法制審議会 民法・不動産登記法部会 第4回会議 議事録 第1 日 時  令和元年6月11日(火)自 午後0時59分                     至 午後6時08分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第4回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   関係官の御紹介を差し上げます。   本日は,財務省から小西関係官が出席なさっておられます。自己紹介をお願いいたします。 ○小西関係官 理財局で調査官を拝命しております小西と申します。本日はよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   法務省事務当局からは,西山卓爾関係官今回から新たに出席をします。西山関係官は,政策立案総括審議官でいらっしゃいます。簡単な自己紹介をお願いいたします。   お見えになっていないようですから,お見えになられたら,御紹介を差し上げることにいたします。   なお,本日は阿部眞一委員が欠席でいらっしゃいます。   事務当局から配布資料の確認を差し上げます。 ○福田関係官 法務省民事局の福田と申します。   今回,部会資料7「相隣関係規定等の見直し」を事前送付してございます。また,本日は,前回配布いたしました部会資料6「財産管理制度の見直し」も併せて使用いたします。   本日,部会資料7につきましては,お手元に配布させていただいておりますが,部会資料6も含め,もしお手元にないようでしたら,この場でお知らせいただければと思います。 ○山野目部会長 資料はよろしいでしょうか。   それでは審議に入りますけれども,本題に入ります前に,前回,第3回会議におきまして,会議時間のちょうど最後のところで,村松幹事から説明を差し上げた,新しくできた法律がございました。本年5月17日に国会で成立いたしました,表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律でございます。これに関して,説明を差し上げるにとどめ,特に質疑の時間を設けませんでした。当日終了間際であったことによります。   本日,それについてのお尋ねの御希望があります。松尾幹事,御発言をお願いいたします。 ○松尾幹事 お時間賜りまして,ありがとうございます。   前回,表題部所有者不明土地法について,村松幹事から解説を賜ることができました。   この法律につきまして,2点コメントをさせていただきたいと思います。これは,前回部会資料4の14ページにございます「第5 その他」の「共有について,他に検討すべきことはないか」という,その点にも関わる点かと存じます。   第1点は,表題部所有者不明土地法14条・15条の適用に関するものでございます。同法14条では,表題部所有者不明土地について,所有者等の探索に基づき,所有者等の特定をしたうえで,同法15条では,表題部所有者の登記(いわゆる変則型登記)を職権で抹消したうえで,所定の事項を登記することになっております。同法14条1項4号ロによりますと,表題部所有者不明土地の所有者が特定できた場合であっても,その土地が法人でない社団等に属する場合については,これは登記能力がございませんので,「表題部所有者として登記すべき者を特定することができない」という判断をした上で,同法15条1項柱書に基づき,表題部所有者の登記を職権で抹消した上で,同項4号ロに従い,表題部所有者として登記すべき者を特定することができない旨の登記を行うことになってございます。   これらの規定運用につきまして,この法律の適用対象となっております,表題部所有者所有者不明土地,いわゆる変則型登記のうち,例えば,記名共有地とか字持ち地に関しては,その近辺の部落や区といった地域コミュニティが実体的な所有者である場合も相当程度あるのではないかと予想されます。その場合,当該地域コミュニティが認可地縁団体(地方自治法260条の2)の手続をとっておれば問題ないわけですけれども,その手続をとっていない場合には,「表題部所有者として登記すべき者を特定することができない」という扱いになるのかと思います。   ただ,その場合にも,字持ち地,記名共有地といったいわゆる変則型の登記の中には,例えば,地域コミュニティの呼び名である「◯◯」の名前を付けた上で,「◯◯組」といった形で登記がされている場合も,相当程度あるようであります。その場合は,いわゆる変則型登記ではありますけれども,むしろ実質的には,その実体上の所有者である地域コミュニティの名を示した登記になっております。この法律を適用する際に,そのような表題部所有者の登記をも職権抹消してしまうということになりますと,それなりに理由のある地域の事情でかえって実体に近いものになっている登記であるにもかかわらず,そうした歴史的遺産を消してしまうことになり,必ずしも適当ではないのではないかという懸念がございます。   この法律の運用について,これから始まりますけれども,この変則型登記のうち,地域コミュニティの名が出ているものについては,慎重に取り扱うことが望ましいのではないかというのが,第1点でございます。   第2点として,この法律を有効に活用するためにも,地域コミュニティそれ自体の登記能力について,ルールを整備し,表題部所有者不明土地の登記について,やはり正面から受け皿となるような制度を併せて整備すべきではないかと思います。   現在,既に地方自治法上260条の2に基づく地縁団体の「認可」の手続がございますけれども,これについては,同条2項3号にもありますように「個人」を構成員としておりまして,その認可を得るための手続においても,名簿を整備することが求められるなど,手続的なハードルが高かったという経験者の指摘もあります。したがいまして,特に新たにできた団地の自治会など,アソシエーションとしての地縁団体の認可手続の円滑化を図る余地もあろうかと思います。他方,例えば,明治期以前から伝統的に存在する部落や区等は,一般的に「世帯」を構成単位としておりますが,すでに厳然と存在するコミュニティとして,事情をよく知る市町村長の認証による特例の手続を設けるといった,円滑に登記能力を承認するルールの整備を併せてすることが,この表題部所有者不明土地法を活かしていくためにも有効ではないかと思われます。   と同時に,それによって所有者不明土地の相当部分を占めていると思われます,この変則型登記の問題についても,大きな改善が図られる可能性があるのではないかと考えまして,意見を述べさせていただきました。   お時間どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 松尾幹事から問題提起を頂きましたから,法律の運用に携わる法務省事務当局の方でどのように考えておられるか,村松幹事からお話があります。 ○村松幹事 松尾幹事,御指摘ありがとうございます。   この表題部所有者不明土地の法案ですね,法律が成立しておりますけれども,研究会でいろいろ御議論させていただいた段階からも,御指摘いただいていた問題の一つかなと感じております。   今,御指摘ありましたように,これから運用に入ってまいりますので,その際にまたよく考えてまいりたいとは考えてございますけれども,おっしゃいますように,今言われましたような事案に関しては,本当に地域にきちんと実態があるものとして,恐らく認定していくことができる事案になりますので,当然ながらそういったケースについては,しっかりと利害関係者,当事者,そういった方とコミュニケーションをしっかり取った上で,手続は,どういう手続がよろしいでしょうかということは,もちろん進めていきたいなと考えてございます。   また,地縁団体の認定の関係もございますけれども,そういったところも併せまして,こちらの方で運用していきますので,いいやり方というのを模索していく必要があるのかなというのは,非常に感じているところでございますので,そういった辺り,工夫を重ねてまいりたいと考えてございます。 ○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。 ○松尾幹事 はい,ありがとうございました。 ○山野目部会長 所有者不明土地問題が,ここに限らず,いつもそうでありますけれども,登記さえ整えればよいということにはならないものであろうと考えます。常に実体の法律関係が重要であります。表題部所有者が変則的な登記記録になっている事案に関して述べますと,もちろん登記のことも考えなければいけませんけれども,それぞれの事案において,歴史的に積み重ねのある,奥行きのある実態が形成されています。   例えば,旧尾張藩領に関して言うと,徳川林政史研究所が地域の実態をよく調べて,研究を積み重ねている実績があります。民法学,法社会学の領域においては,何人かの先達が多くの研究を積み重ねてきました。近時は,林業、森林の分野から山下詠子さんという方の入会林野の研究が奥行きのある学術研究の成果として発表されています。こういったものに徴して,実態,したがってまた実体をよく見ながら,新しくできた法律の運用に携わっていただきたいと望みます。松尾幹事のお話も,そのような観点からのものであったと受け止めますし,村松幹事から適切な法律の運用を期するというお話を頂いたところであります。   この法律の運用について,この際,ほかに何かおありでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日の本題に入ります。   前回,途中まで進んでおりました部会資料6「財産管理制度の見直し」の続きからの御審議をお願いいたします。   長丁場になりますから,おおむねめどといたしまして,午後2時30分頃と午後4時過ぎをめどに,10分ほど休憩をそれぞれ設けたいと考えております。   本日の審議は,ページ数でいいますと部会資料6の5ページ目の「第1 不在者財産管理制度の見直し」の「3 申立人自身による財産管理」からとなりますけれども,前回ひとまずその部分についての事務当局からの説明は差し上げていました。しかし,1か月弱時間が経過しておりますから,簡単なおさらいの事務当局からの説明を差し上げたほうがよろしいのではないかと考えます。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑です。私の方から御説明させていただきます。   今,部会長からお話がありましたように,前回から少し,中途半端なところで終わってしまいましたので,前回どのようなことを議論したかということを少し振り返ってみますと,まず,第1の本文1では,不在者財産管理人が不在者の財産全般を管理することによる負担を軽減する観点から,不在者の財産のうち,特定の財産のみを管理の対象とし得ることを明確化してはどうかということを取り上げました。   次に,本文2では,不在者財産管理人の選任の申立権者である利害関係人の範囲について,どのように考えるかということで,具体的には,財産の取得希望者,隣接地の所有者,地方公共団体というものについて御議論いただきました。   今回は,それに続いて,本文3の「申立人自身による財産管理」からということになります。   まず,本文3についてですが,一般的には,不在者財産管理人には,申立人以外の第三者が就任することがほとんどであると思われますが,それだと,管理費用,取り分け報酬が高額になってしまうこともあります。そこで,本文3は,申立人自身が直接的に管理行為を行ったり,あるいは管理人に選任された上で,自ら管理行為をすることができることを前提に,そのような場合には,利益相反関係が生じやすくなりますので,利益相反行為に関する規律を整備してはどうかというものです。   本文4は,これと似ていますが,数人の不在者がいる場合,特に共有物の所有者のうち複数人が不在者である場合にも,管理の合理化の観点から,1人の管理人を選任すること,それ自体はできることを前提に,利益相反行為に関する規律を整備してはどうかというものです。   次に,本文5ですが,現行法下では,管理人がある財産の処分行為を行うかどうかは,管理人自身の判断,それから裁判所による権限外行為許可の判断に委ねられるわけですが,その判断基準をもう少し明確にできないかというものです。部会資料の中では,考えられ得る考慮要素を明示的に列挙してございます。   そして,本文6は,管理人による手続の終了の在り方に関するものです。現行法下でも,不在者財産管理人が供託をして,管理業務を終了させている事例自体はあるものと思われますが,一方で,そもそも管理人が不在者に渡すべき金銭を供託できるのかについても,必ずしも明らかでないという指摘もあります。そこで,管理人による供託をよりやりやすくすることができないかということを記載してございます。   私からの説明は以上です。御意見賜われればと思います。 ○水津幹事 不在者財産管理人が不在者の不動産を処分する場合における規律の整備について,2点申し上げます。   第1に,①から④までの考慮要素の中には,価格の相当性が挙げられていません。確かに,価格が相当であるときは,原則として,処分を許可してよいなどとすると,特定の不動産を目的とする不在者財産管理制度が,簡易な収用のようなものとして機能するおそれがあって,適切でないと考えられます。   しかしながら,他方で,価格が不相当であるときは,権限外行為としての処分を許可すべきではありません。そうだとすると,①から④までに加えて,ここに価格の相当性を挙げるとともに,価格の相当性を,権限外行為としての処分の許可についての考慮要素ではなく,その要件に位置付けたほうがよい気がします。   なお,不在者の共有持分について不在者財産管理がされたときは,前回議論された持分の売渡請求権と同じように,持分の価格の相当性を,共有物の処分価格を基準に定めるのか,持分のみの処分価格で考えるのかという問題が生じるように思います。   第2に,④の考慮要素について,部会資料では,不在者の特定の財産のみを管理するときは,その管理の対象は,その特定の財産のみであることとの関係が問題とされているように見えます。しかし,財産管理の対象を特定の財産として,例えば,草木の伐採をするときは,それ以外の財産の状況を把握しなくてもよいとすることと,権限外行為としての処分の許可を得ようとするときは,事情によっては,不在者の財産全体の状況を把握することが求められるとすることは,次元が異なる話ですので,制度の設計としては,両立するのではないかと思いました。   なお,同じようなことは,②の考慮要素についても,問題となります。不在者の特定の積極財産のみを管理するときは,その消極財産は管理の対象に含まれないという立場を採ったとしても,権限外行為としての処分の許可を得ようとするときは,事情によっては,不在者の消極財産を把握することが求められるからです。   このように考えますと,不在者財産管理人にとって,過度の負担になるのではないかという懸念が生じます。もっとも,一方では,不在者の利益のために,不在者の不動産の処分を許可するという以上,その許可をするかどうかを判断するにあたって,事情によっては,不在者の財産全体の状況を考慮するというのは,当然である気がします。他方では,不在者の財産全体の状況を権限外行為としての処分の許可を得るための要件ではなく,その考慮要素の一つとして位置付けるのであれば,不在者財産管理人にとって,それほど大きな負担にはならないと考えられます。 ○山野目部会長 もしかして,8ページの本文見出し5のところについて,今御意見をお寄せいただいたものでしょうか。 ○水津幹事 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○道垣内委員 実は,5に最も関係するのかもしれないんですが,大前提として伺いたいことがあります。それは,不在者の財産管理人というのは,不在者の既存の債務を支払う義務ないしは権限があるのかということです。つまり,何をもって不在者の財産管理と言うのかというのを,まずきちんと確定しないと,何かよく分からない。   民法の教科書とかを見ましても,多分,それほどきちんとは論じられていないような気もします。私の不勉強だけかもしれませんが,その辺りはどうなんですか。 ○山野目部会長 債務の弁済と財産管理の概念との関係について,前回審議の対象にされたところで,若干部会資料が話題としています。   そこの確認も含め,大事な観点ですから,事務当局はどなたですか,どうでしょうか。 ○宮﨑関係官 今のは,一部だけが管理対象とされている場合ということですかね。 ○道垣内委員 それでも結構です。どちらでも。 ○山野目部会長 それでも結構ですし,全般について,不在者財産管理というものにおける債務の扱いについて,事務当局が新しくどう提案したいかではなく,従来どういうふうな考え方でしてきたかとか,運用はどうであったかということについて,客観的に見ておられるところがあったら,御紹介いただきたいと考えます。 ○宮﨑関係官 従来でしたら,債務の弁済行為というのは,不在者財産管理人の権限の範囲に属すると解されていましたので,弁済行為はできるとされていたと考えられます。   一方,今回,第1の1の中で上げている,その特定の財産のみを対象とする場合について,ちょっとここの補足説明の中でも書いておりますのは,その債務自体,ある特定の財産だけを管理対象とすると,それ以外の債務というのが管理の対象から外れてしまうと。そうすると,それを消滅させる行為というのは,管理のそもそも権限の枠外になってしまうので,それをできなくなってしまう可能性があるのではないかというところで,記載をしてございます。   ただ,それでも,消極財産については,弁済の権限も付与するという考え方もあるものとも思っております。 ○山野目部会長 道垣内委員,いかがですか。 ○道垣内委員 すみません,どうも。1か月たって,忘れていました。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○佐久間幹事 私もちょっと5にも関わるんですけれども,2点ございまして,一つは,申立人自身の財産管理に関しまして,6ページの一番上のゴシックのところでは,不在者財産管理人に選任することを含むとあります。ということは、そうでない場合も当然あるということですよね。その場合は,一体管理人はどういう立場になるのでしょうか。法定代理人になるのでしょうか。不在者財産管理人になれば,それはいいんですけれども,ならないで,私が管理しますと申し立てて,では,管理してくださいということになった場合は,その人は,不在者財産管理人ではなくて,ほかの何か属性なのかというのが,ちょっとよく分かりませんでしたので,お教えいただければ幸いです。   その場合に,これに関連してなんですけれども,財産管理人になっていない場合であっても,7ページの(2)の利益相反のような場面について考えることが必要なのか,それとも,これはやはり財産管理人になったという場合なのか,私は後者ではないのかと思うんですが,その点ちょっと確認させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 事務当局から説明を差し上げますけれども,不在者財産管理人にならない場合は,必要な処分を求められた,委ねられた人という扱いであろうと考えます。必要な処分は個別性を持ちますから,そこでは,家庭裁判所が適切な運用をしている限りは,利益相反の問題は起こりにくく,それに対し,不在者財産管理人に選任する場合には,103条の権限を一種包括的に与えられることになりますから,利益相反が心配になります。心配だけれども,特別管理人の制度と組み合わせ,今後の運用を考えていきたいというものが,ゴシックで示している提案でございます。   事務当局のほうから説明お願いします。 ○宮﨑関係官 今,部会長がお話しされたとおりの認識でございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 すみません。今ので,必要な処分として,あなた,管理をしてくださいということになるということですね。それは,一体どういう立場なんでしょうか。本人の財産の,やはり代理人なんでしょうか。 ○山野目部会長 お尋ねは,不在者財産管理人に選ばれた場合のお話ですか。 ○佐久間幹事 ええ。管理の場合に,自分で雑草を抜くのだったら自由にできると思うんですけれども,例えば,業者に依頼をするというときだと,これは,言わば事務管理的に,自分で全部費用も持って業者に依頼をし,それは報酬も得られないので,全部自分持ちですよという形でやるということが,賛否の話ではなくて,そういうことが想定されているのかということを,ちょっとまだ1点目なんですが,伺えればと思ったんです。 ○山野目部会長 何か御説明があったら,どうぞ。 ○大谷幹事 ここで申し上げたかったのは,事実行為として,例えば単に草を刈るだけと,本人が刈るだけと,それで管理行為としては終わってしまうということを想定しておりました。おっしゃったとおり,他人にやらせたらどうなるのかというと,これは法律行為として代理をするということになるんではないかと。そういうことであれば,恐らく代理という形になるのかなという気もいたしますけれども,ここで書いておりますのは,事実行為をして,それで1回で終わってしまうということを想定しておりました。 ○佐久間幹事 ありがとうございました。その場合ですと,管理措置請求という,後で出てくるものでも対応できるかもしれないということになるのかなと思いました。   2点目は,前回から少し話題になっておりますけれども,一部の行為についてのみ管理権を有する,そういう管理人が選ばれた場合に,これは5を問題にするのではなくて,一部の管理権しかない人についてということなんですが,例えば不動産をその人が処分した場合において,対価が得られたときに,その対価をどうするのかということが非常に難しい問題になると思うんですね。私は,対価が得られたら,それは供託しなければならないとすればいいのではないかと,前回申しました。けれども,そうなるとは限りません。そうならない場合,例えば,預金をしようと思ったって,それこそ代理権がないと預金もできない。そうだからといって,現金で持たせておくわけにもいかないということで,かなりここは考えなければいけないことがあるのではないかなと思いました。   それともう1点,5は不動産を処分する場合とあるんですけれども,不動産以外の,先ほど出てまいりましたような,全面的な財産管理権でなくとも,債務を弁済する権限があるという場合に,その債務の弁済のために例えば高価な動産を処分したいというときは,この①から④のような要件ではないようにも思うんですけれども,それについては,明文化する必要はないのかということを,疑問に思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き3のところの御意見を伺いますが,今までありましたように,ほかの,その近くの論点が関わる御発言でも結構です。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今までの議論に関連して質問です。   5のところで,不在者の特定の財産の管理人が不動産等を売却した場合、その売却代金がどうなるのかについて,供託する,一定期間は管理人が預金して管理する,もう一つは,先ほど道垣内先生からの質問に対する回答にもありましたけれども,消極財産(債務)をも管理対象とすることによって,弁済をすることも想定されていると。   この消極財産(債務)を管理対象とするということについて確認ですが,これは,不在者の債務全体を管理対象とするのか,それとも,特定の債権者に対する債務だけを管理対象とすることもできるのかということが気になりました。つまり,不動産等を売却して財産ができたときに,管理人は弁済ができるとして,その弁済というのは,不在者の全ての債権者を調べて,例えば債務超過になっていないかとか,そういうことも調べた上で払うのか,それとも,分かっている範囲の債権者だけを管理対象として,その人だけに払っていいというような制度にするのか,そこがよく分かりませんでした。 ○宮﨑関係官 この部会資料のところで,補足説明のところで書いておりますのは,特に消極財産のうちで,一部の債務に限るというふうな考え方を特に念頭に置いているわけではございませんで,債務全般と考えてはございました。 ○蓑毛幹事 そうすると,消極財産(債務)を管理対象として指定されて財産管理人となった者は,その不在者の債務全てについて,調査する義務が生じるということでしょうか。 ○宮﨑関係官 はい。 ○蓑毛幹事 はい,分かりました。 ○道垣内委員 やはり,5に入らざるを得ないんですけれども,私が伺ったのは,正に同じ点でありまして,5のところの要素のうち,②がよく分からないんですよ。つまり,これは,その不動産が差し押さえられてしまうかもしれないところ,それよりも,任意売却の方が高く売れそうだから,売ったらどうか,という話なのですが,仮に弁済義務があって,きちんと調査をして,善良な管理者の注意に従って,無駄な遅延損害金が発生しないように弁済しなさいというのであるならば,別に債権者がこの不動産を差し押さえてくるのではないかみたいな話と無関係に,弁済のために流動資金が足りないときにはその不動産を売らなければいけませんという話になるのではないかという気が私にはするんですね。   さらに,佐久間さんがおっしゃったことにも関連するんですが,もし売却した後に,それを供託するとか,極端なことを言うと,たんすに入れておくということになりますと,②の要素があるときにそういうことができるというのは,執行妨害ではないかという感じもします。正確には,執行妨害ないしは執行のお手伝いといった方がよいかもしれません。供託金還付請求権になったら便利だということであれば,執行のお手伝いということになるんですが,やはりその債務の弁済とか,どこまでの権限があるのか,あるいはどこまでの義務があるのかということと,それぞれの論点でかなり密接に結び付いているのですね。全てについて権限があります,義務がありますというお答えだけで,本当にスムーズに全部が色が塗れるのかというと,なかなか難しいところがまだあるのではないかという気がいたします。 ○山野目部会長 冒頭に事務当局から説明を差し上げた6の供託のところまで,包括して御審議をお願いしたほうがよろしいようですね。6の範囲までで,どうぞ,自由なお話しぶりで御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 では,6について意見を申し上げたいんですが,私は,前回申しまして,先ほども申しましたように,供託を積極的に活用したらいいのではないかとは思っています。思っているんですけれども,例えば不動産を処分して金銭に換えましたと。そのまま現金で置いておけば別ですけれども,それを預金でも供託でも一緒ですが,預金するなり供託するなりした場合には,不動産のままだと,放っておいても権利を失うことないですよね,不在者は。他人が時効取得したら別ですけれども。それに対し,不動産を金銭に換えられ,それが債権化すると,債権の消滅時効がどうしても,どんな形でも起こってくることになると思うんですね。   私は、先ほど来申し上げるように,供託を積極的に活用すべきだと思うんですけれども,その供託の還付金の請求権ですか,その消滅時効がそう簡単に完成しないようにする必要があるのではないかと思います。例えばですけれども,財産を幾つも処分していって,処分のたびに供託を仮にしていった場合に,一つ一つが消滅時効にかかっていくというよりは,一応管理の終了を目指して供託をさせるということだと思いますので,供託所にそれが分かるかどうかはちょっと分かりませんけれども,例えば,当該管理の事務が終了した時から時効の進行が開始するとか,これは単なる一例ですけれども,そのような形で,不在者が仮に戻ってきた場合に,権利の形が変わったことによって実質的に不利益を被ることがなるべくないような措置を講ずる必要があるのではないかと思います。 ○宇田川幹事 これまで議論をお聞きしていて,家庭裁判所の立場から少し,もう一度お聞きしたい点,又は御意見を申し上げたい点がございます。   これまで,特定の財産に着目した管理をした上で,さらに債務全般についても管理することもあるとのお話があったかと思います。前回余り時間がなくて,十分に議論はできていなかったようにも思うんですけれども,3ページの第1の1の3で,管理対象財産の追加ということも記載されておりまして,その前に消極財産のところでも書いてありますけれども,今回,特定の財産についての管理を認めるとした場合に,その追加や拡張があり得るとすると,更に減縮もあり得るのではないかというところもあるんですけれども,何をもって管理財産の範囲を画するのかというところが,あまり議論されていないように思っております。もともと不在者財産管理の制度は,不在者の財産を管理保存して,不在者の利益を保護するということで,不在者の財産全般を管理することで理解されていますけれども,そういった不在者の利益の保護という観点を考えた場合に,どういう形でその管理対象財産の範囲を決めていくのか,それが実際に利害関係人や財産管理人の申立てによっての拡張という形になるのか,財産管理人が,例えば特定の財産を更に追加で管理するとか,そういう恣意的な選択も可能となってしまうところで,そういった管理財産の対象をどうするか,不在者の財産管理制度の趣旨からしてどうするかということを,考えて議論する必要があるのではないかと考えております。   これも既に御案内のところだと思っておりますけれども,不在者財産管理人は,不在者本人の一種の法定代理人であると解されていて,不在者と財産管理人との関係は法定委任関係で,家事法の146条6項によって,委任の規定が準用されて善管注意義務が課されている中で,どのように管理人の申立権を考えるのかというところも,一つ問題にはなってくるのではないかと考えているところでございます。   それと,もう一つ,3について,申立人自身による財産管理の面のところなんですけれども,申立人が不在者財産管理人に選任された場合に,その場合も含めて,申立人が財産管理をする行為,処分をする場合も含めて,不在者財産管理人の選任又は特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない,利益相反の場合にはしなければならないとされています。利益相反という場合に,こちら,7ページの利益相反行為の該当性と書いてありますけれども,外形的・客観的に考察してというところで,実施的な利害関係がある場合については,どのように手当すればいいのかということも問題になるのかなと思っております。裁判所の方では,実質的な利害関係がどこまで,その近隣の人とか,どの程度あるのかということも分からない中で,申立人が家庭裁判所に不在者財産管理人等の選任を請求すればいいというだけの規律で,実質的な利害関係がある場合も含めて手当ができるのかということが,少し心配に思うところでございます。現在の実務では,実質的な利害関係があることも想定して,やはり申立人自身を不在者財産管理人に選任しないという取扱いが多いのではないかと認識しておりまして,そういった観点でも,この規律で,そういった実質的な利害関係がある場合に手当ができるのかというところについて,少し心配があるところでございまして,この点についても,御議論いただければと考えております。   もう一つ,5について,もう1点だけ申し上げてもよろしいでしょうか。   不在者財産管理人の関係で,いわゆる権限外行為の許可の関係で,先ほど冒頭に水津幹事からもお話があったんですけれども,考慮要素の一つとすることは,非常に管理人の裁量,また裁判所の裁量を大きくするというところでございますけれども,この特定の物の財産の管理という場合には,管理の対象が限られているだけに,どこまでの事情を考慮すればいいのかというのは,非常に難しい,現場の裁判官なり管理人が判断するには難しいところでございまして,そういったことを考慮要素として挙げるだけで,委ねるということが本当に実務上混乱がないのかというところについては,懸念を持っておりまして,そうであれば,できるだけ明確な要件という形で規定していただいたほうが,安定的な実務が確保されるんではないかということを,意見として申し上げたいと思っております。   すみません,長々とありがとうございました。 ○大谷幹事 今,宇田川幹事から御指摘,大きく分けて三つぐらいあったかと思います。   その一つ目の,特定のものだけ財産管理をしたときに,他の物を追加するときには,どのような考え方なのかということですが,資料の2ページの2とあるところの,その上の「もっとも」から始まるところの括弧の中にありますけれども,例えば,最初,特定の土地のみの財産管理を申し立てたところ,他の物についても管理をしたほうが不在者の利益のためになるということが分かったというときに,追加をするということがあるのかなということで,管理対象の追加というところを,補足説明で書かせていただいたところでございます。それでいいのかどうかというところについて議論する必要があるかと思っておりますけれども。   それから,2点目の利益相反関係の御指摘もございました。今,正に実質的な利害関係があるときには,申立人を管理人とはしない扱いが多いのではないかという御指摘がございましたけれども,不在者財産管理制度の申立人は,利害関係人であることがほとんどであることからすると,実質的な利害関係があれば申立権があるんだということになると思います。したがって,実質的な利害関係があれば管理人になれないということになるとすると,この方法はなかなか難しいということになりますけれども,それでいいのかというところが,利益相反という法律上の概念に当たらなければ,選任してもいいのではないかという観点からの提案でございます。   3点目が,考慮要素として,他の財産を考慮に入れるということについては,管理人にとっては御負担があることかもしれません。水津幹事からの御指摘は,調査をする権限といいましょうか,ただ今の不在者の財産管理人に,他の財産の調査をするだけの権限を与えるけれども,管理までする義務は課さないということなのかなと受け止めていたところでございます。 ○山野目部会長 中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   2点ございます。   1点は,宇田川幹事への質問です。   不在者財産管理につきまして,東日本大震災の折に,東北で仙台高裁管内全体なのか,それとも各県ごとなのかよく分からないのですが,スポット運用を事実上用いられたと聞いているんですけれども,そのような事例で,どのような考慮要素によって判断をなさっていたのか,御存知でいらしたら教えていただけると,参考になるのではないかと思いまして,質問させていただきました。   もう1点は後の方がよろしいでしょうか,意見ですので。 ○宇田川幹事 まず,中村委員の御質問にお答えしたいと思いますけれども,仙台家裁でQ&Aというのを出しているんですけれども,そもそもスポット運用というのも,結局申立てに当たって,財産として判明している特定の土地について財産として記載して申立てをしていただいていいということです。考え方としては,財産管理人に選任された財産管理人は一応の調査をするということで,結局,震災後の状況ですので,なかなか他の財産が判明しないということも多くて,結果として,その不動産だけが,その管理対象となるということが,実務上多かったと認識をしております。その際に,権限外許可の際の売却の判断基準については,これも,裁判事項であるので,なかなかちょっと私のほうから申し上げることはできないんですけれども,公共事業であるとか,その帰来可能性とか,ここに掲げられている考慮要素は,価格の相当性も含めて考慮されていたのではないかと認識をしております。 ○中村委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 私の認識するところでは,仙台高等裁判所管内全部ではなく,盛岡,仙台,福島の3庁でありましょう。今でも恐らくウエブサイトには,不在者の財産管理についてのQ&Aという文書で,見方によっては弾力的な運用を可能とする案内があります。しかし,その弾力的運用というものは,何かずぶずぶのいいかげんでいいよという感じではなく,かなり丁寧に,いろいろな要素を書き込んで運用しますから,どうぞ御相談くださいという案内になっています。   いろいろなことが書かれていますけれども,例えばスポット運用に関して言うと,結果としてスポットになるようなことがあるとしても,一応は財産の全般を見てください,というふうに,今,宇田川幹事が御紹介いただいたような形の案内をしています。それから,複数の不在者について共通の1人の管理人を選んでもよいですかという問題についても,利害関係が実質的に衝突するようなことがないかどうかを,よく見定めてやってくださいというような案内があり,また,権限外許可の売却に関しては,宇田川幹事がおっしゃったように裁判事項ですから,かちっとしたマニュアルにしにくいですけれども,やはり様々な要素を考慮して運用していくことになるでしょうというような,丁寧な解説がされていて,そのことを,本日の部会資料は,東日本大震災のときに,あのような弾力的運用をしてもらったことの実績を踏まえて,今後も,しかし,それを現場の運用にだけ負荷として課していくか,それとも民法等に規律を整備することがよいかということを考えた上で,民法に規律を設けるとすれば,こういう姿が考えられるでしょうというものを御提示申し上げています。しかし,先ほど来から宇田川幹事から,そのような規律を設けるのであれば,かなり丁寧な,裁判所が運用としてそれに耐えていけるような規律整備をしてもらわないと困りますという観点からの御注意を頂いていると,こういう論議の構図になっているのではないかと感じます。   中村委員,意見をお続けください。 ○中村委員 先に申し上げてよろしいんでしょうか。 ○山野目部会長 どうぞ。 ○中村委員 分かりました。   この財産管理制度の見直しについては,1ページのところで家裁の関与というのが前提になっていますけれども,申立人自身による財産管理を認めるかどうかというようなことについても,例えば,成年後見の申立てなどで申立人が親族を後見人候補として挙げても,裁判所が諸般の事情を考慮して,第三者の専門職を付けるというようなことが実際あるわけですので,本制度についても,申立てはさせるけれども,申立人自身に管理をさせるかどうかは,諸般の事情を考慮して裁判所が関与するという形であれば,この論点だけ取り出して,難しいとか,けしからんとかというようなことにはならないのではないかと思いますので,この方向で進めるということ自体については,日弁連のワーキンググループでも特段の反対はございませんでした。   それから,もし個別の特定の財産についての管理というものを認めるとなりますと,その趣旨として,余り申立人の負担にならないような制度,予納金の額を抑えるというようなことが想定されておりますので,先ほど来議論があります債務の弁済をどうするのかとかというところも,きちんとした調査をさせることまでは想定していないとすると,調査無しに一部の債権者に弁済するわけにはいきませんから、供託という形にして,各債権者は供託金還付請求権に対してかかっていくというようにしないと,公平が図れないと思われます。   ただ,一方で,還付請求権になってしまいますと,不動産のままの場合には,債権者は不動産の所在を確かめて,その不動産を責任財産としてかかっていく,そのための調査自体はそれほど難しいわけではありませんが,債権になってしまった場合には,実務的にとても見付け出すのが難しいということがございます。債権者としては,供託されてしまった後に,どうやってその供託金還付請求権を見付けるのかという問題,それから,不在者自身が後に帰来したときに,管理人自身ももう任務を終了して,管理人がいないという状況の中で,自分の財産が還付金請求権になっているということを,どうやって探索するのかというような問題もあろうかと思いますので,その辺りも目配りしながら進めていただく分には,よろしいのではないかと感じております。 ○山野目部会長 ただいま中村委員から,3の論点とか4の論点などを見据えつつ,成年後見事件の運用などのイメージも参考としていうならば,申立て自体は柔軟に広く認めてよいけれども,裁判所が適切に受否をコントロールすべきであるという,ここら辺りの提案を丁寧に見ていただいた上での,弁護士会の先生方の御意見を集約した御意見を頂きました。   誠に仰せのとおりの部分があるだろうと感じますとともに,そういうふうなことでいったときに,裁判所が一件一件丁寧に見なければならない度合いというものは,成年後見でももちろん丁寧に見ていますが,ここでもやはり丁寧に見てくださいねというお願いをしなければいけないということになりましょうか。裁判所の御負担などを考慮し,可能な限り軽減するような規律の明確化を図っていくということが,やはり課題であろうということも,同時に明らかになってきたものではないかと考えます。   また,利益が相反するときには,特別代理人の選任が申し立てられるからいいでしょうという措置を,3の論点とか4の論点では用意していますが,宇田川幹事から指摘があったとおり,そこで言っている利益相反を,民法108条のような客観的・外形的な利益の相反のことのみに限定すると,言わば民法107条倣いの代理権濫用的な実質的な利害衝突の事例について,特別代理人の選任のらち外であるということにななりかねません。裁判所として事件運営のことを考えると,困ったなと感ずる部分があるだろうと想像しますし,しかし,そこを,実質も見てくださいというと,また裁判所が丁寧に見なければいけないということになり,そこもいささか実質を確保すれば裁判所に御負担かけ,そこは見ないでくださいというと事案の解決としてよろしいかということになり,なかなかに難しいんだろうとは感じます。しかし,問題点はかなり整理されてきているようにも受け止めます。 ○道垣内委員 小さな話なんですが,8ページの5ですよね。今,中村先生の方からも成年後見の話が出たんですが,成年後見のところにはこんな条文ないんですよね。信託のところにもないんですよね。そのようなとき,ここだけは置けないと,私は思います。   それと,6というの,これは,債務も弁済して,残りが金銭のみになって,プラスになったということなんでしょうか。それがちょっとよく分からなかったのと,あと,債権者がいても供託できるという話になったときに,それもよく分からなくて,本来ならば,公平を図る制度というのは破産申立てになるわけであって,マイナスであるならば,不在者の財産管理人が破産を申し立てるという権限があるのかという話になって,これ,なかなかまた面倒くさい手続が含まれなければならないということになるんですが,債務も含まれるということなんでしょうけれども,そうであるならば,たくさんの規律が必要になってきて,ちょっと今のままだと,まだ耐えられないのかなという気がいたします。 ○山野目部会長 6の供託のところについては,今,道垣内委員から,ここで述べられていることの意味,それ自体についてのお尋ねがあったと考えますから,後で事務当局に説明していただきます。   また,5については反対であるという御意見を頂きました。   6の方について,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 6のところ,弁済をした後に残ったものを供託するのか,これは,両方の考え方があるんだろうと思いますけれども,先ほど来御議論いただきました一部の財産のみを管理すると。そして,その場合に,債務の全体を管理するかどうかということも議論になりましたが,全体の管理をしないということであれば,弁済はしないで供託をするということになるのかなと,今,考えておるところでございます。 ○山野目部会長 道垣内委員,6のところについて,何か引き続きの御意見はおありでしょうか。 ○道垣内委員 いえいえ,結構です。 ○山野目部会長 よろしいですか。   道垣内委員の方から,このまま規律を設けることでは,法制上の措置として,他の局面とのバランスの観点等から心配であるという御指摘を頂いた,8ページの5の観点については,道垣内委員の御心配がごもっともな部分があって,引き続き考えなければいけないと感じますとともに,少し背景,経過の御案内を差し上げておきますと,実は,5のこの権限外許可のときに,どのような基準で売却を裁判所はコントロールするかという問題は,現在でもある問題ですね。ただし,それについて,しかし,現在は権限外許可ができるということしか民法に規定が書かれていなくて,裁判所に丸投げになっているところが御負担ではないかと感じられたところから,もう少し不動産に関する限りは基準を明確化するということを意図して,このような規律の提案を,差し当たり法文化するということで差し上げています。道垣内委員の方からほかに例がないよという御注意も頂いたところであります。   実は,本日冒頭に松尾幹事から御質問を頂いた,表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の運用に関する国会審議の中では,あそこで出されている特定不能土地等管理者のために,処分の権限外許可を与えるとか,特定社団等帰属土地について同じ制度が準用されていて,やはり裁判所が権限外許可を与えるという局面があって,あそこでも,どのような要件があったら許可を与えるかということは,法文自体には示されていません。国会質疑の中で,これは,裁判所はどのようにして判断するものですかという質問が出されまして,2019年4月26日の衆議院法務委員会において,政府側から幾つかの要素を考慮して判断するということを期待し,その前提で,裁判所によって適切な運用がされるものと考えるという答えがあって,国会としてもそれを受け止めて,この法律が成立したという経緯がありました。   そのように国会審議等で人々が共有しているものを,運用のレベルで今後も考えていくということは,最小限あるであろうと考えます。加えて,その法文にするということについては,その中身を,さらに今示している①から④のようなもので足りるか,水津幹事から御発言があったように,幾つか補充をして充実をしていかなければいけないかという中身の検討と同時に,法制上異例ではないかという道垣内委員からの御注意などを踏まえ,引き続き考えていかなければならないと感ずるところでございます。   6までの範囲について,御意見を引き続き伺います。 ○道垣内委員 たくさん発言して申し訳ありません。債務の弁済にこだわっていて恐縮なんですけれども,現行法でも,債務は含まれるんだというお話がございました。それと,善良な管理者の注意の義務を負うんだという話がございました。権限は103条で決まると。しかし,この三つは多分同時には成り立たないですよ。   103条で権限が決まって,しかし,債務の弁済をしなければならないとしますと,どうやっていろいろなものを処分して金銭化するのだろうか,という気がいたします。これ一つ考えても,多分これらが同時に並列することは,理屈上難しいのではないかという気しますが,もちろん結論としてそうではないということになってもまったく構いません。ただ,ちょっとその辺を詰めないと,権限外というものはどうするのかというのとか,いろいろなことが関係してまいりますので,御注意いただければと思います。  ○山野目部会長 詰めないといけないというお話がありましたから,今,事務当局に話を聴いてみて,今後詰めていくというお話であるか,今の時点で何か考えを持っているかを尋ねてみようと考えます。   いずれにしても,道垣内委員から御注意が再々あったように,現在の103条は,権限外許可のようなことが,ひょっとすると財産が度々処分されていくようなことをイメージしないで,言わば静態的というものでしょうか,静かに管理している状態を前提に考えていますから,債務の弁済ということをあながち否定しないけれども,あまりにダイナミックに財産を運用して,債務の弁済原資が出てきて,債権者が複数のときに,さあ,どうなるんだとか,倒産手続との役割分担はどうなるかとか,というようなことを,全くイメージしないでしてきたものであろうと感じます。   しかし,これから権限外許可のようなものを話の中心に据えていかなければいけないとすると,もう道垣内委員が両立しないとおっしゃったように,幾つかの要請が,このままでは規律の未整備で両立しないことになりかねない部分がありますから,御指摘のとおり,確かに詰めなければいけないと考えます。 ○大谷幹事 弁済の部分について,現行法の解釈としては,103条の保存行為に当たるというような解釈もあると思っておりまして,その意味では,弁済するということが,103条の中に入ってこないということはないんだとは思いますが,それでいいのか,先ほどから御議論があったように,いろいろな債権者がいる中で,この人だけに弁済するというのが,保存行為としてそれでいいのかという論点はあると思っております。   全体として,全く両立しないということはないのではないかと,今思っておりますけれども,整理が必要であることは間違いないと思っておりますので,考えてみたいと思います。 ○道垣内委員 それはそれでいいのですが,そのときの弁済に当たって,以前の議論は,たんすにお金があるから弁済する,あるいは,せいぜい銀行に預金があるから弁済する,と考えられていたのに対して,弁済するためには株式を処分しなければならないということになると,弁済は保存行為だと言ってみても,処分行為と結び付いてしまうのですよね。ですから,一般にそう言われているということが,現実にこの不在者の財産管理において,弁済は保存行為としてできるので問題ないのだという話には,多分ならないのではないかという気がいたします。   すみません。 ○山野目部会長 ですから,やはり,こういう能動的な不在者財産管理を大いに考えていきましょうというときの最後の弁済というものの姿は,全然変わってきてしまうものですよね。それを前提に,改めて規律整備を考えなければいけないという御指摘を頂いたと考えます。   沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   ここでの提案の内容を,いまだつかみかねておりまして,取り分け債務の履行や弁済というのが非常に難しいように思っておるんですけれども,元々は,恐らく所有者等が不明であるような土地について,適切な管理が必要となっている。そのための制度をどういう形で用意できるかというときに,不在者の財産管理制度というのがあるのだけれども,言わば全ての財産,その人格に所属する全財産,その中に消極財産も含むという理解でということだと思うんですが,そういう制度なので,しかし,むしろピンポイントでこれをというニーズがあり,その方が,全般としてはコスト面なども含めて望ましいことがあるというときに,その受け皿を作ろうという話からスタートしているんだと思います。そうすると,中核は,基本的には不動産,特に土地を対象として管理が必要となっているときに,その管理を行う。そのためには,しかし,原資が必要であるということであれば,当該土地だけではなくて,ほかのものも入れてこなければいけないということになるかと思います。   そういったときに,債務というものが,どういうものを拾ってくるのかということで,元々全財産を想定して財産調査から始まってという制度ではなくて,この土地なりの管理に必要な範囲での管理というときに,一般債権者の引き当てともなり得るから,全ての債権債務というか,他にどんな財産があるかということも考えないと,この土地を引き当てに債務を履行するというような話は,最終的に決められないからというようなことを考えるのかどうかということで,考慮要素の中に挙がっている債務というものも,これは,ここからは必ずしも明らかではないですが,説明の方の9ページを見ますと,9ページの一番下ですが,不動産に関する債務の額とありますし,固定資産税ですとか抵当権がついているときの被担保債権といったことが念頭に置かれており,抵当権付きの不動産を任意売却で売却するときには,抵当権の被担保債務を消さないといけなくて,その部分で弁済をせざるを得ないというふうなことがあって,そこでは債務の履行というのがどうしても入ってくるというような絡みで,当該必要とされる財産管理,それに関連した債務の履行ということが,元々ではないかと思うんですけれども。この債務の履行というのを,どこまで捉えるかという話と,元々どういうことを想定して,ここに制度を置こうとしているのかという中核の切り出しと,そこから派生してどういうものになるかという問題と,さらには,それを既存の不在者管理制度ということで受けることによって,一般制度自体として組まざるを得ない,特別な制度として設けるのではないということになると,そうすると,この部分だけの手当でいいのかとか,特定の財産だけを切り出すときに,なぜ土地だけなのかとか,土地だけではなくてほかの財産も入れるなら,債務だけということもできるのかとか,いろいろと派生してくるんだけれども,そういう一般的な手当までする必要があるのか,あるいはせざるを得ないということになるならば,別の制度を組んだほうがいいのではないかという方向にもなるようにも思われまして,ちょっと何か,焦点が少しわかりにくいと言いますか,一番やりたいことが何で,そのためにはどういうことになってくるのかという辺りから,整理していったほうがいいのではないかなという感想を持ちました。取り分け債務の履行というときに,一体どういうものを想定しているのかというのは,明確にしたほうが話がしやすいのではないかと感じております。 ○山野目部会長 新しい不在者財産管理のイメージの中で,債務の履行というものについて,いろいろなものを見渡してどう考えるかということについて,お出ししている部会資料には,体系的な準備が整っていないということを,多くの委員,幹事から御指摘を頂きました。沖野委員が少しおっしゃっていただいたような,9ページの一番下の抵当権の被担保債務のようなところについて,若干の論及はありますけれども,この不在者財産管理の中での債務の履行ということについてのトータルな検討を,皆様方にお示しして御議論をしていただくというところに,本日段階では至っていないのではないかと感じます。   その点を,事務当局も議論を聞いていてよく分かったと思いますから,整理させていただいて,改めて議論をお願いしようと考えます。   そのほかに,6までの範囲で御意見がおありでしょうか。 ○佐久間幹事 6までではあるんですが,実は,今沖野委員がおっしゃった,どこに特に問題解決しようとする焦点があるのかということで,土地について,しかも所有者が事実上不在だということで不明であるという場合に,その問題を解決しましょうというのであれば,中身は立ち入りませんけれども,19ページからの第3の土地管理制度とさしあたり名付けられている制度で、恐らく解決するんだろうと思うんですね。   もちろん,第3の土地管理制度が採用されるに至るかどうかは分かりませんが,仮にこれが採用されるとしたら,その管理制度は,今焦点になっておりますような債務の弁済とか,そういったことに関して管理人がしなければいけないとか,することができるということとは別個の制度になると思いますので,そちらの制度もあるんだということを前提に,どの問題をどう手当していくのかということを御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 部会資料6の第3のところの検討と密接な関連を持つものであり,役割分担を考えていく余地があるという御指摘を頂きましたから,忘れないでおいて,第3のときに,また思い出すということにいたしましょう。 ○山田委員 これまでの御発言と重なるところも多かろうと思いますが,私の意見をできるだけクリアにしたい方向でお話をさせていただきます。   第1の不在者財産管理制度の見直しというのを,私なりに理解をしますと,現行法の民法25条から始まる制度は,人に着目してから,その財産を捉えようというものですが,まず財産に着目して,その財産を管理,処分するための人が不在者であるというものであると思います。最初の視点の動かし方が逆向きになっているというものとして,どう考えたらいいかと考えました。   それは,積極的にそういうものも制度として作れるといいのではないかと思います。その中には,売却というのが,現在の民法25条から始まる制度では例外的なもので,できなくはないけれどもハードルが高いということかと思いますが,導入したらいいだろうという制度は,売却はどういうふうに裁判所がコントロールするかというのは,細かく考えないといけませんが,例外的な制度というのではなくて,そういうことも狙っている制度だと,初めからそういうふうな位置付けでそのためには何が必要か,これを考えたらいいだろうと思います。   そうすると,不動産ということに限定したらいいかどうか分かりませんが,民法25条から始まる制度は,全ての財産を、そして消極財産も含んで考えるということの,ある種の名残が残っていて,今日の話になっているかのように思われるのですが,財産に着目した不在者財産管理制度の新型というものは,不動産に限ってもいいのではないかなと思います。そして,売却もありうるというものを念頭に置くと良いと思います。それから,不動産に限るというところは言い切れないんですが,しかし,相当ここに重点を置いた制度ではいいのではないかと思います。   その上で,補足説明を見ますと,公共事業のために柔軟な運用が行われた,あるいはそういう要望があると,2か所ぐらいで書かれていますが,公共事業に限らないというものを作れるといいだろうと思います。公共事業は排除するわけではありませんが,公共事業でなくても,必要な土地があり,または、不動産があって,売却もできるようなものを,その所有者が行方不明であってもできるというのが,できるといいのではないかと思います。   その上で,ちょっと二つ申し上げます。   その不在者が債務を負っていたときに,その債務の弁済を売却代金からできるか,これ,非常に重要な,この新しく想定する問題の中でできるかどうかというのは重要な問題で,一つは供託してしまったらいいだろうと、そして、債権者は供託金に掛かっていったらいいだろうって御意見出てきました。ただ,売却代金が払われないうちは,何かできるんですか。供託される前に,債権者が何かできるかなと思いますので,その辺を整理すると良いと思います。それは仕方がないよね,できるよねとするか,それともやはり,複数債権者がいて,場合によっては債務超過の可能性もあるようなときには,この制度が民事執行制度とか倒産制度が仕組んでいる,あるいは民法の中にも似たようなのがあるのかもしれませんが,限定承認みたいなところに,そういう制度の何か抜け穴になってはいけないと,そこは,十分に注意すべきではないかなと思います。   そして最後に,ちょっと細かなことですが,もしこれが前向きに実現するとすると,民法25条以下の規定で定められている,現在の不在者財産管理人との調整問題というのが出てくるのかなと思います。もうそれは,作り上げた上で最後に考えれば,すぐに答えが出るのかもしれませんが,民法25条の不在者財産管理人が選任されていると,この制度は使わないのかな,あるいは使えないのかなと思うんですが,逆にこの制度を使い始めた後に,不在者財産管理人が選任されるとどうなるのかなということです。多分,一本化すべきなのではないかと思いますが,そこは手当をすべきだろうと思います。   そして,先ほど佐久間さんの御発言を伺って,最後に一言言わなければいけないなと思うんですが,今私が申し上げたのが,第3で実現するならば,別に私はそれで全然構わないと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   山田委員からおまとめで頂いたお話,全て貴重なことであり,取り分けお考え,御発想を進めていくと,一つ前に佐久間幹事がおっしゃった第3との関連というところに行き着いて,全体を見ながら議論していくということになると予想します。ありがとうございます。   吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。   私のような法律の専門家ではない者が,この資料を読んで理解をするのは本当に難しかったのですが,今の先生方のお話を聞きまして,財産管理制度のそもそもの趣旨というものと,今回の社会問題を起点として,解決の手段としてこれを利用しようとするところのベクトルが,少し向きが違っているということがあるのだと思います。したがいまして,沖野先生から御指摘があったように,何を解決するために,どの仕組みを用意するのかということを,やはり整理をするということが大事なのだろうと,素人ながら感じているところです。   財産管理制度というのは,本来は不在者や相続人の財産を守るということが趣旨ですが,今回問題となっているのは,その不在者や増えてしまった相続人が管理を放置し,そして,権利の保全,相続登記という権利の保全も長らく放置をした結果,その不利益が第三者に及ぶ場面において,どのように対応をするかという観点から,この財産管理制度が使えないかということで,見直しが提起されているのだろうと思います。   どのように対応するかということは,すなわち,具体的には不動産の権利を確定し,流動化できるようにする,市場に戻していけるようにするということだろうと思います。その手段として,例えば,前回は時効が使えないかということも論点に上がったわけですし,今回は,この財産管理制度が使えないかという提起がなされているのだろうと思っているところです。   そう考えますと,やはりこの手段の使い方は,山田先生や佐久間先生から御指摘があったように,柔軟に考えるということがあるのかなと,感想を持ったところでした。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   6までの範囲で,ほかに御意見おありでしょうか。よろしいですか。   それでは,本日,委員,幹事から頂いた御意見を整理するということにいたします。   部会資料6の11ページから始まっております「第2 相続財産管理制度の見直し」の部分につきまして,第2の1及び第2の2の部分について,事務当局から資料説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 それでは,次に,11ページ目の「第2 相続財産管理制度の見直し」について御説明させていただきます。   まず,本文1では,総説として,相続財産管理人の制度の合理化を掲げています。これは,不在者財産管理人と同じような手続負担の軽減という観点に加えて,現行民法の中には各種の相続財産管理人の制度が段階的に設けられていることから,これをもう少し使いやすくできないか,また,相続人の全員が相続放棄をしたときは,民法952条の清算を前提とした相続財産管理人の方法によらない限り管理ができないという点を,何とかできないかという観点なども織り交ぜてあります。   次に,本文2から見直しの具体的な内容に入りますが,本文2(1)では,各種の相続財産管理人の制度,具体的には,熟慮期間中の一応の管理人の制度,限定承認をしたときの管理人の制度,相続放棄をした者が次順位者に引き継ぐまでの管理人の制度というのを整理することを記載しています。これらは,相続財産の一部のみを管理することも可能とすること,相続人があることが明らかでない場合にも,管理のための相続財産管理人を選任することを可能とすることをも含むものです。   その終期として,補足説明の中では,甲案と乙案と二つ掲げておりますが,これらは,遺産共有の状態をこちらの制度でカバーするのか,前々回に御議論いただいた共有物の管理の制度でカバーするのかというすみ分けの問題であります。甲案は,遺産共有状態は,こちらの制度でカバーするという案,乙案は,遺産共有状態はこちらの制度ではカバーせず,共有物の管理の制度でカバーするというような案です。   そのほか,相続人のあることが不明な場合には,現行法下では清算のための相続財産管理人によって,その財産の全部が管理清算されるところですが,今回の案では,清算が必ずしも不要となり,一部の財産のみの管理が可能となりますので,そこからどのようにして清算のための管理の制度へと移行するかなどについても,検討を要するものと考えています。   本文(2)では,その管理権限の内容等については,基本的には不在者財産管理人の規定を準用することを記載しています。もっとも,共同相続人がいる場合にも,こちらの制度でカバーすることになると,財産の処分については,その共同相続人らの判断に委ねることが適当であることなど,不在者財産管理人とは別途の考慮が必要な点もあるものと考えられます。   私からの説明は以上です。御意見賜われればと思います。 ○山野目部会長 第2の1及び2の部分について,説明を差し上げました。   今までの進め方でいきますと,1と2を分けて御議論くださいというお願いになるかもしれませんけれども,1のみ議論をお願いしても,少し御意見をおっしゃっていただきにくいでしょうか。今説明を差し上げたところ全部,「1 総説」と「2 相続財産を適切に管理することができる仕組み」,この範囲において御意見を承ります。いかがでしょうか。潮見委員,どうぞ。 ○潮見委員 2点申し上げます。   1点は,要するに,相続財産管理制度全体を見やすくする作業は,是非やっていただきたいなと思うところです。実際に,相続法の体系書等でも,あるいは実際の実務等を見ていても,どこまで何でできるのかということが,実ははっきりとしない。お書きになっておられるような解釈上の争いもあるというところから,少し整理してみたほうがよい。特に相続の場面というのは,国民に分かりやすく制度を仕組むのが大事だと思いますから,是非お願いしたいと思います。   ただ,その場合に,改正をするに当たってということにもなりますが,現在の制度でどこまでできるのか,民法の制度も,それから家事事件手続法上の制度もありますので,それを一度整理していただきたいです。実際に12ページ,13ページでいろいろまとめられておられますけれども,これは,学説に立場の違いがあるところは,1か所だけは示されていますけれども,では,どこまでできるのか,どういう場面で対処ができないのかという,立法事実といったらいいのかもしれませんけれども,そのようなものが若干分かりにくいところがあります。その意味では,分かりやすさを求めた改正と同時に,実際の目の前の事実について対応が必要なので,改正が必要ですという辺りを,少し検討して分かりやすく示していただければと思います。これが1点目です。   それから,2点目です。甲案と乙案というのが途中で示されていて,ここでどちらかに決めるというわけではありませんけれども,これも,いろいろなところでいろいろ展開されておりますが,遺産共有状態になった後に,ほかの,今構想しているような,提案しようとしているような財産管理の制度で,目の前で問題となっているようなものにどこまで対応できるのかとの関連で捉えなければ,甲案がいいとか乙案がいいというわけではいけないと思います。私は,遺産共有状態になれば本人たちに任せておくのが適切であり,それが本来の相続の姿であるとは思いますけれども,そうは言っても,困った状態がいろいろ出てきているということであるならば,それを補う別の制度というもので対応するのは否定しませんし,遺産共有になったら,本人たちの意思に任せるということ自体を変えるという形で議論していただければと思います。 ○佐久間幹事 今,潮見委員がおっしゃった最後の点に関わるんですけれども,この何回か前,前回かもしれませんが,遺産共有の場合の管理の在り方について,それはそれで提案もなされており,議論もされましたよね。そのときに,道垣内委員と私は,管理人を選ぶことについて,遺産の共有者が選ぶというのは,それは構わないのかもしれない,今潮見委員がおっしゃったことですね,任せておけばいいかもしれないけれど,第三者の請求によって選ぶというのは,それはあり得ないのではないかというふうな話が出たはずだと思うんですね。そのことと,この相続財産管理の管理人の関係が,今一つよく分かりませんで,相続人不存在というか,いるかどうか分からないという状態のときは,元々相続財産管理制度というのが,かなり重要なものとしてあるとは思うんですが,今の相続人が存在することは分かっている,それは共同相続であるということも分かっている,その場合に,遺産共有状態になっているはずのところのものを,遺産共有に係る共有の仕組みとは別に,相続財産管理人を選ぶという仕組みをなぜ設けるのかというのが,今一つよく分かりません。どこにメリットがあるのかというんですかね,そこがよく分からないので,教えていただければと思います。 ○大谷幹事 共有の管理者制度のときも議論いただきましたけれども,共有の窓口になるものを作るかどうかという議論であったかと思います。特に所有者不明土地問題で問題になるような遺産共有状態になって,窓口になる人がいない,それが,遺産分割がされずに放置されているものも多いということから考えますと,あちらの共有の管理者という方向から考えていくのは一つということで,御提案をいたしましたけれども,遺産共有であるという場合に特化したといいますか,遺産共有用の窓口を作るということでは,この相続財産管理という制度が,現行の民法でも,相続が発生して,承認放棄がされる前の共有状態の場合でも,管理人が付けられるということがありますので,そちらの方から遺産共有というものに広げていってはどうかということが考えられます。  共有の管理者の制度のときには,保存とか管理とか変更処分とか,そちらの方との関係を御議論いただきましたけれども,こちらは,相続財産管理の方から,この相続人たちの窓口を作るということはどうかということで,御提案をしておるところでございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞお続けください。 ○佐久間幹事 続けなければいけないですか。 ○山野目部会長 お尋ねは,ひとまずいいですか。 ○佐久間幹事 よく分からなかったというのが正直なところなんですが,ちょっと考えさせてください。 ○潮見委員 もちろん遺産共有段階というのは,相続財産管理人の選任ということで,第三者が選任されるということはありますけれども,しかし,飽くまでもそれは,現在の遺産共有状態を維持し,その中でどういうふうに最終的な当事者たちの分割に,あるいは分割の判断に委ねていくかという,過渡的な観点から相続財産管理人というものは,現行法上でも認められていると思うんですよ。   ところが,前回の共有のときの管理人の場合については,私,いませんでしたので,つまびらかではありませんけれども,ここの場面に限って申し上げますと,実際には,そうした遺産共有状態を維持管理し,遺産分割につなげていこうという観点からの相続財産管理人の役割を超えた役割を,相続財産管理人に与えよう。さらには,不動産を処分するという観点からの権限も認められた相続財産管理人を作り出そうとしているわけで,そこまで認めていいんだろうかという意見も含んでのことではないかと思います。 ○大谷幹事 今の潮見委員の最後の御指摘で,売却しても,処分してもいいのかというところですが,この場面では,遺産共有状態になって,相続人の方々が余り財産の管理に意を用いない。そこで,管理人が入ってきて,財産を売ってしまっていいのかということの問題だと思いますけれども,やはり基本的には,保存のための管理なのではないかと考えております。  現行の918条などでも,遺産共有状態になっている財産が適切に管理されないことによって,例えば,土地の周りの方々に迷惑が掛かっているというときに,保存行為をしてほしいんですということで,保存のために遺産管理人を選任するということが基本だとされており,条文でもそういうふうに書いてございますけれども,そういうものから,さらに,売却ということまで考えていいのかどうかということも,議論のスコープに入っていると思いますけれども,こちらでお書きした前提としては,そうそう売却していいものではないだろうと。恐らく相続人の方々の意思というのをきちんと確認しない限り,売却はできないだろうとは思っておりますけれども,そういうものとして,相続財産管理制度の見直しについての御提示をしたところでございます。 ○潮見委員 1点だけいいですか。 ○山野目部会長 どうぞ。 ○潮見委員 先ほど,佐久間さんの前に道垣内さんが発言したとき,私はいなかったので,はっきりしませんけれども,であれば,余計に,この相続財産の場面の遺産共有の場合の相続財産管理人に選任できるか,あるいはその人にどういう権限を与えるのかということと,こういう場面ではない,普通のピュアな場面での共有の場合の財産管理人にどういう権限を与えるのか,特に土地の場合に,矛盾なきようにというか,ずれがないようにしておかれたほうがいいかなと思いました。感想です。 ○水津幹事 新しい相続財産管理制度を設けるとしても,相続財産管理人の権限は,慎重に検討すべきであると思います。   15ページのところでは,新たな相続財産管理制度では,共同相続人は不在者ではないことを前提とするため,財産の処分については,処分をするかどうかの判断は,共同相続人の判断に委ねることが適切であるとされています。この論理は,処分だけではなく,利用及び改良にも当てはまるものと考えられます。言い換えますと,相続人が不明でも不在でもないときは,新たな相続財産管理制度を設けるとしても,相続財産管理人は,利用,改良及び処分については,共同相続人の判断に委ねるべきであって,相続財産管理人がすることができるのは,保存のみであるとする方向性もある気がします。この方向性は,先ほど大谷幹事がおっしゃいましたように,新たな相続財産管理制度の基礎に据えられている918条2項並びに同条を準用する926条2項及び940条2項が,その文言上,家庭裁判所は,相続財産の保存に必要な処分を命じることができるとしていることと整合的です。また,新たな相続財産管理制度で何をしたいのかという点については,相続財産管理制度の隙間を埋めることに加えて,12ページのところでは,相続財産に属する土地が荒廃しているケースが挙げられています。そのようなケースに対応するためであれば,相続財産管理人は,その土地について保存することができれば,十分であると考えられます。   他方で,新たな相続財産管理制度は,相続人のあることが明らかでない場合も,その射程に含めています。新たな相続財産管理制度を設けるべきかどうか,また,その相続財産管理人の権限をどのように定めるべきかについては,慎重に検討すべきであると思いますけれども,いずれにせよ,相続人のあることが明らかでない場合について,清算と切り離した形で,管理人が相続財産に属する土地を管理する制度を設けることは,正当化されるものと考えられます。相続人のあることが明らかでないときの相続財産に属する土地についての管理の制度は,先ほど成立した表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律において,所有者等特定不能土地について設けられた管理の制度と,同じような利益状況にあるからです。もっとも,このような管理の制度を,土地以外の財産にも広げ,新たな相続財産管理制度として設けるのか,それとも,土地に特化した形で,むしろ,第3で扱われている土地管理制度として設けるかについては,検討の余地がある気がします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   勇ましすぎる管理人にすることの恐ろしさというか問題点について,御注意があって,それは受け止めて,今後検討を続けなければいけないであろうと感じますとともに,やはり現在の918条が読みにくい規定になっていて,どの場合にどういうふうに働くかということは,まるで規範として透視性を欠くものになっておりますから,これでは,国民から見たときに非常に困りますね。   社会経済情勢の変化もあって,現実に自分が推定相続人の1人になった人の身になってみると,恐らく二つの種類の分からないという混乱があるものではないでしょうか。   一つ目は,918条や940条などのいろいろな民法の規定が置かれていて,これらの関係がどうなっているかということが,可視性,透明性のある仕方で規律整備がされていません。自分はどの規定を根拠に,何の手続を求めたらいいのでしょうかということが,一読して国民に分かりやすいものになっていないという問題があると感じます。   それから,もう一つは,かつてと異なり,自分の住所から遠く隔たった地で相続が開始することが多くなってきています。かつ,戦後の相続法改革によって,相続人は自分一人でないということは,ごく普通の事象であります。遠く隔たったところにいて,連絡調整に困難がある他の共同相続人の動静がつかめず,そもそも他の相続人が誰であるか分からないというところから始まって,誰であるかは分かるけれども,所在がつかめない,それから,所在もつかめるけれども,事実上の困難として,うまく連絡調整ができないといったような場面において,当座,どなたかに遺産の管理を委ねたいと考える需要というものは,日を追って大きくなってきているわけでありまして,そのときに,これが2番目の困難ですけれども,1番目の困難と連動する仕方で,どの規定を用いていいか分からないという状況に追い込まれるものでありますから,忙しすぎる管理人に無理にしていく必要はないかもしれませんけれども,最小限,918条の規範としての透視性を確保し,940条との関係を明瞭にするような民法の規定の見直しをしていくということは,この部会で検討するに当たっての,一つのミッションとして認識されてよいものではないかとも感ずる部分がございます。   今まで委員,幹事からお寄せいただいた御意見がもっともでありますとともに,さらに,ここのところを検討していくことが望まれると感じます。   次に御発言いただく方は,どなたでいらっしゃいますでしょうか。   よろしいですか。   この第2の1と2について,管理人の権限などについては,潮見委員や佐久間幹事から注意点,問題点の指摘を頂いたということを受け止めて,更なる整理を行うということにすることは当然でありまして,そのように検討の作業を進めたいと考えますけれども,よろしゅうございましょうか。   よろしいですか。   それでは,そこまで検討をしていただいたという扱いにいたします。   10分間の休憩をお願いいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開を致します。   本日から御出席になられる法務省事務当局の側の関係官を御紹介します。   西山卓爾政策立案総括審議官が関係官として御参加になります。一言御挨拶をお願いいたします。 ○西山関係官 本年1月から政策立案総括審議官を拝命しております西山と申します。よろしくお願いします。   関係官として名を連ねさせていただきましたけれども,他の用務で,なかなかこの会議に出席できず,今日も遅参しまして大変失礼いたします。   またちょっと,後でまた出ることになりますけれども,できるだけ参加させていただいて,議論に加わりたいと思っていますので,どうかよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   審議に戻ります。   部会資料6の第2の3,相続人のあることが明らかでない場合における相続財産管理制度の見直し及び第2の4,法定相続人の全員が相続放棄をした場合における放棄者の管理義務,この部分について,事務当局から資料説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 本文3では,相続人のあることが明らかでない場合における相続財産管理人の制度の見直しを挙げています。   本文3の(1)では,不在者財産管理人と同じように,申立人自身を相続財産管理人にし得ることを前提とした規定を設けることとしてはどうかというものです。   本文3の(2)は,現行法だと,清算のためには公告手続を3回行わなければならず,権利関係の確定までに10か月以上要するという点を圧縮できないかというものです。   例示として,各公告を同時並行で行うこととし,最長の公告の期間も6か月から3か月へと短縮することで,全体の期間を3か月にすることを挙げています。   最後に,本文4は,法定相続人の全員が相続放棄をした場合に,相続財産の管理をする者が誰もいなくなってしまうことを防止する観点から,放棄者に一定の義務を課すことの是非をテーマにしています。   その具体的内容として,補足説明の中では,相続放棄者自身が管理継続義務を負うこと,民法952条の相続財産管理人の選任申立て義務を負うことを挙げています。   一方,相続放棄をした者にそのような義務を課すこと,それ自体がよいのかどうか。また,順次相続放棄がされた場合に,そのような義務を負うのは誰になるのかなど,検討を要するように考えられます。   私からの御説明は以上です。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 資料の説明を差し上げました。   ただいま説明を差し上げた3の事項と4の事項は,性質が異なりますから,まず3の事項,相続人のあることが明らかでない場合における相続財産管理制度の見直しに関して御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 意見に入る前に,イメージが湧かないんですが,申立人自身,当該申立人と相続財産との利益が相反する行為というのは,例えばどういう場合をいうんですか。 ○宮﨑関係官 3の(1)でいっています申立人自身と相続財産との利益が相反する行為については,先ほど申しましたように,申立人の範囲をどうするかという問題にも関わってくるとは思うんですが,例えば申立人,先ほど不在者財産管理人の中では,申立人の中に買受け希望者まで広げるかどうかとかというふうな話もありましたけれども,それをそのままスライドさせてくるとすれば,申立人の中に買受け希望者という人も入ってくるかもしれない。そうすると,その買受け希望者自身を財産管理人に選任してしまうと,それはもろに利害,利益が相反するような関係に立ってしまいますので,そのような場合が一つあり得るのかなとは思います。   また,そこについては,そもそも,申立人の範囲に,そういう買受け希望者も入れるべきではないというふうな御意見もあるものかとは承知しております。 ○道垣内委員 入れるべきではないという見解は十分に成り立つ見解なんですが,仮に入れるというのが多数になった場合を考えたときに,それは恐らく,特定の不動産についての財産管理,相続財産管理でしょうか,分かりませんが,ということになるのか,それがよく分かりませんし,また,利害関係の申立てにおいて,買い受け希望であるという書面なり,何か主張なりをするわけですよね。そうしますと,はなから利益相反関係にあるわけであって,その人を一旦財産管理人,相続財産管理人に選任しておいて,次に,利益が相反するのではないかといって,特別代理人を選任するという2段階を採る理由が分からない。   シチュエーションが,ちょっと私にはよく分からないままなんですが,まだ。 ○大谷幹事 今少し,やや不正確なところがあったかと思いますけれども,財産管理人として選任される,その財産管理人自身が買い受けるという場面のことを想定しておりました。申立ての時点で,申し立てて財産管理人になること自体が,利益相反になるというわけではないのではないかと思っておりまして,管理人自身が買うということが利益相反になるのではないかということを,典型的には考えております。 ○道垣内委員 つまり,申立ての段階では,自分が購入希望であるということが理由で利害関係人になっているわけではない。それで,たまたま相続財産管理人になったんだけれども,その後,相続財産管理をやっている間に,おっ,これは自分が買い受けるのがいいのではないかというふうな判断を下すに至ったと。そこで特別代理人を選任するという,そういう話ですね。   何か,いかにも怪しい感じはしますけれども。 ○山野目部会長 ひとまずいいですか。 ○道垣内委員 いいです。分かりました。 ○山野目部会長 引き続き,いかがでしょうか。   ただいま,3の(1)について,道垣内委員からお尋ねがありました。そこについても御意見を頂きたいですし,3の(2)についても御意見を頂きたいと考えております。 ○蓑毛幹事 3の(2)について,相続人のあることが明らかでない場合に,現行の952条の相続財産の管理人と,スポット管理人との関係がどうなるかが,よく分かりません。相続人のあることが明らかでない場合は,相続財産は法人となって,その清算が行われる状態になるので,その場合の相続財産管理人は,全ての財産と債務を扱わなければならず,スポット管理人を選任することはできないと理解していたのですが,そうではなく,この状況でもスポット管理人を選任し得ることが前提になっているのでしょうか。 ○宮﨑関係官 部会資料ではそのような,相続人があることが分からない場合でも,管理のための,ある特定の財産の管理人を選ぶということも可能としてはどうかというものです。 ○蓑毛幹事 その場合は,現行法の952条の相続財産管理人は選任しなくてもいいということですか。 ○大谷幹事 今のところは,補足説明の15ページ辺りにお書きをしているところかなと思います。一番上の方からですけれども,新しい制度を創設すると,相続財産法人が成立している場合でも一部管理が可能となると。その場合には,一旦,一部管理が可能な相続財産管理制度を始めて,何らか,清算の必要があると認めるときには,952条の方の選任を申し立てるというような形もあるのかどうかというところを,ここのところではお書きをしているところでございます。 ○蓑毛幹事 分かりました。   そうだとすると,第2、2(2)のところで意見を申し上げるべきだったのかもしれませんが,相続人のあることが明らかでない場合は,現行の952条の相続財産管理人を選任すべきであり,スポットの相続財産管理人は選任できないとすべきというのが,私の意見です。   その上で,3について,952条の相続財産管理人の新たな規律として,特に(2)のように公告期間を短縮することについては,日弁連のワーキンググループでも,この手続に非常に時間が掛かって重いという意見がありますので,この提案については賛成いたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御意見を頂きました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしましたら,3の(1)については,委員,幹事から問題提起を頂きました。一部の物,あるいは特定の物についての財産管理の制度と,3の(1)といいますか,952条で始まる財産管理との関係について,更に考えていかなければいけないということであろうと考えます。蓑毛幹事から御意見を頂きました。   また,その種類の問題というものは,休憩前に不在者の財産の管理の制度と物の財産の管理の制度の関係について,山田委員から御指摘があったように,最後に出来上がっていく制度のメニューが整った段階で,それらのメニュー相互間,あるいは時間的にずれて,一方が始まっていて,後でもう一方が始まるときの考え方といったようなものを,多様な組合せをきちんと考え込んで整理し直すという作業が必ず控えているものでありますから,その際に,蓑毛幹事から慎重な御意見を頂いたことを思い起こし,整理をするということになるものではないかと考えます。   3の(2)の公告を3回する件については,蓑毛幹事から,弁護士会の先生方の御意見として賛成というお声を寄せていただき,特段のお話をほかに頂いておりませんけれども,そのような御意見を承ったという前提で進めてよろしいでしょうか。 ○中村委員 今,公告の期間の話が出ましたので,1点だけ。   実際,公告というのは,本当に届くということが想定されているかというと,なかなか,実はそうではないということがございますので,実際のところ,公告によって,どのぐらいの相続人という人が現れているのかというようなデータがありましたら教えていただき,それが6か月であろうと3か月であろうと変わらないということであれば,短くするということについて,比較的迷いが少なくて済むのではないかと思います。もしデータをお示しいただけるのであれば,次回以降で結構ですので,お願いできればと思います。 ○山野目部会長 今は持っていないですよね。 ○大谷幹事 はい。 ○山野目部会長 3の(2)のところは,提案自体の理論的に意味するところは,委員,幹事の御様子を拝見すると,もっともであるという御感触を頂いたと受け止めます。併せて,中村委員からは,そうであるとしても,これを法文にして進めていく際には,やはり現にある制度というものは,ひょっとしたら,それなりに機能していて,根拠があるものであるかもしれませんから,きちんと,できれば数字を把握して,実態の裏付けを取ってくださいという御提言を添えて,それなら安心して,この提案の方向に進むことができるでしょうというお話も頂いたところであり,法務省事務当局として受け止めているものと考えます。   それでは,ここのところはよろしいですか。 ○潮見委員 4でも結構ですか。4もそうでしたよね。 ○山野目部会長 3のところはよろしいでしょうか。 ○潮見委員 すみません,はい。 ○山野目部会長 それでは,4のところにまいります。   その最初の御意見として,潮見委員から御発言を頂きます。 ○潮見委員 申し訳ありません。1点だけです。   確かにここで書かれているところは,そのとおりではないかとは思います。といいますか,940条1項があって,これは,相続を放棄することによって権利義務は失ったけれども,新しい相続人となる者が相続財産の管理を始めることができるまで,自己の財産と同一の注意を用いて財産を管理しなさいという管理継続義務を課しているものでして,このことからすると,実際に跡を引き継ぐ者がいないという状況が出てきたときに,同項に対応するものとして,何か新しい制度を設計した方がいいのではないかと考えるのは,ある意味では,論理的には筋は通っていると思うんです。   ただ,他方で,940条1項の規定自体が果たして適切なものなのかは疑わしい。かつて相続人であった,しかも相続放棄をすることは自由である,相続放棄をした結果として,自分は相続財産についての権利も放棄した,義務も負わない。しかし,新しい人が出てくるまでは,ずっと管理を継続しなければいけないということ自体の当否というものを,少し考えなければいけないのではないのかなという感じがいたします。   相続人全員が放棄してしまった場合以外にも,何らかの形で,相続放棄をした者がやらなければいけない管理継続から免れるような措置を与えてあげるとか,そもそも940条1項の考え方が本当にこれが正しいものなのかということは,検証はしなければいけないと思います。   最後の点は置くとしましても,その直前に申し上げたようなところは考えていただきたいですし,さらには,ここをいじるのも構わないとは思うんですが,後で出てくる第3の話とか,あるいは,これまで出てきたような所有者不明土地等における土地の財産管理というものに対して,適切なしかるべき措置が講じられるのであれば,わざわざここで,特に相続放棄をした者に義務を課するような,あるいは何らかの負荷を掛けるような制度を設けるということがいいのかは,問題になってこようと思いますので,その辺りは少し慎重にお考えいただきたいところです。 ○山野目部会長 940条の現行の法文が,管理をいつまで続けなければいけないかという終期の在り方について,規定文言自体も若干不明確であるし,当事者にとって戸惑う場面が現実的にあるだろうことから,そこを正そうとする問題提起を差し上げており,そのこと自体は,恐らく部会資料で示唆・提案を差し上げているような財産管理の仕組みと連携させて考えていくことによって,法技術的に可能なことであろうというふうに見通すことができますが,ただいま潮見委員からは,もっと本質的な問題提起として,そもそも相続を放棄した者は,何ゆえに940条のような義務を負うかということについての問題提起があり,こちらの話は重いのではないかと考えます。   何ゆえ,相続放棄をした人はそうなのかという哲学的な問いが発せられて,それはなかなかに難儀なような気がしますけれども,佐久間幹事がそれについてコメントをします。 ○佐久間幹事 いや,違います。 ○山野目部会長 お手を挙げておられましたね。 ○佐久間幹事 手は挙げましたが,潮見委員と全く同じことを考えていますということを申し上げようと思ったのです。潮見委員の疑問は全くそのとおりだと思うんですね。   940条1項は,多分,相続放棄を適時にしないと相続を承認したものと扱われる,自らの負担を免れるためには相続放棄をしなければならないという法制の下で,しかし,相続放棄をした者について,これだけは別だよということになっているんだと思うんです。その上で,940条2項で918条第2項の準用がされているので,自分で管理をすることができないというんだったら,家庭裁判所に管理人を選んでもらいなさいと。それによって義務を免れることはできることになっていると思うんですね。   そこで,ちょっと伺いたいのが,実情として,相続放棄をするような状況にある相続財産について,相続財産管理人を予納金を積んで申し立てるような人というのは,予納金は要らないんだなんていうことは多分ないのではないかと思うんですが,かなりあるんでしょうか。あるのであれば,その程度の負担は受け入れられているということを前提に,最後の相続放棄者に関しては,952条の相続財産管理人を選ぶ申立てをしてくださいというのは,事実としてはあり得る,現実判断としてはあり得るのかなと思うんです。そこで,先ほど申し上げた918条2項の準用による相続財産管理人の選任について,実情,940条2項経由のですね。どうなのかというのが,分かれば教えていただければと思うんですが。 ○山野目部会長 実情のお尋ねですが,少なくとも現行法の理解・運用として,予納金なしでできるという扱いにはなっていないものではありませんか。 ○佐久間幹事 ええ,なっていないと思うんですが。 ○山野目部会長 ですよね。そうすると,そのような人がどのくらいますかということを問うと,いないのではないでしょうか。 ○佐久間幹事 いや,それで,相続放棄は相続による負担を免れようとして普通するはずであるところ,なっていないのは分かっていますが,予納金なしに,ほかに投げられますというのであれば,制度的というか,相続放棄の趣旨と矛盾することはないと思うんです。けれども,実際には予納金が必要となると,相続放棄をしても,財産的な負担が相続を契機として起こりますということになるわけです。そうすると,管理義務の継続というのは,ちょっとおよそあり得ないと思うんですけれども,相続財産管理人選任の申立てをしなさいというのも,結局負担を伴うということになって,ちょっと適当ではないのかなと。   どうしてこんなことを申し上げるかというと,940条は恐らく,無主・無管理の財産のまま,ほったらかされたら社会的に困るということですよね。しかし,放棄者は,個人の不利益において,社会のために何か役立つ行為をしなければいけないという立場にはないので,もしこれが社会的な利益の問題なのであれば,放棄者に何かしてほしいというのなら,負担が掛からないような仕組みを用意する必要があるのではないかなと思うということでございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事のおっしゃっていることが,だんだん身にしみてまいりました。   イメージとしては,938条の規定によって,家庭裁判所に相続放棄の申述をする際に,単に相続を放棄しますというのみではなく,もしかしたら誰も面倒見なくなるかもしれませんから,一言,家庭裁判所に言っておきますよ,よろしくね,というふうに言ってほしいけれども,それ以上に,お金を払ってください,と家庭裁判所の窓口に来た方に求めるということはしないというイメージは考えられないかというお話であったろうと理解します。   実情を交えて,橋本幹事がお話しになります。 ○橋本幹事 今日ここに来る途中の新幹線で,ある埼玉県の弁護士から,正にこの問題のメールを受け取ったんですが,私,栃木なんですけれども,宇都宮家裁ではそうではないと理解しているんですが,埼玉県内若しくはその周辺の多くの家庭裁判所で,952条の相続財産管理人の選任申立てには予納金が100万円必要だと,一律100万円だと,そういう運用がされていると。   したがって,相続放棄者が自ら進んで管理人の選任を申し立てるというのは,よほどのことがない限り,期待できないでしょうというようなお話がありました。なので,ちょっと一律に相続財産管理人選任の申立てを義務付けるというのは,少なくとも現状の,そういった家裁の運用でいけば,甚だ非常に負担が重い。   さりとて,では,予納金なしでいいかというと,相続財産管理人を担う我々弁護士としては,しかるべきフィーを期待したいところですので,それを国庫から出していただくと,別のポケットから出していただくのであれば,こんないいことはないんですが,なかなかそれは難しいんだろうと思いますので。   ただ,政策課題としては,誰も管理しないことで管理放棄地がこれ以上増えるというのはよろしくないので,それをいかに防いでいくかというところで,なかなか妙案は思い付かないところで,実情はそんなところのようです。 ○山野目部会長 その後に続くメールにエクセルの表が添えられていて,お話のあった100万円のみではなく,全国のいろいろな例が紹介されていますね。   昨日から,弁護士の先生たちのネットワークがこの話で盛り上がっており,100万円という例がいくつか紹介されたうえで,予納金の負担があるため,いろいろな義務を相続放棄者に課しても,なかなかうまくワークしないのではないかという問題提起などを実務の観点から出していただいているところであります。   この審議事項について,引き続き御発言を頂きます。 ○蓑毛幹事 今まで出てきた議論は,全くそのとおりだと思います。   その上で,どのような解決ができるかを考えたときに,952条の相続財産管理人の選任請求義務を相続人に負わせるとした場合に,ババ抜きのように,最後に残ってしまった相続人が選任義務を負って,その人が全ての費用を負担するというのは不合理だと思います。どのような方法がいいかについて,今,明確なアイデアはないのですが,たとえば,法定相続人だった人全員で負担するとか,むしろ被相続人との関係で近い,第1順位の相続人が厚く負担すべきであるとか,そういったことも議論した方がいいと思います。 ○吉原委員 この問題は,地域で空き家や空き地の対策や,それから固定資産税の課税などにおいて,実際に影響が出ている問題だと思います。自治体の方からは,近年,相続放棄,相続人不存在が増えているという実感があるということを聞きます。   では,どのように元相続人に義務を負わせることができるのかということについては,全く私は回答は持ち合わせていないのですが,実際にどのようなことがあるかということを少しだけ数字を御紹介しますと,一番目に見える分かりやすい事例が,空き家の略式代執行だと思います。空家特措法によって、倒壊のおそれがあるような空き家について,所有者不明であっても,相手先が分からないまま自治体が略式代執行できるようになりました。この4年間で,68の自治体で89件の略式代執行の実績があります。   空き家の撤去には,1件当たり大体100万円から200万円掛かっていて,これを結局,自治体でほぼ全額負担をしています。国や県などから補助金が一部支給はされますけれども,多くの場合,回収が難しく,また、相続財産管理人の申立てを行って,回収できている事例もありますが,そうした申立て手続の負担も,やはり自治体に掛かってくるわけです。   そうしますと,個人が,自分が負債を負いたくないからということで相続放棄をした結果,その不利益が地域の税金,地域の住民に及んでいるという構図になっていて,やはりこれは何とか解消できるような方策が必要であろうとは思います。   それから,これはやや蛇足なのですけれども,近年,相続特集などが雑誌でも組まれるようになっていて,その中では,ある意味,相続対策のテクニックのようにして,相続放棄が紹介されていることがあります。具体的には,有用な財産のみ生前贈与を受けて,要らないものは相続放棄をすればいいと。そうした記述も公然と見られる中で,やはり,元相続人の責務ということを明確化するということは必要であろうと思います。   これは,第2回の部会で行われた,所有者が土地の所有権を手放すに当たってどのような責務を負うべきかという議論とも通じるものであろうと思っています。 ○山野目部会長 ただいま吉原委員から実情を御紹介いただいたとおりでありまして,様々な週刊誌,メディア等が,いろいろなテクニックなるものを教授する中で,相続放棄というものは,ちょっとヒーローになっている側面があります。   何か使い勝手のいいものとして相続放棄を受け止めようという動きに対し,それに対する反発として現場では,いえいえ,放棄をしたとしても,あなたが一言放棄と言ったからといって,全て逃げられるものではありません,民法940条というのがあることを知っていますかという反論をし,最小限,誰かそこの事態を解決する人にバトンタッチするまでは,あなたはここから立ち去らないでくださいというようなことを説得するというやり取りが続いているところを見ますと,現場は940条の規定があることを前提に,様々な議論やツールの展開が見られるところであり,この状況の中で,今日問題提起を頂いた940条の手直しにとどまらず,これ自体の思想的な基礎の問い直しということになってくると,それは相当大掛かりな検討をしなければいけないということになることは間違いありません。   吉原委員から,そのきっかけの御指摘を頂きました。引き続き,御意見を承ります。 ○潮見委員 吉原委員がおっしゃったことがございましたので,一言だけ,やはり言っておきたいと思います。   相続放棄をした場合に,かつて相続人であったということから責務が出てくるというお話でした。それはそうかとは思いますけれども,しかし,これを一般的に,責務という形があるからということで,相続放棄した,しかもその相続放棄が民法上認められている人に課すということについて,強調するのには,私は強い違和感を覚えます。   いろいろな理由で相続放棄をする人が,周りに存在しています。単に相続税の節約だとか,あるいは土地の管理をしたくないからとか,それ以外の主観的な事情もあったりして,相続放棄というテクニックを使う方もいらっしゃるとは思います。しかしながら,他方で,親が抱えた相続債務から免れたいために,ほかに財産はあるんだけれども,しかし相続を放棄せざるを得ない状況に追い込まれているような方々もたくさんいらっしゃいます。   相続放棄というものの制度は本来,そういうことをやろうとしている人の権利と自由を,そして将来の生活を保障するために,そのような制度として設けられているはずなんです。そこに責務ということを極度に結び付けて捉えていくということは,それは相続放棄制度自体の崩壊にもつながる,非常に極めて危険な考え方ではないかと思います。   飽くまでも相続人の責務という形で出てきているのは,所有者不明土地だとか,あるいは空き家とか,そうしたところで管理が十分にできていない。その適正化というところの障害に,相続制度というものがなっているのではないか。そういう観点から出てきたのではないかと推察をします。   そうであれば,そうした限定の下で,このような必要性に応じて,その場面では相続人として一定の負担を背負わなければいけない。そして,その負担というものを,最終的に個人が負担するか,あるいは国家社会が負担するかという観点から,責務の内容ということを決めていかなければならないと,こういう議論の在り方をしなければいけないのではないかということを強く感じました。   前回,別の文脈で申し上げましたけれども,今回は所有者不明土地等,もちろんそれ以外にも少し入っていますけれども,その問題を処理するために,どのような枠組みが適切であるか。その中で,相続人としても一定の負担は負わなければいけませんねという,せめてその枠組みの中で,相続放棄の制度の在り方をも考えるという方向を是非採っていただきたいなと思うところです。   一言余計なことを申し上げましたが,以上です。 ○山野目部会長 吉原委員と潮見委員との意見交換で次第に明らかになってきたことがあるのではないかと感じますけれども,今,潮見委員の御発言になったことに,吉原委員がどう感ずるのか,ちょっと伺ってみたいような気分も抱きます。何かおありですか。 ○吉原委員 全く異存はございません。私の問題提起の仕方が,かなり局所的だということは自覚をしているつもりですので,潮見先生にこのように御指摘いただけて,大変感謝をしております。ありがとうございます。 ○山野目部会長 吉原委員と潮見委員の意見交換で次第に,かなり明瞭になってきた事柄として,940条には,恐らく二つの困った問題が含まれています。   一つは,どちらかというと法技術的なことであり,今の法文の読み取りでは,いつまで管理をしなければいけないかが,次の相続人が管理をすることできるようになるまでというふうにしか書いていなくて,不親切です。読み方によっては,ババ抜きで,自分が最後になってしまったら,次の人はいない,いや,それは君が遅かったのが悪いのだよ,といった感覚で読めるようなものになっているところは直さなければいけないものでしょう。蓑毛幹事が御指摘のとおり,共同相続人間や順位を異にする相続人の間での不公平・不合理が生じないように,この規律を見直すということは,最小限,この部会が今回940条に立ち向かうときには,要請されることであります。   もう一つ困った問題があることは,自己の財産におけるのと同一の注意義務というふうにいいますが,一体誰に対する何の注意義務ですかということがよく分かりません。例えば中川善之助先生の相続法の御本などは,そういうことを明瞭に記述しているものであり,相続債権者のためには注意を続けてもらわなければならず,そこで940条の注意義務があると説明されます(中川善之助=泉久雄『相続法』〔新版,1974年〕372頁)。   つまり相続放棄する人は,潮見委員が繰り返し強調なさったように,自分は債務を免れるという選択をする自由はある,だから免れていただいて結構です,それはどうぞ御随意におやりください,ただし,あなた個人に債務の履行の追及はしないけれども,従前に被相続人が持っていた財産については,散逸しないように最小限の注意をし,次の時代まで引き継いでくださいね,そこだけはやってくださいよということでありましょう。新たな債務負担を要求しているものではないですから,それは御理解いただけますねということが,少なくとも根拠として控えると思われますが,それを超えて何かがありますかということになったときに,さあ,どうでしょうか,940条を作ったときに,空き家問題であるとか,荒れ果てる建物であるとか,放置された土地とかいうものについて,公共とか近隣が困っているから,あなたは相続放棄しても引き続き面倒を見続けなさいということまでが,果たして,少なくとも940条の原意に含まれていたかというと,恐らくそれは甚だ疑問であって,そういうところまで話が広がっていってしまっていいのかということは,潮見委員が繰り返し御注意なさったように,かなり丁寧に考えなければいけません。   反面,吉原委員から御指摘があったように,現代社会が抱える問題として,一言相続放棄と述べると,全部いろいろなものを免れるということは,現場では大変深刻な問題になっていますという実情も,そのとおりなのではないかというふうに受け止めます。 ○佐久間幹事 今の吉原委員のお話で,潮見委員がおっしゃったのは,全くそのとおりだと思うんですけれども,要するに相続放棄の濫用なんですよね,おっしゃっていることは。   今だって起こっている問題だと思うんですけれども,土地所有権を手放す仕組みを今度,もしきちんと整備することができ,その際に手放すためには一定の経済的負担が必要であるということになった場合には,先ほど吉原委員がおっしゃったような,生前に分けられるものは分けて,しかし,本当だったら手放す仕組みの中で,財産があるので,相当の負担をしないと手放せないというような土地は残しておいて,相続放棄をしますというふうにすれば,真っ当に行動する人はそれなりの経済的負担を伴わないと手放せない土地を,ほったらかしにできるということになってしまうと思うんですね。   そうだとすると,土地の所有権を手放す仕組みのところで,どう組み込めるのか分かりませんけれども,相続放棄の濫用に当たるような事態について,何か対応を,難しいと思うんですけれども,考えられるのであれば,考える必要があるのかなと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   それでは,本日の段階では,940条について,幾つかの種類の,かなり根本的な観点の提示も含む問題提起を頂きました。今日頂いた御議論について事務当局において議事を整理して話を進めることになりますけれども,単に整理を進めればよいというウエートのお話ではなく,次の観点に留意していかなければいけないのではないかと感じます。   一つは,相続放棄をした者の管理継続義務というけれども,純粋に相続債権者のための注意の継続というようなことでは収まらない契機の問題が潜んでいるのではないかと感じます。相続放棄者の管理継続義務がはらんでいる土地公法的な契機といいますか,そういったものに注意が要るものでありましょう。   それから,もう一つは,こういうふうなかなり根本的な見方の分かれる問題こそ,この部会の審議のある段階で,世論に対して意見を問うという段階がありますから,ここでの議論も深めていかなければいけませんけれども,国民の意識の動向も問うてみる必要があるというふうに感じます。   ただし,パブリックコメントに付す際には,それに対して意見を述べる国民が惑うような意見提示では困りますから,複数の案を提示して意見を問うとしても,幾つかの整理された考え方のモデルを提示し,世論の動向を問うてみるということが求められるでありましょう。そういった点にきちんと注意をした上で,事務当局の方で,本日の御議論を踏まえた整理を続けるということにさせていただきます。   それでは,部会資料のその次,部会資料6の最後でございますが,第3の土地の管理人を選任する新たな財産管理制度の創設について,事務当局からの説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 それでは,第3,土地の管理人を選任する新たな財産管理制度の創設に移りたいと思います。   こちらは,これまで御議論いただいた不在者財産管理人制度,相続財産管理人制度とは別に,土地の所有者が所在不明状態であるケースを念頭に置いて,新たな財産管理制度を創設してはどうかというものです。   これを創設するとすれば,その制度趣旨として,土地の利用を促進していく方向,管理不全状態により生ずる迷惑を防止する方向などが考えられまして,そうした制度趣旨に合わせて,要件や管理人の法的地位,権限内容等についても検討していくことになろうかと思います。   まだ現段階では,その内容について,具体的にお示しできるには至っておりませんが,御意見賜れればと思います。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 第3の部分について説明を差し上げました。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今までの議論をいろいろと拝見しておりますと,不在者財産の管理人制度にしても,相続財産管理人制度にしても,やはり既存の制度に当てはめて何かやろうとすると,どうしても,いろいろと無理が出てくるところはあるように思われます。   一方で,所有者不明の土地の管理の必要性があることに疑いはありませんので,そうすると,人単位ではなくて,個々の財産単位で新しい管理制度を創設することを考えた方が,やはり政策的には,非常にスムーズに事が運ぶのではないかと考えております。 ○蓑毛幹事 私も,この制度を創設することに賛成であり,更に要件等を詰めていくのがよいと考えます。   今までの議論でも出ましたが,所有者不明土地の適切な利用・管理を行うための制度として,不在者財産管理人や相続財産管理人の制度の手直しでは,うまくいかない面があります。例えば,部会資料の19ページで,不在者財産管理制度や相続財産管理制度も利用できるのではないかということが書かれています。しかし,これは,所有者不明土地について,所有者の探索をして,その土地の所有者あるいは共有者を特定した上で,その人が不在者であることや,土地がその人の相続財産であることを確認するという手順を踏まなければならず,非常に負担が大きい。その意味でも,物単位での管理人を選ぶ必要性があると思います。   また,部会資料にも書いてあるとおり,法人,株式会社,清算法人が所有する土地についても,今後,管理が必要になってくることがあると思います。現在,後継者不足で,中小企業,零細企業の廃業が相次いでいます。そのような清算法人が土地を抱えたまま休眠状態になっていることも,我々の実務の中で多数見受けられるところです。   そういった意味で,第3の財産管理制度を創設する方向で検討を進めるべきだと思います。   ただし,この制度の創設に当たっては,どのような場合に管理人が選任できるのかという要件の問題や,私的自治等の関係から,あるいは財産権の侵害等の観点から,誰に申立権を与えて,どのような権限が管理者に与えられるべきかであるとか,そういったことについて,更に具体的に検討すべきではないかと思います。 ○山野目部会長 基本的に設ける方向でという御意見が二つあり,併せて検討の留意事項の指摘を頂きました。 ○佐久間幹事 私も,是非とも設けていただきたいと思っております。   その際に,制度趣旨として,土地の利用なのか,土地の管理保全なのかというふうな,一応趣旨の考え方が示されましたが,別にこれ,どちらかである必要はなくて,どちらもと考えればよろしいのではないかとまず思います。   その上で,前回最後に村松さんが御紹介くださった表題部所有者不明の土地に関する特別措置法でしたっけ,名称は忘れましたけれども,あれって,要するに,所有者が不明の土地の一つですよね。あそこで設けられている土地の管理,場合によっては処分の制度というのは,表題部所有者が不明だからということで,固有の論理でしか成り立たない制度ではないと思うんですね。これは所有者が不明ですということが,きちんとした探索も経てですけれども,確認されたのであれば,このような方向で,土地については管理し,処分していくことが望ましいということが,私は表れているのではないかと思っています。   ですから,今,第3で提案されているところでいいますと,単に不在者というだけではどうか分かりませんが,所有者がいない,どうしたって,なかなか出てきそうにないということを,何らかの確認の手続をとって,確定した上で,表題部所有者不明土地の管理又は処分と同じような仕組みを設けることが望ましいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事に見抜いていただいたとおり,正に本質を指摘していただいたものでありますが,表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律において,特定不能土地等管理者とか特定社団等帰属土地についての管理の制度を設けるという規定整備をいたしました。   佐久間幹事が今おっしゃったように,そこで扱われている事態と,ここの第3で提案している事態とは本質的に異なりません。   実は,同法を準備するに際し,本当は管理に関する規律というものは実体事項ですから,今正にここで委員,幹事に御審議をお願いしている第3の問題として,2020年法制で整備するところに委ねればよいものであって,登記の手続の問題を扱う今般成立の法律においては,少し性格の異なる事項ではないかと感じられるところもあったものでありますから、そのような規定整備まで,いわば重武装で入れることがよいかということについては,悩むところというか,説明に工夫を要するところもあったであろうというふうに想像いたします。   しかし,やはり国会に法案を提出して審議してもらうに当たっては,法務局,地方法務局が表題部所有者の変則的な状態を調べますというだけで話は終わらなくて,調べて分からないとき,どうするのですかという疑問に対し,2020年法制を待たずに,2019年の段階で,この法律の中で,言わば先行して解決を与えようというふうな役割を持つ,そういう規律整備を,この法律は伴っていると感じます。   それが出来上がった曉には,逆にそこで,法務局,地方法務局が調べるというような密度の事柄で,管理の制度を仕組んでいくということにしたところの、その仕組み方が,こちらの第3の方の要件の細密化を考えていくに当たっては,蓑毛幹事から御指摘いただいたように,要件を慎重・丁寧に絞ってくださいというお話を考えていくために,一つのヒントになるという,そういう関係にもなってくるものでありまして,佐久間幹事から今,そのようなお話を頂いたというふうに受け止めます。 ○中田委員 私も,このような制度を設ける方向で御検討いただければと思います。   既に何人かの委員,幹事からお話ございましたように,不在者の財産管理人等の管理制度ですと,どうも狙っているところと制度との間にそごがあるということが,御指摘のあったとおりでありまして,この制度についても,公益や利害関係人の利益が主な保護対象であるとしながら,所有者の法定代理人と位置付けるというところで苦労しておられるのですけれども,実態は,何人かの方がおっしゃいましたように,人というよりも物に着目している制度だろうと思います。そうすると,例えば破産管財人のように,不在者の財産の管理機構というようなのが実態なのかなという印象を持ちました。   ただ,そうすると,難しい問題は,所有者の財産権の侵害の問題が出てくるので,それを考慮しながら,対象と要件をできるだけ絞り込んで,財産権の侵害の問題が出てこないようにする方法があるかどうかを検討すべきなのかなと思っています。   これを設けることによって,既存の制度について,やや無理をしてしまうところがあったと思うんですが,例えば先ほど,相続放棄について御議論がありましたけれども,そこを無理するよりも,むしろこの新しい制度の方で,必要なことに対応する方が生産的であり,無理が少ないかなというふうに感じております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   第3の制度を活かしておくことによって,ほかの制度で余り無理して,いろいろなことをすることは考えものであるという御心配を今,中田委員におっしゃっていただき,今まで頂いた御発言の中では,佐久間幹事,そして山田委員から同一方向の御意見と共に,また関連する御示唆を頂いていたところであります。   この制度は,成案になって入るとすると,多分25条以下の「人」のところではないところに排列を考えなければいけませんし,手続は裁判所が出てきますけれども,手続のコントロールは最高裁判所事務総局の役割分担でいうと,家庭局ではなくて,民事局のお話になってくるであろうと想像しますけれども,そのような性格の制度を今,議論いただいているということになります。   平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   私もこの制度の創設については,基本的に必要ではないかと思っているところです。   その上で,この間も多くの方が発言されていますけれども,不在者の概念または,これに類する所在者不明の状態という概念を,引き続き明確にしていくような議論が今後,必要なのではないかと思っているところであります。   また,不在者財産管理制度と多分,準じるのかどうなのか。それは権限も含めて,同じ権限でよいのか,それとも少し違うようにするのか,もしくは,不在者財産管理制度よりも権限を大きくするのか,いろいろな選択肢があると思いますので,それも少し詰めた議論が必要になってくるのではないかと思いました。   以上,意見として言わせていただきます。 ○松尾幹事 先ほど中田委員が言われたことと,かなり重なると思うんですけれども,この制度を議論するときに,今の段階では,非常に抽象的な制度の全体の方向性とか枠組みの議論ですが,恐らく今後は,もう少し具体的な要件が提示された上での議論になると思います。   そのときに,幾つか問題が顕在化すると考えられます。第1は,大前提の問題として,「所有者不明」の状態をどう定義するかという問題があると思います。   第2は,土地管理人の申立権者に関して,これも従来の不在者財産管理人とか相続財産管理人との関係,あるいは今回問題になったスポット的な財産管理人との関係で,申立権者として,いわゆる利害関係人というような形で絞るのかどうかということが次の問題かと思います。   それから,第3に,土地管理人の法的な地位ということで,先ほど中田委員からも御指摘がございましたように,所有者の代理人という形で現在の方向性が示される一方で,不在者財産管理人や相続財産管理人ともまたちょっと違って,むしろ,所有者不明土地問題への対処という意味で,公益的な要素が強くなる管理人ではないかと思います。   そういう人の地位をどうやって法的に位置づけて整理していくのかというのは,やはり非常に難しいですけれども,そこは避けて通れないのではないかと思われます。ここを曖昧にしたままで,誰の側か,不明所有者か利害関係人かどちらの側に立った管理人かというのだと,やはり今までの問題が蒸し返されてしまうと思いますので,ここは正面から,どこまで公益に根差した管理人の地位を法的に作るということになるのか,ここは明確にせざるを得ないのではないかと考えます。   そのことが,第4の問題ですけれども,土地管理人の権限,どういうことができるのかということに結び付いていくのではないかと思います。   そのときに,具体的に何をターゲットに議論すべきか,少しぼやけているところがありますので,主要な場面を明確にする必要がありそうです。例えば,ある土地の管理状態がよくないので,隣地の所有者が何とかしてくれというときに,土地管理人の制度を使うことは想定されているでしょうか。それについては,この後出てまいりますけれども,隣地所有者の管理措置請求権の制度との連携も考えられるようですので,もしかすると,そこですべき議論とオーバーラップする話かもしれません。あるいは,ちょっと場面が違いますけれども,所有者不明土地の時効取得を主張する人が土地管理人を選任して,その者を相手に訴訟をするということが想定されているでしょうか。例えば,現在土地を占有し,管理している者が,その先代が占有に至った経緯について正確に知らされておらず,おそらく共同相続人の1人であると思われるけれども,何代も相続が続いていて,ほかの共同相続人が誰なのか,どこにいるのか,正確に分からない,でも自分だけが固定資産税を払っているというような状況も,相当程度存在すると聞いております。そういう状況を打開する制度が今現在ないとすると,そういう問題に対処するために,土地管理人の選任を請求することができるでしょうか。土地管理人は典型的にこういう場面で利用することを想定しているというように,この制度がターゲットとする事例を幾つか設定した上で議論していくのが,生産的なのではないかと思いました。 ○道垣内委員 松尾さんのおっしゃったこととも関係するんですが,私,21ページの最後の4行の意味がよく分かりませんで,また現行法における何とか,これと同様とすることが考えられると。   これと同様とするというのは,どうするということなんでしょうか。私,日本語がよく読めないです。 ○山野目部会長 お尋ねがあったところ,場所は分かりますね。 ○宮﨑関係官 はい。これとの「これ」というのは,現行法における財産管理人制度と同様とするというふうな。 ○道垣内委員 だから,それと同様にするとは,どうなるんですかということなんですが。 ○大谷幹事 土地所有者,不在者になっているとか,その所有者が管理費用を負担するということで,管理人が付いた場合には,例えば売却することができるんだとすれば,売却されて得られたお金から管理費用が出るということかなというふうに理解をしています。 ○道垣内委員 なるほど。しかし,売却でないと出ないということですよね。そうすると,これは,売却のための制度だというふうに言っているようなもので,前の方でいろいろな制度設計が考えられると言っているんだけれども,最後になると,売却しか実は考えていないと,売るためにやるという感じになってしまいますので,そういう制度として議論をするんでしょうかということになるんですが。 ○大谷幹事 必ずしも売却をしなくても,それは所有者に債務を負わせるということは可能だと思いますが,実際として,そうではないかという御指摘だと思いますけれども,法的には恐らく,所有者に対して管理費用の請求権が生じますよということを書いているというところですが,正に今道垣内委員がおっしゃった,山田委員がその前の方でおっしゃいましたけれども,売却するということを,この制度の,何というか,一つの,売却も可能だというものとして考えるかどうかというところについては,やはり御議論を頂く必要があろうかと思っております。 ○道垣内委員 いや,ちょっといいですか。議論をするというふうにおっしゃいますが,法的には所有者に管理費用を負わせるということも可能ですという話ですが,所有者はどこにいるか分からない,誰か分からないという場合を念頭に置いているわけですから,そうすると,管理人が自腹で出しているんだけれども,償還請求権というのを持つというんだけれども,償還請求権が実現される見込みがゼロであるという,こういう状況なわけですよね。   そうすると,これは,やる人がお金を払うんだという,売却以外の場合にはそうなるということになりそうです。あるといいという意見が相次いでいるんですが,どこから誰が金を出すんですかという話があって,もし申し立てた人が財産管理者,当該財産の管理者になりまして,一旦その人が費用を出しますという話になると,売却の場合はまだいいんですが,少なくともその人に利益があるような形にしないと,制度としては回らない話になります。そこを公益だとかいうふうにいっても,では誰が費用を出すんですかという話で,制度の枠組みが何となく分からないままに,何となくよさそうじゃないかという議論をするというのが,私にはちょっと,どうかなという気がしているのですが。 ○山野目部会長 どうかなと思うんですよね。   道垣内委員が御疑問を今繰り返しおっしゃっておられること,ごもっともであって,所有者がリアルには捕まらないわけですから,そこを託された管理者にとっては,黙ってその土地を見ているだけでは報酬を含む費用は出てまいりません。   一番分かりやすい結末は,売却処分をしてお金に換えることですから,売却を狙った制度でしょうという御疑問が出てくることは当然のことであろうと感じます。   なるほど,売却に限った話ではなく,比較的重い負担である賃借権の設定とか,いろいろな方法はあるかもしれませんけれども,いずれにしても,何らかの処分をするということで費用を捻出しなければ回らないでしょうという御疑問はごもっともであって,そして,その疑問というか,そこを考えなくてはいけないことは,実は既視感があります。   既に今回成立した法律に基づき特定不能土地等管理者を選任する管理命令で始まったときに,同じことを考えなければいけなくなったものでありますから,そのことで苦労なさった村松幹事からお話といいますか,経験談を聴いておくことは有益であるかもしれません。 ○村松幹事 これから施行されて,これから運用の苦労が始まるわけですけれども,検討の段階,また国会でも,正にこういう議論が出ておりまして,売却のケースについて,比較的分かりやすい,任意買収を掛けたい,それが公共事業のためであっても,民間であっても,そういう場合はよく分かるんだけれども,そのほかのケースではどうするのかというところです。ただ,残念ながら,国等で負担するというわけにはまいりませんので,基本的には申立人が,その意味では利害関係人として,自分の利益のために申立てをすることになりますけれども,費用については,そういったケースに関していうと,予納していただく。予納金分の請求ですね,この償還の問題については,なかなか絵に描いた餅かもしれないけれども,しかし,例えばその土地において,非常に木が倒れそうになっているので切り倒したい,所有者としての同意を得たいんだと,そういうようなケースに関しては,その分の,選任費用分の費用を負担してでも是非やりたいというケースは当然あり得るのではないかということで,表題部所有者の関係については,そういった議論もあるのではないでしょうかというところで,整理をしたということでございます。   ただ,もちろんニーズとしては,そういった費用をどこからか捻出できないかという指摘があったのは確かだけれども,ちょっとなかなかそこまでは,話は進んでいなかったというところでございます。 ○山野目部会長 道垣内委員,どうぞお続けください。 ○道垣内委員 結構です。 ○山野目部会長 承りました。 ○佐久間幹事 この制度趣旨の話で,先ほど公益という話が出たんですけれども,私は公益ではないのではないかと思っております。確かに,広い意味で,現在問題を生じている所有者不明土地問題が解消されるという意味では,公益に資するんだと思うんですが,飽くまで,土地所有者が放置している,それでどんどん価値が下がっていく土地を管理・保全するなり利用するなりしたいというニーズがあるときに,その利用を比較的容易に図れるようにする,そういうための制度なのではないかと私は理解しています。   道垣内委員がおっしゃった,結局売却するんですねというのは,売却ももちろんあっていいんだと思うんですが,先ほど少し,山野目座長からでしたでしょうか,お話のあった賃貸借など,公益性のある事業でなくとも,利用希望者があるときにうまくマッチングできるようにする,その基盤を整えるための制度なのではないかと私は思っています。   ですから,予納金を納めなければいけなくて,それが回収できないという場合は,もちろん一杯あるんだと思いますが,そうでない場合も念頭に置いて,むしろ,所有者不明土地問題でいろいろ言われるのは,使いたい土地があるのに,なかなか使えないではないか,どうするんだというふうなことが,かなり強く言われていたわけですよね。それを解決するための一つの方策であるというふうに捉えるのがよいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 公益とは何かという,行政学ないし行政法学の大問題があり,佐久間幹事がおっしゃったことも,もしかしたら,ある視点からいえば公益かもしれないですが,ただし,よく議論を熟させないで,短兵急に公益のためと言ってはいけないという御注意は,そのとおりであります。 ○松尾幹事 不用意に公益という言葉を使いまして恐縮ですが,私が申し上げたのは,土地管理人の権限とか法的地位をどのように考えるかという根拠として,結局これは,所有者の所有権を制限することになるので,その問題から目を逸らして議論することができないのではないか,そうであるとすれば,所有権制限の根拠という意味で,公益という要素は否定できないように思います。つまり,所有者の意思を確認せずに,管理したり,一定の要件の下に売却したり,あるいは時効取得の訴訟の被告になったりという意味で,所有権制限の根拠として,公益的な要請があるという理由を説明をせざるを得ないのではないかと思います。   その点で,土地管理人の権限や法的地位というのは,不在者財産管理人や相続財産管理人とは,かなり違ったものになるのではないかということを申し上げたくて,公益的という言葉を使いました。本日最初に取り上げさせていただきました表題部所有者不明土地法も,19条で所有者等特定不能土地について特定不能土地管理者が,30条で特定社団等帰属土地を対象として特定社団等帰属土地管理者が,いずれも利害関係人の申立てにより,裁判所が必要と認める場合に選任することになっています。ただちに予納金を国庫から出せとか,そういう趣旨での公益ではございませんので,ちょっと補足をさせていただきます。   佐久間幹事がおっしゃったことについては,私は全く異論はございません。 ○山本幹事 公益とは何かということについて,正面からお答えすることは,この場で一言ではできないのですけれども,確かに,所有権の制度が社会で円滑に機能するようにという,非常に抽象的・一般的な公益という点でいえば,全部公益のための制度ということになるわけでしょうけれども,個々に見ていくと,例えば具体的に,土地が放置されて危険な状態になっている。それは何とかしなくてはいけない。あるいは,放置されているんだけれども,より有用な使い道があるでしょうと。それを公共のために使うと。   あるいは,それをほかに使いたい人がいるでしょうと。そういう人に対して,円滑に流通させるようにするのがいいでしょうという,そういう具体的なレベルの話は,やはり分けなくてはなりません。そのような具体的なレベルでは,いろいろな公益ないしは公益と私益の交錯というものが考えられるというのが,一般的な理解だろうと思います。   そして、具体的に考えるに当たっては,いろいろな制度との整合性とか,あるいは相互参照をしなくてはならないだろうと思います。   つまり,ここで議論されていた制度でいえば,土地を手放す制度ですね。あれは,所有者の意思でやるわけですが,ここではそうではなく,所有者が不明の状態であるという違いはあるわけで,したがって,所有者の保護の方にウエートが置かれるといった違いはあると思うのですけれども,考慮事項には,重なりがかなりあるだろうと思いますし,それから,周囲のものでいえば,土地収用の制度,あるいは,特別措置法による使用権設定の制度ともありますし,それから,危険を防止するといえば,もろもろの警察法の制度もありますので,例えば,具体的に費用負担をどうするとか,あるいは,具体的に手続をどうするか,裁判所がどこまで出ていって,あるいは地方公共団体がどういう形で関与するのか,どういう手続に関与するのかという点については,そういうもろもろの制度を見ながら,それとうまく整合するように,あるいは参考になるところは参考にするようにして,組み立てることになるのではないかと思います。   具体的にどういうふうにするとうまくいくかというところについてまで,私もまだ頭が付いていっていないのですけれども,参考になる制度はいろいろあるのではないかと思います。 ○山野目部会長 少なくとも,はっきりしていることとして,29条3項に出てくる公共のために,という意味の公でないことは,異論のないところありましょうが,29条2項のところで公共の福祉に適合するように所有権の制度を定めなさいといっているときの公共の福祉の一内容として,こういうふうにほったらかしになっている土地があったときに,その本人も,捕まらないけれども本人も,あるいは周囲の人,何らかの権利者のことも考えて,新しい民法の規定を置き,所有権の制度を編成し直しますということは,見方によっては公共の福祉であるかもしれません。   公のことが関わりますという事柄に関しては,佐久間幹事,松尾幹事,山本幹事に今意見交換をしていただいたところで,かなり深められたと感じますから,ここはこの程度でよいのではないかというふうに思いますが,よろしゅうございますか。 ○門田委員 制度を運用することになるかもしれないという立場から申し上げます。  既に,委員,幹事の方から様々御意見が出ているところですけれども,不在者とか所有者不明というところをどう整理するのかが,悩ましいところかと思っております。人と物を切り離すということが必要になりそうですが,他方で,これが悪用されないようにすることも重要かと思います。   それから,これは再々出ているところですけれども,管理人の職務の内容や管理の終了事由を明確にする必要もあると思われます。   また,先ほど,管理者の報酬の話が出ておりましたけれども,例えば,所有者の探索義務や債務の調査義務が課されることになると,非常に職務内容が高度化することになり,報酬の額に跳ね返ってしまうということになりかねませんし,管理の期間が長くなれば,これも報酬の方に響いてくるということになりますので,そういうことをもろもろ考えていかなければなりません。その報酬の原資をどうやって確保していくのかということも重要な問題かと思っております。 ○山野目部会長 理論的な観点からも,中田委員から,所有権の不当な侵害にならないよう,要件を精査する必要があるという御指摘を頂きましたし,それと,趣旨として,かなり,同じ方向の御心配を裁判所として,司法行政を担い,裁判実務を運用する立場から,今,門田委員に整理しておっしゃっていただきました。それらの点に留意しなければならないと感じます。   第3の点について,引き続き御意見を伺います。 ○山田委員 今の場の当然の前提かと思いますが,言葉にして,確認をさせてください。   第3というのは,この1項目だけですが,これは予告みたいなもので,例えば第1とか第2と,少なくとも同じ程度には,次の段階には,パラフレーズされて出てくると思っておりますので,よろしくお願いします。   そして,その際には,一例ですが,申立人の範囲をどうするかとか,あるいは,管理人になった人が利益相反になるような場合には特別代理人を選ぶかどうかとか,今までやったようなことが,また全部出てくるんだろうと思いますが,よろしくお願いいたします。   その上で,第3は土地の話になっているんですが,土地の上に建物があった場合に,その建物をどう扱うかというのは,やはり考えておくべき問題だろうと思います。あるいは,建物に限らず,土地の上のものという,ちょっと一般的に取り上げるということでです。それは,この第3の制度を作っていくときには,答えを出さなければいけない問題だと思いますので,それもよろしくお願いを致します。   そして,第3の制度を批判に耐えられるような制度にするための,いろいろなポイントがあると思うんですが,一つは,ここまでには出てきていないと思いますので,申し上げますと,誰もが思い付くことだと思いますが,所有者に対して,相当な額の補償がないといけないということです。それはもう,売却を見込んでいるんだろうという批判を受けるかもしれませんが,私は売却はあってよいという立場ですので,相当な額の補償というので,所有者が自ら関与せずに土地の所有権を,あるいは,場合によっては建物についても,何らかの物理的な変更を加えられてしまうと,あるいは売却させられてしまうということについては,相当な額の補償,正当なのか相当なのか,そこは関連法令に目配りをしながら,そのような補償を、そこで確保し,そして,売却が許されるということです。所有者が、この場にいれば,相当な額の補償を詰まれても,土地を手放す義務というのは,一般的にないわけですが,それが許されるという理屈を考えないといけないというところがポイントだろうと思います。知恵を出せば,出てくるのではないかなと思います。   そして,最後に,希望ですが,会社という言葉が出てきていて,自然人だけでなく法人が含まれているというのは,私,大変よいことだと思うのですが,会社というのは,法人一般について,あるいは会社に限らない,ある程度広がりを持った法人について使われていると思いますし,是非そうお願いします。会社に限った話ではないだろうと思います。   そうすると,ややこしい問題が最後に出てくると思うんですが,いわゆる法人でない社団について,どうするかというのは,どちらもあるのかなと思うんですが,その構成員に総有的に帰属するけれども,代表者の定めがあるが代表者が不在とかいうのですと,実質的には似たような話になってくるかなと思いますので,法人でない社団もどうするかということは,すみません,事務局はお考えいただいて,次の段階に進んでいただければと思います。 ○山野目部会長 たった5行しかゴシック書いていなくて,決意表明以上の意味が全くないではないかという,今お叱りを頂きました。   如何せん,事務当局としては,こういう前例のない発想の制度の検討に入ることについて,まず委員,幹事の御意見を伺ってみないと,その先の細目に進むという勇気がなかったものですから,本日の部会資料は,御覧のとおりの決意表明並みのものにしかなっておりませんが,今山田委員から,たくさんのヒントを頂き,検討すべき項目を挙げていただきました。それらを中心に,事務当局で,今日の御意見を承ったことを踏まえ,中身の検討に着手するということにいたします。   ご指摘を踏まえ,会社は法人に直しますし,既に成立した法律の特定不能土地等管理命令ならびの制度は,法人でない社団を含んでおりますから,それも恐らく含めることになるという予測は抱きますけれども,なお事務当局の方で検討いたします。 ○水津幹事 一点だけ,申し上げます。第3のところで,不在者と相続財産法人が並列して挙げられています。もっとも,不在者は,相続財産法人が成立するときとは異なり,不在者が誰かは明らかになっています。そのため,制度の大枠は,共通するものと考えられますが,例えば,処分を認めるための考慮要素等は,両者で違いが生じる余地がある気がしました。 ○蓑毛幹事 今後,要件を詰めていく中で,不在者財産管理制度のところで議論になった,債務の弁済をどうするかということについて,検討を要すると思います。   第3の制度は,物単位の管理人であり,人単位ではありませんので,その人の債務という概念は入ってこないと思われます。しかし,例えば,土地に抵当権が付いていたりとか,固定資産税が未納になっていたりとかということがあり得ますので,何らかの形で債務を処理する方法を考えないと,うまく処理できないことが起こり得ると思います。 ○垣内幹事 全く初歩的な確認の御質問で,時機を失しているのではないかという感じもするんですけれども,この制度を,仮に創設の方向で検討していく際に,それがどういうケースを対象としていくのかということは,今後検討されるということなんだろうというふうに理解を致しましたが,今日御提示いただいている資料で提案,想定されているものは,どういうものなのかということに関しての御確認ということなんですけれども,19ページのゴシックのところでは,まず第1の場合として,土地の所有者が不在者である場合ということで,さらに,第2の場合として,土地の所有者が法人等であって,その代表者が不在者である場合というのが挙がっていて,第3に,これは土地の所有者が,これに類する所在不明状態である場合というのが挙がっているのかなというふうに読んできたんですけれども,そういうことでいいのかということと,最後のこれに類する所在不明状態というのが,この資料では,どういうものを想定しているのかということですが,補足説明の問題の所在の3行目から4行目に掛けまして,所有者が不在者であるケースに加えて,登記名義人が死亡して,相続人のあることが明らかでない相続財産になっているケースというのが挙がっているんですけれども,全体の説明を拝見しますと,類する所在不明状態に該当する例としては,登記名義人が死亡して,相続人のあることが明らかでない相続財産のようなものが想定されているのかなというふうに理解を致しまして,そうすると,この場合というのは,結局,相続人があるかどうか自体が明らかでないということですので,結局,誰が所有者であるのかということが,それ自体として,ちょっとよく分からないという状態になっているものを含んでいて,それを指して,類する所在不明状態というふうに呼んでいるというふうに理解をしたんですけれども,そうすると,これずっと,いろいろな委員,幹事の方からの発言で,端的に所有者不明という場合を捉える制度が必要なんだということが御指摘があったかと思うんですけれども,それは,ここでいう所在不明状態というのは,それを受けているということなのか。   所在という言葉が使われているので,飽くまで所在に重点があるということなのか,資料の時点では,どちらを想定されていたのかというのがよく分からないところがありましたので,あるいは議論が同床異夢になってもいけないと思いまして,あえて念のため,ちょっと御確認をさせていただければと思います。 ○大谷幹事 ここのところ,それほど正確に書けていないなと我々も思いながら,イメージとしてお示しをしたにすぎないというところでございますけれども,補足説明の中で,登記名義人が死亡して,相続人のあることが明らかでない,これは相続財産法人のことをイメージしておりまして,ゴシックの中でも,不在者の次に相続財産法人と出しておりますのは,相続人があることが明らかでないものを指したつもりでございます。   これに類するというのは,これもいろいろな場合がありそうで,ここでゴシックに挙げておりますのは,代表者が不在者になっているというものを典型的に書いておりますけれども,むしろ,(注)のところでお書きしましたけれども,清算株式会社というときもあるだろうし,ほかの法人の場合もあるだろうし,あるいは法人格なき社団の場合もあるだろうしということがあったので,取りあえずこの時点では,ぼんやりと書いているというところでございます。 ○山野目部会長 解散した法人の閉鎖登記記録が廃棄されていると,どこの裁判所に対し,再び清算人を選任してくださいという,リセットの手続を求めていいか分からない状態になってしまいますから,問題となっている財産が不動産であれば,多分この制度を使うしかない,そうなりそうな気もします。   ですから,何かそういう,拾遺を要する局面というものがあるであろうということを考え,部会資料の方は,類する所在不明状態というふうに記しておきましたけれども,垣内幹事から御注意いただいたように,各自が考えていることが異なったりするといけませんから,なおきちんと考えてもらうようにいたします。よろしゅうございますか。ありがとうございます。   それでは,第3のところについて検討せよという委員,幹事のお話がありましたから,山田委員から御注意があったように,これでは全然決意表明にとどまるものであって,きちんとさらに考え込むというところを事務当局の方で作業を進めてもらうということにいたします。   部会資料6についての御議論を頂きまして,ありがとうございました。   休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料7で扱っております相隣関係規定等の見直しを審議事項といたします。   その中の第1,管理が適切にされていない近傍の土地への対応の中の1,越境した枝の切除,それから,2といたしまして,管理不全土地の所有者に対する措置請求,これらの範囲について,事務当局から資料説明を差し上げます。 ○福田関係官 法務省民事局付の福田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,お手元に部会資料7を御準備いただければと思います。   今回,第1から第3までの合計三つのパートに分けて,御議論いただくこととしております。   まず,第1では,適切に管理されていない近傍の土地が原因となって生じている様々な相隣間に問題に対して,どう対応していくかといった観点から,二つのテーマについて,続く第2では,近傍の土地の利用をこれまで以上に円滑化させるため,相隣関係規定上,どのような規律にすることが考えられるかといった観点から,四つのテーマについて,そして,第3では,第1,第2で挙げたもの以外に検討すべき事項はないかといった観点から御議論いただくこととしております。   それでは,以下,順次御説明させていただきます。   まず,第1の1,越境した枝の切除についてです。   所有者による土地の管理が適切に行われず,竹木の枝が隣地まで伸びてしまい,自治体の方々を始め,その枝の処理に困る事例が少なくないと伺っているところであります。   民法第233条第1項では,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,竹木の所有者に対して枝を切除させることができると規定しているため,竹木の所有者によって枝が切除されない場合,越境された側の土地の所有者は竹木の所有者に対して,枝の切除請求訴訟を提起しなくてはなりません。この手続には,相応の時間や労力を要するため,土地の円滑な管理の妨げになっているとの指摘がございます。   そこで,本文では,土地の管理をより円滑に行うことを可能とする観点から,越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることを認める方向で,甲案から丙案まで三つの案の検討を提案させていただくものでございます。   甲案ですが,越境された土地所有者の利益保護を重視し,根を切り取る場合と同様,越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることができるようにする案です。   もっとも,この案の場合,竹木の所有者が現にその土地に居住している場合であっても,何ら竹木の所有者とやり取りをすることなく,枝を切り取ることができることになりますので,その適否について問題となります。   乙案は,越境された土地の所有者が催告又は公告の手続を踏むことにより,竹木の所有者において枝を切除する機会を確保しつつ,相当の期間が経過しても竹木の所有者が切除に応じない場合には,越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることができるとするものであります。   催告又は公告をするに当たっては,竹木の所有者が不動産登記上の住所から住所変更している場合,竹木の所有者が既に死亡しているにもかかわらず相続登記が未了である場合,竹木が共有である場合などについて,どう対応するのかといったことが問題になると思われます。   丙案についてです。枝の越境は土地所有権の妨害であり,越境した枝の切り取りは越境された土地の所有者にとって,正当防衛又は緊急避難に当たる場合もあり得ると考えた場合,乙案のような公告手続まで要するとすることは,手続として重すぎるのではないかといった指摘も考えられます。   そこで,丙案では,竹木の所有者が土地所有者でない場合もあるという性質に着目し,越境した枝を切除すべき旨の催促を,例えば,竹木の生えている土地の所有権登記名義人,立木登記又は明認方法上の竹木の所有者,氏名・住所等の知れている竹木の所有者に対してすれば足り,公告手続までは要しないとするものです。   もっとも,この案の場合,真の所有者に対する催告がなくても枝を切り取ることができるため,その適否などが課題になり得ると考えます。   その他,補足説明に記載したとおり,越境された土地の所有者が自ら枝を切り取ることができるとした場合に,どの程度切り取ることができるとすることが相当かについてや,既に自力執行が認められている根の規律との整合性等についても検討を要するものと考えられます。   続いて,資料の6ページを御覧ください。   第1の2,管理不全土地の所有者に対する措置請求についてです。   所有者不明などに起因して,現に占有する者がおらず,管理されずに放置され,管理不全状態になってしまう土地があります。これらの土地は,雑草が繁茂して,鳥獣や害虫が繁殖したり,不法投棄がされたりすることがあります。   土地所有者は,法令の制限内において,自由にその土地の使用・収益・処分をする権利を有していますが,土地が管理不全状態になり,近傍の土地所有者に損害を生じさせ,又は生じさせるおそれがあるまでに至っているときには,近傍の土地所有者が当該管理不全状態を是正させることができるとすることが正当化され得る場面もあると考えられます。   そこで,本文では,所有者が土地を全く利用していないケースを念頭に,管理されずに放置されている管理不全土地を対象として,一定の事由により近傍の土地所有者に損害が生じ,又は生ずるおそれがあるときには,近傍の土地所有者から管理不全土地の所有者に対して,管理不全状態の排除又は予防を求めることを可能とすることについての検討を提案しているものでございます。   なお,土地が管理されずに放置されていたとしても,通常,それだけでは他人に損害等を生じさせることはなく,放置され続けた結果によって,何らかの一定の事由が発生し,近傍の土地に損害を与えることになると考えられます。   そこで,本文では,この一定の事由についても検討いただくことを提案しており,外形的にも損害の発生が明らかであるといえる崖崩れ,土砂や汚液の流出といった事由から,主観によるところが大きいと思われる美観の悪化までの4類型を挙げてございますので,どのような事由が生じていれば,請求権を認めることが妥当といえるかについても御議論いただければと考えております。   その他,補足説明にも記載いたしましたとおり,隣地所有者に限らず,近傍の土地所有者にこの請求権を認めることの是非についてや,権利行使に当たって,訴訟によらない簡便な方法等の在り方についても御議論いただければと考えています。   第1に関する御説明は以上でございます。 ○山野目部会長 ただいま,部会資料の御案内を差し上げたところについての補足説明を交えた御案内を致しました。  33御説明差し上げた二つの審議事項は,性質を異にいたしますから,部会資料7の第1の1,越境した枝の切除のところの範囲で,まず御意見を頂きます。 ○佐久間幹事 この233条に関し,枝の切除を隣地所有者に認めるということには賛成です。それは,地方に行けば社会的な大問題になっているということから,それに対応する必要があると思うからです。   その上で,甲・乙・丙案のどれがいいかというのは,よく分からなくて,今のところは,知れている所有者があればそれに,なければ丙案で,というふうな感じかなと思っているんですが,ちょっとそこは,よく分からないというふうに申し上げた上で,ただ,いずれの案も,土地の管理のために必要な範囲内で,その枝を切り取ることができるとされておりますよね。   この土地の管理のため必要な範囲内でというのは,先ほどの御説明にあったように,侵入されている部分ぎりぎりまでしか切り取れませんよということではなくて,もっと奥深くということなんだろうと思うんですね。   ただ,そこで,もし奥深く,反対する趣旨ではないです。奥深くまでということになると,木の立っている方の土地への立ち入りを認めるのかどうかを,考えておかなければいけないのではないかと思うんですね。私は認めてもいいのではないかと思うんですが,もし認める場合は,立ち入りに関する規律も併せて用意することが適当ではないかと思います。   それと,もう1点ございまして,今の御提案及び資料の作りは,枝と根は基本的には同じように扱えばいいのではないかということだと思うんですが,私は,やはり違うのではないかと思っております。   根に関しましては,越境している部分というのは結局,隣地の中での話であって,それを越境してきている側の木の所有者の側が切除しようと思うと,隣地にやはり立ち入らないといけないことになるわけですよね。   現在の233条の立法趣旨自体は,隣地への立ち入りを好まないという隣地所有者の意向が尊重されるべきであるということだと思いますので,仮に枝に関しまして,切り取りを隣地所有者に認めるということになったとしても,何でしたっけ,根か。根の方について,6ページだと思うんですが,根の切り取りについても,竹木の所有者等に対して切除の機会を与えることの要否を検討するという点について、そこまで変える必要は,ないのではないかと私は思っております。   差し当たり,以上でございます。 ○山野目部会長 隣地立ち入りの問題も含めて,御提案,御意見を頂きました。 ○岡田委員 この相隣関係の規定の中,全体に及ぶことだと思うんですけれども,そもそも越境とか,後から出てきます境界標の調査とか,そういう部分に関して,まず境界がはっきり,お互いが認識が合致していないことには,越境しているのかどうかとかということすら,争点になってきてしまう可能性もあるのではないかなと思っております。   何が言いたいかというと,後で出てくる,境界を確定する協議の請求権という表現がされておりますけれども,そういうことも含めて,まず境界をお互いがしっかりと認識をした上でというような,そういう規定を置く必要があるのかどうかというようなことも,御議論いただけると有り難いかなというところです。   それと,昨今は木の枝とか根っこ以外にも,例えば電気を引くための電線が自分の土地の上を通っているとか,あるいは,エアコンの室外機がはみ出ているのではないかというような相談をよく受けたりします。それらについては,ここで特別に,相隣関係の中で見直す必要があるのかないのか,普通に妨害しているものの排除請求権的なもので対応するべきなのかどうかというところも,御議論いただけると有り難いかなというふうなことも考えております。 ○山野目部会長 民法の規定は,現行の規定もそうでありますけれども,隣地がどうとか,立ち入ってどうとか,越境してどうとかという規定が全て,神様の目から見て,境界がはっきりしている前提で,様々な実体的規律を置いているものでありますけれども,岡田委員の方から,現実に置かれた立場の人の状況を考えて,考えるべき事項があれば,御検討くださいという要望を頂きました。   また,枝と根という自然物と並行して,人工的に設営・設置されるものについて,類似の規律を考案する必要の適否・要否等も御検討くださいという問題提起がありました。   引き続き,御意見を承ります。 ○道垣内委員 先ほど,佐久間さんが非常に重要な,いろいろな発言をされたと思いますが,土地の管理のため必要な範囲内でというふうに書いてあるので,出ているところよりも,もう少し先が切り取れるだろうという話だったんですが,当然にはそうは読めないですよね。   つまり,ここが出っ張っているけれども,別にこちらの土地の管理のために,それほど支障とはなっていないというときは,自分が困っている範囲でしか切り取れない,自力執行はできないということも,十分に考えられるのではないかと思います。   しかし,では具体的にどのような規定を置くべきかということになりますと,私は,切る側に判断リスクを負わせるのは,かわいそうだろうと思うんですね。そうすると,出っ張っている限りにおいては,それは切れるのであり,必要性は,そこでは問題にならないと考えるべきだろうと思います。   出っ張っているところについては,訴訟をすれば,強制的な切除が可能になるわけですから,わざわざ,自力執行として切除できるというルールを定める限り,越境している部分を切ることは,判断リスクなしにできるというふうにしないといけないのかなという気がいたしました。   それと,所有権に対する妨害だからという話が説明のときに出たんですが,それに対して,佐久間さんは,実際に困っているからというふうにおっしゃった。そこは微妙だと思うんですね。というのは,妨害だからできるんだというふうになりますと,物が入ってきていてもできるのではないか,何か壁が倒れてきていても,自力救済が完全にできるのではないかと。   所有権の侵害で,およそ自力救済が全てに認められるという条文を作ろうとしているわけではないとするならば,所有権の侵害だからというのではなくて,やはり実体的に,救済しなければならないという事実があるということと,根と枝に関しては,伝統的にも歴史的にも特別扱いされたことが行われてきたということを正当化の論理として,こういう制度を作るということかなと思います。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   この枝の問題なんですが,やはり現実に生じているのは公共インフラへの影響ですね,例えば,鉄道の運行を支障するとか,あるいは送電線を支障する,といった話はあちこちでございまして,やはり根と枝を分けて,異なる規律でやるということに,それほど説得力のある理屈は,今の時代にはないのではないかと思うところもございますので,ここで出てきている案でいえば,やはり甲案で隣地所有者が枝の伐採をできるようにした方がよいのではないか,と考えております。   ただ,先ほど御指摘ありましたように,必要な範囲内ということで,幹に近いところで伐採しようとすると,相手の土地に踏み込まないといけなくなる可能性がある,という指摘は,現場で実際に用地管理をやっている者からも当然出てきておりますので,そこは,どこまでできるようにするか,というところは,隣地への立ち入りまでできるかどうかというところとセットになるのではないか,というふうに考えております。   あと,もう一つ,これは相隣関係の規定全般に共通する話だとは思うのですが,ここでは主語が土地の所有者となっております。しかし,解釈上は,例えば,土地を借りて,その上に,例えば送電設備を持っている賃借権者にも準用される,というふうにいわれておりますので,明文上は地上権者しか準用されていないんですが,基本的には賃借権者等にも準用されることを明確にしてほしいという要望は出てきております。  実際にトラブルになるケース等も,ないとは言い切れませんので,一応以上の2点については,,申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   地上権に準用するという規定,学校で教えるときも,いつも,あそこに地上権としか書いていないけれども,賃借権一般,あるいは対抗力を有する賃借権,それらは同じですとかと説明しますけれども,みんなそう説明しているなら,規定を明確にすればいいのですよね。   そこは,部会資料には盛り込んでいませんでしたけれども,問題提起を頂きました。。 ○水津幹事 越境した枝の切除について,いずれの案を採るにせよ,越境された土地の所有者によって切り取られた枝の扱いについても,規定を設けた方がよい気がします。   一般原則によれば,切り取られた枝の所有権は,竹木の所有者に属することとなりそうです。そうだとしますと,越境された土地の所有者は,自ら枝を切り取ることができると定めたとしても,理屈としては,切り取られた枝を自分の土地から撤去するためには,その土地の所有者は,竹木の所有者の所在を探索し,その所有者に対する訴訟を提起して,請求認容判決を得た上で,これを債務名義として強制執行を申し立てなければなりません。しかし,これでは,せっかく越境した枝の切除について自力救済を認める規定を設けたとしても,その意味がなくなってしまいます。 ○山野目部会長 根も同じですか。 ○水津幹事 切り取られた根の扱いについても,規定を設けた方がよいように思います。 ○山野目部会長 そうですか。ありがとうございます。 ○佐久間幹事 根は土地に付合しているので,土地所有者のものとなり,そこが枝とは多分違うのではないかというふうに私は思います。間違っているかもしれませんが。 ○水津幹事 部会資料7の6ページでも,そのような説明がされています。しかし,隣地の竹木の根が境界線を越える場合に,その根のうち,越境している部分だけが,越境された土地に付合するのか,それとも,付合することなく,その根は,枝と同じように,越境している部分も含め,隣地の土地所有者にとどまるのかは,議論の余地がありそうです。 ○山野目部会長 承りました。 ○平川委員 この方向は賛成なんですけれども,土地の管理のために必要な範囲内で木を切る解釈は,どこでどう判断されるのでしょうか。隣地の所有者が,土地の管理のために必要な範囲内と判断して木を切りました。もちろん,その前には催告もしました,という場合,催告した後でも逆に,土地の管理のために必要な範囲を超えているというような場合,訴訟を提起されるリスクもあるのではないかと思います。その辺のリスクが低減されないと,催告をしました,木を切りました,という行為には,なかなか及ばないような気がいたします。その辺はどうなのか,お聞きをしたいと思います。 ○山野目部会長 御質問ですから,今,事務当局に発言を求めますけれども,少し前の道垣内委員の御発言は,土地の管理のため必要な範囲内で,という提案の文言の,この文言自体を法制上の規律として変更するという提案まで含むのか,あるいは,この文言のままでの解釈・運用の指針をおっしゃったのかは,両方の可能性があると理解しますが,いずれにしても,主張立証責任を境界のこちら側,向こう側でたがえるような仕方で,平川委員が御心配になったのと本質的に同じことについて,考え込んでいこうということをおっしゃったものであろうというふうに聞きました。   事務当局から補足があれば,どうぞ。 ○大谷幹事 私としても同じでございまして,道垣内委員がおっしゃったのは,必要な範囲というのは,結局,切る方が判断しなければ,一次的にはですね,いけなくなってしまうので,それだと,後ほど,恐らく問題になるとすれば,隣の竹木の所有者の方から,不法行為に基づく損害賠償請求という形になったときに,そこは必要な範囲だったんですということを切る方で立証しないといけないということになるのが,それでいいのかということではなかったかというふうに理解をしております。   ですので,例えば,画然とする境界のところまでしか切れないというふうにしてはどうかという御提案も頂いたというふうに理解をしております。 ○平川委員 そうであれば,例えばJRの話ですけれども,強風が吹いて,木の枝が,それこそ車両限界のところまで届くというような場合,要するに車両や架線に触れるぐらいの風が吹いて,危険性があるとJRが判断したとしても,日本では今まで,50も60メートルも吹いたことはないのだから,そんなことあり得ませんと木の所有者,もしくは土地の所有者が主張した場合,JR側としても多分,木を切る行為自体は,すごく勇気が要ることになるような気がします。そのリスクを実務として,どうやって解消するかは,少し考えていかないと駄目なのではないかと思います。民法の世界では,それが可能なのかどうなのかは,考えどころだと思いますけれども,その辺を問題提起としてさせていただければと思います。 ○山野目部会長 問題提起として受け止めました。 ○道垣内委員 私の発言について,確認をしておきたいんですが,私は,実体権として,境界までしか切れないというふうに言ったつもりはなくて,境界までは必要性について何らの立証もなく,切ることができる権利があり,そこから先の場合については,必要性というものを切る側が立証せざるを得ないのではないかというふうに申し上げたつもりです。 ○山野目部会長 少なくとも私と大谷幹事は,そういうふうに理解しましたけれども,よろしいですか。 ○道垣内委員 はい。 ○山野目部会長 道垣内委員の御意見の趣旨も,皆さんで承りました。   次はどなたでしょうか。   甲案,乙案,丙案について,何か案の選好に関わる御意見がもしおありでしたならば,それもおっしゃってください。 ○垣内幹事 甲案,乙案うんぬんのことではないのですけれども,ただ,選択には関係する問題で,資料ですと4ページのところで,取り分け乙案等を採った場合について,共有者が竹木を持っていると,所有者であるという場合について,催告の相手方等をどうするのかという分析,検討がされているかと思います。   この関係で,判例として昭和43年の判決が引かれておりまして,不可分債務構成を採ることによって,建物の収去,土地明け渡しの訴えについて,被告側が建物共有者である場合でも,固有必要的共同訴訟とはならないという判断を示しているというのが挙げられているのですけれども,これを挙げている補足説明の次の段落で書かれている,次の次のですかね,とも関係するかと思いますけれども,この判決自身は,固有必要的共同訴訟ではないんですけれども,結局,順次訴えるか,あるいは共有者の同意を取るということがないと,強制執行はできないということを前提として,この判示をしているかと思いますので,この判決を引くことによって,催告が1人によって足りるということになるのかどうかというのは,全くオープンな問題なのかなという感じがいたしますので,これを踏まえつつ,催告というものを設けたときに,その趣旨が一体何であるのかというようなこととも関係するかと思いますけれども,結局,共有者として,竹木の一部の所有権について,何か影響を受けるということは動かないことだと思いますので,その関係で催告を受けることが必要だということになれば,これは順次,全員に対してすることが必要だという考え方も,この判決を前提としても,十分あり得るのだろうというように考えたところです。 ○潮見委員 今までの議論とは全く違う細かなことですけれども,資料の作り方といいますか,少しだけ,どうなのかと思ったところを申し上げます。   まず,先ほど垣内幹事がおっしゃったのとはちょっと違うところですけれども,4ページの乙案を採った場合に,(エ)の2段落目ですけれども,その末尾に,本来竹木は越境することが許されず,越境しない限度で現状を維持する必要があると考えれば,保存行為に当たると整理することも可能であるというふうに書かれているんですが,こんな学説を,私は,見たこともないし,考えることはできるといったら考えられるんですけれども,そもそも竹木は越境することが許されずと,本当にそういえるのか。既にもう,ここに一定の価値判断が入っているのではないかというような感じが個人的にはいたします。   むしろ問題となるべきは,これは,土地自体の所有権が妨害,あるいは妨害されるようなおそれがあるような状態にあるときに,管理のために必要な範囲で枝を切り取ることができるかどうかという枠組みですから,これはちょっと問題のすり替えに近い,あるいは誤解をされるのではないかという感じがいたしました。   それから,丙案について,私は,丙案の方がいいのかなと思っています。特に佐久間幹事がおっしゃったように,場合によったら他人の隣地の方に入り込んでいって,そこで隣地の財産管理までやろうということであれば,少なくとも甲案は採れない,乙案か丙案しかないかなというふうに思っておりますし,実際にコストとか,隣地の管理の円滑化というものを早目にやらなければいけないということであれば,公告ということを待つまでもなく,より,もう少し簡易な手続で,しかし,手続はできるだけ保障するという観点から,丙案を採るというのはありだと思うんです。   今のような理由ならば,丙案に賛成はしたいのですが,その一方,乙案に対する批判で,枝の越境は土地所有者に対する土地所有権の妨害であり,これは許すとしても,越境した枝の切り取りが土地所有者にとっては正当防衛又は緊急避難に当たる場合もあるというところは気になります。正当防衛,緊急避難に該当するケースって,私はそんなにないのではないかと思うんです。少なくとも,不法行為をやっている人間からしたら,こんなところで正当防衛とか緊急避難というのを拡張するというのは,好ましくもないという観点もありますし,そうなると,ここの理由というのは,理由付けとして,果たして適切なのかなという感じもいたします。   そういう意味では,本当に細かなことですけれども,細部の表現というものは,是非いろいろ検討していただければと思うところです。 ○山野目部会長 論理の組み立てについて,丁寧な説明を求めますという,4ページ,5ページの個所についての御注意を頂きました。 ○畑幹事 先ほど垣内幹事が言及された昭和43年の判例については,私も,催告の問題に直ちには結び付かないと理解しております。   それとは別に,不可分債務という言葉自体も,ちょっとよく分からないと,一部では言われているように思います。つまり,これは物権的請求権で,債権債務ではない事例なので,不可分債務という言葉は,ちょっとしっくりこないのではないかという話があります。   あるいは民法の先生方には違う理解があるのかもしれませんが,ちょっとその辺りの言葉遣いというか,理論構成についても,御検討いただければと思います。 ○橋本幹事 すみません,質問を込めてなんですが,これ,提案としては,現行の233条1項は残した上で,こういった自力救済制度を創設したらどうかという提案という理解でいいんですかね。 ○大谷幹事 乙案と丙案は,そういうことになるのかなというイメージでおりましたけれども,甲案であれば,根と同じことになるのかなと思っております。 ○橋本幹事 そうすると,233条1項は削除してということなんですか。甲案を採る場合は。 ○大谷幹事 削除というか,このように改めるということ……。 ○橋本幹事 つまり,費用負担のことなんですが,甲案でいけば,当然,費用負担を求めることはできないことになると考えられるとなっていますが,乙案については,両方あり得るというふうに書かれていて,多分,丙案も乙案と同じ流れになるのかなと思うんですが,結構費用負担もばかになりませんで,私,田舎の方で弁護士をやっているんですけれども,時々相談があるのが,隣地のケヤキの大木が大木になってしまって,20メートルぐらいになってしまったと。その枝が当然,こっちに覆いかぶさるように出ているんですが,それを切るのに,クレーン車とか出さなければいけなくて,何十万円とか掛かってしまうと。その費用もなくてできないと。   そうすると,費用負担を求めるとすれば,現状の233条1項で,切除させることができるという請求を立てた上で,一旦代替執行なりして,相手に請求するということになると思うんですが,その費用負担についても,自力救済ができるかどうかと,必ずしも論理的にはセットにはならないんですかね。そこがちょっと,この費用負担の考え方についての整理がよく分からなかったなというのがあります。 ○大谷幹事 恐らくおっしゃるとおりで,自力執行をする者が必ず費用も負担しなければならないということではないというふうに私も思います。   ただ,今,根の方は,これはどう考えられているのかなというのも,ややよく分からないというところがございまして,根の方も同じように,恐らく,きちんとやろうとすれば,かなりお金が掛かることもあり得ると思いますけれども,今は少なくとも,根の方は,根を切り取る方が費用を負担しているということを前提に書きました。論理的に必ずそうだというわけではないとは思います。 ○山野目部会長 橋本幹事の御指摘を理解します。   現在,甲,乙,丙の各案で示しているものは,何と申せばよろしいでしょうか,手順として,どのような手順でしたら現実に切り取ることが許されるかということについての委員,幹事の御意見の分布を承ろうとしています。それが見定められてくる段になって,並行して,費用の問題をまた考えていくということであろうと考えます。   もちろん,常に手順の問題と費用の問題が関連し合っている側面がありますから,切り離して議論することはできないですけれども,1ページ目の提案が,必ずしも費用について,特定の方向を決め付けてお出ししているものではなく,今問題提起いただいたところを踏まえ,費用のことは引き続き考えてまいらなければならないと感じます。よろしゅうございましょうか。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,第1の1の枝のところは,お話を伺って,甲,乙,丙,の各案のそれぞれの特徴に即した御指摘がありましたから,また整理を致します。   先に進みます。   6ページの2,管理不全土地の所有者に対する措置請求の部分について,御意見をお出しいただきたく存じます。 ○潮見委員 ちょっと基本的なところで確認させていただきたいという趣旨の質問です。   管理されずに放置されていた土地というのをどのように考えるのかというのは,これはちょっと置いておきます。それの次ですが,ゴシックで示されているところでは,近傍の土地所有者に存在が生じ,又は生ずるおそれがあるときというふうに書かれています。   説明のところにも書いてありますけれども,妨害排除請求,妨害予防請求,こういうものも,所有権に基づいて,認められていますよね。妨害排除請求といったら,単にそれ,語感からすると,妨害を排除するという,あるいは妨害を予防するということをいわれていますけれども,その中には,実際には,単なるやめさせるとか停止させるだけではなくて,積極的な措置を求めるということも,別に妨害排除請求とか予防請求から排除されるわけではない。実際に請求の形態も,作為請求の形もありますし,不作為請求の形もあります。   このことを前提にした場合に,今回ここで挙げられている,いわゆる措置請求と妨害排除請求権の関係はどうなるのかなという質問です。損害が生じ,又は生ずるおそれがあるということを二つの場面で切り分けて,違った意味を与えるということを考えておられるのか。普通に考えると,共通するかなと。   そうであれば,ではどこを変えるのかといったら,次は法益のレベルですね。美観なんかとかも書かれていますけれども,権利とか法益と書かれている部分について,妨害排除請求,それとは違ったことを考えているのか,それとも,そこは全く同じなのかなというところが,正直言ってよく分かりませんでした。   それから,それにもちょっと,連動するのかしないのか分かりませんけれども,妨害排除請求ではできないことを,措置請求ではできるということならば,妨害排除請求で,先ほどの積極的な作為措置ということを認められるという前提ですけれども,その前提に立った上で,更に加えて,管理措置請求と言ったときに,新たに何ができることになるのか。それが,どうして物権的な所有権に基づく妨害排除請求,予防請求でできないのか。このあたりのところを,ちょっと教えていただきたいんです。 ○山野目部会長 お尋ねでありましたから,どのような発想で資料の作成をしたかを,今,事務当局に説明してもらおうと考えます。   潮見委員が今,お尋ねという仕方で問題提起をしていただいたことは,いずれにしても,管理不全土地の所有者に対する措置請求の問題を考えるに際して,考え込まなければならない観点であります。   ここで示唆を差し上げている措置請求は,相隣関係法上の請求権であるというふうに理解することができます。相隣関係法上の措置請求権と,潮見委員がお話しになった所有権に基づく請求権と,それから,おっつけ話題になることが避けられませんが,人格権に基づく差止請求権などの何らかの作為ないし不作為の請求権と三つ並べれば,ひとまず訴訟物は別であろうと考えます。実体的な概念も別でありましょう。   そう考えたときに,ここで差し上げているものを立法として設けるのであれば,当然,三つ並べたものの他の二つとの役割分担がどのようになるかということについての考え方の整理を必要とするということになるものでありまして,潮見委員のお話は,その点について,まずは,御意見がおありかもしれませんけれども,事務当局としての考えを披瀝してほしいというお話であると受け止めます。 ○大谷幹事 ここは,管理不全土地というのが,所有者不明土地問題に関連して,様々なところで,何とかしないといけないのではないかというふうに言われておるところでございまして,それを相隣関係の規律として置く場合に,どのような考え方があり得るかということで,一つの案として提示をしているものでございます。   潮見委員から御指摘のあったとおり,結局のところ,所有権に基づいて,妨害排除,妨害予防ができると。それと何が違うのかというところは,問題になるんだろうと思っておりまして,こういう規律をまず置く必要があるかどうかと,それは所有権でできることだから,もういいのではないかという考え方もあるのだろうと思いますけれども,差し当たって,ここで書いておりますのは,崖崩れとか土砂とか汚液の流出という,明らかに今でもできそうな感じのものから,だんだん離れていって,どこまで認めていいのかということをお聞きしたいということ。それから,権利の行使方法のところで,管理されずに放置されていて,その所有者に対して,物権的請求権を行使して,代替執行という形でしょうか,何らかの形で執行していくということになるんだと思いますけれども,判決を取らないでも一定の手続で,請求者の方で自力執行するということもあり得ないのかということを含めて,結局のところ,そういう自力執行を許すようなことは望ましくないというのであれば,所有権に基づく今の請求権とは何が違うのかということが問題になろうと思いますし,それをもう少し,所有権に基づくものよりも,今認められているものよりも少し広げることが可能なのであれば,それはどこまでなのかということについて御検討いただきたいということで,資料を作成したところでございます。 ○潮見委員 ということは,あれですか,自力執行を認めるというところに,この制度の眼目があるというふうに理解してよろしいということですか。 ○山野目部会長 これは,まずいです。何かここの2の題材が,自力執行を特徴とする提案であるという彩りで眺められるということでは話が迷走します。どなたか,論議の方向を正していただくことがかないませんか。 ○佐久間幹事 正すことはないんですが……。 ○潮見委員 外国法でどうなっているのかという,こんな2本立てでやるのか,あるいは,例えばドイツなんかでも,隣の土地で,何か知らんけれども,カエルが一杯鳴いて,繁殖してうるさいというので,何とかしろなんていうのを,所有権に基づく排除請求等でやっている部分があろうかと思うんですよ。ほかの国もどうかと思いますけれども。   2本立てなのかどうかを含めて,ちょっとそこ辺りも,もし分かって,調べたらよかろうと思います。 ○山野目部会長 外国法調査は,既に初回会議で資料をお配りしておりまして,必要であれば,また局所を御紹介する仕方で俎上に載せることにいたします。 ○佐久間幹事 物権的請求権と相隣関係上の権利については,現行法でも,例えば,先ほどの枝の切除は,物権的請求でできるはずのところ,233条1項が置かれておりますし,216条では正に,自己の土地に損害が及び,又は及ぶおそれがある場合には,その障害を除去させ,又は必要があるときは予防工事をさせることができるとあります。ですから,2本立てになるからまずいということは,現行法を前提にしても,私はいえないのではないかと思います。   その上で,民法典が作られた当時に,物権的請求がどの程度できるかというふうに考えられたか,実はよく分からないんですけれども,仮に物権的請求による対処が可能であっても,相隣関係において典型的に生じやすい紛争類型について,どのような対処が可能かということをピンポイントで明確化する。相隣関係に関する規定は,そういう観点から置かれた可能性もあるのではないかと思います。   そうだとすると,今般御提案されている管理不全土地の所有者に対する措置請求も,今の社会において,相隣関係上,現行民法には規定されていないんだけれども,これこれこういう事象については,物権的請求でも可能かもしれないけれども,この場合にはこういう請求ができますよ,あるいは,こういう措置を採ることを求めることができますよということを明確化するという意味は,私はあるのではないかと思っています。   その上で,ではどういう事由についてかというと,これは別に嫌みでも何でもなくなんですが,御説明のところで最初に出てきたのは,雑草がどうのこうのという話なんですが,資料の「例えば」のところに,雑草とか雑木の繁茂が入っていないですね。これは入れておくべきなのではないかと思います。   それは入れておくべきなのではないかと思うんですが,あと,ここで分かりにくいのは,潮見先生がおっしゃったことにつながりますけれども,物権的請求の関連で,そちらでも対応できそうなことを前提にしつつ,美観の悪化とかというのは,物権的請求と何の関係もない話に,恐らくはなると思うんですね。そんなものまで入っているので,よく分からないということになっているのではないかという気がします。   私は美観の悪化を入れるのは,実は反対でありまして,近傍の誰がこの請求をできるかについて,美観の悪化の場合,請求をすることができる者の範囲がやたら広がりすぎるのではないかと思います。   ちょっと違うことをもう1点だけ確認をさせていただきますが,9ページの,権利行使方法のところの一番下の2段落目に,「もっとも」の後,「管理不全土地は現に利用や管理をする者がいないことを前提とするものであり」とあるんですが,これはそうなんでしょうか。所有者ははっきりしているし,どこにいるかも分かっているけれども,その人が利用や管理をしていません,という場合も含むのではないでしょうか。   資料を読むと,何だか所有者不明に近いような脈絡で書かれているように思うんですが,もし所有者不明のようなことで書かれているんだったら,それは違うのではないかと思う,という意見を申し上げます。 ○山野目部会長 先ほど事務当局が差し上げた説明は,自力執行という言葉が何かちょっと浮かび上がってくることとなりましたけれども,そこに力点があるというよりは,正に今,佐久間幹事におっしゃっていただいた9ページのところですけれども,隣地の所有者に対し,あなたはきちんと土地を見ていなくて,いろいろこちらが迷惑受けているから困ったものですね,と言おうとしても,その人自体が,どうもその土地自体ないしその近辺で捕まらないわけです。   そのようなときに,こちらの土地を持っている人の権利利益を確保するために,どうしたらいいですかという場面において,最終的には,訴訟であるとか,請求,催告,公告とか,いろいろなことを,またこれから規律を細密化していきますけれども,どこかの段階で,要件を丁寧に積み上げた上で,こちら側の土地所有者が自分で措置をするということが視野に入ってくるかもしれないというところまで,問題意識として含んでいます,ということを述べようとしたものです。   何か,最後の自力執行のところだけ,ぼんと浮かび上がってしまいましたけれども,そうではありまません。この提案が自力執行を実現するための提案であるというふうに印象付けられてしまうと,いささか困ります。   そのうえで,潮見委員から御指摘いただいたことを,これから整理していかなければなりません。まだこの部会資料の段階では整理し切っていないと感じますとともに,恐らくは整理していこうとすると,次のようなことであると考えられます。   第一に,所有権に対する何者かによる妨害の中でも,現に誰かがアクションを行って妨害を行っている,それを学説によっては動的妨害というふうに呼んだりしますけれども,動的妨害の事例では,所有権に基づく妨害排除請求権を行使するときの請求原因事実は,原告が土地を所有している,そして,被告が妨害している,この二つです。。   ところが,先ほど申し上げたように,ここで直面している事態は,被告が捕まらないものですから,現実の問題としては多分,訴状の送達ができないか,できたとしても出頭してくれないとかという状況になります。   そこで第二に,その場面において,原告が所有している,被告が所有している,そして,被告は放置していったという三つを請求原因事実として,ここで提案している是正措置請求権を行使することを認め,段階を踏んでいった上で,場合によっては,原告の方で土地について,自分で何かするということまで適法なものとするという規律を入れるということにすると,どうであろうか,これが部会資料の問題提起にほかなりません。所有権に基づく妨害排除請求権にあって,被告所有が請求原因事実にならないのに対して,こちらの方は,それが請求原因事実になるというところが異なってきますし,加えて,効果の仕組み方によっては,更に所有権に基づく妨害排除請求権とは異なる色付けもあり得るかもしれないといったようなことを,一定の政策的観点から追求しようとして,この措置請求のお話が出ているという側面があるのだろうというふうに感じます。   なお第三に,人格権に基づく請求権は、被告が原告の人格的利益を侵害していることが専ら請求原因になり,原被告の土地所有が主要事実の次元で請求原因に登場することがありません。   ひとまず,ここまでの,こうした整理ができる半面において,動的妨害の場合はそうですけれども,ある状態を作り出して隣地の所有権を妨害しているという静的妨害の方に関していうと,静的妨害を作り出している者は,しばしば,隣地の所有者そのものであると見る余地がありますから,先ほど整理したように,請求原因事実が三つになるか二つになるか,ということを述べてみても,現実に機能するときには,隣のいなくなった土地の所有者を訴えるという仕方で,所有権に基づく妨害排除請求権と是正措置請求権とが現実的な機能において,実質において重複してくる局面が観察されると想像されます。   そうなったときに,その局面の理解としては,佐久間幹事がおっしゃったように,それはかなり役割は重複するけれども,現在の相隣関係規定でも,その種類の所有権に基づく妨害排除請求権の行使と相隣関係法上の請求権の行使は,一種の請求権競合として重複する場合はあり得るものであって,規範の展開において規律要件の明確化に浴することができるほうを原告が選択して行使すればよいという観点から,役割が重なる部分があるとしても,設けるということはあるのではないかということを今し方,佐久間幹事からおっしゃっていたというふうに受け止めました。   潮見委員にお出しいただいた疑問について,まだ十分に部会資料の中で,整理を差し上げるものになっていませんけれども,整理をしていこうとすると,そのような議論になっていくものであるかもしれません。 ○潮見委員 まだ最初のラウンドですから申し上げますが,問題の所在を見たときに意外に感じたんです。   というのが,先ほど佐久間幹事が言われたようなことも含めてですけれども,所有権に基づく妨害排除,妨害予防請求権との関係といったことは一切書かれていないんです。書いているのを見たら,これ,不法行為に基づく差止め,人格権に基づく,等が入っていますけれども,人格権等に基づく差止めが入って,その後,管理不全土地の所有者が云々というところで,次に不在者財産管理制度の方に論が移って,ではこういうルールが必要ですよねという書き方をされているものですから,所有権に基づく妨害排除とか予防という制度との関係というのは,一体考えておるのかというようなところがあって,少し探りを入れたというのが正直なところです。   結果的には問題点が整理されて,よかったのかもしれません。また引き続き,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 探りを入れていただいて,話がだんだん明快になってきました。   引き続き,2のところについての御意見をお願いいたします。   蓑毛幹事,お願いいたします。次,藤野委員,お願いします。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキングで議論しているときも,正に今,潮見先生がおっしゃったように,ここで提案されている管理不全土地の所有者に対する措置請求権と,物権的妨害排除請求権あるいは物権的妨害予防請求権との関係がよく分からないという意見が出ました。管理不全土地の所有者に対する措置請求の制度を創設することには,基本的に賛成だが,そもそも何を実現しようとしているかがよく分からないので,その点を明らかにしてほしい,という意見が大半でした。   この制度を相隣関係の中に位置付けるのであれば,原告・被告,請求権者も相手方も所有権を持っていることが前提になると思われますが,果たしてここで実現しようとしている,管理不全土地に対する措置請求というものが,そのような枠組みで機能するのかどうか。部会資料でも、請求権者を近傍の所有権者としていて,通常の相隣関係よりも広く捉えているようですが,そもそも,この措置請求権を相隣関係のなかに規定することが適切なのか。   日弁連のワーキングで意見が出たのは,必ずしも土地の所有権者のみが措置請求権を有するという形ではなく,もう少し広げて,例えば地域住民とか近隣住民にも請求権を認めていいのではないか,という意見もありました。そうすると,この制度は,人格権侵害を理由とする不法行為に近付いていくので,そのこととの関係を検討する必要があるように思います。あるいは,管理不全土地ということの意義について,先ほど佐久間先生からもありましたが,「管理されずに」というのが,その土地に住んでいないということがイメージされているようですが,いわゆるごみ屋敷を考えると,住んでいる者がいても不適切な管理状態にある土地というものは想定されるので、このような限定は不要でないか,という意見もありました。   あるいは逆に,部会資料に記載されている制度では、少々広がりすぎではないかという意見もありました。たとえば,措置請求できる一定の事由として、崖崩れとか土砂の流出はいいとして,美観は広すぎるし,悪臭の発生や鳥獣・害虫の発生も土地の管理不全から生じたかどうかはっきりしない場合があるという意見がありました。部会資料7ページの国土審議会の特別部会の議論では,土地の管理不全による悪影響について,「悪影響を及ぼす」,「派生的な悪影響を誘発する」,「渾然一体となって障害となる」といった表現になっていますが,これはかなり不明確であり,民法の要件立てに当たっては相当きちんとしないといけないと感じました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事が弁護士会の先生方の御意見の整理を踏まえておっしゃっていただいた今の種々の御指摘は,いずれも重要なことばかりです。中身を伺うと,大きく当面の検討の関係で,二つのことには留意をしておかなければいけないという御注意を頂いたものと受け止めます。   二つのうちの一つは,管理不全土地という概念をお出ししており,あるいは,管理されずに放置されている土地という概念をお出ししていますけれども,一種ここも,少し前の別な議題で山田委員からお叱りを頂いたように,僅か数行で,これで進めていくかという,あの話にちょっと似ていて,今日の審議では,こういうものを考えてアイデアを育てていくことについて,どうですかというふうに,委員,幹事に意見動静をお尋ねしているものです。それらの言葉自体,つまり管理されずに放置されている土地あるいは管理不全土地という言葉は,法制に耐えないと考えます。これがそのまま法文になるということは,少し考えにくいですね。   これを法制に耐え得るような表現に洗練させていかなくてはいけなくて,それは多分,言葉だけの問題ではなく,中身をどう考えるかということにつながってまいります。   環境基本法2条3項が,公害とは何かということについての定めを置いていて,人の健康又は生活環境への被害という概念を提示しているということが,ひとまず最初のヒントになるであろうと考えます。   人の健康又は生活環境への被害という抽象要件のみを提示し,それをもって土地所有者に対して何かの請求ができるという規律もあるかもしれませんが,それでは少し,まだ漠然としているということを考えれば,更にそれに例示を補うとか,あるいは限定列挙で民法の規定上は示していくとかいうふうな工夫をし,いずれにしても要件の細密化を図っていかなければならないのではないかと感じます。   蓑毛幹事がおっしゃっていただいたことで,それとは別な種類の,もう一つのことがあって,近傍の所有者が請求することができるという可能性もあるとすれば,必ずしも相隣関係上の権利関係として整理されることが必要であるか,あるいはそれが適切であるかという観点も検討していかなければいけません。   それでいくと,相隣関係なら原告現在所有,被告現在所有が請求原因事実になりますけれども,原告所有が請求原因事実として要らないという解決の仕方があるかもしれません。被告は土地を所有している,民法が定めているこれこれの義務に違反し,これこれの被害が生じている,よって何々をせよと,原告の方の現在所有が請求原因事実から外れるという構成でいくというやり方も大いにあるであろうと考えます。   それでいったときには,多分,成案として得られる規定は,民法の相隣関係のところに排列することではなく,あの前の所有権の効力に対する制限のところ,ちょうど折よく,今208条がぽっかり空いていますけれども,あの辺りの位置にすぽっとはめ込むというような規律の形成イメージになることでしょう。ただしそれも,そちらでいくことがよいか,ここの部会資料で示唆を差し上げている方向でいくことがよいかは,よく分かりません。   いずれにしても,原告所有,被告所有,両方が請求原因事実になるという部会資料提示のモデル・パターンに対し,両方の方向から,異なるアプローチがあり得て,被告所有に必ずしも固執せず,妨害の実質的な在り方を見ていくという方向と,原告所有に必ずしも固執しないで,被告がとにかく土地所有者なのに土地を放置したという方向に行く可能性と,両方へ,異ななるベクトルで展開していく可能性があって,最終的にメニューとして整理されたもののどれでいくことがよいかということを,引き続き委員,幹事に御議論いただかなければならないと感じます。   藤野委員,お待たせしました。 ○藤野委員 ありがとうございます。   これまでに御議論いただいたところともかなり重なるのですが,措置請求まで認めるということになりますと,かなり客観的で,かつ管理されずに放置されていることとの因果関係が明確に分かるような事由でなければ,実務上対応するのは,なかなか苦しいのかなと感じておったところです。   特に美観に関しては,先ほどから委員の先生方がおっしゃっているとおりだと思いますし,他にも,例えば悪臭の発生だとか鳥獣・害虫の発生といった事由についても,どこまで管理すれば防げるのか分からない,というところはございますので,結局,具体的な事例に直面した場合には,管理されずに放置されている,という要件との関係で,非常に困ったことになるのではないか,というのが,最初に部会資料を拝見して感じたところでございます。   あと,権利行使方法に関しては,崖崩れとか,そういったものに関しては,緊急の場合だけでも自力救済できるような形で措置請求の立て付けができれば,実務的には有益なのではないかと思っておりますが,最終的な費用負担に関しては,結局,実際にメリットを受けるのが近傍の土地の所有者だったとしても,管理不全土地の所有者に転嫁できる形にしておかないと,誰かがやってくれるのでいいだろうというモラルハザードが生じてしまう可能性もあり,管理不全土地の所有者ではなく,周りの土地の所有者が負担するという立て付けにしてしまうのは政策的には余りよろしくないのではないかというふうに感じております。したがって,近傍の土地所有者が自力救済をやった場合であっても,費用は最終的には,管理不全土地の所有者の方に持って行けるという制度にするのが良いのではないかというふうに考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。費用の観点も考え込まなければいけないということが分かりました。 ○中村委員 私もこの部会資料を最初に拝見いたしましたときに,物権的請求権との関係がよく分からないなというのがスタートだったのですけれども,今までの御議論で大分整理していただきました。   今回,部会資料にいろいろな場面を挙げていただいているものの中に,物権的請求権でいけるだろうというものもあれば,それは無理だろうというものもあって,それを相隣関係規定上,何かもう少し簡易な方法でというところが狙いなんですよね。   9ページの5項の権利行使方法の冒頭のところには,まずは措置請求訴訟を提起して,判決を得て執行するというパターンがありますが,その下のところに,訴訟によらない簡便な権利行使方法を検討することが考えられると。ここのところが多分,主眼なんだろうというふうに思われますが,そうしますと,いわゆる物権的請求権の場面よりも,もっと軽微な軽目の事案,物権的請求権で訴訟を起こして,判決を取ってというところまで要求するのではなく,お互いの相隣関係の調整の中でできるような態様に,もう少し絞り込んでいただいたらどうかなと思いました。   物権的請求の中でも,行為請求をして,費用も相手に負担させるというタイプもあれば,忍容,受忍してもらう,こちらの行為を忍んでもらうという形の請求の態様で,しかも,請求者の側が費用を負担してもいいよというようなものもあり得ると思うんですね。   そのようなものでしたら,何らかの簡易な方法というのがあったら便利かもしれないですし,ほかに物権的請求権ではないような,例えば害虫が発生して虫が一杯来るよねというのが,近隣土地の所有権侵害だとはなかなか言いにくいような気もいたしますので,そういう場面の調整のための何らかの措置請求というのがあると,場合によっては助かるかもしれないというのがありますので,これを引き続き検討するということについては,いいことだと思うのですけれども,かなり絞り込んで,無理のない範囲でやれたらいいのではないかという気がいたしました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ニンヨウ請求は,中村委員は「認」と「忍」と,どちらがお好みか分かりませんが,民法学者が本を書くと,両方の字を様々に使われていますから,議事録の整理において,どうぞお好みでなさっていただければと望みます。   中村委員のお話を伺っていて,部会資料が政策的に狙っていたところは,非常に委曲を尽くした形で今,整理していただいたと感じます。 ○山田委員 6ページから始まる2,管理不全土地の所有者に対する措置請求についてですが,補足説明のところを見ると,所有者不明等に起因しとか,管理不全土地の所有者が不在者である場合という表現がありますし,9ページにいきますと,管理不全土地は現に利用や管理をする者がいないことを前提とするものであり,現に利用や管理する者がいる場合に比べて,土地所有権の制約が緩やかに認められると考えられることということで,何か制度を導入するための考え方の基本に,所有者不明とか所有者不在というのが各所に散見されます。   その場合についてのルールであれば,いろいろ工夫のしどころはあるなと思うのですが,それとは別に、管理されずに放置されている土地はある、しかし,その所有者はそこにいる,あるいは隣に住んでいるというときに,2で提案しているものを使おうとしているのか,使おうとしていないのかが,よく分かりませんでした。   現にいるけれども,その人は利用や管理をしていないというふうに評価したら,それは不在者や所有者不明と同じだという理屈もあるのかもしれないなと思っているんですが,ちょっとそれは,私は,やはりその人を捕まえて,その人にやってもらうという筋でいくべきなのではないかなと思います。   したがって,不法行為に基づく損害賠償や人格権に基づく差止めが認められることがあるような場合を,709条の要件とか,人格権の侵害があるかどうかという要件を満たさずに,もう少し外形的なものでやろうというときに,自分の土地をごみ屋敷にしていて,所有者はそこにいるという場合については,ちょっとこの新しい制度でやるには,疑問が残るという感じが私はいたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   今おっしゃったことも要件にするならば,まだ出ていないことです。それはだから,もし今の御意見のようなものを受け止め,機能する場面を絞っていくとすると,そのことをはっきり規律として表現していかないといけませんね。 ○山田委員 そういう意見も,形作ることになるかもしれません。 ○山野目部会長 そうですね。ありがとうございます。松尾幹事、どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   この部会資料7・1頁の第1の1と,6頁の同2との関係なんですけれども,第1の1の話は古典的な問題で,それに新しい解決方法を少し加味してはどうかという感じだと思うんですが,第1の2に入ると,一挙に飛躍した感がありまして,まだ十分に理解ができておりません。しかし,今までいろいろお話を伺っていますと,やはり相隣関係の中での請求として考えようということですので,やはりベースは,先ほど中村委員もおっしゃいましたように,調整という話がありましたけれども,やはり相互の立場の互換可能性があるような侵害というのがベースにあるのかなと思います。   それを前提に,類型的に,やはり,お互いにそういうことはあり得ますよねということについて,この具体的な事例,今,部会資料7・8頁(1)の崖崩れ・土砂や汚液の流出から挙げていただいていますけれども,そういうようなところから徐々に拡大していくということであると,次第につながってきて,枝や根の話だけではないですよねという,ではほかに何がありますかねという形で,議論をしやすいのかなと思います。管理不全土地であることを要件として,近傍の土地所有者が措置請求できるというふうに一般化できか,第1の1との関係も意識して,それをどうやって拡大できるかというアプローチもあるのかなと思いました。 ○吉原委員 地域の日々の課題を解決する上で,こうした措置請求ができるようになるということは,大変必要なことであろうと思っております。   質問なのですけれども,措置請求の対象の中に,ブロック塀というのは入るのでしょうか。また的外れな質問かもしれないのですけれども,ブロック塀は土地そのものではありませんし,家屋でもないですが,その土地の周囲,境を囲んでいるという意味においては,土地所有者の権利が及ぶ範囲ではないかと考えています。   近年,例えば昨年6月の大阪北部地震においては,ブロック塀が倒壊して死傷者が出るといったことで,宅地などのブロック塀の老朽化,それをどう補修・修繕していくかということが政策課題の一つとなっております。   それを考えますと,お隣との境にあるブロック塀が自分のところに倒れてきそうになっている,あるいは,道路の側に倒れそうになっている。お隣は,いる場合もあるし,あるいは,なかなか連絡がとれなくなってしまっている場合もあるかもしれません。そうしたケースというのは,この措置請求の対象になるのでしょうか。 ○山野目部会長 工作物の倒壊というものを挙げておこうかどうか,悩ましい局面かもしれない,というふうに,恐らく部会資料作成の過程で悩みつつ,取りあえず典型的なものを挙げているものと思います。別にこれに限定しているものではありませんから,今の吉原委員の問題意識を受け止め,引き続き検討するということにいたしましょう。   吉原委員からお話を頂きましたから,今後の検討のことを考えて,述べるだけ述べてしまうことにしますと,部会資料が挙げているものは,例えば,と書いてありますけれども,ほんの例示なのですね。考え始めると,私がこれから申し上げることだって例示であって,もっといろいろあるぞというお話があるかもしれませんが,実にたくさんあります。   重複をいとわずに言うと,①悪臭,②鳥獣被害,③病害虫,④崖崩れ,⑤建物などの工作物の倒壊,ここにブロック塀の倒壊が含まれます,そして,⑥土砂の流出,⑦汚液の漏出,この辺りは238条に既に出てきている概念を再び,こちらの関係でも用いますかというお話ですね。それから⑧騒音,騒音は人が現にいて,人がする活動によるものと,⑨放置された工作物から生ずるものと,両方があると考えられます。それから⑩ 音波,音波は人の耳に聞こえる範囲のものと,⑪その範囲外,つまり可聴外だけれども,人の健康に影響を与える音波とがあり得るところであります。それから⑫ガス,ガスは,人の現在のアクション,活動によるものと,⑬放置された工作物や自然の事象により漏出するガスもあるであろうと想像します。そして,最後に⑭景観,景観は,建物の工作物による障害と,⑮自然の事象による景観に対する障害との両方あり得ることでしょう。   今私並べたものは,これら全部,措置請求権としてケアすべきだというものではありません。最後に挙げた景観のようなものは,既に部会資料にお出ししている美観について,反対意見を二つ頂いていたところから明らかであり,また,最高裁判所が景観について述べているような判示の姿勢などから想像すると,なかなかここの議論に入りにくいだろうとは思いますけれども,候補として挙げると,そういうものも,最終的に否定される可能性が大きいとしても,いささか検討しておかかなければならないということであり,とにかくたくさんいろいろあります。   それを今,吉原委員に挙げていただいて,全般的に宿題を今後考えていくということになるであろうというふうに見通しています。 ○垣内幹事 これまでも何回か話題に上った自力救済ないし自力執行に関する資料ですと,9ページ以下の権利行使方法として検討されている部分についてですけれども,これはまだ,今後検討していくにつれて,どれくらいの要件が設定されていくのかとか,そういったことにも,あるいはどんなケースを想定するのかということに関わりますので,この段階で余り詳細な検討もできないのかなと思いますけれども,一般的に申しますと,やはり,少なくとも現在,6ページのゴシックで書かれているようなものというのは,かなり概念は広いものが,検討の対象にはされているということですが,そういったものについて,第1の1の甲・乙・丙案のような形での自力執行的なものを広く認めていきましょうというのは,かなり難しいのではないかという印象を持っております。   先に中村委員からも御発言ありましたけれども,対象をかなり具体的に,かつ明確に絞り込んでいくであるとか,あるいは,この管理不全というのは,所有者が本当に不明であるというような場合に限定して考えるであるとか,様々な絞り込みをしていって,その中で,更に慎重な手続を踏んで,自力救済的な場合も場合によっては認めるというのは,あるいはあり得るのかもしれませんけれども,なかなか射程の広いものとして,認めることは難しいのだろうなという印象を持っているところです。 ○山野目部会長 垣内幹事に御発言いただいたところが,今日ずっと理論面と実際面から議論してきていて,かなり慎重に考えを深めていく困難な問題が多いという議論の経過をまとめていただいたと受け止めますとともに,恐らく御議論を受け止めると,かなりハードルの高い制度ではあるけれども,育てていくことを考えて御覧なさいという御議論の全趣旨であろうというふうには受け止めますから,その辺りの議論の全般の状況を引き取らせていただき,今後また事務当局において議事を整理するということにさせていただいてよろしゅうございましょうか。ありがとうございます。   それでは,続きまして,部会資料7の10ページ,第2,近傍の土地の利用の円滑化としてお出ししている事項のうち,1の導管設置権及び導管接続権の明文化に限り,事務局から説明を差し上げます。 ○福田関係官 資料10ページにあります,導管等設置権及び導管等接続権の明文化について御説明いたします。   現代生活において,水道,下水道,ガス,電気,電気通信等のライフラインは必要不可欠でございますが,他人の土地や他人の設置した導管等を経由しなければライフラインの導管等を引き込むができない,いわゆる導管袋地が存在しています。   民法は,ライフラインの技術が未発達であった明治時代に制定されたため,各種ライフラインの設置における他人の土地等の使用に関する規定を置いていません。実務においては,相隣関係の諸規程,下水道法第11条等を類推適用することにより対応されておりますが,類推適用される規定は必ずしも定まっておらず,また,隣地所有者が所有者不明であるケースでは,対応に苦慮することもあるとの指摘があります。   そこで,導管袋地の利用可能性を向上させるため,本文①では,他人の土地に自らの導管等を設置することへの承諾を求める権利,いわゆる導管等設置権を明文化すること,また,本文②では,既に他人の土地に設置されている導管等に自らの導管等を接続させることへの承諾を求める権利,いわゆる導管等接続権を明文化することについて検討するということが考えられます。   なお,本文①及び②では,土地又は導管等の所有者の承諾を得なければ,導管等を設置し,又は導管等を接続することができないことを前提としています。   一方,土地等の所有者が不明である場合,本文①及び②の案では対応に苦慮すると考えられることから,本文③において,一定の手続を踏むことで,土地等の所有者の承諾を擬制するとした案を提示しております。   本文④は,損害が発生した場合の償金に関する規律です。   その他,補足説明にも記載いたしましたとおり,ライフラインについて御議論いただくに当たっては,既存の導管等の所有関係等にも留意しつつ,導管等設置権の法的構成や導管等が設置される土地の所有権の権利保障の在り方等についても検討する必要があるものと考えられます。   説明は以上でございます。 ○山野目部会長 ただいま御説明を差し上げた部分について意見を頂きます。 ○道垣内委員 なるべく片仮名は使わない方がいいのでは,ライフラインという。何か最近,法文上,不要なときについても片仮名が増えているような気がして,どうも気になります。 ○山野目部会長 当面どう書けばいいですかね。もちろん,最終的に法文を草するときには,民事執行法57条5項の法文のように,きちんと整った表現にして,ああいうふうに和語で書き尽くすということが美しいよという道垣内委員のお話でありますけれども,当面,そのように丁寧に書くことに若干しにくい部分があるものですから,何かお知恵があったら頂きたく存じます。 ○道垣内委員 いえ,この段階で一言発言をしておいて,法文作成のときにプレッシャーを掛けようという,そういう理由でございますので,何か案があるわけではございません。 ○山野目部会長 分かりました。遠い慮りのある,含みのある御発言でした。 ○中村委員 日弁連のワーキングでは,ライフラインの重要性に鑑みて,この新しい規定を置く方向で検討すること自体については異論はございませんでしたけれども,手続保障の重要性というところは指摘が多く,承諾の擬制などについては,なお検討が必要だという反対説もございました。   あと償金との関係ですけれども,他人の土地を経由しなければライフラインに接続できないというような土地というのは,袋地の囲にょう地通行権などと比較的似た状況,利益状況を考えることができると思うのですが,このような土地というのは,一般的にいって,価格が非常に低い。それを低い値段で取得しながら,当然のようにお隣を通せということになりますと,やはり問題がありますので,それはしかるべき償金をということを,きちんと定める必要があるのではないかという指摘がございました。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   導管等設置権そのものを明文化することについては,産業界各社からも積極的な意見が多く出ております。ただ,先ほど中村委員からも御指摘がありましたとおり,他の所有者に無断で何でもかんでもできるようにしようというところまでの強い意見ではなくて,承諾を求めるという立て付けの下でやっていくのが原則ということでよいのではないか,という穏健な意見が中心であると理解しております。   あと,やはり各社の関心事としてございますのが,どの範囲から承諾を得るかという点でございまして,この点につきましては,そもそも導管の設置がどういう性質の行為か,というところにも関わってくる話で,これを共有者の持分の過半数で足りるというふうにするのか,また違う考え方を採るのかという点に関しては議論もあると思いますが,いずれにしろ,解釈に委ねるというよりは,もしこの設置権を明文化するのであれば,きちんと書いておいた方がよいのではないかと思います。   また,償金については,実際に損害を与えた場合に限るという前提であれば,これが要件として入っていたとしても,それほど違和感はないように思います。  以上,基本的には導管等設置権を設けるという方向性については賛成で,設置権と土地所有者の双方に無理を強いることのない範囲で制度設計をしていただければ,と考えております。 ○山野目部会長 ただいま,中村委員と藤野委員から,基本的には賛成であり,これを明文化する方向を進めてほしいという御意見を頂き,併せて,細目にわたることですけれども,共有の場合の扱いであるとか承諾擬制の要件は精査してほしいという御要望も頂きました。   それらはいずれもごもっともなことでありますとともに,くわえて償金のことはきちんとしてくださいねというふうにお二人がおっしゃいましたけれども,そこは、ご意見の方向が逆向きですか。   中村委員は多分,実害というか,不法行為法上の意味でいうダメージのようなものが生じていないときにも,償金という概念があり得るという感覚でおっしゃったし,藤野委員は,言わば何かが壊されたというか,リアルな形の何かが生じたときの償金に限定するという方向のことをおっしゃったように聞きましたけれども,私の理解が足りないようであれば,まず中村委員から,何か補足の御発言をいただきたくお願いします。 ○中村委員 御指摘のとおりの趣旨で申し上げました。   つまり導管が,例えば水道管というものが通った場合,余り大深度に埋めるということはありませんので,そうしますと,今後数十年にわたって,今度は導管を引かれた土地の人が,それなりに利用方法などに制約を受けるということになりますので,賃料のようなイメージで申し上げました。 ○藤野委員 そういう観点からいうと,先ほど私が申し上げたのは,土地の利用に決定的な制約が生じていないのであれば,あえて常に償金を払うという立て付けではない方がよいのかなと。実際に損害が生じたという場面に限ってというところの意味であれば,差し支えないのではないかという趣旨の意見でございます。 ○山野目部会長 お二人の御意見は理解しました。   さあ,やや考え込んでみなければなりません。恐らく,特別のことを考えなければ,現在の210条,211条の局面に出てくる償金と同じ意味に理解されるものでありましょう。私は,あそこの償金は,中村委員がおっしゃっている意味の償金であると理解していましたけれども,そこ自体がそのような理解で正しいかどうか,確かめなければなりません。何といっても,相隣関係のことって,民法の本に余り書かれていませんから困るのですけれども,事務当局が,従来学説,裁判例における理解を調査した上で,さらに今,藤野委員と中村委員から御指摘いただいた観点について,それぞれごもっともな背景がありますから,どういうふうに考え方を組み合わせたり,整理していったりするかということを考えてもらえれば,さいわいです。 ○蓑毛幹事 中村委員の発言について,少し補足したいと思います。   今回の提案は,ライフラインを設置する必要性を踏まえつつ,負担を受ける土地の所有権者に対する手続をきちんと保障する。その一方で,所有者不明土地や共有者多数の場合について,みなし承諾のような手続で対応するなど考慮したうえで,バランスよく規定されており,基本的には賛成です。   ただ,藤野委員からもありましたが,負担を受ける土地の所有者が共有者のときは,みなし承諾も含め,持分権の過半数の承諾を得ればいいのかなど検討の余地があると思います。また日弁連のワーキングでは,共有者の中に明示の反対者がいる場合でもいいのか,みなし承諾を含めず,明示の意思表示をした人の過半数で決すべきではないかなどの意見もありました。   また,導管を設置された土地について,例えば,建物を建て替えるときなど,土地の所有者がその導管が通っているところを使う必要性があり,かつ,その導管の位置を移動しても,導管の引き込みが可能であれば,負担を受ける土地の所有権者の側に,ライフラインの導管の変更請求権を認めてもいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 前半でおっしゃっていただいた共有者の過半数かどうかといった点は,考え込んでいかなければいけない問題であり,また,それは,部会資料5までで御議論いただいていた共有制度の見直しの中での共有者間のコミュニケーションの取り方のところの規律整備をにらみながら,考え込んでいかなければいけない部分があると感じます。   後半の方でおっしゃったこと,つまり永久に一旦引いた導管の状態が続きますかという問題は,これも考えなければいけない事柄であり,それとともに,これは現在の210条,211条の通路についても,実は同じ種類の問題がありますね。ですから,あそこについての考え方がどういうふうな積み上げがあるかを調べた上で,蓑毛幹事の問題意識を受け止めてまいりたいと考えます。 ○中田委員 ただいまの点なんですけれども,210条,211条の場合には,通行をしているという状態を変えるだけのことなんですけれども,導管の場合ですと,実際に埋まっているものを動かしたり,撤去したりする必要がありますから,210条,211条の場合よりも,更に所有者にとっての負担が大きいと思いますので,消滅請求とか変更請求とか,要は終わりをどうするのかということも,併せて考えていく必要があるのではないかなと思いました。 ○山野目部会長 終わりの規律を整備するのに,どうしたらいいのかということを考え込み,導管のところについての規律を整備していくということがあり得るかもしれないし,そのときはもしかすると,通路を開設されている場合は,しかし,通行権の場合も同じですよね。 ○中田委員 それはそうですね。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○道垣内委員 11ページの(注4)のところに,承諾がなくても一定の要件が満たされているならば接続できるということについても検討すると書いてあるんですが,仮に(注4)に関連して,やはりそれは駄目だよと,承諾がないと駄目なんだというふうになりましたら,そのために条文が要るのでしょうか。承諾しているのだから,通せるに決まっているような気がするんですが。   そうすると,この問題を検討するに当たっては,承諾がなくても一定の要件を満たすことによって,導管等設置権及び接続権というものがあるかということを議論しないと,意味がないのではないかという気がするのですが,それは私の勘違いかしら。 ○山野目部会長 恐らく勘違いではないと思いますけれども,事務当局の方で補足があったらどうぞ。 ○大谷幹事 私も勘違いではないと思いますけれども,ここで書いております,承諾しないと使えないのだというのが(注1)で書いておりまして,①や②の要件があれば承諾を求めることができるということで,こういう要件があれば,隣地の所有者の方は承諾をする義務があるという形になるのかなと思っておりますけれども,これは,例えばということで,こういうふうにお示ししておりますけれども,所有者不明の場合であるとか,結局,承諾が得られないときにどうするかということも考えたときに,こういう構成ではどうでしょうかということでお示ししたものでございます。 ○道垣内委員 ちょっと分からなくなった,蓑毛さんおっしゃったのは,例えば,共有者の中の1人にすごく反対している人がいたらどうなのかという意見も出ましたという話をおっしゃったんですが,いや,関係ないじゃんというのが僕の感想で,要件が満たされていれば,できるのではないんですかという感じがしたものですから。   もしそれに1人が強く反対すると,それはやはり駄目だよねということならば,それは承諾がないと駄目だという制度にすると。その承諾のやり方について,共有者の場合は過半数でいいのか,それとも誰かが反対していると駄目なのかという,そういう話になってくるので,何かちょっと私が,どういうふうに理解したらいいのか分からなかったものですから,ちょっと一言お話ししました。 ○山野目部会長 道垣内委員を困惑させている理由は,恐らく11ページの(注4)にとどまるようなサイズの話ではなくて,そもそも10ページの,もっと大きなフォントで,①,②,③と文章を用意してお示ししているところの,ここの法的構成というか,法制上の表現が,強い言葉を用いると稚拙であるというか,もっと穏やかに述べると,まだ部会資料の初期の段階ですから法制上の洗練を経た表現になっていません。   そもそも,承諾を求めることができるという提案自体が変です。承諾を求めたときに,相手が,うん承諾するよと応えると,それで話は終わりになってしまうから,そこから先,えっ,話はどう進むのですかというところが,何も規律表現として書かれていません。   ですから,ひょっとすると,こうではなくて,承諾を得て設置することができる,その承諾は場合によっては,しかし異なる方法で調達し,場合によっては,更に調達しなくてもよい場合があるかもしれないといったような構成を打ち出していきますか,とか,あるいはもう少し,更に異なる洗練された法制上の規律表現の仕方がありますかといったような問題を検討していかなければいけないものでありますけれども,本日の段階は,まずこの中身それ自体として,隣の人のところに導管を通すことについて,どうですかという最初の話題提供をさせていただいたということで,そういうところにとどまっているということを御理解いただければ有り難いと感じます。 ○佐久間幹事 私の理解が間違っているのかもしれませんが,14ページに,①,②,③の承諾を求めることができるということの意味が書かれているのではないかと思うんですが,承諾が得られれば,それでオーケーですし,承諾を拒んだ場合は,①,②,③もですか,③は関係ないか。①,②の要件が満たされていれば,訴えて,承諾の意思表示を擬制するというか,そのための承諾を求めることができるという文言なのではないでしょうか。   だから,これ,請求することができるというふうにしたって一緒なのかもしれませんが,要件が満たされているときは,拒んだって,訴えを起こせば使えると,そういう答えになるのではないかと思うんですが。 ○大谷幹事 そのとおりだと思っています。 ○山野目部会長 訴えを起こして,意思表示を擬制する判決が得られたとして,その確定判決が得られた後の状況は,しかし,少なくともゴシックのところではまだ規律表現として明確に語っていないですね。そこを更に考え込んでいかなければいけないという課題はあるかもしれません。 ○水津幹事 導管等設置権及び導管等接続権について,先ほど部会長から,210条の通行権を有する者が,211条2項に基づいて通路を開設したときにも,同じような問題が生じるという御指摘がありました。そのほか,導管等設置権及び導管等接続権については,低地通水権を定める220条や,通水用工作物使用権を定める221条との関係が問題となる気がします。   211条2項,220条,221条の規定では,所有者の承諾は,不要であるとされています。他方,導管等設置権及び導管等接続権に関する提案は,所有者の承諾が必要であることを前提としています。この提案の方向で進めるときは,211条2項,220条,221条の規定を見直したり,これらの規定との違いを説明したりすることで,ルール間の整合性が保たれるよう注意する必要があるように思います。 ○中田委員 補足だけなんですけれども,先ほど,210条の通行権との関係を申しましたが,210条の通行権の場合には,袋地でなくなった場合には消滅するのではないかと思うんですけれども,導管等の場合には,導管袋地でなくなったとしても導管自体は残っているという,そういう違いがあるということを申し上げたかったんです。 ○山野目部会長 中田委員から御指摘いただいた差異に留意をし,水津幹事から先ほどおっしゃっていただいた既存の相隣関係規定の規律との平仄についても,引き続き注意を払っていくことにいたします。同じ規律表現にするか,それとも低い土地に水を流す話は,あのままにしておくということもあり得るかもしれません。そこの平仄そくをどう考えるかの最終的な解決は様々あるかもしれませんけれども,忘れないようにしてくださいという御指摘は,そのとおりです。 ○山田委員 第2の1については,所有者不明とか,あるいは所有者不在とは無関係に,相隣規定の,相隣関係の規定の現代化という観点から,一定の手直しをするのがいいだろうと思います。何かちょっと,本来の立法趣旨から離れるのかもしれませんが,必要性が高いのではないかなと思います。   そうしますと,どうなるかといいますと,私の意見は,第2の1の①と②について,承諾を求めることができる,裁判による承諾を命ずる判決があれば,承諾があったものと擬制するですか,とするというのは,下水道関係はちょっと問題がありますが,水道,ガス,電気,電気通信,これらは,今も解釈できるかもしれませんが,不安定,不透明だと思いますので,ここについて,承諾を求める権利が,一方の土地の所有者には他方の土地の所有者に対してあるということを明確にするというのは,所有者不明土地問題という本来の守備範囲を超えるようにも思えるのですが,今回一緒にやったらいいのではないかなと。実際の必要性が,所有者不明とか所有者不在とは無関係なんですが,あるように思います。   その上で,③についてどうするかというのは,こういうのがあったらいいだろうというのは分かりますが,ちょっと行き過ぎのようにも思いますし,行き過ぎではない場合もあるよという例で,ここでも所有者不明とか所有者不在を挙げられたので,そこはちょっと,ほかのところでやる所有者不明,所有者不在と平そくをどう合わせたらいいかということを考えたらいいんだと思います。   その上で,④について,先ほど少し御発言が出て,思い付きなのですが,現実の損害がなければ償金は生じないという考え方と,賃料のように考えて償金を構成すべきだというお話がありましたが,私は二つ目の意見よりも,もう少し過激な意見として,次のような考え方があるのではないかと思います。   それは,ライフラインが通じなかった土地が,この権利が認められると,価値が高くなりますよね。その価値を,損害が生じているならば,その損害あるいは,ちょっと賃料というのが何を意味しているか,よく分からないんですが,それよりも,価値が増加した部分の一定割合をライフラインを提供する人に,償金という名前になるかどうか分かりませんが,支払うべきだという考え方もあるんだろうと思うんです。   したがって,償金のところは慎重に,経済的に合理的な判断をしなければならないなと思います。   したがって,囲にょう地通行権というのは今,言葉としてなくなったのかもしれませんが,使わせてください。囲にょう地通行権は昔からある制度なので,今私が申し上げたような考え方というのはないのではないかと思うんですが,電気や,電気通信ですか,これらについては,これ,私の解釈が前提になっているかもしれませんけれども,これまでは承諾請求を,訴訟を起こしても認められなかったのではないかと思うんですね。   そうすると,これによって得られた利益というのは,それは社会・公共が有効に利用できる土地の範囲が広がりましたので,いいわけですけれども,それを誰に帰属させるかというのは,損害の部分だけは提供した人にというのは,ちょっと足りないのではないかなという気がするということです。 ○山野目部会長 土地基本法の発想でいうと,開発利益の還元にかなり近いような発想を山田委員がおっしゃって,恐らく,それと必ずしも矛盾しない仕方で中村委員は,法律家的な言葉の選択として賃料のようなものとおっしゃいました。多分,これらの二つは,全く同じではないかもしれないけれども,かなり発想としては重なり合うものでしょう。   それから,③のところの要件は,所有者不明ということが文言上出ていないけれども,その点を引き続き考えてくださいということも受け止めさせていただき,先ほど中村委員,蓑毛幹事から,③のところはもっと慎重にとおっしゃっていただいたところも、想起いたします。確かに①,②は,所有者不明を要件としない,一般的な相隣関係規定の現代化ですけれども,③の性格は,政策的背景が異なる部分がありますから,今の中村委員,蓑毛幹事,山田委員の御注意を受け止めながら,③の規律を考えていかなければいけないということを感じます。   平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   11ページ,④の償金のところですけれども,これはライフラインの話です。ライフラインとは,ある意味,命綱です。私の個人的な感覚で言うと,償金を払わなければならない意味合いが,どうも感覚として,本当にこれでよいのかという疑問を持っています。   国土交通省の関係官に後で伺いたいと思いますけれども,今でも導管は多分,いろいろなところに通っていますよね。もし償金を払わなければならない,今までもらっていなかったのが今度,償金がもらえるという話になったら,水道料金とか下水道料金を含めて,結構な混乱になるのではないのかと思いますが,その辺はどうなのでしょうか。 ○山野目部会長 まず,国土交通省は,ここで尋ねても答えは返ってきません。これは,元々国土交通省ではないですし,たとえ関連する部分があるとしても国土交通行政の範囲は大きいですから,ここにおられる方に伺っても,直ちには答えが戻ってまいりません。   導管のところは,最後に法文を草する段階になりますと,山田委員のお話にも関連する部分がありましたけれども,調整・協議をしなければならない府省がたくさんあります。ライフラインの種別ごとに,所掌しているところ全部と協議・調整した上で,現行の行政的な制度の仕組みとの関係で矛盾や齟齬を起こさないように整合させなければいけませんから,その際に注意をしなければいけない側面を御指摘いただいたという側面があります。   さらに,平川委員のお話は,それよりも更に大きい部分があって,命のためにつないだものにお金を払わせるのかという観点がありました。これは多分,いろいろな人がたくさん御議論をおっしゃることでしょうし,大体御議論の中身も想像することができますが,ややここは御指摘を頂いたということで,引き続き事務当局の方で整理をさせていただくということでよろしゅうございますか。 ○平川委員 それでよいと思います。   どちらにしろ,この償金という仕組みで水道料金が体系付けられているかどうかは,私も承知をしていないので,もしも償金ということになるとすれば,結構大きな問題になりかねません。民法上はそうなのでしょうけれども,やはり現状の導管の運用とかは,どうなっているかという観点から考えていく視点も必要ではないかと思いました。 ○山野目部会長 水道は,水道法を所管している主務省と,それから水道法に基づいて,地方公共団体等の事務とされているという一種の行政事務でありますから,そこの運用との関係で,どのような影響があるかということを,今の御指摘も踏まえ,きちんと成案が得られるまで詰めていこうと考えます。   それから,経過措置の関係について注意をしなさいという御指摘も承りました。 ○岡田委員 実態を少しだけ御紹介させていただくと,古くなくてもいいんですけれども,導管,水道管,下水管等々に,新しくお家を建てようと思った人がつながせてくださいという場面で,100万円規模のお金を請求される場面もあるやに聞いております。   その金額が正当なものかどうかということはあると思いますけれども,でも,こういう一定のルールを作っていただけるということは,とても有意義だと思います。   それと,割とこういう導管が入っている土地というのは,私道の中にたくさん入っていたりします。所有者が分からない土地に,そういう私道がなっている場面がたくさんあったりするので,今までの議論の中で御議論いただいた管理者等々がいてくれると,その方と交渉ができるというような流れになるのかなということで,今お聞きをしておりました。 ○山野目部会長 ご意見をいただきました。   定刻が近づいております。けれども,時間がきたから導管等設置権と導管等接続権の議論を無理やり打ち切るということも乱暴な話でありまして,これらについて,まだ御指摘いただくべき事項があるかもしれません。   次の回の会議の冒頭において,改めて第2の1についても御意見を募るという手順を採らせていただきます。加えて,岡田委員におわびを申し上げながら,本日の議論はこの辺りまででしょうという御案内を差し上げることになりますが,第2の2と3のところについて,岡田委員におかれては,一所懸命,土地家屋調査士会の方でも御議論を積み上げておられて,御発言の用意をなさってきたかもしれません。審議の進捗がこのようなことになりましたから,次回以降に,また土地家屋調査士のお立場から御意見をおっしゃっていただければ有り難いと感ずるものでございます。   本日の内容にわたる議事は,ここまでといたします。   次回会議の案内等の事務的事項について,大谷幹事から案内があります。 ○大谷幹事 本日も長時間ありがとうございました。   次回の日程は,7月2日火曜日,同じく午後1時から午後6時までを予定しておりますが,場所は,この部屋で次回もさせていただきます。   相隣関係規定の見直しで,今の導管等設置権の続きから始めさせていただきまして,テーマとしては,不動産登記制度の見直しの1回目ということを予定したいと考えております。 ○山野目部会長 長時間にわたる御議論ありがとうございました。第4回会議をお開きといたします。 -了-