法制審議会 民法・不動産登記法部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  令和元年9月24日(火)自 午後0時59分                     至 午後5時23分 第2 場 所  東京保護観察所会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第7回会議を始めます。   皆様におかれましては,本日も御多忙の中,御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   本日は,潮見委員及び山本幹事が御欠席であります。   事務当局から配布資料の確認を差し上げます。 ○有本関係官 今回,部会資料10から13までを事前送付しております。また,本日は,前回配布いたしました部会資料9「不動産登記制度の見直し(2)」も併せて使用いたします。   本日,部会資料10から13までについては,お手元に配布させていただいておりますが,部会資料9も含め,お手元にないようでしたら,お知らせいただければと存じます。   よろしいでしょうか。   当該資料の趣旨や内容につきましては,後ほど御説明させていただきます。 ○山野目部会長 部会資料9から審議を始めます。前回会議におきまして,部会資料9「不動産登記制度の見直し(2)」の最後の部分が,審議が済んでおりませんでした。そこで,その部分,すなわち「第5 その他の不動産登記制度の改善に関する検討」の中の「5 附属書類の閲覧制度の見直し」から審議をお願いいたします。   この部分につきまして,事務当局からの説明を差し上げます。 ○有本関係官 資料の30ページ,「5 附属書類の閲覧制度の見直し」では,登記簿の附属書類のうち,図面以外のものについての閲覧の規律について検討しております。   不動産登記法121条2項では,登記簿の附属書類について,何人も閲覧を請求することができるとしつつ,図面以外のものについては,請求人が利害関係を有する部分に限るという規定の仕方をしており,この利害関係がどのようなものを指すと解されるのかが問題となります。   この規定の制定当初においては,附属書類も広く公開されるべきであるとの趣旨があったものと考えられますが,他方で,平成16年の不動産登記法の改正により,登記原因証明情報の提供が必要的とされ,様々な情報が附属書類に含まれ得るようになったことによりまして,個人情報保護への配慮の観点も加わったということができます。さらに,近時の所有者不明土地問題を背景として,附属書類から所有者探索の端緒の見つけるという観点からは,附属書類も一定程度必要な範囲で開示されるべきとの要請もあるように思われます。   こうした様々な観点から現在の規律を見たとき,これを維持することが相当かどうか,又は,より適切な規律に見直すべきかどうかなどについて御議論を頂くべく,検討の一つの手かがりとして,閲覧の請求人や附属書類の類型を考慮要素として,規律の見直しを行うという観点も提示させていただいておりますので,幅広く御意見を賜われればと存じます。   第5の5に関する御説明は以上でございます。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 今,説明があったように,規則193条3項で,閲覧の請求をするときには,利害関係がある理由を証する書面を提示しなければならないということになっておりまして,我々も実務で閲覧をすることがあるのですけれども,どこまで書面を用意すればいいのかというところで,その申出を受ける法務局側とすると,やはり厳しくなりがちという実態がありまして,この利害関係についての判断基準というのを,明確にするというのは賛成であります。意味があることだと思っております。   また,司法書士内部の意見として,「利害関係」という用語も,正当な理由とかのように用語自体も変更をするかどうかということも検討すべきだという意見があります。それと,先ほど少し御説明がありましたけれども,附属書類の種類によって,見せていい部分といいますか,正当な理由というのが変わってくるのではないかと,その附属書類の種類によって,利害関係の度合いを分けることも検討すべきではないかという意見もあります。   ただ,こうなると,法務局の方が,どの類型に入るのかということの判断で,かえって困難な作業になるということも想定されるんですけれども,そのようなことも検討されるべきではないかということと,一方で,平成16年の不登法改正で,登記原因証明情報の必要的添付の制度が入りまして,それを法務局で保管するという制度が導入されましたが,これは,元々登記名義人の権原を調査確認するために,閲覧することに意味があるということで導入された,そういう意味もあると理解をしております。   ただ,それが全て附属書類の閲覧ということでひとくくりにされておりまして,なかなか権原調査もしにくいということもありますので,やはり附属書類の種類によって,その利害関係の度合いを分けていくということは,検討されていいのではないかと思っております。 ○國吉委員 ありがとうございます。   私たち日本土地家屋調査士会連合会としても,この附属書類の閲覧というのは,ここで取り上げられています所有者不明の探索の部分もしかりですけれども,そもそも,いわゆる登記事項を確認する手続の一つとして,我々が出しております規則93条調査報告書という附属書類がございます。実は,ここには,隣地の所有者の関係ですとか,土地の境界をどのように確定したのかとか,そういったような要素も盛り込まれております。   附属書類,一般の附属書類ですけれども,登記事項に関わる部分についての探索ですとか特定に関する部分については,本来でいう登記をするための補助的な部分というんでしょうか,そういったものがあるところについては,利害関係というよりも,やはり正当な理由というか,登記事項を探索するためにも必要であるという理由から,閲覧に供されるべきではないかと思っております。   特に,この所有者不明の問題もそうなんですけれども,隣地所有者の確認というのが非常に重要な形というか,我々の実務上は大変な部分なんですけれども,これを特定すること,それから,隣地との境界を確認するんですけれども,以前に境界の確認の手続が済んでいる場合において,それを確認する一つの手段として,この附属書類を確認するということが重要な部分になるということがあると思います。ですので,我々資格者代理人としての守秘義務等がございますので,ある程度のやはり余裕を持った閲覧の手続をさせていただければと思っております。 ○山野目部会長 利害関係のある部分という現在の文言から,正当な理由がある部分という文言に変更することについて,理解を表明する意見が二つあり,またお二人の意見とも,その上で,附属書類の内容,性質,類型ごとに,その閲覧を許す範囲については,十分な検討が必要であるという趣旨の御意見を頂きました。 ○中田委員 34ページに,閲覧の対象となる附属書類の類型として幾つか挙がっておりまして,その中に本人確認書類というのがあります。戸籍謄本と印鑑登録証明書があって,印鑑登録証明書の方は抑制的であるべきだけれども,戸籍謄本の方は,むしろ積極的に活用すべきであるという記載がございます。   他方で,平成19年に戸籍法が改正されまして,そこでは,公開を制限する方向での改正がされたところであります。第三者による戸籍謄本等の交付請求の基準が法定されているわけでして,そのことと,こちらの考え方との間での調整と申しますか,考慮が必要かと思いました。   それから,同じ問題ですけれども,不動産登記申請で戸籍謄本が求められる目的と,それを第三者に見せることの目的との間に,一致しているのか,ずれがないのかということも確認する必要があると思います。先ほど今川委員から,閲覧させるということも入っているのではないかという御発言ございましたが,それも,戸籍謄本にも当てはまるのかどうか,これは,個人情報の目的外利用の規律との関係で,確認しておく必要があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 印鑑登録証明書について,慎重な取扱いが求められることはもちろんのこと,戸籍謄本についても,個人情報が多く含まれており,極めて慎重な扱いをするのではないかという御示唆がありました。その扱い如何によっては,戸籍法10条の2が定める規律,その他の規律が実質的に潜脱されるおそれがあるという観点からの御注意です。 ○道垣内委員 中田さんがおっしゃられたことに尽きているのですが,補足説明も読ませていただいて,図面以外の附属書類のそれぞれについて,なぜそれが閲覧される必要があるのかというのが,今一歩よく分からなかったのです。   例えば,印鑑証明書類ですが,プライバシーがどうしたというのではなくて,閲覧させる必要性がなければ,プライバシーの問題以前の問題として,閲覧させないという話になると思うのです。れでは戸籍は何のために必要なのだろうかとか,あるいは,ほかにもいろいろ,遺産分割協議書でも何でもいいのですけれども,何のために必要なので閲覧の可能性を探ろうとしているのかというのが,よく分からなかったのですが。 ○山野目部会長 道垣内委員の御意見の中に,御疑問,問題提起が含まれていたかもしれません。今川委員,國吉委員,村松幹事などのどなたかで,何か御発言がおありでしたら承ります。 ○村松幹事 私の方から少し御説明を差し上げて,適宜補充していただければと思いますけれども,この文脈で戸籍を何のために見るのかというところ,確かにございますけれども,一つ最近増えている例としては,今所在が不明であるという方が現にいらっしゃるというときに,結局戸籍を探索し,本籍が分かれば,そこから附票をたどるというようなことになりますが,不動産登記の登記所の方で過去に提出され,保管している情報から,その方の所在を知りたいというようなニーズが出てきておるようでして,そういったところでの利用なんかが,一つ考えられるというところなのかと思います。   道垣内先生の御指摘は,そういう実際上の必要性はともかくとして,それが正当化されるのかというところの検討も必要ですというところで,そこは中田先生も先ほどおっしゃったとおりだと思います。戸籍法,あるいは住民票も同じかもしれませんけれども,それぞれ閲覧ができる者の範囲というのが法定されて,制限されているということで,この間,法制度が変わってきておりますので,そことの調整ということを,そろそろ考えないといけないのではないかなという部分が出てきてございます。   制度の元々のシステム,先ほど,冒頭御説明いたしましたけれども,元々は登記と併せて不動産に関する公示を支えるものとして,広く一般に見せようではないかと,こういうような制度で始まっていたというところがございます。これは,もう旧不動産登記法時代,非常に昔からというところですが,それが,平成16年の改正の辺りで,少し流れが変わってきて,さらには,その後の改正で,附属書類の中に入っている公的書類の位置付けが,例えば,そもそも戸籍法とか,そちらの方で変わってきつつあるので,そういったところとの調整というのを,そろそろ考えないとまずい,ほかのところでは見られない情報が,確かに不動産登記の附属書類の中には入っておりますので,そういったところで見たいというニーズも,逆に最近は出てきていると理解をしております。   ちょっとその辺り,また,今川さん,國吉さんから補充いただければと思いますけれども。 ○國吉委員 先ほど来あります,印鑑証明,戸籍ということではなくて,私どもがやはり一番,閲覧にどうしても必要だというようなところは,そもそもその登記,簡単に言ってしまいますと,分筆の登記ですとか地積更正の登記ですとか,そういった登記をする段階で,いろいろな情報,登記記録として残る情報にたどりつくために,その前の前提として,要件があるわけですけれども,その要件を確認したいというのが,多分私どもの実務者もそうなんですけれども,土地の所有者自体がそうだと思います。   例えば,御自身の所有地の隣地が分筆されました。でも,その分筆をされたときに,自身の土地の境界の立ち会いについての経緯ですとか,そういったものが,当然ですけれども,附属書類の中に入っているわけです,その情報というのは,飽くまでも利害関係が当然あるという話になるんですけれども,そういったものを取得したいということであって,先ほども言いましたけれども,必要のある部分ということで,例えば,個人情報に当たる戸籍ですとか,そういった印鑑証明などは,特に見せる必要はないとは思っておりますけれども。 ○山野目部会長 國吉委員のお話は理解可能であると共に,恐らく表示に関する登記の世界はそうですけれども,何か権利に関する登記の観点からおありですか。 ○今川委員 確かに,住民票,戸籍は,別の法律の規定でもって,第三者請求が許される場合とそうでない場合がありますので,その閲覧の正当な理由,交付請求ですね,住民票や戸籍の交付請求の正当な理由を持っている人が,直ちに登記の附属書類の閲覧の利害関係を有する人かどうかというのは,一致するかどうか分かりませんが,村松幹事がおっしゃったように,住民票や戸籍はまた別の規律で見られる場合があるということは,確かにそうだろうと思います。   我々,普通,閲覧で考えるのは,委任があったのかどうか委任状を見てみたい,あるいは原因証明情報について,正当に作成されたものかというものを見たい,それを否定する人がいるということですけれども,というのが1点と,そもそも登記事項の原因が非常にシンプルに書いてありますので,どういうような原因でどういう経緯で登記名義人が所有権を取得したのか,登記原因の内容等を確認したいという意識があります。特に登記原因が真正な登記名義の回復であるとか,更正であるような場合は,どのような経緯によって,事情によって,真正な登記名義の回復,あるいは更正という原因になったのかを確認するために,登記原因証明情報の閲覧をしたいという要望は強いと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員,お続けになることがあったらどうぞ。 ○道垣内委員 いや,差し当たっては結構です。 ○山野目部会長 中田委員,道垣内委員から問題提起を頂いたことについて,引き続き,もし御意見がおありの方がいたら,伺いたいと存じます。   今川委員と國吉委員がおっしゃっていただいたことは理解することが可能ですし,実務上重要な需要があるということも,お話を伺っていて,次第に分かってまいりますとともに,例えば,戸籍謄本を閲覧して,登記名義人であったり,登記名義人であったりした人が,過去に何回婚姻と離婚を繰り返したかというようなことが,分かる必要がなぜありますすかと尋ねられると,なるほど,それは,うん,まあいいではないですかというわけにはいかないような気もする。その種類の問題というものは,丁寧に検討をされなければいけないと感じます。   引き続き御意見を承ります。   特段の御意見がありませんか。   それでは,今お諮りしている議題について,お四方から御発言を頂いたところを踏まえて,検討を続けてまいることになります。現行法の法文の利害関係がある部分に限りというところを,正当な理由がある部分に限りするということについては,恐らくそのような文言の変更を考えることがよろしいという御意見を承りましたとともに,そのような抽象的要件の文言を変更したのみでは,附属書類の閲覧の細部について,適切な解決が得られるかどうか,まだ分からないということについても御指摘がありました。   事務当局において引き続き検討いただきたいと望みますが,ただいま頂いた御議論等を踏まえますと,戸籍謄本は個人情報が多く含まれており,戸籍法の現行の規律や個人情報保護に関する規制を実質的に潜脱する結果とならないよう,慎重な取扱いがあってよいと感じます。   併せて事務当局に御検討いただきたいこととして,不動産登記規則247条が定める法定相続情報一覧図の開示,閲覧を認める範囲,要件等は,戸籍謄本そのものを閲覧させてよいかどうかという問題とは取扱いを隔てて考える余地もあるものではないかと考えますから,御検討いただければ有り難いと望みます。また,それでいくときに相続関係のみ簡潔に伝える図をわざわざ作ってくれた人には,何か動機付けがあってもよいような,御褒美をくれとまで言いませんけれども,何かあってもよいと気もしなくはありません。   それとは別の種類の問題でありますが,権利に関する登記の場合の登記原因証明情報,及び表示に関する登記の場合の不動産登記規則93条の調査報告につきましては,これは,情報が盛りだくさんの文書でありまして,これらについて,丸ごと閲覧を認めるということが適さない事項が多い反面,不動産の権利関係の調査,確認の観点からいうと,重要な書類であって,反対に丸ごと閲覧を絶対にさせないというわけにも,なかなかまいらない、と想像します。法文の抽象的な文言から具体的な取扱いをどういうふうに導いていくか,難しい部分があるかもしれませんけれども,引き続き御検討いただければ有り難いと望みます。 ○道垣内委員 申し訳ございません。國吉委員とか今川委員というような,我が国を代表する専門家が,非常に慎重な形で権利の確認をされているというのは,よく分かります。   ただ,これ,一般的に附属書類を見ることができるということになった場合には,普通の場合にも,それを見て,本当に真正な登記かどうかとかいうことを確認しなければ,過失があると評価されるといった話が出てき得るのではないかと思うのです。そうなると,例えば,94条2項の問題にいたしましても,現在におけるのと過失の認定の基準が変わってきて,高い注意義務水準が求められるといったリアクションもあり得るように思います。そういったことも併せて,考える必要があるのではないかということを指摘しておきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,この部会資料9についての審議はここまでといたします。   続きまして,部会資料10を取り上げます。   部会資料10「共有制度の見直し(3)」に記載されている事項を,審議事項といたします。それほど分厚い資料ではございませんし,全体を見渡しながら御議論をお願いすることがよいとも感じますから,一括して事務当局から資料説明を差し上げることにいたします。 ○小田関係官 それでは,お手元に部会資料10「共有制度の見直し(3)」を御準備ください。   部会資料4「共有制度の見直し(2)」第3で,共有物分割の見直しについて取り上げたところではございますが,過去の部会において,現行の共有物分割の規律について,改善を検討する必要があるとの御意見を頂きましたので,今回改めて共有物分割請求の見直しについて提案させていただきます。   部会資料10の補足説明1に記載しておりますとおり,裁判による共有物分割請求については,民法第258条第2項において,現物分割と競売分割の2種類のみが定められ,現物分割が基本的な分割方法,競売分割が補充的な分割方法と位置付けられているところでございます。他方で,最高裁判所による累次の判例によって,共有物分割の方法が多様化・弾力化されているところであり,裁判官の裁量によって,事案に応じた適切な解決が可能とされてきました。   このような分割方法の多様化・弾力化については,基本的に維持すべきであると考えているところではございますが,裁判による共有物の分割制度というのは,共有者の一部が所在不明である共有者不明土地の問題を適切に解消する観点からも重要であると考えており,より共有者にとって使い勝手のよい規律とすることができないかという観点から,改めて検討させていただいたところでございます。   本文(1)につきましては,現物分割を基本的な分割方法と位置付ける,民法第258条第1項の規律の見直しを提案するものでございます。現物分割を否定する事情がない場合であっても,競売分割をすることがより適切である場合もあると考えられますので,現物分割が可能である場合であっても,競売分割を認める規律とすることを提案しております。   本文(2)につきましては,裁判所が当事者に共有物の任意売却を命ずる規律を設けることを提案しております。裁判所が共有物の競売分割を命じる場合には,競売手続において,入札者が得られる物件情報が限定されることになりますので,売却金額が低くなる傾向にあると指摘されているところでございます。これに対して,共有物を任意売却することができれば,競売による場合に比べて,売却金額が高くなると考えられますので,裁判所が共有物の任意売却を命じることをできる規律を設けることで,当事者にとってより望ましい結果が得られる場合があると考えられることから,ここで提案させていただいております。   本文(2)アにおいて,裁判所が「相当と認めるとき」に任意売却を命じることができるとする規律を提案しておりますが,その「相当と認めるとき」とは,競売によらなくても換価の公正が担保されている場合,すなわち,競売によるよりも実質的に妥当であり,又は迅速な売却が期待できる場合を想定しております。典型的には,買受希望者が既にいて,相当な価格で売却することができる見込みがあるケースを想定しております。   他方で,民事の執行制度において,競売が最も公正な換価の方法であると位置付けられていることに鑑みて,本文(2)アただし書きにおいて,共有者中に1人でも競売を希望する者があるときは,任意売却を認めないとする規律を設けることを提案しております。   仮に任意売却を命じる分割方法を可能とした場合に,判決後の任意売却の実効性を確保する必要があると考えられます。本文(2)イでは,任意売却の実効性を確保する手段について,差し当たっての提案として,任意売却の売得金を共有者に分配するための共有物の管理者の選任を義務付けることを提案させていただいております。この任意売却の実効性を確保する手段については,種々の方法が考えられるところでございますので,委員,幹事の皆様の御意見を賜ることができますと幸いでございます。   本文(3)につきましては,裁判による共有物分割として,全面的価格賠償を採る事ができるとした平成8年最判を踏まえて,裁判所が「特別の事情があると認めるとき」に,共有物を共有者のうちの1人の単独所有,又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して,持ち分の価格を賠償させる価格賠償の方法による分割を命じることができることを,明確化することを提案しております。   本文(3)の「特別の事情があると認めるとき」とは,家事事件手続法第195条の規律を参考としたものであり,判例の法理を変更することを意図するものではございません。   また,本提案においては,現物分割,競売分割及び価格賠償による分割を並列的なものとして位置付けておりますが,予測可能性の観点から,現物分割,競売分割,価格賠償による分割について,それぞれの位置付けや優先順位を明確化する,又は,それぞれ個々の規律を設けるなどして,予測可能性を高めるということも考えられますので,この論点についても併せて検討させていただきたいと考えております。   共有物分割の見直しについての御説明は以上でございます。 ○山野目部会長 部会資料10について,説明を差し上げました。   これの全体について,特に場所を細かく区切りませんから,御意見を承りたいと考えます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第1の共有物分割請求について,基本的に賛成します。   現物分割を優先して,競売分割を補充的方法としている現行の民法258条2項はやや硬直的であり,これを見直すこと,任意売却の方法を創設すること,そして,全面的価格賠償の方法に関する判例法理を明文化すること,これらは,いずれも共有物分割請求の分割方法を多様化あるいは弾力化するものであって,適切な解決に資すると思います。   それから,(注)に書かれているとおり,これは既に,実務上様々工夫がされていますが,全面的価格賠償においては,金銭債務の履行を確保するための手続・方法が重要ですので,これに関する規律を設けることは有意義だと思います。   具体的には,金銭債務についての債務名義の形成であるとか,持分移転登記と金銭給付の引換え給付などが考えられますが,これらも含めて,家庭裁判所の運用等を聞いて,何かもっといい方法があればそれを取り入れるなどして,規律を設けるのがよいと思います。 ○佐久間幹事 私も,基本的には賛成なんですけれども,少し分からないことがございましたので,伺えればと思います。   現行法は,現物分割が基本であり,それに大きく支障があるときに,代金分割をするということで,優先順位がはっきりしているわけですね。だからこそ,硬直的で困るというところがあるのは分かるんですけれども,御提案の(1),(2),(3)のような形で,言わば並列的になりますと,その順位付けというんでしょうか,それが,どうやって決まるのか,裁判所にお任せになるのか,あるいは当事者が希望すればある程度通るのかというところを,考えておく必要があるのではないかと思いました。   その上で,特にちょっと気になりましたのが,4ページに,先ほども御説明があったんですが,1人でも競売を希望したら任意売却はさせないと。ただ,その後,「これに対して」のところで,共有者の1人が現物分割を希望している場合でも,任意売却は認めるというのがございまして,任意売却の可否ということを基軸に据えますと,競売優先ルールに結局なっているような形に見えるんですね。それが本当にいいのかどうかが,私はよく分からなくて,現物分割を希望している方がいて,その方の希望も,何ていうか,嫌がらせとかそんなのではなくて,全うだというときに,およそ任意売却ができないというのがいいのかどうか分かりませんが,任意売却を認めるという必要があるのかどうか。あるいは,場合によっては,価格賠償だって,現物分割を希望している方が,いや,私が金銭の支払いを引き受けますといい,資力もあるというのであれば,そちらにいってもよさそうなふうにも思います。確たる考えがあるわけではないんですが,そういったことから,メニューを広く用意することはいいと思うんですけれども,その場合に,どういう分割のされ方,方法になるのかということが,ある程度見通せるような工夫が要るのではないかと思いました。 ○大谷幹事 今の御指摘の,そもそもどの分割方法がいいのかということ,一応,今でも共有物分割訴訟は形式的形成訴訟で,当事者がこういう形で分割してほしいと言っても,それに必ずしも裁判所が拘束されるわけではないと考えてられていると思いますけれども,やはり,まずは当事者の方でこういう形で分割してほしいという希望を述べるというのは,現行法でやられていることと同じようなことが請求の趣旨として出てくると思われますし,その希望を踏まえながら考えるということになるのかなとは思います。   それから,全面的価格賠償について,結局特別な事情があるとここでは書いておりますけれども,並列的とはいえ,特別な事情についての主張が出てくると,最初に恐らく全面的価格賠償の適否ということが考えられるのかなとは思っておりますけれども,そのほか,任意売却というのも入れた場合に,どういう形になってくるのかということは,確かに問題になってくるのかなと思っております。   ここの任意売却のところの補足説明に書いておりますけれども,恐らく実効的にきちんと売却できるようにしようと思ったときに,1人が反対していますみたいな形のときに,うまく売却ができるんだろうかというのはやや疑問があるところで,結局のところは,みんなが積極的に反対はしないというようなときに,実際発動するのかなとは思っております。   ただ,御指摘の競売分割は結局,競売分割の方を希望されたら,そっちにいってしまうんだという,競売分割が優先なのではないかというふうな御指摘もありましたけれども,そこも,結局反対する,任意売却は嫌だと言われてしまったときにどうすればいいのかというのは,恐らく現物分割がいいんだと,現物分割が,本当にそれが相当なんだといえば,そちらで現物分割できるんでしょうけれども,現物分割が相当でもないとなってしまうと,結局競売分割になっていくのかなとは思っていたところです。 ○沖野委員 これらの方法を多様化していくという基本的な方向は結構ではないかと思いますし,また,それを明文化するということは,とても大事ではないかと思っております。   それぞれの関係がどうなるかということで,ちょっと気になっておりますのは,任意売却,それから競売もそうなんですけれども,共有者の1人が買い受けることができるかということでして,例えば,現物分割を1人でも希望するというときに,それなら私が買い受けますというようなことができるかです。ただ,そうしますと,今度は,全面的価格賠償との関係をどう見たらいいかという問題が出てきそうに思われます。しかし,他方で,禁止する理由があるのかというのも分からないところで,非常に両者が近接してくるような感じもするものですから,その点について何らかの想定があるかどうかを確認させていただければと思います。 ○大谷幹事 特に想定していたわけではありませんけれども,現行法でも恐らくは,全面的価格賠償を本当はしたいと思っているけれども,それを言わず,現物分割が相当でないとして争って,結局,競売分割になったときに,共有者の1人が競売で買受けができないのかというと,買い受けられそうな気がするので,今でも同じような問題があるのかなとは思っております。 ○沖野委員 それが前提になるかどうかを確認したかったので,これまでのところは結構です。ですから,任意売却は,当然対象とはなり得るということですね。 ○佐久間幹事 今のところと少し関係すると思うんですけれども,管理人を選ぶかどうかということに関しまして,御提案のゴシックのところでは特に限定はないんですけれども,説明のところでは,分配の公正を図るためにとされておりますよね。管理人は売却をすることはしないんだろうかと,実は私は思っておりまして,今の沖野委員の御発言に関係して申しますと,管理人が,職務として売却をするということになれば,共有者の1人が相手方になっても,管理人に共有者の1人がなるかという問題もあり得るとは思いますちょっとそれは置いておきますと,管理人の義務も含めて公正が担保されているならば,共有者の1人が買い受けても,余り問題はないと思うんですけれども。そのような管理人なしに,共有者がどういう形で売買することになるか分かりませんが,自ら売却に当たるとなると,何かちょっと任意売却にしては複雑な問題が起こるのかなと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事がおっしゃった管理人は,全面的にかどうか分かりませんが,次の部会資料で御審議をお願いする管理人の役割と,相当程度重複してくる部分があるかもしれませんね。   ありがとうございます。 ○沖野委員 申し訳ありません,度々。   4ページの(3)のところを見ますと,任意売却及び売得金の分配をする共有物の管理者ということで,一つが,まず裁判であり,共有物の任意売却を命ずる裁判ということになっており,本文の方では,共有者に分配するための管理者の選任を義務付けると,ここは義務付けということになっているわけですが,そのなお書きのところでは,売得金だけの分配だけではなくて,管理者に共有物の任意売却についての代理人としての地位を与え,売買契約の締結,更に所有権移転の審査もできるとすることも考えられると書かれております。ですので,管理人自体に,あるいは管理者自体に,売却自体の裁量を持たせるということもあり得るかと思うのですけれども,その場合には,管理者にいろいろな義務が課されることによって,公正な売却がチェックされるという仕組みかと思いますけれども,今度は逆に,そうでない場合というのは,結局共有物の任意売却を命ずる裁判というのは,誰に幾らで売るというところまで内容にしていると理解すればいいんでしょうか。   そうだとすると,その共有者の1人に幾らで売るというところまで,裁判内容として決めてしまうということになりそうで,そこで総合的な判断もされるようにも思ったものですから,どういう想定かというのを,改めて教えていただければと思います。 ○山野目部会長 沖野委員からお話を頂いたなかの後段は,事務当局の発言も求めようと考えます。   前段で御指摘いただいた4ページのところでありますが,ここを始めとして,部会資料の文体表現として,何々することも考えられると並んでいるところは,何かそうしようというお話よりは,あり得る一つの選択肢であり,委員,幹事の御意見を承りたいという気持ちであろうと想像します。そう言わないと,何かここのところの記述はごたごたしていて,何を言いたいか分からない文章になりますから,いろいろ考えられるメニューを並べてみましたという趣旨でありましょう。   後段は,任意売却を命ずる裁判の在り方,あるいは実態のようなことについてのお尋ねを頂きました。現在の家事事件手続法194条の運用なども,参考にしながら考えていくことになるであろうと思いますけれども,資料の作成に当たって,どのようなイメージを抱いていたかを説明してもらいます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   今の任意売却のところ,部会長からもお話があった家事事件手続法の運用ということの御指摘もありましたけれども,どうも家事事件手続法の運用としては,幾ら以上で売りなさいというような形での裁判もされているようですので,そういうものを参考にして考えていくのかなと思います。 ○山田委員 任意売却について,引き続きで申し訳ありません。   少し細かくなりますが,競売分割を求める者がいたら,任意売却にはしないということを前提にします。   それで,競売分割を求める者はいないとします。しかし,任意売却を命ずる裁判が出た後に,協力しない共有者がいるとします。そのときにはどうなるというのが,事務当局にお考えなんでしょうか,あるいは家事事件手続規則の運用が既にあるならば,どうされているのでしょうか。 ○山野目部会長 山田委員が御心配の,後で裏切る者という困った人たち、たしかにいるのですよね。これが,山田委員のお勤めの神戸大学の所在する神戸で起きた震災のときには,同じことが建物の区分所有等に関する法律の62条の局面で起こって,建替えの場面で,決議の段階では異論を言わなかったのに,その後の登記等の処理をしようとすると,簡単に言うと,お金が欲しくて,金よこさない限り動かないぞという形で裏切るのですね。これを,現地では,仮面の反対者とニックネームを与えておりまして,家事事件手続法194条を参考にして立案をし,御提示申し上げているこの第1の(2)に関しても,類似の問題が起こるおそれがあるということを,山田委員の御発言で気づかせていただきました。   その上で更に,ここで私たちがしようとしている議論がいささか面倒である点は,家事事件手続法194条を参考にしてここの制度設計をお示ししているし,法文にしていくときのイメージも,大体それを参考にして作っておりますが,実は,家事事件手続法194条とここの話が異なるところは,家事事件手続の場合が,全体としての遺産の分割に関する審判事件が係属していて,その中の中間処分の一つとして任意の売却というのも,命ずるというよりは,もっと露骨に言うと,試してみようかという感覚でこの裁判を行い,その結果,売れないで不調になった場面であるとか,お話ししている仮面の反対者というか,裏切り者が現れたような場面で,いろいろ支障が出てきたときには,任意売却を命じてみたけれども,奏功しないところから,また元の,本体の遺産の分割に関する審判事件のところに戻ってきて,換価分割であるとか,そのほかのことを試しましょうという仕方で,事件処理が続いていくものであります。   それに対し,ここのところは,民法258条ないしはその改正された姿を前提に話を進めていますから,うまくいかなかったら,また元のところに戻ってきましょうという,母船に当たるものが,必ずしも観念することができない。あるいは,そういうものを更に設えればいいかもしれませんけれども,今お示ししているものでは,そういうものの装備は,必ずしも具体的にはお示ししていないものでありまして,その中で,今御指摘いただいたような悩みに,どのような見通しを持っていくかということが,宿題になると予想されます。   事務当局からも御発言ください。 ○小田関係官 先ほど部会長がおっしゃったことに尽きるかと思われますが,先ほど部会長がおっしゃったとおり,家事事件手続法の規律に併せて,中間処分のような形で任意売却を試してみる,仮に任意売却が奏功しなかった場合には,競売等のほかの分割方法を実現していくという規律を設けるというのが,一つの措置かと思います。   そのほかに考えられる措置としては,例えば,部会資料10の4ページの(3)に記載しておりますとおり,管理者に売買契約の代理権等を与えて,反対する共有者がいたとしても,管理者の職務として売却を遂行していただくという規律を設けることも考えられるところでございます。   ただ,任意売却を命じた後の規律というのは,色々なパターン考えられるところですので,この2種類の措置に限る意図ではございません。 ○山野目部会長 山田委員,どうぞお続けください。 ○山田委員 分かりました。95%分かりました。   最後のところをちょっと確認させてください。   管理者を選任して任意売却をさせるということもありますねと,なおのところに書いてあって,そういうこともあり得ますねというレベルのことなのかもしれませんが,そこに流れ込む可能性があるということと理解しました。その代理権を与えるというのは,裁判で与えるわけですね。すみません,念のために,裁判で与えるんですね。 ○小田関係官 はい。そのような理解でおります。 ○山田委員 分かりました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続いて,御意見を承ります。 ○中村委員 まず,部会資料の4ページの4項の「なお」というところなんですけれども,その本文においては,「現物分割,競売分割及び賠償分割を並列的なものとして位置付け」と書いていただいていまして,また,次のところで,判断の予測可能性の観点からは,現行法の規律を維持しつつ,特に賠償分割の位置付けを明確にすることも考えられるという記載があります。   実務的な観点から申しますと,予測可能性というのはとても大切で,例えば,ある程度資金力があって,賠償分割により全体を取得できるのであれば,話合いを持ちかける意味があるけれども,現物で一部だけもらっても意味がないという依頼というのはあり得ることだと思います。特に,この所有者不明土地問題との関係で考えますと,ばらばらに分割していくよりも,誰かに集約していくということが,不公平でなく可能であれば,それが容易にできるというのはとても意味があることだとも思いますし,また,実務的上そのような依頼を受けたときに,ある程度の賠償をして全部を取得することが可能であればそうしたいけれども,分割された現物はもらっても仕方がないというような場合に,予測が付きにくいということですと,訴訟を起こすことが,果たしてしていいものかどうかというところが,難しい判断になろうかと思います。   通常ですと,まずは交渉を持ちかけ,そして不在者がいるような場合であれば,資料第3で検討しました持分の有償移転などの手続も使いながら集約していくということを考えるんでしょうけれども,それでもなかなか難しいときに,この共有物分割請求訴訟になっていくということになろうかと思いますが,そのときに,各分割方法が並列的ではなくて,きちんとした順位付けができるような形,例えば全面的価格賠償でなければ棄却してもらえるというような方向性が可能かどうかというところを,ご専門の先生方のお知恵を頂ければと思うのが1点です。   それから,もう一つ申し上げさせていただきますと,第3回でしたかのときに,蓑毛幹事から,この手続の非訟化に関する日弁連ワーキングの考え方を紹介していただきました。今回はそこまでは触れていただいていないんですけれども,今回,次回検討用としていただいております資料13の遺産分割の効果のところを見ますと,甲案,乙案ともに,遺産分割期間が経過した後は共有物分割請求になるという提案がなされております。そうしますと,今後,以前の部会で,増田委員から,現在約年間100万件程度の相続の発生が,二百数十万件になるとご紹介いただいたかと思いますが,その中で,何らかの事情で期間を徒過してしまって,共有物分割でやらざるを得なくなるケースというのは,とても多くなっていく可能性があり,国民にとってとても重要な制度になる可能性がありますので,これをできるだけ使いやすくするというのは,現在よりももっとニーズが高いのではないかと思います。それもありまして,先ほどの使い勝手のよさというところを申し上げました。 ○山野目部会長 中村委員から,大きくは使い勝手,実務的見地から使い勝手の良い制度にしてほしいという御要望の観点を踏まえ,それを前提に,小分けして前半と後半のお話を頂きました。   前半の方でおっしゃったことでありますけれども,例えば,自分は全面的価格賠償で決めてほしいという趣旨で,民法258条の共有物分割請求の訴えを提起する場合において,全面的価格賠償が認められないならばやめてほしいと望み,そうでないものは望まないという趣旨で,裁判所への訴え提起の申立てをするというようなことは,あり得る想定として理解可能であるが,そのような望みに対応していく制度になるであろうかという問題提起を頂きました。   私の理解するところでは,形式的形成訴訟であるこの258条の訴訟というのは,当然には処分権主義が働かないと理解されていもるのではないかと考えますから,当事者が全面的価格賠償を強く希望する趣旨でこの訴えを提起した場合においても,裁判所がほかの内容の判決を言い渡すことは,決して申し立てられていない事項について審判をしたことにはならないという理解ではないかと感じますが,そのような理解を前提に検討を進めていくことでよいか,あるいは,その良し悪しに関わらず,何か新しい制度の建て付けを考えなければいけないかということの問題提起でありました。   これについて何か御発言があったら,後で承ります。   それから,後半で,前回までの会議において,弁護士会からは,共有物分割の手続を現行の,先ほど申し上げたような形式的形成訴訟とはいえ,判決手続で行われているところを見直して,非訟事件手続とする可能性について問題提起をしたはずであるが,事務当局はきちんと覚えているかという御趣旨の指摘があり,あわせて,その御話の際,相続発生件数の数字を伺っていたら恐ろしくなってまいりましたから,そこを事務当局の方がどう考えているかも尋ねてみようと考えます。   前半,後半,中村委員がおっしゃったところのどちらについてでも結構ですけれども,御随意に御発言を承ります。垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   前半のお話ですけれども,今,部会長から御案内ありましたように,現在の制度の理解としては,共有者というのは,共有物の分割を求めることができる地位はあるということですけれども,その分割の方法とか内容について,何か処分権を持っているということではないという理解の下に,裁判所の裁量で一定の場合には全面的価格賠償を含めた分割が許容されているということなんだろうと思います。   そのような実体法の理解を前提としますと,今日御提案のような形で,やはり一定の順位付け等はあるいはあるのかもしれませんけれども,基本的には裁判所の裁量で最終的には判断するというタイプの制度が構想されるということなんだろうと思いますけれども,それが政策的,あるいはその他の観点から妥当かどうかというのは,これは立法論としては議論があり得るところなんだろうというようには思います。   例えば,全面的価格賠償の点に絞って考えますと,この点について,一種の処分権を与えるということを仮に考えるとすれば,これは,全面的価格賠償というのは,258条の定めている共有物分割の一方法ではないという整理をした上で,一種の他の共有者に対する売り渡し請求権のようなものを新たに構想し,それを別の権利として考えると。その行使として,何か手続等を考えるということになれば,それは,別個の権利ということになりますので,そういうことになるのだろうと思いますけれども,実体法上の立法判断の問題として,そのような請求権等を新たに設けるかどうかという形で,仮に議論するとすれば,議論をしていくということになるのかなというように,差し当たりは理解しているところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。よく分かりました。 ○松尾幹事 共有物分割の方法について,現物分割と競売分割のプライオリティを柔軟化していくという点,それから,価格賠償について,その制度的位置付けや手続を明確化していくという点について,賛成であります。特に価格賠償について,どういうふうにルール化していくかということが,やはり現実の共有者のニーズを考えると,非常に重要ではないかと思います。   その点について,今,垣内幹事から,他の共有者に対する売渡請求権の制度との振り分けをどうするのかという御提案もありましたけれども,仮に価格賠償を制度的に位置付けていくということになれば,やはり共有者間の持分権の移転と対価の支払の同時履行をしっかり確保するということを,やはり明確にルール化する必要があると考えます。例えば,共有持分権を1人の共有者に移転することを認めるけれども,それは対価の支払と引換え給付であるということをルール化することによって,同時履行を確保していくという方向です。   そのことと,今の垣内幹事のおっしゃった,共有者に対する売渡請求の制度との併存の必要があるかどうかという点については,更に検討の必要があるかと思いますが,ひとまず共有物分割の多様化という観点からは,同時履行の制度化の必要があると感じました。 ○畑幹事 共有物分割訴訟における処分権主義の問題については,先ほど部会長や垣内幹事がおっしゃったのが一般的な理解だろうと思います。   ただ,考えようによっては,元々協議が成立すればそれで分割できるという仕組みになっているわけですから,その意味では,私的自治の世界の事柄と言えなくもない。それが裁判になった途端に,当事者の意思は全く関係ないというのは,少し妙と言えば妙なところはあるような気が,個人的にはしております。訴訟におけるような厳格な処分権主義を適用することは難しいと私も思いますが,取り分け関係者がみんなこの分け方は嫌だと言っているようなときに,それをするということは実際上もないと思うのですが,ルールとしてもできないということも十分あり得るのかなと,取り分け立法論として考える際にはあり得るのかなと思っております。   ついでにもう一つ,家事事件手続法の194条が参照されて議論がされているところがありますが,既にもう議論になっていると思いますけれども,その場面との異同はいろいろあるので,部会長もおっしゃっておられましたが,そこはちょっと,考える必要があるだろうと思っております。   先ほどちょっと議論になっていた,1人でも競売を希望する場合は,任意売却できないという規律ですが,これは,家事事件手続法の方は,家庭裁判所が換価を命じたということを前提に,任意売却にいくかどうかという,そういう場面なので,現在の194条のような文言になっているので,その文言をこちらに持ってくることで,若干何が意図されているかについて混乱が生じたような気がします。   それから,この194条自体について,私は十分理解していないのですが,これは,管理人が売却するということは想定していないのではないかと,何となく思っていました。共有物分割の場面では,管理人が売却する制度を作るのだということも,あり得る選択肢だと思いますが,いずれにしても,194条とどこが同じでどこが違うかということは,十分に踏まえて検討する必要があると考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続きの御意見を承りますが,事務当局は,非訟事件にする提案に関し何かコメントがありますか。 ○大谷幹事 大きく2点,全面的価格賠償について,別のルールを作るべきではないかというお話と,それから非訟化の話がございました。   前者の方は,これは,全面的価格賠償が認められないとき,相当でないときは,請求を棄却にするというような論考も拝見をしたりいたしまして,そういうルールが確かにあり得るということだったと思っておりますが,ただ,一方で,全面的価格賠償を求めたけれどもできない,あるいは,ほかの人が全面的価格賠償を採りたいとか言ったときに,恐らく普通の処分権主義の対象にするのだとすれば,反訴を起こすとか,そういう形になるのかなと思うんですが,誰も全面的価格賠償ではとれないというときには,結局棄却してそのままになる。共有関係の解消という観点から,棄却してそのままになっているのがいいのかどうかというのは,また考える必要があるのかなという気もいたします。例えば,競売分割をして,誰かが売却して1人が買い受ければ,それでまた分割したという形になるのですけれども,それで共有関係が解消されるなら,それはそれで一つの解決かなという気もいたしまして,現時点では全面的価格賠償について,特別のルールを設けることについては提案をしていないというところでございます。   あと,非訟化についてですが,これも議論がありまして,いろいろ頭を悩ますところなんですが,結局のところ,手続保障として,共有者に,非訟化すれば何か軽くなるのかというところが,共有持分を何らかの形で奪うことになるという,この共有物分割請求の場面で,どこまで便利になるという方向にできるのかなというのがちょっと悩ましくて,今のところ,そこまで踏み込んだ形で提案できていないというところでございます。 ○山野目部会長 今の大谷幹事のお話は理解できますとともに,恐らく,中村委員からお話しいただいたこと,そこの問題提起に含まれていた問題意識であろうと想像いたしますけれども,共有物分割請求の新しい在り方について理解ができるとともに,幾つか細目にわたる問題点を頂いた事項のかなりの部分が,非訟事件手続として仕組むという思考実験をしてみると,その中で解決されていくという見通しもあるであろうと感じます。ただし,見通しがあるから,そちらにしてしまおうという便宜的な話ではなく,中村委員がおっしゃったことは,もし遺産分割の期間の制限に関する規律が導入されるようなことになれば,日本社会の人口動態の趨勢なども併せて考え,更にそういう制度変更をするということにしますと,共有物分割の仕組みと遺産分割のそれとがそれほど隔絶していないことが,実務上の諸問題の円滑な処理に資するという側面もあるのではないですかという御示唆を頂いたものと感じます。   ですから,今の大谷幹事のお話を理解しますとともに,非訟事件で組んでみたら,建て付けを構想してみたらどういうふうになるかというようなことは,いささか事務当局においてまた,少なくとも図上演習のような形で考えてみると,いろいろな論点の整理ができるものであるかもしれません。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 現在,ここの提案にあることではなくて,これは考えないんですかという御質問なんですが,先ほど来出ております遺産分割の場合との段差を埋めることにも関わるんですけれども,現行法の下で,判例においては,例えば複数の不動産について,現物分割の方法として,併せて分割も認めますというのがございますよね。今回の御提案には,それに類するものは入っていない。複数の,不動産に限るかどうかはともかく,同一の共有者が共有している複数の物について,一括して分割の対象とすることができますというルールを設けないんだろうかと。   遺産共有の場合は,仮に遺産分割の期間制限を設けた後も,部会資料13のなかで,なお遺産分割の手続として認める方向も考えられますということが御提案されておりますけれども,遺産共有でない共有の場合に,それは認める必要はないのかということを,ちょっと伺いたいです。 ○山野目部会長 最高裁判所の昭和62年の大法廷判決,森林法の規定を違憲とした著名な判決でありますけれども,あの判決の判示事項は,よく知られているように,現物分割といっても,完全にフィジカルに物を切り分ける現物分割のみを厳格に要求する趣旨ではなく,清算金といったらよいでしょうか,金銭による附帯的な調整も許すということを述べたと,そこが重要な判示事項ですが,実はもう一つ,あの判決が,違憲判断のほかに,民事との関係で判示事項として含んでいた事柄が,佐久間幹事がおっしゃったことであって,複数の不動産を一括して共有物分割の処理の対象にすることも妨げられないとし,抵触するように読む余地のある過去の判例を変更するということを述べていて,これがもう一つの重要な判示事項であろうと理解しておりますが,本日この部会資料の中には,この後半の方のお話を含んでおりません。そこについて今,佐久間幹事からお話を頂きました。   昭和62年大法廷判決の趣旨は,今の両方の点について,とりたてて,いずれについても変更するつもりはないという意図で,部会資料を恐らく作っていると理解しますが,具体的な規律の提案をしている事項は,前の方の共有物分割本体のところについてであって,複数のものをまとめてということについては言及していないものであります。   部会資料を作ったときの事務当局の気持ちをお尋ねした上で,佐久間幹事の方から,それについても何か規律を設けるということを,今後積極的に考えていきましょうというお話があるかどうか,再び佐久間幹事にお尋ねしようと考えます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   確かに,判例で認められた一括分割というものをどうするかというのは,問題になり得ると思っておりまして,この資料を作った際には,現物を分割するというルールの中に入っているというふうな思いで書いております。ここをきちんとルール化すべきであるというのであれば,それも一つ考えられることではないかとは思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞお続けください。 ○佐久間幹事 可能ならば,私は作ったほうがいいかなと思います。分かりやすくなるので,その方が恐らく。メニューがこれだけありますということを,せっかく今,用意されていることもありますし。もっとも,実際上,どこまで使われるのかというのがよく分からないところがございまして,そこは,ちょっと御判断いただければと思います。 ○山野目部会長 実際上のことを想像すると,現在の制度と社会状況を前提にしたときのことも問題でありますけれども,先ほど来から御指摘がありますとおり,将来的にこの遺産分割の期間制限などを設け,その期間が過ぎた後の状況のことを考えると,幾つかのものをまとめて手続をしてほしい,それは,家事事件ではなくて共有物分割で処理してほしいという需要は,一般的な予測としては,これから低くなってくるより高くなってくるものではないかと感じますから,佐久間幹事がおっしゃっていることは重要なことであると感じます。   その上で申し上げれば,大谷幹事の説明では,この部会資料10でお出ししている現物分割という概念,ないしは,それをめぐる規律の整備の中には,既に複数の不動産の一括処理はできることが当然の前提,意味として含んでいるという御案内があったわけでありまして,それと,佐久間幹事のお話を併せて考えますと,それはそうかもしれないけれども,それができるという話を,何かこれしか書いておかないで,後で何か法律が成立したときの解説書か何かに,法務省民事局参事官室が出した本ではこれもできるという説明を添えるということになるか,それとも,いやいや,はっきり法文に,確認のような意味になるかもしれないけれども,出しておくことがよろしいか。後者の可能性もあるのではないかという問題の指摘を頂いたと理解いたします。内容の方向について意見の齟齬があるものではなく,今申上げたような観点から整理をしていく事項であろうと考えますから,引き続き,事務当局において検討してほしいと望みます。   次に御発言なさる方はどなたでしょうか。 ○沖野委員 遺産分割に関する見直しの部会資料13の3ページの一番下の「もっとも」の段落の記述との関係についても,併せて御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 部会資料13ですね,ごめんなさい,確かめながら伺います。はい,どうぞ。 ○沖野委員 大変失礼しました。遺産分割で期間制限を設けた場合に,その後の解消の仕方に個々の財産ごとに共有物分割を使うということが書かれており,個々の財産といっても,複数をまとめるということもあり得るということが,ここに書かれておりますが,前提として,相続人が同意するならという記述になっているのですけれども,そこの記述との関係も含めて,御検討いただければということです。対象になっていないところを,すみません。 ○山野目部会長 失礼いたしました。その点を承りました。どうもありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○山田委員 一つ前の佐久間さんの発言に続けて,申し上げたいと思います。   複数のものを同時に共有物分割の対象にするということは,積極的に検討対象に入れていただきたいと思います。最後,法文にするときに,それを明示的に書くかどうかは,また最終問題かと思いますが,今の段階で,それは当然に含まれているからといってオンテーブルにしないよりは,ずっとそれは取り上げるべきだという意見でまとまるならば,それを明らかにしていくのがいいだろうと思います。   その上でですが,価格賠償の問題が関連してあります。1ページの第1ですと,(3)のところがそれに当たるんだろうと思います。ここは,金銭債務を負担させてという表現になっていますが,価格賠償のことを意味していると思います。   説明の4ページも4のところを見ると,何か途中から全面的価格賠償の話に流れ込んでしまっているんですが,全面的ももちろん含むものの,全面的でない価格賠償も積極的に考えていくと良いと思います。すなわち,2人の場合に,6対4の経済価値のあるものに現物を分割したときに,1を動かすんですかね,プラスマイナス1で5になりますので,それを行うということです。遺産分割では,一般的に行われていることではないかと思いますが,共有物分割のときにも行えるということです。そして,それは,複数のものの一括した共有物分割では分かりやすいですが,それに限られないのではないかなと思います。例えば,1筆の土地でも,分け方によって6対4に経済的な価値が分かれるのが,現物分割としては容易というようなときにも,1の金銭債務を負担させる方法ということで,分割できるということもしてよいのではないかと私は思いますので,それも検討対象にしていただくのが有り難いところであります。   その際には,最初の方で出ましたが,金銭債務の負担をさせる方法が広く使われることになるとすると,履行確保の問題が非常に重要だろうと思います。 ○山野目部会長 昭和62年の大法廷判決から平成8年の最高裁判所判例に至るまでの間に,清算金を伴わせてする現物分割,それから一括分割に始まって,さらに一部分割が可能であるという判例の形成を経て,最終的に平成8年に全面的価格賠償も可能だという判例の展開があるものでありますけれども,部会資料10でお出ししているものは,これらの全部について柔軟な(1),(2),(3)の分割を可能とすることによって飲み込むものとし,全部を許容するという意図から,そのような論理的含意を伴わせて出しているという趣旨であると理解されます。けれども,山田委員からは,委員,幹事の御意見を集約するに当たっては,そういうものの一つ一つについて,それが可能であるということの意見集約の上に,どういうふうに法文において明確に整理するかということも,引き続き考えてほしいという観点からの御注意を頂き,あわせて,それらを通じ,厳密な意味での現物分割を除けば,常に金銭債務の履行確保ということが問題になりますから,それの点についても配意してほしいという御注意を頂きました。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   そうしましたならば,この部会資料10の「共有制度の見直し(3)」につきましては,検討の方向性について,大筋多くの賛同の御意見を頂きましたとともに,手続を組み立てるに当たっての細部については,多岐にわたる御指摘,御注意があったところでありますから,これらを踏まえて議事の整理をしていきます。   もっとも,次第に中間試案を文書として作成しなければならない段階が近づいてきておりますから,いつまでも何でもかんでも引き続きと申し上げているわけにはいかないものでありまして,中間のゴールと申しますか、折り返し点が近づいてきていることを認識しながら,引き続き議事の整理を努めるように,事務当局に対して求めます。   部会資料10の検討をここまでといたします。   ここでおよそ10分間の休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料11に記しております「財産管理制度の見直し(土地管理制度等)」について,お諮りを致します。   その資料の中の第1の部分について,まずは事務当局から説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑の方から御説明差し上げたいと思います。   第3回の会議,部会資料6におきまして,不在者財産管理制度などで特定の財産を管理対象とする仕組みを設けることと,土地の管理人を選任する新たな財産管理制度の創設について取り上げましたが,土地の管理人を選任する新たな財産管理制度の創設について,更に検討を深めるべきとの意見が多くございました。   また,その際には,現行の財産管理制度との関係にも留意しつつ,管理人による土地の利用管理を可能とし,必要に応じて土地の売却も可能とする仕組みとする方向で検討することや,土地所有者が個人か法人か,法人格なき社団・財団であるかを問わず,管理人を選任できるものとする方向で検討することなどについての御示唆も頂きました。   こうした御意見などを踏まえまして,この部会資料におきましては,土地を管理するための新たな財産管理制度の創設について検討しているところです。   この制度趣旨としては,適切に管理することが困難な状態になっている土地の適切な管理を可能とすることにあると整理することが考えられるかと思っておりまして,では,適切に管理することが困難な状態となっている土地というのは何かといいますと,一つ目が土地の所有者が不明なもの,二つ目が,現に土地が適切に管理されていないものの二つあるかと思っております。   そこで,本文の1と2では,その二つを分けて記載しております。   本文1の中では,不明な所有者が自然人であるとき,法人であるとき,法人格なき社団であるときと三つ併記してございます。   本文2では,その所有者の意思に反して管理をしようとする場合もあります関係で,その手続保障への一層の配慮が必要になると思われることなどを補足説明では記載しております。   また,必要な処分の内容としましては,本文1では,管理人の選任が中心になると思いますが,本文2では,防止措置を採る旨を命ずることなど,様々なものがあり得るかと思われます。   申立人となる利害関係人としましては,土地について利害関係を有する者ということになりましょうが,その点についても,補足説明の中で幾つか具体例を挙げてございます。   私からの説明は以上です。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 ただいま,第1の部分について説明を差し上げました。   御発言,御意見をお述べいただくに当たっては,あるいは第2の土地管理人の権限等についてというところでお諮りしようとしている事項と関連させながら,意見を組み立てていただく方がしやすいという側面もあるかもしれません。そういうところにわたって御発言を頂くことも妨げません。   その留保の上で,ひとまず第1の部分について,御意見をお尋ねいたします。いかがでしょうか。 ○今川委員 今川です。   御質問ですけれども,この土地管理人ですが,表題部所有者不明土地の場面で選任される管理人と重なるというか,併用される場合もあり得るのかどうかという点が1点,お尋ねしたいということと,それから,申立人の範囲ですけれども,慎重に検討すべきとはされていますが,購入の希望者も一応入っていると読み取れます。   補足説明の3ページでは,想定されるケースというところで,買受希望者Cというのが出てきて,このCの申立てを認めるということも前提となって,説明をされています。   新しい土地管理人制度は,既に議論されている不在者財産管理とか相続財産管理制度の改正,あるいは相隣関係における管理措置請求ですか,それらの制度では少し課題がある,あるいは解決できないことがあるという理由から出てきたのだと思うんですが,今述べた三つの制度における利害関係の範囲,利害関係を有する者の範囲と,新たに出てきた土地管理人選任申立てをする場合の利害関係人の範囲というのは違うのかどうか,幅広く認めようという意図があるのかという点です。もしそうだとすると,三つの制度から比べると,第三者の利益確保というか保護に,ちょっと偏ってきていると思われます。   買受希望者の場合に,具体的計画を有する者など,事案によっては該当することもあり得ると説明されていますが,その具体的計画がどの程度のものなのかというのがちょっと判然としないので,どのように判断していくというふうにお考えなのか。   それから,もう1点,購入希望者を利害関係人に含めた場合に,視点を変えて考えてみますと,土地管理人の選任の要件としまして,所在不明であること,あるいは共有者が多数に上ることということが前提となっていると思うんですけれども,所在不明であることを把握するためには,一定の調査方法を尽くしても不明であるということが,当然前提になると思います。そうすると当然,住民票などの公的な書類を入手するということも前提になってくると思うんですが,購入希望者が住民基本台帳法とか戸籍法における第三者請求の制限規定をどうやってクリアして,所在不明であるということを把握して申立てするのかという点が分からないので,その点についてもお尋ねをしたいと思います。 ○山野目部会長 お尋ねが三つあったかと理解いたしました。資料の説明の求めでありますから,事務当局の方でお願いします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   一つは,表題所有者不明土地との関係ですけれども,やはり共有の場合で,所有者が特定できない場合も,この制度の対象にするということになれば,それはかぶってくるということになります。表題部所有者の場合には,登記官の方で,法務局の方で調べてという形で認定がされることになりますけれども,こちらの方は,登記官が調べているということが必ずしも前提にならないと思っております。そういう意味で,少し違うところもありますけれども,重複する部分はあるんだろうと思いますし,それをどう調整するのかというのは,今後検討する必要があるだろうと思っております。   それから,利害関係人の範囲の問題でございますけれども,これも前回の資料の際には特出しで,買い受けたい者を利害関係人と位置付けるかどうかということの御議論を頂戴いたしましたけれども,なかなか難しい点もあるという議論がございました。   不在者財産管理にしても,相続財産管理にしても,絶対に買受希望者では利害関係人にならないのかというと,それはそうでもないと思います。事案によって様々に判断されているのではないかとは思っておりますけれども,この土地管理制度というものは,土地の適切な管理のための制度だと考えたときに,どういう者の範囲が利害関係人に当たってくるのかは事例の集積を待たなければ仕方ないというところございますけれども,一つは,今の不在者財産管理等で認められている,公共事業の主体のようなところが買い受けたいと言っているときについては,土地の適切な管理という観点から見ても,望ましいと考えられるので,利害関係人に当たるという判断があり得ると思っておりますし,それが公共事業主体でない民間の場合どうかというところは,こういうことがあったら必ず認められるというのは,なかなか難しいところがあるだろうと思っておりまして,例えばという形で,ある程度の計画がはっきりしているというようなことを書いておりますけれども,この辺りも,最終的には,事例の判断になってくるのかなと思っておるところでございます。   それから,所在不明であることをどのようにして調査するか,これも所在不明とは何かというところを以前から,いろいろな部会資料の中で,登記を見て分からなければ,それで所在不明とするのかどうかなどといったことを様々に御提案してまいりましたけれども,今の共通の理解としては,何も調べなくてもいいということではないのだろう,登記だけ見ればいいのだというようなことではないと理解をしておりまして,やはりできることはする,調べられる資料は全部調べたけれども分からないというようなことになっていくんだろうとは思っております。   実際に,では買受希望があるだけでは,なかなか公的な資料が普通の方には見られないということをどうするのかと,これも一つの検討課題だとは思っておりますけれども,基本的に,調べられることは全て尽くしたけれども,それがかなわなかったというようなことを書き下していくことになるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づく特定不能土地等管理命令を出す対象となる事象と,ここで土地管理人の制度を発動する対象事象とは,抽象的には重なるであろうと考えます。今,大谷幹事がおっしゃったとおりでしょう。   その上で,現実に特定の一つの土地について,裁判所が二つの命令を出して,重複して事件が動いていくということは,そうなったら違法であるかというと,違法ではないかもしれませんけれども,それは非常に錯綜した事案処理を要求することになりますから,いずれもこれは地方裁判所の管轄になりますが,裁判所がそのような事態に直面したときに,適正に片方の手続を取り消すとか,機動的に柔軟な対処をするということで,現実的な対処が得られていくものではないかということも想像いたします。 ○蓑毛幹事 部会資料11の第1,土地管理人の選任を含む土地を管理するための新たな財産管理制度の創設について,方向性としては賛成します。   土地には社会経済における特殊性がある,その上で,近年発生・拡大している所有者不明土地問題に対処するために,端的に土地管理制度を設けるという方向性には合理性があると思います。更に検討を進めて,適切な要件を定めることによって,有意義な制度になると思います。   ただし,以下,考えなければいけないことを少し申し上げたいと思います。   まず,1ページの1の所有者不明土地の問題と,2の所有者は判明しているけれども管理不全土地の問題とでは,利害状況が変わりますので,要件等を検討するに当たっては,この違いを意識する必要があろうかと思います。   また,特に1については,所有者の全部が不明なときと一部が不明なとき,両方含んでいますが,このことは土地の共有者,特に判明している共有者に対する関係で,相当利害状況が変わってきますので,この違いをどう考えるかが重要になってくると思います。   今のことを踏まえて,具体的に申し上げますと,まず1の所有者不明土地ですが,土地の所有者の全部が不明な場合には,この部会資料の説明にあるとおり,土地を適切に管理することが困難な状況になっていて,土地所有権に制約を加えて,土地を適切に管理することを可能とするような土地管理制度を設けることは是認されると思います。   次に,土地の所有者の一部が不明であるときも,必要性がある場合には,土地管理制度の対象にすべきだと考えます。   ただし,この点に関する部会資料3ページから4ページの説明は,余りうまくないという印象をもちました。   部会資料では,持分を2分の1ずつ有している共有者の1人が所在不明である場合について書かれていますが,このように共有者が少数の場合には,この部会で検討されている,共有における同意取得方法の見直しであるとか,持分の有償取得制度の創設もありますし,所在が判明している2分の1の共有者によって,土地の適切な管理が期待できますので,多くの場合は,土地管理の処分が命じられるような必要性は認められないのではないかと思います。   むしろ,1の土地の所有者の一部が不明な場合で,土地管理制度の対象として想定すべきは,共有者が多数に上る場合だと思います。このような場合は,土地所有者の一部の所在が判明していても,その者が土地への関心が薄れていて,主体的に土地の適切な管理がなされることを期待できないので,そのような場合には必要性がある,そういった説明の方がふさわしいのではないかと思います。   それから,2の所有者が判明している管理不全土地の制度ですが,この制度については,物権的請求権や不法行為に基づく損害賠償請求権との関係,あるいは,この部会で提案されている相隣関係における管理措置請求制度との関係がよく分かりません。   相隣関係での管理措置請求制度をなくして,土地管理制度に集約するのか,それとも,相隣関係での管理措置請求制度では足りないところがあるので,併せて,土地管理制度を設けるのか。その辺りのところも含め,2の制度を設けるべきかどうか,あるいはその要件をどうすべきかを考えるべきです。2の「土地が管理されずに放置されているために他人に損害を与えるおそれがあるとき」という要件は,あまりに漠然としていますので,適切な要件立てが必要です。   最後に,(注2)の利害関係人の範囲が重要です。   様々な考え方があろうかと思いますが,土地の適切な管理のための制度ですので,土地の適切な管理を求めるのにふさわしい人が誰かという観点から考えるべきであって,基本的には,単なる買受人は,ここには含まれないと考えます。 ○山野目部会長 第1の1については,基本的に賛成であるという御意見とともに,共有のところについての御指摘を頂きました。   第1回会議において,蓑毛幹事から,メガ共有という衝撃的なお言葉があったことを記憶しておりますが,正にその場合を想定した制度として説明していくことが適切であるというお話でした。   第1の2については,他の部会資料でこれまで提案してきた制度との関係がどうなるかを明らかにする必要があるというお話を頂きました。(注2)についても指摘を頂きました。   他の部会資料で提案している事項,具体的には相隣関係に係る是正措置請求権の制度と,どのような関係になるかという点は,ここで御議論いただきたいことであるとともに,部会資料作成の意図を尋ねておく必要があるとも感じます。何かお知らせいただくことがあったら,お願いします。 ○大谷幹事 相隣関係の際に御議論いただきました管理措置請求制度との関係ですけれども,基本的には,書き方も同じようにしておりますけれども,同じような場面で使うことになるのかなということを想定して書いております。   相隣関係の権利として仕組むのであれば,相隣者だけが行使できる権利という形になるのに対して,こちらの財産管理,土地管理の仕組みであれば,必ずしも相隣者でなくても,利害関係が認められる者には申立権が認められるというようなところに違いがある,あるいは,ここの必要な処分というところで,5ページの4のところでも少し特記はしましたけれども,特に,管理不全土地に関しては,必ずしも管理人を選任するのではなくて,むしろ債務名義を形成するような形ということがあり得るとすれば,似たような,かなり相隣関係上の権利と似たような形になっていくのかなとも思っておりまして,最終的に,今この時点で,相隣関係の方の管理措置請求をやめてしまいましょうというつもりはございませんで,それはそれで一つテーブルに載せた上で,別の角度から,同じようなことを設けた場合に,どちらを生かすべきか,あるいはどちらも生かすべきなのかというようなところを御検討賜りたいというふうに思っておったところでございます。 ○山野目部会長 相隣関係に基づく是正措置請求権の話を,当然にやめるということにはならないだろうと考えますけれども,重複感の強い制度を余り,積極的な意義がないのに並べて規律を具体化する必要はありませんから,ここでの委員,幹事の御意見を伺った上で,いずれかに絞っていくということも,もちろん,先々の可能性としてはあるであろうと予測します。その点も含めて,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 詳細な議論に入る前に,質問をさせていただきたいと思いますが,今回の部会資料の11の第1の1と2のうちの1というのは,以前,資料の6の第3で御提案いただいたものを発展させたものという理解でよろしいでしょうか。それから,2の方は,新たな御提案ということになりますでしょうか。 ○宮﨑関係官 はい,基本的にそういう感じですが,2の方につきましては,今,大谷参事官の方からもお話ありましたように,管理措置請求土地権との関係を整理する必要もあろうかと思っております。 ○中村委員 ありがとうございます。   そうしますと,資料の6では,制度趣旨として,20ページの辺りで2点挙げておられたんですよね。①土地の利用の促進という公益的な面に置くか,又は②土管理不全状態になって周囲に迷惑を掛けることを防止する方向というものの,どちらに重点を置くかというような議論がございましたが,今回は,資料11の7ページの補足説明のところの1の(1)に,この制度は土地所有者の権利を保護しつつ,土地の管理について利害関係を有する第三者の利益を実現することをその趣旨とするものと指摘されているんですけれども,資料11の1ページ目,第1の1項,2項ともに,この記載が掛かっているというように,整理いただいているということになりますか。 ○大谷幹事 部会資料の6の際には,確かに利用促進の観点,それから適切な管理という観点ということを二つお示しをし,その利用促進の観点というのは,なかなか民事上,民事法として仕組むのは難しいところかなというようなことを含意して書いておったところですけれども,前回の御議論を賜って,その後,適切な管理というものの中にどういうものが入るのかということを検討しました結果,今回の部会資料11の2ページの辺りにも少し書いておりますけれども,管理と利用の両方が大きな意味での適切な管理ということに整理することができないかということで,両方を制度の趣旨として説明してみたところでございます。   ですので,今,7ページのところで土地を適切に管理することが困難な状態になっている場合に対応するというのは両方を含んでいると。利用のため,それから,管理されていないものをきちんと管理するためと,両方を含んだものとして考えておるところでございます。 ○中村委員 ありがとうございます。結構です。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   第1の1でも2でもいいのですが,1のところを見ますと,必要があると認めるときは必要な処分を命じることができる,という条文になっています。そこで,必要な処分というのは何なのだろうというふうに思い,後ろの説明を見ますと,管理人の選任が中心となるだろうと書いてある。そうであるならば,管理人の選任ができると率直に書いた方がいいだろう,制度として分かりやすいだろうというふうに思います。   たしかに,不在者の財産管理のところにも,必要な処分というふうに書いてあります。そして,民法25条にそう書いてあって,27条には,前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は,というふうになっていますし,管理人を命じるまでは処分を命じる相手がいないわけですから,管理人を選任して,それから何かやらせるんだろうなというふうなことは,大体見当が付くのですが,ところが,今回の第1の1の制度の中には,一部が不明なときというのが含まれている。そうなると,ここでいう処分には,不明ではない一部の人に対して,裁判所が何か強制的な命令,処分を下すということが含まれているんだろうか,含まれていないんだろうかというのも,よく分からないなってきます。もし仮にそういうことが含まれているのであるならば,それはきちんと書き分けるべきだろうと思います。管理人の選任という制度と,分かっている所有者に対する命令みたいなものをきちんと分けて書かないと,必要な処分というふうに書くだけだとちょっと,何なんだろうというのが分かりにくいような気がいたします。   そして,次に,もう1つの,必要があると認めるとき,というのは,不在者の財産管理のところにはそういう条文はないようなのですが,少なくとも財産の所有者が不在でありますから,そうした不在者のために管理をする必要があるというふうなことで,必要の内容が比較的明確なんだろうと思うんですね。   しかるに,こちらの制度の場合には,何が必要なの,必要な場合とは何かということがよく分からない。25条に合わせて,なるべくそこから外れないような文言でお書きになろうという気持ちは,法律家としてはよく分かるところではございますけれども,しかしながら,やはりもう少し分かりやすく書いた方がいいのではないだろうかというのが感想です。 ○山野目部会長 感想であって,質問ではありませんから,事務当局に発言を求めませんけれども,中村委員と道垣内委員からお話がありましたから,それぞれ受け止めて,検討を続けることになります。   中村委員から,過去の部会資料を読み込んだ上で,今日の審議の御準備を頂く御発言を頂戴しまして,誠に有り難いと感じます。大谷幹事から丁寧な説明をいただきましたけれども,分かりやすく申し上げれば,説明の仕方が変わっています。   かつての資料には,利用促進というふうに述べられていましたが,民法の制度の組み立てを考える際に,土地の利用,取り分け促進という言葉を入れて説明していくことは,おかしいのではないかと考えます。それは,厳しい言い方をすると,時代錯誤もいいところであって,民法のみならず,土地法制に係る各種の施策、法制の転換の中ですら,今どき,もろ手を挙げた利用促進なんていうことは言いません。むしろ世の中は,適正な管理あるいは,しかるべき利用の仕方をどう考えるかということを探る方向に向かっています。   過去の部会資料の利用促進という表現は,筆が滑ったというふうに言わなければいけないのでありまして,今回それを,適切な管理を実現するために,土地政策もにらみつつ,民事基本法制として何ができるかということの説明を差し上げているものでございます。   道垣内委員から,不在者財産管理の法文の,その書きぶりを参考にして,今後の法制化もにらんだ案文の検討をしていることについて,労を多とするという御指摘を頂きましたとともに,言葉遣いをもう少し,引き続き工夫してくださいというお話もありました。御指摘ごもっともであるというふうに受け止めます。   参考のために御案内申し上げますが,法制上の文言の用い方として,裁判所が何かを命ずるという表現が法制上採用されるときに,必ずしも裁判所のする裁判の内容が,給付の裁判であるとは限りません。誰かに何かの権限を与えるという形成の裁判をする際にも,命ずるという表現を用いることがございます。   すごく一般的な例でいうと,例えば訴状却下命令というものは,あれは別に,誰かに訴状を却下せよという行為を押し付けているものではなく,訴状を却下しますということを裁判所が言えば,それで形成的に効果が発生するものであり,しかるべき裁判所,裁判長が言えば,それで効果が生ずるわけであります。   今日議題にしていただいたものでいうと,少し前の,休憩前の話題で,任意の売却を命ずるといいますが,あれは別に,命ぜられことを命に従って,しなければいけないというものではなく,任意の売却をする権限を与える形成的な措置を裁判をもってしたという意味であります。   不在者財産管理のところの必要な処分を命ずるということも,不在者に命ずることが実際上可能かどうかはともかくとして,あるかもしれませんが,近隣の人にこれこれのことをして構わないという措置を講じますという処分も含まれるということが,従来の不在者財産管理の理解でしたし,ここの第1の1と2で提案申し上げている必要な処分を命ずるということも,必ずしも所有者ではなくて,申立人や利害関係人に対して,何かの個別の行為をすることを許容し,又はそのことを望むといったような趣旨の裁判も含まれるであろうというふうに受け止めることができるところであります。   道垣内委員から,この必要な処分を命ずるというところが,言葉が少し不足していて分からないというお話を頂戴したところでありますから,法制上可能な,かつ分かりやすい表現を追求すべく,引き続き事務当局において努めることにいたします。 ○今川委員 いくつか質問させてください。   本文の2ですけれども,管理されずに放置された土地について,他人に損害を与えるおそれがある場合ですが,これ,蓑毛幹事がおっしゃったように,所有者は不在でなくてもいい,所有者がいる,つまり把握しているという意味だと思うんですが,その場合でも,管理人を選任するという趣旨と読めるので,そうですねということが1点と,そうすると,補足説明等では,所有者の意思に反して管理をする場合もあるということが想定されますけれども,所有者は,いきなり管理人が現れて,自分の意思に反する管理等がされる可能性があるのかどうか。所有者が手続にどうやって関与していくのかという点が,これから検討されるのかという点です。   相隣関係のところの管理措置請求をした上で,管理人を選任していくということなのか,いきなり管理人選任可能なのかという点も,ちょっと分かりにくいということもあります。   それから,本文1の②ですけれども,法人の場合ですが,活動実態がないというのを一つ要件として挙げておられますし,本文1の③で,社団で全ての構成員を特定できないとなっていますが,ちょっと抽象的な要件でして,もし具体的な基準が,ある程度示せるということであれば,お聞きしたいと思います。   例えば,本文1の②の法人の場合ですけれども,清算人あるいは代表者がいない,あるいは死亡している,あるいは所在不明であることでもって,実質活動実態がないというふうに判断していくのか,代表者,清算人はいないということが一つの要件であり,更に活動実態がないというのが要件になっているのかという,この点も教えていただきたいと思います。 ○大谷幹事 まず,特に2の場合に,相手方の所在が分かっていても発動するものかどうかについては補足説明に書いておりますけれども,そういうこともあり得ると思っております。強制的に一定の処分を命ずるということもあるのかなと思っておりますが,やはり御指摘にあったとおり,手続保障への一層の配慮が必要だろうと。これは,いわゆる相手方のある手続と,それがない手続にするかというようなことかと思いますけれども,この辺り,5ページの一番上の方に少し書いておりますけれども,もしこのような仕組みを作るときには,この2の類型に関しては,特に手続保障への一層の配慮をしながら考える必要があるんだろうと思っております。   それから,法人の活動実態,これは,こちらで現段階でお示ししているもの,やや抽象的でないかと,おっしゃるとおりだと思っておりますけれども,活動実態がないということと,代表者等がいないという両方が必要なのではないかなとは思っております。そこをどういうふうな形で認定するのかというのを,細かく書いていくということになるのかもしれませんけれども,代表者がいないというだけでは,活動実態はあるけれども,一時的におらず,それをまた違う方に頼めばいいということもあり得ますので,それだけでは,なかなか難しいのかなと思って,こういう書き方をしております。 ○宮﨑関係官 法人格なき社団の場合についても言及しておられましたか。それも御質問の中に含まれているという理解でよろしいんですか。   法人格なき社団の場合についても,基本的に,ここに書いてあるような要件で,これは表題部所有者不明土地法の要件を参考にして,ここに記載したものでございます。 ○山野目部会長 2の制度は,必要な処分として,いろいろなものがありますけれども,例えば,最近我々が目にした例でいうと,杉の溝腐れ病みたいなものが放置されていて,木が倒れて電線を切るおそれが極めて高いというようなときに,あれ何とかしてくれませんかというようなことは,土地の所有者が分かっていて,その人に異論があったとしても,あるいは異論があるからこそ,しなければいけないことであり,そのような場合について述べれば,もちろん丁寧に当事者の権利保障をしますけれども,異論があったとしても2の制度が働く場面というものは,あってしかるべきかもしれません。   それとともに,2の制度で,土地の売却までできる可能性が含まれておりますけれども,売却ということを本人が異論があって困ると言っているのに,できてしまうかということになると,それは御懸念でおっしゃったことが,かなり真剣に考えなければいけない問題になってくるかもしれません。 ○佐久間幹事 細かい文言のことなんですけれども,ゴシックのところで,何というか,分かりやすさがあった方がいいかなと思うので,3点申し上げたいのですが,一つめは,土地管理制度とか土地管理人というところの管理はよろしいんですが,例えば1の2行目のその土地の管理について必要な処分という,この管理は,今,座長でよかったっけ,会長か,部会長もおっしゃったように,売却等も含まれているわけですよね。そうすると,管理の中に括弧書きで,例えば,場合によっては処分も含むとかというふうな形にしておく方が分かりやすいのではないかと思いました。それが1点。   2点目は,これすごく細かいんですが,1の②と③で,②は「代表者又は管理人がおらず」に対し,③は「代表者又は管理人が選任されておらず」というふうに文言が違っているんですね。③の方は,選任はされているけれども現にはいないんだということだってあり得ると思いますし,②の方も恐らく,現にいないということだと思いますので,いずれ外へ出るときのことも考えて,文言をもんでいただいた方がいいかなというふうに思います。   それから,3点目,これはちょっと実質に関わるんですけれども,請求権者が利害関係を有する第三者となっておりますよね。ということは,①も②も,②は単独所有ではなくて,例えば共有者がたくさんいる,それで全員判明しているということを前提に,ちょっと考えさせていただいて,共有者の1人は,なかなか同意調達も自分でやるのは大変だ,内部できちんとするのも大変だ,自分1人ではなかなかできないというときに,この裁判所に請求をするということはできないのか。ここではできないだけで,今後検討が予定されている制度か何かあり,そこでできることになるのか,そこをちょっと教えていただきたいなと思いました。   例えばですが,利害関係人というふうにいえば,もしかしたら解釈の余地としては,共有者の1人も含むということはあり得るかもしれないですが,第三者と書いてしまうと,共有者は含まれないということになるので,私は共有者の1人が含まれても,場合によってはいいのではないかなと思うんですけれども,そこのところを伺いたく存じます。 ○大谷幹事 最後の点,確かに利害関係を有する第三者というのは誰のことをいうのかというのは,いろいろ含まれる,共有者というのも含まれる可能性があるかなというふうに思っていまして,ただ,この部会資料を作っておる際には,特に①の方では,共有者の方では,売渡請求等で対応できる部分があると思っておりまして,その意味では,①の方の利害関係者には入らないのかもしれないというふうにして作っております。それもそうとは限らない,裁判所の力を借りて実現していくということがあってもいいのではないかという御意見かと思いますが,それも少し検討してみたいと思います。②の方も同じようなことかと思います。 ○佐久間幹事 よろしいですか。今のことに関して,いいですか。 ○山野目部会長 はい。 ○佐久間幹事 後で出てくることに関係するのですけれども,管理者の権限のところで,管理人に権限を与えたら,共有者の権限を制限するという可能性がございますよね。その制限をもし掛ける,私は掛けた方がいいと思っているんですけれども,もしこの制度を用意するならば。共有者の権限を制限したならば,共有者の1人が,自分のやりたいようにやるという意味ではなくて,不明だった共有者が後から出てきたときに,自分勝手にするというふうなことを避けたいとか,同意調達の段階で返事はしなかったので,ある共有者は母数から外れた,それで他の共有者の考えで管理をやれるんだなとなったときに,母数から外れた共有者が後からうるさいことをいうのを避けたいというようなときに,この制度を使うメリットあるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事の最初の御発言で3点,文言を中心に御注意を頂いたうちの1点目の,場合によっては売却処分もあり得るから,管理という言葉だけで表現していることはいかがなものかという御注意は,ごもっともでありますとともに,現在の不在者の財産管理の規律も,最初は必要な処分というふうに述べておいて,標準は民法103条の範囲の権限しかないということを念押しした上で,別に権限外許可の法文を立て,売却処分が可能であるということになっておりまして,今回も同じ想定で,ひとまず部会資料はしております。ですから,第2のところを検討した上で,御注意の点の文言として,もっときれいなものにしていくのにはどうしたらよいかということを考えさせていただければ有り難いと考えます。   2点目の法人のところの代表者や管理人がされていなかったりというところの文言が不ぞろいである点は,注意をして精査を致します。   3点目,利害関係を有する第三者というものは,第三者である必要はないではないかという御指摘は,今し方,二度目に御発言いただいた内容の点も関わりますから,その点の検討の帰趨を踏まえた上で,利害関係を有する者とするか,利害関係を有する第三者とするかを検討させていただければ有り難いと考えます。ありがとうございました。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   そうですね,前回この件について審議したときに,新しい土地の管理制度を入れていただけると有り難いということを申し上げたのですが,今回このような形で,用意していただいたということで,方向性については賛成です。   また,ほかの財産管理制度のとの兼ね合いという話も出ておりまして,確かに全く同じものであれば,複数並べるというのは経済的ではないとは思います。ただ,緊急性が高い場合に使いやすいかどうかとか,逆に,将来的な予防の観点から使う場合はどうなのか,といった点は考える必要があると思いますし,暫定的な制度なのか,あるいは,ある程度長いスパンを想定して管理する制度なのかといったように,複数の制度,似たような制度があっても,用途によって使い分けができるような形にしておいた方が,実務上何かと使いやすいというところもございます。そういった観点から,もし可能であれば,例えば今まで出ている制度案と比較しながら,この制度ならではの特徴を盛り込んでいただけると,より充実した形になるのではないかと思っております。   なお,(注2)の申立権を有する利害関係人の範囲に関しましては,当然これからもご議論があるだろうと思います。今回の部会資料で例示していただいているところで申し上げますと,5ページの,いわゆる公共事業の実施者は,土地について利害関係を有すると。そこはそうだろうなと思う一方で,現実には,公益的なインフラ系の事業であっても,民間事業者が主体となって行うものについては,公共事業として認められる範囲が非常に狭いという実態もございます。   例えば,鉄道の例でいいましても,補助金をもらって工事をすると公共事業の主体になったりするんですが,逆に自己資金でやると,公共事業ということにはならないということがございます。しかし,インフラの整備に関しては,公的な資金を使おうが使うまいが,最終的に目指しているものは同じであって,公益的な目的でやっているという点に変わりはないと思っておりますので,やはり利害関係人の範囲というのは,もう少し広げていただくような形がいいのではないか,ということは,意見として申し上げておきたいと思います。これは鉄道に限らず,電気,ガス,通信といった他のインフラも含めて同じことが言えるのではないかと思います。   そこからさらに広げて,例えば市街地の開発とか,そういった事業の主体まで利害関係人に入るのかどうかというところは,もしかすると,またちょっと別の議論があるのかもしれませんが,少なくとも公共事業の実施者だけだと狭いということは,意見として申し上げたいと思います。 ○水津幹事 複数の制度の関係について御意見がございましたので,土地管理制度の2と管理措置請求制度との役割分担について,簡単に意見を申し上げます。   土地管理制度の2は,体系上,土地所有権の内容に関する一般的な規律として位置付けられているのに対し,管理措置請求制度は,相隣関係,つまり隣接する土地相互の利用の調整に関する特別な規律として位置付けられているかと思います。そうだとしますと,土地管理制度の2について,必要な処分の内容として管理人の選任以外のものを認めるなどとすることで,管理措置請求制度をいわば完全に包み込むものとしてこの制度を構想するのであれば,管理措置請求制度を残しておく必要は,ないのではないかと思います。これに対し,管理措置請求制度について,相隣関係に関する規律として,その請求主体を絞り込む反面で,同制度が適用される場面を広く取るならば,土地管理制度の2とは別に,管理措置請求制度を残しておく意味が出てくる気がしました。 ○松尾幹事 土地管理人の制度について,全体的には,今年の2月に出された国土審議会の取りまとめでも,土地の適正な利用から,土地の適正な管理ということに重点を置いた土地制度を作っていくという方針が出されていますが,そういうマクロ的な視点からも,この土地管理人の制度をきちんと作っていくというのは,非常に重要ではないかと思っています。   そのことを踏まえて,この制度の位置付けとして,既に議論になりましたけれども,部会資料6で出された不在者の財産管理人および相続財産管理人について,それを特定の土地について考えようという,そういう制度との関連性と,それから,もう一方では,部会資料3に出てまいりました,共有者が共有物の管理人を選任できるという,この制度との関連性ということがあります。これらの提案との関係で,土地管理人の制度をどうやって位置付けていくのかということについて,更に明確にしていく必要があると思いました。   これらの制度を吸収した形で土地管理人という制度を構想していくのか,あるいは並列した形で考えていくのかということによって,土地管理人の法的地位,選任の要件,権限の内容なども違ってくるのではないかと考えられます。   先ほど佐久間先生がおっしゃった点との関係で,今回の資料では,部会資料11の第1の1で,申立権者としての利害関係を有する第三者ということの意味について,(注1)に出てまいります共有者が請求するときには共有物の管理者の方を使い,共有者以外の第三者が使うときには土地管理人の制度を使うという,そういう振り分けを前提にした表現ぶりかなとも思います。部会資料3の13頁では,裁判所による共有物の管理者の選任のところでも,申立権者は利害関係を有する第三者が裁判所に対して申し立てられるということも提案されておりましたので,どちらについても第三者が申し立てられるということになると,制度のオーバーラップについても整理が必要になってくるのではないかと思います。   全体的には,この制度をすっきりしたものにして,活用しやすいものにしていくということについては賛成であります。 ○蓑毛幹事 少し細かいですが,部会資料4ページのイの前の3行,「なお,事案にもよるが」の段落の趣旨が分からなかったので,質問です。  第1の1では,所有者不明土地が共有の場合で,一部が判明している場合でも,土地管理人を選任できることになっています。そして,第2で,土地管理人の権限は土地全体に及ぶことを前提に,議論が進められています。ところが,4ページでは,判明している共有者であるAが賃貸・売却に反対している場合には,土地管理人を選任しても,賃貸・売却をすることは不可能であるから,選任の必要性がなく,却下されるとなっている。   ここがよく分からないところで,土地管理人の権限をどうするかは,第2で議論されるべきであって,第1の選任の要件のところで,判明している共有者が反対していれば,土地管理人は賃貸・売買が出来ないので選任の必要性がない,とするのは論理がおかしいのではないかとも思うのですが。 ○大谷幹事 確かに少し混乱しているところはあろうかと思います。   ここで念頭に置いておりましたのは,1の方の一部不明の場合で,特に土地の管理状況,今悪いわけではないと。だけれども,今判明している共有者の多くは売りたいし,買いたいという人もいるというようなときを考えますと,なかなか,今判明している共有者の一部が,売りたくないと言っているのにかかわらず,無理やり売ってしまうということが正当化できるだろうかというところがございまして,そこに限って考えると,なかなか発動するのが難しいのかなということで書いております。   よく考えてみますと,部会資料を書いておったときには,土地管理制度って考えてごらんなさいというふうな宿題を頂きましたので,土地の所有者全員の代理人なり,土地の所有権全体の管理をする人ということで考えてみたので,こういう一部の所有者,共有者が処分について反対をしているというときには,なかなか使えないのかなと思って書きました。その上で,よくよく考えてみると,土地の所有者の複数の共有者がいて,そのうちの一部がいない,そのうちの一部というのは,2人,3人といないというときに,管理人が管理しなければいけないのは何なのかというのは,必ずしも土地の全体ではなくて,共有持分でもいいのかもしれない。不明者の共有持分だけを管理するのでも,土地の適正な管理ということには資するという場合があるのではないかという考え方もありそうで,そういう意味で別の方向もあり得るのではないか。そういうことも含めて,また御議論いただければなと思っておったところでございます。 ○蓑毛幹事 はい,結構です。 ○山野目部会長 吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。   この土地管理制度というものは,土地全般について,所有者による適切な管理がされていない場合には,しかるべき手続を経て,所有者以外の者が関与できる仕組みを整える点が特徴的かと思っております。   これまでの土地政策は,土地投機や地価高騰などの行き過ぎを抑制するという方向からの施策が中心でした。所有者が管理を放置しているケースについて,利害関係者が何とかしたい,周辺の住民の方が困っていても,なかなかその土地が,例えば農地や公共事業の対象地など,特定の地目や特定の事業対象地でなければ,所有者以外がその土地に対して,具体的な行動を起こせる法的な仕組みというものは限定的であったと思います。   その意味で,この法律は,そうした部分を新たに創設するものであり,今後必要なものであると思うとともに,新たな制度であるがゆえに,慎重な検討が求められると感じました。   特に,部会資料11の2ページ目の(2)の4段落目,「このような現代における」というところの3行目ですが,土地所有権の内容に新たな調整原理を導入する必要があると考えられると書いてございまして,この制度は,単に新たな制度を設計するだけでなく,新しい考え方を整理するという意味で,大きな意味を持つと思います。それは,この部会とともに,現在,国土交通省の方で検討が進んでいる土地基本法の見直しや新たな土地法制の在り方の検討などと連携して進んでいく必要があると思ったところです。   また,第1の2の所有者が分かっているけれども,適切に管理されずに放置されている土地について,どのような対応が採り得るのかというところについては,特に慎重な検討が必要で,この放置されている事情というのは,かなりケース・バイ・ケースではないかと思われます。   管理する意思がないという方もいるでしょうし,意思はあるけれども物理的に難しいという人もいる。そうしたケースを考えて,所有者や相続人に管理する意思や能力,余裕がどのぐらいあるのかということをきちんと認定する,それに応じて,その次のステップを考えるという段階を経ることが大事かと思ったところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   第1の部分について,ほかにいかがでしょうか。   そうしますと,第2から後の御議論を頂いたところを顧みて,第1について見直しをしなければいけないという部分も出てまいりまして,関連しておりますから,改めて第1についての御議論を頂くことは妨げないとして,更なる御議論をお願いしていこうと考えます。   第1で,1と2として提示申し上げているところは,多くの委員,幹事から,趣旨を理解し,細部について注意した上で制度整備を進めることがよいという方向からの御意見を頂きました。   吉原委員から御注意があったように,1で示している類型のものと2で示している類型のものは,相当に性質が異なるかもしれません。国民から見ての分かりやすさとか,法制上の明快性を考えても,1と2は条を分けたり,項を分けたりするような仕方で,それぞれが一定の範囲で共通の基盤を持つ制度であると同時に,取扱いを異にする部分があるということが分かるような規律内容の整備と規律の表現がされるということがよいとも感じられます。   よろしければ,第2の方に進みます。   第2の部分について,事務局から説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 土地管理制度を,土地を適切に管理することが困難な状態になっている場合に対応するための仕組みとして創設するとすれば,この制度は,土地所有者の権利を保護しつつ,土地の管理について,利害関係を有する第三者の利益を実現することをその趣旨とするものと考えられます。   そして,土地管理人の地位については,土地所有者の権利保護を重視すれば,土地管理人を所有者の代理人とすることに親和性があると思われるのに対し,利害関係人の利益実現を重視するならば,土地の管理のための職務者とすることに親和性があると考えられます。   本文(1)のアでは,そのような意味で記載しております。補足説明の中では,土地管理人が選任された場合に,所有者の管理処分権を喪失させるべきかについても検討を加えております。   本文(1)のイは,土地管理人の権限について,その制度趣旨から,保存行為と一定の利用改良行為等を想定しておりまして,(注3)では,売却の拒否について,判明している土地所有者などが異議を述べたときは売却を許可しないものとすることを前提として,更に検討する旨に言及しております。   そして,本文(3)にありますように,売却代金は供託することを考えております。売却代金から弁済を受けようとする債権者などは,その供託金の還付請求権を差し押さえるなどすることになろうかと考えておりまして,(注4)でその旨を記載しております。   また,本文(2)にありますように,管理人は善管注意義務を負うことを想定しておりますが,こうした義務が誰に対するものかは,土地管理人の地位との関係で整理が必要だと考えられます。   (2)のイに記載しております誠実・公平義務についても,ゴシック部分には土地所有者のためにと記載しておりますが,同様に,法的地位との関係での整理も必要かと考えております。   また,10ページ目の本文2では,処分の取消しを記載しておりますが,例えば管理人が土地を売却して,その代金を供託したときなどが,取消事由に当たろうかと考えられます。   私からの説明は以上です。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 第2の部分について説明を差し上げました。   先ほど御案内しましたとおり,第1の部分と関連させての御意見でもよろしゅうございます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第2の土地管理人の権限等について,方向性として概ね賛成です。   この制度における土地管理人は,難しい立場に立つと思います。土地管理人は,土地所有者と利害関係人双方に配慮する必要があるからです。そして,第1の1と2とでは,土地所有者と利害関係人の利害の状況がかなり異なり,単独所有でなく共有者がいる場合には,また利害状況が異なります。ですので,これらを,全てひとくくりにして,権限や義務を論ずることができるかどうかも含めて考える必要があると思います。   どの類型であっても,土地管理人が,土地所有者と利害関係人双方に一定の配慮をする必要があることは共通だと思います。建て付けとしては,土地管理者の地位を,代理人ではなく職務者とした上で,所有者ないし共有者との緊張関係をどのように考えるのかという観点から,土地管理人の善管注意義務の内容であるとか,この制度における所有者ないし共有者の地位や取扱いについて,更に検討を進めるのがいいと思います。   ここから先は質問ですが,これまでも複数の委員の方から,管理人を選任するときに,管理費用あるいは管理人の報酬は,どのように捻出し、最終的に誰が負担するのかという問題提起がありました。今回の部会資料には書かれていないようですが,これらの点はどうお考えでしょうか。私が考えるには,まずは,申立てをした人が予納金を納めてくださいということになると思うのですが,そのような理解でよいのか。   さらに,土地管理人の権限として,土地を売却した場合の売却代金を供託することが想定されているんですが,土地の売却代金から,管理費用や管理人の報酬を支出したり,申立人が納めた予納金を返還するということを想定しているのか,想定していないのか。その辺りの考えがあれば,御説明いただければと思います。 ○大谷幹事 今,2点御質問がございましたけれども,いずれについてもおっしゃるとおりだと思っておりまして,まず予納金,実際に誰が最初に払うのかといったら,申立人が払うということが想定されると思っております。   また,仮に売却が許可されて,売却されたというときに,その売却金から管理費用というのを差し引くのかというと,それも恐らく,そのような形になって,報酬に充てるということもあり得るだろうとは思っております。 ○蓑毛幹事 管理の制度をどのように考えるかにもよると思います。   第1の2の場合,要するに,その土地の所有者が外部に対して損害を与えるような状況のときに,所有者に対する権利保障の観点から,相当慎重な手続をとったうえで,管理人を選任したのであれば,その管理費用を売却代金から賄うことの正当性が是認されやすいと思います。   これに対し,1については,所有者に,管理費用や管理人の報酬を負担させる正当性が認められるかについては,よく考えるべきだと思います。今回提案されている土地管理制度の趣旨は,土地の利用促進ではなく,適切な管理のためではありますが,現時点で,他人に損害を与えるおそれがないにもかかわらず,なぜ土地所有者の費用負担で、土地管理人を選任できるのかがよく分かりません…。   ごめんなさい,ちょっと整理ができていないのですが。 ○山田委員 6ページのゴシックの,(注3)のところについて申し上げます。後ろの方に書いてあることは,これはもう今後,ぶれずに維持してくださいという意見であります。   すなわち,判明している土地所有者又は共有者が異議を述べたときは,売却を許可しないものとすることを前提として,更に検討するということですが,異議を述べたときには売却できないということです。その場合、裁判所が売却できないということは,そこは総合考慮の対象ではなくて,是非固定して考えていただきたいということを意見として申し上げたいと思います。   特に,第1の1について,次のように考えて,今の意見の理由とさせていただきます。   3人の共有のときに,1人,Aが売却したくないと考え,BとCが売却したいと考えたときに,その不動産を売却できないというのは,これ,動かないルールだろうと思います。今回のこの部会の検討も,そこに手を付けようとしているのではないんだと思います。それで,持分如何にかかわらずということです。   しかし,そのうちCが不明であると,1ページの第1の1の①に当たってしまうと思います。そうすると,管理者を選任できることになります。管理者に裁判所は,売却の許可を与えることも,売却権限を与えることもできるというのが原則的な流れですが,何で3人みんな居どころがはっきりしていたら,売却できる余地がないのに,そのうちの1人が不明だと,手続はそれなりに踏まないといけないけれども,売却できるのかが問題になると思います。要するに,Aの利益が何でそのときに害される可能性が出てくるのかというのが,説明できないんだろうと思います。   したがって,そこを確保しているのが,この(注3)の後ろの方の部分でありますので,それがなければ,売却の拒否は,様々なことを考えて,裁判所は判断してくださいと,裁判をしてくださいというのは,それでいいと思いますが,この異議を述べたときはできないというところは,動かすことができないことではないかと思いますので,そのように進めていただけるようお願いを致します。 ○山野目部会長 御注意を承りました。もっともなことであると感じます。   そうでないと,この制度を使って,山田委員がおっしゃったことを別な言葉で表現しますと,民間版の土地収用が潜脱的にできるということになってしまいますから,そういうことであってはいけないと考えます。ありがとうございました。 ○佐久間幹事 先ほど蓑毛幹事がおっしゃったことに関連することなんですけれども,私もこれ,管理費用はどうなるのかなというふうに最初に思いました。思ったんですが,私は蓑毛幹事と違いまして,これは所有者の負担だなというふうに単純に思いました。   なぜかと申しますと,まず,この土地管理人は,私は職務者であるのがいいと思っており,先ほども申し上げましたとおり,所有者または共有者の権限は制限するのがいいと思っておるんですけれども,そのような立場からいたしますと,まず土地の管理をすることによって,利益が上がってくることはあり得るわけですよね。売却だけではなくて,賃貸をするということだとすると。その場合には,まずは当該管理の対象となっている財産から上がってきた利益を基に費用を出すというのが,素直な考え方なのではないかというのが一つ。   もう一つは,この土地管理制度は,確かに第三者の,というか,利害関係人の利益実現を重視するのかもしれませんけれども,土地の所有者,共有者が本来すべきことをしていない状況において,それを強制的にといいますか,管理人を置いて実現するわけですので,所有者が,あるいは共有者がその費用の負担を免れる理由はないのではないかと思います。   こういったことから,実際上取れるかどうかは,所在不明だと難しいかもしれませんけれども,所有者あるいは共有者が費用の負担をすることは,ある意味では当然なのではないかなと思います。そうしておかないと,当該不動産から利益が上がればいいですけれども,上がらない場合に,結局どこかで中途半端に制度が終わってしまうということに,というか,当該管理が終わってしまうことにもなるので,問題なのではないかなと思います。   あとちょっと,全然違うことで,細かいことを申し上げたいんですが,表現なんですけれども,私,先ほどから,土地所有者の管理権は制限する方がいいのではないかというふうに申し上げているんですが,資料には喪失と書いてあるんですね。喪失は,なくなるわけではないので,やめた方がいいのではないかなと思います。 ○道垣内委員 私は,佐久間さんがおっしゃっていることがよく分からないのです。最初のお答えというのは,予納金があって,予納金からは取るだろうという話で,売却があったら,売却代金からも取るかもしれないという話なんですが,そのときに多分,付け加えなければいけないのは,佐久間さんのおっしゃるように,売却代金が存在していれば,そこから取るということになるのは,売却が適切な管理形態であり,そのような適切な管理形態を行うに当たって掛かった費用を売却代金から取るということになのだろうと思います。それならば,予納金から一旦取られてしまった申立人も併せて,その売却代金から補償を受けなければならないということになって,それで最終的に,その土地の所有者の利益から支払われることになる。その点は,佐久間さんのおっしゃることはよく分かります。しかしながら,予納金から取れないというふうなことにしますと,それは,管理人からすると,賃貸をするなり売却をするなりして金銭を作らないと,自分は損をするという形になるんですね。   ところが,管理人はその行為を善良な管理者の注意に従って行うというわけですが,それはひょっとして,周りの近隣に迷惑を掛けないように,きちんと下草を切って,きれいにして,ないしは崖崩れが起きないように,きちんと補修をすることであって,売却することや賃貸することが求められているわけではないという場合もあるはずですね。しかるに,賃貸,売却というふうな金銭を取得する行為をしなければ,管理人が自己負担になってしまうという制度にしてしまうと,それは管理人のすることを方向付けてしまうということになります。そこで,必ず土地の所有者から取るということではなくて,土地の所有者から取れる状況になったら土地の所有者から取るということになりそうでして,そんなことを思いながら,伺っておりました。 ○佐久間幹事 そのつもりで申しておいたんですが。私が申し上げたことでいうと,現実問題として,所有者が所在不明であると,取れないかもしれないけれどもというふうに申し上げたところがあったと思うんですが,それは取れなかったら,予納金から差し引いていくしかないと思っており,所有者から取れる状態だったら取るべきだと,取れるようにすべきだというふうなことで申し上げたつもりです。 ○道垣内委員 よく理解できました。 ○山野目部会長 佐久間幹事がおっしゃったことの本質的部分は,道垣内委員から頂いた御注意を添えて,より明確になったということであろうと理解しました。   お二人の間に意見の齟齬はないと佐久間幹事からも確認していただきましたけれども,そのように受け止めます。同時に,道垣内委員が御心配になったように,何か管理人に任命された人が,管理人の報酬を生み出すことが自己目的になって管理を続けるというような事態が起こったらどうしますか,そんなことを奨励するための制度ですかという御心配については,もちろんそのとおりで,そのような心配をする事態になってはいけません。する必要がない賃貸なんかを管理人が始めるというようなことは,それは管理人の善管注意義務違反でありますし,そのような事態を認識した裁判所は,管理人に対する監督処分を発動するでありましょうし,もう管理人の報酬がこの後は出ないなということになったときには,管理命令を取り消すという措置も含め,その後の事態の展開を考えなければいけないと感じます。   同じ構図の問題というものは,現在の不在者の財産の管理についても起こり得ることでありまして,それらについての従来の裁判所の懸命な取組を参考としながら,こちらについても適切な運用が期待されます。 ○中村委員 管理費用のことなんですけれども,これは,先ほど御説明いただいた本件の制度趣旨とも関係するかと思うのですけれども,先ほど挙げていただいた,土地所有者の権利を保護しつつ,利害関係を有する第三者の利益を実現することを趣旨とするとなりますと,第三者の利益を実現することのために費用が掛かり,場合によっては管理人の報酬も必要であるということになりますよね。   現行の253条の共有物の負担は,正に共有物の管理のため,共有者の利益のため,もしくは共有者が共有者としての義務を果たすことの費用を,ここで言っているのではないかと思うのですが,ここの制度趣旨をどう仕組むかによって,利害関係人である第三者の利益の実現というところがかなり前面に出ることになりますと,所有者に負担させるというだけではいかないようにも思いますので,どのように考えたらいいか,教えていただければと思います。 ○山野目部会長 多分教える人はいなくて,ここで委員,幹事が知恵を寄せ集めて議論する事項であると考えますから,委員,幹事の御意見を承ります。少し前に松尾幹事から御紹介いただいた本年初頭の国土審議会土地政策分科会特別部会における取りまとめで,増田委員や吉原委員に御参画いただいて方向付けを出している内容は,土地基本法を改正して,土地を適正に管理する所有者の責務というものを明確にしていくことになるであろうと予測します。   仮にそうなったときに,土地の所有者の適正管理の責務を果たすのは,そこで言われているように土地所有者の責務です,ということになります。てすから,責務を果たすための費用は,土地所有者が負担することが当然であることになります。   土地所有者自らがその責務を果たしていないときに,本日御提案申し上げているような,第1の1とか2のような制度を用い,場合によっては第三者からの申立てによって,別な人が管理をするという制度を設けますが,しかし,それは本来,土地所有者が果たすべき責務を果たしていないことから生ずる負担ないし費用でありますから,予納金の処理を措くとしても,最終的には所有者に負担してもらう,理念的にはこのような説明になっていくであろうと考えます。   そうしますと,中村委員から御注意いただいていることはごもっともなことであって,所有者の保護とともに,第三者の利益を図り,というときのその第三者の利益というものは,何か第三者にとって,とてもおいしい,何か積極的な利益の増進というようなことではなく,土地所有者自身が責務を果たしていないところを果たしてもらうことが第三者の利益にもなる場合において,その限度において,第三者が手続申立てをすることを認めるというふうに,明快に説明していかなければいけないと感じます。   その意味で,中村委員に早々に御注意いただいたように,部会資料6で利用促進といっていた点は,何度もお詫び申し上げますが,筆の滑りでありまして,それから,本日の部会資料も,第三者の利益とともに所有者の利益の保護というふうに,この二つを何か単純に機械的に並列に並べている記述も,ある意味では措辞が適切でないところがあります。ですから,もちろんこれから,この制度設計を更に進めていくに当たり今後の説明は,中村委員をはじめとして皆様方から出していただいた御注意を踏まえながら,正確な説明をするように努めます。   仮に,そのような考えで進めていったときには,佐久間幹事から基本的にお話しいただいたし,道垣内委員から補足的な御注意を頂いたような所有者の費用負担という方向付けでいくということに,多分大きな理論的な障りはないものではないかと感じます。 ○佐久間幹事 何度もすみません,先ほど申し上げようと思って忘れていたんですけれども,今のとの関連もあるんですが,6ページの(2)のところで,善良な管理者の注意と誠実・公平の義務が書かれているんですが,御説明のときに,イについて,土地の所有者のためにというのを除くことも考えられるというようなことを,確かおっしゃいましたよね。   私はそれには反対で,この善良な管理者の注意も,本来は土地の所有者のためなのではないかと。本来は,ですが。ただ,広く利益というか,この場面は,先ほど部会長がおっしゃったとおり,所有者がすべきことをしていない,その状況で,本来すべきことを基準とする善良な管理者の注意なのかなと思っております。   そうすると,本来すべきことというのは,先ほど来出ている第三者というか,ほかの人の利益を図ることにも結果的になるんですけれども,そういったことも考えた上での善良な管理者の注意だということであり,イの方は,誠実・公平というのは,誰かの不公平がないようにということなので,第三者をここで入れてくる必要は,基本的にないのではないか。そこは,共有の場合の共有者の1人にだけ利益になるようなことをしては駄目ですよという,それでいいのではないかと思います。   だから,このままにしていただいて,善良な管理者の注意は,名宛人を明確にする必要はありませんけれども,飽くまで所有者が本来すべきことということを前提にすれば,所有者のためにやるんですよという建前を,私は採っていただいた方がいいと感じています。 ○山野目部会長 土地の所有者のためには取ってもいいと言ったのは,どちらですか。 ○宮﨑関係官 取っていいというか,アの方では書いていないんですけれども,土地の所有者のためにというのは,アの方で,もし善良な管理者の注意義務というのが,利害関係人,利害関係を有する第三者などに対する注意義務であるというふうにするとすると,このアの注意義務の対象というのとイの誠実・公平義務の対象というのが変わってきてしまうわけなんですが,そういう風に考えることがよいのかどうかというところで,やや疑義があったので,そういう意味で申し上げました。 ○山野目部会長 佐久間幹事,そういうことで,引き続き検討させていただくということでよろしいですか。 ○佐久間幹事 検討していただいたら,それで結構でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   松尾幹事,次,沖野委員,お願いします。 ○松尾幹事 すみません,先に失礼します。   土地管理人の法的地位,および権限ならびに義務の内容をどういうふうに考えるかということを確認するために,幾つか具体的に検討してみたいと思うんですけれども,例えば,この土地について,時効取得を主張する人がいて,しかし,所有者が所在不明なので,公示送達の手続を取りうる場合,あるいは所有者が誰か特定できず,誰に対して訴えを提起してよいか分からない場合に,この土地管理人の選任を申し立て,土地管理人を相手にして時効取得の訴訟を提起し,勝訴の確定判決を得て登記するというようなことができるかどうか,こういう場合にも土地管理人の制度の利用を想定しているかどうか,確認したいと思います。   これは既に,ほかの制度との関係でも議論され,あるいは次の議題にも関わるかもしれませんけれども,土地の時効取得の主張などにおいて,登記名義人を被告にしてよいかどうかということとも絡めて,土地管理人の権限の中に入ると考えてよいのかどうかということの確認です。それによって,土地管理人が被告になるとしたときに,どういう行動をすべきなのかを確認することを通じて,その権限・義務,および法的地位について明確にすることができるのではないかと考えます。   典型的に土地管理人に期待されていることは何かについてですが,先ほどから出ているのは,例えば,土地の上に生えている樹木が隣家に倒れかかっていて,危険だから何とかしてほしいのだけれども,すぐには所有者分からないというときに,土地管理人を選任して対処するということもあるかもしれません。主たる場面を幾つか想定した上で検討することが生産的ではないかと思った次第です。 ○脇村関係官 取得時効の関係のところについてだけ,御説明させていただこうと思うんですが,以前,共有の関係でも少し議論させていただいたことと関係するんですけれども,今出させていただいている部会資料で,1番は,所有者の代わりに何かしようという話をしているところでして,取得時効のケースは,ある意味,原告自体が所有者ですので,所有者が訴えるとき,所有者に代わる人が相手になるというのは変ではないかという話が,共有でも少しさせていただいて,共有のときにも,よく考えると結局,登記名義人の代わりになる人を作るんですかねみたいな話を部会資料で書かせていただいていたと思います。   議論として,登記名義人が実際いないときに,何かこういう制度を使えないかというのは,今後も検討させていただきたいと思っておりますし,ただそれを,今検討している,この土地管理人という枠組みでやった方がいいのか,別にするのかというのは,相続財産管理制度もこの後検討することを踏まえながら,少し検討していきたいと思っています。   最終的には,これと似たようなものを作る,あるいはこれで包含するのかもしれませんが,本当にそれでいいのか,少し自信がないので,是非先生方の御意見を頂きたいと思いますが,少しちょっと技術的な問題があるのかなとは思っているところです。 ○山野目部会長 松尾幹事,よろしいですか。   今の点,もし,沖野委員の御発言を承った後で,ほかの委員,幹事から何か御意見がおありでしたら,承りたいと考えます。 ○沖野委員 すみません,むしろ一つ前のお話で,6ページの(2)のアとイについて,善管注意義務と誠実・公平義務というか,それについてなんですけれども,このイについて,解説を読みますと,やはり所有者複数の場合の,その所有者間について,誠実かつ公平にということが書かれております。それ以外の場面にも,誠実・公平義務というのが妥当するということであれば別ですけれども,ここでは専らそういう場面だとすると,ここは土地所有者のためにということを入れることで,より明確にするというのは,あり得るかと思いますし,更に明確にしようと思ったら,イについて,共有の場合というか,所有者複数の場合とか,そういう場面設定を明らかにするということで,より明確になるということはあり得るのかもしれないと思います。   それから,アの方ですが,この制度全体が管理が困難になっているというときに対応するもので,その管理が困難になっているというときは,必ずしも所有者に何らかの帰責があるというわけではない場合もあるでしょうけれども,しかし,所有者としてはそれをやるべきだというところをやってもらうという場合ですので,正に新たな調整原理というふうに書かれております点で,所有者だけということでいいのかというのは,気になるところです。   それから,義務違反のときの効果ですけれども,適切な調整のために必要とされる行為を行わなかったというときに,善管注意義務違反ということで,利害関係人が損害賠償請求をするといった場合も考えられるとすると,アについては,やはり所有者だけではないということになるのかなと思われますし,その意味で,特に,こちらは土地所有者のためにということは書かないで,このままの形で検討する方がよろしいのではないかと思っているところです。   引き続き検討するということでしたので,その際の参考になればという趣旨です。 ○山野目部会長 門田委員,どうぞ。 ○門田委員 先ほど松尾幹事から出た話とも関連し,その前の予納金や費用の点とも関連するわけですけれども,管理人の職務をどうするかという点は予納金の額に跳ね返ることになりますので,できれば,管理人が何をすることになるのかというイメージをもう少し具体的にして,議論をしていただく必要があると思っております。   その関係では,管理人の職務が及ぶ期間も重要かと思います。スポット的にやって済む話なのか,あるいはかなりの長期間に及ぶのかということが,予納金をどうするのかというところに跳ね返ってくると思いますので,その点,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 抽象的に述べると,所有者としての責務が果たされていないときに,その事態を改善するということが,求められている土地管理人の仕事であり,それを超えるものでもなければ,それ未満のものでもないというふうに整理することができますから,この理念的な事項の確認の上で,今,門田委員から御注意があったように,その理念だけでは現実の裁判所の実務が回っていかないかもしれませんから,期間などについて具体的なイメージについて更に考えを深めなければなりません。引き続き,事務当局において努力することを望みます。 ○成田幹事 別の観点からですが,7ページの補足説明1の(3)について,1点質問させていただければと思います。   ここでは,土地管理人と不在者財産管理人の双方が選任される場合について言及があると思いますけれども,不在者財産管理人が選任された後に土地管理人の選任の申立てがされた場合,土地管理人を選任する必要があるという状況は,にわかには想定し難いように思われます。逆に,土地管理人が選任された後に,不在者財産管理人の選任の申立てがされた場合ですと,不在者の財産全般を管理する必要があるなどの理由で,不在者財産管理人が選任されるというのはあり得るかと思われますが,そういった場合ですと,財産全般を管理する必要がある以上,土地管理人による管理を継続するのは相当ではないことが多いように思われるところです。   このように,双方の管理者による管理を継続する必要があるという状況は,にわかに想定し難いように思われますので,基本的にはどちらか,多分,土地管理人の方の選任を取り消すなどして,権限の競合を解消した方がいいのではないかと思われるところです。権限の競合という事態が必要となる場合というのが何か想定されているのかというのを,教えていただければと思います。 ○大谷幹事 確かにおっしゃるとおり,基本的に不在者財産管理人が先に選任されていて,土地管理人を選任するときは必要なさそうですし,土地管理人が選任されていて,その後に不在者財産管理人が選任されたときも,基本的には取り消すことになるのかなとは思うのですが,他方で,土地管理人の仕事がある程度進んでいて,例えば売却の話まで具体化しているとか,そういうところまでいって,取り消さなければいけないということになるのかどうかというところが,必ずそうなるのかなと思いまして,その管理の状況によって,取り消されるかどうかが決まるのではないかと思いまして,こういうふうに書いているところです。 ○蓑毛幹事 部会資料の6ページの(注4)ですが,この制度は物の管理人なので,債務は払わないという整理をして,未納の固定資産税がある場合であっても,あるいは土地購入のための借入金等があっても,これは支払わない,こういう整理だと理解しました。   しかし,例えば,固定資産税について,滞納処分による差押えが掛かっていたり,借入金を被担保債権として,土地に抵当権が設定されていたりする場合でも,任意売却するに当たって,債務は払わないというお考えでしょうか。それでは、実務上、任意売却が出来ないと思うのですが。 ○大谷幹事 確かにそこは悩みどころで,取りあえずこういう形で,払わないという方向で考えてみました。   本当に売れるような状態になっていて,抵当権者がいる,あるいは滞納処分が掛かっているというときに,そちらの手続,競売を掛けるとか,そういうことをせずにこちらにくるのかと,やや疑問がないわけではないと思っておりますけれども,その辺り,取りあえず前回の御議論を踏まえまして,弁済の権限というまで,ちょっと考えにくいなということで,こういうふうに書いているというところでございます。 ○蓑毛幹事 さきほど申し上げたような固定資産税などの支払いは,形式的には,たしかに債務の弁済ですが,売却手続を進めるための費用と考えることが出来ないでしょうか。土地売却に向けた,土地管理人の報酬も含めた様々な費用は,売却手続を進めるに当たっての費用と考えられます。例えば,管理人が仲介業者を使って仲介手数料を払うというのは,売却のための費用として,売却代金の中から払うことが認められると思います。滞納処分に掛かっている差押えを抹消するために未納の固定資産税を支払ったり,抵当権を抹消するために借入金を支払ったりするのは,頑張れば,広い意味での土地売却のための費用という概念に含ませることができるようにも思いますので,御検討いただければと思います。 ○道垣内委員 例えば,抵当権が設定されているときに,任意に弁済して抵当権を消そうとすると,2年の利息の制限とか被担保債権額の制限とかが掛かってこないんですよね。そうなると,実際に抵当権を実行したときよりもたくさん払わないと,抹消というのが民事実体的には生じないんだろうと思うんですね。   しかるに,競売をしたときに優先弁済額として得られる額を払えばよいではないか,と判断して,そのような結論を導こうとしますと,この場合の特則ということになるわけであって,やはり難しいのではないかと思うのです。さらには,そのときに,適宜考えながら,交渉しながらということになりますと,それは結構,土地管理人の負担が増えてきてしまって,やはり,制度設計としては難しいのかなという気がしますが。 ○蓑毛幹事 道垣内先生のおっしゃることも,そのとおりだと思いますが,裁判所の許可を得る必要があるので,どの範囲だったら支払えるのかについて,実務上適切な検討が進められていくことになると思います。   基本的には私は,競売手続を実行したときに抵当権者が取得できる部分は,広い意味での土地売却のための費用だとして,支払っていいのではないかと思っておりますが,なお検討が必要だと思います。 ○山野目部会長 ただいま御議論があったところは,部会資料の,蓑毛幹事が御指摘になった太字の部分でも問題提起をしておりますが,より詳しい説明は,部会資料の8ページのところで,細々と説明を差し上げているところであります。   御提示申し上げているワーディングでいいますと,土地の管理者がどこまでの債務負担,債務弁済をするのかということについて,ここまではするし,そこから外はしませんということをどのように表現しているかは,土地管理者が土地の管理をするに際して負担した債務については弁済をするし,それ以外は弁済をしないという仕切りをしているところであります。   債務を負担するという表現をし,その債務を弁済するというようなことになりますと,比較的議論が,どの辺まで債務を弁済するものですかというように,拡散的になっていくところもあって,蓑毛幹事のおっしゃっている感覚は,どちらかというと,拡げしていってよいといということであるかもしれません。もっと頑張れば,というお言葉がありましたが,頑張って少し,余り限定しないで考えてくださいというお話でもあったようにお聞きしまします。   そのような方向の検討も進めるべきであると感じますとともに,債務とか負担とかいう言葉を使っていると,どうしてもそういうような議論になっていってしまう傾向があります。民事執行法の106条1項は,必要な費用については,この財産の管理に当たる者が負担に任ずるという表現をしておりまして,従来の法制の例でいうと,債務というよりは費用というふうに表現すると,議論の進み方としても,今度は逆に限定していく方向には,うまく歯止めを掛けていく方向になるかもしれません。   今,道垣内委員と蓑毛幹事との間では,意見の応酬が見られた債務というか費用の御議論がございましたけれども,反対に,そうではなく,本当に必要な費用については,御異論のない部分もたくさんあるであろうと考えます。   いささか申し上げてみますと,土地の物理的な管理に必要な費用として,盛り土や擁壁の設置や維持の費用,それから土地の管理の事務を委託する管理業者に支払う報酬とか,売却の役務を依頼した宅地建物取引業者に払う報酬とか,これらを負担することには恐らく異論がないでしょうし,それから,土地の法的な管理に必要な費用としては,権限を有して今まで占有してきた者や,権限を有しないで占有する者に対して,明け渡しを請求する訴訟に要する費用などを管理の費用として管理者が扱うということについても,恐らく異論がないだろうというふうに思います。   この辺りまでは手堅いところなんでしょうけれども,そこから先に議論を進めていったときに,抵当権の被担保債務であるとか,固定資産税の滞納分の全部又は一部とかいうことになってくると,お話はかなり険しいなということが,今,お二人の御議論で明らかになったのではないかと感じます。   その点でもよいですし,ほかの点でもよいですが,いかがでしょうか。 ○畑幹事 私の専門でない実体法的な話なので,勘違いがあるかと思いますが,資料6ページの(注3)につきまして,かなり前に山田委員から御発言がありました。御趣旨は,私が誤解していなければ,共有状態のときに,全員がいれば反対できたはずの人が,1人が行方不明であるがゆえに反対できなくなるというのはおかしいのではないかということであったように思います。   それはもっともだろうと思ったのですが,同じことは売却だけではなく,ほかにも当てはまるような気がしたのです。私の理解によれば,管理行為というのは過半数で決すると書いてあるので,同じことが,例えば賃貸に出すとか,そういうことについても当てはまりそうな気がいたします。   もしそれが間違っていなければ,(注2)の管理処分権が土地管理人に専属するということ自体もちょっと,微妙ではないかという感じもしてきたのですが,民法の先生方からは賛成だというご意見が多かったので,私の勘違いかもしれません。 ○山野目部会長 畑幹事から問題提起を頂いたことについて,いかがでしょうか。   恐らく民法602条の期間を超える賃貸をすることは,売却と性質上同じに扱うべきものですから,正におっしゃっているとおりであると考えますが,それ以外の部分についてはなお,畑幹事からお出しいただいた御疑問にどういうふうに応接するか,民法学者という御指名がありましたけれども,民法の先生方,それからそれに限らず皆様,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 先生から御指摘あったとおり,元々できなかったケースについて,不在だから何でもいいというわけではないというのは,恐らく,過半数のケースも同じ問題だろうと思います。   大谷の方から先ほど,少し話させていただきましたが,全体の管理者という立て付けにしていることも分かりにくさの原因かと思いますので,我々の方で,持分についてのみ付けるのかどうかも含めて整理したいと思っています。   山田先生おっしゃっているとおり,本来だったらできないのに,1人だけ不明だったら,残りの意向を無視するのはおかしいというのは,全てのケースに,当てはまる問題だと思いますので,ちょっとその辺の立て付けも含めて,整理させていただきたいと思っています。 ○山野目部会長 よろしゅうございますか。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。第3のところに進んでよろしいですか。   それでは,第3の部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 第3では,建物の管理制度等について取り上げております。   建物につき,土地管理制度と同様の管理制度を設けることについて提案してございます。   これについては,基本的には,建物についても,そのコスト負担の軽減の観点などから,現行の不在者財産管理制度などとは別に,建物そのものについての管理制度を設けるということを趣旨としておりますが,土地とは異なる考慮も必要になる点もございまして,例えばこの補足説明の中では,土地とは異なって,建物は滅失させることも可能でして,建物の取壊しを目的として,建物管理人の選任が申し立てられる場合を取り上げております。そのような場合に,建物自体の管理を図るという観点からすれば,その取壊しについて,許可を与えることができないとすることも考えられますが,建物についての管理を図るという観点からは,その取壊しを許可してもよいというふうに,一定の場合には考えることも可能であろうかと思われます。   そのほかに,建物管理制度の対象となる建物としては,区分所有建物については幾つか,区分所有者の共同の利益に反する行為を防止するための規律も設けられておる関係などから,これを対象に含むかですとか,あるいは,建物ではないんですけれども,例えば土地上に放置されている動産について,どのように取り扱うかというふうな観点から,それについても検討しておく必要があるかと思って,それについて補足説明の方の中で触れてもございます。   私からの説明は以上です。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 第3の部分について説明を差し上げました。   この点について御意見を承ります。いかがでしょうか。   動産もありますけれども,主なるお尋ねは,建物に特定土地の管理の制度と同様のものを及ぼすかどうかというお話になりますけれども,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 建物の管理制度については,私自身の考え方が揺れ動いていて,まとまっていないのですが,日弁連のワーキンググループでは,賛成,反対,両論ありました。   土地についての管理制度の制度趣旨が,所有者不明土地等に対する対処であることを重視すると,その趣旨は,建物にまでは当てはまらない。建物についてまで,管理制度の対象を広げるのは,建物所有者あるいは共有者への権利の制約になるという観点からも,行き過ぎではないかという意見がありました。その一方で,建物について,管理制度を設けることには,社会的な要請がある。空き家特措法の特定空き家という制度もあるけれども,この制度は自治体との関係等で規律されていて,それ以外の制度があった方がよいということで,建物についても,管理制度を設けるべきだという意見がありました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。皆様方が注目している中で御意見をおっしゃっていただいて,ありがとうございました。   いかがでしょうか。今,弁護士会の先生方が御議論いただいて,両論御紹介いただいたところの正にそのとおりであろうと感じます。   一つ,二つ,三つほどガイドを差し上げますと,一つ目は,おっしゃられたように,土地を主眼とする制度設計をしていますから,建物までやみくもに入れることはいかがかという御指摘はもっともですが,現実に起こり得ることとして心配されることは,そうはいっても,土地の上に建物が載っていることはあるものでありまして,所有者を異にし,又は異にしない建物が載っていることがあります。そのときにはもう,そもそも建物ということより前に,土地管理の命令を,管理人選任命令を裁判所は出すことができないということになるか,ここを考えなければなりません。   法的には出すことができるかもしれませんけれども,選ばれた管理人は,その建物の扱いをめぐって困ることになり,そうすると,実際上,裁判所は,そういうのにぶつかったら,もう建物は手出しが出せないから,これはそもそも土地も含め相当でないと認められる事案であるというふうに扱うということになってしまうか。そうであるとすると,この制度の妙味は,余り発揮できないものではありませんすかという観点があるかもしれません。   それから,2点目は,それと少し方向は逆かもしれませんが,ここで,もし建物に正面から制約なく適用があるということを考えますと,それの意味するところというものは,既に皆様方御存じのように,空家等対策の推進に関する特別措置法が定めている特定空き家等についての市町村長が出す14条の除却命令と機能が同じことを,言わば民間開放するという側面を持っていて,民間の方も,市町村長でなくても申し立てて,そういうふうなことをお考えになったらどうですかという制度の機能を含みます。   ただし,市町村ですら,財政上の負担を恐れて,なかなか特定空き家の除却命令に踏み出さないでいるところが多いところを,予納金等の負担に耐えて,よし,民間人の私がやってやろうという方がどれぐらい出てきて,この制度が働くかということを考え出すと,余り現実的に円滑に動く制度ではないというものを御提示申し上げていることになるかもしれません。   もう一つ,3点目でありますが,区分建物のときに,より困難な問題があって,土地管理人等に選任された人が区分建物についても,その管理をするということになりますと,集会が開かれますが,集会にその人は出席する権利があるかないか。出席したときに,その人は黙っているのか,何か発言するか。だけれども,もし発言をして意見を陳述をするときに,どのような態度で集会決議における意見の陳述や議決権行使の可否,適否等について臨めばよいかといったようなことが,悩ましいといいますか,どのような規律を制度に盛り込むかというところが,はっきりしないところがございます。   こういったところが,一般の建物,そして区分建物についての悩ましい点であり,皆様方が注目なさる理由も,そのような意味ではよく理解することができますから,若干の御意見を頂いておいた上で,審議を進める必要があると考えます。 ○沖野委員 正直分からないのですけれども,土地管理制度と同様の管理制度を設けるということの意味が,建物というものをそれ自体として,横並びで管理制度を設けるということなのか,土地管理制度の延長にあるものとして位置付けるのかという観点が,一つあるかと思います。   それから,最初から問題となっております,1ページのゴシックでいうと,第1の1の場合と2の場合が同じなのかということがありまして,土地の場合は限られた資源で,動かないし,近隣もあるということですが,建物も,建物を新しく造ることもできますけれども,一旦できてしまうと,同じような状況になるとは言えます。   さらに,危険な状況というのは,土地よりも建物の方がずっと数もあるのではないかと思われます。そうしたときに,特に2型のものについては,やはり建物に問題がある場合,土地としては大丈夫なのだけれども,建物が危険であるということがあり得るのではないかと思っております。   それに対して,建物自体として1に当たるという場合が,どういう場合を考えればいいかというのは,空き家の場合があるということだけれども,それはそれで特別なものがあればよく,そうではなくて,一般的にどうなのかというと,1と2で,あるいは違うのかもしれないと思います。   それから,土地の管理の延長であるということになりますと,やはりこの土地を管理するために,この建物をどうかしなければ,土地自体の管理ができないというようなタイプのものであるとすると,しかし別個の所有権なので権限はないという場合に,その延長上に建物まで及ぶということは,あり得るのかもしれないと思います。   動産についてもお尋ねがありますけれども,この動産の点も,動産を独立して処分の,処分というか権限の,対象にするということではなくて,やはり土地を管理するためには,この動産をどけなくてはいけないのだけれども,動産は別個の所有権であるということから問題が生じてきているとすると,動産は取り分け土地管理の延長ないしその中で,そして,さらに,土地管理の延長として建物があるとか,あるいは,危険なので建物自体をというときになると,そのためには中の動産どうしますかという話が出てくるので,その管理の延長としてということがあるかと思います。   そういうふうに考えると,区分所有建物の一部というか,専用部分というか,は別ではないかと,ちょっと雑感みたいなものですけれども,と思っております。 ○山野目部会長 幾つかの大変有益な御示唆を頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松尾幹事 土地の上に建物が建っているケースは,やはり少なくないと思うわけですけれども,土地管理人の職務権限の中に建物の管理まで含めて考えると,一つは,管理負担が一挙に重くなるということ,もう一つは,例えば売却するときの価格の算定に時間や費用を要したり,更地だったら買うけれども,建物が付いているときにはなかなか買えないというようなことも考えられるかもしれません。現実問題として,建物についてどう考えるかというのは,やはり重要だと思いました。   ちなみに,所有者不明土地利用円滑化法では,収用手続の簡易化や地域福利増進事業のための利用権設定の対象となる特定所有者不明土地として,簡易な建物を除き,建物が存在しないことが要件とされました。これは建物の補償額の算定を容易にすることを考慮した結果と考えられますが,建物が建っている場合とそうでない場合で区別している例として考慮に入れられると思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   大体,建物,動産のところは御意見を伺ったというふうに受け止めてよろしいですか。   垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   先ほど,土地との関係でも出てきた論点とも関連するかと思いますけれども,資料の11ページのところで,処分行為についてというところがありまして,建物の取り壊しの問題が取り上げられておりますけれども,取り壊されると,建物の所有権が失われるという意味では,土地の売却の場合と類似の利害状況が存在するのかなとも思われまして,そうすると,土地の場面について,判明している所有者等が拒否していた場合にどうなのかということが問題とされていたわけですけれども,同じ種類の問題が,この場合にも生ずるのかなという感じもいたします。   他方で,しかし,ここで言われているような,建物が非常に危険であって,周囲に被害を与えかねないというような場合に,所有者が嫌だと言っているからといって,取り壊せないということでよいのかどうかということも,よく分からないところがありまして,その点は土地の場合でも,場合によっては同じようなことが,2型と議論されているものについては,あるのかなと思われるわけですが,そうすると,1の場合と2の場合とで,かなり違うことを想定することになるのかというようなことをやはり,これは既に出ていることの繰り返しかと思いますけれども,整理を更にする必要があるのかなというように思います。   それから,費用の問題が何回か言及されておりましたけれども,今日の資料全体で提案されている管理制度というものを,どういうふうに位置付けるのかということに関して,一つには,これ,費用も所有者が全部持つんだということだとしますと,特に2型がそうなんですけれども,要するに,代替執行をやるということなのではないかということだとすると,それは,代替執行の場合には一定,きちんとした管理をせよと,あるいは危険を除去せよという請求権を,近隣の人か,あるいはその他の第三者が持っていて,強制執行するということになれば,当然これは所有者の費用で,管理者が必要なら管理者を選任してやるということになるんだろうと思うんですけれども,それと同等のことを考えているということなのか。   それだとすれば,一般には債務名義を得てやるような話で,請求権も成り立つ必要があるということですけれども,しかし,恐らくそこまでいかなくても,もう少し,専ら,第三者に請求権あるとまではいえないけれども,所有者にも,もう少しましな管理をする責務があるでしょうというような局面で,これが機能するということだとしますと,その費用の問題についても,やはり代替執行の場合と全く同じということになるのかどうか。ここまた,いろいろ議論があり得るところなのかなといったような感想をちょっと持ったところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたならば,この建物のところも引き続き検討していく必要がございますから,本日頂いた御示唆等に鑑みますと,第1の1の所有者不明型と第1の2の管理不全型との違いに留意し,建物についての適用可能性を考えることが,同じ程度,内容でありうるかということに注意を払って,今後の制度の検討を深める必要がありましょうし,また,取り分け所有者不明型については,土地の管理に必要な範囲で建物を取り込むというような制度の組み立ての仕方もあるものではないかという御示唆もあったところでございます。これらを踏まえて,引き続き検討してまいりたいと考えます。   部会資料11の審議を,ひとまず区切りとしてよろしゅうございましょうか。   それでは,ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料12をお取り上げください。   「不動産登記制度の見直し(3)」を審議事項といたします。   この中の第1の部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○有本関係官 それでは,資料12の1ページを御覧ください。   第1の1では,登記義務者の所在が知れない場合の登記の抹消手続の簡略化について,これまでの部会資料ではお示ししていない新たな案を御提示しております。   前回の第6回会議におきましては,登記記録に存続期間が記録されている地上権等の登記であって,その存続期間が満了している場合の抹消手続の簡略化について御議論いただきましたが,記録された存続期間が満了した後の地上権等の登記の対抗力の問題などを理由としまして,簡略化には慎重な御意見も頂いたところでございました。   そこで,これに代わるものとしまして,現在の不動産登記法70条1項,2項が定める公示催告及び除権決定という,裁判所が関与する手続を用いることをベースに,この手続を利用しやすくすることで,存続期間が満了している場合の地上権等の登記も含めまして,抹消手続を簡略化することができないかとの提案をしております。   具体的には,現行の登記義務者の所在が知れないという要件の下では,これを立証するために,例えば現地調査報告書の提出が求められるなど,比較的重い手続となっていますことから,例えば,法定された一定の調査方法を尽くしても登記義務者の所在が不明であったことなどの要件に改めた上で,登記義務者の探索方法を公的な書類によるもので足りるとすることなどによりまして,立証の程度を実質的に軽減することで,この手続を利用しやすいものとすることが考えられようかと思います。   もっとも,登記の抹消をするための手続において,このように立証の程度を軽減させることは相当ではないといった考え方もあり得るところでありまして,その場合には,対象となる登記の種類を絞るといったことも考えられますが,このような案の方向性について,どのようにお考えになるか,御議論いただきたく存じます。   また,資料の4ページの第1の2では,法人としての実質を喪失している法人の担保権の登記の抹消手続の簡略化について検討しておりますが,これは前回の第6回会議において,既に御議論いただいたものでありまして,その際には,お示しした案について,特段の御異論はなかったものと承知しております。   そこで,内容に大きな変わりはありませんけれども,前回の案から多少要件を整理し,また,清算人の所在が知れないということも要件として加えまして,解散の日から長期間が経過していたとしても,清算人が判明しているケースについては,共同申請の原則にのっとって抹消手続を行うものと解すべきかどうかなどについて,新たに問題提起をさせていただいておりますので,御意見を賜れればと思っております。 ○山野目部会長 第1の部分について説明を差し上げました。この範囲で御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 まず,第1の1ですけれども,この方策は,部会資料9の第5の1で,買戻期間経過後の買戻特約の抹消の簡略化とか,存続期間が満了している用益権の抹消登記の簡略化に代わるものとして出てきたということで,一応そこは理解はできます。   ただ,70条1項,2項の所在が知れないことの要件が,公示送達の要件に準ずることとされているため,厳格に過ぎるということから,登記記録を基本として,公的な書類による調査で足りることとして,要件を緩和するということで一定の効果はあると思うんですけれども,抹消対象の登記が実体上不存在又は消滅していることを証明しなければならないという要件がありまして,この証明がまた困難であるということが,大きなネックにもなっているのではないかと思われます。   我々の中で議論していたときに,1ページの(注)に書いてある,期間が満了している地上権等の立証が容易とあるのは,当該不動産の占有利用状況を見れば,比較的簡単に証明ができるという意味なのかという点を確認したいという意見がありました。   それから,所在が知れないという要件を満たす公的な書類ですけれども,登記記録を基本として、とされています。不在籍や不在住証明という消極的な証明書だけで足りるという意味ではないのだろうと理解をしています。当然,住民票や除票,戸籍の附票による調査が必要で,住民票や除票により死亡が確認できる場合は,当然,相続人の調査もするということが前提になっていると理解していますが,その点について確認したいと思います。   そして,住所変更などの一定の登記申請を怠っている場合に,通知方法等による不利益を与えることというのが,部会資料8で検討されていまして,それ自体には一定の効果があることは認めますけれども,不利益の程度に応じて,この特例の対象となる規定は個別に,その規定の趣旨や具体的な規律の内容を踏まえつつ選別するというふうに,部会資料8で書いてありますので,一般的に登記記録上の住所だけで調査をしていく,住民票や除票,戸籍の附票は取らないということは想定されていないと思うんですが,いかがでしょうか。   それから,細かくなりますが,補足説明の2ページの最終段落に,登記記録上の住所に居住していないことを証する不在住証明とありますけれども,市町村としては,住民登録があるかないかの証明をするのであって,居住していないことの証明ではないのではないかと思われます。多分そういう意味で書かれているとは思っておりますが。   それから,補足説明の4ページの最終段落に,代表者の選任を経なくてもよいこととすることができることについて,この代表者の選任を経なくてよいこととすることができる場合があることについては賛成をします。買戻しの期間を経過している買戻しの特約の登記や存続期間の満了している地上権等の,これ多分,賃借権も入るんだろうと思うんですけれども,それらの登記に限定することも考えられるとありますが,確かにこういう限定があっても,実務経験からすると,ほとんどはカバーできると思われますので,限定というのは一つは,ありなのだろうなと思っております。 ○山野目部会長 最後は御意見で,その前のところまでがお尋ねでしたから,村松幹事からお願いします。 ○村松幹事 幾つかの質問がございましたけれども,まず一つ目,1ページに書いている(注)の部分ですけれども,御指摘のとおり,権利の消滅の立証は,もちろん必要になります。ただ,ここは最後の御指摘にも係るところですけれども,存続期間満了しているようなケースを前提とするのであれば,むしろ立証責任は転換されてくるだろうと。実際上ですね,もう存続期間経過しているわけですので,しかも存続期間を延長する登記もされていないという状態の下であれば,この立証自体は比較的容易にできるという前提で作るということがあり得るのではないかというのを,ここでは記載しています。   逆に,存続期間を延ばすような合意がされていないということを立証するのは,確かにそこは難しくて,ないこと証明的なことを求めることになってしまうので,そうすると使えないのではないのかという部分はありますけれども,今言ったようなケースについては,むしろ,そこの部分の積極的な立証は不要なんだというぐらいのつもりで制度化を考えるということがあり得るのではないかというのを,(注)のところでは考えながら,記載したというところになります。   それから,2点目ですけれども,住民票の問題ですが,もちろん住民票を探索していただきます。それは大前提です。その上で,この制度にのってくるというパターンについては,結局添付する書面は,そこにいないということになるので,不在籍・不在住といったものが,これは出てくるよという,添付書面としては,ここで使えるのはこっちですよねと,こういう話を記載しています。   それから,正確に言えば,確かにおっしゃるとおりかもしれませんけれども,住民票,証明している内容自体は,そこに住民票がないということですが,ここで言いたいのは,登記記録上の住所に居住していないということを証明する一つの手段として,間接的ではありますけれども,そこに少なくとも住民票がもう既にないというようなことを出させるということで,間接的に証明させてはどうかという趣旨で記載したものでございます。   あと最後,限定の部分に関しては,この1項,2項の対象になる登記の範囲が,どの範囲のものかということについて調べてみますと,解釈上争いがあるんですけれども,所有権移転登記自体も含み得るのではないかと,こういうような理解が示されていたり,あるいは裁判の実例で,そういったものを消しているケースが,かなり古いんですけれども,どうもあったみたいだというような話もございまして,であれば,狭い範囲にした方がよいのではないかというところで,例えば一つとしては,前に議論いただいた用益権の部分については,ちょっとなかなか制度化,難しい部分はあるかなという御指摘ありましたので,そういうところで尋ねさせていただきました。   その意味で,この範囲で実務上のニーズとしては足りているということであれば,確かにこの範囲で考えるというのも一つなのかなという気がいたします。 ○道垣内委員 これから申し上げることは,全く私の勉強不足を露呈しているだけで,意見として何か述べるわけではないんですが,お許しください。2点伺いたいのですが,まず,第1点として,地上権について,例えば20年なら20年という期間で存続期間で登記をしますよね。それで,20年経過した後に,あるいは,経過する少し前の方がよいのかもしれませんが,存続期間の延長とか更新とかがされたとしますよね。このとき,その地上権の登記は,そのまま地上権の存在を表すものとして効力を持ち続けるんでしょうか。また,地上権の後に抵当権が設定されているというふうな場合に,20年と書いてある抵当権が20年たつ前に,もう10年更新されたというふうなときに,更新をすれば抵当権に勝つのでしょうか。   私は勝てないと思うんですね,常識的には。そして,もしそうであるならば,20年という期間が存続期間として書かれているとき,20年経過したら,地上権の実体的な消滅の如何にかかわらず,当該登記は一旦抹消されるべき運命にあるのではないかという気がして,ここで,地上権の実体的な権利が存続しているかどうかということを本当に議論しなければいけないのか,それとも,期間20年という最初の登記は,その期間の経過で対抗力を失うのであり,そうであるならば,20年たったということで抹消すれば,それでいいのではないかなという気がします。急に思い付いたものですから,全く知識がなくて,教えていただければ有り難いというのが第1点。   第2点は,これも全く不勉強で,大変申し訳ないんですが,2ページのところの最終行に,一つの考え方としてはということで,当該住所を本籍とする戸籍がないことを証する不在籍証明書というのが書いてあるのですが,この不在籍証明書というのは何を表すのですか。   例えば私も,現在の住所に本籍はないのですが,それで,私について,現在の住所に本籍がないよねということが証明されたからといって,それによって,このコンテクストにおいて何か意味のある情報が示されるということになるのでしょうか。教えていただければ幸いです。 ○村松幹事 まず1点目なんですけれども,ここは,恐らく一つは,法定地上権,法定の地上権なりという物権のものと,それから賃借権を同じように扱えるのかという問題があるのではないかという御示唆,全然別の局面で,昔,道垣内先生に頂きましたけれども,まず物権と債権で同じなのかどうなのかというところも,実はよく分からないなというふうに我々としては思っております。物権のケースで特に問題になろうかと思いますけれども,そういうものに関していったときに,本当に更新というような言葉で,そういったものを,地上権として期間が延びているということを,本当に登記で簡単に認めてしまっていいのかどうかという問題は,確かに,正直申し上げたら,あるのかもしれないという気はしております。   そこは考えたベースとしては,本当にそうなのかなと,個人的には思う部分がないわけではないんですけれども,ただ他方で,物事の整理として,存続期間の部分について,対抗力があるないかという議論が,実際上,これまで余りされてきておらず,そこの部分について,この部会で決めをある意味打った上ででないと,なかなか抹消の議論はしにくいのではないのか,というような雰囲気を,前回の部会で少し感じたものですから,確かに決めが打てるかといわれると,決めを打つにも,ほとんど議論されていないのではないのかというような印象を頂いておりまして,それで今回は,ちょっと迂回して,別の方策と重ね合わせることで,それはそれで,多少手間がかかるという部分はあるかも分かりませんけれども,一つのやり方としてあるのかなというところで,今回出させていただいたというところになります。   なので,いやいや,そうではなくて,やはりあそこでしっかり議論するべきだというお話も当然あり得るかと思いますが,そういう趣旨でございます。   それから,不在籍証明については,確かに,これだけで何かが証明できるという位置付けのものではございませんで,恐らくこういったものをよくお出しいただいているのは,私が理解しているところによりますと,以前の不動産登記では本籍地と住所地が同じだという扱いになっておりましたので,そういった時代のものも含めて,念のため,こういうものを頂くというところで,これで証明しているというよりは,これらを全部出していただいて,その上で不在であるということになれば,そのまま手続を進めていただくというだけの趣旨のものだと理解しております。 ○山野目部会長 道垣内委員が二つお尋ねになったうちの前の方で問題提起いただいたことでございますけれども,実体上,地上権の設定の登記がされている地上権に係る登記されている存続期間を延長する旨の合意があったときに,それを登記上反映する手段は,地上権の変更の登記になります。権利部乙区に,例えば2番で地上権の設定の登記がされていて,存続期間が30年というふうに登記されているときに,これを50年に延長しようというときには,地上権の変更の登記をし,登記事項の存続期間のところを変更する旨の記録をしてもらうことになります。   ところが,道垣内委員御指摘のとおり,2番で地上権が設定されているときに,その次に3番に抵当権の設定の登記がされているというときには,単純に存続期間の変更の登記を受理し,2番の付記1号として,地上権の存続期間を50年にするということになりますと,登記面を見ただけでは,実体的な対抗の上下関係というか,優劣関係が適切に表現されていないことになりますから,3番の抵当権の設定の登記がされているときには,抵当権の登記名義人の承諾を証する情報を提供してもらったときには,2番付記1号として,抵当権の変更の登記をすることになりますけれども,その承諾証明情報が得られないときには,4番で地上権の存続期間の変更の登記をすることになります。そうすると,権利の優劣は不動産登記法の規定に従って,順位番号の前後によって定まることになりますから,抵当権の設定の登記に後れて,存続期間の延長の合意がされたということが,登記上も明らかになります。   道垣内委員が御示唆いただいたような実体関係の理解そのものが,登記上も表現されなければならず,そのための仕組みというものが,それなりに不動産登記制度それ自体としては,内在的に備わっているというふうに理解しておりますけれども,併せてそのことを御案内した上で,ただいま村松幹事から御案内したことも添えて,お答えとさせていただきます。   ひとまずよろしゅうございましょうか。はい,ありがとうございます。   引き続きまして,いかがでしょうか。 ○中田委員 この説明の仕方についてのお尋ねがございます。現在,70条の1項,2項の手続が余り使われていないということの理由が,1ページの補足説明の1で3点,御紹介がありまして,それは一定の時間を要すること,これは官報の掲載から2か月置かなければいけないということだと思うんですけれども,それから,申立てには証明が必要だということ,それから,除権決定には既判力がないこと。この3点を理由として,使われていないと言っておられるんですが,他方で,ここでしようとしている手当ては,70条1項にいう「登記義務者の所在が知れないため」がネックになっているから,それを緩和しようということを御提言になっているように思いました。   そうすると,何かこう,現状の問題点の指摘と解決方法との間に少しずれがあるのかなと思ったのですが。これは説明だけの問題なんですけれども,仮に70条1項の「所在が知れない」という要件を緩和すると,今指摘されている三つの問題点については,特に手当てしなくても,かなり改善が見込まれるというように認識しておられるのかどうか。その辺りをお教えいただければと思います。 ○村松幹事 問題点は確かに,幾つも書かせていただいておりまして,それらが総合して,結果,恐らく使われていないんだろうという説明をさせていただいています。   特に,効力がそれほど強くもないのに手続負担が,ある意味,判決並みに重いということになると,だったら判決でいいのではないかという辺りに,一つの問題があるのかなと思っておりまして,逆に言いますと,一番最初のステップの義務者の所在が知れないということの調査の程度が,ある程度緩和されてくれば,効力は確かに既判力なくて,弱いんですけれども,しかし登記との関係で,この登記を消すということで,それなりに目的が達成できる,実務上ですね。そういう実態が恐らくあるだろうという前提で,先ほど今川委員もお話しになったんだろうと思いますけれども,そういったものがあるのであれば,一応のニーズに応えるということにはなるのかなと感じてはいたんですけれども。 ○中田委員 分かりました。では,多分説明の仕方として,現状認識として,所在不明を示すことが難しいのがネックになっているというのが,まず前提になっているということだと思うんですね。そこは,補足説明の1の現状の問題点の中に余り明確に出ていないものですから,少し理解しづらかった次第です。   逆に言うと,その点がクリアされれば,例えば既判力がないということを前提としても,まだ使われるだろうという見通しがあるということですね。 ○村松幹事 はい,その可能性があるのではないかということで,今回お示ししておりますので,ちょっとそこは,そういう認識でよろしければ,すみません,ちょっと説明ぶりが分かりにくかったですけれども,中間試案に向けた説明では,そういうところを記載していきたいと思っております。 ○水津幹事 法人としての実質を喪失している法人を登記名義人とする担保権に関する登記の抹消手続の簡略化について,少し気になったことを申し上げます。   法人についてのみ,新しい規律を特別に設ける理由について,部会資料9では,不動産登記法70条3項後段が定める休眠担保権の登記の抹消手続の特例は,同項がその適用場面として,同条1項の「登記義務者の所在が知れないため」を受けており,かつ,その解釈が法人について限定的に解されているため,利用しにくくなっていると説明されていました。   これに対し,今回の提案では,1において,同条1項の「登記義務者の所在が知れないため」の要件を改めることが提案されています。また,2においても,不動産登記法70条3項後段に関する現在の理解より,その適用範囲を拡大することが検討されています。   このような方法で,不動産登記法70条3項後段の適用範囲が拡大されるのであれば,先ほどの説明を前提とすると,2で提案されているように,不動産登記法70条3項後段とは別個の登記の抹消手続を,法人についてのみ,新しく特別に設ける必要性は,それほど高くないようにも思います。部会資料9の提案と本部会資料の提案とでは,前提が異なっているのではないでしょうか。 ○村松幹事 確かに,前提の部分がいろいろ変わってきたときにどうなのかというところはあるかと思います。   ただ,恐らくこの2番に関して申しますと,これ,また実務家の皆さんから御意見いただければと思いますけれども,現状,被担保債権全額を供託するというルールとくっついておりますが,これは現状であれば,古い抵当権なりというのが前提になり,古い抵当権の被担保債権は非常に金額が僅少だろうと,こういうことが前提になりますけれども,だんだん,そうもいかないケースが出てきたときには,やはりこういう制度があった方がいいのではないのかという発想が,実務サイドからもあるのかなというところはございまして,そういう意味で,抹消の方法を多様化させておくということ自体にも意味があるのかなというところかと思います。 ○山野目部会長 よろしゅうございますか。   引き続き,いかがでしょうか。   そうしましたら,第1のところは御意見承り,深刻な御異論はなかったというふうにお見受けしますから,細部について御指摘を頂いたところを踏まえ,また不動産登記制度のブラッシュアップのための検討を続けてまいるということにいたします。   それでは,第2の部分について,事務局から説明を差し上げます。 ○佐藤関係官 それでは,資料の7ページを御覧ください。   第2「被害者保護のための住所情報の公開の見直し」について,第6回会議に引き続いて取り上げております。   資料8ページの補足説明2(2)に記載しておりますとおり,第6回会議では,現住所を非公開とする方法として,①住民票上の過去の住所を登記事項として記録する方法,②住所は非公開である旨の表示をする方法,③最小行政区画までの表示にとどめる方法を3案提案いたしておりましたが,いずれの方法についても難点があるとの御指摘がございましたことから,今回の資料では,新たに④住所に代わる連絡先を登記事項証明書に記載する方法を提案しております。   住所に代わる連絡先としては,登記名義人の親族・知人の住所なども考えられるところでございますが,適切な連絡先がない場合もあり得ることから,法務局を住所に代わる連絡先とすることも含めて御提案しております。   また,資料9ページの(3)に記載しておりますが,非公開の期間につきまして,第6回会議においては,一定期間を有効期間とし,その後は延長は可能なものとして御提案していたところでございますけれども,延長の手続を失念するおそれがあるなどの前回の御指摘を踏まえ,非公開の措置を取り下げる旨の申出がされない限り,非公開の措置を継続することと改めて提案させていただきます。   以上の点を中心に,被害者保護のための住所情報の公開の見直しについて,御意見を賜りたく存じます。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料7ページ,第2の被害者保護のための住所情報の公開の見直しに関し,基本的に,この方向性について賛成します。被害者保護のために様々な配慮をした提案になっていると思います。   対象の範囲を拡大する方向ということも賛成ですし,非公開の方法について,相当事務手続も増えると思うのですが,法務省を連絡先とするというところまで踏み込んで提案してくださっていて,これも評価できると思います。また,取下げのない限り非公開を継続するのを原則とする点も,それでよろしいと思います。   最後に検討すべきこととして,(5)の訴訟への対応があります。訴訟が起こされたときには,本人にきちんと通知がいくようにしなければならないし,訴訟を提起する側への配慮も必要だと思いますので,裁判所が登記名義人等の住所を明らかにすることが必要であると認めて,調査嘱託をした場合には,登記名義人の現住所を回答するということも一つの考え方だとは思います。しかし,DV加害者が,DV被害者に対して,訴訟を起こしさえすれば,DV被害者の住所が開示されるというのでは困ります。そこで,ここで想定されている裁判所が必要であると認めるというのは,どのような場合を想定されているのか,お聞きしたいと思います。   場合によっては,現住所を回答しないまま,例えば法務省を連絡先としている場合に,訴訟の提起,訴状の送達も含めて,法務省がずっと間に入り続けて,最後まで被告の現住所を明らかにしないまま裁判手続が進むということも考えられるのか,それとも,適法に訴訟が提起されれば,原則として,住所を開示する必要性があるということになるのか。この辺りをどのようにお考えになっているのかをお聞きしたいと思います。 ○山野目部会長 それは,村松幹事にも意見を求めますが,裁判所がどのようなお取扱いをなさるかが関わっているとも感じます。   ひとまず,村松幹事が何をお考えになったかお話しください。 ○村松幹事 そもそも,このイメージの問題はありますけれども,調査嘱託のですね。我々からいたしますと,やはりまず不動産登記法の住所を是非見て,それで訴訟を起こしたいという,正にそういうケースを想定しておりますので,どういった訴訟が対象になり得るかといいますと,それこそまず登記関係の訴訟であったり,場合によってはあと,土地の明け渡しとか,そういったケースについては,本来であれば,不動産登記で見ているのだから,そういったものについては,法務局の方でも嘱託に応じるような形を考えればいいのではないかと,こういうふうには考えておりますので,それは一応前提としております。その上で,裁判所の方で必要があると認めるかどうかというのは,基本的には裁判所の方の運用の問題なのかなというふうには感じておりますけれども,ただ,今申し上げたような訴訟に関していえば,それは,住所が分からないということであれば,嘱託は出てくるのかなという気はしておりました。   その上で,では,法務局が間に入り続けるのかどうかという点のイメージは,どちらかというと,間に入るというよりは,そこから先は訴訟の方で,当事者間でやっていただくのかなという気はしておりましたが,そこでいうところの前提としては,DVの被害者ということであれば,夫婦間の訴訟ではないようなケースではそうなるのかなという想定ではございまして,夫婦間訴訟でどうなってくるのかといった辺りは,ちょっとまだ余り,そこまではよく考えておらなかったんですけれども,より一般的な二当事者間の紛争であれば,そういった形で,さすがに情報はお示しするのではないかということを考えています。 ○山野目部会長 法務局がずっと間に入り続けるという運用の仕方というものを,あながち否定しませんけれども,私が言うことがよいかどうか分かりませんが,いささか,法務局は今の人員で,これ以上,質的に重大性を伴う業務を増やしていただくことは,ほぼ不可能な状況になってきています。   何か,それについて打開が得られない限り,不動産登記のことに関わって,ずっと何かを持ち続けるということは,法務局の本来の業務であれば,忙しかろうが何だろうが,してくださいということになりますけれども,民事訴訟が提起された後もずっと,その民事裁判が終局するまでって,相当に時間を要することが事案によってはありますから,その間,ずっと法務局が間に入り続けるということは,なかなか,いろいろな意味で難儀ではないかというふうに感じます。   また,家庭裁判所で扱う家事事件の中には,今でも現実に,一審の家庭裁判所と,抗告されて,いわゆる家事抗告がされて,更に審理が続くというように長い期間にわたって,当事者の住所が知られないようにする取扱いをせざるを得ない場面はあるであろうと想像しますから,そういうところで現に扱われているところを,家庭裁判所に限らず,通常訴訟を扱う,地方裁判所などが扱う通常の判決手続の方においても応用していっていただくような何か工夫も,引き続き裁判所の方と御相談していかなければいけないであろうとも感じます。 ○佐久間幹事 全く勘違いかもしれませんし,勘違いでなかったときに,より積極的に何かあるわけではないので,文句だけ付けるようなことになるかもしれないんですが,現住所を非公開とする方法を多様化することに関して,④で御提案なさっていることにつきまして,これで本当に問題の解決になるのかなというのが,疑問に思ったところがございます。   それは,まず登記名義人の親族・知人の住所ですと,犯罪加害者がここを訪ねていって,結局この人たちが迷惑を被るという,この①ですか,で問題とされていたのと同じようなことが起こり得るのでないかということが,何となく私は心配になるのと,あと,弁護士事務所はいいのかもしれませんが,法務局を住所にしてしまうと,ああ,この人のは法務局だな,そうすると,②と同じだなということになってしまわないんでしょうか。法務局が住所になっている人がほかにいなかったら,被害者であることが特定されてしまうのではないかというふうに思ったんですが。勘違いでしたら、勘違いですの一言でも結構なんですが。 ○村松幹事 そういう意味では,法務局の住所を検索していただいて,あら法務局じゃないかということになると,そういう意味では,ああ,この人何らかの事情があったんだなということは分かってしまいます。そこはもう,ただ,一見しては分からないという点だけがメリットでして,非公開になりますと,住所を何も載せないで空欄にすると,登記を見た瞬間に分かってしまうわけですけれども,そこがメリットであるということです。   それから,御指摘あるように,どういう方かにもよると思いますけれども,親族・知人でも嫌だし,弁護士も適切な人がいないということも当然あり得ますので,そういったケース,どうしてもということであれば,法務局というのも考えられるかなというところで,前二者で対応できる方は,できれば対応してもらいたいですし,その方がスムーズだということもあると思うので,そこはオープンではありますけれども,最後,ほかにはやりようがないだろうというところで,法務局ぐらいしかないのかなという,そういうことです。 ○山野目部会長 佐久間幹事,よろしいですか。 ○佐久間幹事 はい。 ○山野目部会長 諒解しました。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 すみません,それで,法務局の仕事を増やしてはいけないという話が出ましたので,言いにくいのですが,非公開の期間について,取り下げるまでは非公開になるというのは,一見,DVや犯罪の被害者を助ける大変よいことのように思われるのですが,一定の要件が満たされているときの保護手段だろうと思うんですね,住所を公開しないということは。   例えば,婚姻届の不受理願とか,離婚届の不受理願とか,何らの要件を満たさなくても申し出ができるというものと違って,やはり要件があって初めてできるものですので,要件が欠けたにもかかわらず,取り下げがないからといって,ずっと匿名状態が続くというふうには,できないはずなのではないかという気がするわけです。   そうなると,取り下げるという旨の申出をしないときにでも,職権によって,要件が欠けているということをいって,それで住所を出してしまうという手続が,本来的には用意されなければいけないのではないかという気がするのですけれども,何か手続を組むのが非常に難しそうだし,法務局がそんなこと調べられるかと,調べられないわけですので,なかなか難しいのですが,当然のように存続するという制度設計は,実は難しいのではないかということで,何らかの何か歯止めとかチェックを置くということが必要なのではないかと思います。 ○村松幹事 そういう意味では,なかなかこの,住所の公開部分だけですけれども,DV被害者を中心に,住所を住民票であったり,今回は登記ですけれども,その公開する部分についてブロックを掛けるときに,どういう要件でブロックを掛けるのかと,非常に難しい問題がございますので,もちろんいろいろな相談をしていただいた上で,ここにくるというところではあるんですけれども,では実際,本当にDVの被害があったのかというところを法務局側で判断することが適当かというと,一般的にはやはり,そういうのはよろしくないという話であると思いますので,そういう部分はございます。   ございますが,ただ他方で,では漫然と,ずっとやっていいのかという部分もありますので,まだ必要はございますでしょうかというようなことを,折に触れてといいますか,機会に応じてお尋ねするということは,もちろんあるのではないかと感じております。 ○山野目部会長 それは,幾ら法務局が忙しくても,登記業務に関連する重要な事柄であって,道垣内委員御指摘のとおりですから,やっていただかなければなりません。そのために人員が必要であれば,今ここに民事局の首脳が皆さんおられますから,しっかり予算と人員の要求をしていただくことになります。   引き続き御意見を頂きます。いかがでしょうか。大体ここにお示ししているようなことでよいでしょうか。   例えば,そうしますと,この制度の適用があると,千代田区九段南1丁目1番15号というのは東京法務局本局の所在地ですが,それが登記記録ではなくて登記事項証明書に記載されます。それを一般の方々に交付をするということになります。   取扱いの細部はこれから考えていくことになりますが,1番15号の後に,東京法務局ないしは東京法務局気付という記載を加えるかどうか辺りは,考え込まなければなりません。露骨に東京法務局というふうに書くと,先ほど佐久間幹事から御指摘があったように,これは特別な扱いを受けている人であるということが明らかになるということもあります。   ただし,入れないと今度は,ここに宛てた書面が,郵便が迷子になってしまうおそれもあって,いろいろなことを考えながら,どのような記載にしたらいいかということを考えていくことになります。   それから,いずれにしても,九段南1丁目と書くと,たまたま被害者が千代田区九段のマンションに住んでいるというときには,加害者がその生活圏にやってきて,その辺をうろうろする可能性がありますね。法務局の前を散歩していた被害者と加害者がばったり出会うというようなことも,心配し始めれば,なくはありません。法務局など国の機関の住所を記載して,登記事項証明書を交付するというときにも,東京法務局本庁で具合が悪いときには,例えば八王子支局の住所を記載してもらうとか,何らかいろいろな工夫をこれから考えていかなければならないと感じますけれども,ただし,それを恐らく,改正される不動産登記法の法文に全部書き込むことはできません。基本的な趣旨を法律や政省令に定めた上で,細部の運用をまた示してもらうことになるであろうと予想します。   引き続き,この被害者保護について,御意見をお出しいただきたく望みますが,いかがでしょうか。特段ありませんでしょうか。   特段,委員の皆様方から御異論がなければ,この方向で,事務当局において検討していただくことにいたしますが,御議論いただいたことは,国民生活の観点からは重要なことでございますから,私から一言申し上げます。   被害者保護の見地から,登記事項証明書における登記名義人の住所の記載の特例を設ける際には,併せて,特例方式を含む電子申請の際の登記完了証の記載事項や前住所通知の要件など,制度運用についても必要な検討が行われることがあってよいと考えます。事務当局においては,そのようなことについても可能な限りで御勘案ください。   また,法務省事務当局においては,この部会の事務局という立場とは別に,不動産登記制度の実地運用に当たる観点から,その組織体制として,一般には定型的な処理が要請される登記事案であるにもかかわらず,個別事案の特性を踏まえて扱わなければならない人権擁護の感覚が交錯する場面にあって,くれぐれもアクシデントが起こらないよう,法務局職員のために研修の機会などを通じ,問題意識の涵養を促してほしいと望みます。   加えて,司法書士会にもお願いがあります。いわゆるペア・ローンの離婚の際の処理などにおいて,本来は隔離されることが望まれる関係者の間に錯綜した接触を避けることができない手続の局面があり得ることを踏まえ,登記原因証明情報を差入方式にしたり,複数の文書にしたりするなど,取引決済の適切な方法の調査研究を進めていただきたいということもお願いさせていただきたいと考えます。   特段のことがなければ,部会資料12についての審議を了しますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,本日の内容にわたる議事を了したところで,事務当局から次回日程や,そのほかの事項についての案内があります。 ○大谷幹事 御案内いたします。   次回の日程は,再来週,10月8日の火曜日,また午後1時からですけれども,法務省第1会議室で開催させていただきます。テーマといたしましては,既に配布いたしております遺産分割の期間制限のほか,これまで検討した論点のうち再度議論を行っておく必要があると思われるもの,相続財産管理なども先ほど少し御説明ありましたけれども,この辺りも取り上げたいとは思っております。   それから,次々回でございますけれども,これは10月29日火曜日を予定しておりますが,その部会で,地方公共団体の方からヒアリングをするという方向で,今,調整をさせていただいております。またその詳細が決まりましたら,次回御報告をしたいと思います。 ○山野目部会長 ただいま案内があったことのうち,最初は,次回会議が10月8日であり,会場が法務省A棟20階であるということの御案内を確認いたします。   それから,引き続きまして,ただいま大谷幹事から若干,内容について御相談しておく事項のお話がありました。次々回になりますが,10月29日火曜日の部会会議におきまして,土地所有権の放棄に関して,地方公共団体の団体からの精通者の意見聴取,いわゆるヒアリングを実施したいというふうに考えております。   どの団体のどの方をお招きして,どういう事項をお尋ねするかについて,ただいま御案内申し上げた大枠の中で,私の方にお任せいただきたいと望みますが,このような段取りで進めてよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございます。   それでは,ヒアリングにつきまして,10月29日実施の方向で,事務当局とともに検討を続けるということにさせていただきます。   これをもちまして,第7回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-