法制審議会 民法・不動産登記法部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  令和元年10月29日(火)自 午後0時59分                      至 午後6時06分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第9回会議を始めます。   御多用の中,委員,幹事,関係官の皆様におかれましては,御出席を頂きましてありがとうございます。   本日は,阿部委員,潮見委員,増田委員,門田委員,宇田川幹事,衣斐幹事が御欠席です。   事務当局から配布資料の説明を差し上げます。 ○佐藤関係官 今回配布させていただいておりますのは,部会資料17から19まで及び参考資料4に加えまして,昨日全国知事会,全国市長会及び全国町村会の3団体から御推薦いただきました参考人から御提供いただきました資料を,事前送付させていただいております。また,本日は,前回配布させていただいております部会資料16「不動産登記制度の見直し(4)」も併せて使用させていただきます。   本日,部会資料17から19まで及び参考資料4,並びに各団体から提出された資料につきまして,お手元に配布させていただいておりますが,部会資料16も含めて,お手元にないようでしたら,お知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 お手元に資料はそろっているでしょうか。   それでは,本日の審議を始めます。   前回会議において御案内を差し上げましたとおり,本日は,この後,所有権放棄の論点に関連して,全国知事会,全国市長会,全国町村会から推薦いただいた参考人からの意見を聴取する予定でございます。その点を含め,本日の具体的な進行について,大谷幹事から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 御説明いたします。   先ほどの部会資料16,前回の積み残しから,まずスタートさせていただきますけれども,14時からヒアリングを始めるという予定にしております。したがいまして,14時までは,中間試案の取りまとめに向けた部会資料17以降を配布させていただいておりますけれども,できるところまで御審議を頂きまして,一旦少し休憩をとり,会場を設営させていただいて,14時からヒアリングを実施する予定でございます。   大体,各団体,3団体から20分ずつ程度お話を伺った上で質疑応答を行いますので,そうすると,最大で16時まで,このヒアリングの関係の御審議を頂くということを考えております。   また,その後休憩を一度とりまして,再度部会資料の御審議に入っていただくということを考えております。   どうぞよろしくお願いします。 ○山野目部会長 ただいま御説明申し上げましたとおり,14時を目途として,それまで部会資料を基に審議を進めますが,その14時から参考人からの意見聴取を行うという段取りになります。   本日も長時間になりますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。   初めに,部会資料16の不動産登記制度の見直し(4)をお手元にお取り上げください。   前回審議におきまして,その中の「第3 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策」のところが未了になっておりました。部会資料16のページ数でいいますと,11ページからになります。この部分について,事務当局から説明を差し上げます。 ○佐藤関係官 それでは,部会資料16の11ページの最終行から,第3の「外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策」について,御説明いたします。   本文の前段では,外国に住所を有する登記名義人は,氏名又は名称及び住所のほかに,連絡先を登記することができるものとすることについて,取り上げてございます。現在は,外国に住所を有する場合であっても,氏名又は名称及び住所のみが登記されておりますが,第6回会議での御指摘等を踏まえまして,これらのほかに,連絡先を併せて登記することにより,その所在を把握する方策を提案しております。   連絡先の内容といたしまして,13ページの3(1)では,日本国内における代理人の氏名,住所等を記録することを例示して提案しておりますが,これ以外に適切な連絡先としてどのようなものが考えられるかにつきましても,併せて御意見を頂けますと幸いでございます。   次に,本文の後段では,外国に住所を有する者が不動産登記の申請をする際の添付情報の見直しについて取り上げております。   12ページの2に記載しておりますが,所有権の登記名義人となる者については,正確な住所を登記するとともに,虚無人名義の登記を防止するため,登記申請時に,添付情報として住所を証する公務員が職務上作成した情報を提供する必要があり,具体的には,こちらに記載している①から④までのような資料を提供することとされております。   もっとも,14ページの4に記載させていただいておりますとおり,外国に住所を有する外国人の場合には,実際にどのような書面が必要であるか,その正確性がどの程度のものであるかについて,必ずしも明確でない部分があり,運用上の幅が広くなっているとの御指摘がございます。   そこで,所有権の登記名義人が外国に住所を有する外国人である場合に,必要となる住所証明情報について,法令上限定を付すことについて検討しております。具体的には,日本国政府の承認した外国政府又は権限ある国際機関の発行した書類等で,自然人の場合にはその氏名,住所及び生年月日の記載があるものに,法人の場合にはその名称及び本店又は主たる事務所の所在地の記載があるものに限定することが考えられますが,現在の実務上認められている方法よりも限定されることになりますことから,その是非についても御意見を頂きたく存じます。   説明は以上でございます。 ○山野目部会長 御案内を差し上げた部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。   外国に所在する土地所有者に連絡を取りやすくする方法の一つとして,連絡先を登記することに賛成いたします。   具体的な連絡先として考えられるものとしては,例えば,国税通則法や地方税法では,日本国内に住所を有しない納税義務者について,納税管理人を置くことが義務付けられています。したがいまして,もし納税管理人が選任されていた場合には,連絡先としてこの管理人を書くということもあるかと思います。法的な効力が期待できるという意味で,確実な連絡先になるかと思います。   賛成の意を表明した上で,2点補足をしたいと思います。   1点は,この連絡先は飽くまで補助的なものであって,連絡が円滑に行われるかどうかを実質的に審査するまでの必要がないとのことですが,これまで行われてきました個人情報保護の観点からの住所公開についての議論を考えますと,少なくとも連絡先として記録される人の同意を得ていることの確認は必要かと思います。第三者が自由にこの情報を閲覧して連絡ができるようになるわけですから,自分が知らないうちに名前が記載されていたということのないよう,連絡先となる方の同意を得ているということは,最低限確認が必要だと考えます。   それから,もう1点ですが,こうした所有者に自発的に連絡先を書いていただく方法と併せて,登記官が職権で調査をできる法的な根拠を備えておくことが,並行して必要であると考えます。   この部会資料の前半では,登記官が戸籍や住基ネットから死亡情報,あるいは住所や氏名の変更情報を把握して,登記を促進していくことが検討されています。しかし,外国人,すなわち戸籍も住民票もない方々については,こうした新しい方策は適用できません。   外国人の問題というのは,何かイデオロギー的に感じられてしまう側面もあるのですが,安全保障上の問題は別の場で議論することとして,この部会で議論する論点としては,戸籍も住民票もなく,不動産登記簿がほぼ唯一の所有者情報であるという土地所有者が一定数存在すると。その方々への連絡方法や登記記録の更新について,どのような法的手段を備え,登記を促していくのがいいのかということだと思います。   この資料の前半の方で,国内に戸籍や住民票を有している人々についての方策が議論されてきたのですから,この国外にいて,日本の法律が及びづらいところで売買や相続が起きていく土地所有者についても,こちら側からのどのような働き掛けが可能なのかということを,併せて備えていくことが,バランスとして必要ですし,許容できるものであると考えます。   具体的には,最後の登記から一定期間,例えば,30年経過している外国に所在する所有者の登記記録については,必要な場合には,登記官が調査を行い連絡をとって登記を促すことができるという,規定を設けておくことが必要であると考えます。 ○山野目部会長 外国人又は外国法人が登記名義人となる場合の登記の方法について,吉原委員から種々の御注意を頂きました。   中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   外国に住所を有する登記名義人に関し,それを把握する方策を進めるということについては,反対はございませんでした。  そのうえで,外国人又は在外邦人で,登記上の住所から現住所に至るまでをつながないことには,判決又は和解調書を取って債務名義を整えたところで,実際は登記が受け付けられないという事態が,実務上生じているという指摘がございました。   せっかく判決を取っても,現住所とつなぐために,登記名義人に在外公館で居住証明書を取ったりというようなことを依頼しなければならず,それによって単独申請可能という事態ではなくなってしまっているという実務上の指摘がございましたので,現住所を把握できるということだけではなく,さらに,それを証明することが簡単にできる,又は法務局ではそれがつながっているということになれば,債務名義をもって登記できるというふうな取扱いにつなげられないだろうかということです。 ○山野目部会長 承りました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   そうしましたならば,お諮りしている部会資料の第3の部分につきましては,ただいまお二人の委員から御指摘を頂いた点を中心に,事務当局の方で引き続き検討いたします。お二人の委員から御発言を頂いたことを踏まえ,事務当局に対して,併せて要望を申し上げます。   連絡先を,権利に関する登記である外国人又は外国法人が登記名義人となる登記について,登記可能なようにすることとし,そのことを法令上明らかにするという方向で検討が進んでいくものと思われます。その際に,連絡先の登記,それから連絡先を変更する登記を適切に,適切にというのは,個人情報の保護等で問題がないような仕方で,かつ,実務上負荷の少ない安定した形で円滑に行うことが望まれるところであります。   例えば,これらの登記の申請を審査する際に,登記原因証明情報を必要なものとして求めるかどうか,それから,そのほかに,添付情報としてどのようなものを考えるかといったような点について,更に検討を深めていただきたいと望みます。吉原委員から御指摘があった,連絡先に個人を掲げられる場合の,その個人情報の保護のような観点も,その際御留意を頂きたいと望みます。   登記原因証明情報に関しては,金融機関の取扱支店の添記を認めている民事局長の昭和36年5月17日の通達の下での従前の扱い等を参考にして,ここでの適切な取扱いを更に検討していただくことがよろしいと考えます。   この部分について,ほかに御意見がなければ,先に進んでよろしいでしょうか。   それでは,部会資料17をお取り上げいただきます。   ここから,中間試案のたたき台の御審議をお願いすることになります。部会資料17に限りませんが,中間試案のたたき台の審議に関して,大谷幹事から提案がございます。 ○大谷幹事 中間試案の取りまとめを年内にということを目指しておりますというのは,前に御説明いたしましたけれども,そうすると,今回と,それから次回,11月19日,それから12月3日と,3回で御議論を頂くということになります。   資料が大変大部になってまいりますけれども,申し訳ございませんが,今まで事務当局の方から,各項目について簡単に御説明をした上で御審議をお願いしておりましたけれども,各項目ごとに御議論いただくという形はもちろん,今までどおりでございますけれども,最初の御説明を割愛させていただくということでいかがでしょうかと考えております。 ○山野目部会長 ただいま,大谷幹事の方から提案がございました。中間試案を年内にまとめるという,時間的に密度の高い仕事がこの部会に要請されていることとの関連の提案がございますが,委員,幹事の皆様方の御理解が頂けるものであれば,そのように進めるということにいたしますけれども,いかがでしょうか。   よろしいですか。   しかし,それでいくとなると,さあ,次どうぞ,と中身をいきなり御議論くださいとなるものであり,なかなか委員,幹事の皆様方に御負担をお掛けするだろうとは考えますから,どうぞ,あらかじめ部会資料をお読みになってきておられるとは予想いたしますけれども,御不審の点は遠慮なく御発言を頂いて,御意見とともに御質問のような形でお出しいただければ有り難いと望みます。   それでは,ひとまずそのような仕方で進行を試みます。   早速でございますが,部会資料17の中の,部会資料17は共有制度の見直し(1)でございますが,この中の「第1 通常の共有における共有物の管理」の部分,それから,第1の2の部分,第1の2というものは,5ページ,「共有物の管理に関する手続」のところまで,部会資料のページでいきますと,1ページから5ページの範囲で御意見を承りたいと望みます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料1ページの第1の1について,2点,確認と質問をさせていただきたいと思います。   1点目ですが,第1の1③3行目と(注2)で「特別の影響」ということが記載されていますが,これは,どのようなことを意味するのでしょうか。   2点目は,1の②が適用される事例がどのようなものかを,確認したいと思います。遺産共有の場合ですけれども,日弁連ワーキングの理解では,典型的なものとしては,相続開始後に相続人の1人が他の相続人に無断で利用を開始したような場合を想定しているのであって,例えば,相続開始前の時点で,被相続人が所有する建物に相続人が同居していた,そういった場合には,被相続人と当該相続人との間で,黙示の使用貸借が認められるような場合があるだろうが,このような場合には,別途使用貸借の終了が問題になるのであって,②の規律で直ちに明渡しを求めることはできないと理解しているのですが,そのような理解でよろしいでしょうか。 ○大谷幹事 今,2点御質問を頂きました。   1点目の特別の影響というのはどのようなものかということですけれども,やはりこれ,特別な影響って,元々区分所有法を参考にして言葉を使っておりますが,単に住んでいるというだけではなくて,さらに,そこから住んでいる人を出ていかせようというときには,住んでいるのを出ていかせる,非常にかわいそうな事情があるというようなことを想定して,権利の濫用に近いようなところかなとは思っておりますけれども,単に住んでいるだけで,特別な影響があるということではないのではないかと考えておったところでございます。   2点目については,遺産共有の場合,最高裁判例で認められている被相続人と同居していたような相続人の場合はどうなのかという,今御指摘にあったように,使用貸借契約が成立していたと,それが存続していると認められるものについては,別途使用貸借契約の解除が認められるかどうかということが考えられるべきであって,直ちに出ていけと言えるわけではないとは考えております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,よろしいですか。 ○蓑毛幹事 はい。 ○山野目部会長 引き続き承ります。 ○中田委員 ただいまの蓑毛幹事の御質問とも関係するんですが,1の②の共有物を利用するものという概念について,二つお伺いしたいと思います。一つは,共有物を利用する共有者というのが③で出てきますが,それをあえて区別しておられるのはなぜなのかということでございます。   もう一つは,この利用という概念については,ただいま蓑毛幹事の御質問と,それに対するお答えで明確になったと思いますけれども,共有とは別の権限に基づく利用は除かれるのだという趣旨だと思いますが,それは明確にしておいたほうが分かりやすいのではないかと思いました。 ○大谷幹事 今の一つの共有物を利用する者というものですが,これは,共有者から借りている人という場合があり得るということですので,第三者が含まれているということで書いております。   もう1点については,確認しておいたほうがいいですね。 ○山野目部会長 中田委員,よろしゅうございますか。 ○中田委員 では,意図的に第三者も含むということであれば,なおさらやはり,共有関係と,それからそれ以外の債権債務関係とは別だということを整理しておいたほうがよろしいかと思いました。ありがとうございました。 ○大谷幹事 ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○今川委員 まず,(注2)にある特別の影響を及ぼすときという要件について,蓑毛幹事のお話とも関連するんですが,その要件を仮に設けたとして,補足説明2の(2)が述べているとおり,結果として,無断で利用を開始した者が保護されることとなるので,(注2)のような規定は設けずに,本文どおりの規定とした上で,一般法理によって解決を図る方向でよいのではないかという意見が,内部であります。   それから,(注3)の存続期間が経過したときは,共有者は使用権の消滅を請求することができるとするものについてですが,これは,消滅の請求をするまでは,いつまでも期間が続くということで,共有者の負担がこちらの方だと大きくなるのではないかという意見が,我々の内部でありました。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第1の1の④については,前回ご提案頂いたときにも発言させていただいたのですが,反対する人が明確に存在する場合であれば,確かに使用を一定の期間に制限するというのはあり得るかなと思う一方で,元々想定されていた前提には,そもそも共有者全員の同意を取りたくても,そのうちの1人がいないとか,そういう場合も含まれていたのではなかったかと思います。   そう考えると,ここでこのように使用権が存続する年数をきっちりと決めてしまって,特に賃借権に関しては,土地だったら5年が上限だよ,と書いてしまうことによって,かえってマイナスの影響が出るのではないかということは,やはり懸念しておるところです。   共有者の中に明確に反対する方がいるという場合であれば,(注)に書いていただいているような消滅請求という形を取ることでその共有者の意向を反映するというやり方はありうるかとは思いますけれども,この使用行為自体が,常に重大な変更というか,土地などの用途を制限するということに当たるわけではないということは,前回も申し上げたとおりですので,ちょっとそこのところは,もう少し柔軟にご検討いただければと思っております。例えば,地中にインフラ設備を敷設する場合など,土地の使用には大きな制約が生じないという場面についてまで,ここに書かれているルールに縛られてしまうというふうな解釈にならないような形にしていただくことはできないかなというところは,改めてお願い申し上げたいところでございます。 ○蓑毛幹事 先ほどの質問に対する回答を前提としたうえで,日弁連ワーキンググループで出ている意見を申し上げます。   1について,①,③,④は賛成で,②については意見が分かれています。②については,この部会資料の考え方に基づいて,②の規律を設けたほうがよいという意見もありますが,逆に,②は現在の実務を変更するものであり,(注2)のような定めを置くほうがよいという意見もあって,意見が分かれました。   また,(注5)の,物理的な変更を伴う場合であっても,一定のケースでは,各共有者の持分の価格の過半数で決することができるものとするということについて,これを積極的に検討してもらいたいという意見が出ています。現在の共有物についての変更という概念が,少し広すぎるという意見があり,例えば,私道の共有地に地方公共団体との契約で導管を設置するなど,物理的な変更をするけれども,改良を目的としていて,著しく多額の費用が生じないような場合については,管理行為の一種として,過半数で決することができるとすべきであるという意見がありました。 ○山野目部会長 御発言の前段,1の②についての弁護士会の先生方のお悩みは理解いたしました。   それから,(注5)につきしての御要望は受け止めました。松尾幹事を座長として設けられた共有物の利用,管理の在り方に関するガイドラインを精査した上で,法制上更に変更を加える必要があるかどうかという点について,事務当局において検討してもらえるものと思います。ありがとうございました。 ○中田委員 細かいことを含めて3点ございます。   一つ目は,第1の見出しなんですが,通常の共有という言葉が使われておりまして,これは,第2に出てきている遺産共有と対比するという概念だと思います。ただ,これを,いきなりパブリックコメントで読み始めると,ちょっと理解しにくくて,多分,遺産共有もここで考えてしまうのではないかと思います。他方で,第3の持分の売渡請求権等というところでは,通常の共有だけが出てきて,その後出てこないということもありますので,そこは整理していただいたほうが分かりやすいかなと思いました。   それから2点目でございますが,これは,ただいまの蓑毛幹事の御発言とも関係するのですけれども,変更という概念についての検討とともに,処分の概念をどうするのかということも検討する必要があるかと思います。と申しますのは,これは後の方で出てくるのですが,変更又は処分という言葉が出てくる。ところが,251条は触らないので変更しかない。そうすると,251条の変更に法律上の処分が含まれるかどうか,これは議論があるところですけれども,そのことと,後で出てくる処分という概念との関係が余り明確ではない。さらに,その処分という概念には,持分の喪失を伴うものは含まないというようなこともございますので,それは整理していただいたほうがよろしいかなと思いました。   それから,3点目ですけれども,1の④で,土地の使用権が5年ということになっておりまして,これについて別案もあるんだということなんですが,借地借家法との関係についても御言及いただいております。そうすると,全員が同意する処分でない限りは,借地借家法の借地権の設定はできないということになるのかなと理解いたしました。そうすると,土地の有効活用しにくいかなという懸念がありますのと,借地人側からすると,全員の同意があると思っていたのに,一部の同意に瑕疵があった場合にどうなるんだろうかということもありますので,その辺りももう少し,更に検討する必要があるかなと思いました。 ○山野目部会長 三つの点の御注意を承りました。   引き続きいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,第1の「3 共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」の部分をお諮りいたします。この部分についての御意見をお寄せください。いかがでしょうか。部会資料5ページから7ページに向けての範囲になります。 ○蓑毛幹事 質問ですけれども,部会資料5ページ,3の②に,「他の共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができない」という表現が出てきます。これまで所有者不明と言っていたものを,要件として定めていこうという現れだと理解しました。それは結構なのですが,同様の表現が他の箇所でも出てきます。所有者,共有者を知ることができず,又その所在を知ることができないと同じ表現を用いているものは,同じことを意味するのか,それとも,条文によってその意味が変わることがあるのか,その点をまず確認させてください。 ○大谷幹事 同じ表現をとっているものについては,同じ概念だと思っています。なお,不在者との関係はどうなのかというようなお話があろうかと思いますけれども,民法でいう不在者は,必ずしも行方不明でなくても,不在者となり得るものでございますので,不在者とはまた違う,生死が不明だというほうの不在者がありますけれども,そちらに近いものとしてイメージをして,調べても分からない,行方不明だというものとして,統一して書いているというところでございます。 ○蓑毛幹事 3について日弁連のワーキングの意見ですが,①②④については賛成だが,③は,反対ないし慎重に検討すべきという意見が多く出ていました。   ③は,変更又は処分の概念が広いことにも関係するのですが,例えば,借り入れをして抵当権を設定するであるとか,長期の借地権を設定する等については,共有持分を喪失することに限りなく近いという意見もあり,そのような場合も含めて③の規律が適用されることについては,慎重に検討すべきだという意見がありました。   一方で,先ほど申し上げたように,変更又は処分に当たるものの中には,改良行為もあるので,そういったものについては,管理の一類型として,④の規律が適用されるようにしたほうがよいという意見がありました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   一つ前に出された中田委員からの,変更とそれから処分の概念の整理,精密化を求める御意見と併せて,ただいまの蓑毛幹事の御意見を踏まえ,今後の検討を進めるということでなければいけないと感じます。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第1の3に関しても,事前に頂いた提案に基づき,経団連を通じて関係各社の意見等を募っているのですが,やはり,この②の「他の共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないとき」と認められるための要件,(注2)では「合理的な範囲の方法」で探索したことが必要,とされていますが,その範囲がどう具体的に定められるかというところは,やはり一番関心が高いところになっております。部会資料17の6ページから7ページにかけて補足の説明も頂いておりますが,実際の運用として,今どうなっているかという話を聞きますと,例えば,同じような,山の中のほとんど管理されていないような土地を一時的に使用するという場合であっても,裁判所によって,「分からない」ということをどこまで証明しないといけないのかというところで,運用はかなり分かれているようです。なので,判断の予測可能性を高める,という観点からは,具体的に何か要件を立ててルールを作っていただいたほうが,今後安定するのではないかという意見は出ております。   ただ,一方で,余り画一的な要件になってしまいますと,今まである程度柔軟に運用していただいているところが,逆にかえって硬直的になるという可能性もあるのかなと思いますので,ちょっとそこのところは,両方の側面がある,ということも踏まえて御検討いただければと思っております。   あと,土地の現況とか,管理の状態としては同じであっても,それが都内の一等地の話なのか,それとも財産的価値の低い土地の話なのかというところで,手続きを進めるために求められるべき証明のレベルって実は違うのではないかということも,実務的な感覚としては思うところがございまして,それを要件としてどう書くかというのは,かなり難しい話だとは思いますけれども,そういったところの実務のニーズも拾っていただいた上で,どういった形で定めるかというところを御検討いただければと思っております。 ○今川委員 我々も,3の同意取得の方法については,基本的に賛成です。   今,藤野委員もおっしゃいましたけれども,「共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができない」ということについては,合理的な範囲で探索をすることは,当然前提とすべきだと思っております。我々からすると,一定程度厳格にしていただいたほうがいいと思っております。具体的な方法を民法に定めるかどうかは別として,何らかの基準はやはり必要だと思います。   それから,本制度は,変更と処分の違いというか,概念をどうするかという問題はあるんですが,いずれにしても,処分行為を含むことが前提となっておりますので,内部関係の問題にはとどまらず,第三者が出てくる。そういう関係が当初から予定されていることになりますので,取引の安全の観点というのがどうしても必要になってきますので,公的機関の関与が必要ではないかという意見であります。 ○中村委員 3項によりまして,このように手続を進める方策が進むということについては賛成なんですけれども,その場合に,催告ないしは公告を受けて,確答しなかった者,又は確答したけれども,少数者になってしまったために,反対なのに進んでしまった者,特にこのような人たちに対して,結果としてこうなりましたという通知というのが,ここでは設けられていないのですけれども,確か第2回の議論のときに,佐久間先生がこのような場面でのコミュニケーションということを,御指摘なさっていらしたと思います。知らないうちに進んでいるということがないように,結果の通知なども入れ込んでいただく方がよろしいのではないかと思いました。 ○大谷幹事 今の点につきましては,5ページの2の共有物の管理に関する手続のところで触れております。   前回確かに,複数の委員,幹事から,コミュニケーションというものをきちんとすべきではないかという御意見がございました。ここで取り上げておりますけれども,確かにそういう,共有者に対する意思表明の機会を保証するというようなことも重要だろうと思う一方で,共有者全員を調べ上げて過半数で決めたというときに,全員に対して通知をするということの負担というのもありそうですので,その辺りのことの両方の観点を踏まえて,引き続き検討としておりまして,こちらについても,パブリックコメントで意見を頂きたいなと思っていたところでございます。 ○山野目部会長 事前と事後のコミュニケーションが大切ですという問題整理をしてくださったのは,佐久間幹事もそうでいらっしゃいましたけれども,山田委員からあの際にお話しいただいて,今,中村委員に改めて確認していただいたことであり,重要なことですから,引き続き検討しなければなりません。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,この3の共有物の管理に関する項について,同意取得の方法に関しては,総じて,方向として賛成をお述べになる意見が多かったと受け止めますが,繰り返し申し上げませんが,局所については様々な御意見を頂きました。取り分け,共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができないという概念を,概念としても更に可能な限り精密化し,加えて,具体的なイメージが得られるような説明を今後していくということが重要であるということが,複数の委員,幹事から御指摘いただいたところであります。   本年6月に施行された所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法2条の定める局面で,所有者を探索するための努力をどのように進めるかということが,国土交通省が用意したガイドラインで,今,実地の運用が始まっているところであると理解しています。そのような場面で,具体的に課題として認識されることや,設例として参考になるもの等を収集して,こちらと,必ずしも局面は同じでありませんけれども,参考になる部分が多いと感じますから,法務省事務当局において,さらなる具体的な説明ができるように努めることといたします。   先に進んでよろしいでしょうか。   第1の「4 共有物を使用する者と他の共有者の関係等」の部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 確認なんですけれども,これは,過半数の決定を必要とするという場合に,過半数決定を得て使用している者にも当てはめる規定として設けられているのでしょうか。その場合は,デフォルトルールでしょうから,協議等によって無償とすることが可能であることは分かっておりますけれども,そういうこととして設けられているのでしょうか。それとも,権限なく使用しているというか,例えば,過半数決定を経ずに使用している共有者を念頭に置いた規定なのでしょうか。どちらとお考えになるか,質問させてください。 ○大谷幹事 前者の方の定めがあったとしても,これが適用されるということを前提としてお書きをしております。 ○佐久間幹事 別にそれで結構だと思うんですけれども,そうすると,デフォルトルールであるということは書かなくても分かるだろうということでよろしいでしょうか。 ○大谷幹事 そうですね,結構です。 ○山野目部会長 引き続きいかがでしょうか。   特段,ここのところはよろしいでしょうか。   それでは,その次は,部会資料の8ページから14ページを一括してお諮りします。すなわち,第1の「5 共有者が選任する管理者」,第1の「6 裁判所が選任する共有物の管理者」,第1の「7 裁判所による必要な処分」,この範囲について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料8ページからの「共有者が選任する管理者」について,質問です。   部会資料9ページの(3)の「管理者の権限等」ですが,まず,(3)の①で,「管理者は,総共有者のために,共有物の管理に関する行為をすることができる。」と書いてあります。この「総共有者のために」ということは,どのような意味があるのか,何を意図して記載しているのかを確認させてください。   一つの考え方は,管理者が行為をしたことについての,効果の帰属を意味する。つまり,過半数で選任された管理者であっても,その管理者が行った行為の帰属については,総共有者に帰属するという意味で書かれているのでしょうか。それとも,そのような意味もあるけれども,さらに管理者の善管注意義務を基礎付ける考え方として,「総共有者のために」という文言を用いているのか,これについて確認したいと思います。   もう少し言うと,(5)の「委任に関する規定の準用等」のところには,「管理者の権利義務は,委任に関する規定に従う」と書かれています。この「委任に関する規定」と書かれていることには,どのような意味があるのでしょうか。管理者は,共有者の過半数でもって選任されますので,過半数の者が委任者であり,管理者が受任者という法律関係になるのでしょうか。特に(2)では,共有者の過半数でもって共有物の管理に関する事項を定めた場合には,管理者は,これに従うとなっていますので,善管注意義務は過半数の選任をした者に対して負うのでしょうか。  まとめると,管理者は,自己を選任した過半数の共有者に対して善管注意義務を負うのか,それとも総共有者に対して善管注意義務を負うのか,というのが質問です。  また,②にある共有者のために誠実かつ公平にその権限を行使する,この共有者は全共有者を意味していると思うのですが,善管注意義務と誠実公平義務との関係についても,どのような整理をしているのかをお聞かせいただければと思います。 ○脇村関係官 まず,(3)の共有者のためについては,ここについては,端的には,効果帰属のことを中心に考えておりました。ここのためにという表現は,もしかしたらほかの表現があるのかもしれませんが,少なくとも(3)はそう考えていました。   (5)の委任関係についてなんですけれども,ここについては,効果帰属を全共有者の関係でするのだということを前提にしますと,過半数で選任したケースについても,受任者の関係に立つ人を実際に選任した過半数の者に限っていいのかというのは,は気になっているところでございまして,そこではやはり,全員の関係,総共有者といいますか,の関係で,善管注意義務を負うということでいいんではないのかなとも思っていたところでございます。ただ,それが本当にいいのかどうかについては,ちょっと私も,若干気になったところでございますので,是非御意見いただければと思っております。   なかなか効果帰属と負うという意味では,本人と依頼者の関係に近い,頼んではいないとしてもですね,ということからすると,共有者全員との関係で負うという考えなのかなとは思うのですが,もしかしたらちょっと変なのかもしれません。是非,すみません,ちょっと自信がないのですが,教えていただければと思っています。 ○蓑毛幹事 私では教えることなど出来そうにないのですが・・・。この管理者は,総共有者に対して,善管注意義務を負うということで理解しました。脇村関係官がおっしゃるとおり,共有者が選任する管理者の権限と義務については,実務上,非常に難しい問題が生じ得ると思っています。この管理者が,過半数の共有者によって選任されるということは,過半数ではない,少数の共有者とは意見が対立している場面で選ばれるということを意味します。そして,この管理者は,総共有者に対して善管注意義務と誠実公平義務を負うのですが,必ずしも,共有物の管理について広い裁量を有していている訳ではありません。(2)で,過半数の者が共有物の管理に関する事項について定めた場合には,これに拘束されますが,この共有物の管理に関する事項については,事案によって,過半数の共有者と少数の共有者との間で,意見が分かれていたり,利害が反していたりするケースも考えられます。また,(4)で,過半数の共有者は,いつでも,特に理由がなくとも,管理者を解任することができます。   このような立場に置かれた管理者が,どのような行為規範に基づいて,権限を行使するかは,非常に難しい問題だと思います。少なくとも,過半数の共有者が管理に関する事項を定めた場合には,管理者が,それに誠実に従って行為をしたときは免責されるという定めを置くべきだと思います。 ○山野目部会長 ただいま御議論になりました5の(2),(3),(5)の関係につきまして,御意見がおありの方がほかにいらしたら,ここでお出しおきいただきたいと望みますが,いかがでしょうか。 ○山田委員 箇所としては多分同じです。(3)の①を中心に申し上げます。   「共有物の管理者は,総共有者のために,共有物の管理に関する行為をすることができる」という規定で,これは,効果の帰属を狙ったものだというお話ありました。   先ほど,ちょっと別の局面ですが,区分所有法に倣ったという箇所がありました,ここの説明ではありませんが。区分所有法でこの管理者の行為が区分所有者に帰属するという問題については,例えばですが,26条にあります。いろいろと違いますので,簡単に比較していいかどうか分からないんですが,恐らく対応する条文は26条の2項で,区分所有法では,管理者はその職務に関し,区分所有者を代理するという表現をとっているんですね。同じ意味なのかどうかということが,一つ質問です。   そして,あともう一つは,建物区分所有における管理者については,同じ26条の4項で,管理者は規約又は集会の決議により,その職務に関し,区分所有者のために原告又は被告となることができるという,訴訟行為についても一定の要件を定めた上でできるということを,あるいは,するためにはどうしたらいいかということを定めています。訴訟についてここで議論している管理者はどういうイメージでいらっしゃるのかなと,この共有物の管理に関する行為をすることができるということの持っている意味との関係で,今の段階で事務局に御用意があれば,お話しいただければと思います。 ○脇村関係官 まず,区分所有法との関係で,この代理という表現を使わなかったという点でございますが,ここについては,今の段階で決め打ちをしているわけではないという前提なのですけれども,先ほど来出ていますとおり,共有者との関係で利害対立が生じているケースもあり,その者の効果帰属の対象から外さない,例外としないという前提にしますと,代理というよりは,職務者といいますか,職務として行うという構成の方が,なじみやすいのではないかなと,今のところ考えていたところでございます。   権限の内容自体が決まれば,大体おのずと決まってくるのではないかと思っているところでございますので,今の時点で確たるものではございませんが,そのように考えておりました。   訴訟追行につきましては,今,先生から区分所有法との対比の話も併せて頂いたので,少し部会資料の記載とかぶるお話をさせていただきますと,区分所有の方は,やはり団体的構成といいますか,過半数でも物事を基本的に決められると。そうすると,訴訟追行についても決められるという,そういった構成が取りやすいのかなと思っていますが,今提案させていただいている共有者に関しては,そこまで,全体的に団体性を強めようという話はあるのですけれども,そこまで強くない,せいぜい管理者ができることは代わりにやっていいのではないですかという前提で,今のところは考えていますので,そうしますと,訴訟追行について,反対している人の分も含めて委任をしていないかというのは,難しいのではないかなと思っており,11ページの(5)で書かせていただいているのは,そういったことを踏まえて書かせていただいているところでございます。   現時点で,それ以上のことは,すみません,まだ何とも言えないところなのですが,一応違いは少しあるのかなと考えておりました。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○山田委員 はい。 ○佐久間幹事 先ほど蓑毛幹事がおっしゃったところに関係するんですけれども,まず,この5によって管理者を選任することができるのは,飽くまで,共有者間の過半数によって決定することのできる行為について,過半数によって管理者を選任することができますよということですよね。   そうすると,私はこう理解していたということなんですが,共有者間で自ら決定をし,そして,その決定に従った事務を誰かがするということを,言わば委任する。管理者を選ぶことによって,以後は細かい個別の決定及びその実行ですね,これを,もちろん管理を委ねた範囲内でですけれども委任する,あるいは準委任かもしれませんが,そのようにするんだという理解をしておりました。   したがいまして,訴訟追行はちょっと分かりませんけれども,先ほど蓑毛幹事から御指摘のありました(5)の①の委任に関する規定というのは,私はこれでよいのではないか,そして,委任者というのかどうかはともかく,委任者に当たる者は誰かというと,総共有者なのではないかと,私は理解しておりました。   部会長が,意見があればどうぞとおっしゃいましたので,私はそう考えていたという意見だけ,申し上げておきます。 ○山野目部会長 意見を言っていただかないと進みませんから,意見を述べていただいて有り難かったです。ありがとうございます。   それでは,ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   本日,開会の際に御案内申し上げましたとおり,これから全国知事会,全国市長会及び全国町村会の各団体から御推薦いただいた,参考人の皆様方からの意見聴取を行います。   本日お越しいただいております参考人の皆様を,御紹介申し上げます。   まず,全国知事会から御推薦いただいた,全国知事会事務総長,古尾谷光男様,大分県土木建築部参事監兼建設政策課長,山本真哉様,全国市長会から御推薦いただきました,総社市市長,片岡聡一様,同じく総社市の建設部長,林圭一様,引き続きまして,全国町村会から御推薦を頂きました,山形県庄内町の町長,原田眞樹様,同じく庄内町建設課課長補佐,佐藤直樹様でいらっしゃいます。   この際,参考人の皆様に御礼を申し上げます。本日は,御多用の中お越しを頂きまして,どうもありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見をおっしゃってくださいますよう,よろしくお願い申し上げます。   委員,幹事の皆様におかれましては,参考資料4の地方公共団体ヒアリング質問事項をお手元に御用意ください。   参考人の皆様方には,事前にこの参考資料4の質問事項をお送りしているところであり,この質問事項に即して御意見を頂戴したく存じます。   参考人の皆様方から,それぞれ意見をおっしゃっていただいた後に,質疑応答の時間を設けるという段取りで進行することにいたします。   それでは初めに,全国知事会から御推薦いただいた参考人の皆様に,御意見をおっしゃっていただきたく存じます。参考人の全国知事会,古尾谷事務総長様,どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○古尾谷参考人 全国知事会の事務総長の古尾谷でございます。   本日は,全知事が皇室の饗宴の儀の方に出ておりますので,私,大分県の知事に代わりまして,御説明あるいは意見を申し述べたいと思います。   まず,私どもの方として,全国の都道府県にアンケートをさせていただきました。大変,土地所有権の放棄を認める制度の創設については関心が高うございますので,そういう面で,各県の意見を頂いた。基本的には,地方に新たな負担や課題が生じるおそれがあるということから,以下のような点について留意していただきたいということで,意見書として取りまとめてございます。まず,それは御覧いただきたいと思います。   設問がありますので,それに応じてお答えをしたいと思います。   まず,1の一定の要件の下で,土地所有権の放棄を認め,放棄された土地は直ちに帰属先機関に帰属するものとする制度の創設について,どのように考えるかということでございます。   土地所有権の放棄制度の創設によって,所有者不明土地の発生を一定程度予防することができる,あるいは,私どもにとっては,公共事業の中でもそうした課題に直面している部分もありますので,用地取得における負担の軽減につながるということについては,評価したいと思います。また,放棄された土地が帰属先機関によって仮に適切に管理されるならば,管理不全の土地の発生がある程度抑制できるという効果も期待されるとは考えます。   一方で,放棄制度については,帰属先機関における土地の管理の在り方,財政負担等,これまでの法制の枠を超えた様々な検討が必要であると考えております。例えば,放棄される土地の多くは,一般的には市場価値に乏しく,民間事業主体が引き受けることは困難となっているものが多いことが想定されます。結局のところは,そうした部分での人的財政的コストは,国民そのものの負担につながります。これまで個人の義務,責任において処理されてきたものを,単に所有者が不明である土地だということだけで,あるいは,その発生を予防するという観点から認めることが,果たして国民の理解を得られるのでしょうか。また,土地の所有権の放棄の規模が,どの程度のものなのかといったことは,十分な試算があるとは思えません。要件の設定次第では,土地所有者の管理意欲の低下につながらないのか,それらの人たちのモラルハザードの発生にならないのか,過疎地では,土地の荒廃が更に進むということも考えられるのではないかということで,管理水準の低下を生じない,そうした要件の設定は必要不可欠であると考えます。   さらに,粗放的な管理で足りるというようなお話も受けておりますけれども,私どもは,公物の管理については,管理瑕疵責任を常に問われる。道路管理におかれても,無過失責任ということで,落石や,あるいは路面の崩壊等では,事故に遭った被害者に対しては全面的な補償を行っている実情もございます。そうした面では,実際に土地を所有することになれば,周囲をフェンス等で囲んだり,市街地の土地であれば,定期的に草刈りをしないだけでも近隣から訴えられるというような状況も生じますので,他人に不法利用されないためにも,相応の対策や維持管理が求められるところでございます。粗放的な管理で足りるのか,いわゆるメンテナンスフリーの土地というのは,実質的,現実的には,想定できないと考えております。   次に,2番目の設問として,土地の属性は様々であるけれども,適当な機関はどこか,あるいは,仮に地方公共団体を放棄された土地の帰属先とする場合,どのような課題があるのかということでございます。   先ほど申し上げたとおり,放棄される土地の多くは,市場価値に乏しく,流通の可能性も低いため,帰属後は永続的に管理することが求められています。公有地拡大推進法などで,私どもは土地開発公社を設立し,先行取得のような手法で土地を取得してまいりました。高度経済成長の時代には,それで合ったかもしれませんが,皆さんも御案内のように,そうした土地の多く,あるいは一部が,塩漬け土地になっている実情もございます。   土地の問題は,自治体にとって極めて大きな負担になります。その点も踏まえて,人的財政的に過大な負担が生じることも予想されることから,帰属先となる機関は,地方公共団体ではなく,当然国となることが適当であると考えています。民法上,所有者のない不動産や相続人のない相続財産は,基本的に国庫に帰属することを踏まえると,放棄された土地についても同様とすることが,整合性があると考えております。   放棄された土地の管理については,都道府県又は市区町村の法定受託事務とすることなく,国による直接管理とすることが至当でございます。仮に地方公共団体を帰属先機関とする場合,土地の管理等に関する人的財政的コストについては,どう賄うのかというのは必ず課題になります。人口減少,高齢化が進行している地方部ほど,多くの放棄された土地を永続的に抱えることになり,管理に要する人的財政的な負担は担い切れません。放棄者が納める一時的な管理費用程度で賄えるものとは考えておりません。   3番目として,地方公共団体が公益の実現等の観点から,所有権放棄の意向が示された土地の取得を希望する場合に,どのような仕組みを設けることを考えるか,そのような設問がございます。   所有権放棄の意向が示された土地につきまして,国から地方公共団体宛てに取得希望の確認を行う仕組みを設けることは,これはよろしいと思います。その際,土地所有者による所有権放棄手続の検討におきましては,国へ意思表示した後に,放棄の要件を具備しているか,審査と平行して,地方公共団体に対して取得希望の確認を行うようにすること,仮にこのような仕組みを設ける場合,放棄される土地の一部を地方公共団体が必要とすることが考えられますが,このような段階におきましても,地方公共団体が必要とする土地の範囲の取得が可能となるようにしていただきたいと考えます。国に帰属した土地におきましては,取得を希望する場合についても,必要とする土地の範囲が,無償かつ簡易な手続で円滑な所有権移転がされる制度としていただきたいと考えます。   所有権放棄の要件等につきまして,認定を行う機関についての設問でございますが,適切に将来の負担を予測し,あるいは,負担額を見積もり,帰属後に不測の事態が起きた場合の事後的な対応をとることが必要でありますし,国が一括して審査,認定を行うことが至当であると考えております。   5番目として,土地所有権の放棄を認める制度を創設するとしても,可能な限り放棄に至らないよう,土地の継続使用や流通を促進するために,地方公共団体や国による支援の必要性について,どのように考えるかという設問がございます。可能な限り放棄に至らないよう相談窓口となり,土地所有権の放棄希望者と取得希望者とのマッチングを行うほか,管理の受託を行うなど,総合的な調整を行うNPO法人などの民間団体に対する財政的な支援も必要と考えます。ただし,放棄される土地は,民間の取引が成立しないようなものが大半を占めると考えられますので,支援することで取引先が果たして見付かるのでしょうか。効果は低いと考えております。   最後に,所有権不明土地問題の解決に向けて,民法・不動産登記法の改正について,何か意見はないかということでございますが,いわゆる時効取得という制度がございます。私どもも,顧問弁護士等にもお聞きしますが,取得訴訟については,基本的には登記を完了させるに至るまでに多額の費用がかかります。そうした面も含めますと,相続者が価値のない土地だけ放棄し,必要な土地や現金のみは取得するという事態も想定されるため,土地の放棄だけを捉えて検討することなく,不公平感が生じないような制度とする必要があります。   そうしたいろいろな法制度の面も含めまして,御検討を是非よろしくお願いしたいと思います。   私からは以上でございます。 ○山野目部会長 全国知事会におかれましては,全国の都道府県からの御意見を取りまとめていただき,その上で御紹介を賜り,誠にありがとうございます。御意見を承りました。   引き続きまして,全国市長会から御推薦を頂きました総社市の片岡市長,お願いいたします。 ○片岡参考人 皆さん,こんにちは。岡山県総社市長の片岡聡一と申します。   私は,全国市長会に四つの委員会がございまして,その中の経済委員長を拝命している総社市長の片岡聡一と申します。経済委員会は,農林水産省,それから国土交通省,それから経済産業省,この多く,三つの官庁のマターを取りまとめて,全国市長会の意向をまとめて,それを国に提言していくという委員会なんです。この構成委員は,91市で成立しておりまして,この91市の意向を取りまとめて,全国市長会の声にしていく,あるいは全国市長会から上がってきたものを,91市で取りまとめて国に上げていくというパイプ役ということをやっております。今回,いろいろ貴部会から所有者不明土地の発生抑制に向けて,様々なヒアリングを受けたわけでございますが,そのヒアリングに対して,91市にあらかじめ意向を確認した上で,ここの場にやってきました。   それらを取りまとめて御報告申し上げたいと思いますが,大きく言うと四つあって,放棄された後の帰属先移管という問題がございます。今,知事会の代表の方もおっしゃっていましたが,帰属先,これについては,全国市長会一致団結して,国にという考えを持っております。   それから,2点目でございますけれども,取得を希望する際の仕組みについてですね。これ,言い方は悪いですけれども,もう使い道のない土地について,これが一体どういう使い道があるとすら判断されないようなものが一杯生じてきたときに,それをどうやって仕組み化していくかということ。   それから,土地所有者の放棄の要件について,これはやはり重要なテーマで,半ばもう放り投げてくるような所有者不明土地,これを無条件に認めてしまえば,今,日本全国で,九州と同じだけの面積が所有者不明土地と言われていますが,また更に増えていくということが予見されるので,ここのところの要件については,やはりかなり厳しく見ていくべきではないかという考え。   それから,最後に,その審査を行うのは一体誰なのかというようなこと,この多く四つのことについて,私の方から申し述べさせていただきたいと思います。   その前に,私は,実は全国空き家対策協議会会長をやっております。所属団体は900団体,全国の市,町含め,この対策やっているんですけれども,これはもう本当に遅々として進まないテーマになってきております。2018年ベースで846万戸空き家です。その5年前が820万戸,2013年が820万戸,この5年間で実に26万戸増えている。これはもう本当にとどまることを知りません。これは,やはり核家族が進んだり,少子高齢化が進んだり,今日本の形,スタイルそのものが投影されている現象であります。これに比例して,所有者不明土地というのは出てくるだろうと思えば,やはり皆様方が法整備をされていく中で,その制度設計については,是非全国市長会の意向もお聞き願えればと思っております。   今回,所有者不明土地の発生抑制に向けて,所有者の土地所有権の放棄のみにかかわらず,相続登記の義務化等を検討していただいております。実は,この相続登記の義務化については,全国市長会,非常に高い関心を持っております。これは当たり前のことでございます。その実現に向けて,御検討を進めていただければと思います。   それでは,土地所有権の放棄について,意見を述べさせてもらいたいと思います。   所有者不明土地の解消に向け,これを制度化するについては,一定の評価ができるものであると,市長会として認識しております。しかしながらの,先ほど申し上げましたように,その制度設計如何によっては,地方行政に多大な影響を及ぼすことになろうから,本意見を踏まえ,制度設計をしていただければ有り難いと思っております。   まず,帰属先,申し上げましたが,所有者不明土地の発生防止は,公共事業の円滑な推進に資するなど,地方自治体にも利点は確かにあります。しかしながら,古くは律令時代から,国土政策は国が担ってきたものでありまして,所有者不明土地対策はその根幹に,この国の根幹に関わるものであります。それゆえに,その発生を予防する仕組みとして検討されている土地所有権の放棄による土地の最終的な管理責任は,全国市長会として国であると思っております。仮に当該土地の管理を市町村に委ねた場合,各市町村は地域の実情に応じて,それぞれを管理することになります。   これ,全国,市でいうと815市,今ありますけれども,その所有者不明の放棄地を受けた場合,その維持管理,それぞれの市の財政力が全く違います。それから,首長の考え方も違う,そして職員の数も違う,それぞれの形が全く違うとなれば,もしそれぞれの市町村が受けた場合,全く異なる維持管理の在り方が,この国全体によって行われてしまう結果を招いてしまいます。財力があるところはきちんとやる,財力が少ないところは全く手つかずのものになっていく,のようなことになって,よいわけではないと思います。我々も,決して頑張らないわけではございませんが,各市町によって差異が生じるということは,国の骨幹を揺るがす大問題について,余り適切ではないと考えております。   また,現行民法上,所有者のない土地の帰属先や相続財産管理制度において発生した残余土地の帰属先は国とされており,これまでどおり帰属先を国とすることに合理性があると思っております。したがって,様々ありますが,所有権が放棄された土地の帰属先は,国であるとするべきであると考えます。   質問事項にあったんですが,仮に地方公共団体を帰属先とする場合の課題についてでありますが,我々都市自治体がなぜ帰属先となるのか,その合理的な理由が見当たらず,これについては,お答えは申し上げかねるということでございます。   それから,もう一つ,都市自治体が取得を希望する場合の仕組みについて,これは,あり得ると思います。公共事業をやりたいというところが所有権放棄地であるというところに合致するということは,当然あり得ることでありますが,先ほど申し上げましたが,所有権が放棄された土地の帰属先は,まず国とすべきだと。しかしながら,先ほど申し上げましたようなケースがありますし,必要となる土地を所有者の方からお譲りいただくケースもあります。その当該土地が,所有権の放棄されたものであった場合は,取得を希望することが考えられます。これは,よくあると思います。この場合において,都市自治体の取得を可能とする制度にすることは,全く異論はございません。ただし,まずは国が取得することを前提とし,窓口も国が一体的に担うべきだと思います。これ,こういう場合があるでしょうということを,よくおっしゃる方がいます。ただ,この放棄された土地が,市役所を建てたい場所であるとか,市民会館を建てたい場所であるとか,そういうことに合致するケースというのは,さほど多くのケースではないと思います。   次に,その上で,この制度を創設した際の土地取得事務の観点からの課題として,具体的に91の委員の市からは,私が代弁申し上げますと,都市自治体が当該土地を取得するに当たっては,決裁等の事務や現地調査及び登記等について,長期にわたる作業が発生していることから,事務負担が拡大することのないよう十分配慮すべきであると。我々も人口7万のところで,職員数が650人で,ものすごく少ない中で闘っておりますが,この事務が発生したとき,長期化して,もうこれをずっとやり続ける職員が,これに手をとられるということが日常化しているというのが現状であります。また,都市自治体が取得を希望する土地については,抵当権など所有権以外の権利の登記がされていた場合,その抹消に多くの費用や時間を要することから,まずは国が取得した上で,国の職権において抹消登記を行うなど,容易に有効活用ができるよう,適切な措置を講ずるべきであるという意見があったところでございます。   次に,先ほど申し上げました土地所有権放棄の要件などについてでございます。土地の所有権放棄については,所有者として本来負うべき土地の管理の負担を,帰属先機関に転嫁する側面があることなどから,無条件に認めることなく,一定の要件を満たす場合のみ認めるべきであろうかと思います。これはもう本当に要らないから受け取ってくれというのが,一杯出てくるものでございます。   貴部会において,所有権放棄の手続と地方公共団体の位置付けについて,A案,そしてB案と示されているので,これについて申し上げさせていただきたいと思います。   A案については,放棄の要件として検討されている,土地の引受先を見つけられないときの一つとして,地方公共団体に贈与契約を申し込んだが,契約しなかったことを設けると示されているので,寄附のこれまでの実態について説明をさせていただきたいと思います。   それでは,別付資料の1を御覧いただきたいと思いますが,経済委員会,91都市を対象に,寄附の申出件数とその受理件数を伺い,表にまとめたものでございます。御留意いただきたいのは,申出件数については,把握できる範囲で伺ったものであり,実際は,この数値をはるかに上回るものであると思われます。また,受理件数は,道路及び水路等の公共施設の用地取得に係る寄附採納を含まず,基本的に任意の寄附の申出に対する受理件数であることに,御留意いただきたいと思います。   91都市中,御回答いただいたのが81市であり,御覧いただければお分かりになると思いますが,ものすごくたくさん申込みも殺到し,そして,受理できるものはほとんどないということが,実態としてあるということを,お知り受けいただきたいと思います。また,受け取らない主な理由の欄にありますが,そもそも行政目的のない土地の寄附は受け取らない都市が圧倒的でございます。また,各都市に普通財産の宅地面積の削減に向けた取得を伺ったところ,売却や民間への貸与,貸付けを通じて,その削減に努めているとの回答を多数頂いております。このようなことから,各都市は,行政目的のない土地の寄附を決して望んではいないというのが,大方の多くの意見でございます。   また,地方公共団体に贈与契約を申し込んだが,契約が成立しなかったことを設けた場合,制度上の手続になることから,放棄を申し出る土地所有者には申請の手続が,都市自治体にはその申請の受理審査に関する手続が必要となると思われます。これらも,制度上の手続となれば口頭で済むわけでもなく,申請には何らかの関係書類を添えてくることになるのであろうし,それを受け取る都市自治体も十分検討し,庁内で決裁をとった上で,丁寧な対応をとることとなり,相応の事務負担が膨大に生ずるのは当然のことであろうと思います。   しかしながら,先ほど申し上げた寄附の実態を踏まえると,そもそもの任意の寄附は受け取らないことから,これらは無用の事務といえるのではないかとも思います。しかるに,自治体への寄附の不成立を要件とすることは不要であると思っております。   以上のことから,A案かB案かというお尋ねでございますれば,B案が望ましいと考えますが,窓口は国が一体的に担うようにお願いしたいと思います。   次に,その要件審査についてでございますが,土地の帰属先の項でも先ほど述べましたが,所有権の放棄された土地は国に帰属されるべきものであることから,その要件の審査,認定については,全国統一の基準によりまして,これは国が行うべきであると考えます。   また,次に,我々自治体の役割でございますが,その放棄制度を創設した際の我々の役割,部会から示されました質問事項には,土地の継続使用や流通を促すための支援とありますが,民間市場で流通する土地は民間に委ねるべきだと,私は思います。また,所有権が放棄された土地を国に帰属させる仕組みの制度設計に当たっては,都市自治体に新たな人員配置や人材育成のコストに増加が生じないように,十分配慮していただきたいと思います。   誤解のないように申し上げたいのは,この放棄制度創設に当たって,我々は全く協力しないと言っているわけでは決してございません。そもそも地方の支援の必要性を議論せずとも,住民に最も身近な地方自治体である我々は,住民から所有者不明土地問題にかかわらず,あらゆる相談を受ける立場にございます。我々は全てのマターにおいて,窓口の外には,窓口の向こう側には市民が立っているわけであります。消費税が上がろうが何をしようが,不満を言ってくるのは市役所に言ってまいります。その全てを,我々は全力で頑張っているところであります。ですから,現状において,既に土地の寄附や所有者不明土地の問題に関する相談を受け,その都度,最善の策をお示しするなど,それらについては真摯に対応しているところであり,今後もそれは全く変わらないということだけは,申し上げておきたいと思います。   以上,全国市長会からの意見とさせていただきますが,口幅ったいような言い方になったかもしれませんが,御容赦いただきまして,全国市長を代表しての意見とお酌み取りいただきたいと思います。   どうぞよろしくお願いを致します。 ○山野目部会長 片岡市長におかれましても,全国市長会の意見を取りまとめていただき,御紹介いただき,ありがとうございました。また,空き家についても意見を補っていただきました。御礼申し上げます。   続きまして,全国町村会から推薦を頂きました,山形県庄内町の原田町長に御意見をお述べいただきたく,お願いいたします。 ○原田参考人 それでは,発言をさせていただきたいと思います。   全国町村会の副会長でございまして,山形県庄内町長を務めております。発言の機会を頂きましたことを,感謝申し上げたいと思います。   また,この所有者不明土地への対応という,大変困難な課題につきましては,精力的に御審議いただいているということでありまして,全国町村会を代表いたしましても,改めて感謝を申し上げたいと思います。   私からは,まず,庄内町の状況について簡単に御紹介をした後,土地所有権の放棄制度などについて,意見を述べさせていただきたいと思います。   初めに,今回,全国町村会の代表という立場でありますが,全国に現在926の町村があるということでございます。総人口のうち,町村部が占める人口の割合というものは,僅か8.5%しかなくなってしまいました。これは,平成の大合併によって,多くの町村が合併をして市になっていったというふうな経緯もございます。国土の総面積のうち,町村部が8.5%の人口でどれだけの面積を担っているかということで考えますと,42%でございます。町村というものは,少ない人口で広大な国土を支えていると言って,過言ではないと思います。また,平地から山間地域,離島,それぞれの町村が立地する環境というものは千差万別であることは,皆様方に知っておいていただきたいと思います。   今回お話をする内容については,その中の一つの事例ということになりますし,これは,基本的に市長会とか県と違いまして,取りまとめをしたわけではございませんが,まずは,一番小さな自治を預かる現場からの声ということで,御理解を頂ければ幸いでございます。   庄内町はどんな環境なのかというふうなことも,ちょっと知っていただきたいんですが,庄内町,山形県の北西部にございまして,10万都市がある鶴岡,酒田の市,これを両翼としまして,その真ん中に長く,南北に40キロの距離を有する町でございます。庄内平野といいまして,昔から米の産地でございます。人口は2万1,000人,2町での合併を致しまして,その当時は2万5,000人おりましたが,15年間で今現在,2万1,000人まで減っているということです。そして,面積は249.26平方キロメートルありますが,森林面積が約6割,農地面積が2割,残りの2割にこの2万1,000人が住んでいると,こういうふうに考えてもらえばと思います。   周囲は,出羽三山という,月山,湯殿山,羽黒山といった山があるわけですが,その月山の山頂を有しておりまして,日本三大急流という最上川も本町を,酒田市が一番下流ではあるんですが,その手前を流れているということでございます。   ササニシキとかコシヒカリという米などは御存じかと思います。近年は,山形県では,女性の知事が少ない中では目立っていると思いますが,その女性知事が一生懸命宣伝しているつや姫とか雪若丸が大変好評でありまして,こういったおいしい米のルーツ,DNAは,全て実はうちの町で創選されました亀ノ尾という米からスタートをしているということでございます。そんな中で,米が産業のほとんどを占める,米の町と考えていただければと思います。   それでは,本題に入りたいと思いますが,まずは,土地所有権放棄制度の創設についてどう思うかということであります。これは,所有者不明土地の発生を未然に防止するということでは,有効な方策だと考えております。土地は,所有者不明となってからでは,先ほどからありますように,管理が不十分になったり,また流通も困難であり,手を付けられなくなってしまうということがあるわけです。   参考までに,本町における所有者不明土地というのはどのぐらいあるのかということで,調べてまいりました。本年6月の調査では,約20件となっております。これは,固定資産税の課税に際しまして,納税通知書が住所不明で戻ってきた場合に,住民票の確認とか,その再調査をしても不明な場合に,公示送達を行いますが,その数字が20件ということでございます。   それから,次に,放棄された土地の帰属先についてはどうかということでございますが,これは,国を帰属先とするのが適当であると考えております。この部会でも御議論されているようではありますが,民法が,所有者のない不動産は国庫に帰属するという,239条2項にあるように,国を帰属先とするのが合理的かつ整合的であると考えております。   仮に,帰属先を自治体とした場合どうなるかということでありますが,放棄される土地というのは,先ほどからもあったように,経済的価値とか利用価値が非常に乏しいものが大半を占めるのではないかと考えています。このような土地の中に,余り管理に手間がかからないものもあるかもしれません。しかし,そのような場合でも,公有財産として適正に管理するための一定の責任とか,財政負担が生じることになることは,変わりありません。これは自治体,取り分け町村においては,人的にも事務量的にも,非常に大きな負担になると考えられます。   続きまして,放棄される土地の自治体の取得についてはどうかということであります。所有権が放棄されようとしている土地を,自治体が取得できる仕組みを設けることについては,賛成を致します。ただし,この場合の仕組みについては,土地の取得に関する自治体の事務が,煩雑にならないようにする必要があるのではないかと思います。例えば,公共事業などのために用地を取得する場合,その土地がどのような状態であるのか,開発を制限する法令の適用状況など,事前にしっかりと調査した上で,所有者との交渉など,用地取得の手続に入ってくわけでありますが,この場合の手続では,まず,所有者立ち会いの下で土地の境界を確認することが必要であります。そして,測量調査などを経た上で,所有者から土地を購入する場合には,価格の算定作業も行わなければいけないといったような交渉ごとがあるわけであります。寄附の場合には,土地代についての価格交渉は発生しないわけでありますが,どのような条件で土地を引き渡してもらうか,これについては,やはりしっかりと調整をすることが必要であろうと思います。   こうしたことから,今回の制度設計に当たっては,放棄の意向が示された土地については,一定の要件を満たしているか,あるいは満たす見込みがあるなど,ある程度しっかりと絞り込む必要があると考えております。そのためには,所有権の放棄手続のどの段階で自治体が関与していくのかということが,問題になるのではないかと思います。この点については,土地所有者が放棄の認可申請を行った後,審査機関から土地の取得希望について確認してくるというルート,たたき台B案が示されているわけでありますが,このB案が望ましいと考えております。   なお,A案については,所有者が放棄する前の段階で,自治体に寄附の相談が持ち込まれるということになるわけでありますが,これは,取得を希望することがないような土地についてまで,一旦相談を受けてしまいますと,受付をして,調査までしなければいけないような状況が生まれるということも含めて,これは,自治体として非常にリスクを抱えるということであります。大変非効率でもあり,また相談案件が重なっていけば,他の業務の停滞を招くことは,今の職員の現数といったようなことから考えれば,非常に負担が大きくなっていくことは,全くこれは想定し得ると,し得ないのではなくて,し得ることであると思っております。   続きまして,所有権放棄の要件や審査,認定機関についての考え方についてです。まずは,土地所有権放棄の要件について,申し上げたいと思いますが,土地所有権の放棄は,所有者にとって,固定資産税の支払いとか,あるいは土地の管理からの解放を意味するわけであります。これは,土地を持っている人たちが利を得る,利益を得るということであります。ですから,簡単に放棄されてしまうと,国民負担が増えるということになりますので,一定の要件を設けることが必要だと考えます。つまり,先ほどもあったように,個人から公的な負担に切り替わってしまうということでございます。例えば,建物や工作物,立木等は,所有者においてあらかじめ除却するか,放棄後の除却に至る場合は,その費用を所有者が負担すべきであるとも考えております。また,境界や所有者が確定していることも必要であると。また,さらには,廃棄物など有害物質等の含有など,土地に瑕疵がないことも重要な要件ではないかと思います。   これも,事例があるわけでありますが,これは本町ではないのですが,東北地方のある町で土地の寄附を受けた後で宅地造成をしようとした際に,建築系の廃棄物が地中から出てきた関係上,その除却費用を誰が負担するのかということで,大変苦労したと聞いております。結論から申し上げると,もめた末に,交渉が難航した上で,いわゆるトップ交渉,政治的な決着によって,最終的には県の負担で決着をしたといったような,そんな状況もあったということです。   また,山の手入れができない,あるいは農業生産を行う見込みがない農地,いわゆる林,あるいは農地があるわけでありますが,これは,今後確実にこの人口減少社会の中では増加していきます。森林法とか農地法による規制との関係もございますので,これらは別途検討が必要ではないかとも考えております。   一方で,放棄の要件が厳しすぎると,せっかくの放棄制度が有効に機能しないということも考えられるわけであります。要件の設定については,どのような土地がどのくらい放棄されるのか,ある程度の見込みを立てたり,見直し規定を盛り込んだりするなど,実績や実態に対応できるような,そのような法整備等も検討していくべきではないかと思います。   それから,審査認定機関についての御質問については,所有権の変動を伴う問題でもありまして,国の責任において公的な機関が担うべきであると,考えております。その際,自治体との連絡調整,あるいは土地所有者のアクセス機会の便益を考える必要があるのではないかとも思います。   放棄に至らないようにする自治体の支援について,どのように考えるかということについてでありますが,放棄に至らないようにするために,自治体として何ができるかという考え方でもあります。所有している土地を継続的に使ってもらうことや,流通を促進するために,何らかの支援は必要だろうと考えております。所有者不明土地の問題は,放置すると地域社会のみならず,日本社会全体に影響が及ぶ問題であることを,国民に広く啓発することが,まずは重要ではないかとも考えております。このため,自治体としても,国と連携をしつつ,情報提供や住民への周知,広報などに協力していく必要があろうかとも考えております。   所有者不明土地問題についてでございます。これは,土地は一旦所有者が不明になりますと,その土地について,自治体を含め第三者が取得して,使用したり処分することは極めて困難になります。今回の議論は,このような事態に至らないようにするための仕組みを御検討いただいているわけでありますが,一度に全ての問題を解決するのは,非常に難しいとも,現場としては考えます。このため,所有者不明土地の問題に関しては,状況の変化に柔軟に対応できるよう,必要に応じて特別法や政省令など,法体系の整備とともに,運用面での改善にも努めることが必要ではないのかと考えているところでございます。   最後になりますが,放棄された土地の帰属先が,たとえ国になったとしても,どこかの市町村にその土地は所在することになります。その意味では,私どもも無関心でいることはできません。今後,制度設計を詰めていただくに際しましては,引き続き私どもの意見に耳を傾けていただきますようお願い申し上げまして,私からの発言とさせていただきたいと思います。   大変ありがとうございました。 ○山野目部会長 原田町長におかれましては,庄内町の実情を踏まえた御意見を仰せいただき,誠にありがとうございます。羽越本線と陸羽西線が交わるところの風景を思い浮かべながら,貴重な御意見を承りました。ありがとうございます。   参考人の皆様方に改めて御礼を申し上げますとともに,お願いがございます。   更に若干のお時間を頂戴いたしまして私どもから,貴重な御意見を頂きましたことを踏まえ,質疑,お尋ねを差し上げるということにお付き合いを頂ければ有り難いと存じます。私どもの会議のことを部会と呼んでおりまして,部会は,委員,幹事,関係官という,それぞれの立場で,それらの呼称で呼ばれる関係者で構成されてございます。それらの者らから,参考人から頂いた御意見に対してお尋ねを差し上げるということで,お時間を賜るということをお許しいただければ,有り難いと存じます。   それでは,委員,幹事,関係官から,御随意に御質疑をお出しいただければと考えます。いかがでしょうか。 ○吉原委員 ありがとうございます。大変貴重な意見,御発表をありがとうございました。   御存じの範囲で教えていただければということが二つございます。一つは,住民の土地を手放したいというニーズを,地域の役場では通常どのように把握をするのかということ,もう一つは,そうした要望を受けた後に,どのようなルールや手続にのっとって,お断りする場合には受け取れませんよと回答しているのかという2点です。これからどのような制度を作っていくにしろ,地域の土地利用政策を考えていく上で,そうした住民のニーズを把握するということは基本であると思いますので,現状を教えていただければと思います。 ○山野目部会長 吉原委員から2点お尋ねを差し上げました。   お答えを御希望の方は,御自由におっしゃってください。 ○片岡参考人 今日は,実は,私の総社市,人口7万人の,何部長だったっけ。 ○林参考人 建設部長でございます。 ○片岡参考人 実際に担当している部長,これ,日々やっているわけですから,担当者からするのが一番分かりやすい。 ○山野目部会長 お願いします。 ○片岡参考人 よろしいですか。 ○山野目部会長 はい。 ○林参考人 命によりまして,私の方から現状を御紹介させていただきたいと思います。   まず,現状のニーズの把握の仕方という御質問でございますけれども,まず,こちらが積極的に把握をしに行くことはございません。相続をされるときに,やはり,これから先,こちらにもう誰もいなくなるので,これをどうしたらいいかということを,まずあちらから,市民側から申出があって,初めて起こることが多いです。若しくは,持っている土地を手放したいがどうしたらいいか,そういうことが市民側から出てくる,そういうときに初めて分かるものでございます。   そのほとんどは,先ほどの市長の説明にもありましたように,市の方で必要としない土地でありますので,お断りを前提の話をしてしまうことになります。あちらはまず,買い取り,こちらを希望されます。いいものあるよ,買っていただけませんか,そこから来て,それをお断りするのに,30分,1時間かかり,差し上げますになっても,1時間,2時間かかり,最終的に,どうしてもこれが,例えば,道路の拡幅に必要だというふうな状況があったにしても,先ほど村長会の方が言われましたとおり,測量であるとか,そういうものにもものすごく時間が掛かる,お金も掛かるということで,すみません,まとめさせていただくと,あちらからお話が来て初めて動きますが,そのほとんどは,動くに至らないものでございます。動く場合でも,相当の日数と相当の経費,測量等であったり,境界立会であったり,そういうものについてはかなりの経費がかかっているという状況だということを,お知りおきいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 吉原委員,いかがですか。よろしいですか。   はい,ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○山田委員 ありがとうございます。   総社市の方に一つ質問と,それから,総社市と庄内町に同じ質問をさせていただきたいと思います。   総社市長さんへの質問は,庄内町については,所有者不明土地約20件,2019年6月調べというのを,固定資産税の通知のやり取りで把握しましたというお話がございましたが,このような数字,あるいは状況,総社市について,今日お持ちであれば教えていただきたいということです。 ○林参考人 この所有者不明土地,こちらの前提というのが,課税に対して反応があるなしだけではなくて,3代も4代も5代も前というものが,所有者不明土地というふうな認識を持っていたので,ちょっと先ほど,町村会の方がおっしゃられた20件というふうなオーダーでは,我々はないと思っています。もうものすごく多くの方で,課税については,そのうちの誰かが分かれば,税法上何かいいようになっていると,私,税務担当の者から聞いているので,所有者不明土地については,ちょっと数が把握できないぐらいあるというのが現状だと思っております。 ○山野目部会長 御参考にお尋ねしたいにとどまりますから,そのようなお答えでもちろんよろしゅうございます。   山田委員,よろしいですか。 ○山田委員 結構です。ありがとうございます。   では,共通の質問です。   市にしても町村にしても,戸籍を扱っていらっしゃると思います。人が死亡したときに,死亡届が出てくると,受け付けると思います。そのときに,不動産を持っていたら,不動産登記についても相続登記を勧めるとか,紹介するとか,何かいろいろなやり方,やり方というか言い方があると思いますが,何かこうアクションを,死亡届を受け付けるときに,窓口としてなさっているかどうか,それを,総社市と庄内町についてお伺いします。 ○山野目部会長 林参考人からお尋ねしてよいですか。 ○林参考人 先ほどもおっしゃられていましたように,まず,死亡届を受ける部署,そちらの方が承るのが一番スムーズかと思っております。ただ,現状で,それを義務化されていない中で,積極的にそれをお願いしますというのは,現状,正直できていないというところがあると思っております。 ○山野目部会長 原田町長又は佐藤参考人,どちらでもよろしゅうございますが,いかがですか。 ○原田参考人 私の知る限りでは,総社市さんと同じように,特別受付で何らかのアクションをするということはやっておりません。 ○山野目部会長 山田委員,よろしいですか。   平川委員,お待たせしました。 ○平川委員 知事会の方にお尋ねしたいと思います。   最終的に,所有者不明土地の帰属先は国ということで,御意見いただいております。ただ,問題は,国で直接管理するとしても,事実上,それが本当に,膨大な土地を全て管理できるとお考えなのかどうなのか。また,「放棄された土地の管理については,都道府県又は地区町村の法定受託事務とすることなく」と記載されておりますけれども,例えば,交付税措置が何らかされた場合,それに対応して,その交付税措置の状況によっては,法定受託事務として受けることも検討できるのかどうなのかということを,まずお聞きしたいと思います。   また,地方自治体が用地取得する場合の様々な課題が,この市長会提出資料の意見照会結果の2ページ目,3ページ目に縷々書いてございます。これは,自治体が用地を取得する場合の課題ということで記載がありますけれども,やはり最も大きなポイントはどこなのか。事務負担が増えないようにということなど,さまざま記載ありますけれども,特に民法上,どうしてもここだけは改正をしてほしいとか,そういうポイントがありましたら,市長会にお聞きをしたいと思います。 ○山野目部会長 それでは,まず法定受託事務,その他の関係で,古尾谷参考人,又は山本参考人からお願いいたします。 ○古尾谷参考人 まず,広大な土地,国に管理できるのかというお話がございましたけれども,その課題は,そのまま都道府県で管理ができるのかということにつながると思います。   実際問題として,これまでもそういう土地について,私ども都道府県が今やっているのは,例えば,都市計画法に基づく近郊緑地保全とか,あるいは風致地区条例,古都保存法など,買い取り請求のある土地はあります。それから,寄附のような土地についてはあります。そういう土地は,一定の都市計画や,あるいは土地利用の範囲内で,県の施策に合致した場合には受け取るという制度になっておりまして,そういう土地に対しては,管理責任もとりますので,また,国から予算をもらいながら,あるいは県から予算を出しながら,プライオリティーをつけて買い取りをしている状況がございます。   一方で,交付税措置によってできるのではないかというお話がございますけれども,御案内のとおり,交付税というのは,基本的には,それぞれの措置について,基準財政需要額に対して8割程度の措置がされているだけでありまして,必ず超過負担がございます。こうした措置に対して,どのような人員がかかり,どのような量があるのかということも分からない中で,それを受ける,受けないのお話は,全く存在しないと思います。   そうした点を精査した上で,どのような事務が生じるのか,例えば地方整備局単位,あるいは地方財務局単位でどのような国として措置ができるのか,できないのか,そうした点を検討していただきたいと思います。   現に,国の財産である赤道,青道というものがありました。皆さん御存案のとおり,これ,国有財産でございます。17年3月の分権一括法で,従来の機関委任事務から,あの際に市町村にとって使えるものは,青道,赤道は市町村に移譲を致しました。その上で,その他の土地,使えない青道,赤道については,財務局の方で所管しているということでございますので,そうした点から見ても,国が所管するのが適当であると考えております。 ○山野目部会長 ここまでのところ,平川委員,いかがですか。よろしいですか。   引き続き,片岡市長,お願いしてよいですか。 ○片岡参考人 殊更,私の発言が,事務が煩雑化し,そして,大変なんだ,大変なんだみたいなことばっかし言っているように届いているやもしれませんが,実際,市長会の中で,815市ありまして,幹部会があるんですけれども,その中の一員でもございますが,やはり全市が口をそろえて,やはり国の帰属先というのは統一してやるべきだと。ですから,確かにいろいろな煩雑なところはあるんですが,民法の239条の中に,この所有者不明の土地,放棄されたものについては,国に帰属するという文言が1行入るべきだと,市長会としては申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   平川委員,よろしゅうございますか。   どうぞ,お続けください。 ○平川委員 お聞きしたかったのは,公共事業等で自治体が用地を取得する場合,様々な困難があると思います。そういった意味で,民法の規定のこういうところを直していただければ,より事務が効率化するなど,そういう御提言があるかどうかというのを,お聞きをしたかったということです。 ○山野目部会長 どうぞ,お続けください。 ○片岡参考人 我々が取得する場合も,それから国に帰属する場合,いろいろなケースがあろうかと思うんですけれども,とにかく,放棄された土地にいては,まず一旦は,一元的に国が帰属先となるべき,この分掌,まず国が受け取るべき。それから,市が使う場合は市が受け取っていくという仕組み,そういうものがうたわれるべきであると思います。 ○山野目部会長 平川委員,よろしゅうございますか。   どうぞ,御遠慮なく。 ○平川委員 いや,いいです。 ○山野目部会長 片岡市長に補足してお尋ねを致しますけれども,初めに御意見を一括しておっしゃっていただいた際に,空き家の問題についてもお触れいただいたところでありますけれども,土地と,使用していない家屋,建物とでは,また少し議論の仕方が異なるとお考えでいらっしゃるでしょうか。 ○片岡参考人 そうですね。似たようなものになろうかと思いますけれども,空き家についても,放棄したいという方は,もう本当に一杯いらっしゃいます。そこで今,市長会では,強制という措置,強制撤去ということをやれる権利を持っておりますけれども,なかなかその執行が,全国100件以内という非常にレアなケースになっていて,やはり複数の所有者がいて意見がまとまらないで,強制撤去をその中でやるというのは,非常に難しい判断になっています。こういうもの,空き家と,それからこれから生まれてくるであろう所有者不明土地というものの扱いも,全てとは言いませんが,非常によく似通っているということです。   私は,今,全国空き家協議会の議論が,強制撤去を上げていこうみたいな,そういう議論が大半を占めるんですが,それよりも,私たちが進めていくべきは,空き家については,再利用して移住を進めていく,あるいはこの価値を,リフォームして売っていくみたいなところに転じていきたいという希望を持って,取り組んでおります。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   空き家の問題は,ここの法制審議会の直接の議題ではございませんけれども,土地と隣り合った問題でございますし,空き家に関する法律の見直しをするような際に,市町村がお悩みの特定空き家の除却命令や,それに隣接する制度をめぐる運用上のお悩みや課題を,もう一回整理して検討されなければならないであろうと感じます。どうもありがとうございます。   沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   ちょっと細かいことで,私の無知をさらけ出すようで恥ずかしいのですが,この機に教えていただきたいと思います。   一つは,固定資産税の関係なのですが,お伺いしておりますと,土地としてはほとんど必要とされていない,要らないというようなものについて,しかし,固定資産税はやはり一定程度かかり,逆にいうと,それは収入として期待されるようなものであるのか,それとも,そういうものではなく,むしろその通知を毎年毎年公示送達までして,負担だけが掛かるというようなものだと考えればいいのか,その固定資産税をめぐる現状について,どのようなことかをお教えいただけないかというのが1点です。   もう1点は,先ほどのやり取りを興味深く拝聴していたんですけれども,相続登記が義務化されていないということもあって,今,戸籍等の届出の際に,登記をするようにといったような情報提供や働き掛けというのはされていないし,なかなかそういうことはできないということだったんですけれども,これが仮に義務化ということになりますと,それはむしろ積極的に戸籍等の窓口で促すということが事務としても可能になると,期待もできるということだと考えてもよろしいんでしょうか。それが2点目になります。 ○山野目部会長 二つのお尋ねとも,総社市と庄内町にそれぞれ,もし可能であればお教えいただきたいと考えます。 ○片岡参考人 まず,1問目の御質問ですが,これは,度々全国市長会でも出てくる意見なんですが,先ほどの空き家とリンクしていて,空き家が存在している場合で,空き家を撤去して,そのおうちの所有者が倒して更地にすると,固定資産税は一挙に6倍になります。ですから,空き家を倒さないままで,ぐじゃぐじゃのままで置いておくという家が増えてくる。だから,一向に通行人に危害を及ぼすような,かわらが崩れ落ちそうな空き家がどんどん増えてくるというジレンマがございます。   我々は,所有者不明土地が増えるということは,それを阻止したいという気持ちで一杯でございますが,そこから固定資産税が取れてうれしいなどとは全然考えていませんし,この空き家がある場合とない場合の固定資産税の税の在り方を,やはりもう一度考え直したほうがいいのではなかろうかということは考えております。 ○林参考人 続きまして,二つ目の義務化になったときの業務が積極的にやれるかという御質問でございます。   私,現在建設部長をさせていただいておりますけれども,2年前は命によりまして,そういう市民窓口の部長をしておりました。ですので,はっきりと分かるんですけれども,業務は当然増えます。当然増えますが,これをやることによって,我々市としては,必ずほかの業務で助かるので,積極的にやるべきと考えているところでございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   原田町長,佐藤参考人,何かおありでしたらお教えください。 ○原田参考人 私の方からですが,固定資産税と放棄地に建っている建物は,基本的にはやはり分けて考えるべきものではないかと思います。固定資産税は,飽くまでも町にとっては収入です。放棄地は放棄地で,やはり別途に考えていかないと,これを,固定資産税が得か損かということであれば,これは得に決まっていますので,ここはちょっと議論の仕方が違うかなと思っています。   それから,相続登記については,今,市の方からもあったように,義務化することによって,やりやすくなる部分は非常に多いだろうと,事務的なことで。いろいろな手続をするときに,調査の仕方も楽になるということも含めて,これは有効だろうと思います。ただし,この登記を義務化するということは,当然登記をされる方の費用負担が大きいですから,こういったところにも配慮しなければいけないのではないかと思います。 ○山野目部会長 片岡市長がおっしゃった,固定資産税の除却したかしないかで異なってくることは,本当に何とかならないものでしょうか。この部会としては,どのようにして差し上げることもできませんが,ここでの議論を,地方税制を扱う府省が聴いていますから,きっと考えていただけるものと思います。 ○松尾幹事 御説明ありがとうございました。大変勉強になりました。   その上で,実務のことを二つお教えいただきたいんですけれども,一つは,相続人の全員から相続放棄がされて,相続人の誰も管理しなくなって困っているという土地がもしあったとして,それについてどういう対応がされているか,もしかすると近隣住民から苦情が来て,どうにかしてくれというようなことがあるかもしれませんが,それに対して,何らか市や町として,それに対応する費用を出しているとか,そういうような状況があったら,現状をお教えいただきたいと思います。   それから,もう一つは,先ほど,所有者不明土地に関連しまして,納税通知書を送ったけれども戻ってきてしまって,それで所有者の所在不明ということで公示送達しても埒があかないというような,そういう土地については,その後扱いはどのようにされているのか,この2点について,実務で対応されていることとかあれば,教えていただきたいと思います。 ○山野目部会長 こちらも,市と町,それぞれでしょうか。 ○林参考人 失礼いたします。   まず,放棄されて誰も管理していない土地,どうしているか,近隣住民からの苦情は出ていないのか。もう明らかに出ています。総社市では,市長の独自施策として,地域づくり自由枠交付金といいまして,市の単市事業なんですけれども,そちらをもって,地域の方でできることはやってほしいというところをお願いしているところですので,それが,例えば民地の方に入っていくのがいいのか悪いのかという部分はあるかもしれませんが,生活環境を守っていく上で必要なものに使ってくださいというふうなことで,できる限りのことは,地域の方に力をお借りしながらやっているというのが現状でございます。   それから,納税通知書が返ってきた場合でございますけれども,例えば,何代か前の方が亡くなって,現在この方に送っていたが,今年は返ってきた,そういうことはしょっちゅうあるそうです。そうすると,またここに戻って,資料が残っていればいいんですけれども,ここの,例えばハヤシブンザエモンさんとか,そういう方に戻って,そこからの登記をまた追いかけて,どなたがまだ生きていらっしゃるのか分からないので,全てにおいて送ってみる。一応,すみません,住民票ではない,戸籍謄本によれば生きているはずなんで,そちらに送りますが,返答がない場合が多いです。 ○山野目部会長 原田町長,お聞かせいただけますか。 ○原田参考人 相続放棄への対応だけではなくて,空き家の非常に荒れた家屋であったりとか,そういったものの管理というように,総合的にやはり考えざるを得ないと,我々の現場では考えます。ですから,相続放棄かそうでないかということは別にして,隣地の方々が危険を感じるとか,そういったものへの対応は,これは市も町も同じだと思いますが,町として責任をもって,安心・安全を担保するという考え方で,町で処分をするということが多いです。   それから,何度出しても戻ってくるということについては,それ以上のことは実際のところやっておりません。その20件についての対応も,できるだけ調べられる部分については調べて,違う角度で応対はしますが,それ以上のことということは,なかなかできないというのが現実ではないかと思います。 ○山野目部会長 松尾幹事,いかがですか。 ○松尾幹事 ありがとうございました。   すみません。先ほど,最初に総社市の林部長から,地域づくり自由枠の制度で対応しているというお話がございましたが,そこでいわれる地域というのは,具体的には,例えば市の中の個々の地域コミュニティに対して何らかの補助を出して対応をお願いしていると,そういうことでしょうか。 ○片岡参考人 総社市,15の小学校区があって,小学校区15に組織を作って,市役所の補助金,全部ひもがついていますよね。街路灯の取り替えとか,公園の清掃費であるとか,公営トイレの掃除であるとか,田舎のことですから,草刈り作業であるとか,清掃作業,そういうのを全部ひもを取っ払っていまして,お好きにお使いください,繰越オーケーですということで,お宅の小学校区は1,200万円,お宅は1,500万円で,その中で,何でもオーケーですと,御自由にお使いくださいというやり方を総社市ではやって,地域の自治に全てを委ねて任せている。これは防災についても,去年の被災地でもありますが,防災活動についても一切,グロスで渡してどうぞということをやっている。その中に,空き家の安全性の担保であるとか,そういうことも含まれているということでございます。 ○松尾幹事 分かりました,ありがとうございました。 ○今川委員 固定資産税の納付通知の件でお尋ねしたいのですが,毎年,所有者若しくは納税管理者に対して固定資産税の納付通知書を発送されている。そして,あるとき,それが届かずに返ってきたというときに,いきなり戸籍を調べたり,相続人全員を調べるというよりは,まずは,その方の通知先の住所,氏名が分かっているので,住民票情報で確認するという作業にまず着手されるということはないんでしょうか。 ○林参考人 申し訳ございません,かなりはしょって説明をさせていただいたと思います。おっしゃるとおりで,順を追ってやっている中で,最終的に,やはり今まで誠意を持って払っていただいていたものが返ってくるということは,そこにいらっしゃらなくなったという場合は,大抵の場合,亡くなっているということだったので,すみません,そういう説明をさせていただいたようなところがございます。   ちょっと補足して説明させていただきますと,やはり調べて新たに探したとしても,大体今までそういうものが来てなかった方だったので,ちょっと無視をされるというか,そういうことが結構多い,若しくは返ってくることが多いです。実情は,そういうところがございます。 ○山野目部会長 よろしいですか。   今川委員は司法書士ですから,部長と同じ現場の人であり,感覚は同じですから,多分そこが少し,話が大きく展開しているところが,実務家としては気になったものでありましょう。 ○林参考人 大変失礼しました。 ○山野目部会長 いえ,ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○國吉委員 市長さんと,それから町長さんの方にお聞きしたいんですけれども,所有権放棄土地を受け取るときの要件の一つに,例えば所有者不明土地の問題,そのこと自体もそうなんですけれども,その土地を取得するうんぬんの間で,一番問題なのは,その土地の範囲であるとか,いわゆる境界をきちっと確定をするということが,恐らく非常に経費が掛かるということなんだと思うんですけれども,今回,所有者不明の土地の場合の境界の確定をスムーズにしたいとも,私は思っているんですけれども,そのときに,市ですとか町ですとかが,そういったときに何かこういったことには努力しているとか,こういった方策をとっているとか,そういったようなことはありますでしょうか。 ○林参考人 現状を申し上げます。ちょっと,正直できません。やはり隣の方との境界,かなりスムーズにいかないケースが多いので,簡易な方策というのは,正直考えられないというのが現状です。もしできれば,そうやってやれば,期間も短いでしょうし,掛かる経費も少なくて済むんですけれども,ちょっと現状ではうまくいかないというところでございます。 ○山野目部会長 総社市は,国土調査は,進捗はいかがでしょうか。 ○林参考人 国土調査は全域できておりますが,もう30年,40年前の制度でございます。もう相当合わないです,現状とは。 ○山野目部会長 昔の測地計でしたものは,だんだん現地とずれてきていて,難しい部分がありますから,何かあればリフレッシュを考えなければいけないものでしょうね。 ○林参考人 おっしゃるとおりです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   原田町長は,最初の意見陳述でも境界の問題にお触れいただいていたと受け止めます。今の國吉委員のお尋ねに対して,何か御初見があったらお願いいたします。 ○原田参考人 土地の境界というのは,やはりいろいろな争い事があって,相談を受けることが多いわけです。境界がやはりはっきりしていないというのが現実でありまして,本町の事例の中でも,筆界未定の土地も少なからず存在しているということです。また,登記簿上の筆界を,いざ現地で確認ということになると,隣地との間でやはり見解が違ってくると。町でも調査は行っているわけで,その際に杭は打ったりしておりますが,勝手に抜いたりもしますので,やはり長い年月になると,世代が変わってしまうと,その辺が分からなくなってしまうということが多いのではないかと思います。 ○山野目部会長 國吉委員,いかがですか。 ○國吉委員 分かりました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○橋本幹事 お三方に共通してお尋ねしたいと思うんですが,感覚的な意見になるかもしれないという質問なんですけれども,今回,こちらからお送りしている質問事項の別紙の方で,1の基本的な方向性ということで,幾つか要件を書かせていただいて,この質問の前提というか,次の質問で,帰属先機関については,皆さん一致して国が帰属先機関であるべきだという御意見なのは承りましたが,この国が受け取るという前提で考える場合に,この要件のうちの⑤帰属先機関の同意があったときという要件を,今,こちらでは考えているんですが,これについては,何らか御意見おありでしょうかということを,ちょっとお尋ねしたいんですが。 ○山野目部会長 原田町長がお手をお挙げですから,原田町長からまいりましょう。 ○原田参考人 いわゆる土地所有権の放棄を認める場合,市町村で受ける場合の何が問題点になるかというふうなことでよろしいでしょうか。 ○橋本幹事 そういうことです。 ○原田参考人 そういうことですね。   少なくとも,次のような土地については問題があると考えておりまして,一つは,所有権者が明確でも,連絡がまず取れないというのが1点,それから,所有権者が,利用価値や売買益が見込めない理由での放棄ということがあるということ,それから,抵当権などの債権も残っているといったような件,それから,相続等の争いがあるということ,それから,土地の境界の,先ほどあったように争議があったり,境界がはっきりしていない場合,それから,土地の上に建築物や構造物があるといったようなこと,こういった状況があれば,これはなかなか市町村で受けるということにはならないのではないかと思います。 ○橋本幹事 ですから,市町村とか県とかは,第一次的には受けないという前提で,国が受けるべきだという前提で,要するに,国の同意が要件ということでよろしいのかどうかという御意見ですけれども,質問の意味分かりますかね。 ○古尾谷参考人 余り質問の意味が分からないですけれども,帰属先機関を,私ども知事会として,国に帰属先機関になってほしいということを言っておりますので,国が同意したからといって,市町村や県が同意したことにはなりませんので,そういうことをお聞きしているのですか。 ○橋本幹事 だから,市町村,県は受けないという場合ですけれども,端的にお聞きしたいのはですね。ですから,自治体の方としては,いろいろ問題がある土地については受けられないというのは,よく分かりました。ですので,ただ,一方において,所有者不明土地がこれ以上増えていくこと,これについてはよろしくないという感覚だというのも分かりました。   そうすると,国の方は,いろいろ問題点が,境界であるとか抵当権の登記があるとか,そういったものはクリアされているという前提で,それでも国の同意が,国が放棄を受ける要件としてあるべきだということについて。 ○山野目部会長 橋本幹事がお尋ねになっていることは,想像いたしますに,都道府県や市町村は受け取らなくてもよいという制度にしたという前提の際に,国が受け取るに当たって,その自由な裁量で判断をし,受取りを拒絶するという仕組みになる可能性も,従来のこの部会の議論において想定されているが,そこのところについて,都道府県や市町村はどう感ずるかというお尋ねであると理解し,うなずいていただきましたが,そこをどう感ずるかと都道府県や市町村が尋ねられても,必ず意見があるということではないかもしれません。ですら,何かあったら,ということで宜しいでしょうか。 ○橋本幹事 あればで結構です。 ○山野目部会長 強いてのお尋ねではなくて,何かあったら御所見をください。 ○古尾谷参考人 まず,国が引き受けるという場合,各省庁も含めまして,国土政策中で,基本的な方針がまずあるべきだと思っています。例えば,今,様々な問題で,水源地の土地の問題がいろいろ沙汰されておりますけれども,水源地を守るというような国土政策,水管理政策があって,その土地は,国としても帰属機関として受けておくべきだという判断があれば,当然受けていただきたいという気持ちがございます。   同様に,他の地域にあってもそれぞれ,日本は法制度が極めて細かく整備されていますので,都市地域は都市計画法内で整備されておりますし,そういう法令の範囲内で,基本的な要件が整っているということであれば,都道府県として非同意というような,あるいは,それはおかしいのではないかというようなことは,ないと思っておりますけれども。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   原田町長は先ほど伺いました。片岡市長,何かおありでしたら,強いてはお尋ねしません。どうぞ,お話しください。 ○片岡参考人 この所有者不明放棄地というのは,本当に様々なケースが予想されます。   私は,市としては非常に難しいよと言ったけれども,国としてそれを受けるということであれば,我々が何ら申し上げることもないし,それは,国がやるべき課題として,やれればいいと思っています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   橋本幹事,よろしゅうございますか。   道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   もし仮に,市町村ないし地方公共団体が,その土地は必要だと,だから受けるというふうな積極的な判断をしたときだけ,その当該市町村なり何なりに帰属するという制度設計をした場合,判断にはどのくらいの期間が必要だとお考えになりますか。オーケーというか,それとも,そんなものが来ては困るというか,そういった判断です。 ○山野目部会長 そうしましたら,市と町にそれぞれ,何か御感触があったらでよろしいですけれども。 ○片岡参考人 難しいルールは一杯あります。総合計画であるとか,また,市街化区域,あるいは農業振興地域とか,いろいろありますけれども,それらの配合法典に,ルールに合致するものであれば,それは,要る,要らないはすぐに決することができます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   原田町長,何かおありでしょうか。 ○原田参考人 今,片岡市長が言われたように,町としての必要性,需要といったようなものも含めて,これがはっきりしている場合には,すぐ判断はできると思います。そうでない場合は,改めてその調査であるとか計画への位置付けといったようなものが必要になってくるのではないかと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員,いかがですか。 ○道垣内委員 つまり,法制度を作るとしたときに,市町村にとって一番いいのは,放棄があれば,国に帰属するが,市町村が欲しくなったらもらえるというものだと思いますが,なかなかそうはいかなくて,多分,何か月以内とか何年以内に市町村が取得の意思を表明したときには,国を経由してなのか,それとも直接なのかは分かりませんけれども,市町村に行くということなんだろうと思います。そうすると,その期間というのはどういうふうに設定するのかという問題が,出てくるような気がしまして,伺った次第です。いろいろな場合によって異なるというか,すぐにできる場合には,最ももらいたい場合であるということなのかもしれませんね。分かりました。 ○古尾谷参考人 よろしいですか。   たまたま,私,神奈川県でございますので,神奈川は米軍基地をたくさん持っています。通常,今,非常に返還が進んでいて,米軍基地の場合は,一旦国有財産に移ります。その後,取得希望等を踏まえて,自治体の方に,県であれ,市であれ,町村であれ,売られると。あるいはそのまま,国有財産のまま貸付制度が創設されましたので,貸し付けるという判断がされます。そこに至るまでは,通常は2年から3年かかります。返還決定からあって,その土地利用とか周辺環境の整備,近隣住民への説明等を含めますと,広大な土地でございますので,その土地利用計画を市民に示さなければならないし,県民にも示さなければなりませんので,そこから取得のところに至るまでは,3年ぐらいは当然かかってしまうというのが実情でございます。 ○佐久間幹事 先ほど,橋本幹事がおっしゃった御質問を,私も同じように考えていたところがございます。ただ,その考えていたところに対してお答えがありませんでしたので,もう一度ちょっと,蒸し返す形になりますけれども,お聞きしたいんですが。橋本さんが,正に私と同じように考えられたかはよく分かりませんが,市町村などでは,所有権を放棄したいという申出をよく受けると伺いましたが,そのような放棄の希望のある土地について,必ずしも,当然市町村では受けられないと。そうなった場合に,当該土地がきちんと管理され続ければよいのですけれども,結局無責任な状態で放置されるということになり得るのは,十分考えられると思うんです。そのような状況のときに,もし本当に放棄,放棄というか管理が全くされないということになりますと,市町村はやはり,近隣住民は特にそうですけれども,大変困った状況になると思います。   そこで,放棄ということが認められないかということになり,その放棄を受ける主体は国である。ただ,国は,今のところ,この⑤というのは,国の同意がなければ引き受けないことになっているんですね。これを,国が同意せずとも,一定の条件が満たされたときには放棄がされる,国が管理することになるということだと思うのですが,そのようなことを市町村が望まれることはないのか。⑤というのは結局,国が市町村の実情にかかわらず引き受けるかどうかを決めることができるということであるのに対し,客観的な要件が整えば,国の同意がなくても,国は引き受けなければならず,それは,個人が今後管理し続ける土地ではなく,国が管理をすることになる土地になる。そういうことを御希望されることはないのかということを,橋本幹事はおっしゃろうとしたのではないか。もしそうではなくても,私はそれを,実現するかどうかはともかくとして,伺いたいと思います。 ○山野目部会長 この部会が,最終的に成案を取りまとめていく方向の中身の問題ですから,私どもが考えるべきことであるかもしれませんけれども,何か御所見があったら,6人の参考人の方で,御随意に今の佐久間幹事のお尋ねに対して,御意見をおっしゃっていただければと望みますが,いかがでしょうか。   特段おありでなければ,橋本幹事,佐久間幹事のおっしゃるところ,仰せはごもっともであるとともに,多分,私どもがそれを,今日頂いた御所見を前提に考えていきなさいというお話ではないかと受け止めますけれども,よろしゅうございますか。   ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,6人の参考人の方々から,この際,何か特段の意見の補足等がおありでしたら,伺っておきたいと考えますけれども,どうぞ御随意におっしゃってください。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,一言御礼を申し上げます。   まず,全国知事会におかれましては,全国の都道府県の意見をおまとめいただきまして,誠にありがとうございました。意見を承りましたから,どうぞ知事によろしくお伝えくださいますよう,お願い申し上げます。   片岡市長におかれましては,全国市長会の意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございました。私,今年,倉敷市の真備地区まで伺って,被災のその場所を拝見しました。もう少し足を伸ばして,御地まで伺うことができればよかったんですけれども,今日のお話を伺っていて,一層お訪ねしてみたいという気持ちを強くいたしましたから,またお訪ねして,いろいろお教えていただくことがあるかもしれません。よろしくお願いいたします。   原田町長におかれましては,庄内町の現状を踏まえたお話を頂きまして,ありがとうございました。日本海から吹き付けるあの強い風から鉄道の安全を守るために,御地のあの地方に,鉄道事業者がドップラーレーダーを作りまして,用地を確保して作って,電車がうまく走るようにというふうな設えをした実績があります。その際にも,用地を取得するのに苦労があったと聞きます。御地を始め,各地のそういう暮らしの安全を図るためにも,所有者不明土地問題の解決が喫緊のものになっております。私どもも引き続き精励してまいりますから,見守っていただきたいと望みます。   6人の参考人の皆様におかれましては,本日は誠にありがとうございました。頂いた御意見を踏まえまして,部会における審議を続けてまいります。法務省事務当局から,今後また御意見を子細に補足してお尋ねをするようなことがあるかもしれません。その折などを含め,引き続きよろしくお付き合い賜りますようお願い申し上げます。   本日は誠にありがとうございました。   参考人の皆様におかれましては,御退席いただいて結構でございます。   部会の会議の方は,休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料17,共有制度の見直し(1)の中の第1の更にその中の8ページ,「5 共有者が選任する管理者」のお話から始まって,同じ部会資料の14ページまでの範囲をお諮りしている途中でありました。この5のところも含めて,もう少し意見を仰せになりたい方がいらっしゃるかもしれません。ここから始めることにいたします。   どうぞ,お続けいただいて,御意見のある方は御発言をください。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 先ほど,8ページの「5 共有者が選任する管理者」に関し,権限と義務についてお尋ねしました。   その問題意識の前提として,「4 共有物を使用する者と他の共有者の関係等」についてお尋ねしたいと思います。ここでは,共有者の義務に関して,①と②に分けて論じられています。②では,共有物を使用する共有者は,共有物を滅失・損傷させないよう,善良な管理者の注意をもって保存しなければならないとあります。共有者が選任する管理者も,総共有者のために,②と同内容の善管注意義務を負うということになろうかと思います。   問題があると思うのは①です。8ページの補足説明1で,共有者がその持分に応じて共有物を使用することができる,ということの具体的な意味として,㋐共有物を実際に使用することと,㋑共有物を実際に使用しないとしても,収益を得ることと分析し,共有者の1人が共有物を使用するということは過半数の持分で決定できるとしても,他の共有物の持分との関係では,無償で使用する権利はないので,対価を払う義務が生じるということが書いてあります。しかし,例えば,過半数の共有持分を有する者が第三者に対して無償で使用させるということを決定して,無償で使用させた場合,使用を妨げられた共有者は,その対価を誰に請求できるのかということが気になります。   部会資料では,共有者の1人が使用していれば,その人に対して使用の対価を請求できると書いてあるのですが,第三者に対して無償で使用させた場合には誰に対して請求できるのか。過半数で決定した者には,何らかの責任が生じて,そのことを根拠に請求できるのか,これは以前の部会でも,問題になったところですけれども,今のようなケースでは,誰に対して請求できるのか,あるいはできないのか,これについてお考えがあればお示しいただければと思います。 ○脇村関係官 ありがとうございます。   今の問題については,結論的には誰かに請求できないとまずいだろうと思っているのですが,一つの考え方としては,結局,無償とはいえ使わせている人がいるはずでございますので,その使用貸借なりの当事者,契約当事者は,自分自身が使っているのとある意味同義でございますから,そういった使用をさせているということについて,させている人に対して使用料返還請求ということは,一つ考えられるのではないのかなとは思っていました。  また御意見いただければと思いますけれども。 ○蓑毛幹事 今直ちにそれに対する答えを持ち合わせないのですが,そのような問題意識の中で,では,さらに,管理者に選ばれた人は,どのような義務を負うのかが気になります。過半数の共有持分を有する人たちが,共有物を無償で第三者に対して貸したいと言っていて,しかし,一方で,少数の共有持分を有する人は,これに反対している場合に,管理者としてはどのように対応すべきなのでしょうか。先ほど申し上げた,過半数の共有持分を有する者と少数の共有持分を有する者との間で意見の対立がある場合に,管理者は難しい立場に立つというのは,そのようなことを考えていました。過半数の共有持分を有する者が共有物を第三者に無償で貸すことを決定した場合には,管理者が契約当事者として使用貸借を行ったとしても,管理者個人が,少数の共有持分者の使用収益権を奪ったとして,善管注意義務違反となり,損害賠償義務を負うという結論はないと思いますが,そのような結論を導くための法律構成,その前提として,部会資料7ページの①の義務の内容をより深く検討する必要があるように思います。 ○中田委員 管理者が選任されたとしても,共有物分割請求はできるという前提ではないかというふうに理解いたしました。そうしますと,その共有物分割請求があった場合に,管理者の地位がどうなるのかということについても考えておいたほうがいいのではないかと思いました。もし,今お考えのことがございましたら,お教えいただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局において今直ちに考えていることはないとみえます。引き続き検討されるものと考えます。 ○道垣内委員 蓑毛さんがおっしゃったことが面白くて,本当はそれについてもお話をしたいんですが,その前に一般的な話として,5の管理者制度において,過半数の人たちが,今現在の民法の下で,自分たちでやるのは面倒だから,この人にやらせようと決めて,受任者を選任した場合とどこが変わるのかということをお聞きしたいのです。変更とか処分とかについては,なお全員がやらなければいけないということになりますと,現行法上,過半数で決めればできる行動についてだけ,その管理者ができるということになっていて,そしてそれは過半数から委任されているのだというふうに考えると,何にもなくたってできるのではないかという気もするんですが,どうなのでしょうか。   それとの関連で,管理者の3の①です。「総共有者のために」というのは,区分所有法上は代理となっているけれども,そうではなくて利益の帰属をもうちょっとマイルドにというか,曖昧にというか,示しているという話なんですが,その話と,先ほど,多数持分権者が第三者にものを貸した場合の契約当事者概念というのとの間に微妙な緊張感があるような気がいたします。4のところでは,4人のうち3人の人がオーケーといって貸した場合には,3人が契約当事者であるとされていますが,こちらの場合は,4人が契約当事者になるというふうな前提になっているような気がして,それは本当にそう考えていいのかというのが,蓑毛さんの質問に触発されて気になるところです。 ○脇村関係官 一つ目の御質問につきまして,先生がおっしゃったとおり,今の民法のルールでもできるのではないかと言われれば,私は基本的にはそうではないかと思っているところですが,一方で,今の民法のルールとして,過半数でできるのかについて一応の議論がある,あるいは権限についても明確ではないかということで,そういった意味では明確化に近い,そういった趣旨で私どもは考えているところです。   二つ目の問題は,正に私自身もよく分かっていないところで,是非教えていただきたいところの一つなのですが,この過半数でそもそも契約を,例えば売買でも,賃貸借の方がいいですかね,賃貸借契約を過半数を得てやった場合に,その場合に,誰が契約当事者になるのかというのは一つ難しい問題なのかなと思っておりまして,過半数でやった場合について,飽くまでもその過半数でやった人たちだけが契約当事者になって,それがほかの共有者にも一応効力を有するといいますか,出ていけと言えないという形でなるのか,それとも,過半数をやった以上は全員が契約当事者になるのかについてはどっちなんだろう,あるいはケース・バイ・ケースとしか言いようがないのかというのが少し私としても難しい問題だなと思っておりまして,この同じ問題が管理者についてもあるのだろうと思っています。過半数で選ばれた人がやった場合に,選んだ人たち,あるいは場合によっては管理者が自己の名前で賃貸借をしているケースもあると思うのですが,そういった構成でいいのか,あるいはもうダイレクトに共有者全員が当事者になるのか,それは契約の決め方次第なのかということもあるのかもしれませんが,そこについては,今の時点で,すいません,答えを持ち合わせていないのですけれども,すいません,答えになっていないですが,そういう問題だということは引き続き考えていきたいと思います。 ○佐久間幹事 今の問題なんですけれども,2点目はちょっとよく分からないなとは思うんですが,先ほど道垣内先生がおっしゃった現在の民法の下で,過半数の者がこの人に委任しましょうということで委任をした場合と,この案の5ですね。管理者。どこかが違うのかというと,私は違うところがあるのではないかと思っていて,過半数の者が委任をした場合は,その人を解任するのはその過半数の者だと思うんです。でも,この管理者,私の理解は間違っているかもしれませんが,管理者は,共有者の過半数決定で,共有者全員の管理者として選任できますということにしておりますので,解任も全員の過半数で--解任を過半数でできるとしら,ですけれども--することになり,その過半数は,当初選任する際に賛成した過半数と違う人の過半数でも解任できるということになるのではないか,と私は理解しています。   その考え方からいきますと,この管理者は正に共有者全員を,それがいいか悪いかは考えなければいけないと思いますけれども,言わば代理できるというか,その代わりに行為をすることができる。したがって,契約をすることについても,例えば共有者の4分の3の同意が必要である場合に,現行法上,共有者の全員を,つまり同意していない残りの4分の1をほかの人が代理できるのかというのはちょっとよく分からないところありますが,この管理者がする契約は,代理というかどうかは分かりませんし,自己の名前ですることでもいいんですけれども,当然全員に効果が及ぶ形でやれるんだということになる。そういう意味のある制度ではないかと理解しておりました。 ○道垣内委員 それが意義のある制度であるというのも分からないではないのですが,そうすると,私がちょっと分からないのは,次のような問題です。例えばA,B,C,Dというのが各4分の1の持分で共有しているときに,A,B,CがAに使わせようというふうに決めたとします。そうすると,4のルールが適用されて,同意しているB,Cがどう考えるか分からないのですけれども,Dさんは多分,償金が取れるのではないかという気がします。それに対して,A,B,Cの3人がEさんという管理者を選任して,EさんがAに使用貸借として使わせるというふうにしたときには,これは全員が同意しているのだから,各共有者の権利は妨げられたことにならなくて,Dも償金が取れないということになると,それはおかしいのではないかと思っていて,だから,4の民法上の現在の民法でできる制度と5の管理者の制度で,佐久間さんがおっしゃるような違いが出てくると,何かどこかでおかしいことが起こるのではないかなという気がするのです。私も必ずしも詰め切れていませんし,脇村さんが首をかしげているのが私にとって大変ショックでして,そうだねといって,うんうんと言ってくれたら私も自信を持って言えるんですけれども,そうかなあみたいな顔をされているので,間違えているかもしれないなと思っていますが,気にはなります。 ○山野目部会長 蓑毛幹事がおっしゃって,それを引き取って,今,道垣内委員が最後におっしゃった対価の関係の問題は,引き続き事務当局において整理します。脇村関係官は良い表情の人ですから,別に誰かに首をかしげていたりしていたものではなく,引き続き勉強しますという意味で思案をしていたものとみます。   それから,管理者の選任が民法上の通常の委任契約の束でもできることであるし,そことどこが異なるかというお尋ねの点は,その前の対価などの問題と関係があるとは思いますけれども,先ほど佐久間幹事が整理していただいたとおりであり,共有というステージで選任するということをしたか,そうでないかという違いが,解任の手順などに影響してくるということでしょうか。佐久間幹事がおっしゃっていたことは理のあることと聞こえましたけれども,どうでしょうか。そこも,ここで方向を最後まで決め切る必要はありませんから,やはり事務当局で引き続き整理してもらうということにいたしましょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 少し前に,訴訟追行について話が出ていたかと思います。訴訟といっても,いろいろな訴訟があり得るので,なかなか一概には言いづらいというところもあるように思いますが,確かにこの資料,あるいは補足説明にあるように,共有者全員に判決の効力を及ぼすということであれば,共有者全員の同意を得るというのは比較的安全な策かなとは思いました。   その上でなのですが,これは管理人は第三者でもよくて,基本的に誰でもいいということになっていることとの関係で,ちょっと大丈夫かなというところもございます。恐らくこれは任意的訴訟担当のようなことになると思うのですが,任意的訴訟担当一般について,弁護士代理の原則であるとか,訴訟信託の禁止などとの関係が問題になるところです。   それで,民訴法学上,任意的訴訟担当の許容性が古くから議論されているわけですが,その一つの例として,不動産の管理人が,その管理の内容に関する訴訟について,訴訟担当者になることができるかという問題があります。これは別に不動産が共有の場合に限らない問題なのですが,そういう問題があり,議論が分かれている状況であろうかと思いますので,その辺りとの関係も整理する必要があるかなと思いました。   他方で,これもヒアリングの前に話題になっておりましたように,区分所有法だと管理者,これも多分第三者でもいいのだと思いますが,管理者に訴訟を委任というか,訴訟担当してもらうということが可能になっておりますが,区分所有法と同じと言えるかどうか,区分所有法の方は,この資料にも少し出ておりますが,解任請求のような仕組みも入っておりますし,これと同じかどうかということも含めて検討する必要があるかなと思いました。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。 ○垣内幹事 訴訟の話が出ましたので,私も基本的に,今,畑幹事が言われたことについてはそのとおりかなというように思っております。訴訟追行権について,全員の同意を必要とするのか,あるいは場合によってはその過半数で足りるという選択肢があるのかという点については,基本的には従来の考え方によれば当該目的物の処分に要するものとして何が必要かというところと併せて考えるということなのかなと思いますので,処分について全員の同意が必要だということになったとしますと,少なくとも当該目的物の処分につながるような訴訟を想定した場合には,全員の同意が必要ということになるのかなということを一方では感じます。   他方で,区分所有等との関係について,今,畑先生がおっしゃったこともありますし,また,この共有の発生原因が何かということによるところもあるのかなというように思います。任意的訴訟担当の例として,別によく取り上げられて,かつこれは裁判例もはっきりしているものとして,業務執行組合員による任意的訴訟担当が許容されているということはありますけれども,これについては組合契約という形で最初に合意があり,その契約の内容として一定の者に権限を与えるということになっている。共有の場合,何か,例えば共同でものを購入したというような場合であれば,意思的に共有関係に入ったということで,その中に過半数で選んだ管理者には訴訟追行権限まで与えるというような意思を見いだしていくということは,場合によっては可能なのかもしれませんけれども,共有の場合には必ずしもそうした意思が前提になっているということではないわけで,その点が,例えば組合の場合とも違いますし,区分所有の場合も,区分所有権であるという前提で所有権を取得しているということが出発点としてはあるのだといたしますと,その場合とも少し違うところが出てき得るのかなというふうに考えていまして,そうすると,過半数でという考え方については,よりハードルが高い面が共有一般の場合にはあるということになるのかなという気がしております。 ○今川委員 先ほど,新しい同意取得制度のところでも申し上げましたけれども,管理者の権限の範囲として,変更又は処分も含むことが前提になっています。そうすると,第三者からは管理者がそもそも選任されているか,それから管理者が誰であるか。管理者が誰であるかが分かっても,特に管理者の権限の範囲が分からないと安心して取引ができないということがありますので,取引の安全の観点から,登記事項とすることも含めて何らかの形でそれらの証明をする制度を設ける必要があると思っております。これは(注4)に関してであります。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   先に進んでよろしいでしょうか。   それでは,「第2 遺産共有における共有物の管理」についてお諮りを致します。   部会資料の15ページから17ページの途中までになります。この部分について,御意見をおっしゃってください。いかがでしょうか。 ○中田委員 この規律と相続法の規律との関係を教えていただきたいと思います。   一つは,善管注意義務にするかどうかについて,熟慮期間中の規定との関係が問題となるというふうに書いていらっしゃるんですが,その前提として,相続法の規律は,それはそれで残しておいて,その外に,この善管注意義務があるという御趣旨なのかどうかです。   同様のことですが,配偶者の短期居住権というのは恐らくこれの外になると思うんですけれども,そういう理解でよろしいかどうかをお教えください。 ○脇村関係官 1点目につきましては,この後ですけれども,前回,相続放棄を全員した場合の義務をどうするかという議論をさせていただいていたと思いまして,そのときにも部会の中で,この熟慮期間中も含めて考えたほうがいいのではないかという御意見を頂いていたというふうに記憶しております。現時点で,そちらの部会資料がまだできていない状況ですので,どういった形でお示しするかというのは今検討中でございますが,そこでも検討するかどうかも含めて今検討中でございます。次回,相続財産周りについてもお示しさせていただきますので,また改めて,そのときに御説明させていただきたいと思っています。   二つ目につきましては,配偶者居住権についてもらち外といいますかで,それはそのルールで従うということを前提にしておりますので,これは必要がないケースといいますか,そこではないケースについて検討しているものでございます。 ○山野目部会長 この「第2 遺産共有における共有物の管理」の部分は,少し見た感じでは第1について御審議いただいたところで成案を得る方向が見通せるものは,基本的にはこちらでもそれを採用するという方向になりそうですけれども,中田委員から御注意があったように,この後,本日は資料の用意がありませんけれども,相続財産管理についての検討がどういうふうな帰趨を得るかということが明らかになった段階で,そことの整合性をもう一回点検してみなければいけないという宿題がございます。特段のことがなければ,その宿題を確認した上で先に進みますけれども,よろしいでしょうか。 ○佐久間幹事 単に言葉というか,説明の問題ですけれども,16ページの「2 対象となる遺産について」のところで,「相続債務は,相続人に当然に分割されるため」とあるんですけれども,例えば売主としての追完義務みたいなものを相続債務として承継した場合など,金銭債務でないときはこうは言えない場合があるのではないかと思うんですね。だからといって,結論が変わるべきではないとは思って,この結論でいいと思っているんですけれども,説明の仕方を少し考えていただいたほうがいいかなと思います。 ○山野目部会長 御注意を承りました。 ○中村委員 「第2 遺産共有における共有物の管理」につきましては,この第1の制度と基本的に同様の規律を設けるという形で御提案があるわけなんですけれども,本当に通常共有と遺産共有を基本的に同じ扱いにしていいのかということについては,日弁連のワーキングでもかなり話題になりました。通常共有の場合には,何らかの関係があって通常の共有状態になっているわけですけれども,遺産共有の場合には,当然ですが長い数十年のいきさつのある主に親族の間で遺産共有の状態になっていると。そして,遺産共有の場面では,ほかの会で検討しましたように,今後遺産分割を促進していくという方向で,いずれその遺産共有は,なるべく早い時期に解消するというものとして設定されていくのに,通常共有と同じような規律をここで設けるのが妥当か,また必要かということについては,かなりの議論がありました。   それから,先ほど佐久間先生から御指摘のあった16ページの2項の対象となる財産というところの相続債務に関してなのですが,これも日弁連ワーキングでは話題に上っておりまして,例えば遺産共有となった不動産をローンで買っていたという場合のローンの債務ですけれども,積極財産としての当該不動産は管理人が管理するけれども,ローンの方は分割債務になるから,個々の相続人が個別に対応しなければならないということになるのか,そうすると,管理費とか固定資産税も管理者は権限外ですから払えないということになるのか。そうすると,個々の相続人が個別に対応するということになってしまい,積極財産である相続財産については協議が調ったとしても,相続債務の処理については積極財産を原資に使えないということになるのだろうかとか,それから相続債務のうちの不可分債務はどうなるのだろうかと,被相続人がある物の引渡し債務を負っていたような場合に,管理者は債務の管理はできませんといって断るということになると,一体どういうことになるのだろうかなど,実務的な懸念が幾つか出ておりましたので御報告しておきます。 ○山野目部会長 中村委員のお話を伺っていて明らかになったこととして,この後,次回以降にお諮りする相続財産管理の審議の帰趨を見た上で,もう一回ここを見直さなければいけないとともに,遺産分割の期間の制限についての規律としてどのような成案が得られるかということを見定めた上で,本日お諮りしているこの第2のところで扱われるものと,第1のところで扱われるものとの割り振りというか,相互の関係がより見極められてきますから,この第2のところをその観点からも点検しなければならないということも強く感じました。   また,中村委員が後段の方で弁護士会の御意見として種々取りまとめをし,御紹介いただいたところは,その本質的な性格は中田委員から御指摘があったように,相続法の規律とどのような整合を図るかという問題であることを改めて感じます。それらの点を含めて,事務当局の方で整理してもらうことにいたします。 ○道垣内委員 これは,けれども,根本的には遺産の管理者の制度ではなくて,遺産に属する個々の財産に関する管理者の制度ですよね。したがって,その債務はどうなるのかなどという話は関係ないというか,ここにある不動産についての共有のときに管理者をどうするかと,ここにある自動車についての管理者をどうするかという話なのではないかと思います。それを相続の特殊性みたいな話と絡める必然性が,私にはどうもないような気がします。その辺も私の勘違いもあるかもしれませんし,また,私が勘違いをしていなくても,なお,もう少し相続財産であるということの特殊性をいかした制度設計の方がよいということになるかもしれませんので,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 後ろの方のではないでしょうか。道垣内委員がおっしゃるとおり,遺産に属する個々の共有物の管理の話をここでしているものであって,その話と相続法の規律の一般的展開とは論理的には関係がありませんけれども,弁護士会がおっしゃっていることは,さはさりながら実際の事案と向き合うと,何か少し不自然に感ずるような,あるいはやりにくいような局面として幾つか指摘があったところから,忘れないでおいてくださいというお話であると考えます。ですから,道垣内委員のお考えと同じではないでしょうか。   ほかによろしいですか。   そうしましたら,次に,「第3 持分の売渡請求権等」のところでございまして,部会資料の17ページから22ページの途中までのところをお諮りいたします。   ここの部分について,御意見をおっしゃってください。 ○蓑毛幹事 部会資料17ページの持分の売渡請求権の制度の創設について,賛成します。共有関係の解消,特にメガ共有のような共有者多数の場合に機能する有意義な制度になり得ると思います。   ただし,この制度の創設にあたっては,共有者を知ることができず,その所在を知ることができないという要件の内容,価格の相当性,手続の適正さ,特に不動産の移転登記手続をどのように行うのかという,三つの問題があると思っています。   ついては,意見を申し上げる前提として,気になるところがあります。第3,1,①,②に出てくる金額について,供託する金額としての「相当と認められる金額」と,「時価」という2つの概念があります。この「相当と認められる金額」と「時価」との関係について確認と質問があります。   (注3)と(注4)にあるように,共有者が「相当と認められる金額」を供託して売渡請求権を行使した場合は,売買契約が成立したのと同じ法律関係になり,売渡請求をした共有者は不明共有者の持分を取得し,不明共有者は売渡請求をした共有者に対して代金債権を取得する。そして,この代金債権の金額が「時価」として発生するということが書かれています。つまりここでは,供託する金額としての「相当と認められる金額と「時価」との間にずれがあること,あり得ることを想定していて,供託した金額と「時価」との間にずれがあったとしても,「相当と認められる金額」の供託があれば売買契約と同じ効果を生じさせ,ずれについては代金債権の金額の問題として処理するものと理解しました。ということは,裏を返すと,共有者が幾らかの金額を供託したけれども,それが「相当と認められる金額」に満たない場合には,売買契約と同じ法律関係は生じない,売渡請求の効果は生じないという理解で正しいかどうかを確認したいと思います。その上で,そうだとすると,売渡請求の効果が生じる要件として,「相当と認められる金額」の意義が重要になると思います。ところが,部会資料の中に時価の考え方については持分減価の考え方など幾つか示されているんですが,「相当と認められる金額」の意義であるとか,この金額がどのように算定されるかということについては何も書かれていません。そこで,「時価」と「相当と認められる金額」との関係や,「相当と認められる金額」は一体どのように判断されるのか,この点についてお考えがあれば御説明いただきたいと思います。 ○脇村関係官 前段部分については,先生おっしゃっているとおりだと思っていまして,問題は,その相当と,この時価の間の話なのでございますが,まず,書けていないので恐縮なんですけれども,基本的に供託する金額は時価相当額をきちんと納めるべきだというふうに理解をしていましたが,先ほどのお話にもありましたとおり,最終的には,出てきたときにもう一回決着を付けるということを想定していましたので,同じ表現ですと,当時は時価相当額と思って供託をしていたんですけれども,訴訟等を経て,時価というのはもっと高かったのではないかという決着が着いたときに追完するということを想定していたものですから,そうすると,同じ表現だとまずいのかなということで,少し表現をずらしていまして,基本的に供託するときにはずれないように時価相当額が納めるべきだという前提で考えてはいました。 ○蓑毛幹事 脇村関係官のおっしゃったことをきちんと理解できていないかもしれませんが,その考え方だと,逆に問題が生じないでしょうか。供託した金額と「時価」との間で,一定程度のずれがあったとしても,それは共有者と不明共有者との間で精算すればいいだけの問題だとするのか。そうではなくて,供託すべき金額としての「相当と認められる金額」は,時価とぴったり同じであるべきで,事後的にそれがないと判断された場合には,売渡請求の効果,売買契約と同じ法律関係が生じないとすると,その後の取引は無権利者から取得したということになりかねないと思います。そのような意味で,この「相当と認められる金額」というのは,当事者間の清算の問題だけではなく,取引の安全等の関係からどう考えるかが重要なのではないかと思ったので質問した次第です。 ○脇村関係官 すいません,ちょっと私の言い方があれだったんですけれども,ずれることがあることは当然想定したという前提なんですけれども,そういう意味で,ずれた場合には後で追完を当然して,取引自体,類似の効果は覆滅しないということを前提にしていたんですけれども,では,事前に相当な金額として納めるべきものは何ですかということについては,それは基本的にはきちんと時価相当額に沿うような形で,できるだけきちんと納めてくださいということを想定しています。例えば,不動産鑑定士等の鑑定でこうですよという金額をきちんと納めることを一つ想定しているわけですけれども,もちろんその鑑定士の判断について,もっと高いはずだという主張が別途あるケースについては,神の目から見ると,後で,それは時価相当額ではなかったということはあるかもしれませんが,供託段階では少なくとも最善の策といいますか,できるだけきちんと納めてほしいということを考えていました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事の御意見は,時価よりも供託した金額が下回っているときでも,売渡請求の当事者間の精算の問題として処理すればよいものであって,取引の安全の問題にはしないほうがいいというお考えでしょうか。 ○蓑毛幹事 常に,取引の安全を優先すべきとまでは言いません。例えば,極端ですが仮に持分の時価が1億円だとして,それに対して100万円の供託がなされて売渡請求がされた場合に,後に不明共有者が売渡請求の有効性を争い,持分の時価が1億円であったことが明らかになれば,これはさすがにずれが大きすぎるので,「相当と認められる金額」の供託が認められず,売渡請求の効果は生じないということでよいと思います。しかし,例えば,100万円の供託がなされて売渡請求がされた場合に,その持分の時価が150万円であったというときは,「相当と認められる金額」の供託があったとして,売渡請求の当事者間で50万円精算し,売渡請求の効果は生じさせてよいと思います。   このように,売渡請求の効果を生じさせる要件として「相当と認められる金額」は重要な概念であり,これを適切に定める必要があると考えたということです。ちょっと分かりにくいですかね。 ○山野目部会長 いや,御意見の趣旨は分かりました。 ○松尾幹事 私も蓑毛幹事と同じで,この持分の売渡請求権の制度は,共有者不明問題に対する一つの実質的な対応ルールとして非常に重要だと思いますので,要件および効果をこれから詰めていくという方向での質問とコメントです。この持分の売渡請求権というのは一種の強制買取権の性質を持っていると思います。そうすると,その根拠とか手続というのを,関連する制度間の整合性を確認してきちんとルール化していくということが必要だと思うんですが,類似の制度として既に民法253条2項で,共有者が共有物の管理費用等の共有物に関して負担すべき義務を1年以内に履行しないときには,他の共有者が相当の償金を払って持分を取得できるという制度があります。これは共有物の管理費用等の負担義務を履行しない共有者に対しては,そういう人はもう共有者としてふさわしくないという理由で持分を取得してしまうという正当化はできると思いますが,共有者不明の場合には,共有者の特定困難あるいは所在不明の場合に,それを理由に買い取ってしまうよということなので,やはりそれなりの根拠づけと慎重な手続が必要という気がいたします。   それに関連して,共有者不明であることを理由に,権利を買い取ったり,利用権を設定するという類似の制度は既に存在します。例えば,平成28年に森林法が改正されたときに,森林法10条の12の2から10条の12の8が設けられて,共有者不確知森林の確知共有者が,その不確知共有者の立木持分権を買い取ったり,あるいはその森林の土地使用権の設定を受けるという制度が設けられていますけれども,この場合には,市町村長に申し立てて公告をして,その公告の中で立木所有権を取得すること,森林の土地にどういう使用権を設定するということを公告をして,それに基づいて,都道府県知事の裁定によって立木所有権の取得とか,土地使用権の設定が認められています。その際には,いつその権利が移転するかとか設定されるとかということが,手続上は明確になる形になっています。   一方,部会資料17の17ページ,第3の1で問題になっている売渡請求権の制度については,持分権を取得する理由があることを確認する手続をどうするか,そのこととの関係で,売渡請求権を行使したときに,どの時点で持分権の移転が生じるのかということについては,少し曖昧な点が残っていると思われます。例えば,今,蓑毛幹事がおっしゃったように,もし代金の相当性が問題になるようなときには,供託した時にいったんは持分権が移転したことになっていて,それが事後的に問題になったときには,それが問題解決されたときに,最初に遡って持分権が移転したことになるのかとか,そこが不明確であるという気がいたします。   手続に関しては,部会資料17の18ページから19ページの(注)の方で,例えば(注)の2,6,8に,公告の制度というのも言及されていて,恐らくこちらの方で,今の問題は解決されてくるのかとも思うのですが,その公告の内容とか,それから先ほどの代金の相当性とか権利移転について判断する人とか時期とか,そこはやはりルール化していくということが,既存の制度との整合性を保つ上でも妥当ではないかなと考えます。そちらの方で,手続ルールを明確にしていくことによって,蓑毛幹事が提起された問題ですとか,権利移転の時期とか,それから登記をどういうふうにするかとか,それも明らかになってくるものと思われます。 ○佐久間幹事 蓑毛幹事,松尾幹事の慎重な意見から,すごくもう何か,まあ,いいではないかというふうな意見になってしまうと思うんですが,私はこの提案を実はこう読んだということを申し上げて,それでは駄目かということを伺いたいと思います。   焦点としたいのは,その相当と認められる金額を供託したところです。相当な金額が供託されるべきであるとは思うんですが,不相当であるからといって,売渡請求の効力がなくなるということがあってはいけないと私は思っております。そうすると,不相当な金額が供託されることをできる限り防ぐということを考えてはどうか。その場合に,例えば借地借家法の借賃増減請求権の場合には,相当と認められるではなくて,相当と認める金額を供託すればよいということになっており,その代わり,それが不相当であったときは1割でしたっけ,違うかもしれないけれども,その遅延損害金に当たるものを支払わなければいけない,それによって金額の相当性を担保しているということがあったと思います。今ここで問題としている場合は,過大な金額を供託したからといって,返還を受けるときに1割増しというのはあり得ないと思うんですけれども,低い金額しか供託をしなかった場合には,1割余分にというふうなことはあり得るのかなとは思いました。   ただ,そうは思ったんですが,私,実はこれは「認められる」ではなくて,単純に「認める」ということでいいのかなと思っております。この場面は,ここからはすごく乱暴なんですけれども,共有者の一部が不明である場合の制度であって,そう簡単に共有者が出てくるとも思えない状況なのではないかと。そうすると,結局,金額が仮に不相当であっても,その金額を支払う必要は最終的になかったということも大いに想定されるのではないかと。その場合に,ところが不明であった共有者が出てきたという場合は,1割増しとかということではなくて,普通の法定利率による遅延損害金は払わなければいけませんよという形で処理するということでも,まあ,悪くはないのかなと思ったんです。   これが私の理解でありまして,意見としてというか,相当と認められるという,言わば客観性のある金額でないといけないのか,相当と認める金額という,要するに供託をする人が決めることのできる金額とすることはできないのか,ということが御質問でございます。 ○脇村関係官 御指摘も御意見もあると思うのですが,おそらく従前の議論は,やはり効果として持分を取ってしまうということですので,やはりふさわしい金額を積まないといけないだろうという議論であったのだろうと思います。さらには,その先に,その金額をどう担保していくのか,妥当な金額を妥当にするために,この(注)に書かれています公的機関なりをどうかませていくのかというのが今後の検討課題なのかなと思っていまして,ただ,御意見としては,もうそこまで固くしなくていいではないかという意見もあるのだろうと思いますが,従前はそういう前提でやっていたので,今回の資料はそうさせていただいておりますが,もちろんまだ中間試案の前の段階でございますので,御意見いただければと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事,よろしいですか。 ○佐久間幹事 結構ですが,ただ,では,今のところは,この相当と認められる金額の点についても,公的機関をかませることが考えられているのであれば,そこでそれなりの判断が出てくるということをイメージしておけばよろしいのでしょうか。そうすると,何か先ほどの不相当だった場合どうのこうのというのは,余り心配するおそれはないのかなとも思ったものですから。 ○山野目部会長 御意見は承りました。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   売渡請求権の制度自体には非常に賛成ですが,その上で1つ質問させていただきたいのが,先ほどからも何名かの委員の方が指摘されている,「他の共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができない場合」の要件についてです。基本的には先ほど出てまいりました共有者の同意取得のところで使われているのと同じ意味だということを先ほど伺ったんですが,これはその後の(注)で出てくる合理的な範囲で調査するというところでどこまでやるかというところに関しても,先ほどの共有者の同意取得の場面での探索の話とここでの話というのは同じなのか,それとも,ここはレベルを変えるという考え方もあり得ると考えていらっしゃるのか,というのをまず教えていただけますでしょうか。 ○脇村関係官 資料自体につきましては,用語としてはレベル感を変えているつもりはございません。ただ,制度全体として,例えば公告期間を一定期間置くということで,実質的にはよりきちんと調べてよということを前提にしたいということを含意しています。(注)で,2で書かせていただいています「一時的に不明である」というのを外したいというのがありますが,これは知ることができない自体を何かいじるというよりは,それを手続的な形で補うことで,実質的には要件を重くするということができないかというのを少し模索しているものでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。   先ほど議論されていたとおり,売渡請求権に関しては供託した金額が相当かどうかという論点も当然出てくると思われますし,それでさらに,そもそも所在不明という前提が間違っていたりすると,結構危険な制度になる可能性もあるので,先ほどの共有者の同意取得の場面に比べると,こちらの方がちょっとハードルは高くしたほうがいいのだろうな,ということは考えておりました。ただ,こっちの方に引っ張られて,「合理的な範囲で調査」というところのレベル感のハードルが全体的にすごく高くなってしまうと,それはそれでバランスが悪いのではないかというふうに考えましたので,その点だけ申し上げておきたいと思います。 ○道垣内委員 「第3 持分の売渡請求権等」ですが,1の①と②という二つの場合というのがどうしてあるんだろうかということなんですね。佐久間さんが,幾ら仮に不相当であるというふうな供託であっても,売渡しという効果が生じたことは覆滅させるべきではないとおっしゃり,それは事務局からの説明でもそういう説明はありました。第三者が共有物全部の所有権を売却によって取得したときに,いや,実は売主には,ある一定の持分権はなかったんだと言われて,売買契約自体が,売買契約というのは第三者との間の売買契約自体で第三者が所有権を取得するということに支障が出るということになると,それはまずいというのはよく分かるんですが,第三者に処分をするという局面以外で,他の共有者は,売りもしないのに,1人の共有者にすべてを帰属させなければならないのか,がよく分かりません。売却のことだけを考えれば足りるのかなという気がするんですけれども,強いて①を挙げられることの意味を伺いたい。   ①の場合も,売るときの大前提として,売主に全部帰属していなければ相手方は信用しないだろうというふうな話で考えますと,やはり売却を目的とするというふうな場合について,①も問題になるのかもしれないという気もいたしますけれども,①独自,例えば存在が明らかな共有持分権者が他の共有持分権者の持分まで取れてよかったねという話の制度はなぜ必要なのかが,今一歩よく分からないのですけれども。 ○山野目部会長 ①がなぜあるかというお尋ねですよね,①と②がなぜあるかではなくて。 ○道垣内委員 そうではありません。 ○山野目部会長 ①はどうして,という疑問です。 ○脇村関係官 基本的に今の民法でも,管理費を払っていないケースについて取り上げることができるということをベースに考えていましたので,①はその流れで,派生として作れないかなという考えでの出発点なんですが,効果としては,1人に集約したいということであれば,②より①の方を使うケースが当然あるのかなというふうに考えていたところでございます。①を②と別にしたのは,一つはその理由ではございます。 ○山野目部会長 道垣内委員はお続けになることは。 ○道垣内委員 続けたいんですが。 ○山野目部会長 納得できないという御感触でしょうか。 ○道垣内委員 それって,気持ちということですか。1人に集約したいという,その人の気持ちを大切にしようということですか。たしかに,当該共有者が,例えば被相続人となる相続が起こるといったときには,やはり不明者が絡んでいないほうが楽なので,あらかじめ単独所有にしておいたほうが,例えば第三者への処分というのが後発的に起こらなくても,前提を整えるためにも必要だという説明なら,それはそうかなと思いますけれども,まあ,それは収用ですね。 ○大谷幹事 例えば,共有物の変更とか処分とかいうことで,持分を移転しないパターンもありますけれども,それで,先ほど同意取得の方法についての規律の提案を致しましたけれども,それは毎回,毎回やるのかということもございます。結局のところ,今の253条と同じように,もはやその共有物の管理に関与してこなさそうな人から持分を集約してしまったほうが,その後の共有物の管理もうまくできるだろうと,必ずしも他人に移転しなくても,その方が共有物の管理にとっていいということがあり得そうだということで,①があるのかなというふうに理解をしております。 ○中田委員 ただいまのやり取りとも関係するんですが,(注1)で,この制度の対象を不動産に限定するかどうかというのがございます。もしこれを限定しない場合に,例えば株式なんかですと,同族会社で支配権争いということで非常に大きな影響が出てくると思います。(注7)で,売渡請求権の競合の場合についての記載がありますけれども,これも今のような場合を考えると非常に緻密な制度になる必要があるかなと思っております。今までの御議論は,不動産を前提とした御議論だったような感じがしまして,むしろそれで考えたほうが進めやすいかなという気はしております。   それから,もう一つ,細かいことで恐縮なんですが,供託については,弁済供託と同じような規律を置くということを想定しておられると書いています。そうすると,取戻しについても弁済供託と同じになるのではないかと思うんですが,相手方が供託を受諾するということは多分想定しにくいのではないか,いないわけですから。そうだとすると,宙ぶらりんの状態が長く続いてしまう可能性があります。民法の方ですと抵当権や質権が消滅すると,それで終わるんだということになりますが,同様に,この手続の中で,やはりどこかで供託金の取戻しができなくなるとしておくことが手続の安定化のためには必要ではないかと考えました。 ○今川委員 この第3の売渡請求権については基本的に賛成です。本文が非常にシンプルというか,骨太で書いてあって,(注)が一杯書いてあるんですけれども,よくよくこの制度を考えてみると,共有者が不明であることをきちんと合理的な範囲で調査したのかどうか,それから相当な金額,これについては不動産鑑定士等を入れて,その時点では相当であるという判断をして供託をすれば比較的証明はされやすいですが,そのほかのこと,申出をして異議がなかったとか,そういうものは証明するのは困難である。その状態で共有者の持分を集約したり,あるいは第三者に売却することになるとすると,第三者からするととても怖くて,公的機関の関与なしにはできないのではないかと思います。   それと,持分を取得した場合には,最終的に持分移転の登記もすることになりますが,登記官がどうやって判断するのか。単独申請でなければ意味がないと思うんですが,申請人から提供された情報によって,登記官がいろいろな要件を,登記申請の個別の審査の段階でどうやって審査するのか。やはり何か公的な機関が要るのではないかと思います。   それで,所有権の移転というか,契約が覆滅しないことを想定されているとおっしゃいましたけれども,それを担保するものとして,きちっと制度として置いておかなければいけないのではないかと思います。   それと確認ですが,ここは遺産共有は書いていないですが,遺産共有で未分割の場合はちょっと無理がある。ただ,遺産分割の期間を設けて,一定の期間を過ぎたら具体的な相続は主張できない,法定相続分のみを主張できるということを前提として,その期間を過ぎた場合はこれを適用するということでよろしいですね。 ○山野目部会長 後段は御理解のとおりです。遺産共有には適用がないという前提でお出ししています。   前段で今川委員がおっしゃったことは,基本的に賛成とおっしゃるものですが,何か反対ないし疑問の彩りがある御意見に聞こえました。 ○今川委員 いえ,公的機関を関与させるべきだという意味です。 ○山野目部会長 公的機関ってどこですか。 ○今川委員 どこだと言われると,今すぐアイデアはありません。 ○山野目部会長 どちらかというとネガティブな御評価でいらっしゃいますか。 ○今川委員 いや,かなり積極的ではありますが。肯定しておりますが。 ○山野目部会長 仕組みとして動かないという疑義を仰せいただき,なにか反対の御意見であるかもしれません。 ○今川委員 違います。 ○山野目部会長 次第に理解してまいりました。御礼申し上げます。   引き続きいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 先ほども少し申し上げましたが,この制度の創設には賛成です。その上で,この制度をうまく機能させるためには,三つのポイントがあると思います。  一つ目は,「他の共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができない」という要件を適切に定めることです。今日の部会の最初に,「他の共有者を知ることができず,又はその所在を知ることができない」ということが,いろいろな箇所で出てくるのですが,それは全て同じことを意味するのですかということを申し上げたのですが,そのこととも関係します。この持分の売渡請求の制度は,不明共有者の持分の喪失を生じさせるという重大な効果を生じさせるものですから,余り簡単に認められてはなりません。これまでの委員,幹事の先生方からもありましたけれども,合理的な範囲で調査をしても,なお知ることができないということについて,どのように適切に定めるかが重要だと思います。   2点目は価格の相当性です。さきほど申し上げたように,価格については,「時価」と「相当と認められる金額」という2つの概念があり,それぞれ価格の相当性が問題になります。まず,時価ですが,持分減価の点も含めて,持分の価格はどのように計算されるのかという考え方を示すべきだと思います。そして,「相当と認められる金額」が,時価とは違う概念であるとすると,この金額の定め方についても,考え方を示すべきだと思います。相当・不相当というのは,先ほど申し上げたような,客観的な時価とのずれの大きさの問題なのか,それとも鑑定書等に基づいて供託するなど,何らかの適切な手続を踏んで供託することにより,相当性が認められるのかなど,きちんと考え方を示すべきだと思います。   最後に手続ですが,この移転登記手続をどうするかについては,考え方としては部会資料19ページの(注8)と(注10)に書いてあることを組み合わせて,公的機関を関与させ,公的機関が発行した証明書を提出することで,権利者が単独申請できるようにするというのが一つ。それと,そうではなく,売渡請求権の制度は,あくまで実体法上の問題であり,権利者が持分の移転登記をするためには,別途,訴訟を提起する必要があるという仕組みにするのかということが問題になると理解しました。ただし,部会資料にも書いてありますが,持分移転登記に関して不明者を被告として訴訟を提起するということになると,手続が非常に複雑になり,かつ共有者の所在不明でなく,共有者が誰かが特定できないというケースでは被告が特定できず,訴訟では解決できないと思われますので,何らかの形で,権利者が単独申請で移転登記できる仕組みを設ける必要性はあると思います。そこで,このような(注8)と(注10)を組み合わせたような証明書を発行して,この証明書を提出すれば単独申請でできるというのも一つの考え方だとは思います。   しかし,この点について,日弁連のワーキングでは,単独申請を行うについては裁判所の手続で行うべきではないかという意見が強かったです。売却許可決定手続を非訟で設けるべきではないか,会社法の197条2項の所在不明株主の株式売却許可のような形で,裁判所の許可を得て行うべきではないかという意見がありましたので,その点を申し上げておきます。 ○水津幹事 蓑毛幹事が指摘された点に関連して,気になることがございます。共有減価がされるかどうかについて,1の(1)では,売渡請求権の行使をした共有者が,それにより単独所有となるかどうかによって区別する考え方が示されています。この考え方によると,共有者A,B,Cのうち,A,Bが不明共有者である場合において,CがAの持分とBの持分について同時に売渡請求権を行使したときと,まず,Aの持分の売渡請求権を行使し,次に,Bの持分の売渡請求権を行使したときとで,Aの持分の時価が変わってくることとなりそうです。仮にそうだとすると,それでよいのかどうかが気になりました。 ○成田幹事 公的機関のところで,若干コメントしたいと思います。   (注8)で示されている規律を前提にしますと,手続が完了したことを公示するだけの手続であり,判断作用が入っていないと考えられます。そうであれば,ここでの公的機関は,公証作用を担っている法務局等が望ましいのではないかと思っております。蓑毛幹事のおっしゃるように,この手続を重くするという選択肢はあるわけですが,手続を重くしていくと,限りなく判決手続に近づいていくことになり,重くすればするほど,屋上屋を重ねる形にならないかという懸念があります。   また,蓑毛幹事がおっしゃっておられるように,共有者自体が不明というケースも想定されますが,売渡請求が想定されているケースというのは,登記等で誰かしら共有者が特定されていることが前提と思われますので,そういう事態は起きにくいのかと思っているところです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   第3の売渡請求のところについて,大体意見をお出しいただいたというふうに受け止めてよろしいでしょうか。   そうしましたら,中間試案に向けて,この第3で問題提起を差し上げている持分の売渡請求の制度をどのように扱っていくかということを,本日頂いた委員,幹事の意見を踏まえて考え込んでいくことになります。多くの委員,幹事から,枕詞という言い方は乱暴であるかもしれませんけれども,この制度に基本的には賛成ですが,とおっしゃった上で,種々の細目にわたる論点の御指摘を頂きました。細々とおっしゃっていただいたところを一つ一つ丁寧に承ると,どうでしょうか,賛成とおっしゃっている委員,幹事がたくさんいるところから,これを育てていくということが基本的方向だというふうには考えますけれども,話の空気というものが押すということは少し怖い面があります。これが本当に盤石の正当性をもって成り立つ制度として私たちが育てていく見通しを得るため,改めて事務当局において,今後これを中間試案に向けて育てていくに当たって,2点ほど,深く考え込んでいただきたいことを委員,幹事の御意見を承った上で感ずるところがありますから,御案内申し上げておきます。   一つ目は,公的機関という言葉が出てきますけれども,これを全部,法務局にさせようという発想のようなものがおありであるとすれば,それは大変険しいと感じます。法務局の職員の皆さんは資質が高く,大変真摯に仕事をしていらっしゃる方々であるということを法務省事務当局は見ているから,そういうこともあり得るというふうにお考えかもしれませんが,そういう資質とか能力の問題ではなくて,権限を与える機関の性格として,供託や登記手続の確認ではなくて実体的な権利変動について,不明共有者から権利を移転させるということをするという仕組みが働く要件の確認と,それから対価が適正に払われたという,その対価の適正さということについての判断というものを行政機関にさせるということの正当化というものは,よくよく慎重に考えなければいけないものでありまして,そこがきちっと判断された上で,供託であるとか単独申請であるとかいうことを法務局にお願いするということは,今川委員がおっしゃったとおり,従前の法務局の業務にも親しむことであって大いにあり得るところです。けれども,その手前のところを余り軽く扱わないほうがいいのではないかと感じます。   全然ここではない,突飛な例を挙げますけれども,2019年3月21日にフランスの憲法院が,離婚の際の養育費を司法機関ではなくて行政機関に類似する公的機関が増減額できるという立法を通そうとして,憲法院から違憲であると告げられて,それは司法の役割を侵すものだという理由が示されていました。背景,文脈は全く異なるものですけれども,このような重要な生活事象について,やはり裁判官にきちっと判断してほしいというふうな見方というものは軽んずることができないとも感じます。成田幹事のお話もよく分かりますけれども,しかし,大事なことを裁判官に判断してほしいという建て付けで我が国の国制が司法に期待しているという側面があるということも,是非みんなで考えていかなければいけないと感じます。   それからもう1点は,この規律を本当に共有の一般法制上の規律とし,かつ全ての種類の財貨を対象とする仕組みとして設けることがよいかということもよくよくお考えいただく必要があると感じます。具体例を挙げて,中田委員から危惧の表明があったところでありまして,それはほかの委員,幹事のお話を伺っていても,部分的には感ずる側面があります。   多くの委員,幹事から育てていくべきであるというお話を頂いたものでありますから,引き続き検討をしていくことがよろしいと考えますし,中間試案に向けて育てていかなければいけないと考えますが,それほど道は平坦でないということも,今日の委員,幹事の御議論で多くの示唆を頂いたところでありますから,事務当局の方で鋭意努力を続けていただきたいと望みます。   第3の部分について,本日,ここまでの審議としてよろしいでしょうか。   それでは,続きまして,「第4 共同相続人による取得時効」の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。   取得時効について,従来の判例が与えてきたルールの一部についての見直しの可能性を含む示唆を部会資料に盛り込んでお出ししているところでありますけれども,この部分について御意見を頂きたいと望みます。 ○中田委員 今,部会長おっしゃいましたように,判例の一部を取り込もうとしているものだと理解いたしましたが,かなり大きく離れるところもあるのではないかと思っております。取り分け所有の意思を不要とする取得時効を想定するということについては,これはかなり取得時効の基本に関わるような大きなことかと思います。地役権については別の規定はあるわけですが,これは所有権ですから,かなり変わるのではないかなと思います。   取り分け二つの可能性が示されておりまして,その②の方ですけれども,これは相続以後に始まることがあり得るということでして,これは判例でも出ていないことだろうと思いますし,これまでの相続と登記についての考え方との関係も非常に難しい問題が出てくるかなと思っております。   それから,ここでは書かれていないのですが,取得時効の制度の中だとすると,援用も必要になるのかなと思っているのですが,その援用についても考えておく必要があるだろうと。特に,自動的に所有権を取得してしまいますと,不要なものも逆に押し付けられてしまうという可能性もありますので,その点も検討の必要があると思います。   ということで,これは取得時効そのものとの関係についてですので,相当慎重に検討する必要があろうかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   第4の②でお出ししているものは,中田委員御指摘のとおり,従来余り論じられてきていなかった新規のルールとしてお出ししているという側面があります。その点,慎重にせよという御注意を踏まえながら検討しなければなりません。   それから,中田委員が後段で御注意いただいたこともごもっともであります。   恐らくこの部会資料の文章の書き方としては,現在の162条も取得するというふうに書いてあって,あれとは別に,時効は援用によって効果が生ずるというふうな規定が置かれていますから,もちろん援用という契機が働くことを前提に162条と同じ文体を選んでお示ししているというふうに感じますけれども,時効援用の契機について留意を怠ってはならないという御指摘を頂きました。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○市川委員 1点お聞きしたいんですけれども,第4の②の例として,部会資料の25ページの6行目辺りから8行目辺りに,相続の開始後に,戸籍上相続人とされている人について調査をしたけれども,把握できず,相当期間が経過しても音信不通であったケースが挙げられています。この場合は,時効の起算点はどの時点になるということになるのでしょうか。 ○脇村関係官 すいません,ケース・バイ・ケースとしか言いようがないところもあるんですが,基本的にはほかに出てこないだろうと思った,思っても仕方ないという時点を想定しておりまして,調査をして,調査時点でそこまでもういっていい状況なんだということであれば,その時点でございますが,普通であれば,もう少しやはり一定期間,音信不通である状態が続いて,やっとさすがに出てこないだろうと思うのが普通だというケースであれば,ちょっと期間が経ってからということを想定しておりました。 ○山野目部会長 市川委員,どうぞお続けください。 ○市川委員 調査をした上で相当な期間が経過した時点となりますと,調査をしたということ自体が時効による所有権の取得につながる要件になりますので,どの程度の調査が必要となるのか,十分な議論が必要なのではないかと思います。また,相当の期間というのがどれぐらいなのかということも,どういう場合に時効取得できるのかということと,それから,時効の起算点はなるべく明確な時点を捉えるべきだというふうに一般的に理解されていることとの関係で,十分な議論が必要なのではないかと思います。 ○脇村関係官 現在の状況ですと,例えば黙示の意思表示で転換されたケースなどの裁判例があると思いますので,今後も引き続き研究を続けたいと思います。 ○山野目部会長 市川委員の御指摘を宿題として受け止めました。ありがとうございました。 ○水津幹事 共同相続人による取得時効の提案について,185条との関係がどのように整理されているのかが気になりました。   この問題に関する判例は,共同相続人の1人が遺産に属する物を自ら占有した場合に,その占有は,185条の「権原の性質上占有者に所有の意思がないもの」に当たるとした上で,占有の性質の変更に関する同条の要件を満たすときを明らかにしたものであると理解することもできれば,共同相続人の1人が遺産に属する物を自ら占有した場合には,その占有は,185条の「権原の性質上占有者に所有の意思がないもの」に当たらないものの,通常の占有とは異なり,186条による自主占有の推定を受けないとしたものである,つまり占有の性質の変更を問題としたものではないと理解することもできるように思います。   部会資料の第4の前半は,本文②との関係についてのみ,185条を引きつつ,本文②と本文①とのバランスを指摘しています。他方で,27ページの下から2段目の最後のところでは,その提案全体が,185条とは別の特則と位置付けられているものと読むことができます。また,自主占有との関係についての説明と立証責任についての説明とを合わせ読むと,この提案は,185条とは異なり,占有の性質の変更を定めたものではなく,186条による自主占有の推定が及ばないとしたものであるようにも見えます。そこで,185条との関係について,少し補足していただければと思います。 ○脇村関係官 先生に御指摘頂いたとおり,相続と,この185条の関係はいろいろ御議論あるところだろうと思っています。そういった意味で,資料では,余りそこに深入りしない前提で組もうということで,実質論を基本的に書かせていただきました。185条,あるいは186条にまつわる相続に関する問題については,最高裁の判例に対する解釈についていろいろな考え方がございますので,すいません,そういう意味で,関係という点について言いますと,あえてそういう意味では,そこについて触れない方向で,これ独自として作ってはどうかということを今のところは念頭に置いております。もちろんこの後,仮にこれが成案として得られるといった場合には,条文の置き方も含めて慎重に考えないといけないことございますので,差し当たりは,実質論においてどうかということを書かせていただいたというところでございます。 ○中田委員 私,先ほど相続と登記というふうに申し上げたんですが,言い間違いで,相続と新権原のことを言いたかったんです。それを前提として,所有の意思という概念自体を取り払ってしまうというのが御提案ですけれども,それは取得時効制度のかなり根幹に関わる問題ではないかということを申し上げたかった次第でございます。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○中村委員 この御提案は,どの時点からということをお考えなのか確認させていただきたいのですが,この改正があった時点より前に占有開始をしている場合を想定しているのか,それとも時効完成のときに,この改正があれば適用されると考えていらっしゃるのかということについて,日弁連の部会で話題になりました。遺産分割の促進ということを進めながら,話し合いしないでおくと時効取得があり得るという方向性は,矛盾してはいないだろうかという指摘のほか,以前からの占有者であれば,ここに書かれているような事情があって,改正前からずっとその状態できた人について時効取得はあり得ますよというのは分かるけれども,改正後に占有を開始した人はどうなのだろうかというような疑問がございましたので,もしお考えがあれば教えていただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局から直ちにご案内を差し上げる考えというものはありません。今,受け止めて検討するということです。   中村委員におっしゃっていただいたことは,なるほどと聞き入りました。そのような問題があるであろうと思います。ここでしている議論一般について,経過措置のことを一つ一つ念入りに検討しなくてはいけませんが,そうした一般論に吸収することができない個々の論点の固有の経過的問題があるということを今の御指摘で認識いたしましたから,引き続き検討をさせていただきます。ありがとうございます。   いかがでしょうか。   この第4のところは難度が高いということが,今の委員,幹事の御指摘からもうかがわれますから,引き続き問題点を整理しなければならないと感じますけれども,ただし,御議論をお願いしたことではありますから,どういうふうにするにせよ,議論の取りまとめを次回以降にお示しするということにいたします。   特段のことがなければ,この部会資料の審議を終了してよろしいでしょうか。   よろしいですか。   それでは,部会資料の18をお取り上げいただきます。   それでは,部会資料18の方で,審議事項は「相隣関係規定等の見直し」になります。そのうちの,まずは「1 隣地使用権の見直し(民法209条第1項関係)」のところについての御審議をお願いいたします。ここについて,意見を仰せください。 ○國吉委員 今回,お示しいただきました隣地使用権の見直しということで,具体的な事案として1の(1)ア,イ,ウという表現をしていただいたということで,それに基づいて,非常に賛成でございます。   それについて,また今回の所有者不明土地の問題などについても,我々土地家屋調査士等が,先ほどもお話ししましたけれども,所有者不明土地問題の根幹である,いわゆる境界の確認が済まないというようなことからも,やはりこういった規律を作っていただくということについては賛成でございます。   また,注意書きの4の隣地使用権の使用と併せて「住家への立入り」というような文言があるんですけれども,実はこの測量に対して特に都市部ですけれども,土地の立入りだけでは境界が確認できないという案件が非常に多うございます。特に東京,名古屋,大阪の都市部については,土地というよりも隣地の家屋の,例えば窓ですとか屋上に上がらせていただいて,境界を確認するなどという行為もしなければならないという案件がありますので,できれば住家への立ち入りの承諾についても,引き続き検討を頂きたいと思っております。 ○山野目部会長 國吉委員と,その前任でいらっしゃる岡田委員が土地家屋調査士の実務で抱えておられる問題意識,課題の御指摘が今ここに,まだ成案ではありませんが,結実しようとしております。ここまでの御貢献に御礼申し上げます。   住家の立入りについての問題意識も理解いたしました。建物の壁面に境界標がくっついているような事例が特に,御指摘のとおり市街地の稠密な場所について多うございますから,問題意識を理解いたします。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料18の「1 隣地使用権の見直し」について賛成します。   以前の部会でも申し上げましたが,隣地使用権については,請求権の法的性質がよく分からず,実務が混乱しているということがありますが,今回,承諾請求権だということを明確にし,承諾がない場合には,裁判所から承諾に代わる意思表示の判決を得て,隣地を使用すると。ただし,催告をしても答えない者がいる,あるいは所有者不明の問題については(2)のような規律で対応するということで,バランスよく定められていると思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   仰せのとおり,法的構成を明確にしようとしてお出ししたものです。 ○水津幹事 (2)が規定する隣地使用権の特則では,土地の所有者は,必要な範囲内で隣地を使用することができるとされています。ここでは,210条の通行権に関する規定や220条の通水権に関する規定,導管等設置権等に関する提案とは異なり,損害が最も少ない場所及び方法を選ばなければならないとはされていないように見えます。争いになることは余りなさそうですけれども,あえて場所及び方法に関する定めを設けない理由もないような気がしました。 ○山野目部会長 御指摘を踏まえて検討続けることにいたします。   ほかにいかがでしょうか。   特段よろしいでしょうか。   そうしましたら,2の6ページに進んでいただいて,「2 越境した枝の切除」の部分をお諮りいたします。   6ページから10ページまででお示ししている内容について,御意見を仰せくださるようお願いします。 ○蓑毛幹事 2については,基本的に乙案に賛成します。   甲案のような考え方もあり得ますが,このような条文を設けると,土地所有者の権利だとして,枝が越境してきたら直ちに,ばさばさ切ってしまうということになりかねず,争いが起こるのではないかと思います。枝を切る前に,一言断るという趣旨でも乙案がよいと思います。   ただし,乙案の(2)アに関する,部会資料8ページの説明はミスリードだと思います。「竹木所有者による異議がない場合の特則」と書いてあるのですが,乙案(2)アでは,異議の有無にかかわらず,竹木の所有者が枝の切除をしない場合には,土地所有者は枝を切除できるという仕組みになっていますので,このタイトルは不正確だと思います。 ○山野目部会長 御意見と御注意を承りました。   藤野委員,お願いします。 ○藤野委員 ありがとうございます。   枝の切除のところで民法第233条第1項の規律を改めるというところ,これは元々以前の部会で話題になったときにも発言させていただいたとおりで,残していただいたということで非常に有り難いと思っております。   甲案か乙案かという点については,全ての会社の明確な意見を聞いているわけではないのですが,実務的なニーズを考えると,甲案の方が対応はしやすいのかなと,インフラ事業者なんかだと多分そう考えるのではないかと思います。乙案の場合は,結局,2の(2)のウの「急迫の事情があるとき」の要件に関して,どこまで解釈で認めてもらえるかというところと,先ほどから出ているイの「知ることができず」という要件の解釈次第かなというところがございまして,実態としては,枝の切除の際に余り悠長に構えていられないというところもあるというところはお伝えしておきたいと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御懸念を理解しました。   急迫の事情という言葉は,今までの法制にも用いられている文言でありますから,その解釈,運用を引き継ぐことになりますけれども,恐らく鉄道の線路に枝が掛かってきていて運行が危険になるというような局面は急迫の事情に当たるんであろうと思います。しかし,お悩みは理解いたしました。 ○水津幹事 10ページの切り取った根や枝に関する規律について,意見を申し上げます。   切り取った根が隣地所有者に属する理由について,前の部会資料では,付合が理由とされていたのに対し,今回の部会資料では,233条2項の切除権が理由とされています。個人的には,切除権と,切除した物の所有権の帰属は,別の次元の問題として整理すべきであるように思いますが,それはともかくとして,今回の部会資料に挙げられた論理によるならば,枝についても切除権の規定を設けておけば,切り取った枝は,その切除権にもとづいて,切除権者である隣地所有者に属することとなるはずです。言い換えれば,それにもかかわらず,切り取った枝について切除権とは別の規律を設けるのであれば,切り取った根についても,同じように切除権とは別の規律を設けないと,バランスがとれないような気がしました。 ○山野目部会長 今の点も,御注意を受け止めて検討することにいたします。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,部会資料の10ページにあります「3 導管等設置権及び導管等接続権」,10ページから始まって16ページまで,内容をお示ししている範囲につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料10ページの「3 導管等設置権及び導管等接続権」の規律を設けることに賛成します。   その上で,この制度が,土地所有権に対する制約になることを考慮すると,乙案に賛成します。隣地使用権同様,承諾請求権の構成をとるという立て付けがよいと思います。   「(2)導管等の設置場所の変更」についてですが,この場合も,(1)の乙案のような形で承諾請求権の構成をとり,催告をしても確答がなかった場合や,不明者がいる場合は公告をして,承諾を擬制して手続を進められるようにしたほうがいいと思います。 ○山野目部会長 (2)の設置場所の変更のところは,本日少し粗々の規律のイメージを御提案申し上げておるところですから,蓑毛幹事から御指摘があったところを踏まえて,(1)でお示ししているような精密度に達するように,もう少し考えを深めてまいることにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○中村委員 今の蓑毛幹事の御発言に加えまして,15ページの4番で償金の部分なんですけれども,これは日弁連のバックアップでは,実務的な経験上,導管負担が存在するとして宅地評価などが下がることは明らかであって,この15ページの一番下の方に書いてある,損害が小さいとか観念し得ないということはないという指摘が出ておりました。   損害に対して償金を支払うということなんですけれども,この損害というのは違法な侵害による損害ではなく,何らかの損失が出るということを償うという,そういう意味ですよね。そうしますと,先ほど申しました損害が小さいということはないという実務上の指摘もありますので,賃料のような形ではなく,どこかで区切って,償金として請求すれば払われるということは想定されるという理解でよろしければ良いのだろうと思いますが。 ○山野目部会長 事務当局に答えてもらう前に,中村委員のご意見は,ひょっとして平川委員も一緒に御発言いただいた上で,事務当局に答えてもらうほうがよいかもしれません。   平川委員,何かおありだったらお願いします。 ○平川委員 今のところとは関係ないんですけれども,すいません。では,先に答えていただいたほうがいいかな。 ○山野目部会長 これは失礼しました。何かお顔の色を私が勝手に読んだものですが,では,どうぞ,事務当局,中村委員にお答えください。 ○大谷幹事 償金は,違法でない原因で生じた損害を償うというものだと思っておりますけれども,現行法でも裁判例がいろいろあるようで,その損害が発生していない,償金を支払う必要はないとするものもあるようです。結局この場合,ケース・バイ・ケースかなという感じはいたしますけれども,必ず損失というのが認められるか,損害が認められるのかというのが,この種の場合そうでもないということが今までの実務運用としてありそうなので,なかなかこれは難しいところかなと思っておりまして,ケース・バイ・ケースで今後もやっていただくことになるのかなとは思っております。 ○山野目部会長 中村委員,どうぞ,お続けください。 ○中村委員 部会資料にあるように「損害が仮に観念できたとしても僅少である」と言い切ることはできないという実務経験を複数聞いたものですから,それはお伝えしておきたいと思いました。 ○山野目部会長 まず,概念の理解として,隣地通行権に関する209条,210条の場面で出てくる償金とここの償金の理解とを違えるわけにはいかないものであり,同じ概念理解でいきますということが出発点でありまして,そこから考えていくと,中村委員がおっしゃった中で,損害というものは必ずしも違法行為によって惹起された不利益に限定されるものではないというところまでは,正におっしゃるとおりであろうと思います。そこから先,常に必ず損害なるものが生ずるとか,賃料のような形で支払うことになるでしょうとかいうところになってきますと,そういうお考えもあるであろうし,しかし,今までの解釈運用が,大谷幹事が紹介したように,はっきりしていなかったところがあるかもしれません。   ただし,いずれにしても,補足説明において誤解を与えないように説明を整えていくことは大事ですから,僅少うんぬんというような表現はやめることにいたしまして,もう少し誤解のない表現を選んでいきたいと考えます。   そのようなことでよろしゅうございますか。   平川委員,失礼しました。お待たせしました。 ○平川委員 ありがとうございます。   10ページの甲案,乙案の関係ですけれども,別な法律で,例えば下水道法を見てみますと,排水設備の設置などについて,下水道の排水設備を設置する場合,自分の土地だけでは設置が困難な場合は,他人の土地に排水設備を設置できるということになっております。そういった意味で,下水道法では承諾について求めていません。   ただ一方で,例えば他の土地を使う場合,当該土地の占有者に対して,土地の利用について告げなければならないということになっています。甲案,乙案,どっちかがいいということではないんですけれども,やはり制度上は導管を例えば接続することができるとしつつ,具体的な対応については,乙案にありますように承諾ということも併せて考えていく必要があるのと思います。実際,いろいろ話を聞きますと,下水道や排水設備を設置できるとなってはいますけれども,実務としては承諾書を求めるという運用をされているという状況もお聞きをしております。甲案,乙案との関係性というのは,もう少し議論を深めていく必要があるのではないかと思いました。 ○大谷幹事 今の下水道法との関係,あちらの方は,排水区域に指定されますと,その中の方はきちんと下水道を通す義務を,行政法上の義務を負います。その義務を果たすために,隣の土地を使う必要があるときには,隣の土地を使うことはできますよという規律だろうというふうに理解をしておりまして,少し場面が違うのかなとも思いますが,この甲案というのは,そういう下水道法的な考え方というのでいけばこうなりますかねということをお示しをしておりますし,乙案の方はどちらかというと,先ほどの隣地使用の仕組みの方に寄せて考えたらこういうことかなということでお出しをしておるところでございます。 ○山野目部会長 平川委員,引き続き検討するということでよろしゅうございますか。 ○平川委員 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   佐久間幹事,お待たせしました。 ○佐久間幹事 2点ございまして,一つは(2)なんですけれども,先ほど蓑毛幹事から(2)も,(1)について乙案に賛成ということを前提に,(2)についても同様にというお話がございました。   別に,(2)を乙案と同様にすることに反対であるということではないんですけれども,随分状況が違うと思いますので,本当に乙案のようにするのがいいのか疑問に思ったということを簡単に申し上げたいと思います。   (1)の場合は,他人の所有地を,要するに強制的に使うということになる場合に,どういう要件の下で認めるかということであるのに対し,(2)の場合は,導管の設置場所を,袋地所有者の方の都合で変える場合は同様だとは思うんですけれども,他の土地の所有者の方が,補足説明にも出てきておりますけれども,例えば建て替えのためにここにあっては困るというようなときですと,接続を妨げることはできないと思うんですけれども,場所の変更はかなり緩やかに認めるほうがよいと思うのですね。そうしますと,この裁判所をかませるということになっておれば,そこの判断がきちんとされるので,必ずしも(2)については,(1)で乙案を採るにしても,同じように考える必要はないのではないかと思いました。   それと,もう1点は償金に関してなんですが,私も償金は払う必要があるのではないかと,基本的にですが思っております。償金というのは,間違っているかもしれませんが,要するに,形式的には不当利得ではないんだけれども,実質的には不当利得だというようなときに,償金という言葉を使うんだというようなことが,民法立法時に確か言われていて,ここは損害ではなくて損失ということでとれば,正にそれに当たるのではないかと思うのですね。導管を通させてもらうという利益が袋地の所有者の方にはあり,他の土地の方については実質的に損害があるかどうかはともかく,通常であれば賃料相当額を取れるような状態を甘受させるということになるわけですから,金額が幾らになるか,あるいは土地の減価がどうかということはともかくとして,償金を認めるにふさわしい場面なのではないかと思っています。   今の私の発言は,これからいろいろな意見が出て決まってくることだと思いますが,16ページの御説明の最後の4の直前の「他の土地等の所有者に利益を得させることになりかねない」というところが気になる,ということを申し上げたかった次第です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   後段の償金の概念は,少し前の中田委員との意見交換で,佐久間幹事と同じ方向というか,発想のことをおっしゃっていて,その際に,私から差し上げた整理として,大筋,中村委員,佐久間幹事のおっしゃっておられるとおりであるということでありましょう。なおかつ,その概念を竹をすぱっと切るみたいに整理すると,全くお二人の言っているとおりですが,大谷幹事がお話しになったように,いささかリアルな解釈,運用を見ると,よく分からないところがあるということも,注意喚起として御紹介しておく必要があるということを申し上げました。佐久間幹事から,重ねて考え方の整理を頂いたというふうに受け止めます。   前段のところは,実体要件として佐久間幹事のおっしゃるとおりであって,既に導管が設置されていることを前提に変更する場面と,新しく導管を設置する場面というものはおのずと状況の性質が異なるということは正に御指摘のとおりでしょう。それを踏まえて(2)の考察を深めていくことになると思いますとともに,手続要件の面で御指摘があったことは,おそらくここだけ何か借地非訟事件みたいなものが出てきますね。(1)のところにはそれは出てきませんから,この点は考え込んでみてもよいでしょう。今回の一連の話でいろいろ裁判所には御負担をお掛けすることになりそうですが,非訟事件みたいなものがここに卒然と出てくることもいかがなものか,というところが心配です。相隣関係の現行の規定にはどこも非訟事件で扱っているところがありませんから,今般,成案を最後に得たところを踏まえ,裁判所に判決手続や非訟事件等で,どのような場面でどのような手続をお願いすることになるかを改めて整理する中で,今の佐久間幹事の御注意をいかしてまいりたいと考えます。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   「償金」の支払いに関して,これも以前部会で話題になったときにはちょっとコメントさせていただいておりました。理屈のところで,どういう法律構成で考えるのが整合的かということを考えるのも大事だとは思いますが,今の実態として,導管の設置に際して,償金に値するようなもの,そういうお金のやり取りがあるのか,ということをつぶさに見ていくと,そこは実態から離れてくる可能性もあるように思います。導管等を設置する権利を認めていただくというのは非常に有益なことだと思うのですが,償金の規定を設けたことによって,何か紛争が逆に惹起されるというようなことになってしまうと,これまでとは違う懸念も出てくるような気がいたしますので,そこのところは実際にどうなっているのかというところと,理屈の話をかみ合わせる必要はあるかと思います。また,少なくともインフラの事業者の立場では,導管等の設置により,土地の効用にマイナスになるような影響は生じていないという説明を当然することにはなろうかと思いますので,そういったところのバランスも考慮した上で御検討いただければと思っております。 ○山野目部会長 恐らくそのバランスを考慮するから,余り決め付けないで,部会資料の表現を工夫していこうということであろうと感じます。ありがとうございます。 ○道垣内委員 すいません,言葉遣いの問題だけなのかもしれませんけれども,今の言葉で言うと,公道に至るための他の土地の通行権というのは,他の土地に囲まれて,公道に通じていない土地の所有者というわけで,それははっきりしているんだと思うんですね。しかるに,他の土地に囲まれて,電気,ガス等の継続的給付を受けることができない土地というのは,どういう状態のことを言うのだろうかというのがちょっと分かりにくいのです。他の土地に通っている導管に接続するというのならば,まだそれでも分かるような気がするんですが,実は公道のところに本管があり,導管自体は直接そこに続ければいいといったときに,どこにつなげるべき大きな本管があるのかによって,大分状況が変わってくると思うんですが,こういう書き方で果たして大丈夫なのかというのがよく分からなくて。   先ほど出ました下水道法は,つなげるのが困難であるという,ある種分かりにくいんだけれども,いろいろなものに対応できる言葉を使っているわけなんですが,他の土地に囲まれてというのを原因,理由としてクリアに挙げて大丈夫なのかなというのが若干心配になりますので,更に御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員の御指摘はごもっともですから,2点申し上げますと,一つは,他の土地に囲まれて,という,今お示ししている案文が最終的な要件の絞りとして法制的にも耐え得るかどうかは,当然のことながら,これから中間試案,それ以降の段階を経てまいりますなかで,検討してまいります。   もう1点,御指摘に触発されて申し添えますと,実は今提案申し上げている規律は,公道に至るための通行権の方で言うと,210条2項の準袋地に当たる規律は提案を用意しておりません。公道に至るための通行権の方も,狭い意味の通行権は,確かに公道に接していないということが要件ですけれども,加えて川だとか崖だとかで大変だよというものも入っております。その大変だよという実質的な考慮のところも取り組もうとすると,少し表現がアバウトになっていく側面もあるということの御指摘,御理解いただきましたから,引き続き事務当局において検討してもらうということにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松尾幹事 非常に形式的な点の確認なんですけれども,先ほどの償金請求のところで,以前一度,部会資料7で相隣関係を扱ったときには,共有物分割とか,共有物の一部譲渡によって,こういういわゆる導管袋地状態を生じたときには,無償でいいのではないかということも考えられるという言及があったんですが,今回は特にそれについては言及はないんですけれども,これについては変更なしということなのか,あえて変更したということなのか,その点だけ確認させてください。 ○小田関係官 意図的に落としたわけではございません。議論の関係でほかのところに焦点が移ってしまったという関係ですので,ご指摘の論点については議論を捨てていないという趣旨でございます。 ○松尾幹事 了解です。ありがとうございます。 ○山野目部会長 最終的には整備を怠らないようにいたします。 ○國吉委員 今,道垣内委員がおっしゃったことなんですけれども,私どもが実務上,経験している一番の問題は,いわゆるこの袋地と言われていますけれども,私道の問題なんですね。私道の所有権の名義が違うために,これらの導管を設置するために,その承諾を得るというような形になるんですけれども,そういった形も一応,この袋地に入っているんだという形で,一応確認だけはお願いしたいと思います。 ○山野目部会長 そのとおりです。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,続きまして,今度は部会資料の16ページ,「4 管理措置請求制度」をお諮りします。   この部会資料の最後のページまでお示ししている内容です。ここについて,御意見を仰せいただくようお願いいたします。 ○國吉委員 この相隣関係の前の議論の中でもありましたけれども,いわゆる境界の確認に関する,協議という問題が今回落ちているということなんですけれども,これは民法上で表すのは難しいし,また,啓発的な規定として置くのも難しいということなんだろうと思います。   それで,この管理というところに戻ってみますと,こういった崖崩れ,土砂,工作物などもありますけれども,これらのときに,例えば境界標が動く,いわゆるブロック塀が動く,そういったような措置についても,その境界に関する文言に関してはできないものかということの提案でございます。   やはりこの所有者不明土地問題は,先ほども言いましたけれども,土地の取引ですとか売買のときに,やはりこの境界をはっきりしていないというものが第一番の問題なんだろうと思います。そして,先ほどの枝の問題もそうですけれども,導管の設置の問題もそうですけれども,これは飽くまでも境界がはっきりしていることによって初めて越境なりが分かるということですので,その前段であるこの境界をやはりどこかの時点で明らかにするというよりも,きちっとした土地の管理をするということも必要なんだろうというふうには私どもは思っております。やはりこの土地の所有者というのは,隣接者に対してきちっと境界を明確にするんだということをどこかの時点で先生方のお知恵を拝借してでも,こういったものを是非入れていただければと思っております。 ○山野目部会長 土地家屋調査士の皆様のいわゆる立会いの現場における御労苦に思いを致す際に,今,國吉委員からおっしゃっていただいたことは誠にごもっともなことであるというふうに理解をすることができます。   今後の検討を進める上で,國吉委員に参考までにお教えを頂きたいものでありますけれども,民法に置くかどうかはともかくとして,仮にどこかにルールとして,境界に関する誠実な協議をしなければいけないという規定を置いたときに,それに従って隣地所有者が行動してくれないときの効果はどのようなものになるというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。 ○國吉委員 効果というよりも,そもそもの土地の境界,これは筆界とはまた別の話ということになるのかもしれませんけれども,少なくとも土地の境界,いわゆる所有権の範囲というのは,そもそもが筆界と一致していることが大前提です。その筆界の資料をきちっと集めた状態において,その土地の境界の位置を明らかにできる資料を元に境界の協議をお願いをするわけですけれども,そのときに立会いをしていただかないということであるとすると,前にもありましたけれども,公共物の管理の状態などの,一応規律などをやはり参考にして,例えば土地の登記の場面においては,やはりそれらの資料を参考に,我々が土地の筆界を推定する,その推定された筆界線に基づいて境界を判断するというような形になろうかと思います。 ○山野目部会長 理解を致しました。   國吉委員の問題意識をどのような形で受け止めるのがよいかということを引き続き検討いたします。既に御案内のとおり,209条の隣地使用権の見直しが現在考えられている方向で成案を得るとするならば,我が国の民法の歴史の中で初めて境界ないし境界標に関する調査という概念が民法で謳われるという状況を迎えることになります。その上で,更に國吉委員の問題意識に応えていくために,民法に限らず,どのような法制で,どのような表現の仕方で,そのお悩みを受け止めたらよいかということについて,引き続き悩んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず今回,管理措置請求という制度が提案として残ったことは,大変有り難いと思っております。その上で,総論的なところで1点と,各論で2点ほど確認をさせていただければと思います。以前,この提案が部会資料7で出てきたときには,請求権者が「近傍の土地所有者」になっていたかと思うのですが,今回は隣地の所有者に限定されている,というところで,ここは相隣関係における権利関係の調整という観点から,対象を完全に隣地に絞ることによって,ほかの土地管理制度とすみ分けを図るという意図があるのかどうかということを確認させていただければと思っております。   あと,すいません,細かいところになりますが,19ページの解説の3の(2)に,「現に利用されていない隣地」の要件の解釈が示されています。恐らくこれは,管理措置請求が強力な制度であることから,逆に歯止めを掛けるという趣旨で,こういう客観的な要件を設けたい,という趣旨なのかなと思う一方で,例示されているような,例えば生け垣だとか柵だけで囲まれただけで請求の対象から除くという整理が妥当なのか,という疑問も,関係各社から意見として出ておりましたので,そこは1点お伝えさせていただくとともに,今回の提案の中で,この要件をどのように位置付けられているのかというところもお伺いできればと思っております。   あと最後は,費用の負担のところです。管理措置請求権の行使に当たって,無過失責任というところは,事柄の性質を考えると,そうなるだろうなと思う一方で,費用のところが,これは不可抗力によって生じた場合には,一応,減額を求めることができるというふうには書いてあるんですが,今まで不可抗力だと,措置をしても起因者に請求しないという運用が行われてきた中で,費用の償還を請求できるというふうに書かれてしまうと,逆に請求しないといけなくなるのではないか,という戸惑いを感じるという意見も一部の会社から出ていたというところはございます。措置自体は相手の過失の有無に関わらず行えるとしても,費用に関しては逆に所有者に過失がある場合に限るとかという,何かそういう書き方ができるのかどうかというところをちょっとお伺いできればと思っております。   以上,3点につきよろしくお願いします。 ○山野目部会長 小田関係官にお願いですが,後ろの方の細目の2点,現に利用されていない隣地の概念と費用の問題についてお答えください。   最初の方の本質的なところについて,いささか私の方から御説明を差し上げます。 ○小田関係官 現に利用されていないというところの要件についてですが,これもまた一案として提案しているものでして,ここで決まりという,我々の意見が決まっているわけではないということを御理解いただければと思います。   それで,要件を絞っていくに当たって,これもまたいろいろなパターンがあるというふうに理解しておりまして,柵で囲っていない土地であれば,利用されていないということが推認される事情の一つになるでしょうし,そういうのを積み重ねてどれだけ具体化できるかというところが,我々の課題だというふうには理解しております。ほかの法令等も参考にいろいろ見ているところではあるんですけれども,一つ参考になったのが,柵とか,そういったものだったというところでございます。   無過失責任,費用の考え方についてはいろいろな考え方がまたこちらもありまして,法務省の中でもたくさん議論をしたところでございます。減額構成以外にも,いろいろなパターンが考えられると思いますので,御意見賜りまして,また検討したいと思います。 ○山野目部会長 藤野委員が最初に御指摘になった本質的な事柄,観点の問題提起でありますが,実はそこのところについて少し悩ましい側面があります。相隣関係の規律の一部としての隣地管理措置請求制度を残してくれてありがとうございましたというふうにおっしゃっていただき,その上で,相隣地の要件は残すのですねという念押しも頂きましたけれども,正にその点が,最終的にここで調査審議をお願いしている事項の全体を育てていく姿をイメージしたときに,最後に考え込まなければいけない問題であって,もし次回以降の会議でお諮りする土地の管理制度について,それを育てていく見通しが調うものであれば,要件的にはそれとかなり重なっていて,相隣関係の管理措置請求の制度を並べて置いておくことがいいかということは,改めて,冷静に考えてみる必要があります。メニューが多ければいいではないかという議論は,最初の段階はそういう感覚があってもよいですが,法制を仕上げていく段階では少し乱暴な考え方であると言わなければならず,整理が要ると考えます。   反面,実はこの相隣関係としての管理措置請求の制度が残るとすると,今度は現行法の,既にある個別の相隣関係の規定との関係でも,論理的整理が必要な問題が出てまいります。枝が越えてきたとか何とかというものはみんな管理不全状態ですから,ある意味では。そうすると,今の相隣関係の規定は全部廃止し,管理措置請求の制度1か条を,いわば一般条項で置けばいいではないかというふうな論理的関係にあるものではないのですかと問われたときに,うまくそれに対して答えられないという側面が出てくるかもしれません。相隣関係の管理措置請求の制度は,一方では土地管理制度,他方では相隣関係の各則規定との関係で,それぞれ法制的な論理の整理を要する問題を含んでいると考えられます。   藤野委員の御指摘は,正にそういう宿題が中間試案か,それ以降になるか,どの段階かは分かりませんけれども,整理の必要がありますねということの御示唆であるというふうにも受け止めることができますから,引き続き藤野委員にも御意見を仰せいただきたいものですけれども,部会全体で悩んでいくことではないかというふうに考えております。 ○藤野委員 全て相隣関係の中で,隣地に対する管理措置請求だけで今生じている問題が全部カバーできるかというと,恐らくそうではないので,今,別に議論していただいている土地管理制度による管理不全への対応というのも当然必要になってくるとは思います。ただ,相隣関係ならではの特別な地位に基づく請求ができる,というところを強調するのであれば,相隣関係における権利関係の調整のための制度として何か置いていただいたほうが使いやすい場面もあるかもしれないなとは思っておりますので,他の制度の内容も踏まえた全体のバランスの中で検討を続けていただければ,と考えております。 ○山野目部会長 よく分かりました。 ○道垣内委員 費用のことについて一言申し上げたいんですが,原案の4の(3)というのを,責めに帰すべき事由がないときにはというふうなものとして読むというのは,そういうことではないのではないかという気がします。やはり天災とか,そういう不可抗力といった特別な場合を念頭に置いて,そのときに,その不可抗力で起こった事象について,その責任というか,片方だけにその費用を負担させるのかどうかという話なんだろうと思います。   そうだとしたときに,その作りなのですけれども,(注4)に書かれている方法は分からないではありません。しかるに,今のままだと,4の(1)で予防工事をしなさいというふうにいったときに,相手方に。それを,そうだ,民法上はそういう制度があって,予防工事をしなければいけないんだと思ってやった人は全額自己負担,それをやらないでぐっと我慢して,隣地所有者のしびれが切れるのを待ったら半分ぐらいになるというのは,それはおかしいので,(注4)みたいにするのは分かりますけれども,(1)と(3)を並走させるというのは,私にはどうも理解がし難いところであるという。 ○山野目部会長 御注意をよく理解いたしました。引き続き検討いたします。   ほかにいかがでしょうか,管理措置請求の制度について。 ○安髙関係官 すみません,ありがとうございます。   この管理措置請求制度につきましては,ここの17ページの(注2)のところにも記載していただいているとおり,現行法でも認められている内容を明文化するものということで,法律上の整理をするという点では理解をしているというつもりなんですが,これが土地に損害が及んだ場合のみならず,おそれがある場合にも,その隣地所有者に措置を講ずるよう請求することができるという点につきまして,このおそれにつきましては,個人の主観によって判断とか請求をされるということになりまして,特に隣地所有者にとっては心理的には何か大きな負担になるのではないかなと考えているところでございます。   そして,この隣地所有者がどこまで管理をすることが求められているのかということにつきましては,法令の中で具体的に明記するということは不可能であるのかなと考えますし,現実としてはケース・バイ・ケースで対応せざるを得ないのかなというふうに考えております。そうしますと,措置を請求される側の隣地所有者さんと,請求する側の土地所有者さんとの間で管理の内容の認識もそれぞれになってしまって,そして,隣地所有者は漠然と何か負担になるというような状況になるのかなと。すると,結局,所有権放棄,土地を手放したいというようなことを招くことになってしまうのではないかなというようなことをちょっと懸念しているところでございますということを,意見を述べさせていただきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   仰せの御懸念を理解いたしました。引き続き検討いたします。   実は,損害が及んだ,既に現実に損害が発生したという要件のほかに,損害が及ぶおそれがあるという要件を挙げているのは,基本的な発想として,従来の民法上,認められてきていたものとして,明文の規定はありませんが,所有権に基づく妨害排除請求権と並べ,所有権に基づく妨害予防請求権という観念があります。そこでは,法文にないことですから,多くの学説が標準的に与えている概念理解を頼りにしながら輪郭を見定めていくことになりますけれども,一般的な理解としては,おそれがあるという場合に予防の請求ができるというふうな抽象的な理解で今日まで来たものと思います。所有権に基づく妨害予防請求権は,しかし,そうはいっても,現実に行使されている例とか,それをめぐって弊害が顕著に指摘された例とかというものを余り見いだすことができませんで,問題がないからこそ議論されてこなかったような部分があるかもしれません。   今頂いた御注意はごもっともなことでありますから,何となく印象としては所有権に基づく妨害予防請求権と一緒にして,それほど問題がないであろうという気持ちでここの要件の設定をしていますけれども,従来のその領域における裁判例における解釈運用等を調査した上で,御懸念に応えていけるかどうかということを検討してみたいと考えます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○市川委員 費用負担のところですけれども,これは隣地所有者に全く過失がなく,不可抗力で,天災などにより工事が必要になった場合でも減額にとどまって,費用負担を隣地所有者がするということなのか,それとも,完全な不可抗力の場合,隣地所有者は,費用負担はしなくていいということなのか,どちらが前提になっているんでしょうか。 ○大谷幹事 一応,これは減免の意味合いでは考えておりまして,ゼロになる場合もあり得るのだろうというふうには思っておりましたけれども。 ○市川委員 全く責任がないときにはゼロになり,一般の不法行為責任を負うような場合ですと,相当因果関係の議論や過失相殺の議論と重なり合うところがあると思うのですが,諸事情を考慮して不相当と認められるときに減額できるという規定だけですと,どの範囲で費用負担を負うということになるのか,予測可能性が余り担保されておらず,紛争を招いてしまう危険があるかと思います。可能な範囲で費用負担についての考え方の検討をお願いできたらと思います。 ○大谷幹事 先ほどの道垣内委員の御指摘もございましたので,(注4)の方もございましたけれども,検討させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料18の審議を了したものと扱わせていただきます。   部会資料19は,今日は扱うことがかないません。   委員,幹事の皆様方におかれましては,部会資料19の全体が審議未了でございますから,次回会議において,お忘れなくお持ちいただきますようお願いいたします。   本日,内容に関わる議事を了しましたから,大谷幹事の方から事務連絡があります。 ○大谷幹事 次回の議事日程について御連絡を致します。   次回は11月19日の火曜日,また午後1時から午後6時までということで,今度は赤れんが棟の第1教室,これは確か第1回のときにこちらでやったかというふうに記憶をしておりますけれども,赤れんが棟の第1教室になります。   テーマは,今日積み残しの部分と,それからまた中間試案のたたき台を残っている論点についてお示しをしたいと思っておりますので,そちらの方の御審議を頂ければと思っております。 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会第9回会議をお開きといたします。   お疲れさまでした。どうもありがとうございました。 -了-