法制審議会 民法・不動産登記法部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  令和元年12月3日(火)自 午後1時00分                     至 午後4時46分 第2 場 所  東京地方検察庁会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第11回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は,阿部委員,増田委員,衣斐幹事が御欠席です。   初めに,事務当局から配布資料の確認を差し上げます。 ○小田関係官 お手元に配布資料目録を御用意ください。今回,部会資料25及び26を配布しております。お手元に配布しております資料につきましては,事前に送付したものから誤記の修正や平仄を整える修正をしておりますので,本日は机上の資料にて御審議をお願いさせていただければと存じます。また,事前に御案内申し上げておりますとおり,部会資料23及び24につきましては前回の部会で審議未了となっておりましたが,審議の円滑及び資料の一覧性の観点から,その内容を部会資料25に盛り込んでおりますので,部会資料25についての御審議の中で一括して御検討を賜れればと存じます。部会資料25及び26につきまして,お手元にないようでしたらお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 御案内申し上げましたとおり,事前に送付しているものではなくて,本日机上に配布してありますものの方が誤記等の訂正が済んでございますから,こちらの方を用いて御審議をお願いいたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。   内容の審議に入ります。部会資料25をお取り上げください。中間試案(案)の「第1部 民法等の見直し」の中の,初めに「第1 共有制度」についてお諮りを致します。部会資料25の1ページから,しばらくこの共有制度についてのお話が続いている部分についての御意見を承ります。   この部分については,まず,共有物に関する通常の共有における共有物の管理を題材としております。過去にお諮りした部会資料17からの変更はありません。共有者らの管理の一環として使用権が設定される場合の法律関係についての提案をしているほか,不明共有者からの同意を取得するための方法についての特例的な規律の提案や,共有者らが選任する管理者の在り方等について,部会資料17に引き続きお諮りをしております。   それから,第1の部分の後半の2におきましては,通常の共有を終了させる手段として,共有物分割についての問題,そのほかをお諮りしております。第7回会議以降の審議を踏まえまして,部会資料10について若干の改訂を施してございます。引き続き,共有物分割の方法として,全面的価格賠償を明文化するという提案を置いてございます。ただし,第7回会議の際に御議論を頂いたところを踏まえ,共有物を任意で売却するという構想は取り上げておりません。同様に,その他の共有物分割の手続を非訟事件とするという可能性も御議論いただきましたが,これも取り上げておりません。   それから,第1の部分の後ろの方におきましては,不明共有者等から持分を取得するための規律についての提案も差し上げております。第9回会議における審議を踏まえまして,甲案と乙案という二つのものを提示してございます。   御案内申し上げたこの範囲,第1の部分につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今回の部会資料について,前回の叩き台から変更されたところを中心に意見を申し上げます。   と言いながら,第1について,前回の叩き台と同じ内容なのですが,疑問があるということで,少しだけコメントさせてください。部会資料5ページの1の(4)の「共有物を使用する者と他の共有者の関係等」について,この点は,これまで部会で議論したところなので詳細は繰り返しませんが,①のような義務がなぜ発生するのか,また,このことに関連して,部会資料7ページから8ページにかけて,過半数の共有持分を有する共有者が,第三者に無償で使用させる旨決定した場合には,決定をした者が,少数の共有者に対して,利用料相当額を償還する義務を負うとなっているが,なぜそのような義務が発生するのかが今一つよく分からないという意見がありました。また,実務的に考えても,仮にこのような規律を置くとすると,例えば,適正な価格で共有物を賃貸しようという場合でも,一部の共有者が,その価格は低いので反対だという話になったときは,賃貸することに賛成をした人だけがリスクを負うことになり,そのような決定をすることに躊躇するのではないか。賛成をしなかった人は特に責任を負わず,積極的に賛成をした人だけが責任を負うということになると,実務上,共有物の円滑な管理が妨げられる事態が生じるのではないかという意見がありましたので,前回までの議論に付け加えて申し上げます。   部会資料8ページの(1)(注2)民事調停の前置については,迅速な解決の妨げになるので反対するという意見が日弁連のワーキングでは多かったです。   それから,部会資料12ページ以下の「所在不明共有者又は不特定共有者の不動産の共有持分の取得等」については,今回新たに乙案が提案されており,この乙案に賛成する意見が多数でした。 ○山野目部会長 ありがとうございます。5ページでおっしゃっていただいた点は,疑義があるということで御注意いただいた点を受け止めますから,補足説明等において,その疑問を受け止めた解説を加えるというようなことをさせていただこうと考えます。   8ページのところで,(注2)の民事調停の規律について新たな問題提起を差し上げていることは,疑問だという御指摘があったことは受け止めましたけれども,中間試案に入れること自体に反対ということではないですね。 ○蓑毛幹事 ええ,これから様々意見を申し上げますが,中間試案に盛り込むことについて反対という趣旨の意見はございません。 ○山野目部会長 ありがとうございます。そうしますと,今のお話で分かりましたが,12ページの甲案,乙案のところも,乙案が良いという意見があったという弁護士会の御意見を承るとともに,甲案,乙案併記ということについても御理解を頂いていると受け止めさせていただきます。ありがとうございました。 ○今川委員 12,13ページですが,蓑毛幹事と基本的に同じ意見ですけれども,司法書士としては乙案に賛成であるということです。甲案は個別の事件で登記官がその当該事件ごとに,個別に審査をしていくということだと思うのですが,我々の業務として,第三者との売買があった場合には,代金の支払いと登記申請というのが同時に履行するということになっていまして,その場に司法書士がに立ち会うわけですが,事実上,先に代金を支払って,その後,直ちに登記申請を行います。登記官の審査を経ないと確定的ではないという状況で,代金の決済をするのが非常に難しくなるという意見が多くて,乙案が好ましいという意見が多かったです。 ○山野目部会長 司法書士会の意見の動向を承りました。司法書士会におかれて,甲案と乙案とを比べてみると乙案の方を推すという御意見が今のところ有力であるということを理解いたしますとともに,甲案と乙案とを並べて中間試案で諮るということ自体はよろしいものでしょうか,甲案を落とせというところまでおっしゃっているものでありましょうか。念のためお尋ねいたします。 ○今川委員 要件の定め方ということもありますので,甲案を落とすというところまでの意見はなかったです。 ○山野目部会長 承りました,ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○松尾幹事 言葉の使い方の問題なのですけれども,1点確認させてください。   部会資料25の1ページ第1,1(1)②にございます「共有物を利用する共有者」ですが,こちらは,①の251条の管理に関する決定に基づいて使っている者を除くものとして使われております。その一方で,5ページ(4)①では「共有物を使用する共有者」いう言葉が251条の共有物の管理に関する定めに従って使用する者も含むということで使われております。この「使用する」という用語は249条を連想しますので,その場合には,249条の使用権に基づいて使っている者も含むと考えますと,むしろ1ページ(1)②の方が「共有物を使用する者」であって,5ページ(4)①の方が「利用する」という方が,現行法を前提とする言葉使いとしてはなじみやすいのではないかとも思いました。あるいはお考えがあってのことかもしれませんので,その点,確認させていただければと思いました。 ○山野目部会長 恐らくお考えはないと想像しますけれども,何かあったら,どうぞ。 ○大谷幹事 特にございませんので,すみません,表現を合わせるように改めます。 ○山野目部会長 松尾幹事に御指摘いただきまして,ありがとうございました。現行法は法制上,共有のところの法文で利用する,を用いておりませんで,使用するが一貫して用いられております。そのことを踏まえて,松尾幹事から御注意を頂いたものを受け止めます。ただいま大谷幹事から申し上げましたように,ここのところは御指摘のところを始めとして,利用する,使用するという二つの文言の採否,統一等について,字句の推敲,統一を図りたいと考えます。ありがとうございます。   引き続き承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 12ページ,13ページの(2)の部分ですが,甲案,乙案について,どちらがいいという意見はございません。文言の,中身について少し伺いたいことがございます。一つは,両方で③に出てまいります,所在不明共有者が支払いを請求する額なのですが,不動産の時価相当額を所在不明共有者の持分に応じて按分して得た額ということで,①と同じになっているのですよね。売却をした場合は,時価相当額よりも低い額でしか売れなかったり,もっと高い額で売ったりということはあり得ると思うのですが,そこは調整をせずに時価相当額で支払いを請求するということでよろしいのでしょうか。どうすべきだという意見があるわけではないですが,それでいいですかという確認が一つです。   もう一つは,読み方なのですが,間違いないと思っているのですが,①でまず,供託をしますよね。それで,所有権を他の共有者が取得するか売却するかによって,所在不明共有者が共有持分を失うということになったときに,支払請求をするわけですけれども,まず,供託金の還付請求権は所在不明共有者にあるということでよろしいのですよね。そのうえで,支払いというのは,ある種差額に当たるものの支払いを②,③では求めるという理解でよろしいですか,ということが2点目でございます。 ○脇村関係官 まず,③の関係でございますが,内容的には,最終的にはこの売る人といいますか,判明している共有者は自分のリスクでやっていただきたいということを前提にしておりまして,最低限時価相当額については支払うと。もちろん,それを安い価格で売却することも当然あるでしょうし,そのときにはもう責任を負ってくださいということを念頭に置いていました。もちろん売却価格が高かったケースについてどうかということにつきましては,そもそも時価相当額としてふさわしかったのかという別の論点が出てくると思いますが,基本的には差額について,何といいますか,持ち出してでもきちんと払うことを前提に③は書いているところでございます。   次の①の供託の額についての支払いにつきましては,一番重要なのは,差額について請求できるということでございます。その一方で,供託金をある意味,保持できるという,その保持の正当化としての債権という意味では,その部分についても支払請求権があったという整理なのだと思いますが,最終的に意味を持ってくるのは,還付請求をした上で,もし差額があればということを考えておりました。 ○佐久間幹事 結構です。ありがとうございます。 ○中田委員 ただいまの部分で関連するのですけれども,甲案,乙案いずれも共通ですが,①のbですけれども,第三者に譲渡する場合も,売主には所在不明共有者が含まれているという理解でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 御議論あったところですけれども,現時点で決めているわけではないという結論なのですけれども,そういった同意を得て売却したケースについて,その同意をした共有者全員が契約当事者になるのか,それとも,売った,契約書をした人たちだけが,例えば,A,B,Cがいた場合に,AがB,Cの同意を得て売ったケースについて,Aだけなのか,A,B,Cだけなのかについては,現行法でも明確ではないのではないかと思っているところでございまして,現在の案では,そこについては特段,何といいますか,明確な答えを出したものではないというのが正直なところでございます。今後の議論としては,その点どうするかというところがあると思うのですが,すみません,資料としてはそういう前提で考えていました。 ○中田委員 ありがとうございます。ただいまの佐久間幹事の御質問に関するお答えの中で,供託金還付請求権が所在不明共有者に帰属するとお答えいただいたように思うので,そうすると,所在不明共有者も売主に入っているのかなと思いまして,お尋ねしました。仮にそうだとすると,買主の方から担保責任を追及する場合ですとか,契約を解除する場合に,買主は通常よりも非常に不利益な立場に置かれるので,売却価額が普通よりも低くなってしまうのではないかと思ったわけです。ですので,やはりこの点は,売主が誰か,契約上の当事者といいますか,所有権が誰から誰に移転するのかということも含めて検討する必要があるのではないかと思います。今の時点でこのゴシックの部分をどうこうということではないのですけれども,説明などで,今後の課題として考慮していただければと思います。 ○山野目部会長 中田委員から御指摘いただいた点を中間試案以後に検討することを忘れないようにするという意味でも,補足説明で言及していただくように望みます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。8ページの裁判による共有物分割のところで,以前の部会資料で,いわゆる賠償分割の要件が「特別の事情」となっていたところを,より具体的に書いていただいたという点については,産業界の方でも支持する意見が多いのではないかと思っています。ただ,一方で,今書かれている要件の,特に前段ですね,「共有者に取得させることが相当であり」というところの相当性というのが,どういう基準で判断されるのかがまだよく分からないという意見もございますので,条文としては恐らくこういう書き方がベストなのだろうと思う一方で,具体的に相当性が認められる場合として,どの辺のラインが想定されるのかというところは,補足説明等でもし補っていただけるのであれば,より,今回の御提案の趣旨が伝わるのではないかと思っておりますので,意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 平成8年の最高裁判所判決が挙げた要件を踏まえて,ここの文言が選択されていると考えますが,今,藤野委員から御注意を頂いた点,もう少し詳しく説明をせよというお話はごもっともであると受け止めます。ありがとうございます。 ○中村委員 少し戻ってしまいますが,部会資料7ページの(6),(7)の辺りについて,やや読みづらいのではないかという指摘が日弁連の議論の中でございました。   (6)の(注)ですが,共有者の申立てにより裁判所が管理者を選任することを認めるかどうかという指摘がございますが,5ページの(5)の仕組みから見ますと,例えば,2人の共有者で半々の持分であるというときは,過半数で決するという要件ですと,共有者は管理者を自ら選べないということになる場合があろうかと思います。(6)の本文では,第三者の申立てによる管理者の選任という手続については引き続き検討するとなっているのですけれども,共有者たち自らが自分たちで裁判所に管理者の選任を申し立てようとするものの方が(注)に回っていて,第三者の方が本文に回っているというのは,共有者同士の中から自分たちで裁判所に管理者の選任を申し立てましょうというのがまずあって,それから,それもなされないときに第三者申立によるというのが私的自治との関係で言うと筋ではないかとも思われるものですから,この辺りの書きぶりを少し工夫いただくと,中間試案だけを読んだ人にとって分かりやすいのではないだろうかという指摘がございました。 ○山野目部会長 あるいは注記を本文に編入して,共有者ら,又は第三者の申立てによって裁判所が選任するという仕組みについては,引き続き又は慎重に検討するという方がすっきりするのかもしれません。御指摘は理解することができました。ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 先ほど,中田さんがおっしゃったことに関係するところ,それが第1点であり,それは指摘だけでいいのですが,第2番目のことについて実は伺いたいのです。まず,第1番目の中田さんがおっしゃったところにつきましては,現行法,みんなが同意して共有物を売るといったときに誰が売主になるのかというのは,それはやはり売買のやり方によって変わってくるのだと思うのです。例えば,3人の共有であるといったときに,明白に3人が当事者として名を連ねるということもあるでしょうし,代表者に対して代理権を授与するという場合もある。他人物売買になる場合,例えば,A,B,Cで同意をしたのだけれども,CがA,Bの持分ものを売るということになって,Cだけが契約当事者になるという場合もあるのだろうと思うのです。そして,それがどれになるかというのは一義的には決まらないというのは,そのとおりなのですが,中田さんがおっしゃったことの背後にあるところは,共有者の1人がどこにいるか分からないといったときに,前2者のような性質決定,つまり3人で契約締結行為を行っていると性質決定できる場合とか,あるいは代理権授与があったと性質決定できるといったことが果たして可能なのかは疑問であり,他人物売買にしかならないのではないかという可能性があるということなのだろうと思うのです。また,仮に代理権を授与するのだと考えるならば,やはり代理権授与についてのそれなりの条文が必要で,そういうのがないと,代理構成はとれないのであり,誰が当事者であるということを自由に定めるというふうにはなかなかできないのではないかということであり,そのような問題意識を中田さんがお持ちなのだろうと思って伺っていました。ただ,この点につきましても,中間試案の段階で何かしなければならないというわけではなかろうと思います。   私が本当は質問をしたいのは,ひょっとして,これは私がきちんと読み込んでいないからなのかもしれませんし,これまでの議論でもあったところかもしれないのですが,3ページの(3)です。現存する共有者と申しますか,例えばA,B,CのうちCがどこにいるのかよく分からないといったときに,AもBもこの手続がとれるのだろうかということが若干気になるのです。とれるのだと思うのですが,そうすると,先にやった人が過半数を取ると,例えば3分の1,3分の1,3分の1だと仮定したときに,Cは行方不明であるといったときに,Aが先に公告手続を自分の意見を前提にとるのか,Bが先に自分の意見を前提に公告手続をとるかによって,Aの意見で決まるのか,Bの意見で決まるのかが変わってくるような気がするのですが,それでいいのかなというのがよく分からないと思いました。場合によって私の読み込み不足かもしれませんので,お教えいただければと思う次第です。 ○脇村関係官 ただいまの御質問につきましては,この(3)につきましては,いわゆる同意みなしとしているわけではないということを前提にしていますので,A,B,Cがいて,Aが手続をとっても,A,B両方で決めないといけないということだけでございますので,今のケースですと,Bが当然,反対するであろうという前提で,決まらないということになるのだろうと思っていました。ですから,先行することによって必ず先行した方が勝つというよりは,先行したとしても,結局残りの人,催告しなかった人との関係では,また過半数で決めないといけないということで,何とかワークするのではないかなとは理解していたところです。 ○山野目部会長 道垣内委員におかれては,いかがですか。 ○道垣内委員 これ,管理に関してはどうなるのですか。 ○脇村関係官 管理につきましても,過半数で前提。 ○山野目部会長 ここは元々管理の話です。 ○道垣内委員 ですよね。 ○山野目部会長 いや,それで。 ○道垣内委員 その人を除くということになるから,ということですね。ごめんなさい,分かりました。 ○山野目部会長 ですから,別の言い方をすると,今の道垣内委員の御指摘は,この部会の初期の議論では,不明者と連絡を取って何も答えが返ってこないと同意をしたものとみなすという案が語られていた段階があって,今,あれではやはり駄目だということを確認していただいたという意味を持つと思います。 ○道垣内委員 分かりました。申し訳ございません。 ○山野目部会長 いや,貴重な御指摘を頂きました。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○水津幹事 最初に蓑毛幹事がおっしゃった,共有物の使用に関する規律について,少し気になったことを申し上げます。   7ページの2段落目の説明では,5ページの(4)①の規律との関係で,A,B及びCが共有する物について,A及びBが共有物の管理に関する事項として,無償でDにその共有物を使用させる定めをしたときは,A及びBは,Cに対し,使用料相当額を支払うこととなるとされています。このように,A及びBがCに対して客観的な使用価値を償還する義務を負うとすると,共有物について使用権を設定することは,1ページの(1)①の規律により,共有物の管理に関する事項として,同じページの(1)④の規律に係る期間の範囲内において過半数でこれを決することができるといっても,実質的には,無償で使わせたり,安い賃料で賃貸したりすることはできず,客観的な使用価値を対価とする使用権しか設定することができなくなります。つまり,5ページの(4)①の規律と1ページの(1)①及び④の規律との関係について,少し説明があった方がよいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 補足説明において説明を工夫することにいたします。御指摘ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   ひとまずよろしゅうございますか。   本日,最後にもう一度,民法と不動産登記法のそれぞれの審議を終えた段階で,全体を通じて御指摘の漏れがないかをお尋ねするということにさせていただきます。   部会資料25の「第2 財産管理制度」の関係での御意見のお尋ねを差し上げます。部会資料の22ページから後ろになります。   22ページは,所有者不明土地管理制度についてお諮りをしています。第10回会議における御意見を反映させ,土地管理人の権限が管理人に属する仕方についての提案を,文章をより明確なものに工夫するとともに,土地管理人が誰であるかということを登記するという可能性についても問題提起を差し上げています。   それから,28ページのところは,管理不全土地管理制度等についてお諮りをしています。管理不全土地管理制度によっては,保存行為を土地管理人に行ってもらうという仕方での提案として整えてございます。これも第10回会議における審議を受け止めての考え方の再整理でございます。   32ページからは,不在者の財産の管理の制度についての見直しを掲げてございますけれども,これは部会資料22でお出ししたものと比べ,全く変更がございません。   それから,33ページから相続財産管理制度の見直しについてお諮りをしております。部会資料22でかねて御相談を差し上げていた内容と大きく変化はございませんけれども,一つは,相続人が数人ある場合と相続人がいることが明らかでない場合と,それぞれについて管理の仕組みについて御検討いただく必要がありますから,それら二つを分けて御提示申し上げております。   そのほか,この相続財産の管理に係る部分については,民法952条以下の相続人不存在の場合に進めるべき法的手続の手順の合理化についてお諮りしており,さらに民法940条の相続放棄者の負う注意義務についても,今までの審議と同様,問題点として掲げてございます。   最後に申し上げました民法940条の見直しにつきましては,部会資料22では甲案と乙案とを分けて両案併記という仕方で御提示申し上げていたところでございますけれども,部会資料22の審議を頂いた際,甲案,乙案との間に本質的な差異はなく,むしろこれらを統合した形で意見を公募することが適切であるという御指摘があり,ごもっともなことであると受け止めましたから,この部会資料25においては,そのような仕方で問題提起を整えて,改めてお示ししているところでございます。   この22ページ以下の財産管理制度につきまして,御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料22ページ「第2 財産管理制度」の「1 所有者不明土地管理制度等」ですが,以前は補足説明で,1の申立てのできる利害関係人について,不明共有者以外の共有者が利害関係人に当たるということが書かれていましたが,今回の部会資料からは抜け落ちています。今回の補足説明は,前回との変更点についてだけ書いたためだと理解していますが,中間試案の作成に当たっては,以前の補足説明に書いてあった重要なことは,漏れなく書いていただきたいと思います。  また,不明共有者以外の共有者も利害関係人に該当するということは,要件に関わることですので,補足説明から格上げして,(注)に書いてもらいたいという意見がありましたので,お伝えします。   部会資料24ページの「イ 土地管理人の権限等」についてですが,⑤で,土地に関する訴訟の場合に,訴訟権限が,土地管理人に専属するかどうかについて書かれています。甲案,乙案で,土地についての権限が専属する,専属しないということと,訴訟についての権限は理論的にリンクするものではないと整理したのであれば,そのように明確に書いていただいた方が分かりやすいと思います。   28ページの管理不全土地管理制度等ですが,28ページの要件のところでは,「他人の権利又は法律上の利益が侵害され」とだけ書かれているのですが,29ページの補足説明の2の1段落目のところでは,「他人の権利又は法律上の利益が受忍限度を超えて侵害され」と書いてありますので,法文にそう書くかどうかは別として,要件としては受忍限度を超えているということが想定されていると思います。そうであれば,どこかで明確にそのように書いていただきたいというのが,日弁連ワーキングの意見でした。   33ページの相続財産管理制度の見直しですが,38ページの(後注)で,(1)及び(2)の相続財産管理制度と現行の相続財産管理制度を一つの制度とすることについて引き続き検討する,と書いてあることからすれば,4の(1),(2)の相続財産管理制度は,既存の相続財産管理制度と併存する制度として,設計しているということだと思います。そうであれば,そのことを最初に明確に書いた方がよいという意見がありました。   39ページからの相続放棄をした放棄者の義務について,(注4)の②で,供託することによって保存義務が終了することを認めるとあります。この供託ですが,放棄者が保存しているのが金銭等であれば,通常の供託ができると思うのですが,それ以外の動産や不動産については,通常の供託は難しいと思います。仮に,(注4)②の記載が,民法497条の裁判所の許可を得て競売して,その代金を供託することによって保存義務が終了するというところまで念頭に置かれているのであれば,そのように書いてもらいたいという意見が出ました。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を御紹介いただきまして,ありがとうございました。   1点目で御指摘いただきましたことは,御指摘いただいたところの局所にとどまるものではなくて,今般,中間試案として出そうとしているものに付する補足説明の全般についての御注意でありました。蓑毛幹事が御指摘のとおりでありまして,今,委員幹事のお手元に本日お届けしている部会資料の補足説明は,前回会議との異同を明らかにするということに重点を置いて文章を用意しているものでございます。蓑毛幹事のお話にあったとおり,この後,意見公募に際し国民一般に対して中間試案の内容を説明するための補足説明は,今日お示ししているものにとどまらず,今までの補足説明で累次説明してきた中間試案の趣旨を明らかにする説明内容を加え,整えた形で出さなければいけないと考えておりまして,そのことはもちろんのことでございます。御注意いただきまして,ありがとうございました。   2点目で御注意を頂いた,注記に格上げしてほしいというお話について,ごもっともであると見えますから,検討をさせていただきます。   3点目に御指摘いただきました,所有者不明土地管理制度の土地管理人の訴訟における権限が実体的規律としての権限の専属と論理必然性を持ってつながるものかどうかという問題に関連して,もしつながらないという理解で書かれているならば,補足説明できちんと説明をしたほしいというお話を頂きました。恐らくつながらないであろうと考えられますから,補足説明でそのことを明らかにするということにいたします。   4点目でありますが,管理不全土地管理制度について,その発動の要件は,補足説明を見ると,受忍限度を超えるということが要件とされるという趣旨であるけれども,そのことは太文字の提案のところでは明記されていないと,ここのところについて国民に分かりやすくしてほしいという御指摘でありまして,そのこと自体はごもっともでありますとともに,受忍限度という言葉は法文では用いられないものでありますから,お尋ねでございますが,これは太文字にいれなくてはいけないというお話ではないですね。 ○蓑毛幹事 はい,補足説明に書いていただければ結構だと思います。 ○山野目部会長 補足説明で明らかにするようにいたします。   それから,5点目でありますけれども,38ページの(後注)で御指摘いただいたことは,そのとおりでございますから,これを受け止めて,その補足説明で明らかにするということにいたします。   6点目,提案している相続財産管理の制度と,現行法が持っている相続人財産管理の制度は併存するという理解ですね,という御指摘は,そのとおりであると感じますから,補足説明で明確にするというふうにいたしたいと考えます。   最後におっしゃっていただきました40ページの一番上の(注4)の供託のお話は,いずれにしても,その供託の具体的な有様をこれから精査しなければなりません。精査しなければならないという問題の所在を補足説明に掲げることになろうと思いますけれども,どういう姿で具体的にこの供託の仕組みを調えるかは,なお中間試案の後の課題にせざるを得ないと感じます。これは弁済供託ではなくて,ここで新しく設ける,当該規定に基づく供託原因というものを創設することになろうと思いますから,民法497条が当然に適用される関係にはならないと感じますけれども,いずれにしても補足説明で今後の見通しについて触れるということに努めたいと考えます。御指摘を頂きましてありがとうございました。   潮見委員,どうぞ。 ○潮見委員 中間試案でゴシックで書いているところを尋ねるということについては,異論はございません。その上で幾つか申し上げます。まず,先ほど蓑毛幹事がおっしゃったことは,私も部会長と同じ意見です。というか,そもそも受忍限度とは一体何かということを考えるときに,不法行為を研究している者からすると,人によって,考え方によって,受忍限度というものの捉え方自体に様々あるわけですよね。ですから,そういうことも含めて,むしろ受忍限度を書き下すのであれば,具体的な要素を書く方が適切かなという感じがいたしました。  次に,先ほどのやり取りの中でもありましたけれども,資料25の説明で書かれているのは,前回のところからの修正点,あるいは変更点であるという説明であったかと思いますけれども,その点に関連して,例えば,管理不全土地の土地管理人の属性について前回の補足説明のところでは,これは代理人なのか職務代行者なのかということを詳しく書いていたのに,今回は落としておられる。どういうつもりで落とされたのか,教えていただきたいのです。   それから,これも細かいところですけれども,相続財産管理制度のところで,相続人が数人ある場合のところでの相続財産管理人の相続債務の弁済権限のあるなしというのは(注3)に落ちています。他方,相続人のあることが明らかでない場合における相続財産の保存のための相続財産管理制度のところでの相続財産管理人が相続債務の弁済をすることができるか,できないかは,これは本文ゴチに入っています。統一感がないように思われます,むしろ,どちらも,非常に重要なことですし,(注3)の書き方のところでも,その方向で検討すると書いているわけですから,本文のゴシックのところに入れて,それでいろいろな国民の意見を問うということでもよろしいのではないかとも思いました。 ○山野目部会長 前段と後段,おっしゃっていただきましたけれども,いずれも事務当局の方で,そのような方向で受け止めますというお答えであると想像しますが,何かありますか。 ○宮﨑関係官 まず,前段の土地管理人の権限の方につきましては,前回の部会資料の中では二つの説で,基本的には職務者と位置付けられるというふうなことを書いていたと思うのですけれども,補足説明を再度書くようにするかどうかというのは,先ほどのところについても改めて書くというこということ併せて,盛り込むようにしたいと思っております。 ○潮見委員 この前のものを少し内容的に精査した上で,補足説明という形で書くということですか。 ○宮﨑関係官 そういうことです。 ○佐久間幹事 いずれも細かい言葉の問題を伺いたいところでありまして,まず,22ページからの所有者不明管理土地制度等につきまして,特に23ページの(注3)で出てまいります,ほかのところにも出てくるのですけれども,共有持分を有する者を誰も知ることができないという場合に,こういう場合は入るのか,入らないのかということを知りたく思います。例えば,この後でまた出てまいります相続人申告登記でしたっけ,というのがされていて,相続人の1人は分かっている。しかし持分は分からない。この場合は,共有持分を有する者を知ることができている場合に当たるのか。土地管理人は,持分を有する人がはっきり分かっているときは,その人については管理しません,残りの人について管理しますという立て付けになっていると思うのですけれども,そうすると,その持分が分からないのだけれども,共有者であることは間違いないというときは,その分からない持分を除いて管理することは,過半数による決定が必要である場合などを考えると困難ではないかと思いますので,どちらがいいのかよく分かりませんが,そこはどうなのですかということを伺いたく思います。   それから,2点目は,これも細かいことなのですが,24ページの土地管理人の権限等のところです。前回からお変えになったところで,④におきまして,③の規律に反して行った土地管理の行為は無効とするとされたうえで,第三者に対してこれがどういう効力を持つかについては(注1)で書かれています。善意の第三者に対抗することができないという規律を置くということは,それでいいと思うのですが,その後にある,表見代理の規定を類推適用することによって対応すべきというのは,表見代理の規定というのは当該取引の効力に関するものであって,それが無効であるとなった以上は,次の,例えば転得者等との関係では,表見代理の規定では対応できないのではないでしょうか。だから,これは恐らく,法律に定めを置くか,置かないで94条2項の類推適用など無権利者一般との取引をした者の法理に委ねる,となるべきものなのではないかと思いました。それが2点目です。   もう1点ございまして,3点目は,28ページの管理不全土地管理制度等のところで,(注1)に,要件につきまして,他の手段によっては権利が侵害されることを防止することが困難であることを付加するかどうかということを検討するとされています。これに関して,29ページの補足説明では,要するに,土地所有者が判明しているケースなので,土地所有者に対して是正請求すればいいではないかと書いてあって,そこで,となっているのですが,その是正請求すればいいではないかというときに,その手段では権利が侵害されることを防止することができない,あるいは困難であるというのは,どういう場合を典型的に想定されているのかを知りたいと思いました。 ○山野目部会長 3点にわたって部会資料作成の意図のお尋ねがありましたから,事務当局から御発言をお願いします。 ○脇村関係官 最初の質問,すみません,私が聞き取れなかったところもあるかもしれないのですが,今,佐久間先生がおっしゃったのは,一応,共有者が誰かは分かっていて,ただ,持分だけ分からないケースという。 ○佐久間幹事 共有者が何人いるかも分からないのだけれども,この人は共有者の一人であるということだけは分かっているという場合です。 ○脇村関係官 そういった場合につきまして,要するに,A外何名とか,あるいはA外何々がいるかもしれないというようなケースだと思うのですが,そういった意味で言いますと,この土地管理,あるいは,先ほど出てきました共有持分の譲渡請求で不明なケースとして,そういったケースにも当たるということを部会資料全体としては考えていたところです。ただ,その場合にも頭数が分からないことからどう処理していくのか,あるいは特定の仕方をどうしていくのか,Aさん以外の持分みたいな書き方で行くのかということもあると思うのですが,その辺については今後,更に検討していく必要があるのだろうと思っているところです。   さらに,無効と書いた場合の表見法理の記載をした理由でございますが,少し私の理解が足りないかもしれませんが,土地管理人がある行為をした場合に,代理権限が,権限がなかったというケースについて,それは一種の効果不帰属ということからすると,代理権の規定が使えるのではないかということから書かせていただいたところでございます。そういう意味で少し,無効という書き方が雑だったかもしれないのですが,意図としてはそういうところでございます。 ○山野目部会長 3点目,28ページ,29ページでお尋ねがあったところはいいのですか。三つお尋ねがありましたよね。 ○大谷幹事 三つ目というのは,(注1)に書いてあることですかね,28ページの。ここも,普通の要件そのまま,権利侵害が認められるような場合だけでいいのか,やや絞るべきではないかという趣旨で書いております。例えば,急迫性があるとか,そういうようなことがあり得るかなとは思っておったのですけれども,ここのところは,要件の絞り方を,このままでいいのかというところを書きたかったというところでございまして,やや意が尽くせていないところがあるかもしれませんけれども,そういう趣旨でございます。 ○山野目部会長 今,佐久間幹事がお尋ねになった点について,事務当局から説明を差し上げましたから,佐久間幹事の方で何かおありだったら,まずおっしゃっていただけますでしょうか。 ○佐久間幹事 表見代理の規定が類推適用されることって,この種の場面で,仮に無権代理だとして,あるのですかねというのが。 ○山野目部会長 潮見委員のお話を伺ってから,また御発言伺ってもいいですか。潮見委員,どうぞ。 ○潮見委員 すみません,横から入ってきて。佐久間幹事が考えているのは,土地管理人がAで,相手方がBで,ここでいうところの第三者というのは,(注1)のCですよね。 ○佐久間幹事 はい。 ○潮見委員 その場合には,Cについて,例えば②の方でいった場合に,表見代理の規定を類推適用なんていうことはあり得ない,むしろ94条2項の類推適用というのが適切であるということですよね。 ○佐久間幹事 そうです。 ○潮見委員 そこは筋は通っているのだとは思うのですが,脇村さんが言われているのは,A,Bを使ったら,AとBの関係ではないですか。第三者という言葉を使うから少し混乱しているので,ついでに一言だけ言いますけれども,先ほど,ここで無効と書いていますけれども不帰属ですというのは,④の方ですけれども,ある特定の立場に立っていませんか。ここを無効と見るか効果不帰属と見るかは,立場によって変わるので,私は断定的に決め付けるのは少し危ないかなと思いました。。 ○山野目部会長 第三者といわれているものがBであるかCであるかについて論議の混乱があることは,潮見委員が御指摘のとおりですね。事務局の方で今,取りあえず整理がないものであれば,今のところについて,いずれにしても第三者という言葉で伝えているものについて,読む人のなかに潮見委員の挙げた例でいうとBを第三者であると理解して意見を述べる人と,Cを第三者であると理解して意見を述べる人が出るということになると,話が混乱しますから,混乱が生じないような言葉を選んだ上で,その説明を添えるという取扱いにさせていただこうと考えますけれども,そこのところは佐久間幹事,潮見委員,よろしゅうございますか。   それから,最初におっしゃった,佐久間幹事の1点目の,共有者の人数と持分の両方が分からない事例の取扱いは,必ずしも今までの部会審議で意識していなかったところですから,今日は結論が出ないかもしれませんけれども,補足説明で問題提起をしておくということにいたしましょうか。佐久間幹事がおっしゃっている場面というものは,250条の推定が働かない場合ですね。共有者の頭数が分かっていれば250条の推定が働きますが,それすらも機能しない場合をどう考えるかというお話であり,そのことは考えてみなければいけないだろうと感じます。   28ページ,29ページのところについて,管理不全土地管理制度について御指摘いただいた点は,補足説明できちんと説明を尽くせばよい事項ではないかと考えますから,事務当局の方で務めるようにいたします。   それから,潮見委員がおっしゃったことで,戻りますけれども,この善意の第三者に対抗することができない効果を無効と書いてあるところは,最終的な法制上の表現を選ぶに当たっては,もう少し考えなければいけないと思いますし,学界の特定の主張に与したととられてはいけないという御注意は,もとよりごもっともであります。民法113条と同じように,効力を有しないとかとしておくと,誰にも叱られなくて無難ですね。何かそういう工夫をしたいと考えます。   今議論があったところについての御意見を承ります。 ○中田委員 第三者が相手方Bなのか,それとも相手方と取引をしたCなのかということにつきましては,確か前回も議論が出ておりまして,それは表題部所有者不明管理土地法21条3項の表現との平仄をとったものだという御説明だったと思います。ただ,それはそういう前提で見れば分かるのですが,これだけ読むと少し理解しにくいので,そこは,第三者というのがどちらなのか,あるいは第三者という言葉が適切かどうかということを含めて御検討いただきたいと思います。   あわせて,同じところなのですけれども,24ページの(注1)の2行目に,これこれについては②につき乙案を採ることを前提にということがございますけれども,これは甲案を採ったとしても同じ問題が起こるのではないかと思いましたので,どうして乙案を採ることを前提にと限定されたのか,お教えいただければと思います。 ○大谷幹事 これは,元々前回お示しをしていた表題部所有者の仕組みと同様に,乙案の方から善意の第三者の保護規定というものを置いていたところを,前回の御議論の際に,不在者財産管理とかと同じような仕組みにするという考え方もあるのではないかということで,甲案の方をまた別に作ったというところでございます。ですので,元々(注1)にありますのは,前回お示しした考え方として乙案を採ることを前提に表題部所有者と同じような規律を置くという趣旨で,このように書いておりますが,甲案であっても善意の第三者の保護規定というのは別に置くことは論理的にはあるではないかというような御趣旨でございましょうか。 ○中田委員 今までの経緯は今おっしゃったとおりだと思うのですが,今回新たに甲案をお示しになったとすると,乙案に特定するという意味が,これだけを見ると少し理解しづらいものですから,むしろフラットに書いた方がいいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 フラットに書きましょう。ありがとうございました。 ○佐久間幹事 フラットに書くのは,前回確か潮見委員がおっしゃったことだと思うのですが,現在の不在者財産管理制度に関して,その権限外ですかね,権限に属しない行為がされたときに,この種の規定はないと。もしここでその種の規定を置くとすると,バランスがとれないのではないかと。それに対して大谷幹事がお答えになったのが,いや,これは専属ということになっているので,そこが違うのだという御説明だったと思うのです。ですから,フラットに書くことはあり得ると思うのですけれども,フラットに書いてしまいますと,前回,潮見委員がおっしゃった,どうしてここだけというのがすごく目立ってしまうことになるのではないかと思います。ですから,私は,前回からの引き続きだとすると,そこを丁寧に説明した上で,やはり専属だという場合にこういう規定を置くということを取りあえずは諮った方がいいのではないかと感じます。 ○中田委員 特にございませんけれども,ただ,初めてこの文章を見て,乙案を採ることを前提にというと,何か一つの方向に誘導しているかのようにも見えますので,もしこれを維持するのであれば,今おっしゃっていただいたような説明をきちんと書いて,甲案においてはそれを書く必要はないのだということを明確にしていただいた方が,意見を出しやすいのではないかと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事におかれては,今の中田委員の整理で進める分にはよろしゅうございますね。 ○佐久間幹事 はい,というか,むしろ,もし甲案で(注1)のようなものも含めて考えるのであれば,場合によっては不在者財産管理制度なども見直しの対象にはなり得るということを含めて,今後,考えていけばいいのかなと思います。 ○潮見委員 前に言ったことの繰り返しになりますので,余り言うつもりはなかったのですけれども,32ページ,33ページのところに,今,佐久間幹事がおっしゃったように,不在者財産管理制度の見直しとありますよね。ここの部分に,先ほどの中田委員の御発言のようなものを仮に考慮に入れて,ゴシックの方にその趣旨を盛り込むということであれば,この32ページの①,②,③,この並び,あるいはここの(注),その辺りで今議論になっていることを書き込んでおくと,そうするか,ここの甲案のところに丁寧にまた書き込むか,どちらかだと思います。 ○山野目部会長 御発言いただいた3人の委員幹事がおっしゃっている方向の本質的内容は一致したと受け止めますから,最終的にどのような見映えにするかは工夫を致しますけれども,お三方から御指摘の方向で整理を致します。やはり一番大きいと感じられる点は,中田委員のおっしゃったことですけれども,従来の部会の議論を議事録を詳細に追わないと,ここで卒然と乙案を前提にしたときは,と出てきたところが極めて分かりにくいのではないかということが恐れられます。なるべくそういうふうなことにならないような仕方で,この部分については,先ほどからの表現で言うと,フラットに整えた上で,また必要な場所において補足説明等を工夫するということにさせていただきます。ありがとうございます。   成田幹事,どうぞ。 ○成田幹事 22ページから23ページの第2の1の(1)アのゴシック部分について,若干の提案をさせていただければと思います。今回の提案,これまでもそうなのですが,所有者が特定されていない場合と,所有者は特定されているものの所在が不明である場合と,一本の規律で検討を進めているところでございますが,前者と後者とでは,状況は違っていて,規律も異なり得るのではないかと思われます。   例えば,24ページのイの②の甲案,乙案のところも,一律にどちらかというよりも,特定不能の場合には管理権限を専属させるというような切り口もあり得るのではないかと思います。場面は違いますけれども,第1の2の(2)の不動産の共有持分の取得においても,12ページと18ページで所在不明の場合と所有者不特定の場合とで書き分けておりますので,所有者不明土地管理制度においても,そういった形にするのもあり得ると思います。ただし,今,更に1項目立てると,少し大変という気もしますので,23ページの(注)のところに,所有者不特定の場合と所在不明の場合とを別に考えるという考え方もあることを入れておくことが考えられるのではないかと思います。 ○山野目部会長 本文で処置するか,注記で表現するかはともかくとして,所有者不特定の場合と所有者所在不明の場合との規律の差異を検討する必要が人々から忘れられないように工夫をしてほしいという御注意を頂きました。ありがとうございます。 ○松尾幹事 先ほど来問題になっております部会資料25の24ページ,イ②の甲案,乙案でございますけれども,これは土地管理人にどのような権限を与えるかということについて,やはり重要な問題を含むと思います。とりわけ乙案については,土地管理人に財産の管理処分権を専属させることになりますので,その限りで土地所有者の権限を剝奪ないし制限するということになるかと思います。土地所有者の権限を剝奪ないし制限して土地管理の権限が専属した土地管理人の法的地位は,単なる代理人にとどまるのだろうかという問題とも関わると思いますので,やはりそれについては中間試案で広く意見を求めるに値するのではないかと思いました。   そのことを前提として,乙案を採る場合に,管理処分権が土地管理人に専属したという旨の登記をすることが提案されておりますけれども,この登記が具体的にどういうふうにされるか,具体的にイメージできる形で説明があった方が,議論がしやすいのではないかとも思いました。この登記をすることによって,管理権が剝奪されて,それについては土地所有者による取引がブロックされることになるのではないかと思います。そういう非常に大きな意味を持つものですので,具体的なイメージの提供もあった方がいいのではないかと思ったわけです。   それとの関連で,これは非常に細かな表現の話ですけれども,25ページ,1の3段落目,「そこで,本文②では」という段落ですけれども,ここで甲案を採った場合には,土地管理人と土地所有者が別々の処分をした場合には民法177条で,乙案を採った場合には,土地所有者と取引をした第三者の取引の安全は登記で図られるという趣旨のことが書いてありますが,恐らく後者の乙案の方は,土地所有者の方と取引をした第三者は無権限者からの取得者となってしまいますので,そういう取引がされることのないように登記で予防されているのだという趣旨なのではないかと思います。そうであるとすれば,その点は表現を工夫していただいた方が,誤解がないのではないかと思いました。 ○山野目部会長 前段で御指摘いただいた登記の具体的なイメージ,乙案を採る際の土地管理人である旨の登記の具体的なイメージは,可能な限り工夫を試みたいと考えます。今の時点でどこまで書くことができるか分かりませんけれども,書いても,権利部甲区にされるであろう,ぐらいのことしか書けないだろうと思いますが,努めるようにいたします。後段の,表現を正してほしいという点は承りました。ありがとうございます。 ○垣内幹事 ありがとうございます。同じく24ページの記述に関して,少し前に蓑毛幹事から御指摘があった点に関係いたしますけれども,私もこのイの②の乙案の考え方と⑤の考え方等がどういう関係にあるのかというのは,なかなか難しい問題かなと考えておりまして,管理処分権が土地管理人に専属するというのであれば,当事者適格も専属するというのが素直な考え方ではあろうかなと思うのですけれども,仮にそうでないというときに,土地所有者が被告となって訴えが提起された訴訟について,現に選任されている土地管理人がどういう立場で関与し得るのかという問題が生ずるように思います。   当事者適格者が,双方とも当事者適格者であるという観点からしますと,補助参加をするとか,共同訴訟参加するとかいうことも考えられる反面,代理人として関与するのだというようなことも考えられるかと思われまして,この点は,土地管理人が職務者であるのか,それとも代理人であるのかという問題とも関連するように思いますので,幾つかその両者,当事者適格の所在と,それから職務者なのか,代理人なのかという問題との組合せで,考えられる規律が異なってくるところかなと思います。   そこで,その補足説明で,この点についても整理して書いていただけるということだったかと思うのですが,その点についても留意をした形で整理をしていただけるとよいのではないかということと,これも恐らく分かりやすい形になるのだろうと思いますが,現在,25ページの補足説明のところで,3の土地の所有者が被告として訴えを提起することの可否というところで,本文⑤では,これは4行目,5行目ですかね,土地管理人を原告又は被告とすることができるとし,当事者適格を専属するものとしていないという記述になっていて,読んでよく考えれば理解はできる文章だとは思うのですけれども,御趣旨としては,所有者適格がその土地所有者にも維持されるという趣旨でこのように書かれているということだと理解しましたので,その旨をもう少し正面から述べていただいた方が文章としては分かりやすいのかなという印象を持ちました。 ○山野目部会長 前段,後段で御指摘いただいた点を補足説明で明らかにするように努めます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。前回の部会のときに,所有者不明土地管理制度と管理不全土地管理制度の適用範囲の違いについて質問させていただいて,恐らくそれを意識していただいてのことかとは思うのですが,今回,管理不全土地管理制度の29ページの補足説明のところで,土地の所有者が判明しているが,というフレーズが結構繰り返し使われています。ただ,私の方でイメージしていたのは,むしろ逆方向かなというところもあり,また,少なくとも本文の規律の内容を読む限りは,管理不全土地管理制度において所有者が判明しているかどうかというのは余り関係ないような気もしていて,そこのところはどういう趣旨かというのは一応,確認をさせていただければと思います。所有者不明土地管理制度の方が管理人の権限は広いので,こっちの方を使えばいいではないかという御意見もあるかとは思うのですが,一方で,申立ての要件が違うこともあって,所有者が不明で,かつ管理不全という場合に,所有者不明であるということを証明して申立てをするよりは,明らかに管理不全で受忍限度を超えています,ということを証明して申立てをした方が手続が早く進むということも恐らくあるかと思いますので,管理不全土地管理制度において,土地の所有者が判明しているかどうかということは余り適用の前提にしなくてもよいのではないかなというところで,恐らく本文要件を変えるという話ではないと思いますが,そこのところは補足説明のところで少し御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 どちらかというと,所有者不明土地管理制度と管理不全土地制度を併行実施することができるかどうかという点を引き続き検討するというふうに注記か何かではっきり問題提起をしておいた方がよいかもしれませんね。補足説明を読むと何か,ここの言い回しで何とかが示唆されています,みたいな,そういう何か密教的な説明の仕方というものは,必ずしも読む人に親切でないかもしれません。その上で,この二つの管理制度の関係について改めて考えますと,これらが併行実施されることがよいかどうかということを考え始めると,幾つか悩ましい,考えなければいけない点があります。   3点ほどあって,そのうちの1点目は,藤野委員がおっしゃったように,申立ての要件が異なっているということをどう考えるかということであります。2点目は,これも藤野委員が御指摘になったことですが,とはいえ,現在のこの提案では,所有者不明土地管理制度で選ばれる管理人の権限の方が大きくて,大は小を包み込む関係になっておりますから,そのことをどう考えるかという観点があると思います。3点目は,同じ土地について,管理人になる者が異なる種類の制度を根拠として何人も選ばれるということからもたらされる法律関係の錯綜というか,あるいは国民の側から見ての分かりにくさというか,そういう問題についても,どういうふうに考えていったらいいか,あるいは説明していったらいいかということを考え込まなければならないかもしれません。こうした三つぐらいの問題がありますから,引き続きそのまま考えるということにしていきますけれども,御意見のある方はどうぞ,という形で問題提起をした方がよいかもしれません。藤野委員,そういうことも含めて,少し検討させていただきますが,よろしゅうございますか。 ○藤野委員 ありがとうございます。両制度を平行して実施できるようにしてほしいというわけではなく,実際の場面で適用する制度はどちらかに絞るということで良いと思いますけれども,所在者が不明だから一方の制度しか使えないというのでは,少し難しいというか,少し困るときもあるかなという趣旨で申し上げた次第です。ただ,両制度が併存する場合について問題提起していただくことに関しては,何ら異存はございません。 ○山野目部会長 分かりました。併行実施に加え,相次いで同一の土地について二つの手続が申し立てられたときの手続の流れの望ましい在り方等についても考え込んでいこうという点まで観点に含んでの問題提起を頂いたと受け止めます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 御指摘させていただきたいのは,39ページに記載しております民法952条以下の清算手続の合理化の関係でございます。こちらは前回から案文は変わっていないのですが,実務担当者と意見交換をする中で出てきた意見を踏まえて,御指摘をさせていただければと思っております。   現行法では,相続人捜索の公告が最後にされることを前提に,相続人捜索の公告の期間満了によって,相続財産管理人等に判明していない相続債権者等の権利行使ができなくなるという失権効という効果ですとか,特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間の開始等の効果が定められているところでございます。今回の見直しにおいても,どのような効果をそれぞれの公告に生じさせるのか,あるいは,そのような効果が生じることを踏まえて期間等を設定していくといった整理をする必要があるのではないかと考えております。具体的には,家裁による相続人捜索の公告の後に相続財産管理人がやはり遅滞なく相続債権者等に対する請求申出の公告を行うという現在の御提案になっていますけれども,それぞれの期間をどう設定するかにもよりますが,実務では相続財産管理人が不慣れで請求申出の公告に時間が掛かるということもあり得まして,現在御提案の規律によると,相続人捜索の公告の期間の満了後に相続債権者等に対する請求申出の公告の期間が満了するといった少し入れ違いになってしまう事案が生じる懸念もございます。このような場合に,相続人捜索の公告の期間が満了したとして,相続財産管理人等に判明していない相続債権者の権利行使ができなくなるとか,特別縁故者に対する相続財産分与の申立期間を開始させるとしてよいかというようなことが問題になり,後に現れた相続債権者等をどのように扱うことになるのかといったことについても整理していただく必要があるのではないかと考えております。こういった効果についても改めて今後整理していく必要があるという問題意識を,少し補足説明でも示していただければ,実務担当者としては安心するのではないかなと考えるところでございます。   もう1点ございまして,現在の実務では,相続財産管理人が,選任後に相続財産管理人選任の公告期間である2か月以上の期間において相続財産を調査して,その中で判明した相続債権者等に対して,相続債権者等に対する請求申出の公告と同じタイミングで,法律に従って個別に催告をしているところでございます。今回の見直しによって,相続財産管理人選任の公告後,遅滞なく相続債権者等に対する請求申出の公告を行うことになりますと,請求申出の公告の時点ではあまり相続財産管理人が相続財産を調査していない状況になりまして,調査を進めれば判明したであろう相続債権者に対する個別の催告がされなくなることも生じるように思われます。   以上のことから,この議論においては,こういう形で規律を組むとこのような事態が生じると想定されることにも御留意いただいて議論をしてもらったり,意見を出していただくのがいいのかなと考えております。これまでの実務を前提として想定される事態を踏まえて,意見募集をしていただければ有り難いと考えたところでございます。 ○山野目部会長 宇田川幹事が前段,後段に分けておっしゃっていただいた点のいずれについても,今御指摘いただいた論点であるとか,想定される事態であるとかいうものについて補足説明に掲げることによって,意見を出す方から見て,考えを深めてもらう一助にするという工夫を致します。あわせて,この部会におきましては,最高裁判所の御協力を得て,大阪家庭裁判所及び東京家庭裁判所の各本庁で聴き取りをしていただいた成果を参考資料といたしましたけれども,補足説明の中には,あの参考資料も見ていただきたいという引用をしようということも考えます。部会におられる皆さんはあれを皆,見ていますけれども,必ずしも意見を書く国民一般があれに気付くとは限りませんから,それも掲げておきたいと考えます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○水津幹事 28ページの2の管理不全土地管理制度について,質問させてください。この提案では,要件のところで,「他人の権利又は法律上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれがあるとき」であって,必要があると認めるときは,とされています。他方,補足説明の2では,物権の侵害や人格権の侵害が念頭に置かれているように見えます。そこで,この提案は,「他人の権利又は法律上の利益」の侵害を文字通り広く捉える趣旨なのか,それとも,物権の侵害や人格権の侵害のようなものに限定して捉える趣旨なのかが,気になりました。 ○山野目部会長 お尋ねというふうに頂きましたが,何か事務当局から意見がありますか。 ○大谷幹事 恐らく,この(1)の本文で書いているのが,それから(注1)で書いているところですけれども,この要件で絞りが掛かっているのかどうかがよく分からないということ等も,先ほどの御指摘がございましたけれども,そこと関係しているのかなという気がいたします。今,取りあえず,この利益が侵害される,侵害されるおそれがあるときということを書いた上で,(注1)のところで,もっと絞るようなやり方がないかということを書き,それをまた補足説明で,言いたいことは,要するに受忍限度を超えているということなのですが,ということを書いておるのですけれども,ここも書きぶりをもう少し考えたいと思います。 ○松尾幹事 先ほど藤野委員が御指摘になった,所有者不明土地管理人と管理不全土地管理人との関係ということですけれども,先ほど山野目部会長がおっしゃった,両者の関係について重要な点として,ここに挙げられている中で,管理命令の取消要件の問題もあると考えています。特に,管理不全土地管理人の管理命令の取消事由については,部会資料25の28ページ(注4)で,所有者が土地を管理することができるようになったときという事由が加えられております。仮に,先ほどの大は小を兼ねるということで,所有者不明土地管理人の選任があった後,所有者が判明したものの,外国に居住しているとか,あるいはすぐにその管理ができない状態であるにもかかわらず,所有者の申立てによって,この管理不全土地管理命令を取り消してしまってよいかというと,少し不安も残るように思います。   したがいまして,所有者不明土地管理人についても,26ページのカの土地管理命令の取消要件の中に,最後の部分で,「その他土地管理命令の対象とされた土地の管理を継続することが相当でなくなったとき」ということが入っているのですが,そこに,管理に支障を生じることがないという趣旨のことも書き込むか,あるいはこの「相当でなくなったとき」という文言の中に,管理命令を取り消しても管理上支障がないことを含んでいるという趣旨であることを補足説明で加えていただくことが,両者の土地管理命令の関係を支障なく,円滑にする意味でもよいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   財産管理制度について,また後で総括的にお尋ねするときにお伺いすることにして,ひとまずよろしゅうございましょうか。   それでは,続きまして部会資料25,40ページから後のところで御案内している「第3 相隣関係」を審議事項といたします。   この中身を御覧いただきますとありますとおり,第9回会議における審議の成果を反映し,まず,隣地使用権についての見直しの可能性を提案してございます。ここのところは甲案,乙案と分けてございません。   これに続く,越境した枝の扱い,それから,導管設置権の行使の在り方については,御覧いただいているように,甲案及び乙案を併記する形で中間試案に盛り込み,一般に諮ってはどうかという提案をしております。   相隣関係の部分の最後のところでは,管理措置請求の制度について,第9回会議における審議以降,掲げているものを,またそこにお示ししているものであります。その際にも議論され,また,本日部会資料でも注記しておりますとおり,相隣関係に基づく管理措置請求の制度は,最終的にはありうる整理の一つの帰趨として,直前に御議論を頂きました管理不全土地管理制度との関係を整理した上で,一方の役割を他方に吸収するという可能性もございますけれども,しかし,これも再々申し上げておりますとおり,最終的にはそういうふうなことも考えられるということであり,中間試案においては一応,両方を掲げるものとし,どちらかを消してしまうということではなくて,お諮りするという提案をしております。   相隣関係の部分の最後のところでは,管理措置請求の制度に関して費用負担の在り方につき,甲案,乙案という二つの考え方を提示し,これもこの形で一般の意見を募るということを提案しているところでございます。   この40ページから後の相隣関係の部分につきまして,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 相隣関係につきましては,できれば書きぶりを少し直してほしいというのがあります。大きく分けると二つです。   1点目は,相隣関係の権利を行使するに際しての法律構成と具体的な裁判手続の関係を書いて欲しいというものです。例えば,第3の1の隣地使用権については,原則的規律は隣地所有者の承諾が必要で,その必要が得られない場合には,承諾に代わる判決を得て隣地を使用するという形になると。2の越境した枝の切除について,甲案だと土地所有者は特に裁判手続を経ることなく単純に枝を切除でき,乙案だと,枝の切除請求訴訟を提起し,認容判決を得て,代替執行を行うことで権利を実現していくと理解しています。ただし,この本文だけ見たのでは,一般の人には,今申し上げたようなことは分からないので,(注)に,相隣関係の権利を実現するための裁判手続等の具体的方法を分かりやすく書いた方がいいと思います。   2点目は,管理不全の土地について,今まで物権的請求権で処理されていたのに加えて,相隣の管理措置請求と,財産管理制度での管理不全土地管理制度があると。事務当局はお忙しいと思うのですが,できれば,中間試案の説明をするときに,このそれぞれの制度について,要件・手続・効果を一覧表にするとか,ポンチ絵にするとかして,分かりやすく書いてもらえると有り難いという意見がありました。同様のこととして,財産管理制度の所有者不明土地管理人と管理不全土地の管理人,共有者が選任する管理者と裁判所が選任する共有物の管理者など,似たような制度が幾つかありますので,それぞれの異同・比較をまとめたものがあると有り難いという意見がありましたので,お伝えだけはしておきます。 ○山野目部会長 前段で御指摘いただきました,相隣関係上の各種の権利を行使するに際しての承諾構成と,直ちに執行することが可能なものとする構成とで,それぞれ行ったときに,裁判手続等がどのような手順になるかについて,できる限り分かりやすい,法律家というよりも一般の人から見て分かりやすい記述を添えてほしいという点は承りましたから,補足説明において処置します。   後段におきまして,図表等も駆使して,という魅力的な御提案を頂きました。告白しますと,私は前から議事の進行に当たって,手元でたくさんのものを急いで見る必要に迫られたときに大丈夫なように,蓑毛先生が御提案になった二つの種類の図表を毎回手元に置いて,表で見比べながら進めておりまして,図表を用いてそういうことをすることは大好きです。学生にも法律の勉強はこうやってするとよいですよとよく勧めております。さはさりながら,従来この中間試案等のこういうもので余りやっていないことです。前例がないことを理由にしないというつもりはないし,それから,御心配いただいた,こちらの当局が忙しいでしょうが,ということですが,忙しくても必要なことならやるべきです。少し心配なことは,ポンチ絵みたいにしてすると,世論とかなどから見たときに,もうそれで決まったことであるという印象を与えるのですね。特に,カラー入りのポンチ絵というものは,役所が,法務省に限らないですけれども,いろいろなところできれいなものを作って,もう決まったことですから,これでどうぞ御理解くださいとするときに用いられるものです。まだ中間試案であり,何か法務省とかここの部会が,もうこの方向で決まったことですから国民の皆さん方はどうぞこれで理解してくださいという,と言っているものではありません。そこがそのような雰囲気になってしまうことも,いささか,だなという気もいたしまして,しかし,なるべく国民に分かりやすく伝えるということも大事ですから,また考えさせていただくということにいたします。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○國吉委員 ありがとうございます。「第3 相隣関係」の(注3)の部分ですけれども,境界標の調査,境界の確定を求める測量のための隣地の使用を要望するということなのですけれども,その後の部分ですが,この使用することに加えて必要な行為を認めるという,この必要な行為というのは,隣地の使用に対するものなのでしょうか,それとも,前に御議論いただいた,例えば,境界標にコンクリートがかぶさっていて,それをはつる行為とか,そういうようなところまでも含めてというような意味合いなのでしょうか。御質問です。 ○大谷幹事 以前から御検討いただいておりますように,必要な行為として,コンクリートを一部掘ることを含めることが考えられるかという議論もございました。必要な行為ということをわざわざ書く必要があるか,隣地を使用するという内容でもう入っているのではないかという議論はありそうですけれども,掘り起こすといったことも認めるかどうかということについて,補足説明で書こうと思っております。 ○山野目部会長 よろしゅうございますか。 ○國吉委員 はい。 ○山野目部会長 相隣関係について,ほかにいかがでしょうか。   相隣関係について,大体御意見を承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。 ○潮見委員 やはり少しだけ気になりますのは,45ページの4の管理措置請求制度の費用のところの甲案の考慮要素というか要件なのか,よく分かりませんけれども,まずは隣地所有者の負担とするという形で,これを原則のルールとして書いています。次に,例外ルールとして,何か過失相殺みたいな,いろいろな事情を考慮に入れた,あるいは,寄与度みたいな枠組みでの減額というものが考えられています。   その例外に当たる要件,要素が考慮され得る場合として,今の私の理解でいいのかということです。まずは前提として,少なくともその事由が,天災その他避けることのできない事変によって生じたということで,これは従来言われているところの不可抗力と評価できるほどの程度のものに達していなければいけないという理解でよろしいかです。天災といってもいろいろありますから,多分そうだろうなと思うのです。それがまずあって,それで,その場合に限ってということですよね。そして,その工事によって土地の所有者が受ける利益の程度というのは,利益を帰するものに一定の費用負担を課すべきであるという考え方から,これを入れているという理解でよろしいですよね。   次に,その事由の発生に関して,土地の所有者に過失がある場合には,その過失の程度その他の事情を考慮してと書いています。過失の程度というのは,これは過失に限っているわけですか。土地の所有者の関与の度合というものがいろいろあると思うのです。過失と評価できる場合ではなくて,それ以外にもいろいろな事由がそこに寄与しているというような場合もあるのでしょうが,それを,ここはあえて過失に限ったということですか。そして,限ったとしたならば,その過失というのはどういう意味を持ってここで書いておられるのでしょうか。先ほど過失相殺という言い方をしましたけれども,あそこの過失も本当はよく分かりませんが,そうした意味で捉えておられるのかどうか。それから,その他の事情というところで一体何を盛り込もうとされているのか。結局,そう考えると何か,ここで考えられているというのは,正に事情の発生に不可抗力というものと,それから,土地の所有者側の事情,それが原因競合みたいな形で関与しているという状況なのですかね。   全部まとめて申し上げますと,過失というところで何を言わんとしているのか,広いのか,狭いのか,その他の事情というのは一体どのようなものなのかということを,補足説明かどこかで分かりやすく書いていただければいいのにと思います。そうでないと,これは際限のない公平判断に陥ってしまうのではないかと思います。ハブコメで意見を求めたとしても,意見を出した方が同床異夢で,賛成とかあるいは反対とかということを言いかねないと思うのです。いろいろ申し上げましたが,その辺りを含めて,補足説明で結構ですから,分かりやすく誤解のないように書いていただけませんでしょうか。 ○山野目部会長 潮見委員から御注意を頂きましたとおり,思い返しますと,民法の債権関係規定の見直しをした際,契約に関する規律の大部分につきましては,責めに帰すべき事由とか過失とかいうふうに改正前法が表現していたところの全ての場所について概念の精査をした上で,現行の法文になっております。潮見委員もよく御記憶のとおり,あの際,民法のそのほかの幾つかの規定のところに出てくる責めに帰すべき事由とか過失とかいったものをあのままにしてよいか,気持ちが悪いところも結構あるというふうな議論が交わされましたが,法制上,あの機会にはほとんどが見直しが見送られたという経過がございます。それはそれで理解することができますが,今般ここは新しく設けようとしている規定の場面でございまして,そこで不用意に過失その他の潮見委員が御指摘になったような文言を用いるということはいささか問題ではないかという,重要な御注意を頂いたものと受け止めます。甲案の今の案文は,とにもかくにも隣地所有者負担を原則とし,それ以外の場合において例外が,特殊な局面かもしれないけれども,あり得るということを伝えようとして,ここでこういうふうな文章表現をするということが精一杯の段階でお出ししたものであります。   今の御注意はごもっともなことですから,一つの解決としては,(注)を追加して,甲案の例外的考慮事情については,なおしっかり考える必要があるということを忘れないように示した上で,補足説明でその趣旨で,今,潮見委員が御指摘を頂き,私からも債権関係規定の見直しの際の経過等に関連して若干申し上げたようなことを忘れないようにきちんと説明しておくといったような解決が考えられるところでございまして,そういう解決を中心に,ここのところを少し考えてみたいと感じますから,潮見委員,そのようなことでよろしゅうございましょうか。 ○潮見委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   では,相隣関係のところはひとまずの御意見を伺ったという取扱いにさせていただきます。   ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開を致します。   続きまして,部会資料25の「第4 遺産の管理と遺産分割」についてお諮りを致します。   部会資料25の46ページから後ろでございます。その中を御覧いただきますと,まず第4の1といたしまして,遺産共有における共有物の管理という論点で,共有物の管理について,本日休憩前に通常の共有を想定して様々な御議論を頂きましたけれども,それらの中で御議論を頂いた管理者を選任する可能性とか,不明共有者の同意取得を得るための特例的な規律であるとかいったものについて,遺産共有においてもそのようなものと同様の仕方での規律整備をしてはどうかということを提案してございます。   部会資料17で御提案申し上げたことについて,本日お出ししているものは変更がございません。   続きまして,部会資料48ページのところで,2として遺産分割の期間制限,それから同じページの3といたしまして,遺産分割手続の申立て等がされないまま長期間が経過した場合における遺産を合理的に分割する制度についてお諮りをしております。   部会資料13で御提示申し上げていたものについて,本質的な変更を加えた部分はございません。ただし,今後意見公募に当たって国民がこの提案についての具体的なイメージを抱いて賛否を明らかにしてほしいということを望む観点から,遺産分割をする期間として望ましい期間を具体的に提示するものとし,10年という具体的な数字を示すというふうに変更を施してございます。   その上で,その10年が経過した後の遺産の分割の在り方につきましては,49ページのところで甲案と乙案をお示ししているところも従来と変わりません。既に委員,幹事においては御案内のとおり,甲案は,家庭裁判所が行う遺産分割の手続と,そうではない共有物分割の通常の手続と,いずれかを選んで行うことができるという可能性を残すものであり,乙案は,そうではなくて,専ら民法258条に依拠する共有物分割の手続で行ってくださいということを考える提案でございます。注記等において,それらに付随する様々な事項についての説明を添えてございます。   それから,この関連での最後,第4の4でございますけれども,少し飛んで55ページのところで共同相続人による取得時効のお話を差し上げています。従前御案内しているところと本質的には異なっていません。55ページの①のところで,初めから占有をしていた共同相続人についての時効取得の特例的な規律を提案し,②について,相続開始後に時間があって,その後,時効取得との関係で特例的な規律に服して取得時効を主張することができるようになる局面があるものではないかという提案を添え,あわせて,③において,相続回復請求権に係る884条の適用関係について,注意的な記述をしているところでございます。   ここまで御案内申し上げた範囲,遺産の管理と遺産分割につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料48ページの「3 遺産分割手続の申立て等がされないまま長期間が経過した場合における遺産を合理的に分割する制度」について,日弁連のワーキンググループでの議論の状況を御説明したいと思います。   これは,昨日,相当長時間をかけて議論したのですが,今回の中間試案の中で最も意見が分かれたところだということをまず申し上げたいと思います。   正直,私も全ての立場の方々の意見を昨日の今日で整理し切れていないまま申し上げていますので,そのような前提で,お聞きいただければと思います。   まず,(1)の具体的相続分の主張の制限,こういった規律を置くか置かないかについて非常に意見が分かれ,特に相続の案件を多く行っている弁護士から,このような規律を置くべきではないという意見が出ました。   例えば,具体的な遺産分割事案の中には,高齢の夫が亡くなって妻と子が相続人である場合に,夫が死亡しても直ちに妻と子で遺産分割を行うことはしないで,妻が生きている間は従前の妻の居住環境や生活環境を維持して,遺産の紛争は顕在化させないようにしよう,そして,妻が亡くなった時点で夫と妻の遺産分割を子供たちで同時にやるということもよくあるのだと。このような場合に,遺産分割をできないという期間制限を設けるのはもってのほかであるし,そうでなく,特別受益とか寄与分の主張制限にとどめるとしても,これまでは認められてきた特別受益や寄与分の主張について,改正後はできなくなってしまうのはいかがなものかという実務的な観点からの意見がありました。   一方で,遺産分割が全くできないという期間制限は別として,特別受益と寄与分の主張について一定期間経過後はできないということには,合理性があるのではないだろうかという意見もありました。例えば,実際問題として10年たった後に寄与分の主張を立証するのは非常に困難ですし,特別受益についても,不動産の贈与など比較的立証が容易なものがある一方で,その反証をするための預金の動きなどについては,資料がそろわず立証できないなど,長期間が過ぎると,適切な立証や反証が難しいということもある。また,これまで部会の議論でも出てきているとおり,高齢者が増えて,遺産分割の事案が増えていく,そういった状況への対応も必要ではないか。さらに,所有者不明土地問題を解決するために,一つの合理的な手段になり得るのではないかということで,今のところ日弁連のワーキングの中では(1)の「具体的相続分の主張の制限」の範囲内であれば,賛成できるという意見が多数です。   ただし,何度も申し上げるようですが,これについては反対の意見も非常に強かったということを申し上げておきます。   続いて,(2)の分割方法について,甲案と乙案で意見が分かれています。乙案を採る人からは,甲案は分かりにくいとの意見が出ています。一定の事由があるというのはどういうことなのか,要件が不明確ではないか,あるいは,一定の事由がある場合に,共有物分割と遺産分割の両方の手続ができるとなった場合,その関係はどうなるのか。この辺りがよく分からないという意見です。   一方で,甲案を採る人からは,特別受益・寄与分という主張の制限ができなくなったとしても,なお親族間での遺産の分割というものは,民法906条に規定されている様々な一切の事情を考慮して行うべきであって,これは単なる共有物分割とは違うのではないかという意見が出ています。また,一定期間経過後は,遺産分割ではなくて,共有物分割の手続を行うということにすると,様々な問題が起こるのではないかという意見が出ました。例えば,改正民法1028条で認められる配偶者居住権,これは遺産分割で認められる権利になり得るわけですが,一定期間経過後は,一律共有物分割で処理されるとすると,配偶者居住権が認められなくなるが,それでよいのか。また,共有物分割の場合は,遺産分割の遡及効がなくなるので,今は,法定相続分と異なる内容の遺産分割協議等を行っても,所得税や贈与税の課税関係は生じないが,乙案を採って,確定的に共有持分が通常共有として確定した後に,それと異なる内容の共有物分割の合意をするということになると,思わぬ課税関係が生じるのではないかとかいった問題があり,様々考えると,従来の相続制度との整合性,すり合わせをできる限りする形で,甲案を更に詰めていくのがよいのではないか,甲案か乙案かというと,今のところ日弁連のワーキングでは甲案が多数という状況です。   ただし,甲案の場合,一定の事由とは何なのか,また,共有物分割と遺産分割の手続は併存するのか併存しないのか,併存した場合に両者の関係がどうなるのかについては,更によく検討する必要があると思います。   なお,一定の事由をどう考えるかについてですが,基本的には,部会資料49ページの(注6)に書いてあるような考え方でよいのだろうと思います。つまり,甲案は,1の期間経過後も,相続当事者間の様々な事情等を考慮して,民放906条により遺産分割手続を行うという考え方です。しかし,当該遺産共有と通常共有とが併存していたり,数次相続が発生していたりして,他の通常共有・遺産共有と一緒に処理しないと,当該遺産共有状態が適切に解消できないという事態になってしまった場合は,もはや民放906条に基づき,当該遺産分割の相続当事者だけで解決できるものではないわけですから,このような状況に陥った場合に限り,また,他の通常共有・遺産共有と重なり合っている遺産に限り,共有物分割の手続ができるという絞り込みをすれば,弊害が少なくできるのではないかと思います。   以上です。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見の分布の状況をお知らせいただきまして,ありがとうございました。   部会資料の48ページの,まず「2 遺産分割の期間制限」で御提示申し上げていること,それから,次の3の(1)でお示ししている具体的相続分の期間経過後の主張を制限し,特別受益や寄与分の取扱いをしないものとするという部分について,弁護士会の先生方の御意見が,対立というよりも多岐に分かれているという御様子をよく承りました。   蓑毛幹事におかれては,努力をして大きな意見のモデル二つという仕方でお出しいただきましたけれども,併せておっしゃられたように,必ずしもその二極に集約されるものではなく,多岐にわたる御意見があるということも承りました。  弁護士会に限らず,いろいろなところでお話を伺っても,これは意見が分かれる問題でありまして,傾向として感じられるところも,蓑毛幹事がおっしゃったところと似ていて,どちらかというと所有者不明土地問題という時局が論じている問題と近しいところにいる方々は,こういうものが政策としてあり得るというふうにおっしゃいますけれども,それに対し,相続の紛争を比較的に専門的に扱い,それと向き合ってきた弁護士やその他の法律家の皆さんから見ると,必ずしもこういう施策が本当に実態に即したものであるかというお声も聞かれるところであります。正に,意見公募でいろいろな,この問題の近くにいる方のみではなくて,弁護士の先生方もいろいろな先生方がいらっしゃいますから,その御意見を聴くに値する主題であろうと考えます。   この中間試案の提案の建て付けをこの組合せで出すということ自体は,弁護士会としてはよろしいというふうに承ってよろしいでしょうか。 ○蓑毛幹事 そのとおりです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   それから,49ページにいって,甲案,乙案をお出ししているところについても,やはり意見が分かれたというお話を伺いました。どちらが多数かということも承りましたけれども,やはりこれも,それはそれとして広く意見を伺ってみなければいけないだろうと感じます。乙案の場合は常に,それから甲案であっても,共有物分割の手続をとる場合には,蓑毛幹事から御指摘のとおり,特段の税制上の措置を特例的規律として設けない限り,今まで起こっていなかった課税関係が生ずる局面があるであろうと考えます。それから,共有物分割を反映させる,その帰結を公示する不動産登記の手続において,農地法許可証明情報を提供しなければならない場合が生ずるであろうとも想像します。そういった点にも留意をして,ここでの議論が深められる必要があると感じます。御意見の状況の有益な御紹介を頂きました。ありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。 ○中村委員 ただいま蓑毛幹事から日弁連の議論の様子については御報告いただいたのですが,追加で申し上げますと,この49ページの甲案,乙案,いずれにしましても,相続人間というプライベートな人間関係における長年のいきさつに基づく妥当な解決というものを,10年の経過によって一定程度犠牲にするという面がありますので,それをあえてしても,このような仕組みを設けることの必要性というのが,注なりの何らかの形で中間試案の中に表すことができないものだろうかと。御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 補足説明等において,今,中村委員が御指摘になったことを書き表すように努めます。ありがとうございます。 ○道垣内委員 中村委員のおっしゃったことに反対するという形を採りながら,多分根本的には同じ気持ちなのだろうということを申します。今問題になっているのは,そういったことをして,所有者不明土地問題を生じさせないことがそもそも妥当なのかということだと思うのです。そのときに,補足説明において,妥当であるという方向だけから説明するのは,おかしいと思います。   蓑毛さんのおっしゃったことも含めて,10年やそこらで,お母さんが生きている間はちょっとトラブルはやめておこうと,後になってからやろうというふうに言っているその兄弟間の法律関係を,何十年,あるいは100年以上掛かって形成されてきた所有者不明土地問題の解決のために,たかが10年でそういうふうな権利を全部失わせるという方向で解決することが本当に妥当なのかという問題があるわけです。したがって,一方からだけで説明はしないようにしたほうがいいのではないかと思います。中村先生も,私が申し上げていることに反対ではないのではないかなという気がしておりますので,形の上では反対をしている感じになりました。 ○山野目部会長 いささかよく分かりませんでしたけれども,別に対立はしていなくて,中村先生のファンだという表明が今あったように聞こえましたけれども,そうではないのですか。 ○道垣内委員 いや,仲間か仲間じゃないかはどうでもよくて,提案の妥当性を説明しなければいけないというときには,妥当でないかもしれないということも併せて説明していただきたいというだけです。 ○山野目部会長 よく分かりました。   いずれにしても,これは立場が分かれる問題ですから,一面的なアングルではなくて,それぞれの立場から見たときの観点というか,問題点の指摘があるということを書き表していくように努めます。 ○中田委員 今のお二人の続きなんですけれども,必要性という言葉がちょっと多義的に使われているような気がいたします。必要だからなくしてしまっていいんだというのは一つの考え方なんですけれども,私は寄与分や特別受益について考えてきたんですが,そういった制度が認められている理由を検討した上で,それを失権させてよいのだということの理由付けが余り明確ではないように感じます。必要だからなくしていいんだというのは,ちょっと足りないのではないかなという気がしますので,そこは説明をきちっとしていただいて,意見が出やすくしたほうがいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   本日の部会資料でそのことをつまびらかに説明しておりませんが,前の部会資料で説明していた部分がありますから,あの部分を更にバージョンアップして加えてもらうというお話になると思います。ありがとうございます。 ○中田委員 前の部会資料でも,今部会長御指摘のとおりではあるんですけれども,なお充実させていただければという趣旨でございます。 ○山野目部会長 バージョンアップするようにお願いしたいと考えます。今バージョンアップというふうに申し上げたことは,中田委員がおっしゃった趣旨でございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○佐久間幹事 問うていただく際にお願いしたいことがございまして,一つは,蓑毛幹事がおっしゃったことに関連するんですけれども,49ページの甲案,乙案でいった場合に,甲案のときに,蓑毛幹事は一定の事由があるときというのはどういうときかということを一つおっしゃって,もう一つは,併存するときの関係をというふうにと,おっしゃいましたよね。そこがやはり幾つかあり得ると思うんですね。例えば協議のときに,1人は共有物の分割を主張し,別の人は遺産分割の主張をする,この場合どうなるんですかとか,遺産分割の調停とか審判とかが申し立てられた後に,いや,共有物分割でということがまだ可能なのかとか。その辺りについて,今,コンセンサスはもちろんないんだろうと思うんですけれども,どのようにするかについて,利害得失みたいなのがやはりあると思うんですね。   現状から余り離れないようにということであれば,遺産分割の手続の方を優先したほうがいいということになると思うんですが,他方で,例えばですけれども,通常共有の人と遺産共有の人が混在しているという場合で,遺産分割の期間を経過しているときに,通常共有の方からすると,その遺産共有のところも含めてぱっと割れたほうが楽だということはあるはずです。また,所有者不明土地問題の解決ということだけでいえば,その方がいいということにもなると思います。そういったところを解きほぐしていただいたほうが,問うときにはよいのではないか,というのが1点です。   よく似たことなんですが,もう1点,これは,別に反対しようというつもりはありませんけれども,分割擬制は,そうする必要はないのではないかというふうなことが述べられているんですけれども,その述べられ方が,どっちみち法定相続分による共有状態が続いてきて,仮に具体的相続分の主張ができなくなると,それが確定するのだからというふうな説明がされていると思うんですね。ただ,例えばですけれども,ABCの3人の遺産共有ですと,今。そのABCもそれぞれ3人ずつ相続人がいて,みんな死んでしまいましたとなると,共有者が9人になりますよね。このときに,どれがいいかというのはともかくとしまして,考え方をやはり示したほうがいいのかなと思うのは,ABCの共有の場合に,その下に3人ぶら下がっているけれども,ABCの共有についての共有関係の在り方を決めるには,例えば管理だったらそのABCの過半数のはずですよね。   それで,ABの2人についてどういう賛否になるかというのは,その下の遺産共有の関係がぶら下がって決まるというのに対し,期間が過ぎたら遺産共有状態というのは考慮しなくなるんですということになれば,9人の過半数で決まるということになって,違ってくるはずなんですね。どちらになるかは,今はまだオープンだと思うんですけれども,管理の在り方に関係してくるので,こういったことをどう考えるかということも明らかにして問うた方がいいのではないかなと思っております。   今のが主な点で,あとすごく細かいことを2点申し上げたいんですけれども,50ページのこれは(後注1)から(後注3)まで,あえてまとめて書いてあるんでしょうか。改行しなくていいのかというのが気になったというのが,ものすごく話の落差があって申し訳ないんですけれども一つです。それともう一つは,49ページの(注1)で,金銭と預金債権を並べて,金銭について可分債権と書いてあるけれども,これは違うのではないですかね。要件についてどうするかというのは問題になると思いますけれども,一応金銭は共有物のはずなので,特段の定めをしない限りは可分債権と同じ扱いにはならないのではないかと思います。いろいろ落差がある話で申し訳ありません。 ○山野目部会長 一番簡単な話だった真ん中の改行の点は,これは事務的なミスでありまして,部会資料を改行するものと訂正をここでいたしますから,それをもってお受け止めください。   1段目におっしゃったことは,甲案で提案している規律の細密化の必要の指摘であるというふうに受け止めます。その上で,補足説明でそのことを記しますが,記しますといっても限度があって,手続として中間試案として太文字で描かれているところがこの部会の合意事項でありまして,補足説明は法務省がその責任において書くものでありますから,補足説明の内容についてここでみなが合意をしている必要はないとしても,しかし,そうはいっても,それは建前でありまして,やはりここの佐久間幹事から問題提起を頂いた甲案の規律の細密化について,ここでまだ議論が熟しておりませんから,それを引き続き考えなければいけないという宿題がありますよということでありましょう。その宿題は,具体的にいうと佐久間幹事がおっしゃったその二つの手続が錯綜したときの様々な細目的な問題ですよということを忘れないようにする記述を入れるということであって,そこにとどまると思います。それについて結論が,法務省が勝手にこう考えるからこれで理解してくださいということは,この段階ではしてはいけないことであると考えますから,その限度で受け止めさせていただきます。   3点目でおっしゃった事項は,金銭と可分債権の性質の違いに留意して,誤解のないように伝わる文章に整えるということでよろしいでしょうか。   それでは,引き続き御意見を承ります。 ○潮見委員 ゴシックの部分の書き方は別に何も申し上げません。金銭のところは,多分ここまでいってどうですかという感触みたいなものを含めてここに書かれたのかなと,私は受け取りました。それがいいかどうかというのは分からないし,恐らく今の考え方は,佐久間幹事がおっしゃったようなことやと私は思っております。可分の金銭債権と金銭とは違うと。   その上でのことですが,先ほど中田委員らが言われたところとかぶりますけれども,今回の問題で,ここのところは先ほどの弁護士会の意見にもありましたように,基本的な考え方とか,その辺りが大きく分かれているところだと思います。前も確か佐久間幹事がおっしゃったと思いますけれども,遺産分割とみなすことが望ましいんだという立場と,他方で,時間がたったからといって,具体的相続分の主張ができなくなる,特に短い期間をとった場合にそれが顕著ですけれども,そのようなことはけしからんという立場の両極があって,その中にいろいろな考え方があるわけですよね。それを,補足説明のところに,個人的な希望としては2のところで書いてもらいたいのです。遺産分割の期間制限というところがありますので,その辺りの補足説明で,できればここに問題の所在があって,こういうふうな枠組みでいろいろな考え方を整理することができるんだと書いてほしいのです。   このことをなぜ申し上げたのかといいますと,2のところのゴシックで,遺産分割の合意又は遺産分割手続の申立てについて,期間の制限を申し立てることの是非については,期間を経過した場合にどのような効果を生じさせるかについての検討,そしてわざわざ(後記3参照)と書いているんですよね。  これは,読み方二通りできるわけで,例えば期間制限を設けたらその効果はまた別のものもあるかもしれない,あるいは本体としてもっと重要な効果があるかもしれないということも含意しているというところだとも読めるんですよね。   あるいは,3を見ながらまず考えてみて,それ以上に効果は余りなさそうだったら,3にとどめましょうという読み方もまたできるんではないかと思うんです。取り分け,今月号の法律時報の学会会合ではありませんけれども,遺産分割とみなすなんていう,こういうことを法制審の部会がやろうとしているのはけしからんという御意見もあるから,余計にきちんとこの辺りのところは整理をしてほしいなと思っております。  さらに,そのことに加えて申し上げますと,先ほど部会長がおっしゃったように,ここの問題でいろいろ意見が分かれるのは,一方では不明土地の問題を一生懸命やっておられる方々が何とかしろというようなことを言い,他方で,何だこれは,けしからんと言っている人たちは,従来の相続というものの考え方,あるいは具体的相続分の持つ意味というものをこういうことでないがしろにするのはけしからんというようなところから,こういう対立構造なり,あるいは対立点というものが形成されているからだと思います。   そうであるとしたならば,沖野委員がおっしゃったような仕組み,そのアバウトなことは以前に私も申し上げたと思いますが,例えば土地に限って一定の期間が過ぎれば共有物分割という枠組みをとる。それ以外のところは,遺産共有を残すというような考え方もあります。そのような考え方も委員の意見として出ている以上は,そして,それなりに私は説得力があると思いますから,何か補足説明のどこかで示すということをやっていただけないでしょうか。これは強い希望です。御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   不動産に限るとする考え方があるという意見であれば,補足説明で扱うというよりは,むしろ注記に掲げておいた方がよろしいことであろうと感じます。それも意見として,本文に入れないまでも注記にあった方がよいという御意見もあり得るでしょうし,あるいは注記が余り複雑になると非常にまた意見を出す側にとっても不便を与えるかもしれないですし,そこのメリットとデメリットは少し表裏の関係になっている部分がありますけれども,どういうふうに考えたらよいでしょうか。何か御意見はおありでしょうか。   潮見委員は,もし注にするなら注にするということもあり得るということでしょうか。 ○潮見委員 注でも,それは有り難いですけれども,ただ,余りその部分についてここで重点的に検討したわけではありませんから,そういうことであれば,むしろ補足説明のところにでもこういう意見もありましたということで書いていただいて,それでお読みになられた方がそれに対してやはりおかしいとか,これらとは別の考え方もありますよねということで意見が出たら,それはそれで参考にするというのも構わないと思います。 ○山野目部会長 今の点について,ほかに御意見おありでしょうか。 ○中田委員 もしも不動産について別に書くとすると,49ページの(3)のところで,こちらは不動産の持分の取得等というふうになっておりまして,他方で50ページに入りますと,2行目に特定の不動産又は他の財産ということで,不動産の取扱いが場所によってやや揺らいでいるような感じがしますので,ただいまの潮見委員の御提案の御検討の際に併せてそろえていただく工夫をしていただければと思います。   続けてあと二つ申します。   一つは,先ほど潮見委員が御指摘になった今回の法律時報の学界回顧は,家族法の学者からは非常に注目されるものだと思いますので,理由付けについては是非慎重な御説明をしていただく必要があると思います。   それから,最後は細かいことなんですが,48ページの3の(1)というところで,遺産分割の合意及び遺産分割手続の申立てがないまま10年を経過したと,こうなっているんですが,これはどちらか一方があれば,後半の規律は適用されないという趣旨だと思うんですけれども,遺産分割の合意があったときに,その後,具体的相続分を主張するという場面がどういうことなのかが分からなくなりました。この3の(1)の文章が,あるいは私が混乱しているだけかもしれませんけれども,少し整理を試みる必要があるかなと感じました。 ○山野目部会長 中田委員からおっしゃっていただいたうちの1点目は,潮見委員の御議論を受け止めての事柄であります。不動産に限るという観点を,いずれにしてもゴシックのどこかで読み取ることができるようにすることがよいものではないかと感じます。その上で,中田委員が,不動産が幾つか出てきているところについて,相互の整理が必ずしも明瞭でないというお話がありましたから,その点の整理をする際,可能な限り整えたものにしてまいりたいと考えます。   それから,中田委員がおっしゃった2点目の,48ページの2と3で提案していることの全体についての様々な見方があり得るということは,補足説明で丁寧にしていただきたいというお話は,一つ前の議論であったとおりであります。私が従前の部会資料を用いて,と申し上げましたが,従前の部会資料で十分だと申し上げているものではなく,先ほど申し上げたように,あれをバージョンアップした上で,可能な限りの説明をしてほしいということを事務当局にお願いいたしました。   3点目の48ページの3の(1)については,部会資料の作成の意図を少しお尋ねする必要がありますから,何か所見があれば事務当局の方からお願いします。 ○脇村関係官 合意のところだと思うのですが,少し書き方を考えないといけないなと思っています。場面設定を本当は,合意もしていないときに申立てもしなかったらできないですよというのも書きたかったので,合意がない場合において経過したとか,そういった形の修正というのはあるのかなと今思っているところです。すみません,ざっくり書いてしまったので及びで結んでしまったのですけれども,場面設定ですよというのが分かる形で少し整理したいと思っています。 ○山野目部会長 よろしいですか。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 先ほど潮見先生がおっしゃった,こういった規律を不動産に限って設けるという考え方について,先ほどの説明から漏れたのですが,日弁連のワーキングで議論したときにも,所有者不明土地問題を,これまでの相続制度と整合的に解決していくという観点からは,不動産に限るという考え方があるのではないかという意見もありました。初期のころの潮見先生の御発言を議事録で読んで,あれはどうなったんだというような流れだったと記憶しています。そこから進んで,本文や注に書くべきだという意見にはならなかったのですが,そのような意見が日弁連のワーキンググループでも出たことを考えると,注にそのような考え方を設けるということに賛成します。 ○松尾幹事 ちょっと今の文脈とずれるんですけれども,よろしいでしょうか。   部会資料25,55ページの共同相続人による取得時効について,よろしいでしょうか。   この制度の提案は,とりわけ所有者不明土地問題の現状を踏まえた解決策の一つとして,大きなインパクトがあるのではないかと思います。ここに書かれていることの方向性については,自主占有要件の特則を設けるものとして,私自身は基本的に賛成であります。   その上で,もう2点お願いしたいことがあります。第1点として,この提案について広くパブリックコメントを求めるためにも,時効取得を主張するときの手続についても明確にしていただければと思います。例えば,訴えを提起するときの相手方について,登記名義人でよいのか,あるいは土地の場合に土地管理人とすることを想定しているのか。あるいは,本日の部会資料の25の33ページにあります管理型の相続財産管理人を選任して,その者を相手方にして訴えるということが想定されているかどうかということについても,整理をしていただければ有り難いと思いました。   この点との関係で,34ページ(注4)では,この相続財産管理人が訴訟の被告となって応訴することができるかどうかについては,相続人の手続保障に留意して慎重に検討するということが言及されてございますけれども,もしこの相続財産管理人を相手方とすることも考えられるとすれば,これとのクロスリファレンスないしその点についても言及していただくことがコメントをしやすくするのではないかと思いました。   それから,第2点は,もしこの55ページの提案で,共同相続人の一人による時効取得が認められた場合の,登記名義の移転の方法について,登記名義人から時効取得者への時効を原因とする直接の移転登記ができるのか,時効の起算日よりも前に登記名義人について相続が生じていた場合も含めて,登記名義の移転が具体的にどういうふうになるかという点についても,併せて提案の中で示していただけると,意見が出しやすいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   取得時効の実体的規律の提案に併せて登記や訴訟の関係での提案もなるべく分かりやすく書き添えてほしいというお話はごもっともであると感じます。必要な試みをしたいと考えます。登記手続の簡略化の議論などとの関連についても参照指示を入れたりしながら,何か分かりやすく,理解してもらえる工夫を試みたいと存じます。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○中田委員 取得時効のところでございますけれども,補足説明のところで,所有の意思についてお書きくださっていまして,分かりやすくしようという御努力で,感謝しております。ただ,本文の4の①を拝見しますと,他の共同相続人が当該物につき,相続人としての権利を主張しないと信ずるに足りる相当な理由があるということが書かれているわけでございますけれども,これは,他に共同相続人が存在し,かつ相続権があるということを知っていることを前提として,しかしそれを行使する意思がないと信じたということだと思うんですが,さて,それが所有の意思の具体化と言えるのだろうかということがよく分かりませんでした。   つまり,所有の意思というのは,占有を根拠づける権原の性質によって客観的に判断されるというのは,割と広く受け入れられている理解ではないかと思うのですが,それと今申し上げたところとが,ややずれているのではなかろうかという気がいたします。ですので,この規律の当否自体についても更に考える必要があると思いますけれども,少なくとも所有の意思との関係の説明は,もう少し補足,御検討いただく必要があるのではないかと思いました。 ○脇村関係官 中田先生おっしゃいましたとおり,そもそもこの当否自体が問題になっているわけでございまして,その上で,この内容を採用するといった場合には,説明として,所有の意思といくのか,所有の意思を拡張しているということになるのかも含めて検討していく必要があるんだろうなと思っています。   そういった意味では,これを議論としては所有の意思として言うのは,先生がおっしゃった前半部分が限度ではないかと,そういう意味ではそこに限って時効を認めるべきではないかという議論もあるでしょうし,所有の意思とは違うけれども入れていい,あるいは所有の意思はそこまで入るんだという議論もあるのかもしれません。 ○山野目部会長 引き続きいかがでしょうか。   遺産の管理と遺産分割について議題としております第4のところは,今お示ししているような仕方で中間試案の提示に進んでいくということでしょうか。   やはりこの遺産分割の期間の制限というふうに大きく一くくりにして言ってきた第4の2と3のところが,だからこそ意見公募に値するという側面もありますけれども,非常に今後難しい議論をしていかなければいけないと考えます。   49ページの(注2),遺産の一部の分割がされていたときに,その結果を考慮しないで10年経過したら処理するということは,こういうものは本当に大丈夫ですかね。確かに,まず思想的に大きく二つの見方が分かれる問題であるからこそ国民に問うという側面がありますけれども,特にこの場合,期間の制限を設けるという,その積極策の方を打ち出すにしても,それこそ中村委員のおっしゃる家族の歴史が刻まれてきた一つ一つの営みである一部の分割みたいなものを全部反故にするということを示して,随分と乱暴な積極策が出されていますねというふうに国民が感じて議論が進んでいくことが,私たちとして良いボールの投げ方であろうかという辺りは,なお心配ですけれども,このようなことでしていきますか。どうしますか。 ○道垣内委員 何か確定的な考え方があるわけではないんですが,先ほどから不動産に関してだけという制限を何らかの形で書くという話がありましたが,それは,どこかの注にちょっと書けば済むという問題では多分ないのだろうと思うんですね。というのは,不動産に適用対象を限定するというのは,不動産については,遺産分割協議が成立しない,ないしは,先ほど関係ありましたが,遺産分割の協議,審判手続の申立てがないというときには,法定相続分ないしは指定相続分によって,通常共有の状態になりますという,それだけの話ですよね。   そうした後で,他の財産について柔軟に遺産分割を行うことや,あるいは特別受益の考慮することなどには,一切制約がかからないわけであって,不動産だけ取り出してその通常共有の状態に移しますという,それだけの話だろうと思います。大分,制度としてのコンストラクション自体が違うんだろうと思います。それは,先ほど部会長がおっしゃった一部の分割というものがされている場合というものにも関わってくるわけであって,不動産についてだけは,その安定したというか,早目に権利状態を安定させようというのでしたらば,遺産の一部である不動産についてだけは分割されたということならば,もはや,ここで対象とすべき事案ではなくなっているわけですから,もはやそれでおしまいですという話になろうと思います。   繰り返しになりますが,遺産に属する不動産についての確定的な権利状態を10年以内なら10年以内に作らないときには,法定相続分ないしは指定相続分による通常共有になりますという,それだけの話でして,現在の案とは大分話が変わってくると思いますので,どこかに注として埋め込むというのは,抽象論として言うのはたやすいんですが,なかなか本当は難しいということを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員のお話,大変よく分かりました。   今の関連で,ほかに御発言おありでしょうか。 ○吉原委員 法律の専門家でない私のような者が感覚的なことを言って大変恐縮なのですが,法律をよく知らない者からすると,遺産分割の期間制限という言葉はかなり強い言葉だと思っております。3番を読むと,これは何かが決定的にできなくなるというよりは,一定期間が経過したことで,選択肢が広がる部分もあるようにも思われます。そうしたところも酌み取れるような書きぶりというのができたらと,ここで御提案されている趣旨が的確に伝わるような構成というものもあるのかなと,思いました。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。   ほかに今のお話の関連で御発言がおありでしょうか。   そうしましたら,道垣内委員から御指摘いただいたことは,誠に明快で重要な指摘でよく分かりました。不動産に限るという提案を何らかこの補足説明ではない中間試案の方に上げていったときに,いろいろなところとの関係を見直さなければいけないであろうという御話であります。中田委員から御注意のあったところももちろんそうですし,(注2)の遺産の一部分割との関係でもそうですし,(注2)の関係でいいますと,見方によっては,もし不動産に限るということであれば,不動産の一部分割がされている局面については,ここで提案している事柄全体の政策的な必要性というか正当性の基礎が失われかねない側面があるという御指摘は,なるほどというふうにも感じますから,少し見直しの作業が重くなるかもしれませんけれども,試みなければならないと考えます。   あわせて,遺産の一部分割につきましては,簡単に一部分割とよびますが,実は907条2項の適用関係のみならず,909条の2の適用関係,さらに906条の2の適用関係などが10年経過した後にどういうふうになるかといったようなことを細かく仕分けをして考えていかなければいけない部分もあるであろうと感じますから,中間試案ないしその補足説明の段階では,問題点の指摘にとどまるかもしれませんけれども,なお今後の検討が待たれる部分があるということは忘れないように,どこかに説明として残すことが相当ではないかと思われます。   吉原委員から,ここで提案し,問題提起をしようとしている遺産分割の期間制限及びそれに関連する事項の国民に向けての説明の仕方について御注意がありました。ごもっともなことであると感じます。ただいま48ページのところを2として遺産分割の期間制限という,吉原委員の受け止め方でいうと何とおっしゃったでしょうか,びっくりするような,というか強烈な感覚を及ぼすような言葉が出ているというところは,そのような側面があるかもしれません。諮問107号の諮問文が遺産分割の期間制限という言葉を用い,これについても検討してくださいと求めているところでありましたから,今ここにこういう形で残っております。もちろん大臣の諮問は遺産分割の期間制限を必ず入れなさいと言っているものではなく,それについて検討してくださいというお話ですから,中間試案から後,話を整理していくと,ここの48ページで問題提起を差し上げている2と3のどちらもなくなるかもしれないし,あるいは3を更に洗練させた形で残し,2の話はそれをもって諮問にお答えしたという取扱いになるかもしれませんし,先々整理をしていかなければならないと考えますけれども,その際,吉原委員から御注意いただいたことを忘れないようにいたします。ありがとうございました。   そのほかに,第4に関しての御発言がおありでしたら,承ります。   よろしいでしょうか。   それでは,「第4 遺産の管理と遺産分割」についての審議をお願いしたという扱いにいたします。   「第5 土地所有権の放棄」を審議事項といたします。   これにつきましては,部会資料25の56ページから後のところでお示ししております。前回御審議いただいた際に用いた部会資料20からの変更はほぼありません。1番のところでこのような制度を創設することはどうかという問題提起をしています。   それから,58ページの2にいって,放棄の要件,手続のところについて,第10回会議における御指摘を踏まえ,若干の手直しをしておりますけれども,基本は変わっておりません。   それから,少し性質の異なる事項でありますけれども,62ページのところにいって,「3 関連する民事法上の諸課題」として共有持分の放棄や建物,動産の所有権放棄,放棄に起因する損害の填補などについて,問題提起をしております。   このうち,(2)の建物,動産の所有権放棄は,部会資料20と同じものをお出ししています。(1)の共有持分の放棄は,255条の改正提案について,第10回会議の審議を受け止め,少し直してございます。(3)についても同様の見直しを若干加えているところがございます。以上,この第5の土地所有権の放棄につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第5の1と2については本日特に意見はありません。   3についてですが,今,部会長から御説明があったとおり,元々は,共有持分の放棄について,他の共有者の同意を必要とすることについては不動産のみを対象とするというものであったのが,動産についても産廃などについては,不動産と同様,最後に残った共有者に負担が押し付けられるということがあるので,このように変わったと理解しています。ただし,たしかに産廃のようなものはあるけれども,動産債権全てについて,共有持分の放棄について,他の共有者の同意を要するというのは広すぎるという意見もあります。そこで,注で結構なのですが,不動産のみを対象とするという考え方も残しておいていただければと思います。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。所有権の放棄について,ほかに御意見はありませんですか。   どなたもなければ,話をひっかき回すようで申し訳ありませんが,58ページの下から二つ目の③現状のままで土地を管理することが将来的にも容易な状態であることという要件を提示していて,要件の本質内容は変わっていません。「将来的にも」というものを今回の部会資料で追加いたしました。前回第10回会議におきまして,管理が容易な,ということは,誰にとって容易であるかということが,より明確になるとよろしいという御要望がありましたから,それを受け止め,このような表現をしてございます。「将来的にも」というものを法文に掲げることができる言葉であるとは感じられません。ただしかし,中間試案で意見を書こうとする関係各方面の皆さんが,確かに部会で出された御議論と同様に,管理が容易な,ということはどういうことですかという気持ちを抱くかもしれませんから,意見を書いてくださる方とのコミュニケーションのために,法制的な適否をさておき,この表現でひとつお考えくださいということを御提示申し上げているところであります。そのような趣旨であるという説明を添えさせていただきます。   この土地の所有権の放棄のところについて御発言があったらお願いいたします。   よろしゅうございますか。  それでは,この部会資料25でお諮りしている民法等の見直しの全体を通じて,ここまで審議が進んできた中で御発言の機会を逸したという事項がおありでいらしたならば,承るということにいたします。 ○吉原委員 土地所有権の放棄のところですけれども,新しい概念を作るという意味で,これはとても大きなことだと思っております。国民の関心もとても高いと思いますし,かつ,今回の法改正で放棄ができるようになったんだというときに,一般の国民が報道を読んで受ける印象と,ここで書かれている厳格な要件というのは,かなりギャップがあると思います。今後もしこれが認められた場合には,そこを丁寧に埋めていく必要がありますし,放棄という概念を新たに導入することで,今後,どういう社会的な影響や,あるいは法律上の,学問上の検討課題があるのかということは,地道に考え続けていく必要あろうと思っております。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   委員,幹事の皆様におかれましては,年末に向けて中間試案が決定され,公表される段階になりますと,各報道機関からのインタビューや取材の求めなどもお受けになる機会があるかもしれません。中間試案では土地所有権の放棄が認められることになったのだよというふうに述べると,新聞にそのとおり出ますけれども,そうではなく,厳格な要件の下で放棄が認められる方向になりつつあるというふうに丁寧に御説明いただければと望みます。中間試案の理解自体は吉原委員がおっしゃったとおりではないかと感じます。   引き続きほかにこの部会資料25を通じておありでいらしたら承ります。いかがでしょうか。   今はよろしいですか。   それでは,最後にもう一回,部会資料の25と26を通じてお尋ねする機会がありますから,お漏らしのところがあれば,その際におっしゃっていただくようにお願いいたします。   お取り上げいただく部会資料を替えていただきます。   部会資料26が扱っております中間試案の案の「第2部 不動産登記法等の見直し」を審議事項といたします。   部会資料26の表紙をお開きいただきますと,1ページのところから早速「第1 相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」という審議事項をお諮りしております。ここのところでは,死亡情報を登記所が入手する仕組みなどを整え,いわゆる登記と戸籍,住民票との連携をより一層図っていく方策について,引き続き検討するという提案を差し上げております。これまでお示ししているものと基本的に内容の変化はありません。   表題部所有者の場合にも同じことを考えるという修正を部会資料第19に対して加えております。國吉先生,よろしく見ていただければ有り難いです。   それから,それに続きまして,この第1のところでは相続登記の申請の義務付けという問題提起をしております。義務付けの行われる抽象的な範囲については,前回までのものを御提示しているところでありますけれども,それに関連して,この義務であるとされている人がどのような行動が期待されているかという側面に関しては,第10回審議の際に,あの際の部会資料19におきましては過渡的な権利関係を公示する登記というふうに言っておりましたけれども,中身は変わらないものの,表現を適切にしてほしいという委員,幹事からの御要望を踏まえ,今般は相続人申告登記というふうに名称を改め,その内容のものを御提示しているところでございます。   第1のところは,引き続きまして,6ページのところで相続等に関する登記手続の簡略化という問題提起をしています。この部分について,部会資料19からの変更はほぼありません。遺贈の登記については,単独申請を認めることとするかどうかを引き続き検討するという取扱いにしております。   これに対して,法定相続分での相続登記がされた場合の登記手続の簡略化という問題提起において,更正の登記ですることができるようにするという提案の部分は,こちらはこのような形で進めるという提案を前回と同様の形でお示ししているところであります。   続きまして,7ページの下で,4のところで,所有不動産目録証明制度の創設を部会資料19までに引き続き御提示申し上げております。第10回会議における審議を受け,やや変えているところがございますけれども,本質に変更はございません。   ここまで御案内した第1の部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 司法書士としては,おおむねこの形で中間試案としていただくことでお願いをしたいと思っております。特に,新しく出てきた相続人申告登記,名前は別として,これは是非このまま残した形で中間試案としていただきたいと思っております。   それと,前回も少し申し上げましたが,7ページの(2)の③,④について単独申請を認めるというところの(注2)で,登記をした後,他の相続人に対して通知するということについてですが,通知をされること自体は駄目だということはないんですが,例えば,自筆証書遺言であれば,検認をした際に他の相続人に対して通知が行きますし,今回新たな制度として創設された遺言書の保管制度についても,証明を発行したときには通知されるということになっていて,通知がダブルになるのではないかということと,元々抜き打ちでやるのが問題だというのであれば,公正証書遺言であれば,他の相続人に対して通知せずに登記ができるというところについて,そもそも法定相続分による登記が入らなかった場合も通知をするというようなことも検討すべきでないかという意見が出ていたことを付け加えさせていただきます。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでは,相続登記の申請の義務付けについて,相続人申告登記を創設することに賛成です。あわせて,法的な制度というよりも,このような申請をする人たちの便宜を図るために,市区町村と法務局との連携をしてもらいたいとの意見がありました。たとえば,死亡届を出したときには,相続登記が必要になりますよということについて,分かりやすい説明書きを渡すとか,そういった仕組みや連携について触れたほうがいいという意見がありました。   それから,これは本当に細かい話ですが,4ページの4の前の下3行のところ,②の「EがAの法定相続人」とあるのは,「EがBの法定相続人」の誤記だと思います。 ○山野目部会長 後段の誤記の指摘はありがとうございます。承りました。   前段の市区町村と法務局・地方法務局との連携についても御提案を有り難く承りました。現在でも,法務局・地方法務局は各地の対応する市区町村との相続登記促進のための様々な営みをしているところでございますけれども,一層励みなさいというお声掛けを頂いたものと受け止めます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,第2の方に進むということにいたします。   8ページから後になります。   「第2 登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」のところについて,幾つか問題提起を差し上げておりますけれども,いずれも部会資料19から大きな変更はありません。全体を通じて権利に関する登記の所有権の登記名義人についての問題提起を部会資料19においてしておりましたところ,今般は表題部所有者についても特別の事情がない限り同じような取扱いを考えるべきであるということを申し添えております。   その上で,住所の変更の登記を申請人に義務付けることとするかどうかについては,引き続き検討するものとし,公的機関との連携等について,住民基本台帳ネットワークシステムとの連携,戸籍副本データシステムとの連携等について,引き続き関係する府省,部課との協議を踏まえ,検討を深めていくということも部会資料19に引き続き御提示申し上げているところでございます。この第2の部分につきまして,御意見を承ります。いかがでしょうか。   これは,こういうことで中間試案で意見を国民に問うてよろしいでしょうか。   この住民基本台帳ネットワークとの連携なんかは,引き続き可能な方策を追求してくださいということは,ごもっともなことであり,一所懸命やってくださいというお話でしょうし,住所の変更の登記を義務付けるかどうかということは,この段階では私たちの中間試案としては引き続き検討する扱いとし,国民の意見の動向を見てみるという提案で進もうかと考えますが,よろしゅうございますか。   それでは,引き続きお諮りします。   部会資料で「第3 相続以外の登記原因による所有権の移転の登記申請の義務付け」という問題提起をしております。これは第10回会議と同じものを御提示申し上げているものでありまして,太字の本文のところでこういった場面では公法上の義務付けは行わないという提案を掲げており,注記のところで「努めなければならないものとする」という規律は置こうではないかという別案の存在を示唆しているということでございます。このような形で中間試案の方に進んでいくということで,よろしいものでしょうか。御意見を承ります。   第10回会議でも申し上げましたように,注記のところは,今後,土地基本法の改正の姿が次第に明らかになっていく際,あちらの方で土地の所有者や土地について使用収益の権限を有する者が,その関係する登記手続を履践することに努めなさいという規定が入る場合には,その規律との重複がございますから,法制上適切な解決を模索する見地から,整理をしていくということになりますけれども,現時点ではそれが明らかになっておりません。そこで,前回審議と同様,このような方向で進むということでよろしゅうございますか。   ありがとうございます。   それでは,続きまして部会資料26の10ページ,「第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」について,意見をお尋ねします。ここの部分については,大きく二つの問題提起をしておりますけれども,それは部会資料19と異なっておりません。   1の方の登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化は,現行不動産登記法70条の手続の見直しというものであります。引き続き検討するという提案事項になっておりまして,部会資料19でお出ししているものにほぼ変更はありません。    この10ページ,11ページにまたがってお諮りしている第4の部分について,御意見がありましたら承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 基本的に,これで中間試案としていただくことに異論はないんですが,第4の1の買戻し期間を経過した買戻しの特約の登記ですけれども,一番最初に出てきたときは,この公示催告の手続を利用するのではなくて,所在不明の場合に単独で抹消できるという,そういう選択肢が入っていたように思います。今回,買戻しが(注2)で書いてあるのは,これ所在不明要件なしに,とにかく期間が経過していたら単独で抹消を認めるという規定を置くかどうかというものです。これが駄目であれば,本文に戻って公示催告をしなければならないというふうになると思うんですが,司法書士の中では,この(注2)のように期間経過した場合には,すぐに単独で抹消してもいいという意見もあれば,公示催告手続まではとらないにしても,所在不明要件で単独抹消を認めるという,そういう選択肢もあるのではないかという意見もありましたので,その選択肢も入れておいていただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局にお尋ねしますけれども,ただいま司法書士会の方から指摘をもらいました10ページの第4,1(注2)買戻しの登記の取扱いについて,資料作成に当たって今の事項をお考えになったかどうかなど,何か御所見があれば承ります。 ○有本関係官 事務当局としましては,(注2)の中では特に所在不明要件までは設けない形での御提案をしております。御指摘のとおり,所在不明要件を課した上で特別な規律を設けるという選択肢もないわけではないと思われますが,以前この案を御提示したときに,買戻しの特約の登記については,買戻期間が経過していれば,ほとんどこの登記は意味がないものになっているはずであるので,わざわざ所在不明要件まで課さなくてもいいのではないかといったお声も多かったように思いましたので,今回の御提案はその限度になっておりますけれども,所在不明要件を課すという案についても,注にするかあるいは補足説明等に入れるかというところは検討させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 今川委員,いかがでしょうか,よろしゅうございますか。   引き続きこの10ページと11ページの部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 質問なのですけれども,登記権利者という概念は,不動産登記法第2条の12号で,登記上,直接に利益を受ける者をいい,間接に利益を受ける者を除くというわけですが,これというのは,例えば地上権に後れる抵当権を有しているといった人は,それは間接的な利益を得る人であり,登記権利者にはならないというのが一般的な解釈なのでしょうか。 ○山野目部会長 不動産登記法上の概念についてお尋ねがありましたから,事務当局の方からどうぞ。 ○有本関係官 一般的に,恐らく間接的に利益を受ける者ということで,登記権利者ではないと考えられるのではないかと思います。 ○道垣内委員 それでいいのかなというのが若干気にはなるのですが,所有者以外の人は,合意をしても抹消する権限がそもそもないからですかね。それでは,といっては何ですが,そのような抵当権者は,消滅している地上権の登記名義人の所在が把握できているときには,その人に対して妨害排除請求的な抹消請求ができますか。仮にできるのであれば,消滅している地上権の登記の名義人につき,その所在が分かれば権利行使ができる後れた抵当権者に,所在が分からないときにも何らかの方法を認めてあげるというのが,ここの全体の精神と合っているのかなという気が若干します。ただ,前提としての法状況が私もよく分かりませんし,そこまで認めることの妥当性についても自信は持てませんので,自分自身も将来の問題としたいと思います。すみません。 ○山野目部会長 道垣内委員から問題提起を頂いたことを受け止めて申し上げれば,必ずしも10ページ,11ページの第4のところに限ったサイズのお話ではないというふうにお聞きしました。つまり,ここで全体として不動産登記制度について様々な見直しをし,要するに登記簿上登場してくる,あるいは登記手続上登場してくる様々な関係者が所在不明になっているときの連絡の確保の方法について改めて考えてみるときに,登記義務者とか登記権利者の概念のみについて注目して議論がされてきました。道垣内委員が御指摘になったように,それは不動産登記法の2条で定義されているように,直接に利益を受けたり直接に不利益を受けたりする者に限られることになるけれども,しかし,人の所在不明問題というものは,そこにスコープを限定することで十分であるか,なお考えてみたいというお話であったものではないかと感じます。ごもっともなことですから,引き続き事務当局においてもその点に注意を払います。   参考として御案内しておきますと,登記義務者や登記権利者それら自体は直接という言葉を用い利益・不利益の有無で概念の見極めができるように不動産登記法で規定がされていますけれども,それとは別に,登記上利害の関係を有する者という概念が不動産登記法の至るところに登場してまいります。実体法の規律で道垣内委員が話題になさったように,登記請求権があったりなかったり,その他実体法上の権利義務が生ずる場面を不動産登記の手続で受け止める際,ストレートに登記義務者や登記権利者の概念で対応させて受け止めるときもありますけれども,局面によっては,不動産登記の手続との関係では登記上利害の関係を有する者の承諾を得,その情報を提供しなければいけないといったような規律になっているところがございます。そういう場面について所在不明だったときに承諾がとれないではないかといったような問題は,細かく考えていけば,なるほど,ありそうだというふうな気もいたしますから,必ずしも今までの検討の中でそこのところに重点的な関心を払ってまいりませんでしたけれども,最終的に法制として整備していく段階で,今頂いた御注意も事務当局の方で問題意識として保っていて,注意をしてほしいと考えます。どうもありがとうございました。   引き続きこの部分について御意見を承ります。   そうしましたら,第4のところはよろしいでしょうか。これも後でまたまとめて御指摘の漏れがないかどうかお尋ねすることにします。   そうしましたら,部会資料26の最後,11ページ,12ページのところを御覧いただきたいと望みます。   「第5 その他の見直し事項」として,まず1として,登記名義人の特定に係る必要な登記事項の見直しという問題提起をしています。会社法人等番号を追加するというところまでは,恐らく動かないだろうという提案を差し上げつつ,新たに登記事項を追加する可能性について引き続き検討するという考え方を提示しています。部会資料19と変更がありません。   それから,2として,外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策として,連絡先の任意の登記を可能とするような仕組み,その他の問題提起をしておりまして,部会資料19と変更がありません。   隣のページにいきまして,3として附属書類の閲覧制度の見直しという問題提起をしておりまして,ここのところも引き続き検討するものとし,内容について部会資料19と変更がありません。   この11ページ,12ページのその他の見直し事項3点につきまして,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○平川委員 12ページの「附属書類の閲覧制度の見直し」のところですけれども,3の②で「特定の不動産の登記簿の付属書類を利用する正当な理由がある者」は,閲覧を請求することができるという記載になっておりますが,住民基本台帳法であるとか,戸籍法もそうですけれども,かつて原則公開だったのが,閲覧制限をかけることで法律改正がされています。ここで附属書類が,そのほかの法律との整合性なく閲覧ができてしまうということに対しては,国民の不安が高まるのではないかと思いますので,ほかの法律,住民基本台帳法などの法律の趣旨との整合性に関して,何らかの形で記載すべきだと思っています。補足説明の中にはそれらしきことが少し書いてあるのですが,どうもその辺がはっきりしていないような印象を受けましたので,意見として言わせていただきます。 ○山野目部会長 よく分かりました。   本日の3のところの補足説明はたった1行ですけれども,もちろん意見公募をする際には,従前ここで提示し蓄積されてきた部会資料の説明を再び掲げ,あわせて,ただいま平川委員から御注意いただいた点も,既に過去の部会資料や過去のここでの審議において十分意識されてきたところではありますけれども,改めて意見公募で意見を寄せる方に明確にそこを注意して読んでもらえるような記述に整えなければならないと感じます。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,部会資料25と26の全部の一当たりの審議が終えました。ここで,部会資料25,部会資料26を通じて,中間試案として出していくに当たってそれぞれのところを御検討いただいたときに言い漏らしがあったとか,改めてその後考えてみたらこういうことを指摘しておかなければならないといったような事項もおありではないかと感じますから,ここでもう一度お問い掛けをいたします。部会資料25,26を通じて御指摘があれば承ります。いかがでしょうか。 ○平川委員 すみません,ずっとこの意見を言うかどうか迷ったんですけれども,26の4ページの過料のところです。「(2)相続登記の申請義務違反の効果」のところで,一定の額の過料に処する由の規律を設けるとなっていますが,(注)で設けないとの考え方があると記載しています。ほかのところでは,パブコメで意見を求めるときに甲案と乙案という形で記載されているんですけれども,ここの「(注)過料に関する規律を設けないとの考え方がある」ということが,選択肢として提示されているのか,ただ単に意見があったという紹介として示されているのか,少し分かりづらいと思ったものですから,その辺どのように捉えればいいのかということで教えていただきたいと思います。 ○山野目部会長 今,平川委員からお尋ねがあった事項について,中間試案の中身をどういうふうにしていったらよいかは,それ自体,委員,幹事にここで御議論,御意見があったらお出しいただくことがよろしいと感ずる事柄ですから,お尋ねしてみたいと考えます。それに先立って,部会資料の,何と言ったらよいでしょうか,書式といいますか,スタイルといいますか,についてガイドを差し上げるとしますと,今日御審議いただいた中間試案を見て,国民各層から意見を出していただく際の意見の出し方について,特に制約というか,こういうふうに意見を出さなくてはいけないという決まりを添えて意見を募るというものではありません。甲案,乙案というふうに並べているところのみ,甲乙のいずれかを述べることができて,(注)でしか掲げられていない事項について,しかし本文が好ましくなくて注記の方がよいのだというふうな意見を言ったら,その意見は取り上げないことになるかというと,そんなことは全くなくて,自由な書式で意見を書いてもらってよろしいものであります。   ですから,出された意見の事務当局の方の作業には,相当の物理的な負荷がありますけれども,それはそれでしかし制約を課さないで自由に意見を述べていただくという趣旨ですから,そういうふうな前提で今般の意見公募が行われます。今,平川委員が御指摘の点も,ですから,本文ではなくて注記の方を好むという御意見があったら,それはそれで何件そういう意見があったということを取りまとめに反映させていくということになります。   その上で,今のような考え方を前提として,中間試案全体として,かなりこの部会でも対照的に意見が語られたし,一般に意見を問う際にもそれを二つの意見のモデルとして示した方がよいだろうと感じられた事項は,甲案,乙案,あるいは丙案などを並べて提示していますし,そういう扱いをするというところまでではないかもしれないと感じられた事項については,ここに限りませんけれども,注記の中で必要に応じて意見があったということは,しかし中間試案を読む人に理解してもらおうということで掲げています。   基本的な考え方は,今のような姿勢でそれぞれの場所について本日の提案を差し上げていて,具体的に私が申し上げたこの二つの方式のどちらで各事項を処するかは,一応は事務当局としてこういうふうに整理して部会資料を作ってみたということにとどまるものでありまして,それ自体一個一個の事項について必ずこうしなければいけないというふうに決まっているものではありませんから,そこもまたここの委員,幹事の実質的な御議論を受け止めて,整理していくということになります。そこまでガイドを差し上げて,平川委員に何かこの段階で御意見があれば伺うし,その有無にかかわらず,またほかの委員,幹事の御意見も尋ねてみたいと考えます。   平川委員,何かおありでしょうか。 ○平川委員 全体的に注記であったり,甲案と乙案との両論であったりというさまざまな書き方がされておりますけれども,パブコメを行う際は,注記も含めて意見を募集するということもしっかりと国民の皆さんに対して御案内していただくことをお願いしておきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   今の点については,何か御意見はおありでしょうか。   よろしいですか。   それでは,平川委員から御要望を頂いたことはごもっともであるというふうに受け止めますから,事務当局において意見公募をする際に,自由な形式で御意見をお出しくださいという仰せの趣旨のことを案内するようにいたします。   部会資料25,26を通じて,更に御指摘の漏れがあったところを承ります。   ほかにいかがでしょうか。 ○水津幹事 部会資料26の6ページにおける遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化について,意見は前回申し上げましたので繰り返しませんが,少し気になることがありました。   そこにあるとおり,相続人に対する遺贈について,登記原因証明情報として遺言書が提供されるのであれば,おそらく誤植だと思いますが,登記の「真正」,真実,正しいが担保されると言うと,第三者に対する遺贈も同様であることとなりそうです。そのため,前回の部会資料では,相続人に対する遺贈と第三者に対する遺贈とでは,遺贈の真正さに差異があるから,両者は区別されるという説明がされていたように思います。もっとも,今回の説明では,登記手続の簡略化に係る規律は,第三者に対する遺贈がされた場合において,その第三者が先順位の相続人の放棄等によって相続人となったときにも適用されるとされています。しかし,前回の説明のように,遺贈の真正さを持ち出すならば,このようなときは,むしろ第三者に対する遺贈として扱うべきであることにもなりそうです。つまり,前回と今回とでは,状況が異なっておりますので,相続人に対する遺贈と第三者に対する遺贈とで異なる扱いをする理由について,場合によっては,説明の仕方に手を加える必要が生じるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 御指摘を承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 ちょっと細かい点なので,申し上げるかどうかちゅうちょしていたのですが,資料25の45ページの管理措置請求権についてです。既に議論したかどうかちょっと覚えていないので,半分ぐらいお尋ねなのですが,この(1)の隣地の所有者に何かしらの工事をさせることができるというのは,これは最終的には仮処分とか本案判決で強制執行ということにつながり得るという前提でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 45ページの4の管理措置請求につきましては,最終的には訴訟手続においてこの必要な予防措置等について決着をつけるといいますか,判決を頂いた上で強制執行するということをイメージして作られたものでございます。 ○畑幹事 ありがとうございます。   その場合,強制執行では代替執行に恐らくなりそうなのですが,そうすると,執行費用というのは基本的に債務者が負担するということにはなっていて,そのことと(3)のもう少し異なる費用負担になり得るという,甲案も乙案もそうだと思うのですが,それとの関係がちょっと問題になるかなと思いました。   ただ,46ページの補足説明の方を読んでいくと,減額の要件や方法に関する具体的な規律も含めて検討するとなっておりますので,私が今申し上げたようなこともここに含まれるというように理解することもできましょうし,あるいは,執行になった場合の執行費用の負担との関係も含めて検討するとかいうように書くと,より丁寧かもしれませんが,ちょっと御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 御指摘を受け止めました。   畑幹事から問題提起をしていただいて気付かせていただいた事項というものは,考えてみますと,現行法の状況で既に実体法をめぐる論議と手続法の理解・運用の間に必ずしも連絡,架橋がうまくいっていない部分があって,民法の方の学説論議などでは,物権的請求権の性質について,費用は原告負担であるか被告負担であるかという議論が盛んにされますけれども,あの議論の中で,何かをさせられるという判決が出るとして,費用はという仕方が抽象的に議論されているにとまり,ある判決が特段留保なく出されれば,あとは何も工夫をしない限り,畑幹事が御指摘の民事執行法42条の規定が働いて債務者負担になるはずです。そことの関係がどうなるかということを現在の法制状況の中で,既に実体法の議論の方が未消化というか,余り熟していないというか,そういう問題があったと感じます。それが,言わばここでまた平行移動してというか,拡大バージョンで問われることになるものでありまして,今後の法制を考える上でも見落としてはいけない点でありますし,従来の議論の状況をもう一回顧みた上で,事務当局の方で検討を深めていくということになるのではないかと感じます。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○山田委員 少し性格の違う発言ですが,お許しください。もう少し後の方がいいのかもしれませんが,そういう機会があるかどうか分かりませんでしたので,ここで発言させていただきます。   今日も,これまでの議論の中で二度三度話題になっておりましたが,中間試案を発表するときに,事務当局の御責任で補足説明を書いていただくと思います。補足説明は今日の補足説明ではなくて,これまでの部会の議論を反映させて,これは最後の部分だけみたいなところがありますので,もう少し前のところから説明をしますということでした。それはそのように理解をしておりますし,お願いをしたいところですが,その際に,どこから書き始めるかというところについてお話をさせてください。   かなりこれは,短期間に何か広い範囲のことを,そして私にとってはかもしれませんが,難しいことをやってきたなという感じがします。したがって,できるだけ最初のスタート,それぞれの説明のスタートラインは視線を下げてというか,スタートラインを低いところから説明をしていただけるといいなと思います。多分,そういうのは各章にあるんだろうと思いますが,二つだけちょっと例を挙げさせてください。   一つ目は,1ページ目から3ページ目ぐらいのところで,今日も最初の議論のところでしたが,すみません,さようです。25です。1ページ目から3ページ辺りが一つ目ですが,私の理解が誤っていると恥ずかしいのですが,ここを全体として見ますと,共有者が共有物についてする行為として,共有者が共有持分を喪失する行為がまずあって,一番高いレベル,ハードルが高いレベルが。その次に,処分又は変更で共有者が共有持分を喪失する行為を含まないというのがあって,そして三つ目が変更又は処分を含まない管理行為となるんだと思うんですが,それぞれの代表例というんですかね,ボーダーラインのところは,(注)とかで書いてあるんですね。考え方が分かれるとか。しかし,ここは争いがないだろうと,100%ないかどうか分かりませんが,大方のところないだろうと,そういうのを前提にしているというものを挙げていただいて,この通常の共有における共有物の管理という話を始めていただくと,分かりやすいなと思います。御検討くださいというお願いです。   もう一つが,これも今日出てきたところですが,49ページ,同じく資料の25です。49ページですが,不動産・動産債権とあって,債権が可分債権と可分でない債権になって,可分債権の中で預貯金債権がまた特別扱いになると,多分そういう構造なんだと思うんです。そういう構造を前提にして10年たったらどうなりますかという話を書いてくださっているんですが,やはりそこが,これを理解するためには前提となる知識が必要で,そこも,預貯金以外の可分債権については議論が分かれるのかもしれませんが,しかし,事務当局が前提としている状況,こういうのが具体例になって,それらが10年たつとどうなるかということをこの甲案3で聞いていますというようなことも書いていただけると,多分,世の中にはそれでああちょっとこれはパブリックコメントに応じてみようかなという人たちが5%ぐらい,一番周辺部分で増えるのではないかなと思います。 ○山野目部会長 今の山田委員の御提案に反対の方という方は,多分いないと想像しますから,有難く承りました。   引き続き部会資料25,26について御指摘の漏れがありましたならば,承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今の山田先生の御発言と近いのかもしれませんが,日弁連のワーキンググループで,弁護士が読んでいても分かりにくいという箇所があったので,その点を申し上げます。   部会資料25で非常に重要なキーワードになっている「管理」という用語の用い方についてです。第1の1で「通常の共有における共有物の管理」という表現が用いられているのですが,例えば1の(1)の「共有物の管理行為」と(2)の「共有物の管理に関する手続」における管理は,いわゆる処分や変更ではない管理を指しているのですが,(3)の「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」での管理は,3ページの(注)に書かれているとおり,共有物の変更行為及び処分行為並びに管理行為のいずれもが含まれていて,場面によって管理という言葉の意味が異なります。そういったこともあって,日弁連のワーキングの弁護士から,相当注意深く読まないと読み間違えてしまうよという意見がありました。しかし,管理という言葉は多義的で,使い分けが難しいので,このように(注)で書いて注意喚起するということで,やむを得ないとも思います。 ○山野目部会長 1か所ずつ検討するといささか処置に困る難しい部分もあるかもしれません。特に管理という概念は,ある意味でキーワードでありますから,難儀な作業になるかもしれませんけれども,ここはというところで誤解があってはいけませんから,必要な努力を事務当局の方でするということにいたします。   また,今,蓑毛幹事から御指摘いただいたことと少し性質が異なりますけれども,通常の共有の場合の共有物の管理の,その「通常」というものも,や分かりにくいという御注意を従前の会議で中田委員から頂いておりました。通常というのは遺産共有ではないという意味ですが,通常でない方が後で出てきますから,最初から通常と言われると,通常って何ですかというふうに,ここで御議論いただいている方にとっては自明のことですけれども,そうでなければ分かりにくいというお話もあって,今回,可能な限りの工夫はしてありますけれども,なおそういう点についても落ちがないかということは,子細に調べるということにさせていただきます。   ほかにいかがでしょうか。 ○山本幹事 非常に細かいことですので,発言するかしまいか迷いましたが,本日の資料25の61ページの2の部分で,本文でいうと59ページ(注2)の部分に当たりますが,前回の資料で確か行政不服審査と書かれていたところを,今回,行政上の不服申立てというふうに少し広げた表現を使われています。前回,私は行政不服審査という中には,当然特別法によって行政不服審査法の規定の特則を設けることまで含めて表現されていると読んでいたのですけれども,今回,更にそれを広げられたのは,何か行政不服審査法上の制度とは全く独立に行政上の不服申立ての制度を作る可能性を残す意味で改められたのかという点を確認したいと思います。そうすると,かなり特殊な制度が想定されることになると思うのですけれども,そこまで想定されているのか,あるいは具体的に想定はしていないけれども,いろいろ後に可能性を残すためにこういうふうに少し広い表現を用いたのかということをお伺いしたいと思います。   それからもう一つ,先ほど少し意見が出ましたので,一言申しますと,資料26の4ページの義務違反に対する過料の件で,確かに二つ考え方があり得るのですけれども,私が理解したところですと,義務違反に対して何も制裁がついていない制度は,確かに存在するのですけれども,それなりの説明をしなくてはいけないと思います。今回の制度との並びでいえば,例えば,住民基本台帳法においては届出,例えば転入届をしない場合に正当な理由がなければ過料の規定が設けられているということもありますので,もしもこの(注)に書かれていることを実現しようとすると,法制上,それがうまくいくかどうかを検討しなくてはいけなくなる可能性があると思いまして,それでここはあえて(注)の方に入れたと理解しておりました。 ○山野目部会長 山本幹事から前段,後段にわたる御指摘があったことのうちの前段については,事務当局の資料作成の意図をお尋ねします。行政上の不服申立て手段というふうに表現を改めたその心は何ですかというお尋ねになりますが,いかがでしょうか。 ○川畑関係官 この点につきましては,先ほど御指摘あったように,特別法において新たに不服申立て手段を作るというところも含めて考えております。ただ,これについては,特に具体的にどうこうというところまで詰まっているわけではなくて,今後また検討しなくてはならないというところで,可能性を残さなければならないというところも含めてこのような記載で広目に書かせていただいているところです。 ○山野目部会長 山本幹事はうなずいておられますけれども,広目にする必要って,広目にしておかないと心配だという事情を何か卒然とは飲み込むことができません。今の不動産登記法の審査請求も,処分庁を経由するかどうかといったことについて特則は設けられていますが,あれも行政不服審査法の適用の一局面であるという体系的整理ですよね。 ○山本幹事 そうですね,行政不服審査法上の不服申立てであるけれども,特則がいろいろ設けられているという例は非常に多いので,作ることはそれほど難しくないといいますか,あり得ると思うのですけれども,全く特別の制度となりますと,かなり説明が必要になると思います。 ○山野目部会長 事務当局の方で,今,私と山本幹事が指摘したことを少し考え込んで,また文章を整えていっていただければ有難いと感じます。   それから,山本幹事が後段でおっしゃったことは,ごもっともなことでありまして,正に御推測のとおりでありまして,過料等を何も設けないということになると,それ自体が法制的な説明が必要になってきます。翻って,部会資料26で提案しているような非常に簡易な手続ですね,相続人申告の登記の手続を期間以内にしないといけませんよということになってくれば,過料を科するという規律の,何て言ったらよいでしょうか,荒々しさがかなり低減し,変わってきます。むしろ,それは市町村役場に死亡届は出さなければなりません,あるいは住民基本台帳法が定める一定の届出もしなければいけません,その足で,若干の資料を追加して法務局にも行ってくれませんかというものと近い程度のお話になってまいります。   そうなっていったときに,正に山本幹事が御指摘になったように,戸籍法にも住民基本台帳法にも過料の制裁が一応整っています。どのくらいそれが使われていて,実効的に発動されているのかといったようなことはともかく,法制上の説明としては,それが備えられています。戸籍法ですと,死亡の届出をしないと5万円以下の過料に処するということになっていて,ああいったものとの並びでのものは必要ではないか,ということを国民にお尋ねしようということで,中間試案に本文の形で掲げております。しかし,部会において性急に過料を科するということだけ考えるということについての疑問が出されたこと自体は事実であり,それを注記に記したということですから,正に山本幹事が本文と注記でこういう理由で塩梅しているんものであろうと推測していただいたとおりでございます。   それと同時に,一つ前に平川委員から御指摘いただいたこともごもっともなことですから,補足説明で取り上げて説明しようと考えます。あそこで平川委員が甲案と乙案にしてくれというふうに強くおっしゃられると,正直,今,山本幹事がおっしゃったことがありますから,うーん,困ったなと思っていました。でも,そうはおっしゃいませんでした。   引き続き部会資料25と26を通じて,御指摘の漏れがあったら承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,年内の最後というよりも,むしろ中間試案に向けての御審議を頂いてきた調査審議の当部会における段階の最後という,実質的な段階を迎えているということを踏まえて,ここで別して御相談がございます。   本日,部会資料25,部会資料26は,表題にありますとおり,中間試案の案という仕方でお示しいたしました。本日の審議を顧みていただければお分かりのとおり,部会資料25,26でお出ししているものを一字一句変えることなく中間試案にしてよいというお話ではありませんでした。一つ一つ反芻しませんけれども,本文で示している内容について,表現,字句を整えてほしいという多岐にわたる御指摘がありました。   それから,注記についても,同じく表現等の御注意のほか,現在,注記として掲げていない事項についても新たに追加して掲げるべきではないかといった御指摘もあったところでございます。   あわせて,それらと関連して補足説明について各所で御指摘があった,充実を望む御意見を頂戴しているところであります。これらについての作業をこれから事務当局において整理をしてくださるようにお願いすることになります。作業の成果を私の方で拝見さし,改めて確認するということをいたします。その作業を経た上で,この部会として取り定める中間試案の決定を私に御一任いただきたいということを御相談させていただきますけれども,お許しを頂くことがかないますでしょうか。   どうもありがとうございます。   それでは,そのように決めます。この手順をこれから事務的に進めていくに当たりまして,中間試案の決定,公表,意見公募に向かって進んでいく手順について,事務当局から案内があります。 ○脇村関係官 本日も長時間にわたって御審議を賜り,ありがとうございました。   今後は,本日頂きました中間試案(案)に対する御意見を適切に踏まえ,部会長の御指示の下,中間試案について取りまとめを行ってまいりたいと思います。   中間試案の最終調整や補足説明の内容の確定,その後の事務手続にどの程度時間を要するかにもよりますが,年内を目途に中間試案と補足説明を取りまとめ,その後,パブリックコメントの手続を開始したいと考えております。パブリックコメントの手続の期間はおおむね2か月を予定しているところでございます。   そういったことから,令和2年1月21日に予定しておりました本会議については,休会とさせていただきたいと考えております。   さらに,その後,令和2年2月18日に御予定いただいている会議につきましては,関係団体へのヒアリングの実施や,一部の論点について,パブリックコメント中でございますが,御審議いただくことを検討しておりますので,追って御連絡を差し上げたいと思います。   また,来年度の部会の日程につきましては,別途メールにて御一報させていただいているところでございますが,現在調整中でございますので,追って御連絡を差し上げます。 ○山野目部会長 1月の部会が休会になるという,いささか陽気に申しますと衝撃的な案内を今淡々と脇村関係官から御案内いただきましたから,もう一度申し上げます。   本日,中間試案を御決定いただいたことを踏まえて,約2か月間のパブリックコメントを年明け開始を目途として実施することを予定しております。そうしますと,明けて1月21日に日取りを頂いております部会は,まだこの時期にパブリックコメントが終わっていないということになります。そういたしますと,お集まりいただいてパブリックコメントを踏まえた審議をお願いするということがかないませんから,このように進めることについて御意見があればまたそれを承ってここで決定していくことになりますけれども,事務当局の運営の見通しとしては,1月21日を休会にしてはどうか,会議がないということにしてはどうかということを申し上げました。   引き続き申し上げますと,2月18日の会議は,この時点でもまだパブリックコメントが終わって,そこで出された意見を事務当局において取りまとめ,皆さん方に要旨を御案内するという段階には至っておりません。けれども,この時期には,その辺の時機会を用い関係団体へのヒアリングでまだ意見を聴くべきところでそれが実現していないところについて意見を聴いておくというようなことをするとよいではないかという提案を差し上げるものです。あわせて,もしあるとすれば,パブリックコメントの結果が集約されていない段階ではありますけれども,部会資料でこれまで話題にしてきた内容の局部について,なおその検討を深める審議をお願いした方がよいという事項があれば,それを取り上げるということも考えられるところでございます。   したがって,2月18日の会議は,お時間を頂いているとおり開催するということを先ほど脇村関係官から提案申し上げました。3月の会議は予定どおり実施であります。4月以降については,過般に会議外で委員,幹事に包括的に何月は何日が会議日になりますということを御案内をしたとおりでございます。今の御案内のうち,1月21日を休会にするというような提案の提案にわたる部分が含まれていました。この際,委員,幹事から何か御意見がありますれば,承ります。いかがでしょうか。   そちらの席の先生方,ヒソヒソ話が盛り上がっていますけれども,何かおありですか。  ○道垣内委員 いや,賛成ですというだけです。 ○山野目部会長 休みにすることに反対ではないということですね。   1月や2月,3月における部会の運営についても,部会の運営はここで決めていくことであり,別に事務当局が決めることではありませんから,御意見があればお諮りしますけれども,いかがですか。この事務当局提案のとおり進めてよろしゅうございますか。   それでは,ただいま御案内を差し上げたとおりといたします。それを前提に,次回会議の日程について,事務当局から案内があります。 ○脇村関係官 ありがとうございます。   次回の議事日程等について御連絡いたします。次回の日程は,先ほどのとおり,令和2年2月18日火曜日,午後1時から午後6時まで,場所につきましては,法務省大会議室,法務省地下1階,以前に使った地下1階でございますが,そこで行いたいと思っております。   テーマにつきましては,先ほどお話しさせていただいたとおり,ヒアリング及び部会資料の審議を予定しております。 ○山野目部会長 次回は,そのような仕方で開催いたします。   本日も,多岐にわたる審議に委員,幹事,関係官におかれまして御協力を頂きましたことに御礼を申し上げます。   これをもちまして,法制審議会民法不動産登記法部会の第11回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-