法制審議会 民法・不動産登記法部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和2年2月18日(火)自 午後1時58分                     至 午後4時03分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第12回会議を開きます。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は,阿部委員,市川委員,潮見委員,門田委員,山田委員,宇田川幹事,衣斐幹事が御欠席です。   初めに,配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○福田関係官 第12回配布資料目録を御覧ください。   事務当局より事前に御案内申し上げたところでございますが,本日はヒアリングのみの実施を予定してございます。そのため,特段,部会資料の御用意はございません。   皆様の席上には,本日,参考人の皆様方から事前に御提供いただきました資料6点,お配りさせていただいております。万が一,お手元にないようでございましたら,お近くの法務省職員までお知らせいただければと思います。 ○山野目部会長 昨年12月に行われた第11回会議の後,幾つかの動きがございました。それらにつきまして,委員,幹事の皆様に御案内を差し上げておくことが望ましいと考えられます。併せて,本日の進行のことについても御説明を差し上げます。   事務当局からの発言をお願いします。 ○大谷幹事 それでは,前回以降の動き,それから,本日の進行について御説明をさせていただきます。   まず,前回,12月3日でございましたけれども,その際にお取りまとめいただいた中間試案,これは,補足説明を事務当局の方で作成を致しまして,1月10日から3月10日まで,パブリックコメントに付しているという状況にございます。   それから,先月31日に,持ち回りで関係閣僚会議が開催されました。工程表が改訂されましたけれども,そこでも従来どおり,民事基本法制の見直しについては,本年中の制度改正の実現を目指すとされております。   また,今週金曜日の2月21日に,法制審議会の総会が開催されます。山野目部会長から,パブリックコメントに付しておる中間試案について御報告いただく予定としております。   本日の予定でございますけれども,本日は,三重県の名張市役所,公益社団法人全日本不動産協会,公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会,公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会,一般社団法人全国住宅産業協会,一般社団法人不動産協会の6団体から意見聴取を予定しております。それぞれ10分から15分程度ずつ御意見を頂戴いたしまして,その後まとめて,委員,幹事の皆様からの質疑応答の時間を60分程度設けたいと考えております。   御多忙の中,ヒアリングの対象の方々に,無理を申し上げておいでいただきました。2点について御留意いただきたいというふうに考えております。   1点は,三重県の名張市役所の方におかれましては,非常に御多忙の中,ヒアリングにおいでいただいたということで,日程調整がなかなか難しくて,実務に非常に精通した方においでいただきましたので,実務上の不便等についてのお話をお伺いいただくような形にしていただければと思います。   それから,2点目ですけれども,不動産協会におかれましては,別件がある中で御参加いただいたと聞いております。時間が少し早めにお帰りにならないといけないとお伺いしております。16時に御退出とお伺いしておりますので,質疑応答の時間,恐らく,予定どおりいけば,15時35分頃から始まることになりますが,できるだけ早い段階で御質問を頂ければと考えておるところでございます。 ○山野目部会長 本日予定されております参考人の皆様方からの意見聴取を,先ほど大谷幹事から案内した手順に沿って実施を致します。   初めに,本日お見えいただいている参考人の皆様を御紹介いたします。   名張市環境保全部,岡本春南様でいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。 ○岡本参考人 よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 公益社団法人全日本不動産協会,山田逹也様でいらっしゃいます。 ○山田参考人 よろしくお願いします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会,内山俊夫様でいらっしゃいます。 ○内山参考人 よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   公益社団法人不動産鑑定士協会連合会の杉浦綾子様でいらっしゃいます。 ○杉浦参考人 よろしくお願い申し上げます。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   一般社団法人全国住宅産業協会の花沢仁様でいらっしゃいます。 ○花沢参考人 よろしくお願いします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   一般社団法人不動産協会の藤巻慎一様でいらっしゃいます。 ○藤巻参考人 よろしくお願いします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   この際,私から,参考人の皆様に一言申し上げます。   本日は,参考人の皆様におかれましては,大変お忙しい中,資料を調えてくださるなど,事前の御用意も頂いた上で,この部会に御来臨を賜りまして,誠にありがとうございます。   皆様方から忌憚のない御意見を伺って,今後のここでの検討に活かしてまいりたいと考えるものでありますから,何とぞよろしくお願い申し上げます。   委員,幹事の皆様に御案内申し上げます。席上配布しております,各団体から御提供いただいている資料をお手元に御用意ください。質疑応答の機会につきましては,先ほど御案内したとおり,参考人の皆様からそれぞれ意見を伺った後で,まとめてそれを設けたいと考えております。   それでは早速,まず,名張市の参考人から意見聴取を行います。   岡本様,どうぞよろしくお願いいたします。 ○岡本参考人 御紹介にあずかりました,名張市環境対策室の岡本と申します。本日は,どうぞよろしくお願いいたします。   座ったままで失礼させていただきます。   こういった場,ちょっと不慣れなため,何か,すみません,御迷惑をお掛けすることがあればと思いまして,先にちょっと謝罪させていただきます。   そうしましたら,名張市の方の空き地に対する対応についての御説明の方に入らせていただきます。   お手元に配布させていただいた資料を見ていただきますと,1ページ目が目次となっておりまして,本題が2ページ目からになっております。   そうしましたら,まず,名張市についての御説明をさせていただきたいと思います。   名張市は,三重県西部に位置する場所にございます,近畿・中部の両圏の接点にあることから,古くから東西往来の要衝であるとかという形で栄えてまいりました。   中心街の周辺に農村地帯が広がっておりまして,日本の滝百選や森林浴の森百選に指定された赤目四十八滝など,自然にも恵まれております。   また,名張は,記紀に名の見える歴史や文化の薫り高いまちとして知られておりまして,中世には,能楽を大成した観阿弥が初めて座を立てた場所でありますとか,あとは,江戸川乱歩の生家があるという場所でも知られております。   昭和に入りましては,近鉄大阪線が開通しまして,昭和40年代以降に大規模な宅地開発が進んでおります。この結果,大阪方面への通勤圏として,急速に発展してまいりまして,市制の発足時,これが昭和29年でございます。3万人であった人口が,およそ8万人と増えております。   そうしましたら,2番の条例についてのお話をさせていただきたいと思います。   資料といたしまして,別紙に名張市あき地の雑草等の除去に関する条例という条文を付けさせていただいております。それの次に,あき地の相談処理フローチャートとして,我々が実務をこなす上で,こういった手段にのっとって,こういった流れにのっとって行っているというのを,ちょっと分かりやすくフローチャートにさせていただいたものを添付しております。   今回ちょっと,実務の流れについては割愛させていただきますので,まず,条例を制定した背景について御説明をさせていただこうと思います。   名張市は,伊勢参りの宿場町を原形とし,近鉄大阪線の開通以来,大阪都市部へ約60分という立地に恵まれておりまして,大阪のベッドタウンとして発展を重ねてまいりました。昭和38年頃より住宅地の開発が始まりまして,昭和60年現在で,開発された住宅地の宅地区画数は約2万6,000区画,さらに,計画区画数を加えると,2万8,000区画でございました。   しかし,この住宅地のうち,入居している世帯数はとても少なく,全体の32%なので,残りの68%,およそ7割は空き地のままでございました。   今後,この入居数が増えないまま,造成後2,3年を経た住宅地の空き地の大半は,1,2メートル程度の雑草が繁茂し,衛生害虫の発生原因,ごみの不法投棄など,火災の原因,交通障害,数多くの環境問題が生じる不良状態となっておりました。   当時,この名張市の空き地を保有する目的というのは,投資であることが多かったために,経済状況により,計画どおり住宅開発,住宅建築ができない,また,現状では住宅を建築する予定もないなどの理由が存在し,所有者のほとんど,およそ9割が市外に居住していることも加わって,不良状態のまま放置されがちという背景がございました。   住宅地の開発業者による住宅地管理も期限切れとなり,さらには,このときはちょっと,自治会などがあまり発展していなかったために,管理も市内全域で実施されていない状況でありました。そのため,多くの市民から,雑草による不良状態を解消するための施策というものが要請されました。   この際も,消防署の方から,防火の観点により,こういった枯れ草に対しての指導は行っておったんですけれども,飽くまで防火の観点なので,燃えやすい枯れ草に対してのみの対応であり,青草,現に空き地に繁茂している草に対しての対応というのは,なかなか行政の方ではしていなかった,できなかったというものでありました。   市民の苦情解消や生活環境の保全を図るため,所有者に対して,空き地の管理責任の明確化,空き地の適正な管理を行うよう,市長が指導・勧告・命令できることとし,自ら適正な措置ができない所有者には,不良状態が解消されるよう援助することを目的として,市長が雑草等の除去業者を紹介する内容を盛り込んだ条例として,こちらの条例を整備いたしました。   そうしましたら,3番の平成19年に空き地の条例の改正が一度行われまして,行政代執行を規定いたしました,その背景について,お話しさせていただきます。   下の枠内が,改正の内容でありますとか理由の方になっております。元々,代執行についての規定がなかった分を,代執行についての規定をまるっと盛り込んだという改正になっております。   こちらの改正を行う以前は,親族で所有する隣接した複数区画にて,しかる条例にのっとり,文書指導で適正管理をお願いしておりましたが,所有者らが対応を行わなかったため,やむを得ず,地域で交通に支障を来している部分のみの除草を行ったということがありました。   その後,地域から所有者らに,除草に要した費用を請求したものではありますが,支払われなかったという事案がございました。   これは一例ではあるんですが,文書指導のみでは,なかなか解決の難しい事例もこれから増えてまいりまして,議員でありますとか地域代表者の方から,行政代執行の必要性を訴える声が多く上がってきました。   そもそもの条例を制定した当時,行政代執行については,執行までの事務が煩雑であり,また,実施するまでに相当期間を要するものでありました。行政代執行を行うに値すると判断を下した時期と,事務処理を経て行政代執行を実施するときとの間に状況が変化するなどの問題がありまして,具体的に申しますと,夏に青々と繁っていた雑草が事務処理を経て,秋冬になってしまうと枯れてしまって,現況,不良状態には見えないといった問題がございました。   なかなか実効性が期待できないとの考えにより,条例への規定は当初,見送ることとなりましたが,前段のように,解決の難しい事案が増えてまいりまして,導入する必要が生じてきたため,条例へ盛り込むこととなりました。   条例の制定,改定のお話については,以上でございます。   次,3番の条例の施行状況についてにまいります。   ①とさせていただいている表の方が,我々,空き地の方で対応させていただいている件数と,指導文書などを発送した件数の表になっております。   その下の②番の方が,行政代執行が規定された20年度から,行政代執行の件数及び掛かった金額とお金の徴収状況を記載した表になっております。   ①番の表をちょっと御覧いただきますと,改正,代執行を規定した20年の方に,相談件数が幾ら増えたかということを確認できたらよかったんですけれども,ちょっとその前年度の記録がなかったため,数値的には詳しいことは申し上げられないんですけれども,実際,代執行を規定してから,住民さんからの空き地に対する相談事は増えたと,当時の担当の方から聞いております。   こういった形で,苦情件数等が年々減ってきてはいるんですけれども,勧告・命令等の指導の発送文書を見ていただきますと,あまり件数が変わっていないというのは,長年対応いただけていない区画が残り続けているという背景がございます。   そうしたら,表についてはちょっと,ここまでとさせていただきまして,次,③番の問題となっている空き地についてに移りたいと思います。   こちら,4点挙げておりまして,まず一つずつお話しします。   まず,何らかの理由により,所有者の所在が確認できず,所有者不明となっている土地,こちらの所有者不明の理由といたしましては,まず,所有者が死亡後,相続人全てが相続放棄したため,管理する者がいない場合,次に,所有者が海外へ転出しており,宛先が不明になっている場合,次に,登記情報を基に住民票や戸籍,関係書類等を請求しましたが,年数経過や職権により書類が抹消されており,書類が確認できない場合,次に,土地を所有している事業所が法人登記上の所在地に存在しない場合,次に,土地の境界が不明瞭なため,地番及び所有者が確定できない場合,こういったものが所有者不明として,今問題となっております。   次に,代執行後,適正に管理されていない空き地,これは代執行を行った後,そのまま,業者さんに頼んでいただいたりなどして,適正に管理していただけるであろうということを見越して,代執行を行ったものの,その後,同じような形で,代執行する前と同じような形で,長年放置されるという空き地でございます。   次に,所有者自身が高齢となり,管理対応能力が低下している空き地,こちらの管理対応能力というのは,我々がよく聞かせていただいておりますのが,高齢になったため,今まで自分でしていた除草作業ができなくなってしまったでありますとか,業者に除草依頼をする金銭がない,又は,どういった相場か,どれだけ掛かるのかというのが分からずに,ちょっとなかなか,業者にお電話であるとかということもできずに,腰が重いような所有者さんたちの土地であります。   次に,売却を希望するも,地価の低下等の理由により話が進まない空き地,こういった問題が,名張市の対応している空き地としては挙がってまいりました。   それを踏まえた上で,4番の現状の問題点の方でございます。   四つ,これも挙げさせていただいていまして,まず①番の条例について,これは,住民さんでありますとか地域の代表者さん,また,我々実務をしている職員,同様の意見であるんですけれども,即効性や強制力が弱いということが挙げられます。   フローチャートを見ていただくと,分かるかなと思うんですけれども,基本的に,御相談を頂きましてから,現地調査をし,文書を発送いたします。こちらのフローチャート,相談初年度と書いてある表面の方には,文書的に発送は4件行います。これの一番上のお願い文書と次点の指導文書というものは,任意のものになっておりまして,これは条例に規定がないものでございます。   さらに,指導文書から1個ステップが上がった勧告書,その次の命令書については,条例に規定があるものでございます。こちらの勧告書,命令書の対応期限を,一応30日以内,30日,例えば所有者さんが業者さんにお電話をしていただく,見積りを取っていただく等の時間を取らせていただいておりますので,任意の文書もそれにのっとって,対応期限を30日置かせていただいております。   簡単に申し上げますと,相談いただいて,1か月待ってもらって,また1か月待ってもらってという扱いになりますので,すぐに所有者さんに,こちらから指導して対応していただけなくても,やはり1か月待ってから,次の対応に入らなければならないということで,即効性がちょっと薄いということが挙げられております。   次の②番の所有者調査についてです。   こちらは,所有者情報の調査,照会の事務処理が煩雑というのが一つ挙げられます。   まず,法務局に行かせていただいて,登記簿を取得し,そちらの情報から,我々,所有者情報の調査を行いますが,なかなか登記簿自体の住所が更新されていないと,先ほど問題となっている空き地で挙げさせていただいたように,年数経過や職権による抹消が行われており,書類が確認できないなどで,こちら,所有者さんの住所が不明となってくる場合がとても多くございます。   また,話がつながるんですけれども,登記が更新されていないため,年間60件から100件ほどの所有者情報の照会を行っております。大まか,このぐらいの件数が,郵便戻りとして,我々の元に,送った指導文書が戻ってくる件数でございます。   平成30年度の対応,区画数が約300件,300区画ございますので,その中の60件から100件といいますと,全体の20%から30%ぐらいが,こちら調査している区画となっております。   次,③番の所有者不明土地についてでございます。   まず,所有者情報の調査・照会事務処理が煩雑,これは,先ほどの項目でも挙げさせていただきました。そして,次点に,照会可能な情報が限られているというのが挙げられます。   我々,空き地の条例にのっとって,こういった調査をさせていただいて,文書指導を行っておりますが,こちら,照会に使える情報は,登記に記載のある住所と名前のみとなっております。空き家などの対応と違って,我々は課税上の情報は入手できないため,たとえ課税されて,そちらの方で所有者さんが判明している,若しくは管理人が判明しているという場合でも,我々はそこまでたどり着けないといった場合がございます。   次点に,所有者が不明のままでは,できる対応が限られてくる。これは,所有者不明の土地の数が多いわけではないんですが,地域で問題となっているため,市にこの区画について相談がきます。それで,市で対応を行おうと思って,所有者さんを調査するものの,所有者不明で市が対応できないとなりますと,その空き地については,どうすることもできないという形で,どんどん年数が経過してまいります。そしてまた,地域でそちらの不良土地が問題となり,また市に相談がきても,やはり対応が難しいとなって,悪循環で問題がどんどん大きくなってくるという傾向が見られます。   また,所有者さんが不明のままでは,我々の方で規定している行政代執行の方ができないという扱いになりますので,こちら,行政で対応するに当たっては,一時的な改善ですら,ちょっとすることが難しいという状況でございます。   現在,こういった土地に関しましては,定期的な,半年ごとほどの照会を行ってはいるんですが,今まで問題として挙がっている土地については,なかなか改善,見られる様子はございません。   次に,④番の所有者からの要望につきまして,こちら,我々が文書をお送りさせていただくと,所有者さん側からお電話を頂いたり,文書を頂いたりなどします。その際に,皆さんおっしゃられるのが,売却したい,又は手放したいというお話を,よくお伺いさせていただけるんですけれども,こちら,提案できる内容が少ないために,なかなか所有者さんに有効的な手立てをお伝えできずにいます。   現在,我々がこういったお話を頂いた際に行っている対応といたしましては,名張市の条例の方で,空き地の除草業者の紹介ができる,そういった業者を取りまとめるという規定がございまして,そちらの業者さんの方が,もちろんハウスクリーニングさんのような業者さんもいらっしゃれば,不動産業で同じように除草作業を行っていただいている業者さんなどがリストに挙がっております。そういった名簿内の不動産業者さんに,ちょっと御相談をしてみたらいかがですかぐらいのお話ししかできないために,なかなかそれだと,動いていただけない所有者さんなどが多いといった状況でございます。   一応,名張市の条例のお話としては,こういったお話になりまして,今回,名張市の空き地に対する対応について,まとめているうちに,我々の方でも,登記簿の情報などが現況の所有者さんの適正な情報になっていていただけると,非常に業務がしやすい,又は,地域住民さんの対応がしやすいということが考えられるなと思っております。   我々の照会の負担が軽減されることももちろんながら,我々の条例では,空き地の雑草についてしかカバーできないものでございまして,例えば空き地という定義も,宅地と雑種地と地目が限られておる中で,山林の御相談がきます。そういった場合,我々の方では,文書による行政指導などはもちろんできなくなるために,こういった案件があった場合は,民民での解決をお願いしておりますが,こういった民民での解決をお願いする場合,まず動いていただく個人さん若しくは自治会さんなどには,できる対応には限りがあります。   行政が指導する分には,戸籍照会等のことで,所有者さんの情報,更に深い情報を手に入れることは可能ではあるんですが,独自で動いていただくしかない個人さん若しくは自治会さんなどには,登記簿を請求して,そちらの情報で,何か文書を送っていただいたり,若しくはお話ししていただいたりということしかございません。   そういった状況で,登記簿の情報が現況の情報にそぐわない,更新されていないという状況でありますと,簡単に言ってしまえば,そこで手詰まりになってしまうということも,よく聞かせていただいております。   また,所有者さんからの御相談事といたしまして,手放したいでありますとか,不動産業者に相談しているものの売却できないという声に加えまして,お金を払ってでも手放したい,寄附したいという声を多く聞かせていただきます。   こちら,私がお話を聞かせていただいて,放棄の制度の方の検討も進んでいるということでございましたので,こういった制度が確立したとしても,様々な条件により,簡単な手段でないことは分かってはおるんですけれども,こういった手段が確立すれば,できることは限られているけれども,この空き地をどうにかしたいと思っている人たちには,何か一つの手立てとなるのではないかなと思います。   こういった,早々に手放したいと思っているが腰が重たい人たちが,土地放棄という最終目標があれば,土地の管理や売却に一歩踏み出してくれるのではないかという期待を,個人的にはしております。   名張市からのお話としては,以上になります。大変拙い説明で申し訳ございません。ありがとうございました。 ○山野目部会長 空き地の条例のお話を中心に,興味深い,大変有益なお話を頂きました。誠にありがとうございます。   続きまして,意見をお伺いする団体は,公益社団法人全日本不動産協会であります。   山田様,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山田参考人 ただいま御紹介いただきました,全日本不動産協会の山田でございます。   本日は,このような機会を設けていただきまして,ありがとうございます。   空き家,所有者不明土地等の問題に関しましては,以前より,与党政策懇談会や陳情活動の際に,当協会としましても,一番の政策要望として提言してまいりました。   早速ですが,資料に沿って説明させていただきます。   2ページをお開きください。   特に所有者不明土地になる前の空き家や未利用空地に対する対策が重要と考えまして,積極的な国庫への帰属と利活用を要望の中で求めております。また,現状での相続財産管理制度では,実務的に限界があり,機能していないというのが現状であります。機能していない案件が多いというのが現状であります。   3ページになりますが,民法上認められているものの,所有者不明の不動産が国庫へ帰属できていないという現状があります。個人が手に余るため,管理等を放棄している現状を鑑みますと,国の予算によりまして,政策によりまして対応していくということが,解決の道かと思っております。   ただ,個人が手に余るとはいえ,モラルハザードが起きる問題もございますので,所有者の資産状況であります,そのようなことですとか,把握をしまして,具体的に進める体制づくりが非常に重要かと思っております。   4ページになります。   4ページは,具体的な施策としまして,現在の相続財産管理人制度のように煩雑な手続や運用ではなく,1か所に相談すれば全て解決できるような仕組みが必要だというふうに考えております。   5ページをお開きください。   5ページは,国土交通省の調査資料でございます。この中で,一般消費者の立場から,所有者の放棄はよいという意識が多いのが分かります。   続きまして,6ページです。   6ページは,私ども全日で,一般消費者に対しまして実施したアンケート調査です。地域・年代別に統計を取りました。御参照いただければと思います。   このアンケートに基づきまして,7ページを開けていただきますと,統計に基づく一般消費者のマインドの考察として,記載をさせていただいておりますが,アンケートデータに基づきまして,実際に空き家等の所有者であった場合に,空き家等を売って,少しでも利益を得たいという意向が見受けられると思います。   最後に,8ページでございます。   今までの説明のとおり,私ども全日としましても,民法・不動産登記法見直しの内容につきましては,今まで要望してまいりましたことに多々合致すると考えておりまして,今後の取組にも非常に期待をしているところであります。   これからの更なる協議について注視しています点,また,要望としましては,8ページに記載させておりますが,一つは,相続登記の義務化における罰則,過料の制裁の内容,対抗要件のみで公信力のない任意だった登記を義務化するに当たり,登録免許税が掛かるのはいかがなものかという点,また,二つ目ですが,相続登記におけるインセンティブ付与策で,登記費用軽減とありますが,それ以外の税制面,例えば相続税等の減免措置も検討していただきたいと思っております。   この2点につきましては,相続税法に関しまして,近年変わったばかりです。そういうことも鑑みまして,一つの方法としましては,登録免許税は免除ということにしていただき,相続登記でのインセンティブの付与策としては,例えば一定の期限内に登記をすれば,一定の控除を受けられるというようなことですとか,罰則,過料の制裁という部分では,期限内に登記をしなかった場合には,そういった控除が受けられませんという程度の内容にしていただければ,一般所有者の方も理解が深まるのではないかというふうに考えております。   3番目,所有不動産目録証明制度の新設における,地方行政の持っている住民票のデータ等の突合と,これからのひも付けは,必ず実現してほしいと思っております。今後は,死亡届が地方行政に届けられた際には,自動的に登記情報とリンクするようにしてほしいと思います。   四つ目ですが,土地所有権における要件を厳しくする一方で,致し方なく所有権を放棄する人が,費用的な面で放棄できなくなるようなことがないようにしてほしいというふうに考えております。   五つ目,一度国庫に帰属したものがスムーズに流通市場に流れるよう,国庫に帰属した物件の情報開示等の整備を確実にしてほしいというふうに考えております。   なお,今後進められる法改正につきまして,財産管理制度や相隣関係等,多岐にわたりまして,実務上のことがあると思います。さらに,私ども実務者からも意見を聴取していただければと思っておりますので,よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 お話の中に出てまいりました全日というのは,御意見をおっしゃっていただいた全日本不動産協会の定着した略称であります。質疑応答の際にも,山田様のお言葉から出てくるかもしれませんから,委員,幹事の皆様方に御紹介をしておきます。   もう一つ,委員,幹事の皆様に御紹介しておくことは,ただいま用いられた資料の表紙のところに動物が登場してまいります。ウサギさんであります。   山田様,どうもありがとうございました。   次にお話しいただく公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会におかれましては,表紙の動物が何であるかなどというお話もあったら楽しいものではないかと感じます。   内山様,どうぞよろしくお願いします。 ○内山参考人 御紹介あずかりました,全国宅地建物取引業協会連合会の内山です。   ハトです。平和のハトでございますので,よろしくお願いいたします。   本日は,発言の機会を頂き,ありがとうございます。私どもは,全国の中小の宅建業者が会員となっております宅建業者の団体,約10万会員を有しております。   早速ですが,今回の意見発表に関して,本会の基本的な考え方を2ページに記載しておりますので,お開きください。   今般,所有者不明土地問題を改善するための一連の民法・不動産登記法の改正について,私ども不動産業界は大変関心を持っております。その議論の推移を注視している状況です。   御案内のとおり,相続登記がされていないこと等による不動産所有者が分からないケースにおいては,取引を行う宅建業者は,所有者の探索等に多大な労力を強いられているのが現状です。結果として,スムーズな不動産流通を阻害する要因となっておるのが現状です。   こうした状況の中で,特に今般検討されております各論点につきまして,不動産取引実務に直結するものであり,これら見直しの方向については,私ども,基本賛成の立場でございます。   こうしたスタンスの下,本日は,現場における具体的な実情と問題点について,意見を述べさせていただきたいと思います。今回の改正を,少しでも実効性のあるものにしていただくための一助となれば幸いです。   まず,3ページをお開きください。   相隣関係における隣地使用権の見直しについてであります。   御案内のとおり,不動産取引に当たっては,対象地における測量や建物の解体の際に,隣地に立ち入って工事を行うケースがありますが,原則は所有者の承諾を得て行うのが基本であります。しかしながら,隣地が空き家等で所有者が判明しないケースにおいて,所有者の探索が困難なケースがあります。   このような状況の下,私どもの意見といたしましては,隣地を使用することに関し,承諾を原則としつつ,通知に対して異議がない場合や所有者が不明の場合に,公告手続を経て,隣地使用を認めることについては賛成であります。   これに関して,特に通常の不動産取引において,境界標の調査や隣地との土地の境界確定は必須であります。境界確定等を行う際には,中間試案(注3)にもあるとおり,必要な行為を認める規律を設けることは,是非必要であると考えます。   さらに,隣地の所有者と境界確定を行う際に,隣地の協力を得られないケースが存在します。結果的にトラブルに発展する場合がございます。こういったトラブルを防止するために,例えば,境界確定を行う際には,隣地への協力義務を課すといった検討も,併せて必要ではないかと考えます。   続きまして,4ページでございます。   越境した枝の切除についてでございますが,中段には,私どもに相談があった大阪の会員の事例を載せてありますが,隣地の枝が越境し,対象地に悪影響を及ぼしているケースでございます。   特に,隣地所有者との関係が希薄な場合や,所有者が判明しないケース等においては,不動産取引の場合において,弊害も起きているのが現状です。   本件についての意見といたしましては,枝の越境によって悪影響を被っている側の問題解決を優先すべきと考えられることから,竹林の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず,相当の期間内に切除されないときは,直ちに自ら枝の切除することができる乙案に賛成であります。   また,今後検討が必要と思われる項目として,中間試案(注1)にもあるとおり,土地の所有者が自ら切除した際の費用負担の問題は,隣地とのトラブルに発展するおそれが非常にあります。これらの考え方の整理は,是非必要であると考えます。また,トラブル防止の観点から,自ら切除できる場合に,土地の管理のための必要な範囲でというルールを設けることが,併せて必要ではないかと考えます。   続きまして,5ページです。導管等設置権及び導管等接続権についてであります。   この部分については,私どもは大変関心を持っている論点であります。   今回検討されております導管袋地という定義を実務に当てはめると,私どもは,幾つかに分けられるものと考えます。   事例Aは,道路に接道せず,全くの袋地の場合,次の事例Bは,他人の土地に通路を設けて道路に接道している場合,この場合は,道路を通じて建築基準法上の接道義務を満たしているケース,事例Cは,第三者が所有する私道,建築基準法上の位置指定道路等ですが,私道にのみ接道している場合,この場合は,厳密に言うと,袋地ではないと思われますが,他人の土地を通じて導管設置をしなければならないケースであるため,類似した事例として挙げさせていただきました。   今回の導管等設置権及び接続権は,現状,他の規定に類推適用されている実情を考えれば,制度の見直しの方向性は基本的に賛成であります。しかし,5ページの事例Aの場合,建築基準法上の接道要件を満たさず,原則建物は建てられないため,この場合に導管設置権等を認める必要があるのかは,少し疑問が残るところであります。   私どもとしましては,事例Bや事例Cのように,建物建築が可能な土地について,積極的に認めるべきであると考えます。   また,今回,部会で検討されているのが,導管袋地でありますが,不動産取引の実務上は,以下のようなケースが存在します。   6ページを御覧ください。   実際の事例を載せてありますが,ライフラインの設置の問題は,必ずしも袋地だけの問題ではなく,土地の起伏・立地等の関係により,隣地を経由して引き込むケースが多々あります。この承諾の問題について,私どもは,実務上の弊害として,大きな問題意識を持っております。   この事例の場合,敷地に接道している公道に水道管本体が埋設されておらず,接道する道路からの引込みは多額の工事費用を要する,又は公道等の場合に,掘削工事の承諾を得られないということから,隣地を経由して引き込まざるを得ないケースがあります。この場合は,隣地所有者の承諾が必要となることから,袋地での問題と同様の問題が生じます。   仮に,隣地が空き家等の状態で,所有者が不明の場合には,更に問題が深刻化することから,袋地以外のこういった事例についても,改善策を検討すべきと考えます。   続いて,7ページは,土地所有権の放棄についてでありますが,私ども,課題認識としましては,土地の所有権の放棄については,これまで制度がなく,特に地方においては,放置された土地の増加の一因となっておるものと考えます。   資料2,大阪の会員から意見を載せておりますが,自治体への空き地等の寄附を申し出ても,行政利用の可能性が低いという理由で受け入れてもらえないというケースが存在します。   本件について,一定の要件の下,土地の所有権の放棄を認めることについては,基本的に賛成であります。放棄を認める要件等については,モラルハザードにも配慮しつつ,なるべく使い勝手のよいものにしていただきたいと考えております。   本件に関連して,8ページには,崖地等が存在し,その土地所有者が高齢で,管理ができなくなって困っているという大変切実な事例を載せておりますが,こういった個人での管理困難な土地に関しては,放棄を積極的に認める方策が必要ではないかと考えます。併せて,公衆用道路等の公共性の高いものについても,積極的に認めるべきではないかと考えます。   続いて,9ページの相続登記の義務化についてであります。   冒頭にも申し上げたとおり,相続登記がなされずに所有者が不明の場合には,宅建業者は所有者の探索に多大な労力を強いられるのが現状であります。9ページ中段に,相続登記がなされないことによって,所有者の探索に時間が掛かり,大変苦労したケースを記載しております。   今回の意見としまして,相続登記の義務化は円滑な不動産取引が推進されるとともに,所有者不明土地の発生の予防にもつながることから,是非とも実現をしていただきたいと思います。   9ページ下段にあります①,②につきましても,御検討いただければと思っています。   最後に,10ページでございますが,不動産の専門家である宅地建物取引士の活用についてでありますが,現在,中間試案においては,所有者不明土地管理制度等が検討されております。   私どもは,この制度について賛成でありますが,土地管理人の資格者として,弁護士先生以外に,不動産の専門家である宅地建物取引士を利用するのも視野に入れて,検討いただければと思います。   また,所有不動産目録証明制度の創設についても賛成でございますが,登記名義人等による委任を受けた者についても,交付請求が認められるようにすべきであると考えております。   以上,不動産取引の側面から,各論点について意見を述べさせていただきました。お取り計らいのほど,何とぞよろしくお願いいたします。   以上です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 全国宅地建物取引業協会連合会におかれましては,かなり念入りに中間試案の御検討を頂いた御様子であるというふうに拝察いたしました。誠にありがとうございます。   続きまして,公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会の御意見を承ります。   杉浦様,よろしくお願いいたします。 ○杉浦参考人 御紹介にあずかりました,日本不動産鑑定士協会連合会の杉浦と申します。本日は,よろしくお願い申し上げます。   先ほど,ウサギさんとハトさんのキャラクターの御紹介がありました。実は私どもにも,「アプレイざるちゃん」と「コンさるくん」というお猿さんの公式認定キャラクターがございます。本日一緒に連れてくればよかったと,少し後悔しておりますが,御案内だけさせていただきます。ちなみに,「アプレイざるちゃん」というのは,不動産鑑定評価ということを意味しております。   それでは,本題に入らせていただきます。   2ページ目を御覧ください。   我々の意見ということで,こちらにまとめさせていただきましたので,お手元の資料をご覧下さい。   まず,私たちは,所有者不明土地問題が国民的課題となっている中で,これに対応するための,この度の民法・不動産登記法改正の検討は,極めて重要な意義を有すると考えております。   したがいまして,公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は,所有者不明土地問題という国民的な課題に対し,不動産の専門家としての社会的使命を果たすため,今回の民法・不動産登記法改正に関わる検討に関し,全面的に協力する準備がございます。   それでは,具体的な意見について述べさせていただきます。   3ページ目に,私どもの意見の目次を付けておりますので,本日は,この順番にお話しさせていただきます。   それでは,4ページ目をお開きください。   まず,頂いた中間試案の第1部,民法などの見直しにおける第1,共有制度,2,通常の共有関係の解消方法,(2)所在不明共有者などの不動産の共有持分の取得などについて申し上げます。   所在不明共有者などの不動産の共有持分の取得などについて,要件を満たした上で,共有者が請求すれば,当然に持分の取得などの効果が生じるとする甲案と,裁判所の決定を必要とする乙案が検討されているところでございます。   私どもは,次に書いておりますように,乙案を支持しております。   本件制度は,所在不明共有者などの意思が確認できない中で,その所有権を移転させる制度であるため,手続は所在不明者の権利を保護するという観点から,慎重・厳格に行われる必要があると考えます。したがって,私どもといたしましては,乙案のとおり,裁判所が手続に関与することが望ましいと考えているところでございます。   次に,この共有関係解消の場面における不動産鑑定士の活用についてでございます。   所在不明共有者などの財産権を尊重する観点から,精度の高い客観的な時価を把握する必要があるため,時価算定の場面では,不動産鑑定士による鑑定評価の実施を,是非義務付けていただきたいと考えております。   不動産鑑定士による鑑定評価は,国が定めた不動産鑑定評価基準等という統一的なルールに従って行われるものであり,不当鑑定を行った際には処分が行われる制度でもございます。したがって,不動産の時価算定には,このような中立性・公平性を確保した我々を是非御活用いただきたいと願うところでございます。   5ページ目をお開きください。   時価算定における共有減価についてということで,中間試案の補足資料37ページから38ページのところで,時価算定の際の共有減価についての検討がなされておりますが,個々のケースは,専門的実務家である私たちなどが担うとしても,議論あるいは判断の前提として,一定のケースに応じた対応方針を国が定め,国民に示していただきたいと考えております。   検討すべき論点として,我々が考えているものは,以下のaからdのものです。   aとして,所在不明共有者にとって,自己以外の共有関係によって受け取ることができる額が異なることについての妥当性,b,手続の順序によって,所在不明共有者が受け取ることができる額が異なることにならないかという懸念,c,共有関係を解消するための手間・労力・経費を所在不明所有者は一切負担せず,一方的に確知共有者が負担することの妥当性,d,権利関係を明確化するための措置を行わない所在不明共有者の権利を過度に保護する必要性などについて,いろいろ議論,論点があることかと思います。   これらの共有減価に関する対応方針の整理において,制度の信頼性向上,紛争予防の観点から,私たち不動産鑑定士は,国が定める方針の策定に対し,全面的に協力させていただきたいと考えております。   6ページをお開きください。   次は,第1部,民法等の見直しの第5,土地所有権の放棄についてでございます。   これは,その中の3,関連する民事法上の諸問題,(2)建物及び動産の所有権放棄についてということです。   建物及び動産の所有権放棄の規律は設けないこととされておりますが,建物の放棄を認める余地を一切残さないとすると,制度活用のハードルが高くなり過ぎて,制度自体が機能しないのではないか。例えば,建物撤去費用を事前に国に納入することを条件に,建物の所有権放棄を認めたとしても,財政に大きな影響を与える可能性は低いのではないかと考えております。   御説明では,この状態に至るまでには,十分に不動産流通市場における売却努力を尽くしても売却できない場合,というステップがあると伺っておりますが,例えば,過疎地などでは,物件の売却を担う仲介業者の方が見つからない場合が想定されるため,物件の売却ノウハウを有する専門家へのアクセス方法を,国民に対して提供する方法も併せて考える必要があるのではないかと考えております。   ⑤土地所有権放棄制度における専門家の活用については,土地の無秩序な放棄を防止する観点から,放棄の要件の有無に関する審査が必要であると思いますが,その審査過程には高い客観性が求められるため,不動産鑑定士を始めとした不動産の専門家を積極的に活用していただきたいと考えております。   例えば,どういうことに御協力ができるかということを考えたのですが,下にあるように,放棄要件の審査支援であるとか管理費用の査定などにおいて,私どもの知見を活かしていただけるのではないかと考えております。   7ページをお開きください。   第2部,不動産登記法等の見直し,第6,相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み,2,相続登記の申請の義務付け,(3)相続登記申請義務の実効性を確保するための方策についてございます。   私ども国民が登記申請義務を果たすことを支援する方策として,国民が登記情報にアクセスしやすくすることが有効であるため,次の提案を行わせていただきます。   a,現在,土日・夜間などは使うことができない登記情報システムの稼働時間の拡大,b,権利関係を把握するための登記情報閲覧料の軽減,c,地図(公図)閲覧の無償化,d,大規模地を俯瞰可能な縮尺による公図・公図合成図の提供,e,行政が持つGIS情報と地図(公図)を重ねた情報の提供,f,相続登記などに関わる手続の簡素化,例えばe-Taxのように,ネット上で手続が完結する仕組みの検討など,国民が容易に登記情報を把握し,これを積極的に活用することを促すことが,将来の所有者不明土地の発生の抑制にもつながるのではないかと考えております。   次に,第10,その他の見直し事項2,外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策についてでございます。   外国に住所を有する登記名義人は,日本国内における連絡先を登記することができるとすることが検討されておりますが,そこをもう一歩踏み込んで,国内連絡先の登記を義務付けるべきではないかと考えております。   理由としては,以下のa,bのとおりです。   a,自己が所有する土地の権利関係を明確化することは,土地基本法改正案において,土地所有者の責務とされている。(※)マークの下の方を見ていただきますと,土地基本法の改正案第6条第2項では,土地の所有者は,前項の責務を遂行するに当たっては,その所有する土地に関する登記手続,その他の権利関係の明確化のための措置及び当該土地の所有権の境界の明確化のための措置を適切に講ずるように努めなければならないとしているところに立脚しております。   b,登記名義人が外国人である場合,登記所がほかの公的機関から死亡情報を入手することが困難であるため,中間試案第7の2の仕組みは,十分に機能しないのではないかと危惧しております。外国人が所有する土地については,権利関係を明確化するための特別の方策が必要ではないかということを問題提起させていただきます。   以上を,私たち日本不動産鑑定士協会連合会からの意見として提案させていただきます。本日はヒアリングにお招きいただきまして,ありがとうございました。 ○山野目部会長 共有減価のお話は,是非,不動産鑑定士の先生方の御意見を伺っておきたいと考えておりました。その余の点も,重要な御指摘を多々頂きました。誠にありがとうございます。   続きまして,一般社団法人全国住宅産業協会の御意見を承ります。   花沢様,どうぞよろしくお願いいたします。 ○花沢参考人 全住協の花沢でございます。政策審議会という部会も担当しております。   まず,今回の問題の解決に向けて,精力的に検討され,また,着実な対応,そしてまた,御説明にもお越しいただいたりと,大変感謝を致しております。併せて,本日このようにお招きいただいたことに,大変感謝をする次第であります。   まず,私どもの団体の話を少しさせていただきたいと思います。   資料の5ページ,最終ページですけれども,ここの資料の2にありますとおりでございます。   協会の名前が,今から6年ぐらい前に変わっているものですから,私ども,賀詞交換会などですと,何か昔の住産協とか,いろいろ言われますが,今の名前は全住協,全国住宅産業協会と申します。多くは,開発系の皆さんとか,流通系の皆さんとか,その他いろいろ,コンサルの皆さんとかが集まった,1,700社強の団体であります。   ここに一例のシェアを出しておりますけれども,例えば,開発系でいいますと,全国で建売分譲住宅,これは36%を供給させていただいております。また,マンションに至っても,全国で約3割の供給をしている。どちらかというと,単純な住宅供給の団体と見られておりますが,しかし,やはり時代の流れとともに,メンバーの構成も変わっておりまして,今では,例えば権利関係の輻輳した土地を仕入れて,更地にして管理・販売していく会社さんとか,また,借地権付アパートのある土地について,同様のことを行うようなことを専門にしたりしている会社なども出てきておりますので,非常に多様なメンバーがいる会であります。   そのような仕事に対しても,事業用の土地を取得する際に,土地の所有者の全部若しくは一部,特に一部ですよね,これが不明であることは大変苦労する,これはもう,先ほどの各団体さんの言われるとおりでありますが,そしてまた,今後増え続けるマンションの老朽化に伴う建て替えなんかの際には,専用部分である住宅と共有敷地について,そこがまた相続に関わったなどとなりますと,なかなか大変なことになります。建て替え一つがややこしいことになります。   こんなことが,特に私ども,先ほど申し上げたとおり,住宅系でありますから,もうそういうことが起きておりますので,今回の中間試案について,少しまとめたことを御報告したいと思います。   まず,総論的なことで,考え方なんですけれども,まず一つは,この問題は,都市部と,それから,それ以外のところでは,温度差が随分あるのかなという気がしております。私ども全国団体ですから,やはり首都圏での供給のやり方と,また,それ以外のやり方では,非常に変わってきています。   例えば,税制のいろいろな特典も,やはり東京ですと,そんなの少ないよねと思うんですけれども,地方だと,いや,それで十分だというのもあります。これと同じようなことで,やはり随分,価値というものに対しての考え方が違うので,これを一律で考えるというのは,なかなか大変な至難の業だと思っております。   しかし,所有するというのは,当然権利なんだと思いますけれども,それには義務があります。当然,税金も払ったり,いろいろなこともしなければいけない,維持管理もしなければいけない。この辺のルールが,やはりちょっと,この義務ということを何となく怠っている部分があるのかなという人たちが見受けるわけでありますから,それによって,近隣の人たちとか,そして行政とかが,困っていることになっているんだと思います。   所有不明というのを,これは所有が不明なんだよという明示をする必要もあるのかなという気もします。そして,何年間不明を出したら,では,その活用をどうしようというような,時効みたいなことも,考え方の一つにあるのかなと。   それから,先ほどのお話にもありましたけれども,手放したいんだけれども売れない,それは価値が低いからかもしれません。そのときには,例えば,金融機関さんでも今,マイナス金利があるように,お金を出してでも売るという考え方というの,これあるのかもしれない。こんなことも思うところであります。   そして,所有者不明の土地は,まず,本人が知らないということもあるかと思います。自分が持っているということを知らないというのと,それから,多少知っていても,面倒だから関わりたくないという,ほったらかしてあるということもあるかと思います。それによって,多少スタンスが違うと思いますけれども,例えば,例がいいか悪いか分かりませんけれども,犬や猫のペットのように大事にしていても,やはり飼い主が本当に分からない犬,猫を見て,これは迷子になったのかなと思うのか,それとも,いや,もう飼えなくなったから放置してしまったのかなと思うか,殺処分にされないように,何か考えなければいけない,チップを入れたりとか,いろいろなことをやっているわけですから,もっと大きなこの不動産というのは,そういうことにならないようにしたいと思っております。   そして,業界団体の多分,話は,ほとんど一緒だと思います。現場で大変汗をかいている皆さんでありますから,同じ問題に当たっているんだと思っております。   さて,具体的に入ってまいります。   まず,1番目のところでありますが,所有者不明土地の利用についての民間事業者の活用,資料の1ページ目ですが,中間試案28ページにありました第5ですが,土地の所有権の放棄について,土地所有者が相当の努力を払ったにもかかわらず,譲渡先が見付からない結果,所有権が放棄された土地は国庫に帰属することになっておりますがという一文でありますが,この相当の努力というときの手段,手法として,土地の有効活用,不動産の流動化の観点から見れば,民間事業者,例えば不動産事業団体に照会とか相談する仕組みを検討されてはいかがと思っております。   国も所有者も,土地を利用・管理するのは大変なことであります。この幅広い土地の利用,流通のノウハウを持つ民間事業者を活用する仕組みとして,例えば,行政が団体を認定して,土地所有者がその団体を活用するというようなことは,いかがなものでございましょうか。   裁判所の関与についてであります。   資料1ページの下段になりますが,土地に関する権利の取得・喪失等の手続を進める際に,裁判所を経由することは,やはり一般人にとっては,なじみが薄く,手続や手間に時間を要することから,ハードルがやはり高いかと思われます。したがって,裁判所の関与は,可能な限り少ない方がよいと私どもは思っております。   例えば,中間試案の6ページから8ページにありました所在不明共有者又は不特定共有者の不動産の共有持分の取得等について,共有者間の手続だけで共有持分を取得できる甲案,裁判所の命令処分を必要とする乙案が示されておりましたが,手続の簡素化,事務の効率化の観点から,甲案,要は裁判所が関与しない案ですが,の方がよいと私どもは思っております。   相談窓口の設置であります。   資料2ページの上段でございますが,土地に関する権利関係の法令や不動産登記手続は,一般人にとっては,なじみがやはり薄く,難解でありますので,専門家の助言を必要とすることが多いと思われます。   そこで,所有者不明土地に係る対応の仕方,相続登記義務化に係る手続等について,一元的に,いわゆるワンストップで相続できる窓口を,法務局,市町村に設置されたらいかがかと思っております。   区分所有建物の扱いです。資料2ページの下段になりますが,現在,マンションのストック戸数は655万戸,居住人口1,525万人,国民の約1割がマンションに居住しているといわれます。   4ページ目の資料1ですが,国交省の資料によりますと,建築して40年を過ぎる建物が,築40年超えというんですが,これが2018年末に81万4,000戸で,ストック数に含める割合は約1割になっております。当然,10年後には,これが2.4倍の198万戸,20年後には4.5倍の367万戸になると見込まれております。   この老朽化した大規模修繕,建て替えの際に,管理組合の総会での議決が必要となりますが,マンションの専用部分及び共用部分の敷地の共有持分が所有者不明になっている場合には,管理組合の運営,総会での決議等に,大きな支障を及ぼしかねないのは現実であります。   このようなこと,マンションの専用部分とそれに伴う敷地等の共有持分が相続等により所有権が細分化してしまう,すなわち共有部分が,共有関係が複雑になった場合は,その専用部分等を譲渡する際にも,共有者の意思統一の難しさに直面することが現実で増えております。   中間試案の13,14ページに,所有者不明である場合の建物の管理命令,所有者が建物を管理しない場合の建物の管理命令について記載されておりましたけれども,今お話ししたとおり,マンションの固有の課題を解決することができる案となっていないかと思います。したがって,土地だけではなくて,区分所有建物についても,所有者不明になった場合の法的措置を検討するべきだと思っております。   ちなみに,私どもの会議では,所有者不明土地といわずに,所有者不明土地建物及び不動産と,こういう言い方もしております。   さて,その問題を解決するには,どのような法的措置が必要なのかと申し上げますと,これ,私どもの試案でございますが,マンション再生手法のうち,改修・建て替えに関する区分所有権の決議に関しては,事業を円滑に進める観点から,民法の全員同意の原則によらない特例の枠組みが区分所有法において設けられておりますが,所有不明者の持つ議決分については管理者に任せる等の法的措置ができないかと思っております。   また,売買等による所有権移転申請の義務化でありますが,これは資料の3ページ上段ですかね。   売買などによって所有権移転が繰り返し行われる場合に,その都度,登記が行われないと,権利関係が当然不明になるおそれがあります。これは相続と同様であります。   中間試案の35ページの相続以外の登記原因による所有権の移転登記は,公法上義務付ける規律は設けないとされておりますが,これは設けるべきではないかと思っております。   それから,特に私どもが昨今気にしておりますのは,今,前にもお話になりましたけれども,外国人の所有する土地建物について,これはすごく懸念をしております。非常に日常で,やはり海外の方からの購入という話は普通に出てきている話で,特に東京にいるせいでもありますけれども,あります。   中間試案36ページに,外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するため,日本住所の登記を可能化する旨の方策がありましたけれども,近年,外国人投資家等による日本の土地建物,これはマンションなども含めてですが,の取得が増えていることによって,外国人の方の所有する物件が,その後,外国で相続が起こってしまったとしたときに,所有不明に,これはなる可能性が非常にあると思っております。これは,日本以上に,この問題は起きてくるんだろうと思っています。これ,できるだけ早く検討することだと思っております。   最後になりますけれども,第1次ベビーブーム,団塊の世代がもうすぐ75歳を過ぎ,後期高齢者となって参ります。日本は大量な相続の時代となって参りますが,親の所有していた土地家屋を引き継ぐ子の世代が,各々の相続手続においても,また社会全体においても,所有者不明土地,空き家の問題に直面し,手続に関するコスト,行政による対策のコスト,すなわち税負担などが降り掛かってくることになります。   土地や建物という資産が,マイナスの不動産,要は「負動産」にならないように,幅広い制度の見直しを,この度のこのお話でしていただければと思っております。   要約でお話ししましたが,今日はありがとうございました。 ○山野目部会長 戸建て住宅,マンションの供給のお立場から,多岐にわたる観点について,有益な御指摘を頂きました。誠にありがとうございます。   一般社団法人不動産協会におかれては,お待たせを致しました。最後になりますけれども,御意見を承ります。   藤巻様,どうぞよろしくお願いいたします。 ○藤巻参考人 不動産協会の藤巻です。   当協会だけ,気になる項目について,レポート形式で書いております。ほかの団体と書式が大分違いますけれど,少し注釈を加えながら説明をしたいと思います。   まず,第1部の「民法等の見直し」の第2,4の(4),これは民法940条に関して触れていますけれども,今回の審議会としての議題では取り上げられていない,相続人全員が相続放棄をした場合に関して,少し意見を述べたいと思います。   昨今,名張市さんの例でもありますけれども,相続放棄される不動産が,非常に増えています。自分が使っていて,そのまま相続放棄するというケースだと,940条とか,財産管理人とか効くんですけれども,全く自分が住んでいない,使う気もない,売れない,という不動産がこれから増えてきます。そういうところは,子供たち全員が相続放棄を行っていきます。   今,日本の人口が約1億2,600万人,30年後には,約9,700万人と,30年で人口が約3,000万人減る。出生数から考えると,これから5,000万人ぐらい死んでいくわけですね。30年で人口の約40%,今いる人の約40%は死んでしまう。   今,日本全国で土地の所有者は約4,000万人といわれていますから,今の所有者はほとんど死にます。かつ,人口が減っていけば,地方都市においては,コンパクトシティー化は必須です。インフラを維持していくためには市街地を小さくしなければいけないですから,当然,市街地外縁部の不動産,宅地も農地も不要になってくる。これを考えただけでも,所有権放棄という課題以前に,相続発生によって実質的に所有権の放棄がなされていく状態が現実だと思います。   相続放棄は,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に手続きすることになります。これは相続人が個別に順次,順次,手続きしていけてしまいます。相続人が全部放棄をしたときに無主の土地になります。   しかし,不動産が無主になったということは,登記上に全く記載されない。一見して,単なる相続登記未了の土地という形になっているかと思います。その不動産に関して,宅建業者さんとか,地籍調査の関係とか,空き家の解体とかで調べに行ったときに,結局,相続人全部に当たってみて,ようやく「ああ,これは相続人がいない無主の不動産だ」ということが分かるという状態です。   これは非常に効率が悪い。相続放棄の手続きを受ける家庭裁判所は1か所なわけですから,そこで全相続人が相続放棄をしたということが判明した段階で,それを関係省庁や登記所に通知する仕組みを作るべきではないか。できれば,この後にお話しする,相続が発生したこと自体を登記に公示するということの後に,相続放棄された土地に関しても,「これは相続放棄されている土地だ」ということを登記に反映させるような,公示させる制度を設けられないかと考えています。   次の第2部「不動産登記法の見直し」。こちらは「相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」の1の(1)と(2)ですが,不明の土地の発生を予防するというための方策の第一段階として,部分的に評価してもいいと考えます。しかし,「登記官は,申出のあった情報を検索キーとして,連携先システムに定期的に照会を行うなどして,登記名義人の死亡の事実を把握する」という部分は,実質的に機能しないのではないかと懸念しています。   今後,人口が減少して,高齢者死亡の増加を考慮した場合に,登記官が定期的に全登記名義人について,戸籍副本データ管理システムに情報照会して,死亡を確認した場合に,相続人を更に調べて,相続登記を促すというのは,あまり現実的ではないのではないか。   日本全国の土地の登記総数は,平成27年の固定資産の概要調査だと,1億8,000万筆といわれています。土地所有者は,古いですけれども,平成22年の市町村の名寄せで約4,000万人。この筆数とこの人数について,登記官が,1か月単位か1週間単位かは分かりませんけれども,定期的に照会を掛けるというのは,登記所にとっても膨大な作業です。しかも,これが制度化されると,その制度は,延々と続いてしまう。これは,かなり無理があるのではないかと思います。   最終的に目指すのは,不動産登記の情報データベースをきちんと構築して,それと戸籍副本データ管理システム,住民基本台帳ネットワークシステム,これをマイナンバーのような一定の個人コードで連携させたシステムを作ることを目指すべきだろうと思います。   先ほど言った所有者数には,住所移転をした後,住所の移転登記をしていない人も含まれているわけですから,同一人物が複数の人格として把握されている可能性もあるわけです。これらを名寄せしていく。日本全国に,何人の人が何筆持っているんだということを,まず登記情報データベースとして,きちんと作ることが最初の課題だと思います。   普通に,戸籍とマイナンバーを連携させるためにも,102万字の外字の問題,プログラムコードを一致させなければいけないとか,それぞれのシステムをマイナンバーに連結させる上での課題があることも十分承知しています。また,複数の不動産を所有していて,一部不動産について,住所移転登記未了の個人を一致させるためには戸籍の附票から追跡しなければならないとか,かなり力仕事になって,多額の予算も必要になるでしょう。しかし,これは着手が遅れれば遅れるほど,探索は困難になります。AIなども活用して,早期に仕組みづくりに取り組むことが必要だと思います。   あと,この章の中で,死亡情報を不動産登記に反映させるための仕組みについて。相続人を調べ出して,各自に相続登記を促すまでの時間ロスを考えると,まずは相続開始の事実だけを登記記録上に付記登記として,何年何月何日死亡とか,同日相続発生とか,自動的に記載するべきだと思います。相続確定前であっても,所有者が生きているのか死んでいるのかさえも分からないということだと,所有者探索の入口でつまずいてしまいます。これを公示するということは,所有者不明土地を減少させる第一歩だと思っています。これによって,登記未了土地の把握,不正取引の防止,相続人間の相続登記促進の心理的な効果は期待できるのではないかと思います。   また,今,地方自治体の固定資産税の死亡者課税がかなり行われています。相続登記というのは義務化されていないので,死亡者のままの名義でも,誰か家族が固定資産税を払ってくれれば,地方自治体としては構わないという状態です。それは正しい状態ではないので,そこを改善していくことが必要だと考えます。   また,第1章の2の相続登記申請の義務付け,いつまでに登記しなければいけないということの起点をはっきりさせる上でも,相続開始時点は公示した方が良いと思います。   次の2の「相続登記の申請の義務付け」,相続人申告登記の創設の部分に関してです。相続登記の義務化は必要と考えます。一方,相続登記を義務化する前提としては,相続登記に関わる登録免許税は非課税とするべきと考えます。売買等の経済行為は取引に伴う何らかの利益が獲得できる。そして,その対抗要件のために登記するという手続きには,登録免許税等を掛けるのは構わないと思います。しかし,相続登記というのは,自らが希望しなくても降ってきてしまう。そういう観点からすると,それを義務付けるのであれば,正しい所有者の公示を促すという目的からも,登録免許税は免除すべきだと思います。   また,相続登記申請義務の実効性を確保するための方策として,相続人申告登記を創設するという案には,実際にうまく使われるのか,という疑念を持ちます。  先ほど,所有者不明土地問題は,市街地と農村部の地域で,全く取扱い方が違うという話がありました。市街地にある市場性のある不動産であれば,相続人たちの相続意思はかなり強いでしょう。相続人申告登記を行うことによって,申出人が当該不動産の管理者であることを公示するとか,それによって相続割合とか遺産分割協議に有利になるとか,そういうことでもあれば,動機はあるのでしょうけれども,そういうインセンティブは与えられないし,与えるべきでもありません。とすると,相続人間で遺産分割協議に時間が掛かっている間に,仮に登記義務を果たした形をとるのであれば,法定相続の登記で足りるのではないでしょうか。   また一方,郊外とか田舎にある市場性のない不動産,空き屋や放置された畑,山林,こういう管理に手間が掛かって,固定資産税負担もあって,相続したいとも思わない不動産。そういう土地に関しては,できればほかの人に相続してもらいたい。自分は相続放棄したい。そういう場合,相続人申告登記を行うメリットはないと思います。   そういう土地について,相続人の1人であることを登記された場合には,固定資産税の納付書がきてみたり,当該不動産の近隣からクレームがきてみたり,屋根の修繕やってくれとか,そういうことの窓口になるだけなので,恐らく,使用予定がなくて,売却することもできない不動産について,あえて相続人申告をする人はいないのではないかと思います。   あまり利用されない制度を作るより,所有者の死亡が判明した時点で,自動的に相続発生の事実を記録上に付記登記する。そして,一定期間,相続税の納税期間は10か月なので,10か月たったら法定相続分で登記してしまうとか,そういう方が合理的なのではないかと思います。   次に,第2の「登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」です。これは,相続登記のところでも言ったのですが,基本的に,不動産登記情報データベースの構築に向かって動くということが前提ではあるのですけれども,第一段階では,やはり進めるべきと思います。   本来の所有者不明土地の定義,「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない,又は,判明しても連絡が付かない土地」という定義からしたら,登記簿上の住所と住民票記載住所が一致していないという状況を改善することが第一歩だと,最初の名張市の御担当も切におっしゃっていた。   所有者不明理由の66.7%が相続未登記で,住所変更の未登記が32.4%と,比率の問題で,これが第2項目になってきたのでしょうけれども,本来,これは第1項に置くべきだろうと思います。   この2の③のところに「登記官は氏名又は住所の変更の登記を行う」という記載がございます。これは,読み取り方ですけれども,新たな仕組みに関わる規定の施行後の住所変更については,登記官は職権で行うものと解されます。そうなれば,大変良いと思います。   住所変更登記に関しては,不動産取引に関する経済行為を伴わないため,変更登記を行う動機は,極めて低い。そこからすると,これが所有者不明土地を増やす一因になっているのではないかと思います。今回の改正によって,住所変更登記を登記名義人の申請によって,登記官の職権で行うとすれば,所有者不明土地の発生を抑制する効果は極めて大きいと思います。   これはもちろん,1の相続登記の義務付けの仕組みにもつながります。   新たな仕組みに関わる規定施行前からの不動産所有者が既に住所移転をしていて,登記を放置していた場合,所有者自身の住民票や戸籍附票を添付して,登記所に届ければ,登記官が職権で変更登記を行える。こういうことをやれば,現時点で,住所変更登記が行われていなくて,一見所有者不明だとされている土地は,かなり解消されるのではないかと思います。   現実的に,例えばAさんがB県に住んでいて,C県に投資用の不動産を持っている,D県に相続財産を持っている。Aさんが今住んでいるB県の中で引っ越しをしても,あえてC県,D県の登記所に住所変更登記は申請しません。必要なのは,そこの地方自治体に,「固定資産税の納付書はこっちに送ってください」と連絡するだけで済みます。   地方自治体は,登記上の所有者でなくても,固定資産税さえ払ってくれれば,誰が払ってくれても構いません。先ほどの死亡者課税が行われているような状況と一緒ですから。特に地方自治体から不動産登記を直せとも言ってこないので,この状態が続いていくわけです。   これを,先ほどの土地所有者数約4,000万人という観点で見ると,B県に住んでいるAさんと,C県,D県の不動産を持っているAさんは,別人格になるんですね。これを一致させていかないと,有効な不動産登記情報のデータベースは作れないのではないかと思います。   今は,登記所管轄の中では把握できるものの,登記所をまたがっていて住所が違うと,所有者をうまく見付け出せない。第1の4の「所有者不動産目録証明制度」。相続人が「この被相続人は,どこに相続財産を持っているのでしょう」と問い合わせても,現行のままでは,うまく機能しない。   この注釈に「ただし,現在の登記記録に記載されている所有権登記名義人の氏名又は名称又は住所は,過去の一時点のものであり,必ずしもその情報が更新されているものではない」という記載があります。これも,まず現在の登記住所を,できるだけ速やかに正しいものに変えていくということによって,正確性は上がってくるのではないかと思います。   最後に,全般を通しての意見ですけれども「権利部甲区登記の義務付け」ですね。   この中間案は,いろいろなところを読んでいると,相続登記関係,住所変更登記等に「不動産の表題部所有者についても,引き続き検討する」という注記が,非常に多くあります。そもそも所有者変更や所有者の住所変更情報を記載する権利部の登記が義務付けられていないことが問題なのではないかと考えます。   住所の移転や相続登記を付記する上でも,表題部の所有者欄に付記するというのも,当然ながら不自然だし,表題部所有者の,異動・変更があったら,きちんと甲区を作れという規定はあります。   登記情報,戸籍情報,住民票情報を連動させたシステムを作ろうとするときに,表題部の登記だけだと,うまく連動できないですね。きちんと甲区が作られて,その甲区の各項目と連動していかないと,多分働かないと思います。   不動産登記法の第28条で,表題部登記を登記官が職権ですることができるとなっています。第47条で,建物表題部登記は義務付けられています。しかし,保存登記は第74条で,表題部の所有者又はその相続人,その他の一般承継人以外の者は申請することができないとされています。所有者関係者以外は甲区を起こせないわけですね。ここを直さなければいけない。   保存登記は義務ではなくて,今現在,登記官が保存登記を職権で行う規定もない。この登記法を改正して,権利部甲区の登記を,まず義務化していくべきではないかと考えます。   全体的に俯瞰をして見ると,正しい所有者情報を登記していなくてもよいという曖昧な制度の上に,所有者の義務である固定資産税の納税という制度を乗せているというところに,システム上の無理があるのではないかと思います。   地方自治体は,徴税のために,必死に所有者情報を追い掛けます。だから,地方自治体の方が所有者情報を持っています。今回,ようやく登記官が固定資産税の徴税部局から情報を取得できるという方向になったわけですが,本来これは逆だと思います。   日本の国土の土地情報は,登記所がきちんと把握して,そこに徴税部局等が乗っていくというシステムをきちんと考えていく。これを考える,そして実行する期間というのは,恐らく,あと5年,10年が勝負になるのではないかと思います。   ○山野目部会長 一般社団法人不動産協会の意見を伺いました。   6人の参考人の皆様方から頂いた御意見を踏まえ,これより委員,幹事の皆様方からの御質疑をお願いいたします。   参考人のどなたに対する質問というふうに,一つ一つ区切らないでお願いするということにいたしますから,どうぞ委員,幹事におかれては御随意に,どの参考人に対するお尋ねでもよろしゅうございますから,御発言いただきますよう望みます。   いかがでしょうか。 ○増田委員 6人の参考人の方,どうもありがとうございました。   私の方から,実務の取扱いということで,冒頭に御説明を頂きました名張市さんの方に一つお教えいただきたいんですが,先ほど資料の,ちょっとページ数が書いていないので,2枚目の裏の方に,条例の施行状況についてという横長の表がございまして,平成21年から30年まで,ずっと件数が書いてある表がございます。   この表を拝見しますと,途中のところで,勧告書を発送した件数,それから措置命令書を発送した件数等々,これは,いずれの年も3桁でありますけれども,それから,戒告書を発送した件数がぐっと少なくなって,最初の年だけ多いんですが,あとは全部1桁,それから代執行等々ということになってきます。   この措置命令書を発送した件数が3桁あって,その次,戒告書を発送した件数がこれだけ少なくなっているので,措置命令を発送したことによって,皆さん措置を採られて,残ったものに戒告書を発送したというか,ここの,最初の年だけはちょっと違うんですが,あとは,ぐっとそこが少なくなってきているんですが,この戒告書を発送したところは,多分恐らく,あまり実行しないので,そのまま代執行をやったのと,かなり数字が一致しているんですけれども,この3桁から1桁に減った,このところは,その前の段階で,大体皆さん従って,草刈りだ何だ実施して,それだけ1桁に少なくなったと,こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。 ○岡本参考人 頂いた御質問について御回答いたします。   この件数の差につきましては,資料でお付けさせていただいています対応フローの方を御確認いただいてもよろしいでしょうか。   こちらの裏面の方ですかね,対応フロー(2年目以降~)というものが,御相談を受けて,1年度分,対応いたしまして,対応が見られなかった,除草していただけなかったところについては,次年度対応ということで,年度を持ち越して対応してまいります。   おっしゃっていただいたように,戒告書を送ってからの代執行件数が,ほとんど一緒ということで,ほとんど戒告書を送った人に対して,代執行を行ったという認識で正しいことではあるんですけれども,我々の対応の流れといたしましては,2年目以降に引き継いだ次年度対応を行っている方につきましては,まず勧告・命令について,随時対応を行ってまいります。   その後,近畿圏内,我々名張市から自動車で所有者訪問ができるようなところに居住の所有者さんに対しましては,所有者訪問を致しまして,できない遠方地につきましては,同じように,文書による指導を続けてまいります。   そうして大体,これが9月の頭辺りになるんですけれども,まず戒告前通知書というもの,これは表の方には載っていない文書になるんですけれども,戒告書の前に送る戒告前通知書という文書を発送いたします。こちらは,この2年目の対応に入らせていただいている空き地に対して,全部お送りさせていただくんですけれども,この戒告前通知書を送った後に,代執行を行うかどうかの,まず基準に沿って判断を行うという手続がございまして,その手続をした後に,代執行を行うと確定したところにのみ,戒告書というものを発送しております。   なので,戒告書を送ったものは全て,戒告書を送ってから対応が見られたところ以外ですね,戒告書を送って対応がなかったところについては,代執行を行いますという形で,代執行令書を送って,代執行を実施いたします。   なので,そうですね,2年目に所有者訪問などを行って,戒告前通知書を送った後に,代執行を行うかどうかの選定が挟まって,それの選定に進んだ,代執行を行うとなった方のみの戒告書の通知になっておるので,ちょっと件数が少なくなっているという形でございます。 ○増田委員 ありがとうございました。   したがって,下の方の表を見ますと,お金も後で回収しているんですかね。これ,大体件数と合っていますが,ですから,今おっしゃったのでよく分かりましたが,戒告書の発送というか,これは代執行と非常に絡んでくるので,措置命令でいろいろ,目に余るのは随分あるんだけれども,そのほかに,実際に代執行まで行ってやるかどうかの基準が1個あって,それで,そこで代執行をするかを判断して,そこはだから,ぐっと絞られて,それで代執行までいくと。 ○岡本参考人 そうですね,はい。 ○増田委員 それで,金は後で,こういうふうに取り戻すということですね。   だから,市民さんの皆さんの意識がいろいろあるんでしょうけれども,勧告書,それから措置命令書を送るぐらいだと,なかなか従っていただけない方は結構やはりいて,それで,その中でうんと目に余るやつだけは代執行すると,こんな形だというふうに理解してよろしいでしょうか。 ○岡本参考人 はい,大丈夫です。 ○増田委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 進行の御案内が一つございます。   冒頭に大谷幹事から,藤巻参考人におかれては,午後4時に退席なさる御予定ですから,藤巻参考人への質問は,その時刻までに,という御案内を差し上げたところでありますが,その後,御予定が良い方向にお変わりになったということで,特段の時間の制約がないという報告を受けておりますから,委員,幹事の皆様におかれましては,それを踏まえて,御質疑をお願いできればと考えます。   引き続き,御質疑を承ります。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   私も,岡本参考人に1点お伺いしたいのですけれども,よろしいでしょうか。   頂いております資料の,増田委員がお使いになったものと同じ4ページ目の3項で,緑色のラインのある表なんですけれども,例としてこれの平成30年のところを見ますと,御対応になった区画数が6,359件,それから,対応件数777件というふうになっていくんですけれども,この一連の作業に,市役所の職員の方のマンパワーというんでしょうか,手間暇というか,どのぐらいの人数を掛けていらっしゃるのでしょうか。 ○岡本参考人 そうですね,御回答させていただきます。   実務の処理をしている職員自体は,正職が2人と,あと臨時職員さん1人で行っておりまして,窓口の対応や電話の聞き取りなどは,全職員,うちの環境対策室の9人で行ってはおるんですけれども,その中の2名とプラス1,3名で行っております。   この中で,条例の対象となった空き地の区画数というのが,まず6,400ほど出ておりますが,ここの対象となる区画につきまして,まず一番最初,我々,具体的に申しますと,5月の頭ほどに,のり付けタイプの封書のお手紙みたいな,おはがきの形の文書を全員にお送りさせていただいておりまして,それらを調査するというのは,これは外部の業者にお願いをしているんですけれども,そういったリストのピックアップであるとかは,全て2名で行っておりまして,ここから,御相談があった区画数というところが真ん中に表に挟まれておるんですけれども,これが約300件,こちらについては,全区画,現地を確認しに行きまして,写真を撮って,文書を送っております。   こちらの対応件数と出てきています777件につきましては,これは,同じ所有者さんに何回か,同じではないですね,文書,4ステップありますので,同じ所有者さんに4ステップ文書を送って,それでも対応が見られなければ,もう1回という形で,5回,6回送っているということも含めた上での,全文書の発送数になっております。なので,この分だけ,言ってしまえば,現地に向かわせてもらって,写真を撮って,文書の作成を行ってという行動が生じております。   加えて,この対応件数の中には含まれてはいないんですけれども,先ほどちらっと,対応フローを見ていただいた際に,所有者訪問を行うというお話をさせていただきました。これについても,30年の数字はちょっと記憶がないんですけれども,今年度につきましては,おおよそ27件ほどの所有者訪問を行いましたので,それについても,1日掛かり,2名単位の職員で現地確認等を行っていくという業務が発生しております。 ○中村委員 ありがとうございます。結構です。 ○山野目部会長 引き続き伺います。平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   最初に,全日本不動産協会さんにお尋ねしたいと思います。   8ページ目ですけれども,「所有者不明土地等に関する特命委員会の検討結果に関する所感」のところで,以下の点を注視しているということで,二つ目のポツに,「税制面(相続税等)の減免措置も検討してほしい」というのがございますけれども,減免することによって,どういう効果があるのかというのを教えていただきたいと思います。   相続税は,税制全体でいうと,常に注目されている税制でして,所得再分配機能の強化から議論がされている面もありますので,相当の効果があるのであれば,議論の課題になるかもしれませんし,そんなに効果がなければ,ちょっと難しいかなという印象もありますので,考え方をお聞きしたいと思います。   それから,三つ目の「住民票データ等の突合とこれからの紐づけ」のところでありますけれども,死亡届が出された場合は,自動的に登記情報をリンクするようにしてほしいという形になっています。これは登記情報,住民票データと登記情報のリンクというところでいうと,住民票データが登記情報と直接リンクするようになると,逆に登記情報が閲覧が制限されるというふうな考え方も出てくる可能性があります。   住民票の方は閲覧制限が相当強くありますので,それが登記情報と自動的にリンクしてしまうと,逆に登記情報が自由に見られなくなってしまうという可能性もありますけれども,その辺,どう考えていらっしゃるのかというふうなことをお聞きしたいと思います。   それから,すみません,全国住宅産業協会さんにお聞きをしたいと思います。 ○山野目部会長 平川委員,一つずつなさっていただいた方が分かりやすいものではないでしょうか。 ○平川委員 そうですか,分かりました。 ○山野目部会長 最初に,山田参考人を指名なさいましたか。 ○平川委員 はい。 ○山田参考人 私,ちょっと難聴なもので,的確に御質問を分かっていなかったら失礼してしまうんですけれども,すみません。   一つは,税制面で相続税を減免するということについて,基本的に,いわゆる登記が,相続登記が行われないということを,今後市場において,積極的に進めていくということに関しては,何らかのインセンティブ付与策が必要であるということが,今,国の中でも検討されているところだと思いますが,私どもとしますと,そういう面で,ある一定の控除とかが行われるようになれば,相続登記も積極的に進めていただけるのではないかと思っております。   先ほどちょっとお話しさせていただいたのは,いわゆる公信力のない,任意だった登記を義務化するということになりますと,私どもが考えるのは,登録免許税が掛かるというのは,ちょっと負担感があり過ぎる。これは,土地の評価によって全然違ってくるわけでございますが,その辺は難しい部分もあると思いますが,基本的にはそういう,どの程度の効果があるかというのは,ちょっと判断難しいんですが,一つのインセンティブ付与策としては必要ではないかと。   なおかつ,それは,過料の部分では,罰則の部分では,先ほど申し上げたとおり,ある一定期限に登記すれば,それは相続登記の一部控除がありますけれども,その期限を過ぎてしまった場合は,そういう控除は一切しませんよというふうなこともペアにして,できればいいのかなというふうに考えております。   それから,そもそも登記,もう一つの質問の登記のことに関してですが,やはり,我々不動産業者としますと,かなり前から,いわゆる住民票,いわゆる住民台帳関係,所有者不明土地,不明空き家を探すために,宅建士にそういう権利を与えてほしいということをお願いしているわけですけれども,なかなかそこは難しい。いろいろな事例ができまして,各地域で,行政の方で,ある程度それが進んできましたけれども,まだ,我々民間業者はそういうことができない。   せめて私どもとしますと,ただ宅建士ではなくて,不動産業の免許を持った会社に,きちんと登録している宅建士に限っては,そういう情報も欲しいといってきているところですが,なかなかそれはできない状況で,そうなってきますと,やはり,基本的な考え方として,どちらも行政のデータであるんですが,そもそも,土地は誰でも見られて,会社の登記簿謄本も誰でも見られて,住民票だけ,そういうものが見られないということ自体が,我々の中でも,ちょっと疑問に感じる部分が前からありました。   だから,そこはやはり,逆に登記で,その土地の所有者というのは分かるわけですので,住民票で自宅が分からないということだけが,非常にプライバシーの面でということが,一つはちょっと,今後考えていかなければいけないことで,やはり,個人のカードもできたわけで,それはそもそも,いろいろ,持っている不動産だったり,所得であったりというデータを一元化していこうという国の政策もあったわけですから,やはりこういうものは,確実に行政間で情報が流れていって,やはり自動的に,そういうことが法務局でも分かって,変えられていくというのが,実務的には望ましいのかなと思っております。 ○山野目部会長 平川委員,ここまではいかがですか。 ○平川委員 考え方としてお伺いいたしました。 ○山野目部会長 では,お続けください。 ○平川委員 続いて,全国住宅産業協会さんにお伺いいたしますけれども,3ページの5ポツの「売買等による所有権の登記の義務化」のところで,相続による登記の義務化だけでなく,売買による所有権移転についても義務化すべきではないかということで御提言いただいております。   私も,なぜ相続だけが登記の義務化なのかというところについて,国民に対する説明責任が重要ですよねということを,この間発言させていただいているところです。複雑化していくんだというふうな御説明がありましたけれども,今日は実務として,この辺をもう少し詳しく,もしも事例がありましたら,どういう事例か,それも含めて,補足の説明いただければと思いました。 ○花沢参考人 ありがとうございます。   今回,相続による,やはり所有者不明土地が起こることが多いというんですけれども,売買も,売買がされるというのは,価値があったり,また何か,そこに求めるものがあるからされるということになるんだと思うんですけれども,その段階はいいんですけれども,売買が繰り返されることによって,あるときに,そこでやはり相続が絡んでくると。売買と相続が重なってくることがあります。そうすると,なかなかそこから物がスタートしない。   相続というのは,御承知のとおり,円滑にいく相続と,また,そうでない場合があります。そうすると,なかなかその時点で難しくなることがあります。それで,これが,先ほども市街地とそれ以外という話がありましたが,やはり価値があるかないかで,ものすごく変わってくる考え方です。   先ほどの外国人の説明申し上げたとおり,外国人が購入されるというのは,やはり価値があると思って購入されるわけでありますけれども,その場合には,やはり知らないから,その先が相続で知らないからというケースもあるかと思います。   この売買が,やはり所有不明になるというのは,直接はなかなかないかと思いますけれども,繰り返しで,相続と合併したときにと,こんなことを思っております。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○平川委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 引き続き承ります。吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。   私も名張市の方にお聞きしたいのですけれども,貴重なお話をありがとうございました。   実務に携わる中で,所有者の方を直接訪問して,お会いになったりということを続ける中で見えてきた課題がもしあれば,教えていただきたいと思います。  名張市の条例は,宅地と雑種地の雑草を対象とする限定的なものとのことですが,実際に取り組まれる中で,所有者の声を聞いて,地域の土地の保全,利用,管理において,どういう課題が今見えてきているか。また,制度上,どういう対応が今後必要だとお考えか,御自身の経験から,具体的に教えていただければと思いました。 ○岡本参考人 お答えさせていただきます。   まず,訪問等,所有者さん自身に関わること,関わる中で,どういった問題が起きているか,所有者さんのお話,どういったことがあるかということに関しましては,我々が御訪問させていただく対象の方というのが,フローチャートに記載されています2年目以降,1年度対応を行って,何度か文書を送らせていただいた後に,御対応いただけなかった土地に関してでございます。   おおよそ,住民票などをまず請求して,きちんと所在地を確認してから向かわせていただくんですけれども,もちろん,住民票を請求した後,場所を確認した後,それでも現地で会えない方というのはございます。それは,不在である場合が多いんですけれども,例えば,今年あったのは,表札の名前が違うために,御訪問する際に,まず御訪問させてもらって,ピンポンやノック等させてもらって,会えれば,そのときお話をお伺いできるんですけれども,例えば会えない場合でありますとか,会えなくて,御本人かどうか確認ができない場合,若しくは,住民票で請求した住所にお家がもうない場合,あとはもう一つ,今年度ありましたのが,事業所に御訪問した際に,その事業所が空っぽ,空き家の状態になっていて,所在が確認できない場合等がございました。   そういったところにつきましては,今後,御本人さんがどこにいられるかという調査の分類に関しまして,我々が口出しできることではございませんので,情報として管理はしていくんですけれども,対応困難案件,対応不可能案件として,我々の方で,こういった状況だったということを後世に引き継いで,どんどん今後の対応,何か進展があれば,その際に対応していくという形で,案件を引き継いでおる状態でございます。   会えた所有者さんに関しましては,およそ皆様,我々会いに行く際に,名張市で御紹介しております空き地の除草業者の名簿と,あと,どういった対応を行いますという報告書と誓約書を出していただくように書類を仕立てて,持っていくわけでございますが,そういったものを持参した際に,やはり,お金がないというお話をよく聞きます。   今日のお話にもありましたように,団塊の世代さんが,今後の財産として土地を買われたというお話を,やはり多く聞きますので,そういった方たちが高齢者になってきまして,言ってしまえば,そのマイナスの負の遺産として残ってしまっているがために,自分の世代でけりを付けたいけれども,どうしても売却に足が向かないであるとか,いい方向が見えないであるとかというので,管理自体も半ば諦めているような様子の方たちがやはり多いです。   そういった方たちに,例えば我々が,管理の方法として,例えば,こんなところに御相談してみたらどうですかなどのお話をスムーズにできるような体制があればよいと思うのですが,なかなか我々の方で,そういった形で,不動産業者さんなどにお話をお伺いするといった機会が,ちょっとこれまでなかったものでして,そういった,言ってしまえば,条例外,業務外のお話にはなるんですけれども,そういった形で,何か所有者さんのサポートができるような,我々のノウハウづくりといいますか,関係づくりというのを,今後進めていく必要があるなというのを一つ思っております。   そうしまして,次,2点目にお伺いいただいていましたのが,地域の問題として,どういうものが挙がっているかということでよろしかったでしょうか。   こちらにつきましては,我々名張市の方,地域づくり組織といたしまして,各団地でありますとか,地区ごとに代表者さんを置かせていただいて,その下に,さらに区長さん,自治会長さんなどがいるという制度を採っておりまして,お渡しさせてもらった資料1の名張市についてというところに,地図が1枚あるんですけれども,この中に,名張市の詳細な地図の方に,例えば上から,美旗でありますとか桔梗が丘,すずらん台,こういった形で地名が書いてあるところには,1人代表者の方がいらっしゃっていただいています。我々も,こういった代表者の方々からも御相談を頂くことはございまして,個人さんからは,お隣の土地に,そういった不良状態の空き地があるのでという具体的な相談から,地域の方たちであれば,全体的に不良空き地を抱えていて,今後どうしていくべきかという,言ってしまえば,ざっくりとした御相談を頂くことが多いです。   その際に,我々といたしましては,御相談いただけましたら,我々の方で指導の対応をさせていただきますというお話をしつつも,自治会さんの方で,例えば条例外のお話,例えば樹木の伐採の御相談をしたいでありますとか,隣地の石が落ちてきたなども,それこそ民民でしていただくような話に対しては,我々,個人様から御相談を頂いた場合は,行政では対応は難しいですというお話を率直にさせていただいた上で,自治会さんの御協力を仰いでみてはいかがですかという御案内の方法をさせていただくことがございます。   これは,各地域の方々が空き地の問題に対して,非常に積極的な背景がございまして,各地域の方々が,今後,不良空き地について,どうしたらいいかという御相談を受けた際には,我々の方でさせていただける対応と,あとは今回,こういった形で,土地の登記を取っていただいて,そこにお手紙を出していただく方法など御紹介していく中で,地域さんが,そうしたら自分たちの地域で,できる限りのことはやってみるという御回答を頂ける地域が多いということはございまして,個人様から,行政で抱え切れない案件などについては,地域の方にお願いする場合がございます。   そういった流れで,地域さんにいろいろ御対応をお願いさせていただいたり,自主的に動いていただいている中で,やはり所有者不明の土地の問題が大きくなってきていると思います。   これは,説明の中でも申し上げたことでございますが,名張市として,行政として行う行政指導の対応につきましては,住民票等の登記簿から,さらに発展した情報を手に入れることが可能にはなるんですけれども,自治体さんや個人さんで動いていただく,自治会さんですね,で動いていただく場合には,やはり登記簿の情報から一歩進むことができない,又は,そこから発展して,利害関係者となれば,また話は変わってくるとは思うんですけれども,基本的には,登記簿の情報で何とか対応を行っていくしかないということが多いので,そういったときに,同じように所有者不明で,郵便戻りが起きてしまったなどのお話を頂くことが多いので,そういったことが地域の問題として,今多いのかなとは感じております。 ○山野目部会長 吉原委員,いかがですか。よろしゅうございますか。   引き続き御質疑を承ります。いかがでしょうか。   委員,幹事の皆様におかれましては,特段の御発言がないというふうに受け止めさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。   それでありましたならば,6人の参考人の皆様方から御意見を聴取する機会を,ここまでといたします。   この際,一言御礼を申し上げます。本日は,岡本参考人,山田参考人,内山参考人,杉浦参考人,花沢参考人,藤巻参考人におかれましては,あらかじめ入念な準備をしていただき,また,資料も本日のために御用意いただいた上で,この席上,大変有益な御意見をおっしゃっていただき,また,委員,幹事からの質疑に対応していただくことがかないました。深く御礼申し上げます。   この会議におきましては,これから,頂いた御意見も踏まえて,与えられた諮問事項についての成案を得るべく,調査審議を進めてまいります。その過程におきましては,本日お寄せいただいた御意見を参考にさせていただくとともに,場合によっては,法務省事務当局を通じて,御意見を更にお伺いするということもあるかと思います。その節は,どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。   委員,幹事の皆様に御案内いたします。本日,内容にわたる議事が終わりましたところから,事務当局より,次回の日程の御案内を差し上げます。何か部会の運営について,御意見がおありでいらっしゃる際は,それを踏まえてお尋ねしたいと考えておりますから,まず法務省事務当局の方から,申し上げた案内を差し上げます。 ○大谷幹事 次回の日程でございますけれども,3月17日火曜日,午後1時から午後6時までということでお時間を頂戴しております。場所は,ここの地下1階大会議室になりますが,3月10日まで,パブリックコメントを実施しております。その結果を,できる限りのところで取りまとめて,その時点での概要の説明をさせていただきたいと思っておりますし,また,その時点での結果を踏まえて,民法・不動産登記法の見直しに向けた具体的論点について,また部会資料を作成して,皆様にお諮りしたいと考えております。 ○山野目部会長 委員,幹事の皆様方から,部会の運営につきまして,何かお尋ねや御意見がおありでいらっしゃるでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会の第12回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-