性犯罪に関する刑事法検討会 (第2回) 第1 日 時  令和2年6月22日(月)  自 午前9時56分                       至 午後0時24分 第2 場 所  法務省第1会議室(オンライン会議システムを使用) 第3 議 題  1 ヒアリング         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○岡田刑事法制企画官 ただ今から性犯罪に関する刑事法検討会の第2回会合を開催いたします。 ○井田座長 おはようございます。本日は御多用のところ御出席賜りまして,誠にありがとうございます。   なお,本日,池田委員及び小西委員は,所用のため欠席されています。   まず,議事に入ります前に,前回会合を欠席された木村委員に自己紹介と御挨拶をお願いしたいと思います。なお,前回の会合でも申し上げたとおり,木村委員には座長代理をお願いしております。それでは,木村委員,自己紹介と御挨拶をお願いいたします。 ○木村委員 木村でございます。先日は欠席で失礼いたしました。東京都立大学の法科大学院で刑事法を専攻しております。   今回参加させていただくに当たって,監護者による性犯罪について特に関心を持って議論したいと思っております。そのほか,皆様方のいろいろな御意見も伺って勉強させていただきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○井田座長 次に,本日お配りした書面について事務当局から確認をお願いします。 ○岡田刑事法制企画官 本日皆様にお配りしている書面は,議事次第のほか,配布資料として資料9,参考資料として参考資料3から5まで,前回の第1回会合の後に団体から法務省に寄せられた要望書,ヒアリング関係の書面としてヒアリング出席者名簿,ヒアリング出席者の略歴等,ヒアリング出席者からの提出資料がございます。   それでは,配布資料について御説明いたします。   まず,資料9「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」について御説明します。   平成29年の「刑法の一部を改正する法律」附則第9条は,性犯罪の実態に即した対処を行うための総合的な施策の在り方について検討を加えることとされているところ,関係府省が連携してその取組の強化を検討・推進するため,内閣府,警察庁,法務省,文部科学省,厚生労働省の担当者による「性犯罪・性暴力対策のための関係府省会議」が開催され,本年6月11日,今後3年を集中強化期間として,検討すべき施策やその実施時期などを取りまとめた強化方針が決定されました。その内容は,再犯防止,支援,教育・啓発など多岐にわたっておりますが,刑事法に関する検討については,資料9の2ページに記載されておりますとおり,法務省において取りまとめた「実態調査ワーキンググループ取りまとめ報告書」で指摘された意見も踏まえつつ,幅広く意見を伺いながら,速やかに,かつ丁寧に,検討を進め,検討結果に基づいて,所要の措置を講じることとされています。   次に,参考資料についてです。参考資料3から5までは,平成29年改正後に,性犯罪への対応等に関して,各政党から政府に提出された書面です。   参考資料3は,昨年6月に立憲民主党から法務省に提出された「性犯罪刑事法の見直しについて」と題する要望書,参考資料4は,本年6月に自由民主党から法務省等に提出された「性犯罪・性暴力対策の抜本的強化を求める緊急提言」,参考資料5は,本年6月に公明党から官房長官に提出された「性犯罪・性暴力対策の抜本的強化に関する提言」でございます。   資料の説明は以上でございます。 ○井田座長 それでは,議事に入りたいと思います。   ヒアリングを行う方については,前回の会合の後,委員の皆様の御意見を踏まえて案を作成し,その案に対する委員の皆様の御意見を伺った上で決定したものであります。   今回ヒアリングを実施するに当たり,短い準備期間であったにもかかわらず,対象者の推薦の御意見,また,案に対する御意見等をいただき,さらに,御出席いただくこととなった方々との連絡や調整に御協力いただいた委員の皆様には,改めてお礼を申し上げたいと思います。   前回の会合でも申し上げたとおり,幅広い観点からの検討に資するため,法務省の実態調査ワーキンググループで実施したヒアリングや本検討会の各委員の専門分野となるべく重複しない形で,必要な知見と情報が得られるように対象者を選定した上でヒアリングを実施することが適切である,こういう基本的考え方に立ってヒアリングを行うこととし,本日はお配りしたヒアリング出席者名簿に記載されている4組5名の方からヒアリングを行うことといたします。   5名の方の御略歴,御専門等につきましては,お手元の「性犯罪に関する刑事法検討会 ヒアリング出席者略歴等」と題する書面に記載されておりますので,御参照ください。   本日の進行としては,ヒアリング出席者名簿の順にお一人ずつ,あるいは一組ずつウェブ会議に参加していただき,15分程度御意見を述べていただいた後,10分ほど委員の皆様からの御質問にお答えいただく,こういう流れで進めさせていただきたいと思います。   それでは,始めたいと思います。   1番目の方は,宮﨑浩一様,西岡真由美様のお二人です。男性の被害についてお話をいただきます。   おはようございます。御多用中のところ御出席いただき,誠にありがとうございます。本検討会の座長を務めております井田でございます。今日は本検討会のヒアリングに御協力いただき,心から御礼を申し上げます。   お二方からお話をいただきますので,まず,お二人合わせて20分程度お話を伺い,その後,委員の方から質問があれば10分程度御質問させていただきたいと思います。   それでは,よろしくお願いいたします。 ○宮﨑氏 宮﨑浩一です。よろしくお願いいたします。私は,博士後期課程で男性の性被害を研究しています。また,性暴力被害を受けた経験があります。研究者という立場から,自分の経験を通じてお伝えしていきたいと思っています。   まず,配布資料では,「男性の性暴力被害について」と題し,「1 男性の性暴力被害の概要」,「2 男性の性暴力被害の実際(報道されたもの)」,「3 男性の性暴力被害の実態から鑑みた現行刑法の問題点と提言」,「4 男性の性暴力被害をめぐる諸外国の状況」の4点について学術調査を中心にまとめています。   このうち,一つ目の「男性の性暴力被害の概要」として,男性被害者に向けられる「レイプ神話」や,男性被害者の数が無視できないほどに多いこと,男性の性暴力被害者が置かれている社会状況,女性と同様の被害後の影響があること,また男性に特徴的な反応や影響を概説しています。   三つ目の「現行刑法の問題点と提言」では,明らかな暴行や脅迫がなくても男性が性暴力被害を受けていることから,暴行・脅迫要件の撤廃,そして不同意性交罪の創設,また地位・関係を利用した性犯罪の検討が必要であること,さらに,性教育が十分に行われていないことや,第二次性徴の頃の身体や心理的成熟過程に照らすと,「13歳」という年齢は性交同意年齢としては低過ぎるため,その年齢を引き上げること。司法関係者等への研修の検討の必要性を提言しています。これからの私たちの発表と併せて御参照ください。   2017年に刑法が改正されたことは,それまで男性がレイプ被害者となり得なかったことを考えると,非常に大きな前進だと思います。ですが,男性の性被害は非常に長い間,社会的にも学問的にも残されてきた問題です。   資料1-2にあるように,男性が性的に不快な体験をしても真剣に捉えてもらえないことが少なくありません。私自身,長い間,自分の被害を被害だと認めることができませんでした。今でも過去の出来事を話すことには困難を感じます。   5歳頃,ペニスを触られていた被害体験は,断片的な,映像的な記憶しかありません。解離症状でよくあるように,自分を俯瞰的に見ているような映像です。5歳児も刺激に対して勃起します。そして,精通以前にも極めて単純で強烈な快反応が生じます。触られている感覚や臭い,音,時間,感情は統合されていませんでした。   思春期になって体の変化が始まり,徐々に性的な行為の意味が分かるまで,自分の記憶と日常は切り離されていました。   第二次性徴で身体的にも大きく変化を迎えていた14歳の頃,別の男性から被害を受けました。その日は乗り慣れていないタクシーに乗って体調が悪くなり,その男性から「休憩できるところへ行こう」と言われ,着いた場所が上野のラブホテルでした。「ちょっと横になればいいよ」と言われ,体調不良もあり,また土地勘のない場所で一人で帰るのにも不安があり,休める場所をと思い,入りました。   部屋の机には灰皿とビールが置いてあり,その人がテレビをつけるとアダルトビデオが流れ始め,休憩のはずが急にわいせつな雰囲気となり,その場から逃れられないと思いました。   ビールを飲まされ,初めて見たアダルトビデオとアルコールで混乱しました。その男性は私の全身をなめ,耳の穴,鼻の穴,肛門に舌を入れたりして非常な嫌悪感がありました。また,口腔性交と射精を強要されました。さらに,加害者自身が射精するまで私の陰茎をなめ続けていました。加害者の香水や唾液で異臭を放つ自分の体が,とても気持ち悪く感じました。   このことを誰かに相談しようとは全く思えませんでした。その男性についていった自分が悪いと思っていましたし,快感を感じてしまったことに罪悪感と自責感があったからです。そして,私が悪いと思われると信じて疑わず,10年以上誰にも話したことはありませんでした。   26歳になるまで,これらを「性被害」と結びつけられませんでした。なぜなら,「男性の性被害」という概念を持っていなかったからです。しかし,「からだの反応はあなたのせいではない」というある本の一節を読んで,ただ涙が止まらなくなりました。映像以外の記憶が結びついていないという,この分断を起こしていたのは体の反応でした。   これをきっかけにして,出来事と気持ちや感覚が結びついてきました。触られる感覚,口に入るペニスの舌触り,私の体をなめる舌の動きなど,それらがまざまざとよみがえり,耐え難いものになりました。   当時,男性の被害について書かれている日本語の本はほとんどありませんでした。これほど男性の被害は無視されてきたのです。   男性が性暴力被害に遭うということが社会的にも法的にも適切に理解されていなければ,性被害を認識することすら困難です。男性に限らず被害体験は様々です。被害者が存在しているのにもかかわらず,その経験が被害だと定義することを被害者には許されていませんでした。   私は,現行刑法は改正前に比べると非常に改善したと思いますが,問題点も残されています。   1点目は,性交同意年齢です。資料3-3と表の3を見ますと,男性の射精とマスターベーションの初体験年齢分布は思春期頃に高い割合を示しています。つまり,この頃に性的な自身の身体を知っていき,理解していくということです。知的な理解力の問題ではなく,成熟していく自分の体をその機能やそこに伴う感情など様々な変化を受け止めていく時期なのです。ですから,その時期に性的な同意を十分に検討することは難しいのです。   こういった少年の被害についても研修や検討会の議論で取り上げ,性交同意年齢の引上げを検討していただきたく思います。   2点目は,挿入に関する検討の必要です。   強制性交等では陰茎の挿入が性交等の要件となっており,物や舌などの身体の一部の挿入被害がレイプ被害として認められませんが,物や体の一部を挿入される被害も多くあります。男性には,意思に反した勃起や射精が起きます。これは刺激に対する反応ですから,望んでいるということにはなりませんが,この反応に乗じて加害者への挿入を強要される被害も起こります。   また,このような反応に対して,加害者から,例えば「体は正直だ。気持ちがいいのだろう。」と,あたかも被害者が望んでいるかのような言葉をかけられたら,非常な恥辱感,罪悪感を生じさせますし,そのことから被害を打ち明けることは余計難しくなってしまいます。   また,身体的反応が視覚的に分かりやすい男性身体の特徴は,加害者や,その被害を知った第三者との間にも状況の定義をめぐる葛藤を引き起こす可能性があります。   「膣」に加えて,「肛門,口腔」への挿入を性交等と改正したように,陰茎だけではなく物も含む挿入物の拡大を考えていただきたいと思います。   また,勃起や射精の強要は,挿入を伴わなくとも甚大な性的な侵害行為です。単に触るか,挿入かという行為の問題だけではなく,それらの性的な侵害程度も踏まえて議論されていくべきだと思います。   性暴力の問題には,ジェンダーに基づく差別や,性的マイノリティに対する偏見や差別など強くあります。男性といっても性自認,性指向,割り当てられた性別など性的な在り方は様々です。   その上で最後に1点申し上げたいと思います。性という極めて個人的で根源的なものへの被害は誰しもが受ける可能性があり,重篤な影響があること,そして,被害に適切な対応がされ,被害者の負担が少なく相談や訴えができるように,被害者の立場を第一に検討していただきたいということです。 ○西岡氏 初めまして。京都大学大学院で臨床心理学を学んでおります西岡と申します。本日は,どうぞよろしくお願いいたします。   私は,2015年より,京都府性暴力被害者ワンストップ相談支援センターで支援員として関わってきました。同年,学部3年次に編入学しましたが,支援員として活動するうち,男性の性暴力被害のことを自身も社会も十分に理解していないという思いを抱き,卒論や修論で複数名の男性の性暴力被害者の方々にインタビューをさせていただきました。   本日は,そのような実践や活動を基に,男性が性暴力被害に遭うとはどういうことかということと,刑法改正における課題を述べたいと思っております。   プライバシー保護の関係上,これからお話しする中で,一部議事録を非公開にしていただきたい部分がございますことを御了承いただけましたら幸いです。また,検討会以外の場でケースを口外されませんよう,よろしくお願いいたします。   (具体的事例(A)を紹介)   現行刑法では,強制性交等罪,強制わいせつ罪が成立するためには暴行・脅迫要件が必要とされていますが,Aさんの場合,少人数の組織の中における教員という力を持った人物からの働きかけにより,徐々に教員から逃れられなくなって,被害に遭いました。   Aさんは,教員から法的な意味での暴行・脅迫を受けたわけではありませんが,組織の中での関係性があるがゆえに逃れられなくなったと考えられます。組織内で地位・関係がある場合,加害者と対立することは非常に困難なことだと思います。男性の性暴力被害の実態から考えても,暴行・脅迫要件の撤廃と地位・関係を利用した性犯罪の処罰が必要であると考えます。   (具体的事例(B)を紹介)   現行刑法では,13歳未満の者に対して性行為をした者は罪に問われることになっていますが,Bさんのケースから考えると,子供の場合は自身に何が起こったのかの把握が難しく,周囲に信頼できる大人がいなかったり,加害者に脅されたりしていると,自分の体験を話せません。男性・男児の性暴力被害はいまだ社会的な理解が得られず,被害が遷延化し,深刻化することが多いと考えられます。そのためにも,司法関係者や警察の中でも男性・男児の被害についての研修を十分に行ってもらい,被害者の訴えがより受け取られるようになってほしいと思っています。   性交同意年齢以下の子供への加害行為については,その後の深刻な影響を考え,法定刑を上げるべきだと考えています。   (具体的事例(C)を紹介)   Cさんの場合も法的な意味での暴行・脅迫はなかったのですが,酩酊・睡眠状態で意識のはっきりしない中での被害で,また社会生活上の上下関係性もあり,抵抗しづらかったと思われます。恐怖もあり,相手と争うことなくその場を逃げ去りたかったという思いもあったようです。   抗拒不能とまではいかずとも,酩酊・睡眠などの影響で,正常な判断下での自発的な同意が示せないときに性行為を強要された場合も刑法で罪が問えるようになれば,このような男性の被害も救済され,社会に対しても国としての姿勢が示されるのではないかと考えます。   支援員としての活動をしたり,これまでの統計調査の結果から推測する中で感じることですが,お伝えした方々のお話は,例外的で特別なケースではありません。男性の性暴力被害は女性以上に認知されておらず,被害者は声を上げにくい状況にいます。男性の性暴力被害を減らし,被害者の人権を守るためにも,ぜひ私たちの提案を御検討いただきたく存じます。 ○井田座長 ありがとうございました。それでは,委員の中で御質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○齋藤委員 宮﨑先生,西岡先生,ありがとうございました。本当に貴重なお話をいただき,大変有り難く思っております。   私も男性の性暴力被害の調査をしまして,男性は暴力的な被害でないと人に相談もできていないということがありました。男性のレイプ神話として,男性は力が強いのだから性暴力被害のときに抵抗できるのではないか,暴力がないということは同意だったのだろう,というような考えが根強く残っているように思うのですが,成人男性同士の被害について何か特徴的なことであるとか,お考えのことというのはございますでしょうか。質問が漠然としていて申し訳ありません。 ○宮﨑氏 特徴について,実証的なデータというものはなく,印象論になるのですが,成人男性同士の場合,酩酊時に屋内へ連れ込まれて被害を受けたり,睡眠中の被害など抗拒不能の状態での被害だとか,また地位関係を利用したり,電車内での痴漢行為,公共浴場で勃起したペニスを見せつけられるというわいせつ行為があります。痴漢被害や突然の加害行為などで驚愕や凍りつきで抵抗できない状態が生じることがあります。こういった抵抗が難しい状況での被害というのが1対1の被害・加害の関係の中では多い印象があります。   しかし,明らかになっていない被害があると思うので大規模な実態調査が望まれると考えています。 ○山本委員 宮﨑先生,西岡先生,ありがとうございました。男性性被害について私自身も学びながら考えているところなので,貴重なお話を聞かせていただき,ありがとうございます。   質問が2点ありまして,一つは2017年に刑法性犯罪が改正されて,男性もレイプ被害者として認められるようになったとおっしゃっていただきましたけれども,その後,被害を訴えやすくなったとか,起訴されやすくなったことなど,変化として感じているものがあったらお伺いをしたいと思います。   もう一つは,性交同意年齢を引き上げていただきたいという話が出ましたが,それは幾つぐらいに引き上げると適切と考えられているのか知見をお伺いできればと思います。よろしくお願いします。 ○西岡氏 では,一つ目の質問について私の方から答えさせていただきます。   法改正の以後,男性が被害者の事案で強制性交等罪や準強制性交等罪で起訴されて一審判決が言い渡された件数として,法務省刑事局の調査で29件という数字があって,恐らくこれまで強制わいせつで一くくりにされていたものについて,より内容に見合った罪名で判断がなされているとは思います。   ただ,性犯罪の認知件数の推移では,法改正以後,件数が増えたわけではなくて,司法で取り扱われやすくなったということは一概には言いにくいのではないかと思います。   また,支援の場にいる者の実感としては,実際の相談件数が多くなったという印象は,それほどはないのですけれども,一部のワンストップセンターのパンフレットなどでも,「男児も被害に遭う可能性がある」ということが記されて,意識啓発にはなっていると思いますし,実際に男児の被害が届け出られるということも少し増えたのかなということは思います。   ただ,先ほども挙がりました成人男性の被害の申出というのは,いまだほとんどないというふうに感じております。 ○宮﨑氏 二つ目の性交同意年齢の引上げについて,私から回答させていただきたいと思います。   私たちは,射精やマスターベーションの初体験年齢分布だとか,そういった思春期頃の性教育ということも考えると,義務教育終了程度にまで上げることが望ましいというふうに考えています。16歳頃までに引上げを求めたいと思っています。 ○井田座長 複数の委員の方から御質問があるようでございます。時間の関係もありますので,一問一答ではなくて,まとめて質問していただいて,その後まとめてお答えいただくということでよろしいでしょうか。   小島委員,それから金杉委員,2人から質問の挙手があるようですので,小島委員からお願いします。 ○小島委員 どうもありがとうございました。いろいろ実態が分かって,とても参考になりました。ありがとうございました。   先生方への御質問ですけれども,刑法の改正が必要だというお立場から御発言いただいたかと思いますけれども,男性特有の性的な傷つきやすさというか,バルネラビリティ,つまり脆弱性というか,そういう点についてはどのように考えているかをお聞きしたく思いました。   と申しますのは,西岡先生の方からいろいろ事例が御紹介ございましたけれども,例えば先生と生徒の間とか,雇用主と従業員の関係だとかというのは,これは力関係の優劣で出てくるわけで,特に男性被害者というわけでもなく,女性の被害者でも同様な被害が起こるわけでございます。   それと,スウェーデン刑法の規定を参考にした御提案をいただきまして,私もスウェーデンの刑法改正については大変興味を持って,関心を深めているところでございますが,その中で,どうしてそのような提案をするのかをおっしゃっているレジュメの8~9ページのところに,男性の場合でも酩酊とか睡眠時の雰囲気とか薬物の混入とかということがある,これは女性でも同じことですが,男性の場合でもそういうことが起きるということをおっしゃっていらっしゃる。ところで,男性独特の傷つきやすさ,例えばセクシャルマイノリティの方だと,西岡先生がおっしゃったように,アウティング,つまり,性的指向や性自認を本人の同意なく暴露するとか,そういうことが弱点になるというのは想像がつくのですけれども,それ以外に男性が性的な被害者になったときに,性的弱者になるというか,男性特有の傷つきやすさについて,先生たちが被害を見ていて,感じていることがあれば教えていただきたいと存じます。 ○金杉委員 私からお尋ねしたいのは,成人の男性同士の性被害の事例の場合に,先ほど驚愕や凍りつき等で抵抗が明確にできない場合があるというお話がありましたけれども,そういう方々のケースで,幼少期に性的虐待ないしは性的でなくとも虐待経験がある方というものは,感覚的に,統計的ではなくても結構なんですが,そういった御経験がおありの方の割合というか,全くそういう被虐体験がない方でも男性からの被害で凍りつき,抵抗ができないというようなことがあるのかどうかといったあたりをお聞かせ願えればと思います。 ○西岡氏 まず,小島委員からの質問は,男性特有の性的傷つきやすさとは何かということを質問していただいたかと思いますけれども,私が考えるのは,やはり男性は性被害に遭わないというような認識が世の中にあって,そして被害に遭った男性自身もそういうことを自己の意識下に内在化していると思うので,まず被害体験の定義のされにくさというものがあると思います。ですので,体験を認め難いというか,ものすごく混乱の中にあるのだけれども,それが何かが分からない,だけど,ものすごく苦しいというような傷つきやすさというのがあると思っています。   これに対して,女性の方が性暴力に遭う可能性があるということは認識としてはあると思うので,もちろん,ものすごく傷つくのだけれども,定義のされにくさとかということは余り女性にはないように思います。   さらに,特に加害者が男性である場合に自分のセクシュアリティが揺らされてしまうというような傷つきやすさというのがあると考えています。   また,金杉委員からの質問で,成人の被害で驚愕とかフリーズと言われるようなものがあるけれども,幼少期に虐待とか,そういう逆境経験を体験した方の割合ということでお聞きされたと思いますけれども,統計的なことはちょっと分からないのですが,支援に当たったりとかお話を聞いたりする中で感じるのは,特にそういう虐待といったことに遭わなくても十分に起き得るものであるということを感じています。 ○宮﨑氏 西岡先生からおっしゃっていただいたことで十分だと思いますが,補足的に少し,成人同士の場合,過去に虐待があったのかどうかという点ですけれども,私も西岡さんと一緒で,成人同士の被害の方が過去に虐待に遭っていたこともあるし,遭っていなかったこともあります。ただ,少し傾向が違うという印象があるのは,過去に性的な虐待を受けたり,性的な視線にさらされてきた人の方が,被害認識を持つに至りやすいような印象があります。   ただ,実際に不意の加害行為であったりするときには,やはり同じようにフリーズだとか驚愕というものはあると私は感じています。 ○井田座長 時間が参りましたので,これで終了とさせていただきたいと思います。宮﨑様,西岡様には,本日はお忙しいところ非常に有益なお話をお聞かせいただきまして,誠にありがとうございました。   検討会としても,御提供いただいた様々な事例を学んで,これを踏まえて議論していきたいと思っております。検討会を代表して,心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。   2番目の方は岡田実穂様です。性的マイノリティの被害についてお話をいただきます。   おはようございます。本日は御多用中のところ御出席くださり,誠にありがとうございます。本検討会の座長を務めております井田と申します。今日はヒアリングに御協力いただき,心から感謝申し上げます。   まず,岡田様から15分程度お話を伺い,その後委員の皆さんから質問があれば10分程度御質問させていただきたいと思います。   それでは,よろしくお願いいたします。 ○岡田氏 Broken Rainbow-japanの岡田実穂と申します。   資料1について解説をさせていただきたいと思います。   このお話の中では,資料3としてお渡ししました冊子を同時に見ていきながらお話をさせていただければと思います。   【資料1:スライド1】(以下,岡田氏発言部分中の【 】内は,全て資料1のスライド番号。)今日は,「LGBTIQAの性被害 被害の現実と望まれる法制度」ということでお話をさせていただきます。   事前に頂いたヒアリングのテーマの中で,LGBTの人たちのセックスの態様,在りようについてお話をいただきたいとのことだったのですけれども,その話については,今日はしません。大事なことだと思いますのでお話をさせていただくと,性暴力について話すときにセックスの話をしなければいけないということ自体が間違いではないかというふうに思っています。   【スライド2】LGBTIであろうがなかろうがですが,この被害についてしっかりと考えるということ,また,LGBTに関して「特別な人への特別な人による特別な被害」と考えないということについて,今日お話をできればと思っております。   【スライド3】被害の現状と最低限必要な法改正とは何かということで,この5点について主に話をしたいと思っています。   「男性器」の介入が構成要件である性器規定を撤廃すること。   また,「手指器具等」による性暴力を規定すること。   そして,憎悪犯罪(ヘイトクライム)を暴行脅迫の要件として加えること。   そして,レイプシールドを導入すること。レイプシールドに関しては,レイプサバイバーが訴訟において不利益を受けないようにするため,被害者の過去の性的経験を問わないということです。   また,IPV(親密な関係における暴力)を暴力であると規定すること。   このことについて話をしていきます。   【スライド4】まず,LGBTIQAの性被害の実態ですが,こちらは冊子の9,10ページを参照いただければと思うのですが,ここで提示している,例えばCDC(アメリカ疾病管理予防センター)の調査などにおいても,LGBTIQAの被害は,総合的に,いわゆる一般の女性に比べて高いと言われています。特にその中でもトランスジェンダーやバイセクシュアル女性,無性愛者,インターセックスに関しては,こちらスライドでお示しをしていますものにもありますが,バイセクシュアル女性に関しては「生涯の中でレイプ被害に遭っている」というのは46%,2人に1人程度とあります。ここで例示したのは同じような数字,2人に1人程度はあるという人たちです。ほかの人が低いというわけではないです。   また,LGBTの性被害について話すときによく誤解されがちなのが,LGBTの人たちの間で暴力被害があると言われることです。こちらでお示ししている「初めて性被害経験を持った年齢」というところを見ると,11歳以下から24歳までで全体の8割弱になります。ということは,かなり年少者,年が低い段階で性暴力被害に遭っています。   ということは何を示すかというと,ほとんど多くの場合というものが,いわゆる性暴力で,女性の被害について言われてきたとおり,身近な人からの性被害である確率がすごく高いということです。   【スライド5】また,DVについて,ドメスティックパートナーの暴力に関して,資料3の10ページに数字でお示ししていますとおり,性別違和のない異性愛者の方に比較すると被害率がどのデータでも高く出ています。男性同性間が比較的少ないのかなと思われる方もいると思うのですが,そこは男性同士で親密な関係になったとき暴力被害があった,性暴力があったというときに,性暴力から身体的な暴力に発展するケースがすごく高いと言われています。そうしたことで,現実的に傷害事件として可視化されることが多くなっているようだと言われています。私たちのところにも,そういった相談はよく来ます。   全体を通して,社会的な差別とか偏見があるという中で,自分たちの関係性を言えないということによって閉じられた関係が多く,人に対して被害を開示することがより難しくなっています。また,関係性を認める法規定,要は,同性婚の規定がないことから,同性パートナーというものが社会になかなか認識されにくい。例えばですが,DV防止法は前回改正の際に「配偶者」という言葉が入りました。そのことによって,それまでは適用されていたLGBTたちの被害,同性間での被害というものに適用されなくなっています。なぜこれを今ここで言うかというと,今回の改正において配偶者に関する議論も出てくると思いますが,どうかその言葉を使わないでいただきたいということです。「配偶者」という言葉が入ることによって排除される人間がいるということをお伝えしたいと思います。   また,今までお示ししたものに関してはアメリカでのデータになります。日本で相談を受けている中で,全くこのことに関しては違和感がない。アメリカのデータだといって日本と違うとは全く思っていませんが,日本での数字というのはすごく少ないです。特に国が調査をしていないということが実態としてあると思います。   【スライド6】お示ししているのは,宝塚大学の日高庸晴教授が1999年から経年調査をしているLGBTの調査です。当初はゲイ,バイセクシュアル男性でしたが,2016年からLGBT全般を対象としています。   この中でも性暴力,DVの被害経験というのが聞かれていまして,全体を通して一般のいわゆる女性というカテゴリーよりは高くなってきています。ゲイ,バイセクシュアル男性で低くなっているということで,全体の合計は,低くはないのですが,低く見えがちですが,この一個一個の属性を見ていくということが重要なことですので,こちらを見ていただくと高いということは分かるかなと思います。この論文については資料5以降でつけさせていただいているので,貴重な資料ですので,ぜひお読みいただければと思います。   今までお話ししたように,LGBTの被害は被害率がとても高いということになっていますが,その当事者の現実と社会の現実にかなりギャップがあります。   【スライド7】こちらにお示ししているのは,今年,私たちの会で,インターネット上でアンケートを取ったものですが,「LGBTや男性が性暴力被害に遭った際に,性暴力被害のワンストップセンターなどで適切な支援が受けられると思いますか」という質問に対して「受けられると思う」と答えた人は18%です。「断られる」が一番高くなっているのです。現状がこれだけ被害率が高いという中で,なぜこの状態が生まれてしまっているのか。そこには,加害者を後押しする社会というものがあると思います。   【スライド8】冊子の中でも12ページに書いてありますので,ぜひ読んでいただければと思いますが,そもそも日本においては,「強姦罪」において,長い間,LGBTの存在というのが不可視化されてきました。また,「被害は女性のもの」という法が後押ししてきた社会認識があります。そして,LGBTIQAの人たちという意味では,現実に被差別体験をしています。差別や偏見に基づく支援や捜査,法の執行の在りようを間近で見てきています。そして,大事なことは,加害者はこれらの現実を利用しているということです。こうしたことを利用した形で,当事者たちに沈黙を強いるということをずっとしてきていると思います。   【スライド9】法律が加害者に利用されているという状態から,被害者を後押しする法に何とか変えてもらいたいと思っています。法の在りようというのは社会の規範を作るものであると思います。であれば,よりよい社会に向けた法制を皆さんにお願いしたいと思っています。   【スライド10】暴行・脅迫要件についてですが,差別があることを前提に考えれば,「身体的な抵抗や拒否」をすることができないということがあるのは明白です。   例えば,明示的に,明らかに自分たちはLGBTIQAであるということをアウティングする,他者に暴露するということを脅される。脅すということを明示的に言われなかったとしても,そのことを少しでも,もしかしてこの人にばらされるかもと思った瞬間に何も抵抗ができなくなってしまうというようなことは幾らでもあるわけです。   そうした差別を基にして生まれている,差別を理由にして,言い訳にして行われる加害行為に関してはヘイトクライムとしての規定がやはり必要になると思っています。   また,「出会い」の始まりが何であれ,どの職業であれ,被害は被害であるということ,レイプシールドが必要だということに関して。LGBTコミュニティというものは,そこまで大きくはありません。なので,各地方ごとに,何とか同じような人たちに出会いたいと思ったときに,必ずしも性的な,セックス目当てということではなくて,出会い,本当の友人を探したいという意味でも,SNSとか出会い系サイトを使います。通常に使います。それを理由として被害の申告を断られる,受理されないということが相次いでいますので,レイプシールドが必要です。   また,配偶者のみならず,IPV(親密な関係における暴力)に関して明確に定義をしていただきたいです。   【スライド11】そもそも性器を規定することは必要かということです。   【スライド12】本来,性というのは非常に多様なものです。だけれども,社会によって単一化されています。   【スライド13】身体的な性別を100%定義することはできない。トランスジェンダーやインターセックスなど,既に私たちの社会には多様な性があることは疑いようがありませんが,「多数派の外性器」のみを基準とした定義はそもそも困難です。   【スライド14(ホームページ上は画像非掲載)】ここでお示ししているのは,インターセックス,性分化疾患の方の性器の在りようについてですが,もちろん,この形状が全てということではなく,様々な形で外性器,内性器,そして染色体の状態が,医療的な男女,いわゆるマジョリティの性器とか性の在りようと違うというとき,このときに強制性交等罪においての男性器,女性器というものを私たちはどのように判断すればいいのでしょうか。その場合に,この人たちは法廷に立てるでしょうか。立って,自分の性器を開示するということを求められるのでしょうか。   最初の方に被害率の話でお示ししたように,現実的にインターセックスの人たちがその性器の在りように関して標的にされ,被害に遭うということは私たちの相談にも来ています。   【スライド15(ホームページ上は画像非掲載)】また,性器形成におけるグラデーションという意味で左側にお示ししているのは,いわゆるミニペニス,マイクロペニスです。また,右側の一番上,「a」と示されているものは,ホルモン治療の過程においてクリトリスが肥大している状態,またそこから性器形成,陰茎形成をしている状態ですが,今の法規定の中では,この陰茎形成をしている,これは途中ですけれども,陰茎形成をしたものだけ,似ているからという理由で法律の適用対象となっています。しかし,それが本当に適当なことであるか。   【スライド16】「あなたの性器は正しい性器ですか」ということをなぜ国が法律で決めなければいけないのかということ。全ての性器がそれぞれの人間にとって正しい性器なのです。   【スライド17:ホームページ上は画像非掲載】そして,またここにお示ししているのは全て性器ではありません。ディルド,エピテーゼ,ペニスバンド。前回の改正時に,男性器であることの理由として「身体密着性が高い」ということが言われていましたが,これは高くないでしょうか。   【スライド18】また,身体に侵襲するということを問うとすれば,性暴力というのは一番最初に言ったとおりセックスではないです。性暴力は,セックスの罪ではなくて,性を用いた暴力である。   【スライド19】割り箸であるとか木の棒であるとか鉄パイプであるとか,バイブ,ペン,電球,食べ物,カッター,銃,指,手,腕,足,様々なバリエーションがあります。このことについて,果たして日本はいつまで強制性交等罪として取り締まらないのかということです。   妊娠というリスクがあるという話をする方もいると思いますが,そもそも口腔内,肛門を入れた時点で,強制性交等罪は,そうした性差は撤廃しているはずです。   【スライド20】これが今日お話ししたこと,「男性器」,「手指器具」,ヘイトクライム,レイプシールド,IPVに関してということです。   【スライド21】ほかに関する意見は資料4に要望書という形でつけさせていただきましたので,ぜひ御覧いただければと思います。 ○井田座長 ありがとうございました。それでは,委員の方で御質問がある方は,ぜひしていただきたいと思います。 ○山本委員 貴重なお話をお聞かせくださり,ありがとうございました。   二つ質問があります。先ほどおっしゃられた憎悪犯罪なのですけれども,これは具体的にはどのような文言を予想されているのか。例えば,侮蔑的な言葉を言いながら強制的な性交をしたということを処罰したいという意味なのかということ。   また,性被害自体が訴えにくいという特徴があります。さらに,LGBTQI,セクシャルマイノリティの方が訴えにくいという社会的な事情,また司法の現状などもあるかと思います。その場合に,時効が強制性交等で10年,強制わいせつで7年ということなのですけれども,時効についてどのようにお考えか知見を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。 ○岡田氏 まず,ヘイトクライムについてお答えします。   文言についてですが,日本の法規定というもの,条文について見ていくと,なかなか難しいものがあるなというふうに思ってはいます。ですが,差別に関して,これはLGBTに関してだけではなく,例えば障害を持った方であるとか様々な,例えば被差別部落に住む方もそうでしょうし,世の中には様々な差別というものがあります。この差別に関して,これらを利用する形で加害をした者に関してはというところで条文に入れていただきたいと思っています。それは,何を利用してということ,差別を利用した性暴力というものを明確にしていただきたいなというふうに思っています。そうしないと,差別の被害に遭っている人たちにとっては言葉が出しにくいというときに確実にここに文言が入っているのだということが重要になってくると思うのです。特に刑罰が加重されていくような国においてというところだと,これが入れやすくなってくるのだと思うのですが,日本で集団強姦罪が前回消えてしまったというところもあって,私はできれば戻していただきたいのですが,その文脈の流れでつくっていただきたいというふうに,ヘイトクライムについては思っています。   また,時効に関してですが,これは多くの思いもあって,私たちのメンバーの中でもいろいろ話し合ったのですが,時効は撤廃していただきたいということがあります。どうしても,その被害に遭った,特に話の中でもお伝えしたように若い頃に被害に遭った人たちが多くいます。その人たちにとって,この被害について語れるようになるまでというのは,本当にたくさんの時間が必要になる。そのことに関しては,例えば成年後,10年,20年とか,時効の停止ということも考えたのですが,結局のところ,50歳になって,60歳になってようやく言葉を持つという人たちをたくさん見てきました。その人たちに時効が経過してしまっているとはやはり言いたくないという思いがあるので,私は,時効は撤廃していただきたいと思っています。 ○井田座長 ほかに御質問ございますでしょうか。 ○金杉委員 今日はありがとうございました。   1点お伺いしたいのは,性器等ではなくて,道具等の身体侵襲性を伴う行為というのは強制わいせつ等で処罰は可能かと思うのですが,それが身体への侵襲性が大きい,性交と同視すべきであるのに,性交等に含まれないという部分を問題に感じておられるのか。一段軽い刑,もっと重く処罰してほしいという,実質的に重く処罰していただきたいという御希望なのか。その点をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。 ○岡田氏 その点については,先ほどお示しした中で,私としましては,現実的に例えば性器というものであるとか,性器が膣に入る,肛門に,口腔にということに関して,前回の審議会,検討会の中で,よく「その必要性について」というのが語られる中で,「精神的な負荷」という言葉が使われていました。その際に,「性差を撤廃するということをしました」と言っている。膣,ペニスだけではないという状態にしたという中で,どこに差異が出てくるのか。口腔とペニスであれば精神的負荷は同じ。結局のところは,精神的負荷が低い,高いということをジャッジした上で法律がつくられているのです,議論の中で。   という中では,どれだけの負荷が違うのかということ。物を入れられた,手を入れられた,腕を入れられたということに関して差異があるという状態がおかしいんじゃないかというふうに思っているのです。それは,強制性交等罪ではなく,強制わいせつでもいけるでしょうということに関しては長らくずっと言われているのですが,でもいけるからといって,それでいいのかということです。   例えば,同性愛者に関しては,結婚じゃなくて,いろいろな書面で何とか暮らせるじゃないかということが言われますが,では,それに甘んじていていいのかということを考えなければいけない。だって,差異がないのです。精神的負荷になど差異はない。そして,どのような器具を使われようが,どのような物を使われようが,サバイバーにとって,被害を受けた人にとっては本当に本当に人生に関わるほどの大変なことが起きているのです。そこに明確な差異がないにもかかわらず今の状態を続けるというのは,まさにこの法律自体が差別を助長しているものだというふうに私は思っています。違いがないからです。   あと,私,1個だけ言い忘れたことがありまして,LGBTに関して,コミュニティの中では起きていなくて,いろいろな場所で身近な人から起きているというふうにお伝えしたのですけれども,ただ,だがしかしで,自らのアイデンティティというものがその後の生きにくさに大きくつながってくるということ,相談を受けてもらえない,法律が適用されない,そうした中で大きく当事者たちの負担になっているということもぜひ考えていただければなと思います。   以上です。ありがとうございました。 ○井田座長 ほかにございませんか。それでは,これで終わりとしたいと思います。   お忙しいところ非常に有益なお話をいただきまして,ありがとうございました。今後,私どももお話を十分にそしゃくして,それを踏まえて検討会で議論を行っていきたいと思っております。検討会を代表して,心から御礼を申し上げます。ありがとうございました。   3番目の方は野坂祐子(さちこ)様です。子供の被害についてお話をいただきます。   野坂先生には,御多用中のところ御出席くださり,誠にありがとうございます。本検討会の座長を務めております井田でございます。本日は,検討会のヒアリングに御協力いただき,検討会を代表して心からお礼を申し上げます。   まず,野坂様から15分程度お話を伺い,その後,委員の皆様から質問があれば,10分程度質問させていただきたいと思います。   では,よろしくお願いいたします。 ○野坂氏 本日はよろしくお願いします。   【子どもの性被害:スライド1枚目】(以下,野坂氏発言部分中の【 】内は,全て同資料のスライド番号。)野坂祐子(さちこ)と申します。大阪大学大学院人間科学研究科で教育心理学を担当しています。専門は,発達心理学を子供の教育や援助に応用するという発達臨床心理学です。本日は,子供の発達の特徴や,子供が被害体験をどのように捉えるのかといったことについて,主に成人との違いをお話ししたいと思います。また,最後に,性交同意年齢の検討に当たって参考になると思われるデータをお示ししたいと考えております。よろしくお願いします。   【スライド2枚目】まず,子供は性犯罪に巻き込まれやすく,性加害者の言いなりになってしまいやすいことについて御説明します。子供というのは,そもそも,大人の言うことを聞く,非常に従順であるように育てられていますし,そのように振る舞う存在です。基本的には,子供は,大人のことを,自分を愛してくれる,世話をしてくれる,遊んでくれるというふうに認識していますし,そうあるべきです。そのため,子供は大人のことをまず疑わないですし,大人に逆らうということは通常見られることではないわけです。例えば,先生が「こっちにおいで。」と言えば行くし,「やってごらん。」と言ったら,そこでやらないということはまずなくて,やってみるということがふだんの生活でも起きています。加害者は,そういった子供の認知や行動の特徴とか,そうした子供らしさみたいなものをうまく利用して,性加害に及んでいます。   そこで加害者が用いているのが,グルーミングという手なずけ行動です。これは,子供相手の性犯罪者のほとんどが間違いなく使っているものだと思います。かわいがるふりをして近づくとか,褒めてあげるとか,何かお世話をする。ですから,そういったことができる立場にある人は,非常に巧妙に子供に性暴力を振るうことができるわけです。実際に私が関わった子供のケースでも,加害者の多くが何らかのスポーツのコーチや,お世話になっている塾の先生だったりとか,治療者として体を触って治してくれる人だったり,幼稚園や学校の先生だったりというふうに,いつも子供がお世話になっている相手でした。ですから,子供は,疑うどころか「いつもありがとう」という気持ちで近づいていく,そういう関係がベースにあります。あるいは,全く知らない相手であっても,子供にとっては数分でも遊んでくれる大人は,すごく優しくて,すごく楽しいことをしてくれたと感じるので,全く知らない人ではなくなってしまうのです。   脅しの仕方も,もし本当に刃物を持って脅かすなどということをしたら子供は泣き出してしまうかもしれないので,加害者の多くは,そのようなことはしません。大抵口止めをします。子供に罪悪感を持たせるような言い方で。例えば,「これを言ったら,あなたが怒られるよ。」とか,「お母さんが悲しむよね。」といったような言い方をして脅す。子供はとてもおびえますので,何かされたことを口にできなくなってしまいます。   【スライド3枚目】そもそも,子供は,大人と随分違う感覚を持っています。例えば,大人であれば,誰かに急に触られたり,大きな声を出されたら,「怖い」というふうに思うわけですけれども,でも,子供って,例えば,「わっ」と声を出して「ひゃあ」とびっくりしたりするのがすごく楽しいわけです。くすぐったりとか,それから「高い高い」をしたりとか,ああいうちょっと怖い身体感覚とかというものがとても面白いわけです。それは,我々大人とはかなり違うところです。ですから,性被害に巻き込まれて,「何か変だな。」とは思っても,その変な感じというのが悪いことをされているとは思えなくて,むしろ「何だろう。」という好奇心を高めてしまったり,そういうちょっと怖いことが,スリルがあるような感じがしたりする。それは,うまく加害者が,子供の嫌がらないような手だてを講じるからなのですけれども,そうした理由によって子供は性被害を「嫌だ。」と思いにくいということがあります。ですから,子供に,「怖かったら言ってね。」とか,「すごく大変だったね。」,「ひどかったね。」と言っても,ぴんとこないことがあります。むしろ,子供は誰かに触られることで安心する。これは大人にはない感覚ですよね。知らない人に「いい子だね。」と頭をなでられたり,だっこされたりすることが日常生活の体験としてあるわけです。このように,子供が大人から世話をされるとか,ちょっと怖いことに興味を持つというのは,子供の特徴であり,それを「ニーズ」と言います。子供は,本来,安全であるはずの身体接触や大人の関わりを求めている存在なので,そうした子供のニーズを悪用する性加害から非常に免れにくいといえます。   それは,言うまでもないことですが,こうした子供の特徴があるからといって,子供が加害者の性行動に同意しているわけではありません。子供は,3歳くらいでは,まだ排せつの自律も十分にできていませんから,子供にとって性器というのは,セクシュアルなものではなくて排せつの器官にすぎません。5歳,6歳でも,性別がどのように違うのかを理解できるようになる段階です。アニメの「クレヨンしんちゃん」のイメージが分かりやすいと思いますが,そのくらいの年代で性の同意とか性行為の意味なんていうのは分かるわけがない。繰り返しになりますが,加害者は,そういう,子供が性のことをまだ分かっていないという発達の未熟さを悪用します。つまり,ab(アブ)-use(ユース)する。「abuse」は「虐待」と訳されますけれども,そういう子供の能力や状態を利用している,悪用しているといえます。   【スライド4枚目】また,子供は,大人からの性暴力だけではなくて,子供間での性問題,性行動に巻き込まれることもあります。子供同士といっても,加害児童の方が何らかのパワーを持っているということが大半です。   諸外国では,例えば2,3歳の差があった場合,子供同士であっても,力関係があるとみなされます。性問題行動をした子どもへの教育をする際にも,「それは遊びではなくて,無理やりさせた性暴力なんだよ。相手は断れなかっただけなんだよ。」という説明をします。年齢差の持つ意味はとても大きいですが,それだけではありません。ここで言うパワーは,子供の場合,すごく流動的です。これも大人と違う点かもしれません。   いじめの例を考えると分かりやすいかもしれませんが,どういった子が同じクラスの子でパワーを持つかというのは,日によって変動します。学校の先生の覚えのいい子がパワーを持っているときもあれば,翌日はそういった子がすごくパワーを失っていじめられるということもあったりします。ですので,何が子供にとってパワーになっているのかということは,その文脈や生活をよく見なければ分からないことがあります。   なので,家庭生活が難しいということで社会的養護に保護された子供たちの中には,年齢だけではなく,施設への入所時期の長さ,つまり,古株の子の方がパワーを持っているということもありますし,もっと単純に,体格がいいとか,そういったことがパワーになっていることもあります。この辺は,子供同士の性問題行動が単なる遊びなのか,暴力なのかということを見極める際に,アセスメントとして重要なポイントとなってきます。   もう一つここで触れておきたいのは,子供が性加害をするときは,その子供にも何らかの被害体験がある場合が圧倒的に多いということです。家庭での虐待や学校でのいじめ被害もありますが,なかには性被害もある。つまり,そうした被害のケアがされずに,混乱したままであると,ほかの子にも同じような暴力をしてしまうことがあります。これを行動化といいます。被害の後に行動化がみられやすいのも,子供の特徴です。特に,性被害体験は「何をされたのか。」が分からず不安になるため,ほかの子にもやってみるとか,もやもやした気分を遊びの中で表したり,性的な絵を描いたり,性的な言葉を言ったりすることがよくあります。そうした行動化によって,自分がされた性被害を他の子どもにするという性加害行動に転じることがあります。   大人の場合,性被害に遭った女性が性加害をするというケースは一般的ではありませんが,子供は,性被害によるもやもやした気持ちを行動,遊びで表すということは非常に一般的で,そういったことで被害・加害が繰り返されていくこともあります。ですから,新たな性暴力を止めるという点からも,性被害を予防したり,早期にケアをしたりすることがとても重要だと思っています。   【スライド5枚目】子供のそういった被害の受けやすさに加えて,更に障害があったりすると,その脆弱性は更に高まります。   例えば,私が関わったケースでは,障害があるお子さんに対して,親御さんも学校の先生も,安全に気を配って「真っすぐ帰っていらっしゃい。」と教えていました。防犯教育のつもりでそう教えていたのですが,子供は文字通りに受け止めてしまいます。バスを待っている間に体を触られたのに,その子は,どうしたらいいのかの選択肢として「真っすぐ帰る」ということしか習っていなかったので,バスが来るまでずっと触られて,逃げることや助けを求めることができませんでした。交番が近くにあったにもかかわらず,そこに駆け込むという選択肢はなく,バスが来るまで被害に遭っていた。もちろん,加害者はその子が毎日バスを待っているという行動パターンを把握しています。そういったことで,いくら大人が安全を教えていても,子どもが身動きできなくなることもあります。   このように,知的な能力や障害の特徴として,言われたまま受け止めて身を守れなくなるといったことがあります。また,生活の中でいじめられていたり,学校や地域に居場所がなかったりすることによる孤立や退屈があると,加害者に声をかけられると,すごく嬉しくなってついていってしまうことがあります。   当然,これは本人の同意というものではありません。その子がふだん孤立していて,疎外されているということが問題であって,ついていく方が悪いという話ではありません。こういった寂しい思いをしている子供たちが狙われているというのが現状です。男の子も,自分が男の子であるということで性被害を打ち明けにくく,それが性被害を受けやすくなるという脆弱性につながります。   【スライド6枚目】子供は様々な面での脆弱性を持っています。   まず,そもそも子供は,赤ちゃんであれば動けないですし,小さな子であればお世話されていなければいけないので,逃げたりできない。ですから,乳幼児への性虐待は,逃げようがないという点で,脆弱だといえます。大きくなったからといって,子供は自分で生活の場を変えたり,引っ越したりできないわけですから,家庭内や地域内での性被害に遭い続けるリスクが高いといえます。   最初に申し上げた子供の信じやすさや何事にも興味を示しやすいといった子供の特徴は,本来,発達的に言えば強みなわけです。子供が豊かに成長していく上で,それらはとても大事な能力なのですが,そこが悪用されて脆弱性になると言えます。   そして,性被害を受けた後の傷つきやすさという脆弱性も,大人以上に深刻です。   子供は,心の傷だけではなく,体の傷も負いやすい。膣や肛門,ペニス,口の中に,性器や物を入れられた場合,子供はまだ体が成熟していませんから,性器の裂傷が起きやすかったり,出血や傷口から感染症にかかりやすかったりします。このように体の外傷も受けますし,その痛みをうまく言葉で説明できないことから,性被害や外傷・疾患の発覚が遅れることもあります。子供自身が性被害について親に言えないことがまた,「親に秘密がある。」ということの罪悪感につながり,「自分は悪い子だ。」という自責感を高めてしまいます。それによって,ますます自信を持って振る舞えなくなり,新たな性被害に遭いやすくなるというふうに,どんどん脆弱性が高まってしまいます。   【スライド7枚目】精神的な症状としては,成人と同じく,解離,あるいは記憶の健忘もみられます。年齢が低かったり,身近な人からの性虐待の場合,精神的な混乱が非常に大きくなるため,解離症状や記憶健忘を引き起こしやすいことが,様々な研究で確認されています。   こうした精神的な混乱によって,「自分は駄目な子だ。」と思ってしまい,更に性被害に遭いやすくなることがあります。これを「再演」と言い,再び性被害に遭うというようなパターンが繰り返されたり,今度は自分が加害をするという形で暴力的な関係性を繰り返したりすることがあります。   今,記憶の健忘,解離と申し上げましたように,子供の場合は被害認識が遅れる,被害を自覚するまでに時差が生じるというところが問題になってきます。多くの場合,幼少期の性被害を認識するようになる時期の一つは思春期です。いろいろな知識を得たり,身近に性の話が増えたりしてくる時期です。性的な側面が発達し,性に関する知識や情報が増えていくのは年齢相応の体験ですが,トラウマ体験がある子にとってはそれらの変化や情報が引き金となる,つまり,忘れていた性被害の記憶を想起させるトリガーとなります。   3歳から5歳の頃に性被害に遭った子が13歳から15歳の思春期の頃にそれを思い出した場合,被害認識を持つまでに早くて10年かかるということです。その時点では,まだ気付かなかったり,不調はあるのだけれども,なぜなのか分からなかったりして,御自身の出産や子育ての中で思い出す方もいます。そうすると,20年,30年後に思い出すということです。このように,被害認識を持つには,相当な年数がかかることが多いといえます。また,被害認識を持った後,「ああ,そうだったんだ。」とすっきりするわけではもちろんなくて,加害者に対する怒りの気持ちや裏切られた気持ち,「親切にしてくれたと思っていたのに。」といった気持ちを抱きます。何よりも,自分自身に裏切られた気持ちを持つ方がとても多いです。「うかうかと喜んでついていってしまった私がおかしいのではないか。」とか,「自分の体が信じられない。」といった感じなど。そうした裏切られた感覚というのが,思春期,青年期を生きていく上では大きな苦しみになります。   【スライド8枚目】性暴力がどのような影響を及ぼすのかについて申し上げます。トラウマ症状によって生活,対人関係,学校生活がうまくいかないということがありますが,加えて,子供の場合,性暴力によって家族全体が傷つき,家族の機能が弱まってしまう,ゆえに子供が安全に暮らせなくなるといったことが起こります。   性暴力を受けたということを親が知らなければ,親は,子供のサポートができません。もし,子供の性被害を知った親が子供のケアをしたいと思っても,親自身が大きなショックを受けています。そして,親御さんも自分を責めています。「目を離すんじゃなかった。」と。子供の成長は親の喜びですが,子供が性被害を受けた親御さんにとっては,子供の成長は不安でもあります。「この子は,今は身に起きたことがよく分かっていないけれども,思春期はどうなるのだろうか,結婚できるのか,恋愛できるのか。」,そのようなことをずっと不安に思うわけです。そうした親の不安や心配によって,家庭環境が不安定になることがあります。性被害の影響で生じている子供の様々な行動が周囲に理解してもらえなかったり,性被害に対する無理解やスティグマといったものが二次被害になったり,そして,家族自体も脆弱になるなど,派生的な問題が起きてくることがあります。   そのため,子供への性暴力は,被害者は子供だけではないということ,家族,特に親は,間接的被害者であって,親御さん自身も傷つくし,家族全体が傷ついていくということを考える必要があります。   また,この図には,性暴力が起こる前の状態として,点線で「ネグレクト」という背景要因を入れています。例えば,きょうだい間での性暴力の場合,性暴力が起きた時点から問題が発生しているわけではなくて,そもそも,そういったことが起こりやすくなっている状況として,親の目が届きにくいといったネグレクト環境があることも多い。そうなると,きょうだいからの性暴力の影響だけでなく,ネグレクトによる影響もあるため,様々な影響が重層的に重なっていく点も考えていかなければなりません。   最後に,幾つかデータをお示しして終わりにします。   【スライド9枚目】性交同意年齢についての検討に関して,まず,同意の要件を整理する必要があります。単に,被害者も「いいよ。」と言ったとか,そういう点だけで同意の有無を判断すべきではなく,様々な構成要件があるということです。   ここに示している定義は,性加害をした子供たちに,「あなたがしたことは相手の同意を得ていないんだよ。」,「性的な関係を持つには同意が要るんだよ。」ということを教えるためのテキストで説明されている文書です。「お互い何が起きているか分かっている」とか,「これから何が起こるか分かっている」とか,そういう双方の理解なしに契約,つまり同意というのはできないのです。同意というのは非常に複雑なものですから,これができるのが何歳なのかということを考える必要があります。   【スライド10枚目】現行の13歳という年齢について,一般のイメージとしては随分成長しているように思われやすいのですが,データで見ますと,様々な面で発達途上であることがわかります。例えば,これは日本性教育協会が1974年から6年ごとに続けている全国調査なのですが,最新の2017年までのデータを見ても,中学生,つまり,13から15歳までが含まれた子供たちの中で,性交経験がある子が5%を超えたことはありません。つまり,20人に1人にも満たないのです。クラスの中に1人いるかどうか。男の子に至っては,4%あるか,ないかということです。高校生は,「今どきの子は。」と見られがちですけれども,データで見ると,性交経験者は,1割,2割にとどまります。大学生ですら半数程度の割合というのが実情です。   ただ,これは学校に通っていて,学校で調査を受けた子供の約4,000人が対象です。性体験がたくさんある子供たちは,この中に含まれていない可能性を考える必要があります。学校をドロップアウトしたとか,あるいは,非行によって施設処遇を受けている子供たちは,性体験が早い傾向があります。私が行った幾つかの調査では,小学5年生ぐらいから初交が始まり,中学生ぐらいだと,7,8割の女の子は性体験があります。でも,性交同意年齢をそこに合わせるべきではないでしょう。早期の性行動は,性被害体験の影響による性行動の活発化であると捉える方がよいと思います。一般の子供の性行動はこのくらいであるという実態について,まず理解しておく必要があると思います。   【スライド11枚目】また,13歳を迎えるまでの教育という中で,学習指導要領では,性交同意の能力が育てられているのかも考えなければなりません。これは小学校5年生の学習指導要領ですが,「受精の過程は取り扱わない」とされています。つまり,中学になって性教育すればよいという問題ではなく,小学校では受精の過程を学ばないまま,思春期を迎えているのが現状です。さらに,発達心理学の観点から言うと,親密なパートナーシップが形成されるのは,思春期を過ぎてから,青年期の発達段階とされています。思春期は自分に向き合うとか,自分の考えをきちんとつくるとか,そういったアイデンティティ形成を課題とする時期であり,責任のある性的なパートナーシップは,更に成長してからの課題となるわけです。   【スライド12枚目】身体面の成長からみても,13歳は初潮や精通が始まっていない子もいる年齢です。こういった点から言うと,13歳というのは見直しに値すると私は考えます。   【スライド13枚目】最後のスライドは,本日,申し上げたことのまとめです。子供が加害者になつくというのは,同意があるからではなくて,生得的なアタッチメントの行動に過ぎないということ。怖がってくっついている場合もあるということをお伝えしました。公訴時効についても,解離についての期間を考慮していただく必要があると考えております。 ○井田座長 ありがとうございました。大変豊かな内容をまとめてくださいまして,ありがとうございました。   それでは,御質問ございますでしょうか。 ○齋藤委員 野坂先生,ありがとうございました。   時間もないので大きく一つ質問をさせていただきます。野坂先生がお話しくださった子供の年齢は,比較的児童期ぐらいを想定されていたのかなと思うのですけれども,思春期,中学生,高校生ぐらいの子供間の性暴力ですとか,あるいは思春期ぐらいの子供の被害認識や大人からの被害に関するグルーミングの特徴などがございましたら教えていただければと思っております。 ○野坂氏 思春期でも共通する点がいくつかあります。例えば,両者の間に力関係がある,カップルであっても力関係があることが多くありますし,性暴力と思えないという被害認識を持ちにくいことも共通しています。思春期の特徴としては,性暴力について「遊び」というよりも,これは「恋愛」だからというふうに思い込んでいて被害認識が持てないということがあると思います。   グルーミングは,幼い子供に限らず,思春期の子供も巻き込まれやすいものです。幼い子供に対するように「遊んであげる」という言い方はしなくなりますが,例えば,寂しい子に声をかけてあげるとか,自分に自信がない子に「すごいね」と言ってあげるとか,そういう子供が求めている言葉や,家が安全でない子には部屋を提供してあげるとか,これこそが本人が欲しいものを与えているという点で手なずけ行為といえます。被害者の年齢によって,加害者が与えるものは違いますけれども,手なずけは思春期の子供にも行われています。 ○上谷委員 野坂先生,お話ありがとうございました。先生の御私見で結構なのですが,先生は,法律改正に当たって性的同意年齢は何歳が適切だとお考えでしょうか。 ○野坂氏 具体的には申し上げにくいですが,発達・発育の点からも言えば,13歳はどう考えても早いと思います。最低15歳以上,個人的には17歳ぐらいが適正だろうと思っています。なぜ,年齢を挙げにくいかというと,これは単に年齢の問題だけではなくて,教育体系がどのようであるのか,子どもの同意能力を養うための教育がどのようになされるかといったこともリンクさせて考えるべきものだからです。はっきり言って,今,性教育が全くといっていいほどなされていない教育体系の中では,何歳であっても性的同意能力を持ちにくいようにも思います。もし15歳であれ,17歳であれ,性交同意年齢を変えるのであれば,そこを目指した包括的な性教育,あるいは社会全体での教育を入れていくことを条件にする必要があると思います。 ○井田座長 それでは,更に宮田委員,そして小島委員から挙手がありますので,質問をまとめてしていただいて,お二方に対してお答えを野坂先生にしていただくということにしたいと思います。 ○宮田委員 どうもありがとうございました。   一つ質問させていただきたいのは,子供間の性暴力もかなり見過ごせない問題であるというお話でいらっしゃいますけれども,子供間の性暴力の割合はどのぐらいと考えたらよいのか。また,性交同意年齢を上げることによって加害者である子供の行為が犯罪として処罰されるということになることについての先生のお考えをお聞かせいただければと存じます。 ○小島委員 先生,どうもありがとうございました。大変勉強になりました。   私の質問は,まず監護者性交等罪というのがございまして,18歳未満の者に対して現に監護する者について,同意要件なく性犯罪にしますというのがあるのですけれども,この監護者性交等罪について,何かお考えがあれば,伺いたいなと思います。実際問題,学校の先生から被害に遭う子もいますし,男の子でも結構被害に遭っています。先生の御体験から,監護者性交等罪について,御意見があれば伺いたいというのが一つ。   それから,先生が子供の被害を見ていらっしゃって,これは同意って言われても困ると,13歳以上だけれどもどうなのかなと思うような事案がございましたらば伺わせていただきたいと思います。 ○野坂氏 まず,子供間については,十分な実態把握が行われていません。相当見過ごされているのは確かです。児童福祉領域,つまり,施設にいる子供たちについては少しずつ実態が分かってきていて,決して珍しくない事案です。特に施設の中では,男の子同士の性問題行動が,まれではなく起きていることが分かってきています。   また,子供間の場合,今日は「性暴力」,「性加害」という言い方をしましたけれども,治療教育の中では「性問題行動」というふうに言います。例えば,幼稚園児がスコップの取り合いになってポカッと相手の子供を叩いたからといって「傷害罪」と言わないのと同じで,思春期前の子供たちが性的な手段で暴力を振るったとしても,それは問題行動ではあるものの,性暴力,性加害,ましてや性犯罪というふうにはみなしません。これは,支援や教育をしていく上では非常に重要なことです。この会議は,法律のことを考える場ですが,児童福祉の観点からも考えるべきです。諸外国では,成人の性犯罪処遇と子供への福祉・教育・心理的支援というのは別物として扱われています。そのことを本日は十分にお話できませんが,考えておく必要があるかと思います。   監護者については,その範囲をもう少し広げる必要があると思います。実際に,子供の教育・養育に当たっている人を広く含むべきでしょう。何らかの指導に当たっていたり,習い事の先生といったコーチの立場は,日常的にふだんの子供の子育てをしているわけではありませんけれども,教育者であって,子供との立場の違いは歴然としています。むしろ,子供は,教育者の方が親よりも言うことを聞くわけですから,監護者というよりも教育者をその範囲に入れるのが現実的だと思います。   最後の御質問の「同意と見られても困る」事案というのは,まさにその辺のところですよね。教育者に子供が傾倒するというか,先生に師事するという意味での「ついていく」ということと,「性的についていく」ということは,全く別物なのですが,しばしば先生を慕っている,先生の指導を受けたいといってくっついていったことが,まるで性的にも同意したかのようにみなされてしまう。両者の判別をきちんとするということがとても大事だと思います。 ○井田座長 ほかの委員の方,更に何か御質問ございますか。 ○山本委員 貴重なお話をありがとうございました。   グルーミングについてお伺いします。子供をオンラインや,色々な状況で知り合って,手なずけて信用させ,「面倒見てあげるよ。」とか,「君がいい子なのは,僕だけがよく分かっているよ。」みたいな形で囲い込んでいくパターンのときに,子供が13歳以上18歳未満で,暴行・脅迫もなく,抵抗もなく,そして,やり取りの中で迎合しているような形で相手を怒らせないようにとか,あるいは気に入られているという立場から外れないようにというふうにしている場合に,被害を受けていても,同意がなかったということが分かられにくいと思います。症状的には非常に悪化する,体調が悪くなったりとか,日常的な生活を送れないような状況があります。このような被害をどのように発見し,そして支援につなげていけるのか,若しくは,これは同意がなかったということを証明していく必要があるとお考えかお伺いできればと思いました。 ○野坂様 パワーというものを,単なる腕力だとか怖がらせる言動だけではなく,非常に巧妙な操作ないしコントロールも,パワーの行使であるということが,もっと広く知られるべきだと思います。   そういう点で言いますと,今,山本さんが例に挙げたような,いろいろな巧妙なやり方が,洗脳みたいなものであって,心理操作みたいなものであることが理解される必要があります。そうしたコントロールは,対等な関係で行われるコミュニケーションではない。そうした理解が社会で共有されていくことが重要だと思っています。   最後に,今回は法律についての検討なので,余り関係ないかもしれないのですけれども,子供を育てるというのは,犯罪に巻き込まれないようにすることがゴールではないということ。子供への性暴力を考えるときに,防犯の面だけではなく,子供が寂しさや孤立を感じないようにしていく社会の在り方も併せて考えていくべきだというふうに思っていることを申し添えます。 ○井田座長 それでは,時間も参りましたので,ここで終了させていただきたいと思います。   野坂様には,お忙しいところ非常に有益なお話をいただきまして,誠にありがとうございました。また,時間の関係でせかしてしまいまして大変申し訳ございませんでした。   今日のお話,そしてまた資料,我々更に勉強させていただき,今後の議論に役立たせたいと考えています。重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。 ○井田座長 4番目は仲真紀子様です。司法面接についてお話をいただきます。   仲先生には,本日御多用のところ御出席くださり,誠にありがとうございます。検討会の座長を務めております井田と申します。本日はヒアリングに御協力くださり,心から御礼申し上げます。   まず仲様から15分程度お話をお伺いし,その後,委員の皆さんから質問があれば,10分程度御質問させていただくということにしたいと思います。   それでは,よろしくお願いいたします。 ○仲氏 では,始めたいと思います。   【心理学的知見に基づく子供の供述特性と司法面接:スライド1枚目】(以下,仲氏発言部分中の【 】内は,全て同資料のスライド番号。)心理学的知見に基づく子供の供述特性と司法面接ということで1枚目になります。   【スライド2枚目】2枚目に概要です。なぜ子供は特別か。そして,その中でも特に暗示にかかりやすい傾向性という被暗示性の問題,それから精神的な二次被害を受けやすいということについてお話しします。   次に司法面接の概要としまして,自由報告と構造です。なぜ自由報告,自発的にたくさん話してもらうかというと,多くの誘導や暗示が「パパにやられたの?」みたいな具体的な内容を含む質問によって与えられてしまいますので,こういった質問をできるだけ排除して,本人にたくさん話してもらうということをします。ただ,子供さんを呼びまして,「はい,自由にどうぞ」と言いましても子供さんはすぐにたくさん話してくれるわけではありませんので,面接を構造化,段取り化しまして,挨拶,そしてお約束事,それからラポール形成と言いますけれども,話しやすい関係性を築き,そして思い出して話す練習をして,本題に入るということをします。   このようなことをお話ししたいと思います。時間がありましたら,子供の証人についてもお話しします。   【スライド3枚目,スライド4枚目】まず,なぜ子供は特別かということなのですけれども,司法面接がつくられてきた過程を見ますと,多くのえん罪があったということがあります。有名なのは,クリーブランド事件。イギリスのクリーブランドで1980年代ですが,5か月の間に125人の子供が親から性的な虐待を受けているとして保護された。大変大きな数でして,これに調査が入った。その結果,聞き取りの仕方が適切ではない。熱意の余り,誘導的な質問をして,子供がみんな被害に遭ったと言うようになってしまったということが明らかになり,全員家に戻されました。   その下にありますのはアメリカの事案ですけれども,やはり似たようなことがあった。   【スライド5枚目】これは,日本のある事例の判決文から引用させていただいているものですけれども,裁判官がこんなふうに述べておられます。   子供たちが暗示や迎合により体験していない事柄を供述した疑いを残すというほかない。捜査機関が当初の聴取の際,児童らに暗示・誘導なく自ら話してもらい録音・録画し,お母さんからも子供が供述を始めた状況を誘導なく詳細に聴取して録音・録画しておけばよかったのだけれども,というふうなことが判決文に書かれています。   【スライド6枚目】こういった事案に見られる,一般的なやり取りとはどういうものか。これは架空の例でして,作ったものなのですけれども,こういったやり取りがよく見られます。   仮にお母さんが自分の子供が学校でいじめに遭っているんじゃないかなというふうに疑って聞いてみた。こんなふうな例を考えてください。「典型的な事例」と書いてあるところです。   お母さんが子供を呼びまして,こういうふうに聞きます。「ねえ,クラスの××君に叩かれたことある?」。子供がすぐに話さないと,「お友達のお母さんから聞いたんだけど。怒らないからちゃんと話して。××君,叩くの?」。子供が答えないと,「××君,叩いた?叩いたりしたかな?」。こうやって聞いてしまいます。   子供がどこかの時点で「うーん,当たったかな。」みたいな少し曖昧なことを言うと,「やっぱりそうなのね。どこ叩かれたの?いつ叩いたの?」,こうやって聞いてしまう。子供が黙ってしまいますと,「話してくれないと大変なことになっちゃうよ。××君叩いたのね。」と言って,「うん。」という返事を得たりします。   これでお母さんは,××君が叩いたのだと思うかもしれないですけれども,多くの問題があります。実際に何か問題となるようなことがあったのであれば,被疑者の名前,「××」と書いてあるところや,あるいは問題となる行為,「叩く」ということは子供本人に言ってほしい。でも,この場合はお母さんの方から「××君に叩かれた?」と重要な言葉を言ってしまっています。   また,こういった「××君,叩くの?」みたいな質問,「はい」か「いいえ」で答える質問を,右に書いてありますように「クローズド質問(閉じた質問)」と言います。これを繰り返しますと,「××君,叩いたの?」「××君に叩かれた?」,こういった文言がどんどん子供の頭に送り込まれてしまう。かつ,「怒らないからちゃんと話して。」とか「大変なことになるよ。」というようなことを言って圧力をかけ,またよくないのは,「当たった」と言っているのを「どこ叩かれたの?」と言い換えてしまっているということです。「当たった」を「叩く」とか,「当たった」を「押した」とか,「当たった」を「触った」というふうに言い換えてしまう,ということが見られます。   【スライド7枚目】このように特定の仮説に基づいて話を聞いていくと,子供の被暗示性,実際には体験していないのに,体験したかのような気がしてきてしまう傾向性が高まってしまうということがあります。   私どもの研究室を含め多くの研究室で研究が行われていますが,Bruck先生たちの研究を御紹介します。   この研究では,子供たちに実際にあった体験,実際にはなかった体験を数回聞いてみるというふうなことをした。あった体験については,子供さんはお話しできるわけですが,なかった方の体験も数回話を聞いているうちに,ほぼ全員の子供が「あった」というようなことを言い始めた。なぜこういった,体験していないのに体験したかのような気がしてきてしまうということが起きるのか。一つは青で書いています「社会対人的な格差・圧力」です。大人,お母さん,お父さん,あるいは学校の先生,あるいは教師が聞く。子供にとっては絶対的な権威者ですから,「こういうことあった?」「あったんだね?」なんていうふうに言われれば受け入れてしまうということが容易に生じます。   【スライド8枚目】もう一つは,次のスライドの認知発達の問題。箱で書いてありますように,言葉で説明できる記憶は大きく二つの種類,いわゆる知識である意味記憶と,体験の記憶,つまりエピソード記憶に分けられます。   例えば,「お父さんは乱暴な人です」みたいなことは,いわゆる知識,意味記憶です。「お父さんが昨日私を叩いた。鼻血出ちゃった。」みたいなのは体験の記憶,エピソード記憶です。   事実調査,司法面接の目標となるのは,エピソード記憶ということになります。何があったかを明らかにしたいわけです。ただ,このエピソード記憶の発達には,大変時間がかかりまして,そもそも知識の発達に比べて,エピソード記憶は遅く発生する。そして,10年もかかるような期間を経て,だんだんと発達していくということがあります。   1回だけの体験を全部まとめて,見たもの,聞いたもの,感じたもの,みんなまとめて記憶に残しておかなくてはいけないので,エピソード記憶は大変高度な記憶ということになります。   スライドの下にピンクで書いておりますけれども,このエピソード記憶。例えば私の体験という意味で,自己への気付きであるとか,また,お母さんが言ったことではない,先生が言ったことでもない,私の体験なのだというような情報源の理解であるとか,「メタ認知」,これは一段上から自分の心の状態をモニターしたりコントロールしたりすることを言うのですが,私の記憶は正確だとか,これは曖昧だとか,こういったメタ認知能力とも大変つながりが深くて,こういった能力も就学前,学校に入る前から徐々に何年もかけて発達していく。こういった能力がエピソード記憶と関わっている。   子供時代というのは,そういう意味でエピソード記憶がまだ脆弱であり,容易に人から言われたことと自分の体験が混じってしまうというふうなことがあるわけです。   こんなふうにして社会対人的なこと,認知的なことによって被暗示性が高まってしまいやすいということがある。   【スライド9枚目】次に,精神的な二次被害です。   これは聞き取りの文脈でお話しします。やけどしたとか骨が折れたということがありますと,福祉の機関に子供はかかってくる。それから,事件性があれば警察,検察,そして,裁判で主尋問,反対尋問というふうに聞き取りが行われるわけです。   この黒丸をそれぞれの機関で行われる聞き取りだと考えてください。   一番上のライン。これは子供の軸というふうに考えていただければと思うのですが,何度も何度も何度も話を聞かれる。これ自体,子供さんの供述を不正確にします。   【スライド10枚目】さらに重要なのは次のスライドにあります「法的手続により引き起こされる外傷的敏感症状」と呼ばれる,オーストラリアの研究者,Fulcher先生が言っている症状です。聴取を繰り返すと心的な外傷の症状が加算的に悪化してくる。また,継続して聴取すると,前はなかった症状,例えばPTSD,後外傷的な症状ですとか,身体的な症状が現れる。これは大変重篤で,鬱を発症したり,中には自死を選んでしまう方も生じるぐらいの重さということがあります。   【スライド11枚目】こんなことから,次のスライドですけれども,2015年(平成27年)に,厚労省,警察庁,最高検がこういった事実の聴取は1回で,あるいは,できるだけ少ない回数で一緒にやりましょうねというふうに言われたのは大変よかった。多機関連携による協同面接,代表者聴取が始まってよかったということになります。   以上,司法面接がなぜ必要かということをお話ししました。   【スライド12枚目,スライド13枚目】次に,司法面接の概要です。   司法面接ができてきたいきさつですけれども,司法面接が法的システムに入ってきたのは1992年です。クリーブランド事件などを受けて,英国でガイドラインが作られました。赤い冊子として示されているものです。これは,英国の供述弱者に対する特別措置の一つとして作られました。証人が16歳未満である場合,つまり被害者であるとか目撃者が16歳未満である場合,子供から話を聞くのは難しいので,初期に録音・録画面接を行って,これを主尋問の代わりに使うというものです。   その後,2001年,2011年に改正が行われまして,今は「Achieving Best Evidence」というふうに言いますけれども,対象となる子供の年齢が引き上げられた。以前は16歳だったのが18歳未満の子供となり,加えて,大人であっても知的,精神,それから身体障害を持っておられる方,そして一定のカテゴリーに含まれる性的被害が疑われるケースでは,大人であっても,この司法面接を行って,それを主尋問の代わりにするということが可能になった。そんな特別措置というわけです。   【スライド14枚目】司法面接の目的です。   早い時期に,自由報告を重視した面接を原則として1回だけ行って,録音・録画する。これは事実の調査であって,カウンセリングではない。供述の変遷や精神的二次被害を防ぐということになります。   ここで,先にいただいていた二つの御質問にお答えします。   「治療により証言が変わるという指摘もある。どうすれば被害者が保護され,有用な証拠が得られるか。」本質的な御質問です。事実調査というのは過去向きの,過去の出来事を正確に思い出してもらうことです。カウンセリングとか治療というのは,未来の回復に向けて変容を促すということになります。ですので,カウンセリングと事実確認,両方とも必要なのですけれども,順序で言えば,できるだけ早い時期に,記憶が失われる前に事実確認を正確に行って録音・録画し,その後,速やかにセラピー,カウンセリングに入っていただくのがいいということになります。裁判になるまで待っていてもらうというのは,避けなければなりません。   それからもう一つ,「障害等を有しておられる方や成人被害者の通常の事情聴取に使えるか。」これも重要な御質問です。使えるわけでして,正にそういったことがイギリスなどでは行われています。   知的障害を持っておられる被疑者に使うということもイスラエルなどでは行われています。   【スライド15枚目】さて,典型的な司法面接室です。   左側の面接室で,面接者,被面接者が1対1で行って,右側のモニター室で,多機関連携でこれをサポートします。こうすることで子供はいろいろな機関に行かなくて済むというわけです。   「いつ」,発覚から1週間以内程度で。   「どこで」,安心できる,こういった面接室で。   「誰が」,トレーニングを受けた人がチームで。   「どのように」,計画を立て,司法面接の方法で,時間は年齢掛ける5分程度が適切だと考えられています。そして録音・録画するということになります。   【スライド16枚目】次のスライドにあります一つの写真は,司法面接の一室です。   【スライド17枚目,スライド18枚目,スライド19枚目】さて,次に手続です。   大事なところは赤で書いてあります自由報告と,その下に書いてあります質問。足りなかったら質問で補うということになります。でも,いきなり自由報告は求められませんので,挨拶やグラウンドルール,話しやすい関係性を築くラポール形成,そして,思い出して話す練習などをして本題に入る。終わりのところも,「はい,さようなら」ではなくて,質問を受け,感謝しておしまいということになります。   幾つも司法面接の方法はありますけれども,いずれも同じような構造を持っています。   【スライド20枚目】さて,あと少し時間がありますので,法廷での子供のことをお話ししたいと思います。   【スライド21枚目】私はかつて,法廷での子供の証言,790発話を分析したことがあります。グラフのピンクのところが,子供が自分の言葉で話しているところ,全体を通して3分の1くらいしかありません。あとの3分の1はグラフの薄いグレーのところですけれども,「はい」「はい」「はい」だけ。あとの3分の1はグラフの濃いグレーのところですが,「分かりません」「覚えていません」,あとは黙して語らずです。ですので,法廷で子供が話しているのは,この事例では僅か3分の1。こういうことを考えますと,英国での次のような実践は大変示唆的かなと思います。   【スライド22枚目】このスライドのOLD BAILEY,刑事法廷の中に,供述弱者のための待合室や閉回路システムで尋問を受ける部屋があります。   【スライド23枚目】ある事例を紹介したいと思います。この事例では,9歳の目撃者,証人が証言をしました。1日目が主尋問です。裁判官から陪審員に,「9歳の子供であり,子供から話を聞くのは大変難しいので,既に司法面接が行われている。」「これからその司法面接の録音・録画見ますよ。でも,録音・録画と思わないで,そこにいる証人の話を聞くように思って聞いてくださいね。プレイバックはしませんよ。注意を集中して聞いてください。」と告げる。こんなふうにして録音・録画を示すことで主尋問が行われた。   この主尋問の後,翌日の反対尋問について裁判官から陪審員に説示があります。「明日は子供が反対尋問のために来ますけれども,遅刻しないようにしてくださいね。20分ぐらいで疲れると言っているので,遅刻しないように。」などと言っています。   【スライド24枚目】また,裁判官が陪審員に,「閉回路システムで面接を行いますよ」というようなことを言っています。   次に興味深いのは,裁判官が,検事や弁護人にも「私たちは,人から『こちら何々裁判官です』みたいにして紹介してもらうことが多いじゃないですか。でも,明日は子供が来るからファーストネームで3人順番に自己紹介しましょうね。」というようなことを言っています。   また,尋問方法については,仲介者という専門家と立会人が子供に付き添うのですが,この人たちが,子供の様子を見てくれているわけです。裁判官は「仲介者が20分ぐらいで疲れると言っている。なので,休憩をたくさん取りましょう。」とか,「言葉が分かりにくかったら,この仲介者が言い直してくれますからね。」みたいなことも言っています。   あと検事さんから,「この写真を出したらちょっと精神的によくないのではないか」というような議論もあって,結局いろいろ考えて,白黒の図面だけを用意したけれども,それは使わなかった。   【スライド25枚目】反対尋問の当日です。   この日は,裁判官,検事,弁護人は,かつらを外してガウンも取ります。これも特別措置の一つです。裁判官から子供に対して幾つかのグラウンドルール,約束事をお話しします。   そして,10時半から12時15分まで反対尋問は行われたのですが,20分ぐらいで休憩ですから,正味60分ぐらいでした。終始,尋問者は,ゆっくり,はっきり,間を取り,短い質問をする。子供はリラックスしており,最後は,裁判官がにっこり笑って,「今日はどうもありがとう」と言って終わりになった。こんな事例でした。   こういうことが日本でも起こるということがあれば,これは子供のみならず,当事者全てにとって有益ではないかというふうに思います。   【スライド26枚目】二次被害の事例であるとか,DVD採用事例の新聞記事を参考としてつけました。   以上です。 ○井田座長 それでは,御質問ございますか。 ○中川委員 仲先生には,司法研修所でも度々御講演をいただいておりますし,また今年には東京地裁でも御講演をいただいておりまして,ひょっとしたら,そこでの質疑とかぶるかもしれませんけれども,一つ,イギリスの事例を御紹介いただきましたので,その関係で質問をしたいというふうに思います。   スライドの23から25にかけてのところで,イギリスでは司法面接DVDを主尋問の代わりに使っていると。子供は反対尋問のために法廷に出てくるときに,司法面接を自分も見ているということのようなのですけれども,子供からすると,司法面接をした時期と反対尋問をした時期にブランクがあると思うのです。いきなり反対尋問をされると,子供にとっては戸惑ってしまうとか,そういうようなことはないのかなと思いまして,反対尋問をスムーズに始めるためにどのような工夫がされているか,もしも御存じだったら御紹介いただければと思います。 ○仲氏 私が知っている限りでは,「子供は司法面接,主尋問となっているものをあらかじめ見ています」というふうに裁判官はおっしゃっていましたので,そういう準備があるかなというふうに思います。ですので,この事案に関して話を聞かれますよということは理解していると思います。でも,分からないことは,「分からない」と言っていいということを子供は約束事として提示されているということになります。   ほかに,例えばどんな資料を見せられているのかというような細かい内容は分からないのですけれども,少なくとも子供は自分が証言した,その証言のDVDは見ているということです。そういうふうにして記憶を喚起しているのかなというふうに思います。 ○宮田委員 日弁連の供述分析研究会ではいろいろとありがとうございました。   先生の御指摘の中で,子供の記憶が汚染されないよう,被暗示性の高さを考慮して司法面接がなされるというお話があったのですが,例えば,家族の間においてこういう被害があったのではないかという形で随分長い間話がされ,記憶が汚染されるというような場合はないのだろうか。そういうときに,この司法面接がどの程度,真実性を発見し得るのかについて教えていただければと思います。 ○仲氏 二つあると思うのですけれども。   まず一つは,司法面接は魔法の鏡のようなものではなくて,ある時点で子供がこういう手続に入ってきた,その段階で,その時点でできるだけ正確な方法で子供が言ったことを聴取しておきましょうということなのです。ですので,子供が言ったことが正確だとか,正しいということではなく,飽くまでも,この子供に自発的に話してもらったことを基に,外部の情報によって,それが補助されるのか,されないのかということを判断していくということになります。   ですので,そういう手続だというふうに考えていただけるといいかなというふうに思います。   あと,こうやって司法面接のような形で録音・録画するということになると,おのずと事前の初期・初動調査であるとか,家の中での聞き取りが問題になってくるわけです。裁判では,被告人側の弁護人から言えば,事前にどういうやり取りがあったのかというのは反対尋問で確認されるべき重要な事柄であるし,また捜査機関などにとってはできるだけ事前の汚染がないように図っていくということになるのかなというふうに思います。   ですので,子供が言ったことが全て正しいとか,そういうことでは全くないのです。 ○小島委員 先生,貴重なお話をありがとうございました。とても勉強になりました。   2点ほど伺いたいのですけれども,まず,司法面接が,何歳ぐらいの子供に対して主として行われているのか実情を伺いたいと思います。   それから,別な司法面接の方法というのがあるということを聞いたことがございます。山田不二子先生などチャイルドファーストジャパンの先生たちと,仲先生とは司法面接の方法がかなり異なっていると伺いました。例えば性器のある人形を使用して,道具を使って分かりやすく聞くというような司法面接の方法もあると伺ったのですけれども,先生はそういう方法は望ましくないとお考えになっていると伺っております。ほかの方法との比較について先生の御見解を伺いたいと思いました。ある程度の年齢のいった子だったら道具を使ったりしてもいいのではないかと思ったものですから。 ○仲氏 一つ目ですが,何歳ぐらいからというのは,大体エピソード記憶が語れるようになってくる,断片的にでも報告できるようになってくるのは3,4歳ですから,2歳の子供に行うというのは余り意味がないわけです。出来事の報告を求めるということになります。   上の年齢というのは,何ができるからとかいうよりは,あるいはどういう能力が獲得されたからというよりは,もうむしろ法的に決めるということが妥当かなというふうに思います。日本では今のところ,二十歳になるまでは保護される存在というふうに考えられますので,二十歳までは供述弱者の扱いになるというふうに考えるのか,あるいは,少年法のような形で16歳とか14歳というのもあり得るかなと思います。   でも,イギリスがこれまで16歳としていたのを2000年に入って18歳に引き上げたというのは,そしてまた子供だけではなくて障害を持っておられる大人とか,性的な被害を受けた大人にまで拡張しているのは,これは一つの大きなメッセージかなというふうに思います。要するに人に優しい方法,科学的に妥当な方法は,誰にとってもよい,供述を得るというのに役立つということかなというふうに思います。   あともう一つ,主要な二つの方法についてですが,今,日本では,アメリカのNICHD(小児保健・人間発達研究所)というところで作られたプロトコル,手順書を私たちは紹介しておりまして,あと山田不二子先生たちがChildFirstのプロトコルをチャイルドファーストジャパンというNPOで紹介しておられるということがあります。   ChildFirstのプロトコルの基となったRATACは私も受講したことがあるのですけれども,種々ある面接法は異なるものではなくて,どれもラポール形成を行い,そして本人にたくさん話してもらって,足りなかったら確認をして,感謝して終わりにする。子供から正確な情報を傷つけないように聴取するというふうなことで,全く構造的には同じというふうに考えていただく方がいいかなというふうに思っています。   ただ,チャイルドファーストの方法はトレードマークがついていますので,そこに版権とかもあったりするわけです。   NICHDの方は,Lamb先生,Hershkowitz先生,私たちもそうですけれども,在野の研究者が作ってきた,実証的に調査・確認をしてきた方法を提示しているというふうなことです。そういう意味ではどなたでも使えるし,そんなに難しい方法ではないということになります。   人形,ダイヤグラムにつきましては,いろいろな立場があるのですけれども,近年の多くの研究が,年齢が低い子供ではファンタジーや誤った情報を引き出す,あるいは年齢が高ければ,言葉で話しても,人形を使っても,出てくる情報は変わらないみたいなことを示していますので,具体的な情報を示すことは大体全般において誘導暗示になり得るので,使わないで済むのであれば,使わないでいったらどうかなというのが一つの提案というわけです。全然駄目ですよとか言っているわけでは全くありませんので,御安心いただけましたらと思います。 ○井田座長 まだまだ御質問がありますので,ここからは委員の皆様からの御質問を続けてお伺いし,一問一答ではなく,仲先生にまとめてお答えいただくということにしたいと思います。 ○上谷委員 貴重な御意見,ありがとうございました。   まずは先生の御経験とか研究で御存じだったら教えていただきたいのですけれども,司法面接によって,それで主尋問に代えられた場合に,反対尋問が行われて,反対尋問によって司法面接の結果が崩れてしまったケースがあるのかどうか。また,それがあった場合に,再主尋問というのはどのように行われているかということを御存じであったら教えていただきたいと思います。 ○川出委員 今日はどうもありがとうございました。   御報告の中で,現在,我が国で行われている協同面接について,こういうことが始まってよかったということをおっしゃっておられました。司法面接の目的としては供述の変遷と二次被害を防ぐという点が挙げられていましたが,協同面接によって聴取の回数は減りますので,二次被害を防ぐという点は,ある程度達成できていると思うのですが,もう一つの供述の変遷を防ぐという点,これは要するに供述の信用性を確保するということだと思いますが,その観点から,先生は現在の協同面接をどのように評価しておられますか。その上で,現在のやり方について何か改善すべき点があるかどうかについて先生のお考えをお聞かせいただければと思います。 ○齋藤委員 仲先生ありがとうございました。   私が聞き漏らしたのかもしれないのですけれども,イギリスで障害を持った大人や,性的な被害を受けた大人にも適用されるようになったということでしたが,なぜ傷害とか殺人とかではなく,特に性的な被害に対して適用になったのかということについて教えていただけますと有り難いです。 ○井田座長 では三つの,委員の方の質問をまとめてで大変恐縮ですけれども,お答えいただけますか。よろしくお願いいたします。 ○仲氏 一つ目,反対尋問で崩れた事例はあるか。確かにあります。実際,DVDに残っているやり取りがありますので,これを見て誘導がかかっているなとか,あるいは変遷があるなというようなことがある意味客観的に示せるわけですので,これを御覧になった裁判員,裁判官の方たちが,子供さんの供述,信用できないというふうな判断をされた。そういうものもあったりいたします。   これが面接の仕方がよかったらどうなのかとか,いろいろ可能性はあるわけです。本当は被害はなかったのだということもあり得るわけですけれども,それが全て,裁判の場で議論され,子供さんの供述は信用できなかったというふうに判断された事例というのはあるわけです。そういう意味では,司法面接は判断のすごく重要な材料にもなり得るということになります。   それから,2番目の供述の正確性を上げるための協同面接。これは2年ぐらい前に厚労省の助成を受けた調査会社が調査をしていまして,大体協同面接は10日以内ぐらいには7割ぐらいは行われているようなのです。記憶は,なだらかなスロープのように下がっていくのではなくて,初期にくっくっくっと下まで下がって,あとなだらかに行くというふうな特性を持っていますので,できるだけ早く三者が集まって行うというのは大変いいし,あと繰り返すことで変遷が生じますので,それがなかったのはとてもいいということになります。   真実は何かというのは,神のみぞ知るの世界ですから,どういうふうにして正確な情報にたどり着けるかというと,誘導をかけないで本人に話してもらう。それを客観的な証拠と照合させるというふうなことしかないわけです。   そういう意味では,忘れちゃう前に,初期にこうやって記録ができる,何度も何度も聞かないで記録ができるというのは大変重要なことかなと思います。   改善点はないかということだったのですけれども,今は三者集まって,誰が面接官になるか。大体は検事さんがなられますけれども,検事さんも大変よく研さんを積んでおられていいのですけれども,今後,場合によっては,トレーニングを受けた方がワンストップのような所にいて,そこにみんなが集まって,例えば鑑定人が面接をするみたいな形で,子供の専門家が面接をし,その結果を裁判やその後の支援で使うというふうなこともあり得るのかなと思ったりもいたします。つまり,特定の個人が,経験者が面接者となっていくというのもあるかなというふうに思います。   3番目です。なぜ性的な被害か。性的な被害というのは1対1であり,言葉がメインの証拠であり,かつ,その重さが大変大きいということになるわけです。同様に,トラウマになるものとして,例えばひどい暴力を受けたとか,殺人を目撃したというのもあると思うのですけれども,大体そういう多くの事案では外的な証拠があることが多い。これに対して性的な被害というのは,そういう物的な証拠が見つかりにくく,言葉による供述というのをいかに正確に取るかということが大変重要であり,かつ,トラウマになりやすいということがあるかなと思います。 ○井田座長 仲先生,お忙しいところ大変有益なお話をお伺いできて,本当にありがとうございました。また,時間的に少しせかしてしまって大変申し訳ございませんでした。   先生に分かりやすいお話をいただいたばかりではなくて,貴重な資料もたくさん御提供いただきました。私どももこれをよく勉強して,今後の議論に役立たせたいと思っています。検討会を代表しまして,重ねてお礼申し上げます。ありがとうございました。   本日予定していた議事につきましては,これで全て終了いたしました。   議事の公開等についてお諮りしたいと思います。   本日は,1番目の西岡氏のヒアリングにおいて,御発言にありましたけれども,関係者のプライバシーに係るお話がありましたので,プライバシー保護の観点から該当部分については非公表としたいと考えております。   また,本日2番目の岡田氏のヒアリングの提出資料のうち,一部の写真につきましては公表に適さないと思われますので非公表とさせていただきたいと思います。   それ以外についてもヒアリング出席者の御意向を改めて確認の上,非公表とすべき発言,あるいは提出資料がある場合には該当部分を非公表としたいと考えております。   具体的な範囲とか,議事録,あるいは提出資料をどういうふうに記載するかにつきましては,これもまた相手方との調整もございますので,私に御一任いただければと思います。よろしいでしょうか。   (一同了承) ○井田座長 それでは,そのようにさせていただきたいと思います。   では,次回以降の予定について事務局から御説明してもらいます。 ○岡田刑事法制企画官 第3回会合は,7月9日木曜日,午前10時からの開催を予定しており,本日に引き続きヒアリングを実施する予定です。次回会合の方式もウェブ会議システムを用いた方式で開催する予定です。 ○井田座長 私の不手際で時間がかなり延長しまして,大変申し訳ございません。本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。