法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  令和2年6月19日(金)自 午後1時31分                     至 午後5時29分 第2 場 所  日本国際紛争解決センター(東京)会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大野幹事 では,予定した時刻になりましたので,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の第1回会議を開会いたします。   本日は御多忙のところ,御出席いただきまして,誠にありがとうございました。   私は法務省民事局参事官の大野と申します。本日はこの部会の第1回会議でございますので,後ほど部会長を選出していただきますけれども,それまでの間,私が議事の進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。着席をさせていただきます。   御案内のとおり,新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中で,本部会の第1回会議の開催時期につきましては慎重に検討してまいりました。今般,法制審議会においては,緊急事態宣言が解除されたことを踏まえ,十分な感染症対策を施した上で部会を開催し,希望される方につきましてはウェブ会議の方法による御出席をしていただくことも可能とされたところでございます。お陰さまで本日,この民事訴訟法(IT化関係)部会の第1回会議を開催することができました。事務当局もウェブ会議による運営に不慣れなところがございまして,様々な御不便をお掛けすることになるかもしれませんが,可能な限り円滑な進行に努めてまいりたいと考えておりますので,御協力のほどをよろしくお願いいたします。   ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐため,御発言される際を除き,マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御発言を希望される際は,手を挙げる機能をお使いください。手を挙げる機能は,画面に表示されるコントロールバーの中にある手のひらのマークをクリックすることにより使用することができます。それを見て適宜,指名させていただきますので,指名されましたらマイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたらば,再びマイクをオフにし,同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしていただきますようお願い申し上げます。   次に,資料について御確認いただきたいと思います。まず,部会資料1「民事訴訟法(IT化関係)の改正における検討事項の例」,部会資料2「総論(オンライン申立ての義務化及び訴訟記録の電子化)」がございます。こちらについては後ほど審議の中で事務当局から説明をさせていただきます。   また,参考資料がございます。まず参考資料1から3までは,これまでの政府や研究会における検討結果に係るものでございます。参考資料1は,公益社団法人商事法務研究会主催の民事裁判手続等IT化研究会が取りまとめた報告書,参考資料2は,内閣官房が開催した裁判手続等のIT化検討会の取りまとめ,参考資料3は,内閣官房が開催いたしました民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議による取りまとめでございます。参考資料4は,日本弁護士連合会の公表した民事裁判手続のIT化における本人サポートに関する基本方針,参考資料5は,日本司法書士会連合会による民事裁判手続のIT化における本人訴訟の支援に関する会長声明でございます。   また,本日は今後の日程も配布しております。差し当たり今年度中の日程を示させていただきましたが,具体的な進行については,御議論の状況を踏まえつつ随時お諮りしたいと考えております。なお,こちらには今年度の日程しか記載されておりませんが,来年度の日程につきましては追ってお知らせをいたします。   次に,この部会で審議される諮問事項と,この部会の設置決定などにつきまして簡単に御報告いたします。   本年2月21日に開催されました法制審議会第186回会議におきまして,法務大臣から,民事訴訟法制の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち,右肩に「諮問第百十一号」と記載されたものを御覧ください。諮問事項は,ここに記載されておりますように,「近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに,時代に即して,民事訴訟制度をより一層,適正かつ迅速なものとし,国民に利用しやすくするという観点から,訴状等のオンライン提出,訴訟記録の電子化,情報通信技術を活用した口頭弁論期日の実現など民事訴訟制度の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものでございます。   この諮問を受けまして,法制審議会総会では,その日の会議におきまして,専門の部会を設置して調査審議を行うのが適当であるといたしまして,この民事訴訟法(IT化関係)部会を設置することを決定したというものでございます。   また,政府におきましては,未来投資戦略2018,成長戦略フォローアップなどの閣議決定におきまして,2022年,令和4年中の民訴法改正を視野に入れて取り組むこととされております。   まず,以上のことを御報告いたします。   続きまして,審議に先立ちまして,民事局長である小出より御挨拶がございます。 ○小出委員 法務省民事局長の小出でございます。事務当局を代表いたしまして,この場をお借りして一言御挨拶を申し上げます。   皆様にはそれぞれ御多忙の中,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。   我が国の民事裁判手続においては,平成8年に成立した現行民事訴訟法により,争点整理の手続に電話会議システムが導入され,また,遠隔地に居住する証人についてテレビ会議システムを利用した証人尋問が認められるようになるなど,世界的に見ても早期に通信技術を利用した取組が行われてきました。また,平成16年の民事訴訟法改正により,オンラインでの申立てを可能とする規定が整備され,この規定に基づき,支払督促手続については平成18年からオンライン手続の利用が可能となっております。   しかし,民事訴訟手続一般につきましては,いまだオンラインでの訴え提起等は認められておりません。一方で欧米諸国,中国,シンガポール,韓国などでは民事裁判手続のIT化が急速に進められております。また,我が国においても近年の情報通信技術の飛躍的な進展に伴い,訴訟以外の分野ではITの活用が進み,これが国民生活に一定程度浸透していると考えられます。   こうした事情を考慮いたしますと,時代に即して民事裁判制度をより一層適正かつ迅速なものとし,国民一般に利用しやすいものとする観点から,民事裁判手続のIT化に向けた見直しを行う必要があると思われます。   昨年6月に閣議決定された成長戦略フォローアップにおきましても,オンライン申立て,訴訟記録の電子化,手数料等の電子納付,ウェブ会議等を用いた関係者の出頭を要しない期日の実現等を目指し,令和4年中の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組むこととされているところでございます。こうした近年の社会情勢に鑑み,民事裁判手続のIT化について法制審議会で調査審議いただくべく,今般の諮問に至ったものでございます。   また,本日の会議がウェブ会議を併用して行われておりますように,この間の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により,書面や対面手続をできるだけ排するため,社会全体としてIT化を進めていくことが喫緊の課題となっております。その意味でも本テーマの重要性は極めて大きいものがあると考えております。   最後に,私ども事務当局といたしましても,本部会における調査審議が充実したものとなるよう努めてまいりますので,委員,幹事の皆様方におかれましては,より適切な民事裁判手続のIT化の実現のために御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○大野幹事 続きまして,委員,幹事及び関係官の皆様に自己紹介をお願いいたします。 (委員等の自己紹介につき省略) ○大野幹事 どうもありがとうございました。   なお,本日は御欠席の委員,幹事はいらっしゃいません。   また,この機会に関係官につきまして補足して説明をいたします。法制審議会議事規則によりますと,審議会がその調査審議に関係があると認めた者は会議に出席し,意見などを述べることができるとされております。この部会でも従前のとおり,関係省庁に対して審議への参加を求めていこうと思っております。そのため,当省の事務当局のほか,内閣官房日本経済再生総合事務局の川村参事官,また最高裁判所事務総局民事局の武見局付及び水木局付に関係官として御参加いただいております。   続きまして,部会長の選任を行っていただきます。法制審議会令によりますと,部会長は当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき,会長が指名することとされております。この部会は本日が第1回会議ですので,まず初めの手続として部会長を互選していただく必要がございます。   それでは,ただいまから部会長の互選をしていただきますが,自薦又は他薦の御意見などがございましたらば,御発言ください。 ○高田委員 山本和彦委員を推薦いたしたいと存じます。山本和彦委員は民事訴訟法について幅広く,かつ深い識見を持っておられますし,また,本部会以前にも多数の立法過程に委員,部会長として関与されておられます。加えて,本部会の諮問事項である民事裁判手続のIT化につきましては,参考資料としても配られておりますIT化検討会や民事裁判手続等IT化研究会の座長として議論を深められ,報告書を取りまとめられました。これらの観点から,山本和彦委員が最も適任であると思量いたします。 ○大野幹事 ありがとうございました。   ほか,いかがでございましょうか。 ○日下部委員 ただいまほかの委員から,部会長は山本和彦委員が適任であるとの御発言がございましたが,賛成いたします。私も,山本和彦委員が学会で残された数多くの御業績や御経歴に照らしますと,山本和彦委員にお願いをすることがよいと考えます。 ○大野幹事 ありがとうございました。   ただいま高田委員,日下部委員から部会長として山本和彦委員を推薦したいという御発言がございました。   ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,部会長には山本和彦委員が互選されたということとなろうかと思いますけれども,それでよろしゅうございますでしょうか。   では,互選の結果,山本和彦委員が部会長に選ばれたものと認めます。   その上で,法制審議会の井田会長代理に部会長を指名していただく必要がございます。本日,井田会長代理におかれてはこの場にいらっしゃいませんので,事務当局にて電話の連絡をさせていただきます。大変恐縮でございますが,一旦会議を休憩させていただきます。           (休     憩) ○大野幹事 では,会議を再開させていただきます。   休憩時間中に井田会長代理から,山本和彦委員を部会長に指名する旨の御連絡を頂きました。これをもちまして山本和彦委員が部会長に選任されました。   山本委員におかれましては,部会長席への移動をお願いいたします。   山本部会長には以後の進行役をお願いいたしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ただいま部会長に指名されました山本和彦でございます。よろしくお願いいたします。   先ほど小出局長からもお話がありましたとおり,近年の情報技術の飛躍的な進展に鑑みますと,さらには新型コロナウイルス対策の関係,これからも第2波や,更に別のパンデミックという可能性がある中で,この民事裁判手続のIT化に対するニーズというのは更に高まっているのではないかと思います。   他方,この裁判のIT化を進めるについては,理論的あるいは実務的に様々な課題があることは言うまでもありません。皆様におかれましては,様々な,多様な立場から,多様な観点に基づいて,この理論的,実務的な課題を解決していただく議論をしていただければと思っております。   かなり難しい議論になるのではないかと,取りまとめ役としては思っているところではありますけれども,先ほどの諮問事項にありました,民事訴訟制度をより一層適正かつ迅速なものとし,国民に利用しやすくするという観点,これについてはここに集う委員,幹事,関係官の皆様の認識は一致しているのではないかと思いますので,難しい局面においては,そういう観点に立ち戻って建設的な議論を進めていただければと思います。   私といたしましても,不慣れではございますが,この部会における調査審議が円滑に進みますよう誠心誠意,運営に努めてまいりたいと思いますので,皆様方の御協力のほどをどうぞよろしくお願い申し上げます。   なお,今後,このような状況でありますので,部会長である私が朝,急に咳が出たり発熱したりして,オンラインでの可能性というのもあろうかとは思いますが,会議に出席できなくなるということがあろうかと思いますが,その場合に備えて法制審議会令の定めるところにより部会長代理を指名させていただければと思います。   そこで,笠井委員を部会長代理に指名させていただきたいと思いますが,笠井委員におかれましてはお引き受けいただけますでしょうか。 ○笠井委員 謹んでお受けいたします。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 体調を崩さないように心がけますが,その節には是非よろしくお願いします。   それでは,中身の審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについてお諮りをしたいと思います。   まず,現在の法制審議会での議事録の作成方法につきまして,事務当局から御説明を頂きます。 ○大野幹事 では,御説明いたします。   法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては,従前は発言者名を明らかにしない形で逐語的な議事録を作成していたという時期もございましたが,平成20年3月に開催されました法制審議会の総会におきまして,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに,部会長において部会委員の意見を聴いた上で,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。   御参考までに申し上げますと,この総会の決定後に設置された民事法関係の部会では,いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。この部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があると考えております。   以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,今の大野幹事からの御説明につきまして,御質問,あるいはこの議事録の取扱いにつきまして御意見がございましたら,お出しいただければと思います。   特段ございませんでしょうか。   私といたしましては,当部会では,今お話もありました民事関係部会の従前の慣行,あるいはこの審議事項の内容等に鑑み,発言者名を明らかにした形で議事録を作成することにしたいと存じますが,いかがでしょうか。御異論はないでしょうか。   ありがとうございます。それでは,そのような形で取り扱わせていただきます。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日は第1回の会議ということでございますので,まず皆様にこの民事裁判手続のIT化の全体像を共有していただくという観点から,若干のフリートークをさせていただき,その上で個別のテーマの御議論に移りたいと考えております。   そこで,そのための資料として部会資料1というのを用意していただいておりますので,まず事務当局からこの部会資料1に基づく御説明をお願いいたします。 ○福田関係官 それでは,部会資料1につきまして福田から説明をさせていただきます。   部会資料1は,今,部会長からもありましたように,民事裁判手続のIT化を進めるに当たって論点となる項目を,基本的に地方裁判所における第一審の手続の流れに沿って,網羅的に記載をしたものであります。今後このIT化関係部会において皆様に御議論いただくための全体像を明らかにしたものという位置付けでございます。   「第1 基本的な視点」につきましては,先ほど小出委員の挨拶にもありましたように,令和4年の民事訴訟法改正を視野に入れて取り組むということを確認させていただきたいと思います。   「第2 総論」から「第18 その他」まで,多岐にわたる項目を記載しておりますが,これらの項目は「第2 総論」を除きまして,次回以降の部会において順次取り上げる予定としておりますので,本日の部会におきましては,論点についての当否も含め,その一つ一つについて御議論いただくということまでは予定してございません。   なお,個別の論点を提示する際の表現につき,ところどころ一定の方向性を前提としたような記載もございますが,もちろん他の考え方を排除する趣旨ではございませんので,その旨,御留意いただければと思います。また,大きな項目ごとに代表的な論点を一つ又は二つずつ取り上げたものにすぎませんので,こちらに記載のない論点を取り上げないという趣旨でもございません。したがいまして,この後のフリーディスカッションの際には,この部会資料1を参照していただきつつ,今後の議論の進め方や,他に取り上げるべき論点等につきまして,適宜御発言を頂ければと考えております。   あわせて,この部会資料1の中に(注)というものを4か所設けておりますので,この点についても補足をさせていただきます。   まず,2ページの下,「第4 送達等」の箇所では,外国に所在する者に対する送達に関するもの,4ページの中ほど,「第9 証人尋問等」の箇所では,外国に所在する者に対する証拠調べに関するものをそれぞれ(注)として取り上げております。これらにつきましては,他国の主権との関係など,国内の問題とは異なる国際法的な論点についての整理も併せて必要になるものと考えておりますので,そのような趣旨から(注)として記載しているものでございます。   また,5ページの上,和解の箇所と,6ページの第15,上訴等の箇所のところの(注)につきましては,いずれも裁判手続のIT化とは直接は結び付かない論点であると考えられますので,そのような趣旨から(注)という形で記載しているものでございます。   簡単ではありますが,私からの説明は以上とさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,正にフリーディスカッションということですので,どの点でも結構ですし,どなたからでも結構ですので,御発言をお願いいたします。 ○笠井委員 私,検討会,研究会とこの件に関わってまいりまして,研究会の報告書が出たのが去年の12月で,そのときには先ほどからお話に出ているこういう新型コロナウイルス感染症の問題などは全然出てこなくて,IT化って便利になるだろうなという感じではあったのですけれども,それが喫緊の話になってきたというのが,皆さんにとってというか,日本全体,世界全体として共通の認識になる素地ができてしまったという,そんな感じがしております。   裁判所でいわゆる第一フェーズの手続を今しておられると思うのですけれども,私は,これはある意味,タイミングとしてはよかったのかなと一瞬思ったのですけれども,どうも裁判所の方も裁判所に来ないと法廷や弁論準備手続などが開けないものですから,裁判官と書記官の方が裁判所に来ないと手続ができないということだと,通勤の問題などがあるというような話が出てきていて,なかなかIT化を十分に生かせていない部分があるのではないかと思っております。私もあまり詳しく実務の現場を知っているわけではなく,何となく聞いているところというだけなので,誤解があったらまた教えていただきたいと思いますけれども,何が言いたいかと申しますと,研究会などでもあまりそこまでは考えていなかったことで,裁判官や書記官が裁判所に来なくても手続ができるといったような,そういう視点も,これからは入ってくる方がいいのかなと,この間のことを見て考えたということを申し上げます。   これは,公開の法廷でやらなければいけない口頭弁論などだとなかなか難しいのだと思うのですけれども,弁論準備手続などで傍聴を許せばいいというような手続だと,できなくはない感じがしておりまして,研究会のときも,専門委員なんかだと,立場としては裁判所側の人なのですけれども,裁判所に来なくても参加できるようになると,そんな話が出ておりましたので,裁判官や書記官が裁判所に来なくてもできる手続も今後は考えていった方がいいのではないかというのをこの間のやや不幸な出来事に鑑みて感じたということを申し上げます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○井村委員 連合では,国民が安心して行政はじめ国の情報に容易にアクセスを可能とすることは,国民生活の利便性の向上や経済の活性化に資するという観点から,政策の一つに電子政府の構築というものを掲げています。今回の新型コロナウイルス感染症では,多くの人々が影響を受け,連合にも様々な相談が寄せられています。裁判所は,今回の緊急事態宣言によって一部機能の縮小や停止を余儀なくされましたが,裁判所を頼ろうとしている人にとっては,決して不要不急ではなかったはずです。笠井委員のご発言にもありましたとおり,民事裁判手続のIT化は,裁判官や職員の方々が裁判所に出勤することなく,今回のような緊急事態にも裁判所の機能を維持するために必要ですので,是非この審議会で迅速な審議を進めていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 企業の立場からということで,一般的な話も含めてなんですけれども,民事裁判手続においてIT化を進めるというのは強く賛成をしておりますというのが前提にございまして,政府の成長戦略にもあるとおり,民事裁判手続のIT化も含め,行政手続の簡素化,デジタルガバメントの推進というのは社会的な要請として必須であると考えております。また,欧米やアジア諸国にかなり後れを取っている我が国の公共分野におけるIT実装を,サービスの効率化,迅速化と国民の利便性向上,そして負担軽減という意味でも,それを図っていくことというのは,国民のライフスタイルが多様化してビジネスのスピードも加速する中で,重要な課題であると認識をしております。   また,皆さんもおっしゃっておられますように,今回のコロナによって,外出自粛やソーシャルディスタンスの確保のために,民間ではかなりのスピードで様々なサービスがデジタル化,オンライン化されております。国民の意識も非常に高まっておりますので,これを一過性のものとせず,確実にIT実装を進めていくべきであると強く感じております。   また,今回の民事裁判手続のIT化については,内閣官房で検討された検討会においても,「3つのe」ですね,e提出に,e事件管理,e法廷の実現ということについて取りまとめられましたけれども,こういった議論も全て承知しております。そして,諸外国において非常にこういった手続のIT化が進んでいて,特にビジネス面ではライバル企業が多数存在します隣国の中国や韓国において,こういったテレビ会議方式の裁判等が日本の現状よりかなり進んでいるというのも問題に感じております。   また,日本は司法外交と称して,東南アジアをはじめとした新興国に日本の法制度の輸出促進も行っていると伺っております。こういった国内外の現状からすると,個人情報保護やサイバーセキュリティへの対応には当然,留意が必要でありますけれども,民事裁判手続のIT化については待ったなしの状況であろうかと考えます。ですので,是非裁判手続を利用する国民が広く使いやすい体制,システムとなるように,企業側の視点からも今後,意見を申し述べさせていただければと思っておりますので,よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 コロナの関係のため,2月からの裁判でのウェブ会議システムは実際には使用できていないのですが,逆に弁護士は弁護士会内の会議を含め様々な会議においてウェブ会議を経験する機会が増え,個々の弁護士にとってはウェブ会議システムに対するハードルというのはかなり下がったという印象は持っています。   私は大学ないしロースクールでの授業を担当しているのですが,教育機関でも授業を直接対面では実施できずウェブ会議システムを使って行ったりもしていますが,やはり使っていると,教育機関では学生の自室の背景が映ることに非常にセンシティブになっています。今まではそれほど意識しなかったのですが,どのくらいプライバシーについて配慮しなければならないのか,逆に,ホストで操作しているとどのようなことができて,どのようなことについてセキュリティを考えなければならないのかということをかなり意識させられました。授業では,学生にはカメラオフにさせて顔が出ないようにして,こちらは顔を映るようにしながら実施したのですが,やはりいろいろ発言を求めるタイミング等でリアルとは少し違うということを経験しまして,立法後の運用になるのかもしれませんが,リアルとの違いも意識しながら作り込んでいく必要があると考えています。   もう一点指摘すると,教育機関での授業で若い学生を相手としても,必ずしも全員がITに通じているということではなく,その世代の人たちの中でも一定のリテラシーというか,必ずしもITに関心を持たない,経済的な事情だとか様々な事情があると思いますが,アクセスできないという人たちが存在するということを認識したということがあります。学校ではWi-Fiの接続ができないという学生に貸出し等で対応していましたが,やはり研究会の資料や,今回の資料も見て,統計的な数字では浸透度が年々高くなっていることは認識していましたが,逆に,今回のコロナの関係で,リアルにそのようなことに接続できない人たちもいることを経験し,義務化等については,もろもろの配慮が必要なのではないかと思った次第です。感想ですが。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   義務化についてはまた後で御議論いただきたいと思いますが,続いて,大谷委員,お願いいたします。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。一部が聞き取りにくいところがありまして,現在話題になっているテーマでないかもしれませんが,御容赦いただければと思います。   司法においてもいよいよDXが実現するという期待を持って今回,参加させていただいております。このコロナの問題,皆様からも御指摘があったとおりですけれども,企業に在籍しておりますので,コロナの下でテレワークができない理由というのを部署別に挙げていって,テレワークができるような環境を作ろうということで社内の様々な改革を進めているところなのですが,法務部のセクションというのは,いつ送達があるかもしれないので,その送達があったときに対応できるように,誰かが出勤しておかなければいけないということを言って,それほど訴訟もないのにと,周りから笑われているような次第なのですけれども,そういった意味でも期待が大きいと思っているところです。   ただ,幾つか御意見が出ているところでもありますが,実際にテレワークなどを実施していますと,配慮が必要な点も多いのではないかと思っているところです。特に,ウェブ会議などを開催しておりますと,視聴覚障害のある,最近は職場でもダイバーシティに配慮いたしまして様々な障害を抱えている職員なども雇用しておりますけれども,そのような方が自由にウェブ会議での発言がしづらいですとか,そういった問題もあるということを実感しているところでございます。   また,コロナの環境の下で様々な報道がなされているところですが,実際に住所がなかったり,あるいは別の言語を使われている外国の方など,オンライン申立ての義務化というような話になってまいりますと,司法アクセスの確保という観点で配慮が必要になってくるのだろうなと思っているところでございます。   また,もう少し後の方で御検討いただくのかもしれませんけれども,非常に関心が大きいのが送達の部分でございます。電子署名制度などが十分に普及していない中で,例えば企業におきましては,代表者以外の者が,例えばe委任状,電子委任状などで申告できるような仕組みというのが税務の分野で導入されておりますけれども,やはりこの司法に関してもそういったインフラも併せて進めていただく必要があると思っております。   また,事業所が幾つかに分かれておりますと,その係属している事案のケース管理という点では,それが十分に見える化できるようなシステム構築も課題になってくるかと思います。そして,その関係ではみなし送達というのも過去に話題になっているかと思いますが,適切な防御機会を与えるという意味で,みなし送達については慎重な検討が必要ではないかと考えております。そういう意味で,この司法だけのIT化ではなく,それを取り巻く周囲の環境も含めて,DXが進められるような仕組みをこの会議からも呼び掛けていくことが必要になるのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。このたびはウェブ会議で参加させていただいております。消費者代表としてよろしくお願いします。今回の資料を拝読いたしまして,平成16年の民事訴訟法改正で,裁判所へのオンライン申立てが可能となっているにもかかわらず,最高裁が規則整備をしていないためオンラインでの訴え提起が認められていないという現状を知りました。このような中で,オンライン申立ての義務化ということに対して,オンライン申立てが大変便利なものであるということは十分理解するのですけれども,16年掛けてできてこなかったことが,これからは申立てをする私ども素人の消費者も含めて義務化されるということに懸念がございます。これまでの意見にもございましたように,ITに不得手な方や不慣れな方もおいでかと思いますし,また,IT機器整備が整っていない環境もあるかと思います。   私がすごく知りたいのは,いろいろな行政手続の中で,ITによる手続が義務化されているものがあるのかということでございます。いろいろなものが電子化されて便利になっていることは,例えば戸籍謄本や住民票が当該の役所に行かなくても手に入るなど,とても便利なことは理解しておりまして,分かっているのですけれども,それらも手続をITによる手続に義務化されてはいないはずです。特殊な業界の中ではともかくとして,私ども国民が必要とする裁判において,この申立てのITによる手続義務化ということがどうかということは十分検討していただきたいと思います。   もう一つは,裁判において消費者がなかなか情報を十分に得られなかったり,証拠がそろえられなかったりということで,弁護士を立てた裁判をしても,非常に不利になる場合が多いということを聞いています。事業者等,大きな組織の方がいろいろなことでメリットが多いということも聞いておりまして,そんな中でこのIT化ということは,もしかしたら消費者が裁判を起こす際に非常に情報を手に入れやすくなるというようなことも考えられるのではないかと思います。今回の話題の中には入っていませんが,今回IT化を検討する中で,IT化によって情報格差が是正されるなど充実した公正な裁判手続の下で消費者問題が正しく司法救済が図られるような方向に行っていただきたいということも,是非検討課題に入れていただけたらと願っております。   加えて,先ほどの御意見にもございましたが,プライバシーへの配慮,またIT化で新たに起こる情報漏えいも非常に懸念されます。情報漏えいは担当者や取扱者のミスであったり,トラブルであったりもしますが,あるいはハッカーのように意思を持って情報を狙ってくるということも新たに起こり得ます。それらに対しての対策や危機管理の徹底も十分検討した上で進めていただきたいことだと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○門田委員 裁判手続のIT化に際しては,法曹もそうなのですが,特に法曹以外の方たちから,これを機に仕事のやり方を変えなければいけないという御指摘を受けているところです。一部の裁判所ではフェーズ1の取組が始まっており,いろいろなやり方を試してみようという裁判官も徐々に増えてきております。裁判所にしても弁護士にしても,慣れ親しんだ仕事のやり方を変えるということはなかなかしんどいところがあるわけですが,現行民事訴訟法施行の前後にも集中証拠調べの実施などに関して同じような話があり,当時は関係者が一致協力して訴訟実務が大きく様変わりしたところです。この部会では,裁判所や弁護士の仕事のやり方に変革を迫るような様々な提案がされるものと思いますけれども,民事訴訟を利用される方々の多様な期待に応えるためであれば,これまでの仕事のやり方を大きく変えることもいとわず,積極的にチャレンジしていきたいと思っております。   取り上げていただきたい論点ということで,少し申し上げますと,IT化後の新しい民事訴訟をよりよいものとしていくためには,手続を主宰する裁判官のみならず,法律専門職として適正な手続や円滑な進行管理を担ってきた裁判所書記官の事務の在り方についても検討を加えることが必要不可欠であると思われます。今後,調査審議が進められる各論点の中には,裁判所書記官の事務と密接に関連する事項もあると思われますので,裁判所書記官の権限や,その事務の在り方についても幅広に取り上げていただきたいと思いますし,最高裁としても意見を述べてまいりたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○富澤幹事 民事裁判手続等IT化研究会の方にも出席させていただいておりましたので,その際にこのような論点についても御検討いただけないかと思っていたことを御紹介させていただきたいと思います。   まず1点は,訴訟記録の閲覧等の制限の点でございます。本日御議論いただく記録の電子化等が実現されることになりますと,営業秘密やプライバシーといった点について配慮をしっかりとしていかなければいけないと考えております。現行法の下での実務では,対応が困難な様々な課題に直面しております。例えば,閲覧等制限の申立てがされる前に第三者から閲覧等の申立てがされた場合の取扱いをどうするのか,第三者に対するいわゆる口外禁止条項が記載された和解調書の取扱いをどうするのか,さらに,ストーカーやDVの被害者と加害者が当事者になっている事件などにおいて,相手方の当事者に対しても一定の情報の秘匿を希望する場合にどのような取扱いをするのか,これらは飽くまでも一例でございますけれども,いろいろと検討しなければいけない論点があると思っておりますので,今後これらの点についても御検討していただければと思います。   また,争点及び証拠の整理手続につきまして,現在は準備的口頭弁論,弁論準備手続,書面による準備手続の三つの手続に分けられておりますけれども,今後,IT化が進んでいくということも考えますと,なるべく手続をシンプルにしていくのが望ましいと考えております。民事裁判手続等IT化研究会の報告書の中でも(注)に記載されておりますけれども,一つの争点整理手続に統合することも御検討していただけないかと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○長谷部委員 長谷部です。先ほど大学のオンライン授業のお話が出ましたが,私もそういう経験をしました。恐らく大学関係で皆さん,同じような感覚をお持ちではないかと思うのですけれども,確かに対面授業ができない,コロナ禍で外出も制限されているという,そういう状況では,このオンラインでするというのはとても便利だなと思うと同時に,こういったオンラインを維持していくことのコストというのもなかなか大変なものだなと感じている次第です。先ほど藤野委員から情報漏えいの御指摘がありましたけれども,それ以前の問題として,システムを安全に動かしていくためには,相当労力も掛かりますし,費用も掛かるのだなということを感じた次第です。   それで,このオンライン申立てを例にとってお話しさせていただきますと,オンライン申立てが可能になれば,訴え提起等が容易になりますし,従来の書面の郵送等の方法によるよりも時間及び費用の点で利便性が増すことは確かであると思います。また,紙媒体に代えて電子データで訴訟記録を管理することになれば,管理コストの削減に役立つというメリットもあると思います。それから,提出された電子データを利用して別のデータを作成することができれば,これまで文書の作成に要していた時間や労力を削減することにもつながると思います。   こういったメリットがあると思うのですけれども,他方でオンライン申立てを推進することには様々なコストも掛かると思います。例えば,先ほど来御指摘があります,コンピュータや文書作成ソフトの利用に不慣れであったり,そもそも利用できる環境にない人たちのサポートをどうするかという問題は,本日の部会資料でも指摘されているところでありますが,それ以外にもデータの管理に伴うコスト,例えば膨大な容量のデータを維持し,安全に利用するための技術や費用の問題もあると思います。これは,我が国の民事訴訟の事件数が今後これまでどおりの水準で推移するのかどうかということによっても対処の仕方が変わり得る問題ではないかと思うのですが,その関係で,先ほど,小出委員からもお話がありましたし,この資料にも書いてあるところでありますけれども,諸外国ではオンライン化,あるいはIT化というのが非常に進んでいると言われていますが,そういった諸外国でデータ管理にどのように対応しているのか,各国の民事訴訟の事件数や法曹人口,IT化の推進を必要とした事情なども含めて御紹介いただけますと,我が国ではどこまでの水準のIT化を目指すべきかについての今後の議論にとって,大いに参考になるのではないかと思います。今後の議論の進め方との関係で,外国の事情をなるべく実態に即して御紹介いただければ有り難いと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐々木委員 すみません,先ほど富澤幹事がおっしゃった訴訟記録の閲覧制限の件ですけれども,私ども企業の立場からしますと,営業秘密に関しては非常に関心の高いところでございますので,是非検討の俎上にあげていただきたいと思います。今回検討されているIT化ですけれども,全面的に賛成だというのが前提ではありますけれども,非常にハードルの低いIT化の話だと思っております。ですので,是非もう一歩進めて,先ほども少し話題に出ましたけれども,視聴覚障害者の方の訴訟アクセスといいますか,裁判アクセスが可能になるようなIT化のレベルに上げていただくなど,さらには,訴訟記録ですとか訴訟データ,これをビッグデータ化とか,そういうレベル,これは飽くまで法制度の話ではなくて,その後の運用の話なのだろうと思いますけれども,その辺りまでまた検討していただけるといいなと私ども,思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 日下部でございます。私は弁護士ですので,弁護士の業界の中で裁判手続のIT化がどのように受け取られているのか,どのような議論がされているのかということは身近で見る機会がとても多いものです。お聞き及びの方も多いかもしれませんけれども,IT化につきましては,その局面によっては弁護士の中に様々な意見がある,そういうものもございます。内部で議論をしていて思いますのは,その様々な意見の中には,IT化がどのようなものになるのかということが分からないことによる不安や,あるいは自分たちがやってきた実務の在り方が変容を迫られるということに対する抵抗感,こういうものがあるということも否定し切れないのだろうと思っています。   この部会におきましては,法律実務家だけではない立場の方に御出席していただいているところですが,そうした方々からの御意見として,訴訟代理人にどういったことを求めるのか,どういうことを期待しているのか,そういう観点からの御意見を是非頂きたいと思っております。そういった生の声を出していただくということが,広い意味での一般的な弁護士の訴訟に対する物の考え方,見方というものによい刺激を与える契機にもなるのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○湯淺委員 湯淺でございます。先ほど来,委員の皆様から,またほかの方々からも,民事訴訟のIT化に伴うプライバシー侵害のおそれでありますとか,あるいはセキュリティ上の懸念というものをいろいろとお聞きをしているところでございます。当然,営業秘密も含めて非常に機微なデータを取り扱う訴訟においては,そのセキュリティは非常に重要であると認識をしております。   内閣官房の,本日,川村参事官が御出席の検討会のフォローアップの会がございました。私は講義と重複しておりまして出席できませんでしたが,海外の裁判システム,訴訟システムに実際にサイバー攻撃を受けた事例,近年の事例というのを資料として提出をさせていただきまして,米国の裁判所組織がその裁判システムへの攻撃を受けたときにどうするかについて,考え方を裁判所の関係者の組織がまとめたレポートがございますので,それも資料の中で紹介しております。   基本的な考え方としましては,攻撃を受けることを前提として必要な技術的対策を取れば,非常に機微なデータが大規模に流出するということは防ぐことができますし,また,データにつきましても常時暗号化や,様々な技術的な手段がございますので,それらを十二分に事前に検討して採用しておけば,機微なデータがインターネット上に流出するというような事態は避けられると思っております。そういう意味では,攻撃を受けることを前提として,システム全体を政府の監視組織の下に入れるべきかどうかや,あるいはセキュリティ対策のための常時監視態勢をどこに作るべきかというような技術的な検討を十二分にすることで,セキュリティに関する皆様方の懸念を払拭することができると思っております。   他方で,システム側のセキュリティはきちんとした体制と予算を掛ければできますが,もう一つ,訴訟当事者の方々御自身のセキュリティは御自分でやっていただくしかないので,ここもどうするかというのも一つの問題で,実は難しいところかなと思っておるところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。おおむねよろしいでしょうか。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。このデジタル化ということについて,特にこの4月以降,大きく政府部内でも議論が動いております。端的に言いますと,我が国はデジタル化,オンライン化に相当な遅れがあるという認識が各方面で広がっておりまして,特にテレワークができない。先ほども法務部の方が出勤しないといけない,契約書が届いて判子を押さないといけない,こういったことがかなり話題になりまして,これを一気に変えていくべきだと,特に公共部門の遅れが社会全体のデジタル化を妨げているのではないか,遅らせているのではないか,そんな議論がなされておりまして,政府の中で規制改革推進会議で,書面,押印,対面,こういった手続を徹底的に見直していこうという流れがありまして,実際,給付金の話でも,書面で連絡をするとか国民に届けるということがなかなかできないというところが,これもデジタル化の遅れ,これは市町村の事務のところもそうだと思いますけれども,そういったところを一気に加速度を上げて変えて,この10年,遅れを取り戻すというか,先に進めるような社会の変革に取り組むべきだというのが今,政府全体の流れとして出ておりまして,この新しい日常,実際にこういうテレビ会議で審議会をやるようになったのも,この4月,5月で急激に進んでいる動きかと思いますけれども,こういったものを後戻りさせることなく定着をさせていく,こういった流れになってきてございます。そこの中で,やはり諸外国に比べて我が国が遅れていると,ですので,そこを法廷でも,法律でも紙,書面交付義務が残っていたりするような状況でございますので,そういったものを撤廃してどんどんとデジタル化をしていこうと,こういった流れになるところでございます。   また,先ほど湯淺委員からも御紹介がありましたけれども,セキュリティというところで,私が担当していた検討会の中で議論があったところで申し上げますと,セキュリティの専門家の方にお話をお伺いすると,デジタルは危ない,危ないと言われますが,紙で漏えいしていることの方がはるかに多いということで,紙の漏えいの場合は,その痕跡が残らないので,漏えいしている事実も判明しないですが,デジタルの場合は比較的,痕跡が残るというところで,端緒も取りやすいというようなところもありまして,システムだけの問題ではなくて,紙も含めて,その管理をどうしていくかというところも視点としては重要なのではないかというお話もございました。   実際,政府のデジタルの手続を見ますと,紙とデジタルを比べると,デジタルの方がはるかに要求するものが多くて難しくなっているというので,イコールフィッティングがなされていないと,そこはデジタルも使いやすいように,紙と同様に使いやすいような法制度なり制度にしていくべきだと,こういった議論もなされている状況でございます。   今,政府全体で取り組まれているような動きについて御紹介をさせていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 山本克己です。先ほど来,どうもコロナの感染拡大の話と絡めて幾つかのことが述べられていると思います。一つ,長谷部委員もおっしゃったのですけれども,我々大学の人間,こういうものに遠いところにいたと思った人間が結構,在宅勤務でZoom等を使って授業をするということで,ある程度理解が進んだので議論しやすいと,いろいろな問題点も気付きやすいという点は,この部会にとって,コロナウイルスの感染拡大がある面,いい面を持っている面もあるのですけれども,私が気になるのは,裁判所側の人,裁判官や裁判所書記官の在宅勤務を可能とするIT化というのを本当に今,考えるべきなのかと,これは少し慎重に検討しなければいけない事柄なのではないのかと思います。当然に在宅勤務ができるようにするということを考えるべきだとは,私は今のところ思っていない。   というのは,先ほどどなたかが,当事者のセキュリティの問題というのは,システムのセキュリティの問題と当事者のセキュリティの問題を分けるようなお話をされましたけれども,在宅勤務にした場合,裁判官が官舎に住んでおられて官舎のネット環境を裁判所が責任を持って構築されれば,その問題は生じないのですけれども,個人で持っておられる,裁判官が自己所有の建物に住んでおられるような場合に,そこまでは行かないわけですよね。しかも,執務環境がどうなのか,証人尋問で尋問しているときに,裁判官の家族がそこらをうろうろしているかもしれないということもあり得るわけです。私なんかは在宅でZoomで授業をしていますと,家内に,あんたこんなこと言ったらあかんよと冷やかされるのですけれども,そういう状況というものもやはり考えなければいけないので,いきなり在宅勤務を可能とするIT化なんていう問題設定を今すべきなのかということは,少し考えていただいた方がいいように思います。   基本的に私はIT化,反対しているわけではなくて,昔から判子はやめるべきだと,民事訴訟の当事者提出書面に判子を押さなければいけないのはおかしいのではないかとずっと,法制審でも何度か述べたことありますので,基本的に今の紙ベースのやり方がいいとは全然思っておりませんが,その点だけは少し懸念が,今日のお話で急に出てきた話で,少し懸念を覚えたということで申し上げさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。おおむねよろしいですか。 ○大坪幹事 今後,個別に御検討いただきたいということで申し述べさせていただきます。   今後,訴訟記録が電子化されることによって,主張書面なり証拠などが,例えば主張書面などもカラーになったり,見やすいものになっていくというものと考えられます。証拠なども,画像や動画などを使って,分かりやすく事案を整理するということも考えられるのですけれども,若干,裁判官に偏った印象を与えるようなこともないではないのではないかと考えられます。ある程度,主張書面などのそういう動画や画像に関しては,事実認定論的なところで今後の研究対象になると思うのですけれども,故意にあえて偽造した動画を作ったり,写真を作るという危険性というのが今後,高まっていくのだろうと考えられます。技術の進展によって容易に見破るということが可能なのかもしれないのですけれども,やはり我々,素人のあまり詳しくない弁護士が,相手方から出された証拠について,それが偽造だと見破るのは難しいのではないかと思います。そういうことを考えると,そういう証拠が出されないような仕組み,出されたときにそれに対して,場合によっては,一番極端な制裁としては敗訴するような,そういうようなことによって,少なくとも故意に偽造された動画,写真などは提出できないような仕組みを御検討いただけるとよいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。 ○大野幹事 部会資料1の中で(注)として取り上げておりますが,外国にいる方に対する送達や外国にいる方に対する証拠調べにつきましては,先ほども関係官の福田から御説明したとおり,他国の主権との関係など国内のものとは異なる視点に基づく論点の検討が必要となります。そこで,別途,事務当局で検討を進めまして,論点を整理した上で改めて部会にお諮りしたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。今の点も含めまして,幾つか委員,幹事から新たな論点といいますか,付け加えるべき論点について御指摘を頂いたように思います。また,今後の議論の進め方,長谷部委員から外国法のこと,外国の実情等についてのお話もございましたけれども,そのような今後の進め方等も含めて,今頂いた意見も踏まえて,今後,議論を進めていきたいと思います。   それでは,よろしければ,本日はこれに引き続きまして,やはり総論的な論点でありますが,もう少し具体的な話でありますオンライン申立ての義務化等及び訴訟記録の電子化について,一読目といいますか,の御議論をお願いしたいと思っておりますので,資料2になりますけれども,まずはその一つ目の論点として,オンライン申立ての義務化等につきまして,この部会資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○福田関係官 それでは,部会資料2につきましても福田から説明をさせていただきます。今,部会長からありましたように,部会資料2はオンライン申立ての義務化と訴訟記録の電子化について取り上げたものでございます。   まず,第1のオンライン申立ての義務化について説明をさせていただきます。御案内のとおり,現行の民事訴訟法の下では,訴えの提起等の裁判所に対する申立ては書面を裁判所に提出することによって行われておりますが,これを段階的に,IT機器を利用したオンライン申立てに一本化していくことについて御議論を頂きたいと考えております。   このようなオンライン申立ての義務化の議論が出てきた経緯等につきましては,説明の1から3までに記載してございます。1では平成16年の民事訴訟法の改正に至る経緯,2ではその改正後の状況,3では最近の政府内における動きについてそれぞれ記載してございます。この中で,裁判手続等のIT化検討会の取りまとめ,民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議の取りまとめにも触れておりますが,これらは参考資料2及び3として配布させていただいたものでございます。   続きまして,3ページの4におきまして,本日参考資料1として配布させていただいた,商事法務で行われました民事裁判手続等IT化研究会の報告書を引用し,オンライン申立ての義務化に関する提案を紹介させていただいております。この報告書においては,甲案として,オンライン申立てを原則義務化するとの考え方,乙案として,弁護士等の士業者に限り義務化するとの考え方,丙案として,オンライン申立ての利用を任意とする考え方が示されるとともに,まずは丙案を実現し,その後,国民におけるITの浸透度,本人サポートの充実,更には事件管理システムの利用環境等の事情を考慮して,国民の司法アクセスが後退しないことを条件として,甲案の実現を目指しつつ,その過程において乙案を実現することが提案されております。   4ページの5では,オンライン申立ての利点,更に進んで,オンライン申立てが義務化された場合の利便性について言及しております。   他方,5ページの6では,インターネットを利用していない者が無視できない程度に存在すること,更には,よく例として挙げられております刑事施設被収容者のように,そもそもインターネットを利用することができない環境にある者が存在し,これらの者の裁判を受ける権利との関係で課題があるということにも言及をしております。   そこで,7において,義務化に向けた方策といたしまして,裁判所による適切な事件管理システムの構築と,併せて裁判所や法テラス,弁護士会,司法書士会などの関係機関による充実したサポート体制の構築等を挙げております。この中で,日本弁護士連合会における基本方針,日本司法書士会連合会における声明にも触れておりますので,これらを参考資料4及び5として配布させていただいております。   これらの方策を踏まえ,8において,オンライン申立ての義務化につき,その段階的実現の是非について問題提起をさせていただいております。   また,先ほどお話しした課題があることに照らし,一定の範囲で義務化の例外を設けるべきとの考え方も想定されますことから,9においてその点についても問題提起をさせていただいております。この部分は,1ページの本文の(注1)に対応するものでございます。さらに,1ページの(注2)におきましては,電気通信回線の故障その他の事由により申立てができないときを想定して,電磁的記録媒体の提出を認めることとしてはどうかとの問題提起も併せてさせていただいております。なお,このような事情がある場合には,電磁的記録媒体のみならず,書面による申立てを認めるべきとの考え方もあり得るものと考えております。   続きまして,7ページの2,事件管理システムに障害が生じたときに備えた規律についても説明をさせていただきます。これは,オンライン申立てを認めることとした場合,事件管理システムに障害が生じたとき等に備えた規律として,時効の完成猶予に関する規律を設けることを提案しております。ここにいう障害が生じたとき等とは,システムに障害が生じた場合のみならず,メンテナンスの場合も含み得るものとの趣旨でございます。   あわせて,少々技術的な事柄ではございますが,3,事件管理システムに提出することができるデータの種類についても論点として挙げております。本文中に「汎用性のある」との表現がありますが,こちらは平たく申し上げますと,少なくとも裁判所において判読可能なものといった意味合いであると理解して御議論いただけるとよろしいかと思います。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   このオンライン申立ての義務化等の部分につきましては,既に先ほど来,委員,幹事から何名かから御意見を頂いたところでございますけれども,非常に重要な論点だと思っておりますので,改めて,どなたからでも結構ですので御発言,御意見を頂ければと思います。 ○阿多委員 義務化という言葉が出ているので,今後の議論のために言葉の意味を確認させていただきたいと思います。お伺いしたいのは義務化の意味です。法律家はどうしても義務に違反したときの制裁は何なのかと考えるのですが,この申立ての義務化に伴う制裁とは具体的に何を想定しているのか。   例えば,具体例で話しますと,弁護士ではなくて本人が申立てのために裁判所に書面を持参してきたときに,裁判所はそれを受け付けずに帰って下さいという話なのか,また,裁判所に郵送してきたときにごみ箱へ行くというような話なのか,そうではなくて,裁判所としては受付はするが,民事訴訟法でも補正命令等がありますが,それらの手続を経た上で,最終的に命令に沿った形に対応されないのであれば却下となるのかという話なのかということです。   補正命令等がされるのであるならば,後でサポートの話もありますが,現在の多くの実務では,書記官がいろいろ促しをしていますので,それ自体がサポートになるのではないか。形式的には申立て後ですので事後のサポートになるのかもしれませんが,そのような形の対応もあるのではないか。部会資料2の中でも,裁判所の中に国民誰もが利用できるようなパソコン,スキャナを置くという記載がありますが,書記官が端末に誘導し,場合によっては使い方を補助することも考えられます。それらの手続を経た上で,最終的に却下という形になるという意味で義務化と言われているのか。それとも,極端な例として挙げましたが電子データでない限り例外に当たる方は別にして,受付しないという意味なのか,意味内容によってどこまで緩めるのか,例外を認めるのかという議論に影響するかと思うものですから,最初にお伺いさせていただきました。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局の方からコメントを。 ○福田関係官 事務当局としては,基本的に義務化とは一本化と同程度の意味であると考えておりますが,訴訟要件の一つとするとか訴状却下の対象とするというような考え方もあり得ようかと思います。また,サポートの問題とも絡みますが,補正の促しや窓口での対応をどのように位置付けるかとの話につながってくるかと思います。事務当局としましては,義務化にどこまでの意味を読み込むのかという点も含めて,皆様に御議論いただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。 ○阿多委員 そうしましたら,現時点では様々な可能性を含めて議論していく,そのように理解させていただければよいのですね。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 私も最初にお尋ねをさせていただければと思います。2点ございます。   1点目ですけれども,本日の資料2の4ページの説明の5というところを拝見しますと,オンライン申立てに一本化されると,裁判所のみならず,民事裁判手続を利用する者にも利便性が向上するという説明がなされております。ただ,このオンライン申立てに一本化するという考えに対しては,従来の書面による申立てとの併用を認めた場合と比べて,申立人の申立て方法を制約することになるので,裁判手続の利用者の利便性を損なうというふうに言われることも多いかと思います。確かに申立人だけ,それも個別の申立人だけに着目すると,そのようにも考えられるのかと思うのですけれども,一方,裁判手続は裁判所のほかに相手方当事者もいるわけでありまして,そういった裁判手続の利用者を全体的に広く見たときに,オンライン申立てではない書面による申立てをする人が減っていくということが制度全体の上で当事者の利便性を高めるという意味合いもあるのかなとも思っているところです。その点について,事務局の方はどういったお考えなのかということをお聞きできればというのが1点です。   それから,2点目ですけれども,段階的にオンライン申立て一本化に向かうということを提案されていて,その中で示されている研究会における考え方として,国民におけるITの浸透度,本人サポートの充実,さらには事件管理システムの利用環境等の事情を考慮して,国民の司法アクセスが後退しないことを条件とすると,このような説明がなされていると思います。これは,国民の裁判を受ける権利,あるいは国民の司法アクセスを後退させないことが一般的な義務化,あるいは一本化には必要であるという考えだと思いますけれども,その判断,つまり,条件が満たされているかどうかの判断が適切になされないと,その条件は実質的な意味を失うのではないかという危惧もあり得るところかと思います。お尋ねしたいのは,こうした条件が満たされているのかどうかというのを将来において誰がどのように判断をするということが想定されているのでしょうか。現時点でお考えがあれば教えていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 2点御質問があったかと思いますが,事務当局からお答えいただけますか。 ○大野幹事 まず,1点目の点でございます。オンライン申立てに一本化されると利便性が向上するというところについて御質問がございました。この点については,IT化による効用が十分に発揮されるためには,基本的には全面的にIT化を図る必要があるとの前提の下,部会資料では,オンライン申立てに一本化されることによって限られた司法資源の有効活用というのも可能となるということをお書きしております。   2点目については,この部会で,今後,そのときあるサポート状況を踏まえつつ,どの範囲の方についてオンラインの申立てを義務化していくかということを御議論いただき,国民の司法アクセスが確保されているかどうかということを御判断いただきたいと考えています。 ○山本(和)部会長 日下部委員,よろしいですか。 ○日下部委員 すみません,少なくとも二つ目の点についてお尋ねしたかったのは,段階的に義務化される対象を広げていって,最終的には一本化するというお考えが示されているので,最終的に一本化される段階は将来の話であると理解しています。つまり,何年先か分かりませんけれども,将来のどこかの時点において,今であれば一本化してもいいだろうという判断がなされるのだと思いますが,それは一体誰がどのような場でなすことになるのか,それについて何か今,お考えがあればお伺いしたいというのが趣旨でした。 ○山本(和)部会長 段階的にやるかどうかも含めて今後の議論だとは思いますけれども,もし段階的にやるということになれば,どういう形でその段階を進めていくということを考えればいいのかということも含めて,ここで御議論を頂ければと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○富澤幹事 裁判所としましても,オンライン申立てを一律に義務化する方向が望ましく,部会資料3に引用されている甲案を最終的には目指していくべきと思っています。  日下部委員の方から先ほど御質問があった1点目については,裁判所としても民事訴訟の当事者にメリットがあると考えておりますので,その点,御説明させていただきたいと思います。   日下部委員からもお話がありましたけれども,民事訴訟の当事者には一方当事者だけでなく,相手方当事者もございます。仮にオンライン申立てを義務化しないことになりますと,一方当事者がオンラインで提出しているにもかかわらず,相手方の当事者からは,例えばファクシミリや郵送といった紙媒体で直送されることがあるのではないかと思います。そうしますと,オンライン申立てをして,自分の記録は電子的に保管しているにもかかわらず,相手方当事者の記録については紙媒体で保管をするか,自分で電子化作業等をしなければならないこととなるので,そういった意味でオンライン申立てに一本化されるメリットはあるのではないかと考えているところでございます。   他方で,オンライン申立てを義務化する上では,義務化の効果以外に,本人サポートをどのように行っていくのかもしっかり考えなければいけないと思いますし,IT機器やインターネットの普及状況等を踏まえると,まずは士業者に対してオンライン申立てを義務化した上で,対象を拡大することは十分あり得ると思っております。ただ,この場合,条文の規定の仕方には工夫が必要であり,オンライン申立ての義務化の対象を士業者以外にも拡大する段階で,改めて法律を改正する必要が生じないようにしていただくことが望ましいと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 すみません,富澤さんの御説明の意味を確認させていただきたいのですが,相手方にとってのメリットという形で,一方当事者の方はデータで提出しているが,相手方がそれを利用しない場合に,紙で送付されて来ることの負担というお話があったのですが,裁判所を含め誰かがデータ化して提供するのであれば,裁判所に届くまでは紙ということはあり得ても,その後はデータで処理されるわけで,相手方代理人もデータで処理するという話になるかと思うのです。では,誰がデータ化するのかというところに関連する話で,今回の資料も,物理的なデータ化,データの問題と,法的なサポートの話もありますが,一つの選択肢として,裁判所の方で当事者が持ってきたものをデータ化するというのであれば,相手方との関係でも,常にデータで処理されるという形になるはずではありませんか。裁判所の意味が訴訟法の裁判所なのか,組織法上の裁判所なのか,いろいろあるかとは思いますが,裁判所がデータを作成されるというのであれば,相手方が不利になるといった議論はなくなるのではないかと思うのですが,如何でしょうか。 ○山本(和)部会長 富澤幹事,いかがですか,お答え。 ○富澤幹事 若干,私の御説明が分かりにくかったのかもしれませんけれども,確かに,例えば,紙媒体で持ってきていただいたものを,裁判所に設置された機器を使用して当事者本人で電子化作業をしていただきますと,電子記録が出来上がることになろうかと思います。ただ,このような記録を電子化する作業をした当事者が,当該電子記録にアクセスすることができない場合もあり得るのではないかと考え,先ほどのような御説明をさせていただいたところでございます。逆に言いますと,オンライン申立てされた場合に,その電子記録の内容を書面に出力して相手方当事者に送達することを裁判所において行うのかという問題がありますが,仮にそのような取扱いとなった場合には,そのための費用等も掛かることも考慮すべきと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。   先ほど増見委員,手を挙げておられたですか。 ○増見委員 すみません,皆さんのおっしゃっているところと重なる点も多いのですけれども,企業でもすごい勢いでペーパーレス化というのは進んでおりまして,やはり管理の簡便性や時間と手間,コスト等,いろいろな面から,やはり義務化というのは不可避かなと考えておりまして,賛成しております。   そして,この甲乙丙案なのですけれども,仮に丙案から任意で始めましょうということになりますと,やはり甲の一本化に進むまでの道のりというのは非常に長いものになってしまうのではないかと懸念をしておりまして,やはりこのデジタル化を実現するためには,甲案の義務化に向かって,しかも期限を区切った形で,いつまでに甲を実現するというような形で進めていただくのが非常によいのではないかと考えております。また,企業の方からも,利用者の利便性の確保というか,あとITリテラシーの向上に向けた支援というのも非常に重要だと思っておりまして,分かりやすいユーザーガイドや,チャットボットを利用したサポート等も必要になってくるであろうと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 最初に阿多さんがおっしゃった点と似たような話なのですけれども,義務という言葉の意味が,お話を聞いていて,ますます分からなくなってしまったのですけれども,義務というのはネガティブなサンクションを伴うものだと普通,イメージされているわけです。最近,最高裁の判決でも,本当にこれは義務なのかというのを義務だと言っていますので,そういう用語法もあるのかもしれませんけれども,一般に受ける言葉の意味内容はやはり,それに反するとネガティブなリアクションが返ってくるということだろうと思うのです。そのうち,訴状については訴状審査という話が出まして,そこで何かするということはあり得るのですけれども,準備書面等についてはそういうものは考えにくいわけなので,一体,義務化というのはどういうふうに実効性あるものとして実現していくのかということは,もう少しイメージを示していただかないと,なかなか議論しづらいという感じが1点,いたします。   それと,先ほど,話が全然変わるのですが,事件管理システム,提出できる電子データの種類のところで,裁判所に解読可能であるデータフォーマットを意味するのだというような,7ページの3の(1)の説明をされたと思うのですけれども,これってどうなのでしょう。裁判所だけでいいのですかね。つまり,相手方当事者もやはり読めないとまずいし,場合によっては,電子データを提出する人が第三者である場合というのもあり得るのではないでしょうか,鑑定人であるとか。そういう場合については,やはり相手方当事者や両当事者にも解読可能である,容易に解読できることが必要なので,単に標準化されて裁判所が何か対応できるというだけではまずいのではないのか,もう少し限定する必要があるのではないか。ただ,法律事項とすべきだということを言っているわけではなくて,それは最高裁規則でデータフォーマットを指定していただくというような形で,もう少し狭くデータフォーマットを考えた方がいいような感じがしました。後者はあまり大した意味はありませんが,前者の方を是非お教えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 事務当局,いかがでしょうか。先ほどの御説明は訴状の点が中心だったと思いますが,それ以外のものについて義務化の意味が何かということですかね。 ○福田関係官 このオンライン申立ての義務化で主に議論をしていただきたい場面としては,訴えの提起のほか,何らかの申立ての場面を想定しております。現在,申立てを書面でしなければならないという規定があるという前提ですので,訴状審査ほど厳格ではないにせよ,申立書の審査というものが介在する余地はあると理解しております。ただ,複数の御意見があったように,義務化の意味が分かりにくいという御指摘をいただきましたので,これにどういった意味を持たせるかというのを,今後整理させていただきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,よろしいでしょうか。 ○山本(克)委員 一言だけ。先ほどの最高裁の方は準備書面まで含めたことでおっしゃいましたので,そこの交通整理をきちんとしていただかないと,皆さん理解が難しいのではないかなと,私もその方の発言に対応して先ほどの発言をしましたので,その辺り,交通整理を是非お願いします。 ○大坪幹事 今後,弁護士会でも本人サポートについて,具体的にどういうものが必要かというのを検討することが求められるのではないかと思いますけれども,そのときに,考え方の参考として,一弁護士として考えられるところを述べたいと思います。場合によっては最高裁の方で御批判等があるかもしれませんけれども,適宜御指摘いただきたいと思います。   まず,パソコンを持っていない人が訴訟に関与する場合にどうなるかということで考えたいと思います。まず,パソコンを持っていない原告本人が御自分で訴訟を提起すると考えたときに,訴状をまず作成することが必要になり,さらに証拠や訴状の副本など,必要な添付書類を用意するということになります。現状,この訴状について,あまり手書きというのは見掛けないようですので,何らかの形でパソコンで打ったものを訴状として完成させているということが考えられます。これは恐らく誰かにサポートしていただいているのだろうなと思います。この書類等を用意して,コピーするには当然,お金が掛かっているということになります。   オンライン申立てが義務化されますと,原告の方は作った訴状などを事件管理システムに利用登録して,その上で訴状等のデータをアップロードして事件管理システムに載せるということになる。ですので,パソコンを持っていない人は当然その段階でサポートを必要として,誰かに訴状や書証,添付書類等を事件管理システムにアップロードしていただくということになろうかと思います。その後,訴訟係属中はどうかといいますと,準備書面や証拠を提出することが必要になりますけれども,この場合も,パソコンをお持ちではないわけですから,何らかのサポートを受けて事件管理システムにそれらの証拠,主張書面等をアップロードするということになろうかと思います。   それに対して,相手方から提出された準備書面,書証というのはどうなるかといいますと,恐らく,パソコン等を持っていらっしゃらないわけですから,相手方から直接送付を受けるということになって,紙,現状でも民訴規則上,直送という,直接相手方当事者に送るという形で提出された書面を受け取るということになろうかと思います。ですので,この書面の受領の段階ではサポートは特に必要ないのだろうなと思います。そういう形ですが,相手方用の副本を印刷するとか郵送する場合には,それは訴訟費用になりますので,当然,郵送した場合には原則としてはその費用を払わなければならないことになろうかと思います。   判決の場合ですけれども,判決について送達場所をあらかじめ裁判所に届け出ておけば,事件管理システムを通じなくても,判決の送達場所を御自宅にするというようなことは,パソコンを持っていない原告の方でも可能になると思います。そうすると,その場合にもサポートは必要ないと考えられます。判決を受け取って上訴する場合には,引き続き本人サポートという形で,事件管理システムなどにアップロードするなどの手続が必要になってくると思います。   次に,被告ですけれども,被告の場合には強制的に訴訟係属を成立させるということが必要ですので,今後の議論になりますけれども,原則と例外というふうな言い方が正しいかどうか分かりませんけれども,紙での訴状,呼出状などを郵送してもらって,現状での送達を前提とした規律ということになろうかと思います。ですので,訴状等の送達を受ける場合に本人サポートは必要ないと考えられます。被告の場合に,準備書面,証拠を提出する場合は,パソコンをもしお持ちでなければ,事件管理システムに登録してアップロードするという必要がありますので,その段階では原告と同様に本人サポートが必要になってくるということが考えられます。準備書面や証拠を原告から受け取る場合には,これも直送を受けるということになりますので,必ずしもサポートは必要ないと思われます。   なお,裁判期日への出頭ということに関しては,基本的には希望すれば裁判所に行けばいいということですので,利便性という意味で,ウェブ会議に参加することができるような本人サポートというのは必要にはなるかもしれませんけれども,希望されなければ裁判所に行けばいいということで,特に本人サポートは必要ないということでございます。   今考えているところはこういうふうなものです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 最初に用語の確認をと言って義務化の方だけお話ししたものですから,触れなかった点ですが,大坪幹事の方も発言された事件管理システムという言葉がこの資料の中に何度も出てくるのですが,そこのイメージがよく分かりません。富澤幹事が発言されたときも,自分で申し立てるという場面は,管理システムに自身で掲載することを意味する。例えば,今回の資料5ページの7の第3段落に関連して,IT環境整備も重要であるということで,裁判所内に国民誰もが利用することができるパソコンやスキャナ機能を有する複合機を設置とあるのですが,これは事件管理システムを構成するのであれば,これが事件管理システムの端末で,提出者が紙を持参してスキャンを掛けてボタンを押したらその事件のシステムに登録されるということを事件管理システムへのアップと意味するのであれば,別に自宅からネット接続しなくても,裁判所に出向いていって端末からアクセスすれば,裁判手続上は時間管理システムの上でのデータでの話になるかと思うのです。本人が端末を所持しないというのであれば,裁判所に出向いて端末からプリントアウトできるという形になれば,それも事件管理システムでの話になると思うのですが,裁判所に出向いて端末からアクセスすることも事件管理システムでの取扱いに含まれるのですか。事件管理システムは最終的にはいろいろ御議論して決まると思うのですが,少し教えていただけたらと思います。   それとの関連で,事件管理システムにトラブルが生じた場面については,「障害が生じたとき」の2というのがあるのですが,これは技術の方にお伺いした方がいいのかもしれませんが,第1の1の(注2)では,「電気通信回線の故障その他の事情により電子情報処理組織を用いての申立て等をすることができないとき」とありまして,システムの障害という言葉と,電子情報処理組織という定義があるのですが,申立て等をすることができないというのは,完全に切り分けられるのか,それとも重なる話なのか。   これを少し具体的に質問しますが,弁護士が事務所でコンピュータでデータを作成したあと,インターネットで送信しようとしたら,正常であれば裁判所の事件管理システムに登録できるが,自宅や事務所側でのシステムトラブルで登録できない場合,さらには,インターネットの接続環境に支障があって送信できない場合,そして,事件管理システム,裁判所側の,少なくとも物理的な中なのか,システムの中なのか分かりませんが,裁判所の事件管理システムに障害が生じているため登録できない場合,それぞれで3つの場面があると思うのですが,この(注2)で挙げられているのは,いずれの場面を前提に提案されているのですか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○福田関係官 まず1点目の,事件管理システムというもののイメージですけれども,事務当局といたしましては,先ほど阿多委員がおっしゃったように,裁判所の中にシステムが構築されていて,インターネットの環境が整っていればそこにアクセスができ,そのアクセス環境が御自宅や事務所等にない場合には,裁判所等に出向くことによって,そこに設置されている機器を用いてアクセスすることができるというようなものを念頭に置いております。   2点目につきましては,まず1ページの(注2)の部分の電気通信回線の故障その他の事情とは,工業所有権に関する手続等の特例に関する法律第6条で用いられている文言でございます。この用語の解説を見ますと,実際にそのシステム自体の障害のみならず,そこにつながっているインターネット網,これに障害が生じた場合というものも含まれると解釈されているようでございます。これに対し,7ページの2の部分のシステムに障害が生じたとき等とは,事件管理システムの障害のほか,先ほどメンテナンスと申しましたけれども,やはり,そのシステム自体に起因するものという理解でございまして,その意味では,電気通信回線の故障その他の事情の方がやや広い概念なのかなと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 なお,事件管理システムについては,参考資料1の研究会報告書の8ページの(※1)で,この研究会としての一定の定義をそこでは行っております。基本的には,私の理解では,この資料もそれと同じような定義を前提にして,多分記載をされているのだろうというふうに認識をしております。   それでは,ここで休憩を取らせていただければと思います。暫時休憩といたします。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,再開をさせていだきたいと思いますが,まず,事務当局から先ほどの義務化の点について,コメントをお願いします。 ○大野幹事 本日の会議では,義務化という言葉が何を意味しているのかというところが分かりにくいのではないかという御指摘を頂いております。   また,この点につきまして,先ほど関係官の福田から,主に議論をしていただきたい場面として訴え提起や,申立てを想定しているとの御説明をいたしましたが,広く準備書面も含めまして,裁判所に書面を提出する場合の在り方とともに,事務当局が義務化と表現していることの具体的な意味について整理をし,今後改めて皆様にお示ししまして,御議論をお願いしたいと考えております。   また,先ほど,事件管理システムという言葉について御発言がございましたので,念のための補足をさせていただきます。先ほど部会長から,「事件管理システム」という用語については,研究会で使われていたということの御説明がございましたが,部会資料1の中でも,2ページの「第3 訴えの提起等」のところで定義を置いております。部会資料ごとに定義を置くのもかえって分かりにくいと考え,部会資料1だけで説明をさせていただいております。その旨,御了承いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます,垣内でございます。   大きく言って3点ほど,発言をさせていただければと考えております。   1点目ですけれども,今,話題になっておりますオンライン申立てですけれども,これが目的としているところは何かというように考えますと,基本的には,正にオンライン,つまり,従来紙の書面であったものが電子的な形で,裁判手続上管理,処理されていくということが,そこで想定されているということかと思います。   その際に,これが今日議題になっている義務化ということですけれども,この義務化というのは,取り分け,元々紙でできている書面というものが,誰によってどこで電子化されるのかということを問題にするものでありまして,申立て義務化という場合には,裁判所に紙で届いたものを,裁判所で電子化するということではなくて,その前の段階で,ですので,当事者の側で電子化したものが初めから裁判手続の中に入ってくるということを,義務化と表現しているのだろうと考えます。   方向としては,その義務化の方向ということは合理性があるんだろうというように,基本的には考えているところですけれども,これをどこまで厳格に貫くのかということについて,様々議論が分かれるところがあるのではないかというように思います。   その点に関しまして,私自身は,本人サポートの充実等々の前提条件ということも問題になるわけですけれども,場合によっては,サポートの段階でまごまごしているうちに時機を逸してしまって,非常に大きな損害を被るというような事態が起こってはまずいということもありますので,当該申立てが許されるかどうかという問題が一刻を争うような問題であるような場合と,必ずしもそうでもないというような場合とは,区別して考えることもできるのではないかなと思っております。   そういう観点から見ますと,取り分け訴え提起,あるいはそれに準ずる申立ての場合については,時効の完成猶予等の関係もありますので,場合によっては,これは一刻を争うということで,その点について慎重に考える必要が出てくるのではないか。それに対して,それ以後の各種の書面の提出ということについては,サポートに委ねておいても,あまり問題がない場面が多いということも考えられるのかなというような感触を持っています。   ただ,その点も先ほど来議論がありましたように,そもそも義務化の法技術的な意味をどう捉えるのかということとも密接に関わっているかと思います。何人かの委員の方から御示唆がありましたように,紙でも一応受理はすると。受理はした上で,補正を命じて当事者の側で電子化させるというような規律が想定されているということであれば,これは,義務化されたとしても,一刻を争う場合には紙で出せばよいということにもなり得るわけですので,義務化ということの持つ意味というものは,それなりに,相対的には緩やかな形になるということかと思いますけれども,これが,紙では受理がそもそもされないと,初めから電子的な形で持ってこなければ駄目であるということになりますと,かなり例外要件等についてもシビアな形で問題になってくるということがあるのかなと考えておりますので,その辺りは,事務局で先ほど御発言ありましたように,今後整理をしていただいたものを踏まえて,更に検討していく必要があるのかなと思います。   以上が1点目です。   2点目ですけれども,1点目と密接に関わりますけれども,例外の仕組み方についてです。これも,先ほど来議論が出ておりますように,今日の資料でも,第1の1の(注1)あるいは(注2)あたりの記載ですとか,後の方で出てまいります7ページの2の辺りの規律などが,広い意味では例外に関わる規律として幾つか提示をされているという状況で,かつ,それらがそれぞれ要件立てが異なっており,また想定されている効果についてもいろいろと差異があるということで,かなり複雑な様相を呈しているところもあるように思います。   私自身としては,要件について,例外をどのような場合に認めるべきかということを実質的に詰めていって,効果については,緩やかに紙の書面の提出も,例外に該当する場合であれば認めるというような形で,分かりやすい規律が実現できるのであれば,そうした方向も考慮に値するかなと考えているところです。   それから,第3点ですけれども,義務化の段階的な推進ということに関しまして,冒頭で申し上げましたように,義務化の方向,それ自体は基本的に妥当なのではないかと考えていますけれども,研究会報告書で申しますと,最終的な終着点である甲案に至る中間的な段階としての乙案と,士業者に限って義務化するという段階が想定されているところですが,この乙案に至るところまでについては,現時点でもかなり見通しを持って,スケジュール感も持って想定できるということが,かなりあるのかなと思われますけれども,最終的に,本人当事者も含めて,一般的な形でオンライン申立てを義務化するという最終的な甲案については,なかなか士業者に限られないということで,正に多種多様な方々についての配慮が必要となってくるということですので,より一層慎重な考慮が必要になるのかなというように考えております。   そのこととの関係で,冒頭御発言があった,どういった形で条件が満たされているのかを判断するのを,どういう形でやるのかということについても,最終的な甲案に至るという段階については,かなり慎重な検討が,あるいは必要なのかなという印象を持っているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 冒頭に2点お尋ねをしたままになっていたかと思いますので,そこで頂いた意見を踏まえて,私自身の意見,考えをお伝えしたいと思います。   私も3点にまとめたいと思います。   まず,一つ目が,オンライン申立てに義務化,あるいは一本化するということが,個別の事件を受ける申立人の利便性というところに注目すると,利便性を高めるということにはならないのではないかという批判に対して,どう考えるべきなのかということで言いますと,先ほど裁判所の方からは,電子的な手続に乗っかっている相手方の方に,電子的な手続に乗っていない申立人から紙が送られてくるということになるという御説明があったかと思います。   ただ,私の理解ではそうではなくて,研究会における議論の方での整理は,電子的な手続に乗っている者が,書類を受け取るときには電子的な通知が裁判所から来るだけだけれども,電子的な手続に乗っていない申立人に対しては,書面を直送するなり,あるいは書証の写しということであれば,裁判所に紙の写しを提出しなければいけないという,そういう手間が,電子的な手続に乗っているにもかかわらず,相手方当事者の方に生じるという問題になっていたのではないかと思います。   それをベースにお話をするということであれば,申立人が書面による申立てしかしないという立場ですと,相手方当事者の方は,大量に書類,状況によっては,相当大量な書類を自分で印刷なりして,直送するなり郵送するなりをしなければいけないという手間から逃れられないということになると思います。それでは,恐らく非常に不幸な状態が長く続くおそれがあると思います。   考えようによりましては,そういったプリントアウトする手間というのを,全て裁判所の負担にするというのも,制度設計としてはあり得るのかもしれませんが,もしもそういう設計にしますと,裁判所の中に相当なプリンターを用意するなり,大量のプリントアウトを外注するなりして,年中紙の処理を裁判所がやらなければいけないということになって,それが良い姿なのかというと,個人的には疑問を感じるところではあります。   それから,甲案の状態に至るオンライン申立ての一本化,あるいは義務化の状態になるための条件が満たされたかどうかの判断をするんだとしたときに,その判断が恣意的になされてしまいますと,国民の司法アクセス,あるいは裁判を受ける権利を確保するという,その条件の意味合いが失われてしまいますので,先ほど垣内委員からも言及がありましたが,その判断も合理的になされるような仕組みを,あらかじめ具体的に想定して,中間取りまとめにも言及を入れることが適切ではないかと思いました。   なお,先ほど裁判所の方から,その段階で新たな法改正を必要とするとするのはいかがなものかという御意見もあったかと思います。いみじくも,それも一つの考え方なのかもしれませんが,この点は,もう少し議論を尽くす必要があろうかと思います。   続いて,3点目です。今回頂いております資料の6ページの最下部,説明9というところを見ますと,インターネットを利用することができない環境にある者には,オンライン申立ての義務化の例外を認めるという考え方が示されております。そうした環境にある者として,先ほど来何度か言及されております刑事施設被収容者が考えられているかと思いますが,この例示から見ますと,物理的にインターネットから遮断された環境での生活を強いられている者にしか例外を認めない考えなのかなとも,受け止めることができるかと思います。しかし,そのような考え方でいいのだろうかということについては,疑問を持っております。   と申しますのが,甲案のような状態になる条件として,適切な事件管理システムや充実したサポート体制が構築されて,それで,国民の裁判する権利や司法アクセスが後退しないと判断されて,オンライン申立てが一般化されたとしても,そうしたシステムやサポート体制を利用することさえできない者の存在もあり得るのだろうと思っています。そうした者を切り捨てるというわけにはいかないので,当然例外は必要である。その例外というのも,物理的にインターネットから遮断された環境での生活を強いられている者に限るものではなくて,実質的にオンライン申立てを強いることが酷な申立人に対しては,柔軟に書面での申立てを認めるということが適切ではないかと考えております。   この点は,研究会の報告書では,やむを得ない事情という文言で抽象的に規律することが提案されていたように理解しておりますが,例えば,それを,正当な事情,あるいは合理的な事情といった文言で緩和をしたり,やむを得ない事情という文言を用いるのだとしても,そこでは,物理的にインターネットから遮断されている者に限るというものではなく,運用としては柔軟なものであるべき,そういったことを共通の理解にしておくということも考えられるのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。   行政の手続でも,デジタル化というと不便になると,やりにくくなるということを,よく言われます。それが,昨今のこの情勢で,正しいのかということについては疑問に感じております。   と申し上げますのも,この10年で,デバイスの使い勝手というのは相当改善をされてきていまして,10年前,20年前は,何か手続をするときに,マニュアルを読んで習熟して手続をしないと,オンラインで物事ができないという時代でございました。それが,スマホが出てきて10年たちますけれども,直感的な操作で物事ができるのが世の中のスタンダードになってきておりまして,そういう行政の手続ですとか,そういうサービスを実現するのが筋であるという形になってきて,それができないものは,そもそも使われないというような時代,これは民間企業の方のサービスの方が,よほど荒波の中にあろうかと思いますけれども,そういう時代になってきている中で,何が不便になるのであろうかというのがよく分からないなと,正直思っております。   この訴状ですとか準備書面を紙で作成できる人が電子化できないって,どういう状況を想定すればいいのかというのが,正直,具体的なイメージが湧かなくて,はるかに紙の文書の内容を考える方がはるかに難しくて,それを電子化するのは,それほど難しいことなのかと。それは,パソコンがないということなのか,インターネットがないということなのか,そういう具体的な課題を明確化していただければ,それに対する制度設計なり解決策を検討することができるのではないかと思います。   そういう意味で,先ほど来,司法アクセスとか国民の裁判を受ける権利ですとか,そういう抽象的な御意見はございますけれども,それは,具体的にどのような状況で課題になるか,できなくなるのか,そういう具体的な特定をしていただければ,それに応じた解決策も考えることができるのではないかと思います。   ただ,その解決策も,何か一つのことで全てが解決できるようなものは恐らくなくて,その状況に応じて適切な解決策を考えていくということではないかと思います。パソコンが使えない,タイプができないということであれば,例えば,今,音声認識のソフトウエアの精度ってかなり上がってきていますので,裁判所に置いているパソコンで口述筆記をすると,テキストデータでそのまま出てくるとか,そういう形の技術的な解決というのは,かなりできるようなことにもなっているのではないかと思いますので,それぞれ,できなくなる,後退すると言われる課題を特定して,それに対して,どのような対処ができるのか,それは対処できないことなのか,そういったことを検討することが,よい答えを探すということにつながるのではないかと思います。 ○山本(克)委員 今の御意見,今,内閣官房の方がおっしゃった御意見ですが,やはりマイノリティを全く排除すると,一般的なトレンドがこうだから,マイノリティは排除するという議論につながりかねないので,私はちょっと今の御意見には賛同しかねます。   それはともかくとして,段階的というので,私は,現時点では乙案支持なんですが,将来的に甲案を目指すとした場合に,やはり先ほどの義務化の意味というのが,やはり意味を持ってくる,関係するんだと思うんですね。つまり,効力規定にするのかどうかですよ,義務化というのは。義務化に違反したものについては,瑕疵あるものとして補正を命ずるとか,そういうことは除いて,補正にも応じなかったものは却下してしまう,あるいはそういう申立てなり何なりは無効であるとしてしまうのかどうかということが,やはり一番大きな問題で,それは,現時点,今までの考え方だと,法律事項だと考えてきたわけですよね。そういう効力に直接影響するような効力規定は法律事項だと考えてきたわけですので,段階的という場合の法律の在り方というのは,どういうことになるんでしょう。   まず,乙案を法律でやりますと。甲案に移行するときには,甲案のような形に移行するときに法改正は必要ないという発想なんでしょうか。そこ,ちょっと気になりますので,お教えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からでしょうか。 ○福田関係官 今想定しているところについてお答えさせていただきますと,まず,先ほどから出ております訴えの提起その他の裁判所に対する申述について,現行の法律で,書面でしなければならないと書かれている文言を電子情報処理組織を用いてしなければならないなどと書き直すのだろうと考えております。その対象範囲を,訴訟代理人となって活動されている,地裁であれば弁護士,簡裁であれば認定司法書士も含まれますが,その方々に限るという形にしたものが,恐らく乙案として想定されているものであると考えております。 ○山本(和)部会長 質問の御趣旨は,恐らく,乙案から甲案に移行するときに,法律改正が必要と考えられているのかどうかということであったように思いますが。 ○福田関係官 その点につきまして,現在,事務当局において定見はございませんが,経過規定という形で対応することも一応考えられますが,法制的な問題として,それで対応できるのかというのは考えなければいけないと思っております。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,よろしいでしょうか,今の答えで。 ○山本(克)委員 ちょっと先走ったことを言いましたので,そういう問題意識を持っているということさえお伝えできれば結構ですので。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○阿多委員 義務化については,次回整理していただけるという前提で,突っ込むつもりはないのですが,問題提起させていただいたのは,一旦申立てを受けて裁判所で審査をし,場合によっては却下するという現在の実務を前提に考えると,6ページの9で義務化の例外という概念を認める場合,どの段階で判断をするのか。例外の判断に規範的評価が入るとなると,申立て段階で判断できるのか,例外案件を救済できるのか,制度設計がイメージできません。現在の実務のように,一旦申立てを受けて促しや補正命令等のサポートを実施したが,結果として,文書のままで手続を進めざるを得ないということで例外を認めるのであればイメージできるのですが。例外を認めるとしても,一旦文書での申立てを認めた上で最終的に裁判所が判断して例外にするのか,それとも却下にするのかという過程が必要だと思います。義務化の整理については,どの時点で例外を認めるのかについても考えていただければと思います。   同じページの段階的実現について,川村関係官から,法曹関係者側に,何にそれほど問題があるのか,乙案であっても,言わば生業にしている人たちにすればそれほどハードルが高くないのではないかという指摘がありましたが,留意いただきたいのは,我々自分の権利を実現するためではなくて,他人の権利を実現するための手続の履行であって,その履行について本人に善管注意義務を負っており,何かあったときに義務違反の責任を問われると。そのような状況でのIT化の義務化です。少なくとも現時点での法曹教育プログラム,司法試験に合格するまでのプログラムにおいて,IT化やセキュリティの問題とかウェブの利用方法について,トレーニングを受けているわけではありません。その状況で,他人の権利の保護について義務を負うわけですので,いきなりできるでしょうと言われるのは,少し無理がある,ハードルが高いと思います。トレーニングないし慣れるための機会提供をいただかないと。   事務局の説明では,甲案自体の義務化自体が諸外国でそれほど例がないということですが,士業者等について義務化されている例があるのか,どれぐらいのプロセスを経て実現しているのかについて情報があれば御紹介いただけるでしょうか。 ○山本(和)部会長 今の段階であるでしょうか。 ○福田関係官 士業者に限り義務化を認めている例として,ドイツの例がございます。こちらは,法改正が2013年10月に行われ,2022年1月1日までに,士業者については全面電子化される予定であると承知しております。   その他の国につきましては,間もなく,報告書を公表する予定でおりますので,次回の会議には皆さまにもお配りしたいと考えております。 ○山本(和)部会長 よろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員 まず,司法書士会としては,裁判のIT化は,国民の司法サービスの向上につながると理解していますので,当初より基本的に賛成をしております。   日本司法書士会連合会では,令和2年4月1日から新型コロナウイルスに関する生活困り事相談をやっておりまして,電話とウェブでの無料法律相談を行っています。ウェブ相談についてはマイクロソフトのチームスを利用しています。面談での相談というのが難しい昨今でございますので,ウェブでの相談を受け付けているわけですが,たいへん好評をいただいております。先ほどからいろいろな先生方からお話があったように,新型コロナウイルスによって,国民の意識が,大きく変わったということを,相談の現場で感じています。したがいまして,ウェブを活用した裁判をというのも,国民にとっても非常に素直に受け入れられやすい環境になっていると思っています。国民により近い簡易裁判所においても地方裁判所と同じくIT化を進めていく必要があるように感じているところであります。   オンライン申請の義務化に関しては,様々な意見があるということは承知しておりまして,当然,これからも慎重な議論を進めた上で,結論を出していけばいいと思っておりますけれども,司法書士の立場からしますと,司法書士の中心的な業である登記に関しては,オンライン申請の義務化というのはされていないわけですけれども,司法書士は積極的にオンライン申請を活用させていただいているところであります。ですので,司法書士が業務としてこの裁判に関与する場合,すなわち,簡易裁判所における代理業務の場合であっても裁判所の提出書類作成業務であっても,積極的にオンラインの申立ては活用していきたいと考えています。   登記のオンライン申請の利用率は,年々増加しておりまして,平成30年度ですと,全体で70%を超えているということになっています。司法書士による申請がどの程度ということは,正確な数字を把握しているわけではありませんけれども,相当な割合が司法書士によって出されているのだろうと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○服部委員 先ほど,川村関係官から,裁判を受ける権利の侵害だとか司法アクセスの問題の指摘が抽象的な意見ということで,具体的な問題点があるなれば,それを出した上で,解決策を検討するべきだという御指摘がありました。それは,私どもの立場とすると,障害者や高齢者など,司法アクセスや裁判を受ける権利が,オンライン申立てで阻害されるのではないかと心配しているケースを解決する方向で検討するべき,という趣旨を含む御指摘と私は受け止めました。   その関係で申し上げたいことがあります。障害者の方々にも様々な態様がございますので,どのような障害を負われている方が,具体的にオンライン申立てが義務化されたときにどのような支障が生じて,それを解消するのはどうしたらいいのかどうかということを,内部的に検討を開始しておりまして,いずれ報告させていただくことも検討しております。視覚障害者,聴覚障害者の方の支障は把握しやすいかもしれませんが,他にも様々な方がお見えになりますので,その方々の権利が侵害されることのないように,是非対応と方策を考えていただきたいと思っております。   オンライン申立ての義務化に向けた方策というところで,適切な事件管理システムの構築と本人サポートの点が挙げられ,いずれにおいても,高齢者,障害者等をはじめとした方々にも配慮した設計をと明記されておりますので,是非これはお願いしたいと思っております。   そして,システム構築の段階でも,初めから障害者の視点を取り入れた検討をお願いしたいと思います。先ほどを他の委員の方からも,視聴覚障害のある方も可能なシステムということを御指摘いただいています。最初の時点でそれを取り入れていただいて,さらに,例えばシステム導入のユーザーテストをする等,そういうことも御検討いただきたいと思っております。本人サポートについても,いろいろな場面が想定されますので,きちんとサポートできる体制を念頭に置いて,構築していただきたいと考えております。   あと,すみません,少し細かい点に入るのですけれども,事件管理システムに提出することができる電子データの種類という項目がございます。第1の3で7ページです。こちらも,障害者の権利保護という側面から考えますと,汎用性のある電子データということで,PDFが一つの例として想定されているわけですけれども,PDFの形式の中でも,視覚障害者が使う音声読上げソフトにより読み上げることができるアクセシブルな形式と,そうではないものがあります。是非前者の書式を指定するなどの方法を取ることをお願いしたいと思います。   そして,さらにもう1点,別の観点ですけれども,次の(2)の項目のところで,裁判所が必要と認める場合において,当事者が(1)の電子データに係る他の種類の電子データを有しているときは,それの提供を求めるということができるとありますけれども,これですと,裁判所の裁量の範囲がかなり広い,職権でのみという感じになりますので,例えば,当事者の申立権を認めるなど,そういう形での対応,取り決めをお願いしたいと考えております。   そして,さらに,もっと細かくなりますが,訴訟記録の電子化の箇所で…… ○山本(和)部会長 訴訟記録の電子化はまた次に。 ○服部委員 これはまた次ですね,分かりました。 ○長谷部委員 オンライン申立ての義務化の議論が今,白熱しているところですが,その前提として確認させていただきたいのですが,オンライン申立てというのは,インターネットを利用した申立てであるということだとしまして,裁判所の方でどういうシステムを構築するか,また,どういう種類のデータにするかはまた指定すると,そういうことであるかとは思うんですけれども,例えばの話,手書きの訴状を持ってきた人が,スキャナで読み込んでPDFファイルにして,それをインターネット環境があるところに持っていって送るということは,これは,オンライン申立てとして許容されるのかどうかということを伺いたいと思っております。   よく考えてみますと,訴状に添付する,例えば,契約書なども,電子データ化されているものがあれば,それを添付すればいいですけれども,そうではないものについては,やはりスキャナで読み込んだPDFを添付するということになるのだとすると,手書きの訴状をPDF化したものを提出するのも,あながち否定できないのかなと思うんです。でも,それは想定されていないのかどうか,そこを伺えればと思います。 ○大野幹事 現段階では,紙に手書したものをスキャンしてPDFなどのデータとし,そのデータを提出するということも許容されるという前提です。   もっとも,先ほど御指摘がありましたように,その場合には,音声読上げに対応するのかなどといった問題が生ずるものとは思っております。   この点は,皆様の御意見を頂きながら,更に整理をしていく必要があると考えています。 ○山本(和)部会長 長谷部委員,よろしいでしょうか。 ○長谷部委員 結構です。 ○藤野委員 藤野でございます。   最終的に甲案を目指したいということを皆さんおっしゃっているのかもしれませんが,法律として「義務化」と変えてまでやることかということが,いまだに分からないでいます。   というのは,よいシステムであり,今日の資料にもあるように,利点がたくさんあり,かつ,よいシステムが構築されて使われていけば,先ほど,登記のシステムは7割がオンライン申請になっているというお話がありましたように,自然とオンラインが主流になるのではないかと。今,手書きのものをPDF化して提出することでもオンラインだというお話もあったようにハードルはそう高くはありません。併用していくことで,10年なのか20年なのか時間が掛かるかもしれませんが,世の中の流れの中でそうなっていくということでは,まずいのでしょうか。その辺りが,よく分かりません。   確かめてはないのですけれども,韓国では併用されていて,オンラインで申請した方が費用が安いということを聞いております。つまり,メリットがあれば,オンラインを使う人もまた増えるのではないかということも考えられます。先ほど「何が不便になるのか,どういう方がオンラインができないのか分からない」との御意見もありましたけれども,サポートを必要とする人は,サポートをお願いすればいいのでしょうがそれにはやはり費用が掛かります。その費用のことも考えると,義務化が大前提というのが,なかなか納得し難いところがございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○富澤幹事 これまでの御議論の中で,裁判所が構築する事件管理システムの話題がかなり出ておりましたので,システムを構築する最終的な責任を負う裁判所の方から若干御説明の方をさせていただければと思います。   事件管理システムにつきましては,現在,専門業者の知見も得ながら,民事裁判手続のIT化の全体計画の策定を進めているところでして,その検討の中では,現在の民事訴訟手続における業務をシステムの開発に必要な形に整理した上で,システム化の要否等を検討し,IT化後の民事訴訟手続における業務モデルを作成することを目指しているところでございます。また,併せて,IT化後の業務モデルを実現するためのシステムの在り方を検討して,民事訴訟手続のIT化全体のプロジェクト計画案を作成する予定としております。   このような検討の中で,なるべく当事者にとって利用しやすく,分かりやすいシステムにするのは当然のことでありまして,本日も話題に出ておりました,障害をお持ちの方等にも適切に対応することができるように検討を進めていきたいと思っております。   また,先ほど,士業者については,オンライン申立てを義務化することができるのではないかと申し上げましたが,それに対しては,情報セキュリティ上の問題や弁護士が善管注意義務を負っているという御指摘もあったかと思います。   裁判所としましては,本日の部会資料3の中にも記載されておりますけれども,まずは,民事訴訟法第132条の10に基づく電子提出の運用を先行させた上で,電子提出について,言い方は悪いですけれども慣れていただき,それほど難しいものではないということを実感していただくことで,部会資料3の丙案を実質的に実現していきたいと考えております。   このような電子提出の新たな運用につきましては,令和3年度中に一部の庁での運用開始することを目指して,現在,所要の作業の方を進めているところです。この電子提出をスタートさせてからオンライン申立ての義務化にソフトランディングさせていくのが望ましいと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐々木委員 先ほど阿多委員がおっしゃった,資料のセキュリティといいますか,善管注意義務を負っているというお話に関連してなんですけれども,湯淺委員が当初おっしゃっていた,当事者のセキュリティはもう自分でやってくださいとおっしゃっていた,その当事者のセキュリティの話なんですが,これは,この事件管理システムを利用することによって生じるセキュリティの問題ではなくて,当事者に関しては,インターネットを使っていれば生じるものということですよね。今どき,士業の方でインターネットを使っていない方というのはいらっしゃらないので,同じような問題は今も生じ得るという理解でよろしいんでしょうか。それを,ちょっと確認させていただきたくて質問しました。 ○山本(和)部会長 コメントを言われますか。 ○湯淺委員 御質問ありがとうございました。   最高裁の方でどのようにお考えなのか,ちょっと私も存じ上げないですが,事件管理システムに接続する際の一定のセキュリティ要件を設ける,設けないというのは,恐らくシステムの作り方の方針の問題かと思います。   現に,例えば,OSですね。OSはこれではないと接続できませんとか,あるいは,ブラウザは何社の何というブラウザのバージョン何々以上でないと,セキュリティ上接続できないこととしますというような,接続するためのセキュリティ要件というのは,システムを作る際には当然考慮すべきことでございますし,脆弱性のある古いバージョンであるとか,そういうものでは接続させないというのは,一般的に求められていることだと思います。この点でもし,私の説明に誤っているところがあれば,最高裁の方から補足していただければと思います。  当事者のパソコンから情報が漏えいする,例えば,コンピュータウイルスに感染してしまって,事件書類がどんどん流出してしまいましたというのは,接続する際のセキュリティとはまた別の問題だと思いますね。その際に,阿多委員がおっしゃった士業,つまり,専門家としての士業の善管義務において,どの程度までセキュリティ義務を負うかということにつきましては,数年前に,教育産業の大手のところから個人情報が大量に流出したという事案がございました。それについての訴訟も今起きておりますが,残念ながら,日々技術的進化が速いこともあって,ここまで対策を講じていれば十分な善管義務を果たした,あるいは,これを怠っていたら,善管義務を果たしたことにはならないというような,クリアな基準というのは,残念ながらまだ明確には確立されていないように思います。   ですので,阿多委員が御指摘になった,士業として,どこまで依頼人の情報を扱う際にセキュリティ対策をしないと,善管義務違反に問われることがありますよというのは,これはちょっと別途議論が必要な点なのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 佐々木委員,よろしいですか。 ○佐々木委員 このIT化によって,何かセキュリティ上の危険が高まるとか,そういう話ではないですよね。 ○湯淺委員 それは全く別です。 ○佐々木委員 はい,分かりました。 ○山本(克)委員 すみません,何度も。   義務化の例外の話が先ほど来何度か出てきたと思うんですけれども,甲案を採った場合に,義務化の例外を認めなければいけないというのは,恐らく多くの人が認めていただけることなんだと思うんですけれども,乙案を採った場合に,義務化の例外というのはあるんでしょうか。 ○山本(和)部会長 御質問ですか,今のは。   事務当局からお答えを。 ○山本(克)委員 なぜそういうことを言ったかというのを申し上げます。   早めに乙案を採るか,甲案を採るかで,審議の対応,中身が全然変わってくるので,その辺りの審議の進行について,どうお考えなのかということを,併せてお伺いしたいという趣旨です。 ○福田関係官 事務当局といたしましては,今の段階で定見はございませんが,部会資料2の4ページで引用させていただいております研究会の報告書では,乙案の考え方についても,一定の例外というものを設けることが提案されています。   ただ,そこでは,先ほども私から説明させていただきましたとおり,電気通信回線の故障その他の事情によりオンライン申立て等をすることができない場合の電磁的記憶媒体の提出という限りでの例外が提案されているものと承知しております。 ○山本(克)委員 私の頭では,それは例外ではないので,緊急事態に対する措置の問題なので,例外だと思っておりませんので,そういう場合以外の例外というのは,乙案では考えられないということですね。 ○山本(和)部会長 研究会の資料だと,参考資料1の8ページの注2というか(※2)で,「訴訟代理人についても,オンライン申立ての義務化の例外を設けるかどうかについては,引き続き検討する。」ということになっておりまして,私の理解においては,そこは引き続きなお検討するということにはなっていたのかと思いますが。 ○山本(克)委員 分かりました。   ただ,委任による訴訟代理人の場合について,簡裁で許可を受けた素人さんの場合はともかくとして,やはり士業の人にはオンライン申立て義務を負うとしないことには,投資の回収ができないということになりかねないわけですね。これ,国民の税金使って,すごいシステムを作ったのに全然利用されないということになると,やはりこれはまずいわけで,先ほど藤野委員ですかね,お話があったように,義務化以外のインセンティブを与えることによって,利用率を向上するという手立てというのも,私もあり得るんだろうと思います。申立て手数料を8掛けにするとか,そういうようなやり方というのは十分あると思いますけれども,やはり義務化をこのまま,全く義務化を伴わないでシステム投資するというのはやはり,私はちょっと,かなりの,相当な高額のシステム投資をするわけですから,義務化というのをなしにやるというのは,極めて危険な賭けだと思います。   ということで,やはり士業者は,国から資格を与えられた者として,それなりの覚悟は持ってもらわないといけないし,ある程度施行までの猶予期間が必要であるという主張なら分かるんですけれども,乙案そもそも駄目だというのは,私はちょっと想定し難い,丙案で本当に国民が納得できるのかどうかと,税金の使い道として納得できるのかどうかという点については,かなり疑問を持っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私自身が弁護士ですので,士業者に対して義務化をするという,つまり,乙案の状態の適否なり条件なりについて,コメントするのは少し難しい部分があるんですけれども,それでも,率直に思っていることを申し上げたいと思います。   先ほど示しましたとおり,究極的な姿としては,できるだけ多くの人がITによる利便性の利益を享受するためには,究極的には甲案の状態に持っていくということが考えられるというのは,そうだろうと思ってはいるところで,そこに至る過程として,士業者に対して義務化をするという乙案の状態を経るというのも,考え方としては別段おかしくない,そこはそのように理解をしているところです。   気になりますのは,乙案の状態から甲案の状態になるときには,こういう条件が必要だというのは,研究会でも示されていたんですが,丙案の状態から乙案の状態になるには,どういう条件が満たされることが必要なのかとか,それを誰がいつどのように判断するのかということについては,特に決まっていなかっただろうと思います。   とかく士業者はプロなんだから,その辺はしっかりやって当然でしょうと,こういう御意見がとても多く出やすいのかなとは思うんですけれども,実際様々な人がいるわけでして,例えば,非常に御高齢で,とても対応できませんというような人がいるということも,やはり否めないものだろうと思います。それを,市場の競争原理の中で淘汰されて当然というような,紋切り型の意見というのはなかなか厳しいものがございますし,もう一つ御注意いただきたいなと思いますのは,これは,代理人としての活動ですので,その背後に当事者本人がいるわけですね。例えば,弁護士の過疎地域のことを念頭に置いていただきますと,非常に数少ない弁護士が,オンライン申立てにはどうしても対応できませんというような状態ですと,そこにいる人たち自身の司法アクセスが失われてしまうということもあり得るわけであって,そうした現実のことも考えた上で,乙案の状況というのを考える必要があるだろうとは思います。   乙案の状態になったときに,例外を認めるべきなのかどうかということについては,研究会の段階でも議論はあったと思います。私自身は,先ほど申し上げた物の見方から,士業者に対して義務化するとしても,一定の例外を認めることは必要になるのではないかという考えでいるところです。   もう1点,続けてよろしいでしょうか。   問題,ちょっと違う観点のことでコメントさせていただきたいと思います。   資料の7ページの2の事件管理システムに障害が生じたときに備えた規律についてです。   私,これを最初に読みましたときに,最初の段落では,「事件管理システムに障害が生じたとき等」と書いてあって,それに備えて設けることを例示されている規律の方を見ますと,つまり,次の段落を見ますと,「事件管理システムの障害により」という書き方になっていて,こちらは「等」がない。どういうことなんだろうなと関心を持っていたんですが,先ほどの御説明では,「等」というのはメンテナンスも念頭に置いているという話でしたので,そうすると,その次の規律例の方では,メンテナンスのことは気にしないのかなというのが,ちょっとよく,今でも理解できてはいません。   その点はさておき,この問題点について考えてきたことを申し上げます。   現在,民法の161条で,天災その他避けることのできない事変の場合の時効の完成猶予は定めがあるわけですが,事件管理システムの障害というのが,その天災その他避けることのできない事変に当たるというのは,解釈として非常に難しいと思いますので,事件管理システムの障害の場合に備えた規律を設けるということは,適切だろうと考えております。   ただ,気になりますのは,事件管理システムの障害以外にも,オンライン申立てに関して,天災その他避けることのできない事変には当たらないけれども,時効の完成を認めるということは,社会的に妥当ではないという場合が考えられるのではないかと思いました。   一つの例として,適切であるかどうか疑問があるんですが,例えば,集合住宅の一室に居住している申立人がオンライン申立てをしようとした際に,その集合住宅が引き入れているインターネット用の光ファイバーケーブルが,保守会社の作業ミスによって長時間断線したという場合,この場合はどうなんだろうかと考えると,それは恐らく民法161条の天災その他避けることのできない事変に当たるという解釈は,かなり苦しいのではないかなと思います。しかし,これも事件管理システムの障害ともやはり言い難いので,このようなケースを救済するということができなくなってしまう,それでいいのだろうかということについては,議論はあり得るのではないかと思います。そこまでぎりぎりにならないうちに手を打っておくべきだったんだと言えば,そうなのかもしれませんが,申立人にとってはちょっとかわいそうかなと思います。   そこで,例えばですが,事件管理システムの障害,その他電子情報処理組織において生じた申立人の責めに帰すことができない事由により,といったような,もう少し含みのある形で時効の完成猶予等を考えることも,検討に値するのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○品田委員 乙案に例外的な規律を設けるかどうかという話について,実際に多くの訴訟事件を担当させていただいている者として実情を申し上げますと,現在,職務として訴訟追行をなさっている弁護士の方々から手書きの書面が提出されている事件というのは一件も担当しておりませんし,長い裁判官経験に照らしてみても,任官したばかりの頃にあったかどうか,記憶がない程度です。このように弁護士の方々が就いている事件の書面で,手書きのものはほぼないと言っていいと思います。   手書きの書面がないということは,何らかのソフトを利用して活字にし,書面を印刷して提出しているのだろうと思います。このような現状を考えると,このような作業ができる方であれば,オンライン申立てができないことはなかなか考えにくいのではないかと率直に考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 少し前に川村関係官から話が出た,一体具体的にどのような支障があるのだということにコメントします。書面がデータで作成できるという話と,それを事件管理システムに登録する,アップするという過程では,ハードルの高さが異なります。弁護士は,事務所の通信環境,インターネット接続環境についての知識を十分に把握しているということはありません。ですから,事件管理システムが立ち上げられ,裁判所からアプリケーションをダウンロードして,そのアプリで操作すれば,誰でも簡単にミスなく登録・閲覧できるということになれば支障はないのかもしれませんが,そうでなければ,自分で登録先を選択し登録するとなると,今回,電子メールでのやりとりはないという前提になっているとは思いますが,メールレベルでも送信先ミスがあったり,添付ファイルを間違えて添付し,慌てて送信先に削除してくださいという訂正メールが飛び交うことはないわけではない状況です。現状のレベルがその程度のセキュリティであるにもかかわらず,誰も間違いなく登録できトラブルが生じないというシステムが構築できるのか。   一般人も含めて,簡単に登録できる,例えば,事件番号等も入力間違いも起こらず,ほかの事件ホルダーに紛れ込むことはないというシステムが構築できればいいのでしょうが。弁護士は複数の事件を並行して取り扱っていますが,新たに構築される事件管理システムが,事件番号の入力間違いをしても違う事件ホルダーにデータを登録することが起こらないシステムが構築されるのであればよいのですが,そのようなシステムが構築されるのかも不明です。いろいろなことがあり得ると思います。ですから,データで文書を作成できるということと,それを登録するということは,分けて考えていただく必要があると思います。   それと,弁護士会と違うことを申し上げるわけではないのですが,日下部委員の申し上げた点,第1の(注2)については,最初に障害の仕切りはどうなっているのかと質問した点に関連すると思います。提出期間延長という方法もあり得ると思います。事務局からは電磁的記録媒体の提出にこだわる必要はないという話があったのですが,私は,法律事務所のトラブルだとか,インターネット環境自体がダウンしている状況であっても,訴訟データを電磁的記録,端的に言えばUSBで提出しなければならないと限る必要はなく,一旦書面で提出して後日データに差し替えるという方法もあり得ると思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○笠井委員 今の乙案の話に関しては,私は,個人的には,研究会のときから,訴訟代理人になっている士業の方について,例外を設ける必要が本当にあるのかなというのはずっと疑問に思っていて,今のようなお話も伺っていましたけれども,どうも納得いかなかったというところで,やはり,例外を認めることについては,まだ得心がいっていないと,ちょっと申し上げておきます。  それを前提として,先ほど服部委員がおっしゃったことは,非常に興味深かったです。要するに,ハンデがある方について,どういうふうなことが実際起こっていて,どういうサポートが必要かというのを,具体的な例を挙げていただけるというお話なんですけれども,それについては,重要な点だと思いますので,ぜひお待ちしております。   その際の観点というか,本件の審議との関係でいくと,資料2の3ページの下の方に,研究会報告書の引用が載っていますけれども,ここでありますように,甲案を実現するための条件として本人サポートの充実等々といったことが載っていまして,その本人サポートの内容としてどういったものが必要かという,甲案を実現するための条件としての観点というものが,まずあると思います。   それから,もう一つ,その甲案になった場合に,やむを得ない事情としてどういうことが考えられるかといったことがあります。もしかすると,服部委員の御趣旨というのは,本人サポートの充実という条件が整って甲案になった場合でも,なおやむを得ない事情として考慮すべき場合があるのではないかというものかとも思います。今までのところでは,刑事施設の被収容者がずっと挙がってきたわけで,それはもうどうしようもないなというところがあるんですけれども,それ以外に,サポートを幾らしてもやはり無理なのだと,だから,やむを得ない事情の例としては,そういうのがあるのだといったような,そういう観点からの御示唆も,もしあるのであれば伺いたいと思ったということでございます。 ○山本(和)部会長 服部委員は,コメントお願いします。 ○服部委員 今の御質問の点について,現時点で全部お答えすることは難しいので,調査結果の整理の部分も含めて,御指摘いただいた観点を考慮して,整理してくるようにいたします。ありがとうございます。 ○富澤幹事 先ほど日下部委員からも御指摘がありましたけれども,裁判所が構築する事件管理システムの全体像が明らかでない中で,オンライン申立てを義務化することに対する抵抗感や,実際に義務化して大丈夫なのかという思いがあることは,理解できるところです。なるべく利用者に利用しやすく,分かりやすい事件管理システムを構築していきたいと思っておりますし,システム開発の中では,利用者の方の御意見も踏まえながら検討していきたいと考えております。   このような前提で,電子データで書面を作成していることと,実際にインターネットを介して事件管理システムに電子データをアップロードすることは別の問題であると阿多委員から御指摘がありました。確かにそのような側面もあるとは思いますが,なるべく事件管理システムへのアップロードの操作が難しくならないようにシステムを構築してまいりたいと思います。   事件管理システムのイメージとして現時点で考えられる一例を御紹介しますと,例えば,IDとパスワードを入力して事件管理システムにログインした後に,事件番号ごとに作成された共有フォルダに電子データをアップロードするということが考えられるところです。今後,システムの具体的な設計開発をしていく中で,更に検討を進めてまいりたいと思います。 ○山本(克)委員 ウェブで参加していると顔が見えないので,会場におられる方の名前を全然特定できないという状況ですので,ちょっとどなたが言われたかというのは特定できないことを御容赦いただきたいんですが,先ほど,接続障害ですね,端末がインターネットに接続障害になるときに,時効の完成猶予うんぬんという議論をされたと思うんですが,それは,本人が裁判所に直接提出する気で郵送をしないで,でも,時効完成猶予ができるぎりぎりの日に,自分で提出しに行こうと思って病気になったと,で,行けなかったという場合と,質的にどう違うんでしょうか。   そういうものは,民法が排除しているのは,結局そういう個別的な選択の問題として,何が言いたいかというと,接続障害になれば,ほかのところ,今,いろいろなところで接続できるわけですよね。そういう手段もあるのに,そういう接続障害を特に取り上げて,147条の例外を認めるべきだという趣旨が,もう一つよく分からないんですけれども。 ○日下部委員 私が発言したところについて,コメントいただいたものだと思います。   私の発言の中でも申し上げたんですけれども,今申し上げたような,集合住宅に引き入れた光ファイバーが,保守会社のミスによったという場合に,それを時効の観点で救済する必要があるのかどうかということ,そのものも議論が必要だということは申し上げたつもりです。そこまで時間を引っ張っていたのが悪いのではないかと言われれば,それはそうかなという気もするんですが,私が申し上げたかったのは,事件管理システムの障害ということだけを,147条1項各号の,7ページの2の第2段落のところで挙げている,救済が必要となるケースとして規律しているのが,これで十分と言えるのかどうかということについては,もう少し検討した方がよいのではないかという,こういう問題提起でありました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。   今の点についてなんですけれども,確かにいろいろな障害で,オンライン申立てが実際上難しい事態になるということが,いろいろな形であり得るんだろうと思いますが,今,山本克己委員からも御発言ありましたけれども,時効の特則という観点から見た場合には,やはり現在の民法で定めている時効の例外的な規律に準ずるようなものでないと,なかなか難しいのかなという感じは,一方でしております。   他方で,日下部委員から御指摘のあったような事例というのは,今日の部会資料の2ですと,4ページの研究会報告書を引用している部分の乙案の例外が問題になり得るということは,あるいはあろうかなとも思われまして,場合によっては,そちらの方で,ですから,オンラインでない形での申立てが許容されるのであれば,そういった対応をするということも考えられるのかなというように思われまして,いずれにしても,部会資料4ページの例外と,それから時効完成猶予についての特則について,実際に機能する場面というのが,やや重なる部分というのが見方によっては出てくるかと思いますので,両方を見ながら少し検討をして整理する必要があるのではないか。そのときに,4ページの方の規律でカバーできるというのであれば,時効完成猶予の特則について,あまり要件を広げる必要性はないということにもなるのではないかという感じがしております。   それから,先ほど来,乙案について例外を設けるかどうかという話が出ていたかと思いますけれども,何人かの方から御発言ありましたけれども,私も乙案について,研究会報告書にあるような緊急事態についての規律は別として,それほど広く例外を認めるということは,なかなか考えにくいのではないのかなと思っております。   御参考までに,例えば,現在フランスなんかでも,士業者についてはオンラインでの申立てが義務付けられているという状況にあるかと思いますけれども,一応その例外の規定は設けられていて,外的な事由によって電子的な申立てができないというような場合に,紙ができるという例外が設けられているようですが,実際にそれが利用されている例というのは,ほとんどないというような報告もあるようでありまして,若干のトラブルがあっても,そこまで深刻な事態にはなっていないということなのかなということを,御参考までに一つ御紹介しておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   大分時間が押して,もう一つ,訴訟記録の電子化のお話がありますので,最後の方となりますが。 ○大坪幹事 先ほど藤野委員から,本人サポートには費用が掛かるというお話がありましたので,その点についてコメントさせていだきます。   今,部会資料で6ページの最初のところに,本人サポート,サポート体制のまず考えられる担い手の最初として裁判所が挙げられていて,これは,裁判所が具体的にどういうことをするかというのは書かれていないわけですけれども,研究会資料,参考資料1の16ページのところに,研究会の段階で考えられることが,下から2段落目の「さらに」というところにあります。裁判所内におけるIT環境の整備も重要であるというところで,いろいろ書いてあるわけですけれども,そのようなことに関して,裁判所の方で有料ということは多分お考えではないのではないかと思います。   それで,さらに,弁護士会でも本人サポートを今後検討することになりますが,弁護士会の方はどうかというと,参考資料4の4ページのところに,まだ具体的には検討されているわけではないですが,例として想定されているものが,(1)から(3)まで,弁護士によるサポート,弁護士会によるサポート,日弁連のサポートということで書いてありまして,その弁護士によるサポートに関しては,実費のほか,一定の手数料が考えられるということが書いてあります。   ここで予定されているのは,書面をPDFとかにするという程度のことで,それほど実費としても大したものは掛からないだろうと,場合によったら無償でやるというところも,弁護士によってはあるんではないかと考えられます。現行法,現在の本人訴訟の場合でも,紙による場合には,印刷代とか副本をコピーするとか,そういうのは掛かっているわけなので,それ以上になることはないような本人サポートを考えるべきと思われます。   さらに,そういう費用に関しては,将来的には,適正なものについては訴訟費用として考えていただく必要があるのかなと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 ありがとうございます。   私の方も,資料として提出された,日本司法書士会連合会の会長声明について簡単に御案内させていただければと思っています。   司法書士制度は,制度発足以来,本人訴訟支援の担い手として,裁判所の提出書類作成業務を業務としてきましたので,裁判のIT化に伴って,利用者である国民の裁判を受ける権利の保障をするという意味で,積極的なサポート体制を構築することが使命であり,責務であると考えております。既にITが行われている,韓国やアメリカの視察にも行ってまいりまして,IT化が行われた後の本人訴訟のサポートの体制についても学んでまいりました。   そういったものを踏まえて,この会長声明を出させていただいたところ,全国の司法書士会においても,同趣旨の会長声明が,現時点で静岡,広島,愛媛,熊本,愛知の5会から発出されています。今後も多分広がっていくだろうと理解しています。これまでどおり,依頼者の目的がどこにあるかをきちんと聴取して,その真意を把握して,依頼の趣旨に合致するよう,法的判断や法的助言を加えて,本人訴訟をサポートしていくということを,全国的にきっちりと対応したいと思っています。   日本司法書士会連合会としての具体的なサポートは,正にこれから検討を始めようとしているところですけれども,例えば,全国各地157か所存在する,司法書士総合相談センターを拠点にするとか,全国の司法書士事務所において法的助言を含めたITサポートをするとかという形で,きっちり対応したいと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○富澤幹事 先ほど,大坪幹事から,裁判所の本人サポートは無料になるのではないかというお話があったかと思います。この点については,本人サポートの内容にもよるのではないかと思いますが,司法機関としての裁判所の中立公平性に鑑み,本人サポートに掛かった実費を取らなくていいのか,現在でも当事者本人が書類のコピー等を提出するときには,当事者本人がコンビニエンスストア等でコピー代を支払っている中で,電子化に要した実費を全く無料にしていいのかという点については現時点で特に方向性が決まっているわけではございませんが,今後検討をさせていただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。   本日は,第一読会ということで,かなり幅広く御意見を伺ったところです。この,いわゆる申立ての義務化というのは,今回の議論の中で最も重要な論点の,恐らく一つだろうと認識をしておりますので,今後更に詰めた形で御議論を頂くことになろうかと思いますが,かなり幅広く御意見を伺えたと思いますので,それを反映して,更に事務当局の方でも検討を詰めていっていただければと思います。   それでは,恐縮ですけれども,もう1点,訴訟記録の電子化という論点がございますので,この点について,事務局の方から御説明をお願いします。 ○福田関係官 それでは,時間の関係もありますので,手短に説明させていただきます。   8ページの「第2 訴訟記録の電子化」についてでございます。   これは,現行の民事訴訟法の下では,裁判所は訴訟記録を書面で作成するということが前提となっておりますが,訴訟記録を電子化することにより,当事者や裁判所にとって利便性が向上するということが考えられることから,ここでは訴訟記録の全面電子化ということを提案させていただいております。   そして,オンライン申立てについて,一定の例外を認めることとしつつ,訴訟記録を全面電子化した場合ということになるとすれば,そのときの規律として,裁判所において,当事者等から書面で提出された訴訟記録を電子化し,併せて,その正確性を確認するために,当該書面を一定期間保管しなければならないとの規律を設けることについての問題提起をさせていただいております。   簡単ではありますけれども,事務局からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,服部委員,先ほど途中でしたかと思いますので,発言お願いします。 ○服部委員 ありがとうございます。   電子化の点とアップロード,紙で提出された訴状等の一定期間の保管という点については賛同いたしますけれども,この(注)にございます,書面で提出された訴状が電子化された直後の期日が経過するまでの間については,いささか短いような印象を受けております。   この期間について例示されている理由として,資料9ページに,実際書面で提出した場合に,裁判所に提出者が出頭した際,これは期日に出頭したというイメージかと思っておりますけれども,その際に,裁判所に設置された機器などを利用して,書面が正確に電子化されたかどうかを確認することになろうと。そして,保管しなければならない期間について,その直後の期日が経過するまでの間ということにされています。これは,期日に出て行って,その際に確認をして,そこまでを保管期間とすればよいという御趣旨と理解しました。この理解が間違っていましたら,教えていただきたいと思います。先ほど来,障害者に関係する話をしておりますけれども,まず,そもそも当事者が期日に裁判所に出頭しないということもあり得ますので,その場合にはどうするのかという問題がございます。その場合,確認の機会はどうなるのだろうかということもあります。  仮に期日に出頭したとして,その際に本当に確認できるのだろうかということもあります。例えば,障害者の場合だと,同行者の手配が必要ですとか,同行者の時間的な制約ということもあるかもしれませんし,高齢者の方とか障害の種別によっては,正確性を確認するのに,時間が相応に掛かるということも考えられます。書面の量にも関係があると思います。それを考えると,提案の期間ではいささか短いだろうということと,申出によって保管期間の延長を求める制度を設けてはどうか,この点も含めて御検討いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○阿多委員 言葉の意味を確認したいのですが,第1の1には「申立てその他の申述のうちの書面等をもってするもの」という記載があり,第2では「訴訟記録」を取り上げられていますが,訴訟記録という用語は,書証の写しも含むと思いますが,それを含めての話という理解でよいのでしょうか。2の(2)では「書面で提出された訴状又は答弁書その他の準備書面」とありますが,書証の写しも含まれているという理解でよいでしょうか,事務局の説明は。 ○山本(和)部会長 当局は,それでよいということですか。 ○福田関係官 はい,それで結構でございます。 ○阿多委員 実務での訴訟記録とは,裁判所が訴訟記録だと認識したら訴訟記録だと言われたことがあるのですが,実際は,当事者が提出し裁判所の支配領域に入って,書記官等が受領印等を押して,あとは書記官が整理をして記録に編綴するものが訴訟記録になると思います。この記述,特に(2)を見ますと,裁判所の事務としてデータ化するとありますので,文書で提出された訴訟記録がどこかで質的変換をするという意味だと思うのですが,訴訟記録が二つという意味は,書面で提出され編綴された訴訟記録もそのまま残っている,それも訴訟記録と呼ぶという意味でしょうか。電子化するということは,電子化されたものが訴訟記録になって,その元になった書類・文書は訴訟記録ではなくなるのではありませんか。 ○大野幹事 事務当局の考えとしては,電子化された方のみを訴訟記録と呼ぶという整理でございます。   そうしますと,当然,書面で提出されたものが電子化されるまでの間のずれというのは起こり得ると考えています。この点についても,その場合の考え方に関する御議論いただければと思います。 ○阿多委員 分かりました。   今日最初に,富澤幹事から書記官事務の話が出ましたが,書面で提出された訴訟記録の電子化の議論は,一旦書面で作成された訴訟記録がデータに転換したときに,文書とデータが同質だという公証行為が前提となると思うのですが,よく分からないのは「裁判所に出頭した際に」「書面が正確に電子化されたかどうかを確認する」という行為は,当事者が訴訟記録を閲覧し,「確認」とは調書異議をイメージされているのか,調書異議であれば,期間についての制限は電子化された直後の期日が経過までという形で設けられているわけではありません。先ほどの服部委員とは違う理由で,どのような当事者に権利があるということを前提に,「確認」というものを構成されているのですか。   それから,(説明)の9ページの第3段落は「訴状等を書面で提出する者は,IT機器の利用に習熟していない者等であると想定されるから」と書かれているのですが,本文のゴシックの記述の裁判所の方で文書をデータ化するという話とは,あまり関係のない話ではないか。書面で提出した当事者が義務化の例外等の事情で,裁判所は文書として受け付け訴訟記録化した,それをデータ化するだけで,それは裁判所の中の行為と私は理解をしたのですが,そうなりますと,習熟していない者だから確認するという説明は少し違和感がありますので,そこも含めて説明いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局から2点。 ○大野幹事 1点目は,「確認」という言葉の意味がどういうものなのかという御質問だと理解いたしました。   本日は,まだ第一読会目ですので,この点について,部会資料では「確認」という言葉で簡易に表現をしてしまっておりますが,それが何を意味するのか,何か具体的な手続をするのかという御指摘は受け得るものとは思っており,そこも含めまして,皆様の御意見を頂戴できればと考えております。   また,2点目のIT機器の利用に習熟していないということが理由になるのかという点について御説明します。ここでは,オンライン申立てについて,一定の例外を認めることとしつつ,全面的に訴訟記録を電子化するという前提の下での議論ということとなります。そして,オンライン申立てについての一定の例外に当たる方というのは,IT機器の利用に習熟していない方が想定され得るだろうということから,部会資料ではそのようにお示ししたところです。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。 ○阿多委員 特にこだわりませんので。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがですか。 ○富澤幹事 今回,訴訟記録を電子化する上では,「訴訟記録」が具体的にどのようなものなのか一度整理してみる必要があるのではないかと考えております。その意味で,阿多委員の問題意識というのは,おっしゃるとおりであると思っています。   その上で,裁判所としては,電子化された後の書面については,原本が提出された場合には返却し,逆に,ほとんどの場合は写しが提出されることになろうかと思いますので,その場合には,廃棄することになると考えておりました。このような取扱いにしませんと,訴訟記録として紙媒体と電子的なものを両方とも保管しなければならないことになりますので,裁判所の事務が非常に複雑になってしまうということになります。どのような場合に訴訟記録に該当するかについては,もう一度よく考えて整理した方がいいと思いますが,書面で提出されたものについては,結論としては先ほど御説明したとおりの取扱いとするのが望ましいのではないかと思っているところでございます。 ○日下部委員 私も,この訴訟記録の電子化のところでは,理屈の点でどういうふうに整理されるのかなというのが,十分詰め切れていないのかなという部分も感じていたところです。   特に,私が気にしているのは,準備書面を念頭に置いているんですけれども,当事者が陳述した内容と訴訟記録の中に残っている電子データに,齟齬が生じるという事態がないんだろうかという,そういう問題意識です。   例えば,弁論準備手続期日の前に,当事者が書面によって準備書面を提出したという局面で,期日が行われる前に,裁判所の方でそれを電子化して,事件管理システムにアップロードした。そして,その弁論準備手続期日を迎えて,書面の提出者が準備書面を陳述しますと,こういったとします。   ところが,不幸なことに,裁判所が提出された書面を電子化してアップロードするときに,落丁してしまっていて,途中で1ページ,2ページ抜けてしまった状態で,訴訟記録の中にその電子データとして格納されてしまっていて,そのことを気付かない状態でその期日が終わってしまったと。その準備書面については廃棄なりされてしまったということに,書面としての準備書面が廃棄されてしまったということになりますと,陳述された内容は飽くまで提出されていたはずの書面ベースではないかと思われ,一方,訴訟記録の方では,落丁した状態のものしか残っていないということになってしまい,そして,その提出された書面自体は廃棄されてしまうと。   そうなってしまったときに,その手続上の安定の問題はどうなるのかとか,陳述をした当事者の手続の保障の観点で,十分なのかどうかという問題があるように思われて,研究会のときにもそういう問題意識は何度か申し上げてはいたところではあったんですけれども,必ずしもそこを完全に整理された状態で,報告書にまとめられたわけでもなかったのかなとは思っておりまして,再度問題意識をここでお伝えしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ほかに。 ○笠井委員 先ほど,阿多委員がお聞きになられた,IT機器の利用に習熟していない者等であるという話は,これは単に,その方はオンラインで記録を見ることはしない人だということを書いてあるにすぎないと思います。   要するに,裁判所に来られるでしょうという,そういう意味でありまして,かつ,期日も,双方不出頭で期日ができる期日になっても,その方は裁判所に来られるでしょうということですので,期日が開かれれば,その人は裁判所に必ず来るということを前提に,その機会には照らし合わすことができるでしょうという,そういう趣旨だと理解しております。 ○阿多委員 誤解していました。そういうことですか。 ○増見委員 ちょっと前提として,この全面的な訴訟記録の電子化という点については,どなたも異論がなく,これは進めていくべきという前提で議論が進んでいると理解しているんですけれども,それは,そういう前提でよろしいでしょうか。 ○山本(和)部会長 それはまだ,ここで研究テーマではありますが,そこは,まだこれからという。 ○増見委員 なるほど。   訴訟制度のIT化というか,インターネットを介してアクセスを容易にするという意味では,これが全ての基本になるものかと思いますので,ほかのオンラインによる申立てが義務化されるかどうかといった議論とは別に,この訴訟記録の電子化というのは,単独でもどんどん進めてよいものではないかなと思います。   また,ちょっと今回の論点としては取り上げられていないんですけれども,電子化されたときに,それをどのようにアクセス可能にするかという点についても,非常に重要な論点かなと思っておりまして,広く,実は閲覧可能性を担保したい,第三者の訴訟記録であっても,今後の訴訟の参考等にするために閲覧したいというのが,企業側のニーズとしてもございますので,閲覧についての議論というのも,是非とも進めていただきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   閲覧につきましては,少しちょっと先の方になるかもしれませんけれども,御議論を頂く予定になっておりますので。 ○増見委員 ありがとうございます。 ○富澤幹事 日下部委員が御指摘になった点については,現在の実務でも同じような問題が起きていると思います。現在でもファクシミリで書面が提出をされた際に,実は落丁があったが,その落丁に気付かずに陳述をしてしまうというケースは,それほど多くはありませんけれども,想定されます。このようなケースを念頭におくと,今回,提案されているような正確に電子化されているかどうかを確認することができる規律を設けることには,ある程度の意味はあるのではないかと思っております。また,調書異議については,次の期日までに行わなければならないと考えられておりますので,本提案は,このような現在の取扱いと同じような規律であると考えていたところでございます。   もちろん,このような落丁などの問題がなるべくないようにすべきとは思いますが,現在も同様の問題があることを,御紹介させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 失礼いたします,青木です。   訴訟記録の電子化のメリットについてですが,部会資料2の8ページの下から9ページにかけて,①から③のことが指摘されています。このうち,①と②に挙げられている訴訟記録の管理や運搬が容易であることや,持ち運びの必要がないことは分かりますが,③の電子化された訴訟記録を用いて,迅速かつ効率的な争点整理を行うことが可能になるということについて,よろしければ具体的に教えていただけたらばと思います。   商事法務研究会の報告書の24ページには,具体例として,争点整理案などを同時に見て,議論を見ながら即座に修正をしていくことが可能になるということが挙げられていて,恐らく一般的に言うと,テキストデータとして扱えると,文書の編集とか検索とかが容易になるというようなことがあると思いました。そうだとすると,部会資料2の第1の3で検討されているような,提出させる電子データの種類にも関わってくると思います。   電子化というと,先ほど長谷部委員が指摘されたような,手書きしたものをスキャンして,それをオンラインで提出するということもあると思いますが,テキストデータとして扱える方が望ましいというような,電子化にも区別というか段階があると思いました。   質問としては,もしよろしければなんですが,訴訟記録の電子化で,審理が迅速化,効率化するという,その指摘について,もし何かほかに具体的なところがあれば,御教示いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   事務当局から何かございますか。 ○大野幹事 お尋ねの点については,青木幹事から御紹介いただきましたものをイメージしております。   もっとも,そうしますと,紙をスキャンした形のPDFも許容されるということと整合しない場面も出てくるのではないかという御指摘もあり得ようかとは思います。しかし,紙をスキャンしてPDFとしたものが主張書面として提出されるという場面自体がそれほど多くはないだろうとも思われます。その意味では,青木幹事がおっしゃるように段階があると理解しております。 ○山本(和)部会長 青木さん,よろしいでしょうか。 ○青木幹事 ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 訴訟記録の電子化について,文書を電子化する場合は,パターンとして期日前に書記官,誰か裁判所の方でデータ化して,そのデータに基づいて期日を開催する場合と,当日に文書を持参される当事者もあり得るかもしれませんので,当日提出された文書に基づいて期日を開催し,その後に電子化する場合がありますが,電子化に伴う脱漏のリスクもパターンとしては二つあり得ると思います。そうなると,「確認」というか,異議の対象も,瑕疵ある電子データに基づき期日が開催された場合と,期日自体は文書に基づき正当に開催されたが,電子化する際に脱漏等して訴訟記録に保存されている電子データに瑕疵がある場合に分けられるかと思います。その点のみを指摘しておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   おおむねよろしいでしょうか。 ○日下部委員 訴訟記録の電子化について,問題意識を私が先ほど申し上げまして,富澤さんの方からコメントいただいたところですが,今の実務ですと,裁判所に対してファクスが送られてきたときには,当事者間でも,そのファクスが同じものが送られているので,具体的にどういうものが正しいものなのかというのが,みんなが分からないという事態はそれほど生じないのかなと思います。   あと,今回の電子化ですと,紙で提出されたものを,裁判所が自分の責任で電子化するというプロセスが入ってきて,そこは,今までにはなかった,言ってみたらリスク要因なのかなとも思えるところでして,それほど生じることではないかなとも思いたいんですけれども,例えば,まとまって紙で提出された準備書面を,スキャナで一気に通して,機械的にばーっとスキャニングしていったときに,紙が重なった状態のままでしたというようなことは,何かあり得るような気もするんですね。   そのときに,それで電子化されてアップロードされたものを,相手方当事者もそれしか見ることがないわけで,気付かないということもなくはない。ページが,間で数字が抜けていれば気付きやすいでしょうけれども,運悪く最後のページだけがそうやって抜けちゃったなんていうことがあったりすると,また困ることもあるのではないかなと思いまして,現在もあり得る問題だということは,広く言えば,それはそうかなと思うんですが,裁判所におけるその行為というのが,今までよりも入ってきて,そこに過誤の余地というのが,今のものよりも広がるように思いますので,それに応じた規律というのは考える必要性は,少なくとも検討する必要はあるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○富澤幹事 日下部委員のおっしゃることは理解できるところです。若干申し上げておきたいのは,書面で提出されたものを電子化する作業を裁判所が一手に引き受けるというわけではなく,むしろ,本日の議論でもありましたけれども,裁判所に設置された機器を利用して自ら電子化作業をしていただくといった場合も当然あっていいと思うんです。そのような作業ができない場合に,最終的に裁判所において書面で提出されたものを電子化することは,当然あり得ると思うんですけれども,裁判所において全て電子化する作業を行うのかというと,そういうわけではないと考えております。 ○山本(和)部会長 その点は,この義務化をどこまでするかとかということとも関係すると思いますが,おおむね議論よろしいでしょうか。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。   先ほど青木幹事からお話がございましたけれども,記録のデータをどのような形式で持つのかというのは,これは重要なテーマだと思っております。これから作り上げる新しいシステムが,もし画像データしか持たないというシステムを作ること,本当に適切だろうかということは,真剣に考えていただいた方がいいと思います。   増見委員からお話があったように,これは提出する義務とデータで持つということは,切り離した議論でも当然検討できることだと思いますし,昨今,私,驚きましたけれども,アクロバットを使うと,画像のデータをOCRで読み込んで加工できるテキストデータに変えてくれるというソフトウエアもどんどん入ってきていますので,そこは切り離して議論することもできるかとは思いますけれども,いずれにせよこのデータ,文字のデータを画像でしか持たないようなシステムを作ることが,本当にいいかというのはよく考えて,立ち上げのときから,これからデータの世紀とも言われていますけれども,うまく使えるような記録の形態をよく考えて構築していただくことが,とても大事ではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度とさせていただきたいと思います。   最後に,次回の議事日程等につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○大野幹事 次回は,7月10日金曜日の午後1時半から午後5時半頃までです。   場所については,改めて御連絡をいたします。   次回は,訴えの提起,送達及び手数料の電子納付等について,御議論を頂きたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第1回会議はこれにて閉会させていただきます。   初めてのオンラインでの試みでしたけれども,比較的順調に,皆様の御協力の下運営できたのではないかと思います。   本日は熱心な御審議,誠にありがとうございました。 -了-