法制審議会 民法・不動産登記法部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  令和2年6月23日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時57分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第14回会議を始めます。   本日は御多用の中,御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   事務当局から本日の会議の運営方法についての説明を差し上げます。 ○大谷幹事 事前に御案内申し上げましたとおり,今回の部会につきましても委員,幹事,関係官の皆様には当省の会議室においでいただくことを基本としつつも,希望する方にはウェブで部会に御出席いただく方法により開催をさせていただいております。   前回の部会終了後に部会運営についてのアンケートをさせていただきました。お忙しい中,貴重な御意見をお寄せいただきましてありがとうございました。その結果を拝見いたしますと,音声も映像もともに大きな支障はなかったと受け止めておりますけれども,1点,音声につきまして,一部の会場参加者の声が聞き取りにくいときがあったと御意見がございました。これは,飛沫感染防止の観点からマスクの着用をお願いしていることによるものではないかと思っておりますけれども,特に会場にて御参加いただいている方におかれましては,御発言いただく際には意識的にマイクに近づいてお話を頂けるようにお願いできればと思います。   それから,審議時間につきましてですが,今回は前回よりも30分延長して午後6時までを予定させていただいております。もっとも,参加者の皆様の御負担を考慮いたしますと,午後5時半以降,審議の状況を踏まえて,一定の区切りが付いた時点で終了とさせていただきたいと思っております。   以上でございます。 ○山野目部会長 ただいま事務当局から会議の運営について案内を差し上げました。これについて何かお尋ね,御意見等がおありでいらっしゃいますでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは,審議を始めます。ただいま案内を差し上げた方法で本日の会議を進めることにいたします。   本日は阿部委員,門田委員,山田委員,衣斐幹事が御欠席です。   本日用いる配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○小田関係官 今回,部会資料30から32までを事前送付しております。部会資料につきまして,お手元にないようでしたら事務当局までお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 部会資料が欠けている等のことがおありでしょうか。大丈夫ですか。   それでは,本日の審議に入りますが,事務当局から御案内を差し上げましたとおり,感染症予防のためウェブで参加される方もおられますから,前回と同じように,50分程度の審議をした後,10分程度の休憩を置くという仕方で進めてまいります。   審議の内容に進みます。初めに,部会資料30「共有制度の見直し(2)」というものをお取り上げくださるようにお願いいたします。この部会資料30「共有制度の見直し(2)」につきましては,中を御覧いただくとお分かりのとおり,第1から第5までの内容をお示ししているところでございます。   初めに,第1の部分について御意見をお尋ねすることにいたします。部会資料の1ページから8ページまでの部分でございます。第1は「共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法」という論点でございます。中間試案についてパブリックコメントで寄せられた意見の概況を見ますと,おおむねこのような提案を採用すべきであるという意見が多数を占めました。そのことから,ほぼ中間試案と同様の案を御提示してございます。ただし,1の(1)のところで御覧いただくとおり,甲案として,特に事項を限らずにこの同意取得の方法を認めようとする提案と,乙案として,過半数決定事項に限ってこの同意取得の仕組みを用いることができるという提案とを併記してございますので,ここについて御意見を承りたいと考えております。   そのほか,(2)といたしまして,最低限の同意の持分の量を決めておく必要があるかという問題,(3)といたしまして,法的構成として,問題としている催告をすることに裁判所の関与を置くことにするか,そうでないものとするかということについて,甲案と乙案を示しております。   2ページの2のところにまいりますと,今度は共有者の所在などが不明である場合について,それぞれ(1)として,所在が不明な場合,(2)として,そもそも知ることができない共有者がいる場合について,所要の規律を提案申し上げているところでございます。   補足説明は8ページまで御案内しているとおりであります。この範囲について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料1ページの第1,1の催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合について,(1)については乙案に賛成します。日弁連の中間試案についての意見と同じです。乙案については前回の部会の審議を踏まえ,改良行為で著しく多額の費用を要しないものも乙案で処理できるということが明確になったという部分も含めて,賛成します。(2)ですが,乙案を採るのであれば,最低限の同意の要件は不要と考えます。(3)の法的構成等については甲案に賛成します。要件の充足性等については裁判所で判断すべきと考えます。   部会資料2ページの2の所在等が不明である共有者がいる場合についても,賛成します。(2)の知ることができない共有者がいる場合については,不特定共有者の数や持分を知ることができない場合が含まれます。このことは,この後に出てくる論点でも問題となりますが,部会資料にもあるとおり,そのことから制度自体が使えなくなるおそれがあるのか,供託金の額を工夫することで対応できるのかなど,少し複雑ですので,各論点について整理して,説明を加えた方がよいと考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御意見を承りました。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。この第1の1の論点に関しまして,まず(1)の甲案か乙案かということは,非常に難しい問題ですが,蓑毛幹事の御意見にもございましたように,(1)の甲案,乙案を選ぶかという問題と,(2),(3)の要件をどういうふうにするか,例えば(3)の裁判所の決定を要するかどうかという問題とは,密接に関わるものと思われます。   そのことを前提にしまして,(1)の甲案か乙案を検討する際の考慮要因として,共有者の持分権を制約する既存の立法とのバランスということも考える必要があると思われます。例えば,共有者不明の場合ですけれども,共有者不明の農用地等については,市町村長の公示に対して不明共有者から何ら申出がなければ,農地中間管理機構の20年以下の賃借権等について同意を擬製する制度がございますし,共有者不明森林について,50年未満の森林経営管理権を設定するという場合についても,市町村長の公告に対して不明共有者から異議の申出がなければ同意したものとみなすということで,これらの場合は特に裁判所の判断や都道府県知事の裁定は求められておりません。   他方,共有者不確知森林への土地使用権の設定や立木持分権の取得に関しては,市町村長の公告に対して異議がないことプラス知事の裁定によって行いうることを,森林法が定めております。それらとのバランスを考慮しますと,第1の1の甲案,乙案の中で,変更行為を含むとすると,これが共有持分権に対する非常な大きな制約であり,その当否について裁判所の判断行為を介在させ,(2)についても最低限度の要件を設けるという方向が妥当ではないかと思われます。   ちなみに,この後,第2のところで,持分権の取得の方法については別途提案があり,そちらの方は裁判所の判断が恐らく必要になってくると思われます。しかし,それに至らない場合でも,第1の1(1)で甲案採り,変更行為を含むときは,先の既存の立法とのバランスも考慮しつつ考えていくべきではないかと思われます。例えば,この変更行為を含むという中で,説明の中にもありますけれども,短期賃貸借を超える期間の賃貸借となる,借地権を設定するということを考えたときに,異議を述べない共有者がいるときにどう扱うかと,その必要性が非常に高いというようなことであれば,甲案を採りつつ,裁判所の行為を介在させることもあり得るかなと考えました。   仮に(1)で甲案を採るときに,一つ気になる点がございまして,部会資料30の4ページの下から13行目,(1)のオで,試案と異なり,催告期間内に確答がなかった場合の効果を,同意したものとみなすこととはしていないので,催告方法も異議があればその旨を告げよというふうにしているという説明がある部分です。例えば,土地をA,B,Cの3人が共有していて,持分各3分の1で,A,Bは借地権を設定したいが,Cは催告を受けたけれども特にこれについて異議を述べないというときに,(1)で甲案を採った場合に,これで借地権設定できるとなったとして,異議を述べなかったCの同意は擬制されていないということですが,この場合に借地権設定を認められたときの貸主は誰になるのかという点です。このルールに従って,異議を述べなかったCも拘束されて,貸主A,B,Cで,借主は例えばDと考えていいかどうかと,この点も併せて確認しておくべき問題かと思われます。   この点は,前回の部会資料27の18ページ,5の(3)のアで出てまいりましたが,管理行為として共有者が第三者と委任契約を締結するときに,A,Bは賛成したけれどもCは反対した場合に,このときの委任者は誰かという問題とも関わるかもしれませんけれども,今回は特に変更行為ということで,特に異議を述べなかったということをどういうふうに解釈するかという点についても,もし甲案を選ぶのであれば,併せて検討しておくべきかと思いました。 ○山野目部会長 最後にお話しになった点は,松尾幹事におかれて,何か御意見がおありでいらっしゃるでしょうか。 ○松尾幹事 あえて同意擬制をしていないということですので,私の誤解かもしれませんけれども,今回提案されている第1の1の(1)甲案のルールが採用されるとするならば,そういうルールに従って共有関係に服している,これも一つの意思決定ルールと考えますと,催告を受けても異議を述べなかった先ほどのCもこのルールに拘束されて,締結された賃貸借の効果を否定できず,持分に従った賃料債権の帰属,修繕義務のほか使用・収益させる義務等の負担の効果も及ぶとすれば,賃貸借契約の当事者になるということも法律上,可能かどうかという点の検討も必要になってくると思われます。恐らくここは非常に大きな議論があると思いますが,共有関係にある者が共有物の管理・変更に関するルールに従って第三者と契約を締結する場合の法理論の構成として,その合意の方法としては,共有関係にある者が受け容れている一種のメタルールに従った意思決定に服するということであれば,拘束されるという理解もあり得るのではないかと考えます。 ○今川委員 今川です。我々は対象となる行為については,補足説明では,この甲案というのは実質において試案と同様とありますので,共有持分を喪失する行為は含まないということだろうと思います。それを前提として,対象となる行為については甲案に賛成の立場であります。   その甲案に賛成する立場に立ちながら,法的構成については,どちらかというと乙案,どちらかというのは今,説明しますが,乙案に近いという考え方です。対象となる行為は,甲案であろうが乙案であろうが,かなり幅広になると思います。賃借権を設定する行為もあれば,共有者が自ら使用するというような場合もありますので,範囲が非常に広いですので,それが全て裁判所の決定がなければ法的効果が発生しないとなると,少し共有者の負担が大きすぎるのではないかと考えております。したがって,要件を満たすことによって法的効果が発生する乙案に賛成するということです。   ただ,賃借権を設定した場合に,登記の申請をする場合もありますし,また,共有者間で後日紛争を防止したいと考える場合もありますし,取引の相手方から同意の取得要件を充足しているのかどうか証明してくれと,そうでないと心配で取引できないというような証明を求められる場合もありますので,そのような場合のために,要件が充足していることを証明するための,裁判所ではない公的機関による証明制度を用意したらどうかというのが我々の意見です。これは,公的機関が関与しないと法的効果が発生しないというのではなく,必要であれば証明書を利用するということです。   乙案プラスアルファみたいな案なのですけれども,同意取得の効果発生のための要件としては,催告をしたこと,それから,所在不明の場合は,所在不明であること及び公告をしたこと,そして異議がなかったことが要件となるのですが,この異議がなかったことを自ら証明するのが一番難しくて,公的機関は主にこの点を証明する役割を果たせばいいのではないかと。補足説明では法的構成について,甲案を採用した場合でも,裁判所は行為の相当性について判断をするのではなく,異議を述べない共有者を意思決定から除外するか否かを判断するのにすぎない,すぎないとは書いていないですが,裁判所は行為の相当性について判断をしないということであれば,適正手続がとられたことの証明で足りますので,裁判所である必要はない,例えば法務局なんかはどうでしょうかというふうな提案です。   それと,これは質問ですが,法的構成で甲案の場合に,我々は甲案の立場ではないのですが,前記(1)の効果が生じるというのは,裁判所の決定があった場合に,同意取得の対象となる変更行為や管理行為の効力が発生するということで,第三者との契約などが絡む場合はどういうふうに考えるのかというのが少し分かりにくかったので,説明を頂きたいと思います。   それから,所在不明についてですが,法人の場合は,本店及び主たる事務所が判明せず,かつ代表者が存在しない,又はその所在を知ることができないというのが原則でありますが,今回,本店が判明するかどうかに関わらず,代表者が存在しない,すなわち死亡している場合は,もう所在不明と考えていいのだというふうに,少し緩やかになっております。それから,後で出てくる持分取得の場合はそうではないと,代表者が存在しないことのみをもって所在不明として扱うことは相当でないと説明されています。持分取得と同意取得とは中身は違うとはいえ,所在不明の扱いが変わると混乱するのではないかということと,区別する必要があるかどうかということについては,少し疑問を持っているということです。実際,代表者が存在しない場合でも,法人が機能していたら意思表示は,受領権限のある者もいる可能性もありますし,ほかの役員がいるという場合もありますので,代表者が死亡していることをもって直ちに所在等不明であるということについては少し疑問があるというのが我々の意見です。 ○脇村関係官 契約のお話の点なのですけれども,ここで想定していましたのは,甲案を採った場合に,裁判所が決定という案ですと,決定された場合には残りの人で決めていいですよというところまで,そういう効果が発生すると思っていまして,その後,残りの人で,過半数なのか全員なのかあれですけれども,意思決定をし,その後,契約をされるということになっていますので,行為自体の効力を直ちに発生させるとは考えておりませんでした。   あと,法人の件につきましては,いろいろ考えた方がいいのかなと思いましたが,皆さんの御意見を是非伺いたいと思っているところでございます。 ○山野目部会長 今川委員,今のところよろしいですか。 ○今川委員 はい。 ○山野目部会長 藤野委員,お願いします。 ○藤野委員 ありがとうございます。藤野より申し上げます。   部会資料30の第1には,幾つか論点がございますけれども,まず1(1)の対象となる行為等に関しては,先ほど今川委員もおっしゃっていたのと同様に,甲案に賛成しております。やはり事業者としては,災害復興などを進める場合に,工事に伴う用地確保等のため,どうしても賃借権を設定しなければいけない場面というのが出てくる,という中で,前回の部会資料27で議論されていたとおり,使用期間が5年を超えると管理に関する事項からは外れてしまうというのが今の議論の前提になっているかと思いますので,そういう観点から言うと,変更行為とされる賃貸借であっても対象となるような形が望ましいのではないかと考えております。   また,その次の(2)の最低限の同意の要件に関しては,これはもう飽くまで実務的なニーズを優先した意見ということで聞いていただければとは思うのですが,やはり多数人が共有しているような土地で,この要件が課されてしまうということになりますと,かなり手続的には厳しいものがあるという現実がございます。特に第1の2ですね,所在等が不明である共有者がいる場合でも最低限過半数は必要,という案が採用されるということになりますと,せっかく制度として入れていただいても,なかなか使いづらいということになりかねないと考えておりますので,ここは,この要件自体には積極的には賛成できないというところでございます。   あと,(3)の裁判所が関与するかどうか,裁判所の決定があって初めて効果が生ずるかどうかという点に関しましては,少なくともこの同意取得に関しては,裁判所の決定がなくても効果が発生する形にするのが望ましいのではないかと考えています。これもどうしても実務的なニーズが先行した意見になってしまいますけれども,他の制度,特に新たな土地管理制度など,そういったところとの組合せで申しますと,裁判所が関与しなければいけない手続がある程度必要だということは理解できるとしても,この同意取得についてまで裁判所の決定がないと効果が生じないということになってしまうと,やはり時間や費用などの面も含めて,制度全体として使い勝手の悪いところが残ってしまうのではないかと考えておりますので,ここは乙案に賛成したいというところでございます。どういう形で効力発生を担保するか,登記手続を行う前提としての証明が必要かどうかといった点に関しては,様々な御意見があるかと思いますので,そういったものも踏まえてというところで,この点に関して特に何か,これでというところがあるわけではございませんが,甲案か乙案か,ということで言えば乙案に賛成するということでございます。 ○道垣内委員 甲がいいか乙がいいかという問題ではないですが,甲案と乙案とにおける「異議を述べなかった共有者」という言葉の意味が違うのではないかという気がするのです。と申しますのは,賛成とレスポンスした人はこれに該当するのかということを考えたとき,異議を述べなかったのだから,その者は「異議を述べなかった共有者」に該当するということになっても,甲案の①の場合については,それで構わないのですね。というのは,その人は同意しているわけですから,それ以外の人が同意をすればできますよということで構わないのです。しかし,乙案のときには,賛成した人が「異議を述べなかった共有者」であるということになったときには,その人が過半数の判断から排除されてしまうということになりまして,それはおかしいのだろうと思うのです。   したがって,「異議を述べなかった共有者」という言葉を少し変えた方がいいのではないかと思います。   それと,もう一個だけ,藤野さんのおっしゃった,過半数がいずれにせよ必要であるということになりますと実務的には動かないという話なのですが,それは,ごく少数の人がやろうと言えばいいという制度にしろというお話でしょうか。もし仮にそうであるならば,それはとても賛成できるものではないというのは申しておきたいと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員から二つお話しいただいたうち,後ろの方は藤野委員から何かあれば,また承るということにいたしますが,前の方の,異議を述べる,述べないということに関して,事務当局がどのような趣旨でこの言葉を選んだかということについて,異議を述べない,述べるということの国語的意味といいますか,それに関連して算数的にといいますか,国語ないし算数の問題があるもののようですから,発言があったらお願いします。 ○脇村関係官 御指摘いただきありがとうございました。レジュメ自体は,文句があるというか異議がある,反対だという人は積極的に言ってくださいということを明確にした方がいいかという観点から書かせていただいておりましたが,先生がおっしゃっているとおり,賛成のケースは賛成と扱うべきですので,用語についてはまた精査させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 道垣内委員,今のところよろしいでしょうか。 ○道垣内委員 はい,結構でございます。 ○山野目部会長 藤野委員,何かおありでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。同意の要件のところなのですが,考え方としては,催告をしたけれども異議を述べないというところが前提になっているという理解ですので,そういう意味で言うと,積極的な同意が返ってくる人が半分いなかったとしても,意見を言う機会が与えられている以上,それが半数を超えるまで待たなければいけない,あるいはもう所在が不明であるような場合に関しては,何としてでも同意してくれる人を半数以上探してこないといけない,そういうことになってしまうとさすがに厳しいのではないかという趣旨で申し上げた次第です。もちろん異議を述べられる方がいるのであれば当然,催告をした時点で述べていただければいいのかなという話ですので,必ずしも少数の方を無視して進めようという趣旨の意見ではないということは申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 藤野委員の御意見の趣旨は承りました。ありがとうございます。道垣内委員も今のところはそれでよろしいですか。 ○道垣内委員 はい,結構なのですが,私,少数の人を無視してはいけないというのではなくて,少数者だけでできるということになってしまうのではないかということを申し上げたので,若干ずれているような気がいたします。 ○山野目部会長 ただ今の御意見の交錯は,また事務当局において整理いたします。ありがとうございました。 ○潮見委員 二つ申し上げたいのですが,1点目は,実は道垣内委員が先ほど言われたところとほぼ同じところを,違った意味で私は感じていました。というのは,先ほどの松尾幹事の御発言を聞いて思ったところでして,甲案を仮に採った場合,私は甲案でも構わないとは思いますけれども,①と②の,先ほども話題になった異議を述べなかった共有者の持分という,この異議を述べなかったという意味は,②で書いているのが基本で,それが①の方にも使われて,同じ意味だと私は頭の中で整理していたのです,   そのように考えた場合に,先ほどの松尾幹事がおっしゃられたA,B,Cという例,AとBが借地権を設定したいというような場合に,それでCが異議を述べなかった,この例において,借地契約の当事者は誰になるのだろうということを考えれば,異議を述べなかったというだけで,同意をしたとはとてもじゃないが言えませんから,契約の当事者というのは飽くまでも,借地権を設定したAとBだけではないか,Cが入ることはあり得ないであろう。もしそれでCが入るというのだったら,①の異議を述べなかったという意味が少し違った意味,先ほどの道垣内さんが言われたような意味も含めた形で捉えざるを得ない。だから,この辺りは全部ひっくるめて,少しきちんと考えておいた方がいいと思ったということです。これが第1点です。   それから,第2点ですけれども,これは法的構成に絡むところで,裁判所を介在させるか,裁判所の決定が必要かどうかという点ですけれども,仮に甲案を採った場合に,あるいは乙案だと甲案の②だけに対応しますけれども,①の方は裁判所の関与が必要であり,②の方は不要である。乙案は裁判所の関与は不要という整理もすることができるのではないかという感じがいたしました。要するに,これは権利を奪われたり,あるいは制約されたりする人の程度を考慮に入れたときに,②の方は,飽くまでもこれは管理に関する事柄であるから,このところについては別に裁判所を関与させずに,法的構成のところの乙案のような形でも構わないとは思うのですけれども,甲案の①の方について言うと,正にこれは共有物の変更に関わることであって,これは程度問題と言ったらそれまでですけれども,やはり少し②と①は違う。①の方については,後の持分所得とも関わりますけれども,裁判所の関与ということを入れるという整理もありかなと思いました。前回休んでいますから,勝手なことを言っているかもしれませんので,後半の方は御放念いただいても結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。潮見委員が前半でおっしゃったことは,甲案①の異議を述べないということの意味の理解,ないしはその表現の問題についての帰すうが,もし異議を述べないということをもって同意を擬制するというところまで行くならば,松尾幹事が挙げた例でA,B,Cの最後のCも契約の当事者になるということがあり得るかもしれませんけれども,そうでなくて,単に異議を述べないということでいるとするならば,Cが契約当事者になるという議論を素朴に進めることは乱暴ではないかという指摘がありました。松尾幹事及び潮見委員の御意見を受け止めて,ここの考え方の整理を進めてまいることにいたします。潮見委員が後半でおっしゃったことも受け止めさせていただきます。ありがとうございます。   佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。今,潮見委員がおっしゃった第1の点は,私も全くそのとおりだと思います。乙案を採った場合には過半数で決定できるわけですけれども,賛否を問われて反対をした人が,短期の賃貸借をするときに契約当事者にされることはないはずので,甲案を採った場合に,意見を表明しなかった人が強制的に契約当事者とされることはあり得ないだろうと思います。   2点目も潮見委員がおっしゃったことと関連するのですが,少し先に申し上げたいのは,(2)の最低限の同意要件については,スミツキのパーレンがあるのですけれども,これの意味がよく分からないというか,二つ書き分けられていますよね。申し上げたいことがあるのですけれども,そこの意味だけ先に教えていただきたいのです。前記(1)で甲案を採る場合にはと最初にあり,その次には,甲案,乙案のいずれであってもとあるのですが,少なくとも後段の方は,乙案を採っても,盛り込むことでどうかという趣旨でしょうか。 ○山野目部会長 1ページの(2)に怪しいスミツキが二つあることについての釈明要求がありますから,事務当局から案内があります。 ○脇村関係官 申し訳ないです。趣旨としましては,議論としてはどうかという提案でございますが,前記(1)の甲案①を採った,全員のようなケースについて,2分の1,最低限入れますかという提案と,甲案②,乙案を採った場合に3分の1,入れますかということを提案としては書かせていただいたという趣旨です。 ○佐久間幹事 では,少し続けて申し上げたいのですが,道垣内委員がおっしゃった,あまりにも少数の者で決定することができていいのかというのは,確かにそうだなと思うところがあります。他方で藤野委員がおっしゃったような,共有者が非常に多数に上るという場合に,一定数は確保しなければいけないのは厳しいというのもあると思うのです。きれいに分かれるわけではないのですけれども,催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合については,最低限の同意要件はあっても,まあいいのかなと思っています。それに対し,所在等が不明である共有者がいる場合に関しましては,例えば数次相続が起こっていて非常に多数の共有者がいて,というような状況になったときに,これを何とか整理したい,土地について,変更したい,あるいは管理をしたいというような状況になったときに,最低限の,甲案ですと持分の価格の過半数,あるいは単純な管理であっても,持分の価格の3分の1,これを超える賛成がないと全く動かせないのですというのが本当にいいのだろうかと,私も思います。   それで,先ほどの潮見委員と同じようなことを申し上げますがということですが,1の場合と2の場合を全く同じように合わせなければいけないのかを検討できないかと思いました。というのは,この「同意取得の方法」の提案が出てきたのは,2の所在等が不明である共有者がいる場合に何とか合理的な決定ルールを用意できないだろうかと考えて,同意調達の方法を容易化しようというところからだったと思います。そしてそこから,つまり,所在不明の場合,その人は同意を表明するというか,賛否を表明する機会がほとんどなかろう,そういうときに,その人を除いて決定できるとするならば,もう連絡を取らないでくれというような実在する共有者というか,居場所が分かっている共有者も実際にあるので,そちらにも拡張したらどうか,という話であったように,私は記憶しています。   そうだとすると,2の方の,所在不明の人がいる場合,多数いる場合であっても,不動産の管理,変更あるいは処分を実際上できるようにしようというところは,なるべく元の発想のとおり残せないのかなと思いまして,制度が複雑になるということがあるのかもしれませんけれども,1と2で変えるのはどうでしょうか。例えば1の場合だと(1)については乙案,(2)で最低限の同意は要るというようなことに,飽くまで例えばですけれども,しつつ,2の場合については甲案のものまで行ける,最低限の同意要件も場合によっては要らない,その代わり裁判所をかませるなど,そういうような考え方はあり得ないのかなと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事から頂いたヒントは,1ページの1は,必ずしも共有者の所在が分からないというものではなく,共有者がむしろ無関心であって協力的でないケースであり,2ページの2は,正に所在が分からないケースでありまして,1と2について採用すべき規律の内容に関し,1ページの(1)の甲案,乙案の採否等や,(2)の最低限の同意の要件の在り方について,異なる解決を考案する可能性も考慮に入れてほしいというお話でありました。御意見として承ります。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。先ほどの変更行為の場合の契約当事者の話については,潮見委員の御指摘もありましたし,異議を述べないということをどう解釈するかというこということとも絡んで御指摘いただいた点については,そのような形で整理されるということであれば,異論ございません。契約当事者をどう見るかということについては,前回の部会資料27の5の(3)で問題になりました,第三者と委任契約を結ぶ場合の委任契約の当事者が誰かということとも,また共通の問題で,252条の管理行為をするときに賛成しなかった共有者が契約に巻き込まれるのか否かということについても,契約当事者になるという甲案と,契約当事者にならないけれども,その効力は反対した者にも及ぶのだという構成でも行けるという,乙案についての補足説明にあるような議論もございましたので,そこについてはある意味,理論的な整理の問題ですから,特に私もこだわりません。少しそこは議論の整理としては必要かなと思いましたので,問題提起だけさせていただいたという趣旨でございます。   もう一つは,今,佐久間幹事のおっしゃった点ですが,そこは私も全く賛成で,実はこの第1については2の「所在等が不明である共有者がいる場合」の方がやはり現実的には重要な問題で,特にこの2についても,1の場合に検討された,(1)対象行為について変更行為を含む可能性,(2)最低限の同意を求める必要性,(3)裁判所の行為を介在させるかどうかという点について,共有者の所在不明および共有者不明という事態をどのように重くみるか,その点を十分考慮して,例えば借地権の設定がどのようにして可能か,要件を検討する必要があると考えます。(3)については,先ほども述べました,共有者不明の農用地の場合には,市町村長の公示だけで,それについての異議がなければ20年までの農地の賃貸借を認めるという既存の立法もありますので,これらについても参考にしつつ,裁判所を介在させずにも可能かどうか,そこは議論があるかもしれませんけれども,要件と効果のバランスを検討する余地があると考えます。いずれにしても,1と2は要件として別途考えうるという点に私も賛成でございます。 ○山野目部会長 水津幹事,どうぞ。 ○水津幹事 同意取得の方法に関する規律のうち,最低限の同意の要件を定めるとしたときの定め方について,先ほどから話題になっている変更と管理との違いに関連して,気になることがございます。   甲案を採るときは,持分の価格の過半数を超える者の同意がなければ,共有物の変更をすることができないとされています。頭数にしなかった理由について,5ページは,現行民法は,持分の価格により決するとしているからであると説明しています。しかし,251条の規定では,共有物の変更については,他の共有者の同意を得なければならないとされており,その性質上,持分の価格は問題とされていません。そうであるとすると,共有物の変更について最低限の同意の要件を定めるときは,頭数を基準とする方が自然であるような気がしました。 ○山野目部会長 水津幹事から,処分ないし変更との関係では,頭数を考慮に入れる可能性も検討してほしいという要望を頂きました。頭数と持分の多い,少ないの二つの要件をアンドでつなぐかオアでつなぐかにもよる側面があって,場合によっては複雑なことを考えなければいけないかもしれないですけれども,御趣旨はよく分かりました。   中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。今回の御提案は,催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合と,所在不明である共有者がいる場合に関するものなのですが,もう一歩前の段階につきまして,催告をして異議を述べる機会を設けるということの意味について申し上げたいと思います。   前回検討しました資料27では,共有物の管理に関する事項の定め方について,過半数で決する際の手続を定めないという御提案でしたし,また今回の資料30でも,管理者の定め方として裁判所の関与を設けないという御提案,それから,裁判所による必要な処分の制度も設けないという御提案なので,この全体の手続の中では,少数持分権者にとっては,催告を受けて異議を述べる機会というのはとても大切な機会になる可能性が高いと思います。   そのようなものとして考えたときに,8ページで御提案のあります催告期間1か月というのはやや短いのではないかという意見が日弁連のワーキングでは出ておりました。催告を受けてからいろいろ調べ,考え,ほかの方法や,異議を言うにしても何らかの提案を練るというようなことを考えると,事案によっては1か月というのはいかがなものだろうかという場面があるのではないかというような意見が出ておりましたので,少し御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 現行法で言いますと,行為能力制限の場合の20条や,動物を捕獲した人の195条などが一月であり,これらを見ながら一月という機関を例示しておるところであります。中村委員の仰せもよく理解することができますから,参考までにお尋ねしますが,弁護士会の先生方の間で何か,何か月ぐらいが適当であるというようなお話があったら承っておきたいと存じますが,何かおありだったでしょうか。 ○中村委員 具体的に何か月がいいという意見があがっていたわけではないのですが,最低期間として1か月と定めるのであれば,事案によっては,より適切な期間を設定した方がいいという考えに誘導しやすいのではないかということはあろうかと思います。 ○山野目部会長 承りました。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。部会資料の7ページの共有者の所在等が不明であることの意味の記述について,少し意見を申し上げたいと思うのですが,こちらはパブリックコメントのときも,住所に居住していないかどうかを常に調査するというのは,方法として少し重たいのではないかということで,登記簿上の住所への書面の不到達でもこの要件が満たされると解す余地を与えてほしいということを申し上げておりました。   これも制度全体のバランスの中で,例えば裁判所が決定に関与するのか,あるいは自然に効果が発生するとするのか,そのどちらを選ぶかによっても変わってくる話で,仮に裁判所が決定するということになれば,事案に応じて裁判所に適切に認定していただくというのは,これで構わないと思っております。ただその時に,やはりそこに,住所に居住しているかどうかを常に調査しないと,そもそもその次のステップに進めないというようなことには,できればしないでいただきたいですし,実際の土地の現況であるとかそういったところを踏まえて,本当にどこまで探索をやらなければいけないのか,ということも変わってくるのではないかという思いが実務側にはございますので,できればそういう余地が残るような形で,ここのところは定義をしていただければというか,そういうふうな解釈の余地を残せる議論にしていただければと思っています。   そして,先ほどの同意のところの要件もそうですけれども,条文に要件という形で設けてしまうと,もうそれを絶対的に満たさなければいけないということになってしまいますので,今回,部会資料に書いていただいているような説明で通されるのであれば,それを条文等のリジッドな形で残すようなことは,できれば避けていただきたいというのが私からのお願いでございます。 ○山野目部会長 藤野委員の御心配は理解いたします。そのしばらく前に今川委員が法人の所在不明についておっしゃったことと併せて御案内をいたしますと,個人であれ法人であれ,所在不明という概念について,この部会の場で委員,幹事の間でなるべく共通のイメージが作られていることが望ましいであろうと考えられますし,そのようにすることによって,甲案で行った場合の裁判所,乙案で行った場合の関係する私人がどのようにアクションをとるべきかということも明らかになってまいりますから,その議論は部会資料などを題材としてお進めいただきたいと考えますとともに,果たして何をもって所在不明であるかということを法文に精密に書き込むことになるかということは,また法制の観点から別途考えなければいけない事項であるであろうとも感じます。藤野委員のただいまの御心配は承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。ここまで,ひとまずよろしゅうございますか。   それでは,少し前に蓑毛幹事が冒頭に御発言になった中で,所有者がおよそいるかいないか分からない場合というものが幾つかのところに出てくるけれども,今後の議論で注意してほしいとおっしゃっていただいた部分は,格別ここではなくて,今後注意しておけばよろしいというお話で承っておけばよろしいですね。   それでは,第1のところについて,ただいま頂いたような甲案,乙案の採否についての御意見の分布,それは必ずしも多数,少数というものではなく,御覧いただいていてお分かりのように,その組合せの仕方がいろいろ工夫の余地があるという御意見を承ったと認識しますけれども,本日はこのような整理で先に進むということにさせていただいてよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   それでは,8ページにお進みください。第2として「不動産の持分の取得」という論点を取り上げており,それから,今回は併せて26ページまでお諮りしたいと考えますが,それに続く第3のところで「不動産の譲渡」という論点を差し上げているところでございます。   この8ページから始まっている不動産の持分の取得について申し上げますと,中間試案において,御記憶のとおり,甲案として裁判所の関与があるという仕方で,乙案として裁判所の関与がないという仕方で,いずれにしても所在不明共有者の持分を有償で取得する可能性を認めてはどうかという提案を差し上げていたところ,このような制度を設けること自体は賛成であるという多くの意見がパブリックコメントで寄せられたところでございます。これを踏まえて,やはりこのたびも甲案と乙案という二つの提案を差し上げてございます。   それに関連して,9ページの(2)でございますけれども,所在不明共有者に対してこの持分の取得の手続を進める際,所在不明ではない,所在が分かっている共有者が複数いる場合の扱いについて,その人たちの間のコミュニケーションや権利関係がどうなるかということにつきまして,中間試案以後の検討,精査を踏まえ,本日の部会資料では9ページで,甲案に加えて乙-1案と乙-2案を提示しており,甲案は,他の共有者の同意を要件とせず持分の取得ができるという考え方であり,乙-1案は,他の共有者の全員の同意を得た上で当該持分を,また乙-2案は,他の共有者の全員の同意を得た上で不動産そのものの全部を取得することを可能とする案を選択肢としてお示ししていす。これらの甲案,乙案の分岐で御提示申し上げているところについて,委員,幹事の皆様からの御意見を頂戴しておきたいと考えます。   ほぼ同様の問題の構図のことが,その後の第3の不動産の譲渡についても提案を差し上げているところでありまして,持分の取得の場合と不動産の譲渡の場合とで異なる点もあるかもしれませんから,それぞれについて幾つか案を併記しているところについて,御意見を承りたいと考えます。   それでは,第2,第3の部分について御意見を仰せください。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料8ページの第2,不動産の持分の取得ですが,最初の1(1)の法的構成等につきましては,共有者の財産権保障の観点から甲案に賛成します。中間試案における日弁連の意見と同じです。   少し難しいのが,(2)の所在不明共有者以外の共有者が複数いる場合の処理ですが,甲案に賛成します。乙-1案と乙-2案は,判明している共有者全員の同意を要件とするという提案で,1名でも同意取得が得られない場合には適用されず,制度の活用が非常に狭まるということ,また,共有者が多数に上るときには実務上,ワークしないと考えられますので,甲案に賛成します。   部会資料の16ページの説明では,なぜ甲案がよろしくないかということについて,共有者間に共有関係の解消方法の意見の対立がある場合に,持分取得の手続のみをとる必要があるのか疑問という記載がありました。これは,この制度を使って,持分権を集約していくことの意義がどこにあるのかという問題だと理解しています。   甲案を批判する立場は,最終的に共有状態が解消される状況でなければこの制度には意義がないと考える立場であり,そうであれば,乙-2案になるのだと思います。しかし,私の理解では,中間試案では,所在不明共有者がいる場合には,その者との協議ができず,その結果,共有物の管理に支障が生じるのが望ましくない。したがって,そのような場合には所在不明共有者との間の共有関係を解消する便宜な方法があった方がいいのではないかという考え方で,この制度が考えられたのだと理解しています。   そうであれば,所在不明共有者との間の共有関係を解消することによって共有物の管理が適切に行える以上,最終的に共有物の解消まで至らなかったとしても,この持分取得の手続を設ける意義はあるのではないかと思いますので,甲案に賛成します。   それから,(3)の公告の手続,2の知ることができない共有者がいる場合,3の対象となる共有物については,提案内容に賛成します。   第3の不動産の譲渡について。法的構成については甲案に賛成です。ただし,日弁連のワーキンググループのメンバーから,共有者が供託するだけではなくて,買受人,譲受人,購入者である第三者も供託できるような仕組みを検討できないかという意見がありました。これは,共有者に資金力がない場合で,かつ購入者も事前に共有者に資金を出し難いときがあるから,買受人である第三者が直接供託できる制度は設けられないかというものです。 ○山野目部会長 ありがとうございます。蓑毛幹事におっしゃっていただいたとおり,8ページから9ページにまたがっている(1)のところについての甲案と乙案の採否についても御意見を頂きたいと考えますが,取り分け9ページの(2)の甲案,乙-1案,乙-2案の考え方をどういうふうにするかということは,大変論争的な素材であると感じますから,どうぞ委員,幹事の皆様におかれては,それぞれお考えがおありでいらっしゃいましょうから,積極的に御意見を承ることができれば有り難いと存じます。いかがでしょうか。   蓑毛幹事,お続けください。 ○蓑毛幹事 すみません,今の9ページの(2)のところですけれども,今私が申し上げたことのほかに,この後議論される部会資料31の,遺産の中に不動産がある場合の所在不明相続人の不動産の持分の取得の論点と関連していると理解しています。部会資料31の方は,通常共有だけではない複雑な問題があると理解していますので,その場で議論したいと思います。 ○山野目部会長 仰せのとおりであると存じます。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。第2と第3についてですけれども,ここでも先ほど申し上げたのと同じ話で,裁判所の決定を要するかどうかという1(1)のところに関しましては,裁判所の関与がない方,裁判所の決定を要しないという乙案の方が実務上はいいのではないかという意見が事業者から出ております。ただ,先ほどの第1の論点と比べると,またいろいろと,本当に裁判所の決定を経なくても大丈夫かというところの疑問は当然出てくるところだと思いますので,そこのところはもう少し詰めて議論が必要なのかなと思っておりますが,現時点では乙案を支持させていただきます。   あと,それ以外の点に関しましては,3で不動産の使用権の持分権を対象にするということに関しては,積極的に賛成の意見を述べさせていただければと思います。 ○今川委員 法的構成ですけれども,同意取得とは異なりまして,ここでの提案は,共有持分を完全に失わせる行為なので,実体法上も,それから,持分取得となると必ず登記手続というのがまず入ってくると思いますので,そういう手続上も,持分移転の効果が覆滅しないためのルールは必要ですし,第三者がしっかりとその持分移転の効果を確認できる方法が必要だということで,これについては甲案に賛成です。   それから,所在不明の意味については,先ほど申し上げましたように,同意取得の方法と持分取得の場合とで,特に法人について,所在不明の意味を分けるということについては消極でありますので,検討いただきたいと思います。   それから,所在不明共有者以外の共有者が複数いる場合ですけれども,共有持分放棄について他の共有者全員の同意が必要だというのが中間試案で出ておりまして,我々もそれに賛成しているのですが,それとパラレルになるのかどうか分かりませんが,感覚的に考えると,他の共有者の同意が必要だという乙-1案もありかなとは思われるのですが,結論的には甲案に賛成です。   というのは,他の共有者には公告し,かつ通知をし,機会を与えているわけですので,他の共有者が自ら持分を取得したいと思えば手を挙げればいいですし,それから,特定の共有者に所在不明の共有持分をどうしても取得させたくないという場合は,最終的には共有物分割請求しかないのかと思われます。   あと,乙-2案についてですが,不動産の全部を取得するという構成なのですが,不在者の持分についてはこの制度で取得できて,それ以外の共有者については,この合意によって個別契約によって取得することになるのかと思いますので,乙-2案は特に分ける必要がなくて,乙-1案でいいのかと,乙-2案は乙-1案に吸収されていくような気がしております。いずれにしても,甲案に賛成するという立場でございます。 ○佐久間幹事 蓑毛幹事がおっしゃったことに全部賛成です。本体としては。それは,遺産共有の場合に同種の問題があるときは別途考えるという,要するに,9ページの(2)で甲案を採った場合であっても,遺産共有の場合に所在不明の者がいるときは,例えば乙-2案のような形の案を採ることはあり得ますよねということも含めて,賛成です。ということを申し上げた上で,17ページのことを伺いたいのですけれども,7のところで,共有物に不具合があった場合の処理の担保責任について述べられているのですね。私は,所在不明共有者は担保責任を負わないのではないか,と思っています。共有物分割とは本質において違わないと書いてありますけれども,手続に関与しない人に,その関与しない手続において起こった問題について責任を負わせるなんていうことはどうなのかな,と思っているのです。私が今申し上げたとおりにしましょうという提案を聞きたいわけではなくて,7のところにこのように書いてあるということは,何か規定を置きましょう,設ける方向で考えましょうということなのか,こういう問題がありますよということで,いずれは解釈論として争いが出てくるかもしれませんねということなのか,それを伺いたいと思いました。 ○山野目部会長 お尋ねがあった261条の適用関係について,新しい規律を創設することになるか,解釈に委ねるかについて,資料を作った際の事務当局のお考えをお話しください。 ○脇村関係官 結論から言いますと,何か特定の案があるわけではないというのが結論なのですけれども,この問題があるということについて御議論いただきたいと思って書かせていただきました。その上で,積極的に規定を置くべきだという意見もあれば,関与していないのだから置くべきではない,解釈に委ねるべきだ,そういういろいろな意見が出ると思いましたので,資料作成の意図としては,そういった議論をしてほしいということにとどまっているという次第です。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けになることがあったらどうぞ。 ○佐久間幹事 いえ,ございません。私の意見は申し上げましたので。 ○山野目部会長 もし置かなければ,新法施行後に佐久間説が何を書いても御随意ですから,どうぞ御議論を頂ければと存じます。   ほかにいかがでしょうか。(2)のところについて,意見をおっしゃっていただきたいものですけれども,いかがですか。 ○松尾幹事 ありがとうございます。この第2の1の(2)について,一つ質問があるのですけれども,例えば,所在不明共有者の持分を取得するということについては,確知共有者は特に異論はないけれども,誰がどういうふうに取得するのかということについて意見がまとまらなかったときに,どのような解決方法があるのだろうかという点です。例えば,甲案によるのであれば①と②で解決することになるでしょうけれども,乙-1案や乙-2ではどうなるか,結局取得できないままに残る形になるのか,この甲案と乙-1案,乙-2案で全ての場合が分類されているか,(1)の甲案で裁判所の決定を介在させつつ,(2)では甲案と乙-1・乙-2案のほかに,事情によっては他の確知共有者の同意が得られなくとも,特定の確知共有者に取得させる余地があるのかどうかということについて,まだうまくついていけていないところがありまして,少し補足的に御説明を頂ければ有り難いです。 ○山野目部会長 9ページの(2)で問題提起を差し上げている事項は,委員,幹事の皆様方から是非御意見を承りたいと望むところでありまして,着眼点は二つあるものではないかと考えます。いずれも蓑毛幹事がきれいに整理して指摘していただいたとおりでありまして,着眼点のうちの一つは,蓑毛幹事の2番目の御発言であったように,ほぼ同じ構図の論点,そして同じ構図で選択肢をお示ししている部分が,次の部会資料31において,遺産共有と通常共有が混在する場合等に関して出されてまいります。そこでの解決とここでの解決をぴったり同じにするかどうかはともかく,関連させながら検討する必要があるということが1点目でございまして,それから,もう1点は,甲案と,それから,ほかの乙と付けた二つの案の関係は,ここで設けようとしている制度を,蓑毛幹事がおっしゃったように,当面,所在が不明な人との関係が整理されればそれでよいという趣旨の制度として考えるか,それとも,このようなことに精力を割いてコミュニケーション,手続を進めるということをしたからには,可能であれば今後にあって共有の複雑な関係を残すことをせず,なるべく共有物分割をしたのと類似の,共有者間の問題を将来に向けて余り残さないような,究極的というものに近い解決を追求するという制度として設けるかという選択の観点であります。後者であれば乙-1案か,典型的には乙-2案にまいりますし,そうではなくて,そこまで一気に考えるという制度ではないでしょうということであれば,甲案ということでありますし,これが2番目の着眼点でありまして,こういったことを踏まえて,これは部会資料で御提示しているとおり,いずれの選択もあり得るものでありますから,お考えいただきたいですし,しかし立法としてはだんだん方向を絞っていかなければなりませんから,委員,幹事の御意見を承りたいと感じているところでございます。いかがでしょうか。 ○潮見委員 今の部会長の整理でいいと思っていまして,その上で,遺産分割のところと,今話題にしている9ページのところは,やはり性質が違うので,分けて考えるべきであると思います。その上で,9ページに書かれている事柄についてどう考えるのかと言ったら,今,部会長がおっしゃった言葉をそのまま使えば,究極的な解決というようなところまで目指す必要はないのではないか。つまり,不明共有者の持分取得のみが問題となっていて,他の共有者の持分というところには影響を及ぼすようなものではない。そうであるならば,わざわざ乙-1案のように,所在不明共有者以外の共有者の同意などということをこの段階で要求する必要はない。そうすることによって,さらに,先ほどこれは蓑毛幹事がおっしゃったことだと思いますが,実際にこういう所在不明共有者がいるような場合の,その不動産の将来に向けた活用を考えるときに,この部分について余り支障が生じないように制度を作り上げることができるのではないかと感じたところです。   ちなみに,先ほど今川委員がおっしゃった,乙-1案と乙-2案というのは,私はやはり違うなという感じがします。 ○道垣内委員 部会長から発言を求められている部分ではないので,大変気が引けるのですが,佐久間さんが17ページの担保責任について少し発言をされまして,これは明文の規定は置かないで解釈論の問題ですということになったのですが,佐久間さんのお話の発端は,関与していない人が責任を負うのはおかしいのではないかということですね。そして,この点で私は,理論的に担保責任はあり得ないのではないかなという気がします。というのは,額の決定のときにどのような,例えば土地でありますと,どのような土地であるという前提が採られたのかというのが,売買契約や共有持分の譲渡のときには,両当事者の意思によってそれが起こりますので,意思解釈の問題として一応は決まるのですが,所在不明の人との間の移転ですと,どのような性質を持っている土地の持分が譲渡されているのかということについては,両当事者の意思は決まらないのではないかと思います。そうすると,先ほど申しましたように,理論的に担保責任ってあり得ないのではないかなという気がします。これが第1点なのです。すみません,関係ないところの話をして。   第2点は,それとも関連しまして,(2)が求められているところ,(1)についての発言なのですが,乙案をとったとき,相当性は誰が争うのかというのが実はよく分かりません。共有者が複数ほかにいるわけではないといたしますと,争う人がいないではないかという気がするのです。そうすると,幾らでもいいからお金を供託して,「取得をする」という意思表示をすれば,それで持分がやってきてしまうという制度になりはしないのかという気がいたします。乙案のように,裁判所が関与しないとするのは一見軽そうでよさそうなのですが,では,要件充足の有無は,誰がどこでどういうふうにして争って決定する問題なのだろうかというのがよく分からないなと思っております。   最後に,山野目さんに求められている(2)なのですが,これは甲案でいいのではないかという気がいたします。それも先ほどの(1)と関係するのですけれども,どういうふうにするのかという,手続がやはり少しよく分からないところがあって,自信が持てないのですが,乙-1,乙-2は少し大げさなのかなという気がしております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。道垣内委員から3点おっしゃっていただいたうちの最初の261条関係の担保責任のお話は,おっしゃっていることは理解することができます。先ほどの佐久間幹事の御意見と併せ,引き続き整理していかなければならないと感じました。第2点の(1)の法的構成の御議論について指摘していただいたことは,それは要するに,乙案に対する批判をおっしゃっていただいたものであると感じます。それから,3点目,(2)のところについては甲案を支持するという御意見を承りました。道垣内委員,よろしゅうございますか。 ○道垣内委員 すみません,(1)について乙案を批判したいという強い意思があるわけではないのですが,乙案を採ったときのメカニズムというものをもう少し詰めないといけないのではないか。裁判所を関与させないというのは分からないではないのですけれども,乙案のメカニズムについての突き詰めが少し足りないのかなという気がするということでございます。 ○山野目部会長 批判するものと私が早まったことを申し上げましたが,多分そのメカニズムは詰まらないものではないかと思ったところから,申し上げました。道垣内委員におかれては乙案の丁寧な批評を頂いたと受け止めます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。 ○岩井幹事 供託金額を決定するに際しては,いずれにしましても専門的な知見が必要となると思われますので,仮に裁判所の方で判断するということになりました場合でありましても,専門的な知見を適切に利用できる,有効に利用できる仕組みを作っていただければと思います。 ○山野目部会長 御要望を承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   中田委員,音声を操作のうえ,どうぞ。 ○中田委員 第3の1の(1)ですけれども,甲案がいいのではないかとは思うのですけれども,その甲案の内容がよく分からなかったので,お教えいただければと思います。今まで何人かの方からお話のあったのと共通の点ですけれども,この場合に誰が何を譲渡するのかがよく分からないということです。   誰がというのは,申立てをして供託をした人なのか,それとも不在者以外の他の共有者全員なのかということです。それから,何をというのは,売るものが何かということですが,これは不動産全部なのだろうと思うのですけれども,そうすると不在者の共有持分はどうなるのか,あるいは申立てをして供託した人が売るのだとすると,他の共有者の持分はどうなるのかということです。それは契約の当事者の問題であるわけですが,結果として,例えば先ほども出ていたような売主の担保責任を誰が負うのかということや,代金債権が誰に帰属するのかということとも関係しますので,そこは整理していただいたらいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。20ページの甲案,乙案のうち,乙案よりも甲案の方がよいであろうとおっしゃっていただいた上で,甲案の細密な法的構成を明らかにしてほしいというお尋ねがありますから,現段階での部会資料作成の意図を事務局から説明をしてもらうことにいたします。 ○脇村関係官 ありがとうございました。法的構成につきましては,これから更に詰めていきたいと思っているところでございます。特に,契約当事者が誰か問題について,ほかでも出てきている問題と似ているようで似ていないのかもしれませんが,恐らく契約当事者自身は契約した人としか言いようがないのではないかという気もしているのですけれども,その辺をどこまではっきりさせるべきかも含めて,また御相談させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 ありがとうございます。引き続き御検討いただくということで,それで結構ですが,契約をした人が譲渡するということになると,他の不明ではない共有者の分を,なぜ契約した人が譲渡できるのか,代理なのか,それとも何か法定の授権があるのかとか,その辺りの問題であろうと思いますから,そこら辺も詰めていただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。ただいま中田委員におっしゃっていただいたことは,甲案を育てていくに当たっては抜かりなく決めていかなければならないことでありますから,事務当局において今後,精力的にここのところを考えてほしいと望みます。   潮見委員,お願いします。 ○潮見委員 先ほど佐久間幹事や道垣内委員が言われていた17ページの7の共有物に不具合があった場合の処理の部分ですが,先ほどから少し考えていたのですが,やはりできれば条文を作った方がいいのではないか,ルールを明記した方がいいのではないかという感じがいたしました。というのは,先ほどこれは佐久間幹事がおっしゃったところですけれども,この場面は共有物分割の担保責任とは状況が違います。もちろん持分の有償譲渡というところでは,何か売買に似ているような感じはするのですけれども,売買の場合には,これは道垣内委員が言われたことになってくるのか,よく分かりませんが,当事者が正に不適合のリスクをどのように分配するか,それを前提として契約を結ぶという,そんな状況があります。今回の場合にはそのような状況というのは,売買と違って,ありません。ないところで,では,ここで書かれているような不適合があった場合のリスクを誰がとるのかということを考えたときに,捉え方は二通りあると思うのです。   一つは,佐久間幹事が言われたことですけれども,所在不明共有者というものは,そのものの持分の移転に関わっていない。関わっていないから,そのような者に不適合があった場合のリスクを負わせてはいけない。こうなると,責任はどちらがとるのかといった場合には,それは買った方が,持分取得者の方が負担せよという方向に傾くと思うのです。   他方で,持分取得者の方が持分を取得する意思があると言ったからといって,その共有物の性質や性状を承認する,そしてそのリスクを負担するというような意思があるとは限らない。そのような意思をこの制度で擬制するというのは難しいかなというような感じがいたします。そうであれば,それこそ競売の場合の瑕疵の話ではありませんけれども,できることなら,無理なら解釈に委ねることになっても仕方がありませんが,ルールとしてどちらかの方向なり,あるいは,よりよい方法があるかもしれませんけれども,何か明示した方が,今後にとってはよろしいのではないかと思いました。   定見があるわけではありませんけれども,考え方の筋道というのですか,それを少し申し上げたかったので,発言させていただきました。 ○山野目部会長 もし可能であれば,競売の場合における規律などを参考としながら,規律を創設することもチャレンジしてほしいという御提案を頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   1点申し添えます。第3の不動産の譲渡のところについて弁護士会から,供託をする際の供託者を誰にするか,第三者を供託者にする可能性について検討してほしいという御要望があったことを承りました。留意して事務当局において検討いたします。これは,供託すべきお金の回り方の問題と関係することでありまして,司法書士の実務で行われている決済のやり方などを参考にして,規律を設けなくても実務的にこの動き方が分かるようなスキームを考えることもできるかもしれませんし,規律を設けるときに,広く理解が得られるものが考案できるのであれば,設けた方がいいかもしれませんし,引き続き検討するということにいたします。   第3まで御審議を頂いたということにいたします。3時5分まで休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料30の第1,第2,第3まで御覧を頂きました。   26ページをお開きください。   第4と第5についてお諮りをいたします。   「第4 裁判所が選任する共有物の管理者」の制度を題材としておりますが,御覧いただいているとおり,パブリックコメントの意見や中間試案までの当部会における議論等を踏まえますと,これを設けないとすることではどうかという提案を差し上げているところでございます。   27ページの一番下の行から始まる「第5 裁判所による必要な処分」につきましても,やはり同様の検討を踏まえまして,このような第5で扱っているような仕組みを設けないとすることで,どうかという提案を差し上げているところでございます。   この第4,第5の点について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料26ページの第4の1,第三者の申立てによる選任について設けないという提案,また,2の共有者の申立てによる選任について設けないという提案,いずれも賛成します。   1については,引き続き所有者不明土地管理制度や管理不全土地管理制度の検討を進め,土地の管理に問題がある場合については,適切な制度を設けて対応するということを前提として,共有であるということだけを理由に,第三者の申立てにより,管理者を選任する必要はないと考えます。また,共有者間で意見の不一致がある場合には,最終的には共有物分割請求等で解決すべきであって,裁判所が管理者を選任する必要性はないと考えます。   ただし,日弁連のワーキンググループでは,特に2の共有者の申立てによる選任については,認めるべきだという意見も強くありましたので,この点を申し添えます。 ○山野目部会長 弁護士会の先生方の御意見の分布をおまとめいただきまして,ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 今,蓑毛幹事から御説明いただきましたが,共有者の申立てによる選任と,それから裁判所による必要な処分につきましては,日弁連ワーキンググループでは,例えば,メガ共有になってしまって,私的自治がなかなか機能しないような場面ですとか,共有私道などのように,共有物分割ではなかなか対応できないというようなケースにおいては,何らかの仕組みがあった方がいいのではないかという意見もとても根強くあります。これを共有者の申立てによる選任の制度として残すのか,又は,裁判所による必要な処分として残すのか,また,今後検討される共有物分割請求訴訟の制度が,より使い勝手が良く,いろいろな着地点があり得るというものになるのであれば,それでももしかしたら対応できるかもしれませんが,引き続き検討させていただければと思います。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   この部分ですが,パブコメでも経団連から意見を出させていただいていたかと思いますし,現在においてもまだ,裁判所が共有物の管理者を選任する制度を設けるべきではないかという意見は,事業者の中にはございます。   理由としては,特に共有者の申立てによる選任に関しては,共有者間で私的自治が機能しないこともありますよねという話の中で,こういう制度があってもいいのではないか,要は,共有物分割までいくか,あるいは土地管理人の申立てまでいくかというと,そこまで行くにはなかなかちょっとハードルが高いけれども,共有物の管理者を選ぶのであればそこまでではないし,選ぶための場も必要なのではないかという意見があるということは,申し上げておきたいと思います。もちろん,制度全体の方向性を考慮し,ほかの制度とも関連させつつ進めていく話だとは思いますので,現時点ではそういう意見があるということだけ申し上げます。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   ほかにいかがでしょうか。   大体御意見を承ったと受け止めてよろしいでしょうか。   そういたしましたならば,第4,第5の部分につきましては,それぞれのところに掲げております制度を設けないとする方向について,おおむね理解することができるという御意見を頂きましたとともに,実務的な観点からは,取り分けメガ共有と呼ばれているような場面を想定しながら,その局面を打開することを可能とする何らかの仕組みを,なお引き続き検討するべきであるという観点からの指摘も頂いているところでございます。   中村委員からお話がありましたとおり,共有物分割の手続を,今後どういうふうに使い勝手のよいものにしていくかという論点とも関わってくる側面がございますから,改めて共有物分割について御提案する際に,第4と第5についての,ここでお示ししている方向性の点検についても,委員,幹事の皆様方にお願いしたいと考えるものでございます。   部会資料30については,本日のところはこのようなことでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   続きまして,部会資料31をお取り上げください。   「遺産の管理と遺産分割に関する見直し」に関する部会資料31を題材として,御審議をお願いいたします。   その中の第1が,「一定期間経過後の遺産分割」というものでございますけれども,これの中身がそれなりに盛りだくさんでございますから,第1を一括して全部ということではなくて,ひとまず11ページの3の手前の1と2の部分について,御意見を承りたいと考えます。   1ページから始まっている1の部分は,「法定相続分等による分割」ということでございます。部会資料で御案内しておりますとおり,いわゆる遺産分割期間の制限,いつまでに遺産分割の申立てをしないと,もう遺産分割というものはしないという仕方での法制を採用することにつきましては,皆様方御記憶のとおり,中間試案に至るここでの御審議においても,様々な難しい問題があるという御意見を頂いていたところでございまして,加えて,パブリックコメントの結果を見ますと,慎重に考えてほしいという意見,反対する意見等が多く見られたところでございます。そのようなところから,言葉の狭い意味での遺産分割の期間制限ということを採用するということはせず,反面におきまして,パブリックコメントの成果等を見ると,比較的賛成の意見が多かった,そこにゴシックで示しているところでございますが,10年を経過した後にあっては,法定相続又は指定相続分に応じた遺産の分割をするものとし,裏返して申し上げますと,特別受益や寄与分を考慮しない扱いにするという方向を御提示申し上げているところでございます。   関連して,中間試案におきましては,こういうふうな規律を前提とする手続につきまして,甲案として,遺産分割手続を基本とするが,例外を設けるという案と,乙案として,共有物分割の手続に,10年経過後はよらしめるという案とを提示していたところでございますけれども,パブリックコメントにおいては,甲案を支持するという意見が多数見られたところでございます。   そのようなところを踏まえて,3ページのところにいっていただいて,2の(1)のところでは,民法906条以下の現行の規律に対して,特にこれを改めることはしないという方向を提示申し上げているところでございます。   あわせて,それに続く(2)のところで,通常共有と遺産共有が併存している場合について,もし906条以下に特則を設けないということになりますと,遺産分割の手続が家庭裁判所で行われるところと,共有物分割の手続が,家庭裁判所ではない地方裁判所等において行われるルートとかが併存することになりますから,7ページのところで,これらの手続の間において,いかなる調整を行うべきかということについて,7ページの(2),甲案,乙案,丙案を御提示申し上げているところでございます。   その補足説明である11ページまでのところを含め,申し上げました1と2の範囲において御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料1ページの1について,賛成します。   ただし,日弁連のワーキンググループの意見の中で,3ページの(注)について,前提問題について訴訟が係属して解決に時間が掛かっている場合,実務上,期日指定の工夫に委ねるということであると,調停委員から調停取下げを強く勧告される懸念もあるので,このような場合には,調停の申立てを認めた上で手続中止の規定を設けることを検討してほしいという意見がありました。   2の分割手続の基本的な手続については,前記1の期間経過後も遺産の分割は,いわゆる狭い意味での遺産分割の手続を取るという現行法の規律を維持するということに賛成します。   その上で,7ページ以下の(2)の通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則について,少し長くなりますが,意見を申し上げたいと思います。   通常共有と遺産共有とが併存している場合に,共有物分割請求という一つの手続,又は一つの審理手続で共有状態を解消できる制度が適切に設けられるということは,有意義だと思います。また,部会長がおっしゃった範囲を外れますが,部会資料11ページ以下の3で,不動産の持分の取得がありますが,この制度を用いた場合には,遺産共有の状態だったものが,通常共有と遺産共有の併存状態になるのではないかと思われます,したがって,7ページの,通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則を設ける必要性は大きいと考えます。   この制度は,7ページの四角で囲まれている中間試案の第4,3(2)「分割方法等」の甲案の一定の事由がある場合の規律について,細密化が必要だということが中間試案前の部会で議論されていて,その細密化を事務当局においてしっかりと検討していただいたものと理解しています。   ただ,この後の3のところも含めて,その細密化の検討によって非常に複雑になってしまったという印象で,日弁連のワーキンググループの中でも,複雑すぎるという意見もありました。私自身も,率直に言うと,迷路に迷い込んでしまったような印象を持っていて,その迷路から脱出できているか,余り自信がないんですけれども,以下,意見を申し上げます。   7ページの(2)の通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則については,甲案に賛成します。部会資料8ページ辺りから補足説明の1で,甲案に対する批判として,狭い意味の遺産分割の手続を基本的な手続としながら,通常共有と遺産共有が併存している場合に,共有物分割を認めることには正当性がないという意見もあるという記載があります。しかしながら,遺産共有と通常共有とが併存している場合には,その併存状態にあるものに限って言えば,当該遺産分割の相続当事者だけで,民法906条の基準で最終的な共有状態を解消できるわけではないという特殊事情がありますので,対象を,併存状態にあるものに限って共有物分割を認めたとしても,正当性がないとまでは言えないと考えます。甲案では,配偶者居住権の設定ができないという問題もありますが,手続をシンプルにして実務上使いやすいものにするためには,やむを得ないと考えます。その他,甲案が,原則は遺産分割手続をとりながら,例外的に共有分割を行うことについて,批判に耐えられるか,更に検討が必要だと思います。   これに対し,乙案は,甲案に対する批判に応えるという意味で,遺産分割手続を行うという原則を維持し,対象を通常共有と遺産共有の併存状態にあるものに限って,遺産分割の手続と共有物分割の手続を,1個の審理手続に併合して行うものと理解しましたが,訴訟事件と家事事件を併合することについて,様々な問題があるように思われます。他の遺産分割との関係がどうなるかなど,複雑すぎて,実務で用いるにはハードルが高いのではないかと感じました。   次に,甲案にしても乙案にしても,通常共有と遺産共有との併存状態にあるものではない,それ以外の他の遺産の分割手続との関係をどのように考えるかが,また難しい問題だと思います。今回新たに設ける手続の訴えの提起や申立てがない場合にまで,既存の手続が一切できないとする必要はないと思いますので,併用を認めてよいと考えます。その上で,併用を認める場合には,併存状態にあるものの共有の最終的な解消のためには,今回新たに設ける手続の方が資すると考えますので,部会資料で言えば,10ページの(3)ウ①の,新たに設ける手続を優先するという考え方がよいと思います。   この考え方によれば,今回新たに設ける手続がなされた場合には,併存状態にあるものについては,既存の手続はできないことになりますが,これは,複雑な併存状態にある共有の最終的な解消を優先するためにはやむを得ないと,ある意味割り切って考えるということだと思います。   ただ,今回の新たな手続を優先することによる弊害を最小限にするためには,併存状態にあるものについて,今回新たに設ける手続がなされても,併存状態にない,それ以外の他の遺産について,別途遺産分割ができることを明確にして,ほかの遺産分割手続が全て止まってしまうようなことがないように,適切な規律を設けるべきだと思います。   最後に,部会資料7ページでは,通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則ということで,数次相続の場合は特則から除かれています。これについて,部会資料6ページでは,数次相続の場合には,複数の相続による遺産共有が併存していても,その重なり合っている部分について,それぞれ遺産の一部分割を行って,特定の不動産の分割を実施すれば,ニーズに対応することが可能と書かれていて,6ページの具体例でいえば,Aの遺産分割とBの遺産分割をそれぞれ一部分割して併合すればよいということだと理解しました。   しかし,今申し上げた7ページの箇所での議論を踏まえると,Aの遺産分割とBの遺産分割がどのような場合に併合できるかであるとか,Aの遺産の一部分割とBの遺産の一部分割の手続が併合されている場合に,Bの相続人が,Bの遺産分割について全部の分割をしたいと言ったときにはどうなるのかであるとか,その調整規定等が必要になると思いますので,やはり数次相続の場合も,それぞれの手続の関係について整理整頓して,必要に応じて規律や特則を設けた方がいいのではないかと思いました。   長くなりましたが,以上です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。弁護士会の先生方の各論点についての御意見の分布を,網羅的におっしゃっていただきました。   ほかの委員,幹事の皆様方からも,必ずしも今のような網羅的な御指摘でなくてもよろしゅうございますから,御意見を頂きたいと望みます。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   拝見して,やはり蓑毛幹事もおっしゃいましたように,すごく複雑でよく分からないなというのがあったのですが,その中で,私はこういうふうに読んだということを,まず申し上げて,それで,それしかないということはないと思いますが,それもあり得るとおっしゃっていただけるか,違ったら,ちょっとまた考えるとしたいんですけれども,それは,今話題になっている第1の11ページまでのところでは,少なくとも所有者不明土地問題の解決をにらんだ直接の提案というものはないように見えます。というのは,数次相続の場合は外されていますし,特別の規定が最後に,7ページのところでは設けられていますけれども,これは別に所有者不明であるかどうかとかというのは関係がないわけですね。また補足説明のところでも,所有者不明であるということは一切,私の見落としでなければ,出てこないからです。   そこで,提案に際してどういうふうに考えられたのかということについて,私は,11ページ以降の3,4のところの仕組みを通して,所有者不明土地問題は基本的に解決するんだ,分割の方法では,どうせ大してうまくいかないからということなのかもしれませんけれども,余りにも率直すぎる表現かもしれませんが,諦めましょうということなのかなと思いました。   数次相続の場合を落とされたのも,数次相続そのものが続いている場合に,解決の必要がないかというと,私は,それ自体としてはあると思うのですね。何段も相続が起こって,幾つも遺産共有が複合的にというか絡まっているところで,権利関係を誰も何とも動かせませんとなっているのはよろしくないと思うのですが,ある人が,遺産共有の持分を準共有している末端の誰か1人から,3,4以降で提案されているところに従って持分を一つでも譲り受けましたとなりますと,ドミノ式にというのか,オセロ式にというのか,結局,全部共有物分割の手続とろうと思ったら,とれることになるはずですよね。そのように共有物分割の手続をとれるような状況を3および4で整える,つまり,所有者不明土地問題の解決策としては,この土地をこういうふうに利用したいんです,このように取得して,いろいろ使っていきたいんですという人が実際にあるのなら,その人は,遺産共有持分の共有者がいっぱいいる中で少なくともその1人を説得して取得する。その後に,その人が共有物分割の手続に踏み出せばいい,ということなのかなと私は理解しました。間違っているかもしれませんが。   このような理解があり得るとしたら,私は,7ページの2の通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則は,甲案にしろ乙案にしてもものすごく複雑になるので,丙案の現行の規律を維持することでよいと思います。先に申し上げた3,4の提案に従って現れた通常の共有者は,共有物分割の請求をすることができるはずであり,他の遺産共有の状態にある共有者の全部,あるいは大方と話がついているのであれば,通常の共有物分割でその人に帰属させる,あとは価格賠償などの方法で,何とかなるのかなと思いました。というわけで,丙案でいいのではないかと考えました。   ただ,前提のところで,提案の3や4でそういうふうな枠組みさえある程度作れたら,誰かが数次相続の相続人の1人からその遺産共有持分か準共有持分を取得すればそれでいいんですと,そうしたら,この仕組みが動き出すんです,というふうなことで理解していいのでしょうか。駄目だ,そうじゃないということでしたら,今ながながとお話したことは全部なかったことにしていただいて結構です。 ○山野目部会長 佐久間幹事からは,部会資料が提示している考え方の意味の確認をなさりながら,御自身の意見を提示していただいた部分がございますから,事務当局の方から,何か説明を望むことがあれば,お願いいたします。 ○脇村関係官 先生の問題意識に当てはまっているかどうかは自信がないんですけれども,一応作ったときの話をさせていただきますと,後半に出てくるところについて,中間試案のときに比べて意識した点としては,遺産分割,遺産持分の集約という点を,もう少ししやすくするというのが,ある意味解決方法の一つではないかということから,意識的に遺産持分の集約というような枠組みの,元々の部会資料も恐らく入っていたとは思うんですけれども,切り出しをした部分があると思います。併存しているケースについて,遺産相続人の1人がほかの人の分を持って,通常共有に完全に転嫁するみたいなことを意識した部分ございますので,それが,先生がおっしゃっていることと一致しているかどうかあれなんですけれども,当時はそういう,作るときにはそういう点は意識しておりました。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けになることがあればどうぞ。 ○佐久間幹事 いえ。前提が,ここから皆さんがいろいろ意見をおっしゃり,あるいは御議論があって,前提が違っていたらもうあれですけれども,私の頭の中では,1人通常共有者が何らかの形で出てくれば,所有者不明土地状態を解消するための仕組みが動く可能性があるということだろうなと,今は理解していて,それだったら,7ページのところの(2)ですけれども,別に丙案でもいいのかなと思うということを,申し上げておきます。 ○山野目部会長 御意見承りました。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。   今まで御発言があったところの範囲で申しますと,1ページの第1の1と3ページの第1の2(1)のところまでは特段の御異論がなくて,それを前提にお話しいただいていると聞こえましたけれども,そこも,そういうことでももちろんよろしいですし,何か御意見がおありでいらっしゃれば,御意見をおっしゃっていただきたいと考えますし,引き続き御意見を承りますけれども,いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 本当は,私は,ずっとここで申し上げてきていましたとおり,遺産分割の手続に乗っけるのではなくて,10年経てば単純な共有状態に移行させればいいのではないかという考え方を持っております,今でも。それはなぜかというと,所有者不明土地をできるだけスムーズに解決するためという観点からでありまして,所有者不明土地状態の解消だけを言えばいいのであれば,今もそう申し上げます。けれども,遺産分割について,できるだけ現行の枠組みを維持すべきだという考えも,それは当然尊重しなければいけないものとしてあり,そうだとするということで,3ページの2の(1)に関して,これまでのようなことを申し上げるつもりはありません。   でも,万が一,やはり共有でぱっと割りましょうという話が今後あるのであれば,私はその方が望ましいと思ってはいる,ということだけ,意見として申し上げておきます。 ○山野目部会長 佐久間幹事が従来において部会で御発言になってこられた原則的見地というものを,改めて確認なさっていただいた上で,このたびのパブリックコメントで現れた意見分布等を踏まえた遺産分割の在り方についての,より穏やかな方向性の追求ということについて,佐久間幹事のお立場でも,理解が可能な範囲で議論をしていきたいというお気持ちが伝わってくるお話であったと受け止めます。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 佐久間先生のお話を伺って,迷路から脱出できたのかなという気もするのですが,なお問題がなくもないように思います。   13ページに具体的な例が書かれているのですが,土地をA,B,Cが3分の1の割合で相続していて,Cの所在が不明である場合,現行法であれば,Cについて不在者財産管理人を選任して,A,B及びCの不在者財産管理人とで遺産分割を行えば,共有状態が解消できます。   一方,不動産の持分取得の制度を使って,Cの持分をAが取得した場合,個々の財産についての持分を,対価を支払って取得するということなので,その部分は通常共有になると解されます。そこで,A,Bの3分の1ずつの遺産共有とAの通常共有が併存する状態になります。   この場合,佐久間先生がおっしゃっているとおり,通常共有持分を取得したAの側から共有物分割請求すれば,解決できるという考え方も一つだと思います。  しかし,一方で,Bの立場からすると,今までは不在者財産管理人を選んで遺産分割手続をすればよかったところ,併存状態の特則がないとすると,最終的に残りの通常共有がどうなるか分からない状態でAとの間で遺産分割手続を行った上で,残りの部分について共有物分割請求をしなければならないという状況に置かれる。このような状況に置かれることは,Bにとっては不利益であって,それでよいのか疑問です。また,不動産持分取得の制度を使うことにより,持分の集約は進んでも,遺産分割手続が行い難くなるのでは,所有者不明土地問題の解決には却ってマイナスになるようにも思われます。   そういう意味で,先ほどの7ページのところに戻って,特則を設けた方がよいのではないかと考える次第です。 ○山野目部会長 蓑毛幹事と佐久間幹事のお話を伺っておりまして,私,先ほど,当面御意見をおっしゃっていただきたい範囲を11ページの3の手前までと御案内しておりましたけれども,お二人のお話を伺っていると,いささかお話がなさりにくい御様子でいらっしゃいますから,範囲を広げて御議論をお願いしたいと考えます。   11ページの3からあと,そこの3と,それからその次の4ですね,不動産全体を譲渡することができるというお話,したがって,補足説明まで含めますと23ページの5の例外規定の手前までのところを範囲として,ここの中で題材として提示されているものを,相互に関連させて御議論をなさりたいという向きがおありでいらっしゃれば,そのように御随意に制約なく御発言を頂ければと考えます。   11ページから始まっている不動産の持分の取得のところにつきましては,一つ前の部会資料で御議論をお願いした事項と同様の持分取得についての裁判所の決定を要する案と決定を要しない案についての選択をお諮りしておりますし,いずれにしても,所在が知れている相続人が他にいる場合のその人たちとのコミュニケーションの在り方について,やはり部会資料30でお示ししたのと同じように,甲案と乙-1案,乙-2案を提示しておりますし,それに続く4の不動産全体を譲渡する話につきましても,部会資料30と同様の構図の提案を並べているところでございます。   ここのところも含めて,1から4までの範囲について御意見を承りたいと考えます。引き続き御意見をお願いします。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 11ページの3のところなんですけれども,今,蓑毛幹事の御発言にもあったのですが,相続人のうちの1人,A,B,Cのうち,Aでしたっけ,が,例えば,所在不明のCの持分を取得したというときに,AはBとの間の遺産共有の持分と通常共有の持分を持つのではないかと移転については,それしか多分整理のしようがないのではないかと私は思うのですね。AがCの持分を自由に取得できるとしての話ですが。   というのは,全体としては遺産共有の状態がまだ続いていますとすると,一体遺産中のある財産についてのみ,ある人が多くの持分というのか,相続分というのか,よく分からないけれども,そういったものがあるような状態なんていうのは,ちょっと観念し難いと思います。それでもそのようなものとするのであれば,3の(1)について,そのイで提案されていて説明されていることとすると,実は,そのアの段階からイの乙2案のようにしないと駄目なのではないかと思っております。   ちょっとそれは置いておいて,先ほど,蓑毛幹事がおっしゃった,Bからすると,今まで遺産共有で扱っておいてよかったのにうんぬんというのは,それはそのとおりだと思うんですけれども,Cの持分を取得するのはAかもしれませんが,例えばDという,相続人以外の人が,まずAの持分を取得しちゃいますと,もうこれは,遺産分割の世界だけでは処理できなくなるわけでして,その場合にBが気の毒であり,それでいいのかという議論があることは承知しておりますけれども,現行の扱いでは,通常の共有であるとして,共有物分割の対象になってしまうことは間違いないと思うんですね。そうだとすると,全く一緒と言っていいのかどうか分かりませんが,相続人中の1人,AがCの持分を取得した場合も,Bから見てもやむを得ないと考えても,私はいいのではないかという気がします。   ただ,そのAの立場に立つと,Bとうまく話合いがつかない,自分が共有物分割の請求をしたときに,所有権を取得できる見込みも立たないのに,Cの持分を取得しようなんていうことに余りならない,合理的に考えたらならないのかなと思います。そこで,そう強くこだわるわけではありませんが,7ページに戻りまして,(2)のところで甲案,乙案,いろいろややこしい問題があるくらいだったら,丙案でいいのではないかなと思っているということです。   ただ,甲案,乙案に断固反対ということでは全然ありませんで,ややこしいし,それで本当によりよくなるんだろうかということが,私にはよく分からないので,それだったら別に丙案でいい。ここは現状のままでも何とか,事案によってというか,本当にうまく使おうという人がいる土地とかについては,何とかなるのではないかなと思うということです。 ○山野目部会長 佐久間幹事のお立場は,7ページのところは,甲,乙案を否定はしないが,恐らく丙案ではないかということであり,11ページのところは,11ページのアが甲案で,イが乙-2案だと聞きましたけれども,間違いありませんか。 ○佐久間幹事 私は,イも甲-1でいいのではないかとは思うんですけれども。   今,それ,申し上げた方がよろしいですかね。   イで,乙-2案を採るのだとすると,それは,恐らく相続人のうちの1人,あるいは何人かに,通常の遺産共有の持分というか相続分を持っている人と,通常共有の持分を持っている人が混在する状態を好ましくないと考えるのが,前提となっているのではないかと思います。ただ,その前提からイが乙-2案になるのだとすると,アの場合だってそうなるのではないか,と。   つまり,イでは,甲案は,飽くまで持分取得を希望する相続人が複数あるときはと書いてあるのですけれども,別に現在居場所の分かっている相続人が複数あるときで,そのうちの1人だけが不明相続人の持分を取得することを希望したときであっても,同じ問題が起こるのではないかと思います。ですので,イで乙-2案を採るのであれば,アの場合というか,全体としても乙-2案で,この事態は処理しないと不都合なのではないかなと,間違っているかもしれませんが,私は思っています。   そして,アが甲案でいいということになるのであれば,イも甲案でいいのではないかなと,私は思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事のそれぞれの論点についてのお考えは承りました。ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。 ○潮見委員 特に,1ページから3ページの辺りのところについては,先ほど佐久間幹事が言われたとは全く逆の意味で,私はこういうのがどうかなということは前から言ってきましたが,これでも仕方がないのかという感じはします。   その上でということですけれども,先ほど7ページから11ページ辺りにかけてのことですけれども,結果的には,私,佐久間幹事と同じようなことを考えているのかはよく分かりませんが,実際ここで議論してきたのは,大きく分けると二つあると思うんです。   一つは,これは,10年たったら具体的相続分の主張はできない,法定相続分,あるいは指定相続分の主張しか駄目だとすることで,客観的あるいは画一的な処理が容易にされることになるという,こういう意味である。もう一つは,10年経過した以降は,特に不動産について分割をするときに,取り分け所在不明相続人の不動産について共有の状態を解消するときには,共有物分割という枠組みを採ることが適切かどうか,あるいは,共有物分割の方法によって処理するのが妥当ではないかということです。特に,先ほどの7ページの辺りで言われている,併存なのか,あるいはそうではないのかという辺りについては,あるいは中間試案の甲案,乙案というのは,後者の方に関わってきたのではないかと思います。   今回の最初の1ページとか3ページに書かれているということは,これは,その部分については,法定相続分というものの主張が10年たったらできなくなるけれども,遺産分割の手続ということは,基本的に維持するということなので,これはこれでいいと思うんですが,問題はその後で,では,そうしたら,その場合において,遺産に属するある不動産について,その共有状態を解消するときに,10年経過した後では,共有物分割という枠組みを採用した方がいいのか,それとも,10年たっても,やはりその不動産は遺産の中に属するから,遺産分割という枠組みでこれを考えていく方が素直なのか,そして,場合によったら,共有物分割という枠組み自体を,ここで排除するということもあってよいんだということになるのかという辺りに,関わってくるのではないかとも思ったんです。   乙案の方が遺産分割の枠組みの方に乗りやすくて,それから,甲案というものは,むしろ法定相続分基準でいく場合に,共有物分割の枠組みと近づいていて,そして,それと整合性を持たせて処理する方が望ましいという考え方に,論理必然性はないんですけれども,親和的かなと思ったんです。   そうなると,この3以下のところについて,そこで仮に共有物分割の枠組みということを維持するのが適切であるということならば,こちらのところは,その枠組みを維持した上で,それで,先ほどの7ページに戻りますと,共有物分割の枠組みを,家庭裁判所の遺産分割の枠組みに統合することが,手続上妥当かどうか,そこを問題にすればよいのかなと思います。   訴訟の共有物分割の枠組みというものを,家裁での遺産分割の枠組みの中に取り込むとか,統合するとか,一体化するというのは,ちょっと難しいかなという感じがして,そうなると,通常の共有物分割の枠組みを残しておくという方を採ってもいいよということで,先ほどの7ページの甲案,乙案,丙案のうちの丙案という形で処理していくのが,あるいはいいのかなという感じもいたしました。   繰り返しになりますけれども,今申し上げた前提は,11ページ以下の3の不動産の持分の取得という辺りについては,共有物分割の枠組みで処理をする方が好ましいのではないかということが前提となっての発言でした。 ○畑幹事 7ページの手続的な話なのですけれども,通常の共有物の分割と遺産共有の分割というのを一緒にやる,実務的な必要性がどのくらいあるかというのは,ちょっと私には判断できないのですが,一緒にやることが,手続的にできないかというと,できなくはないだろうと思っております。皆さんよく御案内のとおりですが,例えば,離婚訴訟に附帯して,子供の監護に関する処分をするというようなことが,現行法上ありますし,必要性が高ければ,手続としてできないかというと,できなくはないと思います。   ただ,その場合,複雑になるというのは避けられないところがありますし,選択肢もいろいろあると思います。ここでは,一応甲案,乙案と整理されておられますが,地裁の方で統合するのか,家裁の方で統合するのかという,裁判所の職分管轄の話というのがありますし,それから,訴訟手続の方が吸収するのか,非訟手続の方が吸収するのかという,違う軸の話もあるかと思います。   それから,例えば,非訟が訴訟に吸収されたときに,内容的あるいは手続的な非訟事件としての特質を失うのかどうかというのも,また別の問題としてあるように思います。例えば,甲案というのは,これはもう完全に共有物分割訴訟になってしまうと,遺産分割の規律は適用ないという説明であるように思うのですが,離婚訴訟で,子の監護について扱うときには,訴訟の話に全部吸収されているわけではなくて,理論的には結構難しいのですが,家事審判としての特質を失わず,独立の家事審判として判断される場合と,変わるとは考えられていないと思いますので,選択肢はいろいろあるのかなと思っております。離婚訴訟と附帯処分のように,訴訟の方で一応は吸収するけれども,非訟的な特質を残すというようなことも考えられるとは思います。   ということなので,選択肢としては,ここに挙がっているだけではなくて,いろいろあるだろうとは思いますが,不可能ではないとは思います。ただ,複雑になるだろうというのは,皆さんおっしゃるとおりかなと思います。   手続的な角度からということですが,差し当たり,7ページについて申し上げておきます。 ○山野目部会長 畑幹事,ありがとうございました。   7ページは,丙案を支持するという佐久間幹事の御意見を頂いておりますとともに,甲案,乙案というものを分けてお出ししているものについて,なおこういうふうに機械的に二つ分けて出していて,それのみで考えていくというところを,もう少し考え込んでくださいという方向からのお話を頂いたところであります。   ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です,どうもありがとうございます。   先ほど,畑幹事も発言された点に関して,7ページから,あるいは補足説明ですと9ページの辺りの記述に関係するところですけれども,私も,基本的には,手続上,絶対に一緒にできないということではないんだろうと考えております。   ただ,ちょっとまだよく分かっていないところもいろいろありまして,9ページの説明で,元々現在,通常の共用物分割というのは,これは,共有物分割の訴えという訴訟手続でやっているわけですけれども,実質は非訟的なところもあるというようなことが言われているということがあるのですが,9ページの説明の前提というのは,共有物分割が訴訟手続としての手続的な性質を残しつつ併合するということなのか,それとも,実質は元々非訟なので,もうこれは訴訟ではなくて,非訟手続として取り扱うということも許されるだろうという趣旨なのかというところが,少しよく分からないような感じもしまして,その点,もし可能であれば,後ほど補足を頂けると有り難いと考えております。   いずれにしても,併合することは絶対不可能ということではないのだろうと思っているんですけれども,9ページのところで,一番下の方ですが,これは取り分け,具体的相続分の主張がなお可能な場合を仮に想定したとすればということで書かれているのだと思いますけれども,相続人でない第三者が当事者として関与すると,この辺りがかなり特殊というか,遺産分割では出てこない人が関係者として出てくるというところを,どう考えるかという問題があって,この問題は,具体的相続分が主張されない段階にあったとしても,全くなくなるということではないのかなというように,同じ手続で当事者として関与するという事態はあり,かつ,具体的相続分そのものは主張できなくなってしましても,906条等の遺産分割特有の規定については,その手続の中で問題になり得るということだとしますと,その問題はなお,程度の差はあれ残ることはあるかと思いますので,その辺りをどう考えるのかというのが,仮に乙案を検討していく場合には,更に問題になり得るところかなというふうに感じております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   補足説明の9ページのところを中心にして,例えば,仮に吸収という言葉を用いますと,共有物分割の手続を遺産分割の手続に吸収する場合に,言うところの吸収というものは,訴訟としての性質を残した上での吸収であるか,実質に即して非訟と割り切ることにするかといった点が,よく分からなかったというお話を頂きました。   恐らく部会資料を作成している趣旨においても,そこはこれから委員,幹事の御議論を踏まえて見定めていくということであろうと想像しますが,事務当局の方から何か補足説明があれば,お話しください。 ○脇村関係官 論理的な組合せとしましては,例えば,手続上の非訟,家裁で言えば家事事件手続ですけれども,その中で一括してやるという考え方と,離婚訴訟のように,訴訟と家事審判の併合形というんですかね,そういったことで,離婚事件と財産分与を一緒にやるように,訴訟手続と家事を一緒にやるという,組合せとしては両方あるのかなと思っていましたが,さすがに訴訟手続で人事訴訟に当たらなそうなものを家裁での訴訟と非訟でやるよりは,家事事件手続で一本化というのがあり得るのかなとは思って,レジュメ自体は作っておりますが,論理的には両方あるんだろうなと思っておりました。 ○山野目部会長 垣内幹事,お続けになることがあったら,お話しください。 ○垣内幹事 分かりました,どうもありがとうございます。これで結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局の宇田川でございます。   7ページの(2)の乙案の関係で,全体に関わるかもしれませんけれども,結局,通常共有持分を有する者と遺産共有持分を有する者,やはりそれぞれかなり利益状況が違うんだろうと考えております。通常共有持分を有する者は,特定の不動産について分割したいという立場でございますし,遺産共有持分の方は,その一部だけを分割したいということもあり得るかもしれませんけれども,906条等の規律に従って,遺産分割前の処分を問題としたいとか,配偶者居住権を問題としたいという,そういう場合もあるかと思いますので,その利益状況が違うところを,十分に重視する必要があるのではないかなと思っております。   実際に通常共有持分を有する者が遺産分割の手続を利用するというようなときに,遺産の一部ではなく,全体を分割してほしいという,そういう相続人の主張もあり得るところで,その場合に,果たしてどうすべきなのかが問題となります。遺産分割の趣旨から遺産全体を合目的に分割しなければいけないという,そういう要請を重視すると,やはり全体を分割するという話にも十分なり得るところで,そのときには,通常共有持分を有する者を,自分とは余り関係ない手続に巻き込むということも生じ得るところでございまして,そういったことも考えないといけないところではないかと考えております。   現行法の規律を維持するという場合に,具体的にどういう選択肢があるのかということも,改めて確認した上で御議論いただくのがいいのかなとも思っているのですけれども,現行法による場合に,先ほど佐久間幹事からもありましたように,遺産共有持分者で話ができているとか,価格賠償の話のことを考慮したときに,共有物分割ということも選択をできるというところではないかなと認識をしているところです。違っていれば御指摘いただきたいんですけれども,そういうこともできるし,遺産分割の申立てをすることもできるという,そういう現行法の規律であるとすると,その利益状況に応じて手続を選択するということができるという,そういう規律も十分に考えるところではないかと思われるところで,その点も含めて御議論を頂ければ有り難いなと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続きの御意見がおありでしょうか。   7ページの(2)のところでございますけれども,今までお出しいただいた御意見を受け止めて申し上げますと,まず,丙案といういき方も十分にあり得るのではないかという指摘を頂いているところであります。佐久間幹事を中心にお話しいただきましたし,それとともに,宇田川幹事からは,仮に現行法の規律を維持するということでいった場合にも,おおむねここら辺りで話題にしている事柄は,遺産共有の処理というときに,遺産の一部分割が特定の土地などの不動産についてされるというイメージでおりますけれども,関係する相続人等の当事者から,いや,むしろ遺産の全部についての処理をやってほしいという希望が出たときに,通常共有の当事者を手続にどういうふうに関与させていくことが円滑で自然であるかといったような宿題は,なお残るものであるから,丙案を採ったから,あとは検討する事項がないということになるものではなくて,なお,丁寧な検討が必要であるという側面が浮かび上がってまいりましたし,反面において,この甲案と乙案については,機械的に二つを列挙するというよりは,一方を他方に寄せるというよりも,この二つ,共有物分割と遺産分割の手続を統合し,畑幹事がおっしゃったように離婚訴訟における処理のようなものと類似の側面があることに留意し,そのような例を参考にしながら,より具体的な手続の像を整理して御提示申し上げた上で,審議をするということがよろしいものであるかもしれません。   今まで出ている御意見を受け止めると,今後そのような方向に向けて議事の整理をしていくということになるであろうという見通しを得ることもできます。   7ページの点でもよろしいですし,ほかの点でもよろしいですが,引き続き御意見を承ります。   あわせて,11ページの方の遺産共有と通常共有が併存したときの持分の取得についての幾つかの考え方についても,御意見があったら積極的にお述べいただきたいと望みます。その点も含めて,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 すみません,ありがとうございます。部会資料が,結局自分で迷ったのがそのまま書いていて,皆さんに御迷惑掛けているのではないかという気がだんだんしてきて恐縮なんですけれども,先ほどの議論をいろいろ聞いていまして,改めてちょっと気付いたというか,こういうことなのかなと,1点だけ少し気になったことを話させていただこうと思うんですが,従前は,10年をてこにして,この遺産分割的なものも一括して分割できないかという議論を,ずっとしてきたわけですが,先ほどの佐久間先生や蓑毛先生などのお話で,共同相続人間の持分の移転は,通常共有的な移転ではないかというお話があったと思うんですけれども,その議論を今聞いていて思ったのは,遺産分割的な,遺産持分的なこの移転とは別に,通常共有的な移転みたいなものをセットで考えていくというのが,一つ本当はあったのかということを,今改めて,伺っていて思いました。その行き着く先は多分,もう遺産分割は後回しにして,先にやるということなのかもしれませんけれども,通常共有の枠組みで処理するものも含めて,併存も含めて,少し改めて考えていきたいなと思います。 ○山野目部会長 引き続き御意見承ります。いかがでしょうか。   11ページのところは,蓑毛幹事から先ほど,後で議論の範囲を広げたためもあって,弁護士会の御意見を系統的に伺っていなかったように感じますが,11ページの3と,それから,その次の19ページの4のところについて,何か弁護士会の先生方の御意見として,参考として承っておくことがあったら,お話しいただければと存じます。 ○蓑毛幹事 11ページの3(1)のアは,裁判所を関与させるか否かの問題であり,所在不明相続人の財産権の保障という観点から,甲案に賛成します。   イは,先ほど申し上げた7ページの問題も含め,意見が割れています。通常共有と同じですが,乙-1案と乙-2案は,判明している相続人全員の同意が要件ですので,これを要件とすると,1人でも反対するとこの手続は使えない,あるいは相続人多数の場合には実務上ワークしないことから,甲案に賛成する意見が多数です。   ただし,先ほど申し上げたとおり,甲案を採ると,通常共有と遺産共有が併存する状態になるので,それをどのように処理するかを,併せ考えないといけません。   19ページの4について,アは,裁判所の決定を要する甲案に賛成です。ただし,この箇所だけ,「第1の1の期間を経過した場合において」という文言がないのですが,これは,恐らく抜けてしまっただけだと思いますので,これを足すことが必要だと思います。   その他については,基本的に提案に賛成します。 ○山野目部会長 ただいま蓑毛幹事が弁護士会の御意見を御紹介いただいた11ページの3,それから19ページの4の部分について,ほかの委員,幹事の御意見を承っておきます。   11ページの3の不動産の持分の取得の(1)イで問題提起を差し上げている甲案,乙-1案,乙-2案という選択の問題は,既に委員,幹事からも御指摘を頂いているところでありますが,ここの採否選択は悩ましいところがございまして,甲案の場合には,蓑毛幹事からお話があったとおり,全員の同意を得ないでも話を進めることができるという転がメリットです。   半面,甲案でいったときには,遺産共有と通常共有が併存して,たとえ話のように述べると,まだらの状態になり,そのまだらの状態が固定といいますか,継続といいますか,そういう状態になって,複雑な法律関係の様相を呈し,なかなかそれが解決しないまま推移することになるという問題点があります。   それから,乙-1案,それから,取り分け乙-2案でいったときには,今申し上げたように法律関係が,渋滞といいますか,膠着といいますか,そういう状態になるところを打開することができるというところに魅力がありますが,反面において,蓑毛幹事から御指摘のとおり,全員の同意が得なければならないというところが,ハードルが高いという問題点があります。そのように,悩ましいところから御提示申し上げているところでありますけれども,今日,委員,幹事から承った御意見を受け止めて,引き続き検討していくということになりましょうか。   甲案と乙-1,乙-2が互いに排他的で,どれか一つを採ると,ほかのが打ち倒される関係になるかという転もまた子細に考えてみなければならないことであろうとも感じますから,本日御意見を頂いたところを踏まえて整理していくということで,本日のところはよろしいものでしょうか。何か特段の御意見がおありでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,そのような方向で進めさせていただきます。   それで,その次の例外規定ですね,23ページをお開きください。   23ページの5の「例外規定」というところで,既に委員,幹事の間からは,大きな異論を頂いていないことから,10年が経過したならば具体的相続分の主張をすることができなくなるという規律は採用する方向でいこうという前提に立った場合においても,なお,例外的に事由があるときには,単純にそのような規律を及ぼすことでよいかという疑問が残り,その点に応えていくために,具体的な方策として,全く例外規定は設けないという丙案も選択肢として並べておりますが,それとは別に,甲案のように,引き続き具体的相続分の主張をすることができるといういき方や,乙案のように,金銭により,すなわち,価額の支払請求権として問題処理をするという可能性を掲げ,これらについて御意見を承っていこうと考えているところでございます。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでは意見が分かれており,第1の1の規律を設け,その制度の法的な安定性からは,乙案に賛成するという意見もありましたが,一方で,個別具体的にやむを得ない事由がある相続人のことを考えると,甲案に賛成するという意見もありました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,甲案,乙案を中心に,中心にといっても,この二つは発想がかなり異なりますけれども,両論があったという弁護士会の先生方の御意見などを踏まえて,検討を続けるということでよろしゅうございますか。中田委員,どうぞ。 ○中田委員 例外規定としてほかにないかということについてです。全員の合意による留保というんでしょうか,経過期間の利益の放棄というか,具体的相続分の保存というか,合意による伸長ができないか,あるいは,それが無理であれば,調停申立てプラス中止という制度によって,先に延ばすことができるないのかを考えています。分割禁止特約というのが後で出てきますけれども,その分割禁止特約を結ぶことと,5年掛ける2で10年たって,具体的相続分の主張を失ってしまうということが,うまく両立し得るのだろうかということを考えますと,やむを得ない事由以外にも何らかの例外を設けることが考えられるのではないだろうかと思います。その場合の効果が,さらに,具体的相続分による分割なのか,それとも差額の支払請求権なのかというのは,その事由との組合せも考えられるかと思いました。 ○山野目部会長 甲案,乙案という効果の選択の手前の問題として,合意による期間の伸長,留保という言葉を用いますか,伸長という言葉を使いますか,そういったアングルからのアイデアを加えて,考え方を整えた上で,更に甲案,乙案のお話に進んでほしいというヒント,御提案を頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間幹事 ものすごく細かいことで,これでいいですかということだけなんですが,17ページのウの提案の2行目に「相続人の1人が」ってあるんですが,これ,この位置でいいんでしょうか。この位置だと,相続人の1人が所在を知ることができないときとなってしまうように思うんですが,通常の共有持分を有する者の所在を知ることができないときに,相続人の1人がその通常の共有持分を取得することができるということなのではないのかなと。賛否の話ではないんですけれども。 ○山野目部会長 一つ前の話ですね。 ○佐久間幹事 ごめんなさい。もう終わりかけているのかなと思ったので。 ○山野目部会長 分かりました。事務当局に求めて,そこは文言を後でもう一度見直します。御注意いただきましてありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,その次の並びのところの審議をお願いします。   26ページをお開きください。   26ページ,ここから後,部会資料31について,一括して御意見を承ります。   26ページの6のところは,遺産分割期間経過後に相続人となった者について,価額の支払請求権を有するものとするという方向を示して,御意見を承ろうとしております。   27ページの「その他」にまいりまして,遺産分割調停,遺産分割審判の申立ての取下げについての制約のルールを設けるという提案を差し上げています。   27ページの一番下,「第2 遺産分割禁止期間」の関連で,1として,遺産分割禁止の審判について,28ページに御提示申し上げているような現行法の規律を,今回導入する10年の制限が存在するということを念頭に置いて,若干改めるという提案を差し上げています。   29ページにまいりまして,遺産分割禁止特約についても,同様の規定整備を行うということを考えております。   30ページにまいりまして,「第3 遺産共有と共有の規律」のところについて,考え方の確認に当たる内容を,①と②と分けてお示ししております。   32ページの第4にまいりまして,共同相続人による取得時効の点について,中間試案と同様の提案を再び掲げておりますけれども,第4のところは,パブリックコメントにおいて,多岐な意見が出されておりまして,必ずしも賛成意見が多いと集約することはかないません。その辺りも含めて御審議を頂きたいと望みます。   お諮りする事項のうち,遺産分割禁止期間の審判や特約については,今しがた中田委員から御提案があった点も,今後の検討に含めていかなければならないということを申し添えます。   この部会資料31の残りの部分につきまして,御意見を仰せくださるようにお願いいたします。 ○蓑毛幹事 部会資料26ページの6ですが,先ほど申し上げた5と同様,日弁連のワーキンググループでは,この提案に賛成という意見もありましたが,相続放棄の期間経過後に相続人になった者については,遺産分割の申立てを認めるべきという意見もありました。   7の遺産分割の申立ての取下げの提案については,賛成です。   部会資料27ページ,第2,遺産分割禁止期間の,1及び2についても賛成です。   部会資料30ページの遺産共有と共有の規律についても,賛成です。   ただし,通常共有の場合,共有物を利用する者は他の共有者に対して善管注意義務を負うところ,相続人は,918条で,他の相続人との関係で,固有財産と同一の注意義務を負うが,それとの関係はどうなるのかという質問がありましたので,もし御意見があれば,お聞かせいただければと思います。   それから,第4の共同相続人による取得時効については,結論として,このような規律を設ける必要はないというのが多数意見でした。 ○山野目部会長 弁護士会の先生方の御意見を御紹介いただきました。   お尋ねが一つあって,30ページの遺産共有と共有の規律のところについて,918条のような,別異の,通常共有とは異なるルールが置かれている事項もあるけれども,ここら辺りの関係はどうなのですかという御疑問が出されたそうです。   何か御説明はおありでしょうか。 ○脇村関係官 すみません,ちょっと筆が滑ったところがあったかもしれませんので。   この後,また相続人間の議論がございますが,善管注意義務のところはですね。そこについて,もう一度改めて整理した上で,そこの部分については御説明させていただきたいと,次回以降ですね,説明させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事に御案内ですけれども,引き続き弁護士会の先生方の御議論をお願いしたいと考えまして,実は,この30ページの第3の①,②は,これからここで出される御意見の特段のものを受け止めての集約が必要であるかどうかにもよりますけれども,部会資料では,こういう考え方を共有していただけますかという形でお出ししていますが,法制的には,この①,②に当たる法文を書き出さなければいけないかというと,多分ほとんどその必要はなくて,従来の考え方で言うと,遺産共有といっても,特段のことがない限りは,共有の規定やルールが適用されますという考え方でやってきましたから,規定を置かないでおけば,このとおりになるものであって,ただし,御指摘の918条のような別な規定があれば,それは特別法が一般法に優先する関係になることであろうと考えます。   そのような概括的な整理を差し上げた上で,今,事務当局から御案内申し上げたように,引き続き御意見を承りながら整理に努めてまいりたいと考えます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 27ページの7,遺産分割の申立ての取下げというところなのですが,中間試案の段階では,相続開始から10年を経過した後は,他の相続人の同意がないと取下げができないということだったのを,10年を経過する直前に取下げがされると,他の相続人が具体的相続分の主張ができなくなってしまう可能性があるということに配慮したということなのですが,そこから一切取下げができないという提案になるのは,何か随分話が飛んでいる感じもしております。   他の相続人が改めて申立てをする機会が保障されればよいと考えれば,いきなり一切取下げができないというところまでしなくてもいいような気もするのですが,何か勘違いしておりましたら,御教示いただければと思います。 ○脇村関係官 先生がおっしゃっているとおり,ちょっと重くなりすぎるのではないかというお話あるんだろうと思いました。今の御示唆いただきまして,その前に議論した例外事由の作り方にも影響してくるのかもしれませんし,あるいは,その辺の架橋するような方法もあるのかもしれないなと思うんですが,差し当たりは,うまい案が浮かばなかったので,ちょっと重くなってしまったというところなので,先生から御示唆いただきましたので,改めてほかの方法があるのかどうか,少し考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 畑幹事の御注意を受け止めながら,もう少し柔らかい手立てがないかどうか,検討することにいたします。 ○松尾幹事 一つは非常に細かな言葉の問題で大変恐縮なんですが,部会資料31の26ページの6の遺産分割期間経過後に相続人となった者の扱いという,ここで使われている「遺産分割期間」という言葉です。最初に部会資料31について,山野目部会長から御説明があったところでは,特に遺産分割の期間制限という趣旨ではなくてというお話がありましたので,その趣旨を的確に表すためにどのような言葉を用いるのが適切かという全く用語の問題なんですけれども,こういう言葉を使うのかどうかということについて,実質の話ではなくて申し訳ないんですけれども,どういうふうにこの新しい制度を整理するのかということとの関わりで,確認させていただければと思いました。   それから,もう一つは,最後の32ページの第4の共同相続人による取得時効について,先ほど蓑毛幹事からは,弁護士会の中では必要ないのではないかという御意見があったということですけれども,他方で,所有者不明土地問題の一つの典型的な問題事例として,共同相続した土地について,相続人の誰か1人がずっと管理・占有を続けている,例えば,農地を耕作したり,草刈りをしたり,固定資産税を支払い,建物を改修したり,新たに建てて使っているというような場合もあります。それに対して,他の共同相続人が何も文句も言わないという状態が続いていて,そういう状態が長く続いたために,恐らく他の共同相続人にも更に相続が発生していて,誰が相続人かも不明な状態が生じている場合もあります。この場合に,この土地の権利関係を明確にするために,どういう手続とったらいいんだろう,自分の地位は何なんだろうというときに,やはり最終的に権利関係を確定する手続が,どうも欠けているのではないか,一種のミッシングリンクがあるのではないかという問題提起もあったと思います。   この観点から,取得時効の適用可能性を検討する余地がなお存在するように思われます。その際に,この会議の中でも,「所有の意思」をどういうふうに認定するかが問題になりました。特に部会資料31の33ページの①の相続開始時の「他の共同相続人の所在を知ることができないと信ずるに足りる相当の理由」を所有の意思との関係でどう解釈するか,および同②の共同相続開始時には他に共同相続人がいることを知っていたが,その後「当該他の共同相続人が当該物につき相続人としての権利を主張しないと信ずるに足りる相当な理由が生じ」た後の,他主占有から所有の意思の変更というものを,民法185条との関係でどう見るか,所有の意思の表示でも,新権原による占有でもない,新たな(第三の)自主占有への転換事由とみているのかということについては,さらに議論を詰める必要があると思われます。確かに非常に難しい問題があると思うわけですけれども,しかし,これについては,何か制度的な手当てをするということを,積極的に検討する価値があるのではないかと考えています。   ですので,今回,第4の①,②のところで,所有の意思についてかなり踏み込んで御提案いただいた点については,更に検討を続け,既存の取得時効の要件との関係を整理していく必要があるのではないかと思いました。   さらに,そのことを前提にした上での話ですけれども,共同相続人の一人に所有権の時効取得を認めたときに,登記名義の変更をどうやって行うのかということについての手続的な手当てについても,併せて検討していく必要があるように思います。部会でも途中まで幾つかの提案があったと記憶していますけれども,その点も併せて,もう少し検討していく価値があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 お話になった前者の点は,言葉遣いのことで,次の部会資料から注意するようにいたします。今まで議論してきたところの表現の残滓がここにあったということですから,正すことにいたします。   後ろの方のお話の方が,サイズとしては大きいお話でありまして,共同相続人による取得時効という論点について,ここまでずっと御議論いただいてきた積み重ねがあります。この蓄積を,今後に向けて何か新しい規律を考案するという仕方で,法制上手当てをしていくことにするか,ここまでの議論の積み重ねを,185条の今後の解釈論,解釈運用において活かされていくべきものとして引き継いていくかといったようなことを考えなければいけないと感じますし,その種の制度を置くときの今般の全般的な改正で設けられる他の制度,遺産に係る持分の取得であるとか,遺産分割の手順のルールの見直し等の存在意義,機能等に与える影響等についても,それを注視し,分析した上で,なおこの第4のところについての今後の方向を探っていかなければならないと感じます。   松尾幹事には,種々の御注意を頂き,ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○水津幹事 松尾幹事と部会長が指摘された共同相続人による取得時効に関する規律について,2点,意見を申し上げます。   第1に,新たな規律と現行の制度との関係について,②の本文の規律は,185条の規定と同じように,占有の性質の変更が認められるための要件を定めたものであるとされています。しかし,185条の規定では,例えば,賃借人が賃貸人に対し,所有の意思を有することを表示すれば,他主占有から自主占有へと占有の性質が変更するとされています。ここでは,理由は問われていません。これに対し,②の本文の規律では,他の共同相続人が相続人としての権利を主張しないと信ずるに足りる相当な理由が必要であるとされています。この規律は,①の規律とのバランスを採ったものであると理解しています。しかし,185条の規定との関係では,むしろバランスが崩れてしまっているのではないかという気がしました。   第2に,①及び②の規律は,上述のような理由を要件として求めたために,善意無過失であるかどうかと,所有の意思があるかどうかとは,論理的には別の問題であるという前提を採りつつも,結果として,短期取得時効のみを認めることとなっています。これは,共同相続人による取得時効に関する判例法理を意識したものであると理解しています。しかし,所有の意思に関する現在の判例法理は,一般論として,占有取得の原因である権原ではなく,占有に関する事情によって所有の意思があるかどうかを判断するときであっても,悪意の占有者が所有の意思を有するケースがあることを前提としています。いずれにせよ,短期取得時効のみしか認められないという規律を設けることは,162条の規定が長期取得時効と短期取得時効との双方を認めていることとの関係で,論理的には矛盾していないものの,やや違和感が残るような気がしました。 ○山野目部会長 水津幹事から御指摘いただいたことを,その前に松尾幹事から御発言いただいたことと併せ,先ほど少し申し上げましたが,ここまでの審議の積み重ねをどのように今後活かしていったらよいかということについて,改めて考える際に十分に忘れないように,心構えとして念頭に置くということにいたします。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,部会資料31についての審議をここまでとさせていただきます。   休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料32をお取り上げください。   このたびは,相隣関係規定等の見直しを審議事項といたします。   部会資料32におきましては,相隣関係の関係で,三つの題材をお出ししております。隣地使用権の見直し,それから越境した枝の切除等,また,3番目に導管等設置権,導管等使用権についてのお話になります。   最初の隣地使用権の見直しにつきましては,中間試案で提示していた隣地使用権の見直しの方向とほぼ同じものを掲げております。パブリックコメントにおいて,多くの賛成意見があったところを踏まえるものでございます。   ただ1点,隣地が共有に属する場合について,隣地関係者の過半数の了解が得られたならば,隣地使用権を行使することができるという点を明確にした方がよいのではないかという,8ページの問題提起を添えているところでございまして,ここについては,委員,幹事の御意見を承りたいと考えております。   その次の越境した枝の切除等について,11ページからの提案を差し上げています。中間試案におきましては,甲案で自ら切り取ってよいという案,それから乙案で相手方に対して切除させることができるという規律を出発点として,それが困難な場合について,自らすることができるという場面を限定しようという案を提示していた,この後ろの方が乙案でございますが,そのうち,パブリックコメントの結果等を踏まえまして,乙案の内容を提示しているところでございます。関連して幾つかの細かな問題についても,問題提起を差し上げているところです。   16ページにまいりまして,導管等設置権,導管等使用権につきまして,パブリックコメントを踏まえて,ここもやはり甲案,乙案と提示しておりましたけれども,中間試案でいう乙案に対して支持が多かったということを踏まえて,それを整えたものを,今回方向としてお示ししているところであります。関連して,導管の設置場所や使用方法の変更についての規律の提案などを添えているところでございます。   部会資料32で相隣関係について御検討いただきたい内容は,本日のところは以上になります。思い起こしますと,相隣関係規定等の見直しにつきましては,このほかに,大きなサイズの問題として,管理措置請求の問題がございました。あのお話は,財産管理制度の一環である管理不全土地の管理の制度と併せて御審議をお願いすることが,効率が良いと感じられますところから,本日の部会資料においては対象としておりません。   部会資料32に盛り込んだ,御案内した三つの事項について,本日は委員,幹事の御意見を承りたいと考えます。いかがでしょうか。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,この部会資料全てに関してということでよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 はい。 ○藤野委員 それでは,ちょっと長くなるかもしれませんが,まず隣地使用権の見直しのところに関しまして,基本的には,ここに挙げていただいたような規律で良いと思っているのですが,唯一,隣地所有者に通知が届かなかった場合の,第1の1の②のbの要件について,今回改めて官報に掲載して公告をするという御提案を頂いているのですが,これを拝見したときに,本当に公告までする必要があるのかどうかというところに疑問を抱いておりまして,もう少し検討していただく余地があるのかなと思っております。   特に,ここで占有者かいれば,その占有者の方に対して通知するというのが前提になっておりますので,占有者もいない,かつ,所有者にも通知が届かないという状況の中で,ここで想定されている隣地の使用というのが実際どの程度のレベルのものかというところと合わせて考えますと,果たして,更にここに公告という手続を課すことが,本当に合理的なのかどうか,検討していただく余地がまだあるのではないかなと思っておるところです。   あと,第1の2ですが,この隣地が共有地である場合の隣地使用についてというところで,これは,過半数の承諾ということでよろしいかとは思うんですが,先ほどの1の場合,第1の1の中で取り上げられていた,隣地所有者が所在不明であったときの取扱いとの関係で,隣地共有者の一部が所在不明であった場合にどういう形になるのかというところがよく分からないところがございます。また,隣地共有者が例えば100人いて,その一部が所在不明というときのこの過半数というのは,何を分母にした上での過半数になるのか,先ほどまで部会資料30などで議論していただいていた規律,同意取得の規律とか,その辺がここにも適用されるのかどうかというところが,一見しただけではよく分からなかったというところがございますので,後ほど教えていただければと思っております。   第2の越境した枝の切除に関しましては,基本的にここに書いていただいているような規律としていただくことに賛成したいと思っております。   1(2)の費用の話については,パブコメでもかなりいろいろ御意見が出ていたかとは思うのですが,この部分に関しては,少なくとも土地所有者が負担するというような規律を設けることだけは避けていただきたいと思っておりまして,逆に言うと,土地所有者が負担しなければいけないという規律にならないのであれば,実態として様々な解決策が今まで採られていたということもございますので,あえて明記しないという考え方はあり得るかなとは思っております。   ただ,やはり,現実には当然竹木所有者の方が費用負担すべき,という場面の方が多いと思います。今まで竹木所有者の負担とは書いていなかったから,土地所有者の方が負担して解決していた場面もありますというような話も出ているのですが,竹木所有者が自ら切除せず,費用も払ってくれなければ,差し迫ったニーズのある側で切って,費用もそのまま自らかぶるしかなかった,という実態があったことも確かですので,ここは,原則をきちんと確認した上で,その上でそれを条文に書くかどうかは様々な事情を考慮して判断いただくことになろうかと思っております。   また,規模の大きい事業者が土地所有者である場合は,実際に費用を負担して枝を切除するということも当然できるわけですが,それ以外にもいろいろなパターンが考えられるわけでして,個人の方の土地に竹木が伸びてきて,その個人の方が自ら切らざるを得なかったけれども,その後費用を負担してもらえないということになれば,またちょっと困る場面というのも出てくると思いますので,そういったところも踏まえた上でご検討いただくということになろうかと思います。   取りあえず,ここまでのところで意見を申し上げます。 ○山野目部会長 導管のところは,いかがですか。 ○藤野委員 導管のところも,基本的に第3に書いていただいているルールで差し支えないと思いますが,1点だけ申し上げるところがあるとすれば,第3の1の②に,相当の期間内に異議がないとき,という要件がございまして,これ,パブコメの補足説明の中で,その期間を数週間から1か月程度,と書いていただいていたかと思うんですが,実際に導管設置をやるときに,そこまでの期間が本当に必要なのか,ということは気になっております。既に議論していただいているとおり,同意を取得するときの手続きにはいろいろなパターンがございますし,同意の対象によっては,判断のための期間がある程度は必要というものもあると思うんですが,殊,土地使用への制約が少ない導管の設置に関しては,1週間程度あれば判断はできるのではないかというところは,事業者からも意見が出ておりますので,改めてここで申し上げたいと思います。   ○山野目部会長 御意見いただきありがとうございました。   引き続き承ります。 ○平川委員 ありがとうございます。   相隣関係規定のうちの第1の隣地使用権の見直しのところ,方向性はいいと思います。ただ,住家に立ち入る場合のところについて疑問点もありますので,発言したいと思います。   これに関しては,特に必要がある場合に限りということと,承諾に関しては,これは絶対承諾が必要ですよと明記がされ,かなり厳しめに住家に入ることに関して制限していることは分かります。やはり,特に必要がある場合は,それほど多くないことが,中間試案には記載されています。   そこで,民法上,住家に入ることが明記されることの効果というか,影響を考える必要があると思います。例えば,様々な事業者と所有者との間の様々な力関係の中で,承諾をせざるを得ない,追い込まれてしまうということも考えられます。若しくは,所有者と占有者でもなく,実際住んでいる方との関係性も,複雑な場合があるかと思います。民法上にこれを明記していくということの影響も,慎重に考えていかないと,悪い影響も出てくる可能性があるかと思いますので意見として申し上げました。   また,異議を申し出るということについて,特に今回は,住まい,土地に関係するということで,様々な事情で申出ができない方もいます。異議を申し出たいけれども,若しくは異議を申し出る必要があるにもかかわらず,異議を申し出ることができないという方に対しての様々な保障,カバーというのも考えていかなければならないと思いましたので,懸念点を意見として申し上げました。   あと,16ページの第3の導管のところは,この間の議論を踏まえて記載をしていただいているかと思います。急迫を要する場合,急迫の事情があるときというのは,隣地使用権の見直しのところに入っているんですが,導管についても急迫の事情があるときというのが,あるのではないかということについて,質問というか,考え方をお聞きしたいと思います。 ○山野目部会長 平川委員から頂いたお話のうち,最後の導管のところは,急迫の事情がある場合をどう考えるかという点は,後で事務当局から何か説明があればお伺いしたいですし,あわせて,藤野委員の御発言の中で,別な点ですけれども,隣地使用権の行使に当たって,共有者の過半数の承諾があったならば,それを可能とするという規律について,部会資料30で扱った同意取得などについての特例の適用があるかないかはっきりしてほしいというお話も頂いていたところですから,これら2点について,事務当局から何かお話があれば承りたいと考えております。   平川委員に,その前に一つお尋ねですが,異議を述べたいけれども述べられなくなってしまうという事態は,どのような場合をイメージして議論しておられるものでしょうか。 ○平川委員 例えば,認知症となっても地域生活している方もたくさんおられます。そういった方々の様々な異議申立てに対する権利保障をどう考えていくのかという,民法上書くとかどうかは別にして,課題があるということを,意見として申し上げました。 ○山野目部会長 理解をいたしました。   それでは,事務当局において,先ほど藤野委員から1点,平川委員から1点お尋ねがあった事項について,お話があればお願いいたします。 ○大谷幹事 藤野委員からお話のあった,8ページの過半数の承諾を得るというときに,同意取得の方法というのが使えるかということについてですが,ここで念頭に置いておりますのは,共有者でない隣地所有者からの請求を受けている形になりますので,ここで,第三者の方から働き掛けていくときに,共有者内部間の同意取得の方法を採れるかというと,それは難しいのではないかと思っております。ここでは,全体の過半数ということになるのかなと思っておりましたけれども,一方で,共有者の方で同意をしたいというときに,共有者の中でいない人がいて困っている,そういうときには,同意取得の方法を使うということはあり得るのではないかなと思っておりました。   それから,平川委員の導管の設置における急迫というのが,急迫の事情があるとはどのような場合だろうかというのが,ちょっと想定できませんでした。隣地使用権の場合には,非常に危険な状態になっていて,それを何とかしなければいけないということがあり得るのではないかと考えておりましたけれども,導管の設置に関しては,急迫の事情があるのだというのが,どういう場合があり得るだろうかということで,ここでは挙げていないということになります。 ○山野目部会長 御案内を差し上げました。   國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。   この相隣関係第1の隣地使用権の見直しについては,おおむね賛成でございます。特に,境界標の調査等に発言をさせていただきましたけれども,特に都市部における境界の確認については,どうしても,特に必要な場合に限られるということでありますけれども,隣地プラス隣家についても,立入りをせざるを得ないという場合があるということを,一応前提として書いていただいたものだと思います。   また,境界標の調査において,例えば,簡単に言いますと,穴を掘ったり,はつりをしたりという部分については,明記はありませんが,補足説明の中でも,境界標の調査については境界標を探索するための措置として,当然ですけれども,ある程度,穴を掘ったりということは,許される範囲でできるというような記述をしていただいておりますこと,有り難く思っております。   それから,いわゆる隣地所有者の承諾を得ることなく隣地を使用するという形なんですけれども,これも異議がないと認められるときについても,建物への立入りはできないということですけれども,これも当然のことだと思っております。   先ほどもちょっと藤野委員からもありましたけれども,ただ,②のbのこの公告をするという点については,やはり今一度ちょっと考えていただいて,ちょっと重たいのかなというところもありますので,継続して協議の方をお願いしたいと思います。 ○山野目部会長 御意見を承ります。   境界標の調査,境界の測量という文言が民法に入るとすると,それは,土地家屋調査士の先生方の長年の悲願であろうと想像いたしますから,御意見を理解いたします。ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   第1の1の①に関連するのですが,ちょっとそれの跳ね返りといいますかで,ほかのところにも関係いたします。   権限に基づき隣地を占有する者に対して,隣地の使用の承諾を求めるということで,権限に基づき隣地の占有をする者というものの例として,賃借人といったものが挙げられているわけですけれども,例えば,土地の賃借権を有している借主であるというときに,それは,当該契約に基づいて当該土地を占有使用するということは,多分認められているんでしょうけれども,他人の立入りを自由にさせるという権限が契約上認められているのかというと,認められていると考えるべき場合もあるかもしれませんけれども,いや,やはり他人を入れちゃ駄目だよと言われている場合だって,あるんだろうと思うんですね。   そうすると,賃貸借契約が存在して,それに基づいて占有しているからといって,その人に使用の承諾を求めれば話が済むとは,全ての場合にはならないのではないかという気がします。そうすると,占有者プラス所有者であるという場合もあるかもしれませんし,場合によっては,所有者だけの場合もあるのかもしれません。所有者だけであり,かつ,両方ですかね。   それに関連して,16ページの導管等の設置権の方なんですが,こちらの方はやはり,設置の場合には,土地を掘って,そこに設置するということで,所有者の承諾を得るとなっているわけなんですが,現実に賃借人等の占有者がいる場合に,これは,こちらはその所有者だけでいいのかというと,これも若干怪しい感じがいたしまして,同意権者というものについて,もう少し詰める必要があるのではないかという気が,私にはいたします。 ○山野目部会長 道垣内委員から,小分けいたしますと,二つ問題提起を頂きまして,前の方が1ページのお話であります。この隣地使用権の行使に当たり,承諾を得なければならず,ゴシックの文言で言いますと,権限に基づき隣地を占有する者という概念,あわせて,括弧書として,権限に基づき隣地を占有する者がない場合には隣地所有者,これをくくって隣地所有者等が,その承諾を与える者として文言上示されておりますけれども,この解釈運用について,留意すべき点の問題提起がありました。ひょっとすると,ここの規定文言の解釈運用の問題であるかもしれませんけれども,なお検討を要する事項についての御注意を頂いたところであります。   それから,導管使用権,導管等設置権の方につきましては,17ページになりますけれども,17ページの中間試案の囲みを示すすぐ手前のところに注記がありまして,導管等を設置する場合に,導管等設置権は,17ページの隣の16ページで御提案申し上げているとおり,誰の承諾を得るかというと,導管を設置する土地の所有者の承諾を得ることになっていますが,そのとき,所有者とは別に占有者がいるときに,占有者とのコミュニケーションをしないで設置してよいかという問題提起を,この注記においてしており,仮にコミュニケーションが必要だということになった場合において,どのような内容のコミュニケーションになるかという問題について,単に告げればよいか,それとも別途,隣地使用権の要件を充たす必要があるとまで考えるかということについて,御意見をおっしゃっていただきたいという問題提起を,部会資料として差し上げているところでありまして,そこについて,ここを考えないといけませんよというお話を頂いたものと受け止めました。   事務当局が答えることではないかもしれなくて,委員,幹事の御意見を承ることかもしれませんけれども,何かありますか。 ○大谷幹事 ありがとうございました。   隣地使用権の請求の相手方になる者については,現行法が「隣人」という書き方をしていて,その解釈がはっきりしないところがあることから,明確化すべきではないかということでお示しをしています。ここの考え方ですけれども,占有をしている人がいれば,その権限に基づいてというか,平穏に占有している人がいれば,その人の承諾を得て入っていくのが普通かなということで,そういう裁判例もありますので,その裁判例に基づいて書いてみました。けれども,御指摘にあったように,承諾を与えることができる者については,所有者なのか占有者なのか,なお整理をしてお示しをする必要があるのだろうと思っております。   請求権者の方が所有者となっていて,賃借権者もこの請求権があるというような解釈も現行法ではあるようですけれども,所有者という形で書いておくのでいいのか,あるいは,占有者という形で書くべきなのか,あるいは隣人という書き方のままがいいのかというところを含めて,考えてみたいと思っております。   導管等設置権の方も,類型的に土地に何かのものを置く,あるいは土地の形状を少し変更するというようなことがありますので,所有者の承諾が必要なのではないかということでお書きをしております。部会長からも御指摘ありましたけれども,(注)のところで,占有をしている人の平穏な占有というのを,何らかの形で守るべきではないかということで,御意見を賜りたいということで作ったものでございます。 ○山野目部会長 道垣内委員,お続けになることがあれば,お話しください。 ○道垣内委員 すみません,ありがとうございます。   第1の1で,考え方の問題のような気がするんですね。つまり,隣地使用権というのが現実にあるということを前提にして,それで,しかし,勝手に入ったり,平穏を害するということがあってはいけないんで,占有者がいたら,占有者のオーケーを取りましょうと,そうしないと平穏を害するよね,と考えるならば,占有者だけでよくて,かつ,占有者が他者の使用を認める権限というものを持っていなくたって,それでその人が平穏を害されないなら,それでいいではないかということならば,そうなるんだと思うのです。そうすると,②の承諾を得ることなく使用することができるというのが,何かどうも原則になるような気がするところ,やはり全体としてはそういう考え方に立っているわけではないと思います。①の利用権に関しては。そうすると,やはりそれは,使用をさせるということを承諾する権限というものを持っているということが,必要になってくるのではないかという気が,私はいたします。   17ページの(注)のところも,実は同じ話で,これは多分,平穏を害するということだけを,ちょっとやめようということなんだろうと思うんですけれども,しかし,そうであるとしても,実際に占有をしているわけですから,「入りますね」と言えば,当然に,「ああ,そうですか」という話になるのかというと,それは駄目なのではないかと思うんですけれども,私の個人的な見解にすぎないのかもしれません。 ○山野目部会長 道垣内委員に少しお教えいただきたいと望みますけれども,前者の1ページの方は,そうすると,どのような文言にするとよろしいものでしょうか。それが1点。   それから,17ページの(注)の方は,占有者に対して告げるだけでは済まないという,今御提示いただいたお考えは,それはそれとしてあり得る意見であろうと感じますが,そうすると,意思表示の給付を求める訴訟を二つ起こさなければいけないという,実際上そのような問題になると理解してよろしいものか,これら両点について,いかがででしょうか。 ○道垣内委員 まず1ページのことに関して言うと,やはり私は両方だと思うんですね。そうすると,両方からの同意を取るという,それでは訴訟を起こすのかという話になるんですが,そのために②があるわけであって,緊急,非常に必要な場合とかで,こういうふうな場合にはできますということになるわけで,原則としては,人のところに勝手に入っていっちゃいけないのではないかと,私は思います。   だから,山野目さんの質問に答えますと,占有者の承諾も所有者の承諾も必要なのではないでしょうか。   16ページ,17ページの方に関しても,それは同じだと思いますけれども,これは,承諾の内容が違うのだと思うんですね。つまり,土地の所有者との関係では,そこを掘って埋めますよということに対する承諾の問題になりますし,占有者に関しては,現在あなたが占有しているところに立ち入って一定工事しますよということであって,それは,その工事を認めるべきではないと,僕は言っているわけではさらさらなくて,認められるべきだと思うんですけれども,しかし,そうは言っても,告げれば入れるという,何ていいますかね,令状もないのに家宅捜索みたいなことは,ちょっと無理があるのではないかなと思います。 ○山野目部会長 御意見の内容を理解することができました。どうもありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。 ○佐久間幹事 今の道垣内先生の意見と違うことになるのかもしれないんですが,というか,違わないのかな,まあ,いいや。   現行法では,これは相隣関係の規定であり,当たり前のことですが,所有者同士の関係を基本的に規律をしている,そのうえで地上権者などにも準用するという規定が別途置かれ,地上権者に準用されているんだから,例えば,土地賃借人についても,類推なのか拡張なのか分かりませんが,及ぶというふうな理解がされているのではないかと思うのですね。   そうであるところ,1ページの第1,1の御提案は,不法占有者はちょっと置いておきまして,現に占有している者を相手にしようと,そうすればいいと,高松高裁の判決を基にされているわけですよね。そうすると,現在の民法の考え方を,いい悪いの問題ではなくて,変えることにはなるはずで,それは,先ほどの道垣内先生がおっしゃったように,所有者が元々どういう使用をさせる,させないを決められるのではないかというところと,やはり反することにはなると思うんです。   思うんですけれども,そこからがよく分からないなと思うんですが,それでもいいのではないか,そうしてよい場面もあるのかなと思っています。ただし,権原のある占有者を相手にしなさいと仮にしたとすると,探索しないといけないおそれがあるかもしれないですよね。権原があるかどうかは分からないことがあるので,そこが問題ではないかなと思うということが一つです。   不法占有者をちょっと置きますと先ほど申し上げたんですが,第1の1というのは,結局,平穏な占有を害されることから占有者を保護するために,占有者の同意を得させる,承諾を得させるということだとすると,場合によっては,不法占有者だって平穏に占有していることはあるので,含まれてくる可能性はあるのではないかと思います。民法の規定を変える,ここは占有の保護の方に軸足を置くんだとするならば,不法占有者だって入ってもいいのではないかなと思います。そうした方がいいまでは言いませんが,そういうふうに思います。   あと,ちょっと何点か申し上げたいんですけれども,文言ですごく細かくて恐縮なんですが,①のところ,「権原に基づき隣地を占有する者」というのは,所有権も権原だと思うんですね。だから,今のままだと,「権原に基づき隣地を占有する者(権原に基づき隣地を占有する者がない場合には」というのは,この権原を正権原だとすると,不法占有者しかいない場合は隣地所有者だけでいいと読めることになっているのではないかと思います。しかし,それは恐らく御提案の趣旨とは違うと思うので,ちょっと表現を考えていただいた方がいいのではないかと思います。   あと,ほかにも申し上げてよろしいですかね。   8ページからあります2の隣地が共有者である場合等の隣地使用に関してなんですが,共有の場合には,過半数の承諾を得よということになっております。これの適用範囲について補足説明があるんですけれども,9ページの2段落目でしょうかね,「また」の段落のところで,ABCの共有であるときに,A1人で独占的に,少数持分権者が独占的に利用しているというときに,Aのみの承諾を得ればよいことになると書かれています。そうだとすると,後の方の⑤とかで過半数の決定を経ている,経ていないというふうなことが書かれているんですけれども,それは余り関係ないのではないかと思います。例えば,Aのみから賃借している人であっても,Aの権原に基づいて賃借しているのだから,その人だけが承諾してもいいということになりそうな感じがします。あるいは,賃借権が準共有されているという場合だって,準共有者の1人がオーケーと言えば,この理屈からすると,認められるということになるのではないかなと思います。   そうすると,どっちがいいのかというのはよく分からないんですけれども,この「また」の段落のように言っちゃいけないのか,「また」の段落のように言うことでいいのであれば,ここでいう占有というのは直接占有をいうのだと思うんですが,直接占有している者の1人の同意を得ればいいとなるのではないかなと思いました。   もう1点,枝の件なんですが,また共有の話なんですけれども,11ページの第2の1の②のdです。竹木が共有されている場合に,「その持分の価格の過半数を有する者から承諾を得たとき」,ということについてです。よく分からないんですけれども,これ,妨害しているわけですよね。妨害状態がずっと続いていると,確かに妨害されている側も困ると思うのですが,竹木を共有している者にとっても,妨害状態が言わば継続することになって,仮に損害賠償請求があり得るということになったら,生い茂り方がひどくなって切除費用がかさみ,その賠償額が膨らむことになる,ところが他の共有者が承諾しないので,それを甘受しなければいけないとなり得ると思うのですね。そうだとすると,概念的にうまく当たらないということは承知しておりますけれども,放置し続けると,自分が持分を持っているからこそ,責任が拡大することになりうることから,持分のある種の保存行為として自分で切除するとか,切除を認めるとかいうことが考えられてもいいのではないかと,私は思うのです。そうだとすると,持分の過半数を有する者から承諾を得なくても,1人の承諾を得ればいいという結論になってもいいのではないかなと感じます。 ○山野目部会長 佐久間幹事から御意見を何点か頂きました。   1ページの隣地使用権の見直しについて,隣地の誰の承諾を得るかということについて,道垣内委員と佐久間幹事との間で意見の応酬があった論点は,有益な意見交換が得られたと感じますから,引き続き検討してまいります。   本日御意見を承ったところで感ずるところとしては,隣地を使用すると一言で言っていますけれども,どのような隣地使用に対して承諾を与えるかということの具体の様相にもよるのかもしれません。土地について,回復することができない損害が生ずるような隣地使用の場合において,賃借人が承諾すればよくて,所有者とのコミュニケーションは要らないということが言えるかと問うたら,賃借人の承諾のみでそれを進めることができないではないかという,道垣内委員の御疑問はごもっともであると感じます。   賃借人が,現在は平穏に現状占有利用しているところに少しだけ立ち入らせていただきますけれどもよろしいですかという隣地使用について,賃借人の承諾を得れば,殊更所有者とのコミュニケーションを取らなくても,隣地を使用することができるという解決も,その局面について言えば,それはそれとして理解可能なものではないでしょうか。   どのような隣地使用への対応であるかに応じて,現実に誰の承諾を取るべきかということを考えなければならない側面があり,それを更に規定の文言としてどのように,なるべく誤解がないように,かつ簡明に表現していくかということを,引き続き考えていかなければならないと感じました。   その規律の表現,文言を考えていく際に,少し法制的な点も見通して申し上げますと,現行法の隣人という表現は,あんまりだとお感じになりせんか。この機会に,もう少し異なる言葉が見いだせるものであれば,それを探りたいという気持ちを抱きます。明治の時代に作ったときには,この隣人という言葉を選んで,何となくそれがなじんだのではないかと,そういう牧歌的な時代だったんでしょうね。何か夏目漱石の小説に出てきそうな,ほわんとした時代には,隣人という言葉で済んだかもしれないですが,そうではないような,もう少し現代的な規律にできればよいだろうとも感じます。   ただし,区分地上権の規定の269条の2の第2項が定めているような,いろいろな人の承諾を取れって,細かく長々と書くという,ああいうふうに,そこまで頑張る場所であるかというと,そこも少し法制的には分からない側面があります。いずれにしても,今日頂いた御意見を踏まえて,1ページのところの検討を続けていくということになりましょう。   あわせて,17ページ,16ページの導管設置権等における所有者の承諾や占有者とのコミュニケーションについても,道垣内委員を中心に,また佐久間幹事からも示唆を頂いたところであります。現行法の下水道法11条3項の規律は,占有者に告げればよいという規律になっておりまして,あれとの整合性とか,あの考え方自体を見直す必要があるかというようなこととも関連させながら,道垣内委員から頂いた問題提起を中心に,また今後の検討を進めてまいるということにいたします。   その上で,佐久間幹事からは,また別な御議論を頂いていた8ページ,9ページのABCが出てくるところの話は,これ,事務当局の方で精密な検討をしていただいたところでありますから,少し何か御説明があるならば,今お話を頂きたいと考えておりますし,それから,枝の切除に関して,共有に係る竹木の場合において,持分権を有する1人の者が困った状態に陥るおそれがある場面に関して,保存行為の概念をここで弾力的にといいますか,用いて打開ができないかという御提案も頂いたところであります。この後ろの竹木の話は,恐らく解釈運用としてそういうことは大いにあり得るような気もいたしますから,ごもっともな御指摘ではないかと感じます。   補足説明の8ページ,9ページに関して,お尋ねがあった点について,事務当局からお話があれば頂きます。 ○大谷幹事 佐久間幹事のおっしゃった,9ページの②の場合だと,1人の者の同意が得られたらいいと言っているのに,⑤の場合には違うようになっているのはどうかと,ここのところで混乱があるのかなと,我々も今,お聞きをして思いましたけれども,結局,平穏な占有を守るという趣旨なのか,所有権を守るという趣旨なのかというところが,整理が仕切れていないという御指摘かなと思いました。   どちらの方にかじを切るのかというのは,最終的にどういう文言にするかということに関わってくると思いますけれども,今お聞きをしている限り,この場では,所有権を守るということがあるんだとすれば,所有者の承諾としてきちんともらう必要があるんだろうと,さらに,占有者にも承諾をもらう必要があるんだろうというような御指摘がありましたけれども,もう少し切り分けて,整理をしてお示しをしたいと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事にお尋ねした上で,よろしければ,次に水津幹事に御発言をお願いしますが,佐久間幹事,よろしいですか。   ありがとうございます。 ○水津幹事 15ページの越境した枝から落下した果実について,質問が一つ,意見が一つございます。   ここで設けられた規律によれば,土地の所有者は,隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは,枝から落下した果実を処分することができるとされています。補足説明を読みますと,ここでは,果実には価値がないことが前提とされているようですが,そうではないこともありそうです。例えば,越境した枝からリンゴが落ちてきたときは,土地の所有者は,リンゴを捨てるといった物理的処分をするだけではなく,リンゴを譲渡するといった法的処分をすることもありそうです。ここでの「処分」は,そのような法的処分も含むのでしょうか。これが質問です。   続いて意見です。この規律は,越境した枝から落下した果実についてのものです。したがって,この規律によれば,隣地の竹木の枝が越境せずに,つまり,果実が一旦隣地に落ちて,それが自分の土地へと転がってきたときは,土地の所有者は,その果実を処分することができません。この区別をすることが合理的なのかどうか,少し気になりました。 ○山野目部会長 水津幹事がおっしゃった後ろの点も,あるいは御質問が含まれているかもしれませんね。 ○水津幹事 そうかもしれません。 ○山野目部会長 どうでしょうか,事務当局,果実の専門家,どなたかどうぞ。 ○小田関係官 1点目の価値が高いものを譲渡した場合も含むのかというところですが,現時点では,処分一般ということで,譲渡も含むという前提で書いております。   2点目の越境した枝に限るかというところでありますが,私の個人的な意見で恐縮なんですけれども,ここでは一種の不法行為的な場面を想定して,その限定的な場面の規律というところを想定して,越境していない枝というのは,基本的には不法行為がないと。そういった適法な状態から何か事象が生じたという場合は,適用を除外した方がいいのではないかなというようなところで,ここは書かせていただいております。 ○山野目部会長 水津幹事,どうぞお続けください。 ○水津幹事  枝が他人の土地へと越境し,その土地を不法に妨害しているときに,その枝から果実が落下したことは,その果実について,その処分権をその土地の所有者に与えることを正当化する理由にはならない気がします。このことは,物干し竿が他人の土地へと越境し,その土地を不法に妨害しているときに,その物干し竿から洗濯物が落下したことは,その洗濯物について,その処分権をその土地の所有者に与えることを正当化する理由にならないのと,同じことです。  そうであるとすると,この規律は,果実の性格を有する物が,他人の土地の上に不法に存在していることに着目したものであるとみるほかないように思います。しかし,このことは,果実が越境した枝から他人の土地へと落下したときであろうと,果実が一旦隣地の上に落下して他人の土地へと転がったときであろうと,変わりがありません。  先ほどは,区別の合理性について疑問を提起しただけで,どちらに規律を揃えるべきであるかについては,意見を申し上げませんでした。私は,今日の一般的な考え方によれば,他人の土地へと越境した枝から落下した果実について,その処分権をその土地の所有者に与える規律を正当化することは,難しいものと考えています。 ○山野目部会長 今度は事務当局の説明が納得できないという御意見だと受け止めましたので,御意見受け止めて,引き続き検討してまいります。   ほかにいかがでしょうか。   安髙関係官,お願いします。 ○安髙関係官 ありがとうございます。林野庁でございます。   越境した枝の切除の関係で,御説明をさせていただければと思います。   12ページの2,竹木が共有されている場合の特則ということで,本文の②のdについてでございます。ここの補足説明の中で,枝の切除は変更行為であるという解釈もできるという記載がございますが,ここで森林・林業の現場の実態について御説明させていただければと思います。   森林・林業の現場では,枝の切除という行為を枝打ちと申しまして,森林を,そして樹木を適切に維持管理する改良行為であるとして取り扱っているという実態がございます。こういったことを委員,幹事の皆様にもお伝えしておきたいと思います。   その上でなんですけれども,資料の13ページの一番上のパラグラフに記載されておりますとおり,枝の切除について,変更行為なのか,改良行為なのか,解釈に委ねることとした場合に,森林・林業の現場におきましては,混乱が生じる可能性があるかなという懸念をしているところでございます。このため,御提案にありますように,竹木が共有されている場合における枝の切除につきましては,共有物の管理に関する事項に当たると位置付けて,過半数の承諾でできるという規律を設けることにつきましては,一つの方法だなと思っているところでございます。   もう1点,越境した枝の関係でお話させていただければと思います。   枝の切除費用について,14ページ,竹木所有者が費用負担するという規律を設けるということに関しまして,こちらも森林・林業の現場の実態について御説明させていただければと思います。   パブリックコメントにおきまして,多くの意見がございましたとおり,特に森林の場合は,越境の原因や経緯も含めて,ケース・バイ・ケースであると認識をしております。こちら,最初に藤野委員からも御指摘ありましたが,本当にケース・バイ・ケースということで,例えば,Aさんがお持ちの森林を企業に売却されて,その企業さんが森林を伐採して開発をされて,例えば,太陽光パネルなんかを設置されたというような場合,それに隣接していたBさんの森林というものについては,今までであれば,隣にAさんの森林があったので,枝を伸ばせなかったけれども,伐採して空間が空いたことで,枝をすくすくと伸ばし始めるというような場合には,枝が越境するようになった原因は,森林を伐採した方にもあるということでして,このようもケースも含めて,越境した枝の切除費用を森林所有者であるBさんが全額負担するといった規律を置くということは,森林が国土の7割を占めているということを踏まえましても,各地域において,極めて大きな影響があるといった可能性があるのではないかということを懸念しております。   現実においても,竹木所有者が確知できる場合におきましては,個別事案ごとに,当事者間で協議や調整をされまして,基本的に円満かつ穏便に解決されてきた状況と認識をしております。このことを踏まえましたら,今回の枝の切除費用の在り方,こちらにつきましては,所有者が確知されている場合も含めた全てのケースにおいて,普遍的な規律を置くということは,現実社会においては,混乱やトラブルをいたずらに誘発させるだけではないかと,拙速ではないかというようなことを考えているというところでございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。竹木が共有されている場合に関しておっしゃった前段は,御意見として受け止めました。   それから,竹木の切除の費用に係る後段は,そちらも御意見として承ります。少し前の藤野委員の御発言で,費用負担の原則的な在り方について論議が深められているのであれば,規律を法制上設けるという措置まで強く求めるものではないとおっしゃっていたことにも留意しつつ,引き続き検討してまいります。ありがとうございました。   蓑毛幹事,お待たせしました。 ○蓑毛幹事 相隣関係規定の見直しですが,日弁連のワーキンググループの意見としては,基本的には,隣地使用権の見直し,越境した枝の切除等,それから導管等設置権の創設,いずれも賛成です。ただし,幾つか意見というか,更に検討をした方がよい点がありますので,申し上げます。   まず,既に複数の委員の方から意見が出ていますが,1ページの「権限に基づき隣地を占有する者」をどう考えるかに関するものです。具体的に申し上げますと,部会資料の考え方は,隣地の使用について借地人がいる場合には借地人の承諾を,借家人がいる場合はその建物敷地の使用については借家人の承諾を求めるということだと思うのですが,借地人や借家人が複数いる場合を考えたときに,どのような承諾を求めるべきかということについてです。   8ページの共有と権限の準共有の問題として,クリアされるのかもしれませんが,例えば,駐車場のように,一団の土地の中で限られたスペースについて借地人がいるときには,個々の駐車スペースのどこに立ち入るかを検討して,対応する借地人の承諾を求めることになるのか,それとも,駐車場全体を一つの土地とみて,その土地の賃借権を準共有しているのと類似すると考えて借地人の過半数の承諾でよいのか,所有者の承諾を求めるべきなのか等を検討した方がよいように思われます。同様に,賃貸アパートであれば,個々の部屋に賃借人がいる訳ですが,当該アパートの敷地を使用するためには,賃借人全員の承諾が必要なのか,1棟の建物の賃借権を準共有しているのと類似していると見て,賃借人の過半数の承諾を求めるのか,それともアパートの所有者の承諾を求めるべきなのかを検討した方がよいと思います。   それとは別の問題として,1ページの記載では,住家の立入りについては,権限に基づき隣地を占有する者の承諾を求めることになると読めますが,例えばアパートなどの場合を考えると,立ち入る部屋の占有者の承諾を求めるべきです。   それから,承諾を求める土地の所有者の側で,占有権限があることをどこまで確認する必要があるのか,間違えてしまった場合は,不法行為の過失の問題となるのか,もう少し説明を示していただければと思います。   最後に,部会資料17ページ,導管等設置権及び導管等使用権について,cの,他の土地等が共有である場合において,持分の価格の過半数を有する共有者から承諾を得たときに導管等を設置できる,とあるのですが,新たに導管の設置をする行為は,管理行為の枠を超えて,変更行為に当たると見る余地があり,過半数の承諾でよいのかという意見が,一部の委員からありましたので,申し添えます。 ○山野目部会長 蓑毛幹事から弁護士会の御意見をお伝えいただき,ありがとうございました。   隣地使用権の見直しにつきましては,本日多岐にわたる御意見を頂いた点の一つとして,権限に基づき隣地を占有する者及びそれに続く文言部分について,御意見を頂いたところでありますから,今,お尋ねがありましたけれども,恐らく事務当局において,今日頂いた蓑毛幹事の御意見やそのほかの御意見を含めて,ここの文言をどういうふうに改良すれば,比較的汎用性の高いものになるかということを検討してもらうことになるであろうと考えます。   導管設置権を変更行為と見る余地があるものではないかという御意見が,弁護士会の中にあることは承りました。検討いたします。ありがとうございました。 ○中田委員 第1と第3について,意見があります。   第1については,平川委員が前におっしゃった,民法に書くことの影響に留意すべきであるというのは,私も同感でございます。特に,「特に必要」という要件は,割と広いような感じもいたしまして,住家の側の事情は入っていないようにも見えますし,そもそも民法に書くことがどうなんだろうかということは,検討する必要があるだろうと思いました。   それから,第3の導管なんですが,これは,まず表現から考え始めて,だんだん分からなくなってきたということがあります。表現と申しますのは,他の土地に囲まれていることを要件としないということを前提としたときに,導管袋地という言葉を使うことは,かえって誤解ないし混乱を招くのではないかということです。袋地というと,法律家は囲繞地とセットのイメージとして捉えるわけですが,だけれども,それとは違うんだという,ひねった思考操作が必要になります。法律家でない人は,そもそも余りなじみがない言葉ではないかと思います。   中間試案の(注4)では,210条2項の,いわゆる準袋地を参照していたんですけれども,今回の規律はもっと広いわけで,そうすると,導管袋地というのは,やや分かりにくくなっているのかなという気がしました。といって,いい名前が思い付くわけではなくて申し訳ないんですが,例えば,導管必要地とか,そんな言葉も考えられますけれども,いいかどうか分かりません。   そうやって名前を考えているうちに,第2段階なんですが,そもそもどういう場合にこの権利が認められるのか,その要件が何かが分かりにくくなってきたなという気がしました。つまり,他の土地に囲まれているという要件の絞りがなくなったとすると,一体その要件は何なのか。例えば,二つの導管接続の可能性がある場合にどうかとか,あるいは,現行法の211条にある,他の土地のために損害が最も少ないというような絞りが要らないのかというようなことも考え始めまして,要件を詰める必要があると思いました。   さらにまた表現に戻りまして,民法を眺めてみましたら,導水管という言葉が別に出てくるわけですね,237条2項に。これとの関係をどうするのかということも気になり始めたところです。 ○山野目部会長 中田委員から御指摘いただいたうちの導管袋地の方は,部会資料を作る際にいささか悩みまして,どう考えても導管袋地という言葉のまま法制化ができるとは感じられませんから,部会資料の段階でやめようかとも感じられたところでありますが,かといって,今の段階で別の言葉で何かたくさん単語を費やして御案内をすることで,かえって複雑になるかもしれないという気持ちがありました。   ここについては,御記憶があると思いますが,第12回会議において,全国宅地建物取引業協会連合会から出された意見を始めとして,必ずしも囲まれている場合でない場合であっても,設置が不可避であるという局面があるということを,詳細に図面等を使って説明がされたところがありまして,そのような意見の提出の経過をもっともなことであると受け止めて,本日このような提案をさせていただいているところであります。   今の段階でお約束することができる点は,導管袋地という言葉は,このままでは法制にならないでしょうというところまで申し上げた上で,中田委員から指摘いただいたほかの点も含めて,導管設置権がどういうふうな規律文言の表現にしていくと必要十分なものになるかということについて,更に検討を続けてまいります。   それから,前者の点で,平川委員から御注意いただいた点について,重ねて注意をしなさいというお話はごもっともなことでありますから,ここのところも検討いたします。   事務当局にお願いですが,例えば,民事執行手続のときに,不動産競売の場面でする内覧ですね,あれで住家というか建物に立ち入っていくことになりますけれども,あそこで様々な摩擦が起こることを想像して,そこについての民事執行法の規律表現や,それに係る運用とか見ていただき,そういうものを参考にしながら,この住家に立ち入る場面において険しい問題が生じないというメッセージを,民法として可能な限り伝えるような工夫をしていただくことが望まれると感じます。平川委員,中田委員から,その方向での問題提起を頂いたものと受け止めました。どうもありがとうございました。   沖野委員,お手をお挙げになっていたのは下げられたんでしょうか,どうなさいますか。   どうぞ御遠慮なく。 ○沖野委員 大変申し訳ありません,あまりに細かいことなのでどうかとも思ったんですけれども,枝の切除の件に関しまして,先ほど佐久間委員から,共有の場合の,11ページの第2の1の(1)のdのケースについて,言わば妨害状態に伴う責任を早期に免れて,全員にとっても責任を縮減できる,少なくとも自分の持分権に伴う責任というものを早めに解消できるという点からは,一種の保存行為として,1人でも可能だと考えていいのではないかという御指摘がありまして,それが少し気になったものですから。   この承諾を得るということの意味ですけれども,恐らくここには,単独の場合はもちろん,所有者から承諾を得れば切除することができるというのは当然で,それが共有になった場合のその承諾というのを,どういうものとして捉えるかという,そういう問題かなと思うんですけれども,ただ,ここの②については,そもそも承諾によるコントロールの余地というか,つまり,切除に対して異議を述べるとか,承諾を取ってできるという規律にそもそもなっておらず,急迫の事情があれば切れるし,それから,そうでないときには,催告をして期間内に応答がなければではなくて,期間内に切除されなければもう切ってしまえるということになっておりますので,そうすると,承諾という話をそもそも出す必要があるんだろうというのが一つです。もう一つは,この催告をするという場合ですけれども,共有者の場合も,もちろん催告をするというaは働くと理解をしているんですけれども,そうしたときの催告というのは誰にすればいいのかということで,共有関係にあるようなときに,1人にすればいいのか,全員にするのかとか,それによっても変わってくるのかと思いますけれども,1人にさえすれば,あとはその内部関係の問題だということになれば,1人に通知して,相当の期間内にやってもらわなければ,もうこちらで切れるということになるんだろうかと。そうだとすると,承諾の規律というのは,相当期間待たなくてもできる,相当期間というのは,それなりの長い期間なので,急迫ではないけれども期間満了前に可能とすべく承諾ということを要しているという,そういう規律になるという理解でよろしいのでしょうか。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   沖野委員から,小分けすると二つお話があって,前者は,確かにこの11ページの1(1)②のa,b,cに並んでいるものの,こういう規律を考えようというものを並べている趣旨と,dで並べているものとの間に不ぞろいというか,異質感がありますね。ここは整理をしないといけない点を御指摘いただいたと受け止めます。   それから,aの催告が,催告の相手方が共有者のときに,催告は誰にどういうふうにすると十分な催告をしたことになりますかという点は,お尋ねですから,現段階での資料を作成したときのお考えがあれば,事務当局の方で御説明ください。 ○大谷幹事 今のところ,aのところは,全員に催告をすることになるのかなと思って作っておりましたが,今のお話を聞いておりまして,1人に対して催告するという整理が付くのかもしれないなと思いました。 ○山野目部会長 沖野委員,今日のところは,そのようなことでよろしいでしょうか。 ○沖野委員 はい,ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかに,相隣関係についていかがでしょうか。 ○佐久間幹事 今の続きみたいになるんですけれども,11ページの,今,沖野委員がおっしゃったのは②だったんですが,②でもし共有者の1人でいいというのであれば,①の竹木の所有者に切除させることができるというところからして,竹木が共有である場合には共有者の1人に切除させることができる,ということになるのではないかと思います。 ○山野目部会長 よく分かりました,ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,部会資料32でお出ししている相隣関係は,今日ずっと委員,幹事から御指摘いただいたところを踏まえて議事整理を続けるということでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございました。   それでは,本日お出ししている部会資料30,31,32についての審議を了しました。   次回以降の会議の進め方について,事務当局から案内があります。 ○大谷幹事 本日もありがとうございました。   次回の日程は,7月14日火曜日,3週間後になります。時間については,一応,1時半から6時までと,今日と同じような形でさせていただければと思っております。場所はこちらの大会議室になります。   テーマとして,今,実体法関係では,財産管理関係のことを検討しているのと,不動産登記法の関係でも検討を進めておりますけれども,そちらの方が出来上がり次第,できるだけ早めに事前にお送りをした上で,御審議を賜りたいと思っております。 ○山野目部会長 次回の進め方について,事務当局の考えを御案内いたしました。   この点も含めまして,当部会の運営について,お尋ねや御意見,特段の御発言がありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   本日も長時間にわたりまして,審議に御協力を頂きましてありがとうございました。   本日も,会場におられる委員,幹事,関係官の皆様,それからウェブ参加の委員,幹事の皆様も,誠にありがとうございました。お疲れさまでした。   これをもちまして,第14回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-