法制審議会 民法・不動産登記法部会 第15回会議 議事録 第1 日 時  令和2年7月14日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時56分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 第15回の法制審議会民法・不動産登記法部会を始めます。   本日も御多用の中,お集まりを頂きまして,誠にありがとうございます。   事務当局から,近頃の政府の動きその他,関連の御案内を差し上げます。 ○大谷幹事 本日もよろしくお願いいたします。   本年7月3日に所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議において,基本方針が改定されました。また,関係省庁が取り組む主要施策の工程表も改定されたところです。この基本方針では,民事基本法制の見直しについては,「今年度中できるだけ速やかに必要となる法案を提出する」とされまして,以前は2020年中とされていた法案提出時期に関する表現が変更されています。これは,新型コロナウイルス感染症の影響で3月から5月まで部会が開催できなかったことなどを踏まえてのものであると承知しております。事務当局といたしましては,民法・不動産登記法等の見直しに向けた調査,審議が充実したものとなるよう今後とも最大限の努力をする所存でございますけれども,委員,幹事の皆様には引き続き御協力を賜りますよう何とぞよろしくお願いします。 ○山野目部会長 この部会で調査審議の対象としている事項に関連する政府の動向について,事務局から御案内を差し上げました。それを踏まえて,ただいまお話がありましたような仕方で当面の部会の運営をしてまいりたいと考えております。この点についてお尋ねや御意見がおありでいらっしゃいますれば承ります。いかがでしょうか。   特によろしゅうございましょうか。   それでは,引き続き御案内を致します。本日は阿部委員,潮見委員,増田委員,門田委員,山田委員,衣斐幹事が御欠席です。   配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○宮﨑関係官 今回,部会資料33から35までを事前送付しております。部会資料につきましてお手元にないようでしたら,お知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 部会資料3点をお手元にお届けしております。大丈夫でしょうか。   それでは,議事の内容に入ります。御案内いたしました3点の部会資料を番号の順番で取り上げてまいります。   部会資料33をお取り上げください。財産管理制度の見直しとして,所有者不明土地管理制度についてお諮りを致します。   部会資料33の1ページは(1)といたしまして,所有者不明土地を管理するための新たな財産管理制度の提案を差し上げております。おおむね,中間試案で提示していたものについて,必要な調えを与えた上で本日お出ししているものであります。1ページのアのところにその基本的な趣旨が示されておりますとともに,7ページの方にいっていただきますが,7ページで,取り分け共有持分を目的として管理人が選任される場合の法律関係について,設けることが相当であると考えられる規律についての提案を差し上げております。   その後,この部会資料33は,所有者不明土地管理人の義務について扱っている(2),それから,その解任や報酬について扱っている(3),くわえて,所有者不明土地管理命令の取消し等に関する規律の提案を差し上げている(4)と続きます。相互に関連し合ってございますから,部会資料33で御提示申し上げております所有者不明土地管理制度に関わる諸事項について,一括して御意見をお伺いするということにいたします。それでは,どうぞ御随意に御発言を頂きたいと望みます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料1ページの(1)のア,所有者等を知ることができない土地の管理について,意見を申し上げます。   アに記載されている事項については,基本的に全て賛成いたします。  そのうえで,日弁連のワーキンググループでの議論を御紹介します。日弁連のワーキンググループでは,所有者の所在等について,具体的な調査の程度をどのようにすべきかということが議論になりました。一つの考え方としては,他人の所有物を土地管理人に管理させるのであるから,要件としては相当程度厳格にすべきであり,最低限の探索方法については明示すべきであるという意見もありました。一方で,特に地方の弁護士からは,所有者不明土地の大多数を占める地方の土地は価値が低く,所有者の所在調査のために作業量が多く,コストが掛かる,具体的には,現地調査が必要というようなことであると,この制度は利用されなくなるという意見もありました。そうすると,部会資料にありますように,具体的な調査の程度はそれぞれの土地の抱える事情等に応じて裁判所が個別具体的に適切に判断するということがよいのではないかと,探索方法についても特に明示しない方がいいのではないかという意見もありました。必ずしも意見が統一されていませんが,様々な意見があったということを御紹介します。   次に,申立権者,つまり利害関係人をどのようにすべきかということについてです。この点につきましては,部会資料の6ページに説明の(4)ということで記載されています。結論としては,日弁連のワーキンググループでは,利害関係については一律に規定せず,総合的に判断できるようにする,利害関係人の例示もしないという部会資料の考え方に賛成する意見が多数でした。   ただし,戸籍の取得に関して問題提起がありました。部会資料の3ページにもありますように,申立人は戸籍,住民票の調査,収集を行う必要があるということになりますので,申立権者には戸籍法上の第三者請求が認められることになると思われます。しかし,例えば民間の事業者が,買受け希望があるだけで,戸籍情報を自由に取得できるということになると,プライバシーの観点から問題ではないかと。したがって,申立権者に関する民法の定め方とは別に,戸籍に関する濫用的な利用を制限するという観点から,何らかの制度を設ける必要があるという意見がありました。   それから,利害関係人について,共有地における共有者が含まれるということは,中間試案でも(注)で書かれておりましたし,この部会でずっと明示されていたところです。今回の部会資料にはその点に関する明示がありませんが,そのことを明確にしてほしいという意見がありました。   アの部分に関しては以上です。 ○山野目部会長 ただいま蓑毛幹事から,弁護士会でお出しいただいた意見について御紹介いただきました。ありがとうございました。大きく分けて3点おっしゃっていただいたように聞きました。所有者の探索の方法,これが1点目,2点目は利害関係人の概念,関連して戸籍,住民票の制度の運用に関わる事項,3点目として,共有持分を目的とする管理人について,今後とも議論していかなければいけないという御意見を頂いたところであります。   3点目に関して申し上げますと,1ページのアの①のゴシックで示されている文章の最初の括弧書のところは,共有者を知ることができない場合などにおいて,土地の共有持分について,専らそれに係る管理人を選任することができるという趣旨の御案内を差し上げているものでございまして,蓑毛幹事に見抜いていただいたとおり,中間試案でもこのような方向を提示申し上げていたところと特段変わるものではございません。   今,蓑毛幹事からお出しいただいた3点は,いずれも重要な観点であると考えます。それらの点についてでもよろしいですし,ほかの点についても御意見を仰せくださるようにお願いいたします。 ○今川委員 我々も(1)アの規律を置くことについては基本的に賛成です。それと,蓑毛幹事と重複する部分もありますが,補足説明2の(4),6ページに,申立権者については利害関係人とする,そして,利害関係を有する者の中には民間の買受け希望者も含まれるとされています。そして,その買受け希望者の説明のところで,希望の強弱とか代金の支払い能力などにおいて様々であるというふうな説明もされています。これは,裏読みすると,希望が強い,あるいは支払い能力があるということが裁判所の一つの判断材料となるのかというのが1点質問です。  それから,我々は買受け希望者を利害関係人に含めることについては,基本的には消極であります。   なぜなら,申立人が無限に広がる可能性があるということで,前からそのような意見を申し上げておりますが,部会では,利用計画がしっかりしているもの,あるいは一定程度,公共的なものに限定するという説明を受けておりますので,そのような方向で検討されるのだろうと思うのですが,不在者財産管理人の申立権者である利害関係人については,現在の枠組みから変わらないという説明をずっと受けておりますし,現在の枠組みからすると,不在者財産管理人の申立権者の中には買受け希望者は含まれないと理解はしております。そうすると,本制度における利害関係人の範囲が異なるのであれば,不在者財産管理人の利害関係人と本制度における利害関係人の範囲が少し違うというようなことも,理由とともに明らかにしておく必要もあるかと思います。   それと,これも蓑毛幹事がおっしゃったように,相当の調査をしないと申立てができませんので,住民基本台帳法や戸籍法の第三者請求の制限をどういうふうにクリアするのかという問題について解決をしなければいけないと。ただ,これは買受け希望者が第三者請求を可能とする規定を設ければよいということを言っているのではなくて,元々住民基本台帳法や戸籍法の第三者請求の規定というのは個人のプライバシーの保護を目的としておりますから,その立法趣旨は守りつつ,方策を考えていかないといけないのではないかと考えます。   それから,補足説明の7ページの4の管轄裁判所についてですが,全国に多く配置されている簡易裁判所も管轄裁判所としてほしいという意見があったと書いてありまして,それに続けて,地裁で行くべきではないかというようなことが解説されておりますけれども,所有者不明土地の管理人はうまく機能すると,かなり申立ての数が多くなると思いますし,所有者不明土地は地方に行けば行くほど数が多いということもあります。そういうことから,やはり身近な簡易裁判所も管轄裁判所としていただきたいという意見は我々司法書士の中にもありますので,是非検討いただきたいと思います。   そこで,簡裁も管轄裁判所になるとすると,地裁,家裁,簡裁,それぞれで様々な管理人が選任されることになりますけれども,それは今,検討されております裁判のITの進展の中で,各裁判所の連携がシステムとして構築されていくとも思いますので,そのようなことも含めて御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 司法書士会のお立場から,大きく分けて二つの観点をおっしゃっていただきました。前半の方は蓑毛幹事のおっしゃった関心と重複しておりますし,お尋ねに関わる部分が含まれていたと受け止めました。なるほど,この部会資料の文章の中にある「希望の強弱」という言葉は,強弱と書かれると,何か希望が強いと買受け希望者が利害関係人として即合格ですと読めなくもない文章になっていると感ずるところもございますが,後ほど事務当局に資料作成の意図を伺ってみます。伺ってみますが,いずれにしても,自分はあの土地に関心があります,熱烈な希望です,それで裁判所に申し立てようと思っていますと告げると戸籍の請求が第三者としてできる,なんていう運用は言語道断であると感じられるところでありますから,もちろん蓑毛幹事も今川委員も,そのようないいかげんな戸籍の運用になっては困るという御心配も含めておっしゃっているものでありまして,重要な御注意を頂いたと受け止めます。   もう1点,司法書士会の方からお話を頂いた,所有者不明土地管理命令を申し立てる裁判所の管轄の話については,司法書士会で御議論いただいたところを御紹介いただき,意見としておっしゃっていることは,その理由も含めて理解ができるところでございます。それと同時に,御提示申し上げている地方裁判所にしようという案は,裁判所法24条1号などが定めている従来の不動産訴訟に関する管轄の考え方を基本的に踏まえて提示申し上げているところでありまして,確かにこの部会に与えられた使命として,所有者不明土地問題を解決するために可能な限り実効的な制度を構築していくという観点は重要でありますけれども,裁判所の管轄というものは裁判所の組織編成に関わり,その骨格に及ぶ重要な事項でありまして,政策的課題があるから,まあそうしましょうと簡単には行かないという部分もありますから,慎重に検討する必要もあるであろうとは感じます。しかしながら,司法書士会の御意見は承りました。   お尋ねがあった部分について,事務当局からの所見を伺います。 ○大谷幹事 ありがとうございます。希望の強弱と書いたここの部分ですが,裏読みしてしまうと,強ければ利害関係があると見える形になるのですが,ここで書いておりますのは,買受希望者を利害関係人として例示すべきかどうかというところで,一口に買受希望者といってもいろいろな買受希望者がいるので一概に例示すべきでないという文脈で書いておるところでございまして,希望が単に強いというだけで利害関係があるというつもりで書いたものではございません。やや誤解を生じさせかねない表現で,申し訳ございません。   ただ,元々この所有者不明土地管理制度について,これは中間試案の前からずっと御議論を頂いてまいりましたけれども,不在者財産管理であっても買受希望者が絶対に利害関係人に当たらないかというと,そういうことではないのではないかということを何度か部会資料でも御説明を申し上げてきたところでございます。所有者不明土地管理制度の場合には,所有者又はその所在が分からないということで土地が管理しにくい状態になっている,そのことに着目を致しまして,管理人を付けて管理ができるようにする。その際に,所有者が代わって,主体が代わることによってきちんと管理ができるようになる場合もあり得るということ,管理人が土地所有権の移転をさせるということも視野に入れた形での管理制度を作ろうということで検討を進めたまいったわけでございます。   利害関係人にどのような者が含まれるのかというのはケース・バイ・ケースで判断されるということになりますけれども,買受希望者がいるということで,今適切に管理できていない状態の土地の所有権が管理できるようになるというのであれば,場合によっては利害関係人に当たる場合もあるだろうと,買受け希望があれば必ずそうだということではございませんけれども,不在者財産管理制度においても利害関係人に認められ得る場合がある,それよりも更に認められやすいのではないかとは思っておりまして,そういう趣旨で書いております。 ○山野目部会長 今川委員,ひとまずよろしゅうございますか。 ○今川委員 はい。 ○山野目部会長 事務当局からの案内を踏まえて,今の点も含めて御議論を頂きたいと考えます。 ○道垣内委員 ありがとうございます。小さな話なのですが,申立権者のところの補足説明の上から8行目なのですが,「より適切な管理をしようとする」ということが書いてあります。そうすると,裁判所は何らかの申立てがあったときに,当該管理が「より適切」なのかということを判断するのかというのがよく分からないし,さらには,この文章そのものに何か,不適切な管理がされているので,買受け人が出ると「より適切」になるのだという,パターナリスティックというか,そういうふうな感じの気持ちを感じてしまうのです。ですから,希望の強弱も併せまして,今,大谷さんがおっしゃったように,買受け希望者が一切カテゴリカルに排除されるわけではなかろうというのであれば,もう少し淡々と書いた方がいいのではないかという気がいたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。「より」という表現は筆が滑ったような気がいたします。そのほかにも滑っているところがあるかもしれませんから,道垣内委員に良いお言葉を頂戴いたしまして,淡々とですね,今後の説明を進めなければいけないということを肝に銘じます。ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。所有者不明土地管理人について御提案いただいている内容について,基本的に賛成であります。その上で若干,細かな点の確認をさせていただきたいと思います。   一つは,所有者不明土地管理人の制度の位置付けについてです。この後,部会資料34の1に出てまいります不在者財産管理人の職務内容を限定できるかどうかという問題との関連で,仮にそれができるとした場合に,職務内容を限定された不在者財産管理人と,この所有者不明土地管理人というものが基本的に同じ機能を果たすのか,あるいはその制度趣旨を異にしていて役割分担があるのかという点であります。   部会資料33の4ページ,ウでは,両者が併存して活動することは予定されておらず,この点は異論ありません。もっとも,所有者不明土地管理人の場合には,所有者の所在不明または所有者の特定不能という状況を前提にして,土地管理をいかにやっていくかということが制度趣旨にあるのではないかと思います。それを前提にしますと,この所有者不明土地管理人の法的地位がどうなのかという問題を出発点にして,申立権者とか権限とか義務の内容というのが連動して問題になってくるように思われます。   所有者不明土地管理人の法的地位については,不在者財産管理人と少し違って,代理人構成は必ずしも採らない可能性も,部会資料33の10ページ,2(1)では示唆されているとも考えられます。,例えば,管理人がその権限を越える処分をした場合の第三者保護の要件を表見代理の規定を適用または類推適用して善意かつ無過失にするか,管理人に管理権が専属することを前提に別途規定を設けて善意であれば保護するかといった問題とも絡んで,この所有者不明土地管理人の法的地位が,法定代理人というよりは一種の法定の管理人というような位置付けになるかどうかが気になる点であります。   その点では,部会資料33の1頁の提案(1)ア②の注でも言及していただいている表題部所有者不明土地の特定不能土地管理人の法的地位に近いのかどうかということであります。その点は個別問題としてやはり問題になってくるように思われまして,今話題になっている申立権者についても,部会資料33の6ページで具体的に挙げていただいている隣地所有者,公共事業施行者,買受希望者のほか,例えば,所有者不明土地について時効取得を主張する者が土地管理人を選任して,被告になってもらうというようなことができるのかどうか,その場合に,この所有者不明土地管理人が被告になってどういう活動をすればいいのかということも気になる点であります。   また,所有者不明土地管理人の義務については,部会資料33の15ページの(2)の提案で,土地所有者のために善良な管理者の注意をもってその職務を行う,あるいは共有者不明であれば,全共有者のために誠実かつ公平にその権限を行使しなければならないということで,土地所有者のためにということにウェイトが置かれていて,それは当然とも言えますし,表題部所有者不明土地法24条の特定不能土地管理人の義務についての表現と平仄を合わせたものと思われますけれども,所有者の法定代理人とは必ずしも同じでないということであれば,若干その表現を工夫する必要があるかどうか,あるいは既存の表題部所有者土地法24条もありますので,解釈で考えるかということが確認したい点であります。   私は,例えば,利害関係人についても,余り限定するということはせずに,所有者不明土地の状況に応じてその管理をすることができるように,ある程度緩やかな要件にしておくということにも意味があるのかなと思いますけれども,そうしたことも考えますと,まずはその法的地位について確認したいと思った次第です。 ○山野目部会長 松尾幹事のお話は,部会資料が想定している所有者不明土地管理人は土地所有者の代理人ではないという法的構成を前提とするものであることを確認なさりたいという御趣旨で受け止めればよろしいですか。 ○松尾幹事 はい,特に部会資料33の10ページで,管理人の権限違反の場合の問題処理として,無権代理人に関する規定,表権代理の規定を類推適用するという問題との関係で,必ずしも代理人構成は採らない可能性も示唆されているように思われましたので,法定管理者としての地位を認めるものなのかどうかという点について,もしお考えがあれば伺っておきたいと思った次第です。 ○山野目部会長 ただいま問題提起を頂いた事項は,正に委員,幹事の間で御議論いただくことでございます。そのことを確認した上で,資料作成で想定していた考え方について事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 今正に御指摘があったように,代理人なのか管理者なのかという問題は中間試案のときから御議論いただいておりました。中間試案の補足説明でも確か書いたと思いますけれども,そのどちらかであるかによって演繹的に物事が決まるというわけでもないのであろうということで,そこについて,管理者だからどうというようなことで作ったつもりではございません。ただ,今幾つか御指摘のあった,無権代理の形ではなくて,専属させた上で原告や被告になれるというような形にしておりますので,その意味では法定の管理者に近いと思いますけれども,この位置付けについては解釈に委ねられることになるのかとは思っております。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○松尾幹事 分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。まず,(1)のアですけれども,本文に書いていただいていることに関しましては基本的に賛成でございます。こういう制度ができるのは非常に有益だと考えている,ということはこれまで一貫して申し上げてきたとおりでございます。また,補足説明で書いていただいていることについての意見を申し上げますと,まず,探索方法を明示するかどうかという点に関しましては,前回の部会で申し上げたとおり,あと,先ほど蓑毛幹事もおっしゃられていたとおり,やはり地域によって必要な探索方法のレベル感が変わってくるところはあると思いますので,これを裁判所に事案に応じて適切に判断していただき,少しハードルを下げた形での探索方法というのも排除しないという前提であれば,今書かれているような方針で整理していただくのがよいのではないかと思っております。   もう1点,状況に応じて総合的に判断すべきという点で申しますと,申立権者の範囲に関しましても,ここに書いていただいているような方針で基本的には賛成でございます。やはりここでも公共事業の実施者であるとか民間の買受希望者,こういった者が申立権者から排除されないということが何より大事だと思っておりまして,これらの者も状況に応じて申立権者になり得るという前提で一律には規定しないということであれば,基本的には賛成ということにさせていただければと思っております。   なお,2点ほど確認と意見ということで申し上げますと,脚注に書いていただいている所有者特定不能土地等の制度との整理という点に関しましては,これらの土地管理制度が正にこれから施行される制度である,ということもございますので,併存させることに関しては何ら問題はないと思っております。ただ,今の段階では,表題部所有者不明土地がいわゆる所有者特定不能土地としてどれだけ登記されるかというのが,そのスピード感なども含めて,まだ分からないところがありまして,所有者特定不能土地として登記された土地に関しては,こちらの表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の制度を優先するということで差し支えないと思うのですが,そういうふうに認定されるかどうかが確定していない表題部所有者不明土地について,表題部所有者不明土地だからといって,これから作ろうとしている所有者不明土地管理制度が使えないということになってしまうと困るという意見は事業者からも出ておりますので,そういう場合には,両制度を選択的に使えるようにしていただく必要があるように思います。恐らく,部会資料では,所有者特定不能土地として登記された土地に関してこちらの表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の制度の方を使うという趣旨で書かれているのだと思いますが,そこを確認させていただくとともに,所有者特定不能土地として登記されるまでは,両制度を選択的に使えるようにしていただければ,ということは意見として申し上げたいと思います。   あと,管理方法を限定するかどうか,裁判所が土地管理命令において管理行為の内容を定めるかどうかという点につきまして,今回の部会資料では,特にそのような規律を設けることを提案していないと書かれておりますが,こちらに関しては,やはり管理人の負担軽減という点で言うと,ある程度,裁判所の命令の中で,管理方法を限定できるようにした方が,管理人の成り手を増やす,管理人を引き受けていただく方を増やすという意味で,やりやすさがあるのではないかという意見が出ております。こちらの方も,では権限外行為の効果はどうするのかという問題などが提起されているところですが,例えば,管理命令を登記する際に限定した管理方法を書くことで対応できる面もあるように思いますので,完全に管理命令の中で方法を限定できないというふうにしてしまうよりは,まだ限定するというパターンも選択肢として残していただいた方がいいのではないかというところは,意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 大きく二つ,御意見をおっしゃっていただきまして,前の方は部会資料のアの注記の趣旨の確認するお尋ねの趣旨を含んでおりましたから,後ほど事務当局から所見を御案内いたします。   後半のところで,管理の方法を裁判所が管理命令を出す際にもう少し絞るという可能性も残してほしいという御意見を頂きました。御意見に留意して検討を進めてまいりますということを御案内申し上げますとともに,念のための御説明ですけれども,別段,今の部会資料は,裁判所が管理の在り方について示唆を与えるということをしてはならないと述べているものではなくて,ただし,そのことを主文にはっきり掲記するとか,あるいは,それが普通の姿であるとか,さらには登記をするとかいうような制度自体は想定していないということで御提示申し上げているところであります。その御案内の上に更に,しかし,そのような在り方について,藤野委員の御意見も踏まえ,委員,幹事から御意見がおありでいらっしゃれば承りたいと考えます。   前段の方について,事務当局の方から所見を御案内ください。 ○大谷幹事 1ページの(注)のところですけれども,「所有者特定不能土地等については」としており,所有者特定不能土地というのは,表題部所有者として登記すべき者がない旨の登記をされているものと考えておりますので,同法に基づいてその登記がされたものに限って特定不能土地等管理者の選任が可能になると,正に御指摘のとおりと考えております。 ○山野目部会長 藤野委員,よろしゅうございますか。 ○藤野委員 はい,所有者特定不能土地として登記されて初めて表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の制度の方を優先適用されるということですよね。そういうことであれば,登記されるまではいずれも使えると理解しておりますので,それであれば問題はないと思っております。 ○山野目部会長 このアの注記で示している内容は,本日の御議論を効率的にお進めいただくために参考として添えているものであって,何々を想定していると法文に書くものではありませんから,何も書かないで法制が実現した場合には藤野委員が御理解のとおりになるものでありまして,登記されていれば表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律が専ら適用されるということになりますし,それ以前の段階では,いずれかの制度で必ずなければいけないとなり,別の方の制度を使うとそれは不適法な手続運用になるという理解,運用は考えにくいところでございまして,そのような意味でも御安心を頂いてよろしいであろうと考えます。   引き続き御意見を承ります。 ○國吉委員 ありがとうございます。今の表題部所有者不明土地問題の絡みで,もう一つ御質問なのですけれども,所有者が特定不能なのだということが明らかであれば,この表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律に基づいて処理をするというのは賛成でございます。ただ,表題部所有者不明の土地であり,なおかつ登記所が公告をして既に所有者の探索を始めているといったような場合に,先ほど議論がありました,どこまで調査をすれば所有者が不明なのか,あるいは所在が不明なのかといった観点からも,その辺の議論の整理が必要なのかなとは考えました。ですので,この表題部所有者不明土地の探索方法と,この所有者不明土地管理制度による探索の方法というのは,何か少し整合性があった方がいいのではないかというのが御質問の趣旨でございます。 ○山野目部会長 御質問というよりは,アの注記の運用について,意見をおっしゃっていただいたような観点に注意をして運用を図って欲しいというお求めを頂いたと受け止めればよろしいですか。 ○國吉委員 はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○中田委員 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律から離れますけれども,よろしいでしょうか。 ○山野目部会長 お願いします。 ○中田委員 先ほど松尾幹事のおっしゃったことと関係するのですけれども,この管理人を代理人よりもむしろ法定管理者に近いものと位置付けた場合に,利益相反はどうなるのかということが知りたくなりました。と申しますのは,資料34の不在者財産管理制度においては,利益相反については民法の一般的なルール,108条が適用されるだろうという前提の下に,規定を置かないということのようですけれども,こちらの方は代理でないのだとすると,その利害関係は,利益相反行為はどうなるのだろうかということがよく分からなくなってきました。それは規律との関係ですが,また実体としても,管理人自身がその土地を買い受けるというようなことが可能なのかどうか,さらに,利害関係人として買受け取得者,買受け希望者が申立てをしたときに,その人が管理人になることができるのだろうか,その辺り少し,いずれも関連しているところなのですけれども,利益相反行為についてどのようにお考えなのかをお聞かせいただければと思います。 ○山野目部会長 お尋ねを頂いたと感じます。事務当局の方でお考えをお話しください。 ○大谷幹事 この所有者不明土地管理制度につきましても,書いてはおりませんけれども,利益相反のルールはもちろん適用があるだろうということを前提として考えておりました。したがいまして,以前にこの部会でお諮りをしておりました,利害関係人が申し立てて,その人自身が買い受ける,あるいは管理人になるというようなときに利益相反が問題になるのではないかということがございましたけれども,実質的な利益相反関係があるため,なかなか難しいのではないかというような議論もしていただいたところですけれども,ここでの所有者不明土地管理制度におきましても,利益相反のルールは適用があるということを前提として考えておりました。 ○山野目部会長 大谷幹事がおっしゃっている観点は,民法108条に表れている法の一般的な精神,趣旨がここにも及ぼされるという理解で受け止めてよろしいですか。 ○大谷幹事 はい,そのとおりでございます。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 その趣旨であるということはよく理解できたのですけれども,先ほどの松尾幹事と大谷幹事とのやり取りの中で,何か代理から少し離れていって,法定管理者的なものになっていくということになると,利益相反についてのルールはやはり何らかの形でもう少し明確にした方がいいのかなと感じました。また同時に,もしも管理人が選任された後,管理人が買い受けるということになったときの手続が必要なのかなと思いました。 ○山野目部会長 中田委員の御注意を受け止めまして,利益相反に関する考え方を整えた上で,規律の上でもどこまで表現しておくことが望まれるかについて検討をするということにいたします。御注意を承りました。 ○平川委員 ありがとうございます。まず,様々な方が発言されたところについて再度,意見を述べたいと思います。   (1)アの①の3ページの要件のところです。特別措置法との関係で探索方法を明示することについて,最終的に裁判所の判断となっておりますし,また,裁判所が事案に応じ適切に判断すべきという記載がございます。ただ,やはり一般の住民から見て,裁判所がどのように判断するかは,ブラックボックスになっていて見えにくいと思います。一般的には様々な行政手続などを含めて,その手続の過程や判断は透明性を高めるという方向になっていると思いますが,探索方法が曖昧であることについては,住民の皆さんの理解が得られるかどうかというのは少し疑問があると思います。ある地域は不明土地となったけれども,別な地域では,これはまだ探索方法が足りないということについて,本当に理解が得られるかというのは,少し疑問を持っているところです。   それから,もう一つ,6ページの申立権者でありますけれども,これは様々な御意見がございました。私もこの申立権者の位置付け,概念というのが余りにも不明確だと思いますので,明確にすべきではないかと考えているところです。   それから,7ページ目の管轄裁判所ですけれども,実際,行政組織としてはこうなるのでしょうが,私は北海道の旭川出身ですが,旭川地方裁判所の管轄は稚内まで及びますので,250キロの間,手続するところがないとなると,なかなか厳しいなと思いました。この時代,ウェブで,若しくはリモートで一定程度できるということも考えますと,簡易裁判所も含めて,手続として,もう少し工夫できるものがあるのではないかと思ったところであります。意見として申し上げます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。平川委員から御指摘があった所有者探索の方法や利害関係人の概念の論点に関する御意見は,地域住民がこの制度が創設された際に用いるに当たって不便のないようにして欲しいという御要望の骨子は誠にごもっともなことですから,受け止めなければなりません。   それと同時に,それを法文に書くことが適切であるかということは,また考えてみる必要があると感じます。触れていただいた所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の場合には,あれは都道府県知事の対応の仕方など,行政庁の対応の仕方を法律できちんと明らかにし,縛っておく必要がありますから,どうしても法文にする必要がありましたけれども,こちらは事案に即して裁判所に適正な判断を求めていくという領域になります。もちろん,それも平川委員がおっしゃったように,裁判所が考えるということしか分かっていません,ということでは不便があるかもしれません。不在者の財産の管理の制度の運用については,例えば盛岡家庭裁判所のウェブサイトを見ますと,どのような人が普通,利害関係人として扱ってもらえますか,どのような資料を用意すればよいですか,どの辺まで不明な者を探索すればよいですかということについて,そのまま教科書の文章にしてもいいくらいのバランスのとれた,かつ分かりやすい文章で書かれています。そのような運用を引き続き裁判所においても努力してくださいねというお求めとして受け止めるということもあるのかもしれません。   それから,管轄裁判所のことについても御要望を承りますから,検討しなければならないと感じます。稚内と旭川の距離は,破格に異常であると感じます。北海道はそのほかのところも広大な平原が続いていますけれども,大体程よくできているものでありますが,平川委員が御不審に感じたように,なぜ稚内から旭川まで行かなくてはいけないかということは,例外的に,あれは本当に困惑するしかないものでありまして,そこの事案に接したときの苦労というものはよく分かりますけれども,それを全国一律の規律としてどういうふうに受け止めていくかは,また裁判所の御意見なども伺いながら考えていくことになるであろうと感じます。 ○市川委員 ただいま少し話題になりました土地所有者の所在の調査の程度や利害関係人の範囲について,その要件をこれ以上,具体的に明記することはせずに,事案ごとに裁判所が総合的に判断をするという御趣旨ということですが,新しい制度ということもあり,制度が始まった際に実務が混乱したり,支障を来したりすることがないように,運用の参考になるような具体的なケースについて,今回の部会資料に書いていただいた例以外にもできる限り紹介いただくなど,どのような考え方を採ればいいのかということを何らかの形でお示しいただきたいと考えています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。平川委員から,利用者の視点で見たときの不便がないようにしてほしいという御要望を頂きましたが,ただいま市川委員からは,運用に携わる裁判所においても円滑な運用ができるように,法制の趣旨を可能な限り明らかにしてほしいという御要望を頂き,もっともなことであると感じます。この方向で成案を得ていくという見通しが更に強まる場合には,裁判所と法務省事務当局においてよく協議をしていただきたいと望むものであります。ありがとうございます。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。4ページの補足説明のウのところの,他の管理人との権限の競合に関してです。   ここに書かれていること自体は,私はこれでよろしいのではないかと思っておるのですけれども,似たような権限を持つ似たような管理人の制度が,今度,すごく増えることになると思われますので,このような方針で行くのであれば,その旨を法律の規定に設ける方が私はいいのではないかと思います。例えば,全然違う例ではありますが,任意後見と法定後見のところで,法定後見が開始されておりそれが継続するときは任意後見は開始しない,任意後見が開始しているときでも法定後見を開始したら任意後見の方を職権で取り消すと,確か明文で定められています。それと同じような形で明示しておく方が,管理制度を利用するに当たって便宜ではないかと思います。もしここに書かれているのと違う考え方なのであれば,それはそれで明らかにした方がいいのかなと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事から御意見を頂きました。ありがとうございました。御案内いただいた点を引き続き検討するということにいたします。   いささか悩ましい点は,不在者の財産の管理が始まっているときに,その不在者が所有者であることまでは分かっている場面において,所有者不明土地管理命令を発令することはないであろうと感じられますから,そこは,もし書いた方がいいということであれば書いても構いませんが,その逆ですね,所有者所在不明土地管理命令が出されているときに不在者財産管理が始まるときに,部会資料において普通は取り消すことになるでしょうと述べていますが,事案はこれから様々なものが出てくる可能性がありまして,必ず一律に取り消すということを書いてしまったときの怖さというのも若干ありまして,そこはまた少し考えてみなければいけないとも感じます。佐久間幹事から御指摘いただいた点を引き続き事務当局において検討するということにいたします。   沖野委員,どうぞ ○沖野委員 ありがとうございます。   松尾幹事が御指摘になった点に関してなのですけれども,15ページの(2)の善管注意義務について,改めて土地の所有者のためにというのが置かれたという点です。補足説明のところでは,履行を求めるということが書かれておりますけれども,善管注意義務を誰に対して負うのか,あるいはその指針となるのが誰かということを明確化されることによって,飽くまでこの所有者不明土地の管理人は土地の所有者のために行動するのだと,いろいろなことがあったときに,飽くまで土地所有者のためだということが明らかにされる,そのように行動指針が明らかにされることになります。他方で,必要性の要件などの点ではそれが必ずしも土地所有者のためではないという場合も考えられるように思われまして,そうしたときに,一定の目的,一定の必要性のために選ばれている人が,しかし,その行動は土地所有者のためであるという形にすることが果たして適切なのだろうかというのは,もう一度確認をしておいた方がいいのではないかと思います。飽くまで土地所有者のための制度なのだと言い切ってしまうのであれば,これで結構かと思いますけれども,それで大丈夫かというのが1点目です。   あと2点,大変細かい点なのですが,部会資料についてお伺いしたいことがありまして,一つは8ページの権限に違反した行為の効果です。8ページのゴシックの③におきましては,ただし書で善意の第三者に対抗することができないとなっています。これは専属するということの関係で,善意の第三者に対抗することができないということでよいのではないかと考えておるのですけれども,所有者不明土地管理人はという主体が限定されている点です。以前の議論の中で一旦外したのではなかったかと思うのですが,これを所有者不明土地管理人が対抗できないという形で主体を限定した趣旨がどこにあるのか。例えば,所有者が不明であったのが所有者が判明して,管理人の行為について権限外であるというような話が起こったとき,あるいは共有持分で他の共有持分権者が争うというようなときには,この善意の第三者に対抗することができないという話はないのかということが気になりまして,なぜ主体を限定することになったのかという趣旨をお伺いできればと思います。   最後,大変これも細かい点で,3点目なのですけれども,19ページの(4)がございまして,供託について,①におきましては,元々は当該土地の所在地の供託所であったのが,又は共有持分というのが入っています。この又はが入りますと,共有持分の所在地という概念が入りますので,所有権であるのか所有権に関する持分権であるのかという問題はありますけれども,権利の所在地という概念を入れてくることになるのだろうと思います。恐らくその場合,客体が不動産ですので,結局不動産,土地の所在地になるのではないかと思うのですけれども,そうだとすると,あえてこれを足されたのはどういうことなのか,結局土地の所在地でいいのではないかと思うものですから,この点につきまして御説明いただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。最初におっしゃっていただいた善管注意義務については,委員,幹事の皆さんに改めて御案内を致しますけれども,中間試案の際には,所有者のほか利害関係人に対しても善管注意義務を負うというふうな文言にしており,それでパブリックコメントに付したものであります。パブリックコメントでは,それでよいという意見を頂きましたが,その後,事務当局においても精査したところを踏まえて,それではいささか,今,沖野委員のお話にもありましたけれども,管理人の職務執行が難しくなってくるものではないかと感じられる側面がございましたから,このたび利害関係人というものを外し,所有者のために,と注意義務の輪郭を明確にするというか限る,そういうふうなゴシックの文言にして提案を差し上げております。その当否について委員,幹事から御意見があれば,ただいま沖野委員から指摘があったところでもございますから,おっしゃっていただきたいと感じます。   それから,2点お尋ねを頂きました。善意の第三者に対抗することができないというものの主語の問題と,それから,共有持分が所在する場所の供託所なる概念があるかというお尋ねでありました。事務当局から所見を差し上げます。 ○大谷幹事 1点目の善管注意義務の相手方の話がございました。今,沖野委員が御指摘になったとおり,その相手方をはっきりさせるという趣旨で書いておりますけれども,善管注意義務,所有者のためにと言ったときに,それがその利益のためというよりは,土地管理命令が発令されて,その管理行為がある,その中で所有者に損害を与えないようにという趣旨になると理解をしておりました。利害関係人が出てきて,その方が申立てをして,その利害関係人と土地所有者との間で利益が相反する部分があるということにはなりますけれども,管理人の行動の指針としては,所有者の利益を害さない,所有者を害さないということを趣旨として読むことになるのではないかとは考えていたところでございます。   それから,2点目,3点目のところですけれども,表題部所有者不明土地の法律との関係で,それを参照しながら書いたというところがございます。今の供託のところは,ややこれは分かりにくくなってしまっているのかなと,御指摘を伺って,考えておりましたけれども,基本的には表題部所有者との並びで書いているというところでございます。 ○山野目部会長 沖野委員からお尋ねがあった,善意の第三者に対抗することができない処分について,そうすると今のお話は,従前の法制と合わせたという御説明でしょうか。そのことの御紹介とともに,沖野委員の御指摘を踏まえて言うと,従来の理解を内容的に変更するものではないということも今,確認いただいたと受け止めてよろしいですか。 ○大谷幹事 はい。 ○山野目部会長 共有持分の所在地の供託所という概念も従前法制と同じにそろえたということでしょうか。 ○宮﨑関係官 表題部所有者不明土地法では所有者等特定不能土地になっているのですけれども,それが読替え,別の定義規定がありますので,供託のところは持分と読み替えられることになるのかなと思って,こんなふうに記載してみたのですが,もしかしたら,おっしゃるように,そこの読替えは変なような気もしますので,少しまた考えてみたいと思います。 ○村松幹事 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律の立案のときには,「所有者等特定不能土地」等の定義の中で,土地そのもの,それから共有持分のケースが含まれるということを書いていましたので,その後の条文で出てくるときも,共有持分のケースもまとめて「土地」という表現で書いていました。それで,それほどぱっと見には,違和感がなかったというところだと思います。今回のように書き分けると,少し気になるというところだと思いますので,そこはまた,最終的な法律の書き方のところで少し工夫するという話ではないかと思いました。 ○山野目部会長 解説をします。村松幹事は従前法制のときの立案担当者でいらしたことから,責任を感じて御発言をなさいました。宮﨑関係官は,律儀に読替えを御自身でなさったところを御紹介いただきましたが,出てきた言葉が,でも,これは法制的に少し変であると感じます。このまま行けるかどうかは法制的に,関係諸部門と事務当局において協議を続けていただきたいと望みます。   沖野委員,お続けになることがおありでしょうか。 ○沖野委員 一言だけ。従前の法制との関係があるということは理解しましたけれども,従前の法制に従うのがいいのかどうか,特に無効の対抗の方の話は,こちらは民事実体法として書かれるわけですよね。どこに入るのか,民法に入るのか,それにもよるかと思いますけれども,もし主体を限定する趣旨でないならば,こちらは限定しないという判断もあるかと思いましたので,取りあえず付言させていただきます。 ○山野目部会長 御意見を承りました。引き続き検討することにいたします。一つ二つ悩ましいことがありまして,一つは民法に入れるかどうかということですが,この膨大な規定を民法に入れるかどうかは,実は先々悩まなければいけないことでありまして,今,話題になりましたから触れますけれども,少しそこのところは考え込まなければなりません。それと同時に,民法に入れるにせよ入れないにせよ,沖野委員が御注意のとおり,実体法の規律を可能な限り整った文言にしてほしいというお考えは,そのとおりであります。それとともに,たとえ不適切な部分があるにせよ,従前の法制と異なる文言を用いると,そのこと自体の意味合いが問われてくるという側面が法制執務にはございますから,そこも悩ましゅうございます。それこれの点を含めて,ただいま沖野委員から重ねて御指摘があったということの意味合いを十分に受け止めて,考えを続けてまいるということにいたします。   沖野委員,お続けになることがあったらお話しください。沖野委員,よろしゅうございますか,ひとまずは。 ○沖野委員 はい,結構です。ありがとうございます。 ○山野目部会長 道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。沖野さんが三つおっしゃって,一つの管轄の書き方の問題についてだけ,更に触れられたのですが,残りの二つについて沖野さんはさらなる突っ込みを続けませんでした。しかし,私は,それでいいのかな,という気がいたしまして,若干伺えればと思います。   まず,15ページの善良な管理者の注意というところに関して,この書き方というのは私が望んだところでもあるのですけれども,実際には当該土地が売られるということになったり,あるいはきれいに整備されるということになったりしたときに,土地の所有者がそれを望んでいるのか,土地の所有者の利益に本当に資しているのかということは,それは実は分からないですね。だからこそ大谷さんは,これは「損害を与えない」という意味として読むのだろうとおっしゃって,なるほどとは思うわけですが,これは普通のところと構造が違うのですね。つまり,普通の委任でも何でもそうなのですが,委任事務というもの自体がその委任者の利益のために設定されているのですね。そして,その委任者の利益を実現するための注意義務基準として,善良なる管理者の注意というのが出てきているので,善管注意も主たる委任事務の目的も,同じ方向に向いているわけです。   それに対して,この所有者不明土地管理人というのは,最初の目的の方は必ずしも不明になっている所有者の利益を増進するというものではなくて,当該土地の効率的なといいますか,うーん,「効率的な」というのは問題がある言葉ですので,言葉を変えて,適切な管理という目的となっている。それは,不明になっている土地の所有者の利益というところから,もう少し客観的な利益になってしまっていて,そこに,善良なる管理者の注意というのが,その土地の所有者のために存在しているという構造になっていて,ぴたっと同一方向に重なっていない。これは,多分,沖野さんが何となくここに違和感を持たれる原因なのではないかという気がします。   私は,結論はこの15ページに書かれているとおりでいいのではないかと思うのですが,そういうふうな構造の違いというものが存在するのだということを確認しておくことが今後のためにも必要なのではないかと思います。それが,沖野さんに「もっと突っ込めよ」ということの第1点でございます。   「もっと突っ込めよ」の第2点は,先ほどの8ページの,所有者不明土地管理人は,これをもって善意の第三者に対抗することができない,というところです。これは多分,こういう構造なのだと思うのです,つまり,所有者がいて,所有者不明土地管理人がいる。そして,所有者不明土地管理人が何らかの行為をした。この行為の段階では,所有者不明土地管理人が存在しますので,土地の所有者には権限がないという状態にありますので,所有者不明土地管理人がその第三者にその行為の無効を対抗できないとなりますと,土地の所有者にその行為の効力が帰属することになります。したがって,それは,実体的な言い方をすると,有効になるということなのだと思うのです。   ただ,ここだけ読みますと,例えば所有者不明土地管理人が行為をした後に,所有者が発見されて出てきたといったときには,それでは所有者は善意の第三者に所有者不明土地管理人の行為の無効を対抗できるのか,という問題があり,ここで,わざわざ所有者不明土地管理人は対抗できないと書いてありますと,何となく,ほかの人は言えるのではないかといった雰囲気が漂ってしまう。それは問題ではないか。少なくとも,ここで提案されているルールがもたらそうとした結果ではないのではないか,ということなのです。私はここはどう書けばいいのかという技術的な能力はありません。ありませんが,僕が最初に申し上げましたのが多分,メカニズムの理解としては正しいのではないかと思い,それをどう書き表すかというのはもう少し検討した方がいいと思うし,もし書き表す方法がこれしかないよねということであるならば,以上のような理解を共有した方がいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 沖野委員と道垣内委員から重ねて御指摘があった2点につきまして,いずれも御注意を踏まえて法制的な表現を洗練させる可能性を模索することにいたします。その上で,やむを得ず,これらの局面においては現在ゴシックで提示している文言で行くということにするほかないということになります際も,ただいまの道垣内委員の御発言が議事録に残されることによって,この論点の理解が大きく深められたものと受け止めました。どうもありがとうございます。 ○中田委員 ただいま道垣内委員のおっしゃった二つの構造,構造に二つの面がある,つまり所有者の権利の保護と土地の適正な利用という,この間のせめぎ合いというのはこの制度の当初から議論になっていたことだろうと思います。それにも関連しますが,所在不明である所有者が実は亡くなっていたという場合にどうなるのかということがよく分かりませんでした。あるいは既に議論があったのかもしれないですけれども,二つに影響します。一つは,一番最後に出てくる管理命令の取消しのところで,取消事由になるのではないかと思いました。もう一つは,既に亡くなっていたということが判明したときに,管理人によってされた処分行為がどうなるのだろうかということが,今の書かれていることだけで当然に導けるかがよく分からなかったものですから,その点,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 中田委員から御指摘いただいた点を検討することにいたします。現時点で,所有者が死亡していた場合の法律関係について,何か事務当局の方でお考えになっている理解があれば仰せください。 ○大谷幹事 現時点で,こうだろうというのがあるわけではございませんけれども,ここは不在者財産管理のところでも似たような話がございます。不在者が亡くなっていたときにどうなるのかというので,解釈上は管理人の行為は有効であるとか,あるいは管理命令を取り消すということについては,相続人が既にいるということで取り消すということになるのかもしれませんけれども,その辺りとの関係も踏まえながらもう少し検討してみたいと思います。 ○山野目部会長 所有者のためにというところの所有者は,所有者の一般承継人も含むという理解ですか。 ○大谷幹事 今,部会長がおっしゃったのは。 ○山野目部会長 死亡していた場合に,死亡した本人はいないわけですけれども,一般承継人との関係で管理人が仕事をしたものであるという説明で行くか,そうではなくて,もう空振りで,法律行為の効果の帰属先が存在しないという状態であると受け止めるかということについて,何か御定見があったら御紹介を頂き,なければ引き続き検討していただくということになるであろうと考えます。 ○大谷幹事 今の不在者財産管理人で言えば,亡くなった場合には,その相続人に効果が帰属するということになるはずですので,それと同じようになるのかなという印象ですが,再度検討したいと思います。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 これも,代理人的なものと見るのかどうかということとも関係してくるように思います。ここの管理人と不在者財産管理人について,当然に二つの制度を同じように考えているかどうか,そこも含めて御検討いただければと思います。それから,もう一つ,失踪宣告が後にあった場合どうなるかということも併せて御検討いただければと思います。取消事由との関係でもあります。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。御指摘のあった合わせて2点を検討することにいたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐久間幹事 沖野委員,道垣内委員がおっしゃった2点について意見を申し上げて,もう1点追加して別のことをお話しさせていただきます。   まず,15ページの,土地の所有者のためにということですけれども,道垣内委員が整理なさった,正にそのとおりだと思います。そうであるからこそ,ここは,土地所有者のためにというのを明言する方がいいのではないかと思います。それがなければ,申立てをした利害関係人等の利益のためにというふうなことも入って来うるのではないかという,誤解といっていいのか分かりませんが,そういう理解の余地が出てくることになりますので,私はそのようにしていただくのが好ましいのではないかと思っています。   もう1点は,8ページの先ほどの第三者に対抗することができないのところなのですが,これは前のとき,私は非常にいろいろ申し上げたところなのですが,やはり今でも納得できなくて,村松さんもおられるところでこれを言うのは少しあれだと思うのですけれども,確かに表題部所有者不明土地の法律のところでは同様の文言が入ったのですが,私はそれはやはり異例だと思うのです。どういうことかと申しますと,これはまず,7ページのイの①で,ここで選ばれる管理者は処分の権利まで一応全部持っているのだとした上で,②のところで,ただしその権限の行使には制限を掛けるのだとしているわけですよね。その上で,その権限の行使の制限について,対抗できる,できないの話になるのではないかと思うのです。法人などの,あるいは会社の取締役もそうですけれども,包括的権限を持っている人が,何らかの理由でというか,別のところで権限を絞られた場合に,それを善意の第三者に対抗することができないと,その並びかなと思うのです。所有者不明土地管理人は,この限定もどうかと思いますし,これをもってというのも,無効を対抗するのではなくて,権限の絞られているところを対抗することができないという話ではないのかなと思っています。   前に御説明を頂いたときに,私は,これは転得者も含めた第三者保護の問題ではないのかというふうに,善意の第三者はと書いてあるので,申し上げたところ,いや,違うのだと。表見代理などと並びの問題なのだと,確かそのような御説明だったと思うのです。そうだとすると,やはり権限の絞られていることについての対抗の問題になるのではないかと思います。法制上の整理というのには私は全然異論は差し挟みませんけれども,この法制上の整理をするときに,表題部所有者の法律のことばかり考えていていいのかどうかというのを,少し御検討いただければと思います,というのが2点目です。   3点目は少し違う話なのですけれども,これは言わない方がいいのかな,表題部所有者不明土地何とかの法律と,いろいろ合わせてというとおかしいけれども,参考にして案を設けられていると思うのですが,14ページのエのところで,これはその法律の23条1項にあるところを持ってこられているのではないかと思います。表題部所有者の23条の方は,4項とか5項,まだほかに訴えの中断の規定がその後あって,特に関係するかなと思うのは,命令が取り消されたというときに訴えが中断するとかという規定があると思うのですが,それは要らないのですかということを一つ聞きたいと思ったのと,それが要る要らないの議論よりは,これがここで発言しない方がいいのかなと思ったのですが,この規定は一体どこの法律に置くのだろうかというのがすごく疑問に思いまして,そういう非常に技術的なというか,規定を,これは民法ではないのだろうなと,民法ではなくて,訴訟関係の法律のどこかなのか,それともやはり特例法なのかと思ったので,具合が悪ければ発言を取り消してもいいのですが,この際,どうなのかというのは,現状のお考えを少し伺えればと思いました。 ○山野目部会長 大きく三つ分けておっしゃっていただいたうちの1点目は,善管注意義務の規律文言の表現について賛成であるという御意見を頂きました。最大の問題は,この善意の第三者に対抗することができないというルールの意味の理解,それから,それを踏まえての規律文言の表現の在り方ということになります。そのことについては委員,幹事から引き続き,この機会に御意見を更に承ります。   最後におっしゃったことは法制的なことであり,確かに悩ましいですが,我々が書く答申には何法を改正せよと書くものではありませんから,それはさきざきこちら側にすわっている事務当局の人たちに悩んでもらいましょう。佐久間先生がそれほど心配なさっていただかなくてもよろしいことですけれども,少し注意しなさいよという御注意は承りました。   佐久間幹事におっしゃっていただいた最も大きな問題である,この善意の第三者に対抗することができないというところについて,先ほどからの御指摘を踏まえて,もちろん更に検討を致しますけれども,本日段階でこの部分について御意見を仰せいただくものがありますれば,更に承りたいと考えますけれども,いかがでしょうか。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 善意の対象について若干,佐久間さんがおっしゃっていましたけれども,この善意の対象は,裁判所の許可があったと思ったと,ないことを知らなかったということですよね。つまり,通常の権限範囲のところは法定事項なので,それについて別に善意,悪意は語れないので,あるとすると,手続が満たされていると信じたということなのではないかという気がするのですが。 ○山野目部会長 佐久間幹事,何か御意見がおありですか。 ○佐久間幹事 それでいいと思います。そうすると無効の対抗ではないのではないか,権限が結局,きちんと行使されていないということの対抗なのではないかと私は思っていて,それは法人なんかの代表者のところと,どこで制限されているかというのは違うのですけれども,同じ話なのではないかと思ったというのが意見です。 ○山野目部会長 ③の本文で,裁判所の許可がなくて,権限がないと無効になるわけですよね。 ○佐久間幹事 うん,それが,だから。 ○山野目部会長 そこで,道垣内委員が理解としておっしゃったことと,佐久間幹事がおっしゃっていることは,内容的には齟齬しないものではありませんか。お二人の御意見の交換を伺っていて,そのように感ずる部分もございますが,申し上げましたように,今日の議事録を読み直して整理をすることにいたします。佐久間幹事,何か今,御発言があれば承ります。 ○佐久間幹事 いや,もう意見は申し上げたので。 ○山野目部会長 ありがとうございます。今の点について,ほかにいかがでしょうか。   それでは,ここのところは少し考え込んで,今日頂いた御意見をよく整理をした上で,改めて御提案を差し上げるということにいたしますから,様々な御意見をお出しいただきまして,誠にありがとうございました。   この論点以外のところで,部会資料33でお出ししている内容についての御意見を引き続き承ります。 ○中村委員 部会資料の4ページのウのところです。先ほど佐久間先生から御指摘があった点と関連するのですけれども,ここに書かれているように要件を充たせば複数の管理制度の管理人が選ばれ得るわけですよね。後に検討します部会資料34の11ページでも各制度の活用場面の整理という記述をしていただいておりまして,これらの記述自体はよく理解できるのですけれども,確かにほかの制度による管理人が既に選任されているということが察知されている場合でしたら,このように働くと思われますが,管轄が家裁と地裁に分かれていたり,申立権者が違ったり,土地に着目している人と相続財産に着目している人と,というような形で関わり方が違うような場合には,別の管理人制度に基づく管理人が選任されていることが察知できないままに申立てがされ,場合によっては複数の制度に基づく管理人が並び立ってしまうということがあるのではないかと思います。そして,その場合は,それぞれが裁判所から任命されてその権限の範囲内で行為をしていたとすれば,両方とも有効だということになりはしないかと,それがバッティングしたときにその関係がどうなるのだろうかということについては日弁連のワーキンググループで疑問が呈されておりました。   先ほど佐久間先生がおっしゃっていらした,それぞれの制度の優劣というのか,その関係をはっきりさせておくというのが一つの解決方法だと思いますし,また,先ほど今川委員が最後におっしゃっていた,各制度のレファレンスができるというのでしょうか,既に何があるのかということが分かるような,検索できるようなシステムを立ち上げるというのも一つの解決方法かもしれませんけれども,そこの調整を少しお考えいただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。制度間の競合について,どういうふうな方策を採って,可能な限り支障,不便を低減するかということについての弁護士会の御意見を頂きました。ありがとうございます。 ○蓑毛幹事 部会資料7ページのイ,所有者等を知ることができない土地の管理人の権限等について,意見を申し上げます。基本的にこの①から⑤に書いてあることについては賛成なのですが,今回,部会資料11ページに(4)として,共有持分を管理する所有者不明管理人の権限についてという項目ができて,新たに説明が加わりました。この点について,少し長くなるのですが,意見を申し上げたいと思います。   まず11ページのアの記載内容について異論はありません。所有者不明土地管理人は,部会資料11ページのア(ア)の共有物の管理に関する権限に基づいて,共有地の適切な管理を図ることができるということになろうかと思います。また,(イ)の共有物の分割に関する権限,これを所有者不明土地管理人が有することによって,他の共有者が所有者不明土地管理人から共有持分を譲り受け,あるいは所有者不明土地管理人が共有物分割請求訴訟の当事者となることが可能となり,前回の部会の部会資料30で扱った,所在不明共有者がいる場合の不動産の持分の取得の制度や,不動産の譲渡の制度と同様に,不動産の持分の集約及び共有状態の解消を図る制度になり得ると理解しました。  現行の制度がどうなっているかというと,共有者の1人が他の共有者に対して共有物分割請求訴訟を提起して,共有関係の解消を図ろうとする場合には,不明共有者について不在者財産管理人を選任して,被告とするか,公示送達の手続をとることになります。しかし,不明共有者が多数になっている土地の場合を考えてみると,個々の不明共有者ごとに不在者財産管理人を選任して,あるいは全ての不明共有者について調査報告書を作成して公示送達の手続をとるといった方法を採るよりも,複数の者の共有持分を対象として1人の所有者不明土地管理人を選任し,その者を被告として,共有物分割請求訴訟を行うことが出来れば,手続が相当軽くなり,またコストが低額になることが期待できます。   なお,この点に関して,本日のこれまでの議論の中で利益相反の問題が出ましたが,実はこの場面でも利益相反が問題になろうかと思います。部会資料では特に明示されていないのですが,共有物分割請求訴訟の被告になることが予定されている場合に,複数の不明共有者の共有持分を対象に1人の所有者不明土地管理人を選任できるのかということは,利害相反の観点から,問題になろうかと思います。   この点に関する私の意見ですが,部会資料の12ページにも書いてあるとおり,所有者不明土地管理人は,他の共有者の共有持分を取得したり,他の共有者に対して持分の価格を金銭で支払う方法によって共有物の分割をするということは想定し難く,共有分割請求訴訟において,所有者不明土地管理人は専ら代償金を受け取る立場になると思われます。そうだとすると,その金銭を適切に配分しさえすれば,共有者間で利益相反が生じることはほとんど考えられません。部会資料の15ページに書いてありますが,複数の不明共有者の共有持分を対象に1人の所有者不明土地管理人を選任することも可能とし,その場合は,土地管理人は対象とされた共有持分を有する共有者全員のために誠実公平義務を負うという規律を設けることで,足りると考えます。   次に,部会資料12ページには,遺産共有持分に係る所有者不明土地管理人の権限に関する説明が加わりました。この点についてはもう少し検討が必要ではないかと思われることがあります。まず,部会資料12ページのイ(ア)については,特に異論がありません。   次に,(イ)ですけれども,ここには「共有持分に係る所有者不明土地管理人が,その管理の対象となっている土地の共有持分を裁判所の許可を得て処分することができるが,持分の処分について他の共有者の同意を得る必要はない」ということが書かれています。この点について,まず,これは遺産共有に関する記載なのですが,相続開始から10年経過前で,具体的な相続分が確定していない場合には,所有者不明土地管理人が処分すべき土地の共有持分の具体的な割合やその価格は定まらないように思うのですが,法定相続分に従ってということになるのでしょうか,そのような形で共有持分を処分できるかについて疑問に思いました。部会資料31の11ページ以下の,所在不明相続人の不動産の持分の取得については,相続開始から10年が経過して具体的相続分の主張が制限されるときになって初めて,所在不明相続人の持分に相当する金銭を供託した上で,その持分を取得する制度となっています。所有者不明土地管理人が,裁判所の許可を得て,遺産共有の状態の土地の共有持分を処分する際も,具体的相続分の主張が制限される段階にならないと,実際上,処分は困難なのではないでしょうか。   また,相続開始から10年経過後であっても,遺産共有持分に係る所有者不明土地管理人が共有持分の譲渡を行うと,これは前回の部会で議論となったところですが,部会長の言葉をお借りすると,遺産共有と通常共有が併存してまだら状態になって,その状態が固定継続して複雑な関係になります。部会資料31の11ページ以下の,所在不明相続人の不動産の持分取得の箇所では,遺産共有と通常共有が併存することの問題を踏まえ,他の共有者の同意を得る必要があるかという観点から,甲案,乙1案,乙2案が示されて,議論した訳ですが,この局面でも,同様の検討を行う必要があるのではないでしょうか。   それから,同じく12ページのイ(イ)のところでは,所有者不明土地管理人は遺産分割の当事者になることはできないという記載があります。このこと自体について異論はありません。所有者不明土地管理人は物の管理人ということで整理されていますので,遺産分割の当事者になることはできないということになろうかと思います。したがって,遺産共有持分に係る所有者不明土地管理人が選任された場合に,遺産分割を行う必要が生じた場合には別途,不在者財産管理人を選任することが必要になると理解しました。ただし,前回の部会で議論された,部会資料31の7ページ以下の,通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則について,仮に甲案,すなわち共有物分割の手続の中で共有物分割としての遺産共有の分割をすることを認めるという案が採用された場合には,遺産共有持分に係る所有者不明土地管理人は,この特則に基づく手続の当事者になることができると考えられます。   メガ共有となっている土地については,土地の共有持分のうち複数の者が所在不明になっていて,かつ,その共有状態は通常共有と遺産共有が入り交じっているという状態も想定されると思います。そのような複雑な場合でも,1人の所有者不明土地管理人を選任して,その者を当事者として共有状態を解消できる手続がとれるのであれば,所有者不明土地問題の解決に向けて,制度の有効性が高まると思われます。   以上,いろいろと申し上げましたが,今回の部会資料の所有者不明土地管理制度の,特に共有持分についての土地管理人の権限等を検討するに当たっては,現行法における公示送達や不在者財産管理人を使った場合の手続との違いであるとか,前回議論した部会資料30,31の共有制度の見直しの規律の関係も含めて,制度設計をすべきだと考えましたので,意見を申し上げました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事から,弁護士会で出された種々の意見,併せて蓑毛幹事におかれての整理の御紹介を頂きまして,大変有益であると感じます。多くの有益な御指摘を頂きまして,その中でも比重の大きな問題といたしましては,三つほど今後の検討において必ず注目していかなければいけないと感じます。   一つ目は,共有持分を目的とする管理人の選任及びその権限の行使に当たって,複数の共有持分について共通の管理人が選任された場合に利益相反行為に該当するかしないかということについて,蓑毛幹事から理解をおっしゃっていただきました。これは理解,御意見をおっしゃっていただいたものでありますから,ほかの委員,幹事において御意見があれば承ります。   それから,2点目は,遺産に属する共有持分について,この共有持分を対象とする管理人が選任された局面について,部会資料12ページにおいて説明が若干されているところでありますけれども,ここについては更に考え込むべき事項があるのではないかという疑問を含む問題提起を頂きました。ここのところは,もし事務当局の方で今,所見があれば,述べてもらうことにいたします。   3点目は,遺産分割の当事者となる可能性について所有者不明土地管理人がなることはできないという基本的な方向が打ち出されているところでありますけれども,ここについては,それはなるほどと受け止めるとともに,前回審議の対象にいたしました部会資料30及び31で検討されたところの帰すうも踏まえて,全体として整合性が確保されるようにしていただきたいという要望を含む御意見を頂きました。ごもっともなことであると受け止めます。   事務当局の方から所見があれば御案内ください。 ○脇村関係官 遺産共有のところだけ1点だけお話しさせていただければと思いますが,この問題については,理論的な権限の範囲の問題と,実際の職務の,あるいは許可の在り方の問題,二つの問題があるのかなと思っていまして,御存じのとおり,遺産共有状態であっても法定相続分,指定相続分で持分を持っているということから,相続人もその持分を当然譲渡できますので,例えば現行法でも不在者財産管理人が選任されれば,第三者,あるいは場合によっては相続人に対しても譲渡できるということなのだろうと思います。それからすると,土地管理人制度を使って選ばれた場合にも,理論的には権限の範囲内に入ってくるということになろうと思いますが,他方で従前から,この具体的相続分の範囲が分からないままやっていいのかどうかとか,そういった議論もございますので,土地管理人はほかの財産の探索権は多分ない状況ですので,当然にこの譲渡するとの判断をすることは善管注意義務違反の問題等になり,あるいは裁判所の許可というのができるのかどうかというのは,一つ問題になるのではないかと考えておりました。ですから,そういう意味で二つの問題を並行して考えつつ,既存の,あるいは新しく作る制度との整合性も検討していきたいと思っています。 ○山野目部会長 蓑毛幹事において,お続けになることがあったらおっしゃってください。 ○蓑毛幹事 いや,今,脇村さんがおっしゃったとおりの理解を私もしておりましたので,これで結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ただいま蓑毛幹事がおっしゃった点でも結構ですし,ほかの点でもよろしゅうございますが,いかがでしょうか。 ○畑幹事 幾つか教えていただきたいのですが,14ページの訴えの辺りですけれども,表題部所有者不明土地に関する法律がこういうことになっているということだろうとは思うのですが,被告になる場合はともかく,原告になる方については,裁判所の許可とかは一切要らないのかという問題があるような気がいたします。実体法的な行為については,保存行為を超えるときは裁判所の許可というふうになっていることとの関係で,どうなのかという問題があるように思います。あるいは,表題部所有者不明土地に関する法律の立法趣旨のようなものがもしはっきりしているのであれば,教えていただければと思います。   他にも何点かあるのですが,申し上げてよろしいですか。 ○山野目部会長 お願いいたします。 ○畑幹事 これも前から問題があったのかもしれないのですが,管理人の報酬,これは手続法的な話ではないような気がするのですが,17ページの土地管理人の報酬等について,(3)のイのところですが,費用の前払い及び報酬を受けることができるというのですが,どこから受けるかというのが限定されていて,命令の対象とされた土地とか,その上にある動産とかから得ると限定されていて,これでいいのかというのは少し気になります。つまり,19ページの(2)の費用負担の規律のところで,最終的には土地所有者の負担ではないかということが書いてあって,規定は置かなくていいと書いてありますが,所有者の負担だろうということが書いてあります。そのことと,当該土地とかその上にある動産からと限定していることの関係が,どうなのかなという気がいたします。   例えば,土地が,それ自体余り価値がなくて,あるいはその上に廃棄物か何かがあってマイナスだというふうなときに,では報酬は受けられないのかというと,多分そうではなくて,その気がある人がいれば費用を予納して,そこから報酬が払われると。最終的にどうなるか分かりませんが,その予納した人が,もし所有者が見付かれば,その人に求償するというようなことに多分なると思うのですが,そういうことと,この当該土地等から報酬を受けることができると限定することの関係がよく分からないような気がしました。これも表題部所有者不明土地の法律で似たような条文になっているようなので,そちらの方でもある問題なのかもしれません。   それから,あとは少し手続的な細かいところで,これもほかの法律にもある問題だろうと思いますが,この土地管理命令は,非訟事件に多分なるのだろうと思うのですが,ここで裁判を受ける者というのをどう想定することになるのか。単純に考えれば所有者ということだろうと思うのですが,正に所有者が不明な場合に使われる制度なので,どう観念するのか,かつ,裁判を受ける者には裁判を告知するということになっていて,というように,非訟事件手続の組立てにも関わってくるので,そこは少し整理しておく必要があるかなという気がいたしました。 ○山野目部会長 3点お尋ねを頂きました。最初におっしゃっていただいたものが,14ページのエにおいて,訴訟当事者となる管理人という局面において,原告となるについて,そのこと自体の裁判所のコントロールは要らないかというお尋ねでありました。これは村松幹事ですか,宮﨑関係官ですか。 ○村松幹事 すみません,事前に準備をしてきたわけではないので,思い出す限りで,参考になればという趣旨で申し上げます。元々この所有者不明土地管理人に原告あるいは被告の適格を持たせるというのは,専属するというルールを置いたことの帰結として必要だからということで置いたものです。表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律では,本当に,もう所有者を法務局で様々な手法で探索しても全く分からなかったというケースだけが想定されておりますので,こういう規定でもないと,およそ何ともしようがなくなってしまうのではないかということで置いたものになっております。私の感覚としては,訴えの提起をするという局面については裁判所の許可を頂くのだろうというような気はしておりましたけれども,その当時どういうふうに整理したのか,すぐには思い出せないのですが,そういうことかなと思っておりました。   また,報酬の規定,17ページの方で,実際の運用は,先ほど畑幹事がおっしゃいましたように運用されるというところかなと思っておりまして,この規定自体を置いた趣旨の理解については,いろいろ理解はし得るかなと思いますけれども,所有者不明土地管理人が自分の管理の対象であり,かつ善管注意義務を負っている,その財産から報酬を得られるという,その部分についてルールを設ける必要もあるだろうということで,こういうルールを置こうというふうな発想だったような気がしております。   思い出す限りで,以上です。 ○山野目部会長 1番目におっしゃった,裁判所の許可が原告になるのに要るであろうという村松幹事のお話は,民法103条の権限を越える行為について,裁判所が与える実体法上の許可が要るというお話をされているものですよね。訴訟行為としての訴え提起には格別,許可が要るとは考えていなかったという御説明を今,頂いたと聞いていいですか。 ○村松幹事 すみません,にわかに当時の整理がどうであったか思い出せません。 ○山野目部会長 分かりました。宮﨑関係官から3点目のところも含めて補足のお話を頂いた上で,畑幹事の続きのお話を伺います。 ○宮﨑関係官 今回の部会資料でいうと15ページ目の下のゴシックの(2)のすぐ上のところに,原告となって訴訟提起をする場合には裁判所の許可が必要となるということは記載させていただいておりまして,今の不在者財産管理人などについても,訴えの提起などについては裁判所の許可が必要になると,ほかにも訴訟行為をするについて裁判所の許可が必要な場面もあると考えられておりますので,それと同じような考えになるのではないかと考えておりました。 ○山野目部会長 ほかの2点について,宮﨑関係官から特段のお話はおありですか。 ○宮﨑関係官 報酬をほかの財産からも支弁できるかどうかというところは,基本的にはこの補足説明の最後の19ページ目の(2)の費用負担の規律についてのところにも書いていますように,特段その規律を設けるまでもなく当然だというふうな考え方もあるのかなと思ってはいたのですが,もしかしたら表題部所有者不明土地法の場合にはあまり,それ以外の財産からということを考えにくいのかもしれません。こちらは所在不明の場合なども考えている関係上,そうとも限らないのかもしれないなとも思いますので,そこは引き続き考えたいと思います。 ○山野目部会長 裁判の名宛て人の問題は,何かお考えがおありですか。 ○脇村関係官 ありがとうございます。少し非訟についてしゃべらせていただければと思うのですが,畑先生がおっしゃっているとおり,非訟事件手続法では裁判を受ける者,裁判によって直接,権利関係に影響を受ける人については,告知しないといけないというふうになっております。今回の管理人についての作り方によってですが,今の原案ですと専属するということになっていまして,本人から一応,権限をとってしまうということになっていますから,非訟事件で裁判を受ける者に当たるのは間違いないだろうと思います。ただ一方で,正直,告知するといっても誰か,あるいは所在が分からない状態ですので,制度の作りとしては何も置かずに公示送達でやるという方法もあれば,失踪宣告でもとっていますけれども,告知自体は要らないけれども,公告などをすると,別途特別規定を置くということもあるのかなと思っておりまして,現実的に手紙を確実に送るというようなことは想定していないですけれども,公告なり公示なりをどういった方法でするのかについては,今後考えていく必要があるのかと思います。 ○山野目部会長 畑幹事,お続けください。 ○畑幹事 おおむねお話は分かりました。例えば破産管財人でしたら,訴えの提起には裁判所の許可が必要だと条文にはっきり書いてあるので,どうなのかなと思ったのですが,実質が固まっているのであれば,あとはそれをどう法制化するかという問題かなと思いす。 ○山野目部会長 ありがとうございます。それでは,最後におっしゃった点は引き続き,法制化の際に検討することにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○今川委員 補足説明の21ページの2段落目ですけれども,所有者不明土地管理人が土地を売却し,その代金を供託することによって管理命令が取り消された場合には,当該命令の抹消の登記と土地の売買を原因とする所有権の移転の登記がされると書いてあります。この登記の記載例等については今後検討されていくということだろうとは思うのですが,これを読みまして,売却と供託は必ずしも同時にされるわけではないということ,それから,仮に売却して代金を供託したとしても,管理命令の取消しと必ずイコールというわけでもないと思われます。売却許可があって所有権が移転する,それが転々と移転する場合もありますが,その後,取消しの裁判があった場合は抹消登記の嘱託をするというように,現時点ではそう考えておられるということなのですかという確認です。   というのは,こういう管理人が登記されるというのは初めてのことですし,表題部所有者不明土地法の嘱託登記についても,まだ公表されておりませんので,どうなるか分からないのですが,管理人の登記があって,売却された場合,裁判所の許可を得て売却しているので,当該不動産についての管理は終了していると,代金を管理しているかどうかは別として,当該不動産についての管理は終了しているというのはそこで分かるわけでして,その後,ほかの原因でもって取り消されたときに,その管理人の登記も抹消するというような方向で考えておられるのだろうと思ったので,その点だけ,今後のこともありますので,どのようなイメージを持っておられるか,もしその今イメージがあるのでしたら,教えていただきたいと思います。 ○山野目部会長 所有権の移転の登記と,それに相前後して行われる供託及び関連する,当事者が申請する登記,あるいは裁判書記官が嘱託する登記の前後の関係を明らかにすることを中心とする手順は,今の今川委員の御注意を踏まえて,これから整理を致します。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   そうしましたら,今日は一つ一つ論点を繰り返しませんけれども,部会資料33で御提示申し上げている所有者不明土地管理制度について,引き続き考えを深めなければならない多岐にわたる御指摘を頂きました。これらについて議事の整理を重ねるということにいたします。   部会資料33までの審議はここまでといたします。休憩いたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして,本日の2番目の部会資料,部会資料34をお取り上げください。財産管理制度の見直し,中身の題材としては不在者財産管理制度及び相続財産管理制度を取り上げることにいたします。   この不在者財産管理制度と相続財産管理制度には類似,共通する側面もございますけれども,一応別個の制度でございますから,まずは,補足説明も含めますと1ページから4ページのところで扱っております不在者財産管理制度についてお諮りを致します。   中間試案以来お出ししているものを大きく変えている部分はございません。不在者財産管理制度につきましては,管理すべき財産の全部に係る金銭の供託について,その供託をすることができ,その際には手続を終了させるという方向の提案を差し上げております。あわせて,管理人として選任される者の職務の範囲を限定するという規律にすることが適切かどうかということについては,委員,幹事の皆さんの御意見を問いたいという問題提起も含んでございます。   それでは,この不在者財産管理制度のところについて御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連のワーキングでは,この不在者財産管理制度,それから,後の相続財産管理制度全体を通しまして,大変分かりやすく使いやすい制度になりそうだということで評価する声が多数でした。   この不在者財産管理制度の見直しに関しましての(2)ですけれども,これについては現行法の下でも,大阪の例では,裁判所と弁護士会が協議をして,職務内容を限定して,それを前提として職務遂行期間を予想した上で予納金を絞るといったことが運用として行われているという情報提供がありました。このように,今回の御提案のような定めがなくても運用で対応できるのかもしれないのですけれども,しかし,法律専門職ではない人が管理人になるような場合ですと,やるべきことがはっきりしていて,これはしてもいいけれども,これはできないということが明確であった方が対応しやすいということもあるかもしれませんので,(2)のような形であらかじめ定めることができるという定めぶりというのは,それにも対応できるので,よいのではないかと考えます。それから,(3)についても特段の異論はございませんでした。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を承りました。   ほかの委員,幹事の御意見をおっしゃっていただきたく存じます。いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 大きく2点ございまして,1点目は,供託の場合のケースで,今後,供託により管理人選任命令が取り消され,更にまたその後に課題が生じた場合に,不在者財産管理人が選任されるという事態も生じると思われますが,改めて管理人が選任された場合に,その管理人において供託金の有無を明確に確認した上でその管理事務を遂行する必要があると思われるところ,その供託金の有無をどういう形で確認することができるのかという点について一つ教えていただければ有り難いと思っております。   2点目につきましては,こちらの部会資料の(2)の職務内容の限定のところでございます。先ほど中村委員からも御指摘のあったところではありますけれども,まず,この職務内容を限定するというときにどういう要件を考えるのかというところが,少し部会資料では明確ではないように思いましたので,ここの点の要件の明確化が必要ではないかと考えておりますが,部会資料は不在者の利益にかなうことを要件としているようにも読み取れるところでございます。このときに,部会資料にも書いてありますけれども,やはり管理人の選任の要否を判断する際,利害関係人という立場にある申立人の主張及び提出資料しか把握できないときに,その管理人の職務を限定することが不在者の利益にかなうかどうかということを適切に判断することがなかなか難しい面があるのではないかとも考えております。   大阪の運用について,その詳細を十分に把握しているわけではございませんが,飽くまでも選任されているのは不在者の利益の全体を保護することを職務とする不在者財産管理人であり,その点の善管注意義務がある形での選任にはなっていますけれども,明確に主文で職務を限定するというようなことが,これだけの資料でできるのかどうかというところが少し不安に感じるところでございますので,この点には注意する必要があるのではないかと思っております。   また,実際に管理中に新たな対応すべき課題で,それが利害関係人としては特に関心のないような課題が発見された場合に,果たして,主文で職務を限定したときに,この課題にどういうふうに対応していけばいいのかというところの規律が明らかではなく,この場合に不在者の利益を害するおそれがあるということについても留意する必要があるのではないかとも考えております。   ですので,人を単位とした不在者の財産全体を管理するという不在管そのものの制度趣旨との整合性なども含めて,慎重に御議論いただければ有り難いと考えているところでございます。 ○山野目部会長 供託の有無の確認の方法と,職務内容の限定に関わる疑問点の2点についてお尋ねを頂きました。事務当局から案内を差し上げます。 ○大谷幹事 1点目の,供託の事実をどのようにして把握するのかについてですが,官報公告をするということになるのかと思いますから,公告が一つあるのと,不在者財産管理の場合は,恐らく一旦,特定の家庭裁判所で財産管理人が選任されて,またそれが取り消されて,必要があるので再度,選任されるというときに,同じ家庭裁判所で選任されることになるのかと思いますけれども,家庭裁判所の中で記録が残っていれば,それも見ていただくということがあり,公告と家庭裁判所の中の記録で御確認いただくことになるのではないかと思います。   職務内容の限定に関しましては,今ここで正に,大阪の話もありましたけれども,現行法でも対応できるので,必要がないのではないかという御意見も,日弁連の方がそうだということではなくて,そういう御意見もあるでしょうし,ここをきちんと定めるのだとすれば,きちんとした要件が必要になってくるとは思いますけれども,そもそもこの限定の規律を置くことについてどのように考えるかということで皆様の御意見を伺いたいと思って,このように書いているところでございます。 ○山野目部会長 宇田川幹事,お続けください。 ○宇田川幹事 ありがとうございました。まず,供託の関係のところにつきましては,官報公告されるというのはもちろん承知しているのですけれども,実際に官報公告されたことを財産管理人が検索などをするということが可能なのでしょうか。そこら辺のシステムの点が不勉強なもので,そういったことができるという前提でお話しされているのかどうかが分からず,そこも,もし何か教えていただけるようなことがあれば,御教示いただきたいと思います。 ○宮﨑関係官 官報の検索のサービスのようなものがあるので,それを使って検索していただくということはあり得るのかなとは思っていました。 ○宇田川幹事 それはできるという理解をしてよろしいのでしょうか。 ○脇村関係官 すみません,供託については,もう一度整理して答えさせていただきたいと思います。先ほど参事官の方から説明させていただいたのは,取消しする際には,供託書の写しといいますか,供託しましたということの届出を裁判所にされると思っていましたので,仮に検索がなくても,恐らく家庭裁判所の中で,どこで供託したかという記録が残っているのではないかということから,少しお話しさせていただいたのですけれども,それとは別に,法務局の方でどういったことができるかについては,少し整理した上でまた検討させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 供託の点は,法務省事務当局において若干調査の上,また裁判所に御相談させていただくことにいたします。職務内容の限定の方について,宇田川幹事から続けることがあれば,おっしゃってください。 ○宇田川幹事 職務内容の限定のところについて,大阪家庭裁判所の運用についても,全体的な資料を見て,この事案であればこの職務を中心にやっていくということができると,そういう運用で対応されているというようにも思われるところでございまして,そういった運用も,事案に応じてあるのかもしれないとは思いましたけれども,そこを正に制度の運用全般としてそういう形で規律するのがいいのかどうかということは,改めて慎重に検討する必要があるのかなと思います。 ○山野目部会長 大阪方式と仮に呼ぶことにいたしますと,中村委員から御紹介を頂いた大阪方式が工夫された良い手法であるということについては,恐らくどなたも異論がないであろうと感じます。その上で,そこの大阪方式で行われていること,あるいはその実質をどこまで法文として規律として明示し,表現していくか,そういうふうに明示することが適切であるかといったようなことになると,幾つか悩ましい部分が出てくるかもしれません。仮に,職務内容を限定することができるという文言であったとしても,それを示すということでいった場合には,もちろんメリットとしては,終了時期の見通しが立てやすくなって,それに関連して予納金の額を低廉なものに抑えることができる見通しが出てまいります。反面において,宇田川幹事のお話の中に御心配として披瀝されていたことですけれども,不在者自身から資料が出てくるということは物理的に想定できませんから,申立人から出された資料に専ら,又は主として依存して裁判所が判断をするということになります。それで果たして適切な職務内容の限定ができるかといったようなことは,なるほど悩ましいとも感じます。補足資料の説明ぶりが不十分ではないかという宇田川幹事からのお叱りでしたが,そこはむしろ十分なものを用意することになかなか難があるのではないかという気持ちが,露骨には申していませんが,部会資料の補足説明の中に,気持ちとしてあるかもしれません。   さらに観点を付け加えますと,このたび所有者不明土地管理制度が用意されますから,ここのところで職務範囲の限定ということを規律上の表現として行ったときと行わなかったときのそれぞれについて,休憩前に御議論いただいた部会資料33で創設される制度との役割分担をどう考え,どう説明していくかといったようなことにも心配りがされてもよいかもしれません。それらのことを踏まえて,引き続き検討していかなければならないと感じます。   今の点でもよろしいですし,ほかの点でもよろしゅうございますが,引き続きいかがでしょうか。 ○松尾幹事 今,山野目部会長がおっしゃった所有者不明土地管理制度との関係で,一つ確認したい点がございます。不在者の財産管理人については,所有者不明土地利用の円滑化に関する特措法38条で申立権者の特例として,行政機関の長等にも,所有者不明土地について適切な管理のために特に必要があると認めるときは,家庭裁判所に対して民法25条の規定による命令を申し立てることができるという制度が創設されております。今回,所有者不明土地管理の制度が創設されたとした場合に,この特措法38条の位置付けが,所有者不明土地管理制度の方に付随して,そちらの申立権者の方に行政機関の長等に関する規定も移行していくのか,あるいは,これはこちらでそのまま残しておいて,不在者財産管理人の申立てにも使えるとしておくのか,これはこの制度の目的,それから,所有者不明土地管理制度と不在者財産管理制度との関連性といいますか,役割分担をどう考えるのかということの一環として,整理が必要と思いました。   それとの関係で,利害関係人の範囲については,従来の不在者の財産管理に関する処分の命令の申立権者の規律は特に変えないということで,役割分担を図っていくことでいいのだろうかと私は思っております。そうなると,例えば隣地所有者は必ずしも入らないという解釈がされてきたと思いますが,ここは不在者の利益を中心に考えていくとということでよいと考えます。一方,所有者不明土地の管理という要素が出てきた場合には,別途の考慮もプラスアルファで入ってくるということであるとすると,所有者不明土地利用の特措法38条の特例は,どちらかというと所有者不明土地管理制度の方にくっついていくのかなという感じがしますけれども,それでいいかどうかということを確認したいと思いました。 ○山野目部会長 確認とおっしゃいましたが,松尾幹事として,観点の整理と意見を述べていただいたと受け止めることでよろしいですか。 ○松尾幹事 はい,そうです。 ○山野目部会長 御意見を受け止めました。その上で,法務省事務当局の方にお願いですけれども,所有者不明土地管理制度,部会資料33の制度の申立権者については,既に規律の提案があるところでありますけれども,松尾幹事からの問題提起を受けて改めて考えてみますに,民事の法制の規律として,ここに地方公共団体というものを加えることがよいかどうかの適否を検討していただき,ましょう。その上で,仮に民事の法制に置かないということになる際には,今後,関係法律の整備等において,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法を今般,民事法制の見直しと連動して,所有者不明土地管理制度の活用を請求する主体として地方公共団体を加えることの適否ということを国土交通省に検討してもらう必要があります。本日,国土交通省の関係官は欠席しておりますから,事務当局において向こうの方に,論点として今後検討していきたいということの問題提起をしておいていただきたいと望みます。   松尾幹事,ありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○國吉委員 不在者財産管理人のこの制度なのですけれども,実は私ども土地家屋調査士も,特に境界の確認の項目に対して,この不在者財産管理制度を利用する場合がございます。恐らくその場合には,ここにありますとおり,先ほどの大阪方式と言いましたけれども,職務の権限を制限した形で選任されるという形になろうかと思いますけれども,取り分け,この職務の権限を規律として定めるという方式もいいのかもしれませんけれども,やはり今ありますように,取扱いの中で柔軟に考えていただけるということであれば,特に定める必要もないのかなと思いますし,また,その職務が終了した時点で,当然ですけれども,退任をするという形になるかと思いますが,その退任の方法も,できれば,職務が限られているものですから,その職務権限が終了した時点で,当然ながら退任をする手続としても,職権でもできるというような形で,制限されることがいいのではないかと思っています。特に不在者の財産に対して,境界の問題もそうですけれども,不在者の権利をきちんと守るという観点からも,こういった制度を活用できるすべをより一層高めていただけたらと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。御意見を頂きました。   引き続きいかがでしょうか。   それでは,不在者の財産管理については特段なければ,御意見を承ったという扱いにさせていただきます。   続きまして,部会資料の4ページから,相続財産管理制度の見直しという2の項目を立てて問題提起を差し上げているところでございます。その中身でございますけれども,(1)のお話と,後ろの方の(2)の相続人不存在の場合の手続,期間の短縮の話は少し性格が異なっておりますから,ひとまずは部会資料の,補足説明まで入れますと4ページから20ページまでになりますけれども,相続財産の保存に必要な処分の見直しという部分に限って御意見をお尋ねすることにいたします。   この2の「(1)相続財産の保存に必要な処分の見直し」という項目で問題提起を差し上げている事項は,すなわち中間試案以来,民法918条2項が定めている現在の相続財産の管理の制度が当事者から見て必ずしも使いやすいものになっていないという問題意識に立脚いたしまして,現行法のように限定承認,相続放棄のような局面に分かれて置かれている相続財産管理の制度を統一的,一元的なものとして構築し直すことを構想し,あわせて,その中で共同相続の場合における遺産分割前の相続財産の管理や,相続人があることが明らかでないという場合における,専ら管理にとどまる管理のためにも,この統一的な制度を用いることができるようにしようということが構想されているところでございます。おおむね中間試案で出しているものと同様のものを,各方面からこの間もらった意見などを踏まえ,改めて整理検討し直した上で本日,お出ししてございます。   この2の(1)の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連のワーキングでの意見を紹介させていただきますと,この相続財産の保存のための包括的な相続財産管理制度を設けることについて,全体として賛成いたします。   1点,4ページのアの(注1)なのですけれども,これはなかなか難しい問題でして,弁護士会の方でも,どうした方がいいというふうな意見が出たわけではありませんけれども,大変難しい問題なので疑義のないように設計をしてほしいという要望が寄せられておりました。   それから,本文ではないのですけれども,補足説明の16ページの辺りで債務の弁済について記載いただいておりまして,従前は債務の弁済はできないという方向性で資料をお作りいただいていたと思うのですけれども,日弁連の方では従前から,場合によっては保存のためでも弁済をする必要がある場面があるのではないかと懸念する声が上がっておりましたので,ここにこのような方向性を打ち出していただいたことについて賛成したいと思います。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を御案内いただきましてありがとうございました。中村委員のお話,多岐にわたる御意見を御紹介いただいたところは,いずれも有益でございますとともに,取り分け4ページのアの(注1),(注2)とお出ししているところについては,委員,幹事の皆様方から御意見を伺った上で今後の検討を深めていかなければいけないと感じておりますから,どうぞ御意見を仰せください。   (注1),(注2)とお出ししておりますうちの(注1)の方は,この新しく構想される相続財産管理の制度に基づいて選任される管理人の権限と,当該相続財産について清算が必要であると認められる場合の清算の権限との関係の問題でございます。例えば,限定承認の場合に関して言いますと,限定承認の場合に清算の任を担う管理人は,現行法の936条で相続人の中から選任するとされておりますから,法律専門職のような人になってもらうことがかないません。そういう方が,こちらの新しい918条2項タイプの管理に基づいて管理人に選任されたときに,管理人のような性格を持つ存在が複数並立することになります。その関係をどう整理するかという問題提起でありまして,中村委員のお話では疑義のないようにしてほしいというお話ですが,正にそうですから,弁護士会の先生方の御意見はどうだったかと思い,やや期待していたところもありまして,何かおありでしたら,また引き続き御発言いただきたいと考えますし,ほかの委員,幹事の皆様方からも御意見を頂きたいと考えます。   それから,(注2)でお出ししている問題は,先ほど不在者財産管理について御議論いただいたことが,やはり相続財産管理についても問題になって,職務範囲の限定ということについてのその可能性を規律上,明示するかどうかということについての問題提起を差し上げています。   そのほか,中村委員からは債務の弁済の可能性等についても御意見を頂きました。ありがとうございました。   ほかの委員,幹事の御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○水津幹事 相続財産管理制度について,質問させてください。   財産管理制度では,財産の管理について必要な処分を命ずることができるとされることもあれば,財産の保存に必要な処分を命ずることができるとされることもあります。便宜上,前者を管理型とし,後者を保存型とします。  不在者財産管理制度等では,管理型の規律が定められています。他方,相続財産管理制度の見直しに関する提案は,918条2項等の規定による相続財産管理制度に加え,相続人が数人ある場合において遺産の分割がされていないときについての相続財産管理制度と,相続人のあることが明らかでないときについての相続財産の清算を目的としない相続財産管理制度とを新たに設け,それらの全てを包括して,統一的に保存型の規律を定めることとしています。  提案によって新たに設けられた相続財産管理制度のうちの前者,つまり相続人が数人ある場合において遺産の分割がされていないケースを念頭に置く制度について,918条2項等の規定に準じて,保存型の規律が定められていることは,理解することができます。他方,提案によって新たに設けられた相続財産管理制度のうちの後者は,相続人のあることが明らかでないケースを念頭に置くものです。提案では,この制度についても,保存型の規律が定められています。この制度について,不在者財産管理制度等とは異なり,管理型の規律ではなく,保存型の規律を定めることとしたのはなぜなのか,その理由が気になりました。 ○大谷幹事 中間試案のときからそうですけれども,相続財産管理制度というのは今,区々になっている,一部抜けている部分もあるという中で,918条は,いつでも相続財産の保存のために必要な処分ができるという形になっていることを基礎として,その抜けている部分について,それを埋めるというのを今回,一つの制度とするという形で御提案をしているところでございます。   今,恐らく水津幹事のおっしゃったのは,相続人全員が相続の放棄をしたなどの場合で,相続人があることが明らかでないときは,不在者財産管理と同じような規律にするということも考えられるのではないかというようなお考えなのかなと推測いたしますけれども,ここでは,そのような段階であっても,他の段階と同様に,相続財産全体について保存のために必要な処分をできるようにするという形で提案をしているところでございます。 ○山野目部会長 水津幹事,お続けください。 ○水津幹事 統一的な制度を設けることとしたい,ということであると理解しました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   先ほどの(注1),(注2)で問題提起を御紹介していた事項でない事柄についても,もちろん御意見を承りますけれども,これらの注記の点についても何か御意見をお持ちだったらどしどし御意見を頂きたいと望みますが,いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 中身のことではなくてすごく申し訳ないのですけれども,読ませていただいていて,相続財産管理人というのが,今回提案されているのは保存のためのものであるのに対し,相続人不存在の場合の相続財産法人のための管理人の場合と同じ言葉で使われていて,すごく分かりにくいのです。拝見していると,今提案されている保存のための相続財産管理人というのは,952条の管理人が選ばれたら職務が終了するというふうなことになっていますよね。だから,何というか,僕が頭が悪いからなのかもしれませんけれども,ぱっと分かるような言葉を何かこれから,せっかく整理されて,ある意味では大きく二本立てになるのであるとすると,今の相続人不存在の場合の相続財産管理人というのはもうほぼ定着しているのかもしれないので,新しく作る制度について何かネーミングを考えていただけるといいかなと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事におかれては,何かニックネームのアイデアはおありでしょうか。 ○佐久間幹事 ないです,申し訳ありません。 ○山野目部会長 それは事務当局の仕事だろう,何を言っているのだということでいらっしゃるかもしれません。佐久間幹事から,人々が制度を理解した上でこれを使ってもらうという観点からは大事な提案を頂きましたから,検討を致します。その際,もちろん管理人というふうに何がしか呼ばれる存在が,根拠規定を異にして,現在でもかなりの混乱の状態になっていますけれども,今後,整理統合するとはいっても,見方によってはかえって管理人の類の概念が用いられる場所が増えるということになるかもしれませんから,呼称も含め概念を整理するという必要があるということはもちろんでございまして,今,有益な提案を頂きました。   それとともに,少しそういうラベル,名称,呼称のことを考えていく際に悩ましいことは,相続人不存在で相続財産法人が成立する場合の952条の場合は,今,佐久間幹事におっしゃっていただいたとおり,法人になって952条の管理人が設けられたときには,この管理人の権限がオールマイティーでありまして,管理,保存のところも吸収することになりますから,918条2項型の管理は終了するということになりますけれども,反面,限定承認の場合には,お話ししている(注1)で御案内しているように,936条を根拠とする管理人と,このたび918条2項で選任されるということを構想する管理人との関係については,吸収にするかどうかということ自体が一個の論点になります。例えば保存管理人と清算管理人という二つの言葉を用意すれば全体がすっきりきれいになるというふうに中身が決まっているとすると,仮称保存管理人と仮称清算管理人で当面,一般に周知していきましょうということで済みますけれども,内容面での整理もしっかりした上で,それをどういうふうに分かりやすく表現していくかということが主題として存在しているとも感じます。これらの点を検討していかなければいけないということの確認の御指摘を頂きました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 2点ございまして,先ほど座長がおっしゃったことにも関連しているのですけれども,931条1項や,家事法200条1項等の既存の相続財産管理制度も併存するということであれば,やはり各制度による管理人の権限が競合する事態が生じて実務上混乱することのないように,管理人や相続人の権限や優劣について,現行法上解釈に委ねられている部分も含めて,御議論が頂き,その上で可能な限り整理をしていただくと有り難いと考えております。必ずしも規律に明確化するということではなくて,解釈,こういうことが考えられるのではないかということで立案担当者の解説でも結構なのですけれども,そういう形で明確化していくことによって実務上の混乱を避けることができるのではないかと考えております。   あともう1点,これとも似たような問題意識なのですけれども,相続財産の管理制度を一つにした場合に,相続人が明らかでないケースの場合,相続財産の保存を目的とする制度で,清算という終期がございませんので,このときに終期をどう考えるかということが問題になり,管理人において管理終了を見通した進行管理をするためには,「その他財産の管理を継続することが相当でなくなったとき」という取消し事由の具体的な内容について,できる限り明らかにしていただくことが実務上望ましいと考えているところでございます。   例えば,崖地の崩落防止のために,清算目的ではない相続財産管理人が選任された場合に,その崩落防止のための職務を終え,特に現時点では必要な管理行為がないというときに,ただ,管理人の報酬などの管理費用が掛かっていってしまうということになりますけれども,そういう場合には,その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときということで取消しをしていいということなのかどうかと,そういうような事例に基づいての御議論を頂けると非常に有り難いと考えているところでございます。 ○山野目部会長 今,宇田川幹事からお尋ねを含む意見というか問題整理を頂いたところでありまして,これは委員,幹事に御議論いただきたいことであるとは考えますけれども,この部会資料を作る際に事務当局がどう考えたかについて,何か考えがあれば聴いておきたいと考えます。アのただし書の事由に当たるという事態に後発的になったときにはこの管理についても終了するというか,取消しがされるということは明らかだと考えますが,宇田川幹事からお話があったように,アのただし書に当たるような事態になっていないけれども,例として幾つかお挙げになったように,事実上その管理を引き続き報酬を与えて続けさせることに問題があるというような場面について,どう考えるか,お考えがあったらお話しください。 ○大谷幹事 ありがとうございます。今の,特に最後のところでおっしゃっていた,もう予納金がなくなってしまうであるとか,費用支払のための財源がなくなって管理を継続することが難しいということになっている場合には,5ページのオの①のcの,その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときということになると理解をしております。そのほかにどういう場合があるのかというのは,今後また実務的な観点を踏まえて,どういう形で周知するかも含めて,考えてまいりたいと思います。 ○山野目部会長 宇田川幹事,余り今の段階で明確な答えになっていないのですけれども,引き続き裁判所とも御相談しながら検討していくということでよろしゅうございますか。 ○宇田川幹事 はい,引き続きこの点について御議論を頂きたいと思っております。あと,現行法上の解釈に委ねるという部分のところが,せっかくこういう制度にするのですから,少し明確化するといいなという思いで発言させていただきました。 ○山野目部会長 承りました。引き続きよろしくお願いします。   ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 また少し訴訟の関係でということなのですが,資料の15ページから,顕名について扱われておりますが,15ページから,実体法上はどうかということが書かれていて,16ページに入って,変動する可能性があるので,相続人の氏名を完全に表示しなくても何とかなるのではないかというようなことが書いてあり,しかし,訴訟では特定する必要があるということになっているようなのですが,実体法の問題として,相続放棄などで変動する可能性があるので特定するのは困るというのであれば,訴訟でもやはり特定するのは困るかなという気もするので,その辺り,何か考える必要があるのではないかという気がいたしました。   それから,今の話は法定代理人だということが前提になっているように思います。多分それは動かしづらい,17ページにありますように,判例上も訴訟でも法定代理人扱いというのがありますから,動かしづらいのかなとは思うのですが,それで大丈夫かという心配も若干ありまして,例えば,管理人と相続人が意見が違うというようなことはあり得る,取り分け,特定の財産が相続財産に属するのか,相続人の固有財産に属するのかというようなことが問題となったときに,その両者間で紛争を生じるということもありそうに思います。そういう場合,法定代理という位置付けだけで行けるのかどうかというのは,財産管理人の類いについていろいろな局面である問題ですけれども,ここでもそういう問題があるかなという気はいたします。   それから,最後は,先ほどの話と少し関係があるのですが,訴訟をするのに裁判所の許可が必要かどうかという問題が17ページから18ページに掛けて書かれています。ここでは,先ほどと違って,18ページの上から4段落目辺りですが,本文イ各号に掲げる行為の範囲を超える場合には,家庭裁判所の許可を得なければならないとなっていて,先ほどは原告か被告かという分け方になっていたように思うのですが,また少し違う線引きになっているような気もいたします。現行法でもある解釈問題だという気もするのですが,立法するに当たっては,少し考える必要があるかなと思いました。 ○山野目部会長 訴訟手続との関係で,立法するに当たって注意すべき点として,いずれも有益な御示唆を頂きました。宮﨑関係官に今何か考えがあったら御説明ください。 ○宮﨑関係官 ありがとうございました。18ページ目のなお書のところで,本文イ①各号に掲げる行為の範囲を超える場合,先ほどの一個前の部会資料とは少し表現を異にはしておりますけれども,現行の不在者財産管理の説明などでも,この民法103条の各号の範囲を超えるというふうなことで,裁判所の許可が必要となる場合がある,例えば,先ほどの訴えを提起するような行為とかというのが挙げられておりますので,裁判所の許可の要否というのは結局,民法103条なり,この実体的な権限のところの規定というのが根拠になってくるのかなと思いまして,こんな記載をしておりました。 ○山野目部会長 確認ですけれども,不在者の財産の管理の際に,やはり畑幹事から問題提起を頂いて,あの折に裁判所の許可が要るかどうかという議論をしたのと,ここでも類似の観点の議論が必要ですけれども,扱いが異なっていますか。不在者の財産の管理のときに議論の焦点が,原告の方になるか被告の方になるかに焦点が当たっていましたけれども,そういうことではなくて,どちらも103条並びのコントロールを受けるという点は,両方そろっているように御説明は聞こえますけれども,その理解でよいですよね。 ○宮﨑関係官 はい。 ○畑幹事 そうすると,資料33の15ページの記述が今おっしゃったこととはずれているという感じはいたします。それは書き方の問題ですが,訴訟行為が実体法的な保存行為かどうかと考えるということになると,そういうふうに解釈せざるを得ないかもしれないのですが,なかなか難しい問題が生じるだろうとは思います。実体法の規律というのは,事実関係とか権利関係がはっきりしていることを前提として,保存行為だとかそうでないとか言う話なのですが,訴訟というのは権利があるかないか分からないという話なので,103条に当てはめるというのもなかなか難しいところはあるかなと思います。最終的にはそこの解釈に委ねなければならないのかもしれないのですが,少し難しい問題は生じるだろうということは申し上げておきます。 ○山野目部会長 分かりました。書きぶりの問題と,中身の検討を深める必要と,二つに分けてお話をしますと,確かに部会資料33,15ページの書きぶりと,こちらの部会資料34の書きぶりが,同一内容のことを考えているけれども,必ずしも表現がそろっておりませず,ひょっとすると適切な理解を得る上で障害になるおそれがありますから,今御注意を頂きましたことを受け,次の機会以降,説明を整えるということにいたします。   それから,中身の問題ですけれども,確かに103条並びで,言わば実体法の行為について裁判所が許可を与えるということの一環として,その許可対象行為の一つに訴え提起,ないし重要な訴訟行為も含まれるという規律でいいだろうと漠然と考えてきた節がありますけれども,畑幹事から御注意を頂いて次第に分かってきたことでありますが,103条を超える事項の裁判所の許可は,その中身の相当性を判断して,実体法的な正に実質,内容について判断をするものであって,それと,およそ中身はともかく訴訟行為をすることの適否についての判断というものは同質のことですかと,同質であるにせよ,しないにせよ,それを同じ許可のルートで考えていいですかということについては,一度検討してみなければいけないと感じます。検討した上で,またその規律としては,なるべく統一的に簡素な規律を置いていくということになるかもしれませんけれども,いずれにしても御注意を頂いたところでありますから,検討させていただくことにいたします。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。   大体よろしゅうございましょうか。それでは,部会資料34の相続財産の管理についての918条2項の見直しについては,今日承った御意見を踏まえて議事の整理を続けてまいります。   続けてお諮りいたします。同じ部会資料34の20ページから後ろでありますけれども,(2)といたしまして「民法952条以下の清算手続の合理化」という提案を差し上げているところでございます。皆様に中間試案以降,御議論を頂いてきたとおりでありまして,現行法の問題点は,あらかじめ申し上げるまでもないことでありますけれども,957条の規定によって裁判所が管理人選任の公告をしてから,その1項前段の2か月,それから1項後段の2か月,さらに958条の6か月,ここまでで10か月が必要だということになりますし,部会資料では関係がありませんから直接取り上げていませんけれども,特別縁故者の財産分与の申立ての処理のことまで考えますと,これに更にプラス3になりまして,ある方が亡くなって相続人が分からないという事態になった場合に,13か月を待たないと終局的な処理ができないという姿が現行法の与えているルールでありまして,これについて,関係人の権利保障の適確に留意しつつ,必要な期間の整理をするということが喫緊の課題として要請されてきたところであります。それについて,中間試案で提示していたものについて若干の修正を加えた上で,20ページにゴシックの文章をお示しし,21ページと22ページに補足説明を添えてございます。この(2)のところについて御意見を承ります。いかがでしょうか。   弁護士会の先生方はどんな御意見だったか。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 1点,確認させていただきたいのですが,20ページの②ですけれども,これは①の公告があった後,2か月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは,この②の公告に入ることができるということで,最短4か月という理解でよろしいでしょうか。 ○宮﨑関係官 今回のやつですと,①の公告をまず,選任のときから始めなければならず,その期間はまず6か月ですよと。②で決めていますのは,①の公告の6か月間の最初の起算が始まった後,2か月以内に明らかでなかったときに,この次の請求の申出の公告をしなくてはいけなくて,それは2か月間を下ることができませんよという規律になっていますので,最短で行きますと,①の6か月間が経過する前に②の請求申出の公告の2か月間も終わるということに,最短4か月後に終わるということになりますので,①の6か月の後で①,②の公告の手続が終わるものだと考えて記載しておりました。 ○山野目部会長 ですから,中村委員御理解のとおり,4か月でいいのです。2プラス2ですから。 ○中村委員 それでよろしいのですか。ありがとうございます。それでしたら,日弁連のワーキングは賛成意見でした。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。大体ここのところはこのような方向で成案に向けて整えていくという御意向を委員,幹事から承ったということでよろしゅうございますか。   それでは,若干問題があるかもしれないというところを更に精査してまいるということにいたします。あわせて,法務省事務当局に対してお願いでありますけれども,仮にこの方向で法制の見直しがされるということになる際には,相続人不存在の場合の不動産登記に係る登記の手続を定めている民事局長通達,平成3年4月12日民三2398号など,関連の登記先例の見直しが必要になってまいりますから,徐々に関係する登記先例の整理,再検討の作業などにも着手していただけると有り難いと考えるところでございます。   ほかに部会資料34について御意見がなければ,今日のところでの部会資料34についての審議を区切りといたしますけれども,よろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   それでは,休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   続きまして,部会資料35をお取り上げいただき,これについての審議に進むということにいたします。   部会資料35は「不動産登記法の見直し(1)」ということでございまして,そのことに直接に関係する幹事,関係官を御紹介します。これまでもこの部会の関係官としてのお仕事をしてくださっていた方々でありますけれども,法務省の会議室の大きさの制約,そこに入ることができる人数の制約から,委員・幹事の皆様に直接に御紹介を会議の席上で差し上げる機会がありませんでした。この審議に入りますに当たり,改めて御紹介を差し上げます。3人の方の御紹介をします。   沼田知之関係官です。簡単な自己紹介をお願いします。 ○沼田関係官 所有者不明土地等対策推進室長の沼田でございます。どうぞよろしくお願いします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   続きまして,吉賀朝哉関係官です。 ○吉賀関係官 法務省民事局民事第二課に4月から参りました民事局付の吉賀でございます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いします。   続きまして,中丸隆之関係官です。 ○中丸関係官 同じく民事局付の中丸と申します。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 それでは,部会資料35の審議に進むことにいたします。   「不動産登記法の見直し」の(1)の部分についての審議をお願いします。   第1と第2に中身が分かれてございます。第1の方が「登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」ということでございます。第2が「その他の見直し事項」でございまして,この二つがやや性格を異にしますから,初めに補足説明も含めますと部会資料35の1ページから9ページまでのところで御案内を差し上げている「登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」をお諮りいたします。ここのところでは,御覧いただいているとおり,まず不動産登記法の70条第1項及び第2項の規律について,現在の規律よりも更に特例が機能する場面を拡大させるための所要の見直しについての提案を差し上げています。   それが(1)でございますが,(2)として買戻しの特約の登記の抹消の手続の簡略化についてもお諮りをいたしております。1の(1)と(2)でこのようなことを取り上げておりますけれども,その中で(1)の注記のところでは,配偶者居住権の登記について,やはり同様の抹消手続の簡略化の対象としてよいかという問題提起も含めているところでございまして,ここについては委員・幹事の御意見を頂きたいと考えております。   それから,第1の2におきましては,「法人としての実質を喪失している法人を登記名義人とする担保権に関する登記の抹消手続の簡略化」についてお諮りをしています。解散から30年,そして担保権が担保する債権の弁済期から30年が経過した場合をターゲットとして登記手続の簡略化を図るものでございます。   ここまで御案内いたしました部会資料35,1ページから9ページまでの範囲について,御意見を仰せくださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 日弁連のワーキングの第1関係の議論状況について御紹介したいと思います。   まず,1の(1)ですが,方向性につきましてはおおむね賛成でありまして,(注)の配偶者居住権についても議論はいろいろしたんですが,おおむね賛成という方向になりました。ただ,法務省令で定める相当な調査の内容について幾つか意見がありましたので,紹介します。   まず,補足説明5ページでの1行目,2行目にかけてのところなんですが,「その住所を本籍地とする戸籍や戸籍の附票の有無」とあるんですが,これはその登記に記載されている住所を指しているのかなと読んだんですが,だとすると通常そこが本籍地となるケースは余りないだろうということで,であるとすれば,提案として,登記記録上の住所氏名から本籍地を何とか探し出せるような仕組みを作れないものかなという提案がありました。   もう一つ,逆方向なんですが,今度は権利の設定から極めて長期間経過している,50年とか70年とか経過しているようなケースでは,逆にその調査を相当大幅に省略を認めるような例外の規定も考えられてよいのではないかと,そういう意見がありました。   次に,(2)の方ですが,(2)については本文の内容でおおむね賛成の方向ということになりました。ただ,意見としてあったのが,この(2)に関しては(注)の方で「登記義務者の所在が不明であることを要件とすることや」と書いてあることからして,所在が不明にはなっていない,つまり10年経過したら直ちに翌日にもう抹消の請求ができるという立て付けで考えられていると思うので,だとすると,最低限の手続保障として登記官が登記申請があったことを通知するぐらいはあってもいいのではないかという意見もありましたということを御紹介します。   2に関して,法人の実質を喪失しているものに関しては,提案の内容で賛成するという方向で大きな異論はありませんでした。   第1関係は以上です。 ○山野目部会長 弁護士会の先生方の意見を集約していただきまして,ありがとうございます。 ○今川委員 まず,第1の1の(1)については基本的に賛成であります。   (1)の(注)の配偶者居住権も先ほどの橋本幹事と同じで,配偶者の生活の場の確保を前提とするということで,簡易な方法で抹消すべきでないという意見もありますが,配偶者居住権は配偶者の死亡により消滅するということになっていますし,死亡による消滅のときは単独申請でできるとなっています。配偶者の使用収益を目的とする権利なので,地上権等と同様に考えてもいいのではないかという意見の方が多いというところであります。   それから,第1の1の(2)ですけれども,結論から言うと,本文の規定には反対で,(注)の登記義務者の所在が不明であることを要件とするということの提案に賛成であります。簡易な抹消を実務上望む声が大きいというのは理解はできますけれども,不動産登記法の共同申請という原則,それに対して例外を設けるということについてはやはり慎重に検討しなげればならないと考えています。   元々不動産登記法70条は,登記義務者の所在が知れない場合に例外的に登記権利者の単独申請を認めるというものです。そして,今回の提案は,存続期間が登記されていて,その期間が満了しているものについて,一定の要件の下,所在が知れないものとみなすという形で70条の特例を設けるというものです。その流れの中で,買戻し特約については70条から離れていきなり登記義務者の所在不明という要件を取り除いて,登記法60条の例外を設けるという提案になっています。   元々は,登記名義人の所在不明の対策として検討がされてきたものでありますので,共同申請に関する例外規定を置くという考え方に立つとしても,公示催告あるいは除権決定の手続までは必要とは思われませんけれども,少なくとも所有者の所在不明は要件とすべきであるというふうに考えます。   それと,期間の経過によって実体上の効果が発生する登記というのはほかにもあるはずですので,そちらの方にまで共同申請に関する例外として影響を及ぼさないかという観点からも,やはり本文の提案については消極であります。 ○山野目部会長 法人としての実質を喪失している場面の提案は,いかがですか。 ○今川委員 すみません,そちらについては賛成で,意見はありません。 ○山野目部会長 10年の期間の買戻しの登記の所有者所在不明の調査は必要だという司法書士会の御意見は理解いたしました。所在不明情報を登記官に対して提供して証明するという運びになりますでしょうか。 ○今川委員 はい,それでいいと思います。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   藤野委員,どうぞ ○藤野委員 ありがとうございます。   これも,これまで意見等を申し上げていたとおりの方向性で今回ご提案いただいているところでございまして,特に第1の1の(1)のところと,2ですね,特に企業の実務としては,担保権の抹消手続のところはかなりニーズがございましたので,それをこのような形で簡略化していただいて,かつ登記義務者の所在の調査方法のレベルに関してもこのような形で御説明いただいているという点には全面的に賛成させていただければと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   そうしましたら,大体登記手続の簡略化のところについては御意見を承ったというふうに考えてよろしいでしょうか。   部会資料において必ずしもこれで進みましょうという御提案の形にしていなかった点が一つ二つありまして,一つは配偶者居住権の登記の扱いですけれども,弁護士会,司法書士会,藤野委員などの御意見を伺うと,特段地上権や賃借権の登記などと扱いを異にする理由はないという御意見をおっしゃっていただいたように受け止めます。   それからもう1点は,買戻しの登記については,10年の場合であっても少し慎重にせよという御意見を弁護士会と司法書士会から頂きましたけれども,慎重にするということの中身については,御両所で同じことではない提案を頂いているところでありますから,これは引き続き検討をするということになろうと考えます。   ほかにありませんか。 ○平川委員 配偶者居住権の関係について,制度的にはこれでいいかもしれません。,ただ,登記の対象とするということになると,配偶者居住権というのはそもそも別の制度として作られたものです。これを登記の対象にすること,若しくは場合によっては登記をしなかったから住めなくなってしまうのではないかという誤解が生じかねないことも含めて,どういうことが起きるかという想像がつかないんですが,少し丁寧な説明が必要になる気がしました。   実際,配偶者居住権を得る方々は,かなり高齢の方も多いですし,どういう影響が出てくるかということについて,考えさせていただきたいのと,実施するとすれば設計に関する丁寧な説明も必要だと思ったところです。意見として申し上げました。 ○山野目部会長 配偶者居住権の論点について,平川委員から御発言を頂きましたから,ややガイドを差し上げますと,まず平川委員に向けてお話を差し上げるとするとすれば,配偶者居住権の設定の登記が抹消されたからといって,そのこと自体がオートマチックに実体上配偶者居住権が消滅したということになるものではないというのは当然のことでありまして,この場面でもその理解を前提に施策を考えているところであります。   そうはいっても,登記が抹消されることになりますと,その配偶者居住権は対抗力を失うということになりますから,第三者が出現するときには面倒な状況になるかもしれないという理解を前提に検討を進めているものであります。   そのようなことも含めて,あるいはそういう法律関係になるということの周知,一般への理解の促しも含めて,平川委員は少し危惧が残るから引き続き考えてみたいということを率直に仰せいただきました。   また,弁護士会と司法書士会からは,地上権や賃借権と同じにしてよいのではというお話も頂いたところであります。それはそれで御意見をおっしゃっていただいた際の御説明で理解いたしますとともに,この4月に動き出したばかりの制度であり,したがってこれで所有者不明で困ったという立法事実の蓄積はないことに加えて,今川委員御指摘のとおり,そういう言い方はやや不謹慎かもしれないですけれども,やがて69条で抹消することができるわけなので,果たしてここで同じ並びにするところまで,かなり必要度の高いものとして求められているかということをつらつら考えていくと,いささか考えさせてくださいと述べた平川委員のおっしゃり方って実感のあるお話であるというふうにも感じますけれども,どうですか,何か補足がおありでしょうか。 ○橋本幹事 補足なんですが,議論があったと申し上げましたけれども,我々もまだ配偶者居住権についての実務感覚を持っていないので,平川委員がおっしゃるように今後どうなるか分からないという前提で話したんですが,権利として延長が予定されていないというところを考えると,賃借権とかと実質的にどう違うんだろうかというような発想でいくと,除外する理由も余りないのではないかという理屈的な考えでして,心配したのは,例えば介護施設に入っている方が住民票を介護施設に移してしまったんだけれども,帰住先として元々住んでいた家があるという前提で入所していたんだけれども,その家を売り払ってしまったということで,帰住先が,戻る可能性があるかどうか分かりませんけれども,ないという状態になったときに,施設から追い出されるのではないかとか,そういう心配がないかということはちょっと危惧したんですけれども。   だから,平川委員がおっしゃるように,我々としても全然ノープロブレムだよというところまで割り切った上ではないので,分からないけれども区別する理屈もなかなか立たないねという限度での賛成という議論でした。 ○山野目部会長 橋本幹事のお話,よく分かりました。   続きまして,中田委員,その次,沖野委員に御発言をお願いします。 ○中田委員 ありがとうございます。   ちょっと私,誤解しているのかもしれませんけれども,配偶者居住権については存続期間が満了したということが前提となった規律なのかなと思ったんですけれども。つまり,配偶者居住権は普通は配偶者の終身の間ということで,亡くなられると終わりですけれども,しかし,一定の場合には存続期間を定めることができるというのが1030条の本文とただし書の規律だと思います。ここで問題となっているのは,存続期間の定めがあるという場合において,その存続期間が経過したというか,その期間が満了して,かつ相当な調査をしたにもかかわらずその所在が不明であると,そういう場合に限定した規律なのかなと思っていたんです。ですから,既に配偶者居住権は存続期間の満了により消滅しているということかなと思っていたんですが,そういうことではないんでしょうか。 ○山野目部会長 中田委員の御理解のとおりです。まれであるかもしれないですけれども,一つのみ心配なこととして残る論点は,1(2)の買戻しの登記の10年の場合にも同一構造のことがありますけれども,登記されていた存続期間について,錯誤を原因としてもう少し長い存続期間が実体上存在していた可能性が残る場合について,そういう可能性が僅かでもあるにもかかわらず,考えられている70条1項2項の見直しの新しい要件のみで処置してしまってよいかということがあり,これについて,僅かながら心配が残るかもしれません。中田委員,お続けください。 ○中田委員 私は,錯誤によって存続期間が違っていたという場面を想定していませんでしたので,そのような場合そもそも1030条の規律との関係でどうなるんだろうかということは,検討していませんでした。はここでは錯誤による取消しの対象になっているということが,もし前提となっているのであれば,そのような説明なり,それについての議論が必要かと思いました。 ○山野目部会長 先ほどの私の御案内の言葉が足りませんでしたけれども,申し上げた錯誤は民法95条の錯誤ではなくて,不動産登記法の更正の登記をするときの登記原因で,本当は違っていたんだけれども登記手続のときのミスで存続期間について別な数字を入れてしまったというときに,民法95条とは関わりなく錯誤を原因とする,全くこれは登記手続上の用語法である錯誤でありますけれども,原因とする更正の登記が申請される可能性というものが,頻繁にはないことでしょうけれども,僅かながらあるところが心配であるということを話題といたしました。そこまでそれを重く受け止めて考える必要がないという見方もありますけれども,そうではないという見方もあるかもしれませんから,今様々な御意見を交わしていただいているところではないかと感じます。   中田委員,何かお続けになることがあったらどうぞ。 ○中田委員 非常にまれな場合を想定しているということを理解いたしました。恐らく沖野委員も続けてこのテーマについての御議論だと思いますので,どうぞそちらにお進みください。 ○山野目部会長 ありがとうございます。沖野委員,お待たせしました。 ○沖野委員 ありがとうございます。   私もこの配偶者居住権ですけれども,ためらいの気持ちはよく分かるというところがございます。配偶者居住権は,本来は終身が基本であるものに特別に存続期間を定めている,定めの仕方も幾つかのルートがあるということではないかと思います。そうすると,制度の発想として基本的には終身にわたって,生涯にわたって居住を確保する,そのための制度だけれども,そもそも与える人の意思であるとか,遺産分割におけるいろいろな状況であるとか,総合判断をした結果,これで,このくらいの存続期間で十分でしょうという判断をしたときに存続期間が定められるものだというふうに理解しております。   そうしたものについて,その期間が満了していればもう直ちに終わりでしょうということで,登記が残っていればさっさと消すということでいいんだろうかというのは,気になることは気になりました。ただ,この場合というのは,他方で所在が知れないという場合ですので,したがって居住の実態が恐らくない場合で,生死もよく分からないという状況でしょうか,死亡の公的な記録はないけれどもと,そういう非常に特殊な場合ですので,そうだとするとここで対象とするという余地はあるのかもしれません。むしろ制度的には同じように考えられるのではないかという考え方は,その意味ではそうだろうと思われますけれども,ただ,ちょっとできたばかり始めたばかりの制度だということと,それから存続期間についても基本終身だけれども定めることができるという制度になっていますけれども,例えば今後の展開によって伸長を可能にすべきではないかとか,変更を可能にすべきではないかとか,そういう制度の見直しということもあり得るのかなと思われます。その考え方としては,基本は終身,生涯居住を確保するというところの制度ではないかという理解に立っておりますので,そうしたときに,現在のできたばかりのこの制度からすると,同じように考えられるだろうということで対象にしてしまって本当にいいんだろうかというのは,やややはり気になるところではあります。本当に煮え切らなくて申し訳ないんですけれども。 ○山野目部会長 沖野委員のおっしゃることは実感も含めてよく分かる部分がございます。   引き続き委員・幹事の御意見を承りたいと考えます。 ○道垣内委員 すみません,ちょっと私,不勉強でよく分からないんですけれども,配偶者居住権が例えば30年ということで定められて,30年というふうに書かれたときに,30年経過した後は対抗力は失われるんですか。   というのが第1の質問で,第2の質問は,これこそ不動産登記法をきちんと勉強すれば分かるような問題なんですが,山野目さんのおっしゃったミスですね,登記のときの。そのときに,本来30年と書かなければいけなかったんだけれども,20年と書いてしまったと。しかし,それを直す前に20年を経過して,現在23年目であると。この時点って,対抗力はあるんですか,ないんですか。この二つがちょっと前提としてよく分からなかったものですから。 ○村松幹事 1点目の方は,30年と決めて,そういう意味では処理している例ですので,30年を超えてしまえば権利は消滅しますし,そうすると,当然ながら対抗力を持つことはないという理解なのかなと思っておりました。それから,この話はほかの賃借権も含めてそうかと思いますけれども,その期間を登記するという形が採られているときに,その期間を経過した状態で登記は残っているんだけれども,経過はしている。そのときに第三者に売却された場合に,実際はもうちょっと長くなっていたというケースで対抗できるのかというのは,いろいろ調べてみたんですけれども,なかなか確たる文献で結論が示されていないというのが結論かなというところであったような気がしております。なかなかちょっと一概に必ず対抗できないはずだろうとまではちょっと言いにくいかなというところだったような気がしております。 ○山野目部会長 道垣内委員がおっしゃった後ろの方の問題は,配偶者居住権に限られた話ではなくて,かつ中間試案の前の段階の部会の審議においてやはり道垣内委員から全く同じ趣旨の問題提起を頂き,ほぼ似たような話を村松幹事から差し上げていたところの御記憶を蘇らせていただくことができるものと信じます。   道垣内委員,お続けください。 ○道垣内委員 いえ,僕も村松さんから説明を伺っていて,そういえば私が聞いていたんだということを思い出しました。だから後者は分からないといえば分からないんですが,それはめったにないということだと理解し,かつ,その生死が不明であるけれども,死んだら終わっているはずだというふうなことで,抹消を求めることが仮にできないとするならば,これは期間の経過の問題だよというふうにするのならば,別段皆さんがおっしゃっているような心配は別に存在しないように思うし,というよりは逆に抹消できないことにしても対抗力が失われているんだったらば,戻ってきたらもはやありませんでしたという事態は幾らでもと生じ得るのであり,私は別に配偶者居住権を含めたからといって特に問題があるとは思わないんですけれども。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   ほかに配偶者居住権の論点についていかがでしょうか。 ○中田委員 私の理解が不十分かもしれないんですが,配偶者居住権の存続期間を定める場合には,当然その遺産分割の際の財産評価に影響してくるわけで,そこで評価されたことが前提となって遺産分割が行われる。したがって,配偶者居住権の存続期間が満了した後に延長したり変更するということは,なかなか難しいだろう。これはもう自動的に消滅する。その上で更に居住者を保護しようとすると,賃貸借契約なり使用貸借契約なりによって,これは明示,黙示両方あり得ると思いますけれども,配偶者を保護しようということかなというふうに理解しておりました。   その上で,しかしここで問題となっているのは,配偶者の所在不明の場合でありますので,もう既にそこには住んでいないということになりますと,その保護の必要もなくなっているのかなと思って,そうすると特に残すまでもなく,配偶者居住権についても同じようにしても大丈夫ではないかなと思っておりました。  ただ,それにもかかわらず,沖野委員から,今後存続期間の伸長や変更の可能性があり得るということについてご発言いただき,そういう理解があるのかなと思って,やや今後の動きがあり得るということを御教示いただいたわけですけれども,そのような見方というのが配偶者居住権の存続期間の定めということとうまくつながるんだろうかということについて,更に補足していただければと思います。 ○山野目部会長 中田委員の御発言は,沖野委員にもし御発言がおありだったらおっしゃっていただきたいという御希望だったかもしれません。 ○沖野委員 御指摘ありがとうございます。   私自身が今後の見直しと申し上げたのはむしろ制度自体の見直しということを想定しており,配偶者居住権自体については対価性がある形で居住の保護を図るということに対する批判も非常に強いという面もありますので,まだ始まったばかりでこれから更に展開していく中で,立法的な手当てということをむしろ想定しておりました。ただ,そうだとすると,そのときに改めてまた変えればいいということも言えるかと思います。具体的に解釈論で展開していくという想定では必ずしもなかったのですけれども。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 今の御説明でよく理解することができました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○村松幹事 すみません,いろいろと御議論いただきまして,ありがとうございました。   私たちの検討でも,やはり理屈としては余り差をつける部分は正直ないのかなというところはございます。ただ,全般として所有者不明土地対策の一つの流れで,所有者不明土地ではありませんけれども,古い登記が残っていて,土地の流通や有効活用等を阻害するということが多く起きているので,こういった特例を考えましょうと,そういう文脈からしますと,配偶者居住権については,繰り返しですけれども,不動産登記法69条に基づいて死亡を原因としていずれは抹消ができるということになりますので,ニーズがどれほどあるのかという部分,あるいは対策を打つ必要性がどれぐらいあるのかという部分で,理屈の問題というよりは,むしろそこまで特例を設ける必要性があるのかという観点は,あろうかというふうに考えております。   今日,いろいろと御議論いただいておりますので,事務局の方で御意見など分析してまたお示ししたいと思います。 ○山野目部会長 中間試案の前の段階でも,配偶者居住権の登記の抹消の簡略化という論点がありますということは御案内申し上げていたところでありますけれども,あの際には規律全体の新しい像についての具体化がまだ進んでおりませんでしたから,配偶者居住権のところについて特出しで少し考え込んでおこうという論点は,結論が積極,消極のいずれになるにせよ考え込んでおこうということについて,委員・幹事の間で必ずしもその段階では認識が共通しておられなかった可能性があります。今日の御議論で,ここはいささかどちらの結論を採るにせよ考えなければいけないということを共有していただきました。そうだとすると,それで成果としては十分でありまして,これは最後に何か新しい作業が,積極になるか消極になるかで生ずるというものではありません。極端に申せば,最後に決めればいいということでもありますから,今日議論を交わしていただいたところを委員・幹事においてもまたお考えいただいて,次に提案を差し上げる際に御意見を更に御披瀝いただきたいと望みます。   ほかに第1の部分についていかがでしょうか。 ○畑幹事 この不動産登記法の70条の仕組みはよく理解しておりませんし,以前に御説明があったのを私が忘れているという可能性もあるのですが,5ページの公示催告手続における権利の消滅又は不存在の証明ということについて,これは公示催告手続の中でその権利の消滅又は不存在の立証が必要だという前提になっているかに思われるのですが,それは安定した解釈なのかということと,それはどこから来ているのかということを,ちょっと御教示いただけますでしょうか。 ○村松幹事 安定したものだと思って資料は出しておりましたけれども,文献等にもそのような記載があったような記憶でございますが,もしかすると疑義があるのかもしれないので,念のため確認させていただきます。 ○山野目部会長 畑幹事に御案内申し上げますけれども,現行70条1項2項の立てる建付けは,畑幹事の御理解いただいたとおりでありまして,そのことについて学説というか,学者は余り議論しませんけれども,解釈・運用の面での理解はここの部会資料に記されているとおりで安定しているというふうに考えます。民事局長の通達もあります。これは非訟事件手続法に基づいて申し立てる際,70条1項の文言でいいますと,登記義務者の所在が知れないということが要件でございまして,不動産登記令の定めによって登記義務者の所在が知れないことを証する情報というものを,直接に登記官に出すときにはそれを登記官,それから非訟事件手続法に則ってするときには裁判所に対し説明ができるようになっていなければいけなくて,どういうものを調べることが望まれるかが通達で示されております。   何か警察署に行って交番などで聴いてきて何とかみたいなものが挙がっていたり,やや時代を感じさせる部分もありますけれども,手順としてはそういうふうなことで運用してきたものでありまして,あるいは手続法の先生から見て少し不自然さを感ずる部分があるかもしれませんし,そういう点は御指摘いただきたいと望みますが,村松幹事が更に調べるということを御案内している点を留保した上で,ひとまずこのような御案内をしておきます。畑幹事においてお続けになることがあったらお話しください。 ○畑幹事 今部会長がおっしゃったのは,所在不明ということについてのお話であったように思うのですが,5ページの(4)に書いてあるのは,権利の消滅,不存在の話であるように思います。   権利の消滅,不存在の立証が必要だということが,繰り返しになりますが,どこから出てくるのかちょっと私にはよく理解できなかったということです。この資料だと,登記権利者であることを基礎付けるためにと書いてあるのですが,これも部会長に笑われるかもしれませんが,登記権利者という概念については不動産登記法の2条に定義規定がありますが,実体法的にそれを正当化する権利があるということは定義に含まれていないような気がするのです。何か勘違いしているかもしれませんが。 ○村松幹事 すみません,登記の方の70条1項と2項,こちらの手続についての解説の中には,所在不明の問題だけではなくて,権利の消滅についても立証が必要になるというような解説にはなってはおりまして,ちょっとその部分がどういう根拠できちんと説明できるのかという部分については,ご指摘を踏まえ,一度精査をさせていただきたいと思います。   除権の対象を何だと考えるのかとか,そういうところは多分理論的にはいろいろ問題になるところだと思いまして,もちろん今回も登記上の権利といいますか,登記を消すという部分に,あるいは登記に登記権利者として示されているというそこの部分に着目して消滅させるというのがあるので,恐らく登記権利者というような言い回しで従前,この登記の目線からの解説では言い表されてきたのかなというような気がしておりますけれども,おっしゃるように,もちろん実体的な権利とは別な問題でありますが,なので,ちょっとそこの辺りの表現も従前の不動産登記側からの解説にある程度依拠して,そういうものかなということで記載しておりますが,念のためもう一度精査をしてみたいと思います。 ○山野目部会長 畑幹事から御注意を頂き徐々になるほどというふうに感じてきたところがありまして,それはつまり現在の70条はこれを目して休眠抵当権の規定と呼ぶ人がいるくらいであって,主たるターゲットは担保権ですね。担保権の場合には,登記義務者と連絡がつきますか,弁済期から随分長い間経っていますかとかというような,訴訟であれば間接事実に当たるものを集めてくれば,比較的割と簡単に主要事実である担保権はもうないでしょうということを認定しても,それほど弊害というか隙間というか,問題がないような事例で70条が運用されてきたし,そういうところで併せて理論的な理解もその前提でされてきたのですね。   ところが,今度はそういうふうな何か所在がつかめないというような外形的な徴表から直ちに権利そのものが実体的に存在していないというふうに話を進めてよいですかということについて,論理的な構造は同じですけれども,実際の権利の性質を考えたときには,少し距離が広がってくるような側面がございまして,そうだとすると,今,畑幹事から御注意いただいたところについては,たとえ結論はこの方向でいくとしても,もう少しその説明ぶりについて丁寧なところが求められるということに気付かせていただいたと感じます。   村松幹事と私から今のような御案内を差し上げて,畑幹事におかれてお続けになることがあったら,お話しください。 ○畑幹事 いえ,引き続き御検討いただければと思います。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,今度はその先に進んでよろしいでしょうか。部会資料35の後半になりますけれども,9ページから後で「その他の見直し事項」ということで,三つの種類の事柄についての提案を差し上げています。一つ目は,「登記名義人の特定に係る登記事項の見直し」に関して,中間試案でお出ししているものと同じ趣旨のものをお示ししています。すなわち,登記名義人の特定をきちんと円滑に行うために,法人の場合にあって会社法人等番号を登記事項とし,その他個人の場合も含めてその観点から必要な事項について法務省令で定めるものを登記事項として加えるという見直しの提案を差し上げています。   2点目といたしまして,「外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策」として,国内における連絡先となる者の登記を必要的な登記事項として登記をしてもらうという提案をし,それに加え,外国に住所を有する外国人についての住所証明情報の見直しについて,規律の明確化,所要の規律の創設についての提案を差し上げています。   この2の(2)のところは,中間試案では外国政府が発行した住所証明情報に限ってこれからは受け付けますよという提案にしておりましたけれども,渉外登記等をしておられる司法書士その他の実務家の皆さんからいろいろ有益な御意見を頂いて,そのような限定をしたのでは必ずしも良い結果にならないのではないかという御意見も多々いただいたところであります。   狙いは,虚無人が登記名義人になることを防止するということでありますから,その観点から言えば,今般お出ししているような公証人の作成した書面で一定の要件を満たすものについても許容してよいのではないかというふうに考えられるところでありますから,中間試案からその段を修正したものを御提示申し上げています。   3として「附属書類の閲覧制度の見直し」については,中間試案の骨格を保って本日の御提案を差し上げています。正当な理由がある部分についての閲覧の請求をすることができるという一般原則と併せ,自ら申請人となってした登記の申請についてはその閲覧の請求をすることができるという規律を提案しているところでございます。このその他の見直し事項に係る細目の3点,御紹介したところについての御意見を頂きます。いかがでしょうか。   橋本幹事,次,今川委員お願いします。 ○橋本幹事 すみませんです。第2関係の日弁連の議論状況ですが,まず「1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し」については,会社の法人番号等を新たに追加するということについて異論はありません。   補足説明で書かれているマイナンバーを含めないという点についても異論はありません。   その他,12ページの一番上のところで,以上を踏まえ,それ以外どのように考えるかという問い掛けがありますものですから,提案として,個人の方について会社の役員登記のように選択的に旧姓の併記というものをできるようにしていただけないかという御要望を提案したいと思います。   それと,2の外国に住所を有する登記名義人の関係ですが,これについても今回中間試案と変更して連絡先を必要的に登記させるという点について異論はありません。異論はないんですが,ということは,これ登記申請に当たって連絡先を併せて明記しなければ,登記申請は受け付けられないという扱いになるんだろうと思うんですが,そこで割り切るという決断なんでしょうけれども,それによって外国に住所を有する方が日本の不動産の登記を取得できないというハードルが上がってしまうけれども,しようがないのかなということ。ただ,それとの関係で更に14ページの上から5行目のところで連絡先をなしといった記載に変更するということが認められるように書いてあるので,そうすると登記申請に当たって連絡先なしという登記申請は許されるんですかというのをちょっと質問としてお聞きしたいです。   それと,(2)の外国に住所を有する外国人の住所証明書の関係,これについても賛成です。ただ,確認なんですが,このうち公証人と言っているのは日本の公証人を指して言うという理解でよろしいのか,外国の公証人を含んでいるのかということをちょっと教えていただきたいです。   最後の3の「附属書類の閲覧制度の見直し」についても賛成の方向です。ただ,意見として,現状で閲覧のときに附属書類の写真撮影,閲覧が許可される場合に写真撮影も許されていると思うんですが,それを法務省令で写真撮影が許されるということを明記するということも考えていただけないかという意見がありました。   以上です。 ○山野目部会長 意見を頂いたところは承りました。   お尋ねが二つありました。 ○村松幹事 一つ目は,連絡先の登記について,そこが正に議論のしどころというところでございますけれども,どういう形で登記をしてもらうのかというところです。最初から連絡先なしというふうに登記することを認めるということですと,結局のところは連絡先の登記は任意にするということと違いはありませんので,それももちろん一つの提案です。中間試案はそういう立て付けでした。それに対してもう一歩進めるとすると,登記事項としては連絡先の登記ということで法務省令に委任をすると。その上で,新しく所有権の登記名義人になるときは登記を必ずしてくださいというルールにしておき,事後的な変更の局面についてはそれをなくすと。そういったことも含めて,全部それを登記事項というふうに表現する。今までは恐らくそういう整理のものは不動産登記の世界では余り考えられていなかったような気がするんですけれども,今回のこの連絡先の登記は正に情報提供の意味しかないものを新しく作ってという趣旨ですので,その趣旨に合わせてちょっと特殊な整理の登記事項というのが考えられるかどうかというところだと認識しております。   それから二つ目ですけれども,14ページの公証人ですね。確かに日本にいらっしゃって,外国の方が日本で取引するときに,住所証明情報を日本の公証人のところで作ったりすることもあるというところで,お聞きしておりまして,そういったケースについてどうするのかというのは一つの検討のポイントかと思います。差し当たりは,そういうケースも含めて,本国の方にしっかりした住所を証明する外国の政府なりなんなり公的機関の住所を証明するようなシステムがないということであるとすると,仮に日本の公証人が作成される場合であっても,もちろんパスポートなんかを持参して日本にいらっしゃっているでしょうから,そういったものを添付していただくというルールでもいいし,むしろその方が制度趣旨は貫徹できるような気もしております。ただ,ちょっとそこはまたよく検討してみないといけないかなと思います。 ○山野目部会長 後段の方は外国の公証人でもよいのですね。 ○村松幹事 おっしゃるとおりです。 ○橋本幹事 いや,分かりました。結構です。 ○今川委員 まず第2の1ですけれども,基本的にこれには賛成であります。それから(注)の表題部所有者を対象とするかということですけれども,これについても法人を識別するという意味では同じなので,表題登記についても適用するということが必要だろうと思います。   表題登記だけをして権利登記をしない場合もありますので,そのような場合に所有者を探索しなければならない場合もあるだろうというところで,(注)も含めるということで賛成です。   それから,その他ということで2点あります。   まず1点は,補足説明にありますように,外国人の場合のローマ字表記を追加するという点で,法務省において引き続き検討をする予定であると書いてありますので,是非そこは前向きに検討いただきたいなと思います。   それから,関連ですが,現行登記法においては所有権以外の登記で登記名義を取得する場合には,住所を証する情報を提供しなくてもいいということになっていまして,虚無人名義の登記が生まれる可能性があります。法人の場合は資格証明情報を提供しますので問題はないと思うのですが,個人の場合には存在しない住所等で登記される可能性もあるということになります。所有権以外の登記であっても,その名義人の所在が不明であるということで不動産の流通の障害となる場合が多いということが言えます。そのことを受けて,今回新しい制度として存続期間が満了している地上権等の抹消制度を導入しようと検討されているわけでありまして,所有権以外の登記であっても,名義人の探索がスムーズに行われるような仕組みを用意しておく必要があると思われます。   個人の場合の住所を証する情報は,ふつうは住民票になると思うんですが,住民基本台帳に記載された住所できちんと登記することによって,住民票の除票の保存期間が150年に延長されておりますので,名義人の探索がずっと楽になってくるのではないかと思います。   それから,2の(1)の連絡先の登記ですが,中間試案に対しては基本的には賛成だったのですが,義務的にするというふうに今回変更になっていまして,義務化しても実効性があるかなというのが我々の意見です。先ほども同じ意見がありましたけれども,義務付けをしてもその連絡先となる第三者がいない場合はどうするのかという問題と,それから補足説明では,不動産売買の仲介業者や資格者代理人というのも想定されているように見えますが,日本人がたまたま外国に住所を有していて,日本国内に親族等が住んでいて,そんな場合に連絡先の引受けをすることは,可能性としてはあるんですけれども,ただその場合は親族が連絡先になればいいともいえますが,登記名義人が外国人であった場合など,資格者代理人が連絡先となった場合に,資格者代理人という立場上,やはり名義人の現住所を把握し続けなければいけないのではないかとか,信頼関係があって初めて連絡先になるのではないかということをやはり考えますので,なかなか引き受けにくいのではないかと思います。   逆に,補足説明では連絡先である第三者が辞任したりした場合は,その第三者が自ら変更登記をできるとされていますから,実質的な関係が全くないのにビジネスとして一旦連絡先を引き受けておいて,登記がされた後,自らが辞任をして連絡先なしという登記をしてしまうというような行為が横行することも考えられるのではないかということで,提案されている制度設計のままですと実効性を少し考えなければいけないと思います。   連絡先の登記を任意としておいて,外国の住所で登記した場合は,住所を探索することが難しくなる可能性が高いので,所有者不明土地管理人制度や不在者財産管理人制度の利用につながってしまいますよということをしっかり周知して,任意ではあるけれども,できる限り実効性のある実質的な連絡先を登記しておくと,あなた自身にとっても有利ですよというようなことを周知していくということが大事かと思います。   それからもう1点,3の「附属書類の閲覧制度の見直し」ですけれども,内容については賛成をいたします。それと,正当な理由について,法務省の方で通達や通知等で運用上の指針を示していただくということですので,是非これは期待をしておりまして,そのようにしておいていただくことで実務がきちんと回っていくと思います。   それと1点,中間試案に対する意見でも述べましたけれども,現行の不動産登記法が成立する時点で議論がされていたこととして,不動産取引の安全であるとか不動産登記の真正担保の観点からすると,登記原因証明情報というのは元々閲覧されるのに意味があると,そういう性質も持っているということで,制度の導入があったと思っております。   例えば錯誤によって所有権が抹消されている,更正登記によって共有者の構成が変わっている,あるいは,真正な登記名義の回復を原因として所有権の移転登記がされているというような場合には,やはり現在の名義人の権原を調査するために登記原因証明情報を閲覧して確認してみたいという,そういう需要はあることはありますので,それも含めて今後の運用については検討を頂きたいと思います。 ○山野目部会長 司法書士会の意見を集約し,紹介をしていただきまして,ありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○國吉委員 今回の第2,登記名義人の会社法人等番号の記載には賛成でございます。先ほど今川委員からもありましたけれども,この補足説明の要は3の(2)のところに,表題部所有者については他の論点と併せて検討されるというふうに書いてございますけれども,他の論点というのは幾つもあると思いますけれども,一つは,所有者不明の財産の名寄せの問題ですとか,現実に例えば建物表題登記のときに会社法人等番号,当然ですけれども,今明示をして,それぞれの住所証明情報等の添付の省略をしております。なおかつ,表示に関する登記については義務というものがありますので,土地の表題登記,それから建物の表題登記についてもこの会社法人等番号を記載していただくということが適切なのではないかなというふうに考えております。   先ほどもありましたけれども,建物の場合ですと,例えばその表題登記のまま数年を経過し,例えば会社の本店を移転して初めてそのところで保存登記をし,新しい住所地で所有権保存登記をするというような場合もございますので,この表題部,所有者についても同様の手続をしていただければと思っております。   それから,外国の住所を有する登記名義人に対しては,我々土地家屋調査士の方からも隣地の所有者についての探索が外国人の方については非常に難しいということから,お願いをした事案でございますけれども,やはりこれも賛成でございます。是非,実務的な,先ほど今川委員,それからその他の委員からもありましたけれども,実際になしというような,連絡先がなしという登記ができればないようにというか,できれば全ての方が日本の住所を有する方の連絡先を登記できるような何かシステムを構築していただければと思っています。   それから,最後の附属書類の閲覧制度ですけれども,これも賛成でございます。是非正当な理由のある部分については,登記事項のみではなくて,やはり登記に関しては登記の附属書類の閲覧をせざるを得ないというところが多くございます。是非こういったものを作り上げていただきたいと思っています。 ○山野目部会長 國吉委員の御意見を承りました。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 私がこれからの発言は,私が申し上げるような制度が妥当であるというふうな意味でのものではなく,今回できるのはこの程度でしょうという話として聞いていただきたいと思います。  先ほど,外国に住所を有する方が登記名義人になるときに,日本に住所を有する人の連絡先を書かなければいけないということですが,日本の連絡先を書いたときに,その人が連絡を受けたら登記名義人にきちんと伝えなければならないとか,あるいは自分が死んだときには届け出なければいけないとか,自分がその人と仲たがいをしたときには届けなければいけないとか,そんなふうなことをしますと,連絡先の人の義務規定みたいなものを結構細かく書いていかなければいけなくなると思うんですね。私は,それはちょっと無理なのではないかと。ここは少しでもアクセスがしやすくなるように登記名義人に対して連絡をしてくれる人がいるならば,その人を書きましょう,あらかじめその人のオーケーも取っておいてねという程度のものでして,そして,後からなしにできるというんだったら,僕は最初からやはり任意のものだと思うんですが,なるべく書いてよねという,そういう話なのではないかなという気がします。   もう一つは,先ほどアルファベットを書くというのも,片仮名ではなくて,極めて重要だとおっしゃったんですが,そのとおりだろうと思います。ただ,私,韓国の友達,中国の友達がたくさんいますけれども,韓国の友達だって同じ韓国の文字によって示されている複数の人の名前がアルファベット化されたときには,人によって違いますよね。つまり,同じ苗字の人なんだけれども,その人がどういうふうにそれをローマ字に起こすかということは違うわけです。それは,中国の人も同じであって,同じ名前の人が結構違うアルファベットで書きます。   そうなると,それによって同一性の識別が完全につくなんていうのは,やはり無理なので,少しは追えるように,現在よりは追えるようにしましょうというだけの,だけと言うと失礼ですけれども,という話であって,ここに,11ページにAの氏名の片仮名による表記が異なっているときには,同一性の識別ができないというふうに書いてあるのを,だからローマ字というかアルファベットにしようというのですが,先ほど申し上げましたように,「A」という人の氏名のアルファベットによる表記は異なりうるわけでして,また,同じ人が一貫して使うかどうかもわからない。ちなみにどうでもいいんですが,道垣内というのは,私は多くはDOGAUCHIと書いているんですが,一部のクレジットカードはDOUGAとなっていまして,それを海外で使おうとすると,パスポートとつづりが違っており,しばしばトラブルになったりします。日本人だっていろいろな書き方があるわけで,それで一貫していないんですよ。だから,こういうのは少しは,一歩でも,一歩アクセシビリティーを高めるためにこういうふうにするというふうな制度だと考えるべきであって,それはやはり重くすることとか,余り期待するということは,私は避けた方がいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員から多岐にわたる重要でかつ面白いお話を頂きました。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第2の1の会社法人等番号の登記事項への追加の件ですが,この内容については一貫して賛成を申し上げているところでございます。あとは,恐らく今後議論される事項にもなってくるのだと思いますが,ここで会社法人等番号を登記事項としたときに,例えば住所の変更について登記を義務付けるという規律との関係で一度考えていただいてもいいのかなと思うところもございまして,要は会社法人等番号がきちんと登記されて,それに紐づく法人の名称や住所の情報については,以前提案で出たように商業登記簿の情報とリンクするというような話になってくると,逆に言うと法人の場合に住所変更登記の申請って本当に必要なのかとかという話とかがもしかすると出てくるのではないかなというところはちょっと思ったところでございます。会社法人等番号を登記事項として使っていただくこと自体には全く異論はないところなんですが,それによって何かほかのところが,義務が軽減できるようなところというのはないのかということも,もし今後御検討いただけるのであればと思っていたところでございます。   あと,今回の部会資料では外国において設立された法人の話も出てきていまして,こちらは,ご提案のような日本の会社法人等番号がないので設立準拠法国を記載するというような方向性もあり得るかなと思っております。ただ,国によっては,例えば会社法人等番号に相当するような制度がある国もあって,その信頼度が結構高い上に,日本からも登録事項を閲覧できるというような場合もあるものですから,登記事項とすることによって何を求めるかというところにもよるのだと思いますが,設立準拠法国の登記だけだとちょっと情報として追い切れないというところはやはりあると思うので,そこを踏み込んで更にそれぞれの国の例えば会社法人等番号に相当するようなものを登記事項とするかどうか,といったことも,もし検討ができるのであれば検討いただいた方がいいのかなと思ったところでございます。   更に申し上げますと,外国の法人が名義人になっている場合にも,恐らくその次に来る連絡先の登記の話というのは出てくると思うのですが,逆に言うと,外国の法人等が明確に特定できるのであれば,例えば法人等番号に相当するようなもので特定できるような場合であれば,ダイレクトに連絡を取ることもできるというケースもありますので,そうすると,ではその場合に連絡先の登記って本当に必要なのかどうかというところは一つ議論になり得るのではないかというふうに感じておるところでございます。   もちろん,その法人を特定するために必要かどうかということよりも,実際にコンタクトを取りやすく,少しでも取りやすくするということを重視するのであれば,外国の法人として特定できたとしても,実際に海外までアクセスするのは大変なので日本国内の連絡先を登記させるという考え方はあり得ると思うのですが,ここは何を重視するかというところによっても変わってくる話なのかなというところは思いますので,一つ意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 会社法人等番号の登記を求めることとした場合に,併せて整理した方がよい事項があるのではないかというお話はごもっともであると感じます。検討するようにいたします。   伊藤幹事,どうぞ。 ○伊藤幹事 ありがとうございます。   外国に住所を有する登記名義人のところで,権利取得時に登記事項とするというアイデアでございますけれども,同じ必要性を有する場面として,国内に住所を有していた人間が国外に転居していった場合というのも同じように必要なのかなと思うところではあるんですけれども,一方で,そのような場合転居した後に登記申請,国内の連絡先を登記するというのもなかなか難しいのかなというようなところで,ちょっと感想でございますけれども,そのような場面もちょっと想像してみたところでございました。   以上でございます。 ○山野目部会長 分かりました。   この方向で整備するなら,今の点の手当ては必要でろうと感じます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。   そうしましたら,2の「その他の見直し事項」というところについては,大筋お出ししているものについてはそれぞれ賛成であるという御意見を頂いたとともに,それぞれのところについて注意点を多岐にわたる仕方で頂きました。それらは引き続き事務当局において整理いたします。   この際,私の方から3点ほど申し上げておきます。   1点目は,アルファベットの記載をする必要性については,従来も指摘されていたことですし,中間試案の前の段階で吉原委員からこの方向の示唆を頂いていたところでありまして,今後は,法務省において,それを引き続き運用上の課題として検討していこうとしているところでもございます。   ここから先は,そちらでの検討に当たっての留意点になりますが,なぜアルファベットですかという問題についてその説明ができる,この方向でいくのであれば,その用意が必要であろうと感じます。一方では,登記事務のことを考えれば,登記官が判読可能な文字を用いてもらわなければいけないという要請があります。他方で,パスポートに記載されているアルファベットの表記というものを取り上げて登記していくことになるであろうと考えますけれども,パスポートの表記についての国際条約上,国際慣行上の規律との関係で,そちらはどちらかというと実務的というよりは理論的な説明を補わなければならないと感じられるところです。   2点目として,表題部所有者を特定するための登記事項の充実については,國吉委員のみならず,今川委員からもその御発言があって,御両職の世界の麗しき同盟であるとは感じますけれども,それはごもっともなことでありますと共に,表題部所有者だけ別扱いする理由は理論的にはありませんが,ただし,これはシステムとか予算とかいうことが関わってきますから,会社法人等番号であれば加えるのは簡単であるとしても,そのほかの法務省令で定める事項というものの中に,かなり実質的なものが場面によって入ってくるときには,会社法人等番号以外のもので何か入ってくるときのその取扱いが必ずしも全ての事項について表題部と権利部で同じにならないかもしれません。両委員の意見は意見として承りますが,ややそのような政策技術的な検討が必要な部分がありますから,そこはまた御理解を頂いた上で,土地家屋調査士会及び司法書士会とも御相談をしながら進めなければいけないと感じます。   それから,3点目はたくさん御議論を頂いた国内の連絡先の登記でありますけれども,今日はいろいろな意見を頂きました。任意的な登記事項とするか必要的な登記事項にするかという論点や,連絡先を「なし」という登記を認めるかどうかとか,それから最初に登記をするときに,そもそも最初から「なし」でいくという原始的に「なし」という登記申請を許容するかとか,伊藤幹事からは,ちょうどそれと裏返しという関係でもないかもしれないけれども,内国に居住していた人間が日本国外に転居するときにも求めなければ整合がとれないのではないかといったような多々の御議論を頂いて,伺っていて,いずれもなるほどというふうに感じました。   任意的な登記事項にするか必要的な登記事項にするかは,結局,委員・幹事の皆さんの思いはみんな外国にいる人は日本の国内連絡先をなるべく登記して,という施策の方向について同じでありましょう。それはそういうふうに前進させるべきであるというお考えでいらっしゃると感じますが,その上でなるべく登記してもらいたいという要請を個々の事案と向かい合った登記官が申請人に対して直接に示し,もうこの件で国内連絡先を登記していただかないと困りますというコミュニケーションをできる機会を必ずシステマティックに設けることとするか,そうではなくて,任意的登記事項ですからそれは要らないですとしつつ,法務局の脇か何かあたりにポスターか何か貼って,なるべく国内連絡先は登記しましょう,それでは皆さんよろしくお願いしますという,法務省の広報予算を使って法務局広報でするかという,どちらがいろいろメリット・デメリットを考えたときに政策としてコスト・パフォーマンスが良いですかということになってくるであろうと思います。   今日,なるほどそれぞれ悩ましい点の御指摘を頂きましたから,引き続き考えるということにさせていただきます。   部会資料の35全体を通じて何かさらに御指摘があったら承りますが,いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,部会資料35の全体について引き続き検討を進めるということにいたします。   本日お諮りすることにしておりました部会資料33,34,35の3件につきましては,委員・幹事の御協力を頂き,ここまでで内容にわたる審議を了しました。   次回会議の段取りについて事務当局から案内があります。 ○大谷幹事 本日も長時間の御審議をありがとうございました。   次回の議事日程ですけれども,8月4日午後1時から午後6時までという形でさせていただきたいと思っております。場所はこちら大会議室ですけれども,テーマとしては,現在,土地所有権の放棄,共有物の分割,それから不動産登記制度の見直しほかについて準備をしておるところです。準備ができたところからお取り上げいただきたいと思っております。   審議時間についてなんですけれども,次回からは,昨年までの取扱いに一度戻させていただきたいと思っております。今回よりも30分早い午後1時からスタートして,終了時刻は一応午後6時までとさせていただきたいと思います。   ただ,長時間にわたる審議になり,特にウェブ会議の皆さんもお疲れのところありますので,休憩を取るように努めたいと思いますし,また御審議の状況を踏まえて早めに終了するということもありますけれども,時間としては1時から6時までを確保していただければと思います。   また,次回の部会につきましても,今回と同様に基本的には会議室においでいただきますけれども,希望する方にはウェブで御出席いただくという形にしたいと思っております。 ○山野目部会長 第16回会議の開催の方法について事務局から案内・提案がありました。ただいまのことについて御意見やお尋ねがあれば伺います。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,特段の支障がない限り,次回第16回会議を今御案内申し上げた方法で開催するということにいたします。   本日,この第15回の会議におきましても,法務省会場におられる委員・幹事の皆さんも,またウェブ参加の皆さんも,それぞれに御労苦,御負担をお願いし,しかしながら熱心な御討議を頂きました。深く御礼を申し上げます。   これをもちまして,第15回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-