裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第13回)議事録 第1 日 時   令和2年8月3日(月)午後1時32分から午後3時21分まで 第2 場 所   東京地方検察庁1531会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,石山宏樹,小木曽綾,小林篤子,重松弘教,島田一,菅野亮,武石恵美子,堀江慎司,山根香織,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,中野浩一大臣官房付兼企画調査室長,鈴木邦夫刑事局刑事法制企画官    (その他)市原志都最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 検討事項に関する意見交換等について 2 その他 第5 配付資料  資料1−1:検討事項 資料1−2:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)に対する附帯決議(衆議院法務委員会・参議院法務委員会)  資料1−3:ヒアリングにおける発言要旨  資料1−4:「裁判員制度に関する検討会」取りまとめ報告書  資料2−1:最高裁判所説明資料  資料2−2:事務当局説明資料  資料3−1:「平成19年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会」における議論の概要  資料3−2:最高裁判所説明資料  資料3−3:石山委員説明資料  資料3−4:重松委員説明資料  資料3−5:和氣委員説明資料  最高裁判所補足説明資料 第6 議 事 ○鈴木刑事法制企画官 予定の時刻となりましたので,ただ今から裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第13回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は,皆様,御多用中のところ御出席を頂き,ありがとうございます。   菅野委員,武石委員,堀江委員,和氣委員には,本日はウェブ会議システムにより御出席いただいております。   まず,事務当局から配付資料について説明をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 本日お配りしている資料は,議事次第,資料1−1「検討事項」,資料1−2「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)に対する衆議院法務委員会及び参議院法務委員会の附帯決議」,資料1−3「ヒアリングにおける発言要旨」,資料1−4「裁判員制度に関する検討会取りまとめ報告書」,資料2−1「最高裁判所説明資料」,資料2−2「事務当局説明資料」,資料3−1「平成19年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会における議論の概要」,資料3−2「最高裁判所説明資料」,資料3−3「石山委員説明資料」,資料3−4「重松委員説明資料」,資料3−5「和氣委員説明資料」です。   資料2−1及び資料2−2については,検討事項5「上訴審の在り方」に関するものであり,検討事項5について意見交換を行う際に,資料2−1については最高裁判所から御説明いただき,資料2−2については事務当局から説明します。   資料3−1から資料3−5までについては,検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」に関するものであり,検討事項6について意見交換を行う際に,資料3−1については事務当局から説明し,資料3−2から資料3−5までについては最高裁判所,石山委員,重松委員及び和氣委員から,それぞれ御説明いただきます。 ○大澤座長 それでは,早速議事に入ります。   前回会合では,検討事項4「評議・評決の在り方」まで意見交換を行いました。   そこで,今回は,検討事項5「上訴審の在り方」から意見交換を行いたいと思いますが,検討事項5の意見交換に入る前に,前回の最後に小林委員から御発言がありました裁判員裁判における量刑等の変化の点に関して,最高裁判所から補足説明があるように伺っております。 ○市原最高裁刑事局第二課長 前回会合の小林委員からの御質問につきまして,まず最高裁から量刑検索システムのデータの範囲について補足して御説明いたします。   裁判員量刑検索システムは,前回も御説明させていただきましたとおり,裁判員裁判において行為責任の原則にのっとった量刑評議を行うための資料として,同種事例の大まかな量刑傾向を把握することを目的として開発されました。   裁判員裁判開始前の平成20年4月1日に運用を開始し,同日以降に第一審で言い渡された裁判員裁判対象事件の判決データから登録を始めましたので,当初は裁判官裁判のデータのみでしたが,制度施行後に初めて裁判員裁判が行われた平成21年夏以降は,裁判員裁判のデータも順次登録されていき,徐々に裁判員裁判のデータの割合は増加していったということになります。   その後,平成27年度の改修により裁判官裁判の判決データをシステムから削除いたしました。これは,裁判員制度の施行から約6年が経過し,裁判員裁判の判決データだけでも相当量のデータが蓄積され,裁判員制度施行当初とは異なり,裁判官裁判の判決データを収録しておく必要性が低くなったと考えられたためです。   その結果,この改修以降の量刑検索システムに登録されている裁判員裁判対象事件の判決データは,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第3条の除外決定によって,裁判官の合議体で取り扱うこととされた事件を除いて,全て裁判員が参加した事件のものということになります。   また,前回,小林委員の御質問があった際に,座長から最高裁がまとめた量刑傾向の変化に関する資料について言及がございましたので,ここで補足して御説明させていただきます。   最高裁事務総局では,裁判員制度施行10周年を機に,裁判員制度施行10年の成果と課題を総括した「裁判員制度10年の総括報告書」を公表いたしました。その中で,判決における量刑について検討を加えておりまして,本日,追加の資料としてお配りしている最高裁判所補足説明資料のうち1枚目から8枚目は,同報告書に掲載している資料で,罪名別に三つの時期の比較,すなわち一つ目として,裁判官裁判の時期,二つ目として,制度施行から平成24年5月末までの裁判員裁判,三つ目として,平成24年6月から平成30年12月末までの裁判員裁判における量刑分布を比較したものでございます。   同じく,この資料の最後のページ,9枚目でございますけれども,こちらも同報告書に掲載している資料ですが,これは先ほど申しました三つの時期における保護観察に付された割合を比較したものになります。   これらの資料を適宜御覧になりながら,お聞きいただければと存じます。   同報告書でも分析されていることでございますが,裁判員制度の施行から3年が経過した時点では,殺人未遂,傷害致死,強姦致死傷,これは当時の罪名でございますが,それから強制わいせつ致死傷及び強盗致傷については,実刑のうち最も多い人数の刑期が重い方向へシフトし,殺人既遂,殺人未遂,強盗致傷及び現住建造物等放火については,執行猶予を付される割合が上昇する傾向が見られました。また,保護観察に付された割合が大きく上昇しておりました。   その後も,殺人既遂については,ピークが13年以下から15年以下にシフトし,強制性交等致死傷については,ピークが7年以下で変わらないものの,より重い刑の割合が多くなっております。   また,現住建造物等放火については,執行猶予の割合が増加しております。   このように,小林委員が前回御指摘をされました性犯罪以外の罪につきましても,裁判員制度の導入により国民の多様な視点,感覚が量刑に反映され,量刑傾向が徐々に変化している罪がございます。 ○島田委員 前回,小林委員から,裁判官裁判のデータを前提に,どのような議論をした結果,性犯罪の量刑傾向が重くなったのかという趣旨の御質問がありました。   量刑評議においては,前回も御説明したとおり,犯罪行為のうち重視すべき事情について,おおむね意見がまとまった時点で,その量刑因子を入力して量刑検索システムのグラフを示した上で,今回の事件がグラフの中のどの辺りに位置付けられるかを検討いたします。その結果,今回の事件が,おおむね何年から何年の幅の中になりそうだということになれば,その後,一般的な情状について検討して,その幅の中で最終的な刑を決めることになります。   ただ今,市原課長から説明があったとおりですが,裁判員制度施行3年が経過した時点でも,強姦致傷等の性犯罪では,裁判官のみの時代と比べて量刑が重くなる傾向にありました。この頃は,まだ量刑検索システムに裁判官裁判のデータも含まれていました。裁判官と裁判員は,それを前提にして行為責任の観点から具体的な事件をグラフの中で位置付けていたわけです。   評議において,裁判員と裁判官が協働して裁判員の多様な視点や感覚が反映された結果,裁判官だけの時代と比較すると,少しずつ量刑が重くなっていったということが言えるのではないかと思っております。 ○大澤座長 ただ今の最高裁判所及び島田委員からの御説明につきまして,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,本日は,「上訴審の在り方」から意見交換を行いたいと思います。   この検討事項5について意見交換を行うに当たり,参考として,事務当局から,平成27年改正法の国会審議や附帯決議で指摘された事項,当検討会におけるヒアリングでの発言の要旨のうちこの検討事項に関連するもののほか,過去の検討会におけるこの検討事項に関連する議論の概要について,説明をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 裁判員裁判の上訴審の在り方については,平成27年改正法の国会審議の際にも指摘がありました。   具体的には,裁判員裁判の判決を上級審が破棄することについて,問題が全くないとは言えず,見直しをする余地があるのではないか,裁判員に重大な事件を審理するという負担を負わせている以上,裁判員裁判で死刑判決が宣告された場合,上級審ではなるべくこれを覆せないような制度設計が必要ではないかといった指摘がありました。   そのほか,裁判員裁判を続けるのであれば,控訴審や上告審においても裁判員制度を導入すべきである,控訴審や上告審に裁判員制度を導入しないのであれば,控訴審や上告審は,第一審の裁判員が関与した裁判の結果をより重く,真摯に受け止めるべきであるといった指摘がありました。   次に,ヒアリングにおける発言の要旨のうち,検討事項5に関するものについては,資料1−3の10ページを御覧ください。   この検討事項5のうち,「裁判員裁判の判決(特に,死刑判決)については,上級審でなるべく覆せないようにすべきではないか」という事項に関して,犯罪被害者等の方から,第一審の裁判員が苦労して死刑判決を下したのに,上級審の裁判官が書類だけを見て,裁判員の判断を覆すのであれば,一体何のための裁判員裁判なのか,非常に疑問が残るといった御発言がありました。   また,「上訴審も裁判員裁判にすべきではないか」という事項については,裁判員経験者等の方から,裁判員裁判の控訴審にも市民が関わることを検討し始めてもよい時期なのではないかといった御意見がございました。   上級審の在り方については,過去に行われた「裁判員制度に関する検討会」においても議論がなされました。その議論の概要については,資料1−4に添付された資料6「論点整理のための検討について」の8ページに記載されております。   上訴審の在り方については,裁判員裁判の控訴審における判断の在り方について,最高裁判所が平成24年2月に一定の判断を示したことから,今後それに沿って運用がなされ,裁判員制度にふさわしい仕組みが整えられていくことが望ましい,控訴審において,最高裁判決の方向性が徹底されていくのか見守っていきたいといった指摘があったほか,裁判員制度立案時には,控訴審は,現行法が予定しているとおり事後審としての審査を行う限り,裁判員制度に適合すると考えられ,これを前提に,上訴審の在り方については改正が行われなかったものであって,現時点でも法改正を行う必要はないといった御指摘もありました。   御説明は以上です。 ○大澤座長 ただ今の事務当局からの御説明について,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   続きまして,資料2−1について,最高裁判所から御説明をお願いいたします。 ○市原最高裁刑事局第二課長 最高裁判所説明資料について御説明いたします。   資料2−1を御覧ください。   まず1枚目でございますが,この資料は,第3回及び第10回の検討会でお配りした資料の最新版になります。   上段の控訴審における終局人員及び破棄人員という表を御覧ください。   裁判員裁判対象事件のうち,主要15罪名について,平成21年から令和元年までの第一審が裁判員裁判である事件の破棄率は累計で10%となっており,平成18年から20年までの第一審が裁判官裁判の事件の破棄率17.6%を下回る状況が続いております。   続きまして,2枚目でございますが,第一審の裁判員裁判で死刑判決が出て,控訴審判決が出された件数と,このうち控訴審で死刑判決が破棄された件数を表にまとめたものです。 ○大澤座長 続いて,配付資料2−2について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 資料2−2は,控訴審における事実誤認の判断について判示した平成24年2月13日最高裁判所第1小法廷判決(刑集66巻4号482頁)を抜粋したものです。   同判決は,過去に行われた「裁判員制度に関する検討会」において,裁判員裁判の控訴審に関する議論に関連して紹介されたものです。同検討会において,同判決の方向性が控訴審において徹底されていくかどうかを見守っていきたいといった指摘があったことから,検討事項5について意見交換をしていただく前提としてお配りしたものです。   同判決は,刑事訴訟法は控訴審の性格を原則として事後審としており,控訴審は,第一審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく,当事者の訴訟活動を基礎として形成された第一審判決を対象とし,これに事後的な審査を加えるべきものであるとした上で,控訴審における事実誤認の審査は,第一審判決が行った証拠の信用性評価や証拠の総合判断が論理則,経験則等に照らして不合理と言えるかという観点から行うべきであって,刑事訴訟法第382条の事実誤認とは,第一審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であるということをいうものと解するのが相当である。したがって,控訴審が第一審判決に事実誤認があるというためには,第一審判決の事実認定が論理則,経験則等に照らして不合理であることを具体的に示すことが必要であるというべきである。このことは,裁判員制度の導入を契機として,第一審において直接主義・口頭主義が徹底された状況においては,より強く妥当するとしています。  御説明は以上です。 ○大澤座長 ただ今,資料2−1と2−2につきまして,それぞれ市原課長及び事務当局から御説明をいただきましたが,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項5「上訴審の在り方」について意見交換を行いたいと思います。   この検討事項5につきましては,先ほど事務当局からも説明がありました平成27年改正法についての国会審議の過程での御指摘,ヒアリングでの御発言等を踏まえて,「裁判員裁判の判決(特に,死刑判決)については,上訴審でなるべく覆せないようにすべきではないか」という事項及び「上訴審も裁判員裁判にすべきではないか」という事項を検討事項としております。   これらの事項について,順次,意見交換を行い,その後,この検討事項に関するその他の事項についても意見交換を行うこととしたいと思います。   そのような進め方とさせていただくということで,よろしいでしょうか。   それでは,まず「裁判員裁判の判決(特に,死刑判決)については,上訴審でなるべく覆せないようにすべきではないか」という事項について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○島田委員 日本の刑事裁判では,一審の判決に対し,控訴及び上告という2回の上訴ができる制度が採用されています。裁判は人間が行うものですから,裁判官だけの裁判であっても裁判員裁判であっても,その判断に誤りが生じる可能性を否定することはできません。控訴審や上告審は,一審の裁判の誤りを是正して,事案の真相を踏まえた法令の適用や解釈の統一,そして,被告人又は裁判を受けた者の救済を図ることを目的とした制度です。   ところで,裁判員裁判を導入した際に,控訴審の在り方については新たな制度は設けられませんでした。しかし,控訴審としては,国民から選ばれた裁判員が合議体を構成する裁判員裁判の判断について,控訴審は事後審であるという控訴審本来の趣旨を運用上もより徹底させ十分に尊重する姿勢で臨んでいることは,先ほど御覧いただいた資料2−1の統計からも明らかだろうと思います。   また,控訴審の在り方について,控訴審を担当している裁判官も含めた裁判官同士で議論を重ねてきており,裁判員裁判の判断を尊重すべきということは,共通の認識になっているものと思っております。 ○小木曽委員 重複する部分があると思いますが,基本的な考え方について意見を申します。   まず,今御説明があったところですが,日本の上訴審は事後審であり,一審裁判所の判断の誤っている部分を正すもので,裁判を始めからやり直すわけではありません。このことをまず念頭に置く必要があると思います。   隣人による裁判を受ける権利を被告人に保障して裁判理由を示さないという特徴をもつのが陪審制度ですけれども,そのような制度は裁判員制度を導入する際には導入されなかったわけです。したがって,事実認定や量刑判断を含めて上訴審の審査対象とするというのが裁判員制度の制度設計です。   その上で,せっかく国民が参加するわけですから,その判断を尊重すべきであるということが言われてきており,ただ今の御説明にもありましたように,実務上もそれが尊重されてきていると評価できるのではないかと思います。   事実誤認については,先ほどの事務当局の説明資料にありました24年の最高裁判例が論理則や経験則に照らして不合理かどうかを基準に判断するという判断基準を示しているところですが,上訴審の破棄理由には,事実誤認や量刑事情のほかに法令適用の誤り,法律問題についての判断もあるわけで,かつて報道された事例の中には,例えば責任能力を認めた一審の判断に対して,心神喪失や心神耗弱を認定すべきであったということで,これを破棄する上訴審の判断もありました。   そのような事例について,これは報道のレベルですけれども,それでは裁判員が参加する意味がないなどという反応が見受けられたように記憶しておりますが,責任能力というのは,精神状態についての事実評価の問題でもありますが,しかし,それを前提として法律上の責任能力を認めるかどうかというのは法律問題であって,裁判所の責任で判断されることになります。   したがって,仮に一審の判断がそのような理由で破棄されることがあったとしても,だからといって,裁判員の判断が軽視されているとか,あるいは裁判員の参加が無駄であるということにはならないだろうと思います。   さらに,裁判員の判断を覆すことができないようにする場合には,一審の判断が無罪になった場合にもそれを尊重するということになると思いますが,そこまで踏まえた上で裁判員裁判を上訴審で覆さないという主張なのかということ,それから,特に死刑については,上訴審で覆さないようにすべきではないかという点については,陪審制度をとるアメリカでも,死刑については自動的に上級裁判所の審査を受けるという制度を持っている州もある,それほど慎重に判断するものとされているということを,参考までに申し上げたいと思います。 ○山根委員 裁判員裁判の結果を最大限尊重すべきであって,上級審は事後チェックの場に徹するということは,それで行っていただきたいと思います。その上で,新たに見えてくるものがないとは言えませんし,少しでも引っかかるところがあれば,特に死刑判決では踏みとどまることもありではないかと考えます。   精いっぱい力を尽くして出した結果が変えられてしまうということに不満を持つ裁判員もいる一方で,私は,覆すことをなしと決めることは,かえって裁判員の負担を増すという面もあるのではないかとも考えます。それぞれの役割があるのではないかと考えています。 ○堀江委員 検討事項の中で「特に,死刑判決」と書いてある点について,一言申し上げます。   まず,特に死刑判決については,なるべく覆さないようにすべきではないかという議論の根拠が,私自身は余りよく理解できておりません。それは,死刑というのは重い判断だから,それを裁判員が行ったのに,上訴審で覆すべきではないということかもしれませんけれども,私の感覚としては,むしろ逆ではないかと思っています。   死刑か無期かという判断は,ある意味,質的な違いがあるものの間で選択をする,それに対して有期刑における刑の量定は量的な判断,そういう違いがあると思われます。量刑判断においては一般に一定の許される幅があって,その幅を超える場合に,上訴審で量刑不当として破棄されることになるのだろうと思うのですけれども,そうした判断の当否について許される幅というのは,死刑か無期かの質的判断の場合と有期刑における量的判断の場合とでは異なるのではないか,死刑の判断に関しては,その許される幅は相当小さいのではないかと思います。また,死刑に関しては,特に公平性というものが重視されるべきではないかということも言えるかと思います。   そうしますと,上訴審で覆されるかどうか,厳格に審査されるべきかどうかという点については,むしろ死刑判決に対する方が上訴審による審査は厳しくなるというイメージを持っております。したがって,ここの検討事項に書いてあることとは,むしろ逆ではないかという印象です。 ○島田委員 堀江委員の今の御発言に少し補足させていただきたいと思います。   裁判官の裁判では,かなり狭い量刑相場ができていました。ところが,裁判員制度が始まってから,量刑は重い方にも軽い方にも裾野が広がっております。その中で,先ほど,性犯罪や生命に対する犯罪で実刑となった場合については,全体的に重い方向に量刑が変化しているという御指摘がありました。   このような変化があるにもかかわらず,控訴審による破棄率を見ますと,量刑不当による破棄率も下がっているようです。量刑の面でも裁判員裁判の判決が尊重されているように思われます。   ところで,量刑についても控訴審の基本的な判断の手法は,先ほど御紹介のあった事実誤認に関する判断と同様で,一審の判決を事後的に見て不合理かどうかを審査することになります。例えば殺人事件で第一審が懲役15年の宣告をしたといたします。当該事案にふさわしい量刑の幅が,控訴審の裁判官から見て13年から16年程度と考えられるといったときに,控訴審の裁判官3名では,自分たちだったら懲役13年が相当だなと思ったとしても,一審の15年の判決が当該事案にふさわしい量刑の幅の範囲内にある以上は,これは裁量の範囲だということで,控訴審としては破棄することはできないということになります。つまり,有期懲役刑の場合には,その幅というものがかなりあるということです。   これに対して,死刑か無期かという点では,そういった幅というものがかなり小さくなっているのだろうということは,堀江委員が御指摘されたとおりなのかなと実務家としても思っております。 ○大澤座長 この関係につきまして,ほかに御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次の「上訴審も裁判員裁判にすべきではないか」という事項につきまして,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○石山委員 上告審は法律審であるため,上訴審のうち裁判員制度を導入すべきかが問題となるのは,事実審である控訴審であると思われますが,控訴審では,主に書面からなる公判記録によって第一審に提出された証拠,主張や審理経過を精査し,第一審の判断の誤りの有無を審査することとなりますが,そのような経験のない裁判員が本来の力を発揮できる場面とは考えにくいことからも,現時点で控訴審の在り方を改める必要性はないと考えております。 ○小木曽委員 これも基本的な制度設計の話ですけれども,例えばフランスでは,重大事件で参審制がとられております。かつては,日本のような控訴審というのはなくて,一審の次は法律問題を判断する最上級裁判所での審理が予定されているだけだったのですが,事実認定の誤り等を正す必要に迫られまして,一審の裁判をそっくりやり直す制度が導入されました。これは専門的には「覆審」と言っております。覆審の覆は「覆水盆に返らず」の覆です。覆という字には,幾つか意味があるようですが,ここでは,元に戻ってやり直す,繰り返すという意味だろうと思います。   そのような制度を採用していれば,参審員が始めから審理をやり直すということには意味がありますが,先ほどから指摘のあるとおり,日本の上訴制度はそのような仕組みになっておりません。   また,上訴審の審査は書面中心ですので,直接口頭で証人の証言を聞いたり証拠を見たりするのとは違って,一般の国民にはなじみがない作業で負担が重くなるのではないかという実務上の問題もあろうかと思います。   それからまた,国民の意識を反映すべきだから控訴審も裁判員でという主張だとすると,しかし,一審も国民の意識を反映する裁判員の判断なわけで,これはどちらの判断を尊重するのかという問題にもなろうかと思いますので,現在の枠組みを変える必要はないだろうと思います。 ○大澤座長 ほかに御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この問題についてはこの程度といたしまして,検討事項5「上訴審の在り方」に関し,今取り上げた二つの事項以外の事項につきまして,何か御意見がある方は,挙手の上,御発言をお願いしたいと存じます。いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項5「上訴審の在り方」についての意見交換は,ひとまずこの程度といたしまして,次の検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」について意見交換を行いたいと思います。   この検討事項6につきましても,意見交換を行うに当たり,参考として,事務当局から,平成27年改正法の国会審議や附帯決議で指摘された事項,当検討会におけるヒアリングでの発言の要旨のうちこの検討事項に関連するもののほか,過去の検討会におけるこの検討事項に関連する議論の概要について,説明をお願いいたします。   また,資料3−1についても,併せて事務当局から説明をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 検討事項1「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」についての意見交換の際にも御説明いたしましたが,平成27年改正法においては,非常に長期にわたる事件の対象事件からの除外等のほか,裁判員等選任手続での被害者特定事項の保護の制度が設けられました。   この平成27年改正法の国会審議の際には,裁判員裁判における「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」についても指摘がありました。具体的には,新たに設けられた制度に関するもののほか,公判前整理手続に被害者の参加を認めるべきではないか,被害者本人が参加できないとしても,被害者側の弁護士は参加できるようにすべきではないかといった指摘などがありました。   そうした指摘を踏まえて,資料1−2のとおり,衆議院法務委員会の附帯決議第3項及び参議院法務委員会の附帯決議第5項で,平成27年改正法の附則に基づく検討の場を設けるに当たっては,犯罪被害者等の意見が反映されることとなるように十分に配慮することとされているほか,衆議院法務委員会の附帯決議第7項では,同検討に当たっては,性犯罪についての対象事件からの除外などの犯罪被害者等の保護の在り方等について,引き続き裁判員制度の運用を注視し,十分な検討を行うこととされております。   次に,ヒアリングにおける発言の要旨のうち,検討事項6に関するものについては,資料1−3の11ページ及び12ページを御覧ください。   このうち,11ページの前半には,検討事項6のうち「公判前整理手続において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項に関する御発言が記載されており,犯罪被害者等の方々から,公判前整理手続に被害者本人又は被害者参加弁護士を,傍聴でもいいので参加させてほしい,公判前整理手続が長く,被害者はその間,待つしかない,被害者参加弁護士が検察官から情報収集して被害者にフィードバックするのが筋だと思うが,手続の雰囲気は分からないし,個々の検察官の対応によって情報量が左右されてしまう,被害者が公判前整理手続に関与することで,未確定な議論が被害者に伝わるというリスクは理解できるが,未確定であることを明示することや被害者参加弁護士が慎重に取り扱うことで解決することもできるのではないかといった御発言がございました。   11ページの途中から12ページまでには,検討事項6のうち「裁判員裁判の公判において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項に関する御発言が記載されており,犯罪被害者等の方々から,弁護人や裁判員の質問で,立証趣旨から外れたり,明らかに被害者を侮辱するような質問がなされたりした場合には,裁判官が意識して制限してほしい,裁判員裁判が連日長時間にわたって行われることは,被害者参加をしたい被害者にとっては精神的・肉体的負担が非常に大きい,被告人が起訴事実を認めている事件で,犯罪被害者が証人として出廷することが必ずしも必要ではない場合であっても,裁判員に対する分かりやすさやアピールのために証人出廷を求められることもあるといった御発言があったほか,裁判員経験者等の方々から,裁判員の服装に関しても御発言がありました。   犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方については,過去行われた「裁判員制度に関する検討会」においても議論がなされました。その議論の概要については,資料1−4の20ページから22ページまでに記載されており,被害者等の心情等への配慮のための運用上の工夫,裁判員等選任手続における被害者等のプライバシー等の保護を通じたその負担への配慮の在り方について検討がなされております。   検討事項6についての御説明は以上です。   引き続き,資料3−1について御説明いたします。   犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方に関しては,法務省においては,被害者参加制度等が導入された平成19年改正刑事訴訟法等の見直しの要否について検討を行うに当たり,幅広く関係者の意見を伺うため,平成25年1月から平成26年7月までの間,被害者関係団体,刑事法研究者等の各関係者等が出席する「平成19年改正刑事訴訟法等に関する意見交換会」を開催し,被害者参加制度を始めとする平成19年改正刑事訴訟法において導入された制度の実施状況等を踏まえ,制度上又は運用上講ずべき措置の要否等について,意見交換を行いました。   同検討会においては,公判前整理手続への被害者参加人又は被害者参加弁護士の参加又は傍聴を認めるべきか,公判前整理手続とは別の事前打合せの際に,被害者参加人及び被害者参加弁護士の参加又は傍聴を認めるべきかという事項につきましても意見交換が行われ,公判前整理手続への被害者参加人等の参加や傍聴についての積極的な立場からは,争点や証拠の整理への関与の必要性,公判前整理手続を直接見聞きすることの必要性について指摘がなされる一方で,公判前整理手続への被害者参加人の関与について,刑事訴訟制度の基本的構造や被害者参加制度の趣旨との関係で問題を指摘する意見,公判前整理手続に被害者参加人等が在席することの要否や影響について問題点を指摘する意見も述べられております。   これらの意見の概要は,資料3−1の5ページから8ページまでに記載されております。また,21ページには,被害者が参加をしやすい公判期日の設定の在り方についての議論の概要も記載されるなどしております。該当部分の意見交換の際に,適宜御参照ください。  御説明は以上です。 ○大澤座長 ただ今の事務当局の説明について,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   続きまして,資料3−2について,最高裁判所から御説明をお願いいたします。 ○市原最高裁刑事局第二課長 資料3−2「犯罪によって被害を受けた方へ」というリーフレットを御覧ください。   犯罪被害者の権利利益の保護を図るために,各種の制度が施行されているところでございますが,本リーフレットは,これらの制度の内容や制度を利用するための手続等につきまして,図表やイラストを用いて解説したものでございます。   具体的には,裁判の優先的傍聴,事件記録の閲覧・コピー,公開法廷における氏名等の秘匿,法廷における意見陳述,証言する場合の不安・緊張の緩和措置,損害賠償に関する手続,刑事裁判への参加手続などについて紹介されています。   このリーフレットは,各地の裁判所の待合室などに備え付けられているほか,都道府県の警察本部や地方検察庁,民間支援団体等の関係機関にも配布されております。これにより,裁判所の刑事手続における犯罪被害者に関する諸制度について,情報提供の充実を図り,これらの制度を利用する方の一助とすることを目的としております。 ○大澤座長 続いて,資料3−3につきまして,石山委員から御説明をお願いいたします。 ○石山委員 検察庁における被害者保護の取組に関しまして,資料3−3に沿って御説明いたします。   まず,資料3−3の前半につづってあります次長検事名の「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」という依命通達は,検察官に対し,犯罪被害者等への対応について,なお一層の配慮に努めるよう求める内容となっております。   この通達が発せられた経緯について,簡単に御説明いたします。   平成19年に,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律によって,被害者参加制度を始めとする犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための種々の制度が設けられましたが,同法の附則には,政府は,この法律の施行後3年を経過した場合において,この法律による改正後の規定の施行状況について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするという検討条項が定められておりました。   法務省では,この附則による検討を行うに当たり,幅広く関係者の意見を聴取するため,平成25年1月から平成26年7月にかけて,被害者団体等関係者,刑事法研究者,法曹三者が参加する意見交換会を開催したところ,それまでの検察官の犯罪被害者等への対応について,おおむね好意的な評価を得られたものの,一部に検察官の対応に問題があった事例の指摘があったほか,被害者参加人と検察官との間の密接なコミュニケーションや検察と関係機関等との連携の重要性を指摘する意見が示されました。   この通達は,これらの指摘を踏まえて発出されたものでございまして,犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための種々の制度の趣旨を再認識するとともに,検察の理念が,犯罪被害者等の声に耳を傾け,その正当な権利利益を尊重することを基本姿勢の一つとしていることに思いを致し,犯罪被害者等に対してなお一層の配慮に努めるよう求めております。   そして,その際の留意点につきまして,「1 事件の捜査・処理に当たっての対応について」,「2 被害者等のための制度等に関する情報提供等について」,「3 公判における検察官の主張・立証の内容に関する説明等について」,「4 公判において主張・立証する事項に関する要望に対する配慮について」,「5 公判前整理手続等の結果等に関する説明について」,「6 刑事裁判の公判期日等の指定に関する要望に対する配慮について」,「7 被害者参加人等の行う訴訟行為に関する助言等について」,「8 判決を踏まえての対応について」,「9 事件の処理,公判における主張・立証又は上訴に関する判断についての不服申立てへの対応について」,「10 上訴審における対応について」の10項目を挙げまして,各段階での対応の留意点について記載しております。   具体的には,例えば「3 公判における検察官の主張・立証の内容に関する説明等について」の項目では,「(1)」にありますように,被害者のある事件を公判請求した場合には,当該事件の被害者等の要望に応じて,事案の内容,捜査・公判に支障を及ぼすおそれや関係者の名誉・プライバシーを害するおそれの有無・程度等を考慮しつつ,適宜の時期に,公判における検察官の主張・立証の内容を分かりやすく説明するように努めることなどが記載されております。   また,「5 公判前整理手続等の結果等に関する説明について」の項目では,公判前整理手続及び期日間整理手続が行われた場合は,被害者等の要望に応じ,適宜の時期に,その経過及び結果について必要な説明をするように配意されたいとの記載がされております。   また,「6 刑事裁判の公判期日等の指定に関する要望に対する配慮について」の項目では,「(1)」にありますように,犯罪被害者等の方が公判傍聴を希望する場合には,その機会が可能な限り得られるよう,公判期日の指定に当たっては,犯罪被害者等の方と十分なコミュニケーションを取り,必要に応じて,その希望を裁判所に伝達することなどに加えまして,「(2)」の第2段落にありますように,被害者参加人による公判等への出席に関しては,その意向を十分に聴取し,付添いや遮蔽の措置が必要な場合には,その必要性について適宜裁判所に説明するなど,公判等への出席に伴う被害者参加人の心理的な負担の軽減が図られるよう配慮することとの記載がされており,それぞれの段階で犯罪被害者等の方々に対し,適切な配慮を行うこととしております。   検察官は,個々の事件におきまして,この通達に従って犯罪被害者の方々に対する対応を行っているところでございます。   この通達の次に,検察庁が発行している「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットがございます。   このパンフレットには,刑事手続の各段階に応じて被害者支援策が記載されるなどしております。このパンフレットは,各検察庁に備えられておりまして,検察官が犯罪被害者等の方々に対し,被害者支援策について説明を行う際などに使用するなどしております。   このパンフレットの内容ですが,被害者支援のための一般的制度,捜査段階での被害者支援,公判段階での被害者支援,少年審判に関連する被害者支援,心神喪失者等医療観察法の審判に関連する被害者支援,裁判後の段階での被害者支援,その他の被害者支援がイラスト入りで記載されているほか,被害者ホットラインの連絡先,よくある御質問等も記載されております。   裁判員裁判における被害者保護につきましても,このパンフレットの9ページには,裁判員裁判の法廷のイメージイラストが掲載されており,24ページ・25ページには,公判段階での被害者支援の具体例としまして,裁判員裁判の法廷のイメージイラストを使用して,証人への付添い,証人の遮蔽,ビデオリンク方式での証人尋問について制度の説明が記載されております。   検察官は,このパンフレットを用いるなどして,犯罪被害者等の方々に対し被害者支援策について分かりやすく説明等を行うよう努めているところでございます。 ○大澤座長 続いて,資料3−4につきまして,重松委員から御説明をお願いいたします。 ○重松委員 現在,警察が行っております被害者の方やその御遺族を支援する施策につきまして,その主なものを御紹介いたします。   資料3−4「警察による犯罪被害者支援」と題するパンフレットの6ページを御覧いただきたいと思います。   都道府県警察におきましては,刑事手続の概要,捜査への御協力のお願い,被害者の方等が利用できる制度,各種相談機関,窓口などについて記載したパンフレットを作成しておりまして,被害者の方等から初めてお話を伺った際など,初期の段階におきまして担当の捜査員等から内容の御説明を行っているところでございます。   次に,7ページを御覧ください。   警察では,その後も継続して被害者の方等に対して被疑者検挙までの捜査状況,被疑者の検挙状況,逮捕被疑者の処分状況などにつきまして,その御意向を酌んだ上で事件を担当する捜査員が連絡を行っております。   また,18ページの左下,「指定被害者支援要員制度」というところを御覧いただきたいと思います。   被害者支援を担当する警察職員が,医師の診察が必要な場合の病院の手配,付添いや御自宅等への送迎を行うなど,被害者の方等の御意向を踏まえた支援活動も推進しております。   同じく18ページの上,「犯罪被害者の安全の確保」の項目を御覧ください。   警察では,同じ加害者により再び危害を加えられるおそれが大きいと認められる被害者の方等に対しまして,再被害防止のための関連情報の教示,連絡体制の確立と要望の把握,防犯指導,警察による警戒措置,加害者への警告等の再被害防止措置についても実施しております。また,被害者の方等への支援を行うに当たりましては,民間の支援団体と連携しているほか,これらの団体に対する財政的な援助にも努めているところでございます。   以上のような各種支援内容につきましては,警察庁及び各都道府県警察のホームページ等で御紹介をしているところでございます。 ○大澤座長 続いて,資料3−5につきまして,和氣委員から御説明をお願いいたします。 ○和氣委員 全国被害者支援ネットワーク及び各都道府県の被害者支援センターでの支援活動について御説明をいたします。   この国では犯罪被害者はじっと耐えるしかないと訴えられた犯罪被害者御遺族の声に応え,平成4年,民間による被害者支援活動を開始いたしました。その後,各地に被害者支援センターが設立され,平成10年,それまで設立されていた被害者支援センターを加盟団体として,全国被害者支援ネットワークを設立いたしました。全国被害者支援ネットワークが目指す社会は,犯罪被害者とその家族が全国どこにいても,いつでも求める支援が受けられる社会です。   令和2年4月現在,全国被害者支援ネットワークは,47都道府県48か所の被害者支援センターで構成されておりまして,全都道府県のセンターが各公安委員会から犯罪被害者等早期援助団体の指定を受けております。被害者の被害の軽減・回復が図られるよう支援活動に取り組んでいるところでございます。   犯罪被害者は,突然被害に遭遇し,悲しみ,悩み,怒り,自責の念に駆られながら毎日を送られています。平成16年12月に制定された犯罪被害者等基本法では,全ての犯罪被害者等は,個人の尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい処遇を受ける権利を有すると明記されております。犯罪被害者支援に取り組むことは,犯罪被害者の人権の回復に取り組むことでもあります。平成17年12月には,犯罪被害者等基本計画が閣議決定され,現在,第4次犯罪被害者等基本計画について検討が始まっております。   全国被害者支援ネットワークと加盟団体は,民間被害者支援団体の中核として,事件直後より被害者支援活動を行っております。これからも被害者の声に応えることができるよう,支援の質の向上と支援体制の充実・強化を図ってまいります。   また,全国被害者支援ネットワークでは,被害者支援活動に関わる団体及び関係機関との連携,相互協力を通じて都道府県の被害者支援センターを支援すると同時に,支援者への人材育成,要請も行っております。その他,社会啓発活動,被害者支援広報活動,それから講演活動,学生には命の大切さを学ぶ教室,刑務所や少年院では被害者の視点を取り入れた矯正教育,司法修習生への研修,マスコミには新人記者研修を行っております。また,国の機関との連携では,国会,法制部会での参考人意見等に参加しまして,各省庁との連携等も行っております。   資料3−5の全国48の被害者支援センターが取り扱った相談件数を御覧ください。2018年では,3万2,783件の相談を受けております。特に最近は,性被害の相談が極端に多くなっております。その他,殺人や暴行傷害,交通事故関係,DV等,相談を受けて支援に当たっているところです。   各都道府県のセンターでは,被害者等からの相談を受けて傾聴するだけではなく,被害者のニーズに添った同行支援を行っています。被害者等は同行支援を必要としていますので,その同行支援を直接的支援と呼んでいます。どの様なことをしているかというと,被害者からの依頼により関係機関の窓口への誘導や手続き等のお手伝いをし,被害軽減に努めています。特に裁判関連支援ですと3,079件支援させていただいていますし,検察庁への付き添い支援や連絡調整等も行います。また警察や検察庁へ被害者等が自ら行くことは,とてもハードルが高く行きにくいためそちらへの付添い支援も多いです。犯罪被害は全国で発生しており県をまたいでの連携支援は,全国の被害者支援センター同士が連絡を取り合いながら支援を行います。   次にセンターとちぎの活動を紹介します。全国被害者支援ネットワークでの研修を受け,全国のセンターが同じ支援ができるよう質の向上を目指し活動しています。特に裁判の付添いに関しましては,初めて裁判に臨む被害者等がほとんどで不安を感じています。検察庁や弁護士との連携,時には警察との連携が必要であります。被害者等が加害者とバッティングしないように調整することも非常に神経を使っています。   また,マスコミからの二次被害等を避けるための導線検討,それから被害者にとって,裁判所は戦場の場ですので,その日の体調への気くばりも必要です。その他,昼食手配や飲物の手配,トイレ,休息場所への誘導,裁判所までの送迎を行います。これは栃木県内の被害者等だけではなく,他県から来られる方については,駅から裁判所までの送迎をできる限り行います。このように被害者等のニーズに合わせて支援を行っております。   特に御相談が多い部分としましては,被害者等から当日の服装や持ち物の相談も数多くございます。特に,死亡事件被害者等に関しましては,被害者等の心情として喪服を着て臨みたいという被害者等も数多くいらっしゃいますので,そういうときの御相談も受けております。遺影の持ち込みが可能かどうか,初めて裁判に参加する被害者がほとんどでありますので,不安だらけの状態です。それから,法廷内での注意事項も必ず伝えておく必要がありまして,感情的になって加害者の方を追いかけていってしまうというような被害者等もおられますので,その時は止めに入る時もあります。体調が悪くなってしまう被害者等もおりケースバイケースで対応が必要となります。   今回の検討内容でもありますが,裁判の日程が決定するまでの間,とても不安が募ります。公判前整理手続中は,被害者側から全く見えない部分となっており,いつになったら裁判が開かれるのか何の連絡もないため,どちらかに相談したくなるのではないかと思います。この検討会の以前の議論の中で,検察庁の方から改善の回答をいただきましたが,進捗状況を伝えていただけると非常に有り難く思います。   最後に裁判員経験者のヒアリングの意見にもありましたが,特に女性は服装に困るのです。裁判員裁判の日程は何日か続きますので,被害者の方に失礼がないように服を選んでいるそうです。裁判所からは常識ある服装,ふだん着で良いそうですが,裁判員それぞれに感覚が違いますので傍聴席から見ていますと,法廷に相応しくない目立つ服装であったり露出度が多い服装であったりと場違いではないかと思える方がおり,気になってしまい裁判に集中できないという意見があります。私の意見としては是非,裁判官が法服という黒い服を着ておりますので,法服に近い制服等を準備していただくことで,裁判員の方々も服装選びに苦労せずに済みますし,傍聴席の方からも服装を気にせず裁判に集中できると思います。  法廷の中は厳粛な場ですので是非検討いただければ幸いです。 ○大澤座長 ここまで最高裁判所,石山委員,重松委員,和氣委員からそれぞれ御説明を頂きましたが,ここまでの御説明につきまして,何か質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」について,意見交換を行いたいと思います。   この検討事項6につきましては,先ほど事務当局からも説明がありました平成27年改正法についての国会審議の過程での御指摘,ヒアリングでの御発言等を踏まえて,「公判前整理手続において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項及び「裁判員裁判の公判において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項を検討事項としております。   これらの事項について,順次,意見交換を行い,その後,この検討事項に関するその他の事項についても意見交換を行うこととしたいと思います。   そのような進め方とさせていただくことについて,よろしいでしょうか。   それでは,まず「公判前整理手続において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○石山委員 先ほど和氣委員から御発言がありました公判前整理手続が行われている段階における犯罪被害者の方々に対する検察官からの情報提供につきまして,意見を述べさせていただきます。   公判前整理手続は,事件の争点及び証拠を整理するための公判準備手続でありまして,犯罪被害者の方々がその経過や結果について関心を持ち,その内容等について知りたいと感じられることは当然であると考えております。   和氣委員がおっしゃったように,公判前整理手続につきまして,検察官から適切な情報提供がなされないと犯罪被害者の方々が不安を抱くというのは,誠にもっともでございまして,犯罪被害者の方々の御要望を検察官として丁寧にお聞きしつつ,適切に情報提供を行うことが必要だと考えております。   検察庁といたしましては,先ほど御説明いたしましたように,「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」の通達を発しているほか,犯罪被害者等の方々に対する情報提供を適切に行うことについて,各検察官に対して指導してきたところでございますけれども,今後とも犯罪被害者の方々に対し,適切に情報が提供されるよう,改めて検察の現場で御要望について共有してまいりたいと考えております。 ○小林委員 一つ教えていただきたい点があります。石山委員が先ほど,適宜の時期に必要な説明をしていると説明してくださいましたけれども,具体的にはどのような時期に,例えば手続が行われるたびにその都度説明をされているのか,それとも公判前整理手続が始まった段階で1回,あとは終わる頃にこのような形でまとまりましたというような説明なのか,それによって受ける納得感というのも違うのではないかと思います。具体的にどのような説明をされているのか教えていただけますでしょうか。 ○石山委員 どのような形で被害者の方々に御説明しているかについては,事件によっても異なるのかなと思いますし,また,被害者の方がどういうタイミングで説明を受けたいとおっしゃっているかによっても様々だと思いますけれども,公判前整理手続期日が行われる都度,担当検察官から被害者の方に電話で連絡して,その日どういうことが公判前整理手続期日で行われたのかということを,できるだけかみ砕いて御説明するという場合もありますし,特に被害者の方が御希望であれば,検察官等の面談の場を設けまして,そこで御説明するというような対応もしているところでございます。   あるいは,公判前整理手続期日の前に御説明をしておいた方がよいと思われる場合には,期日前に被害者の方に御説明差し上げ,御意見等を伺っておくという場合もあると承知しております。 ○島田委員 公判前整理手続において,裁判所が犯罪被害者等に対して講じている保護や配慮について,御説明いたします。   裁判所は,検察官を通じた情報提供という法律上の枠組みを前提として,通常は検察官を通じて被害者側の御都合や御希望を聞いた上,可能な限りそれらに配慮した審理日程を立てるなどしております。   また,被害者参加人等において,公判前整理手続を傍聴して情報を知りたいというニーズがあることは,裁判所も承知しております。ただし,この情報を知りたいというニーズについては,検察官が被害者参加人等との間で密接に意思疎通を図り,適切に情報提供することによって実現していくものと考えております。   すなわち,公判前整理手続が行われている場合には,検察官の権限行使について被害者参加人等は意見を述べることができます。そして,検察官は,これに対して必要な説明を行うこととされています。また,法律上,被害者参加人等による証人尋問や被告人質問,意見陳述など審理計画の策定に関わる事柄について,全て検察官を通じて申し出ることとされています。   もし仮に,検察官がきちんとした説明をしていないと感じられるような場合には,裁判所としては,その点を是正するように,検察官に対し被害者参加人等と適切にコミュニケーションを取るように働きかけることによって,問題状況を解消していきたいと考えております。 ○武石委員 公判前整理手続に関して,被害者の方たちとして情報が欲しいというのは,ヒアリングでも随分皆さんがおっしゃっていたことだろうと思います。   検察庁や裁判所が大変丁寧に対応されていることは,よく分かります。ただ,前回の評議のときも気になったのですが,評議を丁寧にやりましょうとか,情報を出しましょうとか,公判前整理手続のそれぞれのタイミングで情報を出しましょうというのは,検察庁や裁判所の現場に任されているような印象を前回から持っていて,要は,どんな情報が知りたいかというのは被害者によってそれぞれだと思うのですが,やはり最低ここまではやらなくちゃいけない,前回も言ったミニマムスタンダードみたいなところがあるのかなというのが,お話を聞いていて気になっているところです。   私がもし被害者だったら,やはり今裁判までどういう見通しなのかなというのは絶対知りたいことだと思いますので,そういう情報が適切に提供される仕組みというのが必要なのではないか,現場の方の良心とか努力に任せているのも大事なのですが,仕組みをつくっておくことが重要ではないかということを感じました。 ○和氣委員 先ほどヒアリングにおける発言要旨の説明を伺って,被害者の中には公判前整理手続に直接参加できないのかですとか,意見は述べられなくてもその場にいることはできないのかという御意見があったかと思うのですけれども,そういうことは不可能なのでしょうか,可能なのでしょうか。この辺を伺いたいと思います。 ○小木曽委員 これについては,理論的な視点と実務的な視点というのがあると思います。   理論的には,被害者参加制度というのは,現行法の枠組みの範囲内で設けられているということです。その現行法の枠組みでは,被害者は事件の当事者ですけれども,訴訟の当事者ではないということになっているわけで,このことは,当事者に与えられている各種の権利が被害者参加人には与えられていないということから明らかでありまして,そのために,手続について検察官に丁寧な説明義務が課されているわけです。公判前整理手続は,その訴訟手続を計画的かつ迅速に行うために設けられたものですから,やはり現行法の枠組みの中にあります。   手続に参加しないまでも傍聴したいという御意見もあろうと思いますが,それについては実務的な視点として,整理手続というのは,実際のことは実務家の委員に教えていただきたいと思いますが,公判の準備をする場では,流動的でいろいろな意見交換が率直にされることが予定されているものだろうと思います。   そこで,一つには,被害者がそれを傍聴していることで,当事者の率直な意見交換が傍聴者がいない場合と同じようにできるかどうかということへの懸念,それから二つ目としては,整理手続で出された暫定的な主張や争点が公判では変わっているということがもしあるとすると,それが以前に聞いていた話と違うじゃないかということになって,被害者から見た検察官や被告人,ひいては訴訟手続への不信といったことにつながらないかという懸念がありはしないかと思います。   言わば舞台裏でものが決められているという疎外感があるということだろうと察しますけれども,それを払拭するためにも検察官に丁寧な説明が求められているということなのではないかと思います。 ○菅野委員 実際の弁護人の立場から,公判前整理手続でどういった準備をしているのか,お話したいと思います。   主張が変わるかどうかというお話で,小木曽委員が御指摘された点と重なるのですけれども,まず弁護人が大きな方針を決めるまでに,暫定的な主張を出すことはございます。例えば私は,被疑者から話を聞いて自首が成立すると思えば,自首が成立する可能性があるという主張をします。   ただ,その弁護人の主張に対して,検察官が,先生,確かに自首調書がありますが,実は共犯者がちょっと前に警察に来ているので自首は成立しませんよ,そういう証拠があるのですというような形で,関連する証拠が開示されることもあるのですね。その結果,こういう事実関係であれば,自首は法律上の主張としては成立しないので撤回しますと,こんなやり取りを公判の前にすることはございます。   同じく,例えば責任能力に関して,私たちが起訴直後に得ている情報はごく僅かです。なので,鑑定が行われたという話を聞いて,責任能力にもしかしたら問題があるかもしれないという主張をすることはございます。ただ,その後に鑑定書が開示されたり,検討した結果,やはり公判では責任能力の主張をやめようと,こういった方向で整理するというのはあるのですね。   このように,公判前整理手続の中では,常に暫定的な主張を出して検察官から証拠を開示していただいて,それで主張が変わっていって,最終的には公判で主張するもの,しないものというものも,かなり最初の段階と最後の整理の段階とでは異なっているのが実情でございます。   ヒアリングのときも少し気になったのですが,私たちが公判前整理手続で暫定的な主張を行った結果,それを法廷で言わないこと自体が問題であるというような御趣旨の御発言がヒアリングでもされましたけれども,公判前整理手続等では,暫定的な主張を段階的にしていって争点を形成していくことがもとより予定されているものですから,恐らく最初に言っていたことをどうして言わないのだというような公判での反発をそのまま被告人等にぶつけられても,残念ながら,その段階ではそういう主張をしていないので,異議がございますという形で,そういった質問に対する異議を出すことも少なくないというのが正直なところです。   公判前整理手続ではこういう主張をしていたじゃないかというような質問は何件かの事件で私も受けたことはあるのですけれども,残念ながら,それは,被告人の供述ではなく,検討した結果,公判では主張しないことになった,飽くまで暫定的で撤回された主張であり,そこがきちんと御理解いただけないために,公判が混乱する場合が実際にはあるということが言えると思います。   これをなくすためには,やはり参加が問題なのではなくて,私たちの暫定的な主張と争点を最終的に作っていくプロセスをやっている手続なのだということを,まずは御理解いただくことが必要です。必ずしも被告人が言っているからこうというだけの問題ではなくて,法律的な観点から,弁護人が問題意識を持った主張を最初の段階では行っている結果,暫定的な主張が立つことはあり得ると,この辺りを正しく理解してもらうことがとても大事なのかなと私自身は思っています。   最後に,実務で公判前整理手続を期日として開いているかというと,正直言って,そんなに開いていることはございません。事実上の打合せ期日というものがかなり使われておりまして,例えば半年間準備しているとすれば,必ず公判前整理手続期日は開きますけれども,例えば裁判所で6回打合せをしたとしても,恐らく公判前整理手続期日を正式に開いているのは1回か2回というような事件もほとんどでして,最終的にどういうタイミングで公判前整理手続期日を利用しているかといいますと,裁判員の職務従事期間が大体見えてきた,証拠の採否も大体できるタイミングになった,検察官,弁護人の主張もほぼ固まった,その辺りで大体,公判前整理手続期日を入れており,もともと公判前整理手続期日は公判のようなペースでは行われていないので,その点は御理解いただく必要があるのかなと思いました。 ○島田委員 小木曽委員や菅野委員からも御指摘いただいているところですけれども,被害者参加人等が公判前整理手続を傍聴するとした場合に,やはり実質的な,あるいは率直な意見交換というのが難しくなってしまうのではないかというおそれを持っております。公判前整理手続が硬直化してしまって実質的な議論がなされずに,かえって公判前整理手続が長引いてしまうのではないかという心配がございます。   また,被害者御本人や被害者御遺族は,法廷での審理の中で証人あるいは心情に関する意見陳述の主体になる可能性がございます。証人は,自らの記憶に基づいて証言していただく必要があるところ,公判前整理手続を直接傍聴することによって,ほかの人の記憶と混じってしまうといったおそれもございます。   また,意見陳述においても,今,菅野委員から御指摘がありましたが,公判前整理手続の中で示された弁護人の暫定的な主張あるいは方針の変更と被告人の供述とを同一視したり,あるいはこれらを混同するなどして,被告人が供述を変更していて問題だというような形で,無意識のうちに不当な意見陳述をしてしまうおそれもあるのではないかといった点を心配しております。   したがいまして,被害者参加人等におかれましては,やはり,検察官と密接に意思疎通を図って,公判前整理手続の進行状況やその内容について把握していただくのが相当かなと考えております。 ○山根委員 犯罪被害者の方が手続の成り行きをもっと知りたい,見守っていきたいという気持ちはとてもよく理解できますので,より強くそういった気持ちに寄り添って進めていただく必要はあると思っています。更に何ができるかということについて,検討は進めていただければと思います。   先ほど資料として通達を御紹介いただきましたけれども,平成26年に出されたということで,少し日にちも日数も経っておりますので,更に状況を確認して,より進めることが何かあるのかどうか,課題がまだ見えてくるかどうかについても検討を進めていただければというふうに思いました。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次の「裁判員裁判の公判において,犯罪被害者等に対する保護・配慮は十分に図られているか」という事項についての意見交換に移りたいと思います。   御意見のある方は挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○島田委員 裁判員裁判の公判における,犯罪被害者等に対する保護・配慮の観点ですが,裁判所が講じているものとして,法律上定まっているものと事実上行っているものとございます。   まず,法律上定められている被害者保護や配慮の制度としましては,性犯罪などの被害者について,お名前など特定事項の秘匿をしております。また,証人あるいは被害者参加人として御出席される場合に遮蔽の措置や付添人の制度,それからビデオリンク方式による証人尋問,心情に関する意見陳述,特別傍聴席の確保などがございます。   事実上の配慮といたしまして,和氣委員からも御指摘がありましたが,被告人とは異なる動線を確保して控室から法廷に来ていただくなどの配慮をしております。その際には,事前に検察官を通じて被害者の方々の御希望等を聴取し,また,必要に応じて,例えば裁判官,職員において,当日の関係者の動き,そしてそれに対応した適切な遮蔽を行うためのパーティションの配置などシミュレーションをするなどして,実質的に効果的な配慮ができるように努めているところでございます。 ○和氣委員 今,島田委員から御説明がありましたが,10年前よりもいろいろ配慮はしていただいているなということは付き添い支援をしていていて感じるのですけれども,担当者によってなのでしょうか,もう少し違う配慮をしていただけたら有り難いなというところが多々ありまして,やはり,休廷になった際ですとか,その辺がまだまだバッティングすることがありますので,その辺まで慎重に配慮をお願いしたいところでもあります。是非よろしくお願いいたします。 ○島田委員 御指摘いただきましたので,更に丁寧な対応をしていきたいと考えております。 ○小林委員 先ほど,法廷でのドレスコードのお話が御指摘としてありました。裁判所のQ&Aを拝見しますと,ふだん着とか普通の格好でと書かれているかと思うのですけれども,あいまいな表現でむしろ困っている裁判員の方もいらっしゃるのかなと思います。   ふだん着でと言われてもどういう格好をしていっていいのか分からない,というのは,ヒアリングの中でも出ていた内容でもありますし,重大事件を裁く場ということで御遺族がいらっしゃることも当然想定されます。今後は一歩踏み込んで,呼出し状に同封されるQ&Aの中に,公の場であって御遺族がいらっしゃることもあるということをはっきり書いてもいいのではないかと思います。   この例が適切かどうか分かりませんが,学校の保護者面談で先生と会うときにタンクトップや短パンを着ていく親がいないのと同じで,そのような配慮が必要な公の場であることが明記されていれば,女性ならカーディガンを1枚ちゃんと持っていこうとか,ジャケットを持っていこうと思うのではないかと思います。   10年前に裁判員裁判が始まったとき,裁判所が作られたパンフレットの表紙に,いろいろな職業やバックグラウンドを持った方が参加する意義のある制度なのですということを強調される意味で,様々な職業の方の格好を描いた絵があったと思うのですけれども,多様な価値観とか視点を裁判に持ち込むというのは,必ずしも見た目ではないと思います。裁判員の様々な経験とか視点とかが生かされて,評議を充実させることが制度本来の趣旨なのであって,見た目で被害者を不快にさせるということがあるのであれば,それはやはり是正すべきではないかと思います。   私は,必ずしもケープのようなものを裁判員がおそろいで着るべきだということまで求めているわけではないのですけれども,少なくとも法廷ではきちんとした格好をした方がいいですよ,というぐらいのことは事前にお伝えしてもいいのではないかと思っています。 ○和氣委員 服装関係なのですけれども,これは人それぞれに感覚の違いもありますし,普通ふだん着といえば,それなりの服装をする方もいらっしゃると思うのですけれども,中には,ちょっと場違いの格好をされていて,ほかのセンターさんの付添い支援をやっている方々から,おかしいのではないかという意見も多々ございます。   そういうことをいろいろ考えますと,私も被害者なので,人一人亡くなっている裁判ですと,やはり気持ち的には喪服なのですね,被害者の参加する服装というものは。そうしますと,やはり裁判員の方々もある程度皆さんそれを考えていただいていて,気にしている方も多いですけれども,やはり裁判員の方の御負担も非常にあるのではないかと考えておりますので,やはり何かユニフォーム的なものが裁判の法廷の中だけで着るものが欲しいなと,私たちはそう考えています。   評議をする場合には,どのような服装でもいいかと思うのですけれども,法廷の中で裁判員が参加するというときには,余計な,気持ちが嫌な思いをすることがないように,是非是非配慮していただくためにユニフォームを私は作っていただきたいなと考えています。 ○山根委員 例えば全員黒い服を着るといったような個人の個を消すというようなことは,私は裁判員制度の趣旨にはそぐわないかなという考えを持っているのですけれども,ただ,例えば派手な服装などで苦痛に感じる被害者の方がいらっしゃるとか,裁判員も着ていくものに苦労するという声もありますし,何らかの対応を考えてもいいだろうとも思います。   御意見にあったように,Q&Aのようなものに何らかのことを書き込むということもあっていいかとも思いますし,何か服装を貸し出せるようなことにするとか,一歩前進というようなことで考えることはあってもいいのかなと思います。 ○島田委員 和氣委員,小林委員から御指摘のあったとおり,法廷は審理・判決を行う場ですので,極端な服装は好ましくないというふうに思っております。   ただ,裁判員裁判の場合,国民から選ばれた裁判員の方々は,多種多様な職業,経験をお持ちの方たちです。物事の考え方や価値観はもちろんですけれども,ファッションに関する感覚やセンスも違うはずです。   そして,法廷は厳粛な場所です。一般の人にとっては,とても緊張しやすい場所です。しかも,裁判員は,法壇の上に座って審理を見たり聞いたりいたします。裁判員が必要以上に緊張することなく,審理の内容を正確に理解して,その力を十分に発揮できるようにしていただくためには,基本的にはそれぞれ過ごしやすいふだん着で参加してもらうことが望ましいと私は考えております。したがって,必ずスーツを着てきてくださいというようなドレスコードまで定める必要はないのかなと思います。   裁判員の方々から,服装についてよく相談を受けることがあります。この場合,裁判員に選任された初日に相談を受けるので,その日の裁判員候補者,選ばれた裁判員の方の服装を見て,今日の皆さんの服装であれば特に問題ないと思いますとか,そういったようなやり取りをすることが多いと思います。   また,例に挙がっておりましたが,肌の露出が多いといったような場合には,服装について一定の配慮を求めるということも,裁判官としてやるべき事柄かなと思っております。 ○菅野委員 私も,服装に関しましては,今の島田委員の意見に賛成なのですけれども,今まで出ていない視点としまして,私たちの依頼者も,実はドレスコードに悩むこともあるということをお話しさせてください。   裁判員裁判になりまして,実は着脱式のネクタイのようなもの,それと革靴に見えるようなスリッパを拘置所で借りることができるようになりました。しかし,そもそもシャツやスーツは,拘置所で貸してくれるわけではございませんで,身柄を拘束されていると,本人がもちろん買いに行くこともできませんので,家族とかから支援が得られない場合,あるいは外国から来て逮捕されてしまったような場合は,正直なところ,何の服もなく裁判に臨むこともあるのですね。   仕方なく弁護人が洋服なんかを自腹で買って差し入れてあげたりすることもありますけれども,裁判員よりもずっと法廷にいて,まずは被害者,あるいは遺族の方から目につくのが私たちの依頼者である被告人だとすると,もう少し被告人のドレスコードに関する支援も国の方でいただけると有り難いかなという意見を述べさせていただきます。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」に関するその他の事項につきまして,もし御意見があれば意見交換をしたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○堀江委員 ヒアリングの中で,被害者関係者の方の意見で1点気になったところがありまして,,裁判員に対する分かりやすさやアピールのために証人として出廷を求められるということもあると,そういう意見が疑問として出されていたように思います。その方が実際どういう状況で出廷を求められたのかは,必ずしもよく分からないのですけれども,例えば当事者間では書証で立証することに同意しているにもかかわらず,裁判所の方で書証より人証優先ということで考えておられて,証人として出廷を求められたのだとした場合,確かに,事実認定や心証形成のための分かりやすさという点で,人証の方が適切だと判断されることももちろんあるだろうとは思うのですけれども,もし書証よりも人証という方針がしゃくし定規に用いられて,そういった対応をされたということであれば,それはいささか疑問に思います。証拠方法としてどちらによる必要性がどれだけあるのか十分検討されたのか,また当事者追行主義との関係でも問題があるのではないか,そういう感想を持った次第です。 ○島田委員 証人尋問で立証するのか,証拠書類で立証するのかという点については,当事者と裁判所の間で証拠の必要性,あるいはその立証事項との関係でどのような証拠方法で調べるのがふさわしいのか議論しております。   なお,性犯罪などプライバシーの保護が特に求められる被害者については,その供述調書が同意されているとき,二次被害を回避するために被害者の証人尋問を実施しないというのが原則になっているように思います。 ○大澤座長 ほかにいかがでしょうか。今の関連でも結構ですし,あるいは新しい問題提起でも結構ですが,御発言のある方はおられますでしょうか。   本日の段階としては,この程度でよろしいでしょうか。   それでは,検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」についての意見交換は,ひとまずこの程度といたしまして,本日はここまでとさせていただきたいと思います。   最後に事務当局から,次回の日程について確認をお願いしたいと思います。 ○鈴木刑事法制企画官 次回,第14回会合の日程については,令和2年9月14日,午後1時半から開催する予定としております。   場所につきましては,現時点で法務省大会議室を予定しております。 ○大澤座長 次回は,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」から議論を続けることにさせていただきたいと存じます。   それでは,本日はこれにて閉会といたします。どうも長い時間ありがとうございました。 −了−