法制審議会 民法(親子法制)部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和2年6月30日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時14分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法第772条の嫡出推定規定等の見直し(二読) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 予定しておりました時刻になりましたので,法制審議会民法(親子法制)部会の第8回会議を開催いたします。   本日はウェブ併用という変則の方式での開会ということになりましたけれども,御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   まず,本日を含め,この部会の今後の開催方法等につきまして,事務当局の方から説明をしてもらいます。 ○平田幹事 御案内のとおり,新型コロナウイルスの感染の拡大が続く中で,本部会に参加する人数が多数に上ることなどを踏まえまして,4月以降,2回の部会の開催が見送られてまいりました。今般,法制審議会におきましては,緊急事態宣言が解除されたことを踏まえ,当面,十分な感染症対策を施した上で部会を開催し,委員,幹事,関係官の皆様には,当省の会議室においでいただくことを基本としつつも,希望する方にはウェブで部会に御参加いただくことを認めることとされたところです。   お陰さまで,本日この民法(親子法制)部会を再開することができましたが,法制審議会としてもウェブ参加を可能とする部会は6月に入って始めたばかりです。事務当局も不慣れでして,様々な御不便をお掛けすることになるかもしれませんが,可能な限り円滑な進行に努めたいと存じます。また,長時間の審議をウェブ参加併用で行うことについては,参加者の皆様の負担の面でもやや不安がございますので,休憩を1時間に1回程度入れさせていただきたいと考えております。   新型コロナウイルス感染症の感染状況は今後も予断を許さないところではございますが,次回以降も,皆様に会議室においでいただくことを基本としつつも,ウェブで参加することもしていただける形で運営してまいりますので,御協力のほど,どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまお話がありましたような形で当部会の審議を進めるということでよろしいでしょうか。   それでは,そのように進めさせていただきたいと存じます。   人事異動の関係で委員等に異動が生じておりますので,議事に入る前に御紹介をさせていただきたいと思います。  (委員等の自己紹介につき省略) ○大村部会長 ありがとうございます。皆さん,どうぞよろしくお願い申し上げます。   それから,本日は山本委員が御欠席と承っております。   次に,配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方からお願いを致します。 ○濱岡関係官 今回の配布資料は,事前に送付させていただきました部会資料8です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,今御説明があった部会資料8に基づきまして,本日の審議に入りたいと存じます。進め方ですけれども,まず最初に事務当局から部会資料8全体について御説明を頂こうと思っております。その上で,全体を,関係するところはございますけれども,便宜,四つに区切って御意見を伺っていこうと思っております。   それでは,まず,部会資料8についての説明をお願いいたします。 ○濱岡関係官 それでは,御説明いたします。お手元の部会資料8を御覧ください。初めに資料全体について御説明しますと,第1で民法第772条の嫡出推定規定の見直しについて,第2で女性の再婚禁止期間の在り方について記載しております。   まず第1についてですが,民法第772条の嫡出推定規定の見直しとして,①妻が婚姻中に懐胎し又は出産した子は,夫の子と推定する。②婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。③離婚[若しくは夫の死別]による婚姻の解消[又は婚姻の取消し]の日から300日以内に生まれた子であって,母が前夫以外の男性と再婚をした後に出産したものは,①及び②の規律にかかわらず,再婚後の夫の子と推定するということを提案しております。   次に,1についてです。本文①は民法第772条第1項に対応する規律として,母が婚姻中に懐胎し又は出産した子に関する規律を,本文②は,同条第2項に対応する規律として,この出生時期から懐胎時期を推定する規律を,本文③は,本文①,②の規律の例外として,婚姻の解消後300日以内に生まれた子であって,母が前夫以外の男性と再婚した後に出産したものに関する規律を設ける形で提案をしております。   2についてです。ここでは本文①の,妻が婚姻中に懐胎し又は出産した子に関する規律について記載しております。(1)では,妻が婚姻中に懐胎した子を夫の子と推定することについて検討しております。   次に,(2)です。ここでは,妻が婚姻中に出産した子を夫の子と推定することについて記載しております。民法第772条第2項は,子を出産した時期を基準に,婚姻の成立の日から200日が経過した後,又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するとしていますが,本文①は,このうち婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子に関する規律を見直し,婚姻の成立後に生まれた子は一律に夫の子と推定することを提案するものです。   イで提案の根拠を記載しております。また,第3回会議では,懐胎を基準に法律上の父子関係を推定する規律(懐胎主義)を維持しつつ,出産を基準に法律上の父子関係を推定する規律(出生主義)を併存させることによって生じる問題があるのではないかとの指摘もあったところですので,この点も含めて御意見を頂きたいと考えております。   次に,(3)ですが,妻が婚姻成立前に懐胎し,婚姻成立後に出産した子の地位について記載しております。本文①は,現行法の下では,妻が婚姻前に懐胎し,婚姻成立の日から200日以内に出産した子は夫の子と推定されないこととされている点を見直し,妻が婚姻前に懐胎した子であっても,夫の子と推定することを提案するものです。   イでは,一読目で御指摘いただいた事項について検討を加えております。そこでは,母が婚姻成立前に懐胎し,婚姻成立の日の後に生まれた子について,嫡出でない子としての出生届の提出を認めるといった特段の例外を設けないこととし,夫の子と推定することとしておりますが,この点につきまして御議論を頂きたいと考えております。   次に,(4)では,推定の意義について記載しております。第3回会議では,民法第772条第1項の推定を見直し,法律上の父とする規律であることを明示するべきであるとの指摘があったところですが,現行法は,妻が婚姻中に子を懐胎した事実から父子関係を推定し,その推定を覆すための手段を否認訴訟によらなければならないとの制限を加えたものにすぎないと解され,法制上の用語の見直しをする必要性が高いと言えるかについては疑問もあります。また,このような見直しをした場合には,判例で認められている推定の及ばない子の法理にも影響を与えることになると考えられ,父子関係不存在確認の手続や強制認知の手続が,無戸籍者問題を解消する観点から有効な手段となっているとの指摘が多かったことからすると,これを見直すことについては慎重な検討が必要であるとも考えられます。そうしたことを踏まえ,民法第772条第1項の推定については,現行法の規律を維持することとしておりますが,この点につきましても御議論いただければと存じます。   次は,3についてです。ここでは,本文②の母の婚姻の解消又は取消しの日の後に出生した子の懐胎時期の推定に関する規律について記載しております。第3回会議では,一般的に離婚後に生まれた子は前夫の生物学上の子である蓋然性が低いことから,母の再婚の有無にかかわらず,離婚による婚姻解消の日の後に生まれた子は前夫の子と推定しないこととすべきとの指摘があったところですが,一定期間別居したことが夫婦の離婚の要件とされているドイツなどとは異なり,協議離婚を認める我が国の法制の下では,必ずしも離婚の直前の時期に夫婦の性関係が失われているということはできず,離婚後に生まれた子が一般的に前夫の生物学上の子である可能性が低いとはいえないとの指摘があったことや,一般的に前夫の子と推定しないこととすると,生まれた子は認知によらなければ法律上の父が確保されないことになるため,総体として子の利益が害される事態が増加するとも考えられることなどから,現行法の婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子は,原則として婚姻中に懐胎したものと推定するという規律を維持することとしておりますが,この点について御議論いただければと存じます。   次は,4についてです。ここでは,本文③の婚姻の解消又は取消しの日の後,母が前夫以外の男性と再婚し,子を出産した場合の規律について記載しております。ここでは,本文①,②の規律の例外として,婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子であっても,母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は,再婚の夫の子と推定することを提案しています。   また,(2)では,それほど多く生じるケースではないと思われますが,第3回会議で指摘のございました,母が再婚後の夫と離婚をしていたケースにおいて,再婚後の夫の子と推定すると考えるのか,それとも,前夫の子及び再婚後の夫の子との推定が及び,父を定めることを目的とする訴えによると考えるのかについて簡単に検討しているほか,離婚後に前夫が死亡して相続が発生したケースについても触れております。   さらに,(3),(4)では,前婚の解消原因が夫の死別による場合や婚姻の取消しの場合について記載しておりますが,前夫の子である蓋然性の高さや再婚後の家庭でのその子の養育する意思についてどのように考えるか,離婚と死別や婚姻の取消しとで差異を設けることが相当か,第2で記載している女性の再婚禁止期間との関係をどのように整理するのかといった点について,更なる検討が必要と考えられます。   そこで,離婚の場合と同様に,本文①,②の原則の例外として本文③の規律を設けることを提案しつつ,死別や婚姻の取消しの場合には③の規律を設けず,亡夫の子と推定することの規律を維持することとの案も併記し,引き続き検討することとしておりますので,これらの点につきましても御議論いただきたいと考えております。   最後に,第2についてですが,まず,第2は女性の再婚禁止期間の在り方についてです。先ほど申し上げた第1,本文①ないし③の見直しをした場合には,離婚若しくは夫の死別後に生まれた子について,母の再婚前に生まれた子は前夫の子と推定され,母の再婚後に生まれた子は再婚の夫の子と推定されることになるため,父性推定の重複により父が定まらない事態は生じないこととなることから,再婚禁止期間の定めを設ける必要性が失われるとも考えられます。そこで,嫡出推定規定の見直しにより,前夫の子との推定と再婚の夫の子との推定とが重複し父が定まらない事態を回避することができる場合には,これを削除することとするとの提案をしております。   他方で,死別のときや婚姻取消しのときは嫡出推定の例外を設けないとした場合には,なお父性推定の重複が生ずることとなりますが,この場合には,父を定めることを目的とする訴えにより裁判上,父を定めることとすることも考えられますので,これらの点についても御議論いただければと存じます。   部会資料8に関する説明は以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。第1の嫡出推定,772条関係を中心にいたしまして,それから派生する形で,第2の女性の再婚禁止期間の在り方,773条関係ということで,御提案と御説明を頂きました。   それでは,少しずつ中身を分けまして御意見を伺っていきたいと思います。この資料で申しますと,第1の①,②,③となっておりますが,最初に①の関係,妻が婚姻中に懐胎し又は出産した子に関する規律ということで,説明で申しますと部会資料の第1の2の部分ということになりますけれども,この部分について御意見を伺いたいと思います。ただ,今回の検討項目は全てに密接な関連を持っておりますので,ここに限るということではなくて,他の部分に及ぶ場合には,それと併せて御質問あるいは御発言を頂いても結構でございます。どなたからでも結構ですので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○窪田委員 多分ほかの部分にも関係する部分なのだろうと思いますが,一定の規律を採用するという場合に,一つは蓋然性で,もう一つは意思という形で,複数のファクターを組み合わせて御説明をして頂いているということで,それは十分に理解できるところなのだろうと思います。   ただ,やはり気になりましたのは,例えば2ページの下から10行目ぐらいでしょうか,婚姻した夫婦は,通常,その子を養育する意思を有しており,という部分なのですが,ここでいう意思というのがどのくらい具体的なもので,一体どの時点での意思を言っているのかが気になります。こうした説明はほかの部分にも随所で出てくるのですが,少し気になっています。例えば,妻が既に懐胎していて,そして,再婚する相手もそれを知っていて再婚するという場合には,正しくその子という存在を認識した上で再婚するということになるわけですが,恐らくそうではない場合もあるだろうと思います。この意思の意味をぎりぎり詰めていって,うまく解決できるというわけではないのかもしれませんが,少なくともやはりどの時点でのどんな意思を観念しているのかということについては少し気になったということです。これは質問といっても,うまく答えていただけるかどうかよく分からないところなのですが,気になったということで申し上げさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。何かあれば。 ○平田幹事 御指摘を受けて,検討させていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。表現ぶりの問題と,それから実質の問題と,両方あろうかと思いますけれども,他の部分にも類似の表現が出てくるという御指摘もございましたが,それらも併せて少し見直していただくということにさせていただきたいと思います。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○水野委員 4ページの(4)の推定の意義について,お伺いします。下から6行目くらいに,夫の子とするという表現を使わずに,推定するという表現を使い続けることの理由として,推定の及ばない子の法理に影響を与えることになると書かれてあります。この推定の及ばない子の法理については,まだ私自身,考えが煮詰まっておりませんので,内容についてはもう少しゆっくり考えさせていただきたいのですが,ただ,この法理そのものをどこまで維持するかということも議論をしなければならない現段階で,ましてその言葉はいかようにも変えられるように思います。推定の及ばない子の法理を,法理としては維持しても,嫡出効果の及ばない子と言い換えることもできますから,推定という言葉を削ってしまうことは問題ないと思います。それから,法律用語としての嫡出推定は,通常の日本語の推定とかけ離れているという問題があります。医学や生物学の専門家と嫡出推定の議論をしますと,推定は常に事実の立証によって覆るものだと,嫡出推定を誤解しておられる方が,少なくありません。日本語の推定は,そういう理解が普通でしょうから,嫡出推定には説明の必要な法律用語の難しさがつきまといます。言葉を変えることに必ずしも固執するつもりはないのですが,推定を維持する説明としては,この理由は少し弱いように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○平田幹事 御指摘のとおり,言葉を変えた上で「嫡出効果の及ばない子」というような形で規定することも考えられるかと思いますが,第5回会議で,やはりなかなか「推定の及ばない子」の法理を明文化するということは難しいという指摘を多数受けており,今回の諮問が無戸籍者問題を解消する観点から検討するというところもございますので,推定という言葉を変えるべきという御意見があるということは承知しておりますが,その場合にはどういう手当をするかというところも含めて御議論いただけると有り難いということで,記載させていただいた次第でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の点につきまして,何か御発言はございますか。 ○窪田委員 何度もすみません。私も水野先生と同じような印象を持ちました。結論的に言うと,多分772条の適用がない子という形で説明すれば解決するのだろうと思います。ただ,恐らく,今ここで議論するのが適当かどうかは分からないのですが,嫡出推定の及ばない子に関して言うと,懐胎主義を採っているときには,懐胎の可能性はないということで,比較的簡単に説明できたかと思います。しかし,出産主義を導入した場合,それとの関係でどうなるかという問題が,恐らく実質的により重要な問題としてあって,いずれにしてもそこの部分をクリアしないとこの問題は解決できないのかなと思いながら,資料を拝見しておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。前に何かのときに話題になったかもしれませんけれども,「推定す」というのは明治民法のときに書き換えて,このようになったわけですが,旧民法では「子とす」となっていました。「子とす」ということで,父子関係は覆すことはできないのかというようなことが言われて,「推定す」と書き換えたわけですけれども,旧民法でも嫡出否認の訴えへ認められていたので,実質が変わったわけではないと考えられてきたのだろうと思います。今回またこの点を「推定す」から改めたとしても,それによって何か実質を変えようということを水野委員も窪田委員もおっしゃっているわけではないのだろうと思います。むしろ,それに伴う説明の問題をどうするかという点と,それから,その説明に表れている問題が,今回の改正に伴って,問題の性質が変わって議論を要することになるのではないか,そういう指摘があったと理解を致しました。   説明は少し工夫していただくとして,推定の意義についての説明自体には特段の異論はないと理解してよろしいでしょうか。あとは,この説明がこれでよいのかということで,このようなことについて余り考えないのならば,水野委員がおっしゃったように書き換えるということだって不可能ではないという御指摘があったと受け止めさせていただきたいと思いますが,何かほかにございますでしょうか。 ○棚村委員 結局,第1の,妻が婚姻中に懐胎した子,出産した子,この規律は,今までも出ていましたけれども,懐胎主義と,出産主義という,異なる考え方を併存させるということが,どういう具体的な意味を持つかということに大きく関わってくると思います。   元々,私も十分な知識があるわけではないのですけれども,フランス法,それにかなり似通っている日本というのが,原則としてやはり婚姻中の懐胎子について嫡出推定と父性推定を与えていくという考え方を採用しました。これに対して,ドイツとか英米は,推定力は少し違うのですけれども,やはり婚姻前の子の懐胎出生子にも,出生ということを基本にして嫡出推定,父性推定を与えています。今は海外などを見ますと,婚姻がかなり相対化されてきていますので,必ずしも婚姻というものと親子関係の結び付きは持たせているのですけれども,少し弱くなってきているかもしれません。日本でどう考えていくかというときに,先ほど窪田委員もおっしゃっていましたけれども,やはり遺伝的なつながりに対する事実の蓋然性で行くのか,意思や生活をするということでの生活事実や親子になる意思みたいなものを重視するかと,そういう違いはあると思うのですけれども,元々,懐胎主義にしても出生主義にしても,やはり科学的な親子関係の決め方がかなり難しいという時代の産物であり,特に父子関係については証明や確定が難しいという前提の中で案出された考え方だったと思うのです。   それで,今,ではそれをどういうふうに使っていくかというときに,私もどちらかというと併存説に賛成しましたが,これは,子供に早くお父さんを与えていくという考え方とか,それから,先ほど言ったように,懐胎主義でも出生主義を採った場合でも,事実の蓋然性とか遺伝的なつながりの問題と,やはり意思とか,親としての立場を引き受けるとか,一緒に暮らすとか,子供を育てるつもりであるとかという,その要素がどうしてもファクターとしては影響を与えることになるのではないかと思っているからです。   そうすると,今言いましたように,確かに説明の仕方は,どちらに重きを置くかというのでなかなか難しいのですけれども,懐胎主義が持ってきた機能,それから出生主義が果たそうとしていた機能みたいなものと,それから,婚姻制度というものをどれくらい重視することで親子関係を決めていくかという,その辺りのバランスになると思います。またそれから,窪田委員や水野委員も多分意識していたのは,推定をして子供をどういう範囲で取り込んでいくかという問題と,そう推定されたものに対して覆せるというか,地位を奪う否認の問題ですね,それはやはり,どれくらいを取り込んでいけるか,どれくらいの人に,どんな形で,いつまで否定をできる権利を認めるかというのは,場合によってはどうしてもリンクせざるを得ないと思います。   今議論しているのは,どこまで子供を推定という網でかぶせていくかというときに,これまでの規定をある程度前提にしながら,どこまでそれを修正をしながら,多く取り込んでいくかという判断をしなければなりません。この点でもケースとしてはいろいろな多様なものがあるので,一元的に説明をしていくとか,一貫させるというのはすごく難しいのかなと思います。そうなると,やはり懐胎主義というものと出生主義というものを一定程度併存させて,何段階かのルールや推定規定を織り交ぜながら,今起こっている問題に対して,ある意味では広すぎたり狭すぎたりというのを調整するということが期待されているのではないか。その意味で,私は今回提案されている規律に対しては基本的には賛成かなと思っています。   ただ,先ほど水野委員からも窪田委員からも御説明があったように,かなり一元的に一貫した説明をしていくというのは,判例法理ももちろんそうですけれども,難しいので,説明の上でもかなり工夫が必要になってくるのかなと思います。ただ,どういう規律を今の段階で,どういう事態を想定して設けていくかというのは,必ずしもこれまでの議論の中でも,そうすっきりはしてこないと思うのですけれども,今言われたような,事実の蓋然性と,その意思的な要素,養育の環境の受皿の確保みたいなことを,子供の視点からも少し加味しながら,どういう規律を実親子関係の成立,特に父子関係の成立で置いていくかということで言うと,1の規律みたいなもので,ミックスさせた考え方,それから,2,3というふうにまた進んでいくと思いますけれども,それで,併存した場合に,具体的な説明の問題で,少し書かれていますけれども,私の記憶がはっきりしないのですけれども,この併存された場合,3ページの(2)の一番下のところで書かれている点です。要するに,懐胎主義と出生主義を併存させることで生じる問題があるのではないかというところだったのですが,この辺りは説明の問題なのでしょうか,それとも実際的な形で,両方の主義というか考え方を取り入れたときに具体的な問題が生ずるということなのか,すみません,質問なのですが,先ほどから出ているように,説明が非常に難しくなるという,あるいは理論的にかなり一貫させるのが難しいとかというレベルなのか,それを教えていただきたいと思います。長くなってすみません。 ○大村部会長 ありがとうございます。772条の問題は嫡出否認の方と併せて,その全体を見ながら考える必要があるということと,それから,772条限りで言うと,幾つかの要素を組み合わせて一定の幅で父子関係を認める側に組み込んでいく,どこでバランスをとるかということで,必ずしも一元的な基準による必要はないということを,まず御指摘されたと思います。   その上で,一番最初に窪田委員が触れられた点でもありますけれども,懐胎と出生とを併存させるということによって生ずる問題があるのではないかということが3ページに出てくるけれども,この問題は説明の問題なのか,それとも実際上の問題が生じるのか,この点が御質問ということだったと思いますが,まず御質問についていかがでしょうか。 ○平田幹事 先ほど窪田委員から御指摘があった部分が念頭にあったのですが,今回の見直しについて、仮に出生主義という観点から説明すると,やはり推定の及ばない子の法理についての説明をどうしていくかというような問題があると考えていたところではございます。そのほか,今回の資料にもありますけれども,婚姻と離婚等が続いて,最後に婚姻状態でない段階で生まれた場合にどう考えるかなどについても,説明をどうしていくかという問題があると考えたところで,このような記載をさせていただいた次第でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。そうすると,2番目の問題は実質的な問題としてあるかもしれませんが,説明の問題が大きな問題としてあるだろうということでしょうか。   この資料の書きぶりについて,最初,窪田委員,水野委員から御質問がありましたけれども,今,棚村委員の方から内容にわたる御発言がありましたので,内容にわたる御質問,あるいは御意見も頂戴できればと思います。いかがでしょうか。 ○磯谷委員 質問としてはシンプルで,確認的なものですけれども,一つ目は,今,水野先生と窪田先生のやり取りを伺って思ったのですけれども,要するに,婚姻後に出産をしたと,そうすると,今回の規律からするとその夫の子と推定されるわけですけれども,しかし,その懐胎時期を考えてみると,例えば,その夫となる人は海外にいたとか収監されていたとかいうふうな形で,その夫の子供を懐胎するということが客観的に外観的にあり得ないという場合であっても,この推定は及ぶということになり,そうすると,その後は,今の在り方からすると,嫡出否認をすると,それで解決をしていくという形になるのかというのが一つ目の質問です。   それから,二つ目の質問は,妊娠をしている女性が結婚したのですけれども,出産前にもう離婚してしまったという場合には,この規律からすると,夫の子とは推定されないというふうになるのかなと思いますけれども,その確認です。というのは,どちらかというと二つ目の方の問題は,後から再婚後の方がすぐ離婚した場合にどうなるのかというふうな規律のところとも絡んでくるので,念のため一応,そういうふうな理解でよろしいのかということを確認したかったです。 ○平田幹事 まず1点目についてでございますけれども,御質問は,いわゆる外観説の場合であっても否認訴訟で争うことになるのかという御質問という趣旨でよろしいでしょうか。 ○磯谷委員 要するに,①の規律からすると,婚姻している間に出産すれば,それは夫の子と推定されるという形になりますよね。しかしながら,その懐胎時期を考えると,ちょうどその夫は不在だったということになれば,少なくとも今までの考え方からすると,今はとにかく200日以内はそもそも推定されないので,いいのですけれども,今回この規律を導入する場合には推定されるということになるので,そうすると,今のような何か外観説というものが採り得るのか,それとも,もうそうではなくて,やはり嫡出否認で行くのか,というのは,先ほど少しお話があった,推定の及ばないということというのは,懐胎があり得ない時期だったので推定が及ばないということを考えられたけれども,今回,出産というところで切っているとすると,果たしてその考え方ができるのかどうかというのを思ったからです。 ○平田幹事 ありがとうございます。今の御質問の部分は,この規律を入れて,直ちにいわゆる外観説のような場合,刑務所に入っていたり海外にいたりしているなど,懐胎可能性がない場合についても全て嫡出推定が及んでしまって,全て嫡出否認訴訟で争うことになるというところまでは御提案しているつもりはございません。第5回にも御議論させていただきましたが,外観説に与える影響というところで改めて御議論いただきたいとは考えている次第でございます。   2点目の方が,離婚した後に出産した場合の規律ですが,そこは第1の②で,300日以内に生まれた子は懐胎したものと推定するという規律を及ぼすところかと思います。 ○磯谷委員 理解しました。そうすると,例えば想定できる例として,結婚するときに男性側は女性が妊娠しているとは知らなかった,それで結婚した,その後に妊娠が発覚した,「おかしい,離婚だ」となった。ところが,この場合において,離婚したとしてもなお再婚後の夫の子であるという推定が働くため,再婚して離婚した夫は嫡出否認をしなければならないということですか。 ○平田幹事 そのように考えております。 ○大村部会長 磯谷委員,今の点はよろしいですか。再婚が絡んでくると,もう少し複雑なケースも出るかもしれませんけれども,取りあえず今のところでは,それぐらいで。 ○磯谷委員 はい,結構でございます。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○大森幹事 私も質問的なことを二つ述べさせていただきます。1点目は,今回,婚姻後200日以内についても推定するとなったことによって,これまでとどう違ってくるかという点に関してです。婚姻後200日以内に出生したけれども,実は夫の子ではないという場合に,その場合も否認訴訟以外の方法として外観法理が使えるとすると,懐胎時には婚姻していないため実態はなく,あとはDNA鑑定で全て覆るということになり,期間制限などの制約もなくそれができることになると理解していいのかという点です。   2点目が,先ほど①が懐胎主義と出生主義を併存させる考えだとお聞きしましたが,これを実際の条文化しようとした際に,併存したような文言が果たしてできるのだろうかという点です。要は,婚姻中に出産したことで全てカバーできるのではないか,「懐胎又は」という文言が必要な場面が果たしてあるかということが疑問としてあります。考え方として併存したものだと考えたいという趣旨は分かるのですが,条文化することを念頭に置いたときに,婚姻前懐胎の場合であっても,全て婚姻中に出産した子とだけ書けばカバーできるとすると,「懐胎又は」という文言が出てくる場面が果たしてあるのだろうかということが二つ目の質問でございます。 ○平田幹事 それでは,まず1点目についてですが,婚姻後200日以内に子が出生した場合に外観説が及ぶのかというところですが,先ほど申し上げたように,出生と懐胎が混在する中で,外観説にどういう影響が及ぶのか,特に婚姻後200日以内が恐らく一番顕著に表れるのだろうとは思いますが,婚姻前の段階の状態をどういうふうに見て,どう評価するのかというところもあろうかとは思いますので,そこはまだ,ここで示しているものではないというところで御理解いただけないかと思っているところです。   2点目の,懐胎の文言を残す必要があるのかという点についてですが,少なくとも婚姻解消後の部分については,懐胎の話がないと出てこないとは思いますので,少なくともその部分については必要かと思います。 ○大森幹事 ありがとうございます。私が考えたのは,婚姻中に出産した子は夫の子とするというのが①で,その例外として③があるということですので,離婚後出生の場合は③の話で解決すると整理するのではと思ったのですが,そうではないでしょうか。 ○平田幹事 今回の資料の最初の規律の出し方としては,第3回会議で,772条の規律に合わせて記載するというようなところがありましたので,第1項目としては,772条第1項の推定に対応するものとして,懐胎又は出産ということで推定を及ぼした上で,今の第2項に対応するものとして,懐胎の部分の推定について,婚姻の解消の300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するとした上で,三つ目の規律として,再婚が生じた場合については,その両方の例外として,再婚の方を優先すると記載させていただいたものでございます。 ○大村部会長 大森幹事,よろしいですか。 ○大森幹事 ありがとうございます。御説明は理解しているのですが,婚姻中に出産した子は夫の子とするという,まず大原則を作った上で,離婚後に出産した子の場合はどう扱うかという点は,また別の規律にするという考え方もあるのではないかと。そうすると,「懐胎又は」という文言をあえて残す必要が出てくるのかということが若干疑問に感じました。 ○平田幹事 ありがとうございます。そのような定め方も多分あり得るのだろうと思いますが,現行法との連続性等も含めて,このように記載させていただいたというところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。書きぶりは多分どこかで改めて検討する必要があるのかと思って,伺いましたけれども,大森幹事がおっしゃっているのは,分けて書けば,懐胎し出産したと並ばなくて済むということですね。 ○大森幹事 はい。 ○大村部会長 出産によって夫の子と推定される場合と,懐胎によって夫の子と推定される場合が残るということは避け難いのかと思いますけれども,それでも,書き分けてしまった方がいいではないかという御指摘ですか。 ○大森幹事 そうですね,その方がすっきりするのではないかと思いました。 ○大村部会長 分かりました。そこはまた,検討を要するところかもしれません。   ほかにいかがでしょうか。 ○幡野幹事 3ページの(3)の,妻が婚姻成立前に懐胎し,婚姻成立後に出産した子の地位についての部会資料の記述について1点,コメントがございます。   ア,イとありまして,イのところで,前回第3回の会議で,母等が夫の子である場合には嫡出子としての出生届を提出し,また夫の子でない場合は嫡出でない子としての出生届を提出することを可能にしつつ,嫡出子出生届が出されたときには嫡出推定が及ぶと,こういうルールの在り方も考えられるのではないかという議論が第3回会議であり,それに対して,3ページの一番下の辺りですが,出生届の記載によって嫡出推定を排除することができることになるが,この考え方は婚姻成立の日から200日以内に生まれた子のみならず,嫡出推定が及ぶ期間に生まれた子一般に影響を与える可能性があると書かれておりますが,この部分についてのコメントを差し上げたいと思います。   一般に影響を与える可能性があるという文言の御趣旨についてはお伺いしたいと思っているのですけれども,あるいは,似たような制度としてフランスではこのような制度が採用されていると,フランスでは全ての期間にわたってこのような形で,出生届の父親欄の記載によってその推定が及ぶ,及ばないということがコントロールできるという制度になっておりますので,そのような事情があるために,推定が及ぶ期間一般にというふうに書かれているのかと思いました。もっとも,純粋に法技術的に考えてみると,限られた場面でもこのような考え方というのは利用可能ではないかと,このようなコメントを差し上げたいと思って発言をした次第です。   今のところ日本では,嫡出推定が及ぶ場合には,自動的に推定される父親が決まると,それによって嫡出否認の訴えを行使しないとその親子関係を否定できない,これに対して推定が及ばないと,もう一切そのような推定の効果が働かないと,この二者択一なのですけれども,出生届の記載によってというのをかませて,たとえ推定期間の中に入っていたとしても,もう一つアクションを起こさせることによって初めてその推定の効果が及ぶというフランスの制度は,今の日本法の,推定が及ぶと及ばないの両者の中間的な意味合いを持つ制度として理解をすることが可能なのではないかと考えております。すなわち,推定が及ぶけれども,嫡出子出生届が出されない限り推定されないと,そのような一つ要件をかませることで,必ずその期間が及ぶと嫡出否認の訴えを行使しなければいけないという,ある意味で強い効果と,その推定が及ばないというものの間に位置する中間的な推定の在り方というのを作り出すという技術的な意味があるのではないかと考えております。   そして,それは限られた場面でも利用が可能なのではないかと考えております。このような中間的な推定の在り方のメリットが生じる場面というのは,恐らく推定の重複が生じる場面になってくるかと思います。なぜかといいますと,後の話に関係してしまうのですけれども,9ページの(注5)というところでフランス法の紹介がなされており,最後から4行,なおと書かれているところなのですけれども,なお,子の出生時に母が再婚している場合は,父性推定の重複が生ずる可能性があるが,父性推定は子の出生証書が父の資格で父を表示しないときには排除されるので,出生証書に父として記載された者が子の法律上の父となるとされていると,このように書かれておりますが,これは結局,二重の推定が生じないことを意味しています。期間として重なっていたとしても,必ず出生届の父親欄に書かれるのは1人になるので,そういう意味で推定の重複を避けるという法技術的な意味があると考えております。   実は,フランスで再婚禁止期間がなくなったのが2004年5月26日の法律です。この法律により,フランスでも嫡出推定の重複が生じうることとなっていますが,出生届の父親欄に書かれるのが1人であるという仕組みがあるために,推定の重複という事態を避けることができています。様々な趣旨がこのルールにはあると思いますけれども,一つの狙いとしては,この父性推定の重複を避けるという点にあるのではないかと,そのように考えておりまして,最終的なコメントとしては,いずれにせよ,4ページの一番上の行にあるように,全ての期間にわたって今申し上げたような中間的な推定の在り方を,フランスでは採用しているのですけれども,それが唯一の選択肢ではなくて,限られた場面,例えば,ここは強い推定を及ぼすと余りうまくいかないという部分に限って,このような中間的な推定の在り方というのを採用するということは,可能性として排除するのは尚早であると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。この点について,今御指摘がありましたけれども,以前に御議論が出たところでもありますが,何かほかに御発言ありますでしょうか。   事務当局の方で何か,どうぞ。 ○平田幹事 今,幡野幹事から御指摘があった部分については,御指摘のとおり,そういう制度もあり得るとは思うのですが,我々が少し懸念したところは,ほかの一般的な部分について影響を及ぼさずに,婚姻後200日以内に生まれた子についてだけそういう制度を採るということの説明が可能なのかどうなのかというところでございます。やはりこのような仕組みにしますと,出生届に実体法的な効果を与えることになると思われますけれども,そこが現行法の理解とは大分異なってくるだろうと考えていたところでございます。最後に,ここは資料にも記載させていただきましたが,母親のみにそういう選択権を与えるということが,今までの枠組みとはやはり違うものですから,その辺についてもどのように考えるかといったような問題も検討する必要があろうかとは思っております。 ○幡野幹事 ありがとうございます。直ちに第一の選択肢として,今申し上げたような制度を採用せよという趣旨ではないのですけれども,まだこのような選択肢は消さないでいただきたいというのが一番申し上げたいことで,あと,母親に選択権を与えるという話ですけれども,先ほど申し上げたように,推定の重複を避けるというメリットのあるところでもありますので,それが多分,技術的なメリットとして,今までは比較的,母親に選択権を与えるべきかどうかということを検討する際に,その制度の技術的な意味については余り議論されていなかったと思うのですけれども,先に述べたような正当化もできるのではないかと思い,提案をさせていただいた次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。今伺っていると,200日までと、300日後と,それからその間の期間とで,幡野幹事がおっしゃっていることの機能というのが少しずつ違っているように思って伺いました。御提案は,特に300日後について,今回のような200日までについても嫡出推定が及ぶという規律を設けると重複が生ずるので,重複解消の手段としての選択権の付与は,特に考えられるのではないかという御趣旨だったかと思います。ですから,300日以後について最も当てはまり,次に200日までについて,もしかしたら当てはまるかもしれない,そして,その間の期間については一番弱い理由で支持される,そんなことをおっしゃっているのかと思って伺いました。   何かそれに関連して,あるいはそれ以外でも結構ですので,御発言があれば,いかがでしょうか。技術的なというか,こういう場合はどうなるのだろうという点について,幾つか御指摘や御質問を頂いておりますけれども,基本的な考え方については何か御意見がおありでしょうか。 ○棚村委員 前も少し発言させていただいたと思うのですけれども,テクニカルにはそういう中間的なグレードを付けたようなやり方ができれば便利だなという部分は非常にあると思います。それから,選択がある程度できるというのも,柔軟性もあると思うのです。ただ,私がやはり懸念するのは,親子関係の成否というときに,実体的なルールの中でできるだけ明確なものを作っていく必要があるのではないかと思います。それがなかなか難しいときに,例えば判例法理だと,推定が及ばない子という例外の法理を設けたり,それから,戸籍の手続で少し動かすというか,要するに,手続法とか特別法のレベルでできることというのは,その実体法のルールが十分でないとか,画一的であったり機能できないと,明確にはそこを定められないというときには,そのぎりぎりのところでは多分,幡野幹事の御提案,あるいはフランス法の知恵というのはいいなと思いますし,英米も実はそうなのです。出生届の段階で,病院で生まれた場合には,お母さんからお父さんと指名されたり名前を書いた人がやはりお父さんとされて,ただ,推定力が大陸法とは違って弱くて,争える状態になっているので,それほど強力な推定とされていません。しかし,もし手続法のレベルでのこういう選択なり記載というのに推定排除の効果を認めてしまうと,先ほど言った,やはり父の立場とか権利というとの比較で問題でないかということと,それから,やはり親子関係を決めるのはできるだけ実体的なルールで明確にしないといけないのではないかという懸念があります。日本は何か戸籍がすごく力を発揮して,ある意味では実体法にも大きな影響を与えてしまうようなところもなくはないので,ある意味では,実体法をせっかくいじるのであれば,その実体法のところで明確なルール化をまず目指して,幡野先生がおっしゃるようなものは,先ほど言った外観説の問題もそうなのですけれども,外観説辺りは使わなければ,要するに判例法理ですから,排除する法理というのは,明文化よりは,もし使わないで済むような形で改正ができればいいと考えています。ただ,もしそれがどういうふうに運用されて,実態が先ほど言った,どんなことがどんなふうに対象になっていくかということが見えてこないと,やはりなかなか難しいのかなとも考える次第です。   そういう意味で,問題点の指摘としては,私もどちらかというと,水野先生が大分前に言われたときに,ああ,これは便利だなと思って,すごく魅力的なものとして支持するというか,特に,2007年ぐらいに戸籍のない子供の問題が出たときは,ものすごくいい方法ではないかというので,フランスの例を出していただいて,賛成もしました。ただ,今こういうような形で,立法技術的にどこのレベルでやるべきかということで言うと,申し訳ないのですけれども,今,平田参事官なんかがおっしゃったような形で,全く排除するというよりは,実体法のルールで明確にできそうもないなというときに,是非それは使えるのかなというふうな理解です。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの幡野幹事の御指摘についてコメントを頂きました。   ここで中断を致しまして,再開後に①と②を併せて,基本的な考え方について御意見を伺うというところから入ろうかと思いますけれども,よろしいでしょうか。   それでは,中断いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   第1の①について御意見を伺っているところでしたが,第1の②まで含めて御意見を頂ければと思います。いかがでございましょうか。   休憩前に棚村委員の方からは,基本的な考え方としては①のような考え方でいいのではないかというご趣旨の御発言がありましたけれども,方向性についての賛否も含めまして,是非御意見を頂ければと思います。 ○窪田委員 先ほどの幡野幹事の発言にも少し戻ってということになるのですが,私自身もこの①で示された方向で,書きぶりは工夫する余地があるとしても,基本的な方向としてはいいのではないかと感じております。   ただ,幡野幹事から,特に200日以内に生まれた子について判断の余地を残すというのも案として残してほしいということでありましたし,幡野幹事御自身の案としては飽くまで①の案ということなのだろうと思いますが,先ほど大村部会長からも整理されていた中にも御指摘があったのだろうと思うのですが,むしろ③の問題を解決する方策として,こうしたものについても検討の余地を残すということはあり得るのかなと思います。幡野幹事の本意ではないのかもしれませんが,そういうふうな可能性があるのではないかと思って伺っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかに御発言はいかがでございましょうか。 ○磯谷委員 この①の考え方,基本的にノーマルな一般的な家庭を設定すると,正にそうなのだろうとは思います。そういう意味で,基本的な考え方としてはあり得るのかなと思っていますけれども,ただ一方で,先ほど少し質問させていただいたところでも絡みますが,やはりいろいろなケースを想定いたしますと,必ずしもこの推定というのが適切に働くわけではない場面もあるように思われます。したがって,この辺りはやはり,仮にこういうふうな規律を基礎として設ける場合に,やはり救済のところをいかにしっかりきめ細かくやっていけるかと,そこはよく考える必要がありますし,また,先ほど外観説の話もございましたけれども,併せてやはり検討していかなければいけないのだということを,ある意味,自分自身そう思ったということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。   ②についても御意見があれば,また伺いますけれども,①については,先ほどの幡野幹事の御発言も含めて,細部について,あるいは例外ルールについて,何か考える必要があるのかどうか,あるいは否認の方のルールをこの先,考えていくことになりますけれども,その中で考慮すべき事情はないのかといったようなことは残るとしても,基本的な方向としてはよろしいのではないかという意見が今,続いておりますけれども,何か御発言はございますでしょうか。 ○窪田委員 何度もすみません。今ここで決めるということではないのですが,検討課題として明確にしておいていただきたいという点として,私自身は①のような実体法のルールを作るという方向性でいいのではないかと思うのですが,先ほどから出ております,嫡出推定の及ばない子という概念との関係で,①がどう機能するのかという点については,どこかで明確に議論した方がいいのだろうと思います。出生の時期から遡って懐胎すべきであったときに,その夫となった男性とによって懐胎する可能性はなかったという場合でも,飽くまで①のルールは適用されて,嫡出否認によってのみ親子関係が否定されるという形になるのか,あるいはそうではなくて,従来どおりみたいな形の嫡出推定の及ばない子というのがそこでも出てきてしまうということになるのかで,子の法的地位についての扱いが随分変わってくると思いますので,①のルールはこれで結構なのですが,嫡出推定の及ばない子との関係でこの問題がどうなるのかというのは,どこかで明確に議論していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員,今の点について何か御示唆を頂けるようであれば。 ○窪田委員 私自身はやはり,①のルールを作るのであれば,そして①のルールというのが婚姻後200日以内の子供についてもその法的地位を安定させるということに主眼があるのだとすれば,基本的には嫡出否認によるべきであって,そこでまた,遡ったある時期にどうだのこうだのという話を持ち出してきて,推定の及ばない子というような形で親子関係不存在確認で解決するのは,やはり適当ではないのではないかという感じがしております。 ○大村部会長 ありがとうございました。今のような御意見がございましたけれども,それとは異なる考え方も含めて,いずれにしても検討する必要があるだろうという御指摘を頂いたものと思います。そうした留保を付けつつ,差し当たりはこの①をベースにして考えていくということについては,おおむね皆様の賛同を頂いているのかと思います。また後の御議論との関係でこれに戻ってくることがあるかもしれませんが,①はひとまず措きまして,②の方につき御意見,御質問を寄せていただければと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 ②というのは,要するに,5ページの3の辺りということですよね。 ○大村部会長 そうです。 ○磯谷委員 ここはもう前から議論になっているところで,今回整理していただいた中でも,一般的に離婚後に生まれた子供が前の夫の生物学上の子である蓋然性が低いという主張がある一方で,ドイツなどと異なって,協議離婚がある,一定期間の別居というのが必ずしも要件になっていない我が国においては,離婚の直前の時期に性的な関係が失われているということはできないのではないかというふうな,ある意味,事実認識の違いといいますか,そういったところが出ていると思います。   この問題は,やはり遡って考えると,要するに,子供が生まれてきて,なかなか父を定めるのが難しいわけですけれども,やはりその蓋然性をどう見るかというところが一番大きなポイントであって,そして,この蓋然性についてこれだけ認識が分かれているというところになっているのです。やはりこれを見ると,果たして現実にどうなのだろうかという思いと,ただ,現実といってもなかなか難しいのかもしれないけれども,例えば国民一般の受け止めというものが一体どういうふうなものなのかというところがとても気になると思います。理屈だけで考えると,いろいろとありますけれども,一般の国民の方々の見方というのがどういうものなのかと考えて,それを何とかうまく酌み取ったりすることができないのかと。恐らく一般の方々の認識というところの背景には,やはり社会実態というものがあるのではないかとも思うものですから,そういうふうに思っています。   それから,この問題というのは,やはりスタートラインは無戸籍をできる限り解決する,なくしていくというところだったかと思います。その背景では,この300日問題があり,特にDVなどで元夫と関わりを持たなければいけないということが非常に大きな抵抗になって,結局子供が戸籍の登録をされないという非常に大きな問題が生じてきたというのが多分,出発点だったと思うのです。ここに,認知によらなければ法律上の父が確保されないことになるため,総体として子の利益が害される事態が増加とありますけれども,ひょっとするとそれを上回るような子供の利益を害される事態というのが現実にあって,そこを何とか解決するというのが今回の出発点だとすると,一体これでどういうふうに無戸籍の問題を解決するのかというところは,やはり常に考えなければいけないと思います。   その後の本文の③の方を見てみると,確かに再婚をするというのは一つの大きな解決なのだということは分かります。ただ,全てが全て再婚ができるわけではないと考えると,先ほどのような,元夫と関わりたくない,元夫が怖いから関われないというようなケースで,一体どういうふうにして無戸籍の問題を解決するのか,それをやはりここに書いていただく必要があるのではないかと思いました。残念ながら,それが見えてこないと思っているので,やはりまだ少し検討しなければいけないのではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。蓋然性の問題はなかなか難しいところがあるという磯谷委員の御指摘で,それはこれまでも言われてきたところだったかと思います。このルールを覆すほど明らかな蓋然性というのもないようだという御意見も一方でありましたし,しかし,このルールが前提とする蓋然性を前提にしていると困ったことがあるといった御指摘もあるということで,議論をしているというところかと思います。また、300日問題の解決,無戸籍問題の解決との関係で,これでよいのかという御指摘があったところですけれども,これでよいのかというのは,いまここで検討している点に関して,これでよいのかという御趣旨ですね。ほかのところでもいろいろと手当を考えているわけですが,そのことを前提とした上で,ここでの規律はこれでよいのかという御指摘だと理解しましたが。 ○磯谷委員 おっしゃるとおりで,後のところでも,再婚をした場合に解決が一定程度図られるというところは出てきていますし,恐らくこれから先,否認の在り方であるとかというのも議論になりますから,そういう意味では本当に全体が連関しているのだろうとは思いますが,しかしながら,できるだけこぼれないようにと考えると,やはりこの300日の推定というのが果たして本当に妥当なのかどうかというところは,常にやはり疑問になっているというところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。今のような御意見を頂きましたけれども,いかがでしょうか。 ○水野委員 磯谷委員のご懸念は私も共有しております。そして,先ほど棚村委員の御発言にもありましたように,プラグマティズムという観点から,母の出生届によって嫡出推定を外すことをお考えいただけないかと以前からずっと言ってきたのですけれども,やはりその大なたを振るってしまうと嫡出推定制度全体が危うくなると強い反対を受け続けてまいりました。嫡出否認の提訴権を妻に与えることが無戸籍児問題の解決になるかと言いますと,実際に嫡出否認の提訴ができるような妻であれば,推定の及ばない子のルールを使って事前に強制認知の手続などをとることによって現状でも闘うことができるでしょう。そういうことができない女性たちが無戸籍児を生んでいるという問題の実態を考えますと,いまだにやはり,大なたではありますけれども,母の出生届による解決は存在意義があると思うのですが,ただ,それが嫡出推定制度全体を危うくしてしまうという議論については,もちろん私も一定の了解はしております。もしその大前提が大切だということでしたら,せめて200日以内,あるいは300日問題のところで,母の出生届という技法を使うことはできないかと思っております。  さらに,より本当の構造的な問題としては,DVからの救済,あるいは児童虐待の問題でも同様ですけれども,家庭内の暴力からの救済が,日本は実に行き届いていなくて,その不備の問題がここに流れ込んできているという構造があります。ですから本来的な筋は,そういうDVがある段階で社会が介入して救済することによる解決を図るべきなのであって,ここで母の出生届に強大な権限を与えるのは筋が違うと言われると,それはそれで一つの筋の通った考え方ではあると思います。  ただ現状では,そういう本筋の解決がにわかに実現しそうにはありません。やはり常にその問題をこの無戸籍児の背景に抱えていることを前提にせざるをえません。たとえば,行政的な手段などで,母が懐胎した段階で,DV被害に遭って別居していること等を事前に申し出ておくことによって救済されるとか,何らかのきめ細かな対応策は手続法のところでも考えておく必要はあるように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。  中田委員,お願いいたします。 ○中田委員 5ページの3の(2)の第3パラグラフに,本文の(注)についての記載がございます。この(注)は③に付されているわけですけれども,内容を拝見すると,これは②を否定するという趣旨ではないかと理解いたしました。つまり,再婚があろうとなかろうと,その推定をしないということですので,②を否定することになるのかなと理解いたしました。しかし,そうすると,それはかなりラジカルであって,例えば,これは死別も含めるとしますと,夫の死後に生まれた子供は相続権や損害賠償請求権を持たないということにもなりかねないということで,②を全面的に否定するというのは,やはり難しいのではないかと思います。   そうすると,②はいかしながら,しかし今,何人かの方々から御議論が出ておりますように,例外的に何か手当ができないだろうかと。その例外の方法として,幡野幹事の御指摘に端を発して皆様がおっしゃっているような,②を前提とした上で,一定の手当ができないかということが今の課題なのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。まず,(注)の趣旨について補足をしていただきたいと思います。 ○平田幹事 中田委員御指摘のとおりでございまして,③の(注)として付いているのは,③が①と②の例外として,再婚した場合に例外のルールを設けるというところを発生させて,更に②全体について例外を設けるかどうかについては引き続き検討するという趣旨でございます。 ○大村部会長 ③のところに(注)が付いたのは,②が否定される場合として,まず③を提案しているけれども,更にそれより進むという選択肢もあり得るという趣旨だという御説明だったかと思いますけれども,結果としては(注)をとりますと,中田委員がおっしゃったようなことになってくるということだろうと思います。そこまではよろしいでしょうか。 ○中田委員 どうもありがとうございました。そうすると,②を排除するということになると,その場合は多分,①にまで跳ね返ってきまして,②がなくなると①の「懐胎し」というのも恐らく要らなくなるだろうと思います。多分そこまでは考えていらっしゃらなくて,そうすると結局,②を維持しながらどうやってその例外を設けていくかというのが課題だという,先ほどの話に帰着するのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。②を全面的に否定するということでは,それに伴う問題があるのではないかということで,生ずる問題については,例外を設けることが可能かつ必要であるということであれば,その方向で検討すべきなのではないかという御指摘を頂いたと理解いたしました。   この点について,ほかに御意見はございますでしょうか。 ○久保野幹事 今御議論がありました点と関わりまして,③と注との関係にかかわり,③で「推定する」となっている部分は,前夫の子としての推定はされず,再婚後の夫の子としてのみ推定されるということでしょうか。注により②が否定されることになるというのはそのような構成を前提としているように思います。しかし,その構成に限らず,前夫の子としての推定もされるが,再婚後の夫の子としての推定が優先するという構成も考えられるということでよろしいでしょうか。 ○大村部会長 御趣旨は,③の再婚後の夫の子と推定するということの中身について,前婚の推定が外れるのかどうかということですか。 ○久保野幹事 そうです。 ○平田幹事 ③の記載としては,後婚の推定が及ぶというところで,ただ,前婚の推定が全くなくなっているかどうかというところについてまで踏み込んでいるつもりはございません。第5回会議でも御説明差し上げましたが,この部分の考え方については,前婚の推定がなくなってというような考え方と,推定が重複するというような考え方,両方考えられるというところで,当時も御指摘ございましたとおり,その考え方は両方あるし,いろいろな考え方に結び付くだろうという前提で,ここは記載させていただいております。   その上で,③は,後婚が基本的に優先するという形で規定はしておりまして,この後,後婚の後にまたそれが離婚したような場合についても,一応後婚の推定が及ぶような形で記載はさせていただいておりますけれども,ただ,そこの部分についてどういうふうに考えるかという点は留保しているというところではございます。 ○大村部会長 今のお答えを踏まえて,何か御意見やコメントがあれば,頂ければと思いますけれども,久保野幹事,いかがでしょうか。 ○久保野幹事 離婚の場合と死別の場合とでは,前夫との間の生物学上の親子関係の蓋然性の高低や再婚が持つ意味が異なると考えられますので,②についても,③についても、離婚の場合と死別の場合とを区別して考える必要があると思います。そして,③について,推定が重なりつつ優劣をつける構成と片方の推定のみが及ぶとする構成の両方の可能性を考えておくことが,離婚と死別との違いを踏まえての検討に資するように思います。 ○大村部会長 ②についても離婚の場合とその他の場合とを区別して考えるべきだという御指摘だと思いましたけれども,その後の部分は。 ○久保野幹事 死亡のときにはより慎重に考えた方がいいという方向性を感想として述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   続けて木村幹事,お願いいたします。 ○木村幹事 まず,久保野幹事がご指摘されていたように,離婚と死別は区別して考える可能性は十分にあると考えられます。そのため,②のような規定をもうけず,出生主義に一本化したとしても,死別の場合には別途例外規定を設けることもありうるのではないでしょうか。   次に,②の婚姻解消等後について,②の規定を維持しつつも,無戸籍児問題への対応として救済的措置を検討する可能性があるとの指摘があり,その方策の一つとして幡野幹事がさきほど示唆されていたような,たとえば母による出生届の可能性が挙げられていたように思います。その際,幡野幹事からは,弱い推定という考え方が示されたと記憶しています。この弱い推定について,たとえば,久保野幹事が指摘されていた場面,つまり,前婚と後婚による父性推定が重複しており,それらを比較した結果,後婚の父性推定が優先される,との結果として,前婚の父性推定が弱いものと捉えることは可能かと考えます。これに対して,そうした父性推定の重複がない場合,つまり,②について,再婚などがなく,ただ婚姻の解消等から300日以内に出生した子についても,弱い推定とすると考えられるとすると,その弱い推定は何をもって根拠づけられるのでしょうか。一つは,生物学上の父子関係の蓋然性が低いこと,もう一つは出生主義が説くような,婚姻家庭における子の安定的な養育環境の存在するか否かと思います。この点,後者の点まで含めて説明することが適当なのかどうか,より慎重な説明が求められていると思います。 ○大村部会長 御質問の趣旨は分かりました。それで,今の御発言はその前の久保野幹事の御質問とも関わっているかもしれませんが,300日の推定がどういう性質を持つのかということによって考え方が違ってくるのではないかという御指摘かと思います。弱い推定と考えたとすると,そのことを基礎にして幡野幹事のようなアイデアを盛り込めるかもしれないけれども,そうすると,重複している場合だけでなくその考え方が及ぶということもあり得るので,その辺はどうですかという御質問だったかと思います。 ○木村幹事 そうですね,基本的に懐胎主義だと,婚姻中の懐胎においては生物学上の蓋然性は十分にあるという理解をもって,それに支えられて,②のような規定が置かれているのかと思うのですけれども,必ずしもその蓋然性が高くないと説明をすることになろうかと思います。他方で、出生主義について,2ページ目のイの②で書かれていたような,子供の養育する意思を持って婚姻中の夫婦によって安定的な養育環境を与えることができるということが根拠として重要であるのであれば,果たしてそこまで,ある意味,出生主義に傾いたような説明を採ってもよいのかどうかという点をもう少し議論した方がよいのかなと考えております。 ○大村部会長 事務当局の方で何かあれば伺いますし,それから,フロアの皆様の御意見も伺いたいと思いますけれども,何かありますか。 ○平田幹事 御指摘のとおり,ここの部分をどういうふうに説明するかというのは,一つのポイントだとこちらの方でも思っておりますので,この辺,皆様の御意見を是非頂ければとは考えているところでございます。 ○大村部会長 今の木村幹事の問題提起について,何か皆さんの方で御意見,あるいは御感触があればと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 幡野幹事の先ほどの御示唆が,私は多分正しく理解していないのですが,やはり婚姻中の夫婦の間に生まれた子が夫の子である蓋然性が高いというところは,客観的にも異論がないところだと思うんですけれども,ちょうど離婚をするという話になってきますと,そこが恐らく大きく揺らぐわけなんですよね。その場合,婚姻中における蓋然性と,離婚した後の300日以内の蓋然性というのは,やはり同じではないのだろうと思います。そうすると,先ほどの幡野幹事がおっしゃった案,これは母がどう届け出るかというところに重きを置くわけですけれども,母は子の本当の父が誰かということを一番知り得る立場にあることから,まず第一に母の意見というのを尊重してみようという考え方と理解しました。   ただ,蓋然性である以上覆ることもあり得るわけですから,いやいや違うよという場合には嫡出否認等の手続でやっていこうと,そういう一つの知恵なのかなと思いました。従って,離婚後300日という蓋然性が大きく揺らぐ場面においては,母の意見をまずは尊重してみるというやり方もあり得るかなと思って聞いておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   磯谷委員は,今の蓋然性に対する説明の仕方について,あるいは捉え方については分かりましたけれども,ルールとしては,母の判断をかませるのは,離婚後の場合に限ってということですか,それとも全ての場合にということですか。 ○磯谷委員 ごめんなさい。私もちょっとそこまで明確に何か言い切っているわけではないのですけれども,そういうふうな非常に蓋然性が揺らぐ時期の方法としては,一つ,何ていいますか,面白い方法かなと思って聞いていたという次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見があれば頂きますが。 ○棚村委員 今,木村幹事も,何か弱い推定と強い推定ということをおっしゃっていたのですが,その辺りも,結局原則を一体どういうルールで一般的なルールとして考えるか,それから,サブルールですよね。私は英米法を研究しているものですから,かなり,推定とはいっても,いろいろな人が一定の期間であれば,DNA鑑定も含めてかなり強い形で否定をする権利や権限も持っているという制度になっています。   今回の御提案を見ますと,やはり懐胎主義というものを採っていた民法が,出生主義みたいなことを導入して,どこまで修正できるかが問われています。それから,当然②のところは,懐胎主義を前提としていますから,200日の問題はどうするか,それから,300日問題もどうするかということで,200日はちょっと外して,300日については,懐胎期間の推定規定を置いています。3番目のところで,やはり,2にも関係するのですけれども,離婚の場合,それから死別の場合と,それから取消しの場合でその間の事情がどれくらい変わってくるのか。多少なりとも事情は違うということはよく分かります。むしろ,離婚が数としては多いだろうとも思います。それから,死別とかもかなりあるけれども,取消しということになるとかなり少ないだろうとも考えられます。そのときに,一般的なルールみたいなもので,それぞれの違いに合わせてサブルールみたいなもの,これは窪田委員がいつも言っていたことですけれども,大きな原理とか原則をどこに定めて,サブルールみたいなものをどこまで細かく作っていくかということが,やはり問題になっていくと思います。   中田委員も今おっしゃっていましたように,原則をどう立てていって,例外をどこまで認めるかということが,最終的には絞られてくるのだと思います。そのときに,懐胎主義を採っているものを,大森委員は先ほど,出生主義で整理してしまっても可能ではないかという御提案もありました。しかし,懐胎主義は,一定期間の懐胎ということを通して実親を決めようという考え方は,やはりそれなりの妥当性があって,特に死亡解消とかという話になると,離婚とはまた違う夫婦関係の変化というか再編というか,そういうプロセスになってくるので,死亡解消における夫婦の実態とかそういうものも,やはり大分違ってくると思います。   それから,取消しの場合も,取り消されるまでは婚姻は有効と解されて、効果としても離婚の規定が準用されて処理されることになります。私自身は,やはりそういう中で,最初に,基本的にはこういう方向性については賛成だと述べたのは,大きな前提として,どこまでコンセンサスが皆さん得られるか,その懐胎主義みたいなものを採るか,採らないか,それも併存させながら,出生主義を導入して,婚姻を基礎とした親子関係の決定みたいなことに,どれくらいコンセンサスができるか,それから,取消しとか死別と離婚と,その辺りをどういうふうに皆さんが了解できるかというので,数から言えば,先ほど言ったように,離婚,それから死別,数はだんだん少なくなってきますから,それをどういうルールでくくっていくかという問題となります。離婚はもうとにかく外してしまうという考え方も,300日ルールでいえば当然あるわけで,それから,死別の場合には,むしろ実態が少し残っているから300日ルールを適用すべきとも考えられます。これは,アメリカの統一親子関係法でも300日以内は,死亡解消の場合には推定される父として出てきます。   そういう意味で言うと,取消しとかそういうケースについても,今回の提案は,一応それは,懐胎主義を採った上で残そうというので,②の提案になっています。3番目のルールとしてどうするかというのが,括弧にくくって出てくるわけですね。   やはりこれから議論しなければいけないのは,死亡の場合と離婚の場合と取消しの場合で,異なったサブルールなり原則の立て方をするべきか,しないかということではないかと思います。それで,その辺りのところになると大分,私も自信がなく,正直言ってちょっと迷っているのは,磯谷委員もおっしゃっていましたけれども,離婚ということになると,新しい家庭を作ったり,次のステップに移っていて,前婚というのはかなり,実態が残っているというよりは,むしろ関係も薄くなっていると考えます。それを,この300日ルールの中に取り込んでやっていていいのかというのは,やはりちょっと疑問を持っているところではあります。この段階から,外す必要はないのだろうかということで悩んでいるんですけれども,御提案があったように,日本はやはり協議離婚という制度を採っていて,その意味でいうと,当事者が合意さえすれば,実態と関係なく,当事者の意思で離婚ができるという制度です。そこの辺りが欧米とはやはりかなり違うので,それをどうするかなというところが非常に悩ましいところで,今,決断がついていないところです。   それで,②あたりも,先ほど言いました,数で言えば離婚を,9割近くが協議離婚という実態なので,そこをうまく把握できない事情のなかで,これを外すというか,推定を外すようなサブルールを作っていくというのが,なかなか難しいという感じがします。例えば,新しい家庭をもう形成しているときは,前夫を外してしまうとか,そういうようなことが,別居という法的クッションのある国と,そうでなく,協議離婚という制度の日本と,裁判離婚で統一されている国とで,ちょっと違うのではないかと,本当に悩ましいところですね。   それから,3番目のルールに至っては,やはり再婚ということを経た者以外の人たちは,ではどういうふうに規律をしていくのだということを考えると,やはりもっと悩ましいという感じになります。中間で感想のような話なのですけれども,やはり懐胎主義みたいな今のものを採っていくか,それから,出生主義でどこまで修正するか,離婚と死別とか婚姻取消しとか,それを一つのくくりの中でやるのか,もうちょっと細かく区別してルール化するのかという辺りが,すごく重要なポイントになってくるのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございました。   いろいろな御指摘,御示唆を頂きました。サブルールという言葉が何度か使われましたけれども,先ほど久保野幹事からも御指摘ありましたが,②,③を含めて,離婚と死別と,それから取消しとを,差し当たって分けて考えることは可能なわけです。しかし,離婚については,別居問題があるのでという御指摘もありました。   2と3とを併せて,離婚,死別,解消の区別をどうするのかということについては,引き続き御意見を頂きたいと思います。木村幹事から先ほど手が挙がっていたかと思いますが,もう一度御発言がありますか。 ○木村幹事 磯谷委員がおっしゃったように,母が父性に関する生物学上の蓋然性をもっともよく知っている者だとして,その母に判断を委ねるという考え方は一つあり得るのではないかと思います。しかし,その母の判断ないし決定権の行使を出生届ないし戸籍に関する手続をもって実施できるという点には違和感があります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほどの幡野幹事の御提案,それから磯谷委員の御発言との関係で,実質について母親の判断を介在させるとして,それをどのようにルール化するかという点については,なお検討が必要ではないかという御指摘かと思います。   その点も含めて,いかがでしょうか。 ○大森幹事 3点ほど述べさせていただきたいと思います。   1点目は,先ほど久保野幹事や木村幹事,棚村委員からも御指摘ありましたように,私自身も,離婚か,死亡かによって,考えなければいけない要素が大分違うと思いますので,区別して検討する必要があるのではないかと思っています。   2点目は,離婚を前提とした場合の話ですけれども,今回の御提案のように,推定は維持するとしながら,その不都合がある場合を何とか解消しようということで,サブルールをどう置くかという議論が今なされています。一つは再婚した場合を救済しましょうという話が出ています。また,それ以外に,幡野幹事からの御提案のような考えもあるのではないかという御意見が出ています。ただ,このサブルールがちょっと適当ではない,あるいは,なかなか機能するものない,あるいはそこでカバーし切れるものではないとなった場合には,翻って,その原則論からやはり見直さなければいけないという話にもなってくるだろうと思います。そもそもこの父子関係について,どういう要素を基に考えるかという点については,冒頭窪田委員からも御指摘ありましたように,蓋然性,あるいは養育意思というキーワードが出ていますが,離婚後300日以内について,果たしてどこまでこれらの要素が妥当するだろうか,磯谷委員からもご指摘がありましたように,蓋然性がどこまであるのかということを考えていかなければいけないということもあります。   申し上げたいのは,今回の御提案は,推定を維持するとしながら,それを修正するという内容になっていますけれども,今申し上げた点を踏まえると,推定しないとしながら,そちらの方向からの修正としてはどういうものがあり得るだろうかという,両方向の考えがあり得るのではないかということです。蓋然性がどこまであるのか,ないのか,一般国民の意識がどこまであるのかどうかということは,なかなか判断が難しいからこそ,パブリックコメント等で御意見をお聴きするのが適切ではないかとも思いますので,個人的には,両論を併記した形で,議論を整理するのが適切ではないかと思います。   例えば,離婚後300日について推定しないとした場合に,当然これまで御指摘があるような不都合があるではないかということもあると思いますが,それについてはどういう手立てが考えられるのかということを検討していくということも重要ではないかと思っています。   最後の3点目ですけれども,今回の御提案で,サブルールの一つとして再婚した場合を救済するというのが,③の話として出てくるわけですけれども,救済が再婚のみということは婚姻の自由との観点においても適切ではないのではないかと考えております。つまり,血縁上の父ではない人と再婚する場合もあるということもありますし,そのほか,中には,前夫の子としないためには,再婚を余儀なくされるということも出てくる可能性があるということが挙げられます。これまでのお話にも出ているとおり,前夫との関わりを持ちたくない,対峙することを避けるという当事者がおります。前夫に対する否認の手続をすることなく前夫の推定を避けるためには,再婚をしないといけないということになってしまいますと,婚姻の自由との関係も問題が出てくるのではないかという懸念があります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   3点の御指摘ないし問題提起を頂いきましたが,1点目は,先ほど来出ておりますけれども,離婚,死別,それから取消しを,差し当たり分けて考えてみる必要があるのではないかということだったかと思います。   また,2点目は,原則は推定が及ぶということにしてあり,それで不都合なところを例外として手当するという作りになっているけれども,原則と例外を逆転させて考えてみるという発想もあるのではないかといった御指摘だったかと思います。やってみると,結構近いところに収束するかもしれませんが,考え方としては,両側から考えてみる必要があるのではないかというのが,2点目の御指摘だったかと思います。   3点目は,現在第1段階の救済策として再婚後というのが挙がっているわけですけれども,それで線を引くということが妥当かどうかは,検討に値するのではないかという御指摘だったかと思います。   3点目については,この場合を救済するとして,その先,更に救済する必要があるかどうかというのが問題になるというのが,(注)の書き方なんだろうと思いますけれども,これとの関係でいうと,③だけでとどまるということには問題があるかもしれないという御指摘になるのかと思って承りました。よろしいでしょうか。 ○窪田委員 ちょっと感想めいたことで大変に申し訳ないのですが,やはり①に関しての問題が,やはり最後までずっと引きずっているのではないかなという感じがしております。出生主義か懐胎主義かという部分で,両方ともあるのだということであったとしても,多分,①のルールをどういうふうに続けるか,あるいは②のルールをどういうふうに続けるかといったときに,現行の懐胎主義を前提としつつ,婚姻成立後200日の部分にまで,言わば嫡出の親子関係を広げるのだという,その意味では,出生主義を例外的に子供の利益のために取り込むのだという捉え方と,いや,むしろ出生主義をもう原則とした上で,例外として,その後の300日の問題を考えるのだという考え方があるように思います。   恐らく大森幹事は,後者のような捉え方をされているので,多分そういう方向になるのだろうと思います。どっちがいい悪いということではないのですが,どうもやはり,どういうふうに①のルールを捉えるのかということによって,味方が随分違ってくるのではないかと感じました。むしろ,現行法の懐胎主義については,やはり原則は変更していないのだということを前提とするのであれば,②というのはそれほどおかしなルールではないということになると思います。さらに,今こういうふうな発言をすることが適切であるかどうか分からないのですが,恐らく,懐胎主義を支えていたというのは,単なる事実的な蓋然性ではなくて,恐らく規範的な性格も含んだ評価ということだったのではないかと思いますので,そうした基本的な理解を維持するかどうなのかというのが問われているのかなと思いました。   それと,やはりもう一つ,すごく気になった点なのですが,なるほど無戸籍問題,300日問題を解決するということは重要なのだろうとは思いますが,これを②のレベルで扱わなければいけないという必然性は,必ずしもないのではないかという気がしています。つまり,300日の嫡出推定というのは,確かに非常に困った状態をもたらすということはあったわけですが,他方で,否認権者の拡大とか別のアプローチという形のも用意されている中で,②のようなルールを全面的に否定してしまったら,その問題は確かに解決できるとしても,しかし,それ以外の多分問題も出てくるのだろうと思いますので,そうした点をやはり意識しながら議論する必要があるのではないかなということを感じました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今の御指摘で,先ほどの大森幹事の第2点というのが,出生主義か懐胎主義か,どちらを原則に考えるのかということと結び付いているというお話ありましたけれども,そのように整理をしていただいて,考え方の差というのが,ある程度明確になったように感じます。   また,②を全面的に否定するということがもたらす弊害という点につきましては,先ほど中田委員からも御指摘があったところかと思いますので,親子法全体として考えるときに,これを維持することの当否というのも,考慮に入れて考える必要があるのだろうと思って,伺いました。   それから,300日問題の解決が,ここの部分だけで果たされるというわけではないということは,先ほども少し話題になりましたけれども,この部分も含めて,全体として無戸籍児問題に対して,一定の効果がある方策を講じていくということを考えるという御趣旨だと伺いました。 ○磯谷委員 今,窪田委員がおっしゃった最後の点ですけれども,要するに,この②の規律を維持すると,どういう制度にするにしても前の夫を手続に関与させなければならないのではないかと思うんですね。そうだとすると,DVなどで元の夫とはもう関わりたくないという女性たちにとりますと,結局は,元の夫と関わらなければいけないのかということになりかねないのではないか。   従って,論点が手続的なところにもリンクしてくるのではないかなという懸念があります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   DV問題は,問題自体としては深刻な問題で,先ほど水野委員からも御指摘がありましたけれども,この問題自体に対して,対策を様々な面で講じていくということが必要だろうと思いますが,その上で,これをどうするかということで,ここに手をつければ,今の問題については大きく改善されることになるというのが,今,磯谷委員の御指摘だったかと思います。   ほかにいかがでしょうか。   まだ御議論は続くかと思います。それから,2と3については,離婚,死別,取消しを区別してという御議論がありましたけれども,3に重点を移して御意見を伺いたいと思いますが,その前にここで中断したいと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開をしたいと思います。   これまで,第1の①,②について御意見を頂いてきましたけれども,②につきましては,③と併せて議論をすることも必要ですし,既に③と併せての御発言も出ております。③に重点を移しつつ,②も含めて,この後御意見を頂ければと思います。   ③というのは,資料で申しますと,5ページの4以下ということになります。婚姻の解消又は取消しの日の後,母が前夫以外の男性と再婚し,子を出産した場合の規律という部分になりますが,繰り返しになりますが,②と併せて御意見を頂ければと思います。 ○大石委員 私は全く素人なので,ちょっと分からないところを教えてほしいんですが,続く7ページのところで,胎児が死亡で生まれたときは相続人とはならないということを参考にしてうんぬんとあるんですが,胎児が死亡で生まれたときって,要するに権利能力以前に権利主体が何もないわけですから,その場合を「参考」にして,何らかの人間を,あるいは権利能力者をどこまで扱うという議論につなぐときに,「参考」にということの意味が,私,どうしても分からないんですが,どういうアナロジーなのか,あるいはどういうリファレンスなのか,その含みを教えていただければ幸いです。 ○平田幹事 参照した例が適切ではなかったかもしれませんが,この部分では,出産までの間に母が再婚したときには,やはり相続人とはならないというような規定を置くということは考えられるのではないかというところで記載させていただきました。そこのロジックについては,今後,検討させていただきたいとは考えております。 ○大村部会長 表現も含めて,何が対比されているかということについて,見直ししていただきたいと思います。ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。   休憩前までは,②と③とつながった中でということで御意見がありましたけれども,③を単体で見たときの意見として発言をさせていただきたいと思います。   6ページの(2)には離婚の場合,そして7ページの(3)のところには死別の場合,8ページの(4)には婚姻の取消しの場合と,それぞれ論点が示されているわけですけれども,感覚的な意見で大変恐縮なのですが,離婚の場合と婚姻の取消しの場合は,大きく一緒にくくって考えてもいいのではないかという気がしております。一方で,死別の場合なのですが,いわゆるもめごとがあって婚姻関係が解消されたわけではないので,その点では,同様に扱っていいのかどうかという悩ましい点はあるかと思っています。   ただ,第3回の会議でも発言をさせていただきましたが,やはり法制度というのは,国民にとって分かりやすい内容であるということが望ましいと思っていますので,複雑に区別することは避けるべきではないかと考えています。   また,これも繰り返しになりますが,大切なのは,子の利益の保護であって,早期に父子関係を確定し,子の地位の安定を図ることだと考えています。そもそも離婚の場合も死別の場合も婚姻の取消しの場合も,事情は様々あると思います。画一的にこうだからこうだとは言い切れないのではないかと思いますので,むしろ様々なケースを包摂的にカバーできる仕組みであることが重要なのではないかと考えますので,結論としては,この本文③は,全ての場合に共通した例外として認めてはどうかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ③について,全ての場合に共通したルールがよいのではないかという御意見をいただきましたけれども,その前提として,ルールは簡明であるということに非常に大きなメリットがあるのではないかという御指摘も頂いたところです。   先ほど来,具体的な妥当性を確保するために,場合によっては例外ルールを設けるという御意見も出ておりましたけれども,それが必要なことはもちろんあるわけですが,余り複雑なルールは望ましくないのではないかという御指摘として,今の御意見を伺いました。   ほかにいかがでしょうか。   どなたでも結構ですが,いかがでしょうか。   離婚,死別あるいは取消しとを区別するかどうかという問題と,それから,再婚ということで線引きをして,これを一つのカテゴリーとして一定の取扱いをするということがあろうかと思いますけれども,後者については,先ほど大森幹事の方から,これでよいのかどうか疑問もあるという御指摘がありましたけれども,その辺りについてはいかがでしょうか。   御発言ございませんでしょうか。 ○棚村委員 先ほど,離婚と死別と取消しのところで,ちょっと事情が違うのでは悩ましいという話をしたのですけれども,アメリカ法の話をしますと,統一親子関係法というのがありまして,2002年の204条のところで,父性推定というのが出てきます。お父さんになるのは,まず第一は,母が夫と婚姻して,その婚姻中に生まれたこと,出生したという出生主義のルールが採られます。そして,次のところに出てくるのが,やはり離婚とか,それから死亡解消,それから婚姻の無効とか取消しの宣言がされた場合に,その後300日以内は,やはり婚姻していた夫を推定するというルールになっています。そして,出生証明書に記載された父の欄に記載がある者も父と推定される。   そういう意味では,木村幹事が先ほど言っていたような,かなり弱い推定というのですか,広い範囲でいろいろな父である可能性ある者に推定を及ぼして,養育費を払っていたとか,一緒に暮らして親としての役割を引き受けていたとか,そういうサブルールで遺伝的な蓋然性のほかに,同居・養育などの生活事実、引き受けの意思など多様な要素で大きく網をかけている感じです。私が先ほど言ったのは,大きなルールや原則をどこに置くかというと,出生主義というか,出生のときに婚姻状態がどうだったとか,それからその期間,例えば,多分300日以内というのは,懐胎主義のある意味では変容したもので,亡くなったり取り消されたりした場合でも,やはり300日,要するに,100日ぐらいはおなかの中にお子さんがいただろうという,だから,そういう意味ではミックスしていると思います。最終的に,アメリカでも,婚姻ということについては,サブルールまで落とされてはいるのですけれども,かなり重視していると思われます。そういうことでいうと,再婚した夫というのが出てくるのは,当然だろうと思います。   ただ,それ以上に,社会的な親子関係というか,ある意味ではそういうファクターをどれくらい細かく入れるかというと,アメリカ法は,ある意味では,推定はかなり広い範囲で及ぶ。それから,それを否定する手段というのは,期間をかなり区切ったり,原因ごとに子供がとにかく生まれて5年ぐらいまでは認める場合があるけれども,それ以上はもう一切認めないというようなことで,否認をする権利を持っている人たちが,どれくらいの期間それを争えるかというところで調節すると工夫をしています。   そういう意味で言うと,今回,やはり婚姻をどういうふうに親子関係と結び付けていくか,それから,懐胎主義と出生主義というところで,どちらに重きを置いていくか,最終的に,そこで推定をされて父と目される人たちについて,どんな例外を,どんな事情で認めていくかというところで,取りあえずこれは,これまでの基本的なものを維持した上で,再婚ということに対して,かなり重い評価をしていこうということだと思います。幡野幹事なんかもおっしゃっていたような形で,例外としてどんな方法で,どんなやり方で,それに対して例外を認めていくかというのは,少しいろいろなケースがやはりあり得ると思っています。   最終的には,どこまで広げるかというので長くはなったのですけれども,英米法なんかを見ている限りでいくと,離婚はそういう意味では数は多く、実態も多様であろう。それから,死別もまあまあ,離婚ほどは多くないけれども夫婦の実態は残っているかもしれない。取消しとか無効という話になったときに,やはり子供の地位の安定ということを考えると,井上委員が言ったように,個別の事情とか細かいことをルールとして決めてしまうということは,適切ではないような感じを持っています。   そうすると,今回の御提案のように,違いはあるんですけれども,やはり離婚と死別とか取消しとかということについても,②のルールみたいなものが維持されるとすれば,3番目のところで,やはり再婚ということだけで,その推定だけを維持すべきは,もう少し広げる可能性はないのかとも感じます。ただ,婚姻ということを基準にしないと,ある意味では,内縁とか事実婚とかという実態とかがじつに多様ですし,それから,先ほど言いました養育しているとか,していないとか,親子として引き受けたとか,引き受けないとかということに踏み込んでしまうと,実体ルールとしてはなかなか,きわめて難しい事実判断,評価みたいなことが入ってきたときに,親子関係をそこまで細かく決めていくためのルールとして採用できるかどうか問題もあるように思われます。   その辺りの中で,私は,先ほど言った再婚の夫の推定というのは,きちっとした上で,婚姻について言うと,前夫というものをどう位置付けるか,やはり推定の重複が起こって,優先はされるけれども,前夫が全く生物学上の単なる血縁上の父と同じような地位になるのかというのが,まだ疑問なところがあります。   そういう意味で言うと,子供として引き受けるとか,いろいろなことについての要素ですけれども,婚姻以外で何か推定のルールみたいなことを考える必要があるのかどうか,推定のルールが難しければ,先ほど幡野委員がおっしゃったように,推定の中に強弱みたいなものがもし付けられるとすれば,何か中間的な手段なり方法として,例えば,受皿として,親が責任を持って子供を養育しようとするような人が存在するという場合,そういう人に対して父ということを主張できるというか,それは,認知ということの手段みたいなものを広げるという形で埋めるということになるのか,その辺りが,すごく悩ましいところで,結論が出てこないんですけれども,少なくとも,今言ったような形で,離婚と死別と取消しということであると,②のルールというのは,ある程度合理性があるんではないかと思います。   3番目のところで,再婚は,ある意味で入れたときに,今度は死別とか取消しとかということが加わったときに,婚姻を基礎にして推定をするということ自体は,私は否定するつもりはないのですけれども,それが否定をされたりした場合の後始末というか,そのときに出てくるルールというものが,何がしかのルールなり,お父さんのいない子供をやはり作るべきではないのではないかという印象を,今の段階では持っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   完全に理解できたかどうか分からないところもありますが,離婚,死別,取消しというのについては,少なくとも②のルールについては共通で考えるということをおっしゃっておられたと思います。③については,それもやはり,出発点は共通というお考えですか。 ○棚村委員 そうですね。結局,推定を広く及ぼしていくということになると,それを否定する手段とかルールみたいなものを,きちっと明確にしないといけない。その相関的な関係の中で考えていくという前提で,死別とか取消しみたいなものを含めた上で,再婚の夫という推定もあり得るんだろうなと考えている次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ③についても,離婚,死別,取消しを一括して考えて,再婚の夫の子と推定する。ただし,再婚の夫がいない場合について,一定程度拡張することはできないかという御指摘があって,子に親がいないということにならない形でということで,認知と関連付けるといった方向を示されたということだったでしょうか。 ○棚村委員 はい。それで多分,死別とか取消しも,再婚した場合に,原則は婚姻したということを重く見て,親子を決めるということを推定ルールとしていいと思うのですけれども,ただ,死別とか婚姻取消しの場合に,結局前婚の夫がいる場合は,離婚で何とかそっちに持っていくということはできるのですけれども,死別の場合なんかは特に,そっちに持っていけませんので,そういうときどうするのかということを,少し議論しなければいけないのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○幡野幹事 先ほど木村先生から,弱い推定ということに基づく中間的なルールを採用することの可否についての御質問を頂いて,前婚の推定が弱いということを根拠に,中間的なルールを用いた場合には,離婚だけして再婚はしていないという場合も,その推定が弱いので,そういう場合も同じルールが妥当することになるのではないかと,そのような御趣旨の御質問を頂きました。恐らく,前婚の推定が弱いからという理屈で中間的なルールを採用するということになると,やはり木村先生のおっしゃったとおり,中間的なルールを採用しなければいけない範囲というのは広くならざるを得ないだろうと思っておりますが,そのような考え方を採用せずに,推定の重複がある場合は,その重複しているということに基づいて,一つ一つの推定が弱いではないかと,つまり重複という点に推定の弱さを結び付ければ,その場面だけ中間的なルールを採用するということは可能なのではないかと,御質問を伺っていて思いました。   もう1点,出生届がなぜ法律上の父子関係を採用するのかと,それは不適当ではないかという御質問だったんですけれども,この点については,まだお答えの準備はできていないのですが,もし,それでもこのルールが望ましいと判断される場合には,出生届という形態を用いるかどうかは別として,何らかの手段を考えればいいのではないかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○大森幹事 先ほど,③のルールに関して,昨今,事実婚など多様な生き方,選択肢が認められている中で,婚姻をしなければいけないということについて引っ掛かりを感じるということを申し上げました。それ以外の観点で,③について引っ掛かりというか躊躇を感じるのは,先ほど井上委員もおっしゃったように,国民にとって分かりやすいルールでなければいけないということが,非常に大切なメルクマールと思っているのですが,再婚した場合の扱いについては,前婚との重複をした場合に,排除するのか,両方残るのか,また,実は前婚の子でもないという場合にどうするのか,また前夫に否認の申立権を認めるのか,一回的解決ができるのかなど,様々な論点が出されて,議論されたと思います。それに加えて,再婚夫と離婚していた場合どうするか,あるいは,離婚後に前夫が死亡していた場合どうするかなど,更に追加の問題が出てきていて,非常に難解なところが更に難解になっているという印象を受けており,なかなか一般国民の方に分かりやすいものになっていないことについて,これでよいのか疑問を感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   これを導入することに伴って,解釈論上の問題ももちろん生じますし,立法的に手当てをしなければいけないという問題も生ずるだろうということで,その負担,あるいは分かりにくさを,どう考えるのかという御指摘だったかと思います。   先ほど幡野幹事から,戸籍との関係で,出生届に一定の意味を持たせるような解決は採りにくいという指摘に対して,いや,必要があるのだから,考えてみてよいではないかという御指摘がありましたけれども,幡野幹事のおっしゃっているような方向で考えるのがよいのか,あるいは再婚後の夫の子として推定するというのがよいのか,あるいは300日には及ばないとした上で,出てくる様々なトラブルについて対応策を採るというのがいいのか,その辺,選択肢が分かれるところになるのかと思って,伺っておりました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○窪田委員 ちょっと全然違う観点からということになるのかもしれませんが,死別と離婚を別に扱うかどうかというときに,少し気になっている点がありまして,死別の場合には,後婚の方を,後の方の夫との父子関係を優先させるということは,同時に,死亡した夫,前夫との相続関係は生じないということを,当然に意味します。   気になるというのは,母が再婚するという自らの行動によって,子供の相続権がなくなるのか。子供は第1順位の相続人ですから,ほかに子供がいれば別ですけれども,そうではない場合に,母の相続分との関係では,完全に利益相反みたいな,子供の分が減った分だけ,配偶者の方に行くという,直系尊属とかもいなければという形になります。死別の場合,考えなければいけない利益関係というか利害関係というか,それがどうも離婚の場合と違うということについては,もう少し意識して検討する必要があるのかなと感じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   離婚,死別,一括した方がいいという意見が幾つか続きましたけれども,しかし,やはり死別について考慮すべき事情もあるのではないかという御指摘を頂きました。   ほかにいかがでしょうか。 ○木村幹事 幡野幹事によると,前婚と後婚の父性推定が重複する場合には,その重複に基づいて一つ一つの父性推定が弱くなるというご説明でしたが,この説明によると,理論上は,前婚の父性推定も後婚の父性推定のいずれも弱くなり,母がいずれの出生届を出さないということも可能になってしまうように思えますが,そのような理解でよいでしょうか。 ○大村部会長 では,幡野幹事,どうぞ。 ○幡野幹事 こうでなければいけないという特定の考えは持っていないんですけれども,フランス法では,嫡出でない子の出生届を出すという選択肢もあるという立場を採用しているので,そのような立法例があるということを前提にすると,どちらでもないという選択肢もあり得るのではないかと考えております。 ○木村幹事 ありがとうございます。   ただ,今回の無戸籍児問題の解決としてはそこまで求められているようには思いませんので,さきほどの説明をもう少し詰める必要があるかもしれないといった印象を持ちました。   加えて,窪田委員のご指摘に関する点ですが,とくに,死亡解消の場合には母の行動,つまり再婚によって子の相続権が喪失するという帰結がもらされることについての懸念を示されておりました。この点については,資料7頁(3)イにありますように,死亡解消の場合には,離婚解消の場合とは異なり,前婚の夫の父性の蓋然性が後婚の夫の父性の蓋然性よりも低いとは言えないという説明を前提とされており,その結果,再婚家庭による子の養育とそれにかかわる意思が重視されていることが前提とされているのではないかと思います。しかし,このうち後者の説明を強調すると,離婚解消の場合でも,生物学上の蓋然性の程度を問わず,結局のところ,再婚当事者の意思が重要であるとの帰結が導かれる可能性も十分にあり得ると思います。そのため,死亡解消の場合の説明について,資料7頁(3)イのような説明でよいのか,といったことが気になりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   木村幹事が今おっしゃったのは,離婚と死別とで,前夫の子供である蓋然性が違うという説明ではない説明というのも,あり得るのではないか,そういう説明をした方が,再婚の際の母の意思を取り出して重視しないでも済むという御趣旨でしょうか。   窪田さん,何かありますか。 ○窪田委員 木村先生の御発言が最終的にどのような方向に向かうのかについては,まだ十分に理解できておりませんが,前提となる蓋然性は,やはり死別の場合はかなり違うということを前提としつつ説明するとなれば,7ページの下から4分の1ぐらいのところに出ている,母と再婚の夫は,再婚後の夫婦の元でその子を養育する意思を有していると考えられるという部分を強調して説明するということになるんだろうけれども,それでいいのかという問題提起だったのかと思って伺っておりました。   ちょっと木村先生のご発言とは離れるかもしれませんが,私自身も,再婚後の夫婦の元でその子を養育するというのが重要であって,それが望ましいというのは理解できます。理解はできるのですが,その話と,ある意味で意思の話というのが出てくるのは,例えば,養親子関係というのは正しく意思として説明できるわけですが,そのときには,実親との相続関係って別に切れるわけではなくてということが説明できます。ところが,ここの場面では,この意思によって,これからはこういう方向にしましょうよというと,幾ら蓋然性が高かったとしても,前婚の夫との関係は切れてしまうというのが,本当に適切なのかどうなのか検討した方がいいのかなという趣旨の,先ほどの発言でした。   この点,木村先生のご発言の趣旨と方向性が一致しているのかどうか,ちょっとよく分かりませんが,確認させて頂きます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   木村幹事,更に何かありますか。 ○木村幹事 そうですね。ドイツ法の考え方ですと,死亡解消の場合は,原則として,前婚の父性推定が優先されるのですけれども,その死亡解消後に再婚した場合には,今御提案されている内容と同じように,再婚の方の父性推定が優先されるとなっています。そのときの説明としては,多くの論者によると、やはり再婚という事情があると,前婚の父性推定の生物学上の蓋然性が低いことが基礎付けられると考えられているようであり,むしろここの7ページのイで説明されているような,子供を養育する意思を尊重して,再婚を優先するという形を採っている論者はそれほど多くないとの印象を持っております。   ですので,そもそもドイツ法の多数説が採っているような説明ができるのかどうかという点を検討しなくてはいけないのではないかという点と,他方で,窪田先生がおっしゃっておられるような,当事者の意思というものをここで強調しても,ある意味養子のような形を認めてしまうような可能性もあることが,果たして適切なのかどうか、という疑問を抱いております。この点については,窪田委員の問題意識と共通している点もあると思います。 ○窪田委員 ちょっと,木村先生に,教えていただきたいのですが,ドイツ法で,本来死亡の場合には,前夫とのというか,夫との嫡出推定が及ぶとしつつ,再婚すると,その蓋然性が低くなるという理由はどういうものなのでしょうか。というのは,死亡した後の行動によって蓋然性が変わるということ,死亡するというのを,多分妻も子供も知らなかったわけですから,そうした場合に,夫の死亡後,妻が再婚すると,いや,やはり蓋然性は低いかなとなる理由が余りよく分かりませんでした。多数説だということは,多分一定の説明はなされているのだろうと思いますので,何か御存じあれば,教えていただければと思います。 ○木村幹事 ありがとうございます。   私が調べた限りですと,とりわけ,前の夫が死亡して,比較的早い段階で再婚することが,このケースで問題になっていると思うのですけれども,そのような場合は,前婚の夫と既に婚姻関係がうまくいっていなかったという事実も認められるのではないかという指摘がなされています。実際,前婚の夫が死亡してから300日以内に再婚しているようなケースですので,前婚の夫が死亡する前の段階から,再婚相手との間に親密な関係があったとの事情も推測されるというような説明もされているように思います。 ○窪田委員 そういう見方もあるのかもしれないけれども,もっといろいろな物語があるような気もします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   その辺は,先ほど木村幹事がおっしゃった,蓋然性をベースにして考えるのか,考えないのかということとも,多分関わっているのかと思って伺いましたけれども,どういう制度にするのかということと,それにどのような説明を与えるのかというのは,共に,工夫しなければいけないと思って伺いました。   ほかにいかがでしょうか。 ○水野委員 先ほど,再婚をしないと,前夫の推定を破れないというのは,少しおかしいのではないかという御発言がありました。本当に思い付きで申し訳ないのですけれども,むしろ現在の実務を前提とすると,再婚ではなくて,実の父による認知を前提として覆されるという構成もあり得るのではないでしょうか。現在は,推定の及ばない子の法理の下で,認知,特に裁判所における強制認知,強制認知といっても,実父が進んで認知するという状態ですが,強制認知をかませる形で,実父の子としての出生届を可能にしている実務がございます。   その実務と,連続性がある設計として,再婚によって覆すのではなくて,実父の任意認知を可能にして,認知によって覆すという制度設計の可能性もあるのではないでしょうか。先ほど事実婚などの多様な選択肢もあり得るはずだというご発言もありましたけれども,子に父を確保するという点が担保されたら,再婚ということにそこまで必要性を置かなくてもいいのではないかという気がいたしました。   それから,これは論点が違いますけれども,やはり死別と離婚は大分違うと,私も思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   1点目は,先ほど棚村委員が示唆されたような考え方で,再婚の場合と認知の場合と,二本立てにすることもできるでしょうし,水野委員は,そうではなくて認知一本でとおっしゃったのかもしれませんけれども,いずれにしても,再婚の外に何か別の場合を認めるとすると,認知があった場合というのが一つの選択肢となるという考え方が,委員からの御発言として出ていると受け止めました。   死別と離婚と同じか同じでないか,違うところはもちろんあるわけですし,しかし,一括して扱いたいという要請もあるいうのも,そうなんだろうと思います。   ほかにはいかがでしょうか。   今,2,3と申し上げておりますけれども,全体として,もしこの第1の嫡出の推定の見直しについて御意見があれば,更に伺いましてと思います。もし御意見がないようでしたら,休憩を挟んで第2に移りたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○平田幹事 水野委員の発言に関連して,先ほど実の父による認知で覆すということも考えられるのではないかとおっしゃられたと思うのですけれども,それは,飽くまで離婚等の後,300日以内の部分について覆すという御趣旨,そこだけ,特別のルールを設けるという御趣旨で伺ってよろしいでしょうか。 ○水野委員 私の提案は,婚姻中であったとしても,事実上の破綻をしているような場合に,拡大してもいいだろうとは思っておりますけれども,そうすると,母の出生届によって嫡出推定を覆すという提案と重なってくるでしょう。母の出生届という提案には、嫡出推定の機能をあまりにも弱めさせてしまうという反論が,ずっと一貫して加えられていまして,それに一定の正当性があることは,私もよく分かっておりますので,今のところの提案としては,ここレベルでということで御理解いただいて結構です。そこまでちょっと譲っていると御理解ください。 ○平田幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。 ○髙橋委員 ちょっと,余り考えまとまっていないんですけれども,無戸籍問題に関して,300日以内に生まれた子について,無戸籍者問題があるわけですけれども,それについて,再婚すれば,前の夫の嫡出推定よりも,後の夫の嫡出推定を優先して,戸籍が入れられると。無戸籍問題の一部が再婚によって救済されると,こういうふうに理解されているんだと思うんですけれども,実際に再婚という形で協力してくれるような男性がどれだけいるのか,どれぐらいこの制度によって,そういう救済が増えるのだろうかというようなところをちょっと考えるわけです。   現在の制度の中で,後の男性が協力してくれるのは,認知の手続という形で協力してくれる方はいるんですけれども,もしかしたら,こういう制度を作っても,今認知で協力してくれるぐらいのパーセントの方ぐらいしか,再婚という形で協力してくれないのではないかと,無戸籍の解消という点で増えるんだろうかということを,ちょっと心配しています。どうして協力してくれる男性が一定比率に限られるのか,協力してくれない理由が何かあるのではないかと,何らかの実情があるのではないかと,その辺のことを知りたいなと思います。   一つ心配なのは,これは,思い付きで直接私が聞いたところではないですけれども,前の夫から不貞をしたといって損害賠償請求を受ける,やはりそういう可能性を心配している方もいるのではないかと思うんですね。   今,水野先生から認知という話がありましたけれども,認知という形であれば,お子さんとの関係をはっきり認識して認知してくれるわけですけれども,再婚という形で嫡出推定制度をひっくり返して,だから,あなたの子だよとなった場合,必ずしもその子が自分の子になるということを覚悟してというか,鮮明に認識して再婚したかどうか分からないわけですね。そうしたら,生まれた子が再婚によって後の夫の子になってしまったと,だから,前の夫から不貞があったという法律の理屈ができると,だから,損害賠償を請求されると,こんな心配をする人が,もしかしたら出てきやしないかというようなことを,ちょっと心配するわけです。   もしそんな心配を解消したいのであれば,再婚して生まれた後,後の夫が嫡出否認すればいいわけです。再婚して嫡出否認するんだったら,結婚はもうちょっと後にしようよと,生まれてからにしようよということで,再婚すれば嫡出推定を優先するという仕組みを作っても,もしかしたら余り数字は変わらないのかなというようなところを,ちょっと心配するところです。   取りあえず以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 今の御発言,なるほどなと思ったのですが,恐らく認知に関しても,その問題は完全に同じようにありますよね。要するに,懐胎時期のときにまだ婚姻が続いていたら,不貞行為に基づく損害賠償にさらされるという。だから,その問題は恐らく,③のようにルールではなくて,認知を入れたとしても同じ問題は出てくるでしょうね。 ○大村部会長 ありがとうございます。   父親が,再婚するにせよ,認知するにせよ,協力をためらわせるような事情があるのかどうか。あるとしたら,それはどういうことであり,もしそういうことが障害になっているのならば,それに対する対策というのも必要なのではないかという御指摘として承りました。 ○垣内幹事 先ほど来,ずっと非常に難しい問題だと感じていますけれども,冒頭のところでも少し議論があったところにも関係するかもしれませんけれども,取り分け,先ほど直前に認知との関係なんかについても御議論があったところとも関係しますが,現行法の下,あるいは現在の実務の下で認められている一定の救済と申しますか,外観説を前提として,場合によっては強制認知等の手続を介することにより,これは,再婚というようなことは前提とならず,また,婚姻が継続中であっても,婚姻継続中に生まれた子供であっても,場合によっては嫡出推定が及ばない形での処理が可能になっているということなのかなと理解しておりますけれども,新たな規律を導入した際に,結局現在でも可能になっているようなものというのができないことになって,以後は明文化された,例えば,今日の第1のような規律に一本化されるということなのか,そこは解釈問題ということに最終的にはなるのかもしれませんけれども,なお現在のような解釈が残っていく話なのかということによって,大分考えなければいけない問題というのは異なってくるのかなという印象を持っております。その辺りについて,現在どの程度この場で認識が共有されているのかどうか,私自身はちょっとよくつかめていないところもあり,可能であれば,その辺りについても少し整理と申しますか,認識の共有を図った上で議論を進めるということでないと,なかなか難しいのかなというような印象を持ちました。   単なる感想ですけれども,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。重要な御指摘を頂いたと思います。   おっしゃった問題自体は,これまでに何度か議論したこともあったかと思いますけれども,最終的に一定の制度を提案するときに,従前の法制度との関係,実務との関係がどうなるのかということについては,整理をしておく必要がありますね。   垣内幹事がおっしゃったのは,それを整理しないと,どういう制度を採るのかということについても,議論を進めることは難しいのではないかという御指摘だったと思います。ですから,しかるべき時点で先に進む際に,今の点について,整理をしてもらうということが必要かと思って伺いました。どうもありがとうございました。   ほかに御発言何かありませんか ○大森幹事 今の点に関連してですが,先ほど水野委員から御提案がありました,再婚ではなく血縁上の父による認知によって覆すという方策もあるのではないかということについては,現在も離婚後300日以内に出生した場合に,強制認知の方法でそれを覆すということが,実務上一定の事案では採られています。ただ,それも,外観の有無に関して,前夫の手続保障の観点から,担当の裁判官の判断になりますが,前夫の関与を完全には排除できない中でやらざるを得ないということになっています。   水野委員の御提案は,離婚後に出生した場合には,そうした前夫の手続保障なしに,認知さえあれば覆すことを認めるという御趣旨と受け止めております。   他方で,婚姻中の場合については,まさに今御指摘ありましたように,外観法理を維持するのかどうかということを,否認制度をどうするかということも整理した上で,引き続き検討していく必要があるのではと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   垣内幹事の御指摘を,具体的な問題とつなげた形で,更に補助していただいたものだと理解いたしました。さらに,今の点につきましては,水野委員,あるいは棚村委員から挙がった選択肢の可能性,あるいは他の選択肢もまだ残されていると思いますけれども,それらも含めて,次の段階で議論するということが必要かと思います。   今日のところは,①については,皆さん,大枠はこの線でということでしたけれども,②,③につきましては様々な意見が出ました。この考え方では,全く駄目だという意見があったわけではありませんけれども,別の方向で考えることもできるかもしれないし,サブルールとか例外ルールというのを工夫することが,なお考えられないかという御指摘もあったところですので,そうした御指摘を引き取らせていただいて,更に事務当局の方で御検討いただくということに,今日のところはさせていただきたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,休憩しまして,再開後に,第2の問題について御意見を頂きたいと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   本日の資料でなお残っておりますのが,10ページ以下の「第2 女性の再婚禁止期間の在り方」についてという部分でございます。この部分につきまして,御意見等を頂ければと思います。   どなたからでもどうぞ。   いかがでしょうか。 ○棚村委員 確かに父性推定のルールをどういうふうに決めていくかということで,再婚禁止,要するに,推定の重複が起これば,それをどう解決するかというので,最終的には父を定める訴えとかという方法で争わせるか,それとも,ある程度推定のルールで早く親子関係を確定して,早期に子供の地位を安定させるかということになると思います。   ただ,私自身は,井上委員なんかもおっしゃっていたと思うのですけれども,国連の女性差別撤廃委員会とかいろいろなところで,再婚禁止というのは,正に婚姻する自由とか権利,これを制約するということになりますから,父性推定についてのルールをできるだけ適切に定めることによって,できれば婚姻というところであまり大きな制約や負担を加えて,親子関係の紛争を防止するというのは,できるだけ回避すべきだろうとは考えています。   ですから,恐らく連動してくると思うのですけれども,父性推定についてのルールをしっかり,今の段階でなかなかどういう方向でいくかということを決められませんけれども,できるだけ重複した場合の最後ぎりぎりのところで出てくれば,やはり父を定める訴えとか,そういうところで何らかのルールを決めなければいけないという覚悟も必要になってくる場合も出てくるかもしれません。   ただ,今のところ,御提案されたものでいくと,死別とか婚姻の取消しも含めて,再婚ということが絡んだ場合には,一応推定ルールを置いていくということになると,再婚禁止というものを置かなければいけない必要性とか,今の100日というものも,実質上,これがいいかどうかは分かりませんけれども,一種の非懐胎証明というのを出すことによって,即再婚もできるという方向なので,本当にこれが必要なのかどうかも含めて,大きな疑問を感じているところです。   最終的には,父性推定の競合みたいなことが起こったり,争いが生ずる限りは,これ,必要なのかなという議論になると思いますけれども,できるだけ婚姻というものを大きく制約するということについて,他の手立てがあるのであれば,そちらの方で解決をすべきなのかなと考えています。本来の父性推定の重複ということが,できるだけきちんとしたルールで解決するような方向で,実親子関係をきちっと決めることによって,婚姻ということを制限するまでいかないようにすべきであろうということを考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   再婚禁止期間は,できれば廃止したいというのが基本的な御意見だと伺いました。そのこととの関連で,親子法のルールで重複が生じないようなものが作れれば,それが望ましいし,重複がどうしても生じてしまうという場合には,父を定める訴えによるということも,あるところからは引き受けるべきだという御意見として承りました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。   今,棚村委員から少し触れていただきましたので,歴史的な観点から少し発言をさせていただきたいと思います。   1985年に日本政府が国連女性差別撤廃条約を批准をし,1991年に婦人問題企画推進有識者会議の法務省への提言があって,1996年に民法の一部を改正する法律案要綱が答申され,それを受けて婚姻適齢が見直しがされ,そして,再婚禁止期間も短縮されたわけですが,それでもなお100日という期間が残っています。そのため,日本政府に対して,国連の自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会からも,遅滞なく再婚禁止期間を廃止すべきことが,繰り返し勧告をされています。   ちなみに,この部会の検討課題ではありませんけれども,答申にあった選択的夫婦別氏制もいまだに実現していない状況にあります。   折しもコロナ禍で,給付金需給に当たっての世帯主基準であるとか,DVの問題であるとか,あるいは家事,育児等が女性に非常に偏って負担があるという,女性の人権がないがしろにされているという社会の現実が,改めて今回浮き彫りになったと考えています。   今年,この2020年は,国連女性差別撤廃条約の批准から35年,そして,1995年に第4回世界女性会議で北京宣言と行動綱領が採択されてから25年,そして,政府の男女共同参画推進本部が,社会のあらゆる分野において,指導的地位に女性が占める割合が,少なくとも30%程度になるよう期待するという目標を設定した年ということで,あらゆる面で節目の年と,私たちは理解をしています。   そういうことであれば,そろそろこの女性の再婚禁止期間の在り方については,廃止という結論を出すべきではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   基本的な方向としては,廃止の方向が望ましいという御意見として承りました。   そのほかいかがでございましょうか。 ○窪田委員 私も,廃止という方向でよろしいと思っています。   もちろん,嫡出推定の重複がそもそも生じないのであれば,こんなのはもう要らないということになります。一方で,残るのだとした場合に,そうした状況に関して,再婚禁止期間という形で嫡出推定の重複が生じるということを避けるのか,あるいは嫡出推定の重複は生じるということを前提とした上で制度設計をするのかという選択肢があるのだろうと思います。再婚禁止期間を設ければ,確かに形式的には重複は生じなくなるわけですけれども,しかし,男女間の関係というのがそれによって変わるのかというと,多分,実質的には変わらないのだろうと思います。変わらないにも関わらず,ただ,要するに,再婚禁止期間を置くことによって,後婚の方を劣後させるということを形式的に優先させて,重複が生じないようにするというのが,実質的な解決として望ましいのかといったことを考えると,実は余り意味がないのではないかという気がします。嫡出推定の重複が生じる場合というのが,かなり減少するであろうということも前提としつつ,仮にそれが生じるとしても,その場面を回避するために再婚禁止期間という形で問題を解決する必要はなく,父を定める訴えで問題を解決すればいいのではないかなと思います。基本的には棚村委員から御発言があったとおりのことでいいのではないかなと感じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。 ○水野委員 昔話だけでございます。   平成8年婚姻法改正要綱を作成した身分法小委員会に参加していたメンバーで,生き残っているメンバーは少なくなりました。あのときも,議場の全体的な意見としては,実は,女性の再婚禁止期間を廃止したかったのです。ただ,その場合には,嫡出推定規定に手を入れざるを得ないということになり,婚姻法全体を洗うだけでも大変でしたので,親子法までとても手が出せないということで,やむを得ず,せめて100日にという形でまとめたという経緯がございました。   今度ようやく晴れて手が入れられるわけですから,再婚禁止期間を設けておく必要はないだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   皆さん,基本的な方向としては,再婚禁止期間は廃止する方向で考えたいということだったかと思います。そのための環境作りとして,どの程度までのことが必要なのかというところについては,この先の議論によるのだろうと思いますけれども,それにしても,最後は父を定める訴えで処理するということを含めて考えたいというのが,大勢だと思います。何か追加の御発言があれば承りますけれども,いかがでしょうか。   特にございませんでしょうか。よろしいでしょうか。 ○髙橋委員 直接この議論に関係するんではないんで,ちょっと恐縮なんですけれども,今,生殖医療の問題は直接取り扱っていないんですけれども,父を定める訴えになったときの話なんですが,片方がAIDで子供を作った男性の場合,父を定める訴えで,どっちが父親かということになったときに,DNAでは負けてしまうのは,これは分かっているわけです。そのとき,AIDで生まれた子なんだという証明をどうするかとか,AIDに同意した自分が父親だということで父親になるのかとか,父を定める訴えに関しては,AIDとの関係で少し議論が必要な場があるのではないかなと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   どういう当事者が出てくるのかにもよると思いますけれども,どちらも血縁がないというような場合もあり得るということかと思いますが,そうした場合に,AIDであるということを,どのように勘案するのかということを考える必要があるだろうという御指摘として承りました。父を定める訴えについて,何か整備をするということになりますと,今のようなことも考えなければいけないことになるかもしれません。御指摘として承っておきます。   ほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,第2につきましては,基本的には再婚禁止期間を撤廃するという方向で,この先考えていくということで,御意見を頂いたものとまとめさせていただきます。   以上で,本日予定していた議事は終了ということになりますが,ほかに御意見何かございますか。よろしいですか。   次回の議事日程等について,事務当局から説明をしていただきたいと思います。 ○平田幹事 次回の日程についてですが,日時は,令和2年7月21日火曜日午後1時30分から午後5時30分までで,場所は,法務省地下1階大会議室になります。   次回のテーマについてですが,嫡出否認制度の見直し,具体的には,否認権者の拡大,否認権の行使期間等の問題について御議論を頂きたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   本日は,初めてのウェブ参加併用ということで会議を行いましたので,いろいろと行き届かない点も多かったと思いますけれども,どうやら無事に終了することができたと思います。   これで,法制審議会民法(親子法制)部会第8回の会議を終了させていただきます。本日も議事の進行に御協力を頂き,また熱心に御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。   閉会いたします。 -了-