法制審議会 民法・不動産登記法部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  令和2年8月4日(火)自 午後1時00分                    至 午後5時40分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第16回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   この回から審議のタイムスケジュールが従前のものに戻り,午後1時から午後6時までとなります。長丁場となりますから,50分程度に一度ということを目安として適宜休憩を挟みながら進めるということにいたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。   このたび,関係府省の人事異動などに伴い,新たに委員,幹事,関係官となられた方々を御紹介いたします。   まず,竹内委員が法務省大臣官房政策立案総括審議官に就任されたことに伴い,この回からは関係官としての御出席になります。また,堂薗幹事が法務省大臣官房審議官に就任され,この回からは委員として出席いただくことになります。引き続き両官におかれてはよろしくお願い申し上げます。   今回から新たに出席される内野幹事,自己紹介をお願いいたします。 ○内野幹事 このたび,民事法制管理官を拝命いたしました内野宗揮と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   続きまして,関係官として初めて御出席いただくことになる皆様を紹介申し上げます。   総務省から御出席の勝目関係官,自己紹介をお願いいたします。 ○勝目関係官 失礼いたします。総務省地域振興室長を7月20日に拝命いたしました勝目でございます。よろしくどうぞお願い申し上げます。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   国土交通省から関係官として御出席いただく千葉関係官,自己紹介をお願いいたします。 ○千葉関係官 国土交通省,新しくできた課なんですが,土地政策課長を7月16日付で拝命しました千葉です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   なお,本日は阿部委員,増田委員,宇田川幹事,衣斐幹事が御欠席でいらっしゃいます。   事務当局から資料の確認を差し上げます。 ○川畑関係官 それでは,配布資料の確認をさせていただきます。   今回は部会資料36から38までを事前に送付させていただいております。また,昨日追加で送信させていただいたものですが,参考資料8としまして「土地所有権放棄制度の利用見込等に関する調査について」という資料を机上配布させていただいております。   部会資料,参考資料につきまして,お手元にないようでしたら,会議中でも結構ですので,事務局にお知らせいただければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 配布資料について説明を差し上げました。お手元にそろっておりますでしょうか。   それでは,早速,ただいまお話がありました参考資料8につきまして,事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 参考資料の8について御説明いたします。   法務省におきまして,土地所有権の放棄制度の利用見込み等に関しまして,民間の調査会社に委託してインターネットを利用したアンケート調査を実施いたしました。   調査は,2月28日から3月4日までの間,スクリーニング調査と本調査の2段階方式で実施されました。スクリーニング調査では,日本全国に居住する20歳から79歳までの約5万サンプルを対象として,土地の所有状況や所有権放棄制度が創設された場合の利用意向の有無等について質問が行われています。   また,本調査では,スクリーニング調査で現在自己の世帯で宅地や農地,林地のいずれかを所有している,若しくは今後所有する見込みがあると回答した者であって,かつ土地の所有権放棄制度を利用する意向があると回答した者の中から約1,600サンプルを抽出いたしまして,土地所有権の放棄制度の利用希望の有無,放棄したいと考える土地の所在やその物理的状況,国の審査機関に手数料を支払うことに関する意識等について質問が行われています。   この参考資料では,この調査に基づく利用見込み等の推計結果を記載しております。資料下段の(2)の欄を御覧ください。ここでは,宅地・農地・林地ごとに利用希望率,認可要件充足率,放棄見込率という3種類の推計割合をお示ししています。   左側の欄に利用希望率とありますけれども,これは一番下の(注1)にあるとおりで,土地を所有している世帯の中で土地所有権放棄制度の利用を希望する世帯の割合を推計したものであって,宅地所有世帯の13.16%,農地所有世帯の22.10%,林地所有世帯の25.81%,平均すると土地所有世帯のうちの20.36%が土地所有権放棄制度の利用を希望していることを意味しております。   利用希望率の右側の欄,認可要件充足率ですけれども,これは下段の(注2)にありますけれども,土地所有権放棄制度の利用を希望する世帯の中で,その土地につき中間試案で示された認可要件を満たすことが見込まれる世帯の割合を推計したものであり,平均すると4.51%となっています。   また,その右側の欄,放棄見込率の欄ですけれども,これは(注3)にありますが,土地を所有している世帯の中で,その土地についてこの制度を利用して認可を受けることによって所有権を放棄することが見込まれる世帯の割合を推計したものになりまして,平均すると0.95%となっています。この推計結果によると,全国の土地のうち約1%の土地が所有権放棄制度を利用して放棄される可能性があることを示していると考えられます。   放棄される可能性がある土地の割合については,もちろん現在御審議いただいている認可要件等によって変動することが想定されますけれども,本日の調査審議の際の目安として御参考にしていただければと考えております。   参考資料8の説明は以上です。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げました参考資料8について,もしお尋ねの段がある際は,この後の部会資料36に関する審議の際に仰せいただきたくお願い申し上げます。   本日の審議の内容に入ります。   初めに,土地所有権の放棄を審議事項といたします。部会資料36をお取り上げくださいますようにお願いいたします。   部会資料36の初めのページのところに,ここで提案申し上げる土地所有権の放棄に関する規律のアイデアを御案内しております。御案内を差し上げているとおり,前提として民法の規定に,法令に特別の定めがある場合を除き不動産の所有権は放棄をすることができないものとするという規律を設け,このことを前提とした上で,その法令の定めの一つの例として,土地所有者は,法律の定めるところに従い,審査機関の認可を受けて放棄の申請をすることとし,ただし,放棄申請をしようとする所有者は,その申請に先立って売却,貸付けその他の処分について必要な努力をしなければならないということを想定し,認可は,四つの要件を掲げてございますが,これらについてのチェックを経た上で認可を与えるかどうかが定まるものとするという規律の構想をお示ししてございます。   あわせて,放棄をする際には政令で定める額の認可に係る手数料,それから土地の管理に係る手数料を納めなければならないとされ,さらに,その土地に係る損害賠償責任を検討しなければならないような局面について,損害賠償責任や認可の取消しに関するルールの構想をお示ししているところでございます。   補足説明まで含めますと,部会資料の20ページまでとなります。21ページに別な話題が示されておりますけれども,少し性格が異なりますので,初めに補足説明も含めますと部会資料の最初のところから20ページまでの土地所有権の放棄を認める制度の創設に関してお諮りをすることにいたします。御随意に御意見を仰せくださるようにお願いします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今日配布していただいた参考資料8について,確認と質問です。   二段階の調査のうち本調査の調査対象者は,「現在,宅地や農地,林地のいずれかを所有しもしくは今後所有する見込みがある者で,かつ土地の放棄制度を利用する意向がある者」とされていて,そのサンプル数が1,574サンプルとなっています。そして,推計結果を見ると,利用希望率は,土地を所有している世帯(A)の中で,土地所有権放棄制度の利用を希望する世帯(B)の割合で算出することとし,これが平均で20.36%となっています。そこで質問なのですが,この本調査のサンプル数1,574がBを指しているのでしょうか。サンプル数と,利用希望率との関係を御説明いただけますか。 ○大谷幹事 この利用希望率と出しておりますのは,スクリーニング調査の方で,土地を所有していますと,かつ制度ができたら利用を希望しますとお答えになった方の率を示しております。ですので,1,574の本調査のサンプルとはまた別の数字になります。 ○蓑毛幹事 認可要件充足率は,土地所有権放棄制度の利用を希望する世帯(B)の中で,その土地につき試案の認可要件を満たすことが見込まれる世帯(C)の割合で算出することとされていますが,これと,本調査の1,574サンプルとの関係はどうなりますか。 ○大谷幹事 本調査の1,574サンプル,こちらは所有している人だけではなく,所有する見込みがある人というのも含まれていますので,認可要件充足率では,そのうちの「所有している」と御回答になった方で認可要件を充足していることが見込まれるとお答えになった方が4.51%という形になっています。 ○蓑毛幹事 利用希望率はスクリーニング調査を基礎に算出し,認可要件充足率は本調査を基礎に算出していて,利用希望率を算出する際のBの値と,認可要件充足率を算出する際のBの値は,異なる数値ということですね。よく分かりました。   この調査は,所有権放棄制度を創設した場合に,どの程度の国民がこの制度を利用することになるのか,それによって国にどの程度の管理負担のコストがかかるのかということを推計する上で重要だと思います。ですので,この調査の結果が,制度を作った場合の実態に近いものになるような内容になっていることが望ましいと思います。そのために,具体的にどのような質問をしたのか,回答に当たってどのような選択肢が示されていたのか,回答の分布がどのようになっているかということを,後で構いませんのでお示しいただければと思います。特に,本調査の対象者に対して,試案の認可要件をどのように示したのか,放棄をするためには,一定の手数料がかかることを示した上で希望を聞いてみたのかについて知りたいと思います。 ○大谷幹事 アンケートでは,中間試案の内容を丸めた形でお示しをし,それで自分の土地がそれに当たっているというふうな形でお答えになった方を,この中では「要件を充足している」という形でカウントしているわけですけれども,管理の手数料の額は示しているわけではなくて,お金を払ってでも放棄したいというふうにお答えになった方の数字を採っております。 ○蓑毛幹事 分かりました。この資料についてはこれで結構です。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今回御提案を拝見いたしまして,まず最初の2行のところで,元々今まで議論していた中では所有権を放棄できるという前提の下で,例外的に権利の濫用というような話で土地所有権の放棄を制限するかどうかというお話になっていたかと思うんですが,今回の部会資料では,放棄することができないという規律を設けるということが原則になっております。私から見ると何か原則と例外が今までとは逆転しているのではないかと思ってしまうのですが,これは法制的な観点からこのような書き方をせざるを得ないということなのか,それともまたちょっと別の意図でこう書かれたのかというところはちょっと教えていただければと思っております。   あと,中身に関して申し上げますと,4の(1)のところで,放棄を認可する要件として,取得原因を相続又は遺贈,かつ相続人であった場合に限るというふうにされていることに関しては,やはりちょっと狭いというところはあるのかなと思います。現時点であまり大きな制度にはできないという事情は重々理解するところですが,この要件だと補足説明にも書いていただいているとおり,当然に法人は入らないということになりますし,あるいは,ほかの取得原因で土地を取得されて,でも今はちょっと持て余しているという方の分も入らないということになってきますので,冒頭の原則の規定の仕方とも関わるとは思うのですが,将来のことまで考えて,この制度を小さく産んで大きく育てるというような可能性も残していただければということは意見として申し上げたいと思います。   あと,(3)(4)の要件に関してなんですが,まず(3)のところで,土地所有権の放棄を認める要件として筆界の特定までは不要,という形で整理していただけたことにつきましては,これまで意見等を申し上げていたところですので,反映していただけたのは非常によかったなと思っております。   あと(4)につきましても,例えば土壌汚染等が存在しないことの証明のためにボーリング調査のようなものをやる必要はないということを補足説明に書いていただいている。これも要望等で申し上げてきたとおりなのかなと思っておりますので,この点は非常によいのではないか,よい方向性ではないかと思っておるんですが,同時に,崖地等は基本的には過分の費用を要する管理困難な土地ということで所有権放棄の対象から除外するということは依然として書かれております。この点に関してはこれまでの部会でも議論があったところだと思いますし,今回補足説明を拝見すると,補助金等の交付を受けて所有者が工事をすればいいというようなふうにも読めるのですが,であれば,結局のところやはり公費を投入して管理するということには変わりはないというところもございます。何よりも,実際,崖地のような土地の場合は,国が平時に管理するコストだけを見るのではなく,万が一その土地が災害とかにつながったときにもたらされる社会的なコストの大きさというものもちょっと考慮していただく必要もあるように思いますので,そこまで検討していただいた上で,これも所有権放棄を認める対象に含めるという考え方はできないのかというところは,意見として申し上げさせていただければと思っております。   すみません,いろいろ申し上げましたが,ひとまず以上でございます。 ○山野目部会長 後ろの方でたくさん御意見を頂きましたとともに,冒頭のところで規律の表現に関して法制的な背景があるかどうかについて,事務当局の確認を求めるお尋ねがありました。 ○大谷幹事 第1の一番最初の2行の問題でございますけれども,ここは元々所有権の放棄というのは自由にできるのではないかという議論,確かに中間試案の前までに部会資料でも書いて御議論をお願いしていたところでございますけれども,中間試案でお示しした内容をよく考えると,あれはあれで相当厳しい要件の下で放棄を認めるということになっています。結局のところ,所有権の放棄というのは自由にできないという方向に近い内容になっていたのではないだろうか,例外的にできるものというものを示すことになっていたのではないかという,その中身の問題としてそういうところがあるかなと思いました。それから法制的な観点でいえば,現行法では土地所有権の放棄ができるのか,できないのか分からないという出発点があって,実際に放棄が認められた例はあまり聞かないというところですので,基本的にできないという方向で整理をした上で,放棄ができる例外的な場合というのを新たな仕組みとして作るということを改めて提案したというところでございます。   4の(1)のところ,相続を取得原因とするものに限るということに関しましても,法人か自然人かで,中間試案の範囲では自然人だけが放棄できるという方向でどうかということを本文の提案としておりましたけれども,法人が放棄するのは難しいと考える理由については,法人は自らの意思で土地を取得しているということ挙げておりました。しかし,自然人であっても,自らの意思で土地を取得している人というのは,法人と何が違うのだろうかというところがございましたので,やはり法人と自然人とで線を引くのはなかなか難しいのではないか。その一方で,相続によって土地を取得した人というのは自己の意思では必ずしもなくて,相続放棄か承認かということを選ばされた中でやむを得ず引き受けたものもあるだろうと,その場合の相続を取得原因として土地を取得して持っている方の負担を免れさせるという趣旨で,新たな考え方として(1)というものを御提案をしています。 ○山野目部会長 藤野委員,お続けになることがおありですか。 ○藤野委員 いや,この点に関しては。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○蓑毛幹事 部会資料36の土地所有権の放棄について,日弁連のワーキンググループでの議論を踏まえて意見を申し上げます。   今,大谷幹事から御説明があったところではありますが,今回の提案では「不動産は,法令に特別の定めがある場合を除き,その所有権を放棄することができないものとする」となっていて,中間試案で「土地の所有者は,法律で定めるところによりその所有権を放棄できる」とされていたのと比べ,原則と例外が逆転していますが,これを元に戻すべきだという意見がありました。   それから,本文1から3については,基本的に賛成します。ただし,本文3の「売却,貸付け等の処分その他の行為を試みなければならない」ということの具体的な内容を明確にしてもらいたいという意見があり,また,この要件については,放棄申請者にとってさほどの負担とならないような手続にすべきだという意見がありました。   それから,最も議論になったところが本文4のところで,本文4(1)の要件については反対意見が多数でした。本文4(1)は,放棄申請の対象地の取得原因を相続等に限定する結果,法人である土地所有者を一律対象外にしていますが,これは法人が共有者に含まれるケースを一律除外するという方針とあいまって対象を不合理に限定する考え方であって,土地が将来管理不全状態となり,最終的に所有者不明土地化することを抑制するという今回の土地所有権放棄の制度創設の意義を大きく損なうものだと考えます。   先ほどの大谷幹事の説明にもありましたが,今回の提案は,相続等によって土地を取得した者にはやむを得ず土地を引き受けたという面があるとして,あたかもその者に対する恩恵として土地の所有権放棄を認めるかのようです。しかし,この部会の使命は土地所有権の放棄を可能とすることによって,所有者不明土地の発生を抑制する方策を審議することにあります。そうであれば,国に管理コストを不当に転嫁することなどを避けるために,土地所有権の放棄に一定の要件を設けて対象をある程度絞り込むことは必要だと思いますが,それは当該土地を誰が所有しているのか,あるいは土地の取得原因が何かという過去の経緯によって判断されるのではなくて,主として放棄の申請時点における当該土地の性状や当該土地に関する権利関係,事実関係,こういったものに着目して要件を設けて判断すべきだと考えます。   仮に現在の案が採用されれば,例えば自然人について,土地を所有していて放棄したいが,取得原因が相続以外なので放棄できないという場合に何が起こるかというと,次の代で相続になるのを数十年待って,それから放棄するということになると思われます。そのように放棄の時期を遅らせるだけの結果になることが,土地の適切な管理という観点から合理性があるのか疑問です。   また,法人においては,廃業や倒産により,土地が管理されずに放置されて管理不全化が起こり,それから長い期間が過ぎれば所有者不明土地化が起こることが十分考えられます。   このように,本文4(1)の要件を設けることは,土地所有権の放棄の制度を創設して,現時点で適切に管理されている土地が将来管理不全状態となって最終的に所有者不明土地化することを抑制するという政策目的に沿ったものとは言えないように思われます。   したがって,所有権を放棄することができる土地の取得原因には制限を設けず,また法人についても土地の所有権の放棄を認めるべきであると考える次第です。   次に,仮に本文4(1)の要件を設けるとして,その場合,部会資料10ページ以下に説明されている,取得原因が混在する共有地の所有権放棄をどう考えるべきかについて意見を申し上げます。   ここでは,アで自然人と法人が共有している土地,イで土地の取得原因が相続等である自然人と取得原因が相続等以外である自然人が共有している土地,これらについてはいずれも所有権放棄を認めるべきでないとしながらも,ウでは相続等で土地を取得した者が他の共有者の共有部分を取得して土地共有関係を解消すれば,土地の所有権を放棄することが可能ということが書いてあって,ア又はイの土地であっても,土地所有権を放棄し得る救済手段を提示しています。   このような救済手段があること自体については賛成します。しかし,これでは土地の所有権放棄をするためには,相続により持分を取得した者が他の共有者から共有持分を買い取って,しかし最終的には所有権放棄が実現できなかったときには,その土地の管理責任を一手に負うという結果になります。共有持分を全て取得した者一人に,このようなリスクを負わせる制度創設は適切ではないと考えます。   そこで,ウに記載した手法を認めるのであれば,端的に,共有である土地については共有者の全部又は一部が相続等により共有持分を取得した場合は,全ての共有者が共同して行うことによって土地の所有権を放棄することができるとすべきです。また,ウの内容について,提案の本文から読み取れるとは言い難いので,これは補足説明ではなく提案本文に記載していただければと思います。   少し長くなっていますが,続いて,部会資料1ページの本文4(2)から(4)の要件について意見を申し上げます。   国に管理コストを不当に転嫁すること等を避けるため,土地所有権の放棄に一定の要件を設けて対象を絞り込む必要があるという観点から,これらの要件を設けることについて賛成するという意見が多数でした。ただし,その内容について,部会資料の補足説明に詳しく記載されているにもかかわらず,本文4(2)から(4)では具体的に記載されず,「政省令で定める」となっています。しかし,本文4(2)から(4)は土地所有権放棄の可否に直結する要件であるので,その内容のうち重要な部分については,法律に定めるべきだという意見が出されました。   技術的あるいは細目的な事項に限って政省令の定めによるということはよいのですが,重要部分については法律で定めるべきであるというものです。部会資料の補足説明に記載されている内容を基に,具体的にワーキンググループで考えた文案を申し上げます。   例えば(2)については,「担保権又は使用及び収益を目的とする権利その他これに準ずる権利について対抗要件が具備され,あるいは第三者に不法占拠されている土地」と法律に定めればよい。(3)については「土地所有権の存否,帰属又は範囲について争いがある土地」と定めればよい。(4)については幾つか号を設け,本文で「次に掲げる土地その他管理又は処分に過分の費用を要する土地」と定めた上で,1号で「建物,工作物,車両,人工的埋設物その他の土地の性質に応じた管理を阻害する有体物がある土地」。2号として,「傾斜度が30度以上であって,その崩落を予防する相当な措置が施されていない土地」。これは急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第2条を参考にして考えたものです。3号で「土壌汚染対策法第2条に定める特定有害物質がある土地」。4号で「土地の管理に当たって他者との調整に多額の費用を要するなど当該土地の管理以外の目的での費用を過分に要することとなる土地」。このような形で法律に定めればよいのであって,これ以外に技術的,細目的なことがあれば政省令に委ねるのがよいという意見がありました。   それから,本文5の要件,手数料の納付について賛成します。賛成しますが,いわゆる粗放的管理が可能な場合には,管理に関する費用は生じないのではないかという意見がありました。粗放的管理の場合でも,一定の手数料を徴収する必要があるということであれば,例えば単位面積当たり幾らの費用がかかるのかなど,現時点で事務当局にお考えがあれば,お示しいただければと思います。   本文6,7,8については賛成します。本文9も,基本的には賛成ですが,青天井の損害賠償が認められるということだとすると,利用を妨げる結果となりますので,その辺りをどう考えるのかという意見がありました。   本文10についても,基本的に賛成意見多数です。ただし,例えば,土地所有権が放棄されていることを前提に,相続放棄することなく相続を承認した相続人がいた場合に,所有権放棄の認可が取り消されて所有権が戻ってくるということになると,不意打ちになるだろうと。この点をどう考えるのか,例えば職権取消しについて期間制限を設けるなど,何らかの手立てが必要ではないかという意見がありました。   長くなりましたが以上です。 ○山野目部会長 部会資料の第1で提示している事項について,全般的な御意見を頂き,取り分け4について詳細な御意見を開陳いただいたところであります。   委員・幹事からは4のところでもよろしいですし,ほかの点でもよろしいですし,引き続き御意見を承りますが,その前にお尋ねが一つありまして,5のところで管理に係る手数料についての,これはまだここで決め切るという性質のものではありませんけれども,しかし想定されているような運用がもし事務当局において検討途上であるならば,可能な限り紹介してほしいというお求めがありましたから,その点について事務当局から発言をお願いいたします。 ○大谷幹事 この管理のための手数料が幾らになるかということは,現時点でこれぐらいということをお示しできるものはございませんけれども,今,国有財産の管理に関して伺っているところでは,客観的な数字として200平米ぐらいの宅地であれば10年間で80万程度の管理費用がかかると伺っております。それは客観的な現にあるコストの問題ですけれども,それを一つの目安といいますか,スタートとしてどのような管理手数料を求めていくかということは,引き続き検討していきたいと思っております。 ○山野目部会長 お尋ねの部分について蓑毛幹事,何かおっしゃることがおありでしょうか。 ○蓑毛幹事 いや,特にありません。 ○山野目部会長 國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。   この土地所有権の放棄の前提条件として,パブリックコメントのときには筆界が特定されることということであったんですけれども,今回はそれが一応要件としてはないということなんですけれども,そもそもこの所有権の放棄をする前提として売却・貸付け等の処分その他の行為を試みるという要件があります。この売却・貸付け等を試みるということの前提としては,不動産の特定がされていなければ恐らくこれは何も進まないのだろうと思います。そうすると,おのずと例えば地籍更正登記をするなりなんなりをするという手続がどうしても必要になってこざるを得ないのかなと思っています。   そうすると,必然的にこの売却・貸付け等の処分を試みる場合には,筆界そして所有権界が特定されていなければ,これらの行為には及べないという前提条件なんだろうと思います。その前提条件があるにもかかわらず,土地の境界については所有権界を確認できればいいという一応立て付けになっているんですけれども,この立て付けだとすると,そもそも筆界それから境界については確認がされていなくても,例えば筆界と所有権界はそもそも一致しているものを,わざわざ所有権界だけ暗黙のうちに,もしかしたら恣意的にでも決定されてしまう機会があるんだろうと思いますけれども,そういうことが条件となるとすると,その後,例えば国に帰属した土地を,では処分するなり利用するなりするときの管理はどうするのかということになってきてしまうんだと思います。   ですので,この辺のちょっと所有権の確認をすればいいなというようなところを,例えば所有権を放棄したい所有者さんはむしろ弱い立場の人間ですので,恐らく境界はどうでもいいやなんていう考えをなきにしもあらずだと思います。   ですので,将来の例えば国が管理する状態に持って行くためにも,そこはきちんとしたものを前提としなければ,後々のそれから管理,処分等については進めないのではないかという疑義がありますので,御意見として申し述べたいと思います。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   2点,細かい点なんですけれども,教えていただきたいことがあります。   一つは,主体あるいは利用の場面についてですけれども,法人ですとか取得原因による限定等をどう考えるかという御指摘が出ているのですけれども,その点ではなく,むしろ原案によった場合の考え方です。一つ気になっておりますのが,相続財産法人の場合です。必要がないということで相続人が全部相続放棄をするとか,そういうような場合について,相続の局面でもこれはやはり原案の下でも対象になるのかなという気がするものですから,その点はどうかというのを確認させていただければというのが1点目です。   2点目ですが,3の要件のところですが,相当な努力をするという中に今回,売却,貸付け等の処分という形で記載されています。試案の段階では譲渡等になっていたかと思いますけれども,貸付けというのが具体的に入りました。誰か使ってくれる人というのを探さなければならないということかと思います。それ自体は,土地の管理が十分に行われないということに対する予防として努力をするということは分かる気もするのですけれども,この制度自体は放棄の制度で,帰属を変更していくというものです。終局的に所有者不明になってしまうというような事態を避けて,もう帰属自体を国庫の方にさせてしまうという制度だということからしますと,貸付けというのは貸借ということでよろしいでしょうか,土地を使ってくれる人がいるかというのを探して,そういう人がいても,しかしもはやこの後誰が所有権自体を持って行くのかということについては了解も見通しもないというような場合だと,やはり放棄ができてもいいように思うものですから,この貸付けというものが具体的に入った理由について,それが本当に必要なんだろうかということについてちょっと理解が及ばないものですから,もしよろしければ御説明いただければと思います。 ○山野目部会長 2点は御意見でいらしたようにも感じますが,お尋ねということで頂戴いたしましたから,相続財産法人の問題と貸付けの点について,事務当局の現時点での所見をお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   まず相続財産法人ですが,沖野委員御指摘のとおり,この場合も相続で,相続財産法人というものが持っているというか,相続財産法人そのものが財産で構成されるわけですけれども,その相続財産法人も土地所有権の放棄をするということは可能ではないかとは思います。ただ一方で,相続財産法人になっているということは,管理人がついて清算をした上で,最後に残った財産については国庫に帰属するということになっておりますので,相続財産管理人が所有権の放棄をするということが理屈上あり得るわけですけれども,所有権の放棄ということをしなくても,最終的に残ってしまったときには国庫に帰属するということになりますから,実際に管理の手数料を負担してまで相続財産管理人が土地の所有権の放棄をするということは少ないのではないかと考えております。   それから,2点目の貸付けの点でございますけれども,これも中間試案の際にはこういう表現を採っておりませんでしたが,例えば,農地については,農地バンクという仕組みがございます。農地については農地バンクで貸付けのあっせんなどもされて,現在の所有者ではない方に耕作をしてもらうということを一つの政策的な目的としてやっておるところがございます。こうした農地のような場合を念頭に置きますと,まず農地バンクを利用して貸付けを受ける方がいないかということをお聞きした上で,それでも誰も利用してくれないというときに,土地所有権の放棄ということを許すということでどうかということで,これは農地政策と関連してのことでございますけれども,こういうような形にしてはどうかという提案でございます。 ○沖野委員 1点目については分かりました。   2点目については,なお制度と整合するんだろうかというのは気になりますけれども,政策的な判断からそちらに誘導したいという観点から入っているものと理解しました。それ以上には申し上げることはありません。 ○山野目部会長 道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   蓑毛さんがおっしゃったことがちょっと私よく分からなかったところがあるので教えていただければと思うんですが,例えば4の(1)で相続以外であるということを求めるとか,あるいは法人は駄目だよというふうな話だとか,そういう話について,こういうふうな一般的な制限を設けるのは妥当ではないのではないかという話をされまして,しかし,実質的に見ますと,放棄のために取得をすることを認めていいのかという問題があるという話も併せてされたのだろうと思います。   そうであるならば,ある程度の実質的な審査というのをせざるを得なくなるのではないかという気がするんですね。   その実質的審査をするということと,4の(2)から(4)を非常に明確にしようと,具体的な基準を明らかにして明確にしようというのとがどういうふうな関係に立つのかというのがよく分からなくて,また8も賛成だとおっしゃったんですが,8というのは実質的にあまり審査しないというのが,ある程度,前提になっているような気がして,そうしますと,相続とか法人とかということが,それだけの理由では放棄を認めないという方向にはつながらないはずだという話と,形式的な要件審査で処理をしようという8は賛成だというのとが,どういう関係にあるのかが私にはちょっと分からなかったんですね。   それが大きな点,2点目は非常に小さい話です。それは,今後は逆に蓑毛さんのおっしゃった話に乗って,4の(2)というところを精緻化すると,明確化するというところで,対抗要件が具備されているという話をされたような気がするんですね。しかし,これ第三者が担保権を設定して,相続以外の事由で取得がされていると,それはその時点で担保権は対抗できないというものになっているわけですし,逆に言うと,これは本人が担保権を設定しておいてそれで放棄をするというのは,それはおかしいという話も含んでいるんだと思うんですね。   そうなると,対抗要件の具備は不要ではないかという気が私はいたしまして,細かな話ですが,対抗要件が必要だとおっしゃったんだとするならば,それはちょっと違うのではないのという気がいたします。 ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれましては,今何か仰せになることがあれば伺いますし,あるいは弁護士会でまた持ち帰って御議論になるということでもよろしいですけれども,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 私の能力では,道垣内先生の疑問に答えられるかどうかよく分かりませんが,答えられる範囲でお答えします。道垣内先生からは,実質的審査・形式的審査という言葉があり,手続と実体法上の定めとの関係についてのご質問であったと思いますが,私は手続や審査について特に言及した訳ではありません。私が申し上げたのは,部会資料1ページの本文1で「土地の所有者は法律の定めるところに従い,土地の所有権を放棄することができる」とあり,本文4がその法律の定めについて記載しているわけですが,4(1)の実体的要件については不要,それから,4(2)(3)(4)について補足説明で詳細に説明されている内容は,法人を含め,モラルハザードを避ける等の観点から,適切な実体的要件であると考えるが,それは法律で定めるべきものであり,細目的なところのみ政省令に委ねるべきだと申し上げました。実体的要件を政省令に委ねず,法律に規定すべきということと,実質的審査か形式的審査かということが,どのように関係するのか,ちょっと理解できませんでした。   本文8が実質的審査をしないことを前提としているというのがそうなのか,あるいは,私の意見との関係については今整理できていませんので,お答えできません。   それから,対抗要件が必要かどうかというのは,部会資料に記載している点を踏襲して述べましたので,これは事務当局の方からお答えいただければと思います。 ○大谷幹事 今多分,道垣内委員はその規定を置くとすると難しいというか,説明がつきにくいというところがあるのではないですかとおっしゃったものと理解をしておりましたけれども,実態として担保権がついている場合には放棄できないという考え方もあるのだろうとは思っています。   ただ,今のところ,結局登記で担保権が消えてしまうというか,国の方には対抗できないということになるのであれば,それはもう放棄を許してもいいということになるのではないかということで,部会資料は作っております。 ○山野目部会長 道垣内委員,お続けください。 ○道垣内委員 いや,差し当たっては結構です。どうも。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   次,佐久間幹事にお願いします。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   2点申し上げたいと思うんですが,一つは,取得原因の制限についてです。この点につきまして,蓑毛幹事から弁護士会の御意見を御紹介いただいたわけですけれども,なるほどもっともとは思いました。しかしながら,一応この要件として今原案で絞られているのは,現在所有者不明土地問題として一番大きな発生原因であると思われる相続を契機に土地が放置されるということを何とかしようということがあるということが一つ。   モラルハザードというものを,所有者のですね,防がなければいけないということがもう一つ。さらには,何といってもこれうまく成立したといたしましても,初めて認められる制度となりますので,一体どういう行動を国民がとることになるかというのも分からないわけですので,いずれ見直しをすることはあってもいいと思うのですが,最初は少し控えめな出発点をとる方がいいのではないかと考えておりまして,以上の次第から,原案に私は賛成いたします。これが1点目です。   2点目は,これはすごく大ざっぱなというか,中身の話ではないんですが,蓑毛幹事がやはりこれもおっしゃったことなんですが,冒頭で,第1の定め方を変えるという御提案が今日されています。不動産について法律に定めがあればそれに従って所有権を放棄することができるというのが試案での御提案だったわけですが,本日お示しになっているものは,不動産は法律で特別な定めがある場合を除き放棄することができない,繰り返しますが,所有権を放棄することができない,となっております。   私は,これは先ほど蓑毛幹事がおっしゃったことだったと思うんですが,元の方がいいと思っています。それはなぜかと申しますと,民法に不動産の所有権の放棄について定めることはいいのかなと思うのですが,それがほかの権利の放棄になるべく影響を及ぼさないようにした方がよろしいのではないかと思っています。   補足説明のところでは,動産については放棄が許されているではないかというふうに書かれておるわけですけれども,動産についても全くその単独行為として自由に意思表示をするだけで放棄することができると考えている方がどれほど多くあるかについては,やや疑問に思っております。   そういったところについてまで波及をさせないということからいたしますと,元のように,所有者は法律で定めがあれば所有権を放棄することが不動産についてはできるというふうにしておくならば,ほかの権利についてはどうか述べていないということに,私の感覚ではできるのではないかと思います。そこで,前のようにするほうがよいのではないかと申し上げました。 ○山野目部会長 佐久間幹事の御意見2点を承りました。   中田委員,お待たせしました。 ○中田委員 ありがとうございます。3点あります。   1点目は,ただいま佐久間幹事のおっしゃった,第1の冒頭2行の民法に所有権放棄ができないという規律を置くということについてです。   これは,置くとした場合に,どうして不動産については所有権を放棄できないのかということの理由付けを明確にする必要があるのではないかと思います。その一つとして考えられるのは,所有権の内容である「処分」には放棄を含まないという説明です。しかし,そうすると動産にも及ぶということになりますから,これではうまくいかないと思います。   2番目に考えられますのは,物理的に滅失させることができるかどうかということです。しかし,土地については滅失させられないけれども,建物や土地の定着物あるいは立木法の適用のある立木などについては,そうはいえないので,この説明もうまくいかないだろうと思います。   三つ目に考えられますのは,民法の規定として239条2項で不動産については所有者がいなければ国庫に帰属するというのがありますので,これと結び付けるような説明があるのかなと思います。ただこれは,今回資料を拝見して急に思い付いたことだけですので,全く自信がありません。  仮に民法に大原則のようなものを置くんだとすると,その理由付けを明確にすることがほかとの関係でも必要になってくると思います。現に,この資料の中でも共有持分の放棄について,甲案,乙案ございますけれども,そういうところとも関係してきますので,もしも規定を置くのだとすると,その内容,理由付けを明確にする。それが明確にならないのであれば,その規定を置かないという選択肢もあるかもしれません。   第2点は,管理手数料についてです。これは,先ほど具体的な数字でイメージがつかめたんですけれども,これは認可の後も毎年払うということになるのか,それとも認可の際に一括して払うのかです。そこは私としては認可の際にもう精算してしまう方がいいのではないかと思っております。もしもその後も払わせるということになりますと,その回収リスクもありますし,その後亡くなったりした場合にどうなるのかということを考えると,非常に面倒になります。   3点目は,9(2)の損害賠償請求の期間制限5年ということでございます。これは,申請者が知っていた場合,これは20ページの最後のところに有害物質を埋めたことを秘して申請した人についての言及がありますが,例えばそういう人についても5年の期間制限が及ぶのかというと,やや疑問に感じました。 ○山野目部会長 中田委員の御意見,3点承りました。   続きまして,松尾幹事お願いいたします。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   土地所有権の放棄に関する原則をどう定めるかという点について,既に多くの意見が出されておりますが,私も原則として不動産について所有権放棄を認めないというよりは,所有権放棄は認めうるけれどもかなり厳しい要件が付きますよという方がよいのではないかと考えます。   理由は三つありまして,一つは,従来の裁判例では土地の所有権の放棄について,原則として認めうるけれども,権利濫用等に当たることを理由に,放棄を前提とする請求が絞られてまいりました。権利濫用に当たるという実質的理由が何なのかということについて,議論があったように思います。その権利濫用に当たらない場合について,法律が特に定めて要件を満たした場合には認めますよという方が,従来の土地所有権放棄をめぐる制度との連続性を保ち得るのではないかというのが第1点です。   それからもう一つは,この要件を満たした場合には,部会資料36の第1の8で審査機関は認可をしなければならないというふうになっていますけれども,要件をクリアすれば認可をしなければならないという制度構成をとるとすれば,原則は所有権放棄を認めるという立脚点に立つことになるのではないかと思います。  それから,3番目は,先ほど中田委員の方から御指摘がありましたけれども,もし不動産に限って所有権の放棄を認めないということになると,ほかの制度へのインパクトとして,動産については否定できないこととの法理上のバランス,不動産の共有持分権の放棄を認めるかどうかということについて,部会資料36の22ページ下から10行目以下でも指摘されている規律の問題も考えなければならないということで,波及する問題が大きいと思いますので,原則はできるけれども厳しい要件がつくというスタンスの方がよろしいのではないかと思います。原則できないというのはちょっとインパクトとしては大き過ぎるのではないかと感じた次第です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   山本幹事,お待たせしました。 ○山本幹事 ありがとうございます。   4点ほど,いずれも細かい点ですけれども,本文で申しますと9と10の部分です。   まず第1点は,9の部分に関してですけれども,説明の方で申しますと19ページから20ページにかけての部分です。これは,先ほど中田委員からも御指摘がございましたが,ここでの案は会計法の30条ないし31条の方の考え方に寄せて時効を考えると。すなわち,会計法の30条,31条のように,行政上の事務処理上の便宜等の観点から,画一的に比較的早期に金銭債権債務の行使について確定をさせるという除斥期間に比較的近い考え方がここでは示されていると理解を致しました。   立法のやり方としては,そのように会計法の方に寄せるやり方と,それからどちらかというと民法の消滅時効の規定の方に近づけ,知ったときからという時点を起算点にするやり方があります。ここでの案は認可のときからということなのですが,知ったときからという形で民法の方に寄せるやり方もあるのではないかと思います。どちらがいいか,私はちょっと定見がないのですけれども,一つの考え方として,ここに示された案もあるかと思いますが,議論の余地はあるのではないかと思います。   それから,第2点は,20ページの4行目の部分ですけれども,ここで損害賠償請求と認可の取消しとの関係が書かれておりまして,ここでは,そこまではっきりと書かれていないのですけれども,放棄をした人の財産権を保護するという観点からいうと,損害が莫大に生じて,損害賠償請求を国が行う前に,認可の取消しをすると,そちらの方が放棄をした者にとって負担が少ないということであれば,できるだけ早くそちらの方の措置を取るべきであるといったことがあるのではないかと思います。   先ほど蓑毛幹事から,損害賠償の額が非常に大きくなるという話がありまして,一つそれを抑えるためのやり方として,むしろ認可の取消しを早期にした方が放棄者にとって負担が少ないということであれば,それをやるべきということになるのではないかと思います。   それから,第3点は,同じく20ページの,すみません,非常に細かい話ばかりで申し訳ないのですが,(2)の直前にあります「なお」の部分で,行政訴訟が提起される場面は実際には想定し難いということです。例えば,放棄者が真の権利者であるかというようなことは,初めに審査されるので,実際には後から実はその人が権利者ではなかったという事態はあまり想定されないのかもしれませんが,仮にそのような権利の帰属に争いがあったような場合には,恐らく行政訴訟ではなく,通常の民事訴訟で争われることになるのではないかと思います。これは私もちょっと考えがまとまっていないところで,かなりマイナーなケースですので,そこまで考える必要は現在のところはないのかもしれません。   それから,最後ですが,20ページの認可取消しの期間制限の話です。20ページの最後に書かれております。これは,先ほど蓑毛幹事からも御指摘がございましたけれども,一般的に申し上げれば,行政処分の職権取消しをする場合の要件を事細かく書くことは,あまりないのではないかと思います。一般的には,どれぐらいの期間がたっているかということ,それから取り消す公益上の必要性がどれだけ大きいかということ,それから私人の側の帰責事由がどれほど大きいかという,大体そういったファクターを考慮して,一般的には判断することになるのではないかと思います。   ただ,立法としてはある程度明確にしてしまうというやり方もあり得るかと思います。例えば期間を5年とか10年という形にして,その上で例えば放棄者が知っていた,放棄者の側に帰責事由があるという場合には,無期限といったようなやり方も一つあるかもしれません。そこまで細かく書くことが適切なのか,あるいはむしろ通常行われているように一般的な利益衡量でもって処理をするのがいいのか,どちらかということになるのではないかと思います。   すみません,あまりまとまりのない話で申し訳ございませんでした。 ○山野目部会長 山本幹事がおっしゃった2点目のお話でありますけれども,認可を取り消した方が放棄者である私人に対してあまり不利益が大きくならないというときには,そのように導くべきだというお話は,規律表現としてもう少しその趣旨のことをはっきり書いておいた方がいいという御意見の御趣旨も含むものでありましょうか。 ○山本幹事 そこはなかなか書き方が難しいところがありますが,明確にそこまでもし決めるのであれば,書くというやり方も一つあるのではないかと思います。ただ,行政処分の際にこういうことが問題になる類例があまりないので,実際どう書くかというと,私も具体的なアイデアは現在のところ持ち合わせておりません。 ○山野目部会長 御意見の趣旨,よく理解することができました。ありがとうございます。   水津幹事はお手を下げられましたか。 ○水津幹事 では,土地所有権の取得原因の制限について,質問いたします。   4(1)の規律は,相続人に対する遺贈を相続と同じように扱っています。補足説明では,その理由として,特定財産承継遺言と相続人に対する遺贈の機能は,類似していることなどが指摘されています。しかし,特定財産承継遺言の性質は,相続であり,受益相続人の受益は,相続人として相続財産を包括承継することと結び付いています。このことは,受益相続人が相続を放棄したときは,その者は,その受益を失うことに示されています。これに対し,相続人に対する遺贈の性質は,相続ではなく,贈与に類するものであると考えられます。そうであるとすると,相続人に対する遺贈を相続と同じように扱い,受遺者である相続人が遺贈を承認して土地所有権を取得したときに、その土地所有権を放棄することをその者に認めてよいのかどうかが,土地所有権の取得原因を制限する趣旨との関係で,少し気になりました。 ○山野目部会長 お尋ねとおっしゃいましたが,水津幹事から御指摘いただいたことに注意をして検討を進めなければいけないというふうに受け止めればよろしいでしょうか。 ○水津幹事 そのようにしていただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   安高関係官,どうぞ。 ○安髙関係官 ありがとうございます。林野庁でございます。   2点ほどちょっとお話をさせていただきたいと思います。   まず,11ページの(5)権利の帰属に争いがないことの記述についてでございますが,その末尾の12ページのところに,所有者が一筆の土地の一部を放棄したいと考える場合ということも想定をされているという記述がございます。こちらについて,ちょっと懸念点がございますので,一言申し上げさせていただきたいと思います。   本文のとおり,分筆した上で放棄の申請をすると,要件を満たしている場合であれば,土地の一部の放棄も当然認めることになるということは認識しております。ですが,森林を例にとりますと,育ちがいい森林ですとか林道脇の近くて施業がしやすい森林といったような条件のよい森林は引き続き所有をされて,それ以外の不必要な,厄介なところだけを放棄しようとするといったモラルハザードと言えるような放棄の申請が行われるというケースも出てくるという懸念があるという点でございます。これは懸念点ということで一言ということでございます。   もう1点でございます。これは12ページの(6)のところに,隣接する土地の所有者との間で境界について争いはないことのうち,3パラ目,先ほど國吉委員からも御指摘があったところでございますが,管理の対象である土地の所有権の境界が明らかであれば足り,公法上の筆界が特定することを要求する必要はないという記述があるところでございます。林地については,筆界が特定されていないという割合が非常に高うございますので,筆界特定を放棄の要件とすると,制度自体が機能しなくなるという考え方はあるのかなというふうに理解しております。   一方,放棄後に筆界を特定するとなった際には,登記の手続を含めて発生する手間ですとかそれにかかる費用といったコストについては,国,ひいては国民の皆様方に転嫁されるということになるところでございます。そうして最終的にその筆界と所有権界が一致しないといった場合については,国とその隣接所有者との間で実務上トラブルになってしまうという可能性もあるのかなと。そう考えますと,筆界を特定させた上で放棄申請をしていただくというのがよいのかと思うのですが,そうでなければ,管理に係る手数料,この算定にそのコストも加味しておく必要が出てくるのではないかと,そういった考えもあってよいのではないかなと考えているところでございます。   また,せめてその筆界が特定されていなくても,しかるべき水準の測量図の提出,そういうものが必要ではないかと考えているところでございます。   こういった境界についてどの水準で放棄を認めるかということを検討するに当たり,最終的には決めの世界になるのかなとは思うのですが,そのような点も踏まえた上で,筆界が特定されていなくとも,それでも放棄を認めるというふうにするかどうかというのは,判断が必要かなと考えているというところでございます。ありがとうございます。 ○山野目部会長 2点の御注意を承りました。   後ろの方の点は,前の方の点とともに検討いたしますが,どちらかというと,筆界特定が必ず必要であるという規律に,かつてそういうふうに考えていた時期もありますけれども,あれに戻すことは重いお話になってまいりますから,費用の方でうまく処置ができるものであれば,そちらの方が穏当な解決であろうと考えますけれども,本日,國吉委員からも御意見をお出しいただいているところを踏まえて引き続き検討することにいたします。ありがとうございました。   垣内幹事,お待たせしました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。垣内です。   1点,ちょっと細かい点で恐縮なんですけれども,確認の質問をさせていただければと考えております。内容的には,資料の1ページの4の(1)の理解,それから,若干は8ページの本文の最後の段落,法人格なき社団等に関する記載に若干関連することになるかと思います。   具体的には,入会権の対象となっているような土地で,共有の性質を有する入会権のような場合に,入会権者が実質的には社団になっているような場合とそうでない場合と両方考えられるのではないかというふうに理解をしておりますけれども,本日の御提案で4の(1)の考え方によりますと,そういった場合にはそういう権者全員の同意というか,全員の認可の申請があっても,これは放棄ということは許されないという理解でよろしいでしょうかというのが御質問でございます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 お尋ねを頂きました。事務当局からお願いいたします。 ○大谷幹事 8ページのところに書いておりますけれども,法人格なき社団については,個人が相続しているというのとはまた別のことになるんだろうと,どちらかといえば団体に近いということに,法人に近いということになりますので,法人格なき社団については放棄は認められない,この4の(1)には当たらないということになると理解をしております。 ○垣内幹事 入会権者が法人格のない団体を形成しているとまでは言えないような場合もあるのではないかというふうに,ちょっと民法の理解が間違っているかもしれませんけれども,そのような場合については,そうしますとどうなりますでしょうか。 ○山野目部会長 民法の理解は垣内先生のおっしゃるとおりです。 ○大谷幹事 そうですね,結局のところ,法人格なき社団ではないということで共有になっているのだということであって,それで相続で取得しているということであれば,全員で放棄をするということであれば,それはあり得るのではないかなと思います。 ○山野目部会長 垣内幹事,お続けください。 ○垣内幹事 分かりました。ありがとうございます。   これはまた私の民法の理解のあれなんだと思うんですけれども,何か入会権というのが相続によって取得されるのか,それとも,何というんでしょうか,住民であって世帯主であるみたいなことで,相続とは別の形で取得されるのかというのがちょっとよく理解できていないところがあるんですけれども,相続によって取得されると考えて適用される場合もあるという,そういうことになりますでしょうか。 ○大谷幹事 今,いろいろ御指摘を頂きまして,現時点でそうかなと思いましたけれども,もう少しよく考えて整理をしたいと思います。 ○山野目部会長 垣内幹事,よろしいですか。 ○垣内幹事 はい,どうもありがとうございます。 ○山野目部会長 垣内幹事からは,ひとまずそういうことですかというお話を頂いたところでありますが,後でまた今後に向けての宿題の整理を差し上げようというふうに感じておりますけれども,今後検討しなければならない点の一つとして,取得原因が混在している土地についての放棄の在り方は,蓑毛幹事からも具体的な幾つかの御指摘を頂いているところでありますし,垣内幹事からお話いただいたところも,入会権者が権利能力なき社団を構成していないとき,全員が相続によって承継したと考えられるときには,部会資料でお出ししている案でも土地所有権の放棄が可能になるかもしれませんが,混在している場合についての扱いとそれほど隔てなければいけないかというようなことを考えながら,入会権の構造にも注意を払いつつ,問題提起を頂いたことについて考えをまとめていくということになりましょうから,ただいまの御注意をそのような今後の検討の中で活かしてまいりたいと考えます。 ○潮見委員 すみません。質問が1点,それから意見が1点,それからお願いが1点,3点ぐらい御発言したいと思います。順番からいったら意見の方がいいかもしれません。   先ほどの山本幹事の御発言にも関わることですけれども,この第1の9に関わるところです。5年の期間の起算点のところです。私も先ほどの御発言でおっしゃられたことにも同じように感じるところがありまして,この起算点については,国が放棄者に対して求償する機会を奪われないようにするためにも,これは認可された時ということではなくて,要件が充足されないことを知ったときというところで考えた方がよろしいのではないかというように思いました。   また,5年の期間というのがこれでいいのかというのは,先ほど中田委員が,登記者が悪意の場合ということを想定しておっしゃられましたが,それ以外にも何かありそうな気もするんですよね。例えば畑にされた土地のところから6年か7年たった後で汚染物質が出てきたような場合に,そうしたときに国の方に最終的にそのリスクを負担させるという結果で終わってしまうというのが果たしてよいのかどうかというのは,いろいろな考え方があっていいかと思います。これが1点目です。   それから,2点目の質問に関わることは,同じ9のところの(1)の本文とただし書といいますか,本文に関わることなのですが,(注2)の4の(4)の政省令で定める内容……というふうなことが書かれていますが,例えば㋔の場合に,9の(1)の本文の4に規定する要件を満たしていないことによって国に損害が生じたということは,想定されているんでしょうか。このような場合にそういう事態があるのかということを,ちょっとお伺いしたい。   後の補足説明等のところを読んでいますと,要するにこういう場合には管理主体となる行政機関の意見を求めて,それでいいかどうかというものをそこで考えてもらって,それで過分の費用を生じないという認定評価がされた場合に放棄というものが認められるという中で進んでいくというように書かれています。そうであるならば,後で何か起こったときに4に規定する要件を満たしていないことによって国に損害が生じたということが,因果関係の話ですけれども,そういうことが起こり得るんだろうかというところがちょっと分からなかったというところなので,これは教えてくださいということです。   最後にお願いというのがあります。それは,9の(1)にこれも関わるのですけれども,こういう本文ただし書の構造をとるということは,私は理解できます。ただ,こういう本文ただし書構造をとった場合に,放棄者が,自分が無過失であるということについての立証責任を負うことになります。もちろん,証明がしやすいという場合もありましょうけれども,先ほどの例えば(注2)のところの㋓ですね。こういう埋蔵物とか土壌汚染があるという場合に,では無過失ということを放棄者が立証しなければいけないということになれば,考え方次第ではかなり厳しい事前の調査義務,あるいは情報収集義務というものを放棄者が負担するような形で解釈がされるリスクもないわけではありません。実質的に無過失責任が課されてしまうような局面があり得ないとは言い切れないところがあります。   ですので,ここからがお願いで,法改正がされたときには,解説とかが出されると思います。そういうところで,あまり過酷な調査義務,事前の調査義務,あるいは情報収集義務というものを放棄者に課すことがないように,少しその辺りは説明を丁寧にしていただければ有り難いというところです。これがお願いです。 ○山野目部会長 1点目の御意見は,山本幹事から問題提起を頂いたところについて,更にお立場を表明していただきましたから,有り難く承りました。   2点目のお尋ねは,ただいま事務当局から説明をいたさせます。   3点目のお願いというのは,ああお願いなのですね,というふうに承りました。この本文とただし書の構造そのものが駄目だというふうに潮見委員に叱られてしまうと,あまりほかに書きようがないものですから,困るなという気もしないではありませんでしたが,法令の意味内容の説明において留意していただきたいというまことに穏当なお話を頂きましたから,お願いの向きはもとより承りました。   事務当局からお尋ねにお答えくださるようお願いいたします。 ○大谷幹事 9の(1)の4に規定する要件を満たしていないことによってということにつき,今潮見委員の御指摘にあった(注2)の㋔のような場合はどうなのかということですが,基本的にはこの㋔の要件が実は満たされていなかったんですということは,あまり想定されないのではないかと思っております。ここで一番ありそうなのは,放棄者は権利関係に争いがないというふうに言っておったけれども,実は争いがあったであるとか,今も御指摘がありましたけれども,(注2)の㋓の,土地に埋設物や土壌汚染があるということが後になって分かったということがケースではないかと思っております。   先ほど潮見委員から損害賠償請求権の期間について御指摘がありましたが,部会資料の作りといたしましては,国の方の損害賠償請求権というのを重く見て,主観的な起算点とするかどうかということはありますけれども,やはりある程度事務処理上の便宜というものを考えながら,また,土地所有権の放棄をした方が,特に実は土壌汚染があったんだということを知らないで放棄した人が,いつまでも取り消されるということもどうなのだろうかというところがありますので,一応客観的な起算点ということでどうかと考えて,こういう提案をしております。   また,際限なく損害が発生してしまって,無過失であることを立証できないで,結局損害賠償責任を負ってしまうということがあるのではないかということがありましたけれども,そこも具体的な損害が生じてしまったときにはやむを得ないところがありますけれども,山本幹事から御指摘がありましたように,具体的な損害が発生していないのであれば,取消しをして,国の方で持っているとどうしても国の方ではきちんとした管理をしないといけないので,土壌汚染が発見されたらその土壌を入れ替えるというようなことをするけれども,それが通常の方が持っているのであればそれは必要ないということもあり得るところですので,そういう場合には取消しをしてお返しをするということもあるというふうに考えておりました。 ○山野目部会長 潮見委員,お続けください。 ○潮見委員 そうであるならば,除斥期間としないのですか。 ○大谷幹事 会計法の規律との関係がありますが,先ほど山本幹事もありましたけれども,除斥期間のようなものという形で作るということもあるのかなと思います。 ○潮見委員 こちらの部分について,会計法とは少し切り離した形で除斥期間という形で組むというのは難しいという御趣旨でしょうか。 ○大谷幹事 除斥期間として組むということもあり得るのかなと思いますが,これも結局のところ,時効制度との関係でどういうふうに仕組むのか,会計法との関係もいろいろあると思いますので,必ずそうできるとは思っていませんで,取りあえずこういう形で提案をしているというところでございます。 ○潮見委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 潮見委員の御指摘を踏まえて,期間のことはさらに検討することにいたします。   吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。   第1の土地所有権の放棄を認める制度の創設について,法令に特別の定めがある場合を除き,その所有権を放棄することができないものとする規律を設けるという2行について賛成いたします。   また,4の(1)取得原因を相続又は遺贈に限定することにも賛成いたします。このようにしたことで,今回のこの議論の背景,それから所有権放棄の制度を設ける趣旨というものが明確になったと受け止めました。政策目的に合致したものであると考えます。   その上で,放棄できると書く,あるいは放棄できないと書く,いずれにしろ世の中に与えるインパクトというのは非常に大きいものがあると思います。仮に放棄できると規定した場合,一般国民の受け止め方としては,できると原則書いてあるということは大部分ができて,例外的にできないというふうに受け止めてしまうのではないかと想像しております。ただ,今日配布されました参考資料8を見ますと,放棄見込率は1%程度ということで,ごくごく限定的です。このような推計を見ますと,放棄できないと書く方が一般国民の受け止めとしては実態に即したものと理解を得やすいのではないかと考えます。   土地の承継について,これまで相続の承認とそれから相続放棄という限られた選択肢が用意されていたわけですけれども,今回,所有権放棄の規律を設けることによって,その間に新しい制度が生まれてくると。これを,放棄できないという原則を置きつつ限定的に認めていった場合,ではなぜ限定的にしか認めないのかということについて,もう少し本質的な理由を考える必要もあると思っております。   先ほど中田先生から,ここでもし原則放棄ができないとするのであれば,それはなぜでしょうかという問題提起がございました。ここがやはり多くの国民が疑問に思うところだろうと思います。実態としてモラルハザードを生むからとか,管理コストが国や自治体にかかってしまうからという,そういう理由は当然あるのですけれども,果たしてそれが放棄を原則認めない本質的な理由なのだろうかということは,まだちょっと考え中なところがあります。   なぜ原則認めないのか,それは土地という財の特性によるものなのか。もし,逆に原則認めるとした場合,その理由は何なのか。そこをもう少し突き詰めて考えることが,普通の人にこの制度を周知していくときに必要だろうと思います。   それを考える上で,最後1点ですけれども,第1の書き出しが不動産はとありまして,ただそこ以降の1,2と続いていく部分は,土地のとなっているわけです。建物については滅失できますが,土地はそれができないという性質上の大きな違いがあります。   この後ろの方で建物についての扱いも出てきますが,ここで不動産と置いて,土地と建物という性質の違うものを一律に大きくうたってしまって,後々解釈上の混乱が出ないのかということはちょっと思っているところです。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。 山田委員,お待たせしました。 ○山田委員 ありがとうございます。届いていますでしょうか。 ○山野目部会長 届いています。 ○山田委員 発言を始めます。   先ほどお話が出ていました入会,あるいは入会権に関することについて,一言意見を申し上げます。   過去のある時期まで入会権が成立していたと認められる例というのが全国に多くあるだろうと思います。それらは,管理が行われていない土地となっているものが少なくないのではないかと思います。共有の登記が行われている場合というのもあろうかと思います。   このように考えてきますと,8ページの本文の下3行に書かれていることは,少し,今私が想定しているような例を考えると,この制度に乗ってこない可能性があるというおそれを感じます。特に,法人格なき社団等の実態は法人と変わらず,土地を取得するのはその組織の活動の一環としてであり,土地所有権の放棄を認めるべき必要性が低い点では法人と同様であることから,土地所有権の放棄の主体とすることは現時点では難しいと考えると書かれています。これは,法人格なき社団一般については当たるところがあると思うのですが,先ほどの御発言にもありましたように,入会団体が法人格なき社団の性質を持っていると認められる場合があります。それを自らが土地を取得したんだと考えるのは,当たらないのではないかと思います。   今日の次の話題の共有とも関連しますが,共有持分の形式を持った権利がかつての入会団体の構成員の子孫というんでしょうか,卑属に共同で帰属しているということがあろうと思います。それらは厳密な意味で相続なのかどうか,確かに難しいところがあるのですが,自分で購入した,自分で自発的に取得したというのでないのは明らかでありますので,是非,そういう例についても今回の土地所有権の放棄にうまく乗せることができるように,事務当局ではお考えいただきたいと思います。 ○山野目部会長 入会権のことが大きな宿題であることがよく分かりました。どうもありがとうございました。   引き続き委員・幹事の御意見を承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,部会資料36の「第1 土地所有権の放棄を認める制度の創設」につきまして,本日,委員,幹事,関係官から様々な御意見を頂きました。いただいた御意見の全てについて,これから精査して改めて議事を整理いたします。それらの全てを繰り返すことはいたしませんが,大きな二つの宿題が浮かび上がってきていると感じます。   第1点は,部会資料でいいますと最初のところで問題提起をしていることですが,不動産所有権の放棄の可否について,民法に規定を置くか置かないか,置くとした場合にどのような規律表現で置くかということについて,本日の御議論において主に民法の先生方からは,それが他の権利の放棄に波及する影響等について慎重に検討するようにというお求めを頂きましたし,また吉原委員その他の委員からは,ここで設けられるルールの規律表現が国民に対して与えるメッセージとの関係で,また別の性質のことでありますけれども,十分に注意するようにという御指摘もいただいたところでありまして,本日の御議論をもう顧み,ここを整理しなければならないと感じます。   もう一つ大きな宿題がある点は,4の全般についてお話を頂いたところであり,どれも重要でありますが,取り分け4の(1)との関係におきましては,4の(1)のように相続に限定することの適否そのものについても御議論があったところでありますけれども,仮に相続に限定するということにした場合においても,取得原因が混在する土地の放棄の要件,手順をどのようにするかということについては,なお考え込まなければいけない点がたくさんあるということが明らかになってきたと考えます。取得原因が混在する土地というものは,言い換えれば所有権の一部を相続等によって取得したけれども,他はそのような部分になっていないという局面でございます。蓑毛幹事が弁護士会の御意見を受けておっしゃったように,所有者不明土地管理制度を用いるか,あるいは他の共有持分を取得するという手順を経なければ,また経た上でであっても,土地所有権の放棄に結び付くことができないというリスクを冒して,ここのところの手続を進めなければならないという困った状況に当事者を置くことの適否等について,更に考え込まなければいけないと感じられるところであります。   この点についても,委員,幹事,関係官からお出しいただいた御意見等を踏まえ議事を整理することにいたします。特段の御意見がなければ,第1のところについての今日の段階での審議を終えるということにいたしますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,部会資料36はまだ残っていますけれども,本日の部会の会議が始まってから相当の時間が経過しておりますから,休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料36について,引き続き審議をお願いいたします。   休憩前に補足説明を含めますと20ページまで済んでいるところでございます。それに続く21ページのところで,「第2 関連する民事法上の諸課題」といたしまして,共有持分の放棄の新しい規律の在り方について,御覧いただいているとおりの甲案と乙案をお示ししているところでございます。ここについては,委員・幹事の御意見をお出しいただき,それを踏まえて今後に向け方向を見定めていくということになりますから,どうぞ御意見を仰せくださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料21ページの第2については,日弁連のワーキンググループの中で,意見が分かれています。不動産は管理の負担が動産と比べて重いということ,現在も実務上は持分放棄の登記をする際には共同申請で他の共有者の協力が必要であることから,乙案でよいという意見がありました。   一方,乙案のように不動産に限る理由はなく,動産についても管理の負担を押し付けるという側面があることから,共有持分を放棄するためには,他の共有者全員の同意を必要とする甲案に賛成だという意見もありました。統一的な見解は出ていないという状況です。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   私は,甲案がいいと思っております。ただ,理由は共有持分の放棄を自由に許すべきではないということが前提として私の中ではありまして,その場合に不動産に限る理由は少しもないのではないかと思うから甲案がよい,という程度のことです。   ただ,その上で気になりましたのが,仮に甲案にした場合に,補足説明では,結局のところ全員の同意を得て放棄するということで,按分帰属だということは譲渡と変わらないではないか,255条の死亡者に相続人がないときはというのは残すのかもしれませんが,持分を放棄したときというところは除く,それで済むのではないかというところが気になりました。気になりましたというのは,それでは駄目だというつもりもないのですけれども,そのような選択をした場合に,結局のところ,いや放棄はできるんだよね,後の処理はともかく,というふうなことにならないのかなということがやや心配に思ったところです。 ○山野目部会長 中田委員,どうぞ。それとも,お下げになりましたか。 ○中田委員 ありがとうございます。甲案,乙案迷っているんですが,検討課題として,他の共有者の一人でも反対したときに,放棄による解決ができなくなるということの問題があるかどうか,その問題があるとして,どちらが大きいのかということがあるかと思います。それから,甲案を採る場合に,株式や無体財産権などの準共有における実務に及ぼす影響はあるのかないのかということ。それから,三つ目といたしまして,今佐久間幹事もおっしゃいましたけれども,255条の死亡して相続人がないときの規律が残るとしますと,その放棄プラス同意との整合性は甲案,乙案どちらの方がより高いのか。その辺りが考慮要素かと思いました。結論が出ていなくて申し訳ございません。 ○山野目部会長 重要な御指摘を頂きました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたならば,本日幾つかお出しいただいた御議論を踏まえて議事を整理することにいたします。   本日の御議論の状況を承ると,甲案,乙案いずれかに絞ってお話を進めていくということには直ちにはなりませんけれども,今後の検討に当たって,甲案,乙案というふうにあるうちの甲案を採用する場合に関して言うと,法制上の規律の表現の問題と,それとは性質を異にする実態との関係の問題と,二つほど注意すべき点があると感じます。甲案でまいります際には,255条の現在の法文から相続人不存在の場合を残し,放棄に関する規律を単純に削除するという仕方で規律表現をするのと,甲案で今お見せしているこの文章そのものを規律表現にするということとの二つの選択肢を見て,利害得失を検討していくということになると考えます。これは法制上の検討事項です。   もう一つは,中田委員から御指摘がありましたが,甲案を採用した場合には,土地建物以外にもこの規律が波及していくことになります。もちろん,土地建物以外の全ての財産について,念のため検討をすることは必要でありますけれども,今日の経済社会において実態上その重要な役割を演じている株式会社の場合の株式,その他これに準ずるようなものについて,何か思わない帰結を招くのではないかということは実態,実務との関係で注意をしておく必要がございますから,この点については事務当局においてこの方面の実務や法律運用に精通している方の意見を聴取するなどして,遺漏のない検討を進めていきたいと考えます。   半面において,乙案を採用する場合には,これはこれとして本日も御議論いただいたようにあり得る解決であるとともに,規律の表現の上におきましては,本日休憩前に御議論を頂いた土地所有権の放棄に関する議論の中で出ておりましたように,民法に不動産の所有権の放棄についてどのような規律を置くか,あるいは置かないこととするかということについて,本日結論が得られておりませんけれども,その帰すうをにらみながら,当面の補足説明20ページまでのお話においては,不動産の所有権の全部を放棄するということを中心イメージにお話をしていましたけれども,一部を放棄するということについてのルールであるとも言えるこの乙案について,最終的にあちらの方の議論の結論を見定めた上で,法制上の表現としてどのようにする解決が最も適切なものであるかということについて,改めて整理を要すると感じられるところでございます。これは,この観点を踏まえて今後また検討を進めてまいるということにいたします。   特段の御意見がなければ,部会資料36についての審議を了したことにいたしますけれども,よろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   それでは,続きまして,共有物分割の方法を審議事項といたします。   部会資料の37をお取り上げください。部会資料37の1ページに第1として示しているものが唯一この資料で御提示申し上げている内容でございます。   1ページで太字で示している内容のとおりでございますけれども,現行の258条の規律に手直しをするという構想をお示ししております。   ①のところは,現行法の法文とあまり変わりませんけれども,「又は協議をすることができないとき」という従来も解釈上認められてきた内容を明文化しようとしております。   ②は,いわゆる全面的価格賠償又は部分的価格賠償の可能性があり得ることを法文に明示する際の一つのサンプルを御案内しています。   ③は,現行258条の法文を手直しする中で,競売分割の順序,位置付けについて,新しい①②の規律を念頭に置きながら整理を試みて,規律表現を提示しているところでございます。   ④は,現在の258条に存在しないものを提示しています。しかし,実務上も従来これに当たることが行われてきているところでございまして,なおかつ共有物分割の訴えが形式的形成訴訟であるということに鑑みますと,原告となる当事者など,当事者に対して細かく予備的請求を添えるというような対応を求めることは適当であるとは考えられませんから,それらのことを考えた上で,④の規律を置き,このような主文における措置を採ることができること,それわ裁判所が採ることができるということを明示しようとするものでございます。   第1でお示ししている事項について,委員・幹事から御随意に御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連のワーキンググループでの議論を御紹介したいと思いますが,今回のこの本文の部分は,法律専門家にとってもやや読みにくいものになっているのではないかという意見が多数出ておりました。いろいろな御配慮があってのことだと推察はいたしますけれども,やはり国民にとって読みやすく分かりやすいものをということから,少し書きぶりを工夫した方がよろしいのではないかという意見が多数です。中間試案のときの案の方が分かりやすいという意見はかなり出ておりました。   本文の②と③及び補足説明の4項に関して申し上げますと,中間試案では現物分割と価格賠償とに検討順序の先後関係はつけないということと,競売分割は補充的な分割方法とするということが書かれていて,今回も趣旨としては同じにされていると思うのですけれども,しかし,本文②だけを読みますと,特別の事情があると認めるときに賠償分割が可能であるというように読めてしまいはしないかというような指摘も上がっておりました。補足説明の4ページに書かれていますように,判例に述べられている一定の事情が必要であることを表すために家事事件手続法や95条を参考にこの文言を使っておられるということですので,この補足説明を読めば分かるわけですけれども,本文だけで分かるだろうかというところが気になっております。   さらに,補足説明の4ページの中ほどに,平成8年最判が判示しているような判断要素を全て明示し,法文化することは困難というふうに記載されているのですけれども,これにつきましては,例えば借地借家法の更新拒絶の正当事由の条文のように,判例によって考慮されてきた要素というのが法文上に書き込まれている例がありますが,4ページの冒頭に挙げられております最判の平成8年の判断要素を条文に記載すると,かなり長くはなろうかと思いますが,こういうことが考慮されるのだということが条文上明示されて,国民にとっては分かりやすいということになりはしないだろうかというような提案も挙がっておりました。   ④と補足説明の5ページ5項以下の説明に関しましては特段の意見はございませんでした。 ○山野目部会長 中村委員から弁護士会の御意見を取りまとめておっしゃっていただきました。御意見を受け止めて今後の審議を進めてまいるということにいたします。   あまり意味のない感想を1点申し上げますけれども,中村委員のおっしゃるとおりで,中間試案の方が読みやすいと感じます。私も感じます。併せて,参考までに御案内申し上げますけれども,いつもそうです。この部会に限らず,中間試案の文章というものは読みやすくて,その後,要綱案に向かっていくにしたがって,よく言えば法制的な洗練を重ねていくことによって,しかし,そのことは裏返して言うと国民の視線からはやや遠くなっていくという,その法文立案上の作業における宿命がございます。   しかし,申し上げていることは,宿命だからいいではないかと居直って申し上げているものではなくて,中村委員が御注意いただいたように,そうはいっても法制的に正確であると同時に,国民から見て理解され,親しまれる法文にしていかなければいけないということは,もとより当然のことでございますから,御注意を承ります。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 お願いしますと言われても本当は困るのは,山野目さんと同じことを言おうと思ったんですね。 ○山野目部会長 恐れ入ります。 ○道垣内委員 中間試案の方が読みやすいという中村さんの御意見に全面的に賛成ですというのが僕の話の中心になります。共有物分割について判例で進展してきたところのものというのは,民法の現在の条文だけ見ますと,現物分割をするのか,それとも競売をして価格で分割するのか,その二者択一のように読めてしまうところ,複数の不動産があるときに共有者に1個ずつ例えば帰属させて,そのでこぼこを金銭で調整しようというふうにしてみたり,あるいは,ある人に完全に帰属させてあとは金銭だけで調整しようとか,場合によっては一部を共有に残そうとか,様々な方法を認めてきたということなのだと思うのですね。  そして,それは,実は遺産分割のときに認められてきたものが,共有物分割の方でも認められてくるという形がとられてきたわけですけれども,以前は,共有物分割ではリジッドな方法しか用い得ないと考えられていたものですから,柔軟な方法が採れる遺産分割手続を利用すべきであり,共有物分割の方に流してはいけないといった話が,たとえば,特定の財産についての相続持分の第三者に対する譲渡などの場合について学説上説かれたりした時期というのもあるわけです。それが,だんだんと柔軟になってきて,共有物分割であっても柔軟にできるからいいじゃないということになったわけです。   ただ,遺産分割については,そもそものところで民法906条に,いろいろな事情を考慮してできますよという実体法の規定があって,その後にそれを受ける手続的な規定があるという形になっているんですね。それに対して,通常共有に関しましては,906条のような規定がないということになりますと,この分割の手続みたいなことが書いてある条文の中に,いろいろな事情が考慮できるというのをきちんと書き込んで,分かるような形にしなければいけない。ここに,遺産分割の場合の条文の作り方との違いというのが出てくるのではないかという気がいたします。   さて,そうなったときに,いろいろな事情があるだろう,特別な事情というのは全部書き込むのは難しいだろうというのはいろいろ分かるんですけれども,2,3ですね,つまり現物分割とか競売とか,価格弁償による調整とか,そういうものを組み合わせることができるんだよというルールがどこかに明文で欲しいんですね。本日配られている案だけ見ますと,それこそ特別な事情があるという,非常に特別なときに,金銭の支払いだけでやるんですみたいに読めてしまう条文になっているわけでして,そうではなくて,一部は現物で分割するのだけれども価格賠償などを使って調整する。そういうのがきちんと出るようにする必要があるんだろうと思います。   中間試案の方が分かりやすいというのは,中間試案のときには裁判所は次に掲げる方法により共有物の分割を命ずることができると書いてあって,現物分割と価格賠償と競売による換価というのが三つ書いてあって,組み合わせていいというふうにはクリアに書いていなかったように思いますけれども,それでも三つあるんだよということが明示され,その組み合わせがありうるというのが,比較的読みやすい形になっていた。   今回,何か読みにくくて,三つの選択,特別な事情があるときだけ特別な方法が選択できるというだけであるかのような感じで,長い判例法理の共有物分割についての進展というものを生かし切れていないような気が,申し訳ないながらするわけでありまして,中村さんとかがおっしゃったことと基本的には同じだろうと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員から,中村委員からお出しいただいた意見を更に深く掘り下げる観点の整理の御提示を頂きました。ありがとうございます。   引き続き委員・幹事の御意見を承ります。   松尾幹事お願いします。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   私も今問題になっております部会資料37の第1の②の特別の事情ということについては,現物分割も賠償分割も特に順位はないということであれば,ここは特別の事情があれば認めるというよりは,「相当と認めるときは」という表現ぶりもあると思います。   ただ,実際問題としてこの賠償分割がうまく機能するためには共有者間の公平を害しないという制度的な保障があるということが大前提になるように思います。   そのときに一番問題になるのは,賠償分割するときに,共有物を取得する共有者から持分権を譲渡する共有者に対して,きちんとお金が払われるということをどうやって保障するかという点です。その点に関して,第1の④で,共有物分割を命ずる場合に,当事者に対して金銭の支払い,登記義務の履行等の給付を命ずることができるとあります。これが意味することの確認ですが,賠償分割を認めるときに,例えばABCが土地を共有していて,Aが全部取得することを認めてお金をBCに払うというときに,BCに対しては持分権をAに譲渡して登記をしなさい,AはBCに対してその評価額を払いなさいということを引換給付とすることが,この④を使って可能と理解してよいでしょうか。もしそれができるとすると,賠償分割の使いやすさが出てきて,相当と認めるならばそれを活用していきましょうということもあるのかなと感じた次第です。ちょっと誤解があれば,また正していただきたいと思います。 ○山野目部会長 ④の規律は,現行の家事事件手続法の下においてほぼ同じ文言があるものをここにも規律として明示して表現しようとしているものでありますから,家事事件手続法の運用がどうなっているかというようなことを参考として見ておく必要もあります。   事務当局において,そうした点を見据えながら何か御紹介いただける情報があったらお教えください。 ○大谷幹事 ②では,債務を負担させるという形で,部分的価格賠償の場合,全面的価格賠償の場合,両方があり得るということで書いておりますが,それは債務を負担させるということにとどまっており,それに更に④の方で債務名義とすることができるということで,これに基づいて強制執行が可能になるということを表現しているつもりでございます。   引換給付に関しましては,裁判所が相当であると認めた場合には引換給付を命ずるということもあるのではないかなと思っております。 ○山野目部会長 引換給付の判決は書くことができるという趣旨の御案内を致しました。   松尾幹事,お続けください。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   引換給付を命じることは賠償分割を使う上では,共有者間の公平を担保するという意味で重要な機能ではないかと思います。   特に賠償分割を認めるということは,この後出てくる代金分割との関係では,実質的に共有者に優先取得権を認めることになりますので,そういう制度を使いやすくするということについては,私は理由があるのではないかなと思います。   今の点を確認していただいて,実務上も運用できるのであれば,非常によいのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○潮見委員 すみません。1点だけ意見を申し上げます。   というか,これ第1の②のところの下線を引いた部分なのですが,この表現です。家事事件手続法の規定の文言表現を参考にしてこのような形にしたのだと思いますけれども,先ほど中村委員がおっしゃったこととは違う意味で,中間試案の方では,ここは持分の価格の賠償というところが表現に出ていたんですよね。ところが,今回お示しになられているこの下線部分では,「共有者の一人又は数人に他の共有者に対する金銭債務を負担させる方法による分割を命ずることができる」ということで,持分の価格の賠償なのだということが消えているんです。もちろんこの金銭債務を負担させるというところで,これは持分の価格ということを基準にして考えるのであると理解するのであれば,これはこれで構わないのかもしれませんけれども,突然と読めば,では金銭債務を負担させるときに,いろいろなファクターを考慮に入れて裁判所が適切と思われる額というものを,あるいは適切と思われる金額を負担させるということができるんだとも読めないわけではない。むしろ,誤解のないように,持分の価格の賠償ということがはっきりと出るようにした方がいいのではないかという感じがいたしました。   家事事件手続法の場合は,これは遺産の分割審判ですから,なかなか持分価格の賠償というのを文言表現として使うのは難しいというところがあって,この種のルール化がされているんだと思いますが,こちらの方はそのような制約がないものですから,むしろはっきりと書かれた方がいいというのが私の個人的な意見です。 ○山野目部会長 ただいまの点は御意見としておっしゃっていただきましたが,事務当局に趣旨の確認のみはしておいた方が,この後の委員・幹事に御議論をお進めいただくことが容易になると感じますから発言を求めますが,金銭債務を負担させると書いてある個所は,特段の事情がない限り持分の価格を賠償させるという運用を念頭に置いてのことであると理解してよろしいですね。 ○大谷幹事 そのとおりでございます。部分的価格賠償,いわゆる2分の1,2分の1で共有している土地を7対3で現物分割をしたとき,20%分をお金で払うというのを,それは持分の価格を賠償させる方法というふうに呼ぶのかどうかというところも問題があるかなということで,今のような形にはなっております。 ○山野目部会長 こういうところがこの②について読みにくいと言われるゆえんであろうとは感じます。その点でも結構ですし,ほかの点でもよろしいですが,委員・幹事の御意見を引き続き承ります。いかがでしょうか。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   先ほどから先生方がおっしゃっている本文の書きぶりの問題の話に正になってくるかとは思うのですが,やはり私も最初に拝見したときに,①と②がフラットに並んでいるというふうにあまり読めなかったというところがございます。   従前から合理的に,共有者が土地の細分化を防いで全面的価格賠償で整理したいというような場面でも,現行法の条文を前提とすると果たして価格賠償になるのか,もしかしたら現物分割の方に持って行かれてしまうのではないかという不安があって,なかなか制度を使いづらいという声が事業者から出ていた中で,①と②が基本的に並列に位置づけられるということは,非常にいいことだなと思うのですが,今回の部会資料で拝見した本文の書きぶり,特別の事情という表現は少しひっかかります。③と比較すれば,②は①とフラットといえばフラットで,一定の要件を満たせばいずれも選択できるということになっているんだなというのは分かるんですが,やはり法律専門家の先生方ですらなかなか読みづらいというふうにおっしゃるということは,一般の企業実務家にしてみれば,よりそういうところはあるのかなと思いますので,ここは①と②が対等になっているというところがより明確に出るような形でやっていただけるとよいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   私も今回の案は,実は何回も読んでいて分からないのは自分だけなのかなと思ったんですけれども,皆さん分かりにくいというふうにおっしゃいまして,安心しました。   その上で,潮見委員から,中間試案では持分の価格の賠償というのがはっきり出ていたけれども,今回の②ではそれが出ていないのでうんぬんというお話がございました。そのとおりだと思うんですが,もし仮に今後中間試案に近い形で検討していただくことがあるとしたらということなのですが,その検討にならなかったら意味のない発言になるんですけれども,価格賠償という,そこに言う賠償というのが,私は今普通に使われている賠償とやや違う意味になっていると思うのですね。別段不法行為をしたわけでもないし,債務不履行があったわけでもなく,正規の手続に従って取得をした所有権について,ただ保障をしなければいけないというのか,償金を払わなければいけないというのか分かりませんが,賠償では多分,今の普通の使い方でいうとないのではないかと思うのです。もし御検討いただくのであれば,私の勘違いかもしれませんけれども,その点を考慮しながら検討いただければなと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事の御意見の全体を承りました。   私の個人的趣味を申し上げる場所ではありませんが,私は,共有物分割のときに使う賠償という言葉が大嫌いでありまして,本当は用いたくありません,もう実務上定着している言葉であって,これを用いないと言語的な伝達がしにくいものですから,せめてもの抵抗として冒頭に②を御紹介するときにいわゆる全面的価格賠償又は部分的価格賠償を許容しようとする規定であるというふうに御案内して,ささやかな抵抗を致しました。   佐久間幹事からは,更に法文にするときに注意をしなさいというふうな御指摘もいただいたところであります。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   今のところ,②のほかについても御指摘があったところですけれども,一番御議論が多い点は②でありまして,なおかつ②の中を更に小分けしてまいりますと,二つの点が検討しなければならない点として浮かび上がってきております。一つは,特別の事情があると認めるときは,という,この文言を置いていることをめぐって,このままでは座りが悪いということが多くの委員・幹事から共通してお出しいただいているところでありますけれども,しかし,更にどうしていったらよいかということについては,幾つか悩ましい点がございます。松尾幹事からは,この文体の骨格を維持しながら「特別の」という表現がよろしくないから例えば「相当と認めるときは」といったような御提案を頂いています。   確かに,「特別」と書くときには,特別に先立ってその前の方に標準が何であるかが示されて,それに対する特別でありますから,道垣内委員のお言葉で言うと,遺産分割の場合の906条に相当するようなものがあって,それを踏まえた「特別」になりますので,そういうものがないならば,もっと簡素な表現の方向にするという引き方があるという示唆があったところであります。   半面において,中村委員からは,弁護士会の御意見の御紹介という形で「特別の事情があるときは」というところをもう少し言語的表現を更に豊かにする方向を考えるべきであるというお話があり,借地借家法28条の書きぶりのようなものを参考として,考慮要素を列記するアイデアが考えられないかという御提案も弁護士会においてあったというヒントを頂いたところであります。   いずれにしても,現在のこの言葉の置き方が座りがよくないということが委員・幹事から指摘を頂いたところであります。   ②に関してもう1点は,「金銭債務を負担させる」という表現をもって,いわゆるつきの賠償でありますけれども,全面的価格賠償や部分的価格賠償の実務を進めていくことのガイドとして適切かという問題提起もございました。読み方によっては,これは保証金か何かを積ませるみたいな軽い話みたいに読めなくもないような規律表現になっている側面がございますから,ここは何か工夫ができないかというような観点からの御指摘もありました。これらの点についてでもよろしいですし,ほかの点についてでもそうですが,引き続き部会資料37について御意見を承ります。いかがでしょうか。   ただいま差し上げた整理のようなことを踏まえて,事務当局が議事の整理に当たるということで進めてよろしゅうございますか。   それでは,この②のところを中心に,本日は重要な御意見,御指摘を幾つか賜ったところでございますから,これらを踏まえて議事の整理を進めるということにいたします。ありがとうございました。   部会資料37をめぐる審議はここまでとし,休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料38をお取り上げください。「不動産登記法の見直し(2)」を審議事項といたします。   部会資料をお開きいただきますと,第1として「相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」というタイトルの下で,幾つかの問題提起を差し上げています。1として,登記所における他の公的機関からの死亡の情報の入手・活用につきまして,新しい制度の施行後に登記申請をする所有権の登記名義人となる者に対し,検索用情報の提供を必ずしてもらうということを求め,それらを発端として登記所が他の公的機関から死亡の情報を入手する仕組みの整備をする構想などが考えられており,さらに,それを踏まえて登記所が死亡情報を不動産登記に反映させるための仕組みということも構想されているところでございます。   これを踏まえて,それらと関連させながら相続登記の申請の義務付けという,この部会においてずっと御審議を頂いてきた事項について,区切りとなる提案を差し上げています。相続による登記,それから特定財産承継遺言による登記,相続人である受遺者の権利取得の登記について義務付けをするという中間試案で示していた方向での考え方を提示してございます。   あわせて,相続登記の申請義務違反の効果について過料が考えられるという観点から,部会資料を用意しておりますが,この点については適否をめぐって意見があるところでございますから,委員・幹事から御意見をお出しいただきたいと望みます。   さらに,相続登記申請義務の実効性を確保するための方策として,仮称でありますが,相続人申告登記という新しい制度を設けようということも提案しているところでございます。そのほか,若干の事項について考えられる新しい制度や従来の制度の見直しの提案を差し上げております。そこまでの範囲で,その後,相続等に関する登記事項の簡略化のお話もございますけれども,そこまでいかない範囲のところでございますから,お手元の部会資料で申しますと,補足説明も含めますと27ページの相続等による登記手続の簡略化の手前のところまでの範囲でまず御意見を承ることにしたいと考えます。どうぞ委員・幹事から御随意に御意見をお出しくださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 弁護士会の議論状況についての御紹介と,若干質問も入るんですが,させていただきます。   まず第1の1関係ですが,登記所が他の公的機関からの情報連携で死亡情報を入手する仕組みを創設するということ,これについては,中間試案の段階からも日弁連としては方向性としては賛成ということで意見を述べています。ただ今回,中間試案では戸籍副本データシステムか住基ネットかという両立てだったのを,住基ネットの方にかじを切られた提案ですので,この点について補足説明を読んでなるほどなと思ったところはあるんですけれども,法定相続人の方に将来的に情報を連携させていくというのがやはり目的なんだろうと思いますので,副本データシステムだといろいろ負担が大きいとか,得られる情報が限られるというような記載はあって,消去法的に住基ネットだというような説明になっているんですが,住基ネットの方が積極的に優れているんだよというのがちょっとなかなか理解しづらくて,将来的な法定相続人の方に踏み込んでいくには負担は大きいけれども,やはり副本データの方が長い目で見ると優れているのではないのかなという指摘がありまして,その辺りをどのようにお考えなのか,もうちょっと説明を頂けたらと思います。   それから,検索用情報を申出をさせるということについては,特に異論なく賛成の方向ですが,この検索用情報についての定義が,生年月日等と,「等」となっているので,具体的にどういった情報までを想定しているのか,具体的にちょっと明示していただいた方がいいかなと思います。   それから,登記申請の義務付けの点ですが,中間試案の段階でも日弁連としてはこの部分については反対という御意見を申し上げております。抽象的なレベルでの義務,相続が発生した場合は相続人が登記しなければならないものとするという抽象的な規定にとどめて,過料の制裁までいくのは反対だという意見を申し上げていたんですが,現時点でもまだその意見は基本的には維持しております。   ただ,後に相続人申告登記という制度を創設する,これについては賛成で,申告登記がなされれば義務は果たされたという御理解だということですので,であるとすれば,申告登記の限度で過料の制裁付きとして,共同相続の登記,そこがなかなか難しいのかもしれないですけれども,という意見がありまして,相続登記全般については抽象的義務の限度にとどめるべきだけれども,申告登記については過料付きでもいいのではないかという意見はありました。それで,申告登記を創設するということについては賛成です。そこまでですかね。 ○山野目部会長 お尋ねが2点と意見を一つ頂きました。   お尋ねの1点目は,住民基本台帳ネットワークと戸籍副本データ管理システムとの特質の比較検討に関わります。   2番目は,検索用情報が生年月日等になっている,この「等」とは何かということであり,細かく読んでいただいたという感想を抱きつつす,事務当局から案内を差し上げることにいたします。   3点目に御意見としておっしゃっていただいた点は御意見として承りますが,御提示申し上げている案を相続人申告登記をすれば過料の制裁は科せられないことになるということについて,弁護士会の御意見は過料とともに義務付けるのは相続人申告登記までにしてくれというお話であり,やや言いぶりは異なりますけれども,表裏の関係であり,規範内容の論理的内容は同じであろうと感じますけれども,しかし,御意見としておっしゃっていることは受け止めさせていただきます。   事務当局からお願いします。 ○村松幹事 まず第1点目の戸籍との連携の話でございます。   御指摘がありますように,戸籍の方で身分関係の情報は管理していますので,そちらの方から所有者不明土地の解消につながるような情報,元々死亡情報と言っていましたけれども,それに加えて法定相続人の情報が取れるようになれば,それを取得するのは望ましいのではないかという点は正におっしゃるとおりでございまして,そういう状況が出来上がりましたら,そこはもう正にすぐに情報を頂きにいくということを基本的には想定するのだと思っております。   ただ,現時点において,戸籍の方でどういう準備状況かといいますと,なかなか今お話にあったような,ある方の法定相続人をぱっと分かるような状態にするというところまではまだ具体的な計画が立てられておらず,まずはマイナンバー連携を行うという前提で,その範囲内で計画を立てているという状態ですので,現状においては,まずは死亡情報を住基ネットから取得するというところで具体的な制度設計あるいはシステム整備を行っていくというのが穏当なのではないかというところでございます。   ただ,繰り返しですけれども,先々,そういうことが可能になったあかつきには,もちろん私どもとしても情報を取得していくというところになりますし,民事第一課はもちろん民事局内の兄弟の課ですので,そういったところについてこちらの方からまた要望という形になるかもしれませんけれども,話はしなくてはいけないとは思っておりますが,具体的に情報が取得できる体制がどう整えられていくのかという部分で申し上げますと,今言ったような状況ですので,現状では,ここでは固いところの住基ネットからの死亡情報の取得というところでまずは考えてはどうかというところになります。   それから,検索用の情報というところで,「等」という部分ございます。中間試案でも等になっていたかもしれませんけれども,この部分,一応基本4情報と言われるものがあと性別もございますので,性別も場合によっては書いていただくのかという部分がございます。   あと,それから住基ネットをこれで検索するというためだけのものではなく,ちょっとこれは登記側で,せっかく申出していただくので,併せて情報を取得できないかなという話があるのが振り仮名でございます。この部分については,ここでははっきり書いておりませんけれども,後ろの方の所有不動産目録証明制度でも活用できるのではないかと。つまり,名寄せを行うときなどにこういう情報も含めて保持しておいた方が効率的に行うことができるのではないかということがありそうですので,まだはっきり具体的に決めたわけではありませんけれども,そういったものが差し当たりは考えられるのかなというところでございます。   それ以外,今の段階では先ほど申し上げたとおり戸籍との連携は考えられておりませんので,それ以外の情報というのは,差し当たりは考えていないところになります。 ○橋本幹事 すみません,分かりました。   1点意見言い漏らしたのでちょっと追加させていただきます。   相続人申告登記ですけれども,これ,登録免許税は非課税とはできないんでしょうか。非課税とすべきであるという意見がありましたので,御紹介します。 ○山野目部会長 登録免許税の規律の在り方については,根拠法を所管しているのが法務大臣でないこととの関係もあり,当部会に対して審議を求めた総会に対して法務大臣が発出した諮問の事項の外にあるというふうに,厳密に申せばそういうふうな整理になりますけれども,しかしそうであるからといって,私が申し上げたいことは,議論をしないでください,というお願いではありません。相続人申告登記というそれ自体はここで議論すべき事柄でありますけれども,そこでもしその方向でいくとすれば,設けられようとしている制度の機能,立て付けと密接に関わる事項でございますから,ただいま橋本幹事から問題提起を頂いていた観点は,委員・幹事において御議論いただきたいと望みます。   それとともに,今お尋ねの仕方で御発言を頂きましたが,どうなりますかというお尋ねそのものに関しては,この場いささか見渡しても答える人はおりません。今の橋本幹事のお話は,その観点に留意ししてまいりますということを私から御案内するということでお許しを頂くことがかないますでしょうか。   ありがとうございます。引き続き御発言を承ります。いかがでしょうか。   今川委員,お待たせしました。 ○今川委員 司法書士会,今川です。   弁護士会さんの意見と重複する点はあるとは思いますけれども,まず登記所が他の公的機関から死亡情報を入手する仕組みについては,個人情報の取扱いに配慮するということを当然の前提として賛成をしております。   定期的に照会を行うということについて,どれぐらいの頻度かという素朴な疑問があるのと,費用対効果も含めて今後検討課題だろうと認識しています。   連携先システムについては,先ほどの戸籍の情報という意見もありましたけれども,我々としては固定資産税情報との連携も引き続き検討を続けていただきたいという意見です。   それから,検索用情報等の「等」の中ですが,補足説明の4で触れられていますし,今,村松課長からも御説明がありましたが,振り仮名を考えておられるということと,外国人の場合について,登記事項ではなく検索用情報としてローマ字表記の申出も考えていると書いてありますので,是非併せて検討していただけたらと思っております。   連携先システムから取得する情報ですが,高齢者消除はどうなのかと思います。相続開始の原因ではないので,入手情報はなるべく絞り込む方がいいのではないかということで,消極の意見が多かったです。   1の(注1)については賛成を致します。生年月日等の情報の申出を義務としたとしても,さほど過度な負担にはなりませんし,検索の精度を上げるには有益だろうと思います。   それから,この新しい制度の施行時に既に所有権の名義人となっている者については,義務ではなく任意でいいのではないかと思います。ただ,登記名義人へ様々な方法によって周知をするとか,広報については積極的に行う必要があると思います。司法書士会としましては,既に名義人となっている者の申出の場合は,単なる本人確認ではなくて,登記名義人との同一性を確認するために,例えば登記識別情報を提供させる等厳格な本人確認が必要であるという意見を申し上げていたのですが,補足説明を読みますと,元々中間試案においても申出人と登記名義人との同一性を証明する情報の提供を前提としていたとされておりますので,安心しておりますし,今回そのことを明確にする観点から,(注1)の中に自己が当該不動産の名義人であることを証する情報というふうに明確に書いていただいたのは,分かりやすくて有り難いと思っております。   (注2)ですが,表題部所有者についても相続が発生した場合に適切な登記がされるべきなのは,権利登記と変わるところはないので,本制度を導入すべきだと思います。   登記所が死亡情報を入手した場合の不動産登記に反映させる仕組みですけれども,これも個人情報に配慮することは当然として,登記の公示機能を少しでも高めていくという観点から賛成であります。   最後の住所宛ての通知については,今回の提案ではしない方向ということになっております。通知をすることは全く無駄だとは思いませんが,コストを考えると見送るということでよいと思います。   これも,ほかの様々な方法によって相続登記の促進に関する周知を国民にしていくということが必要だろうと思います。   公示の具体的な方法ですけれども,省令等によって定めるということですが,何らかの符号を表示するということで,そういう方向で検討されているのは賛成であります。   それから,補足説明資料13ページの5の所有権の登記名義人が法人である場合と,所有権以外の登記名義人の場合については除外するという提案ですが,その方向で賛成であります。ただ,そこの理由付けのところで,所有権の名義人の場合は,虚無人名義の登記を防止するために住所を証する情報を提供しているというのが一つの切り口というか,メルクマールとして書かれておりますが,それはそれとして,我々とすると以前から意見として申し上げておりますとおり,所有権以外の名義の登記であっても,住所を証する情報を提供すべきであると考えます。このような規律を設けていただきたいと思っております。   なぜなら,所有権以外の名義人について,死亡情報を入手してそれを公示するかどうかという公示のニーズやコストの問題と,所有権以外の名義人についても探索するための確実な手立てを残しておくというのは別問題であると考えておりますので,これについては引き続き検討いただきたいと思っております。   第1の2の「相続登記の申請の義務付け」ですけれども,単に公法上の義務を課すことについては実効性とそれから私的自治の観点から消極ではあるのですが,相続登記の未了が所有者不明の発生の大きな原因の一つであるということと,今回,土地基本法に土地所有者の責務というのが定められており,その趣旨は十分理解をしておりますので,もし何らかの義務付けを課すとするならば,その方向性としては必要かつ最小限度のものとすべきであるという基本的な立場に立った上で,二つのことを前提としてこの登記の申請の義務付けに賛成を致します。  その一つは,(注1)の1段落目に記載のとおり,遺産分割がされる前であっても法定相続分での登記の申請又はこの次の(3)で提案されている相続人申告登記の申出をした場合にも申請義務が履行されたものとするということ。   それからもう一つ,二つ目の前提としては,過料の規定はやはり消極でありまして,これを行わないということを前提として義務付けに賛成をします。   (注1)のただし書ですけれども,相続人申告登記又は法定相続分での登記がされた後,さらに遺産分割協議がされること,遺産分割協議の登記についても義務を課すかという点ですけれども,この二重の義務については消極であります。遺産分割がされた場合は,対抗関係に入ることもありますので,登記申請を期待することもできますので,新たに登記申請義務を課すべきではないと考えております。   それから,第2の②③の場合でも,期間については①と同一にしていいと思っております。同一にしたとしても酷とは言えないだろうということで賛成です。   (注4)の表題部所有者について,同様の規律を設けるべきであると考えております。ただ,相続人申告登記を表題部所有者についても適用していくという場合には,かなり公示方法の技術的な側面について検討しなければならないというのは理解をしております。   この規律の施行時において現に相続が発生している場合はどうするかという問いかけが(注5)ですけれども,所有者不明土地の発生を将来に向けて抑えるということに加えて,現在存在する所有者不明土地問題の解消というものも非常に重要になってきますので,施行時に名義人が既に死亡している不動産についても,この本文の規律に準じた規律を置くべきだろうと思います。ただ,数次相続が発生している場合もありますので,過度な負担とならないように措置を講じるべきだろうと思います。   義務履行の期間,今回1年,3年,5年というふうに提示されましたが,何年がいいかというのはなかなか意見が分かれるところです。相続人申告登記をすることで,申請義務が履行されるということを前提とするならば,その期間は比較的短期でいいだろうと思われます。ただ,あまり短期とすると,相続人申告登記だけ取りあえず急いでやって,それで安心して帰って遺産分割協議が放置されるということにもなりますので,そこは検討していかなければいけないと思います。   過料については,先ほども申し上げましたように,登記官がその主観的要件を含めて認定をするのが困難であると思われるのと,過料に処される可能性があるから登記をするという意識が果たして働くかというその実効性にも疑問がありますので,消極であります。   相続人申告登記(仮称),これについてはもう全面的に賛成であります。今回,補足説明4に出てきましたように,他の最寄りの法務局で管轄外の不動産も含めて申告登記の申出をすることができるという案,是非これは相続人の利便に資するものでありますので,そのようにしていただきたいと思っております。   それから,登記申請義務の履行に利益を付与する方策ですけれども,これは何といっても先ほどもお話が出てきましたけれども,相続人申告登記も含めて非課税とすると,そういうインセンティブを与えていくということは,非常に重要ではないかと思います。   「(4)その他」で,不動産所有者の特定を登記記録に基づいて行うという,このような法制度を置くということについて,提案のとおり,これは個別の規定ごとに検討していくべきだと考えております。 ○山野目部会長 高齢者消除は情報連携の対象から除いた方がよいという意見をおっしゃいましたか。 ○今川委員 はい。 ○山野目部会長 そうですね,分かりました。   御意見いただきましてありがとうございました。   佐久間幹事,お願いいたします。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   私は,相続人申告登記について,創設することそのものについては反対ではありませんけれども,中間試案が作成される前の段階から申し上げていたことですが,これをあまり過大に受け止めることは,不動産登記制度そのものの観点からして適当ではないのではないかと思っております。過大にというのは,どの点に関わるかと申しますと,特に11ページの(注1)の下線が引いてある部分の一つ上のところですが,相続による所有権の移転の登記の申請義務が相続人申告登記がされたことによって履行されたものとするという点に関わります。ここは実は私にはすごく違和感がございまして,過料の制裁についてどうするかということはともかくといたしまして,本来ここで登記の申請の義務付けで求めているのは,権利の登記のはずだと思うのです。   その権利の登記が権利関係について全く公示力のない相続人申告登記がされたことによって,履行されたものとみなすというのは,ちょっと私には理解し難いというふうにしか申しようがありません。過料の制裁を科す点については科さないというのであれば,それはある程度は理解できますけれども,相続人申告登記をしたならば,共同相続登記,遺産分割後の登記等について,もうされたことと同じになるんだというのは,ちょっとおかしいのではないかと思うというのが一つです。   その前提といたしまして,相続人申告登記でいいことにしようということについては,私の見るところでは理由が二つ挙げられているように思いました。一つは,私的自治の原則との関係,もう一つは国民負担の軽減です。国民負担の軽減のところは特に申し上げることはありませんけれども,私的自治との関係については,私は違う理解をしています。確かにこれまで不動産登記については非常に広い場面におきまして私的自治に委ねられてまいりましたけれども,権利の登記に関して申しますと,偉そうに言うまでもないことですけれども,二つの機能がございまして,一つは対抗要件が備わるという面,もう一つは,権利について社会において公示されるという面があります。   対抗要件の側面に関して申しますと,これは正に個人の権利のみに関わる事柄ですので,私的自治に全面的に委ねればよいと思いますけれども,公示の側面は個人の権利がどうのこうのという問題ではなく,社会の利益の問題でございますので,私的自治に委ねるかどうかは,それは一つの判断であろうと思うのです。これまで私的自治に委ねられてまいりましたのは,私の理解では,ということでありますけれども,対抗要件主義を採っているので,その対抗要件主義を介して,個人は自らの利益を守るために社会の利益につながることとなる公示を備えるであろうと考えられてきて,ほぼ全面的に私的自治に委ねられてきたのではないかと思います。   しかるところ,今般問題となっておりますこの相続を契機とする権利の登記の義務付けに関しましては,対抗要件主義を前提として個人の私的自治に委ねればいいではないかという考え方が機能しないではないか,あるいは機能しないおそれがあるのではないかということから,義務付けの話に来ているのであろうと思います。   そこで,これまで私的自治に委ねられてきたのだからという理屈は,必ずしもそれが説得力あるものではないのではないかと思っております。これは単なる理由の問題なのですけれども,そうであるといたしますと,最後に国民負担の軽減のために相続人申告登記でいいことにしようというのであれば,それはもう権利の移転の登記について義務付けしないのと同じではないかと思っているところであります。   これが意見でございまして,あと最後にちょっと伺いたいのですが,相続人申告登記に関しましては,各相続人がすることになるわけですよね。そうだとすると,3人相続人がいて,1人だけ相続人申告登記をしましたというと,その人は義務を履行したことになるけれども,あとの2人は義務は履行していない,そこで,例えばですけれども,申告登記をした人がチクって,こいつ義務を履行していないぞとなると,過料の制裁を仮に科すとすると,過料の制裁がその2人には科されるおそれがあるというふうになるということでよろしいんでしょうか。それとも,1人の人が相続人申告登記をすると,ほかの人は名前が全然出てきていないんだけれども,その人も義務を果たしたことになるか。これはどちらと理解すればよいのかお教えいただきたく存じます。 ○山野目部会長 佐久間幹事から意見とお尋ねを頂きました。前半の方で御意見としておっしゃっていただいた点にいずれも留意しますし,取り分け11ページの(注1)に関連して相続人申告登記の効果が過料を課さないこととするか,それとも義務付けられている相続登記の義務を履行したものと擬制するということに近いものですけれども,要するに擬制するという規律表現をとるかということについては,よくよく注意をしてほしいという御意見はよく理解することができますから,法文の立案に際して御指摘を忘れないようにいたします。   後段でお尋ねという仕方で頂きました事項,例えば戸籍上は一つの戸籍文書を見るとABCが推定相続人であることが分かるという際に,そのうちのAが相続人申告登記の申出をすると,BCとの関係で過料の制裁が発動される可能性は残るか,残らないかといったような問題について,どのような規律運用を考えているかというお尋ねを頂いたところでありまして,これは委員・幹事において御議論を頂きたいとも感じますが,差し当たってこの部会資料が伝えようとした規範内容がどのようなものであると考えられているか,事務当局から何かお考えがあったらお話しください。 ○村松幹事 御質問の点ですけれども,ABCといて,うちAだけが申告登記をしたというケース。その場合はもちろんAだけの名前が登記には載るという前提です。その場合にBとCについては,もちろん義務は履行されていないという状況が生まれているという前提になります。   したがって,主観的要件の具備などありますので,一概に直ちに過料の制裁ということになっていくのかどうかというのは,またそちらの問題がございますけれども,義務違反があるかないかという点に関していいますと,BCについては義務違反の状態が解消されているわけではない。そういう意味では,人単位で義務の履行の有無というのは考えられるというのが基本的な発想になっております。   前半部分についても,私として感じているところを申し上げますと,確かに義務化に関しては賛否両論ございまして,反対の立場からすると,私的自治というものを重く見るという立場があるのはそのとおりですけれども,しかし,それだけではなかなか世の中回っていかないのではないか。現にこういう問題が起きているという御指摘は事務当局としてもそのとおりであろうというところで考えているところでございます。   権利の登記の義務付けをしたという形になりながら,しかし,権利の移転の登記ではない,ある意味報告型であるにもかかわらず,なぜ申告登記で義務が果たされたといえるのかというのは,私どもからすると基本的には登記の公示がしっかり果たされていない,相続の局面でということに関しては,まず第一にはやはり死亡したということが登記面に表われていない,ここが一つ問題なので,それを何とかしたい。またそれから,本当は,パーフェクトに言えばもちろん相続人への権利移転,それ自体をすべからく明瞭に登記に表すことを徹底的に追求するというのもございますけれども,しかし,所有者不明土地問題の解消という観点からいいますと,まずは相続人が分からない,誰に連絡していいのかよく分からない,こういう点が特に大きな問題として指摘されているという点に鑑みて,そうすると,本来的にはこの二つ,死亡しているという事実と相続人の地位にありそうな方というものと,この二つの事実の公示というのが果たされていないというのが,完全にというわけではありませんけれども,特に大きな問題だという認識の下,これを何とかする方策を考えたい。   現存するような権利移転の登記をすれば,それはもちろん満たされているわけですけれども,しかし,そういった方策に加えて,義務を課した趣旨が先ほどのもののようなことであるとすれば,新しい申告登記でも義務が履行されたというふうに見ることができるのではないかという,一応はそういう発想もあるのではないかというところで提案させていただいているというつもりでございます。 ○山野目部会長 前段と後段の両方について,佐久間幹事から引き続きお話を頂きますけれども,その前に,後段で話題になっている相続人申告登記の制度のイメージを少し確かめておきたいと考えます。   事務当局にお尋ねですけれども,一つの戸籍に関する事項の証明書を見ると,そこにABCの3人が推定相続人であることが分かるという内容が記載されていて,それを提供してきたAが相続人申告登記の申出をした,その申出に係る事案を扱う登記官は,それを受けて職権で相続人申告登記をしますけれども,Aのみを相続人であるというふうに記録するものですかね。それとも,その文書を見るとBCも相続人であることが登記官にとって顕著であるときに,BCを書いてあげることはしないという扱いを前提に今の議論がされたように聞こえましたけれども,そのようなイメージで今の制度を考え込んでいこうとしていますか,という確認が1点と,それからもう一つは,仮にAのみを書くという扱いのときに,これから登記官のところに行こうとするAに,BとCが自分たちが忙しいから一緒にそれ申請しておいてくれないか,と求めた場合には,代理権限証明情報さえ出せば,AがA自身及びBの代理人兼Cの代理人としてABCを記録する相続人申告登記の出をすることは可能であるという理解でよいか。まだ制度の具体的な姿を考え込んでいない段階かもしれませんけれども,現段階で何かお感じになっていることがあったらお教えください。 ○村松幹事 現状考えているところでは,いずれも御指摘のとおり,両方ともイエスという答えになると思います。Aだけが申告登記では名前が出る。Aさんからの申出なので,Aだけを出します。また,BCも併せて代理が,業ではないケースにおける代理ですけれども,代理自体はもちろん認めて構わないだろうと思いますので,そういうものは一般論としては想定しているところです。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お話をお続けください。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   2点目については,特に申し上げることはございません。   1点目についてですけれども,村松幹事がおっしゃったことについては,理解はいたします。しかしながら,私はやはり違う考え方を持っておりまして,相続人申告登記というのは確かにお手軽でよろしいと思うのですけれども,それさえしておけばいいんだというイメージが定着いたしますと,更に一層権利の登記がされにくくなるのではないかと思います。   ですから,繰り返しますけれども,過料については相続人申告登記をした方については科さないということはあると思いますけれども,そうであっても,権利の登記はしなければならないんだと,結局その部分は訓示規定にしかならないのかもしれませんけれども,そこは残すべきではないかと私は思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事の御意見の趣旨はよく理解いたしました。御意見を念頭に置いて検討を進めることにいたします。   説明の仕方が苦労を要する部分がございまして,国民に対して過度な負担を強いるものではありませんよ,御安心くださいという観点からアプローチしていきますと,相続人申告登記さえしてくれれば,義務はすっかりきれいに果たされたことになりますという口ぶりになりますし,反面,国民に対して相続による権利変動があったら,きちんと登記をしてくださいという方向で国の制度を運用していきますから御協力くださいということを呼びかけていくという見地からいうと,たやすく義務はすっかり果たしたことになるという説明では誤解を招きます,ということもそうなのでありまして,規律の表現を法制上どのようにするかという点とともに,そこのところについての言葉の選択が国民に対してどのようなメッセージとして伝わっていくかということに留意しなければなりませんから,ただいま佐久間幹事と村松幹事との間で意見交換があって,そこで出された観点がいずれも重要であるというふうに受け止めながら検討を進めてまいるということにいたします。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   企業実務の観点から申し上げますと,これは従前の部会でも申し上げてまいりましたとおり,やはり実際に用地管理,用地取得の実務を担当している立場から見ると,正に今回の御提案の第1の1の(2)で示されている登記所が死亡情報を不動産登記に反映させてくれるという仕組みですね,符号であったとしても,それが分かるというのは,最初の段階で,用地関係業務の初動でどう動くかというところで,非常に有り難いというか,非常に有益な制度なのではないかと思っております。   あともう一つが,正に相続人申告登記でございまして,これも実際に誰が動いているか,実際に相続人の立場にあるということを認識しておられるかということが真っ先に分かるという意味では,その土地に利害関係を持つ立場というか,その土地に対して関心を持っているという者にとっては,非常にそういうのがあると有り難いというところはあるかと思います。これは正に村松幹事が先ほど強調されていた点で,企業の実務にとっても非常に有益な制度になるのかなと思っているところです。一方で,今気になるところがあるとすれば,部会資料18ページのところにございます,施行時に所有権の登記名義人が死亡しておられる場合にどうなるかというところです。これも従前からいろいろ質問等はさせていただいていたところなんですが,やはり今一番実務で問題になっているところというのが正にここでございますので,これに関しては過料制裁とかを科すのはさすがに酷であるというのは非常によく理解できるところではあるんですが,一方で,これがそのまま放置されていると,新しい制度を作っても効果が半分になってしまうのかなというところはございますので,せめて誰か一人でも相続人が申告するようなインセンティブが出るような形で何かやっていただけるとよいのかなと思うところはございます。また,先ほどからいろいろ御懸念というかご指摘が他の先生方から出ているとおり,相続人申告登記で止まってしまう場合というのも考えられるのかなと思うところで,それがいいというわけではないんですが,現実問題としてそうなったときに,例えば登記所が死亡情報を反映させるという仕組みの中で,相続人申告登記にも符号を付けてやるということは想定されているのかどうかというところは,最後に確認をさせていただければと思っております。   というところで,制度としては非常にすばらしいものができつつあるなと思う一方で,細かいところではまだもう少し詰めていくべきところがあるのではないかというところで意見を申し上げた次第です。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 藤野委員から頂いた御意見は受け止めました。   それから,御疑問として御提示いただいたことですが,お示ししている部会資料では死亡情報を入手したときには所有権の登記名義人の死亡に係るものについて,それと分かる符号を付するということになっておりますけれども,相続人申告登記によって相続人であるという記録がされたものについて,類似の符号処理を考えるのかというお尋ねがありました。事務当局からお願いします。 ○村松幹事 申告登記をされた方が亡くなられたという状態になったときに符号を付すという施策を講ずるかどうか,これはまだ実はこちらとしても検討中でございます。ニーズが一定ありそうだなとは感じておりますけれども,他方で,またそれだけ登記所側の負担が増えてまいりますので,そういったところができるかどうか,そこはちょっと検討したいと思っておりますが,ニーズの御指摘は承りました。 ○山野目部会長 藤野委員,よろしいですか。 ○藤野委員 はい。連携可能なのであれば,というか,正式な登記がなされないことを前提にシステムを作られるというのはなかなか大変かなとは思うのですが,ニーズとしてはございますというところは,改めて申し上げます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。   今回のこの不動産登記法の相続の義務,そして登記所における検索用情報を取得するというようなところについては賛成でございます。この事案の発端が,やはり所有者不明土地問題というのが大前提で,簡単に言いますと,登記所のデータだけでは所有者が発見できないというところからスタートしているんだと思います。その所有者を探索するなり特定するための情報を登記所が多く取得するというのが,外国人の問題もありましたけれども,非常に重要だと思っております。   その中で,相続登記の義務化ですけれども,今,相続申告登記等の御議論がありましたけれども,やはりこれ相続登記が大前提なことには変わりがないのだろうと思います。ちょっと情報的に私どもも例えば相続が発生した段階で現時点でどのくらいのパーセントで相続登記がされていないのかという情報は持っておりませんけれども,通常であれば,例えば売買であるとか,それから敷地なりを有効利用しようとすれば,当たり前のように相続登記をするんだろうと思うんですね。それがないという大前提として申告登記をするんだということだと思います。   ですので,そうであるならば,やはり基本は国民の皆さんに発信するのは,相続登記が当たり前ですけれども大前提にあるんだと,その中でどうしてもやむを得ずそれができない場合において初めて申告登記をするということを,大きな声でというか,啓蒙していただきたいと思います。   ですので,この過料については,どうしても義務を課すのであればやはり過料が必要なんだろうと思います。表示に関する登記の義務化の問題でも,それほど我々の表示に関する登記を実務としてやっている者について,過料という問題については特に問題になることはないのかなとは考えております。   あと,表題部所有者については,この後一括していろいろなところで議論をしていただくということで,また継続して是非お願いしたいと思います。 ○山野目部会長 あまり過度に図式化してお話しすると,単純化のし過ぎであるというふうに叱られてしまいますけれども,伺っていて,司法書士会は過料に冷淡で,土地家屋調査士会は過料に慣れているという構図を頭のなかで描きました。ありがとうございました。 ○山本幹事 非常に細かい点を一つだけ御質問したいと思いますが,23ページから24ページにかけてのところに,今話になっている相続人申告登記について,申請の仕組みによらないと書かれています。初めの方に書かれていることは理解いたします。権利の登記のような手続ではなく,もっと簡易な手続によると。それからそこで審査される内容に関しても,客観的な事実に関わる問題であるということです。   ただ,その次のところで,申出という仕組みを設けることとした場合,またと書かれているところですけれども,これは,申出というのは一種の届出であって,届出の後に職権で処分が行われるというイメージかと思ったのですけれども,そうする必要があるのでしょうか。基本的に申請のスキームでその後の通知であるとか不服申立て等の手続を考えてもいいような気がいたします。   例えば納税申告の場合などと違って,単なる義務であるだけではなく,やはり自分の情報を表示してもらうという言わば権利としての面もあるのではないかという気がいたしまして,そうだとすると,基本的な仕組みとしては申請と考えて,ただ簡便な手続にするとか,通常の権利に関する登記とは違う手続にするというやり方もあるかと思ったのですけれども,ここであえて非常にはっきりと特別な手続を考えると,5の直前のところで書かれているのは,やはりこうでないと法制上はまずいということがあるのでしょうか。 ○山野目部会長 どうして申出で職権ですか,というお尋ねに対して,事務当局からお願いします。 ○村松幹事 恐らく山本幹事がおっしゃいましたように,これは広く見れば申請に対する一種の応答の部分があるという整理になってくると思います。ただ,登記官側での主体的な判断事項もあるだろうしというところで,申出というものが一応あり,それをキックオフにして更に登記官側での行動があっての登記に至るのだという,一応その2段階の整理ということにした方が,整理としては整っているのではないかとは考えたところです。   広い意味で申請応答型であるのは恐らく間違いないので,恐らく権利としての側面も,おっしゃるように当然ございますので,その部分について申請型の行政処分としての不服手続というのをある程度想定しながら,登記としての手続も作るということになりますけれども,不動産登記法の中での従前の申請というものとの差異を付けつつ,しかし登記官側の作用というのが普通の不動産登記の申請とは違う部分がやはり残りますので,そこの部分については差をつけて整理をした方が,今後の各所への説明がしやすいのではないかなというところを考慮してございます。   また,ここの辺りは法制的な整理もありますので,もしかするとまたちょっと形を変えてというところはあるかもしれませんが,実質としてはそういうところを考えております。 ○山野目部会長 山本幹事から御懸念というか疑問として御提示いただいたことを,ただいま村松幹事からも御案内申し上げたとおり,引き続き検討してまいります。改めて考えてみますと,申請に対して登記官が却下するか認容して登記を実行するかという手続構造ではなくて,申出を職権発動のきっかけとして構成するという現在お示ししている相続人申告登記のこの法的構成をとったときには,申請とどこが異なるか,あるいはどこが違ってくる可能性があるかという問題について,気付く範囲でも幾つか気になる点はあります。   二つ申し上げますと,一つは不動産登記手続に内在的な問題ですけれども,申請がされてそれを登記官が認容したときには,登記が完了した後で登記完了証を当事者に対して,つまり申請人に対して与えるということが現在の不動産登記に関する法令の規律であります。それを申出にしたときには,現在の不動産登記規則の法文上は,登記完了証を出すということには当然にはなりませんから,もし同じ解決をとるとすれば,不動産登記規則の関連する規定を見直す必要があります。   それからもう一つ,今度は行政手続との関係においては,権利に関する登記であると表示に関する登記であるとを問わず,現在の制度の運用は申請がされたのに対して登記官が拒む,却下処分をするということになりますと,これが行政処分になります。行政不服審査請求の対象になるのみならず,行政事件訴訟法に基づいて抗告訴訟を提起して,取消訴訟や,場合によっては義務付けを請求することが可能であるという理解で運用されておりますが,それが申出をきっかけとして職権でするという構成に変えたというか,そちらを採ることによって,行政救済法の適用との関係で何か違いが生ずるか,あるいは生じないかといったようなことを検討してまいらなければなりません。   反面において,申出をきっかけとして登記官の方でしてあげるという言い方が適切かどうか分かりませんけれども,国民に過度な負担をかけるのではなくて,登記官の方が職権でいわば国の給付,サービスとして,してあげるという構成によった方が,相続登記を励行してくださいというムーブメントの関係からいうと,国民に親しんでもらうものとしてメッセージを伝えることができるという側面があるかもしれません。そのことの延長ですけれども,例えば橋本幹事から問題提起を頂いたように,登録免許税を課するという取扱いを相続人申告登記についてするのは,政策的には問題があるとも感じられますから,登記官が職権で登記をするという整理もあり得ると考えられます。   そういったことを考えると,していることの実質は同じですけれども,届出を契機として相続人を登記簿に記録するということは同じで,考え方の整理はどちらでも中身は同じだからいいではないですかというわけにはいかなくて,細かく考え始めると幾つかの論点がございます。山本幹事から問題提起を頂いたことなどをきっかけとして,制度として整えるまで検討を続けてまいるということにいたします。 ○松尾幹事 この相続人申告登記と権利の登記としての相続登記との関係について,部会資料38の11ページの(注1)で,相続人申告登記の申出をすれば,相続登記等の代わりになるということなんですけれども,両者の関係を考えてみたときに,完全に代替するというよりは,相続登記についてはいろいろ遺産分割も時間がかかるだろうから,それはすぐにはできないという事情もあるかもしれないけれども,とにかく相続が発生したということについては知らせてください,その後できるだけ早く遺産分割をして相続登記をしてくださいというのが制度趣旨なのではないかと思います。そうすると,相続人申告登記さえすれば,完全に相続登記に代替してしまうというのはちょっと本来の制度趣旨ではないのかなと思います。   そうであるとすれば,申告期間について,相続による権利取得の事実について知ったときから1年,3年,5年とありますけれども,これらについても相続人申告登記の方はもうちょっと短くするとか,それと本来の相続等による取得の登記とは必ずしも同じにしなくてもいいのではないかという気もいたします。   相続人申告登記は例えば1年以内とか,あるいは6か月以内とか,早くやってもらって,そうすれば相続登記の方は本来3年が5年になって,それで遺産分割の準備に入ってもらうというような運用はできないものかどうか。期間についてまで全部同じにして,相続人申告登記で代替できますよというと,先ほど佐久間先生からのお話もありましたけれども,何かそれで終わってしまうのではないかという気もして,相続人申告登記と相続登記がつながっているということについて,もう少し制度的にこの両者の関係をうまくつなげられないかという気がいたします。 ○山野目部会長 松尾幹事がおっしゃるのは,飽くまでも一つの例でありますけれども,例えば相続登記の義務付けの本則の期間を5年と定めておいた上で,1年以内であれば相続人申告登記をすることにより過料の制裁は免れることができますというような組合せがあるものではないかというアイデアを提供してくださったというふうに受け止めます。アイデアを頂きました。   その場に立った相続人が,何と言ったらいいでしょう,人間行動分析というのですかね,どういうふうに動いてくれるんだろうかということを幾つかシミュレーションしてみないといけないということが委員・幹事の御発言を幾つか伺っていて感ずるところであります。   今の松尾幹事がおっしゃったことを一つの何か楽しいアイデアであると感じたとともに,そうすると,手っ取り早く,素早く動く人は1年以内に取りあえずもう相続人申告登記をやってしまって,あとは知らないよとなってしまう可能性もあるし,そういう方向を助長するとすると,多分松尾幹事やしばらく前に佐久間幹事がおっしゃったことの本意には反するし,いや,そういうふうに動く人ばかりではないですよというふうな実態予測が得られるならば,御指摘いただいたようなアイデアが一つの有力な案になってまいりましょうし,今の御意見をきっかけに,また様々な想定を考えて,検討していかなければいけないということを感じます。 ○村松幹事 今の点でお話を伺っていて,想定をというところなのですけれども,何となく事務局として松尾幹事のおっしゃった観点で考えていたのは,1年,3年,5年と書いてありますけれども,恐らく我々からすると1年という短い期間で①の部分とかは整理をした上で,ここから先は,今は資料上は両論を掲げていますけれども,(注1)のただしの傍線のところですね,そちらの方でもう一度義務を課すかという点が挙げられていますが,お話を伺っているとこの再度の義務というのが一番近いのかなという気もいたしました。遺産分割が終わったら遺産分割による相続登記を義務としてやっていただきましょうというふうに言うのかどうかというのは,本当に両論,今日も意見がそういう意味では出ているようなところがあるような気がしておりますけれども,これは本当になかなか事務局としても,さあどうしたものかしらというところが非常に難しく,まだ決定的に何かというところがないなと感じておりますので,また引き続きここはよく検討したいと思っています。 ○中田委員 いずれも細かい御質問だけでして,結論に結び付かないことなんですけれども,3点ございます。   一つは,過料ですけれども,これは筆ごとに科されるという理解でよろしいでしょうか。   それから2番目は,過料に処せられた場合にそれに連動するサンクションというものが何か実際上あるんでしょうか。   それから3点目ですが,法定相続分の相続登記を第三者が代位によりしたという場合には,これは相続人は義務を履行していないという状態になると思うんですけれども,そうすると,遺産分割を一定の期間内にしなければいけないということになるのかどうか。以上3点お教えいただければと思います。 ○村松幹事 1点目については,正に運用の問題になってくるかと思いますけれども,概念的には筆ごとという理解になろうかと思いますが,実際過料の制裁をどのような金額で科すということになっていくのかという部分については,必ずしも掛け算というものでもない,そういう運用があるのではないかなと考えておりますが,まだここは議論が必要かなと思います。   それから②について,過料の制裁を受けた上で更に何か過料の制裁を受けたことで追加的な不利益が課されるかということの御質問だったかと思いますけれども,我々としてはそういったものは特にないのではないかと思って立案はしております。もしかしたらちょっと見落としが何かあるのかも分かりませんが,特段そういうものはないのかなと思っております。   それから,代位の形で法定相続分での相続登記がされるケース,確かにございます。そのケースについては,自分でしたものではありませんけれども,本人がしたものと同じように扱うということで義務は果たされていると見るのかなと,むしろそちらの方で考えておりました。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 ありがとうございます。   第3点について,書き方だけの問題だと思うんですけれども,11ページの(注1)のところでは何か自分でしたというように読めたものですから,もしそういう御趣旨であれば,それを明らかにしていただければと思います。   それから,第2点については,これは全く私,知識がないのでお聞きしているだけなんですけれども,何か過料に伴う社会的なといいますか,あるいはほかの制度との関係で不利益があるのかないのかということが,実はこの後の問題でも出てまいりますので,お教えいただければと思った次第です。しかし,今のところは,追加的な不利益がないだろうということでしたので,それを前提に考えてみたいと思います。   ありがとうございました。 ○山野目部会長 中田委員からお尋ねがあったうちの1点目は,あまり考えられていなかったことであるとは感じますし,現実に部会資料でも過料通知を現実にするのは慎重な運用を想定しているということで,そこで何と申しますか思考停止になっていたものであろうと考えますけれども,現在の規律表現で法文が書かれた場合の形式論理を言えば,筆ごと,筆ごとというか,厳密に言うとこれは建物も入りますから,1個ごと又は1筆ごとについて,過料は刑法上の犯罪ではありませんけれども,犯罪構成要件の考え方になぞらえて言えば一罪が成立するという理解になるものでありましょう。ただし,これは元々行政上の秩序罰である過料に関して,刑法総論的な思考を緻密に当てはめていろいろな議論がされるということの蓄積が恐らく今までなかったであろうと思うのですね。   例えば,刑法でいえば併合罪の関係になるような場面について何か特別の操作をするかとかいったような議論がないまま今日に至っていて,100筆の土地を持っている人が不動産の相続人の登記を怠ったら,例えば5万円掛ける100の過料を科せられることになるか,そうではない何らかの調整はあるかといったようなことは,一つの理論上の宿題であるかもしれません。いずれにしても,非常に謙抑的に発動していきますという部会資料の御案内と併せて,また中田委員においても御検討いただければとお願いします。   2点目で御指摘いただいた事項は,村松幹事から御案内したとおり,私も今思い起こしておりますが,懲役刑などに処せられたときに何々の資格を奪われるとかという場面は,中田委員も御存じでいらっしゃるように幾つかの場面でありますが,過料に処せられると何とかという場面は,あまり記憶の範囲ではありませんね。しかし事務当局においてなおきちんと調べておくということはもちろんでございます。   代位に関しては,考えられている解決は,村松幹事の方から現段階の事務当局の考えを御案内しましたから,中田委員から御注意いただいたように,それを規律として表現していく際に注意をすることにいたします。 ○佐久間幹事 すみません,もう一度申し上げるまでもないのかもしれません,もう終わりかけたのに申し訳ありませんが,先ほど村松幹事がおっしゃった事務局としては,何でしたっけ,相続人申告登記がまず例えば1年以内にされて,その後,例えば更になのか,相続開始時からなのかちょっと分かりませんが,5年程度以内に遺産分割の登記がされる,それを義務化するんだということなのかなというふうにおっしゃったように思うんですが,もし私が今申し上げたことが理解として間違いでなければ,私はそれがいいと思っておりまして,そうすることが中田先生が3点目で確か少し言及されたと思うのですが,遺産分割の義務化というんですか,遺産分割の促進にも資するということになると思います。ですので,この11ページの(注1)の下線部のただしのところの検討を是非進めていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 承りました。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,相続登記の義務付けまでのところの審議は,今日頂いたところを踏まえて議事の整理を続けることにいたします。   本日お届けしている部会資料の38は,御審議を頂きました部分に続けて,相続に関する登記手続の簡略化という問題提起を差し上げています。これについては,(1)といたしまして,遺贈による所有権の移転の登記の登記手続の簡略化として,相続人を受遺者とする遺贈に関して,不動産登記法60条の規定とは異なり単独申請を許容するという方向での方針を打ち出しているところでございます。   それから,(2)として法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化というお話でありまして,先ほど佐久間幹事にも話題にしていただいた局面でありますけれども,一旦法定相続分による登記がされた後で遺産分割などによる権利変動があった際の登記を更正の登記によっていたさせるということはどうかという提案を差し上げておりまして,より詳しく申し上げれば,部会資料の30ページでございますが,30ページの上の方に太文字で①から④と示しているこのいずれについても,権利に関する更正の登記で処するという解決を考えたいという方向を示しており,これについてどのように考えるかというお尋ねを差し上げているところでございます。   あわせて,30ページの一番上には不動産登記実務の運用により対応するという前提で,不動産登記に関する法令の,取り分け法律の改正はしないという前提での構想を示しているところでありますけれども,考え方によっては法律改正によって問題を扱うということもあるかもしれません。いずれにしても,委員・幹事におかれては,①から④の全体を見て御意見を仰せいただきたいと望みます。あわせて,①から④のうちの③及び④については,一旦登記名義人となった者に対する通知を登記官からするという一種のサービスを付加して丁寧に進めるということも考えられるところであり,そのようなことまでする必要があるかどうかということの問題提起も添えてございますから,こちらも意見をおっしゃっていただきたいと望みます。   部会資料の32ページにまいりますと,一番下のところでそれとは異なるお話として所有不動産目録証明制度,仮称でございますが,その創設について中間試案で提示していたものと骨格を同じにするものを提示してございます。補足説明も含めますと37ページの第2の手前のところまでになりますけれども,この範囲で委員・幹事の御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。   橋本幹事,お願いします。 ○橋本幹事 ありがとうございます。   まず,3の(1)ですが,これについては弁護士会としては異論ありません。   (2)なんですが,①から④について,更正登記で単独申請という方向性については異論がないんですが,実務の運用で対応するという点については,反対というか,いかがなものかと,なぜそういうふうにするのかという真意をお尋ねしたいんですが,やはり共同申請原則の例外を広く認めるということになりますので,そこは法文で明示すべきではないかという意見が強いものがありました。   それと,この③④についての32ページの4の上に書いてある(注)ですけれども,これはその方向でやっていただきたいと考えています。   4もいいんですよね。所有不動産目録証明制度を創設するということについては,大きな異論はありませんでした。賛成方向なんですが,ちょっともう割り切るという政策判断と理解しますけれども,35ページ,36ページ辺りにこの目録証明書を第三者が取得する可能性について注意が必要だというふうに規律がいろいろ書いてあるんですが,他方において代理人による申請は排除されないという前提で考えられているので,そうすると,債権者が債務者に対して目録証明制度の申請の委任状を事前に取ってしまうというケースが考えられまして,それをやられるともう身も蓋もないというか,もうフリーで行ってしまうので,それはもう仕方がないという割り切りで制度設計をやらざるを得ないだろうなと思います。   更に言えば,我々弁護士は債権者側・債務者側両方の代理をやりますので,債権者側で代理をする場合には債務名義を取っていれば民事執行法の改正で取れるという立て付けですが,その前の段階で債務名義がなくても弁護士法23条の2による弁護士会照会制度によってこの証明書の情報を実質的に入手することができてしまうだろうという点もちょっと問題かなとは思うんですが,それでもこういう制度があった方がメリットは大きいかなと思うので,そういう点に注意しつつ賛成という意見です。 ○今川委員 まず3の遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化ですけれども,現行,特定財産承継遺言は単独申請が認められています。相続人に対する遺贈というのは実質的には特定財産承継遺言と変わるところはないというふうに理解しております。   そして,特定財産承継遺言による登記は,戸籍事項証明書等に加えて遺言書を添付することにより登記の真実性が担保されているという前提です。相続人に対する遺贈の登記も同じように戸籍事項証明書プラス遺言書を添付して行うというものですので,単独申請を認めたとしても真実性の担保が劣るものではないというふうに理解をしております。   次に,一旦法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化ですけれども,本文の提案について賛成です。実務の運用によって対応していくということも含めて賛成であります。ただ,前提としては,運用でこれを認めるというのは,相続法の枠内での限定的な例外的措置なので,不動産登記制度の共同申請主義の原則を変更するものではないので,この取扱いが更に売買や贈与などの登記にまで手続簡略化の名の下で単独申請を許容するということは,あってはならないことだということは大前提であります。   それと,登記の目的を所有権更正とされた上で,所有権更正となると登記原因は錯誤というふうにセットみたいに考えられているのですけれども,今回,錯誤ではなくて①から④の態様に応じて,例えば①であれば遺産分割というふうにして,①から④までの意味が登記原因からも分かるようにしていくということについて賛成であります。   この更正登記についても非課税とすべきだろうと考えております。   ④については,部会資料の一つ前に提案されているように遺贈による所有権の移転登記手続の簡略化が認められるということが前提となります。まずそこで簡略化が認められるとしたら,④について,法定相続分による登記がされた場合であっても,単独申請で認めてよいということであります。   補足説明の(注)ですが,③と④については他の相続人に対する通知をするということですが,司法書士会としては通知をする必要はないのではないかという意見が多いです。補足説明によりますと,前住所通知制度を参考にして他の相続人を保護するという観点からとあります。とすると,そもそも法定相続分による相続登記を経ていないで,遺言によって権利を取得した相続人が直接単独で申請を行う場合についても,他の相続人を保護する必要があるのかどうか,権利を取得しない相続人に対する通知を行うかどうかということを検討すべきということになってしまいますが,今までそのようなことは議論されたことがないし,必要性があるとは思えませんので,この③④の場合のみに通知をするということについては不要であるという意見です。   それから,ちょっと関連ですが,遺産分割協議を経た登記と,それから法定相続分による登記は,どちらも登記原因は「年月日相続」となりますので,非常に細かいお話になりますが,登記記録上からはその権利関係が遺産共有なのか,遺産分割協議を経た後の共有状態であるのかというのが分かりませんので,遺産分割協議前の法定相続分による相続登記なのか,遺産分割協議を経た後の相続登記なのかが分かるような登記原因というものも今後検討はしていただきたいと思います。   4の所有不動産目録証明制度ですけれども,これはもちろん賛成であります。   (注3)について,表題部所有者もやはり対象とすべきだと思います。システム上の難しい問題はあるのかもしれませんが,やはり表題部所有者も対象にした方がいいと思います。   (注2)に関して,今弁護士会さんの意見もありましたけれども,債権者からのプレッシャー等があるのではないかという点なんですが,これは本制度を置くということとはまた別に,検討していただくという補足説明になっていましたけれども,その方向でいいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 弁護士会と司法書士会から御紹介いただいた御議論の範囲で若干の議事の整理を差し上げておきます。   3の(2)の法定相続分で一旦相続登記がされた後の登記手続の簡略化に関して,両会からどちらも部会資料30ページの上の方の①から④の全てについて簡略化する方向に賛成であるという大筋の意見を頂きましたとともに,細部を伺うと,少し検討しなければいけないことがあります。   一つは,①から④の全体について,法制上の措置を講じて簡略化を明らかにするか,運用の見直しで処するのかということについては,異なる感覚の御意見の御披露を頂きました。橋本幹事に引き続き御理解を頂きたいことですけれども,御意見を理解するとともに,法文にちょっとしにくい面があって,つまり,例えば遺産分割でいうと今まで実務は圧倒的に持分の移転の登記でやってきていたところを今回は更正の登記に変えるものですが,変えるといっても従来の持分の移転の登記でやってきた扱いが,そうするのですよというふうに何か法律に書いてあったものではないし,確固とした先例があってそうなっているわけでもなくて,それが実務で普通であるということでしていたところを直そうするものでありますから,少し法文が書きにくうございます。この点は御理解ください。   ただし,①から④は簡略化する,という法文は書けないですけれども,①から④のことをするときには,更正の登記の申請権者はこの人であるというような書き方をする解決は,従来の不動産登記法の法文の書き方として不自然ではありませんから,御指摘,御要望も踏まえて考えてまいるということにいたします。   それから,③④について登記名義人への通知ということをするかどうかについて,弁護士会からお出しいただいた議論と司法書士会からお出しいただいた議論の方向性が,形だけ比べると一致しておりません。これは,引き続きこの通知の要否について,しかしどちらも伺っていると引き続き丁寧に考えてほしいという御趣旨だったというふうに受け止めますから,また事務当局において検討するということにいたします。   また,司法書士会からは,①から④をするときは当然非課税ですよねとおっしゃられましたが,ここ何もしないと1,000円かかると思いますね。1,000円をゼロにするという御意見であるかどうかも,御意見の趣旨を伺っていまいりたいと考えます。   それから,法定相続分で登記をした場合において,登記原因が相続になり,それから遺産分割した場合も直接それをすると相続になるから区別してほしいという実務上の需要のお気持ちは,しばしばその悩みを聞きますし,よく分かります。それをやり始めると,譲渡担保が登記原因だったときに実行された譲渡担保か,そうでないかみたいな区別もしてくれとか,いろいろ現場からはそういう声が上がってきていて,それをこの機会に事務当局において全部精査せよということも大変な話になりかねません。可能な限りで御要望の趣旨を受け止めて,検討を続けてまいるということにいたします。   水津幹事,お願いします。 ○水津幹事 では,相続人に対する遺贈に関する登記手続の簡略化について,29ページの小括の上のところに述べられていることとの関係で,意見を申し上げます。   3(1)の規律の趣旨については,まず,次のような考え方をとることが考えられます。すなわち,特定財産承継遺言は単独申請ですることができるのに対し,相続人に対する遺贈は共同申請でしなければならないとするのは,両者の機能的な類似性を考慮すると,合理的でない。この考え方によるならば,相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記以外についても,その趣旨が当てはまります。そのため,この考え方によるならば,補足説明でも指摘されているように,不動産を目的とする所有権以外の権利の移転の登記についても,相続人に対する遺贈によるものについては,同様の規律を設けるべきであることとなります。そのほか,これと同じことは,船舶や自動車等といった登記・登録を要する動産についても,当てはまります。さらに,相続人に対する遺贈による債権の移転についても,民法899条の2第2項の規定に準ずる規律を新たに設けるべきであることとなりそうです。   これに対し,3(1)の規律の趣旨については,次のような考え方をとることもできます。すなわち,相続人に対する遺贈も,遺贈にほかならない以上,相続の性質を有する特定財産承継遺言とは異なり,原則どおり共同申請によらなければならない。もっとも,補足説明にあるように,不動産を目的とする所有権の移転の登記に限っては,相続登記の申請の義務化と併せて,所有者不明土地問題の解決を図るという観点から,その手続の簡略化を認めるべきである。この考え方によるならば,今回の提案のように,相続人に対する遺贈による所有権の移転の登記に限って,新たな規律を設けるべきであることとなります。   相続人に対する遺贈による権利の移転を公示する手続について,これを一般的に簡略化する規律を設けないとするのであれば,前者の考え方ではなく,後者の考え方を基礎に据えることとなり,その結果,今回の提案が支持されることとなるように思いました。 ○山野目部会長 水津幹事が理論的な観点から注意すべき点を御指摘いただいたことを理解いたしました。御指摘いただいたことは受け止めて,今後の検討の参考にするということにいたします。   水津幹事が直接おっしゃっていることではありませんが,そのことを発端として事務当局に対し念のため理解を確認します。相続人を受遺者とする遺贈を単独申請ですることができるというお話は,それはそれとして理由とか説明については多々御注意があったものの,大筋において委員・幹事から御支持を頂いているところでありますとともに,これはあれでしょうかね,単独申請でできるということであって,仮に共同申請でやってきたときに,何かそれを却下する理由はないような気がいたします。そこは,これは飽くまで理論的な問いであって,めったにそんなことをする必要はないと考えますが,そのことが1点と,それからもう一つ,遺言執行者が申請してくるときは,もちろん従前の実務どおりそれも許されるという理解でよいであろうとも感じます。この2点,いかがでしょうか。 ○村松幹事 御指摘のとおりであると考えておりまして,共同申請でももちろん可能だという従前の枠組みを残した上で,追加的にといいますか,こういう形での単独での申請も認めると,申請の根拠規定を1個付け加えるような,そういう位置付けになろうかと思います。 ○山野目部会長 水津幹事,お続けになることはありますか。 ○水津幹事 とくにございません。 ○山野目部会長 よろしいですか。   引き続き委員・幹事から御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○國吉委員 4の所有不動産目録証明制度なんですけれども,これも賛成でございます。これは,前回のときの議論にもお話をしましたけれども,特に,例えば都市部でもそうですが,いわゆる固定資産税等がかかっていないような,例えば都市部における道路内の敷地民有地などは,御本人も所有しているかどうかというのを知らない場合が多うございます。そうすると,やはり相続のあったときに相続登記漏れという状況が結構散見されます。そういったものを防ぐためにも,やはり個人というか,自己の持っている所有不動産がどれだけあるのかというのを客観的に判断できるというようなこういう制度を作っていただくというのは,所有者不明土地の解決についても非常に有益だと思いますので,よろしくお願いしたいと思います。 ○山野目部会長 道路の端っこに長く細長い筆である土地って,困りますよね。ほったらかしにされることがよくあって。國吉委員が御指摘のとおり,この制度が設けられれば今よりは,劇的にそうなるかどうかは分かりませんけれども,関係者自ら気付いていただける可能性は高まりますね。御指摘ありがとうございます。   垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。   1点確認の質問で,今話題になっておりました4の所有不動産目録証明制度に関する点ですけれども,従前,中間試案の補足説明の段階で,債権者代位の取扱いについて記載がされていたかと思います。そこでは,債権者代位権の客体とはしないものとすべきであるという説明が見られたんですけれども,そうした理解というのは,今日の御提案でも受け継がれているという理解でよろしいのでしょうかということと,併せて中間試案の補足説明で破産管財人等についての言及があったのですけれども,それについては現段階ではどのような整理になっているでしょうかという御質問でございます。よろしくお願いいたします。 ○村松幹事 債権者代位については,中間試案の補足説明どおりで対象にならないという前提で考えてございます。   また,破産管財人等を始めとする者については,引き続きちょっと今検討をしておりますので,また改めてお示ししたいと思います。 ○山野目部会長 垣内幹事,お続けください。 ○垣内幹事 分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   おおむね御意見を伺ったというふうに受け止めてよろしいでしょうか。   それでは,登記手続の簡略化及び所有不動産目録証明書の制度に関しては,本日段階で御意見を承ったという取扱いとし,お出しいただいた御意見を踏まえて引き続き検討をしてまいるということにいたします。   部会資料38は残された部分がございます。第2の部分でございます。部会資料の37ページから後ろになります。   ここで扱われている第2は,「登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」についての御提案であります。   中身が三つに分かれておりまして,1として「氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付け」ということをするかどうかということに関して,ここも1年,3年,5年といったような期間の候補を御提示申し上げ,また過料による制裁を伴わせるかどうかについて御意見を伺うということにしておりますので,ここは是非,委員・幹事から御意見をお寄せいただきたいと望みます。   2として,登記所が他の公的機関から氏名又は名称及び住所の変更情報を入手し,それを踏まえて住所の変更について措置をする可能性のきっかけにするということが考えられてございます。これ,実は本日の部会資料の第1の1(1)で御提案申し上げていることと内容は同じです。最終的に法制上の措置を講ずる際には条文がその二つにまたがることがどうかといったような観点からきちんと整理を致しますけれども,本日はここでの審議のしやすさの観点から,中身は同じことですけれども,第1の方では死亡情報を更新する観点からの住民基本台帳ネットワークとの連携,こちらの第2の方は住所変更情報に関する情報連携を図るための住民基本台帳ネットワークとの連携についてお諮りするものであります。   3といたしまして,「被害者保護のための住所情報の公開の見直し」についてお諮りをしております。生命・身体に危害が及ぶおそれ,それからそれに準ずる心身に有害な影響を及ぼすおそれがあると認められる所有権の登記名義人に関して,登記事項証明書に住所を記載せず,それに代えて法務省令で定める事項を記載するという取扱いを導入するという登記情報の公開に係る部分的な見直しの提案を差し上げているところでございます。   部会資料は,最後に第3としまして相続以外の登記原因による所有権の移転の登記の申請の義務付けについて話題としており,これについては義務付けを定める不動産登記に関する法制上の措置は講じないという方向をお示ししているところであります。   講じなくても登記はどうでもいいということになるものではなくて,講じなければ民事法制上は措置されないことになりますが,土地基本法6条2項が定める登記手続を土地所有者等はきちんとしてくださいという土地政策に関する理念の要請の下には置かれるものでございますから,そのことに留意しながら,こちらでは先ほど申し上げたような提案をしている次第でございます。   この第2の部分及び第3の部分について,委員・幹事からの御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 第2の1の住所・氏名の変更の登記の申請の義務付けですけれども,これについてはこの次の氏名・住所の変更の情報を法務局が入手するためには,その根拠付けとして必要だということが部会資料において記載されていますが,その前提であれば,その限りにおいては認めてよいと思いますが,義務化については基本的には消極です。訓示的な義務付けだけで何とかならないのかというところが我々の意見であります。   というのは,住所移転というのは相続以上に頻繁に起こりますし,住居表示実施といった当事者の意思に基づかない,当事者の行為に基づかない住所変更もありますので,相続登記以上に義務的な拘束になじむものではないと思います。   したがって,②の過料についても消極であります。それよりも,登録免許税の非課税等のインセンティブを設けるべきではないかと思います。   (注2)について,表題部所有者についても同様に扱うべきだということについて賛成です。義務化をすることについて手放しで賛成という意味ではなくて,権利と表題部の所有者欄についても同じような扱いをするということについて賛成です。   それから,登記所が住所・氏名の変更情報を入手するということについては,個人情報に配慮するということを前提として賛成であります。   (1)が登記名義人が自然人である場合ですけれども,これについては個人情報に配慮することを前提として賛成ということです。   (注1)ですけれども,これは死亡情報を入手する仕組みの構築のところで述べたのと同じ意見です。基本は賛成であります。   (2)の法人が登記名義人である場合も,この規律を設けることに賛成であります。ただ,我々の中には,法人であっても変更の登記をするときにはなりすましの防止の観点から確認をすべきでないかという意見はあります。   (注2)ですが,(注2)のうちの新しい制度が施行されたときに既に所有権の登記名義人となっている法人についてですが,法人の場合は義務化をしてもいいのではないかという意見があります。そもそも法人は財産の管理を正確に行うという,そういう主体であるということが前提となっていますので,義務化をしてもいいのではないかという意見が多いです。   それと,法人の場合の会社法人等番号に関する変更の登記の申請は,非課税とすべきと考えます。   (注3)の表題部所有者についても同様の仕組みを設けるべきかどうかについては同様の仕組みを設けるべきであるという意見です。   3の被害者の保護のための住所情報の公開の見直しですけれども,これは賛成であります。   ただ,この申出については,登記官がその申出が正当なものであるかどうかの判断をしなければならないので,補足説明にも書いてありますが,公的な資料又はこれに準ずる資料というのを具体的に規定しておく必要があるのではないかと思います。   第3については,この提案どおり相続以外の原因による所有権の移転の登記について義務付ける規定を設けないということで,その方向に賛成であります。 ○山野目部会長 第3も賛成だというふうに受け止めてよろしいですね。 ○今川委員 第3,はい。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   橋本幹事,お待たせしました。 ○橋本幹事 弁護士会の意見を申し上げます。   第2の1ですが,これについては先ほどの相続登記の義務化と同じように,抽象的義務の限度にとどめるべきであって,過料の制裁を科すということについては反対であります。   2については,連携システムで登記所がこういった情報を入手して反映させる仕組みを作ることについては賛成であります。ただ,ちょっとここよく分からないのが,1との関係なんですが,1の方は義務化をしますと。2では職権で登記をしますと。そうすると,職権で登記される局面と,義務化して過料制裁しますという,何というんですか,どの場合に,職権で登記されても過料の制裁がされるということも想定している制度設計なんでしょうかね。というのがちょっとよく分からなくて,そこの整理をちょっとお願いしたいということです。   それから,3に関しては賛成であります。   それから第3について,これも提案どおり賛成です。 ○山野目部会長 橋本幹事からお尋ねが1点あったところについて,事務当局からお願いします。 ○村松幹事 この点,もしかすると先ほど中田委員から御指摘があった部分と同じかもしれませんけれども,自分でという,自分でやったら義務がなくなるというニュアンスに,全体的に読めるような記載になっておるかもしれませんけれども,結果的にというと語弊があるかもしれませんが,登記上しっかりと住所変更等が表われていれば,それで義務は果たされた,あるいは違法状態といいますか,違法というのはちょっと言葉が強いですけれども,法違反状態は是正されているので,義務違反もないし過料も科されないという想定で資料を作成してございます。   住民基本台帳制度と連携して職権でできるケースについては,基本的にはこちらで賄おうという趣旨になりますけれども,海外に居住されているような方につきましては,一応なかなかそういった手法は現状においてはとりづらいところがあり,そういった部分については直接にこの義務違反だということになっているので,なるべくやっていただきたいということを申し上げる必要があるという認識です。 ○山野目部会長 橋本幹事,よろしいですか。 ○橋本幹事 分かりました。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   今の第2の1と2の関係なんですけれども,橋本幹事がおっしゃったのは,職権で結果が表われたというか,変更がされても過料が科されるのかということだったわけですが,私はちょっと別のことで気になりました。それは,義務化をし,かつ,例えば過料に処するということになった場合に,その期間内に職権で対応してもらったら過料を免れるのに,職権で義務期間内にしてもらえなかったら,場合によると過料を科されるんですよという,これは何かすごく運・不運に左右されることになってしまわないのかなと。そのようなことを考えると,1と2が本当にこれでというか,2があるのに1の義務化というのは成り立つんだろうかということを,少し疑問に思いました。これが1点目です。   2点目は,実はこういうことが考えられているんですよ,ということをある裁判官の方と雑談していたら,その方は,私なんかと違って転勤が多いと。3年から5年に1回転勤がある。転勤があったときに,この義務化そのものは分かるんだけれども,そうでなくてもいろいろなところに手続に行かなければいけないし,内示があってから次,本格的に働き出すまでにほとんど時間がないのに,こんなことをやられたら対応できない,というふうなことをおっしゃって,例えば,市役所に転入届を出したときとかに,そこから申請を出せるようにできないのか,というようなことをおっしゃったんですね。   それは,なるほどそうなのかなと思いまして,窓口を多様化するというんでしょうか,そういうことは可能ではないのでしょうか。これは全然分からないので伺う次第です。 ○山野目部会長 佐久間幹事から,ここまで御発言があったものを踏まえての整理のようなことも併せてしていただきました。第2の1で申請を義務付けていることと2で登記官がアクティブに活動するような仕組みを情報連携を充実させて進めるということとの関係について,理論的にこれらは両立するものであるかというお尋ね,問題提起がありました。   少し前に取り上げた論点ですが,死亡情報を登記官が入手することと登記名義人が死亡したことの符号を登記官が職権でつけることにしますということや,それらをにらみながら相続人申告登記などを義務付けますという話との間には,そのような緊張関係がありません。なぜかというと,あちらは情報連携は死亡したかどうかという生死のことのみであって,誰が相続人であるかということは改めて義務付けをして出してもらわなくてはいけないということであり,その二つは論理的に両立,整合しますけれども,こちらはどちらも住所の変更という同じ事項に関して一方では義務付けて,一方では登記官がアクティブに情報を入手するというふうになっていますから,この二つは論理的に一種の重複が生じて整理が困難ではないかという御指摘があったし,それから実態との関係において,それとは別なことですけれども,住所というものは頻繁に変わることがあります。人間の生死というものが頻繁に変わるということはありませんが,住所は現実に勤労者などの生活実態を考えますと変わることがあり得るものでありまして,それについてどう考えるものでしょうか,果たしてほかの情報と同じように考えることができるかといったような実態に即した心配,それから関連してワンストップサービスのようなことを大胆に導入することができないかという提言もいただいたところであります。   佐久間幹事の御発言は,全体が意見でしたけれども,お尋ねしてみたいとかいうふうにもおっしゃっていましたから,村松幹事から何かあったらおっしゃってください。 ○村松幹事 1点目ですけれども,ちょっとこちらの運用イメージを申し上げますと,住所変更のこの期間,比較的1年,2年,3年ということで長めにとっております。転居届なんかはもっとずっと短い期間ですけれども,長めにとっていますが,これはやはりある程度法務局側で作業を任意のところでするという前提をとっておりますけれども,それが例えば1か月に1回,法務局の方で住所変更をチェックするということまでは恐らく難しいと思っておりますので,ある程度の期間をおかないとなかなか住所変更を法務局側でチェックして,変更があるのではないでしょうか,住所を変えておいていいですねという手続をとれないだろうと思っておりますので,それで1年,2年,3年という形にしています。   逆に言いますと,基本的には,期間内に法務局側の方でアクションをとって,名義人の方に住所を変更しますよということをする前提,行われるだろうという前提での期間ぐらいにしておいた方がよいのではないかというふうには思っております。   なので,基本的には国内で住所変更をしっかりされるということになれば,法務局側がワンストップ的にということになるのかどうかという部分がありますけれども,手続を進めるという形になるのが想定です。外国の方になるとそういったことが難しいというのが先ほど申し上げたところです。   窓口の多様化の部分は,ある意味窓口の多様化に近い状況をこの局面ではもうやるほかないのではないかというのが第2の2のところの判断だと思っておりまして,転居届を出していただければ住民票が変わる。それの情報を定期的に住基ネットの方から法務局が取得し,変わっていますねということを確認させてはいただきますけれども,それで登記を入れておきます,よろしいでしょうかということをこちらの方からやるということなので,ある意味窓口の多様化にもなっているようなところはあるような気がしております。   実際のところ,登記所の事務自体を自治体の方にお願いすることが容易かというと,もちろんとても難しい面が自治体に事務をお願いするということだとありますけれども,その部分を登記所側の方で住基ネットの方から住所が変更しているのだということを察知して職権的に変更につなげていくということなので,窓口は実質的には多様化しているようなイメージで捉えています。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 いえ,よく分かりました。ありがとうございます。そういうシステムができればいいなと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き承ります。   中村委員,お願いします。 ○中村委員 ありがとうございます。   今,佐久間先生がおっしゃった第1点については私も疑問に思っておりましたところでしたので,御説明いただけてよかったです。その前提としまして確認の質問をさせていただきたいのですが,42ページの(1)の②と③に関しまして,このネットワークシステムで定期的な照会を行うなどしてという記載がございますよね。そうしますと,ある一定範囲の物件に関して,例えば年に一度とか数年に一度とかいうタームで一斉に検索をかけて修正をするというようなことを御検討なさっていらっしゃるということですか。 ○村松幹事 そういう想定です。 ○中村委員 そうすると,それが網羅的に全体に行き渡る期間と,それから過料を科す期間というのはリンクするというような形になるのでしょうか。 ○村松幹事 実際上はそういうところも踏まえて義務違反の期間を設定しないとうまく回らないだろうと思っています。 ○中村委員 私がちょっと疑問に思っておりますのは,39ページの中ほどに,またというパラグラフがありまして,「第2の2(1)本文において提案しているように,登記名義人の負担軽減策を併せて講ずることも考えれば」という記載があるんですね。これは第1にも似たような記載があったと思うんですけれども,これは,登記名義人の住所などを実態に合わせて反映させるために検索情報を申し出させるということを義務付けしていくという新たな制度だというふうに理解していたんですけれども,ここで負担軽減策という言葉が出てきたことについて,私,若干の違和感を持っております。これは本当に負担軽減になるのでしょうか。 ○村松幹事 これというのは,法務局の方で住基ネットから情報を入手して,登記名義人の方に問合せをして問題ないということであれば法務局側で職権で入れてしまおうかという,その部分が負担軽減になっているので,義務を課しているからしっかりやってくださいと言いながら大部分は,言い方はあれですけれども,8割方法務局側で頑張りますというのが今回の制度なので,多くのものについてはそれほど大きな負担にはならないのではないかなという,そういうことを,すみません,言ったつもりなんですけれども。 ○中村委員 もし全件について,このシステムに乗って,全てが検索されて,修正がされるということであれば,実際は過料の制裁を受けるようなことがない方向に持って行くことができるかもしれなくて,その場合にはある意味の負担軽減策になる可能性もありますけれども,まだ当面はそれほど全体を網羅的に把握できるようになっていくのかどうかわからないということもあり,この負担軽減という文言を使っていいのかというところをもう一回御検討を頂ければと思いますのが1点です。あともう一つこれに関連しまして確認ですけれども,42ページの(注1)ですが「検索用情報の申出を必ず行うものとする」とあり,第1の方でも同じ(注1)で同じ記載がありますけれども,この必ず申し出るということが義務付けられるとすると,この申出がないと登記申請自体が受け付けられないという理解でよろしいでしょうか。 ○村松幹事 そのように考えておりましたが,直ちに却下事由にするかどうかはちょっと,もしかするとよく検討した方がいいのかもしれませんが,必ずやっていただくということに基本的には尽きておりますが,必要なことだということなので。 ○山野目部会長 理屈上は却下事由ではないでしょうか。ただし,現実にはすぐ出そうとすれば補えることですから,登記官の現実の事務として一刀両断に却下しますということではなくて,いや,これは検索用情報も付けていただかなければいけませんから,お待ちしますという補正を促すという扱いで現場が進んでいくであろうと想像しますけれども,ぎりぎり詰められて必要的添付情報ですかと尋ねられれば,そうだということになりそうですけれども,いかがでしょうか。 ○中村委員 登記申請に必要な事項であって申し出が義務であるということになる場合には,負担軽減策があり国民には大きな負担とはならない見込みというようなことではなくて,所有者不明土地という問題に対応するために,新たに義務を創設してこのようにやっていきましょうという正面からの突破の方が良いのではないかと思います。まだ言葉がまとまっていませんで,こんな言い方で恐縮ですけれども,発言させていただきました。 ○山野目部会長 中村委員のおっしゃることは大変よく理解することができまして,そこに記されている登記名義人の負担軽減策を併せて講ずることも考えればという文言との関係でいいますと,最後の方に話題があった検索用情報を必ず出さなくてはいけないことが過酷ではないかといったような観点は,多分あまり本質的な論点ではなくて,それは前の方の生死確認の方で手掛かりにするためにも検索用情報をやはり出してもらわなくてはいけないものであって,あれが付いていなければ登記官は最終的には却下するし,その前駆段階として補正を促して補ってもらうという扱いでいいと思われます。   そこはそうですけれども,問題は,この住所との関係で検索用情報をうるさく言い,さらには,ひいてこの住所の変更の登記を義務付けるということをどこまで,抽象的な義務を設けることの適否や,加えて過料を設けることの適否ということを,その軽減策と仮に言われているものとの関係で正当化することができるかというお話であろうと感じます。   幾ら過料をめったに科しませんと言っても,法が住所の変更の登記はしなければいけません,一応は過料の制裁の規定が法律にありますということになっていると,佐久間幹事が話題にしていただいた裁判官であるとか検察官であるとか,あるいは弁護士の先生方もそうであるかもしれませんけれども,頻繁に転勤が定期的に予定されているような職業で,かつ遵法精神が旺盛で,しなくてはいけないと思っている方々は,恐らく,いやほったらかしておいてもめったに過料ってないから,まあいいではないか,そのうち法務局が検索用情報でしてくれるからというふうにはなかなか行動パターンとしてはとれないかもしれません。その期間,何か少しほったらかしておいてもいいよねと言っている間にこの検索をかけて登記官の職権でしてくれるのが追い付いてくれるというリズムが,かなりリズミカルにいくものであったらば,ほっといてもいいよということになりますけれども,そうでないなら,やはりこの忙しい中で転勤の前後だけれども行かなくてはいけないねといふうなお話になってしまうかもしれなくて,そこがものすごくリズムにずれが生ずる以上は救済策とは言えないから心配ですということをおっしゃっているところは,現実にその場に自分が置かれたという想定でいろいろ考えると,すごく生活感覚としてよく理解することができるものがあります。仰せはごもっともですから,果たして第1の方で様々な情報を提供させ,またその義務付けも併せて考えたということと,こちらとをほとんどコピー・ペーストするみたいに同じに考えることが素朴にできるかどうかという点は,改めて今日の御議論を見直して考えてみなければいけない事柄であろうと感じます。   何か補足されることがあったらお話しください。 ○中村委員 まとまっていない話で失礼いたしました。ありがとうございます。私も少し考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   これは,まず登記名義人が法人である場合の住所変更について申し上げたいと思いますが,これは前回の部会でも申し上げたとおり,事柄自体は非常にすごく有益なことだなと思っております。ただ,先ほどから議論されている義務化と職権登記の関係で申しますと,正にいわゆる会社の商業登記のシステムとこちらの不動産登記のシステムがリンクして,法人の名称や住所の変更が商業・法人登記のシステムから直ちに反映されるというようなことになってまいりますと,そもそももう,何というか,検索用情報というか,会社法人等番号の届出をするかどうかというところだけが鍵になってきて,法人に関しては住所変更の申請をする義務というのを何か観念すること自体できなくなってくるのではないかなというところは,今回の部会資料を見ながら感じていたところでございまして,もちろん形として義務を残すということであれば,きちんと登記名義人が会社法人等番号を届出さえすれば対応できるので,あまり弊害はないのかもしれませんが,ちょっとそこら辺はもやもやしながら拝見していたところでございますというのが一つです。   あとは質問として2点ほど確認させていただきたいのですが,今の案はシステム間で通知に基づいて職権で変更登記をするという前提になっておりまして,この場合,先ほどから職権の場合は基本的には手数料負担はかからないような前提でということでお話いただいているかと思うんですが,この法人の名称,住所変更の場合に関しても,基本的には同じ考え方でいいのかというところは一つ確認させていただければと思います。   あともう一つ,施行後に所有権移転登記手続をやるものに関しては,会社法人等番号を当然申請情報として出すということになるんですが,恐らくこの(注2)に書いてある,既に所有権の登記名義人となっている法人が会社法人等番号に関する変更の登記の申請をするかどうかというところが,不動産登記に正確な名称や住所を反映するための一つの鍵になってくるのかなというところはございまして,これを実際やるという場合に,どういう形でやることを今想定されているのか。例えば,これ土地を管轄する全ての法務局ごとに自分の会社の法人等番号と対象となる土地の1個1個を特定して出していくということになるのか,あるいはどこかで一括して何らかの手続をとれば,変更の届出をしたことになるのかというところによっても,大分使い勝手が変わってくるのかなというところはございまして,そこは実務側でも関心の強いところでございますので,今のお考えを教えていただければと思っております。 ○山野目部会長 前段で意見としておっしゃっていただいたところは,要するに会社法人等番号を出せばそれで済む話ということになるかもしれませんねというお話はごもっともであるとも感じますから,引き続き検討します。   例外的に会社法人等番号を持っていない法人がありますから,その場合については逆に自然人と区別する扱いは,理由はありませんから,むしろ住所の変更の登記を自然人に義務付けるなら,こちらも義務付けなければいけないということになるかもしれません。   残余の点は,御質問を頂きましたから,事務当局からお話を差し上げます。 ○村松幹事 会社法人等番号がない法人は外国の法人等がありますので,義務は全体にというふうに一応は想定していました。それを切り分けるかどうかという問題が引き続きあるという御指摘いただきましたけれども,そういうことです。   それから,紐付けの申出みたいなものについて,これもいわゆる登記申請とちょっと異なりますので,ある程度管轄に縛られないようにすべきではないかという御指摘を以前から頂いておりまして,一応その方向で検討するということで,検討を進めているというところです。 ○山野目部会長 大規模な企業が合併したりするときの名称と住所の変更の登記を個別にわーっとやらなくてはいけないか,それともどこかでワンストップでするとそれで済むかといったような局面を考えると,藤野委員が御心配のように,それはやり方によっては大変な負担になりますから,そういうことについて,広い意味での国民に含まれる法人事業者に可能な限り負担が無用に重くならないようにする配慮ということの御注意はごもっともであると感じました。ありがとうございます。   引き続き意見を伺います。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   第3の部会資料の最後ですが,相続を原因とする権利変動以外の登記原因の場合の所有権の移転の登記の義務付けはしないという提案を差し上げていて,賛成の意見が聞かれたほか特段の御意見はありませんでしたけれども,ここはよろしいですか。よろしいとなれば,ここはもう次回以降はこれ以上深く突っ込むことはしないという想定で部会資料の作成を続けてまいるということにいたします。   その点も含めて,お諮りした範囲について何か御発言はほかにおありでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,部会資料38に関する本日の御審議はここまでといたします。   本日用意いたしました3点の部会資料に係る審議を了しましたから,次回の会議等につきまして,事務当局から案内があります。 ○大谷幹事 次回の議事日程等について御連絡いたします。   次回の日程は8月25日の火曜日,午後1時から午後6時までということで,今日と同じ時間帯で御予定をお願いいたします。場所はこの場所,法務省大会議室になりまして,テーマとしては,中間試案後の1読目,管理不全土地への対応というものが残っておりますけれども,それを議題としてお出しするのと,そのほかに2巡目,2読目に入ってくる部分もあると思います。また部会資料を事前にお送りをして,御検討を賜れればと思います。 ○山野目部会長 次回第17回会議の開催方,ただいま事務局から案内を差し上げましたけれども,その点も含め,この際,委員・幹事から部会の運営についてお尋ねや御意見がおありでいらっしゃいますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,本日予定した審議を全て済ませたということになります。   これをもちまして,法制審議会民法・不動産登記法部会第16回会議をお開きといたします。本日も誠にありがとうございました。 -了-