法制審議会 民法・不動産登記法部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和2年8月25日(火)自 午後0時59分                     至 午後5時50分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第17回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御出席を頂きましてありがとうございます。   本日の会議の審議のタイムスケジュールにつきましては,前回と同様,午後1時から午後6時までといたします。適宜休憩を挟みながら進行することといたしますから,どうぞよろしくお願い申し上げます。   今回,関係官として初めて御出席されることになった方を御紹介申し上げます。   最高裁判所事務総局における異動に伴い宇田川幹事が退任され,家庭局課長に就任された木村匡彦課長が幹事に就任されたことを御紹介し,その上で,木村幹事においては本日御欠席であるため,家庭局局付の松原経正関係官が出席されていることを御紹介いたします。   松原関係官,自己紹介を一言お願いいたします。 ○松原関係官 最高裁家庭局局付の松原でございます。どうかよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   本日は,ただいま御紹介申し上げた木村幹事のほか,阿部委員,國吉委員,増田委員,衣斐幹事が御欠席であります。   本日の配布資料について,事務当局から確認を差し上げます。 ○小田関係官 部会資料39から42までを事前に送付しております。部会資料39につきましては,昨日,差替え版及び正誤表をメールにて送付させていただきました。本日の議事では,差替え版を前提として御審議を頂きたく存じます。   また,蓑毛幹事より,本日の会議における配布資料を頂戴しており,こちらもまた昨日,メールにて送付させていただいております。こちらにつきましては,遺産の管理と遺産分割に関する見直しについての御審議の際に,蓑毛幹事から適宜御説明がされるものと伺っております。   各部会資料及び蓑毛幹事の御提供資料につきまして,お手元にないようでしたら事務局にお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 差替えや追加を含めて御案内をいたしましたけれども,お手元にそろっておりますでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日の内容の予定された審議に入ります前に,御都合により前回途中退席された平川委員が本日出席しておられて,前回会議で審議をいたしました不動産登記法の見直しに関する検討事項について御意見があるというお話でありますから,まず,その点について平川委員の意見を聴取したいと考えます。   平川委員,お願いいたします。 ○平川委員 ありがとうございます。   前回,会議が重なり途中退席したことをおわび申し上げます。   不動産登記法の見直しの関係で,資料のページ数に沿って意見のみ申し上げます。   7ページに,不動産登記に関する地方自治体の関係業務への協力について記載されています。7ページの下の方ですが,既に自治体の中には協力しているところもありますし,ある意味,この所有者不明土地問題に関して言いますと,この取組はお互いWin-Winの関係になり得ます。是非とも関係省庁と連携を強化した上で,各自治体との協力もしっかりと推進していくべきだと考えているところです。   続きまして,32ページです。   所有不動産目録証明制度の創設についてです。これについては賛成ですが,名寄せに関しては法人にもしっかりと対応していただいた方が,問題の解決がしやすいと考えています。この法人の名寄せについては,よりやりやすい形で対応する必要があるのではないか、自然人と区別して考えていくべきではないかと考えているところです。   それから,41ページ以降です。不動産登記の情報と住民基本台帳ネットワークとの連携についてです。私はずっと検討してはどうかと申し上げてまいりまして,基本的に大きな流れとして賛成です。   ただ問題の一つは,42ページの登記名義人が自然人である場合のうち,所有権の登記名簿人に確認をとるなどした上でという記載についてです。本人確認が大きなポイントですが,難しい問題であります。登記簿の性格と住民票の性格をどう考えるかということですが,この確認をとるというのが一つ重要な課題ではないかと思っています。また,43ページのDV被害者等というところです。DVの直接的な被害者に限らず,住民票のデータを登記簿に反映させることについて様々な課題があります。いろいろな事例が考えられると思いますので,このDV被害者等の「等」については,より幅広い観点から検討していく必要があるのではないかと考えています。   46ページには,人の生命若しくは身体に危害が及ぶおそれがあるということなどについて,法務省令で定めるとなっておりますので,幅広な観点から検討していくべきではないかと考えているところです。   以上,意見として申し上げます。ありがとうございました。 ○山野目部会長 前回,不動産登記制度について審議した折に取り上げられました題材について,平川委員から意見をお出しいただきました。前回,委員,幹事から承った様々な意見と併せ,検討に反映させていくことにいたします。   それでは,本日の審議に進みます。   部会資料39をお取り上げください。部会資料39は全体として管理不全土地への対応ということを扱ってございます。   まず,委員,幹事の皆様に,「第1 管理措置請求制度」についてお諮りをいたします。   部会資料1ページにおいては,第1の1といたしまして,相隣関係の規律として,甲案として,他の土地について,そこに記されているような土砂の崩壊,汚液の漏出,悪臭の発生,工作物・竹木の倒壊などによって自己の土地に損害が及び,又は及ぶおそれがある場合に,その原因除去,予防工事を請求させることができるという案を示すとともに,乙案として,物権的請求権の行使が可能であるかどうかについて,解釈上疑義がある天災事変の場合を特に出して示すという仕方で改めて規律を整理して示しているもの,これが乙案でございますが,それを示し,併せて丙案として,これらの局面において被害を被るおそれのある土地所有者自らが,それらの措置をすることができるという仕方も考えられるのではないかということで,甲案,乙案,丙案の三つをお示ししているところでありますから,これらを見ながら,どういうふうに進むべきかということについて,委員,幹事の御意見を承りたいと考えます。   5ページに行っていただきまして,2として,現に使用されていない土地における特則を設け,ただいま1でお話ししたような権利行使に関して,取り分け甲案又は乙案で進んだ場合には,第1次的には当該他の土地の所有者に対して,それらの措置をさせるものでありますが,それに困難がある場合の土地の所有者の対応についての特例的な規律の提案をお示ししているところであります。   7ページにまいりまして,費用の問題を取り上げ,それぞれにただし書など,要件の細目をお示ししているところでありますが,一言で申し上げれば,甲案は,問題を抱えている他の土地の所有者などが費用を負担すべきであるという考え方を提示しているのに対して,乙案は,等しい割合で,権利行使をする側と,それを求められる側との間で負担を分かち合うべきではないかという考え方を基本とする提案をお示ししているところでございまして,ここも甲案と乙案とを並べてお示ししているところでありますから,どのように進むべきかということについて,やはり委員,幹事の御意見を承りたいと考えます。この範囲で,まず委員,幹事の御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連のワーキンググループでは,様々な意見が出ました。一番広く制度構築を認めるという方向での見解では,甲案プラス丙案といいますか,全ての場合に請求権を認めるとともに,天災その他避けることのできない事変による場合には自ら除去ないし予防工事をすることができるということを明示するのがよいという考え方が一方でございました。   他方で,(注1)には物権的請求権の要件と同程度の所有権侵害が必要であることを前提とするとの記載がありますが,このことを要件として法文に書き込むべきであり,それがない限り,現時点では甲乙丙案ともに反対であるという意見もございました。また,これを法文に書き込むのはなかなか難しいだろうという理解の下,少なくとも,後に一問一答などの公定解釈といいますか,何か示される場面で,このことはきっちり書き込んでほしいという意見もございました。   天災と不可抗力による侵害がある場合に,土地所有者が自ら妨害排除ないし予防工事をすることができるとすることで,迅速に危険を除去できる仕組みを作りたいという点がこの制度の主眼であろうと思うわけですけれども,この思いは共有しているところです。   他方,丙案を採用する場合には,一定の場合に法的手続を経ることなく自力執行ができることを認めることにもなりますので,簡便・迅速に事態に対応できるという利点はある一方で,天災その他避けることのできない事変であれば私権への介入がフリーハンドになるおそれがありはしないかという懸念を覚える実務家も多かったということだと思います。現行法下では,丙案が想定しているような場合は物権的請求権を被保全権利として,恐らく断行の仮処分の決定を得て執行するということになると思われますが,申立人自らに工事をさせてほしいという態様においては,被保全権利と保全の必要性をかなりしっかり疎明しないと決定が出ないわけですので,何かそれにもう少し近づけるような要件設定ができないかというようなことなどを含め,引き続き検討することには賛成です。   第2項の,「現に使用されていない土地における特則」に関してですけれども,先ほどの1項に反対する意見では2項にも反対するということなのですが,甲案に賛成する見解は2項に賛成という意見と,あと①のaの通知に対する異議の対象が,部会資料では工事をすべき旨に対する異議のように読めるのだけれども,現に使用されていないに該当しないという異議もあり得るのではないか,この要件の認定は意外に難しいのではないかという意見も出ておりました。   3項の「費用」については,甲案賛成意見と乙案賛成意見に分かれておりました。乙案につきましては,天災その他の事変による場合であっても,元々の管理が不全であったために,その天災等に耐えられなかった,あるいは管理不全であったために被害が甚大になったというケースもあり得るところですので,このようなただし書を設けるということについても賛成しています。   それから,文言の使い方についてですけれども,第1,1項の冒頭の柱書きのところですが,「管理不全土地の所有者に対する」というふうになっているのですが,今回,管理不全土地に限らない作りになってきているかと思いますので,その辺りの文言の調整を今後お考えいただければいいのではないかという意見も出ていました。   長くなりました,以上です。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見をまとめていただきまして,ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,管理措置請求制度の1番のところ,甲案から丙案までの案について申しますと,ここは,先ほど中村先生もおっしゃっていたような迅速な対応が必要だというところのニーズが事業者にも強く,自ら原因の除去や予防工事ができるということを明記してほしいという意見が強く出ております。したがって,今,出ている甲乙丙の案の中では,やはり丙案ということになってくるということでございまして,今回の提案の中で,例えば隣地が他の土地という表現に変わったとか,そういったところに関しては非常によい方向に,変えていただいているのではないかと思う一方で,やはり,この自分たちでできるというところは,一定の要件を課すにせよ明記していただかないと,なかなか実務上,当事者の話合いに委ねているだけではどうしても解決しないと。それで,結果的に自然災害等が起こって被害がより大きくなるというような事態もございますので,そこはやはりきちんと書き込む形にしていただけないかというところがございます。   また,2の「現に使用されていない土地における特則」に関しても,1で丙案では駄目だという話になった場合には,当然これは入れていただきたいというところでございます。補足説明に書いていただいている,正当防衛とか緊急避難として一定の管理措置が正当化される場合もあるという御指摘につきましては,これで実務を動かすことはできない,正当防衛に当たる可能性があるから大丈夫だと言われても実務は動けないという意見は,事業者の方からかなり強く出ているというところでございまして,正当防衛とか緊急避難というのは,あくまで事後的な救済法理に過ぎないのではないか,というところもございますので,やはりここも自分たちで,本当にいざとなればできるというところは明記していただきたいところでございます。   最後,3の「費用」のところですが,こちらについては,やはり甲案の方がよろしいのではないかと思っております。放置したもの勝ちにならないようにということで,原則,所有者の負担,原因を作っている土地等の所有者の負担ということにしていただいて,その一方で,様々な考慮要素を明記していただくことで,より柔軟な解決を図るという方向性に賛成したいと思っております。   乙案は,比較的基準が明確に見えるのですが,フィフティー・フィフティーで負担するか,あるいは責めに帰すべき事由のある方が負担するかということで,選択肢がまず限られてしまうという問題がございます。また,現実には,これはもう実際に災害等が起こってしまったときの話なんですが,複数の土地に起因して,例えば山から何かが崩れてきて,それが事業者の土地に流れ込んで,さらにその事業者の土地から周辺の田畑に流れ込むとか,そういう複合的な事情で複数の土地が絡むような場合に,このルールで果たして処理できるのか,関係する土地ごとに一個一個請求を立てていけばできるのかもしれませんけれども,それは迂遠な解決策のようにも思えますし、このような複合的な事象が起きたときに,処理が非常に硬直的になってしまうのではないかという懸念もあるところですので,やはり甲案のように比較的フレキシブルに事情に応じて判断ができるというような制度設計がよろしいのではないかというふうに考えておるところでございます。   以上,一通り意見を申し上げました。 ○山野目部会長 各論点について御意見を頂きました。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 補足説明のところに物権的請求権の話だというふうに書いてしまうと,物権的請求権一般のこととの関係がちょっと分かりにくくなるので,相隣関係の問題として書くというふうな説明が,特定の案についてですが,ありまして,私は,相隣関係の問題として書けば,どうして物権的請求権の一般論への跳ね返りというのがないと言えるのかというのが若干疑問だったのです。しかし,現在の民法の相隣関係の規定のところには土地相互の関係として様々なことが規定されておりますので,それの一類型であるということで,より一般的な物権的請求権の問題とは区別して考えられるんだというふうに説明するのは,まあ,あり得るのかなと思うようになりました。したがって,そのような説明はそれでいいのかなと思いました。   2番目なのですが,費用負担の問題なんですね。この管理措置請求制度等々に関しましては,恐らくこれは当該他の土地ですね,自分の土地に一定の影響を及ぼしている他の土地について,そこについて工事をするといったことなどが前提になっているのだろうと思います。それだから,本来的には当該他の土地の所有者にやらせるというのがあって,しかし,不可抗力のときはあまりにかわいそうではないかといって均分にしようとか,そういう話につながってくるのでしょうけれども,例えば私が土地を有しているとして,隣の土砂が崩壊してきたり,汚液が漏出してきたりすると,私は自分の土地にはきちんと土留めというか,留める作業等をすると思うんですね。   つまり,侵害があると自分の土地にも一定の工事をするはずなのです。長々と漏出など続いていては嫌ですから。しかし,それは自分の土地についての工事であり,この管理措置請求の中身ではないから,自分の土地の工事をする人が費用を負担し,そのあげくに,隣の土地の工事について場合によっては折半というのは,僕はバランスがおかしいのではないかという気がいたします。どこかで勘違いがあるのかもしれませんので,2番目についてはお教えいただければと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員から御意見を頂いて,最後に勘違いがあるかもしれないのでお教えを,とおっしゃっていただきましたが,私が伺っている印象では勘違いはないように感じますが,何か大谷幹事の方からございますか。 ○大谷幹事 今,道垣内委員の御指摘のように,自分の土地で防御措置をするということもあり得るのだろう。その場合の費用を,今でもそういうことは多分されていて,相手方に請求するということはされていないのかなという気はいたしますけれども,それが絶対にできないのかというのは,もう少しよく考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員,お続けになることはおありでしょうか。 ○道垣内委員 いえ,請求できると書けというつもりはないのです。私は,どちらかといえば,甲案といいますか,当該他の土地の所有者だろうと思っていて,それでバランスがとれるのだろうと思います。片方の土地の工事代金額だけが折半というのは,何かどうもバランスが崩れているのかなという気がするということでございます。 ○山野目部会長 乙案についての問題点の御指摘はしかと承りました。ありがとうございます。 ○潮見委員 潮見です。   第1の1のところについてのみ,意見を申し上げます。   言いたいことは二つありまして,「権利の内容について」と挙がっていることについてです。既に弁護士会,あるいは藤野委員の御発言にもございましたが,この内容を忍容請求というふうに考えるのか,相手方に対する行為請求というように考えるのかという,これが一つの問題です。それから,もう一つは物権的請求権との関係です。   前者の方ですけれども,藤野委員がおっしゃられたことも分かるのですが,忍容請求権のような考え方を採ったら,弁護士会の意見の一部にもございましたように,他人の所有権,あるいは所有権限に対する介入という度合いがあまりにも強過ぎるという感じがいたします。要するに,物を所有している人が,その所有物に対して持っている権限を,自分が代わって行使していろいろなことをやるということがメインになってくるのが忍容請求権の基本ですから,それはちょっとあまりにも強過ぎるかなと思います。弁護士会の御意見の一部にもございましたように,仮処分という方法もありますし,そのようなことを考えると,丙案というものは厳しいかなという感じがいたします。その意味では,相手方に対する行為請求,除去請求,あるいは予防工事請求という形で,実体法上の請求権というものは立てた方がいいのではないかという意見です。   それからもう一つは,物権的請求権との関係で,甲案を採るか,あるいは乙案,丙案のような考え方を採るかというところです。不可抗力を原因とする管理不全のような場合に,物権的請求権,妨害排除,あるいは妨害予防請求権が使えるかどうか分からないとあります。しかし,土砂崩壊なんていうことがあるときに,それを放っておくことができないから,この管理措置請求のような形で新しい制度を設けて,それに対応するというように,つまり物権的請求権が使えない,あるいは使えるかどうか不安な場合に,こうした請求権を立てるという形で考えていくんだったら乙案とか丙案,まあ,乙案だと思いますけれども,土砂の崩壊とか,土地のその他の理由によって所有権が危険にさらされているという天災地変,不可抗力の場合に限定してよいのか。むしろ,土地の所有権自体が危険にさらされているときに,その除去を求める権利というものを,当該危険にさらされている土地の所有者に認めるべきであるということで考えるのであれば,乙案のような限定というものは要らないのではないかという感じがいたします。後ろの方にある,費用負担面で調整がうまくできるようなルールが作られて,しかも,その妨害状態というものがどんな場合がということに関して,これは甲案も乙案もそうですけれども,ある程度明確な形で列挙ができるのであれば,乙案のような天災地変に限定する必要はない,むしろ危険にさらされている土地所有者の権利保護という観点から,管理不全土地への介入ということを一般的に認めても構わないのではないかという感じがいたします。   ついでに,余計なことですけれども,先ほど弁護士会の方々の御意見の中で,(注1)に書いている所有権侵害が必要であるということを明記するうんぬんという意見があったようですけれども,甲案の書き方,あるいは乙案の書き方でも,物権的請求権において言われている土地所有権に対する妨害排除請求等々が問題になっている場面での所有権侵害というものと同じものであるというのは,直感的な私の印象ですけれども,不法行為を研究している人間からすると,この中に十分に含意されているというふうにも感じるところです。   最後は感想です。 ○山野目部会長 大きく2点にわたる御意見,更に若干の御指摘を頂きありがとうございました。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   今,手を挙げた後に潮見先生がお話をなさって,ほとんど同じだなと思い,手を挙げる必要はなかったかと考えてもいるのですが,少しだけ違うというか,付け加えることもあるかとも思いますので,申し上げさせていただきます。   まず,第1の1について,私は甲案がいいと思っております。物権的請求権との関係で,不可抗力等の場合に物権的請求権には慎重な意見があるというふうに補足説明では書いてあるわけですけれども,物権的請求権の行使自体についてできないという見解は本当にあるのでしょうか。費用負担の面で考慮すべきであるという意見はよく聞くところですけれども,先ほど潮見先生がおっしゃったところだと思うのですが,物権的請求権自体を行使できないというのは余り聞いたことがないように思います。   例えば土地所有者というのは通常の場合,占有者でもあるわけですよね。そうだとすると,占有保持や占有保全の訴えができるわけで,占有保持や占有保全の訴えについては,これは明文があって,基本的に何ら留保はないということになっています。そのことからしても,物権的請求権について明文の規定がないのはもちろんそうですけれども,物権的請求権の場合に,占有者に認められる請求が,所有者等の物権者には認められないという考え方は,恐らくないように思います。結局,繰り返しですけれども,潮見先生がおっしゃったとおりのことではないかと思っています。   費用負担についても,確かに不可抗力の場合には,それで全面的にいいのかということについての疑義はないわけではありませんけれども,折半こそが正しいというふうな積極的な考え方も必ずしも言われていないと思いますので,費用負担もやはり原則としては相手方といいますか,侵害者の方がすべきであろうと。先ほど道垣内先生がおっしゃったことも含めて,そうであろうと思います。   その上で,5ページにございますように,2の甲案を採った場合ですけれども,特則が要らないのかということについて,特則を設けることを比較的積極的に考えた方がいいのではないかということを最後に申し上げたいと思います。  1の場合は管理不全土地一般の問題であるのに対し,2の場合には妨害している方の土地の所有者が,土地の管理に結局関与していないという場合ですので,この場合については,先ほど来出ておりますけれども,慎重な手続を設けた上で,忍容請求が認められてもよいのではないかと。どうしてもそうすべきだとまでは言いませんが,そういうことがあってもいいのではないかと思います。それはどうしてかと申しますと,後で管管理不全土地の管理命令の話が出てまいりまして,そこでの説明で,管理不全土地の管理命令について,管理者が置かれたんだけれども,その管理者の管理を例えば土地所有者が妨害するというときに,実効的な排除の方法が必ずしもないのではないかというふうなことが,確か書かれていたと思うのですね。そういったときに,妨害されている側の土地の所有者の権利として,そのような妨害に対して有効に対処するために,この5ページの2の制度を使うということはあり得ると思います。また,管理されていない土地について,その管理不全状態が継続している場合は管理者を置くということは有効な手段だと思いますけれども,一回的,あるいは比較的短期で措置が終わるという場合についてまで,管理者をどうしても置けというのは過剰かなとも思います。   最後に,細かいことなんですが,もしそのような形で管理者の制度と並べて考えるのだとすると,管理者の方では,前回までは「現に管理されていない」というふうな文言だったのが「現に」というものを取られたところ,この5ページの2のところでは,「現に使用されていない」という前回のままの文言になっております。仮にの話ですけれども,この2の提案がこのまま残っていくとしたならば,この文言でいいのかということを考える必要があるのではないかと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   潮見委員のお話と全く重なっているということではなくて,やはり佐久間幹事からも有益な御意見を頂きました。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   まず,部会資料39の第1の1の甲・乙・丙案ですけれども,やはりオルタナティブというよりは,かなり性質というか,観点の違うものがあるように思います。特に丙案については,現行民法215条の自然流水が低地で閉塞したときに,高地所有者は疎通工事権ができるという規定の要件を少し広げたものとしての位置付けであるというふうにも拝見しました。そうしますと,仮に丙案をとる場合は,215条との関係をどういうふうに理解するか,215条を吸収するような形になるのか,あるいはそれと併存していくということなのかという点は,確認したいと思います。丙案については,潮見委員が御指摘されましたように,やはり他人の土地に立ち入って工事をするという点で,所有権に対する制約が非常に強くなるので,そこはかなり要件を絞っていく必要があると考えられます。その意味でも,215条との関係を意識しつつ検討していく必要があると思います。   それから,費用負担については,行為請求の場合には原則相手方の費用で,忍容請求をして自分がやるときには自分の費用でというのが基本であるというふうに私も思います。しかし,その上で,とりわけ不可抗力による場合で,双方ともに利益を受けるにもかかわらず,相手方だけが負担する,あるいは自分だけが負担するということになると,どうにも不公平というときに,費用の半分ないし一部の分担を求めるという余地はあってもよいと思いました。   その点については,215条は自らの費用でと定めていますので,それについては費用の一部を相手方に求める余地を認める形で調整を図る必要があると思われます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   既に存在している規定である215条との関係についても注意をしながら検討を進めることにいたします。   安高関係官,どうぞ。 ○安髙関係官 ありがとうございます。林野庁でございます。   初めに,この一連の制度の見直しの検討の目的,位置付けについて,改めて確認させていただきたいと思います。   今般の制度見直しの検討というのは二つございまして,所有者不明土地の発生抑制と所有者不明となった土地の適切な管理の確保の二つを目的として検討されており,この管理措置請求制度については,所有者不明などによって管理不全となった土地への対応策として検討されていると理解してございます。その上で,この1ページにございます,1の「権利の内容」について大きく2点,述べさせていただきたいと思います。   まず1点目でございますが,この3案並べられている甲乙丙でございますが,3案いずれも所有者不明などにより管理不全となった土地を対象とした制度ということだと思うのですけれども,一見してそれが判然としない規律になっているということでございます。「損害が及び,又は及ぶおそれがある場合」というのが,相当の所有権侵害が既に発生している場合,あるいは、蓋然性が高い場合であって,このような状態になることをもって管理不全ということであって,それが所有者不明であることが起因しているということなのかもしれませんが,多くの一般市民は,ここに御参集の委員,幹事の皆様のように民法に深い御知見があるわけでございません。なので,今の甲乙丙の3案,いずれも見ただけでは,管理不全であるかということに関係なく,近隣の者が損害のおそれがあるということで,いきなり管理措置を講じるように求めることができる,又は求められてしまう制度になってしまうのではないかと。言い方は悪いんですけれども,ちょっと管理措置請求してみちゃおうかなとか,管理措置請求やったら儲けものみたいな,そんなような形で安直に請求が求められたりしてしまうといったようなことを懸念しているところでございます。このようなことから,中村委員からも御指摘がございましたが,管理不全土地の権利の対象というのが明確に分かるような規律とする必要があるのではないかと考えてございます。   もう一つ,「権利の内容」の2点目でございますが,乙丙の案のように,「天災その他避けることのできない事変」という文言を明記した規律を置くということについては,極めて重大な問題があると林野庁としては考えているところでございます。現行民法の解釈上,疑義のある不可抗力による侵害の場合について,新たに規律を設けるという考え方につきましては,何十年も専門家の皆様方の間で判断が分かれていてグレーになっていたところを,今回,白黒を付けるということで,民法の立てつけとしてはすっきりとするのかもしれませんけれども,不可抗力による侵害の場合こそ,これまでどおりケース・バイ・ケースで判断していく必要があるのではないかと考えているというところでございます。また,そもそもなぜ物権的請求権について規律を明確化していないにも関わらず,今回,不可抗力による侵害の場合についてのみ新たな規律を明文化されるのかということが,国民目線からしますとなかなか理解が及ばないと考えているところでございます。   これから申し上げます話は,特に森林に限った話になりますが,国土の7割を占める森林を所掌している林野庁としての懸念を皆様に共有させていただければと思います。   気候や地形といったような我が国の状況から,昔から台風ですとか豪雨,地震といった災害が多発しておりまして,このような自然環境下におかれましては,木が倒れたりとか土砂が流れ出るというのは不可抗力ということでございます。重力がある限り,上から下に落ちるものでございますので当然と言えば当然なんですが,こうした我が国の状況下では,従来より治山,治水対策といったことで,行政が公的に復旧,予防を行ってまいりました。民民の関係においても,関係者間での解決が図られているという実情がございます。またそのような中で,天災などの不可抗力であっても,一方に責任を問いましょうというような民民関係の法律として,規律として,新たに規定をすることになりますと,森林所有者にとりましては,もはや森林を所有していること自体がリスクということで,所有者不明森林化ですとか,そもそも森林の所有権を放棄しようというふうに,所有権の放棄も助長することになるのではないかということで,国土の7割を占める森林の今後の管理ですとか利用の在り方について,極めて大きな影響が発生することを懸念してございます。   このほかにも,森林において事業者などが道路ですとか送電線といったインフラの整備をされるといった場合についても,森林所有者側としては,この管理措置請求制度を恐れてインフラ整備に非協力的になってしまったりであるとか,また,インフラ整備をするのであれば,その隣接する一定の範囲の森林も買い取って,事業者の方で管理をしてくださいといったことを求めるといったような行動も想定され,これは地域の維持・発展を進めていくという上でも負の影響が発生するのではないかと懸念しているところでございます。なので,「天災その他避けることのできない事変」ということを対象とした規律としますことについては,森林を所有するということへの責務の程度が従来よりも本当に大転換されるようなことだと思っておりまして,実社会,諸政策への影響を考慮すると,なかなかあり得ないと考えてございます。   こういった社会のニーズとして,また課題として,こういった不可抗力の場合に措置を請求できるかということではなくて,所有者不明の土地が存在していることによって,必要な措置を適時に講じることができないところが社会の問題点としてあると考えているというところでございます。   こういったことを踏まえると,今,提示されてございます管理措置請求制度の内容にこだわることなく,所有者が不明な場合に,所有者不明土地によって損害を受ける,所有者不明土地で損害を受ける方が速やかに原因を除去できる規律とするということで,事足りるのではないかと考えてございます。   繰り返しになりますが,圧倒的多数の市民の皆様方は,委員,幹事の皆様のように民法などに深い知見があるわけではございませんので,こんなことを裁判で,そんな無茶なことは言いませんよ,というふうにおっしゃっていただいても,そもそもいつ訴えられるか分からないとか,どこまで管理をしていれば訴えられないのかといったことがなかなか分からない状況でございますので,そういったことが不安であると,恐怖であるということも,是非委員,幹事の皆様方にも御理解を頂きたいというふうに申し上げます。   あと費用の負担,本文7ページからの費用の負担の在り方でございますが,この規律を置くこと自体,混乱,トラブルが起きるのではないかと考えてございます。特に森林の場合は,所有者が森林の管理を適切に行っていたとしても,その隣接地の利用形態が森林から変わってしまうといったことで,管理措置を請求されてしまうというケースもあると考えてございます。例えば,これは前の部会で申し上げたのですが,Aさんが企業に森林を売却しましたと。その企業が森林を開発してしまったといった場合に,そのAさんの隣にいたBさんの森林というのは,今までであればAさんの森林があったので,枝を伸ばさなかったり,倒れるということもなかったのですが,伐り開かれたことで風通しがよくなって,日差しもよくなって枝を伸ばすとか,倒れやすくなるといったことで,企業側の土地に損害を及ぼすということもあろうと思います。こういった場合,原因としては企業側にも一部あると言えます。こういったことから,費用に関する負担の規律を置くべきではないと考えていまして,もし規律を置くのであれば,費用を森林所有者が全額負担するということを基本として,その減免を求めるために,最悪,裁判で争わなければなくなるというような規律を民法上に明文化されるというのは非常に酷であると思っていまして,そういった面からは,乙案をベースにして,等しい割合で負担をしましょうというところから,不可抗力ですとか受益の程度というものを勘案して調整することがいいということで,7ページの注釈の後段3行に記載いただいていますが,そういった規律の考え方が望ましいのではないかと考えてございます。   すみません,以上でございます。 ○山野目部会長 御意見承りました。 ○松尾幹事 すみません,先ほど一つ確認し忘れた点がございます。   甲案,乙案と丙案との関係については,先ほど中村委員からも,甲案と丙案は必ずしも排斥せずに併存可能であるという御意見もあったという御紹介がありました。私も,その可能性は理論的にあると思います。甲案又は乙案と,それからかなり要件を絞った丙案は,必ずしも両立不可能ではないというふうにも思います。   丙案については先ほど意見を述べましたけれども,甲案と乙案の違いについて確認したいと思います。部会資料39の3ページの下から3,4行目あたりにもありますように,乙案の趣旨は,今まで解釈上疑義があった,不可抗力の場合に限ってこういうことができますよということを示しましょうというふうに説明してあって,それは理解できます。   それを前提に1ページの乙案を読みますと,この「天災その他避けることのできない事変による他の土地における土砂の崩壊…その他の事由により,自己の土地に損害が及び,又は及ぶおそれがある場合であっても」という表現なのですが,ちょっと私の国語力の問題かもしれませんが,これは,こういう場合に限って,こういうことができるというふうに読むべきなのか,この「場合であっても」という読み方について,すみません,ちょっとここは私の誤解があるかもしれませんが,確認させていただいた上で,乙案はあくまでも不可抗力の場合に限っての規律だというふうに理解してよいかどうかという点です。   それから,それを前提に,では,甲案とどこが違うかというと,甲案は不可抗力の場合にも,行為請求を認めるというふうに読んでよろしいかどうかと,その点を確認させていただいた上で,甲案プラス要件を絞った丙案はあり得るかと思った次第です。 ○山野目部会長 甲案及び乙案が提示している規範の内容について,今お尋ねがあったことについて,差し当たり部会資料はどのような意味での御案内を差し上げているかを,今,大谷幹事に説明してもらいすけれども,別に松尾幹事が国語力の問題と謙遜しておっしゃったような話ではなくて,現在の法文にも,ほかのところを見ますと,何々の場合であってもという表現とか,それから民法の法文の現代語化の前で言いますと,何々であるといえども,という表現の法文とか,あれらをめぐって多く御指摘の疑義があったことは,松尾先生もよく民法のいろいろな研究で見ておられると思いますけれども,確かにそういう問題点があると感じます。それぞれのところについて,意義を明らかにしていくという作業になるであろうと考えますから,大谷幹事の方でお話があったらお願いいたします。 ○大谷幹事 まず,今の松尾幹事の御指摘ですけれども,乙案の「であっても」という書き方につきましては,これはこういう不可抗力でなければ,当然に物権的請求権は現行法でも行使できるだろうと。それで当然できるんだけれども,こういう不可抗力の場合であっても同じような請求ができるという趣旨で,このような表現をここではとっております。   もう1点,先ほど林野庁の方から,所有者不明土地問題というところから,この管理措置請求制度というものについても考えるべきではないかというような御指摘などを頂きました。資料の作成の意図を申し上げますと,これまでのこの民法・不動産登記法部会における御議論というのは,所有者不明土地のみに限ったものではなくて,ほかの分野でもそうですけれども,所有者不明土地問題を契機として現れてきた問題についての民法における対応ということを検討をしてきた部分がございます。ここの管理措置請求制度につきましても,これは中間試案の際からそうでしたけれども,管理不全土地というか,管理措置請求を受けるような土地が所有者不明土地状態でなくても使えるものとして御提案をし,パブリック・コメントに掛けたというところでございます。   林野庁の御指摘にもありましたように,森林関係者の方々からは多数の懸念の声をパブリック・コメントでも頂きましたけれども,ルールを明確化することによってかえって問題が生ずるのではないかという御指摘,それも考えとしては確かにあると。その一方で,ルールを明確化することによって紛争を予防し,解決するということにもつながると考えられますので,引き続きこの管理措置請求制度についての提案をさせていただいたというところでございます。   天災についての規律を設けるのはいかがなものかというような御指摘もありましたけれども,これも松尾幹事から御指摘がありましたように,現行の民法上も215条という天災に関する規定がある中で,こういう考え方というのもあり得るのではないかということで,今回提案をさせていただいているというところでございます。 ○山野目部会長 大谷幹事の今のお話で,松尾幹事からお出しいただいたお尋ねを受け止めて申しますと,乙案は天災地変の場合も含むし,天災地変でない場合についても働くという説明をおっしゃったと聞きました。甲案の方についても松尾幹事の方からお尋ねがあって,甲案で提示している規律は天災事変,不可抗力の場合にも働くと理解してよいかというお尋ねもあったと理解しますが,そちらもそのように理解してよろしいということですか。 ○大谷幹事 はい。失礼しました,そのとおりでございます。 ○山野目部会長 そうすると,理解の仕方によっては甲案と乙案は論理的には同じ内容の規範を案内しているというように理解される可能性もあるということでしょうか。 ○大谷幹事 そうですね。物権的請求権との関係で,どのように考えるかということでございます。 ○山野目部会長 松尾幹事,お続けになることはありますか。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   そうしますと,もし甲案と乙案の違いを付けるということになると,甲案については,不可抗力の場合はまだ解釈上疑義が残ることを前提にした規律で,場合によっては,費用負担等で特別のことを考えなければいけないという余地を残す点で,何か差別化を図るというような方向でしょうか。すみません,ここも私の理解不足かもしれませんけれども。 ○大谷幹事 現行法上,不可抗力で生じた危険を除去するための工事についての費用をどのように負担させるのかということが問題になる事案もあるようで,下級審の裁判例も幾つかございますけれども,その不可抗力の場面で,乙案のような規律を設けた上で,その費用の負担についてのルールを資料の3のところのような形で発動させることによって,今,解決がなかなか難しいと言われているようなケースについて対応ができるようになるのではないかという提案でございます。 ○山野目部会長 松尾幹事,ひとまずよろしいですか。 ○松尾幹事 はい,分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,この第1の「管理措置請求制度」について,様々な御意見をお出しいただきました。   1ページの権利の内容として,甲案,乙案,丙案として示しているところについて,取り分け乙案を提示申し上げたことについて,委員,幹事の多くから,一言で言うと評判が悪いものですが,様々な御疑問や意見を頂いたところであります。様々といっても,安髙関係官がおっしゃったことと民法の研究者の先生方がおっしゃったこととはやや性格を異にしますけれども,いずれにしても,乙案のこのような規律表現でこのままいくということについて,多くの疑義が出されたということは確かであります。   少し釈明というか,説明をしておきますと,事務当局としては,やはりパブリック・コメントなど各方面から出された様々な意見,反応に対しては,パブリック・コメント後の部会の審議において,それに応接する審議はしておかなければならないものでありまして,真面目に作業をすると,そういうことが必要であるという気持ちがあるものですから,さまざまに寄せられた意見の中で物権的請求権の行使の可否について疑義がある天災地変,不可抗力の場合をどうするかという意見があったことを受け止め,それを一つの背景として注意しながら乙案をお出ししたという経緯があります。   佐久間幹事がおっしゃったように,では,その民法の学説の中に,費用の問題はともかくとして,物権的請求権は不可抗力のときには行使ができないと言っている学説がどこかにありますかと問われれば,もう有力な,あの有名な学説がありますから,それに注意しなければなりませんというようなものは,佐久間幹事がおっしゃっていたようにないものであろうと感じます。私もこれを見て,次から法科大学院で教えるときには,不可抗力のときにはできないということもあり得るよ,というふうに教えないとまずいかもしれないと思い始めたくらいですから,それは佐久間幹事がおっしゃったような御指摘が正鵠を得ていると思われますけれども,種々出された意見について,ここで一応,委員,幹事の方々に論議をお願いしたいという要請があるものですからお出しいたしました。それで,乙案のような規律表現で強いて進むということが必要だとは考えられないというような御意見を今日たくさん頂きましたから,そのような意見分布を踏まえ,この後の審議を進めるということになろうと考えます。   また,甲案又は乙案と丙案とを組み合わせるという仕方もあり得るという御指摘も,複数の委員,幹事から頂いたところであります。見方を変えて言えば,それは例えば甲案を採ったときに,丙案というよりも,2のところでお出ししている現に使用されていない土地の場合の特則との間の役割分担というか,組合せといいますか,比重の置き方について,更に深く考え込んだ上で,次の機会に提案を差し上げていくということになるかもしれません。安髙関係官が大きく意見を二つおっしゃったうちの後半の部分は,甲案なら甲案と,2の提案内容をどういうふうに組み合わせていって,どちらにウエートを置いて,国民一般への説明も含めて提示していくかという仕方でお答えを申し上げていく事項になるかもしれません。1ページについては,そのようなことを考えていく必要があるということが,委員,幹事の御指摘を承って明らかになってきたと感じます。   7ページの費用の甲案と乙案との対比につきましては,それぞれの案を支持するお立場から根拠を示して御意見をおっしゃっていただいたところでありますから,これについても本日の議事を整理して,今後の審議を進めていくことになろうと考えます。   第1のところについて御意見をお出しいただきましたけれども,何か補足で御指摘を頂くことがありますでしょうか。   よろしいですか。   それでは,部会資料11ページから後の「第2 管理不全土地等の管理命令」の方に進むということにいたします。   11ページの第2の1のところで,「管理不全土地の管理命令」という制度を設けてはどうかという提案を差し上げております。アのところは,その制度の骨子でありまして,イは管理人を選任することになりますから,その管理人の権限についての案内を差し上げており,ウのところで管理人の義務についてのお話,エのところで解任及び辞任についての規律の提案,12ページにまいりまして,オのところで,管理人の報酬,それからカのところで手続の終了の事由をどういうふうに仕組むかということについての御案内を差し上げています。   部会資料は,引き続きまして20ページのところに飛びまして,この選任された管理人に,20ページの一番下の(2)のところで,処分行為をする権限を与えるかどうかという論点について,甲乙丙という三つの可能性を御提示申し上げております。甲案は,処分行為については管理人に権限を認めないということでありますし,乙案は,建物の区分所有等に関する法律59条などを参考にして,競売を請求することができる可能性というものを提示しておりますし,丙案は,裁判所の許可を得た上で,いわゆる従来の権限外許可と類似の手続構造で処分をする可能性を開こうとするものでございます。   22ページにまいりますと,(3)として給付を命ずる処分というものをどう考えるかという問題提起をしております。先ほど一つ前の審議事項で佐久間幹事からお話がありましたように,選任された管理人が所有者から協力を得られず,挙げ句は妨害されるような事態に対してどのような応接を考えられるかという,あの課題に関わることでございます。   それから,隣の23ページにまいりまして(4)で,緊急の対応が求められるケースの対応について,お示ししているような規律を設けることについてどう考えるかという問題提起をしております。あるいは,ここに提示しているような規律を設けなくても,物権的請求権を本案とする保全処分を上手に用い,ここで考えられている問題を達成することができるという見方もあるかもしれませんから,お考えをお聞かせいただきたいと考えます。   最後に24ページのところで,管理不全建物の管理命令という制度については,本日は詳しいお尋ねを差し上げる体裁になっておりませんで,これについては,所有者不明建物管理命令の制度や,本日一つ前に御議論を頂いた管理措置請求の制度などの行方がどうなるか,さらには,今お諮りしようとしている管理不全土地の管理命令の制度がどのように育っていくかというようなことを見据えた上で,この管理不全建物の管理命令の制度についても,今後採用するとすれば,制度の細部を明らかにしていくということになろうと考えますから,本日は,少し御提示申し上げている内容が十分ではないかもしれませんけれども,お気づきの点は御指摘を頂きたいと考えます。   部会資料のこの部分について,委員,幹事からの御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございます。   第2につきましては,中間試案のときから日弁連は,この制度を創設する方向自体には賛成させていただいておりまして,前回の部会での御提案で土地の放棄の要件がかなり厳しくなったこととあいまって,放棄したいというほど管理に負担を感じているが,放棄は認められないという物件が今後増えてくる可能性があり,このような管理ができるシステムというのは引き続きしっかり検討していきたいということが前提としてございます。   その上で,ちょっと細かいことを申し上げますと,11ページの第2の1の(1)のア①のところですけれども,まず,現に土地を管理していないということを要件とせず,「現に」を外すことについては賛否両論がありました。適切ではないにしても,現に管理はしているという所有者がいるような場合に,管理者が管理を行うことは事実上,極めて困難であることが予想されるので,この「現に」を外して,実際この制度でうまく管理人が仕事をしていくことは難しいのではないかという視点です。逆に,裁判所にその辺りのこともしっかり判断していただければ,この方向で進めていただいてもいいのではないかという意見もありました。   それから,管理していないという要件についてですけれども,管理していないというのがどういうことなのかということについて,もう少し踏み込んだ方がいいのではないかという意見もございまして,一例として,破産法91条の保全管理人の選任の要件の条文の書きぶりなどを参考に,その所有者の管理が失当であって,他人の権利の確保又は保全のために特に必要があると認められるときなど,もう少し絞り込んではどうだろうかという意見もございました。   それから,ここで言うところの①の「他人の権利又は法律上の利益が侵害され」という要件の「他人の」という部分ですけれども,第1の「管理措置請求制度」における土地の所有者という要件よりも広いように読めるけれども,この適用範囲をもう少し明確にした方がよくはないかという意見もございました。   それから,イ,ウ,エ,オ,カまでの御提案につきましては,おおむね方向性としては賛成意見が多かったと思います。   (2)の処分行為につきましては,甲案賛成意見もありましたが,丙案賛成が比較的多かったです。   21ページの丙案の下のところに(注)というのがありますけれども,(注)に関して,「裁判所は,土地所有者に異議がないときに限り,土地の処分をすることができる」とすることについての検討事項が示されていますけれども,土地所有者が明らかに管理不全状態であって,処分の必要性もあるのに,土地所有者が異議を述べれば全く処分ができないということになるのかと,それだとこの制度はなかなか働かないのではないかという見地から,もう少し要件を工夫した方がいいかもしれないという意見も出ておりました。   それから,(3)の「給付を命ずる処分」についてはおおむね賛成でした。   (4)の「緊急の対応が求められるケースへの対応」についてもおおむね賛成意見でしたが,保存ないし利用・改良行為に必要な範囲であれば賛成という意見がありました。   それから,2項の「管理不全建物の管理命令」については,今回,日弁連ワーキングで余り深い議論をする時間がなかったのですが,方向性としては賛成です。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございます。 ○今川委員 私の方は,第2の1の(1)で1点と,第1の(2)で1点,意見を述べさせていただきます。   中村委員からも御指摘ありましたけれども,試案では,現に土地を管理している者がいる場合は対象外だったところ,今回の提案では,現に土地を管理していても,それが不適切であった場合は対象にするとなっております。本来,土地の管理は所有者が行うものでありまして,本文の提案の制度を利用するに当たっては,第2の1の(1)の(注)の,土地の所有者の陳述を聞くなどの手続保障をしっかりやるということと,適切に管理していないというのはどのような状態なのかという,ある程度の基準みたいなものも示していくべきだという意見です。   それから(2)については,今の(1)で申し上げた意見からして,保存行為と利用・改良行為を超える権限を認めるということは,あまりにも土地所有者に対する権利侵害の幅が大きくなる可能性がありますので反対でして,(2)については甲案に賛成です。ただ,土地上の動産についてだけ丙案を採用するという考え方はあるのではないかという意見が我々の中ではあります。   ほかについては,大体おおむねこの内容で賛成であります。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   弁護士会からお出しいただいたものと,方向や観点が類似,近接しているものも,御意見の中にはあったのではないかと受け止めます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,管理不全土地等の管理命令の制度自体については賛成でございます。権限としても,保存行為,利用・改良を目的とする行為がベースになるという点については全く異存はないのですが,一方で,(2)の処分行為までできるかどうかということに関しては,これをできないということにしてしまったときに,実際,管理している人との関係というか,土地を現に管理しているかどうかによって一律に区別しない,という今回提案されている管理不全土地管理人の選任要件との関係で,ちょっと不都合が起きる可能性はあるのではないかというところがございますので,この処分行為をする権限を与えるかどうかという点に関しては,丙案に賛成させていただきたいと思っております。処分行為が認められる要件は,かなり厳しいものになるかもしれませんが,ただ,全くそういうのがなくて,もう手が出せないという状態は,管理人を置く以上はやはり避けられるべきではないか,というふうに考えておるところです。   同様の理由で,(3)の給付を命ずる処分の規律についても設けた方がいいだろうというところはございますし,あと(4)の緊急の対応を求められるケースに関しては,ここはもう緊急の場合に限りということにはなってくるかと思いますが,手続を省略できるというのも,迅速性を求めるという観点からあった方がいいだろうと。特に先ほどの管理措置請求制度の方で迅速な予防保全ができないということになってまいりますと,正にこちらの対応の方が極めて大きな意味を持ってくるということになりますので,ここはやはり設けていただける方がいいのではないかと思っております。   あと,最後の「管理不全建物の管理命令」ですが,こちらに関しては,所有者不明建物の管理命令の制度のところで申し上げたのと基本的には同じ考え方というか,事業者としても同じ意見が出てきておりまして,裁判所の許可をもって取り壊せるという前提に立つのであれば,例えば中間試案のときの甲案のような形で,建物管理人というのを認めてもいいのではないかと考えております。逆にそれができないということになってくると,なかなか実際,ずっと処分できないまま,取壊しができないままずっと管理しなければいけないというのはちょっと不効率かなと思うところですので,そこは所有者不明建物の議論とパラレルに検討する,という方針に賛成でございます。 ○蓑毛幹事 部会資料20ページから21ページの処分行為をする権限について,仮に丙案が採用されて、管理人は裁判所の許可を得て権限外行為ができるとなった場合,それによって得られた財産はどうなるのでしょうか。   所有者不明土地管理制度のときには,土地の処分によって得た財産についても管理人の管理処分権限が及ぶという規定になっていたと思います。   そこで,管理不全土地の管理命令について,管理人が土地の処分ができるとなった場合に,それにより得た財産についてはどうなるのか,管理人がそれを管理して管理費用に充てることができるのか,それともそれはできず,判明している所有者に直ちに返還しなければならないのか,この点を確認したいと思って質問いたします。 ○大谷幹事 今の点,ここのところのどの案を育てていくべきかというところで,必ずしも現時点でこうだというふうな考えはございませんけれども,所有者不明土地管理人の場合には所有者がおりませんので,売却がされて代金を得た場合には,報酬決定を受けて,残ったものについては供託をするという形になっていく。今度は管理不全土地管理人の場合には,土地の所有者がおりますので,費用は返していかないといけない,お金は返すことになるんだろうというふうには今の時点では思いますけれども,その際に報酬の決定というのはまたされる,管理費用についての決定はされて,管理人の方に,そのお金の中から支払われることになるのかなというふうな気はいたしますけれども,少し所有者不明土地の場合とケースが違いますので,どのように整理するかはもう少し考えたいと思います。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,お続けください。 ○蓑毛幹事 引き続き検討ということで,理解しました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   松尾幹事,お待たせしました。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   この管理不全土地の管理命令の制度をどういうものとして理解するかについては,一方では先ほど出てまいりました管理措置請求について,相手方が応じてくれないので勝訴の確定判決を得て,それを執行していくという場合と管理不全土地管理人による管理との役割分担をどう考えるかということと,他方では,今,蓑毛幹事からも御指摘ありました所有者不明土地管理人との関係をどう考えるかということで,これら2つの観点からこの要件を明確にしていく必要があるかなというふうに感じました。所有者不明土地管理人との違いは明瞭で,管理不全土地管理人の場合には,所有者が誰かが分かっていて,かつ所在も分かっているという場合を前提にするというふうに考えられます。逆にそうなりますと,やはり所在も誰かも分かっている所有者と,この管理人との間には,結構微妙な緊張関係があるというふうに感じまして,場合によっては意見が対立するというような中で,この管理不全土地管理人は行為しなければならないのではないかという場面も想定できるように思うんですね。典型的にどういう場面を想定したらいいかちょっと分からないんですけれども,例えばある土地所有者の持っている土地が管理放置されていて,年々草が伸びて,あるいはごみが投棄されて,これはどうにかならないかということでみんなが迷惑しているにもかかわらず,所有者に言っても全く何もやってくれないというようなときに,管理措置請求の要件は必ずしも満たさないかもしれないけれども,管理不全土地管理人を選任して対応する場合,あるいは管理措置請求もできるけれども,毎回毎回それをやるのは大変なので,管理不全土地管理人を選任して対応するというような使い方もあるのかなということを想定しました。そういうことを念頭に置いて,部会資料39の11ページの第2の1の(1)①にあります,「土地を管理していないことによって他人の権利又は法律上の利益が侵害」されるということを具体化していくということが必要かなというふうに感じました。   もう1点は,部会資料39の11ページの第2の1の(1)のウの「管理不全土地管理人の義務」のところで,「土地の所有者のために,善良な管理者の注意をもって」という規律を置いていますけれども,先ほど申しましたように,この管理人と土地所有者との関係は,所有者不明土地の管理人と所有者との関係以上に,所有者との対立ないし緊張関係が存在することを想定しているようにも思われます。そのときに,「土地の所有者のために,善良な管理者の注意をもって」という規律がどういう意味内容を持つのかということが気に懸かります。もちろん管理人として他人の土地を管理するわけですから,その求められる注意義務というのはあるというふうに感じていますけれども,あえてこの状況の中で,土地所有者のために善管注意義務を負うという規律を置くことによって,管理不全土地管理人と所有者との間に紛争を起こすような種にならないかということも若干懸念されまして,あるいはウについては,まさにこの法律規定が定める権限を行使する義務内容を当然果たすべきものとして,あえて書かないという選択もあるのかなというふうに感じました。 ○山野目部会長 松尾幹事が幾つか御懸念としておっしゃったことを理解いたしました。受け止めて,審議を続けることにいたします。垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   御提案の内容につきまして,2点ほど確認のための質問をさせていただければと考えております。   1点目ですけれども,この管理不全土地管理人についての提案というのは,実際上は先ほど来,御発言もありますように,所有者そのものは判明しているという場合を想定しているということなんだと理解をしておりますけれども,ただ,資料の16ページの(4)のところにも説明がありますように,要件立てとしては所有者不明の場合を除外しているということではありませんので,そういう意味では所有者不明の場合についても適用の余地がある制度として構想されているというように理解をしております。   その場合に,これも今回の御提案の中で11ページの1の(1)のアの②の(注)のところですけれども,「土地の所有者の陳述を聴かなければならない」などの所有者の手続保障の規律を設けるという御提案がされていまして,このこと自体は適切なものではないかというふうに考えているのですけれども,所有者が不明であるような場合についても,この仮に必要的陳述聴取の規定を設けた場合の運用の在り方等について,どういう想定をされているのかということについて,もしお考えがあれば承れればというのが1点目でございます。   それから,2点目なんですけれども,これは資料で申しますと18ページの上の辺り,(2)の直前の辺りになりますでしょうか,ここでの土地管理人というのは,代理人であったり,あるいは訴訟担当者になる者ではないという記載がされておりまして,これもそういうことなのかなというふうに受け止めておりますけれども,例えば管理人が除草作業その他の何らかの作業について,業者に費用を払って契約をして行うというような場合には,これは管理人自身が契約当事者となり,仮にその費用の支払等についてトラブルが発生するといったような場合については,その契約の相手方としては飽くまで管理者を被告として訴えを提起するというようなことになると,そういう理解でよろしいでしょうかというのが2点目でございます。よろしくお願いいたします。 ○脇村関係官 前々回,陳述聴取の相手方がある意味所在不明のときどうするかという御議論を頂きました。従前からそうですけれども,陳述聴取をしないといけないという,陳述聴取の機会を与えないといけないということでございますので,その機会を与えた上で,陳述のないケースについては,通常は陳述を聴かずにやるということなんだろうと思います。あとは,陳述の機会を与えたというために,陳述しますかということを送達で送ることまで要るかどうかという議論が民訴,あるいは非訟の世界では議論されていたと思いますが,そういった一般的に問題となる議論でしょうし,今回の件ですと,そもそもそういったケースについては最初から所有者不明管理人の選任の方を申し立ててはどうですかというようなことを言うのかもしれませんが,その辺は従前の手続法における陳述聴取の機会の在り方を踏まえた運用がされるのだろうと思っています。   2個目につきましては,前回,先生からも管理人の方でお話があったと思いますが,ここで部会資料に書いていますのは,所有者本人を当事者としないといけないケースを想定しておりまして,管理人本人が当事者そのもの,責任主体であるケースについては,基本的にはこの管理人が原告,被告等になるということは想定していたところでございます。 ○山野目部会長 垣内幹事,お続けください。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   一般的な場合について,どこまですれば陳述の機会を与えたと言えるのかというのは,私自身,なかなか悩ましい問題だなと考えておりまして,この場合に,そういう問題が生じたとしたらどうなるというお考えなんだろうかという点について関心があったということですけれども,私自身も引き続き検討させていただきたいと思います。   どうもありがとうございます。 ○市川委員 2点,申し上げたいと思います。   まず1点目が,管理命令の取消しの関係です。部会資料の12ページのカのところに,命令の対象土地などの管理を継続することが相当でなくなったときは,管理命令を取り消さなければならないとされていますが,どのような場合が管理を継続することが相当でなくなったときに当たるのかということが明確になっていなければ,実務上,支障が生ずるおそれがあるように思われます。   一つの例としては,管理人の報酬に係る予納金が不足して追納されないという場合が考えられるように思われますが,そのほかにどのような例があるのかなどについて,判断基準,考慮要素や具体例について何らかの形でお示しいただければと思います。   それから,2点目ですが,処分行為の権限について,部会資料21ページの丙案では,裁判所の許可を得て保存行為等を超える行為をすることを認めるとされていますが,これもどのような場合に裁判所の許可が認められるのかということについて,ある程度,具体化されていなければ,判断の基準が定まらずに裁判実務上,支障が生ずるおそれがありますので,こういう観点も踏まえて,処分行為をする権限に関する規律の在り方について御検討いただきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   2点おっしゃったうちの前の方の命令の取消事由としての相当でなくなったことについて,市川委員が御指摘の場面のほかに何か今考えられるものがあるかどうかは,事務当局に今尋ねてみようと考えます。   それから,後段でおっしゃった21ページの丙案における裁判所の許可の在り方についても,併せて事務当局から発言してもらおうと考えます。   この21ページの甲案,乙案,丙案をお出ししているところでありますけれども,本日,委員,幹事から様々な御意見を頂きました。拝見したところ,乙案がいいと述べた方は誰もいなくて,乙案は寂しい思いをしているというふうに受け止めますが,反面,今川委員が司法書士会の御意見としておっしゃった甲案を基調とするという考え方や,藤野委員が強調された,丙案のような可能性は残しておいてもらった方が実務的にはよいというふうな観点,それぞれいずれも理解をすることができますとともに,仮に乙案を除いて甲案と丙案をにらみながら,今後ここの局面の制度の在り方を育てていくということになりますと,丙案は従来も権限外許可の実務の積み重ねがあることから,まあ,これでいいでしょう,というふうに簡単に進む話では恐らくなくて,本日はキックオフの議論ですから,丙案はこういうふうにざくっと書いてありますけれども,本当にこれを育てて進めていくときには,いろいろ考え込まなければならないところがあって,一つはこの裁判所が許可を出すまでのところで言うと,市川委員も御指摘になったように,どのような要件で許可を出すかということ,さらにそれに関連して,どのような処分の許可を出すかということもイメージを共有しておく必要があります。処分という言葉は普通に考えれば売却というところまで含んでしまいますけれども,本当に所有者が片やいるのに,管理が手抜かりであるということがきっかけで売られてしまうというところまで,裁判所に許可を求めて,あり得るというところまで,いや,あってよいというふうに考えるとすると,これは相当我々は認識を共有して勇気を持ってしなければいけないことであって,そのような問題があります。   それから,許可を出して話が進んだ後に関して言うと,蓑毛幹事が鋭くも御指摘になったように,仮に処分によって何らかの対価というか,そういうふうな金銭に換価されたものが生じたときに,その扱いはどうするかといったようなことも,所有者不明土地管理命令のときのようにはいかないものでありまして,権限外許可というと,何となく不在者財産管理の経験の蓄積があるから,あれのアナロジーで大体いけますよねという気分になってしまいますけれども,それは確かに所有者不明土地管理命令のときには,従来の経験のアナロジーを参考にするる場面というものは領域として大きいと考えますが,ここはかなり局面が異なっていて,松尾幹事が繰り返し強調されたように,一方に所有者が,可能性としては,健在であるというのは変な言い方ですが,所有者がいて,そこに現存している状態で,この命令の制度が動いていくということを考えると,様々なことを考えなければいけないと感じます。   差し当たって本日の段階で考えていることを,市川委員お尋ねの2点について,事務当局からお話ししてくださるようにお願いいたします。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑です。   2点お尋ねいただいたと思いますが,まず1点目の方が,命令の取消しがされる場面というのはどういう場合かということでした。一つは,先ほど御指摘の中にもありましたけれども,19ページ目から20ページ目にかけて書いておりますように,その管理費用を支出することが難しいような場合というのは取り消されるような場合に当たるのかなと考えておりましたが,それ以外の場面としましては,例えばですけれども,15ページ目の真ん中辺に少し,その土地の使用状況などについても考慮して,管理継続が相当でなくなったときというのは取消事由になり得るようなことを書いております。   この管理人がどこまでのことを可能とするのかにもよるのかもしれませんが,土地の所有者が実際にいて,その所有者がいる限り,管理が実際上難しいということはあり得るのではないのかなと思います。管理人に,その土地の所有者を排除するような権限まで付けるとすれば,その場合もできるのかもしれませんけれども,そこまではしないということになりますと,実際上,管理人を選任したとしても,管理人はうまく機能しないということになろうかと思いますので,そういう場合は,それ以上の管理の継続というのは相当でないということで取り消されるような場合もあるのかなとも考えておりました。   2点目で頂きました裁判所の許可の判断基準ということでございますが,これについても,まだ現時点で何か固まったような考えがあるわけでもございませんで,幾つかの案を今並行して検討しているようなところではございます。もし丙案ということになったとすると,所有者不明土地管理制度の方ですと,実際,所有者がいないという状況でありましたので,その状態を踏まえての許可の在り方ということを考えなくてはいけないのかと思いますが,管理不全土地管理制度の方ですとそれとは大分状況が違っていることは今までの議論にも出ているとおりでございますので,その実際にいる土地の所有者の意向というのをどのように踏まえるかですとか,ちょっと異なった観点からの検討をしていく必要があるのかなと思っております。 ○山野目部会長 市川委員,ひとまずのお答えを申し上げましたが,いかがでしょうか。 ○市川委員 ありがとうございます。   もし丙案を採用されるようなことになりましたら,引き続き検討の方をよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 承りました。   引き続きいかがでしょうか。 ○岩井幹事 最高裁民事局の岩井でございます。   部会資料22ページの「給付を命ずる処分」の関係ですが,この給付を命ずる処分につきましては,権利侵害がある場合などには妨害予防請求訴訟の提起も想定されるところでございまして,訴訟が係属しながら重ねてこの申立てがなされた場合の帰趨について,必ずしも現在のところ明らかでないように思われますので,このままですと,裁判実務上,支障が生ずるおそれがあるように思われます。この点も含めまして,御検討いただければと思います。   もう1点ですが,先ほど御説明を頂いた土地の管理を継続することが相当でなくなったときには取り消すという点について,今の資料ですと職権でという記載もありますが,裁判所の方で,管理状況について常に確認しておく必要があるわけではないのだという理解でよろしいのかどうかというのを御確認させていただければと思います。 ○山野目部会長 お尋ねがあった部分について,事務当局からお話をくださるようにお願いします。 ○宮﨑関係官 職権による取消しというのは,ほかの管理人の例などにも倣ってそのように記載しておりますが,管理の状況というのを実際に裁判所の側で能動的に常にチェックするということは現実的には難しいと思いますので,そのようなことまで今の段階で想定しているわけではございません。 ○山野目部会長 岩井幹事に御案内ですけれども,管理不全土地管理命令が発令された場合に選任された管理人に対する裁判所の監督の規定は今のところ設けないという方向で部会資料をお出ししておりますから,岩井幹事の御懸念の裁判所が常に見張っていなくてはいけないですかという点については,これからこの制度を育てていく中での委員,幹事の御意見にもよることですが,常に見張っていなければいけないようなことを想定しているものではありません。職権で,というふうに記している点は,関係人の申立てを待たずにしてもよいということを一応筋道としては明確にしておこうという程度のお話であろうと考えます。これも,ここのところを更にこういう方向で進めていくときには,裁判所の方とも御相談をしながら進めていかなければならないと考えております。   また,前段でおっしゃった給付を命ずる処分について,複数の手続が並走して,必ずしも明快でない状況になるという点も注意してほしいというところもごもっともなことですから,これからも裁判所と御相談させていただこうというふうに考えます。   そのようなことでよろしいですか。 ○岩井幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   不全土地の管理はすごく悩ましい話です。以前,意見を申し上げましたが,土地の不全管理の原因が,認知症だったり,若しくは精神疾患を有していたりということなどによって,土地の管理ができなくなる場合があります。土地の所有者の陳述を聞くことについては,こういった実態を考慮した対応が必要ではないかと思っているところです。   また,一つ,これは質問ですが,例えば,土地の管理が不十分だというときに,土地の所有者ではなくて,土地を借り家を借りて住んでいる方が,ごみ屋敷問題などの課題を持ってしまう場合が大変多いということがあります。これは飽くまでも土地の所有者という観点での対応になるか,若しくは借りている人が,その土地の管理に関してかなり不十分だというところまで及ぶのかということについても,質問したいと思います。   それから,もう1点質問です。基本的には不動産の管理人の権限ですが,これは飽くまでも,動産も不動産も同様の権限ということになるんでしょうか。多分,実際にごみ屋敷問題等を解決するときには,動産の対応について,場合によっては不動産と違う対応が必要だという考え方もあり得るのかもしれません。管理人が持つ権限に関しては同じ権限を持ついうことでよいのでしょうか。質問したいと思います。 ○山野目部会長 平川委員から幾つか問題提起を頂きました。   所有者の陳述を聴くということは,所有者の陳述しか聴かないよと言いたいものではなくて,少なくとも所有者とコミュニケーションはとってくださいよという運用の在り方を案内しようというふうに考えて,細部をこれから検討するというつもりでお出ししているものでありまして,1点目と2点目でおっしゃった,認知症などでうまく陳述ができないような所有者の状態のときに,その人に代わる周辺の人で相当のわきまえのある人とコンタクトをとればいいということにするか,あるいはやはり判断能力が減退していても,御本人となるべくコンタクトをする努力をしてくださいということになるかといった運用の在り方を考えた上で,今後,規律を考案していくということになるであろうと思います。ここで言っている陳述は,必ずしも訴訟行為能力を備えた人であるというような意味ではないでしょうから,その辺りのところを柔軟に考えていく余地もあるかもしれません。   また,土地の所有者の陳述とともに,土地を占有している者もなど,関係人の意見を聴くということにするかどうかということも,今後の課題であろうと思われます。   それから,動産の扱いをどうするかは,そういう論点,課題があるからこそ,司法書士会はその点に注意をせよという意見を今川委員からおっしゃっていただいたものであろうというふうに理解します。   そのようなことで,今後の検討に待つべき部分が大きいものでありまして,現時点で事務当局からお話を差し上げることができることを今お願いしますけれども,今後の検討において,平川委員からもどしどし御意見をおっしゃっていただければと望みます。   事務当局からどうぞ。 ○大谷幹事 今正に部会長から御説明のあったとおりではございますけれども,部会資料で申しますと16ページのところに賃借権関係,一番上の方ですけれども,賃借権を有する者が土地を占有していたとしても,適切に管理がされていないということであれば,所有者が管理していないということで,要件は満たしているものと考えられるとしておりますけれども,正に御指摘にあった土地について賃借権が設定されていて,建物があると。それで,建物の管理について問題があるというようなケースにおいて,それは管理不全建物の管理制度で対応するということも考えられるところでございまして,賃借人,賃借権者についての管理制度というのを設けるかどうかということについては,また引き続き検討したいと思っております。   また,動産については18ページの辺りに書いておりますけれども,これも今川委員から御指摘があったようなことですけれども,土地自体の処分は難しいものがあるとしても,動産についての処分というのはまた別に考える必要がある部分もあるのかなと思っておりまして,これも本日頂いた御意見を踏まえて,考え方を整理したいと思っております。 ○山野目部会長 畑幹事,どうぞ。 ○畑幹事 ありがとうございます。畑です。   資料の22ページの「給付を命ずる処分」の辺りに書いてあることで,私,前にも発言したことがあると思いますし,今日も話が出ていたと思いますが,管理人と所有者とで意見が違う。それで,所有者が協力しないというような場合どうするかということについては,手続だけの問題ではなくて,実体としてどうなのかということを整理しておく必要があるのではないかと思います。   例えば,当該土地には柵がめぐらされていて,鍵がかかっていると。それで,何か必要なことをするためには,何か工作機器を入れる必要があるけれども,鍵がかかっていて所有者は協力しないというようなときにどうなるのか。なお,22ページには,特別な手続を設けるということについて検討すべしと書いてありますが,ある種,実体法の問題としてどうかということを詰める必要があるのではないかと考えております。私自身としてはっきりした意見があるということではないのですが,一つの考え方は,もうそういうときはこの制度は使えないと諦める,ほかで提案されているような制度で対応するというのも一つかと思いますが,そういう場合にもこの制度は使えるということを考えるのであれば,その場合にこそ初めて手続としてどうするのかということが必要になってくるのかなと思っております。もしそういう場合もこの制度でいけるのだとすれば,どういう実体関係を想定するのかということが問題となるのではないか。場合によっては,特別な手続を設けなくても、管理人が所有者に対しても主張し得る何らかの実体権を想定し,それを前提として一般の保全処分を使う,民事保全を使うというようなこともあり得るかもしれませんし,いずれにしても,そういう場合に使える制度なのか,使えない制度なのかということを決める必要があるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 畑幹事,どうもありがとうございます。   例えば,宅地建物取引業者に不動産取引の実態をいろいろ聞いていると,新婚の御夫婦がマイホームの土地と家を入手したときに,庭の片隅に結婚記念植樹をする人ということがあるらしいですね。その植樹をした若い御夫婦がやがて年老いて,一方がお亡くなりになったりして,もう一方が気力,体力が衰えてきて,庭の片隅の木を放置していて,それがいろいろ周辺にも害をなすというときに,管理命令が出されて,管理人があれは御近所に迷惑だから切るべきだと言い,しかし,所有者はそこに健在でいるものですから,あの木は私にとって大事なものであって,あの木が切られたら一生の思い出がなくなってしまうと抗議し,切るのに反対するときに,そういうときには,もう管理命令は使えないということにするか,いや,どちらにするか誰かに決めてもらいましょうというふうに飽くまでもするか。それで,そのときに周辺への迷惑というものがやはり現に生じているとすると,畑幹事がヒントをくださったように,別な制度を使って対処していくことになるか,いや,飽くまでこの管理命令の制度でいくかといったことを考え出すと,やはり松尾幹事がおっしゃったように,そこに所有者がいるという場面で働く姿が中心場面になるこの制度というものは,たくさん悩ましいことが出てきそうな気もいたします。今の畑幹事の御指摘に触発されて,何か御意見があったら承ります。 ○平川委員 ありがとうございます。   民法でこれを明確にするということは,かなり大きな話だと思いました。例えば地方自治体が管理不全土地の管理命令を使うと,場合によるとごみ屋敷問題も管理人に命令してい,何らかの形で処分してしまおうというインセンティブが相当働くと思います。その辺の運用について,若しくは影響について考えておかないと,本人の所有権や人権の問題を含めて,侵害的なことが起きるかもしれないという懸念があります。   意見です,以上です。 ○山野目部会長 御懸念,御注意を承りました。   引き続きいかがでしょうか。本日の段階で承っておくことがあったら頂きたいと考えますが,どうでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,本日お出ししている部会資料の中で,今お諮りしている部会資料39のみが1周回遅れになっておりますから,まだ今日は様々な御指摘を承ったという状況にとどまらざるを得ない側面がございます。次回またこの題材を取り上げる審議の機会に,ただいまの39よりも深めた部会資料を用意した上で,委員,幹事の御意見を承りたいと考えます。   部会資料39についての審議をお願いするのをここまでといたします。   休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料40をお取り上げくださるようにお願いします。   部会資料40は,「共有制度の見直し(通常の共有における共有物の管理)」についてお諮りするものであります。   1ページの「1 共有物の変更行為」のところについては,部会資料27をお示しして,前回この話題をお諮りしたときと同じものの提案を差し上げております。前回の第13回会議で御指摘いただいた点については,補足説明でこのように考えたらどうかという御案内を差し上げているところであります。   2ページから3ページにまたがっての共有物の管理行為についての(1)民法252条についての改正方向をお示ししているところは,①,②,③とも前回部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししています。④も何となく同じものをお示ししているように映りますが,実は,a,b,c,dで並べて示している期間を超えて約束がされた場合についてはどうするかということについて,それを明記する規律を添えておりましたところが,それを削ってございます。削った方が,借地借家法の適用関係についてより明快な解決を示すことができるものではないかという考えに基づくものでありまして,そのことを補足説明で御案内しているところであります。   5ページのところの,まず(2)は,共有者全員の合意とその承継についてという論点につきまして,規律を設けることに困難があるものではないかという複数の御指摘を第13回会議で受け,それらがもっともであると考えられるところから,規律を設けないとする方向の提案を差し上げております。   5ページの一番下,「共有物の管理に関する手続」について,持分の価格に従って過半数で決する際の共有者相互のコミュニケーションの在り方については,これも規律の創設を見送るという提案を差し上げているところでございます。   6ページの4にまいりまして,「共有物を使用する共有者と他の共有者の関係等」につきましては,①,②とも,基本は部会資料27でお示ししたのと同じものをお示ししております。損害賠償の規律等について,誤解を招かないように整理をしている部分がございますけれども,基本は第13回会議にお諮りしたものと同じでございます。   部会資料40の全体について御意見を承るということにいたします。   委員,幹事の皆様方から,どうぞ御随意に御発言をください。 ○橋本幹事 弁護士会で議論した内容を御紹介したいと思います。   まず,1の共有物の変更行為についてですが,方向性については大きな異論はありません。   ただ,この著しく多額の費用の点ですが,補足説明にいろいろ説明書かれているんですが,ちょっとやはり不明確だよねという意見が多くて,費用という切り口でやると,どうしても補助金とか,あるいは求償しないということについて疑義が出てしまうのかなと思って,意見としては,もうちょっと何とか目安的なものを示せないのかというような意見もあったんですが,むしろこの補足説明で書いてあるように,結局のところ,物理的に大幅な変更を伴うかどうかというところがキーポイントになっているように思うので,金額が多い,少ないよりも,物理的に大きな変更を伴うかどうかという方にした方が,すっきりするのではないのかなと思いました。意見です。   それから,2についてですが,(1)の②なんですが,これについては,中間試案のパブリック・コメントのときも,日弁連としては反対の意見を述べていたんですが,これについても,現時点でもまだ賛成できないという意見が強かったです。   後ほど検討される部会資料42の第3によると,遺産共有の場合も全て適用されるという前提だという立てつけのようですので,遺産共有の場合だとすると,ちょっと弊害が予想されるのではなかろうかということで,やはりこの部分について,反対という方向は今のところ維持するという方向です。   それから,④の点ですが,cに関して,借地借家法の適用がある建物賃貸借の場合には,全部無効だという説明が補足説明に書いてあるんですが,ちょっと硬直的ではなかろうかと,部会資料27の当時のもののがよかったんではないかという意見がありました。   それから,(2)の共有者全員の合意とその承継について,設けないということなんですが,何とか設ける方向でもうちょっと粘れないでしょうかという意見がありました。   3と4については大きな異論はありませんでした。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をおまとめいただきまして,ありがとうございます。   引き続き承ります。 ○沖野委員 2点お伺いしたいことがございまして,1点目は,3ページ目の④について,今御指摘のありました点ですけれども,むしろ意見としては逆になりますが,4ページの補足説明のところでは,部会資料27の後段で書かれていたものを削除しているのは,混乱が生ずることになるからだと書かれておりますけれども,この混乱自体は,借地借家法で30年のものを5年の一般の建物所有目的の土地賃貸借契約を締結することはできない,その強行規定があるにも関わらず,こちらの方が優先して5年になってしまうと読めてしまうことによる混乱ではないのかと理解したのですが,そうだとしますと,特に借地借家法などの他の強行規定がある場合に,こちらが優先するということではないという話であり,その限りでのことになります。   しかし,他方で,④の話というのは,結局共有物の管理として,どこまでできるのかということであって,そうだとすると,契約締結が処分に実質的に該当するような長期の契約というのは,そもそもこの過半数決定ではできないとする。したとしても,共有との関係では効力を持たない,過半数決定ではできないことだと整理してしまうというのも,一つの案ではないかと思いまして,それに対して,現在の④は,それはできるんだけれども,超えて存続することができないんだと書かれておりまして,部会資料27の後段の規律は,ただ,強行規定との関係で混乱が生じるから削除したということですから,この内容は維持されていると見られるんですけれども,本当にそれでいいんだろうかというのが,むしろ気になったところです。この期に及んでという感じはするんですけれども,どうだろうかということです。むしろ,これは管理行為には当たらないので,こういうものはできないと整理するという方が,あるいは,この期間内の契約しかできないと,もちろん,更に強行規定を排除するのはできないという整理の方が,むしろ適切ではないかと,この記述を見て思ったところですので,どうだろうというのが一つ目です。むしろ意見だと思いますけれども,あるいは,部会資料27からの変更の趣旨は何かということかもしれません。   もう一つは,4ページの補足説明の(2),4ページの下から3行目のところですが,一部の共有者の同意なく借地権を設定した場合の法律関係についてということで,土地賃貸借の例を考え,その説明をしていただいています。この法律関係を明確にすべきだという指摘がこの趣旨だったのかどうかというのは,ちょっと私には分からないのですけれども,この例の場合について,そもそも建物所有で借地借家法の適用があって,しかも,土地であれば30年となるような契約について,Cが異議を述べた場合には,借地権の設定自体ができないと。他方で,賃貸借は有効に成立しているということで,一種他人の権利の部分を処分してしまうという,そういう関係かと思うのですが,これは,本来そもそも過半数決定でできない場合であるのに,それをしたらどうなるかという話ではないかと思われるのですが,ここの説明は。そうではないのでしょうか。   問題になりますのは,過半数決定でできるけれども,しかし,異議を述べた者との関係ではどうなるのかとか,そのときに,契約は誰と誰との間ですることになるのかとか,そういうことの整理が,やがて出てくる管理者の選任等々との関係でも必要になってくるのではないかと考えられまして,そのような問題として整理し直すべきではなかろうかと思われるのですけれども,そうした場合に,ここで過半数決定をするということが,仮に共有者が集まって,こういう形でこのような契約の賃貸借をするかどうかということについて,過半数でしようということになった場合に,契約はどうなり,賃貸人たる地位はどうなるのかについて,以前の御指摘では,それでも異議を,自分は反対であると述べた人は,およそ賃貸人になるということもないし,契約は飽くまで賛成した人,場合によっては賛成した人ではなくて,そのうちの1人でもいいのかもしれません。1人だけが契約をするということで,あとは内部関係として処理していく,反対者は,妨害はしないという話になるのかもしれないんですが,そういう権利関係なのかどうかということの整理が必要でないかと思われましたので,問題の設定と,それから,もしそういう問題だと考えるならば,どういうふうに理解したらいいのかということを,御説明いただければと思います。   長くなってすみません。 ○山野目部会長 沖野委員がおっしゃった2点について,今,事務当局との間で意見交換をしてもらおうと考えます。   前段でおっしゃった3ページの④のところは,これからの御議論にもよりますが,沖野委員のお話をヒントとして,削った部分を復活させるということになれば,理由,経過は全く異なりますけれども,橋本幹事の復活させてくれという弁護士会の意見と,奇しくも結果だけは一致することになり,幸せな結果に至りますが,本当にそう進むことがいいかどうかは,引き続き考えなければなりません。   沖野委員の後段の4ページから5ページのところ,これ,例の挙げ方が悪いですね。2年とかの建物の賃貸借をしたときに,しかし,反対した人の置かれる法律的な状況がどうなるかという例を挙げれば,今のような御疑念の指摘を受けなくて済むであろうと考えますから,何かこれ,筆が滑ったとも感じますけれども,事務当局からどうぞ。 ○大谷幹事 1点目に御指摘いただいた短期の賃貸借でないもの,長期間の賃貸借を過半数ですることはできないとするのではないかというような御指摘,確かにここのように変えてみて,例えば,建物の使用権3年を超えるもの,土地の使用権5年を超えるものを,契約としてやったときに,それ自体もう無効だと考えることもあるのかなと思い直し始めていたところです。ですので,ちょっとここは,今の御指摘も踏まえまして,④の書き方,後段の部分を削ったということだけではなくて,もう少し,共有関係で,過半数だけで賃貸借をするというときにはどうなるのかというのを,改めて整理をしてお示しをしたいと思います。   また,過半数の者との間で賃貸借契約をした場合の法律関係ですけれども,これも,ほかのところで出てまいりましたけれども,A,B,Cの3名のうちのA,Bのみで賃貸借をしたときに,賃貸人は誰かといえば,契約関係はどうなるかといえば,AとBだけが契約当事者になるということで,反対をしているCについてはならないと。ただ,CはAとBが結んだ賃貸借契約を否定することができないという関係になるのではないかと考えているところでございます。 ○山野目部会長 大谷幹事のお話の後段はそのとおりで,そのこと自体は,沖野委員もそのように理解しておられるけれども,挙げている例が,借地権の設定は元々できないことから,もっと適切な例を挙げてくださいという御要望であると受け止めますから,次回は丁寧にここを書き改めてお出しすることにいたしましょう。   沖野委員,よろしゅうございますか。 ○沖野委員 ありがとうございました。   私自身は,実は別の考え方もあると思っておりまして,大谷幹事は私自身の考えを受け止めてくださったのですが,整理としては,最終的に部会長がおっしゃったような整理でいくということで,まとまっていくということには,全く異存ありません。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   今の4ページの(2)のところなんですが,多分,前回私が申し上げたことについて対応していただいたんだと思うんです。どういうことだったかといいますと,無効だとするのか,期間を超えることができないのだとするのかはともかくといたしまして,借地借家法の適用のある賃貸借を過半数決定でしてしまった。ところが,借主の方は,そうとは思わず,無過失まで含めるのかもしれませんが,善意無過失で借地借家法の適用があると考える状況であった,その場合に借主を保護はしなくていいのかと,私が申し上げたのに対して,これはお答えいただいたんだと思います。ですから,これが,前回からの議論の続きで,不適切な記述というわけではなくてというか,事務局のために私が言う必要があるのかどうか分かりませんが,これはこれとして,前回の私が申し上げたことに対してお答えを頂いていて,それに加えて,今日,沖野先生から御発言があったという整理が適当かと思います。これが1点です。   もう1点は,これ,ずっと出ているところで,今更なんですけれども,1ページの1のところで,括弧書きで,共有物の改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除くとあります。これがこのままでいいのか,先ほど橋本幹事から,軽微変更みたいなのに変えた方がいいのではないかということがございましたが,それは御検討いただくとして,もしこのままでいくというときに,軽微変更でも一緒かな,改良という言葉でいいのかなというのが,少し分からないなと思ったところがございました。改良というのは,多分価値を増すということが含まれていると思うのですけれども,これからの時代,ダウンサイジングとか,価値の面でいうと,例えば,今まで居住に適していたもので,それ自体としては価値が高かったものを,もう利用者がいないので,納屋に変えるとか,簡易化するという方向で目的物に変更を加えるということもあり得るのではないかと。これは,主観的には使用価値を高めるということになりうるとは思うのですけれども,客観的に言うと,価値が高まるとは言えないのかなと思います。そういったことから,この改良を目的とするということでは駄目だというわけではないのですけれども,これからの時代,これで尽きるということでいいのかどうか,考える必要があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   前段のお話を伺っていて,佐久間幹事は優しい方だなということを実感いたしました。   確かに4ページから5ページは,前回の佐久間幹事のお話を引き継いだものでありますから,本日沖野委員から頂いた御注意を踏まえ,将来に向けては適切な例を選択して,補足説明の文章を草していくことにいたします。   後段で御指摘いただいたことは,今後の日本の社会を考えたときに,なるほどと,うなずかざるを得ない御指摘を頂いたとともに,悩ましくて,従来の法制の用語例からいくと,ここはやはり改良になると思うのですね。今後の日本社会を考えたときに,改良でない哲学を表現する言葉を探し,よりふさわしいものにしてくださいという課題は,誠にしごく当然のお話であると同時に,良い言葉を見つけて,法制的にもそれを採用可能なものに育てられるかどうかは,少しまた事務当局において検討してもらおうと考えます。   ここの括弧書のところは,橋本幹事からも多額の費用のところについての文言の再検討を求める御意見を頂いております。括弧書は,事務当局においても,何とか考え直して,いろいろなことを考えましたが,やはりここに落ち着くのではないかと考えざるを得なくて,同じ文言のものをお出ししていますけれども,本日両幹事から頂いた御意見を踏まえて,更に検討していかなければならないことであると考えます。   引き続きいかがでしょうか。   委員,幹事から御意見はおありでしょうか。   それでは,どなたからか御意見をおっしゃっていただくまでに,いささか橋本幹事にお尋ねですが,5ページの太文字の(2)のところを,提案を見送らないで設けてほしいという御意見が弁護士会にあるというお話であると,先ほど聞こえましたけれども,その理解で間違いないですか。 ○橋本幹事 はい,(2)ですね,合意の承継について。 ○山野目部会長 ここについて,規律創設の需要があるということが理解できますとともに,第13回会議において,いろいろ異質なものがここの規律の適用対象として想定されるところを,誤解がないような仕方で,過不足なく規律の表現にまとめるのは難しいという御意見も頂いていたところでありまして,なかなか難しいと感ずるところでありまして,弁護士会の御意見は御意見として承って,もう少し考えみようと思いますから,すこし弁護士会の先生方も引き続きお付合いいただいて,お知恵を頂きたく思います。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたらならば,第13回会議でお出しした部会資料27の確認をお願いするような内容も多うございますから,強いて御発言がないと受け止めてよいのかもしれません。   御発言がないようでしたならば,部会資料40についての審議をここまでとして,更にこれを整理していくということにいたしますけれども,よろしゅうございますか。   それでは,引き続きまして,部会資料41をお取り上げくださるようにお願いいたします。   引き続き共有制度の見直しでありますが,部会資料41のタイトルに括弧書でありますように,共有物の管理に関する行為を定める際の特則等について,お諮りをしているところでございます。   第1の1は,これは,共有者の中に共有物の管理等について,無関心や積極的な関心,意欲的な関心を抱いてくれない者がいる場合に,問合せをして異議を述べない,意見がないということを確認した上で,更に共有物の管理を進めるということを認めてよいかということについて,前回と同様の提案を差し上げております。   (注1)から(注3)までのところで,本文の案とは別に,こういうことも考えられるということをお示ししていますけれども,(注1)から(注3)までに御提示申し上げている事項は,そこに本案とは別な案を示して,これも大いに考えていこうという趣旨で御提示申し上げているものではなくて,ここで強く(注1)ないし(注3)の可能性も,引き続き考えてほしいという御意見があるかどうかを確かめるために,お出ししているものでございます。   引き続きまして,3ページにまいりまして,太文字の2のところ,「所在等不明共有者がいる場合の特則」は,今度は共有者の所在が分かっているのではなくて,そもそも所在が分からない場合について,こちらは裁判所の関与を得て,それに代わるコミュニケーションを取って,先に話を進めていくということが許されるかというお話の問題提起をしています。(注1)から(注3)まで,本文の案とは別な案が考えられるかという可能性もお尋ねしていますから,併せて御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。   (注1)から(注3)まではそういうことですけれども,(注4)は性格が異なっていて,これは別にお尋ねするものではなくて,太文字の案の本文の前提を補足しているものであります。   小さな誤植がありまして,(注4)のところ,本当は改行しなくてはいけないはずですが,そのまま続けてしまっているところは,改行があるものと訂正を差し上げて,その前提でお考えくださるようにお願いいたします。   6ページのところにまいりまして,第2のところで,「不動産の所在等不明等共有者の持分の取得」について,裁判所が持分を取得させる旨の裁判をするということを基本とした上で,裁判所が定める時価相当額の支払請求の制度などについての関連する提案を差し上げております。   9ページにまいりますと,第3のところで,所在等不明共有者がいる場合において,知れている共有者の全員の同意があるときには,これを譲渡するという可能性を認める制度の提案をしております。   11ページにまいりまして,第4のところは,共有者が選任する管理者の法律的な地位,それをめぐる法律関係につきまして,第13回会議でお諮りしたものの骨格を維持し,それを整理したものをお示ししているところでございます。   部会資料41は,このような論点を盛り込んでお示ししているものでありまして,これらの全体について,委員,幹事の御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第1「共用物の管理に関する行為を定める際の特則」について,日弁連のワーキンググループでの意見の分布について申し上げます。   第1の1については,本文のとおりでよいという意見もありますが,(注2)に賛成,すなわち,裁判所の決定があって初めて効力が生ずることとすべきいう意見の方が多数でした。2については,本文のとおりでよいという意見が多数でしたが,(注2)に賛成,すなわち,対象となる行為を持分の価格の過半数で決する行為に限定すべきだという意見も有力でした。   6ページの「第2 不動産の所在等不明共有者の持分の取得」については賛成します。9ページ,第3の「所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡」についても賛成します。いずれも,前回申し上げた,日弁連の意見を取り入れていただいたものと理解しています。ありがとうございました。   第4の「共有者が選任する管理者」について,本文で書かれている「1 選任・解任」,「2 管理者の権限等」について,本文で書かれていること自体については賛成ですが,補足説明で,部会資料12ページに書かれている「委任契約(委任関係)とは別の法律関係(管理者選任関係)」の概念がよく分からないという意見が多く寄せられました。では,本文に書かれている選任・解任の要件を満たしつつ,それを,どのように理論的に説明するのかについて,日弁連のワーキンググループの中で何かよい案を提示できるのかと言うと,できません。大変申し訳ないのですが,そのような意見があったということだけ申し上げます。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただきまして,ありがとうございます。   ただいま弁護士会からお出しいただいた問題提起をめぐる御意見でも結構ですから,お出しください。 ○今川委員 まず,第1の1についてですけれども,14回の会議を受けて,催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合と,所在不明共有者がいる場合とに区別して,提案されています。そして,前者の場合は,当事者の行為のみで効果が発生するとされて,後者の場合は,裁判所の決定があって,初めて効果が発生すると整理されています。   我々が出していた意見については,第1の1の補足説明2の(2)で取り上げていただき,それに対する考え方も説明されています。  催告をしたが異議を述べない共有者がいる場合において,共有者全員の同意を要する変更行為を除く場合であっても,場合によっては第三者が絡む場合があるし,登記をしなければならない場合もある。また,逆に,所在不明共有者がいる場合であっても、共有者間で単に使用方法を定めるようなものもあり,言い方は適切かどうか分かりませんが,重いものから軽いものまで幅広くありますので,我々の意見としては,一律に裁判所やその他の公的機関を関与させないと効果が発生しないというのではなくて,共有者が望めば,任意に要件を満たしていることを証明できるような制度を置いてはどうかという意見でありました。   それについて回答も頂いており,一定の理解はしておりますが,ただ,短期賃借権の登記をするという事例は,かなりレアケースだとは思いますけれども,そういう場合に,この要件を充足している,そして登記原因が発生しているといことを,司法書士あるいは登記官等がどのような形で確認していくのかという課題があると考えます。したがって、手続上の手当ては,引き続き検討していただきたいという意見があります。   それから,第3の所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡について,(注3)の裁判の効力について,その終期を定めるということですが,現行制度で不在者財産管理人が裁判所の許可を得て管理している不動産を売却するような場合等でも,許可の効力に終期が設けられるということは普通はないので,新しい考え方だろうと思います。   裁判の効力について終期を定めること自体は,反対するものではありません。ただ,実際は,所在不明共有者以外の判明している他の共有者の同意があるかどうか,それから買受人が実際いるのかどうか,その金額も決まっているのかどうか,売買契約書の中身はどのようなものかというのも,事前に提示した上で許可の申立てをする。実務の運用を考えると,実際にはそうなるのかとは思います。   裁判の効力について終期を定めることについて,一定の理解はしますけれども,登記の期限も定めることについても触れられておりますが,実体上の終期を定めておけば,あとは対抗要件ということですので,登記の終期までも定める必要はないという意見です。   あとは,特に意見はありません。 ○山野目部会長 司法書士会の意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございます。   今川委員が後段でおっしゃった第3のところの権限付与の時期的なタイムリミット,終期を定める件について御注意いただいたことは受け止めましたから,検討することにいたします。   前段の方でおっしゃった第1の1の,催告をしたが異議,意見が出ない場合に,過半数の同意を得たのと同視される状況を確保して話を進めるときに,登記の手続を進めようとすると暗礁に乗り上げる場面が生ずるのではないかというお話は,司法書士会からそのことの問題指摘を頂いたのは,今回が初めてではなくて前にも,司法書士会って短期賃借権がどういうわけか好きなんだなと思わざるを得ませんが,前にも頂いていて,再々お話を頂いているところでございます。   少し私が理解に苦しむ点は,第1の1でお出ししていただく,そういうサイズの話でお出しいただくよりは,第1の2のところの,部会資料の3ページですね,所在等不明共有者がいる場合の特則のところの方が話が深刻で,こちらは,登記名義人として共有者の氏名が載っているけれども所在がつかめなくて,したがって共同申請に関与させることが絶望的であるという状態で,この2のところの規律にのっとって,その同意関与に代わるような裁判所とのコミュニケーションを経た上での,こちらは本当に管理にとどまるのではなくて,処分までするということを射程に置いていて,(注2)に関わる弁護士会の御意見はありますが,仮に処分ができるとすると,かなり長い期間の借地権の設定のような処分が,この規律にのっとって行われる場合があるものでありまして,こちらの方が実体的にそういう権利変動があったのに,登記が円滑にいかなくて,所在不明共有者の共同申請の関与が絶望的だと登記手続が暗礁に乗り上げてしまうという困難が深刻であると感じます。   今川委員御自身がおっしゃったように,短期賃借権はめったに登記されませんが,とおっしゃるような1番の話ではなくて,サイズが大きな2番の話で,え,どうなんだと言っていただいた上で,関連して,類似の問題は1についてもありますとおっしゃっていただければ,これは本気で考えなければならない話になるであろうと感じますけれども,何か話の順番が,何で1の方の小さい話からいくのかという点は,いささか解せないという気分で前にも伺ったし,今も伺いましたけれども,何かお話があったらどうぞ。 ○今川委員 第2は,裁判所の許可が要件になりますので,そこで手続上,要件充足とか登記原因の発生等は確認できるのではないかと思っておりまして,必ず全て裁判所の決定というのはちょっと重いなとは思いつつも,強く反対するものではないです。ただ,1の場合は,当事者だけの行為で効力が発生することになりますので,そこをどう確認していくのか,ということです。 ○山野目部会長 6ページの第2もそうですし,3ページの第1の2のところも,同じような構図の問題があって,こちらが多分問題としての深刻さが大きくて,そこについては,確かに今川委員がおっしゃるように,裁判所が関与しているから登記原因は確かめられますというお話があるかもしれませんが,登記原因が確かめられたとしても,直ちにそれが共同申請の例外になるとは限りませんから,裁判所の給付文言がついていれば,63条1項でいけるかもしれませんけれども,そこのところも,規律創設を明示に要求していただくというようなお話とともに,第1の1のところも問題であると話が進んでいくものであろうと感じます。   いずれにしても,しかし,司法書士会が御意見としておっしゃろうとしていることの骨子は理解することができるものでありますから,第1の1,第1の2,それから第2の三つの局面について,ここで提示されているような実体的規律の変更や創設が,仮にこの方向で実現した場合の登記手続との関係で,裁判所の裁判に給付文言を入れてもらうような規律にするかとか,共同申請についての例外を考えることの適否であるとか,登記原因証明情報の在り方等について,総合的に検討する必要があるということを,大枠しておっしゃろうとするものであると理解しますから,事務当局の方でそれを検討していただくようにお願いします。   今までここのところ,規律の創設方向がここまで育ってきておりませんでしたから,登記のことまで余り意識が向かなかったですけれども,ただいまの司法書士会の御注意で,そろそろそういうことを考えなければいけないという段階に来ているということが分かりましたから,事務当局の方で努め,また司法書士会とも御相談をさせていただくということにいたします。どうもありがとうございます。 ○今川委員 整理していただきまして,ありがとうございます。 ○山野目部会長 いえ,ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 申し上げたいのは第3についてなのですが,それとの比較をするために,第1の1の話からしたいと思います。   弁護士会で,第1の1の(注2)に関連して,裁判所が関与するということにするという話だったんですが,それは(注2)のところにも,催告は裁判所が行うとなっており,裁判所の役割をここでは催告と書いてありますし,さらには,補足説明のところでは,2ページですね,裁判所が何をやるのかということについて,いろいろな考え方があり得るという話が書いてあります。いろいろな考え方について検討するということ自体には何の異存もありませんが,ただ,その大前提として,これはこういうふうに管理すべきである,こういった管理をするということはいいことだと,裁判所が判断するのはやめるべきであり,裁判所には,手続が満たされているなら満たされているということを明らかにさせましょうというのが,せいぜいだろうと思うんですね。   それとの関係で申し上げたいのは,第3の,さきほど今川さんからお話があったところなんですけれども,第3の①のところで,処分をする権限,譲渡をする権限を付与する旨の裁判をするに当たっては,恐らく契約の内容とかそういうものをきちんと示して,裁判所の許可を得るのだろうと,そういう実務的な対応になるだろうとおっしゃったんですが,それって,本当なんだろうかという気がするんですね。そうなりますと,裁判所としては,その譲渡価格が妥当か否かとか,相手方が妥当か否かとか,そういう実体的な判断をするということが,そこでは予定されそうなんですが,原案といいますか,この資料で出てきているというのは,第三者に譲渡するという必要があるかもしれないよねということが抽象的に認められたら,権限付与というのがあり得るという,そういう前提であって,個別具体的な譲渡契約のよしあしについて判断するという構造ではないと思うんですね。したがって,実務はこうなると思います,運用はこうなると思いますと,さらっとおっしゃったんですが,それって全然違う制度として構想することになるんだと思います。   個人的な意見としては,第3の①のままでよくて,それは抽象的な譲渡権限を与えるべきか,このシチュエーションにおいて,その範囲内だけで裁判所は判断するということでいいのではないかと思います。いちいちここで売るべきかどうかというふうなことを,裁判所に判断させるというのは,私はどうもおかしいのではないかと考えます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   道垣内委員がおっしゃった2点について,脇村関係官が話したいという表情をしていますから,本当は蓑毛幹事に指名しようと考えましたけれども,脇村関係官,先にどうぞ。 ○脇村関係官 すみません。   事務局の御説明させていただきますと,道垣内先生おっしゃっていたとおり考えておりまして,抽象的にも,一番考えないといけないのは所在不明ですとか,供託する金額幾らとか,その辺を考えていまして,誰に売るかとかは,基本的には,後の共有者の方で考えてくださいと理解していました。   一方で,今川委員がおっしゃっていたのは,申立人にといいますか,登記申請する立場でおっしゃっていたのかなと,思っていまして,実際には裁判所に申請というか,そういう手続をとるときには,事前にきちんと確認をして,そろってからやるんだということかと理解しておりまして,裁判所の方で事務局の案を考えていたのは,ある意味,無味乾燥,金額はそういう意味で,譲渡する金額は考えないということを考えていました。すみません。 ○山野目部会長 道垣内委員が問題提起をなさった事柄のうち,後段の部会資料の9ページ,第3との関係で言いますと,ここで裁判所が譲渡をする権限を付与する裁判をするということの意味は,道垣内委員が御理解なさったとおり,また,今,脇村関係官が説明したとおり,これは抽象的な,譲渡をしたら処分の効果が生じますという法律関係を作り出すための形成裁判を裁判所が行うことができるということを定めているにとどまるものでありまして,それを超えるものではないであろうと感じられます。   裁判所は,不動産屋ではありません。幾らの金額で,いついつこういうふうに履行しろというようなことを,裁判所が指図するというか,命令をするというような法律関係ではなくて,譲渡をすればその法的効果が認められますという,法律関係の形成を是認しますという裁判をするという意味を述べている場所が①の本文のところでありまして,それとは別に,確かに(注2)のところで,供託をする金額は裁判所が指定することになっていますから,そこでは,別な文脈で金額が出てきますけれども,太字本文の①のところ自体は,そういうことであろうと考えられます。   部会資料が御提示申し上げていることはそのような内容であり,蓑毛幹事がおっしゃったような,それとは若干異なるイメージで弁護士会の先生方に受け止めた方がおられるとすれば,また弁護士会の方で御議論いただいたりして,コミュニケーションを重ねるということであろうと考えます。 ○蓑毛幹事 部会資料について,弁護士会のメンバーの理解が違っている訳ではないと思います。第1の部分について,これは,裁判所が内容の審査をするか否かではなく,手続に関与するか否かの問題であるという理解を弁護士会もしています。   そのうえで、第1の1の規律,本文の提案は,そういった手続的な関与も裁判所は一切しないという提案だと理解し,そうではなくて,裁判所は手続には関与すべきだということで,(注2)に賛成するという意見が多数であったということを申し上げました。   第3の部分についても,部会資料本文と補足説明に書いてあるとおりだと理解しており,これに賛成しています。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,ありがとうございます。   そのうえで,今も話題にしていただいたですが,今度は道垣内委員が御発言なさったことの前段の方でありまして,1ページの第1の1のところで,催告をして,異議,意見を問い合わせるという手順に,裁判所を関わらせるという,この(注2)の可能性について,弁護士会では,積極の御意見が有力であったという意見分布を蓑毛幹事から御紹介いただき,道垣内委員からは,しかし,それに対しては,疑問を感ずるという趣旨の御発言を頂いたところでありまして,いずれのお話も根拠があるものと感じられますけれども,少し法制的に考えていったときに,ここに裁判所を関与させるということは,いろいろ難しい部分があるということは,実感として思うところがあるものでありまして,第1の1の扱っている局面というものは,問合せの相手方が行方不明ではなく,現にいるものですね。   現にいる人との間のコミュニケーションについて,裁判所,1回関わってくださいと言われても,裁判所の関わり方というものは,道垣内委員がいろいろ可能性を考えて悩んでおられたところから明らかなように,別に内容的に良い悪いをかなり裁判所が入ってきて述べるという局面ではありませんから,裁判所の目の前を通っていって,見ました,どうぞしてくださいということを,公正な機関である裁判所が見ているから安心ですよということを超えて,何かが得られるかというと,あまりそのようなことは感じられないということがあるとともに,従来の法制の,これと似たような場面ですね,例えば,建物の区分所有等に関する法律で,建替えの決議をするときに,建替えに賛成しますか,反対しますか,お答えがないから困りますねという問合せをするときだって,別に裁判所を通していなくて,当事者同士で,念のため内容証明,配達証明でするでしょうけれども,当事者同士でするものであって,ああいう従来のところで裁判所が関わっていないのに,ここは裁判所に関わらせるということになると,いろいろ説明が難しいことになってくるであろうとも危惧されます。   悩ましいですけれども,弁護士会の先生方の中にそういう御意見をおっしゃる方がいるという経過は,御紹介として受け止め,また意見交換を重ねていただけると有り難いものですが,蓑毛幹事,お願いしてよろしいですか。 ○蓑毛幹事 部会長がおっしゃられたことについて,今,私の方から反論等があるものではありません。部会長がおっしゃることは,個人的には最もだと思いますので,持ち帰った上で,ワーキンググループ内でコミュニケートを取りたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます,御面倒をお願いいたします。   引き続き御意見を承ります。 ○佐久間幹事 細かいことで恐縮でなんですが,2点ございます。   いずれも同意に関することなんですけれども,一つは,3ページの2の直前にある(2)のところでして,この仕組みを用いる場合に,誰に対して催告するかということに関しまして,絶対的過半数を得ている場合は別だけれども,相対的過半数しかない場合は,基本的に全員に催告せよとなっておりますよね。   例えば,ですけれども,共有者が4人いて,2人は賛成していると。残り2人から意見を徴そうというときに,まず1人に対して意見を聞こうとしたところ,意見が出てこなかった。この場合,もう一人に催告しなければいけないということなんでしょうか。仮にそうだとしたら,どうしてなのかなというのが,私は疑問に思いました。分母が3に下がって,2の多数があるということが確定しているのに,どうしてもう一人にも意見を聞かなければいけないのかというのが,私が多分気づいていないのだろうと思うんですけれども,実質的に何かそれによって保障されるべき利益があるのであれば,お教えいただければと存じます。それが1点です。   もう一つは,11ページでございまして,これ,前からの提案のようで,今更ということになるかもしれませんが,第4の2の①で,共有物の管理者は管理行為をすることができると。ただし,他の共有者の同意を得なければすることができない行為については,共有者全員の同意を得なければならないとされております。これに関しまして,たとえば,共有物の管理行為にかかる意思決定について,本日の部会資料40の2ページから,実際には3ページの③に,要するに,過半数決定で管理に関する行為をしてきた場合,その管理に関する事項をひっくり返す決定は過半数ですることができるのだけれども,特別に影響が及ぶ共有者があるときには,その人の承諾を必要とする,という規律の提案があります。この規律に関して,元に戻りまして,共有者が管理者を選びまして,その管理者が,前の管理に関する事項を変更するという場合に,特別に影響を受ける人がいるときに,全員の同意がいるという現状の案では,その影響を受ける共有者以外の同意も得なければいけないということになると思います。これもちょっと,なぜそうなるのか,私には理解ができませんでしたので,申し訳ありませんけれども,御説明いただければと存じます。 ○脇村関係官 最初の1点目の承知の件ですけれども,一般的に252条の議論として,それは要らないのではないかと,あるいは部会の議論として,やはり意見陳述の機会を与えるべきではないかということで,両論あったと思うんですけれども,意見を陳述する機会があれば,それを聞いて他の方が意見変わるかもしれませんし,何といいますか,絶対的に完全に過半数超えて賛成している場合よりは,そういう陳述機会をより保障すべきという議論があるのかなと思っていましたのと,実際の運用としても,最初の1人だけまず連絡して,その後に次やろうというのが,集団的意思決定をしようとする局面で,本当にいいのかなというのが,書かせていただいた趣旨でございます。   管理者の方につきましては,確かにその関係,すみません,もう一回整理したいと思いますけれども,もう一回,すみません,確認したいと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 いえ。ありがとうございます,特にございません。 ○山野目部会長 今後とも検討いたします。ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   第1のところで,前回の部会のときに,所在等不明共有者の場合はちょっと区別して考えていただけませんかということでお願いをして,今回このような形で分けていただいていると。特に,対象となる行為のところと,裁判所が関与するかどうかというところで,場合分けをしていただいているというのは,非常によい方向性なのではないかと思っています。催告をしたが異議を述べない共有者がいる,という場合では裁判所が関与しない手続になるという点と,所在等不明共有者がいる場合に,対象となる行為を限定しないという点については,強く賛成をしたいと思っています。   1点申し上げるとすると,第1の1の(注1)のところで,本文では,対象行為として「共有者全員の同意を要する変更行為を除く」と書かれているんですが,前回申し上げたとおり,やはり催告して,返答する機会を与えているというにもかかわらず,同意も反対もないと,異議が述べられていないということなので,このような共有者にどこまで保障を与えないといけないのかというところは,もう少し検討していただければ,というところでございます。というのも,所在等不明共有者だと認定された場合は,ここでいうと2の方のラインに乗っかっていって,裁判所が関与するということになるわけですが,所在等不明という要件を充たすかどうかは,今回の部会資料では,土地の現況等を踏まえて判断することになるという書き方をしていただいておりますが,やはり最終的にどうなるか分からないというところもあります。そのような中で,催告したけれども何も返ってこないと,所在等不明と言いたいんだけれども,そこが微妙なところですねというような共有者の方が仮にいらっしゃったとして,それでも,催告して何も異議がないというだけでは次に全く進められない,ということになってしまうと,困ることが多々あるのではないかと思いますので,ここのところは,例えば,催告の手続のところを,かすめ取るようなというか,詐術を用いて返事なんてしなくてもいいですよといって返事させなかった,それで,残りの人だけで決めてしまったと,そういうような場合は,基本的には駄目だという話でいいと思うのですが,逆に正当な手続を経てやっているときに,これが,共有者全員の同意を要する変更行為なので,催告で何も返ってこなかったというだけでは駄目ですというのだとちょっと厳しい場合があるのかなというところで,第1の1に関しては,(注1)の案が採用される余地がないのかというところは,再度,意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 藤野委員の御意見を承りました。受け止めた上で,引き続き検討することにいたしますとともに,今の段階で御案内しておくとすると,少なくとも民法が定めている共有というか,今まで理解されてきた共有というものは,共有者一人一人に不機嫌を許す制度なのですね。ある共有者が,今,自分はいささか不機嫌で誰とも口をききたくないと述べ,あなたがたと一緒にこんなものを共有しているかもしれないけれども,一緒に共有していたからって,別に仲よくしなければいけないとかコミュニケーションを取らなければいけないという立場にはありません,言っておきますけれども。私は不機嫌ですから,誰から手紙が来ても,誰からメールが来ても,何も答えたくありませんっていう態度をとる人がいたときに,それを絶対いけないとは,必ずしも言わないという前提で作っている制度であり,変更に係る事項について,問合せに知らんぷりして何も答えないときに,答えないなら,こちらでしてしまいますよという制度まで突き進むと,従来の共有観を少し変えていく部分がありますから,おっしゃることはごもっともであるとともに,いささかそのような大きな話が背景にあるということには注意をしなければいけないということが1点と,もう1点は,(注1)のところを動かすと,場合によっては,論理必然性はないかもしれませんけれども,(注3)が連動して動く可能性があって,コミュニケーションを省略していいなら,最低限(注3)の最低数というか,定足数は確保してくださいという議論に,一見弾みがつく可能性もあります。いろいろなところが関係しますから,御意見を受け止めた上で,また考えてまいりましょう。 ○道垣内委員 すみません。私,先ほど今川さんの御意見について,反論を述べたんですが,自分で反論を述べておいて,それからもう少し考えていると,わけ分からなくなってきたので,ちょっと教えていただければと思います。ひょっとすると,今川さんの言うとおりだと,最終的に意見を変えるかもしれません。   と申しますのは,第3の①をまずどう読むのかなのですが,その3行目のところで,「裁判所は,共有者の請求により,請求をした共有者に対し所在等不明など全員の同意を得て不動産の所有権を第三者に譲渡ができる権限」とありますが,この文において,「同意を得て」というのは「譲渡できる」にかかるんですよね。同意を得たら,申立てをすることができるようになるわけではなく,同意を得て譲渡することができるということですよね。   そうしたときに,②のところですが,これはすでに議論されているかもしれませんので,大変恐縮なのですが,私は,すぐ全部忘れてしまうものですから申しますと,②の,「①の裁判が効力を生じたとき」というのは,同意を得れば,第三者に譲渡していいよという権限が与えられたという段階ですよね。にもかかわらず,同意を得たら譲渡できるということになったら,もし所在等不明共有者というのが出てきたら,時価相当額を払わなければいけないのでしょうか。自分は,同意を得て譲渡しようと思っていて,しかし,時価よりも高く売れないかもしれないけれども,それは請求する自分のリスクだろうなと思ってやったら,ほかの人が同意してくれなかったから売れなかった。にもかかわらず,請求したのだから時価相当額を,持分に応じた額を払えと言われたら,それはびっくりです。自分は頑張ったんだけれども,ほかの人が同意してくれないから売れないのに,なぜ払わなければいけないのか。ちょっとよく分からなくて,何か大きな勘違いを僕はしているんだろうかと思ってしまうんですね。   第2のところでの②は分かるのです。これ,実際に申立共有者というのが取得をすることになりますので,その部分の時価相当額を払いなさいというのは分かるのですけれども,第3のところで,どうして②のようになるのかというのがちょっと分からなくなってきて,そこで,今川さんの話に戻るんですが,今川さんがおっしゃったように,契約書も額も全部,相手方も決まった段階で①の申立てをして裁判があるというのが,全体として前提になっているのだろうかという気がしてまいりまして,結論として今川さんがおっしゃったことは正しいのであり,私の反論が妥当でなかったのだろうかというのが,気になっている次第でありまして,お教えいただければと思います。 ○今川委員 私は,道垣内先生ほど深くは考えていたわけではないのですが,同意取得の場合は,裁判所は、共有者のうち,ある共有者の持分を除外するという決定をすれば,あとは他の共有者に変更行為の中身は任せるというのでいいと思うんですが,この第3の不動産の譲渡については,相当な価格の供託をさせるというのがありますので,裁判所が相当な供託金額は幾らだと定めなければならない。そして理屈上は、裁判所が相当であると判断した金額と全然違う金額で共有者が売却するということもあり得るとは思いますが,第3の②のように,所在不明共有者がもし出てきた場合に,時価相当額を請求するということになっていますので,裁判所とすると,信用力ということも考えると,実務上は裁判所が相当な額として認めたものと,実際の価格が全然違いましたということは,できる限りないようにするのではないかということもあって,この時価というのを判断するのって非常に難しいので,実際幾らで売却するということが,もし予定として決まっているのなら,その額は,非常に大きなファクターになると思ったので,申し上げました。   誰に売るのか,買受人は誰かということの相当性についてまで,裁判所が判断するということを,申し上げたわけではありません。 ○脇村関係官 まず,道垣内先生から御指摘いただいた点,ありがとうございます。   ちょっとここは,私も書いていて,ぐるぐる回っていたところで,すみません,実質論においては,譲渡した後に当然請求できると,あるいは譲渡した場合に請求できるということでいいんだろうなということを考えていましたし,従前の部会もそういう議論をしていたんだろうと思います。   あと,それを譲渡した場合と書くのか,ここでこういうふうに書きましたのは,終期を入れるんであれば,実質的には終期を越せば当然無効になりますんで請求できないということを加味すれば,こういった表現でもいいのかなというのは少し考えていたところだったのですが,実質は道垣内先生の考えていらっしゃる譲渡して,全くしていないケースについてまで請求といいますか,お金を取れるということは考えていませんでしたので,ちょっと表現ぶり,法制的なことも含めて考えていきたいと思っています。   また,今川委員おっしゃっていたとおり,元々この部会で,中間試案の方ですかね,議論していたときに,時価と実際に譲渡する金額がずれてもいいんですよねって議論は,理論的にはさせていただいていたと思います。その上で,今川委員おっしゃったとおり,ただ,実際認定する際に,実際の売買価格を見ずに,鑑定といいますか判断できるのかというのは,おっしゃるとおりかも,ちょっとそこら辺,私も若干,不動産鑑定に疎いところがありますので,そういった御指摘はそうなんだなと思って伺っていました。それも含めて理論的には変わらないんですが,実質論を含めて,考え方についてはまた考えていきたいと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員,今のようなことで少し,考え方そのものを整理した上で,さらにそれをルールの表現としてどういうふうに言葉を整理するかということの課題が残っているということが分かりましたが,それを前提にお話をお続けいただくことがあれば,お願いいたします。 ○道垣内委員 1点だけ申し上げますと,仮に時価が1億であっても,うまい具合に2億で売れたら,その所在等不明共有者は,2億を基準とした額がもらえると思うのですね。決して時価相当額で1億を基準とした額になるわけではないと思います。そうすると,時価相当額が,処分時の時価相当額といえば,それはそれでもいいのかもしれませんが,裁判が効力を生じたときというふうなのを基準値にすると,どうなのかなという気がしますので,引き続き御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 よく分かりました。   この第3のところについては,実際に時間の順番を追って,何の次にこれをするということを,1回時系列的に整理をし,その上で整理された事柄のどこまでを,どのような言葉で規律文言として表現していくかを検討するという仕事があるということが,今日の御議論で分かりましたから,事務当局にその作業を続けてもらうことにいたします。   これは,不動産取引の現場で行われている決済の手順のいろいろ複雑な様相を帯びている事柄,事象に更に輪をかけて,局面が,所在不明者がいたり,裁判所が関与したりして複雑になってくる事態をうまくさばかなければいけないという話になりますから,事務当局において検討し,司法書士会のお知恵も頂いた上で,検討が深められるとよろしいと感じます。   従前の不動産に抵当権の負担があったりすると,更にその抵当権の処理のために厄介な問題処理をしなければいけなくて,何かこれは,いささか試験問題を思わせる複雑な話になりますから,皆さんで知恵を集めて進めていくということにいたしましょう。ありがとうございました。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   この部会資料41の第2の所在等不明共有者の不動産の共有持分の取得について,この制度をどうやって活用していくかということは,所有者不明土地の解消に向けた方策の切り札の一つとして,重要なポイントになるのではないかと思っています。   この後,部会資料42でも出てまいりますように,この仕組みを,共同相続人の一部が所在不明の場合,あるいは特定できない場合にも使っていくということですので,しかも,これも部会資料42の最後で,共同相続人による時効取得については規律を設けないという提案ですので,そのことにも鑑みますと,この第2の所在等不明共有者の持分の取得の制度がどういうふうに運用されるか,実際にうまく使えるかということが非常に重要になってくるのではないかと思われます。   そのことを前提にしまして,例えば,共有者のほとんどが特定できない,所在も分からないまま,共有者の1人が管理を継続しているという状況の中で,例えば,その1人の持分が10分の1であるというときに,ほかの10分の9の持分を,この不明共有者の持分取得の制度を使って取得するということを考えたときに,裁判所に申し立てて公告し,時価相当額を供託するということで,例えば,時価4,000万円の土地だったとすると,3,600万円を供託しなければいけないことになります。しかし,その際に,例えば,この共有者が10年も20年も1人でこの土地の公租公課を負担し,その管理費用も支払ってきた場合に,その費用償還部分を,253条の管理費用として,共有持分を取得するために供託すべき時価から差し引いて供託すればよいということが認められるでしょうか。私は認めてよいのではないかと考えますが,確認させていただきたいと思います。   それがどういうふうに扱われるかによって,この制度の実際の使われ方や機能が違ってくるのではないかと思います。もしかすると,そういうことは想定していないかもしれませんが,ちょっと筋違いの質問だったら申し訳ないんですけれども,疑問になったものですから,お伺いできればと思いました。 ○山野目部会長 今のお話は,事務当局はどう考えていますかと誰か関係官に発言希望があれば伺いますけれども,考えているかというよりも,松尾幹事から,今のお話でいうと,差し引き計算が可能になるような解決を想定し,所要の規律整備をしてほしいという,御意見を承ったと受け止めてよろしいものではないかと思いましたけれども。 ○松尾幹事 はい,そのとおりです。もし費用の控除が可能であれば,この共有持分取得の制度は所有者不明土地の解消手段として,実際に使われるものになるのではないかと思います。ちなみに,今回規律しないことが提案されていますが,共有者の1人による時効取得が認められるときは,持分取得の対価の供託ということなしに他の共有者の持分が取得されることになります。ただ,強制取得を可能にするものですので,そこはちょっと慎重に考えなければいけない部分もあって,本当にそれでいいのかなということを,確認させていただきたいと思った次第です。 ○山野目部会長 それでは,松尾幹事がおっしゃったことについて,事務当局も含めて,何か御意見があったら,今承っておいて,次の検討の機会に,更に深めた資料をお出ししようと考えますけれども,何かただいまの論点について御発言がおありでしょうか。 ○脇村関係官 ありがとうございます。   確か松尾先生から,以前も同じような話を頂いたような気がしているんですけれども,今回の制度につきましては,時価相当額について簡易にやろうという発想でおりますので,もろもろの費用,それまでの費用などをきちんと清算したいという制度として組むんであれば,相当制度の根幹が変わるんだろうなと思います。   ですので,従前払ってきた費用ですとか,そういったものを含めて清算したいということであれば,私としては,この制度ではなくて,所有者不明土地管理制度などを活用し,管理人との間できちんと協議をして,幾らの費用がこれまで掛かったということを確定した上で,売却をし,そこから差し引くということしかないのかなと思っております。   この制度にしようとすると,当事者がいないのに,裁判所が管理費用を認定しないといけないとか,従前払った費用の確認ということになりますので,ちょっと,手続が大分変わってくるのではないかなというのが,正直思っているところでございます。 ○山野目部会長 松尾幹事が提起した問題は,別の制度で受け止めてはどうかという意見を今,もらいました。   ほかに,この点についておありでしょうか。   よろしいですか。   では,これは引き続き検討するということにいたします。中田委員,どうぞ。 ○中田委員  先ほどの第3の方に戻るのですけれども,第3について更に御検討いただくということでお願いしたいと思います。   その際に,一つお願いなんですが,譲渡をする際,相手方である買主,買い受ける人に,法律関係を明確にしてあげることによって,譲渡がスムーズにいくようにするのが望ましいのではないかと思っています。   今回の法律構成は,非常に明快になっており,法定の処分授権みたいなものをスタートにしたものだと理解しています。つまり,所在等不明共有者以外の共有者たちが不動産全体の売主になる,したがって,担保責任もその売主である共有者たちが負うし,代金債権もその人たちが持っていて,所在等不明共有者は関係ないんだということだろうと思います。ただこれは,その不動産を買おうとしている人から見ると,とても難しい制度だと思いますので,それを条文の上で,もし可能であれば,できるだけ疑義のないようにしていただくというのがよろしいですし,少なくとも解説などでは明らかにする必要があると思います。ただ,今はまだ条文化の作業の前,条文に至るための検討の作業の段階ですから,買主が安心して取得できるような制度にするということも,御検討の際に考えていただければと思います。 ○山野目部会長 御注意をよく理解し,承りました。踏まえさせていただきます。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,部会資料41について,多々有益な御指摘を頂きました。   今日頂いた御意見を踏まえて,整理を続けるということにいたしま……失礼しました。沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 こちらこそ,間際にすみません。   第4の管理者の点ですけれども,前回疑問に思った点を非常に詳細に明らかにしていただいて,有り難いと思います。ただ,なおもよく分からないところがあります。   どういうことをやりたいかというのは書いてあって,問題は,何か書いていないところが,どのように埋まっていくのかということではないかと思われますので,書かれている,具体的にどういうことをしたいかという限りでは,このゴシックのとおりだと思うんですけれども,一方で,これが管理者の選任・解任,あるいはその職務の執行ですとか遂行という概念で全部整理をしていくということが,あたかもといいますか,共有をめぐる関係において,一種の地位あるいは機関的なものとして,その管理者というのを立て,その地位にどういう人を就け,あるいは,そこからリムーブするか,どういう職務権限を与えるかという,そういうような構成に,第4は見えます。   しかしながら,ここでは,飽くまで管理を依頼するというのは,委任契約を別途締結するということが想定されていて,その委任契約に基づいて,いろいろな権利義務というのが管理者の方に発生していく。報酬ですとか,あるいは善管注意義務の規定なども,今回は置かれませんけれども,それは委任の方で,委任契約当事者との関係で負うんだと,そういう整理のように見られます。そうすると,それと管理者の職責に就けるということとの関係がどうなるのかというのは,よく分からないように思います。   むしろ,第4で説明として書かれているような法律関係を考えるのであれば,むしろ共有者間の管理行為,管理に関する行為について,共有者自身がするときに過半数の決定で行うことができるけれども,具体的に,例えば,賃貸借契約をするというようなときには,それに賛成した人が,あるいは賛成した人との間で契約をするのか,さらには,それをまた更に切り離して,契約は契約ですということになるのかというのも分からないのですが,むしろそれと類似の法律関係ではないのかという気もしまして,だとすると,管理者というような一種機関的な者を選任・解任するというよりは,共有物の管理を第三者に委託するということについての規律の話になってくるんではないかと,そういう整理になるのかなと思ったんですけれども。さらにその前提としては,ここでは,管理者に選任すれば,当然賛成した,あるいは反対しなかった人との間で委任契約ないしは委任関係となるような想定でもあるようですが,例えば,1人の人が提案して,何人かの人は過半数を超えるまで賛成があって,しかし,異議を述べた人もいるというときに,一体委任なり委任契約なり委任関係は誰との間に立つのか,それは,賛成した人は当然,委任関係がそこに立つならば,それは実は法定の委任関係で,誰との間に立つかというのを賛成した,あるいは異議を述べなかった者との間だけに立つという規律にしているように思われますし,それに対して,いや,委任契約をするのですということであれば,実際に契約を締結した人だけということにもなり,例えば,提案した人だけが締結するということかもしれません。そうすると,修補ですとか,各種の権利義務も,その人だけが負うことになりそうで,その辺りが,なおどうもはっきりしないように思うのですけれども,今のような機関的な説明で,本当にいいのかどうかというのは,考え直す機会はないのかもしれませんけれども,やはりちょっと気になるところですので,お伝えしたいと思います。 ○山野目部会長 沖野委員から今,第4の部分について御所感を頂いたところを踏まえて,もちろん次回の,次の機会に向けて検討いたします。   思い起こしますと,部会資料27は,どちらかというと,むしろ沖野委員の発想に近くて,第三者が管理者である場合と共有者のうちの1人が管理者である場合とに場合分けをした上で,それぞれの法律関係がどうなりますかということを,正にこの太字の部分に記して,委員,幹事の意見を問うという形でお出しいたしました。それについての御議論を第13回会議で承ったところ,それらについて様々な御意見が出て,必ずしも意見の方向性が一致しませんでした。取り分け共有者のうちの1人が選任された場合のところについて,意見が分かれたという側面が大きいように感じます。   そのようなことがあったという経過を踏まえ,かつ,考えてみると,共有者の中から,共有物の管理をする者を設けたときの民法上の契約関係の実体といいますか背景,基盤をどのように考えるかは,解釈に委ねるべき事項であるかもしれないと考えられましたところから,本日は,中身をがらっと変えたものではありませんが,部会資料で提示する太字の内容としては,沖野委員のおっしゃり方でいうと,機関を描くという仕方で提示申し上げると,改めてみました。   ただいま沖野委員からは,むしろ,どちらかというと,そこまではっきりおっしゃったかどうか分かりませんが,第三者を選任する場合に焦点を置いて,もう少し法律関係を明確にするような,太字に値するような規律を構想してみた方が,分かりやすいではないかというヒントも頂いたところであります。何通りか,この太字にする内容として,どういうふうな打ち出し方をするかということについては,考えられるところでありますから,沖野委員から頂いたヒントをも踏まえて,次の機会に向けて,また表現の仕方,並べ方のメリット,デメリットを比較して,再検討してみようと考えます。   本日,そのような御案内にとどめさせていただいてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   畑幹事,どうぞ。 ○畑幹事 畑でございます。   5ページの手続の辺りに関連して,お尋ねなのか意見なのかよく分かりませんが,ここに書かれておりますように,確かに一般的には裁判の形成力が生じた場合,それをほかの人が勝手に争うことはできないと考えられていると思いますし,多くの場合,それで大過ないのだろうと思います。個人的には,論理必然的にそういうわけでもないだろうとは考えているのですが,それはともかくとして,この種の制度について,反対とかそういうことでは特にないのですが,手続的な面でいえば,これを悪用されることがないかということが,少し気になります。つまり,意見が合わない共有者がいる場合に,本当は所在が分かっているけれども,あの人は所在不明だといって事を進めてしまうというようなことが,当然病理現象だと思いますし,所在不明の認定というのをきっちりすれば,そうそう起こらないということかもしれませんが,その辺りどうするのかということも考えておく必要があるかと思っております。   特に,5ページの辺りで書かれていることというのは,基本的に管理行為ですので,しようがないかという気もしないでもないのですが,同じ問題は多分,第2の持分の取得とか第3の譲渡についてもあるような気がいたしまして,第2や第3になると,これはもう持分を失ってしまうものですから,かなり深刻な問題かなという気がします。   訴訟の話でいえば,最近は余りそういうことないのかもしれませんが,例えば,公示送達というものを悪用して確定判決を騙取した事例などというのも,かなり前ですが,存在しますので,そういうことがあり得ないわけではないということで,条文として何か手当を置くとかいうことではないのかもしれないのですが,問題としてはあるかなと考えております。 ○山野目部会長 長期の海外における滞在とか長期入院の機会を,何らかの形で知り得た他人が,その期間はコミュニケーションが難しいということを奇貨として,このような制度を悪用するというようなことは,何か推理小説のような話のことを考えると,ありそうな気がしてまいりました。   更に考えますと,ここに限らず,所有者所在不明,あるいは共有者所在不明を要件とする場面一般について,そのようなことというものは危惧されるところでありますから,ただいまの畑幹事の御注意を,ここ及びその他類似の局面で,注意してまいるということにいたします。ありがとうございます。 ○道垣内委員 すみません。分からないまま発言しますので,結論が出るような話ではないんですが,沖野さんのおっしゃった第4に関連します。これは結構,難しいですよね。つまり,管理者として選任された受任者が共有物について賃貸借契約を結ぶと,契約当事者は受任者になるんだけれども,委任をした者は,委任した者というのは共有者ですが,当該賃貸借契約の効力を否定できないというか,当該賃借人の占有権限を否定できないというか,そういう法律関係になるというわけですけれども,委任契約一般の問題として,どういうふうに考えるのかという問題が背後にもちろんあるわけであり,ちょっとそこに自信がありません。だから,私はこの補足説明は,その意味ではすごくレベルが高いと思うんですけれども,今まで委任契約のときの効力について,こんなにクリアに整理できていたのだろうか,という気がするわけでして,本当は委任のところではそれほど明確になっているわけではないのに,この共有者の管理者についてはこうなりますよと,書けるのかな,という心配があります。条文上は,委任一般との関係もありますので,クリアに書けないということになるんでしょうけれども,だから,どういうふうにすべきであるという意見も何もないままに発言をして申し訳ないんですが,何かこの辺りのところを,沖野さんのお話も踏まえて整理をされると,今伺いましたので,あわせて,法律関係についても,何か理解の取っかかりというものが書けるのならば,整理をしていただいた方がいいのではないかと思います。   私自身は,その後の解説で書いたからといって,何かそれに法的な拘束力があるとは全く考えませんので,一問一答に書けばいいという問題ではないと思います。 ○山野目部会長 最近の一問一答は,いささか饒舌ですかね。ですから,何でも一問一答に書けばいいというわけではないということは,おっしゃるとおりでありまして,今後,委員,幹事で御議論を進めていただくに当たっても,何とかのことは一問一答に書いてくださいね,とかということを気楽におっしゃっていただくことも困りますけれども,さはさりながら,ここの第4の論点に関して言うと,補足説明のところで示している法律関係理解は,一定の理解として間違っていないというか,恐らく成立可能な明快な理解の一つを示していると感じます。   道垣内委員がやや御心配になった部分があるように,本当にこれしか考え方がありませんか,ということは,なお議論の余地がありますし,また裏返して述べると,本当にこれしか考えがなくて,委員,幹事の意見がまとまるものなら,もう少しそれを規律表現として明確に外に出していただけませんかという問題意識が,沖野委員の御指摘にもあったとみます。   それとともに,第13回会議,部会資料27からの経過を振り返ると,そのうようことを,考えが明快であるとしても,規律で表現していくことの得失といいますか,難しさもありまして,それらがいずれも悩ましいことであって,総合的に勘案して,また考えましょうということが,今日の御議論で明らかになってきたものであろうと受け止めます。 ○潮見委員 余り言うつもりもなかったんですけれども,先ほどの沖野委員や道垣内委員の話を聞いていて,やはり言わなければいけないと思ったので,少しだけ発言させてください。   規定の中に,これ以上にきちんとしたものを組み込むことができるかどうかということは,私自身はかなり悲観的です。沖野委員と道垣内委員が言われたところに尽きるんですけれども,この問題というのが,そう簡単に,理論的にこうだという形で解決することはできないと,私は思っています。   というのは,普通の委任の場合でしたら,委任者が受任者に対して,例えば,財産管理を委任するということで話がついて,その財産管理権の内容とか,あるいはどのような義務を尽くすべきかは,基本的には,委任契約の内容から出てくるし,さらに,そのことを決めていないならば,準拠枠があるわけですから,その準拠枠にある規範を適用すれば,これで解決はできます。   ところが,今回の場合には,委任者に当たる人と並んで,ほかにもいろいろな共有者がいて,財産管理権限も持っています。そんなときに,一部の共有者が,ある人に財産管理をさせるということで管理人の選任に関与して,一定の条件といいますか,権限付与というものをした。ところが,他方においては,それに全く関与していない人がいる。ここで、管理人が実際に行うのは,土地あるいは不動産の管理であるということで,管理に着目すれば,共有の中での管理者と共有者の関係という準拠枠がもう一つ出てくるわけですよね。結局,考えうる準拠枠として,委任という準拠枠と,共有における共有者と管理人という準拠枠と,二つがあって,その二つをどう関係付けるのかということが問題となりまして,これについて,いろいろな考え方ができます。その際に,委任契約の中でどこまで決めることができるのか,決めたことが,契約に関与しなかったものの,共有地の財産管理については関与する他の共有者にどういう影響を与えるのかをいろいろ考えていくと,それほど,これ,簡単に,理論的にこうだという形の説明はしづらいというようなところがあろうかと思うんです。   そうした中で,できる限りのことを書こうとしたら,場合によっては前回の案に出てきたような,管理者が共有者の1人である場合と,そうではない場合とに分けて,管理者選任関係として,共有地に関する管理者と共有者の関係はこうあるべきだというところを,ルールとして示していくという辺りが関の山かなと思います。かえって,それ以上に組み込んでいくと,話がちょっとややこしくなるのかなというふうな感じもします。そういう意味で,先ほど申し上げた管理者選任関係,共有物に関する管理者と共有者の関係というものを,できるだけ明確に条文としては書き切る。合意や,あるいは多数当事者の意思によって変えることができるんであれば,その旨をルールとして書き加えるという辺りが,結果的には分かりやすいのではないかなという感じがしました。   飽くまでも印象なんで,お前はどうするんだと言われたら,何とも言いようがありませんけれども,ちょっと気になりましたんで発言させてもらいました。 ○山野目部会長 潮見委員がおっしゃるような法律関係の描き方についての難しさといいますか,一様に決め付けて議論することができないという側面があるということは,正にそのとおりでありまして,そのことを受け止めますと,前回お諮りした部会資料27,第13回会議のときにお出ししたような,管理者が共有者の1人である場合と,第三者である場合とに分けて,何かを描くという規律の表現が考えられるところであるとともに,それをしようとすると,かえって潮見委員のお嫌いな管理者選任関係の概念の採否や,それをめぐる事柄について,何らか触れざるを得ないような文章になってきてしまう側面もあります。   そこが困りますから,今回は機関を描くという仕方でお出ししていますけれども,それにはそれとして問題点,課題があるということも,本日分かりましたから,沖野委員,道垣内委員のお話に付け加えて,今,潮見委員から頂いたお話も踏まえ,改めてどういうふうに太字の提案にしていったらいいかを考えるということにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。   それでは,部会資料41についての御議論をお願いしたという扱いにいたします。   休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料42をお取り上げくださるようにお願いいたします。   部会資料42は,遺産の管理と遺産分割に関する見直しについてお諮りするものであります。   1ページの第1は,「一定期間後の遺産分割」ということで,10年が経過した後については,具体的相続分を考慮しない遺産分割をしてもらうという規律の提案をし,第14回会議に引き続き,同じ趣旨の提案を差し上げています。   同じく1ページの「2 分割手続」の(1)のところでは,960条以下の規定に従い,遺産分割の手続で,そこで述べることをしてもらうということをお示ししているものであります。(2)の「通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則」として,共有物分割訴訟の中で,遺産分割として扱われている内容を取り上げる場面を認めようという提案を差し上げ,ただし,それは10年が経過した後であって,かつ,遺産分割事件が家庭裁判所に審判又は調停の形で係属している場合において,関係する相続人から異議が出されなかったときに限るというふうな要件設定で,規律の提案を差し上げているところであります。   4ページの方にまいりまして,遺産共有の場合にあっても,所在不明などである相続人がある場合の持分の取得について,先ほど休憩前に御議論いただいた部会資料41の提案と同じ内容のものを,こちらでも考えようという提案を差し上げております。   6ページにまいりまして,4も同じ話でありまして,通常共有のときと同じように,所在等不明相続人がいる場合の不動産の譲渡について,それを考えようという提案を差し上げています。   部会資料の6ページの一番下の5の例外のところは,やむを得ない事情によって10年以内に遺産分割をすることができなかった場合の救済策を,第14回会議に引き続き話題としているところであります。御提示申し上げている内容の考え方の方向が少し異なっておりまして,前回は,どちらかというと,価額請求によって問題処理をしようという方向が有力になってきたところでありますが,本当にそれでよいかという観点から改めて考えた上で,期間終了間際6か月の時点で起きた変則的な事態に伴って,このような困った状況になった場合については,なお遺産分割の請求等について,例外的な取扱いを,それそのものについて認めようという方向の提案を差し上げているところであります。   8ページにまいりまして,6のその他で,遺産分割の申立ての取下げ等に関する規律の見直しの提案を差し上げ,9ページ,第2のところは,以上の提案を踏まえた上で,第2の「遺産分割禁止期間」,それから第3の「遺産共有と共有の規律」について,お示ししているような提案を差し上げているものであります。   最後に10ページでありますけれども,第4の「共同相続人による取得時効」については,新たな規律を設けることが,そこに補足説明でお示ししているような幾つかの観点から困難ではないかという見通しを踏まえて,これについては規律を設けないものとするという提案を差し上げているところでございます。   部会資料42の全体について,委員,幹事から御意見を承るということにいたします。   いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今回の部会資料42について,弁護士会のワーキンググループの中では,前回の部会資料31と比べて非常に分かりやすくなったという意見がありましたので,まずその点を申し上げます。   順々に申し上げますが,第1の1と2は,前回と同じで,賛成です。   2の(2)「通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則」について,前提として,この特則がどのようなことを意味しているのかということと,どのような場合を想定しているのかということについて,確認させて下さい。今回,席上に配布していただいた図を示しながら,御質問いたします。   下手な図で恐縮ですが,図1,図2,図3を書きました。   図1は,部会資料42で例示されている,2ページのA,B,C,Dの関係を図にしたものです。すなわち,A及びBが各2分の1の持分を有する共有状態の土地がある場合に,Bが死亡し,C及びDが各2分の1の法定相続分で相続したときということで,これが,通常共有と遺産共有が併存している場合の典型例として挙げられています。   今回,この特則を提案する理由というのは,部会資料42の3ページに書かれているように,この図1の場合には,現行法では,Cが協議によらずに共有物の全部を取得するには,共有物分割と遺産分割の手続の双方を経なければならないところ,共有物分割手続の中で一回的に解決する方が,相続人にとっても便宜であること。したがって,共同相続人の有する遺産分割上の権利を侵害しない限りにおいて,一定の要件を満たせば,このような場合に共有物分割の手続によって,一回的な解決をできるようにするということだと理解しました。   そこで,念のための確認なんですが,図1の場合には,部会資料2ページの①,②の要件を満たせば,CがA及びDに対して,民法258条1項に基づき,共有物分割請求ができることになるということを提案されていると理解しましたが,そのような理解で正しいでしょうかというのが,一つ目の質問です。   次に,図2ですが,これは,図1の状態から,Aも死亡して,その相続人としてEとFが出現したという事例です。   この事例は,一見すると,現在の権利者であるCないしFは,いずれも遺産共有状態の共有者であって,通常共有と遺産共有が併存していないようにも見えます。しかし,この事例も,Cが協議によらずに共有物の全部を取得するためには,共有物分割と遺産分割手続の双方を経なければならない,具体的には,Dとの間の遺産分割と,E及びFとの間の共有物分割請求が必要になるということで,この二つの手続が必要になるという状況は,図1の場合と全く同じです。したがって,この図2の場合も,今回提案されている特則の対象となっていると理解しています。   つまり、通常共有と遺産共有が併存しているということの意味は,図2で「共有」「遺産共有」と書いたとおり,C及びDの遺産共有,E及びFの遺産共有に加えて,C及びDとE及びFの通常共有,これが併存している。この不動産については,このような形で遺産共有と通常共有が併存しているということなので,図2の場合も,この特則の対象になると理解していますが,それでよろしいでしょうかというのが,2番目の質問です。   2番目の質問に関連して,今の理解が正しいとすると,部会資料1ページの(2)本文に書かれている規律,すなわち,「財産が数人の相続人及び相続人以外の者の共有に属する場合において」という表現が,これは,図1の場合を想定していると思うのですが,図2の場合も,これに読み込めるかが,疑問に思いました。   図3ですけれども,これは,図2と似ていますが,これは数次相続の事例で,元々AとBが通常共有でなく,遺産共有であった場合です。この場合,Cとしては,D,E及びFとの間で,Xの遺産分割手続を行い,Dとの間でBの遺産分割手続を行うことが可能であり,かつ,今回の改正で,相続開始から10年間が経過した場合には,具体的相続分の主張が制限される結果,遺産の一部分割が基本的に認められるだろうということで,X及びBの遺産の一部分割として,不動産の分割を実施すればいいということになり,したがって,数次相続の場合は,今回の特則の対象とする必要はないと整理されたと理解していますが,それでよろしいでしょうか。   図3の場合に,Xの遺産分割手続とBの遺産分割手続を一回的に解決するためには,2つの遺産分割手続が併合されることが必要ですが,実務的にそのような併合が認められるのか,その辺りの見通しについて,お聞かせいただければと思います。   一旦ここで切りたいと思います。 ○山野目部会長 それでは,今日,蓑毛幹事からお配りいただいた1枚ものの資料についてのお話を頂いたところでありますから,蓑毛幹事のお話の途中でありますが,ここで切って,1枚ものについてお示しいただいた三つの図の関連は,事務局に資料の案内の趣旨の確かめを求めておられるということであると受け止めますところから,事務当局からお話をください。 ○脇村関係官 ありがとうございます,脇村です。   まず,先生に頂いた質問については,いずれも,はいという答えなんですけれども,図1については,おっしゃるとおりだと理解しています。   図2につきましても,実は,なかなかどうやって書いていいのか難しかったんですけれども,意図としてはそういった,いわゆる遺産共有以外のものも混ざっていることを含めて考えておりましたので,射程に入っているという理解しておりました。あと,この後,どこまで表現をきれいにできるかは,改めて考えたいと思います。   図3の図形につきましても,おっしゃるとおり考えておりまして,従前の実務はどうかとか,併合最終的にどうかという議論あるんですけれども,いずれにしましても,理論上は,併合した上で,かつ,一部分割を活用すればできるであろうと理解しておりまして,今回の改正でこういった議論がされたことは,きちんと紹介をし,考えていただくように促すことになるんだろうと思います。   もちろん,一部分割に相続人が反対しているケースなどは,結局難しいケースあるかもしれませんけれども,皆さんが基本的にいいというケースについては,スムーズにできるのではないかと思っています。   図1の関係で少しだけ,先生おっしゃったとおりなんですが,1点だけちょっと補足的なお話をさせていただきますと,先生の方から,CがA,Dに対して共有物分割請求できるという意味でしょうかとお話がありましたが,できるという意味につきましては,とりようによっては二つの意味があるかなと思っていまして,単純に,Cが単独で共有物分割訴訟を請求できるという問題と,プラス,CがDとの関係との解消もできるという,この二つの意味があると思っていまして,部会資料で書いていますのは,主眼は,どちらかといいますとDとの関係についてメインで議論していますが,もちろんこういったことになりますと,Cが単独でしやすくなるというのはそのとおりではないかと思っています。   この規律でなかった場合でも,併存している場合について,共有者の1人,相続人の1人が,自分たちの遺産関係と共有者,通常共有者との関係の分割を単独でできるかどうかという解釈論はあるとは承知していますが,いずれにしても,お答えとしては,この部会資料としては,はい,ということだろうと理解しています。 ○山野目部会長 図1から図3まで,内容の理解は,全て蓑毛幹事にお見通しいただいたとおりであるということを御案内し,太字で示す規律表現については,御指摘も踏まえて,なお検討していくという案内がありました。   蓑毛幹事,お続けください。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。   脇村さんがおっしゃったのは,恐らく最判平成25年11月29日の射程の関係をおっしゃったのだと思いますが,あの判例の射程がどうあれ,今回の提案で,先ほど申し上げたとおり,CがA及びDに対して共有物分割請求の訴訟を提起できるとしていただければ,この制度が非常に,実務上使いやすくなると思っております。   続けて申し上げてよろしいでしょうか。   部会資料1ページから2ページにかけての(2)で①と②の要件を設けることについて,これは,前回の部会資料31では,①だけが要件であったものが,甲案としてあったのですが,これに②の要件が付加されたと理解しています。つまり,10年経過後であっても,原則は遺産分割を行うということであって,共同相続人の有する遺産分割上の権利を重視して,②の要件が付加されたと理解しています。   この点について,日弁連のワーキンググループでは,②は不要という意見も若干ありましたが,②の要件を設けることはやむを得ないという意見が大半でした。   ただし,②の異議がいつまでも言えるということになると,共有物分割請求の訴訟が非常に不安定になり,審理の無駄が起こりますので,この異議の申出については,一定の期間に制限すべきだという意見が多数でした。また,この特則に基づく共有物分割請求訴訟が起こされた時点では,遺産分割の審判も調停も係属していなかったにもかかわらず,訴訟提起後に,言わば後出しのように遺産分割の請求をして,異議を言うということについては,更に強い制約をすべきではないかという意見もありました。   続いて,3の「不動産の所在等不明共有者の持分の取得」については,賛成が多数でした。ただし,少数説として,相続開始から10年を経過するまでは,この限りではないという要件について,これは,共同相続人の有する遺産分割をする権利には関わらないので,不要であるとの意見がありました。   部会資料6ページの4,所在等不明相続人がいる場合の不動産の譲渡についても同様で,これに賛成する意見が多数ですが,ただし書は不要という少数意見がありました。   6ページの5の例外規定等については,賛成意見が多数でした。   ただし,やむを得ない事由という定め方ではなくて,具体的にその事由を明示すべきという意見がありました。また,共同相続人の全員が同意をして,具体的相続分の主張ができるようにすると合意している場合には,10年経過後もそのような主張を認めてよいのではないかという意見がありました。   部会資料8ページの6,遺産分割の申立ての取下げ等については,賛成します。ただし,前回も申し上げたことで,部会資料で反論されてもいるのですが,遺産分割事件の中止の規定は入れて欲しいという意見が,現在も残っています。   それから,第2の遺産分割禁止期間,1,2については,いずれも賛成です。   第3の遺産共有と共有の規律についても賛成ですが,①の「特別の定めがない限り」という文言について,特別の定めがなかったとしても,通常共有と遺産共有とで,性質上違った考え方をすべきものがあるかもしれないので,例えば,「その性質が許さないときを除き」といった規定の仕方の方がよいのではないかという意見がありました。   最後,第4の共同相続人による取得時効については賛成です。 ○今川委員 この部会資料42については,全体的には賛成の方向で特に意見はありませんが,一つ,第1の2の(2)の補足説明4のところで,蓑毛幹事もおっしゃったんですが,濫用的な異議申出の対策はしっかりすべきであるということと,同じ補足説明4の最後の「また」というところの3行の部分ですが,これは,家裁と地裁との連携,情報の共有を説明されていると思うんですが,裁判のIT化に関しても,法制審議会で議論されていますけれども,ITを積極的に促進をして,ITを駆使しながら,裁判所間で情報を共有する,連携をしていくということが必須であると考えております。   それと,これは質問ですが,5の例外規定についてですけれども,この例外規定が該当するときは,3の持分取得とか4の不動産譲渡もやはり禁じられるという考え方でいいのかどうかという点です。多分禁じられるのだろうと理解していますが,ひょっとして気が付かずにやってしまうこともあるのではないかという意見が,我々の検討チームの中からあがっており,これも裁判所間の連携でうまく防げるのかどうか,また,気づかずに譲渡してしまった場合などは,どのようにして回復していくのかということも気になります。   実際,そういうことはまずないだろうというお考えなのか,その辺りのお考えを教えてください。 ○脇村関係官 今のやむを得ない事由の件なんですけれども,論理的な問題はちょっと置いておくとして,実際上の問題として,特に所在等不明相続人にやむを得ない事由があった場合の処理につきましては,もともと異議があった場合のために公告期間を設けるという前提にしておりますので,公告をして,当然異議が出して,やむを得ない事由があるんだからみたいなことになれば,それは止まるということなんですけれども,そもそも自分が権利を主張すれば止まる制度にしていますので,結局,機会を与えて何も言わなかったということに,論理的にはなるのかなと思っていますので,何といいますか,結果的には,相続人の方から公告機会があるにもかかわらず権利主張しなかった場合と同様に,そのまま処理がされて,あとは,残りのものについて,家庭裁判所で,今度別途本当に出てきた後に遺産分割を請求した場合には,それを前提に処理がされていくんだろうと考えていました。   結局,機会あって言わないということと同じ処理かなと思っています。 ○今川委員 所在不明共有者や所在不明相続人が出てきた場合だけではなくて,例えば相続人間で,不動産の譲渡の許可を申し立てている場合に,所在が分かっている他の相続人の1人に例外に該当する正当な事由があって,分割調停を申し立てていくということがあったときに,裁判所の連携がうまく機能すれば,バッティングしているというのが分かると思うんですが,そもそもそういうバッティングもないわけではないと思ったんですね。 ○脇村関係官 まず前提として,ちょっとまだ私も煮詰まっていないところありますけれども,今回の仕組みを作る場合には,少なくとも登記上の相続人には通知が行くことになっていますので,そういった人たちが,どういうアクションを取ったとき,この手続がどうかという問題なのかなと思っています。   従前は,自分が取りたいというときについて,同じような申立てをしてくださいということを今,念頭に置いていたんですけれども,今,今川委員がおっしゃったのは恐らく,では,遺産分割を申立てしているケースもあるのではないかと。そのときには,この遺産分割の申立てしているんだから,この持分譲渡といいますか,取得について止めるべきではないかという御意見かなと伺っていて思いましたので,少しそこは,改めて検討したいなと思います。恐らく,やむを得ない事由がある場合に限らず,ほかの人が遺産分割をするんだから,あなた1人だけ抜けるのやめなさい,1人で取るのはやめなさいですかね,持分取得やめてくださいというようなことを言わせるべきではないかという御指摘かなと,今伺っていて思いましたので,もし今,今日御意見あれば頂きたいですけれども,そういったアクションの取り方について,また改めて検討したいと思います。 ○今川委員 続けてよろしいでしょうか。   今,脇村関係官がおっしゃったことで,部会資料41に関わってくるんですが,持分取得の場合は,他の共有者に裁判所から通知するという規定,注意書きがありますが,譲渡の場合はその規定がなく,1人が譲渡の許可の申出をしても,他の共有者には通知しないと思っているのですが,やはりする通知という前提なんでしょうか。 ○脇村関係官 そちらの方は,最終的に同意が必ず要件になりますので,嫌だったら同意しなければ権限を行使できませんので,そういう意味では,大丈夫かなと思っています。 ○今川委員 分かりました。はい,了解しました。 ○山野目部会長 今川委員と脇村関係官の今の意見交換で明らかになってきたことの一つとして,相続人の一部が所在不明であるときの持分の取得とか不動産の譲渡については,それらの手順を進めることができるということについて,一つ前に御審議いただいた通常共有のときと同じ規律をこちらに持ってこようとしていますけれども,遺産分割が問題になるかもしれないという,そのような意味で遺産共有という特殊性を有しているステージにおいて,単に通常共有のときの手順をコピー・アンド・ペーストして済む話かということは,もう一度いささか慎重に考えてみる必要があって,今川委員が御指摘のとおり,例外規定との関係がありますし,それ以外にも,ひょっとすると持分取得とか譲渡の権限を与える許可の裁判の手続が進んでいる途中で,ほかのそのような動きを考慮して,一旦止めなければいけないとか,やり直そうとしなければいけないとかという要請を感じさせる場面があるかもしれませんから,今,脇村関係官が少し視野を広げて検討してみますとお答えを差し上げたとおりでありまして,少しそこのところを,御注意を踏まえて検討してみたいと考えます。ありがとうございます。   そうしたら,司法書士会からは以上ということでよろしいですか。よろしければ、次は佐久間幹事にお願いしようと考えます。 ○今川委員 以上です,はい。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   今の点なんですけれども,5の例外規定ですが,この規定が,3とか4,2には及ばないということでよろしいんですかね。2というのは,通常共有と遺産共有の場合の特則については及ばないということでよろしいんでしょうか。すみません,まずそれを教えていただければと思うんですが。 ○脇村関係官 脇村です。   はいといいますか,2につきましては,そうですね,関係ないと。ここは通常共有の,ある意味,持分の決め方という前提を考えていましたので,ここについては,そこはリンクしないと考えていました。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   そうすると,3と4には及び得るということなのですが,先ほどのお話で少し気になったことがございまして,3と4の裁判所に,例えば,処分とか持分取得の許可,許可と言っていいのか,ちょっと分かりませんけれども,それを求める請求があった場合に,その審理がされているときに,5の例外規定に当たるということが出てきたならば審理を止める,というのは分かります。けれども,もし既に許可された,あるいは請求が認められた,それで譲渡が認められる,あるいは持分取得が認められるということになった後に,この事情がありましたと出てきた場合,裁判で認められたものまで覆るということが,何か先ほどの受け答えではあり得るとも聞こえたんですが,それはそうなんでしょうか。もしそうだとしたら,ちょっと問題ではないかなと思うのですけれども。 ○脇村関係官 私,申し上げました趣旨としましては,やっている最中に,遺産分割なり,あるいは共有も同じかもしれませんけれども,共有分割請求等が別途された場合には,場合によっては,そもそも止めた方がいいのではないかということを,一つ,もしかしたら検討すべきなのかなと思ったということを申し上げました。   その上で,後で考慮すると言いましたのは,やり直すというよりは,遺産分割前に持分譲渡等が,普通の場合,普通の相続をやった場合についてはされるわけですけれども,そういったことを,後の遺産分割では,ある意味考慮して判断する,論理的には,遺産分割の審判なりの中で,かつてそういうのがあったということを前提とした遺産分割,極端な話は,もう遺産がなくなっていますので分割しようがないんですけれども,そういった事後処理が,場合によってはあるのではないか,さらに,そのときには,906条2などの活用もあるんではないかということを申し上げたつもりでして,そういう自体をひっくり返そうということは考えていませんでした。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 いや,それだったら結構です。   申し上げたかったのは,このやむを得ない事由が何かということにも関わるんですけれども,この例外規定が,前回の価額償還という調整の仕方から変わったということは,それはそれとしてよろしいんだろうと思うんですけれども,価額償還で処理をしようという前回までの流れとしてあったのは,この10年が経過した場合には,いろいろな意味での処分がなるべく容易になるように,そして,効力が安定するようにということであったと思います。その点は,今回のように例外規定のあり方を変えるとしても,なお留意する必要があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 よく分かりました。   手続を止めることはあるけれども,手続をひっくり返すことはないという解決を,皆さんが抱くイメージとしながら,引き続き事務当局に置いて検討してもらうことにいたします。 ○山田委員 ありがとうございます。聞こえますでしょうか。   二つあります。一つ目から発言いたします。   部会資料42の6ページから7ページに関しまして,「5 例外規定等」のところです。この点については,私,賛成でありまして,前提となっている第1の1,2も含めて賛成です。特に,今発言をさせていただきましたのは,具体的相続分に基づく価額の支払請求というものが,今回,5の例外規定等のところで補足説明には触れられていますが,それについては,制度的な手当てをしないというお考えを示されているという点についてであります。   具体的相続分については,初歩的なことですが,法的な利益であり,そして経済的な価値であることは,確かなところであります。したがって,具体的相続分がこのような,第1の1から始めてですが,ルールにすることによって,その帰趨というか消長についてどう考えるかということを整理する必要があるのだろうと思います。事務当局でこういうふうに整理された過程で,イメージをお持ちであれば,お教えいただきたいと思います。   結論は,私,こういう解決が簡明であり,よいと思うのですが,しかし,具体的相続分をどういうふうに考えると,こういう具体的なルールを適切に基礎付けられるかという点について,お考えをお伺いしたいということです。   それから,もう一つは,今のことと関係しないですが,簡単なことですので,続けて発言してよろしいでしょうか。   部会資料42の1ページ,2の分割手続,(2)の通常の共有と遺産共有が併存している場合の特則に関してであります。少し前に,ここは発言が集中したところですが,遅れてしまって申し訳ありません。   通常の共有と遺産共有が併存している場合に関する規律を,今回のこの遺産分割に関する手直しに合わせて行うという趣旨と理解しました。そうしますと,このゴシック,太字で書かれているところの第2段落の「財産が数人の相続人及び相続人以外の者の共有に属する場合」という,この表現についてちょっと疑問がありますので,発言をさせていただきます。   蓑毛さんの文書,先ほどお使いいただいたものですが,私もこれを使って,一言発言を続けさせていただきます。   蓑毛さんの文書の図1ですが,一番単純な基本的な場合ですが,このとき,AとCが同一人物だというケースもあると思います。すなわち,AとBが元々通常の共有だったと。Bが亡くなって,C,すなわちAが相続人としてDと共同相続したという例であります。これは,通常の共有と遺産共有という言葉を使っていると,通常の共有と遺産共有が併存しているという言葉に素直に当たるのですが,それを,相続人及び相続人以外の者というのに言い換えますと,少し紛れが出てくるように思います。   ここについては,それでも大丈夫なのだということであれば,とやかく申し上げたいということではないのですが,ちょっと疑義が,私には生ずる余地があると思いましたので,一言発言させていただきました。 ○山野目部会長 二つお尋ねがありまして,一番目のお尋ねで,事務当局の方から所見を述べてもらいます。   後段は,お尋ねというよりは,むしろ文言の注意を頂いたと受け止めるべきかもしれませんが,あわせて,何かあれば案内ください。 ○脇村関係官 脇村です。   後者の方からいきますと,すみません,ほかのいい用語があれば是非教えていただきたいというのが正直なところでございまして,私も考えていますが,是非よろしくお願いいたします。   最初の御説明では,恐らくこの部会資料,第1の1の書き方にも関係してくることかと思っていまして,恐らくイメージとしては,法定相続分の共有持分がある,あるいは,そういったのを修正する,具体的相続人の利益,権利といっていいのかもしれませんが,そういったのが,一定の機会によってなくなっていくんだろうなというようなイメージで捉えていたところです。   ただ,今の書き方ですと,その辺が,家裁はこうするみたいな書き方になっていて,うまく表現できていないのではないか。実際問題として,従前の議論でも,みんなの合意があれば,それに従ってやっていいんだとすると,家裁はと書くと,調停どうするんだというようなこともありますので,少し表現は,どうしたらいいかというのをまた考えたいと思いますが,イメージとしては,そういった権利が一定期間で消えるというんですかね,そういったことではないかというようなことを,私自身はイメージしておりました。 ○山田委員 分かりました。   通常の共有,遺産共有の方の表現については,私が対案を考えて発言したわけではありませんので,適切な時期までに思い付きましたら,事務局に会議の外でお伝えしたいと思います。   それから,例外規定の方ですが,やはり時間がたつと消えるという考え方になるのだろうと,今,お話を伺って思いました。そこが,恐らく遺産分割においては,具体的相続分は主張できないけれども,それとは別に,地方裁判所で価額相当分の支払請求が成り立つのではないかという考え方を,封ずるというか,とらないとすることの根拠になるように思います。   その点,まだこの部会で意見が分かれているのであれば,決めなければいけませんし,あるいは,そこは今後の運用に任せるということもあるのかもしれません。しかし,今回事務局がお考えになっている考え方で部会の意見が一致するならば,遺産分割の外でも10年がたった後,具体的相続分を法的な利益として,それに基づく金銭の支払いを求めることができるということにはならない解決の手がかりを明らかしておくことが,私は望ましいと思います。 ○山野目部会長 山田委員から二つ問題提起を頂きました。   整理をいたしますと,1枚ものの紙の図1に関連して,文言の御注意を頂いた点は,今後とも検討することにいたしますし,委員,幹事においても,何かアイデアを得られた際には,事務当局の方にお伝えいただきたいと望みます。   図1について,山田委員から御指摘いただいた文言に関する御注意,それから,しばらく前に図2に関連して蓑毛幹事から規律表現が論理的にうまくいっていないという疑問の提示を頂いた点があり,いずれの点についても,文言の整理に努めてまいります。   皆さんに読み込んでいただき,本当によくいろいろな点をお気づきになる,感銘を受けると申したら変ですけれども,感銘を受けてお話を聞いておりました。何か補足説明を読んでしまうと,ふむふむ,そうだよなと,私などは凡庸な性格をしていますから,文言に疑問を抱かないで見てしまったものですけれども,なるほどと感ずる諸点を鋭く御指摘いただき,有り難いことでます。   それから,山田委員がもう一つ御指摘いただいたことというものは,それとして,また別な重みを持っておりまして,10年を経過した後の具体的相続分はどうなるかということに関して,ここまでの,本日までの部会審議の成果の確認として,確実に言えることは,例外規定に当てはまる場合があり得ることを留保して,遺産分割においては考慮されないことになると,ここまでは争いがないものとして固まっておりますが,なお,金銭の支払請求権として存続することがあると考えるか,ないと考えるかについて,確かに御注意があったように,ここではっきりとした議論をしてこなかったかもしれません。今回提案がこういうふうに,少し方向が改められたことによって,初めてその問題が意識されるという側面もあるかもしれません。   山田委員からは,金銭の支払請求権として存続させることは相当でないという解決の御提案を頂き,根拠を含めてごもっともだであると感ずるとともに,このことは,何となく後で学者の解釈に任せましょうとか,運用で工夫しましょうとかというサイズの話ではありませんから,具体的相続分の,正に山田委員がおっしゃったように,消長の話は,国民が相続に関する法律関係について有し得る法的地位の根幹に関わることですから,何となく意見交換をしませんでしたけれども,こうなりましたというわけにはまいりません。本日でも結構ですし,この後の審議の機会でも結構ですから,委員,幹事の間において,意識をしていただいて,御意見をお出しいただきたいと望みます。   今話題になったことでも結構ですし,それ以外の点でも,引き続き承ります。中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。   ただいまの山田委員の指摘された問題は,当初から潜在的には意識されていたのではないかと思います。遺産分割の期間制限が当初話題になったときに,その期間制限を設けるということは,具体的相続分についての,言わば除斥期間を設けるようなことになるのではないかと,こんな問題点の指摘もあったかと思います。   具体的相続分と申しますか,特別受益ないし寄与分について,10年で消えてしまうというように考えるというのは,これはかなり思い切った方向でありまして,そう軽々には言えないのではないかと思います。   その上で,例外規定についてなんですけれども,5の例外規定,これを考える際には,処分の相手方である第三者との関係と,内部で具体的相続分を主張できるかどうかということは,分けて考えるべきだと思います。これは,先ほど佐久間幹事の御指摘から明らかになってきたことだと思います。内部で具体的相続分を主張できるのはどんな場合か,それがやむを得ない事由のある場合だということで,これは分かりやすいと思いました。   以前,第14回会議において,全当事者の合意による期間の延長というものについて御検討をお願いしたんですけれども,やはりそれは無理だということで,御検討いただいたことには感謝したいと思います。ただ,これは利害が対立することでして,つまり,特別受益のある人は,その10年に逃げ込んでしまうと,そこで得をするということになりますので,意図的な引き延ばしであるとか,あるいは,もっと言うと,10年を詐害的に経過させてしまうというようなことになってくると困りますので,やはりやむを得ない事由による対応というのは必要だろうと思います。   そういたしますと,やむを得ない事由の前に括弧書きがあって,遺産分割を禁止する定めがあることというような例を挙げること,これはこれで明快ではあるんですが,何か法律上の障害がある場合に限って,やむを得ない事由が認められるということになると,それはやはり狭いのではないかと思いますから,この括弧はない方がいいように思いました。   この5については以上です。   それから,あと,全く細かいことというか,詰まらないことなんですが,その直前の4,所在等不明相続人がいる場合の不動産の譲渡というところの第2パラグラフの3行目に,「不動産を売却することができる」とあるんですが,ここだけ「売却」になっていて,「譲渡」ではないのは何か理由があるのかどうか,これは細かいことですが,お教えいただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   御意見の前段は,括弧書の例示はしない方がよいという御意見を承りました。   後段の字句の指摘は,筆が滑った間違いだと思いますが,事務当局の方……,間違いだとうなずいています。売却ではなくて,譲渡することができるというものが相当であると考えられますから,次回から注意をいたします。   中田委員,お続けになることがあったら,お願いいたします。 ○中田委員 ありがとうございました。結構です。 ○潮見委員 非常に簡単なことで,教えていただきたいという趣旨の質問です。   先ほどから少し問題にもなっていました,第1の2の(2)の②,席上配布資料でいけば,②のところは2ページ目の2行目になりますが,この②についてです。遺産の分割の審判事件又は調停事件が係属する場合において,相続人が当該請求に係る訴訟において,相続人間の分割をすることに異議の申出をしたときということがありまして,簡単な確認なんですけれども,仮に異議の申出をしなかった場合,遺産に属する共有持分というものは,いつの時点で遺産分割の対象から,つまり審判事件,調停事件の対象から外れるという理解をされているのでしょうか。その辺りを,少し教えていただきたいということがあります。   もちろん,先ほどから,これは弁護士会の意見でも出ていましたような,異議の申立期間を何とかしろとか,あるいは相互の手続の間の連携というものをきちんとしなければいけないというのは,私も同感ですけれども,それを踏まえてなお,分かりにくかったところがありますので,教えていただけませんでしょうか。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ②の異議の申出がされないということになったときの,共有物分割請求訴訟を与っている地方裁判所の方の対応ははっきりしているものでありまして,共有物分割の審理を続ければいいということになるであろうと考えます。   半面,この異議がないときの審判事件,調停事件を与っている家庭裁判所はどうすればよいかは,ちょっと迷う,という問題について,今,事務当局の現時点での考えを尋ねますけれども,恐らくそういうことがあることから,裁判所同士が緊密に連携してくださいと,今川委員からITの時代ですよというお話があったものだろうとも受け止めています。   事務当局からどうぞ。 ○脇村関係官 判決確定時かなとは思っておりまして,共有物分割訴訟が終わったというか,認容判決か,効力発生して初めて外れるのかなと思っていましたが,すみません,もしかしたら違う考えがあるのかもしれません。 ○潮見委員 もしそうであれば,その間,審判,あるいは調停もそうですよね,この手続はどういうふうなことになるのでしょうか。 ○脇村関係官 すみません。   私のイメージとしては,待つんだろうなというのが第一感でございまして,プラス,話がついているんであれば,除いて一部分割をやるということかなと思っていましたが,家庭裁判所の方で終わった後を見据えないと駄目だと思うのか,当事者と相談して残りやろうというのかは,適宜判断していただけないかなと思っていました。 ○山野目部会長 家庭裁判所が待っているという扱いになるから,今川委員がおっしゃったように,裁判所間で連絡を緊密にしてくださいというお話になるものであろうと思います。   潮見委員,お続けください。 ○潮見委員 考え方は分かりましたけれども,実際に調停とかをやったことがある人間からするのは,なかなか大変かなということはあります。特に,共有物分割請求訴訟というものが長引いた場合に,特に遺産分割の辺りで,一部分割をうまく使えれば問題がないとは思うんですけれども,結構,どこまでが遺産の範囲であって,それをどういうふうに分割するのか,全体を見極めないと先に進めないというようなことも,まま見受けられましたから,その辺りは,もちろん裁判所間の連携ということと,当事者を納得させるということで,うまくいくのかもしれませんけれども,やはり少し気になるということだけは申し上げておきます。ありがとうございました。 ○山野目部会長 潮見委員のお話を伺っていて,なるほどこの局面に立たされた家庭裁判所の事件運営は,いろいろ悩ましい,特に時間が長く経過するようなことになってきますと,悩ましい局面があるだろうということが,実感として分かってまいりましたから,事務当局において検討を続ける際,裁判所の方とも運用を含めて御相談を申し上げながら,検討を進めるということにいたします。ありがとうございます。 ○松原関係官 松原でございます。   第1の2の(2)に関係して,3点申し上げさせていただきたいと思います。   まず1点目は,異議申出期限の関係で,この点は,蓑毛幹事からも異議申出期限を定めることが望ましいのではないかという御発言がありましたが,最高裁としても同様の意見でございます。   ただ,この場合に,部会資料で御提案されているように,裁判所,これは共有物分割訴訟が係属している地裁ということになろうかと思いますが,地裁が期限を定めるとした場合,期限設定の有無や期限の長さが裁判所によって異なるとなりますと,やはり家裁において予測可能性を欠くことになり,遺産分割手続の進行上混乱が予想されますので,この点に関しては,法律上一律に異議の申出期間を定めることが望ましいのではないかと思われます。   2点目は,先ほどおっしゃっていた地裁と家裁間の情報共有の方法という点でございますが,部会資料にございますように,共有物分割手続と遺産分割手続の間で判断の齟齬が生じないようにするためには,家裁において,遺産分割手続の中で,共有物分割訴訟の係属の有無及びその結果,異議の申出の有無,裁判所が申出期限を設定するとした場合には,異議の申出期限がいつまでかなどを把握する必要がありますが,現行の枠組みを前提とする限り,これらの情報は通常当事者からしか入手できないため,正確な情報収集について隘路があるように思われます。地裁と家裁の間の緊密な連携というお話も頂きましたが,家裁においては,どの地裁に共有物分割訴訟が提起されているのかというのは,現行の枠組み上はなかなか分からないということもございますので,家裁がこれらの情報を確実に入手できるための仕組みでありますとか,また,家裁にこれらの情報が提出されずに,地裁と家裁の判断に齟齬が生じた場合の効果について,御議論いただければと思います。   3点目に関しましては,これも,一部先ほどの議論の中で出ていた点ではございますが,共有物分割訴訟の結果が残余財産の分割に与える影響についてでございます。遺産共有部分が共有物分割訴訟の中で分割された場合で,かつ,遺産分割手続において,具体的相続分の主張が可能な場合も考えられると思われますが,このような場合に,当事者の一部が民法906条の2の同意をしなかった場合には,遺産分割手続において,残余財産のみを分けていくことになると思われます。その場合,共有物分割訴訟の結果取得したものを,残余財産の分割に影響させるのか否かというのが,実務上一つの争点となり得ると思われます。共有物分割訴訟を経ている場合の残余の遺産分割への影響について,当事者間で意見が統一できない場合にどのように考えるのかに関して,規律の要否も含めて御議論を頂ければと思います。   引き続き,第1の5の例外規定に関して,2点ほど,御質問と発言をさせていただければと思いますが,まず,このやむを得ない事由に関して,どのように解釈するかということに関して,今後,このような規律が設けられた場合には,実際の訴訟において,病気療養中であったとか,海外勤務を命じられて日本にいなかったなどの,属人的な事情が主張されるということが予想されるように思われます。このような事情がやむを得ない事情に該当するかについてはどのように考えていらっしゃるのかについて,もし今のお考えがあれば,お聞かせいただければと思います。   また,この点の補足説明の2で,遺産分割期間経過後に相続人となった者の取扱いについての記載がございまして,遺産分割期間経過後に相続人となった場合については,これは,やむを得ない事由の一つとして考えられるという記載がございますが,遺産分割期間の経過後に相続人となる場合としては,死後認知あるいは再転相続のいずれかであると思われますが,死後認知の場合については,そもそも価格賠償しか認められていないこととの関係性が問題になりますし,また,再転相続の場合については,そもそも再転被相続人が遺産分割の申立てをすることができたのではないかと思われることとの関係,これは,やむを得ない事由が再転相続人にのみ認められれば足りるのか,それとも再転被相続人にも認められる必要があるのかということにも関わるのかもしれませんが,この点についても,更に検討する必要があるのではないかと思われます。 ○山野目部会長 松原関係官から幾つか問題提起を頂いたことについて,ほかの委員,幹事から御意見があれば,今承りますし,特段なければ,引き続き検討することにいたします。   それから,お尋ねとして1点頂いた,御発言の順番でいうと,おっしゃった後ろから二つ目の事柄は,お尋ねということでお話しいただきましたから,現時点での事務当局の考えを尋ねますけれども,意見としては,属人的な事由もやむを得ない事由として扱った方がよいという感覚もおありでおっしゃったようにも聞きましたけれども,そのような受け止めでよろしいですか。 ○松原関係官 そういうわけではなく,そこも含めて,どういうふうにお考えかというところをお聞かせいただければということでございます。 ○山野目部会長 分かりました。   事務当局の方で考えがあれば,お話をください。 ○脇村関係官 ここについてはいろいろな御議論あろうかと思いますが,参考になるのは,やはり今の債権の消滅の起算点のできるときの解釈について,客観的に判断していこうという議論かなと思います。ただ,そこは別に,属人的なものを排除しているわけではなくて,主観的なことではなく,客観的状況からしたら,やむを得なかったねということが言えるかどうかで決まってくると思いますので,そういった議論が従前参考になろうかと思います。   ただ,今,例に挙がっていた病気ですとか,そういったケースは,従前そういった債権消滅について,当然には左右しなかったと思いますので,もちろん意思能力というか,被後見人があって,後見がないような,正に時効の停止のような,停止と言わないですね,完成猶予などの議論があると思いますが,そういったのを参考に,属人的であっても,客観的であれば,それは主観的な認識ではないですが,客観的状況であればやむを得ない事由があるということは,一つ考えとしてあるのかなと思っています。   あと,死後認知の話,ちょっと誤解かもしれませんが,現行法で,死後認知があり,遺産分割されていたケースは価額請求ですけれども,今回は,遺産分割していないケースなので,余り現行法の死後認知の関係は考えなくても良いのかなと,ちょっとすみません,うまく言えないですけれども,ちょっとまた考えたいと思います。 ○山野目部会長 しばらく前に,平川委員が別な場面で話題にされたような,この場合でいうと,相続人が認知症などに罹患して判断能力が減退しているけれども,成年後見人を選任する手続が今進んでいる最中で,必ずしも進捗していません,という状態で,この10年の期間の満了を迎えるような場面を想像すると,なかなかいろいろ考え込まなければいけなくて,険しい判断を求められるというようなことは,今,脇村関係官も少しそれに近いことをおっしゃいましたけれども,考えられるところでありまして,そういった場面があるからいろいろ中田委員が問題にされた,括弧書の例示を入れるかどうかというところの触り方が非常に微妙で,慎重を期さなければいけないとも感じられます。   松原関係官,お話をお続けになることがあったら,お話しください。 ○松原関係官 ありがとうございます。   第1の6の「その他(遺産分割の申立ての取下げ等)」に関する部分について,2点だけ付加させていただければと思います。   1点は御質問でございますが,この点,前回の部会資料31では,同意擬制の規定を設ける必要性についての記載がございましたが,今回の部会資料では,この点についての記載がございませんでした。これは,提案の規律を設ける場合,同意擬制の規定を設ける必要があるということに関しては特段変更はないという理解でよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 という1点でよろしいですか。 ○松原関係官 2点目は,先ほど蓑毛幹事の方から,日弁連のワーキンググループの方で中止規定を設けてもらいたいというような御発言があったとお伺いしました。   この点に関しましては,いろいろな考え方があるところだとは思いますけれども,現在の実務を前提としましても,具体的相続分の主張制限規定の適用を回避するために,遺産分割事件を維持しなければならないような事案については,調停委員会において,民事訴訟が係属した場合に,具体的相続分の主張制限に関する規定の存在を伝えるなど,十分な説明を行った上で,当事者がそれでも遺産分割事件の維持を希望するのであれば,それ以上に取下げの促しをしないということで足りるようにも思われます。   また,遺産分割事件が維持される場合には,事案ごとに適切な期間を空けて期日指定をし,当事者から民事訴訟の進捗状況を確認するなどしながら,遺産分割事件の進行について協議することなどによって,適時適切に訴訟結果を把握することが可能ですし,当事者から書面により適宜報告がされるのであれば,期日を取り消して,再度指定することを繰り返して,期日の出席や口頭での説明を求めないということも可能ですので,この点については,現在の実務を前提としても対応することが可能であり,かつ,柔軟なかつ適切な対応ができるのではないかと考えておるところです。   他方で,家事事件手続法の立法の際にも指摘されていたことではございますが,仮に中止規定を設けた場合には,熱心な当事者と不熱心な当事者がいる事案で,熱心な当事者にとって不利益な訴訟結果が出た場合に,中止決定がされたままになってしまうというリスクが少なからずあるように思われます。このように,現在の実務を前提としても,運用の工夫により中止規定の趣旨,目的は十分に達せられ,むしろ中止規定よりも利点が大きいと思われるのに対して,実務上の弊害も予想されるところではございますので,中止規定の必要性,相当性については,慎重に御検討いただければと思うところでございます。 ○山野目部会長 後段は意見として承りました。   前段がお尋ねでありましたから,事務当局からお願いいたします。 ○脇村関係官 すみません,前段は書き忘れていました。基本的に,考えに変更はございません。改めて,次回出させていただく際には,明示したいと思います。 ○山野目部会長 松原関係官,今の回答でよろしいですか。 ○松原関係官 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ただいま松原関係官から何点か問題提起を頂いたことについて,現時点で伺っておく御意見を聴取しておきます。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,後でまた議事録を見ていただいて,幾つか問題点の指摘を頂いたところについて,委員,幹事がお考えになることを,改めて御指摘いただければ有り難いと考えます。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   誠に細かな点の確認で申し訳ないんですが,部会資料42の第1の3,同4ページの「相続開始時から10年を経過するまでは,この限りではない」ということの意味についてです。蓑毛幹事から配布していただいた資料の図を使わせていただいて,その図の3のケースで,一番下にE,F,C,Dとあって,CがこのE,Fに対して共有持分の取得の請求をしたいと考えたときに,Aが亡くなったのは5年前,Xが亡くなったのは10年前というときに,E,F個人個人で考えれば,まだ相続開始から5年しかたっていないので,10年経っていないということになるんでしょうけれども,その前のE,Fが相続したXの相続開始からはもう10年たっているので,この場合には,この10年の制限がかからないと考えてよいでしょうか。これは基本的に数次相続が生じた場合の考え方になるんだと思いますが,それが質問の第1点です。   それから,第2点は,この制度を使うときに,先ほど部会資料の41の方でお伺いすべきだったのかもしれませんけれども,例えば,E,Fにその共有持分の取得請求をするときに,その供託金額は,Eに幾ら,Fに幾らと個別的に供託しなければいないのか,それとも,Aを相続した分という形で,まとめて供託することを許す趣旨かという点です。もしE,Fそれぞれについて計算しなければいけないということであれば,E,Fの相続開始からはまだ10年たっていないから取得請求できないことになってしまいそうですが,それだと共有持分の取得がかなり難しくなると思われますので,確認できればと思いました。 ○山野目部会長 前段のお尋ねの方が根本的なことで,後段がその発展といいますか,付随的なお尋ねであると受け止めまして,いずれも現時点での事務当局の考えを尋ねてみることにいたしましょう。 ○脇村関係官 ちょっと,うまく言えるかどうかあれなんですけれども,少なくとも第1次相続から10年たっていないと,第1相続自体の持分取得はできないと思っていました。ただ,そこで言っている取得というのは第1次相続の持分全部でございますので,例えば,そのうちの相続人の一部が不明だけれども,残りは不明ではないというケースについては,多分使えないんだろうと思っていました。   プラス,再転相続については,そういう意味で,今のE,Fですかね,Eだけの持分を取りたいというケースについては,当然Eの被相続人の死亡時から10年たっていないといけないという整理かと思っていましたので,先ほどおっしゃっていた,一番最初から10年たっていたからといって,当然使えないという整理かと思っていましたけれども,一部しか使えないケースは使えず,一部だけのケースについて使いたい場合には,その人の10年がプラス要るのではないかと,私としては考えていたところです。   そういう意味で,供託の金額も,全員合わせて取ると,第1次相続の持分全部ですかね,取るときについては,全額を,ある意味その人の相続人全員に対して供託するということかなと理解していました。 ○山野目部会長 そうするとあれですね,X死亡から10年経っていれば,A死亡から10年経っていなくても,EとFのをまとめてCがこちらによこせということは,言えるということですね。 ○脇村関係官 はい。ちょっとすみません,うまく,多分そうだと思います。 ○山野目部会長 松尾幹事は言えるだろうという前提でお話を始められたと理解しますし,そうであろうという気がしますけれども,違いますか。 ○脇村関係官 そうですね,はい。 ○山野目部会長 そこはそのように考え,供託金は,だから,分けないでまとめて供託するという解決で,整合性をとるというお答えになると考えますけれども,松尾幹事,何かお考えと違っていたり,何か前提や理解が異なっていたら,お続けください。 ○松尾幹事 この共有持分の取得制度を,共有者不明土地の実情に即して使いやすいものにしていくためには,10年以上前に死亡したAを相続したEとFの持分を一括して供託することが許されるべきではではないかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   しかし,大変ですね。これが出来上がったときに,こういうもの大学の試験とか何かに出すものですかね。とても何か,ここで議論していてもかなり難しい話ですけれども,解けるものですかね。そういうことは,そのときのその立場の人たちが心配してすればいいことではありましょうけれども。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料42について,大筋,部会資料42の全般でお出ししている論点について,御理解や賛成の御意見を頂いたとともに,細部については,繰り返し確認をいたしませんけれども,今後考えを深める中で,明らかにしていかなければならない細目の点が,かなり豊かに御指摘いただいたと受け止めます。この時点で,既にたくさん御指摘を頂いておきませんと,後々どこかでつまずくということになりますから,御指摘を数々頂いたことは,大変有り難かったと感じます。   部会資料42にいての審議をここまでとして,次回以降,またここで扱った題材について,お諮りをするということにいたします。   本日御用意をいたしました部会資料39から部会資料42までについての内容にわたる審議を終えました。   次回の部会会議について,事務当局から案内を差し上げます。 ○大谷幹事 御案内します。   次回の日程は,9月15日の火曜日,場所はこちら,大会議室なのですが,普段,最近午後1時からお願いをしておりましたけれども,会場の都合で1時30分スタートにさせていただきたいと思います。1時30分から,枠としては午後6時までと,早く終わればそれまでということになりますけれども,枠としては午後6時までを予定させていただければと思っております。   テーマといたしましては,実体法関係で,二巡目に入ってまいりましたけれども,財産管理制度や相隣関係等について,部会資料をお作りをして御審議をお願いしたいと思っております。   次回もまた,希望する委員の方には,ウェブで部会に御出席いただく方法によって開催させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 第18回会議の開催について御案内を申し上げました。   その点を含め,この際,委員,幹事から部会の運営について,何か御意見,お尋ねがあれば承りますが,いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日も長時間にわたり審議に御協力を頂きまして,ありがとうございました。   これをもちまして,第17回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-