法制審議会 民法・不動産登記法部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  令和2年9月15日(火)自 午後1時30分                     至 午後5時03分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第18回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日の審議のスケジュールについて御案内を申し上げます。   会場の都合上,前回よりも遅い開始時刻といたしましたから,午後1時30分から午後6時までとなります。適宜に休憩を挟みながら進めてまいりますから,どうぞよろしくお願いいたします。   委員の交代について,御紹介をいたします。   このたび,公益財団法人連合総合生活開発研究所連合総研主幹研究員の平川則男臨時委員が辞任され,その後任として,日本労働組合総連合会連合総合政策推進局長の佐保昌一臨時委員に御参加いただくことになりましたから,自己紹介をお願いできればと考えます。   佐保委員,どうぞよろしくお願いします。 ○佐保委員 着席したままですみません。   御紹介いただきました,連合で総合政策推進局長をしております佐保といいます。本日より,平川と交代で本部会に出席することになりました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   また,前回御案内いたしましたとおり,最高裁判所事務総局家庭局の課長の異動に伴い,新しく木村匡彦課長が幹事に就任されました。本日御出席になっておられますところから,自己紹介をお願いいたします。   木村幹事,よろしくお願いいたします。 ○木村(匡)幹事 最高裁事務総局家庭局第二課長を拝命いたしました,木村匡彦と申します。宇田川の後任ということになります。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   本日は,阿部委員,衣斐幹事が御欠席でいらっしゃいます。   配布資料の確認を,事務当局から差し上げます。 ○小田関係官 今回,部会資料43から47までを事前送付しております。各部会資料につきまして,お手元にないようでしたら,事務局までお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 御案内を差し上げた部会資料がお手元にまいっておりますでしょうか。   そうしましたならば,審議の内容に進むことにいたします。   部会資料の43をお取り上げくださるようにお願いいたします。   財産管理制度の見直し,その中でも,所有者不明土地管理制度についてお諮りをいたします。   部会資料43の1ページ(1)のところで,前回,第15回会議において御審議をお願いした,部会資料33の基本的な方針を踏まえたものを再び提示しております。   引き続きまして,同じ部会資料の5ページにまいりますけれども,イといたしまして,細目に関わる事項として,管理,処分の権利が,管理人に専属すること,範囲を超える行為をするには裁判所の許可が要ること,これに違反する場合には無効とし,ただし,善意の第三者に対抗することができない旨の第三者保護の規定を設けること,登記を嘱託することなどについて,これも部会資料33でお示ししたところを踏まえ,再びお出ししているものでございます。   部会資料の6ページから7ページにまいりますと,ウからエと,この制度について更に細目についての御提案をお示ししておりますけれども,いずれも部会資料33でお諮りしたものを整えた上で,大きく内容を変更することなく,本日お出ししているものでございます。   部会資料43でお諮りする所有者不明土地管理制度の全般について,御意見を承ります。どうぞ御随意に御発言をくださいますようお願いいたします。 ○蓑毛幹事 部会資料43について,日弁連ワーキンググループでの議論を紹介します。   部会資料43の本文は,いずれも基本的に賛成します。その上で,少し細かいですが,それぞれの箇所について,議論になったところを申し上げます。   まず,部会資料1ページ本文の申立権者についてです。申立権者である利害関係人について,例示して分かりやすくしてほしいという意見もありましたが,今の提案のままでよいという意見の方が多数でした。   それとは別の問題として,実務上,この申立てをすることが想定される者として,地方公共団体の長が考えられるので,民法ではなく,所有者不明土地特措法に定めを置くことになるかもしれませんが,地方公共団体の長に申立権があることを明確にすべきとの意見がありました。   次に,部会資料4ページの管轄裁判所についは,所有者不明土地管理人の選任,監督,あるいは土地の売却の可否や代金の当否などの法的判断が必要となることからすると,民事における財産管理事件を基本的に取り扱うこととされている地裁がふさわしいという意見が多数でした。   それから,部会資料4ページの裁判を受ける者についての箇所で,所有者不明土地の所有者に対する決定の告知について,失踪宣告と同様の特則的規律を設けるという説明に対して,疑問が示されました。所有者不明土地管理人の選任については,失踪宣告で死亡とみなされる場合とは異なるではないかと。不在者財産管理人が選任されても,家事事件手続法146条には,失踪宣告の場合の家事事件手続法148条4項のような規定はないが,それとの関係をどう考えるかという疑問が出されました。   部会資料5ページの所有者不明土地管理人の権限等,イの部分について,基本的に賛成しますが,一部のメンバーから,今回,動産に関する権限の規律が本文の①に取り込まれたことによって,このように,土地と動産を同列に並べた定め方にすると,管理人の権限又は義務が,土地と動産について同じものになると解されてしまうのではないかという疑問が出されました。管理人は土地の管理に必要な範囲で動産の管理を行えばよいのだと理解していますが,このように土地と同列に並べるということで,誤解を招くのではないかと思います。   部会資料6ページのウは,特段意見はありませんでした。   部会資料7ページのエ,所有者不明土地等に関する訴えの取扱いに関する中断と受継の規定を設けるという提案について,基本的に賛成です。ただし,この規定は,破産法44条の規律を参考にして作られたと思うのですが,破産法44条6項に相当する規定がありません。部会資料7ページのエ③で,所有者不明土地管理人は受継することができる,相手方も受継の申立てができるという規定になっていて,受継が必要的ではありませんので,いずれも受継せず中断したままになる可能性があります。その状態で,所有者不明土地管理命令が取り消された場合は,所有者不明土地管理人は訴訟の当事者になっておらず,④及び⑤の適用外ですので,④⑤とは別に,所有者に訴訟を受継させる仕組み,つまり破産法44条6項に相当する規定が必要だと思います。   その後の部分は,本文についていずれも賛成します。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見のお取りまとめを頂きまして,ありがとうございました。   部会資料43を起案した関係官から,現時点で何かありますでしょうか。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑でございます。   ありがとうございました。5点ほど御意見など頂いたかと思います。   最初の申立権者のところにつきましては,自治体の長にも申立てができるようにという御趣旨の御意見かと思いますけれども,こちらについては,所有者不明土地特措法の所管の省庁ともよく相談してまいりたいと思っております。   それから,裁判を受ける者についてでございますけれども,不在者財産管理人については,御指摘のとおり,このような規律は設けられていませんが,今回の所有者不明土地管理制度の場合は,不在者財産管理人とはやや異なり,本人の管理処分権も制限するという効果が生じるというところがありまして,そういう意味では,やはりこの規律をもし置かないとすると,告知の対象になってしまう可能性もあるのかなと考えてはおりました。もしかしたら,異なる考え方もあるのかもしれませんので,御議論いただければと思っております。   それから,イの動産と同列になるのではないのかということ,土地と動産を並べて書いているということにつきましては,これまでの部会資料と同様,私どもの考え方としましては,土地の管理に必要な限度で,その動産についても管理処分を行うということになるのかなとは思っております。そこの考え方を変えているものではないんですけれども,適切な表現ぶりについては,引き続き検討してまいりたいと思っております。   最後に,中断,受継のところで,破産法44条6項に相当するような規定が必要になるのではないかという御指摘を頂きました。44条6項というのは,当然に受継するということになっておるんですが,これは,破産の同時廃止などを念頭に置いた規律なのかと理解しております。今回の所有者不明土地管理制度ですと,管理命令がされてから取消しが直ちにされるということは,想定しにくいのかなと思っておりましたので,間に中断は必要になるのではないのかなと思っておりました。そういう意味で,44条6項に相当するような規定は今回は置かないということで,今回の提案の中ではさせていただいているところですが,これについても,様々な御意見を賜りたいと思っております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,何か補足なさることはおありでしょうか。 ○蓑毛幹事 最後のところだけ。土地管理命令が発令されて,土地管理人も受継しない,相手方も受継しない,こうなった場合は,訴訟は中断したままになる。その後に,土地管理命令が取り消された場合,中断の効力を失わせて当初の当事者に訴訟が係属するような仕組みを設けないと,うまくいかないと思ったのですが,そういうことではないですか。 ○宮﨑関係官 おっしゃるように,そういうケースは,理論上は出てくる可能性もあるのかもしれませんが,一般的には,所有者不明土地管理人は受継をすることになるだろうと思っておりますので,受継もされないままに取消しがされて,また元の状態に戻るということは,レアケースになるのかなとは思っておりました。   それでも,そのような場合に備えて,何かしらの手立てを置くという考え方もあるのかもしれませんが,管理命令が取り消された後は,中断状態を解消して,所有者が訴訟を追行していくということは,別に規律を設けなくとも可能という解釈もできるのではないのかなと考えておりました。 ○蓑毛幹事 はい,分かりました。 ○山野目部会長 ただいま議論をしていただきました受継と中断のところ,もう少し事務当局においても検討して,皆さん方に御紹介をしたいと考えます。   ただいまの意見交換があった事項でも結構ですし,それ以外の事柄でもよろしゅうございます。 ○今川委員 我々も,この財産管理制度,所有者不明土地管理制度については,基本的には賛成です。   幾つか意見がありますが,(1)のアについて,補足説明の4の管轄裁判所ですけれども,簡易裁判所も管轄裁判所としてほしいという要望が司法書士の中で多いのですが,理由は,前々回の部会で申し上げましたとおり,制度を利用しやすくするために,選択肢が増えることはいいのではないかというようなことからの意見要望であります。   補足説明の2のところですが,所有者不明土地管理人と不在者財産管理人とが競合した場合に,土地管理人には権限が専属するので,不在者財産管理人の処分行為は効力を有しないということについては異論はないのですが,所有者不明土地管理人については登記情報を確認するという方法はあるのですが,不在者財産管理人にはそういう方法がありませんので,理屈上は,不在者財産管理人が土地の処分について家裁の許可を得るということと,所有者不明土地管理人が選任されて嘱託登記がされるというのが,同時に起こるということもあり得ると思います。ほかにもいろいろ競合する申立てがされる可能性があるので,前から何回も言っておりますが,競合する申立てがあるかどうかが確認できるような仕組み,裁判所の情報連携があれば,よりいいのではないかと思います。   それから,補足説明3の申立権者についてですが,利害関係人として民間の買受希望者も一律に排除されるわけではないとされております。公共の利益と,個人情報というか個人の権利のバランスの問題なので,我々も全面的に排除すべきだと考えるわけではありませんが,買受希望者を認めるにしても,飽くまでも利害関係人として認めるわけなので,申立ての濫用がないように,一定の絞りをかけることは当然必要だろうし,その基準は,民法に規律を置くことができるかどうかは別として,何らかの形で一定の基準は示すべきだと思います。   それから,買受希望者が申立てをする前提として,所有者の探索が当然必要となりますし,そのためには,住民票や戸籍事項証明書等の交付請求をしなければならないですが,単なる買受希望者に交付請求を無限定に認めるということは,まずないのだと思います。そして,その戸籍等の交付請求は,裁判所に申し立てる前に行うものであるので,結局は,戸籍法10条の2第1項に該当するかどうかは,役所の窓口において判断されることになってきますので,戸籍事項証明書の交付のための要件も,何らかの形であらかじめ一定基準のようなものを示しておく必要があると思います。   それから,イの補足説明3ですね,ページ数からいくと,6ページの債務の弁済ですね。管理人が不動産を売却するときに,抵当権等の抹消をどうするかということで,債務の弁済という切り口で説明をされておられますが,このような理論的構成はまず置いておき,我々実務の感覚からすると,売却するためには抵当権を抹消することが当たり前で,抹消ができなかったら売れな,買受人も,担保権が付いたままで買い受ける人はまずいないのだろうと思います。   普通は,管理人が売却するためには抹消の請求を銀行にして,銀行は,ただでは抹消できませんと,では,幾ら弁済すればいいですかという話になってくるのではないかと。常に,完済をして,付従性で当然抵当権が消滅するという場合だけではなくて,根抵当権もあり得るわけですから。結論から言うと,管理人が抵当権の抹消ができないと売却できない。そのためには,弁済もできるようにしなければならないと思います。   前回,不明共有者の第三者への持分譲渡のところで,裁判所が許可をするときに,どこまで射程として見ているのかという話がありましたが,あのときは,相当な価格の供託という,相当な価格のところだけを判断していくのではないかということがありましたが,ここでの売却については,この弁済,抵当権の抹消等も含めた形で,視野に入れた形で,裁判所が許可をするのではないかと思われます。実務上,そういうふうになるのかなと思われますので,この権限がないと,売却は進まないと思っております。   それから,これ,質問ですけれども,クの管理命令の取消しのところですけれども,すみません,これはちょっと,我々の読み方が悪いのかもしれませんが,所有者の死亡が判明して,相続人の存在や所在が判明した場合には,管理命令が取り消されるというのは理解できます。複数の相続人がいて,そのうちの一部が所在不明の場合は,これは,やはり自動的に持分の管理人になるわけではなくて,1人でも所在が判明している相続人がいる場合は,一旦取り消されると理解してよろしいでしょうか。最初の管理人は,不動産全体の管理人として選任されているので,一旦は取り消されるという理解でよろしいでしょうか。その点が質問です。 ○山野目部会長 御意見とお尋ねを頂きました。   お尋ねについて,事務当局から回答を差し上げます。 ○宮﨑関係官 そのときは,管理命令の対象となる持分が,全体から一部の判明した人を除く部分だけということになると思いますので,その場合は,管理命令を一旦取り消してもう一回やり直すというよりは,管理命令の変更などにより対応するというやり方もあるのかなとも考えております。 ○山野目部会長 全体を対象としていた管理命令を,所在不明相続人の有する持分を対象とする管理命令に変更するということを,今,おっしゃったんでしょうか。 ○宮﨑関係官 はい。 ○山野目部会長 今川委員,お続けになることがあったらどうぞ。 ○今川委員 変更というのが可能だとすると,それもありなのかなとは思います。   最初は,やはり一旦取り消されるのかなと思っておりました。選任されている管理人は,土地全体についての管理人であると捉えておりましたので。 ○山野目部会長 今日,意見交換がありましたから,そこを検討します。同じ事件番号で起こしているものを,そのまま続けて変更で済む話になるか,一旦取り消して,共有持分に係る別な管理命令の事件を起こすことになるかといったようなところを,精密に検討する必要がありますから,御指摘に御礼を申し上げた上で,改めて検討することにいたします。   ほかにいかがでしょうか。 ○松尾幹事 細かな点の確認ですけれども,部会資料43の9ページ,本文キの所有者不明土地管理人の報酬等について,①では,不明土地所有者の負担になる対象について,管理に必要な費用が挙がっていて,報酬は挙がっていないわけですが,ここに報酬を挙げる必要はないかどうかということでの確認です。   補足説明の2の本文キについての説明を見ますと,管理費用及び報酬は,土地の所有者が負担すべきと解されると説明されていますので,報酬がここに挙がってもいいのかなと思いましたので,確認させていただければと思います。 ○山野目部会長 キについて,お出しいただいたお尋ねについて,お願いします。 ○宮﨑関係官 ここについては,御指摘のとおり,①の方の費用の中にも報酬は含まれるという前提で考えております。ほかの法令などを参考にして,このように記載しているものではございますが,表現ぶりについては,引き続き検討してまいりたいと思っております。 ○松尾幹事 はい,分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   2点ございまして,一つは,所有者等を知ることができないの意義なんですが,次の資料になるんですけれども,資料44で,所有者不明建物管理制度について取り上げられていて,その3ページの第1段落に,例えばという行が,行というか,つぎのような記述がございます。つまり,所有者が分かっていたんだけれども,その人が死亡した,その共同相続人全員が相続放棄をした,この場合の例が挙げられているんですね。ということは,今さら何を言っているんだと言われるかもしれませんが,この所有者不明土地管理制度というのは,今のような,言わば所有者がいたんだけれども,いなくなりましたというようなときも,所有者を知ることができないという場合に含めて使える制度なのですかということを,繰り返しになりますが,今さらになるかもしれませんけれども,確認させてください。それが一つです。   もう一つは,これも何度も申し上げていて,非常に恐縮で,もうそうだということであれば,今日で申し上げることはやめようと思うのですが,5ページのイの③です。これは,要するに,管理人が権限の制限に違反した行為は無効とすると。ただし,括弧書きになっておりますが,所有者不明土地管理人は,これをもって善意の第三者に対抗することができない。ここでいう第三者につきまして,5ページの補足説明の下から2行目には,行為の相手方を含むとあるのですね。しかし,行為,例えば,売買をすることができない,特段の許可を得ていないので売買をすることができないときに,土地管理人が売買をした。相手方である買主は,売買の当事者であって,無効に関して第三者では私はないと思うんです。にもかかわらず,第三者に売買の当事者,つまり行為の相手方も含むということになりますと,ここはそういう言葉で使うんですということなら,もうそれでいいんですけれども,これまで一般的に言われてきた第三者の概念と,それは異なるのではないかと思います。   私のそのような考え方からいたしますと,例えば,ここは次のようにできないのかと思っております。②に違反して行った所有者不明土地管理人の行為は,無効とする。ただし,行為の相手方がその違反を知らなかったときは,この限りでない。そのようにした上で,言わば,もし条文だったら,こう改めた上で,前項の規定による所有者不明土地管理人の行為の無効は,善意の第三者に対抗することができない。例えばですけれども,このようにすることが,今まで使われてきた一般的な用語法に合うのではないかと思っています。規律の実質については,全く異論を申し上げようということではありませんけれども,何度もで恐縮ですけれども,言葉の使い方として,無効である行為の相手方を第三者に含むというのは,やはり私はおかしいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事から2点頂きまして,前者は確認のお尋ねでした。   後者は,御提案を頂いたとも感じますけれども,何か事務当局として理解しているところがあれば,案内してほしいと思いますから,両方の点について,事務当局から所見を差し上げます。 ○宮﨑関係官 まず,前者の方の,「知ることができない」の意味ですけれども,これについては,御指摘のように,この建物管理人の方でも例示を挙げておりますような,相続放棄を相続人全員がした場合というのも,ここに含まれるものと考えてございます。   また,②のイのところですね。「善意の第三者」という表現で,行為の相手方を含むということで考えられるのかどうかという御指摘かと思いましたけれども,ここについては,従前の部会でもそのような御指摘を頂いていましたので,いろいろ調べはしたんですけれども,これと同じような文言の規律は破産法などにも設けられていまして,もっと遡ると,昔の会社更生法55条の中で,同じように善意の第三者に対抗することはできないという規律が設けられております。その当時の解説書などにも,「善意の第三者」の中には相手方を包含するものと書かれておりまして,恐らくこれは,一般的にとられている解釈なのかなと思いましたので,このような書き方でも許容されるのではないかなとは考えてございました。   今,また別途の表現ぶりの御提案というのも頂けましたので,引き続き検討してまいりたいと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けください。 ○佐久間幹事 いえ。意見を申し上げましたので,今のようにお考えいただくのであれば,もうそれで結構でございます。 ○山野目部会長 それでは,御意見を踏まえて検討することにいたします。   引き続き承ります。いかがでしょうか。 ○市川委員 今回の部会資料で変更された箇所ではありませんが,部会資料の5ページのイの②の権限外行為に関しまして,この権限外行為の裁判所の許可の運用の在り方について,現行の不在者財産管理人の場合とは異なる考慮要素などもあるかと思われますので,改めて確認させていただきたいと思います。   まず,所有者不明土地の権限外行為の対象となる行為として,念頭に置かれている行為がどのようなものなのかということを確認させていただきたいと思います。また,そのような行為を許可するかしないかの考慮要素として,どのようなものが想定されているのかということを,改めてお聞かせいただけますでしょうか。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 イの②の運用について,部会資料の作成に当たってイメージしている運用がありましたら,御案内ください。 ○宮﨑関係官 まず,一つ目が,許可の対象となるような行為はどういうものを念頭に置いているのかという御質問でしたけれども,これについては,典型的には売買かなと思っております。   その判断の際の考慮要素ということにつきましては,売買契約の内容としましては,価格の適切性などについては一つの考慮要素になりますし,また,今回の制度というのは,土地の適切な管理を実現するためのものでございますので,その限りにおいて管理が適切にされることが見込まれるということも考慮されるのかなと思いますが,一般的には,買い受ける人というのは適切に管理を行っていくということが見込まれますので,この要素をもって否定されるケースは少ないのではないのかなと思っております。   また,土地の所有者の出現可能性ないしは帰来可能性ですか,そういうことについては,不在者財産管理人と同様に考慮要素の一つになっていくものかなとは考えてございます。 ○山野目部会長 市川委員,お続けください。 ○市川委員 ありがとうございます。   今回不在者財産管理人と特に異なる部分としましては,土地の適切な利用可能性というところかと思いますが,その点について,裁判所が深く資料を提出させて検討するということは,余り想定されていないという理解でよろしいでしょうか。 ○宮﨑関係官 今申し上げましたように,普通は土地を買う人であれば,そこを適切に管理しながら使用することが見込まれるのだろうと思いますので,具体的にそれが否定されるような事案というのは,今の時点では想定しにくいのかなとは考えております。 ○市川委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   佐保委員,どうぞ。 ○佐保委員 ありがとうございます。   私の方から1点,1ページの注意書きと4ページの補足説明4にある管轄裁判所について,発言させていただきます。   所有者不明土地管理人の選任申立件数が多くなると,地方裁判所の業務が増大する可能性がありますので,簡易裁判所も管轄裁判所とすべきではないかと考えております。また,地域によっては,近くに支部を含む地方裁判所がなく,簡易裁判所のみの場合があるため,利便性を考えれば,簡易裁判所に管轄を与えてもよいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 御意見承りました。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。   10ページの補足説明のところです。土地の所有者が死亡した場合の取扱いについて,前回意見を申し上げましたところ,御検討いただきました。どうもありがとうございました。   その上で,もう少しお伺いしたいんですけれども,所有者が管理命令のあった時点で既に死亡していた場合,相続人の存在あるいは所在が判明したとすると取消事由になるけれども,そうではないと取消事由にはならないと,こういう整理だと思います。ただ,その場合に,既に死亡していた場合には,被相続人甲の存在,所在不明をもって,相続人乙の所在不明と同視するというか,それをスライドさせて理解するということのように読んだんですけれども,何か本来両者は違うことであって,別途検討すべきことなのではないかなという気がしました。それは恐らく,先ほど今川委員の御質問ともつながることではないかと思います。   それからもう一つ,一般的に,管理人が既にした行為については,既往に遡らないということが,最後の方に書かれています。管理命令が取り消されたとしても,既往に遡らないということなんですけれども,他方で,所有者あるいは相続人の権利を害するということを,どうやって防ぐかということも必要になってくると思います。   類似した問題で,失踪宣告の取消しについては一定の配慮があるわけです。不在者財産管理人が家裁の許可を得て処分行為をしたときについては,特段の規定はないということで,どっちに寄せるかということなんですけれども,所有者不明土地管理人については,先ほど来議論の出ております管理人の権限外行為の無効に関する,5ページ,イの③の手当てがあります。それと同じような相手方保護の必要があるのではないかなと思います。もう少し広く言うと,その土地が名義人,行方不明になっている名義人の所有地ではなかった,つまり不実登記であったという場合にも,行為の相手方が悪意である場合には,真の所有者を保護するという考え方があるのではないかと思います。つまり,全体として,管理命令に広い意味での瑕疵があった場合の管理人の行為の効力について,行為の相手方が悪意であるという場合には,それを保護する必要はないのではないかと,そのような規律を置くことを検討していいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 中田委員から2点にわたる御意見を頂きまして,前段でおっしゃったことは,中田委員自身からも御案内があったとおり,今川委員からお出しいただいた質問と関連する部分がございます。後段で御意見を頂いたことは,佐久間幹事が問題提起をなさったことと関連する側面がございます。 ○宮﨑関係官 最初の前段の方については,被相続人の所在不明というのを,相続人の所在不明にスライドさせて考えているのかという御質問かと思いましたけれども,この部会資料の補足説明で書いていることは,必ずしもそういう趣旨ではございませんで,そのときは所有者だと思われていた被相続人が死亡していて,その相続人の存在・所在が判明した場合には取消事由にはなるということの趣旨としましては,被相続人の所在不明と,相続人の所在不明は,それぞれ個別に考えるということを,念頭に置いた記述ではございました。   次の,既往に遡るかという問題については,御指摘の中に含まれておりましたように,不在者財産管理制度の解釈などを参考にして,ここの補足説明は記載したものでございますが,御指摘も踏まえて,引き続き検討してまいりたいと思っております。 ○山野目部会長 中田委員が前段で問題提起をなさったことは,少し前に今川委員からお尋ねがあった局面と全く同じではありません。同じではないというのは,相続人の判明,不明が,相続人の一部にとどまっているか,必ずしもそこに議論を限定しないかといったところが異なりますけれども,いずれにしても,不明であるとされていた当初段階の所有者について,相続が開始したことが判明し,相続人の全部又は一部についての所在が明らかであるかの状況が明らかになってきたときに,当初に起こされた事件,管理命令の事件を,どのようにその後に継続,発展させていくかということに関わりますから,本日頂いたお二人の御意見を踏まえて,事務当局において更に検討をいたします。   後段については,中田委員から32条1項後段の規定のようなものを参考にして,管理命令について,その実質的基礎を欠くことについて,悪意であった関係者の法律上の地位の在り方についての問題提起がありましたから,これについても検討いたします。   中田委員,よろしゅうございましょうか。 ○中田委員 ただいまの部会長の取りまとめで結構でございます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○道垣内委員 5ページのイの③の,佐久間さんがおっしゃったことに関連するのですが,十分に聞き取れなかったところもあり,これから申し上げることは同じことを申し上げてしまうことになるのかもしれません。この点をあらかじめお詫び申し上げますけれども,ここの多分ポイントというのは,「第三者」の使い方というのがおかしいというよりは,無効というのが,売買契約なら売買契約が行われたという,その売買契約の無効ということを意味していないというところにあるのではないかと思うんですね。   つまり,売買契約というのが行われても,それが所有者にその効果が帰属しない,そうすると土地に帰属しないのですけれども,帰属しないということを,ここで無効と表現しているのであって,そうすると,いわゆる代理において,無権代理であるから効力が発生しないというのと同じになって,それで,取引の相手方のことを第三者と呼ぶというのが,代理と同じ構造として第三者と呼ばれているという,こういう構造になっているんだと思います。ただ,結構難しい話でありまして,私の理解が正しいかどうか分かりませんが,あり得ない書き方ではないのかなという気がいたしました。   少し関連して一言だけ申しますと,不在者の財産管理のときには,こういうふうな裁判所の許可がないにもかかわらず,不在者財産管理人が行為をしてしまった場合と,それを超える行為をしてしまった場合というのは,無権代理であって,表見代理の規定が適用されると,一般に解釈されているのだろうと思います。そうしますと,正当な理由とかいろいろな言い方がありますが,ごくごく簡単な言い方をすると,相手方は無過失が要求されていますよね。しかるに,ここが本当に善意でいいのかというのは気になるところではあります。例として,信託法66条第5項というのが書かれているんですが,これは,信託財産に関して,受益者がいて,受益者が一番利害関係を持っているにもかかわらず,受託者がいないという場合を指していて,多分,取引を円滑に進める必要性というのは極めて高いと考えられているから,善意になっているのかなという気がいたします。   表題部所有者不明土地法については,これも善意になっているんですが,その理由はよく分からないのですけれども,今までの,取り分け表題部所有者不明土地法との関係で考えると,善意でも仕方がないのかなという気がいたします。ただ,なお慎重に,本来は考えてみるべきところではないかという気がいたします。   もう1点は,続けて申しまして恐縮でございますけれども,今川さんの方から話が出ました債務の弁済の話であります。   実務上,抵当権を抹消しなければ売却ができないというのは,これはおっしゃるとおりだろうと思います。ただ,それが,債務を弁済できるというふうなことだといたしますと,例えば,所有者がどこへ行ったか分からないでもいいのですが,どこか行っちゃって,当該抵当権の債務者が,当該登記名義人と同じだという場合は,まだ比較的簡単なのですけれども,物上保証人であるだとか,あるいは,債務者が複数であるとか,共有であるということになりますと,これ,結構難しい問題が生じます。   取り分け物上保証人との関係でいいますと,抵当権を当該物上保証人が設定しているという状態が,抵当権者との間の債権的な契約とか,あるいは債務者との間の債権的契約,つまり,担保を拠出しますという契約に基づいて行われていることもあって,そうすると,抵当権というのを,今現在の根抵当の何かの,額でも何でもいいのですが,弁済して,本当にそれは,物上保証をしてくれという委任契約に反しないのかというのは,微妙な問題であるような気がいたしますし,さらには,根抵当のときに,交渉するとおっしゃいましたが,銀行と幾らで抹消できますかという交渉について,善良な管理者の注意に基づいて交渉しろという話になってまいりまして,結構難しい問題が出てくるような気がいたします。   もし仮に交渉で済むのならば,第三者弁済を事実上するという形で処理をするというのがせいぜいであって,直接に債務の弁済ができる旨を書くというのは,私は結構難しいし,弊害もあるのではないかと思います。   この点は,実際それでは動かないと言われてしまえば,そうかもしれませんので,余りよく分からないままに発言をしておりますが,以上でございます。 ○山野目部会長 道垣内委員から,前段と後段のそれぞれについて,異なる事項の問題提起を頂きました。   前段が,先ほど来から話題になっておりますとおり,イの③に関わります。それで,ここにつきましては,元々この「所有者不明土地管理人は」という,鍵括弧で包んでいる主語がどうかということ自体を検討していかなければいけないということに加えて,本日の御議論の中で第三者という言葉の当否や,善意が単に善意でよくて,善意無過失であることまで求めなくてよいかといったような観点についても,注意喚起を頂いたところであります。   改めて,従前の類似の局面を見てまいりますと,三つほど今申し上げますけれども,一つ目は,民法の表見代理の規定は,相手方に当たる者を指すときに,第三者という文言を用いております。その第三者に求められる主観的要件は,無過失まで要求するというふうな規律になっております。それから,失踪宣告の取消しの場面の32条1項後段の場合には,これは,第三者という言葉ではなくて,要するに者という言葉が用いられていて,善意でした行為という表現になっていて,第三者という言葉が避けられているかどうか分かりませんけれども,用いられていない。その32条1項後段の場合には,単に善意ということが求められているという,主観的要件の区切り方になっております。それから,三つ目,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の規定に基づいて,理事が法人の内部統制を超えて,代表行為たる法律行為をするときの関係者の保護に関しては,ここは,善意の第三者に対抗することができないとなっていて,第三者という言葉が用いられており,主観的要件は,無過失を要求しない単なる善意ということになっております。   恐らく,本日の部会資料のここを作成するに当たりましても,従来の法制上の様々な例を参照して,事務当局において悩んだところを踏まえて,今日お出ししており,これについて委員,幹事からは御意見も頂いたものであると受け止めます。   佐久間幹事,又は事務当局から何か,今日の段階で今後の検討に向けて補足の御発言があれば,承っておきます。   佐久間幹事,何かおありでしょうか。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   まず,表見代理との関係なんですけれども,表見代理のところで第三者が相手方のこと,代理の相手方を指して用いられているのは,もちろんそのとおりでございます。   代理のところで,相手方を指して第三者と呼んでいるのは,代理関係の第三者だからだと思うのですね。だからこそといいますか,表見代理の規定でいう第三者というのは,直接の相手方に限られていて,それ以降の者,転得者等はこの第三者には当たらないというのが,一般的解釈だと思います。そうであるとすると,今御提案の5ページのイの③の第三者において,直接の相手方と転得者,併せて第三者と呼ぶというのは,代理における規定との平仄も必ずしも取れていないのではないかと思います。   それから,一般法人法の善意の第三者というときは,それは善意の第三者なんですが,そこで対抗できないのは,権限の制限のはずでありまして,無効の対抗ではないと思います。前回まで私が,ここで善意の第三者というのだったら,対抗できないことの対象は権限の制限であるべきだと申し上げてきたのは,そのためでございます。   会社更生法以来,そこから端を発しての,例えば,信託法,あるいは表題部所有者不明の,その文言の使い方はどうなのかというのは,ちょっと私,そこはよく分かりません。ただ,そこの考え方を本当に民法に持ってきていいのかなというのは,やや疑問に思うところがございます。   それと,もう1点。善意無過失であるか,善意であるかですが,善意無過失とするという考え方,もちろん十分あり得るわけでして,それは言い方が適当か分かりませんが,決めの問題だと思います。そのうえで,もし善意無過失を相手方に要求するのであれば,特段の規定は要らないのではないか,表見代理の規定に委ねるということでいいのではないかと,私は思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き検討しなければなりませんけれども,事務当局から現在時点で,この論点についてありますか。 ○宮﨑関係官 今の善意無過失とするかどうかについてでございますが,確かに不在者財産管理人のときとはややずれてしまうのかもしれませんけれども,不在者財産管理人の場合,不在者の財産の保護というのが制度趣旨になっているのかと理解していますけれども,今回の土地の管理人の場合は,その土地の適切な管理の実現ということが制度趣旨になっていて,そこの制度趣旨の違いなどから,この要件の違いというのも説明ができないかということは考えておりました。もう少し検討してみたいとは思っております。 ○山野目部会長 そうしましたら,道垣内委員が前段でおっしゃったことについては,ただいま事務当局の方から申し上げたような方針で,更なる検討をいたします。   道垣内委員の問題提起の後段でおっしゃったことは,債務の弁済に関わることであります。今川委員の問題提起を受けて,道垣内委員からお話をしてくださいました。   今川委員に今コメントがあったら,今川委員,それから事務当局の御発言をお願いしますが,恐らく今川委員がおっしゃったことは,債務の弁済が比較的簡易な事務として可能なときには,それをするということであって,道垣内委員が問題にされたような,物上保証,それから,道垣内委員はおっしゃいませんでしたが,オーバー・ローンになっていたりして,一種,倒産の法律事務で処理しなくければいけない感覚を催させるような,複数の担保権者がいて,複雑な法律関係になっているようなときには,これは,所有者不明土地管理人の事務として仮に債務の弁済が事務に含まれることが考えられ,売却の過程での債務の弁済が事務に含まれることがあり得るとしたとしても,極めて不適切な事例であって,少し前の市川委員のお尋ねで示された観点と問題意識が全く同じではないですけれども,裁判所が許可を与えることがが不適切な場面の典型的な一つの例になるものではないかとも感じられます。今日お出しいただいた御議論を踏まえて,更に検討を続けなければいけないと感じました。   今川委員から何か補足の御発言はおありでしょうか。 ○今川委員 いえ,特にありません。 ○山野目部会長 事務当局からどうぞ。 ○宮﨑関係官 1点だけ補足ですが,道垣内先生の後段でおっしゃった債務の弁済については,債務の弁済に関する規定を何か設けようということを意図しているものではございませんで,本文イのゴシックで書いているところから考えると,債務の弁済についてはこのような考えになるのではないでしょうかということを,この補足説明の中では記載させていただいているところです。 ○山野目部会長 道垣内委員の後段につきましても,更に検討を続けてまいりますから,委員,幹事におかれては,お気づきのことをさらに,折に触れ御指摘いただきたいと望みます。   道垣内委員,よろしゅうございますか。 ○道垣内委員 はい,問題ありません。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○潮見委員 言いたいことは簡単です。一つは,先ほど佐久間さんがずっと言っておられたことについて,私も気になるところがありますし,ちょうど同じような議論が相続法改正のときに,遺言執行者のところで,相続人の債権者と書くときに,そこに相続債権者が入るのか,入らないのかというので,括弧書きをして,確か相続債権者を含むという,そういうふうなことで紛れがないようにしたということがあったかと思います。何か同じような仕組みを採れないものかというように感じました。   もう一つは,それと関係するんですが,先ほどの,5ページ目の「所有者不明土地管理人は」という主語を置くことについては,私は反対です。結論は同じかもしれませんけれども,先ほどから,佐久間さんは,ここでの問題は権限の制限の問題であると言われ,また,先ほど道垣内さんは,この問題というのは,要するに,土地管理人がしたことの効果が所有者に帰属するのかどうかという話でした。いずれにしても,そうした権限の制限とか,あるいは効果が所有者に帰属しないということを,相手方,あるいは第三者に対抗することができるかどうかという問題ですから,ここを,人を主語にして,所有者不明土地管理人はというような形で立ててしまうと,あたかも対人的な,相対的な無効というような形でも読めるような文脈で取られる可能性があります。ですから,この部分は,少し検討をしていただければと思います。 ○山野目部会長 潮見委員の前段,後段にわたる御意見を承りました。ありがとうございます。  どうぞ,畑幹事,御発言ください。 ○畑幹事 何点か,既に議論になったところと,そうでないところについて申し上げます。   まず,4ページの管轄裁判所,事物管轄でございますが,確たることは申し上げにくくて,確かに政策論としては,簡易裁判所に管轄を認めて,広く利用できるようにするということも十分理由があるように思いますが,他方で,制度としては初めてのものということになりますから,出だしの際には,この資料にあるように,原則的な裁判所である地方裁判所の管轄ということで出発し,ある程度運用が安定し,かつ,非常にニーズも多そうだということであれば,簡易裁判所に後から広げるということも考えられるかなというような感想を持っております。   それから,4ページ,その下の裁判を受ける者ですが,私,以前にお尋ねしたところではなかったかとは思いますが,結論的には,ここに書いてあるように,告知しようにもできませんから,告知しないということでいくしかないのかなと思っております。蓑毛幹事から最初の方でお話がありましたように,不在者財産管理についてはそういう規定はないということで,私もなぜかということをよく思い出せないのですが,恐らく不在者というのは,全然誰か分からないとか,どこにいるか,およそ分からないということでは必ずしもないということなのかなという気もしております。不在者財産管理の方はともあれ,こちらについては告知しようがないということであろうと思っております。   それから,7ページの下の方の訴訟行為についての裁判所の許可の要否のところです。ここも,前にお尋ねしたところではないかと思います。今日の資料の御説明は,なおあまりクリアでないところがあるという感じはいたしますが,どうも不在者財産管理であるとか,相続財産管理,8ページにちょっと出てきておりますが,これらについても,ある程度解釈に委ねられてきたところかなと思いますので,ちょっとクリアでない面はありますけれども,ここでも解釈に委ねるということであっても,やむを得ないかなという感じがいたします。   それから,最後に,細かい点というか,あるいは法制的な問題なのかもしれませんが,1ページの制度の立て付けというか,アの①で管理命令を出すと。②で管理命令を出す場合には,当該命令において管理人を選任するということになっております。これがどういう意味なのかということなのですが,例えば,後見開始決定というのと,後見人の選任というのは,恐らく別の裁判と観念されているのではないかと思いますし,それから,破産開始決定と破産管財人の選任というのも,同時処分と呼ばれてはおりますが,一応別の裁判と観念されているのではないかと思います。   新しく所有者不明土地管理制度を作る際に,そこをどう整理するのかということは,実質には恐らくほとんど関わりなくて,法制的な問題かなとは思いますけれども,一応検討は必要かなということを,思いました。 ○山野目部会長 手続の側面から,畑幹事にもろもろの点を御注意いただきまして,ありがとうございます。いずれも御意見として受け止めます。   1点のみ申し添えますと,後ろから2番目におっしゃった訴訟行為に係る裁判所の許可の問題につきましては,第15回会議で畑幹事から御発言いただき,問題提起を頂いたことに対して,本日の部会資料の説明では,それに十二分に答え切るものになっていないということは,共感いたします。畑幹事がお望みになったような仕方での整理にはなっていないだろうと感じます。   それとともに,畑幹事御自身もおっしゃったように,8ページの上の方に整理いたしましたように,どうも従前の経過を見ると,ここは何か宿命的な曖昧さというものでしょうか,元々少しはっきりしないところがあって,確かにここ,もう少し研究されなければいけないとは感じますけれども,今般ここのところについて,こういうふうなものだということを決め切ることに困難があるという気持ちで,部会資料でこの御説明を差し上げました。それについて,今,畑幹事からある程度の御理解も頂いたと伺いましたから,更に検討することにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○市川委員 すみません,補足でもう1点。   部会資料の5ページの補足説明の6項のところの管理方法等の限定に関連して1点,お伺いさせていただきたい点がありまして,管理方法等を限定せずに管理命令が出されて,管理が開始された後に,例えば,処理に多額の費用を要する産業廃棄物が存在することが判明したようなケースなど,当該土地を適切に管理する費用が捻出できないものの,そのまま放置するということもためらわれるような事案もあり得ると思いますが,そのような場合の対応については,どのように考えられるのかということについて,教えていただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局において,市川委員からお尋ねがあった事項について,運用のイメージを持っているならばお話しください。 ○宮﨑関係官 御指摘いただいたケースにつきましては,所有者不明土地管理人による管理を継続するのが相当でない場合に当たり得るのではないのかなとも思われますので,裁判所が管理命令を取り消すという判断もあり得るのかなとは考えてございます。そのような場合において,産業廃棄物などによって近隣へ被害が生ずるおそれがあるときは,具体的な事案にもよるとは思いますが,そういった被害を防止するために,選任されていた管理人が,行政官庁などに対して情報提供をして,処理についての協力を求める事案もあるのではないのかなとは考えてございます。 ○山野目部会長 市川委員,お続けください。 ○市川委員 分かりました,ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 さきほど市川委員がおっしゃったような事例,選任後に,産業廃棄物があって費用が生じることが分かった場合には,そのような費用を捻出するために土地を売却するということは認めらるのか,事務当局にお考えがあればお示しいただければと思います。 ○大谷幹事 今の点,恐らく,既に土地の管理がなかなかいい状態ではないということなんだと思います。それを,土地を適切に管理するという観点で,売るということがあるのだろうと。それは,費用を捻出するという観点なのかというと,また違うのかもしれませんけれども,売却をして,その上できちんと使ってもらった方がいいというような判断ができるのであれば,そういう形で売るということもあるのではないかと理解されます。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   最初に発言させていただいたときにお答えいただいて,ああ,そうですか,そこは結構ですって申し上げたことで,蒸し返しみたいになって申し訳ないんですが,所有者がいて,その人が亡くなって,相続を開始したことが分かり,しかし,相続人の全部が放棄をしたという場合も,この制度を使えるんだということでした。   ああ,それはそうなんだなと思ったんですが,何かひっかかる,何だろうと思っていて,先ほど気が付いたんですが,所有者を知ることができずの要件に,本当に当てはまるんだろうかということが,気になります。つまり,相続人全部が放棄をいたしますと,相続財産法人が,法律上当然に立ち上がっていることになるのではないか。そうすると,その相続財産法人が所有者に当たる,ただし,管理人はいないので,何か現実に行われることにはなっていないという状態なのではないかなと思いました。   間違っているのかもしれませんが,もし間違っていないのだとすると,所有者を知ることができずという要件で読めるのかな。所在は,実態のある所有者がいないので知ることはできないんですけれども,そこが気になりましたということです。御教示いただければと思います。 ○山野目部会長 私も,あの場面で,佐久間幹事が結構ですとおっしゃっていただいたところが,議事進行の私としては,そうおっしゃるのならば,処分権主義に従ってそうなんだろうと思って進めましたけれども,本当にそうであろうかということは,いささか心配でありました。   思い起こしますと,御発言の順番とは異なりますが,中田委員が問題提起をされたことは,所有者甲が行方不明であるということで始まった管理命令事件について,所有者甲の死亡が明らかになり,相続人乙がいることは明らかであるが,その所在が不明であるというときに,甲の所在不明と乙の所在不明は同じ事象ではないですから,同一の事件で続行するという単純な発想でよろしいですかという問題提起であり,続いて,続いてというのは,論理の順番で整理しますと,今川委員はその応用バージョンで,相続人の一部の所在は明らかであるが,一部が不明であるときはどうなりますかとおっしゃり,そして,佐久間幹事に今改めて整理していただいて,相続人は全て分かっていて,そして,その全てが放棄をした結果,相続財産法人に帰属することが明らかであるという,その事態は,所在不明とは言えないではないか,当初起こされた事件を単純に続行するということでよいでしょうかというお話を頂き,中田委員,それから今川委員の問題提起について,さらに,今日,そのような問題点があることが発見されましたから,検討しますという御案内を差し上げていたところでありまして,佐久間幹事の今の問題提起も,その際に,この局面も忘れないでくれということを御注意いただいたと受け止めますけれども,佐久間幹事におかれて,よろしゅうございましょうか,そのようなことで。 ○佐久間幹事 はい,よろしくお願いします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。問題提起を頂きました。垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   大変細かい点で恐縮なんですけれども,資料の7ページのエのところの訴訟の受継に関する規律の関係について,若干確認をさせていただければと思っております。   具体的には,エの③のところで,所有者不明土地管理人側では受け継ぐことができるとなっていて,⑤の方で,所有者が再度という場合には,受け継がなければならないとなっており,これは,破産法の44条がこういう形になっておりますし,表題部所有者不明土地に関しても同様の規定が置かれているということで,それとパラレルになっているのかなと思うんですけれども,この3項のところで受け継ぐことができるとされていることの趣旨としましては,これは,この管理人がどういった地位にあるのかという点について,例えば,今日の資料ですと,8ページの辺りで管理人の義務との関係の御説明で,土地の適切な管理を実現するために選任されると,必ずしも土地の所有者のために選任されるわけではないというような,所有者との関係で若干独自性が認められているというところが,この受け継ぐことができるという規定ぶりに反映されているというような理解をしてよろしいのでしょうかというのが,1点目でして,付随しまして,2点目なんですけれども,破産法に関して申しますと,相手方が受継の申立てをした際に,破産管財人が受継を拒絶できるのかという議論が従前存在いたしまして,破産法の規定が受け継ぐことができるとなっていることを根拠として,破産管財人は受継を拒絶できるのだという議論もないわけではないように考えて理解しておりますけれども,ここでのエの③では,所有者不明土地管理人が受継を拒絶するというようなことを想定されておられるのかどうかということについて,何か特定のお考えをお持ちだということであれば,御教示いただければと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   事務当局から,受継の関係で,2点について説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 御指摘いただきましたように,ここの規律については,ほかの規律の表現なども参考にして,このようにしております。破産の方について,何でその民訴法124条のような形で,受継の義務という書きぶりになっていないのかというところについては,訴訟の進行に利益を有する者が受継申立てをすればよいとの考え方に基づくものであると。双方が受継申立てをしないな場合というのも考えられないわけではないんですけれども,破産管財人としては,善管注意義務の観点から,自ら受継すべきことが相当な場合もあるということかと理解しております。今回の土地管理人につきましても,善管注意義務の観点から受継すべき場合が一般的には考えられるのではないのかなと。後ろの方で御質問いただいたような,受継を拒絶するという場合も,想定しにくいのではないのかなとは考えておりました。 ○山野目部会長 垣内幹事,どうぞお続けてください。 ○垣内幹事 分かりました。どうもありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   ほかに,部会資料43についておありでしょうか。   大体御意見を承ったと考えてよろしゅうございましょうか。   そうしましたならば,この際,私の方から1点御案内を差し上げます。   所有者不明土地管理命令に係る事物管轄のことでございます。本日,委員,幹事から頂いた御意見は,いずれも参考になるものでありますから,今後事務当局が法律案の作成に向けて参考にさせていただきます。それとともに,少し考え込まなければいけない点は,それを法制審議会の答申で,一つの姿を示すことが要請される事項であるかということも,いささか一度じっくり考えてみるということにいたします。   思い起こしますと,現在裁判所の管轄というものは,法律事項であるということが何か当たり前の前提ですが,日本国憲法が施行された当初は,最高裁判所規則と法律の所管事項や,その効力の上下関係について,様々な考え方がありました。現在は,裁判所の管轄は法律で定めるという憲政上の運用が安定して定着しておりますけれども,同時に,管轄の内容を定めるときには,裁判所の取扱いに支障が生じないように,その運用の様子についての十分な尊重を踏まえて,法律の中身を決めていくという,これも憲政上の慣行が定着しております。そういたしますと,この所有者不明土地管理制度という民事の基本に当たる制度を設けなければいけないという政策は,正にここで委員,幹事が御相談いただいて,そうであればそうであると決めて,答申で示す事項ですが,そのときの裁判所の管轄をこうするというところを,法制審議会の答申に必ず書くことにするか,それとも,そのような実体の規律整備の方向が示されるということを受けて,法律案提出までに関係法律整備の中で適切な措置をするために,政府内の関係する府省及び裁判所と協議した上で決めていく事項であるかということは,なお慎重に検討をいたしてまいりたいと感ずるものでございます。   部会資料43についての本日段階での審議をここまでといたします。   それでは,かなり時間が経過いたしましたから,休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料44をお取り上げくださるようにお願いいたします。   部会資料44は,引き続き財産管理制度の見直しでございますが,このたびは,所有者不明建物,この建物の方の所有者不明建物管理制度についてお諮りをするものであります。   まず,部会資料44の1ページにおきましては,従前より話題にしております,所有者不明建物管理制度という制度を仮に創設するという方向でまいりましたときに,甲案,乙案,丙案という三つのようなモデルを想定して,検討していくことになるものではないかという観点からの御提案を差し上げております。   御覧いただいておりますように,甲案は,建物もまた独立の管理命令の対象にしようという発想でありまして,ニックネームを与えますと,建物独立型とでもいうべきものであります。それに対しまして,乙案は,所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の上に,所有者又はその所在が不明な建物が存在する場合でありまして,これもニックネームを与えますと,所有者不明土地前提型とでもいうべきものであります。丙案は,所有者不明土地管理命令の対象とされる土地の上に,土地の所有者と同じ者が所有しているとおぼしき建物が存在する場合の,管理命令の可能性を考えようとするものでありまして,土地建物一体型とでもいうべきものでございます。これらが考えられますところ,どのような方向で進むことがよいかということについて,委員,幹事から御意見を承りたいと望みます。   続きまして,同じ部会資料の2といたしまして,4ページになりますけれども,建物の管理をするということになった場合に,その建物の敷地利用権の管理の在り方について,やはり甲案,乙案,丙案というものをお示ししておりまして,甲案は,当然に敷地利用権たる賃借権などが管理の対象になるというものであるのに対して,乙案は,必要があると認めるときは,申立てにより管理の対象にするというものであり,丙案は,権利者を知ることができず,又はその所在を知ることができない土地を問題として,それについて,丙案でお示ししているような要件,手続の下で,土地の賃借権等についての管理を考えようとするものであります。これも,案を分けてお示ししておりますから,委員,幹事からの御意見をくださるようにお願いいたします。   この部会資料は,6ページのところで,3といたしまして,無権原で建てられている建物の敷地への立入り等に関しては,規律を置かないという提案を差し上げております。   続きまして,最後になりますが,4として,区分所有に係る専有部分,共用部分については,このたびは,仮に所有者不明建物管理制度を設けるとしても,その適用の対象から除外するという方向を提案しているところでございます。   御案内した,取り分け1の点と2の点を中心に,御意見を仰せくださるようにお願いいたします。   それでは,御随意に御発言ください。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料44,所有者不明建物管理制度について,日弁連ワーキンググループでの議論を紹介します。   元々日弁連は,中間試案に対する意見書では,この論点について,所有者不明土地管理命令の対象となった土地上に所有者不明建物がある場合に限って,管理命令を発令できるという丙案に賛成でした。現在は,所有者不明土地問題に対応する限りでよいとして,丙案に賛成という意見もありますが,甲案に賛成するのが多数意見となっています。   その理由としては,土地と建物の所有者が異なっていて,かつ,建物の管理を要する場合がある,具体的には,土地所有者が建物に余り関心を持っておらず,物権的請求権を行使,あるいは賃貸借契約を解除して明渡しというようなことをしないために,建物が適切に管理されずに放置されているという状況がある,あるいは,そのような状況に陥る危険性が高い建物がある。このようなケースに対応できる制度を創設することが有益であり,甲案に賛成するという意見が,多数となっています。   ただし,甲案を創設する場合,部会資料にも書かれていますが,所有者不明建物管理制度は,所有者不明土地管理制度よりも,管理人の行為の裁量の幅といいますか,業務の幅が広いということになろうかと思います。建物の修繕等の保存行為を行うこともあれば,敷地権と一緒に建物を売却することもあれば,あるいは,ケースによっては,建物を取り壊すという判断をしなければならない場合もあります。したがって,部会資料の補足説明にも問題意識が書かれていますが,どのような要件の下で,あるいは,どのような事情があれば建物を売却するという判断をすべきなのか,あるいは,建物を取り壊すという判断をすべきなのか,この辺りをもう少し細かく議論した方がよいと思います。   それから,甲案で対象となる事案にはいろいろなパターンがあるのですが,中でも管理人にとって難しいと思われるのが,土地と建物の所有者が異なっていて,いずれも所有者不明状態である場合です。このような場合でも,甲案では,所有者不明土地管理人と所有者不明建物管理人を選任することができるわけですが,土地所有者と建物所有者とで利害相反が生じ得ると思われます。ケースによって,たとえば,管理人は土地・建物いずれについても保存行為をすればよいという事案では,必ずしも利害相反にならず,同一人物が土地・建物の管理を行えるケースがあるのかもしれません。ただし,建物を取り壊して土地を更地にするであるとか,あるいは敷地権があることを前提に,建物を敷地権とともに売却するといった場合には,土地所有者と建物所有者とで利害が相反すると思われますので,このような場合には,同一人物を管理人に選任することができないということになるのかとか,そういったことを,もう少し議論した方がよいと思います。   それから,部会資料4ページの2については,1で甲案を採るのであれば,甲案に賛成というのが多数意見でした。乙案と丙案は,迂遠だというのがその理由です。   3と4については,本文に賛成します。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   この建物の管理命令に関する甲,乙,丙案のうちどれがいいか,ということにつきましては,今回新たに出していただいた乙案なども,従来の案に比べればかなりフレキシブルになっているように感じられるのですが,事業者の中からは,甲案を支持する要望,独立して建物だけ管理できるようにしてほしいという要望が依然として強く出ているという状況です。   理由につきましては,先ほど正に蓑毛幹事がおっしゃられたとおりで,土地の所有者に関心がないために土地上の所有者不明建物が放置されている場合が現にある,ということによるニーズはかなり強いのかなと思っております。ただ,その場合,やはりどうしても,建物の敷地の利用権が設定されていない場合にどうするのか,今回の提案では,例えば,3で,建物が無権限に建てられている場合に,管理人がその建物の敷地に立ち入って使用することができるようにするための特別の規律は設けないというふうな方針になっておりまして,この理屈自体はやむを得ないかなと思えるところがある一方で,では,そうなってしまうと,建物管理人を独立して選任したところでどうなるのかという懸念は出てくるところでございます。   前回の部会で,部会資料39で出ておりました,いわゆる管理不全土地に関する制度との関係で申し上げますと,例えば,実際にこの建物管理が問題になる場面の多くは,本当に土地上の建物が非常に危険な状態であると。だけど,土地の所有者は,分かってはいるんだけれども何もしてくれないというときであるわけでして,その場合,管理不全土地管理人による管理を命じることもできるはずです。したがって,これを所有者不明建物管理という制度でやるのか,あるいは,管理不全土地の管理の制度を使い,そこでさらに,その中で,危険な建物が建っている土地なので,ということで管理人の権限でその建物を管理したり,場合によっては除去したりすることによって防ぐというアプローチを採るのか,これは何かいずれのやり方もあるような気はしておりますので,恐らく部会資料39にも書いていただいていたとは思いますが,ちょっとその辺の制度の整理の中で,何がベストかというのを検討していただくのがいいのかなとは思っておるところです。   以上を踏まえ,今回の提案に関して申し上げるとすれば,建物管理制度を独立して設けていただきたいというニーズがある一方で,例えば,甲案と乙案というのが全く両立しないものなのかというとそうではなく,例えば,所有者不明土地管理制度の中で,土地の管理人が建物も処分できるようにするというのを設けつつ,場合によっては,土地の所有者が不明ではないときも所有者不明建物の管理や処分ができるようにする,そういった何かフレキシブルなやり方の方が,むしろ実態には沿うのではないかというところもあったりするようには思います。   ですので,一応甲案を望むニーズがあるということは申し上げつつ,建物だけ独立して何かやる,ということになると,土地との関係でどこまでできるのかという問題がありますので,ちょっとそこをうまく,管理不全土地の管理制度でやるのか,あるいは所有者不明土地,あるいは所有者不明建物の管理制度でやるのかというところを,トータルとして御検討いただければなというところを申し上げたいと思います。 ○今川委員 我々も,1の1のところですが,結論からいうと,甲案に賛成です。   元々建物について,利害関係人が申立てをするという場合は,建物の取壊しをしなければならない場合が相当数あるだろうと。そうすると,建物の管理人が選任されて,その管理人が建物を取り壊すというのはどうなのか,疑義が生じるということで,管理人を置くことに消極だったのですが,管理人による建物の取壊しも可能であるという考え方も示されましたので,であるならば,建物管理人制度があってもよいだろうと考えています。   そして,乙案,丙案は,建物の管理人は置かずに,必要な場合は土地管理人が建物を管理するという仕組みであって,土地管理人の選任が前提となっていますので,甲案は,場合によっては建物のみの管理人を選任したり,土地と建物双方に管理人を置いたりという,選択の幅が広くなると思われるので,甲案がよいのではないかという意見が,我々の中では多いです。   補足説明の3の建物の取壊しというところの3ページの第2段落の中頃に,建物の取壊しが予定される場合には,それに要する費用などを事前に申立人に予納させる必要があると考えられるし,この予納金が納付されない場合には取壊しをすることができないので,管理命令は取り消される,又は却下されることが想定される,と説明されているので,この説明からしても,元々取壊しを予定して管理人を選任する,そういう選任方法もあり得るということなのだろうと理解しています。   質問ですが,管理人が選任された後,事後的に取壊しが必要となる場合もあると思うのですが,そういう場合の一番の問題は費用だと思うんですが,そういう場合は,予納金の追納というか,追加というか,それを求めるというようなことになるのでしょうか,というのが質問です。   それから,2の賃借権等の権利についてですが,これも,1で甲案を採ることを前提としての三つの案ですけれども,これも甲案でいいのではないかという意見が多いです。この乙案,丙案が,逆にどのような場合にこのような制度が必要なのかが,ちょっと見えてこないという意見が多いです。特に丙案なんかは,土地の管理人,それから賃借権等の管理人,建物の管理人と,理屈上,3人の管理人が選任されることもあり得る。そういう場合というのはどのような事例なのか,どんな場合に必要なのかなというのが,ちょっと分からないという意見が多かったです。   あとは,特に意見はありません。 ○山野目部会長 今川委員から,数々の御意見に加えて,お尋ねが一つありました。所有者不明建物管理命令に基づいて,裁判所の許可を得て建物の取壊しをする際に,管理命令が発令された後,しばらく時間を置いてからその取壊しが話題になってきたときに,予納金の追加を求めることがあるかというお話であります。   恐らく,理論的には,管理命令がまず出されて,その上で取壊しが相当かどうかを裁判所に判断してもらって,そこ,一瞬というか,ワンタイミングというか,離れていて,それで取壊しが問題になってきて,許可が与えられたら取り壊すということになるでしょうから,そのときにもう一回,予納金が既に収められているもので十分かということを考えなければいけないという御議論は,ごもっともなことであろうと感じます。   事務当局において運用のイメージがあれば,お話しください。 ○宮﨑関係官 御指摘のように,事後的に取壊しが必要となるような場合で,費用が足りないような場合もあると思います。そういった場合は,追納してもらうということもあり得るものかなと考えております。 ○山野目部会長 ありていに言うと,権限の面では裁判所の許可,お金の面では予納金の追加,それらがなければ取壊しができないということは,ある意味では当たり前の常識的な帰結ですけれども,そのようなことだろうと考えます。   引き続きいかがでしょうか。   甲,乙,丙という三つの案をお示ししているところについて,御発言を頂いた3人の委員からそれぞれお話を頂いております。山田委員,どうぞ。 ○山田委員 ありがとうございます。   甲,乙,丙,どれがいいかについては,余りはっきりした意見を持っていないのですが,前提について少し分からないところがありますので,質問をさせていただきます。   直前まで検討していた所有者不明土地管理制度と所有者不明建物管理制度との関係です。   土地上に建物があって,どちらも所有者が不明の場合,所有者不明土地管理制度の方は,保存行為などをまずすることができ,しかし,それを超える場合には,更に裁判所の許可を得て,例えば,売却ということも可能であると,そのように理解しました。それに対して,建物管理制度の方は,資料43の土地の5ページのイに対応する提案がありません。そして,補足説明を見ても,取壊しの話が中心になっているようであります。そうすると,所有者不明の土地と,その上に所有者不明の建物があり,この制度を使おうとしたときに,土地と建物を一体として第三者に売却するということについては,どう考えられるのだろうかというところが,疑問の中心です。   一応理解したところに基づくと,そのときには,建物を取り壊してから土地を売却すればいいのかもしれないなと思うのですが,しかし,それが適切な場合も多かろうと思いますけれども,土地,建物を一体として,この所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度を使って売却するということも,できてもよいのではないかなと考えております。両者の関係というんでしょうか,今申し上げたような例について,どういうふうに使えるのか,あるいは使えないのか,御説明を頂ければ幸いです。 ○山野目部会長 山田委員,ありがとうございました。   ただいま,事務当局から,弁解というか説明を差し上げますが,どのような弁解があるかというと,おおむね次のようなことです。つまり,所有者不明建物管理制度については,本日甲案,乙案,丙案をお示しして,これを委員,幹事の御意見を承って,大きな方向が定まった段階で,所有者不明土地管理制度における部会資料43,5ページ以下のイ以下の細目に当たる規律の提案を,次の機会に差し上げようと考えておった次第でありますから,当然山田委員が既に御発言の中で見抜いておられるような,細目の整備がされていくであろうと感じられるところでありまして,そのようなお話を事務当局の方からお願いいたします。 ○宮﨑関係官 今,山野目部会長からお話しいただいたように,ここで大きな方向性を決めた上でとは思っておりましたけれども,これは中間試案の中でも記載していたところではあるんですが,基本的には,所有者不明土地管理制度におけるゴシックのイ以下の権限などの規定と同じようなものを今回の建物管理制度の管理人についても置くということを考えてございました。 ○山野目部会長 そうしますと,山田委員のお尋ねを受け止めて,ただいま事務当局がお話ししたことの趣旨を繰り返しますと,土地も建物も所有者又はその所在が不明であるときに,土地とその上の建物を,どちらもそのままの状態で一体として裁判所の許可を得て売却をすることもできますし,同じ局面について,裁判所の許可を得て建物を壊して,いわゆる更地として土地について裁判所の権限外許可の裁判を得て売却するということも可能であるという趣旨の御案内を差し上げました。   山田委員におかれて,お続けになることがあれば,お話をください。 ○山田委員 ありません。大変よく分かりました,ありがとうございます。   配られた資料を見ると,今の御説明は書かれていたのかもしれません。言及があったのかもしれません。大変失礼いたしました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   山田委員の御心配はごもっとものことですから,作業を続けてまいることにいたします。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○國吉委員 所有者不明のこの建物については,やはり甲案がいいのではないかと思っております。   そもそも所有者が不明であるということ,土地上に建物があって,土地の所有者が不明であると同時に,建物の所有者が不明であるというときに,土地,建物が同一の所有者であるということを,そもそもそれを認定できるのかどうかというのが第一だと思います。建物についても,やはり建物管理人,それから土地の管理人と,別個でやはり選任されるということを,その土地の処分,それから建物の処分についても,やはりそれがいいのではないかと思っております。   あと,この建物について,補足説明の4番,未登記建物についてという記載がございます。これについては,そもそもその所有者が不明である建物についての,いわゆる表示に関する登記等は,これから公示方法について引き続き検討いただくということですけれども,やはり建物の認定の部分については非常に難しい。そもそも所有者が不明であるので,例えば,建築のときの経緯であるとか諸々のところが,当然ながら不明ということになろうかと思いますけれども,そういったところも含めて,この未登記建物についての公示方法については,引き続き検討をお願いしたいと思っています。 ○山野目部会長 國吉委員から頂いた,前段の甲案の支持の御意見の御表明を承りました。また,後段で,未登記建物について,引き続き検討せよという御注意も承りました。未登記建物については,引き続き土地家屋調査士会の御意見なども伺いながら,検討を深めてまいるということにいたします。   御相談は,常に表題登記をしないといけないかという問題が,やや気になっておりまして,所有者不明建物管理命令が発令されると,一般的な扱いとしては,裁判所書記官が管理命令の登記を嘱託することになりますが,そのときに,表題登記がないと,現在,処分の制限の登記についてされているような,前提となる表題登記から起こさなくてはいけなくて,土地家屋調査士の先生方に建物図面を作ってくださいとかいうお話になりますが,しかし,これは事案によりますけれども,取り壊すことがほぼ,その解決しかないであろうと思われるような事案で,わざわざそれをして,直ちに取壊しになって,建物の滅失の登記をするというなりゆきは,何だか社会的な資源の使い方としていかがなものであろうということも感じます。そのような問題を見抜いて,今,問題提起をしていただいたと思いますし,引き続き御相談をしながら悩んでまいりたいと考えます。ありがとうございます。   吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。   私も甲案に賛成をいたします。   ほかの先生方がおっしゃったように,適用範囲が広いということ,それから,利用の仕方が分かりやすいであろうという単純な理由ですが,その意味で甲案がいいのではないかと思います。   また,甲案を採るか,乙,丙を採るかというのは,そうした仕組み上の問題であるとともに,建物の問題を土地の問題の延長線上として位置付けるのか,あるいは建物は建物,土地は土地と考えるのか,といった問題にもつながるかと思います。日本の場合,登記制度は土地と建物と別々で,所有者も別の可能性があるわけですので,どちらかといえば,これは土地と建物と整理して仕組みを作ることが分かりやすいのではないかと思います。   そして,資料44の2ページの2に,制度の活用が想定される場面についてという部分がございますが,この所有者不明建物管理制度が利用される範囲というのは,実はかなり広いのではないかと期待しております。今回のこの建物管理制度と,それから資料43の所有者不明土地管理制度の特徴は,土地や建物にスポット的に運用ができるということに加えて,個人と法人の両方に適用できることだと思います。地域では,個人が持っている土地や建物が不明化するという問題とともに,法人が倒産を契機に,その所有していた事務所や工場の所有権が曖昧になって手が付けられないという事象もあります。そうした法人の倒産を契機とする所有者不明化に対応する意味でも,こうした管理制度は,スポット的に土地や建物,そして,所有者が個人であれ法人であれ使える可能性があるということで,非常に重要なものではないかと思います。 ○山野目部会長 吉原委員におかれましては,法人の方面への注意喚起をしてくださいまして,ありがとうございました。   法人といえば,もちろん会社など,営利法人もございますけれども,あわせて,現在,地域においてちらほら目立ってきている点は,無住のお寺,住職がいないお寺とか,誰もいなくなっている神社とか,祠(ほこら)みたいなものがあって,神様,仏様が関わっていることから,うっかり手が出せないような側面がありますけれども,まちづくりとの関係で困ると思わせるような局面も増えてきています。   あわせて,吉原委員から問題提起を頂いた機会に,吉原委員にもお願いしておくとすると,本日,現段階で多くの皆様方から支持を頂いている甲案で制度整備を進める場合には,ほかの案でもそうですけれども,取り分け甲案の場合において,空き家等対策の推進に関する特別措置法の見直しとの関係をよく考えなければいけない度合いが大きくなってまいります。国土交通省の施策との関係でも,甲案で進んだときのここでの民事法制上の制度整備とあちらとの連携などについても,またいろいろ御意見をお寄せくだされば有り難いと望みます。   佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   費用の負担のことについて,反対とかっていうことでは全くないんですけれども,こういう場合どうなんだろうかということを思ったことがありまして,それを申し上げたいと思います。   土地の上に建物がある。その建物は除却せざるを得ない。その場合,除却費用は誰が持つんですかと。それは,当然分かっているならば,最終的には建物所有者であると。しかし,それが分からないということも,よくあると思うのですね。そうすると,予納金から出すということになり,結局は,請求者が実質的には負担するということになると思うんですね。   それはそれで当然だと思うんですけれども,その建物が除却された結果,土地の方は価値が上がる場合がありますよね。この土地についても,仮にの例ですけれども,その後,権利関係も整理されたしということで,比較的よい値段で売ることもできて,売れましたということになったといたしますと,恐らく今,構想されている1の甲案では,土地については土地で土地の管理人を選び,予納金を誰かが納めて土地の管理をやり,建物の方は建物の方で誰かが予納金を納めて管理人を選んでもらう。そして,土地の管理人と建物の管理人が,場合によっては同じ人ということもあるかも知れませんが,それぞれが自分の仕事をして,第三者の手に結局更地が渡りましたというときに,土地の方については,恐らく予納金は実質的負担としては残らないのに対し,建物の方は,何も理屈を用意しないと,予納金を取られ損というか,取られて,はい,終わりですということになりそうだと思うんですね。   どうすれば解決できるのかはよく分かりませんけれども,何かうまい調整の仕組みが,法的なのかどうかも分かりませんけれども,できた方が,全体の処理がうまくいくこともあり得るのではないかなと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事から問題提起を頂きまして,ありがとうございました。   今後の検討を進める上で,事務当局において参考にするために,佐久間幹事にお尋ねを併せて差し上げたいと考えます。   佐久間幹事から,あまり気づかれていない重要な問題提起を頂きました。委員,幹事の皆さんも,今御覧いただいたとおり,一言で申せば,土地を更地にするということについてフリーライドをする土地所有者がいると,それを許してよいかという,その問題提起をしていただいたものでありまして,それは,何らかの解決があてがわれなければいけないと考えますが,想定される方向としては,これからここで私たちが考えている規律整備の中に,何かルールを明文で置くということが一方にありますし,もう一方では,そこについては,既存の不当利得であるとか事務管理であるとか,そういう規定ないし法理の一般適用に委ねて解決を見定めていくということになるということも考えられるでしょうし,現時点で,それを決め切るような御所見をお願いするわけにはいきませんけれども,目下のところで何か,佐久間幹事においてアイデアをお持ちでいらっしゃれば,お教えいただきたいと望みます。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 申し訳ありません,アイデアはありません。ありませんが,不当利得も事務管理も難しいのではないかと思うんですね。ですから,もし何か調整が必要だということであれば,新たに工夫をして,そのための制度を,繰り返しになりますが,法律なのかどうか分かりません,でも,法律で決めないと駄目なのかな,設ける必要があるのではないかなと思います。   そういうふうな仕組みを用意した方が,土地を流動化させやすくなるのかなと,素人的には思いますけれども,実際そこまでしたって,そのような土地については,まあ,そうでもないよということでしたら,理屈はかなり難しいと思いますので,何も手立てをしないということもあるのかなと思っております。 ○山野目部会長 よく分かりました。   今の佐久間幹事の問題提起を伺いながら,今後更に検討しなければいけないことでありますけれども,三つほど方向が考えられるところでありまして,一つは,私も佐久間幹事がおっしゃるとおり簡単ではないと考えますが,何か民法の一般法理を適用することによって処するという行き方が一つ目。二つ目は,ここで考えられている民事法制の中に,何かルールを起こすということであります。ただし,起こすといっても,上手にルールが書けるかどうかは,かなり難しい作業になるような気がいたします。3番目は,そういうことをかちっと,動きようのないルールを書き切るということではなくて,その局面の費用の分担等の手当てにつきましては,まちづくり,都市計画事業の観点から,必要なときには何かその手当てがされるという可能性をにらみながら,特に民事法制としては手立てを講じないという行き方もあるのではないかと感じます。   いずれにしても,大事な問題提起を頂きましたから,更に検討することにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 先ほどの佐久間先生の御発言に関して,まだよく考えがまとまっていないのですが,発言させてください。先ほど佐久間先生がおっしゃった,土地の所有者も建物の所有者も不明で,土地の上に建物があってその建物を除却せざるを得ないというケースには2種類あって,その土地と建物の所有者が同一人物だということが認定できる場合と,そうではなく別人の場合があります。この二つを分けて考える必要があると思います。   まず,土地と建物の所有者が同じ場合ですが,厳密に考えると,甲案では,土地の管理人と建物の管理人は別ですので,別事件ということになるのかもしれませんが,土地所有者と建物所有者との利害相反はありませんので,土地と建物の管理人を同一人物にして事件を併合するような形にし,土地の売却代金の中から建物の除却費用を捻出するという処理も許容されるように思います。あるいは,実務的な感覚からすると,管理人が費用をかけて建物を除却することはせず,後に買受人が建物を取り壊すことを前提に,建物0円で土地建物を売却する方が現実的かもしれません。   難しいのは,土地所有者と建物所有者が別人の場合ですが,実務的な感覚からすると,土地の管理人と建物の管理人を別々に選んで,それぞれの立場で善管注意義務を負う管理人同士で話し合って,和解的解決を図ることになると思います。建物の管理人としては,建物を取り壊すべきだけれども,その費用が捻出できない。土地の管理人としては,建物管理人を相手に建物収去土地明渡請求訴訟を提起して強制執行するのでは,時間と費用が多額にかかるところ,建物管理人に建物を取り壊してもらって土地の明渡しを受ければ,土地の価値が上がって高く売れるという状況がある。そうであれば,土地の管理人と建物の管理人の双方が,それぞれ裁判所の許可を得て,和解的解決をすることによって,建物除却費用を土地の売買代金から捻出して,建物管理人が建物を取り壊した上で売却する,あるいは,土地管理人と建物管理人が売主となって,建物を取り壊さずに,建物0円で土地建物を売却する,そういったことは可能ではないかなと,漠然と思いました。  所有者不明建物管理制度を創設するに当たっては,今申し上げたようなことに対応できるような制度設計が必要なのではないでしょうか。 ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれては,ありがとうございます。   土地計画事業とかいうことのほかに,事案に接した裁判所の調整の御努力などを踏まえて,和解的な解決をするというアイデアの可能性もおっしゃっていただきました。御礼申し上げます。   ほかにいかがでしょうか。   大体,部会資料44について御意見承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。   それでは,この際,申し上げます。   部会資料44について審議をお願いしましたところ,本日段階で決め切るものではございませんけれども,所有者不明建物管理制度の在り方につきましては,1ページに用意している三つの案の中で,甲案を支持する複数の御意見を頂戴いたしました。次回に,この制度の検討をお願いする際には,少なくともこの甲案などを踏まえた,更なる提案を差し上げることになろうと存じます。   その際,本日の審議を顧みますと,大きく分けて三つの点,1点目は,山田委員から御指摘がありましたとおり,甲案なら甲案を踏まえての,創設しようとする規律の細密度の向上,詳細化を図った上でお諮りをするということが,当然に求められます。   2点目といたしまして,蓑毛幹事の冒頭の御発言,それから,今の御発言もそうでありますが,仮に甲案でいった場合において,土地の管理命令と建物の管理命令が別事件として起こされ,それぞれについて別の管理人が創設されるということになりますが,しかし,実質の運用として,同一人であっていけないか,いけないという理屈は当然にはないと思われるが,利益相反の問題等について注意をする必要があるという観点から,少し問題になりそうなところを洗ってみるということが必要でございます。   3点目といたしまして,佐久間幹事から問題提起を頂いたことでありまして,建物の管理に要する費用,売却も含む意味での広い意味での管理に要する費用と,土地に関し管理に要する費用との調整の側面については,少し丁寧に考えなければいけない契機があるということが分かりましたから,これについても可能な限りの議論をしていただくための整理を用意するということにいたします。   部会資料44についての審議をここまでといたします。ありがとうございました。   続きまして,部会資料45をお取り上げくださるようにお願いいたします。   部会資料45も財産管理制度の見直しでございますけれども,こちらは,不在者財産管理制度及び相続財産管理制度についてお諮りするものであります。   部会資料45の1ページは,不在者財産管理制度の見直しについて,第15回会議でお諮りした部会資料34と基本趣旨が同一内容のものをお示ししてございます。   それから,おめくりいただきまして2ページから後にまいりますと,相続財産管理制度について,これも第15回会議でお諮りしたように,部会資料34で御案内した方向に基づき,一言で申せば,統一的な相続財産管理の制度を設けるという構想の骨格を維持し,さらに,法制的な準備を踏まえた文言の整理を含めたものを御提示申し上げております。   4ページにまいりますと,4ページの下の方,(2)のところで,相続人があることが明らかでない場合の相続人の捜索,探索等の手順,それから相続債権者及び受遺者への弁済等の手順についての基幹のリズムのことについて,部会資料34でお諮りしたとおりのものをお出ししております。   隣の5ページにまいりますと,相続の放棄をした者の義務に関し,部会資料29でお諮りしたものと基本趣旨を同じにするものをお示しした上で,第13回会議において議論になったことについて,補足説明で若干の御案内を差し上げているものでございます。   不在者財産管理制度と相続財産管理制度を分けないで,部会資料45について,一括して御意見を承るということにいたします。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   日弁連ワーキンググループでは,まず,1項の不在者財産管理制度につきまして,(1)の供託の規律については賛成多数でした。   (2)の職務内容の限定に関する規律を設けるかどうかという点につきましては,これを設けないということに対して賛成意見と,もう一つは,裁判所が管理対象財産を限定することなどが可能となる仕組みを,引き続き検討した方がいいという意見とがありました。   第15回の部会で宇田川幹事から,この職務内容の限定に関する規律を設けることに関しての,いろいろな難しさという御懸念が示されていましたことは承知しておりますけれども,あらかじめ定めることができるという規定であれば,そのとき御指摘のあったような御懸念のない事例,可能であり,かつ,適切な場合にだけ,この規定を利用すればよいという考え方もあり得ることから,引き続き検討してみてはどうかという意見もございました。   それから,2項の相続財産管理制度ですが,(1),(2)を通して賛成意見が多数でした。その上で,幾つか提案がありまして,一つ目は,これも第15回の部会で宇田川幹事から御指摘があったことと同じなのですが,各制度による管理人の権限が競合する事態が生じて混乱することの無いように,管理人,相続人の権限や優劣関係を整理してほしいという要望がございました。今回の部会資料の先ほど検討しました43の2ページに,所有者不明土地管理人と不在者財産管理人等との競合という項目を設けて説明いただいており,それについては理解できるわけなんですけれども,この項目では,不在者財産管理人等との競合という題名ではありますけれども,ほかの管理人制度との関係については,特段のお示しがなかったと思います。改正後の実務におきまして,要件という面からは複数の制度の利用が可能であるように見える場合に,どれを選ぶのが適切か,選択の指針にするために,先ほどの資料43のような説明を設けていただけると有り難いという指摘が出ておりました。   それから,もう一つは,各制度の管理人となった者の行動指針を御検討いただけると有り難いという意見です。特定人の利益のためなのか,より公益に即したものと見るべきなのかというような,行動のための指針ということです。   3項の相続の放棄をした者の義務については,賛成多数で特段の異論はございませんでした。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただきまして,ありがとうございます。   木村幹事,どうぞ。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。   まず,一つ目は,不在者財産管理制度の見直しのうち,本文の1(2)の職務内容の限定に関するところですが,部会資料の補足説明において,運用上の工夫により同様の結果を得ることは不可能ではないと考えられ,第15回部会でも現にそのような運用が行われている旨の記載があり,そのような運用が行われているということは承知しておりますところ,このような運用におきましても,不在者の財産全体に管理が及ぶということを前提とした上で,一応の不在者の所在調査や財産調査を行うことによって,不在者の利益を保護するという不在者財産管理制度の趣旨も踏まえた運用が行われていると認識しておりまして,その点を御参考までに付言させていただきたいと思います。   これが1点目でございまして,二つほど2の相続財産管理制度の見直しに関して御教示いただきたい点がございます。1点目は,先ほど中村委員からもございましたけれども,法改正後も残る既存の相続財産管理制度と新しい相続財産管理制度との関係についてですが,例えば,家事事件手続法200条1項の相続財産管理制度と新しい相続財産管理制度との優劣,例えば,家事事件手続法200条1項の相続財産管理人が既に選任されている場合に,新しい相続財産管理人制度の選任の申立てがなされたケース,又はその逆のケース,そういったときに,その帰趨についてどのように考えたらよいのか。また,両者が重複選任されてしまったといった場合,それぞれの権限の範囲や優劣について,どのように考えたらよいのか。そもそも重複選任といったことがなされないように,申立てを受けた裁判所において,他の裁判所で相続財産管理人が選任されているのかどうかを把握することができる仕組みといったものも考える必要があるのではないかといった点が問題として考えられましたので,何か御教示いただけるところがあればご教示ください。   もう一つが,相続財産管理制度の関係で,本文のアのただし書でございます。相続財産管理人が選任できる場合から,相続人が1人である場合でその相続人が相続の承認をしたときが除外されるということになっております。例えば,成年後見制度が利用されているケースで,被後見人が死亡しまして,唯一の相続人が非協力的ないし無関心であって,熟慮期間が経過したにもかかわらず,相続財産を後見人から引き継ごうとしないといったような事態が考えられますが,こういった場合に,供託できない財産については,後見人であった者が相続財産を無報酬で,裁判所の監督を受けることもなく,事実上管理しなければならないことになります。こういった事態に,相続財産管理人の選任ということで対応できるのかについては,現在は,法文上そういったことも検討できなくもなかったのではないかと思われますが,これが,今後相続人が1人である場合において,その相続人が相続の承認をしたときというのが明文で除外されるということになった場合に,法文上これがもうできなくなってしまう,検討がもうできなくなってしまうというようなことも考えられ,何かこういった問題に参考になるようなことがあればご教示いただけますでしょうか。 ○山野目部会長 都合3点にわたる御意見ないしは問題提起を頂きました。   1点目のみ,不在者の財産の管理に係る御指摘でありまして,職務内容の限定に関して,法制上の規律を置かないという方向を,この部会資料45で提示しておりますけれども,それに関連する御知見の披歴を頂きました。一つ前に中村委員から,弁護士会の中の一部の皆さんの御指摘として御要望があった事項,そのお考えとの間で,引き続きこの部会資料で御提示申し上げているような考え方を題材として,意見交換を重ねていただければ有り難いと感じます。これが1点目でございます。   それから,2点目の家事事件手続法200条の関連のこと,及び3点目に御指摘いただいた成年後見年の死後の事務の円滑な終了と相続財産管理制度の運用,新しく設けられる制度との間にエアポケットが生ずるおそれはないかという観点からの御指摘,これら後ろの都合2点については,いずれもどのようにすべきかということについて,むしろ今後において裁判所との間で御相談を重ねていくべき事項であると感じられますけれども,現時点において,御指摘を承ったところを踏まえて,法務省事務当局において何か考えているところがあれば,御案内を差し上げます。 ○宮﨑関係官 まず,1点目の家事事件手続法200条で選任される,いわゆる遺産管理人と,今回の本文,相続財産管理人との関係なんですけれども,先に遺産管理人が既に選任されている状態で,その後相続財産管理人の選任の申立てがされた場合において,その遺産管理人が全て相続財産の全般を管理しているという状態でしたら,相続財産管理人を更に選任する必要性は普通はないのではないのかと思われますので,後の方にされた相続財産管理人の選任の申立ては却下されるということが考えられると思います。また,その逆も同じようなことが言えるのかなと思いまして,先に相続財産管理人が選任されている状態で,後から遺産管理人の選任が申し立てられた場合には,後の方にされた遺産管理人の選任の申立てが却下されるということが通常はあり得るだろうと考えておりました。   また,既に重複してそれぞれが選任されてしまった場合については,普通は両方の管理人に,いずれも管理を継続させるという必要はない場合が多いのではないかと思われますので,どちらかを取り消すことが考えられるのかなと思っております。どちらを取り消すのかということについては,個別事案の判断になるかとは思いますが,一つの考え方としましては,家事事件手続法200条の遺産管理人の選任に係る保全の必要性がなくなったと認められると判断をして,そちらの方を取り消すという運用も考えられるものと思われます。   今のが家事事件手続法200条の関係でして,もう一つが,相続の承認との関係でございますが,現行の民法第918条第2項に基づく相続財産管理人の選任というのがございますが,こちらの選任を申し立てることができるのは,相続人の熟慮期間中に限られると解釈されていると考えられまして,そういう意味では,現行法下においても唯一の相続人が相続の単独承認をした場合であれば,同法に基づく相続財産管理人の選任の申立てはできなくなるものと考えられます。もっとも,お尋ねのケースにおきましても,相続の単純承認がされていないと認められるのでしたら,現行の民法第918条第2項と同じく本文の相続財産管理人の選任を申し立てることができるとも考えられます。   実際の実務で,相続開始時から3か月を経過した後に,民法第918条第2項による相続財産管理人の選任が認められているというのも,そういったケースではないのかなと考えられます。 ○山野目部会長 事務当局から一応御案内を差し上げました。   家事事件手続法200条との関係については,御案内申し上げたように,裁判所と引き続き相談していく必要性が大きいであろうと感じます。   それから,成年後見人の死後の事務の関連も同様でありますけれども,民法873条の2の規定が議員提案による民法改正で追加されてから,その運用上浮かび上がっている課題も整理した上で,こちら側の相続財産管理の制度の整備をにらんだ上で,更に検討していかなければならない事項もあるであろうと感じます。このたびの法制審議会の答申の中で,873条の2の規定に手を触れるということにはなりませんけれども,そこに検討すべき課題があるという可能性はあり得るものであります。   いずれの点につきましても,引き続き裁判所と御相談していくということで,木村幹事におかれてはよろしゅうございましょうか。 ○木村(匡)幹事 はい,ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。 ○水津幹事 相続の放棄をした者の義務について,気になっていることを申し上げます。   提案では,相続財産に属する財産を占有するなどとされています。占有というと,物,つまり不動産及び動産が念頭に置かれているようです。他方,財産というと,物以外の財産も含まれます。規律の対象を物に限定するのであれば,財産という文言は,物に改めた方がよいと思います。もっとも,この場合には,物以外の財産の扱いについて,規律が欠けることとなります。   これに対し,規律の対象を財産一般とするのであれば,物以外の財産の扱いについても,規律が欠けることはありません。もっとも,この場合には,占有という文言は,改めた方がよい気がします。民法以外の法律の中には,例があるようですけれども,民法では,財産の占有という概念は,用いられていないように思われるからです。 ○山野目部会長 水津幹事の御注意を伺い,よく理解することができました。どのような文言として整理したらよいか,よく考えてみることにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   相続人があることが明らかでない場合の基幹のリズムの見直しに関する民法952条以下の見直しにつきましては,賛成であるという簡単な御指摘のほかに,特段の御議論がありませんでしたけれども,ここは,この方向で進めてよろしゅうございましょうか。   もし,これがこの方向で実現することになりますと,相続開始から特別縁故者の不存在確定まで含めますと,13か月もかからないと登記上及びその前提となる実体関係上の処理ができないという,現在の民法が抱えている大変な不便,そして社会経済情勢を踏まえると,今後ますます深刻になってくるであろうこの問題につきまして,かなり抜本的な対策が講じられるということになってまいります。   引き続き,この観点も委員,幹事の御意見を承りながら,規定整理の構想を進めてまいるということにいたします。   部会資料45について,特段の御指摘がなければ先に進ませていただきますけれども,よろしゅうございましょうか。   そうしましたらならば,部会資料46をお取り上げくださるようにお願いいたします。   相隣関係規定等の見直しについて,御相談を差し上げます。   部会資料46の1ページは,第1といたしまして,隣地使用権の見直しについてお諮りをしています。そこに御提示しているもの全般について見ていただきたいと考えます。   基本的な趣旨は,第14回会議でお諮りした部会資料32と同じであります。ただし,本日やや念入りに御議論いただきたいと考えます事項は,隣地に立ち入るに際して,コミュニケーションを取らなければならない相手が,隣地の所有者であるか占有者であるか,あるいは,はたまたその両方であるかということについては,第15回会議における問題提起を踏まえて議論の材料を用意しておりますから,ここについて御意見を承りたいと考えます。   おめくりいただきまして,5ページにまいりますと,越境した枝の切除等について,これも,部会資料32と基本趣旨を同じくする提案を差し上げております。ただし,竹木の枝の切除,根の切取りの費用とか越境した枝から落下した果実の扱いなどにつきましては,6ページで御案内しているとおり,規律を置かないという方向での提案を差し上げているところであります。   それから,おめくりいただきまして,8ページのところは,導管等設置権及び導管等使用権につきまして,部会資料32でお示ししているものと同様のものを御提示申し上げております。   部会資料46の全体について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 まず,第1関係ですが,請求の相手方をどうするかという点については,日弁連のワーキングの意見では,占有者でよろしいのではないかと,占有者説が多数でありました。その場合,占有者の権限については問わないということについても,賛成するという方向です。   ①のただし書なんですけれども,この点について,補足説明で,現行法の規律と実質的に変えるつもりはないんだという説明をされているんですが,承諾を求めることができないという,仮にこのままの条文になっちゃうと,現行法よりも狭くなっちゃうふうに読めちゃうので,ここは,補足説明の趣旨が通るような表現でお願いしたいということです。   第2関係ですが,第2関係全体として,方向性としては大きな異論はありません。賛成方向です。その上で,竹木が共有の場合について,共有者の1人の承諾で可とするという提案になっているんですが,これは,部会資料32のときには,これは変更行為か管理行為かという議論はされていたんですが,今回はそういうことはもう問題にせずに,1人でいいんだという決め打ちをするという趣旨の提案という理解でよろしいんでしょうかという,確認のための質問です。   それから,②のcですね。著しい損害又は急迫の危険を避けるため,急迫の危険という話が入ってきましたけれども,要件をもうちょっと具体化できないだろうかという要望がありました。   それから,落下した果実の扱いについて,大きな反対ではないんですが,従前の部会資料32の当時の,処分権限を認めるというものを付けた方がいいんではないかという意見がありましたということを,紹介させていただきます。   それから,第3関係ですが,②の点についていろいろ意見が出されまして,これについては,やはり竹木の枝の切除と同じように,共有の場合ですね,導管設置についての承諾について,変更行為なのか管理行為なのかという問題があろうかと思うんですが,やはりそこは度外視して,過半数でいいんだという割り切りの御提案という趣旨なんでしょうかと。というのは,導管,埋めちゃえば表面からは見えないけれども,やはり性質としては変更行為なのではないかと。なので,過半数というのは筋としておかしいのではないかという意見がありましたので,その部分についての確認をさせていただきたいということです。   それから,提案には書かれていないんですけれども,導管が設置されているということについて,何らかの公示方法が必要なのではないかという意見がありました。これは,公示方法なくても,対抗力は何人にでも対抗できるという意味での提案なんでしょうかという質問を含むと思うんですが,例えば,導管を設置した方の土地が,将来売却などされて,買受人がそこに埋まっているのを知らないという場合が想定されるんですけれども,そういった場合の調整についてはどうするのかと,公示方法がなくても,隣地の導管を使用している側の権利が,常に優先するという考え方に立っておられるのかということを聞きたいという点です。   おおむね以上です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   橋本幹事におかれて,弁護士会の御意見を取りまとめいただき,御意見をおっしゃっていただいた点も多々ありました。それから,確認のためのお尋ねというおっしゃり方でしたけれども,大体3点だったでしょうか,共有されている竹木の扱いについての疑義,それから,関係する土地が共有である場合の導管設置権の規律の在り方についての疑問,それから,同じく導管設置権,導管等使用権についての,第三者対抗可能性と呼んでもいいようなお話の関連の確認のお尋ねでした。   これら3点を中心にして,事務当局からお話しください。 ○小田関係官 関係官の小田でございます。   まず,1点目の竹木の枝の議論でございますけれども,こちらは,従前,変更行為だったり管理行為の議論させていただいておりましたが,今回は,その議論とは関係なく,共有者の1人の者に対して枝を切り取らせるという規律を設けるということを提案しております。ですので,変更行為か管理行為かという話は,ここでは直接的には関係ないということになろうかと思います。   導管の方の共有についてでございますけれども,こちらは,承諾をする側が,本来変更行為に当たる行為であっても,この特殊性といいますか,導管設置の必要性であったり,他の土地等を使わせる義務を負っているという特殊性から,一律に過半数で足りるというような整理ができないかというところで,提案させていただいております。   今までの従来の議論であれば,変更行為に当たり得る行為であっても,一律に過半数で足りるというところを提案させていただいております。従来の議論からは変更行為の枠に入ってくるものも,ここでは過半数でできるというところを提案させていただいておりますので,そのような理解で御議論していただければと思っております。   最後に,導管の公示について御意見を賜りました。どのように公示するのかというところが難しいところかと思うんですけれども,我々の考えとしては,相隣関係の権利として,発生したものに関しては,次の所有者についても引き継がれるというところで考えております。ここについては,そういう権利があるものとして,その土地を買う方が調べていただく,あるいはその周りの土地を買う方が調べていただくということになるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 橋本幹事におかれて,ただいま小田関係官から案内を差し上げた内容を,弁護士会の先生方にお伝えいただければよろしいと考えます。   最後に話題になった点につきましては,改めて考えてみますと,小田関係官も今述べたように,従来の他の相隣関係上の権利,典型的なものは,公道に至るための通行権でありますけれども,あれは登記の対象になっておらず,小田関係官が述べたように,登記されていなくても,特定承継人に対して追及するといいますか,拘束が及ぶという前提で,あとは,例えば,売買当事者間では権利の不適合があったものとして,民法565条が定める,売主の契約不適合責任の問題として処理してもらうという発想で運用してきたものでありましょう。   今,導管について何かそこについて特別の規律を講じますと,通行権の方についても何かしなければならないという話になってきそうでもあります。いろいろ波及する問題も含めて考えていかなければいけないというような状況を,お伝えいただければ有り難いと感じます。   何か補足しておっしゃられることはおありでしょうか。 ○橋本幹事 今の説明,そういう説明だろうと予想しておりました。それを含めて,方向性としては,大きな反対論はありませんでしたということです。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。 ○潮見委員 先ほど弁護士会の発言がございましたから,1ページ目の点について,やはりどうしても言っておきたいと思いまして,発言をさせていただこうと思った次第です。   弁護士会の御意見,1ページ目の点で,占有者がよいということで御発言になりました。当面する問題の処理として,それが最適であるということであるならば,私はそれに,あえて反対するつもりはありません。   ただ,理屈っぽい話ですけれども,相隣関係というルールという制度は,基本的に所有権同士が衝突する中で,一方の所有権が他方の所有権のために制約を受けると。他方の所有権を一方の所有権のために拡張するという枠組みで制度が作り上げられてきたというように理解をしておりますし,その基本は,今でも私は変わっていないと思っております。   そういう意味では,ここの1ページ目で提案されている内容での隣地使用権についても,相隣関係という制度の枠の中で考えるということからすれば,隣地の使用によって所有権が制約を受けるという観点から,所有権の制約が必要か否かとか,その要件はどうなるのか,また他方,その隣地を使用する側の所有権の拡張という必要があるのか,あるいは,その要件は何かという観点から比較考慮をするべきであって,この問題を占有レベルでの調整という形で考えるべきではないし,理論からいったら,そうならざるを得ないというように思います。   先ほど申し上げましたように,当面する問題の処理として,占有者ということを相手にして承諾を求めればよいということであるのならば,こだわりません。新しい制度をここで作るんだと割り切るしかないとは思いますけれども,従前の伝統的な相隣関係という枠から考えますと,基本はやはり,相手方は所有権者であり,さらに,少し進めて所有者から土地の占有権限を与えられた者というように捉えていくというのが,理論としては筋ではないかと思います。さらに,それを崩して占有者まで広げるのが適切かという観点から,考えていくべきではないのかと思いました。   そういうこともありまして,弁護士会がおっしゃった考え方には賛成できないということを,最後にお話ししたいと思います。 ○今川委員 まず,第1の①のただし書については,橋本幹事がおっしゃった弁護士さんの考えと同じ意見で,逆の効果が発生するので,単に削除するだけでいいのではないかという意見があります。   それから,これも,橋本幹事が質問されて,当局の方で回答いただいた件ですが,越境した枝の切除について,その共有者,数人の共有に属する場合ですけれども,14回会議では,部会資料32では,変更行為に該当するから全員の同意を要するという意見もあったという記載があって,また,部会の席上で,保存行為と位置付けてもいいのではないかという意見もありました。今回,そこは全く考えずというか,関係なく,1人に対して請求できるという規律ですという回答を頂いたのですが,共有物について,単独でできるのか,過半数でやらなければいけないのか,全員の同意が要るのかということは,できる限り明確にしていこうという要請があるので,今回もこのような規律を設けるのであれば,枝の切除は保存行為として捉えているということを,やはり積極的にというか,あえてはっきりとさせておいた方がいいのではないかという意見が,我々の中にありました。 ○山野目部会長 司法書士会の御意見を承りました。ありがとうございます。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   まず,部会資料46の1ページ,第1,隣地使用のための①承諾請求および②催告の相手方につきましては,先ほどの潮見委員の意見に賛成です。この隣地使用のために承諾請求や催告をするということが,一つの権原の取得という意味を持つのであれば,その相手方はやはり既存の権原を持っている者であることが,土地所有権の効力を調整する相隣関係法理の趣旨に相応しいと思います。確かに,占有者に対する承諾請求や催告で足りると法律で定めればよいといえないことはないですが,承諾請求や催告の意味は,部会資料46の2ページ,下から2段落目で言及されている,占有訴権を発動させないための要件とは異なるもので,占有訴権レベルの問題ではなく,権原付与の問題であるということは,明確にしておく必要があるのではないかと考えます。   それから,もう1点,部会資料46の1ページ,第1の③では,承諾請求や催告をしなくても,①の目的の範囲内で隣地の利用ができる要件として,著しい損害又は急迫の危険を避けるためという新たな要件が設けられました。前回14回会議の部会資料32では,所有者の特定不能又は所在不明というのが要件として挙がっていて,隣地使用権の場合には公告をして,枝の切除の場合には公告を要することなく,隣地の使用や越境した枝の切除を認めるという構成になっていました。その要件に代えて,著しい損害又は急迫の危険,急迫の危険は既にありましたけれども,これらの要件が,所有者不明の要件の代わりに入っているという特徴があるように思います。   この変更の経緯について,御説明を伺いたいと思います。 ○山野目部会長 二つおしゃっていただいたうちの後ろは,お尋ねでした。隣地所有者が不明であるようなケースについて,前回部会資料用32までと,その点に関して見ると,異なる規律の提案がされている経緯を教えてほしいというお話でした。   経緯のお尋ねですから,事務当局の方から差し上げます。 ○小田関係官 御質問ありがとうございます。   所在不明又は所有者不明の場合の特則といいますか,規律を今回提案から落とす形になっておりますけれども,当初,その規律を置いていた趣旨といいますか,困っている場面というのをよく考えてみると,平時の場面と緊急時とに分けて考えることができるのではないかなと考えておりまして,平時の方は,②の規律で公示による意思表示を使うことで,裁判所の手続も介すということで,適切にやっていくということができるのではないかと,緊急時の方は,従前急迫の特則を提案しておりましたけれども,そちらの規律で対応できるのではないかというところで,所有者不明の特則を落としたという経緯でございます。   この③の著しい損害というところなんですけれども,必ずしも所有者不明の特則を落とすことのバーターとして入れたという趣旨ではございませんで,民事保全法の要件と同程度の要件がなければ,隣地使用をしてはいけないのではないかという価値判断で入れたものでございます。結果として,著しい損害というところが,所有者不明と絡むところとして補足説明で書かせていただいておりますけれども,経緯はそのようなものでございます。 ○山野目部会長 松尾幹事におかれては,いかがでしょうか。 ○松尾幹事 はい,分かりました。   ということであると,従来の所有者不明の場合に対応するというのは,むしろ②の方で,催告して確答がない場合というところで,むしろ対応するということになるでしょうか。 ○小田関係官 そのような理解でおります。 ○山野目部会長 よろしゅうございますか。 ○松尾幹事 はい,分かりました。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず第1なんですが,理論上の観点からのお話をいろいろ頂いている中では,非常に発言しづらいところではあるんですが,やはりここは,実務的な観点で申し上げますと,承諾を求める対象は隣地の占有者のみにしていただかないと,なかなかちょっと厳しいかなというところはございます。この隣地使用権で認められる使用類型の所有権に対する制約というのが限られたものに過ぎない,であるとか,ちょっとそういった理屈付けで何とか実務上のニーズに即したものにしていただけないものかというところで,引き続き占有者のみを対象とするという案を支持したいというところでございます。   あと,先ほど御指摘のあった第1の③につきましても,この要件を満たした場合に承諾なく隣地使用ができる場合というのを一定の範囲で用意しておいていただくということが,やはりいざというときには必要なのではないかというところがございますので,こちらについても賛成の意見を述べさせていただければと思います。   越境した枝の切除に関しては,先ほどから御指摘が出ておりますとおり,共有者の1人に枝を切除させることができるという点に関しては賛成でございまして,他の点についても,特段異論ございません。あと,導管等設置権に関しましても,今,本文に書いていただいている内容に関しては,基本的に賛成できるということを申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 少しここのところで議事の整理を差し上げます。   隣地使用権の行使に当たって,コミュニケーションの相手方として選ぶ者が,所有者であるか,占有者であるかという議論につきましては,潮見委員及び松尾幹事から,相隣関係の規律の本質に照らすと,所有権相互の調整であるから,所有者であるべきだろうという御意見を頂きました。藤野委員からは,実務上の観点から,占有者であってほしいという御意見を頂きました。   恐らく,その占有者であるという選択にする際は,相隣関係に関する規律の209条の趣旨としては,客観的要件を満たせば,所有者は隣地に立ち入ってよいものでありますということになるでしょう。ただし,その手順として,そこに現に使用している者がある場合において,その人とのコミュニケーションは,言わば政策的に求められることになりますという説明になるものであろうと考えられます。理論的にはそういうお話になりますが,そのような施策の採用がよいかどうかは,ただいま御発言いただいたようなもろもろの観点を踏まえて,議論が続けられなければなりません。   なお,関連して申し上げますと,所有者か占有者かといいますが,これ,所有者が自ら賃貸借契約の賃貸人になって,賃借人に使わせているときには,所有者は間接占有を有していますから,占有者の承諾を得ればよいと言ってみても,間接占有者が含まれるならば,結局は所有者である人の承諾も得なければならないことになってしまうものであり,何かこの部会資料が所有者ですか,占有者ですか,どちらですかと,畳みかけるように尋ねますが,その問い自体をひょっとしたら問い直さなければならないものであるかもしれません。   引き続き,國吉委員からの御発言を承ります。 ○國吉委員 第1の隣地使用権のところで,ちょっと意見を述べさせていただきます。   まず,先ほども幾つかの幹事,委員からありましたけれども,第1①のただし書の部分です。住家への立入りについては,私どもの経験値から,境界標の探索のために,どうしても隣家ですね,住宅に入らせていただくという場面があるということを,御紹介して協議を頂いたところですけれども,ただ,このプライバシーですとか強要的なものが含まれてしまうのでということで,現行法上でも,当然ながら通常の隣人同士の間柄であれば,おのずと承諾を得られるということですので,現行法を基本に維持するということであるんであれば,このただし書の部分については,できれば削除を頂きたいというのが意見でございます。   それから,隣地使用権の相手方ですけれども,ここに書いてありますa,b,cの目的を達成するためには,どうしても最終的には隣地の所有者の承諾なり確認なりが必要ということになります。そのときに,占有者だけにその目的を説明するかというと,通常であれば,当たり前のように所有者自身に隣地を使用する目的を説明するというのが,現実的というか,実務上もそうだと思います。そのときに,実際にこういった境界標の近くに構築物を造ったり,測量のために入るというには,やはり占有者,実際にそこに,その土地なり建物を利用している方に,やはり承諾を得るというのが通常の業務だと思います。となると,やはり,ここであります隣地の占有者という方に,隣地使用を求めるというのが一番というか,合理的なのではないかなと思います。   ただ,その使用する目的については,あらかじめ所有者には説明をしておくというのが,実務の取扱いになると思いますので,その辺の所有者なのか占有者なのかってありましたけれども,先ほど部会長の方からもありましたけれども,実質的には占有者という表現でいいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   國吉委員が前段でおっしゃった①のただし書のことでございますけれども,國吉委員のみではなくて,先ほどから伺っていると,このただし書の部会資料が提示している文言は,非常に評判が悪うございます。   確認ですが,私の理解するところでは,委員,幹事の間で,この住家への立入りの関係でのルールの実質的内容についての意見の対立は恐らくないものであろうと感じます。これを規律として表現していくときに,その波及効果であるとか,誤解を出来するおそれであるとかの御心配の観点から,いろいろ御指摘を頂いたと理解しております。もし誤っていれば,御指摘を頂きたいと望みますが,もしルールの実質についての御意見のコンセンサスが見られるのであれば,あとは,法制上,誤解のないような,無理のないような法文に整えていくという作業を,今日頂いた御意見を踏まえて,また整理をして,次の機会に御相談を差し上げるということにいたします。ありがとうございました。   道垣内委員,大変お待たせをいたしました。どうぞ,御発言ください。 ○道垣内委員 申し上げたいことは二つあって,その前者として申し上げたいことは,実は,山野目さんがおっしゃってしまったので,あんまり申し上げなくていいのですけれども,どういうことかと申しますと,第1の①の所有者プラス占有者か,占有者かという問題について,所有権の調整の問題であるから所有者も入るよねという話に関して,それでも占有者だけにするという論理はあり得ないのかというと,僕はどちらがいいというのではなくて,あり得ないのかというと,あり得るのだと思います。山野目さんがおっしゃるように,実態的な要件が満たされれば,片方の所有権はへこむというか,制約されるのだが,しかしながら,それを自力救済で勝手にやるというのはいけなくて,平穏が乱される人に対して承諾を得るという手続が必要なのであって,所有権の調整の問題自体は,既に実態的な要件の具備によって,ある種結論が出ていると説明するのかなと思います。実質論として,所有者のオーケーを取った方がいいのではないかという気は,私はするのですが,理屈上立たないかというと,立つのかなという気がします。  もっとも,同じく山野目さんがちょっとおっしゃったことが,本当かという気がしたものですから,ちょっと一言申し上げます。   非常に今日の話の中心でないところで恐縮なのですけれども,山野目さんは,公道に至る通行権の話をされまして,それが発生していると,次の人にも受け継がれるとおっしゃったんですが,それって,やはり要件が満たされていれば,公道に至る通行権というのは当然に発生するから,本来的には,継承といいますか,そういう問題ではないのではないかと思うのです。つまり,新所有者が出てきたときに新たに判断しても,同じ結論が出て,同じような通行権が認められるはずだということなのではないかなという気がするわけであって,そうしますと,山野目さんがおっしゃったことで何が気になったかというと,担保責任を売主は負い得ると,そういう通行権があるというようなことであったならば,その土地の通行権が存在している,存在というのは,通行権の負担のある土地の売主の場合に,そういう担保責任を負うことがあるとおっしゃったのですが,そうなのかなと。通行権が仮にその時点でないというか,通行されていなくたって,客観的にはそれ,発生し得る,発生というか,存在しているものなのだから,別に担保責任の問題は生じないのではないかなという気がしたというのが,非常に細かい点なのですが,1点目です。   2点目は,竹木の共有の話ですが,これも,共有物であろうが,その所有者である限りにおいて,その人に対して,どかせと多分言えるんだろうと思うんですね。それは,共有の石が上から落ちてきたとしても,共有の自転車が放置されているとしても,共有者の1人に対してそういう請求はできるのだろうと思います。そして,請求をして,その上で,相手方にはそういう義務があるわけですが,それを一定の要件が満たされれば,自力救済で切ってもよいという,それだけの話であって,保存行為とか処分行為だとかという問題とは,直接には結びつかない問題なのではないかなという気が,私はいたします。これも,私が是非共有者の1人でいいとすべきであると主張しているというわけではなくて,保存か処分かという話ではないよねという感じがするという,そういう話でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   道垣内委員から,細かく見ると,三つの話題をおっしゃっていただきました。   1点目,隣地立入権のコミュニケーションの相手方として,所有者とするか,占有者とするかという問題につきまして,相隣関係の本質との関係の議論を整理していただきました。一つ前に,私が何かぼそぼそと申し上げたことと同じ内容のことを極めて明快に整理を頂くことができました。   2点目でありますけれども,公道に至るための通行権の目的になっている土地について,特定承継が起きた場合の扱いについても,明快な整理をしていただきました。先ほど私が565条の規定による売主の契約不適合責任の問題でしょうというお話を申し上げたことについても,御注意を頂きました。なるほど,本当か,というお叱りを受けると,そのとおりですね。不調法をいたしました。御注意を踏まえて,改めて申し上げれば,通行権なんてないよということが,当該個別の契約において,565条が参照する562条にいう契約の内容になっていれば,契約不適合責任が発生することがあるかもしれないという程度の話でありまして,先ほどの申し上げようは不正確でございました。   それから,3点目は,共有竹木について,1人の人とコミュニケーションを取れば足りるという規律の提案そのものについて,本日の部会の中で意見の険しいそごがあるとは見えませんけれども,今川委員から保存行為であるという性格付けを明らかにしてほしいというお話を頂いたのに対して,道垣内委員から,いやいや,必ずしもそういう議論にならないのではないかというお話を頂きました。   いずれの発想もごもっともなものでありまして,今川委員も恐らく,これを保存行為とすると法文に書けという趣旨ではないだろうと考えますから,道垣内委員に御注意を頂いたように,保存行為そのものであるというよりは,1人とコミュニケーションをすれば,話を進めることができるという趣旨の解決を採っていこうという方向を確認した上で,どのくらいの丁寧さで事に当たらなければいけないかは,レベルは保存行為と同じだよねということであり,ただし,それを保存行為と言ってしまうということについては理論上問題がありますという,道垣内委員のお話は,そのとおりではないかと感じます。   都合3点,ありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。   畑幹事,どうぞ。 ○畑幹事 ありがとうございます。   今の竹木の共有なのですが,結論的には,ここに書いてあるようなことでいいのかもしれないとは思うのですが,理論的な説明というのは,やはりなかなか考える必要があるのかなと思います。②の自力救済的なところは,実体法的な規律としてこういうこともありうるのかなと思いますし,①の方もこういう規律はありうるのかなとは思うのですが,6ページの説明のところですと,共有者の1人に対して,竹木のために訴訟は実際にはしないかもしれませんが,債務名義を取得して,それによって強制執行もできる,ほかの共有者は邪魔できないということになっているのですが,一般的にはそういうことはあまりないのではないか,共有物について,共有者の1人を被告として訴えて,それで,ほかの人が何を言おうが強制執行できるという事態は,一般的には余りないのではないかと思われますので,ある種政策論としてこういう規律が望ましいということであれば,何か理論的な説明というのは,大分考える必要があるのではないか。   皆さん御存じのように,共有が絡む場合の訴訟というのは難問の一つで,私も確たることを申し上げられないのですが,理論的にはちょっと難しい問題を残すのではないかと思われます。実際には,自力救済の方で処理されるのではないかとは思いますが,理論的にはちょっと問題が残るかなという感じはいたしました。 ○山野目部会長 畑幹事の共有関係訴訟の処理の難しさに関わる御指摘は理解いたしました。事務当局において,更に検討いたします。ありがとうございます。 ○中田委員 3点ございます。順番は,今の畑幹事の御指摘のところから始めます。   ここでの問題は,所有者が,竹木の共有者に対して何が請求できるかということと,それから,竹木の共有者の1人が何ができるかという問題とが混在していて,その整理が必要ではないかと思います。所有者が竹木共有者の1人に請求できるというのは,多分,最終的には代替執行になるだろうから,問題ないのではないかというようなイメージがあるのではないかと思うのですけれども,そのことと,所有者が請求すれば,共有者のうちの1人が切除できるという権能を取得するということは,別の問題だろうと。そこが交じっているので,分かりにくくなっているのではないかと思いました。   それから,2点目は,①のただし書,住家の立入りについての承諾を求めることはできないという書き方について,様々な御指摘があったわけですが,その御指摘は理解できるんですけれども,恐らくこれは,現在の209条1項本文,使用請求というのを承諾請求にした上で,第1の②,③という例外を設けていくという立て付けにして,その上で,現在の209条1項ただし書をどのように表現するかということと絡んでいるのだろうと思います。ですから,全体として,209条の規律をどのように設けるかということを併せて考えると,表現の問題なのかなと感じました。それは恐らく,最初の頃に藤野委員がおっしゃったこととも関係しているのだと思います。   それから3点目は,導管の点なんですけれども,前回の御提案のときから,他の土地に囲まれているということは要件としないということになりました。そこで,甲という土地が,継続的給付を受けるために導管を設置する必要があるというときに,それが乙という土地を使っても,丙という土地を使っても,どちらでも可能であるというときに,かつ,乙と丙の所有者が違う場合に,どちらになるのかという問題があると思います。   民法211条と同じような規律が,7ページにあります第3の1の④にあるわけですけれども,民法211条の場合には,囲んでいる土地の通行権があるということを前提にして,その中での通行の場所や方法の制限になると思うんですけれども,導管等については,囲んでいるという要件がないものですから,どの土地になるのかという,その前の問題がより多く出てくると思うんですね。その点が,7ページの第3の1の④で十分に表されているのかどうかということは,なお検討する必要があるのではないかと思います。   前回も211条との関係の発言をして,今申し上げた趣旨のつもりだったんですけれども,少し言葉が足りませんでしたので,改めて申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 中田委員から,御自身で整理いただいたとおり,3点についての御案内を頂きまして,いずれも誠にありがとうございます。   1点目の共有竹木の関係は,御指摘のとおりでありまして,1人の人とコミュニケーションを取れば,隣地所有者が何かをすることができるというルールといいますか,理解でいくからといって,たまたまコミュニケーションの相手方となったその1人が,それについて何でもできるという権能を生ずるというふうなことを始めとして,論理が飛躍していくことは困るから,よく論理を整理してくださいという御要望でありました。   2点目は,隣地立入権の際の話題となっているただし書を含む文言の整理について,部会の中における意見の実質を見ながら,さらに,表現の問題と中田委員はおっしゃっいましたけれども,整えてくださいという御要望も承りました。   3点目といたしまして,導管の設置,使用との関係で,211条並びの文言の提案を,現在は差し上げております。しかし,公道に至るための通行権と事情が異なる点は,取り分け第12回会議で全国宅地建物取引業協会連合会から出された意見などで代表されるように,実際の現場を考えますと,他の土地に囲まれている土地ということを要件とすると,いろいろ実情に適しない問題が出てくるという指摘があったところを踏まえて,導管に関しては,そのような要件を課していません。そのことから,中田委員が御指摘のとおり,単に211条並びの考慮要素を挙げることでは足りず,一言で言えば,土地の選択に関わる問題があるということを分かる規律表現にしていかなければならないということでありまして,それは,前回審議をした際の中田委員の御指摘を,私及び事務当局において正当に漏れなく承っていなかった憾みがあるかもしれません。   ただいまの御指摘を踏まえて,更に検討してまいりたいと考えます。どうもありがとうございました。   垣内幹事,お願いいたします。 ○垣内幹事 ありがとうございます。   直前に,畑幹事,中田委員が発言された点と重なる部分がありますけれども,5ページから6ページにかけての枝の切除に関する点ですけれども,先ほど来御発言がありますように,共有者の1人に対して枝の切除を求めることができる,させることができるという,ですから,1人を,例えば,被告として訴えを提起したときに,請求が認容されるということと,強制執行について,他の共有者の同意なくすることができるかどうかということとは,一応別の問題なのかなという感じがいたしますので,それぞれについて求めることができるということが第1段階としてあり,さらに,6ページのところの説明のように,同意が不要であるという規律まで引けるというためには,もう一段階何か説明をしていく必要と申しますか,その根拠を考える必要があるのかなという感想を持ちました。 ○山野目部会長 どうもありがとうございました。   先ほどの畑幹事の御指摘と併せて,取り分け垣内幹事が強調されたように,強制執行段階の手順のことも描いてみて,検討を更に皆さんにお願いしてまいりたいと考えます。   佐保委員,どうぞ。 ○佐保委員 ありがとうございます。   隣地使用権の見直しの考え方については,特に異論ありませんけれども,その一方で,隣地所有者の権利保護については,一定程度の配慮が必要ではないかと考えます。隣地の所有者に対する説明といった一定の配慮があるべきと考えております。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。   所有者とか占有者とか言いますけれども,國吉委員もお話になったように,現場をまろやかに進めるためには,思い付く人みんなのコンセンサスを得た方がよいというアドバイスは,もとよりごもっともであると承ります。   中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   1ページ目の第1の③,それから第2の②のcの要件を,従前の急迫の事情から,著しい損害又は急迫の危険に変えての御提案の趣旨は理解できました。  また,従来ですと,民事保全法に基づく仮処分命令を取ってしなければならなかったことを,1ページ目の①のa,b,cの目的が限定された場面において,著しい損害又は急迫の危険がある場合には,承諾なくできるということにするということについての必要性なども理解できました。その上で①のa,b,cを見てみますと,cですと,資格のある測量士さんが必要最小限のことをされるのでしょうから,それほど大きな侵襲があるとは思わないのですけれども,bですと,規模によっては,枝を運び出すためのトラックが入ったりとか,aですと,もしかしたら重機が入ったりとかというようなことも想定されるかと思います。   そこで,この隣地使用権で承諾を得ることなく入るような場合に,7ページの導管等設置権の④の3行目にあるような,隣地のために「損害が最も少ないものを選ばなければならない。」というような定めを入れてもいいかもしれないという気がいたしました。 ○山野目部会長 中村委員にお尋ねですが,目的のために必要な範囲内で,では,心もとないというお話ですかね。 ○中村委員 目的のために必要な範囲内というのは,行為者の側から見た要件ですが,踏み込まれる側のといいますか,隣地の人からするとということですね。 ○山野目部会長 踏み込まれる側の要素になっていない,なるほど。御意見の趣旨はよく分かりました。検討いたします。   ほかにいかがでしょうか。   大体部会資料46の相隣関係規定について,御意見を承ったと受け止めてよろしゅうございましょうか。   それでは,引き続き部会資料47についての審議をお願いいたします。   部会資料47をお取り上げください。   共有関係の見直し,その中でも,通常の共有関係の解消方法について,御相談を差し上げます。   「第1 裁判による共有物分割」,これのみをお諮りするものであります。   部会資料37を第16回会議にお示ししておりましたが,その方向を基本的に維持して御案内を差し上げているものであります。見かけが異なっている点は,部会資料47,1ページ目の第1②のイの,いわゆる全面的価格賠償に関わる事柄についての表現についての調整,見直しをした上でお諮りをしておりますけれども,部会資料37で御案内した内容,基本趣旨の本質を変更するものではございません。   それでは,この部会資料47について,御意見を承ります。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。   今回の御提案については,日弁連のワーキンググループは賛成が多数でございました。   その上で,よりよくするためにというようなことで意見が出ておりましたので,御紹介したいと思います。   まず,前回,第16回の議論の際に,平成8年の最高裁判例の判断要素を明文化できないかという意見があるということをお伝えしたのですけれども,今回の資料では,それを御検討いただいた上で明文化は難しいという記載になっております。   これに対して,日弁連の方では,最高裁が示している判断要素は,実務上重要な意味があって,当事者の主張の指針になるものなので,全て盛り込むのは難しくても,例示でもよいから示すことはできないか,また,部会資料の2ページの2行目後半から示されている懸念というのは,記載の仕方の工夫によっては払拭できるのではないかという意見が上がっておりましたので,まず1点目として御紹介いたします。   それから2点目ですけれども,本文の②のアとイの記載ですが,これは,最高裁の昭和62年4月22日判決の分類に基づくものと承知しておりますけれども,法律知識のない人にとっては,部分的な価格賠償がアに含まれると読み取ることは難しいかもしれないと思います。法文上,選択肢が明記されるように工夫ができないかという指摘がありましたので,御紹介いたします。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめになり,御紹介いただきまして,ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今回出していただいている提案なんですが,やはり先ほど御指摘あったとおり,②のア,イのところの表現ですね,こちらの方は,非常にフラットな形で表現されていまして,本来の趣旨がより伝わるのではないかと思っております。   内容的には,もうこれでいいかなと思わないこともないのですが,やはりいろいろ,事業者の実務的な見地からの意見を聞いてまいりますと,要件の明確化といいますか,予測可能性,要は,共有物分割請求をかけたときに,確実に賠償分割という結論を得たい場合にそれが得られるような要件化ができないのか,こういうときに賠償分割を請求すれば認められるというような要件,あるいは指針のようなものを何か書き込むことはできないのかという意見は出ております。   もちろん難しいのは重々承知しておりますが,最高裁判例の要件の中でも,共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当である,と認められる場合というのがどういうときなのかというところが,実務者としてはすごく気になっているところではございますので,先ほど中村委員がおっしゃったような,例示で要件を明記していただくという案もございますし,あるいは,もっと何か違う形で,できることはあるのではないかと思っています。今までは純粋に,まず現物分割ありき,特段の事情があれば賠償分割ということで進められていたことが多かったと思うのですが,今後,土地の細分化により管理が困難になることを防ぐという観点からも,賠償分割をより積極的に活用していくという考え方もあるのかなと思いますので,ちょっとその辺を,より当事者予測可能性が立つような形で何か作っていただけると,これ,条文に入れてくださいというお願いなのか,それ以外のところの話になるのかというところはあると思うんですけれども,一応要望としては,そのようなところでございます。 ○山野目部会長 藤野委員におかれては,経済界の様々な御意見をお届けいただきましてありがとうございました。   中村委員と藤野委員から共通に,やはりこの②のイを中心とする部分につきまして,平成8年10月31日の最高裁判所判例が示す要件に関わって,簡単に言うと,簡単過ぎる書き方になっているから,もう少し規律文言の詳細性を高めることができないかという方向からお話を頂いたものであって,それぞれごもっともであると感ずるとともに,お話を承っているところの直感で言うと,もっとここ,文言を豊かにして明確化してほしいとおっしゃっているお二人の,しかし,考えていることの中身は異なるというか,ひょっとすると正反対だったりするかもしれません。弁護士実務の観点から明確にしてほしいと述べられる姿と,経済界が明確にしてほしいお考えになっている姿は,一致しないかもしれませんね。また,それが,ここの文言を豊かにしていこうとすることの努力にとっては,かなり困難な事情の一つなのかもしれません。   しかし,今のお二人の御意見を承って,更に検討してまいります。沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   2点申し上げたいと思います。   まず,基本的にこの形でお願いできればと思います。特に②の書き方については,前の資料からこのような形に変更していただいたのは,よいことではないかと思っております。その上でですけれども,一点目として,今も言及のありました考慮要素について,2ページの冒頭のところに二つの問題点が書かれています。一つは,明文化するにしても,適切に,それなりに網羅的に判断要素を挙げることができるのかということ,2つ目として,賠償分割についてのみ判断要素を挙げることによって,これがあたかも劣後的な方法であるというようなインプリケーションを意に反して与えないかという,二つの問題が挙げられております。   ただ,判断要素を明文化するということについては,ある程度具体的なものを挙げた上で,一切の事情というような形で受けるということは,あり得るのではないかと思っております。   それから,二つの方法の間の優先劣後のインプリケーションにならないかという点については,一つのアイデアですけれども,両者を包含するような形で,適切な方法を選び取るための判断要素を挙げることができないかと考えております。このことは,実は1つ目の点目にも関わります。   2点目は,③についてです。②をこのような形で,かつ,判断要素を全く挙げないで③を書いたときに,現在の258条2項というのは,現物分割を想定して,それができない場合,又は価格を著しく減少させるおそれがある場合という限界を付けて,競売を命ずるという形になっておりますけれども,価格賠償の方法による分割というのを入れた場合に,現在,258条2項に挙げられているこの二つの場合というのが,うまく当てはまるのかということです。②に掲げる方法ということですから,②のイも含んでいると思われますけれども,支払資力面で問題があり相当でない場合などが②のイによるのではできないといえるのか,恐らく不相当であるという場合もできないに含むということなのかと思いますけれども,単独の所有にする,あるいは一部の人の所有にしてしまって,あとは金銭的な解決によるというやり方の場合の限界付けが,果たして③の二つの場合で受けられるんだろうかということが気になりました。   そこで,二つお話なのですけれども,一つは,もし判断要素などを挙げるということが可能であるとしますと,現物分割の③に挙げられているようなものも含めて,裁判所による選択の一つの考慮の在り方なりガイドラインを示すというのが,一つは考えられるように思います。例えばですけれども,②で方法を二つ示し,「その場合において,裁判所は共有物の現物の分割の可否,共有物の現物の分割による共有物の価額の棄損のおそれ,共有物の利用の経緯及び状況,各共有者が共有物を必要とする事情,価格償還債務を負担することとなる共有者の支払資力,その他共有物,あるいは及び共有者に関する一切の事情を考慮して,共有者間の公平の確保の観点から,相当な方法を選択することができる」と,例えば,そういった形で判断要素なり,その特に重要なものを挙げることができないかというのが,一つ目です。   二つ目としましては,それがやはり難しいという場合,③の限界の場合というか,そこに,取り分けイの方法によるときの限界なりを入れなくていいだろうか,したがって,現物,現物とは書いていないのですが,分割ができない場合,それから価格を著しく減少させる恐れがある場合と並んで,例えば,共有者間の公平を害する場合とか害するおそれが高い場合とか,そういったようなものを挙げるということも考えられるように思いました。   ちょっと長くなって恐縮ですが,以上です。 ○山野目部会長 沖野委員から,種々の観点にわたる御意見を頂きました。   前の方でおっしゃっていただいた②のイの規律の表現を,もう少し豊かな言葉を盛り込んで考えることができないかというお話につきまして,中村委員,藤野委員から御指摘,御提案があったことと併せて検討してまいらなければなりません。   それから,沖野委員から新しく御指摘を頂いた新しい問題提起といたしまして,③の問題があります。これは,問題提起を頂いて大変有り難く感じます。なるほど,この258条の現行の文言を,そのままコピー・アンド・ペーストしてここに持ってくると,このたびは②のアのみならず,イも受けた上で,③のところにお話がいきますから,現在お示ししている③の文言のままでは具合が悪いと感じられます。   沖野委員もおっしゃいましたけれども,例えば,②のイでいったときに,償金の支払の債務を負う者の資力に不安があって,イの方法が採れないといったような事例を③で受け止めることができる文言にはなっておりません。そういったことを踏まえて,解決の在り方を正確に伝達ができるような文言の改良を施さなければならないと感じました。   いずれにしても,今,沖野委員におっしゃっていただいたようなことをヒントにして,検討を続けるということにいたします。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   部会資料47につきましては,やはり②のア,イともですが,取り分けイについて,それから,関連して③の規律の表現について,やはりそれぞれ引き続き考えなければいけない問題があることがよく分かりましたから,事務当局において,よく議事を整理いたします。   ほかに,特段部会資料47について御発言がおありではないでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,共有物分割方法についての本日段階での審議はここまでにいたします。   本日は,部会資料の数として,合わせて5点をお示しして審議をお願いし,委員,幹事の皆様には大変盛りだくさんの難しい審議をお願いさせていただきました。熱心な御審議の御協力のおかげをもちまして,五つの部会資料の全てについて,内容にわたる審議を了しました。   次回会議につきまして,事務当局から案内を差し上げます。 ○大谷幹事 本日もありがとうございました。   次回の議事日程でございますけれども,3週間後,10月6日の火曜日になります。   午後1時からスタートということを考えておりまして,場所はこちらの大会議室です。テーマは今のところ,いわゆる所有権の放棄を取り上げることを考えておりますが,そのほかの点について,どこまでできるかというところがございます。また少しこちらの方で検討いたしまして,終了時間については,改めて御連絡をするという形にしたいと思います。いつものように6時までということには限らず,もう少し早く終わるということもあり得ると思っております。   次回の部会についても,ウェブで部会に出席していただくことも可能という形で開催をさせていただきます。 ○山野目部会長 次回の第19回会議は,もしかしたらそれなりに早く終われるかもしれませんという御案内を差し上げようかとも一瞬考えたものでありますけれども,しかし,現実には,扱う議題の量とか質は重くなってくる可能性がありますから,早とちりなことは申し上げない方がいいとも感じ,ただいま大谷幹事から御案内を差し上げたようなことで,第19回会議を考えております。   この際,委員,幹事から,第19回以降の部会の運営につきまして,お尋ねや御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございましょうか。   それでは,本日もお疲れさまでした。   これをもちまして,民法・不動産登記法部会第18回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-