裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第14回)議事録 第1 日 時   令和2年9月14日(月)午後1時30分から午後4時2分まで 第2 場 所   法務省大会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,小木曽綾,小林篤子,重松弘教,島田一,菅野亮,武石恵美子,畑中良彦,堀江慎司,山根香織,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,中野浩一大臣官房付兼企画調査室長,栗木傑刑事局参事官 (その他)市原志都最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 検討事項に関する意見交換等について 2 その他 第5 配付資料  資料1-1:検討事項 資料1-2:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)に対する附帯決議(衆議院法務委員会・参議院法務委員会)  資料1-3:ヒアリングにおける発言要旨  資料1-4:「裁判員制度に関する検討会」取りまとめ報告書  資料2  :最高裁判所説明資料  資料3-1:最高裁判所説明資料  資料3-2:島田委員説明資料  資料3-3:司法法制部説明資料  資料3-4:裁判員休暇制度に関する資料  民事局説明資料 第6 議 事 ○栗木参事官 予定の時刻となりましたので,ただ今から裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第14回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は,皆様御多用中のところ御出席いただき,ありがとうございます。   菅野委員,堀江委員,和氣委員には,本日ウェブ会議システムにより御出席いただいております。   議事に入る前に,前回の会合以降,委員の異動がありましたので,御紹介をさせていただきます。   石山宏樹委員が委員を退任され,新たに畑中良彦氏が委員となられました。初めて当検討会に御出席いただいた畑中委員から,自己紹介をお願いいたします。 ○畑中委員 東京高等検察庁公判部長をしております畑中と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大澤座長 畑中委員,どうぞよろしくお願いいたします。   また,事務当局の異動もございましたので,自己紹介をお願いいたします。 ○栗木参事官 法務省刑事局参事官の栗木でございます。よろしくお願いいたします。 ○大澤座長 どうぞよろしくお願いします。   次に,事務当局から配付資料について説明をお願いいたします。 ○栗木参事官 本日お配りしている資料は,議事次第,資料1-1「検討事項」,資料1-2「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)に対する衆議院法務委員会及び参議院法務委員会の附帯決議」,資料1-3「ヒアリングにおける発言要旨」,資料1-4「裁判員制度に関する検討会取りまとめ報告書」,資料2「最高裁判所説明資料」,資料3-1「最高裁判所説明資料」,資料3-2「島田委員説明資料」,資料3-3「司法法制部説明資料」,資料3-4「裁判員休暇制度に関する資料」です。   それでは,各資料についてその概要を御説明いたします。   本日お配りした資料1-1から1-4までの各資料については,第10回会合以降,毎回お配りしている資料を改めてお配りするものです。   資料2は,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」に関するものであり,検討事項7について意見交換を行う際に,最高裁判所から御説明いただきます。   資料3-1から3-4までは,検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」に関するものであり,検討事項8について意見交換を行う際に,資料3-1と3-2については最高裁判所及び島田委員から,資料3-3については司法法制部からそれぞれ御説明いただき,資料3-4については事務当局から内容を説明いたします。 ○大澤座長 それでは,議事に入ります。   前回会合では,検討事項6「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」まで意見交換を行いましたので,本日は検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」から意見交換を行いたいと思います。   この検討事項7について意見交換を行うに当たり,参考として, 事務当局から現行法における守秘義務等の概要,平成27年改正法の国会審議や附帯決議で指摘された事項,当検討会におけるヒアリングでの発言の要旨のうちこの検討事項に関連するもののほか,過去の検討会におけるこの検討事項に関連する議論の概要について,説明をお願いいたします。 ○栗木参事官 まず,現行法における裁判員の守秘義務等の概要を御説明いたします。   裁判員の参加する刑事裁判に関する法律9条2項は,「裁判員は評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしてはならない」として裁判員の守秘義務を規定し,10条4項で補充裁判員についても同条の規定を準用し,同様の守秘義務を定めていますが,以下では,裁判員として御説明します。   この「裁判員の職務上知り得た秘密」とは,裁判員が職務の執行に関連して知り得た秘密の全てをいい,その内容は評議の秘密と評議の秘密以外の職務上知り得た秘密に分けることができます。   まず,評議の秘密については,裁判員法70条1項が,「構成裁判官及び裁判員が行う評議並びに構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたものの経過並びにそれぞれの裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数については,これを漏らしてはならない」と規定しています。   ここでいう「評議の経過」とは,評議がどのような進行過程を経て結論に至ったかの道筋をいい,具体的には,例えば,「被告人は現場にいたのかどうかが議題にされた」などの評議において議題にされた事項の内容や,「議題を審議した順序はこうだった」などの評議における審議過程などが含まれます。   次に,「裁判官及び裁判員の意見並びにその多少の数」とは,議題として提出された各問題点について裁判官及び裁判員が表明した意見の内容及びこれを支持しあるいはこれに反対した意見の数をいい,必ずしも評決に際しての各裁判官及び各裁判員の意見やその多少には限られず,評決に至るまでに各裁判官及び各裁判員によって交換された意見についてのものも含まれます。   意見を述べた個人が特定されない形であっても,裁判官又は裁判員が述べた意見の内容を明らかにすることは,「裁判官及び各裁判員の意見」を漏らすことに当たり,また,立案担当者の解説によりますと,自分が述べた意見を明らかにすることについても同様とされています。   次に,評議の秘密以外の職務上知り得た秘密については,様々なものが考えられますが,立案担当者の解説によれば,裁判員の職務の性質上,典型的に想定されるものとして,審理の過程で知った個人のプライバシーに関わる秘密があるとされ,例として,証拠物として公判廷で取り調べられた日記に記載された内容であって,公判廷で朗読された部分以外のページに,作成者のプライバシーに関する事項が記載されているような場合が考えられるとされています。   裁判員が,今御説明した守秘義務に違反した場合,裁判員法41条1項4号及び43条の規定により裁判員を解任されることがあるほか,108条に定められた刑事罰の対象となり得ますが,刑事罰の内容は,裁判員又は補充裁判員とこれらの職にあった者とで一部異なっています。   すなわち,裁判員については,108条1項で,評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すこととされています。   他方で,裁判員の職にあった者については,108条2項1号から3号で,評議の秘密を除く職務上知り得た秘密を漏らしたとき,評議の秘密のうち裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき,財産上の利益その他の利益を得る目的で,評議の秘密のうち裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数以外のものを漏らしたときは,6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すこととされていますが,108条3項で,財産上の利益その他の利益を得る目的によらず,評議の秘密のうち裁判官又は裁判員の意見及びその多少の数以外のものを漏らしたときは,50万円以下の罰金に処すこととされており,この点で,現に裁判員の職にある者に比べ,軽い刑が定められていることになります。   なお,ただ今御説明した裁判員の守秘義務については,期間の限定は設けられておりません。   検討事項1「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」でも御説明したとおり,平成27年改正法では,裁判員等選任手続における被害者特定事項の取扱いに関する規定が設けられました。具体的には,裁判員法33条の2第2項において,被害者特定事項の秘匿決定があった事件の裁判員等選任手続において,裁判員候補者に対して被害者特定事項が明らかにされた場合,裁判長は,裁判員候補者に対し,当該被害者特定事項を公にしてはならない旨を告知することとされ,3項で,告知を受けた裁判員候補者又は当該裁判員候補者であった者は,裁判員等選任手続において知った被害者特定事項を公にしてはならないとされています。他方で,この義務に違反したことについての罰則は設けられておりません。   次に,当検討会で行われたヒアリングにおいて,裁判員経験者等の方から裁判員候補者であることの公表禁止規定について御発言があった関係で,その点に関連する現行法の規定についても御説明します。   裁判員法101条1項前段には,何人も,裁判員,補充裁判員,選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならないと規定され,後段には,これらであった者の個人を特定するに足りる情報についても,本人がこれを公にすることに同意している場合を除き,公にしてはならないと規定されています。   ここで,「公にする」とは,当該情報を不特定又は多数人の知り得る状態に置くことをいい,出版や放送,文書の頒布,インターネット上のホームページ等への掲載等,様々な態様が考えられます。裁判員やその候補者が,休暇の取得のためその他の理由から,自身が裁判員又はその候補者であることを他人に話したとしても,この規定に違反するものではありませんが,たとえ自身の氏名等の情報であっても,裁判員やその候補者が,正当な理由もないのに,これらの情報を殊更に公にすることは許されないとされています。   次に,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」について説明します。   この検討事項については,平成27年改正法の国会審議の際にも指摘がありました。具体的には,評議の秘密に該当するか否かの基準が曖昧で,裁判員はどこまで話していいか分からないのではないかといった指摘があったほか,裁判員の守秘義務について,期限を設けるべきではないかといった指摘などがありました。   そうした指摘を踏まえ,資料1-2のとおり,衆議院法務委員会の附帯決議第7項では,平成27年改正法の附則に基づく検討に当たっては,裁判員等の守秘義務の在り方等について,引き続き裁判員制度の運用を注視し,十分な検討を行うこととされ,参議院法務委員会の附帯決議第3項では,裁判員等の守秘義務の範囲の明確化について更に取り組むとともに,裁判員制度の運用を注視しつつ,守秘義務の在り方全般にわたって引き続き十分な検討を行うこととされています。   次に,ヒアリングにおける発言の要旨のうち,検討事項7に関連するものについては,資料1-3の13ページ及び14ページを御覧ください。   この検討事項7のうち,「守秘義務の範囲について,裁判員等に十分な説明がなされているか」という事項に関しては,裁判員経験者の方々から,守秘義務の範囲や内容について,裁判官から丁寧に分かりやすく説明してもらい,十分に理解できたとの御発言があった一方で,評議の秘密に関して,話してよい内容と話していけない内容の区別が分からなかった,具体的にガイドラインのようなものがあればと思うとの御発言もありました。   また,「守秘義務の範囲を変更すべきではないか」という事項については,裁判員経験者等の方から,裁判員の経験を共有するため,守秘義務を緩和するべきである,具体的には,裁判員の自由な討論を損なうことがないように,発言者が特定される事項や事件関係者のプライバシーについては守秘義務の対象とし,他方で,評議の経過や多数決の数,発言者を推知させない意見については,守秘義務の対象から外すべきである,裁判員候補者であることの公表禁止規定は,萎縮効果があったり,候補者を制度から遠ざけるといった弊害を生じさせたりしているのではないかとの御発言があった一方で,守秘義務があることについて不都合だと感じていない,裁判員の安全を守るためにも当然必要なことだと思うし,日常生活の中で負担とも思っていないとの御発言もありました。   守秘義務の在り方については,過去に行われた「裁判員制度に関する検討会」においても議論がなされました。その議論の概要については,資料1-4の26ページから28ページまでに,「守秘義務の範囲等の在り方等について」として記載されています。   この検討会では,裁判員経験者のアンケートで,守秘義務の範囲が曖昧であるなどの指摘があることから,守秘義務の対象となる「評議の秘密」から「評議の経過」を除く方向で検討すべきである,このように改めても守秘義務の趣旨は損なわれず,経験をより語ることができるとともに,精神的負担の軽減にもなるなどの,守秘義務の範囲を限定する方向で見直すべきとの意見もありましたが,「裁判員及び裁判官の意見」,「多少の数」及び「評議の経過」は全て同格であって,「評議の経過」が明らかになると,裁判員制度の核心部分である評議の場における自由な意見交換の障害になる以上,法的に区別すべきではないなどの意見が述べられ,守秘義務の範囲を見直すことについては消極的な意見が多数を占めました。   なお,この点について,「守秘義務の範囲を具体的に説明してほしいという裁判員経験者の声が見られるので,裁判所においては,一層適切な説明の仕方ができるよう努めていく必要があると考えている」との指摘もなされています。   検討事項7についての説明は以上でございます。 ○大澤座長 ただ今の事務当局の説明について質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは続きまして,守秘義務に関して,島田委員から御説明を頂きます。 ○島田委員 裁判員法39条1項は,裁判長は,裁判員及び補充裁判員に対し,最高裁判所規則で定めるところにより,裁判員及び補充裁判員の権限,義務その他必要な事項を説明するものとすると規定しております。そして,裁判員等の義務の一つに守秘義務があります。   まず,守秘義務に関する説明をする時期について,お話しいたします。   裁判長は,通常,先ほど申し上げた裁判員法39条1項の説明として,裁判員等の宣誓の前に必ず説明をします。また,判決宣告の終了後,皆さんが解散する前にもう一度守秘義務について説明をしています。さらに,審理や評議の途中でも,質問を受けたときなどに折に触れて説明をしているはずです。   次に,守秘義務の範囲ですが,法律により,評議の秘密とその他職務上知り得た秘密が定められております。裁判員法39条1項の説明内容として,実務では最高裁の規則制定諮問委員会で示された説明案をベースにした守秘義務の説明を行っております。   その内容を申し上げます。   「次に,裁判員の皆さんにお願いがあります。裁判は皆さん全員が揃わないと行うことができません。もし,病気などやむを得ない事情で裁判所にお越しいただけなくなった場合には,ご連絡をいただきたいと思います。   また,評議で誰が何を言ったかといった評議の内容は秘密にして下さい。評議の秘密が漏れることになりますと,率直に意見を交換することが難しくなります。評議の秘密が漏れないようにすることは,皆さんのプライバシーや安全を保護することにもなります。   また,記録に出てくる事件関係者のプライバシー情報も漏らさないようにして下さい。ただ,公開の法廷で見たり聞いたりしたことや,裁判員を務めてみての印象といったことは,他の方にお話しいただいても構いません。」   これが説明案として紹介されております。そして,この説明案を参考にして,それぞれの裁判長は説明において工夫をして行っております。私の場合ですと,次のような説明をしています。繰り返す部分がありますけれども,御容赦ください。   「裁判員,補充裁判員の皆さんに守っていただきたい事柄の一つに守秘義務があります。秘密にしてほしい事柄は,次のとおりです。   評議,すなわち結論を決める会議の中で,一つ目,誰が何を言ったのか,二つ目,どのような議論をして,最終的に何対何で結論が決まったのか,ということは,秘密にしてください。なぜならば,評議で述べた意見が第三者に知られてしまうと,ネット上で公開されたり,事件関係者から不当な圧力を受けたりする可能性も出てきます。そのような前提では,評議において率直な意見交換が成り立たなくなってしまうからです。そこで,お互いに誰が何を言ったのか,何対何で結論が決まったのかなどの点は,第三者に話さないようにしましょう。三つ目として,記録に出てくる事件関係者のプライバシーに関する事項も漏らさないようにしてください。   この義務は,裁判が終わった後も続きます。もし違反すると罰則を科されることもあります。   これに対し,法廷で見たり聞いたりしたことは,基本的に話してもらって構いません。事件の内容や判決の結果などを家族や勤務先の同僚などから聞かれたときに,お話しすることは全く問題ありません。なぜならば,法廷は公開されています。傍聴人も知っている事柄です。   裁判員や補充裁判員に選ばれたことを家族や勤務先の上司・同僚に伝えるのはもちろんオーケーです。家族や職場の協力を得る必要があります。」   このような説明を私自身は行っております。   また,他の裁判長の説明例として,審理が始まった後,裁判員に対して守秘義務について説明する際,その担当する事件の内容に即して次のような説明をする例もあると聞いています。   例えば,「今日法廷で見たり聞いたりした内容は全部話しても構わない内容です。しかし,今日の証人の証言が信用できるかどうかについて皆さんで議論する内容については,第三者に話してはいけない内容です。」などと説明する例や,判決の宣告を終わった後,「話してよいのかどうか迷った場合には,遠慮なく裁判官に質問してください。」と裁判員に伝える工夫例もあると聞いています。   さらに,裁判員制度について,国民の関心や参加意欲を高めたり,不安を解消したりする上では,同じ一般国民である裁判員経験者の感想や声が効果的です。経験者の方から周囲の方々に対し,御自身の経験や感想を話していただくことが重要です。そこで,裁判官が裁判員に対して守秘義務の説明をする際には,次のようなお話もしています。   「是非,周りの皆さんに裁判員や補充裁判員を担当した感想などを積極的にお話しいただきたいと考えています。」このような説明をしている例が多いと思います。   そのほか,話してよい内容の具体的な例示や,裁判員を経験したことによるやりがい,改善すべき点などを周りの方々にも積極的にお伝えいただくよう協力を求める旨の書面を渡す例もあります。   ヒアリングでは,守秘義務の範囲や内容について裁判官から丁寧に分かりやすく説明してもらい,十分に理解できたという意見と,逆に,評議の秘密に関して話してよい内容と話してはいけない内容の区別が分からなかったという意見がありました。裁判所といたしましては,引き続き分かりやすい説明をできるように運用上の工夫をしていく必要があると考えております。 ○大澤座長 ありがとうございます。   続きまして,資料2について最高裁判所から御説明をお願いいたします。 ○市原最高裁刑事局第二課長 配付しております資料2について御説明させていただきます。   資料2は,先ほど島田委員からもお話がありました守秘義務の説明等を記載した裁判員等に配付する書面の書式例です。守秘義務の対象となるのは,評議の秘密と,裁判員として職務上知り得た秘密に限られており,公開の法廷で見聞きしたことや,裁判員として裁判に参加した感想については,周囲の方々にお伝えいただいても何ら問題がないところです。   そして,令和元年度の裁判員経験者の方へのアンケート結果によりますと,97%の方が「非常によい経験と感じた」,「よい経験と感じた」と回答されており,国民の関心や参加意欲を高めたり,守秘義務に関するものも含めて国民の不安を解消したりする上では,実際に裁判員を経験された方の生の声が効果的であり,裁判員等経験者から周囲の方々に対し自らの経験や感想を語っていただくことが重要になります。   先ほど島田委員からも御説明がありましたとおり,守秘義務の説明は事案に応じて丁寧にされておりますけれども,守秘義務の説明だけでは経験談の積極的な発信を阻害しかねない面もありますので,この書式例は,裁判員経験者の方々に経験談をなるべく積極的に発信していただけるよう,守秘義務の対象ではなくて,あえて守秘義務の対象外である,経験者の方々に話してもらってよいことを記載しております。   最高裁としましては,平成30年7月に各地方裁判所に対し,裁判員裁判が終了し,守秘義務について説明する場面などにおいて,このような書面を裁判員等経験者に配付し,その貴重な経験を周りの方々にもお伝えいただくよう協力を求めるという方法を紹介し,検討を求めたところであります。 ○大澤座長 ありがとうございました。ただ今,島田委員と最高裁判所から頂きました御説明について,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」について,意見交換を行いたいと思います。   この検討事項7については,先ほど事務当局からも説明がありました,平成27年改正法についての国会審議の過程での御指摘,ヒアリングでの御発言等を踏まえ,「守秘義務の範囲について,裁判員等に十分な説明がなされているか」という事項及び「守秘義務の範囲を変更する必要があるのではないか」という事項を検討事項としていることから,これらの事項について順次意見交換を行い,その後,この検討事項に関する他の事項について意見交換を行うこととしたいと思います。そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。   それでは,「守秘義務の範囲について,裁判員等に十分な説明がなされているか」という事項について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○小林委員 御説明ありがとうございました。今お聞きしても,やはり何を話してよくて何が駄目なのかというのをもう少し具体的に分かるようにしてほしいというのが最初の感想です。ヒアリングの中でも,「ガイドラインがあればいい」という御発言があり,島田委員や最高裁判所からも「話してよいことも説明している」という御説明がありましたが,やはり「これは話したら駄目」ということではなくて,「これは話してもよい」というのがもっと分かりやすくなった方が良いと思います。それが分からないと,やはり,周囲の人も聞きづらくて話題から避けてしまいますし,私の経験でも,取材に行って,ここまで聞いていいのかなと迷ってしまうことがありました。   せっかく97%の人が裁判員をやって良かったという感想を持っているにもかかわらず,その経験が共有されないということは,大きな問題だと思うのです。「良かった」と言われても,何が良かったのかが分からない。私たちも取材するときに具体例をやはり知りたい,そうでないと通り一遍の内容になってしまって読者に伝わらないということがあり,調査結果も自画自賛的で信用されないのではないかと思いますので,もう少し,話してよいことを具体的にブレークダウンしてもらいたいと思います。   もう1点,各裁判所で同窓会のようなものをやっているところもあるとお聞きしたことがありますけれども,裁判員の経験者の方の交流団体も幾つか熱心に活動されています。そういう多様な発言の場というのがあるということを知らせてあげることも必要かなと思っています。 ○山根委員 裁判員が知人に体験を話そうとすると,守秘義務違反なんじゃないのというふうに言われて,何も話せなくなるというようなこともあると聞きます。何を話すのが駄目で何が良いのかというのは,裁判員になった人だけでなく,広く皆が知っている必要があると思います。   そして,違反に当たるかどうかの線引きが難しいと感じる上に,違反には懲役刑というような重い刑までありますし,義務は生涯続くということで,不安に思います。そのため,裁判員経験者は,何も話さないでおこうというような心理が生まれたり,精神的な負担ともなっていると感じます。法務省や裁判所のホームページでQ&Aなども豊富に使って説明をされていますけれども,この守秘義務のところはやや見づらいのかなという気もしておりまして,具体例なども載せてより分かりやすくする必要もあると思っています。 ○大澤座長 先ほどの小林委員の御発言で,こういうことを聞いていいだろうか迷うというお話がございましたけれども,具体的にそれがどのような事柄に関するものかというのが分かるともう少し裁判所にも伝わるかなという気もいたしますが,いかがでございましょうか。 ○小林委員 聞くときに,細かい点を詰めて質問し続けていくと,守秘義務に触れてしまうようなことを聞いてしまっている部分もあるのかなと思います。 ○保坂官房審議官 事務当局から裁判所の方に質問したいのですが,今御説明のあった最高裁判所の資料の一番下のところに,守秘義務に関して気になることがあればこちらにお問合せくださいという形で問合せ先が書いてあります。守秘義務の範囲が分かりにくいということがヒアリング等で言われていましたが,裁判所に対して,どのような問合せが多いのかということと,全国的によくある分かりにくさの原因を除去するために,こういうやり方で説明した方がいいのではないかということを検討するなど,具体的な取組を何かされているのでしょうか。 ○島田委員 守秘義務を説明した後,判決終了後のことですけれども,他の人に話してよいのかどうか,疑問があったら裁判所に連絡してくださいということはお伝えしております。しかし,実際に私のところにそういう問合せが来たことがございませんので,どのようなところで裁判員経験者の方がお迷いになっているのかについては把握できておりません。それから,守秘義務の説明の在り方について,裁判所内部,例えば東京地裁で勉強会をやったとかいうことは,今のところございません。 ○堀江委員 先ほど小林委員がおっしゃった中で,話していいことについてもう少し分かりやすくブレークダウンできないかという御意見があったかと思いますけれども,資料2にあるような形の説明文書に記載できることというのは,この辺りが限界かなという印象を持っております。   ただ,先ほど島田委員のお話の中で,守秘義務の範囲等について,当該事件の審理内容に即して説明される例もあるというふうにおっしゃっていたかと思います。   その中で,その事件の審理・評議に関して,具体的にこのぐらいなら話してもいいというようなことを裁判官の方から裁判員の方に説明していただくということは考えられるのかなという感想を持ちました。 ○大澤座長 事件に即して説明をするというのは,かなり頻繁に行われることなのでしょうか。 ○島田委員 恐らく,裁判員の方からこの話をしてもいいのでしょうかという質問を受けたときに,今日の法廷で見たり聞いたりしたこと,証人の話したこと,証拠の内容は話しても大丈夫ですが,この後,結論を決める会議を行い,その中で,この証人の話を信用できるかどうかみんなで議論するわけですが,それについては話してはいけませんと,このような例ですと,比較的相談があったことに対して具体的な説明としてしやすいのかなと思います。それを必ず毎回やっているかというと,そうではないというふうに私としては思っております。 ○大澤座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,「守秘義務の範囲について,裁判員等に十分な説明がなされているか」につきましては,取りあえずこの程度といたしまして,続いて,「守秘義務の範囲を変更する必要があるのではないか」という事項について,意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○小木曽委員 ヒアリングでは,評議の経過や発言者が分からないようにした意見,多数決の数又は裁判員候補者であることについては,守秘義務の対象から外してもよいのではないかという意見がありました。恐らく,そうした御意見の趣旨は,制度への関心を喚起して,裁判員の辞退率を下げるということにあるのではないかと思いますけれども,この問題を考える際には,公正な裁判の実現と,裁判員ないしその候補者の利益保護という二つの観点からの検討が必要だろうと思います。   まず,原則論ですが,刑事事件は事案によって社会の関心も非常に高い中で,裁判員には被告人の有罪・無罪や量刑という極めて重大な事柄について判断することが求められます。   裁判員が評議において率直で自由な意見交換をして,その職責を果たすために,裁判員には評議を始め職務上知り得た秘密を漏らさないよう守秘義務が課されるわけです。これは,裁判の公正さを保つためでもありますし,裁判員への請託や威迫から裁判員を保護するためにも必要なことです。請託や威迫を防いで,ひいては制度の公正さを確保するという関心は,裁判員の候補者についても当てはまります。   ここまでは異論のないところだと思いますが,その上で裁判員制度への関心を高めるために,評議の経過や多数決の数,誰の発言か分からないようにしての発言内容については,守秘義務を外してよいのではないかという意見があるわけです。   しかし,これまでも指摘されていることですが,裁判官はこう言った,しかし裁判員はこう言った,こうした論点があった,といったことが明らかにされますと,取り分けその匿名性を特徴とするネット上では,それをめぐって様々な発言が飛び交うことは想像に難くありません。それこそが裁判員制度への関心を高めるのだという考え方もあろうとは思いますけれども,匿名の書き込み等の影響力はなかなか想定し難いものがあります。評決の数についても同じで,例えば僅差であったとか,裁判員は何票で裁判官は何票だったといったことが明らかになりますと,たとえ法律に従って行われた評決であっても,その正当性に疑義が差し挟まれる,そのことによって,裁判員だった人々が悩むとか,あるいは将来裁判員になるかもしれない人々が萎縮するということが起こらないとは言い切れないと思います。   発言者が特定されない発言内容であれば公表してもよいのではないかという意見もありますが,発言自体が公表されることで,そのような意見を持っていたこと,持つことへの萎縮効果が働く懸念があると思います。また,情報を継ぎ合わせて発言者が特定されるおそれがないという保証もないわけです。   裁判員候補者であることについては,守秘義務から外してよいのではないかという意見もあります。これについては,そうすることがどういう過程,プロセスで裁判員制度への参加促進につながるのかということは,必ずしも明らかではありませんが,恐らく自分が候補者になったということが語られることで,制度への関心が高まるという趣旨であろうかと思います。   しかし,具体的事件の候補者であることはもちろん,どの事件の候補者であるかが分からない段階であっても,候補者であることを公にすることでどのような請託,威迫,影響があるかは予測できないところで,候補者であることを公にすることによるプラスの影響とマイナスの影響が読み切れない段階では,現行法を変えることには消極にならざるを得ないという感想を持ちます。 ○堀江委員 守秘義務に関して,現行の範囲を絶対に変えるべきでないとか,あるいは変えるべきであるというような明確な意見を現時点で持っているわけではありませんけれども,もし仮に範囲を変更するとして,その際に検討すべき点として,幾つかのことを申し上げたいと思います。   まず一つは,そもそも変更すべきだというニーズがどの程度あるのか。確かに守秘義務の範囲が広過ぎる,これを狭めるべきだという意見が,裁判員経験者あるいはそれ以外の方の中にもありますけれども,裁判員経験者全般が守秘義務の範囲についてどのように考えているのかということは,必ずしも明確ではないように思われます。   それから,守秘義務の範囲を狭くすべきだという意見の理由としては,まず裁判員の心理的負担を軽減するという点と,それとともに,裁判員としての経験を広く共有するといった点から議論がされているのだろうと思います。   ただ,そのうち心理的負担という点では,守秘義務を全くなくすというのであれば別ですけれども,その範囲を多少狭めたところで,やはり負担というものは残り,その点はさして変わらないのではないかという気がいたします。   それから,裁判員としての経験を広く共有するという点ですけれども,現行の守秘義務がその妨げになっているのではないかという意見があるのだと思いますが,ただ,経験を共有するために,果たして評議の中身,裁判員・裁判官の意見の内容等についてまで守秘義務の範囲から外す必要性がどの程度あるのか,裁判員の経験を共有するために何が必要なのかということを慎重に検討する必要があるのではないかと思います。   もう1点,この範囲の変更の問題について考える際に注意しないといけないことは,新たに守秘義務の範囲を策定するとして,現行の守秘義務の範囲の仕切り方と同等あるいはそれ以上に明確な仕切り方が果たしてできるのだろうかという点でして,そこに懸念を覚えるところです。先ほどの点とも関係しますけれども,守秘義務を全くなくすというのでない限りは,多少なりとも守秘義務の対象になる範囲は残る。その範囲はやはり明確にしておく必要があると思いますが,先ほど御説明があったような現行の範囲以上に明確な基準が立てられるかどうかということは,よく考える必要があるだろうと思います。   それから,最後ですけれども,仮にこの裁判員の守秘義務の範囲を変更するとして,裁判官の守秘義務の範囲との関係がどうなるのかも検討しないといけないのではないか。裁判員裁判における裁判官と裁判員の守秘義務の範囲を違えるという制度設計をするのか,そうでないとしても,裁判官裁判における裁判官の守秘義務と裁判員裁判における守秘義務の範囲が異なることになるのか。そして,そうした場合に,先ほど言ったような心理的負担の軽減とか裁判員としての経験の共有という観点のみからそれを正当化できるかどうかということも十分に検討する必要があるのではないかと思います。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょう。よろしいでしょうか。   それでは,続いて,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」に関するその他の事項について御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。   もし検討事項7に関連してまだ言い残したことがあるということがあれば,先ほどの事項に遡っても結構ですが,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項7「裁判員の守秘義務の在り方」についての意見交換は,ひとまずこの程度といたしまして,次に,検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」について意見交換を行いたいと思います。   この検討事項8についても,意見交換を行うに当たり,参考として,事務当局から平成27年改正法の国会審議や附帯決議で指摘された事項,当検討会におけるヒアリングでの発言の要旨のうちこの検討事項に関連するもののほか,過去の検討会におけるこの検討事項に関連する議論の概要について説明をお願いしたいと思います。 ○栗木参事官 それでは,検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」について御説明いたします。   この検討事項については,平成27年改正法の国会審議の際にも指摘がありました。具体的には,辞退率の上昇及び出席率の低下の背景の一つに,参加することに対する不安感があるのではないか,心理的負担を軽減するための支援が大事ではないか,会社員が裁判員として選任されるなどした場合に弾力的に休暇を取得することができるような制度が必要ではないか,裁判についての理解を深めるための教育を更に進めていく必要があるのではないかといった指摘などがありました。   そうした指摘を踏まえ,資料1-2のとおり,衆議院法務委員会の附帯決議第4項及び参議院法務委員会附帯決議第2項として,裁判員制度施行後の辞退率の上昇及び出席率の低下について十分な検討や調査を行い,必要な措置を講じることとされたほか,衆議院法務委員会の附帯決議第5項として,職場環境改善の促進等できる限り国民が裁判員として裁判に参加できるような環境の構築に向けて更に積極的に取り組むこととされ,また,参議院法務委員会の附帯決議第3項として,裁判員の心理的負担を軽減するための方策の推進について,更に取り組むこととされています。   次に,ヒアリングにおける発言の要旨のうち,検討事項8に関連するものについては,資料1-3の15ページ及び16ページを御覧ください。   この検討事項8のうち,「裁判員等の辞退率の上昇及び出席率の低下の原因をどのように考え,どのような対策をとるべきか」という事項に関しては,裁判員経験者等の方々から,会社の規定により,上司は部下が裁判員として裁判に参加することを妨げてはならないと定められており,参加しやすかったとの御発言があった一方で,会社によっては,裁判員の日当を受領すると給料からその分差し引かれるなどの措置が採られているようであり,参加する意欲をそいでいるのではないか,裁判員候補者となった際,1年間のうち,特定の時期だけ参加はできないが,そのほかの時期は参加したい,という要望が受け入れられるシステムがあると参加しやすいのではないかとの御発言もありました。   また,「裁判員等の負担を軽減するための方策としてはどのようなものがあるか(心理的負担への対応を含む)」という事項については,裁判員経験者等の方から,公判中や評議中に裁判長が適宜休憩を取ったり,気を遣ってくれたりしたため,メンタルヘルスのケアを十分にしてもらったと思うとの御発言があった一方で,裁判所にカウンセリング室を設け,いつでも相談に行ける体制を整える必要があるのではないか,心理的負担に対する取組はしっかりと進めていかなければならないが,それらの取組の土台として,裁判員経験者の思いや具体的な経験が共有されることが重要であるとの御発言もありました。   裁判員等の負担に対する措置については,過去に行われた「裁判員制度に関する検討会」においても議論がなされました。その議論の概要は,資料1-4の23ページから26ページまでに「裁判員やその経験者の負担に対する措置について」として記載されています。この検討会では,裁判所のメンタルヘルスサポート窓口を更に充実させるべきではないか,裁判所において,判決宣告後に精神衛生の専門家の協力を得て裁判官と裁判員とが事案についてグループとして話し合う機会を持つことを検討すべきではないか,国民が量刑や更生について学習する機会が少ないのではないかとの御発言がありましたが,裁判所や検察庁,弁護人における裁判員等の負担軽減のための取組が紹介され,裁判員等の負担に対する措置については,裁判官,検察官等の訴訟関係者には運用上より一層の努力が求められるとの認識で一致しました。   検討事項8についての説明は以上でございます。 ○大澤座長 ただ今の事務当局から説明について,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,資料3-1について,最高裁判所から御説明をお願いしたいと思います。 ○市原最高裁刑事局第二課長 最高裁から裁判員・補充裁判員の選任状況のうち,特に出席率及び辞退率に関する最近の統計数値について簡単に御説明いたします。   資料3-1を御覧ください。こちらは,裁判員候補者名簿記載者数,各段階における裁判員候補者数及び選任された裁判員・補充裁判員の数の推移でございます。   まず出席率,これは選任手続に出席を求められた裁判員候補者のうち,実際に選任手続期日に出席した者の割合でございますが,この出席率につきましては,表の「リ」の下の段を御覧ください。平成21年の83.9%から年々低下傾向が続き,平成29年には63.9%まで低下しましたが,平成30年は67.5%,令和元年は68.6%となっており,改善傾向がみられました。令和2年は3月までで63.0%になっております。   次に辞退率,これは具体的な事件で選定された裁判員候補者のうち,法定の辞退事由があるとして辞退を認められた者の割合でございますが,この辞退率につきましても,表の「ル」の「(b)」を御覧いただきますと,平成21年,22年の約53%から年々上昇し,平成30年は67.1%まで上昇しましたが,令和元年は66.7%に低下しました。令和2年は3月末までで69.4%になっております。   裁判員候補者の辞退率の上昇,あるいは出席率の低下の傾向の原因につきましては,第2回の検討会でも御説明しましたように,最高裁判所で平成28年から平成29年にかけて外部業者に委託をして分析を行い,平成29年3月にその結果を取りまとめております。   その分析結果によりますと,一つ目として審理予定日数の増加,二つ目として人手不足や非正規雇用者の増加といった雇用情勢の変化,三つ目として高齢化の進展,四つ目として裁判員裁判に対する国民の関心の低下等の事情が,辞退率上昇又は出席率低下に寄与している可能性があることのほか,一部の庁で行われていた運用上の工夫,これは具体的には不在を理由に呼出状が不送達となった場合の再送達でありますとか,事前質問票が期限までに返送されなかった場合の書面での返送依頼でございますが,こうした運用上の工夫が出席率を高めるための方策として一定の効果を有する可能性が高いと考えられるなどが指摘されております。   そこで,各裁判所では,平成29年夏頃から,今申し上げましたような運用上の工夫を実施するほか,裁判員候補者が勤務先に相談しやすいようにするため,勤務先向けの協力依頼書面を呼出状に同封したり,裁判員候補者の参加意欲を高めるために,裁判員経験者の多くが肯定的な評価をしている事実や裁判員経験者の声を分かりやすくまとめた書面を同封したりする取組も実施しております。   具体的には,こちらは島田委員提出の資料3-2の1枚目及び4枚目ですが,これは第2回及び第5回の検討会で提出している資料の数値をアップデートしたものでございます。資料4枚目は,勤務先向けの協力依頼書面,資料1枚目は裁判員経験者の声を分かりやすくまとめた書面であり,各地方裁判所では,この東京地裁の書面のように最高裁から示した書式例を適宜加工して,裁判員候補者に送付していると承知しております。   これらの書面の利用の実情等につきましては,後ほど島田委員からも御説明があると思います。   出席率や辞退率について,令和元年末の時点で好転の兆しが見られる要因としては,これらの取組の成果が出始めているのではないかと思われます。   なお,辞退につきましては,そもそも国民の負担を過重にしない等の観点から制度化され,法定の辞退事由があると裁判所が判断した場合に限って認められるものですから,辞退率がどの程度まで許容されるかということについては,現に選任された裁判員の構成を含め,裁判員の選任手続の運用状況を踏まえて判断する必要があると考えられます。   そこで,選任手続の運用状況を見ますと,これまで裁判員の選任に具体的に困難が生じた例はなく,選任手続期日に出席した裁判員候補者の職業別,年代別,性別の構成割合は国勢調査における各構成割合と大きく異なっておらず,国民の縮図と言える構成になっております。このように,今現在の辞退率は,制度の安定的な運用に差し迫った影響を及ぼすレベルには至っていないと考えられます。   もっとも,辞退率につきましては,先ほど申し上げました分析結果にある雇用情勢の変化や高齢化の進展という社会的な要因によるところも小さくないと思われますため,今後も必要な取組を実施しつつ,選任手続の運用状況とともに動向を注視する必要があると考えているところでございます。   また,これまで申し上げましたような取組以外にも,裁判所では国民の関心や参加意欲を高めたり,不安を解消したりする様々な広報活動を行っております。裁判員等経験者の皆様に貴重な経験を周りの方々にもお伝えいただくよう協力をお願いしていることは,先ほど守秘義務の検討事項の際にも申し上げましたが,これにとどまらず,各地方裁判所では,裁判官とともに裁判員経験者が自らの所属先以外の企業や学校等に出向いて,裁判に参加した感想を語っていただくなど,裁判員経験者の生の声を広く届ける広報活動を積極的に行ってきたところでございます。   なお,資料3-1の表のうち,令和2年3月末時点の出席率・辞退率は,先ほど御説明させていただきましたとおり,令和元年1年間と比べますと出席率は低下し,辞退率は上昇しております。   過去の月ごとの推移からしますと,例年1月から3月頃にかけては,出席率の数値はやや低く,辞退率の数値はやや高い傾向がございます。そこで,令和2年1月から3月までと過去の1月から3月までの数値を比較しますと,1月から3月までを通してみると,令和2年は前年と大きな差はありませんが,3月のみを見ますと出席率が下がっており,新型コロナウイルス感染症の影響が懸念されるところでございます。   なお,詳しくは次回御報告したいと思いますけれども,4月・5月は選任手続期日の実施件数が少ないため,新型コロナウイルスの影響を見極めるには,今後も引き続き動向を注視する必要があると考えているところでございます。 ○大澤座長 ありがとうございました。ただ今の最高裁判所の御説明について,質問等ございますでしょうか。 ○小林委員 1点質問ですが,辞退が認められた人の中の理由別の内訳というのはお分かりになりますでしょうか。 ○市原最高裁刑事局第二課長 例えば平成30年を見ますと,事業における重要用務を理由に辞退が認められた裁判員候補者数が2万5,417人,介護養育を理由に辞退が認められた裁判員候補者数が6,979人となっております。   なお,同年における辞退が認められた裁判員候補者の総数は8万5,484人,選定された裁判員候補者の総数は12万7,490人で,辞退が認められた裁判員候補者のうち,事業における重要用務を理由に辞退が認められた裁判員候補者の割合は29.7%,介護養育を理由に辞退が認められた裁判員候補者の割合は8.2%ということになります。 ○大澤座長 他に御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ただ今の最高裁の御説明の中にも引用されましたが,資料3-2について,島田委員から御説明をお願いいたします。 ○島田委員 出席率の低下,辞退率の上昇については,東京地裁としても先ほど最高裁判所から説明があった四つの要因があるのではないかと考えているのは同様です。   そして,それに対する対応策について,以前にも御説明しましたが,広報活動の充実と環境整備が重要であると考え,継続的に取り組んでおります。   ここでは資料の御説明ということですので,まず環境整備について御説明をいたします。   お手元の資料3-2の1枚目,「裁判員になることに不安を感じている皆様へ」という資料を御覧ください。平成30年度の裁判員経験者のアンケート結果によりますと,参加する前に積極的に裁判員をやってみたいと思っていた方は,合計39.5%でした。ところが,実際に裁判員を経験してみると,よい経験と感じた人と,非常によい経験と感じた方を合計して96.7%に上っております。   そこで,裁判員候補者への働きかけといたしまして,平成30年4月からこの資料3-2の1枚目を裁判員候補者の呼出状を送る書類の中に同封して,参考にしてもらっております。   裁判員として出席された方の感想の一部を御紹介しますと,自分の周りには裁判員裁判を経験した人がいなかったので,とても不安だったけれども,この書類を見て多くの人がよい経験と感じたとあるのを見て,安心して来ましたといった声があります。   続いて,資料3-2の2枚目と3枚目を御覧ください。「小さなお子さんがいらっしゃる候補者の方へ」という書類と,「介護が必要なご家族等がいらっしゃる候補者の方へ」という書類です。この書類は,保育施設や介護施設の案内の文書です。この書類も,裁判員候補者への通知の際に一緒に併せてお送りしております。そして,東京地方裁判所のホームページに,23区それから多摩地区の分ですが,育児・一時保育のサービス,それから高齢者福祉,障害者福祉の相談窓口の一覧表を掲載しており,電話番号が記載されており,問合せができるようにしております。   なお,幼い子供さんの養育や障害者の介護が必要な場合には,その御負担を考慮して,辞退の申出があった場合には辞退を認めることが多いと思います。   また,保育所などを利用している裁判員の方がいるときには,そのお迎えの時間に間に合うように,審理時間が長引くことのないように審理時間をきちんと守るように配慮をしているところでございます。   続いて,資料3-2の4枚目を御覧ください。「裁判員候補者の雇用主・上司の皆様へ」という書類です。この書類は,職場への働きかけとして作成した書類ですが,裁判員候補者への通知の際,先ほどの1枚目から3枚目までと一緒に同封しております。この書類は,裁判員候補者から勤務先の雇主や上司の皆様にこの書類をお渡しして見ていただくことを予定しています。そして,裁判員制度に御理解を頂いて,候補者が裁判員として参加しやすい環境づくりをしていただきたいというお願いの文書になります。   この書類も,平成30年4月から送っております。また,この書類の左下には,必要な休暇等についてという欄がありまして,従業員が裁判員に選ばれたときには休暇を取得できるよう御配慮くださいというお願いを雇主や上司の皆様にしております。この書類についても,裁判員の方から上司に見せたところ,うちの会社では裁判員裁判に参加する裁判員第1号になるかもしれないから,自信を持って,勇気を持って行ってきなさいと,このように背中を押してもらったというお話を聞いたこともございます。 ○大澤座長 ありがとうございました。ただ今の島田委員の御説明について,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,法務省における法教育の取組について,司法法制部に御説明をお願いすることといたします。 (法務省大臣官房司法法制部川副万代大臣官房付入場) ○川副官房付 法務省大臣官房司法法制部の川副と申します。これから法務省における法教育の取組について説明をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   お配りしております資料3-3に基づいて説明をさせていただきます。まず前提としまして,法務省が考える法教育について簡単に説明をさせていただきます。   法教育とは,知識だけではない法的なものの考え方を身に付けるための教育であり,法務省におきましては,法教育を,法律専門家ではない一般の人々が法や司法制度,これらの基礎となっている価値を理解し,法的なものの考え方を身に付けるための教育と定義付けしております。そして法教育では,①社会の中でお互いを尊重しながら生きていく上で,法やルールが不可欠なものであることへの理解を深める,②他人の主張を公平に理解して,多様な意見を調整して合意を形成したり,法やルールにのっとって適正な解決を図ったりする力を養うことを通じて,自由で公正な社会を支える人材の育成を目指すということをしております。   その中で主に取り上げておりますテーマは四つあり,資料の「法教育の主な内容」のところに記載しております。一つ目が法やルールの意義・役割,より良いルールの作り方等,二つ目が契約自由の原則などの私法の基本的な考え方,三つ目が個人の尊重,自由,平等などといった法の基礎となっている基本的な価値,四つ目が司法の役割や裁判の特質となっています。   これらのテーマ一つ一つがいずれも簡単なものではなく,実感を持ってこれらを学んでもらうためには,一度授業を受けてもらったり,話を聞いてもらったりすれば足りるというものではないと考えております。そのため,法務省では法律分野や教育分野の学識経験者,弁護士や現役の教員の方々といった実務家の皆様のお知恵をお借りしまして,小学校,中学校,高校それぞれについて,子供たちの発達に応じて段階的に理解を深めることができる法教育の教材を作成し,全国の学校などに配布するとともに,法務省のホームページにおいても提供しております。   また,視聴覚教材なども作成・配付しており,ユーチューブなどでも公開をしているところです。   今回は,作成しております法教育教材のうち,裁判員裁判に関わりが深い部分について簡単に内容を紹介させていただきます。資料3-3の2枚目を御覧ください。   まず,小学校向けの教材においては,題材一覧の項目にあるとおり「友だち同士のけんかとその解決」,「約束をすること,守ること」,「もめごとの解決」,「情報化社会における表現の自由と知る権利」という四つのテーマを取り上げております。このうち,「もめごとの解決」というテーマが特に裁判員裁判とも関連するものであり,掃除をさぼったかどうかというもめごとの事例を通じて,事実を正確に把握して,事実に基づいて公正に判断することの大切さを理解させる内容となっております。   小学生段階では,児童たちの司法に関する関心を高めつつ,司法への参加意欲を根付かせることが重要と考えられます。そこで,児童が身近な事例を基に事実認定を経験して,紛争の解決の在り方を議論することを通じて,司法に関心を持ってもらい,国民の司法参加の意義を感じる,そういうことができるものとしております。   次に,中学生向け教材においては,題材一覧の項目にある四つのテーマを取り上げております。   裁判員裁判との関係では,そのうち「(4)」の司法のテーマの中で,電車の中で生じた他人同士の傷害事件の事例を通じて,民事裁判と刑事裁判の違いについて学んだり,それから裁判に関わる人々の役割について考えたりしながら,法に基づく公正な裁判の仕組みや機能について学ぶことができる内容になっております。   また,裁判員裁判に関連するものとして,通貨偽造の事例を題材にして,証拠による事実認定を体験させることにより,自分が裁判員になった場合の留意点や裁判員裁判に参加する意味等について考えさせる内容となっています。   そのほか,司法法制部では最高検察庁と共同して強盗致傷罪の事案に関する刑事模擬裁判の台本やワークシート,補助教材などを作成しております。   中学生段階では,裁判手続の一部の模擬体験を通じて,法やルールに基づいて紛争を解決し,また,ルール違反に対処するという裁判の機能を学習させることにより,裁判が公正な手続の下で理性的な議論を踏まえて行われているということに気付いてもらうということを目指しております。   次に,資料は3ページ目にある高校生向け冊子教材では,題材一覧にあるとおり,「ルールづくり」「私法と契約」「紛争解決・司法」の三つのテーマを扱っております。   このうち,最後の紛争解決・司法の刑事裁判手続に関する部分では,強盗致傷の事案に関する刑事裁判を扱っており,模擬裁判や模擬評議を通じて,無罪推定の原則や証拠裁判主義などの刑事裁判の基本的な考え方について理解させるとともに,裁判員の果たす役割について学習させる内容となっております。   この教材では,裁判所による紛争解決手続過程の模擬体験を通して,第三者の立場で当事者の言い分を公平に理解し,争点を整理して,法に基づいて紛争を解決する力を養うとともに,司法の意義・役割,民事裁判や刑事裁判手続の特徴について実感することを目指しております。   そのほか,資料3-3にありますように,法務省のホームページにおいてモデル授業例を公開したり,教員向けの法教育セミナーを実施したりして,法教育を行う教員のスキルアップを図っております。   また,法務省職員などによる出前授業を実施することにより,学校やそれ以外の場所での法教育の取組を推進しております。   法教育に関しましては,平成17年に発足しました法教育推進協議会という会議体におきまして,法教育の実践の在り方や教育関係者と法曹関係者による連携の在り方などについて継続的に検討をしております。先月8月26日にもこの会議が行われ,法教育を広めていく今後の取組の方向性などについて議論が行われたところです。   最初に触れさせていただいたとおり,法務省における法教育への取組は必ずしも裁判員裁判に特化したものではありませんが,取り扱っている四つのテーマ,これはいずれも司法制度やその価値,基礎になっている価値の理解につながるものであり,発達に応じてこれらを段階的に学ぶことにより,司法の役割や裁判員裁判に参加することの意義などについての理解につながるものと考えております。   法務省としましては,今後も法教育推進協議会を中心に,法教育の推進に積極的に取り組んでまいりたいと思います。 ○大澤座長 ありがとうございました。法教育の取組に関しましては,事務当局からも御説明を伺いたいと思います。 ○中野企画調査室長 法務省刑事局総務課企画調査室長の中野でございます。引き続き,全国の検察庁における法教育の取組について御説明いたします。   裁判員法の施行に当たり,法務省において,法教育を重要施策と位置付け,全省的かつ積極的に推進することとされたことに鑑み,検察広報活動の機会に刑事司法一般等について説明するなどして,法教育を実践すべきとされました。   さらに,裁判員法の一部改正における衆議院及び参議院の附帯決議におきまして,できる限り国民が裁判員として裁判に参加できるような環境の構築に向けて,更に積極的に取り組むことが求められたことから,引き続き法教育の趣旨を取り入れた検察広報活動を積極的に実施することとされました。   法教育の趣旨を取り入れた検察広報活動の具体例としては,例えば学生・生徒を対象として相手方を訪問して行う「出前教室」や,検察庁舎等に訪問を受けて行う「移動教室」を実施し,司法の役割,刑罰や刑事裁判の意義,刑事裁判のルール,裁判員制度等について御説明したり,刑事事件を題材にした模擬裁判を実施するなどしております。   こうした検察広報活動のうち,法教育に関する内容を含み,かつ裁判員制度について広報したものの件数の合計は,平成29年622回,平成30年は789回,平成31年,令和元年ですが,705回となっております。   検察庁において,引き続き国民の方々に裁判員裁判等に対する理解を深めていただくよう,こうした取組を実施してまいります。 ○大澤座長 ありがとうございました。それでは,ただ今の司法法制部及び事務当局からの説明につきまして,御質問等ございますでしょうか。 ○堀江委員 御説明いただきありがとうございました。法教育に関しては,将来の裁判員候補者の参加意識を醸成するのに非常に重要なことと思っております。御説明は非常によく分かりました。ただ,1点お教えいただきたいのですが,こういった教材を用いた法教育,特にここでは裁判員裁判との関係で刑事裁判に関する法教育が,実際に高校などでどれくらい時間をかけて行われているのか,実態調査などはされているのでしょうか。もしされていれば,その情報をお教えいただければと思います。 ○川副官房付 御質問いただきましてありがとうございます。   平成30年度に小中高の教材がそろったところであり,全面的な実践状況調査はまだできていない状況です。小学校向け教材については,その利用率等について,昨年度に調査を行っており,その結果をホームページで公表しております。細かい数字が今手元にはなく恐縮ですが,刑事裁判に関する題材だけではない教材全体の利用率が10%程度であったと記憶をしております。   コロナの影響で中学校,高校の調査はできておりませんが,今後,その利用状況,周知の状況などにつきまして,順次調査をしていきたいと思っており,課題があれば,改善していきたいと考えておりますす。 ○島田委員 先ほど資料3-2の2枚目と3枚目について説明をしたところですが,1点誤りがございましたので訂正をさせていただきます。   東京地方裁判所のホームページに育児サービスや障害者福祉窓口の一覧を載せているというお話をいたしました。23区内のものと,大島や八丈島などの島しょ部の役場の部署名と電話番号が記載されております。先ほど多摩地区と申し上げましたが,その点は訂正させていただきます。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょう。よろしいでしょうか。   それでは資料3-4につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○栗木参事官 資料3-4は,「裁判員休暇」に関する資料です。資料3-4の1枚目,「裁判員休暇をはじめとした特別休暇の普及促進」と書かれた紙を御覧ください。   厚生労働省が昨年度企業を対象に行った調査結果によりますと,裁判員休暇制度を導入している企業の割合は37%であり,企業規模が大きいほど導入率が高いという結果になっております。   1枚おめくりいただきまして,「71」から「78」とページ番号が付されているページまで,その他の調査結果等がまとめられておりますので,御参照いただければと思います。   また,厚生労働省では,裁判員休暇制度の導入のポイントをまとめたリーフレットや,裁判員休暇制度を含む特別な休暇制度の導入事例集を作成・配付して,ホームページへの掲載等を通じて,同制度の普及促進に取り組んでいるとのことです。   先ほどの「78」とページ番号が付されているページの次のページにリーフレットがございます。このリーフレットが2ページございまして,このリーフレットの次に導入事例集がございます。この事例集のうち,裁判員休暇の導入事例が掲載されているページを御紹介いたします。この8ページを御覧ください。   このページで紹介されている製造業の会社では,「取組のポイント」の部分に書かれているとおり,裁判員休暇を導入しています。導入の経緯や詳細については,次の9ページの右側に「公共性を重視する会社としての姿勢から裁判員休暇制度を導入」と書かれている箇所で紹介されております。具体的には,就業規程に,従業員が裁判員に選出されて参加したときは,特別休暇扱いとすることを記載している,裁判員として裁判に参加するかどうかの最終的な判断は個人に任せるものの,辞退する場合は仕事を理由にしないように従業員に伝えている,裁判員休暇制度には日数の規定は設けず,かかった日数分の特別休暇を付与しているとのことです。   このほか,20ページ以下でも,裁判員休暇の導入事例が紹介されておりますので,適宜御参照ください。   厚生労働省では,こうした導入事例を紹介することによって,裁判員休暇の導入を促進していきたいとのことです。 ○大澤座長 ただ今の事務当局の説明について質問等ございますでしょうか。 ○山根委員 最後に御説明いただいた導入事例集ですけれども,これは表紙に大きく2018とありますが,定期的に発行される予定なのでしょうか。 ○栗木参事官 厚生労働省に確認をしたいと思います。この導入事例集自体は,働き方・休み方改善ポータルサイトという厚生労働省が開設したホームページに掲載されていたものでございます。 ○山根委員 この調査は2018が初めてということでしょうか。 ○栗木参事官 その点についても厚生労働省に確認をしたいと思います。 ○大澤座長 ほかに御質問等いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」について意見交換を行いたいと思います。この検討事項8につきましては,先ほど事務当局からも説明がありました,平成27年法改正についての国会審議の過程での御指摘,ヒアリングでの御発言等を踏まえ,「裁判員等の辞退率の上昇及び出席率の低下の原因をどのように考え,どのような対策をとるべきか」という事項と,「裁判員等の負担を軽減するための方策としてはどのようなものがあるか(心理的な負担への対応を含む)」という事項を検討事項としているところでございます。   そこで,これらの事項について順次意見交換を行い,その後,この検討事項に関するその他の事項について意見交換を行うこととしたいと思います。そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。   それでは,「裁判員等の辞退率の上昇及び出席率の低下の原因をどのように考え,どのような対策をとるべきか」について意見交換を行いたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○島田委員 東京地裁で取り組んでいる広報活動の充実化の問題について御説明したいと思います。   以前,この検討会でも御報告したとおりですけれども,まず広報活動の一つとして,裁判官による出前講義があります。裁判官が裁判所を出て,学校や裁判員経験者の勤務先などを訪問して,裁判員制度の意義や内容について説明をしております。昨年の例で申し上げますと,大学や高等学校,小学校のほか,実際に裁判員を経験してもらった方の勤務先,幾つか訪問いたしました。高校や小学校では比較的短い時間の模擬裁判ビデオを見ていただき,有罪か無罪か生徒さんに議論をしてもらいました。   それから,二つ目の広報活動ですが,裁判の団体傍聴を多数実施しております。これは,小中高,そして大学生などの見学や修学旅行先の一つとして利用していただいているところです。また,地域社会の勉強会ですとか,学校の先生による勉強会でお越しになる場合もあります。   そして,具体的な事件,傍聴してもらった傍聴人の方に担当裁判官が裁判の手続について説明をしたり,別の若手の裁判官が裁判員制度の解説をしたりしております。   平成27年から昨年のこの第2回の検討会までに60団体,合計2,000名の団体傍聴の方に法廷傍聴をしていただきました。その第2回の検討会の後,さらに昨年は10の団体,約300名以上の方に法廷傍聴,団体傍聴をしてもらっております。   この法廷傍聴は,裁判員裁判には限らず,通常の単独事件などの傍聴の方が多いわけですけれども,その中でやはり裁判員裁判が話題になりますので,それについての説明を加えているところでございます。   ただし,今年の春以降は,新型コロナウイルス感染拡大防止の関係で,出前講義と団体傍聴については一時中止している状態にあります。   続きまして,マスコミによる報道に積極的に協力をしております。昨年は,裁判員制度10周年ということもありまして,テレビや新聞,週刊誌などに裁判官のインタビュー記事を多数掲載してもらいました。また,先日もあるテレビ番組に東京地裁の裁判長が出演して,有名なメインキャスターの方のインタビューに応じたところでございます。   また,東京地裁では昨年,裁判員制度10周年記念行事といたしまして,3月19日に裁判員経験者6名をお招きして裁判員制度10周年記念フォーラムを行いました。このフォーラムは公開しておりまして,将来の裁判員候補者となる大学生,大学院生の前で裁判員経験者の皆様に経験談ややりがいなどをお話ししてもらったところでございます。   東京地裁の取組は以上でございます。 ○山根委員 辞退率が増えている理由に,社会の関心の低下と不安が相変わらず大きくあるというようなことは,とても残念で改善していかなければならないと思います。制度の理解をもっと深めて不安を小さくするためには,選任された人向けだけではなく,幅広く広報をする工夫がもっと必要なのだろうと思います。そして,選ばれたらやってみようという人が増えたらいいと思います。   先ほどの守秘義務のところでも,なぜ守秘義務が必要なのか,何が話してよくて何が駄目なのか,どういうルールになっているかということをもっと一般向けに広報してほしいと思います。広報活動を頑張っていらっしゃるのは分かるし,増えているという御説明もあるのですけれども,なかなかそういう実感は受けていないような気もしますし,例えば学校などでも,とても熱心な学校とあまり関心がない学校もあるように思いますし,学校自体やることがいっぱいで,そこまで手が回らないというような状況もあると思います。コロナのこともありますので,オンラインを使って何ができるかとか,様々な工夫や検証をしたり,推進したりしていただければと思います。 ○小林委員 どうしたら参加しやすいかというのを考えるのはすごく大事なことだと思います。企業の休暇制度の拡充とか職場の理解の向上というのはもちろん今後も進めていく必要があると思うのですが,やはり大企業だけではなく,中小企業も含めて幅広く休暇制度を取り入れてもらうよう,厚生労働省と法務省で協力してやっていただきたいと思います。   先日,裁判員の経験者の方とお話ししたときも,この方は名前の知られた企業にお勤めの方ですが,自分と同じような感覚の人が非常に多く,同質化しているような感じがあるというようなお話もありまして,多様性を確保するためにもそういうことは必要かなと思っています。   次に,裁判所の方では,国民に過度な負担をかけることを避けるべきだという考えから配慮してくださっているということを重々理解した上であえて申し上げたいのですが,裁判所が辞退をちょっと緩やかに認め過ぎていないかなという感じがしています。ネット上では,こんな理由でも辞退が認められたというような書き込みも散見されますし,少なくとも選任手続に出席してもらう人の割合をもうちょっと高める必要があるのではないかと個人的に思っています。一旦足を運ぶことになれば,段々やる気になるということもあるでしょうし,一日でも裁判所に行くということを職場に言わなければならないなら,自分だけの判断で仕事が忙しいから断る,というようなことはなくなるのではないかと思います。 ○和氣委員 先ほど島田委員から,様々な広報をしているという御説明がありましたけれども,東京の方と地方の方では少し温度差があるのではないかと感じています。地方の方ではまだそういう動きが余り聞かれませんので,国全体としてもう少し広報啓発に力を入れるべきではないのかと感じています。 ○武石委員 広報のこととも関連するのですけれども,それは非常に重要だと思うのですが,私は,企業の人事管理が専門なものですから,企業がこれをどういうふうに受け止めるかということについて私なりに考えると,先ほどの厚労省の事例集もとても良いのですが,特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度という枠組みの中で入ってしまっていますが,実は企業としてこういう社会的責任をどう捉えるかということが重要なのだと思っています。裁判員裁判に自分の会社の社員が行くというのは,それ自体が社会的に非常に重要なことであって,そこで社員が何か経験をしたことが,必ずどこかで自社の役に立つというように事業主の方に思ってもらう必要があって,そういう形での広報というのがあり得るかなと思います。   島田委員からも,事業主の上司の方にも大変丁寧な文書を出していただいているという御説明があって,こういうこともやっているのだなと非常に感心したのですが,やはりここでは,これは法律でも定められているし,辞退は認められませんというように,法律で決まっているからということが書かれていますが,実は社員が裁判員裁判に行くことにどれだけのメリットがあるかですとか,社会的な意義などについて訴えていくと,社員が裁判員制度に参加することは大事なことなのだと思ってくださる事業主の方もいらっしゃると思いますし,そうすると休暇の制度ができてきたり,仕事で辞退するなんていうことはうちの社員にはやってほしくないという事業主のメッセージというのはすごく重要だと思うので,そういう企業側への配慮依頼には,もっと工夫の余地があるかなということを感じました。 ○堀江委員 先ほどの小林委員の御発言とも重なりますが,企業の中で,特に中小の企業での対応状況というところがやはり今後重要な課題かなというふうに思います。厚生労働省の資料に裁判員休暇の導入状況に関するデータがあり,円グラフで示された全体の状況を見ますと,平成29年度に比べて令和元年度だと裁判員休暇を導入している割合がかなり増えていて,これは望ましいことだと思います。一方,棒グラフの方を見ますと,中小の企業では,導入していない,予定もないというところがまだまだ多いようですので,こういったところに重点を置いて広報活動などを行っていくということが大事だろうと思います。   それから,法教育の関係ですけれども,先ほども申しましたように,やはり若いうちから,裁判員制度というものがあって,その意義がどういうところにあるか,なぜそういう制度が導入されているのかということについて時間をかけて教育をしていって,参加意識を醸成するということが非常に重要になるのではないかと思います。   裁判員制度に関しては,負担の点や不安があって参加をためらう方が少なからずおられて,その負担を軽減することももちろん重要なことで,そのためのいろいろな努力を法曹三者中心にされてきていると思いますけれども,それと同時に,負担があることを前提に,負担を負ってもらってでも国民に参加していただく意義があるのだということについて,積極的に広報,説明していくことが必要だろうというふうに思います。 ○島田委員 幾つかのテーマについてお話ししたいと思うのですけれども,まず,辞退の申出に対する裁判所の判断の在り方です。辞退の申出について,正当な理由があれば,これは国民の正当な権利行使ということになります。裁判所は個々の裁判員の御負担を踏まえて適切に対応しているところです。   この辞退を判断するに当たっては,その認定の資料と,どのような基準で辞退を認めるのかという二つの問題点があるように思います。一つ目の辞退事由の認定資料について,その資料の提出が容易なものかどうか,あるいは質問票などに記載された辞退理由の具体性からその記載だけでも十分に辞退事由を認定できるのかといったような観点から,必要性を検討しているところでございます。   例えば学生であることを理由に辞退したいといった場合には,提出が容易な学生証の写しを添付してもらっております。他方,病気や家族の育児・介護,仕事など,それぞれの人によって事情が異なる理由による辞退の申出については,その事情によっては資料の提出を求めること自体裁判員候補者の負担になるということもあり得ます。   このような場合に,事前質問票に記載された内容,例えば病気を理由に辞退したいと言われている場合に,その病名や病気の程度などが具体的に書いてあり,ほかに信用性に疑問を挟む事情がないということであれば,記載内容だけで判断するといったことも多々あります。もちろん,疑問があれば追加資料を提出してもらうということもあります。   それから,裁判員選任手続の当日に辞退の申出があったときには,個別に質問して,その事情を候補者から直接お尋ねして判断の資料にしているところでございます。   次に,辞退を認めるかどうかの判断が少し緩やかなのではないかという御指摘を頂いたところですけれども,この判断はとても難しいところですが,裁判員として参加することは国民の義務であるという要素と,他方,何日も仕事や家庭を離れて裁判所に来るということの負担とのバランスに配慮して,個別事情に応じて柔軟かつ適切に運用を行うべきであるということは,裁判官の間で基本的なスタンスが一致しております。そのようなスタンスに基づいてこれまで運用してきているところでございます。   私としても,裁判員の義務性を考慮しつつ,裁判員候補者に無理を言って御参加していただいたとしても,審理や評議の途中で抜けられてしまいますと,6名の裁判員に欠員を生じるということもありますので,その辺りのバランスも考えながら,判断に努めているところでございます。   そして,健康状態や家庭の事情,仕事の重要性などの理由で,今回は裁判に参加できなかったとしても,次の機会に御協力いただくようにお願いをして対応をしているところでございます。   それから,企業の社会的責任という点について武石委員からお話がありましたが,実際に裁判員経験者のお話を聞いて,裁判官として出前講義に出かけた際に,企業の方から裁判員を経験した方の報告会を会社の中で行ったことで,コンプライアンス,法律遵守ということが非常に社員の間で重視されるようになったとか,あるいは,資料に基づいてきちんと分析をした上で判断をしたり提案をしたりということで,裁判は証拠裁判主義なわけですけれども,それと同じような事柄が企業の中でも意識付けされてきて,とてもよかったというような御意見を頂いたこともあります。そこで,裁判所の方で,こういった意見を企業の方から出してもらっているということを他の企業の方にお伝えするといったような広報活動を考えてもいいのかなと,武石委員からの御指摘を伺って思ったところでございます。   それから,前半の第7の話題のときに少し出たのですけれども,裁判員の方に,あるいは裁判員候補者ですかね,民間団体があるということの御紹介をしたらどうですかという御提案を頂きました。裁判所が個別の団体を紹介したり,そちらに入会することを勧めるというのはなかなか難しいのですけれども,話題になったときには裁判員経験者の団体がありますよということをお話しして,検討する材料にしてもらっているところでございます。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょう。よろしいでしょうか。   本日の会議ですが,開会からかなりの時間も経過しましたので,ここで休憩の時間を取りたいと思います。司法法制部はここで御退席と伺っております。どうもありがとうございました。 (法務省大臣官房司法法制部川副万代大臣官房付退場) (休     憩) ○大澤座長 それでは,休憩前に引き続き,意見交換を行いたいと思います。   次は,「裁判員等の負担を軽減するための方策としてはどのようなものがあるか(心理的負担への対応を含む)」という事項について,御意見のある方は御発言を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○島田委員 裁判員等の負担軽減のための方策について,これまで御紹介してきたところではありますが,改めてまとめてお話しさせていただきます。   まず,審理計画についてです。制度開始当初は,午前中に選任手続を行って,午後からすぐ審理を始めるという審理計画を立てておりましたが,現在では選任手続と審理開始までの間に1日あるいは数日間空けて,裁判員の方に心構えをしてもらったり,仕事の引継ぎができるようにしております。   また,制度開始当初は,午前10時から夕方午後5時までぎっちり審議をしておりましたが,詰め込み過ぎであるとの御意見を頂き,休憩時間を長めに取るとか,午後4時過ぎ頃には閉廷するようにしております。他方,審理期間が長期化しないようにするため,証人尋問の必要性について当事者と十分に議論をしております。   なお,今年は,新型コロナウイルス感染防止の観点から,裁判員等選任手続や審理の開始時刻について,通勤時間帯を避けて少し遅めの開始時刻にしております。   続いて,審理の内容ですが,裁判員の方たちが負担を感じることなく,目で見て耳で聞いて分かる審理を実践しております。例えば冒頭陳述では,事案の概要と争点,そして証拠との関係に絞った簡潔なプレゼンテーションを実施してもらったり,統合捜査報告書を採用したり,自白事件であっても重要な事実に関しては証人による立証を行い,また,専門家証人の証言方法についても工夫をしてもらっております。   論告・弁論では,行為責任を意識して,量刑グラフに言及した主張を当事者にしてもらっているところでございます。   また,刺激証拠を採用するといった場合には,裁判員選任手続の中で今回の事件ではこのような証拠を調べる予定になっているといったことを情報提供して,裁判員候補者の方に辞退するかどうかの判断要素としてもらっております。また,法廷では実際にその証拠を調べるときに事前に告知をし,証拠調べが終わった後はアフターケアといいますか,裁判員の皆さんの心身に変化がないかどうか確認をするようにしております。   裁判に参加するということは,一般の国民の方にとってはふだんの生活と全く異なる状況で,また日常生活の中では余り考えたこともないような事柄について,しかも重要な判断をしなければならないという意味で,とても心理的な負担を負うことになります。   このような心理的な負担を軽減するために,審理や評議のある期間の間,裁判官としては雰囲気づくりがとても大切だろうと考えています。裁判官と裁判員が一体感を持つことができるように,例えば私たちは同じ船に乗った者同士ですなどと説明することもよくあります。   また,一人で判断をするのではなくて,みんなで同じ証拠を見たり聞いたりして,お互いにアイデアを出しながら結論を決めていくという審理や評議の過程を理解していただくことも大切です。そして,判決宣告後も裁判官として適切な説明が有効であると考えて,実践しているところです。例えば次のような説明を心掛けています。   一つ目として,裁判の結論は裁判官と裁判員の全員で十分な議論を尽くして出したものであって,裁判員が一人で全ての責任を負うものではないこと。むしろ,その責任は裁判官が負うものであること。二番目に,体調不良や不安,その他疑問があったときには,いつでも裁判官に相談してくださいというふうに申し上げております。そのために,判決終了後,裁判所の電話番号を書いたカードをお渡ししております。三つ目として,メンタルヘルスサポートの窓口に関して,もう一度案内をして説明をしております。さらに,先ほどもありましたが,守秘義務の範囲について誤解がないように改めて説明をしております。このような工夫をしているところでございます。 ○小林委員 介護,育児に関わる部分で一つ申し上げたいのですけれども,これを理由に辞退される方,7,000人ぐらいですかね,いらっしゃったかと思うのですけれども,特定の世代の女性が対象となる可能性が非常に高く,裁判員の多様性の確保というところにも影響するかなというふうに思っています。保育や介護は,サービスを利用することで一定程度代替できるものですので,サービスの充実とか利用しやすさを向上させることで,参加すべきかどうかをためらっている人の背中を押す方向で進めていただきたいと思っています。   私自身の経験を踏まえても,育児中に社会参加したいと思っている女性は非常に多いと思うのですけれども,現状で裁判所のホームページ等を見ると,保育サービスの問合せとか利用の申込み,利用料については,全て利用者が自分で負担しなければならないというのが現状のようです。選任手続に行く日だけではなくて,公判の予定期日も全て予約してくださいというふうに書いてあって,選ばれなければキャンセルしてくださいと,キャンセル料がかかることもありますというふうに書いてあります。これは介護も同じで,これだとやはり,やりたいとなかなか言い出せないのではないかなというふうに思います。やってみようかなと,どうしようかなというのを,やって大丈夫ですよという方向で背中を押してあげられるように,「辞退の申出をすることができます」とあまり強調するのではなくて,もちろん法律上は辞退事由として認められているわけですけれども,書きぶり一つとっても,「子供を預けられるなら参加したい場合には」という文章ではなくて,参加してもらいたい,という積極的なニュアンスがもっと伝わるように工夫してもらえないかと思います。   あと,例えば,各地裁で1か所ぐらいは,地元の公立の保育園などと連携して,責任を持って候補者若しくは選ばれたときの期日分の保育や介護の確保をするとか,少なくともそこの保育園であればキャンセル料は負担しないで済むというようなところを確保する必要があるのではないかと思っています。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,続いて検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」に関するその他の事項について御意見をお伺いしたいと思います。   御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。あるいは,ここまでで言いそびれたこと等あれば,ここで御発言いただいても結構かと思います。いかがでございましょうか。 ○島田委員 今日の前半のときに少しお話が出ていたかと思いますが,裁判員経験者が集まる機会を提供できるようにしたらどうかというお話がございました。判決宣告の後であっても,裁判員の精神的負担の軽減を図ることは,裁判官の職責であると考えております。   そして,同じ事件を担当した裁判員経験者がお互いに事件のことや経験を振り返って話すことは,心理的な負担の軽減につながると考えております。担当裁判官の判断でそのような機会を設けることがございます。例えば,重大な事件を担当した場合に,体験を共有した者同士が連帯感を持つことができるように配慮することが重要で,裁判官からお声がけして,裁判官含めて裁判員等経験者が集まって,同窓会のような機会を設けるということがございます。   また,裁判員経験者同士の交流のために,同じ事件の経験者の連絡先を知りたいという御要望が出されることもあります。このときには,相手方の了解を得た上で連絡先を伝えることもしております。 ○菅野委員 ここで話をするのが適切か分からないのですけれども,コロナウイルス感染症拡大の影響で裁判員裁判が中止されたり,延期になって,最近ようやく裁判が開始されています。私自身も,選任手続など経験していますが,コロナウイルス感染症拡大の影響で裁判員候補者が集まりにくくなっていることがあるのか,ないのかということをお聞きしたいと思いました。   あるいは,コロナウイルス感染症が不安で参加しにくいという人がいるのであれば,今後どういうことを検討していけばいいのかというところが,私自身も考えているところではあるのですけれども,なかなかまとまらないので,まずはコロナウイルス感染症が不安で裁判員選任手続に来にくい,あるいは裁判員裁判の公判に来にくいといった,新しい不安が出てきているように思うものですから,その点について裁判所としては今どういうことを考えているのか,何かお考えがあれば聞かせていただきたいなと思っています。   実際の事件でも,テレワーク中なのに電車に乗って移動するのはどうなのか,という御不安の声を聞くものですから,そういった実際の不安に対して,どう答えていくべきなのかというところも,お伺いしたいなと思いました。 ○大澤座長 コロナ関連の対応については,次回にまとめて御報告を頂いて議論の機会を設ける方向で考えているところですが,菅野先生,次回でもよろしゅうございますか。 ○菅野委員 次回で結構です。 ○大澤座長 それでは,次回にまとめてということにさせていただきます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項8「裁判員等の参加促進及び負担軽減のための措置」に関する議論はひとまずここまでということにいたしまして,これで各検討事項についての1巡目の意見交換はひとまず終わったということにさせていただきたいと思います。   これまで,第10回から本日の第14回までの合計5回にわたりまして,1巡目の意見交換を行い,様々な御意見を頂いたところでございますが,今後,本検討会において更に意見交換を行い,議論を深めるべき検討事項もあろうかと思います。   そこで,今後の具体的な議事等については,座長である私の方で検討をし,事務当局を通じてなるべく早めにお知らせすることにさせていただきたいと思いますが,そのような進行でよろしゅうございますでしょうか。                  (一同了承)   ありがとうございます。それでは,そのように進めさせていただきます。   さて,第9回の会合において事務当局から説明があったところですが,本検討会の本来の検討事項ではないものの,刑事訴訟手続以外の訴訟手続における国民参加について,担当部局において,検討の参考とするため,刑事事件の裁判員制度を検討しているこの検討会の場を借りて,委員の皆様の御意見を賜る機会を設けさせていただきたいとのことでございます。ついては,本日,法務省民事局からの御説明を伺った上で,皆様の御意見をお聞かせいただくことにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。                   (一同了承)   ありがとうございます。それでは,法務省民事局から御説明をお願いいたします。 (法務省民事局大野晃宏参事官,最高裁判所事務総局民事局渡邉達之輔第二課長入場) ○大野参事官 法務省民事局で参事官をしております大野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。   本日は,民事裁判手続における国民の司法参加に関する検討の参考とするため,本検討会の場をお借りし,委員の皆様の御意見を賜る機会を頂戴いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。この関係に関する進行は当職にて行うこととさせていただきます。   では,まず御意見をお願いする背景などにつきまして御説明をさせていただきます。   裁判員制度の導入を提案した平成13年の司法制度改革審議会意見書においては,その対象範囲について,国民の関心が高く,社会的にも影響の大きい重大な刑事事件とすることが相当であるとされ,刑事訴訟手続以外の裁判手続への導入については,刑事訴訟手続への新制度の導入,運用の状況を見ながら将来的な課題として検討すべきであるとされております。   また,裁判員法の改正法が平成27年12月に成立しておりますけれども,その際の衆参法務委員会の附帯決議におきまして,裁判員制度の対象事件の範囲について言及されているところでございます。   例えば,衆議院法務委員会の附帯決議第6項では,国民の中から選任された裁判員が裁判官とともに訴訟手続を行う制度の在り方について,差し当たり刑事訴訟手続における国民参加の制度である裁判員制度が導入されたことに鑑み,国民の司法に対する理解,支持を更に深め,司法の国民的基盤をより強固なものとして確立するため,広範な視点に立って検討を行うこととされております。   そこで,本日は,この検討会で裁判員制度につき御検討をされてこられた委員の皆様から,刑事訴訟手続以外の訴訟手続への国民参加について,その御知見を賜る機会を設けていただいたというものでございます。   刑事訴訟手続以外の訴訟手続,具体的には民事訴訟事件についてその概要を御説明いたします。配付資料の「一般的な民事訴訟事件の流れ」を御覧ください。   当事者間で紛争が発生いたしますと,一般的には当事者間で交渉がされますが,交渉によって解決しないときに,当事者のいずれかが原告となって訴状を裁判所に提出することによって,民事訴訟事件が開始されます。   民事訴訟事件の訴訟の構造は,基本的に原告対被告の対立構造であり,その中には訴訟の当事者が代理人弁護士を選任していない本人訴訟が相当数ございます。   訴えが提起されますと,裁判所において訴状の審査をした後,第1回口頭弁論期日を指定した上で,被告に訴状を送達いたします。訴状を受け取った被告が訴状に対する主張を記載した答弁書を提出することによって応訴し,第1回口頭弁論期日が開かれ,争いのある事件については争点及び証拠の整理をする手続に移行いたします。   争点及び証拠の整理手続において,裁判所は当事者双方から提出された主張書面や書証などの証拠から,事実関係や法解釈について争いがある点と争いがない点を整理しますけれども,裁判所は単に当事者の言い分を整理しているのではなく,当事者双方から提出された証拠を見て,一定の暫定的心証を持ちつつ,当事者双方と口頭議論をし,裁判所が法的判断を示すべき争点や証人や本人の尋問を必要とする事実関係についての争点を確定する作業をしています。   また,この争点及び証拠の整理手続において,裁判所が争点について暫定的な心証を提示するなどしつつ,和解協議をすることも多々ございます。   その後,争点及び証拠の整理手続において,証人又は本人の尋問が必要となる争点の確定がされた後,原則として集中的に尋問が実施されます。また,尋問後には尋問の結果を踏まえて和解協議をすることも多くございます。   その後,当事者から尋問の結果を踏まえた最終的な書面の提出がされることもあり,裁判所は当事者による主張立証を終えた時点で弁論を終結いたします。   弁論終結後,裁判所が判決書を作成し,判決言渡しをすることにより,第一審の民事訴訟が終了いたします。   なお,先ほど御説明いたしましたとおり,民事訴訟の各過程において和解協議がされ,事件によっては数期日にわたって和解協議を実施することもあり,その結果,和解によって事件が終了することもあります。   過去5年の事件数については,配付資料の「地裁第一審訴訟事件(民事関係)の新受件数及び人証調べを実施した事件の平均審理期間」を御覧ください。   令和元年においては,地裁第一審民事訴訟事件の新受件数は約13万6,000件,人証調べ,これは証人又は本人の尋問を実施したものという意味でございますが,人証調べを実施した事件の平均審理期間は22.1月となっております。   以上が民事訴訟事件の概要でございます。刑事訴訟事件と異なる点も多くあると思いますけれども,それらの点も踏まえて刑事訴訟手続以外の訴訟手続への国民の司法参加について,委員の皆様から御知見を賜りたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山根委員 これにつきましては,簡単に拡大への結論は出ないと思いますけれども,司法に社会常識とか市民感覚を生かして,司法をより身近なものにするために,社会的に関心が高くて影響の大きいような民事訴訟とか行政訴訟に対象を広げるということについては,真剣に議論をし始めていいのではないかというふうには思っております。 ○小木曽委員 検討課題だろうと思われるものは様々あると思います。一つ目は,国民の司法参加と一言で言われますけれども,裁判員法では1条で司法への国民の理解と信頼の促進ということが言われていますが,民事の場合も同じような点にその目的を置くのか。また,国民が参加することでそれが促進されるのかどうかということですね。そのことは,裁判員に期待される役割は何かということも関係するわけで,刑事裁判では事実認定と量刑判断に裁判員が参加するわけですけれども,民事の場合は刑事よりも訴訟物,要するに裁判の目的のようなものが非常に多様だろうと思います。手続としても途中で和解があったりするわけで,その民事訴訟のどの部分に一般国民がどういうふうに参加するのかという,その具体的な制度設計をどうするのかということですね。そこに国民が参加することで,目的が達せられるのかという点について詰めた検討が必要であろうと思います。   二つ目は,現在でも職業裁判官以外の人々が民事司法に参加ないし関与する制度がいろいろあると思いますけれども,それとの関係をどう捉えるのかということです。つまり,現行の制度を発展させた方がいいのか,それとも新しい制度を考える方がいいのかということです。   それから,三つ目は,国際比較ということで言いますと,刑事に比べて民事への市民参加というのは恐らく少数ではないかと思いますし,やめた国もあると思いますけれども,なぜそうなのかということの分析が必要だろうと思います。   四つ目としては,国民の負担感,今まさに,刑事裁判に参加するのにどのくらい負担があるとかないとか言っているわけですが,民事の裁判員を考えたときには,今より国民の負担が増えるわけですから,その負担感と目的達成との費用対効果はどうか,ということ。   五つ目は,課題としての取上げの順序として,刑事について施行から10年が経ち,裁判員の辞退率の上昇にどうやって歯止めをかけるかということを考えている段階で,民事についての具体的な検討に入るのが,政策課題として適切かどうか。  ざっと考えるだけでもそのくらいの課題はあろうと思います。 ○堀江委員 既に御発言の中で出てきたことと重複するかもしれませんが,一言申し上げます。   国民の社会的関心が高い民事事件について導入するということになろうかと思うのですが,しかし,どういう事件を社会的に関心が高いと考えるか,もちろん全ての事件というわけにはいかないわけで,どこかで線引きをし,対象範囲を確定する必要があるわけですけれども,その絞り込みが刑事事件の場合と比べるとなかなか多種多様なものがあるため難しいのではないか。刑事の場合は,現行の制度では法定刑などを基準に,これもいろいろな議論や意見があるかとは思いますけれども,一応重大な事件ということで国民の関心は高い,そういう仕切り方をしているわけですが,民事事件,行政事件でどのような事件を国民参加の対象とするのか,その絞り込みというのは非常に難しい課題ではないかと思います。   それから,先ほどの民事局の御説明からも窺われますけれども,小木曽委員の御発言にもあったように,国民がどの範囲でどの手続に参加するのかということですね。刑事の場合は,法廷での審理に参加するために連日開廷,集中審理ということが要求されているわけですけれども,やはり国民の負担が過剰にならないようにするためには,手続の範囲を限定する必要がありますし,参加する部分については連日的,集中的にしないといけない。しかし,民事あるいは行政事件について,特に社会的関心が高い事件になってきますと,そのような集中,連日の期日設定,それへの参加ということが果たして実現できるのかどうか。争点整理の在り方についても刑事とは違うわけですが,実質的に参加するということになりますと,そこに参加せざるを得なくなるのではないか,しかしそれが可能なのか,そういった課題が多々あるというのが,先ほどの御説明とほかの委員の方の御意見を伺って持った感想です。 ○大野参事官 ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   では,特にこれ以上の御意見はないものと承ります。   本日は,委員の先生方から,大所高所から様々な御意見,大きな課題を頂戴いたしました。本日頂戴した御意見を踏まえますと,民事裁判について国民の司法参加を求めることとした場合であっても,その在り方,課題は多様なものがあるというふうに理解をしているところでございます。   冒頭で御説明いたしましたとおり,司法制度改革審議会意見書では,民事訴訟事件における国民の司法参加は将来的な課題として位置付けられております。民事裁判への国民の司法参加の在り方については,委員の先生から本日頂戴した貴重な御知見を踏まえまして,引き続き当省において,裁判員制度の運用の状況を注視しつつ,国民の皆様の負担など生活に与える影響などの観点も含め,多角的かつ慎重に検討してまいりたいと考えているところでございます。   民事裁判手続における国民の司法参加について御意見を賜る機会につきましては,以上とさせていただきたいと存じます。どうもありがとうございました。 (法務省民事局大野晃宏参事官,最高裁判所事務総局民事局渡邉達之輔第二課長退場) ○大澤座長 本日予定していた議事は以上でございます。では,最後に事務当局から次回の日程について確認をお願いいたします。 ○栗木参事官 次回第15回会合の日程につきましては,令和2年10月13日火曜日,午前10時から開催する予定としております。場所につきましては,本日と同じ法務省大会議室を予定しております。 ○大澤座長 それでは,本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-