法制審議会 民法・不動産登記法部会 第19回会議 議事録 第1 日 時  令和2年10月6日(火)自 午後1時00分                     至 午後3時00分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 お待たせをしました。法制審議会民法・不動産登記法部会の第19回会議を始めます。   本日は,御多用の中御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日の審議のスケジュールにつきまして,部会資料48の審議が終わり次第終了という見込みで進めるということにいたします。   本日は,阿部委員,潮見委員,門田委員,衣斐幹事,木村幹事が御欠席です。   事務当局から,本日の配布資料の確認を差し上げます。 ○福田関係官 今回,部会資料の48を事前に送付させていただいております。   なお,本資料につきましては,昨日差替え版及び正誤表をメールでお送りさせていただきましたところです。本日の議事では,差替え版を前提として御審議を頂きたく存じます。   万が一,部会資料48につきましてお手元にないようでございましたら,事務局にお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 ただいま確認を差し上げました,部会資料48についての審議をお願いすることにいたします。   委員,幹事の皆様におかれまして,御覧いただいてお分かりのとおり,部会資料48は,括弧書きのところに,「いわゆる土地所有権の放棄」と示しておりまして,括弧に入れ,また,「いわゆる」という言葉を添えてございます。   こうなりました背景は,既にお気付きのとおり,その上にメイン・タイトルとしてお出ししているように,このたびの部会資料48からは,今まで土地所有権の放棄という仕方で御議論をお願いしてまいりましたものについて,相続を契機にして取得した土地の国への所有権移転という発想で取り組んではどうかという御案内,御提案を差し上げるものでございます。   そのほか,内容を御覧いただくとお分かりのとおり,第16回会議で御議論がありました,土地の所有権の取得原因が,いろいろ混じり合っているような事例,さらに,それに関連して,土地が共有の目的になっているような状態にある場合について,その際に,土地所有権の放棄といっていたものを,どのような要件で認めるかという論点につきまして,若干錯綜する問題状況がありましたところを整理した上で,本日改めて御提案を差し上げております。   そのほか,御覧いただければお分かりのとおり,認可という言葉を使ってまいりましたところを,本日は認定処分という概念を用いてお示ししているところ辺りが,言葉遣いとしては目立つところでございます。   認定処分という言葉に,この段階で何か特別の含みを与えるという趣旨で,提案を申し上げているものではありません。行政行為の性質をどう考えるかという見地から,なお法制的に精査を要する事柄ではありますが,何も言葉を用いないというわけにはまいりませんから,ひとまず認定処分という言葉を与えて,御審議をお願いするということにいたした次第でございます。   部会資料48はこのようなものでございます。これについて,ただいまより,この部会資料48の全体について,委員,幹事から御随意の御意見を承るということにいたします。   それでは,御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○中村委員 第1ばかりでなく,第2の方も申し上げていいですか。 ○山野目部会長 よろしいです,お願いします。 ○中村委員 はい,承知しました。   日弁連ワーキンググループでの議論を御紹介させていただきます。   従前の議論の経緯から,もっと大きな制度となることを期待していたのに,少し残念だとか,民事基本法制に今回の議論が反映されないことに,残念さを感じるという意見がありながらも,民法に所有権放棄に関する新たな規律を設けずに,特別法によって,放棄ではなく認定処分の形で国への所有権移転を認める方法を採ること自体につきましては,賛成ないしは積極的に反対はしないという意見が多数でした。   その上で,日弁連ワーキンググループから,従前から申し上げてまいりましたように,本文1項の認定処分を受けることのできる者の範囲を,相続又は遺贈により土地の所有権を取得した者に限定するのは狭過ぎるのではないか,本文6項のような厳しい要件によって,国が引き取る土地を絞り込むのだから,土地の取得原因を相続,遺贈に限定する必要はないのではないか,この要件を設けることによって,この制度の利用を次の相続まで待つということになりますと,相続によって権利者が更に分散しますし,また,その間,管理する意欲を持たない者が所有し続けるという事態になってしまいはしないかというような指摘がございました。   また,1項(注4)のただし書につきまして,当該土地の共有持分を2回以上にわたって取得した者に関し,7ページの補足説明の6項末に挙げていただいております例のほかにも,もう少し考えられそうな気がするという指摘がございまして,これを法文化するのはなかなか難しいのではないかという指摘が挙がっておりました。先ほどお話しいたしましたように,相続等で取得した土地に限定せずに,6項で絞り込むという方法を採れば,このような困難さはないのではないかという指摘も挙がっております。   それから,本文10項ですけれども,(1)から(6)に該当する場合を除いて,1の認定処分をするという作りになっていますので,10項の(3),(4)は,認定処分の実体要件となる項目であるところ,この内容である5項の申請に先立つ売却等の試みの内容ですとか,6項の各項目というのを,できる限り具体的に法律事項として法律に盛り込むべきであり,技術的な細目に限って政令に委任する形にしてほしいという意見が挙がっておりました。   少し戻りますが,本文3項の認定処分は,土地の1筆ごとにするという要件についてですけれども,1筆の土地の一部は対象としないということを示すためには,この要件は必要かと思いますが,逆に,ワーキングのメンバーから,東日本大震災の後に,津波で浸水した低い土地を自治体が買い上げて,その代金で高地に家を建てて移ってもらうという施策の例が挙がりまして,自治体が低い土地にたくさんの土地を所有することになったけれども,緊急の対応なのでやむを得ないこととはいっても,区画がまとまらず,言わば虫食い状態で自治体が持つことになったために,再利用が困難という事態が発生していることの紹介がありました。   今回の制度では,国が引き取った後の有効利用の見通しというものがないと,なかなか今後,対象を拡大したり,要件を緩和していく方向には向かわないのではないかと思われますので,例えばですが,隣接する複数の筆の一群の土地を対象とする場合ですとか,国有地に隣接する土地を対象とするような場合には,ある程度要件を緩和するなどの扱いをしたらどうかといった意見も出ていました。   また,本文6項の(7)とも関連するのですが,隣接する複数の筆の一群の土地を対象とする場合には,他の所有者との境界が明確であれば,その一群の土地の複数の筆の相互の間の境界が不明確であっても,不適格としないなどとすることによって,申請者が大きな費用をかけずに,まとまった形で提供する方向へのインセンティブにすることができるのではないかという意見などもございました。   本文11項,(2)の時効期間につきまして,認定処分の際に既に6項の要件について審査がなされているのだから,申請者を長期間不安定な状態に置かないために,認定処分がなされたときから,5年に限定するのがよいのではないかという意見がありました。   それから,第2について申し上げます。   日弁連は,中間試案意見書では,他の共有者全員の同意を必要とする,すなわち,今回の甲案とすることが妥当であるという意見を述べておりましたけれども,今回の資料48に対しまして,新乙案,つまり,新たな規律を設けないという意見が比較的多数ありました。理由は,甲案を採って,共有全般について全ての共有者の同意を必要とすることは,やはり厳し過ぎるという考えに至ったというような意見ですとか,土地所有権の放棄について,民法を改正せずに,特別法を設けて規定する方向性と併せて考えると,持分の放棄についても,新たな規律を設けない方がバランスがよいだろうという意見などがございました。   他方,今回は,案として挙がっていない,従前資料の36の乙案,不動産についてだけ共有者全員の同意を要するのがよいという意見も,依然としてございました。理由は,今回,資料48の17ページ中ほどに御説明いただいておりますように,不動産の持分の放棄があった場合,これを登記に反映するためには,持分放棄者と他の共有者との共同申請が必要なので,放棄については同意は不要としたとしましても,他の持分権者が放棄された持分の取得を望まずに登記に協力しないような場合,放棄者の側も訴訟を起こしてまで登記を受け取らせるという意思がなければ,実態と登記が乖離する状況のまま推移するということになりはしないか,そしてまた,放棄したつもりの人も,引き取るつもりのない人も,いずれもが管理をしないという事態になることも考えられますので,この部会のミッションに反することになってしまいはしないかということが,挙がっておりました。   長くなって申し訳ありません,あと1点だけ。   また,17ページの共有物の管理に係る負担を早い者勝ちで他の共有者に押し付けることの懸念に関する部会資料での説明によりますと,他の共有者に一方的に負担を押し付ける目的で共有持分を放棄したときは,権利濫用に該当する可能性があることを書いていただいておりますが,それ自体はそのとおりだと思います。ただ,実務上,そのような立証は大変難しいために,結果として押し付けられるという事態は避けられないのではないかという懸念が挙がっておりましたのが1点。また,押し付けるというよりも,自分がつらいから負担を免れたいという意図であったとすると,権利濫用には恐らく当たらないのではないかと思われますけれども,結果として早い者勝ちという事態は,必ずしも限定的とは言えないのではないかという懸念も示されておりました。   長くなりましたが,まずは概略を御報告いたしました。さらに具体的な提案,意見につきましては,後ほど橋本幹事,蓑毛幹事から御提案させていただきます。 ○山野目部会長 弁護士会の多岐にわたる御意見をおまとめいただきまして,ありがとうございました。この後の委員,幹事からお出しいただく御議論の参考になるものと受け止めました。増田委員,どうぞ。 ○増田委員 ありがとうございます。   私は1点だけ,もう各論的な部分でありますが,この本文の(注3)でありますが,具体的には,5ページの4のところに,今回の所有権の移転の認定処分をする審査機関をどこにするかということで,具体的な行政機関名は書いていないわけですけれども,ここの5ページに書かれているとおりの観点が重要だと思います。公平性を担保するという意味では,具体的に土地を管理するというと財務であったり,農水林野がありますが,そういうところから遠い組織である必要がありますし,一方で,それなりの数がやはり出てくることを考えると,利便性ですとか実際の審査する能力ということも,十分考える必要があると。   別途頂きました調査によりますと,地目によっても多少違いますけれども,農地の割合がその調査で多くなっていますが,一応所有権の放棄見込み数で10万世帯が放棄をするという,それなりの数が出てくるということを考えますと,やはり,さらに本文の方でも行革的に新たな,当然行政組織を設置することが慎重ということを書いていますので,言いますと,具体的には,法務省の法務局をここで審査機関として考えていくのが必要ではないか。ただし,今申し上げましたとおり,それなりの数が出てくるので,今の法務局の体制にそれなりに,やはり動かしていく上での増強なり何なりが当然必要になってくると。これをどうしていくかというのは,今後また,実務的にいろいろ必要性を訴えていくということが必要だろうと思いますが,この審査機関については,ここは法務省の法務局を使って審査をしていくことが必要ではないかということで,意見を申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 審査機関の在り方の具体的なイメージにつきましては,これまで余り論じられてまいりませんでした。増田委員からは,その点について,踏み込んだ検討をしていただいた成果を御披歴いただく意見を頂戴することができました。どうもありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。 ○今川委員 まず,確認ですが,今回このような制度に変更というか,考え方を変えたことで,現行の民法239条2項はそのまま残って,また,土地所有権の放棄については,放棄できることを前提とするような判例もありますし,放棄を前提とした法務省の通達等もありますが,これはそのまま維持されて,個別で裁判等によって解決が図られていくという考え方でいいのでしょうか,その点を確認させていただきたいと思います。   それと,(注3)の審査機関についてですが,今も意見が出ていましたけれども,放棄された土地を管理する機関からできるだけ遠い公的機関の方がいいだろうと思います。したがって,実際に管理をするような省庁は避けるか,あるいは別途独立性の強い機関を設けるか,どちらかがいいのではないかと思います。   それと,(注4)の補足説明6の最終段落の例ですけれども,場合によっては,Aの持分がものすごく少なくて,購入してからBが死亡するまでの間がものすごく長期にわたるようなときなんかは,本制度の対象としてもいいようにも思われます。これも,先ほど意見が出ていましたが,駄目なら,次の相続まで待つというようなことにもなってしまいますので,難しいかもしれませんが,審査機関において,個別事案によって実質的に判断できるような方策も必要だという意見がありました。   それから,ちょっと細かいですけれども,本文10の認定処分について,却下処分と不認定処分に分けられていますが,申請書の内容の不備とか添付資料の不足等も却下事由となっているのですが,不動産登記法25条のように,申請の不備の補正というようなものも,規定として盛り込むことも検討していただきたいというそういう意見がありました。   それから,本文6の(7)のところですけれども,所有権界に争いがないかの判断で,隣地所有者の異議がないことの書面とか,境界標の設置,測量図面の提出等が例示されています。これが絶対ということではないのかもしれませんが,これは,実質,土地の筆界を含めて境界確定を求めることに等しくなってくるので,かなりハードルが高いのではないかと思われます。そしてまた,所有者不明の土地の場合はどのようにするのかというような意見も出ておりました。この辺り,もう少し検討をしていただけないかという意見が,我々の中には多いです。   それから,上記に関連しまして,国民からすると,マスコミとか世論の動きを見ていると,不動産をこのまま所有し続けることができない,あるいは所有したくないという意識がありまして,今回,この部会でその要請に応えてもらえる内容の制度ができるという期待感が非常にあったのかなという気はします。ただ,新しい制度を見ると,非常にハードルが高くて,手放すのはかなり難しいよね,という印象を持たれるかもしれません。もちろん,この部会の議論の過程というものを,我々は分かっております。最初は土地所有権の放棄をどのように認めていくかという議論から始まったんですけれども,モラルハザードの問題とか,土地基本法において所有者の責務が明記されたことや,所有権の放棄に関する理論をどのように構築するかという困難な問題にぶつかるということで,今回の提案に至ったというのは,理解はしております。   先ほども10万世帯という数字が出ました。前々回の部会資料36の参考資料として提示された資料において,1%弱のものが要件に合致するということですが,1%でいいのか,1%では少ないと見るのかは,これは政策判断にもなってくるかと思うんですけれども,審査機関において,できるだけ国民の期待に応えられるような運用もできる作り込みにする,または,常に検討し,検証していくような制度設計にしてほしいという要望がありました。   それから,第2については,先ほど意見が出ておりましたが,我々も不動産について,原則として所有権の放棄をすることはできないという規律を置いて,放棄を認める場合の要件とか手続を定めていくという方向性であれば,そのバランスから,持分の放棄について,他の共有者の受入れの意思表示を要件とするということも必要かとは考えておりましたけれども,所有権の放棄について今回特に規律を設けないというのであれば,共有持分の放棄についても乙案でいいのではないかという意見が多かったです。 ○山野目部会長 今川委員におかれては,司法書士会の多岐にわたる御意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。   また,冒頭にお尋ねが一つありました。それについて,法制面での現在の検討の方向として考えを抱いているところについて,事務当局からお話があればお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   前回,不動産の所有権の放棄は基本的にできないとする規定を民法に設けるという提案をしていましたけれども,今回の提案では,そのような規定は民法には設けないということになりました。したがいまして,土地の所有権の放棄の可否については,引き続き解釈に委ねられる,ケース・バイ・ケースで判断されるということになります。もっとも,今回土地所有権を国に移転させるための要件,手続を,別の法律とはいえ,詳細に定めるということになります。   そうしますと,結局のところ,土地所有権の放棄の可否の問題というのは,土地を国庫に帰属させるということができるかという問題で,国庫に帰属させるルートが改めて新法によって示されたということになれば,民法の解釈としても土地所有権の放棄ということは難しいという方向に動くのではないかと理解をしております。 ○山野目部会長 今川委員,ただいまのお答えについて,何かおありでしょうか。 ○今川委員 いえ,まずは結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,委員,幹事の御意見を承ります。 ○蓑毛幹事 先ほどの中村委員の発言,意見を補足する形で,意見を申し上げます。   第1の1について,日弁連の意見は先ほど申し上げたとおり,個人について取得原因を問わない,あるいは法人についても認定処分の申請主体としてもらいたいということですが,部会資料に書いてあるとおり,現時点で,この制度についてどの程度の利用見込みがあるのか,また国の財政負担がどの程度になるのかがよく分からないという状況の中で,今回の提案のように認定主体を絞り込むことについては,一定の理解ができるところではあります。   ただ,一方で,部会資料にも書かれているとおり,この制度の目的は,土地が適切に管理されることなく放置され,所有者不明土地や管理不全土地になることを防止するということにあります。したがって,現に土地が所有者不明の状態になっているものについては,他の要件を満たす限り,国に管理を任せるべく所有権を移転することを認めるほうがいいのではないかと思います。具体的には,今回の民法改正により創設される予定の所有者不明土地管理人が選任された場合には,その取得原因を問わず,国に土地の所有権を移転することが認められてよいのではないかと思います。   また,所有者不明状態には至っていなくても,適切に管理する主体が存在しないために,類型的に見て管理不全化,所有者不明化する蓋然性が高い状態にある場合については,国に土地の所有権を移転することを認めてよいのではないかと思います。具体的には,法人が破産した場合の破産管財人です。破産法上,あるいは実務上,破産管財人は,破産財団に帰属する土地の売却を図りますが,これが難しいということになれば,裁判所の許可を得て破産財団から放棄します。そうすると,誰も土地を管理する者がいないということになり,管理不全化,将来的には所有者不明土地化する蓋然性が非常に高いということになります。そこで,このような場合には,例外的に国への所有権移転を認めてよいと思います。   もう少し広げるならば,解散決議をして清算手続に入った法人についてもと思いますが,これは広過ぎるということであれば,そこまでは申し上げません。前回の部会で,小さく産んで大きく育てるという話が出ましたが,その小さく産む中に,少しでも,所有者不明土地,管理不全土地になることを阻止するという目的に沿った申請主体を設けることを,御検討いただければと思います。それが,大きく育てることにつながると思います。   それから,もう少しだけ。中村委員の申し上げたことの補足として,6の要件に関して,日弁連のワーキンググループでの意見を申し上げます。   6(1)で,建物が存在する土地が認定処分から除外されることはやむを得ないと思いますが,申請に先立って費用を掛けて建物を取り壊したけれども,他の要件を満たさないので申請が通らないというのでは申請者にとって酷ですので,認定に当たっては,事前協議のようなシステムを設けてはどうかという意見がありました。事前協議をして,建物を取り壊せば申請が通りそうという感触を得たうえで,建物を取り壊すということができたほうがよいというものです。   それから,(9)の要件について,「過分の費用又は労力を要する」の箇所ですが,民法には「過分の費用を要する」という概念はありますが,「労力を要する」ということの意味がよく分からないとの意見がありました。「労力を要する」というのは,「費用を要する」ことに含まれるのではないか,あるいは,部会資料を読むと,ここで「労力を要する」という用語を用いているのは,「他の権利者との間の調整を要する」ということを表しているようにも思われますので,もしそのような趣旨であれば,「労力を要する」ではなく,端的に「他の権利者との調整を要する」と書いた方がよいのではないかという意見がありました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事から,認定処分の申請をする者の資格の範囲について,まず御意見を頂きました。   これから私たちが検討して作ろうとしている制度が,小さく産んで大きく育てるものであるだろうということについては,恐らく,想像いたしますに,大方の委員,幹事の間において,そのようなイメージをお持ちでいらっしゃるのではないかと考えますけれども,仮にそのように考えてまいります際にも,最初に産むときの小さくとは,どの範囲のことで考えて出発するかということについては,なお考え込まなければならない論点が存在しているものでありまして,その一端を今,蓑毛幹事から御指摘いただいたと感じます。   それに引き続いて,蓑毛幹事からは,一,二のお尋ねがありました。部会資料48の趣旨を確認する側面がございます。   これについて,事務当局の方からお話を差し上げます。事前協議と,それから,労力という言葉は要らないのではないかということです。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   事前協議の在り方,これは,実際に制度を動かすときに,どのようにしていくかということかと思います。御指摘も踏まえて,今後検討していきたいと思います。   6の(9)のところを,もう少し具体化できないかという御指摘もございました。この点についても,確かに書きたいことというのは,部会資料に書いてあることでございまして,その趣旨が読めるように,もう少し工夫できないか検討していきたいと思います。   また,相続に限らずに,別の取得原因であっても,所有者不明土地化を防ぐために必要なときには,土地所有権の移転の仕組みを使えるようにしてはどうかという御指摘を頂きました。ここのところ,まずは相続による所有者不明土地化というのが社会問題になっているというところに対応するものとして,今現在このような形で提案をさせていただいております。様々な要件をもっと緩めてはどうかというのは,これも何度も御指摘を頂いておるところでございますけれども,一方で,やはりこれも御指摘いただいておりますが,国の方の管理のコストの負担ということも考えていかないといけないだろうと思っておりまして,そのバランスが難しいところでございます。   所有者不明土地状態になりそうだという場面として,法人の倒産の場面を御指摘いただきましたけれども,そこのところも,土地の所有権の国庫への移転ということを許す方向にいくのか,それとも,所有者不明状態になっても管理を可能とする所有者不明土地管理制度などの提案をしてまいりましたけれども,そちらの方で対応できるようにするのでどうかということもございまして,現時点でなかなか,もっと大きく産もうというのはなかなか難しいかなと思っておりますけれども,本日頂いた御指摘も踏まえまして,もう少し考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 蓑毛幹事がお尋ねという仕方でおっしゃっていただいた,二つの論点のうちの前の方の,事前協議という言葉でおっしゃった事項については,確かに考えなければならない側面があり,これは,問題意識が全く同じではないかもしれませんが,少し前に今川委員の御発言の中に,申請がされたときに,補正のチャンスはないものですかという話題提供がありました。司法書士の考えるイメージの補正とは,何か書類が足らなかったから追加します,というような補正を,もしかしたら最初はお考えになっておっしゃったかもしれませんけれども,ここで考えている申請の手順を考える際には,そのような書類の不備のようなものから,恐らく実地調査の場所に,その申請した人にも同行してもらって,いろいろ意見交換をしながら話を進めていくと想像されますが,その際に,建物さえなければ,ほかの要件は大体満たしているますねというような心証開示を行政庁の側がして,いろいろなコミュニケーションの往来がある中で,申請の受否が決まってくるであろうと想像します。   特に規律を設けず,放っておいてもそのようなコミュニケーションは事実問題として行われると思い描きますけれども,そのようなやり取りについて,言わば行政手続としての信義則を定型化するような,何かの制度装置を設けた方が,安定して手続を運用することができると考えられるものであるならば,今川委員や蓑毛幹事の問題提起をヒントにして,何か考えてみる必要があるかもしれません。   蓑毛幹事がその後でおっしゃった過分な費用又は労力という際の,又は労力という部分は,論理の問題として要らないのではないかと,いささか率然と理解しかねるというお話は,なるほどと感じますとともに,むしろ他者との調整が困難であるというようなことを,正面から申請が認められない事由として考えるべきではないかという御提案も承りました。他者との調整という抽象的な言葉で行ったときに,行政の裁量の余地が広がることが少し心配であるとともに,いろいろな事象が出てくると予想しますから,ある程度は抽象的に要件を法文上描かなければならないと感じられるところもあって,なかなか難しいとは感じますが,しかし,確かにその点は考えなければいけませんから,検討をしてみようと考えます。   非常に深い場所に鉄道を通す大深度地下利用の使用権がありますなんていう土地の国への移転をしたいといったときには,ほとんど地表の利用には影響がないですけれども,若干は鉄道事業者と他の事業者などとの調整が必要になったりする側面があったりするものですから,そのようなことは考えなければいけないですけれども,しかし,政省令も含めて,そうした細かいことを全部書き切るということは難しいですですから,法制的にどういうふうに組んでいったらいいかということを,引き続き悩んでみなければならないと感じました。   山田委員,どうぞ。 ○山田委員 ありがとうございます。   (注4),3ページでございますが,これに関して意見を申し上げたいと思います。   (注4)のところで,二通りのものについて,法人の共有者の中にいても構わないというのと,それから,相続,遺贈以外の取得原因で共有持分を取得した者が共有者の中にいても構わないということを明らかにしていただいています。これは是非,この形で実現していただきたいというのが,私の意見です。   理由は,この制度の利用をどの程度の範囲で認めるかというところが,実質的には重要だろうと考えますが,その一つのポイントとして,これは是非,実現していただきたいということです。   そして,あわせて,(注4)のただし書のところは,しかし,範囲を合理的なところに絞りたいということも理解しましたが,相続又は遺贈で先に取得して,その後,それ以外で取得したというのはオーケーで,その反対だと駄目だということですが,期間とか持分の大きさというところも問題になるかもしれませんが,順序に関わらずに,相続によって取得した共有持分があれば含めるという考え方も,ここに書かれていることと相違なく認められるように思いますので,広くしてはどうかというのが,私の意見です。   そして,関連するのですが,少し違った角度からの発言を続けさせていただきます。   所在等不明共有者がいた場合に,今の共有土地についての認定処分申請がどうなるのかということについて,これは応用問題なのかもしれませんが,同じ部会で検討しているところですので,一応答えは出しておいた方がいいのだろうと思います。   部会資料,遡りますが,41になるのでしょうか。41には,第2と第3が関連するように,私は理解しました。第3の方が簡単だと思うのですが,これは,所在等不明共有者がいる場合に,不動産の譲渡をどうするかということで,裁判所の判断を経て,所在等不明共有者の持分についても譲渡することができるというルールだと理解しております。これを,やはりここでの認定処分申請に当てはめられるということが確保されることが,望ましいと思います。譲渡そのものではなくて,国が行う認定という所有権の移転の効果を生じさせる行為を導くための私人の認定処分申請ですので,譲渡とは,細かく言うと違うもののように思われます。そこで,所在等共有不明者がいるときには,部会資料41の第3の方法を使って申請できるということは,是非,確実に行えるとしていただけるとよいと思います。   それに対して,同じ資料,部会資料41の第2で,不動産の所在等不明共有者の持分の取得をしてから,認定処分申請をすればいいではないかという考え方も,反論としてはあり得るのかもしれませんが,しかし,別の文脈で議論されているとおり,一旦持分を取得したけれども,結局認定処分が得られなかったとなると,持分抱えなくてはいけませんので,やはりこの部会資料41の第2の方法を用いてというのも,もちろん妨げられないわけですが,第2の方法でなく,第3の方法で認定処分申請を行うということができるようになるべきだと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   山田委員が前段でおっしゃった,部会資料48,3ページの(注4)のお話でございますけれども,これにつきましては,思い起こしますと,(注4)の少なくとも本文,ただし書にいく手前の本文のところの部分につきしては,第16回会議におきまして,様々な御意見を頂戴したところでありますけれども,大筋,部会資料36で提示していた,うるさい要件を言わなくても,共有の目的になった土地について,なるべく国への所有権の移転の可能性を認めてあげるという方向で進んではどうかという全体の御議論の雰囲気を承ったところでありまして,本日この部会資料48におきましては,(注4)の本文において,正に前回の部会資料より申請が可能となる場面が拡がる方向での提案を差し上げているところであります。   これにつきましては,ただいままで意見表明を頂いた委員,幹事の御意見,そして,ただいまの山田委員からの御指摘でも,やはり賛成の御意見を承ったところであります。それに対して,本日の部会資料,この部会資料48の(注4)のただし書については,ただいままで御発言いただいている中で拝見しますと,評判が悪いということではないかと感じます。冒頭に中村委員から,弁護士会の御意見の集約として,このただし書はいかがなものかという,これは小さく育てるといっても,ここは小さ過ぎですという感覚からのお話を頂きましたし,今川委員からは,持分の多寡等を考慮して柔軟に対応してほしいというところまで,更にその議論を深掘りしていただきましたが,ただいま山田委員からは,持分の多寡とかいうことも,本当にうるさく要件にしなければいけないものでしょうかというお話を頂戴するに至りまして,総じて言うと,この(注4)のただし書は,現在評判が悪いという状況で推移しているということを御紹介しますから,重ねて委員,幹事の皆様方からの御意見を承りたいと考えます。   それから,山田委員が後半でおっしゃっていただいた点も,引き続き検討しなければいけない点でありまして,これについても,部会資料41で問題提起を差し上げていた所在等不明共有者がいる場合の不動産の譲渡の手続のルールが,論理的には,何も書かなくても譲渡の先が国であるときにも適用されると,山田委員は政策的にそういうふうに考えるべきだというお考えを前提に,論理的にそういうふうに読み取れることがあるかもしれないけれども,なおそのことは,部会の審議において,皆が何となくそう考えていたとか,いや,そうは考えていませんでしたとかいうふうに,認識に齟齬があるといけないところであるから,なおどうなのかという問題提起を差し上げたいというお話を頂きました。   この後段につきましては,事務当局がどういう考えでいるかを尋ねる趣旨も含まれていたと感じましたから,後段について,事務当局において考えがあったらお話をください。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   先ほど山田委員から御指摘いただいた,部会資料41の第3の制度との整合性というか,それが使えるのかということですけれども,私は使えるという方向で考えていました。   今回,承継取得という形でお示しをしておりまして,行政処分をかませた上でのお話で,やや所有権,共有の持分そのものの行使とはまた別の部分がございますけれども,共有持分権,所有権に基づいて申請を行い,それを国に移転させていくという意味では,譲渡と実質的に共通する部分もあると思っておりまして,その意味で,先ほどの部会資料41の第3の譲渡の仕組みも,利用可能なのではないかと思っておりました。 ○山野目部会長 山田委員,いかがでしょうか。 ○山田委員 大谷さんのお答えは,私の実質的な結論と同じ方向を向いていますので,うれしく承りました。それが,認定処分申請という行為と譲渡と,私人間で一般的に行われる法律行為との関係についての理解の問題で,大谷さんのお考えが広く共有されるのであれば,明らかにしてほしいというのは,もう明らかになっているということで,解決したんだろうと思います。 ○橋本幹事 意見を踏まえた質問になるんですけれども,まず1点目ですが,第1の6の(9)の関係で,先ほど蓑毛幹事から,労力というのはいかがなものかということで,座長から,ある程度抽象的な規律にせざるを得ないというお話があって,それはそれで納得するんですが,要は,国民の予測可能性を確保するという観点だろうと思うので,政令に委ねざるを得ないところは出てくるかと思うんですけれども,そこを,できる限り明確化する必要があるだろうということです。   そこで,審査機関について,先ほど冒頭,増田委員から法務局でしょうと,私もこの文書を読んで,法務局一択なんだろうなと読みましたので,法務局に賛成です。是非予算を獲得して,人的物的設備を充実してやっていくと,お願いをしたいと思います。   そこで,法務局さんでもしやるという制度で実現した場合には,どういう事案,どういう申請が認容されて,どういうケースだと棄却されたかというのは,事案の公表,要するに,先例的な意味合いで,国民が分かるように,そういうものを毎年公表するようなことも考えていただきたいと,要望的な質問ですかね,そういうことも考えていただけますかねという質問。   それと,もう1点ですが,部会資料36のときにお聞きすればよかったんですけれども,今回,民法には特に所有権の放棄,あるいは所有権の移転というものはいじらずに,別途法律で決めると提案されていて,この方向になった場合には,この部会の答申としては,所有権放棄,所有権移転についての民法に規定は盛り込まないというところで終わるのかなと思うんですけれども,そうすると,この特別法については,方向性についてはこの部会で議論していますけれども,具体的な法律案としては,もうこの部会の手を離れて,法務省の事務当局の方で立法作業に進んでいくというスケジュールなんですか。その場合は,当初この部会のスケジュールで示された,来年の通常国会に法案を上程するという目標で作業されていくのかを,ちょっとお聞きしたい。 ○山野目部会長 橋本幹事の御発言のうち,最後の点が立法のリズムの問題ですから,事務当局の方で説明を,今分かっている範囲で説明を差し上げなければいけないと感じますが,そこを除いて,その前の方は,いずれも御立派な意見を頂いて,もう,それはそうだよねということばかり伺ったような印象を抱きましたから,そちらは,質問とおっしゃいましたが,貴重な御意見を承ったと受け止めることにいたします。   立法のリズムについて,事務当局の方から説明ください。 ○大谷幹事 確かに,土地所有権の放棄という形ではなく,新しく所有権の移転の仕組みということで提案をしておりますけれども,その内実は,所有権の放棄に関するこれまでのこの部会での御議論を踏まえてのものでございまして,我々としては,部会の結論として,こういう仕組みを作るということの御提言を頂きたいとは思っているところでございます。   この後の立法関係の,いつ法案を出すのかということですけれども,これも,所有者不明土地への対応の一環として,民事基本法制そのものではないにしても,それに関連するものということで今回提案をしておりますので,民法・不動産登記法の改正と同じタイミングで法案を作成していくことを考えております。 ○山野目部会長 橋本幹事に御案内を差し上げますと,まず,この部会の仕事としては,最初に諮問107号で法務大臣から賜った諮問の中に,土地所有権の放棄を認めることの適否及び認めることとする場合の,その要件について検討されたいという項目が入っておりましたから,その求めがあった以上,そこについて何も答えを戻さないということはできません。今,ちょうどこの部会資料48で議論している事柄は,表現が放棄ではなくて移転になりましたけれども,それに対応することでございますから,専門的な御議論をお願いした結果,こうなりましたということは答えなければなりません。   答えを差し上げた後,それを受け取った法務大臣として,それを法律案として立案し,内閣として国会に提出するかどうかは,政府内の府省の協議によって決めていくという段取りになりますが,そういう意味では,確定したことをこの場で決めたり,述べたりする状況ではありませんけれども,当面の見通しを今,大谷幹事から差し上げたということになります。よろしゅうございますか。 ○橋本幹事 はい。 ○道垣内委員 ルールの内容についてではないのですが,議論の仕方というか,前提というか,そういったことについて一言だけ申し上げたいと思います。先ほどから,小さく産んで大きく育てるという言葉が出てきており,部会長もみんなそう思っているんだと思います,とおっしゃったのですけれども,私は少し気をつけなければならない言葉だと思っています。先般,民事執行法の関係の部会が開催されている際,その議論において,財産開示制度というのは,小さく産んで大きく育てるということで,みんな納得していたはずだ,だから今回は拡大するのが当然なのだという意見が,かなり強く出たんですね。私は,それはおかしいだろうと,拡大することの是非をここで決めるはずであると申し上げました。たしかに,財産開示制度を最初に立法化する過程においては,小さく産んで大きく育てる,といった言葉が出たのかもしれません。しかし,だからといって,次の議論の際には当然に拡大するのだと言われるとそうではないと思うわけです。同様に,今回の制度についても,将来,再検討が問題になったときに,これは拡大する話だったはずだと言われるのは,それはおかしいのであり,そのときに必要性に応じて,より小さくするかもしれないわけです。   ですから,それは将来の議論の話であり,大きく育てるというコンセンサスがここで成り立っているというわけではないということは,確認をしておきたいと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員の注意を,ごもっともなこととして承りました。   しばらく前の今川委員の御発言の中で,この制度を作って運用していくに当たっては,どういうふうな成果を生んだかということを,課題も含めて検証してもらいたいという御指摘があったところでありまして,これから政府において立案することになる法律案に,一つの可能性としては,附則として見直しの条項を入れることになるかもしれません。その見直しをしていく中で,蓑毛幹事が問題提起をなさったような幾つかの事象のうちのあるものについては,新しくその時点で認知される立法事実を踏まえて,見直しをするということになるかもしれませんし,その見直しをするときには,ただいま道垣内委員から御注意を頂きましたように,やみくもに適用の範囲を広げるということのみ考えるのではなくて,見直しという言葉のとおり,適切に見直すということをしていくというお話になるものであろうと感じます。   そのような見直しのお話を適切に進めていく手掛かりとするためにも,橋本幹事から御指摘いただいたように,1年を回顧してということでも結構ですし,リズムはいろいろ考えられますけれども,国への土地の所有権の移転が認められた事例を集積しておいて,資料として人々が共有をして議論を進めるということも,有益であるかもしれません。   道垣内委員におかれては,どうもありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   何点か,細かいことも含めて伺いたいこと,あるいは意見を申し上げたいことがあります。   まず,小さく産んで大きく育てるかどうかはともかくという点なんですが,最初は,どちらにしろ,私は,前も申しましたけれども,小さく始めた方がいいと思います。それは,先ほど今川委員がおっしゃった,国民の期待はかなり大きそうだ,がっかりするのではないかという話に関係するんですけれども,制度が始まると,かなり放棄の希望が出てくるのではないかと思うのですね。   そのときに,希望を全部受けられたらいいと思うんですけれども,仮にそうならなかったときに,こちらの方が放棄を認められてもいいはずである,あちらが認められるのはいかがなものかという意見のようなものも,出てきかねないのではないかと思うんですね。そのときに,自分で取得をした人とそうではない人がいた場合には,一般的に言えば,自分で取得したんだろう,それは,あなた,責任を負わなければいけないではないかという,非常に単純な考え方ですけれども,考え方になりがちではないか。したがって,この相続を契機として取得した人からまず始めるというのは,私は極めて合理的だと思っています。   その上でなんですけれども,先ほど山田委員がおっしゃった(注4)のところのただし書の部分は,そうであっても私も,不要とする方がいいのではないかと思います。というのは,確かに,まずは自分が意思に基づいて共有持分を取得している。しかし,その後,相続が起こって,他の共有持分も取得することになりましたとなりますと,結局それは,放棄をしたいと思っているような状況で,更に負担が増すということになることは変わりがないわけですから。持分が2分の1ずつだったとしまして,最初の半分は,あなた,自分の意思で取得したのではないかということを,いつまでも不利益な方向に考慮することは適切ではないのではないかと思っております。これが1点目です。   あと,ものすごく細かくなるので,ちょっと恥ずかしいなと思うんですが,かなり具体的な案が出てきているので,どうなんでしょうかということを伺いたいんですが,まず,文言なんですけれども,6の(2)のところには,単に「土地の管理又は処分」とあり,(5)と(8)は「通常の管理又は処分」となっているんですね。これは意味が違うのか,意味が同じなのであれば,合わせた方がいいのではないかと思いました。それが1点。   それから,2ページの(6)のところでして,補足説明にもあるんですけれど,「権利が設定されている土地」の意味です。対抗要件が具備されていない場合に,権利が設定されている土地に含めているのか含めていないのかで,補足説明では,どっちみち対抗要件が備わっていなければ,この場合の国は第三者に当たるのだから,権利は無視できるというふうな説明がされています。それはそれでいいと思うんですけれども,権利は設定されているけれども,対抗要件登記されていませんということが分かったときに,原則としてどうするのか。受け入れるのか受け入れないのか。原則受け入れませんとするのであれば,それを条文に書くか,政令で書くかどうかはともかくとして,ポジションははっきりしておいた方が,先ほどの国民の予測可能性ということからすると,よろしいのではないかと思います。   1に関してもう1点ございまして,それは消滅時効についてです。5年がいいという御意見があり,原案は10年で,どちらがいいかよく分からないのですけれども,1点気になりましたのは,全ての場合に問題になるということではないのですが,例えば,6の(4)とか(5)というのは,一種の隠れた瑕疵ですよね。そうすると,ここで提案されているのは民法の規定に関するものではないことは承知しておりますけれども,隠れた瑕疵のときに,その瑕疵に気付いたのに,その時から通知もせずにずっと放っておいて,5年ないし10年の期間内にぽんと損害賠償を請求すれば認められますとすることで,民法の規定の担保責任のところと照らし合わせて,いいのかということがちょっと気になりました。ここであんまり規定を細かくするのがいいのかどうかも,よく分からないところがありますので,民法の規定の考え方とあわせる方がいいとまで申し上げるつもりはないんですけれども,賠償請求を受ける側からしますと,それだったら,早く言っておいてくれとか,本当にそうだったのかという,瑕疵の状態がですね,疑念を抱くこともあり得ると思うのです。国だからきちんとやるだろうとは思いますけれども,場合によっては通知をしなかったことによる失権みたいなものも,検討はした方がいいのではないかと思います。以上が,第1についてです。   第2も,併せて意見を申し上げたいと思うのですが,私も,第2は,第1が変わったのであれば,乙案でいいのかなとは思っておりますが,ここでの議論がどれだけ,立法につながらないときに意味があるのか分かりませんけれども,先ほど中村委員がおっしゃった早い者勝ちに関連して,早い者勝ちをきちんと防げるんだっていうのは,それはちょっと違うかなと思いました。   放棄の早い者勝ちを防ぐには,やはり同意が必要ですとしておくことの方が望ましいとは思っていますし,放棄のための一定の要件を設けるというのは,制限物権などには例もあるわけですので,およそ無理だとは思いません。思いませんけれども,所有権の放棄は事実上,先ほど大谷幹事からのお答えにあったとおり,できないんだよねというか,容易に権利濫用になるんだよねと,この認定処分の制度ができたらなり得るだろうということからすると,それと類似する共有持分の放棄についても,あえて他人にというか,他の共有者に負担を押し付ける意図がなかったとしても,やはり本当は難しいものなんだということが,ある程度確認されたらいいかなと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事から合わせて5点頂きました。   第1点は,先ほどから皆さんの間で評判が悪い(注4)のただし書について,評判が悪い方向の意見を一つ追加していただいたということになります。   第2点,第3点,第4点が,事務当局に対するお尋ねでありますから,今お話を頂きたいと望みます。   第2点としてお尋ねがあった点が,1ページの6の中で,「通常の」という言葉があったりなかったりと,文言が不ぞろいになっているところの趣旨を確かめたいというお話でありました。   それから,都合3点目,お尋ねの二つ目は,認定処分申請地に,使用収益を内容とする権利が存在しているかもしれないというときに,権利が実体的に存在しているが,対抗要件は具備されていない場合において,結局国は移転を受けるか受けないか,どちらの解決が想定されているかということでした。   全体の4点目,お尋ねの3つ目は,この5年にするか10年にするかという消滅時効の期間の問題について,客観的な期間の経過とは別に,566条が定めているような,知ったら通知をするという規律と似たような発想のことは考えられないかと,その点をどう考えているかというようなお尋ねがありました。   最後の5点目は,255条の今後の規律の扱い方についての御意見を承りましたから,冒頭の中村委員の御意見と対比した上で,委員,幹事からその点に関して御意見があれば,更に承りたいと考えます。   佐久間幹事からお尋ねがあった3つの事項について,事務当局から考えの説明を差し上げます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   第1点目の「通常の」というのが入っているところと入っていないところがある,これは確かに不ぞろいのところがございます。もう少し精査をして,場面によって言葉を変えた方がいいということがやはりあるということになるかもしれませんけれども,今のところは,「通常の」というのが入っているときと入っていないときと同じようなことを考えておりましたので,もう少し精査をしたいと思います。   2点目の担保権等が設定されている土地についての考え方ですけれども,恐らく審査機関としては,登記を確認するということで足りるということになるのかなと思うのですが,仮に,そのような権利が設定されていることが何らかの形で分かったというときであれば,認定処分をしないという方向になるんだろうと思っております。   3点目の損害賠償の請求権,瑕疵担保責任の場合と,どのような整合性を取っていくかということについて,これも,今の国の債権の管理の在り方と踏まえて,こういう形を一応の提案としております。今の御指摘も踏まえまして,ほかの考え方がないのかということも,もう少し詳しく考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事において,お続けになることがあったらお話しください。 ○佐久間幹事 結構でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。佐保委員,どうぞ。 ○佐保委員 ありがとうございます。   私からは2点ほど申し述べたいと思います。   1点目に,第1の6の(3)の急傾斜地として政令で定める土地についてですが,急傾斜地での崩落により,災害のおそれがあるということも考えられます。今年2月には,神奈川県逗子市で市道沿いの傾斜地の一部が崩落し,県立高校の女子生徒が土砂の下敷きになって死亡するという,痛ましい事故が起きています。土砂災害の防止については,急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によるもので,各地で対策が講じられていると思いますが,今回の検討が,所有者不明土地や管理不全土地になることを防止することを目的とするものであれば,(4)の土壌汚染や(5)の地下埋設物と違って,急傾斜地は土地の形状によるものなので,一考の余地があるのではないかと考えております。これが1点目です。   2点目は,増田委員始め,ほかの委員さんからも発言ございましたが,3ページの(注3)にある審査機関をどのような行政機関とするかについてということです。申請をする者の利便性を考えれば,支局を含め,全国各地にある法務局がよいのではないかと,私も考えております。 ○山野目部会長 2点御意見を頂きました。ありがとうございます。松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   部会資料48,第1の土地所有権移転の認定処分については,いわゆる土地所有権放棄の制度を具体化するという趣旨は変わっていないと理解しています。所有者が自ら管理することが難しくなっている土地について,管理の負担を適正な形で再調整しようというのが,土地所有権放棄の制度検討が始まった当初からの趣旨であったと思います。公平な管理の負担という観点からみて,部会資料48,第1の6に掲げられた要件は,(1)から(8)で各論的な要件を掲げ,(9)でバスケットクローズ的な要件を掲げる形で,所有者のフリーライドとモラルハザードを回避するための慎重な要件化を図っている点で,評価できると考えています。   しかしながら,全体的な基調として,特に最後の(9)で,その他管理処分をするに当たり,過分の費用又は労力を要するものとまとめてしまいますと,国に費用負担が掛かることを回避しようという色彩が,少し強くなり過ぎるのではないかという気がいたします。管理の適正な分担という観点から,この要件については見直す余地があるように思われます。   一つは,佐保委員もおっしゃった点ですけれども,この第1の6,(3)は,各論で上がっている(1)から(8)の中では,ちょっと性格が違っていて,(3)以外の要件は,所有者が自分で責任を引き受けるべきものという要素が強いと思いますが,(3)の急傾斜地は,土地そのものの物理的状況に関するものの中でも,(4),(5)とは性質が違うのではないかと思います。   急傾斜地の中でも,所有者が自ら削ったというような場合は別かもしれませんけれども,自分の責任によらずに生じた傾斜地で,所有者としてその管理を何とかやってきたけれども,もう難しいなというときには,土地所有権放棄制度の趣旨,公平な管理の分担という観点から見ても,考慮の余地があるのではないかと思います。   部会資料36でこの要件を検討したときには,崖地等の管理困難な土地でないこととされ,急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律や宅地造成規制法等の要件も参照して,この要件を具体化していくとされていたところです。今回は急傾斜地という形になっていますが,部会資料48の9ページのウで言及されている各種行政法規等を参考にしてという点は,このことを指しているのではないかと思われます。これらの行政法規で対応可能であれば問題ないと思われますが,そうでない土地について,所有権移転の認定処分をしてはいけないかというと,それをしても制度趣旨には反しないのではないか,再考の余地があるのではないかと思います。所有権移転ができない場合,結局は管理が放棄され,放置状態が続くことにより,所有者不明土地の発生予防の手段としての土地所有権移転の認定処分の制度目的に反してしまうのではないかと思います。所有者も国も,誰もが目を背けてしまうような土地を創出することは回避すべきであると考えます。   また,第1の6の柱書で,次のいずれかに該当するものである場合には,認定処分をすることができないとしている点は,審査機関を拘束する趣旨と思われますが,認定しないことができるというような,少し裁量を持たせる表現はできないものかどうか思われます。   それから,第1の6(9)のバスケットクローズに当たる部分ですけれども,「過分の」費用又は労力というよりも,「不当な」負担を課すものでないことという趣旨を明確にし,所有者は本来自分で負担すべきものを国に転嫁してはならないということを明確にする定め方もあるように思われます。国が本来引き受けるべきものは引き受ける姿勢をもっているということを示す意味でも,認定申請の不当性を判断する趣旨が分かるような要件の表現の方がよいのではないかと考えました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。何点かにわたって御意見を頂きました。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   対象をどこまで広げるかという点に関しては,私も以前,大きく育てる可能性を残してほしいということを申し上げたところですが,これは飽くまで実際に制度を導入してから,どれくらいニーズがあるかというところに関わってくるんだろうとは思っております。   そのことに関連して申し上げますと,放棄したいと思っている人がどれくらいいるかという観点からのニーズの話は今でも結構出ておるんですが,制度として考えたときは,放棄された土地をそのまま国が持ち続ける,という前提だけで考えるのではなくて,その土地自体をどう活用するか,土地って,細切れの状態であれば全く活用できないけれども,ある程度まとまってくれば活用できるという場合も多々あるわけでございますので,逆にそういう土地を,どういう形で次につなげていくか,利用する方向に持っていくかというところまで含めて,これは飽くまで法的な話というよりは政策的な次元のお話になってくるとは思いますけれども,それも含めて御検討いただくのがいいのではないかと思っております。   具体的には,実際に制度が始まったときに,例えば,先ほど御指摘があったような,どういう場合に放棄が認められるのかみたいなところを,もう少し皆さんに広く知ってもらうというのもありますし,そもそもその放棄がなされて,これくらいの土地が実際に国に帰属する土地として出てきていますよというところが,もう少し分かるような形になってくると,より,今まで想定されていたよりは,土地の活用サイクルというものが生まれてくる可能性は出てくるのではないかなと思うところでございます。   また,そういう観点から申し上げますと,やはり気になるのは,先ほどからいろいろとご指摘が出ております第1の6番の要件のところでございまして,(3)の急傾斜地などは,正に今,松尾先生が御指摘になられたとおりだと思いますし,(4)の土壌汚染のところなども,拝見していると,これは,土壌汚染対策法の規制に従って,というよりは,むしろ一般的な土地取引の,それも一番売り手側に厳しい基準でやったときにこうなりますねというところで,今,作られているのではないかと思います。所有権移転という構成を採る以上は,そうなってくるのもやむを得ないところあるかと思う一方で,ただ,現実の取引において,これ,常に全くまっさらな状態ではないと取引していないかというと,そういうわけでもないと。現実の取引においては,土壌汚染のリスクがあることを前提に,どっちにリスクを乗せて,それをどうやって価格に反映するかということを考えながら行われているというところも,現にございますので,これ全く,ちょっとでも有害物質があると駄目,という要件にするのが適切かどうかというところは,ほかの要件との兼ね合いもあると思いますけれども,再度御検討いただく方がよいのではないかと思うところはございます。   というのも,急傾斜地なんかだと,見たところの外観ですぐ分かるからよいのですが,例えば,土壌汚染であったりとか,埋設物であったりという外からは見えないものに関しては,そういうのがあると一切駄目ですということになってしまうと,どちらかというと,これ,存在する可能性を明らかにするというよりは,その可能性があることを秘匿して放棄手続に載せようとするインセンティブの方がむしろ働いてしまうのではないかという懸念がございます。実際のところ,土壌汚染に関して言いますと,形質変更しないということであれば,そのままでもいけるという場合は現にあるわけでございますので,どちらかというと,現状を明らかにした上で,それをどう,移転して管理していくかというところの方に焦点を当てた方が,むしろ弊害が少ないのではないかと思うところも,ちょっと資料を拝見していて思ったところでございます。   埋設物に関しては,どちらかというと補足説明で柔軟な対応もできるというような書き方がされておるわけですけれども,一方で,土壌汚染の方はかなり,一番厳しい書き方になっているというところもございますので,ちょっとその辺のバランスですね。その辺も踏まえて,最終的なところを御検討いただくのがよいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   委員,幹事から種々の御意見を頂戴したところを,事務当局において聴き取っておりますから,今後の検討において,受け止めてまいるということにいたします。   委員,幹事の御意見を,引き続き承ります。いかがでしょうか。   安髙関係官,お願いします。 ○安髙関係官 ありがとうございます。   林野庁でございます。   3点ほど確認と,懸念をお伝えさせていただきたいと思います。   まず,1点目でございます。所有権移転の認定要件についてでございます。法律の立て付けが,これまでは,放棄を認め,無主物となり,それが国庫に帰属するという形,無主物になったものを国が受け取るという形でございましたが,今回からは所有者から国が直接受け取るという形に変わったということで,手放す所有者からしますと,特段何も変わっていないのかなとは思いますが,受け取って管理をします国側の視点からしますと,承継人になるという違いがあると思っておりまして,認定要件,これまで労力ですとか費用といったことに着目をしてきましたが,そういう要件がメインとなっているのみでいいのかというところで懸念がございます。   例えば,固定資産税ですとか相続税,こういったものが未納とか滞納の土地ですとか,林地で申しますと,伐採した後に,森林法の規定に基づいて適切に造林を行っていない森林といったような土地は,果たすべき責務が果たされていない土地であり,場合によっては罰則が科されるというものでございまして,そもそも通常であれば,そのような土地を所有者から御相談受けたとしても,国や自治体は,それを直接受け取るということは,基本的にはあり得ないと考えております。   所有権移転となりますと,土地所有者がお持ちの義務,責任ということが管理コストとして国に転嫁されるということにつながることを踏まえますと,このような土地まで所有権移転を認め,認可をし,所有者が管理の負担から免れる道を開くということは,典型的なモラルハザードとなるのではないかと。そういったことは,国民の皆様方からも理解が得られないというふうな懸念をしているというところが,1点目でございます。   2点目でございますが,資料の1ページの第1の3にございます,認定処分は土地の1筆ごとにするものとするということについて,確認をさせていただきたいと思います。ここでいう1筆でございますが,これは,不動産登記上の1筆ということでよろしいでしょうかということでございます。この場合,要件の6の(7)におきましては,所有権界について争いがなければという考え方となっていますが,所有権界として申請された範囲が,筆界と一致することを審査機関が確認する必要があると思うのですが,そうすると,事実上,審査過程の段階で筆界が特定されるということになるのかと。これが2点目,確認の点でございます。   3点目でございますが,これは2点目にも関連して確認をさせていただきたい事項になるんですが,境界を明らかにするということと,事前の売却,貸付け等の試みとの前後の関係でございますが,8月4日の部会で,日本土地家屋調査士連合会の國吉委員が御発言されておられましたが,売却とか貸付けを試みることの前提として,不動産が特定できる,境界が特定できるということが必要だという御指摘がございました。そうなりますと,資料の12ページのところの上から二つ目のパラ,なお書にありますように,境界標の設置ですとか測量図面などが整理されているというのは,放棄の申請,今回は認定を受ける申請でございますが,その申請に先立って行うとされている売却ですとか貸付けの試みを行う際には,既に整理されていて,その上で,売却とか貸付けの試みを行った,きちんとした形で売却,貸付けの試みを行ったということを,担保証明するような仕組みが必要なのではないかということで,これも確認の点でございます。   以上3点でございます。 ○山野目部会長 3点にわたる確認のお尋ねがありました。   事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 1点目の,固定資産税の未納のような場合は,どうするのかということがございましたけれども,固定資産税が未納であったとして,それで所有権の移転が認められたとしても,固定資産税の支払義務は元の所有者にあるということになりますし,何らかの法令に従っていないということがあるからといって,直ちにこの所有権の移転の仕組みに乗れないということではないのではないかと思っております。違反行為については各法令において罰則等があると思いますので,そちらの方で対応することになり,こちらの方では,要件がそろっていれば土地の管理コストが比較的低いということで,国の方で引き受けるということになるのかなと思っておりまして,土地所有権の放棄という構成を採るのか,移転という構成を採るのかとは別の問題と思っております。   2点目の,1筆のというのは,不動産登記上の1筆かということですけれども,所有権の対象となる1筆ということで,持っている土地の一部だけについて移転をしますということを認めないという趣旨で,1筆ごとにとしております。所有権の移転の認定処分をする際には,この何番地何番の土地についてやりますということが必要で,その一部についてだけやるということではないと理解をしております。   3点目の事前の売却処分の努力の問題がございました。どの程度の努力が必要かということは,今後検討してまいりたいと思います。その際には,林地の場合にはどのようなことがされているのかということに関して,また林野庁の御意見も賜りながら,詳細について詰めていきたいと考えております。 ○山野目部会長 安髙関係官,お続けください。 ○安髙関係官 結構です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 分かりました。   安髙関係官に,併せて一つお願いを差し上げますが,1点目でお尋ねいただいた際に話題としていただいた事柄,すなわち,固定資産税やその他の,都市計画税も同じかもしれませんが,土地に関わる公租公課について滞納があるようなものの移転の申請を認めるかどうかとか,林地について整備の義務が公法上課せられているような場合において,それを履行していない状態での申請も認められるのかといったような疑義の御提示を頂いたところであります。   恐らくお挙げになった題材,二つの性質が異なっていて,固定資産税は,その土地に関わる固定資産税が未納であるものが国に移転したとしても,今,大谷幹事が説明したように,固定資産税の納税義務がなくなるものではありません。太政官布告(明治10年太政官布告第79号)の時代において,地租についての今日でいう強制執行は,その土地についてのみするという取扱いがされていた時代であったならば,これはゆゆしき事柄ですけれども,現在はそのような固定資産税の考え方ではありませんから,それは,ただいま大谷幹事が御説明したとおりではないかと感じられます。   半面,林地整備の義務を履行しないで認定申請がされたときに,それで認定を受けられるかどうかという問題は,認定をするかしないか自体が問題であるとともに,認定をする場合において,費用をどういうふうに払わせるかという問題と連動いたしまして,これは,先ほどの固定資産税と同じには扱えませんから,むしろそれは,林野行政の中で,どういうふうな公法的規律というか行政監督が行われているか,そのことをにらみながら,ここをどう処するとよいかということを,引き続き法務省事務当局との間において林野行政のお立場から協議していただいて,良い解決法を見出していただくことを望みます。御協力方,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本幹事 いずれも細かいことですので,若干,言うか言うまいかちゅうちょしたのですけれども,幾つか申し上げます。   本文で申しますと,5ページの(2)に国への所有権の移転時期とございます。確かに,認定処分の効果が発生するのは,申請者に認定書が到達した時点ですけれども,所有権の移転時期は,例えば,認定処分の中で,具体的に何月何日と書くことも技術的には考えられます。あわせて,移転をする場合には,国への登記をどのタイミングでどういうふうに行うかという問題があるかと思います。これはかなり技術的な問題ですけれども,今後立案に当たって詰めていただければと思います。   それから,13ページの(2)の却下事由,不認定事由でございますけれども,先ほど補正という話がございました。これにつきましては,行政手続法7条で,行政手続の一般的なルールとして,形式不備の場合に,補正又は許認可等の拒否という選択ができるような書き方になっております。ただ,場合によっては,補正が簡単にできるのに却下処分,拒否処分をするのは,いかにも不親切ですので,必要があれば,補正の規定を特別に入れることも考えられるかと思います。   また,14ページのイの最後の段落で,期間制限の法的性質について,当事者の援用を要し,完成猶予,更新可能である消滅時効とするとございます。完成猶予,更新可能というのは,そうなのだろうと思いますが,援用を要するかどうかという点については,会計法は31条で特別な規定を置いており,援用を要しないとしております。起算点をこのように画一的に定めるとすると,あるいは,援用を要しないとした方が,一貫するのかもしれません。かなり技術的な話ですので,指摘にとどめさせていただきます。   それから,16ページで,職権取消しの期間制限をかけ,ただ,例外的に,悪意者については配慮する必要はないと,これは基本的にそのとおりであろうと思います。日本法には余り,授権的行政処分の職権取消しにおける信頼保護の程度について具体的に書かれた法律がないのですけれども,外国には,職権取消しにおいて一般的に,信頼保護をどの程度行うかについて,事細かく法定している国もあります。例えば,ドイツの連邦行政手続法48条においては,信頼保護を求めることができない場合として,偽りその他の不正な手段によって処分を得た場合,不正確あるいは不完全な情報提供によって処分を得た場合,それから違法なことを知り,又は重過失により知らずに処分を受けた場合と書かれております。こういった規定が,あるいは参考になるかもしれません。その点で申しますと,細かくいうと,重過失の場合はどうするかという問題があるかもしれません。   先ほど指摘があったことと関わるのですが,同じドイツの法律の中に,行政庁側が違法なことを知っていた場合にどうなるかという規定があり,そこには,知ってから1年以内に限り職権取消しができ,ただし,偽りその他の不正な手段によって処分を得た場合は,この限りでないと定められております。あるいは,参考になるかもしれないと思います。   最後に,非常に技術的な話になりますが,4ページに戻りまして,そもそもの認定処分という構成でございます。これは,確かに余りほかに例がないので,どういう処分なのか若干よく分からないところもあるのですけれども,ただ,私人の申請に応じて,国に所有権を移転させるという効果が発生する処分であることを明らかにしておけば,ひとまず足りるのではないかと思います。行政法学上,認可とか特許という議論があり,認可とは,私人が元々なし得る行為の効力を,行政庁が完成させる行為,特許というのは,私人が元々なし得ない行為について,行政庁側が特別にそれを行う法的な地位を与える行為であると解説されております。   今回のこの処分が,どちらに当たるかという点には,若干よく分からないところがあります。譲渡の意思表示は,私人ができる。ただ,国が受け取るかどうかは,国の側の意思によるのが原則です。こういった場合に処分の性質が何になるかは,よく分からないところもあるのですが,取りあえずは,このような効果を認めればよろしいのではないか。   それをどう法律上表現するかという点も悩ましいのですが,一般に認定という概念は,民事法に関して,裁量性がない行為について使われていると思いますので,認定というのが一つの案ではないかと。ただ,この点は,非常に技術的な話ですので,今後詰めていただければと思います。 ○山野目部会長 山本幹事から,行政手続との関係で,多岐にわたる御意見を頂きましてありがとうございました。   行政手続法7条や会計法31条との関連に注意して検討を進めるという点については,なるほどと感じますから,事務当局の方において検討いたします。   それから,職権取消しの期間についてのドイツ法制の御紹介も頂いて,貴重であったと感じます。それとともに,おっしゃった,行政庁が知ってから1年とかというような期間の制限の発想というものは,佐久間幹事が少し前におっしゃった民法の類似局面と,題材になさったものは異なりますけれども,近しい部分があって,大変参考になる側面があるとともに,それを何かここの法律で職権取消しの制限みたいなことを,山本幹事の今の御教示によると,我が国では余り例がないという代物を法制的に入れるかという論点は,勇気が要るような気もいたします。何か本当は行政法総論がきちっと対応して,行政手続法等で一般原則として整備されていなければいけない話のようにも感じないではないですから,そういった点にも留意をしながら検討をする必要があると感じます。   それから,最初におっしゃったことと最後におっしゃったことは関係していて,本日,委員,幹事の御議論を大方伺っておりまして,今回,この認定処分によって国に移転させるという法的構成のアイデアそのものについては,大きな御異論がないという議論の状況を承っているところでありますから,今後,このような方向で検討を進めてまいりますけれども,細密に法的構成をきちっと考え込んだ上で,それを法文に表現していくに当たっては,なお注意を要する点があるようにも感じます。これは,認定申請を私人がしたのを受けて,国の側が,審査機関たる行政庁が,よしと言うと,そのよしと言った時点で,所有権移転の効果が生ずるという法的構成を提案しているつもりです。それでいったときに,この認定処分という言葉がいいかとか,あるいは,認定処分を受けることにより,国に移転することができるという,この法制上の表現も,ちょっと危ないような気がします。その辺のところを整えていった上で,先ほど申し上げたような法的構成で進むとすれば,国へ所有権が移転する時期を,実体構成上明確にした上で,その前提で登記の手順を考えていかなければならないと感じます。そこも,山本幹事が御指摘いただいたとおりであります。その場面で,登記原因日付,それから登記原因,それから登記の手続を考え込むということになります。   恐らく不動産登記法116条の規定に基づいて,国が嘱託をすることになるであろうと想像します。お話ししたような登記原因や登記原因日付をどうするかということを,こちらの実体上の法的構成の成案が得られた段階で,さらに,登記手続の観点から深めていくという手順となることでしょう。   いずれも御指摘いただいたところを,貴重なものとして受け止めさせていただきます。   山本幹事から,何か追加で御教示いただくことはおありでしょうか。 ○山本幹事 先ほど,このような授益的な行政処分の職権取消し等の制限については,一般行政法制上の問題ではないかと御指摘になられたところは,そのとおりで,今,ドイツ法の例を出しましたが,フランス法にもございますし,EUのレベルでもそのような提案があります。日本はそれがないのですが,今回,その点について少し細かく定めを置いて,信頼保護の程度を明確にする方針であるということですので,若干の参考になるかと思って申し上げた次第です。   それから,1年というところは,先ほど佐久間幹事から発言があったものですから,それに関わるかと思って申し上げたまでです。かなり細かい話になりますので,そこまでは,具体的に規定すべきというつもりはございません。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   佐久間幹事の御指摘と併せて,山本幹事からただいま頂いたお話も,検討に反映させてまいることにいたします。 ○水津幹事 (注4)のただし書について,先ほど,持分の割合を考慮するという考え方が示されましたので,この考え方について意見を申し上げます。   相続を契機としてやむを得ずに土地を取得したかどうかという観点からは,最初の共有持分の取得原因が相続等であったかどうかは,重要ではないように思います。いずれにせよ,相続等によって取得した共有持分については,相続を契機としてやむを得ずに取得したものといえるのに対し,自分で譲り受けた共有持分については,そのようにいうことができないというだけのことであると考えられるからです。   そうであるとすると,持分の割合を考慮するという考え方については,次のようにいうことができるかと思います。一方で,今回の提案のように,最初の共有持分の取得原因が相続等であった場合において,その後,共有持分を譲り受けたときは,相続等によって取得した持分の割合が小さかったとしても,国への所有権移転が認められるとするのであれば,最初の共有持分の取得原因が相続等でなかった場合において,その後,相続等によって共有持分を取得したときであっても,同じように,相続等によって取得した持分の割合の大きさにかかわらず,国への所有権の移転が認められるとしないと,バランスが取れない気がします。   他方で,相続を契機としてやむを得ずに土地を取得したかどうかという観点から,最初の共有持分の取得原因が相続等であったかどうかにかかわらず,つまり,最初の共有持分の取得原因が相続等であった場合において,その後,共有持分を譲り受けたときも含めて,相続等によって取得した持分の割合の大きさを考慮するというのであれば,考え方としては,あり得るのでないかと思います。 ○山野目部会長 水津幹事から,先ほどから散発的に委員,幹事の間で話題にしておられる(注4)のただし書及び関連する状況についての御意見を頂きました。   引き続き御意見を伺いますけれども,ただいま話題になった(注4)のところについて,何かこの際,委員,幹事から御意見がおありでしょうか。今後の事務当局の立案準備の参考にしたいと考えますから,今のタイミングで,(注4)について更に御意見があれば,承っておくことが効率的であると感じますが,どなたかおありでしょうか。   顧みますと,先ほど少し申し上げたように,中村委員から疑問の指摘を頂き,今川委員が持分の多寡によっては,最初に取得した契機が相続が原因でない場合であって,二度目が相続である場合について,なお一考の余地があるとおっしゃっていただきましたね。あの際に,恐らく今川委員のイメージにあったものは,そうはっきりはおっしゃいませんでしたけれども,例えば,親子の関係で,お母さん又はお父さんが土地を取得するときに,娘又は息子を誘って,おい,お前も10分の1ぐらい持ってくれよと申し向け,親の方が10分の9持つからな,お前には余り負担をかけないと告げて話が始まって,そのタイミングは,確かに自発的意思によって取得したものですけれども,やがて親が死んで,10分の1だけ持って,責任はそれで済むと思っていた娘又は息子が,10分の9も背負わされて,おいおい,こんなになっちゃったよというときに,放棄を認める余地はあるものではないかというような物語であったろうと想像します。   その後,山田委員,そして,ただいまの水津幹事の御意見で,持分の多寡を考慮することも,それほど重視する必要がありますかというお話を頂戴いたしました。水津幹事は,それに加えて,さらに別な局面のこともおっしゃっていただきましたけれども,(注4)との関係ではそういうことをおっしゃっていただきました。   山田委員や水津幹事がそういうふうにおっしゃっていただいた背景を具体的にイメージしますと,そういうふうには委員,幹事はおっしゃいませんでしたけれども,これは,例えば,親子の話なんかではなくて,例えば,最近の不動産登記簿を見ていると,夫婦が自分のマイホームなどの土地を取得するときに,持分を比較的半分ずつ,あるいはそれに近いような形の共有で土地を取得することという姿が,かつてに比べよく見かけるようになりました。それはそれでよいことであるかもしれませんけれども,それについて,やがて配偶者間で相続が起きたときに,いやいや,あのとき,自分たちの意思で取得したんでしょうといっても,あのときというものは随分前であることが珍しくなく,たまたま最初に取得したときが夫婦でマイホームを持つときであって,それは自発的意思に決まっているでしょう,ということが理由で,これから創設しようとする制度を使えなくなるということがよいかといったようなことは,確かに考えさせられる側面があるかもしれません。   今話題になっているここについて,何か補足で御意見を承っておくことがあったら,承りますけれども,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   ここまでいただいた御意見を踏まえて,さらに今日の委員,幹事の御意見を再び整理した上で,検討を進めるということにさせていただきますが,よろしゅうございますか。   ありがとうございます。   それでは,そのほかの点について,引き続き部会資料48の全体について伺います。 ○國吉委員 先ほど少し御意見がありましたけれども,第1の5のところです。認定処分申請をする前提として,必要条件で,売却,貸付け等の処分の行為を試みなければならないということで,具体的には政省令に委ねるということなんですけれども,例えば,先ほどもありましたけれども,売却などを考えたときに,この認定処分の条件,6の(1)から(9)までの条件というのは,当然ながら,通常売却を考えると,これらの条件を調査したり,簡単に言ってしまうと,重要事項説明書というようなことで作るわけですけれども,やはりここの政省令で定める,試みなければいけないところを,例えば,現地に,ここは売地ですよとか表示をして,それでオーケーだとか,そういうようなことになってしまうと,実際に認定処分の申請をしようとしたときの費用と,この売却などを試みる条件としての費用もそうですけれども,乖離が余りにも激しくなってしまうんではないかなと思うんですね。   そうすると,やはりこの制度自体がちょっと,非常に苦労するというか,非常に大変なんだということを広めてしまうので,ここの売却,貸付け等の処分の行為を試みる,これを,やはりきちっとしたものを作り上げておいていただいた方が,いいのではないかなと思いました。   先ほどもありましたけれども,当然ながら,境界の確認もそうですし,固定資産税の未納の問題も,通常の場合であれば,そういったものまで調査をするわけです。ですので,ここのいわゆる政省令で定めるこの行為の試みの部分と,実際の認定処分の申請の,要は条件の乖離がないようにしていただいた方がいいんではないかなというのが,意見でございます。 ○山野目部会長 御意見は承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   部会資料48でお出ししているものについて,御意見を承ったと受け止めてよろしいでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,部会資料48について,委員,幹事からは,本日,多岐にわたる御意見を頂きましたことを踏まえて,この際,私から議事の整理の観点,今後の検討の準備を進める観点に立って,3つのことを申し上げます。   1点目でございますけれども,本日部会資料48で御提示申し上げている方向で,細かな点は措くとしても,今後の検討を進めるということについて,委員,幹事から,大きく言えば賛成の方向での御意見を承ったものと考えますが,それと同時に,この制度を作り上げた後,国民に対してどのように説明していくかということについては,注意を要する点があるように感じました。   何人かの委員,幹事から御指摘があったことですけれども,具体的に言うと,急傾斜地の問題ですね,ああいうものを放棄することができるでしょうという期待を抱いて,この制度の検討を見ていた国民は,少なくないのではないかとも想像します。それに対し,政令で定める基準ということで,ここをコントロールして,場合によっては放棄をすることができないというような可能性も盛り込んだ制度構築をしていこうとしています。ここについては,どのような説明をしていくか,どのような制度を作るかということとともに,どういう説明をしていくかということについての考え方を整理しながら,同時に,制度の立案を進めていかなければいけないと感じます。   その観点から,幾つかの点を申し上げるといたしますと,今般,土地基本法が改正される準備として,国土審議会の土地政策分科会特別部会が,その準備のための考え方を整理した際に,管理がうまくいかなくなっていて,困った状態になる土地の問題を解決しようという問題意識で出発したものでありますが,管理がうまくいかなくなるといっても,2種類の事態があるということが意識されて議論をいたしました。一つは,その土地の状況が,物理的に困った状況になっていくという事態を避ける物理的管理,もう一つは,その土地の所有権の所在等が明らかでなくなっていく,あるいは登記簿に反映されなくなっていくといったような法的な管理について,困った事態が生ずるのを避けるという,二つの事柄があって,区別がされなければなりません,という問題意識に基づいて議論が進められました。   恐らく,今回この部会資料48に基づいて作っていこうとする制度は,物理的管理の方について,正面から答えようとする制度ではなくて,放っておけば所有者不明というふうな事態になって,法的管理が立ち行かなくなるような局面について,それを未然に防止するというところを,主だった対応すべき事象として考えて制度を作ろうとしているものでありますから,平たく言うと,その土地をそのまま国が引き受けることで,特に問題がないということであれば,国としてはお引き受けしますけれども,その土地に様々な物理的なトラブルがあるときについては,それは,もちろんどうでもいいとは言いませんが,別個の問題でありますという整理で恐らく進んできたし,これから制度を作っていくものであろうと考えます。そのような観点からいうと,急傾斜地の問題というものは,それであるからこそ放棄したいという需要は確かにありますが,それを受け取ればよいという話ではなくて,その急傾斜地を危険のない状態にするという事業が必要な局面ですね。そうすると,ここで議論している制度の目的や射程とは異なってくる側面があります。そのことを,まず国民に説明していかなければならないであろうと考えます。   あわせて,細かな問題になりますけれども,崖地に代表されるような,その崖地を含むような急傾斜地の場合には,それは何とかしなくちゃいけないですけれども,国が引き受けるといったときに,国って抽象的に呼びますけれども,受け取る機関は,林地の場合は林野部局,そして農地の場合の農政を与っている部局である場合を除けば,国の理財が引き受けますが,理財の予算で崖地,急傾斜地の手当てをするということには,恐らくならないと考えられます。それは,進め方としておかしいですから。そうすると,急傾斜地を放っておいてよいということにはならないですが,それに対しては,別な府省の持っている別な制度を適用して,そこの危険を除去するという話になっていかないと,行政の進め方としてはうまく回っていかない側面があります。そこを考慮しなければなりません。   あと,崖地という表現を避けて,今回は急傾斜地という言葉を用いています。実際は,森林は崖の形状に,国語的な意味で常識的にいうと,崖の形状になっているところが多いものですから,崖は駄目だよと言ってしまうと,森,林のかなりが実際上駄目になってしまう可能性があります。言葉遣い,概念を丁寧に整理して,本日お出ししていますが,だからこそ,ここのところを本日議論していただいたという側面があります。ただいま申し上げたような点に注意をして,制度の立案と国民への説明の仕方について,心していかなければならないということを,委員,幹事の御議論を承っていて感じました。   大きく分けて3点を申し上げるうちの2点目ですが,認定申請を誰がするかという,その資格をどの範囲で認めるかということについては,小さく育てて,という言葉を用いながら,幾つかの議論や問題提起,提案を頂いたところであります。本日段階で,比較的委員,幹事から多く承った事項は,(注4)で話題としている場面については,広く,余り細かく切らないで,申請の資格を認めてあげたらどうでしょうかというお話を頂いたところでありまして,ここまでのところですと,小さく育てると仮に言った場合であっても,そこは申請可能のほうに含めるというお話になってくるものであるかもしれません。   さらにお話を進めて,蓑毛幹事からお話があった所有者不明土地の管理人であるとか,破産管財人であるとか,からの申請で,より広く法人による国への移転の可能性をも認めることの適否ということが,その後ろに控えている,もう一つ難度の高い問題として控えております。それを,今般の立案の中で受け止めることにするか,立法事実の蓄積ないし確認を待って,更なる検討に委ねることにするかということについて,引き続き委員,幹事の御意見を承ってまいりたいと考えます。   3点目,最後でありますけれども,審査機関のことについて,今日,何人かの委員,幹事から,本格的な御議論を頂いたことは,有り難かったと感じます。法務局にやってもらったらどうですかという,具体的な御意見もいただいたところであります。これにつきまして,委員,幹事からお出しいただいた御意見はごもっともであると感じますから,今後,法務省事務当局において,国の関係する府省とも協議をしながら,検討を進めてまいらなければなりません。大きくいって,二つの観点が大事であろうと感じます。一方においては,国への移転を望む私人である国民の申請が,公正に審査される制度環境が調えられなければならないと感じます。   それと同時に,土地というものには将来があるものでありまして,移転したら,それで終わりということにはなりません。将来の管理に向けての,その管理の適正が期されるという制度環境を併行して調えていかなければなりません。土地の用途に応じ,関係する府省が異なってきますけれども,いずれにしても,関係する府省と,この申請の審査の段階で緊密な協力をしていくことが必要であります。個別の事案の申請がされた際の実地調査の段階から,関係する府省が協力していただくような制度を構築していただかなければなりませんし,法制上も,そのことが読み取れるような,提案されようとしている個別法において,仕組みとして盛り込んでいく必要があります。国の関係する行政機関の意見を聴くとか,連絡調整をするとかという,生易しい表現で個別法上の協力態勢の表現をしてもらうことについては,大変な心配が残ります。そういうことをしたのでは,法務局に丸投げということになってしまいますから,この制度の期待された役割を果たすことができません。   正直言って私は,法務局に,とおっしゃっていただいたところは,法務局への期待が大きくて,すばらしいお話だなと感ずると同時に,どうでしょうか,皆さん,法務局の職員の方とお話しになった御経験や御記憶で,どういうふうにお感じでしょうか。大変に真面目に,律義にお仕事をなさる皆さんですね。法務局の今までの業務の適性というか,性質というものは,そういうものでありました。   私,依頼を受けて,赤レンガの建物で法務局の職員の方に講義をするチャンスが時々ありますけれども,私の話を皆さん,真面目に聴いておられて,笑ってもらえないですね。それは,元々お前の話が面白くないから笑わないのだという説もききますが,しかし,私が大学でしている話はそれなりに笑ってもらっているものでありまして,やはりレシーバーの方の,非常に気高い業務に臨む姿勢があるものでありましょう。けれども,その気高い方々だけに委ねて回っていく話ではないものでありまして,委員,幹事の御指摘で,予算,人員の確保をとおっしゃっていただいたことは,もとより当然ですけれども,それと同時に,業務の性質が,従来の法務局の業務とかなり異なっている側面がありますから,お話ししたように,実地調査の段階から,関係する府省が緊密に現場で協力する態勢が構築されなければ,この新しい魅力ある制度の円滑な実地の運用がおぼつかないということになります。是非その点については,委員,幹事の皆様方の御支援を頂くことはもとより,さらに,法務省事務当局において,この部会に関係官を出しておられる府省を中心に,政府部内で,今の段階から緊密な協議,協力態勢を構想していただきたいと望むものでございます。   部会資料48についての委員,幹事からの御意見を一当たり伺いました。何か御指摘漏れがあったら伺いますけれども,いかがでしょうか。   それでは,部会資料48についての,本日のところの審議を了したという扱いにいたします。   次回の会議について,事務当局から案内があります。 ○大谷幹事 次回の議事日程等について御連絡をいたします。   次回の日程は,2週間後,10月20日の火曜日です。また,午後1時からということで予定をさせていただきます。   テーマは,管理不全土地関係というのが,二読ができていないというところがありますので,こちらをお出ししたいと思いますけれども,管理土地請求,管理不全土地管理,この二つがテーマになると思っております。   本日と同じように,審議が終わり次第閉会という形で,終了時刻についてはあらかじめ決めておきませんけれども,その前提で御予定いただければと思っております。   本日もどうもありがとうございました。 ○山野目部会長 次回の部会につきまして,ただいま御案内を申し上げたとおりでありますから,日取りと場所がやや変則的であります。このたびは,日にちが2週間しか間が,空きがありません。あわただしく委員,幹事の御協力をお願いしますが,よろしくお願いします。   本日,事務当局と私から御案内することはここまででございますけれども,この際,部会の運営に関して,何か御意見やお尋ねがあれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日も,長時間ではないですけれども,かなり濃密な御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。民法・不動産登記法部会の第19回会議を,これをもちましてお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-