裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第15回)議事録 第1 日 時   令和2年10月13日(火)午前10時3分から午前11時44分まで 第2 場 所   法務省大会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,小木曽綾,小林篤子,重松弘教,島田一,菅野亮,武石恵美子,畑中良彦,堀江慎司,山根香織,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,栗木傑刑事局参事官    (その他)市原志都最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 検討事項に関する意見交換等について 2 その他 第5 配付資料  資料1:検討事項  資料2:最高裁判所説明資料  資料3:最高裁判所説明資料  資料4:事務当局説明資料  最高裁判所補足説明資料 第6 議 事 ○栗木参事官 予定の時刻となりましたので,ただ今から,「裁判員制度の施行状況等に関する検討会」の第15回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は,皆様御多用中のところ御出席いただきまして,ありがとうございます。   本日,菅野委員,武石委員,堀江委員,和氣委員にはウェブ会議システムにより御出席を頂いております。   まず,事務当局から配付資料について説明をお願いいたします。 ○栗木参事官 本日お配りしている資料は,議事次第,資料1「検討事項」,資料2「最高裁判所説明資料」,資料3「最高裁判所説明資料」,資料4「事務当局説明資料」です。   それでは,各資料の概要について御説明いたします。   資料1については,第10回会合以降,毎回お配りしている「検討事項」を改めてお配りするものです。資料2及び資料3は,前回御質問のあった裁判員裁判に関する新型コロナウイルスの影響に関するものであり,後ほど最高裁判所から御説明いただきます。資料4は,検討事項3「公判及び公判前整理手続の在り方」に関するこれまでの議論状況をまとめたものであり,後ほど事務当局からその内容を御説明いたします。 ○大澤座長 それでは,早速議事に入ります。   前回の会合において,裁判員裁判に対する新型コロナウイルスの影響及びその対策について御質問がありました。そこで,二巡目の議論に先立ちまして,まず,最高裁判所からこの点について御説明をお願いいたします。 ○市原最高裁刑事局第二課長 最高裁から新型コロナウイルス感染症の裁判員裁判への影響につきまして,統計データを御紹介しながら御説明いたします。   少し前の話になりますけれども,今年2月下旬,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け,政府の専門家会議が,「この1,2週間が感染が急速に拡大するか収束するかの瀬戸際」との見解を示し,さらに,首相が,全国の学校に臨時休校を要請いたしました。   こうした状況を受けまして,裁判所におきましても,今年3月以降,各庁において事件・手続の性質や緊急性の度合いを考慮した上で,各種期日の実施の当否を判断するようになり,裁判員裁判につきましては,裁判員等選任手続期日が多数の一般国民に出頭義務を課すという特質を有することも踏まえて,各地の裁判所で各地の実情等も考慮した上で,多くの裁判員裁判の選任手続期日が取り消されました。   その後,4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令され,4月16日に緊急事態措置を実施すべき区域が全国に拡大されると,裁判所では,感染症に関する業務継続計画に基づき,裁判所としての必要な機能を維持できる範囲に業務を縮小し,裁判所を利用する当事者や職員の移動等をできる限り回避するなどしてまいりました。   緊急事態宣言下においては,ほとんどの裁判員等選任手続期日が取り消されましたが,このように業務が縮小された状況下にあっても,裁判員裁判以外の刑事裁判につきましては,被告人が現に勾留されている事件のうち,緊急性のあるものを中心に公判を実施してきたところでございます。   そして,5月中旬以降は,緊急事態宣言の対象区域も段階的に縮小され,5月25日には全面的に解除されるに至りました。裁判所においては,緊急事態宣言の解除の動きに合わせて,感染防止策を徹底しつつ段階的に業務を回復させてまいりました。刑事事件については,裁判員裁判を順次再開するとともに,裁判員裁判以外の刑事裁判についても,公判を実施する事件の範囲を,被告人が身柄を拘束されていない事件にまで段階的に拡大し,現在ではおおむね平常時に近い形で公判が実施されております。   資料2の1枚目を御覧ください。これは,全国の地方裁判所で令和2年3月から7月にかけて実施が予定されておりました裁判員等選任手続期日について,各月ごとに新型コロナウイルス感染症を理由として期日が取り消されたものの件数及び期日が取り消されることなく実施された件数をまとめたものです。   なお,終局人員に関する資料2の2枚目の表及び辞退率等に関する資料3の表とは異なり,この表につきましては,事件終局時ではなく,選任手続期日の取消時又は実施時が計上の基準となっておりますので,御留意ください。   資料2の1枚目の表を御覧いただきますと,令和2年3月は選任手続期日を実施しておらず,4月,5月についても,多くの事件の選任手続期日が取り消されましたが,6月以降は実施してきているということがお分かりいただけるかと思います。   次に,資料2の2枚目を御覧ください。これは,裁判員裁判以外の刑事事件の状況についても御確認いただくために,平成30年から令和2年までの3月から6月までの各月の全国の地方裁判所の通常第一審事件の終局人員の数をまとめたものです。表では,裁判員裁判を含む全事件の終局人員が左側に,そのうちの裁判員裁判の終局人員が右側に記載されております。   終局人員とは,判決等により事件が終局した被告人の数を示しており,例えば令和2年3月の終局人員として計上されているのは,令和2年3月中に判決が出された事件,つまり,同月に判決期日が開かれた事件ということになります。したがって,この数を見ることで,裁判所がその月に刑事事件の期日をどの程度開いていたかの目安とすることができます。   この表を御覧いただきますと,令和2年4月及び5月の終局人員は,前年及びその前の年に比べて減少しておりますけれども,大きく減少している5月で見ても,令和2年の終局人員は平成30年と令和元年の終局人員の平均の約46%になります。つまり,緊急事態宣言下においても,相応の数の刑事事件が実施されていたということになります。   また,緊急事態宣言が解除されたことを受けて,全国で裁判員裁判が再開されたことは,先ほど申し上げましたとおりですが,新型コロナウイルスを理由に裁判員等選任手続期日が取り消された事件について,どの程度選任期日が先になったのかを見るために,最初に予定されていた選任手続期日からその後再指定された期日が実施された日又は再指定された期日の実施が予定されている日までの期間を調査しました。その結果,全事件174件の平均は114日でございました。   次に,緊急事態宣言解除後の裁判員裁判における感染防止対策について,具体的な取組については,後ほど島田委員から東京地裁における実情の御紹介があるかと存じますが,最高裁からも総論的に申し上げます。   裁判員裁判は,その制度趣旨からして幅広い国民の参加を確保する必要がありますので,裁判員候補者の方や裁判員の方々に安心して参加していただけるよう,「三つの密」を避けるなどの感染防止策を徹底することが重要であると考えており,各裁判所では,政府の専門家会議や厚生労働省から示された知見等を踏まえながら,様々な感染防止策を講じております。   また,裁判員裁判に限った話ではございませんけれども,現在,最高裁において,専門家に法廷をはじめとした裁判で利用する部屋等を実際に見ていただいた上,その助言を得てこれまでの裁判所における感染防止対策の効果について確認するとともに,裁判手続や法廷等の特殊性を踏まえた裁判所の感染防止対策の在り方について検討しているところです。   最高裁としては,これまでも各裁判所の取組をほかの裁判所に情報提供したり,代表的な感染防止策を最高裁のウェブサイトで紹介したりして,裁判員候補者や裁判員の方々に安心して参加していただけるよう努めてきたところですが,感染防止対策の在り方についての検討結果も含め,今後も引き続きこうした取組を続けてまいりたいと考えております。   次に,出席率・辞退率の状況について御説明いたします。資料3を御覧ください。   まず,出席率については,選任手続に出席を求められた裁判員候補者のうち,実際に選任手続期日に出席した者の割合ですが,この出席率については,表のリの下段を御覧いただきますと,令和2年7月末までで68.3%となっております。   次に辞退率については,具体的な事件で選定された裁判員候補者のうち,法定の辞退事由があるとして辞退を認められた者の割合ですが,この辞退率については,表の「ル」の「b」という欄を御覧いただきますと,令和2年7月末までで67.0%となっております。   前回の検討会で,1月から3月までを通して見れば前年と大きな差はないものの,3月は出席率が下がっており,新型コロナウイルス感染症の影響による今後の悪化が懸念される一方で,4月から5月につきましては新型コロナウイルス感染症の影響で全国で実施件数が少ないという事情があったことなどを御説明いたしました。緊急事態宣言解除後に裁判員裁判が順次再開されていることは,先ほど申し上げましたとおりですが,1月から7月までの出席率・辞退率を見ますと,令和元年1月から7月までと,平成30年の1月から7月までの各出席率・辞退率とさほど変わらない数値となっております。この点につきましては,引き続き動向を注視してまいりたいと考えております。 ○大澤座長 ありがとうございました。   続きまして,東京地方裁判所における裁判員裁判に対する新型コロナウイルスの影響及びその対策に関して,島田委員から御説明をお願いいたします。 ○島田委員 本日は,一つ目として,新型コロナウイルスの感染拡大によって,東京地裁刑事部における裁判員裁判がどのような影響を受けたのか,二つ目として,緊急事態宣言解除後,裁判員裁判の再開に当たりどのような対策を講じているのかについて御説明し,三つ目として,今回の事態に対する所感などについて御説明いたします。   まず,緊急事態宣言発令前の状況ですが,令和2年1月中旬に国内初の感染例が確認されました。しかし,裁判所では,1月及び2月は,裁判員裁判対象事件についてほぼ通常どおり開廷しました。その他の事件も同様です。   しかし,感染症の実態がはっきりしない中で,国内での感染が拡大し,2月末に首相による学校の全国一斉休校要請がなされたことを受けて,東京地裁刑事部の裁判官で話し合った結果,この状況の下で数多くの裁判員候補者に選任手続への出席を求め,裁判所に集まっていただくのは適切ではないという意見が多数を占めました。   そこで,東京地裁刑事部では,3月中に選任手続を予定していた裁判員裁判13件の選任手続期日及び公判期日について,当事者の意見を聴いた上,各裁判体の判断によって取り消しました。したがいまして,3月中に判決宣告に至った裁判員裁判が4件ありますが,これは,2月中に裁判員等が選任されていた事件だけということになっております。   続きまして,緊急事態宣言の発令による業務縮小ですが,4月7日に緊急事態宣言が発令されました。裁判所は,国の一つの機関として感染症のまん延防止の取組に最大限努力することが責務と考えられますし,また,現行法が定めている裁判員裁判対象事件からの除外決定は,感染症の拡大などを想定したものではなく,感染症を理由とした除外規定の適用は困難と解されます。そこで,東京地裁刑事部の裁判官で話し合った結果,緊急事態宣言中に期日が予定されていた裁判員裁判は全て延期することとしました。4月分は1件,5月分は19件の期日変更をしました。   また,裁判員裁判以外の刑事事件のうち,被告人が在宅起訴されたもの,あるいは保釈中のため身柄を拘束されていない事件についても,原則として期日を変更しました。他方,被告人が身柄を拘束されている勾留中の事件については,追起訴が予定されているため当面審理が終わらない事件などを除いて,原則,審理・判決を実施しました。4月と5月を合計しますと,昨年の半数程度の事件を処理しました。   続きまして,緊急事態宣言解除後の業務再開について御説明いたします。   まず,裁判員裁判対象事件についてですが,5月下旬の緊急事態宣言解除を受けて,6月1日以降に選任手続が予定されている事件については,感染拡大防止策を講じた上,原則として裁判員裁判を再開しました。そして,6月に6件,7月に19件,8月に14件の判決宣告に至りました。東京地裁では約3か月間,裁判員裁判の審理を中断していたことになりますが,現在ではおおむね従前どおり期日を実施しており,既済率,つまり事件の終わった割合についても元に戻りつつあります。もっとも,3密防止の観点から広めの評議室を各裁判体で調整しながら使用しており,完全にコロナ感染症拡大前どおりというわけではありません。   また,新型コロナウイルス感染症を理由に期日を取り消した事件について,早い場合は2か月ないし3か月先に新たな期日が入りました。しかし,事件によっては裁判所と当事者の予定が合わず,半年程度先に期日変更されたものもありました。先ほど最高裁から,新型コロナウイルスを理由に裁判員等選任手続が取り消された事件について,再度指定された期日が実施された日,あるいは今後再度指定された期日の予定されている日までの期間が,平均114日であるとの説明がありました。東京地裁では,約122日となっております。   新たな期日の実施までに一定の期間を要する理由についてですが,新たな選任手続期日を入れる場合,出頭をお願いする裁判員候補者の皆様の準備の都合などを考慮して,選任手続期日の約2か月前に期日を指定し,遅くとも6週間前までに新たな呼出状を発送することとしております。   また,裁判員裁判では,充実した審理,裁判員の負担への配慮などから連日的に開廷しています。特に,公判日数が長い事件や,医師など専門家の証人尋問が予定されている事件では,検察官,複数の弁護人,証人などの関係者の日程調整に困難を伴うことがあります。   さらに,実務上の工夫として,関係者の都合を合わせるために,公判期日が後ろ倒しになることがないように,審理計画の大枠が見えた段階で,早期に公判期日を仮予約しておく運用をしていますから,一旦ある裁判員裁判の期日を取り消しますと,既に数件の公判日程を仮に押さえており,取り消した事件の裁判体のほかの裁判員裁判の更に先にしか新たな公判期日の日程が入らないということもあります。その結果,新たな公判期日や選任手続期日が入るのが2か月よりも更に先になることが多いということになります。   裁判員裁判対象事件以外の事件についても,在宅事件や保釈中の事件を含めて,延期されていた事件につき順次業務を再開いたしました。   続きまして,裁判員裁判における主な感染拡大防止策について御説明いたします。   裁判員制度の制度趣旨からして,幅広い国民に参加していただくことが重要であり,裁判員候補者や裁判員等の皆様が安心して参加できるよう,いわゆる3密,密閉,密集,密接を避けるための防止策を講じています。そのうち主要なものについては,裁判員候補者の方に事前にお知らせをしています。また,テレビや新聞の取材に応じて説明したり,東京地裁のホームページでお知らせしたりして広報もしています。   具体的な対策ですが,まず裁判員候補者に選任手続に来ていただく際,体温の測定,マスクの着用,手指の消毒の依頼をしています。候補者待合室は,二つの部屋を合体した広い部屋を使用し,候補者同士の距離を取っております。選任手続や法廷を含め,裁判官,検察官,弁護人及び職員のマスク着用を原則としております。また,法廷の法壇にはアクリル板を設置しました。法廷の消毒は,基本的に毎日2回行っていますし,休廷時間にはドアを開けて換気もしております。評議室については,広い評議室だけを使用し,お互いに2メートル以上の距離が確保できるようにしているほか,換気にも努めております。消毒液も評議室に備えています。   裁判員等選任手続期日や公判期日の指定に当たっては,通勤時間帯を避けた期日指定を行っています。例えば,午前10時30分に期日指定をしたり,1日の審理の閉廷時間を午後4時30分とするといった工夫もしております。また,裁判員裁判の法廷には限りませんが,法廷の傍聴席については,おおむね1メートル程度の間隔を空けて座ってもらうようにしています。   このような裁判所の対応策について,裁判員等経験者から次のような感想が寄せられています。   すなわち,「裁判所の感染防止対策は,勤務先のそれよりも徹底しており,感心した」,「来る前は不安だったが,ラッシュ時間を避けたり,換気,消毒,法廷への移動の際も配慮してもらい,最終的に不安要素はなかった」,「安心して審理や評議に臨むことができた」という意見が多く聞かれます。ただし,「評議室では距離が離れていて,一体感が持ちにくい」という意見もございます。この点も踏まえて,丁寧な評議の実施に努めているところです。   最後に,今回の事態に対する所感,問題意識について述べさせていただきます。   東京地裁におきましては,今回の事態によって,3月から5月までの約3か月間,裁判員裁判の一部又は全てが実施できませんでしたが,緊急事態宣言の解除後は,感染防止策を徹底して裁判員裁判を実施してきております。新型コロナウイルスはいまだ収束していないものの,引き続き感染防止策を徹底し,今後は専門家の知見も得ながら,より一層感染防止策を徹底させて,できる限り裁判員裁判の実施に努めていくつもりです。   しかし,仮に,今後感染状況が大きく悪化し,政府から,平日の日中も含めて国民の外出や移動,接触を大幅に減らすなどの方針の下に緊急事態宣言が出された場合などには,裁判所も国の一機関として感染症のまん延防止のために最大限努力する必要があり,できる限り人の移動や接触を避けるための取組を行う必要があります。   そこで,一般国民に義務として選任手続や公判への出頭を求めることができるのかどうかが問題となります。幅広い国民の皆様に安心して裁判に参加いただく環境を整える必要があるという観点からも,感染拡大の状況などによっては,裁判員裁判の実施が難しくなることがあるのではないかと考えられるところです。 ○大澤座長 ありがとうございました。   ただいまの最高裁判所と島田委員からの御説明につきまして,御質問や御意見はございますでしょうか。 ○山根委員 マスクの着用について質問したいのですが,法廷内におけるマスクの着用というのは,義務のようなものとして強く要望されているのでしょうか。裁判官,裁判員は,人の表情とか空気も敏感に感じて進めていく必要があると思うのですが,その辺りの配慮はいかがでしょうか。 ○島田委員 裁判員裁判においては,感染拡大を防止し,裁判員の方々に安心して参加していただくための環境を整える必要があります。そこで,裁判官,裁判員や裁判所職員はマスクを着用しており,検察官や弁護人,証人,被告人に対してもマスクの着用をお願いしているところです。多くの弁護人が理解して協力してくれています。   しかし,一部の弁護人から,マスク着用に支障があるという申出がなされることがあります。このような場合には,どのような訴訟活動に,どのような意味で支障があるのか,具体的にまずお尋ねをして説明を求めています。そして,弁護人には,フェイスシールドの着用やアクリル板の設置など,マスク着用に代わる合理的な感染防止措置を考えていただいて,必要な場面に限ってそのような措置を講じています。   また,証人や被告人のマスク着用についても,御指摘のとおり,当事者からいろいろな御意見もあります。当事者の意向も踏まえつつ,事案ごとに検討して,適切に心証形成をするために口元を含めて見る必要があると考えられる場合には,マスクに代えてフェイスシールドなどの着用の対応を取っております。   ただ,フェイスシールドについても,光の加減で反射してしまって表情や口元が見えにくいという意見も実際には出ているところでございます。 ○堀江委員 今のお話で,特に証人とか被告人が発言するときにマスクをしているという場合,口元を見る必要があると判断された場合は外すこともあるということですが,マスクを着用したままでの発言を聞いた側の裁判員の方々の印象とか感想は一般的にどうでしょうか。   それから,弁護人や検察官が発言をする際にマスクをしていることが,裁判員に何らかの影響を与えるのかどうか,そうした点を裁判員がどう受け止めておられるのか,もし差し支えなければお聞かせいただければと思います。 ○島田委員 まず,証人や被告人がマスクをして発言した場合について,裁判員の一部の方の感想を聞いたことがありますので御紹介いたしますと,証人や被告人の口元も見たかったという意見もあります。しかし,実際には見えなかったわけですが,心証形成には影響なかったという意見が出されております。   また,弁護人については,是非マスクを着けてほしいという意見が裁判員の間では多数を占めているように感じています。 ○小林委員 先日,東京地裁の取組を見せていただく機会がありましたけれども,手探りの中,大変よく対応されたと思っています。ただ,今回は緊急事態宣言が2か月程度で済んだので良かったですけれども,今後も未知の感染症が蔓延するリスクはあるのではないかと懸念しているところです。   先ほど来,説明いただいているように,裁判員裁判は,選任手続や評議も含めてほかの裁判に比べて実施が困難な面があるのは否めないと思いますので,東日本大震災の後に非常災害時には呼出しをしなくてもいいという特例が設けられたように,極めて例外的な状況下で,プロの裁判官だけで裁判ができるような除外規定を設ける必要がないのか,検討を始めておいた方が良いのではないかと考えている次第です。先ほど最高裁から,プロの裁判官の裁判は相応に処理が進んだというような件数の御説明もありました。規定を必ず設けるべきだ,というところまで強く考えているわけではないのですけれども,今後に備えて検討する必要がないのかと思っておりました。 ○小木曽委員 今の関連で,運用面で様々な御苦労をされて適切に対応されているということは今教えていただいたわけですけれども,運用で対応するのではなくて,制度上なんらかの対応をするかどうかということになりますと,まず,現行法上,裁判員裁判の対象事件であっても裁判員裁判で扱わない場合を定めているのが裁判員法の3条と3条の2です。3条は,裁判員の安全確保を目的としています。3条の2は,いわゆる超長期の裁判で裁判員を確保することが難しい事態を想定したものです。   さらに,27条の2には,非常災害時には裁判員候補者を呼び出さなくてもよい旨の定めがあり,16条8号イは,裁判員の辞退事由として,重い疾病で裁判所に出頭できないことを挙げています。これが現行法上関連する条文だと思いますが,感染症が原因であるときというのは,裁判に携わる全ての人々の健康に関わりますので,裁判員裁判だけの問題ではないような気もしますけれども,ともあれ,裁判員制度の目的は,1条に書いてありますように,国民参加で司法への理解と信頼の促進を図るという政策的な目的ですので,ほかに達成すべき政策目的があれば,それとのバランスを図ることが許されると思います。   立法論としては,例えば,裁判員やその候補者の健康を確保するということは,現在除外事由とされている心身の安全と同様に保護されるべきものだと思いますし,緊急事態宣言が発出されれば,非常災害に匹敵する非常事態として裁判員候補者に呼出状を出さない,あるいは感染のおそれを辞退事由に含めるといったような制度を考えることはできるだろうと思います。   要するに,緊急事態宣言が出るような事態というのは,現行法が既に裁判員裁判のために国民に協力を求めないことができるとしている場合に匹敵すると思うのですが,これを法律に書くかどうかということになりますと,そもそも書かなければ対応できないかどうか,問題は裁判員裁判だけのことであるかどうか,さらには感染症の場合だけ書けばいいのか,書くとして除外事由等の対象や要件をどのように定義するかといったことについての検討が必要になるだろうと思います。 ○大澤座長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,裁判員裁判に対する新型コロナウイルスの影響及びその対策につきましては,この程度とさせていただきます。   さて,当検討会におきましては,第10回会合から第14回会合まで,本日の配付資料1の検討事項に沿って一通りの意見交換をしてまいりました。本日は,一巡目の議論を踏まえて,更に議論を深めるため,各検討事項について,これまでに出ていない観点からの御意見や追加・補充の御意見を中心に意見交換をお願いしたいと思います。   本日検討すべき事項として,まず,検討事項1の「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」については,第10回会合において,平成27年12月12日から令和元年10月31日までの適用状況を前提に意見交換を行ったところですが,その後の状況について,最高裁判所から御説明いただいた上で,改めて意見交換を行いたいと思います。   また,検討事項3の「公判及び公判前整理手続の在り方」については,具体的な検討項目が多岐にわたる上,それぞれについて,様々な御意見が一巡目で示されたことから,議論の状況を整理した上で,改めて意見交換を行う必要があると考えております。   そこで,本日は,検討事項1及び検討事項3について二巡目の意見交換を行い,その後,その他の検討事項である検討事項2及び4から8までにつきましても,これまでに出ていない観点からの御意見等があれば順次意見交換を行うこととしたいと思いますが,そのような進め方とさせていただいてよろしいでしょうか。 (一同了承)   ありがとうございます。   それでは,検討事項の1「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」から意見交換を行います。前回意見交換をしてから1年近く経っていると思いますので,まず最高裁判所から,平成27年改正法の令和元年11月1日以降の適用状況について御説明を頂きたいと思います。 ○市原最高裁刑事局第二課長 平成27年改正法の運用状況につきまして,第10回検討会では令和元年10月末までの状況を御説明したところでございますが,今回は,その後,令和2年7月末までの状況について御説明させていただきます。   まず,非常に長期にわたる事件の対象事件からの除外についてですが,改正法施行から今年7月末までに裁判員法3条の2第1項に基づく除外決定がされた例はございません。   次に,災害時における辞退事由の追加及び非常災害時における呼出しをしない措置に関してですが,改正法施行から今年7月末までに終局した事件のうち,災害時における辞退事由に基づく辞退が認められた裁判員候補者数は82人となっております。また,非常災害における呼出しをしない措置がされた裁判員候補者数は185人となっております。   第10回検討会の際にも申し上げましたとおり,これらの辞退等の原因となった具体的な災害についてまで統計として把握しているわけではございませんけれども,今回増加した分について見ますと,裁判所の所在地などからしますと,東日本大震災や,令和元年10月の台風などが原因ではないかと推測されます。   次に,裁判員等選任手続での被害者特定事項の保護の運用状況についてですが,改正法施行から今年7月末までに終局した事件のうち,裁判員等選任手続において被害者特定事項が明らかにされた被害者は29人となっております。 ○大澤座長 ありがとうございました。   ただいまの最高裁判所からの御説明につきまして質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項1「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」につきまして,更に御意見のある方は挙手の上,御発言をお願いしたいと存じます。   いかがでしょうか。ございませんでしょうか。先ほどの小林委員からの問題提起がこの点に関わる問題提起という面も持っているのかもしれません。   それでは,検討事項1「平成27年改正法により設けられた制度の在り方」についての意見交換はここまでといたしまして,次に,検討事項3「公判及び公判前整理手続の在り方」について意見交換を行いたいと思います。   この検討事項3につきましては,議論に資するものとして,事務当局にこれまでの議論の状況をまとめた資料を作成してもらいましたので,まず事務当局からその資料の内容についての説明をお願いしたいと思います。 ○栗木参事官 それでは,事務当局から資料4の内容について御説明いたします。   検討事項3については,「証拠調べの充実のための運用上の工夫は適切に行われているか」という事項及び「公判前整理手続の充実のための運用上の工夫は適切に行われているか」という事項を検討項目とした上,前者を「分かりやすい公判の在り方」,「裁判員裁判における法廷通訳の在り方」,「いわゆる刺激証拠の取扱い」に更に分類して御議論いただきました。また,「分かりやすい公判の在り方」に関連して,「録音・録画記録媒体の実質証拠としての取調べ」及び「いわゆる手続二分論」についても御議論いただきました。   資料4では,これらの具体的な検討項目ごとに関連する御発言を整理し,その要旨を記載しておりますので,これからの御議論の際に参考にしていただければと思います。 ○大澤座長 ただいまの事務当局の御説明につきまして,質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,検討事項3「公判及び公判前整理手続の在り方」について,資料4に掲げられている具体的な検討項目に沿って,順次,意見交換を行いたいと思います。   まず,「1 証拠調べの充実のための運用上の工夫は適切に行われているか」の「(1)分かりやすい公判の在り方」について御意見のある方は挙手の上,御発言をお願いいたします。   いかがでしょうか。この点については,よろしいでしょうか。   それでは,先に進みまして,次に,「(2)裁判員裁判における法廷通訳の在り方」について御意見のある方は挙手の上,御発言をお願いいたします。 ○小林委員 法廷通訳について一言申し上げたいと思います。   以前,この関係で記事を書いたことがあって,犯罪白書を調べたところ,平成6年の白書の中で犯罪の国際化というテーマが取り上げられていまして,平成3年から5年までの3年だけですけれども,捜査段階・公判段階において通訳の正確性に疑義が生じた事案に関して最高裁が統計を取っていました。通訳の確保が困難だったケースは全体で年間40件ぐらいとされています。その後,統計は取っていらっしゃらないということでしたが,最近では,2016年のジャカルタ事件もそうですし,東京高裁で判決があった覚醒剤の密輸事件や,大阪地裁の判決において捜査段階の通訳がたくさん間違っていたというような指摘がされるなど,問題になるケースも目立ちます。   統計を取られた1990年代とは比較にならない数の外国人が来日しているということもありますし,ヒアリングにおいて通訳の技量に差があるというような御発言もありました。資格制にすると,元々足りない通訳が更に足りなくなるという懸念があるということは理解しているのですけれども,資格制を設ける必要の有無を検討・判断するに当たって,トラブルの実態を把握しておく必要があるのではないかなと思いますので,このような統計をもう一度取っていただきたいと考えています。 ○市原最高裁刑事局第二課長 ただいま小林委員から御指摘があった点ですが,現在,法廷通訳等をめぐる紛議について最高裁の方では統計を作成しておりませんけれども,現在の最高裁の取組について改めて簡単に御紹介させていただきたいと思います。   通訳事件が終了した後,裁判体において,当該事件の通訳人が対応できる事件の難易度などにつきまして,当該通訳人に関する裁判体の評価を通訳人候補者名簿に掲載することとなっております。   そのため,後に別の裁判体が通訳人を選任する際には,このような情報も踏まえて通訳人の選任の適否について判断しているものと承知しております。   また,通訳能力に問題がある,通訳人としての適性に問題がある,あるいは通訳人として活動する意思がないなどといった場合には,通訳人候補者としての登録の抹消の対象となっております。これにより,一定数の候補者の登録が抹消されております。   通訳人の質の面で申し上げますと,第11回検討会におきまして,通訳人候補者名簿への登録に当たり,裁判官のみならず経験豊富な当該言語の通訳人にも面接に同席してもらい,希望者の通訳能力をじかに評価してもらう運用を一部で始めたと申し上げましたけれども,今年度からはこうした面接手法を全国的な運用へと拡充したところでございます。   また,引き続き通訳人の研修の充実にも努めているところでございます。 ○大澤座長 ほかに御発言等ございますでしょうか。   小林委員からの御質問に関連しますが,統計等を取るのをやめた御事情というのはあるのでしょうか。 ○市原最高裁刑事局第二課長 この統計の経緯等につきましては,既に20年以上経過しているということもあり,申し訳ありませんが,分かりかねるところでございます。 ○大澤座長 恐らく,統計を取り始めた頃というのは,本当に外国人事件が急激に増加して,他方で法廷通訳を担うことができる人も少ないという状況の下で,問題把握のために取られていたのだろうかとか思います。   ほかにいかがでございましょう。よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただきまして,「(3)いわゆる刺激証拠の取扱い」について御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いしたいと存じます。 ○山根委員 ここに意見ということでまとめていただいた中の三つ目の丸として「立証趣旨との関係で必要性や相当性が吟味される必要がある」とあり,その下に,「なぜ裁判員は見なくてよいのかの説明が必要である」とありますけれども,「見なくてよいかの説明」というよりは,見る必要があると判断される場合の目安のようなものが共有されるとよいのではないかなと思っています。   やはり,裁判員は素人であって,実際心身に不調を来すようなこともあるので,慎重に判断いただきたいとは思っていますし,そこの不安をなるべく取り除くということが,参加の意欲との関連でも必要となってくると思っています。 ○島田委員 今,山根委員から御指摘いただきましたが,裁判官裁判であれば裁判官が見るであろう証拠をなぜ裁判員は見なくてもよいのかという記載があるわけですけれども,裁判官の裁判でも,最近は御遺体の写真や傷口の写真などは証拠採用されないことが多々ございます。争点や立証事項との関係で必要性がない証拠については,厳選しようという運用が着実に定着してきているのだろうと思います。   そして,どうしても写真を見なければならない場合とは,どういう場合なのかということですが,例えば,傷の色が問題になっていて,その写真を調べる以外に方法がない場合には,オリジナルの証拠を採用することになると思います。しかしながら,その場合にも,カラー写真の枚数や大きさ,取り調べる範囲などを工夫して,裁判員に対する負担をなるべく軽減するという形で工夫をしながら証拠採用をしているというのが実情でございます。 ○大澤座長 ほかに,この刺激証拠の取扱いに関しまして御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,先に進ませていただいて,「(4)録音・録画記録媒体の実質証拠としての取調べ」について御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いしたいと思います。 ○畑中委員 録音・録画記録媒体の実質証拠としての取調べについては,当検討会でのこれまでの議事録を読ませていただきました。それを拝見したところ,これまでの議論では,録音・録画記録媒体を証拠として取り調べることの必要性・相当性の議論と,被告人の捜査段階の供述を証拠として公判に顕出することの必要性・相当性の議論が混在していて,この点を整理する必要があるように思いましたので,若干意見を述べさせていただきます。   まず前提ですが,事実認定に関して,公開の法廷でなされた供述を証拠とすることが原則であるという点については,私としても異議を述べるつもりは毛頭ございません。まずは法廷で被告人から真実の供述を得る努力をすべきであると思います。ただ,例えば,一つとして,客観証拠や関係者の供述はあるものの,それだけでは犯人性を十分立証することができず,被告人の捜査段階の自白の信用性が認められることによって合理的な疑いを超える立証に至る場合,二つとして,実行行為に関して客観証拠が乏しく,被告人の捜査段階の自白の信用性が認められることによって初めて事件性や構成要件該当性を判断できる場合など,被告人の公判供述だけでは事実認定上不十分であるため,被告人の捜査段階の供述を証拠とすることが必要になる場合も十分に考えられるところであります。   このような場合,つまり,被告人の捜査段階の供述を証拠として公判に顕出することの必要性が認められる場合においては,現行法上,一定の要件の下で,被告人の捜査段階の供述を証拠とすることができるものとされているのです。その方法としては,具体的には,一つには,捜査段階で供述調書が作成されていれば,その供述調書を証拠として取り調べること,二つには,捜査段階で取調べについて録音・録画が行われているのであれば,その記録媒体を再生して取り調べること,この二つが考えられます。   そして,供述調書には,取調官の質問や被告人の口調,挙動などの情報は記録されず,そこに記録される内容も取調べの際に被告人の供述した内容の要旨とならざるを得ないのに対し,取調べの録音・録画記録媒体には,取調官の質問とそれに対する被告人の供述,答えのありのままが全て記録される上,取調べにおける被告人の口調,挙動等も全て記録されるのでありますから,捜査段階の供述を公判に顕出する必要性がある事案に関しては,取調べの録音・録画記録媒体こそが,その立証のための最良の証拠であることは明らかではないかと考えております。 ○小木曽委員 しばらく前に,実質証拠として取調べ請求された録音・録画記録媒体について,録画映像部分を除いて証拠採用決定がなされた東京地裁の令和元年7月4日決定に接しました。これは,供述調書が作成されていない事案ですが,被疑者の供述には任意性があって,録音・録画記録媒体に証拠能力を認めることができるとした上で,ただ,その全部を取り調べるのではなくて,証拠調べの必要性がある部分を限定し,さらに,自白の信用性を映像中の被告人の表情や態度などから判断することは容易ではなく,直感的・主観的な判断に陥る危険性が高いとして録画映像を除いて音声部分を証拠採用したという判断です。   刑事訴訟法301条の2第1項は,被告人の不利益供述を内容とする書面が証拠調べ請求され,その任意性が争われたときには,供述を録音・録画した記録媒体を取調べ請求することを検察官に義務付けています。しかし,記録媒体を実質証拠として取り調べることについては様々な解釈があり,本検討会でも様々御意見があったところです。   元来,密室で行われる被疑者取調べにおける不利益供述の任意性を検証可能にするための方策として提案・採用された取調べの録音・録画とその記録媒体の取調べ制度ですが,供述に任意性が認められれば,それを録取した書面に実質証拠としての証拠能力が認められるわけですから,証拠能力の問題として考えますと,書面に任意性が認められるのであれば,そこに録取された供述や供述状況を記録した媒体に実質証拠としての証拠能力を認めない理由はないと思います。ただ書面か記録媒体かの違いだからです。   そうしますと,記録媒体の実質証拠としての採用の可否は,必要性と相当性の判断にかかってくるものと思われます。これまで本検討会で示された御意見は,必要性や相当性がないのに取り調べるべきであるとか,逆に必要・相当であっても取り調べるべきではないというようなものではなかったと思いますので,先ほど述べたような具体的事案に応じた判断が積み重ねられることで,問題の方向性は定まってくるのではないかと考える次第です。 ○島田委員 捜査段階の被疑者の供述をどのように法廷に顕出するかということについて,先ほど畑中委員から,供述調書の場合とDVD,つまり録音・録画媒体の場合の二つがあるが,供述調書には捜査官の質問という部分がなくて要約されているので,より録音・録画の方がよいだろうという御指摘がございましたけれども,供述調書についても捜査官の質問と被疑者の答えという形で問答体の供述調書を作成している例が多数ございますので,そういった面で,録音・録画だけが優れているということではないのだろうと思っております。   そして,小木曽委員からも御紹介いただいたとおり,録音・録画のうち,録音のみ採用した例というのが確かにございまして,いろいろな工夫を考えていくといった形で今後運用が進んでいけばいいのだろうと考えております。 ○大澤座長 ほかにいかがでしょうか。   任意性が争われた場合の任意性の立証の仕方とも関わってくる面があるのではないかと思うのですが,裁判員裁判開始当初は,任意性の話というのは,信用性の評価と一体なので,任意性の立証を行う場合には,裁判員もいる前でそれをすべきではないかと,そのために録音・録画を使う場合には,裁判員もいる前でそれを再生すべきではないかという議論が強かったように思いますが,最近はそこは変わってきているという理解でよろしいのでしょうか。 ○島田委員 自白調書の任意性を立証するために録音・録画媒体を利用することは,刑事訴訟法301条の2が予定しているところです。ただし,自白の任意性は,証拠能力の有無という訴訟法上の事実に関するものであり,裁判官の判断事項です。公判手続で再生することも可能ですが,本格的に自白の任意性が争われていて,録音・録画媒体の内容を調べる必要があるときは,裁判員がいない公判前整理手続の中で法律上許されている事実の取調べとして,録音・録画媒体を調べて,自白の任意性に関する決着を付けるというやり方はあるだろうと思っています。   その理由について補足いたしますと,刑事訴訟法301条の2は,自白調書が作成された際の記録媒体についてだけ検察官に取調べ請求義務があるとしています。仮に自白した場面の映像を法廷で裁判員の前で調べて,その前後の取調べ経過については捜査官や被告人の供述を中心にした証拠調べが行われた場合,裁判員の心証にどのような影響を生じるでしょうか。映像による影響力を考えると,裁判員が,自白している映像を見て犯罪事実について心証を形成してしまう危険性があることは明らかです。裁判員にとって,映像から供述の過程や供述の状況についてだけ心証を取り,犯罪事実についてはこれと区別して心証形成しないというようなことは,とても不自然なことです。無理を要求することになりかねません。このことは,裁判官が評議の中でどれだけ説明して忠告したとしても,既に形成された裁判員の心証を正すなどということは,まずできないだろうと思っています。   したがいまして,自白の調書の任意性について記録媒体で立証する場合には,公判前整理手続の中で決着を付けて,証拠整理を済ませておくのが本筋だろうと最近,私は考えております。 ○大澤座長 ほかに御発言等ございますでしょうか。   私から更にお尋ねするのも申し訳ない気もしますが,録音・録画記録媒体を実質証拠として使おうとする場合に,当然,実質証拠として使う部分やそれ以外の部分を含めて弁護人には開示されているということが前提だと思います。そうすると,弁護人は,そこに至る経緯を含めて十分に御理解された上で,その信用性について必要なことを公判廷に出されるでしょうし,被告人自身もなぜこういう自白をすることになったのかという事情についてはお話しになるのだろうと思いますけれども,そういうものも含めて見ても,やはり非常に評価が難しい証拠だという実感をお持ちなのでしょうか。 ○島田委員 自白している場面の映像の持つインパクトというのが,やはり大きいのだろうと思います。そして,任意性や信用性が真っ向から争われているときに,裁判員の方が,実質証拠の部分と,あるいは被告人自身が任意に話しているのか,信用できる話をしているのかといったことを区別して行うのは,なかなか難しいだろうと思います。そして,一旦見てしまうと,多くの裁判員にとっては,無実の罪について人がうそをついてまで認めるはずがないだろうというバイアスを持って評価してしまうおそれというのはとても大きいのではないのかなと考えております。 ○保坂審議官 事務当局から島田委員に質問なのですけれども,先ほど,任意性が争われるような事件で,公判前整理手続で取調べの録音・録画記録を見て,その任意性の判断をするべきであると考えているというお話がございました。   そのときに,実質証拠として調書があって,録音・録画は任意性だけの証拠であるという場合は,それが成り立つと思いますが,録音・録画が実質証拠としても証拠調べ請求されている場合には,その録音・録画は,要するに証拠能力だけの証拠ではなくて,罪体立証の証拠でもあると思います。それを公判前整理手続で先に見ることは,もちろん事実の取調べとして可能だとは思うのですが,かつて裁判所の皆さんは,裁判員との情報格差をかなり問題にされていて,罪体に関わるものを裁判官だけで見ることにかなり抵抗があるというお話をよくお聞きしたのですけれども,録音・録画に関していうと,むしろ公判前整理手続で裁判官が見て,それで判断をするのだとお考えになっておられるということでしょうか。 ○島田委員 先ほど申し上げたのは,私の本当に個人的な見解でございます。   ただ,録音・録画の持つ影響力を考えたときに,任意性の問題の決着の方法としては,法廷で任意性と信用性の両方を裁判員の方に見ながら判断してもらうというよりは,公判前整理手続の中でまず証拠能力の問題として解決できる方策があるだろうと考えているということでございます。 ○大澤座長 ほかにこの録音・録画記録媒体の取扱いについて御発言等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この程度といたしまして,次に,「(5)いわゆる手続二分論」に関する議論に進ませていただきます。   この点について,御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。   いかがでしょうか。議論は尽きているということでよろしいでしょうか。   それでは,次に,「2 公判前整理手続の充実のための運用上の工夫は適切に行われているか」について,御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いいたします。   いかがでしょうか。もしないようでしたら,検討事項の3「公判及び公判前整理手続の在り方」についての意見交換はこの程度といたしまして,その他の検討事項について御意見があればお伺いをしたいと思います。   検討事項2又は4から8までのいずれについてでも結構ですし,また,これらに記載のない点についてでも結構ですので,御意見のある方は,挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいた上で御発言をお願いしたいと存じます。 ○畑中委員 検討事項6の「犯罪被害者等に対する保護・配慮の在り方」に関しまして,意見を申し上げさせていただきます。   公判前整理手続が行われている段階で,検察官として,被害者の方々の御要望にどのように対応しているかという点につきまして,私の先任である田野尻委員や石山委員からも説明があったものと承知しておりますが,私からも若干補足して御説明申し上げたいと思います。   公判前整理手続期日における主張や証拠の整理に当たっては,事前に当事者双方が準備をして,裁判所に書面を提出する場合がほとんどでございます。検察官は,公判でする予定の主張を明らかにするに当たって,証明予定事実記載書面という名前の書類を公判前整理手続期日に先立って裁判所に提出しておりますし,証拠の取調べを請求する場合には,その証拠の標題,作成日付などを記載した証拠調べ請求書を提出いたします。   こうした証明予定事実記載書面や証拠調べ請求書については,お渡しする必要が認められ,かつ,お渡しすることに弊害が認められない場合であれば,被害者やその御遺族の御要望に応じて,その写しをお渡しすることとしております。   また,第12回検討会において資料として配付された「犯罪被害者等の権利利益の尊重について」と題する通達にも書かれておりますように,起訴状の公訴事実や罰条の内容を記載した書面についても被害者やその御遺族の御要望・御希望に応じてお渡しする扱いとしております。   さらに,公判に提出する予定の証拠は,御希望があれば御覧いただくこともできますし,公判に提出する予定の証拠以外の証拠で,弁護人に開示した証拠についても,御覧いただく必要性が認められ,それに伴う弊害が認められない場合であれば,御希望に応じてお見せできる場合もございます。   そして,公判段階においても,検察官がその公判で証明する予定の事実を述べる冒頭陳述の要旨を記載した書面,それから,公判の最終段階において,事件に対する意見を述べる論告の要旨を記載した書面などについても,被害者やその御遺族の方々にその写しをお渡ししております。   検察官として,被害者の方々の御要望を丁寧にお聞きして,適切に情報提供を行うことが必要であるということにつきましては,田野尻委員や石山委員からも申し上げたとおりであり,私も同様の考えでおります。   今お話ししたような書面の交付の点も含め,適宜・適切に情報提供が被害者やその御遺族になされるように,今後も検察の現場を指導していきたいと考えております。 ○大澤座長 検討事項6「犯罪被害者の保護・配慮の在り方」について御発言を頂きましたが,ほかにいかがでございましょうか。 ○市原最高裁刑事局第二課長 検討事項8「裁判員等の参加促進」の論点とも関係するかと存じますが,前回,小林委員から御質問がありました,辞退が認められた裁判員候補者の辞退事由別の内訳につきまして,前回の検討会以降,最高裁において「令和元年における裁判員裁判の実施状況等に関する資料」を公表いたしまして,この資料の中で,辞退が認められた裁判員候補者数及びその辞退事由別の数値につきましても,最新の令和元年の数値が出ましたので,この機会に御紹介したいと思います。   お手元の「辞退が認められた裁判員候補者数及びその辞退事由別の内訳」と記載されている表を御覧ください。   この表の総数の欄を御覧いただきますと,令和元年において選定された裁判員候補者の総数は11万8,754人,辞退が認められた裁判員候補者数の総数は7万9,236人でございます。辞退事由別の数値につきましては,この表に記載されているとおりでございますが,例えば,事業における重要用務を理由に辞退が認められた裁判員候補者数は2万2,401人で,全体に占める割合は28.3%,介護養育を理由に辞退が認められた裁判員候補者数は6,442人で,全体に占める割合は8.1%などとなっております。 ○小林委員 この点についての感想ですけれども,70歳以上や学生等で辞退が認められている人が予想以上に多かったという感じがありまして,今後高齢化が進む中で,このカテゴリーの人数が増えていくのだろうと思います。   このような人たちに対して,裁判所まで来てくださいとお願いするのが難しいとすると,介護育児のように環境を整備することによって来られる人に裁判所に来てもらう,そういう環境整備の努力がより求められていくのではないかなと,この数字を見て改めて思いました。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょうか。 ○小林委員 論点は変わりますが,守秘義務の在り方に関して前回の議論のときに,私の発言の中で,守秘義務の範囲が分かりづらいので取材で質問するときにどこまで聞いていいのか悩むこともあると発言したのに対して,座長から,具体的にどういう場面でそういうことがあるのかという御質問を頂いた際,私がお答えできなかったところがあったかと思いますが,その後,同僚にも話を聞いた上で頭の整理をしてみました。   私の経験で言うと,裁判体によって量刑データベースの示し方とか説明に違いがあるというのを,裁判員の経験者の方に取材をしたときに感じたということがありました。その点について同僚に聞いたところ,同じように,性犯罪で量刑が重く出た場合に,その評議の中で量刑の資料がどのように示されて,それについてどのように話し合った結果,重い方に振れたのかというようなことをもっと具体的に知りたかったのだけれども,それを質問しても教えてもらえなかったというようなケースがあったそうです。また,これは新聞記事の中で書かれていたので,私が直接取材をしたということではありませんが,今市の女児殺害事件の一審判決の後に,裁判員の方が記者会見の中で答えている中で,「録音・録画の再生がなければ今回の判断はなかった」とか,「映像なしに状況証拠のみの判断だったら結果が変わっていたかもしれないと思った」というような形で,詳細に語っている記者会見の様子が報じられています。   この記事を読んだときに,ここまで話していいのだなと思った一方で,別の裁判では,判決で執行猶予に保護観察を付けたということについて記者会見でその理由を問われた際,「実刑だと重いけれども,執行猶予だけではなくて何か付けなければと思った」と言いかけた裁判員の発言に,同席していた裁判所の職員の方からストップがかかったというような事例もあったと聞いています。   事案に応じてという面も多分にあると思うのですけれども,事例を幾つか細かに挙げていくと,どこまで話していいのかという線引きはすごく難しいのだなということを改めて思っている次第で,一般の裁判員の人にとっては,どこまで話していいのかとても悩むと思います。   前回の議論でも島田委員からご紹介がありましたが,こういうことは話しても差し支えないかという質問があったときに,裁判長や,その合議体の中で丁寧に答えてあげることが必要なのではないかと思っています。 ○島田委員 守秘義務の範囲について,裁判員の方に丁寧に説明する必要があるというのは御指摘のとおりだと思っております。引き続きそのように対応したいと考えております。   それから,量刑検索システムの関係ですけれども,量刑検索システムを用いたグラフを論告や弁論の際に法廷で当事者が示しております。したがいまして,評議の中でこの量刑検索システムを使うこと自体は,公知の事実でございますので,裁判員経験者がそういった量刑検索システムのグラフを見て議論したと話すこと自体は問題ないものと思います。   しかしながら,具体的にどのようなグラフを見て評議が進んでいったのかということは,評議の経過や,裁判員・裁判官の意見が明らかになる可能性もあるため,原則として評議の秘密に当たると考えています。   もっとも,判決で,最終的にこういった事情を重視してグラフを見て判断したというように,判決の理由の中で示されている限度では公開されておりますので,それについては当然のことながら守秘義務には反しないということになると思います。 ○小林委員 では,判決の理由の中で示されている範囲であれば話してもいいのだという整理をすればいいということですか。 ○島田委員 判決で示したということは,公開の法廷で裁判長が読み上げているわけですから,それについては守秘義務の対象から外れると考えております。 ○菅野委員 IT化の話をさせていただきたいのですが,今回,コロナを契機に影響が出たのは公判だけではなくて,公判前整理手続や準備の手続にももちろん影響が出ております。例えば,公判前整理手続は,法曹三者と,希望した場合には被告人が参加するわけですけれども,それなりの人数が集まることもありますので,例えば共犯事件なんかですと,かなりの人数が集まるので取消しになった事件などもございました。   ただ,準備の手続であれば,オンライン化することによって,人が実際に集まらずに充実した議論もできるのではないかと思います。しかし,現行法では公判前整理手続をオンラインで行うことが許容されておりませんので,期日の打合せ,公判前整理手続,こういったものについても,いずれオンライン化することも将来の課題としていただければと思います。特に裁判所と検察官は比較的近い場所から移動するだけですけれども,弁護人は遠隔地から裁判所に行くこともございますので,それを考えるとオンライン化されると効率的で,日程も入れやすいのではないかと考えております。   そして,裁判員の選任手続自体も,諸外国によってはオンライン化したなどというニュースを聞くこともありますので,将来の課題として,法廷でやらなければいけないことと,オンライン化できることを検討していく必要があるのではないかと考えています。   また,これまで述べたことではありますけれども,例えば証拠の一覧表,これも紙で開示されるだけで,追加で一覧表が随時リニューアルされることは実務的にはよくあるのですけれども,結局紙で次々開示されるということでして,これが最初からエクセルのデータのようなものでお互い管理できるようになれば,証拠の管理も楽になると感じることもございます。運用,あるいは今後の手続については,オンライン化,デジタル化をどこまでできるのかという視点も持っていただければと考えております。   2点目として,先ほど検察庁から,被害者への適切な情報提供がなされているというお話があり,私も,そういった情報提供を今後も続けていただきたいと切に思っているところです。他方で,私が経験する事件では,例えば,公判前整理手続で既に撤回された弁護人の主張を前提に,被告人に対して,なぜ主張を撤回したのかと問いただすような質問が行われたり,本来であれば被害者の論告で行うべき具体的な事実主張が心情意見陳述の場面でなされ,それに対して異議が出て,残念ながら心情意見陳述が制限されて意見陳述ができないような事件も複数経験しているところです。   したがって,ルール上何ができて何ができないのかということは,検察官から説明がしやすいところだと思いますので,審理の中で被害者等が混乱することがないように,手続の内容及びどこまでの行為が可能なのかといった情報をきちんと提供していくことが,真の意味での被害者の保護につながるのではないかと,このような感想を持っているので述べさせていただきます。 ○畑中委員 ルール上何ができて何ができないのか,これを十分御理解いただくことは,被害者やその御遺族に適切に活動していただくための前提となるものでございますから,今後も十分にそれを説明するように努めてまいりたいと思いますし,そのように現場を指導するようにいたします。 ○小林委員 検討項目8の参加促進に関連して一つ御紹介したい制度があります。裁判員制度が始まる前にフランスに参審制度を取材しに行った際,午前中の手続で参審員に選ばれた人のうち,希望者だけでしたけれども,その足でその日の午後に刑務所見学に出かけていくということがありました。実際に見学に行った方にお話を聞かせていただいたところ,「自分が後日出す判決の重みと実態を知るために必要なとてもよい制度だ」とおっしゃっていて,非常に好意的に受け入れられている制度だと思いました。日本でも同じように,裁判員になった人たちが刑務所を見学したり,保護観察の実態を学んだりする機会があればいいのではないかと考えています。   裁判員制度が始まってしばらく経ったときに,たしか,裁判員の人から裁判官に対して,刑務所の懲役というのがどういうものなのかとか,保護観察ってどうなっているのですかというような矯正保護の実情に関する質問がなされた際,裁判官がうまく答えられなかったというようなことがあって,最高裁の方で勉強会を開いたというようなこともあったと記憶をしています。   裁判員の方には,裁判に参加するというだけではなくて,それをきっかけに幅広く刑事司法について知っていただくことも大事かなと思いますので,意見として申し上げたいと思います。 ○島田委員 裁判員から,刑務所における受刑者の生活,あるいは刑務作業の内容,それから仮釈放ってどういうときにできるのですかとか,保護観察って何ですかといった実情について質問を受けることがよくあります。   そのような場合,裁判官は,最高裁判所刑事局が作成している「刑事施設と更生保護の実情について」という資料に基づいて説明をしております。この資料は毎年バージョンアップされているものです。   その説明を聞いていただいて,裁判員には評議に臨んでもらっております。 ○武石委員 今の議論で,私も,小林委員がおっしゃるように,裁判員の方にいろいろな情報を提供するというのはすごく重要なことだと思っていますし,ヒアリングの中でもそういった経験者の方からの御意見があったと思っています。   今,そういう質問があった場合には適切に対応しているというお話もありましたが,例えば刑務所の見学に行くというようなことを日本でやっているのかどうか分からないのですが,急に裁判員に選ばれ,何も分からないままにいろいろな質問ができる人はなかなかいないと思うので,裁判所において,質問があったらというよりも,むしろ積極的に,こういうことができますよという情報を伝えていただけると有り難いなと思いました。 ○山根委員 最後の話題に関連するのですけれども,裁判員制度を導入した意義は,市民にとってもっと司法を身近にということがすごく大きくあったと思います。そのためにも,もっと裁判を身近に感じるための取組であるとか,罪を犯した人が再び罪を犯さないようにするための社会の受入れ態勢であるとか,そういった幅広い教育,法教育というのかもしれませんけれども,そういったものを更に充実させるということも盛り込んでいただきたいなと思っています。 ○大澤座長 矯正の在り方とか,更生保護の在り方といったことについても,一般的な法教育とか,あるいはマスコミも巻き込んだ形での広報といったようなことも考えられるのかもしれません。逆に,裁判員として呼ばれていきなり刑務所のビデオを見せられたら,有罪を前提にしているという印象を受けるかもしれないため,やりにくいところもあるのではないかという感想を持ちました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,各検討事項についての意見交換はここまでとさせていただきたいと思います。   今後についてですが,当検討会においては,平成31年1月から開催し,これまで活発な御議論を頂き,本日検討事項に掲げられた論点全てについて二巡目の検討を終えることができました。本日の御議論の状況を見ますと,全ての検討事項についておおむね意見は出尽くしたように思われますので,当検討会としてはそろそろ議論の取りまとめに入ってはいかがかと思います。   御承知のように,当検討会は,法務省刑事局が,平成27年12月に施行された「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律」の附則に定められた検討作業を行うに当たり,その参考とするため委員の皆様から幅広く御意見を伺うという趣旨で開催されてきたものです。   当検討会の取りまとめの方法等について特段の定めはありませんが,当検討会の趣旨に照らしますと,当検討会においてどのような事項についてどのような意見があったのかが分かるような形で,また,賛否の分かれたものについてはその状況が分かるような形で議論を整理して取りまとめることが適切ではないかと思われます。   そして,そのようにして取りまとめた結果を公表することで,広く国民の皆様の御議論にも供することが望ましいのではないかと思われます。   まず,そのような取りまとめをするということにつきまして,よろしゅうございますでしょうか。 (一同了承)   ありがとうございます。   その取りまとめに当たりましては,まずは事務当局に取りまとめの報告書の案を作成してもらい,それに基づいて更に議論をすることが効率的で建設的な検討に資するものと思われます。   そこで次回は,事務当局にそのような取りまとめの報告書の案を作成してもらった上で,これに基づき意見交換を行うという進め方にしたいと存じますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 (一同了承)   ありがとうございます。それでは,そのように進めさせていただきます。   私の責任の下で,事務当局に報告書の案を作成してもらい,それを事前に皆様にお送りすることとしたいと思いますので,事務当局におかれましては案の作成作業をお願いします。   次回会合の日程につきましては,その作成作業も踏まえまして,事務当局を通じてなるべく早急に皆様にお知らせをすることにさせていただきたいと思います。   それでは,本日の議事は,これで予定したところが全て終了いたしました。   これにて閉会とさせていただきたいと思います。   どうもありがとうございました。 -了-