法制審議会 民法・不動産登記法部会 第23回会議議事録 第1 日 時  令和2年12月15日(火)自 午後1時00分                      至 午後5時43分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第23回会議を始めます。   本日は御多忙の中御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日の審議につきましても,部会資料53,54,55の審議が終わり次第,終了ということにさせていただきます。   本日は,阿部委員,潮見委員,増田委員,衣斐幹事,木村幹事が御欠席です。   配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○福田関係官 今回,部会資料53から55までの三つの資料を事前に送付させていただいております。また,事前送付いたしました資料に加えまして,本日,総務省から御提出いただきました,土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設についてと題する本日付の資料を配布させていただいております。こちらの資料につきましては,部会資料54に関する御審議の際にお取り上げいただくことになりますので,よろしくお願いします。   ただいま御案内差し上げました資料について,お手元にないようでございましたら,事務局までお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 資料についての御案内を差し上げました。   それでは,本日の審議の内容に進むということにいたします。   本日の審議の順序について御案内を致します。部会資料を3点配布申し上げてございます。それらで扱われている内容,題材の性質や分量等を勘案いたしまして,番号の順序のとおりではなく,最初の二つを入れ替えて御審議をお願いするということにいたします。すなわち,部会資料54を最初に取り上げ,それについての審議を了した後,部会資料53を取り上げ,最後に部会資料55の審議をお願いすると,このような段取りでよろしく御協力方,お願い申し上げます。   そのようなことでありますから,部会資料54をお手元に御用意くださるようにお願いいたします。御覧いただいておりますとおり,要綱案として作成していこうとする文書の第3部に当たるものとして,土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設,括弧書で,従前に中間試案等において呼んできた論点の名称を覚えとして残しておくために,土地所有権の放棄と記してございます。中身は御覧いただいてお分かりのとおりでありますけれども,取り分け,従前の資料におきましては必ずしも明確な形で具体的に提示しておりませんでした審査機関につきまして,この部会資料54からは,法務大臣を審査機関とするということを示した上で,委員,幹事の皆様方の御意見をお尋ねするという段取りで進めるということにいたします。その余の点は委員,幹事において事前に御検討いただいているとおりでございます。   本日,この部会資料54の審議に関しましては,これに関連して総務省から参考資料が提出されております。参考資料について,先ほど事務当局からも案内を差し上げましたけれども,繰り返します。会場におられる委員,幹事には机上に本日配布を致しました。それから,ウェブで参加している委員,幹事の皆様にはメールで添付をして送付を致しました。先ほど事務当局からもありましたとおり,お送りしてから間がないことがございまして,委員,幹事の皆様方に御迷惑をお掛けいたします。ウェブ参加の委員,幹事の皆様方におかれて,何かこの参考資料の関係で御支障はおありでしょうか。   特段ありませんですか。ありがとうございます。   それでは,この総務省から提出を受けている参考資料につきまして,勝目関係官から説明をお願いいたします。 ○勝目関係官 総務省でございます。お手元,総務省のクレジットの資料をお願いを致します。1枚めくっていただきまして,全国市長会及び全国町村会から連名で意見の提出がございますので,その概要について御説明をさせていただきます。   これは,部会資料54の3ページ(注3)に,農用地,林地の国への承認申請の前置手続として,市町村への申出の法定化について引き続き検討するとされていることに関するものでございます。   記書の1でありますが,本制度は飽くまで土地所有権の放棄に伴う法務局等の諸手続の中に位置付けられるべきものでないかということであります。農業経営基盤強化促進法,あるいは森林経営管理法に基づく手続と,今般の所有権放棄の一連の手続行為というのは,全く別の性格を持つ政策でございますけれども,市町村関係者からの意見を聴取することなく,言わば既存制度に便乗するような形になっていないかということでございます。   すなわち2,これら二つの法律におきましては,利用権や管理権を適切に行使することで,放棄地等とならないような仕組みとしているものと理解をしておりますが,申出を行うか否かというのは任意となっているところであります。   3,今般,市町村への手続を義務化するとなりますと,前記二つの法律とは別の,所有権放棄に伴う国の手続の一環として法的に整理されるべきものでないかということでございます。   あわせまして,4,この関係者につきましては,関係市町村外の遠方の関係者も相当数に上るということが見込まれる中,一律に市町村への申出手続を行わせることは申請者の負担からも問題があるのではないか。また,一見して農用地の利用集積や森林経営管理に適さないと判断できるような事案までもが数多く市町村の窓口に持ち込まれることになれば,事務の非効率,手続全体の長期化を招くことになりかねず,運用面からも慎重な検討がなされるべきものということでございます。   5,以上を踏まえまして,正式に市町村長から意見聴取をして進めていくべきということを強く要請するということでございます。   よろしくお取り計らいのほど,お願い申し上げます。 ○山野目部会長 勝目関係官におかれては,どうもありがとうございました。   ただいまお話しいただいた事項は,部会資料でいいますと部会資料54の3ページの(注3)ということで御案内している事柄に関する地方の御意見を取りまとめて,総務省としてお出しいただいたものの要旨を御紹介いただきました。この後,部会資料54についての全般的な審議をお願いしてまいりますから,その中で,ただいま総務省から(注3)に関して御披瀝があった意見に関しても,委員,幹事,関係官から何か御意見がおありでいらっしゃいますれば,仰せいただきたく存じます。   それでは,小分けを致しませんで,部会資料54の全般について御意見を承ります。委員,幹事におかれては,どうぞ御自由に御発言をください。いかがでしょうか。蓑毛幹事,どうぞ。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。部会資料54について,日弁連のワーキンググループでの議論を踏まえた意見を申し上げます。   まず,これまでも申し上げているとおり,土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設について,基本的に賛成です。細かく申し上げると,それぞれの提案について意見がある部分がありますので,申し上げますが,その意見が入れられなければこの制度の創設自体について反対するというほどの強いものではありません。   まず,1ですが,本制度の対象となる土地は相続又は遺贈により取得したものに限るとされていますが,これまでも申し上げているとおり,この制度の対象となるか否かは土地の性質,性状等によって決められるべきであって,その取得原因を問わないとすべきではないか,また自然人だけでなく法人も制度の対象とすべきではないかという意見が,現時点でもあります。   それに加えて一つ,今まで申し上げていなかった観点からの意見を申し上げます。この提案では,相続又は相続人に対する遺贈が制度の対象となっているわけですが,相続人に対する遺贈の場合以外,具体的には,相続人に対する贈与,売買,信託等の場合も制度の対象とすべきではないかという意見がありました。よりよい土地管理の承継という観点からは,死亡時の相続,遺贈ということではなく,生前のきちんとした判断能力がある段階で権利を次世代に処分,承継させるということが望ましいと思いますし,実際,実務上も我々はそのような相談を受けて,相続人に対する贈与,売買,信託といった形で,次世代への土地,建物の承継ということを行っています。ところが,こういう望ましい行動をした者に対して,この制度が,自分の意思に基づいて取得した者についてはこの制度の対象としないということになりますと,次世代への土地の処分を生前に行うことが不合理な話になって,それはすべきでないということになりかねないのではないかという意見が出ています。そこで,相続人に対する遺贈だけではなく,相続人に対する贈与,売買,信託等もこの制度の対象に含めてもらいたいという意見がありました。   1について,審査を法務大臣が行うということについては賛成です。   それから,3の要件について幾つか申し上げます。以前も申し上げましたが,①の建物,あるいは⑦の工作物について,運用ということになるかもしれませんが,仮にその建物等が取り壊されたならば承認が下りるか否かが分かるように,事前協議等の制度を設けた方が望ましいという意見がありました。   ③ですが,通路その他の他人による使用が予定される土地と書かれている,この「予定される」という文言は不明確ではないかという意見がありました。補足説明あるいはこれまでの議論の流れからすると,この「予定される」というのは,将来通路が開設されるとか,将来通路として使われるという意味ではなく,現時点で通路であって,他人による使用が想定されるというような意味で使われているのだと思われますが,「予定される」という言葉でそのような意味を指すのかが疑問だという意見がありました。   ⑦の樹木が地上に存する土地ということについて,もう少しうまい定め方ができないかという意見がありました。この規定は,土地の通常の管理又は処分を阻害するような樹木がある場合を指すのだと思いますが,たとえば居宅等で庭に木がある場合に,これが通常の管理又は処分を阻害する樹木なのか,阻害しない樹木なのかということの判断がどのように行われるのか不明瞭だという意見がありました。   それから,4の承認は,土地の一筆ごとにするということですが,一団の土地について,一筆一筆は必ずしもその境界がはっきりはしていないけれども,全体として見れば,他の土地との境界がはっきりしている場合は,承認されるべきですので,そのようなことが分かるような仕組み,定め方ができないかという意見がありました。   7ですが,管理に要する標準的な費用というのが具体的に幾らくらいになるか分からないので,明確にできないかという意見がありました。   あとは,(注)ですが,(注3)農用地及び森林については,承認の申請に先立って,既存の法律において整備されている利用権の設定や売却のあっせんなどの仕組みの活用を申し出なければならないとするということについて,そのような必要があるのか疑問だという意見がありました。   それから,(注4)の農用地,森林について,農林水産大臣及びその土地の管理をすることとなる財務大臣から意見を聴取するという規律ですけれども,この聴取をする趣旨,目的について,もう少し明確にすべきだという意見がありました。つまり,3の要件を満たすのであれば,承認をするということになるはずですので,なぜ,大臣の意見を聴く必要があるのか,いかなる趣旨で意見を聴くのかを明確にすべきだという意見がありました。 ○山野目部会長 弁護士会の意見を取りまとめていただきまして,ありがとうございました。蓑毛幹事からのお話によると,部会資料54で構想をお示ししている制度をよりよくするための見地からの種々の御意見を頂いたということでございます。ありがとうございました。   引き続き御意見を頂きます。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。今回御提案を拝見いたしまして,これまでにも1の制度の適用範囲のところであるとか,あるいは3の放棄にかかる実体的要件に関していろいろ意見を申し上げておりました。全てが反映されたということではないと思っておりますが,熟慮された上でこのような形で整理していただいたということですので,ここで改めて申し上げることは致しません。   1点,少し質問をさせていただきたいのが,3の⑩のところです。①から⑨までに掲げる土地のほか,政令で定めるものとなっております。これは以前,部会資料で出てきたときは,今回3の③で入っている,例えば通路その他の他人による使用が予定される土地というようなもの,共有地のようなものが,ここのその他類型の中に含まれることが想定されていたところがあったと思うのですが,それについては,今回,別建てで③の方で出していただいているということで,では残ったものとして,一体どういうものが今想定されているのか,①から⑨までに挙げられているもの以外で,今後,政令で指定される可能性があるものとして具体的に何か考えておられるのかどうかというところをお伺いできればと思っております。 ○山野目部会長 では,⑩にについて,事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 今の点,補足説明の8ページのところで,法令違反行為があるからといって直ちにこれに該当するわけではないということを書いておりますけれども,例えば森林において,既に木が伐採されてしまってなくなっていて,森林の状態に戻すためには植栽しないといけないというような場合もあり得ようと思います。そのようなときに,例えば,森林として管理するのに非常に労力が掛かる,費用が掛かるということであれば,それはこの,政令で定めるものに当たる,政令で定めて,それを受け入れないという形になるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 藤野委員,お続けください。 ○藤野委員 それを政令で具体的に基準を示してお書きになられるということでしょうか。 ○大谷幹事 そうですね,それは関係省庁と今,また協議して定めていきたいと考えております。 ○藤野委員 分かりました。少し追加で。   政令で事前に明確化されるということであれば,この場の議論には出てこなくても予測可能性は立つのかなと思う一方で,こういう立て付けになっている以上,やむを得ないこととは思いますが,結局のところ,今既に明記されている実体的要件に加えて,更にバスケット的に政令で要件を厳格化できると見ることもできるのかなと思っておりまして,これまで申し上げてきたとおり,ある程度,最初の時点で慎重に運用していかなければいけないというところは理解いたしますけれども,やはり新制度の適用範囲の拡大であるとか,あるいは要件のところを,今後の実際に制度が出来上がって運用されていく中での施行状況を見ながら,緩和するという方向も引き続きどこかに残しておいていただければと考えておりますので,以上は意見でございますが,申し上げた次第でございます。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 藤野委員の御要望は受け止めました。ありがとうございます。   引き続き御発言を頂きます。安高関係官,どうぞ。 ○安髙関係官 ありがとうございます。林野庁でございます。先ほど,総務省から御説明がありました,具体的には部会資料の(注3)についての御指摘の関係で,御説明をさせていただきたいと思います。   この,いわゆる土地所有権の放棄については,所有者自らが管理をすることが困難な土地への対応として,その最終手段として検討されているものであると承知しているところでございます。先般改正されました土地基本法でも,土地所有者に対しては,土地の管理などの責務ですとか,国や地方公共団体が実施する土地に関する施策に協力する義務というものが規定されているところでございます。このことを踏まえますと,最終手段として国に放棄を申請する前に,まずは所有者に,あるいは,地域において所有者以外の方が管理をするという道を模索していただくといった然るべき努力をしていただくということが必要ではないかと考えているところでございます。   特に農地と林地につきましては,市町村を介した利用権設定といったものが既に制度化されてございまして,申請に先立ちましてこの仕組みを御活用していただくことを試みる形としていただきますことは,所有者が放棄申請するに当たって,審査手数料ですとか管理費用の負担を伴うことなく,その土地が地域において有効活用されることにもつながるというメリットがございます。このことを新法上にしっかりと規律しておくことが,これまでの部会で委員,幹事の方からも,今も御指摘がございましたように,放棄を申請する所有者の方々が放棄申請の前に何をしなくてはいけないかということが明確になりまして,より望ましいのではないかと考えてございます。   一方,部会資料の中でも,市町村の費用や事務の負担が増えるという御懸念も示されているところではございますが,例えば森林経営管理法でございますと,所有者の方から市町村に利用権設定を申し出ていただくことになりますが,この申出は,現在でもいつでも行えるということに加えまして,市町村が所有者からの申出を受け入れ,利用権を設定しますのは,森林経営管理法上,市町村の実施体制といった地域の実情等も踏まえまして,その市町村が必要かつ適当と御判断いただいた場合に限るという立て付けになってございますので,飽くまで市町村の自由裁量となってございます。これを踏まえますと,新法に林地に係る特例の規律を設けることをもって市町村の費用とか事務の負担が増えるといったような御懸念は当たらないということを申し上げさせていただきたいと思います。また,森林経営管理法などを御活用いただきまして森林の経営管理の集約化が図られれば,将来的には地域の民間事業体に一定程度まとまって森林の所有権を移転するということが可能になるといったように,地域振興のためにも大変有効な機会になるのではないかと考えているところでございます。   そのように考えますと,新法上に,所有者の方が森林を自ら管理することができないといった場合に,放棄の申請に先立って,まずはその地域の実情に応じまして,市町村に利用権設定等の検討をしていただける仕組みとしておくことが,所有者にとっても,またその地域にとっても,大変有益ではないかと考えているところでございます。その点,今一度,委員,幹事の方々にも御理解いただきたいと思ってございます。 ○山野目部会長 (注3)につきまして,総務省から出していただいた御意見に続いて,林野庁の御意見を承りました。   佐久間幹事,どうぞ御発言ください。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。(注3)と関係がなくてもよろしいですか。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お気遣いいただいてありがとうございます。室賀関係官,どうぞ。 ○室賀関係官 農林水産省です。ありがとうございます。本日望月は所用がございまして,室賀が代わりに出席しております。よろしくお願いします。   先ほど森林の関係のお話がございましたけれども,農用地につきましても,最終手段としての放棄を申請する前に,農業委員会によるあっせんなどによりまして,地域においてまず有効利用を図っていくということが非常に重要ではないかと思っております。総務省さんの御意見の中でもございました,経営基盤強化法等の手続の話でございますけれども,これにつきましては,所有者が農業委員会にあっせんの申出をするとか,農地バンクが所有者の申出に応じて協議を行うとかという形で,農地としての有効利用を図るための措置として施策を活用していくことによりまして,高齢化している状況の中で,担い手による効率的な農業生産ができるよう,農地の集積,集約化の推進に政策的に取り組んでいるところでございまして,そういった取組の一つの手段ということの手続でございます。そういった意味では,日頃から地域の現場において取組をされておりますし,当方からも一定の支援等もさせていただいている中でのものでございますので,こういった中で新たに御負担を掛けるというようなものではないと考えてございます。先ほど,荒れたところもという話もございましたけれども,耕作されていない遊休農地につきましても,年に一度,利用状況,利用意向調査ということを行いまして,それに基づいて担い手につないでいくというような取組を実際行っておりますので,そういったものの一環として取り組んでいけたらと思っております。   また,今後の法務局を中心としました放棄の審査についても,当方もできる限りその手続がスムーズに,また的確に進むよう,十分な協力をしていきたいと思っておりまして,そういった中で,関係者が一体となって取り組んでいくことによって,事務の負担の軽減にもつながっていくのではないかと思っておりますので,そういった点も含めて御理解を頂ければと思っております。 ○山野目部会長 農林水産省の御意見を承りました。   佐久間幹事,おまたせをいたしました。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。2点ございまして,一つは今の(注3)に直接は関係しないのですけれども,事前手続についてという点では関係するところです。   補足説明の4ページに,手続要件に関しまして,前回まで提案されていた売却等の試みは不要にするということが述べられています。これ自体については,その手続を実際上意味のあるものとして組むのは難しいと思いますので,反対ではないのですけれども,これを落とした結果,これまでの議論の経過からいたしますと,所有者のモラルハザードを防ぐという契機として何を求めるかというところが抜け落ちてしまうことになると認識しています。   つまり,いろいろこれまで議論があったわけですけれども,所有権放棄を認めるには,放棄の必要性があるとともに,モラルハザードを一定程度防ぐ必要があるという認識の下に議論がされてきて,提案は紆余曲折があったかと思いますけれども,最終的に残ったのがこの,事前手続を言わばきちんと踏んでもらって,万策尽きたからやむを得ないね,というところでどうかという話だったのではないかと記憶しています。   そうであるのだから,ここを残せということではないのですけれども,放棄したい人は特に何も感じないのかもしれませんけれども,自分は放棄にはおよそ関係がない,結局国民負担になるだけなんだよなという人にとっては,モラルハザードがどのように防がれるのかということも関心事にはなると思いますので,どこかで,どういう形になるか分かりませんが,その説明を用意していただくとよろしいのではないかと思います。   もう1点ですけれども,これは補足説明の10ページにあります承認の職権取消しについて,期間制限を加えるのをやめましたという話です。これも,書かれていることは分かるのですけれども,承認の取消しが承認から実際上どのぐらい長い期間経てから行われることがありうるのか分かりませんが,抽象的にいうと20年,30年たっても,あるいは代替わりしたって,代替わりというのは,元土地所有者が死んで相続が起こったというような場合だって承認取消しはあり得るということになるわけですね。本当にそこまでする必要があるのだろうかというのが素朴に疑問に思うところです。10年が適当かどうかは分かりません。あるいは20年でもいいのかもしれませんが,一定期間たてばもう戻らないとすることはあってもいいのではないかと思っています。期間制限をしないという説明として,不正な手段を用いた人なのだから保護する必要はないではないかと書かれているわけですけれども,期間制限の制度というのは,時効でもそうですけれども,不当な行為,不正な行為による場合であっても,ここはもう法律関係を確定しましょうという制度だと思うので,どうしてもということではありませんけれども,一定の期間制限が設けられることはあってもいいのではないかと思うという意見を申し上げたく存じます。 ○山野目部会長 佐久間幹事から2点お話を頂きました。   1点目は,従前の部会資料におきまして,事前に売却の努力をすることを,当時,放棄と呼んでいたものの一つの要件,ハードルとして課そうということがあり,その趣旨はモラルハザードの防止ということで議論をお願いしてきたところでありますけれども,考えてみますと,売却の試みという概念が,発想といいますか考え方は委員,幹事におかれても御賛同いただいて,育ててきたところでありますけれども,法制的に少しなじみにくいところがあるというふうな問題があります。それ自体は追求しないということにした反面において,農業経営基盤強化促進法及び森林経営管理法において実定法上の具体的な制度が設けられている局面については,あるいは(注3)で御提示申し上げているようなハードルを設けておくということが考えられるかもしれないということで,提案を差し上げています。   この間,部会資料の建て付けについて,佐久間幹事が御注意いただいたような説明を要する変遷があったと認められますから,その点について,事務当局がどのような意図で部会資料の内容を変化させたのかということについて説明を差し上げた上で,この点についてもし意見がおありであれば,委員,幹事から更に御意見を伺うことにいたします。   後段でおっしゃっていただいた,不正な手段によって承認を得た局面に関しては,佐久間幹事の御指摘のとおりでありますとともに,法制的に見て,不正な手段によって行政庁の許認可を得た場合の措置については,行政関係の法令において他にたくさん類例がございますから,それらとの整合性を検証する必要がございます。そういう点も,事務当局においては今までも検討してきましたし,これからも検討していくことになるであろうと感じます。この点についても,事務当局から紹介してもらえることがあったら申し上げたいと考えます。 ○大谷幹事 まず,手続的要件のところでございます。これは確かに前回まで,売却の試みをするということを一つの要件として求めておりましたけれども,部会資料の4ページの補足説明に書いてありますとおり,具体的に検討してみると,なかなか合理的な仕組みを仕組むのは難しいだろうということがあります。また,管理費用に当たるものを申請者に負担していただくということから考えますと,管理費用まで支払って,それでもこの制度を使いたいという方は,合理的には,普通はまずはそういう負担がないような,売却して一定の代金をもらうであるとか,あるいは全く無償で誰かに引き受けてもらうとか,そういうことを試みた上で,こちらの制度を利用することになるだろうということから,手続的要件として一律に売却の試みをするなどのことまでは求めるべきでないと考え,構成を改めたというところでございます。   一方で,モラルハザードの防止という観点からいたしますと,やはり土地の実体的要件の中である程度厳しい,管理と処分がそれほど難しいものでないものに限って,この制度の対象とするという方向にしておりますので,そのように土地をきちんと管理をした上でこちらの制度に乗っていただく,その意味ではモラルハザードがないように,引き続き仕組みとしては仕組んでいると思っておりますので,説明の仕方かもしれませんけれども,モラルハザードは引き続き防止する方向で考えているということでございます。   2点目の職権取消しの期間制限に関してですけれども,これも前回までと構成を改めたのは,そのとおりでございまして,期間制限は設けておりません。類例を見ましても,こういう悪意で不正な手段を用いて承認を受けたような場合に,その取消しについての期間制限というのは余り例がないと記憶をしております。一方で,相当長期間が経過してしまったときに取消しができるのかというのは,相続などもあり得る中で,承認という行政処分に対する信頼が生ずるということがありますので,取消しが必ず許されるわけではない,それは一般的な権利濫用とかいう話になるかもしれませんけれども,必ず取消しが許されるわけではないだろうと理解をしております。 ○山野目部会長 佐久間幹事におかれて,お続けになることがおありでいらしたら,お願いします。 ○佐久間幹事 いえ,ございません。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。部会資料54について3点申し上げたいと思います。   第1点は,ただいまの事前売却の試みとも絡みますけれども,今回の部会資料54と第19回の部会資料48との大きな違いとして,部会資料48,第1の5では,認定処分の申請に先立って売却等の行為を試みるということが必要でしたが,今回はこの手続を外したことと,もう一つは,部会資料48,第1の8で,認定処分の申請があったときに審査機関が地方公共団体の長等にその旨を通知するとされていましたが,今回はこの手続も外したという点でございます。部会資料54では,第3部の5の③で,法務大臣が必要と認める場合の調査を行う際に,関係行政機関の長のほか,関係地方公共団体の長,関係のある公私の団体その他の関係者から必要な協力を求めることができる点を承継するに止まっています。   このような承認申請に際しての,または承認前の審査に際しての事前手続として,当該申請地が属する地域コミュニティに対して何らかのアプローチをとることを手続に組み入れることができないか,あるいは組み入れる必要がないかという点であります。土地所有権のいわゆる放棄を希望している土地に最も利害関係を持つのは,当該申請地が所在する地域コミュニティではないかと思います。市町村ということになりますと,合併等の結果もありまして,かなり利害関係が薄くなっているという場合も少なくないと思いますし,このことは今回法務省から出していただいた資料やヒアリングの過程でも明らかになった点かと思います。しかしながら,市町村の利害関心と,当該土地が所属する地域コミュニティの利害関心は,少し違うところがあるのではないかと思います。当該申請地がまさに自分の居住地の周辺に存在する者にとっては,その放棄の希望が出ている土地については,やはり何らかの形で利害関心を持ち得るし,場合によってはある程度の負担をしても,何か管理しようというインセンティブを持つ動きが出てこないとも限らないと思います。したがいまして,承認の申請または承認に先立つ審査の手続に先立って,売却等の試みはしないにしても,地域コミュニティにアプローチするということは手続に組み込むことはできないだろうかということでございます。   それから,その手続にとどまらず,その効果に関しても,今回の部会資料54,第3部の8に,承認申請が認められますと,管理費用の納付時に国庫に帰属するとして,効果は国庫帰属が唯一のものということになっております。しかし,この点も,もしかすると,当該地域コミュニティで引き受けてもよい,特に,その管理費用を払ってくれるならば引き受けてもよいというような動きが出てきた場合には,そちらに引き受けてもらうということも考えられますので,その余地も効果として残すことはできないのだろうかと思います。つまり,国が間に入って承認要件の検討と管理費用の判断をしたうえで,その効果を地域コミュニティに帰属させるという特例の創設です。これについては少し御考慮いただける余地があればと考えました。以上が第1点でございます。   それから,第2点目は,これは非常に細かな言葉の問題ですけれども,部会資料54,第3部の3⑥,⑩にございます「過分の費用又は労力」のうちの「労力」という言葉でございます。この用語をあえて残した理由は,部会資料54の8ページでも丁寧に説明していただいており,コの第2段落目で,過分の費用というだけでは金銭的費用に限定されるニュアンスがあるので,争訟のために必要となる資料の準備等の人的負担が重くなることを回避する趣旨であると説明されており,この趣旨は非常によく理解できます。しかし,土地所有権の放棄ないし移転の承認要件として,過分の労力が掛かるときには受けないということを積極的に示すことが,何か負担になる土地を皆で押し付け合っているというか,避けたがっているというか,そういうニュアンスが非常に強くなってしまい,これはよくないのではないかと思います。もちろん,その趣旨はよく分かりますけれども,言葉の持っている一般的なニュアンスとして,少し強い表現なのではないかということが,なお気になる点でございます。費用という場合は,金銭的費用だけではなくて,人的,物的,様々な費用を含みますので,費用ということでもよいのではないかと思った次第です。   ちなみに,今回の部会資料54では,第19回の部会資料48と違って,承認の要件を満たした場合には,第3部3の柱書で,承認をしなければならないという表現に変わっております。部会資料48,第1の6の柱書では,列挙事由のいずれかに該当する場合は認定処分をすることができないという表現になっていましたので,この修正は,管理困難となった土地の移転のサイクルを創設するという制度趣旨を示すものとして,私は非常によいのではないかと思います。その意味で,一定要件を満たしていれば承認をしなければならないのだという表現ぶりは,非常に前進であると思います。それを更に一貫させるためにも,労力については御一考いただけたら有り難いと感じた次第です。   それから,3点目は,これも更に細かな言葉の問題で,もしかすると私の無知によることかもしれませんけれども,第3部,3⑨の,「争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地」という文言です。これは部会資料48にもあった表現ですけれども,具体的に想定されているのは,申請地の隣地から樹木の枝が伸びてきたり,建物が越境していたりということで紛争になることが不可避だということだと思いますので,その管理や処分に当たって紛争が不可避である土地とか,あるいは紛争が不可避的に伴うというような表現でもよいのではないかと思いました。この点は非常に細かな点でございます。恐縮ですけれども,気が付いた点を申し上げました。 ○山野目部会長 松尾幹事から3点にわたって種々の御指摘を頂きました。お尋ねではなくて御意見であると受け止めましたから,今後の検討において参考にするということにさせていただきます。   あわせて1点のみ,松尾幹事にお教えを頂きたいことでございまして,1点目の意見でおっしゃった,承認申請をするに際して連絡調整をすることが望まれる地域コミュニティというお言葉をお使いになったと聞きましたけれども,これは具体的にはどういう概念でしょうか。 ○松尾幹事 大変失礼しました。市町村の中にある,例えば地方でいうと部落とか区とかいう単位のものでございます。都市では自治会というようなものがそれに当たるかと思います。その一部は地方自治法260条の2の「地縁による団体」の認可手続をとっているものもありますが,とっていないものも含めて,権利能力のない社団の要件を備えたものを想定しております。大変失礼しました。 ○山野目部会長 いいえ,かえってありがとうございます。御意見を理解いたしました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○今川委員 この制度自体は原則として賛成をするものですけれども,関連して確認します。相続人不存在の場合に,相続財産管理人,これは相続財産清算人と名前を変えることが提案されているのですが,その清算事務が全て終了した最終局面としての国庫帰属の制度と本制度とは関係がないと考えます。何を言いたいかといいますと,本制度における国庫帰属の要件というものが相続財産の国庫帰属に影響を与えるというようなことは基本的にはないですねという確認です。相続財産の方は,法律上当然に国庫に帰属するという制度ですので,本規律のように行政処分として承認する,そのための要件を定めているというのとは意味が違いますので,そこを1点,確認をしておきたかったということであります。 ○山野目部会長 お尋ねでありましたから,959条が定める帰属と,ここで構想されている帰属の概念との関係についての整理を事務当局から差し上げます。 ○大谷幹事 今お尋ねいただきました相続財産の清算の仕組み,これは相続人のあることが明らかでない場合には,必ず清算人を選任した上で清算手続を経て国庫帰属をさせるというものでございます。一方でこちらの制度は行政処分,承認という手続を経て国庫に帰属するというものでございますけれども,もちろん別の場面のことでございますので,こちらの仕組みを導入したからといって,相続財産の清算の手続が変わるというものではないと理解をしております。 ○山野目部会長 今川委員,よろしゅうございますか。 ○今川委員 はい。 ○伊藤幹事 東京法務局の伊藤でございます。今回,土地所有権の国庫の帰属に関する審査機関の役割を法務局に担わせるという御提案でございますけれども,私自身,大変に大きな,また全く新しい仕事でございますので,身が引き締まる思いがしているところでございます。一方におきまして,第19回会議におきまして複数の委員,幹事の先生方から,審査機関の役割を仮に法務局に担わせるに当たっては,人的体制の整備や予算的措置の必要性を指摘するお話がございましたが,私も全く同感でございまして,現状の人的体制や予算では到底この新しい制度を回していくことはできないと考えているところでございます。   また,申請がされた初期の段階で所管行政庁を定めて,所管行政庁の方には,承認されることとなれば,管理費用が納付されると同時に当該土地の管理を開始しなければならないということを前提として対応していただく必要があろうかと存じます。この制度の下にありましては,承認後,管理費用が納付されると同時に所管行政庁が管理を行うスキームと考えておりますけれども,法務大臣が承認をして,承認申請者も管理費用を納付したのだけれども,実際の管理がスタートしないというような事態が起きないように,運用を整えていただく必要があろうかと存じます。   また,承認を行う際の要件の中には,例えば,部会資料1ページの3の④や⑧など,土壌汚染の有無など,法務局に全く知見がないというものもございます。そこで,例えば土壌汚染あるいは埋蔵物の有無に関する要件などについて,管理をすることが予定される行政庁の知見によれば地歴などから承認が認められない土地に当たる疑いがあるというような場合には,所管行政庁の方から疑いがあるということを御報告いただいた上で,審査機関の方から承認申請者側に具体的にそのおそれを示し,承認申請者側にボーリング調査等を行わせて,その結果を報告していただくというような経過をたどると思いますので,所管行政庁の側にも御協力をお願いしたいと思っております。   いずれにしましても,本省レベルはもとより,各現場の段階においても,審査機関と所管行政庁との実質的かつ緊密な連絡体制がとられる必要があろうかと思っているところでございます。 ○山野目部会長 伊藤幹事から御発言を頂いたことを受けまして,この際,一言申し上げます。この制度の構想におきましては,前の部会資料までは審査機関というものについて抽象的な御案内しかしておりませんでしたけれども,本日ここに至りまして,法務大臣を承認の権限を有する者として明確にイメージを具体化し,その具体の事務を法務局職員に担っていただくという構想を提示しているものでございます。それを受けて,ただいま伊藤幹事から御発言を頂きました。   私の方から2点御案内いたしますと,1点目といたしましては,この制度の創設がこの構想のとおりに進む場合には,法務局の職員の皆様に新しいお仕事をお願いし,多大な御負担をお掛けすることになります。ただいま伊藤幹事からは,鋭意その仕事に取り組んでまいりたいという決意を語っていただいたことを大変有り難く思い,全ての法務局職員を代表する気持ちとしておっしゃっていただいたものと受け止めます。この方向で進むことになりますと,法務局職員の研修や体制整備等において御労苦がお願いすることになりますけれども,何とぞよろしくお願い申し上げます。   もう1点は,ただいまの伊藤幹事のお話にありましたとおり,法務局が実際にこの制度の運用に係る事務を処していくに当たっては,法務局ないしその職員が有してきた知見のみでは対応が困難な事案が多くの局面において生ずることが予想されます。国民の関心も大きい制度でございますから,法務大臣を審査機関とする内容を提示しているところでありますが,その運用に際しては,この部会に関係官をお出しいただいている府省を始めとして,政府が一体をなす協力体制を構築して運用していくことが非常に重要であると感じられますから,今後この構想でお話が進みます際には,政府としてその運用の準備方について,よろしくお取り計らいを賜りたいと望むものでございます。   吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。正に今,伊藤幹事と部会長がおっしゃったことに関連して,私も少しだけ申し上げたいと思っていたところでした。   部会資料の6ページ下から8行目で,法務局や関係行政機関の職員が現地調査に赴き,とございまして,これは法的な権利関係の審査に加えて,現地で境界確認をするという専門的かつ物理的な大変さが求められるものだと拝読しました。是非人的な体制が整備されるように願っております。雪の多い地域では冬場は現地確認が難しいといった季節的な要因などもあるかと思いますので,それらが審査にどのように影響するのかといったことも考えなければいけないかと思います。他方で,これは関係行政機関や専門業界の方々の協力,連携を図る絶好の機会でもありますので,今回のこの新しい仕組みを契機として,土地政策において関係する方々の連携が図られる機会になればと願っています。 ○山野目部会長 道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。いろいろな御発言があったのですが,その中で少し分からなかったところが2点ありますので,伺わせていただければと思います。   まず1点は,蓑毛さんの方からご紹介があった意見ですけれども,1の相続がどうしたということに関連いたしまして,事前に信託を設定するとか,あるいは贈与をするというふうな場合というのが,現在ではエステイトプランニングとして結構行われているところ,そのときに放棄ができないことにする,つまり,それらの対象財産をこの制度から除外してしまうと,エステイトプランニングとしての信託設定や贈与に対する逆風といいますか阻害要因になり得るおそれがあるので,それらも含めて国庫帰属ができ得る対象にすべきではないかという意見があったということについてです。しかし,それは,売買であれ相続であれ,受け取った側が合意をしている例ですよね。そういうものも含めてこの制度に入れるということになりますと,制度そのものの性格をかなり変容させるのではないかと思うのです。   そもそも,一部の共有持分を有していた場合に,相続によって,残りの共有部分が来たときにどうするかという問題があって,それはいっしょにして国庫帰属ができるようにしようと今回,直したわけです。それについても,私は,本当にそうすべきなのかなあという気はしますが,それについてはまあ認めるといたしましても,それ以外に一般的に,売買にせよ,贈与にせよ,信託にせよ,含めて考えるべきだという御意見があるということは,どうやってそれが正当化されるのかというのが私にはよく分かりませんでした。   第2点は,これは松尾さんがおっしゃったことなのですが,国庫帰属というのではなくて,地縁団体をもっと活用するということなのですが,それは無理筋だろうと思います。国庫が地縁団体に管理を委ねるということにすればよい,そのシチュエーションごとに,場合ごとにそういう判断をすればよいではないかという気がいたします。  後半は意見なんですが,前半は,どういう場合を考えていらっしゃるのかがよく分からなかったものですから,お教えいただければと思います。 ○山野目部会長 蓑毛幹事にも,もしおありだったら補足の御発言をお願いしたいと考えておりますけれども,道垣内委員に一つお教えを頂きたい点のお話を差し上げるとすれば,相続人に対する死因贈与で取得された土地というものはどういうふうにお感じになりますでしょうか。 ○道垣内委員 形式的に,合意があったものは全部除くとすべきだと思います。 ○山野目部会長 御意見を理解いたしました。   蓑毛幹事におかれて,何か補足の御発言がおありでしょうか。 ○蓑毛幹事 道垣内先生がおっしゃることは,その発言自体としては理解できるところです。この制度が飽くまでも合意に基づいて取得したものは除外するのだということを徹底するのであれば,先ほど申し上げた日弁連の意見は正当化されないということになろうかと思います。   一方で,この国庫帰属の制度は,現在発生している所有者不明土地問題の今後の発生を抑制することが,その目的の根幹にあると理解しています。すなわち,現在適切に管理されている土地が,将来適切に管理されなくなる事態を防ぐための一つの方策として,この国庫帰属の制度を創設するということだと思います。そして,先ほど申し上げたとおり,生前に相続人に対して売買,贈与,信託などにより所有権を移転することは,次世代に土地を適切に承継させ,将来の適切な土地所有権の管理のために有益であり,究極的には,国庫帰属の制度と目的を同じくするものだと思います。   そのような観点から,今回の国庫帰属の制度の創設が合意に基づくものを除くというものとして制度設計されていることは理解しておりますが,一部それを緩め,相続人に対する売買,贈与等を阻害しないようにしてはどうかというのが日弁連の意見です。 ○山野目部会長 蓑毛幹事が弁護士会で出された意見をお伝えいただいたところは理解いたしました。   道垣内委員において,お続けになることがおありだったらおっしゃってください。 ○道垣内委員 賛成できないというだけです。すみません。 ○山野目部会長 野暮なお尋ねを致しました。賛成がおできにならないものであろうと理解しております。道垣内委員のお立場は,合意・非合意の基準というものをきちんと維持して制度設計を進めなければ,この制度の全体の輪郭が分からなくなってくるという御注意であります。それはそれとしてお考えは明解であります。   蓑毛幹事が弁護士会の御意見としてお伝えいただいたところは,恐らく,その趣旨やそれに関わって道垣内委員がおっしゃった懸念は理解していただきつつも,元々弁護士会の先生方の中にこの制度の版図をもう少し拡げて始めたいというお気持ちが底流にあって,そういうことを考えると,合意・非合意の基準というよりは,ニックネームを付けると相続人受け手の基準というものしょうか,権利を取得することになる者が相続人であるときには,相続や遺贈のほかに,贈与であるとか,売買であるとか,信託であるとかというのも緩めて入れるということも一つの政策としてあり得るということをお話しくださったものと理解します。   そこは悩むところでございますから,道垣内委員の御懸念と蓑毛幹事からお伝えいただいた弁護士会の御意見等を踏まえて,どのような制度の構想にするかを考えていかなければいけないと受け止めます。ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。先ほど道垣内先生から御指摘があった点について,補足させていただきます。御指摘にうまく答えられるかどうか分からないのですけれども,国庫帰属すべき土地について,認可地縁団体ないし地域コミュニティに帰属させるというのは難しいのではないかというお話でしたけれども,私が先ほどこれを申しました趣旨は,土地所有権の放棄ないし移転の申請をしたいという人と,その申請地が属する認可地縁団体ないし地域コミュニティとが直接交渉したときには,なかなか交渉がまとまらずに難しい場合でも,今回のこの土地所有権の放棄ないし移転の承認手続に乗せて,所定の要件についての審査を経て,適切な管理費用も認定する形で,国が仲介役的な立場に立って手続を進めたうえで,その帰属先として認可地縁団体ないし地域コミュニティとすることも意味があるのではないかと考えた次第です。その審査の手数料は国に入りますけれども,土地所有権が認可地縁団体ないし地域コミュニティに帰属する場合は,管理費用に関しては認可地縁団体ないし地域コミュニティに対して支払ってもらう形をとることにより,国にとっても土地の管理負担を軽減するメリットがあるのではないかと思います。もちろん,それは地域コミュニティの方からそういう希望があればその手続に乗せるという趣旨で申し上げました。それが余り功を奏さないかもしれませんけれども,私人にとって管理困難となった土地の受け皿の1つとして,市町村とは異なる可能性があるものとして,申請地の地域コミュニティを何らかの形で制度に取り込むべきではないか,申し上げたかったのはそういう趣旨でございます。 ○山野目部会長 松尾幹事の地域社会への熱い思いが伝わってくるお話を頂きました。それとともに,道垣内委員から御注意を頂いたように,その御構想を直接の仕方で法制的に,取り分け民事法制において実現することができるかということについては,危ぶまれる側面があるという御注意もそのとおりであろうと感じます。御議論を頂きましてありがとうございます。   國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。今回のいわゆる土地所有権の放棄の関係ですけれども,基本的には賛成を致します。いわゆる土地の管理が一番重要だということで,そのうちの一番重要なところは,やはり土地の境界の画定をしていくというところが大事だというのは,私どもが何度もお話しさせていただいたところでございます。これについても,審査機関が法務大臣,いわゆる法務局が筆界を確認するということも含めてですけれども,対応するということは,これも賛成でございます。   先ほど伊藤幹事の方からもありました,この規律を運用していくためのいろいろな方策をこれから考えていただくということなのですけれども,我々土地家屋調査士としても,こういった機会に御協力を是非させていただきたいと思いますし,例えば,表題部所有者不明土地問題のいわゆる探索委員というような形を取っていただくというようなことも一つの方策なのだろうと思っていますし,それの受皿として,我々の業界も是非参加させていただきたいし,また御協力をさせていただく用意があると思っております。是非運用方法も含めて,これからも検討をしていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたならば,部会資料54で制度として構想を提示申し上げております土地の所有権の国への帰属の制度については,本日の段階の御審議を頂いたものと整理を致します。   この際,私の方から一言申し上げます。この制度に関わるもろもろの論点について,熱心な御議論を頂きましてありがとうございます。私の方から取り分け御案内しておきたい事項は,土地政策との関連ということでございます。部会資料54で提示しておりますものは,国民の関心も大きい重要な制度でありますとともに,これを大局的な観点で整理してながめたときには,どのような位置付けを与えられるものであるかと申しますと,土地基本法の13条が土地の所有者,国,地方公共団体に対して求めている低未利用地の管理,適切な利用その他の責務ということと密接に関連しております。13条が構想している幅広い政策領域の一角を占めるものであります。この制度がこのまま創設されるということになったとしても,ここだけでは尽くせない様々な土地政策上の課題が残ります。この法律,この制度の外郭において,これから国土交通省の方で御努力を頂いて進んでいくであろうランドバンクであるとか,地域コミュニティの再生のための管理構想であるとか,それから農業経営基盤促進法や森林経営管理法が定めている様々な仕組みや,そういった土地政策のもろもろの,既にあり,また,これから設けられていく施策と有機的な連携を保つように,この制度が運用されていくことが強く要請されます。   本日の御発言の中で,吉原委員から,様々な職能との連携を含む土地政策との関連を意識することの重要性の御指摘を頂きました。松尾幹事からは,地域コミュニティとの関連ということを重視しなければならないという御指摘も頂きました。恐らく松尾幹事が提案なさったことは,道垣内委員から御注意があったように,民事法制としての基本的性格を持つこの法制に入れるということは法技術的に困難というか,恐らく不可能であると感じますけれども,それとは別に,承認申請があったというような情報を地域が共有できるような仕組みを,これから広い意味での土地政策の中でネットワークとして構築していく中で,御心配になったような,地域コミュニティとの対話が欠落してはいけませんといったような要請に応えるような施策が展開していくものであるのかもしれません。   それから,本日は部会資料で提示申し上げている太字の提案の後に,(注3)として,農業経営基盤強化促進法,それから森林経営管理法の運用に関わる内容をどうしようかという問題の示唆を差し上げていたところでありました。総務省,農林水産省そして林野庁,の関係官からそれぞれ有益な御指摘を頂きました。改めて,政府として土地基本法13条の理念を実現していくために,国,そして地方公共団体がそれぞれの役割を担わされているということに思いを致していただいて,それらの間の適切な分担が図られる姿がどういうものであるかということについて連絡調整を努めていただきたいと望みます。今後,成案を得るために,この(注3)の点についても審議を深めてまいらなければなりませんけれども,是非この部会に関係官をお出しいただいている府省を中心に,成案が得られる方向で鋭意連絡調整を図っていただくことを強くお願いするものでございます。   部会資料54についての審議をここまでといたします。   続きまして,部会資料53の不動産登記制度の検討のところに進まなければなりませんけれども,法務省事務当局の側の関係官の席の入替えをしなければなりません。休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料53をお取り上げください。構想される要綱案の第2部に当たる「不動産登記法等の見直し」に係る改正構想事項の全てをこの冊子に綴じてございます。内容が盛りだくさんでございますから,少し分けて御意見をお尋ねすることにいたします。   初めに,第2部の「第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」,この部分について御意見をお尋ねすることにいたします。部会資料で申しますと,補足説明まで入れますと11ページまでの範囲で御意見を承ることにいたします。いかがでしょうか。 ○今川委員 第1の1(1)の所有権の登記名義人が死亡した場合における登記の申請の義務付けについてですが,①の義務付けについては,後で出てきます(3)の相続人申告登記の制度を創設して,その制度による申出をすることにより登記申請義務が履行されたことになることを前提として賛成を致します。また,同じように,相続人申告登記の申出により義務の履行を認められるということであれば,義務履行の期間を3年とすること,これは比較的短期ですけれども,それについても反対するものではありません。なお,義務化を導入するのであれば,是非登録免許税の軽減策を併せて導入されることを要望いたします。   次に,本文②の法定相続分による登記がされた後に,遺産分割があった場合に,更に登記の申請を義務付けるということについては消極意見の方が多いです。理由は,一つはまず,私的自治の原則に従うべきであるということ。関連しますが,売買や贈与その他の意思の合致による物権変動が生じた局面でも登記の義務化につながらないかという危惧があるということであります。二つ目として,そもそも不動産を含む遺産について分割協議を行うということは,それ自体,登記を前提としているともいえますので,あとは対抗関係の下での行動に任せていいのではないかということであります。三つ目の理由は,相続登記を義務とすることの理由としては,権利能力を失った者を公示し続けるのが不適当であると,こういう理由が大きかったと思います。そうであるならば,一旦法定相続での登記や相続人申告登記がされたということは,その後,遺産分割があった場合について登記の義務を課す必要はないのではないかということであります。四つ目として,このような規律を置くと,ある特定の不動産を除外して一部分割をするということも考えられるので,その実効性に少し疑問があると,こういう理由です。   ただ,一方で,本文②について,もしこのような規律を置くのであれば,3年は長いのではないかという意見もあります。遺産分割協議が成立していながら長期間申請しないという理由が見当たらないので,もしもこの制度を導入するのであれば,例えば1年以内ぐらいでもいいのではないかという実務の感覚からの意見があります。   それから,(注5)の改正法施行時既に所有権の登記名義人が死亡している不動産についての義務付けですけれども,本文①と同様に,義務発生要件に主観的要件が元々盛り込まれているということと,補足説明5の第1段落で説明されているように,既に登記名義人に死亡が発生している場合についても相続人申告登記の申出をすることで義務履行を認めるということを前提とされているとするのであれば,賛成であります。また,義務履行の期間を3年とするということについても,先ほど述べた理由によって反対するものではありません。   (2)の相続登記等の申請義務違反の効果ですけれども,過料を科すということについては消極な意見の方が多いです。理由は,過料が科されているということで登記申請行動に結び付くのかどうかというのが我々の実務の感覚からして疑問であるということ,それから,正当な理由がないのに申請を怠ったことを登記官が判断するということになるのですが,補足説明にあるように,違反していることを職務上知る場合というのがどれほどあるのかというのが疑問であるという実効性の観点からの消極意見であります。それよりも,登録免許税の軽減等のインセンティブを与える方法によって義務化の実効性を持たせていく方がよいという意見であります。   それから,(3)相続人申告登記の創設ですけれども,これは賛成であります。ただ,④の遺産分割を行った際の登記申請義務については(1)で述べたのと同じ意見です。   幾つか,若干細かいところで質問があるのですが,補足説明2の6ページの最終行の括弧書きに,相続人に対する遺贈により所有権を取得した者についても,相続人申告登記により,登記申請義務を履行したものとみなすという表現があります。ということは,特定財産承継遺言によって取得したもの,さらには遺産分割によって取得したものについても,このようなケースは余りないかとは思いますが,規律上は相続人申告登記をすることによって義務を免れるということになるのですねという確認です。   それから,二つ目の質問ですが,これも同じく補足説明2の7ページの第2段落の8行目に,登記官は,所要の調査の上で,職権で登記を行うとあります。これは(注2)と関連するのですが,この所要の調査というのは,住基ネットとの連携を利用して登記名義人の死亡の事実を確認したり,被相続人の死亡時の住所を調査して同一性を確認するというような意味ですねという確認と質問です。つまり,この登記の申出をする相続人が,被相続人の死亡の事実や死亡時の住所を証するものを提供しない,あるいはそれが不足していたとしても,そのまま受け付けて職権で登記をしてしまうという意味なのだろうと思うのですが,その辺,お尋ねを致します。   それから,補足説明3の具体的な公示方法ですけれども,相続人申告登記については付記登記,そして,申出をした者が死亡した場合や住所又は氏名に変更があった場合には,付記登記の付記登記という形式をとることについては,今後,細部はまた省令等で定められることになるのだろうと思いますが,基本的にはそれでよいのだろうと思っております。そこで質問ですけれども,申出をした者について住所や氏名に変更があった場合は,その変更の旨も申出をさせるのか,申出をさせるとしたら,これを義務化の対象にするのか,それから,現時点ではこの申出をした者の住所,氏名の登記については住基ネット連携の対象には直ちにはならないのですねという確認であります。   それから,これは申出に基づき職権によって登記をするという仕組みなので,手数料等も掛からないのですねという質問と,それから,これも同じ補足説明2の7ページの第2段落に,管轄区域外の不動産についても最寄りの法務局で申出をすることができるようにすることを検討するとありますけれども,これは当事者の負担を軽くするためにも,是非そのような制度としていただきたいという要望であります。   それから,補足説明3で,相続人申告登記の申出をした者が死亡した場合に,登記官が職権でその者の死亡の事実があったことを示す符合を表示するということについては,すぐに実現することは困難であると説明されていますが,それは理解します。ただ,将来においてはデジタル化を進めて,この申告登記についても,ほかのネットワークとの連携を図るような改善はしていただきたいという,これも要望であります。   それから,(4)について,遺贈による所有権の移転の登記手続の簡略化については賛成です。   (5)の法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化についても賛成です。ただ,(注)については消極な意見が多いです。この点については部会で何回か意見を述べさせていただいておりますが,(注)の提案は,所有権の登記名義人となっている他の相続人の保護の観点から,必要に応じて仮処分の申立て等の所要の措置を講ずる機会を与えることが目的であるとされていますが,その趣旨に反対するものではありません。   ただ,消極である理由として,一つには,法定相続の登記を経ずに最初から特定財産承継遺言に基づく相続又は相続人に対する遺贈の登記の申請をするときには,他の相続人に対しては何ら通知はされません。二つ目として,登記手続以外の局面ですが,自筆証書遺言は検認等の手続の場面で他の相続人に対して通知されますが,公正証書遺言の場合はそのような通知もなくて,登記がそのままされてしまうということであります。これ自体,よくないと言っているわけではないのですが,そういうふうな制度になっているということです。それから,三つ目の理由として,例えば,多数存在する相続人の1人が保存行為として全員のために法定相続分による登記をする場合,そもそも法定相続分による登記はほとんどがこの場合だと思います。ある1人の相続人が,保存行為として全員のために法定相続分による登記をした場合,この法定相続分による登記をしたこと自体が登記申請を行った相続人以外の相続人には通知もされません。そのため,登記名義人になった認識すらない相続人がいるということであります。以上のことから,相続人の保護を図ること自体は否定しないのですが,バランスを考えると,仮に他の相続人が所要の措置を採る機会を失わないようにするための方策を検討するのであれば,登記の局面だけでなく,相続法において実効性のある方策を検討すべきではないのかというのが意見であります。   それから,これは少し司法書士として細かい要望になりますが,中間試案の補足説明の中で,この本文における更正登記の登記原因については「遺産分割」とするというような説明がありました。これは維持していただきたいと思います。加えて,法定相続分による登記と,法定相続分による登記を経ないで直に遺産分割協議による登記をした場合の登記原因が同じなので,遺産分割協議を行っているのか否かが登記記録上判然としないという課題があります。今後は,この部会での議論ではないかもしれませんが,登記原因についても見直しを検討していただきたいと要望いたします。   それから,2の権利能力を有しないこととなったと認めるべき所有権の登記名義人についての符合の表示ですが,これは賛成であります。   第1については以上です。 ○山野目部会長 司法書士会の意見を取りまとめいただきましてありがとうございました。お尋ねがあった点を中心に,事務当局から回答を差し上げます。 ○村松幹事 幾つか御指摘,御質問を頂いておりますけれども,まず,6ページの一番下の辺りというところで,遺贈により所有権を取得した者についても,申告登記によって申請義務を履行したものとみなすと,これはゴシックの方で書いてあるとおりの文言になっています。実体的に遺言がされているとか,あるいは遺産分割がされているとか,ありますけれども,後に取り消されたりすることもあるということも含めて考えますと,幅広く申告登記で義務が免除されるという形にする方がよろしいのではないかということで,この部分はそのように全般的に記載しているものですので,御質問の点については,そのとおりだということになろうかと思います。   それから,申告登記について,今回,職権的に行うという表現に全般的にしていますけれども,申出をしていただくけれども,その後の,あるいは全体の手続としては職権登記という側で基本的には整理するという新しい仕組みを設けています。この部分については,資料の中にも書いておりますけれども,添付書面に関して,なるだけ省力化したいし,あるいは今後の技術革新というと言葉は強いですけれども,様々なデジタル的な連携が進むごとに,あるいは法務局側でのマンパワーがあるのであれば,できるだけ申請人の負担を軽減するという施策を引き続き検討していきたいと思っておりますので,その意味で,所要の調査の内容というのもできるだけ減らせるようにというのが含意であります。そこから先,どこまで減らせるかというのは引き続き省令の中で具体的には考えていきたいということを,施行時まで若干の時間がありますので,またその間の状況の変化も見ながら考えていくことを予定しております。調査が必要な事項については従前から申し上げているとおりですし,今の御指摘が前提の話になっているかと思っております。   それから,付記の関係で,付記登記で結局,申告された相続人の名前が入ってくるということになっておりますけれども,この関係で,相続人申告登記がされた後の住所,氏名の変更は認めるのだろうとは思っております。問題は,それが住基との連携の対象にできるのか,あるいは,住基との連携の対象にできるのであれば,また職権的にここも変更していけるのではないかという部分がございます。この部分,全体的には職権登記の世界の中の話ですので,ある程度,省令の中で,これもまたコントロール可能かなと思っておりますが,実際のところ,住基との連携がこの部分について可能かどうかについては,まだこちらの側ではシステム面を含めて精査中という状況です。基本的には,ますは所有権の登記名義人について,こういった施策をしっかり講じていくのが前提で,しかし,次の段階といいますか,同様のニーズがここの部分にもあるということは認識しておりますので,そこは問題意識を持っております。ただ,まだ現状では,結局,システム開発の規模が,ここも入れるとなると,膨らんでくるところがありますので,問題意識は持って取り組まなくてはならない,そういう課題だというところになっております。申し上げたいのは,必ずしもここを法律事項にしておかなくても対処は可能なものではないかとは感じているのですけれども,そういったところでこの部分は考えております。 ○山野目部会長 村松幹事に一つ補足ですけれども,相続人申告登記において記録された氏名,住所のうち住所に変更があったときの申請が義務付けられるかという司法書士会の御疑問があったと聞きました。この部会資料の構想は義務付けられないということであろうと理解していますけれども,いかがですか。 ○村松幹事 おっしゃるとおりであります。 ○山野目部会長 ありがとうございます。山田委員,お待たせをいたしました。 ○山田委員 ありがとうございます。簡単な質問で,申し訳ありません。意見というよりは,どういうことでしょうか,こういうことでしょうかというような質問を差し上げたいと思います。   第1の1,相続登記の申請の義務付けに関わることであります。ずっと議論してきたことですし,このような方向で具体化していくことについて賛成という立場を最初に表明した上で,質問をさせていただきます。   どういうことかというと,共同相続で複数の相続人がいると,遺産分割は行われていなくて,法定相続分どおり登記をすることになる,それが義務付けられるということになります。①の一番中心的な例であります。直前の御発言の中にもありましたが,保存行為として位置付けられますので,A,B,C,3人,共同相続人がいた場合は,その中の誰か1人が申請をすれば,相続を原因とした登記が法定相続分どおりで実現すると理解しております。そうすると,1の(1)の③の,前記①及び②の規定は,代位者その他の者の申請又は嘱託により,当該各規定による登記がされた場合には,適用しないとありますが,これが働いて,Aが単独で申請して登記がなされれば,BとCはこの規定に基づいて義務を免れることになると,そういう作りになっていると理解をしましたが,それでよろしいでしょうかというのが質問です。その質問に限りますので,申し訳ありません,お教えください。お願いします。 ○村松幹事 山田委員御指摘のとおりでございまして,代位者その他の者の申請と書いておりますけれども,この部分で今の御指摘のあった部分は読むことになろうかと思っております。A,B,Cといて,Aが保存行為として法定相続分での所有権の移転の登記の申請をしましたら,B及びCの名前が入っていますので,BとCについても義務は履行されたものとなるということでございます。 ○山野目部会長 山田委員,いかがでしょうか。 ○山田委員 分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。まず第1の1,つまり相続登記等の申請の義務付けに関して発言をさせていただきます。   原案に一応というか基本的に賛成であるということを申し上げた上で,先ほど今川委員がおっしゃいました反対意見に対して,今までも同じことを言ってきており,繰り返しになるのですけれども,いや,それは違うと思うということを申し上げたいと思います。その上で,1点だけやや疑問に思うところがあるので,申し上げたいことがあります。   今川委員は先ほど,特に第1の1の②について反対であると,今川委員御自身が反対かどうか存じませんが,司法書士会としては反対の意見が強いということをおっしゃって,4点,反対の理由を挙げられました。私は,その反対の理由はいずれも必ずしも妥当しないのではないかと思っています。それらを個別に申し上げようとは思うのですが,結局のところ,この義務付けを何のためにするかというところで認識に違いがあるのだろうと思います。   特にそれを端的に表しているのが,今川委員が3番目の理由としておっしゃったことで,ここで義務を認めるのは,権利能力のない者が所有権を有しているという記録を残し続けないことですよねとおっしゃったわけですが,私はそうではなくて,所有権を取得した方が所有権の登記を積極的にする,登記を見れば所有者が誰かが分かるという状態を実現する,その方策としてこれを考えるということであろうと思っています。そうだとすると,では,どうしてこの場面でというのは資料の補足説明にも書かれておりますし,これまでもずっと述べられてきているとおり,売買等の場合には基本的に自己の権利を守るための権利者の主体的行動を期待することができると考えられるのに対し,今,義務付けが問題とされている場面では,必ずしもそうとは言い難い面もある,だからここを手当てするのだということだと思うのです。   今川委員は第1の理由として,ここでもし遺産分割などを入れてしまうと,売買等への拡張が心配されるのではないかとおっしゃったわけですけれども,この案は慎重に,そこは権利を取得した人が単独で登記の申請をすることができるという場面,ほかのところを工夫してですけれども,全部そういう場面に限って義務付けようとしているわけですので,売買の場合等に簡単に波及することにはならないと思います。   それから,第2の理由として挙げられた,これは私的自治に任せるのだということについては,いや,これは公共の利益を守るためだという側面もあるのだということも,これまで申し上げてきたところです。さらに,一部分割の助長をすることになるのではないかとおっしゃいましたけれども,しかし,その場面であっても,法定相続分による登記又は相続人申告登記は3年以内にしなければいけないというわけですから,登記名義に関して,あるいは登記記録に関して一定の手当てがされるという状態で,それ以上,誰に帰属させるかということをある土地について決めないというのは,もう致し方がないと割り切ることができるのではないかと思っています。したがいまして,ここの義務付けの趣旨が,所有権の登記がきちんとされることにしようということにあるのだと理解いたしますと,この提案は特段,問題を抱えているわけではないと思っています。   その上で,相続人申告登記の扱いについて,先ほどは1点と申しましたが,2点申し上げたいことがあります。一つは,先ほどの今川委員からの問い掛けに対して村松幹事がお答えになった,申告登記の場合,住所変更の義務付けはしないのだということなのですけれども,技術的に難しいということもあるのかもしれず,それはしようがないのかなとも思いますけれども,申告登記だけがされて,その後,結局,住所が変更されないままほったらかしになるということになりますと,登記を見ても所有者を追えない,簡単には所有者にたどり着けないという状態が残ってしまうことになりますので,何とかできないのかなと思っています。これが意見の1点目です。   もう1点は,申告登記でもって義務が履行されたとされる場合につきまして,それほどないのかもしれませんが,遺産分割が既にされた,相続開始時から3年以内にですね,あるいは特定財産承継遺言があるということも認識している,そういった場合に,そうであるにもかかわらず,当該権利者が申告登記しかしなかったけれども,それで義務が果たされましたとなると,何となく,まず申告登記がされ,その後に,遺産分割がされたとか,特定財産承継遺言があることが分かったというときと,バランスが取れないような気がします。権利関係を公示するのだということにもし趣旨があるとすると,ここは趣旨の捉え方に違いがあるということは理解しておりますが,そこに趣旨があるとすると,何だか,遺産分割が終わっていません,あるいは帰属が本当の意味では確定していませんというところでは,申告登記で置き換えるというのはなるほどと思うのですが,権利関係が既に確定しているにもかかわらず,申告登記をすればそれでオーケーですよというのは,制度の仕組み方として難しい点があるのだとすると,そこは何とも申し上げられませんけれども,受け取られ方としては非常に中途半端というか,権利の登記は結局無理にしなくてもいいのだよねと受け取られかねないように見えるのではないかが,少し気がかりなところです。 ○山野目部会長 佐久間幹事から,合わせて3点を頂きました。後ろの2点,相続人申告登記に関する御提案を含む御意見については,引き続き検討することにいたします。   1点目でおっしゃっていただいた事項は,今川委員との論争に発展しつつあります。論争にニックネームを付けるとすると,2段ロケット論争とでもいうべきものでありまして,相続人申告登記がされ,又は法定相続分による相続による所有権の移転の登記がされた後,遺産分割があった場合において,当該遺産分割の成果を反映する遺産分割による登記を義務付けの範囲に含むかどうかという論点,この後ろの2段目のお話のところ,言うなれば2段ロケットのところを義務付けに含むかどうかということについて,ただいま今川委員と佐久間幹事との間に応酬がありました。 ○橋本幹事 少し気が引けるのですけれども,弁護士会の意見状況を報告したいと思います。相続登記の義務付けの点については,中間試案の段階から日弁連としては消極な意見を申し上げてきたところです。ただ,そうはいっても過料の制裁も科さないものでは意味がないだろうという賛成意見を述べるところももちろんあります。なので,日弁連として一枚岩で反対ということではないのですが,依然として過料の制裁については反対であり,抽象的義務の限度にとどめるべきであるというのが現時点においても多数であります。   それで,仮に過料の制裁を課するとしてもなのですが,今,2段ロケット論争になっていますが,弁護士会としても②の点,それから(3)の④の点,この2段ロケット論争は少し行きすぎではなかろうかという意見が強い状況でした。政策パッケージとしてはここまでやらないと徹底しないというのは,それはそれで私は理解します。ただ,少しそれでは酷ではないだろうかというような心情的なところもありまして,そこについては消極であると。仮に共同相続についての登記義務で過料の制裁としたとしても,2段ロケット目は勘弁してくれないかということです。   それと,もう1点ですが,過料の制裁を課すについての運用については,通達で明確化すると,登記官が催告をしたにもかかわらず,正当な理由がないのに,やはり応じないという場合に限って過料の制裁を発動するというようなことが書かれていますが,この点については,過料の制裁を作る場合には,やはりしっかりと通達を整理していただいて,そのほか一問一答などでもしっかりこの趣旨を国民に分かるように広く啓発していただいて,不意打ちになるようなことがないようにお願いしたいと考えています。   それから,1の(1)の(注5)の点ですが,施行時から3年でどうかという問い掛けなのですけれども,3年ではやはり短いのではなかろうかと。恐らく既に亡くなっているケースに関しては,この施行時で一斉に義務が具体化する状況になりますので,この経過期間についてはもう少し長い期間が望ましいでしょうという意見が多数でして,更に少数意見としては,施行時に亡くなっているケースについてはそもそも適用すべきではないというような意見もありました。これは少数意見だと思いますが,そのような懸念を示す意見もありました。   それから,相続人申告登記ですが,④の点については,先ほど申し上げたように反対意見が多数であります。相続人申告登記を創設することについては賛成しておりますが,義務履行の効果をみなす範囲ですけれども,共同相続人のうちの1人が申告をした場合には,ほかの共同相続人についても義務履行があったとみなす効果を与えるべきではないかという意見がありましたので,御紹介したいと思います。   それから,(5)の点ですけれども,更正登記であるということについてはこれまでも賛成しておりましたが,前回,部会資料38のときにも申し上げましたけれども,これを不動産登記実務の運用により対応するということについては,前回の部会のときにも反対の意見を申し上げて,それを配慮したことを補足説明に書いていただいているのですが,やはりこの点については納得し難いという意見が多数の状況でありました。   第1関係は以上です。2に関しては,特に異論はありませんでした。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。岩井幹事,どうぞ。 ○岩井幹事 ありがとうございます。部会資料53の7ページに,登記官が相続人申告登記の申出に対して応答しなかった場合には,その登記官の判断は処分性を有するとされているところでございますけれども,相続人申告登記の申出があったときには,登記官が職権で付記登記をすると制度設計されていることとの整合性をどのように説明するのかという点に疑問があるところでございます。   すなわち,現在の制度設計を前提といたしますと,相続人申告登記の申出は登記官の職権発動を促す行為と解されるところでございますので,この申出に単に応答しないという行為につきましては処分行為性を認めることができないのではないかという疑問があるところでございます。また,部会資料では,処分性を肯定する解釈上の手掛かりとなる規定を法務省令に置くことを想定されていると思われるところでございますが,処分性の有無の根拠となるような事項につきましては,本来,法律で定められるべき事項ではないのかという点も疑問のあるところでございますので,これらについて更に御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 岩井幹事から御指摘を頂きました。ありがとうございます。   御指摘を頂いた問題の側面の中には,行政事件訴訟法の解釈,運用に関わる側面が含まれていると受け止めます。本日この会議に山本幹事からやや遅参するという御案内を頂いているところでありまして,この後の山本幹事の御出席のタイミング等を勘案して,御出席になられた段階で,ただいま岩井幹事から問題提起をしていただいた事項について議論を再開したいと考えますから,しばらくお待ちを賜りますようお願いいたします。   ほかの点について御発言を頂きます。吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。相続人申告登記について若干の意見を述べたいと思います。   こうした公法上の義務を履行するための簡便な申出の仕組みを導入することに賛成いたします。その上で,これを相続人申告登記という新しい登記と位置付けることが本当に大丈夫かということは,十分に考える必要があると思っております。私のような素人が感覚的なことを申し上げて大変恐縮なのですが,ただ,登記の種類を増やすということは非常に大きなことであって,これが今後の不動産登記法全体の議論にどのような影響を与えるかということ,それからもう一つ,国民への分かりやすさという点からどうなのかというところは,この名称で行くにしろ,十分に議論を尽くす必要があると考えます。   最初に結論を申し上げますと,これは登記ではなくて相続人申告届といった方がいいのではないかと感じているところです。理由を2点申し上げたいのですけれども,まず,これを登記と位置付けることで,実体法上の効果の有無について議論や誤解が起きてしまうのではないかという懸念をやはり若干持っております。第10回会議において部会長から,以前,予告登記という制度が一時的にあったということ,それから,中田委員より,そのときに実体法上の効力の有無についてやや紛糾があり,今回はそのようなことのないようにという御指摘がございました。今回,是非本当にそうした現場での混乱や,法律関係者における必要のない議論が起きないようにしなければいけないと思っております。   登記というのは幅広い概念かと思いますが,保存登記,移転登記などと並んで申告登記というものが新しくできたときに,登記と付いてはいるけれども,その実体は大きく異なります。移転登記は一筆単位の物権変動ですが,それに対して今回の申告登記というのは個人単位で行い,しかも飽くまでも付記登記であり,権利の移転は伴わないと。そうした大きく性質の違うものを,大きく登記とくくって,本当に今後,大丈夫であろうかということ。もちろん住所変更登記のように権利変更を伴わないものもありますが,住所変更登記は読んで字のごとくで,それによって権利に何か影響があるのかと迷う人は少ないと思います。しかしながら,今回の相続人申告登記というのは,字を見ただけでは一体どのような法的効果があるのか,どのような単位で行われるのか明示的ではなく,関係者が迷う余地が大きいと思っております。そうしたことは,やはり防がなければいけない。   それから,2点目の国民への分かりやすさという観点ですが,相続登記に直面する場面というのは人生の中でそう多くはなく,この制度を初めて使う人がすぐに分かるように立て付けておくことが大切であると思います。そのときに,一般の人が相続人申告登記という七つの漢字を見て,それから,もう一方で相続登記という四つの漢字のものがありますと,同じように両方登記と付いているのだけれども,こういうふうに違うのですよと聞いたときに,すぐに理解できるだろうかと感じてしまいます。そして,どちらか,相続人申告登記をやれば,取りあえずいいのでしょうとなってしまわないだろうかと思います。   そこで,この新しい仕組みに込められているメッセージをしっかりと正しく世の中に伝え,そして,政策目標である相続登記の促進を実現していくためには,この制度自体は登記とは呼ばない方がいいのではないかと思っております。そして,相続人の方に説明をするときには「今回,相続登記が義務化されました。それは重たいことなのだけれども,公法上の義務を履行するための柔軟な対応方法として,こういう届出による個人ベースでできる申告の制度もあるのですよ。そうした届出も活用しながら,是非しっかり相続登記をしてくださいね」というふうに,性質の違う行為についてはそれぞれ別の名前で説明できるように,簡便な届出の仕組みを活用しつつ,登記をしっかりしてくださいと国民に説明できる方がいいのではないかと思っております。 ○山野目部会長 相続人申告登記という新しい制度を創設するに際して,その法制的な意義のみならず,国民にしっかりと正確な理解を抱いてもらって,円滑な運用がされることが大切であるという見地から,吉原委員に御発言を頂きました。御提案も含まれていました。   現在,部会資料で提示しているものは,登記官の方がその職権に基づいて行う行為及び,その登記上の成果を相続人申告登記の概念で呼び,申請人に対して求める行為を,丁寧にいうと相続人申告登記に係る申出,簡単にいうと相続が開始したことに伴う申出ということをお願いしますという言葉の整理で臨んでいるところでございます。ただいま吉原委員から御注意いただき,また御提案も添えていただいたところを踏まえて,より法制的にも整合的な説明が可能であり,国民に対しても誤解が生ずることがないような言葉の整理について努めてまいり,引き続き検討したいと考えます。ありがとうございます。畑幹事,どうぞ。 ○畑幹事 既に今までの審議で出ていたことだとしたら申し訳ないのですが,相続人申告登記について,私の専門分野に関わることではないのですが,質問させてください。   先ほどから,従来からある相続登記については,共同相続人の1人が全員の分を申請できるという話が出ておりますが,この相続人申告登記の方はどうなのでしょうか。ある人が出してきた戸籍謄本,抄本の類いから,兄弟のことも分かるとかいうこともありそうなのですが,その辺りはどういうイメージを持てばよいか,御教示いただければと思います。 ○村松幹事 相続人申告登記につきましては,個々の相続人の方が自分の分だけ申告していただくというのをまず基本に据えてはどうかと思っております。逆に言いますと,他の人の分も義務履行の効果を発生させるとなると,他の方の,相続人として他に誰がいるのかといった問題ですとか,場合によってはその住所等についても資料を提供いただくのかと,こういったことが問題になってまいります。そこまで,他の人の分までやるのではなくて,自分の分だけだったら簡単に済むから,それだけだったらやりますよと,こういう方向性で,それぞれが簡単に義務を履行できるようにという方策,こちらの方策で立ててはどうかというのが基本線です。それをベースにしています。   ただ,とはいいながらも,この手続は申出という形で行われる手続で,いわゆる登記の申請よりも簡素な手続で進めたいと思っておりますけれども,そういった状況ですので,他の方と連名でといいますか,親御さん等含めて,お子さん含めて,連名で,では私の方で基本的にはやっておきますよという形で申請をしていただくということはもちろんありますし,もちろんそれが委任の代理の形で行われるということも否定されるものでは全然ありません。なので,考え方のベースがどちらなのかということかもしれませんけれども,1人でもできるし,ではやっておいてということであれば,その3人の方の分をまとめて申出をするということも否定はされないということになります。一応そういうつもりで作っています。 ○山野目部会長 畑幹事,どうぞお続けください。 ○畑幹事 いえ,何かはっきりした意見があるということではないのですが,この登記は今のところ職権による登記と位置付けられているようなので,先ほど申し上げたように,誰か1人が出してきた書類で兄弟姉妹のことも分かるというような場合には,登記してしまってもいいのかなということを少し考えたというだけです。特に強い意見ではありません。 ○山野目部会長 ありがとうございました。御示唆は承りました。   恐らく,先ほど村松幹事から御案内をしたとおりの運用のイメージであろうと感じます。ある人が亡くなって相続が開始したとき,その被相続人に5人のお子さんがいて,3人は1通の戸籍の謄抄本から分かるけれども,あと2人はそこからは直ちに分からないという書類を司法書士などの資格者代理のところに持って行ったり,登記所に持って行ったりすると,そこで相談を事前にするようなチャンスがあって,そういうときに相談すると,いろいろ言ってくれます。人によって,おしゃべりな人と,機嫌が悪い人と,寡黙な人と,いろいろいますが,比較的おしゃべりな人だと,その戸籍を見ると,ああ,3人さんいるのならAさん,あなただけではなくて,B,Cと御相談の上,委任状等をそろえて3人の分なさったらどうですかと勧めることもあるかもしれないし,そのときどうするかは申請人の随意ですし,そういうふうな現場の運用でされるということかもしれません。余り相談の場でいろいろこちらがたくさん述べると,畑幹事はよく雰囲気を御存じのように,積極的釈明がどこまで許されるかみたいな,それに似たような議論になってきて,ややこしいですけれども,しかし現場でそういうふうに収めていくという局面,契機も存在するかもしれません。御指摘いただきましてありがとうございました。山田委員,どうぞ。 ○山田委員 ありがとうございます。先ほどの質問と少し違うところで,しかし似たような質問をさせていただきます。   資料53の1ページの1の(1)の今度は②でございます。②については,冒頭で御反対だという御意見があったと理解をしております。それほど強い意見ではないのですが,まだ十分に私が咀嚼できていないがゆえの質問になると考えております。   これは,法定相続分どおりの登記がまず行われて,その後,遺産分割が行われたということと思います。その後,遺産分割を反映させる,これは更正登記になるということが今日も話題になっていますが,それを申請しなければならないというのを義務付けるというものと理解しました。私の理解が誤っているかもしれない不安はあるのですが,その更正登記は共同申請になるのだろうと理解をしております。A,B,C,3人が法定相続人で,法定相続分どおり相続登記が行われたとします。しかし,遺産分割が行われて,BとCがその不動産を共有する形で遺産分割が行われ,Aが所有者から外れるという場合には,Aは登記義務者として更正登記の申請に加わらなければならないのだろうと理解をしております。そうしますと,BとCに申請の義務が課せられるわけですが,BとCはAの協力がないと申請ができません。しかし,遺産分割から3年をたつと,この義務違反に基づく過料の効果が生ずるということと理解をしました。それは,先ほど①について,一番単純な,多く例があると思うのですが,1人でできる,それをしなかったら過料になるというのとは少し違ったレベルの話かなと思います。しかし,そういう場合のB,Cが,訴訟までは起こさなかったけれども,登記についてはきちんと関心を持っているというときに,相続人申告登記,名前は変わるかもしれませんが,それをすることで,BとCは遺産分割に基づく更正登記をしなかった義務違反から免れると,こういうことになるのだろうと理解をしております。その理解でよいかどうかということと,そして,直前の畑さんの御質問にも関わるのですが,そのときBとCはそれぞれが相続人申告登記を申請しなければならないのか,それとも,そうではない方策があるのか,その辺をお教えいただければと思います。 ○村松幹事 まず,法定相続分での相続登記がされた後に遺産分割があったケースについて,A,B,C,3人いて,B,Cが2分の1ずつ遺産分割で相続するという形になりましたと,このケースについての整理でございますけれども,御指摘がありましたように,②に従いますとBとCには申請義務が課される。その申請義務の履行の仕方につきましては,今回,簡略化の提案を併せて申し上げていますので,9ページの(5)のところですけれども,更正登記の形になり,かつ単独申請ということにしております。そのため,B,Cがこのケースでは登記権利者と扱われますが,B,Cにとって,Aの協力は不要ということになろうかと思います。これまでの単独申請に関する登記実務の理解を前提といたしますと,B,Cいずれかによる申請で更正登記が行われるということが想定されております。 ○山野目部会長 山田委員,お続けください。 ○山田委員 続けることはありません。分かりました。9ページの(5)のところをしっかりと関連させて,連携させて理解をしておりませんでした。よく分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 山田委員,どうもありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。この相続登記の義務化というのに関しましては,基本的には賛成でございます。その中で,義務に対する過料といういろいろな御意見がございました。私ども,表示に関する登記については従前から過料という部分がありました。それについては全く違和感なく,当然ですけれども,義務の履行に対するモチベーションというか,そういったものを含めて,過料を科すべきだろうとは考えております。そもそも相続登記を義務化するという大前提が,所有者不明土地をなるべく減らそうということで,その相続の発生があったときには,それをきちんと登記簿に表すということが大前提でありますので,やはりこれの履行を促す一つとしても,やはりこの過料というのは必要ではないかと思っております。 ○山野目部会長 松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。今回,相続人申告登記の申告期間につきましては,法定相続,特定財産承継遺言,相続人への遺贈,または遺産分割による所有権取得による登記の場合と同様に3年間ということにするという説明が,部会資料53の3ページにございます。この3ページの9行目以下では,第16回会議で,相続人申告登記については負担を軽減した手続であるので,期間を1年とか6か月とする提案もあったのだけれども,これまでなかった義務を新たに課すものであるから,「差し当たり3年とするのが適当である」と,理由を丁寧に説明していただいていると思います。   それを前提にしてということですけれども,やはりこの相続人申告登記を導入する趣旨は何かということを考えたときには,一つは,相続が開始したということを公に知らせて,それと同時に相続登記の準備をする,あるいはひとまず相続人申告登記をしておいて,遺産分割の準備に入ってもらうという意味もあるのではないかと思います。したがって,法定相続の登記とか遺産分割の登記というのと横並びの第三の登記というよりは,やはりその準備的なものであるという位置付けになりますし,そのために手続も軽減もされて,各相続人が単独でもできるということになっているのではないかと思います。そういう趣旨からいたしますと,あえて3ページで説明していただいている点ではありますけれども,3年でいいのか,それとも1年とか2年とか,少し縮めるということをなお考える余地があるかどうかということについて,議論があってもいいのではないかと思い,問題提起をさせていただきたいと思います。   と申しますのも,部会資料53,第2部第1の1(1)②および注4では,相続人申告登記がされた後で,遺産分割があったときは,「遺産分割の日から3年以内」に所有権移転登記の申請をすべきことになっています。では,その遺産分割自体をいつまでにやるのかという点について,その動機付けというかインセンティブはどうなっているかというと,17回会議だったと思うのですけれども,部会資料42,第1の1で示されましたが,相続開始時から10年経過すると法定相続分又は指定相続分で遺産分割をすることになるというのが一つのインセンティブないしディスインセンティブとして想定されていたと思います。遺産分割そのものは相続開始時から10年以内にということですので,そのための最初の準備手続はできるだけ速やかに,もちろん,過度な負担を課さない範囲でですけれども,短くするという姿勢を示すことにも意味があるのではないかと思った次第です。その後,遺産分割がされれば,遺産分割の時から3年以内に所有権移転登記を申請すべきであるということを,公法上の義務として課すとともに,民法899条の2によって対抗要件の効果も働くということで,そちらはそれなりに効果的ではないかと思います。そこで,そもそも遺産分割それ自体の1つの準備になりうるかという観点から,少しでもスピードアップを図る考慮が示されてもよいと思い,あえて発言いたしました。 ○山野目部会長 3年という期間は,このたびの部会資料で初めて数字を一つに絞ってお出ししているものでありまして,その当否をもとより委員,幹事に御検討いただきたいと望みます。ただいま松尾幹事からはその観点の御意見をおっしゃっていただきました。ひとまず3年という数字を選んだ背景は,部会資料の補足説明で御案内しているところでございます。   実務的な経験を見て直感的に感ずるところは,これは公式の統計はありませんけれども,司法書士の方々のお話などを伺っていると,人が亡くなってから割と1年後,2年後ぐらいにやる人が多くて,その後しばらくずっと余りいなくて,10年目ぐらいになると,またやる人が増えるというグラフを描くもののようです。そうすると,松尾幹事がおっしゃったように,10年を待つことはいささか,あちらの遺産分割の時期のコントロールとは趣旨が異なりますし,それから,1年か2年でやる人が多いという実態ではありますが,今回は罰則も一応用意した上で義務付けますから,世の中でされているとおりに,ほらすぐやりなさいという感じで義務付けるよりは,もう少し後ろのところに法定の年数を置くことにしようかということも考えなければいけないというところから,3年という数字を出していますけれども,様々な政策的要請を考えるともっと短くていいではないかという松尾幹事の御意見も理解することができます。   1段目のロケットについてはそういうことでありまして,2段目はまだ実態上,経験がありませんから,ここは手探りで年数を決めていくしかありませんけれども,1段目の方のお話と連動させながら,そちらも考えていかなければならないという観点の御示唆を頂きました。   中田委員にお尋ねですが,お手をお挙げになって,お手をお下げになったのですが,もし何かおありでしたら御遠慮なさらないで,どうぞ御発言いただたく望みます。 ○中田委員 ありがとうございます。ただいまの3年の話とは違う話でしたので,引っ込めたのですけれども。 ○山野目部会長 どうぞお話しください。 ○中田委員 先ほどの山田委員と村松幹事と部会長とのやり取りがあった部分なのですけれども,相続開始後に遺産分割をして登記をするという場合と,相続開始後に法定相続分の相続登記をした後,遺産分割をするという場合と,相続開始後に相続人申告登記をした後,遺産分割をする場合と,3種類あるのと思うのですけれども,最初の二つについては,現行法の下では,一旦法定相続分の登記をした後ですと共同申請になるのだけれども,遺産分割をいきなりしたときには,単独申請プラス遺産分割協議書でできるということだろうと思います。今回,法定相続分の相続登記をした後に遺産分割をした場合も単独申請にするとともに,相続人申告登記の場合も,直接遺産分割をして登記する場合と同じになるというのが今回の部会資料の整理だろうと思っています。それはそれで,もしその理解で間違いなければ,整合的だなとは思いました。   ただ,今申し上げました私の理解自体が正しいかどうかよく分からないのですけれども,仮に正しいとしても,非常に分かりにくいところでして,現行法の下でも必ずしも明瞭ではなく,不動産登記法63条2項がどの範囲で適用されるかについて,解釈の部分もあると思うのです。今回,新しい制度を設けて,更に複雑化するのであれば,そこはもう少し明瞭にした方がいいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 中田委員,どうもありがとうございました。村松幹事の方から何かお話しになることがあれば,どぞ。なければ無理にはお願いしませんけれども,おありでしょうか。 ○村松幹事 今,中田委員からお話しいただきましたように,今回の改正を踏まえて,整理を工夫しているところですけれども,分かりにくいというのはおっしゃるとおりかもしれませんので,そういった辺りは通達という形なりで示していくということ,対外的にもしっかりと示していくということかなと思っております。 ○山野目部会長 中田委員におかれては,どうもありがとうございました。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○水津幹事 第1の1(1)(3)の規律について,先ほど出ていた意見と同趣旨ですが,重ねて意見を申し上げます。この規律によれば,法定相続分での相続登記も,相続人申告登記もされていない場合において,遺産分割があったときは,相続人申告登記の申出がされれば,登記申請義務が履行されたものとみなされます。この場合には,遺産分割の結果を踏まえた登記を申請する義務は,課されません。これに対し,法定相続分での相続登記がされているか,又は相続人申告登記がされている場合において,遺産分割があったときは,遺産分割の結果を踏まえた登記を申請する義務が課されます。これでは,アンバランスではないかという気がします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,第1の部分の相続登記の義務付けその他の事項につきましては,おおむね方向が固まってきておりますけれども,それゆえにという側面もありますが,本日御議論いただいた細目にわたる点について,なお説明ぶりを含めて,深めなければいけない点が明らかになりましたから,これらについての検討を重ねてまいるということにいたします。   引き続き,部会資料53についてお諮りを致します。「第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の更新を図るための仕組み」及び「第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み」,この二つの柱でございますから,部会資料で申しますと,補足説明まで含めますと15ページまでの範囲でございますけれども,この範囲につきまして御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 第2の1の氏名又は名称及び住所の変更の登記の申請の義務付けについてですが,登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の住所等の変更情報を取得して不動産登記に反映させるための仕組みを設ける,その前提としてこの義務化が必要だというのであれば,その限りにおいて,①の規律には賛成であります。ただ,基本的に②の過料については,やはり消極意見が多いです。登記名義人の負担が大きくなる可能性があるということと,これは相続登記についてもいえるのですけれども,登記官が正当な理由がない場合というのを判断する場面がどのような場面なのか,その実効性に疑問であるということと,登記官が職権で登記をするという制度を認めていくということと過料との関係がうまく整理できないというのが理由であります。   幾つか質問があるのですが,住所について,区制が施行されたとか住居表示が実施されたといった当事者の行為に基づかないものは,もちろん義務化の対象外ということでよろしいですねということと,住所を間違っていたという場合もあるのですが,その更正登記をすることについて,これは対象内でしょうか,対象外でしょうかというのが質問です。   それから,これも非常に細かいお話になるのですが,数回の住所変更があった場合の起算点はいつになるのかと,それぞれの変更の日から起算されるのであろうとは思いますが,そこも一応確認をさせてください。   それと,職権でもできるということは,当事者が申請をした場合には非課税なのですねという質問です。   それと,この本文の規律が施行されたときに既に所有権の登記名義人の住所や氏名について変更がある場合はどのように取り扱うか,相続登記と同じように,これにも義務を課していくのか,施行の際,既に住所,氏名に変更がある,その登記をまだしていないというものについてはどういうふうな扱いをするのかということを教えてください。   それから,2の登記所が氏名又は名称及び住所の変更情報を不動産登記に反映させるための仕組み,これも賛成であります。これも幾つか質問があるのですが,登記名義人が自然人で,登記官が申出があるときに限って住所変更等を職権で行うという規律になっていますが,これは職権で変更登記をする前に登記名義人に通知をする,その返事がない場合というか,その返事によっては,これは登記官が正当な理由があるかないかということを知る機会になって,この場合には過料の制裁につながる可能性があるのかという点であります。   それから,この仕組みについて,詳細は法務省令で定められると思いますが,申出がある場合に職権登記をするという規律の仕方について,この申出という文言が,別途申出行為が必要なのかということとか,申出があると職権で登記するというのは,いつでも登記名義人が申出をすれば職権で登記をしてもらえるのかとも読めるので,これは単に異議がない旨の返答とか,そういう意味ですねという質問であります。   それから,第3の登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得する仕組みも,これは賛成です。要望ですけれども,検索用情報については今後,省令で定まるとなっておりますが,是非外国人の場合はアルファベット表記等も検索情報としていただくようお願いをしたいと思っております。   それと,高齢者消除は,その情報を入手した場合,死亡の情報ではないので,含めていいのだろうかという意見がやはりありまして,含めるなら,その理由をもう少し示していただきたいという意見がありました。 ○山野目部会長 御意見は頂きました。司法書士会の意見をお取りまとめいただきましてありがとうございます。何点かにわたり事務当局に対する質問がありましたから,回答を差し上げます。 ○村松幹事 住所の変更の関係は,住居表示の変更とかその辺りは義務の対象外かということかの確認でございますが,対象外だと理解しています。それから,誤ったケースというのは,登記官が間違って登記してしまったという,たまになくはないかもしれません,そういうケースでしょうか。 ○今川委員 申請人が間違っていたという。そのまま登記が通って,そのまま登記が存置している状況。 ○村松幹事 総じて言って,登記官も見逃しているということだと思いますので,そういったケースについては,義務が掛からないというのか,過料がないというのか,あれですけれども,それは本来,更正の登記で是正されるべきだと思いますので,ここの規律の直接の対象として想定されるものではないだろうと思います。   それから,数回にわたって住所変更があるようなケース,それぞれのタイミングから義務がスタートするのかということだと思いますけれども,それは観念的にはそのとおりであります。   あと,申請のケースに関しての課税の在り方というところです。  改めて,登録免許税の課税の在り方については,この部会では検討がされず,政府全体といいますか,与党も含めて申しますと,政府と与党の税制調査会というものがありますので,具体的な検討はそういった場所で行われます。与党税制調査会の令和3年度税制改正大綱が12月10日に決定されておりますけれども,法務省や与党法務部会からの要望も踏まえて,この所有者不明土地等問題の解消に向けての税の在り方,必要な措置については令和4年度税制改正において検討されるということがしっかり書き込まれたところでございます。令和4年度の税制改正というのは,実際,来年のそれこそ今ぐらいの時期に最終結論が出る,そういうタイミングになるのが通例かと思いますが,不動産登記法の改正案を踏まえて,そこで議論がされるということがスケジュール的にはもう決まっているというところになっておりまして,具体的にはそこでの御議論を待つことになるというところだと思っております。   その上で,どれぐらいのものとしてこの申出を理解していくのかという辺りが,恐らくその申請のケースも含めて,関連してくるところだと思っておりますけれども,基本的にはここでいう申出というのは,非常に軽いものを想定しているというところであります。主眼としては,御本人の意思を確認して,問題ないですねということの確認ができれば,それでよいと,基本的に必要な内容はそこに尽きてきますので,その部分の確認だけをごく簡単にやらせていただくということで,今までの登記申請よりも,ここも同じですけれども,非常に軽い手続を,できるだけ負担のない手続として想定しております。登記官側の方から,少なくとも積極的にアクションする形にして,その申請を待たなくても大丈夫だという形にはしたいと思っております。   他方,検索のタイミングというのは,少しタイムラグがもちろんありますので,その間にその変更がしたいということ,これは当然あり得る話だと思いますので,そこについてある種の,本当の意味での確認というよりは,どちらかというと積極的な申出が所有権の登記名義人側からあるということはあり得ると思っておりまして,こういうケースについてもある程度職権的に対応できないかということで,一応そこはそういう検討をしたいと考えてございます。おっしゃるように,細部についてはまたこの省令も含めて,この施行の段階までの間に更に詰めることが可能なものにはなりますけれども,そういったところを考えております。   あと,少し戻りますが,施行時に既に所有権の登記名義人となっている方についても義務を掛けるのかどうかという部分です。相続登記については,若干の反対意見というお話も出ておりますけれども,賛成の御意見の方が多く,従前のものについても適用するという形になっておりますので,住所変更についても同じではないかという考え方も十分にあろうかと思います。弁護士会からの御意見にありましたように,これが既存分についても同じ2年で行くのか,それともやはり少し延ばしておくのかという部分はあるかもしれませんけれども,同じように義務を掛けておくという選択肢もあるのではないかと考えておりまして,ここは今回の議論状況を踏まえて,また検討してみたいと思っておりますし,この後,御意見を頂ければ幸いだというところになってございます。   それから,正当な理由の有無との関係です。ここは相続登記の部分でも出てまいりますけれども,主観的要件あるいは正当な理由の有無,ここらについてしっかりと法務局側で確認する。間違っても,取りあえず裁判所に過料通知しておくので,もし問題があるのだったら裁判所に言ってくださいとか,こういったような運用にはもちろんならないように,丁寧で慎重な手続をここは想定する必要があるというのを申し上げています。その意味で,相続登記についてもそうでございますし,また,この住所変更についても,相続登記と比べると判断要素が少ないように見えるかもしれませんけれども,やはり正当な理由の有無として非常に深刻な部分もあります。自分はDV被害者だと思っているとか,犯罪被害者の要件に当たると思っているとか,そういった方も当然いらっしゃいますので,そこの部分について余り軽々に,例えば,一度通知をしたときにそういうことをおっしゃっていなかったけれども,自分でやるとおっしゃっていましたねと,なのに2年経過してもまだされていませんよということがあるかも分かりませんが,そのときに,当然登記をすることができたはずでしょうといえるかどうかは,確認を経ませんとなりません。そういった被害に遭うなどの状況は時々刻々と動き得ますので,そういったところはもちろん丁寧に確認をしなくてはいけないということを念頭においております。そういった辺りは登記所側でしっかりとした手続を踏んだ上で,裁判所の方に対する過料通知をやらせていただいて,それこそ当事者の皆様にも裁判所にも御迷惑をお掛けするというものにはしないというのが適切ではないかと考えているところです。 ○山野目部会長 よろしゅうございますか。 ○今川委員 はい,結構です。 ○山野目部会長 今川委員から頂いた御質問を契機として,委員,幹事に御案内を差し上げておきます。この部会資料53で扱っている様々な事項の全般を通じて,経過措置をどのようにすべきかということについては網羅的な提案は差し上げておりません。法制審議会における調査審議の慣行といたしまして,一般にここで経過措置についてまで委員,幹事の御議論によって一つの方向をまとめるということは今までされてまいりませんでした。それと同時に,しかし例外が全くなかったものでもなくて,やはり構想されている規律の社会経済における影響とか政策的効果の観点から見て,経過措置が実は非常に重要な意味を持つというような事項につきましては,ここでの審議を頂いてきたという経過もございます。   部会資料53に掲げている事項でいいますと,相続登記の義務付けは,従来のものについても適用するかどうかが我が国の不動産登記制度の運用,ひいては所有者不明土地問題の解決の在り方に非常に重要な影響をもたらすものですから,注記の仕方で経過措置についての大づかみな構想をお示ししたところであります。それ以外の事項については経過措置の案を示しておりませんけれども,もちろんそれは議論を妨げる趣旨ではありませんで,御疑問に感じていただいたところは,ただいまの今川委員の住所変更の登記の義務付けに係る経過措置の在り様のお尋ねのような仕方で,御遠慮なくお出しいただきたいと望みます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。第2の1と2の関係について2点,質問がございます。   一つは,先ほど村松さんがお答えになったのかなと思っておるのですけれども,変更登記の申請が2年以内にされない場合に5万円以下の過料に処するという,この罰則規定が設けられた際に,具体的にどのような発動の仕方になるのかということについてです。2年の期間を設けたというのは,すべからくではないのかもしれませんが,基本的に2の職権による登記もにらみながら,職権による登記をする前提として,住所変更があったので変更しませんかという照会を掛けたところ,申出を断るというようなことを名義人が言ってきた,その結果,2年の期間を経過してしまった。そのようなときに過料の制裁があり得るところ,そこで申出を断ったことについて正当な理由が基本的には問われることになるのだ,それ以外に,例えば職権の登記の促しが全くなかったところ,たまたま,2年経過していましたね,はい,あなたは過料を支払わなければなりません,というようなことは基本的には想定されていないということでよろしいでしょうか,というのが1点目です。   2点目は,先ほど今川委員がおっしゃった,変更登記の申請をしたときに,登録免許税が掛かるのかという話なのですが,それは今後決まることですというお話が村松さんからあったのですけれども,それも含めて,仮に登記申請を自らしたときの方が不利だということになった場合,職権の登記をしようと思うのですがいかがですかという照会が登記所からあり,それに対して申し出るということを待たず,自分が窓口に行って,実は住所の記録を変更したのですが,変更申請ではなくて職権の登記を申し出たいと言った場合は,これは受け付けてもらえるのか,受け付けてもらえないのか。受け付けないということはあり得ると思うのですけれども,受け付けなかったら,では,職権の登記の照会があるのを待ちますという態度に出られてしまうこともありうるのではないかというような気がします。要領を得ない言い方になっていますけれども,この登記の申請と申出は,一体どういうすみ分けがされるということを考えられているのか,特に,例えば登録免許税が掛かるということになった場合どうなのか,ということを伺いたいと思いました。 ○村松幹事 まず1点目ですけれども,恐らく大枠はおっしゃっているとおりだと思っております。法務局側で定期的な検索をした上での照会を行うというのが前提になっておりまして,この照会もされないのに2年が経過して過料に問われるという事態にはもちろんならない。そのような期間として,一応2年を設定してはどうかと考えてございます。なので,申出を,理由があるのかはないのかは客観的にはよく分からない状況かもしれませんけれども,今はしないというお話をされたのだけれども,その後,経過したようなケース,こういったケースについては過料の制裁が具体的に発動し得る状況にはなります。ただ,そうは言いましても,もちろん,正当な理由の有無を確認し,精査する必要があるというのは,先ほど来申し上げているとおりです。   あと,典型的にこの枠組みの外に出てしまう外国居住の方たちに関しては,直接的に,しかし罰則付きで,しっかりと対応していただきたいということを御説明することにはなりますが,こちらについても正当な理由については同じような枠組みで捉えるのだろうと,過料の制裁の枠組みは同じように運用をするのだろうと思っております。   それから,職権で行うわけですけれども,申出というものをどのように位置付けるのかというところで,ここは先ほど今川委員からも御指摘があった部分ですけれども,窓口に来て,住所変更が必要なのだけれども,職権でやってもらえないのかという部分が当然あり得るところになってまいりますので,そういった部分については個別の,本当の意味での職権発動の促しに近い部分になってきますけれども,そういった促しの部分に関して,法務局側で対応するということも十分あり得るのではないかとは感じておるところです。   このあたりは登録免許税の在り方によっても多少説明の仕方が変わり得る部分はあるのかもしれないなとは考えておりますけれども,法務局側での事務の営みとしては,できるだけそういった方向で考えられないかなということでは考えております。ここで申出といっておりますけれども,基本的な考え方としては,必要な書類を全て備えて登録すべき情報もしっかりと自分で記載して住所変更の登記の申請をするという従来のものと比べると,登記所側で必要な情報などは検索を行って把握していくということで,申請のケースと,申出に基づく,しかし,職権性の強い変更登記のケースとでは,その在り方に区別があるということでございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事,いかがでございましょうか。 ○佐久間幹事 結構です。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。第2のところは特にそうなのですが,実務的にかなり各会社,関心の高いところですので,何点か質問させていただければと思います。   まず第2の2の,変更情報を法人登記のシステムから取得して職権で反映していただくということについては,非常に合理的な対応であり,賛成したいと思っておるのですが,少し気になっておりますのは,第2の1のいわゆる過料を伴う義務付けの話と,2の関係でございまして,先ほどもちらっとどなたかから御意見があったかもしれませんが,職権登記が期待できる,というような状況にあることが,第2の1の②の過料に処するかどうかの要件とされている,正当な理由がないのに,というところと関わってくるのかどうか。例えば,商業法人登記システムの方ではきちんと住所変更,名所変更の申請をしていたということによって,別途,その法人が所有権の登記名義人としては名称や住所の変更の登記申請をしていなかったとしても,正当な理由ありということになるのかどうかというところは,教えていただければと思っています。   もう一つ,会社の法人等番号とリンクしていただくというところは今後の話,といいますか,ここに出てきているのは,これから新たに会社法人番号を登記事項としてリンクできるようにするという話なのかなと思っております。ただ,一方でこれまでの部会資料の中では,既に登記されている不動産等についても会社法人等番号とのひも付けをするというような話も頂いていたかと思うところでございまして,そうなってきたときに,今回,第2の2の職権でやっていただけるというメリットを及ぼそうと思ったときにどうすればいいのかという話がやはり出てくるのかなと。   以前,第16回の部会だったかと思いますが,御質問させていただいたときは,いわゆる変更登記の申請というよりは,何か違う申出のようなものでやるというような話もちらっと頂いていたかとは思うのですが,今回,部会資料に特に具体的にそのような形では書かれていなかったものですから,ここはどういう形になるのか。今まで登記事項でなかったものが新たに入るということなので,過去のものに全部遡って,では変更登記で登録免許税を負担してやってくださいという話になってくると,これはかなりハレーションが大きいというか,コスト的な負担がかなり大きいということになってしまいますので,できればそのようなことがない形で整理していただけるといいのかなと思うところですので,そこを確認させていただければと思っております。   以上,2点でございます。 ○山野目部会長 ただいまの話も経過措置に関わる側面がございます。事務当局の方で現段階で考えていることをお話しください。 ○村松幹事 まず質問の1点目ですけれども,おっしゃるとおり,職権でやるというのを制度的には全般的に一体として仕組んでいるというところでございますので,正当な理由の判断にそこは反映するというのは御指摘のとおりで考えてございます。   それから,会社法人等番号を変更登記の形で,既に登記が入っている部分については,入れる必要があります。これは,そういう意味では申請などで起こる問題ではありますけれども,ある種,経過措置的な問題ということになりますので,部会長からも御指摘がありましたように,これは経過措置の中で,その変更の登記についてどのような位置付けをするのかということは考える必要があるかなと思っております。職権的な対応をここもするのかどうかというところは検討ポイントだと思っておりますので,そこは今回,特に資料を出しておりませんけれども,経過措置の検討の中で検討してみたいと思います。 ○山野目部会長 藤野委員,いかがでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。今まで登記事項ではないけれども,例えば添付情報などで出していますという話もある中で,そこから拾って職権で登記してくださいというのは余りにもハードルが高すぎるかなと思うのですが,一方で,何を登記と呼ぶかという先ほどの話とも関わってくるのですけれども,そこがすごく登記名義人側に重い手間の掛かるやり方でしかできない,ということになってしまうと,せっかく入れていただいた制度が定着せず,かつ,下手をすると多くの法人が過料のリスクまで負うということになってしまうので,そこのところは慎重な御検討をお願いできればと思っております。 ○山野目部会長 御意見ないし御要望を承りました。   ほかにいかがでしょうか。 ○橋本幹事 日弁連としての意見を申し上げたいと思うのですが,ここについても今回も従前と同様の意見が多数でありました。既に大勢が決している感じはあるのですが,ここについても抽象的義務にとどめるべきであって,過料の制裁については反対であるという意見が多数でした。   2に関しては賛成でありますが,過料の制裁を課するについても,先ほど村松課長がおっしゃっていたように,正当な理由に関してはきちんと通達で明確化するという手当てをきちんとしていただきたいと考えております。   第3なのですが,ここについても基本的に賛成です。方向性として賛成なのですが,前回の部会資料38のときにも申し上げましたが,連携先の情報システムについては,現時点ではなかなか難しいという補足説明ではありますが,やはり将来的には戸籍副本データシステムとの連携というものについては諦めないで,システム構築を引き続き目指していっていただきたいと考えています。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を頂き,ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   特段,委員,幹事から御発言がなければ,ここの段階で,先ほど岩井幹事から問題提起を頂き,山本幹事がお見えでなかったところから,審議をしばらく留保しておきましょうと御案内していた事項について,御相談をさせていただきます。山本幹事におかれては,お忙しいところお越こしを頂きましてありがとうございます。   岩井幹事の方からお話がありましたとおり,部会資料53の7ページの補足説明のところにおきましては,相続人申告登記が相続人の申出によってするという仕組みにされておりますところ,その申出を却下する登記官の措置,あるいは,その申出に対して登記官が何も応答をしないといったような対応があった場合について,これらの事態を行政事件訴訟法や行政不服審査請求の手続における抗告訴訟や審査請求の対象として扱うという考え方が示されており,あわせて,相続人申告登記の申出の手続や登記に関し必要な事項を法務省令に委任するということも想定しているところでございますが,これについて岩井幹事から,果たして職権で登記官がするという仕組みになっていることと,審査請求,抗告訴訟の対象となると思考整理をすることとの間に整合性が確保されているかといった点は更に検討してほしいという御要望があり,また,相続人申告登記に係る細目の事項について,申請人の申出に対する措置,具体的には却下の事由等を定めることにわたって,法務省令への委任をするという方向は相当ではなく,法律事項として考えるべきではないかという御示唆を頂いたところであります。   これについては,御案内いたしましたように,行政事件訴訟法等の解釈運用,理解が関わる部分がございます。山本幹事の御意見を聴いた上で,更に委員,幹事の御意見を広く承ってまいりたいと考えます。恐れ入りますが,山本幹事におかれてお感じになっていることを御紹介いただければ有り難いと望みます。 ○山本幹事 今伺ったところですので,それほど考えがまとまっているわけではないのですけれども,資料を拝見いたしますと,行政事件訴訟法及び行政手続法,行政不服審査法上は,申請に対する処分として,申出を申請とし,それに対する却下の処分は申請に対する処分であると整理をすると,ただ,通常の申請の場合に比べると行政側で進める手続の部分が大きいため,不動産登記法上は申出という表現を使い,申出という手続をとると理解いたしましたので,一応そのように説明は付くのではないかと思います。   確かに法律で定めた方が明確であることは間違いないので,何らかの形で法律上,申請の仕組みにすることについて手掛かりを置いておいた方が明確であるとは思います。ただ,省令に委任をして,法律の解釈で申請の仕組みをとることまで委任しているといえれば,ぎりぎりそれでも大丈夫という感じはいたします。近時の最高裁の判例において,処分性をかなり法律の解釈でもって認めています。具体的に法文を作る段階で少し検討する必要が出てくるのではないかと思いますけれども,ぎりぎり法律の解釈で申請の仕組みをとることが読めれば,それも可能ではないかと思います。 ○山野目部会長 山本幹事におかれましては,唐突に御指名を差し上げたにもかかわらず,有益な御教示を頂きまして,ありがとうございます。岩井幹事,山本幹事から問題提起を頂いた事項について,委員,幹事から御意見がありますれば承ります。いかがでしょうか。   特段なくていらっしゃいますでしょうか。そうしましたならば,岩井幹事及び山本幹事から頂いた意見を踏まえて,御指摘のあった点について事務当局において検討を続けることにいたします。   あわせて,岩井幹事にお願いとして,裁判所においても行政訴訟の仕組みについて専門的に研究しているセクションの方にお伝えいただきたいことを2点に分けて御案内を差し上げるといたしますと,一つは,今般構想されている相続人申告登記は,それを履践すれば相続登記の義務付けに係る過料の制裁を免れる等の関係から,申請人となる国民の権利義務に重要な影響をもたらすものでございます。したがいまして,その申出があったのに対して登記官がする措置や対応は,そのような意味において国民の権利義務に重要な影響を与える性格を持つと感じられます。そのことを更に御検討いただきたいとお願いします。   それから,もう1点,併せて参考に御案内いたしますけれども,不動産登記法27条3号のいわゆる表題部所有者の記録は,表題登記の申請があったときに,それを受けて登記官がするときがございますけれども,あわせて同法28条,29条の規定に基づいて,登記官の調査により職権でするということも可能であるというふうな仕組みにされてございます。職権でされる場合であると申請でされる場合であるとを問わず,性質上の区別なく,これについての登記官の処分は,平成9年3月11日の最高裁判所の判例によりますと,抗告訴訟の対象となる処分としての性格を持つと考えられているところでございます。このような隣接場面の従前の判例上の取扱いも参考にしていただき,御案内申し上げましたように事務当局においても検討いたしますけれども,裁判所の御専門の分野においてもなお検討を深めていただき,意見交換を続けていただきたいと望むものでございます。御指摘を頂きまして,どうもありがとうございました。   第2,第3の部分について,ほかに御意見はなくていらっしゃいますでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,続けます。同じく部会資料53の「第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」について御意見を伺います。補足説明も含めますと,部会資料の19ページまでになります。この範囲で,いかがでしょうか。 ○今川委員 第4の1の登記義務者の所在が知れない場合の一定の登記の抹消手続の簡略化ですけれども,基本的に賛成であります。(2)の買戻しについては,本来我々は登記義務者の所在不明を要件とすべきという意見だったのですが,飽くまでも政策的なものとして,不動産登記法60条の例外として位置付けるということであれば,本来共同申請で行うべき権利の登記の抹消について,一般的に単独申請が許容されるのだというところまで広げるという趣旨ではないので,(注)にあるように,事後通知をするということを前提として,10年期間経過で単独抹消を認めるのもやむを得ないという考えであります。   そこで,確認事項ですけれども,この(注)の通知は,登記記録上の住所に宛てるしか方法はないということですねという確認です。買戻し特約の名義人について,まず,第2の住所変更の義務は所有権の登記名義人に対するものとなっていますが,買戻しの名義人は義務化の対象となるのか,ならないのかという点です。多分ならないのだろうと思うのと,買戻し特約登記の名義人については,現時点ではまだ住基ネット連携の対象にはならないですねという確認です。そうすると,登記記録上の住所はすでに旧住所であって,新住所が登記に反映されていない場合も少なくないと思いますが,登記上の住所に宛てるしか方法はないですねという確認です。それと,先ほども申しましたが,所有権の登記名義人以外の名義人の情報連携も将来に向けて検討はしていただきたいというのが要望であります。   それから,確認なのですが,今回,補足説明の2の(2)において,公示催告の手続において,登記された権利の不存在又は消滅の立証も必要であるということで,改めて詳細な説明をしていただいておりますが,前回のこの点に関する部会の議論,部会資料でいうと35ですけれども,そこに説明されていたように,個別の認定の問題ではあるものの,登記された存続期間が経過した事実などを立証することで登記された権利は消滅したものと認定されるケースが多いものと考えてよいという説明があるのですが,それはそういうふうな理解で,あそこで示された考えはまだ生きているのかという点を確認したいということであります。   2の解散した法人の担保権に関する登記の抹消手続の簡略化については賛成であります。 ○山野目部会長 それでは,2点お尋ねを頂きました。お願いします。 ○村松幹事 まず1点目ですけれども,登記上の住所に宛てて通知するほかないのは,それはおっしゃるとおりです。それで仕方がないと考えており,通知をしないよりはましであろうというところです。   それから,2点目ですけれども,そこはおっしゃるとおりで,ここは一般的な要件としてそういうものが必要だという部分の改めての確認というところになりますけれども,具体のケースにおける当てはめに関しては,先般の部会資料で御説明した内容から特に何か変更したいというつもりではありませんので,そのまま生きているという認識でおります。 ○山野目部会長 今川委員,よろしゅうございますか。 ○今川委員 はい,結構です。 ○橋本幹事 この第4関係につきましては,日弁連としては大きな異論はありません。賛成の方向です。 ○山野目部会長 御検討いただきましてありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 先ほど話に出た17ページの,権利が消滅したことの証明ということについて,前に確か私がお尋ねをしたのではないかと思います。今回,説明を加えてくださって,私としては引き続き,条文の文言との関係では少し分かりづらいという感触は持っておりますが,解釈としてそれなりに定着しているということであれば,それはそれで結構かと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。畑幹事に前回議論いただいたときに続いてお叱りを頂いているとおりでありまして,70条の文言は余り明解,軽やかではないと感じます。それでありながら,しかし,ここを今,文言を大きく改めるということにすることも混乱を招くおそれもございますから,補足説明で御案内している方向で提案を差し上げていて,これで進めようと考えているところについて,ただいま畑幹事から御理解を賜りました。御礼申し上げます。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,引き続きまして,部会資料53の「第5 その他の見直し事項」,補足説明も含めますと,部会資料53の最後までの範囲のところで御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 第5関係ですけれども,4の所有不動産記録証明制度の創設についてですけれども,こういった制度を創設することについては賛成であります。ただ,前回も確かここを私,申し上げたと思うのですけれども,代理人による交付請求ができるという立て付けで考えていらっしゃって,それに関しては,事前に債権者が委任状を取ってしまうというようなケースもあり得るということを申し上げたと思うのですが,この代理人の範囲を何とか絞るということは考えられないでしょうかという意見なのですが,例えば資格者代理人に限定するというような感じで,あこぎな債権者が事前に何でもかんでも白紙委任状を取ってしまって,これも取ってしまうというような濫用的な使い方というのを防止する必要があるのではないかと考えています。   それから,5の(2)のところですけれども,その他の検討課題として,不動産の表題部所有者に関する規律について,登記官が権利能力を有しないことになったと認める場合に,所有権の保存の登記をすることができるという点については,ここは慎重に検討を求めたいという意見がありました。不動産登記法76条2項,3項を引用されて(注)で書かれていますが,それらの手続は一応,手続に裁判所が関与しているというのが前提になっているのではないかと考えますので,権利能力を有しないこととなったと認められる場合,一律に保存登記を登記官ができてしまうというのは,私的自治への干渉としては大きいものがあるのではないかという意見がありましたので,この点については慎重な検討をお願いしたいと考えます。   それ以外については大きな異論はありませんでした。 ○山野目部会長 ありがとうございました。 ○今川委員 まず,その他の第5の1,登記名義人の特定に係る登記事項の見直しですけれども,これも先ほど少し話が出てきましたが,経過措置については検討していただくということで先ほど御説明を受けたので,それで結構です。   それから,2の(1)の国内における連絡先ですけれども,これも基本的には賛成です。連絡先なしという登記を認めるということになりますと,連絡先なしで登記する場合が多くなるのかもしれませんが,実際に連絡先がないのに,その登記を無理やり強制的に求めるということまではできないので,まずはこのような形で現状よりは一歩進めていくということでいいのではないかと,やむを得ないのではないかと考えております。確認ですけれども,これは外国人だけでなく,外国に住所を有する日本人も含むという趣旨ですねというのが確認です。   それから,(注2)で連絡先の登記の変更について触れられていますが,部会資料35では,連絡先である第三者が死亡した場合とか,又は辞任した場合も含めて,連絡先なしとする変更の登記をするという説明がありましたけれども,この考え方は維持されているということでよろしいかという確認です。それと,この第三者の登記について,住所や氏名に変更があった場合,変更の登記について義務化まではしないということであろうと思いますが,それも確認です。さらに,国内に住所を有する者が国外に住所変更をした,住所移転をしたという場合に,第2の1の住所変更の登記申請義務は課されるとは思いますが,それでいいですねということと,国外に住所を変更した場合にも,その変更登記をするときには連絡先の登記を義務付けていくということでいいのでしょうか。結果的に外国に住所を有することになるので,連絡先を変更登記と同時にしてくださいということはあり得るのかという御質問です。   (2)は特に意見はありません。賛成です。3も,附属書類の閲覧も賛成です。   それから,4の所有不動産記録証明制度の創設も基本的に賛成であります。ただ,(注2)について,今,日弁連の委員の方もおっしゃいましたけれども,やはり債権者からの圧力みたいなものも考えられますので,明確なアイデアがあるわけではありませんが,第三者から強制的に提出を求められるというような事態に対応するための何らかの規律を設けることは必要かと考えております。   それから,5のその他の検討課題ですけれども,(1)の被害者保護のための住所情報の公開の見直しについては賛成です。それから,不動産の表題部所有者に関する規律ですけれども,表題部所有者の登記について,所有権登記名義人と同じ規律を本来は適用すべきだという意見を申し上げていたのですけれども,住基ネット連携等のシステム構築のコストの問題もあるので,まずは今回の本文のような規律を置くことについては賛成をします。   この規律は,保存登記をして,直ちに死亡の符合も職権で登記するということですねという点を確認したいと思います。それから,先ほどから何回も言っていますが,表題部登記についても所有権登記名義人と同様に,ネットワークのシステムの中に今後,組み入れていただきたいと思っております。   補足説明1の24ページから25ページの1行目にわたって,表題部所有者についても規律を設けるかどうかの検討課題として幾つかの項目が挙げられています。このうち連携システムを前提とする項目については,そのまま当てはめるのが難しいというのは理解はしておりますが,では,相続登記の申請の義務付けと,氏名,住所の変更の登記の申請の義務付けは,これも今回は課さないということなのでしょうか。これらの義務付けについては,表題部所有者に対して課すということも考えられますし,所有権保存登記がされた場合に限定して課していくという方向もあると思いますけれども,第1,第2の規律は所有権の登記名義人と明記されておりますので,表題部の所有者については義務付けをしないという方向かと読めるのですが,確認をさせていただきたいと思います。   それから,この本文の規律は,登記官が職務を行う上で,ある意味,たまたま表題部所有者の死亡情報を取得することがあった場合に,職権で所有権保存登記をするという制度であります。そうすると,死亡情報を入手した,つまり表題部所有者が死亡したと考えられるときには,普通は表題部所有者と,死亡したといわれる人との同一性というか,特定をしっかりする必要があります。これは,表題部所有者であろうと所有権の登記名義人であろうと同じであろうと思います。であるとするならば,登記名義人の特定に係る登記事項の見直し,つまり,検索情報ですね,生年月日等は表題部所有者が表題部の登記をするときにもそれを求めたとしても,当事者の負担が重くなるものでもないと思うので,いかがでしょうかということであります。   もう一つ,これは最後の質問ですけれども,表題部所有者が共有名義で,共有者の1人につき相続が発生して,本文の規律によって,登記官がたまたま死亡の情報を知ったというときには,共有者も含めて職権で保存の登記をするというような立て付けなのでしょうか。 ○山野目部会長 司法書士会の意見をまとめていただきましてありがとうございます。外国に住所を有する者の連絡先の登記に関わる事項を中心に,またそのほかの点もありましたが,お尋ねがありましたから,事務当局から回答を差し上げます。 ○村松幹事 この連絡先の登記について,海外に在住する日本人が含まれるかというのは,含まれるということです。文言どおりになっております。   それから,死亡,辞任のケースにつきましては,そういう意味ではもう連絡が付きませんので,登記させるということになれば,連絡先なしという登記に変更することを想定しております。   それから,国外への住所変更があったと,日本人,外国人問わずということになりますけれども,そういったケースについても住所変更の義務化の規定,前の方の規定は掛かるということは前提になります。その際,連絡先についても住所変更に併せて登記をしていただくということになりますが,連絡先なしということはありますので,連絡先をとにかく見つけてそれを登記しなくてはいけないという義務をかけてはいませんので,その連絡先が見付かっている方については連絡先を登記していただくし,そうでない方にはその部分は必要ないということではあります。   それから,表題部の関係ですけれども,表題部所有者について,なかなか権利部と同じような取扱いが難しいという状況,それから,元々表題部所有者と権利部の所有権の登記名義人は法的にも位置付けが違うというのは大前提としてあります。そこの部分もあることから,同じような取扱いはなかなか難しいということで,今回は若干ひねっている部分がありますけれども,死亡のとき,死亡情報を表示するというこのルールの前提として,保存登記を入れるという,しかもそれを職権でやるという方策というのが,もしかしてあり得るのではないかというのを御提案し,ご意見をうかがいたいと考えているところです。したがって,これは飽くまでも死亡情報の表示ですね,これをするための前提になっていますので,保存登記をしたら直ちに,保存登記された方が亡くなられていることはもう分かっているからこそ保存登記いたしますので,死亡情報の表示を併せてやるということを想定してございます。   あと,おっしゃった,生年月日などの検索情報の点が少し,質問の御趣旨が分からなかった部分があったのですけれども,これはあれですか,表題部所有者についても検索用情報を出させたらどうかという。 ○今川委員 そうです。 ○村松幹事 そこは正に要否の問題かなと思います。他部との連携,あるいは法務局内でのある意味,名寄せ,検索ということがあり得るのであれば,お出しいただくということは説明可能なのだと思いますけれども,特に使用用途もなくお出しいただくということができるのかどうかという問題は別途あろうかと思いますので,そこはまた引き続き,どういう制度設計になるのかにもよりますけれども,検討が必要かなと思っております。   それから,共有者の1人だけが,共有状態で登記されているケースというのがどれだけあるかというところはありますけれども,このケースについてはご指摘を踏まえて検討が必要なのではないかという気がいたします。 ○今川委員 相続登記の義務付けとか住所変更の義務付け自体は,表題部所有者には課さない。 ○村松幹事 はい,申し上げたように,位置付けが異なりますので,なかなか同じようなルールでは整理できないのではないかという気がしてございます。 ○山野目部会長 今川委員,よろしゅうございますか。 ○今川委員 はい,ありがとうございます。 ○佐久間幹事 2点ございます。1点目は,22ページの4でして,先ほど来話題に出ている(注2)(注3)ですけれども,(注2)のようなことがあるので,弁護士会からは(注3)について,代理人を資格者代理人に限ることなども考えられるのではないかという,確か御意見だったと思うのですけれども,それは僕は困るなと。私は不動産をほとんど持っていませんので,私には実際は関係のないことなのですけれども,①のような請求をしたいというときには面倒くさいな,妻に行ってほしいなというときに,それもできないなんていうことになるのは,悪事を防止することを余りにも過剰に考慮しすぎて,一般の人の利便性を奪うことになりかねないので,それはちょっとどうかと思います。   2点目は,先ほど今川委員がおっしゃったことの続きのようなことなのですけれども,24ページの(2)で,保存登記が職権でされたとなりますと,先ほどは表題部登記について登記の義務化のことをおっしゃいましたけれども,保存登記がされますと,そこで登記名義人となった者の相続人がいるはずですから,その保存登記を前提に,今日の第1の1の適用があるという話になってくるのではないかと思うのです。保存登記がされておりませんと,登記名義人に関して相続の開始があったという,その登記名義人というところの要件が満たされないわけですけれども,保存登記がされますと,登記名義人というものがあることになり,その人について相続の開始ということが,もう登記名義人は死んでしまっているわけですから,起こっているということで,第1の1の適用があるということになるのではないかと思うのです。そうでないのでしたら,私の誤解だったということでいいのですけれども,そうであるとしたら,3年ならばその3年の起算点は一体いつになるのだろうか。その登記の時からなのか。しかし登記がされているというか,保存登記がされたことを相続人が知らないと,その相続に関する登記のしようもないので,それを知った時からなのか。その知るということがどうやって確保されるのか,というところを疑問に思いました。 ○山野目部会長 前の方は御意見を頂きました。後ろの方は,このたびの部会資料におきましては,表題部所有者に相続が開始した場合の解決を所有権の保存の登記の職権による実行という仕方ですることがよいかというアイデアの基本のところを,これは初お目見えの提案でございますから,そこについての委員,幹事の御意見を伺ってから細目を考えていこうというふうに,部会資料を作成する意図として考えておりましたところから,佐久間幹事に問題提起を頂いているような細部についての解決がまだ行き届いた仕方でお示ししていない側面がございますけれども,現時点で事務当局の考えがあったら説明を望みます。 ○村松幹事 先ほど少し申し上げたところをもう少し敷衍して申し上げますと,表題部所有者について,相続あるいは住所変更というもので,表題部所有者部分を実際の関係に即応するようにしていく,きれいにしていくという発想は余り採りにくいのかなと思っております。その関係もあるので,ある意味,無理やりに,この保存登記をすることで,権利登記の方に亡くなった方の名義を移していくということになりますと,佐久間先生がおっしゃいましたように,これでやっと相続登記の義務化の方に乗ってくるという形になります。その意味で,少し説明としてはひねった形になっていますと先ほど申し上げましたけれども,趣旨としては,死亡の符合の表示をするというところの前提として,保存登記を入れるという形にはなりますけれども,ある意味,表題部の義務化がなかなか色々な意味で難しいというところがありますので,この制度を利用することで,表題部所有者についてもなるべく権利部に移して,義務化の対象に入れていくということになっていくのだろうと,そういうつもりでございます。   起算点ですけれども,起算点については私,直感的には,登記名義人になったときからしかもちろん義務の掛かりようがないということでございますし,更にその上で,その不動産について相続があって,かつ登記名義人になっているということも,事柄の性質上,その前提を全部知った状態でなければ,その義務は起算点としてはスタートしないということになるのではないかと考えてございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事におかれては,いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○國吉委員 2点ほど意見を述べさせていただきます。まず,第5の2,外国人の住所の関係ですけれども,国内での連絡先を登記するという形なのですが,連絡先なしということを許容しようということに関してですけれども,これはなるべくないような形といったらいいのでしょうか,正式に国内の連絡先を登記できるようなシステムを構築していただきたいと思っています。今,外国人の方の登記名義人に対して,私どもも,例えば連絡を取ったりする段階で非常に困っているのは前から御紹介したとおりです。その中で,多いのが,ここに書いてありますけれども,不動産業者さん,それから弁護士さん,司法書士さん,若しくは我々,土地家屋調査士がそういう所有者の,要は土地の取得の段階で関わっている場合が多いですので,例えば,そういった資格者代理人の方々への啓蒙というのでしょうか,そういった方々がこういう事案に対して協力をしていくのだというようなことを推奨していただいて,連絡先なしというようなことがなるべく少ないような形の方策を考えていただきたいというのが一つです。   それから,表題部所有者については,提案がありました,職権で相続があったときなどに保存登記をするというのも,現時点でほかの表題部所有者の,システム上,少し触るのが難しいということであれば,これに賛成です。是非細かい部分も含めて検討いただいて,成案となっていただくことを望みます。 ○山野目部会長 御要望,御意見を承りました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○市川委員 部会資料53の23ページの5(1)の被害者保護のための住所情報の公開の見直しに関して,1点,念のため確認させていただきたいと思います。部会資料38の48ページでは,登記名義人への訴訟提起が困難となることを回避する必要があるところ,調査嘱託を活用した対応など,その具体的な運用の在り方についても引き続き検討するとされていましたけれども,今回の部会資料ではこの点の言及が特に見当たりません。例えば,調査嘱託に対する登記所の運用の在り方など,引き続きこの点に関して御検討いただけるということでよろしいでしょうか。 ○村松幹事 はい,御指摘のとおりでして,調査嘱託という形で対応するということで問題がないということであれば,その具体的な進め方についてもあらかじめ実務的には詰めておいた方がいいのだろうとは考えてございますので,施行に向けてということになりますけれども,事務的に詰めていきたいと思っております。 ○市川委員 よろしくお願いします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○中村委員 先ほど佐久間先生が前段でおっしゃった,部会資料22ページ4項の所有不動産記録証明制度の取得できる者を資格者代理人に絞ってはどうかという日弁連の意見についてなのですけれども,前回この点について検討しました第16回の部会資料38の36ページの補足説明のところでは,日弁連が中間試案に対して既にこのことについて懸念を示していたことを受けて,幾つかの案を示していただいていました。不法な態様で証明の提供を求めることを抑止すれば足りるのではないかということで,幾つかの提案を書いていただいておりましたが,今回の資料にはそのような種類の記述がなかったので,再度,代理人ということを無限定にしてよいのかということを申し上げたということです。その点についてはどのようにお考えなのか,教えていただけますでしょうか。 ○村松幹事 実際上,不法な態様での請求を抑止するという決定的な方策というのは,なかなか見いだし難いなとも考えておりますけれども,もう少し何か検討の余地がないのかというところを今日,改めて御指摘いただいておりますので,もう一度頭をひねってみようかなとは考えます。ですが,今お話ありましたように,絞りすぎてもよくないですし,絞らなさすぎてもという御指摘もあるところですので,確かに結局のところは,どなたが代理するのかとか,あるいは委任のタイミングとか,そういったところで切るしかなさそうな感じはもちろんするわけですけれども,委任のタイミングの方はなかなか書類上,判断できるのかというところもありますし,そうしていくと結局のところは,代理人になるべき主体という辺りが一つの答えになるのかも分かりませんが,そこの部分の切り方については非常にセンシティブな問題も含まれているような気もいたしますので,今日の御議論を踏まえて,次回までに検討してみたいと思います。 ○山野目部会長 ただいま事務当局の方からお約束をした検討に際しては,中村委員がおっしゃった,従前に弁護士会から御提案いただいている幾つかのアイデアといいますか,代案といいますか,それも併せて検討に含めて,どうしたらいいかということを悩んでみるということにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。そうしましたならば,最後のその他の事項については,大部分が従前にお出ししてきたものを基本的方向を同じくしつつ,細部を整えてお出ししたものでありまして,多くの委員,幹事からおおむね賛成であるという御意見を頂いたところであります。   それとは異なり,本日新しい提案として差し上げている事項が,國吉委員が後段でおっしゃった,24ページの職権による所有権の保存の登記の問題でございます。これにつきましては,橋本幹事から慎重に検討してほしいという御要望がありまして,もちろん慎重に検討してまいることとし,この制度の採否そのものを慎重に検討した上で,仮にこの方向で採用して進むということになる際にも,その次元においても,今日幾つかの細かい点の指摘がありましたから,そこについて法律事項にすべきことは要綱案に盛り込まれるように整えていくということにいたします。   今川委員から御指摘があったように,表題部所有者が複数いて,そのうちの一部に相続が発生したときに,この職権による所有権の保存の登記をルールどおりするかといったようなことは,なるほど司法書士でないと気付かないなという気もいたしまして,それは検討していかなければならないと感じますとともに,どうしたらいいかということを考え始めますと,幾つか悩ましい点があって,共有者の1人に相続が始まっているなら,もう全部を権利部の方に移して,その場合であっても所有権の保存の登記はやはりするという考え方が,恐らく表題部に余計な負荷を掛けないという理念から言うと,正当であろうと感じます。   ただし,問題は表題部所有者が100人単位でいるようなメガ共有と呼ばれているような事例は,その中に1人,2人,あるいはもっといるかもしれませんが,相続が開始した者があるとしても,古くからの土地であればたくさんいる可能性がありますが,その場合において,それは実体が認可地縁団体である可能性があって,むしろ地方自治法260条の38,260条の39の手続を,登記官から促すというのは少し変ですけれども,それを待って解決した方が実体に適合した解決が得られるというような事例もありましょうから,これは考え始めると,少し悩みが深いということでありますけれども,運用当局の法務省はそこを悩むことが仕事ですから,悩んでもらうということにいたしましょう。御指摘を頂いたことに御礼を申し上げなければなりません。   ほかに,部会資料53の最後の部分について,御意見はおありでしょうか。よろしゅうございますか。それでは,部会資料53について,本日のところの御審議を頂いたという取扱いにいたします。   委員,幹事の皆様におかれましては,長時間の御審議に御協力いただきましてありがとうございます。ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料55をお手元に御用意くださるようにお願いいたします。要綱案として作っていくものの第1部,民法の見直しの第1のところで扱う相隣関係の中の1として,隣地使用権を題材としている資料でございます。前回会議でこの隣地使用権について御議論を頂いたところを踏まえ,議事を整理いたしまして,本日改めて部会資料55の1ページに太字で掲げているような規律の構想をお示ししているところでございます。部会資料55のその余の部分は,その補足説明でございます。事前にお目通しを頂いているものと考えます。それでは,この部会資料55の全体につきまして,委員,幹事の御意見を承ることにいたします。いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございます。前回の第22回の部会では,この点につきましていろいろな議論があり,仮に前回御提案の使用権構成で進む場合でも,要件,手続,効果,それぞれの観点から適切な絞りを掛けることができるかどうかを更に探るということになりましたが,今回はそれを受けて,手続要件である本文③のところを更に工夫していただいたものと理解しております。日弁連のワーキンググループでは,今回の提案に賛成する意見があった一方で,前回もお伝えしたのですが,引き続き強い修正意見もありました。   まず,今回提案に基本的に賛成する意見としましては,この御提案にそのまま賛成する意見と,少し修正を加える提案が付いているものがあります。③の通知の宛先の部分ですけれども,第一次的には現に使用する者に対してとする,そして,隣地使用者を知ることができず,又はその所在を知ることができないときは,土地所有者に対してとするということによって,使用者がいない,又は不明という場合に,所有者は判明しているのに何ら通知をしないで使用できるといった,隣地の円満な利用の調整という観点からは望ましくないような事態を避けることができるとして,若干の修正を求めるという意見がございました。   それから,強い修正意見としましては,より根本的に見直すことを提案するものなのですけれども,部会資料の本文の定めぶりですと,これを読んだ国民の間には,自力救済は許されるという誤解が生じることを防ぐことは難しいという強い危惧感による意見です。今回の部会資料の提案では,本文だけを読みますと,①から③の要件を満たす限り隣地使用は適法であって,隣地所有者がこれを拒めば違法となると解釈され得るところ,例として,隣地使用権者が大掛かりな商業ビルの建築を予定しているような場合に,隣地所有者がこの時期は困ると申し入れた上で門扉に施錠をしたというような場合に,隣地使用権を侵害されたとしてその損害は巨額になるよというような形で迫られると,やむなく押し切られるという事案などを想定して,このような場合が生じてくるのではないかという懸念も示されていました。   その上で,この反対意見からの対案といたしまして,前回の部会でもお伝えし,また,前回中田委員から御示唆がありましたように,①の実体要件の中に,次に掲げる目的のために必要であり,かつ,隣地使用の日時・場所及び方法が,隣地の使用状況,隣地が受ける損害の性質と程度,他の代替方法の有無その他の事情に照らして相当と認められるときに,などとして相当性の要件を盛り込むことが1点。そして,もし①の要件をこのように修正すれば,②の要件を①に吸収してしまって,②が吸収された①と,今回の③の手続要件の両方を充足しなければ隣地使用はできないのだということが国民の目に分かりやすくなるのではないか,そうすれば懸念される自力救済をできる限り防止することができるのではないかという対案が示されました。   さらにもう1点ですが,これも前回お伝えしましたが,③の規律によって通知された日時・場所,方法などが被通知者にとってはどうしても都合が悪いということはあり得るので,変更請求権を設けてはどうかという,前回もお示ししましたが,引き続きこのような案が出されていました。   隣地使用権については,基本的に以上です。もう1点,前回の部会資料52の4項で扱われました,他の土地等の瑕疵に関する工事,いわゆる管理措置については今回の御提案はありませんけれども,このいわゆる管理措置についても前回多くの論点が指摘されまして,隣地使用権の検討と整合性をとりながら整えていく必要があるという指摘がなされたところでした。あと3回しか部会が予定されていない中で,なかなか難しいとは思いますが,管理措置についても,最終提案の形になる前にもう一度検討の機会を頂きたいという希望が出ておりましたので,申し添えたいと思います。 ○山野目部会長 弁護士会の意見をお取りまとめいただき,個別の出していただいた意見,それから審議の進め方についての要望を承りました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○佐保委員 ありがとうございます。先ほど中村委員が発言された隣地使用権の③の通知の相手方の話であります。現に使用している者については特段私も異論ありませんが,同じように,2ページの補足説明では,後段,他方でから始まり,隣地使用者が存在しない場合にはということも書いてあります。私は専門家ではありませんけれども,例えば,隣地使用者が存在しない場合は隣地の所有者に通知しなければならないといった規律を入れておいた方が分かりやすいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   引き続き承ります。いかがでしょうか。 ○道垣内委員 ありがとうございます。前回,この相隣関係の隣地使用権につきまして,②の要件に関して,隣地のため損害が最も少ない,というのではなくて,隣地所有者や隣地の使用者に損害が及ばないようにしなければいけない,といった文言にすべきであるという修正案が出されたのに対して,私も含めまして何人かの者が,隣地使用権というのが所有権対所有権の調整の話であるとするならば,そこに隣地所有者や隣地使用者に損害を与えないというふうなことを入れ込むのは,権利の性質を大きく変えることになるのではないかと発言いたしました。   今回,中村委員から,修正案が出たという具体的な話を伺いました。①について,相当性的な要件を入れる,というわけですが,しかし,そのときに中村委員は非常に慎重な言葉遣いをされまして,隣地所有者,隣地使用者という言葉をお使いになりませんで,「隣地が受ける損害の性質と程度」という言い方をされたのですね。私はその点には全く異存はありませんで,また,①のところに,必要な範囲内でということだけではなくて,そういう相当性の要件というものを入れるということにも特に反対するものではありません。もちろん②の,「隣地のために損害が最も少ないもの」というところで読めるといえば読めるのかもしれませんが,それよりも明確になるという点はあろうかと思います。   ただ,そういうふうに新しく①,②のところを作り変えるにせよ,あるいは現在のままにするにせよ,そこでは,前回申し上げましたように,①,②が,ある土地とある土地の関係の要件として規律されているところなのだと思います。これに対して,④を見てみますと,これは現在の所有者,現在の使用者というものに対して現実に損害が及ぶかどうかという観点で書かれていることであって,①,②とかなり性質の異なるものだろうという気がいたします。そして,それを前提にして,③の意味を考えてみますと,③は④の関係のものなのだろうと思うのです。これは現に使用している者というのを念頭に置いているわけですね。そうすると,①,②とはかなり性格が違うのであり,つまり,手続要件という話がありましたが,仮に,現使用者に対して通知をしないというままに,相当な方法で用いたというのを考えてみますと,通知をしなかったことによって,①,②で定められた権利の行使が当然に違法になるのかというと,どうも私は違法にならないのではないかという気がするのです。   そうすると,③の要件は何を意味しているのだろうかというと,恐らく④の話なのではないか。つまり,隣地所有者,隣地使用者が損害を受ける可能性がある,目的,使用方法,日時及び場所を通知されたときに,その日は都合が悪くて,その日にやられてしまうと大きな損害を受けるということであるならば,それをきちんと土地所有者に対して,使用しようとしている人に対して伝えなさいと。伝えないでおいて,自分に損害が,非常に都合の悪いときにやられてしまったなどといって,損害が生じたといって損害賠償を払えというのは,それは駄目でしょう。何日の何時から何時までと言われたときに,そのときなら大きな損害が生じるというのだったら,それはきちんと伝えなさい。伝えないで損害が生じ,ないしは拡大したということを理由にして償金請求はできませんよ。それに対して,伝えられたのにもかかわらず,あえてその日にやってしまったということになるならば,①,②の観点からは,ひょっとして正当な権利行使であるとしても,④における損害は認識して与えている損害であり,回避可能な損害であるという形になって,完全に償金の支払義務というのが認められるということになるのではないかと思うのです。そうなると,④のところのただし書に③というのを入れ込んで,ただし,通知を受けたのに,それをきちんと言わなかったことによって損害が生じ,ないしは損害が拡大した場合には,この限りでないというふうな要件として位置付けるべきではないかと思います。   なかなかうまく言えませんで,分かりにくかったと思いますが,以上です。 ○山野目部会長 中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。私は③について,ただ今の道垣内委員とは違いまして,もう少し積極的な理解をいたしました。今回,③に目的と使用方法を入れることで,規律内容の明確化と紛争防止の両面で非常によくなったのではないかと思いました。と申しますのは,②の規定は,使用方法はこれこれのものを選ばなければならないと書いてあるものですから,そうすると,①が権利の成立要件で,②は成立した権利の行使方法というようにも読めるわけです。しかしながら,③に目的と使用方法も入ったことによって,①と②を満たすことを前提にして③で権利が具体化される,そういう構造になったのかなと理解いたしました。   ところが,今,道垣内委員からの御指摘で,③というのはそういうものではなくて,もっと軽いものである,③がなくたって①,②で権利は発生しているのだと,それを行使しても適法なのだと,③は④のただし書として位置付けるべきだということを伺いまして,そうかと思ったのですけれども,そうだとすると,やはり権利の発生の時期,あるいはその発生した権利の内容というのが非常に不明確になるのではないかと思います。元々,前回申しましたとおり,立入権というところから出発していて,それが使用請求という形になった,だけれども,請求という構成を採ることによって,権利の内容がだんだん煮詰まっていくだろうと,こういうプロセスが予定されていたと思うのですが,今回,請求ではなくて使用できるということにしたとしますと,やはりその権利が具体化するということを明らかにした方が,規律の内容としても,紛争の防止という観点からも,よろしいのではないかと思っております。   ということで,むしろ私は③を積極的に位置付けたいなと思っておりました。その上で,①で,相当性の要件を入れる,弁護士会の御提案のような方法というのは,そうなればいいなとは今でも思いますけれども,しかし,なかなかそれも難しいのではないかと,この段階ですので。ただ,この部会資料でも一致していることは,①にいう必要な範囲というのは,決してその土地の所有者の主観的な必要性ではないということだろうと思います。つまり,この資料の1ページの下の2行にありますように,必要性の中には,あるいは①と②を併せて,様々な事情が考慮される,あるいは,2ページの3行目にありますように,正当化される範囲というものに限るのだということであります。そうすると,主観的な必要性ではないのだということを,解釈上当然だとお考えかもしれないのですけれども,条文だけを見た人はなかなかそうは理解しにくいかもしれませんので,何か手掛かりを入れることができたらいいなとは思います。例えば,「社会通念に照らし必要な範囲内で」とするような方法も考えられるかもしれません。もちろんそれは一つの例にすぎませんけれども,主観的な必要性ではなくて,この規律から出てくる制約の範囲内で判断されるべきものなのだということを表せたらいいなと思います。 ○山野目部会長 御意見を頂きありがとうございます。   今までお出しいただいている御意見などを参考としながら,引き続き委員,幹事から御意見をおっしゃっていただきたいと望みます。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。こちらの意見としては,これまで出させていただいていたとおり,なるべくそれほど重たくない手続がよいのではないかということで,そこは変わっていないわけですが,やはり想定している前提が大分,それぞれお立場によって違うのかなというところは感じているところでございまして,一番気になっているところは,正に最初の議論の出発点である,隣地所有者が連絡取れません,現に使っている人も分かりませんという場合に,なるべく,ある程度必要なところはきちんとやっていけるようにしたいというニーズに適切に対応できるものになるのかどうか,ではないかと思っているところでございます。その観点からいたしますと,今回,補足説明の一番最後のところに幾つか場合分けをして,3ページの一番下の方に,(5)のところに書いていただいている整理,おおむねこのような整理の仕方が非常に納得感のあるところかなと思っておりました。   念のための確認ではございますが,実際に例えば,一番最後の段落のなお書などでも書かれているのですが,現に隣地を使用している者はいないと評価する場合とか,所有者による使用すらないと評価されるような場合,こういう場合というのはもう通知まで不要という考え方でよいのか,あるいは,念のため通知をして,それで応答がなくてもそのまま使っていいという趣旨なのかというところは少し確認させていただければと思っております。   いずれにしても,通知して何も返ってこない場合には相隣関係を維持するために必要なメンテナンスを一切やってはならない,ということにならないのであれば,今回このような形で規律を改めていただく意義というのはあるのかなと思っておりますので,以上,意見と御質問ということで,よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。隣地の使用の解釈として一連の考え方をお示しいたしましたけれども,これは,今正に御指摘がございましたとおり,所有者が現に居場所が分かっているというときに,これは前回の部会資料でもお書きしておりましたが,後のトラブルを避けるために通常は所有者にはお知らせするだろうと。また,概念としては使用していないと評価できるとしても,念のために所有者に通知をするということが望ましいだろうと思っております。 ○藤野委員 明らかに使っていない場合は,名義上の所有者に連絡をした方がいいということですか。 ○大谷幹事 明らかに使っていない場合でも,所有者が分かっているのであれば,後のトラブルを避けるために所有者に通常は通知をするのではないかというところでございます。 ○藤野委員 判明している場合はですよね。判明しておらず,連絡も取りようがないというときは,逆に言うと,ここの中では通知先がないという要件,解釈でいいのかどうかというところで。 ○大谷幹事 さようです。今の補足説明の一つ上の段落の,所在が不明だというときには,それは使用していないと評価することが可能ではないかと考えております。 ○藤野委員 ありがとうございます。基本的にもう隣の所有者が分かっているとか,現に使用している人がいるというときに,そもそも隣地使用権の行使という立て付けを実務的にそれほど使うかといえば,少なくとも事業者というか会社の話であれば,それはないというか,この条文を持ち出すまでもなく,きちんと判明している所有者や使用者と話をして使うだろうというところで,私どもの方で想定しているのは,やはりそういった方々がいない,所在が分からない場合というところが前提になっていますので,一応そこのところも含めて目配りをした形で検討を進めていただければと思っております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き御発言を承ります。   いかがでしょうか。ここまでの御議論で,①,②という基本的な成立要件を案内する規律の部分に加えて,③の通知を掲げ,そして④の償金の規律を置くというフォーメーションを御提示申し上げ,前回の部会資料と比べて,③のところについて変更を加えて御提案を差し上げております。ここまでの御議論で,このような前回の部会資料からの変遷を経た提案の基本的骨格は理解ができるという御意見を頂いたり,そのような基本的な骨格は理解ができるということを踏まえた上で,若干の御提案を頂いたりしているところであります。   ①につきましては,このままの文言でも理解がきちんと説明されるということで進めるという可能性があり得るほか,相当性,社会通念という言葉などを例示しながら,何らかの形で,隣地使用権の行使の範囲,態様についておのずと制限があるということが規範として伝達がより明瞭になるようにする方がよいという御意見や,あるいは,更にもっと多くの文言をここに充てて,そのことがかっちり伝わるようにすべきであるという御意見が出されたりしているところでございます。   皆様方の御意見を引き続き承ってまいりますけれども,いかがでしょうか。   おおむね,ただいま御発言いただいたようなところを踏まえて,改めて①,②,③を中心に整理を深めていくということでよろしゅうございましょうか。何か補足で承っておくことがあったらお伺いいたします。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでの意見を先ほど中村委員から申し上げましたが,少し補足して意見を申し上げます。   中田先生がおっしゃったことと関係しますが,私は,③の要件が④の要件との関係で存在するのではなく,①,②の実体要件を受けて③の手続要件が定められているという位置付けとするのが望ましいと考えております。そのことを考える上で,先ほど,道垣内先生もおっしゃられていて,難しい問題があるところだと理解しておりますが,②の「その使用方法は,隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」を,どのように解釈できるかが大事かなと思っています。つまり,「隣地のために」というのは,隣地所有者や隣地の使用者のためにということを意味するのではないのだよという指摘を頂いています。しかしながら,「隣地のために」というのは,部会資料1頁の下から2行目にもあるとおり,隣地の使用状況であるとか,隣地が受ける損害の性質と程度,他の代替方法の有無などの事情を考慮して判断されることになろうかと思います。そして,③では「その目的,使用方法」に加えて「日時及び場所」を通知するとあるのですが,この「日時及び場所」が「使用方法」との関係でどのような位置付けになるかが重要だと思います。私は,「日時及び場所」は必ずしも隣地所有者や隣地使用者の個人的な事情ではなく,隣地のために損害が最も少ないものでなければならないという「使用方法」の一要素になると考えます。例えば,極端なことを言えば,真夜中に工事をするなんていうのは隣地のために損害が最も少ないとはいえないであろうとか,そういった意味において,③の「日時及び場所」は,②の隣地のために損害が最も少ないということのための判断の要素になるのだと思います。そのようなことも併せ考えて,②と③をうまく整合させ,そして,弁護士会が懸念しているようなトラブルが生じないような適切な仕組みを構築していただければと思っております。 ○山野目部会長 ②と③の関係について,今,蓑毛幹事に整理していただいたとおりの趣旨で部会資料は御案内していると理解しておりますけれども,事務当局から何か補足がありますか。 ○大谷幹事 御指摘をありがとうございます。使用方法という言葉,②と③で同じ言葉を使っていて,この関係がどうかということもあるのだと思います。本日の御指摘も踏まえまして,更に何か,この本文を変えるのか,あるいは説明ぶりをもう少し充実させるのかというところも両方あり得るかと思いますけれども,再度検討したいと思います。 ○道垣内委員 ありがとうございます。私は③の要件を軽くしようという話で申し上げているつもりもありませんで,蓑毛さんが今おっしゃったような,真夜中は駄目ではないかと,それはやはり土地に損害を与えるわけではなくて,土地の使用者,所有者に損害を与えるから駄目なので,それが隣地のために損害が最も少ないとはいえないということになるという,それはそのとおりだと思うのですが,私は逆に,1週間後の何日に工事をやりますと言われたときに,いや,実はその日は友達を招いて庭でバーベキューパーティーをやることになっているのだとか,あるいは,友達を招いていて,その友達には赤ちゃんがいて,大きな音を立てられると困るのだというふうなときだって,そう言われれば,使用はやめるべきだと思うのです。日にちをずらすべきでる。しかし,そういうのは「隣地のために損害が最も少ない」というところには読み込めないだろうと思いまして,そうなると,それに反したときはどうなるのか,2,3日ずらしてくれればそれでいいのだけれども,その日はもうお客さんを呼んでいるから勘弁してほしいというときに,強行したときどうなるのだろうか,あるいは都合を聞かないでやったときどうなるのだろうかとかということになると,4の損害賠償的な話というのが生じるということを明らかにすべきであって,それが私が言うところの,①,②と性格が少し違うのではないかということの意味です。そうなると,償金という言い方も正当性が何となく感じられるので妥当でないかもしれません。   だから,極端な話,土地どうしの関係ではなく,所有者との関係であるということであっても気にしないのならば,逆に,手続要件の①に書いてしまうべきだと思うのです。こういうふうな通知をして,やらなければいけません,それで,合理的な異議が述べられたときにはもう権利はありませんと書いてしまうのだと,またこれも分かるのです。それに違反したら,それはもう勝手に人のところに入った不法行為であるという話になるわけです。今のままだと,③は何なのという,違反したらどうなるのだろうというのが私にはよく分からないものですから,その位置付けをはっきりさせてほしいということです。軽くしたいということではございませんので,一言申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 ③の位置付けについて,軽く位置付けを与えているものではないという道垣内委員の御意見の本旨を理解いたしました。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。道垣内先生から非常にうれしい言葉を頂いたと思います。①と②の要件を満たしていると思われる土地所有者が,隣地の使用者に対して③の通知をした,しかし,隣地の使用者からすると,小さな子供もいるので日を改めてほしいということであれば,それは日を改めるべきだと,この結論は正に弁護士会が望んでいるもの,そのものでして,とても有り難い言葉だと思います。   その場合,弁護士会が気にしているのは,そのようなことを言って拒んだ隣地の使用者には不法行為は成立しませんよねと,隣地使用権の行使を故意,過失によって妨げたということによって不法行為は成立しませんよねということの確認をしたいと思っているのです。道垣内先生のお立場ですと,隣地の使用者が,小さな子供がいるから別の日に改めてくれと言って,しかし話合いができないまま,土地の所有権者,隣地使用権があると主張する者の工事ができなくなったとしても,不法行為は成立しないという結論になってしかるべきだと思うのですが,それが不法行為のいずれの要件を欠いて,不法行為の成立が妨げられるのか。隣地使用権が成立して行使要件も満たしているにもかかわらず,自分の都合でそれを拒んだ者について,不法行為は成立しないということになるということでよろしいのかということが,道垣内先生にお尋ねしていいのかどうか分かりませんけれども,そこが気になっているところです。 ○山野目部会長 今のお話は,しかし,道垣内委員に直ちに発言をお願いして議論のラリーを少ししていただくと,考えが深まるであろうという予感を抱きますから,もしよろしければでいいですが,道垣内委員におかれて,ただいまの局面での不法行為の成否,それから成立,否定の論理構造について,何かお考えがあったらお話しいただければと望みます。 ○道垣内委員 だから,それは妨げても不法行為にならないというふうにしなければいけないということは分かります。そうであるならば,それはもう①の中に③の話は埋め込まざるを得ないのであって,③のところに書いていたからといって,①,②の権利自体がなくなるという話には,構造上はならないような気がするのです。ですから,今,蓑毛さんがおっしゃったような,バリケードを作ってか何か分かりませんが,使わせないように妨害をするという行為が不法行為にならないということを明らかにしようというのだったら,このままではなくて,①に入れなければいけないし,あるいは,解釈かどうか分かりませんが,中村さんがおっしゃったような,①のところに相当性みたいなものを入れて,その相当性の解釈の中に③における交渉とか,そういうものというのを埋め込めるようにしないといけないのではないかと思うのです。   もちろん,209条は歴史がある条文であって,いろいろな請求構成とかいろいろあるのは,それは分かりますけれども,やはり全体としてはこれは土地の問題としてやっていて,例えば,最高裁の平成⑤年判決というのは,袋地上の違法建築物に下水排水のための隣地使用権があるか,を扱ったものですが,現在建てられている建物が建築基準法違反のものであることにより隣地使用権自体を否定するのではなく,権利濫用で処理しているわけですね。私は,土地と土地との関係で考えたときには,水を出すという権利自体は否定できないところ,除却対象となるような建物を建てて水を出すというのを妨げようとするならば,権利濫用の話としてせざるを得ないというのが判例の立場なのではないかと理解しております。中村さん,蓑毛さんがおっしゃっていることと,私が申し上げていることとの間で,具体的な事件における,どう在るべきかという結論は恐らく違わないと思うのです。だけれども,それをどういうふうに整理した形の条文にするかということで,今のような③の位置付けだと,そういうふうにはならないのではないかというのが私の思うところです。 ○山野目部会長 道垣内委員,ありがとうございます。   佐久間幹事,少しお待ちください。ボールを一回蓑毛幹事にお戻しして,今の道垣内委員のお話を聞いて,御発言があったら,頂きます。 ○蓑毛幹事 いえ,もう少し頭を整理して,道垣内先生がおっしゃったことについて議事録をよく読み返して,考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○道垣内委員 いや,余りきちんと読み返さないようにしていただいた方がいいかもしれません。 ○山野目部会長 でも,きっと読み返すと思います。   佐久間幹事,お願いします。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。余りまとまってはいないのですけれども,先ほど蓑毛幹事がおっしゃった,真夜中に工事するとかという例ですよね。違うか,子供がいて迷惑だからという例でしたか。 ○山野目部会長 今,二つ例が挙がっていて,真夜中に工事をする話と,庭で友達を呼んでバーベキューパーティーをする話があります。 ○佐久間幹事 そのどちらでもいいのですけれども,不法行為の成立について,それほど単純に判断することはできないと思います,そもそも,隣地使用権は債権ではなく物権的な権利なのだろうと思いますけれども,それほど保護法益として強いものでないとしたならば,侵害態様とか,その妨害に当たる行為をした者の主観的状態によって,故意又は過失の要件が否定されるとか,あるいは違法性の要件が実はここでは満たされなければいけないところ,その要件が充足されないというふうな考え方で不法行為が否定されることが一つはあり得るだろうと思うのです。   もう一つは,①の目的のため必要な範囲内でというところで,先ほど中田委員がおっしゃったことに近いことになるのかもしれませんが,まさにその日とかその時期にピンポイントでどうしても,例えば収去又は修繕をせざるを得ないのだというときは,立入りを妨害することが違法になるということはあり得ると思うのですけれども,比較的余裕のある時期というか,一定期間内にやれればいいのだというときには,ピンポイントの日時,特定の期間に立ち入れないことがあったとしても,まさにその日,あるいはその期間に立ち入ることだけが必要な範囲内での隣地使用であるとはいえない,という考え方だってできると思うのです。   申し上げたいことは,種々いろいろな要件操作がされ,最終的にそんな訳の分からん結論になることは,少なくとも法律家の間では,ないのではないかと思います。そのことが法律の知識のない一般の人たちにどの程度うまく伝えられるかということが焦点であり,その意味では,余り物権法の範囲では見ないのかもしれませんけれども,中田委員がおっしゃった,「社会通念上必要な範囲内で」といった文言を入れることが可能であれば,それは一つの方策ではないかと感じました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   不法行為の成否そのものに関する言わば学理的,学問的な不法行為の要件論上の体系整理としては,ざっくり言えば,佐久間幹事がおっしゃったように,それほど簡単に不法行為が成立するはずがなくて,多くの事案において過失が否定されるでしょうし,しかし,問題の核心は過失の要件に依存するのではなくて,違法性阻却ができるか,あるいは体系のとり方によっては権利侵害の有無の問題として考えたときに,弁護実務のお立場における実際感覚で行くと,学者はそう言うかもしれないけれども,一体この①から③のうちのどこが否定されるから,権利侵害が否定され,又は違法性が阻却されるということになるかはっきりしていただかないと,弁護士会の先生方としては,どちらの依頼者の側に立ってアドバイスをするのでも困る場面が出てくるところから,そこの議論を明瞭にしてくださいという御要請であろうと受け止めます。   その上で,それに対し,どのようなお答えをしていくかということに関しては,今の①,②,③の並びだとしても,ここまでの御議論で明らかになった点は,②の趣旨,③の趣旨のようなものは,①とばらばらに存在するものではなくて,①の中の,取り分け目的のため必要な範囲内でという規範的概念の理解の中に吸収する仕方で総合的な判断がされるということになって,その判断の過程から得られる結論として,権利侵害が否定され,又は違法性が阻却されるという結論になるものでありましょう。   佐久間幹事のお言葉で言うと,法律家は普通そういうふうに判断するものであるから,やみくもに不法行為が成立することはありませんよというふうな話で論理が進んでいて,そこまでは弁護士会の先生方にも御理解を頂けると想像しますが,あとは,今のような説明で①,②,③として出している姿を理解しますと説明していくということで進めるか,もう少しそこのところが,法律家でない方々に対しても,より規範の内容が透視性を持つ仕方で文言の改良をしていくかというところに収斂されてくるであろうと感じます。そこのところを先ほど大谷幹事が,引き続き整理してみますとおっしゃいました。その観点から言うと,恐らく②,③を今の建て付けの基本は維持しながら,もう少しそこの言葉の関係を整理する必要があるかもしれません。   それから,もう一つは,①の柱書き本文のところの,取り分け次に掲げる目的のため必要な範囲内で,の文言について,何かベターな伝達の仕方があるかということは考えてみる余地があるかもしれませんけれども,法制的に難しいという限界がそこにもしかしたらあるかもしれません。それらの工夫をして,①,②,③の建て付けが余り変わらないというときには,大体狙っている結果は弁護士の先生方と民法の先生方がおっしゃったものと齟齬していないものですから,そういうふうに説明して理解してもらいますという進み方になるでしょうし,しかし,最初からそういうふうに決めないで,もう少し文言を工夫してみましょうというお話になっていくかもしれません。   悩ましい点は,少し場面が離れますけれども,賃貸されているアパートの窓が壊れたりして修繕の必要が生ずるときに,賃貸人が保存行為をしようとすると,契約に関する規定を参照しますならば,賃借人は拒むことができないという文言になっております。拒めば違法であると考えられます。賃借人の方に拒むか拒まないかの随意の恣意的な選択をする余地はないということを,法文は拒むことができないという言葉で伝えていますけれども,しかし,そうはいったって,拒むことができないのだからあなたのアパートに入っていくよと告げ,賃借人,どいていなさいとドカドカ入り,窓ガラスの修繕に賃貸人が業者を連れて入りますというふうになると,それは違法な自力救済以外の何物でもないのでありまして,そのとき正にその賃借人の方が,今,家に友達を招いてホームパーティーをしている最中であるから困ります,窓ガラスが壊れているところは直してほしいですけれども,明日にしてくれませんかというやり取りがされることになって,そのやり取りの全体が,賃貸借の場合には,契約及び取引上の社会通念という概念がいちいち書かなくても常に支配していますよということがバックボーンにあって,その拒んだ,拒まないのやり取りのところの相当性がこの概念を用いて判断されますというお話になっていくものでありましょうけれども,こちらは契約関係にない人同士の間のコミュニケーションの問題になりますから,少なくとも取引上の社会通念という言葉をここに入れようとすると,どんな取引があるのですかというお話になってまいります。そこで,取引上の社会通念そのものではないだけれども,中田委員がヒントをくださったように,社会通念ないし,それと類似の,法制上ここに可能な限り親しむ概念を探して,何か工夫するということはあるものではないでしょうかというお話になってくるかもしれません。   もう少し,ここの議事の整理を次回以降につなげていくために,委員,幹事がお気付きになっていることのお話を伺いたいと感じますから,何かありますればお話をくださるようにお願いいたします。松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。今問題になっている部会資料55,第1の1③の要件は,道垣内委員の問題提起,中田委員のご指摘を踏まえて,私の理解では,同じく①と②では隣地使用の目的のために必要な範囲内で,かつその使用方法は隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならないとして,抽象的に定められていて,要件としては明確だけれども,具体的に何を意味するかということになると,隣地との関係によって多様性があるために,同じく③で隣地使用の目的,使用方法,日時および場所を具体的に示して交渉することを促すことにより,同じく①・②の内容を具体化して,土地所有者と隣地を現に使用する者との間の調整を図ることを可能にするという機能をもつものと思われます。   そのうえで,③が定める「通知」が法的に何を意味するかですが,これについては,部会資料55の2ページの下から6行目「他方で」から始まる段落で,この「通知」は相手方に相当期間を定めて応答を求める趣旨のものではないとして,その性格を明確にしていただいています。たしかに,隣地使用権である以上はそうであるとしても,やはりできる限りは,これから隣地を使いたいという土地所有者と,隣地を現に使用している者との間の調整を可能にするような「通知」である必要があるものと思われます。したがって,「通知」の方法については,この趣旨に照らして実効性があるものを工夫する余地があるように思います。   なお,先ほどから問題になっておりました不法行為による損害賠償との関係ですが,④の償金は土地所有者が隣地を使用する際の故意・過失の有無にかかわらず,したがって不法行為とは関わらずに,法定の権利である隣地使用権に基づく使用によって隣地の所有者または使用者に損害が生じたならば,その償金を請求できるものと理解しております。③の要件の具体的な行使の仕方として,やり方が悪かったら,それは不法行為になり得るけれども,その話と④の償金請求は別だと理解しております。例えば,隣地使用権の行使により,隣地の所有者または使用者が当該土地を10日間,20平米使えなかったということであれば,それは当然,損害があるから,償金を払ってくださいねという趣旨だと私は理解していますけれども,それで合っているかどうかということを確認させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 お尋ねの部分について,事務当局からお話をください。 ○大谷幹事 今の点,償金の考え方はそのとおりだと考えております。 ○山野目部会長 松尾幹事,お続けください。 ○松尾幹事 ありがとうございました。   あともう1点だけ確認をさせていただきたいのですが,前回と同様の確認事項で,少しくどいようで大変恐縮なのですが,部会資料55の3頁,下から4~8行目で,土地所有者の所在が不明であるようなケースでは,隣地を現に使用している者はいないと評価することが可能であるという説明ですが,これは通知をしなくても隣地を使えるという理解でよろしいでしょうか。これについて前回,私は不明所有者にも公示による意思表示等の方法で通知すべきであるという意見を申しました。これに対し,それでもなお,隣地が所有者不明になっている場合には,それは通知なしに使っていいのだということであれば,そういう所有権の制限を受けるということについては,不明所有者の責務として,それは甘んじて受けてもらいましょうという説明をすることになると思いますので,その点だけ最後に確認させていただきます。 ○山野目部会長 その旨は先ほど藤野委員との間で確認していただいたことの再確認であると感じます。 ○松尾幹事 正に藤野委員が先ほどおっしゃった点でございます。 ○大谷幹事 そうですね,所在不明の場合には通知が不要であるということを,ここで解釈として示していることになります。 ○山野目部会長 松尾幹事,よろしゅうございますか。 ○松尾幹事 はい,結構です。 ○山野目部会長 部会資料55でお諮りしている事項について,ほかに御発言はおありでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,1ページの①,②,③,加えて④の関係について,今日は委員,幹事から活発な多くの有益な御指摘を頂きました。これを踏まえて整理をするということにいたします。深く御礼を申し上げます。   本日,3点の部会資料,53,54,55についてお諮りをし,実質的な審議をここで了したという扱いになります。   次回の会議の案内等につきまして,事務当局からお話を差し上げます。 ○大谷幹事 次回の議事日程ですけれども,来年の1月12日火曜日,午後1時からということで,終了時間は最近のとおり,終了時間未定とさせていただきますが,場所は東京地検の15階になります。隣の建物の15階になります。最初の頃に使っていた所かと思いますけれども,法務省ではなくて検察のエリアの方になります。   テーマとしては,要綱案について御議論を賜りたいと思っております。   今年も大変な御協力を頂きまして,何度もおいでいただき,ありがとうございました。一応この部会は年内はここまでということになります。また来年,よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 次回の会議の案内等は,ただいまお話を差し上げたとおりですが,この際,部会の運営につきまして,委員の皆様からお尋ねや御意見がおありでしょうか。   よろしゅうございますか。   本日は3点の部会資料,いずれも難度の高い論点が含まれておりまして,委員,幹事におかれましては長い時間にわたる審議に熱心に御協力を賜りました。深く重ねて御礼を申し上げます。   これをもちまして,民法・不動産登記法部会の第23回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-