裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第16回)議事録 第1 日 時   令和2年12月15日(火)午前10時2分から午前10時56分まで 第2 場 所   東京保護観察所集団処遇室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,小木曽綾,小林篤子,重松弘教,島田一,菅野亮,武石恵美子,畑中良彦,堀江慎司,山根香織,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,栗木傑刑事局参事官 (その他)市原志都最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 取りまとめ報告書(案)についての意見交換 2 その他 第5 配付資料  資料:取りまとめ報告書(案) 第6 議 事 ○栗木参事官 予定の時刻となりましたので,ただ今から裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第16回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は,皆様御多用中のところ御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   菅野委員,武石委員,堀江委員,和氣委員には,本日,ウェブ会議システムにより御出席いただいております。   まず,事務当局から,配付資料について説明をお願いいたします。 ○栗木参事官 本日お配りしている資料は,議事次第,取りまとめ報告書(案)の2点です。 ○大澤座長 それでは,早速議事に入ります。   本日は,前回の会合でお伝えしたとおり,本検討会の取りまとめに向けた議論をお願いしたいと思います。   取りまとめについては,前回の会合後に,取りまとめ報告書(案)を事務当局において作成してもらいましたので,まず,その概要について,事務当局から説明をお願いします。 ○栗木参事官 取りまとめ報告書(案)について御説明します。   取りまとめ報告書(案)は,座長の御指示に基づき,事務当局において,本検討会における意見交換の取りまとめに向けた御議論に資するため作成したものです。   取りまとめ報告書(案)の目次を御覧ください。   取りまとめ報告書(案)の「第1」には,本検討会の趣旨や取りまとめ報告書を公表することとした趣旨を,「第2」には,本検討会が設置されることとなった経緯や開催状況を,「第3」には,裁判員制度の施行状況等の把握のため,法曹三者の委員から取組について御説明いただいたことや,ヒアリングを実施した上で,検討項目を整理したことなどを記載しています。   また,法曹三者の委員から御説明いただいた内容やヒアリングの内容等については添付資料としております。   「第4」には,第1回会合から第15回会合までの議事録に基づき,これまで御議論いただいた内容を整理して記載しました。   「第5」には,本検討会の総括的意見を記載しております。   取りまとめ報告書(案)の御説明は以上です。 ○大澤座長 それでは,意見交換を行いたいと思います。   取りまとめ報告書(案)について,御質問や御意見のある方は,挙手の上,どの点に関するものかを明示していただいた上で,御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。 ○菅野委員 何点か意見を述べさせていただきます。   まず,1点目は,「上訴審の在り方」について,18ページの上から二つ目の「○」に,「死刑判決に対する上訴審の判断は,むしろ厳しくなるべきである」という表現がございます。上訴審でなるべく覆さないようにすべきではないかという問題に対して,「上訴審の判断は,むしろ厳しくなるべきである」というまとめがどういう意味を持つのか,ここを読んだときにやや分かりにくいと感じました。これまでこの検討会で出た御意見は,一審を尊重すべきという考え方が基調にはあるけれども,死刑判決については裁量の幅が狭いので,一審尊重の度合いが低下するという趣旨だったかと思いますので,「むしろ厳しくなるべきである」とまとめると,趣旨がやや分かりにくいと思います。ですので,もう少し表現ぶりをクリアにするような改訂ができないかなと感じています。 ○大澤座長 発言の趣旨を確認させていただきたいと思いますけれども,「厳しくなる」という言葉が分かりづらいという,そういう御趣旨ですか。 ○菅野委員 そうです。 ○大澤座長 分かりました。   ここの部分については,元々の御発言者は堀江委員だったかと思いますが,何か御発言の趣旨をいかした形で適切な言葉はございますか。 ○堀江委員 厳しくなるべきだという言い方だと,若干私の趣旨とずれているのかもしれません。   私の発言の趣旨としては,死刑を選択すべきか否かという判断は,量的判断ではなく質的判断であり,刑期を何年にするかという量的判断の場面に比べて,許される裁量の幅が狭くなるだろうと。そのため,上訴審によって裁量の幅を超えていると判断される場合が,有期刑における場合より増えることがあり得る,増えてもおかしくはないだろうという趣旨なのですけれども,それで御理解いただけますでしょうか。 ○大澤座長 「厳しくなる」という言葉の意味についていろいろな取り方があるというところが問題なのか,「べきである」と書いてあるところが問題なのか,菅野委員の問題意識はどちらですか。 ○菅野委員 この問題は,元々,「なるべく覆せないようにすべきではないか」という問いですから,「厳しくなる」という表現だと,どちらの方向に厳しくなるのかというところが分かりにくいと思います。私は,以前,堀江委員がおっしゃった御意見の趣旨は,今の堀江委員の御発言のとおり,死刑の判断については,裁量の幅が狭くなるので,上訴審における審査が厳しくなるのであって,上訴審でなるべく覆せないようにすべきではなく,むしろ,死刑判決の場合は,それ以外の場合とは異なる配慮が必要なのだということだと理解していました。ですから,その趣旨が明確になった方がより適切ではないかと感じた次第です。 ○大澤座長 事務当局としては,いかがでしょうか。 ○栗木参事官 今の御意見を踏まえて,事務当局の方で修正案を作成して,お諮りしたいと思います。 ○大澤座長 ほかの委員の皆様方,よろしいでしょうか。   それでは菅野委員,2点目はいかがでございましょう。 ○菅野委員 2点目は,20ページ目の「(2)」の問題点についてです。   具体的には,この「(2)」では,裁判員の制服の準備をすべきではないかという御意見に対して,幾つか意見が述べられたという取りまとめになっているところです。この取りまとめ自体に私自身も異論はございません。こういった意見が出たことは間違いのないところだと感じています。   他方,ほかの論点についての記載を見ますと,例えば,「これに積極的に賛同する意見はなかった」とか,意見のまとめのような表現が付いています。制服を準備すべきではないかという御意見についても,その意見そのものに対しては特段の賛同をする意見はなかったように思いますので,そうであれば,他のパートと同じような形で,意見のまとめのような表現を入れてもいいのではないかと感じました。その上で,配慮は必要なので,こういう各意見が出されていたというようにまとめる方が,他のパートとのまとめ方の整合性がとれるのではないかと思います。 ○大澤座長 今の御指摘については,元々の意見の書き方というよりはまとめ方の問題ですので,全体としてどのように考えるかということかと思いますが,元々の御発言は和氣委員かと思いますので,もし何か御発言されたいことがあれば御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。あるいはまとめ方の問題ですので,まとめ方という観点からほかの委員の方々,いかがでしょうか。   要するに,裁判員の制服を準備するというところに重点を置いた御意見であると捉えると,菅野委員が今おっしゃったような書き方もあり得るかと思いますが,他方で,裁判員の服装を正すべきであるというところに重点を置いた御意見であると捉え,そのための方策の一つとして,例えば裁判員の制服を準備したらよいのではないかということだとすると,それを受けた形で,他の委員からもいろいろなアイデアが述べられたという形のまとめもあり得るところかと思いますが,菅野委員,いかがでしょうか。 ○菅野委員 私も特に強くこだわっているものではありません。ただ,特に具体的な提案が出た項目については,積極的に支持する意見があったとか,なかったとかというまとめが記載されていたものですから,裁判員の制服を準備すべきという具体的な提案が出ていたのであれば,そういったまとめの方が平仄が合うのではないかという程度の話になります。   他方で,法廷には被害者や御遺族がいることもあるということを念頭に,裁判員の服装全般について配慮してほしい,例えば裁判員の制服を準備したらどうかという御趣旨なのであれば,このような取りまとめ方でも異論はございません。 ○大澤座長 取りまとめをされた事務当局から,何か御説明はございますでしょうか。 ○栗木参事官 まとめの表現として,単に「意見が述べられた」としておりますのは,必要に応じて裁判員に服を貸し出せるようにするといった工夫があってもいいのではないか,という他の委員からの御意見が,服装についての配慮の方法として,裁判員の服をあらかじめ用意しておくという点において,裁判員の制服を準備すべきという御意見と同じ趣旨であると思われましたので,全く支持する意見がなかったというふうに評価することはできないと考えたためです。 ○大澤座長 いかがでしょうか。裁判員の服装についての問題提起として発言があり,それを受けていろいろな議論があったということであれば,裁判員の制服を準備する等,服装についての意見があったというような書きぶりというのもあり得るところかと思いますが,そのような形ではいかがでしょうか。 ○菅野委員 私としては,もしこれが制度としての御提言であれば,制服そのものに賛同する意見はなかったように思ったものですから,ここだけこのようなまとめ方になっていることに不思議さを持ったという程度にすぎませんので,今のままでも特段異議があるというものではございません。 ○大澤座長 最初の部分について,例示の形にするなど,事務当局で修正していただくということでよろしいでしょうか。   それでは,菅野委員,更に御指摘ございますか。 ○菅野委員 はい。これはまとめに関して訂正をしてほしいということではなくて,実務に対して誤解がなければいいなという気持ちからの意見ということになります。   具体的には,8ページ以降から,いわゆる刺激証拠の取扱いというテーマと,それに引き続いて録音・録画記録媒体の問題がかなりボリュームをとって整理されております。整理につきまして異論はございません。ただ,実務において,これらの論点がたくさん争われているのかといいますと,それはちょっと実情とずれておりまして,例えば刺激証拠について厚く議論がされる事件はもちろん一定数あるのですが,多くの事件では検察官が適切に絞り込みをして,弁護人が意見を述べて,そして裁判所もそれを尊重して,それほどもめることなく進行しています。   録音・録画記録媒体も,これがベストエビデンスになり得るものだとまとめられているのですけれども,正直,録音・録画記録媒体が証拠調べ請求される事件,あるいはその採否が問題になる事件というのは,数としてはすごく少ないです。実際,検察庁から録音・録画記録媒体が請求される事件は,私が担当した約50件のうち1,2件あったかどうかですし,それらにおいても,念のために請求しておくという位置付けでした。検討会では,たくさん議論して,理論的には整理されたように思いますし,たくさんの意見が出たのは間違いありませんが,日々の裁判員裁判でここがシビアに議論されているかといいますと,現場の温度感とは少し違うのかなということをお伝えしておきたいと思います。 ○大澤座長 この点については,取りまとめ(案)を作成された事務当局として何かございますか。 ○栗木参事官 御指摘のとおり,刺激証拠の取扱いや録音・録画記録媒体の実質証拠としての取調べについては,ほかの論点と比較して,いろいろな立場からかなり多くの御意見が述べられましたので,この取りまとめ報告書(案)にも,そうした議論の状況を反映させる必要があるとの考えから記載したものです。 ○大澤座長 今の菅野委員の御指摘が,議事録に残るという形になりますので,そういう御注意があったものとして伺っておくということでよろしいでしょうか。 ○菅野委員 はい,結構でございます。 ○小林委員 細かい表現の点で2点ほどお願いしたいところがありまして,1点目は,16ページの上から二つ目の「○」の文末を「改善できる一つのポイントとして,量刑検索システムの使い方があるのではないか」というふうにまとめていただいたのですけれども,改善できる一つのポイントとしてというよりは,量刑検索システムの示し方や説明の方法に工夫が必要なのではないかというような感じでまとめていただきたいと思いました。 ○大澤座長 ここの部分は,小林委員御自身の御発言が基になっている記載ということですので,まとめ方について事務当局の方で御検討いただくということでよろしいでしょうか。 ○栗木参事官 議事録を再度確認した上,今の御発言も踏まえて,表現ぶりなどを再検討したいと思います。 ○小林委員 2点目は,19ページの武石委員が御発言された部分で,下から二つ目の「○」について,「あり得るニーズにきちんと対応していくためのミニマムスタンダードを確立し」とありますが,「あり得るニーズ」というのがちょっと分かりづらいかなと思います。武石委員の御発言の趣旨からすると,事件を担当する検察官によって対応が異なることがあってはならないため,最低限このように対応するといったミニマムスタンダードを確立すべきということだったと思いますので,もう少しきちんと書いていただいた方がその趣旨が伝わるかなと思いました。 ○大澤座長 ここは武石委員の御発言が基になっているということですが,御趣旨をいかす上で,武石委員,いかがでしょうか。 ○武石委員 確かに「あり得るニーズ」というよりは,御指摘のように検察官によって対応が分かれないように,最低限というか,一定の共通認識の下で情報が提供されるべきという趣旨ですので,あり得るニーズにきちんと対応していくということまで書かなくてもいいかなというふうには思いました。 ○大澤座長 御指摘があったとおりの御趣旨だとすると,要するに運用が安定するようにということかと思います。そのような趣旨が表れるような形に事務当局において修文いただくということでよろしいでしょうか。 ○栗木参事官 今の御指摘を踏まえて修文し,また委員の皆様にお諮りしたいと思います。 ○山根委員 確認したいのは,この取りまとめ報告書(案)は,検討会として結論を得たものを示しているようなものではなくて,意見交換やヒアリングや検討状況を記録してまとめたもので,提言等ではないということでよろしいわけですよね。そういう意味で,この報告書の今後の扱われ方等について後で説明いただきたいというふうに思います。   それから,ヒアリングにおいて,裁判員経験者の方から,被告人が判決を受けた後に生活する場所である刑務所のことをもっと知った上で判断したかったですとか,裁判員裁判や裁判がどういうものなのか理解しないで参加したことが気になっている,刑務所を出た後の生活をフォローする仕組み等も勉強する場があれば参加をしたいというような意見が出ていたと思います。その声に応じる仕組みや手立ても必要だというようなことを,ニュアンスとしてどこかに触れていただければなというふうに思うのですが,どこかにそれが書かれていたかということを教えていただければと思います。 ○大澤座長 2点あったかと思いますが,まずはこの報告書の位置付けについては,御議論いただく上で前提として確認しておいたほうがいいかと思いますので,事務当局から御説明いただけますでしょうか。 ○保坂審議官 会議の開催の最初の頃にも御説明させていただいたかと思いますが,元々,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律」の附則に基づき,政府として,裁判員法の施行状況等について検討することが求められておりました。法務省において,この検討をするに当たり,有識者の皆様に集まっていただいて意見を交換させていただいて,かつ,ヒアリングも実施したところでございます。この報告書でヒアリングも含めて委員の皆様から示された意見,これを私ども法務省として受け止め,さらに,法務省としてどのような対応をするかということを早期に考えてまいりたいと思っております。   したがいまして,この報告書自体は提言という形ではありませんが,ここで出された意見を踏まえて,法務省として対応を検討させていただきたいと思っており,検討の際の材料として参照させていただくべきものというふうに受け止めていただければと思います。 ○大澤座長 それから2点目の,ヒアリング等でも言及があった,例えば刑務所のことですとか,刑務所から出所した後の話について一般的に知る機会を設けるべきではないかということについてはどこに出ていましたでしょうか。 ○栗木参事官 取りまとめ報告書(案)の25ページの下から三つ目の「○」のところに,「矯正や更生保護の在り方についても広く一般に知ってもらえるようにしたりすべきである」という記載をしています。 ○山根委員 やや簡単な記載かなという気はしますが,私も特段強く発言してもいないかもしれませんので,「終わりに」のところに触れてもいいかなとも思います。ただ,全体のバランスとしてあまりよろしくなければこれで了解いたします。 ○大澤座長 一応はここに書いてあるということですね。事務当局としては,いかがでしょうか。もうちょっと具体的に書く余地はありますでしょうか。 ○栗木参事官 今の御指摘を踏まえ,また,議事録も確認いたしまして,もう少しここを膨らませるような形で修文を検討したいと思います。 ○大澤座長 それでは,そういう形で御対応願いたいと思います。   私から一つだけ,10ページの下から2番目の「○」の2行目のところで,「争点や立証事項との関係で必要性がない証拠については,厳選しようという運用が」とあり,余り気にせずに読めばそのまま読めるのですけれども,恐らく厳選という言葉は厳しく選ぶという言葉で,捨てる方向ではなくて厳しく選んでも拾い上げる方向の言葉かなという気がいたしますので,必要性がない証拠について厳選するというのは日本語としてはどうかなという感じがいたします。ここについては本当に言葉の問題ですので,何らか事務当局の方で御検討いただけたらというふうに思います。   元々の御発言者も,それでよろしいでしょうか。 ○島田委員 結構でございます。よろしくお願いします。 ○大澤座長 ほかにいかがでございましょうか。   ほぼ意見は尽きたと理解してよろしいでしょうか。   それでは,取りまとめ報告書(案)についての意見交換はこの程度とさせていただきます。   本日御指摘があり,事務当局の方で修文を検討することとなった点については,それぞれこの場で確認した方向で修正をするということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 それでは,そのように修正させていただいた上で,後日,皆様にも御確認をいただくということにさせていただきたいと思います。   また,ただ今出てまいりました修正点以外の内容につきましては,御了承いただけたというふうに理解してよろしいでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 ありがとうございます。   それでは,取りまとめ報告書(案)につきましては,事務当局において,本日御指摘があった修正点についての修正作業を行ってもらうほか,誤記などの形式的なチェックも行ってもらった上で,後日,最終的に委員の皆様にお送りして御確認いただくこととします。そして,皆様からの御確認をもって,本検討会の最終的な取りまとめがなされたものとすることとしたいと思います。   これで本日の意見交換は終了いたしました。   本検討会の会議は本日で最後ということになりますので,本検討会の感想などこの機会に御発言のある方がいらっしゃるようでしたら,是非お願いいたします。 ○小木曽委員 私は,報告書の28ページの「終わりに」の部分にありますように,裁判員制度はおおむね順調に運用されているという意見で,今,特段法改正を必要とするような事態にはないという印象を持っております。特にこの新型コロナ禍の事態下で,これは制度を始めたときには全く予測していなかったことですけれども,その間に裁判員として参加された皆さんもそうですし,制度の円滑な運用のために心を砕かれた裁判所を始めとする関係諸機関の皆様の御努力に敬意を表したいと思います。 ○小林委員 私,途中からではありましたけれども,大変貴重な議論に参加させていただきまして,本当にありがとうございました。   裁判員制度が始まって10年,最大の課題って何かなと思って参加したのですけれども,やっぱり制度に対する市民の関心の低下というのが一番大きい課題かなと思っています。参加促進のための啓発や負担軽減が非常に重要だと思いながら参加させていただきました。   負担軽減に絡んで,育児や介護サービスの充実について発言をさせていただき,取りまとめ報告書の案にも入れていただきましたけれども,この方たちへの支援の必要性というのは,制度の発足時からずっと言われてきていて,10年たっても余り変わっていないと感じています。予算の関わる部分もあると思いますので,今すぐというわけにはいかないかもしれませんけれども,保育所や介護施設の優先的な利用ですとか,キャンセル料が掛からないような仕組みというのは,できる限り早期に運用の改善をしていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。ありがとうございました。 ○武石委員 私は今回,裁判員の制度というのを初めて知りまして,余り議論のお役には立てませんでしたが大変勉強になりました。本当にありがとうございます。何も知らない立場で参加しながら,やはりこの制度の社会的な意義というものを改めて理解させていただきました。   私は,企業の人事管理が専門で,ワーク・ライフ・バランスの研究などをしてきたのですが,仕事と他の生活領域のバランスということで,この裁判員制度は,正に国民の社会的な責任を担っている大変重要な制度であるということを改めて認識しております。   現在,企業の関心として,従業員が自分の会社だけではなく外の世界をきちんと知ることで社会的な視点を広げ,それを組織に持ち帰ってもらうという,非常にいろいろな制度,副業などは正にそうなのですが,そういう制度が動いているときですので,私は大変微力ではありますが,ここに参加させていただいた経験を踏まえて,何らかのワーク・ライフ・バランスの一つの重要な側面として,こういう制度の重要性というのを広く皆さんに知っていただくことはすごく重要な点かなと思いながら参加をさせていただいておりました。ありがとうございました。 ○山根委員 大変お疲れ様でした。いろいろとお世話になりました。   裁判員等経験者の9割以上がやって良かったという回答をしているというのは,本当にすばらしいことだと思います。法曹関係者の皆様の努力が大きく反映されていると思っています。ただ一方で,辞退する人が結構多いということはとても残念なことで,それぞれの理由はあると思いますけれども,もし何とか務めることができる立場にあるのであれば,やるべきだ,やってほしいというような声が後押しになるといいと思っています。   そういうことでは,様々な工夫もされていますけれども,経験者の声を語ってもらう場が増え,経験者の声がもっと届くようにしてほしいですし,そういった中から守秘義務の範囲なども理解が広がればいいと思います。そして,職場の理解や協力が得やすくなるよう,企業や事業主などへの働き掛けも,どういう方法があるか,ないか,更に議論をいただければと思っています。ありがとうございました。 ○堀江委員 ヒアリングや意見交換を通じまして,大変勉強させていただきました。どうもありがとうございました。   制度の運用についてはいろいろな課題もあるようですけれども,全体としてはおおむね順調に実施されていると評価できるのではないかと思っております。それを可能にしているのは,これまでの法曹三者の皆様を始めとする関係者の方々の御努力,それからまた何よりも裁判員や補充裁判員,あるいは候補者として手続に参加した国民の皆さんの協力のたまものだと思います。   私自身は職業上,直接参加することができない立場であり,そういう立場からいろいろ勝手な意見を申し上げたところではございますけれども,今挙げましたような方々の御努力,御協力に敬意を表しますとともに,参加できない立場からは羨ましくも感じておるところです。   手続の運用の中で,個別具体的な課題を解決するための工夫を続けることもさることながら,手続全体の運用を担う,運用を支える人々,そうした人材の育成ということが,この制度が長く安定的に続くためには取り分け重要ではないかと感じております。加えて,10年以上経過したこの現在において,改めてこの制度自体の存在意義というものを確認して,それを広く伝えていくという努力も必要だろうと思っております。   裁判員の負担軽減とか,あるいは裁判員に対する配慮といった面に目が向きやすくて,それはそれで大事なことだとは思うのですけれども,会議の場でも申しましたように,そのことに加えて,国民には一定の軽くない負担を強いるものだということを直視した上で,そういった負担があってもなお参加していただくということの意義を説いて伝えていく必要があるのではないか,そう感じた次第です。 ○和氣委員 私は被害者の立場と被害者支援の立場で,今回参加させていただきました。大変勉強になりましたし,関係機関の方々の御努力等が感じられまして,非常に有り難く思いました。   裁判員裁判で被害者等に付添支援をさせていただいた経験で感じたことは,非常に裁判全体の流れが分かりやすくなりましたし,使われている専門用語も非常に分かりやすくなりました。そういう点では,被害者にとっても被害者支援者にとっても,良い裁判員裁判になっているなと感じ,有り難く思っています。   ただ,これで完璧ということではありませんので,引き続き被害者等や被害者支援者の声を聞いていただきながら,今後も改善をお願いしたいと思います。それから,検察庁の方から被害者等支援に関して前向きなお言葉を頂きました。やはり,刑事裁判に関しては,検察庁が窓口になるかと思いますので,是非,被害者と信頼関係を密にしていただき,被害者が不安に思っていること,不信に思っていることについて,検察庁から説明や情報提供,アドバイス,御指示等を頂けると安心すると思いますので,フォローをよろしくお願いいたします。最後にヒアリングに参加していただいた犯罪被害者の方々,支援者の方々には,貴重な御意見をいただき感謝申し上げます。私にとって大変貴重な会に参加させていただいたことに感謝いたします。   大変お世話になりました。ありがとうございました。 ○大澤座長 ほかにございませんでしょうか。   他にないようでしたら,最後に事務当局であります法務省刑事局から御発言をお願いいたします。 ○保坂審議官 本日,刑事局長の川原は所用のため出席がかないませんでしたので,私が刑事局長に代わって御挨拶を申し上げます。   大澤座長を始めとする委員の皆様におかれましては,平成31年1月の第1回会議以来,本日の第16回会合までの間,約2年の長きにわたりまして,本年春以降はコロナ禍で会議の開催も難しい時期もございましたけれども,御出席いただきまして,誠にありがとうございました。   皆様には,裁判員制度をめぐる様々な検討項目につきまして,幅広い観点から,活発な意見交換を行っていただきました。私ども刑事局といたしましては,この取りまとめ報告書や,委員の皆様から頂いた御意見等を踏まえまして,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律」の附則第3項で求められている検討を早期に遂げてまいりたいと考えております。   委員の皆様におかれましては,今後とも法務行政に対して変わらぬ御理解と御協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○大澤座長 ありがとうございました。   最後に私からも一言御挨拶をさせていただきます。   今の刑事局長の御挨拶にもありましたように,約2年にわたる検討会ということになりました。この間,つたない議事進行にもかかわらず,皆様方には御協力を頂きまして,まずは厚く御礼を申し上げたいと思います。   本日,何とか取りまとめまでこぎつけることができましたのも,ひとえに委員の皆様方の御協力と,それから私にとって心強かったのは,事務当局の皆様方,様々アレンジしてくださった事務当局の方々でありますが,これらの皆様方にこの場を借りまして厚く御礼を申し上げたいと思います。   裁判員制度というのは,他の法制度もそうでありますけれども,特に、法律に定められた規定だけを見てもなかなかその姿がつかめるものではなくて,むしろ現場での様々な運用の工夫によって担われているところが大きい制度なのかと思います。この場におきまして,様々な関係者の皆様方からのヒアリングを行い,また,現場を担われている実務家の方をはじめとする様々な方々の御意見を聞きながら,現在の裁判員制度について多方面から検討することができたということは,大変意義のあることであったというふうに思っております。   その中で,これまで様々な節目で行われてきた検証作業と同じように,おおむね順調,この間,順調に進んできているということがこの場でも確認されたのかと思いますけれども,よりよい運用を目指すという観点からは,幾つかの課題を指摘する御意見も頂いたということかと思います。   今後,制度の面でどのように御対応されていくのかということについては,法務省の方で御検討されるということかと思いますけれども,運用ということでは,今後ますます現場を担っていただいている法曹三者の皆様方に御工夫をお願いしたいというところかとも思います。また,指摘のあった課題の中には,法曹三者の中では終わらず,より広く社会的な議論ですとか,社会的な協力が必要な問題というのも含まれていたと思います。   私は大学に籍を置く身でありますけれども,そういう立場からも,今後やっていくべきこと,工夫できることというのはあるのかなという印象を持った次第です。この場でいろいろと学ばせていただいたことを私自身もまた自分の職場に持ち帰って,できることはしていきたいというふうに考えております。   甚だ簡単ではございますけれども,これで私の挨拶とさせていただきます。   委員の皆様に御参集いただいた上での会合は本日をもって終了となります。皆様の御協力に改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。   それでは,これで散会といたします。 -了-