法制審議会 民法・不動産登記法部会 第24回会議議事録 第1 日 時  令和3年1月12日(火)自 午後1時00分                     至 午後4時42分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第24回会議を始めます。   本日は御多忙の中御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日の審議につきましては,部会資料56,57,58をお配りしておりまして,これらの審議が終わりましたならば終了ということにいたします。   本日は,阿部委員,潮見委員,増田委員,衣斐幹事が御欠席です。   事務当局から配布資料の確認を差し上げます。 ○小田関係官 今回,部会資料56から58までを事前送付しております。また,事前送付した資料に加えて,総務省から提出された,「土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設について」と題する資料を配布させていただいております。こちらの資料については,部会資料58に関する御審議の際にお取り上げいただくことになります。ただいま御案内差し上げた資料について,お手元にないようでしたら事務局にお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 資料の確認を差し上げました。お手元にないものがありますれば,事務局の方におっしゃっていただくようお願いいたします。   審議の内容に進むことにいたします。部会資料56をお取り上げくださるようにお願いいたします。構想されております要綱案の「第1部 民法の見直し」に当たる部分について御審議をお願いしてきた事項を掲げてございます。第1の相隣関係,第2の共有のところを中心として,太字の部分に下線を引いて御案内しているとおり,それぞれ字句,表現の見直しを重ねております。内容,本質にわたる大きな変更はございません。早速,審議をお願いすることにいたします。   まず「第1 相隣関係」の部分,補足説明を含めますと部会資料56の6ページまでになりますけれども,この範囲で御意見を承ることにいたします。御随意に御発言くださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。中村です。第1,相隣関係について,少し長くなりますが,日弁連ワーキンググループでの検討の結果を御報告したいと思います。   まず,隣地使用権につきましては前向きに御検討いただきまして,ワーキンググループではおおむね賛成の方向性となってまいりました。ただ,賛成意見にもバリエーションがありまして,それを少し申し上げたいと思います。   まず,①と②を一本化して,権利行使の要件を国民に分かりやすくすること及び,③ただし書の事後通知の要件の,あらかじめ通知することが困難なときという文言につきまして,部会資料2ページの末尾に記載されているように,隣地使用権が濫用的に行使されることを防止するという趣旨に照らしますと,これでは広すぎるので,隣地所有者及び使用者又はその所在を知ることができないとき,とすることを提案し,この2点を条件にして賛成するという意見がございました。もう1点は,通知の相手方について隣地所有者を加えていただいたこととの関係で,逆に従来よりも要件が厳しくなり,使いにくくなるのではないかという懸念を示す意見も出ました。   このまま続けてよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 お続けください。 ○中村委員 では,今度は2項の竹木の枝の切除等について申し上げます。これもおおむね賛成意見でしたが,1点,②の竹木が数人の共有に属する場合に関して,請求者側から見ますと,誰を相手方とするべきか,執行はどうなるのかが明確ではないのではないかという指摘がありました。   この点に関して確認させていただきたいのですが,第18回部会で検討しました資料46には,共有者の1人に枝を切除させることができる旨の御提案が示されまして,その際に畑先生,中田先生,垣内先生から,理論的に説明が付くのか,共有者の1人を被告として訴訟を提起して勝訴したとして,執行はどうなるのかといった問題点について御指摘があり,恐らくそれを受けて,前々回から現在のように竹木の共有者の権限の規律という形に変わっているものと思われます。このように定めた場合には,これは共有者の内部関係を規律したものにとどまり,共有者を相手として請求する側としては,従前どおり全共有者を相手にするという理解でよいのかどうかを確認させていただきたいと思います。もしそうであれば,補足説明なりで説明を補充していただけると,手続的な指針になるので有り難いという意見が出ておりました。   それから,3番目の継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権についてです。これもおおむね賛成意見でした。ただ,その中には,①について,その他これらに類する継続的給付とある部分を,その他の生活又は事業の維持あるいは形成に必要不可欠な継続的給付といった,もう少し絞り込みを掛けた要件にすることを条件に賛成したいという意見がございました。   また,1点,確認させていただきたい事項としまして,他の土地が宅地,私道のいずれの場合であっても,先方が反対ないし無回答の場合には自力執行はできず,判決を得なければならないという理解でよろしいのか,これに対して,他の土地の所有者が所在等不明の場合には判決を得ずとも自力執行できるという意見でよろしいのか,ここを確認させていただき,その点について実務で道しるべがないと混乱するので,これに関する御説明を補足説明,また一問一答等で明確に示していただければという意見が出ておりました。   最後に,他の土地等の瑕疵に対する工事,従前の管理措置ですけれども,これについては反対,又は現状では反対するという意見が多数でした。その理由ですが,従前から申し上げていますように,要件,効果が抽象的で,適正な運用が期待できず,私権への不当な介入を招きかねないこと,それから,想定されている事態で真に必要のあるケースは,新たに設けられる管理不全土地管理命令制度と従来からの物権的請求権を被保全権利とする保全処分ないしは訴訟によって対応できるので,それらの裁判所の関与がある手続でなされるべきであるという意見でした。   長くなりました。以上です。 ○山野目部会長 相隣関係に係る四つの大きな柱のそれぞれについて御意見を頂きましたとともに,竹木の問題と設備設置使用権につきまして,確認のためにお尋ねをしたいというお話も頂きました。大谷幹事,お願いいたします。 ○大谷幹事 竹木の枝の切除の方,②の方で,数人の共有に属するときは各共有者が枝を切ることができるという形になっておりますので,この各共有者に対して請求をすることができるということになるはずだろうと思っております。一方で,実際に判決を1人の共有者に対してだけ得て,他の共有者がそれに反対している,それで,それを邪魔しようとするというときには,結局のところ,その他の共有者に対する判決も必要になるということになろうかと思いますけれども,そうでなければ強制執行としては1人に対する債務名義で可能だと考えております。   二つ目の,継続的給付を受けるための設備設置使用権及び設備使用権ですけれども,私道であっても基本的に,所有者が反対をしているであるなどのときに判決が必要かというお話がございました。基本的には自力執行は不可能だと考えておりますので,そちらは判決を取った上でということになりますけれども,私道の所有者が所在不明であるというときには,この通知を行った上で,この規律の下で適法に設備の設置ができると考えております。 ○山野目部会長 お尋ねに対して大谷幹事からお話を差し上げましたところについて,中村委員におかれては,いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございました。1点目について,もう一度お尋ねさせていただいてよろしいでしょうか。   そうしますと,②の規律により,1人の共有者が竹木の枝を切除できる,それを行使しても内部関係的に越権などの問題は出ないということが一つと,そのような権利関係になるので,例えば隣の土地の人が切ってほしいと求めようという場合には,共有者の1人を相手にして,その1人でできるという権限の行使を求めれば足りるという理解でよろしいのでしょうか。 ○大谷幹事 基本的にそのように考えております。共有者の1人に対して請求をして,1人に対して切除を求めることになりますので,それで判決を得れば,その内部関係的にも,その1人が切ることができますので,問題がなくなると考えておりますけれども。 ○中村委員 ありがとうございます。そうしますと,今回の規定によって竹木の共有者間の内部関係の調整について新たな規律が設けられたので,訴訟についても従前とは異なる扱いをすればよくなると理解すればよいということでよろしいでしょうか。 ○大谷幹事 はい,そのとおりでございます。 ○中村委員 どうもありがとうございました。以上です。 ○今川委員 今川です。隣地使用権のところで要望が2点あります。   今の弁護士会の意見と重なる部分もあるのですが,隣地使用権に限らずに,第1で定められております権利について,自力執行が可能ではないということと,それから,部会資料52の補足説明2の(2)に,通知を受けても回答をしない場合は,黙示の同意をしたと認められる事情がない限り,隣地使用について同意しなかったものと推認される,そして,隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになるという解釈について,しっかりと周知をしていただきたいという要望がありました。特に,隣地使用権の場合,住家については承諾が必要という要件が明記してありますので,逆にそれ以外は承諾が不要であると読まれるのではないかということであります。   それから,これも先ほどの中村委員の御発言と重なる部分がありますが,補足説明の3の最終段落,3ページです。公示による意思表示を必須とする趣旨ではないと書いてありますが,本人が事案によって判断するのは大変難しいのではないかと思います。できるけれどもやらなかったというのは,手続において不備があって,結果,不法行為責任を追及されることもあると思われます。それと,ここの説明では所有者の不明という言葉と所有者の所在不明という言葉の両方使われています。それで,所有者が不明,あるいは所在が不明ということの違いとか,事前の通知なのか,事後の通知でもよいのか,その関係,それと,公示送達をしなければならないのか,しなくてもよい場合とはどのような場合なのかなどについては,やはりしっかりと説明をし,周知をしていただきたいという,この2点の要望であります。 ○山野目部会長 今川委員からの要望を承りました。ありがとうございます。 ○藤野委員 発言申し上げます。今回頂いた御提案について,先ほど大きな変更はないという御説明を頂いておりますけれども,やはり今回変わったところについては,事業者の中に,これだとより使いづらいルールになってしまうのではないかという意見が非常に強くございました。もちろん,実際に隣地と紛争になっているときに,隣地使用権を前面に出して余計にトラブルを誘発してはいけないと,その発想自体は理解できるところですので,例えば通知の内容を充実させるとか,そういった形で修正することに関しては,基本的には異存ございません。   ただ,今回,②の要件が新たに設けられたことによりまして,例えば通知をしましたと,先ほど,積極的な承諾が必要ではないかという御意見もございましたが,実態としては明確な承諾がなくても同意したとみなせるような場面というのはあると思っておりまして,なので,通知して,何ら隣地所有者からの異議もなかったので隣地使用を行いましたと,ところが,後になってから②の要件のところを突いて,沈黙していた隣地所有者から何らかの損害賠償請求をされるというようなことも,②の要件が独立して設けられることによって,出てくる懸念はあるのかなと思っております。   したがいまして,土地所有者が適切な通知をしたにもかかわらず,隣地所有者等から特に異議が述べられなかったというときは,後になってから不法行為だということで請求がなされたような場合であっても,そこに違法性がどれだけあるのかという問題の中で考慮される,というような考え方が採れないものかなと思いまして,その点についてお考えをお伺いできればと思っております。   あと,ほかの部分も関係する話なのですが,あらかじめ通知することが困難なとき,という要件は,確かに隣地の所有者あるいは使用者の所在が不明となっていて,通知しようと思っても通知する先がない,という場合にもっとも機能を発揮するのだろうと思っております。ただ一方で,仮にそこまで要件を厳格に考えてしまうと,例えば,所有者不明土地管理人の申立てをするのと同じレベルで,隣地所有者がいないというところをきっちりと調べた後でないと隣地使用権を行使できない,ということにもなりかねないと思っておりまして,ここは,例えば,隣地の使用者ないし所有者が不明だと思っていて,それを前提に隣地を使用する準備をしていたら実際には見付かったので,直ちに遅滞なく通知をやりましたというようなことがあろうかと思いますし,あるいは,最後まで見付からなかったので,結局最終的には通知するあてがないまま手続が終わる,ということもあると思います。その辺は,やはりこの規定が,相隣関係の調整ということで日常的な隣地使用のニーズに柔軟に対応するという趣旨で置かれているという観点を踏まえますと,ここは今の部会資料くらいの表現の方がよろしいのではないかと思うところでございます。   あと,先ほど,第1の4の他の土地等の瑕疵に対する工事に関しても極めて慎重意見が多いという御意見を頂いていますけれども,これも緊急性が高い場合等に迅速な対応ができるようにすることを求める実務上のニーズが現実にある,という話を出発点に,近傍の土地の瑕疵が原因で大きな被害が生じることを少しでも防ぐために選択肢を用意していただくという趣旨でこの部会での議論が進んできて,ここまでの案ができているものと理解しておりますので,こちらとしてはやはり何としてもこの提案を残していただきたい,ということはお願いとして申し上げたいと思っております。   以上,質問と意見でございます。 ○大谷幹事 ②の方の御質問ですけれども,これも前に申し上げたとおり,通知をして,それから何も反応がないときにどう見るかということですけれども,承諾があったものとみなすような形にはならないのだろうとは思っておりまして,それは正にケース・バイ・ケースで判断されていくことですけれども,慎重に判断する必要があるだろうと思っております。   一方で,日時,場所,方法を明らかにして,その上で③の規律において通知をするという形になりますけれども,それについて何も言わず,その日時では困るということがなかったにもかかわらず,後で,その日時は困ったのだといって争われるような場合に,結局のところこれもケース・バイ・ケースの判断になってまいりますけれども,事前に通知した内容が,損害が最も少ないものであったと認定されやすい方向にはなるのだろうと思われます。その意味で,事前に日時,場所,方法をきちんと示した上で隣地を使用するのであれば,その後の紛争においても判断がしやすくなってくるのではないかと思っているところでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。そうですね,事前に通知した内容と実際の立入りの態様から客観的に判断して,不法行為の成否についても判断するということで理解いたしましたが,そのような考え方ということでよろしいでしょうか。 ○大谷幹事 はい,結構でございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。先ほど中村委員の御質問との関係でやり取りがありました3ページの2の竹木の枝の切除等に関する部分ですけれども,この成案に従いますと,御説明がありましたように,まず,竹木切除請求というのは共有者の1人に対してすることができ,その場合,1人に対して請求すれば請求が認容されると,請求認容判決に基づいて強制執行も可能だということになるのだと理解しておりますけれども,その先の問題といたしまして,他の共有者が第三者異議の訴えを提起して自己の共有持分権の侵害を主張するということがあり得るように思われますけれども,その点については何か,事務局でどういう整理をされているのか,もし御教示いただける点があればお願いできればと思います。よろしくお願いします。 ○小田関係官 関係官の小田でございます。もちろん認容判決の効果が他の共有者に及ぶわけではございませんので,他の共有者の方から一定の異議を申し立てるという場面も想定されるのだと思います。その際に他の共有者としては,要件を満たさなかった,枝が境界を越えていなかったとか,その辺りを争うこともあり得ると思いますので,そういう場面はあり得るということを事務局としては想定しておりました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。そうしますと,一応ほかの共有者が特に異議を申し出るようなことがなければ強制執行はできるけれども,異議を申し出ることは当然,完全に排除されるわけではないという理解でよろしいということですね。 ○小田関係官 そのような理解でおります。 ○垣内幹事 分かりました,ありがとうございます。 ○山野目部会長 佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。2点ございまして,一つは2の今の続きのようなことになるのですけれども,竹木が数人の共有に属する場合において,③の適用がどうなるのかということを確認させていただきたいと思いました。以前に話題になったのかもしれませんけれども,①,②の段階では共有者の1人が切り取ることができ,その人に対して,だからこそ,切取りの請求も可能であるということでした。では,例えば,その数人のうちの1人に相当の期間を定めて切取りの催告をした,しかし,その人が切除しないときというのは,③によって,直ちにその土地所有者が自ら切り取ることができることになるのか,それとも,ここは土地所有者ということになっているので,共有者全員に対して催告をした上で,誰も応じないときに初めて③アが発動するのかということを確認させてください。イは多分,共有者の1人を知ることができない,又は所在を知ることができないときであっても,ほかに分かっていれば,その人を相手にすべきだということになるのだろうと思うのですけれども,アについてどうかをお教えください。   2点目は,4についてでありまして,弁護士会からなお反対意見が強いという御紹介がありました。そういう反対があるというのはこれまでもおっしゃっていたわけですけれども,理由が今一つ,私には納得できないところがあります。というのは,4のこれまで管理措置請求と呼んできた問題については,相隣関係上の規定として置くということは,これは多分,合意があったと思うのですが,その前提として,相隣関係上の規定として置くのであるけれども,物権的請求が可能であるという場面に限られて,その場面を切り取って規律を設けようというものなのだということも基本的には合意があったのではないかと思うのです。そうだといたしますと,それを条文にうまく表し切るということはできない,これは極めて難しいだろうと思うのですが,今のような表現ぶりを前提に,しかしこの趣旨はそういうことであるということを説明したならば,濫用的にそれが行われるということをそれほど心配する必要はないのではないかと感じました。   また,その場合において,例えば管理人を選べばいいではないかというような意見もあったということですが,管理人を選ぶことができる場合というのは,先ほどの妨害ということを使いますと,妨害状態がずっと継続していますというような場合に限られるわけですし,かつ,管理人を選ぶとなると手続も大掛かりになるし,ものすごく時間とお金も掛かる。それほどのものではないのだというときに使えるようにしましょうというのが4の制度であったと思いますので,ほかの措置で十分だということにも少し,個人的には納得し難いところがあります。だから,私はこのまま,4のまま残せばいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 佐久間幹事が前段でおっしゃったお尋ねについては,今,大谷幹事から説明を差し上げます。後段で頂いた御意見に関しては,4の採否について委員,幹事の御意見を広く承りたいと考えますし,弁護士会の先生方からお伝えいただく御意見について補足があれば,それも承りたいと考えます。   まず前段の方について,大谷幹事の方から話を差し上げます。 ○大谷幹事 前段の竹木の枝の切除についての③の適用ですけれども,アにつきましても,これは1人に対して催告をして,その1人が切除しないのであれば,②によって切取りをするということも可能かなとは思いますけれども,通常は,ほかにも連絡が付く人がいて,共有者がいるのだということになるのであれば,それはその方にも催告をすることになるだろうし,その方が切ってくれるのであれば,それで済むということになるのかなとは思っておりました。 ○山野目部会長 佐久間幹事,お続けになることがおありでしょうか。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。私はそれでいいと思うのですけれども,先ほどの,訴えがあった場合に,1人に対しては認容判決があった,しかし,そのほかの共有者から異議が出ることもあり得べしということが,手続にきちんと乗れば,確保されるわけですよね。それが,自分で切り取りましょうということの③の場合には,異議が出ても,1人が切除しなければ切り取ってしまっていいのだということで,ほかから異論が出ないのかなと。繰り返しますが,私は別にそれでいいのではないかと思うのですが,異論が出ることはないのかとやや心配しました。その心配が,いや,別に大丈夫ですということであれば,結構でございます。 ○山野目部会長 共有の目的である竹木の切除の手順について,ただいま佐久間幹事と大谷幹事との間で意見交換がありましたけれども,この点について何か委員,幹事から御指摘を頂くことがおありでしょうか。 ○垣内幹事 ありがとうございます。もし強制執行がされる場合において,第三者異議の訴えが許されるという理解に立つといたしますと,2の③の規律によって所有者が枝を切り取ることができるという権限というのは,飽くまで催告の相手方となる共有者との間ではそのような権利が認められるということであって,他の共有者がそれで黙認していれば済むでしょうけれども,積極的に異議を申し出てくるという場合については,権利が必ずしも認められないということになるのではないかと。ですから,後で損害賠償等の問題というものが,場合によってはこの要件が満たされていないのではないかといったようなことで,生ずることがあるのではないかと。仮にそう考えるといたしますと,手続に乗った場合と乗らない場合とで,一応,同じようなことにはなっているという理解になるのかなと考えてみましたけれども,事務局の方でもし何か,それではないということがあれば,適宜御指摘いただければと思います。 ○山野目部会長 大谷幹事をはじめ事務当局に念のため確認のお尋ねを申し上げますが,AとBの2人が共有している竹木について,Aに対して催告をして応答がなかったときに,Bの所在が分かっているのであれば,Bに対しても催告をするという手順を経ないと切除することができないという理解になりますでしょうか,それは要らないという理解になりますでしょうか。念のためまとめて御所見を御案内いただけると有り難いです。 ○大谷幹事 現時点で先ほどの整理でいいのかなとは思っておりますけれども,すみません,ここのところはもう一度整理をした上で,次回にまた説明を申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 整理をした上で,次回まとめて御案内を差し上げるということを今,事務当局の方からお話をしました。御発言を頂いた佐久間幹事,垣内幹事をはじめほかの皆さん方,いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございます。先ほど佐久間先生から御指摘のありました4項の,他の土地の瑕疵に関する工事についてなのですけれども,この相隣関係の中に定めを置く,そして訴訟をするまでもないほどのものではあるけれども,それに何らか対処できる方法があるとよいという当初の目的については,日弁連ワーキングでも反対するところではありません。そして,今になって急に反対を申し上げているわけでもなく,第20回の部会でも,また第22回の部会でも御報告いたしましたように,無限定の大きな制度になっていますが,もしこれを設けるのであれば,要件,効果をしっかりと絞り込む必要があるだろうと。要件を絞り込むこと,工事内容の相当性について何らかの定めを置くこと,それから,通知を不要とする場合の限定などについても検討していく必要があるのではないかということを前提とした発言をさせていただいておりました。その後,提案が変わっていないものですから,このまま行くのであれば反対であるという意見が大方だということを申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。一つ前に話題になりました,共有されている竹木の問題につきましては,現時点で特段の御発言がないようにお見受けいたしましたから,次回会議までに事務当局において改めて整理した上で,考え方の整理を御案内するということにいたします。   続きまして,ただいま中村委員の方から4の,他の土地等の瑕疵に対する工事について,佐久間幹事からお出しいただいた点についての御説明を頂きました。佐久間幹事をはじめ委員,幹事の皆様方から,4について引き続き,ただいまの中村委員の御説明も踏まえてお話を伺いたいと考えます。いかがでしょうか。   現段階で4の項目についての御発言はおありではありませんか。   中村委員に補足でお教えを頂ければ有り難いと考えますが,要件が広きにすぎるということと,工事の在り方についての更に細密なルールをお求めになるという観点からの御意見が弁護士会に強いという御議論の状況は,先ほど紹介いただきましてよく分かりました。何か現在,太字で示している文言の要件,ルールの作り方に対して,更にこういうふうに改善せよというふうなお話があれば,承っておいた上で,更なる検討を続けていきたいとも考えますけれども,何か御指摘を頂くことがおありでしょうか。 ○中村委員 ワーキングのメンバーから対案のメモなどももらっているのですが,全部整理して今この場で申し上げるのが難しいので,次回までの間に事務当局にお示しするなどということならできると思いますが,それでいかがでしょうか。 ○山野目部会長 よく分かりました。それでは,また事務当局の方からお尋ねを差し上げたりするようにいたします。ありがとうございます。   4の点について,ほかに委員,幹事から御発言がおありでしょうか。   それでは,改めてお尋ねしますが,「第1 相隣関係」の部分全般について,ここまでで御指摘になっていない事項があれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは,先に進みます。   部会資料56の「第2 共有等」のところでございます。補足説明まで含めますと15ページまでございます。この範囲で御意見を頂きたく存じます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第2の共有等について,日弁連のワーキンググループの多数意見は,いずれの提案についても賛成するというものでした。今回変更された点について若干コメントします。   まず,部会資料7ページの3,共有物の管理のところで,これまでと異なって,意見を述べない者がある場合について,裁判所の決定を要することとされています。この点について,制度が使いにくくなるという意見もありましたが,安定的な運用という観点から,賛成意見が多数でした。   それから,非常に細かいことですが,部会資料9ページの5③のゴシックの下から2行目,裁判所はその者に係る3②の裁判をすることができないとあるのですが,3②イの規律による裁判とした方がよいと思います。   それから,これは少数意見ですが,8の所在等不明共有者の持分の取得と9の所在等不明共有者の持分の譲渡に関する,相続開始のときから10年経過という要件は不要ではないかという意見がありました。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見をまとめていただきまして,ありがとうございます。承りました。   引き続き御発言を承ります。 ○今川委員 今川です。2,共有物の変更行為の②ですが,部会資料41の5ページに明確に記載されていますが,共有持分の喪失を伴う行為はその対象行為に含まないということになっております。この部分は明確になるよう周知をしていただきたいという要望です。これは,4の共有物の管理者のところの③も同じです。   それから,蓑毛幹事の先ほどの発言と少しダブりますが,3の共有物の管理の②イですけれども,賛否を明らかにしない共有者がいる場合の取扱いが,裁判所の関与が必要であるというふうに,また戻ったという感じがあります。この点ですが,部会資料41以降は,仮に裁判所を関与させることとした場合でも,管理行為の内容の妥当性までは判断することはないので,賛否不明共有者の場合は,当事者が任意に行えばいいとされてきたのだと思います。ただ,公的機関が関与しない場合は,異議を述べなかったということについてはどのようにして証明するのか,法的安定性を考えると少し問題があるのではないかということを我々の意見として申し上げていたのですけれども,それについては民事の法律関係一般の課題として検討するべきだということであったと思います。我々は,裁判所を関与させるというのは少し重いので,もし可能であれば,異議がなかったということのみを,必要に応じて,当事者が求めた場合に,裁判所以外の公的機関が証明をしていくという制度があってもよいと述べていたのは,そういう理由であります。今回の提案にどうしても反対をするという趣旨ではありませんけれども,新しい規律の施行後,この制度がどれぐらいの頻度で利用されるか,あるいは裁判所の決定までの時間がどれくらいかということにも関係してくるとは思うのですが,少し重い制度になりはしないかと思われるのですが,その点の事務当局の見解があれば教えていただきたいということであります。 ○山野目部会長 ただいまお尋ねがあった部分について,脇村関係官からお話を差し上げます。 ○脇村関係官 脇村です。従前から御議論させていただいたものを踏まえてお話しさせていただきますと,今回の案は,そういったもろもろの御意見がある中で,最終的に,やはり一種の例外的な処理ということで慎重なものを作るということでどうかということを考えております。中心は慎重な手続にするということで,手続違背等によって不当に権利等が制約されることを防ぐということにありますが,逆に言うと,そういったことから考えますと,ある程度重くなるということは,ある程度ですけれども,仕方がないのかなと思っています。ただ一方で,訴訟とは違いますので,定型的な処理が多分されることになると思いますから,事前の催告を含めれば多少時間を要しますけれども,そこまで複雑に,1年,2年掛かる話ではないということでは考えています。   また,証明の関係では,今川委員からいろいろ御指摘いただきまして,今回の案は,証明すること自体をメインに据えてこういった形にするというより,その効果は副次的なものかと思っておりまして,裁判所の手続によって慎重にした結果ではありますけれども,結果的には決定が出ますので,決定されることによって,結果的にですけれども,結果的とは言いすぎかもしれませんけれども,安定的な仕組みになっていくのかなと思っています。   また,今回全般的に共有を見直させていただいておりまして,変更とか管理とか,全般的なトータルで見た場合には,最終的には手続は軽くなっているのではないかと思っています。ここだけ取り出しますと,裁判所が関与しない案と比較すると,裁判所をかませていますので,手続は重くなりますが,共有全般の改正で,かなりいろいろ,手間をそれほど掛けないような仕組みを考えておりますので,トータルで評価していただければいいのかなと当局としては思っているところでございます。 ○今川委員 了解いたしました。 ○藤野委員 ありがとうございます。先ほど今川委員からも御指摘があったとおり,これまで3の②のところは裁判所が関与しないということでずっとやってきたものですから,やはり今回の提案を見ると,少し使いづらくなったかなというところは正直,感じるところでございます。一方で,これを前向きに受け止めるとすれば,裁判所が関与するということで確実性が担保されるということと,これまでは管理行為か,あるいはそれを超えた変更,処分かというところで手続面にかなり大きな差が生じることになっていたところ,今回のご提案であれば,どちらにしても何らかの裁判所の手続をかませなければいけないということになりますので,逆に使用態様の性質に関して余りぎちぎちに詰める前に裁判所に持って行くという実務になっていくのかなとは感じているところです。   そういった観点から,一つ質問させていただきたいのですが,例えば,3の②にある共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判と,その後に出てくる5の変更・管理の決定の裁判,これらを一つの手続の中でワンセットで処理していただくことは可能なのでしょうか。そこが全部一つの一貫した手続の中で済むという話であれば,それはそれで一つの実務のやり方としてはあり得るのかなと思うところですので,少しそこは確認させていただければと思っております。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 今お尋ねがあった部分について,脇村関係官,お願いします。 ○脇村関係官 理屈の面で言いますと一応,別事件だろうと思いますけれども,同一共有物について,一方については所在不明である,一方については催告したいというケースについて,実際に請求を一本にされるケースはあるのだろうと思います。もちろん,最終的に併合してやるかどうかは裁判所の判断でしょうけれども,非訟事件の手続でも別事件であるからといって必ず分離しないといけないということではございませんので,そこは事案に応じてされるのではないかと思っています。もちろん,今,藤野委員がおっしゃっていた関係で言いますと,恐らく途中で切り替えることもあるのではないかということ,催告してみたところ,実はいなかったと,事前に催告が入っていますので,余りないと思いますけれども,そういったケースでは申立ての変更なり,請求趣旨をきちんと明らかにしていただいた上で手続を進めていくということもあるだろうと思っています。 ○藤野委員 ありがとうございます。今御指摘いただいたとおり,手続を進めている間に,相手方というか,ほかの共有者のステータスが変わるということもございますし,実際の利用態様自体が変わり得ることもあると思いますので,今おっしゃっていただいたような形で柔軟に対応していただけるのであれば,実務的には有益な制度になり得るのではないかと思っております。ありがとうございました。 ○山野目部会長 今川委員と藤野委員が心配を胸に抱いてお尋ねになったことの背景にあるであろう事柄を推測しながら,事務当局において確認の意味で少し御発言をお願いしたいと考える事項は,②の裁判をするときに裁判所は何を判断しなければならないかというと,言うなれば形式的なことを確認で判断すればよろしくて,当該共有事案の適切な処理になっているかどうかといったような実体といいますか,中味に立ち入って判断することが求められているものではないし,いわんや③のところの特別の影響を及ぼすべき者があるかどうかといったようなことについて判断を求められていることでもなくて,②のアとイの要件を満たしているかどうかを判断するということが裁判所の仕事であるという理解で行くということが明らかになっていれば,御懸念というか御心配を背景におっしゃっていただいたことも,それなりに納得していただく方向になるのではないかと感じますけれども,裁判所は何をすればいいかという点は,いかがですか。 ○脇村関係官 脇村です。今,山野目部会長がおっしゃったとおりと考えておりまして,基本的にアとイの要件を充たすことを判断するということだと思います。もちろんイに関しては後ほどの手続がございますので,その手続をきちんと充足していると。もちろんこの決定が出た後でも,当該共有物に関する事項に関する定めといいますか変更等の決定が,最終的に3③の要件を満たすかどうかというのは別途になるわけでございますが,それは問題になったときに最終的には訴訟事項として争うということですけれども,非訟としては先ほど言ったとおりと考えております。 ○山野目部会長 ただいまの脇村関係官の説明も交えて,ここまでの御議論を聞いておられて,今川委員,藤野委員や,そのほかの委員,幹事から何か御指摘があれば,承ります。中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。ただいまの3②の裁判ですけれども,これは申立人と相手方はそれぞれどうなるのでしょうか。 ○脇村関係官 申立人については請求者でございますので,ほかの共有者を想定しています。また,非訟事件は相手方,事件の当事者的なものを,非訟でしたら,相手方と呼ばないのですけれども,実際上はここでいう裁判を受ける,告知を受ける人というのは,ここで外される人を想定してございますので,先生の御質問に答える形で言えば,相手方は不明者であったり,反応しなかった人ということになろうかと思います。 ○中田委員 申立人とか相手方という言葉が不正確なようですので,申し訳ございませんが,便宜に使わせていただきますと,共有者が3人以上いる場合に,第三の人ですね,申立人でも相手方でもない人は加わらないということでよろしいのでしょうか。 ○脇村関係官 当然には関与しないということでございます。もちろん最終的に過半数同意が必要でございますので,実体法的には関わってきますけれども,手続としては当然に入ってこないのかなと。もちろん非訟事件では関係ない人でも利害関係がある人は参加するという手続がありますけれども,そこまでされることは少ないのではないかと思っていますが,当然にはそうならないのかなとは思っています。 ○中田委員 ありがとうございます。非訟事件について知識がないものですから,見当違いのことを言っているのかもしれませんけれども,第三の人が関与しない状態で,しかし過半数の管理行為を残りの過半数で決めることができるということになるのでしょうか。つまり,Aがア又はイに該当する人であるBを,相手方ではないのかもしれませんけれども,対象として申立てをして,しかしCが関与していないときに,裁判があれば,AとCの合意でできる,AとCの過半数でできるという理解でよろしいのでしょうか。Cは関与していなくてもよろしいということでしょうか。 ○脇村関係官 脇村です。先生のおっしゃっているとおりと考えておりまして,Cは関与しませんけれども,非訟事件の裁判は形成力ということで,対世効がございますので,Cが合意すればできると。もちろんCがBを外すことについて異議があるということであれば,合意しなければA単独では決められないということになりますので,そういった結論になろうかと思いますけれども,決定としてはそういうことを考えておりました。 ○中田委員 分かりました。この後は手続法の問題だと思いますので,これ以上,私は発言はできないのですけれども,今のような理解で,もし可能であれば,多分手続として軽くはなるのだろうと思います。ただ,そういう理解以外の理解があり得るのかどうかについては,もし可能であれば,どなたかお教えくださればと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。共有物の今話題になっている関連のところで,結局のところ,裁判所が出す判決というのは,3②の正に書かれているとおりのことだということになるのでしょうか。つまり,共有者が何人かいて,そのうちの何人が催告に応じていないとか,所在不明であるとかということに関わらず,1人でもそういう人が仮にいたならば,「当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い,その過半数で共有物の管理に関する事項を決定することができる。」という判決が出て,あと,実際にその決定がされたかどうかは裁判所は関与しないで,例えば5人,均等に持分を有しているという場合で,明示的に意見を表明する人が5人で,5分の1ずつだということになれば,5分の3あれば,それでできます。その決定が成り立ったか,成り立っていないかは判決の中には含まれていない,別途証明するのですよということになるということでよろしいのでしょうか。裁判についてイメージが余りうまく抱けなかったので,確認させてください。 ○脇村関係官 では,私の方で中田先生の御指摘も踏まえて少し話させていただきますと,作りとしては,今の案ではなくて,当該行為自体をしていいのだというような決定をするということもあり得たのかもしれませんけれども,多分そうなりますと,全ての共有者を交えてやるという手続だったのだろうと思います。ここの案は,そうではなくて,その人を外してやっていいですよということだけを決める,正にそういった手続を想定していまして,逆に,その先のことは今,佐久間先生がおっしゃったとおり,実際に決定するかどうか,決定というのは,残りの過半数で決めるかどうかとか,残りの人で決めるかどうかについて自体には裁判所は関与しないということを想定していました。そういった意味では,当事者的に対応するのは,その請求する人と外される人ではないかと理解していたところです。 ○佐久間幹事 よく分かりました。では,例えば,3人不明,あるいは意見を述べないという人がいた場合に,1人だけ取り出して,その人を相手にして,あと過半数を得ていたら,それでもうオーケーですよということになるのでしょうか。それとも,例えば3人応答しない人がいた場合は,3人全部を応答しない人として訴えないと駄目だということなのでしょうか。それだけ追加で教えてください。 ○脇村関係官 外す人だけを考えていました。 ○佐久間幹事 分かりました。はっきりすればいいので。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   共有について,ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今の点について,この共有物の管理についての裁判が,管理の中身を問題とするのではなく,ある人,所在不明の人であるとか賛否を明らかにしない人を外すということに限定されると,そこはよく分かりました。質問なのですが,例えば所在を知ることができない人を外すという裁判が行われたときに,その裁判の効力は,いつまで続くのでしょうか。一度外されてしまった人は未来永劫,管理の多数決に加われないというのはおかしい気もします。既にこれまでに説明があったのかもしれませんが,この裁判はある特定の管理の決定,決議に関するものだという限定がされないのでしょうか。 ○山野目部会長 ただいま蓑毛幹事からお尋ねがあった件について,現時点での事務当局の見通しがあれば,お話を下さい。 ○脇村関係官 従前の部会資料でも少し書かせていただいておりましたけれども,ここでは,外すと言っていますけれども,当該具体的な行為を決めることに関して外すということを考えております。ですので,抽象的に,例えばこういった契約していいのだとか,そういったことを想定しているというよりは,具体的なものを想定していましたので,その行為,同一性がどこまであるかという問題はあるかもしれませんけれども,未来永劫その類型に関して外すとかということは想定していませんでした。具体的に特定の問題が起きていて,そういった問題について決めるにはどうするのだといったときに,それについては外すということを考えていたところです。もちろん,そうしますと適時対応できなくなるのではないかという御議論もまた一方であると思いますが,そういった場合には,例えば共有物の管理者を決めるとか,それについては管理者が変更行為以外はできますので,そういったことで対応することを考えていました。 ○山野目部会長 非訟事件手続については,判決手続におけると同じような厳密な意味における既判力であるとか,訴訟物であるとかという議論の仕方をしないものであるかもしれませんけれども,そうはいっても,②の裁判手続において一体どこまでの事項を範囲として考えて裁判をしているかということは明らかになっていなければいけないという点は当然のことでありまして,先ほどから,裁判所はどのような判断を,言わば主文を描くようなイメージで,どのようにするかというお尋ねを頂いてきたところでありますけれども,既に事務当局から案内を差し上げておりますように,過半数で共有物の管理に関する事項を決することができるということを主文に書くものであろうと考えますとともに,その際に,どの事項についてそれができるかということは裁判の主文において明らかにされなければいけないものでありましょう。別紙目録記載の土地について,と書き出して,およそその土地についてはもう,1回分母から外されたら未来永劫分母からはじかれるという裁判処理をするということは,ただいま脇村関係官からお話がありましたとおり,現実的にも考えられませんし,理論的にもおかしいものであろうと感じます。したがいまして,別紙目録記載の土地のこれこれに関する事項について,これこれのことができるということを主文に書くものであろうと考えますが,これこれの事項について,というものをどのくらいの意味を充填したものとして書き表していくかということを,その事案の特性を見ながら,ここのところは裁判所に見てもらって,適切な事案ごとの処理をしてもらうということになりましょう。いずれにしても無限定な仕方でそこのところが野放図に扱われてしまうということにならないということは,脇村関係官からお話を差し上げたとおりであり,そのような趣旨でこの②をお出ししているものでございます。   蓑毛幹事,どうぞお続けください。 ○蓑毛幹事 よく分かりました。私が裁判の内容について勘違いしていたようです。ただ,そうすると,特定のために,裁判の対象となる事項には時間の概念を入れるべきだということになると思います。例えば,裁判の対象となる管理に関する事項が,3④の建物の賃借権の設定である場合には,令和〇年1月1日から3年間建物の賃借権を設定すること,というふうに時期を特定しないと,将来にわたって,ある人が賃借権の設定については決議から外されることになるように思います。うまく整理できていなくてすみません。 ○山野目部会長 蓑毛幹事の御要望というか,意見は理解いたしました。受け止めさせていただきます。ありがとうございます。   ただいまの点でもよろしいですし,そのほかの共有の点についてもいかがでしょうか。 ○畑幹事 畑でございます。裁判所の決定をかますことで安定的な運用が可能になるということなのですが,これがどの程度安定的なものなのかということがよく分からない気がしております。脇村関係官には申し上げるまでもないですが,非訟事件の決定に既判力というものがあるのか,ないのか,あるいは何かしらの拘束力というのがあるのか,ないのかというのは,必ずしもはっきりしないところだと理解しております。取り分け,先ほどの話で,共有者が多数いて,1人の人が申立てをして1人の人を外すというような局面を考えると,特に他の人,手続に関わっていない人は,②の要件を満たしていないという主張ができてしかるべきではないかとも思われますし,安定的といっても完全に安定的にはできない,ある種,事実上安定的になるというぐらいの意味かなと理解したのですが,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○脇村関係官 先生がおっしゃったとおり,非訟事件の決定には既判力がないといわれているのはおっしゃるとおりだろうと思います。この既判力がないというのがどういう意味なのか,いろいろ皆さん方も御意見あるところですが,私の理解するところを述べさせていただきますと,少なくとも再審なり取消しがない限りはそういった効力が発生,ここでいうと外すということは発生しているということ自体は,まあ動かないのかなと思います。ただ一方で,再審事由とか,そういった何らかの問題があるケースについて,絶対覆ることがないとまではいえないのだろうというところはおっしゃっているとおりだと思います。だ一方で,何もない中で一私人がこうですよというよりは,裁判所が判断を示すこと意味があるといいますか,安定しているのはそのとおりかなというぐらいのことを考えているところです。ただ,もちろんこの手続自体は,証明させたいというよりは,もう少し慎重にやりたいということを念頭に置いていますけれども,副次的には第三者機関,中立公平の裁判所が要件を見ているという点では,安定することもあるということだろうと思っています。 ○畑幹事 既判力なり拘束力的なものについては,多分,引き続き解釈に委ねざるを得ないところが残らざるを得ないということで了解しました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○中田委員 念のための確認なのですけれども,Aが所在不明のBについて外そうということで申立てをしたのですけれども,3人目のCはBの所在を知っているという場合はどうなるのでしょうか。 ○脇村関係官 そのCの方から,何らかの形で手続で,いますよと言っていただければ多分,止まるのだろうと思っています。 ○中田委員 止まらなかった場合は,しかし,非訟事件の決定の効力は生じるということでよろしいですか。 ○脇村関係官 そうですね,裁判として有効に成立した場合には,そういうふうになろうと思います。あとは,先ほどからあるその裁判を取り消したり再審したりすることができるかどうかという,そういった問題だろうと思います。 ○中田委員 やはり安定的といえるのかなということは疑問に思いますけれども,ただ,そこら辺になってきますと,手続法の先生のお知恵がないと,私にはこれ以上申し上げられません。 ○山野目部会長 中田委員がお挙げになった例で,CはBの所在を知ってしましたという事情が手続の途中で分かった場合には,脇村関係官が述べたとおり,決することができる旨の裁判をしないということになりましょう。それから,それが分からずに,決することができる旨の裁判がされるときには,その裁判の形成力自体は生ずるということを前提にお話が進んでいくことになりましょうけれども,その先は恐らく話が二つに分かれて,一つは訴訟手続の側面においては,極めて例外的な場合ですけれども,その裁判が形成した効果を覆すための特別の手続を用い,更に手続をしますかということが論点になってまいりましょうし,民法の実体法の運用としては,仮にこの裁判が出た場合であったとしても,CがBのことを知っているのですよと,裁判は出てしまったけれども,Bさんはここにいるではないですかということを告げたときに,いや,裁判が出ているから,もうBのことは無視してやってしまおうよ,俺たちで決めようよというふうに進めていくことが,果たして民法実体法の観点から見たときに,過半数で管理の方法を決したといえるかということは,また別な次元の問題としてチェックしていくということになるかもしれません。しかし,いずれにしてもそれらの事項というものは今後,幾つかそういうふうに考える可能性があるでしょうということで,解釈によって究められていくことになっていくかもしれません。   今の点について,引き続き御意見を承ります。 ○垣内幹事 垣内です。大変難しい問題のように伺っておりますけれども,一応,今日の資料ですと,8ページから9ページに掛けて通知,公告という手続が想定されており,この通知というのは,外される共有者に対して通知をするということが想定されているのだということで,確かにこの裁判の効果として,決定に加われなくなるという意味で直接の影響を被るのは当該共有者ですので,当該共有者に対して通知,あるいは,それを名宛て人とする公告をするということなのだと思いますけれども,安定した運用という観点から申しますと,他に所在等も分かっている普通の共有者がいるというときに,一応その他の共有者に事情を聴くであるとかといったことは当然考えられることなのかもしれないというように思いまして,これは裁判所の運用の問題ということになるかもしれませんけれども,それが必ず経るべきステップだと考えるのであれば,当該共有者以外の他の共有者に対しても通知をすることを何か手続条件に付けるであるとかいったことも考えられるのかもしれませんが,適切に運用されれば足りると考えるのであれば,現在のような形でもいいのかもしれない。裁判所で一応聴いておこうと思えば,先ほどのCという共有者に聴いてみて,そうするとCは実は知っているよというようなことは,共有者間ではそのようなことは,共有者間の関係にもよりますけれども,少なからずあり得るとすれば,そういった運用が通常は期待されるということなのかなというようにも考えました。 ○山野目部会長 垣内幹事,ありがとうございます。よく分かりました。   ただいまの点についての引き続きの御発言も承りますし,そのほか共有についてのお話を伺っていきます。 ○佐久間幹事 今の続きになりまして,またよく分からなくなったので教えていただきたいのですが,裁判の手続のことは全然分からないので,置いておきまして,実体法上どうなるのかということを伺いたいのですが,仮定の話ですが,共有者が6人いたといたしまして,各持分の割合は同じで6分の1ずつだと。今のところ賛否ある事柄について,賛成が3人で反対が2人である,1人は不明であるといたしますと,3人の多数では過半数になりませんから,本来ですと決定できないわけです。そうであるところ,例えば賛成3人のうちの1人のAという人が不明であるFについてこの裁判を求めた。先ほど中田先生がおっしゃった,しかしCは実は居場所を知っているという場合に,裁判手続の途中ではそのことが明らかにならず,決定というか判決が出た。5人で決定することができるようになったので,5分の3の多数で一応決定した形になっているというときに,Aに焦点を合わせれば,確かに5分の3になっていると思うのですけれども,Cの立場からすると,元々②のアでもイでもいいですけれども,要件を満たしていないわけですから,Cが手続を仮にとろうとしても,これはとれないということになっているわけですが,共有者の中の1人に,②ア,イのどちらかに私に関しては該当するのですという事実があれば,それで実体法上の過半数の要件が他の共有者との関係でも満たされるということになるのでしょうか。それとも,それは今後の解釈の問題なのだということになるのでしょうか。何となく感覚的には,共有の決定は一応,共有者全員でするということからすると,共有者全員についてこの要件が満たされていないといけないのではないかという気がするのですが,よく分からないので,質問です。よろしくお願いいたします。 ○脇村関係官 少し誤解かもしれませんけれども,主観的に知っている,知らないだけで決まるわけではなくて,客観的に,知ることができない,不明であるということは当然,認定されないといけないということを前提に考えています。ですから,もちろん実際問題,不在者財産管理人でも,特定の人は所在を知っているけれども,所在が知れないということで裁判が出るケースもあるわけですから,ここで考えていますのは,裁判所が,これは不明といっていいよねということを認定することを前提に考えていました。もちろん,その認定が間違っている可能性があるということかもしれませんけれども,認定された以上はそういった決定の効果が及ぶと考えていたところです。 ○佐久間幹事 はっきりしていればいいと思うのですけれども,先ほど私が申し上げたような例ですと,実は共有者の中の1人に真実をなぜか知る者がいたとかいう場合であっても,この裁判がされれば,それで全共有者との関係で,先ほどの例では5分の3の過半数で決定したら,もうそれでいいですということになるということですね。 ○脇村関係官 そうですね,おっしゃるとおりだと思います。もちろんそういったことはないようにきちんと証拠調べしていただきたいということなのですけれども。はい,そうですね,すみません。 ○山野目部会長 佐久間幹事はよろしいですか。 ○佐久間幹事 はい,結構です。ほかのところで共有で少し申し上げたいことがあるのですけれども,この話題が終わってから申し上げます。 ○山野目部会長 分かりました。 ○畑幹事 再度すみません,引き続き,私もよく分からないのですが,垣内幹事がおっしゃったことに関連して,今話題になったような事例を考えると,やはり共有者全員に何かしらの陳述聴取なり通知なりということを考える方が手続的にはしっくりくる感じはいたします。ただ,そうなると手続が重くなるという御批判は当然あるとは思います。   それから,もう1点,先ほど部会長が少しおっしゃったことがやはり気になりまして,決定の時点では行方不明と思われた人が出てきたらどうなるかということもありますし,今のは②アですが,②イに関しても,決定が出た後で,いや,実は自分は反対だという意見を,それまで賛否を明らかにしていなかった人が表明したらどうなるのかという問題も,理屈の上ではありそうで,考えるべきことが結構あるような印象を持ちました。いいアイデアがなくて恐縮なのですが。 ○脇村関係官 畑先生の後者の問題については,この部会資料上は,期間内に言わない限りはもう言えないことを前提に考えています。部会資料で,期間内に裁判所に対して言わないといけないということを明確にしていて,そうでない限りは却下できないことにしています。これは,前々回でしたか,佐久間先生から,少し違う文脈の話でしたけれども,いつまでも意見を言っていいのかというお話があったことを意識して,部会資料の方を書かせていただいたところです。 ○山野目部会長 畑幹事はよろしいですか。今,一応事務当局から案内は差し上げましたけれども,引き続きまた御指摘を踏まえて考えていくということでよろしければ,そのようにいたしますし,何か御発言があれば伺います。 ○畑幹事 いえ,結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。ただいまの点について,ずっと後でお出しいただくことでも構いませんが,今の段階でおありでしょうか。よろしいですか。   そうしましたら,佐久間幹事,どうぞほかの点の御発言に行ってください。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。非常に細かいことで恐縮なのですけれども,資料10ページにございます6の裁判による共有物分割,もうずっと前からこういう御提案で,もっと前に申し上げておく方がよかったと思うのですが,今回もう一度拝読して素朴に,これで大丈夫なのかな,文言としていいのかなと思ったことがありました。   それは,③についてなのですけれども,現行法の258条では現物分割が原則であり,それができなければ代金分割となっておりますので,③のような,現物分割ができないとか,あるいは現物分割をすると価格が著しく減少するということは,それは当然に事態としては考えられて,競売して代金分割ということになると,それは自然だと思うのです。ただ,今回は②イが入りましたので,イの方法ですと,債務を誰かに負担させて持分の全部または一部を取得させることができないということはないはずですし,その債務の履行に不安があるから適当ではないということは大いに考えられるのですけれども,だからといって,それは価格を著しく減少させるということにも必ずしもならないのではないか。そこから先,平たく言えば,イの方法によることが相当でないと判断されるときが③になるのだろうと思うのですけれども,この③の文言でよろしいのでしょうかというのが質問です。これで大丈夫ですということでしたら,特に,賛否のことではありませんので,それで結構です。よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 いわゆる全面的価格賠償の場合の,③に進んでいく読み方ですけれども,②に記述する方法により共有物を分割することができないときというのが,現物分割の場合もありますし,それから,全面的価格賠償の場合には,資力要件などいろいろな要件が必要ですけれども,それが欠けていると,なので分割することができないという形になって,競売分割になっていくということに読むのかなと思っております。 ○山野目部会長 大谷幹事にお尋ねですけれども,読み方は佐久間幹事と大谷幹事とで共通であると理解しますが,その共通に抱いている思考内容が③のワーディングで表現されていますか,という点が佐久間幹事の御心配であると想像します。何かお話がおありでしょうか。 ○大谷幹事 全面的価格賠償につき,「分割によって著しく減少させるおそれがない」という要件に当たる場合がないのかということにつきましては,こちらの方に当たることはないのかなと思っておりまして,そのような理解で何とか読めるのではないかとは思っていたところですけれども。 ○脇村関係官 多分,佐久間先生と私たちの考えは一緒なのですけれども,私たちは相当でないときはしてはいけないという理解でおりますので,そういった意味では,できないということを読めるのではないかと考えていたところです。現物分割も本当の意味でできないケースばかりではなくて,分けようと思えば何でも現物分割できるわけでございますが,そういった意味でできないという表現で,先生がおっしゃった相当性の要件のことも,読めるということで私たちは考えていたところです。 ○佐久間幹事 正にワーディングの問題なので,これでいいでしょうということでしたら,もうそれで結構でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 佐久間さんはそれでいいとおっしゃるのだけれども,佐久間さんのおっしゃった質問の一つに,分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときというのはどういう場合ですかというのが含まれていたような気がして,全面的価格賠償によるときも,「又は」より前で読めるというのは,それに対する回答になっていないような気がしたのですが,佐久間さんは今のでいいのですか。 ○山野目部会長 処分権主義ですから,道垣内委員が御意見がおありでしたならば道垣内委員がおっしゃってください。佐久間幹事がどうするかは佐久間幹事の思想信条の自由でありますから。 ○道垣内委員 では,「又は」以下の例はどういう例ですか,具体的には。 ○山野目部会長 事務当局に改めてお尋ねします。②イとの関係での③の「又は」から後の文言が働くのはどのような場合ですか,というお尋ねです。 ○道垣内委員 ②イとの関係という限定は不用です。「又は」以下は具体的にはどのような場合かということです。 ○大谷幹事 イとの関係では,著しく減少させるおそれがあるというのは,なかなかなさそうですけれども,現物を分割するということによって価格を著しく減少させるおそれがあるというときのことが中心になるのではないかと思っておりました。 ○山野目部会長 ②アと③の「又は」から後の部分は今と同じですから,尋ねていかなければいけない点は,②イと③の「又は」から後の部分であるだと考えます。そこは空白であるということが事務当局の今の説明でした。   道垣内委員,お続けください。 ○道垣内委員 ②イも分割なのですよ。②イというのは分割の一種ですから,この方法で著しく減少させるおそれがないときには,③の「又は」以下に該当するということにはならないのではないかと思うのですが。 ○山野目部会長 先ほど事務当局からそのようにお答えしました。 ○道垣内委員 いえ,そうではないと思いますが。 ○山野目部会長 事務当局から,もう一度お話しください。 ○大谷幹事 今の道垣内委員の御指摘は,著しく減少させるおそれが②イの場合でないとすると,②イの方で共有物の分割を命ずることができることになるのではないかという御趣旨でしょうか。 ○道垣内委員 おっしゃるとおりです。 ○大谷幹事 それはそうではないと考えています。著しく減少させるおそれがないというところには引っ掛からないので,そちらで,いわゆる全面的価格賠償ができないということはないのだろうと。一方で資力要件などが欠けているということであれば,③の前段の方に当たって競売分割に進んでいくということになるのではないかと思っております。 ○道垣内委員 しつこくて申し訳ないのですが,私が伺いたいのは,分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときとは具体的にどのような場合かということだけであり,私も考えていたわけではなくて,佐久間さんがおっしゃっているのを伺って,疑問に思っただけなのですけれども,どのような場合なのですか。そのときには分割の方法として②イもあるわけですよね。したがって,分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときという要件が成り立つためには,②イを使っても著しく減少するということが言えなければ,又は以下の要件が満たされていることにはならないのではないでしょうか。したがって,私は「又は」以下を削除してしまえば,それで済むと思うのですけれども,会話において②イが資力の関係で妥当でないときには,「又は」よりも前のときに当たるので,競売を命ずることになるとおっしゃって,それはそれで結構なのですけれども,後者がどのような場合なのかがよく分からないものですから。私だけ分からないのなら結構ですけれども。 ○山野目部会長 大谷幹事,改めて説明をお願いできますか。 ○大谷幹事 すみません,少し御質問の趣旨が理解できておらず,繰り返しになってしまうばかりですけれども,現物を分割する方法の場合には,著しく減少させるおそれがあるというときはあり得るわけですが,そちらの方にのみ働くもので,分割することができないというのはアとイ,両方に働くものということかなと理解をしておるのですけれども,道垣内委員のおっしゃっているところは,これだと多分,擦れ違っていることになってしまうのですよね。 ○山野目部会長 先ほどから事務当局はそのように御説明しています。道垣内委員,お続けください。 ○道垣内委員 よろしゅうございますけれども,例えば,当事者が現物を分割する方法によるというふうに申し立てたからといって,それに裁判所が拘束されるという建て付けにはなっていないわけですよね,多分。そうすると,裁判所としては競売を命ずるというときに,何の要件が満たされているから競売を命ずるということになるのかというと,現物を分割すると価格を著しく減少させるおそれがあるからという理由で競売を命ずるということになりますと,いえ,②イの方法はあるのではないですかという話になるのではないかと思います。そうなると,②イの方法を潰すためには,先ほどから話に出ているように,資力が不十分であるとか,そういうふうなことを言わなければいけないわけであって,そうすると,それは「又は」よりも前になるわけですよね。「又は」よりも後の「おそれ」というのが単独で働くという場面が私にはよく分からないのですけれども,私ももう少し考えてみたいと思いますので,本日のところはこれで結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○佐久間幹事 すみません,私が妙なことを招いてしまったのだろうと思うのですが,まず,まあそれで結構ですと申し上げたのは,これで読めるということだったら,飽くまでワーディングの問題として,それで結構ですということを申し上げたわけで,それは相当性の問題なのだということが大谷さんから,あるいは脇村さんだったかもしれませんが,そこも含めてお答えがありました。そうすると,全体として,「又は」の前後いずれについても,②ア,イのどちらからで,いずれについてもその方法で分割することは相当でないというときは,このワーディングで読めるのだということを前提に,それで僕はいいですと申し上げたところです。あとは細かいことはよく分からないので,法制的にも問題のないワーディングにしていただければ,それで結構かと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。この点は以前に問題になった点かと思っておりまして,現行法の現物分割を前提とする規律に全面的な価格による分割を入れたときに,そのままでいいのかということで,一応,事務局のそのときの御説明は,今日と同じように,分割をすることができないという中に,資力等の問題で相当ではないというようなときを含むという説明で,それが現行法と同じ文言で果たしてそう読めるのかという問題はあったものの,そのような御説明であるということですので,そこは一貫していると思うのですけれども,相当ではないというものも含めて,分割することができないとう定式を用いているとしますと,後半の,分割によって価格を著しく減少させるおそれがあるというようなときも,結局は相当でないということになり,ここに概念の重複といいますか,そういうことが起こってくるのではないか,それがわかりにくさを呼んでいるのではないかと思われ,そういった御指摘も今までのやり取りの中では出てきたということかと思っております。   それから,道垣内先生がおっしゃった,そんな場面があるのかということですが,これも事務局が繰り返しおっしゃっておりますように,現物で分けることは可能,しかしながら,分離するとか二つにすることによって,それぞれの個体の財産となると,集まることによって価格の増加があるような部分というのは切られてしまうので,そういう場合はこの,分割によって価格を著しく減少させるということになる。他方で,イのやり方だと資力の点があるので,やはり適切ではないというような場合に,当事者が現物分割を申し立て,しかし,価格賠償もあるけれども,そちらは資力の問題があって駄目だということになると,どちらも駄目で競売になるのですけれども,そのときどの要件でなっているのかというと,アについては価格が非常に減少する,イについては資力不足で相当でなく,できないということで,したがって③は,一部空振りにはなるのですが,又はでつながっているその要件がいわばクロスで②のア,イに掛かってき,ア,イいずれもがそれを満たす場合ということになると,そういう説明なのかなと思います。そうだとしましても,結局,できないに非常に多くを入れ込むことによって,又は以下との要件の関係が不明確になってくるという点はあるのかなと思います。やり取りを聞いて,そのように思ったということだけですので,多少,整理になっているのかどうか分かりませんけれども,その趣旨で発言させていただきました。 ○山野目部会長 沖野委員に整理をしていただきまして,ありがとうございます。恐らく現行の,従来の258条に出てくる「できない」という日本語の意味合いよりも,ここで③として提示されていて,これが仮に法文になったときの今後の「できない」は,余りにも意味が豊かな「できない」であるということになってまいりまして,それはそのように受け止めてくださいということで,従来の資料の補足説明も含め,そのような御案内をしているものでありますけれども,それだけ重い意味を含むことになった「できない」ということの意味を,仮にこれで行くならば,誤解がないように周知していくということもまた大切であろうということが,ただいま御発言いただいた委員,幹事と事務当局との意見交換で明らかになったと感じます。   ただいまの点も含めて,共有のところについて引き続き御発言を承ります。 ○道垣内委員 一言だけ言わせてください。もう言わないと申し上げましたが,沖野さんの説明を聞いて,やはり,「又は」でないということがはっきりしたような気がします。というのは,後半だけでは裁判所は命じることができないわけですから。 ○山野目部会長 ご意見をいただき,どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   共有全般について,ほかにいかがでしょうか。 ○畑幹事 ありがとうございます。手続というより実体の問題のような気がするので,私が発言するべきではないような気がするのですが,今の6の次の7の部分で,前の資料と変わった部分があって,これは皆様はよろしいのでしょうかということです。前の資料と変わったのは,共有物分割の申出をした人が,遺産共有の部分については分けなくていいということが法的にはいえなくなったということのように理解しております。誤解があるかもしれませんが,今までは,そういう共有物分割しかできなかったのだと思うのですが,それを今回なくしてしまうということが提案されているように思います。そのことに,それほど強い理由があるのかなということを,少し疑問に思いました。   共有物の分割は分割として分けて,遺産共有の部分については相続財産全体で分けたいというのは,それほどおかしな話ではないのかなと思ったのですが,いろいろ前提を誤解しているかもしれませんし,実体法の問題だと思いますので,ほかの皆様の御感触をお伺いできればという趣旨です。 ○山野目部会長 畑幹事から問題提起があった点について,ほかの皆様で御発言がおありでしょうか。あるいは,事務当局から何か説明をしてもらうことがあったら,お願いします。 ○脇村関係官 一応,資料を作った趣旨だけ御説明させていただきます。畑先生がおっしゃったとおりなのですが,自分であえてやったという点を捉えて,そこまで認めなくてもいいのかなということで書かせていただいています。最終的には自分の選択で決めた上でやっていただくということであれば,あえてそこまで法的には認めなくていいのかと思いつつも,実際にはそんなことはしないだろうなということを前提に部会資料は作らせていただいているところです。 ○山野目部会長 ただいまの点について,ほかの皆様方から御意見があれば,承ります。   よろしいですか。畑幹事から御指摘いただいたことを踏まえて更に検討するという取扱いでよろしゅうございますか。   ありがとうございます。ほかに共有全体について,いかがでしょうか。松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 すみません,ありがとうございます。既に出ている論点と絡むのですけれども,部会資料56の6頁,第2の2の共有物の変更行為,それから7頁,同3の共有物の管理について,共有者不明の場合等における裁判の効果に関する確認です。例えば,同2の共有物の変更行為に関する②の定めに従い,共有者の一部に不明者がいる場合において,不明共有者以外の共有者の同意で変更行為を行ってよいという裁判を得たときに,その効力が不明共有者にどのように及ぶかということです。この裁判に基づいて共有者の一人が不明共有者以外の他の共有者の同意を得て変更行為を行った場合,費用が発生したときは,その費用については,253条1項に従い不明共有者の持分に応じた分担を請求できると解釈していいかどうかということです。一方で,その変更行為によって債権が生じた場合,例えば,共有地への借地権の設定によって賃料債権が生じた場合,その不明共有者への帰属についても問題になります。   同じことは同3の共有物の管理についても,不明共有者以外の他の共有者の持分の過半数で決することができる旨の裁判に基づき,同④の期間内の賃借権の設定等の管理行為をしたときに要した費用については,不明共有者にも分担を求め得ると解釈していいかどうかということについて,確認させていただければと思います。 ○脇村関係官 ありがとうございます。費用負担の253条を使うことを想定していました。逆に,だからこそ慎重手続を要するのかなと考えていたところです。 ○松尾幹事 ありがとうございます。253条1項によって効力が及ぶということについて確認できれば,私も異論ございません。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかに共有のところはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは,先に進むことにいたします。   所有者不明土地管理制度,それには等という字を付けておりますが,部会資料15ページから後,第3の部分で,所有者不明建物管理命令,それから管理不全土地管理命令,管理不全建物管理命令までを含みますから,補足説明で申しますと部会資料の23ページまでの範囲でお尋ねをすることになります。この範囲で御意見を頂きたく存じます。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 第3についての日弁連ワーキンググループの意見を申し上げます。第3については,いずれも賛成するというのが多数意見でした。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。第3の土地管理命令に関するところですが,所有者不明土地管理命令については,これまで申し上げているとおり,基本的にはこの内容で特に異存はなく,賛成でございます。   管理不全土地管理命令につきましては,今回変わったところ,2(2)③のところで,前回までの部会資料では,裁判所が土地の処分に関する許可をすることができる場合の要件として,所有者が異議を述べない場合に限る,と書かれていたのですが,今回はそこが所有者の積極的な同意がなければならない,と書き改められたということで,例えば,前回の部会での発言の中で申し上げた,手続の最初の時点では土地の所有者がいらっしゃったのだけれども,途中でいなくなってしまった場合にそのまま手続を続けられるかどうか,といった点も変わってくるように思います。前回の部会では,積極的な同意まで求められないのであれば,一度手続を終わらせて所有者不明土地管理命令を改めて申し立てるというようなことまではしなくていいですね,という話をしていたのですが,今回こう変わってしまったということですので,やはりここも少し使いにくくなるのではないかという懸念は出ているところでございます。   先ほど第1のところで議論した,いわゆる管理措置請求制度に比べると,こちらの管理人を申し立てるという手続は,かっちりしたというか,ある程度時間の余裕を持って対応できる場面での利用が想定されていますので,ある程度慎重な手続,しかも裁判所が絡むということで,しっかりした手続にするというところは理解できるところではあるのですが,一方で,手続がある程度始まって軌道に乗っていたところで状況が変わってしまったというときに,また一から別の手続をやらなければいけないということになってくると,いろいろと使いづらい制度になってしまうのかなというところもございます。したがって,例えば,今提案いただいている2(2)③のところに,所有者の同意がなければならないということを原則としつつも,この土地の所有者が所在不明になった場合はその限りではないと書いていただくとか,あるいは,そこは裁判所の運用で,例えば管理不全土地管理制度の管理人として申立てをしていた場合でも,途中からその土地の所有者がいなくなったときに,所有者不明土地管理制度の方に持って行けるとか,そういった柔軟な運用ができるのであれば,まだ比較的,実務への負担は少ないかなと思うところですので,そのような対応がそもそも可能なのかどうかというところを教えていただきたいというのが一つと,できればそこは柔軟にやっていただきたいというところを意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 藤野委員が御指摘のとおり,前回までの部会資料において,異議がないときに限り,となっていたところを今般,同意ということで要件を重くした点は,確かにお使いになる側から見ると不便を増したという側面があることは,そのとおりでございます。その上で藤野委員からは,それは理解するとともに,可及的に円滑な運用を考えていってほしいという観点からお尋ねがありましたから,事務当局から所見を差し上げます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。どの時点で所在不明が明らかになるのかということにもよるのだとは思いますけれども,今回お書きしましたとおり,この管理不全土地管理人が選任された場合に,その土地の処分については所有者の同意が必要だということになりますので,その時点で所有者が不明だという状態になったといたしますと,その場合には,この仕組みの下で処分をするということは困難になると考えています。その意味では,所在不明の所有者が持っている土地の処分が問題になっているのであれば,それは所有者不明土地管理制度を最初から御利用いただくという形になるでしょうし,あるいは,管理不全土地管理の申立てをして,まだ管理人が選任される前であれば,そちらの方に切り替えていくということはあるかもしれませんけれども,基本的には管理不全土地管理人の方では売却といったところで終了させるというのは難しいのではないかと考えておるところでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。そうすると,管理不全土地管理命令の手続の方は一度終了になって,土地の所有者がいなくなったということで再度申立てをしないといけないということになるわけですか。 ○大谷幹事 基本的にはそのように考えています。 ○藤野委員 ありがとうございます。元々管理不全土地というような状態になっている土地というのは,そもそもきちんと土地の所有者が管理していればそうはならないわけですから,どちらかというと,もう土地の所有者が,連絡が取れたり取れなかったりとか,いるのかいないのか分からない,というような場合が結構多いのかなと思っていまして,そうすると,この制度自体を使うというよりは,土地所有者の行方が分からなくなったら所有者不明土地管理制度を使うという話になってくるし,そうでないとなかなか使いづらいということになってしまうような気がします。緊急性が高い場面では,先ほどの管理措置請求の制度を使えば良い,という話もありますが,そういった制度が仮に設けられないのだとすると,管理不全土地に対する対応というのはなかなかやりづらいことになってしまうのではないか,という印象もございますので,そうならないようにしていただきたい,ということは意見として申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 御意見を承りました。ありがとうございます。理論的には,同一の土地について発せられる管理不全土地管理命令と所有者不明土地管理命令とは別事件になりましょうけれども,個別の事案ごとに,それと向き合った裁判所が,ただいま藤野委員が御披瀝になったような問題意識等も参考にした上で,適切な処理をしていくことになるものであろうと考えますから,引き続き運用の方を見守っていただければ有り難いと考えます。ありがとうございます。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。ただいまの管理不全土地管理命令について,2点,御質問がございます。   20ページの①のところですけれども,これは以前からこうだったのですが,他人の権利又は法律上の利益が侵害され,という表現がございますけれども,民法709条に非常に似た表現があって,そちらの方は,他人の権利又は法律上保護される利益とあると思うのですが,両者をあえて違えているのは何か意味があるのでしょうか。もちろん制度が違いますから,違って構わないのですけれども,同じ民法に置かれるようですので,両者の関係について御説明くださればと思いました。   それから,もう1点は,③の下に書いてある(注)でございますけれども,対象土地の所有者の陳述を聴く手続を経ることにより,その申立ての目的を達することができない事情があるとき,とありますが,これは具体的にはどんな場合なのでしょうか。仮処分なんかにおいて密行性が必要だということで,これに類似したような規定があるかと思うのですけれども,ここで考えられているのはどんな場合なのかということをお教えいただければと思います。 ○大谷幹事 1点目の方は表現ぶりです。これは以前から,法律上の利益が侵害され,という形でお示しをしており,管理が不適当であることによって非常に困っている人がいる,損害を受けているような人がいるというようなことをイメージして書いておりますが,今,中田委員の御指摘があったように,民法の中で規律をするのであれば,表現ぶりについて統一する必要がないかということもございます。この点については引き続き検討したいと思います。   それから,2点目の(注)の方ですけれども,ここで陳述聴取をすることについての例外を設けておりますのは,他人の権利,法律上の利益が侵害されているという状態にはいろいろな場合があり得ようかと思いますけれども,緊急性があるようなときには,早く管理人に入ってもらって何とか管理してもらいたいということなのであれば,陳述聴取をせずに管理人を選任するということがあり得るのではないかということで,こういう形にしております。 ○中田委員 理解いたしました。ただ,そうであれば端的に,緊急性をという表現にしたらいいように思うのですけれども,ここの書き方から民事保全法の規定を連想してしまったものですから,何か密行性を要する場合があるのだろうかと,それがなかなか理解できなかったものですからお尋ねした次第です。ただ,今の御説明だけですと,ほかとの関係からいっても,緊急性を要するというようなことで済みそうな気もいたしましたけれども,表現の問題ですから,こだわりません。 ○大谷幹事 今の表現のところは,基本的に緊急性のあるときということは考えておりますけれども,いろいろな場合があり得るということで,裁判所での運用が柔軟にできるというところもありまして,こういう形にしております。これも他の法令との表現ぶりをいろいろ参考にしながら書いておりますけれども,今の御指摘も踏まえまして,また考えてまいりたいと思います。 ○山野目部会長 それでは,中田委員が御指摘になった1点目の法律上の利益の点も含めて,文言について適切なものを選ぶための検討を続けることにいたします。中田委員におかれてはアドバイスを頂きまして,ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしければ,先に進むことにいたします。部会資料23ページから後でございますが,「第4 相続等」について,補足説明は部会資料の最後まで続きます。この部分について御意見をお聞かせください。今川委員,どうぞ。 ○今川委員 私は第3,遺産分割に関する見直しの(3)の遺産の分割の禁止について,一つ要望があります。   部会資料51の20ページだったと思いますが,10年の期間経過後に相続人間で具体的相続分による分割をするとの合意がされた場合には,協議によるケースはもちろん,調停審判によるケースでも,その合意によると説明されていますが,実務的な面から見ますと,この辺は十分周知をしていただきたいという要望です。 ○山野目部会長 要望を承りました。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。日弁連のワーキングでは,当初からの反対意見というのはなお,全くないわけではありませんけれども,いずれも賛成が多数でした。その上で若干申し上げますと,1(1)②につきまして,遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由という文言につきまして,遺産分割の禁止特約,その旨の審判及び遺言がある場合,その他やむを得ない事由がある場合と例示列挙にすると,より分かりやすいのではないかという意見,また,2項につきまして,従前からお伝えしていますように,10年経過前の取下げについても相手方の同意を要求した方が,遺産分割の促進という意味で,よいのではないかという意見などが引き続き出ておりました。 ○山野目部会長 御意見を御紹介いただきまして,ありがとうございます。   ただいまのお二人の委員から指摘のあった点でもよろしいですし,そのほかの点についてでもよろしいですから,委員,幹事から御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○中田委員 すみません,ただいまの中村委員の御発言の中で,やむを得ない事由について例示列挙した方がよいという御意見が日弁連の中にあるということだったわけですが,これは以前に例示案があった上で,しかし,そうするとむしろ限定的になってしまう可能性もあるので,それは外して,やむを得ない事由とするということで,2,3回前の会議だったかで,そういうことになったかと思います。それは私は維持した方がいいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。中村委員の御紹介も,弁護士会の一部においてそのような御意見があったという御紹介です。それを受け止めて中田委員から,従来の審議の経過を確認した上で,御自身の御意見もおっしゃっていただいたところであります。両委員におかれましては,どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,部会資料56についての審議をここまでといたします。休憩といたしましょう。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   部会資料57をお取り上げくださるようにお願いいたします。構想される要綱案の第2部に当たる「不動産登記法等の見直し」の部分でございます。   その中の「第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」の部分について,御意見を最初にお尋ねすることにいたします。補足説明も含めますと,部会資料57の11ページまでになります。どうぞ御発言を下さるようお願いします。いかがでしょうか。 ○今川委員 第1について意見を申し上げます。まず,1(1),登記申請の義務付けです。その部分の②についてです。これは表現が正確かどうか分かりませんが,いわゆる2段の義務については,我々の検討チームの中では消極という意見が多かったことは事実です。ただ,この基本的な義務の規律である①の読み方について,我々の中でもいろいろと,どういうふうに解釈するのかという議論をしていたのですが,今更ですけれども,今回の部会資料で明確になったということがあります。その箇所は後ほど申し上げますが,その考え方を基に②の規律があるということがはっきりしたということであります。   どういうことかというと,例えば登記名義人Xが死亡して,その法定相続人A,B,Cの3人が,Xの死亡時点で自分たちが不動産を相続したことを知っているという事例を想定しますと,この事例において,今まで①の規律については次のように理解していました。つまり,まずXの死亡から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた登記をするべきである,これが基本であると。そして,3年以内にその登記ができないときは,未分割の状態での登記,すなわち法定相続分による登記をすることで義務の履行となる。ただ,その法定相続分の登記というのは,当事者に一定の負担もありますし,相続分による登記自体に問題がないわけではないので,新たに相続人申告登記という制度を設けて,相続人にとってより負担の少ない相続人申告登記をすることでも義務の履行を認めることにするのだと,このように読んでいました。   ですが,今回の部会資料の補足説明,特に7ページに,遺産分割による登記と,法定相続分による登記と,それから相続人申告登記の関係が詳細に説明されておりまして,①の規律の読み方が明確になりました。そういうふうに感じているのは私だけなのかもしれない,既に皆さんはそういう理解でおられたのかもしれませんが,すなわち,先ほどの事例では,まずA,B,Cに対して,Xの死亡から3年以内に法定相続分による登記をしなければならないという義務が課されて,例えば,法定相続分による登記をする前に,Xの死亡から2年を経過した日の遺産分割によってAが単独で取得することになった場合は,AはXの死亡から3年以内にということではなく,その遺産分割の日から3年,つまりXの死亡から起算すると5年以内にAの単独の登記をしなければならないということになると。そして,このXの死亡から2年後に遺産分割によってAが取得したという場合において,仮にXの死亡から3年以内に,つまり遺産分割から1年以内に,法定相続分による登記をしたとしても,Aの遺産分割の日から3年以内に単独取得による登記をしなければならないという義務は残ると,こういうふうに解説がされております。ということは,①の基本となる義務の規律において,ダブルの義務というか2段の義務が既に課されていると,それを前提として②の規定があるということであるという認識を持ったということであります。   それと,二段の義務に対して我々が消極意見である理由の一つにありました点ですが,今回補足説明において,売買等による所有権の取得の場面への登記申請義務の拡大には直結しないということも明確にはしていただきましたので,その点については一応理解をしております。   それから,補足説明の7ページの(注2)ですが,先ほど三つの態様の登記の関係について詳細に説明をしていただいたというページですけれども,(注2)では,遺言による場合は遺産分割や相続人申告登記と異なる取扱いをするという説明がされております。その理由がよく分からなくて,これを同じように扱ってもいいのではないかという意見もあります。ただ,初めて明確に理由が書かれたので,我々としてももう少しよく考えてみたいというところであります。   そこで,①の規律に関して質問です。理屈の話ですけれども,先ほどの事例で,Aが遺産分割の結果を踏まえた登記をした場合においても,理屈としてはBとCの最初の,ある意味,1段目の義務は消えることはない,しかし義務の不履行には正当な理由がある,というような理解でよいのでしょうか。あるいは,1段目の義務は,Aが単独で遺産分割の登記をした場合は,相続人申告登記等を登記技術上,することは不可能であるので,実質的にBとCの義務は消滅してしまうのだと考えているのか,という点が一つです。   それから,関連しまして,Aが遺言で取得している,それで,Aの単独取得の登記はまだされていないのですけれども,遺言があることをBとCは知っているという場合でも,BとCは1段目の義務は消えないのか。消えないとしても,当然,登記をしないことに正当理由があると判断するのかということが,関連しての質問です。   次に,二つ目の質問が,A,B,Cの3人が相続人であって,遺産分割をする前にA,B,C全員が相続放棄をした場合は,第2順位の相続人が不動産を相続したことを知った日から3年以内の義務期間が起算されると,これは当たり前なのですけれども,ではA,B,CのうちAのみが相続放棄をした場合は,BとCに対して,その放棄を知った日から3年の義務が発生することにはならないのですかという質問です。   関連しまして,A,B,CのうちBとCが相続放棄をした場合は,その時点からAが単独で相続登記をするべきだという3年の登記義務が発生するのか,という質問であります。   それから,②の規律について,非常に細かい確認ですけれども,A,B,CはXの死亡後3年以内に第1段の義務である法定相続分による登記をした。その後,例えばXの死亡から9年経過した,その10年経過する前ぎりぎりに遺産分割によってAが単独で取得した。この場合は,Aはその日から3年,つまりXの死亡からは12年以内に,自らを単独名義とする登記を申請する第2段の義務を負うと,こういう理解でいいのだろうと思うのですが,その確認です。   それから,②の規律は,法定相続分を超えて所有権を取得した者に申請義務を課しています。例えば,A,B,Cの法定相続分,各3分の1で登記されていて,遺産分割の結果,Aが5分の4,Bが5分の1を取得することになった場合,義務が発生するのは法定相続分を超えて取得したAのみということになる。資料3ページの上の(注)に関連して,このような場合,登記手続上はA又はBが単独で登記申請ができるけれども,登記義務という観点からはAのみに義務が課されると,こういう理解でいいのだろうと思いますが,その確認です。   それから,もう一つの確認ですけれども,補足説明の3,これは3ページですけれども,確認というか,これは要望ですかね。本規律の施行のときに既に所有権の登記名義人が死亡している不動産についても,本文の規律の適用対象とすることを前提として,義務履行期間の長短を始めとする様々な角度からの検討を経て経過措置を置くとありますが,それには賛成です。すなわち,本規律の対象とするということについては,まず賛成をします。そして,今後検討するのは経過措置の具体的な内容であるということについて賛成しますということです。   それから,要望ですけれども,これは非常に細かい要望で申し訳ありませんが,法定相続分による登記を経ないで,直に遺産分割に基づく所有権移転の登記をした場合の登記原因は,単に相続として公示されます。法定相続分による所有権移転の登記と公示上の区別が図られていない。今回,相続登記の義務化が入ったわけで,その観点からすると,ここは変えた方がいいと思います。登記原因については運用で定まるものであろうとは思いますけれども,あえてここで意見を述べさせていただきます。   それから,(2)の相続登記の申請義務違反の効果ですけれども,過料については基本的には消極的な意見を持っているのですが,今回の補足説明で,相続登記の申請の義務化に伴う各種の負担軽減策をパッケージで設けるに当たっては,その大前提として,登記申請義務が過料の制裁を伴う具体的な義務であることが重要であり,これを単なる努力義務や理念的,訓示的なものと位置付けるのでは足りないと考えられるという,この軽減策を入れるについての考え方,この説明は一応は理解できます。それと,もしもこの規律が設けられるとした場合には,補足説明にあるように,義務発生に係る相続人の主観的要件の該当性や,過料通知における手続を通達において明確にすること,また,適切な実務運用がされるよう十分配慮されることが絶対の条件であろうと思いますし,通達によって明確にされるのであれば,我々も含めて,関係の団体等からしっかりと意見を聴いていただいて,通達による明確化を図っていただきたいと要望します。   それから,(3)の相続人申告登記の創設について1点,要望があります。補足説明5の(3),9ページですけれども,システム連携や住所変更等の義務付けについて,運用等によって対応することも視野に引き続き検討するということですが,それに賛成しますが,将来的にはシステムの連携も実現をしていただきたいと考えております。   それから,確認ですが,補足説明5の(3)の最後の括弧書きの記載ですが,職権で変更するという記載があります。これはこういう理解でいいかという確認です。つまり,今のところは変更の申出を任意で行うことを認める。そして,その申出があった場合には職権で変更するということであると理解しておりますが,それでよいかどうか確認をいたします。   それから,補足説明5の(2)です。国民に少し分かりづらいのではないかという意見について,何か考えがないかということですが,これはネーミング等のアイデアはないかということが問われているのだろうと思うのですが,我々の中でもいろいろと意見は出て,議論もしたのですが,まだこれからもアイデアは出てくるとは思いますが,まず,申出についてのネーミングですけれども,登記という言葉が国民の誤解を招くというのであれば,例えば,相続人申告登記の申出ではなくて,登記名義人の死亡の申出とか,相続開始の申出とするなどして,登記と類似する表現を避けていくというやり方が考えられるかなと,これは制度自体のネーミングの問題。それから,公示の仕方ですけれども,例えば相続人とはせずに,申出人と換記するとか,あと,申出人の権利を公示しているものではないとか,登記官の職権による登記であるというような旨を付記していくか,付記登記の中に加えていくというのはどうかというような意見がありました。   それから,(5)の法定相続分での相続登記がされた場合における登記手続の簡略化ですけれども,(注)書については司法書士会としては消極ではあります。その理由の一部は,(注)の中でも取り上げていただいていますし,そのほかの理由も前回の部会で申し上げました。結論から言うと,相続人に不利益となるものではないので,一定のコストを掛けても通知をすると言われるのであれば,絶対に反対するということではないのですが,余りに他の相続人に対する手続保障を強調すると,では共同申請しか認めないという現状の取り扱いでいいのではないかとなってしまわないかと思うのと,それから,何らかの意図を持って法定相続分の登記を入れるという人がいることはいるのですけれども,そもそもそういう人にとっては,事前であろうが事後であろうが,通知を受けるまでもなく即座に仮処分などの次の手続をするのではないかと思われまして,通知を待つということはないのかという意見が我々の内部でありました。   最後です。長くなって申し訳ありません。2の権利能力を有しないこととなった場合の符合の表示ですが,我々の検討チームの中では,符合の表示を実施する場合に,職権消除が含まれるということについては違和感を感じるという意見は多いです。これは多分,権利能力を有しないこととなったと認めるべきという文言からは死亡の場合などの限定的なイメージを受けるので,表現を少し変えるなどして,死亡だけではなく,もう少し広い範囲を射程としているという制度であることが分かるようなものにしてはどうかと思うという意見がありました。   以上です。長くなりました,申し訳ありません。 ○山野目部会長 前の方で相続登記の義務付けについて理解の確認をおっしゃっていただいた上で,お尋ねと要望がありました。お尋ねを頂いた部分について,事務当局の方からお話を差し上げます。 ○村松幹事 すみません,回答が漏れた部分がありましたら,また補足で,ここの部分をと言っていただければと思います。   まず総論的に,①,②ですね,1ページの部分でありますけれども,その辺りの読み方を,こういう読み方ですよねということで御説明いただきました。その部分についてはおっしゃるとおりで,私どもの言わんとしているところを理解していただいて,今,御説明いただいたと考えております。   それで,質問の部分に入ってまいりますけれども,最初の御質問は,A,B,Cが相続をしたというケースで,3年経過する前に,遺産分割ができましたというケースだったかと思います。そのようなケースについて,遺産分割ができたわけなので,遺産分割によって所有権を取得した方については引き続き義務を負うことになっていきますけれども,遺産分割で取得していないB,C,そういった方々については,これはもう義務の対象になりませんよねというところは,おっしゃるとおりです。それの位置付けをどのように理解するのかというところですが,正当な理由でもちろん理解することもできようかと思いますが,どちらかといいますと,所有権を取得した者という要件のところに,途中までははまっていたわけですけれども,3年経過時点ではまっていませんので,この時点でこの方については義務がなかったというふうに扱うのだと理解した方が直截かなという気がしております。正当な理由で整理することもあり得ますけれども,差し当たりはそうなのではないかと考えておりました。それが1点目です。   それから,2点目が相続放棄の関係です。相続放棄が行われた場合について,確かに持分の割合が変わってくるというところになりますけれども,とはいえ,自分が相続人だということの公示自体は,法定相続分による相続登記はできてしまうわけですし,相続人申告登記でもそれは可能だということになりますので,差し当たりは3年以内にする義務というのはその時点では掛かっているので,その義務の履行はお願いしたいというルールとして一応,考えておりました。   それから,この後にも御質問いただいた記憶があるのですけれども,ちょっと記憶が定かでないので,後ほど補足していただければと思います。   それから,Aの単独での遺産分割が成立したのが9年ぐらいたっていましたというケースについての御質問,これは御指摘のとおりで,9年目から12年目の間に遺産分割による登記をしていただくということで,何か特別なことがあるわけではないということになろうかと思います。   それから,法定相続分で登記されていたのだけれども,Aが5分の4,Bが5分の1とされたケース,このケースに関して,②のルールで行きますと,法定相続分を超える取得をした人がAだけになりますので,このAさんが義務履行者ということになるわけですけれども,その登記の申請自体は,その次の3ページの(注)のところで整理しておりますけれども,A,Bそれぞれが単独で独立にできるという整理になっています。したがって,義務の履行者としてはAだけなのだけれども,Bが履行してしまうということも実際上はあり得ます。それはそういう理解でおりまして,それについても③のルールによって義務が履行されたと扱われるという意味で,おっしゃるとおりということかと思います。   それから,登記原因の在り方につきましては,ほかの論点にも入っておりますので,これは実務的には少し検討が必要な事項だろうと思っておりますので,そこはまた,この法制審議会での議論の後に実務的には詰めていくということになってこようかと思います。   それから,相続人申告登記の方に移ってまいりますけれども,一番最後の部分でしたか,申告相続人の住所等の変更について,これをどういうふうに位置付けるのかという部分がございますけれども,相続人申告登記は全体的に職権で行われるものですので,その変更についても職権の枠内で行うことが考えられて,それ自体は大きな弊害はないだろうというふうな理解で記載しています。この職権の行われ方としては,大枠でいえばもちろん職権になりますけれども,おっしゃるように,本則の方の住所変更と基本的には同じようなルールで考えておりますので,当事者からの申出があった場合にだけ行うというような整理学でやっていくということになろうかと思います。個人の話としておっしゃっているのだと思いますけれども,そこはそのように理解をしています。   あとは,それぞれ御意見を承っておりまして,相続人申告登記の分かりやすさという点について,今御指摘がありましたように,ネーミングを考えるですとか,付記登記の中に若干の注書きになるようなことをうまく盛り込めたらどうかとか,そういったところを確かに検討していく必要があるなと思ってございます。 ○山野目部会長 今川委員から補足のお尋ねがあれば,なさってください。 ○今川委員 ありがとうございます。最初の方の質問ですが,相続人がA,B,Cの3人であった,そのときにBとCが相続放棄をした場合,Aが単独で取得したということがそこではっきりするわけですけれども,そこから3年という登記義務も発生しないのでしょうか。 ○村松幹事 そうですね,そういうケースについては単独で所有権取得したということになりますので,その部分についてどうするのかというのが問題にはなり,①のところでその枠内に入ってくるという御趣旨ですかね。それは確かにそうだと思います。 ○今川委員 では,義務となるということで。分かりました。 ○山野目部会長 今川委員にお尋ねですが,そのAは相続開始の時から3年以内に登記をしなければいけないという義務は当初からありますよね。それを履践してもらうということになるのではありませんか。 ○今川委員 いや,遺産分割協議と同じように,BとCが相続放棄を知った日から新たに3年という義務が課されるのではないのかと思ったのですが,今,村松幹事もそうだと回答していただいたと思うのですが。 ○山野目部会長 今,村松幹事はそこをはっきり回答してはいなくて,部会資料もはっきり述べておりません。そこは少し考えどころであろうとは感じますから,ただいまの論点の理論的な検証と政策的な当否を含めて,いささか事務当局において検討いたします。 ○今川委員 了解いたしました。以上です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○橋本幹事 弁護士会の議論状況ですが,前回の部会資料と基本的に維持されておりますので,弁護士会の意見状況も基本的に従前と大きく変わりません。相続登記の義務化に関しては,抽象的義務については異論はありませんが,過料の制裁を課すという点については,賛成意見もありますが,依然として反対意見の方が優勢な状況です。   それから,前回の部会資料で出てきた2段ロケットの話ですが,この点についてもやはり反対論が優勢な状況です。   それから,相続人申告登記について,創設すること自体については異論ないですが,この部分についても,やはり2段ロケット部分については消極意見が多数の状況です。   それから,これは前にも申し上げた意見ですけれども,1(5)ですけれども,更正登記についての不動産登記実務の運用によって対応するという点について,以前の部会でも私から意見を申し上げて,部会長からも説明を頂いているところではありますが,やはりこれは法律事項とすべきであろうという意見が依然としてあります。   それから,今,司法書士会さんは消極だという御意見がありましたけれども,他の相続人に対する通知ですね,この部分に関して,逆に弁護士会としては,登記完了時ではなくて登記申請時に通知をすべきであろうという意見があります。手続保障を徹底すべきだという,ここは真っ向から対立する意見ですが,そういう意見がありました。   それと,この(5)に関してなのですが,更正登記の登記原因なのですけれども,相続ということになってしまうと,最初の一発目の登記との区別が,登記原因では,付きにくいのではないかと。したがって,登記原因としては更正なのですけれども,①に関しては遺産分割,②に関しては相続放棄,③は遺言相続,④は相続人に対する遺贈というふうな,登記原因を見て分かるような形を考えるべきではないかという意見がありましたので,御紹介します。   基本的に従前どおりですので,以上です。 ○山野目部会長 弁護士会の御議論を御紹介いただきましてありがとうございました。   引き続き,委員,幹事の御意見を承ります。岩井幹事,どうぞ。 ○岩井幹事 ありがとうございます。前回の23回の会議におきまして,私の方から,相続人申告登記の申出を却下し,又はこれに対して応答しない旨の登記官の判断が処分性を有するのかという点について発言させていただきました。今回の部会資料57の8ページ,その他のところに記載していただいている部分でございますが,前回の部会でのやり取りを踏まえて内部でも検討させていただきまして,次の2点について確認させていただければと存じます。   まず1点目でございます。相続人申告登記においては,登記官は登記申請義務者の申出があったときに付記登記をすることができるとされております。登記官に応答義務を課す場合には,申請という文言を用いる方が疑義がないようにも思われますが,本制度においては申出という文言を用いているものの,登記官にはこの申出に対する応答義務があるという理解でよいかという点が1点目でございます。   次に,2点目でございますが,本制度においては登記官は申出があったときに職権で付記登記をすることができるとされております。職権による登記を求める行為は職権発動を促すものにすぎず,登記官に応答義務はないと解することが一般的であるようにも思われますけれども,本制度においては,職権でとの文言を用いていても,登記官の応答義務を否定する趣旨ではないという理解でよいか,以上が2点目でございます。 ○山野目部会長 お尋ねのあった事項について,村松幹事から所見を差し上げます。 ○村松幹事 今御指摘いただきました2点でございます。まず1点目ですけれども,登記官にはこの申出に対する応答義務があるという理解でございます。それでよろしいと思っております。また,2点目ですけれども,職権の部分ですが,職権でとの文言を用いておりますのは登記官の応答義務を否定する趣旨ではないと,またここもそのとおりでございます。職権でというのでは,申出を受けた登記官が職権で所要の調査等を行う,こういうことを想定しているため,こういった用語法をしたという説明になります。 ○山野目部会長 岩井幹事においては,よろしゅうございますか。 ○岩井幹事 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。今回の不動産登記法の見直しの,この相続部分のところについては,先ほど今川委員からもありましたとおり,非常に整理をされていて,申告登記という新しい制度を設けられていますけれども,基本は相続登記が大原則,これを義務化するのだということがより明確になったと思っています。これについてはおおむね賛成でございます。それから,先ほどの議論はありましたけれども,過料については,以前から申し上げているとおり,私ども土地家屋調査士会とすれば,過料をやはり設けることが正当であろうと感じています。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   第1の部分について,ほかに御発言はおありではありませんか。 ○村松幹事 今の中で,橋本委員から御指摘がありました,論点でいうと(5)のところで,法定相続分での登記の部分で,登記原因についてのお話,それから通知についてのお話がございます。登記原因については,先ほど今川委員からも話がございましたが,これは登記実務上,今後少し検討が必要な事項の中に入ってまいりますので,その辺りについてはしっかりと検討してまいりたいと考えてございます。また,通知についてはかなり細かな論点になってまいりますので,最終的なこの部会での取りまとめの中にそこまで記載するものではないと理解しておりますけれども,次回に向けてもう一度,整理をさせていただきたいと考えてございます。 ○山野目部会長 弁護士会と司法書士会から御意見をお出しいただいた点について,当面の事務当局の議事の進め方について,今,村松幹事から説明を差し上げました。 ○水津幹事 第1の1(1)①の規律について,意見を申し上げます。同規律の文言は,今川委員もおっしゃったように,読み方が少し難しい気がします。遺産分割があったときは,法定相続分での相続登記が遺産分割の前にされたかどうか,また,相続人申告登記の申出が遺産分割の前にされたかどうかを問わず,遺産分割の日から3年以内に遺産分割の結果を踏まえた登記を申請する義務が課されるのであれば,そのことを明確に表現するか,それが難しければ,解説等で説明をしていただけたらと思います。 ○山野目部会長 水津幹事の御意見,御要望を受け止めました。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,第1の相続登記の義務付けのところに続きまして,その次は少しまとめて御意見をお尋ねすることにいたします。11ページの「第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」,それと併せて13ページの「第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み」,さらにもう一つ,14ページの「第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」,この第4のところまでの範囲で御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。 ○今川委員 ありがとうございます。今度は少ないですので,すぐ終わります。第2,第3,第4について,前回の部会で基本的に意見は申し上げておりますので,それと変わるところはありませんが,第2の1,氏名,名称,住所変更の登記の申請の義務付けの補足説明の3で,本文の規律の施行の際,既に所有権の登記名義人の住所等について変更が生じている場合も規律の対象とするということを前提に,所要の経過措置を設けることについて検討していくということに,賛成であります。これは,先ほども申し上げましたように,基本的には規律の対象とするということを前提にしながら,具体的にどのような経過措置を設けるかということについて検討するということに賛成するという意味です。   それから,2の,登記所が氏名,名称,住所の変更情報を不動産登記に反映させるというところですが,これは繰り返しの要望ですが,職権登記制度を導入するということであれば,当事者が申請をした場合の登録免許税も非課税としていただきたいということです。これは要望です。 ○山野目部会長 御意見と要望を承りました。 ○橋本幹事 この点も従前と同じ提案ですので,やはり弁護士会としては従前と同じでして,住所変更に関しての抽象的義務はいいのですが,過料の制裁についてはやはり反対論が多数の状況で,変わりません。それから,第2の2に関しては,特に異論はありません。第3,第4,いずれも特に異論なく賛成という状況です。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を御紹介いただきまして,ありがとうございます。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。第2の住所変更のところに関しまして,前回の部会等で質問させていただいた内容を今回,部会資料12ページなどに反映していただいておりまして,よく理解できましたというところでございます。一方で,やはり申請を怠ったときに過料を科す,ということに関しては,依然として不安を持っている事業者もいるところではございますので,ここのところは運用といいますか,元々職権でかなり合理的に対応していただける,ということも前提になっていたかと思いますので,そういったところとの組合せで,なるべく不公平感などが出ないような形で運用していただく必要はあるのかなと考えているところです。ですので,後ほど出てくるご提案や経過措置の話とも関係するところかとは思いますけれども,過料に関するスタンスといいますか,義務付けに対するスタンスに関しては,今申し上げたとおりですので,よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 御要望を承りました。   引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。そうしましたならば,部会資料57の最後の部分,14ページの一番下のところ,「第5 その他の見直し事項」として,次のページ以降に示されている内容,部会資料57の最後までの部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○今川委員 第5の1で,法人の場合の登記名義人の特定に係る登記事項の見直しですけれども,補足説明2の(2),(3)について,規律の施行時に既に所有権登記名義人である法人について,会社法人等番号を追加するような制度とすることには賛成です。それと,この法人等番号については自然人の検索情報と違って,公示していくということなので,この法人番号を追加するためには,単に申出では済まなくて,変更登記をしなければならないという立て付けになってくる。ですから,その制度を導入するについては,その法人の負担を考えて,不公平が生じないような観点を踏まえて経過措置を設けるということですので,登記申請でないと駄目とするのではなくて,申出による職権登記も視野に入れてこの経過措置を設けるということを要望するとともに,そのような検討をしていくということに賛成であります。   それから,2の外国に住所を有する名義人の(1)の連絡先となる者の登記です。これについての意見は前回の部会で申し上げましたが,今回は補足説明に,広く国内における連絡先となる者が具体的に登記されるよう,不動産関連業者や資格者代理人,司法書士,土地家屋調査士等が協力しながら,この制度の定着に向けて積極的に関与していく必要があるとありますが,補足説明にこういうふうに書かれまして,私が発言をしないわけにはいきませんので,もとより我々は資格者代理人として,これだけではなくて,全体の新しい制度が実効性を持つように積極的に関与していきますし,そして,依頼者を含む国民全体にこの趣旨を周知していくということについても,積極的に組織的な対応をする所存であるということは,ここで申し上げておきます。   それから,4の不動産記録証明制度の創設です。制度の導入には賛成です。債権者等の第三者から証明書の交付を不当に求められるという事態に対しては,不動産登記法の中に何らかの規定を置くというのは難しいというのは理解はできます。補足説明に,債権者等の事業者について各種業法に基づく監督を徹底し,そして国民一般に対する周知をすることで対応していくと説明されていますが,確かにそのとおりであって,それが非常に重要だと考えております。   それから,不動産登記制度の中で今申し上げたような事態に対応するには限界があるのはやむを得ないとしても,できる限りの対応をしていくという意味で,補足説明(2)のような,本人確認を徹底していくということと,例えば郵送の場合の送付先について仕組みを設けるというのは必要であり,有用だと考えます。今後も,省令のレベルになるかとは思われますが,検討は続けるべきだと思います。   なお,細かい指摘ですけれども,郵送の場合に補足説明で例示されている郵送先ですが,登記記録上の住所ではなく本人確認をした資料の住所地に宛てて送付した方が,これは当然,そちらの方がよいのではないかという意見がありました。   それから,5(2)の表題部所有者に関する規律ですけれども,これはアとイに分かれていまして,アは登記官による職権の保存登記ですけれども,これは見送ることについて賛成です。いろいろと検討する材料がまだまだ多いと思っております。それから,イの表題部所有者に対して所有権の登記名義人と同様の規律を置くということについて,義務化については,適用対象としてもいいのではないかという意見が我々の中では多いのですが,ただ,これはシステムとの連携とか,情報を入手したり,場合によっては職権で登記をしていくという,それらの全体の制度との絡みがありますので,現状では見送ることもやむを得ないと考えておりますけれども,今後はシステムとの連携も含めて,所有権の登記名義人と同様の規律を適用するという方向で前向きに検討していただきたいと考えております。 ○山野目部会長 要望を交えた御意見,それから決意表明を頂きました。ありがとうございます。橋本幹事,どうぞ。 ○橋本幹事 私でよろしかったですか。では,申し上げます。第5関係については,まず,1については異論なく,賛成意見です。2に関しても特に異論はありませんでした。賛成ということです。   3なのですが,閲覧についての正当理由の判断について,現状で認められている閲覧よりも過度な制限がされるのは少し困るという意見がある一方で,本人確認手続は厳格にやるべきだという意見があります。御紹介します。   それから,4の所有不動産記録証明制度についてですが,前回私が意見を申し上げた点について補足説明でいろいろ検討いただいて,ありがとうございます。内容としては,こういう範囲だろうと思いますので,今,司法書士会さんがおっしゃったように,不動産登記規則などにこういった内容を明記していただいて,できる限り不正というものを防いでいって,この制度を健全に育てていくべきだろうと思います。ただ,依然として,前回申し上げた,代理人については資格者代理人に限るべきだという意見がまだありましたので,それも御紹介させていただきます。   それから,5に関しては(1),(2)とも賛成です。見送るということについて異論はありません。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見を御紹介いただきまして,ありがとうございます。   藤野委員,お願いします。もしかしたら藤野委員が先にお手をお挙げになっていたかもしれません。御無礼をいたしました。どうぞ御発言ください。 ○藤野委員 ありがとうございます。私からは1点のみですが,第5の1の会社法人等番号のところです。これは,先ほど申し上げた名称及び住所の変更のところとも絡んでくる話ですし,今回設けられる新しい規律に関しては,いかに円滑に,既存の土地に関しても会社法人等番号を登記する方向に持って行けるかというところがかなり大きいと思っておりますので,やはり経過措置のところが最大の関心事となっております。ここは様々御配慮いただいているであろうというところは,既に今の補足説明の記載からも読み取れるところではございますが,やはりここのところの作り方次第によっては,新しい規律の導入が円滑に進むかどうかにかなり影響する,少なくとも会社,法人に関しては,そういうことになるかと思いますので,ここは是非よろしくお願いできればということを申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。会社法人等番号の経過措置は事務当局において十分に心得ているところであると想像しますから,引き続き見守っていただくようにお願いいたします。國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。第5の1から4までは賛成でございます。それから,5の(1)も賛成です。ただ,表題部所有者に関する規律のところなのですけれども,このアとイの,イの部分なのですけれども,不動産表題部の所有者について,第5の1,それから第4の部分もそうなのですけれども,例えば氏名,住所の更新情報ですとか死亡情報などは,登記に反映されないまでも,法務局のバックデータとして用いられるのかということ,それから,それがないと,例えば不動産の証明情報,不動産記録の証明制度も,これが表題部所有者まで発展しないのかということの確認です。少なくとも表題部所有者まで含めて,この所有不動産記録証明制度がなければ,今までも議論をいたしておりました,例えば長狭物であったり,相続の登記がされていないものの確認までもできなくなってしまうということもありますので,その辺を確認させていただきたいと思います。表題部所有者については,所有不動産記録証明制度に乗るのか,それから,後の住所の変更等を登記所でバックデータとしてお持ちになるのか等について,お聞きしたいと思います。 ○山野目部会長 國吉委員からお尋ねがありました。村松幹事からお話を差し上げます。 ○村松幹事 今の所有不動産記録証明制度の対象に,少なくとも表題部所有者が含まれるのかという問題は,20ページの方に記載しておりますように,システム整備の状況等も踏まえて対応を検討していくということになりますけれども,実際に対応可能なのかというと,対応の余地はもちろんあるというところがあるので,具体的に,将来的にということになりますけれども,検討するという書き方にさせていただいてございます。そういう意味で,各種情報を登記所側で取得いたします氏名や住所の情報ですとか,あるいは亡くなられたら亡くなられたという情報,こういう情報を持っておりますけれども,この情報に基づいて,表題部所有者について,ざっくり言えば,検索を掛けていくということ自体は,技術的には可能な状況になっていこうかと思いますので,あとは費用対効果の部分を乗り越えて実現できるかというところの検討の中身になっていくという理解でございます。 ○山野目部会長 國吉委員,いかがでしょうか。 ○國吉委員 表題部所有者について,特に名寄せの部分は,実現できるように是非,お願いしたいと思います。 ○山野目部会長 御要望を承りました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは,部会資料57についての審議をここまでといたします。   休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   要綱案として作ろうとしているものの第3部,最後の部分に当たるものとして「土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設」について,御審議をお願いしてきたところであります。本日,部会資料58という仕方でお出ししております。内容を御覧いただきますとお分かりのとおり,考え方の基本的骨格は前回までの部会資料と変わるものではございません。文言が疑義のないように整えられている部分があったり,負担金という言葉を用いてお金の性質をより明瞭にしようとしていたりするといったような点を今回,改めた上で,それをお出ししているところでございます。   部会資料58の全体につきまして,委員,幹事の皆様方から御意見を伺って,審議を進めたいと考えます。では,どうぞ御随意に御発言を下さい。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。第3の土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設について,日弁連のワーキンググループでの議論の状況をお伝えします。   これまでも申し上げてきたとおり,この制度の対象が狭すぎるということに不満はあるものの,この制度を創設すること自体には賛成するというのが多数意見です。その上で,今回修正された箇所について,意見を申し上げます。   部会資料2ページの7の10年分の負担金という定めがあることによって,この制度を実際に用いるときの大きな負担にならないようにしてもらいたいというのが日弁連での意見です。これに関連して,10年分というのを,法律に書くのは行きすぎではないかという意見,また,いわゆる粗放的管理で済む土地については,低廉な金額にしてもらいたいという意見がありました。   それから,(注3)と(注4)があることによって関係者の負担が過大となってボトルネックとなるようなことのないよう,制度の運用や整備をしてもらいたいという意見がありました。特に,(注3)についてですが,農地あるいは森林については,利用権の設定や売却のあっせんという地域における効率的な土地の利用を促すような既存の制度があり,このような制度の活用を積極的に図ることが望ましいことだとは思いますけれども,今回の土地所有権の国庫帰属の制度に前置するような仕組みとして設けるのはいかがなものかと思います。   例えば,こういった農用地や森林を地域で効率的に利用するという政策目的の実現に資する施策として,土地所有権の国庫帰属の承認申請の相談を受ける際に,法務局の窓口において,そういった承認申請をする者にとって,よりメリットのある既存の制度の存在を案内するとか,そのような運用をするとことが考えられるのであって,本制度の手続的要件として既存制度の利用を義務付ける必要まではないと考えます。 ○山野目部会長 御意見の趣はよく理解いたしました。ありがとうございます。   引き続き御意見を承りますけれども,差し当たっての御発言の御希望がなければ,本日,総務省から意見書をお出しいただいておりますところから,その御紹介を頂いた上でお話を伺いましょうか。今川委員の御発言の希望は理解しました。また御発言をお願いします。それでは,総務省の勝目関係官から,総務省御提出の意見書についての御説明をお願いします。 ○勝目関係官 総務省でございます。右肩,総務省のクレジットの資料をお願いいたします。全国市長会及び全国町村会からの意見書でございます。先ほど蓑毛幹事からもございました,部会資料58,3ページから4ページに掛けての(注3)及び補足説明4に関するものでございます。   1枚おめくりいただきますようお願いをいたします。両会からは,現場の立場から,下記の記書きのとおり意見申し上げるということでございまして,記書きを順次,御説明させていただきます。   まず,1.2.でありますが,本制度につきまして,この制度を利用する国民の十分な理解,納得が必要というところでありますところ,所有者に対し放棄の意思とは異なる申出を義務付けると,このような負担は制度趣旨を没却しかねないのではないかということです。   3.は,申出前置化により,本来法務局が窓口となるべき国の事務について,実態上,市町村が相談窓口とならざるを得ないことが十分に想定されるということであります。   4.は,農用地,森林の利活用については,現行の政策の積極的な利用を促すこと等に国,市町村,連携して取り組むべきであると。さらに,法務局からの情報に基づき,市町村が必要と判断の上,土地所有者に働き掛けることも可能であって,これらが土地利用の適正化,放棄の抑制にも資すると考えるということであります。   5.は,申出の義務付けによって,利活用に資するものかどうかも不明なもの,一見して利活用に適さないものまで全て市町村の手続を経るということになりますれば,所有者の負担,手続の長期化,市町村におけるクレーム対応を含めた負担の増大といった懸念があるということです。   6.行政のデジタル化,ワンストップ化が進められている中で,国と市町村の2段階,ないしはそれ以上の申請者負担,事務負担を課すということについて,いかがなものかということです。   7.以上のことから,土地所有権の国庫帰属制度の創設については賛同するものでありますが,相続等により取得した農用地,森林の所有者に対し,市町村への申出を前置手続として義務付けることについては反対せざるを得ない。この問題は,飽くまで法務局を窓口とした新たな制度が創設されることを前提に,制度の実施状況の検証などを通じて慎重に検討すべきものと考えるということでございます。   本意見書を踏まえまして調査,審議いただきますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○山野目部会長 部会資料58の太字の部分の(注3)としてお出ししている点について,ただいま総務省から全国市長会,全国町村会の御意見を踏まえた意見の披瀝がありました。承りました。 ○今川委員 私の方の意見は(注3)に関するもので,先ほどの参考資料の説明と関係しますし,蓑毛幹事がおっしゃったことと重複するのですけれども,(注3),農地や森林については,この所有者不明土地問題を解決するための制度として,最近,様々な改正とか新しい制度が導入されて,整備されたところでありますので,この制度の利用の周知とか徹底というのは,やはり,今ある法律そのものの課題として処理をすべきではないかという意見がありました。(注3)のように,いわゆる土地所有権放棄の規律の中に入れる必要はないのではないかという意見が多かったので,そのことを申し上げます。 ○山野目部会長 司法書士会の御意見を承りました。   室賀関係官,どうぞ。 ○室賀関係官 ありがとうございます。農林水産省の室賀でございます。先ほど勝目関係官の方からもお話がありましたけれども,(注3)のところでございます。前回,第23回の部会におきましても発言をさせていただいたところでございますけれども,事前の申出の手続,ここにつきましては,これまでも地域の効率的な土地の利用とか国民負担という勘案で検討されてきたものと承知しております。そういった中で,農用地につきましては,前回もお話ししたとおり,既存の申出の制度がありますということで,今もお話がございましたけれども,こういったことをしっかり活用していけばいいではないかというところもございますが,こういった手続の中で農地の有効利用を図ることが必要だというところでございます。   これらの手続につきましては,これまでもお話しさせていただいたとおり,既存の手続ということでございまして,新たに市町村の皆様に御負担をお掛けするという趣旨ではないと考えておりますけれども,他方で,今お話もありました全国町村会,市長会の現場の立場からの御意見,意見書がありましたので,こういった意見書の内容を踏まえまして,実際にこの仕組みが国と市町村,関係機関が連携,協力して,円滑に,また適切に進められるようにすることが非常に重要だと考えております。そういった観点から,今後,法務省さんの方の法制的な調整等もございますけれども,そういった内容も考慮しつつ,農林水産省としても対応につきまして御意見を踏まえまして検討してまいりたいと思っております。 ○山野目部会長 室賀関係官,ありがとうございました。安高関係官,どうぞ。 ○安髙関係官 ありがとうございます。林野庁でございます。部会資料3ページの(注3)の規律を設けることの必要性,意義については,前回,第23回で同じく意見を述べさせていただいたところでございますが,改めて補足をさせていただければと思います。   市長会,町村会の皆様の御懸念としまして,部会資料3ページの補足説明の4のところにも記載されておりますし,今日,総務省の方からも御説明いただいた資料にもございますが,大きく3点挙げられているのかなと思っておりまして,1点目として,承認申請者の御負担,2点目としまして,市町村の事務の非効率化,3点目として,手続全体の長期化という3点が挙げられているのかなと思っているのですが,今回の制度につきましては,所有者自ら管理をすることが困難な土地への対応の最終手段ということが大前提だと承知しているところでございます。だからこそ,一定の手間や時間的な負担は伴うとしましても,この承認申請を行おうとする者には,事前にしかるべき努力をしていただくということは必要不可欠でありまして,このことはこれまでの当部会の皆様方も共通の認識だったのではないかと承知してございます。   民間ベースでの売買やあっせんなどの活用が宅地ほど一般的ではない森林におきましては,その代わりとしまして,森林経営管理制度を活用していただくとか,既存の制度を活用していただいて,身近な行政機関である市町村の窓口に,森林経営管理法であれば,申出というものを試みていただくというのは至極当然,妥当なのではないかと考えているところでございます。また,承認申請前にこの申出制度が活用されますと,承認申請を行おうとする方にとりましても,この申請手数料を払わずに済むという可能性もございますので,事前努力の具体的な内容を通じて,気付きを得られるというメリットもあるのではないかと考えてございます。   さらに,市町村にとりましても,承認申請が行われた後に国から通知を受け,必要があれば市町村側からその申請者に連絡を取るという形よりも,承認申請をしようとする方から市町村の方にやってくるという形の方が,事務的には効率的なのではないかと考えてございます。   手続全体の長期化という御懸念をされておられますが,市町村が承認申請される土地に関わりたくないのであれば,その御指摘も当たるのかなと思うのですが,市町村がその土地を有効活用していこうと考えるのであれば,承認申請がそもそも行われずに済むということにもなりますから,手続全体の長期化には当たらずに,さらには,その土地が地域で有効活用されるということにも資するものと考えてございます。   森林経営管理法につきましては,その法目的の一つとしまして,森林の管理の適正化ということもございますので,今回の新法の趣旨とも整合していると考えております。また,森林経営管理法に基づく市町村への申出につきましては,これも前回御説明したかと思うのですが,申出を市町村が受けるかどうかということにつきましては,市町村の実施体制等も勘案した上での自由裁量となっているということも御理解いただきたいと思います。また,この申出への対応につきましても,諾否の応答が義務付けされてはございませんので,市町村におかれまして新たに過度の事務負担が生じるというものではないということを,この場でももう一度,申し添えさせていただきたいと思います。 ○山野目部会長 林野庁の御意見を御提示いただきまして,ありがとうございます。佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。私も今の(注3)のところについて,です。勘違いだったら必要のない発言なのですが,3ページの補足説明の4のところに(注3)のような考え方を盛り込むことについて,前回の議論で,このような手続要件を設けることにはモラルハザード防止の意義があるとの意見あったという一文があります。前回,モラルハザードという言葉を使ったのは多分,私だけだったと思うのです。だから,私がこういう発言をしたということで受け止めていただいているのだとしたら,そうではないということを少し申し上げたく存じます。私は,この制度を創設するにはモラルハザードを防止するという観点が不可欠であると,そうは考えております。しかし,前回そのことをどういう脈絡で申し上げたかというと,一般的に売却等の試みをやれるだけ,まずやってくださいというのが前々回までの提案で,それを落とした以上は,それを落としたのだけれども,モラルハザード防止の観点は忘れていませんよという説明が今後も,どこかですることが必要になるのではないでしょうか,それをお願いしますということを申し上げたつもりだったのです。   そのときには,(注3)のことが話題になっているなかでそう申し上げたので,こういう受け止め方をされたのかもしれませんが,本音を申しますと,難しいことは分からないですが,農用地と森林だけ手続を残すというのは,何でというふうに私は思います。一般的にモラルハザードを防ぐために,これを積極的に提言するわけではありませんが,売却等の試みを皆がしなければなりませんというのであれば,農用地,森林について既存の制度を使ってそういう手続を踏んでくださいというのはあり得ると思うのですが,そうでないというか,ほかの人に何も求めないのに,農用地,森林にだけ,こういうふうに必ずしなければなりませんというのは,私は違和感を持っているということを,まず申し上げたいと思います。   その上で,今,関係官から御紹介いただいたようなお話を伺いますと,実際はその既存の手続を踏む方が,土地を手放したいという所有者にとっても,実は有利である,便宜であるということはあるのだろうと受け止めました。そうだとすると,それを手続として強制するのではなくて,そうなのですよということを,しかるべき場で,例えば法務局で申出があったらそういうのを案内するとか,広く農林関係者に周知するなどの施策を打っていただく方が適当ではないのかと思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事が第23回会議で御発言になったことの本意は,ただいまの御説明で更に一層よく分かりました。また,佐久間幹事に考え方を整理していただいたところをヒントにしてお話を続けることにいたしますと,本日の会議において御発言いただいた総務省,農林水産省,林野庁のどの方々の皆さんも,また蓑毛幹事,今川委員の御意見もそうでありますが,土地の種類を問わず,この制度を用いて承認申請をするに際しては売却などの自らする努力をしてもらいましょう,そして,そのためにいろいろな制度を活用してもらいたいということについて,考えの方向の齟齬はないものでございます。当然,そこで活用されるべき制度の中には農業経営基盤強化促進法や森林経営管理法が定めている制度も含まれますが,しかし,土地一般について更に目配りをしなければいけないということもございます。これらの皆さん方の間で方向が一致している施策内容について,反面におきまして,法制上どのように表現していくかということについて,なお検討を深めなければならない問題が残っているということが本日ここまでの御議論で明らかになっております。   議事の進め方を顧みましていささか悔やまれますことは,中間試案の段階までにおきましては,土地の種類を問わず,承認申請に当たるものをする私人は試みをしてほしい,努力をしてほしい,という,試み,努力という言葉を用いて,してほしいと求めていたところでありまして,そういうふうな考え方を示している段階で,全国市長会と全国町村会の方々にここに来ていただいて意見聴取をする機会がございました。その際に,その試みの点というものがそれほど何か深刻な話題になったものではありません。その後,今の段階になりまして,必ず申し出てくださいという(注3)の仕方での考え方をどういうふうに受け止めますかというふうにお話が進んできておりまして,これについて,全国市長会や全国町村会にあの時点で意見をおっしゃっていただく際には,話題にするチャンスがございませんでした。そのことを補足する意味で本日,総務省から意見書を出していただいているという経過,意義もあるものであろうと感じます。こういった経過を踏まえて,しかし,(注3)について今後どういうふうな解決の見究めをしていくかということが,なお問われていかなければなりません。   この(注3)の点について,委員,幹事からほかに御発言がおありでいらっしゃいますれば承ります。いかがでしょうか。吉原委員,どうぞ。 ○吉原委員 ありがとうございます。住民の立場で想像しますと,土地を手放したいと思ったときにどういう順番で行動するかというと,制度が浸透するまでの間は,やはりいきなり法務局に行く人は少ないのではないかと想像します。まず地方自治体の役場の窓口に行って,それも窓口もばらばらかもしれません。手放したいのだけれどもどうしたらいいのだろうかと,高齢の所有者が相談に来るかもしれないし,あるいは相続をした相続人が相談に来るかもしれない。そのときに様々な役場の窓口の担当者の方々がどういう対応をするかということも想像しながら制度を作っていくことが大事かと思います。その人たちにどう法務局につないでもらうのか,また,法務局の担当者の方には,そこから,既存の仕組みについて,そして,新法についてどのように御案内をしていただくのかというシミュレーションもしながら法制上,位置付けていくことが大事かと思っております。結果的には法務局の方々に非常に負担が大きくなるような仕組みかもしれないので,ここは市長会,町村会にも,現場の実情を踏まえて,どういう仕組みならばあり得るのか,アイデアを是非,出していただきたいと思います。   大げさな表現になってしまうのですが,これからは,土地制度の新しい所有のサイクルというものを作っていく段階に入っているのだと思います。利用を促進する既存の仕組み,そして,まずその活用を試した上で,どうしても難しいのであれば国庫に帰属させるという,そういう段階的な施策を踏んでいくということで,省庁ごとの施策を今度は横串で刺すということと,その運用に当たって国と地方自治体が連携を図るということが必須になってきます。そこは市長会と町村会の具体的なアイデアが必要ですので,今後の是非,お力添えが必要ではないかと思います。   そうしたことは,昨年の3月に成立した土地基本法,それから5月に閣議決定された土地基本方針などの方針に基づくものですので,地方公共団体にも是非,そこはお知恵を出していただくことが重要ではないかと思いました。 ○山野目部会長 吉原委員におかれましては,土地政策上の重要なヒントを下さいまして,ありがとうございます。確かに御指摘のとおり,話題になっている事項を民事法制上どのように表現していくかということも問われ続けなければなりませんけれども,土地基本方針は柔軟に進めていくことができる度合いが相対的に大きく,一度決めたら変えられないというものではございませんから,国土審議会に諮った上で,あそこにここで話題としているような観点を更に踏み込んで反映していくということも考えられるところでございます。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。特段(注3)についての御発言はなくていらっしゃるでしょうか。   それでは,この際,私から御案内を差し上げます。農地採草放牧地及び森林につきましては,農業経営基盤強化促進法及び森林経営管理法におきまして,利用権を設定したり売却をあっせんしたりするなどの仕組みが整備されております。これらの施策は,これらの土地を適切に集約して維持し,利用するという政策的観点に立脚するものであります。農用地,森林につきましては,これらの法律に基づく仕組みをまず利用した上でなければ承認申請をできないものとするなど,政策的観点から宅地とは異なる特別な規律を設けることも考えられるものであります。   反面におきまして,これらの法律に基づく仕組みの実施主体である地方公共団体の事務及び費用の負担が増加するおそれがあり,その点が危惧されるところでもあります。これらの観点を踏まえ,第23回会議におきましても同様の案内を差し上げたものでありますが,この部会に関係官を出している省庁におかれましては,法務省事務当局と協力し,精力的な連絡調整を重ね,26日の当部会の会議を目途として,政府として一体をなす土地政策の方向の考え方を当部会の委員,幹事に対し,かないますれば,提示することができるよう,引き続き努力を尽くしてくださるようにお願い申し上げます。   部会資料58で提示している制度の概要につきまして,そのほかの点についての委員,幹事の御発言を承ります。いかがでしょうか。   特段,御発言がなくていらっしゃるでしょうか。   それでは,本日の御議論の状況を踏まえて,部会資料58で提示している制度について成案を得るべく,引き続き事務当局において検討いたします。申し添えますと,弁護士会の御意見を御披瀝いただく中で,部会資料2ページの7の項目について,幾つか御提案,関連して御注意を頂いたところであります。政令に委任して標準的な費用の額を勘案して定める際,粗放的な管理の場合について余り多額にするということは相当でないという観点も御指摘いただいたところでありまして,ごもっともなことではないかと考えます。政令で標準的な額を定める際に,そういった観点が可能な限り取り込まれるよう留意されることが適切であろうと感じます。併せて,10年分と書くのですかという御疑念も頂いたところであります。その御疑問はごもっともであるという側面があると感じますとともに,何年分にするかという事項を政令で内閣に判断してくださいという運用は,それはそれで少し心配である気もしなくはありません。国民の権利義務に関わる重要な事項は法律事項ではないかという観点にも法制的には留意する必要がございます。弁護士会の御意見を本日御披瀝いただいたところは理解をいたしましたから,引き続き事務当局において検討に努めるということにいたします。   部会資料58について特段の御発言は,ほかになくていらっしゃるでしょうか。   それでは,本日段階での部会資料58に係る制度の審議をここまでといたします。   本日用意いたしました3点の部会資料についての内容にわたる審議はここまでで了されました。   次回以降の段取りにつきまして,事務当局から案内があります。 ○大谷幹事 本日もありがとうございました。次回の議事日程について御連絡をいたします。   次回は1月26日火曜日,午後1時から,終了時間未定という形にさせていただいております。場所は法務省の建物の方に戻りますけれども,20階の第1会議室というところになります。テーマは要綱案の取りまとめに向けた検討です。いつもの地下1階ではなくて20階の方でやるということですので,御留意を頂ければと思います。   また,1月26日,これが一応,最後の日という形で従前は御案内いたしておりました。2月2日に予備日という形で取っておりますけれども,まだ幾つか論点が残っておりますけれども,1月26日に終了できるかということがまだ見通せないというところでございまして,一応,2月2日の予備日については確保しておいていただければと思っております。 ○山野目部会長 次回26日の部会及びその後の段取りについて,事務当局から案内を差し上げました。次回の部会会議の場所についても御案内を申し上げたところでありますけれども,併せて補足いたしますと,1月26日,いまだ感染症に係る政府が発出した緊急事態宣言の発令下であると考えられます。本日,委員,幹事,関係官の皆様に対しては,どうぞウェブ参加にしていただくということを厭わないでくださいという事前の御案内を事務当局から特段,差し上げたところでございます。あるいは26日も,ほぼそれと変わりのないような次第になるかもしれませんし,改めてその方面の事柄については事務当局から案内を差し上げるようにいたしますから,その点についてもよろしく御協力方,お願い申し上げます。   部会の運営について事務的な御案内を差し上げたところでありますけれども,この際,委員,幹事から何か御発言がありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   そうしましたならば,これをもちまして民法・不動産登記法部会の第24回会議をお開きといたします。誠にありがとうございました。 -了-