法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  令和2年11月27日(金)自 午後1時29分                      至 午後5時36分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,皆さんおそろいですので,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第6回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   出欠ですが,本日は衣斐幹事が御欠席で,その他の委員,幹事は御出席ということです。   それでは,本日の審議に入ります前に,配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○大野幹事 御説明いたします。   まず,部会資料10「特に検討すべき項目2(争点整理手続の在り方,新しい訴訟手続,和解に代わる決定)」を配布させていただきました。こちらについては,後ほど審議の中で事務当局から説明をさせていただく予定です。   また,本日は服部委員から「障害者のための法改正等について」という御提案書を提供いただいており,こちらも配布をさせていただいております。本日は前回の積み残しについて御議論いただきました後,こちらの内容についても御審議を頂きたいと考えております。   本日の配布資料は以上でございます。 ○山本(和)部会長 それでは,早速ですが本日の審議に入りたいと思います。   本日も議論すべき論点が非常に多いところでありますので,恐縮ですけれども,全体を通して御発言につきましては可能な限り要点に絞って簡潔にお願いしたいと思います。決して発言を制限する趣旨ではございませんけれども,円滑な議事進行に御協力を頂ければと思います。   それでは,先ほど事務当局からもありましたとおり,前回部会で部会資料9のうち,「第2 送達」の部分が積み残しになっていましたので,本日はこちらから議論をしたいと思います。   まず,この点につきまして事務当局から一括して資料の説明を頂いた後,各項目について順次議論をしていきたいと思います。 ○西関係官 それでは,御説明させていただきます。   部会資料9,4ページの「1 システム送達」についてでございます。一読の際の内容から変更された点を中心に御説明させていただきます。   まず,本文(1)の「通知アドレスの届出」につきましては,第2回会議において,複数のアドレスの届出を認めることが,利用者の利便等の観点から望ましいとの意見がありましたので,それが可能であるということを明示いたしました。   次に,本文(2)については,システムに登録している場合の送達方法はシステム送達が原則となるという点を明示いたしました。なお,第2回会議においては,システム送達の例外を設けるべきかという御議論もございましたが,ここでは,後で出てくるみなし閲覧の特則の例外によって対応することとして,システム送達を行う場面における例外は設けないという形にしております。   また,現行法上の書面による送達と異なり,システム送達の場合には,送達を受けるべき者が複数名いるということもあってもよいのではないかと思われます。こちらでは,システム送達においてはシステムに登録している者全員が送達を受けるべき者になることを前提としつつ,当事者の届出により,一部の者に限って送達を受けるべき者とするということも認めるという規律を提案させていただいております。   本文(3)については,基本的な規律に特段変更はございませんが,送達を受けるべき者が複数名いる場合には,その最も早い閲覧が送達の効力発生の基準となるという規律を考えております。   なお,一読の検討の際に御提案させていただいておりました訴え提起時における特則につきましては,第2回会議におきまして御懸念の声を複数頂いたところでございます。そこで,そのような特則については今回の資料には掲げておりませんが,IT化による効用を最大化する見地からは,訴状についても可能な限りシステム送達によることが望ましいとも思われるところでございまして,そのための方法がほかに考えられないかというところにつきましても,御示唆を頂戴できればと考えております。   続きまして,資料の8ページ,「2 送達すべき電子書類を閲覧しない場合に関する特則」についてでございます。なお,この資料では,この特則をみなし閲覧の特則と呼んでおります。   この点につきましては,第2回会議において,送達を受けるべき者が,システム障害や天災など,やむを得ない事由により送達書類を閲覧することができなかった場合に,その者を救済するための仕組みを検討することが必要ではないかという御指摘がございました。そこで,ここでは,みなし閲覧の特則にただし書きを設けることによって,このようなケースへの対応を試みております。もっとも,送達にこのような例外を設けることは,手続の安定性を欠くということも考えられるところでございまして,この点について御議論を頂戴したいというふうに考えております。   また,このような観点から,資料10ページの「3 考えられるその他の方策」のところでは,そのほかに考えられる案はないかというところを検討させていただいております。この点につきましても,皆様の御意見を頂戴したいと考えております。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 それでは,この論点につきまして,順次御検討いただきたいと思います。   まず,資料4ページの「1 システム送達」についての部分について,どなたからでも結構ですので御意見を頂ければと思います。 ○湯淺委員 湯淺でございます。   4ページの「システム送達」の「(1)通知アドレスの届出」のところで,少し意見を述べさせていただきます。   まず,「電子メール等」という文言が使われておりますが,ここでいう電子メール等とは何かということについて,民事訴訟法なり何なりの中に適切に規律することが適当と考えます。不正競争防止法の電子メールの定義を公職選挙法が引用したり,逆にストーカー防止法では独自の規定を置いたり,法技術的には定義の仕方はいろいろあるかと思いますが,いずれにしましても,何らかの定義をすべきと考えます。   それから「等」でございますけれども,ここはショートメッセージであるとか,SNSであるとか,Teamsのメッセージ機能であるとか,Slackのような新たなツール等を想定されているのかもしれませんが,その中でショートメッセージ,SMSの利用は,私は個人的には避けるべきと考えます。その理由は,まず,基本的には携帯電話を持っていない人は受信できないこと,それからSMSは送信者が裁判所であるということを確実に受信側で認証する手段に乏しいので,裁判所になりすましたショートメッセージが頻発するおそれがあります。なおかつ,近時,宅急便業者を装ったり,様々な個人情報等を盗み出すためのショートメッセージが多数送信されたりしている状況に鑑みますと,訴訟当事者でない第三者に対しても間接的であれ,そういう危険性を及ぼすおそれのある制度というのは導入するべきではないと考えます。   他方で,今後の技術的進歩,3年後,5年後ということに鑑みますと,電子メールに代わって,様々なそれに代わるメッセージ伝達ツールが用いられるようになっているということも十分に予想されるところでありますので,「等」というのを残すということはその可能性を開くものでありますので,そこには意義があると考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 先回,訴訟記録の閲覧でも指摘させていただきましたが,送達でキーワードとなる閲覧と訴訟記録の閲覧では想定している場面が違います。送達は支配領域に入るかどうかという切分けの概念ですので,他の表現を考えていただけたらと思います。私も技術関係者等からいろいろ話を聴いていますが,片仮名ですとログオンとかログインというようです。検討いただけたらと思います。   2点目。5ページのイの3行目の「この場合には,アの規定による送達は,アの規定にかかわらず,その届出に係る者に対してする。」として,複数人が登録している場合は,送達を受ける者の指定できるという提案を頂いていますが,方法としては複数人全員に通知をするが,送達の効力は届出をした特定人を基準にするという処理も可能なはずです。元々第一文は全員に通知するが,特定人を届出する場合には届出人だけに送達するという提案ですが,その趣旨は訴訟代理人が意図しないところで当事者が送達すべき電子書類を閲覧するなどすると,訴訟代理人の訴訟活動に支障を生ずるおそれがあるという事後処理の問題ですので,原則どおり複数人全員に通知するが,起算日だけは届出をした特定人を基準とすれば,訴訟活動に支障が生じることはないと思います。   危惧されるのは,届出人以外の人がアクセスして内容を把握して情報を共有しながら届出人が意図的にアクセスすることなく放置する場合にどう対応するのかという場面ですが,登録をしている複数人のうち最初にアクセスした人から一定期間経過したときに特定人もアクセスしたものとみなすというみなし送達を設ける方法もあると思います。またみなし送達を肯定する説明としても,複数人の通知アドレス宛てに通知していることで,届出人だけに限定する場合に比べて肯定する理由が説明しやすいと思います。送達を受けるべき者だけに送達するのではなくて,登録をしている全員に通知するが,送達は届出人だけを基準にするという考え方を提案します。   それと,(注)については,前回も提案させていただきましたが,被告に対して常に訴状副本等一件書類全てを送達するのではなくて,例えば呼出状とアクセスに関する方法を記載した通知だけを送達し,被告に,システム送達を利用するのか,弁護士に依頼して代理人を通じて利用するのか,それとも紙を求めるのかの選択の機会を与える,そうすることで事件管理システムの利用の機会を増やすことができると思いますので,再度繰り返し提案しておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 日下部です。   今,阿多委員の方から2点御指摘があったかと思います。   一つ目の方ですけれども,届出に係らない者が事件管理システムなどを通じて送達対象書類を閲覧することができるのかどうかということについては,部会資料では示されていないと思います。阿多委員の御意見は,そのような届出に係らない者も送達対象書類を見ることはできるようにしてよいのではないかという御意見だったかと思います。   この場合には,届出に係らない者による閲覧を通じて,実際は送達対象書類の内容を知りながら送達の効力発生を回避できるということになってしまいますので,それが一般的な理解を得られるのかどうかということについては個人的には疑問を持っています。そういう意見もあるということは踏まえていただければと思います。   それから,2点目ですけれども,訴状送達の際にシステム送達の利用可能性を増やすための方策として,訴状の副本ではないけれども,訴えが提起されたということを書面で通知をするという方法が言及されたかと思います。私もそれは一つの方策としてあり得るだろうなというふうには思うんですけれども,一方で非常に不十分な,恐らくは訴状却下になってもおかしくないような訴え提起の場合であっても,常にそうした通知が被告に対してなされるということですと,被告にとっては実質的な意味合いが薄い訴訟の準備活動を強いられることにもなりかねないように思います。   したがいまして,そうした通知を送ることは,適切なケースであれば行ってよいと思うのですが,それは裁判所による運用上の工夫として考えるという位置付けにして,法律上の義務という形にはしないということも考えられてよいのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○富澤幹事 日下部委員の1点目の御指摘と同じ意見ですが,仮に届出に係らない者が事件管理システムに記録された電子書類を閲覧することができるようになりますと,その者が閲覧してその内容も了知したにもかかわらず,届出に係る者が閲覧をしなければ送達の効力が生じないとすることには問題があるのではないかと思っております。部会資料9の7ページを拝見いたしますと,訴訟代理人の訴訟活動に支障が生じるという説明が記載されておりますけれども,果たしてそのような支障が実際にして生じるのかにも疑義があります。   もう1点,最初に湯淺委員から,通知アドレスの定義を設ける必要があるのではないかという御指摘があったかと思います。その点は,確かにそのとおりだと思います。他方で,5年後,10年後の技術発展も踏まえて具体的な規律を考えていく必要があると思いますので,仮に定義を置くのであれば柔軟な形にしておく必要があると思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○渡邉幹事 前回の会議でも若干言及させていただきましたが,システム送達により訴状を送達することができる場面を拡大する方策として,例えば,既に阿多委員や日下部委員からも似たような御紹介があったかと思いますが,最初に相手方当事者に送達するものについて,訴えの提起があったという旨や事件番号,そして事件管理システムに誘導するためのURLやQRコードといったものを送りまして,まず,事件管理システム経由で訴状及びその添付資料の確認を求めることとした上で,事件管理システムへのアクセスが確認された場合に送達があったとするとことが考えられるのではないかと思っております。   先ほど日下部委員から,記載の不十分な訴状について準備をさせられるのではという御指摘もありましたが,これにつきましては,現在でも,きちんと訴状審査をした上で,送達して手続を進めても大丈夫な状態まで至ったものを送達することが多いと考えております。   また,前回も申し上げましたが,迅速な進行が必要な事案ですとか,被告の事件管理システムを通じた応訴がおよそ期待できない場合につきましては,最初から紙の送達を上申していただいた上で紙の送達を行うということによって,迅速な訴訟の促進も図ることができると考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員 3の「システム送達の効力発生時期」については,原案に賛成をしたいと思います。複数の代理人が就任している事案について,その一人が閲覧をしたときに有効な送達の効力が生じるということでいいと考えます。   一方,代理人と当事者本人がいずれも利用者登録をしている場合の関係についてですが,そもそも訴訟手続の透明性の確保という観点から,当事者本人にも利用者登録をしてもらうというのはとてもいいことであると考えております。本人訴訟の支援という形で,正に司法書士は二人三脚で行ってきたという経緯もありますので,代理訴訟であっても,全ての作成書類を確認してもらって,事案によっては一緒に出廷していただくというような,手続のプロセスについての共有についても大事にしてきたということがあります。従いまして,基本的には当事者本人が閲覧したときに送達の効力が発生するということでよいと考えています。指摘されているような懸念が本当にあるのかどうかということについては,検討する必要があると考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○増見委員 増見でございます。   既に渡邉幹事から郵送での通知については御検討いただいているというところで少し安心しているのですけれども,やはりメールのみによる連絡というのは,一度システム登録をしても,企業もそれほど頻繁に訴訟をする会社ばかりではございませんので,リテラシーの違いもございますし,引き続きはがき等の形でも通知が頂けるというのが,企業側としても望ましいかなと思っておりますので,この方向で御検討いただければと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 渡邉幹事から先ほどお話があった点に関して,増見委員からも言われたような,最初の訴状を提出された段階で,裁判所からその提訴の連絡が行くということで,増見委員ははがきでというふうにおっしゃられたのですけれども,それについては封書にした方が,裁判所からのはがきを詐欺に利用されるというようなことが防止できていいのではないかと思います。さらに,その封書の中には本人サポートについての案内なども入れてもらえば,実効性のある本人サポートができるのではないかと考えております。   阿多委員もおっしゃられて,その点について渡邉幹事の御発言を確認したいのですけれども,渡邉幹事は訴状審査をした上で通知を送るというようなことだったと思うんですけれども,恐らく阿多委員は提訴があった段階で,できるだけ早い段階で,その提訴があったことを知らせる方がいいのではないかというふうに以前はおっしゃっていたように記憶しています。私もできるだけ早い段階で,その提訴があったことを通知する方がいいと思っておりまして,その後に訴状審査して,最終的にきちんとした訴状になれば送達されるということでよいと思いますし,仮に却下になったとしても,却下の通知は被告に届く,送達されることになれば,それほど無駄な訴訟準備を被告側に強いることはないのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○渡邉幹事 大坪幹事の御発言に関連して確認をしたいのですが,最終的には訴状却下で終局するような訴状にもいろいろなものがありまして,例えば印紙を貼ってこない場合や,なかなか内容がよく分からないので,補正命令を出して訴状却下するといったものについても御覧になりたいという御趣旨なのか,そうではなくて,それなりに中身があるものについて対応したいということなのか,もう少し明確にしていただいた方が検討しやすいと思いましたのでお伺いいたしました。 ○阿多委員 先回この話題が出たときには,訴状審査をどこまでするのかが話題となり,欠席判決ができる程度までの審査なのか,訴状却下になるか,ならないかのレベルかという話題があったかと思いますが,訴状却下の場合には,被告に送達する必要はないといます。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。 ○大坪幹事 同じです。訴状却下のような,全く印紙が貼られていないとか,そういうことまで通知をするという趣旨ではございませんでした。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○増見委員 増見でございます。   先ほどの私のはがきを使った通知ということについて頂いたコメントについてなんですけれども,はがきというのは,必ずしも誰にでも読めるような形で通知するというものではなく,昨今いろいろな保険に関するもの,年金に関するもの,その内容についてはかなり機微な内容を含んでいたとしても,それは折り込んだ形でと申しますか,ダイレクトメールのような形で個別の情報を折り込んだものをかなり簡易に,安価に発送するというようなビジネスをやっている会社もございますので,必ずしも封書ではなくてもできるのではないかということも申し添えておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○笠井委員 笠井です。   ちょっとすみません,2点質問があり,まず先ほどの大坪幹事のお話との関係で1点確認したいんですけれども,これは送達についてのことをやっていると理解してよろしいんですよね。つまり送達の前に何か通知というようなことを考えるという趣旨の議論ではないということで,通常の訴状の送達,あるいは期日呼出状の送達ということの考え,それを議論すればいいのかということの確認が1点です。   もう一つお尋ねしたいのは,実際の企業が当事者になる場合についてのアドレスというのがどういうものなのかというのが,少しイメージが湧けばよいなと思って,これは単なる質問なんですけれども,例えばたくさんの部署が関わっている事件とか,そういう場合に,たくさんのアドレスが,その一企業の中で,一法人の中で複数のアドレスが届け出られるというようなこともあり得るのかどうか。あるいは,例えば法務部が一元的に取り仕切っているという話であるとして,その法務部の共通のメールアドレスが届け出られて,それが読める人はたくさんの方がいて,そのうちの一人の方が読んで,それでアクセスをすれば,もうそこで送達というふうに考えていいのかといった,ちょっとその辺りのことをお尋ねしたいと思います。どうしても個人の当事者が一人で読むことと弁護士との関係という話だけではなくて,企業の中で複数のアドレスが登録されているような場合というのがあるのか,ないのかといった辺りについて,その前提を共有したいなと思って御質問したんですけれども。 ○山本(和)部会長 2点目は企業の方に対する御質問ですか。 ○笠井委員 企業の方に対する御質問ということもありますし,ここで言っている届出をするアドレスというのが2以上ある当事者等というのが,どういう場合のことを意味するのかという事務当局への質問でもあります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   それでは,第1点,第2点ともに事務当局の方から。第1点は,その趣旨を確認する,ここで議論している趣旨を確認するというのは事務当局に対する質問という形ですか。 ○笠井委員 すみません。第1点は,送達というのは普通は訴状の副本の送達から始まるわけですから,そこから始めたらいいはずで,訴状審査がその前にあるのは当然のことかなと思っていたものですから,ちょっとそれが,訴状審査を前提として,訴え提起通知みたいなものの議論というのが,この電子メールの持つ意味ということで何かあるのかどうか。ないというなら,それはないということで,私はそれでいいと思うんですけれども,それだけです。 ○大野幹事 事務当局からの御提案の中にはそういった趣旨は含んではおりません。 ○阿多委員 先ほど来システム送達を利用していない被告にどういう種類の文書を送るのかという視点から,裁判所が現在送達する書類の中に含まれる書類を意識して呼出状という言葉を意図的に使いました。私が想定したのは,訴状等の一件書類のうち一部だけをまず送達して,それにシステム送達のアクセス先等を記載し,被告にアクセスしてもらって,システム送達で受領するというイメージです。そうなりますと,送達すべき書類を二つに分けて,呼出状だけを送達し,訴状や証拠は後日という提案になります。ただ,訴訟提起通知書といった概念があるのであれば,訴状の送達は後日という扱いになるのかもしれませんが,それらは今後の議論する工夫,立て付けの話だと思います。 ○日下部委員 お話をお伺いしていて,大分混乱しているような印象を受けています。渡邉幹事の方がおっしゃったルールというのは,私がお聞きしたところでは,訴えが提起されたということを通知して,その被告が事件管理システムに自己の判断で登録をして,その上で送達対象書類を閲覧すれば,それで送達の効力を認めるというもので,この場合には通常のシステム送達における通知アドレスに対する通知というのは存在していないということになりますから,制度的には特則というものになって,事実上の工夫,実務上の工夫ではないと思います。   私が最初に印象,今日の議論の前にこういうことなのかなと思っていたのは,正に実務上の工夫の方の話でして,最初にともかく訴え提起がなされましたよということを被告に連絡をして,被告が事件管理システムに利用登録をしたら,そこで改めて通知アドレスに対して通知をして,要は普通行われるシステム送達と同じルートをもう一回たどるということを念頭に置いていたんですね。どうもお話を聞きますと,皆さん,考えていることがちょっとずれがあって,整理をしないと,余り生産的な議論になっていないのではないかなと思いますし,恐らく渡邉幹事が御説明されたようなものがきちんとお手元の資料で内容を誤解することがないように確認できるようにしたところで御議論いただくのがよいのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   この部分は,今の資料の段階では(注)という形になっていて,今日はちょっと考えられる事柄についてのアイデア出しというかをお願いしていたというところだと思います。今の議論でかなり状況は明らかになったのではないかと思いますので,次回以降,事務当局の方で整理していただき,完全な実務上の工夫であれば,提案ということにはならないのかもしれませんけれども,その点も含めてちょっと考えていただきたいと思います。 ○湯淺委員 湯淺でございます。   事務当局で整理をしていただく際に,もう一つ整理をしていただく必要があるのは,先ほど笠井委員から,会社であれば担当者の個人メールアドレスと,会社の代表アドレスみたいなものと,両方電子メールで登録するとどうなるかというような御発言があったと記憶しております。結局この問題は,この事件管理システムへのアクセス権の問題にかなり深く関わってくるわけでございまして,そういう組織代表だとか,団体代表メールアドレスを登録することを認めて,逆にそのアドレスを,そのメールを見ることができる者であれば誰でもアクセスすることができるという設定になると,一方当事者は,それほどたくさんの当事者がこの資料を見ていないということを想定しているのに,逆に団体アドレスで登録した側は,もう社員数百人,数千人も見ようと思えば見ることができる状態になってしまいます。   したがって,これは事件管理システムへのアクセス権を自然人,個人単位にするのか,組織単位,団体・法人単位,それで団体・法人に認めるとすれば,どの段階まで認めるのかということの具体的な設計と密接に関わっておりまして,そこを議論しないとシステムを実際に運用する際に,多々いろいろな問題を生じると思います。ですので,その点の御検討もお願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。今の点,笠井委員の第2の質問と関係すると思いますので,事務当局から。 ○大野幹事 部会資料9において「二以上ある当事者等」としているのは,一人の当事者に訴訟代理人が1名又は複数名いる場合を念頭に置いております。ここでいう「当事者」とは何を意味しているのかというと,法人であればその法人という単位であるという前提です。先ほどの湯淺委員の御発言は,これに対する問題提起だと理解をいたしました。 ○山本(和)部会長 よろしいでしょうか,笠井委員。 ○笠井委員 はい。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。   若干細かい点なんですけれども,2点ほど御教示を頂きたい点がございまして,1点は事務当局に対しての確認のお願いなんですけれども,最初の方で,阿多委員の方から御発言のあった関係で,5ページの(2)のイのところの規律に関しまして,阿多委員の方からは,ここに書かれているのとは異なって,送達を受けるべき者として届出があったとしても,全ての当事者等に通知をした方がいいのではないかという御提案があったかと思います。   それに対して,ここで部会資料に記載されているのは,通知は送達を受けるべき者として届け出られた者にのみするという考え方というふうに理解しておりますけれども,関連いたしまして,こちらは送達の規律ですけれども,事件記録の閲覧との関係で,当事者等として事件管理システムに登録をしている者が複数いるときに,送達の効力が生ずるまでの間は,ほかの者は通知の有無にかかわらず,見ること自体できないという前提でいいのか,それとも通知はないけれども,アクセス権があるので,事実上,見られる状態になるということになるのか,その辺りがどうかということによっても規律が若干意味合いが変わってくるところもあるようにも思うんですけれども,その点,この資料はどういう前提でしょうかという点が1点です。   それから2点目は,これは湯淺委員に御教示をお願いしたいということなんですけれども,ちょっと私自身が素人で申し訳ないのですが,先ほどSMSについて懸念点があるという御指摘を頂きまして,なるほどと感じたんですけれども,メールの場合には,なりすまし的な発信であるとかいったことというのは,SMSに比べると心配しなくてよいということなのか,あるいは現在様々な,そういったコミュニケーションツールというのがあるのではないかと思いますけれども,そうしたものの中で,ある程度普及しているもののうちでは,現段階ではメールというのが一番そういう意味では安全だというふうに考えて検討を進めていっていいのかという点について,もし何か御補足いただける点がありましたらお願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,第1点については事務当局からお願いします。 ○大野幹事 お尋ねの点についての事務当局の考えを申し上げます。電子化された訴訟記録の閲覧とも関わり得るところですが,現段階では当事者やその代理人のうち送達の名宛人以外の方が閲覧をすることを制限するということは考えておりませんでした。その場合に,送達を受けるべき者以外の方が閲覧をできるとすると,送達の効力を発生させないままに送達書類の内容が了知されてしまうという問題の指摘を受けるだろうということは,事務当局としても予想しておりました。ただ,現行法の下においても,例えば代理人宛に送達手続をとっている最中に本人が閲覧に来た場合に,閲覧を拒むということはないだろうと考えられます。そのため,御指摘の問題は,今もある問題なのだろうと思っております。   これに対する解決の方法としては,二つの方向があると考えています。一つ目の方向は,送達が開始されると,その名宛人以外の関係者は閲覧をすることができないとすることです。この場合には,送達の名宛人となっていないことを理由に訴訟記録の閲覧を制限することができるとする理論面での説明はどのようなものとなるかということの検討が必要となると思います。   もう一つの方向は,当事者又は代理人のうち誰かが送達書類を閲覧してしまったら,その者が送達の名宛人でない場合であっても,その時点でその当事者について送達の効力が生ずるとすることです。事務当局がこのような考え方を採らなったのは,送達の名宛人でない者の閲覧で送達の効力が生ずるというのはやはりおかしいだろうというところでございます。ですので,これを乗り越えられる理論的な説明がもしあれば,御教示いただきたいと思っています。 ○山本(和)部会長 垣内幹事,第1点は終わりました。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。整理いただいたことを踏まえて,私自身ももう少し考えてみたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,第2点,湯淺委員,もしお答えを頂ければ。 ○湯淺委員 御質問ありがとうございました。   先ほどの件に補足をさせていただきますと,確かに電子メールはかなりなりすましのメールであるとか,それは多数流通しているところでございます。ただし,確実に裁判所から出されたものであるということを確認する技術は大別すると2種類ほどございまして,1種類目は,メールの一通一通に電子証明書,電子署名を付けるというものでございます。これは今,金融機関になりすましていろいろな情報を引き出す手口が非常に多いので,一般的に銀行が顧客に対して連絡をするメールなどにはS/MIMEと呼ばれる技術を使っておりますけれども,電子署名を付けるということが広く行われております。   もう一つは,一通一通に電子署名を付けるのではなくて,このメールを送信してきているのは確実に裁判所ですということ,つまりその送信者の証明を,送信者が確実になりすましでないこと,当人であることを保証するための技術がございます。これを送信ドメイン印象と呼んでおりますけれども,そのような技術を用いることで確実に,このメールは確かに裁判所が送り出したものであるということを確認することが可能です。   ただし,どちらのメールも,電子メールというのは事実上,ただに近い値段で普通は送受信できますが,この技術を使う際にはどちらの場合にも若干のコストは掛かってまいります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。大変よく分かりました。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○富澤幹事 先ほどの垣内幹事と事務当局の御発言に関連しますが,裁判所としても,事件管理システムに登録をしている以上は,届出をしているか,届出をしていないかにかかわらず,閲覧をすることができることになると考えていたところでございます。そのために,届出をしていない人が既に閲覧をしているにもかかわらず送達の効力が発生しないというのは問題があるのではないかという指摘を先ほどはさせていただいたところです。   それに対する解決策として,事務当局の方からは,届出に係らない者は,届出に係るもの者に送達されるまでは閲覧をすることができない規律の指摘がありました。確かにそのような方法は一つの解決策になり得ると思う反面,事件管理システム上,かなり複雑になるようにも思われるところであり,現実的な対応の可否についても検討していかなければいけないと思ったところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   おおむねよろしいでしょうか。ありがとうございました。   それでは,引き続きまして,今度は資料8ページ以下の「2 送達すべき電子書類を閲覧しない場合に関する特則」,みなし閲覧の問題について御議論を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので御発言ください。 ○日下部委員 この「送達すべき電子書類を閲覧しない場合に関する特則」で示されている問題意識,つまり何らかの事情によって受送達者が送達対象書類を閲覧することができなかった場合の救済の仕組みを設けるという,その問題意識には共感をしております。問題は,そういった救済に値する受送達者を適切に選別できるのか,それから救済の手段は適切であるのかということかなと思っております。   部会資料の中で示されている御提案というのは,救済に値する,つまり自らの責めに帰することができないという要件を満たしている受送達者に対して適用するというものですので,素直に出てくる考え方ではあろうかなと思います。しかし,みなし閲覧の効力を争うという場合になったときに,受送達者が自らに帰責性がなく閲覧ができなかったと主張してくることが予想されますが,閲覧がなされなかった理由が問われることになりまして,それが技術的に立証困難であるとしますと,受送達者の救済としては不十分になるのではないかと思います。それを慮って,運用として立証のハードルを下げたとしますと,逆に意図的に閲覧をしなかった受送達者を不相当に利して,手続をいたずらに不安定にすることにもなりかねないかと思います。帰責性の有無という価値判断に委ねるという仕組みは,その立証がIT技術に関わることとあいまって,理念的には適切であっても,実際の運用における困難さが懸念されるところであります。   この点,日弁連の意見を再度御紹介させていただきますと,送達の効果が受送達者の権利や法的地位に重大な影響を及ぼすものであって,かつ当事者が将来の送達を予見できないようなもの,こういうものについてはみなし閲覧の規律を受ける書面から除外すべきというものになっています。例えば,送達が予見できるものとしては判決書,予見はできないけれども,恐らくは重大な影響とまでは言えないものとしては,例えば訴え変更の申立書,それから,予見はできないし,非常に重大な影響を及ぼすものとしては訴状と,こういったものが考えられるところです。これはある意味,一種の割り切りでありまして,みなし閲覧の効果を貫徹するのか,みなし閲覧の規律をそもそも適用しないという,この二分を,送達対象書類の種別に応じて決めるというものであって,これであれば,救済のための別途の措置を必要とせず,手続の安定は害さないだろうと思います。   ただ,これは言ってみればある意味,ある程度の自助努力を受送達者に期待することになりますし,重大な影響を及ぼさないものであれば手続の安定の方を重視するという割り切りをすることになりますので,それが受け入れられるのだろうかという問題意識は持っているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 第2文ただし書では「責めに帰することのできなかった事由」を例外事由にしていますが,みなし送達を認めない例外を「責めに帰する」という主観的な要件で区別するのは難しいと思います。主観的な事情で区別するのではなく,原則に戻って,紙で送達すると割り切るしかないと思います。ただ,実際そういう場面がどれほど生じるのかという点については,先ほど通知を受ける者を複数人届出する場合に,一部の者がアクセスして一定期間経過をすれば送達したものと扱うことができるという提案をしましたが,多くの場合は誰かがアクセスするでしょうから,それほどトラブルになることはないと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木幹事 以前,電子メール等が届かない場合があるということを申し上げて,それに対する対応として,みなし閲覧の特則の例外を設けていただいたのかとも思います。しかし,このような例外を設けると,送達機関に判明しないような事情で送達の効力が左右されるということになり,そのような事情の有無を調査しないと送達の証明や,それを前提として,例えば判決の確定証明などができないということになってしまうのかなとも思います。   それで,どうしたらよいのかということについて,必ずしもよい考えではないのですけれども,メール等による通知が届かない場合に,それが放置されないようにするために,先ほど受送達者に自助努力を課するのはどうかという話もありましたが,当事者側で訴訟係属中は定期的に,例えば1週間に一度は閲覧システムをチェックするというようにするとか,またはシステムの方から新着情報といいますか,文書のアップロードがあったかどうかということの情報を定期的に電子メールで送るようにして,それが届かないのであれば当事者の側から閲覧システムにアクセスするようにするというようなことにして,電子メール等が万一届かないという場合にも,一定期間の経過により閲覧をみなすというふうにすることは考えられるかなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○富澤幹事 今の青木幹事の御発言は非常に重要な御指摘だと思います。事件管理システムの開発については,今後進めていくということになりますが,通知メールの見落とし等をできる限り防止することができるようなシステムにしたいと思います。また,訴えが提起された段階と訴訟が係属されている段階というのは分けて考える必要があると思いますが,少なくとも訴訟が係属されている場合には,システムにアクセスをしていただいて,そのシステム上では新着情報のような形で,できる限り分かりやすく何らかの書面が提出されていることが分かるようにしていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○大谷委員 多少細かい話ではありますが,これまでの個人的な経験ですとか,あるいは周囲の方の経験として,重要なメールが迷惑メールフォルダに入ってしまって,届いているのに閲覧できなかったということが多くございます。したがって,事件管理システムのテストなど開発テストを進めていく中で,裁判所のシステムから発信されるメールやメールアドレスが主立ったメーラーなどで迷惑メールとして処理されないように,周辺のシステムとの連携ですとか,それから代表的なメーラーでの取扱いというのも含めてテストを行うことをお願いしたいと思います。   私からは以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○日下部委員 先ほど私の方から,日弁連のこの点についての意見を御紹介させていただいた上で,送達を予見できずに,かつ重大な影響を及ぼすという送達対象書類については,みなし閲覧の規律を適用しないという,それによって,あとの問題は解決されたものと考えるという,そういう発想について御説明申し上げました。   これは,みなし閲覧の規律が適用されるタイプの送達対象書類については,何らかの事情で,あるいはやむを得ない事情で受送達者が通知を認識することができなかった場合であっても,みなし閲覧の規律が適用されるということを一種割り切って認めるという考えであるわけで,それが受け入れられるかどうかが一つ問題になるだろうということをお伝えした次第です。   そのほかまだ問題が,考えなければいけない点があるとすると,例えば判決書など,送達が予見できるが重大な影響を及ぼす書面については,例えば大規模自然災害などで自助努力に期待することに無理があるという場合に,訴訟行為の追完などの既存の制度で十分に救済ができるのかということの確認は別途必要になるだろうと思っています。また,送達を予見できず,かつ重大な影響を及ぼすがために,みなし閲覧の規律を適用しないという書面を適切に抽出できるのかどうかということも検討課題にはなるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。   先ほど青木幹事の方で指摘された,送達の効力について明確に把握できることの重要性というのは,そのとおりかなというように思っておりまして,その関係では,一つの方向としては,先ほど日下部委員がおっしゃったように対象書類自体を制限するという考え方もあり得るのかもしれませんけれども,私としては,今回こういう制度を導入するのであれば,可能な限り広い範囲の書面についてシステム送達が活用できる方が望ましく,そもそもみなし送達ができないというような書類がかなりあるということになりますと,紙で初めからやった方が早いというようなことにもなりかねないと思われますので,その点は可能な範囲で広く認めていくべきではないかというふうに考えております。   あとはシステムの作り方についてですけれども,未読の書面が残っている場合には定期的に連絡が行くであるとか,様々工夫を凝らしていただいて,見落とし等による不利益が生ずることはできる限りないようにしていくということは当然必要なことだと思いますけれども,その上で,かなりの程度,それが確保できるということであれば,あとは既存の訴訟行為の追完等の救済に委ねていくというようなこともあり得る考え方ではないかなというように現時点では考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。   それでは,部会資料9の積み残しの部分ですが,この「送達」については御審議を頂けたということにしまして,次に進みたいと思いますが,次に,これも前回配布いただいたところかと思いますが,委員提供資料として「障害者のための法改正等について」ということで,服部委員から御提供いただいた資料がございますので,これについて議論をしていきたいと思います。   まず,この資料につきまして,服部委員から御説明等を頂けますでしょうか。 ○服部委員 説明の機会を頂きましてありがとうございます。   今,御紹介いただきましたとおり,「障害者のための法改正等について」を提出させていただきまして,委員提供資料として御準備いただいております。   日弁連では2013年2月15日付で,民事訴訟手続における障害のある当事者に対する合理的配慮についての意見書というものを発出しておりまして,今回のこの書面もその意見書で求めた趣旨内容に沿うものでございます。また,私の名前の書面となってはおりますけれども,日弁連の関係委員会,ワーキンググループでの検討を経たものでございます。   民事訴訟法の改正事項として8点,手続上の配慮として1点を御検討いただきたく今回提案いたしております。運用での対応が相当と考える事項もかなりございまして,そちらは別途,最高裁などとの協議の場で御検討をお願いしたいと考えております。   まず初めに,法改正を求める理由について説明いたします。   我が国では,障害者権利条約の国内法として,平成25年に障害者差別解消法を制定しておりますが,司法機関における国内法の整備は立ち後れております。最高裁判所で平成28年3月に,「裁判所における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」を議決していただいて,障害者の差別解消や合理的配慮に努めていただいておりますけれども,現行民訴法の規定で実現困難な合理的配慮の方法などもあり,障害者が民事訴訟の場面で様々な不利益を被っているというのが実情でございます。   そこで,民事訴訟手続において,一定の手続上の合理的配慮の方法を明文化することで,障害者の裁判を受ける権利を実質的に保障するため,法改正などの議論をお願いしたいということでございます。   改正事項の1点目は,2(1)にありますとおり,障害者が手続上効果的な役割を果たすことを容易にするため,性別,年齢,障害の状態に応じて,裁判所が必要かつ合理的な手続上の配慮をするとの一般条項を新設するという提案でございます。   障害者権利条約第13条を踏まえ,裁判所が障害者の特性に応じた手続上の配慮をする責務を負う旨の一般規定を設けるという趣旨でございます。   2点目は,2(2)にありますとおり,特別代理人の要件の見直しでございます。   これは未成年者,成年被後見人,若しくは精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者が訴訟行為をしようとする場合,又はした場合にも,訴訟法上の特別代理人の選任申立てを可能とする改正を行うという提案でございます。   現行の民事訴訟法35条1項は,未成年者等が被告となる場合の特別代理人の選任申立てを規定しておりますが,判例は,この実体法上の特別代理人の選任を待っていては遅滞のため損害を生ずるおそれのあるときは,原告として訴訟を提起する場合でも,特別代理人の選任を裁判所に申し立て得るということとしておりますので,その判例法理を明文化する趣旨でございます。   次に,3点目は2(3)にありますとおり,視覚障害者等に対する送達等に係る配慮でございます。   視覚障害若しくは聴覚障害により文書又は電磁的記録の内容の認識が困難である旨の申出,又は知的障害,精神障害などにより伝達された事実の理解が困難である旨の申出を受けたときは,送達,システム直送などに当たり,裁判所又は裁判所書記官が,障害者が当該文書又は電磁的記録の内容を了知できる方法で伝えることができる旨の規定を新設するという提案でございます。   現行法上,視覚障害,その他の障害により表現の認識や送達の事実の認識が困難な者に対する送達の方式について定めた規定はございません。主張書面や証拠の内容を知り,又は送達などがされた事実を理解することを可能とし,もって障害者が実際に攻撃防御方法を提出できるようにする趣旨でございます。   4点目でございます。2(4)にありますとおり,付添人の見直しなどを求めるものでございます。   趣旨としましては,障害当事者が,その障害ゆえに意思疎通が困難なときに,意思疎通支援を行う者や,事件管理システムのアップロードやダウンロードなどが困難なときに支援をする者,また裁判所による意思疎通支援なども可能とし,民事訴訟手続における意思疎通支援を実現するということにございます。その際,障害者の権利を擁護するため,意思疎通支援者に関して非弁活動を抑止することが必要であると考えております。   この意見書では,規定の方法として,民事訴訟法155条の弁論能力を欠く者に対する措置の規定の改正を提案しておりますけれども,この方法につきましてはまだ十分に詰められていない状態でございます。例えば法60条の補佐人制度に寄せる方法や154条の通訳の立会いの制度に寄せる方法もございますし,逆にこれらの条文による制度との関連性も整理する必要があると考えております。さらに,全く新しい条文として新設するという方法なども考えられます。先ほど申し上げた趣旨を実現するに適切な規定の在り方について,委員,幹事の皆さまのお知恵をお借りできましたら幸いに存じます。   5点目でございます。2(5)にありますとおり,障害者に対する配慮に要した費用を国庫負担とすることの御提案でございます。   今申し上げました2の(2)から(4)の措置を講ずる費用について,これは障害者の実質的平等を負担するためのコストでございますので,障害者自身に経済的負担を負わせるのではなく,国庫負担とするのが相当であるという趣旨でございます。現行法は公費負担とする規定がなく,例えば聴覚障害者が手話通訳を必要とする場合,この通訳人に関して生じる費用は訴訟費用に含まれることになっております。ただ,要約筆記や訴訟資料の点訳の費用などは公費負担とされていますが,これは運用上の取扱いにとどまっております。   6点目でございます。2(6)にありますとおり,音声変換可能データの提出の促しです。当事者が視覚障害などにより,相手方が事件管理システムに登録した情報を読み取ることができない旨の申出があったときに,裁判所が相手方に対し,音声情報に変換可能な情報を有する電子データの提出を促すことができる旨の規定を新設するという提案でございます。   これは手続上の配慮の一環であり,視覚障害者が相手方の主張内容を把握することを容易にするという趣旨でございます。   7点目でございます。2(7)にありますとおり,証人尋問の場面で民事訴訟法が定めている第203条の2第1項の付添い,第203条の3第1項の遮へい,第204条第2号の映像等の送受信による通話の方法による尋問の可否を検討する際の考慮要素に「障害」を加えるというものでございます。また,付添いについては,証人尋問の場だけではなく,障害者である当事者が口頭弁論や争点整理手続や和解に関与する場合にも準用するという提案でございます。   知的障害者や精神障害者の方は,精神的な不安や緊張感から暗示や誘導に乗りやすいという傾向がございまして,公正な裁判の実現には,その特性への配慮が必要であると考えております。そのため尋問手続における手続上の配慮について,障害という考慮要素を明示することで,これを明確にするという趣旨でございます。   現在,条文上には「心身の状態」を考慮すると記載はされておりますけれども,ここに障害ということが明らかに含まれるということを明確化して,障害特性への配慮を求めるために明記することが相当であると考えております。   8点目でございます。2(8)にありますとおり,再審事由の追加と明文化でございます。   障害のある訴訟当事者が手続上の配慮がなされなかったために訴訟係属を知らないままに判決を受ける場合があり得ます。また,訴訟に関与できたとしても,手続上の配慮がなされなかったために訴訟の内容が理解できないまま判決が出されることがあり得ます。この,訴訟に関与できなかった,若しくは訴訟の内容を理解できなかったことを当事者の責めに帰することができない場合には救済を可能とする必要があることが考えられます。   その救済方法としましては,最判で法338条1項3号の再審事由の存否について,「当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていたか否かの観点から,改めて判断されなければならない」と判示されている趣旨を踏まえ,この場合,障害当事者に保障されるべき手続関与の機会が与えられていなかったとして,再審事由に該当すると考えられます。しかしながら,再審事由は制限列挙とされていますので,明示的な規定を新設し,もって帰責事由なく敗訴判決などを受けた障害者の救済の道を開くという趣旨でございます。   法制化を求める事項は以上の8点でございます。   加えて運用の場面となりますが,視覚障害者又は聴覚障害者が事件記録の閲覧謄写請求をするときは,裁判所において対応要領,ガイドラインなどの制定を通じ,障害特性に応じた配慮をお願いしたく存じます。   私からの説明は以上でございます。御議論,よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま御説明いただいた論点につきまして,どの点からでも結構ですので御意見等を頂ければと思います。 ○笠井委員 なかなか難しい問題で,非常に重要なテーマであると考えております。ですから,どれは良くてどれは必要ないというのを軽々に言えないということを思いながらでございますけれども,非常に大きな話になると思いますのは,1ページの(1)の一般規定の新設と,それから最後の(8)の再審事由の追加と明文化です。この二つは障害者の方だけの話なのかというところもありまして,現行の一般規定,2条の裁判所や当事者の責務といった辺りの中で,そういった趣旨を解釈で入れていくという認識を関係者が共通して持つといったようなことなのかなと考えております。明文の規定を書くとなると,障害者以外に,では,どういうものが考えられるかという話になっていって,結構大変な話になるのではないかというのが直感でございます。   それから再審の事由に関しては,これは今の338条1項3号というのが非常に便利使いされているというのはそのとおりなのでありますけれども,手続保障一般に関する規定として,判例法理として使えるということは一応確立していると思いますので,改正するとしても,障害者に特化したような規定を置くというよりも,むしろ3号を手続保障についてのことだと,より読みやすいような規定に変えるというのであればあり得るかなと思うのですけれども,そういうことをしなくても,今のままでも,そういった手続に関与できなかった場合について,この規定を使うといったことについても,もちろん判例など出ないとなかなかそうはいかないかもしれませんけれども,関係者の認識を共有していくことかなという気がしました。   他方,必要だなと感じましたのは,1ページの(2)の特別代理人の要件については,こういったことについては障害者の方が明確に入るような形というか,条文をどう書くかは別にして,おっしゃっているような原告側というか,自分の方でアクションを起こすという方についても広げていくということは十分あり得ることかなと思います。2ページの(4)の付添人についても拡大をしていくといったようなことはあり得るのかなと思いました。   他方で,(7)の付添人等に関する203条の2とかは,今,服部委員も若干言われましたように,今の規定で読めるという感じもしなくはなくて,どこまで必要なのかなということであります。   あとは個別には申しませんけれども,(3)とか(6)とかについて,運用でできる範囲もあるのではないかと漠然と思っているということでございます。   私からは以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○大谷委員 非常に時宜を得た御提案だと思っておりまして,細かい内容についてはよく理解できていないところもありますし,制度として選択肢はいろいろほかにもあり得ると思いますけれども,このところのIT技術の進展に伴いまして,例えば視覚障害のある方もパソコンに備わった読み上げ機能を使って,御自身でテキストデータを自ら読んで,いちいち点字化するということでもなく,普通の健常者と一緒の通信のやり取りができるようになったりということで,数年後は更にそれが拡大するということも考えられるかと思います。   また,出頭せずに訴訟のメインの機能が利用できるという点でも,このIT化に伴った障害を持つ方に司法アクセスの可能性が大いに広がると思いますので,これを機に,IT化の関係でも障害者のための司法アクセスを確保するために,今どんな制度ならできるのかということを十分に検討し,この民訴法の改正が行われるときに,その全てが実現できないとしても,ある程度の改正内容が盛り込まれるということは必要だと思っております。そのためには,やはり民事訴訟法だけが改正されればいいのではなく,障害者の方を支えるサポート機能,特に行政手続なども含めて障害者の方が共通して利用できるプラットフォーム機能のようなものが併せて整備されるということも必要だと考えておりまして,是非裁判所も,裁判所自身の仕組みとしてそれを備えるというよりは,行政と技術を共有するとか,プラットフォームの一部を共有するという形で事件管理システムの進化というのを見据えた対応を御検討いただくのが適当ではないかと思います。   雑駁な意見ですが,以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 挙げていただいています改正項目のうち,(8)については私も笠井委員の御意見に賛同いたします。かえってこういうようにスペシファイした規定を置くことによって,むしろ3号が持っている幅が狭まってしまうことを恐れますので,これは適当ではないと思います。   それから,(2)ですけれども,これは要件として「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」というのは,現行規定にもないものを付け加えようということのようですが,これは後見制度の問題を訴訟法に持ち込むような感じがして,本来,成年後見制度でやるべき問題なのではないのかなという気がします。   それから,訴訟行為をしようとする者を付け加えるべきかどうかというのは,多分,現行民訴法,平成8年民訴法が制定される際にも恐らく議論があったのではないのかなと思います。はずだろうと思うんですが,これは判例があるにもかかわらず,平成8年民訴でこれが取り入れられなかった理由というのをもう一度,私は存じませんので,検証する必要があるのかなという印象を持っています。   それから,最後に,民事訴訟法だけでいいのかという問題ですね,改正対象が。かつて,民事の手続法はほとんどの法律が民事訴訟法を包括準用していたんですが,最近は割と特別法というか,それぞれの手続法が独自に書き切っている場合が結構あるわけですね。包括準用は少なくなってきているというと,典型的には家事事件手続法ですが,家事事件手続法でこういう配慮は必要ないのかということも考えなければいけないわけで,ちょぼちょぼ突破していくというのも,それは戦略としてはあり得るんですが,ただ,それは法制度としていかがなものかという考え方もあり得るところであって,今次の我々のタスクの中に入りそうなものももちろんありそうですけれども,むしろ手続横断的,刑事訴訟を含めた手続横断的な事項も結構あるような気がして,どの場でこの議論をすべきかというのはもう少し慎重に考えた方がいいのではないかなと思います。   障害者差別法は,基本的に行政機関を念頭に置いて作られておりまして,その際に,あれと同時に司法を対象とした別途の法律を作るということが本来あってしかるべきだったのかなと,今から思うとそういうような気もしなくはないんですが,それができなかった現状において,むしろ包括的に司法を対象とするような障害者差別法ということを考えるべきなのか,単行法の改正によって行うべきなのか,これはどちらなのかということは少し考えた方がいいような気がします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 いろいろ御意見ありがとうございました。   指摘のありました(2)の「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」という表現はほかの法令で使われています。今回これを用いたのは,民法の成年後見等実体法で処理されるべき問題かもしれませんが,実務では成年後見制度は本人及び家族も含めて選択しない場面が多々あります。したがって,客観的には成年後見が開始できるにもかかわらず,申立てを回避しているために,被告としてのみならず,原告としても訴訟に巻き込まれることがある。本人に事理弁識能力,訴訟能力があれば訴訟代理人を選任できますが,これらを欠き訴訟代理人の選任行為自体の有効性が問題になり得ることがあり得ますので,民事訴訟法に規定が必要と考えての提案です。   それから,民事訴訟法に限定して提案したのではなくて,基本法であることを前提とする提案で,民事訴訟法が準用されない法律があれば広く定めていただきたいと思います。民事訴訟法はフェアである,公正であること意識して組み立てられていますが,基本規定の新設の意図は,障害者の位置はそうでない者と必ずしも同じではない,まず同じ位置に立つことを想定して提案しています。特別扱いではなくて,同じ位置に立つための支援ということで検討いただけたらと思います。その意味で,どなたも触れられませんでしたが,(5)の予算措置の問題で,訴訟費用化ではなくて,(4)等の指摘でも国庫負担を提案しています。現行法の特別代理人の許可では訴訟費用になりますが,同じ位置立つための費用という意味で国庫負担を提案しています。議論を重ねてお願いします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○井村委員 服部委員からの御提案を受けて,連合内でもこの件について各部署で検討してまいりました。民事訴訟法だけではなく,例えば労働審判制度においても同様に,障害者が関わるということが想定されますので,同様の規定を持つ各特別法等についても是非改正の方向で検討していただきたい。提案には賛成の立場です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。よく分かりました。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。 ○湯淺委員 湯淺でございます。   この御提言について,服部委員にちょっと質問をさせていただきたい点がございますが,まず(3)のところで「アクセシブルな形式のPDFファイル」を御提言されております。これは,いわゆるタグの付いたPDFファイルということを想定されているのかなと思いますが,他方で(6)では「音声情報に変換可能な情報を有する電子データ(ワード,エクセル等)の提出を促す」ということを御提言されておりまして,タグ付きのPDFファイルでは駄目なので,ワードファイル,エクセルファイルを提出することを促すということを御提言されているのか,アクセシブルなPDFファイルと,さらにワード,エクセルの提出を促すということの関係がちょっと分からなかったので,そこを伺わせていただければ幸いです。 ○服部委員 このアクセシブルな形式のPDFファイルのものに加えてということでございますね,ワードデータ,エクセルデータなどの提出。アクセシブルなPDFファイルでは対応不可能な場合もあるということでございますので,やはり読み上げ可能なものでということでのものを特にお願いしたいというのが(6)の趣旨でございます。 ○湯淺委員 ありがとうございました。   確かにタグが付いたPDFファイルでも,読み上げソフトで構造が把握できない場合があるので,元のワードやエクセルの方が望ましいというのは御指摘のとおりかと思います。   それで,これを裁判所に提出を受けて,これを裁判所側で電子データ,具体的には音声データに読み上げソフトなり何なりを用いて変換して,障害をお持ちの当事者に送るという手続なのか,それとも,この任意で提出されたワードファイルやエクセルファイルを障害をお持ちの当事者に渡して,御自身で,そういう読み上げツールなどを使って読んでいただくというフローなのか,そちらはどういうフローを想定されておられますでしょうか。 ○服部委員 すみません,そこまで細かく詰めているわけではございませんけれども,今回の御提案は裁判所が相手方に提出を促すということで,相手方から提出をしてもらったものを障害当事者の方で読み上げなりの機能を利用して行うという,そういうイメージでございます。 ○湯淺委員 分かりました。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。   ほかにはよろしいでしょうか。   ありがとうございました。   大変重要な問題提起を頂いたかと思います。今,委員,幹事からいろいろな御意見を頂いたところですので,本日の審議を踏まえて,事務当局においては,必要と考えられるものについては具体的な提案に落としていっていただければと思います。   それでは,引き続きまして,本日の資料である部会資料10についての議論に入りたいと思います。   部会資料10は大きく三つの項目が取り上げられておりますが,まず一つ目の点といたしまして「争点整理手続の在り方」,いわゆる一本化について御議論をしていただきたいと思いますが,まず事務当局から,この点についての説明をお願いいたします。 ○西関係官 御説明いたします。   争点整理手続の一本化につきましては,第3回会議において一読目の御議論を頂戴しましたが,その中で頂戴した御意見の中でも,一本化された後の手続のイメージというものは各人によっても異なっていたように思われました。   そこで,本部会資料は,一本化された後の手続のイメージというものを複数提示させていただきまして,こちらをたたき台として一本化の当否ということにつきまして改めて御検討いただくということを目的としたものでございます。   まず甲案は,現行法における三つの手続をその要素としては存続させるということを前提としまして,これを一本に統合するという案でございます。   具体的には,現行法上,最も多く活用されていると言われております弁論準備の規律を基本としまして,これに準備的口頭弁論及び書面による準備手続の要素を加え,裁判所が適宜選択することができることとしております。ただし,現行法上の準備的口頭弁論におきましては証人尋問を行うことができますが,第3回会議におきまして,実務上のニーズがそれほどないのではないかというような御指摘もございましたので,その要素につきましてはひとまず落とさせていただいております。   このほかIT化に伴いまして,現在の争点整理手続に関する規律自体について見直しを掛けるということもあり得ようかとは思いますが,本日は個別の規律に関する細目的な議論というところには立ち入りませんで,大きな方向性として一本化の当否につきまして集中的に御議論を頂戴したいと考えております。   次に,乙案についてでございますが,こちらは現行法上の手続のうち,準備的口頭弁論と書面による準備手続,この二つを廃止するというものでございます。   これら二つの手続を廃止しました結果,弁論準備手続だけが残るという意味におきまして,この案も広い意味では一本化というふうに呼び得るのではないかと思われます。   最後に丙案は,現行法の規律を維持するという案でございます。   なお,例えば,現行法上の手続の一つだけを廃止して二本にするというような考え方ですとか,一つだけを廃止して残った二本をまとめて一本化するという考え方ですとか,そういった甲案と乙案の中間的な考え方というのは幾つかあり得ようかとは思われます。ただ,ここでは整理の観点から以上の三つの案に絞って御提案をさせていただいたという次第でございます。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   以上のような趣旨で,具体的なイメージを持っていただくために甲案についてはかなり詳細な記載内容にはなっていますけれども,本日の御議論いただきたい趣旨は,どちらかと言えば,この具体的な規定内容についてここはこうすべきだということよりは,甲案,乙案,さらに丙案というこの選択,あるいは甲案と乙案の中間としてこういうことが考えられるのではないかという大きな方向性について御審議を頂きたいという趣旨でございますので,どうかよろしくお願いをいたします。 ○日下部委員 一本化後の規律の個別的な内容に立ち入って議論することは想定していないということなので,どこまで踏み込んで御質問なり意見なりを述べればよいのか少し迷ってはおりますけれども,二つ,質問を最初にさせていただきたいと思います。   一つ目は甲案についてですが,甲案の3の(1)の規律によりますと,新たな争点整理手続の期日を電話会議等により行うことが許容されております。これは手続が公開で行われる場合でも当てはまるようになっていますので,実質的には現行法の準備的口頭弁論を電話会議等で行うことができるようにするものと思われます。電話会議による場合には,当事者の映像を公開法廷において傍聴人が観察するということはできませんので,公開主義との関係での整理が気になりました。この点,9番の規律によりますと,新たな争点整理手続の結果は口頭弁論において陳述される想定でありますので,新たな争点整理手続の期日は,たとえそれが公開法廷で行われる場合であっても口頭弁論ではないので,憲法上の公開の要請はそもそも及ばないから問題がないのだという整理かなと思っておりますが,どういった整理をされているのか御説明を頂ければと思います。   仮にですけれども,公開法廷で行われる場合であったとしても,それは口頭弁論ではないから,つまり憲法上の要請が働くものではないからということで整理されるということであれば,例えば裁判所法70条のように,憲法上の定めを基点として設けられている公開に係る規律の適用関係に影響があるのではないかと思っております。   二つ目のお尋ねは乙案についてです。乙案では,弁論準備手続のみを存置するというものになっておりますが,当事者が期日に出頭も電話会議等による関与もできない場合には,争点整理手続を利用することができなくなるように思えます。そうした当事者としては,現在は刑事施設被収容者が挙げられると思いますが,そのような者が当事者である事件の具体的な手続としては,どのようなものになることが想定されているのでしょうか。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,2点,事務当局の方から回答をお願いします。 ○大野幹事 まず,1点目の点でございます。今般お示しした甲案につきましては,一本化という言葉の意味の理解が人によって異なっている可能性がございましたので,その認識を共通化するために試みに一つの方向を提示したものということの御理解を頂ければと思います。そのため,事務当局として,その細部についてこうすべきだという前提をもって精緻に詰めきれているわけではございません。   その上で申し上げますが,日下部委員が御指摘のとおり,ここでいう公開というのは,憲法上要請されている公開とは別の問題だという整理ができるのではないかと思っているところです。そうしますと,争点整理の段階での公開というのは立法政策の問題となり,それを電話会議で行ったとしても,憲法上の問題となるわけではないのではないかという整理が可能だとは思ってはおります。また,それとの関連で申し上げますと,争点整理の結果陳述についても,公開してされた争点整理手続は口頭弁論ではないという理由からこれを行う必要があるのではないかというのも一つの整理だろうと思います。   ただ,この点については,現段階では,そうすべきだとまで整理ができているわけではなく,そういった考えがあるだろうという程度の整理と御理解ください。もしそういうことになった場合には,日下部委員から頂戴した更に発展した問題意識も踏まえつつ,更に検討していく必要があると考えています。   また,第2点目は,乙案になった場合に,書面による準備手続を本来必要としているような方についての訴訟手続はどうなるかという御質問でございますが,この点については,正にそういうニーズを今後想定しなくてよいのかどうかを御議論いただきたいという趣旨でございます。 ○山本(和)部会長 日下部委員,よろしいですか。 ○日下部委員 そういうことでありますと,乙案につきましては,あらゆる当事者が期日に出頭又は電話会議等による関与ができるという前提が伴わないと,争点整理のための手続の利用ができなくなる場合を考えざるを得なくなると思います。刑事施設被収容者にそうした出頭又は関与を認める制度的な裏付けがない限りは,乙案の正当性を説明するということは困難ではないかなと思いました。何らか,その実務上の工夫で対処をするということもあり得るのかもしれませんが,訴訟における争点整理という審理の重要部分が制度的な裏付けのない事実上の手当てで扱われるということは,やはり適切ではないのではないかと思う次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは山本克己委員,お願いします。 ○山本(克)委員 今の日下部委員の御発言は,既に事務当局自身が自認されていることではありますが,今回の整理方法が,やはり幾つかのベクトルをごっちゃにして提案されているということを指摘されているのではないのかなという気がしました。   私は,その同じような観点からちょっと違うことを申し上げますけれども,今の日下部委員の第1点の御質問から明らかなように,甲案における争点整理手続というのは,準備的口頭弁論を吸収したものではないということになりますよね。ということは,準備的口頭弁論は甲案のような争点整理手続をとっても,なおそれなりに固有の価値を持っているのではないかということになろうかと思います。ですので,準備的口頭弁論を仮に廃止するのだとすれば,甲案で,一応,公開も選択肢に入っていますよというだけでは駄目であって,何かもう一つ論拠が必要になってくるのではないかなという気がいたします。   私としては,弁論準備手続をリファインするものとして甲案を捉える,乙案と甲案を合体したような案というのが一つの選択肢としてあり得るのではないのかなという感じがしております。書面による準備手続についても,今,日下部委員が第2点でお話しになったように,ニーズがあるんだとすれば存置するというような形であってもいいのではないか。とにかく害がないのであれば,残っていてもなぜ悪いんでしょうかと,ニーズもあるのであれば残してもいいのではないかと,そういう発想です。   甲案自体については,私,前回,一本化の名において,インフォーマルな手続を作ることには反対だという趣旨のことを述べたと思いますが,私,そこで念頭に置いていたのは,対審性が確保されているかどうかという点でございまして,甲案はその点については非常に配慮が行き届いているので,たたき台になり得る案であろうというふうに私は好意的に受け止めて,甲案で提案されている弁論準備手続のリファインバージョンについては,それなりに好意的に受け止めております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。確認ですが,丙案の3種の争点整理手続を置くということで,その中の弁論準備手続の改正案として甲案的なものを捉えるという,そういう御趣旨ですか。 ○山本(克)委員 そうです,はい。そのとおりです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 部会第1回の自己紹介のときに,平成8年改正について,理念と実際に乖離が生じているのではないかと,それについて,せっかくの機会ですから検討してはどうかと発言しましたが,その発言は争点整理手続を意識しています。   整理すると,準備的口頭弁論は使われていない,通常の口頭弁論で対処されているという実務を指摘し,準備的口頭弁論の必要性がどこにあるのかと手続の必要性に疑問を述べました。逆に弁論準備手続にも,先ほどの山本克己委員の発言ではないですが,使い勝手の悪いところがある,争点整理の前提として,一旦証人尋問,当事者尋問を実施するとか,鑑定人の書面の顕出する必要がある場面があるがそれらを実施すると弁論準備手続に戻れない。実務の運用は,その後は口頭弁論で争点整理を続けるとか,準備的口頭弁論という選択があるとは思いますが,その使い勝手の悪さがある。主張と証拠の峻別の問題はありますが,書証以外の証拠調べを実施すると争点整理に戻ることができない不便さをあげることができます。   書面による準備手続について,現状に触れると,コロナ禍という事情が影響していますが,ウェブ会議として選択する場合には,弁論準備手続よりもはるかに使われていますが,それは双方当事者が出頭しなくてもよいということが理由であって,この手続に特有のメリットがあるわけではないと理解しています。今回の改正案での議論を前提にするならば,弁論準備手続で双方ウェブでの関与を認めるのであれば,逆に書面による準備手続の存在意義があるのかを再検討する必要があります。  甲案は,準備的口頭弁論での私が考えるメリット,証人尋問を実施できるという点を外した上で三つの手続の整理というものであり,メリットが外されて,逆に使えない手続になっていると思います。   また,書面による準備手続の協議について,5ページの中段下,(2)の上8行目に「なお,この手続は,新たな争点整理手続の期日に並行して,又はその準備段階として」と手続を二つ並行するという説明がありますが,本来,期日を指定するか否かに書面による準備手続と弁論準備手続の差があるのであって,なぜ並行する提案が必要なのか非常に疑問です。さらには,ノンコミットメント・ルールに言及されていますが,実務の現状は弁論準備手続を含めた争点整理手続でノンコミットメント・ルールを適用できないかと議論をしているのであって,そこに触れずに協議の場だけで議論をされると,逆にノンコミットメント・ルールは弁論準備手続では適用されないという消極的メッセージを発していると読まれかねません。そういう意味で,今回の提案は疑問があります。   私自身が新たな争点整理手続での物差し・メルクマールを提案するのであれば,一つ目は期日を開くのか,開かないのか。刑事施設被収容者の問題も含め期日という概念を用いずに手続を進めるのか。この提案にもありますが,あり得る手続だと思います。さらには期日において,口頭弁論期日における証拠調べも取り込むのか。その二つのメルクマールが重要であって,手続を並行させたり,証拠調べを峻別した形になると,理念と現状の乖離だけではなく,そもそも何を意図する統一なのか理念自体が分からなくなるというのが正直な意見です。現状の提案のままでは甲案も反対,乙案も反対,このままだと丙案でいくしかないというのが現時点での感想です。 ○山本(和)部会長 御趣旨は,甲案の中身をより改善すれば甲案に賛成ということなのか,そもそもそれは無理そうだから丙案でしようがないという御意見なんですか。 ○阿多委員 改善という言葉の意味次第ですが,私自身は甲案が進むべき道だとは思っていますが,現状の案では使えない,そういう趣旨です。 ○山本(和)部会長 分かりました。   ほかにいかがでしょう。 ○門田委員 第3回でも申し上げたところと若干重複するところですけれども,今の実務の現状等を御紹介しますと,今年の2月から,いわゆるフェーズ1の運用が始まっており,その中では,書面による準備手続に付した上で双方当事者が裁判所に出頭することなくウェブ会議の方法による協議をする形で争点整理を進行させて,準備書面の陳述あるいは書証の取調べを行う必要がある場合には適宜弁論準備期日を開いて争点整理を行うというプラクティスが行われるようになっていると認識しております。   今回の甲案の御提案は,現行法の下では三つに分かれている争点整理手続を一つの手続として再構成するということであり,この提案によれば,正式な期日と,準備段階としての協議を手続の目的に応じて選択するなどの運用が可能になりまして,現在フェーズ1の運用の中で,裁判所と双方当事者が協力して進めている審理運営の改善に沿う方向になるものと考えております。   準備的口頭弁論のメリットというのは,証人尋問を実施することができるところにあると思うのですが,現状,争点整理段階で証人尋問を行うことは実務上ほぼないと理解しているところです。このように,これまで20年間この制度が実際に利用されていないことを踏まえますと,準備的口頭弁論の規律を維持する必要性は余りないと思っております。   また,先ほど阿多委員の方から御指摘がございましたノンコミットメント・ルールとの関係ですけれども,充実した争点整理のためには,いわゆるノンコミットメント・ルールを適用して行うのがよいということで,弁論準備手続の中でノンコミットメント・ルールを適用するということを当事者と共通の認識にして行おうと取り組んでいるところです。もっとも,どうしても正式な期日で行いますと,幾らノンコミットメント・ルールの適用が宣言されても,自白が成立してしまうのではないかとか,あるいは裁判所の方で弁論の全趣旨で考慮されるのではないかというような懸念があるという指摘は絶えないところです。   正式な期日でない協議という形で行えば,ノンコミットメント・ルールが適用されることが明確になるということで,懸念をお持ちの代理人の方にも応じていただけるのではないか,そういう意味で,使い勝手のいい手続になるのではないかと思っているところです。したがって,甲案をベースに御検討いただくことが相当であると思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私自身も一本化論を推してきたところでありまして,その観点から発言したいと思いますけれども,まず,漠然と研究会のときとかに思っていた一本化論というのは乙案的なもので,要するに期日に双方が出頭しなくてよくて,ウェブ会議でできるということであれば,書面による準備手続というのがほぼ要らなくなりますねということが前提で,かつ準備的口頭弁論でございますけれども,これは先ほど阿多委員からもお話があったようにほとんど使われていないということ。それから,実際第8回の迅速化検証の報告書(最高裁判所事務総局・裁判の迅速化に係る検証に関する報告書(第8回)26頁)とかを見ましても,地裁の第一審で,そもそも争点整理手続,この三種の手続が使われた事件が半分もいかないで40%台だということが分かりまして,そういう意味で,口頭弁論期日に実際争点整理的なことが行われているということは,恐らく実務の現状ではないかなと思います。それ自体,164条から167条の規定の潜脱であるというふうに断じるというのは一つの理論的な方向で,あり得ると思うんですけれども,そこまでのことを言わないのであれば,準備的口頭弁論というものを残す必要というのは余りないのではないかと思います。証人尋問の話というのは確かにあるんですけれども,本当に必要であれば,口頭弁論で普通にやって,それこそ争点整理と口頭弁論期日の行き来をすればいいのではないかなという気はしております。   そんなことで,乙案から出発して考えてきたんですけれども,ただ,その場合でも,現在の弁論準備手続がこれでいいのかという話はあると思いますので,その一本化の方向として,甲案のように具体的にいろいろと整備していくというのについては,私自身は基本的な方向としては賛成しております。ただ,今,門田委員からもお話があった期日外の協議というのが,ちょっと何を意味するのかという辺りは多少疑念がありまして,書面による準備手続であれば,これが必要であるということは分かるんですけれども,期日に出頭しなくてもよくて,ウェブ会議で期日ができるということであれば,期日外の協議というものについて,非常に何かインフォーマルなものをここに明確に位置付ける必要性ということについてはやや危惧を覚えております。   今のノンコミットメント・ルールとの関係につきましては,やはり阿多委員もおっしゃいましたけれども,争点整理一般について妥当するというふうに考えるべきもので,協議であれば,では,裁判官が弁論の全趣旨に入れないのかとか,そういった問題というのはきっと起こってくると思いますので,協議にすれば,それはもう何を言っても後々残らないみたいな,そういう理解が完全に共有されるとは思われないのです。そういう意味で,甲案の中で私が違和感を覚えたのは,期日外における協議というのが必要なのかどうかということであります。   あとは,日下部委員もおっしゃった刑事施設被収容者に関しては確かに問題が残るわけですけれども,この辺りは,本来は,研究会でも言いましたけれども,刑事施設の方の管理としてきちんと法廷に来られるようにした方がいいのではないかというのはありますけれども,そういうのがなかなか難しいのであれば,実際上,書面のやり取りで争点整理をするといったことで,それについて,必要であれば,何か協議というようなことがあるのかもしれませんけれども,結局,電話にも出られないということであればそこでは使えないわけでありまして,刑事施設被収容者については,うまく折り込む案が私にもありませんけれども,そこのことを念頭に置いて,今の書面による準備手続で使われている期日外の協議といったものを残す必要はないのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○佐々木委員 佐々木です。   私ども企業の立場としては,争点整理手続というのが複数用意されているのにも,いろいろと理論的なところはあるんでしょうけれども,争点を整理するという目的のために柔軟な対応ができればそれでいいというところはございます。   今回この甲案であれば,一応いろいろな手続の,現行法上のほかの手続の内容を基本的に行うことができるということで,甲案に賛成したいと思っているんですけれども,その中で,ちょっと1点確認させていただきたいというのは,素人的な質問で大変恐縮なんですけれども,準備的口頭弁論の中では争点整理のための証人尋問ができるけれども,新たな争点整理手続においてはこれをすることはできないとありますが,例えば,一旦争点整理をした上で,通常の証人尋問を行って新たな争点が生じれば,更に争点整理手続に戻るというようなことが実務上はできないものなのかどうかというのをちょっと教えていただければと思います。この場合,ちょっとこの証人尋問というのは,争点整理のための証人尋問とは位置付けられないのかもしれませんけれども,こういった運用の仕方ができ得るのかどうかというのを教えていただきたいなと思います。 ○山本(和)部会長 これはこの資料の趣旨かと思いますので,事務当局からですかね。 ○大野幹事 現行の民事訴訟法の制定前の旧法下においては,争点整理と尋問とを繰り返すという五月雨式な運用がされていましたが,それでは非常に非効率的であり,時間も掛かるという問題意識の下,運用改善が図られていく中で,争点をまず集中的に整理し,何が争点なのかをきちんと洗い出して確定した上で,その確定された争点について証拠調べをするという運用が行われるようになり,それが法律として結実したものが現行の民訴法です。   ですので,準備的口頭弁論において争点整理のための証人尋問ができるという点については,結論を出すための証人尋問というよりは,争点を的確に整理するために必要な場合もあるだろうから,先に尋問をしてしまうということもあり得るだろうというものでした。事務当局としましては,準備的口頭弁論において証人尋問ができるという前提で,それを新しい手続においても可能とすべきかどうかという点について,現段階において,確たる整理までできているというわけではなく,暫定的に,新しい手続ではそれはできないという整理をして御提示しております。そういう意味では,先ほど御指摘のあったとおり,準備的口頭弁論を全て再現しているわけではないということとなります。 ○山本(和)部会長 佐々木委員,よろしいですか。 ○佐々木委員 はい,ありがとうございます。 ○日下部委員 私自身の考えとしましては,今,三つ存在している争点整理手続というのは分かりづらいというのが率直に言ってあると思いますので,一つにまとめる形で,そのタイトルも手続の目的をダイレクトに示すようなものにする方がよいのではないかという感覚を持っています。   ただ,争点整理の過程において,非常に例外的なケースだとは思いますけれども,争点を整理するために証人尋問や当事者尋問をする必要が実務上のニーズとしてないわけではないということであれば,三つを一つにした形のものであっても,手続を公開で行うことを前提として人証調べを行うこともできるというような規律にするというのは,アイデアとして考えられるのではないかと思いました。   それはそれとして,私自身がお話をお伺いしていまして,やはり一番大きい問題なのではないかなと思いましたのは,先ほど笠井委員の方からも御指摘のありました,協議の利用が過剰なものになったり,不適切なものにならないだろうかという懸念です。現在は,この協議というのは書面による準備手続が一つの独立の争点整理手続であって,その中で口頭による意見交換を必要とする局面もあるだろうからということで設けられているものだと思います。しかし,三つの争点整理手続を一つのものにするということですと,その協議を必要とする理由というのが非常に薄くなる。取り分け期日を設けて協議をする場合であったとしても,電話やウェブ会議の方式で行うことができるというようになれば,協議という別途の手続を残す実質上の意味合いはないのではないかと思えます。   先ほど来お話をお伺いしていますと,期日による手続と協議による手続を使い分けて柔軟にというような,そういった御意見もあったかと思うのですが,協議はルールがあってなきがものという部分がありますので,それが柔軟に使われるということになると,適切な訴訟運営と言えるのだろうかという問題意識がございます。特にこの観点で言いますと,協議の場合には場所の指定というのは特にないと思いますので,例えば地方裁判所と,その支部における問題など,ほかにも発生する懸念というのが強まってくるかなという気もいたします。私としましては,三つの手続を一つにまとめるということであれば,期日にとどめておいて,協議というものを残す必要が本当にあるのだろうかというのはシビアに見ていくべきではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 再三申し訳ありません。   書面による準備手続をなくす理由がもう一つよく分からないんですが,刑事施設に収容されている人たちの処遇改善を待つべきだというのは,そんな現状ほぼ見込みのないことを前提に議論していいのかどうかということは非常に疑問を持ちますし,聴覚障害者や視覚障害者にとっては,ウェブ会議なんていうのはちょっと対応できないのではないのかなと。でも,そういう人たちが遠隔にいる場合において,書面であれば時間を置いて,相手方の主張も理解できて,自分の主張も展開できるというような場合,書面による準備手続のニーズはあるのではないのでしょうか。健常者を前提に議論する,ウェブ会議に出られる,そもそもそういうノウハウを持っていない人もいますし,障害者の方のことも考えると,書面による準備手続はなお存続意義があるのではないかなと思うんですけれども,その辺はいかがでしょうか。 ○山本(和)部会長 質問ですかね。では,富澤幹事から。 ○富澤幹事 私も半分質問になってしまうのかもしれませんが,甲案であっても書面による準備手続が本来予定していた書面の交換による争点整理の方法は維持されると思っていたところでございます。要するに,書面の交換を行いながら争点整理を行っていくというのは,例えば弁論準備手続の期日と期日の間隔を空けて次回期日を指定して,その間で書面の交換をしてくださいといった方法も考えられますし,仮にそういう方法でないとしても,甲案では準備書面の提出期限を裁判所の方で定めて書面の交換をすることを前提にしていると思っておりました。   フェーズ1の運用の話が出ておりましたので,最新の統計上の数値を御紹介いたしますと,10月の1か月間は,訴訟手続では3,973件の事件でウェブ会議が利用されております。そのうち弁論準備手続が896件,書面による準備手続が2,951件,その他の手続,例えば進行協議期日や事実上の打合せにつきましては126件でございます。このように弁論準備手続の期日と書面による準備手続の協議をシームレスにいろいろ行き来をしながらフェーズ1の運用が進められているところが,これまでの運用とは違ってきているのではないかと思っています。   そのような中で,甲案では期日と協議の双方の規律を提案していただいておりますけれども,確かに期日でどのような手続を行うことになるのかよく考えなければならないと先ほどから御意見をお伺いして思っていたのですが,例えば大量の領収書等が書証として提出されていて,それを整理する必要があるケースでは,正式な期日では行わずに,協議という形で行うこともあり得るのではないかと思いました。また,例えば,現地に行って,建物の瑕疵を見るといったことを現行法下では進行協議期日を流用する形で行っておりますけれども,場所をどうするのかという先ほどの御指摘にも関係しますが,協議という形で行っていくこともあり得るのではないかと思ったところでございます。 ○山本(和)部会長 それでは,最初に質問ということであれば。 ○大野幹事 ただいまの富澤幹事のお尋ねの点については,事務当局としても,お示しいただいた御理解のとおりで甲案を御提示しています。 ○山本(和)部会長 甲案,この6の(1)のただし書の中に,新たな争点整理手続の全てを期日を指定せずに行った場合という仮定が書かれていますので,恐らく全く期日を開かないで,この手続を終えるということも含まれているということではあるんだろうと思いますが。 ○服部委員 服部です。   一本化に関してですけれども,日弁連としましては,あえて一本化するのではなく現行の制度をという意見を出しておりますということを改めて申し上げさせていただくとともに,今回,甲案の御提案は三つの今準備されている争点整理の手続を融合的にという内容ですので,日弁連の意見も一定程度御配慮いただいているのかなと思っているところではございますが,幾つか疑念に思う点が示されておりますので,お伝えをさせていただきたいと思います。   まず,今お話にもありました,期日を指定せずに争点整理を終わらせることもできるという点についてでございます。それが,果たして期日概念が一体どうなのだというところの懸念が出ております。やはり争点整理の期日を中心にしっかり行うべきではないだろうかという意見でございます。   そして,あと例えば,期日ということを想定したときに,例えばこれは,新たな争点整理手続としては,公開して行うことができるし,公開しないで行うこともできるわけですが,例えば同一期日で,公開してから非公開にするとか,逆のパターンもあり得るのかもしれませんけれども,非公開から公開ということも制度的には可能になるのだろうかと。そうするとシームレスすぎて,一体この期日でどういうことをしようとしているのかというところがかえって分かりにくくなるのではないかという疑問が出ております。また,その場合,調書などで記録化するときどうするのでしょうかというような意見も出ておりました。   そして,別の点で,先ほど来,出ておりますノンコミットメント・ルールの点ですけれども,現在,弁論準備手続での活用というのが議論されているというのは既に御紹介いただいているとおりで,そこで弁護士の方からいろいろ出ている懸念についても,門田委員に御紹介いただいたとおりでございます。そういったことを前提としますと,部会資料にも記載していただいていますけれども,ノンコミットメント・ルールというものが非常に多義的な概念であり,人によって受け止め方がかなり違うという部分がありまして,そういったものを真正面から期日外で認めていくということはどうなのか。仮にそういうことをするのであれば,より具体的な規律が必要なのではないかと思われるというところですし,また,ノンコミットメント・ルールを使う場合でも,2の(3)で「協議の結果を裁判所書記官に記録させることができる。」とありまして,ノンコミットメント・ルールで話したものを記録されるというのはどういうことなのだろうかということに対しての懸念も示されているところですので,提示させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員 争点整理手続の在り方を整理するという方針については賛同しております。手続の切替えがシームレスになることから迅速化,効率化が期待できると考えますので,利用者にとって分かりやすい甲案をベースに,更に練り込んでいくことが望ましいのではないかと考えています。また,現時点では,甲案をベースに考えた場合においても,本人訴訟における不都合は特にないのではないかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。   甲案そのものをどのようなものとして理解するのかというお話が出ておりまして,山本克己委員からも御指摘がありましたように,現在の甲案ですと,準備的口頭弁論の要素が落ちているところがあるのではないかという御指摘があって,それが確かにそのとおりかなと思いました。   そのときに,一つの方向としては既にこれまでの御議論でも出てきていたところかもしれませんけれども,例えば甲案の中で,新たな争点整理手続は口頭弁論期日ですることもできるといったようなものを加えると,理屈としては全て包含するという形にはなるのかなというように思いまして,その方が使い勝手がいいということであれば,そういう方向を追求するということも,あるいはあり得るのかもしれないという感じが一方でいたします。   ただ,私自身は現在の制度に慣れているというところがあるのかもしれませんけれども,争点整理を開始する段階でどういう形で争点整理を行うのかということについての一応の方針を決めて,手続の振り分けを行うと。それで,書面による手続であれば,基本的には書面のやり取りで争点整理を行っていくといったようなやり方というのは,これからどういう手続をするのかということについての関係者の認識を共有するという点では,ある種の手続の透明性の向上に資するというところもあると思われますので,それにはそれ相応のメリットということもあるのかなと思うところがあります。ただ,一旦決めたものについて,それが硬直的になってしまって柔軟な取扱いに支障があるという部分があるときに,そうした方針を一応決める形を前提としつつ,何らか若干柔軟化が図れないかというような方向でのアプローチというのも,あり得ることはあり得るのかなというように感じます。   他方で甲案について,飽くまで弁論準備手続のリファインであるという方向で考えていくというお考えも示されているところかと思いますけれども,それはそれでまたあり得る方向かと思われますが,その際,これも御指摘が出ておりますように,従来存在している準備的口頭弁論であるとか,書面による準備手続を積極的に廃止すべきだというまでの理由があるのかどうかという点については,私自身は少し今の段階ではまだよく分からないなという感じを持っております。   それから,これも既に御指摘がされているところですけれども,協議の期日につきましては,確かに現在出てきているもの,資料の記載ですと,やや不透明なところがあるのかなというように思われるところでして,これはそもそもこの争点整理手続における期日でどのようなことができて,その期日にどのようなルールが妥当するのかということを詰めていってからでないと,その外の協議でなすべきこととしてどのようなことが考えられるのかというところがなかなか認識を共有するところは難しいのかなという印象を持ちました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょう。 ○横田委員 先ほど来,協議と期日というお話が出ていますので,フェーズ1の下で実際に運用している立場から現状について意見を述べさせていただきます。先ほど御説明がありましたように,現在,書面による準備手続が大変広く行われておりまして,その中で民訴法176条3項の協議を行う運用が非常に多く行われております。協議をずっと続けて行っていくのですが,一定の場合には弁論準備の期日を開く必要がありますよねということで,期日を開くことになります。その場合には,書面による準備手続を一旦取り消した上で弁論準備手続を指定して,弁論準備期日を開くことになるのですが,そのような一定の場合として,例えば,書証の原本の確認が必要な場合ですとか,あとは重要な争点について,きちんと一度当事者と議論した上で調書化する必要がある場合ですとか,あとは,ホワイトボードや模型などを見ながら一緒に議論した方がいいような場合があり,その場合には期日を開いて,そこで議論をして,場合によってはその結果を調書化することが行われております。このように,ウェブ会議が入ってフェーズ1の運用が開始されたことによって,書面による準備手続の協議と弁論準備の期日を行き来するような,必要に応じて審理の内容に即して,当事者と議論をしながら,審理の内容に即した手続の選択をしていく運用が生まれつつありますので,その延長として,甲案で御提案をいただいているように協議と期日というのを行き来するようなことが柔軟に行うことができると,実務としては非常に有り難いと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 今,現状の実務として,期日と協議を行き来するということが御説明でありましたけれども,これは根本的には現在の弁論準備手続における期日というのは一方当事者が裁判所に来なければいけないという制約があるから生じている事象であって,法改正の結果,争点整理手続における期日において,両当事者とも出頭しないで手続に関与することができるようになれば,協議というプロセスを設ける実質的な理由がどこにあるんだろうかということを改めて考え直さなければいけないだろうと思います。   協議であれば,何でもありだから好きにやれるよねというようなことで協議を残すというような発想というのは,私は非常に問題があると思っていまして,むしろ話をする必要があるということであれば,期日を指定して,お互い遠くにいるのであれば,ウェブ会議などでやればいいのではないかというのが私の感じたところであります。 ○高田委員 今の日下部委員の御意見と全く同じことを申し上げることになりますが,現在のフェーズ1の実態は,書面による準備手続を使っていることによる実態ではないかという印象を持っております。本来,弁論準備手続であるということであれば期日においてすべきことが,現在,書面による準備手続という制約があるがゆえに,協議で行われているのではないかなという気もいたします。   そこから先も日下部委員と同じ意見になるわけですけれども,平成8年の改正で現在の弁論準備手続ができる段階でも,新争点整理手続と呼んでいたと思いますが,立法担当者の言葉を使えばオールマイティーの手続というのが構想されたわけでして,それを何となく思い出しているわけですけれども,現行法の弁論準備手続ができたのは,私の理解によりますと,先ほどの手続の透明性と申しますか,弁論準備手続でできることをきちんと書こうということで,基本的には準備書面の提出期間とか期日外釈明とかという幾つかの例外はありますけれども,基本的には期日で口頭弁論の準備を行おうという思想でできたわけですから,期日外の協議についてはやはり慎重に御判断いただければと思います。   もう1点,協議自体は甲案のブラッシュアップの問題ですので,甲案の内部で考えていくことになろうかと思いますけれども,甲案の位置付け自体の問題は,先ほど垣内幹事がおっしゃられたとおり,甲案で使いやすい弁論準備手続ができたとしましても,なお,丙案と結び付けるという選択肢は残っているように思います。仮に甲案に一本化するとすると,口頭弁論期日を許すということになろうかと思います,証人尋問もできるというのも一つの選択肢だろうと思います。しかし,垣内幹事からご指摘いただいたように,手続の透明性という言葉を考えますと,横田委員もおっしゃられましたように,やはり一旦手続を取り消して,改めて違う手続を指定するという移行の手続によって,手続の透明性を確保するということが重要だということは前回も長谷部委員が御指摘されていると思いますので,その観点からも丁寧に考慮しれた上で一本化というものを考えるべきではないかということを,繰り返しにはなりますけれども,申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。   裁判に慣れていない者にとりまして,この説明を読むだけでもとても大変だったのでございますが,御説明していただいて,先ほど小澤委員も言われましたけれども,いろいろな手続がシームレスに使えるということは,ユーザーには使いやすい,分かりやすいのではないかというのが印象でございます。先ほど横田委員がおっしゃってくださったように,現状では一つ一つの手続を切り替えるのに,裁判所が当事者と十分な話合いをしてやっているというのがございましたけれども,そこが大事なところだと思っております。甲案になった場合も,これからどう進んでいくのかということが当事者の十分な理解を得た上で進めていけるのであれば,甲案は素人目で見れば使いやすいのではないかという理解をしております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 山本克己委員の方から,書面による準備手続を維持する必要性の話がありました。理念的なことは外して,刑事施設被収容者との関係での書面のやり取りを書面による準備手続だけで整理するのか,甲案の(2)のアのただし書に基づき期日を指定せずに行うのかという方法論が提案されており,私は後者の期日指定せずに実施するので,書面による準備手続を維持する理由はないと発言しました。事務当局に1点確認したいのは,民訴法93条の期日指定の関係です。93条は申立てまたは職権とありますので,当事者から期日の指定の申立てがあった場合は,甲案の(2)のアのただし書の場面でも適用があると考えてよいのか。93条との関係がどう整理されているのかという点です。   それと,これも高田委員からも指摘がありましたが,期日外釈明について,書面による準備手続において電話会議システムが導入されるに際は協議という言葉が使用されていますが,書面による準備手続でも期日外釈明は可能であり,その方法として電話会議システムを使用して釈明し回答することは従前から行われていました。そういう意味では,甲案,新争点整理手続においても,期日外釈明を含めほかのツールも適用されることを指摘しておく必要があると思います。   なお,途中,弁論準備手続での証拠調べが必要な具体的場面に触れませんでしたが,遺留額侵害請求において,対象不動産,相続財産の価額が決まらないと前に話が進めない場面での鑑定結果の顕出や,工事現場の事故等で事故状況を確定しないと安全配慮義務の議論ができないという場面での請負業者や関係者の証人尋問が考えられます。陳述書で代替するといった工夫を実務は対処していますが,証拠調べが必要な場面は一定あるという前提で争点整理手続に戻ることができる手続を考えていただく必要があると考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   93条との関係は,御質問だったと思いますので。 ○大野幹事 新たな手続の中で,書面による準備手続が想定しているような運用ができるというのをどう表現しようかと考えたときに,書面による準備手続ができますとは書けないことから,期日がないというその特徴を踏まえ,「期日を指定せずに」と表現いたしました。   今でも書面による準備手続がされている最中に93条の申立てがあったらどうなるのかという問題はひょっとするとあるのかもしれず,それについての運用や考え方について確たるお答えができる状況ではございませんが,通常の実務に照らすと,期日の申立てがあれば,それについて裁判所において必要かどうかというのを判断して決めているのだろうと思われます。そのことは,新たな争点整理手続においても,同様だと考えています。 ○品田委員 最近の実務の状況については,先ほど横田委員から御紹介があったとおりでございます。審理の内容に合わせて弁論準備手続の期日,それから書面による準備手続の協議を行き来するような新しい運用が行われているというところです。そういった関係から,また実務的な感覚からしても,甲案の細部はこれから詰めていく必要はもちろんあるとは思いますが,争点整理手続を一本化するという基本的な方向性には賛成したいと思います。実務的には使いやすい手続になると思います。   ただ,裁判官の立場で使いやすいというと,手続の裁量が広くなりすぎるのではないかとか,あるいは融通無碍な手続になるのではないかといった御懸念があるのかもしれませんが,現在の運用においても,例えば手続の切替えや協議と期日の切替えに関しては,当事者の意見もお聞きしながら,必要に応じて選択しているつもりですし,仮に甲案が採用された場合であっても,手続を預かる裁判所としては,事件の性質や内容,手続の進行状況に応じて,当事者双方の意見もお聞きしながら,その日に行うべき審理の内容に合わせて,具体的な手続を選択していくつもりですし,そうなると思っております。   したがって,争点整理手続の一本化が実現されたからといって,裁判所の手続の裁量が広すぎるとか,あるいは融通無碍な手続になるというようなことにはならずに,むしろ行うべき審理の内容や実情に即した手続選択が,争点整理手続の中できちんと行われていくことになると考えているというところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 何度もすみません。   私は甲案に割と好意的だと言っていたんですが,議論を伺っているうちにちょっと早まったことを言ったなという気がしていますので,そこの点をまず修正させていただきます。   高田委員が最後に,ほかの委員,幹事の方もおっしゃっていますが,やはり協議と期日,期日概念というものをもう少し見直す必要があるだろうという感じは,協議に何でもかんでも移行する,協議で何でもかんでもやるというようなことにならないような工夫は必要なのかなという感じがしました。   それと,ノンコミットメント・ルールとの関係ですけれども,これも各論的な話は今日の話題ではないのかもしれませんけれども,自白の擬制の規定であるとか,攻撃防御方法の却下の規定を準用してしまうと,もうノンコミットメント・ルールというものは実現できないことは明白なので,ノンコミットメント・ルールを本当に取り入れたいのであれば,その辺りの規律というのをやはり考えていく必要があるのではないか。協議なら大丈夫というのは,やはりちょっと私はあれです。基本的には,でも,プリトライアルとトライアルを分けない限りは,ノンコミットメント・ルールを完全にエンフォースすることはできないだろうというふうには思っていますが,気持ちでもノンコミットメント・ルールを入れたいのであれば,今言いましたようなところに工夫が必要なのかなという感想を持ちました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがですか。 ○増見委員 増見でございます。   今,いろいろな議論を拝聴していて少し疑問に思った点がございまして,今回議論されているのは訴訟の前段階の争点を整理するために,今三本ある手続を一本化するかどうかというところなんですけれども,訴訟当事者になり得る企業の立場から申し上げますと,迅速に,効率的に争点が整理できるのであれば,それがどのような手続であっても,ある意味構わないと思っておりまして,その手続が厳密に分かれていることですとか,期日が厳密に設定されていることが,迅速な争点整理にどう結び付くのかというところが,少し理解が難しいと思った点でございます。   取りあえず,その点だけ申し上げます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 前回の検討のときに,柔軟で,裁判所の裁量の範囲を認める手続というのは,場合によっては当事者の予見可能性を低下させるおそれがあるのではないかというようなネガティブな御意見を申し上げたところですけれども,必ずしも訴訟利用者にとっての予見可能性が低下されないような仕組みを盛り込んでいくことができるのではないかというのを甲案を見ながら感じたところでして,甲案の内容を見ていきますと,個別には様々な御意見も出ているところですけれども,手続の開始に当たっても当事者の意見を聞くということと,それからその必要性という理由が出ているのと,それから期日は,基本的な原則としては当事者双方が立ち会うことができる期日において行うけれども,期日を指定せずに行う場合にも当事者の意見を聞くというステップを必ず入れていますし,この期日の管理などについても当事者の意見が反映されて,当事者にとって今後の手続がどのように進展していくのかをイメージしながら,この争点整理に関わっていく,そんな場が確保されている仕組みというのを新たな手続の中に折り込んでいくということが現実に可能なのではないかなという,希望を持って受け止めさせていただきました。   そして,乙案の方ですけれども,私,結構誤解しておりまして,書面による準備手続の可能性というのは,これから出頭を利用しないで手続が可能になるということで不要になっていく方向なのかなと思いましたが,10月の実務の傾向としては,圧倒的に書面による準備手続が多かったということなので,ちょっとそこは考え直したいと思うんですけれども,乙案で弁論準備手続のみに絞り込むということも余り現実的ではないのかなと思えまして,ちょっと元々乙案的なものを指向していたんですけれども,ちょっと甲案寄りになってきております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○大坪幹事 各論的な話になって恐縮なんですけれども,書面による準備手続についてです。   争点整理手続がとられる事件というのは本来は,争いがある事件で,争点整理が必要な事件というふうに考えられていると思われます。ですので,本来だと準備書面の交換とか書証の提出だけで訴訟が進むような事件というのは,争点整理が必要な事件とは言えないのではないかというふうに個人的には思っております。そういう意味で,現在実務上,書面による準備手続に付された事件についても,電話での協議をしないという運用はないというお話だったかと思います。   現在,弁論準備手続について書面の交換だけをやるという運用について,弁論準備手続,争点整理手続の形骸化ということで問題として言われているわけですけれども,そういう意味で,書面だけで争点整理ができるということであれば,弁論準備手続で書面の交換だけで終わることもなぜ悪いのかということになります。そういう手続もあってもいいのかもしれませんけれども,仮に刑事施設被収容者などの電話会議等を利用することができない環境にある当事者に対して,書面による準備手続のニーズがあるということであれば,それは争点整理手続とは別の手続として,本来整理すべきだったのではないかなと思っております。その点で,争点整理手続の在り方について改めて検討する必要もあるのかもしれないと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。   ありがとうございました。   この甲案をこういう形で書いていただいて,議論はかなり論点は明らかになったのではないかと思いました。   伺った限りにおいては,甲案を支持する方,丙案を指示する方,それぞれ相当数の委員,幹事がおられたように思います。ただ,甲案はこのままでいいという方はどちらかと言えば少数派だったように思いまして,争点整理手続過程での証人尋問の問題とか,あるいは協議というもので一体何ができるのか,こういうものが必要なのかといったようなこと。あるいは,その手続をいろいろ切り替える際に,当事者の意向,意見というのをどの程度反映すべきかというような点が浮かび上がってきたのかなと思います。   また,丙案を採るにしても,現在の弁論準備手続については恐らく何らかのリファインが必要になってくるという御意見もあったように思いますので,かなりの多くの委員,幹事に御発言をいただけたと思いますので,今日の会議の状況を踏まえて,中間試案に向けて,事務当局には更に選択肢を詰めていっていただければと思います。   それでは,ここで休憩を取りたいと思います。4時20分に再開をしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,審議を再開したいと思います。   資料10の二つ目の論点であります「第2 新たな訴訟手続」についての議論に入りたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いします。 ○波多野関係官 それでは,事務当局から説明いたします。   「第2 新たな訴訟手続」でございますが,こちらは第3回会議におきまして,抽象的には一定のニーズがあるとの御意見や,他方で制度創設に対する御懸念を示す御意見を頂戴したところでございます。また,具体的な規律のイメージを持ちながら議論をする必要があるとの御指摘も頂戴したところでございます。   そこで,部会資料8ページ以下におきまして,新たな訴訟手続の具体的な規律として甲案及び乙案と,新たな訴訟手続を設けない丙案を御提示して御議論をお願いしております。   甲案は,手続全体を一つの特則として法定することを指向するもののモデルとして御提示するものでございます。   具体的には,原告に一次的な手続選択権があることとして,被告が第1回口頭弁論期日までに通常訴訟手続への移行の申述をしない場合には新たな訴訟手続が開始されることとし,審理期間を6か月と法定した上で,これを制度的に担保するために即時に取り調べることができる証拠に限ることとし,証拠制限が法定されていることに鑑みまして,不服申立ての方法を異議によることとして,証拠制限が解除された同一審級での審理が続行されるという仕組みにしております。   乙案は,紛争の実態を最も把握する当事者のイニシアティブにより訴訟進行を決定していくということを指向するもののモデルとして御提示するものでございます。   具体的には,当事者双方の共同の申立てによって新たな訴訟手続が開始されることとし,審理期間は甲案と同様に6か月と法定した上で,審理の計画を定めることを義務付けつつ,その審理の計画において定めるべき事項や内容を法定することによって標準的な審理モデルを示しながら紛争の実態に応じた審理を可能とするということとしております。また,証拠制限を法定していないことに鑑みまして,不服申立ては通常の控訴ということにしております。   なお,甲案におきましても,当事者双方の共同の申立てによって新たな訴訟手続が開始されることや,審理の計画を定めることを否定するものではございません。その観点からしますと,甲案と乙案は相互に排他的なものではございませんが,規律の在り方に関する大きな方向を議論していただくものとして,一つのモデルを示すものでございます。   丙案は,新たな訴訟手続を設けないというものでございます。   (注1)は新たな訴訟手続の対象となる事件について,一定の類型のものを除外すべきかどうかについて御議論をお願いするものでございます。   (注2)は新たな訴訟手続による進行につきまして,双方に訴訟代理人が選任されている場合に限るかどうかについて御議論をお願いするものでございます。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   前回この点を御審議いただいた際には,事務当局から特に具体的な案は示さず,参考として研究会等で議論されていたものをお示ししながらフリーに御議論を頂いたところ,何らかの手続を引き続き検討していくことがよいのではないかということで,今回は事務当局から甲案,これはどちらか言えば,前回参考にお示しした研究会の案に近いものだと思いますが,さらに,それとは別にまた乙案というものも提示を頂いて,何も設けないという丙案という,三案をお示しする形で御議論を頂ければということであります。   どの点からでも結構ですので。 ○門田委員 総論的な話になりますけれども,裁判所としては,現在の民事訴訟について特に審理期間に関する課題の指摘が強いということを深刻に受け止めておりまして,IT化を契機として,利用者の期待にこたえられるように現状を何とかしたいというふうに考えているところです。前回議論されたときにも申し上げましたけれども,審理期間についての当事者の予測可能性を高めるとともに,争点中心の集中かつ充実した審理を実現して,併せて手続の透明性を高めるという観点からは,新たな訴訟手続を創設するということには大きな意味があると考えております。   前回の御議論も踏まえまして,現場の裁判官の意見も少し聞いてみましたが,双方当事者と審理期間のイメージが共有できるということを前提として,ITツールを活用すればウェブ会議により期日指定が容易化,迅速化して,ファイル共有やチャット機能,メッセージ機能によって期日間の準備を充実させることもできるし,当事者間での情報共有も瞬時に可能となるということで,双方代理人に加えて当事者,本人や関係者の方を交えた口頭協議の実施も容易になるので,活発かつ充実した議論に基づいて,短期間で争点や行うべき証拠調べについて認識を共有することが可能となるといった意見が出されました。   意欲のある裁判官からのニーズは高いということを改めて認識したところですけれども,当事者側に立たれる弁護士等の皆さんにも,意欲のある方々はたくさんいらっしゃると思われますので,そうした関係者の意欲を顕在化させて,先ほど申し上げた現在の民事訴訟の課題を少しでも改善できるような制度的な手当てというのを是非御検討いただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 今,門田委員の方から御発言がございましたけれども,何らかの手だてをとるべきだというのは私も同じように考えているところであります。   現行法における実務では,審理計画が定められることはほとんどなく,計画的な審理が行われているとは言い難いと思います。数か月から数年を要するにもかかわらず,スケジュールを立てることなく,終わりまでの期間のめども立たない中で進められる紛争解決手続では利用がちゅうちょされることは当然であって,裁判制度に関わる者がそれを所与のものとして漫然と捉えることには危機感を持っております。裁判IT化を契機に,多くの事件でスケジュールを立てて手続を進行できるように制度の見直しをすべきだと考えておりますので,もしも丙案がそうした試みの放棄にほかならないということであれば,それには反対であります。   甲案と乙案と挙がっておりますけれども,私としましては当事者のイニシアティブによって訴訟の進行を決定していくことを指向するものである点を積極的に評価しておりまして,取り分け各当事者にいつでも通常の訴訟手続に戻る権限を保障しているという点では,手続保障の観点からも,実務的な利用可能性の観点からも,提案内容の大きな改善であると受け止めております。したがって,私としては,乙案を基本的なベースと考えた上で,制度の細部を詰めていくことが適切ではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○増見委員 増見でございます。   前回も申し上げたんですけれども,この裁判の期間を予測可能なものにとどめ,迅速化する動きについて,企業としては非常に積極的に捉えておりまして,先ほど門田委員からも大変意欲的な御発言がありましたけれども,これに強く賛同するものでございます。ですので,是非とも前向きに進めていただきたいのですが,甲案,乙案を拝見しますと,それぞれにいいところ,課題もあるかなと思っておりまして,1点,甲案について申し上げますと,異議が申し立てられた場合に,口頭弁論終結前に戻り,通常の手続きによってやり直すという点について,それがよいという御発言もあったところなんですけれども,当事者として,この手続に参加する者の立場から申し上げますと,できるだけこの訴訟の早期解決を目指して,社内で勇気を持って短い期間で紛争解決を試みたにもかかわらず,相手方の異議によって,その6か月の労力と費用が全く何も実を結ばなかったというか,何も前に進まなかったということでゼロに戻るというのは,ちょっといかがなものかという印象もございます。   それから,もう一つ,乙案について,両者の積極的な合意によらないと手続が始まらないという点でございますが,この方がより安全な設計であるという御意見もあるところかと思いますが,制度の積極的な利用を促進するという意味では,紛争当事者同士の積極的な合意がないと始まらないというのは,少しハードルが高いのではないかという印象を持ちました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○笠井委員 私自身もこういう訴訟手続,新たなものが必要である,迅速トラックのようなものは必要であると考えて,前回もその旨発言したと思いますけれども,従来は研究会での議論もあって,甲案のようなものについて,最初の部分を積極的に両当事者が合意したことをスタートラインにするように変えて実現すればよいのではないかと漠然と考えていたところなんですけれども,今回こうやって甲案,乙案を拝見いたしまして,乙案の方向というのは,十分にこれはよい案ではないかなと,今,考えております。   乙案は,通常の訴訟の中で審理計画をきちんと立てるというか,あらかじめ法律で審理計画が大体こんなものと決まっていて,それを利用するという選択を両当事者が合意をして使うという,そういうものです。ですから,不服申立ても先ほどお話があったように控訴で,結局特段,何か特別な手続という感じはないところです。そういう意味では,従来の147条の3の審理計画の話と,この訴訟手続を新たに作るということとの関係というのは問題にされてきましたけれども,それとの関係でも,条文の作り方とかはお任せしますけれども,147条の4みたいな感じで,それらの整合性もとれそうです。147条の3はオーダーメイドで複雑な事件についてやると。それで,147条の4というか,新しい手続はレディメイドの審理計画があって,それを使うかどうか当事者が合意をするといったようなことで,そういう意味での位置付けとしては,こういったものがあるということはよいのではないかなと思っています。   それとの関係で,乙案ですと,先ほど日下部委員がおっしゃった通常の手続への移行という話が出てくるわけなんですけれども,そもそも通常の手続への移行と,それからこの審理計画の変更というものとの違いがほとんどなくなるというか,同じではないかという感じもしています。制度をどう組むかはこれから細部を詰めていただくことになると思いますけれども,それほど特別なものと考えずに審理計画を立てて,それでもし状況からしてそのとおりは難しいということになれば,それで変更するといったようなことでよいのではないか。変更の要件とかはまたきちんと書かなければいけないかもしれませんけれども,そういう位置付けで考えていけばいいのかなと感じている次第でございます。   それから,増見委員がおっしゃった,甲案であれば今までの手続が全然無駄になるということはなくて,甲案でも当然原状に復するだけですから,今までのものは全部あった上で続きをやるという話だと思いますけれども,そういうことがあるとしても,甲案ではなくて乙案のように,こういうものをレディメイドのものとして用意するということについて意味があるのではないかなと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○井村委員 一般の人が裁判に思っているイメージは,とにかく時間が掛かるというものです。これがIT化することで迅速になるということは,我々も理解します。前回懸念を示させていただいた部分についても,通常裁判に戻れる,通常の裁判を受ける権利は担保されたことを評価したいと思います。   その上で,(注1)にある個別労働紛争に関しては,労働審判制度の形骸化を防ぐためにも除外をしていただきたい。加えて,消費者紛争についても,その当事者である消費者は労働組合の組合員である場合も多分にありますので,同様に除外していただきたい。   また,(注2)に関しても,やはり社会的に弱い立場,弱者というのが我々消費者であり,労働組合員であるという観点からすると,よく分からないままにこの訴訟に巻き込まれるということを防ぐためにも,訴訟代理人を選任することで新たな訴訟手続が使えるということ,すなわち(注2)についても,是非導入をしていただきたい。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○品田委員 新たな訴訟手続は,争点中心で,集中かつ充実した審理を実現して,法律で定められた期間内に紛争解決しようということを指向するものです。このような審理を実現するためには,主要な争点に関連する必要な限度での主張,証拠を的確に選別して,期日において口頭での充実した議論を行う必要があると思います。そのため,今,井村委員からも御指摘があったように,甲案であっても,乙案であっても,実際にこの手続を実施しようとすれば,現場で実務を担当している者の感覚としても,業として訴訟活動を行う訴訟代理人の選任は不可欠であると考えています。   また,若干ちょっと別の観点からの発言となりますが,前回会議の場で新しい訴訟手続を行うニーズはそれなりにありそうであるとの意見が出たことを受けて,現場でもどのような事件類型があるか検討してきましたので,幾つか御紹介いたします。前回,横田委員から幾つかの事件類型について御紹介いただいたところではありますけれども,ニーズのある事件類型の共通項としては,当事者間で事前の交渉が相当程度行われていて,主な証拠資料は双方が既に持っていて,対立点も明確になっているような事件ではないかと思います。   具体的には,三つほどございまして,まず一つ目として,マンションの管理規約違反に基づく一定の用法での使用の差止請求のようなもので,既に当事者間で事前交渉がされて,管理規約の規定の解釈をめぐる対立点が明確な事件ですとか,二つ目として,フランチャイズ契約に基づく競業禁止義務違反に基づく損害賠償請求事件で,既に当事者間で事前交渉がされて,競業禁止条項の対象が何かとかいった対立点が明確な事件ですとか,あるいは,三つ目として,特定の業界における売買契約に基づく売買代金請求事件などで,既に当事者間で事前交渉がされて,一定の商慣習の存否など対立点が明確である事件があるのではないかという意見が現場から出ましたので御紹介させていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 私,先ほど乙案をベースに細部を詰めていくことが適切だと思うと申し上げたところなんですが,今挙がっている乙案の内容について,これでよしというふうに考えているわけではなくて,大きく言いますと,もう少し柔軟に内容を決定できるようにしていただくべきではないかと考えております。   例えばですけれども,規律の1番と2番のところを見ますと,この手続を使おうという共同の申立てができる時期が第1回の口頭弁論の期日までとされております。もちろん審理が進んで途中から計画を立てようというふうに当事者が指向することは余りないだろうなとは思うのですけれども,第1回口頭弁論期日よりも後に共同の申立てがあった場合には,裁判所がこの手続の規律に準じて審理の計画を定めることができるといった程度の柔らかめの規律を加えておくということは考えてよいのではないかと思いました。   それから,この共同の申立ての方式ですが,書面によることが求められていないことが気にはなっております。合意が明示的かつ確定的になされることを担保すべく,書面または書面データをもってなすことを求めるべきではないかというような意見を以前は持っておりました。ただ,第1回口頭弁論期日までに申立てをすることが必要だと考えますと,被告側の方で,その期日において申立てをするという機会を確保するということを重視するのであれば,口頭での申述によってもいいというふうに考えるべきかなとも思われまして,しかし,それを野放図に認めるということになりますと,不適切な理解の下での口頭での申立てをしてしまうということもあり得ると思いますので,そういう観点からも,両当事者に法律専門家である訴訟代理人が就いていることは必須の条件だろうというふうに考えております。   それから,期間につきましては6か月というのが上がっておりますけれども,これについては特別の事情がある場合を除きとありますが,6か月というのが非常に固定的になりますと,この手続を使えるのは6か月で審理が終えられそうだなと考えられる事件に限られることになってしまって,やや使えるケースが少なくなりすぎないかという気がいたします。実務的には6か月では無理だけれども,9か月あればできそうだとか,あるいは1年以内には審理を終えたいというように当事者が考えることもあり得るわけですから,6か月,または当事者が合意するそれを超える期間以内にというような形で,そこは柔軟性を持たせていただければと思っております。   その関係で言いますと,4の(4)のところに,6か月である場合の内訳が原則的な形態として定められていますけれども,これは例えば6か月である場合であったとしても,審理計画を定めれば,その内訳をどうしようかというのはおのずと決まることでありますし,先ほど申し上げましたように,審理期間を6か月というのを固定化せず,柔軟性を持たせるのであれば,4の(4)のような定めはそもそも必要ないのではないかなと思われました。ただし,一番最後にあります審理終結から判決言渡しまでの期間,これにつきましては,現行法の251条1項の特則として,原則として1か月以内とするというような形にしておくことには意味があるのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員 ありがとうございます。   裁判のIT化というのは,裁判の迅速化を図って利便性を向上させるとともに,透明性を高めるということが目的であって,IT化をすることだけが目的ではないと理解しています。こういった理解に立つのであれば,このIT化に関する技術的な議論だけではなくて,新たな訴訟手続を検討することには大きな意味があると考えています。   参考までに,司法統計によりますと,令和元年度の少額訴訟判決に対する異議申立ての新受件数は171件となっていまして,年度のずれなどを考慮する必要はあるとは思いますが,少額訴訟の新受件数が8,542件となっていますので,この数値を前提にしますと,異議申立てというのは全体の僅か2%となっており,利用者は少額訴訟判決の内容におおむね満足をしているということが推測されます。つまり期日や証拠調べに制限のある制度の代表例である少額訴訟制度は,概ね利用者に歓迎されているというふうに考えています。迅速に紛争を解決するというニーズは,必ずしも訴額の高い,低いによらないと考えられますので,現時点で丙案を採用するということ,新たな訴訟手続を落としてしまうということについては大きなちゅうちょがあります。   甲案,乙案についてでありますけれども,乙案というのは現行法でも可能というふうにも考えられるので,新たな制度を設けるという意義においては少し乏しいのではないかなという感想を持っています。したがって,甲案をベースに考えていくべきというのが私の意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○佐々木委員 企業の立場としては,こういった新たな訴訟手続の必要性というのは感じているところで,前回もそういうニーズについてお話をさせていただいたところなんですけれども,ちょっと乙案を拝見して少しイメージが湧きにくいといいますか,疑問に思うのは,この共同の申立てというのが第1回の口頭弁論の期日までにしなければならないというふうになっていますけれども,その第1回の口頭弁論の期日前に共同の申立てをするということは,具体的にどういうふうに行うのかというのがよくイメージできないということと,さらに,この審理の計画を定めるというのが,恐らくこれも第1回の口頭弁論の前に行われるのではないのかなと思うのですが,そこで結構非常に時間が掛かるのではないかというふうに推測をいたしまして,結果的には何か,被告の立場からしても,訴状が届いてから第1回の口頭弁論期日を経て最終的に判決が出る前までに6か月では済まないのではないかなというふうな印象を持っておりまして,ちょっとそこの点で,こういうイメージの捉え方が合っているのかどうかというのも確認したいところでございます。   あと一方,ちょっと甲案は基本的には賛成といいますか,甲案に沿った形がいいのかなとも思っておりますが,甲案の中でも事実上,審理の計画はするんだろうとは思っています。ただ,確認をしたいのが,5の(1)のところで,訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述ができるのは被告となっております。それで1のところで,事件管理システムの利用の登録をした者は,新たな訴訟手続を求めることができるとありますが,これは我々としては被告の立場になることが多いので,被告としても,この新たな訴訟手続を求めることができる方がいいんですが,この「事件管理システムの利用の登録をした者は」と書いてありますが,これは原告に限ったものではないですよねということを確認させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   それでは,事務当局から御回答をお願いします。 ○大野幹事 まず,順番が逆となりますが,甲案についてのお尋ねから先にお答えいたします。事務当局からお示ししている案というのは,飽くまでも原告の意思でこのような手続が始まるというものであって,被告は,このような手続によることで構わないということであればそのまま付き合い,このような手続によることは困るということであれば異議を述べて通常の手続に移行するというものです。ですので,甲案は,飽くまで原告だけが訴えを提起するに当たって,この手続でやってくださいということを申し立てることができるという制度でございます。   次に,乙案に関する御質問についてお答えをいたします。まず,共同申立てのイメージがわかないという点については,例えば企業間紛争などで事前交渉がきちんとされているものが,共同申立てが可能な最も典型的な例に当たると考えております。佐々木委員からも御質問がありましたとおり,乙案においては早期かつ詳細に審理計画を立てていく前提となっておりますが,その前提として必要な条件というのは,双方が紛争の全容や,そのお互いの認識といったものについて対称的に把握をしていて,それを裁判所にも知らせることができるというものだろうと考えています。そうでなければ駄目だとまでは申しませんが,そういう場合が最も典型的に想定されるところです。   また,事前に審理計画をきちんと立てるのは難しいのではないかという御指摘についても,そうであるからこそ,ここでは標準的なモデル,先ほど笠井委員からレディメイドという御発言がございましたが,そのようなレディメイドの標準的なモデルというのをお示しし,かつ,場合によってはそのようなモデルを前提としつつ当事者が紛争の全容を踏まえて柔軟にモデルを変えていくといういわばセミオーダーのようなものを考えてはどうかというのが乙案の趣旨です。乙案は,標準的な審理モデルをあらかじめ準備しておくことで,訴訟の最初に審理の計画をゼロから立てるための時間や労力を省くことができるのではないかという問題意識に基づくものです。 ○山本(和)部会長 佐々木委員,いかがですか。 ○佐々木委員 はい,分かりました。私ども企業の立場として,ちょっと予定していた使い方にはかなり制限があるのかなというのがよく分かりました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。   今回の案につきまして,今のお話ではっきりしましたが,合意しなければ始まらない手続きであるので,やりたくなければこの手続はとらなければいいということが分かりました。   裁判は結論が欲しくて始めるものでございまして,訴える側は十分な準備ができていても,訴えられた側はそこからの準備になります。「早く」という目的は分かりますが,半年という期間が,訴えられた側には短いのかもしれないという懸念がございました。また訴える側にとっても100%準備していても,その半年という期間で十分かという辺りは,裁判に臨んだことがある者から,ちょっと厳しいのではないかという意見を聞きました。   また,今回,消費者が当事者である場合はこの対象から外すという御提案も頂いておりまして,前回私が申し上げた意見を尊重していただきありがとうございます。しかし,例えばサブリース問題など,多額の借金をして建物を建てて一括で借り上げてもらったが,その家賃が支払われないというような案件は,消費者問題の窓口によく相談が来る内容でもあるのですが,実はこれは建物を建てた者は消費者ではなくて事業者になっています。つまり私たちが知らず知らずのうちに事業者になっている場合もありまして,なかなか「消費者」でくくって外すということは難しいものもあるのではないかと思いました。   品田委員がおっしゃってくださったように,また今事務当局からお話がありましたように,また前回,横田委員が教えてくださったように,どういう案件が適しているかというのは大きく見えてきていることも分かってまいりました。私は,前回も申し上げましたが,そもそも今のままでも早くしようと思えばできることもあると思いますし,その早くできない理由を明らかにして次に進んでいくのがよいのではないかと考えています。新たなる仕組みを作る前にやることがあるのではないかという意見を持っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 積極的な御意見が多い中で,少し慎重にという発言をします。まず,甲案は代理人が就くことは要件にはなっていません。そうしますと,本人訴訟等で,第1回口頭弁論期日の終了までに通常移行させるという申述をしなければ新しい訴訟手続で進行することになりますが。実務において,第1回口頭弁論期日までに被告本人は代理人を選任して第1回期日に臨んでいるかというと,必ずしもそんな状況とはいえません。我々も法廷で先行事件の口頭弁論期日を傍聴しますが,裁判所からの封筒を持参した本人が出頭し,裁判所にいろいろ促されている様子をよく見ます。そのような現状において,原告が新しい手続で申し立ててきたときに,被告は第1回口頭弁論期日終了時点までに申述もできないまま,新しい手続に取り込まれてしまうのではないかと思います。そういう意味で,代理人選任が要件ではない提案は問題があります。   対象事件についても,消費者と事業者間の紛争が外すという意見がありますが,甲案は原告が選択しますので,被告が消費者に当たるか,当たらないかという判断は誰がするのですか。もちろん裁判所が消費者に当たると申立段階で判断してくれるのでればリスクはありませんが,サブリースもそうですし,個人事業者の商売に関係すれば消費者でなくなるとか,消費者か否かについて明確な基準があるわけではありません。とするならば,消極的要件ではなく,新しい訴訟手続の適用対象にすべき事件は何かを積極的に選別し指定すべきと思います。   日弁連が従前から主張しているとおり,本人の利益が確実に守れるのかという点から,今回の提案でもかなり心配となる点があります。慎重に検討いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 どういう事件がこの手続にフィットするのかということについて,いろいろ御議論があったかと思います。多くの御議論を聞いていますと,6か月という審理期間が変えられないという前提でお考えの方がとても多いのかなと思いますし,それは今回提案されている乙案を見てもさもあらんという気もいたします。先ほど私が申し上げましたとおり,この6か月という期間を固定的なものとして捉える必要は別になくて,9でも12でも,当事者がそれを決めるということを許容するようにするということは大いに考えるべきだと思っています。もしもそのように柔軟性を持たせることができれば,事前に当事者間で,お互いの手持ち証拠のことが大まか分かっているということは別に必要ではなく,紛争になってしまったときに,お互い嫌い合ってはいるけれども,少なくとも審理期間は1年程度では終わらせたいという点では,原告も被告も同意であるというようなケースであれば,原告が例えば訴状において,この手続を使いたいという申立てをして,被告の方も,答弁書に書くのか,第1回期日で口頭で申述するのか,どちらもあるかもしれませんが,それは応じますよと了解した上で,では,期間はどうしましょうかというところに話を持って行くということであっても,私は別に構わないのではないかと思っています。そういう意味で,この6か月というのが固定的であるという前提で話をするというのは,少し硬直的にすぎるかなと思います。   その関連で申し上げますと,4の(3)のところで,訴訟手続の計画的な進行上必要な事項の例として,特定の事項についての攻撃又は防御の方法を提出すべき期間のみが挙げられておりますが,例えばそのほかに,各当事者が準備書面及びそこで新たに引用される書証の写しを交互に提出していく各期限,それを踏まえた次回以降の複数回の争点整理手続の期日,証人及び当事者本人の尋問の申出をすべき期限なども,スケジュールを立てる上では決めることが考えられる事項ですので,そういったものは挙げておいてもよいのではないかというふうに考えております。   先ほど来,この手続について御懸念なりということをおっしゃる方が少なからずいらっしゃいますが,少なくとも乙案について言えば,当事者のいずれかが通常の手続に戻すことを希望すれば,それで戻るということを前提としているものだと思いますので,それでもなお不安であるというようなお話になるのかというと,私はそこは少し理解が難しいなと思っている次第です。 ○阿多委員 日下部委員から期間について,6か月は当事者で変更できるという提案がありました。私は,期間だけではなく審理計画自体が定められれば裁判所を含めて関係者を拘束する,守らなければいけないと理解していますが,それまで事前交渉をしてきた当事者と違って裁判所は訴状と答弁書を見ただけで,6か月で処理できるのか,9か月かいう審理期間を見極めることができるのでしょうか。前提自体に疑問があります。次に,乙案はだれに裁判をしてもらうかという裁判官を選択できるわけではありません。裁判官とすれば,他の通常事件も同時に処理することを前提に,乙案の審理を行うことになります。特別部,専門部が設置されるのであれば別ですが,大庁ではない地裁において通常事件も抱えて,新しい訴訟手続の事件も抱えてと,処理類型が異なる事件を並行して,それも当事者が決めたスケジュールで裁判所が処理できるのでしょうか。マンパワーも含め実現可能性に疑問を持っています。 ○垣内幹事 垣内です。   私自身は,この新しい訴訟手続で迅速な審理を実現するということは非常に重要な課題であると考えておりまして,基本的には前向きに検討していくべき問題ではないかと考えております。そうしますと,お示しの今日の資料ですと,甲案,乙案ということになってくるわけですけれども,現時点では乙案の方に多少,より大きな魅力を感じているというところであります。   甲案,乙案を比較いたしますと,甲案の方が証拠の即時性を要求するであるとか,あるいは異議申立ての方法が特殊であるとかいった点で,特別手続の色彩が強いものになっているのに対しまして,乙案の方は,要するにレディメイドの審理計画がセットで付いてくるというような手続ですので,通常手続との連続性が強いものなのかなという感じがいたします。   甲案の特別手続性を根拠付けている部分というのがどれほど魅力的な規律になっているのかということですけれども,証拠の即時性というのは疎明の場面などで用いられる概念がここで使われているのではないかと思いますが,6か月という期間を想定しているときに,疎明の場合と同様の即時性を要求するということが必ずしもそぐわないような印象も受けるところで,手段として,迅速なので即時性ということは分かることは分かるんですけれども,即時性を要求することで,この手続の魅力は増しているのかというと,そこは必ずしもそういうことでもないような感じもいたします。   また,異議申立てをして一審を続行するという点も,これが証拠の即時性という制限から来ているというところでもあるわけですけれども,そこまでするだけの魅力があるのかというところは,既に疑問の指摘もありましたけれども,私もそういう感じを持っております。   乙案の方は,その点,かなり通常手続の計画的進行を促すというような工夫として,非常によく考えられたものではないかという印象を持っておりまして,現在の案ですと,乙案の方が共同の申立てということになっているわけですけれども,基本的には通常手続で,そこまで特別性が強くないということを考えれば,もちろん共同申立てがあれば,その後がスムーズに進むということは間違いないことかとは思いますが,厳格に共同申立ての場合のみに限定する必要性がどこまであるかというと,こちらの方でも一方当事者の希望と,他方がそれに異議ないというようなことで,この手続に乗せていくということも選択肢としてはあり得るのかなという感じがいたします。もちろんその場合には,甲案の6のところで想定されているような例外というものは少し検討する必要はあるんだろうと思います。   それからもう1点,(注2)のところで検討されている訴訟代理人の選任を要件とするかどうかという点につきまして,確かに甲案であれ,乙案であれ,訴訟代理人がいた場合の方が円滑に進行することが期待できるでしょうし,懸念される弊害ということも心配が少なくなるということはそのとおりなんだろうと思いますけれども,ただ,取り分け乙案をベースにしましたときに,審理計画についてレディメイドのものが付いてくるということで,これが訴訟代理人がいた場合でなければ使えないということなのかといえば,現行法で審理計画を作成するのに特段訴訟代理人が義務付けられているということでもないというようなこともありますし,また別のところで見ますと,例えば不起訴の合意であるとか仲裁合意であるとか,こういった,ここでの手続よりもより一層裁判を受ける権利にとっては重大な帰結をもたらすものについて,代理人が義務付けられているということでもないといったところを考えますと,これは法制面の問題なのかもしれませんけれども,明文規定で代理人のいる場合に限るというところまで規定するのがよいのかどうか,もし迅速な手続によって解決してもらえるということが,代理人の付いていない本人訴訟でも同様に期待されるということではあり得るとしますと,そこは異なる考え方も場合によってはあり得るのかなという感じがいたします。もちろんその場合には,先ほど申しましたように,甲案の6で書かれているような,この案件ではこれは本人訴訟で認めるのは相当でないというものについて,もう少し柔軟な形で,つまりここでのレディメイドの審理計画には乗らない形での進行を確保しておくというような配慮が併せて必要になるんだろうと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○大谷委員 私も甲案に対して,乙案という新たな選択肢を御用意いただきまして,乙案の方であれば迅速な裁判への実現の可能性というのはかなり高まるのではないかと思っております。やはり巻き込まれた訴訟において迅速にといっても,実際に難しい面も多いと思いますけれども,当事者双方が紛争解決に前向きな姿勢があるパターン,共同申立てというスタイルであれば,この乙案というのは実現可能性もあり,また弊害も少ないのではないかとは思っております。   ただ,若干杞憂かもしれませんけれども,共同申立ての実質というのがどれほど問われるのかといったことについては多少疑問がございます。企業間取引にしても,定型約款に基づく取引というのが非常に多いわけですが,そういった標準的な規定の中に紛争解決条項として,こういった新たな訴訟手続の選択というのをあらかじめ定めるというような規定が入っていたりすると,本当はじっくり紛争解決に時間を掛けたいと思っても,共同申立てを余儀なくされるということが懸念されるのかと思っておりまして,本来,望んでいない新たな訴訟手続に巻き込まれるということが,あらかじめの定型約款とかによる合意によって強要されるということは,できるだけ回避すべきではないかと思っております。といいますのも,そういった紛争解決条項というのが,やはりこの新たな訴訟手続には迅速性というメリットもありますので,必ずしも他方当事者にとって不利益な条項とは言えないので,不当条項性もないと思いますので,無効な規定というふうに言うことも難しいと思いますので,当事者が本当にこの新たな訴訟手続を求めて,それを利用したいと実質的に考えているのかを裁判所が見極めるだけの手続を事前に組み込んでいただくことが必要ではないかと思っております。   私からは以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがですか。 ○阿多委員 垣内幹事から,代理人を必須とした提案に,本人訴訟の可能性の指摘がありました。   確かに訴訟物,権利であれば,最終的にどう処分するのかという判断は代理人が就いている場合であっても,本人が最終的に判断するわけですが,乙案の提案は訴訟のスケジュール,進行管理であり,そうなると,経験値がない本人にすれば次は何をするのか,今後どうなっていくのかという将来予想ができず,審理計画を立てることが難しいと考えます。通常訴訟であれば,進行も含めて,裁判所の後見的な役割が期待できるかもしれませんが,当事者がイニシアティブをもって審理計画を作成するわけで,審理計画どおりに準備できない,間に合わないという不利益を本人に負わせてよいのか。本人が新しい訴訟手続を選んだのだから仕方がないという判断もありますが,本人の不利益をいかに防ぐのかという観点からは,予想される不利益は蓋然性が高いものである以上,弁護士強制で考える必要があると思います。 ○小澤委員 恐縮ですが,今のご意見には反対です。(注2)の代理人選任事件に限るという点については,当初から反対をしています。法人はもちろん個人であっても,新たな訴訟手続の使い勝手がよいものであれば利用したいというふうに考えるというのは当然で,少額訴訟や手形小切手訴訟も同様だというふうに考えています。これらの制度は自己の権利を実現するために,特則を利用するか,一般の訴訟手続を選択するか,自己の選択に委ねられるものとなっていますが,代理人によらずとも,適切に選択がされているものというふうに考えています。   特に,先ほど申し上げた少額訴訟については,判例タイムズ社の「大阪簡易裁判所少額事件集中係における少額訴訟手続に関する実践的研究報告(大阪地方裁判所簡易裁判所活性化研究会編)」によれば,代理人が就任したらほぼ全件が通常訴訟に移行されているという記述がありますので,むしろ代理人が就いた方が利用されなくなってしまうというような感想も持っています。もちろん手続のメリット,デメリットがよく分からないということであれば,入口のところで十分な説明をすればよろしいのではないかと思いますし,その上で,本人の責任において利用すればいいのではないかと考えております。   例えば少額訴訟のように,一定の範囲で「手続の教示義務」のようなものを明記するという方法も考えられるのではないかというふうに考えています。本人訴訟の当事者であっても,解決までの期間の見通しが立つという点では心理的負担も非常に少なくなると思いますし,そのような意味でもニーズがあると思っています。   先ほど甲案をベースにというふうに申し上げましたが,手続の入口部分についてはやはり甲案が適切だと思っています。一方,皆様の意見をお聞きしまして,その後のところは甲案乙案のよいところを取り入れる形で,より当事者の利便性にかなって迅速かつ透明性を確保された新しい訴訟手続を練り上げていくということが必要なのではないかというふうに考えました。 ○日下部委員 先ほど,新たな訴訟手続を利用することが契約書などによって合意されていることで,その利用が私法上,強制される事態を懸念する御意見があったかと思います。確かに,それは私自身も問題点としては気に掛けていたところなんですけれども,乙案をベースにお話をさせていただきますと,各当事者にいつでも通常の訴訟手続に戻る権限が保障されているということであれば,契約書などで合意があったとしても実害がどれだけ生じるんだろうかという気もいたしますし,いつでも通常の手続に戻ることができるという制度であれば,この手続を使うことを私法上の契約の中であらかじめ定めようというような動機も余り生じないのではないかなという気もいたします。   ただ,合意の仕方として,この新しい訴訟手続の利用を申し立てて,通常の手続に戻らないことというのを合意してしまうということも考えられなくはありませんので,どうしても懸念として残るということであれば,この合意の私法上の効果を無効とするといった定めを何らかの形で置くということも考えられてはよいのかなと思います。   それから,訴訟代理人が就いていることを必要と見るかどうかということにつきましていろいろ御意見ありましたけれども,私は法律専門家である訴訟代理人が当事者双方に付いていることは要件として求めるべきだと考えております。先ほど来,当事者が本人訴訟している場合でもニーズはあるだろうということは,確かにそうお聞きはしましたけれども,一定の計画を立てて,それに乗る形で処理をし,どうしても主張立証がまだ不十分であると考えられるような事態になったときに,計画の見直しを申し出たり,あるいは通常の手続に戻るという権能を行使するというためには,手続についても,それから実体法に基づく訴訟物,請求原因,抗弁,再抗弁などの主要事実,あるいは間接事実や証拠の構造など,こういったものを適切に,的確に把握することができるということはやはり重要なことであって,それがなくてもやれますよというふうに言ってしまうことの危険性というのは,私は軽視してはいけないだろうというふうに考えております。 ○佐々木委員 先ほど,乙案の共同の申立てというのはイメージが分かりました。   あと甲案の方も,一次的な手続選択が原告にあるというのも,すみません,見落としていましたけれども,12ページの3の(1)のところにありましたので,失礼しました。   ただ,ここでなお書にありますけれども,甲案においても,被告側からこういう申述ができるようにするということも考えられるとありますが,ちょっとこれは是非お願いをしたいなと思いましたので,ちょっと発言させていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○笠井委員 今,議論になっている10ページの(注)の話なんですけれども,まず(注2)に関して,双方に訴訟代理人が選任されていることを必要とするかということなんですが,これは先ほど乙案がいいのではないかというお話をしましたので,乙案を前提にすれば,垣内幹事と全く同じですけれども,これは必要ないのではないかと考えております。そもそも乙案の方は,特別な手続というほどのことはないというところもありまして,審理計画を変更するといったようなことについて,裁判所も入ってやるということも含めて手続が進められるということであれば,わざわざ(注2)のような,訴訟代理人が付いていないといけないということまでは必要ないと考えました。   それの流れで,これはちょっといろいろと議論があるかもしれませんが,(注1)の消費者紛争を除く,あるいは個別労働関係紛争を除くということについても,乙案であれば,それはあえて外すことはないのではないかと考えております。先ほどの約款の関係のことはなるほどと思いましたけれども,手続が始まった後の合意で,それを義務付けるといったようなことについて,やはり一定,日下部委員もおっしゃったように規制をしなければいけないのかもしれませんけれども,そういうことを前提に,(注1)についても,こういう限定は乙案であれば必要ないと考えております。労働審判についてよく承知しているわけではありませんけれども,労働審判のメリットは,それはまた別にあるわけでありまして,そちらから何か,事件をこちらに取られるというほどの心配は余りする必要はないというのは,感覚的なものですけれども,思っております。 ○山本(克)委員 訴訟代理人の件なんですけれども,入口のところの専門的判断の必要性というところにかなり焦点が絞られているような気がしましたが,どなたか裁判官の方がおっしゃっていましたように,その後の進行について,やはり専門家が関わらないと所期の目的を達成しないのではないかという観点も取り入れた上で議論しないと,入口のところだけ考えていたらうまくいかない可能性もありますので,その点ちょっと,問題点を共有していただきたいなという感じがしました。   それと,消費者うんぬんという除外事例ですけれども,これは訴訟物との関係で,消費者であり事業者であるということを意味しているんでしょうか。消費者契約法は契約との関係で,相対的に消費者,事業者というのを決めているわけですから,およそ消費者であって事業者であるという二つの顔を持った人はいるわけですよね。ですので,ここの除外の仕方というのがもう一つよく分からないなという印象を持っていますので,後者の点については事務当局のちょっと御説明をお願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局から御回答いただけますか。 ○波多野関係官 波多野でございます。   御質問の点は仲裁法の条文を意識して,ここは借用してきたところでございまして,恐らく対象の法律関係を前提にして,消費者かどうかというところを考えているのかなと思っておりましたので,それ以上の意図はないというところでございます。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,よろしいですか。 ○山本(克)委員 阿多委員が何かこの辺を心配しておられたのは,今のを確認できたことで私は十分だと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○富澤幹事 今の山本克己委員の御意見とほぼ重なるのですが,新たな訴訟手続を設けるのであれば,訴訟代理人の選任を強制する必要があるのではないかと思っております。   その理由としましては,山本克己委員からも御指摘がありましたとおり,この甲案,乙案のいずれにつきましても,裁判所と当事者の間で審理計画を策定した上で,適切な主張や証拠を選別して提出をしていただき,期日において口頭で議論しながら充実した審理を行うことになりますので,それを行うためには,業として訴訟活動を行う訴訟代理人の選任が必要ではないかと考えております。個人的には,商事法務研究会の民事裁判手続等IT化研究会に参加していたこともありまして,甲案に親和的ではありますけれども,甲案,乙案のいずれの場合においても訴訟代理人の選任というのは不可欠であると思っております。   また,佐々木委員からも御指摘があった点ですけれども,甲案を前提としても,原告の方で新たな訴訟手続による審理を選択して被告が同意をするというパターンもあれば,逆に被告の方から選択して原告が同意するパターンもありますので,両方のパターンを認めた方がいいのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○笠井委員 1点だけ,今の山本克己委員と富澤幹事に対する質問をしたいんですけれども,147条の3の審理計画についても,訴訟代理人が,弁護士が要るという,そういうふうに変えるべきだということまで含む御発言でしょうか。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,答えられますか。 ○山本(克)委員 私はどちらかにコミットしているのではなくて,そこの論点もきちんと踏まえた上で議論すべきだということだけ申し上げたので,結論は,ずるいですけれども,何も持っておりません。 ○笠井委員 ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 富澤幹事は何かありますか。 ○富澤幹事 個人的には甲案に親和的な意見を持っていますので,甲案のように証拠を選別し,即時に取り調べることができる証拠に限ることが可能となれば,訴訟代理人の選任を強制することは当然に必要だろうと思っています。仮に,乙案であったとしても,個人的には,先ほど申し上げたとおり,審理計画を定めたり,デフォルトルールではありますが,期間が法定されている中で審理を行っていくという意味では,訴訟代理人が選任されていた方がいいと思っております。このことを更に突き詰めていくと,現行法の下でも訴訟代理人の選任が強制されていた方がいいということになろうかと思いますが,その点については様々な御意見があろうかと思います。 ○大坪幹事 丙案についてですけれども,私もこの丙案については反対いたします。   これまでの議論で,現在の民事裁判に問題がないというふうにお考えの御意見の方は少なかったように思います。実際,民訴の147条の3の審理の計画は定められていないというのが現実でございますし,私も準備書面が期日に提出されないという問題を指摘させていただきました。ですので,仮にこの中間試案に丙案というものが残るということでありましたら,例えば必要に応じて現行の規定を改正するなどして,新たな民事訴訟法で,次に関する規律を設けないというような書きぶりにしていただく方がいいのではないかと思っております。 ○青木幹事 ありがとうございます。   前回,審理の計画を定めることで十分ではないかということを申し上げたのですが,今回,乙案を示していただきまして,甲案の特徴がよく分かりました。   甲案においては,原告主導による手続選択と,それから証拠制限と,それと対応して判決に対する異議申立てというのが,この辺りに特徴があるのかなと思います。両当事者の積極的な同意が,そのハードルが高いという御指摘がありましたが,それはそのとおりだと思いますけれども,やはり当事者の意欲がないと,なかなか審理の計画に沿った手続というのもうまくいかないのではないかなとも思います。少なくとも甲案の証拠制限をするのであれば,少額訴訟とか手形訴訟はありますけれども,通常の事件ではやはり当事者の積極的な同意が必要ではないかなと考えております。また,判決に対する異議申立てを認めると,やはり結局時間が掛かってしまいますので,こういった観点から,方向としては乙案の方向に賛成です。   それから,訴訟代理人がいることが必要かという点ですが,これは山本克己委員が指摘されたとおり,手続選択主体としての適格というのと,審理の計画に従った手続遂行の適格の二つの点が問題になるとは思います。特に二つ目の観点から,訴訟手続に習熟していないとうまくいかないのかなとは思いますが,本人訴訟について,迅速な裁判を受ける可能性を一律に排除するということにも問題があるかと思いますので,乙案の共同の申立てを前提に,その本人の適格性については乙案の5の(1)イにある,裁判所による,この手続を利用することの相当性の判断で対応するということも考えられるのではないかなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 いろいろまた御議論いただいたところなので,思い当たるところを申し上げたいと思います。   (注1)で挙げられている消費者や労働者の問題ですけれども,確かにこれは仲裁法の附則を参照して作られているものなんですが,あれは仲裁合意が前提としてあって,それの効力を定めるという形になっているので,確かにこの規律をそのままこちらの方に持ってきてうまくワークするのかどうかということで考えると,ちょっと難しい面はあるのかなというふうにお話をお伺いしていて思いました。   それから,2点目ですけれども,乙案において不服申立ての方法として特段の規定を設けないとする理由が,主張及び証拠の制限をしないためであると,こういう説明が部会資料ではされていると思います。しかし,乙案であっても,当事者の合意があれば,例えば準備書面の提出のサイクルなり回数なり,あるいは証拠の種類を制限するということを可能としてもよいように思いますし,少なくとも審理期間をスケジュールをもって定めるのであれば,主張及び証拠の制限をしないという理由が適切であるかは,私は疑問を感じているところです。むしろ乙案においては,各当事者にいつでも通常の訴訟手続に戻る権限が保障されているということを,不服申立ての方法として控訴でよいということの理由として理解すべきではないかと考えました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。おおむね議論は出たと見てよろしいですか。 ○日下部委員 すみません,せっかくですので。   細かいところで少し言い漏らしがありましたので申し上げたいと思います。   部会資料の13ページのところで,審理計画を更に実効性のあるものにするための方策として,訴状及び答弁書における必要的記載事項の拡充が挙げられておりますが,これをルールにしてしまいますと,実際上,新しい訴訟手続の利用を訴え提起前の段階で当事者間において実質的に合意が成立しているという場合に限ることになってしまうと思いまして,この制度を利用しにくいものにしてしまうのではないかと思いますので賛成いたしかねます。   一方,攻撃防御方法の早期提出というルールについて,部会資料の14ページで言及されております。時機に後れた攻撃防御方法の却下の制度における影響を踏まえる必要があると思いますが,この点については積極的,前向きに考えていきたいと思っています。   あと13ページで,ノンコミットメント・ルールを制度的に保障する観点から,裁判上の自白の成立しない口頭審理のための期日の新設というのも入っておりますが,これは先ほども御議論の中でありましたけれども,通常の弁論準備手続などの争点整理手続の中でのノンコミットメント・ルールに基づく自由な口頭議論を逆に妨げてしまう危険もあるように思われまして,この点については軽々に賛成するということは私は致しかねるところであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか。 ○富澤幹事 今の日下部委員の御指摘に関係しますが,仮に乙案が採用された場合であっても,審理計画を早期に定める形になっておりますので,やはり訴状や答弁書の中で予想される争点や争点に関連する重要な事実,争点ごとの証拠,交渉の経緯等を必要的記載事項にしなければ,裁判所において審理計画を立てるのは難しいのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   おおむねよろしいでしょうか。   本日は,最初に申し上げたように,この点については実質第一読会に近いことだったと思います。   甲案,乙案,それぞれについて御支持があった,数としては乙案の方が多かったような印象もありますけれども,いずれについても御支持があった。また,さらに,その両方について慎重に考えるべき,丙案を意味しているかどうかはちょっと分かりませんが,慎重に考えるべきだというような御意見も頂いたかと思います。   また,(注1),(注2),それぞれについても賛成,反対,それぞれから御意見があったということですので,この資料から前に進んだのかどうかというのはちょっと自信は必ずしもないところではありますけれども,少なくとも議論が深まったことは間違いのないところであったかなと思います。   今日の御議論を踏まえて,中間試案に向けて,事務当局の方で更に詰めて御検討を頂ければと思います。   ということで,あと「和解に代わる決定」が残っておりますけれども,既に予定されていた時間になってしまいましたので,もう何かおなじみになってしまいましたが,ちょっとこの点は積み残しということで,本日の審議はこの程度にさせていただければと思います。   最後に,次回議事日程等について,事務当局から説明をお願いします。 ○大野幹事 次回は,12月25日の金曜日でございます。次回以降開始時刻は30分早めさせていただき午後1時からとし,終了時刻は30分後ろ倒しをさせていただいて,午後6時頃までということとさせていただきます。   場所については,改めて御連絡を差し上げます。   次回は,中間試案のたたき台をお示しできればと考えておりますが,先ほど部会長からもお話がございましたとおり,本日も積み残しが生じましたので,部会資料10を持参いただくようにお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,これをもちまして法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第6回会議は閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。 -了-