法制審議会 民法・不動産登記法部会 第25回会議議事録 第1 日 時  令和3年1月26日(火)自 午後1時00分                     至 午後2時08分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題 民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第25回会議を始めます。   本日は御多忙の中御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日は,部会資料59,60,61を取り上げて審議をお願いすることになります。   本日は,市川委員,潮見委員,増田委員,衣斐幹事,木村幹事が御欠席です。   事務当局から配布資料の確認を差し上げます。 ○小田関係官 今回,部会資料59から61までを事前送付しております。ただいま御案内差し上げた資料について,お手元にないようでしたら,チャット機能などを用いて事務局にお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 本日の資料は,御案内申し上げたとおりでございます。   審議の内容に進むことにいたします。部会資料59をお取り上げください。構想されている要綱案の「第1部 民法等の見直し」に当たる部分のうち,まず初めに,皆様に「第1 相隣関係」についてお諮りをいたします。   「第1 相隣関係」の部分について,御意見がおありの方は御発言くださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。部会資料59の第1の4,「他の土地等の瑕疵に対する工事」の項で,これまでの提案が改められ,今回,他の土地等の瑕疵に対する工事に関する新たな規律は設けないこととする,という提案となっていることにつきまして,次のとおり意見を申し上げたいと思います。   これまで,物権的請求権に基づき土地所有者が自ら他の土地上の原因の除去や予防行為をすることができるか否かについては,消極的な見解も含め,様々な議論がございました。また,緊急避難や正当防衛についても,それによって行為者が免責された判例の蓄積はないに等しい状況でございます。したがいまして,結果的に法令遵守意識が強い事業者ほど,自己の土地や土地上で供する事業に損害が及ぶ事態が差し迫っている場合であっても安全サイドで対応せざるを得ず,瑕疵ある土地の所有者が所在不明であったり,不合理に対応を拒んでいたりするために同意を得られないような場合には,手を付けられないまま事態を静観し,災害等によって問題が顕在化して初めて事後的に対処せざるを得ないという状況にございます。特にインフラを担う事業者から,そのような形で対応が遅れることで重大な事故が発生し,ライフラインが長期にわたって寸断される事態であるとか,あるいはそのライフラインを利用する人々や,インフラ施設の周辺の土地を利用する人々の生命・身体に甚大な影響が及ぶような事態は何としても避けなければいけないという意見が強く出されておりまして,本部会においてもこれらの問題意識をその都度お伝えし,前回の部会資料までは,そういった点にも一定の配慮を頂いた上で,規律を設ける方向での提案を頂いていたものと理解しております。   今回,部会資料では,先ほど申し上げたとおり,新たな規律を設けないこととする,という提案となっておりまして,補足説明では特段の規律を設けないこととした理由についても御説明いただいておりますけれども,新設される土地管理制度とか,そういった裁判所の関与を前提とした制度だけでは対処できない場合があるということは,これまで再三申し上げてきたとおりでございます。また,緊急避難や正当防衛といった一般的な規定によるという説明も頂いておりますが,これだけではこれまでと何ら状況は変わらないと考えております。   経済界といたしましては,やはりここで何らかの規律を明文化していただくということに大きな意義があると考えておりましたし,前回の部会資料56で提示された要件では部会の全面的な賛同を得られないということなのであれば,更に要件,特に実体的要件のところを絞ってでも規律を盛り込むことを御検討いただくことが,将来の土地の瑕疵に起因した重大な損害の発生を少しでも減らすことに資するのではないかと考えております。   部会最終盤ですので,このようなタイミングでまたお願いをするということになってしまい,大変恐縮ではございますが,いま一度ちょっと御検討いただけないでしょうかというところで,意見及び方針を確認させていただくための質問という形で申し上げた次第です。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 藤野委員,今,質問ということもおっしゃったでしょうか。 ○藤野委員 質問といいますか,要件を修正してでも規律を残すことを御検討いただけないでしょうか,ということで改めて方針をお伺いしたいと思います。 ○山野目部会長 かしこまりました。   御意見をおっしゃっていただいたものと受け止めますけれども,ややお尋ねに関わる部分もあったかもしれません。事務当局の方で何かあればお話しください。 ○大谷幹事 ありがとうございます。今藤野委員が御指摘になったとおり,これまで,他の土地等の瑕疵に対する工事に関して規律を設けてはどうかという形で御提案を申し上げてきたところでございます。他の土地等の瑕疵に対する工事についての規律を,物権的請求権が認められるような場合に適用される新たな相隣関係上のルールとして導入してはどうかということで御議論いただいたところですけれども,前回中村委員から要件を絞ることについての御指摘もありましたが,立法の趣旨を害さないような形で適切な要件を立てることはなかなか難しいのではないかということは,この補足説明に書いてあるとおりでございます。   一方で,物権的請求権が認められるような場合ということが前提であり,御指摘のあった緊急性のある事態にも,物権的請求権を行使し,民事保全などの手続をとった上で救済を得ることは,当然現行法でも可能だろうということがございます。また,新たな規律として管理不全土地管理,所有者不明土地管理といった別の仕組みも入れるということもございますので,総体的に他の土地等の瑕疵に対する工事に関する新たな規律を設ける必要性は下がってくるのかなというところもございました。要件を絞るのはなかなか難しい,また,ほかの制度で救済を得ることは可能だというようなところから,この新たな規律は設けないこととしてはどうかという形で今回お示しさせていただいたところでございます。 ○山野目部会長 中村委員の御発言を伺った後で,藤野委員におかれて御発言なさりたいことがあれば,更にお尋ねすることにいたします。 ○中村委員 ありがとうございます。日弁連のワーキンググループでは,いずれの項目につきましても,従前お伝えしてきましたような修正意見は残っておりますものの,賛成ないしは反対しないという意見が多数となりました。その上で,1項から3項につきまして,しかるべき時期に通知ないしは催告の要否及び自力執行の可否について典型例となるような事例を示しての分かりやすい整理,説明をお願いしたいという要望がございました。 ○山野目部会長 御意見と要望を承りました。   藤野委員におかれて,事務当局の発言と中村委員の御発言などを伺った上で,何か御発言になられることがおありでしょうか。 ○藤野委員 ありがとうございます。事務当局の御説明につきましては,理解はしておるつもりですけれども,やはりこれはもう事業者からのヒアリング等で出てきている話として,例えば緊急避難の規定を活用できないかという点に関しては,事業者が顧問弁護士に相談に行っても,確実に倒れてくるくらいの状態,例えば自分たちのインフラ設備のところに周囲の木であるとか,あるいは建造物とかが倒れてくるような状態で,それによって大きな事故が発生することが懸念されるような場合であっても,かなりぎりぎりといいますか,もうほとんど確実に倒れてくる寸前のような状態にならないと対処できない,というような見解を言われてしまうことが多いという前提があるわけでして,それが今の法解釈として妥当なのかということはともかくとして,実務的にはやはりかなり安全サイドに立ってやらざるを得ないという状況がございます。確かに補足説明にも書かれているように,規定を置いた場合に,それが今までできていたことができなくなるかのように解釈されてしまうのはまた問題だというところはあるのかもしれませんが,飽くまで新しい規律を確認規定として位置付けた上で,一定の範囲で認められる,ということが明文化されることによって,真っ当な事業者がきちんと自分たちで対処できるようになるということ,そういう余地が生まれるということには意味があることなのではないかなと思っておりました。実際には,対処できるということになれば,それはそれでまた別の責任は発生するわけでございまして,今までならもう不可抗力だからしようがないねという話になっていたところも,きちんと対処すべきであったと言われる場合というのは当然あり得るかと思いますが,それでもなお,規定ができれば責任を持ってきちんと対処できますという声が,事業者サイドからも出ているということは申し上げておきたいと思います。   今の時点では以上です。 ○山野目部会長 御意見を承りました。   ただいま話題になりました他の土地等の瑕疵に対する工事のところでもよろしゅうございますし,そのほかの点についてでもよろしいですから,相隣関係について引き続き御意見を承ります。いかがでしょうか。   相隣関係のところは,ほかに御発言はおありではありませんか。   そうしましたらば,後で部会資料59の全体について,言い漏らしの意見等がおありでなかったかどうかをお尋ねする時間を設けますから,ひとまず先に進むことにいたします。   「第2 共有等」のところについての御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでは,若干の反対意見もありますが,「第2 共有等」のいずれの項目についても賛成するというのが多数意見です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。 ○今川委員 今川です。よろしくお願いいたします。   5の変更・管理の決定の裁判の手続に関する補足説明,8ページの最後の部分です。ある共有者が所在不明であるということを裁判所が判断するに当たって,申立てをする共有者が他の共有者に対して不明だと言われている共有者の所在を知っているかどうか確認しても,なお所在を知ることができなかったということを立証する必要があると書かれておりまして,これは具体的には,例えば他の共有者の陳述書を付けるというようなことなのでしょうかという質問が一つと,制度はちょっと違いますが,例えば共有者の一部が所在不明の場合に不在者財産管理人を選任するというときも,他の共有者に確認したけれども分からなかったということを立証しなければならないということになるのでしょうか。その2点,質問です。 ○脇村関係官 関係官の脇村です。今頂いた最初の件につきましては,そういった方法も採り得るのかなと思います。前回までの御議論を踏まえて,当然聞いたら分かるようなケースは,要件を充たさないだろうということを前提に,あとはそれをどう立証していくかということは,陳述書も一つの方法ではないかと思います。最終的な認定は,裁判所の判断に懸かってきますが,あり得ると思います。   不在者財産管理につきましても,恐らく現在の実務についても裁判所の適切な判断の下になさっていると思いますが,不在者であると認定する際に,共有者に限らず,知っていそうな人も知らないかどうかというのも一つ立証することはあり得るのかなと,もちろんどういったケースかというのは事案ごとだと思いますが,あり得るのかと思います。そういう意味では同じようなことはあるのかもしれませんが,ただ,必ずしないといけないかどうかは,最終的には本当にその人が知り得ているかどうかとか,そういったことを踏まえて考えることだと思います。 ○山野目部会長 今川委員,いかがでしょうか。 ○今川委員 ありがとうございます。 ○松尾幹事 ありがとうございます。部会資料59,第2の2の共有物の変更行為の②と,同3の共有物の管理の②について,確認したいことがございます。まず,共有者の一部に不明者がいる場合には,変更については当該不明者を除いた他の共有者の全員の同意で変更をすることができる旨の裁判をすることができるというのが2の②です。それから3の②は,不明共有者がいる場合には,その他の共有者の持分の過半数で管理行為ができるという裁判でございます。この両者における裁判の効力についての確認です。   前回,この裁判を受ける方法が,変更行為または管理行為として一般的・抽象的に裁判を受けることができるのか,それとも個別の変更行為または管理行為ごとに裁判を受けることになるのかが議論になりました。特に前者の形で裁判が行われた後,個々の変更行為や管理行為が行われる前に,不明共有者が現れた場合に,この裁判について何らかの取消しのような手続をすることができるか,できないか,あるいは共有者が現れた以上はもうその共有者の同意なしには変更はできない,あるいはその共有者の持分も加えて管理行為に必要な持分の過半数を計算して管理行為をすることになるのか,この裁判の効力をどう捉えるかということについて確認をさせていただきたいと思います。   ひとまず以上です。 ○脇村関係官 ありがとうございます。基本的には短期間の間にされることを想定していますので,先生のおっしゃったようなケースは正直言って想定はしていないところです。ただ,もちろん事案としてそういった事例があり得るというところだと思いますので,そこは解釈論として取消し,変更,あるいはもう知り得たにもかかわらずそういったことをやった場合に,信義則違反などの一般条項による対応,そういったことは考えられるところだと思います。規律として何といいますか,レアケースといいますか,そういったケースについて置くのは難しいと思いますが,今うかがった先生の御意識を踏まえた解釈がされていくんだろうというふうに認識しております。 ○山野目部会長 松尾幹事,いかがでしょうか。 ○松尾幹事 ありがとうございます。今,脇村関係官から御説明いただきました解釈の可能性について,了解しました。ちなみに,部会資料59,第2の8の所在等不明共有者の持分の取得,同9の所在等不明共有者の持分の譲渡についての裁判は,権利の帰属自体に変更を生じさせる効果を生じますので,その裁判がされた以上は,後で共有者が現れてもその後取消し等の問題は生じないと思うわけですけれども,同2および3の共有物の変更行為・管理行為の裁判については,裁判の後に,かつ管理行為,変更行為が行われる前に不明共有者が現れた場合の扱いをどうしておくのかということについて,考えておく必要があるかと思いました。   それに加えて,この変更行為または管理行為についての裁判の効力に関して,例えば,変更行為についての裁判が行われ,不明共有者を除く共有者の同意によって借地権が設定されたときに,その効力が不明共有者にどういうふうに影響を与えるか,前回,管理費用については,民法253条1項により,この不明共有者にも管理負担が及ぶということを確認させていただきました。その一方で,借地権を設定した場合の賃料債権についてはどういうふうに考えるべきか,飽くまでもこの裁判は不明共有者の持分には影響しないと考えて,賃料債権も帰属せず,部会資料59,第2の1の①の一種の不当利得の返還請求として,持分を超える使用の対価の償還請求をすればいいというように考える一方で,飽くまでも不明共有者の持分には影響しないものと理解すれば,たとえ裁判が下された後でも,変更行為または管理行為の前に不明共有者が現れた場合は,それが不明共有者の管理権自体を剥奪してしまうわけではないので,その不明共有者が現れれば,その者を除いて変更行為をすることはできないと解釈すべきか,確認させていただきたいと思いました。   少し私の理解があやふやで混乱しているかもしれませんけれども,その辺りの整理をさせていただきたいと思って質問いたしました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 松尾幹事から補足で頂いた説明,御意見を承りました。ありがとうございます。   引き続き,共有についての御意見を承ります。 ○中田委員 6ページの3,共有物の管理の②について御質問です。   ②にはアとイがありまして,どちらも共有者がという主語で始まるわけですけれども,アの方の共有者というのは,他の共有者を知ることができない主体ということで,不明である共有者以外の共有者全員がという意味ではないかと思います。それに対して,イの共有者がというのは,催告をしたある1人の共有者がという意味ではないかと思います。そうしますと,アとイとどちらも共有者がという言葉で始まるのですが,その内容が違っているのだとすると少し紛らわしいような気がいたしました。そこで,もし可能であれば,条文化の際にでも工夫していただければいいと思いますが,いかがでしょうか。 ○脇村関係官 関係官の脇村です。今の先生のお話の関係のちょっと私の前回からの説明を,今回作るに当たって少し説明させていただきますと,前回,申立人の共有者以外の人が知っているケースではどうするんだという御議論がありました。恐らくその議論は,ここでいうアの共有者というのは,申立人,申立てをしたというんですか,請求をした,裁判所に申立てをした共有者を指しているんですかねということを前提に,それだとするとほかの人との関係はどうなんだということで,いろいろ御議論があったのかなと思っています。私改めて考えますと,先生おっしゃるとおり,このアの共有者というのは,フラットに書いていますので知らなかった人そのものなんだろうと思いますが,一方で,請求をする人はその共有者のうちの知らなかった人の一人になりますので,併せて読むと,読み方としては申立てをした共有者と読んでもいいのかなと思っているところです。ただ,そういった場合であっても,ほかの人が知っているケースについてどうなんだという問題が生じるということで,今回補足説明の方に,そこについては,ほかの人が知り得たケースについてはきちんと立証しないといけないということで書かせていただいたところです。先生の問題意識も踏まえつつ,条文化に当たっては工夫できれば工夫させていただきたいと思いますが,差し当たりはここでいう共有者というのは,そういった説明もあるのかなと考えているところでございます。 ○山野目部会長 中田委員,お続けください。 ○中田委員 ありがとうございました。そうしますと,前回の御説明と今回の御説明と少しニュアンスが違うような気もするのですけれども,このアで言っている共有者がというのは,申立てをした共有者がという意味で,その場合に,ほかの共有者が知っているかどうかについては「知ることができず」ということの解釈で賄われると,そういうことになりましょうか。 ○脇村関係官 関係官の脇村です。ありがとうございます。そういうふうに前回頂いた意見をちょっと私なりにこの間整理した結果,先生おっしゃったとおりの整理もできるのではないかなと,それによって前回出た問題意識にもこたえられるのではないかなと考えておりまして,すみません,そういう意味ではちょっと私が変遷しているような気もしますが,そういった説明で今回は改めて考えたところでございます。 ○山野目部会長 先生おっしゃったとおり,というのは,中田委員の二度目の御発言で示唆された理解のとおりという意味でしょうか。 ○脇村関係官 はい,そうです。 ○中田委員 前回と今回の御説明で私は理解いたしましたが,依然として紛らわしいことだと思いますので,何らかの方法で分かりやすくできればと思います。これはお願いだけでございます。 ○山野目部会長 中田委員の御要望を承りました。ありがとうございます。   引き続き,共有についてお尋ねをします。いかがでしょうか。   今の段階ではよろしいでしょうか。   それでは,引き続き,お諮りをします。続きまして,4つの制度,所有者不明土地管理命令,所有者不明建物管理命令,管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令,これらの制度について審議をお願いします。御意見のある方は仰せくださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 「第3 所有者不明土地管理命令等」につきまして,日弁連のワーキンググループでの多数意見は,いずれの項目についても賛成です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。引き続き,先ほど申し上げた4つの制度についての御意見を承ります。いかがでしょうか。   今の段階ではよろしゅうございますか。   それでは,差し当たり進めることにいたしますと,第4の相続等に関わって三つほどのお話,相続財産等の管理,相続財産の清算及び遺産分割に関する見直し,これらについてお諮りをいたします。御意見がおありの方はおっしゃってくださるようにお願いします。いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございます。第4の1から3の項目につきましては,いずれも賛成が多数でした。その上で,1の(3)の不在者財産管理制度及び相続財産管理制度における供託の新たな規定は,現行法の下で選任された管理人にも適用されるのかを確認させていただきたいということが1点,それから,3の(1)の期間経過後の遺産の分割における相続分の規定は,国民に大きな影響を及ぼす定めですので,改正法施行時点で既に相続が開始している場合の新たな規定の適用関係について,経過措置が決まった後に分かりやすい説明と周知をお願いしたいという要望がありました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。事務当局の考えを尋ねてみようと思いますけれども,法制審議会において,経過措置についてはここで御決定いただく事項としては取り上げないということでおおむねの運用をしてきたところでございますけれども,それとともに,中村委員からも御示唆がありましたが,国民生活に影響が大きい経過措置の事項につきましては,ここで御論議を頂いたところを踏まえて政府として大いに参考にしてもらうということも望まれるところであります。中村委員のお話はそのような観点からの御助言,御提言も含まれていたと受け止めます。現段階において事務当局が抱いている所見がありましたならば,御紹介くださるようにお願いいたします。 ○脇村関係官 関係官の脇村でございます。不在者財産管理のところについて御説明させていただきます。   今の規律は,内容としては国民にとって便利な方向でございますので,基本的にいうと,こういったものについては幅広く適用する方向で考えていきたいと考えているところでございます。今先生から頂いた御意見を踏まえながら,引き続き当局としてもその方向で考えていきたいというところでございます。 ○山野目部会長 中村委員,いかがでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございました。今お答えいただきましたのは,1の(3)に関して,供託に関する規律についてでしょうか。 ○脇村関係官 そうでございます。 ○中村委員 あと,相続に関して,3の(1)の方について,お差し支えのない範囲でお話しいただければと思いますが,いかがでしょうか。 ○大谷幹事 ありがとうございます。遺産分割に関する見直しのところも,先ほど御指摘にあったような相続開始後既に10年たっている場合はどうするのかという,経過措置に関係するところを検討する必要があると思います。新法施行時に相続開始後既に10年経過しているケースについて,新法が施行されてから10年丸々また待つのかという問題があるので,経過措置については今後検討していきたいと思っております。いずれにしても,御指摘のあったように,国民生活に非常に関係するところではございますので,きちんと周知を図っていく必要があるだろうと思っております。新法が成立し,またそれが施行されるのがいつになるのか,それはある程度先になろうかと思いますけれども,その期間も踏まえながらきちんと周知を徹底していきたいと考えております。 ○山野目部会長 御注意を受け止めて,適切な経過措置を定めた上で周知,広報に努めるという事務当局の決意表明がございましたが,中村委員におかれましては,本日のところはこのようなことでよろしゅうございましょうか。 ○中村委員 はい。ありがとうございました。結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。引き続き,相続に関してお尋ねをいたします。いかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,お約束いたしましたとおり,部会資料59の全体につきまして,改めて御意見がおありの方の御発言を承ります。いかがでしょうか。   それでは,藤野委員に御意見を確認の意味でお尋ねを差し上げます。第1の相隣関係,4の他の土地等の瑕疵に対する工事のところにつきまして,藤野委員のところに寄せてくれた産業界の見方等も御紹介を頂きまして,大変参考になりました。前回会議までここのところの法制の在り方について,委員,幹事において御議論を頂き,お悩みを頂いてきたところであります。藤野委員が仰せのとおりに,産業界の要望を受けて何らかの規律を設けるということが可能であれば,それをしたいというふうに感じるところでございますけれども,藤野委員の御発言の中にありましたように,規定を設けることによってかえって今までできてきたことができなくなるという解釈を招くおそれがあるというところを,遺憾ながら本日段階の部会資料においてはどうしても克服することがかないませんでした。それで,ただいまお見せしているような部会資料の内容になってございます。ここのところについて,何か藤野委員から改めて御助言や御意見等がおありでありましたならば承っておきたいと考えます。 ○藤野委員 ありがとうございます。私もこれまでずっとこの議論に参加させていただいておりましたので,様々な角度からの意見があり,立法化するには難しいところがあるということは重々承知しております。今,山野目部会長がおっしゃられたようなこれまでの議論の経緯といいますか,物権的請求権の考え方から始まって,本来であれば今の法制度の下でも,もっとできるはずのことがあるのではないか,というようなところをもう少し世の中に広く知らしめていただくというか,仮に今回このような形で元々予定されていたような条文化ができなかったとしても,そういう背景があるということを何らかの形で今回の法改正を機に知らしめていただくような取組をしていただけるのであれば,改正項目に入らなかったとしても,これまでの議論の一つの結果として,また次につながる何かになるのではないか,と考えておるところでございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。よく分かりました。   ただいまの点について,ほかに委員,幹事からの御意見はおありでしょうか。   特段おありではありませんか。   そうしましたならば,この際,一言申し上げます。中間試案において管理措置請求権と称していた時期から今回会議に至りますまでの間,委員,幹事の皆様におかれましては,他の土地の瑕疵に対する工事に係る規律を設けることの適否につきまして,熱心な御審議を頂きありがとうございます。空き地や空き家の問題に関する近年の研究が明らかにしたところによりますと,管理が不全で困った問題を起こす事象としては,ごみの散乱,樹木の管理不全,雑草の繁茂,そして不適切な施錠などがあるとされております。これは最近出た住宅土地経済という雑誌に,馬場弘樹さんという方が載せている論文で明らかにしていることであります(「多面的な要因からみた空き家の管理不全傾向」住宅土地経済118号〔2020年秋号〕)。これらの事象に実際に直面する場面が少なくない事業者の皆さんにおいて御労苦がある様子も,藤野委員からこの部会の調査審議におきまして再々御指摘,御紹介を頂いてきたところであります。ここまで進められてきた調査審議を踏まえ,ただいま藤野委員と私との間で意見交換をさせていただいた観点も含めて,次回2月2日の第26回会議に向けて,いま一度悩んでみるということにいたします。   いずれにしましても,ここまで進められてきた調査審議は決して無益であったものではなく,今後は構想が固まりつつあり,ただいま御審議いただきました管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令の制度がこれらの事象に対し,どのような実効的な対処を用意することができるかという観点から,実務の工夫を考える際の出発点にするべき議論をしっかり残していかなければならないと考えますし,反面におきましては,物権的請求権とそれを本案とする保全処分の在り方につきまして,解釈理論が深化を遂げていくに当たり,やはりここの部会で行われた調査審議が重要な礎を提供しなければならないものと考えます。他の土地の瑕疵に対する工事に係る規律の論点について,多様な観点からここまで御意見をお出しいただきましたことに改めて御礼を申し上げ,次回会議に向けての審議について引き続き御協力を賜りますようお願い申し上げます。   ほかに部会資料59について,委員,幹事から補足として御発言いただくことがおありでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,先に進むことにいたします。   部会資料60をお取り上げくださいますようにお願いいたします。   部会資料60は,全体として構想されている要綱案の「第2部 不動産登記法等の見直し」に当たる部分でございます。第1から第6までお示ししているところでございますが,初めに,第1の所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組みの部分について御相談を差し上げます。この部分について御意見を仰せくださるよう,お願いいたします。いかがでしょうか。 ○今川委員 今川です。全体でよかったですね。第5でもよろしいんでしたか。 ○山野目部会長 第1の相続登記の義務付けのところをお願いします。 ○今川委員 間違えました。申し訳ありません。 ○山野目部会長 今日は重要な会議ですから,余り飛ばさないで,一つ一つ丁寧に御意見を伺っていくことにいたします。 ○今川委員 すみません。 ○山野目部会長 今川先生がかっ飛ばしたい気持ちも分からなくはありませんけれども,そういうふうにせかないで丁寧に審議を進めたいと考えます。第1の部分についてお話を下さい。 ○今川委員 第1についてはありません。 ○山野目部会長 分かりました。ありがとうございます。   橋本幹事,お待たせしました。 ○橋本幹事 ありがとうございます。第1について,意見とそれから要望を幾つかと,あと確認のための質問をさせていただきたいと思います。   意見についてですが,前回まで弁護士会としては,この相続登記の過料制裁を伴う義務化に関しては消極的な意見を申し上げてきました。しかし,最終回まで近づいてきましたが,今回の資料の補足説明でも,危惧される過料通知の手続についての不公平というものを避けるために法務省令に規律を設けるということも明記されています。それから,正当な理由がない場合についての具体的な類型についても通達で明確にするということで,私たちが心配していた点がかなり払拭された内容になったと考えますので,これ以上消極的な意見は申し上げません。これ以上反対はしません。これが意見です。   次に,要望ですが,まず4点あるんですが,1点目についてですが,この改正法ができた段階で既に相続が開始しているケースへの適用,先ほどの経過措置の話と同じなんですが,そこについては経過措置を適切に定めて慎重な検討を再度お願いしたいという要望,それから,2点目の要望としましては,義務化を進めるに当たっての政策パッケージとしての登録免許税の減免措置の実現,これについては引き続き実現に努めていただきたいということ,それから,(5)の更正登記の単独申請の点,これまでに何度か申し上げてきたんですが,実務運用ではなくてやはり法律への明文での規律を検討していただきたいという要望なんですが,それが困難な場合でも,改正に伴う基本通達で厳格かつ明確に定めていただきたいということです。4点目ですが,相続人申告登記などを3年以内に義務化されるわけですけれども,国民にとっては,死亡届を提出する市区町村役場の窓口で死亡届を出すときに,亡くなった場合はこういった手続が必要ですというような手続案内書を交付している例があると思うんですが,その中に是非この相続登記関係についても必要なんですよということを明記するようなものを配布するように,市区町村,自治体への協力をお願いしていただきたいということです。   次に,確認のための質問が3点ありますが,まず1点目ですけれども,1の(1)の②なんですが,所有権の移転の登記と書いてあるんですが,対して(5)の更正登記の方なんですけれども,これは同じ場面の話だと思うんですが,こっちは更正の登記によるものということになっているんですけれども,これらは所有権移転登記と更正登記はどちらでも選択できるということでよろしいんでしょうかという確認の質問です。それから,相続人申告登記の具体的な表記方法なんですが,これはどういう表記にするか,まだ仮称なのでこれから検討されるということだと思うんですが,これは単に相続人という書き方だけだとすると,登記を見た人はその人が唯一の相続人だと勘違いしてしまう可能性があると思うので,例えば肩書として申告者相続人というような肩書を付けるというようなことは考えていますかと,考えた方がいいのではないでしょうかということ,それから,もう一つですが,2の権利能力を有しないこととなったと認めるべき登記名義人の符号の表示についての話なんですが,これは失踪宣告も含めるという前提ですけれども,失踪宣告が間違いであったということで後に取り消された場合には,法務局の方はその取消しの情報をどうやって入手されるんでしょうかと,本人から失踪していませんよというような,窓口に来てそういう申出があって初めて動くのか,それともやはり職権で情報を入手するような仕組みを何か考えていらっしゃるのかという確認の質問をさせていただきます。 ○山野目部会長 村松幹事,お願いします。 ○村松幹事 ありがとうございます。まず,御質問の点から申し上げます。3点ございましたけれども,一番最初の(1)の②のルールと,それから(5)のルールとの関係でございます。特に(5)の記載の内容の御確認ということだと思います。御指摘の方向性なんですけれども,ここで更正の登記によるものと書いてございますけれども,これは更正の登記によることができるという趣旨でございまして,通常の移転登記の形で行うことを妨げるということは考えておりません。ですので,その意味で選択可能でよろしいかという御質問でしたけれども,結論として選択可能であるということになります。要綱案における記載の仕方については見直した方がもしかすると良いのかも分かりませんので,その点は引き続き検討いたします。   2点目ですけれども,相続人申告登記の表記方法については,前回も国民に分かりやすく,この内容が伝わるようなものにする必要があるという御指摘があり,特に登記事項証明書を御覧いただくときに登記の内容についての誤解が生じないようにする必要があろうかと思います。そういう意味では,相続人申告登記に表示する者の肩書としてどういうものを付すのかというのは重要なポイントだと思っておりまして,御指摘が今ありました「申告者相続人」という肩書や,「申告相続人」ですとかそういう肩書を付すというのは,一つの対応方策として十分あり得るのではないかと,当方も考えてございます。実務の運用に当たって分かりやすい,そういった表示の方法というのは考える必要があると思っておりますので,こういったもののほかにも何か対策がないのかということは,引き続き検討する必要があると認識しております。   それから,3点目ですけれども,権利能力を有しないこととなったという方についての符号の表示に関し,現時点では,失踪宣告がされている場合にも符号を付ける方向で検討しておりますが,失踪宣告が取り消されたというケースというのも確かにあり得ると思います。こういったものがあった場合には,自分は失踪宣告をされているけれどもきちんと生存しているんだということで,失踪宣告の取消しの手続をしていただいたその御本人の方に法務局への情報提供をしていただくということは,もちろん一つの有力な方法になります。また,それ以外に住民基本台帳ネットワークシステムとの連携はしますので,それとの関係で何か情報の取得が可能になる部分があるという可能性もあるかと思います。移転がまだされていないという状況で住基の方の情報が変わると,それを基点にできる可能性はあるかも分かりません。ただ,ちょっとその辺りは細かい話もございますので,最終的にはよくよく確認しないといけないかなと思っておりますけれども,情報の出どころとして差し当たりちょっとありそうかなというのは,そういった辺りになるのではないかと考えてございます。   あと,経過措置を含めた御意見を頂いた部分,いずれも御意見を頂いております。経過措置について,施行日前に相続の開始があったケースについて,余り負担が過大にならないようによく考えてというところは御指摘いただいたとおりでございまして,また前回の部会資料でも記載しておりますけれども,その点については,主観的要件,あるいは正当な理由の整理についても慎重によく考えて作っていくということが必要だと思っております。   あと,相続登記等の申請の義務化に伴うパッケージとしての施策の中には,御指摘のとおり,登録免許税の問題は,費用負担の問題として大きいところでございますので,そういった部分について,法務省としても今年度取り組みましたけれども,来年度もまたそういった取組はしていく必要があると認識してございます。   それから,更正登記について単独申請で行うことができるという明文の規定を設けていただきたいと,しかしそれができなければ基本通達などでしっかりと枠組み,位置付けを示してほしいという御指摘をいただきました。その点については,御指摘の方向でよくよく検討したいと思ってございます。   最後に,死亡届の際の手続リストの問題です。これは御指摘のように非常に効果的だと思っておりますが,やはり今は登記申請の義務化がされていないのでリストに入れられないという御指摘がございました。この部会におけるヒアリングのときにもそういった御意見が披露されたところはあったかと思いますけれども,義務化がされた後には,そういったリストに登記の申請もしっかり載せていただくよう,法務局としてもしっかり取り組んでいく必要があると認識してございます。 ○山野目部会長 橋本幹事におかれて,お続けになることはおありでしょうか。 ○橋本幹事 よく分かりました。ありがとうございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。引き続き,第1の部分について承ります。いかがでしょうか。   また後で部会資料60の全体についてお尋ねする時間を設けますから,ひとまず進めます。   「第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」の部分について御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 ありがとうございます。第2についての意見ですが,これについても従前弁護士会としては消極的な意見を申し上げてきましたが,意見を変更しまして,これ以上反対の意見は申し上げませんというのが意見です。   要望が2点ありまして,まず施行,またこれも経過措置の話になってしまうんですけれども,以前の部会で部会長から裁判官の方との雑談でということで御紹介がありましたけれども,頻繁に転勤をする方にとってはやはり非常に負担になってしまうと思いますので,職権による変更登記ができるような体制が整うまでの間,この施行を先延ばしするというような経過措置を考えていただきたいということです。   もう1点ですが,先ほどの相続登記は権利に関する登記ですけれども,こちらも権利は権利ですけれども,名称,表示に関するものですので,その部分についてはより軽微な変更を求めることについての義務化でありますので,こちらの正当な理由がない場合の運用については,相続登記よりももう少し謙抑的なものとしていただいた方がいいのではないかという要望であります。 ○山野目部会長 いずれの要望も承りました。   ほかにいかがでしょうか。   それでは,先に進みます。   「第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み」,この項目について御意見を頂きます。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 ありがとうございます。第3については,賛成いたします。   要望というか,ちょっと意見があったのが,検索用情報の検索キーの方ですけれども,これについて,性別というのは除外すべきではないかという意見がありましたので,それだけ申し上げます。トランスジェンダーの観点を考えると,性別を検索情報にするのはちょっと望ましくないのではないかという意見がありましたので,その御紹介です。 ○山野目部会長 御意見の御紹介を承りました。   ほかにいかがでしょうか。 ○國吉委員 ありがとうございます。一応要望という形になるかと思いますけれども,この死亡情報,それから住所の変更情報などの情報を取得した場合,表題部所有者に対してはシステム上なかなか難しいというのは前からの議論でもお話を頂いています。ただ,これも前にもお話ししましたけれども,200万筆という土地の表題部所有者の変則型登記があると言われておりますので,できればできる限り早くこういったシステムを構築していただいて,表題部所有者にも適用できるような形を採っていただけるよう,お願いをしておきたいと思います。 ○山野目部会長 御要望を承りました。   第3の部分について,ほかにいかがでしょうか。   それでは,ひとまず先に進みます。   「第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」についてお尋ねをいたします。いかがでしょうか。 ○橋本幹事 ここの点については異論がありません。賛成いたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   では,先に進みます。   「第5 その他の見直し事項」についてお尋ねします。いかがでしょうか。 ○今川委員 今川です。4の所有不動産記録証明制度についてです。その補足説明の2の(注)について,郵送で請求があった場合などに,郵送で証明書を交付する場合の手続について,送付先の住所は登記簿上の住所に送付するというのを基本とするということのようです。これは今後運用面での検討がされていくと思いますので,回答は必ずしも頂かなくても結構ですけれども,やはり住所や氏名の変更登記の義務履行期間は2年ということになっていますし,それから登記官が住基ネットに照会を掛けるそのスパンは1年に1回程度ということになるという説明も受けておりますので,必ずしも登記記録上の住所と本人確認資料の住所が一致しない場合も随分あるだろうと思われますので,本人確認資料の住所地に送付するということがいいのではないかと思います。   それともう一つ,例えばAさんが甲住所で登記を受けている,それから,その後乙住所で同じAさんが登記を受けているものがあったという場合に,理屈上は,甲住所地のAさんに係る証明書と乙住所地のAさんに係る証明書,この二つの記録証明を同時に交付申請する場合もあると思います。そのようなときは当然現在の住所,本人確認資料に表された住所に返送するというようなことになるのではないかと思いますので,その辺りまた今後も検討していただけたらと思います。   以上です。これは意見です。 ○山野目部会長 今川委員からの御要望を承りました。   続きまして,橋本幹事,お願いします。 ○橋本幹事 ありがとうございます。第5関係ですが,いずれも内容については賛成いたします。   要望が1点あるんですが,5の被害者保護のための住所情報の公開の見直しの点,これは従前から賛成するという意見は申し上げてきましたが,要望として,法務省令で定めるに当たってなんですが,DV法の措置を受けている方を想定されているという従前からの説明でしたが,措置をされていない実質的なDV被害者という方がどうしても漏れてしまう危険があるかと思うので,そういった法律専門家にたどり着けていない実質的DV被害者にも分かりやすいように,これが必要であればDV法の申立てをしなければいけないとかという動機付けにもなるといいんですけれども,そういった新制度を分かりやすく周知するように,分かりやすい内容で努めていただきたいという要望です。よろしくお願いします。 ○山野目部会長 ただいま橋本幹事から要望を頂いた件について,村松幹事からお話を差し上げます。 ○村松幹事 このDV被害者を含めました被害者保護のための新しい措置については,非常に重要であると思っております。義務化とバランスをしっかりとっていくためにはこういった措置は大切でございますので,そういった観点からは,御指摘ありましたように,この新制度が所有者,登記名義人に伝わるように配慮していくというのは非常に重要なことだと思っております。そういった面で,法務局側でも実際運用面に当たってはしっかりと対応してまいりたいと思っておりますし,また,DVの被害者の方に近いところにいらっしゃるそういった弁護士さんを含めまして,専門の方々にどういった形で周知をするのが適切か,またそういったことも是非御助言などを頂ければと考えております。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 橋本幹事におかれては,弁護士会の先生方にお伝えいただきたいと望みますけれども,ただいま村松幹事から御案内申し上げたことはもとより,これらの点について留意していくということに加えて,旧年末,法務省におきましては,法務大臣の求めによって設けられた養育費不払い解消に向けた検討会議の取りまとめの中におきましても,配偶者からの暴力に係る現在の法制が抱えている課題について指摘があり,その観点が盛り込まれたところでございます。その審議においては弁護士会の先生方にも御尽力を頂きました。不動産登記制度の運用においてもこの観点を引き続き重視してまいりますとともに,配偶者からの暴力の問題について,現在社会に横たわっている問題を総合的に勘案して対処を講じていくということを政府として努力することが求められますから,そのような御案内を差し上げるとともに,弁護士会の先生方においても引き続き御協力を賜りますようお願い申し上げます。   ほかに第5についていかがでしょうか。 ○國吉委員 ありがとうございます。第5の4の所有不動産記録証明制度について,もう一度確認をお願いしたいのですが,これは表題部所有者の不動産についても一応証明されるということ,システム上の問題かもしれませんが,それが整ったときにはできるということ,それからもう一つが,4の①の何人も自らの所有権の登記名義人,これに準ずる者というのは当然ですけれども,表題部所有者が含まれるという理解でよろしいのでしょうかということでございます。 ○山野目部会長 要望ないしお尋ねを頂きましたから,村松幹事からお話を差し上げます。 ○村松幹事 表題部所有者の取扱いにつきましては,従前から申し上げておりますけれども,御指摘のように,システム上の対応が必要になってまいりますので,若干段階を付ける必要がありそうだというのが現状の見立てでございます。その意味で,所有権の登記名義人が差し当たりは対象ということで制度的には組むべきであると考えておりますけれども,他方で,今お話がありましたように,これに準ずる者として法務省令で定めるものを含ませるということが可能になっておりますので,そういった準備が整い次第,そういったものを加えていくということは射程にも一応入っているというところでございますので,その旨お伝えさせていただきます。 ○山野目部会長 國吉委員,いかがでしょうか。 ○國吉委員 ありがとうございました。 ○山野目部会長 ほかに第5についていかがでしょうか。   そうしましたならば,部会資料60の全体について改めてお尋ねをいたします。少し前の私の発言におきまして,部会資料60は第1から第6まであると申し上げましたけれども,誤りでございまして,第1から第5まででございます。最後に「第4部 その他」という項目がありますけれども,これは要綱案全体の最後に付くべきその他がここに便宜を置かれているものでありまして,不動産登記制度の見直し等そのものに関わる事柄ではございません。   それでは,御案内申し上げたように,部会資料60の全体につきまして,何か頂いていなかった意見がおありでしたならば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,部会資料61に進むことにいたします。   部会資料61をお取り上げください。   要綱案の第3部に当たる土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設についてお諮りをいたします。   部会資料61の全体について御意見を頂戴することにいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設につきまして,日弁連のワーキンググループでの議論を踏まえた意見を申し上げます。   従来から申し上げているとおり,対象を限定しすぎているという意見はあるものの,この制度は所有者不明土地の発生を抑制する方策として有意義であると考えております。したがって,この制度の創設について賛成いたします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。引き続き,部会資料61についてお尋ねをいたします。いかがでしょうか。 ○今川委員 質問が1点だけあります。   7の負担金についてです。政令で定めるところにより算定した額とされていますが,この政令では計算方法であるとか,考え方が示されるのか,それとも参考となるような標準の額まで示されるものなのか,もし今そのイメージがあるのでしたら教えていただきたいという点と,政令にはその標準となる額は示さないというのであれば,やはり申立人のために,何らかの形で事前に基準の額が分かるようにしてほしいという要望であります。 ○大谷幹事 ありがとうございます。この7項の政令というのは,国民の皆様にこの制度を利用するに当たって幾ら負担をすればいいのかということを明らかにするものでございますので,今御指摘にあったように,政令の額として幾ら払えばいいのかということが分かるように政令を定めるつもりでございます。これについては今後の検討でございますけれども,今の御指摘も踏まえて検討してまいりたいと考えております。 ○山野目部会長 いかがでしょうか。今川委員,よろしゅうございますか。 ○今川委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。3の⑤境界が明らかでない土地ということになっております。以前はこれが所有権界という一応明記がされていたのですけれども,そもそものこの4,3の承認については土地の一筆ごとにするということの明記をしていただきました。これをやはり所有権界ではなくて,飽くまでもやはり一筆ごとですので,筆界と所有権界は当然ながら一致することが前提としてやはりその土地の管理をしていくということだと思います。これは土地基本法にも表していただきました土地の所有者の責務ということで登記手続を進める,そして土地の境界の確認をきちんとするというような意味合いからも,是非これは筆界と所有権界が一致しているものということを前提として進めていただきたいと思っています。そうでないとすると,やはり国庫に帰属した以降の土地の処分なり管理なりが非常に難しくなると,そもそもの管理の費用だけでは賄えないようなことになりかねないと思っていますし,土地の筆界,それから所有権界を確認するということが管理の大前提になるということだと思っていますので,是非そのことはこれから先,法務局が窓口になっていろいろな手続をされていくのでしょうけれども,そのことだけは一応申しておきたいと思っております。 ○山野目部会長 國吉委員からの御要望を承りました。   引き続き,部会資料61についてお尋ねをいたします。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   委員,幹事の皆様におかれましては,どうもありがとうございます。   本日用意をしております部会資料59,60,61についての審議をお願いしたところでございます。本日の会議の内容にわたる議事を了しました。   この際,次回以降の部会の運営につきまして,事務当局の大谷幹事から提案がございます。お願いします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   本日頂戴した御意見も踏まえまして,今後事務当局において精査をいたしまして,この民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案(案)というものを作成させていただこうと思っております。次回の部会におきまして要綱案の取りまとめをお願いできればと考えております。 ○山野目部会長 ただいま事務当局から,次回の会議において執り行うことについての提案がございました。これにつきまして委員,幹事の御意見を承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,お諮りいたします。   ただいま大谷幹事から提案があった手順で,次回第26回会議において要綱案の取りまとめの作業に進むという議事の進め方を採ることについて御異論はないでしょうか。   よろしゅうございますか。   ありがとうございます。それでは,そのように取り扱うことにいたします。   事務的な案内を差し上げます。   次回第26回会議の日時,場所について,事務当局から案内を差し上げます。 ○大谷幹事 次回の日程は,先ほど申し上げましたとおり,令和3年2月2日火曜日,来週の火曜日ということになります。午後1時30分からという形にさせていただきます。場所は,一応法務省大会議室地下1階に場所を用意させていただく予定でございます。今申し上げましたとおり,本日まで大体午後1時からスタートという形にさせていただいておりましたけれども,次回の部会の開始時刻は今回よりも少し遅く,午後1時半からという形にさせていただきたいと思っております。また,今回と同様,基本的にはウェブ会議方式で御参加いただければと思っておるところでございます。 ○山野目部会長 ただいま次回の会議の予定につきまして事務当局から案内を差し上げました。その点も含めまして,先ほどもお尋ねしましたけれども,念のためお尋ねします。   この際,この部会の運営につきまして,委員,幹事から特段のお尋ねや御意見等がありますれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,お話を差し上げたように,次回2月2日も政府が発出した感染症に係る緊急事態宣言が発令中でございますから,やはり十分その点について皆様方にお気を付けいただき,感染症の観点からウェブ会議での開催ということになります。事務当局から改めて期日が近づいてまいりましたならば,事務的な御案内も差し上げることにいたしますので,よろしく御協力方お願い申し上げます。   本日お諮りする事項はここまででございます。これをもちまして法制審議会民法・不動産登記法部会の第25回会議をお開きといたします。   皆様,本日も誠にありがとうございました。 -了-