法制審議会 民法(親子法制)部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和2年11月24日(火)自 午後1時31分                      至 午後5時20分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  嫡出推定制度の見直しに関する各論点の補充的検討(続き)         中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定しておりました時刻になりましたので,法制審議会民法(親子法制)部会の第12回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席いただきましてありがとうございます。   まず,本日を含めたこの会議の開催方法等につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○平田幹事 まず,御説明ですが,ウェブ会議方式での参加につきまして,新型コロナウイルス感染症への対策として急遽行われたというところもございまして,これまで確立した運用指針がなかったところではございますけれども,令和2年10月29日に開催された法制審議会総会におきまして,情報通信機器を利用した法制審議会への出席に関する決定がされましたので,今後本部会もこの決定に基づいて運用がされることになります。   お手元にこの法制審議会の決定とその説明資料を配布させていただいておりますが,情報通信機器を利用した出席を認める要件や情報通信機器を利用した出席において映像又は音声が途切れた場合の取扱いに関して定められておりますので,御確認いただければ幸いです。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ウェブ会議についてのルールが定まったということですけれども,従来の取扱いが大きく変わるということではないと理解しております。適宜状況に合わせて,本部会でもこれに従って運用を図っていきたいと思いますので,どうぞ御協力のほどお願い申し上げます。   それから,本日は千葉委員と木村(敦)幹事が御欠席と承っております。   次に,配布資料の確認をさせていただきたいと存じます。これも事務当局の方からお願いをいたします。 ○小川関係官 配布資料ですけれども,事前にお送りしました部会資料12-1から12-4まで,それから議事次第,資料目録,先ほど御説明いたしました情報通信機器を利用した法制審議会への出席についての決定とその説明資料,さらに,前回の積み残しがございますので部会資料11もお配りしています。皆様お手元にございますでしょうか。   ありがとうございます。資料については以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,本日の審議に入りたいと思いますが,本日はまず前回の積み残しの部分,部会資料11の第2の7ページ以下の「父子関係の当事者が死亡した場合の規律」という部分について御議論を頂きたいと思っております。その次に,「懲戒権等に関する規定の見直し」ということで,部会資料12-1についてき,3番目として「嫡出推定規定の見直し」及び「女性の再婚禁止期間の在り方」ということで,部会資料12-2の第3,第4,そしてその後に「嫡出否認制度の見直し」,これが部会資料12-3の第4ということになりますが,これらについて御議論をいただき,一番最後に「嫡出推定制度の見直しに伴うその他の検討事項」についてということで,部会資料12-4の第6につき御検討いただこうと考えております。   資料の順に御意見を頂いてまいりますけれども,その中で,部会資料12-3の第5,28ページ以下になりますけれども,「嫡出否認制度に関するその他の見直し」という部分がございます。この部分につきましては,これまで何度も御議論を頂いた論点でもあり,また,時間の関係も考えまして,ここは次回の会議に送らせていただきたいと考えております。以上のような順序で進めさせていただきたいと存じます。   まず最初に,事務当局の方から,最初の議題になります部会資料11の第2,前回の積み残し分についての説明をお願いいたします。 ○小川関係官 部会資料11の第2について御説明します。   資料の7ページを御覧ください。   「父子関係の当事者が死亡した場合の規律」については,否認権者自身が死亡した場合と否認権行使の相手方が死亡した場合とそれぞれ検討する必要があると思われますので,それぞれ7ページの1及び13ページの2と分けて記載をしております。   まず,7ページの1についてですが,否認権者の見直しに関するこれまでの御議論に照らせば,否認権者が死亡した場合に,その権利の承継の範囲についてもその利益に照らして実質的に検討される必要があると考えられます。そのような観点から,1の甲案は,夫が死亡した場合,子が死亡した場合のそれぞれについて,なお一定の範囲の者に否認権の承継を認める必要があるとする案です。これに対して,乙案は承継を否定する案になります。   次に,2は否認権行使の相手方が死亡した場合の規律です。夫の否認権については,現行法上も存在する問題ですけれども,夫の否認権の行使期間を伸長することに伴って,何らかの見直しをする必要があるかという点について御意見を頂戴できればと思います。   他方で,子の否認権については,子が提起する認知の訴えに関する人事訴訟法第42条の規律を参考に,検察官を被告として訴訟を追行することを提案しております。 これらの点について御意見を頂戴できればと思います。   第2の説明は以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   父子関係の当事者が死亡した場合のうち,否認権者が死亡した場合の規律につきましては,一定の範囲で承継を認めるという案と,それからそれを否定するという案が,甲乙という形で示されております。それから,相手方が死亡した場合の規律につきましては,夫の否認権の場合と子の否認権の場合に分けて記載がされているところでございます。   一括して御意見を賜れればと思いますが,いかがでございましょうか。   どうぞ,棚村委員。 ○棚村委員 整理をしていただきまして,特に人事訴訟法の41条1項の規定があるわけですけれども,これもやはり否認権というものをどういう性格の権利として見るかと,身分権であって,特に一身専属権ということになると,本人自身が行使すべきで,ほかの人が権利行使すべきではないという考え方も出てくると思います。乙案は正にそういう考え方に基づいていると思います。これに対して,やはり相続とか扶養とかそういう形で,一定の財産的な権利や経済的な利害関係がある者に一定範囲で権利行使を認める必要があるという考え方の対立だろうと考えています。ただ,そう言いながらなかなかちょっと割り切れないところがあるものですから,海外の法制を見ますと,割り切って一身専属権的な扱いにして本人が死亡した場合には認めないという立場の国もあり,ドイツなんかは多分そういう形だと思います。ただ,日本は,これまで相続に関わったり,他の人に重大な影響があるということで規定を多分置いていると思いますので,この辺りのところについて,その際の価値判断とかほかの認知等の取扱いとの整合性など,特に人事訴訟手続での規定になりますので,その辺りの説明を少ししていただけると今後どういうふうに検討すればいいのかというヒントが出てくるのかなと思っています。 ○大村部会長 甲乙について,どういう観点からかということについて理解をお示しいただきましたけれども,他の問題との関連もあるのでこの点についての基本的な考え方について更に補足の説明を頂きたいという御趣旨だったかと思いますが,何かありますか。 ○平田幹事 ちょっと御指摘を踏まえて検討したいと思います。 ○大村部会長 ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,大森幹事。 ○大森幹事 ありがとうございます。   今棚村委員からお話がありましたとおり,一身専属権をどこまで重視するのか,相続権等の利益をどこまで重視するのかという価値判断の問題であると思います。それが今回否認権者を拡大し,行使期間も長くなることに伴って,上記価値判断を踏まえて人訴法41条をどこまで見直す必要があるのかという観点で甲案,乙案という整理のされ方をしておられると理解しています。   そうすると,今申し上げました利益考慮の一つの選択肢として,1項と2項を分けるという考え方もあり得るのではないかと思いました。すなわち,否認権者が権利行使をしないうちに亡くなっている場合と,権利行使,意思表明を既にしている場合とで扱いを別にすることで,その両者の調整を考えるということも選択肢としてあり得るのではないかと思って御意見申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   既に訴えが提起されているかどうかというところで区別をして考えるという選択肢も加えて,更に検討をする必要があるのではないかという御指摘として受け止めました。ありがとうございます。   中田委員から挙手があるようですが,中田委員,お願いいたします。 ○中田委員 ただいまの点でございますけれども,41条をなくするということについては,現在ある41条において何か不都合があるのか,その意味での立法事実についても併せてお教えいただければと思います。次に御説明いただくときで結構でございます。   それから,甲案においては,夫が生存していたら否認権を行使できた期間を維持するということが出ているんですが,10ページの(ウ)の第3パラグラフの辺りなんですけれども,理由が余り明瞭ではないような気がいたしました。それから,夫の知った日を起算点とするというのは,実際上はなかなか難しいのではないかなと思ったんですけれども,そのような問題もないのかどうか併せて御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほど棚村委員から御提案の趣旨についての確認がございましたけれども,現在の運用の状況も踏まえて,再度御検討を頂きたいという御要望として承りました。   それから,説明等については,次回の提案までに再度見直していただきたいと思います。   そのほかいかがでしょうか。   それでは,この点につきましては,今頂きました御指摘を踏まえて,更に整理をした形にさせていただくということでよろしいでしょうか。   では,これにつきましては,そのようにさせていただきます。   前回の積み残し分はこれで終わりということにさせていただきまして,本日の中心的な議題,部会資料の12-1以降の検討に入らせていただきたいと思います。   まず最初に,12-1の「懲戒権に関する規定等の見直し」について御議論を頂きたいと思いますが,最初に,事務当局の方からこの資料についての御説明をお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。   お手元の部会資料12-1を御覧ください。   第1の1は,懲戒権に関する規定の見直しについてですが,従前の提案から変更点はございません。第10回会議では,甲案を明示的に支持する意見はなかったというところではありますけれども,懲戒権に関する規定の見直しについては,その与えるメッセージ性という観点が特に重要であり,民法第822条を削除するという甲案については元々有力な案の一つであったということを踏まえますと,現時点では甲案も併記させていただいた上で,パブリックコメントにかけ,国民の意見を広く求めることが相当とも考えられます。そこで,現段階では従前の提案内容を維持することとさせていただいておりますが,いかがでしょうか。   次に,第1の2は「懲戒権に関する規定の見直しに伴う検討事項」です。   (1)②と(2)については,従前の提案から変更点はございません。   (1)①については,従前,権利と義務の語の順序を入れ替えるということをブラケット付して併記していたところですけれども,権利と義務の語の入替えによって民法第820条の解釈に実質的な変更が加えられるものではないことからすると,そのような見直しを行う理由について法制的な観点からの説明が難しいとも考えられます。他方で,本部会ではこのような見直しを支持する意見が多く出されており,このような見直しを行うことは相応の合理性があるものと考えられますので,(2)に(注)という形にしてはおりますが,引き続き検討するということを記載しております。   以上につきまして御意見を賜れればと思います。   部会資料12-1についての説明は以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   資料そのものは,前回にお出しいただいたものと大きく変わっておりません。第1の1につきましては,甲乙丙の3案併記となっております。意見分布につきましては,この甲乙丙で大分違いがございましたけれども,御説明がありましたように,今の段階では甲案も残しておくということでいかがかということを改めて御提案しているということかと思います。中身につきましては様々な御意見があろうかと思いますけれども,中間試案の取りまとめに向けてという観点から,資料をどのように作るのがよいかといった点につきまして御意見を頂ければと思います。どなたでも結構ですのでお願いをいたします。   磯谷委員,どうぞ。 ○磯谷委員 たたき台の中間試案ということにつきましては,基本的にはこれで結構かなと私は思っております。   補足説明のところなんですけれども,2ページ目の11行目になりましょうか,「また,第2回会議においては」で始まる文がございます。ここで,親権においては権利性が重要であるという観点からこのような見直しに消極的な意見もあったということで,このような観点から権利,義務の順序を入れ替えることについては消極的な意見もあったという記載になっていると思います。ただ,ちょっと私も議事録を見直してみたんですけれども,多分より正確に言うと,権利性が重要であるということは,そもそも論として権利と書いてあるのが誰に対する権利なのかということが少なくとも明文上明確ではなく,子どもに対する権利という意味ではその必要性はないのではないかという御意見があった一方で,やはり国や社会に対する権利という意味ではなお必要性はあるのではないかと,こういう意見だったかと思いますので,まとめてこの権利性が重要であるという表現をするとちょっとその辺りが伝わりにくいというのが1点と,そのことと権利,義務をひっくり返すことについての消極的な意見というところが,必ずしも何といいますか,論理的につながって議論されたのかどうかというのがちょっと読み返してみても今一つよく分からなくて,この辺りはまとめ方が難しいなと正直思いましたが,ちょっと多分明確な形で権利性が重要だからひっくり返すのは反対だということでもなかったのではないかと思いますので,ちょっといま一度御確認を頂いて,もし私の感覚でよろしければ少し御修正いただけるといいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   補足説明の第1の2に関する文章のニュアンスについて確認を頂きたいという御趣旨だったかと思います。   併せて確認ですけれども,この補足説明は,差し当たり今日の資料に付いている補足説明であると私は理解をしておりますが,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○平田幹事 今回の補足説明,部会資料12-1につきましては前回を踏まえた記載ということになりますが,次回については,これまでの議論が少し錯綜している部分もございますので,ちょっと詳しいものを作成させていただきたいというふうに考えておりますので,よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 委員,幹事の皆様の中には,補足説明はこれだけが資料として出るのかと思われた方もいらっしゃるかもしれませんが,今御発言があったように,前回の資料との違いについての補足説明ということでございますので,中間試案の取りまとめに向けた補足説明につきましては次回により詳しいものを出していただき,その中で今の磯谷委員の御指摘の点についても御対応いただくということにさせていただきたいと存じます。   そのほかいかがでしょうか。   棚村委員,どうぞ。 ○棚村委員 中間試案では,私もこういうような取りまとめをして意見を聞くということでよろしいかと思います。ただ,補足説明の中で,恐らく前回に議論したときも,体罰ということだけに限定していいのだろうかという御意見はあったかと思います。それから,海外の立法例を見ますと,人格を否定するような行為とか尊厳を害する行為みたいな形で,もう少し禁止される行為について広く立法で規定をしているというところも見られます。今般の児童虐待防止法とか児童福祉法の改正もあって,体罰ということにかなり焦点が絞られてしまいましたけれども,民法の規定としては監護,教育のところで人格の尊重というのが入りますので,それと併せて読めば体罰だけではないのだなということは分かってくるかもしれません。しかし,補足説明でもしよろしければ,そういう海外の動向とか議論が出たことを踏まえて説明を少し足していただけると分かりやすいかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   本日の審議が順調に進むと,次回への積み残しは第5だけになりますので,次回は第5と,それからその補足説明について書き足したものを御検討いただくということになろうかと思いますけれども,その際に今のような点にも御留意を頂くということかと思います。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。   補足説明という言葉がよく分からなかったんですが,中間試案に付ける補足説明というのは,これは参事官室において付けられるものであって,部会の決定の対象とは違うんだと思います。今日頂いている補足説明というのは,飽くまでこの部会資料12-1について,前回からの変更点などについての御説明でありまして,その点を少し整理して,共通の理解を持って行った方がいいのかなというふうに感じました。先ほどの部会長の御発言も,多分そういう御趣旨だったんだろうと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   中田委員に今おっしゃっていただきましたけれども,繰り返しになりますけれども,今回の資料の補足説明は前回の分との違いについての御説明である,それから,次回皆様に御覧いただくものは中間試案に付ける補足説明ということになります。中田委員御指摘のように,中間試案の補足説明は最終的には事務当局の責任で取りまとめていただくということになろうかと思いますけれども,皆様の御意見を伺った上で,それを適宜参酌していただくということかと思います。ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。   どうぞ,井上委員。 ○井上委員 ありがとうございます。   1の懲戒権に関する規定の見直しについて発言させていただきます。   この間,連合としての取組として,子どもの人権を守り,子どもの最善の利益を考慮する観点から,監護及び教育に必要な範囲であっても懲戒すべきではないと発言させていただいておりました。同時に,児童虐待の予防対応策を強化するため,親権者が子の利益のために子の監護及び教育を行うときなど,いかなる場合であっても子どもに対する体罰を禁止することが必要だと考えています。よって,第820条において子の人格を尊重しなければならない旨の規定を設けることを前提に,この822条については,懲戒という言葉を用いずに監護及び教育において体罰を禁止する丙案に賛成ということで表明させていただきたいと思います。   その上で,乙案に関して意見を申し上げたいと思います。   第10回の部会でも発言をさせていただいたのですが,指導については指示の意味が含まれておりまして,しつけなどと同様に指導の一環と称して虐待が後を絶たないことを考えますと,用語として適切と言えるのかどうかという懸念を持っております。仮に乙案を採った場合には,(注2)の方で,「『指示及び助言』を採用した場合には,体罰を加えてはならない旨の文言を用いない」とありますが,国民への分かりやすさという観点で考えると用いるべきであると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   先ほども申し上げましたように,この部会では甲乙丙について,委員,幹事の皆様の御意見,丙案を中心に検討を付けるということであったわけですが,乙案も残しておいた方がいいのではないかと御指摘もあり,これも残すことになりました。それとの関連で,(注2)について,体罰を加えてはならない旨の文言を用いないことも考えられるとなっていますけれども,やはり体罰を加えないという趣旨の文言を残した方がよろしいのではないかという御提案でした。ありがとうございます。   ほかに御意見いかがでしょうか。   久保野幹事,どうぞ。 ○久保野幹事 ありがとうございます。   先ほど棚村委員からございました体罰という言葉について,より広い言葉を使う可能性について注記をするとよいのではないかという意見に賛成なんですけれども,その際,海外の法制も参考になるわけですが,私自身,最近,前回の議論以降に気づいたのですけれども,里親の養育についての里親が行う養育に関する最低基準というものの中で,その6条の2に,身体的苦痛を与え,人格を辱める等の行為をしてはならないということが定められているようなものも参考になるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほどの棚村委員の御発言と関連する点ですけれども,具体的な文言について御提案を頂きました。   そのほかはいかがでございましょうか。   これについては,今頂いたような御意見を参酌しながら説明を付けるけれども,基本的には現在の案を中間試案の取りまとめの案としていくということで,御異論はないと理解してよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,今頂きましたような御指摘を踏まえて,説明等については更に工夫をしていただきたいと存じます。   それで,先に進ませていただきたいと存じます。   次が,部会資料12-2ということになります。   第2の嫡出の推定,これが1ページ以下ですが,第3の「女性の再婚禁止期間の在り方」というのが8ページ以下になります。この二つについてまず御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。 ○砂山関係官 それでは,御説明いたします。お手元の部会資料12-2を御覧ください。   本部会資料は,これまで御議論いただいた点を整理したもので,中間試案の取りまとめに向けて適切かという観点から御意見を頂ければ幸いです。   第2は,「嫡出の推定の見直し」についてです。   本文①については,第10回会議の議論状況を踏まえて,婚姻中に懐胎した子について夫の子と推定するという現行法の考え方を基本としていることを明確にするために,妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。妻が婚姻中に懐胎した子でなくても,妻が婚姻中に出産した子であるときは,同様とすると変更をしております。この点については,2ページの(2)のアで基本的な考え方を示しておりますが,このような説明をすることについても御意見を頂戴できればと考えております。   3ページの(注)ですが,以前,本部会におきまして,今回の見直しに関するデータを調査できないかとの御依頼を頂きましたので,平成29年6月時点における平成26年から平成28年までの間に全国で出生した子302万9,074件について調査したところ,次の結果が判明しました。①として,婚姻後200日以内に出生した子の数27万9,581件,9.2%,②,①のうち推定されない嫡出子の数27万8,299件,①の99.5%でございます。③,①のうち母の前夫の嫡出子の数(離婚後300日),これが58件,①の0.02%,①のうち嫡出でない子の数31件,①の0.01%,⑤として,①のうち上記②から④以外1,193件,①の0.4%でございます。この②から④以外については,子の父は日本人という判定であったものの,母の配偶者は外国人とされたため,子の父が母の配偶者と確認ができなかった場合などがあります。   続いて,本文の②ですが,本文②は従前から変更点はございません。   続いて,本文の③です。本文③の妻の再婚後に生まれた子は再婚後の夫の子と推定することについては,第8回会議での意見を踏まえて,一律に再婚後の夫の子と推定する甲案と,妻の再婚後に生まれた子について,前婚の解消原因が離婚の場合は再婚後の夫の子と推定し,死別の場合は前夫の子と推定する案,乙案として提案しております。   なお,7ページの(注3)ですが,先ほど申し上げた調査において次の結果も判明しております。①として,母の婚姻解消後300日以内かつ婚姻後200日以内に出生した子の数1,717件,②母の再婚後の夫を父とする子1,659件,①の96.6%,③母の前夫(婚姻解消後300日以内)を父とする子58件,①の3.4%,母の前夫(婚姻解消後300日以内)を父とする子について,令和元年6月時点のものについても調査したところ,嫡出否認の裁判等を理由に52件,①の3.0%に減少していました。   7ページの2では,再婚後の夫の子と推定される場合の嫡出否認の効果について検討しておりますが,基本的には従前のものと変わりはありません。   第3は,「女性の再婚禁止期間の在り方」についてです。   本文第2の1③甲案を採用した場合には,父性推定の重複を避けることができるため,甲案として,女性の再婚禁止期間に関する民法第733条を削除することを引き続き提案しております。   他方で,本文第2の1③乙案を採用した場合には,父性推定の重複が生じることになりますが,これを採用することを前提に,乙案として,再婚禁止期間に関する規定を削除するとともに,前夫の子との推定と再婚後の夫の子との推定とが重複する場合には,父を定めることを目的とする訴えにより父を定めることを新たに提案しております。   これらの点について御意見を頂けると幸いです。 ○大村部会長 ありがとうございました。   部会資料の12-2につき御説明を頂きましたが,第2の1につきましては,①について表現ぶりが変わっているということ,それから,調査のデータについて3ページと7ページの(注)に上がっているものがございますけれども,これについての御説明を頂きました。   3番目に,8ページの再婚禁止期間につきましては,乙案の考え方,第2の1の③について,乙案を前提とするという場合について新たな提案がされているということだったかと思います。   第2,第3は関連いたしますので,これも一括して御意見を頂ければと思います。どなたでも結構でございますので,よろしくお願い申し上げます。   窪田委員,どうぞ。 ○窪田委員 実質的な話ではなくて,もう本当に言葉のことだけということになります。また,法制審議会での中間試案にしても最終的な取りまとめにしても,条文そのものとして示すものではないということは十分に承知しているのですが,ただ,やはり第2の1の①の妻が婚姻中に懐胎した子でなくてもうんぬんというのは,何か書きぶりとして余りよくないのではないかという感じがいたします。また,読んだときにすっと意味が入ってこない感じもしました。中身を変えるわけではないのですが,例えばこの部分について,妻が婚姻前に懐胎した子であっても妻が婚姻中に出産した子は同様とすると言っても多分同じなのではないかと思いますし,より分かりやすいような気もするのですが,文言について御検討いただければ有り難いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   内容ではなくて,表現ぶりについての御指摘を頂きましたけれども,確かに子でなくてもというのは多少引っ掛かるところもありますので,今の御提案も含めて表現ぶりについては見直していただこうと思います。   ほかにいかがでございましょうか。   大石委員,どうぞ。 ○大石委員 全体,今の点だけ,第2のところだけに絞りましょうか。ほかのところも少しあるんですが,だから8ページ以下の第3のところは後でまた戻るとして,取りあえず第2のところだけ申し上げるということでよろしゅうございますか。 ○大村部会長 どうぞ,そのように。 ○大石委員 この中身そのものよりも,3ページの説明,20行目前後ですが,養育する意思の関係なんですけれども,この説明のところが非常に分かりにくくて,「そこで検討すると」と19行目にあります。妊娠が分かった上で婚姻した場合というのは,養育する意思があることは明らかである。それはそうです。2番目ですが,婚姻時において妻が懐胎中であることを知らなかった場合などであっても,夫婦は抽象的にはこういう意思を有していると言葉を添えてあるんですけれども,前の質問を受けてのこれは検討だと思いますけれども,2番目のところは,要するに婚姻時に知らなかった場合でもそういう意思を持っているんだとみなすんだという程度の話なので,実質的になぜ抽象的にそのように言えるかということの実質が示せていないように思うんですね。ですから,その点は少し説明が必要ではないかと思いました。   それから,細かいところで恐縮ですが,4ページのこれは単なる言葉の問題です。十二,三行目から五行目のところですが,死別の場合には継続している場合が多くというのは何となく重複感があるんですけれども,6ページのところを見ると,死別の場合にはここでは可能性が高くという言葉を使ってあるので,これに合わせたらどうかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   2か所につきまして,説明をよりよくすることが考えられるのではないかという御指摘を頂きましたので,御検討を頂きたいと思います。   ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,井上委員。 ○井上委員 ありがとうございます。   第2,1ページ目のところです。   甲案は一律に再婚後の夫の子と推定する,乙案は死別の場合は前夫の子と推定するということですけれども,甲案,乙案ともに,①,②の規律,言わば原則の例外とされていますけれども,①,②の規律ですと生物学上の蓋然性が重視されて,しかしながら再婚した後は再婚後の関係が重視されて,ただし死別の場合は生物学上の蓋然性が重視されているというような,何か行ったり来たりの印象が少ししております。そのような観点で見ると,乙案の死別の場合は実は原則であってそれ以外の場合が例外,一方,甲案は全体が例外との位置付けになるのではないかと思いました。毎回言っているのですけれども,法制度は国民に分かりやすい制度であることが望ましいのではないかと思っており,複雑な区別は避けるべきではないかと思いますので,パブリックコメントに付す際には分かりやすい見せ方がいいのではないかと思います。   なお,個人的な考えなのですけれども,いずれにしても自分の意思で再婚しているので,周知期間を置いた上で,事情によらず再婚した場合は再婚後の夫の子と推定するとした方がシンプルで分かりやすいのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   資料の説明ぶりと,それから,その上で第2の1の③について,甲乙のうちの甲の方がよろしいのではないかという御意見を御披露いただきました。   垣内幹事から手が挙がっていたかと思いますが,垣内幹事,お願いします。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   1点御質問なんですけれども,資料の7ページの(注3)で今回御紹介いただいているデータの関係で教えていただきたい点がありまして,ここで婚姻解消後300日以内かつ婚姻後200日以内に出生したお子さんがどういう形で父子関係が設定されているかということの数が御紹介あるんですけれども,婚姻の解消事由についてお分かりになるのかどうか,そしてもしお分かりになるのであれば,再婚後の夫を父とした場合に離婚が多いとか,あるいはそうでないのかとか,死別の場合に前夫を父とする者が多くなっているのかどうかとかいったことが内容に若干関連するデータになり得るのかなという気がいたしましたので,分からないのであればやむを得ないと思いますけれども,分かるのであればそういった説明を加えていただくということもあり得るのかなと少し感じた次第です。   以上です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   直前の井上委員の御指摘とも関わる点かと思いますけれども,何かもしデータについて補足がありましたらお願いをいたします。 ○平田幹事 大変申し訳ないのですが,婚姻の解消の原因については,区別のないデータになっておりまして,お答えすることができないという状況でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   データとしてこういうものが上がってきているということで,御希望に沿えないということかと思います。   ほかにいかがでしょうか。髙橋委員,どうぞ。 ○髙橋委員 今のデータなんですけれども,(注3)の1,717件というのを見ると,これは300日以内ですから前の夫の子と推定されるのが普通だと思うんですけれども,再婚後の夫が父となっているのが96.6%で,前の夫のままというか,推定の原則になっている子が58件で3.4%ということで,②に当たる状態になるためには夫の方から嫡出否認訴訟を起こした場合と,あと外観説で推定されないんだと,強制認知になったんだという場合とあると思うんですけれども,②のその辺りの手続の比率みたいなものは分かりますでしょうか。 ○平田幹事 申し訳ございませんが,こちらの方も内訳は分からないのではなかったかと思います。   ここに該当するものとしては,懐胎していないことの証明等によって手続がされたもの等も恐らく含まれてくるんだろうとは考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。二つあります。一つは,第2の1について,1の①で出産だけではなくて懐胎を残しているということなんですけれども,その意義については資料を拝読したのですが,結局は懐胎を推定の出発点に置くということが重要ではないかと思いました。ただ,法制的にといいますか,技術的に懐胎というのがなくとも,出産だけでも同じ規律を導くこともできるような気もしたんですが,そうではなくて,やはりこれはテクニカルにも懐胎というのを入れておく意味があるのかどうか,もしあるとすれば,そこをもう少し明確にしていただいた方がよろしいかと思いました。根拠付けですとか,あるいは現行法との連続性ですとか外観説の維持とか,そこはよく分かるのですけれども,適用との関係でございます。   それからもう1点は,第2の2ですけれども,今回死別も含めて,否認された場合は前夫の子と推定されることになるという規律になっていると思うんですが,そうしますと,前夫の相続との関係で割と複雑な問題が出てくるのではないかなという気がしました。例えば遺産分割が終わっていた場合に,現行法で910条の相続開始後の認知の場合の価額支払請求権といったような規定ですとか,あるいは相続の承認,放棄ですとか,あるいは別の部会で今検討されていることですけれども,相続開始から10年たつと遺産分割は具体的相続分によらない規律によるという制度との関係ですとか,いずれにしても細かいことまでは必要ないと思うんですけれども,相続との関係について手だてを置く必要があるということは考えておいた方がいいかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   2点頂きましたけれども,2点目は7ページの2の後始末について,相続との関係を中心に考えておく必要があろうということだったかと思いますが,1点目は,第2の1の①について,事務当局の方に更なる御説明があればということで御要望があったかと思いますけれども,お答えがあればお願いいたします。 ○平田幹事 ちょっとまた検討させていただいて,また説明について御相談させていただきたいと思います。 ○大村部会長 分かりました。では,その点につきましても御検討をお願いできればと思います。   そのほかについてはいかがでございましょうか。   どうぞ,大森幹事。 ○大森幹事 第8回のときにも発言させていただいたのですが,今回の見直しの出発点が無戸籍の解消を図ることだという点も踏まえると,果たして婚姻解消後300日以内について,②の提案だけで本当にいいのだろうかということが気になります。今回注書きとして書いていただいてはいるのですが,今回の御提案を見ましても,再婚をしない限りは前夫の推定が維持され,嫡出否認の否認権行使をしないことには推定を外すということができないとなっています。再婚で区別するという点については,婚姻の自由という関係でも問題があるのではないかという指摘も前回させていただきましたが,救済として非常に狭いのではないかということを考えますと,婚姻解消後については推定をしないという選択肢も,注ではなくて提案として,中間試案で国民の皆さんに示した方がいいのではないかと思うのが1点ございます。   2点目が,4ページの31行目のウのところでございます。これは第8回のときに議論が出たところかと思います。すなわち,嫡出否認によらなくても認知によって覆しを認めるという余地があるのではないかという提案で,確か婚姻中の出生に比べると蓋然性が弱い推定というような表現が出ていたかと思いますが,そういうことも考えて認知による方途を認めるなどの工夫ができないかと複数の先生方からも御意見が出たかと思います。その点について検討していただいたのがウの箇所だと思いますが,私が理解をしていたのは,ここで書いてあります胎児認知や任意認知ではなくて,裁判所の手続つまり認知の訴え等の手続を使って,その中でDNA鑑定などによって血縁の有無を確認した場合は覆しを認めるということでした。そのため,ここに書かれている内容がそうした前回の議論の理解とはちょっと違うのではないかなと思いました。   最後の3点目ですが,先ほど大石委員からも御指摘があった7ページ目の再婚後の夫の推定が否定をされた場合に前夫の推定が復活するかというところでございますが,ここは前夫にとってみれば自分のあずかり知らないところで突然推定が復活をすることになり,そうした場合に,更に前夫としては自分の子ではないと考えた場合には否認権行使をしていくということが必要になってくるわけですけれども,行使期間が再婚後の夫の否認権行使がぎりぎりだった場合に,前夫としては否認権行使する期間がないというような事態も予想されると思いますので,そうした手当てをどうするのかといったことなど検討する必要があるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   3点御指摘いただきましたが,1点目は第2の1につきまして,現在(注)になっているものを選択肢として掲げた方がよいのではないかという御提案と承りました。   それから,2点目は,4ページから5ページにかけて,ウの部分の説明というのについて,これが従来の議論というのを適切にまとめているだろうかといういう御指摘だったでしょうか。   それから,最後が,前夫の否認権について,それを行使できる状況を確保するための方策を考える必要があるのではないかといった御指摘だったかと思いますが,いかがでしょうか。 ○平田幹事 まず1点目についてでございますけれども,こちらの方は前回も御指摘いただきまして,婚姻等の解消後の部分の推定をなくすことについては,やはり現在推定が及んでいる子について逆にその推定がなくなるということも生じてくるかと思いますので,その関係をどう考えるかというところで今回御提案させていただいているところでございます。もちろん(注)でこの推定自体をなくすというところを記載させていただいているところではございまして,それでは不十分だというような御意見かと思いますので,また検討させていただいた上で,ご議論いただきたいと思います。   2点目の関係ですが,前回,認知の訴えを使って嫡出推定を覆すという御提案があったという認識では必ずしもなかったので,資料の内容は今回のようなものになった次第ではございます。けれども,ご提案いただいている案は,これを訴えによって強制認知のような形でやるということになりますでしょうか,推定の及んでいる子について裁判をして認知ができるという仕組みに切り替えるというところをどのように考えるかということが問題になりそうかと思うんですが,ちょっとすみません,それを含めて検討させていただきたいと思います。   3点目につきましては,再婚した場合の夫についての嫡出推定が否認された場合に前夫の推定が復活することについてどうかというところですが,今回の部会資料の12-3の方で,その否認訴訟においてどのように手続保障していくかという点について記載させていただいたところではございます。19ページの3,「再婚後の夫の子と推定される子についての前夫の否認権」に関連して,具体的には20ページの(2)再婚後の夫の子との推定が否定された場合における前夫の子との推定に関する否認権ということで,前夫の否認権行使の起算点については,当該審判又は判決が確定したことを知ったときから1年間というご提案をしているほか,否認訴訟の内容,結果等についての前夫の関わり方については(注3)で記載させていただいているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   最後の点は,また当該のところで御議論があれば伺いたいと思います。   それから,前の2点は相互に関連している御指摘かと思いますけれども,現在(注)ということで,第2の1の①,②,③まで考えたとして,更に考える必要があるかどうかという形で,幾つかの考え方を示してあるということかと思いますけれども,ここのところを何かより絞った形で整理できるかどうかということと,それから,前の御提案についての皆様のコンセンサスの状況とここのコンセンサスの状況はどうなのかということによるのかと思いますけれども,御意見もありましたので,少なくともちょっと説明の方でこの点について配慮するというようなことについては工夫を頂きたいと思います。   そんなところで差し当たりよろしいでしょうか。 ○大森幹事 ありがとうございます。   2点目の覆しを認知の方法で認めるかという点については,前回御発言いただいたほかの先生にも確認させていただければと思います。   私は,先ほど申し上げましたように,きちんと裁判手続の中で血縁があるということが確認をされるというイメージで捉えておりましたので,解消後の場合に限っては推定が弱いということを理由として,嫡出否認の訴えの方法と強制認知の方法と,両方が選択的に使えるということになるのではないかと思いながら議論を伺ったのですが,その辺りもご意見を伺うことができればと思います。 ○大村部会長 そこもまたこれまでの議論を御確認いただいて整理をしていただければと思いますけれども,そういうことでよろしいでしょうか。   ほかにいかがでしょうか。先ほど大石委員から第3の点についての御発言を後でということがございましたけれども,第2について,あるいは第3も含めて御発言があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   どうぞ,磯谷委員。 ○磯谷委員 第2の1の(注)のところに多分関係するんだと思いますけれども,以前ここで議論したときに,確か幡野幹事だったかと思いますが,外国の法律で,母親がまず誰の子どもかということを届け出るなり何なりして,ある意味第一義的にまず母親の方が判断をするような仕組みがあったように思いまして,それは個人的には興味深い方法だと思ったということは確か申し上げたと思います。つまり,やはり通常は母親が「父親が誰か」ということを一番よく分かる立場にあるということから,まずその母親の認識というものによって決め,そしてもちろんそれが違うことがありますので,それは争う方法も設けるという仕組みというのもあり得るんだなと認識した次第です。恐らく今回補足説明のところでは特に触れられていないんですけれども,そういったことも含めてこの(注)なのかなとは理解したんですけれども,今のような在り方というのは,多分一般の私どもも含めて市民の人たちには余り思い付かない方法でもあると思いますので,少なくとも説明の中で少し御紹介を頂くなどすると検討するのに参考になるのかなと思った次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   なお引き続き検討すべき点として,(注)に上がっているものがございますけれども,そのほかのものもあるのではないかと,(注)に書くか,あるいは補足説明に書くかはともかくとして,そうしたものについて幅広に検討いただきたいと,こういうことかと思います。ありがとうございます。それについて何か。 ○平田幹事 ちょっと最終的な説明ぶり等については検討させていただきたいとは思いますけれども,いろいろな御提案があるというところは承知しております。 ○大村部会長 ほかにこの第2及び第3につきまして御発言があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   どうぞ,井上委員。 ○井上委員 ありがとうございます。   第3のところで発言させていただきます。女性の再婚禁止期間は廃止すべきという意見が大勢を占めていた中で,今回,甲案,乙案のいずれにつきましても,削除するという方向性を打ち出していただいたことについては評価をさせていただきたいと思います。その上で,女性の再婚禁止期間は女性差別であって,国連の女性差別撤廃委員会等から繰り返し勧告を受けている旨を付した上で,パブリックコメントで問うていただきたいと思っております。   なお,乙案の②ですが,ここに記載のとおり,第2の1③における乙案を前提にするものということで,必要性は理解をするのですけれども,死別という不可抗力の場合に一つハードルがあるのがどうなのかという印象があります。その点では,10ページの(3)の検討すべき事項として,「乙案の見直しをした場合には,前夫の子との推定と再婚後の夫の子との推定とが重複し得るので,その場面で民法第773条を適用することができるように,同条を見直す必要があると考えられる」とあり,この辺りも分かりやすく示す必要があるのではないかと思いましたので,発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   この第3の案について,基本的に賛意を示していただいた上で説明の仕方,その背景ですとか,あるいは分かりやすさに留意を頂きたいという御指摘を頂きました。   ほかにいかがでございましょうか。特にございませんでしょうか。   それでは,大石委員,それから山根委員の順でお願いいたします。 ○大石委員 9ページのところの説明の文,ちょっと分かりにくいなという感じを持ったものですから発言いたします。   9ページの30行目前後ですが,要するに733条との関連を述べているところですけれども,ここに類推適用の問題が書いてあって,773条がその732条で言っている重婚の場合禁止でうんぬんというのがあって,この場合には類推適用だという話なんですが,元々733条を削除するという文の中で書いてあるので,この重婚の禁止に違反して婚姻がされた場合に用いるものとすることも考えられるというのがちょっと回りくどくて分かりにくくて,類推ではなくなるので,732条の場合にはというような形で明文化するという表現を採った方がすっきり分かりやすいのではないかと思うんです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   この点も説明ぶりにつきまして今御指摘を頂きましたけれども,少し見直していただきたいと思います。   山根委員,どうぞ。 ○山根委員 すみません,感想になりますけれども,中間試案の説明の書きぶりというのは,とても重要で大変な作業であるなというふうに感じています。先ほど大森委員からも提案があった最初の御提案,とても同じ感想を持ちますし,注記にあって引き続き検討するという書きぶりであるけれども,もう少し何か工夫ができないかというふうにやはり私も考えました。この会の発足というか,無戸籍問題の解消というのはとても大事なスタート地点から大きなミッションだと思っていますし,そこから考えてもこの辺りきちんとした位置付けで,パブリックコメントに掛けるときにも分かりやすく説明が在るべきだと思いましたので,いろいろと御検討をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   嫡出推定という制度自体がなかなか理解の難しいところもございます。それにつきまして,先ほど井上委員から御発言がありましたけれども,例外を定めてそれに更に例外を置くというようなことになりますと理解が更に一層難しくなりますので,説明については工夫をしていただきたいと思います。今の山根委員の御発言もそういう御趣旨だったかと思います。特に第2の1の(注)の部分については様々な御意見を頂きましたので,説明については手厚い説明をしていただいてパブコメ等の参考になるようにしていただきたい,そういう御要望として承りました。   ほかに資料12-2につきまして御発言があれば伺いますけれども,いかがでございましょうか。   どうぞ,髙橋委員。 ○髙橋委員 すみません,ちょっとくどいようなんですけれども,7ページの先ほどのデータなんですが,前の夫の推定がある子が58件ということですけれども,これは無戸籍の子の場合,実体法上は推定が及んでいるんだと思うんですけれども,そういう無戸籍の子の数というのはこれに入っているんでしょうか。 ○平田幹事 基本的には調査の時点で戸籍ができていなければカウントできませんので,入っていないかと思いますし,逆にその時点で無戸籍者として判明していて戸籍ができていれば,恐らく反映できているかなというふうには思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   (注3)のデータには先ほどから複数の御質問が寄せられていて,ちょっと関心が集まっているようですので,元のデータを見直していただいて,何か更に分かることがあれば後で補足をしていただければいいかと思って伺っておりました。   ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,資料12-2につきまして御意見を頂いたということで,頂いた御意見を踏まえて,中間試案に向けての最終的な取りまとめに向けて更に検討をしていただくということにしたいと思います。   1時間に1回ぐらい休憩したいと思っておりまして,1時間10分ほどたちましたので,ここで休憩いたしまして,今14時40分になろうとしておりますので,14時55分から再開をしたいと思います。   では,休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   先ほど部会資料12-2につきまして御意見を頂きましたので,12-3に入りたいのですが,その前に,先ほどから話題になっております12-2の7ページの(注3)にございますデータについて,多少補足説明が可能だということでございますので,事務当局の方からこの点についての補足説明をお願いいたします。 ○平田幹事 先ほど髙橋委員の方から,12-2の7ページ目の(注3)のデータについて,特に②の母の再婚後の夫を父とする子についての内訳は分からないかという御質問を受けまして,確認したところ,その内訳について分かるところがございましたので御紹介させていただきたいと思います。   主だったところをご紹介しますと,戸籍の記載上民法第772条の推定が及ばないというところで,懐胎していないことの証明書を添付する方法で出生届が出されたものが493件,29.7%,認知の裁判が確定したものが203件,12.2%,嫡出否認の裁判が確定したものが142件で8.6%,親子関係不存在確認の裁判が確定したものが275件,16.6%などがございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   髙橋委員,よろしいですか。 ○髙橋委員 もしあれでしたら,ここにそういうのを書いた方がよろしくないかなと思うんですけれども,御検討いただければと思います。 ○平田幹事 ちょっとデータの紹介の仕方については検討させていただきたいと思っております。【追記:この点については第14回会議参考資料14-1で公表済み。】 ○大村部会長 ありがとうございました。   では,その点につきましては,検討を頂くということにさせていただきたいと思います。   続いて,部会資料12-3,第4の部分に入りたいと思います。   「嫡出否認制度の見直し」という部分ですけれども,まず,事務当局の方からこの部分についての説明を頂きたいと思います。お願いいたします。 ○小川関係官 部会資料12-3の第4についてですけれども,こちらは嫡出否認制度の見直しについて記載しております。資料12-1及び12-2と同様に,中間試案の取りまとめに向けて,部会のこれまでの議論のまとめとして適切かという観点から御意見を頂戴できればと思っております。   これに加えてですけれども,7ページの2の「子及び母の否認権」についてですが,幾つか実質的な変更を加えております。8ページ以下に記載しておりますが,特に9ページの3行目以下の(2)の親権のない母について御議論いただきたいと考えております。従前から御提案していたものとしては,特別代理人の選任を申し立てる余地を認めるという案がございましたが,この案に加えて,親権のない母も含む趣旨で,母という地位に基づいて子の訴訟代理人又は訴訟担当者となることを認める案というのを,甲案③にブラケットを付けて提案をしております。本部会のこれまでの御議論では,このような考え方を支持する御指摘も多かったものと認識しておりますが,親権を根拠とせずに訴訟代理又は訴訟担当を認めることが理論的に可能かどうかという点についても御意見を頂戴できればと思います。   次の実質的な変更点としては,19ページ以下では「再婚後の夫の子と推定される子についての前夫の否認権」について記載しております。これまで御議論された論点は多岐にわたりますが,前回からの変更点として記載しているもののうち,21ページの2で,前夫に子の出生の事実を知る機会を与え,子の身分関係の早期安定を図る方策の要否について新たに記載しておりますので,御意見を頂ければ幸いです。   第4の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   資料の作りについての説明と,それから実質的な変更点の御指摘がありました。   大きな変更点の一つとしては,「子及び母の否認権」につき,太字で言いますと7ページの2の甲案の③のところが,子の親権を行う母という案と併せて子の母という案とブラケットで併記になっております。2番目のものが付け加えられておりますけれども,この変更につきまして御議論を頂きたいということであったかと思います。   それから,もう一つは,19ページの3の前夫の否認権に関わる問題として,こちらは説明の方を挙げられましたのでそちらを見ますが,21ページの上から3行目,前夫に子の出生の事実を知る機会を与えるという部分について御意見を頂ければということでございました。   もちろん他の点についての御意見でも結構ですので,全体を一括して御意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですのでよろしくお願い申し上げます。   いかがでございましょうか。   どうぞ,井上委員。 ○井上委員 ありがとうございます。   2の「子及び母の否認権」で,7ページのところです。   7,8ページで甲案,乙案の記載がありまして,共に③に「その子のために」という表現が補記されているかと思います。その上で,11ページの下段のところで,「2 本試案(たたき台)の概要」の(2)では,ここの書きぶりなのですが,甲案と乙案との実質的な相違点は,ということで,「子の利益を離れて母による否認権の行使が認められるか否かという点と,親権を行わない母が自ら訴訟を遂行することができるか否かという点である」とありますけれども,この前者の子の利益を離れて母によるというところですが,この前者について,父子関係の文脈である以上,母が行使する場合は,結局は「その子のために」という要素は排除できないのではないかと考えます。そのため,乙案で母の否認権を認めるにしても,「その子のために」ということは明確にしつつ,親権を行わない母が自ら訴訟を遂行することができるか否かをシンプルに問う形にしたらどうかと思いましたので,発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   母の否認権の位置付けにつきまして御意見を頂きました。   今の点は,先ほど事務当局の方からの御説明の中でも出てきた点かと思いますけれども,関連の御発言があれば是非頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   御発言はございませんでしょうか。   子の否認権というのは母が行使するとして,親権がないというときにはそれをどう説明するかということについて,何か御意見があればといった御発言もありましたけれども,そうした点も含めて御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。   御発言の対象を限定する趣旨ではありませんので,今の点についてはもちろんですけれども,他の点につきましても何か御意見や御指摘があればと思います。   中田委員,どうぞ。お願いいたします。 ○中田委員 御発言が余りないようですので,2,3お伺いしたいと思います。   一つは,7ページの2の甲案の③でありますけれども,ここには二つの御提案があるんだと思います。14ページに言うところの(ア)と(イ)とあると思うんですが,これを一読した感じですと,二つの案が出ているということがちょっと理解しづらいものですから,表記の際に二つあるんだということをもう少し分かりやすく示していただけたらと思います。   それから,9ページに,親権のない母であっても母の地位に基づいて否認権の代理権を与えることは実体法上は可能であるという御説明がありまして,それが訴訟にどう跳ね返っていくのかということだろうと思うんですけれども,もし分かれば同じような例,つまり,権限とは別に一定の地位に基づいて否認権なり何らかの権利の代理権を与えるということについての具体例を示していただくと,より理解しやすいのではないかと思いました。   それから,3点目,これも細かいことなんですけれども,乙案の(注4),これは8ページの14行目になるわけですが,母に否認権を認めることとした場合には,子の否認権を認めるかどうか引き続き検討とありまして,10ページの20行目からでしょうか,実質的には母子は重なるから未成年の子の否認権を認める必要はないのではないかという御指摘があるわけなんですけれども,母の固有の否認権を認めて子の否認権を認めないという場合の根拠はどう説明したらいいのかというのがよく分からなかったんです。つまり,子については父子関係の一方当事者であるという説明で,非常にシンプルに説明できるのですけれども,母だけにあり子にはないということをどう言うのかということをお教えいただければと思います。   細かいことばかりで恐縮ですが,3点お願いします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   最初の点は,表記の問題として工夫をできるかどうか御検討いただくということかと思います。おっしゃるように,確かにちょっと見づらいところがあって,改良ができればいいなと思います。   2点目,3点目は説明についての質問ということで,実体法上はこういうことができるということについて何か具体例を挙げてほしいということと,それから,母の否認権を認めるというときに未成年の子の否認権を認めないということの趣旨,ここで何を言っていて,どうしてそうなるのかということかと思います。   最後の点は,先ほどの井上委員の御発言とも関連するところはあると思いますけれども,事務当局の方でお答えを頂ければと思います。 ○小川関係官 まず,2点目の方ですけれども,親権という実体法上の代理権を離れて,母という一定の地位に基づいて訴訟上の代理なり訴訟担当を認める例として適切なものがあるかどうか少し検討させていただきたいと思います。   次に,3点目の子どもの否認権を認めない根拠ですけれども,子どもの否認権を全く認めないとする場合については,その理由についてはちょっと引き続き検討させていただきたいと思っています。ただ,未成年の子の否認権は母の否認権と重なるところがあるので認めないこととしつつ,成年に達した後の子の否認権を認めるということもあり得るのかなとは考えているところです。 ○大村部会長 どうぞ。 ○平田幹事 今の中田委員の1点目の御指摘の同じような例が何かないかというところにつきまして,1点だけこの部会でも出ております。これが適切かどうかあれですけれども,父を定める訴えで母が原告適格を有しているというところは,場合によっては当たり得るかなとは考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。   中田委員,更に続けてもしあれば,よろしいですか。 ○中田委員 結構です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   どうぞ,磯谷委員。 ○磯谷委員 15ページの23行目のところですけれども,「仮に」で始まるところで,文脈としては,本来であれば双方親権がある場合に,共同親権なので父の方も同意を取る等々の何か必要なのではないかと思われるけれども,それは必要がないという流れだと思います。その流れ自体はいいんですけれども,母及び未成年後見人による否認権の行使が親権の濫用に当たる余地があることから,夫は母又は未成年後見人が提起した嫡出否認訴訟において,子の利益に反する事情を主張することができると考えられるという規定が書かれているんですけれども,ちょっと私の誤解かもしれませんが,この嫡出否認訴訟の提起を一旦されるとその中では子どもの利益については議論されない,むしろそれは父子関係があるかないかというところに絞られるのかなと思っております。成年の子どもについて認める場合には,ちょっとそれ以外の要件を入れるかどうかという議論はあったかと思いますけれども,一般には嫡出否認訴訟の中では,もうだからその訴訟をするかどうかのところで多分子どもの利益は実際に申立権者が判断するんだと思いますけれども,だからもしそうだとすると,ちょっとここの記載は若干何といいますか,誤解を招きかねないのではないかなと感じました。また御検討いただければと思います。 ○小川関係官 ここで子の利益に反する事情を主張することができると書かせていただいた趣旨としては,親権者が子に代わって否認権を行使しますので,権利濫用などの一般法理によってその行使が許されないという場面があるのではないか,そのことを前提に,権利濫用を基礎付ける事情の中で子の利益に反する事情が考慮されるのではないかということを記載させていただきました。 ○磯谷委員 では,かなり例外的な場面でそういうこともあり得るのではないかということで書かれたということですか。 ○大村部会長 趣旨が分かるように。そうですね。 ○磯谷委員 分かりました。そういうことであれば,あり得ないことではないのだと思いました。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。   大石委員,どうぞ。 ○大石委員 何度も申し訳ありません。前も御質問申し上げたんですが,いろいろな権利の行使期間の長さという問題で,6ページにも出ていますし,それから16,17ページにもこの点が出ておりますが,まず一つは,単純な文章上これが入った方がいいのではないかというものを申し上げます。17ページの方の11行目から15行目にかけては,物心が付く年齢(3歳頃),学校へ行く頃(6歳)となって非常に分かりやすいんですが,6ページのところにないものですから,6ページにも是非,25行前後のところですね,入れていただくと非常に趣旨がはっきりするのではないかと思います。   もう一つは,前から申し上げているんですが,よく3年,5年というのが出てくるんですけれども,その3年,5年の意味については,今回7ページの(注7)のところで丁寧に御説明があるんですけれども,これは現行法上こういう仕組みになっていてということの説明,説明というよりも例示ですよね,だから一般国民に投げ掛ける場合になぜ3年が意味があるのか,5年が意味があるのか,その2年の違いというのは具体的にどういう点が違うのかという点が少し分かりにくいのかなと,私なかなか整理ができないところがあります。特に説明としては,例えば16ページから17ページになぜ3年が必要かということは一応書いてあるような格好なんですが,ここの説明,長さについてはうんぬんという1行目から4行目までを見ても,3という数字は出てこないんですよね。だからこういう背景や理屈があってという,だけれどもそのことと数字は直接結び付かないので,そこのワンクッションが本当は何かおありになるのではないかと思うんです。だから,それが先ほどの(注7)のような,現行制では一応そういう3年とか5年とか大きなくくりでやっていて,それにはそれなりの意味があって,だからこういう理屈を考えると3年になるんですという,何かそこの説明があったら素人的には分かりやすいなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そこも少し説明を丁寧にしていただくということで,一般の方々にも一定の理解を持っていただけるように工夫を頂ければと思います。   それから,6ページの26行目から後にも括弧書きで入れた方が親切ではないかという御指摘もありましたけれども,それはそのとおりだろうと思いますので,そのようにしていただければと思います。   垣内幹事,よろしくお願いいたします。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   今回の資料の8ページから9ページにかけてでしょうか,先ほども御説明があったか分かりませんが,前回からの変更点の中で,親権を行う母等が子の否認権を行使する際の法律構成として,代理ということなのか,あるいは訴訟担当ということなのかということについては他の局面でも解釈論上の解釈に委ねられているということで,今回もその点について訴訟担当構成を排除するまでの理由はないのではないかという御説明をされていまして,その趣旨については私は了解したんですけれども,その関係で,資料の7ページのゴシックのところの甲案の③の部分というのは,先ほどの変更点の説明に係るところで,その子のためにということで,代理かどうかということは明示しない形になっているんですけれども,同じ甲案の②のところなんかを拝見しますと,①の否認権は,母の夫に対する嫡出否認の訴えによって行うとありまして,この表現ぶりというのがむしろ代理構成を排除している理解のように見えなくもないような気もして,恐らく両論あり得るという前提での表現だろうとは思うんですけれども,何か表現ぶりについて御工夫いただくか,あるいは補足説明,今日の補足説明のたたき台の中ではこの代理なのか訴訟担当なのかという点について余り触れていないようにも思われまして,むしろ代理構成を前提としているのではないかと思われる表現も見受けられるように思います。14ページの6行目などでは,子の否認権を代理行使する主体というような説明が出てきたりとかしますので,少しその辺り,その点は一応オープンだということであれば,全体についてそういう形で表現を整えていただくということも考えられるかなという感想を持ちました。   それから,関連いたしまして,すみません,行ったり来たりで恐縮ですけれども,7ページの甲案の②のところの母の夫に対する嫡出否認の訴えという表現に関してですけれども,ここで言っている母というのと③で出てくる子の親権を行う母,あるいは子の母という表現との関係というのが若干気になるような感じもいたしまして,③のところでこれが亀甲で二つ並ぶということだとしますと,②のところも同じようにならないのかどうか,あるいは②の記載の趣旨というのは,嫡出否認の訴えの相手方を明らかにするという趣旨なのかなとも思われますところ,そうだとすれば,母のという表現をここであえて使うまでもないのかなというような感じも少し持ちましたので,その辺りも含めて,少しもし可能であれば整理していただけるとより分かりやすくなるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   法律構成が複数あるとしたら,それとの関係で説明を整理した方がいいのではないかという御指摘を全体として頂きました。   甲案の②は,私は垣内幹事が最後におっしゃったような理解なのかと思っていたんですのが,そこをちょっと確認していただけますか。 ○平田幹事 甲案の②については,相手方を特定するというような垣内幹事の御理解のとおりでございます。 ○大村部会長 そこが少し読みにくいところがあるかもしれないので,疑念がないようにしていただくといいかと思いました。   そのほかいかがでございましょうか。   どうぞ,髙橋委員。 ○髙橋委員 ちょっと戻るんですけれども,5ページの行使期間のところですけれども,これは夫の行使期間ですけれども,これの18行目,通常,夫は妻の懐胎・出産の事実を認識しており,子の出生を出生のときに知ることが多いから,早期確定が阻害される程度は大きくないと書いてあって,通常はそうだと思うんですが,通常でない場合どうなるんだろうと,子どもの出生を知らなかった場合,その期間が結構長くて,分かったというときからいつでもそこから3年ないし5年ということでいいのかということは,ちょっと疑問に思う方が出てくるのではないかと思うんですが,この辺はどう考えたらよろしいでしょうか。 ○大村部会長 今の点は,議論の過程を示した方がいいということですか。   どうぞ。 ○髙橋委員 すみません,どう考えたらよろしいでしょうかではちょっと無責任なものですから,無戸籍の場合などを考えますと,例えばDVがあって,妻の方が夫の元を出て別居期間がかなり長くて,その間に妻が別の男性と懐胎とかそういうようなことになって,そのうち離婚をして子どもが生まれたと,無戸籍なので,また別居しているので子どもが生まれたことはなかなか分からないと,子どもが無戸籍の間に何年もたっていったと,やがて分かる日が来た場合,そこから3年なり5年なりで嫡出否認できると,これを当てはめるとそういうことになるのかなと読まれるかと思うんですが,これは書きぶりというよりはちょっと実質的な議論が必要かなというような疑問を今持ったんですけれども,どうなんでしょうか。 ○大村部会長 起算点をどうするかということについての御指摘かと思いますけれども,かなり前には幾つかの起算点の考え方が併記されていましたけれども,今回はこのように整理されている。そうなると,髙橋委員から御指摘のような問題が生じ得るのではないか,また,結果としてこれでよいのだろうかと,これでは困ることはないかという問題提起かと思いますけれども,それについてもし何かあればお願いします。 ○平田幹事 ここの部分はいろいろな考え方がもちろんあるところだと思いますけれども,一つは自分の子でないことを知った時というようなところから,あるいは出生した時など,三つぐらいの考え方があり得るというところかと思いますけれども,今回は,これまでの議論を踏まえて,最低限子が出生したことを夫が知っていないと夫の否認権行使が制限されるということを説明することが難しいのではないかということで,夫が子の出生を知った時というところで提案をさせていただきました。もちろん髙橋委員おっしゃるとおり,無戸籍者などの場合には,父子関係がなかなか確定しないということもあり得るとは思いますけれども,現行法でもおっしゃったような事例ですと推定の及ばない嫡出子ということで,親子関係不存在確認の訴えで場合によっては否定されることもあり得るということかとは思いますので,今回御提案をさせていただいたのは,現行法のこの部分の規律は変えないというところではございます。 ○大村部会長 今の点につきまして何か御意見等あれば伺いたいと思いますが,ほかの方々はいかがでしょうか。   平田幹事から御発言がありましたけれども,起算点は三つぐらいありうるわけですが,出生を知った時からという現在の考え方を動かさないで,期間の方で調整しようという考え方に立っている。たくさん起算点を置けばより妥当な解決に近づくことができるという面もあるのですけれども,他方で制度が複雑になるという面もあるということで,そのバランスの問題もあるのだろうと思います。このやり方だと,一定の場合にはいつまでも行使できることになってしまうということもあるわけですけれども,しかし出生を知った時からなので,それ以上に自分の子でないということについて何らかの事実を知ったということまでは要求していないので,その意味では期間は走りやすくなる。こういったことが勘案されているのだと思いますが,窪田委員から御発言があるようです。   窪田委員,お願いします。 ○窪田委員 確認したいのですが,恐らく髙橋先生も,だからこの部分を書き直してということよりは,むしろ子の出生を知った時というのを置くことによって,推定の及ばない子で処理できるかどうかはともかく,全く知らなかったようなケースにおいてはそこから否認できるというのは,それとしてはあり得るということを前提としておっしゃっていたのではないかなという気がいたしました。ただ,気になるのは,恐らくその点を髙橋先生も問題にされたと思うのですが,先ほどの5ページの17,18行目辺りでしょうか,子の出生を出生の時に知ることが多いと考えられて,子の身分関係の早期確定が阻害される程度は大きくないという,こういう説明の仕方をすると,何か早期確定が一番大事だという感じになりますので,だったら知った時ではなくてもっと早い時という考え方が,これは髙橋委員のお考えではないと思うのですが,そういう考え方が出てきてしまうかもしれないと思います。説明の仕方としてはいろいろあると思うのですが,少なくともやはり一定の期間が経過することによって父子関係が自主的に形成されてきたような場面においては否認権の行使が制限されるのだということを前提とするのであれば,子どもの出生も知らないのに社会的な,あるいは自主的な父子関係が形成されるということはあり得ないといった,そうした説明の方が実は重要なのではないのかなという気がいたしました。単に説明の問題なのだろうと思いますが,やはりこういうふうに早期確定ということだけを強調すると,知らなくたって場合によっては確定するよという話になってしまいかねないので,ちょっと言葉を補っていただいたらよろしいのではないかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   説明については,窪田委員からの御指摘のような複数の要素があろうかと思いますので,それらを取り込んだ説明にした方がよいのではないかということで,それはちょっと工夫をしていただきたいと思います。他方,髙橋委員は,窪田委員からの言及もありましたが,ここを書き直してほしいという御提案なのか,それとも今のような出てくる問題点についての考え方を示せばそれはそれで結構だということなのか,その辺りはいかがでしょうか。 ○髙橋委員 先ほどお話しした無戸籍の場合だと,無戸籍の状態がずっと続いて,実質的な父子関係が何も形成されないで時間が過ぎていって,そうだったら知ったときから3年なり5年なりで嫡出否認しても,子どもにとっては何か形成されたものがないから子どもに不利益はないのではないかと,だったらこの規定のままでいいのかという考え方もあると思うんですけれども,ただ,戸籍がないからちょっとよく分からないんですけれども,例えば外国人の別の男性から生まれた子だった場合に,この子が日本にいられるのかどうかなんていう話が出てくるのかどうかちょっと分からないんですけれども,子どもに不利益なことが何もないのかどうかというのもちょっといろいろな場合があるような気がしていて,実質的な答えとしてどういう答えがいいのかというのはちょっと自分でもよく整理が付いていないんですけれども,ただ余り細かくそういうことをここで書けるかというと,なかなかそれも大変かなと思いまして,書きぶりを変えて説明できるのかどうか,すみません,ちょっと今よく分からないんですけれども。 ○大村部会長 ありがとうございました。   では引き取らせていただいて,御検討いただくということで,少なくとも説明については多少広がりのある窪田委員からの御提案のような方向でと思います。ほかにはいかがでしょうか。   どうぞ,井上委員。 ○井上委員 ありがとうございます。2点発言させていただきます。   一つが,19ページの3の「再婚後の夫の子と推定される子についての前夫の否認権」のところです。前回の部会だと思うのですけれども,どなたかの委員の方から,他の嫡出否認の訴えとは異質であり,制度上別類型にした方がよいのではないかという意見があったと記憶しています。これについては,私も以前の部会で,自分に及んでいる推定ではなく,再婚後の夫に及んでいる推定を否定する権利となるため,名称を含めて検討する必要があるのではないかという発言をいたしました。その間,何かいいアイデアがないかと思っていて,あるわけではないのですけれども,また特に強いこだわりがあるというわけではないのですが,少なからず国民に理解され,浸透されているこれまでの否認権とは性質が異なるので,これも丁寧な説明を付記する必要があるのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   再婚後の夫の子と推定される子についての前夫の否認権というのは,先ほども問題提起があったところですけれども,他のものとちょっと性質が違うところを含んでいるということで,そこの説明を丁寧にするように配慮をしていただきたいと思います。   今回様々な否認権が出てきますが,今井上委員が発言されようとした子の固有の否認権というものをどう位置付けるのかといったことも問題になろうかと思います。条文にどう書くのかどうかはともかくとして,何と呼ぶのか,何と呼ばれることになるのかといったことも,分かりやすさということと関連するのではないかという御指摘もあったと理解をいたしました。中間試案の段階でどういう制度になるかは確定しないところが残ると思いますので,制度の呼び方などについて直ちには決まらないと思いますが,最終的に案を取りまとめてこれを社会一般に示すときには,今回の制度とはどういうものであるのかということについて,分かりやすく,しかし,正確さを犠牲にしないネーミングをするといったことも考えていく必要があるのかと思って,今の御意見を承りました。   ほかにいかがでございましょうか。   どうぞ,大森幹事。 ○大森幹事 20ページに,先ほど,前夫の否認権のところで手続保障を検討する必要があるのではないかと申し上げた点について記載されております。ここの(注1)と(注3)では,いずれも前夫に子の出生の事実を知る機会を与える必要があるという観点で検討頂いております。書いていただいたように,知る機会を与える必要があるのではないかという問題意識自体は十分理解ができるとは思いますが,これを実際の無戸籍の当事者の方などの立場に立ってみますと,こうした提案がされること自体が非常に心外といいますか,驚きをもって受け止められてしまう危険があるのではないかなと思います。と申しますのは,皆さん既に御存じのように,DV等によって前夫と関わりを持つことに対して非常に抵抗感が強い,子が出生したという事実を何としても知られたくない,それを知られると自分は前夫に場合によっては殺されるという恐怖感や,あるいは損害賠償など何かしらの攻撃を受けるという不安感を持っている当事者の方が少なからずいらっしゃって,そういう現状が今の無戸籍を生んでいるという状況にあります。そうした中で,ほかの男性と再婚した後に子どもが生まれた場合に,その子の出生の事実を通知するといった(注1)でありますとか,あるいは再婚した夫との父子関係が否定された場合にはそのことを通知するという(注3)のようなことが出てきますと,それこそ無戸籍を助長しかねないおそれがあるのではないかと思いまして,こうした提案を書くかどうか検討したほうがよいのではとも思いますし,仮に書くとしても,今申し上げたような懸念に対して非常に丁寧な説明が求められるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   前夫への通知について懸念される事柄,DVが典型的な例かと思いますけれども,それに対する配慮というのをする必要がある。それについてはここに書くかどうかということと,書くとしたら説明をどうするかという問題があるという御指摘を頂きましたけれども,これについて何かあればお願いします。 ○平田幹事 御指摘ありがとうございます。(注1)につきましては,慎重に検討するというところではありますけれども,書くかどうか,あるいは書くとしてもどういった説明をするかというところを含めて,もう一度検討させていただきたいと思っております。   (注3)についても検討させていただきたいと思うのですが,1点,これはもう再婚後の夫との関係を否認された場合のお話でありますけれども,そこを含めてなおやはりそういう懸念があるという御指摘だと理解してよろしいでしょうか。 ○大森幹事 おっしゃるとおりです。こういうことがあると,もう再婚もやめておこうとか,そういったいろいろ心配をされるのではないかという危惧は少し感じますので配慮した記載が必要ではないかと思います。 ○平田幹事 承知いたしました。ちょっと検討させていただきたいと思います。 ○大村部会長 どうぞ,棚村委員。 ○棚村委員 今の点なのですけれども,甲案,乙案という形で書かれているところに,今大森幹事がおっしゃったような実際上のハードルとか,いろいろな困難とかそういうことは多分あるとは思います。しかし,無戸籍の問題でいつも思っているのは,例えば相談支援体制を充実するとか,DVとかストーカー対策が日本では十分ではないのでそれはきちっとするとか,それから,今回出ているのも前夫の知る機会とか手続保障というのがないままに,権利は与えるけれどもそれをどうやって行使するかとかという問題の中で出てきている一連の提案というか,検討事項ではないかと思います。ですから,大森幹事がおっしゃるように,実際上,暴力やDVとかいろいろな精神的に追い詰められている,あるいは不安を抱いている当事者に対して配慮をするということはどこかに書いておく必要はあると思うのですけれども,一方で,やはり利害関係を持つ者に対する手続保障みたいなものでその地位を,ある程度権利を行使するための前提となるような事実を知るとか情報を得るとかという配慮も一方でないと,多分権利だけ与えられても,実際上は知らされなければ行使をできないということも起こりかねないように思われます。今実務でも,強制認知みたいな形で嫡出推定が事実上排除されるような場面では,そこで前夫に連絡するか,通知するかというのは規定がないので実際にはしないという扱いで,その結果,多分助かっているというのはあると思います。   補足説明には多分書かれていたと思うので,私自身はその辺りも前夫に知らせないようにすべきであるという議論の仕方をするよりは,手続的にはこういうことが考えられるけれども,国民の一般の皆さんも含めてどう考えるかというようなことで,示したほうがよいかと思いました。誤解かもしれませんけれども,手続保障とか前夫が権利を行使するときにどういう状態になっているかという事情を知らないまま権利行使しろというようなことで決めたとしても大丈夫なのかと考えました。手続的な面での提案なり検討として書かれているので,私自身は中間試案のレベルで,対比して,客観的に論じられると思いました。これを記載したから恐怖感とか非常に違和感を感じる方はいるとは思うのですけれども,やはり取り上げてある程度甲案,乙案というような形で示しておくことは割合と必要なのかなと考えました。もっとも,誤解されないように申し上げたいのは,DVとかストーカーとか個人情報の住所・連絡先とかの秘匿とか,特にお子さんが生まれた,生まれないということに関わるのは,前夫から見ると生まれているのか生まれていないかも分からずに戸籍に自分の子として記載されるような制度,それはやはり問題はあるのではないかと思います。逆に言うと,他方ではそのために無戸籍になっている実態というのも多分あるので,その辺りは両者のバランスをとりながら議論する必要があるのではないか。DVとかストーカーの問題とか個人情報の秘匿の問題,この辺りはやはり少し分けて考えた方がいいのかなという感想を持っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   前夫に対して何らかの機会を保障する必要はあるのではないか,そのことを踏まえて大森幹事御指摘のような御懸念を勘案し調整した形で書くことはできないかという意見として承りました。手続の問題ですけれども,垣内幹事から手が挙がっておりますので,お願いします。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。垣内です。   手続保障というお話があったこととの関係で,若干感想を申し上げたいと思いますけれども,ここで狭い意味での手続保障と考えた場合には,前夫に嫡出否認の訴え,(注1)の場合には再婚後の夫との関係での嫡出否認の訴えの提訴の機会を与える,あるいは(注3)との関係では,自らとの関係で生じている嫡出推定について否認の機会を与えるということなんだと思いますけれども,(注1)の場合においても(注3)の場合においても,これは否認の提訴期間の訴訟期間の起算点をどうするかということとの関係で,第一義的にはその手続というか争う機会は前夫に保障されるということかと思いますので,それが最低限満たされていれば積極的な通知までは必要ないというような考え方も十分成り立ち得るところなんだろうというように思っています。   その上で,(注1)と(注3)とを比較いたしますと,(注3)の方は,既に次項との関係で嫡出推定が復活しているという状態を前提としますので,それについて争う機会を与えるという配慮は(注1)の場合に比べるとよりあり得る配慮なんだろうとは思いますけれども,それでも(注3)についても両論あり得るところだろうと思われますし,(注1)については,これは既に今日の資料の21ページでの御説明にもありますけれども,こういった通知をして知る機会を与える必要性がどこまであるかということは,私自身はかなり疑わしいような感じもしておりますので,最終的な判断は先生方,あるいは事務局にお任せしたいと思いますけれども,(注3)はともかく(注1)については,場合によっては書かないという選択肢もおよそあり得ないということはないかなというような印象を持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   起算点の点で最低限の保障は与えられているので,それを踏まえて考えると選択肢としては書かないという考え方もあり得るということで,複数の考え方が出ているかと思いますが,複数の考え方があるということを示すに当たっては,これについては様々な懸念が生じるでしょうから,その点に十分な配慮をする必要があるのではないかというのが皆様の御意見かと思って伺っておりました。ほかに何か,この点についてございますでしょうか。   どうぞ,木村幹事。 ○木村(匡)幹事 今の点に関係してくるところで,かなり細かい話ではあるんですけれども,20ページの(注3)につきましては,これまで議論されてきたのかどうかというところがありまして,審判又は判決をした裁判所が,当該審判及び判決の内容を通知するということなので,その主体というのは裁判所なのかというようなところで出てきているのだとは思うのですけれども,仮にこういった制度を考えるとすれば,裁判所において前夫の通知先の住所とか,氏名等をどのように把握するかとか,把握できない場合どのようなことになるかとか,そういった場合の規律,人事訴訟法28条ただし書みたいなものが参考になるのかもしれませんけれども,そういったことも今後議論はされていく必要があろうかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   これを置くとしたときには,いろいろ更に考えなければいけないこともあるのではないかという御指摘を頂きました。   そのほかいかがでございましょうか。   ほかに御発言ございませんでしょうか。   水野委員,幡野幹事という順番でお願いします。 ○水野委員 先ほど磯谷委員が指摘されたところが,よく御説明が飲み込めておりませんので,もう一度御教示いただければと思います。   15ページで,親権の濫用に当たる余地があるときに子の利益に反する事情を主張することができると考えられるとあります。私の理解が間違っていたらお許し頂きたいのですが,磯谷委員は,そういう議論をこの訴訟でやることは難しいのではないか,限られた提訴期間内に提起するときには,そこに父子関係があるかないかが争点になるのではないかという質問をされたように思います。私もそのように思っておりまして,これで子の利益に反する事情があるかどうかを争う,例えば,母が夫と子の父子関係を否定して,新たに血縁上の父と子どもの関係を作ろうとしているとき,それに対して,その血縁上の父は無職無収入であって,しっかりした職業人である夫とは比べ物にならない,というようなことを主張する場面ではなかろうと思えてならないのです。   6ページの(注6)に書いてあります最高裁の平成18年の判決は,親子関係不存在確認請求訴訟という訴えの利益さえあれば誰からでも当事者の死後でも何十年たってもいつでもできるという訴訟類型を,これ自体がとんでもない訴訟類型なのですけれども,初めて権利濫用という形で封じることで,親子関係不存在確認請求訴訟の弊害を一定の割合で改善した意味のある判決だったと思います。けれども,相続争いで親子関係が問題になる平成18年判決のような場面と違って,通常の3年とか5年とか年限を限った形の親子関係の争いにおいて,このお父さんはいいお父さんか,それを否定するのは権利の濫用に当たるかということが争点に入ってくる制度設計をするのはとても難しい気がしてなりません。その点について,先ほどの事務方の御説明がうまく飲み込めなかったものですから,よろしければもう一度御説明を頂ければ。最初に御質問をされた磯谷先生が納得していらっしゃるのに蒸し返して申し訳ありませんけれども,御教示いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○小川関係官 ここで想定しているのは,母ないし未成年後見人が親権を行使して,親権に基づいて子の否認権を代理行使ないし訴訟担当として訴えを提起しているという場面だと思います。そうしますと,理屈としては,その親権の行使が濫用に当たるという場合があることは否定できないと考えており,権利濫用を基礎付ける事情として子の利益に反する事情,先ほど委員がおっしゃったような血縁上の父に全く資力がないとか働かないとかそういうような事情だったり,あるいは母が訴訟提起に至る経緯等の事情を考慮されるのではないかということを,申し上げさせていただいたところです。   ただ,御指摘のように,平成18年の最高裁判決のように,子の利益に反する事情のみが考慮されるわけではないと思いますし,このような主張が認められる場合というのがどれだけあるのかというところに疑問があるというところもそのとおりだろうと理解しています。 ○大村部会長 では,磯谷委員,先にどうぞ。 ○磯谷委員 いいですか。   事務局の御説明で,要するにその訴訟提起自体が親権濫用に当たるという,恐らく極めてまれな,私からすると多分ほとんど考えにくいんだと思うんですけれども,ただ,抽象的にはあり得る,そういう場合についておっしゃっているんだと理解はいたしました。ただ,今正に水野先生からもお話がありましたように,やはりちょっと何といいますか,誤解を招きがちなのは,正にこの嫡出否認の訴えのところで,実体要件にしても訴訟要件にしても,何か親権行使が適切であることとかそういうあるいは子どもの利益とか,そういったものが考慮要素に入ってくるのかという誤解を招きかねないので,そこは一つやはりちょっと書き方が慎重にならなければいけないのかなという思いと,それからこの文脈は先ほども申し上げたように,父の了解がなくても本来親権は共同行使なんだけれども,母だけでできるというところの正当化の話なんだろうと思いますが,ちょっとその正当化の理由としてもかなり適切ではないのかなと私は思いました。ですから,いずれにしてもちょっと御検討いただく必要はあるのではないかとは思っております。水野先生,すみません,何か途中で口を挟みまして,申し訳ございません。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の磯谷委員の御指摘の表現ぶりとか,あるいは理由としてこれを主として掲げることがいいのかといったことについては,少し検討いただいたらいいかと思いますけれども,水野委員,そういうことでよろしいですか。 ○水野委員 はい。もう1点あるのですけれども,ほかに先に手が挙がっていらっしゃるようでしたら,そちらを。 ○大村部会長 では,水野委員から伺って,それから幡野幹事,窪田委員という順番でいきたいと思います。 ○水野委員 同じページで少し引っ掛かるところがございます。説明ぶりだけなのですけれども,15ページの下のところです。826条によれば,親権者と子の利益が相反する場合にはというここの一連の,それから昭和35年の判決などについての説明ぶりです。この826条の利益相反行為は元々こういう趣旨の条文ではなくて,親権者であれば自己契約,双方代理に当たるような契約であったとしても,つまり総則の代理法の制約で自己契約,双方代理に当たってできないことであったとしても,親権者がやる場合には行わなくてはならないという立法判断で,むしろ親権者が行えるように特別代理人を選ぶという趣旨で,起草者が設計した条文です。ただ,実際には利益相反に当たるような場合に,裁判所に行って特別代理人をわざわざ選ぶことをしないで,親権者が直接契約するほうが通常でしたので,争われた事案では,結果としてこの条文は子どもを守るために機能しました。けれども,元々の起草の意図は,子の利益を守るためではなくて,利益相反に当たるような,自己契約,双方代理でできないような場合であったとしても,親権者が推薦する特別代理人を選んでもらって,できるようにしようという立法理由から設けられた条文です。親の選んだ特別代理人を選任する際に契約の内容まで審査できるのかという議論もありますし,ここの説明では,そのあたりの配慮が足りないように思います。具体的にこう変えるべきだという提案はにわかに思い付かないのですけれども,少し修正していただく必要があるように思われました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の点も少し見直していただいて,御検討をお願いしたいと思います。   幡野幹事,どうぞ。 ○幡野幹事 ありがとうございます。幡野です。   細かい話ではございますが20ページの③の甲案の補足説明に関する24ページの叙述について,20ページの甲案を見ると,訴訟要件と実体要件というものを書き分けているのですが,その書き分けた趣旨というのが24ページのところで十分に余り明らかにされていないように思われました。一番重要だと思われるのは,訴訟要件を判断する段階で再婚後の夫と子との間の,例えばDNA鑑定など生物学上の父子関係があるかどうかは判断しない,言い換えれば,前提の訴訟要件の段階では前の夫と子との間の生物学上の父子関係を判断するにすぎないということについて明示していただければ有り難いと思った次第です。  ○大村部会長 その点につきましても,検討していただくということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。   窪田委員,お待たせして,すみません。よろしくお願いいたします。 ○窪田委員 先ほど磯谷委員,水野先生から出たところ,私もかなり違和感がありますので,15ページの23行目からの「仮に」の段落はもう削ってしまった方がいいのではないのかなという気は正直いたします。というのは,父子関係を否認することが子の利益に反する場合というのですが,父子関係を否認すること自体は,父がいない状態をいったんは作り出すので,一般的に言えば,子の利益に反するという言い方はできるのだろうと思います。それにもかかわらず,それ以上の形で子の利益に反する場合というのは,理論的には観念できるのかもしれないということであるのですが,私自身はやはり具体的に観念はできません。どっちの父親がいいのかという話をここでやるのだとすると,大変に気持ちの悪い仕組みを導入することになると思います。前項の文脈からいっても「仮に」という段落はなくても意味が通じると思いますし,むしろ記載することはミスリーディングなのかなと思います。磯谷先生も水野先生も遠慮しながら御検討をということだったのですが,もう端的に削ってしまってはいかがでしょうという提案でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ちょっと再検討していただいて,もし要らないのであれば削除する,他の説明が必要ならば,磯谷委員おっしゃったところだと思いますけれども,加えていただくということで,少し整理をお願いをしたいと思います。   久保野幹事,どうぞ。 ○久保野幹事 今終わったはずのところを繰り返して申し訳ないんですけれども,今のところを仮に削ったとしましても,恐らく17ページから18ページのところで,先ほど磯谷先生がおっしゃっていた子どもの利益や福祉を否認を認めるかどうかで考慮するのかということが直接論点として挙げられているようにも思いまして,残すにせよ残さないにせよ,そことの関連付けも御検討いただきたいということを申し上げようと思いました。   それで,もう一つ,今の窪田先生と重なるんですけれども,仮に一般法理としての親権濫用で封じる可能性というものを,理論上は認めるとしても,血縁上の父が子どもの養育をするのに適切かどうかといったような,先ほどちょっと質疑で出たような例というのは恐らく当たらないというか,そのようなことを考えての親権濫用ということではないのではないかと思いますので,誤解を招く等不適切なところかと思いましたので,重ねてになりましたけれども意見させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   皆様の御指摘は,嫡出否認の訴えの中で問われることが何かということについて誤解が生じないようにということと,それから濫用可能性があるのだとするとそれはどういう場面で出てくるのかということ,窪田委員は例を思い付かないとおっしゃいましたけれども,なお言及をしておく必要があるのかということについて再度整理をお願いするということにさせていただきたいと思います。   ほかにはいかがでしょうか。   中田委員,お願いいたします。 ○中田委員 ありがとうございます。   もう終わってしまったところなんですけれども,前夫に通知をするという点につきまして,20ページの(注1)と(注3)に関しまして,前夫といえども手続保障の観点から考慮すべきであるという御発言が相次いで,一定の収束を見たと思うんですが,ここでの元々の趣旨というのは,前夫に対する手続保障もさりながら,子の身分関係の安定ということが重要なのだろうと思います。つまり,前夫が知らなかったということでいつまでたってもひっくり返すことができるということは何とか封じたいということで,それはそれで意味があることだと思います。ただ,といって20ページの(注1)のようなシステムというのはかなりショッキングなことでありますから,こういう方法でないにしても,子の身分関係の早期安定を図る手段がほかにないだろうかということを検討する必要があるのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の御指摘は,ちょっと前の髙橋委員の御指摘とも関わる点があるのだろうと思いますけれども,否認権を行使できないという状態が続いてなかなか身分関係が安定しないというのを避けるということだとすると,それにふさわしい対応はほかにあるかもしれないというような御指摘だったかと思います。   窪田委員,もう一度手が挙がっていますか。 ○窪田委員 すみません,ちょうど今のところなんですが,中田先生からも御発言ありましたので,お尋ねになっていた部分について,一つだけ発言させてください。   20ページの(注1)と(注3)で,手続保障という観点から,場合によっては少し違うかもしれないという点は垣内幹事から御指摘があったところなのですが,やはり(注3)の方はちょっと私実体法上も気になる部分というのがあります。つまり嫡出推定がされる形になっていて,父子関係があるという形になっているにもかかわらず,全く知らないまま嫡出推定がされている父親の方は死んでしまったということになって,相続が開始するという場合,死んだ本人もそもそもそういう嫡出推定のある親子関係が認められていたということを知らない,家族の方もよく知らないという状況で,その後どうなるのかなと考えたときに,やはり(注3)に関しては,単に手続保障ということだけではなくて,実体的な法律関係が発生するのだということを踏まえて,こういう形の単純な通知制度になるのかどうかはともかく,やはり検討する必要があるのではないのかなというふうに気になっておりましたので発言させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   20ページの(注1)(注3)につきましては,様々な御指摘を頂いております。御指摘いただいたことをうまく全部回収できるかどうか分かりませんけれども,それらの要請というのが分かりやすい形で示されて,それに対してどんな選択肢があるのかということを整理していただくということで引き取らせていただきたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。   どうぞ,棚村委員。 ○棚村委員 補足で,先ほど強い言い方で言ったのですけれども,今窪田委員が言われたようなことをやはり少し考えて,利害関係がある人にどういう手段で伝えるかという伝え方の問題と,それから逆に言うと,そういう情報が上がってこなければ実際にはなかなか伝えられていないという現状があるので,そういう現状の制度の仕組みの中で新たにそういうものを設ける必要があるのかという問い方をしていただきたいと考えた次第です。つまり,実体法上利害関係が生じる可能性のある人にどういうような形で伝えるかということと,手続保障みたいなものもあるものもあるわけですから,これらを踏まえて検討していくということで,先ほど言ったのは,本当に失礼な言い方をしたのは,隠すとか隠さないとかという話ではなくて,やはり権利を持っているとか関わりを持っている人たちに対する通知や知らせる機会を保障する制度みたいなものは検討する必要があるという趣旨です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今の棚村委員の御指摘まで含めて,更に整理検討をお願いしたいと思います。   ほかにこの部会資料の12-3につきまして御発言はございませんでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,12-3につきましては,頂きました御意見を踏まえて更に整理をしていただくということにさせていただきます。   12-4ですけれども,今4時10分ですので,ここで休憩を挟みまして,4時25分から再開して,12-4について御意見を頂きたいと思います。   15分間休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   残る検討対象は部会資料12-4の第6ということになるのですが,その議論に入る前に,山本委員の方から書面での意見をお出しいただいておりますので,これについてちょっと御説明をお願いします。 ○平田幹事 今回部会が始まる前に,今日の午前中に,山本委員から欠席された場合に意見があるということで,今会場にいらっしゃる皆様におかれましては,お手元に配布させていただいた次第でございます。今ウェブ参加されている方におかれましては,後ほどメールでお送りさせていただきたいと思います。   内容につきましては,懲戒権の規定の見直し,甲乙丙についての御意見,あるいは懲戒権に関する規定の見直しに伴う検討についての御意見ということで承っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   説明等を考える際に,事務当局の方で参考にさせていただければと思います。中にはこの会議場で御指摘があった案と同じ趣旨の御提案も含まれているようですので,そうしたものについても参酌をして,事務当局の方で考えていただければということで,これを受け取らせていただきたいと思います。   山本委員,どうもありがとうございました。   それで,残りの時間で12-4について御意見を伺いたいと思いますけれども,まず,資料の説明からお願いいたします。 ○砂山関係官 では,御説明いたします。お手元の部会資料12-4を御覧ください。   第6の1は,「嫡出の承認の制度の見直しについて」です。   第10回会議において具体的な案を提案させていただきましたが,その案自体については消極的な意見を多く頂きました。他方で,民法第776条の活用という方向性自体には異論は見られなかったことから,本部会資料では承認の方法を限定することなく,同条の活用について引き続き検討することなどを提案しております。   続いて,2ページ目の2ですが,推定の及ばない子に関するいわゆる外観説の明文化についてですが,基本的に従前からの変更点はございません。   続きまして,3ページ目の3でございます。「認知制度の見直し」についてです。   従前文中に記載していた案をゴシック体にして冒頭部分に持ってきた上で,2点変更を加えております。1点目が(2)①について,従前は認知者の錯誤のみを取消事由としておりましたが,それに限らず,認知が事実に反するときを取消事由としております。2点目が認知無効に関する規律の④について,従前は公益に反する目的としていたのを,子に日本の国籍を取得させる目的その他の不正の目的との文言に修正しております。特に1点目は実質的な変更にもなりますので,御意見があれば頂戴できれば幸いです。   続きまして,13ページの第6の4は,「嫡出の用語の見直し」についてですが,この見直しが他の法制度に与える影響等について整理する必要があることなどを踏まえまして,本部会資料では引き続き慎重に検討することを提案しております。   部会資料12-4についての説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   12-4の第6については,今御説明を頂きましたように,1から4までに分かれております。それぞれ別のことが話題になっておりますので,順番に御意見を頂ければと思います。   最初に,1の承認の制度の見直しにつきまして御意見があればと思いますが,いかがでございましょうか。   中田委員,どうぞ。お願いいたします。 ○中田委員 ありがとうございます。   私は,このような取扱いでよろしいのではないかと思います。この承認制度が大きな意味を持ち得るのは,大きくなった子の否認権を認める場合だと思います。ただ,それがどうなるかというのはまだ確定しておりませんので,現段階ではこのようなお示しの仕方でよろしいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今のような御意見を頂きました。他のところが固まらないとこれについて立ち入って議論することは難しいということで,この程度の記載でよいのではないかという御意見だったかと思います。   ほかにいかがでございましょうか。   これについては特に御意見はないということで,中田委員から御発言がありましたけれども,この方向で引き続き検討するということで引き取らせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,その次の「推定の及ばない子に関する外観説の明文化」という部分についてですけれども,これについて御意見を頂ければと思います。   どうぞ,棚村委員。 ○棚村委員 これについても繰り返しお話をしたり議論がされてきたところですので,一定程度こういう外観説に頼らなくてもいいようなケースが増えるだろうということは考えられるんですけれども,ここにまとめてあるような形でよろしいのではないかという感じを持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   このまとめでよいのではないかという御意見を頂きましたけれども,窪田委員,どうぞ。 ○窪田委員 私も同じです。基本的には,772条をどういうふうな形で書き直すかによってこの問題はものすごく大きな影響を受けると思います。御意見があったように,完全な出生主義というのを採るのであれば外観説の位置付けというのはまた変わってくると思いますし,そういう点も踏まえた上で検討せざるを得ないので,これ以上は踏み込めないということでよろしいのではないでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。   今の窪田委員からは,やはりこの問題についても,前提となる問題が決まらないことには更に立ち入った考え方をここで示すことは難しいという御指摘がありましたが,ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   では,これにつきましても,このような形で引き続き慎重に検討するというような書きぶりで残させていただくということにいたします。   3番目ですけれども,「認知制度の見直し」ということで,ここについては前回の資料から修正した点があるということで,3ページの3の(2)のアの①の点,それからイの④の書きぶり,表現の点などの御指摘がありました。この点も含めまして,3の認知制度の見直しにつきまして御意見を頂ければと思います。   どうぞ,磯谷委員。 ○磯谷委員 この認知制度のところですけれども,まず,3ページの(2)のイの④のところです。もちろん濫用的な認知について防止していくという必要性はそのとおりだろうと思っていますけれども,どこまでがそういった排除すべきものと考えるのかというところですけれども,例えば想定されるのは,日本人の男性が外国人の女性の子どもについて,父子関係がないことを知りながら認知をするという場面なんだろうと思います。ただ,この場合というのは常にやはり無効になると考えるのか,それともそういった場合で,かつ実際に同居して子どもを養育していて一定の年数もたってという場合に,まずちょっと実体法的にそれも無効ということなのかどうなのかというところの外縁がなかなか難しいのかなと思います。その点について,ちょっと事務局の方から少し補足をお願いできればと思います。   それから,もう一つは,やはりこの部分というのはかなりいわゆる入管の取締り的な部分が入ってくるのかなと思うんですけれども,ここで仮に民法上無効だということになった場合に当局としてはどういう対応をされることになるのか,単に無効だと解釈して何か後は行政的な形で対応するということなのか,あるいは何か民事的にも対応される,例えば無効の確認だとか,無効ですからもちろん判決が必要というわけではないのでしょうけれども,具体的にどうこれを活用されるのか。文脈を見ますと,無効のものであれば今のところは不受理という形で,言わば水際で対応しているような感じですけれども,本件についても大体そういう形を想定されるのか,ちょっとその辺りがなかなか読み切れなくて,どんな対応になるのかなというところも教えていただけるといいかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   2点について,どういう運用を想定しているのかという御質問だったかと思いますけれども,よろしくお願いいたします。 ○小川関係官 まず,1点目のどこまで排除すべきなのかという点のその他の不正の目的の部分については,明示もしていないところですのでいろいろ御議論があるところかなと思っておりますが,反対の事実を知りつつ日本の国籍を取得させる目的に関して言いますと,認知の時点でこの目的があった場合には,その後,同居しているといった事情というのは基本的には考慮されないと考えているところです。今の提案としてはそう考えているという趣旨です。   もう1点の何か無効になった場合の取扱いというものが変わるのかというところなんですけれども,こちらは少し検討させていただきたいところではあるんですけれども,今の提案としては,現状の取扱いを変えるところではないと考えています。 ○大村部会長 磯谷委員,よろしいでしょうか。 ○磯谷委員 はい。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 どうもありがとうございます。   表現だけのことなんですけれども,3ページの3の(1)の嫡出でない子はその承諾がなければこれを認知することができないという文章です。これは現在の779条と782条を言わば合体したような表現ぶりになっているのですけれども,この文章だけを見ますと,嫡出子はその承諾がなくても認知することができるというように誤読されてしまう危険があるように感じました。ですから,そういうことのないように何か表現を工夫した方がいいかなと思いました。例えば単に子はとするとか,それでは十分ではないかもしれませんけれども,何か考えたらいいかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   先ほどから御指摘がありますけれども,一般の方々に誤解が生じないような表現ぶりを工夫していただくということで,今の点につきましても,ここの書きぶりと併せてお考えを頂ければと思います。   窪田委員,どうぞ。 ○窪田委員 今の同じ部分なのですが,現行法でも同じ問題がありますが,嫡出でない子は認知することができるとなっていますが,多分認知されている場合にはもはや重ねての認知はできないと思いますが,それが多分適切に現行法でも示されていないと思います。何か工夫して書く余地はないのかなというのは以前から気になっていたものですから,ちょっと指摘させていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そうですね,おっしゃるような問題はあるかと思います。   ほかにはいかがですか。   久保野幹事,どうぞ。 ○久保野幹事 4ページの(注2)についての質問です。大丈夫でしょうか。   (注2)で,本文の①での取消事由の範囲とここで書かれているものとの関係が,この(注)を見ますと,本文①のようにすることのほか,これこれの場合にもとなっていて,広げる方向にも見えるんですが,5ページの上の4行ですとか10ページの27行目辺りからの説明ですと,むしろその場合に限ることが注記されているとなっていまして,これは完全にどちらかに包含される関係にはないんだとは思うんですけれども,そこの関係について確認をさせていただければと思います。お願いします。 ○平田幹事 基本的に3の(2)のところのアの①につきましては,認知が事実に反するときという表現は,現行法の認知無効の根拠条文を参考にして,無効原因についてこのような記載ぶりとさせていただいているところでございます。一方で,ここで(注2)を付した趣旨としましては,この無効原因について,認知者の主観等で更に制限するということも考えられるということで,具体的には,事実に反し,かつ,錯誤や詐欺の要件を満たす場合のみに認知の取消しを認めるという考え方もあり得るという趣旨で,記載させていただいたというところではございます。 ○大村部会長 久保野さん,それを踏まえてもし何か御意見とか更なる御質問があれば,どうぞ。 ○久保野幹事 そうすると,説明の方の理解で,つまり事実に反するときであって,それが錯誤によるときや詐欺や強迫によるときに限るという,別の考え方があり得るというのが(注2)の趣旨だということであると,そうしたら,まずは(注2)の書き方が変わるということだと理解いたしました。   それで,私自身がこの点について何か強い意見を持っているわけではないですけれども,以前にもし議論がされていましたら重ねてで申し訳ありませんけれども,詐欺や脅迫によって認知がされたというときに,事実に反するかどうかにかかわらず,取消しをするということについてはここでは取り上げていないという整理ということでよろしいですね。確認です。すみません。 ○平田幹事 御指摘のとおりでございます。   (注2)については,記載ぶりを訂正させていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,3の「認知制度の見直し」について,いかがでしょうか。   どうぞ,大石委員。 ○大石委員 前回の資料の16ページから始まる部分が,多分今回の10ページ以下のところだと思いますが,認知無効にする規律だと思います。ちょっとよく分からないのがありまして,前回は特にこの言葉は出ていなかったと思うんですが,今回の11ページの14行目のところで,(注)にもちょっと出てくるんですが,公共の利益に関する制度のここは規制とありますが,自由に対する規制ではないので,多分規律,(注5)と同じように規律だと思いますが,要するに,脱法的なものを防ぐということなのに,端的にそうなのに,公共の利益に関する制度うんぬんという文言をわざわざ持ってこられたのは,前回にはなかったんですけれども,その文言を,あるいは言い回しを用いた含みがどうなのかなという,よく分からないところがあります。   もう一つは,そういう公共の利益に関する制度の規律を潜脱する目的ということで,(注5)では,そういうものとしてフランスはこういう制度だという紹介の仕方なんですが,フランスの立法過程に則してこういう意味合いでの議論なのかどうかが,ちょっと私自信がないものですから,その点の情報があれば教えていただきたいと思います。それが一つです。   もう一つは,第4点目ですから,13ページのことですから,後でまた申します。一応今の点だけ御質問申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○小川関係官 公共の利益に関する制度の規制を潜脱する意図を持ってという表現を今回用いさせていただいた趣旨としましては,前回公益に反する目的で認知をしたときという表現にしていたところ,これに対して認知自体は公益目的でするものではないという御指摘があったところから見直しをさせていただいたところでございまして,不実の認知を利用して他の公益に関わる制度を潜脱することに悪用されるという場面があり得るということですので,そういう目的にされたものは認めないという趣旨で書かせていただきました。   (注5)の文献の引用の冒頭の公共の利益に関する制度の規律を潜脱する目的の有無というところがフランスの立法過程に則しているかというところについては,引用の仕方がまずかったのかもしれませんが,ここのフランス民法の方で上がっている特定の利権に関わるものとして,国籍の付与と社会福祉上の給付というところが上がっておりましたのを指すものとして事務当局の方で表現させていただいたということですので,不適切であればそこは修正させていただきたいと思います。 ○大村部会長 どうぞ,大石委員。 ○大石委員 今のフランスの元々の政府法案も多少は見ましたけれども,直接こういう言葉は使っていませんので,やはりちょっと誤解を招くかなという感じです。   それと,何か持って回った言い方なんですよね,正直言って。公共の利益に関する制度の,そこは規制ではなくて規律だと思いますけれども,要するに法制度を潜脱するというだけの話で,公共の利益に関する制度に関する潜脱だからいけないとかという話ではおよそないので,だからもうちょっとあっさり書いても全然問題ないのではないかと思うんですけれども,無限に広がる議題ではないのでと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   では,ちょっと書きぶりを御検討いただくということで,お願いをしたいと思います。よろしいでしょうか。   ほかに,この認知の点についていかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   大森幹事,どうぞ。 ○大森幹事    3ページの(1)の承諾を要するかどうかという点についてです。   6ページと7ページにわたってその理由を説明していただいた上で,濫用的な認知を防止する観点から,承諾という要件を入れてはどうかという御提案をされておられますが,他方で,7ページのイ,20行目で,実際に濫用的な認知という立法事実があるのかという疑問が呈されているということであるとか,承諾を要するとすると,父の方からは,認知の承諾の意思表示を求める訴えという手続を踏んでいかなければならないという負担が生じてしまうということも記載されており,こうした点を考えますと,本当に承諾という要件を新たに付すということが必要なのかどうか,妥当なのかどうかという点がやや疑問に感じるところです。そうすると,提案としては,例えば鍵括弧にして検討を要するとしてみるということもあり得るのではないかと思いますし,今申し上げたような疑問点に関して,補足説明の中でもう少し補足していただいた方がいいのではと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それは検討させていただくということで。 ○平田幹事 検討させていただきます。 ○大村部会長 本文の書きぶりを改めるのか,あるいは説明の方をもう少し詳しく書いてこれに伴う問題点というのを取り出すか,ちょっと事務当局に考えていただくことにしたいと思います。   ほかに,いかがでしょうか。   それでは,今のような御指摘を踏まえて,この認知制度の見直しにつきましても,基本的にはこの方向で中間試案に向けて取りまとめるということにさせていただきたいと思います。   では,最後が13ページの「嫡出の用語の見直し」というところですけれども,大石委員から先ほどこの点について御発言があるということでしたので,まず大石委員からお願いいたします。 ○大石委員 嫡出という用語を見直すかどうかと,いろいろな見方があると思うんですが,前回も窪田委員の方から,いろいろ言い換えは当然できる部分があるというお話もございました。大変参考になりました。しかし,「他方で」というところで,最高裁の言い方もありますけれども,以前からずっと水野委員などが心配されておられるように,例えば国会の場で議論されるときにどういうリアクションがあるかということ,そういう点も水野委員から教えていただきましたが,そういう点から考えると,例えば嫡男系嫡出なんていうのは皇室典範にも出てくるわけですよね,意外にそんなところから妙なクレームが付いたりすることをちょっと恐れるんです。民法だけの問題ではないので,やはりそういうある種のフリクションを起こすところはかなり慎重にした方がいいのではないかというのが個人的な意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   4の冒頭のところにも,社会的にこれがどう受け止められるかといった点にも配慮が必要だという指摘がありますけれども,この点はかなり難しい問題になりはしまいかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。   ほかにこの嫡出の点につきまして御発言があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   棚村委員,どうぞ。 ○棚村委員 私も前回発言をさせてもらったのですけれども,この点もやはり元々は嫡出という概念が,海外でもそうですけれども,legitimateとかlegitimacyということで,正統か正統でないかという用語を使っていたのが,表現として適切ではないというようなことで廃止をしたり,そういう動きがあります。そこで,日本でも受け止め方はいろいろあると思うのですけれども,できる限りこうニュートラルというんですか,それからそれを受ける人の印象でいうと,例えば結婚外で生まれた子とそうでない結婚内で生まれた子とか,そういう表現であれば事実を指しているということになりますので,その辺りのところはできるだけ,多分議論としては区別というものが民法上も戸籍上もあるんだという事実と,それからそれがどう社会的に受け止められてきたり歴史的に差別みたいなことにつながってしまったかということを踏まえた上で,引き続き慎重に検討するというようなことで書いていただけますと助かります。嫡出,嫡出でないという法的な表現を残しておくことが妥当かどうか,ある意味ではこの点での検討が必要なんだということをできるだけ強調していただけるとありがたいかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   資料には,両方向からあり得る議論が記載されているかと思いますけれども,委員,幹事からも両方向の御議論を頂いたと理解いたしました。それらを踏まえた上で引き続き慎重に検討するという形になっておりますけれども,更にこの点について御発言はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   では,これもこのような形で更に引き続き慎重に検討するということで,取りあえずまとめさせていただきたいと思います。   それで,12-4は以上ですけれども,窪田委員から先ほど御発言の申出がありました。戸籍に関する技術的な問題があるという御指摘だと承っておりますけれども,窪田委員,どうぞよろしくお願いいたします。 ○窪田委員 ちょっと話を蒸し返してしまって申し訳ないのですが,資料12-3の20ページ,先ほどから随分話題になっていたところの(注3)の部分です。基本的には(注1)も(注3)も裁判所なり,あるいは本人なりが審判とか判決の内容を通知するとか,そういった仕組みとして検討するということなのですが,戸籍について,そもそも戸籍にどう記載するのかという点を考えておく必要があるのではないかということです。つまり認知と同じように考えると,通知するかしないかに関係なしに,認知者の側にも認知された側についても戸籍の記載というのが考えられるのですが,そういう仕組みでいくのか,前夫の嫡出推定が言わば復活したといいますか,嫡出推定がされるようになったのに戸籍に記載が全くないというのも多分奇妙だろうと思います。この議論は戸籍についてどう扱うのかというのとセットにして検討する必要があると思いますので,御質問というよりは,その点御検討いただいた方がいいのではないかということだけです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   直ちにお答えするのは難しいところがあるかと思いますけれども。 ○平田幹事 御指摘の問題があろうかとは思いますので,戸籍関係の担当者と相談した上で,また次回以降検討させていただきたいと思います。お願いいたします。 ○大村部会長 窪田委員,それでよろしいですね。 ○窪田委員 それで結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   以上で本日予定していた部分は終わりましたが,第5に入るほどの時間的な余裕はないでしょうか。どうしましょうか,説明されますか。   それでは,多少まだ時間が残っていて,先に進めると有り難いところもございますので,時間の許す範囲で5についての御意見を伺いたいと思います。   では,簡単に御説明の方をお願いします。 ○小川関係官 第5の1ですけれども,「成年に達した子の否認権」ということで,これまで子自身が行使する否認権として議論いただいていた部分をまとめたものということになります。28ページ以下の補足説明の部分については,これまで皆さんに幾度も御議論いただいた中で補足説明としてまとめさせていただいた部分になるんですけれども,もしこのまとめについて御議論,御意見等ございましたら頂戴できればと思います。   それから,実質的な部分なんですけれども,28ページの(注2)の部分が,前回「一定の要件」の部分について,考慮要素は列挙しているけれども具体的にどういう規範なのか明らかでないというところの御指摘がございましたので,今回考慮要素を挙げた上で,一定期間父子関係の実態があったことというのを規範として立てることができるのかというところについてもちょっと修正をしておりますので,御議論,御意見を頂戴できればと思っている次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今御指摘があった点について御意見を頂きたいと思いますし,それ以外でも結構です。先ほど井上委員からここの部分について御発言があるということでしたので,まず井上委員からお願いいたします。 ○井上委員 ありがとうございます。   今の28ページのところですけれども,乙案では成年と25歳の2案が示されています。父子関係の早期確定という意味では,25歳を待たずして,いずれ18歳になる成年から3年というのがベターなのかもしれないのですけれども,18歳から21歳という年齢で行使するということは,少しハードルとして高いのではないかと率直に感じています。この辺りもパブリックコメントに付すときには丁寧に説明をしていただければということで,意見です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   3年,5年というのは説明を要するという御指摘を先ほど大石委員から頂きましたけれども,ここの部分の,成年,25歳についてもちょっと実質についての説明をしてほしいという御要望として承りました。   そのほかにこの第5につきまして御意見があれば頂きます。   磯谷委員,どうぞ。 ○磯谷委員 30ページの下から乙案の根拠について記載がございますけれども,これまでの議論において子どもの人格的利益という視点が語られていたかと思うのですけれども,その点についてちょっと触れられていないように思いますけれども,この辺りは何か意図があってそういう形で整理をされているのか,その点をちょっと確認したいと思いました。 ○大村部会長 御質問なので,もしお答えいただければ。 ○小川関係官 まず,子の出自を知る権利に関しては,29ページの(3)の方で言及させていただいているところです。それから,31ページの方に乙案の方の「根拠等」というところで書かせていただいているところの部分なんですけれども,今回人格的利益というところを前面に出した説明はしていないところでしたが,記載については検討させていただきます。 ○大村部会長 どうぞ,磯谷委員。 ○磯谷委員 ありがとうございます。   29ページの下のところの「子の出自を知る権利との関係」というところでありまして,確か前回の議論でも,出自を知る権利そのものではないという整理が望ましいのではないかという話になったかと思うので,そういうことからすると,やはり31ページの乙案の根拠のところには,書き方はちょっと難しいんだろうと予想しますが,それでもやはり子どもの人格的利益というところは是非入れていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それはちょっと御検討いただくということで,引き取らせていただきます。   ほかにはいかがでしょうか。   (注2)を書き改めたといった御説明がありましたけれども,その点,あるいは今の説明ぶりについて磯谷委員から御指摘もありましたが,ここでの説明の部分など,何か御指摘があればと思いますが,いかがでしょうか。   中田委員,どうぞ。 ○中田委員 ありがとうございます。   お願いだけなんですけれども,29ページにドイツでの改正の動きについての御紹介がございます。29ページの15行目からですけれども,なぜこのような改正をする動きが出てきたのかという,そこの背景事情を御説明していただくと検討の役に立つのではないかと思いますので,今回でなくても結構ですのでお教えいただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   やはり資料の書きぶりについてですが,ドイツの事情についてもう少し理由を書いていただくと,考える際に役に立つであろうという御指摘を頂きました。   そのほかはいかがでしょうか。   棚村委員,どうぞ。 ○棚村委員 29ページの(注2)のところで,やはり「一定の要件」というところで,乙案のときに制限をされるというときに,今中田委員がちょっと御説明されたように,ドイツでも社会的家族関係とかあるいは社会的親子関係というような,どこの国でもかなり重視するという傾向がみられます。つまり血縁とか生物学的な関係以外に考慮すべきファクターとして挙げられているので,この辺りのところも少し説明をされたら分かりやすいのではないでしょうか。同居とか期間とか監護の有無とか,こういうような父子関係の実態というのは正に社会的な親子関係とかそういうキーワードになってくると思いますので,そんなようなことを,要するに血縁の有無だけではなくて,こういうようなことがやはり考慮すべき事項として考えられるということで説明されると分かりやすいのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   (注2)を踏まえた上で,このように考える理由について説明を加えた方がよろしいという御指摘を頂きました。   久保野幹事,どうぞ。 ○久保野幹事 すみません,別の点になりまして。 ○大村部会長 どうぞ,結構です。 ○久保野幹事 かなり細かい点ですけれども,31ページの30行目前後で,年齢の25歳について説明がありますけれども,特別養子の養子の年齢を参照していまして,普通養子の方が792条との関係も織り込んで説明を頂けるとよろしいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ちょっとそれは説明を補正していただくということかと思いますが,ほかにはいかがでしょうか。   どうぞ,磯谷委員。 ○磯谷委員 32ページの一番下,31行目からウのところで,どういう場合に成人した子どもの否認権の行使を認められるべきかというところで,なかなか微妙な議論だったと思います。この中で,①,②については否認権行使を認めるべきとの意見が多く,③についてはうんぬんというところでまとめられていて,特段私の認識と大きく違うということではないのですけれども,例えば②について,これは要するに少し父が養育していたけれども,離婚してそれからはもう没交渉になっているという話になっているわけですよね。ただ,例えばでは養育費を払っていた場合どうなのかとか,ちょっとなかなか悩ましいところがある。それから,③についてもいわゆる虐待のケースを想定されていて,虐待についてはむしろ親権の問題として扱われているので,親子関係を切る必要はないのではないかというような文脈かもしれませんけれども,虐待の中には実はネグレクトといって養育を放棄してというところもあったりして,ここの辺りは本当になかなかちょっと断定的にといいますか,整理するのは難しいと思うので,余り何かこう意見分布というよりも,何といいますか,余りそこまで踏み込まない方がいいのではないかなと個人的には思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   これはこういうものを挙げて,分かりやすさということもあって説明をされているんだろうと思いますけれども,限界的な事例を挙げますと様々なものが出てくると,それを挙げますとなかなか議論が不明瞭になるところもありますので,そこの説明を維持しつつ,しかし何かこれで断定することがないような形に工夫をしてもらうと,そういうことでよろしいでしょうか。磯谷さん,それで。 ○磯谷委員 はい。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○大森幹事 よろしいでしょうか。 ○大村部会長 どうぞ,大森幹事。 ○大森幹事 ありがとうございます。   (注3)の遡及効の制限についてです。子が否認権を行使しようと考えた場合,行使した結果どうなってしまうのかということは非常に大きな問題になるであろうと思います。その観点で引き続き検討すると書かれているのですが,大きな柱となる考えだけでも中間試案の段階で示した方がいいのではないかと思いまして,それが可能なのかどうかも含めて御検討いただきたいということが一つです。また,その関係で33ページに御説明を頂いている箇所がありますが,そういう意味から説明としても少し不足をしているのではないか,もう少しいろいろな類型も示しながら説明をされた方がいいのではないかと思うことと,あと11行目に第三者の利益を保護する観点から遡及効を制限することも考えられると書いてありまして,確かにそういった観点で遡及効制限を考える必要もある場合もありますが,例えば父親とされてきた人が扶養料を返せと子どもやあるいは母親に請求をしてくるということは,必ずしも第三者の利益の保護の観点ではないと思いますので,そういう観点の制限についても少し触れていただければと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   当事者の保護というのは多分前提になっていて,それで第三者というのが出てきているのだろうと思いますが,しかし卒然と読むとなかなかそこは分かりにくいところもありますので,ここはほかの御指摘の点と併せてもう少し見直していただくということかと思います。それでいいですか。大丈夫ですか。 ○平田幹事 遡及効の制限の部分については,どこまでどういう合意が得られているかというところもありますので,ちょっとまた検討した上で,触れることができるようであれば考えていきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。   それでは,もし御発言がないようでしたら,この第5についても御意見を伺ったということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,そのようにさせていただきたいと思います。   本日は第5までは進めないと思っておりましたが皆様の御協力によって第5も含めて御意見を頂くことができました。   本日の予定は以上ということで,特に御発言がないようでしたら,次回の議事日程等について事務当局から説明していただきたいと思いますが,よろしいですか。   どうぞ,髙橋委員。 ○髙橋委員 生殖医療の部分なんですけれども,今国会で法案などが出て,ちょっとどうなるのかという時期ではありますが,この部会では議員立法の動向を見ながら必要な議論はするということを,第7回でそういう意見が出ていると思いますけれども,そういうのを後ろに何も付けないと,何もやっていないのかとか何もやらないのかと思われてしまってもどうかなと思いますので,もう第7回で出たようなことをそのまま少し後ろに付けておくというようなことはお考えいただけるのでしょうか,どうなんでしょうか。 ○平田幹事 生殖補助医療法案については,御指摘のとおり現在国会で審議されているところでして,今国会で成立すれば,もちろんこの後中間試案の取りまとめに向けて,ちょっと今からでは時間がないのでどこまで記載できるかはありますけれども,必要なところについて論点として上げるなりというようなところは検討したいと考えております。 ○大村部会長 生殖補助医療の問題ですね。何らかの形で対応が必要なのではないか,特に法案が通った場合には具体的な対応を迫られる点もあるように思われますので,どこかの段階で資料に上げて御検討いただくということになりますけれども,どの段階でどの程度までという点に,検討が必要ですね。 ○平田幹事 今回の中間試案にどこまで載せられるかというのは,この後検討させていただければと思っておりますので,また次回御議論いただければと思います。 ○大村部会長 髙橋委員からは具体的な内容とは別に,検討を要するとか検討をしているとかということだけでも記載しておいたらいいのではないかという御指摘があったかと思いますけれども,それも踏まえてちょっと御検討いただければと思います。   ほかはよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,次回の議事日程等について事務当局の方から御説明を頂きます。 ○平田幹事 平田でございます。   次回の日程についてですが,日時が令和2年12月22日の火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所は本日と同様,法務省地下1階大会議室になります。   テーマにつきましては,引き続き中間試案の取りまとめに向けた議論のためのたたき台ということでお願いできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ということで,引き続き中間試案の取りまとめに向けた議論のたたき台について御議論を頂くということをお願いしたいと存じます。   以上で,法制審議会民法(親子法制)部会の第12回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。閉会いたします。 -了-