性犯罪に関する刑事法検討会 (第15回) 第1 日 時  令和3年4月12日(月)  自 午前10時07分                       至 午後 0時12分 第2 場 所  法務省大会議室(オンライン会議システムを使用) 第3 議 題  1 取りまとめ報告書(案)について         2 起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの検討状況について(報告) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○浅沼刑事法制企画官 ただ今から性犯罪に関する刑事法検討会の第15回会合を開催させていただきます。 ○井田座長 おはようございます。本日も御多用のところ御出席いただきまして,誠にありがとうございます。この検討会もいよいよホームストレッチに差し掛かるところでございますので,何とぞゴールまでよろしく御協力をお願いいたします。   なお,本日,池田委員及び小西委員は,所用のため欠席されています。   まず,お配りしている配布資料について事務当局から確認をお願いします。 ○浅沼刑事法制企画官 本日,議事次第及び一部の委員の御異動を反映した「令和3年4月12日付け「性犯罪に関する刑事法検討会」委員名簿」,「「性犯罪に関する刑事法検討会」取りまとめ報告書(案)」をお配りしております。この報告書案は,前回の会合において座長からお話があったとおり,本検討会におけるこれまでの御議論を踏まえて,座長の御指示を頂きながら,事務当局において作成したものです。このほかに,前回配布後に新たに団体から法務省に寄せられた要望書をお配りしております。また,御発言の際の補助的な資料として書面の提出がありましたので,本日机上配布又は送付させていただきました。 ○井田座長 それでは,議事に入りたいと思います。   本日は,取りまとめに向けた議論を行いたいと思います。委員の皆様には,事前に報告書案をお送りいたしましたので,既に御一読いただいているかと思いますし,先ほどの事務当局からの説明にありますように,書面にて御意見を下さった委員もおられ,それらにつきましては,本日,机上配布又はメール添付にて配布させていただきました。前回まで14回の会合を重ね,委員の皆様には大変熱心な御議論を頂いたところであり,どのような取りまとめとするのがよいか,私としても相当に考えさせていただきました。その結果,検討会として意見の一致を見た点はもちろんですけれども,一部に反対意見があるにしても,議論全体として見るとおおむね賛成が得られたと思われる点につきましては,可能な範囲で議論をまとめつつ,本検討会として,法務省に対し,法改正の要否・当否を検討することを含め,法整備に向けた更なる検討を行うに当たっての指針ないしは重要な資料として,十分に役立つようなものとなることを重視して,この報告書案を作成してもらった次第であります。   報告書案の構成や作成に当たっての考え方については,事務当局から更に説明していただきます。 ○浅沼刑事法制企画官 まず,全体の構成としては,「第1 はじめに」で,この報告書案が本検討会の議論の結果を取りまとめたものであることなどについて記載した上で,「第2 本検討会の開催趣旨及び開催状況」で,本検討会の開催経緯や開催状況等について記載しています。そして,「第3 各論点についての検討」で,各論点に関する議論の内容を整理して記載し,「第4 終わりに」で,本検討会として法務省に対し法改正に向けた迅速な取組を進めることを期待することなどについて記載しております。   本検討会は,性犯罪に係る事案の実態に即した刑事法の在り方について委員の皆様に御議論いただき,その結果を法務省における検討の重要な参考とさせていただくために開催しているものであることから,「第3 各論点についての検討」では,今後の法改正の要否・当否の検討に資するよう,意見が収れんしている点についてはそのことが分かるように,また,意見が分かれている点についても更なる検討課題が明らかになるように記載しております。   具体的には,資料12の「検討すべき論点」の各論点ごとに,委員の皆様からの御意見を,要約しながら,なるべく漏れのないように取り上げつつ,例えば,法改正の要否・当否に関する意見なのか,それとも具体的な規定の在り方に関する意見なのかといった観点から分類・整理した上で,異なる見解の存否や内容を示し,検討課題等が分かるようにするとともに,議論状況をまとめる意味で,必要に応じて各論点の末尾に「小括」を設け,今後の法整備に向けた検討に際しての視点や留意点を記載しております。   報告書案に関する事務当局からの説明は以上です。 ○井田座長 それでは,本日は,この報告書案に沿って,取りまとめに向けて御議論いただきたいと思います。私として今日の御議論のためにお願いしたいことをまとめて申し上げることをお許しいただきたいと思います。   まず,我々にとっての検討課題は,社会的関心が極めて高いものであり,法務省にはなるべく早く次の検討ステップに進んでもらいたいということがありますので,今この段階での我々のミッションは,これまでの三巡目までの議論において出された主要な意見を適切に要約して,意見の収束又は対立の状況を公平に反映すると同時に,法務省における更なる検討のための指針として役立つような,そういう取りまとめ報告書を作成することにあると考えるところです。   そのため,本日の会議では,新たな意見やこれまでとは別の論点を出して更に議論を行うとか,他の委員の意見について,その内容の当否を論じるといった形で進めることは適切ではないと思います。そうではなくて,報告書案に書かれている意見について,これだと趣旨が分からないので,より内容を明確化するためにこういう補足をしたいとか,報告書案のまとめ方だと検討会全体の意見の分布を正確に反映していないので,こうまとめるべきではないかとか,三巡目までにはこういう議論もあったのに,それに全く触れられていないとか,議論の要約としてこれでは誤解を招く可能性があるので,むしろこう要約すべきではないかといったように取りまとめ報告書の完成に向けた具体的な修文意見を述べていただく形で進めるのがよいのではないかと思っております。   また,本日は,限られた時間の中で多数の項目を御議論いただく予定になっていますので,御発言に当たっては,重複を避け,なるべくコンパクトにしていただくなど,進行への御協力もお願いしたいと思っております。また,本検討会の議論全体に対する感想のようなものについても,この検討会を終える際の最後に御発言いただく機会があると思いますので,本日は控えていただけると幸いです。なお,書面をお出しいただいた委員におかれましては,その内容どおりであれば,御発言を適宜まとめて,また,手短にしていただければと思います。   更にもう一つ付言しますと,頂いた御意見に応じて今ここで報告書に記載する文言を確定するというのは困難なことですので,その御意見に対する他の委員の御意見を伺うとともに,本日は御意見として承った上で,一旦引き取らせていただければ幸いです。   議論の進め方ですが,まずは,総論として,報告書案全体の構成のほか,「第1 はじめに」と「第2 本検討会の開催趣旨及び開催状況」についてまとめて御意見を伺い,次に,各論として,報告書案の「第3」の各論点について順次御意見を伺い,そして,最後に,「第4 終わりに」について御意見を伺うことにしたいと思います。   なお,本日の進行における時間の目安ですが,最初の総論の議論として5分程度,次に各論に入って,「第3」のうち,「1 刑事実体法について」の中の「(1) 現行法の運用の実情と課題(総論的事項)」から「(5) 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲」までについて合計で40分程度,それぞれ御議論を頂き,午前11時頃に10分程度休憩を取りたいと考えております。そして,休憩後,「1 刑事実体法について」の「(6) 法定刑の在り方」から「(8) 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方」までと「2 刑事手続法について」の全体で合計30分程度,そして,最後に,「第4 終わりに」について10分程度御議論いただくことを予定しております。   その後,本検討会の「検討すべき論点」の第2の「2 起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの在り方」については,当時の法務大臣の指示により,法務省において,別途,法改正に向けた具体的な検討を行うこととなっていたところですが,その検討状況について,事務当局から10分程度で報告をしていただきます。予定している時間についてはその都度申し上げますので,御協力をお願いします。   早速,報告書案の議論に入りたいと思います。   まず,報告書案全体の構成,「第1 はじめに」,「第2 本検討会の開催趣旨及び開催状況」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,御発言をお願いいたしたいと思います。5分程度の時間を予定しております。 ○齋藤委員 この報告書案全体が法務省への指針であるという趣旨は理解しているのですけれども,私は,この取りまとめ報告書案を読むことがとても大変でして,恐らく今回の報告書案に関しましては,司法関係者以外の方がすごくたくさん読まれるのではないかと思いまして,そのときに,取りまとめの趣旨がきちんと伝わらずに誤解を招くということは一番避けたいところではないかと思っております。   そのため,今,事務当局の方が説明くださったような,このまとめ方ですとか読み方の指針となるようなものを最初に付けていただくと,多くの方が誤解なく読めるのではないかと思いました。 ○井田座長 その点については,御意見として承り,また検討させていただきたいと思います。   ほかにございますか。よろしいでしょうか。   それでは,次に,「第3 各論点についての検討」に入りまして,第3の「1 刑事実体法について」の「(1) 現行法の運用の実情と課題(総論的事項)」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,御発言をお願いします。なお,この「(1) 現行法の運用の実情と課題(総論的事項)」から「(5) 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲」までについて,合計で40分程度の時間を予定しているところでございます。 ○齋藤委員 三点ございまして,一点目なのですけれども,3ページの「イ」の「②」のところなのですが,性的自由に加え,尊厳,自律などと書いてあるところの尊厳に関して,もう少し強調して丁寧に述べていただけると有り難いなと思いました。   もう一つ,3ページの一番下の「③」のPTSDや自殺企図などと書かれている部分ですが,精神医学とか心理学的な観点で言うと,鬱病というのを付け加えていただきたいのと,あと,自殺企図ではなく自殺未遂・自殺既遂という書き方の方がいいのではないかと思いました。   また,4ページの一番最後の「④」のところの性的同意に関してなのですが,これは,私が検討会の最後の方で述べたことなので,入れていただくかどうかについては座長と刑事局の皆様に一任いたしますが,性的同意について海外では定義や概念に関する研究が積み重なっていることですとか,日本社会においても性的同意の概念がこれまでと異なるスピードで広がっているようなことを発言したと思いますので,その点を入れていただけると有り難いなと思いました。 ○井田座長 三点について承りました。検討させていただきます。   ほかに何かございますか。特にございませんか。   それでは,次の「(2) 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,御発言をお願いしたいと思います。 ○山本委員 5ページの「(ア)」で,「例えば,虚偽の結婚の約束をすることにより同意させた場合や,金を支払うとの虚偽の約束をすることにより同意させた場合についてまで刑法で処罰することは相当ではないということについても,異論はなかった。」と書かれている部分についてなのですけれども,議事録を読み返してみて,余りお金を支払うということに関しての議論が展開されたわけではないと思っております。一方,会ったらお金を支払ってあげるという口実で呼び出されて性暴力被害を受けることは非常に多く起こっているので,ここが異論がないというようにされてしまうと,現実の被害をカバーできなくなるのではないかという懸念があります。お金を支払うという約束で相手の自由を自分に渡させる行為,被害者を欺いて同意を得るという行為は禁止しなければいけないのではないかと私は思います。ただ,これは話してはいないことなので,異論がないという記載は,お金を払うことに関してまでは,ちょっと広げて書いているように思うので記載について検討していただけないでしょうか。 ○井田座長 この点については,いかがでしょうか。かなり内容に関係する御意見でもあると思います。お金を支払って同意させるという例を最初に出したのは,もしかすると私かもしれません。委員の皆さんの議論をまとめるときに補足的にそういう例を出したかもしれません。ただ,その後,その例は委員の皆さんによって何度か取り上げられて,そういう場合には処罰が望ましくない,ふさわしくないという御意見が出たことを記憶していますが,いかがでしょうか。 ○橋爪委員 ちょっと記憶が定かではないのですけれども,私も個人的には,お金を支払う旨の虚偽の約束により同意させた場合については性犯罪を構成しないように漠然と考えておりましたが,その点について具体的に議論をしていない可能性はございますので,議事録を確認いただきまして,もし,この点について十分な議論がなければ,この記述については削除する可能性も含めて御検討をお願いできればと存じます。 ○井田座長 承知しました。では,議事録を確認した上で,「金を支払うとの虚偽の約束をすることにより同意させた場合」という部分については,場合によっては削除することを考えたいと思います。   ほかに御意見はございますでしょうか。この点につきましてはよろしいでしょうか。   前々回でしたか,小島委員から,お金をもらってという場合には誰も処罰することは考えていないというような御発言があったように記憶しているのですけれども,小島委員,いかがでしたでしょうか。 ○小島委員 お金を支払ってというよりは,18ページの「⑥」のところで,上司から昇格すると言われて任意に応じた場合とか,結婚詐欺のような場合について例が挙げられたかと思うのですけれども,その関係で,結婚詐欺のようなものについてまで処罰するべきと考えている人はいないのではないかというようなお話をしたかと思います。あのときは結婚詐欺というようにお話をされたのではなかったかと記憶しております。 ○井田座長 分かりました。では,それ以外の点で何かございますでしょうか。 ○宮田委員 5ページの「(イ)」の「①」のところですけれども,改正の要否・当否に関する議論のところで,議論を行うに当たり,判決書などの具体的な情報の公開を十分にしていただきたいという意見を述べていたので,その点を明記していただけると有り難いです。  次に,「(ウ)」の「⑥」の後のまとめの文章,6ページの下から8行目以降のところです。ここの「おおむね異論はなかった」というところに違和感を持ちました。また,8ページの本文1行目から3行目に,「これに特に異論はなかった」とありますが,私の方も異論がないわけではないので,多数を占めたとか,多く述べられたとか,おおむねとか,何か修正してほしいということです。私が異論を述べたところで異論がなかったというのは,ちょっと違うのではないかというところでございます。 ○井田座長 宮田委員の今日配布していただいた書面の「2」の「(1)」から「(4)」までに記載された御意見ですね。 ○宮田委員 そうです。   これから述べるのは若干些末なところかもしれないですけれども,9ページから10ページにかけてです。「○ 手段・状態を列挙する場合の規定の在り方」の議論の際に,私は,どのような手段や状況を列挙するにしても,構成要件該当行為とそれに対する法定刑の関係が不可分で,その法定刑の議論との結び付きがないままの議論というのは全く違う結果をもたらしてしまうのではないかという趣旨のことを述べたと思いますので,その意見を是非付加してほしいと考えました。 ○井田座長 宮田委員からお出しいただいた書面をざっと読ませていただくと,例えば,金杉委員と宮田委員は,現行法の下でも,解釈を共有すれば十分対応が可能なので,改正については一切必要ないというような意見を述べていたとそこには記載されています。しかし,現行の刑法177条・178条について,一切改正の必要がないのだというはっきりした主張は,恐らく,これまでに御意見という形では表明されていなかったのではないかと思います。といいますのは,もし,そのような御意見が表明されていたのであれば,5ページから6ページにかけての「(イ) 改正の要否・当否に関する議論」の辺りに,そのような御意見がはっきりと書かれているはずであり,それがないということは,これまでに必ずしもそこをはっきりとおっしゃってこなかったのではないかと思うのですが,その点はいかがでしょうか。 ○宮田委員 私の当初からの意見は,改正の必要なしでございますし,あとは,現行法でいくにしても,むしろ法定刑を下げるべきだという意見です。 ○井田座長 金杉委員も同じ御意見と理解してよろしいでしょうか。私は,これまでの両委員の御意見をお聞きしていて,必ずしも,一切改正の必要はないという強い意見であるようにはお伺いしておりませんでした。これは,委員の皆さんも多分同じ印象をお持ちではないでしょうか。少なくない委員から,例えば,現行法を適切に解釈すれば,何とか対応ができるはずだという御意見はありましたが,とはいえ解釈にぶれがあったり,あるいは,これまでの経緯のせいであったり,どうしても強盗との類似性に引っ張られて厳しく解釈し過ぎたりというようなことがあって,本来適切な解釈をすればいいところ,なかなかうまく解釈されていないということがあるので法改正を通じて明確化すべきであるという御意見が表明されていたと思うのです。 ○宮田委員 私は,その原因として,判例の共有等がなされていないところが最も問題であると述べたつもりでございます。ですから,私は,現行法でいける,解釈の共有の方がむしろ重要だという意見であり,その辺のところはお分かりいただけていたのかと思っておりました。 ○井田座長 少なくとも私は,今初めてはっきりと,そういう御意見だということを認識いたしました。そのことを前提に考えると,例えば,手段としてどういうようなものをあり得べき規定に書き込んでいくかというときに,例示列挙にするか,それとも限定列挙にするかは非常に大きな論点でありますが,この検討会の場では,例示列挙は余りにも曖昧でよくないという御意見はなかったと思うのです。ですから,そういう意味で,その点に異論はなかったというように,あるいは,それに反対する御意見はなかったというようにまとめるのは当然であり,宮田委員の御提案のように,例示列挙とせざるを得ないとの御意見は多数の意見だと書くと,少数意見は限定列挙だったのかというように理解されてしまうと思うのです。 ○宮田委員 そうですね,私の修正の意見は,限定列挙とすべきという意見がなかったという意味では違いますね。 ○井田座長 宮田委員が出された書面について,その点はそういうものとして承ります。そして,金杉委員と宮田委員のお二人とも,結論的には刑法177条・178条については,一切改正の必要はないという御意見であったということは,取りまとめ報告書案にはっきりと書いておきたいと思います。それでよろしいですかね。 ○宮田委員 ありがとうございます。 ○金杉委員 私の意見については,意見書を出させていただいていますので,補足的に今の部分を説明させていただきたいと思います。   報告書案の「1」の「(2) 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方」で,5ページから10ページまでの部分についての意見につきましては,一点だけ修正を求めたいというものです。報告書案の9ページの「○ 手段・状態を列挙する場合の規定の在り方」という部分があります。こちらの「①」と「②」の間に,「といった意見も述べられたが,包括的な要件を設けること自体には,おおむね異論はなかった」という記載があります。この,「包括的な要件を設けること自体には,おおむね異論はなかった」という部分を削っていただきたいというのが私の意見です。私が出した意見書に理由を書かせていただいていますので,そちらの方を御確認ください。   また,改正の必要があるかないかという部分についてなのですが,私の方は,ちょっとニュアンスが宮田委員と異なっていたら申し訳ないのですが,現行の刑法177条につきましても,構成要件が逆に不明確なのではないかと思っております。抵抗を著しく困難にする暴行・脅迫といったものがどのようなものかということが判例によってばらつきがあって,そういったものをもう少し明確にする必要があるのではないか,そういう検討が必要なのではないかという点については異論はないところです。ですので,報告書案の6ページの4行目なのですけれども,「安定的で適切な運用に資するような改正であれば検討に値するという点では,おおむね異論はなかった」というのは,私も賛成です。   ただ,その後の,具体的に例示列挙するとか,8ページの3行目の「例示列挙とせざるを得ないとの意見が述べられ,これに特に異論はなかった」という部分や,9ページの17行目の修正をお願いしている「包括的な要件を設けること自体には,おおむね異論はなかった」という部分もそうなのですが,検討した結果,処罰すべき範囲を明確に画せるような規定の在り方,さらに,私どもが重点を置いている,処罰されるべきでない行為が含まれない規定の在り方というのが果たして本当に可能かというと,それは難しいのではないかという方向で,意見をずっと述べさせていただいていたつもりです。   確かに,改正の必要がないということまで明確に申し上げていないと思います。ただ,そういう適切な運用ができるような,処罰されるべきでない行為が含まれないような規定の仕方が難しいのであれば,改正をしない方がいいのではないかというスタンスであることは間違いありませんので,そういった意味で,改正をすることを前提に,9ページの部分で包括的な要件を設けること自体に異論はなかったというようになると,そもそも前提条件として,改正する場合にはというところが埋もれてしまいますので,ここは私としては異論があると申し上げざるを得ないと思います。 ○井田座長 私には,御発言の趣旨がいまいちはっきりしないのですけれども,もし,包括的要件を設けることに異論はないとされているところを,そこに異論があった,つまり,包括的要件を設けるべきではないという意見もあったとまとめるとすると,手段だけを書いて包括的要件を書かない構成要件にするべきという見解があったというように受け取られるおそれがあると思うのです。そもそも新しい規定を作るなというのであれば,それはよく理解できるのですけれども,新しい規定を作って要件をより具体化し,手段を書き込んでいくというときに,手段だけ書き込んでも十分ではないので,その解釈指針になるような,あるいは,それを全部包括するような抽象的な文言は必要でしょうというのがこの検討会での総意だと思うのです。そこを,もし抽象的な文言など必要ないと考えるのであれば,手段だけ書けという議論になるのではないかと思うのです。違いますか。 ○金杉委員 取りまとめ報告書案の9ページを見ると,「②」の「その他意に反する性的行為」と規定すべきとの意見に対して,私が,「⑥」に記載されている意見を申し述べたという形になっているのですけれども,私としては,そうではなくて,そういう包括的な全てを処罰すべき範囲を除外できるような包括的な要件を設けることはやはり難しいのではないかという意見を述べさせていただいたつもりです。 ○橋爪委員 私個人は,この問題について,法改正は必要と考えておりますが,恐らく,金杉委員,宮田委員としましては,法改正に関する検討をすること自体は御異論がないが,その検討の結果として,現行法よりも内容が明確かつ具体的な条文を作ることは困難であるという御趣旨と承りました。そうしますと,6ページの上から4行目ですね,「安定的で適切な運用に資するような改正であれば検討に値するという点では,おおむね異論はなかった」という記述自体については間違いないと思うのです。   そして,その後の6ページの「(ウ)」以下は,仮に具体的に法改正を検討する場合にどのような内容が好ましいかに関する議論に入っているわけです。恐らく両委員は,検討したとしても,具体的な帰結を得ることが難しいということをおっしゃっていると思いますので,「(ウ)」以下については,具体的にいかなる法改正が適切かについて検討した際には,このような議論があったという趣旨になるようにしていただければ十分であるような感じがします。仮に,先ほど御指摘があった,包括的要件が必要かどうかのところで異論があったと書いてしまいますと,法改正それ自体は必要だが,包括的要件は設けるべきではないといった御意見があったかのような誤解を与えかねませんので,むしろ,「(ウ)」の冒頭のところで,例えば「以上の前提に基づいて具体的な法改正を検討する場合に」という形で条件を付けていただけますと,今の問題については解決するような気がいたします。 ○井田座長 非常に適切にまとめていただきまして,ありがとうございます。そういうことでよろしいでしょうか。 ○金杉委員 はい,結構です。 ○井田座長 では,その点はそのぐらいにして,ほかに御意見はございますでしょうか。 ○山本委員 7ページの「⑩」ですね,私の意見だと思うのですけれども,こちらの意見の冒頭に,第8回会合の議事録の13ページの辺りですけれども,私は,不同意の徴表である暴行・脅迫と抗拒不能の要件を明文化するのだから,重い類型に含ませていいという意見を述べていたので,そちらも理由として記載していただければと思っています。 ○井田座長 承りました。検討します。   ほかにいかがでしょうか。   「(2) 暴行・脅迫や心神喪失・抗拒不能の要件の在り方」についての御意見はほかにございますか。よろしいでしょうか。   それでは,次に,「(3) 地位・関係性を利用した犯罪類型の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見があれば,お願いいたします。 ○山本委員 すみません,伝え忘れていたことがありまして,些末なことなのですけれども,11ページの「①」のところで,「立証責任の転換は可能ではないかといった意見が述べられた」ということなのですけれども,私は,これについては,質問をしたという認識なので,こういうことはどうでしょうかという質問があったというような記載にしていただければと思っています。 ○井田座長 質問といいますか,問題提起のような感じでしょうか。 ○山本委員 私の理解では,「Yes means Yes」型であるならば立証責任の転換は可能だと理解しているけれども,それはどうでしょうかという御意見を伺えればという質問の意図でしたので,特に意見を述べたという意識ではなかったのです。 ○井田座長 ということは,削除した方がよろしいということですか。ただ,「Yes means Yes」型も検討の対象になっているわけですので,削ってしまうのは惜しいと思います。 ○山本委員 ちょっと考えます。 ○井田座長 では,これもまた検討したいと思います。 ○木村委員 細かな点で申し訳ないのですけれども,18ページの「(オ) 小括」について,一点お願いがございます。   小括の3行目から4行目にかけて,「意思決定に影響を及ぼしたといえる実質的要件を設けることを含め」という文章になっているのですけれども,この点について,若年者等の場合には,意思決定に影響を及ぼしたかどうか,つまり,性的自由に対する罪であるというようには必ずしも決める必要はないという議論があったかと思います。むしろ,青少年保護のような議論もあったかと思うので,この書きぶりについては,「ことを含め」と書いてあるので,非常に慎重に書いていただいていることは分かるのですが,もし可能であれば,例えば,「意思決定に影響を及ぼしたといえるかなどの実質的要件を設けることを含め」として,意思決定の自由だけが実質的要件ではないように読めるように修正をお願いしたいと思いました。 ○井田座長 検討したいと思います。ほかにございますか。 ○齋藤委員 恐らく15ページ辺りの議論だったかと思うのですけれども,私は,中間年齢という辺りに置かれている13歳から18歳ぐらいまでの年代の中でも,例えば中学生年齢と高校生年齢だと発達の程度が違うとか,子供の発達に関する発言をしたような覚えがあるのですけれども,その辺りを掲載していただけたらなと思っております。というのは,やはり,発達心理学上,その年代の中学生,高校生年齢は随分違うことがありますので,子供の発達について言及した点の掲載を検討いただけると有り難いです。 ○井田座長 検討させていただきたいと思います。 ○小島委員 18ページの「⑥」の意見に対して私が申し上げたことをできれば入れていただきたいと思って意見を申し上げます。この意見に対して,概略,以下のとおり申し上げたと思います。地位・関係性を利用した犯罪類型については,性的要求と不利益が結び付く報復型と,利益が結び付く報償型があるところ,いずれも許されない行為である。処罰根拠は瀆職であり,私欲のために職責を汚すなということである。例えば,落第寸前の学生に,性的要求に応じれば単位をあげる,進級させてあげると言って性的要求をするということは許されない。こういう意見があったと書いておいていただけると有り難いと思いました。 ○井田座長 承りました。検討したいと思います。 ○宮田委員 この報告書案をどう読むかにも関わるのかもしれませんが,例えば,報告書案の14ページの一番上のところで,「(3)」の「(イ)」の「○ 新たな罰則を設けることの要否・当否」のまとめが書かれておりますけれども,「その特性に応じた対処の必要があることについては認識が共有された」というところで,多分,これは私だけではなくて,金杉委員もそうだったかと思うのですけれども,児童福祉法や児童ポルノ法といった児童福祉法制などの特別法での対処が可能であるという意見も出ていました。ここのところは,認識が共有されたので,新たな構成要件について検討されたというように読めてしまうので,特別法における対応が可能であるという意見があったと明示していただけると有り難いと思いました。   これは障害者のところについても同様で,16ページの「(ウ)」の冒頭部分についてですが,「①」の後に,「これに対する異論はなかった」とあり,私も障害に付け込む行為を罰する必要があるということについて異論はないです。しかし,私は,刑法178条でいけるという意見,あるいは,障害者保護の法制の中で充実を図るべきだという意見を申し述べました。障害者に対して,あるいは未成年に対して対処の必要があることについては意見は一致していましたけれども,だから刑法の改正が必要であると読めるところは修正していただければと思います。 ○井田座長 恐らく,14ページの「対処の必要がある」という部分は,決して刑法に関するものだけに限定された文言ではなくて,およそ対処の必要があるという趣旨で書かれているのだと思いますけれども,おっしゃられたことも分かりますので,検討させていただきたいと思います。   それから,先ほど宮田委員がおっしゃった,法定刑の問題と規定の作り方の問題の関係について何もお答えしていなかったと思うのですけれども,その点については,恐らくこの報告書案を見ますと宮田委員のお考えは伝わってくるような感じがいたしますので,更にはっきり書くまでもないような気がいたしました。しかし,その点も検討させていただきたいと思います。   ほかにございますか。 ○金杉委員 私の意見は意見書のとおりなのですけれども,修正をお願いしたい部分は,13ページの「(ア)」の上から3行目です。「そのような特性に応じた対処が必要であることについては,異論がなかった」という部分なのですが,「その特性に応じた対処を検討すべきであることについては,異論がなかった」というように修正をお願いしたいと思います。理由は,先ほどの宮田委員の御意見と重なります。私の意見は,14ページの「④」,それから15ページの「⑭」に要約していただいていると思うのですが,飽くまで現行の児童福祉法や青少年保護育成条例及びそれらの改正で足りるのではないかという意見でありまして,それに対して,もし,それでもなお刑法にこうした規定を入れる必要があるのであればという前提で述べているものです。現行の法体制では不十分であり,何らかの対処が必ず必要だというところまで述べたつもりではありませんので,「その対処を検討する必要について」という形にしていただければと思います。 ○井田座長 承りました,検討いたします。 ○山本委員 書き方の問題なのですけれども,私は,読んでいて非常に混乱したのですけれども,15ページの「⑮」に監護者性交等罪に関する意見があり,その意見が未成年者の地位・関係性についての議論の後に位置しているので,ちょっと混乱するというか,まとめて14ページの「③」の後に記載してもいいのかなと思いました。 ○井田座長 14ページの「①」から「③」までの監護者性交等罪に関するトピックにまとめた方が分かりやすいということですね。検討いたします。   特にほかに御意見はございませんか。 ○山本委員 18ページなのですけれども,その前のページの「④」と「⑤」の意見に関して述べられた「⑨」において,「処罰の外延を明確にすることが必要であるといった意見が述べられた」で終わっているのですけれども,2月16日に開催された第12回会合の議事録の地位・関係性を議論した箇所を読むと,現行法でうまく拾えていない問題が広がっている領域であるという意見もあり,その後,法定刑についての議論も展開されていましたので,そちらについての記載もあった方がいいのではないかと思いました。 ○井田座長 検討させていただきます。 ○金杉委員 16ページの「②」の下の記載なのですが,「といった意見が述べられ,これに対する異論はなかった」という部分につき,「といった意見が述べられた」という形にしていただくか,「異論はなかった」というのを入れるのであれば,「おおむね異論はなかった」という形にしていただきたいと思います。   私の意見は,障害者の障害に乗じて性交等を行う行為のうち当罰性の高いものについては,既に刑法178条2項で捕捉できているのではないかというものであり,適用のばらつきがあるという指摘を踏まえて,要件の解釈を明確化するために例示列挙する方法ということは検討に値するとしても,新たに障害者を被害者とする処罰規定を設けることが必要だと考えているわけではありませんので,この点について修正をお願いできればと思います。 ○井田座長 承りました。検討させていただきます。   いかがでしょうか。ほかにございますか。よろしいでしょうか。   それでは,次の「(4) いわゆる性交同意年齢の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,御発言をお願いします。 ○上谷委員 特にどこというわけではないのですけれども,どこかに入れていただきたいのが,若年者が性的搾取から守られるべきことについては反対する人はいなかったと思うのです。そこの趣旨がやはり明確にならないと,どうして引き上げるべきなのかとか,何歳まで引き上げるのかというところが分かりづらいと思いましたので,そこは入れていただきたいと思っております。 ○井田座長 検討させていただきたいと思います。   ほかに,いわゆる性交同意年齢について御意見ございますか。 ○齋藤委員 私も,どこに入れていただきたいということがちょっと明確に言えないのですけれども,私は,以前,そもそも性交同意年齢の同意というのは何に同意しているのかということの趣旨に関しての発言をさせていただいたと思います。それは,心身の境界線を侵害する行為というのは,児童の体とか精神に深刻な傷を残す可能性があるとか,子供たちが時間的展望を持ってそうしたことを理解して同意しているとは考えにくいといったような発言をしました。性的同意を考える上で,何に同意をしているのかということを考えるのはとても大事ではないかと思うので,どこかに残していただけると有り難いなと思いました。 ○井田座長 議事録をもう一度確認して,その点についてはどこかに入れられれば,入れるようにしたいと思います。   ほかに御意見はございますか。 ○金杉委員 27ページの「(ウ)」の3行目,「その特性に応じた対処の必要があることについては,認識が共有された」という部分なのですが,修正案として,「その特性に応じた対処を検討すべきことについては,認識が共有された」というようにしていただけないかというものです。   先ほど,ここが議論の対象範囲だと思わずに,飛ばしてしまったのですが,私が出した意見書の「5」の部分についても意見があります。その上で,性交同意年齢に関して,中間年齢層の方について,その特性に応じた対処の検討が必要であるということには異論はないのですけれども,私は現行の青少年保護育成条例や児童福祉法等でも足りるのではないか,その改正等でも足りるのではないかという意見なので,この部分について刑事法を特に設けるべき必要があるということについて認識が共有されたという趣旨であれば,少し違うかなと思いました。 ○井田座長 承りました。 ○宮田委員 今,金杉委員が発言したところは,私も同様の意見なので,御検討をお願いしたいです。また,27ページの「(エ) その他」の「②」でございます。「子供の性的な問題行動の背景には」とありますけれども,問題行動でも結構なのですが,性的な加害行為,つまり,子供が被疑者の立場になってしまうような場合があるということが明らかになるような書き方の方が有り難いと感じました。   また,28ページの「(オ) 小括」のところですけれども,脆弱な若年層の場合,「その特性に応じた対処が必要であることに鑑み,地位・関係性を利用した犯罪類型と併せて,更に検討がなされるべきである」ということでも結構なのですが,検討はなされるべきなのだけれども,その上で特別法によるべきだという意見もあった,あるいは,そちらを拡充していくべきだという意見があったことは,ここでなくてもいいのですけれども,どこかに書いてほしいなと考えました。 ○井田座長 はい,承りました。   いかがでしょうか。ほかにございますか。 ○齋藤委員 すみません,大変細かなところで,今,宮田委員のおっしゃった27ページの「(エ) その他」の「②」なのですけれども,私も,ここに関する発言として,宮田委員と同じような趣旨の発言をしたような気がするのですけれども,「性教育を受けていないことのほか,暴行の被害に遭っていることが原因である場合もあるから」とあるのですが,暴行の被害以外にも,逆境的な小児期体験とか,子供にとってトラウマとなっているような体験が原因である場合もあるので,トラウマとなっている体験が原因となる場合もあるということを付け加えていただきたいと思いました。 ○井田座長 議事録をもう一度確認します。   ほかには,この論点についてはいかがですか。   それでしたら,次の「(5) 強制性交等の罪の対象となる行為の範囲」について,報告書案の修正に関する御意見があればお願いします。 ○小島委員 「(ア) 議論の概要」のところで,「㋐」と「㋑」が議論の対象になったというような記載があるのですけれども,もう一つ,少なくとも膣・肛門への身体の一部や物の挿入について,性交等と同様に扱うことができるかについて,かなり議論した記憶がございます。そして,最終的に31ページの「(エ) 小括」のところになると思うのですけれども,少なくとも膣・肛門への身体の一部や物の挿入については,強制性交等罪とするかどうか,又は強制性交等罪と強制わいせつ罪との中間の犯罪を別に設けるかどうかは別にして,いずれにせよ当罰性のある行為として法改正が必要だという意見がかなり多かったと思います。座長が,第13回会合において,以上のように議論をまとめられたと理解しております。追加をお願いしたいという意見です。 ○井田座長 要するに,多くの委員から,膣・肛門に対する身体の一部や物の挿入については,それは重くすべきだという意見があったということをどこかにもう少しはっきりと書いてほしいという御趣旨でしょうか。 ○小島委員 はい,そういう意見でございます。 ○井田座長 承知しました。検討させていただきます。   ほかに,この論点についてはいかがでしょうか。 ○宮田委員 些末なところで申し訳ないのですが,30ページの「⑤」です。指で弄んだ事案というのが出ていますが,私は,いわゆるオーラルセックスという形で舌の問題を出しました。舌の場合は,指の場合よりもっと微妙な問題が出てくるのです。だから,指だけではなくて舌も入れていただければと思います。 ○井田座長 分かりました。 ○山本委員 30ページの「⑥」で,「性的意味が乏しい行為を」と記載されているのですけれども,これは「加害者にとって」ということを追記していただければと思っています。被害者にとっては特に性的意味が乏しい行為とはいえないと思いますので,主語が明確である方がいいかと思いました。 ○井田座長 歯ブラシを口に入れるとか,そういうような状況は,被害者にとっても性的な意味を持つといえるのかどうかという問題かと思います。検討させてください。   ほかに御意見ございますか。よろしいですか。   それでは,一通り御意見をお伺いできたようですので,「第3 各論点についての検討」のうち「1 刑事実体法について」の「(1)」から「(5)」までについての議論は,この辺りで一区切りとさせていただきたいと思います。   開会からかなり時間も経過しておりますので,10分ほど休憩したいと思います。 (休     憩) ○井田座長 会議を再開いたします。   これまでのところで,何か言い忘れたことがあればどうぞ。 ○上谷委員 先ほどの性的同意年齢のところで,若年者を性的搾取から守るべきことについて反対する人はいなかったということに加えて,年齢を引き上げるべきという意見が多数を占めていたと私は認識しているので,そこも明確にしていただけたらと思います。ここのところはいろいろな意見が出ていて,それぞれの委員の方の意見は網羅的に挙がっていると思うのですけれども,それを全体として読むと,引き上げた方がいいのか,引き上げない方がいいのかという全体の方向性が,初めて見た人は分かりづらいかなと思いましたので,そこを明記していただけたらと思います。 ○井田座長 この点については,絶対的に保護すべき年齢と相対的に一定の要件を加えて保護すべき年齢とを区別すべきではないかということが途中で議論されるようになり,それに対応して,では,そこでいう絶対的に保護されるべき年齢は何歳なのだということについては,例えば,その点は現状のままでもいいのではないかという御意見も少なからずあったということに関係する気がいたします。いずれにしても,その点については,もう一度議事録を見て,どういう議論の状況だったかということをどこかで書き込みができるかどうかというのを検討したいと思います。 ○小島委員 12ページなのですけれども,行為者が,被害者が同意していないことの認識を有しない場合にどのように対処すべきかという論点がございまして,この中で,私は,過失レイプ罪を設けるべきだという意見を申し上げたのですけれども,その当時,未必の故意についても議論がありました。ここの部分について,もし可能であれば以下の修文をお願いしたいと思います。「不同意性交であることを認定しながら,故意がないとして無罪となる場合があるが,故意の認識の対象については必ずしも明確になっていない。未必の故意も含めて,故意について理論的検討が必要である。」というような文章を入れていただけると有り難いです。 ○井田座長 それは,故意一般について検討するという趣旨ではなくて,性犯罪における故意についてもう少し検討する必要があるという趣旨でしょうか。 ○小島委員 はい,そうです。性犯罪について,未必の故意が認められにくいとか,認識対象についてなかなか明確になっていないことが実務の混乱を招いているのではないかと思っておりますので,いきなり過失レイプ罪までいけないとしても,その前の現行法の解釈で可能な点として検討をしてはいかがかという意見でございます。 ○井田座長 そういう御意見は,過去にお出しになりましたか。 ○小島委員 少なくとも未必の故意について議論が出ていたことは間違いがないので,もし可能であればということです。 ○井田座長 議事録を確認して,もし可能であれば修正したいと思います。 ○小島委員 よろしくお願いします。 ○井田座長 ほかに,これまでのところで何か言い忘れたことはありますか。 ○山本委員 すみません,先ほどの補足なのですけれども,30ページの「⑥」で加害者にとって膣や肛門に物を入れるような行為に性的意味が乏しいというような議論がありましたが,被害者にとっては侵襲行為である以上,性的意味が乏しくない行為なので,そこはやはり,誰が主語であるのかということは入れていただきたいと思っています。 ○井田座長 分かりました。性的意味の問題は,実は非常に大きな問題で,理論的にもかなり議論になるところですので,それを含めて検討させていただきます。 ○山本委員 あと,性的同意年齢のところなのですけれども,年齢差要件を設けたときに,中間年齢を何歳にするのかまでは決まっていませんでしたけれども,成人とか,ある程度の年齢から,その下の保護すべき年齢を保護するというような意見は多数を占めていたと思ったのですけれども,それを意見として記載するか,どこかに含めていただければと思います。 ○井田座長 そこまで議論が煮詰まっていないと思いますので,むしろ今後の検討課題になるのではないかと思います。 ○山本委員 「多数を占めていた」ではなくてもいいのですけれども,年齢差がある場合の年少者の保護についての意見を入れていただければと思います。 ○井田座長 議事録を確認して,入れられるものがあれば,入れたいと思います。   先ほどまでの議論については,よろしいですか。   それでは,「(6) 法定刑の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,発言をお願いします。この「法定刑の在り方」から,最後の「司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方」までについて,合計で30分程度の時間を予定しています。 ○山本委員 2名以上の者が現場において共同した場合についてなのですけれども,集団の場合であるとか,あるいは常習性・継続性がある場合に,そういうタイプの性犯罪を行ったことが分かるような罪名にする,あるいは罰条にするというような意見もあったと思います。加重は難しいとしても,集団であることが分かる文言を入れてほしいという意見を出していますので,類型として復活するという意見もあったというような記載をしていただければ有り難いと思います。 ○井田座長 もう一度議事録を確認して,検討いたします。 ○宮田委員 最初は些末な点です。33ページの「⑥」の下のまとめのところですが,「いずれの場合についても,重く処罰すべき必要性がある」とあるのは,「類型的に重く処罰する必要性がある」と表現すべきで,個別的には重く処罰できないものもあるのではないかと感じました。   あと,35ページの法定刑の下限の引下げのところで,「①」と「②」は私の意見をまとめていただいたものだと思うのですが,その他に「③」として,強盗罪と比べたときに,法定刑の下限が3年であるのは軽いといって改正がされたわけですが,事実上,恐喝などの財産犯の中でも軽いものに当たるような脅迫も含めて刑法177条の適用が考えられているのだとすれば,下限が5年では重いのではないかと思います。「①」が比較法で,「②」が不起訴のときとの不均衡ということだけでなく,財産罪との比較という問題も申し述べたつもりですので,「③」として入れていただけると有り難いなと思いました。 ○井田座長 ただ今の御意見を,「①」と「②」のどちらか,例えば,「①」に組み込むということも可能ですか。 ○宮田委員 形は結構ですが,比較法の問題と,不起訴との比較だけではなくて,財産罪との比較の問題も発言したので,入れていただきたいという趣旨でございます。 ○井田座長 検討させていただきます。   ほかに法定刑については,何かございますか。よろしいですか。   次に,「(7) 配偶者間等の性的行為に対する処罰規定の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見はございますか。   この点は,皆さん,特に御意見はありませんか。   それでしたら,次に,「(8) 性的姿態の撮影行為に対する処罰規定の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,お願いします。 ○金杉委員 40ページの上から1行目なのですけれども,「などとして,処罰規定を設けるべきとする意見が多く述べられた」ということで,同意なく性的な姿態を撮影する行為を処罰する処罰規定を設けるべきとする意見が多数述べられたというように終わっています。こういった意見が多数であったということは私も理解しているので,これで構わないのですが,ただ,第13回会合で,私は,最後に,これまでは処罰の必要性について立法事実があると考えてきたので,強く反対はしませんでしたがということで,不同意性交や不同意の在り方の規定の議論状況からすると少し懸念がありますという意見を言わせていただきました。その点を入れていただきたいなという意見です。修正案につきましては,意見書の5ページで具体的に述べさせていただいていますので,ここでは申し上げませんけれども,それに対して懸念を表する意見があったということは入れていただければなと思います。   私の意見に対しては,佐藤委員からも,そもそもそういう事態が生じないように処罰範囲を明確にする必要があると,そこが大前提で大切だという御指摘もありましたし,かつ,上谷委員からの御反論があったということも承知しています。それも記載していただくのであれば,併せてでも構わないと思うのですが,触れてはいただきたいなと思います。 ○井田座長 御意見としては,一切そういう規定を設けるべきではないという御意見だと理解してよろしいでしょうか,あるいは,適用範囲を限定した上で考えるべきだという御意見なのでしょうか。 ○金杉委員 最後に述べた意見としては,この処罰規定は設けるべきではない,現在生じている不利益や法益侵害に対する対処としては,撮影行為そのものを処罰する規定を設けるのではなくて,流出させる行為を処罰する,あるいは有罪判決を前提としない行政没収等で対応すべきだという趣旨です。 ○井田座長 承りました。   ほかにございますか。 ○上谷委員 42ページの「(オ) 小括」のところなのですけれども,「今後の検討に当たっては,被害者の意思に反する性的姿態の撮影行為を処罰する規定を設ける場合には」とあるのですけれども,私が受けた印象では,ただ今,金杉委員から基本的には必要ないという意見が出ましたけれども,ほとんどの人が処罰の規定を作る必要性が高いという認識に立って発言をされていたと考えています。ですので,新しく創設する必要性が非常に高いのだという意見が大多数を占めており,その上で,その規定を設ける場合にはというようなニュアンスにしていただきたいというのが私の要望です。 ○井田座長 小括に書き込むべきだということですか。 ○上谷委員 小括です。 ○井田座長 ここは目立つからということでしょうか。 ○上谷委員 はい。多分,全部読めない人がたくさんいると思うので。 ○井田座長 御意見として承りました。検討させていただきたいと思います。 ○宮田委員 今の小括に書き込むべきという上谷委員の意見には反対であることを取りあえず述べたいと思います。   40ページの一番上の行の「処罰規定を設けるべきとする意見が多く述べられた」のところなのですが,私は一巡目の議論のときに,刑罰よりは行政処分や民事での対応といった刑罰以外の対応を考えるべきだという意見を述べておりますので,この点を,まとめの中に入れていただくのでも結構ですし,ほかの意見があったという形でも,書き方はお任せしますが,そういう意見もあったと記載していただければと思います。   このようにお願いするのは,書き方の技術的な問題ですけれども,インターネットへの掲示という被害者に最もダメージを与えるような行為に関して,被害者の方たちが,「(8)」の「ア」のまとめの中,あるいは「イ」の方の没収のところで十分な言及がされていないと感じるのではないかと思ったわけです。渡邊委員が述べたところと私が述べたところがあったと思うのですが,現行刑法でもやれる方法として,公然わいせつ罪などで処罰する方法があり,そのことを例えば42ページの「⑲」の後ろ辺りに入れてみる,あるいは,インターネットへの対応についてのところも,例えば,インターネット捜査についての抜本的な法整備が必要だと書いておくと,被害者の方々が大きな被害を無視されなかったということで御安心いただけるのではないかと感じました。 ○井田座長 承りました。議事録を確認して検討したいと思います。   ほかにございますか。   では,これで実体法を終えて,次に,「2 刑事手続法について」の「(1) 公訴時効の在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたら,お願いします。 ○齋藤委員 50ページの「⑥」なんですけれども,「年齢とともに被害の開示ができるようになる実態に照らし」ということは,正にそのとおりなのですけれども,恐らく,私は,成人したからといってすぐに開示できるわけではないとか,一定の年齢を超えたからといってすぐに開示できるわけではないといったような趣旨の発言もしていたと思いますので,「成人したからといってすぐに開示できるわけではないけれども,年齢とともに被害の開示ができるようになる実態に照らし」などのように修正いただけると有り難いなと思いました。 ○井田座長 承りました。 ○佐藤委員 私も50ページに関してです。「⑤」は私の意見だと思うのですけれども,説明が足りなくて非常に申し訳なかったのですが,この書き方だと,私が30歳とか28歳といった特定の年齢にこだわっているように見えるかもしれないと思ったのですけれども,そうではなくて,別に25歳でも30歳でも,日本にふさわしい年齢であれば,それでいいと思っております。ここの趣旨としましては,オーストリアのように18歳未満の未成年のときに被害に遭った場合に限って28歳に達するまで公訴時効の進行を止めるというような方法もあるけれども,そうすると18歳以上28歳に達するまでの人は,未成年の間に被害に遭った人よりも早い年齢で時効が完成してしまうため,そういうところも考えないと駄目ですよねという趣旨の発言でございます。それがちょっと分かりにくい感じになっているので,分かりやすい感じでまとめていただければありがたいですし,あるいは,私が代案を出すというようなこともあるかと思いますので,その点,誤解がないようにできればなと思っているところでございます。よろしくお願いいたします。 ○井田座長 場合によっては御発言の趣旨をお伺いして,少し修文させていただくかもしれません。承りました。   ほかにございますか。 ○金杉委員 48ページの下から3行目に,「といった意見も述べられたが,これに対しては」となっていまして,49ページの「⑧」の2行上には,「といった意見が述べられた」という形になっています。これらの部分の修正をお願いいたします。修正案につきましては,ちょっと細かいのですけれども,それぞれ,「といった意見が述べられた。この点については」,「といった意見も述べられた」という形にしていただきたいというものです。   理由につきましては,48ページの「⑤」の意見は恐らく私の意見を要約していただいたものだと思うのですが,「④」・「⑤」と,その下の「⑥」・「⑦」は,必ずしも「④」・「⑤」に対して「⑥」・「⑦」が述べられたという先後関係や対応関係になっているのではなく,「⑥」・「⑦」が先に述べられたのに対して「④」が述べられたというような場面もあったと思います。議事録を確認していただきまして,ここはちょっと並列的な形で,両論併記的な形にしていただきたいということで,修正を求めます。 ○井田座長 報告書案の全体に妥当することですが,必ずしも実際の会合で示された御意見があって,それに対して御意見が述べられたというような形の時系列的な議論の流れを反映するものではなく,後で読んで,論理的な順序といいますか,一方でこういう意見があり,他方で,これに対してはこういう意見があるというような形で,言わば論理関係を考えた上でまとめたということです。ですから,その点を御理解いただいて,もし論理的におかしい,例えば,これは対立していないとか,あるいは,批判になっていないということであれば別問題だと思うのですけれども,決して時系列で並べているのではないということは御理解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。 ○金杉委員 その点については理解しています。ほかの部分にも,このような表現はかなり多数あったのですけれども,特にここの部分については,先後関係というか,対応関係ということではなく,両論併記の方がいいかなと思ったものですから,申し上げました。すみません,御検討ください。 ○井田座長 検討させていただきます。   ほかに御意見はございますでしょうか。 ○山本委員 50ページの1行目の「㋑」のところで,「公訴時効期間を延長する方法が考えられ」に関して,私の方から,以前,20年間に延長することを希望しますという意見を述べたので,そちらはできれば記載していただけるとうれしいと思います。 ○井田座長 承りました。検討いたします。   ほかに御意見ございますか。よろしいですか。   それでしたら,「(2) いわゆるレイプシールドの在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたらお願いします。 ○山本委員 レイプシールドのところなのですけれども,二次被害がないようにするための対応として,どういうことをされているかなどの調査研究が必要であるということとか,研修なども踏まえてガイドラインなども必要ではないかという意見を述べましたので,それらもどこかに記載していただければと思っています。 ○井田座長 承りました。 ○金杉委員 54ページの「⑥」の意見は,私が述べた意見の要約だと思いますが,ちょっと要約が不正確で,事実と異なってしまっていますので,修正を求めます。修正案につきましては,意見書の6ページのとおりです。 ○井田座長 承知しました。 ○齋藤委員 52ページの「②」なのですけれども,これは,私やほかの委員の発言がまとめられているのかと思うのですが,社会全体にジェンダーバイアスがあるといったときに,明確にきちんと伝えられたかどうか分からないのですけれども,私の意図としましては,ジェンダーバイアスはもちろんなのですが,セクシャリティーですとか特定の職業などに対するバイアスも含めて,性に関わる様々なバイアスについて発言したつもりでしたので,そうしたニュアンスを含めていただければと思います。 ○井田座長 承知しました。承りました。   ほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。   それでは,次に,「(3) 司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方」について,報告書案の修正に関する御意見がありましたらお願いします。 ○小島委員 57ページの「④」の意見は,私の意見を入れていただいたものだと思うのですけれども,子供への反対尋問というのは,子供に対する負担が非常に大きいことからという理由を入れていただきたいのと,私の意見は,何らかの形で裁判官面前調書に結び付けていかなければならないということで申し上げたので,刑事訴訟法321条1項2号ではなくて,同項1号と申し上げたので,そこは訂正をお願いしたいと存じます。 ○井田座長 この意見は金杉委員の御意見でもあるようですが。 ○金杉委員 57ページの「④」は,私もこういうことは申し上げましたけれども,同様の意見を小島委員も述べられていたという理解です。両方の意見がまとめられているのかなと思っていました。 ○井田座長 お二人の意見を合体したものになっているようでございます。 ○小島委員 私は,刑事訴訟法321条1項1号ということで申し上げたと思うので,反対尋問の負担が重いということと,司法基盤の充実ということを申し上げたので,それらをもう少し明確に入れていただければ有り難いです。 ○井田座長 分かりました。各意見を正確に反映したいと思います。 ○川出委員 57ページの「⑦」の記載について,修正をお願いしたいと思います。   まず,最初の「規定ⓐ」の部分ですが,これは,上の「⑤」のところで,伝聞例外の規定と証人尋問請求権との関係をどう整理するかという問題があるという御指摘がありましたので,それを受けて,「規定ⓐ」を前提に両者の関係を整理するとすればこうなるだろうという趣旨で前回の検討会で申し上げた発言をまとめていただいたものだと思います。しかし,このまとめ方ですと,「⑤」の御指摘への回答になっておりません。そこで,この部分を,「規定ⓐについては,被害者の証人尋問を行うことによる弊害が大きいことと供述の信用性が担保されている情況を証拠能力の付与の前提としているので,更に被害者の証人尋問を行うことは証拠調べの必要性を欠くと考えられる。」と,このように修正をお願いしたいと思います。   それから,後半の「規定ⓑ」の部分については,58ページの2行目の「そもそも,主尋問の時点における」というところの「主」という字を削っていただければと思います。第14回会合での私の発言は,主尋問によって尋問の時点における記憶を確認する必要があるとの指摘は必ずしも当たらないということを申し上げたものですので,「主」を削っていただいた方が正確なまとめになります。 ○井田座長 かしこまりました。 ○金杉委員 三点あります。まず一つは,57ページの「⑤」なのですけれども,これは恐らく私の意見も一部入っていますが,佐藤委員や宮田委員ですとか,中川委員の意見をベースにかなりいろいろな意見が取り入れられているのではないかと思います。ここは切り分けていただいた方が分かりやすいのではないかなと思ったのですけれども,私の方で修文を御提案するのには,一人ではちょっと手に余るので,指摘にとどめます。   二点目は,55ページの「②」です。55ページの「②」は,恐らく私の意見なのだと思うのですが,私は,遮蔽やビデオリンク,期日外尋問を活用すべきであるという積極方向で述べたのではなくて,そういった反対尋問権の制約につながる規定があって,それ以上に更に反対尋問権自体を失わせるような規定,証拠能力を認める規定を設けることには抵抗があるという文脈で述べたものですので,意見書のとおり修文をお願いいたします。   三点目です。57ページの「⑥」ですけれども,これも恐らく私の意見かなと思うのですが,これは,「規定ⓑ」の創設を検討すべきであるという方向で述べたのではなくて,少なくとも「規定ⓑ」の方向で検討するならまだしも,「規定ⓐ」は容認できませんという文脈で述べたものですので,その点も正確に反映していただければと思います。 ○井田座長 議事録を確認して対応したいと思います。   ほかに御意見はございますか。よろしいですか。 ○山本委員 55ページ辺りに入るのかなと思うのですけれども,司法面接がどうして行われるのか,子供に記憶の変遷が起こりやすいことであるとか,障害児・者の特性ということを踏まえて,その記憶のメカニズムに照らしてプロトコルが作成されており,それを遵守していくことが必要というような意見も述べられていたかと思いますので,そこの部分を追記して,科学的根拠に基づいてされているということが示されるようにしていただければと思います。 ○井田座長 承りました。議事録を確認して対応したいと思います。   ほかに御意見はございますか。よろしいですか。   それでは,御意見はこれ以上はないようですので,「第3 各論点についての検討」のうち,「法定刑の在り方」から,「司法面接的手法による聴取結果の証拠法上の取扱いの在り方」までの議論は,この辺りで一区切りとさせていただきたいと思います。   最後に,報告書案の「第4 終わりに」について,修正に関する御意見がございましたらお願いしたいと思います。10分ほどでお願いします。 ○上谷委員 事務局の皆さんも,多分これをまとめるのがものすごく大変で,「終わりに」のところは力尽きた感じがします。まだ案の段階ではあるのですけれども,これだけの議論をして,ところどころというか,その都度,立法化が技術的に難しい面はあるけれども,だからそれで何もしなくていいわけではなくて,被害者がどれだけつらいかという実情は共有したので,ここで知恵を絞らなければならないという意見が出ていたと思うのです。そういったこの検討会の熱量が伝わるようにというか,多分,一般の人は,自分が関心のある論点以外は,「はじめに」と「終わりに」だけを読むと思うので,そこをもうちょっと一生懸命書いていただきたいなと思って,その点だけです。 ○井田座長 具体的に御提案はありますか。ここをこうしたら,かなり力が入る,熱量が伝わるというようなことはありますか。 ○上谷委員 そうですね,分量も2ページぐらいは欲しいなという感じです。 ○井田座長 分かりました。検討したいと思います。   ほかに御意見はございますか。 ○宮田委員 逆の方向のベクトルの話になってしまうのですけれども,私が出した意見書に記載した内容のうち,司法面接の問題など,今まで述べなかったところは,意見書に記載しているので特に述べなかったというだけで,それを撤回するわけではないので,御検討いただければと思います。   「第4 終わりに」のところなのですが,二つ目のパラグラフのところで,「被害者に対し深甚な苦痛を与えることに思いを致し」とあります。これはもちろんなのですけれども,それだけではなくて,「えん罪を生まないための視点を忘れることなく」ということは,どこかに入れてほしいと思っています。性犯罪でのえん罪に関して言えば,えん罪の対象者の苦痛がひどいのです。ほかの事件と比べて社会復帰がものすごく困難になります。その点については,後藤貞人さんのヒアリングなどもございましたので,何かの形でえん罪の防止という観点は明示していただけるとうれしいなと思いました。 ○井田座長 ありがとうございます。私の気持ちとしては,「第4 終わりに」の2行目のところに,「現行法の基本的枠組みや刑事法の諸原則との整合性にも留意しつつ」とあるのは,えん罪防止を含めた現行法のいろいろな枠組み,あるいはいろいろな形のプリンシプルといいますか,そういうものを十分考えた上で,こういう提案をいたしますということです。あとは法務省にお任せしますので,法務省はもう刑事法の諸原則を考えなくていいので勝手にやってという趣旨ではもちろんないわけです。法務省は,当然にそこは考えていただけるだろうと思うので,こういうような形で特に被害者のことのみを明示したということで書かせていただいているのです。ですから,御趣旨は承りましたけれども,私は,これは簡潔ながらとても良い文章なのではないかと自画自賛しているのですが,もしほかに具体的に修文の御意見があれば,是非出していただきたいと思います。 ○金杉委員 宮田委員の意見と重なります。また,今,座長からも,そういった趣旨であるということで御説明いただきましたけれども,やはり,えん罪防止の視点ということは明文でもう少し分かりやすい形で入れていただきたいなというのが意見です。具体的な修正案につきましては,意見書で述べさせていただいています。性犯罪に関する取組を迅速に進めることを期待したいということは書いていただいた上で,ただし,その際には処罰されるべき範囲を明確にし,本来処罰されるべきでない行為が処罰されることのないよう,えん罪を生まないための制度とする視点が必要であることは言うまでもないという記載を御提案しております。御検討いただければと思います。 ○井田座長 えん罪という言葉を使うかどうかは別にして,御趣旨はよく分かりましたので,検討させていただきたいと思います。 ○齋藤委員 本当に必要なことがぎゅっとまとまった文章だなと思っているので,付け加えることがすごくあるということではないのですが,「刑事法の整備だけでなく」というところに,運用とか司法判断において科学的知見をきちんと踏まえていただきたいという,その科学的知見がもっときちんと調査研究によって積み重ねられることを,それは政府全体の方針もそうだと思うのですけれども,それを望みますというようなことを入れていただけると有り難いなと思いました。 ○井田座長 承りました。検討いたします。 ○山本委員 先ほどの宮田委員,金杉委員の意見のえん罪についてですけれども,被害者がうそつきと呼ばれ,その被害の訴えが信用されないということは,日本だけではなく世界で起こっています。レイプ神話があるということを踏まえていただき,えん罪が起こってはいけないというのは当然のことなのですけれども,処罰されるべきものが処罰されていないという現状もあるので,そこを殊更に言うことが,被害者が被害を訴えられなくしているということにも思いを馳せてほしいと思います。少なくとも同列に扱ってほしくないと思っています。また,被害者に苦痛を与えるということを記載し,思いを致してくれたのも大変有り難いと思っています。加えて,政府が性犯罪・性暴力対策強化の方針で書いているように,先ほどのレイプ神話の話とも重なるのですけれども,どうして被害の訴えが認められず,司法でなかなか取り扱ってもらえないのかということは,女性に対する暴力の問題,ジェンダー・ベースド・バイオレンスであるということの問題と大きく関係しています。   SDGsにおいても目標5で,ジェンダーの平等を達成し,全ての女性と女児のエンパワーメントを図ることが挙げられています。イスタンブール条約でも,女性に対する暴力について,人権侵害であり,女性に対する差別の一形態とし,公的生活若しくは私的生活のいずれで生じるかにかかわらず,女性に対する身体的,性的,精神的,経済的な危害若しくは苦痛,強制又は恣意的な自由のはく奪をもたらすか,もたらす可能性のあるジェンダーに基づくあらゆる行為と定義されているということも踏まえて,このような性暴力というのを許さないというようなことを明記していただければ大変有り難いと思います。もちろん女性だけではなく,男性,男児,セクシャルマイノリティーの被害もありますので,このことも踏まえて,性暴力・性犯罪を容認しないという意思を示していただければうれしいと思います。   また,更にその下の,具体的に適切に対処するためにということの具体的な支援なのですけれども,よりフォレンジックな診察ですね,被害の訴えがあったとしても,証拠がないとなかなか起訴することが難しいというのは世界で共通する課題でありますので,被害者の苦痛に配慮した性暴力診察とフォレンジック,法医学的な証拠採取というのが進められているところでもあります。国連は,女性20万人に1か所,性暴力被害ワンストップ支援センターを設けるように提言しています。この被害直後の証拠採取と刑法の構成,立証の問題というのは車の両輪としてリンクしていますので,そのような証拠が確保できるような体制整備についても言及していただければ大変うれしいと思っています。 ○井田座長 御意見として承りました。 ○齋藤委員 すみません,先ほどお伝えし忘れたのですけれども,最後の段落のところで,「社会や価値観の多様化に伴い」というのがあるのですが,デジタル性暴力など性犯罪の形式自体が多様になっているという観点が入ると,なお良いのではないかなと思いました。 ○井田座長 どういう言葉があるといいですかね。何か良い言葉がもしあれば。 ○齋藤委員 「科学技術の発展に伴って新しい形の性犯罪が現れている」というような文章があるといいのかなと思いました。 ○井田座長 検討させていただきたいと思います。   いかがでしょうか。「第4 終わりに」のところで,皆さんから,かなりたくさんの御意見を頂いたと思うのですが,ほかにございますか。よろしいですか。   それでは,「第4 終わりに」についての議論は,この辺りで一区切りとさせていただきたいと思います。   本日頂いた御意見を踏まえて報告書案を修正して,次回会合では改訂版をお示しし,できればそれを最終版としたいと思っております。具体的な修正の仕方については,恐縮ですけれども,私に御一任いただいて,次回会合までに事前に改訂版の案を委員の皆様にお送りした上で,事務当局を通じて御意見を頂き,調整するようにしたいと思います。   これもお願いですけれども,多くの御意見を頂いたわけですが,その全てをそのまま反映できるものではないということも御理解いただきたいと思います。報告書案については,事前に,一部の委員から,まとまりに欠ける,分かりにくいという御意見も述べられたと聞いています。様々な御意見を正確に書き込もうと努力した結果として,まとまらない印象が出てくるという面もあると思います。報告書という形にするためには多少の取捨選択は必須のことであって,いかにそれを偏りのない立場から,それも非常に難しいのですけれども,そのようにまとめるということで我々は努力したということを御理解いただきたいと思います。   議論の細かいことを見るのであれば,議事録を見ればよいわけですので,議事録とは別に取りまとめを行う以上は,議論全体の流れがどういうものであったか,あるいは,議論における各意見の位置付け,論点ごとのバランスのようなものも考慮しなければいけないのは当然であると思われます。類似の意見は一つにまとめてみたり,あるいは言葉を少し削らせていただいて,趣旨を正確に理解できる最小限の内容にとどめたりする,そうしないと本当に膨大なものとなって,結局議事録の内容をそのまま足したようなものになってしまいますので,それでは取りまとめにはならないということで,この報告書案はそういった観点から作成したものであり,これを修正するに当たっても,そういった観点からの意見の採否・取捨選択ということは当然しなければなりませんので,このことは是非御理解いただきますようお願いいたします。   そういう形で進めさせていただくことでよろしいでしょうか。 (一同了承) ○井田座長 ありがとうございます。それでは,そのように進めさせていただきます。   本日の最後に,「検討すべき論点」の第2の「2 起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの在り方」については,当時の法務大臣の指示によって,法務省において,別途,法改正に向けた具体的な検討を行うことにしたという経緯がありました。その検討について,事務当局から10分程度で報告をしていただきます。お願いします。 ○浅沼刑事法制企画官 本検討会における「検討すべき論点」に掲げられております,「起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの在り方」については,現在,法務省において法改正に向けた具体的な検討を進めているところであり,その検討状況について御説明します。   まず,本検討会の論点となっていた起訴状における被害者の氏名等の秘匿措置について御説明します。刑事訴訟法上,公訴の提起は起訴状を提出してしなければならず,起訴状には,公訴事実を記載しなければならないこととされています。そして,起訴状謄本は被告人に送達しなければならないことから,そのまま送達すると,公訴事実として記載された被害者の氏名等が被告人に知られることにより,性犯罪を始めとして,被害者の名誉・プライバシーを著しく害したり,加害行為等がなされるおそれがある場合があります。   そこで,起訴状謄本の送達に際して,被害者の氏名等が被告人に伝わらないようにするため,検察官が起訴するときに被害者の氏名等の記載のない起訴状抄本を提出し,裁判所は抄本を被告人に送達するとともに,被告人の防御への配慮として,弁護人には,被害者の氏名等を被告人に知らせてはならない旨の条件を付して起訴状謄本を送達する,被害者の氏名等が秘匿されることにより被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは,被告人側の請求により被害者の氏名等が明らかにされる仕組みとすることを検討しております。   次に,本検討会でも御指摘のあった,捜査手続における被害者の氏名等の秘匿措置について御説明します。   刑事訴訟法上,逮捕状及び勾留状には,被疑事実の要旨を記載することとされ,被疑者の弁解録取手続においては,司法警察員及び検察官は,被疑者に犯罪事実の要旨を告げることとされています。また,被疑者の勾留質問手続において,裁判官は,被疑者に被疑事実を告げなければならないこととされています。そして,逮捕状・勾留状の呈示,弁解録取手続又は勾留質問手続において,被疑事実の要旨や犯罪事実の要旨をそのまま呈示したり告知したりすると,起訴状の送達と同様,被害者の氏名等が被疑者に知られることにより,性犯罪を始めとして,被害者の名誉・プライバシーを著しく害するなどのおそれがある場合があります。   そこで,捜査段階において,被害者の氏名等が被告人に伝わらないようにするため,検察官又は司法警察員が,裁判官に対し,被害者の氏名等の記載のない逮捕状の抄本の交付を請求し,被疑者には裁判官から交付された抄本を呈示する,検察官が,裁判官に対し,勾留質問時の被疑事実の告知を被害者の氏名等を明らかにしない方法で行うことや被害者の氏名等の記載のない勾留状の抄本を交付することを請求し,裁判官はその方法で勾留質問を行い,被疑者には裁判官から交付を受けた抄本を呈示するなどの仕組みを設けるとともに,被疑者の防御への配慮として,被害者の氏名等が秘匿されることにより被疑者の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるときは,被疑者側の請求により被害者の氏名等が明らかにされる仕組みとすることを検討しております。   さらに,起訴後に行われる証拠開示等の段階においても,被告人の防御への配慮をしつつ,被害者の氏名等が秘匿されるようにするため,証拠開示の際の被害者特定事項の秘匿の要請,証拠開示における秘匿措置,裁判書の交付請求などについても,必要な措置を採ることができる仕組みとすることについて検討しております。   ただ今御説明した仕組みについては,引き続き検討を進めているところであり,今後変更される可能性がございますが,現段階での検討状況の御報告は以上です。 ○井田座長 この点について,何か御発言,御質問はございますか。 ○上谷委員 秘匿によって防御上不利益なときは,その特定事項を通知するというところについて,防御上不利益なときというのは,どういうケースが想定されているのでしょうか。 ○吉田刑事法制管理官 具体的にどのような文言を用いるかというのは検討中の段階であり,今後,その文言を確定しつつ,その意味内容も更に詰めるということになりますので,防御上の不利益の内容について,現時点では具体的なお答えは差し控えたいと思います。 ○井田座長 ほかにございますか。よろしいですか。   それでは,「起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの在り方」についての報告は,ここまでとさせていただきます。   では,次回は,修正した報告書案を基に,再度,取りまとめに向けた議論を行いたいと思います。   本日予定していた議事はこれで終了いたしました。   本日の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成して公表することとしたいと思いますが,そのような取扱いとさせていただくことでよろしいでしょうか。 (一同了承) ○井田座長 ありがとうございます。それでは,そのような取扱いとさせていただきます。   先ほどもありましたけれども,起訴状等における被害者等の氏名の取扱いの検討状況についての報告は,事務当局の説明どおり,法務省で検討中のものでもあるため,議事録の公表までは,内容の取扱いには御留意いただきますようお願いいたしたいと思います。   では,次回の予定について,事務当局から説明をお願いします。 ○浅沼刑事法制企画官 第16回会合は,令和3年5月21日午前10時から開催を予定しております。次回会合の方式については,追って事務当局から御連絡申し上げます。 ○井田座長 本日はこれにて閉会といたします。