法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  令和3年4月16日(金)自 午後0時59分                     至 午後3時54分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,定刻少し前ではございますけれども,出席予定の皆様方全ておそろいということですので,これより法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第11回会議を開会いたしたいと思います。   本日も御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   なお,本日は衣斐幹事が御欠席ということであります。   それから,前回の部会後,幹事等に交代がございましたので,御報告をいたします。富澤幹事が退任され,後任として橋爪幹事が就任されました。また,水木関係官が退任され,新たに木村関係官及び後藤関係官が就任されました。よろしくお願いいたします。   このたび新たに就任をされた橋爪幹事,木村関係官及び後藤関係官におかれましては,簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。順次指名いたしますので,マイクをオンにしてお名前,御所属の御紹介をお願いいたします。   (幹事等の自己紹介につき省略) ○山本(和)部会長 よろしくお願いいたします。   それでは,次に,本日の審議に入ります前に,本日の議事事項等及び配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○大野幹事 まず,本日の議事内容についてでございます。本日は,まず,4名の参考人の方々から今般の改正についての御意見を伺う予定となっております。その後,湯淺委員よりサイバーセキュリティ等に関する専門家としてのお立場から,IT化について検討するに当たり参考となるお話を頂戴する予定でございます。   また,本日の配布資料は,後ほど御紹介させていただきます竹下参考人と湯淺委員から御提供いただいた資料でございます。後ほど御説明の際に適宜御参照いただければと存じます。なお,本日は部会資料の御用意はございません。 ○山本(和)部会長 それでは,早速ですが,本日の審議に入りたいと思います。   先ほど事務当局からも説明がありましたが,本日は参考人として4名の方々に御出席を頂いております。   日本障害フォーラム副代表,日本視覚障害者団体連合会長でいらっしゃいます弁護士の竹下義樹様,弁護士の田門浩様,日本視覚障害者団体連合に御所属の弁護士,田中伸明様,DPI障害者インターナショナル日本会議副議長でいらっしゃいます尾上浩二様でございます。どうかよろしくお願いをいたします。   本日は大変お忙しい中,ヒアリングをお引き受けいただいたことに,まずもって感謝を申し上げます。是非とも忌憚のない御意見を頂戴し,今後の私どもの検討にいかしてまいりたいと考えておりますので,何とぞよろしくお願い申し上げます。   本日は,最初に参考人の皆様より民事裁判手続のIT化についての御意見やお考えをお聞かせいただいた後に,質疑応答の時間も設けていただけると伺っております。   それでは,参考人の皆様,よろしくお願いを申し上げます。 ○竹下参考人 日本障害フォーラムの副代表をしております竹下といいます。本日は障害者の立場から,民事裁判のIT化に向けた改正論議の中で,障害者の立場から,その当事者,あるいは代理人として活動する上での配慮事項を皆様にお聞きいただく機会を設けていただいたことに感謝申し上げます。   日本障害フォーラムは,身体障害者,知的障害者,あるいは精神障害者の全国組織,さらには障害者の支援団体である全国社会福祉協議会であるとか,日本障害者リハビリテーション協会といった組織,合計13団体で構成されている連合組織でございます。この日本障害フォーラム,略称JDFと称しておりますが,JDFは,障害者権利条約の我が国の批准に向けた取組や,あるいは,その後に障害者差別解消法の制定に向けた取組に注力してきた団体でございます。最近では,障害者権利条約に基づき国が国連の障害者権利委員会に提出した政府レポートに対応するパラレルレポートを作成するために,障害者団体あるいは地域の団体からのヒアリングをして,それらの論議に基づいたパラレルレポートを作成し,国連の障害者権利委員会に提出するなどの活動をしている団体でございます。   そうした我々の活動の中で,民事裁判のIT化に向けて,障害当事者の立場から,あるいは障害を持った司法界のメンバーたちがこれまで,当事者の声を十分に反映していただくための取組としてアンケート調査を行ったり,団体ヒアリングを行うなどして,これまで取りまとめた内容を本日,資料としても提供させていただいておる次第でございます。内容につきましては私以外の3名のメンバーが説明してくれると思いますけれども,この民事裁判のIT化に向けて,是非障害当事者が司法の場で十分にその立場を理解していただいて,裁判に適正に参加できる仕組みを作っていただくことをお願いし,私からの発言を終わります。よろしくお願いします。 ○田門参考人 田門です。続きまして,私,田門から,日本障害フォーラムの要望の内容について御説明させていただきたいと思います。要望内容については,本日お配りの資料10です。要望について一つ一つ私,田門と田中参考人,尾上参考人と交代で説明をさせていただきたいと思います。   まず,田門の方から説明させていただきます。本日はお時間を頂きまして,本当に感謝しております。資料10の要望のうち1番目について,説明させていただきます。   1番目は,このように書いてあるとおりです。障害者が民事に関する手続の当事者,証人,参考人そのほかとしてこれに関わる立場になったときに,民事訴訟を含む様々な法規について,手話言語を含めた幾つかの形による意思疎通手段を確保,点字版やデジタル版,読みやすい版,資料に関する提供,個々の障害者の特性に応じた手続上の迅速な提供が必要となっております。そのために,民事訴訟の手続の配慮について総則規定を定めることを求めます。障害者に関する手続の配慮の内容規定について,決定について,要望,決定を尊重することについて,明記してください。手続上の配慮と,均衡を失していることを理由に制限されないという点で,合理的配慮との区別が必要になってきます。そこを十分含む必要があります。   そこについて少し説明をさせていただきます。資料1になります。資料1については,障害者権利条約の条文が載っております。13条の司法手続については,利用の機会について規定があります。そのほか,国連には人権に関する条約,人権差別撤廃条約や女性の差別撤廃条約など,各種の人権条約がありますけれども,こういった司法に関わる手続については障害者権利条約だけに記載されています。13条というのは民事手続に該当するものになります。   それについて,資料5の3ページを参照ください。障害者の司法へのアクセスについて,国連原則ガイドラインの2.1において,ユニバーサルデザインの原則に基づいて,司法制度において実施すべき施設及びサービスの利用可能性,アクセシビリティを保証しなければならないとなっています。規則や政策,ガイドライン及び慣行を実施し,実施することを可能とするとなっています。   次のページに英文の原文を載せてありますが,そちらの2.1の(a)に「enact」という単語が記載されています。この「enact」というのは,法律を制定するという意味になります。つまり,ガイドラインは司法へのアクセスを保証する法令を制定することを求めているということになるわけです。障害者権利条約に基づく配慮に規定されているものというのは,ガイドライン,手続上の配慮ということで対応するべきと書いてあります。   日本内の法規については,民事に関する場合には民事訴訟法しかございませんので,また,権利条約の13条を作ったときには,日本が大きな役割を果たしてきました。条約でいえば2006年12月の国連の場で採択されているわけですけれども,その前の国連の総会においてはアドホック委員会の第8回が行われています。この条約案の文案についてはそこで審議されていますが,第3回アドホック委員会では,2004年5月26日,司法について物理的やコミュニケーション上の障害を取り除くための条項を入れるべきと意見が出されています。最終的には13条の成立にそれが結び付いていると考えています。そのときの日本の大きな役割を考えたときには,配慮の規定を民事訴訟法の中に反映させる必要があると受け取ることができます。   また,日本内でいうと,障害を理由とする差別の解消法,差別解消法においては,行政の合理的配慮が義務付けられていますが,裁判所はその規定がないのですね。合理的配慮というのは,障害者の権利条約2条に合理的配慮と規定されています,そこから来ているものですが,条約の13条というのは手続上の配慮と整理をされています。先ほど言ったように,合理的配慮とは別で考えなければなりません。   資料4の障害者権利条約の委員会の一般的な意見6号51項の説明に入りたいと思います。つまり,条約の2条の合理的配慮とは,障害者の負担がないという,均衡を失した,又は過度の負担がないというふうに,制限がない,障害者に対する配慮がきちんとしなければならないと読み取ることができるわけです。そこで,民事訴訟法については合理的配慮ではなく手続上の配慮ということで,別の分野に入っていくわけです。   今回,新型コロナウイルスの拡大により,ITが非常に早く進んでいる状況の中で,障害者に関する手続上の配慮,非常にここが重要になってくるわけです。資料7のデジタル社会の法律に向けてというところで,8条,利用に関する機会の均等についての条文についてです。障害ある,なしと,あと心身の状態についても,差別の原因,格差の原因になるということになるわけです。改正については民事訴訟法の手続上の配慮の規定に入れるべきであると思います。そこで,先ほど言った1項の要望をしたわけです。   続いて,資料10の2項の説明に入りたいと思います。テーマはここに書いてあるとおりです。障害特性に応じた手続上の配慮の具体的な内容の一つとして,障害者が,民事訴訟法の当事者,証人,また参考人,そのほかの関係者になった場合,それぞれ個々の特性に応じて適切な意思疎通支援者を配置すべき,これがきちんと権利が守られるようにすべきということで,意思疎通支援者の確保について求めます。また,意思疎通支援者に対する障害者の権利条約に基づく障害者の人権について,研修や適切な手続の配慮などの研修をすることも併せて要望いたします。   資料4,一般的意見6号51項,手続上の配慮ということで,裁判を受ける意思疎通手段の申出がここには規定されています。また,52項でいえば,手続上の利用する効果的な機会を確保するために,プロセスへの参加を認めなければならないということになっています。必要事項についてはそこに書いてありますけれども,四つの項目があります。   資料5,障害者の司法へのアクセスに関する国連原則のガイドライン,3.2(e),あらゆる形のコミュニケーションを利用するための支援や技術の確保をするということになっております。(f)では,ファシリテーターを含めた第三者のコミュニケーション支援に関することについて記載されています。その方法について,(ⅰ)から(ⅳ)まで,ノートテイカーや資格を持つ手話言語通訳者,リレーサービス,触覚通訳ということで例示を幾つか出してあります。日本の法律でいうと,意思疎通支援者という言葉で法律の中では使われています。   資料2において,国連障害者権利委員会により2019年9月に採用された事前質問事項の中に,民事や刑事や行政手続に関する障害者のための個々に必要な事項,配慮を提供すると書いてあります。個々に対する支援の手続上の配慮,手続を進めるための措置について,日本に対して情報提供を求めています。ですので,以上のことから,日本の民事訴訟法について,意思疎通支援の手段の確保について必要になっているということが分かるわけです。   また,研修については資料5,障害者の司法へのアクセスに関する国連原則のガイドラインの3.2の(g)に掲載されていますが,このような経過の中で,要望の2項について要望したいと思います。   3項について,田中参考人,お願いいたします。 ○田中参考人 要望事項の3につきまして,田中の方から御説明をさせていただきます。資料10の要望事項3,手続上の配慮のために必要な費用を公費負担とすること,ということでございます。障害者に対する手続上の配慮を提供するために必要な費用については,公費で負担することを求めます,ということでございます。この手続上の配慮という言葉は,先ほど田門参考人からも御説明がありましたように,不均衡の概念によって制限されないという意味合いを持つものでございます。これは,裁判を受ける権利の重要性が反映されたものと考えることができます。   現行民事訴訟法下で障害者が裁判手続を利用しようとする場合,様々な障壁が生じてまいります。この障壁を除去するために,障害者が費用を拠出するのではなくて,国が費用を拠出してこの障壁を解消するということを求める要望でございます。このような対策によりまして,障害者が障害のない者と同等の立ち位置で裁判手続を利用することができることが可能となります。これによりまして,障害者の裁判を受ける権利の実質的な保障が図られるということを求めるものでございます。   関連する資料につきまして御説明をいたします。まず,資料6を御覧いただきたいと思います。これは韓国の資料になります。障害者司法支援のためのガイドラインというものでございます。作成は法院行政処,裁判所事務局となっておりまして,2020年5月に公表されたものでございます。   この公費負担につきましては,そのガイドラインの91ページから93ページのところを抜粋させていただきました。ここを見ますと,韓国におきましても裁判期日で手語通訳が行われる場合に,誰が通訳費用を負担するのかという問題提起がなされております。これにつきましては,韓国における手話言語法,あるいは障害者差別禁止法の立法趣旨等を勘案しまして,様々な検討がなされております。   結論部分の指摘を読み上げさせていただきますと,手語通訳費用は,障害者が障害者でない人と実質的に同等の水準で裁判を受ける権利を保障されるようにするための正当な便宜提供の内容であるため,その費用は国庫で負担することが障害者差別禁止法を制定した立法者の意思に合致すると思われる,このように記載されております。   続きまして,このガイドラインでは海外調査につきましても報告されておりますので,御紹介させていただきたいと思います。このガイドラインの海外調査によりますと,アメリカ50州のうち40州におきまして,民事裁判で手話通訳者が付きました場合には,その費用は政府の財政から負担するという制度が既に実施されているという報告になっております。また,オーストリアの例ですけれども,通訳費用だけでなく,訴訟手続のために弁護士と必要な接触をするための費用につきましても,これは連邦が負担するという規定になっているところでございます。   次に,資料6-2の御説明をさせていただきます。これも韓国の資料でございますが,手語通訳等に関する例規の概要というものでございます。2020年9月1日付で,韓国大法院の報道資料別添からということで資料とさせていただきました。手語通訳等の費用に関する例規でございますが,1のところ,制定理由が書かれております。手語通訳の費用等を国で負担することにより,聴覚障害者が障害者ではない人と実質的に同等の水準で司法手続を利用できるようにする内容に民事訴訟法規則及び刑事訴訟法規則が改正され,2020年6月26日から施行されたところであり,それに伴う具体的な業務処理の手続を定めるものということで制定理由が書かれております。   2で,主な内容ということで紹介がありますけれども,一つだけ御紹介します。三つ目の文章でございます。第3条になりますが,ここでは,手語通訳は裁判所の権限又は当事者,関係者,傍聴者の申請を受けて実施することという紹介がございます。注目すべきは,傍聴者からの申請に基づいても手語通訳が実施されるという定めのあるところでございます。   では,要望事項の4の方の説明に移りたいと思います。資料10を御覧いただきたいと思います。要望事項の4でございますが,司法手続において用いられる情報通信システムをアクセシブルなものにすること,という要望でございます。これにつきましては,aからcまで三つありますけれども,私からはaについて御説明します。   訴訟関係者がインターネットを通じて送受信する方式,又は裁判所が管理する文書データのフォーマットを視覚障害者,盲ろう者にもアクセシブルな形式とすること,という要望でございます。これは主として,現在検討されております事件管理システム,それから,その事件管理システムにアップロードされる文書ファイルの形式のアクセシブル性を求めるものでございます。特に,文書フォーマットにつきましては現在,PDFを前提とする検討がなされておろうかと思いますけれども,PDFにつきましては,テキストデータがPDFに貼り付いたものであれば,視覚障害者もスクリーンリーダー等で読み上げる可能性がございます。また,そのような場合,テキストデータさえあれば盲ろう者でも点字ディスプレイというもので対応ができる可能性が出てまいります。そういったこともありまして,このa項を要望するところでございます。   関連する資料の御説明をいたします。資料5を御覧いただきたいと思います。これは先ほど来出てきている資料ですが,障害者の司法へのアクセスに関する国際原則とガイドラインというものでございます。2020年8月に公表されまして,障害者の権利に関する特別報告者,カタリーナ・デヴァンダス・アギラー氏,障害者権利委員会委員長,それから障害とアクセスに関する事務総長特使の3名の連名で公表されているものでございます。この原則は,全体では10個の原則と,それぞれについてのガイドラインからなるものでございますが,今回,IT化に関連する原則について抜粋をしております。原則1から4と原則6でございます。   要望事項4に関連する原則は,原則4でございます。障害者は他の者と平等に,適時にかつ利用しやすい方法で,法律上の通達及び情報にアクセスする権利を有するということになっております。ガイドラインの方も抜粋をさせていただきましたが,4.1の(b)項を御覧いただきたいと思います。司法制度及び手続に関する情報が,適切かつ必要な場合を含めて,様々な方法で入手できることを確保するというガイドラインになっております。   具体例も幾つか載っておりますが,例えば4番目,アクセス可能なウェブサイト,それから6番目は音声拡大装置及び文書拡大装置,8番目を見ていただきますと,点字というものがございます。こういった様々な形式での情報提供によって,障害者が様々な情報を入手可能となるということでございます。   また,これは資料にはございませんが,我が国におきましては色覚障害という方々もおられます。この色覚障害につきましては,各自治体におきましてカラーユニバーサルデザインという考え方も公表されているところでございますので,事件管理システムやウェブ会議等のシステムを導入する際には,そのような点につきましても御検討いただけると有り難く思います。   それから,資料8でございます。これは,ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律に制定されているものでございます。これは13条までございますが,要望事項4に関連しましては,第2条のところを御覧いただければと思います。これは定義規定になっておりますが,第3号のところ,ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の定義規定が置かれております。具体的な施策の内容につきまして,イ,ロ,ハ,ニ,ホと並んでおりますが,ニのところを注目いただけたらと思います。障害者,高齢者等が円滑に必要な情報を取得し,及び利用することができること,ということが達成目標として掲げられているところでございます。こういった法律の内容も考慮いただきまして,IT化の制度作りの検討材料としていただければと思います。   では,続きまして,田門参考人の方からbとcをお願いいたします。 ○田門参考人 田門です。要望4のb,cについてです。ウェブ会議に関するテレビ電話についての要望になります。障害者にとってはテレビ会議というのは非常に使いにくい部分がございます。例えば,テレビ会議のソフトの画面をクリックするという方法について,視覚障害者にとっては非常に使いにくい,難しいわけです。また,聞こえない人にとって,また難聴者にとってみると,音声だけでのやり取り,手話,字幕がない場合には内容がつかめないという問題があります。そのほか,日弁連のアンケートにあるように,例えば,通信が途切れたりした場合,説明の音声がそこで途切れたり,画像が乱れたりする場合があると思います。また,通訳者がオンラインの向こう側にいる場合,目の前に通訳者がいない状態の中でコミュニケーションがとりにくいということがございます。また,カメラに映っていない空間の状況が分からない,なのでコミュニケーションがとりにくいということになるわけです。また,画面に出ていない人が突然声を出した場合,そのときに何が起こったのかということが非常につかめないことになるわけです。また,会議の進行の早さによっては,障害者からは質問が,また発言ができにくい,しにくいということがあります。そのほか,テレビ会議に関することで言うと,文書の提示があると思いますが,視覚障害者にとってみると,それが出ても読めないというような課題が残っている状況です。これに対する,障害者に合ったシステムを是非御検討をお願いしたいと思っています。要望4のb,cに関することでした。   次は尾上参考人,お願いします。 ○尾上参考人 尾上です。要望項目5の説明をさせていただきます。弁護士,裁判所職員,裁判官に対し,障害者権利条約に基づく障害者の人権に関する研修及び適切な手続上の配慮の提供に関する研修を義務化し,これを定期的に実施することを求めますという内容なのですが,これについて説明をさせていただきます。   まず,資料1,障害者権利条約の条文ですけれども,この中の第13条です。司法手続の利用の機会,その第2項にはこうあります。締約国は,障害者が司法手続を利用する効果的な機会を有することを確保することに役立てるため,司法に係る分野に携わる者,警察官及び刑務官を含む,に対する適当な研修を促進するとあります。   先ほどほかの参考人からも説明がありました資料4の方なのですけれども,障害者権利委員会が作成をしました一般的意見第6号のパラグラフ55を御覧ください。55には,権利及び義務の適切な尊重と実現を促進するには,法執行官に関する研修,権利所有者の意識向上並びに義務履行者の能力構築が必要である,適当な研修には以下を含めるべきであるということで,(a)(b)(c)(d)(e)とありますが,(e)を読み上げます。弁護士,治安判事,裁判官,刑務所職員,手話言語通訳者及び警察官並びに刑務官を含む職員を対象とした,障害のある人の権利に関する効果的な研修を確保するためにとられる措置,それも含めた効果的な研修を行うべきだとあるのです。   これらの規定を踏まえて,私自身の少し経験したことも交えてお話をしたいと思います。今日はオンラインなので分かりにくいかも分かりませんが,私はふだん電動車椅子で,寝るとき以外は電動車椅子で生活をしている者なのですけれども,その立場から,これまで障害者の自立支援法でありますとか,優生保護法被害,強制不妊手術ですね,それに関する裁判などを傍聴してまいりました。それらの中で,例えば車椅子席,車椅子でそのまま着席できる席の確保が,あらかじめかなりの椅子を取り外していただいて車椅子席を十分に充てていただける場合もあれば,いろいろな方と抽せん結果次第で確保するという,それこそ本当に端っこの一番後ろというか,そんな場合もあったり,もう本当に車椅子席の確保は裁判官次第という感じになっているのが現状でございます。   あるいは私,介護者を付けて行くときもあるわけですが,そのときに介護者と別々に抽選してくださいと言われ,では,私が当たって介護者が外れたらどうするのだろうというようなことがございます。あるいは,同じように今日,手話通訳の方に来ていただいていますが,手話通訳や文字通訳者も傍聴人なので傍聴券を抽選で確保してくださいと,では,聴覚障害の方が抽選に当たって,でも,手話通訳や文字通訳の方は抽選に漏れたらどうするのだろう,みたいなことがあります。   あるいは,パソコン文字通訳というのが最近は主流になってきているのですが,その際に法廷内の電源コンセント使用が,これも裁判官によって認めていただける場合もあれば,認めていただけない場合もある。今日も会議をオンラインでやっていますけれども,これでもし電源が使われなかったらパソコンを使えないですよね。そういうふうに考えていただいたら,パソコン文字通訳ができなくなるというのが容易に想像ができると思うのですけれども,それが認められない場合がございました。   あるいは,手話通訳の方の立つ場所や,立って手話をすることが認められるかどうか,今まで私が見た中で一番ひどいというか,これは大変だなと思ったのが,ろうの方の横に座って手話をしてくださいと,前を見て横の手話を見てと,こんなことはできないわけです。そういった様々なことが裁判官の判断によって大きく違っていました。もちろん,すごくよくしていただいた裁判官もおられます。裁判の独立性があることは理解をしていますが,その前提に障害者権利条約が求めているものを共通理解として,障害者の配慮が確保されるようにしていただきたい,そのために,是非これらを踏まえて研修の実施や拡充をお願いしたいと思います。それが一つです。   最後,項目6ですけれども,障害者の司法参加に必要な制度の構築のために,障害者が参加する継続的な検討の場を設けることを求めます,について説明させていただきます。   障害者権利条約は世界中の障害者が関与してできたわけですが,日本からも私たちJDFで傍聴団を組織し,8回開催された国連の特別委員会に毎回参加をしました。私たち抜きに私たちのことを決めないで,これが障害者権利条約の基本精神であります。この,私たち抜きに私たちのことを決めないでということは,権利条約全体に貫かれていますけれども,締約国の義務が規定されています第4条3項,資料1の次のページになりますけれども,第4条3項には,締約国は,この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において,並びに障害者に関する問題についての他の意思決定過程において,障害者,障害のある児童含む,を代表する団体を通じ,障害者と緊密に協議し,及び障害者を積極的に関与させるとあります。   この間,改正障害者基本法でありますとか改正バリアフリー法,そして,先ほど資料8としてありましたユニバーサル社会実現推進法等では,当事者意見の反映がいずれも重視されています。資料8,ユニバーサル社会実現法の条文を御覧ください。後ろの方になりますけれども,この中の13条では,法務省も関わるユニバーサル社会推進会議の設置が規定をされていますが,さらにその第9条には,障害者,高齢者等の意見の反映ということで,国及び地方公共団体は,ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策を策定し,及び実施するに当たっては,障害者,高齢者等の意見を反映させるために必要な措置を講ずるように努めなければならないとあります。こういうふうに国内法においても,法務省も関わられる,このユニバーサル社会実現の法律の中で規定されているわけです。   参考までに,資料9ということで,私どもJDF並びにその構成団体が政府の様々な政策決定の場に参画の機会を得てきたという一覧をまとめました。資料9です,後ろから3枚目ぐらいですけれども,障害施策に関わる審議会や会議ということで,障害者政策委員会や社会保障審議会,労働政策審議会,中央教育審議会,国土交通省のバリアフリー関連の検討会や,情報通信審議会,中央防災会議等,多岐にわたっています。そのほかにも,独自の意見交換や学習の場ということで,放送事業者と障害関係団体の意見交換会の開催でありますとか,あるいは最高裁判所事務総局の方に来ていただきました裁判員制度に関する学習会,そこでの意見交換をさせていただいたこともありますし,あるいは参議院事務局の障害者差別解消に関する研修への講師対応をさせていただいたりということもあります。是非この法務分野におきましても,今後も障害者が参加する検討の場を継続的に持っていただくことを最後にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。大変重要な諸課題につきまして,御示唆に富む貴重なお話を頂戴できたかと思います。   それでは,質疑応答に移りたいと思います。今の参考人の皆様の御発表につきまして御質問,あるいは御意見でも結構ですが,おありの方がいらっしゃいましたら,どなたに対する御質問等でも結構ですので,御自由にお出しを頂ければと思います。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。非常にきめ細かな御説明をありがとうございました。質問をさせていただくのと,それから,一言コメントさせていただければと思います。   質問は2点ございまして,先ほどのお話の中でも,現在書面で行われている現在の裁判についても,手続上の配慮ですとかファシリテーターの問題について一定の課題があることの話,御説明があったと思いますけれども,今挙げていただいた中で,具体的な項目もございましたけれども,書面の取扱いということについて具体的に支障に感じていること,電子化への危惧ということもあると思いますけれども,書面であれば対応ができるのかどうかについて,まず1点,教えていただければと思います。   そして,2点目ですが,行政機関あるいは地方自治体,民間企業を問わずですけれども,ユニバーサルデザインが取られている情報システムなどでお手本になるようなもので,これはまねした方がいいというものがありましたら,教えていただければと思います。   それで,コメントですけれども,今御指摘いただいた,例えば車椅子席のない裁判所であるとか,それから,通訳人などの傍聴券を別に抽選をしなければいけないといったものについては,恐らく電子化の検討に先立って裁判所として取り組んでいただき,先行して解決すべき課題ではないかと思います。電子化を待つべきことでもないと思っておりますので,そういったことについて,この機会は大変貴重な機会を頂いたわけですけれども,何かこの部会とは別の機会も作っていただいて,本格的に御検討いただく必要があるのではないかという感想を持ちましたので,一言述べさせていただきました。   差し支えない範囲で質問への御回答を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは,質問については2点頂いたかと思いますが,参考人のどなたかからお答えいただけますでしょうか。 ○田中参考人 御質問ありがとうございます。第1点目の質問につきまして,お答えさせていただきたく思います。現在は,御指摘のとおり,書面でやり取りをしておりますが,視覚障害者の場合,書字情報につきましてはそのままでは把握ができません。この場合,把握する方法としましては,例えば補助者に読み上げてもらうとか,あるいは,かなり最近,IT機器が進展してまいりましたので,OCRソフトで取り込んで,誤認識というところもありますので,人の手で少し修正を加えてもらった上でテキストファイル化して音声ソフトで読み上げるというような形で把握をしております。   今回のIT化は,そういう意味では非常に障害者にとっても大きなチャンスであるというところがございます。もし使われるPDF形式がテキストデータが貼り付いたものでアクセシブルなものになりますと,そういった読み上げであるとか,OCRによる取り込みというものをしなくても,スクリーンリーダーを用いて文書内容を把握するということが可能となってまいります。そういう意味ではIT化に期待するところでございます。   私からは以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   田門参考人,お願いします。 ○田門参考人 2点目についてお答えをしたいと思います。最近は音声を自動的に文字に変えるシステムが少しずつ進んできています。ですので,例えば,聞こえない人が会社で働いているときに,自動音声認識ソフトを使うと相手の話している内容の文字化をして理解ができるというパターンが増えてきています。残りの問題は二つありまして,一つは,裁判所におけるウェブ会議のときに,うまくその機能が合致できるかどうかということです。それともう一つが,裁判の場合には専門用語が多く使われるかと思います。この専門用語について,なかなか自動変換が難しいのではないかということが課題として残ります。   また,聞こえない立場で言うと,二つの課題があります。一つ目が,聞こえない人の中には日本語が得意ではない方が多くいらっしゃいます。聞こえない人の場合には,ろう学校に入って学習をする人もいます。その人の場合は,実は今までは手話を使わない教育でした。ですので,先生が話していることが分からないまま育ってきているという子供が多くいた,なので日本語の理解が十分ではない人が多くいるということです。もう一つは,聞こえない人自身が自ら発するとき,発言をする場合,この声というものが明瞭ではない,ですので,自分の声で話していても自動音声認識の日本語にうまく反応しないということです。なので,聞こえない人はやはり手話を使って話をするのですが,この手話で話したものを,人の支援,そこには機械ではなくて意思疎通支援者,手話通訳者が,今回の田門もそうですけれども,弁護士,23年間仕事をしてきましたが,手話通訳者をいつも同行させて手話で仕事をしてきました。その辺りがまだ技術的なところでは難しいのではないかと思います。技術の進歩に期待しなければならないところになると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   大谷委員,よろしゅうございますか。 ○大谷委員 どうも御回答ありがとうございました。IT化によって障害者の皆様にとってもエンパワーされるということですので,このタイミングで何ができるかという情報を集めながら取り組めればと思っております。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○服部委員 弁護士の服部でございます。以前,障害者のための法改正等についてということで意見を提出させていただいております。私からも2点,お願いしたいと思います。   まず1点目ですが,JDFその他障害者団体などの御活動を含め,民事訴訟を実際に傍聴されたり経験されたりということがおありかと思いますが,直接経験したり見聞されたことで,障害者の方が民事裁判手続に関与する場合,こういうことがやはり問題だとか,気になるとかいうことがございましたら,もう少し具体的に御紹介いただけると有り難いかと思います。今,尾上参考人から傍聴での状況ですとか,書面でのやり取りの場合ですとか,テレビ会議での問題など,幾つか伺いましたけれども,もしその他にもございましたら具体的に御紹介いただけると有り難いと思います。 ○山本(和)部会長 尾上参考人,お願いします。 ○尾上参考人 尾上です。どうもありがとうございます。先ほど申しましたとおり,優生保護法の被害裁判について,去年11月,大阪訴訟の判決を傍聴したときのことを少しお話をしたいと思います。その裁判では,優生保護法の違憲性は認められたのですけれども,除斥期間を理由に原告の請求は棄却ということで,敗訴ということになり、裁判の費用は原告負担となったのです。その中には,通常の裁判費用のみならず手話通訳費用も含まれていました。強制不妊という理不尽な行為をされた聴覚障害のある被害者が訴えたのに,通常の裁判費用だけではなくて,その通訳の費用まで課すというのは,この国の司法制度は,障害者に何と過酷な現状にあるのだろう,そう思わずにはおれませんでした。   また,多くの聴覚障害者が傍聴をしましたけれども,その手話通訳や文字通訳の支援団体が負担をしたり,ボランティアベースで行われました。先ほど田中参考人から説明がありました韓国の制度では,訴訟の当事者や関係者だけではなくて,傍聴者に対する手話通訳も公費負担の対象になっているというのをつい最近知りました。是非こういったことを踏まえて,日本でも実現をしていただきたいです。   やはり去年,その裁判の傍聴をして,なぜ被害に遭っている人がその手話通訳の費用まで課せられなければならないのか,こんな不条理なことはやはりもうなくしていただきたいなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   服部委員,よろしいでしょうか。 ○服部委員 ありがとうございました。今の点,公費負担に関する御指摘かと受け止めております。ありがとうございます。   もう1点,御質問なのですけれども,意思疎通支援者の配置に関することでございます。資料10の第2項で,意思疎通支援者の配置について,障害者の方が民事事件の当事者,証人,参考人その他の関係人となった場合に,個々の障害者の特性に応じた適切な意思疎通支援者を配置し,とございます。この意思疎通支援者のイメージをどのように持てばよいのかということなのですが,資料5に仲介者,ファシリテーターというものが用語として出てまいりまして,御紹介を頂いております。その中に,中立的な立場であり,障害者や司法制度を代弁したりということはないということが記載されております。さらに資料5をもう少し進みまして,5ページにコミュニケーション支援というものが出てまいります。このコミュニケーション支援というもの,また,この仲介者というものと意思疎通支援者がほぼイコールと捉えるのか,また,意思疎通支援となりますともう少し違う部分,側面も含んでくるのか,お考えを御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○田門参考人 田門です。御質問いただきましてありがとうございます。まず,日本の中の意思疎通支援者というものは,障害者総合支援法の中に定義がされています。手話通訳者,要約筆記者,また盲ろう通訳支援者,そのほかとなっております。ただ,その定義というのは非常に狭いものになっています。例えば,知的障害者に対するコミュニケーション支援,精神障害者に対するコミュニケーション支援も本来は含まれなければなりません。知的障害者の場合には,例えば,難しい言い方を理解できない方が多くいます。ですので,そこを分かりやすく言い換えをする支援者というのが必要になってきます。それも意思疎通支援者に含まれます。また,障害者の中には自分で声を発することができない方もいらっしゃいます。そういう人たちの場合のために,代わりに発音をする支援者がいるわけです。それも意思疎通支援者に含まれます。   先ほど御指摘のありました仲介者という言葉ですけれども,資料5の5ページ目になりますかね,仲介者というところがありますが,私の理解では,コミュニケーション支援という言葉がここにもありますけれども,をする人が意思疎通支援者という理解でいます。それが私の考えになります。 ○山本(和)部会長 服部委員,よろしいでしょうか。 ○服部委員 ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 1点,質問させていただきます。先ほどの資料10の要望に関してになります。   訴訟というのは,障害者の方が法的なトラブルに遭遇した場合の最後の解決の手段になると思いますけれども,意思疎通などの支援については,そういう法的なトラブルが発生した初期の段階から必要になると思います。その関係で,法テラスでは司法ソーシャルワークに関する取組というのを行っているとのことです。これは,法律専門家である弁護士や司法書士と地方公共団体,福祉機関等の職員とが協働しながら,自発的には司法サービスを求めづらい高齢者,障害者の下に出向くなどして積極的に働き掛け,その方々の抱える様々な問題の総合的な解決を図るという取組,障害者,高齢者が社会の中で自立して生活するための本格的な援助を提供する施策といわれております。この法テラスのソーシャルワークに関する取組について,障害者の立場から,何か課題があるのかどうか,それについてどうすればいいのか,もしお考えのところがありましたら,お聞かせいただけないでしょうか。   質問の趣旨は,訴訟の前の制度や取組が訴訟段階での制度設計にも参考になるのではないか,また,課題があるとすれば,訴訟においても同様に課題となるということが考えられますので,あらかじめ検討しておくというのは有益ではないかということでございます。お願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,田門参考人でよろしいですか。 ○田門参考人 田門からお答えしたいと思います。障害者,高齢障害者が法律を利用するという機会があるのは確かです。法テラスの中には実際,聞こえない人が相談に行くとき,法テラスが意思疎通支援を配置するという規定があったような気がします。今,正しい記憶かどうかは少し曖昧,うろ覚えになっておりますが,あったような気がします。ですが,実際にそれを利用している人がいるかどうかというのは分かりません。実際には,聞こえない人たちの場合には法テラス自体を知らない人が多くいます。法テラスの方も障害者に対していろいろな周知をするということ,そして,もしかして法テラスが意思疎通支援者のシステムがきちんとあれば,それを積極的に普及していただければいいのかなと思っています。 ○田中参考人 御質問ありがとうございます。法的トラブルの初期の段階で正確に事実確認を行うということは,御指摘のとおり,大変重要なことだと思います。障害者の場合,なかなか声を上げづらいというところもありますので,そういった法テラスを中心にした枠組みの中に,例えば,知的障害であるとか発達障害の方を身近で支援している方などもメンバーに加えていただいて,事実の確認を行うというところは非常に有効でありますし,積極的な活用がなされれば障害者の権利救済にもつながると,そういうふうに考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   大坪幹事,よろしいでしょうか。 ○大坪幹事 ありがとうございます。 ○阿多委員 大坪幹事の質問と少し関連するかもしれませんが,今回の資料10の要望事項を拝見し,更に先ほどの説明を聞いて,人の支援を要望される場面として,裁判の最中や,裁判期日における通訳人等の具体例は挙げられていたのですが,4の司法手続では,情報通信システムをアクセシブルな形式とすること,言わば裁判所にデータを提出する際のシステムの利便性に留まっています。質問は,情報通信システムを利用する場面で,人の支援が必要になることはありませんか。情報通信システムがアクセシブルになれば,人が支援する場面は少なくなるのかもしれませんが,裁判期日外においても人の支援が必要になる場面があるのではないかと思い,質問させていただきました。   もう1点は,現在,障害者総合支援法に基づいて地方公共団体等が意思疎通支援者の派遣等をし,地方公共団体が費用負担をする制度になっていると思うのですが,裁判等で手話通訳が必要な場面では,行政によるの意思疎通支援は適用にはならない,費用負担はないということでしょうか。実情のご紹介をお願いします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。2点御質問がありました。 ○田門参考人 田門です。御指摘ありがとうございます。まず,聴覚障害者と弁護士の立場とから言うと,やはり裁判の期日の中の通訳と期日外の通訳については意味が少し異なるかと思っています。期日内の通訳というのは一言一句,裁判の流れだったりとか,権利の実現に大きな影響を及ぼすものになると思います。例えば,尋問をする際にも,言った言葉,一言一句が権利の実現に大きく影響する,又は影響を与えるわけですよね。ですので,言った言葉を正確に通訳をしなければならない,そのため,期日内の通訳,通訳というのは大変重い責任を伴う通訳になるわけです。期日外の通訳,例えば行政場面だったりとかの通訳であれば,一言一句が権利実現に対して直結するかということでいうと,そうとは限らないわけです。言い直しがあったりとか,言い換えとか,それがスムーズにできるわけですね。そういう意味では通訳の責任の度合いが違ってきます。特に裁判所の場面においては,専門の通訳を用意しなければなりません。ですので,例えばアメリカの場合には,行政や,また地域のコミュニティにおける通訳と司法場面というのは,担う人たちの研修が内容が別になっているのです。アメリカの場合は,自分自身が通訳に対して研修を行っている。そういう意味でも,やはり意思疎通,手話通訳だけではなくてほかの通訳,要約筆記だったりとか,ことも同じようなことがいえるかと思いますので,別々にここは整理をした方がいいのではないかと私は思っています。   答えになっているかどうか分かりませんけれども,以上になります。よろしいでしょうか。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   阿多委員,第1点はよろしいでしょうか。 ○阿多委員 結構です。1点目の期日外の通訳等の必要は理解しました。2点目もどなたかに回答をお願いできればと思います。 ○田門参考人 では,田門の方から。費用負担についてですが,まずは行政の,地方自治体の手話通訳,意思疎通支援者の費用負担は自治体が費用負担をしています。今でいうと障害者差別解消法等によって,手話通訳等の合理的配慮ということで,行政がやらなければならないことになっています。これは行政負担になっています。一方,同じようなことが司法にもいえるのではないかと私はイメージしていまして,しかも,司法の場合には,通訳というのはやはり当事者の権利の実現だけではなくて,公正な司法を実現させる,そのためにも意思疎通支援者というのが必要になってきます。そのためには,費用負担というのは司法が負担した方がいいのではないかと考えています。韓国やアメリカの多くの州でも司法の方が費用を負担しています。国が費用を負担しています。これと同じ方法がいいのではないかと思っています。 ○山本(和)部会長 阿多委員,よろしいですか。 ○阿多委員 障害者が裁判所に出向いた場合に,地方公共団体が通訳等の費用を負担してくれる現状にはないという理解でよろしいですか。 ○田門参考人 田門です。説明が漏れてしまいまして申し訳ありません。まず,通訳者の養成に関することについてで,それがまず,少し違うということです。行政における意思疎通支援事業というのは,必ずしも司法に対することを研修でやってきていない,養成の中でもやってきていないのです。例えば,障害者の日常生活とか医療の場面というような場面の研修を中心にやってきています。司法通訳,司法の場面の研修というのは必ずしも経験しているわけではない。研修を受けた人が,その中でもごく一部の人たちが自主的にやっている,今,状態になっています。なので,資格を持っている人が必ずしも司法に適応できる,対応ができるかというと,そうではありません。なので,やはり司法専門の通訳というのがいた方がいいのではないかと私は考えています。   お答えになっていますでしょうか。 ○阿多委員 ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。 ○日下部委員 日下部です。2点お尋ねをさせていただければと思います。   1点目は,これまでの御質問とも重複している部分があるかもしれませんが,資料10の2項で示されている意思疎通支援者の具体的な姿についてです。こちらの要望を読みますと,司法機関の方で適切な意思疎通支援者を配置するということや,研修プログラムの提供,その定期的な実施が求められているところです。こうした記載を拝見しますと,想定されている意思疎通支援者というのは,民事裁判手続における障害者の方の支援について専門性のある研修を受けた,言ってみればプロフェッショナルな人のことを念頭に置かれているのかなと思うところです。しかし,例えば知的障害をお持ちの方や精神的な障害をお持ちの方の場合には,そのようなプロとは別に,日常的にその障害者の方を支援している人,場合によっては親族の方ということもあるのかもしれませんが,そうした方の支援が必要で有効ということもあるようにも思われます。そうしますと,ここで示されている意思疎通支援者のイメージとは大分異なるもののようにも思われまして,この要望の中で示されている意思疎通支援者というのがどういうものをイメージすればよいのか,もう少し御説明を頂けると有り難いと思います。   それから,2点目につきましては,これは難しいお尋ねになってしまうのかもしれませんけれども,意思疎通支援者の支援を受けているときに,障害者の方の目から見て,つまり意思疎通の支援を受ける方の目から見て,何か問題を感じたり,不自由を感じることがないのか,意思疎通の支援の上での課題,あるいは不都合,そうしたものがもしもあれば,具体的なエピソードで構いませんので,御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは,これも2点ございましたが,いかがでしょうか,お答えいただければ。 ○田中参考人 御質問ありがとうございます。田中の方から御回答させていただきます。   まず,1点目でございます。要望事項で記載させていただいた意思疎通支援者というものは,JDFとしてはまだしっかりと固まったものというものはございませんが,かなり幅広いイメージで捉えております。といいますのも,様々な障害特性をお持ちの方がおられますので,その特性に応じた支援というものをしていく必要があるということで考えております。   例えば,精神に障害のある方からしますと,身近にいてくれるだけで非常に安心して,精神的に落ち着いて,自分の回答ができるというような方もおられるかと思います。特に法廷というところは非常に緊張する場面でもありますので,そういった場合には,同行してもらえるだけで,精神に障害のある方にとっては自分の考えをしっかりと述べられる,そういう意味の支援になります。また,知的障害の方の場合になりますと,御指摘のとおり,言いたいことはあるのだけれども,コミュニケーションにふだんから慣れた支援者でないと正確に読み取れないということもございます。そういった意味で,障害種別に応じて幅広く考えていただきたいというところが現時点の要望になろうかと思います。1点目の御回答は以上です。   それから,2点目につきましては,これはひょっとしたら田門参考人からの方が適切かもしれませんが,特に手話通訳であるとか,あるいは盲ろう者の方が意思表明をされるような場合に,果たして正確に自分の言ったことを伝えてくれるのだろうかというようなところは時々指摘がございます。自分は,例えば10のワードを並べていたつもりでも,通訳を介すると五つのワードになってしまうというようなところでございます。これを正確に自分の意思を,10のワードを使っている場合には10のワードで通訳してもらうという正確性を保つというところは,一つの課題になっておりまして,この場合は,例えば複数の通訳者を準備するとか,そういった工夫もあるところでございますが,この点は田門参考人から補足を頂けたらと思います。 ○田門参考人 田門です。田中参考人から御説明があったように,正確性を確保するために,手話通訳者のダブルチェックという方法があります。つまり,通訳をする担当者と,通訳の正確性をほかの通訳者がチェックをするという方法があります。また,録画をするという方法もあります。その方法で正確性を確保するということができると思います。ただし,まだ試行的な段階であります。   そして,もう一つなのですが,司法関係者の通訳者に対する理解も課題であります。例えば,話が早すぎたりとか,話が長すぎたりとか,あとは,遠回しすぎるような話の仕方とか,そういったことが課題であります。それを通訳するというのがとても大変ですね。話し方を工夫していただける等ございましたら,そういったところを御理解いただければと思います。幅広い意味での司法上の配慮ということを含みます。通訳者だけではなく,盲の方とか,ほかの障害者の方,盲ろう者の立場で,例えば,相手方において,早口だったりとか,遠回しな言い方だったりとかは,遠慮していただくというようなことです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   日下部委員,よろしいでしょうか。 ○日下部委員 御回答ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。本日は大変貴重なお話を頂きまして,ありがとうございました。私からも2点ほどお尋ねをしたい点がありますので,よろしくお願いします。   1点目ですけれども,障害者の方に対する手続上の配慮が必要になる司法手続としましては,様々なものがあるかと思います。一方で刑事の裁判手続もありますし,また,民事でも訴訟の場合もあれば,家事事件などの非訟事件などもあるかと思います。そうした中で,基本的には手続上の配慮の中身,内容というのは,どんな司法手続でも共通のものとして考えるということでよいのか,それとも,特に民事訴訟の場合にこういう点に気を付けてほしいといったような御要望がおありかどうか。もしそういった,民事訴訟の場合には特にこういう点が困るのだというようなことがおありでしたら,教えていただければというのが1点目です。   それから,2点目ですけれども,障害者の方が司法手続に関与される場合に,そのお立場というのも幾つかの場合があろうかと思います。民事訴訟の場合で申しますと,一番代表的なものとしては,障害者の方が原告あるいは被告という当事者の立場で関与するということかと思いますけれども,今日の資料10の要望事項の2のところにも記載がありますように,そのほかに証人とか参考人その他の関係人といった形で当事者以外の立場で関与される場合もあり得るだろうと思いますし,先ほど御紹介いただいたお話の中では,傍聴人として法廷に来る際の不都合についての御紹介もあったかと思います。また,場合によりましては障害を持つ方が代理人として訴訟の手続に関与するということもあり得るかと思われますので,そうした立場の違いによって,何か考えるべき手続上の配慮の内容に違いが出てくることがあるのかどうか,特にこういう立場の場合にはこういうことに気を付けてほしいといったような御要望がもしおありのようでしたら,その点についても併せてお教えいただければ有り難いと思いました。   以上です。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,これまた2点の御質問でしたが,いかがでしょうか。 ○田中参考人 それでは,田中から御回答いたします。御質問ありがとうございます。民事訴訟手続で特に気を付けておくような点があるかということでございますが,ほかの手続につきましても,やはり共通する部分が多いと考えております。   といいますのも,典型的なお話をさせていただきますと,やはり視覚障害の場合は文字情報を取得するところに障壁がございます。ですので,いかに文字情報を把握するか,あるいは写真であるとか表やグラフの情報をいかに取得するかというところが障壁になってまいりますので,これは民事訴訟法に限ったことではなくて,やはり家事であったり破産手続であったり,刑事手続であったりというところにも共通してまいろうかと思います。同様に,聴覚障害の場合には,音声情報をいかに取得するかというところに障壁がございますし,発達障害や知的障害の方々にとってみると,自分の言いたいことをいかに正確に相手に伝えるかというところに障壁が出てまいります。   したがいまして,典型例で考えてまいりますと,やはり障害特性に応じた障壁が制度によって解消されていくという工夫は,やはり民事訴訟法に限らず,ほかの手続にも共通してくることになると考えております。   それから,2点目でございますが,それぞれの立場によって気を付けるところがあるかという御質問でございますが,これも十分検討しているわけではございませんが,共通する部分もやはり多々あろうかと思いますし,その立場,立場で求められるものが異なってまいりますので,やはりその場,その他に応じた配慮を頂く事項が変わってこようかと思います。   これは刑事手続になって大変恐縮ですが,例えば,現状,刑事裁判では弁論要旨というものを読み上げる形になっております。弁護人が読み上げますが,視覚障害の弁護人として活動します場合,この弁護要旨の読み上げというものが相当長文にわたる場合どうするかということは,常に真正面から取り組まなければならない,非常に難点でございます。   それから,民事訴訟におきましては,恐らく原告あるいは被告代理人,これは立場に共通しようかと思いますが,やはり訴訟資料の内容を正確に把握していくというところが,これは共通する課題になってこようかと思いますし,今,整理してお答えができなくて申し訳ないのですが,私としてはそういう感想を持っております。 ○竹下参考人 竹下です。今,御質問の中で少し気付いた点があるので,発言させていただきたいのですけれども,まず,当事者の障害の特性あるいは立場によって意思疎通支援に気を付けるべきものがあるかという御質問の点なのですけれども,これは極めて重大というか,重要な御指摘だと思っております。例えば,端的にはここにいる田中,竹下,田門というのは障害を持つ弁護士ですけれども,専門職に対する手話通訳だったり,あるいは視覚障害に対する補助の仕方と,それから,当事者の立場にある方に対する手話の通訳の在り方は随分違ってくると理解しています。取り分け,例えば聴覚障害者で言いますと,手話の理解力においても個人差は非常に大きいと聞いているし,理解しています。そういう意味では,その当事者の立場や,時には証人が聴覚障害,視覚障害の場合に対する補助の仕方というものは,その当事者の持っている特性といいますか,例えば中途視覚障害なのか,中途失聴なのかによっても,その意思疎通の支援の仕方が違ってくるということがあるのに対して,逆に,代理人弁護士の補助とか通訳の関係で申しますと,専門用語の関係を十分理解した意思疎通支援,それは手話だけには限りませんけれども,そういうことでの内容的な面での大きな違いが出てくるのではないかと思っているのです。   それから,先ほどの服部委員の質問のところもそうなのですけれども,特に手話通訳なんかでは,本人のための手話通訳と裁判所のための手話通訳というのは多分,場面ごとによるかもしれませんが,分ける必要が出てくると理解しております。今日は民事の裁判の場面ですけれども,刑事法廷ではそのことは明確に意識されてはいるのですけれども,民事裁判の場合においても,その通訳の公正あるいは正確性の問題と同時に,本人の理解との関係から言っても,そういう手話通訳等の配置の仕方においては,裁判所のための通訳と,本人又は代理人のための通訳というものは区別して配置することが必要になってくるのではないかと理解しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   垣内幹事,よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 どうもありがとうございました。 ○山本(和)部会長 それでは,その他,御質問はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,ヒアリングにつきましてはこれで終了とさせていただきたいと思います。   当部会におきましては,これから諮問事項について成案を得るべく調査審議を進めてまいりますが,その過程におきまして,本日頂戴いたしました御意見も是非とも参考にさせていただきたいと思います。大変熱心に長時間にわたりまして御質問にお答えいただき,また,貴重な御意見を頂戴したことに心より感謝を申し上げたいと思います。誠にありがとうございました。   それでは,これから10分程度休憩を取りまして,2時50分に再開をしたいと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,所定の時間になりましたので,審議を再開したいと思います。   続きましては,湯淺委員からセキュリティ等の観点からの御説明を頂きたいと思います。   湯淺委員は皆様御存じのとおり,サイバーセキュリティ等についての専門家でありまして,これまでの部会におきましても,そのような御知見に基づいて様々な貴重な御意見,御指摘を頂戴しているところであります。本日,民事裁判手続のIT化を検討するに当たり考えておくべき点,このセキュリティの面から見た問題点について,まとまった形でお話を頂けるということで,今後の検討に当たって非常に参考になるお話が伺えるのではないかと思っております。   それでは,湯淺委員,お願いいたします。 ○湯淺委員 御紹介いただきました湯淺でございます。   本日は貴重な機会を頂きましてありがとうございました。私の方から,30分ぐらいお時間を頂きまして,民事訴訟のIT化に当たって情報セキュリティ,サイバーセキュリティの問題をどのように考えるべきかということで,少しプレゼンテーションをさせていただければと思います。   既にサイバーセキュリティや情報セキュリティについてある程度御見識のおありの方には繰り返しになってしまいますけれども,情報セキュリティやサイバーセキュリティを考えます際には通常,いわゆるCIA概念,コンフィデンシャリティ(機密性),インテグリティ(完全性),アベイラビリティ(可用性)の3点を中心に考えるということでございます。これに加えまして,旧日本工業規格,最近では日本産業規格と呼んでおりますけれども,JISQ27002では,さらに真正性,責任の追跡性,否認の防止及び信頼性のような特性を維持することを含めてもよいという言い方をしておりまして,民事訴訟のIT化のセキュリティもこのCIA,それに加え真正性や責任追跡性,否認防止,信頼性をどのように担保するかという観点が求められているわけでございます。   このうちCの機密性につきましては,これはアクセス制限を適切に行うということが重要で,この民事訴訟のIT化を実現するシステムでもアクセス制限をどのように行うか,その方針を決定することが非常に重要ということでございます。   それから,2番目の完全性は,情報及び処理方法が正確かつ完全であることの保護でありまして,民事訴訟のIT化におきましては,特に証拠を含めました文書類の改ざんがないこと,欠損がないこと,滅失を防ぐということも含めまして,それを適切に担保する必要があるということでございます。   最後の可用性は,逆に,アクセス権がある者が必要なときに情報及び関連資産にアクセスできる状態を確保することとJISQでは定義をいたしております。   この機密性と可用性というのは,必ずしも常時両立できるというものではありませんで,特に機密性を高めようとすればするほど可用性の部分が減っていってしまう,使いにくいシステムになってしまうという面がございます。したがって,民事訴訟で取り扱う情報には様々なものがあるわけですが,どの情報にどの程度の機密性を要求することが適切か,どの情報にどの程度の完全性を要求することが適切かということを検討する必要があるということです。   さて,従来の民事訴訟のIT化の実証実験等ではセキュリティの問題をどのように考えてきたかということです。既に御案内のとおり,裁判所も大分前から情報化に着手をされているわけで,先行の実証実験といたしましては,いわゆるサイバーコートの実証実験,それから,法のライフライン・コンソーシアムにおける実証実験がございました。特に,この法のライフライン・コンソーシアムの実証実験はかなり本格的なものでも,その中で重要なものとして指摘されているのが,なりすましの防止,本人性の確保,それから改ざんの防止ということでした。その際に,このライフライン・コンソーシアムの報告書では,当事者が裁判所に提出する資料を申立て行為,主張その他の陳述,そして証拠と3分類いたしまして,特に証拠については非常に改ざん防止が重要であるけれども,その他については必ずしも高度なセキュリティを要求しなくてよい,他方で,一旦裁判所に提出された後のものについては,電子署名を用いた真正性の担保がなされるべきだということを述べております。さらに,裁判長の認印は決裁的機能を持つので,裁判長が電子署名を付与すべきであるかどうかの検討が必要であるということが述べられております。この点は,電子判決に裁判官の電子署名が必要かというような点に恐らく関わってくるのかなと思います。   他方で,この法のライフライン・コンソーシアムの報告書を今読みましても,今から十数年前の時点のもので,今日のようにサイバー攻撃が激化をしていない段階の実証実験でした。このため,システムの中に不正侵入される,あるいは当事者のコンピュータがコンピュータウイルスに感染して,更にコンピュータウイルスに感染したドキュメント類が裁判所に送付される,あるいは,それが裁判所の中で感染が拡大するというようなことは余り想定をされていなかったわけでございます。今日の状況に鑑みますと,後ほど触れますが,裁判所や裁判システムもサイバー攻撃にさらされる可能性が非常に高いということでありますので,サイバー攻撃に対する備えというものをしなければならないと思っております。   今も少し御紹介をさせていただきましたが,諸外国の民事裁判システム,民事訴訟のIT化のシステムは,かなり様々なサイバー攻撃を受けておりまして,実際に障害の事例も公表されております。公表されているもののうち主なものとしましては,米国の連邦裁判所のPACERのシステムが頻繁にサイバー攻撃を受けておりまして,最近では2014年に約4時間システム停止をした,それから,2017年に脆弱性が判明しまして,実はPACERの中からドキュメント類が流出をしていた可能性が非常に高い,データ漏洩が起きていたということが報告をされております。   また,州裁判所レベルのシステムへのサイバー攻撃ということで申しますと,これは3年前でございますけれども,ジョージア州のアトランタ市全体が大規模なサイバー攻撃を受けまして,ランサムウエアと呼ばれる身代金型のコンピュータウイルスに感染したということが報告をされております。このランサムウエアと呼ばれるコンピュータウイルスは,これに感染をしますと,ファイルですとかフォルダを開こうとしてもパスワードを入れないと開かないという状態になってしまいます。そこでパスワードを入れることを要求されまして,そのパスワードは,ここに幾らお金を払えばパスワードを教えてあげますよということで,正に身代金を支払わないとファイルやフォルダが開けなくなるということで,ランサム,身代金型のウイルスといわれております。これに感染したことで,このアトランタの裁判所では令状,手数料,交通違反の反則金,裁判スケジュールその他,様々なものがこの身代金型のコンピュータウイルスに感染をしまして,全く開けなくなってしまったということでございます。   ちなみに,このように身代金型のコンピュータウイルスに感染したときに身代金を支払ってパスワードを教えてもらうべきかどうかということにつきましては,これは多々議論があるところでございまして,日本では一般に,これは犯罪組織に加担することになるので,すべきでないと解されておりますし,米国でもFBI等はそのように当初はそのような立場を取っていたわけですが,他方で,これを支払わないことには非常に組織の存立に関わるようなデータが取り戻せない,あるいはステークホルダーに対して重大な影響を与える,正に裁判に関するデータなどはそうだと思いますけれども,その場合は身代金を支払うことも選択肢の一つであるというように最近,FBIは少し態度を変えております。ジョージア州が身代金を支払ったのかどうかは公開されておりませんが,一部身代金を払ってデータを取り戻した可能性がございます。   こういうことから,米国におきましては州裁判所管理者会議等々の団体が合同技術委員会を作って,サイバー攻撃への対処のガイドライン,それから,サイバー攻撃が実際に発生して被害が生じることを前提とした対処計画,あるいは実際に受けた場合の対処計画等についてのガイドライン,またインシデント対処計画等を公表しているところでございます。   なお,この民事訴訟法のIT化に伴う内閣官房日本経済再生総合事務局の裁判手続等のIT化検討会でも,このセキュリティについては議論をしておりますけれども,可用性の担保という観点から,必要なセキュリティ対策を講じることが望ましい,余りにも高いセキュリティ対策を講じますと非常に使いにくいシステムになってしまいますので,その必要な情報の内容,性格等によって適切な水準を立てるべきであるということを述べております。他方で,証拠につきましては,改ざん防止のためのデジタル・フォレンジック技術の活用等を講じて真正性をしっかりと担保すべきであるということが述べられております。   民事訴訟のIT化をめぐりましては,API連携を行う,複数システム間の連携や外部サービスの機能活用,共有をする,それからクラウド化,データ形式のオープン化等の様々な可能性を検討すべきであるということも,この内閣官房の検討会では述べられておりました。この審議会でも,行政機関と裁判所のこの民事訴訟のIT化システムを連結,接続することはできないかという御意見があったところでございます。これは恐らく送達等の場面において,行政機関や地方自治体が持っているデータを利用することは非常に効率性を高めるという御意見であるかなと思いますが,他方で,自治体に仮に裁判所がシステムを接続しようとしますと,これは後ほども触れますが,行政機関全体のセキュリティ基準にそろえる必要があるわけでございますが,現時点においては,国の行政機関,それから地方自治体,地方公共団体を結んでいるネットワークは裁判所の参加を予定しておりません。すなわち,これは行政機関と地方自治体を結ぶことを想定しておりますので,司法府や立法府が参加をすることは必ずしも想定をしていないということです。接続しようとする場合には,その行政機関側のセキュリティ基準にそろえたセキュリティ対策が当然,裁判所側も必要になってきますし,場合によっては裁判所内部のシステムと行政機関や自治体とを結ぶためのシステムを切り分けるとか,そういうような技術的な対策も必要になってくると考えられます。   他方,この点につきまして行政側の専門家の御意見を伺ってみると,別に禁止されているわけではなく,ただ単に今までは裁判所が参加することを想定していなかっただけなので,必要な規程類改正や技術的な手立てを講じていただければ,別に裁判所が参加することに問題ないのではないかというような御意見もありましたが,いずれにしましても一定のハードルはあると思われます。   なお,マイナンバーを使うことにつきましては,現時点ではマイナンバー法で,使ってよい場面が非常に限定をされておりますので,現状では裁判所が民事訴訟手続のためにマイナンバーを使うことはできないと思いますし,仮に裁判所のシステムと行政機関,地方自治体のシステムを接続したとしても,民事訴訟手続のためにマイナンバーを介した情報連携をすることはできないということです。   それから,クラウド化につきましても,現在,国全体で公共部門,あるいは自治体にクラウドを導入するということが進められております。他方で,非常に不適切なクラウドサービス,セキュアでないクラウドサービスもございますので,国におきましてはISMAPと呼ばれるクラウドサービスの認証制度を始めたところでございます。しかしながら,このISMAPの認証を取得しているからといってセキュアで絶対安心できるかというと,必ずしもそうとは限らないということでございます。特に,クラウドサービスのいわゆるサービスレベル,どの程度そのサービスが安定して稼働することが保証されているか,それから,海外にサーバが置かれていないかどうか,海外にサーバが置かれていますと,当該国の司法手続に服する場合がございます。あるいは,最近話題になっているソーシャルネットワーキングサービスの問題もそうですが,当該国がセキュリティ法制を定めている中で,当該国にあるサーバのデータの中身を見ることを事業者に要求することができるというような規定を持っている場合には,当該国のサーバの中身が見られてしまうということになりますので,クラウドの導入にはそういう点を考慮して慎重な検討が必要となります。   それから,データ形式のオープン化,それからまた判決データのオープン化の課題ということにつきましては,これは別の機会でまた,もしお話の機会があればと思いますが,次号の法とコンピュータ学会から刊行されている「法とコンピュータ」にその点につきまして寄稿予定でございますので,そちらも御参照いただければと思います。   一つ,留意点といたしまして,裁判所は個人情報保護法,行政機関個人情報保護法のいずれにも服していないということでございます。裁判所は民間部門ではございませんし,行政機関でもございませんので,裁判所が独自に個人情報保護,プライバシー保護を講じる必要があります。プライバシー保護につきましては,後ほどもまた御説明をさせていただこうと思います。   そうしますと,この民事訴訟における手続とセキュリティについての考え方でございますけれども,正にこの審議会におきまして法令の要求を確定しておる段階と理解をしております。まず法令上何が要求されるか,手続の内容が明確化される必要があります。その後,裁判所において今,御検討中であろうかと思いますが,では,それを紙に代えて電子的に代替する手段は技術的にどのようなものがあるか,それに関しては,関係者の確定と,それに基づくアクセス権限の設定が必要であるわけで,これは先ほどのCIAのCの部分にあたりまる。当然のことながら,裁判官全員が全国の裁判の全てのデータにアクセスできるとか,裁判所の書記官であれば全てのデータを全部アクセスできるということでは好ましくないわけで,裁判所内部においても当然,適切なアクセス権限というものを設定する必要があります。これについて,リスクや脅威がどの程度あるのか,サイバー攻撃,あるいはシステム内部の脆弱性,人的な要因等を総合的に分析した上で,それらに適したセキュリティ対策をとる必要があるということでございます。これについては膨大な種類の対策技術というものが今,生まれておりまして,各種サービスも多くの種類のものがございます。その中から適切に組み合わせて対策をとることが求められております。   最後が被害発生時の対応でございまして,これは可能性,蓋然性の話でございますが,どんなにセキュアなシステムを作ったとしても,やはり不正攻撃に遭って情報が流出してしまうという可能性はゼロにならないということです。どうしても行政機関というものは,裁判所は行政機関ではありませんけれども,やはり国家権力なので,行政無謬ということが前提になるので,そういうことはあり得ないということを前提に考えがちでございますけれども,情報セキュリティ,サイバーセキュリティの世界では,絶対にセキュアということはあり得ないということです。これも最後に述べますが,いわんや当事者やその代理人である弁護士の先生方や事務所においてをやということでございますので,実際に被害が発生したときにはどうするか,被害拡大の防止の対応手続の明確化を図る必要があると考えております。   また,被害を生じさせるようなインシデントは可及的速やかに検知する必要がございます。夜だからといって,あるいは休日だからといって,攻撃者は攻撃をやめてくれないわけでございまして,基本的には24時間365日の監視が必要になります。これは民間企業の場合は,セキュリティオペレーションセンターやインシデントレスポンスチームを自前で持つか,外部のサービスに依頼をしているわけでございますが,裁判所におけるシステムも当然,この24時間365日の監視体制が必要になると考えられます。   さらに,セキュリティ水準や証拠についての真正性,改ざんの防止ということは先ほど申しましたとおりですが,やはりインターネット上のプライバシーというのは紙の上でのプライバシー,あるいはリアルな裁判所,法廷におけるプライバシーとは別の考慮が必要とされます。既にこの審議会でも一部の委員の方から危惧の念が何回も御提示を頂いておりますが,インターネット上の情報というのは即座に,かつものすごく広範囲に伝播をしていきますので,法廷におけるリアルな場所におけるプライバシーとは性質が違うということには十分留意をする必要があるのかなと思っております。また,一度流出してしまいますと,インターネット上の情報というのは全部消すというのはほぼ不可能であるということも含めて検討する必要がございます。   また,今,裁判所におかれましてはマイクロソフトのTeamsを使った試行をされていると伺っておりますが,当然この民間事業者が提供するシステムを利用する場合には,先ほども御説明をさせていただきました,サービルレベルがどの程度保証されるのかというような問題が出てまいります。あるいは,民間事業者が提供するサービスを用いる場合には,当該の事業者が仮に当事者となった場合にはどうするのか,いわゆる法務部門と技術部門がきちんと分離されているのかという点の考慮も必要になってくるということでございます。   また,これは大分先の話でございますが,一度入れてしまったシステムは他社製に乗り換えるということが難しくなってくるので,ロックされてしまうということですね,そのことについての考慮も必要かと思っております。   さて,先ほど申しましたように,政府におきましては統一情報セキュリティ基準等があるわけです。2014年にサイバーセキュリティ基本法ができまして,政府自体もサイバーセキュリティの推進を行っておりますが,先ほども申しましたように,これは行政機関を対象にした構造になっております。サイバーセキュリティ基本法の各条文を読みますと,「行政機関等」ということになっておりまして,裁判所と立法府である国会は対象外になっております。特に問題になり得るのが,行政機関は現在,内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)において,運用されている政府機関の情報セキュリティを24時間365日で横断的に監視をし,もし不正が,あるいはその兆候があれば直ちに対応する即応調整チーム,通称GSOCと呼んでおりますけれども,これが監視をしております。   裁判所の民事訴訟IT化システムもこのGSOCに常時監視していただければ非常に安心なわけですが,現時点では,繰り返しになりますが,国の行政機関,独立行政法人,一部の特殊法人に対象が限定されておりますので,現状ではこのGSOCの下に入れることができない。そうしますと,法改正をするなり,何らかの技術的な工夫をしてGSOCの下に入れてもらえば,非常に安心ではございます。しかし,やはり制度的にそれができないということになりますと,それに代わる体制を整備しないと,プライバシーに関わるようなデータ,個人情報が大量に含まれているデータ,あるいは知財訴訟や営業秘密に関わるような訴訟の機密性の高いデータが裁判所のシステムの中に入っているにもかかわらず,それが流出することに対して監視体制が不十分ということになります。これでは,システムを安心して使うことができないだろうと思います。   また,AIの利用ということにつきましても,この審議会におきまして幾つか御意見があったかと記憶しております。これは現在,アメリカの裁判所が先行しておりまして,裁判所における事務処理としまして,メールの自動分類,あるいはメールの自動返信や文書類の自動発信等には使われております。また,弁護士の委員の皆様方には御案内かもしれませんが,膨大な文書の中から証拠として提出するのにふさわしい文書はどれかというのを,人の手でやるよりもAIによってスクリーニングした方がはるかに高い精度が出るということで,弁護士事務所等でもAIの利用が進んでいるようでございます。   裁判所におきましても,例えばカナダのシビル・レゾリューション・トリビューナルにおいて,AIによる助言を行う,あるいは,米国の幾つかの州裁判所の刑事裁判で既に使っているCOMPAS,コレクショナル・オフェンダー・マネジメント・プロファイリング・フォー・オルタナティブ・サンクションズというものがあり,量刑をするときに再犯可能性がどれぐらいあるかということを,飽くまで参考情報ということではあるのですが,AIがまず値を出して,それに基づいて裁判官が判断するということが既に実用段階に入っております。ただ,当然これはセキュリティ上の批判もありまして,バグがあったらどうするのだとか,不正侵入されてデータが書き換えられていないのかとか,あるいは,適切でない学習や,ジェンダー,人種等のバイアスが掛かっているというような批判もあるところでございます。   最後に,少し駆け足になってしまいましたが,ここまではどちらかというとシステムのセキュリティの話でございました。今後はもう一つ無視できないのは,当事者と訴訟代理人である弁護士の先生方や司法書士の先生方のセキュリティの問題でございます。これは外的な要因と内的な要因があるわけでございまして,外的にはサイバー攻撃を受ける,あるいはマルウエアに感染してしまうというような要因が考えられます。内部要因としましては,設定を誤った,誤操作をした,あるいはパソコンそれ自体を紛失したとか,盗難に遭うというような事態が十二分に考えられるところでございます。   日本の民事訴訟がIT化され,営業秘密だとか,そういう非常に機密性の高いデータが日本の裁判システムだけではなくて,日本の弁護士の先生の事務所にもあるのだということが知られると,恐らくそれを窃取しようとする攻撃は激化するものと予想されます。大手の事務所では既にかなり独自にサイバーセキュリティ対策を講じておられるところも多いようでございますけれども,必ずしも大手の事務所ばかりではないわけでございまして,弁護士へのサイバー攻撃,司法書士へのサイバー攻撃をどうするかということでございます。  サイバー攻撃による漏洩,流出,滅失の責任論というのは,現時点では主に個人情報が漏洩してしまったときの事例において法的に議論されております。   有名なのが,大手の教育事業者から大量の個人情報が漏洩し,その後,様々な訴訟が起きているわけでございますが,しかしながら,この事件は外部からの不正侵入ではなくて,業務委託先の社員が意図的に持ち出したというものでありましたので,裁判に関する記録が外部からサイバー攻撃を受けて,弁護士の先生の事務所なり,弁護士の先生のパソコンから流出をしてしまったという事例にはそのまま適用することはできないのかなと感じております。   その場合にどういう法的な責任が生じるか,あるいは,民事訴訟のIT化システムの導入に伴い,訴訟代理人である先生方や事務所がどの程度の注意義務を払う必要があるのかということについては,これは今後の具体的な議論を待つ必要があるのかなと思っております。   ちなみにですが,この問題は米国におきましても弁護士のデューディリジェンスとの絡みで,どこまでのサイバーセキュリティ対策をとっていれば,万が一攻撃を受けても,必要な対策はとっていたのだからこれ以上は予測ができなかったといえるのか等,ABAその他でもいろいろ議論されているようです。ですので,ここまでやっていれば大丈夫とか,これをやっていないと責任を問われますというような具体的な基準をお示しすることができないので,大変恐縮でございますけれども,この点に関しても今後,議論が深まることを期待しております。   大変駆け足で申し訳ございませんでした。私からの御説明はひとまず,以上でございます。 ○山本(和)部会長 湯淺委員,ありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告につきまして,御質問あるいはコメント等,何でも結構ですので,また,どなたからでも結構ですので,お出しを頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○井村委員 湯淺委員,大変ありがとうございました。セキュリティに関して一点,API連携の件で,行政とのシステム連携の話が出ておりました。確かに今国会で審議中のデジタル社会形成基本法には,行政という言葉は出てくるのですけれども,司法という言葉は,当然のことながら出てきていません。デジタル化によってワンストップサービスを活用するという意味では,先ほどマイナンバーを使うことはできないというお話がありました。確かに現時点においてはそのとおりだと思います。一方で,マイナンバーカードの公的個人認証を使うことは可能だと思っておりますので,ここはマイナンバーとマイナンバーカードは少し分けて論議をしていった方が良いのではないでしょうか。   また,海外とのシステム連携とセキュリティについて,海外の司法はIT化が相当進んでいるという情報もありますが,今後,海外との連携について,また,その際のセキュリティは一体どのように考えればいいのかということ,もう一点は,例えばマイナンバーカードの個人認証を使う際に,海外の訴訟代理人からの民事訴訟などに対しては,どのようなことが考えられるのかということについて,是非教えていただければと思います。 ○湯淺委員 御質問,それからコメントありがとうございました。まず1点目のAPI連携についてでございますけれども,現時点では裁判所は行政機関と地方公共団体のネットワークにはつなぐことは想定されていないと先ほど申しました。他方で,今後接続が可能になった場合には,既に地方公共団体と行政機関側のいわゆるLGWANと呼ばれるネットワークがございますけれども,このLGWANに接続することができるようなAPIは、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)と呼ばれる公的な地方共同法人がございますが,ここが認定をして,認定されたAPIであれば接続してよいということになっております。したがいまして,今,マイナンバーカードを持って行くとコンビニで証明書が発行できるシステムを導入している自治体が多いと思いますけれども,あれが典型的な例でございまして,LG1の下で使えるAPI連携の例でございます。したがって,今後,裁判所のシステムもつなぐことができれば,API連携の可能性は非常に高まっていくなと思っております。   それから,海外の裁判所なのですけれども,先ほどの米国の例で言うと,やはりサイバー攻撃を多々受けているので,最近かなり神経質になってきて,クローズになってきている面があるのではないかと思います。プライバシー保護という面もありますので,米国のPACERは,判決文だけではなくて訴訟記録のほとんどを検索して入手することは可能ですが,例えば個人名とかで横串を刺して検索するというような機能はあえて付けないという方針を採っているようでございます。   問題の,今御質問のあった外国人をどうするかということについては,恐らくマイナンバーカードを使って本人確認をしたとしても,おっしゃったように当然,外国人はマイナンバーカードを持っていないわけですね。したがって,本人確認手段をマイナンバーカード一本にするということはできなくて,マイナンバーカードを持っていない方の本人確認手段を常に併存,併用していかないといけないのだろうと思っております。   それから,実務上幾つか問題になり得るのは,今はコロナで少し出張も控えめかもしれませんけれども,コロナが収まって再びビジネス関係者の方が頻繁に海外に出張されるようになると,それに伴って当事者の方も頻繁に海外に滞在されるようになるというときに,最近各国の政府がインターネットをブロックしてしまうケースが増えているわけです。裁判所のシステムをブロックされてしまうと,そもそも全く参加できないわけですし,それから,メールをブロックするということもかなり行っているようでございます。ミャンマーでは今,一日のうち数時間しかインターネットにはつなげない状況のようでございますので,IT化はそういう裁判の国際化に対応できるはずだったわけですが,他方で最近のインターネット情勢を見ますと,逆に海外からのアクセスに障害が生じて難しくなる危険性もあるという現状なのかなと思っております。 ○井村委員 ありがとうございました。よく分かりました。 ○大坪幹事 2点,質問させていただきます。   まず,資料の4ページのところで検討項目を表にしていただいて,その下に検討が必要となる点というのを幾つか挙げていただいております。あと,先生がほかのところで書かれているところを読みますと,情報システムやネットワークに関しても,法律か規則かはともかくとして,何らかの形で規定が必要ではないかとお考えのようにお見受けできるところがありまして,そういう意味で,法律なり規則なりで検討すべき課題について定めなければいけない事項としてどういうものがあるのか,その点についてお聞かせいただきたいというのがまず1点になります。   2点目ですけれども,先ほど,この資料の最後のところにありますけれども,サイバーセキュリティ基本法の関係で御指摘いただきまして,これは行政機関が対象で,国会なり裁判所は対象外だということでおっしゃられていて,裁判所に関しては独自にサイバーセキュリティ対策を行わなければいけないということなのかと思うのですけれども,その独自に行うに当たって,このサイバーセキュリティ基本法のような何か法律というものの裏付けは必要ないのかどうか,その点,いかがでしょうか。サイバーセキュリティ基本法の基本理念などは,裁判所がセキュリティ対策をするに当たっても適用されるというか,参考になるものではあるかと思うのですけれども,実際にセキュリティ対策を裁判所が構築するに当たって,予算的な手当てとか,そういうところで何らかの裏付けになる法律も必要ではないかとも思われるのですが,その点はいかがでしょうか。   以上,2点になります。 ○湯淺委員 大坪幹事,御質問ありがとうございました。まず,1点目の点でございますけれども,これにつきまして根本的な考え方として,民事訴訟に関するシステムというのは,いわゆる法律事項と考えるべきか,それとも裁判所側の規則事項と考えるべきか,これはシステムもある種,法廷とかと同じようなものであると考えれば規則事項でよいのかもしれませんが,逆に,法律事項,民事訴訟法があって,もうシステムの詳細は全部規則以下に任せてしまっていいのかという問題があるのかなと思います。これはある種,原理原則論の問題で,両方のお考えがあり得ると思っています。   ただ,私がここは法律事項にしておいた方がいいのではないかということについては,例えば,裁判所に提出する様々な電子文書,その詳細ですね,例えばPDFでないといけないとか,ワードでないといけないという部分まで法律で書き込む必要はないのかもしれませんが,それについて法律の授権の下で規則なり何なりを定めますという構造の方がよいのではないかと個人的には思っております。   それから,多くの弁護士や研究者の皆様方から一様に,これはこの際だから法律で是非規定すべきだと御指摘を受けているのは,訴訟記録の保存の問題でございます。いつまでこのシステム上で保存されているのかがはっきりしないと困るではないかと。研究者の方の中には,電子化されれば置場の問題もなくなるのだから,この際,永久保存すべきという先生もおられますし,実務の先生方からも,少なくとも時効が切れるまでの保存は法律で義務付けてしまうべきだというような御意見もあります。私も,伺ってみると,少なくとも時効が切れるまでは法律上も保存を義務化しておいた方がよいのかなとと思いました。   それから,2点目のサイバーセキュリティとの関係で,恐らくこれは,これだけ大規模な個人情報やプライバシー性の高い情報,秘匿性の高い情報を裁判所が持つことになりますが,サイバーセキュリティ基本法が裁判所には適用できないとしますと,それに準じた形で,裁判所における施策,少なくともセキュリティポリシー等をきちんと定めるということが必要になってくると思います。先ほど米国の裁判所におけるABCD対処などの例も御紹介させていただきましたが,裁判所におけるリスクの評価,あるいは実際に万が一インシデントが起こった場合にどのように対処するのかという基本計画等は最低限,裁判所において作っていただく必要があると考えております。   サイバーセキュリティ基本法自体を改正してしまって,この際,裁判所も下に入れてしまうということも不可能ではないのかもしれませんけれども,それは法改正ですから,また別途議論が必要で,少なくとも現行法の下でもサイバーセキュリティ基本法の規定に準じた内部の法規範を裁判所が作っていただくことが望ましいと考えている次第でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   大坪幹事,よろしいですか。 ○大坪幹事 ありがとうございました。 ○笠井委員 セキュリティの関係で,少し技術的なことをお伺いします。マルウエアとかウイルスとかの対策のソフトというのは日々更新されて,どんどん良いものができていると思うのですけれども,ある種,いたちごっこみたいなところがあるかなというところもあって,そういう対策のソフトは当然,裁判所の方ではきちんと整備されると思いますし,それがないと,訴訟代理人のところで攻撃を受けて感染したものが送られるということはしょっちゅうありそうな話ではありますので,そうされると思うのですけれども,実際上そういうウイルス対策というのがどの程度実効的なものかという,漠としたお答えのしにくい質問で申し訳ないのですが,それがまず伺いたいと思います。それと,恐らく,完全なものというのはないというお話だったと思いますので,完全なものはないことを前提にして,先ほどのジョージア州のようなお話というのは大変なことだなと思うわけですが,例えば,裁判所が外部から受け付けているシステムに入ったものを即時にバックアップして,そのバックアップされたものは外部からは攻撃を受けられないようにするなんていう,そういう技術的なことというのはおよそ考えられないのか,あるいはあり得るのかといった辺り,この辺は完全な素人の質問になりますけれども,お伺いできればと思います。 ○湯淺委員 笠井委員,どうもありがとうございました。1点目の御質問は,セキュリティソフトも高度なものになっておりますので,通常,あるいは最近ではウインドウズをお使いの方はウインドウズに標準装備されているものもかなり強力でございます。ただ,一定の限界はございまして,それはゼロデイ攻撃といっておるのですが,要するに,セキュリティ対策ソフトというのは,ある攻撃が行われたら,それに対応する,あるコンピュータウイルスが出てきたら,それに対処するというものですので,初めて出てきてしまったものには基本的にはこれは対応できないということでございます。ですので,一定の限界はあるということは認めないといけないと思います。   それと,先ほどの大坪幹事の御質問にも少し関係するのかもしれませんが,障害が起こったときはどうするとかということをこの審議会でもいろいろ御議論いただいておりますけれども,例えば,期限ぎりぎりに出したものがマルウエアに感染していたのでシステムからリジェクトされてしまいましたというような場合にどうするのか等についても,それは実務上,問題にならないのか。障害よりも,むしろそのようなトラブルの方が実際,いろいろ多発してきそうな感じはしているということでございます。   それから,常に丸ごとバックアップすることでセキュリティを担保するということについては,これも非常に漠然としたお答えになってしまうのかもしれませんが,日々進化していくシステムに合わせてどのようにその最新性を担保するかということが難しいなと思っておりまして,例えば今,私どもがこの審議会でいろいろ議論をしておるわけですが,この後,法改正をして実際にシステムが使えるようになるまでの間に,また技術進化していってしまうわけですね。この間のタイムギャップというのがITの領域では常に存在をいたします。このタイムギャップを追い掛けるということは,やはり法制度の限界と申しますか,これはどうしても技術の方が先行していってしまいますので,法制度がそれを追い掛けるということはどうしても難しい。そのタイムギャップがあるということを前提にしてどういうふうに議論したらいいのかなというのは,これは非常に悩ましいところでございまして,はっきりとしたお答えになっていなくて申し訳ございませんが,そういう問題が常にあるということでございます。 ○笠井委員 ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 阿多でございます。2点ほどお教えいただきたいと思うのですけれども,4ページで挙げられています,下の検討が必要となる点の本人確認とアクセス制限というところなのですけれども,先生御承知のように,民事裁判の場合は判決騙取とかなりすましの問題があって,そのなりすましも全く外部者がなりすましている場合もあれば,内的要因で,本人が自分の,先ほど出ていましたマイナンバーカードを渡して完全に任せてしまって,知らない間になっているというような場合とがあり得ると思うのですが,ここで本人確認について,例えば事件管理システムといわれる場面でのデータの提出や受取の場面と,いわゆるウェブ会議システムに具体的にシステム関与して参加する場面と,二つあり得ると思うのですが,変な話なのですが,本人以外の者の関与というのは一体どこまで排除できるようになっているのでしょうか。   本人以外の者の関与以外に,本人に影響する者がそばにいるようなものというのを排除する方法,事件管理システムの提出の場面は難しいかとは思うのですが,ウェブ会議のときに,今回も中間試案のところで,証人尋問のときに影響を与える者がそばにいないこととか,いろいろな要件を設けましたけれども,ウェブ会議システムでの本人確認及び本人以外の者が関与していないことを何か確保する方法というのがあり得るのかという点です。   それから,2点目の質問,これも今日のお答えの対象でないというのも先生が自らおっしゃったのですが,表題のセキュリティのところで,部会の途中でも私,先生にも御質問させていただきまして,発言もさせていただいたのですが,いわゆる責めに帰すべき事由と,代理人とか本人がどういうことがあると,それは本人の,代理人の責任なのかというテリトリーというか領域の問題で,先ほどサイバーセキュリティデューディリジェンスのお話も出ていましたけれども,現状,つまり今のレベルでここまでの安全装置というか,そういう対策を実施していないと,当該代理人としては責めに帰すべき事由があるとか,そういう議論になってくるかと思うのですが,現在どういう場合に,これはもう代理人側の責任リスクですよねというふうなことが,諸外国も含めて,話題になっているのかということについて,御紹介いただければと思います。変な御質問で申し訳ありませんが,よろしくお願いします。 ○湯淺委員 ありがとうございました。まず,1点目の問題につきましては,本人確認を厳格化する手法というのは,技術的にはたくさんございますが,本人確認を厳格化していけばしていくほど利便性が下がっていってしまいますので,どこでバランスをとるかということになります。例えばですが,一番厳格にやろうと思ったら,生体情報をあらかじめ登録してもらう。それに加えて所持情報である携帯電話番号等も登録してもらって二つ以上の要素によって本人確認を行う,いわゆる多要素認証と呼ばれていますが,そういう方法はございます。ただ,それらをとればとるほど非常にややこしくなってきて,可用性というか利便性は下がってしまうという問題です。   オンライン化全般がそうだと思うのですけれども,リアルの場面では必ずしもそれほど厳格に本人確認していないというケースがあると思うのです。それは,リアルの場所では必ずしも厳格な本人確認をしなくても,ほかの手段でなりすましが何となく防げているのに対して,オンラインだとその手段が採れないということが問題なのかなとは思います。   それから,影響力が行使されていないことを確認する手法でございますけれども,これもやろうと思えば,部屋の中の赤外線データを別途送信するようにするとか,技術的に工夫すれば不可能ではないのかもしれませんけれども,なかなか現状では難しいだろうと思います。ちなみに今,外国に住んでおられる方々の在外選挙権の行使,在外投票をインターネットで行おうという計画がございますが,インターネット投票では後ろから誰かに投票を強要されていないかというような点が問題になっております。インターネット投票を行う際にスマホのカメラを一回オンにして,周りに人がいないかどうかというのを確認してから投票してもらうようなやり方を採ってはどうかというような技術的な提案も生まれております。赤外線カメラを全ての部屋に置くというのもなかなか現実的でないでしょうから,ぐるっと周辺をカメラで写してもらって,こっそり誰かが隠れていて何か助言を与えたりしていないということを確保するという程度の運用上の工夫で何とかするしかないかもしれません。不十分な回答で申し訳ございませんでした。   それから,最後の,責めに帰すべき事由は何ですかという御質問で,これは個人情報漏洩の場面でいろいろな訴訟が起きてきたところでございます。あるいは,セキュリティ対策を専門の企業に委託したにもかかわらずサイバー攻撃を受けて情報が流出してしまったというような場面で,その対策が十分であったかということの訴訟も起きてきたところです。ただ,全体的に申し上げると,これをやっていればよいという基準自体が刻々と変化をしていくわけですね。2011年の時点ではこれをやっていればよかったのが,2021年ではもうそれでは通用しないということです。ですので,正直申しまして,これをやっていれば恐らく相当な注意義務を払っていたということになる,これをやっていなかったら相当な注意義務は払っていなかったということを具体的に申し上げるのは非常に難しいです。そうだとしますと,逆に,これは法律というよりは,むしろ規則レベルかセキュリティポリシーレベルなのかもしれませんが,最低限こういう要件がない場合には,裁判IT化システムには接続してはいけませんと定めてしまった方が,セキュリティレベルは上がるのかなと思います。それによって,例えば古いOSを使っている人がつながらなくなったとか,利便性は下がります。利便性は下がりますけれども,結果論的にはセキュリティ対策上,一定の効果は出てくると思います。   他方で,それをやっても内部要因は防げないわけですね。パソコンをなくしたとか盗まれたというインシデントは防げません。ですので,この部分だけはどうしても責任論として残ってしまうということでございます。こちらの最後の方も,はっきりとしたお答えできなくて申し訳ございませんが,今考えているのはそういうことでございます。 ○阿多委員 どうもありがとうございました。 ○日下部委員 日下部です。   私がお尋ねさせていただきたいのは,セキュリティの中でも事件管理システムの利用に当たって,その当事者なり本人なりではない者がアクセスしてしまう事態をどのように避けることが適切なのかということについてです。先ほどお話の中にありましたとおり,その意味でのセキュリティを強化するための方策というのは様々なものがあって,それを数多く利用するということも考えられるのでしょうけれども,それは逆に利便性を損なうという面があり,どこでバランスをとるのかという問題でもあるのかなと思っています。   よく聞かれるのは,本人確認をした上でIDとパスワードの付与を受け,その付与を受けた後にはIDとパスワードを使うということをベースにするということが想起されるのですけれども,懸念されるのは,そのIDやパスワードをほかの人に教えてしまい,そのほかの人がまるで本人であるかのように,以後ずっとシステムを利用し続けてしまうという事態かと思います。例えば,弁護士のように訴訟代理を業として日常的に行っている者がそのようなことをするということは通常考えられないかと思うのですが,例えば本人訴訟の本人の場合には,身近にいる人にそのようなIDやパスワードを教えてしまうということも大いにあり得るのではないかと懸念をしております。   そこでお尋ねなのですけれども,事件の管理システムへのアクセスの方法につき,当事者本人の場合に求められるセキュリティの在り方と,訴訟代理人に課せられるといいますか求められるセキュリティの在り方のレベルに違いを設けているという国の実例などをお聞きになったことがあるかどうか,あれば御紹介いただきたいですし,特にそういうのは聞いたことがないということであれば,その旨を教えていただければと思います。よろしくお願いします。 ○湯淺委員 日下部委員,御質問ありがとうございました。当然,今,委員も御質問になったとおり,IDとパスワードを一回発行した後,それをほかの人に教えてしまうとか,一つのID,パスワードを使い回しをしてしまうということは十二分に想定されるところです。あるいは,特に本人訴訟の場合には,先ほど委員も御懸念されていたように,それを,例えば家族に教えてしまうとか,そういうことも十二分に起こり得るところす。   先ほど先行の実証実験としまして,法のライフライン・コンソーシアムの報告書の件を御紹介させていただきましたが,法とライフライン・コンソーシアムの報告書でも,IDの管理の在り方にかなりの分量を割いていろいろと検討しております。委員御指摘の問題,あるいは今後,法律事務所の内部で,例えば弁護士の先生が事務員に代理で何か書類をアップロードさせるというようなときには,サブアカウントを発行して事務的な作業だけができるようなアカウントを発行すべきなのか,それはその代理人である弁護士の先生の裁量で,適切にしっかり監督をした上で代理としてアップロード行為をさせればよいのかとか,いろいろな議論が既に法とライフラインのコンソーシアムの報告書の中ではなされておりました。結局,結論はないというと問題になるかもしれませんが,本人確認の厳格性,あるいは第三者が関与することを排除するということの厳格な担保と利便性との間で,どこでその線を引くかという,その判断に委ねられているということになるのかなと思います。   それから,諸外国のシステムで,本人用と代理人用とでアクセスレベルなり何なり差を設けているかという2点目の御質問は,申し訳ございませんが,私もそれについては知見を持ち合わせておりません。お答えできずに申し訳ございませんが,以上でございます。 ○山本(和)部会長 日下部委員,よろしいでしょうか。 ○日下部委員 詳細な御回答ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ほかに御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,湯淺委員への御質疑についてはこれで終了させていただきたいと思います。   湯淺委員におかれましては,御多忙のところ御説明の御準備を頂き,また本日,貴重な御説明,御指摘を多々頂戴いたしまして,誠にありがとうございました。これからパブリック・コメントを踏まえて本部会の調査審議を進めていくに当たりまして,本日頂戴したお話を是非参考にしつつ議論をしてまいりたいと思いますので,引き続きどうかよろしくお願いをいたします。   それでは,本日の審議はこの程度にしたいと思いますが,よろしいでしょうか。特段の御発言はございませんでしょうか。   それでは,最後に,次回の議事日程等につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○大野幹事 事務当局でございます。本日も長時間,ありがとうございました。   次回の日程でございますが,5月14日金曜日,午後1時からでございます。場所は未定でございます。追ってお知らせをいたします。   次回の会議におきましては,中間試案に記載いたしましたテーマのうち幾つかの論点について御審議を頂く予定でございます。詳細につきましては,追って皆様に御連絡をさせていただきます。 ○山本(和)部会長 それでは,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第11回会議はこれにて閉会にさせていただきます。   本日も御熱心な御議論を賜りまして,誠にありがとうございました。 -了-