法制審議会 家族法制部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  令和3年4月27日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時34分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  参考人ヒアリング         離婚及びこれに関連する制度の見直しについて(意見交換) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第2回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   なお,本日は大山委員が御欠席と伺っております。   本日も前回と同様にウェブ会議の方法を併用した開催となりますので,よろしくお願い申し上げます。前回からの変更といたしまして,外務省の国際法局社会条約官である林さんが,手続の関係で前回,関係官として参加されておられましたが,今回からは幹事となります。ただ,林幹事は今日は御欠席と伺っております。   また,今回が初めての御出席となる関係官がお二人いらっしゃるということですので,簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。その場でお名前と所属を御紹介いただければと思います。   最初に,厚生労働省の石原関係官,お願いをいたします。 ○石原関係官 厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課の石原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   続きまして,法務省の横山関係官,お願いをいたします。 ○横山関係官 法務省民事局付の横山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   続きまして,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきたいと存じます。これは事務当局の方からお願いします。あわせて,この部会での調査審議に関する情報提供等につきましても事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○志田関係官 まず,私から,事前に配布した資料の説明をさせていただきます。事前に全部で11の資料を送らせていただきました。一つ目が,法務省の「協議離婚に関する実態調査結果の概要」,二つ目が,法務省の「財産分与を中心とした離婚に関する実態調査結果の概要」,三つ目と四つ目が内閣府から提出いただきました男女共同参画会議の女性に対する暴力に関する専門調査会による「DV対策の今後の在り方概要」と「本文」,それと,「男女間における暴力に関する調査報告書」になります。また,外務省から四つ提出頂きまして,「児童の権利に関する条約に関する資料」,「児童の権利委員会の総括所見」,「日本における子の連れ去りに関する欧州議会決議の概要」,また,「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約に関する資料」の計四つでございます。さらに,厚生労働省から合計二つ,「養育費の履行確保等に関する取組事例集」と「令和元年人口動態統計の概況」を提出頂きました。最後に,最高裁から提出頂いた「子の監護に関する処分事件の事件動向について」になります。合計11の参考資料を事前配布し,また,会場では机上配布させていただいております。   これらの資料は,今回のヒアリングに直接関係するというものではございませんが,今後の議論の参考資料としていただくために配布しました。 ○藤田幹事 続いて,民事局の藤田です。本日もよろしくお願いいたします。残りの配布資料について,御説明いたします。   まず,一つの束として,本日ヒアリングをお願いする皆様方から事前に頂いた資料を配布いたしております。これについては後ほどの御講演で,順次御紹介を頂きたいと思っております。   もう一つ,資料の束といたしまして,非公開資料とする机上配付資料を配布しております。今回の部会での検討事項につきましては,国政の方でも高い関心を持たれております。既に各方面で議論がされて様々な御提言・御要望が出されていることの一例として,各政党等から法務省に提出があったものにつきまして,御参考として提供する次第です。議論の参考にしていただければと思っております。   資料の取扱いですが,先ほど説明があった参考資料2につきましては,このまま法制審のホームページに掲載して公開します。ヒアリング講演者の資料につきましては,後ほど部会長から御説明があるかと存じます。また,政党関係の机上配布資料については,皆様のお手元限りとして,ホームページには掲載しないということにいたしたいと思っております。  非公開資料となる机上配付資料ですが,先ほど説明したとおり,法務省に提出された各政党等の提言書等となっております。具体的には,提出時期の順に,自民党女性議員飛躍の会,同党女性活躍推進本部,同党司法制度調査会,同党女性活躍推進特別委員会,同党母子寡婦福祉対策議員連盟から,それから公明党・不払い養育費問題対策プロジェクトチーム,同党女性委員会から,あるいは超党派の共同養育支援議員連盟から,それぞれ提言書等を法務省にいただいているということで御提供する次第です。   続いての事項ですが,先ほど部会長からあった,この部会の調査審議に関する情報提供等について,報告申し上げます。今回の部会の議論については各方面の関心が高く,お問合せ等を多く頂いていることに鑑み,法務省としても情報発信の工夫として,通常の議事概要と議事録の公表に加え,議事速報という形で,部会終了後速やかに日本語,英語の形で速報的な情報を発信することにしました。さらに英語情報の発信については,法務省の英語版ホームページを通じて紹介することで,海外の方のアクセスにも対応できるようにするといった発信の試みをこの部会では行っておりますので,お耳入れさせていただきます。   最後に,前回の部会では,法務省で実施した「未成年時に親の別居・離婚を経験した子に対する実態調査」につきましては,更なる検討・分析のために元データ,ローデータの提供が必要ではないかという御指摘を頂いたところです。これを受けて検討し,法務省から,更なる調査分析を希望される方にローデータを提供することとしました。部会の皆様にも是非御活用いただければと思います。   まず,事務局からは以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。お手元の参考資料等,たくさんございますけれども,御確認を頂ければと存じます。   それでは,引き続きまして本日の審議に入りたいと思います。   本日は,まず離婚に伴う子の養育をめぐる実情を把握するために,ヒアリングを行わせていただきます。そして,残った時間を使いまして,次回以降の進行について御意見を頂き,意見交換を行うということを予定しております。   直前に藤田幹事の方からお話がありましたけれども,今回のヒアリングに当たりましては,その内容が個人のプライバシーに関する事項等を含んでおりますことから,お話しいただく参考人の方々の氏名の秘匿,あるいは匿名化,お話の際の資料の全部又は一部の非公開,さらに議事録の関係部分の非公開や要約等につきまして,お話しいただく参考人の方々の御意向に十分配慮しつつ,私の方でそのやり方につき判断をさせていただくという扱いにさせていただきたいと考えておりますが,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。配布資料に関して少し確認させてください。   1点が,配布資料目録の中にある厚労省さんの2−9,養育費の履行確保に関する取組事例という資料が事前配布されていると思います。これは別に今日でなくても構わないですが,同様の調査が面会交流でもないのかなと思います。もし存在するのであれば,是非次回,御提供いただきたい,これが1点でございます。   もう1点は,資料の取扱いでございまして,各与党さんから出ている机上配布目録及び中身の取扱いに関して,これは内容によっては既に公開されているものも含まれていると思っておりまして,今回非公開という趣旨,そこだけ教えていただければと。   以上,2点でございます。 ○藤田幹事 事務局です。1点目の方は,おそらく厚労省さんの方で,お答えできる範囲でお答えいただくなり,御準備いただくのがよろしいかと思います。   2点目の机上配布資料の関係です。こちらは御指摘のとおり,一部は公表されているものもあるところかと思いますが,事務局としては,今回の部会での御議論は,まだ第2回目でこれからスタートするところでございます。各政党からの御意見等として提供いたしつつ,部会としては,正にこれから議論いただくという意味で,余りまとまった資料を公開するということで前提とは見えない方がよろしいかということで,御参考に机上配布させていただくのがよろしいかと思っております。特に御異論がなければ,そのように取り扱っていただければと思っております。 ○武田委員 趣旨理解いたしました。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   最初の御質問,厚労省の方でもし今,この場でお答えできることがあれば,お答えを頂ければと思いますし,後で打ち合わせた方がよろしければ,事務当局と厚労省の方で打ち合わせをしていただき,資料があれば出していただくということにさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○中野幹事 厚労省の家庭福祉課長でございます。お尋ねのありました面会交流に関する自治体の取組状況の資料,これは調べたものがございますので,次回以降,必要があれば提出をさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員,それでよろしゅうございますか。 ○武田委員 はい,ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   では,資料につきましては今のような取扱いにさせていただきたいと存じます。   それでは,話は戻りまして,本日のヒアリングの具体的な進行等につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○藤田幹事 本日の進行について簡単に御説明いたします。   本日,参考人として合計9名の方にお越しいただいており,それぞれのお立場から各15分程度でお話を頂く予定にしてございます。   順番の都合で大きく三つのグループに分けて実施したいと考えております。最初に,親の離婚を経験したお子様の立場と,子育て世代の一般有識者の立場,そういった方々から4名の方に,参考人として御発言いただき,質疑応答をお願いしたいと思っております。   続いて,二つ目のグループとして,監護親の立場,それから,DV被害の問題に支援の立場で関わっておられる方,そのお二方についての御発言と質疑応答をお願いしたいと思います。   最後に第3グループとして,非監護親の立場,それから,当事者支援の立場で関わっているFPIC様からお話を頂くということで,順次お願いしたいと思います。   また,今日の部会に時間の都合等でお越しいただけない方がおられますので,今回のヒアリングとは別に,次回に改めまして,ひとり親支援の立場の方,親子問題の相談支援や紛争解決に当たっておられる方,自治体での支援の立場,そういった方々からのヒアリングについても更に行うことを予定してございます。   全体の進行についての説明は以上です。 ○大村部会長 以上のような形で進めさせていただこうと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは早速,ヒアリングに入りたいと思います。第1のグループということでお話を伺っていきたいと思います。   最初に,参考人の光本様に御説明を頂きたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。 ○光本参考人 はじめまして,NPO法人ウィーズ,理事長の光本と申します。親の離婚を始め家庭環境に悩む子どもの支援ということで,10年ほど関わっております。日頃から子どものことを考えた法制度,支援の在り方について議論をしてくださり,ありがとうございます。今日はどうぞよろしくお願いいたします。   私も中学2年のときに親の離婚を経験いたしました。家庭の中に暴言や物が飛び交う状況というのは,今でも鮮明に思い出すことができます。当時,私の父,母は,自分のそれまでの経験や考え方に固執していたのかなと思うのですけれども,自分の立場と価値観を越えて相手の意見に耳を傾けるということがどちらも全くできなかったのかなというふうに子どもの立場から見ております。だから離婚をしたと私は思っております。   今日この場には,子どもに対する様々なお立場の方がいらっしゃるかと思います。お父さんの立場の方,お母さんの立場の方,研究や調査,支援をされている先生方,親の離婚という状況下にある子どもの気持ちに目を向け,立場を越えて議論がされているということは,あのような父母の争いに心を痛める子どもたちを減らしていく一歩と感じ,大変うれしく思っております。   本日は,子どもの視点から離婚制度や親子に関する法制度,支援について意見をということで御指示を頂いております。私どもウィーズでは昨年,1,800人を超える子どもたちのLINE相談に対応してきましたが,そこには一つとして同じケースはありませんでした。それぞれ似たような状況でも,子どもによって感じ方も異なります。第三者として話を聴いて,ひどい虐待を受けられたのだなと思っても,その虐待をした親と一緒に暮らしたいという発言をする子もいらっしゃいました。そのため,子どもの声から,これが全ての子どもにとって最善の制度だという共通解を出すことは難しいかもしれません。しかし,親の離婚がその子どもの心にどのような影を落とす可能性があるのかという私たちの考えが御議論の参考になればと思います。   親の離婚の子どもの養育制度というと,養育費と面会交流が大きく出てくることが多いですが,私自身は別居することになった母から養育費を受け取ってはおりませんでした。父が母との一切の関わりを絶つことを離婚のときに決めていたからです。けれども,私は母には会いたい気持ちがありました。しかし,父も父親側の親族も母のことを憎んでおりました。あいつのせいで,と悪口をさんざん言っておりましたし,私がお母さんに会いたいということを言えば暮らしの場がたちまち大炎上してしまうということは,子どもの目から見ても明らかなものでした。   会いたいという気持ちは,父といるのが嫌だからとか,寂しいとか,そういう気持ちはなかったように思います。どちらの御夫婦も,離婚をするとなれば負の感情がぶつかって,どたばたするものかなと思います。我が家もそうでした。母と別れるそのとき,母の顔もきちんと見られずに,話すこともできないまま,私たちは家を出ることになりました。だから,今回の離婚について,母の言い分や気持ち,そういったものもきちんと知りたいし,お互いに笑顔で,またねと言えたら,私の中でも踏ん切りが付くのになというのが,私の母親に会いたい最大の理由でした。   親の離婚でしんどかったのには四つの理由がありました。一つには,一緒に暮らす親たちの表情を見て,自分の気持ちを抑えなければいけないこと,二つ目に,自分の親の悪口を聞くこと,三つ目に,生きる環境が変わること,そして四つ目はお金のことです。これらは,支援活動で子どもたちの声を聴いていても共通しています。日本には,これら子どものしんどさに寄り添う制度,支援がありません。子どもの頃欲しかったもの,子どもたちが必要としているものを柱として支援を行いたいと考え,現在に至っております。   御参考までに,親権についてですが,こちらは私たちが接するほとんどの子どもが,どっちみち離婚するのならどうでもいいと表現します。親の争いが終わるなら親権はパパにしてくれて構わない,でも学校が替わるのは困るから,住むところはママにしてほしいと言った中学生がおりました。また,共同親権で面会交流が強制されていたら別居親のことをもっと嫌いになっていたかもしれないと語り,現在,別居親との交流を重ねようとしている学生さんもおりました。   親の離婚を経験しながら成長した20代,30代の方からの声も気になるところです。自分も自分の親と同じように離婚をしてしまう気がする,今更ながら親の離婚の傷を消化できていないことを実感したという相談が本当に多いです。自身が結婚するときに結婚式に片親を呼べないもどかしさに直面したり,結婚をして相手の家族との違いに気付いたり,子どもを授かり子育てに悩んだりするのがきっかけになることが多いようです。   親の離婚による負の連鎖というのは確実にあると感じています。子どもの頃には離れて暮らす親のことは嫌いで,気にもしていなかった,親の離婚をそこまでマイナスに思ったことはなかったと言いますが,離れて暮らす親になぜそのような気持ちを抱えていたのか,両親の離婚の理由は何だったのかと聴くと,なぜなのかはっきりと分からないと言います。きちんと向き合う機会を持たないまま育った結果,次の世代を長く苦しめてしまう場合があることを,親を含めた大人は知っておかなければならないと思います。   親の離婚によるしんどさを長く感じ続けるか否かというのには,二つの要素が大きく関係しています。一つは,きちんと両親の離婚の理由を父母間の問題として,子どものせいではないということを子どもが理解できているかということ。もう一つは,親の存在や親が離婚していることが自己否定につながっていないかということです。このことは今日の話のテーマからそれてしまいますので,詳しくお話しすることはできません。しかし,子どもへの離婚の説明,子どもが親の離婚を消化することを妨げないことについては,法的手続を行う親御さんがその後に向き合っていくべき課題になりますので,少し触れさせていただきました。   親の離婚をどう捉えて悩んでいるかということにかかわらず,自分のせいだと思い込んでいた,誰に話しても分かってもらえなかったし,こんなことを考える自分は間違っていると思っていたという子どもが多くおります。子どもたちが親の離婚を乗り越えるために,第三者のサポートがあること,そして,そのような情報が必要なときに手に入る仕組みは必要になってくると感じます。   私たちは無料の面会交流支援というのも行っておりますので,様々な親御さんのお話も伺っております。裁判所を通じて離婚の話合いをしている御両親は勝ち負けの思考に陥ってしまっているように思います。相手の主張が間違っていて,自分の主張がいかに正しいかということを調停委員や調査官に伝える作業を繰り返すわけなので,それもやむを得ないかとも感じますが,これは子どものためにはならないと思います。子どもたちは両親が争うことに本当に心を痛めています。離婚してほしいと言う子どももいますが,聴けば,けんかを見るのが嫌だからと言います。争いを助長したり長引かせたりする制度というのはなくさなければなりませんし,親の離婚で傷付く子どもに更なる負担感を与えることも避けなければなりません。   子どもからの相談でも,このような声がありました。裁判に勝ったといって親は喜んでいたけれども,離婚してほしくないという私の思いはかなわなかったし,どうしたいか,どうなってほしいかと聴かれることもなかった。私の希望がかなえられないことについて謝ってくれることもなかったし,決められたことを受け入れるしかなかったという声です。   また,当事者の御両親間では,離婚理由についてDV,モラハラや,ある日突然,一方の親が子どもを連れて家を出る連れ去りという言葉が使われているのをよく耳にします。両親それぞれの捉え方も異なり,係争の種となる,子どもにとっては怖いワードです。それらに直面する親のつらさや恐怖は理解しますが,子どもの視点で見てということであれば,DV,モラハラや連れ去りというのは,どちらも片方の親を否定するだけの言葉です。子どもにとってはどんな親でも自分のルーツです。親を否定されることは自分の存在を否定されるのと同じで,長く心をざわつかせることになります。   それを考えたとき,父,母がなぜそのような行動をとったのかというところに,私たちがやらなければならない支援や制度のヒントが隠れているように思います。私の父親にも暴力がありましたが,彼の立場を今考えれば,やるせなさや怒りを感じていたことは十分に理解をできます。それらを受け止めてもらえる場所は必要だっただろうと思いますし,それは母も同様だっただろうと感じます。それぞれの御両親にとっても,子どもを授かるまでに至った経緯を考えれば,離婚は自らの過去の選択の否定にもなります。御両親が,あのとき結婚しなければと思い続けることが,そのまま子どもの,私は生まれなければよかった,につながってしまっています。   終わりに近付いてきましたので,ここで面会交流と養育費について再度,触れたいと思います。まず,面会交流に関してですが,葛藤の強い両親間の面会交流実施に第三者機関を利用するということは,親同士が顔を合わせたり連絡を取ったりせずに済むという親側のメリットで表現されがちです。しかし,子どもは,先ほど述べたように,両親が争うこと,自分の親が否定されたことを負の影響として抱えてしまいます。親の負の感情を子どもに見せないため,早期に面会交流を実現するためという子ども側の理由で,第三者機関は利用されるべきと思います。   親子の時間に第三者が入ることは,それだけで子どもに,自分の家庭は普通ではない,第三者が入るのは自分の親がおかしいからだと否定的に感じさせる要素になってしまいます。子どもに負担のないよう配慮した支援を行える機関が裁判所などの関係機関と連携をする必要があると感じます。そして,両親が勝ち負けの思考から脱し,憎しみも怒りも手放して,離婚後の親としての協力関係を構築することが求められると思います。そして,そのことへのサポート体制が整うことが理想と考えます。   養育費についても,さんざん争った上で嫌々支払われたり,それを生活の支配の道具に使われたりするのであれば,月500円,1,000円でもいいと表現した子が何人かおりました。物理的にもお金がある方がいいとは思いますが,子どもから見ると捉え方が少し違うことがあります。   離婚を選択した両親それぞれにお話を聴くと,子どものことを一番に考えたいとどちらもおっしゃいます。しかし,子どもたちは,親や大人は子どものことを何も考えてくれていないと言います。この擦れ違いは,父,母,子のそれぞれに理想の家族像があるのに,その家族が離婚という結末をたどってしまうことの喪失感を乗り越えられていないことに起因しています。喪失を乗り越えるためには,まず,それぞれの思いが丁寧に聴かれること,家族に起きた事実を確認することが必要です。支援機関では丁寧に聴くことを,法的機関では事実を確認することを担うことができると思います。それぞれの役割や連携がなされていないと,明確な線引きができずに,当事者である両親を混乱させ,負の感情を高めてしまうだけのように思います。それが今,子どもの思いと反していることです。   また,離婚が増えると再婚も増えます。家族がステップアップしたり形が変わったりするときに顕在化しがちな問題を親を含めた大人が早い段階で知ることが,子どもが望む家族の在り方を守る上で必要なのではないでしょうか。   最後に,補足をさせてください。子どもの立場としては,離婚がない方がもちろんいいものの,絶対悪ではないとも思っています。私は両親が離婚をしたことを,これでよかったと思っています。冒頭では,父母ともに自分が全てだったということを述べましたし,私が子どもの立場で感じたことは変わることはありませんが,今は両親に心から感謝をしております。周りにいてくれた人たちのお陰もあって,両親も両親なりに子どものことを考えようとしていたことを理解できました。そして,自分の人生の主導権が自分にあることを理解することができたからです。   両親の子どもを思う気持ちが真っすぐに子どもに届き,子どもが両親の離婚による負の影響を感じることなく自分の人生を歩んでいけるような制度や支援が必要と考えます。子どもの数だけ,その気持ちを表す声があり,それぞれに異なる事情があります。そうした事例をたくさん御紹介したいのですが,今日はここまでとさせていただきます。お手元に一部のケースを紹介した書面が渡っているかと思いますので,お目通しを頂ければ幸いです。   本日は御清聴いただきましてありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   委員,幹事から御質問等もあろうかと思いますけれども,まず参考人の方々のお話を伺った上で,質疑応答は後でまとめさせていただきたいと思います。   では,続きまして星様,お話をお願いいたします。 ○星参考人 よろしくお願いします。一般社団法人のひとり親支援協会,エスクルから参りました,星と申します。本日はよろしくお願いいたします。僕の場合は,詳しい専門的な話とかは僕も全然分からないので,非常に僕個人の,本当に自分の家庭でどんなことが起きたのかという事実だったり,そのとき,当時僕が子どもの目線でどう思っていたのか,今振り返るとどう思っているのかというところを話させていただこうかなと思います。手元に資料とか全く用意しておらず,非常に申し訳ないのですが,もろもろ素直に話そうと思っていますので,よろしくお願いいたします。   まず簡単に,僕の家庭と,どんな感じだったのかというところを自己紹介がてら,できたらなと思うのですけれども,僕は新潟県長岡市という本当に田舎の雪国の出身でして,父親と母親,それから僕と,あと4歳下の弟という4人の家族で過ごしておりました。僕が9歳の頃,なので弟は5歳とかぐらいの頃に,両親がけんかが多くなり,そのまま離婚という形で,母親が出ていくということで,その後は父親と僕と弟という3人でシングルファーザーの家庭で育ちました。何でそういうシングルファーザーで,父親側に引き取られたのかというと,母親が結局,出ていくことを選択したので,父親が,お前が出ていくのだったら,もう子どもはこっちで引き取るわという形で,お互いの話合いの末,いつの間にか決まっていたという形です。その後,僕が二十になるまで母親とは一切会わないまま男3人で生活していたのですけれども,二十からは少し母親とも会うようになり,今では定期的に連絡を取ったり,会ったりするような関係にはなっております。   ということで,それが今の現状なのですけれども,それぞれ,離婚の直前だったり,離婚する最中,それから離婚の直後,あとはその後の生活だったり,再会したときのお話だったり,心情なんていうものを簡単に話せればなと思います。   まずは,離婚直前ですね,やはり子どもの目線で一番思っていたのは,とにかく親のけんかの時間というのがすごいストレスでした。何より音の暴力というのが一番怖かったイメージがあります。母親と父親がいつもけんかを始めるとなると大体,嫌な空気感というのが漂ってくるので,兄である僕が4歳下の弟を子ども部屋に連れていって,少し一緒に遊ぼうかなんて言って部屋に籠もって,空気を読んで,行くのですけれども,もう灰皿だったりお皿とかが飛び交う音だったり,親同士の怒号なんていうのは全然,壁を通り越えて聞こえてくるので,そのときの音を聞くのが本当にとにかく嫌だったなという印象があります。離婚というワードを聞くと,とにかくそのときのけんかの音というのを僕は一番イメージしています。   子どもながらに,ああ,もう多分この二人はどこかで別れるのだろうなというのも理解していましたし,非常に今の自分から見ても,とてもドライにというか,結構客観的に親のことを見ているのかなと思います。弟とかにも話を聞いたことがあるのですけれども,弟もその当時,5歳とかではあったのですけれども,ああ,もう母親って離婚すると思っていた,あの頃からと言っていたりとか,母親が出ていっても,まあそうだよねというような印象を持っていたようで,5歳ぐらいの子どもでもそれぐらいのことって結構理解できるのだなということは,今になって,そういうものなのだなというのは思います。   そこから,親が離婚するとなったときなのですけれども,やはり子どもに対してヒアリングというのは一切なかったですね,うちの場合は。母親が突発的に出ていって,後から離婚したと聞かされたりとか,離婚理由というのも大人になってから教えてもらったりであって,何で離婚したのか,いなくなったのかというのは知らなかったのですけれども,そのとき僕と弟が一番思っていたのは,もうあのけんかが見られなくなってよかったなという感想が一番でした。母親がいなくなって寂しいとかというのは,実はそこまでではなく,あの時間がなくなるのが本当に安心した,ほっとしたという感想を持ったのをすごく覚えています。   実際離婚して,シングルファーザーという形で育つのですけれども,苦労した点は2点ありまして,1個はやはり母親がいないので,僕が母代わりになってくれと親から言われて,家事とか炊事洗濯とか,もろもろを任されるようになり,それは大変だったなという印象はあるのですけれども,ストレスではなかったなと思います。家族がそういう形になったので,自分がしっかりしないとな,弟を守らないとなということで,弟の送り迎えをしたりとかすることに関しては,結構適応するのかなと,その状況に置かれたらもう仕方ないよねという形で僕は受け止めていました。   もう1個苦労した点というのが,やはり金銭的な問題ですね。両親共働き想定で家のことだったり全ての物事を進めていたので,その収入源が父親一つになったことで一気に金銭的に厳しくなって,その金銭的な苦しみというのはもう慣れるものでもなく,永遠に続くものなので,それはずっとストレスでしたし,そして何より,僕以上に多分,父親がすごいストレスに感じているのだろうなというのが子どもながらに思っていました。なので,お金と時間と,そしてシングルファーザーというなかなか周りにいない環境下で,父親はすごくストレスを抱えていて,しばしば子どもである僕とか弟に当たることもあったりとか,ぶつかることも非常に多くて,どこでも理由を見ると,金銭的なものだったりするのが一番多かったかな,なんていうのは,今になって振り返ると思います。   その後,一番,離婚してそこから適応していたのですけれども,母親という存在というか,第三者的な存在が欲しかったなと思った瞬間というのが進学の瞬間でした。高校進学であったり,大学進学というときに,うちの父親というのが,田舎あるあるなのですが,少し不良上がりですごく,昔暴走族をやっていたような父親だったので,もう高校なんか行かなくていいと,中学卒業で働いてくれと言われていて,僕自身ももうそれで働こうと,働くしかないのだなと半ば諦めの環境でおりまして,そのときにもし母親がいたら,もっといろいろな相談とか,いろいろな未来の形を一緒に考えられたのかなと思うのですけれども,そのときはすごく母という存在というか,何か第三者の存在が欲しくなったのを覚えています。   僕の場合は結果的に,それが教師というか,担任の先生でした。三者面談のときに父親が,もう中学卒業して働きますと言い放ったのですけれども,先生の方から,今はそういう時代ではないのだと説き伏せてくれたお陰で,進学という道が僕の中に増えて,結果,高校だったり大学というところに進学できて,今すごくよかったなと思います。なので,あのときの先生がいなかったら中学卒業で働いていたと本当に思うので,そういう,特にシングルファーザーとかに限ったことではないかもしれないですけれども,結局,子どもにとっては家族と学校というのがすごく比重の重い場所になってくるので,例えば,家族に何か解決策がないときは学校という場所であったり,若しくはサードプレイス的な場所,第三者的存在が近くにいてくれたら,もっともっと楽だったのかなということは個人的にはすごく思っています。   そこから今度,二十で母親と再会したという話になるのですけれども,これはたまたま親同士の話で,父親の方から母親には,もう子どもに会わせないとずっと言っていたのですけれども,いよいよ僕も二十になったタイミングで,何か思うことがあったらしく,父親の方から母親に連絡を取り,子どもも二十歳になったから一度少し会ってやってくれないかと言ってくれたみたいで,家族4人で一度会ってみるという場が設けられたお陰で,そこで会うことができました。   その当初の僕の気持ちとしては,正直,今会ってどうなるのだという気持ちが結構強かったです。今更会っても,もう二十だしな,会ってもどうしようもないよなという気持ち半分,あとは何か照れくさいような,正直,どんな顔して会ったらいいか分からないという気持ち半分,でも,どこかに,やはり母親なので会っておいた方がいいのかもな,みたいな気持ちも半分みたいな,すごく入り交じった気持ちだったのですけれども,そのときは会ってみようという気持ちが強く,何とか会うことができました。   結果,会ってみたら,もうすぐに打ち解けて,ああ,やはり母親なのだなと思うことができて,連絡先交換して,そこからはもう個人的に電話をしたりとか,いろいろな相談をしたりするような関係になって,今でも食事に行ったりとかはよくするので,本当に会ってよかったなと思っています,僕の場合は。ただ,それは今,結果こういう自分があるから思えているのかなとも思うので,当時の複雑な感情というのはなかなか,もしかしたらあのとき,いや,今更会ってもしようがないといって会っていなかったという人生も全然考えられるのではないかなというのは思っています。   結果的に,今までの僕の,こういう形で今,家族があって,僕としては父親とも母親とも連絡が取れている状況だったり,家族としても非常に関係性はいい,家族というか,僕個人が父とも母とも関係性がいい状態にはなっているということなのですけれども,僕個人として思うことは,やはりどこまで行ってもこれは人それぞれだろうなと思うところはあります。友達とも,シングルファーザーだったりシングルマザーで育った方としゃべるのですけれども,もう親とは会いたくないと言っている方もいれば,本当に会いたいけれども会えていないという方もいたりとか,何か本当にいろいろな子どもがいるなとも思います。なので,そういう子たちそれぞれに寄り添ってくれて相談してくれるような第三者がやはりいると,すごくいいなというのは僕は常々思っています。若しくはそういう制度だったりとか。   あとは,よく養育費の話は確かに僕も聞くようになったのですけれども,僕もシングルファーザーの家庭だったので,もちろん母親からお金というのは送られていなかったですし,それでも父親というのは本当にお金に苦しんでいた姿はあるので,とはいっても,離婚した母親が養育費を父親に振り込むほどの経済能力が果たしてあったのかと思うと,そこも難しいところなので,そこら辺もすごく,うちの場合は別にそれで母親も恨んでいないですし,養育費というのも払われていなくても仕方ないよなとか思いつつ,なので,そこも本当に人それぞれの家庭なのだろうなと,とにかく最近は思っています。   以上,本当に個人的な話で大変恐縮でしたが,終わりにしたいと思います。あとは感想というか,質問で頂けたら,何でも答えたいと思っていますので,以上で終わりにしたいと思います。貴重な時間をありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。後ほどまた質問へのお答えをお願いいたします。   それでは,3番目に,本日は匿名でお話を頂くということで,Aさんと呼ばせていただきますけれども,Aさんにお話をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○A参考人 よろしくお願いいたします。私も親の離婚を経験した子の立場から,自分の経験を回想してお話しさせていただければと思います。   私は,私自身が2歳のときに両親が別居,離婚しました。2歳ですので,父と一緒に暮らしていた頃のことは全く覚えていませんし,父と母が離婚したときの状況についても全く記憶がありません。私と母,父と3人で住んでいた集合住宅から母が私を連れて家を出て,二人で住むようになったということです。   私が物心付いたときには父との面会交流が既にありました。頻度としては恐らく2,3か月に一度ぐらい会っていたと思います,平均にはなりますが。一緒に過ごす場所は,幼児期の頃は上野動物園ですとか水族館,あとは遊園地,児童館,夏は公営プールなどに連れていってもらって泳ぎを教えてもらったこともあったと思います。大体いつも半日ほど過ごして,帰ってきているというような状況でございました。大体いつも面会交流の日は昼頃に待合せをして,早めの晩御飯を食べて帰ってくるという感じでした。旅行に行ったりですとか,余り遠くに行くことというのはありませんでした。   幼児期の面会交流は,父と二人で会うこともあったのですけれども,私の場合は父と母の共通の知り合いの女性がおりまして,この女性がよく仲介をしてくれていたりですとか,父と面会するときは一緒に遊んでくれていました。女性は子どもの扱いもとてもうまくて,いつも私の気持ちに寄り添った対応をしてくれており,楽しく面会交流ができていました。この女性の支援がありまして,幼児期は面会交流が嫌だと思ったことは特にはなかったと思っております。父方も母方も祖父母の支援は受けられない状況でしたので,今思えばこの女性の存在はとても大きかったと感じております。   幼児期は以上のような感じなのですけれども,幼児期から今度,小学校に上がりまして,小学校ぐらいからは面会の日は,母が父との待合せ場所に送り迎えして,すみません,幼児期から小学生の間ですね,は面会の日は母が父との待合せ場所に送り迎えをしてくれていました。駅で待合せして,私を受け渡してという感じでした。受渡しのときに父と母と一緒にお茶をして帰ることもあったのですけれども,私はそのときは小さかったので余り覚えていないのですが,母には少し気まずい時間を過ごしていたこともあったようです。   私の誕生日やクリスマスなどは,父は服やおもちゃを買ってくれたりしていました。母が前もって,クリスマスにはコートを買ってもらえば,などと決めていたこともありました。子どもの頃は全くそういうことは知らなかったのですけれども,父は私の養育費については全く出していなかったとのことです。養育費は支払っていないのですけれども,私にプレゼントをするのは好きだったようでして,母はせめてそれを利用して生活に必要なものを買ってもらえばと思っていたのではないかと思います。今から考えると,たまに父に会うことは特に違和感もなく,当たり前のことだと感じておりました。年末になると母の実家に帰省することがあったのですけれども,それと同じ恒例行事のようなものだと思っていまして,自分にとっては特に違和感はありませんでした。   小学校以降の面会交流についてお話しさせていただきます。小学生になると,土曜日に習い事に行き出したりですとか,友達と遊ぶことも増えましたので,面会の頻度は少し落ちました。低学年のときは年に3,4回,高学年になっても少なくとも半年に2,3回は会っていたと思います。父が再婚しまして,その父の家に遊びに行くようにもなりました。再婚相手の女性も私のことをかわいがってくださる方でして,もてなしてくれていました。小学生になると自分で電話ができるようになりましたので,放課後など父に電話して学校などのことを話したりですとか,自分で勝手に,特に決まりはなかったのですけれども,自分で父に電話することもありました。高学年になってからは,面会の日程なども父と自分で電話をして決めていました。行きは自分で電車に乗って父との待合せ場所に行って,帰りは母に迎えに来てもらうという形でした。   これは私の所感なのですけれども,面会の頻度や曜日などが決められていなかったのがよかったと思っています。幼児期は母に面会交流に連れていってもらう必要がありました。父の都合だけではなくて,面会交流の場合は母の都合もあると思います。そういった場合,頻度や曜日などが決められていると,親同士も子どもにとっても過剰なストレスになると私は思います。会えていたのはよかったのかもしれないのですけれども,頻度が決められているというのは誰にとってもストレスになるのではないかと思います。   父は離婚前は保育園の送り迎えなどは少しやっていたそうなのですが,幼児の食事やトイレなどを器用に世話ができるタイプではなかったので,一緒に遊びに行ってくれる人が,先ほどの知人の女性ですね,がいてよかったと思っています。母が一緒に付き添って面会交流をしなければならなかったとしたらということを考えたこともあるのですけれども,それは,両親同士もですし,私にとっても気を遣わなければいけないので,そういうことがなかったのが私はすごく幸せだったなと思っています。正直,恵まれていたなと思います。   私自身,少し神経質な子どもでしたので,学校行事があって疲れたりですとか気分が乗らないときは,約束をしていてもですね,面会交流の直前に父に電話をして,面会をキャンセルしたこともたくさんありました。父も特にそのことは気にしていなかったですし,何か嫌なことを言われたことはありませんでした。母も同じように,父からそんなことで何か文句を言われたりとかということもなかったようです。今の感じからも分かるかもしれませんが,父も私にすごく関心があるという感じではなかったと私は小さい頃から思っています。どちらかというと自分が子どものような人で,趣味が多くていつも忙しそうだと子どもながらに思っていました。   私が子どもの頃から,母は父のことについて何かマイナスの情報を話すことも全くありませんでしたので,私自身,幼児期の頃から小学生の頃,父について特に嫌な印象はありませんでした。父も面会交流のときに母の悪口を言うようなことはありませんでしたので,お互いの両親についてお互いから聞くということも余りありませんでした。   私が高校生のときに,母が転職したこともあって収入が減りまして,私の進学の費用について母と相談する機会がありました。このときに初めて,父が私の養育費を全く払ってこなかったことを知りました。払っていると思っていたわけではないのですけれども,母はずっと外で働いていましたし,私の生活を優先していろいろなことを考えてくれているのは分かっていましたので,このときに父が養育費を払ってこなかったということを知って,少し父に腹が立ちました,そのときは。そのときはしばらく会いたくないと思っておりまして,高校生のときは2,3年ほど,高校の間ずっとですね,父には会っていなかったと思います。母は父のことについてマイナスのことを言うことは,子どもの頃は全くなかったのですけれども,私がこれを機にいろいろ母に問い詰めるようになると,離婚の原因もどうやらお金のことだったのだなと改めて母から聞かされました。これも,私がいろいろせがんでやっと母から聞かせてもらったような形だったので,お互いにお互いのことを余り言わないように,平和協定みたいなものがあったのかなと思います。   その後,私は大学も理系に進んだのですけれども,理系ですので学費が大変かさみました。今も働きながら奨学金を返済している形です。父から経済的な援助がなかったことは,いまだに私は不満に思っています。というのは,子どもの頃から父もそれほど経済的に困窮しているようには見えなかったというのがありまして,母は結構あくせく働いて,私が困らないようにとしてくれていたのですけれども,父はどちらかというと道楽者というか,それほど困っているようには見えないのだけれども,養育費は出していないということを高校生になってから知って,少し不満を持つようになりました。父とたまに会っても,今もたまに会うのですけれども,お金の話は一切しません。父も高齢者になっていまして,持病もあるので,今更特には期待はしていません。   養育費を支払っていなかったので,父としては当然のことだとは思うのですけれども,父が私の進学や進路などについて口出しをすることは一切ありませんでした。養育費の支払がなかったことを知ったのは高校生になってからなのですが,それよりずっと前から,一緒に住んでいないし私の養育をしているわけではない父が私や母の生活に口出しをすることはありませんでした。子どもながらに,それも当たり前のことだと感じておりました。   小さい頃から母が自分のよりどころになっていましたので,仮に母とけんかしたからといって父のところに行くということは,子どもながらに全く考えたことがありませんでした。今思うと,それが象徴的だなと思うのですけれども,私は子どもの頃から父とけんかをしたことも全くありませんでした。子どもの頃から母にはいつも体当たりというか本心で接していたのですけれども,その分,けんかになることも母とはたくさんありました。それに比べて父の関係はとても薄かったですし,母に甘えるほどは父には甘えていなかったと思います。たまに会う人になっていますので,もうそれが普通のことでしたね。一緒に住んでいないことを考えると,当たり前だと思います。自分の日常の暮らしや友達との関係,学校のことなども父とは話すのですけれども,時々会うだけの人に断片的に話しても,父も実感としてよく分からないですし,私も父に何かアドバイスを求めていたようなところはなかったと思っております。   思春期や反抗期に親と余り話をしなくなったり,私もありましたが,いろいろ詮索されたくないということは普通の心理だと思います。私も不登校になったりですとか,母に反発した時期があったのですけれども,だからといって父に甘えたいとか,悩みを聞いてほしいと思ったことは特にありませんでした。父に反発して会いたくなかった高校生の時期も,父も母も特に,面会をしておいでと強制をしたりですとか,なぜ会わないのと根掘り葉掘り聞いたりもしないでそっとしておいてくれていました。両親ともそういう態度だったので,今でも父と時々会う気になるのだと思います。制度ですとか,人に強制されるというのは,やはり結構ストレスになる場合もあるのではないかなと個人的には思います。   両親が離婚することによって,逆に,月1回などといって決まって親と過ごすことが必要になるのは,私は違和感を感じます。中学生や高校生になって自分の世界がだんだん広がっていく時期に,毎月お父さんと一日遊びに行くという子は余りいないと思います。それは子どもによりますし,場合にはよるとは思うのですけれども,決められているということのストレスがあると思います。もちろんそうしたい子はそうすればいいと思うのですけれども,私自身は強制されなくてよかったなというのを大人になってからとても感じております。親であれ誰であれ,いつ会ってどんな話をするのか,とてもプライベートなことなのに,こう在るべきという規範が入ってくることは避けてほしいなと私個人としては感じます。   すみません,少しまとまっていないのですが,以上となります。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   それでは,このグループの最後ということになりますけれども,ウェブ会議の形で御参加を頂いております久保田様にお話を頂きたいと思います。久保田さん,どうぞよろしくお願いいたします。 ○久保田参考人 御紹介ありがとうございます。TBSの久保田と申します。私は2019年に特別養子縁組を利用して,現在2歳3か月の女の子を育てています。一般的な子育てとは少し違うかもしれないのですけれども,子育てをしている母親として少しお話をさせていただければなと思っております。とはいえ,やはり違う形で,特別養子縁組というものなのですね。時間も限られているので,大きく三つのことをお話しできたらいいかなと思っています。   一つ目は,特別養子縁組を利用するということは,娘を迎えるときに,子どものためなのですよ,この制度は子どものためにあるのですよということを何度も強調されるのですね。子どものためだということをすごく意識化されて子育てをするってこういう感じなのですということを少しお話しできると,今回の議論にもつながるのかなと思っています。   二つ目は,自分が子育てをする前だったのですけれども,アメリカのニューヨークに3年ほど住んでいまして,そこで知人たちが離婚をするのを見て,その後,子どもたちがどういう状況になるのかというようなところを少し御紹介できればいいなと思っています。   最後の三つ目,まとめも含めて,自分の育った環境について少しお話しできればいいかなと思っています。   では,一つ目なのですけれども,特別養子縁組というのは,もう皆さんも御存じだと思うのですけれども,これは迎えるときに研修を受けることになっていまして,研修の中で何度も,これは子どものため,あなたたちのためではないです,子どものためにある制度で,子どもの福祉の増進が目的なのですよということを,もう何度も何度も言われるのです。それが刷り込まれた後に子どもを迎えて,子育てをするということになりました。本来,普通に自分が産んで育てていれば,余りそこら辺は意識しなかったと思うのですけれども,子どものために何ができるのかというのを常に考えるようになりました。ということで,特別養子縁組で子育てをするということによって,かなり心構えが普通と違ったのかもしれないなと思うのです。子どものため,子どものためということで強調されればされるほど,自分たちの生活がある意味,制限はされるのですね。自分たちの幸せというよりか子どもの幸せを考えましょうということになりまして,でも,それがとても実は子どもとの絆につながっているような感覚が今,2年3か月一緒にいて,感じています。   それは恐らく特別養子縁組でなくても,一般の御家庭の皆さんにとってもそうだと思うのですけれども,より,子どもというのは単体でいるのだよということを意識化することによって,何となく自分たちの所有物ではなくて社会の大切なものなのだというような感覚をすごく育むことができたのかもしれないなと思うのです。なので,子どもというのは一人の独立した人間として扱わなくてはいけないなと思って,それは何となく自分との距離感を感じるようになるかなと思っていた時期もあるのですけれども,実はそうではなくて,すごく子どものことを尊重するという意識につながったなと思うのです。それは,恐らく自分が産んで当たり前に育てていたら,そういうふうな感覚ってどのぐらい持てたかなと感じています。   特別養子縁組を利用して,子どもがいることが当たり前ではないという環境の中で,ともすると自分は親として入替え可能なのかもしれないな,なんて考えることもあるのです。どういうことかというと,実際に血のつながりがないわけなので,自分の家庭に来ていなくてもこの子は幸せであってほしかったなと思うし,ほかの子が自分の家に来ていたかもしれないなと思ったりもするのです。そうしたらやはりその子のことをとても大切に思って,その子が一番幸せになるように育てていたろうなと思います。   それは,特別養子縁組だから確実にそういうふうに思うのですけれども,でも,一方で実は子どもって独立した存在で,産んでいようが産んでいまいが,そういう感覚ってもしかしたら,あると見え方が違うのかもしれないな,なんていうふうにも感じるのです。ですので,入替え可能なのではないかって,とても考え方によっては寂しいことなのです。というのは,自分でなくてもいいのではないかというような感覚で,多少落ち込む可能性もある考え方なのですけれども,実は入替え可能なのかもしれないなと思いながら日々,大切に生きていくことで,より愛情が強まる,絆が強まるという感覚があるのです。つまり,だらだら育てているというよりかは,子どものために何ができるのかな,この子の幸せのために何ができるのかなということをすごく,日々自分ができる最大限をしたいなと思うようになりまして,なので,子どものためなのだよということを,子どもを持つときにすごく強調して意識化することによって,実はすごく愛情の面でも,接し方の面でも変化が生まれることが,特別養子縁組だけでなくて,本来の家族を作るときにも少し意識をすることで,変わる可能性もあるのかもしれないな,なんていうふうに感じています。   とはいえ,比較するにも,私は産んだことがないので,それはそれでまた違った感覚があるのかもしれませんけれども,特別養子縁組という,子どものためにあなたはいるのですよという感覚をより強く持つことによって,実はすごく愛情の面でも,接し方の面でも,私にとってはとてもプラスがあったなと感じています。   子育てをする前のアメリカにいたときなのですけれども,ニューヨーク,マンハッタンに住んでいまして,その中ではおよそ5人に1組が離婚をするというような,本当に離婚の多い,アメリカの中でも特に多いエリアにいたのです。ちょうど友人が5歳の男の子を育てていて,離婚をしました。そういうふうにアメリカではなるのかと少し驚いたので,御紹介させていただきたいのですけれども,離婚すると離婚を学校に届出するのですね,離婚しましたと。そうすると,もうお手のもので,向こうではカウンセラーがいて,離婚について,5歳の子どもですよ,5歳の子どもを呼んで,話を聴いて,どういうふうな気分なのかということを調査するのです。加えてお父さんとお母さんも交えてカウンセリングをするそうなのです。きちんと説明しなければいけないということを学校では言われるそうです。つまり,子どもは5歳だから,どこまで分かっているのかというのは本当に個人差があると思うのですけれども,それでも,そのときにどういう気持ちなのか,何を感じているのか,あなたのせいではないのだよということをきちんと伝えてくださいと,両親に,絵本なんかを使って説明をしたのだというようなことを言っていたのです。つまり,離婚をするときに説明をしないとか,会話をしないということをしてはいけないという指導を受けるのだそうです。   そこから感じるのは,やはり子どもの幸せというのが何よりも優先事項であって,その後,結局協議離婚になりまして共同親権になったのですけれども,お父さんの方は週末担当で,お母さんの方は平日,お母さんが私の友達なのですけれども,平日担当で,きっちりと分けて,一度それで時間配分を裁判所に出したところ,これでは配分がおかしいといって返ってきて,また配分し直して出すというような,子どもにとってどちらも,お父さんもお母さんも大切だから,この二人と関わりをきちんと持って,しかも対話ができるような形を作るということを大切にしていたというのが,ああ,そういう形ってとてもすてきだなと思いました。   最近,友人と話して,感情的にはお父さんもお母さんも離婚するぐらいですから,いがみ合っているところがあったそうなのですけれども,今はやはり子どもを通して,子どものためにはやはりどちらも必要だよねという感覚になった。最初はやはりもう話をするのも大変だったのが,きちんとこうしなさいという第三者の指導があったお陰で,まず子どものためには親が成長しなければいけないという言い方をするのですね。お父さんとお母さんが成長して,子どもに合わせて,やはり自分たちの問題というよりは,それを越えたところで成長していかなければいけないという感覚を持っていると言っていたりだとか,あとは,家族ではもうないけれども,どちらかというとチームとして子育てをする,この子のためにどういうふうにサポートしていけばいいかというチームになっている感覚があって,関係は,まあ感情的な対立は常にあるとは言いますけれども,非常によくなって,コミュニケーションも子どもについてはできるようになったというような話をしていました。だから,そういう離婚をした後の子どもに対するケアというのは,日本ももっともっと学べるところがあるのかもしれないなというのを,見ていて感じた次第です。   最後に,私の経験を少しお話ししてみようかなと思いました。私の親は離婚はしていないのですけれども,いつもけんかをしていたのですね。けんかというのも一方的なけんかでして,父親がとても強くて,母親はどちらかというと,ただただ弱い立場に立って,それでもやはり耐えて,耐えて,耐えていた母親だったのですけれども,何度か別れたいというような話になりました。そのときに必ず出てくるのがお金の問題だったのです。よく覚えているのですけれども,私は大学進学が決まっていた高校生のときに,やはりそういう,つらいからというような相談をされて,高校生だったからざっくばらんに話をしてくれたのですけれども,母親が,大学に行けなくなってもいいかというようなことを私に聞いたのです。そうすると,私もやはりそれをお母さんのためにいいよとは言えなくて,結局お母さんもそれをよく理解してくれていて,今も離婚しないまま,そのまま,まあ昔と比べると大分円満な関係にはなっていると思いますけれども,離婚はしないままだったのです。   でも,それを考えたときに,私に離婚しないお父さんとお母さんが我慢し合っている家庭にいたときの影響ってどれぐらいあったかなと考えたときに,やはりかなりあったと思うのです。自分はしばらくの間,仲のいい家族像というのを描くのはとても難しいなと思っていました。家族を持つということを具体的に思い描く,そのモデルもないなというような状況が続いていて,それはやはりお父さんも我慢していて,お母さんも我慢していて,私もそういう家族の関係に我慢していて,みんなが我慢している関係が続いていて,それが家族だからしようがないよねという感覚で過ごしていたからだと思うのです。   例えば,うちではお金の問題が一番大きくて,あとはうちの母がシングルマザーできちんと育てられる自信がなかったというのもあると思うのですけれども,その辺りが法律で,養育費はこうですねというのがきちんと条件としてそろっていたら,うちの母は自分の幸せをもっと追求できたのかもしれないなとも思います。父は父でまた違った幸せ,我慢しない幸せというのがあったのかもしれないなと思うのです。   だから,決して離婚を推奨したいというつもりは全くないのですけれども,一方で,自分の職場の人たちの話を聞いても,やはり子どもがいると,子どもが成人するまでは我慢しなければと言っている人たちもとても多くて,でも,その辺の離婚をするということの条件がきちんと,お互いの条件を提示して,子どもに関してもきちんと話合いが付くような形が整えば,我慢をしなくてもいいという決断をできる人は増えるのかもしれないし,それによって,離婚をするリスクもあるし,離婚をしないリスクもあるのだとすると,子どもにとってもまた別の選択肢というのができ得るのかもしれないなと感じています。   なので,自分の経験で言うと,自分はとても運がよくて,そういう家庭環境の中でも,海外に出たりする機会を得ていろいろな家族像に触れることができて,モデルとするものを見付けることができたのですけれども,そうできない人もたくさんいるのかもしれないなという感覚を持っていて,家族の形をどう定めるのかという議論のときには,できるだけ自由な形というものができるといいなと漠然とは感じています。   これが15分ぐらいですかね。以上になります。ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   ここまで4人の方にお話を頂きましたが,ここで質問の時間に移りたいと思います。20分程度を予定しております。御質問がある委員,幹事の方は,まず御自分のお名前を言っていただいた上で,どなたに対する質問であるかということを示された上でお話を頂きたいと思います。   では,どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。 ○棚村委員 早稲田大学,棚村です。光本さん,今日も御自身の経験から,お子さんたちの相談支援に直接関わっているというお話で,非常に貴重なお話を伺えました。光本さん,それから星さんもそうなのですけれども,そういう御自身の経験を生かしながら率直なお話を聞けて,とても参考になりました。子どもたちから見て,どんな制度,あるいは支援が必要なのかというようなことで,特に日本で足りないのではないかという制度とか支援についてお話を伺えればと思います。また,Aさんについても全く同じで,子どもたちは割と冷静に大人の争いとか自分の置かれた状況を見ているのだということも非常によくわかりました。私の関わった別の調査研究でも子どもたちが大人の紛争から距離をとっているというケースも出てきて,子どもたちって結構賢いのだと思いました。厳しい状況の中でも,いろいろなことを見ながら,どうやって距離を置こうとか,どう対応しようかとか,かなり強いところもあるなという印象を持ちました。端的に,お三方には特に,子どものために今,日本で足りない制度,あるいは支援,こういうものをお話頂けると,参考になると思います。お願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。今,お三方とおっしゃったのは。 ○棚村委員 お子さんの立場からということです。 ○大村部会長 光本さんと星さんとAさん,3人ということですね。 ○棚村委員 はい。 ○大村部会長 では,順番に,一言ずつお願いいたします。 ○光本参考人 皆さんのお話を聞いて,多分重なるのかなと思うのですけれども,必要な制度,支援ということで言うと,まずはやはり,星さんもおっしゃっていたように,第三者の存在というのはすごく大きいと思います。私も星さんと同じで,学校の先生がすごくいい先生で,それで何とか今日まで来られたというところがありましたので,そういった第三者に話を聞いてもらえる,おうちのことについて親以外に話を聞いてもらえる第三者が見付かるか,見付からないかが,それこそ運みたいに今,なってしまっているので,そこが全ての子どもたちに出会えるという環境があることがまず必要かと思います。   それなりに大きくなった子どもたち,小学校高学年ぐらいからかなと思うのですけれども,に関しては,親を介さずに子どもに情報提供をするということも必要かなと思います。例えば,奨学金の制度であったりするものも,私なんかは親に先生が伝えていたのですけれども,親がはなから,もうこれは使っても無理ですということで,私にまで下りてこないということがすごくありましたので,私に直接伝えてもらってももう分かる年齢になっていたと思うので,そういったことをきちんと子どもに落として,子どもがどういうふうにしたら活用できるのかというのをその子どもが分かる言葉で伝えてあげられる,これは支援になるかなと思うのですけれども,そういったことが必要かなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   では,星さん。 ○星参考人 ありがとうございます。僕も光本さんとかなり意見が一緒なのですけれども,特に久保田さんのお話を聞いていて,ニューヨークマンハッタンのときの,学校にそういうカウンセラーがいるというのを聞いて結構衝撃を受けていまして,僕の中ではそれはめちゃくちゃあったらうれしかったなと思っています,子どもとして。僕も光本さんと一緒で,いい先生に出会えたのでよかったのですけれども,もっと確かに家庭のことを聴いてくれたりとかしてくれたらうれしかったし,親和性はあるのではないかなというのは思っています。   光本さんが軽く奨学金の話も触れられていたので,うちも正に先生から直接,僕の方に持ち掛けてくれたようなパターンで,高校時代に,うちはお金がないから学校に行けなくてという話を先生にしたら,奨学金という制度があるよといろいろ資料を用意してくれて,これで説得してみたらと言われて,自分で奨学金制度を持っていって親を説得するみたいな形で何とか学校に行けたので,本当にそういう,学校というのはすごく救いの場になるのではないかなというのは思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   Aさん,何かございましたらお願いします。 ○A参考人 私も同じような感じなのですけれども,うちの場合は面会交流のときに第三者,たまたまいる第三者だったのですけれども,そういった方が入ってくださるのがすごく私は有り難かったので,誰にでもそういう人が付くような,しかも,経済的に親同士が全く気にしなくて済むような第三者が入ってもらえると,すごく有り難いのかなと思います。父の立場でもなく,母の立場でもなく,子の立場で面会交流に寄り添ってくださる第三者が必要だと私は思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかの方々からも御発言ありますでしょうか。 ○赤石委員 ありがとうございます。皆さん,貴重な体験のお話ありがとうございました。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。   まず,光本参考人には,やはり親の離婚が子どもに負の連鎖をしてしまうというようなお話を伺ったのですけれども,状況が整えば負の連鎖というのは減らすことができるとお考えなのだろうと思うので,端的に何が必要なのかということをお教えいただければ有り難いです。   星様には,つらかったときというのは,やはり御両親が葛藤している状態のところがとてもつらくて,離婚成立時にほっとされたとおっしゃっていたのですけれども,やはりそういう葛藤時,親の離婚でショックを受けるということもいわれているのですけれども,それより前のときの方がおつらかったのかなと思うので,そこを少し確認したいと思います。   それから,Aさんには,進学などでお父様が口を挟んでこなかったのが,当たり前だと思っていたから,よかったと。離婚後の子どもの養育をめぐる話の中には,重要決定事項に関しては両親が関わるようなことも研究会の中で議論されているのですけれども,重要事項に関わられたらどうだったかということを少し教えていただければと思います。   それから,久保田様には,アメリカの離婚後の養育についてポジティブな面を御紹介くださってありがとうございます。私はそれほどアメリカに詳しくはないのですが,この間,『メイドの手帳』(最低賃金でトイレを掃除し「書くこと」で自らを救ったシングルマザーの物語)という本,バラク・オバマ前大統領が推薦文を書いているシングルマザーの生活についての本なのですが,そこで,引っ越すことにすごくためらいを持っていて,要するに,面会交流があるので,居所指定などがありますので,学びたい大学に行くために移らなければいけないというときに認められるのかどうか,ものすごく葛藤されている場面が出てきたのですが,こういった悩みを抱えている方のお話は聞いたことがなかったのかということを少しお話を聞かせていただければと思います。 ○大村部会長 それでは,また光本さんから順番にお願いできればと思います。お願いいたします。 ○光本参考人 ありがとうございます。赤石委員がおっしゃったように,親の離婚による負の影響というのはあるけれども,条件が整えばそういったことは減らせるというのは,おっしゃるとおりでありまして,それにはどんな条件が必要なのかということなのですけれども,まず,親の離婚の理由というか,なぜお父さん,お母さんが離婚をしたのかということであったりだとか,離婚をして,これから私たちの生活,子どもの生活というのがどういうふうになっていくのかということなどの,いろいろな子どもにまつわることというのがきちんと子どもが分かる状態になっているということが,まず一つ,必要かなと思います。   また,そういったことを,もう離婚するのだというのが子どもが分かって,それはしようがないのだなということが分かったとしても,やはり子どもの中には悲しみだったりだとか,場合によってはどちらかの親御さんに対して,何でそういうことをしたのだろうという憎しみの思いだったりだとか,いろいろなものがあると思うのですけれども,そういったことを子どもが整理できる場,どうしても親には言えないのですよね,なので,それを先ほどの第三者だったり,吐ける場所であったりだとか,あとは自分が夢中になれる,例えばスポーツであるだとか,絵を描くことであったりだとか,そういう何かにぶつけられる場ということでもいいのですけれども,何か吐ける場,ぶつける場というのが子どもにとってあるということの二つがまずあると,子どもは親の離婚を消化しやすいなというふうに,見ていて感じるところです。   そこから,最終的に親の離婚をマイナスの経験として捉え続けていくのか,それを糧として生きていくのかというところについては,やはり自分の人生をこれからどうしていくかというのを自分が主体となって決めていくことができるというところに関わってくると思いますので,その点で先ほどの,必要な情報が自分の手に入る環境,そういったことが条件として整えば,子どもが親の離婚の負の影響を受けたままに生きることというのがなくなるかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   では,星さん,お願いします。 ○星参考人 ありがとうございます。僕も,そうですね,離婚前の親の葛藤を見ているときのダメージと,あとは離婚時の喪失に関してどうだったかというところだと思うのですけれども,まず離婚時に僕もほっとした,親のけんかを見ているのがつらかったので,ほっとしたとは言ったのですけれども,それが心底,本当によかったなとほっとしたというよりは,諦めだったり喪失感を伴ったような感じです。ああ,よかったというよりは,これしかないよねみたいな,まあしようがないかみたいな,すごく悟ったような感覚に,すっと熱が冷めていった感じをめちゃくちゃ覚えています。なので,喪失したこともつらかったのを無理に抑えていたと思います。抑えていたのですけれども,呼び起こされてしまう瞬間というのが結構あって,特にそれが学校行事でした。母の日で,お母さんに手紙を書こうみたいなのとか,似顔絵を描いて贈ろうみたいなイベント事って結構あった,今はどうか分からないですけれども,結構あって,そのときに,自分は描く相手がいないのだなということをすごく直面させられる瞬間というのが結構,そういう要所,要所ですごく心に負荷が掛かっていたというのは思い出します,という感じです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,Aさん,お願いいたします。 ○A参考人 進路ですとか進学に関しての父の介入がもしあったらどうかという御質問だったかと思うのですけれども,進学とか進路ってその人の将来を決めるところになりますし,大変多感な時期に,しかも意外と時間がない中で決断を迫られることだと私は認識しております。そんな中,極端な話なのですけれども,一緒に住んでいる親ですら子どもの進路,進学についてそこまで口出しをする権利は私はないと思っています。ただ,それは経済的な問題が絡みますので,もちろんその親とはいろいろ議論をして相談をして,決めるべきだと思いますし,ある意味では,一緒に住んでいる親には口出しをする権利はある程度はあると思います。ただ,一緒に住んでいない親,しかも経済的な援助を一切していない親から何かを言われるというのは,父と母は離婚しているにもかかわらず,その中でまた意見の対立があると,子どもの心が揺れる問題でもありますし,自分と父との意見の葛藤とかにも悩まされますし,大変なストレスだったと思います。なので,私は,そうですね,経済的な問題がかなり大きくのし掛かってくるとは思うのですけれども,経済的な支援をしない親,しかも一緒に住んでいない親が進路や進学について,生活のことについて口出しをするのは,私は到底やってはいけないことだと思います。よろしいでしょうか。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   それでは,最後,久保田さん,お願いいたします。 ○久保田参考人 アメリカの実情という意味で,私がどこまで言えるのかというのは少し疑問があるのですけれども,私の友人の話を二つ御紹介したいと思います。まずは,協議離婚をするために頑張るのですね,どうも。というのは,裁判に入ると本当に泥沼化することが多いらしくて,どちらかの側がとにかく財産をできるだけ取るというような闘いになって,だから,その裁判に行かないように,協議離婚で何とかお互い歩み寄りながら条件を決めていくということが多いそうです。協議離婚で条件を決められるというのを離婚するときに目指すのだと友人が言っていたのを今,思い出しました。   その協議離婚で条件が整ったときに,例えば私の友人の場合は週末は夫,平日は妻というような配分だったのですけれども,ちょうど妻の側の私の友達が今,日本に帰国しようとしていまして,そうなった場合どうなるかというと,やはり移動することによって決めた条件から外れるわけですよね。つまり,平日自分が見るということができなくなってしまって,そうすると,やはりその取り決めた条件というのはとても大切なものなので,移動することによってそれができないとなると,やはり向こう側に有利に働く可能性はあると言っていました。今どうしようかと悩んでいるのですけれども,結局,夏休みはアメリカに戻って3か月お父さんといる,日本で学校生活,基盤は日本にして,9月から6月までいるという条件ができないかどうかという話合いをこれから始めると言っていたのですけれども,それはやはり協議離婚で決められたその基準からは外れるので,うまくいくかどうか分からないのだそうです。そうすると,やはり引っ越しをするということ自体のリスクは出てくると思いますし,制限はあると思います。それでは,友人の場合はどう決めるかというと,やはり子どもに決めさせると言っていました。最後は家族で話をして,今こういう状況で,お父さんはこういう状況で,あなたはどうしたいですかというところが一番最後の選択肢,決める材料になるだろうという話もしていました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今,挙手があったのは原田委員ですか。 ○原田委員 弁護士の原田です。いろいろなお話ありがとうございました。   光本さんにお伺いしたいのですけれども,先ほどのお話の中で,第三者を入れるのは親のためではなく,子どものためだと考えるべきだとおっしゃっていた中で,両親はいろいろな感情を子どものためにしまい込むといいますか,そういうような雰囲気のお話をされていたと思うのですけれども,やはり離婚から,離婚の原因にもいろいろよると思うのですが,非常に大きな葛藤がある場合に,子どものために冷静になれとか,あるいは子どものために親に徹しろと言われることはとても難しいことではないかと思うのですけれども,支援をされていた御経験で,そのように冷静になれる親御さんの方が多いのでしょうか。逆に,そういうことがあるからこそ第三者機関が必要だとおっしゃっているのか,その辺りを少し伺いたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,光本さん,お願いします。 ○光本参考人 すみません,今日は支援者としては参加をしていなかったので,そこは余り詳しく触れられなかったので,言葉が足りなかったかなと思うのですけれども,第三者を入れるのは親のためではなく,子どものために徹してほしいというお話をさせていただいたのは,支援現場に出ていて,おっしゃるように高葛藤というのですか,お父さん,お母さんが負の感情が強くて,当事者同士では面会交流ができないというケースで支援に来られる親御さんが大多数を占めております。   私が先ほどそのように申しましたのは,家庭裁判所を経て面会交流支援機関にたどり着くケースというのを私たち支援団体としては扱うわけなのですけれども,その際に,家庭裁判所で調停で話し合う中で,調停が何回も重なった上に,お父さん,お母さんの間で条件合意ができないから,多くの場合は同居親さんが面会交流をさせたくないとお話をされていて,別居親さんの方が面会交流をされたいということでお話しされるわけなのですけれども,その際に当事者同士でずっとその話が平行線になってしまった後,家庭裁判所の方で調停委員等から,では第三者機関を入れて面会交流すればいいのではないかという提案を受けることがあるというふうに多くのケースで聞いております。   その際に,家庭裁判所等で,子どものためには早期に面会交流を,子どもが会いたがっているケースなんかでは,早期にやった方がいいから,第三者機関を入れて始めた方がいいのではないですか,であるだとか,子どものことを考えると,お父さん,お母さんだと今,対立が深まってしまっているし,例えば裏で離婚調停もしているから,面会交流を自分たちでやったら争いが増えてしまいますよねということで,第三者機関を入れて一度冷静に,そこは向き合ってみたらどうですかとか,そういった御提案をしていただけるならいいなと思うのですけれども,どうやら今の段階では,お父さん,お母さんで話が付かないから,では第三者機関を使ってやってよというふうになっているのが正直なところ,現状かなと思いますので,それではなかなかお父さん,お母さんも納得して,本当に合意をして第三者機関にたどり着いているとはとてもいえないかなと思いますし,実際そのようにして来られた親御さんというのは,もう不満ばかりなのですよね。片方はすごく面会交流させたくないのに,第三者機関を入れてやれと言われましたということで渋々来られているし,片方は全然納得していないのだけれども,取りあえず子どもに会うにはこれしか方法がないみたいなのでということで,来られるというのが現状です。これはこの後,FPICさんなんかもお話しされるのかなと思うのですけれども,そういったことで,第三者機関を入れることで何とか親の話を進めましょうということだけの御提案というのは,やめていただきたいというと語弊があるのですけれども,そうではなくて,子どものことを考えて第三者機関という選択肢を提示していただくというのがいいのではないかなということで,発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   予定の時間になっているのですが,今津幹事から手が挙がっていますので,今津幹事からの御質問を受けて,お答えいただくというところまでやりたいと思います。 ○今津幹事 すみません,時間のない中で恐縮です。東北大学の今津と申します。私は裁判所の手続について研究をしているもので,その立場から少しお伺いしたいと思います。   こういった問題に取り組む場合,よく言われるのが,養育費とか面会交流の問題をどうするかというのを,よく我々の研究の中でも取り上げるのですけれども,私たちの頭でいうと,養育費というのは,例えば毎月幾らを定期的に支払う,あるいは面会交流だと毎月1回,あるいは毎月2回,どこどこで会うという形の交流をよく想定してしまうのですけれども,今日お伺いしていて,必ずしもそういう形だけではないのかなと,実態としてもそうでしょうし,子どもという立場からの御希望としても,そういう形に限定されるものではないのかなと,そういった感想を持ちました。   その上でお伺いしたいのですけれども,養育費,広く子どもの成長に関わる金銭的な支援の問題と,それから,金銭的以外の精神的な面での子どもの養育に携わる方法として,実際,御自身の経験でどういったことをされてきたか,あるいは,本当はこういうふうな関わりをしてほしかったなというようなことがもしお伺いできるのであれば,具体的な方法としてどういったものがあるか,お教えいただければなと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 どなたに対する御質問になりますか。 ○今津幹事 順番に皆さんにお伺いすることはできますでしょうか。 ○大村部会長 それでは,一言ずつ,一番印象に残ることを光本さんからお願いできればと思います。光本さん,星さん,それからAさんという順番で伺います。 ○光本参考人 この点については,先ほどAさんがおっしゃっていたことに私も共感するなと思ったのですけれども,やはり強制されたりだとか制限されるということが,取決めがなされてしまうと,起こり得ることなのかなと思います。それらというのは,やはり子どもにとってはすごくストレスかなと思います。会いたいときに会えないし,あとはお金も欲しいときに欲しい額もらえないというのですかね,そういったことも起きてくるかなと思いますので,その点は子どもにとってはなかなか決まっていないで,都度,両親が協議ができて,その場で子どもにとって一番いいのは何かなということで話合いがなされて実行されるというのが一番いいのかなと,理想としては思っています。   私の場合も,うちの両親は借金を理由に離婚をしておりますので,星さんと同じく養育費というのははなからないものというか,眼中にもないというか,そういった状態でおりました。ですので,毎月幾らという取決めが子どもにとってすごくいいように感じるというか,継続的な愛情として捉えるという側面ももしかしたら,経験していないので私自身は分からないのですが,あるのかもしれないのですけれども,私としては,多少のつながりというか,今月元気という連絡が来て,元気だよと返すとか,何か思ってくれているという感覚が持てるアクションがあれば,私はそれで納得していたところなので,それでいいのかなと思っているところです。   回答になっているかが不安なのですが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   では,星さん,お願いします。 ○星参考人 そうですね,僕も面会交流及び養育費というのは,受け取ってもいないし,やってもいなかった人間なので,経験しなかったので,かなり回答に困るのですけれども,そうですね,僕が子どもとして見ていたのは,親的に払えるのだったら払ってほしいとは思うのかなというところと,親の経済力によると思うのですね。あとは面会交流に関しても,本当に人によるのかな,あのときの僕がもし母親と会っていたら,当時結構,貧乏,お金がない上におやじの当たりもきつかったのを覚えているので,母親だけそこを抜け出して,でも会って,もしかしたら会うことで母親のことを意識してしまって,何で母親はうちにいてくれないのだろうとか思い始めてしまうのかな,とかも思ったりするので,こればかりは経験していないので何とも,たられば論なのですけれども,僕の場合は逆に,大人になって割り切れたタイミングで親に会えたことがすごくよかったなと思っているという感じです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,最後にAさん,お願いいたします。 ○A参考人 面会交流については,毎月この日とかと決められたりですとか,頻度が決められているのは,親にとっても子どもにとっても,生活がありますので,非常なストレスではないかなと思うのですけれども,養育費については,それも親の生活がある問題ではありますけれども,できれば,定期的ではないにしても,子どもの入学のお祝いですとか,何か節目,節目に祝ってくれているとかというだけでも,お金というものの存在はあるかなと思います。私自身,進学を少し制限されたところもありましたので,そうですね,お金と面会交流というのは大分違うものであると思います。お金がないと子どもは育ちませんので,そこは分けて考えるべきかなと思います。すみません,意見にはなっていないですが。 ○大村部会長 ありがとうございます。   まだ皆様の方から御質問等あろうと思いますけれども,大分時間が押しております。特にというお申出がなければ,ここで終了とさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,この第1のセッションについてはここまでとさせていただきます。   参考人の皆様におかれましては,大変お忙しい中を当部会の調査審議に御協力を頂きまして,誠にありがとうございます。貴重な御意見を頂きましたので,審議の中でいかしていきたいと考えております。重ねて御礼を申し上げます。   それでは,ここで10分休憩を取らせていただきます。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開いたしまして,引き続き参考人の皆様から御意見を頂戴したいと思います。   二つ目のグループということで,お二人の方にお話を伺いたいと思います。お一方,今日は匿名ということで,Bさんと呼ばせていただきます。それから,もう一方,ウェブ参加で北仲様にお話を頂くということを予定しておりますが,それぞれ順番に15分ぐらいお話を頂きまして,まとめて質問の方はその後にさせていただくということで進めさせていただきたいと存じます。   それでは,Bさんとお呼びいたしますけれども,どうぞよろしくお願いいたします。 ○B参考人 本日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介をさせていただきます。名前は匿名にて失礼いたします。私は都内在住,40代後半,2人の子どもを育てるシングルマザーです。 (以下,発言内容等に鑑み,発言要旨のみを掲載)  ・夫からの経済的DVと子どもへの暴言をきっかけに,離婚を決意した。 ・協議離婚で,母親(である自分)が親権を持つことになった。 ・離婚後,元夫からのDVや嫌がらせが悪化した。母親(である自分)への嫌がらせが目的で,親権は父親が持っていると嘘をつき,子どもの学校の退学手続を取ろうとするなどの被害を受けた。その結果,子どもは精神的に追い詰められ,苦しむこととなった。 ・子どもの幸せを考えられない親や,共同で話し合うことが難しい元夫婦がいることを認識してほしい。そのために,子どもに危険や悪影響が及ぶ可能性があることを理解してほしい。 ○大村部会長 ありがとうございました。大変貴重なお話を頂いて,感謝しております。   続きまして,ウェブの方で参加をしていただいている北仲様にお話を頂きたいと思います。北仲さん,どうぞよろしくお願いいたします。 ○北仲参考人 全国女性シェルターネットといって,全国でDVシェルターの民間団体をしている団体の全国組織で共同代表をしています北仲といいます。   DVというのは,夫婦や恋人などの親密な間にある人の虐待のことです。DVは男性から女性にするものだけをいうわけではなくて,性別を問わずに当てはまりますが,同時に加害者の圧倒的多くが男性です。これは女性問題というよりも,男性をDVをしてもいいと思わせて育ててしまう,この社会の構造を反映している問題ですので,国連などでは女性に対する暴力,あるいはジェンダーに基づく暴力という問題設定で論じられています。同時にこれは周辺的,逸脱的な事例なのではなくて,本当にたくさんの女性がこのことで人生を狂わされている問題だと思います。   DVというのは身体的暴力とイコールではなくて,支援の関係者の間では,それは支配とコントロールだというふうに見られています。様々な方法の暴力や,行動の監視,言葉であるとか,お金を渡さないであるとか,性的な暴力,子どもを使うなどのことによって,相手をペットか奴隷のように支配して,自己決定を奪っていくような構造を呼んでいます。   これはレジリエンスの中島幸子さんという人のイメージ図をお借りしているのですけれども,普通の対等な夫婦や恋人であれば,こういうイメージ図になります。二人がいて,その周りにも友人とか,実家の人とか,職場の関係者とか,いろいろな人間関係の関わりの中で私たちは生きていて,だけれども,この二人がお互い特別に大事な関係で,一緒に住みたい,一緒に時間を過ごしたいと思います。そうであれば,この二人は別々の,当然別の人格なわけですけれども,一緒に時間を過ごしているうちにお互いに影響を与えたりします。   しかし,DVの関係のイメージはこうです。片方がもう片方にいろいろと,自分の思うとおりするように命ずるようにする。だけれども,お互いに影響を与え合うとか心配し合うということではない。その中で,逆らうとすごくびっくりするようなことを言ったり,脅したり,暴力があったりするので,だんだん被害者の方は,好きで一緒に暮らしていたはずなのに,いつも相手を怒らせないように,怒らせないように,びくびく,どきどきして,自分は本当は何がしたかったのかとか,そういうことは分からなくなって,パワーが落ちていってしまうと。そして,ほかの人と関わるのも嫌がるので,周りの人間とも絶ってしまって,二人だけの支配関係になってしまう,こういうイメージで考えています。こういうイメージの関係になれば,そこに身体的暴力があってもなくてもDVだと我々支援者は考えています。   そこには身体的暴力や監視や,いわゆるモラルハラスメント,それから,一緒に暮らしていますので,経済的な問題や,それから,夫婦ですので性的な暴力というのがかなり伴います。   世間の人たちは,では別れたらいいではないかと思いがちなのですけれども,被害者は逃げられるはずがないと感じていたり,夫婦なので,相手が暴れていても,まだ相手のことを心配してしまったり,そして,ほかの人には話せないと,個人的なこととして隠していたり,それから,別れたら今後の生活のことや子どもの影響などが気掛かりで,いろいろな意味で別れられないというふうな心理になっています。   こちらに紹介しているのは,内閣府の過去の被害経験者への聴き取り調査から紹介していますけれども,かなり多くの人が同じような心理状況,助けてもらえるはずがないとか,知られたくないとか,相手にもいいところがあるとか,そういうふうに思っています。   同時に,加害者ですけれども,加害者は特に荒っぽい人とか,誰にでも殴り掛かるような人ではなくて,夫婦や恋人だから自分のものだというふうに,支配してもよいというふうな発想を持ちがちだといわれています。そして,愛情と独占,自分のコントロールというのを混同しているので,相手が別の人格であって別れたいと思っていると知ることが一番ショックな受け入れ難いことで,裏切られたと思ったりするので,何としても元のさやに戻りたいと,急に優しくなったり,あるいはどこまででも捜し出して連れ戻そうとしたりします。それが無理なら,更に激しい暴力になったり,別れ話のもつれ殺人事件が起きたりします。   ですから,DVの被害者支援は,どこに逃げているのか分からない,場所が内緒の場所に逃げ込む必要があって,シェルターと呼ばれているわけで,シェルターというのは世界中のDV被害者支援の合い言葉,キーワードのようになっています。そして,そういうDV被害者に対しては,私たちは,まず,これはDVなのではないか,別れてもいいのではないか,どうしたら別れることができるかという話をして,本人が自分の力で決めていくのを援助して,そして相手から安全に離れて,そして新しい生活を始める援助をして,もちろんけがや心のダメージを受けているので,治療というのも必要ですし,この逃げる過程で子どもが不安定になったりすることもありますが,それらが全部落ち着いてから,今度ようやく離婚の話の援助をして,全体の支援が終わるまでは何年も掛かります。   今回のテーマでありますDVと離婚についてですけれども,まず養育費についてです。お配りしている資料にありますように,母子家庭というのは一般的に非常に貧困だという数字が出ていますが,この中でもDV被害を受けて避難した母子というのは極度の厳しい貧困に苦しんでいます。なぜかというと,一つは養育費を受け取れないことが多いから,あるいは婚姻費用もうまく受け取れないことが多いからです。なぜなら,相手に接触したくないと,逃げることを優先しますし,加害者である夫の方も払わないことが多いです。養育費を払うなら居場所を明かせとか,子どもに会わせろというバーターにされるという話がいつも関係者の間から出てきます。そして,元々対等な話し合える関係にないので,元々幾ら毎月収入があったのかとか,貯金がどこに幾らあるのかというのを分からなくて,この交渉をするのが難しくなります。そこで,多くは養育費等をなかなか受け取れないまま逃げるわけですけれども,DV被害者の中には精神的なダメージを受けている人が多かったり,それから,住所を隠していたりするので,簡単にきちんと次のフルタイムの仕事につくというようなことが難しいという状況があります。   ですので,私たちDV被害者の支援者が考えることは,この養育費について当人同士の交渉ではなくて,確実に養育費を支払わせるような仕組みを国や自治体で設けてほしいということです。特に,額の取決めについても何らかの援助があった方がいいのではないかと思っています。そして,そのときに特に,居場所の開示や子どもの面会と養育費をバーターにしないで済むような方法というのを作っていただきたいと思います。   もう一つは,今申し上げたようなDVのケースというのは極端なごく一部のケースではないのではないかということです。このイメージ図なのですけれども,DVの相談支援センターに行って相談した証明が取れたりとか,あるいは保護命令が取れたりとかするような表面的なDVのケースが一部あると思います。それから,表向きは協議離婚をしていて,特にDVの相談センターに行ったりしていないけれども,実際はかなりDV的な関係の中で,もうとても一緒にいられないと思って別れている,いわゆる隠れDVのケースが相当程度あるのではないかと思います。それから,DVとはいわないかもしれないけれども,非常にお互いの不信感とか対立があって,とても話し合えない,一緒にいられない,一緒に子どもを育てられないと思って離婚するカップルというのも相当程度あるのではないでしょうか。   現在の調査などで,実際に協力や話合いができているカップルというのがもしかしたら2割程度あるのかもしれないと読み取ることができます。現在でも協力した子育てや話合いができている離婚カップルにとっては,これは殊更取決め制度というのは要りません。逆に,そうではないカップルに何か面会させろというような取決めを強いるのであれば,これはきっと恐ろしいことがたくさん起きるのではないかと心配しています。   DV被害者やその子どもにとっては,面会交流というのは,結局それはDV行為が続くことになります。現在でも日本中あちこちの裁判所や,あるいは相談した弁護士から,面会は原則実施ですからということを言われて非常に苦しんでいるという話が出てきています。それから,DVと主張しても,あるいはDVと認められても,面会交流を実施するように裁判所や弁護士などから言われるという声も届いています。そして,先ほども言いましたように,養育費とバーターにされているということがあります。お配りした資料1の方に支援者と,それから被害当事者からの声を紹介してありますので,お読みいただければと思います。   そして,子どもへの影響です。御存じのように,DVの家庭で育つ子どもは面前DVといわれて,児童虐待の子どもです。そして,同居中,それから避難した後に,そこから子どもたちが調子が悪くなるという話がたくさん出てきています。そのために母親も元気でどんどん仕事をするわけにもいかなくなったりするわけですけれども,現在のDV対策で,このことについての子どもの回復支援の施策というのはそれほどありません。ない中で,離婚した母子が苦しんでいます。   ですから,この面会交流については,特に子どもの状況や子どもの意思から判断することが重要で,しかも一旦決めたらずっとやるのではなくて,柔軟に判断して変更することも必要だと思います。とすると,離婚の子どもへの影響,特にDV的な離婚の子どもへの影響というものをどのように把握していくのか,どんな枠組みで判断していくのかということが,丁寧に論点を整理していただいて,議論していただきたいと本当に思っています。   そのほか,お配りしている資料の中の資料2は,2月に私どもが発表した性的DVについての資料です。性的DVについてもなかなか知られていませんが,かなり過酷な実態があって,性的DVの被害者というのはかなり回復も遅いというような話もありますので,お読みいただければと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   お二方からお話を伺いましたが,先ほどのセッションと同様に,御質問のある委員,幹事の方々は,御自分の名前と,それから,どなた宛ての御質問かということを示した上で御発言を頂ければと思います。時間が限られておりますので,すみませんけれども,質問は短めにしていただいて,お答えの方に時間を割けるようにということで進めさせていただければと思います。どなたからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○戒能委員 戒能と申します。今日はお話ししていただき,本当にありがとうございました。離婚が決まればもうそれで終わりという考え方が根強くある中で,実はそうではないと,離婚が決まった後大変なのだ,子どもに対しても本当に支援が,先ほど回復支援がないというお話がありましたけれども,子どもの状況にきちんと向き合って支援をするという制度もないということを,お話によってまた如実に明らかにしていただけたのではないかと思います。今振り返って,どういう支援,最初は区役所に相談なさったと,その後,一番大変なときに,こういう支援があったらなと,あるいは支援がなかったとか,そういう状況をお話ししていただければと思います。Bさんに対してです。お願いいたします。 ○大村部会長 それでは,お願いいたします。 ○B参考人  (以下,発言内容等に鑑み,発言要旨のみを掲載) ・区のDVの担当の部署に相談に行ったが解決しなかった。 ・誰にも助けてもらえないのではないかという気持ちに陥って,すごく悲しかった。 ・子どもを守るために向き合ってくださる方が近くにいたらよかったと思う。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   そのほか,落合委員,手が挙がっているかと思いますが,どうぞ。 ○落合委員 ありがとうございます。北仲さんに御質問なのですけれども,このDVケースを例外扱いにするべきではないというところでお示しくださったグラフですね,あれはすごく衝撃的であったと思うのです。ただ,余りそれの根拠についてお話しくださらなかったので,どうしてDVやそれに準じるケースはこのぐらいの割合という感じを持たれたのかという,少し根拠を伺いたいということです。   それから,北仲さん以外でも,DVとか離婚,あれは離婚したケースの中でという分類でしたので,離婚に関わっている方はこの会議に大勢出ていらっしゃると思いますので,その割合については大体どんな感じをお持ちかというのをほかの方にもお尋ねしたいと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,北仲さん,お願いをいたします。 ○北仲参考人 むしろこの2割の方は,今のひとり親家庭の調査などを参考にして,現在自分たちで面会交流のこととか養育について話し合えているという数字は出したのです。残りのこの割合については多分,研究がないと思うので,是非こういう観点で今後,研究とか調査をされるべきではないかなということで,イメージ図です,今日の場合は。 ○大村部会長 ありがとうございました。   フロアの方で,ごく簡単に補足。武田委員,御質問ですか,それとも今の件で。 ○武田委員 質問です。 ○大村部会長 少しお待ちください。   今の件について何か補足の発言をされる方がいたら伺いますが,赤石委員はそういう御趣旨ですね。 ○赤石委員 はい。昨年,家族法研究会にも提出した私どもの,しんぐるまざあず・ふぉーらむ,赤石です,すみません,最初に名のらなくて。しんぐるまざあず・ふぉーらむで五百数十人にアンケート調査した結果はもうお示ししていますが,またこちらにも提出しようと思っておりますが,それで協議離婚を経験した方の中でどの程度DVの割合があったかというと,今うろ覚えなのですが,半数近かったのです。これは再度調査してもそのくらい出るのですが,私どもの団体にアクセスしてくる方の特徴があるのかどうか,つまり標本調査ではないので,ということは分からないのですけれども,そのくらいの割合であったということはお伝えしておきたいと思います。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。また必要に応じて赤石委員データを出していただくということもあろうかと思いますが,その節はどうぞよろしくお願いいたします。 ○武田委員 親子の面会交流を実現する全国ネットワーク,武田でございます。Bさん,北仲さん,お二方双方に質問させていただきたいと思います。   まず,Bさんから,非常におつらい話をしていただきまして,本当にありがとうございました。本当にコメントができないぐらいのお話だったと思っています。Bさんの元御主人なのですけれども,二つお尋ねしたいことがありまして,ご結婚以来,元御主人が,お子さんに愛情をお示しになったような時期とか,そんなことはあったのか,なかったのかという観点を,お尋ねしたいと思います。あと,孤立する方を何か社会が手を差し伸べるためにどうすればよいのかということを,まず,Bさんにお伺いしたいと思います。 ○大村部会長 では,そこまでで一旦切りましょう。   お答えの方を,Bさん,お願いいたします。 ○B参考人  (以下,発言内容等に鑑み,発言要旨のみを掲載) ・子どもが生まれたときや小さい頃は幸せそうだった。子どものことはとてもかわいかったのだと思うが、彼はその表現の仕方がわからないとても不器用な人だった。 ○武田委員 そういうふうになったときに支える方みたいなのは,どういう方がいいだろうと。 ○B参考人  (以下,発言内容等に鑑み,発言要旨のみを掲載) ・離婚して一人になってしまった親への支援は,行政ではないかと思う。 ○大村部会長 ありがとうございます。   もう1問,北仲さん宛てに。手短にお願いします。 ○武田委員 分かりました。   北仲さん,貴重なお話ありがとうございました。簡潔に,1点だけ教えてください。いろいろDV,肉体的DV,精神的DVなど,いろいろ御説明があったかと思います。現状,北仲さんが現場で御支援されている中で感じておられる,それぞれのDVをどうアセスメントする,あと,いろいろ議論にも上がっておりますが,加害者の更生支援ということで求められるようなこと,それを少し教えていただければなと思います。 ○北仲参考人 後半の話からしますと,加害者に社会の誰かが,あなたのやっていることをやめた方がいいよと言うような仕組みというのが必要だと思います。今の日本では,かなりそれが少ない。たまたま警察が関わったときには警察が話すとか,保護命令の審尋の際に話すということがあるかもしれませんけれども,そういうのはごく一部のケースなので,誰もその間に入って,あなたのやっていることを少し見直して,その行動はやめた方がいいよと言う場面がないので,DVの加害者は次から次へと,その行動をやめられなかったり,また次のパートナーに対してもやめられなかったりするので,加害者の更生に対しては,まず,誰がそういうふうに,社会が伝えて,その中でカウンセリングとかプログラムというのにつないでいくかという,その仕組みが大事だなと思っています。   アセスメントについては,被害のダメージのアセスメントと,それから加害者の行動の危険性のアセスメントと両方あると思います。相談支援を受ける者は両方から見ていきます。加害者のアセスメントについては,もちろん一番危険なのは,海外でもいわれているような,首を絞めるであるとか,幾つかの兆候から,本当に殺人とかに至るようなアセスメントというのもありますし,日本ではまだ導入されていないので,早急に何らかの世界で使っている知見というのを日本に適用して,少しでも最悪のケースというのを防ぐべきかなと思っています。   同時に,被害者の方が本当にもう精神的に参っているとか,本当に自分で何も決められなくなっているとか,ひどい方は本当に精神的にもう乖離してしまっているような状況もあったり,また,子どもにとってもそれはよくない状況であったりすると思うので,その面からも,相手から離れるとか,何か治療を受けるというような必要の面からも判断するというふうな,両方の面をやっていて,私はDV支援だけではなくてハラスメント相談の仕事をしているので,やはりどちらがいい,悪いとか,どうするかというのを決める前に,決められなくなっているほど精神的に余裕がない方は,相手から離れてまず休もうと,休んで,本当は自分は何を大切にしたかったのか,相手から少し離れて考えましょうというようなことをよく提案したりしますので,そういう意味で,本当の事実がどうだったのかという前に,別居するとか,誰かと話し合うとかいうのも,被害者支援の立場からは大切かなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,赤石委員,短くお願いいたします。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。北仲さんに質問があるのですが,一つは,御自身がDVを受けているという認識をしていないで夫婦で暮らしているということがかなりあるのかどうかということです。私どもの相談でも,そういったいろいろな暴言とかを受けていても,自分が至らないからだと認識したまま,DVだと思っていらっしゃらない方がいるのですが,それはどの程度いらっしゃるのかどうかということが一つ。   それから,頂いた非公開資料,資料1の方で,お子さんに,DVがあればほとんど面前DVがあると思うのですが,今,裁判所ではこれが面会交流の阻害要因というか,ストップする要因になっていないような記述を拝見するのですが,その辺りの事情についてお話しください。 ○北仲参考人 まず一つ目ですけれども,ほとんど多くの人が,あまり自分がDVだと思っていない。他人が聞いたら,それはひどいことをされているよと,あなたは大変な目に遭っているよと思っても,私が悪いのだとか,私が怒らせるようなことをしたからとか,どんどん近視眼的になって,相手を怒らせないようにと,家族が円満に済むようにというふうな生活をしてしまうので,もう本当に多くの人がDVだと気付かないということが多いです。特に,殴られることがDVだというふうなイメージを持っていらっしゃる方が多くて,非常にひどい,レイプだとか妊娠と中絶を繰り返しているようなカップルとかであっても,特に性的DVとか精神的なDVについては,DVだと名前を付けずに離婚されるという方が多いと思うので,私のイメージでも,DVという名前の付いた相談センターに来て行動する人よりもずっと多くの人が,そういうふうな定義はせずに,別れるとか,あるいはそのまま暮らし続けるという人が多いと思っています。   もう一つは何でしたっけ。 ○赤石委員 面会交流で。 ○北仲参考人 面会交流ですね,はい。これは多分,地域によっても差があるようなのですけれども,地域によってかなり,原則実施だよというのを言われるという話を聞く地域と,いや,そうでもないよという地域があるようで,多分,調停委員や裁判官や,あるいは相談に乗った弁護士の助言にばらつきがあるのではないかなと思います。ですから,当事者からのアンケートの回答を見ても,裁判所で言われることもあるし,逆に自分の側の弁護士から,とにかくもうこれはしようがないから,DVがあったとしても面会交流なのですよと言われてつらかったという話も出てきているので,私は是非原則実施ということがかなりDVのケースでも言われてしまっているということと,先ほどの養育費バーターという話と,この二つがたくさん聞かれるということをお伝えしたいです。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。もしよろしければ,この第2のセッションをこのぐらいにさせていただきたいと思います。   ありがとうございました。参考人の皆様におかれましては,大変お忙しい中をお越しいただきまして,当部会の調査審議に御協力を頂きまして,誠にありがとうございました。御意見を参酌して,審議の中で役立てていきたいと思っております。重ねて御礼を申し上げます。   それでは,ここで参考人の方々の交代を行いますので,委員の皆様はしばらくお待ちいただければと思います。ここは休憩なしで続けさせていただきます。   それでは,ヒアリングを再開したいと思います。参考人の方,御交代を頂きまして,これから第3グループの方々,お二組,お三方をお迎えしております。まず,一組目が浅井様,それから,二組目が笠松様,山口様ということですが,それぞれお話を頂いた後で,質疑につきましてはこれまでと同様,まとめて行わせていただきたいと思います。   まず,浅井さんにお話を頂ければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○浅井参考人 よろしくお願いいたします。すみません,私の状況をこのままお話しさせていただくことで問題ないでしょうか。 ○大村部会長 お願いします。 ○浅井参考人 事前に皆様に,少し長くて恐縮ではございますが,私の今の状況というところで2点,資料を共有させていただいています。一つ目が文章の資料でございまして,私の基本的な情報とこれまでの経緯,それから,私のこの問題に関する意見というところでまとめさせていただきました。またもう1点は写真の資料でして,それにまつわる私の娘との一番最近の状況について,それが分かるような状況の写真を資料として共有させていただいています。   私は娘が1人おりまして,現在小学校6年生です。間もなく11歳と半年たつ娘,思春期の入口に立つ娘でございます。その娘が3歳になる本当に手前の3日前,私にとってはある日突然でした。夫にとっては,今思えば用意周到に連れ去られるということが起こりました。その中で本当にパニック状況の中で,当時私は法に関して,又は裁判制度というものに対して等,何の知識もない一般の市民でございましたので,裁判所に行けばどうにか助けていただけるのではないかという,その思いの一心で,まずは弁護士の先生を,少し周りの声も聞きながら探すというところからスタートした次第です。   ただ,実際に法テラスから始まって,皆さんに紹介を頂いたりして,いろいろな弁護士の先生方を訪ね歩いたところ,どの先生も口をそろえておっしゃったのが,どんな理由があったとしても,たとえだまされたとしても,あなたが向こうに親権を取られてしまった以上は,何をしてももう戻ってくることはないので,土下座をしてでも,小さい娘さんなのでしょうと,まだお母さんが必要な頃だから,会わせてもらいなさいと言われました。   私としてはもう,何も知識がない中で,本当に乗り込んででも娘を何とか取り返さねばと思ったのですけれども,必死でその弁護士の先生方は私のことを止められました。なぜかというと,連れ去り返しは本当に法律違反であり,それこそ捕まってしまうかもしれない,そうなれば本当に永遠の別れになってしまうかもしれないから,歯を食いしばって我慢しなさいと,そういうふうにおっしゃったのを覚えています。当時はもう本当に,娘のことを思えば必死でしたけれども,どうやって過ごしていたのかも正直よく覚えていませんし,もう青い空を見ることも難しくて,死んでしまいたいと思ったことが何度もありました。ただ,私の母,娘の祖母に当たる存在にすごく叱られまして,死んだら娘に会えない,しっかりしなさいと言われたこともいまだによく覚えていて,それが私のいまだに一番根幹にあります。   その中で,ようやく出会えた先生が,一番おかしいのは,私のケースですが,連れ去りの事情がおかしいと,要は,私はだまされて,うその事実を伝えられて,白紙の離婚届にサインをしてしまったのですけれども,それに夫が直ちに親権欄に自分の名前を書いて,それを区役所に当日提出したという流れで離婚が決定しました。よって,協議離婚でもなんでもなくて,何も協議しないままに虚偽の離婚が成立してしまったわけで,そもそもその原点を正さなくては親権を取り返せないので,そこからスタートしようと,ただ一人の先生だけがそこにスポットライトを当ててくださって,本当に親身になって私の娘と私の状況を救ってくださろうと立ち向かってくださいました。そのかいあって,家庭裁判所にて,この離婚は虚偽の離婚であり,何も話合いが行われていないので,取り消すことができると,そのような判決を頂きまして,最高裁まで行きましたが,結果,離婚は取り消されまして,親権を元に復すことができました。   ただ,その間,私の夫は,家裁の判決が出た後にほかの女性と再婚をしまして,子連れの女性と再婚をしまして,そこもいろいろとあったのですけれども,今日の本来の争点ではないと思いますので,内容に関しては割愛いたします。そんなこんながありまして,夫は今,後に結婚された女性と家庭を築き,更に新しく子どもも設けて,現在5人で暮らしているというのが,私の娘が今,置かれている状況です。   様々な裁判を起こしました。それは,娘の監護権の変更であったりとか,保全処分であったりとか,養子縁組の取消しであったりとか,もう本当に事情が錯綜しておりますが,その辺りのことは皆様,どうか共有させていただきました資料を御一読いただければ状況が分かるかと思いますので,そこのところはこの段階では少し割愛してお話をさせて,進めさせていただきたいと思います。   そんなこんなではございましたが,面会交流,これに関しても,夫は本来であれば二度と会わせたくないけれども,したとしても半年に一度,1回1時間,自分が立ち会うか,若しくは第三者の立会いの下にというのが私の前の夫の要望でした。ただ,そこはさすがに,調査官の調査報告の中にも,娘が私を慕っていることであったりとか,また,娘が小さく,母親と離れていることはよくないと,そこは書いていただくことができまして,ただ,高葛藤を理由に,2か月に一度,1回2時間,そのときは2時間でした,その後に3時間に増やしていただくことはできましたけれども,そして,第三者機関の立会いの下にと決定いたしまして,私としては到底そこで娘と私の絆が取り戻せる時間には全く十分ではないと思っていましたが,ここで争いをまた長々と進めて,さすがに私も裁判というものが遅々として進まないものだというのはもう理解していましたので,まずは第三者機関の方にお世話になって面会交流を再開しました。   そこで,娘は3歳になる直前に連れ去られていて,あとは陰ながら見ているばかりでしたけれども,娘が5歳のときに面会交流,第1回目を迎えることができました。その後は,家庭支援センターの皆様にお世話になりながら2か月に一度の面会交流を進めてきました。ただ,その中で,生活圏内に立ち入ってはいけない等の記載があったわけですけれども,私としては,やはり娘の無事を確認したいといったことがあり,娘に声を掛けたりということはありませんでしたが,時々学校に柱の陰から様子を見に言ったりですとか,お稽古事にお友達と行く様子を見に行ったりですとか,そういったことをしたことが何度かあり,ただ,運悪くそこに元夫に鉢合わせをしてしまうことがありまして,警察沙汰の大騒ぎをされ,本当に,やはり世の中の目というのは親権者でないという者に対しての目はとても厳しく,事情を知らない方々からは,母親なのに連れ去られているということは,何かしら私に問題があるのだという第一のバイアスが掛かった状態で最初は皆さん,関わっていらっしゃいますので,警察の方からも,最初の口調はとても厳しくて,何か私が犯罪を犯した犯人かのような,そういった御対応をされたということが私の経験上のお伝えできることではあります。   そんなこんなで,話を進めていきたいと思いますが,いろいろと,面会交流が一度頓挫したりですとか,様々なことはあったのですけれども,そこに第三者機関方のお口添えもあったりですとか,もろもろの弁護士の先生方の御協力もあり,面会交流が再開されることとなりました。相変わらず第三者機関を使用してというお話ではありましたが,どうしても人に見られながらですと,私の娘は天真爛漫に何でも思ったことが言えるタイプの子では元々ないばかりか,やはりそういった経験をしている子どもですので,何か気まずいことがあれば,分からない,忘れちゃった,若しくは黙るというのが私の娘の日々の態度でございますので,それを分かっていたので,私はもう裁判所の方にお願いをする,若しくは私の元夫の気持ちの成長に期待をするということをしていては,このまま娘が私に捨てられたとか,そういった虚偽の事実を信じてしまって,自分の中に自己否定を作り上げながら成長してしまうのではないかという危機感がありました。それであれば,もう自分でどうにかするしかないと,そういった気持ちを持つようになりまして,私は娘のすぐ近くに引っ越しをして,娘に面会交流のある日にそっと私の居場所を伝えました。でも,娘がそこに来てくれるという期待は正直,なく,ただ私がいつもどこにいるかが彼女が分かって,いつも彼女を思っているということが伝われば,少しでも彼女の心の中に安心感を伝えてあげることができると思いましたので,そのようなことをした次第です。   ところが,文面にも書かせていただいているのですが,娘はたった一度で私が伝えた私の居場所を理解しました。当時まだ小学校3年生でしたけれども,その家を探し当てて,私がポストに鍵を入れておくよと言ったことをきちんと覚えて,私が家に戻ってみると,彼女はある日,私の部屋で笑って,お帰りと言って待っていたのです。そんなことがありまして,娘が小学校3年生の終わり,4年生になる手前の春休みから,つい最近,ただいま6年生ですが,5年生の終わりまでですね,娘は,9月までですが,ほぼ,もう週に5回ぐらいですかね,学校が終わるとランドセルを投げ出して,夕方帰る時間まで私の家で過ごすようになっていました。何度も,やはり余り来てしまうと,元夫にそれが気付かれてしまうのではないかとか,娘がそれによって責め立てられるということは容易に想像できましたので,なるべく早く帰るように促したりですとか,本来でしたら当たり前にできるこの日常を隠し通さなくてはいけないし,娘にそれを言ってはいけないよと言うことは,本当に私の葛藤ではありました。何も悪いことをしているわけではありませんけれども,それをもう本当に責め立てる元夫の姿は簡単に想像できましたので,娘に,娘もそれをよく分かっていましたので,私たちはただひっそりと,この家が,隠れ家が,娘とのやり取りが,本当に見付からないようにということをいつも話している,そういう親子でした。   ところが,昨年の9月ですね,娘はどうしてもやはり私と過ごしていない時間も,成長につれて,携帯電話やiPadを使って私とLINEでやり取りができるということも覚えていましたので,それを家に持ち帰れば,会えない間にも夜もおやすみと言えて,朝もおはようと言える,そのことを理解していたのですね。なので,何度か私が目を離した隙にそれを持って帰ってしまうということが起きていまして,写真の資料にも共有させていただいたのですが,そうやって度々私に,間違えて持って帰ってしまったと,見付からないように気を付けるからといってLINEをくれたりすることがあるようになりました。私も気を付けてあげればよかったし,どうにかして持ち帰らせなければよかったなと,そんなふうに思っていますが,過去のたらればを言っても何も取り消せませんので,そこはもう致し方がありません。   案の定,それは見付かってしまい,大騒ぎとなり,そのときはもう家庭支援センターの皆様ではなく,違う民間の第三者機関の皆さんにお世話になっていたのですが,そちらにもすごく,なぜ監視していなかったのかというふうにやくざまがいに電話を掛けて脅迫をしたりとか,そういったようなことを元夫はしまして,面会交流はもちろんなくなってしまいましたし,そればかりか,元夫は私のことを,そもそもよくは言っていなかったようですが,実はこれまでは娘が傷付くと思って言っていなかったけれども,お前の母親はお前を2歳のときに,ずっと虐待をしていたし,最後にはインフルエンザに掛かったのに一人置き去りにして遊びに行ったりとか,そういうことを日常茶飯事にしている母親だったのだと,実際証拠もあるといって,裁判所には何度も私の「虐待の証拠」として彼が提出していた,2歳だった娘が言うことを聞かなくて叱り付けている映像を彼は携帯電話で隠し撮りをしていたのですけれども,それを娘に見せて,これが証拠だと説明をしたそうです。   娘はそんな,私に叱られた記憶など全くないものですから,その映像に相当衝撃を受けたようですし,それをすっかり信じてしまったのかどうか定かではありませんが,とある日,全然態度が変わってしまいましたので,話し掛けて尋ねると,お父さんにそういうふうに言われたと。ですので,あなたはその虐待をして私を捨てたのであって,もうお母さんではないので話し掛けないでください,消えてくださいと,まるで元夫に刷り込まれたことをそのまま繰り返しているかのような口調でそう言いました。ただ,私の娘はとても優しい子ですから,それを言ったこと自体に傷付いていると思います。本当にまだ子どもですので,小さな小さな自己防衛の気持ちでそのような発言をしたのだと思っています。   何が問題かといえば,このように娘はうそをついてまで私に会いたかったのですね。うそをついたのではないです,言えなかったのです。言って何か大変なことが起こるというのは娘は分かっていましたので,言えずに私に会いに来ていました。私は娘を捨てたことは一度もありませんし,思わなかった日は一度もありません。脅迫されてだまされて連れていかれたということがなぜ容認されるのか,いまだに理解に苦しんでいる状況です。ただ,過去のことをいろいろと言っても仕方がないと思っています。ただし,これからもそういった同じような事例が起きたときに,また同じように,連れ去っても,その場に慣れてしまったから,その場に慣れてしまったというのは,私の感覚からいえば遅々として進まない裁判の中に時間が経過して,連れ去り後にその家庭で過ごしたという実績が積まれただけのことであって,私が何もしなかったわけでもないし,ではどうしたらよかったのか逆に教えてほしいというのが私のケースにおける私の感じ方でございます。   娘に関して,そこにいるのが子の福祉かといえば,そうではないと思います。現在,結局私の元夫は全く成長することはできず,自分のしたことも反省することもできず,娘に自分の感情を押し付けて,自分の言うとおりにしなかったからといって激高しているというのが現状でございます。そして,いろいろと複雑な状況ではございますが,私の元夫は再婚をして,今現状,5人家族で家庭を築いているわけですが,ひょんなことから私はその後妻の方とLINEでやり取りをしたり,直接話す機会もございまして,彼女自身は御理解のある方で,娘が私に会えないことはちっともいいことではないし,親がいがみ合っていてどうするのだと,いつもそういうふうにおっしゃっています。ただ,そのことによって今度は,私と話したということが元夫の耳に入り,家庭内で激高し,非常に気まずい家庭の雰囲気になっているとつい先日連絡を受けまして,そうやって親の権利を元夫に与えたことにより,私だけでなく,娘だけでなく,その後に知り合ったその方々にまでその剣をかざしている状態なのだということを思えば,いろいろなケースがあると思います,もちろん本当にDVを受けていて,命からがらに逃げた方にとっては,今の現行の状況が,現行の法が守ってくれている状況であれば,それを変えるということは非常に抵抗があるというのはもちろん理解しています。同じ女性として,母親として,そういったケースもあるだろうと想像します。ただ,一方で,真逆の立場で,子の福祉とは真逆の方向に行っている我々のような存在がたくさんいるということを知っていただきたい,そのように思います。見なかったことにしないでいただきたいです。   もちろん,ではどのように法を制定すればよいのかというのは,本当に簡単な問題ではないかとは思いますけれども,例えば,そういったDVが厳しいというのであれば,そこの法律をもっと厚みを増すというか,改善をするというか,そういったところを検討していただいて,その上で本当に,もう決まっているから,法律としてこうだから,もう本当に判を押したように現状維持を続けて,そして面会交流は1回2時間といったような決まり切った判決を出す,そうではなく,やはり法の決まりを改善することにより,裁判官がその法律をうまく活用しながら,その一人一人のお子さんの福祉にかなった判決を出していただけるような,そんな現場を作り出していただくことが非常に重要なのではないかと私は感じています。   現状,私自身,個人の話で申し上げましたら,娘とは全く話ができていない状況です。ただ,娘がどこで何をしているかというのは,その過去の娘の話から全て分かっていますので,また同じです,二度目の連れ去りに遭ったような気持ちでありますけれども,柱の陰からでも娘の姿をいつも見詰めていますし,私が生きていて,ここにいて,いつでもあの子のことを思っているという心の最後の支えにしてもらえたらと,そんなふうに思って日々過ごして,娘の目の入るところに姿を現したりということはしている状況ではございます。日々,お母さんとして当たり前に食事を作ったり,学校での日常の出来事を聞くような,そんな機会は一生奪われてはしまいましたけれども,心の中の一番の安心感のあるお母さんでいたいという思いは変わることはありません。今後も未来を諦めることも決してないです。ですので,本当に,私のケースには適用されないのかもしれませんけれども,この世の中が,その決まりというものが全く見直されないということで苦しみ続ける人がいるのであれば,そこを真摯に検討していただいて,改善の道に進むということを心から願ってやみません。   すみません,長くなりました。以上です。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。貴重なお話を伺いました。   続きまして,笠松さんと山口さんからお話を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○笠松参考人 公益社団法人家庭問題情報センター,FPICの笠松でございます。本日はこのような場で家庭問題情報センターの当事者支援について御報告する機会を与えていただき,誠にありがとうございます。座ったまま失礼いたします。   お手元に事業概要についての資料をお届けしておりますが,FPICは行動科学の知見をいかして,家庭裁判所の家事事件,少年事件に従事してまいりました家庭裁判所調査官が中心になりまして,平成5年に設立した団体でございます。平成23年に公益社団法人として認可され,現在,全国の12の相談室で活動をしております。私どもの当事者支援は,面会交流支援や,厚労省から事業委託を受けて実施しております養育費相談支援のほか,家庭問題に関する一般的な相談,ADR調停,成年,未成年後見など多岐にわたっております。内容についてはお手元にあります,この「ご案内」というものがございます,この中に事業として扱っておりますものを書いてございます。   本日は主として,養育費及び面会交流に関する相談や支援から見た,子どものいる夫婦の離婚の実情について御報告させていただきます。まず,養育費に関する相談から見た実情について,離婚前後の問題状況,離婚後の問題状況の時系列で御報告いたします。   養育費相談支援センターで受けている相談件数はここ10年間,ほぼ6,000件前後で推移しております。養育費相談支援センターについては,同じくお手元にお届けしておりますこちらのパンフレット,これを御参考にしていただければと思っております。   離婚時の取決めや養育費の金額に関する相談が4割程度で最も多いというのは変わらないのですけれども,近年は経済状況を反映しているのか,不履行や強制執行に関する相談が増えています。   また,平成23年の民法改正後,面会交流に関する相談が増えています。養育費相談支援センターの相談を利用される方々には,裁判所の利用を経験されている方もいらっしゃいますが,多くは,これから離婚を考えている方や既に協議離婚をした方であり,非常に幅広い様々な皆様です。後で述べます面会交流支援の対象である父母は,子どもと交流を持ちたい,養育に関わっていきたいという父母の関係ですけれども,養育費相談支援センターで養育費についての相談を利用する方々の場合は,子どもに関心を示さず連絡さえ絶っていく親,多くはお父さんたちですけれども,現実にはそういうお父さんたちが非常に多く,後になって養育費の支払を求める際の障害となっていると感じております。   まず,取決めについてですが,取決めを困難にしている理由の大きなものとして,相手と関わりたくないというものがあります。必ずしもDVだけが理由ではなく,面会交流と交換条件にされているのが困るというもの,相手に対する不信感や,収入が低いためどうせ履行されないだろうと思ったというもの,逆に,本当に子どものために使われるのか不安があるというもの,養育費を払うくらいなら親権を要求すると言われた,などというのもあります。また,調停については裁判所の敷居が高いという印象を持っている人も少なくありません。   父母間で協議ができない理由については,統計的な整理をしていませんし,相談者からだけの情報という制約がありますが,DVが日常的にある,モラルハラスメントを受けている,相手は人の話を聞こうとしない,何についても自分中心であるという方が男女ともにあります。したがって,夫婦間のコミュニケーションが十分とはいえないのではないか,また子どもの心身への影響や離婚に関する情報の不足を強く感じ,離婚前後の取決めの時点で適切に父母双方が話し合うことができるような環境や支援が乏しい実情があるように思われます。   次に,離婚後の相談では,今からでも取決めができるのか,関わりたくないと思ったが,子育てで生活が苦しくなり,改めて請求したい,また,口頭で約束しただけで一度も支払われないなど,離婚時にきちんと取決めができていないことが離婚後になって尾を引いている相談が少なくありません。また,調停や公正証書による取決めがあるにもかかわらず,すぐに履行されなくなったという相談や,再婚や転職などを理由とした減額,増額に関する相談も多く,特にコロナ禍で不払や減額に関する相談が増えていると感じています。   一方,別居親からは,養育費を払っているのに一度も子どもに会わせてくれないといった相談があります。面会交流に関してはほかにも,交流の場に別居親が祖父母を同席させたがる,別居親が交際相手を連れてくるなど,面会交流のルールや約束をきちんと決めなかったための争いに関する相談が少なくありません。また,最初はよかったが,だんだん子どもが別居親を嫌がるようになったという相談もあり,時間の経過とともに問題がシフトしていくことも少なくありません。   このような養育費に関する相談からは,離婚前後の段階から離婚後に至るまで,夫婦の離婚という問題にこだわって子どものことが置き去りにされているという印象が強く,離婚の争いがいつまでも続いていて,養育費,面会交流,親権等がその取引材料になっているなど,親同士としての話合いや本当の意味での協議が行われていないと感じています。なぜ子どものいる父母が自分たちの離婚問題にこだわって,子どもの問題を切り離して考えることができないのか,その理由を解明することは難しいことです。背景としては,親の離婚の子どもへの影響が問題視されるのが欧米等に比べると歴史的に日が浅く,家庭の中のことについて触れられないようにされてきたといえるのではないか,協議離婚という形で事を荒立てないで解決することをよしとしてきた傾向もあるのではないかと感じます。また,子どもを独立した人格として捉えず,自分と一心同体,子どもを自分のものと考えがちであることや,夫婦としての関係が悪くなっても子どもの父親,母親としての関係を再構築しなければならないという意識が不足しているともいえましょう。このようなことを見ると,離婚を考えている両親への早期の親ガイダンスや個別の相談といった支援が求められているように感じています。   次に,面会交流支援の実務から見える子どもや親たちの実情,また,それに対してどのようなことに注意して支援に当たっているかについて御報告いたします。FPICの面会交流支援は,平成8年頃から一般相談の延長として実施してきましたが,平成16年以降,正式な公益事業として実施してきました。この10年間の新受件数の推移について,全国の相談室の合計を見ますと,平成23年が234件だったのに対し,令和元年度には455件と2倍になっており,令和元年度の総支援回数は6,132回となっています。   このように面会交流の支援の申込みが増えたのは,やはり平成23年の民法改正による影響が大きいと思いますが,量的な増加だけでなく,支援が困難な事例も急速に増えてきており,様々なタイプの親子の面会交流を支援しています。お手元に「面会交流支援の案内,FPICルール」というパンフレットもお届けしておりますので,支援の中身についてはこのパンフレットをご参照になっていただければを思います。   FPICでは面会交流支援を開始するために,事前に両親別々にお会いして私どもの支援内容やルールを説明した上で,両親双方がFPICを利用して面会交流をするという合意をされた場合に,両親のそれぞれと支援契約を結びます。FPICを利用されるケースのほとんどは,面会交流の実施について多かれ少なかれ紛争の経緯があり,自分たちだけで主体的に面会交流をすることができないために,支援をさせていただいています。したがって,調停,あるいは代理人弁護士を介しての話合いによる合意がある場合だけでなく,審判や判決によって面会交流をすることになったケースが多く,支援の開始段階では多分に紛争性を残したまま,あるいは訴訟中のまま支援を開始するということも少なくありません。最近では,子の監護者の指定,子の引渡しを裁判所で求めたケースも増えてきているように感じています。ですので,私どもが支援する事案は父母の葛藤が高いケースが非常に多いということがいえると思います。このため,支援に当たっては,このような父母間の紛争性をよく理解し,父母それぞれの思いに十分な配慮をすることが必要となります。   一方,子どもたちの様子も極めて多様です。年齢も含めた一人一人の子どもの発達状況をよく観察する必要があります。兄弟関係も様々であり,保育園などでの集団生活を経験しているかどうか,また,両親の紛争をいつからどのように体験していたのか,両親の別居後,それぞれの親とどのような関わりがあったのかなどが支援を続けるうちに分かり,それにつれて支援の在り方を工夫していくことになります。   父母の離婚の事案においては,子どもの意見,意向の把握ということを言われることがありますが,これは実は容易なことではありません。子どもの心情は流動的であり,多層な面をもって構成されていると言ってもいいのではないでしょうか。父母間の葛藤のはざまに置かれた子どもは,程度の差はあれ板挟みの状態,忠誠心葛藤に翻弄されています。一つの時点においての発言をもって,これが子どもの意向と判断することは難しく,経過の中で揺れ動いていく,変化していくということも考えておかなくてはいけないと感じています。子どものときに自分が意見を言ったことが両親の離婚に影響を与えたのではないかと大人になっても悩み続けた方の実例もあります。子どもが意見を言える機会を尊重する,ただし子どもには決めさせない,子どもに責任を取らせないことも重要であると考えています。   また,支援に当たっては,両親それぞれの個性や人間関係の持ち方,子どもとの接し方の特徴などにも配慮して関わっていくことが求められます。別居親と別居してから親子の面会が再開するまでの期間については,短い場合で数か月から半年,中には1年,2年ぶりに別居親と会うという子どもも少なくありません。しかし,見ていると子どもたちは様々な行動や表情を見せます。同居親が席を離れた途端に泣き出す子どももいます。見慣れぬおもちゃに好奇心一杯で,同居親の離席をも意に介さない子どももいます。決して面会親と視線を合わせまいとする子ども,口をへの字に結んで一言も発せず,黙々とプラレールで遊ぶ子どももいます。そのような子どもがふとしたきっかけで別居親と自然に遊ぶようになり,いつの間にやら別居親に肩車をしてもらって大喜びということもあります。   別居親との面会の回数や期間も様々です。1年,2年と支援を続けて,次第に両親が協力して,自分たちだけで面会交流ができるようになるケースは少なくありません。しかし,年に1回だけの面会であっても,やあ,元気だったと何の抵抗もなく交流が始まり,ではまたねと別れていく,そんな交流を続けているケースもあります。そうかと思うと,面会交流の継続に支障が生じて度々中断したり,結局は続かなくなって支援中止で終わるケースもあります。   このように,一口に子どもに寄り添うといっても,子どもの多様性や時間的な発達,親子関係の変化を見逃さないよう配慮して支援を続けることが求められます。絶えず変わっていく子ども,また,その子どもは面会交流のあるなしにかかわらず成長していくということをも念頭に,子どものための面会交流という視点で考えた場合,子どもにとって無理がなく,負担がなく,子どもの笑顔が伴う継続できる面会交流という観点が重要ではないかと考えています。   支援の過程で困難を感じるケースの中には,父母の紛争に子どもが長期間にわたって巻き込まれていく場合や,面会交流が父母の紛争解決の取引材料になっている場合があります。特に,これまでの紛争の中でDVが問題になっている場合は,適切な支援が難しいことが少なくありません。また,DVが父母間の大きな問題になっていたといっても,そもそもDVの有無について双方の主張に隔たりがあるなど,実態は様々であり,支援者にとって事実関係がはっきり分からないことが少なくないのが実情です。ですから私たちは,DVが父母の紛争の背景にあるという情報があっても,両親から事実関係を確認したり,双方の主張を問いただしたりすることは決してしません。DV問題にかかわらず,父母間の争いの中に分け入って調整することは私たちの役目ではないからです。   支援者としては,とにかく目の前の子どもが別居親と少しでもよい時間が過ごせることを第一に考えて支援を続けます。その過程では,パパとママを仲直りさせようとする子どももいれば,最後まで別居親に近付かなかった子どももいます。また,ママに暴力を振るった別居親をたしなめた子どもに別居親が謝って面会交流が進展したケースなど,様々です。私たちはこのような様々な子どもや両親と出会い,困難な経験を積み重ねて,子どもが主人公となる面会交流ができるにはどうしたらいいか,日々悩みながら支援を続けています。   このようなFPICの長い支援の経験から,離婚前に親の離婚や紛争に巻き込まれる子どもたちの心や体のことを父母にあらかじめよく考えてもらう機会や情報が提供されることが何より必要であると感じるようになりました。そして,平成28年,厚生労働省から「親子の面会交流の円滑な実施に関する調査研究」を委託したのをきっかけに,かるがもミニセミナーを始めました。東京相談室では現在,毎月1回ないし2回,1回当たり2時間開催し,毎回5,6人のお父さんやお母さんが参加されます。面会交流支援を通して子どもたちがつぶやいた言葉を子どもの詩の形にし,解説を加えた,子どもからのお願い,離婚・別居後のお父さん・お母さんへというテキストを用いて,子どもの気持ちを考えていただく参加学習型のセミナーです。   実物はこのテキストですが,お手元にプリントしていただいたものがございます。このテキストの解説の中で,DVについてのところに,両親とも加害者ですという表現があり,御批判も頂いております。これは,家庭の中に暴力の存在があれば,受け手の反応についても子どもたちが体験し,両親どちらからも子どもたちへの影響を及ぼしているという意味であり,セミナーではファシリテーターが丁寧にこの点について説明をしております。   最初は面会交流支援中の父母に参加を呼び掛けていたのですが,今では一般の父母の方も参加されるようになり,早くこのようなガイダンスを受けたかったという声が寄せられるようになりました。一部自治体等で同様の取組を始められていますが,離婚を考えている方々に早い段階での子どもの視線を重視した両親へのガイダンスの場が広まることを望んでおります。   日本の離婚問題については,制度についての検討と同時に,離婚前後の父母に対する社会的支援のシステムの整備と充実が喫緊の課題であり,支援を専門的に支えることができる人材の育成も重要な問題であると痛感している次第でございます。御清聴ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   お二方からお話を頂きましたので,これから委員,幹事からの質問をお受けしたいと思います。先ほどまでと同じで,御自身の名前と,それから,どなたに対する質問であるかということを示した上で御発言を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。いかがでしょうか。 ○原田委員 弁護士の原田と申します。浅井様に,本当に大変な状況で御苦労されている様子に本当に胸が痛いのですけれども,ある意味,DVで子どもを連れて逃げてしまった人と,DVで追い出された人という,同じような共通の問題があるのではないかと思うのですけれども,浅井さんのレジュメの最後の方に,片親制度という決まり事がこういう問題を生んでいるというか,それが変わらないのがどうかという御提案があったように思うのですけれども,こういうケースでお二人で話し合って共同して子どもを育てるということが見込めると思われますか。私はどちらかというと,そういうお子さんの状態とか御夫婦の判断をする人がもっとよく見ていないことの方が問題なのではないかと感じているのですけれども,いかがでしょうか。 ○浅井参考人 私のケースになりますけれども,面会交流が細々とでも実施がかなったことなどの理由というのは,私の元夫は権威にとても弱いことがございまして,決められたことは守らないと自分の正しさが皆さんに証明できないということが非常に彼の中では問題のようで,面会交流はこうしなくてはならない,裁判中だったということもありますけれども,そういったことに関しては最低限守るように自分の弁護士の先生に諭されて,それが実施されたということがありました。   ですので,決まり事が片親ではなく共同で,どちらも親であるという決まり事が前提として話が進んだときに,それはそういうものだという認識があれば,葛藤は変わらないと思いますし,正直,我々のようなケースで信頼関係を築くというのは非常に不可能に近いことだとは思いますが,それとは別に,その制度が助けてくれるものだと認識をします。また,一方で今,後妻の方と私はお話をするチャンスがあるのですけれども,彼女も非常に苦しんでいて,例えば共同養育というのが前提であれば,世の中の決まりとしてこういうことがあるのだから,やはりそこを守りながら娘の幸せを考えるべきではないかという,そういった発言がきっと彼女も今,現状できるのではないかと想像していて,そういった意味では,私のケースにはなりますが,それは片親制度というものが非常に大きな阻害になっていると認識しています。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○菅原委員 貴重なお話ありがとうございました。FPIC様にお伺いしてよろしいでしょうか。お願いいたします。   非常に丁寧な支援をされていらっしゃることがよく分かったのですけれども,1点,大変失礼ながら,かなりやはり支援を受ける側の方にある程度支出が伴うというところで,経済的に可能な方がアクセスされているのかなというイメージを若干持ったのですけれども,その辺りはどうなのかということと,そういうコストに関してどういう支援があれば,もっと多くの人が利用できるようになるのかということについてのお考えを伺いたいのが一つです。   もう一つは,こうした第三者の支援機関というところで,子ども,お父さん,お母さんの三者の調整というところが非常に重要になってくると思うのですけれども,その専門職として,支援機関には理想的にはどういうスタッフがいるのがよいとお考えかお聞かせいただければと思います。   以上です。お願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。では,2点お願いいたします。 ○笠松参考人 コストの点では,公益社団法人でございますので,余剰がないために,当事者の方々に負担していただかざるを得ない状況になっております。私ども一部自治体からの委託で,公的支援の入った面会交流の支援も委託,受託ということでやっておりますけれども,それだとやはり広く皆さんへの支援を拡充するということで,1年間だけという形の支援になっております。それでも1年間やって,その後は御自分たちでやっていくという自立につながるケースでもありますので,最初のうちだけでも支援があるということは大切なことなのではないかと感じています。   それと,専門機関としてのスタッフの経験ですけれども,やはりこの,強調したつもりでおりましたが,やはり子どものそれぞれの特性と,それから,父母のやはり葛藤が高いケースというという特徴がございますので,父母の家庭の問題に関する解決についての経験のある者というのが私どもの支援者の土台でございますけれども,そういった知見というのは必要ではないかと感じております。 ○菅原委員 ありがとうございました。 ○山口参考人 付け加えさせていただいてよろしいでしょうか。FPICの山口でございます。   費用の問題ですが,実はFPICの支援を始めさせていただいたときから実は価格を上げないでやってまいりました。ぎりぎり限界のところでやっておりまして,そういう意味では公的な支援,少なくとも支援者の養成に関わるような費用だけでもどこかで出ることがあれば,私たちは非常に助かるという思いがございます。加えて,面会交流支援についての公的な助成,特に今,笠松さんの方から話させていただいたように,せめて初期段階,スタート支援についてだけでも,公的な公共団体なり公的な支援の下に,もう少し充実した形でできれば多くの方が助かるのではないか,スターと支援がないから,面会交流の初期について葛藤を残したまま無理な失敗をされて,私どものケースの対象になる方もたくさんおられまして,そういうことをしみじみ感じているところでございます。是非そういう形でお話が進んでいくことを願っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほかに。それでは,赤石委員,池田委員,戒能委員という順番で。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。浅井様にまずお聞きしたいのですけれども,今日はありがとうございました。本当に母親としてお子さんと会えないということがどれだけつらいかというのは想像して余りあるところがございます。お話ありがとうございました。経過のところで,お聞きしたいのですけれども,離婚が詐欺で虚偽であったということが決まった後の親権者が決まったときに,調査官調査ですとか裁判所の対応で何か御納得がいかないところがあったのかどうか,やはりそこの筋が少し,もちろんその間,お父さんの側にいらしたということで,それを考慮したのかなと思うのですけれども,どのようにお考えかということ。   それから,もう一つはお子さんが大きくなっていって,これから進路ですとかいろいろなところで,今検討されている中には,検討されているかどうか分からない,検討が検討されているところでは,進路についてとか,そういうのを共同で決めたらどうか,みたいな話がございますけれども,お子さんと会えなかったりしたときに,父親側,同居親の側が決めたことを,全て情報がないところであなたの方がやはり譲ることになることがあるかと思うのですけれども,そういうことは御覚悟されていらっしゃるのかどうかということをお聞きしたいと思います。 ○浅井参考人 ありがとうございます。まず1点目ですが,監護権,親権の決定の際に関して私が納得いかなかったところという点なのですけれども,正直,全てのことが納得がいかないというのが前提ではあるのですが,まず,裁判官は,判決文の中に明示されていましたし,裁判の最中にも何度となくおっしゃっていたことに,連れ去りというものが違法であり,それを計画的に行ったことによって娘が分離不安に陥って,まだ本当に3歳にも満たない幼い子どもを無理やり引き離して,当初は母親は最初は死んだと娘には伝えていたと調査官報告には書かれていました。その後,少し娘が,3歳,4歳ぐらいになったときに,ママは死んだのでしょうと言ったら,今度は,いやいや,本当は死んだのではなくて,君を捨てて出ていってしまったのだよと伝えたというようなことが書いてあって,それ以降,娘はママに嫌われているのよねと言っていたというようなことも祖母の証言として書かれていました。それに対して非常に問題であると裁判官はおっしゃっていましたし,その時点で親の資格がないともいえると明言されていらっしゃいました。ただ,実際に判決の中においては,そういう理由があったとしても,結局その裁判の判決が出るまでに2年と長い時間がたっているわけですけれども,その中で子どもはその環境になじみ,現状というところをまた,一度ならず二度までも親から引き離すということは,娘に不安を与えて,子の福祉にかなわないというのが判決の理由でありました。   ただ,私は一度ならず二度までも引き離すのではなく,取り戻すというのは,娘は物ではありませんので,一人の人間ですから,娘がそれでも父を慕うという気持ちは自然のことだと思っていますし,そもそも第一前提として,私は夫のDVにすごく苦しんでいましたので,何度となく周りの方から逃げなさいと言われたこともありますし,一歩間違えば逆の立場だったと感じているのです。ただ,私は個人的な意見として,娘は一人の人であって,私のものではないのであって,父親を奪うということを勝手にしてはいけないという思いが強くありました。それは自分自身の両親の離婚経験というところからも感じていましたので,ですから,私の中では,自分が連れ去るとか,親権を自分に持って,それを剣のようにかざすという考えはそもそもなかった。ただ,結果としてそれが今のような状態を引き起こしているのであれば,私の考えは間違っていたのかもしれないと過去を悔やんだりすることもありまして,少し話の本題がそれましたけれども,その裁判の中において,裁判官は判決の中にこんなことを書いていました。それは,報告人との交流が絶たれていることなどについて未成年者に対する配慮が足りない面がある点を除けば,特段の問題は見当たらない。見当たらないでしょうか。特段の問題は見当たらないと,非常に納得がいかないです。配慮が足りないことにより,配慮が足りないだけでなく,娘はそれを,ママに会いたいという思慕の念を出すこともできず,会わせてもらうこともできず,娘は非常に苦しんでいます。そして,私が一つ場所を教えたときに,彼女は危険を冒してでも毎日でも私に会いたかったのです。そのことは何の配慮もなされていないことが問題ではないでしょうか。そして,また今,娘は成長の中で,またその同じようなことを経験し,自分が会いたいと言えば,それはすごく剣をかざされると分かれば,自己防衛に入るのはいたく当然のことであって,これが彼女の未来に何の影響もないといえるのかといったら,私は全くいえないと考えます。ですから,やはりそこを振り返ってみても,今御質問いただいた点,納得がいかないことだらけです。全く配慮がなされていないことを問題視していただきたかったです。 ○赤石委員 お子さんへの調査とかで意向を確認されてはいないということなのですか。調査官調査とかは入らなかった。 ○浅井参考人 入りました。 ○赤石委員 意向としては。 ○浅井参考人 調査官の意向ですか。調査官の意向は,娘に会わせないということはおかしいけれども,その監護者の指定のときですよね,その環境にはなじんでいるというのが調査官のお話でした。 ○赤石委員 ありがとうございます。それを少しお聞きしたかったので。 ○浅井参考人 もう1点の質問だったのですが,ごめんなさい,もう一度だけ伺ってもよろしいでしょうか。 ○赤石委員 法改正を何らかの形で御希望されているという中に,共同で意思決定をするというようなことをお考えなのかと思うのですが,情報も少ない中で,どういう進路だとか,どういうことを娘さんが望んでいるとか,そういうことで意見が違ったときに,もしかして相手の側の意見を尊重することになる可能性がございますよねということをお聞きしたかったのですけれども。 ○浅井参考人 今,片親制度ということを前提に話をする中で,そもそも論の,連れ去りがうんぬんというよりも,全てのことにおいて非監護親が我慢を強いられるというのが現状だと思っています。例えば,第三者機関の皆さんに御支援を頂くときも,監護親の,私のケースでしたら,父親の機嫌を損ねれば会えないということにつながり,娘を悲しませることになるので,お母さんが我慢してくださいというのが常日頃の御意見で,第三者機関の方も本当に親身になって考えてくださる中,そう言うしかないのだと思います。それに,娘も私に,隠れてではありますが会いに来ていたときに,聞かれたことがありました。それは,もしママが親権者だったらお父さんに会わせたというふうに聞かれたことがありました。もちろん私は会わせたと思います。会わせるも何も,娘が会いたければ幾らだって会ったらいいと思いますし,娘がそんな気兼ねをして,子どもでいられないということが問題だと思うからです。なので,片親制度というものにより,全てのことを非監護親が我慢をするというのが今の前提ではあり,それが改善されたとしても,そうではなくなることはないと思います。ただ,今までがそうでしたので,何が一番大事なことかといえば,やはり子どもがその渦中に巻き込まれて,子どもが悲しい思いをして苦しんでいることがやはり一番の問題点ですので,それが改善されるのであれば,その覚悟はあるか,何年にもわたってこの問題に,一番の渦中にいる私としては,覚悟もなにも,当然のことだと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   赤石委員,まだ質問あるかもしれませんけれども,お二方いらっしゃるので,すみませんが,先に進ませていただきます。 ○池田委員 池田でございます。弁護士をしております。今日は貴重な御経験のお話を伺いまして,どうもありがとうございました。   私の質問は,赤石さんからの質問と大きく重なってしまうところがあって,大体お話を伺えたかなと思いますので,絞ってお聞きできればと思います。いろいろな裁判の手続の中で,子どもさんが意見やお気持ちを聴かれたという場面があったかと思うのです。あるいは,第三者の支援をお受けになっている中で,その第三者,支援者の方から子どもさんが意見というか,言葉を聴かれたという場面があったかと思うのですけれども,そういった第三者がお子さんの言葉を聴くということについて,抽象的な質問で申し訳ないのですが,何かお感じになるところはありますか。よかった,悪かった,こういうところが不十分だったとか,こうすればもっとよかったのではないかとか,その辺り,御意見がございましたら伺えればと思うのですが。 ○浅井参考人 先ほどの家庭支援センターの皆さんからもお話があったのですけれども,お子さんも様々で,まず,そこに誰がいようが天真爛漫に思ったことを発言できるお子さんもいれば,全くそうではないお子さんも,いろいろと人の空気を読んで,親の目を見て,心を閉ざしてしまう子もいると思います。ですから,一概に何とは言えないと思いますが,飽くまでも私のケースでというところでのお話にはなってしまいますが,私の娘はむしろ何も話さないタイプで,そもそもそれは連れ去り前のときからそういった気質を感じている子どもではありましたが,環境により,なおそれが強化されたと思います。そして,その調査官が何度か,面会交流を検討する際や監護者を指定する際,合計3回の調査官調査を娘は経験しています。その発言がいろいろと書かれていて,私も読みましたが,ほとんどのことに対して,黙るか,忘れちゃったと言うか,分からないと答えています。ただ一つだけ,なぜ面会交流が実現,少なからずしたかといえば,娘は母親に会えてどう思ったかと言われたことに対してだけ,ただ一言,うれしいと答えたと書かれていました。なので,断絶されずに済んだのは,娘の意向がそこに一つ影響したのだと思っています。   ですから,意向を聴いていただくことは重要だと思いますけれども,その言葉尻だけを捉えて,問題がないと言っているから問題がないとか,会いたくないと言っているから会いたくないのだとか,そういった御判断は本当に,何というか,大きな間違いを引き起こす元になるのではないかと思いますし,あと,調査官調査が実施された場所が監護親のいる,隣の部屋で聞いているかもしれない場所ですね。初めて来た大人に,そこだけでただならぬ雰囲気を,きっと娘のような性格であればなおのこと,察知して警戒する中で,隣でお父さんが聞いているかもしれないという中で,本心が話せるかといったら,話せるわけがないと感じます。   ですから,調査官の方は本当に,どう書けばいいのかというのは難題なのだと思いますが,私,裁判官に,それは二度目の協議離婚の中で,親権を争点とした離婚の中での裁判の中でのことでしたけれども,裁判官に言われたことがあって,それは,きっと私たちが違う判決を出しても,お子さんが自分の意思で非監護親の下に戻ったケースというのは幾らでもあるのですよとおっしゃっていて,ですから,きっと浅井さんもそうなるのではないでしょうかと,なので,お嬢さんが判断できる日が来ますよと判決前に言われたのです。ということは,つまり監護親に監護権を渡すということですねというのを私はすごく感じて,がっかりしたのですけれども,そういった御判断しかできないのは,やはりそもそも法律として大前提に,現状維持の法則であり,現状維持の法則という法律があるわけではないですが,そういったこれまでの前例というものがあり,法の中が何も改善されていないので,裁判官はそういう判決を出すしかないのだなというのが私の理解でした。   すみません,答えになっていますでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○戒能委員 戒能と申します。今日はお話,お二人いただきまして,ありがとうございました。FPICの方に,非常に単純なことなのですけれども,よく分からないのでお伺いしたいということだけです。   様々な支援をしていらして,そして,そのスタンスとか,それから御苦労なさっている点などをお話しいただいて,大変勉強になりました。ありがとうございました。それで,面会交流なのですが,支援の種類が幾つかあるということで,今日,資料も頂きましたが,その中でも付添い型とか,受渡し型も入るのかもしれませんけれども,支援をした結果といいましょうか,状況ですよね,どういう状況だったとか,それはお子さんの状況もあれば,面会された親の方の状況とか,それから,何か突然起きるとか,そういうこともあるかもしれません,そういうことは親の方にどういうふうにお知らせするとか,御報告なさるのかどうかとか,その有無と,それからどういう形で御報告,例えば口頭でなさるのか,それから,何か決まりがあって書面でなさるのかとか,そういうことを少し伺いたいと。それから,報告して,報告を受けた側からのまたリプライといいましょうか,そういうものは次の支援にどういうふうに役立てていらっしゃるのかとか,その辺を,知らないものですから,お聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。 ○笠松参考人 基本的に,面会交流の様子をその後に同居親ですよね,先生がおっしゃっているのは,同居親にこうでしたよということを報告することは,基本的にはいたしません。ただ,もし何かアクシデントがあって,公園に行って遊んだのだけれども,転んでしまってけがをしましたとか,そういうことがあれば,そういうことはきちんと報告します。私たちが報告するのは,無事に終わりましたよということを報告して,お子さんたちのいい面がたくさん発見できるので,お嬢さん,とても快活ですし,細かいことに気付いていいお嬢さんですねといったような報告をいたします。   私たちは,特に初めのうちは,久しぶりに別居親との再会が始まるわけですから,当然お子さんには何らかの予期せぬ,おうちへ帰ってからの反応,アクションが出ることがあります。リアクションがあります。例えば,爪かみが始まってしまったとか,指しゃぶりが始まったとか,おねしょするようになってしまったとかということ。ただ,そういうことがままありますけれども,続けていくうちに改善されることだと思いますから,余り心配しないでゆっくり過ごしましょうねというようなことを最初から同居親にはお伝えしておきます。それで,最初の1回あるいは2回目ぐらいまでは,一応,次回の日にちの連絡というようなこともありますので,2,3日たった後に連絡して,お子さんいかがですか,お変わりありませんかというお伺いのお電話をしたりするようにしています。 ○大村部会長 ありがとうございました。   大分時間がたっているのですけれども。 ○武田委員 簡潔に終わらせますので。 ○大村部会長 では,短くお願いします。 ○武田委員 浅井さん,親子ネット,武田と申します。簡潔にお答えください。浅井さん,お話を聞いていると,同居時代,主たる監護者であったと理解しました。一般論でいうと,お母さんでずっと主たる監護者だったのだから,親権者・監護者指定になったらお母さんが親権を取れるのではないのかという感覚があるかと思うのですけれども,浅井さんや周りにいらっしゃる当時者の方々というのは,いかがでしょうか。 ○浅井参考人 そもそも,やはり社会の目というのは,先ほども申し上げましたが,厳しく,母親なのに親権が取れなかったというのは,すごく問題が何かしらあるのだろうという,すごくバイアスの掛かった目線で物を見られ,そういった心ない発言を頂くことも度々当初経験していましたので,事情の分からない方に,私がどういう状況かというのはそもそも伝えられないというところがあります。なので,例えば,訳あって一緒に暮らしていないお母さん,お父さん,そういった方と出会う機会が,こういった状況ですと,多くありまして,そういった方々のお話を聞きますと,男女はほとんど関係ないのだなというのが私の中での理解です。とにかく,お母さんだから,お母さんが主に世話をしていたから,子どもがお母さんを慕っているからお母さんに監護権をと,そういうことではなくて,とにかくやはり現状がどうなのかというのが裁判所はとても大切なのだなというのが,私がすごく肌で感じたことであります。 ○大村部会長 ありがとうございます。よろしいですか。   ほかにはよろしいでしょうか。よろしければ,これで本日のヒアリングの第3セッションを終了ということにさせていただきたいと思います。   参考人の皆様におかれましては,大変お忙しい中,当部会の調査審議に御協力を頂きまして誠にありがとうございます。貴重な御意見を賜りましたので,今後の審議に反映させていただきたいと思います。重ねて御礼を申し上げます。   本日予定しておりましたヒアリングは以上ということになります。   参考人の方々が退出されるまでの間,休憩を10分しようと思っていたのですけれども,もう終わりの時間に近付いておりますので,休憩はなしということにしまして,次回のことを,少しだけお時間を頂いてお諮りさせていただきたいと思います。当初予定したアジェンダでは,これからの進め方について45分ほど御議論を頂いて,意見のすり合わせをしようと思っておりましたが,もう到底そういう時間がございません。   まず,今回の冒頭に事務局からお話がありましたけれども,日程の都合等で本日できなかったヒアリングというのがございます。これを次回の会議の冒頭で行いたいということを考えておりますが,この点はよろしゅうございますね。   次に,それだけですと次回は時間が残るということが想定されますので,審議のほうも始めたいと考えております。逆に言いますと,ヒアリングが次回にはみ出す形になりましたので,ヒアリングを続けますが,検討の方にも入りたいということでございます。   そこで,検討の順序についてですけれども,様々な御意見が,伺えば出てくるのではないかと思います。今日ヒアリングを行いまして,いろいろな観点が指摘されたのではないかと思います。また次回も新たにお話を伺えば,更に考慮すべき観点も出てくるのではないかと思います。今日の話を伺っていて,一方で養育費の問題,それから面会交流の問題という子の監護に関する具体的な問題をどうするか,これはこの部会で考えなければいけない重要な課題の一つであるわけですけれども,他方で離婚に際しての情報提供とか,支援による取決めの促進,こういうことも大事ではないかという御指摘もございました。これもどこかで必ず検討しなければいけない課題であろうと思います。   どこから始めるかということに関しては,大変悩ましいのですけれども,中途半端な申し上げ方をいたしますが,取りあえず次回については,養育費と面会交流という具体的な問題を念頭に置きつつ,協議離婚やその後の場面において生ずる問題,取決めの確保ですとか履行の確保といったものを一度検討してみてはいかがかと思っております。もちろんその中で養育費に関する御意見ですとか,面会交流に関する御意見というのが出ることはあろうかと思いますけれども,枠としては取りあえずこういう形でやってみてはどうかと思っております。   その後どうするかということについては,また御意見を伺ってお諮りしたいと思います。今日のところは,ともかく次回どうするかということで,差し当たり次回分についてだけ,このように決めさせていただければ大変有り難いのですけれども,いかがでございましょうか。 ○棚村委員 部会長のご提案に賛成です。本日のヒアリングの中でも,養育費について,子どもの立場から非常に欲しかったというお話もありました。また,面会交流についても,もちろん会いたいと思った方もいらっしゃったり,会わなくてもよかったという方もあり,いろいろな方がいたというお話もお聞きできました。さらに,協議離婚で本当に話合いがどんなふうにされているのかという点などについても,実態の調査等も出てきております。それから,FPICの方からのお話でも,親ガイダンスとかのお話もありました。養育費や面会交流などの子ども養育や養育計画など,そんな辺りのところを,少し実態を踏まえながら論点を整理して,議論ができればと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   よろしゅうございますでしょうか。 ○池田委員 確認ですが,情報提供と取決め支援というのが次回の取りあえずの議題ということですか。 ○大村部会長 協議離婚やその後の場面において生ずる問題ということで,情報提供の問題についても含まれるという理解でおります。 ○池田委員 主に支援的な場面を念頭に置いてということになりますか。 ○大村部会長 取決めをどうするかというようなことも含めて,と考えておりますけれども,具体的に何をどういう形でお諮りするのかということについては,事務当局の方でまだこれから検討するということなのではないかと理解しています。 ○池田委員 支援的な話をするときに,是非視点として取り入れていただきたいのは,親の話合いの支援とか取決めの支援だけではなくて,子どもに対する支援という視点も是非取り入れていただければと思います。 ○大村部会長 今日,何人かの方々から発言があったことにも関わる論点かと思って伺いました。   落合委員,原田委員の順番で,手短に。 ○落合委員 落合です。私もこの支援のことが今日は重要な一つのテーマとして挙がったなと思うので,次回かどうかはともかく,一つの項目として挙げていただきたいと思いました。学校での,例えばカウンセラーの方がどういう役割を果たすのかとか,離婚親への支援とか,ですから,面会交流の支援ということも重要ですけれども,少し幅広く,社会としての支援ということをテーマに入れていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員と同じ方向の御発言として承りました。 ○原田委員 今回,協議離婚の実態についての調査報告がありましたけれども,一番最初に出た,厚労省がしたひとり親調査の支援と結果が,私がざっと見た限り,少しそごがあるのではないかという感じがいたしまして,どういう支援が必要なのかという研究会のときの協議では,ほとんど取決めがされていないということを前提とした支援の話がされていたと思うのですけれども,協議離婚の実態とか離婚の実態について皆さんとの間で認識を共有するためには,どうしてそういうそごが出ているのかとか,このアンケート結果をどう見るべきかとかいう辺りについての御説明か分析かが頂きたいなと思いました。前回のときに,確か落合先生だったかと思いますけれども,こういうことに対するいろいろな先行の調査があるのではないかというようなお話がありましたけれども,アンケートやこういう調査をした場合に,先行の調査と同じような結果になっているのであれば,その調査に対する信用性は高いと思われますが,結果がいろいろ違うということになると,それを前提とした議論をしてもいいのかということにもなるのではないかと思いまして,その辺りの分析や,社会学の観点からの何かレクチャーなどが頂ければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。議論する際のデータの取扱いということで御注意を頂いたものと理解をいたしました。 ○赤石委員 ありがとうございます。協議離婚についての実態調査,これからデータを頂いて,少し分析をさせていただきたいと思っております。ただ,1か月というのは少し厳しいので,今,先生が協議離婚というところにスポットを当てるという理由がもう少し明解だといいのかなと思います。裁判所が関わっている調停や裁判ではある程度の実態があるけれども,協議離婚については今まで余り分かっていなかったので,そこから議論しましょうというようなお話なのでしょうか。そうだとすると,1回でやるのは少し分量的に多いのだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。1回でできるかどうかは,準備をしてみないと分からないところがあるのではないかと思います。 ○水野委員 何しろ対応すべきターゲットがものすごく広い問題です。本当は離婚前の段階から暴力被害者や児童虐待を救わなければなりませんのに,そこが日本はあまりにも不十分です。その不備の弊害を痛感しながら,痛ましい話を伺っておりました。どこから手を付ければいいかというのは悩ましいのですけれども,やはり具体的な問題としては,養育費と面会交流の取決めの確保と,同時に特に面会交流について弊害が生じないようにしながら,それらの実効性を確保するという問題からになるのかと思います。これらの点について家族法研究会でかなり議論をされて,論点の整理をされたと伺っております。その情報を事務局に整理していただいて,一度我々で共有したいと思うのですけれども,それもお願いできますでしょうか。 ○大村部会長 御指摘は分かりますけれども,順番の問題がございますので,今の御要望はできるだけ早いところで実現するように,事務当局の方には考えていただきたいと思っています。それから,赤石委員のおっしゃっているように,次回やって,それでおしまいだということではなくて,皆さんが議論できるだけの時間というのは確保していただくようにしたいと思っています。   これについて,皆さんの御議論を頂いた上で決めましょうというのではなくて,私から提案するということにしたのですが,更に御意見が出ていますので,簡単に御意見を述べていただければと思います。大石委員,柿本委員の順番でお願いします。 ○大石委員 ありがとうございます。原田委員や前回の落合委員がおっしゃっていたことと同じなのですけれども,私は経済学が専門ですが,発達心理学や社会学などの分野でのリテラチャーレビューというのでしょうか,それをまとめてやるような機会というのが頂けたらなと思います。順番としては,リテラチャーレビューをしてからデータ分析の結果を検討してというふうに進むものかなと思いますので,それを希望いたします。 ○大村部会長 直前の大石委員,それから,これまでにも何人かの委員の方々から御指摘いただきましたが,先行文献の調査等についても可能な範囲で進めていただくということが必要かと思います。他方,次回のヒアリングの後の時間で検討する課題ということにつきましては,先ほど棚村委員から御賛成を頂きましたけれども,取りあえずやらせていただいて,その後,皆様の御希望を勘案して検討の順序を決めるということにさせていただくということでよろしいでしょうか。   時間の管理がうまくいかなくて,最後はばたばたといたしましたが,しかし,ヒアリングで様々なお立場の方の意見を聴くということは非常に重要なことであると思いますので,今回はこのようにさせていただきました。また次回も時間は限られておりますけれども,様々なお立場の御意見を伺った上で審議の参考にしたいと思っております。   大変時間が掛かりましたけれども,このぐらいにしたいと思います。そこで,次回の議事日程等について事務当局の方から説明をしていただきたいと思います。 ○藤田幹事 今日もありがとうございました。   次回は5月25日火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所等については,また御案内をいたします。   先ほど部会長からお話があったとおり,次回は積み残しのヒアリングと,先ほど出ましたことを踏まえた具体的な審議をお願いすることとし,先ほど御指摘がございました実態等についても,事務局でできる限り,また皆様にお届けしたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   拙い議事の進行で,皆さんからの御意見あろうかと思いますが,それはまた少し時間の余裕があるときに伺いたいと思います。   今日は,これで法制審議会家族法制部会の第2回会議を閉会ということにさせていただきたいと思います。   本日も熱心な御議論を賜りましてありがとうございました。閉会をいたします。