法制審議会 家族法制部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  令和3年5月25日(火) 自 午後1時31分                      至 午後5時33分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  参考人ヒアリング         養育費及び面会交流に関する論点の検討について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 予定しておりました時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第3回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日も前回と同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,まず本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方からお願いをいたします。 ○藤田幹事 資料について御確認頂きたいと思います。資料としては,事前に送らせていただきました,まず部会資料3,それから,今日お願いするヒアリング講演者の資料,さらには厚生労働省から,前回の会議で指摘のあった面会交流関係の取組事例集を御提出いただいております。さらに,事務局からの参考資料として二つ,改定されました離婚届の標準様式に関するものと,離婚に伴う子の養育に係る海外7か国調査の結果概要を配布してございます。この他に,委員からも参考となる資料をいただいております。  このうち,部会資料や役所提出資料につきましては,そのまま法制審議会のホームページに掲載して公開いたしますが,委員から御提出のものについては一部,御意向を踏まえて非公表としたいと思いますので,取扱いは御留意下さい。また,ヒアリング講演者の資料につきましては,後ほど部会長からお諮りがあるかと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,早速本日の審議に入りたいと思います。   本日は前回に引き続きまして,ヒアリングを行いまして,その残りの時間で,先ほどお話がありました部会資料3に基づいて意見交換を行いたいと考えております。   今回のヒアリングに当たりましては,その内容が個人のプライバシー等に関わる事項等を含むところから,前回と同様,御講演の際の資料の全部又は一部の非公開,さらに議事録の関係部分の非公開,要約化等につきまして,講演者の御意向に十分配慮しつつ,部会長の私の方で判断をさせていただくということにさせていただければと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   本日のヒアリングの具体的な進行等について,事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○藤田幹事 それでは,お手元の家族法制部会議事次第・第3回に基づいて簡単に説明いたします。本日,参考人として合計5名の方にお越し頂いており,それぞれ15分程度で御講演を頂く予定です。まず,ひとり親や親子の問題について現場で相談支援,紛争解決等に当たっておられる4名の方に御講演をお願いします。また,これまでの意見交換では,事務局から参考資料として提出しました離婚後養育に関する実態調査結果について,その全体的分析を専門家に求めてはどうかという御意見を頂いたことから,本日は,社会学の研究者であり,これまでに実態調査も行っておられる野沢参考人に,調査分析の観点からお越しいただくことにしてございます。   まず,ヒアリング全体の説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。合計で5人の方々からお話を伺うということを予定しておりますけれども,まず,データに関する分析を頂く野沢参考人を除く4人の方々に順次お話を頂いて,その後まとめて質疑応答をさせていただくということで進めさせていただきたいと思います。   順番といたしましては,最初に海野参考人,どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○海野参考人 全国母子寡婦福祉団体協議会の海野と申します。よろしくお願いいたします。それでは早速,ひとり親家庭を支援する団体として,母子家庭等の子ども,親に接する機会の多い団体として,離婚後の子の養育の在り方についてお話しさせていただきます。   子どもの健やかな成長を確保する責任は,両親が生活を異にしたとしても,双方で継続して維持すべきものであり,特に,離れている親が養育費を支払うことが,親としての責務を果たすための大きな役割を占めます。しかし,離婚後,親権を持たない父母は,親としての義務,責任の自覚がない場合もあり,養育に関わらなくなる現状もあります。離婚後の親権や親子関係の在り方については様々な意見があることは承知しておりますが,重要な点は,子どもの利益を最優先に考えていただきたいということです。離婚に至る原因の多くは,お互いの事情がかみ合わず,離婚前後の両親の関係が良好ではない状況にあることを考えれば,離婚後の子の監護の仕方と子に対する環境を整理しようとしても,父母それぞれの感情が先に立ち,冷静な話合いは難しい状態となります。離婚時において,相手と関わり合いたくないため,養育費の支払の取決めをしないで離婚の成立を急ぐ場合も見受けられます。   また,新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い,親権を有する親が入院を余儀なくされる状況が発生し,可能な場合には,離婚後も父母の双方が子育てに適切に関わることの必要性についても実感している状況です。しかし,現状では,DVによる離婚など,父母で正常な協議ができない場合があり,その点は十分な配慮を講じていただく必要があります。   離婚後の子育ての考え方として,まず,離婚前後の状況や離婚後の父母や親子の関係は,家族ごとに様々です。離婚後も常に父母の関わり合いを必要とすると,親の意見が対立することも考えられ,子どもの養育に関わる方向性が確定しないことになります。そうならないように,子どもの養育が停滞しないようにお願いいたします。また,父母が何らかの対立により離婚する場合,両親の不和が子どもに与える影響が多いように感じます。離婚後にも同様の対立関係が生じるようになるのであれば,子どもの育成に悪影響が及ぶことを懸念いたします。社会における共同親権の問題の理解はまだまだ十分ではありません。ひとり親家庭の事情を当然のことと受け入れられる社会が整っているとはいえない状況下で,数々の不安要素を抱えているのが現実です。   離婚後にも父母双方が子の養育に関わるとすると,当事者から見た相手方の不安要素は,離婚に至った要因が離婚後もそのまま反映されます。一つ目は,配偶者や子に対する全てのDV,中には立証が困難なものも少なくありません。二つ目は,ネグレクト,3つ目は,ギャンブルやアルコール依存症,4つ目は,借金,生活費の不足等,経済的事情など。仮に共同親権が法制化された場合,離婚後も相手方との連携は必須となりますが,婚姻時の状況によって不安が残ります。   離別時に良好な関係性でなかった父母について,その後の関係性が良好になったというケースは,ほとんど聞いたことがありません。子どもは,関係が良好ではない両親の間にあって,伸び伸びと自身の気持ちや希望を伝えることができるのか,住居や進路の選択が自由にスムーズにできるか等,両親のそれぞれの生活文化に対するギャップなどのはざまにあって葛藤が生じ,子どもにとって大きなストレスになることは容易に想像ができ,子どもへの配慮が重要となります。   現状においては,当事者自身が離婚家庭であることを隠したがる例が少なくない状況があります。ひとり親家庭の事情が当然のこととして受け入れられる社会の実現を願っております。また,離婚後の親子関係の在り方を議論するには,家族や親子の状況が多種多様であることを前提に検討する必要があります。   養育費については,関係機関の御努力により,離婚時には父母間で養育費などに関する協議をすることになっていますが,当事者には協議する重要性が十分に理解されていない現状があります。当事者の間では,お金がないから払えない,元夫とは関わり合いたくない等,両親それぞれの感情や過去の出来事に振り回されることが多く,そのため,子の権利は置き去りにされることが少なくありません。   平成28年に実施された全国ひとり親世帯調査によれば,養育費を受け取っている母子家庭の割合は24.3%,養育費の平均月額は4万3,707円とのことです。養育費の支払義務は,子どもの最低限の生活ができるための扶養義務ではなく,それ以上の内容を含む生活保持義務といわれているにもかかわらず,まだまだ低い状況です。支払われない理由として,お金がない,払う必要がない,妻が連れていったのだから自分の子どもではない,などの声があり,当事者の意識,自覚を高めることが必要です。一方,DV等の理由で協議ができない父母がいることも十分に配慮しなければならず,その場合にも,養育費を諦めない,受け取ることができる仕組みが必要です。   養育費確保の制度の仕組みとして考えられることとしては,養育費を支払うべき親に責任・義務を自覚させること,相手方と協議できない場合にも権利を保護する仕組みを作ることであり,特に養育費の協議,請求をする裁判手続の簡略化,迅速化が重要です。  このほか,行政上の措置として検討していただきたいことは,養育費を支払う側への支援として,養育費支払分の所得控除,養育費を支払う意思があるが払えない者の支援,行政の立替え払い制度,養育費無利子貸付け,貸付金は直接受け取る側へ支払う。養育費を受け取る側への支援としては,児童扶養手当算定時に養育費の一部を所得に加算しないでいただきたいことです。   昨年からの新型コロナウイルス感染症拡大による実情として,離婚相手が職を失い養育費の支払が止まったという事例が多く,ひとり親世帯の生活は厳しさを増しております。更なる困窮に拍車を掛けています。特に母子家庭からは,養育費の逃げ得とならないよう,支払逃れを許さない仕組み作りを求める訴えが多数上がっています。養育費が支払われないことで子どもの可能性の幅が狭くなることがないよう,また,親が子どもの夢を諦めさせることがないよう,御検討をお願いいたします。   最後に,離婚の理由は様々であり,離婚後の父母による子の養育への関わり方についても,個々の事情に応じた環境整備を頂き,子どもの利益が確保できる形で議論を進めていただくことを希望いたします。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   続きまして,しばはし参考人にお話を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○しばはし参考人   皆さん,はじめまして。一般社団法人りむすび代表のしばはしと申します。今日,私の方からは,共同養育実践に向けた現在の支援の現状と課題というものをお伝えさせていただきたいと思っております。   まず,当会がどのような活動をしているかというものと,簡単に自己紹介も含めてお話をさせていただきます。   当会の活動としましては,大きく分けて六つの柱で活動しております。何をしているかというと,共同養育をしていくには,やはり親同士の葛藤を下げるということが一番大事になってきますので,親に向けたサポートというものを行っております。   一つ目は御相談ですね。子どもに会えない,子どもを会わせたくない,会ってほしい,会いたくない,そういったような御相談の個別の相談でしたり,夫婦カウンセリングというものを行っております。   そして,二つ目,では実際,共同養育をやろうとしたときにどのようにやっていけばいいのかということがイメージが付かない方が非常に多いので,基礎の知識でしたり,そして実践的なコツやイメージを湧いていただくような講座,そして,離婚を考えている女性に向けて,離婚後の子育てをどのようにしていけばいいのかというプレシングルママ向けに講座を行っております。   そして,三つ目,離婚協議のサポートもしております。これは弁護士と連携をしておりまして,葛藤を下げる気持ちの面を我々りむすびの方で行った上で弁護士におつなぎをして,離婚の取決めをしてもらうということになっております。現在,ADR認証申請中なのですけれども,弁護士と連携をすることで,認証前でもこのような協議の離婚後のサポートをしております。   そして,四つ目,面会交流支援,第三者機関的な役割もしております。これは,物理的にお子さんをもう一人の親御さんの方に連れていくというよりは,むしろ支援を通してそれぞれの親の気持ちに寄り添いながら,できるだけ葛藤を下げつつ,いずれ卒業できる形でという支援を行っています。   五つ目,コミュニティーの運営をしております。これは何かといいますと,別居親と同居親,共同養育というのは両方の立場が,相手側の気持ちも理解しつつ,子どものために協力をしていくということになっていきますので,自分の元配偶者にはなかなか気持ちを聞くことはできませんが,自分の配偶者と同じ他者から何か学びを得るという意味で,同居親,別居親がまとめてこのコミュニティーの中で,オンラインなどで交流をしています。現在,全国,海外で103名ほど登録してくださっています。   そして,最後,この共同養育という考え方,離婚すると一人で育てると思われがちですが,子どもにとっては二人というシンプルなことを,こういった著名人の方と対談をさせていただいたり,本などで出版をさせていただくなどして普及活動をしています。あとは,共同養育を実践している方のインタビュー記事というのもメディアで,こちらで配信をさせていただいております。   こんな活動をしております私自身が,子どもを夫に会わせたくなかったという後悔を持っている同居親の立場になります。その後悔がきっかけでこの団体を立ち上げまして,現在,4期目になっております。相談業務を行っている者が4名ほど,そして面会交流支援や普及活動を行ってくれている者が25名ほどおるという現状です。   次ですね,支援を通して感じることなのですが,よく子の福祉ということがあるのですが,我々は常々感じているのが,子どもが何を望んでいるか,それは親同士が争わないこと,そして,親と関わり続ける環境を持つことができること,一方的に閉ざされるのではなく,子どもが自分で自由に会うことができるという環境があること,この二つを望んでいるのではないかというところです。   では,この二つ,どうすればかなえられるかというと,やはり親の争いをなくす,つまりはそれぞれの葛藤を下げていくことになっていくわけです。そこで,我々りむすびは,もちろん一人で育てるための支援も大事です,就労支援や経済的な支援も非常に大事です,養育費の問題もとても大事です,ですが,共同養育をするのであれば,二人で育てるための支援,そして,どうしても調停や裁判ですと別居前よりも関係性が悪くなってしまう,ですので,争わない形で円満離婚といいますか,離婚をする形で,葛藤を下げる支援,そして,共同養育は片側だけではできません,どうしても同居親,別居親,それぞれが必要になってきますので,パパ,ママ,それぞれをまとめてきちんと支援をするという,この3本を共同養育に必要な支援だと考えて取り組んでおります。   最近,御相談者の傾向が変わっているように感じております。よくあるのが,調停中や裁判中の会えない別居親の方ですね,これは男女問わずというところです。そして,会わせたくない同居親です。最近変わってきたというのは,離婚をしたい,仕事もしたい,育児分担もしたい,つまりは共同養育をしたいと。離婚したいがゆえにといいますか,共同養育に非常に前向きに関心を持っていらっしゃるような,特に女性からの御相談が増えました。ただ,どうやってやるのか分からない,前例がないということで,御相談に見えている方が増えているというのが現状です。   支援を通して,共同養育に必要な三つの要素があると考えています。一つ目,頻度,これはよく調停などで取決めをされる頻度になります。もちろん多いに越したことはないでしょう。そして,二つ目は親子関係です。離れて暮らす親と子どもの関係性,もちろん大事になってきます。そして,三つ目が,取決めなどでついミュートされがちなのが親同士の尊重といいますか,争わない関係性になります。共同養育をするというとどうしても,月何回ですとか取決めが先行して,親子の関係がどうだと調査官調査などが入ると。だけれども,実はこれは親同士の関係がある程度きちんとできていれば,1番も2番も底上げされていくというか,共同養育の質としては充実していくわけなのです。ただ,離婚するほどの親同士,どうやって尊重するのかというところが,なかなか誰も手付かずというところで,我々はこの,正に親同士の尊重をするための葛藤を下げるという支援を行っております。   では,この頻度というところと親同士の尊重というところを少し分解して見ていきます。よくあるのが,ライト級なんて級で分けてみましたけれども,休日のスポット,月1回でしたり,何か月に1回みたいなスポット的な取決めをされている方,そして,平日と週末で分けられているような方,中には1週間ごとみたいな方も最近見え始めたなと感じております。これは取決めの話ですよね。   一方で,親同士の関わり方というのはいろいろ,やはりあります。完全に没交渉,もう関わりもやり取りもNGという方,そして,やり取りはできるけれども顔を合わせることは難しいという方,そして,一緒に学校の行事などにも行けるような,そういった関係性ですね。   今の頻度と親同士の関わりというのをマトリックス的な感じで表にしてみたのですけれども,左下ですね,頻度が低くて親同士の関わりもどうしても難しい場合,これは正に第三者機関などを使われている方になって,いわゆる高葛藤というケースですね。また,左上の親同士の関係はなかなか難しいのだけれども,取決めはすごく頻度が高く決まったという場合には,第三者機関を使うとやはり費用が掛かってしまいますので,アプリを使ったりですとか,細かく決めていくというのも一つあるかなと。一方で,右下の親同士の関わりはできるけれども頻度が少ない,遠方に住んでいたりですとか,そういった場合にはオンラインを活用したりですとか,親同士で子どもの成長を共有していく,そんな方法もあるかと。そして,右上ですね,これは一番充実しているというか,親同士の関わりもありますし頻度も高い,ある意味自由な共同養育ができているというところになります。ただ,この右上ができないと共同養育ができないから,だったらやらないではなく,できるところから支援を借りながらでもやっていくということが,最終的に子どものためになっていくと考えております。   少しおさらいとなりますが,ポイントです。決して親同士が仲よくなる必要なんかないのです。先ほどの右上をやるには仲よくしなければいけない,実際に顔を合わせなくても,やり取りが最低限できればできることもありますし,仲よくせず,ハードルを上げずに,できるところからやっていく。そして,やはり大事なのは,子どもが両親の顔色を見ずに自由に関わる環境を両親がコミットして作っていくことになります。そして,もちろん子どもが自分でその目で確かめて,いや,本当にこの自分の親は少し難しいということも含めて,自分で見に行く機会というのがあること,そして,その環境を作っていくことが親の役割になってくると考えております。   では,この親同士の尊重,なかなかできない対立構造というのを,この支援を通して感じているところ,2パターンの対立構造があるなと考えております。まず一つ目ですね,よく調停や裁判であるのが,子どもに会わせたくない同居親に対立して,子どもに会いたい別居親です。これは,離婚をしたら会わせるという同居親に対立して,会えるまで離婚しないという別居親。そして,どうしても過去が許せないという同居親に対して,未来の取決めをどんどんしていきたがるという別居親。そして,同居中にどうしてもつらい,大変な思いがあった,だけど置いていくわけにはいかないから連れて出ざるを得ないと思って出ている同居親に対して,連れ去りは誘拐だという別居親。完全に,話し合いたい時間軸も違えば,対立構造がますます深まってしまうというのが,恐らく調停などの場ではこういった論争が激化しているのではないかと思います。そして,同居親はどうしてもやはり,自分と相手との関わりで葛藤が高いと,親子関係もどうしても,子どもも会いたくないということで混同しがちになる傾向もあります。一方で別居親側は,同居親がなぜを家を出たのかというところを少し振り返ったりしてみることで関係がよくなっていくというケースもたくさんあるのですが,どうしても,社会が悪い,法律が悪い,弁護士が悪いなど,少し外向きにパワーが注がれていくという傾向があって,だからやはり会わせたくないわというふうになっていく,そういった相談者の方をサポートしております。   もう一つ,対立構造その2としては,子どもに会ってほしい同居親に対して,子どもに執着がないという別居親の傾向も出てきています。同居親としては,そもそも離婚したくなかったりするわけなのですけれども,育児分担もしていきたいと。相手をどうしても自分のやり方でコントロールして共同養育したいとしてしまうのですよね。それに対して,別居親は,子どもとは関わりたいのだけれども,相手から解放されたいという思いで子どもを会うことを諦めて,ないしはそのまま次の新しいパートナーを見付けて,全く子どもに無関心というような方もいらっしゃっています。りむすびは,どちらかというと1番の方の御相談者が多いというところになっていきますが,最近では2番の方も増えています。   では,この対立構造をどうやって親同士の尊重をしていけばいいのかというところなのですけれども,そして,共同養育をするためには子どものために親同士が尊重しなくてはいけないということを先ほどお伝えしました。どうしてもお父さん,お母さん,それぞれが子どもに向けて愛情を注げばいいではないか,そこの取決めをしようとしがちなのですけれども,やはり子どもは,幾らたくさんの頻度で会っていても,親同士の関係が非常に悪いと,顔色を見なくてはいけないですし,本当にそれが幸せな共同養育かというと,私自身は少しクエスチョンというところです。ですので,親同士がきちんと共同養育をできるような最低限の関係性を作ること,ただ,それが当事者ではどうしても難しいです,そして,調停や裁判になるともっと溝が深まっていきます。であれば,お父さん,お母さん,それぞれに対して葛藤を下げる心の面のサポートというのを時間を掛けて丁寧にやっていくことが大事です。   りむすび,ではどうやって葛藤を下げるのかというところは,簡単に軽く触れますと,まず,それぞれ怒り,悲しみ,あるのは,やはり不安だとか悲しみから来ています。そこに対して,まず圧倒的に共感をしたり,不安を受け止めるというところで関係を築いていった後に,こちらから,こうした方がいいのではないのというアドバイスを,耳を貸してくれる関係をまず作る,そこをすごく重要視しています。その後,会わせたくない同居親の場合でしたら,子どもの気持ちを代弁したりですとか,あとは親としての心得をお伝えしたり,あとは前向きになれるコツなどもお伝えをしていきます。   一方で別居親に対しては,どうしてもやはり連れ去りは誘拐だ,みたいなことになると当然,同居親はもう怖くて関わりたくないと思ってしまうわけですから,相手側がどんな気持ちなのかということもお伝えしつつ,同居中にどんなことがあったのかがきっかけだったのかなということを一緒に振り返っていったりしています。そして,争わずに歩み寄りというのは,同居親も同じでして,逃げたり閉ざしたりということもある意味,争いということから考えますと,お互いが子どもの親である以上,相手を責めても何も生まれませんから,争わずに歩み寄りといいますか,相手を責めないというスタンスでいることですね。そして,我々が大事に考えているのは,相手が悪い,相手を説得してほしい,相手のせいでこうなったと,やはり他責の念が最初は強いのですが,ではなく,自分自身がどういうふうにやっていけばいいのかということをサポートしております。   では,次に,合意形成に向けて,共同養育をしていくに当たって何が大事かというところになります。ピンクと緑で分けましたけれども,条件や取決めを,離婚したいとなると,まず4番から始まるわけですよね,離婚協議や調停など。関係性ができていない状態でいきなり取決め,条件を出して,到底実現ができないというか,合意形成がなされない,そして関係が悪化していきます。それぞれ条件を出していく,その背景には,必ずそこに気持ちがありますよね。まず大事なのは,取決めをする前にそれぞれの葛藤を下げ,争わない態勢を作り,夫婦から親同士の関係になっていくのだということを理解してもらった上で取決めをしていくと,非常にスムーズで継続可能な共同養育が実践できます。実際,我々が行っている協議離婚のサポートでは,1,2,3をもう9割というぐらい念入りにやった上で,弁護士の方に取決めの仲裁をやっていただいております。そうすると拡充するようなケースもたくさんあります。   ここで,第三者機関として,我々はまだ4期目でありまして,諸先輩方の団体さんはたくさんいらっしゃるのですけれども,少し気になっているというか,お話をさせていただきたいことがございます。第三者機関をたくさん増やして,補助金を出したり,使いやすくすれば解決するのではないかなんていう話に,もし今後,議論が進んでいくのであれば,少し警鐘を鳴らしたいなという話です。   第三者機関を利用しやすくすることは,私は根本的な解決にはならないと考えています。当然,利用しやすくなれば精神的な負担が減って,ではやってみようかなという実施をする足掛かりというか,最初のキックオフにはいいかもしれませんが,実際使わなくてもできるかもしれないような方も安易に利用が増え,付添いや,ないしは監視,そういったようなことが必要ではない方も全部,大げさに全部支援はフルで活用したいというふうになっていき,なかなか自助努力をしていく,親同士の関係を築いていこうという機会が減ってしまうようなリスクを感じます。そして,どうしてもやはり相手が悪い,そして他力本願,今度は第三者機関が悪いみたいなことになっていきがちなのではないかと。それよりは,大事な支援というのは,第三者機関を利用しやすくすることの前に,利用しなくても済む関係性を作るための支援,これをまず川上といいますか,そこで堰き止めていく,それでもやはり難しいケースの場合は,我々が支援していても,やはり付添いがあった方がいいなという御家庭も正直,いらっしゃいます,そういった方に対しては支援をしていく。なので,順番として,事後的な救済ではなく,まず未然に親同士の関係を作るための支援ということを先にやる必要があると考えます。   そして,是非ともこの継続可能な合意形成というのが必要だと。第三者機関で活動しておりますと,とてもこんなに悪い関係性の中でこの取決めどおりできないよねというような書面が送られてくるわけなのです。そして,それ以降は第三者機関の指示に従うみたいな,割と丸投げされているような書面もあったりします。丸投げされても,もちろん気持ちの支援をしていって,葛藤を下げることを全身全霊やっているのですが,一方で非弁という問題がございまして,我々は交渉とかはできない,決まったことしかできないのです。となると,全部,あとは第三者機関よろしくね,と言われても,これ以上何もできない,詰んだ状態になるわけなのです。そうすると,一番困るのは御利用者の方,では今後どうしていけばいいのか,再調停しなければいけないみたいな不具合が出てきてしまう,その間に子どもはずっと親とも関わることができない,親同士の葛藤が高い中で過ごしていかなくてはいけないということになっていきます。   そして,利用の必要性ですね,我々は決まったとおりのものを行っていくのですけれども,先ほど申し上げたように,付添いがあってよかったなと思う御家庭もあれば,正直,要らないよねという御家庭もあります。ただ,取決めでそうなったから,行わせていただきつつも,いずれ卒業に向けてという支援は行っておりますが,暴力とかがあると,明らかに付添いというのは分かるのですが,精神的なモラハラといわれるケース,相対的な評価になってきますので,一方はやられた,一方はやっていないの平行線であると,なぜ使わなければいけないのか,また葛藤が高まっていく,対立構造が深まっていく,ここの精神的なDVというところの見極めをどのようにしていくのかというのは,恐らくまた議論を深めていくところなのかなと感じます。そして,支援団体としては,物理的な支援だけではなく,きちんと卒業に向けた支援,いろいろな団体の方々,皆さんされていると思いますが,そこも非常に大事になってきます。   一気にしゃべりましたが,まとめとして,今後必要な議論をお伝えしていきます。まず,離婚協議をする場でしたり,調停の場など,そこで是非とも,取決めありきで過去のことは振り返らず,とにかく決め事だけしましょうみたいなことって結局,その条件の中にお互いの思いが乗っかってしまっているので,対立があった状態で取決めをされても,結局実施されないのですよね。ではなく,きちんと取決めをする前のカウンセリングの機能を充実するということが絶対に大事だと考えています。我々はそこを重んじていることで,葛藤を下げた後ですと拡充をしていくようなケースもあります。   1個事例として言いますと,調停中にもう親権取るぞ,といった別居親のお父さんが,過去を振り返って奥さんに歩み寄りをしたところ,奥様がお子さんと近くに引っ越してきて,完全に一緒に御飯を食べたりするような関係にもなられています。そこはやはり取決めをする前にきちんとカウンセリングをして歩み寄ろうということをしたことによって,共同養育の拡充がかなったというケースです。   そして,二つ目,必要な議論としては,先ほど申し上げたとおり,第三者機関の在り方です。利用できれば解決ではないという,この盲点ですね,を今一度議論をする必要があるのではないかと。   そして,最後ですね,当事者に向けた支援の在り方,離婚って一般的な知識はみんな勉強して,分かるのですけれども,知識ではできないのが,気持ちというわけですよね。相手と関わりたくない,子どもと会いたい,なかなか子の福祉という正論だけで片付かなかったりする部分もあります。そこで,共同養育の一歩,気持ちの面に踏み込んだ実践的なコツでしたり,イメージが湧けるような,学ぶ場というのを提供していくというのは,それを離婚前に必ず義務化にするようなことが大事になってくると考えています。   後ろの方に参考資料を載せたのですが,参考資料1ですね,共同養育の講座,これは正に一般知識だけではなく,夫婦から親同士にシフトするための気持ちの面を掘り下げた実践的な講座になっています。これを是非とも本当に別居して悪化する前に受けてもらいたいです。そして,先ほどのオンラインコミュニティーですね,こういった知識で勉強するだけではどうしてもできない,ましてや相手から会わせろなんて言われても嫌だという場合に,相手側と同じ立場のそれぞれの当事者の経験を聞いたりすることって非常に有意義になってきます。同居親と別居親が集まるような,集うようなサロンというようなものが全国各地で運営できていくと,更に共同養育に対しての理解が深まるのかなと考えております。   駆け足になりましたが,最後に,離婚しても,子どもにとって二人,親であることは変わりません。どうか親同士が争わない共同養育の支援の充実を図るための,この部会で議論が深まることを心より祈っております。御清聴ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きましてお三方目になりますけれども,泉参考人にお願いをしたいと思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。 ○泉参考人 明石市長の泉です。よろしくお願いします。まずはこういった機会を頂き本当にありがとうございます。感無量であります。限られた時間ですので,資料として提出しております今回のレジュメ以外に,明石市の小冊子「明石市こども養育支援ネットワークの奇跡」をお配りしていますので,後ほど該当部分を御覧いただきたく,お願いします。また,もう一つ,明石市の広報紙の中でもこのテーマを取り上げておりますので,ページにしますと10ページ,11ページ辺りですけれども,後ほど御覧いただきたく,よろしくお願いします。   それでは,基本的にレジュメに沿って御説明申し上げたいと思います。まず,それに先立ちまして,強い思いをお伝え申し上げたいと思います。離婚によって泣いている子どもがいないわけではありません。全員泣いているとは言いませんが,泣いている子どもは現にいると私は思っています。子どもが泣いているのに,それを見て見ぬふりするような社会ではなく,泣いていますよと指摘するだけの社会でもなく,泣いている子どもが泣き止むように,そして,そもそも泣かなくてもいいような制度を作るのが私ども大人の責任だと,私はそういった認識を持ってこのテーマに対応しています。   まず冒頭,「はじめに」として,やはりこのテーマを考える際に重要なのは発想の転換だと思えてなりません。大きく三つ。   まず第1は,子どもは子どもであって,親の持ち物ではありません。離婚のときに片方の親が荷物のように子どもの手を引いて立ち去るような離婚が望ましいと私は考えておりません。飽くまでも子どもは子どもであり,離婚に際しても子どもの意思,子どもの利益というものを最大限尊重するのが社会の責任だと思います。   そして,二つ目は,かねてから言われているような「法は家庭に入らず」では子どもは守り切れません。大きな時代状況も変わってきておりますので,積極的な公的関与が必要だと思えてなりません。   そして,三つ目でありますが,子どもの貧困といわれますが,子ども自身がお金を稼いでいない以上,貧困なのは当たり前であって,すなわちそれは親の貧困であり,社会の貧困であります。言い換えると法制度の貧困で,このテーマについて法律を作ってこなかった関係者の正に怠慢だと思えてなりません。繰り返しになりますが,今回の議論が,きちんと子どもたちが泣かなくて済むような制度を作ることを強く期待したいと思います。   明石市の取組でありますが,このテーマは私自身も大変思い入れが強うございまして,市長に就任した10年前,その前から準備しておりましたが,3年ほどの準備期間を経て,2014年,今から7年前にスタートを切りました。今回の委員の方々にも多くお力添えを賜っております。   具体的には,まず第1,情報・相談提供を対応しました。特にポイントとなり,最初にやったのは,やはり寄り添う相談であります。必要なのは専門性です。素人の一般行政職だけでは足りません。このテーマにお詳しい,FPICの方々や,弁護士が必要です。明石市では私以外に弁護士資格のある職員が現在12名おります。常に男女1名ずつ以上はこの窓口に配置をしている状況で,できる限り寄り添うような対応と考えております。あわせて,子どもの立場に立ったパンフレットや,親に対する離婚前講座なども実施してまいりましたし,また,毎年,児童扶養手当の現況届の提出月間である8月に合わせて個別の相談会なども実施し,このテーマについても可能な限りの対応をとっているのが特徴であります。   二つ目ですが,取決め支援にも取り組んでおります。参考書式をお配りし,それを踏まえた上でアドバイスをし,さらには掛かる費用,公正証書作成費用や調停の申立て費用を全額明石市の税金で負担して対応しております。昨年度だけでも63人の子どもさんに公的助成を行っております。   続きまして,養育費です。特に特徴的なのは立替えです。明石市では既に3年前に民間保証会社と連携をして,その掛かる最初の保証料を明石市の税金で持つことを前提に立替え制度を実施しましたが,民間保証会社では限界があります。望ましい姿ではありません。必要なのは公的立替えです。そういった観点から,昨年の夏,明石市独自で公的立替えを実施いたしました。短い期間ではありましたが,32名のお子さんに対する対応をとりました。具体的に立て替えた方もいますが,立て替えるまでもなく,明石市が関わることによって任意の支払が始まった方もおられます。4人の子どもさんについて,明石市が関わるだけで養育費の支払が再開したということです。また,立て替えた後の回収ですが,関心がお強いかと思います。19人の子どもに立て替え,うち11名に養育費を払うべき方々から明石市に戻していただいている状況でありまして,100%全部回収というのは難しかろうと思いますが,現状,半分強ぐらいは何とかなるのかなというのが実感です。また,これもお伝え申し上げたいのですが,こういったテーマに関わることによって,何か大きなトラブルが起こるのではないかというような御意見があろうかと思いますが,特に明石市においてそういったトラブルは発生しておりません。もっとも,大変気を使う個々のケースに応じた丁寧さを必要とするテーマですから,その分,専門性と丁寧さということを心がけている認識であります。   4点目はいわゆる親子交流,面会交流です。明石市としてもこのテーマに取り組み続けております。むしろ養育費より先に明石市は面会交流の直接支援を対応しております。面会交流のための場所を提供したり,そのときに利用いただくような交流ノートというようなものを作成し配布もしておりますし,それに加えて,明石市では5年前から明石市の市役所の職員などが立ち会う形で,いわゆるお子さんと面会交流をするときのお手伝い,具体的には片方の同居親からお連れいただいたお子さんを一旦お預かりし,そして別居している親御さんのところで過ごしていただくというようなことを現にしておりますし,また,場合によってはそのお姿を見守るという形での付添い支援もしております。これまでに34人のお子さんに対して200回以上のいわゆる面会交流支援を実施しております。当然無料です。こんなことでお金を発生させるべきではありません。繰り返し申し上げますが,養育費や面会交流で金を取るのは間違っています。それが公的機関であれ,また弁護士であれ,法テラスであれ,金を取るのは根本的に間違いであります。面会交流は子どもの権利です。養育費は子どもの権利です。養育費からピンはねするようなことを許してはいけません。このことは強く申し上げたいと思っております。   次のページにまいります。5点目です。関係機関との連携であり,明石市は一番初めにこれをスタートさせました。やはりこのテーマは行政だけでできるわけではありません。関係する方々としっかり手を携えて,できることを増やしていく。また,それぞれできることを確認し合って協力し合う,それだけでも大きな前に進むことだと思います。具体的に,明石市では弁護士会や社会福祉士会や心理士会のほかにも,いわゆる公的な部分を担う法テラスや公証役場,また家庭裁判所にも入っていただいておりまして,裁判所も交えてこういったネットワーク会議を開催しているのが特徴であり,今も現に家庭裁判所の方々がお三方,明石市のこのネットワーク連絡会議に御出席いただいております。このテーマは裁判所も大変重要な役割を果たします。当然,裁判所は入るべきで,特に明石市の場合,様々な取組をしておりますので,家庭裁判所で明石市の面会交流支援を使うようにということを勝手に調停調書に書かれますが,それをするのであればきちんと相談いただきたいと,そのように思っておるところであり,家庭裁判所の怠慢は本当に許し難き状況であって,しっかりと対応してほしいと強く願う次第であります。   関連施策といたしましては,そういった離婚を経験した子どもたちに楽しい時を,また,お互いの同じような境遇の子どもたちの会話という意味でのキャンプを開いたり,例えば関連施策では,戸籍が取りにくい,取れない,そういった無戸籍についての相談窓口や,戸籍取得支援もしております。さらに加えて,養育費がなくても子どもを育てる社会を作ることが重要でありまして,養育費に全てを期するべきではありません。そういう意味では,児童扶養手当の金額はもっと上げるべきです。また,2か月に1回でなく,1か月ごとの家計管理の方が子どもにとって望ましいのは明らかであります。明石市では希望する方全員に毎月支給を実施しております。できることです。単なる国の怠慢です。行政の利便性ではなく子どもの立場で考えれば,毎月支給を早期に実施すべきだと思えます。   さらに,このテーマは繰り返し申し上げますが,全体的に私たちの社会が子どもに余りに冷たすぎるのが最大の原因であります。子どもに掛ける予算は,これもよく言われておりますが,OECD諸国と比べた場合,日本の子ども関係支出はほかの国の半分以下であります。すぐに子ども予算を2倍以上にするのは当然です。なお,明石市は,私が市長に就任した10年前から比べて,子ども関連予算は既に2倍以上,子どもを担当する職員数は3倍以上に増やしております。決して多い数ではありません。ほかの国並みです。日本が余りにも子どもに冷たく,子どもを無視し続けているだけでありまして,さすがにそろそろほかの国並みの予算と,ほかの国並みの人の数と,ほかの国並みの法制度を作るべき時だと思えます。   なお,明石市ではこういった子育て支援のほかにも,児童相談所も2年前に,全国で9年ぶりとなる形で市独自で立ち上げ,そこの職員数も国基準の2倍以上の職員を配置し,子どもの危機に対して寄り添っている認識であります。   最後になります。法制審へのお願いであります。簡潔に5点,お願い申し上げます。まず1点は,子どもの権利です。養育費は同居親の権利ではありません,子どもの権利に決まっています。何を今頃こんな議論をしているのかと,子どもに決まっておるではないかと。面会交流も子どもの権利です,親の権利ではありません。養育費も面会交流も,そして,それ以外のことについても,子どもが意見表明できるのは当然であり,これは国連からも勧告を受けてきていることであります。早急に法制度の見直しを求めます。   2点目は,離婚手続であります。こんなに子どもにひどい離婚制度はありません。親同士が合意しただけで子どもの状況に関係なく離婚を認める,こんな理不尽な社会がいまだ続いていることが本当に情けないです。早急に,子どものことを考えた上での離婚制度という見直しを強く望む次第でございます。   取決め支援についても当然必要でありますが,公正証書にお金を掛けるのは間違いです。早急に無料化すべきです。これに関わる弁護士や司法書士が金を取るのは間違っています。法テラスも無料化するのは当然であります。子どもの権利である以上,その子どもの権利をしっかりと保障するのは公の責任であり,それは子どもやその親の責任ではありません。   続きまして,履行確保であります。これもいろいろ言われておりますが,私としては罰則でも強制徴収でも立替えでも,とにかく絵に描いた餅ではなく,子どものところに食べられる餅が要るのですから,そのためにできることは全部やったらいいと思っております。これは各国によって様々な対応がありますが,日本においては全部やったらいいと私は考えております。   最後に,面会交流でありますが,養育費と面会交流はバーターではありません。それぞれ重要な子どもの権利であり,この二つをてんびんに掛けるべきではありません。両方大変重要な権利であり,両方しっかりやっていくべき,そのように思います。その際,特に重要なのは,いわゆるDV事案です。これについては様々な意見があることは重々承知しております。このテーマについて,DVに対するしっかりとした,より積極的な公的な支援を前提とした上で議論を進めていただきたい,そのことを強くお願い申し上げ,時間となりましたので,私からの説明といたします。期待をしております。よろしくお願い申し上げます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   それでは,最後になりますけれども,小泉参考人に御説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小泉参考人 小泉と申します。それでは,私の方からは家庭裁判所調査官の経験者としてのお話,それから,現在のADR事業者としてのお話としまして,異なる協議ステージでの当事者やお子さんの姿をお伝えしつつ,そういうことを踏まえた私の考えというようなものを少しお話しできればと思っております。よろしくお願いいたします。   まず,家裁利用者の当事者についてですけれども,離婚全体の10分の1しかいないという点からも御想像が付くと思いますが,やはり当事者間での合意が難しいという紛争性の高い当事者が多いです。また,同居の有無の観点からしましても,家裁利用者のおよそ8割程度が別居をしている反面,今年の3月でしたか,法務省さんの方で実施された離婚当事者向けのアンケートによりますと,離婚前に別居した人の割合が半数以下となっていましたので,そういった意味でも,家裁当事者というのは既に同居での協議が難しいという意味においても,やはり紛争性の高い当事者ということができるかと思います。   そういった紛争性の高い当事者間の協議についてですが,まず,面会交流については子どもの拒否であるとか子どもの悪影響が主張されるといったような,原則実施を当てはめることが難しいケースがございます。あとは,本来実施が可能なのだけれども,夫婦間の葛藤が非常に高く,親の葛藤の高さゆえに面会交流が難しいケースなども多い印象があります。また,養育費につきましても,算定表がベースにありながらも,双方が大なり小なりの主張を繰り返してなかなか決まらないと,そして面会交流と養育費が相互に悪影響を及ぼして,こちらが決まらないならあちらもごねてやるというような感じで両方決まらないと,長引いているうちに葛藤が更に高まっていくというような,そんなケースが散見されたというところでございます。   次に,ADRの利用当事者像としまして,当センターのADRを利用される方について少しお話をさせていただきます。当センターは,平成29年12月に法務大臣の認証を取得しまして,現在丸3年と半年程度が経過しております。令和元年と令和2年につきましては,年間120から130件ぐらいの申立て件数がありまして,決して何かを一般化できるような件数ではないですけれども,家裁の利用者とはまた違うステージでの協議をする当事者として御紹介をしたいと思います。   まず,当事者像についてですが,現在,ADRは認知度が低く,いろいろとネット検索をしているうちにこういう制度にたどり着いたというような方が多いのが現状です。また,家裁の調停よりもある一定の費用が掛かるわけですので,そういった費用を出したとしてもきちんと問題を解決したいというような人たちですので,そういったことを総合しますと,相対的に知識欲があるといいますか,知識が高い方で収入も高い方という方が,平均と比べますと,多いように思います。それから,もう一つ大きな特徴としまして,穏やかな解決を望むという視点があります。皆さん,養育費や面会交流についてはいろいろ,ネットで検索をしたりですとか,弁護士相談に行かれたりということで,ある程度の知識を持っていらっしゃる方がかなり多いように思います。例えば算定表上は幾らというような妥当な金額を知っているのだけれども,ただ,その金額を知っているだけではやはり前に進めずに,それを相手に伝えたところで応じてくれないといったことがよく起こるわけなのです。そうした場合に,今の日本では,弁護士に依頼するとか,それから家裁に申立てをするとかといった選択肢しかないわけですけれども,夫婦だけでは協議ができないけれども,弁護士に依頼したり裁判所で争うことまではしたくないといったような,ある程度穏やかな解決を求める人が多いというのもADR利用者の特徴かと思います。   そういった当事者像のADRですけれども,お子さんがいる御夫婦の離婚協議においては,ほぼ100%といっていいくらい面会交流と養育費について取決めをします。面会交流につきましては,家裁の協議と大きく異なりまして,もめるケースというのは本当に半数以下,4分の1ぐらいのイメージです。同居親の方も,子どもの生活に支障がない限り,ある程度会ってもらって構わないというような姿勢ですし,別居親の方も,同居親と子どもの生活を想像した上での無理のない主張をされる方が多いように思います。結果として,特にお子さんの年齢が低い場合は,月に複数回会うような面会交流ですとか,宿泊付きの面会交流が認められることも多いです。一方,お子さんの年齢が高い場合,別居親も余り無理をしないといいますか,子どもが会いたいときに会えればいいというスタンスの方もおられます。そして,養育費についてですが,基本的には算定表を参考に決められる方がほとんどですが,特徴としては,私立学校の学費や大学の費用など,いわゆる特別出費の高額な教育費の部分を割と丁寧に決められる方が多いように思います。やはりひとり親家庭になるに当たって一番心配なところなのだろうと思います,高額な教育費ですね,大学に行かせられるのだろうかとか,そういったところが皆さん御心配なのだろうなと思っております。   また少し違う視点の話になるのですけれども,養育費を取り決める方の9割程度がADRでの合意と同じ内容の公正証書を作成されます。当センターでは公正証書の作成までを行政書士業務として請け負うことがほとんどですので,当事者の方が特にもろもろ手間が掛かったり,別途公証役場に行かなければいけないということはないのですが,やはり余分に費用が掛かるというのが大きなネックです。また,事前のお問合せなんかでも,ADRで養育費を決めた場合,強制執行はできるのですかというようなお問合せも一定数あります。そのため,家族法の議論とは少しそれるのですけれども,ADRで合意した内容についても,一定の条件の下,債務名義化できるということになれば,より一層,子どもの福祉が守られるという結果になるのではないかと考えております。   続きまして,その他の離婚当事者の実態としまして,いわゆる親プログラム参加者についてお話をしたいと思います。親プログラムにつきましては,こちらにおられる皆様に更に御説明をする必要はないかと思いますので,現在,当センターの主催若しくは自治体との共催という形で実施している実際のプログラムについて,少し御説明をさせていただければと思います。   当センターでは,「パパとママの離婚講座」という名称で月に1回,オンラインの親プログラムを実施しております。また,昨年は港区と共催で同様の講座を開催しましたし,今年度は豊島区,文京区,目黒区でも同様の講座を月に1回,若しくは2か月に1回のペースで実施予定であります。こういった講座に参加される方の特徴としては,第三者を挟んだ協議までは必要ないかもしれないけれども,一応養育費や面会交流をきちんと取り決めたいとか,離婚前後の子どもの福祉というものに関心があるといったところです。こういった特徴を備えている点におきまして,こういった層の人たちへのアプローチというのはとても大切だと感じています。なぜなら,もろもろの統計にもありますように,養育費や面会交流支援の取決め率が低い大きな理由として,そもそも権利者が求めない,その理由としては相手と関わりたくないというのが非常に多いからです。こういった方々に対しては,取決めを法律で義務化しない限り,任意の取決めを促すのは難しいと考えられます。一方,講座受講者の方々は,きちんと取り決めたいという気持ちを少なからず持っておられますので,打てば響く層と感じているところでございます。そういった層の皆様がどんなことに興味を持って,どんなことを知りたいと感じているかということを,資料で見ていただければと思うのですけれども,二つ御準備させていただきました。   一つは,当センター主催の講座の受講後アンケートです。もう一つが,港区の受講前アンケートになります。お時間の関係もありますので,それぞれ皆様に見ていただければと思うのですけれども,まず双方のアンケートに共通なのは,やはり離婚時の関心というのは本当に多様で,人それぞれだということなのです。ただ,幾つか特徴的なところがあると感じているので,そこをお話しさせていただきますと,当初この講座を始めるに当たって,メンタルケアみたいなものよりも,離婚条件のような法的な知識を求められる方が多いのではと思っていたのですけれども,意外とメンタルケア的な内容としての,お子さんへの説明とか,そういったことに関心をお持ちの方も一定数おられるのだなと感じました。また,手順とかフローといった言葉が少し見られると思うのですけれども,実際に離婚を進めるに当たって,具体的な手順であるとか,離婚協議の方法を知りたいといったお声も多いように思います。また,これも意外だったのですけれども,講師の体験談であったりとか,ほかの参加者の方との相乗効果的なものもあるので,いろいろなニーズを短時間の講座で網羅するのは非常に難しい面があるのですけれども,法律相談や個別相談とはまた異なる効果があるということをこの講座を通じて実感しているところでございます。   少し話題を変えまして,親の離婚を経験する子の実態というところで,子どもの意向について少しお話をしたいと思います。   まず,家裁で実施される子の意向調査についてですが,既にある程度紛争の高まった御夫婦が多いことから,子どもの意向を家裁の段階で聴取したとしても,同居親の意向が色濃く影響していたり,若しくは親の紛争に巻き込まれた結果,お子さんのピュアな意見が聴けないということが多かったりいたします。そのため,家裁調査官が意向の調査を行ったとしても,何か思いもよらなかった子どもの真意が聴けたということは余りなく,想像どおりの発言になることが多いように思います。ただ,だからといって必要でないというわけではなくて,意向調査まで行う案件はやはり葛藤が非常に高いケースですので,そういったケースを家裁で処理するに当たって,一種のけじめといいますか,双方の納得度を高めるためには,非常に必要なプロセスだと感じております。   では,お子さんの意向調査,家裁の外でどんなふうに行われているかというところで,ADRのお話を少しさせていただきたいと思いますが,ADRでは子どもの意向調査のようなことはしませんが,親の口から子どもさんの気持ちが語られるということはよくあります。特徴としましては,そこでは比較的正直な,ゆがめられていないお子さんの声が聞かれることが多いように思います。例えば,モラハラ夫だけれども,子どもにとってはいいお父さんなのだというお母さん側の評価があったりとか,いい父親だとは思えないし,父親が母親を痛め付けているような場面も見ているのだけれども,なぜか子どもはパパを好きなのですよねといったような,子どもの気持ちの素直な代弁があったりします。こういったところが非常に家裁の当事者との違いだと感じているのですが,その違いが何から生まれてくるかといいますと,やはり夫婦の問題と親子の問題というものをある程度切り離して考えられる土俵があって,離婚をしても別居親が子どもに関わることが子どものプラスになるのだということがある程度腑に落ちている方々だということがいえるかと思います。   そういった当事者像等を踏まえまして,ではお子さんのためにこれからどういうことができるのか,必要なのかというところですけれども,まず大前提として,子どもの多様性というところです。面会交流一つ取っても,毎日のように別居親に会いたいお子さんもいれば,もう一切関わりたくないというお子さんもおられます。親の離婚に際しても自分の気持ちを聴いてほしいというお子さんもいれば,聴かれても困るのだというお子さんもいたりします。そういった多様性を前提として考えますと,一様に意思表明を求めるというよりは,まず大切なのは正しい情報提供だと感じています。お子さんの年齢に応じた適切な説明や質問の機会があることが意思表明の前提であって,その結果,意見を言うことを望むお子さんもいれば,そうでないお子さんもおられるというところだと思います。   最後に,両親のケアについてお話をさせていただきます。実際の業務に携わっていますと,心底感じるのは,配偶者の仕打ちに心身ともに疲れ果てていたり,若しくは怒りの感情に支配されている方々にとって,子どもの福祉を語られたとしても,その手前にある相手への悪い感情が先立ってしまって,純粋に子どもの幸せに思い至ることが難しい状態にあるということです。そういった方々のケアは,とにかく話を聴いてあげるということが第一の方法だと思うのですけれども,とにかく時間の掛かる作業となります。ですので,現実的に一番大切だと思うのは,そういった心身の状況に至る前に早期の段階で行政等が当事者にアクセスができるということが大切なのではないかと感じております。   こういったことを総合的に考えますと,現時点で私が必要だと思っていることは,子どもの福祉の実現のために必要なことは,子どもに直接的に何かを施すというよりは,それぞれの親が子の福祉実現に関する知識や意欲を持つということだと思います。そのため,いわゆる親プログラムが周知され,紛争のステージに上がる前の早期にアクセスすることができるということが,行政を中心としてできるようになればいいなと思いますし,加えて,離婚協議の選択肢を増やすという意味で,ADRの周知も望まれるところだと思っています。9割を占める協議離婚の中で,夫婦だけでは協議が成立しない,でも余り大げさに争いたくないという方の取決めを促すことができると考えるからです。   以上になります。ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   以上で4人の方々のお話を伺いました。この後は,これまでお話を頂いた方々のお話の内容につきまして,皆様から御質問を頂きたいと思います。御質問される方は,まずお名前を言っていただいて,次に,どなたに対する質問であるかということを示していただきまして,その上で質問の内容に入っていただければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。 ○棚村委員 大変貴重なお話を頂きまして,本当にありがとうございました。早稲田大学の棚村です。貴重な御意見を頂きましたので,端的にお答えいただければと思いますが,お子さんのために今必要な制度,それから法の改正で,既に明石市の市長なんかはおっしゃってくださったと思うのですけれども,特にこういうものが必要ではないかというのをお聞きできればと思います。はっきりとおっしゃっていただけなかった方もいたと思いますので,短い時間でいいのですが,皆さんにお尋ねしたいと思います。 ○大村部会長 それでは,各参考人から一言ずつお願いできればと思います。 ○海野参考人 教育もそうなのですけれども,やはり子どもを横道にそらさせないためには,愛情というものが一番根本にあるのではないかと思います。同じ母子家庭で育っても,愛情をたっぷりに与えられたか,仕事が忙しくて子どもの面倒を見ている暇がないか,というような現状の中で,同じように子どもを育てるというのは少し難しい現状があるのです。やはり親の仕事,それで,ダブルワーク,トリプルワークしている人なんかは,子どもの面倒を見ている時間がないのですね,だから,そういう方が余裕が持てるような,やはり愛情を伝える時間をもう少し持てるような仕組みが何かないのかなというのは,常日頃考えているのです。結局ダブルワーク,トリプルワークしないと子どもを学校にも上げられないという現状がある今,この世の中で,やはり子どもはみんな全ての権利を持っていると思うのです。私たちが今回思うのは,全ての子どもが幸せにならないといけないというのを根本に思っておりますので,その基本が日本ではできていないのかなと。やはり金持ち優遇の世界になっているので,そこのところをもう少し,貧困世帯,母子家庭だけではなくて,低所得の方も今たくさんいらっしゃいますし,コロナで解雇になった男性もたくさんおります。そういう人たちが安心して子育てができる社会を作らなければいけないのではないかと思っております。そういうための法律が必要ではないかと心から思っております。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   では,しばはし参考人,お願いいたします。 ○しばはし参考人 子どものために何ができるかということに関してですと,子どもに直接何か支援を,もちろん大事なのですが,やはり家に戻ったときに親の顔色を見なくてはいけないような家庭の中でいると,結局子どもにサポートをしても,子どもってやはり親の言うことを聞いてしまったりというところになるので,先ほど御説明したとおり,やはり親の葛藤を下げる,親が争わないための制度というのが必要になってきます。   具体的に何かというと,先ほど申し上げましたとおり,やはり見ていると調停や裁判で別居前よりも関係が悪化している方々ってたくさんいらっしゃるのですよね。皆さん,離婚をしたい,ないしは面会交流をしたい,いろいろな話合いができると思って調停に初めて臨むわけなのですが,実際,調停の場って取決めありきで,全然気持ちの面を何も聴いてくれない,わだかまりがあるまま,取決めがされてしまった,ますます葛藤が高くなって対立構造が深まる,そうすると決められた面会交流も実施されないというようなことに陥ってしまうので,是非とも調停ないしは離婚協議の場で,これ以上対立構造が深まらないための,それぞれの葛藤を下げるような気持ちの面でのサポートをしっかりした上で取決めをするという,そのフローが制度として行われていくこと,そして,当事者に向けても,離婚届を出しますと,相手と自分は縁を切れるものだと思われがちですけれども,やはり子どもにとってはお父さんとお母さんであるわけですから,もちろん子どもに暴力を振るうような方においては更生プログラムなども必要になってきますが,離婚しても,一人で育てるということだけではなく,二人で育てる選択肢を採っていけるような,その情報提供ないしは,情報だけではなく,知識だけではなく,具体的にどうすればいいのかという気持ちの面に踏み込んだ実践的な方法を知ってもらう機会というのをマストにすること,そこが大事だと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   泉参考人は先ほど御要望を頂きましたけれども,特にという点につきまして御発言をいただけますか。 ○泉参考人 端的に2点。1点は,協議離婚制度はもうやめてください。こんな荒っぽいものはありません。少なくとも子どもがいる場合に,子どものことを考えた新たな離婚制度の創設,これはもう絶対必要です。こんな協議離婚が9割を占めるなんて間違っています。   もう1点,これは無責任な司法から責任ある司法への転換です。例えば調停で面会交流を決めたり,養育費を決めても,守られていません。こんな無責任な司法のまま放置していいわけがありません。司法関係者は大いに反省すべきです。履行確保をきちんと前提とした法制度の変更が必要だと思います。この2点です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,小泉参考人,お願いいたします。 ○小泉参考人 私からも2点挙げさせていただきます。まず1点は,いわゆる親プログラムの拡充です。紛争が高まる前に情報提供をするということが趣旨なわけですけれども,もう少し具体的に申し上げますと,例えば自治体が中心となって,離婚届を取りに来られた方にそういった講座の案内をするとか,若しくはもう少し進んで,条例でそういった受講を義務付けるというようなことができれば,皆さんがある一定の知識を得た上で離婚協議に進めるということが一つ実現できるのかなと思います。   もう一つは,離婚協議の選択肢の拡充という意味でのADRの認知度の向上です。ADRの仕事をずっと日々やっていく中で,やはり紛争性が高まらずに親族間の紛争を解決する手段としては非常に有用なものだと感じております。ただ,残念なことに,知らない方がたくさんおられますので,家裁という選択肢もあるし,弁護士に依頼するという選択肢もあると,もう一つ選択肢としてADRというものがありますということを周知していただくということをお願いできればと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ウェブ参加の方から挙手があるようですが,原田委員,石綿幹事の順番でお願いいたします。 ○原田委員 弁護士の原田です。今日はどうもありがとうございました。しばはしさんにお伺いしたいのですけれども,お配りいただいたパンフレットの中に,共同養育をした場合のメリット,しなかった場合のデメリットという記載があるのですけれども,逆に,通常これはした場合のメリット・デメリット,しなかった場合のメリット・デメリットと書かれる場合が多いと思うのですけれども,その辺りについてのお考えを一つ伺いたいのと,それから,しばはしさんと泉さんになのですけれども,しばはしさんも先ほど,精神的DVとかの場合に,非常に相対的で平行線になるので,見極めが重要だとおっしゃっていたと思うのですけれども,見極めることはできると思われますか。それから,泉さんについても,DV事件については例外だと書かれていますけれども,これについて,どのように例外を区別というか,見極めるのかということについて御意見がありましたら,お願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。二つ御質問いただきましたので,まず1問目についてしばはし参考人にお答えいただき,その後,2問目の方に移りたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○しばはし参考人 御質問ありがとうございます。恐らく,この緑のリーフレットのところに書いてある,共同養育のメリット,共同養育しないデメリットということの記載のことでいらっしゃるかと思うのですけれども。   要するに,共同養育はメリットしかないということを伝えたいというところになっていきます。もちろん子どもに対して身体的なDVでしたり,そういったことを行っているような方は例外にはなりますが,そうではない場合,たとえお父さんやお母さんが怖いという思いをしていたとしても,どこか愛されたい,愛されていることを確かめに行きたいというような思いを秘めている子どもたちもよく話を聞く機会もあります。ですので,まず,共同養育の定義だと思うのですよね。皆さん,もしかしたら,すごく協力し合って,育児分担も毎週交代,共同監護みたいなことが前提であると難しい家庭があるというのも分かるのですけれども,共同養育イコール頻度といった定義付けよりは,私としては,親同士が争わずに,子どもが自由に行き来できるような環境を整えることこそ共同養育に大事なポイントだと考えていますので,そういった定義付けの上での共同養育という意味では,メリットしかないと考えております。   二つ目の御質問について,私から続けてしまいますと,精神的なDV,相対的評価で非常に見極めが難しいというところになります。我々のところに相談に来られる方も,会わせたくない同居親,会いたい別居親の構図での御相談者って,理由がほぼその精神的DVなのです。浮気でしたり借金みたいな,明らかに相手側に黒があるような場合というのは,相手が謝ってくれるから,何か少し気が済むではないですけれども,人ってやはり嫌なことをされたときに謝ってほしいとか,直してほしいという気持ちが非常に強く,ですので,謝ってくれない,相手はモラハラだということを認めないみたいなところで,より会わせたくないみたいな感情になっていくケースが多い。こちらに来られる方はモラハラといわれている別居親の方々がたくさんいらっしゃるのですが,一緒くたに同じかというと,全然違いまして,中には,それも個人的な尺度になっていくのですが,できるだけ子どものために相手側の気持ちも尊重したいと,思いもある方もいらっしゃいます。一方で,全くその思いがなく,相手は連れ去った,自分は被害者だと言い切るような方もいらっしゃいます。とはいえ,子どもと関わっていく是非については,例えば攻撃的な別居親である場合には,支援団体の付添いを付けるなどして関わっていくという機会を作っていくことは大事だと考えています。そして,実際,本当に相対的という部分があるという意味では,そうですね,自分自身が,自分はモラハラではないということではなく,そう思われているところがどこだったのかというのを正していくという作業も必要になってきますし,更生をするということと並行して,きちんと子どもに対しては関わっていくことが大事だと考えています。   一方で,同居親側に対しても,ずっと被害者意識があると,逆にモラハラといわれる別居側からずっと追われているという状態になってしまって,離婚してもずっと逃げ続けなければいけないというような人生になってしまうのも,非常に不幸になってきます。そこで,もちろんサポートなどを利用しながら,相手ときちんと向き合うといいますか,子どもに対して親同士として関わっていけるために,こちらの要望を伝えるですとか,そういったものを支援を通してきちんと意思を示していく,モラハラだから子どもを会わせない方がいいという単一的な方程式になるとは私は考えておりません。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,DVの件につきまして,泉参考人からもお願いいたします。 ○泉参考人 大変大きな論点です。端的に3点ばかり。   まず大前提として,日本の場合,子どもにも冷たいですが,DVに関してはもっと冷たい国です。お金を全然使っていません。例えば,自治体レベルのDVの相談員も二,三百万円の年収で働かされています。間違いです。明石市では正規職員化して一般行政職並みの給与にしましたけれども,そのお金は市がかぶっています。まず初めに,DV支援に対して今の予算の5倍ぐらいは付けるのが大前提だと思います。   二つ目です。DVを考えるときに悩ましいのは,例えば明石市,児童相談所も設けましたが,児童虐待ケースもDVと関係しているのが大変多いです。悩ましいのは,いわゆるDV支援の立場に立つのか,子どもの虐待防止の子ども側に立つのかで,やはり緊張関係が生じます。大事なのは,やはりDVの加害者,被害者のみならず,もう一方当事者の子どもという立場に立ち,子どもの意思表明,子どもの利益を擁護する存在がポイントになってくるように私は思います。だから,単純にDVだから即こうとか,DVではないから大丈夫という話ではなくて,やはり子どもの立場に立った丁寧さが要るという趣旨です。   3点目は,そういったことをするために諸外国の事例を研究して,日本なりのDVに特段の配慮を込めた離婚制度を作っていただきたい,これはお願いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,石綿幹事,赤石委員,落合委員,武田委員という順番でお願いいたします。 ○石綿幹事 一橋大学の石綿と申します。しばはし参考人にお伺いしたいのですが,パワーポイントの資料の5ページで,共同養育を希望する女性からの相談が増えているという御指摘があります。それに関連して三点,なぜ当事者は共同養育を望まれるのか,どのような方が共同養育を望む傾向にあるのか,そして,そのような共同養育を望む方が増えている理由をどのように分析なさっているのかということを教えていただければと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。 ○しばはし参考人 御質問ありがとうございます。一つは,共同養育という発想が今まではなかった。私も活動している中で,少なくとも2年ぐらい前まで共同養育という言葉をメディアが取り上げてくれることはありませんでした。しかしながら,ここ1年,テレビ,そして新聞,最近では女性誌ですね,ファッション誌などでも,芸能人なども,離婚しても二人で子育てというやんわりしたものではなく,共同養育というキーワードが割と出てくるようになったのです。ですので,検索をしていくうちに,離婚をしたいのだけれども,子どもにどんな悪影響があるのかなという,子どもには父親も失わない方がいいな,みたいな方が,今までは多分,共同養育という言葉にたどり着かなかったような層が一定数いたのだと思うのです。しかしながら,ここ最近,この言葉を目にする機会が増えたということもあって,共同養育からりむすびに到達してくるという方が増えたということが,なぜ増えたかということの回答になるかと存じます。   そして,どのような層が多いかなのですが,仕事をしている方が多いです。自分自身のきちんと仕事もしたい,今まで夫も育児をそれなりにしていた,ないしは育児をしてほしかったというような方々が,離婚をした後も,一人でワンオペ育児というのはつらいし,だけれども,どうしても夫婦の関係では難しい,なので離婚もしたいけれども,育児分担はきちんとやっていきたい,そういった方が多いのかなというところになっています。中には,それって夫との関係が良好なのではないかと思われがちなのですけれども,夫はモラハラなので関わりたくないけれど,子どものためには,自分だけが一人で育てていると留守番をさせる機会も多いし,きちんと父親も交えて育児をしていきたいというような思想になっている女性が増えてきています。割と以前よりも若い層ですね,2,30代の方々というのも共同養育というのに関心が広がってきているのではないかという印象を受けます。   今,理由の点も,育児分担もしたいし,子どものためには父親を奪いたくない,だけれどもどうしても離婚はしたいという,その辺りで,共同養育という考え方が相性がよかったのかなと思います。一個懸念としては,共同養育という方法があるからということで安易に離婚に進むことは,私は少し警鐘を鳴らしたいというか,離婚はしないに越したことはないが,やむを得ない場合の共同養育という選択肢で考えていただけるといいのかなと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   更に手が挙がりましたけれども,まず,赤石委員,落合委員,武田委員,お願いします。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。   まず,しばはしさんにお聞きしたいのですけれども,大変面白い実践をされていると思いました。こうした,面会交流支援だけではなく,カウンセリングですとか,こういったものの専門性の獲得というのはどのようにできるのかということを少しお聞きしたいのです。面会交流支援で子どもの個人情報を相手方のDV加害者に漏洩してしまうといった事件ですとか,いろいろな問題をお聞きすることがあります。どのようにしたらこういったことを防げるのかということをお聞きしたいと思います。また,しばはしさんは取決めが優先ではないという認識でよろしいのかどうか,そこもお聞きしたいと思います。   それから,泉市長にお聞きしたいのですけれども,この資料の3ページ目,離婚に際しての子どもの意見表明権というのを書いていらっしゃるのですけれども,この間,家裁で子どもの意見表明をした場合に,それが同居親の影響下によって歪められている,片親障害であるとか片親阻害症候群といわれて,結局子どもの意見というのが聞かれないというようなことが出てきて,非常に家裁の中で,子どもの意見をどのように聴くのかが難しいということがあるのですけれども,その辺りの御意見をお聞かせいただければ大変有り難いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。しばはし参考人宛てに2問と,それから泉参考人宛てに1問ございましたので,順にお答えを頂ければと思います。 ○しばはし参考人 御質問を赤石さん,ありがとうございます。3点あったかと思います。専門性について,そして,子どもの個人情報などの扱いについて,そして,取決め優先なのかという御質問だったかと思います。   まず,専門性において我々は,先に言いますと国家資格は有しておりません。当事者ないしは共同養育というものを広めたいと思っているような者でしたり,という者が,我々が独自で作った研修を受けた上で,活動を行っています。研修では,別居親に対して,そして同居親に対して,それぞれに対してどのような対応を行っていけばいいのかということをマニュアル化しているのですが,やはり個々で違うので,そこは,ケース・バイ・ケースというような対応をとっていきます。ただ,子どもの専門家ではございませんので,子どもの心理などの相談があったときには,連携というか協力をしてくださる専門の先生にお聞きして,おつなぎなどをしております。そして,法的な知識という意味でも弁護士と連携をさせていただいております。   二つ目なのですけれども,常々,個人情報の扱いでしたり,情報の提供ということに関しては,毎月,中で支援をしている者での研修や事例検討の機会というのを設けております。   もう一つ,取決め優先ではないのかという御質問に関してですが,もちろん取決めはきちんと実施するべきです。ただ,実施できないような取決めになってしまったり,関係が悪化してしまうような中で取決めを行われてしまうのではなく,その前にきちんと合意形成ができるような関係性を作っていくことがまず先に必要なのではないかということでお話をさせていただいた次第です。  いずれにしても,決まったことはきちんとやる必要があると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,泉参考人,子どもの意見表明に関して,お願いいたします。 ○泉参考人 子どもの真意というものをいかに確認するかというのは大変難しく,深いテーマです。でも,大前提は,「聴く」でしょう。しっかりと子どもに耳を傾けていくわけですが,明石市の場合は児童相談所を設けており,同じテーマがあります。明石市でしているのは複数の耳,複数の機会です。児童相談所の職員が子どもの声を聴くだけではなく,明石市では既に第三者も全ての子どもの声を聴き始めています。行政とは違う者が聴くということです。更に加えて,秋からは弁護士会に委託をして,全く無関係の弁護士にも聴いてもらうと。つまり,きちんと複数の耳を持つこと。そして,もう一つは,当初の子どもの意見と少したってからの子どもの意見が変わることはままありますので,継続して声を聴いていくことだと思います。いずれにしても,子どもの声を聴くために重要なのは専門性,赤石さんおっしゃるとおりです。この専門性をいかに培っていくか。ただ,幸いに日本の場合,家裁で正に調査官制度もあり,心理職とか福祉職もおられますので,その辺りを充実化させていく方向かなとは考えています。   取り急ぎ,以上です。 ○赤石委員 泉市長にお聞きしたいのですけれども,今,調査官調査は1回で行われることが多いので,そこに御不満を持っていらっしゃる親御さんは両方いらっしゃると思うのです。これは複数の方が聴いたり,密室でなく聴いたり,いろいろな条件の担保が必要だとお思いでしょうか。 ○泉参考人 当然必要です。今の家庭裁判所はひどすぎます。きちんと家庭裁判所は人的充実化も図り,専門性の向上も図るべきです。レベルが低すぎます,家庭裁判所の充実化は待ったなしです。もっと最高裁が本格的に参入すべきなのであって,これはもう裁判所のテーマだと思います。 ○赤石委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○落合委員 しばはしさんと泉市長に一つずつ質問がございます。   まず,しばはしさんには,個人的な質問になるといけないので,抽象的な形でお答えいただいて結構なのですけれども,共同養育に反対の親だったから,そのことを後悔しているとおっしゃいましたよね。なぜそれで考えが変わったのかということをお話しいただけたら有り難いと思います。   それから,泉市長には,対応する職員を正職員化されたのですね。DVに対応するような方を。非常に感銘を受けました。今,地方自治体の公共サービスに対応する職員の非正規化が非常に進んでいますし,しかもそれを女性が担っておりますよね。こういうことが子どもに対してとか,それから,こういう当事者に対する対応を貧しくしている,それが専門性を損なわせていると私も非常に思っているのですが,行政改革の流れというのが全国的には強いです。これを逆転させるには一体どうしたらいいのでしょうか。そういう公共サービスに対応する職員の給与を上げたらこんないいことがあったとか,この全国的な流れを逆転させるためにどのようにしたらいいかということのお知恵をお聞かせください。お願いいたします。 ○大村部会長 それでは,しばはし参考人,それから泉参考人の順番でお願いをいたします。 ○しばはし参考人 御質問ありがとうございます。個人的なことではありますが,公にしている範囲でお話をさせていただきます。私自身,調停離婚を行いまして,当時,小4の息子がおりました。いわゆる,私が出たというのではなく,夫が出たという形での別居からスタートだったのですけれども,相手と関わりたくないがゆえに,会ってはいましたが,私が露骨にやはり夫のことを嫌というオーラを出していました。子どもは私の顔色を見て,夫の話も一切しないですし,面会交流をした後に家に帰ってきても,何をしたみたいな話もしないですし,それでも明るく振る舞ってくれていました。しかしながら,夜しくしく泣いたりだとか,何が原因なのか分からなくて,パパのせいでこうなってごめんね,みたいなことを言っている時期がありました。   そこから前向きになった経緯としては,ほかの家族の面会交流のシーンを少し見る機会がありました。能面のような表情で子どもを嫌々連れてくる同居親に対して,実際,子どもが別居親さん側の方に移動したときに,とてもうれしそうに関わっているシーンを見ました。子どもが父親と会いたい,ないしは母親と会いたいみたいなことを言わないのは,もしかして一緒に住んでいる親の顔色を見ているのではないかということを,私自身そのときに気付きました。そこで,子どもに対して,会う日を作るね,みたいなことを言ったら,そこから関係が,子どもはもちろん家で父親の話をするようになりましたし,私自身が実はストレスが,ストレスだった夫と正対をするというか,ストレスだった夫とやり取りができるようになったことで,ものすごくストレスフリーになって,関係がよくなったのです。   これは離婚する前,ないしは別居前に,離婚しても夫とは親同士の関係が続くのだということを知っておくかおかないかでその後の人生が変わると痛感しました。うちの息子は1年間,私の顔色を見て育ってしまいました。それを初期から知っていれば,子どもが親の顔色を見ずに済む,そういった思いがあって,この団体を立ち上げたというのが私の離婚の経緯となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。もう1問は泉参考人宛てに,職員の雇用に関わるお話があったかと思います。 ○泉参考人 これも端的に3点ばかり。   まず1点目,人材確保,ポイントは待遇改善です。当然であります。明石市では,例えば児童相談所,弁護士職員が今,5人います。常勤です。市役所にも合計12名の弁護士職員がいます。福祉職は私が市長になってから六十数名雇いました。待遇は当然,正規職員です。非正規とか安値で雇うべきではありません。専門性があるのだから,プラスアルファするのが本来の姿だと思っています。そのためには,国がそういった専門職を採用する際の人件費相当額を持つことです。今は持っていません。国が余りにも専門職に対してお金を使っていないのが最大の課題の一つです。   二つ目,人がいなければ育てる。明石市では去年の4月,全国2か所目となる子どもに関係する研修センターを作りました。いないから愚痴るのではなく,いなかったら育てるという関係に入っていくべきで,育てるという発想が重要だと思います。また,もっときちんと子どものことができる弁護士がいるべきです。ほとんどの弁護士は子どもに興味がありません。なので,弁護士のレベルが低すぎます。子どものこともきちんとできる弁護士の養成,心理士の養成,福祉職の養成が喫緊の課題だと私は思っています。   3点目,子どものことをやると,街はよくなります。手前みそになりますが,今日配っている資料の広報紙にも記載しておりますが,明石市は子どもの予算を,私が市長就任後,2倍以上に増やし,子どもに関わる職員数を3倍以上に増やした結果,何が起こったか。8年連続人口増,この5年間で明石市の人口は1万人増えました。出生率は1.70です。税収は7年連続増加。当たり前です。子どもに対して手厚い街は発展するのです。このような発想の転換が必要で,日本社会全体が子どもに対して力を入れていくという大幅な発想の転換が今必要だと私は考えており,このことを広めていきたいと思っております。 ○落合委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   武田委員に次に,伺いますが,その後,まだたくさん質問がありますので,すみませんが御質問もお答えも簡潔にお願いをできればと思います。 ○武田委員 親子の面会交流を実現する全国ネットワーク,武田です。今日は参考人の先生方,非常によい話を聞かせていただきまして,本当にありがとうございます。まさに今回,法制審の諮問理由にもなった国民意識の多様化,いろいろな方が増えているというのを身をもって本当に体感,実感したというのがまずは感想でございます。先生方皆さんに御質問申し上げたいのですが,私の方からはしばはしさんと泉市長にだけお伺いしたいと思います。   しばはしさんに関しては,プレゼンスライドの15ページ,合意形成に向けてというところです。要は,その協議,いきなり条件面の話合いではなくて,きちんと葛藤を下げましょうと,きちんと話し合えるようになりましょうと,一定,恐らく最低限の信頼関係を結んだら取決めもうまくいくよね,こういうメソロドジーを御紹介いただいたと,そんなふうに理解をしております。まさに共感するところではあるのですが,しばはしさんがこうやって共同養育ということで支援されてきた皆さん,結果,もし把握されていれば,養育費の支払い率ってどのぐらいになっていますか。これが質問の1点目です。   2点目,この15ページの1番から3番の支援に関して,今日,小泉先生からも親教育の話がございました。要は,ここの1,2,3のステップで,しばはしさんの御経験の中で結構です,どのぐらい時間を掛ける,いわゆる教育的なプログラムだけで立ち上がっていく方々,理解される方々が多いのか,それともやはり個別の寄り添えるしばはしさんたちのような支援者がいて,それで寄り添えるようになるものなのかという観点,これが2点目です。   最後,こういう方々というのは,少し手を差し伸べればどんどん増えると思いますか,これが3点目です。   泉市長,今日は本当にありがとうございます。2014年からの取組,本当に感服いたします。いろいろお聞きしたいことはあるのですが,法的なこと,これからこの場で議論が進んでいくと思います。泉市長には,いろいろな法整備,今日たくさんの課題を頂いたと思っています。その中で,今後も,基礎自治体がと,ここは我々の役目だというところがございましたら,少し書いていただいていますが,そこに関してのコメントを頂戴できれば幸いでございます。   私からの質問は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。まず,しばはし参考人に3問ありましたけれども,そちらからお願いいたします。 ○しばはし参考人 御質問ありがとうございます。まず,養育費の支払い率でいきますと,我々のところに相談に来られる方というのは,別居親の立場の方,既に養育費を支払われている方がほとんどですので,支払い率がそれによってアップしたというようなことは,具体的に支払うようになった,ならないみたいなのを聞いたわけではないですが,元々払われている方が多いというところになってきます。   そして,この合意形成に向けての1から3番,どのぐらい時間を掛けているのかというところでいきますと,実際,4から6が動いている状態で並行してカウンセリングというか,行っていることも多々あります。ですが,そうですね,初期に,例えば調停を始める前ですとかですと,割とこの1,2,3が早く済んだりするのですけれども,並行して結構悪化してしまっている状態で,やはり相手側の気持ちを理解したい,みたいに来られたりする場合は,結構時間が掛かってきたりとかするケースもあります。   そして,3番目,親ガイダンス的なものでいいのか,きちんと歩み寄る個々の対応が必要なのかというところなのですけれども,一般的な講座だったりなんかすると,もちろん大事な知識ではあるのですが,これは大事なことだよねと,ただ,うちは無理というところで終わってしまうのです。できる家庭はやればいい,けれどもうちはモラハラだから無理ですとか,妻がこうだ,病気だから無理だとかということになってしまうので,最終的には気持ちの面を分解したところで寄り添えるような講座的なものがあるのが一つですが,やはり本当に御家庭によって,その方の性格や生育環境などでも変わってきますので,最終的には個別に,調停って正に個別ではないですか,そこで丁寧な個別のカウンセリング対応というのがあることが,対立構造を深めずに,最終的に子どもが望む,親同士が争わない形というのが実現できると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,続いて泉参考人にお願いいたします。 ○泉参考人 国と自治体の役割的に言いますと,国での法律,制度化が本来であります。明石市がやっている公的立替えなども,本来は国がやるべきであります。面会交流支援も,本来は司法がやるべきであります。そういう意味において,国がしっかりと役割を果たしていただきたいのは大前提です。ただ,市民に近いのは自治体,特に市町村の役割は大きいと思います。できることは数多くありますが,すぐにできることが三つあります。   まず一つは,既に国が作っているパンフレットなどをしっかりと提供することです。今はできていません。なぜかというと,法務省が所管しているのは市町村の戸籍係だったりします。そこに置いていたって余り意味がありません。必要なのは,相談対応する部局です。これは厚生労働省の管轄です。幸い両方で連携されておられるようですから,厚労省と法務省で御相談されて,自治体ごとに担当者の一覧表を作っていただいて,誰が責任を持ってそのパンフレットを市民に渡すかということをお決めいただきたい。そうするだけで結構,公務員は真面目ですから,担当になれば,やると思います。だから,このことはすぐできると思います。二つ目は,相談です。市役所職員で不十分であれば,NPOの方とかFPICとか弁護士会などに委託する形で,これらのテーマについて,月1回からでもいいですから,しっかり相談を始める,これはすぐできると思います。最後に三つ目,ネットワークを作ることです。やはり行政だけではできませんので,関係機関とのネットワーク作りをしっかりスタートする。この三つ,情報提供,そして相談スタート,最後にネットワーク作り,この三つは,国が音頭を取っていただければ全国の自治体で始まると思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   菅原委員,そして戒能委員という順番で伺いたいと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。泉様にお伺いしたいのですけれども,今日はお話ありがとうございました。既にたくさんお答えいただいているのですが,1点だけお差し支えなければ教えていただきたいのですが,明石市の場合,弁護士資格を持っていらっしゃる方を5人でしょうか,正規職員で雇用されていると伺い大変感銘を受けたのですけれども,そのほかに心理職などの専門の正規職員としてどのような職種の方がいらっしゃるのかということが1点と,離婚のことを扱う専門のセクションがあるのか,それとも何かほかの業務と兼担でやられているのか教えてください。 ○大村部会長 ありがとうございます。弁護士資格をお持ちの方は12名と先ほど御説明があったかと思いますが。 ○泉参考人 今現在,12名の弁護士資格の職員がおります。ただ,明石市は弁護士だけではなく,心理職,福祉職含めてどんどん採用していっています。私からすると何でも屋さんは要らない,最低何かの専門性を持った人間を採用したいと思っています。ポイントは専門職を専門性だけで使いません。一般行政職の仕事もできる専門職です。給料が1割増し,2割増しでも,2人分働くと市民に望ましいことですから,専門職を正規職員プラスアルファの給料で雇うというのがポイントだと思います。 ○菅原委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○戒能委員 今日,お話しいただきましてありがとうございました。泉市長にお伺いしてよろしいでしょうか。今日のレジュメの2ページ目の下に,面会交流のコーディネートという事業が書かれてありまして,もう2016年から始めておられるということなのですが,その中に,最後に付添いなどを行うと,付添い支援ということだと思いますが,3点お伺いしてよろしいでしょうか。   1点目は,付添い支援の中身といいましょうか,どういう支援をしていらっしゃるかということが1点目。それから,先ほどの質問にも出てきたのですが,どうしても付添い支援をしている中で避けられないリスクといいましょうか,危険な状態というのが生じ得る。先ほどは,住所が分かってしまったとか,どこかで面会していると,そこから終わった後,追跡をして住所を突き止めて,そしてストーカーのようなことをしてしまうとか,そういうことも考えられるのですが,その辺はいかがなのでしょうかということと,そういう場合にどういう対応をなさるのか,その対応をなさる上で,行政ならではのメリットといいましょうか,行政だからできるような支援,逆に行政だからの限界,どういうふうにお感じになっていらっしゃるか,お聞かせいただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは,お願いいたします。 ○泉参考人 ありがとうございます。後で御覧いただいたらいいのですが,「こども養育支援ネットワークの奇跡」という冊子の60ページ辺りに詳細に記載しております。端的に言いますと,明石市の場合は面会交流を三者合意を前提にしています。同居親と別居親の両方,そしてお子さんの希望と,この三つを前提にしていますので,三つのうち一つ欠けたら,すみません,少し対応できませんので裁判所の方で御相談ください,としています。また,取決めに関与するわけではなく,支援し,取り決めたことについての履行をお手伝いしております。   そうはいってもリスクはあります。具体的には,片方の親がそのままいなくなってしまったケースもあります。夜には何とか確認できましたけれども,リスクをゼロにすることはできません。なので,できる限り丁寧に事前に状況確認をし,リスクに備えていくこと,リスクがあってもすぐに対応する体制をとることが大事であって,リスクがあるからしないではなく,リスクに備える,リスクに対して,そのリスクを軽減していくという発想で明石市は対応しております。   それから,明石市ならではの良さという部分と限界ですが,やはり一番良いところは,市役所は市民にとって身近で,安心があるので,来やすいです。そういう意味で寄り添うのは向いています。ただ,市役所,行政は司法機関ではありませんので,決定をすることはできません。飽くまでもお手伝いにとどまりますので,市役所の良さは寄り添うこと,ただ,限界があり,法律や制度化という部分は本来国の仕事であり,特に司法の役割が大きいと思えてなりません。日本の場合,司法が余りにも遠慮がちすぎます。さすがに司法が遠慮をしていたのでは子どもは浮かばれませんので,やはり裁判所や司法関係者がより積極的にこのテーマに関わっていただくことを強く望む立場です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   原田委員からもう一度手が挙がっていますが,原田委員,池田委員の順で,短くお願いいたします。 ○原田委員 すみません,不躾けな質問で,少しためらいがあるのですけれども,しばはしさんと小泉さんですかね,大体1件当たり利用者負担がどのくらいなのかということを,今後制度のことを考えるについても必要かと思うので,教えていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは順番にしばはし参考人,小泉参考人,お願いいたします。 ○しばはし参考人 御質問ありがとうございます。個別の相談でいきますと,初回が90分1万2,000円(税別)になっております。それ以外はサポートによって変わってきますので,まずは御相談の費用というところのベースでお伝えさせていただきます。 ○小泉参考人 申込みの段階で,初期費用として,申立人,相手方,それぞれ1万円に消費税が掛かります。期日費用といいまして,調停期日1回につきまして,同じくそれぞれ1万円に消費税が掛かります。何回調停を開くかということによって総合の費用が掛かってくるわけですけれども,例えば面会交流や養育費を全部決める方というのは,少なくとも3回は調停を重ねる方が多いですので,そうすると総体的に掛かる費用としてはお1人4万4,000円ということになります。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○池田委員 時間のない中,申し訳ありません。弁護士の池田でございます。1点だけ,泉さんにお尋ねします。先ほどの戒能委員の質問の御回答の中で,面会交流支援について三者合意を前提としているということで,子どもの希望というのを前提としているというお話を伺いました。子どもさんからの希望というのはどんな形で把握されますか。子どもさんと実際にお会いになるのか,あるいは同居親を通じて確認されるのか,教えていただければと思います。 ○泉参考人 子どもに確認します。もちろん年齢によってなかなか限界もありますけれども,基本的には子どもです。子どもは,一緒に暮らしていようがいまいが親のものではありません。子どもの意思は子どもに確認します。それには大変専門性が要りますので,この分野の正に私たちの社会の第一人者の方に,明石市が依頼し東京から来ていただいて対応いただいております。やはりこのテーマを考えるときに重要なのは,経験豊富な専門性が要ることです。ただ,数が足りませんので,早急に専門性のある人を育てていくことが必要だと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   非常に貴重なお話を頂きましたので,委員,幹事の中からはまだ御質問があろうかと思いますけれども,大分時間を過ぎておりまして,次の参考人の方にもお待ちを頂いておりますので,質疑応答はこれぐらいにさせていただきたいと存じます。   参考人の皆様におかれましては,大変お忙しい中をお越しいただきましてありがとうございます。当部会の今後の調査審議の中で御意見は参考にさせていただきたいと存じます。改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。   それでは,ここで10分休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   引き続きまして,父母の離婚後の子の養育に関する実態調査結果に関しまして,野沢参考人から御説明を頂くことを予定しております。野沢参考人には大分お待ちいただきまして,授業の関係で決まった時刻にここをお出にならなければいけないと承っておりますので,15分ほどお話を頂き,残りの時間で皆様の質問にお答えを頂くということで進めさせていただきたいと思います。   では,野沢参考人,どうぞよろしくお願いいたします。 ○野沢参考人 御紹介いただきました,明治学院大学社会学部で家族社会学などをやっております野沢です。私自身は親の離婚や死別,そして再婚を経験している子どものいる家族,ステップファミリーと呼んでいますけれども,そういう家族についての研究を,いろいろな立場の方にお話を伺ったりしてやってきましたので,その関係でお声を掛けていただいたのかなと思っております。   今回,お手元に資料があるかと思うのですけれども,そこの最初に書いてある(1),(2),(3),(4)というような課題を頂きました。15分でここにある四つをしゃべることはほとんど不可能でもありますので,基本的には(1)ですね,今回特に法務省の方でされた調査結果を拝見しましたので,それらを見た感想,これをどういうふうに使っていかれるのかというのがこの部会でも一つの課題なのかなと思いますので,私の個人的な観点からコメントをさせていただきたいと思います。いろいろな項目,いろいろな対象者に調査をされていて,膨大なデータでもありますけれども,特に私の関心にやはり引き付けて,そういう意味では見方に偏りがあるかもしれませんが,内容について私なりのコメントをしたいと思います。   2番目のところに書いてあります各種統計・調査の違いと全体から見える離婚,あるいは離婚前後の家族関係の状況。この辺りから何かを浮かび上がらせたいと,我々研究者も常に思うわけですけれども,いろいろなデータを使って事実に近いものを何とか理解しようとしているわけです。今回お示しいただいたA,B,C,D,Eというようなデータがあるけれども,そこに一定の,例えば数字の上では齟齬があったりするけれども,これをどう読んだらいいのかという辺りがお尋ねの一つのポイントだったかなと思います。   Aは厚生労働省の全国ひとり親調査で,これは以前から繰り返し行われているもので,最新のものが2016年。そしてB,C,Dというのが,Bが子どもの立場で親の離婚を経験した若い人たちへの調査,Cが協議離婚した親の立場の人たちへの調査,Dが財産分与に関する,これは子どもがいない人も含んだ元カップルへの調査と理解しています。Eは司法統計で,家裁などに持ち込まれた事件についての統計ということで,それも一部参考にさせていただきました。特にB,C,Dが新たな調査ということで,実施されたことは,私自身も,画期的というか,今後いろいろなほかのデータ収集も刺激するような呼び水という意味でも,あるいは研究者がその後分析していくという形で公開されていることも含めて,非常に重要だなと。特にこれまで厚生労働省の全国調査にはない子どもの立場とか,別居親の立場の人たちも含めて情報を集めようと,離婚あるいは再婚も含めてですけれども,そこに関わってくる当事者というのは非常に多様ですので。そういう人たちからどういうふうに見えているのかということを探っていく,これは家族社会学の中でも遅れているように私も日頃感じていますけれども,情報が少なかった部分ですので,こういう情報,データというのは非常に重要だろうと思っています。   これらから見えてくることで何が違うのかということですが,まずはサンプリングを含めた調査の方法がそれぞれ違うと。どの研究も一定のやり方でしていますから,それぞれ結果に違いが出てくるということは当たり前のことなのですが,Aの全国母子世帯・父子世帯の調査に関して言うと,これは,全国のいろいろな地域から無作為に地域を選び出して,その中から対象者を見付けていくということで,もちろん単純なランダムサンプリングではないのですけれども,母集団を想定して,そこからできるだけランダムにみんなが等確率で選ばれるような方法で抽出するのに近い方法を採っております。ある種,代表性のある,全体を代表したサンプルを集めようという方法で,実際の母集団というのは,実際にある母子世帯だったり父子世帯ですが,その全体を推測することがやりやすい,あるいは誤差がどれぐらいかを推定しやすいサンプリングの方法だろうと一般的に思います。訪問手渡しという方法で,回収率が6割強ということですけれども,一般的な調査で今なかなか回収率が上がらないということでいうと,相対的に高い比率だと。もちろん40%が抜け落ちているので,どういうやり方をしても完璧に正確な母集団における分布の推定というのは難しいのですが,サンプリングにおいて信頼性が高いということはいえるだろうと思います。   それに対してB,C,Dは,今回どういうモニターかということは正確にはつかみ切れていない部分もありますけれども,調査会社に登録している,これはかなり数の多い,何百万という単位で登録している方たちからのリクルートですね。こういう条件に合う人で協力していただける方というのを言ってみればボランタリーに集めていく。ここを少し確認できていなかったのですけれども,謝礼とかそういうのを付けて大抵募集していますので,そういうものを一定程度期待して登録していて,という方たちですから,登録していない人とどれぐらい差があるかという辺りは少し要検討の部分はあります。けれども,結果を見ていって,比較的信頼できると思われるAの方の調査なんかと極端に違う結果かどうかというのは常にチェックしていって,ある程度信頼性を推定していくことになるのかなと思います。Eの場合は,これはもう裁判所の方から出てきた報告ですので,サンプリングの問題とかはないと想定しています。   (2)は,設定された対象者の違いということですけれども,これは対象者が違うので,出てくる答えにずれが生じるのはある意味では当然だろうと思います。どれが一番正しいのかといっても,むしろずれるというのが現実なのだろうと思っております。けれども,例えばAの場合は,母子世帯に限ってみると,離別した人たち,母親の年齢は30代から50代以上まで含んでいますが,20代以下の,より若い層も含まれているということですね。これが例えばCの調査では30代,40代に限定していますので,年齢層も違うという辺りは頭に入れておいた方がよいと思います。Bは子どもの立場で,比較的若い人たちということですが,20代,30代ということは20歳から39歳まで含まれていますので,ここも意外と年齢幅は広いということになります。Dは30代から60代までですが,ここで特に離婚と子どもが中心テーマだとすると,子どもがいない人が半分いるという意味で,直接比較するのは難しいだろうと思います。   (3)の方にいきますと,調査実施時期,それから離婚が生じた時期範囲というのもかなりずれているだろうということはあります。特にBの場合は,先ほど言いました,子どもの立場の回答者が39歳までということは,理論的には,例えば1歳で親が離婚したとすると,39年とか38年前の離婚のケースについて回答しているということもあり得ますので,かなり遡ったケースが含まれている。例えばDと比較すると,Dは10年以内に離婚を経験したということが条件で,同じ離婚といっても多分,時代差もそこにはある。そんなことを含めていくと,回答分布はどれが一番正しいかとかというのは難しいような差を含んでいると。   先ほども申し上げましたけれども,完全に偏りのない客観的データというのは手に入れたいですけれども,入れられませんので,複数の統計とか今回上がってきた調査結果,そういうものの差異を比較検討しながら実像を推測していく,推定しながら,そこに浮かび上がる問題の大きさ,深刻さ,そういうものを比較して議論しながら共有していって,そこから,では何が必要かということを議論していくことは非常に意味のあることではないかと思います。   先ほど申し上げたモニター登録者への募集で行ったB,C,Dについては,やはりその母集団を推定するような手続をしていないので,何が何%というのはどれぐらい正確かというと,少しそこに弱点があるだろうと思います。しかし,例えばAの調査と大きな差異がないか,あるとしたらどの部分で,それはどちら側に誤差が生じている可能性が高いかとかということを検討しながら,全体を把握する材料としていくには十分に意味のあるデータだと思います。   いずれにしても,データには常に限界がありますので,できればほかの既に行われている調査,私も質的調査研究などをやっていますが,そういうものも,全体の数を推定するのではなくて,多様なケースがある中で,どのケースはどんなプロセスとかダイナミクスでこんなことになるのだろうかというような,もう少し奥行きのあることを探っていくのが質的調査ですので,そういうものと組み合わせていくことによって,統計といいますか,数量的なデータで多様だと出てきているものがどういう多様性なのかを探っていくようなこともさらにはできると。もちろんこれは研究者がやることですけれども,そういう意味では,限りない,真実は何かということに答えはなかなか出ないものです。が,これだけそろってきたデータから見えることも相当あるだろうと私は思っています。   時間が限られていますが,その後,それぞれの研究,特にB,C辺りを中心に見えてきた,この数字,分布自体に絶対的な意味がないと既に言っているのに数字を挙げているわけですけれども,参考までに比較していくと,@ですと,監護親・親権者は誰になっているかということですが,BとCの回答を見ていくと,Bでは母と同居というのは78.6%,父と同居が約21%。Cの方は監護親について親に訊いた調査ですけれども,女性が86%,男性が14%ということで,人口動態統計の方ですね,実際にこれは調査ではなくて国の統計から出てきている数字と大きく掛け離れてはいない。これは一つの指標にすぎませんが,というチェックはここでできるかなと思います。   Aの方にいきますと,子どもと同居・親権について協議と同意がどういうふうに取られているかということについて,それぞれ訊き方は同じではありませんけれども,Bの子どもの立場の人たちへの調査でいいますと,子どもたちは,これはもう本当に離婚を経験した年齢もばらばらですので,その時点で子どもたちにどういう判断ができるか難しいところです。けれども,これは基本的に,父母どちらと住むのかとか,そういうことについて選ばされることについて,非常に回答が難しかったのだろうなと。あるいは選ぶ余地もなかったということもありますが,多様な回答になっていました。多くは受け身的に親たちの判断に合わせていくしかない状況に置かれてしまっている状況を反映しているのかなと私は解釈しています。   Cの親への調査ですけれども,ここで,別居するという前に子どもとどちらが同居するのかというようなことについて同意できたという人たちは,もちろん過半数は超えているのですが,できていない状態で別居に至っているとか,あるいは親権者について合意できていたかということでいうと,4割ぐらいの人たちは,できていなかったと判断していて,別居に至ってしまったというようなケースが含まれていることが推測できます。正確に何割かということではないですが,かなり多くのケース,そういうものがあるのかなということをうかがわせるような結果かなと思います。例えば,Q40でいうと,子どもの親権について離婚相手と話し合わなかったというケース,そもそも話合いがなかったというケースも4分の1ぐらい,この調査では数字が出ていますので,無視できないほどそういう形のケースがあるのかなと。合意できない,あるいは協議自体ができないところが当事者の協議に任されているのが今の協議離婚ですけれども,それで問題なくいっているのではないかという前提に立ってよいのかというと,そこは,こういうデータから見ていくと,相当前提は崩れているのではないかと私は思いました。   Bについて,面会交流・養育費についての取決め,これを見ていくと,厚生労働省の全国調査データと,数字に少し違いはあるのですが,それに近い形で,取決めができていない,「口約束」とかそういうことをどういうふうに解釈するかは難しいのですが,きっちりできているという人たちが過半数とか,圧倒的多数というわけでもない状況は見えてきています。   4ページの方にいきますと,Cですね。離婚後の養育費・面会交流の実施状況ということで,実際どうなったのでしょうということを見てみますと,Bの子ども調査では,やはりお金のことは子ども自身が把握していない,親からも聞いていない,あるいは小さくてよく分からなかった,というようなケースがあって,非常に多様です。細かい数字はそこに書いてあるとおりなのですけれども,矢印のコメントの部分を見ていただくと,交流がなかったケースでは,交流があった場合のことをもう想像しにくいような状況になっているように見えますし,交流があったケースでは,なかった場合を想像することが難しく,いずれにしても現状を肯定する考え方を採るか,その辺りもどう評価してよいのか分からないという状況に,結果として子どもたちは置かれやすいのかなと思いました。自らの希望とか選択の余地がない変化を経験したケースが多いことからすれば,それもある程度当然なのかなと思ったりしました。   Cの監護親,非監護親に対する調査から,その後実際どうなったかということを見てみると,特に面会交流については定期的に行われているというのがかなり少なくなっていて,厚労省の全国調査に近いかもしれません。どれぐらい続いたかというと,数年たっていくとどんどん続かなくなってしまうというような回答が見えました。   Dについて,離婚の相手からの暴力・虐待の介在が一体どれくらいそこに見えてくるかということですが,厚労省の全国調査Aの方でいうと,参考になるのは,面会交流を実施していない最大の理由は何ですかと訊いている中で,相手の暴力などの問題行動があるというのは1.2%ありました。Bの子どもたちに対する調査では,子どもから見た離婚原因,現時点の認識は,やはり性格の不一致というのは挙がっていますが,その前の調査に比べると,身体的な暴力とか精神的な暴力というのを挙げる率がかなり高くなっています。これらが何を意味しているのかは少し分かりにくいですね。両親間でこういうものがあったのではないかと思っている子どもが比較的多くいました。Cの親に対する調査では,そこにあるとおりなのですけれども,話合いができなかった中に,DVや子どもへの虐待等の問題があり,話をする余裕がなかった,あるいは話をすることが危険というような項目が,いずれも5ケース,6.5%含まれていたということです。離婚した相手と関わりたくない,取決めをしなくても交流できるなど,面会交流の取決めをしなかった理由についてもそこに挙げていますけれども,身体的・精神的暴力というのは0.6%,子どもの連れ去りの危険というのを5.5%の人が挙げていたというようなことが,ここでの関心に関わる部分かなと思います。Dは子どもがいないケースも含む調査ですが,そこに挙がっているような数字で,比較的高くなっています。それから,Eの裁判所に持ち込まれた事件の中でいうと,これは当然予想されますけれども,より高くなる。妻でいうと,暴力を振るうというのは20%ぐらい挙がっていました。精神的虐待については妻,夫がそれぞれ25%,20%となっていまして,そういう少し深刻なケースは裁判所に持ち込まれるのかなと思います。それを除いて,協議離婚のケースを見ていくと,一定程度暴力が絡んでいて,そこから子どもについての協議とかがないままというケースもあるのかなと思われます。  そこまでが資料に書いたことだったのですけれども,協議離婚のケースなんかですね,Cの調査などを見ていくと,協議ができなかった,あるいは合意できなかったという理由が暴力であるケースは相対的には少なくて,それだけで説明するのは非常に難しいだろうなというのが私の感想です。  今の制度の中で家族に離婚後の子どもとの関わりですね,子どもの最善の利益を考えて協議するということが10年ほど前に民法に決められたわけですが,それがなかなかできないまま現実に離婚,別居,そういうことが進んでいって,話合いができた場合でも時間がたつ中でその関係が変質していってしまうことに対して,社会が何かできているかというところがすごく気になるところです。社会あるいは制度が,あるいは国が,親子の関係,特に子どもの権利とかをめぐって,そこを守っていく,あるいは多くの場合,母親がそれを背負ってしまう,子どもの養育というのを一人で背負ってしまったりすることが多いわけですが,それでそのまま良しとされてしまっているのでよいのかという辺りが気になるような現状を全体としては確認できるようなデータだったのではないかと思います。   少し時間を過ぎましたが,以上が私の報告とさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。複数の調査結果について慎重に比較検討すれば,改正のために有益な知見というのを引き出すことができるのではないかということで,実際に幾つかのデータにつきまして解釈をお示しいただいたと理解をいたしました。   時間が限られておりますけれども,皆様の関心が高い話題だと思いますので,御質問があれば頂きたいと思います。   武田委員,池田委員の順番でお願いいたします。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。野沢先生,今日はありがとうございます。数値面の中身の質問ではないのですけれども,4ページのQ41−2,1から2と3のところですね,養育費,面会交流とも途絶えたと,これは取決めがそもそもあった中での数字だと思っていて,このアンケートに関わらない質問で恐縮なのですけれども,野沢先生のステップファミリー研究とか,海外のほかのこういった数字と比べて,この途絶えたという数字ってどういう数字なのでしょうか。どういう数字というか,要は海外と比べて高い,低い,こんな3,4年でなくなるのはおかしいとか,もしそういうコメントを頂ければ,回答を頂ければ有り難いです。 ○野沢参考人 それは高いか低いかは私も答えるのが難しい。海外と比べたら,この数字自体を見た場合には,多いのだろうと思います。けれども,この数年で途絶えていくというのは,どういう意味でこうなったのか,訊き方とかそういうこともあるかもしれないのですけれども,実施が続いたかというQ41−2辺りも,どの時点まで続いたという答え,今でも続いていますよという意味だったら結構続いているという話になってしまうのです。けれども,その辺はデータをもう少し精査して分析していくことによって,この数字の意味とかは見えると思うのです。日本で実際に,先ほどの厚労省の調査を見ても,基本的には途絶えていくケースが多いし,それに対して何か介入するということもなかなか難しいような制度の中ですから,ある意味ではまあ予想できるような範囲の数字になっているのかなと私は思っていて,何か特別びっくりしたということではないのですけれども,答えになっていますか。 ○武田委員 結構です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。数字の読み方について少し教えていただければと思います。3ページのBの数字なのですが,AとCとで比較すると,Aでは養育費の取決めのあるのが42.9%とされており,Cの表で養育費/監護親のところを見てみますと,決めていないが25%,つまり決めていたというのが75%と読めるとすれば,AとCでは42%と75%の差があるように読めます。そういう読み方でよろしいのでしょうか。もしそうだとすれば,どうしてその差が出てくるのかという辺り,もし教えていただければ有り難いです。 ○野沢参考人 BのAのところの42.9%ということですよね。これは厚労省の全国ひとり親調査の場合だということになると思いますが,Cの方は今回の監護親,非監護親に聴いたということですよね。ここは少し大きな数字の違いということになると思うのですが,取決めがあるというのと,口約束というのが30%入っている。これが回答している人がどういうふうに解釈して答えたかという辺りの違いはあるかなと思います。それから,これは対象者も違っていますね。最初に言いましたように,Cは協議離婚した人だけに限定していまして,Aの方は裁判が関わる調停離婚その他が加わっていますので,裁判に関わることによって一定の取決めの方向に行くケースが多くなるというのも想像できることです。先ほどの対象者とか時期のずれもありますので,そういうことを考えたときに差が出てきているということは言えると思います。実際には,今現実にどうなっているのだという,この間の辺りにあるのかなと推測したりできるかなと思いますけれども。それ以上はなかなか,どうだと言いにくいところもあります。 ○池田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 それでは,赤石委員,どうぞ。 ○赤石委員 いろいろ標本の性格とかそういうのをお示しいただいて,ありがとうございます。子どもの調査,Bですね,それの中で少し,私は1回目のこの会議でも言ったのですけれども,面会交流を取決めなしにやっているケースが結構あったと思うのです。確か460人ぐらいあって,何番だったか忘れてしまったのですけれども,この辺りというのはどのようにお考えかなと。何番だったか,すみません,少し忘れてしまったのですけれども,先生はどうお考えになるのかということと,5番にも関わるのですが,面会交流をしていない理由をいろいろ厚労省調査で聴いているのですけれども,不詳という方がすごく多いということがありまして,ということは,この質問項目が合致していないというか,きちんと聴けていないという可能性があるということでよろしいのかどうか,少しお聞きしたいのですけれども。 ○野沢参考人 そうですね,不詳がなぜ多いかも,私もその調査票とかを詳しく見ていないので,はっきりは分からないのですけれども,そこの選択肢以外の何かがある可能性もあるでしょうし,それが何かというのも推測がしにくいとは思います。ただ,比較的,Aについてはここにほかの数字を引用しなかったので,今すぐには確認できないのですけれども,ほかの理由を挙げて,例えば暴力の問題以外もいろいろ挙がっていたと思いますので,むしろほかの多数派の理由はあるのだろうと思います。   子ども調査は非常に興味深いところがありまして,離婚後に特に別居親との交流の様子なんかもかなり多様なのだなというのを具体的に見えてきたところもありまして,宿泊付きをしている人もいれば,もう全然会わなくなる子もかなりの比率でいるのだろうなということを推測させるわけなのですけれども,子どもと親の交流,私も子どもたちの立場だった若い人たちにインタビューしたりすると,成長する過程で一定の年齢になると自分から連絡を取るということがあって,本当に会えなくなってしまうと,連絡を取れなくなったり,取ってもなかなか関係を取り戻すことは難しくなるのだなということは分かるのですけれども,子どもの側の年齢によってはアクションがあって,取決めがなくても交流が生まれる,あるいは取決めをしていなかったのだけれども,何かのきっかけで会ってみるかとか,会いたいとかそういう話になって交流が始まるというようなことも,私が知っている事例の中ではあるなと思うのです。けれども,そういうことで言うと,かなり多様なケースが出てきて,取決めがなくてもというケースはあり得るとは思います。   ただ,取決めとか,そういう話合いがない,あるいはできない状態という,親もそれに対して非常に否定的,特に同居親とか,あるいは別居親も関心がないみたいなことになっていった場合,子どもが自分からやっていくというのはなかなか難しくなるのだろうなと。そこに何か方向性があって,今日は時間がなくて言えませんでしたけれども,基本的には海外の研究や最近の日本の研究でも,離婚後に親がいかに子どもを育てるということについて協力し合えるということが,子どもの育ちとか,人生を切り開いていく力になる,適応を高めるというようなことは一般的には確かめられていることだと思いますので,それをどうやって応援するかというところでいうと,両親がまず話し合えるみたいなことを応援できる仕組みになっていないと,子どもが,いろいろ考えるのだけれども,関係が途切れる方向に行きやすいだろうなと。そこに,でも多様なケースがあるので,取決めの内容,取り決めた上でどういう取決めなのかというのも非常に重要なポイントだと思いますので。 ○赤石委員 聞いているのは,460人の方が会っていたと答えているのですよね,子どもは確か。ということは,取決めが12%と比較してかなり多いですよね,取決めと関係なく会っている方が多いですよね,という事実確認です。 ○野沢参考人 このBの子どもの調査で,親が,あるいは親同士が取り決めをどうしているかを,子どもがどれぐらい正確に把握しているのかについては,私は少し疑問があるなと。例えば,養育費の支払についても,知らないとかということになっていますし。 ○赤石委員 取決めがあって,していたかもしれないということですか。 ○野沢参考人 可能性もあるかもしれないです。 ○赤石委員 かなりの方が面会交流をしていたということは事実でございますね。 ○野沢参考人 その交流の結果の方は,より正確だと思います。子ども自身の体験ですので。親同士の取決めがどうかというのは,むしろやはり親に対する調査の方が,情報としては正確なのかなという気はします。 ○赤石委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   よろしいでしょうか。野沢参考人から興味深い解釈を示していただきましたので,まだ御質問等はあろうと思いますけれども,時間も過ぎておりますので,このぐらいにさせていただきたいと思います。   非常にお忙しい中をお越しいただきまして,大変ありがとうございました。お話しいただいたことは今後の審議の中で参考にさせていただきたいと思っております。改めて御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。   それでは,本日予定しておりましたヒアリングはこれで終了ということにさせていただきたいと存じます。   前回からヒアリングを行っておりまして,前回にお越しいただいた方と合わせて14組の方にお話を頂くということでやってまいりました。前回会議の意見交換の結果も踏まえまして,本日はこの後,養育費と面会交流の問題についての検討をしたいと考えておりますけれども,ヒアリングの結果などについて皆さんの御意見や御感想というのもあろうかと思います。それにつきましては,また最後にお諮りいたしますけれども,次回に意見交換の場というのを設けてはどうかと思っております。   それで,残り時間が1時間ほどになりまして,残っているプログラムはかなりございますが,ある程度,やれるところまでやって,次回に持ち越したいと思っております。   本日は,部会資料3に基づいて,養育費及び面会交流に関する論点の検討ということで御意見を頂きたいと思っております。 ○原田委員 すみません,進行について少し御意見を言わせて…… ○大村部会長 短くお願いいたします。どうぞ。 ○原田委員 今,ヒアリングの結果についての共有のお話も少しありましたけれども,今までのヒアリング,前回と今回のをどんなふうに受け止めているかということを前提として,今回提案された資料の中で,ヒアリングに基づいているのかなと疑問を感じるところも多々あるので,このままの議論というよりは,この中でそういうことがあれば,それについての意見を途中でも差し挟ませていただければと思っております。 ○大村部会長 部会資料3についてこれから御議論いただきますけれども,その中でヒアリングと関連付けて御発言いただくというのは結構かと思いますので,御意見を頂ければと思います。また,それとは別にヒアリング全体についての御意見をお持ちの方も多々いらっしゃると思いますので,それはそれで機会を設けて伺うことができたらと思っております。 ○赤石委員 ヒアリングについての意見交換はいつということでございましょうか。 ○大村部会長 最後に少し,これ以降の進め方について,時間が限られていますが,お諮りをして,皆さんに御意見を頂きたいと思っております。そのための時間を考えますと,部会資料3については今日は余りできないと思っております。しかし,せっかく準備いただきましたので,少しだけ検討に入りたいと思っています。赤石委員の今の御質問に差し当たり私の考えを申し上げますと,次回に時間を取ってもらおうと思っております。そのことも含めて最後に改めてお諮りをさせていただきたいと思っていますので,今日の最後のところまで少しお待ちいただけますか。 ○赤石委員 はい。 ○大村部会長 では戻りまして,部会資料3について御説明を頂こうと思いますが,この中に出てくる論点の中で問題になるDVの現状や検討状況について,内閣府の方から最新の状況を提供していただいてはいかがかと考えております。前回会議で内閣府が参考資料として提出されたDV対策の今後の在り方,男女間における暴力に関する調査報告書に基づきまして,内閣府の難波幹事から簡単に御説明を頂き,その後に部会資料3についての御説明を頂く。その上で時間があれば,それについて多少意見交換をし,次回の内容について皆さんにお諮りする時間を残すという形で残り時間を使いたいと思っております。   赤石委員,それでいいですか。 ○赤石委員 私としてはもちろんヒアリングについての意見交換をし,そしてヒアリングの足りない点について,いろいろ多々あると思いますので,それを議論するのが本来のやり方だと思っております。ですが,御用意されているものがあるということなので,意見を言って,その後にきちんといかしていただきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。御意見はよく分かりましたので,これから用意しているものについてお話を頂いて,その後,この後の取扱いについて少しお話をしたいと思います。   ということで,まずは難波幹事の方からお願いをできればと思います。 ○難波幹事 内閣府男女共同参画局男女間暴力対策課長の難波でございます。本日はよろしくお願いいたします。私の方から,先ほど部会長の方から御説明がありましたが,現在どのようなDV対策がとられているかということと,今後どのような方向で検討がなされていくかということにつきまして,前回会議に参考資料としてお配りさせていただいた資料に基づいて御説明をさせていただきます。   まず,参考資料2−4を御覧いただければと思います。こちらの資料がDVの現状といたしまして,本年3月に公表いたしました男女間における暴力に関する調査の結果の概要になってございます。この調査は,男女間における暴力に関する実態把握のため3年に一度調査をしているものでありまして,全国の二十歳以上の男女5,000人を対象に行っているものでございます。   このうち3ページ目からが配偶者からの暴力に関する調査の結果となります。まず一つ目ですけれども,配偶者からの暴力の被害経験につきましては,全体で22.5%,約4人に1人が配偶者から暴力を受けたことがあるという結果が出ております。暴力の種別では,殴ったり蹴ったりなどの身体的暴力が一番多く,次いで暴言を吐く,長期間無視するなどの心理的攻撃が多くなっております。その下の2のところですけれども,配偶者からの暴力の被害経験を男女別に見たものでございます。身体的暴力,心理的攻撃,経済的圧迫,性的強要,いずれの行為におきましても,男性よりも女性の方が被害に遭った経験の割合が高く,女性の25.9%,約4人に1人が被害経験があると,10.3%,約10人に1人は何度も暴力を受けたというような結果が出ております。   次に,4ページ目になりますけれども,配偶者からの暴力の相談経験について聞いたものになります。被害を受けた女性の約4割,男性の約6割はどこにも相談をしていないという結果が出ております。次に,配偶者からの暴力被害を受けたときの行動,相手との関係をどうしたかということについて聞いたものでございますけれども,男女全体では相手と別れたという人は15.5%となっております。女性では,別れたい(別れよう)と思ったが別れなかったというのが44.1%で最も多く,男性では,別れたい(別れよう)と思わなかったというのが40.6%で最も多くなっております。   5ページ目になりますけれども,配偶者による暴力への被害経験について聞いたものでございます。子どものいる被害者の26.5%。約3割が子どもへの被害もあったと回答をしているところでございます。その下の,配偶者からの暴力被害により命の危険を感じた経験について聞いたものでございますが,被害を受けたことのある人全体では13.2%,約8人に1人が命の危険を感じたことがあると,特に女性では18.2%,約5人に1人が命の危険を感じたことがあるという結果が出ております。   また,DV相談の状況について申し上げますと,先週の金曜日に昨年度の状況を公表させていただいたところですが,全国の配偶者暴力相談支援センターと,あと,後ほど御説明しますけれども,新たな相談窓口であるDV相談プラスに寄せられた相談件数を合わせますと,昨年度,令和2年度は19万30件となりまして,一昨年度,令和元年度の相談件数11万9,276件と比較しますと,約1.6倍になっているというところでございます。   次に,参考資料2−3を御覧いただければと思います。こちらが本年3月,男女共同参画会議の下の女性に対する暴力に関する専門調査会で取りまとめましたDV対策の今後の在り方に関する報告書の概要,それから,後ろに本文の方を付けてございます。今日はこの概要に沿って御説明をさせていただきます。   この報告書の取りまとめの背景ですけれども,令和元年6月に公布をされました児童福祉法の一部改正法の附則で,DV防止法における通報の対象となるDVの形態,保護命令の申立てをすることができるDV被害者の範囲の拡大等について検討を加え,必要な措置を講じることとされていることなどを受けまして,DV対策の現状と課題を整理したものになってございます。   初めに,DV対策について,今現在内閣府で取り組んでいることについて御説明をいたします。概要のところは,1,これまでの取組というようなところでございますけれども,本文で申し上げますと4ページ目から6ページ目になります。内閣府では民間シェルター等の支援のため,民間シェルターと連携して先進的な取組を進めております都道府県等に対し交付金を交付しております。また,その効果検証を行うというパイロット事業を昨年度,令和2年度から始めております。また,加害者対応としまして,令和2年度においてDV加害者プログラム,被害者支援と位置付けまして,自治体を実施主体としてノウハウを蓄積してきた地域の民間団体と連携して,試行的にDV加害者プログラムを実施し,今年度も引き続き試行実施をすることとしております。さらに,最寄りの配偶者暴力相談支援センターにつながる全国共通番号を昨年,令和2年10月から#8008,はれればという短縮化すること,また新型コロナウイルスの問題に伴います生活不安やストレスでDVの増加や深刻化が懸念されるという状況に対応するため,新たな相談窓口としましてDV相談プラスという窓口を昨年,令和2年4月に開設しまして,24時間対応の電話相談に加えまして,SNS,メール相談など,多様なニーズに対応できる相談体制をとっているところでございます。    次に,概要の2ページ目になりますけれども,DV被害者支援の更なる充実を図るための課題として指摘されていることについて,ポイントをかいつまんで御説明いたします。本文で申し上げますと32ページ目からになります。まず,先ほど背景で申し上げましたDV防止法上の通報,それから保護命令の関係の暴力の形態などにつきましては,まず精神的暴力については,被害者がコントロールされ続けた結果,心身に不調を来したような場合には,暴力による疾病として捉えられるのではないか,次に,性的暴力に関しましては,望まない妊娠をもたらすものであり,それにより命が脅かされることは身体的暴力と同視して同等に扱うべきではないか,身体的暴力以外の暴力全般につきまして,法益侵害の程度や被害者に与えるダメージは心理的な暴力と変わるものではなく,身体的暴力と同様に扱うべきではないかといったことが指摘されているところでございます。   次に,少し飛ばしまして,4のDV対応と児童虐待対応の連携につきましては,配偶者暴力相談支援センターと児童相談所,どちらが先に関与することとなったとしても同じ支援が受けられるよう,関係部署,機関の合同研修,相互研修ということを行うことが必要ではないかということが指摘されているところでございます。   次に,また少し飛ばしまして,6,逃げられない,逃げないDV対応ということでは,逃げられないDV対応,コントロールされ,力を奪われて,考えることもできないような状態にある,そのことにつきましては,まず精神的なサポートを充実させ,本人が自分のために意思決定できる流れを作っていくことが必要ではないか。逃げないDV対応,これは本人の選択ということになりますけれども,それについては,加害者が逃げることを前提とする支援は,就業継続を困難にしたり,支援そのものへのアクセスをためらわせる原因になり得ることから,被害者が逃げることなく安全を確保できる制度を組み入れていく必要があるのではないかといった指摘をされているところでございます。   さらに,その他としまして,概要の資料には記載しておりませんけれども,本日の議題であります面会交流に関しましても本文の40ページの方に簡単に記載がされております。面会交流を行う際にはリスクの十分なアセスメントが必要であると,また,例えば被害者や子どもへの精神的な影響が甚大な場合,子どもの利益を最優先する観点から,心身が回復するまで面会交流の実施を保留するなど,ケース・バイ・ケースでの柔軟な対応の検討が必要であるといったようなことが指摘をされているところでございます。   説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。内閣府におけるDV対策の状況につきまして,資料2点に基づいてお話を頂きました。難波さんは幹事ということでこの審議会部会に参加していただいておりますので,具体的な問題の検討に際して,このDV対策について内閣府の考え方等を折々にまた御披露を頂ければと思っております。   続きまして,部会資料3につきまして,取りあえず全体について説明を伺い,今日皆さんに御意見を伺えるところを絞って多少御意見を伺って,それで,先ほど申し上げましたように,次回のことについて御相談をしたいと思っております。   それでは,事務当局の方からお願いいたします。 ○藤田幹事 事務局でございます。時間も押しておりますので,お手元の部会資料3に基づいて,あらかじめ送付しておりましたから,ポイントを絞って御説明申し上げます。   まず第1,はじめにということで,この資料の位置付けを記載してございます。前回会議で,まず養育費や面会交流の問題を念頭に置きつつ,協議離婚やその後の場面において生ずる問題等について議論することとされたことを踏まえまして,事務局で,この場で御議論いただくためのたたき台として作成したものが,こちらになります。真ん中辺りにあるとおり,この資料の作成に当たりましては,法務省で昨年実施しておりました養育費不払い解消に向けた検討会議の取りまとめ,さらには家族法研究会の報告書,こういったものなどを参考に,できるだけ幅広く具体的な論点を取り上げさせていただいて,これを基に御議論をしていただこうというものです。先ほど原田委員から御指摘がございましたけれども,これは飽くまでたたき台ですので,これ以外のテーマ,選択肢等をどのように取り上げるかも含めて,その点はこの部会の場で御議論いただければと思います。   2ページでは,具体的に,まず養育費,面会交流,それぞれの問題につきまして,法的概念の整理というベーシックのところを確認するところから始めてございます。   2ページの1,現行規定ということで,民法766条以下の関連する条文を挙げさせていただいた上で,3ページの2,子の扶養義務・養育費ということで,具体的に養育費の課題について取り上げております。まず,民事法において子の扶養,養育費等がどのように理解されているかということで,親の子に対する扶養義務という観点と,父母相互間の問題として現行法では理解されている養育費の問題について整理をしたものです。   3ページの真ん中辺りに,親の子に対する扶養義務については,未成熟子に対しては重い扶養義務があるという考え方が紹介されておりますし,4ページの一番上を御覧いただきますと,養育費につきましては,民法に養育費やその義務を果たすことが重要であること等を示す条文はないという,既に御指摘のあった問題意識についても記載してございます。   それを踏まえて,4ページの(2)課題のところで,養育費,扶養義務に関する問題につきまして,例えばということで,指摘のある課題の例示として三つのことを掲げております。ここに書いてありますとおり,この三つは例示でありまして,その他に検討すべき課題についてもこの場で御議論いただければと思いますが,養育費についての具体的課題,@からBでございますが,@のところで権利の位置付けの問題,Aで重い扶養義務という問題,Bでは重要な権利という位置付けの問題,そういった点を指摘しております。   5ページの3からは別の問題に移りまして,次に面会交流についての問題を取り上げております。議論の流れは先ほどと同様でございまして,(1)で現行の民法についての理解を示しているところであり,それを踏まえて6ページの(2)課題で,先ほどと同じように,考えられる課題についての例示として事務局から二つ,@,Aという形で示してございます。面会交流については,@法的性質の明示という点と,A親族等の面会交流という問題を掲げているところです。   次に,7ページからは第3として,少し局面を変えまして,父母間での取決めの促進・確保ということで,養育費,面会交流それぞれの取決め,権利の発生の課題についての説明等をしてございます。7ページ,(1)からがまず養育費についての記載でございまして,現行法の理解について記載をした上で,8ページでそれを一覧的に記載した表がございます。権利性など,まずは現行制度についての理解をまとめたものです。9ページ(2)面会交流というところは同様に,現行の取決め等に関する規律をまとめたものです。10ページ(3)取決めの実情ということで,取決めに関する統計も紹介しております。この辺りはヒアリングでも御議論があったところですので,それも踏まえて意見交換をお願いできればと思っております。   その上で,11ページの2,課題ということで,先ほどと同じように,これまでの議論の中で挙げられた意見を参考に,例えばということで,この取決めに関するルール,規律として考えられるものを,@からCとして掲げているものです。このうち@とAは,養育費と面会交流に共通するということで,それぞれに係るものとして記載してございますが,B,Cについては養育費を念頭に置いて問題になるものとして掲げてありまして,(注)の形で関連する問題の説明も記載しております。   12ページにいきまして,第4,これは取決めをする際の取決め内容に関するものでございます。端的には,いかに取決めを促進するかという観点でありまして,1の養育費のところでは,(2)の課題にありますとおり,算定方式や考慮要素の法定化というアイデアが提案されております。2の面会交流の方でも,テーマ設定として現状を記載した上,13ページで考慮要素,基準等の法定化という課題を挙げています。   最後,13ページ以下ですが,第5で,裁判手続に移った場合の養育費,面会交流それぞれの問題についての課題を挙げてございます。1として,債務名義の取得段階では,まず取決めについての債務名義がないという場面を設定した場合に問題になる裁判手続上の問題を,これまでの議論を踏まえて挙げているものです。13ページの(1)では,まず家事審判の申立ての問題,具体的には住基ネットと公示送達の点を挙げ,15ページからは(2)養育費に絞って,養育費に関する審理手続ということについて提案をしてございます。その中では,イ,課題として,養育費の審理手続で問題になる調査嘱託等や収入認定の問題について例示してございます。(3)は面会交流の審理手続の問題でございまして,16ページに検討すべき課題の例を挙げています。   最後の項目,16ページの2として,強制執行,民事執行による権利の実現について問題になるテーマを記載してあります。まず養育費について,強制執行場面の課題ということで,イの課題としての例示を御覧いただきますと,例えば権利者による簡易な1回の申立てによる情報取得に関するもの,マイナンバーの活用等の課題も含めてですが,また,執行手続の特例など,新たに考えられる方策等を記載してございます。面会交流につきましても同様に考えられる課題の具体的例示をしてございます。このように,全体を通して,基本的な原理から個別の裁判手続の有り様についてまで,事務局で一つのたたき台として整理させていただいたものになります。   まず,御説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   部会資料3について御説明を頂きました。前回は,次回にヒアリングの残りの分をやるとともに,さらに何をやりましょうかということで,差し当たり養育費及び面会交流に関する論点の検討をとりあげるということで,このような資料を用意していただいたところでございます。中身については今,御説明がありましたとおりで,第1から第5までに分かれておりますけれども,準備の段階から全部をやることは無理だろうと思っておりまして,第5は次回に回すことにして,第4までについて御意見を頂きたいとあらかじめ御案内を差し上げていると伺っております。   ただ,第4までについて御意見を伺うという時間ももう十分には残っていないと認識しております。そこで,第3から後は実質的な問題になりますので,第3,第4,第5は次回以降に送るということにしてはどうかと思います。第1のはじめには前書きのようなものですが,その後に出てくる第2の部分は,最初のページに書いてありますけれども,委員から,議論の前提として現行制度の理解や,これまでに行われた論点整理の結果等を共有することが必要ではないかという御指摘が出たのに対応して作られた資料だと理解しております。この部分について御質問等があれば伺い,お答えを頂く,あるいは,ここで課題とされているものについて御意見等があれば,この段階でこの資料との関係でお述べいただくということにしまして,その後,今後の段取りについて御相談をさせていただければと考えております。この進め方でよろしいでしょうか。   それでは,時間が限られておりますけれども,最初の第1から第2まで,7ページの最初のところまでということになりますが,この部分について御質問あるいは御意見等があれば伺いたいと思います。いかがでございましょうか。 ○赤石委員 赤石です。ありがとうございます。先ほど泉市長もおっしゃっていましたけれども,民法766条に基づいて,面会交流と養育費を同列に扱うというよりは,それぞれ条文は別にすべきではないかという御議論をされていたかと思います。私はやはり,同じように並列に議論することにはとても抵抗がございます。やはり子どもの生存に懸かっているような,かつ定型性とかという言葉も出てきましたが,取決めなしには進まない養育費と,面会交流というある程度自由意思でも行えるものが,同列に扱われることというのは非常に違和感がありますので,この書きぶり自体に私は反対でございます。ですので,こうした議論の進め方にも問題があるかなと思います。   それから,もう一つ,先ほどしばはし参考人もおっしゃっていましたけれども,非監護親の方は面会交流を要求し,権利者になるみたいなことがあったのかな,それで,監護親はそれを履行する立場というような表現があったかと思いますけれども,必ずしもそうではない,同居親の方が一生懸命会わせたいと思っていて,全く無関心で別れた後はどこに行ったかも分からないというような非同居親もいる。だから,ここで書かれているのは一面的であると思います。   まず議論の土台が少し違うということと,ヒアリングでやはり不十分なところは幾つかございまして,こういった取決めをしてきた各国の先行事例を反省,あるいは振り返って知見を頂くということがどうしても必要だと思っておりますが,そういったこともなしに続いていくというのは非常に危惧がございます。アメリカでもいろいろな弊害が生まれていると聞いておりますし,各国事情も報告されているので,そういったところも踏まえて議論を行われるべきだと思っております。また,ヒアリングの中で,DV被害を受けたお子さんの立場の議論も聴いていないですし,なぜか抜けているのはお父さんの立場のことも聴いていないと,いろいろなことがございます。   ですので,もう少し,もしヒアリングを参考にするのであれば,それが足りないということで,例えばを指摘させていただきます。アメリカの子どもたちの声を今,お話ししてくださっている方では,エンパワメント・センターの森田ゆりさんのような,子どもたちが非常に今,面会交流を強制されたり,いろいろなキャンプに行かされていたりすることで,非常に叫びを上げているというようなことを御報告できる方もいらっしゃるので,是非そういった方の声も聴きたいですし,いろいろなパターンの子どもたちの声,お父さんの声も聴いた方がいいのではないかと思います。   少し立て付けについて意見を述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。非常にたくさんのことを御指摘いただいたと思いますが,この資料に近いところとの関係で言うと,ここで挙げられているような,養育費と面会交流の取扱い方について御意見を頂いたと思います。その上で,具体的な問題について,面会交流の扱いについて,このような観点だけで十分かということも御指摘を頂いたかと思います。   それとは別に,この後の議論の進め方につきまして,前回と今回と,1回半以上充ててヒアリングをしましたけれども,なおヒアリングをする必要があるのではないかという御指摘も頂きました。それから,どのようにこの先,議論をしていくのかということについての御意見も承ったと思います。   今後ヒアリングをどうするか,あるいは,先ほど申し上げたヒアリングを踏まえた意見交換,それから,この後の進め方ということについては,今の第1と第2ということとは差し当たり切り離して,この後にほかの皆様の御意見も伺いたいと思っております。 ○原田委員 進め方についてはまた後で述べさせていただくのですけれども,面会交流についての資料の問題で,私が前から申し上げている,諸外国の例のときに,どんなことを具体的にやって,どれだけの資源を使っているかについて,今回の委員の先生の中には専門の方もいらっしゃるので,お聴きできるのではないでしょうか,みたいなことを事務局の方から伺ったので,それは期待しています。   もう一つ,実は弁護士会の中で議論したときに,養育費のことなのですけれども,養育費請求権とするか扶養請求権とするかというふうに法的性質を述べることについて,どんな意味があるのかという疑問が出たのです。つまり,どちらにしてもメリット,デメリットというか,それでは説明できない場面が出てくるとか,今日,泉市長がおっしゃった,扶養請求権にすると費用を取るのはおかしいではないかというのは,確かにそういうふうにはできるなと思ったのですけれども,でも,実際に扶養している監護親が,例えば代理行使するとなると,報告義務がでるのかとか,あるいは両方の意見が違ったときにどうするのかとか,いろいろな問題が出てくると思われて,法律家の議論として性質を議論するのは当たり前と思われるかもしれませんが,実務家の立場からは,これを分けることによってどれだけの意味があり,メリットがあるのかという疑問が出て,私もそうだなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。1点目は,データないし資料に関する御指摘ということで,これまでに御指摘いただいたことを更におっしゃっていただいたと理解をいたしました。2点目は,養育費と扶養義務の関係について整理するということについて,その限界ということについての御指摘として承りました。差し当たり,御意見として承りたいと思います。 ○窪田委員 すみません,窪田です。もう時間がかなり過ぎているものですが,2点述べさせていただきたいと思います。先ほどから,どういうふうな形で進めるかという形での議論について錯綜している状況ではあろうと思いますが,今,議論しているのは,部会資料3の第1と第2の部分と承知しております。そして,第2の部分に関して言うと,先ほど,面会交流の理解の仕方が一面的だということがあったのですが,ここでは面会交流についての理解は別に一面的に示しているわけではなく,正しくその点を検討しようということの問題点を示しているということだと思いますので,更に資料に触れるかどうか等はともかく,私自身はこの部分に関して特に違和感は持ちませんでした。これが第1点目,感想です。   第2点目なのですが,5ページのところで問題点が整理されている中で,未成熟子に対する扶養であるとか,未成熟子の扶養請求権といったことが出てきており,また,3ページのところでは,未成熟子という概念が不安定だということも書かれています。私自身は少し,5ページのような形で問題を整理するのは適切なのかなというのが,しばらく考えるうちに少し疑問に思うようになったので,その点についてだけ述べさせていただきたいと思います。   恐らく,非常にはっきりしているのは,未成熟の未成年に対する扶養の問題に関しては,かなり明確に問題を位置付けることができるのだろうと思います。この場合には,それが親権に基づくものなのか,親子関係に基づくものなのかということはともかくとして,比較的明確だと。一方で,未成年ではあるけれども,もう成熟して自立している者に対する関係はどうなるのかという問題と,成年には達しているけれどもまだ経済的には自立していない者に対する関係はどうなるのかというのは,一まとめには扱わない方がいいのではないかと思います。この問題の立て方がいけないということではないのですが,もう少し全体構造が分かるような形にしないと,民法では明確にされていない未成熟子概念に引きずられることになると思いますので,その点だけ少し工夫していただければと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。5ページの課題に挙げられている未成熟という言葉について,分けて考える事柄があるのではないかという御指摘を頂きました。今日のところは御指摘として承っておきたいと思います。 ○大山委員 大山でございます。お時間が限られますので,私もポイントだけお伝えしたいと思います。資料第2に記載の「法的位置付け」につきましては,今後の議論の大きな方向性に関わる事項であると思います。その中でもとりわけ養育費については,子の扶養義務や養育費の概念を,きちんと民法で明確化し整理するという今回のご提案に賛成したく存じます。初回の会合でも申し上げましたけれども,経済界の立場から見れば,子どもはもちろん将来的な人材の源泉であり,その健やかな成長を,社会全体で支えていくことは喫緊の問題であると考えます。その際,離婚後に,子どもの生活基盤や自由な選択,学習機会など,そういった子どもの成長のベースとなる事項を法的に担保することは,最低限必要なことであると感じており,この点については法的手当てがマストではないかと考えます。   また,面会交流につきましては,離婚の事由や状況,また様々な当事者の方々のメンタルの部分も含めて,ニーズが多種多様であり,養育費等と比べ,より難しい課題だと感じております。面会交流は大変重要ではあると思いますが,やはり養育費の問題と面会交流は,検討の中で議論を分けて進めるのが分かりやすいのではないかと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございました。基本的な方向に賛意を示していただくとともに,養育費と面会交流については分けて議論した方がよいのではないかという御意見を頂きました。 ○落合委員 私は,この5ページの未成熟子に対する重い扶養義務というところに少し意見があります。この重いというのは,生活扶助義務なのか生活保持義務なのかという違いで,重いということが付いているわけですけれども,しかし,独り歩きする危険があるように思うのです,一般の人の理解の上で。親が子どもを育てる義務をより重くするというか,そのことによって,社会的責任とか,それから国の責任,子どもを育てるということを社会的に分担するということの重要性が後ろに引いてしまうのではないかと私は心配をします。ですから,重いというのは付けない方がいいのではないかと思いますし,あるいは,もう少し誤解がない形で付けるかですね,あるいは国の責任というようなことを書き込むということも重要ではないかと思います。非監護親が養育費を払う余裕がない場合とかについて,いろいろ話が出ていましたけれども,そのときにすぐ国が責任があるというふうに発想ができるように,ここに書き込んでおく方がいいように思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。重い扶養義務という表現がどういう受け止めをされるかということについて,御心配を御披露いただいたと思います。国が子どもの成育について一定の責任を負っているということが分かるようなことも書いておく必要があるのではないかといった御指摘を頂きました。   ほかに,この第1,第2について,何かございますか。 ○戒能委員 簡単に申し上げます。今日は第2までということだったのですが,この資料3の全体の組立ての考え方ですね,それをもう少し本当は説明をしていただきたい。どうしてかといいますと,第1,はじめにがあって,第2が法的概念の話ですよね,それで整理をして,そこで,次の第3が,これは私の受け止め方だけかもしれませんが,取決めにもう,すぐに進んでしまう,そこは非常に違和感を持ちます。どういう論理的な展開で行くのかということが説明がない,というと言いすぎかもしれませんが,不十分ではないかと思うんです。   もう1点,それとも関連するのですが,それは今までの面会交流,70年,80年ぐらいからということで,慣行のような実務の運用で出てきたわけなのですが,そこで家族法理論として欠けていたのが,それは今日,明石市長も何度も強調していらっしゃいましたけれども,子の権利というような権利性の問題ですよね,そこの議論を今まで十分してこなかったということは5ページにも書かれているにもかかわらず,それをすっ飛ばして,ということではないかもしれませんが,やはり取決めの議論に入る前に,一体誰の権利でどういう権利なのかということをこの機会にやらないと,またパスしてしまって,実務的な問題に行ってしまうのではないかと。ですから,子の利益とか子の権利とかということが面会交流あるいは養育費にとってどういう意味を持って,どういう権利として描き出していくべきなのかという議論をもう少しきちんと,何というのでしょうか,余りすぐに結論に行くということではなく,展開した方がいいのではないかという感想を持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございました。この資料の作りにつきましては,必要に応じて,また事務当局の方から補足的な説明をしていただいた方がよいかと思って伺いました。それから,子の権利という問題は,一連の問題を扱う上で重要だと思うのですけれども,今回は差し当たり養育費及び面会交流に関する論点を取り出して議論をしているということで,この部会で扱う全体がどういうものであって,子どもの権利をどこで扱うのかといった問題もあろうかと思います。その点についてどうするかということは,すぐ後でお諮りしようと思っている今後の進め方にも関わると思いますので,その中で事務当局にも,それから皆さんにも,お考えを頂ければと思って伺っておりました。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。今までの御意見も聞かせていただいて,また,法制審議会にも何度か関わってきたのですけれども,法律の専門家が中心で,実務家と研究者が中心で法制度の改正ということでやってきました。そのため,審議に必要であるとか,実情を把握したいということで専門外の方々とか,あるいは関連している分野の方々のお話はヒアリングでいろいろお聞きしたり,あるいは資料なんかで拝見するということでした。しかし,今回はすごく思い切った取組というか,いろいろな分野のいろいろな立場の方に入っていただいて議論しようということなので,やはりなかなか難しいところがあるのかなとも感じながらも,こういうような開かれた形で議論が進むということに対しては,非常にいいことかなとも思っています。ただ,今回の議論を聞いていて,資料が配布されて,皆さんもお感じだと思いますけれども,養育費とはいっても条文上は民法766条に,監護の費用の分担となっております。また,面会交流といっていますけれども,面会及び交流と条文上は規定されています。その前は面接交渉というような言い方をされたり,概念そのものが古くなりつつあります。例えば親権,監護という言葉,それ自体が,釈迦に説法になると思うのですが,明治31年からのもので,今から120年以上も前の民法典というのがベースになって仕組みができ,それが改正を経ていろいろ議論をされて,今日に至っています。   もちろん,私も養育費を最初にやるということについては賛成したいと思いました。ただ,問題は,条文の改正をするときに,養育費といっているその概念,あるいは言葉遣いがそもそもどういうことを意味していて,どういう性格で,どういう基準で決められて,誰がどんなふうに決めなければいけないのかとか,そういうことが全部関わってくるので,言葉の使い方や言葉の意味とか,この条文のこういうところにあって,こういう位置付けていいのだろうかという点まで精査したり,吟味しながら議論をしなければなりません。先ほど原田委員から,扶養請求権ということと監護費用の分担のところで,実質は余り変わらないのではないかというお話もあったのですが,実は私たちは正に,養育費の問題を取り上げて論じるためには,未成熟の子の扶養請求権について,法的性質,用語や条文の位置づけなどを含めて,きちんと実務的にも理論的にも問題点を明らかにする必要があると思います。明石市長がおっしゃったのは,まさに親が負担する私的な個人的な請求権という位置付けだけで本当にいいのだろうかとか,社会や国が確保すべき権利ではないか,もう少し公的な位置付けとか考え方とか性格付けみたいなものはないのだろうかとかという趣旨だったと思います。要は120年以上も前に定められた民法を継ぎはぎのように修繕しながら,今までは変えてきて,新たに766条の条文に「監護の費用」,「面会及び交流」,「子の利益」を入れたのも11年ぐらい前だったのです。法改正についてのいろいろな調査とか議論の中でも,海外調査をして,面会交流というのが実際にどういうふうに支援が行われているとか,どういう規定の構造になっているとか,それから養育費も全く同様に調査研究や実務の状況も前提にしてきました。   そういう中で,そもそも養育費といわれているものが民法上どういう条文で,どんな形でもって位置付けられて議論されてきたという現状について,この第1とか第2の中では示され,そこにどういう議論を,学説として研究者も行い,それから判例も含めてですけれども,運用でどんな工夫がされたり,限界が見えてきたのか,その課題が明らかにされて初めて,これをどういうふうに変えていったらいいかということが議論できると思います。そこで,はじめて,今の社会の実態とか,当事者や子どものことを考えると,どういうふうに現行法を変えることで,あるいはどういう制度を新たに設けることで,子どもたちに実際に養育費が届くのか,それから,面会交流についても全く同じで,面接交渉とかといわれながら,陰ながら見ておくべきで,むしろ会いたいなんていうことを言わない方がいいのだという昭和30年代,39年に東京家裁の判決で出たものが面接交渉というので初めて出てきて,今の議論や規定につながった。私たちはそういう経緯とか,議論の状況も知ったうえで,さらには,この法的な概念とか,今の条文の構成とか内容に問題があるということとか,どういう成り立ちでそれが出てきたのだろうかとか,どういうふうに変わらなければならないかということについて,是非委員の皆さんの御意見を聞きながら,今後丁寧に審議をやっていく必要があると思うのです。   ですから,親権についてもそうです。親の権利といっていますけれども,親が子どもにもつ支配権です。要するに,子どもを従属的なものと見て,権利の客体や保護の対象としか見ていなかったのが,もはや今では子ども自身が生きて,健やかに成長する権利を持っていて,周りの人は親だけではなくてみんな責任を負う。大人とは異なる子どもの人格や法主体性を認めるべきだということが,児童の権利に関する条約で謳われています。戒能先生が今言われた,皆さんも言われた,国や社会の大人の責任というのが正に今みなさんに共有されている出発点だと思うのです。そのためにどういう順番で議論していくかということで言うと,正に条文で今どうなっているのか,どんな議論がこれまでされてきて,どういう課題が示されているのかというのを,私たち審議に関わる者が法的には共有する必要があります。ただ,私たちのような法律の専門家としてやってきた人と違う先生方,多くの皆さまに協力していただいていますから,できるだけ分かりやすく,先ほど言った重いとか言われても,何が重いのだとか,程度なのか,内容なのか,いろいろなことについて分かりにくいと思うのです。それは事務局で工夫していただいて,ただ用語も含めてですけれども,養育費とか面会交流とか,親権,監護といわれている120年以上前のものがそのままでいいのか。ここの場でもそれでいいという人は多分いらっしゃらないと思います。むしろ親よりは子どもに焦点を当てて,子どもの利益を守ろうということは皆さん共通だと思うので,是非,整理の仕方で違和感があるかもしれませんけれども,私はどちらかというと,窪田さんと全く同じ意見でして,現行法が一体どういうふうに規定をしていたり,どういう状況になっていて,どんな問題については,みなさんでしっかり確認しておくべきであり,この前提があってはじめて,それをどう変えるかという話についてはいろいろに御意見があると思いますので,是非今後そのような仕方で進めていきたいと考えております。   それから,養育費を一番というのは,お子さんにとってお金とか経済的な面の支援も大事です。しかし他方で,面会交流というのは,誤解されるかもしれませんけれども,精神的な心のつながりみたいな部分もあるので,一緒に議論をするかどうかはこれからの皆さんの御意見で良いと思います。もちろん,養育費と面会交流は,質も相当違ったり,中身も違っているので,一緒に議論したり,それをリンクさせてバーターでやるということには反対ですけれども,ただ,法的には同じ条文に入れられた経緯とか,いろいろなことを考えると,それから海外なんかを見ますと,ペアレンティングタイムということで,親とどんな時間を過ごすかということに焦点を当てているため,もう面会交流という言葉も使っていない。それから時間の長さも暮らし方も過ごし方も子ども中心に,子どもにとって充実して楽しいという時間をどう持つかということになっていますから,この面会交流という言葉そのものも議論の対象にしていただいてよいと思っています。面接交渉という用語のときには,刑事事件での留置場とかそういうところの被疑者との接見とか,そういうものと誤解していた人もいたぐらいですから,用語の使い方も含めて,中身もそうですけれども,きちんと議論していただいて,私はやはり現状,条文がどういうふうになっているかということと,それから,そこに法的にもどんな問題があるかということは,皆さんで共有した上で,それをどう変えていくかというところの着地点については,いろいろな御意見があると思いますから,拙速にやる必要はないと思っています。   ただ,親権という言葉も監護という言葉も,今の条文の位置付けも,それから規定の仕方も,これが何の問題もないという理解よりは,いろいろな問題を実は抱えているということの認識だけはきちんと持った上で,ヒアリングもほかの法制審の部会でも必要に応じて間でも入れていますので,是非,赤石委員がおっしゃったように,必要な調査やヒアリングをすることについても賛成です。ヒアリングだとか実情調査とか,それが全部できなければ法的な問題の審議はできないということではなくて,同時並行で議論しながらやれるのかなと思っています。いずれにしても,私たちは慣れているせいもあるかもしれませんけれども,この部会の用意していただいた参考資料の構成や組立てについて,余り違和感を感じておりません。むしろ内容とか表現について,こういうふうに変えた方が誤解を生まないとか,そういうことはあると思うのですが,そんな印象を持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの御指摘を頂きましたけれども,中核をなしている部分は,民法等の法律の改正をするということになりますので,法律の現状についての認識から出発し,様々な議論を経て,最後は法律を書き直すという形に落ち着かなければいけない,そのプロセスをやはり重視しなければいけないという御指摘だったかと思います。それをどの順番でどのようにやっていくかというのは,また別論かと思いますけれども,今のような基本的な御指摘として受け止めさせていただきます。   それで,時間はなくなってきているのですが,大石委員,沖野委員,青竹幹事とお手が挙がっているので,一言ずつ御意見を頂ければと思います。 ○大石委員 ありがとうございます。千葉大の大石です。私の専門は法律ではなく経済学で,子どもの貧困について研究してまいりましたが,ひとり親世帯の貧困の実態や経済状況については,皆さんにおいてかなり問題意識は共有されているように思います。ですので,私としては子どもの権利として,どのようにして養育費を受け取る権利を確立することができるのかといった部分,それから,親に経済力が不足している場合に法的な支援をできないか,という部分ですね。たとえば現在,ひとり親世帯には児童扶養手当がありますけれども,それをもっと機動的な形で,緊急避難的な手当を設けるというような政策立案に持っていくことができないかという問題についての議論を先に進められたらよいなと考えています。経済面の緊急性は高いと思われますので,そちらについては割合と合意ができやすいのではないかでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございました。経済的な面からのアプローチが合意ができやすいのではないか,先にやったらどうかという御指摘を頂きました。 ○沖野委員 時間がないところを申し訳ありません。3点だけ申し上げたいと思います。   一つは,今回の資料につきましては,棚村委員がおっしゃり,また部会長がおまとめくださったところに尽きているかと思うのですけれども,現行法でどう理解されていて,そこにどのような問題があり,それを踏まえてどういう課題を検討していくかということを問われているというものと理解しております。具体的な話として,例えば5ページなのですけれども,幾つかの考え方が書かれておりますけれども,このような意見があるということなので,これ自体を特に提案するということではなくて,こういったことを踏まえてどう考えていくかと,そういうお話なのだろうと思っております。   個別に申しますと,今回の資料で,例えば養育費については,子どもの養育ということが親族間の扶養の中でも,親子間の在り方として,最も重いものであるという位置付けをした上で,そのような義務というのを親が子どもに対して負っている,あるいはその反面で子どもの権利があると,それの範囲だとか程度だとか,そういうことを明確に民法で位置付けていくべきだというような考え方が,例えばAなどに書かれているのかと思いました。もっとも,これを扶養という言葉を使って表すというのが適切なのか,むしろ,養育がいいかどうか分かりませんけれども,養育する義務を負うというような形で,親子間の場合の特有の表現を用いることで,ただ,それを,例えば理論的に説明するには,一種の扶養の一つと位置付けることができるけれども,その中でも非常に重いものだとか,対象がこうだとか,そういうような説明もできるのだろうと思いました。   また,今日のヒアリングを聞きますと,面会交流と,それから養育費という問題は,子どもの養育という観点から考えると,それをどういう形で実現していくか,経済的な面で行うのか,それも含めてかもしれませんが,交流ですとか,いろいろな形で,それをどう実現し,また分担するかというようにとらえることもできるように思います。また,それ自体は親が負っているということは,ほかの者が負わないということでもないということも理解しました。いずれにしましても,それ自体を今後検討していくということなのだろうと思っております。   細かいことを更にもう1点だけ申し上げますと,今回は離婚を軸にして,その場合の規律ということからスタートしておりますので,こうなるのだと思うのですが,例えば3ページに,養育費請求権というのは離婚をした父母間に発生する権利であると書かれています。現行法の説明としてこうだということだと思うのですけれども,今後,婚姻と離婚という,もうここでぽんと一つ切られてしまうというよりは,別居という場合をどう考えるかとか,そこでの規律の問題がありますので,飽くまでこれは説明として言われているということですし,離婚を軸にして考えたときに,そこから更に,別居ということをどう考えるかとかいう話で,また議論も行くのだと思うのですけれども,切り方としてこの二分論だというふうな前提だと,そうではないのだろうなと思ったということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。具体的な問題,今の別居の問題をどう扱うかという問題ですとか,先ほどから出ています扶養義務と養育費,これらを示すためにどのような言葉を使うのかということ,理論的な説明をどうするかということは分けて考えられるのではないかといった御指摘も頂きましたが,資料についてはここで,例えば5ページで@,A,Bというのは,様々な考え方があるとうことで問題が提起されているという見方を示していただきました。棚村委員が先ほどおっしゃった,法制審の民法系の部会の言葉でいうと論点整理に向けて,まず最初の提案がされているということで,必ずしも具体的な方向付けがされているというわけではない。これは窪田委員もおっしゃったことかもしれませんけれども,そうした御指摘を頂いたと受け止めました。 ○青竹幹事 進め方についての意見を二つだけ簡単に申し上げたいと思うのですけれども,養育費と面会交流につきまして,委員の先生方がおっしゃっているように,これは結び付けないで分けて検討すべきであるということについて賛成いたします。けれども,どちらも同じぐらい重要だということも大分共有できているようですので,どちらか一方に偏らないように,同時に進めるべきなのではないかと思っております。分けて議論するけれども,同時に検討するべきということです。   2点目は,法的性質とか権利性の問題,非常に重要で,必ず検討すべきだとは思うのですけれども,こういった問題は深く議論すべきですし,多面的な問題,いろいろな意見が出るという問題でもあります。時間が掛かるだろうということが予想されます。それですので,まず比較的分かりやすく,かつ重要な,やはり養育費とか面会交流というところから検討するのが合理的なのではないかということを思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。この後に議論の進め方について御意見を伺うと申し上げたのですけれども,既に皆さんから進め方についての御発言をかなり頂いているところです。そこで,この後の進め方について,今まで出ていない観点があればおっしゃっていただいて,その上でどうするかということについてお諮りをしたいと思いますが,何か追加の御発言がありますか。 ○小粥委員 少し店を広げるようなお話になってしまうのですけれども,前回と今回のヒアリングを通じて,家庭裁判所での手続の現状に様々な課題があるということが改めて確認されたような気がします。養育費とはどういう権利なのかとか,面会交流というのはどういうものなのかというのは実体法,民法の問題ですけれども,それとは別に手続プロパーの問題ですね,そこに制度や運用の改善の余地がないのかどうかを幅広に丁寧に検討する必要があるのではないかと思います。   そうだとすると,その前提として,現在,家庭裁判所で子の引渡しや面会交流等の監護に関する処分事件についてどのような対応がなされているのかということを少し丁寧に教えていただいて,共有できないかと思っております。既に参考資料が出ていて,審理期間の平均値などは出ているわけですけれども,手続に時間が掛かるから連れ去りが助長されているのではないかというような意見もよく耳にするところですし,ヒアリングとの関係では,家庭裁判所はDVをどうやって認識しているのだろうかとか,あるいは調停事項をまとめるについて,例えば今日のヒアリングとの関係で言いますと,葛藤低下への取組等は何かあるのかとか,あるいは子どもからの意見聴取,具体的に何回,どうやっているのかとか,保全処分がどのくらい活用されているのかとか,実際にどのくらいスピーディーに物事ができているのかとか,DVが分かったときに,当事者から何か言ってきたときにどういうふうに対応できているのかとか,裁判所がある程度こういう問題があると感じているというようなことを裁判所から教えていただく方が,多分今後のことを考えると実効的な手当てもできるのではないかと思うのです。要するに,家庭裁判所の手続の実際をもう少し詳しく教えていただきたい,これを部会で共有できないかということであります。 ○大村部会長 ありがとうございました。家庭裁判所の実態ということであれば,ヒアリングではなく,裁判所関係の方にお話を頂くということでもよいのだろうと思いますが,それも含めまして,家裁の手続面についてもう少し知識を共有したいという御指摘を頂きました。   そのほかに,いかがですか。 ○赤石委員 一言だけです,すみません,何度も。赤石でございます。1回目に申し上げた,婚姻によらないで生まれた子どもの養育費ですとか,そういった権利について,議論になかなか乗りにくそうなのですが,同じように議論すべきではないかということを一言申し上げておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。取りあえず今,離婚後ということで話をしているわけですけれども,婚姻関係にない父母の間の子については,現行法でも準用規定があったりしますので,いずれどこかで整理をしなければいけないということになろうと思いますので,それも検討する必要があるという御指摘として承りました。   ほかにはいかがでしょうか。時間がなくなりましたので,皆さん遠慮されて発言を控えられているかもしれませんが,いろいろな御意見を伺いました。一つは,ヒアリングにつきまして随分たくさんの方に御意見を伺いました。それぞれに皆さんの方から質問をしていただいたわけですけれども,ヒアリングを聞いて,どういう認識を皆さんがお持ちになっているのかということについて意見を言う機会が欲しいという御発言が本日の席上もございましたし,事務当局にも寄せられていると伺っております。それとの関係で,更にヒアリングが必要ではないかという御指摘も今日,複数頂いているところです。必要なヒアリングについては随時行っていくということが考えられるかと思いますけれども,棚村委員も御指摘のとおり,制度をどうするかということについて,一方で我々の考え方を擦り合わせつつ,他方でヒアリング,あるいは外国法についての情報等を集めていく,並行してできるという面もあろうかと思います。   今後の進め方などにつきましては,先延ばしにしてまいりましたけれども,次回,少しまとまった形で御意見を頂くことにしたいと思っております。何かの後にやるというのではなくて,むしろ先に時間を設けて御意見を頂いた方がよいかと思います。その際には,皆様の基本的な考え方,あるいは,今回は養育費及び面会交流を取り上げておりますけれども,そのほかの問題,離婚後の監護の在り方そのものについて先に議論したらいいのではないかという御指摘も頂いておりますが,そちらについても御意見をお持ちの委員,幹事は少なくないと思います。無制限にというわけにはいきませんが,余り厳しい時間の制限を設けない形で意見交換をしていただく,あわせて,先ほど資料3について最初のところだけ御意見を頂いておりますので,残りの部分についても時間があれば御意見を頂くという運びにしたいと思いました。一方的にまとめましたけれども,それでよろしいかと皆さんに伺いたいと思います。ただ,その前に,もしそれでいいということになった場合に,事務当局の対応は大丈夫ですか。 ○藤田幹事 そこはもう,皆様方でお決めいただければと。 ○大村部会長 分かりました。以上のように一応まとめさせて引き取らせていただきたいと思っておりますけれども,よろしゅうございますでしょうか。 ○落合委員 ほんの一言ですけれども,外国法のことなどをまとめて配布していただきましたけれども,少しそれについてもお話しいただいて,話し合う機会が少しあったらいいのではないかと思うのです。先ほどペアレンティングタイムという言葉を出していただきましたけれども,確かに外国の家族法の方が新しい考え方を取り入れたいい表現というのを工夫されていると思うのです。親権という言葉をこのまま使うのかというようなことも含めて,そういうことを考えるヒントにするために,外国法はどのように変わっているかという,新しいいい感じの方向を学ぶ機会というのが欲しいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろな国でいろいろな経験があるところですので,外国法の情報もできるだけ機会を捉えて参考にできればいいと思います。どういう手順でどの辺りでできるのかということも含めて,また次回以降に検討をさせていただきたいと思います。次回の取扱いにつきましては,先ほどのようなことでよろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございます。それでは,事務当局には,そのようなことで次回についての御準備を頂ければと思います。   最後に,次回の議事日程等につきまして,事務当局の方から御説明を頂ければと思います。 ○藤田幹事 本日も御議論ありがとうございました。先ほどおまとめいただきましたとおり,次回につきましては,部会資料3の残りの部分とともに,それに先立ち,全体の進め方を含めた総括的な御議論ということになったかと存じます。   次回は,6月22日の午後1時30分からということで,先ほどの総括的な御審議,また,部会資料3についての御検討もお願いできればと存じます。 ○大村部会長 では,今御説明がありましたような形で次回の審議を御予定いただければと思います。   それでは,本日の会議はこの程度にさせていただきたいと思います。   本日も熱心な御議論を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 −了−