法制審議会 仲裁法制部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和3年5月21日(金) 自 午後1時27分                      至 午後4時38分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 執行力を付与し得る対象となる和解合意の範囲  部会資料8に基づき,執行力を付与し得る対象となる和解合意の範囲について調査審議がされた。  2 「国際性」の規律の内容    前記1の調査審議を前提に,「国際性」の規律の内容について調査審議がされた。     第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 それでは,定刻前かもしれませんが,法制審議会仲裁法制部会第8回会議を開会したいと思います。   本日も御多忙の中,御出席を賜りまして誠にありがとうございます。   本日の出席状況ですが,北澤委員,衣斐幹事が御欠席と伺っております。   本日も前回に引き続きまして,ウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので,まず,ウェブ会議に関する注意事項を事務当局から説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日もよろしくお願いいたします。   本日も新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が出ている中での実施ということになっておりますので,部会長も含め,基本的にはウェブでの参加という形でお願いをしていたところでございます。   まず,ウェブ会議を通じて参加されている方の映像と音声の確認をさせていただきます。私の声が聞こえておりましたら,手を挙げる機能を使いましてお知らせいただけますでしょうか。   ありがとうございます。確認ができましたので,手を下げていただいて結構でございます。   これまでの会議と同様のお願いとなりますが,念のため御案内をさせていただきます。ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐため,御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。審議において御発言される場合は,先ほどの手を挙げる機能をお使いください。こちらの会場にて御出席されている方も,机上のパソコンで同様の機能をお使いください。それを見て部会長から適宜指名がありますので,指名されましたらマイクをオンにして発言をお願いいたします。発言が終わりましたら,再びマイクをオフにし,同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしてください。なお,御発言の際は必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。   私からの説明は以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,本日の審議に入ります前に,配付資料についての説明を事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 再び福田でございます。本日は部会資料8「仲裁法等の改正に関する論点の補充的検討(5)」と題する資料を配付させていただいております。資料の内容につきましては,後ほど事務当局から説明をさせていただきますが,本日の会議におきましては,執行力を付与する対象となる和解合意の範囲につき,中間試案でお示しいただいた三つの案のうちどの考え方を軸として今後検討を進めていくかという点を中心に御議論を頂き,できましたら一定の方向性をお示しいただきたいと考えております。そのため,部会資料と併せて参考資料8としてODR推進検討会における執行力付与の是非に関する取りまとめを配付させていただきました。内容については,こちらも後ほど当省司法法制部の渡邊関係官から説明をしていただく予定でございます。   さらに,本日の議論の参考としていただくために,この5月7日まで実施をしておりましたパブリックコメントで寄せられた意見のうち調停に関する部分を暫定的に取りまとめたものを配付させていただいております。こちらの資料は飽くまで暫定版ということになりますので,ホームページ等において公表を予定しているものではございません。ただし,本日の会議で御発言をされる際,こちらの資料を引用するなどしていただくことは差し支えがございません。   ちなみに,パブリックコメントにつきましては,合計で19件の御意見が寄せられました。団体が13,個人が6という内訳になっております。この取りまとめについては,現在,事務当局において集計をしているところでございますので,正式版につきましては準備が整い次第公表し,部会において参考資料として配付をさせていただく予定でございます。   本日の配付資料は以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございます。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   まず,部会資料8,これについて事務当局から説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは,鈴木から説明をさせていただきます。今回の部会資料では,大きく二つの論点を取り上げております。   一つ目は,執行力を付与し得る対象となる和解合意の範囲に関するものになります。前回の部会では,調停による和解合意に執行力を付与することの正当化根拠について御議論いただきましたが,その議論の内容も踏まえつつ,今回の部会では,中間試案で提示した三つの案のうちどの案を採用すべきか,皆様からの御意見を賜りたいと存じます。   当部会において,国際性を有する和解合意に執行力を付与することの必要性が高いことについては,これまでも指摘がされており,そのことに特段異論はなかったものと認識しております。もっとも国内の事案についても執行力を付与する必要性が高い場面は考えられ,この後御紹介いただく予定のODR推進検討会における取りまとめの内容も踏まえつつ,そのニーズについて,執行力の有無につき差を設けるほどのものなのか,皆様から御意見を賜りたく存じます。   ここで,暫定版ではございますが,パブリックコメントの結果を一部紹介させていただきます。パブリックコメントについては,先ほど福田の方から言及がありましたとおり,合計19件の意見が寄せられました。その中で,調停による和解合意に執行力を付与すること自体について慎重に検討すべきという意見が1件ございましたが,この意見は,調停による和解合意に執行力を付与することを既存の債務名義との整合性の観点から正当化できるのか問題提起をされているものであり,この点に関しては,前回の会議において皆様に御議論いただき,一定の方向性が示されたものと認識しております。そして,この1件以外の意見は,執行力を付与することについて支持する御意見ばかりでした。そして,その範囲については,乙1案を支持する意見は一件もなく,最も多かった意見が乙2案,次いで甲案という結果となりました。もっとも甲案を支持する意見について,その理由を見ると,国内の事案に対象を広げるべきではないというものではなく,国内の事案に関して議論に時間がかかるのであれば,国際性を有するものについて先行して法制化すべきという観点からの御意見であったものと認識しております。このようなパブリックコメントの結果についても適宜参照していただければと存じます。さらに,仮に,パブリックコメントにおいて最も支持が多かった乙2案を採る場合には,国際と国内とで基準を異にすることの合理的な説明が必要になります。この点に関しても皆様からの御意見を賜れれば幸いです。   続きまして,二つ目の論点は,国際性の規律の内容についてです。これまでの部会の議論においては,甲案を採用する場合に国際性の要件がシンガポール条約と同じでは狭いのではないかという指摘があり,外弁法の規律を参考に③,④の要件を追加したという経緯があったものと認識しております。もっとも仮に乙2案を採用した場合,国内の事案にも,一定の限定はあるとはいえ,執行力を付与し得る対象が広がるわけなので,その場合にも国際性の要件を広げる必要があるのかという観点から今回は御議論いただきたいと考えております。   国内法において,国際性の要件をシンガポール条約の規律より広げることは,日本において強制執行される範囲を広げるということになります。これまでの部会における議論では,日本がシンガポール条約と整合的な国内法を設けることで,同じ規律を設けている諸外国の企業との間で紛争が生じた際,相手方企業からすれば,日本でも同じ範囲で強制執行することが可能であるということになるため,日本企業が調停を紛争解決手段として選択することができる,そのことに大きな意義があるとの指摘がされ,このような観点から,今後国際的なスタンダードとなっていく可能性のあるシンガポール条約と整合的な国内法を設けるべきとの議論がされてきました。そうであるとすれば,条約よりも広い範囲で国際性の規律を設け,日本における強制執行の範囲だけ広げる必要性はあるのかという点について,皆様から御意見を賜れればと存じます。   また,仮に乙2案を採用するのであれば,国際性の有無により執行力が付与される規律が異なるので,国際性の要件については,そのような異なる規律を設けることが正当化できるものである必要があります。このような観点からも,外弁法の規律を追加した国際性の要件が適切といえるのか,御議論いただきたく存じます。   私からの説明は以上になります。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,続きまして参考資料8につきまして,司法法制部から説明を頂きたいと思います。渡邊関係官,よろしくお願いします。 ○渡邊関係官 関係官の渡邊でございます。それでは,参考資料8を御覧ください。   先般御紹介いたしましたODR推進検討会では,執行力の付与の是非について国内のADR事業者に対して実施したアンケート及びヒアリングの結果を踏まえた上で,執行力の付与に関するニーズや弊害といった点を中心に検討を進め,本年3月に取りまとめを行いました。本資料はその取りまとめとなります。少々お時間を頂戴いたしまして,その概要を御紹介させていただけたらと思います。   まず,結論の概要を先にお伝えいたしますと,執行力を付与することのニーズにつきましては,我が国のADRの利用の実情等に照らして十分な合理性があるということで意見の一致を見ております。そして,弊害の点でございますが,その意見の多数については,仮に弊害が生ずるおそれがあるとしても,適切な規律を設けたり,あるいは運用の適性を図るための環境整備を行ったりすることで弊害等の発生を防止することが十分に可能ではないか,こうした懸念にも十分に配慮した適切な制度を設計し,ADRに対するニーズや期待にこたえていくことが我が国のADRの更なる拡充,活性化につながるのではないかというものでございました。   具体的な検討の結果につきましては,4ページ以下の第2に示されているところでございます。簡単に御紹介してまいります。   まず,5ページの2では,執行力を付与することに関するニーズについての検討結果が示されております。検討会では,アンケートにおいて73.9%ものADR機関が,無条件又は一定の条件の下に執行力を付与することに賛成と回答したことを重く受け止めるべきであるとの意見が多数を占めました。アンケートでは,執行証書や即決和解等の代替手段が存在するので必要性がないのでないかとの意見もございましたが,そのような考え方については,和解合意に至りながら,いまだ不履行が生じてもいない段階で将来の履行の不安を解消する手当てとして更なる費用や手間を要することとなり,そのことが当事者や代理人の視点からすると,ADRの利用を妨げている要因となり得る。特に,少額紛争が少なくない我が国のADRの利用の実態からすれば,そのような費用や手間を掛けることは現実的でないものと思われる。世界的にODRの導入が急速に進み,我が国でもその導入を進めるADR機関が相次いでいるが,ODRにより和解が成立しても,そのような代替手段をとらざるを得ないというのであれば,オンライン上で和解合意を締結できるというODRのメリットを大幅に減殺してしまうことになりかねないなどの指摘がされました。こうした検討の結果,執行力を付与することのニーズは我が国のADRの利用の実情などに照らして十分な合理性があるとの結論に至りました。   続きまして,9ページの3では,執行力を付与することの弊害や隘路についての検討結果が示されています。検討会では,アンケートやヒアリングにおいて弊害や隘路として指摘された五つの点を中心に,個別具体的な検討が行われました。具体的には,1点目として,私的自治や任意性が重視されるべきADR機関における調停には執行力はなじまないとの意見。2点目として,執行力を付与することにより応諾率や和解成立率が低下するおそれがあるとの意見。3点目として,悪質な事業者が無知な消費者をだまして和解合意をさせるような,いわゆる濫用事例を危惧する意見。4点目として,執行力を付与することにより認証の基準要件が加重されるなどして,ADR機関の負担が増加することを懸念する意見。5点目として,執行裁判所において執行を認めない旨の判断をされた場合のリスクを懸念する意見が示され,これらの意見について検討が行われました。   時間の都合もございますので,これらの検討結果の全てをこの場で御紹介することはかないませんが,当部会においても議論されました,悪質な事業者が無知な消費者をだまして和解合意をさせるような,いわゆる濫用事例を危惧する意見についての検討結果を御紹介することにしたいと思います。   12ページのエに検討結果が示されております。検討会においては,我が国におけるADRの実情,弁護士法第72条やADR法の規律が存在することを踏まえれば,手続的実体的正当性を欠くような和解合意が粗製濫造されることは考え難い。このような意見が想定する悪質な事案は,和解合意に詐欺,脅迫,錯誤といった実体法上の無効を来す原因が存在する場合や,公序良俗違反があるものが多いと考えられるところ,これらの事由については執行拒否事由に該当する。濫用等の弊害が生じやすいと考えられる紛争類型については適用除外とすることが検討されていることなどが指摘されまして,複数の委員からは,執行力を付与するニーズよりも弊害が上回っているといえるかは疑問であるといった意見が示されました。   続きまして,14ページの4では,国際調停と国内調停のニーズ面及び弊害面を比較した検討結果が示されております。ニーズ面につきましては,国際調停と国内調停に若干の相違があるとしても,アンケート結果等を踏まえると,国内調停におけるニーズは否定できないとの検討結果となりました。また,弊害面につきましては,国際調停が国内調停よりも弊害が少ないと言われているのは,いわゆるBtoB事案の割合が高いとの事実認識に基づくものであり,そのような特徴は,調停が国際的なものかどうかではなく,取り扱われる紛争が企業間の紛争かどうかに起因するものと考えられ,国内のBtoB事案であれば類型的に弊害が小さいものと考えることが妥当ではないかとの指摘や,BtoC事案,CtoC事案における弊害について比較すると,国内調停と国際調停で実質的な差異があるとは考え難いとの指摘がされ,かえって複数の委員からは,弁護士法や認証ADR制度において一定の法的担保がされている国内調停の方が弊害が少ないという見方もあり得るとの意見も出されました。   17ページの5では,執行力を付与する条件等についての検討結果が示されています。検討会では,当部会での調査審議の状況を踏まえ,(1)①の和解合意の当事者が当該和解合意に基づいて民事執行することができる旨の合意をした場合に限ること,②の裁判所の執行決定等による事後的な審査を要件とすることのほか,どのような要件を設けることが適当かについても議論が行われましたが,ADR機関が執行力を付与するかどうかを選択できるようにすることも一考に値するのではないかとの指摘がされているところです。   さらに,18ページのウでは,執行力付与の対象となる和解合意の範囲について,国際性を有する調停による和解合意のみを適用対象とすべきか,国際性を有する和解合意に限定せず,国内事案も適用対象とすべきかという,いわゆる甲案,乙案の議論についての検討結果が示されています。検討会では,甲案よりも乙案の方が適切ではないかとの意見が多数を占めたところでございます。特に甲案については,国内調停においても執行力の付与に対するニーズが高く,弊害の面においては国内調停と国際調停で有意な差が認められないことからすると,国際調停に限るものとする立法事実の有無については,なお慎重な検討が必要であるとの指摘がされているほか,殊更に国内調停にだけ執行力を付与しないことにより,国内外に我が国のADRが適正を欠く危ないものであるとする誤ったメッセージを発信することになりかねないことが懸念されるなどの指摘がされました。また,乙案については,乙1案,乙2案のいずれの案も一定の合理性を有する案であり,いずれの規律を採用することが妥当であるかについては当部会での調査審議に委ねることとしたいとのことで意見の一致を見ました。   また,6では執行力付与の適用除外とすることが考えられる紛争の範囲についての検討結果が示されています。まず,消費者と事業者との間の契約に関する民事上の紛争につきましては,国内調停事案においては,消費者の手続的保護を確実なものとする規律を設け,執行力の付与に対するニーズの充足と弊害の懸念の払拭を実質的に両立する方法を模索すべきではないかとのことで意見の一致を見ております。次に,個別労働関係紛争については,適用除外とすることについての強い反論は見られませんでした。また,人事に関する紛争,その他家庭に関する紛争につきましては,家事紛争は,支払が長期となりがちな養育費や登記手続を要する遺産分割といった分野を中心に,執行力を付与するニーズが特に高い類型と認められる一方で,子の福祉が害されるおそれなどの独自の弊害も認められる類型であることから,一律に適用除外とすることが妥当であるかどうかについては当部会における調査審議に委ねることとしたいとのことで意見の一致を見たところでございます。   簡単ではございますが,私からの説明,報告は以上となります。   なお,この検討会の座長でございます垣内幹事が本日出席しておりますので,もし補足がございましたらお願いしたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,垣内幹事から補足がございますでしょうか。 ○垣内幹事 垣内でございます。お時間を頂戴しまして恐縮です。   内容につきましては今,渡邊関係官の方から御説明,御紹介いただいたとおりですけれども,一言だけ付け加えさせていただきますと,この検討会におきましては,国内のADR関係者へのヒアリング,あるいはアンケートに基づきまして,執行力付与をめぐる選択肢をより充実したものとするということについての期待が国内の文脈においても幅広く見られたということを反映しまして,また,制度としてもそのような選択肢が十分に検討に値するのではないかという方向での取りまとめとなったものと認識をしております。時間的には比較的制約もある中で,委員の先生方,この部会の委員,幹事をお務めの先生方も複数おられますけれども,大変御熱心に御議論を頂きまして取りまとめていただいたものですので,今後の当部会における検討の参考に供していただけましたら大変幸いに存じます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま御説明いただいた資料につきまして,パブリックコメントの結果や,あるいは参考資料のODR推進検討会の御検討の内容等も踏まえまして,委員,幹事の皆様から幅広く御意見をいただきたいと思います。   部会資料では,執行力を付与する対象となる和解合意の範囲に関する論点,甲案,乙1案,乙2案という,その論点と,国際性の規律の内容に関する論点,二つ取り上げられておりますけれども,後者の論点につきましては対象となる和解合意の範囲を前提にしたものになるとも考えられますので,まずはこの対象範囲,甲案,乙1案,乙2案,この問題について皆さんの御意見を頂ければと,もちろん御質問でも結構ですけれども,頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○古田委員 古田です。聞こえておりますでしょうか。   今回問題になっている甲案か乙1案か乙2案かということですけれども,以前にも議論したとおり,要するに新しい何か制度を立法で設けようというときには,一つは既存の我が国の法制度との関係で,新しい制度が理論的に正当化できるのかという問題があり,それは今回の部会資料2ページの1に書いてある執行力を付与することの正当化根拠という問題であり,前回の部会でも議論をしましたが,国際であろうが国内であろうが,当事者の意思ということで正当化できるという理解だったと思います。   その上で,立法に際しては,新しい制度を設けることの必要性や便益と弊害とを比較して,実際上の問題として,新たな制度を設けることが適切かどうかというのを検討しなければいけません。それが今日の議論かと思います。調停による和解合意に執行力を付与することの必要性については,現行法制下の代替手段,例えば執行証書を作成するとか即決和解を使うといった方法の使いやすさとの関係で従前から議論がされてきました。そして,とりわけ国際的な案件では,執行証書ですとか即決和解を使うというのは定型的に非常に不便であるのに対して,国内的な案件であれば執行証書とか即決和解を使うハードルはそれほど高くないので,両者には違いがあるという議論だったと思います。   今回の部会資料では,そういう必要性の違いだけで甲案が正当化されるのかということが書いてありますけれども,ここはやはり必要性と弊害の比較対象の問題ですから,必要性の違いだけで比べるということではなくて,その弊害の違いも考慮して判断しなければいけないのではないかと思います。調停和解に執行力を付与することの弊害については,今御紹介いただいたODR研究会の資料にもあるとおり,企業間同士のBtoBの紛争であるのか,BtoCの紛争であるのか,あるいはCtoCの紛争であるのかによっても定型的に違いがあるといえると思います。また,今まで従前議論されてきたように,国際的な案件であれば企業間紛争が中心であって,双方に弁護士が付いていることが一般に想定されるのだけれども,国内調停は多様な案件があって,例えば消費者関係の案件などもあり,国際案件とはやはり定型的に違うという観点もあります。今回の甲案,乙案は,BtoBかBtoCかCtoCかという切り口ではなくて,国際か国内かという切り口で規律を検討しようとされており,それはそれで一つの合理的な切り口なのかなと思います。   パブリックコメントの結果を拝見しても,甲案について,国際的な調停について執行力を付与すること自体が駄目だという意見は余り見られないと理解しています。今回の資料で甲案に反対と整理されている意見も,要するに,乙案を採用しない理由はないから甲案では駄目だとおっしゃっているので,国際的な調停に執行力を付与すること自体に反対されているわけではありません。そういう意味では,甲案,すなわち国際的な調停和解に執行力を与えるという立法課題は,皆さん共通の認識だと思いますので,それは早期に実現する必要があるのだろうと思っています。   それを前提に,今回の立法で執行力付与の対象を国内調停にどこまで広げるかということなのですけれども,これもパブリックコメントの結果を見ますと,やはり乙1案というのは懸念の声が多いようです。特に最高裁のコメントで,裁判所のスクリーニング機能に限界があるというようなことをおっしゃっています。そうすると,乙1案を採った上で,執行拒絶事由のところの判断で個別案件でチェックすることによって弊害が防止できるので問題がないということは,少し言いにくくなっているのかなと思っており,個人的には,今後は乙2案を基本として,あとは認証ADRのほかにどういうものを加えていくのかという方向性の議論になっていくのではないかと思っております。   差し当たり,以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○高杉委員 仲裁振興のために仲裁を補完する調停についても整備する必要があるとの前提に立てば,仲裁法と平仄・方向性を合わせるというのも合理的な考えではないかと思っております。仲裁法を見ますと,国内仲裁と国際仲裁を区別せず仲裁判断に執行力を付与しておりますし,仲裁判断の執行拒否という形で事後的な規制を行っている,こういう理解ができるかと思います。調停につきましても,和解合意に執行力を認めるかどうかという点におきまして,理論的には,国内調停・国際調停で区別する理由はないというのが,既に今回の資料にも書かれておりますし,事後的な規制の点についても,仲裁判断と同様の方法で調停和解合意も事後的規制を行うことで,特に大きな問題が生ずるのだろうかと思っております。   確かに調停につきましては仲裁と違って,様々な様式があるとの主張もございますが,仲裁についても,仲裁法が直接に規制しているのは仲裁地が日本国内にある国内仲裁手続だけで,外国を仲裁地とする仲裁手続については基本的に事前規制がないわけです。事後的規制しかないということです。もちろん日本の場合には弁護士法72条があるので,国内紛争を対象として国内で行われた調停につきましては一定の規制が考えられるかもしれませんが,それも日本の公序を理由とする調停和解合意の執行拒否事由として,例えば国内紛争を対象として国内において行われた調停についてはADR認証団体によるものを除き執行しないとか,こういう執行拒否事由を明確に定めていれば,最高裁判所の御意見等で表明されている懸念についても解消できるのではないか。一律に執行拒否事由ということが分かっておりますので,様々な弊害のある調停和解合意が成立することも少なくなるのではないかと考えます。 ○山本部会長 ありがとうございました。ということは,今の高杉委員の御意見は,方向として乙案ということになるのでしょうか。 ○高杉委員 はい。入口は乙1案で構わないのではないかと考えます。仲裁法とも平仄が合いますし,拒否事由のところで明確に規制しておれば,考えられる弊害に対処できるのではないかと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございます。よく分かりました。 ○手塚委員 手塚です。聞こえますでしょうか。   今回のパブコメの概要を拝見して,私が一番なるほどと感じたことは,利用者からのニーズに対する声が非常に鮮明に出ていたということです。それで,パブコメの概要資料の2ページのところでいいますと,例えば経団連からは,国際調停で和解合意に執行力を付与する手段に乏しいという実情があって,企業間紛争では執行力付与ができない手段の利用が難しいので,スピード感を持って国際水準に見合った法制度への対応をしてほしいという御意見がございますし,その下のJILA,企業内弁護士の団体だと思いますけれども,ここでも,シンガポール条約の加盟国が増加していった場合に,日本がそれと同様の国際調停和解合意に執行力を付与する制度を持たないと,日本企業を相手とする紛争で,時間も費用も掛かる裁判ないし仲裁によらずに調停で解決するという今注目されている紛争解決方法について,相手方からは不公平な状況になってしまうので,利用に応じてもらえないという実害が出てくるから,それを解消してもらいたいということが出ておりますし,それから,次の次ぐらいですかね,適用範囲に関するところで,5ページの下の方だと思いますけれども,経営法友会からは,国際商事紛争解決方法の選択肢に限りがあるという現状の中で,国際調停に関してスピード感を持って法整備を進める必要があるという御意見で,この国際調停に係る法整備を迅速に行う障害にならないのであれば,乙1や乙2案を採用することも考えられるとおっしゃっています。   これは,実は私の所属母体であるところのJAA,日本仲裁人協会の意見も同様でありまして,国際調停においてシンガポール条約の加入というのでしょうか,それを急ぐべきだという観点から,国内についての合意ができないことで,国際調停についての和解合意についての執行力付与,これが置き去りになってしまうというか,早期対応ができないという事態は避けるべきということを申し上げております。   以上のような利用者側の意見というのでしょうか,ADR団体の方で執行力付与することができれば安く簡便にできるから便利だと,そういうニーズがあることを私は否定しませんけれども,利用者が今,現に国際商事紛争において使える手段が限られている中で,是非これを早く入れてほしいと,そういうニーズが明確に出ているということについては,やはり法制整備をする上では重視すべきだろうと思います。   今回のパブコメを拝見していると,私が懸念しているのは,国内の調停和解合意について,果たしてどの範囲で執行力を付与するかというのは結構いろいろな意見があるなというのが私の実感でございまして,そこが国際の方の法制化,あるいはシンガポール条約への加盟に遅れを生じさせないような形でうまく早期にまとまるのであれば,私はそちらの方に一切執行力付与は不要だと申しているわけではないのですが,実情からいうと,なかなかすぐにまとまらないおそれがあるのではないかということから,そうであれば国際の方だけでも早くやってほしいなと思います。   それで,あと1点だけ申し上げますと,先ほどのODR推進検討会の中で,国際と国内,基本的に違わないという認識が示されておりましたけれども,私はそこは,前から申し上げているように,おかしいと思っていて,国際的なものというのは執行に関するルールは日本で全部決められないのですね,相手のある話でありますから,そういう違う制度の国の当事者と日本の企業とでどうかという話でありますので,そこが決定的に国内同士の場合とは異なるので,単に需要だとか弊害だというところがそれほど大きく違わないというよりは,シンガポール条約というものがなぜ議論されて,こういうふうに出てきたのかということを考えれば,そういう法制度の違いがある中で,シンガポール条約の枠組みの中で国際調停という形での紛争解決を実効性のあるものにしていこうという,この大きな流れがあるわけですから,そういう問題は国内についてはないというところは,私は決定的に違うと思っています。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○河井委員 先ほど高杉委員から,仲裁法を題材として調停を考えれば,むしろ国際と国内を区別しない乙1案をベースに考えるのも良いのではないかと,そういう御指摘かと思いましたが,私,国内ADRをかなりやっている者として感じるのは,国際事件,すなわち国際訴訟ないしは国際仲裁,国際調停の場合は,多くの場合,双方に代理人が付いて争うという形態がかなり多いですが,国内のADRの場合,例えば弁護士会ADRにしても原発ADRにしても,一方当事者,特に企業側に代理人が付くことはあっても,双方に代理人が付いて徹底的に争うというケースはそれほど多くなくて,私が経験した範囲で双方に代理人が付いていることが多いのは,医療ADRの場合は双方に付くことが多いですけれども,そうでない場合は,片方は代理人が付いているけれども片方が付いていない,ないしは両方とも付いていない場合もあると,そういうパターンがありまして,要は国内ADRの事件というのは非常に幅がありますし,代理人の関与であるとか手続もいろいろ機関によって異なるところもあるので,乙1案を原則として考えるということには正直,違和感を感じております。国内ADRを入れるのであれば,やはり今まで国内のADRの実績を作ってきた弁護士会のADRプラスADR法制定以降行ってきた認証ADR,この二つをベースとして考えていくべきではないかと私は考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内でございます。どうもありがとうございます。執行力をどのような合意あるいは文書に付与していくかということに関しての一般的な考え方については,前回の会議でもこの部会で議論があったところですし,今日の資料ですと2ページの辺りに記載されていること,そういった理解で基本的にはよろしいのだろうと考えております。資料の2ページですと1から2(1)にかけて記載されているところかと思いますけれども,そういう観点から見まして,私自身は基本的には執行力の対象となり得る和解合意について,国際性がないものが当然に排除される,あるいは国際性のあるものだけに適格性が認められるということに理論上,当然になるというものではないだろうと。言い方を変えて申しますと,国内のADRでの和解合意についても執行力の付与の対象とすること,執行力の付与の対象といいますか,ここで想定している執行決定の手続の対象とするということは理論的にはあり得る選択肢なのだろうと基本的に考えております。   そうしますと,その上で,具体的にどの範囲の文書に執行力を付与していくのかというのは,これは先ほど古田委員からも御発言がありましたし,資料も基本的にそういう理解であろうと思われますけれども,一言で言えば,ある種の政策的な判断ということになるのだと思われますが,必要性についての考慮,また,その適正性をどういった形で確保できるのかという意味で,弊害に関する考慮を総合して決まっていくという問題なのだろうと,立法政策上の判断の余地と申しますか,幅というものがあり得る領域というものが存在するのだろうと考えております。   そうした観点から見まして,国際的な商事調停ということで申しますと,これは繰り返し御指摘がありますように,一方で既存の日本国内の執行力の取得のための手段が使いづらいという意味で,ニーズが非常に大きいということもありますし,他方,国際商事調停における当事者あるいは手続の実情というものが類型的に国内のものと違いがあるのではないか,当事者が企業間であるということが主として想定し得る状況,実情にあるということや,手続において双方に弁護士が付いているということを類型的に前提とし得る,そういう実情にあるといったようなことがあり,また他方で,これはニーズに関係するのかもしれませんけれども,正にシンガポール条約という形で世界的に共通の規律へと進みつつあるといった国際的な潮流があり,そこに参加していくことについて,日本の企業等の関係者が国際的な場で活動していくに当たっても利点が大きいと考えられているというようなこともあるということですので,そういう観点から見ますと,国際商事調停に関してはシンガポール条約に基本的には準拠した形の規律で,執行力付与を可能にしていくということに合理性があるということなのだろうと思われます。   他方で,国内につきましては,ニーズという面では国際におけるほど表面に現れていないのではないかという御指摘があるところですけれども,しかし一定のニーズがあるのではないかという主張もされているというところであり,少なくとも国内について一律に否定する必要があるということではないのではないか,ニーズが全く皆無であるとはいえないのではないかと考えております。その上で,国内の和解合意についての執行力付与に当たっての適正性の確保という観点から申しますと,これも既に御指摘のあるパブリックコメントでの最高裁の意見などもありますけれども,全ての多様なADRに執行決定の手続のみで適正性を審査するということで,新たな制度を導入するに当たって適正性の確保について十分に合意,納得が得られるのかというと,そこはなかなか難しいところがあるのかなと現時点では考えております。   そういたしますと,結論としては乙2案をベースに考えていってはどうかということですけれども,認証のADR手続については,これも既に申し上げてきたことの繰り返しになりますけれども,弁護士の助言措置でありますとか,あるいは標準的な手続の進行について定まっており,手続記録等もきちんと保持することが義務付けられているといったような一定の枠組みが設けられておりますので,それを前提とすれば,執行決定の手続を経ることによって十分に適正な形での運用が期待できるのではないか,また,弁護士会等の運営しているADRも,実情を見れば同様ないし類似の規定等を設けた上で運用がされているということがあるように思われますので,これは法制上の問題ということがあるかもしれませんけれども,適切な形で範囲を切り出すことができるということであれば,弁護士会ADR等についても対象として,認証ADRと同様の扱いをしていくということは,十分に選択肢として考慮に値するのではないかと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○春田委員 ありがとうございます。連合としましても甲案,乙1案,乙2案の中では,やはり乙2案を支持したいと思っております。執行力を付与し得る対象となる和解合意の範囲ということで当然,国際性に関しては,シンガポール条約に準拠を踏まえて,ということもあろうかと思いますし,それに加えて国内におきましては,認証ADRで成立した和解合意も適用対象とする案を支持したいと思っています。ただ,この認証ADRだけか,というところが議論になるところです。私も実は,いろいろ調べました。素人目線で恐縮ですが認証ADRと,それから実績から鑑みると弁護士会ADRも加えて検討していくということもあるのではないかと思っています。   そもそも執行力を付与する論理的な根拠で線を引くというのは,様々な議論を聞いていても非常に難しいと思っていました。そこに,政策的判断ということで最終的には線を引いていくということになろうかと思います。最終的に,すべからく認めていくということを将来,頭に置いた時に,第1段階のステップとして,どこまでの範囲を検討していくのか,ということだと思います。弁護士会ADRを加えた時に,法制上の問題点が,いろいろ出てくるというような話もあります。しかし,それを克服していくことも少し検討しながら,やはり国民から見た利用対象と利用率を上げていくことに,いかにつなげていくのか,ということも重要かと思います。認証ADRに限らず弁護士会ADRも加えて,検討していくのはどうかというのが私どもの考えです。素人目線で大変恐縮ですけれども,検討をお願いできれば,と思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○今津幹事 東北大の今津でございます。私も今既に出ていた御意見と方向性としては異なるところはありませんで,国際的な性質を有するものと,それから国内的なもの,いずれについても執行力を認める方向でよいのかなという気がしております。国際的なものについては,確かに国内で別途執行力付与の手続をとるのが非常に大変だという御指摘が既にあったところだと思うので,非常にその点は理解できるなと思っていたのですが,正直,国内の方は代替手段で行けるのかなという印象も当初持っておりました。   ただ,今回頂いた参考資料を拝見しまして,やはり国内の方も,今回御提案のあるような形での執行力付与を認めるニーズがあるのかなという印象を持っているところです。特に,オンラインでの手続を想定したような御意見とか,あるいは合意を形成する段階で,現在既にある,例えば執行証書なんかの手続をとるということになると,不履行があるかどうかよく分からない段階で執行力付与の手続をとると,これが非常に負担であるという御指摘はもっともだなという印象を受けました。合意形成の段階では,特に調停の場合だと,任意の履行を期待することもかなり多いと思いますので,その段階で執行証書とか即決和解などをするというのは,確かにハードルが高いなと。それよりは,執行に関する合意を付けた形での調停を成立させるということの方がハードルとしては当然低いだろうと思いますし,言わばそういう形での,完全な債務名義ではないにせよ,半人前といいますか,そういった形での文書を取っておいて,最終的に不履行があった段階で執行判決を得て,完全な形での債務名義を取るという設計の方が,確かに利用者のニーズには合うのだろうというような印象を持ったところであります。   仮にそういう形での執行力付与を認める場合,懸念するというか,弊害が生じないようにする方策として,執行力が付与されるということについて利用者にきちんと説明をするということをADR機関にはお願いしたいと思っているところです。執行力がこの合意によって発生するということの理解がうまくいっていないと,利用者にとってのデメリットという形で出てくるおそれがあると思いますので,これは執行判決の作り方とも関連するかもしれないのですが,この合意に基づいて執行されるのだという,そこについての実体的な権利関係に関する合意と,プラスアルファで執行に関する合意もするのだというところをきちんと明確に,それについてのチェックをするのだということが明確になるような形での制度設計をしていただくということを注意していただければという意見を持っているところです。 ○山本部会長 ありがとうございます。御趣旨として,乙案の方向性だと理解をさせていただきましたけれども,乙1案か乙2案かというのは,何らかの御意見はございますでしょうか。 ○今津幹事 明確な基準としては,認証を取った,取らないということが確かに分かりやすいと思うのですが,現在行われている実態として,既に御指摘のあった弁護士会ADRなんかは,実績等もありますし,弁護士という属性で事案に当たっているということであれば,実質としても,認証を取っていなくても,きちんとしているという言い方はできるかと思うので,基準の作り方は非常に難しいと思うのですが,必ずしも認証を取ったか取らないかというところにはこだわらなくていいのかなというのが個人的な感想です。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○山田委員 ありがとうございます。山田です。私も,今までの先生方の御意見,あるいはこれまで述べてきました意見と余り変わっておりませんで,結論としては乙2案,仕組み方はなかなか難しいですけれども,乙2案で現時点では相当ではないかと考えております。もちろん将来,例えばODRが拡大をするということになりますと,国際,国内を分けるということ自体が非常に難しくなるわけで,その際においては,すなわち将来的には,現在言われている中では乙1のような規範にしていくということは大いに考えられるところで,それはひょっとすると近い将来なのかもしれないですけれども,現状においてはなお区別をするということは生産的ではないか,あるいは実情に即しているのではないかと考えております。   国際紛争につきましては事実上,この商事に限るということになるのだと思いますけれども,そういたしますと,これまで挙がってまいりましたように,事実として双方代理人が付くということは多いだろうと思いますけれども,規範論としても,商事紛争であれば,当事者が権利関係の処分をどのような手続で,ADRにも様々あり得るし,調停人の関与の仕方も様々あり得るわけですけれども,どのような方法でそれを処分していくのかということについての判断に一種の自己責任を観念することができるのではないかと。例えば,仮に代理が付いていなくても,和解段階でしかるべき人に相談をするといったことに伴うリスクを正当化できるのではないかと思われます。   これに対して,国内調停,少なくとも日本においては,その対象たる当事者が様々であるということは今まで御指摘のとおりであります。聞くところでは,最近ビジネス関係の代理人の間でADRに対する評価が上がっているとも聞きますけれども,しかしなお多様であるということを前提とすべきであって,そうだとすれば,言わば安全側に立った場合には,現在ADR法の認証制度が設けられ,あるいはこれが法律事務とされて弁護士法の適用があるという日本の法制自体は一定の合理性がなおあるもの,予防的なものとしてなお存続するものかなと思っております。そこでは,ADR認証基準や,あるいは弁護士の関与により手続の一定の公正さであるとか,あるいは反公序等を含む合意を基本的には予防する,また,合意の真正を確保するといったことが,個別のことはともかくとして,制度的な保障として一定認められるということを前提として,こういった手続によった和解には一定の強い効力を与えてもよいということになるのではないかと考えております。   しかし,このように考えても,国際調停における調停人と日本における調停人とは資格が異なるということの説明はなかなかしにくいところはあるのですけれども,先ほど申しましたような一定,安全側に立つというのが少なくとも現在の日本のポリシーであるということと,それから,先ほど手塚委員からもお話がありましたけれども,当事者の立場に立った際には,日本国内では一般法として弁護士法等の規律があり,取引慣行や交渉等の実務もそれに沿う形で展開しているもの,あるいはコストを掛けているものと思われますので,執行力付与を念頭においたADRも本来,そういう交渉とかふだんの契約慣行の延長線上にあるものとしてとらえることが当事者にとって違和感が少ないのではないか,そういう点で,乙2という方向性を今のところは相当ではないかと考える次第です。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○吉野委員 吉野です。   これまでに出た意見でほぼ尽きているとは思うのですが,私としては乙案の方を支持するということはこれまでと変わりないところです。必要性,緊急性についていろいろ意見があったわけですが,必要性については,国際事案と国内事案とで変わりはないという意見が多かった,私はそれに無論同意するわけでありますが,既にこれまで出ておりますように,BtoBの事案だけではなくて,国内事案でBtoCとかCtoC,それから,これまでにも紹介させていただきましたけれども,個人が申立人となって企業を相手にするという,言わばCtoBとでもいいますか,そのような事案が意外に多かったわけです。そうすると,やはりこういう場合にも執行力を認めるという必要性はかなり高いと考えられます。   それから,緊急性については,確かに国際性の事案についてはシンガポール条約との関係があるわけですけれども,私ども民間ADRに関わる者としては,この執行力については10年以上前から期待をしており,数年前にもいろいろな御議論があり,再度棚上げとなったという経過から言いますと,緊急性といいますか,私どもとしての期待は非常に大きい,今回の動きについて非常に期待しているということは言えようかと思います。   乙案の中でいずれかという点について言いますと,私個人としては,最初に申し上げましたけれども,乙1案でも構わないと思うのですが,これについては,ある程度予想しておりましたけれども,裁判所から乙1案に反対という御意見が出されております。これは,要するに執行拒否事由についての定めがやはり問題だろうと,曖昧ではないかと,こういうところに起因するところが大きいのではないかと思われます。そういたしますと,現段階において乙1案ではなく,立法の仕方としては難しいのかもしれませんが,乙2案で行くべきだろうと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○高杉委員 ありがとうございます。度々申し訳ありません。先ほど私の意見は乙1案であると申し上げましたけれども,結論的に見ると乙2案ということになります。と申しますのは,最終的に執行力を付与する和解合意の範囲,特に,今,議論しているのは,国際だけでなく国内を対象とするか,仮に国内を対象とした場合にどの範囲まで含むかという点ですが,この点については,「入口」としての和解合意の範囲だけでなく,消費者紛争や家事紛争を入れるか否か,そして,その執行拒否事由をどのように定めるかによっても変わってくるかと思います。そのような問題も全て総合してみると,実はある程度の意見の一致があるのかもしれないと思っております。ですので,今の論点としては国際と国内,そして国内の範囲をどうするかについて議論しておりますけれども,可能であれば総合的に議論するというのも生産的かも分からないということで,場合によってはこの国際と国内,国内の範囲をどうするかという点を,消費者紛争・家事紛争とか,適用除外の議論をした後に議論するのも一案ではないかと思う次第でございます。 ○山本部会長 ありがとうございます。高杉委員の御意見,誠にごもっともなのですが,全体が総合的に関連しているというのは全く御指摘のとおりなのですけれども,まずどこかで方向性を出して,その方向性を前提にするとこちらはこうなる,こちらはこうなるという形で議論をしないと,なかなか最終的な方向性が見えてこない部分もありますので,本日はこういう形で御議論いただいております。ただし,もちろん,消費者,家事等の適用範囲等の問題も,次回以降に御議論を頂いて,その全体が固まった後でもう一度,この甲案,乙案という問題について再度御確認をいただく機会というのは設けたいと思っていますので,恐縮ですが,本日はこういう形で議論をさせていただいているという点については御理解をいただければと思います。 ○高杉委員 承知しました。ありがとうございます。 ○有田委員 有田です。ありがとうございます。私はこれまでの議論をいろいろ振り返ってみまして,乙2案を支持したいと思っております。そして,適用除外というのも何回目かの検討会でも議論しましたし,また,前回のところで民事のIT化に関わるところでもいろいろと,消費者と事業者の間の契約に関する民事上の紛争について議論がかなりされました。そういうものはこれまでも,この場でも議論したと思います。消費者と事業者の間の契約についてはそれほど,出ていたわけではなかったですが。ですので,乙2案が多ければ,その中で具体的にこの適用除外について考えていく方がよろしいかと考えておりました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○髙畑委員 ありがとうございます。聞こえていますでしょうか。   私どもも,先ほど手塚先生から御紹介がありましたように,日本組織内弁護士協会としてパブコメに意見を提出させていただいております。メンバーで主に国際仲裁研究会と資源エネルギー法研究会の方で議論させていただいたのですけれども,やはり皆さんどちらかというと,いわゆる国際投資にまつわる紛争については非常に経験があるのですけれども,国内の紛争について余り知見がないものですから,議論の中心はどうしても,甲案はもちろんそうなのですけれども,甲案をなるべく早くやってほしいというところに来ております。その場合にも出ていましたのは,やはり仲裁の判断の執行に関するニューヨーク条約なども,結局日本が条約にサインしたのが非常に迅速だったし,あるいはエネルギー憲章条約ですね,それも,多分日本で具体的にそれをどういうふうに使うかというか,実際に,特に投資協定仲裁なんかがイメージできない時代だったにもかかわらず,非常に迅速に署名国となっているところなどの御指摘もありましたし,やはり今後,ですから,シンガポール条約についても,ニューヨーク条約と同様に,恐らく150,160か国がサイナーとなるような条約になることが見込まれるのであれば,やはり日本としてもなるべく早くその署名国となっていただきたいということが一つと,そのために必要な国内の法整備,急いでいただきたいということにむしろ力点があったというのが議論の中心でございます。   では乙案についてどう思うかという議論も実はしましたけれども,先ほど申し上げたとおり,余り実際に困った事例がないので,例えば,国内の調停を行って,合意についてはいわゆる即決和解であるとか,そのほかの日本の裁判所での適切な手続をもって執行されている例などもございましたので,今のところさほど困っていない,少なくともいわゆる商事ですね,企業を回るところというか,BtoBのところがほとんどだと思いますけれども,という,実際にそこまでの必要性があるかどうかが正直言って分からないというところで,恐らく仲裁人協会さんと同じような感覚を持っているのかなと思いました。つまり,国内について,もし甲案について,乙案についてどう考えるかというよりも,手続が早く進むというか,国内法との関係で,国内の調停について上手に整理が付く,早く付く,例えば,先ほどの執行拒否事由であるとか,そういった裁判所側の事務手続というか,判断基準の策定などにさほど時間を要しないということであれば,殊更国内の案件について除外するという強い意見はないというのが現状でした。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井でございます。既に皆さん,御意見が出ているので,余り付け加えて言うことはないのですが,日本弁護士連合会もパブコメに対してコメントを出しておりまして,今日の論点の関係では乙2案に賛成です。ただし,認証ADRだけではなく,これまでも何人かの方から御発言,御提案があったように,弁護士が手続実施者となっている,あるいは弁護士会が仲裁する,その辺りは今後,法制上十分検討しなければいけませんが,認証ADRに限らず,弁護士が関与しているものについては,あるいはその一部については,執行力付与の対象としてよいのではないかという意見でございます。もう一つただし書が付いておりまして,これも何人かの方から御意見があったように,国際以外についての法制化にいろいろな障害がある,あるいは時間が掛かるということであれば,シンガポール条約の対象とする国際的な調停について優先して立法化することとすべきであるという意見を日弁連としては出しておりますので,改めてお伝えしておきたいと思います。   その上で難しいのが,乙1案を採ればその問題はないのですが,甲案及び乙2案を採る場合には,冒頭,事務局の方から問題提起があったように,国際と国内で取扱いに差を設けるということになりますよね,法制上。これをどう説明するのかという結構難しい問題があります。その関係で,少し皆さんの御意見を聞いていて思ったというか,コメントしておきたいのが,渡邊関係官から御紹介のあったODR推進検討会の取りまとめです。私自身も垣内先生,それから山田先生と共にこの検討会に参加していたわけで,この取りまとめ自体には異論があるわけではなく,また,検討会での議論をヒアリング等も含めて正確に反映していただいていると思います。   ただ,ニーズのところですね,この点の言い方が,皆さんそれぞれニュアンスが結構違っていて,私のこの検討会の取りまとめの受け止め方は,確かに国内についてもニーズは,垣内先生は全くないわけではないと引き下がった言い方をされましたが,一定程度ある,相当あるということは言わざるを得ないと思います。ただ,国際と比べてどうかということになりますと,今日の部会資料8の3ページの(3)の上辺りですかね,国際性の有無により執行力の有無に差を設けるほどの有意な差を見いだすことは困難である,それから,先ほど渡邊関係官は,若干の相違がある,あるいは若干の相違しかないとおっしゃったのか,そこは私は,結構有意な差はやはりあるのではないかと思っております。これはODR検討会でも申し上げたことだったかもしれませんが,やはりこれまでも何人かの方から指摘があり,また,今日の部会資料8の3ページの上の方ですかね「もっとも」で始まる段落の上の方に書かれていることからすると,やはり広い意味での必要性は,国際についての方が有意に高いのではないかと思っております。その辺りから,国内の調停についての法制化に時間が掛かるようであれば,国際を優先するということもあり得べき立法の選択肢であるということが出てくるわけですし,それから,説明が難しいと申し上げた,国際以外のものについて,認証あるいは認証プラスアルファという国際にはない要件を課していくことになりますが,ここもやはり必要性,ニーズのところは国際性のある案件は非常に高い,シンガポール条約との関係でも,シンガポール条約をコンプライアントしなければいけませんので,非常に高いということから,差異をある程度説明することはできるのではないかと思っております。ただ,その差異が,国内については何も立法措置は必要ないというほどの差異ではないというのが私の意見でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   事務当局からもお話がありました,私も先ほど言及しましたが,できれば今日,ある程度全体の方向性みたいなものをお出しいただいて,次回以降,より具体的な検討ということを考えておりますので,できるだけ多くの委員,幹事の御意見を承りたいと思いますが。 ○高田委員 高田でございます。結論といたしましては,乙2案でよろしいかと私も存じます。その説明といいますか理由付けも,取り分け山田委員,垣内幹事のおっしゃられたことで尽きているのではないかと思います。   ただ,理屈と申しますか,理論的な面で申しますと,前回三木委員が御指摘いただいたことが非常に気に掛かっております。すなわち,これまでの債務名義におきましては,債務名義成立時点のみならず,調停,和解との関係で言えば,和解の成立の時点で当事者の真意に基づいているということを一応公的機関が公証してきたのではないか,一応事前のチェックがあったのではないかと,それがない調停和解について,裏から言いますと,単に執行拒否事由の審査だけで十分にその真意性の担保ができているかどうかということについて疑義が残るのではないかというのが,私が理解しました三木委員の御発言だったと思います。そうだとしますと,執行拒否事由の審査だけで十分かという一応のチェックをする必要があるのではないかと,理論的な確認をする必要があるのではないかというのが現時点における私の考えです。   その点で,国際調停につきましては,山田委員,垣内幹事もおっしゃられましたように,商事であり,かつ多くの場合代理人が付いているといった形での担保があるというのは一つの説明であろうかと思いますが,理論的に詰めていきますと,代理人が必要であるとか,様々な更なる条件というものも考えられるのかもしれません。ただ,そのことにつきましては,繰り返しご指摘いただいておりますように,国際調停は国内調停で利用できる即決和解,公正証書というものの利用が困難である,あるいはそうした隘路が存在するゆえに国際調停が利用されていないという現状に対応する必要が現時点で存在するといったことで正当化されるのかどうかということを考えることになるのではないかと思います。   他方,国内調停につきましては,同じ問題がやはり残るわけでありまして,執行拒否事由の審査だけで十分かという観点からの確認というものが必要ではないか,公証人というものがどの程度の確認をしているかは別といたしまして,理論的に見ますと,当事者の真意に基づいて和解が成立しているということも確認しているというのが私の理解でありますから,そうした当事者の真意に基づいて和解が成立したかということをチェックしなくても,執行拒否事由だけを審査することで十分だということが担保できる調停に限定するということが一つの選択肢と考えられます。それが乙2案が目指している方向ではないかと現時点で私は理解しております。その意味において,乙2案に賛成いたしたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 本日のテーマである国際に限るか国内にも広げるかということと,国内にした場合に乙1か乙2かということは,いずれも理論的な考察で決着が付くことではなくて,結局は,すべて政策的な判断にかかる問題だろうと思います。その前提として,少し怪しげなところはありますけれども,全ての前提として,国際であれ国内であれ,あるいは乙1であれ乙2であれ,最低限の理論的な正当性の保障はあるということを一応の前提として,そうであれば,あとは政策的にどこでどう線を引くかという問題であろう,私は,そういうふうに理解しております。   そういうことから考えますと,国際の方については,これまで言い尽くされておりますけれども,シンガポール条約の関係もあり,日本だけが船に乗り遅れるわけにはいかないので,政策的に,この部会でも争いはないと思いますけれども,少なくとも甲案は通す必要があります。それから,この後,次のテーマとして議論されることでしょうけれども,その内容もシンガポール条約と整合的というよりも,基本的には同じものにするということではないかと思います。   問題は,これにプラスアルファとして,国内の方をどうするかということです。これについては,先ほど高田委員から私の前回の発言を引用していただきましたが,国内については国際とは別枠で考えるとして,そうすると,現在の国内の債務名義と比較しますと,今回作ろうとしているものだけが,執行決定を経る前の段階,すなわち,債務名義の成立の段階において,そこに司法機関の関与がないということであり,現行法制と整合していないところがあるように思います。ただし,それは,やはり工夫で何とかする必要があるとすれば,この点につきましても,冒頭に言いましたように,政策的に何とか乗り越えるための筋道を考える必要があろうかと思います。そうすると,乙2案の認証ADRの場合は,今,問題にしているような意味で,債務名義の成立の段階で当事者の意思確認を司法機関が行うような仕組みになっているわけではないですけれども,ただ,認証機関は,今回の立法で,国内の調停の和解合意にも執行力を付与されるという制度ができた場合には,和解合意の成立の過程と最終段階において繰り返して意思確認をきちんとしておかなければ,最悪の場合には認証を取り消されるというプレッシャーの下に置かれることになります。これを,司法機関による意思確認に準ずるようなものとしてあえて捉えれば,認証機関に政策的に執行力の付与を認めるというのは,理論的にもぎりぎり許されるかなと,私は考えております。   そうすると,今度は,弁護士委員の方々から出されている,弁護士会が行う調停,それももちろん認証を得ていない弁護士会の調停について,認証機関と同様に考えることができるかという問題が問われることになります。私は,調停のクオリティーという点では,言うまでもないことですが,弁護士会の調停が認証機関と比べて劣るとは全く思っておりません。また,私は弁護士会の中の東弁や一弁などの,弁護士会の調停をリードしている有力な単位会が,あえて認証を取らないという立場を採っていることも,十分にその趣旨を理解し,大変高く尊重しております。したがって,そういう認証を得ていない弁護士会の調停を差別的に扱うということは,心情的には全くよしとしないところではあります。しかし,理屈で考え,ますと,あるいは法制的な裏付けということのみで考えますと,認証を得ていない弁護士会の調停には,先ほど言ったような認証を取り消されるというような国家の制度としての担保がないものですから,今回この制度を作るに当たって多くの方から意見が出ているように,国内の制度を作ることが国際の方の足を引っ張ってはいけないと,これは私もそのとおりだと思いますので,一定のスピード感を持ってやるというためには,弁護士会が運営主体になっているというだけで,あるいは弁護士が行っているというだけで, 執行力を与えるということはできないのではないかと思います。   ただ,仮に,国内では認証ADR機関にだけ執行力を与えるというような制度ができた場合には,それが,弁護士会のみならず,大げさに言えば国家の権力的な支配下に入ることを嫌って,あえて優秀なADR機関であるのに認証を取らないという判断をしているところに対して,不当なプレッシャーを掛けるといいますか,認証を取れという方向の圧力になるようなことがあってはならないと思います。もし,そういうおそれが生じるという御意見があちこちから出てくるのであれば,私は,先ほど申し上げた,認証機関にのみ執行力を与えるという案も理論的に正当化できないように感じております。 ○山本部会長 ありがとうございます。   1点,三木委員,あるいは先ほどの高田委員でも結構なのですが,お伺いしたいのは,現在の仲裁法における和解合意を内容とする決定ですね,これについては仲裁判断として扱われ,執行決定に基づいて強制執行ができるということになっておるわけですが,公的機関の真意性の認証という観点からして,この制度はどのように説明されるのか,もしその点について御意見があれば,少しお伺いしたいのですが。 ○三木委員 私から答えてよろしいでしょうか。   今の御質問の趣旨を正確に理解しているかどうか,少し自信がないのですが,趣旨が違っていれば,後で御指摘いただきたいと思います。現在,多くの仲裁と調停を両方扱っている機関において,まず仲裁で手続を進めていって,そして,仲裁手続の中で和解合意が成立するという場合が,1つあります。その場合は,最後の判断の部分が裁断的ではなくて和解に変わっただけであり,また,仲裁法自体がこれに仲裁判断としての効力を認めています。もう1つは,もともと調停で手続を進めていき,調停が成立した段階で,そこで両当事者から仲裁合意を取って,調停案を仲裁判断に変えるという実務があります。ご質問は,そのことでよろしいでしょうか。 ○山本部会長 必ずしもそうではありません。私の質問の趣旨は,むしろ三木委員が最初におっしゃったところで,そこでは公的機関が,仲裁人は公的機関ではないという理解を前提にすれば,公的機関でない者が意思を認定しているけれども執行力が認められているというところが,私にはやや疑問だったわけですが,三木委員は前回の,もしかすると,仲裁機関は一種の公的なものであるという。 ○三木委員 私が,前の会議で申し上げたのは,そもそも公的機関か私的機関かというのは目の付け所がおかしいのではないか,あるいは,それは日本だけの議論であろうということです。日本では,公か私かということを尊重しますけれども,UNCITRALの中で行われた議論の前提として,あるいは欧米各国の多くの国の共通認識として,司法機関というのは,公的機関もあれば私的機関もあり得る。もちろん,私的機関が国家の承認なしに司法機関になることはできませんけれども,仲裁法というのは,私的機関に国家が司法の役割を与えているものだということです。私が申し上げているのは,司法の関与が必要であるということですから,御質問になった,仲裁人が行う場合には,これは司法であるということでクリアしているのだろうと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。了解しました。仲裁人は司法機関,司法であるけれども,民間調停人は必ずしも司法ではないと,そういう仕分けといいますか。 ○三木委員 理論的にはそうなるのではないかということです。 ○山本部会長 ありがとうございます。私が余計なことを言って議論を混乱させたかもしれませんけれども。 ○小川委員 裁判所は,これまで国際調停でどのような調停が成立しているのかとか,国内のADRでどのような調停が成立しているのかということは,存じ上げていないので,どのような調停合意が持ち込まれてくるかということはよく分からないのです。調停合意に執行力が付与される場合に,実際に国際調停がたくさん持ち込まれてくるのか,国内調停の執行力が認められた場合に,どの程度持ち込まれてくるのかということもよく分からないのですけれども,国内調停の執行力が認められるとすると,国内調停の方が絶対数が多いのではないかと想像されるので,持ち込まれてくるものも多くなることが予想されます。   そうすると,裁判所にどの程度のスクリーニング機能が期待されているかということにもよるのだと思うのですけれども,当事者間で執行拒否事由について異なる主張がされた場合に,実際にどのような審理ができるのかというのは,やや分からないところがあるわけです。裁判所からパブリックコメントでも意見を出していますが,裁判所のスクリーニング機能は,執行拒否事由の有無に限られており,一定の限界があるということを御理解いただき,その上で,執行拒否事由の判断をどのようにするか――判断を厳しくするとADRの執行拒否が増えADRでの調停の合意についての信用性,信頼性が失われる危険性があるという御意見もあったかと思うのですけれども―,執行できるかどうかについての予測可能性をきちんと担保できるようなものにしていただかないと,裁判所としても,どのように判断をしていいのか分からないし,ADR機関としても,当然執行力を付与してもらえるものだと思ったら裁判所から拒否されたというようなことになって,信頼が失われかねないという話になります。国際調停についてはシンガポール条約との均衡上,執行拒否事由について変更を加えることは難しいとは理解していますが,国内調停について執行力を付与する場合には,シンガポール条約と同じ並びで本当にいいのか,更に予測可能性を担保するために,もう少し具体的な規定を設けた方がいいのかどうか,法制度の問題かもしれませんけれども,一緒に議論していただく必要があるのではないかと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。おおむね御意見は出尽くしたと理解してよろしいでしょうか。   それでは,私の理解した限りにおいては,委員,幹事の御意見の大勢としては乙2案を支持するという御意見が多かったように伺いました。ただ,もちろんこの乙案といいますか,要するに国際的なものと国内のものとが全く同列,同レベルなのかどうかということについてはいろいろな御意見があり,甲案の国際の部分を優先すべきであって,言い方は少しあれかもしれませんが,国内の方がそれを足を引っ張って議論が長引くとか,早期の実現が難しくなるのであれば,むしろ甲案で考えるべきであるという留保といいますか,そういうような御意見も複数あったように思います。ただ,そのような御意見も乙2案の方向で,この部会としてコンセンサスが得られていくということであれば,それには反対はされないという趣旨とお伺いをしました。   それから,乙2案については,理論的な問題,あるいは法制的な問題,あるいは最後に小川委員からも御指摘がありましたが,その執行拒絶事由との関係等,なお詰めていかなければならない問題があるということ,それから,高杉委員からも御指摘がありましたけれども,全体の,これから適用除外事由その他も含めて,全体を総合的に考えていかなければならないという御指摘も頂いたかと思います。その辺りは今後更に詰めていく必要があると思いますし,何よりも大きな問題は,認証ADRについては基本的には御異論はなかったように思いますが,それにプラスアルファとするのかどうか,プラスアルファとすれば,一体どういうものをプラスアルファとしていくのか,具体的には弁護士会のADR,あるいは弁護士が主宰者となるADRということかもしれませんが,そういうようなものを加えるべきという御意見が複数あったかと思いますけれども,ただ,理論的にはなかなか難しいのではないか,法制的には問題があるのではないかというような御意見もあったように伺いました。この辺りは今後,乙2案を具体化していくとすれば,かなり詰めて考えていかなければならない点かなとは思いました。   私が伺った全体的な方向性としては,そういうような感じだったのかなと思いますが,いかがでしょうか。更に追加で御意見がございますれば。 ○出井委員 出井です。ただいまの座長のおまとめでよいかと思います。1点だけ,乙2案の中身のことに関して,パブコメの意見を見ますと,乙2案,認証ADRに限るだけではなく,更に認証ADRにプラスアルファ,このプラスアルファというのは横出しではなくて加重ですね,加重の要件を課すべきであるという意見も一部にはあったように思いますが,それについては特に部会の方々は,横に広げることは,私も含めて何人かの方が賛成だったかと思いますが,縦に加重することについては,そういう方向での検討が必須であるとまで出てこなかったように思います。小川委員から,執行拒否事由についてはシンガポール条約並びではなく,もう少し別の規律もあってよいのではないかという問題提起はございましたが,認証プラスアルファのところについては,先ほど申し上げたように加重するという意見はないという理解でよろしいでしょうか。これから弁護士会で議論するときにそこが問題になると思いますので,確認しておきたいと思います。 ○山本部会長 いかがでしょうか。三木委員,その点についての御意見でしょうか。 ○三木委員 はい。先ほど申し上げたことと関係するかと思います。先ほどの確認ですけれども,認証ADR機関を乙2案として入れた場合には,私の理解では,これまでの日本の法制とややそぐわないというか,違うところが出てくる,すなわち当事者の意思確認といいますか,債務名義が成立する段階で,司法の関与または司法のチェックがないという,これまでに例のない唯一のものができることになります。したがって,そこを何がしかでカバーするために,司法に準ずるものを作るために,出井委員がおっしゃった意味での加重要件を加えるというのは,私は,あり得る話だろうと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。その際,加重するとなると,どういうようなことが具体的に考えられますかね。 ○三木委員 今,初めて出井さんのお考えを聞いて,それはまともな議論だろうと思ったということですので,現時点では何も考えを持っておりません。 ○山本部会長 失礼しました。その点は引き続き考えるということでしょうか。 ○出井委員 すみません,私自身の意見というわけではなく,パブコメにそういう意見があったので,それは考慮対象にしなくてよいのかという観点で申し上げたものです。ただ,そうするとそれも一つの今後,考慮要素になり得るという,少なくとも三木委員はそういうお考えということですかね。少し私もそこは考えてみますけれども,実際に認証の要件としてどういう要件を設けるのかというのはなかなか難しいというのが一つと,それから,そこまで加重すると国際との差が更に大きくなってしまって,国際は何もそこを考えなくていいのかという議論が起こってきはしないかというのが少し心配です。それから,もしそういう方向で検討するのであれば,一般の認証の要件ということではなくて,執行力を与える認証の要件というか,特定認証みたいなことは,それはあり得るかもしれませんが,私は実際にそういうのを検討するのはなかなか難しいのではないかと今のところは思っていますので,ただ,これは確定的な意見ではございません。 ○山本部会長 ありがとうございます。   古田委員もこの点ですか。 ○古田委員 はい。今,出井委員から御指摘があった点なのですけれども,まず,現行法制下でも仲裁法38条の和解合意を内容とする仲裁判断については,仲裁申立てから手続が始まって,仲裁事件としての審理中に当事者間で和解が成立して,それを仲裁判断にすることもありますけれども,実務上は,調停事件として始まって,調停手続中に和解が成立したときに,その執行力を確保するために,その段階で仲裁合意をした上で和解合意を内容とする仲裁判断もするような場合もあります。その場合の和解合意を内容とする仲裁判断は,仲裁人が司法機関に準ずるものとして仲裁に関与したというよりは,調停人が最後に名前だけ仲裁人になったというものになっていると思います。ですので,今回,調停和解に執行力を付与したとしても,それが既存の債務名義との関係で全く新しい属性の債務名義になるわけではないだろうと思います。   また,司法機関の関与・チェックについては,調停から仲裁に移行して和解内容を仲裁判断にする場合も,調停和解自体に執行力を与える場合も,債務名義の成立段階では司法機関は関与していないのですけれども,正にそこを担保するために,今回の立法では執行段階で執行決定手続を入れて,その段階で司法機関が審査をすることになっています。つまり,全く司法機関が関与せずに債務名義ができるわけではありません。そういう意味で,従前の法制度との整合性はとれていると思います。   最後に,法務大臣の認証以外に更に要件を加えるべきかという点ですけれども,少なくとも国際的な調停については,法務大臣の認証の有無にかかわらず執行力を付与しようとしており,それによる弊害は執行決定の段階で裁判所が執行拒否事由の有無を審査することで担保しようとしています。国内調停についてはいろいろな類型が想定され,弊害のおそれが類型的に高いことを考慮して,執行決定の段階での裁判所の負担を減らすために,乙2案では認証ADR機関や弁護士会の調停であることを要件としているのですから,これらが行う調停について,それ以上の要件を加える必要はないと個人的には思っているところです。 ○山本部会長 ありがとうございました。   この点,ほかにいかがですか。よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 1点,付言させていただきたいと思いますけれども,今日御紹介いただいた参考資料8の取りまとめにおきましても,執行力付与等に伴って認証の基準要件をどうするのかという点についての言及が何か所かでなされております。取りまとめそのものにおきましては,13ページのオというところでその点について言及がされておりますけれども,結論としては,要否については慎重に検討する必要があろうというまとめになっておりますが,その準備段階で行ったアンケート等におきまして,基準要件等を加重することについては,それに伴う負担の増加等を懸念する声がアンケート等で多く見られたといった点の紹介がされており,また,検討会の委員からも反対の意見も出されていたところであるというところで,この点,1点御紹介させていただきたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○山田委員 ありがとうございます。先ほどの出井委員の御提案に係る加重の観点なのですけれども,2点ほど,もしあり得るとすれば,考えられることがあろうかと思っております。一つは,執行についての同意の時点をいつにするのかということでございまして,シンガポール条約においては,その時期は特段定めがないわけですけれども,国内においては全般に,あるいは一定の類型においては,和解が成立した後にというか,それと共にかもしれませんが,その同意を得るというような一種の加重をするということが一つあり得るのかということが1点です。   それから,もう1点は,先ほどの三木委員,高田委員のお話とも関連するのですけれども,確かに和解の成立の真意性に関して,最後に狭い意味での司法機関が判断をしていないということはおっしゃるとおりなのですけれども,それの対応の仕方というのは様々あり得て,これから申し上げるのはそのうちの一つの可能性にすぎないのですけれども,執行拒絶事由にも調停人の規範が言及をされておりまして,そこで恐らくは情報開示の義務であるとか,あるいは公正に両当事者に接するといったようなごく抽象的なものであって,UNCITRALの調停モデル法等にも言及がある,あるいはICC等の著名な国際調停機関においても通常は持っているような,そういった規範を持っているということを要件として付加することで,言わばその手続をやや構造化することで,最後の合意の真意性をサポートするというような考え方もあり得なくはないのかと思います。それは,現行の認証ADR機関や弁護士会ADRも多くは持っているのではないかと思いますけれども,例えば個人の弁護士さんが調停をやるという場合にどういうルールを自分で持っておられるかというのは定かではありませんが,そういったことでの担保も一つ考えられるかと思います。もっとも,これ以上重くするのは余り本意でないというのも確かでございまして,それほど強い意見ではございませんが,選択肢として申し上げます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 私は個人的には乙1でいいと思っていますけれども,乙2の案を採る場合に,認証ADRに更に加重要件を課すかということについて,一言だけ。それはやめた方がいいのではないかと思います。このADRの利用促進法が,調停による和解に執行力を付与できないようなものを作り出す機関にも認証を与えているということになるわけで,それはこの法律の目的に照らして,国民の権利利益の適切な実現に十分でないところも認証しているということを意味しますから,よろしくないのではないかと思います。他方,新しい法律が執行力というプラスアルファの効果を与えることになれば,事実上,認証を与えるハードルが高くなるのではないかと思います。もう少し立入検査を頻繁にするようになるとか,あくまで事実上の効果ではありますが,変化は生じるのではないかかと思います。結論としては法律上は平等に扱った方がいいのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   委員,幹事からある程度,その点についての意見を頂けたかと思いますが,この点は結局,乙2案の対象をどの範囲で認めるかという話になってきますので,次の議論をする際に,またその点についても一定程度,事務当局から原案が示されると思いますので,それを踏まえて,また引き続き御議論を頂ければと思います。   それでは,対象となる和解合意の範囲という問題についてはよろしいでしょうか。   よろしければ,次の国際性の規律の内容という点に入りたいと思います。この点につきまして,御説明は先ほど既に頂いていると思いますので,この国際性の点について御議論,あるいは御意見,御質問があればと思います。   先ほど既に,私が理解している限りでは,垣内幹事あるいは三木委員からは,基本的にはシンガポール条約に準拠した範囲でというお話があったかと思います。三木委員はかなり明確に,シンガポール条約どおりであるべきだという御意見であったように承りましたが,垣内幹事もそういう御趣旨だったでしょうか,先ほどの御発言は。 ○垣内幹事 私自身はそこまで確たる意見を持っているということではありませんで,少なくともシンガポール条約に矛盾しないことが必要だろうと考えておりますけれども,それを踏まえてどういった規律を,例えば国際性についてもう少し拡大した形で,現在の中間試案はそうであると思いますが,そういったことが,どういったニーズがあって,それによって生ずるデメリットがあるのかどうかと,今回,資料でも言及されているところですけれども,その辺りは実情と申しますか,実際のユーザーとなるような方々からの御知見等も伺った上で,私自身は考えていきたいと考えております。選択肢として,シンガポール条約どおりとするというのは当然あり得る選択肢ではあるだろうとは思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○古田委員 古田でございます。今回の法制審議会の部会での議論がシンガポール条約が一つのきっかけになっていることはそのとおりです。また,今回の立法が仮に将来,我が国がシンガポール条約に加盟するときの障害になってはならず,シンガポール条約に整合的なものでなければいけないというのも,そのとおりです。けれども,それを超えて,今回の立法がシンガポール条約と全く同じでなければならないことはないだろうと思っております。   今回,調停による和解に執行力を付与する必要性を議論するときに一つポイントになっているのは,その代替手段,例えば執行証書を作成するとか,即決和解を作成するという代替手段が,国際調停の場合には現実的ではないという点です。その観点から言いますと,既に外弁法を改正したときに国際調停の定義を設けており,これについては外国弁護士も代理ができることになっているのです。外国弁護士が日本語で交渉したり日本語で契約書を作るということはあり得るわけですが,多くの場合は,例えば英語とか,日本語以外の言語で和解契約を作成したり,和解交渉をしたりすることが多いだろうということが予想されます。そのような外国弁護士が代理できる外弁法上の国際調停事件であるにもかかわらず,執行力の観点からは国際調停ではなく,我が国では執行力は付与しないというのは,国内法制として整合性を欠くのではないかと思います。また,実務上の観点からしても,外国弁護士が代理をできる国際調停なのに執行力の観点から国際調停でないというのは,非常に違和感のある状況であろうと思います。   ですので,私としては,中間試案に書いてあるような外弁法の規定を参照した限度で広げた国際性の定義,すなわちシンガポール条約の国際性よりは広い定義を国内立法として採用した方がよいのではないかと思っております。   今回の部会資料の4ページには,そのような立法をした場合には,例えばシンガポール条約と全く同じ国際性の定義を採用した法域との間で不均衡が生ずるのではないかという指摘があるのですけれども,そもそもシンガポール条約は相互の保証を執行力付与の要件としておりません。例えば相手方の所在国がシンガポール条約の締約国でなくても,我が国では調停和解に執行力を与えることになります。そうしますと,仮にシンガポール条約どおりの国際調停の定義をした相手国との間で差が生じても,それは致し方がないという判断になるのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○竹下幹事 竹下でございます。今の古田先生の御発言にほぼ近いところではありますが,この部会資料の中で,シンガポール条約よりも国際性のある事案の範囲を拡大することについて,アンバランスといいますか,不均衡といいますか,相互性の問題といいますか,確かに日本企業にとって問題となり得ることは,そうかもしれません。しかし,今,古田先生が御指摘のとおり,そもそも非締約国の企業との取引の場合には常にアンバランス,シンガポール条約が対象とする事案だけを日本で立法してもアンバランスになることは,これは全く同じで,それはもう前提として議論はしているのだと思いますし,また,特定の事案において,仮に日本企業が真にこのアンバランスは問題だなと思ったら,ただ単に調停による和解合意をしないという選択肢をするということもできるのではないかと思われますので,ここで書かれているような不均衡というのは余り問題ではないのではないかと思われるところです。古田先生の御指摘のとおり,シンガポール条約の発想自体,国家から独立的に行われた調停による和解という紛争解決を,紛争解決が行われた現地の国とかとは無関係に締約国が直接に尊重するという発想で作られていると思いますので,この条約の対象としていない国際性のある事案についても同じような発想で考えるとすれば,他国で和解合意が執行されるかは余り重要でないのかなというのが私の意見です。   仮に,アンバランスであることから調停による和解合意を日本企業全体がおよそ使わなくなる,いや,向こうとアンバランスは嫌だなということであれば,問題なのかもしれませんが,しかし,これまでの議論を伺っていると,むしろ日本企業のニーズとしては,今ここで書かれているような,シンガポール条約の対象にはならない,しかし現地企業と日本の現地の支店が取引をしたようなときに,現地の裁判などの手続ではなくて,むしろ調停によって紛争を解決したい,現地の企業に対して,いや,日本に和解合意を持ってくれば執行できるから,和解は君たちにとって不利ではないと,現地の外国企業に対して和解合意をしようとするインセンティブを与えるという観点からすると,やはりここで書かれているような事案も対象とした方が合理的なのではないかと個人的には考えているところでございます。結局はどのような日本企業のニーズがあるか,これは垣内先生が御指摘したところでございますが,そのニーズによって決まってくるのではないかと思いますが,少なくとも今までの議論からすると,アンバランスというのは余り問題とする必要がないのではないか,むしろ執行力付与で問題があったのは,日本にとっての純国内的な事案だけだったのではないかと考えているところでございます。   長くなって申し訳ありませんでした。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○古田委員 ありがとうございます。今の竹下さんのコメントに多少付け加えたいと思います。まず,日本企業が日本国内でだけ執行されて相手国では執行できないことを懸念する場合には,調停和解自体を拒否するというよりは,その調停和解の中に,いわゆる執行認諾文言を入れないという選択をすれば足りるのだろうと思います。   それから,2点目ですけれども,実務家の発想としては,調停和解をする以上は,その和解で約束した義務はお互いに履行することが前提になっていますので,相手に対して執行できないから自分の方も執行できないようにしようと考えるよりは,むしろ相手に対して執行する方策を考えるのが実務家の発想なのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○今津幹事 東北大の今津でございます。今回の国際性という枠組みで設けられている要件のうちのシンガポール条約の考えている国際性というのは,要するに複数の国が関与するという意味での国際性で,日本で外弁法並びで設けた国際性というのは,日本から見て外国が関連するという意味での国際性だと思いますので,その意味でやはり異質なところがあるというのは,そのとおりだと思います。   以前の部会の議論では,実務に携わっているような委員の方々から,なるべく広げた方がニーズに合うという御意見が出たのを踏まえまして,私の方でもなるべく広く取った方がいいのではないかという御意見を申し上げた記憶があります。今回改めて部会資料の方で御指摘いただいたように,確かにシンガポール条約に合わせるということ以上のものを中間試案ではお出ししているということですので,その点に引っ掛かりを覚えるという御指摘があるのは,確かにそうだなという,今改めて考えて,思ったところであります。   外弁法では,外国法事務弁護士の職域をどうするかという問題ですので,必ずしも執行力付与の場面で規律として合わせる必然性があるかというと,そういうわけではないのかなという気はしています。ただ,古田委員の御指摘があったように,ニーズとしてそこまで設けた方がいいという声が,特に実務に携わっている方の御意見をいろいろお伺いしたいと思ってはいるのですが,そういうニーズがあるということでしたら,国際性という枠組みの中でシンガポール条約以上のものを付け加えてもおかしくないのかなという,私としては個人的には思っているところですので,是非委員の方の,実際にこういうニーズがあるのだという御意見をもう少し伺えればと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 ありがとうございます。増見でございます。実務観点から少し補足をと思ったのですが,ほぼ古田委員及び竹下幹事の方から代弁していただいたところで網羅していただいていると思っております。まず,調停による和解合意について,国際的にどう交渉して合意するかという点について,現状,日本企業において,調停による国際紛争の和解が現実には日本でほとんど行われていない状況では,具体的なニーズがどれほどあるかということを申し上げるのは難しいところです。ただ,竹下幹事がおっしゃってくださったように,日本でやれば執行も可能だし,日本を調停の場にすることを相手方に提案して説得するための材料があるという意味では,非常にポジティブなものになると思います。シンガポール条約の範囲に縛られて,相互的に先方の国では執行できないから日本でも執行させるべきではないというような思考回路には,日本企業としては必ずしもならないと申しますか,企業同士の紛争では,おっしゃるとおり,任意に和解内容が履行されることがそもそもの期待値でございますので,執行が相手国でできるかということよりは,調停地を日本に引き込めるということのメリットの方が大きいと考える企業もあるのではないかと感じております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○吉野委員 現在,国際性に関する要件について,いろいろな御意見が出ているわけですが,先ほどの段階では,国際性に限る和解合意だけではなく,国内の一定の和解合意についても対象とするという方向を考えるということだったのですが,現在議論されている国際性の要件についての議論というのは,これも必要な議論だろうとは思うのですが,国際と国内と別々に調停の範囲,あるいは要件というものを考えていくことになるのかどうかですね,そういう考え方もあるでしょうし,一つの統一した法律の下で,別々の法律になったとしても,統一した考えの下で立法していくという,いろいろな考え方があると思うのですが,その点はどういうふうに考えたらいいのか,それはそれとして,将来といいますか立法の段階でどうなるか分からないので,国際性についてもやはり厳密に吟味しようということで意見をされていると,そういうふうに理解してよろしいのでしょうか。 ○山本部会長 ありがとうございます。この点,事務当局から御説明を頂けますでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。御質問ありがとうございます。我々の理解としましては,仮に乙1案というものを構想するのであれば,国際性の定義というものを特段吟味することなく,調停というものに当たるのであれば,そこでされた和解合意に執行力を付与していく制度ということでいいのかだろうと理解をしております。   ただし,乙2案というものを採用した場合は,認証ADRないしはプラスアルファ,いろいろな意見が出ましたけれども,そういったものでされた調停による和解合意のみに執行決定を経て執行力を与えるという制度になりますと,国際的なものについては必ずしも認証ADRによる手続を経ていないものがもちろんあるわけでして,そうしたものであっても,和解合意に執行力を付与していくということになります。ですので国際性という要件の下,どういった要件を備えた和解合意に執行力を付与していくのかという点において,非常に重要な意味があると思っておりますので,ここで議論をしていただく必要があろうかと考えております。 ○山本部会長 吉野委員,よろしいですか。 ○吉野委員 そうすると,やはり二本立てで当面といいますか,考えていくと,そういう理解でよろしいわけですね。 ○山本部会長 ええ,二本立てということの意味ですが,それは基本的にはそういうことかと思います。大丈夫ですか。 ○長沼幹事 この議論はシンガポール条約の締結とは直接リンクしないということではございますが,今後我々が直面する課題という観点から一つ申し上げたいと思います。   シンガポール条約を締結していく過程において,我々は,いろいろな方に対してこの条約は日本の企業にとってより有利な条件を作っていくために非情に重要なのです,シンガポール条約は国際水準なので,そのスタンダードに日本も合わせていくべきです,という説明をするのだろうと思っております。他方で,日本の企業を支援するために条約に入ると言いながら,国内のルールはシンガポール条約とは異なるものとします,その理由は条約上のルールのままでは日本の企業が不利益を被るような事情があるかもしれないからです,と説明するのは,一般の方にとってみると若干分かりにくい議論になるかと思います。また,この点に関して,いや,条約上は相互性の要件はないので大丈夫なのですというふうなような説明をいたしますと,そもそもこの条約は何なのだという疑問にもつながりかねません。さらに,この条約が世界のスタンダードだというのもなかなか分かりにくくなる可能性もあります。したがいまして,専門家の方からすれば自明な点であったとしても,普通の方々にとっても分かり易いような説明ぶり,ナラティブを作っていくということが,この条約への理解を得ていく上で非常に重要ではないかと思います。そのような観点から,シンガポール条約とは異なるルールとするのであれば,その方が日本の企業にとっても,こういう観点から非常に大きなメリットがあるということを,実務に照らして具体的に説明していくことが重要であり,そのようなアプローチを採っていくことが重要でないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○手塚委員 手塚でございます。日本仲裁人協会,JAAの中でも議論をいたしまして,結論的には,中間試案にあるような③と④をシンガポール条約における国際性の要件よりも追加して加えることに異論はなくて,ただ,これを加える加えないというところでまた紛糾して,全体としての法制化,国際調停,和解合意についての執行力付与の法制化だとか,シンガポール条約への加盟が遅れるということは避けるべきだというような意見が多かったと思います。   それで,一つ注意すべきは,元々①の要件,シンガポール条約のところで,日本企業から見て当事者の中に1社でも日本でない企業が入っていれば,これはもうそれだけでシンガポール条約の国際性を満たしますので,要は③は,例えば代表者も交渉担当者も証人もみんな海外なのだけれども,法人格としては日本子会社であるために,形式的にはそれは日本企業と日本企業同士の紛争であるために,シンガポール条約に直接乗ってこないというような場合についても,過半数の親会社が海外,日本以外であれば,日本とそれ以外ということで外弁法の代理もできるし,それから執行についても,そこは気にせずに日本と海外の親会社の直接の紛争と同じように考えていいと,そういう話であって,私はこれを広げることで,日本企業にとって執行される範囲が広がり,相手方にとって執行される範囲が狭まってしまうことから来る不利益というのは,余り現実論としては起こらないのではないかと思っていて,むしろトリッキーといいますか,すっかり海外の相手方だと思ったら形式的には日本企業だからシンガポール条約を使えなかったというようなことがあり得るのかもしれませんけれども,それは日本としては,そういうものは日本では執行するという形にして,そういうことで全体として,今言ったようなものも私は立派に国際的商事紛争だと思いますので,そういうものが執行力付与の枠組みに加わるということは,日本が率先して国際調停の利用を促進するという全体のメッセージにもなると思うので,余りマイナス面に懸念をしなくてもいいのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○竹下幹事 竹下でございます。今の手塚先生のお話を受けて話が2点になってしまって,大変申し訳ないのですが,まず1点目が,シンガポール条約どおりの適用範囲だと何が起こるかということをもう一度確認した方がいいかなというところがございまして,シンガポール条約,確かに本日の部会資料8でいうと①のところで,当事者の全部又は一部が互いに異なる国に住所,事務所又は営業所を有するとき,ではあるのですが,この事務所,営業所というのが,この(2)の規律,すなわち紛争に最も密接な関係がある事務所,営業所をいうという規律が係ってくるので,日本企業と外国企業の取引であったとしても,日本企業の現地営業所が最も密接に関係するとなったら,既にこれはシンガポール条約の対象から外れてくるということになってしまいます。元々私が一番気にしていたのはそこのところで,密接に関係するって日本の本社になるのか現地になるのか分かりにくいし,さらに現地になったときに突然,シンガポール条約の射程から外れて,日本の法律からも外れるというのは,これはむしろ不安定性が高いだろうと,そういう趣旨で,特に外弁法の③なんかが入ってくるとすれば,日本企業と外国企業の取引であれば,密接に関係する営業所がどこであったとしても,常に執行の可能性が認められることとなり,非常に安定性の高い法律になるのではないかということで,入れた方がいいかと思われました。若干,私の誤解かもしれませんが,手塚先生が,異なる国にある企業であればシンガポール条約でカバーされているということをおっしゃられたような気もしましたので,少しそこだけ改めて確認をさせていただきたく,指摘をさせていただきました。   もう1点なのですが,これはまた別の点でございまして,国際性を広げることに私は賛成なわけでございますが,ただ,注意していただきたいのが,国際性を広げたときの対象,これはもうむしろシンガポール条約との関係でも問題となるのですが,CtoC,BtoCも対象となるのかは,別問題であるということです。シンガポール条約について,BtoCは入らないとのことですが,このCtoCのところもシンガポール条約の対象になっていないのではないかというのが私の認識でございまして,商事紛争でございますので,コマーシャルでございますので,そうであるとした場合に,では日本の立法で国際性を広げたときに,国際性のあるCtoCの事案まで広げるかといわれると,少しやはりそこは違う考慮が必要となってくるのではないかと,思います。高杉先生も先ほどの議論で,全体として見なければならないということを御強調されていらっしゃったのではないかと思いますが,シンガポール条約が対象とするコマーシャルを超えて,BtoC,更にはCtoCにまで広げて考えるときに,単純に国際性の枠も広げてよいのかというのは,また別問題であるということだけ発言させていただければと思います。   長くなって,しかも2回目で,申し訳ありませんでした。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○髙畑委員 ありがとうございます。私は基本的には,シンガポール条約の国際性の規律を超えて,現行の中間試案にあるように③,④を加えた形でと思っております。というのは,やはり,部会資料8に書かれていた弊害もそうなのですけれども,先ほど増見委員かな,古田委員だったかがおっしゃられていたように,そもそもシンガポール条約に加盟しているか,していないかというところで,既にそういった弊害というのは十分予想されますので,むしろそこの部分はある程度,日本企業が,例えば日本に財産を有することが多いであろうということが予想される場合に,やはりシンガポール条約を前提として,日本において執行の可能性もあるということまでを見込んだ,そもそも紛争解決条項を入れていくと,そういうスタイルに変わるのかなというだけであって,広げることによって確かに,確か増見委員がおっしゃられていたように,つまるところ日本企業が相手なのだけれども,調停による和解合意ということができて,執行可能性があるのだということは,紛争解決条項のバリエーションを増やすという意味では非常に重要なポイントかなと思っております。   ですから,恐らく部会資料8にあるような弊害であるとか,あとはシンガポール条約に加盟していない国との関係でも,それはニューヨーク条約であるとかエネルギー憲章条約でも同じようなことが言えますので,そもそも投資する,一等最初のストラクチャーのところで,紛争解決条項も含めてどういったエンティティーを使ってやっていくのかというところから設計すればいいというところでありますので,基本的には,例えば組織内弁護士協会においては,今まで以上に,契約締結段階でそういったことをきちんと議論できるような体制にしていく,企業の法務部の中でそういった知見を蓄えていくということが大事なのではないかと,そういう問題意識でございました。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○高杉委員 ありがとうございます。この問題は,この部会の検討対象かどうか分かりませんけれども,最終的な法形式とも関係するのではないかと思います。あるいは,先ほどの国際と国内の切り分けにも関係してくるのではないかと考えております。と申し上げますのは,先ほどの御説明でもあったとおり,もし乙2案を採った場合には,国内についてはADR法の改正等で処理するとなれば,残りの国際の方は,結局,シンガポール条約の実質的な国内担保法としての単行法ということが想定されます。そうであれば,むしろシンガポール条約と平仄を合わすというのも考えられるところかと思います。それに対して,先ほどの論点で,国際と国内を切り分けずに,乙1案ということであれば,むしろ仲裁法の中で全ての対処ができる可能性もあるのではないかと考えました。この方向であれば,そもそも国際と国内を必ずしも分けて考える必要はないのですが,仮に分けて考えるとしても,国際の概念を広く捉えておく方がいいのではないかと考えます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○河井委員 河井でございます。この国際性の定義の③と④については,元のシンガポール条約にはないものの,改正外弁法の文言を参酌して追加したという部分ですけれども,外弁が調停できる事件についてシンガポール条約では手当はされていないところにも執行力を認めることによって,そのような事件について外弁が調停をすることを日本国としてウエルカムですよという形での政策判断というか,政策表明だと思います。ただ,これはいずれにしても,これが本件の一番重要な論点でもなくて,正に政策判断であれば,私としては個人的には追加した方がいいのではないかと思いますけれども,外務省の幹事の方がおっしゃったように,それによって何か全体の法案の成立が危ぶまれるとか,ましてシンガポール条約の承認が危ぶまれるような事態になるのだとすると,それは本末転倒になりかねないので,ここはそこまでそこまでの配慮は要らないのではないかと思われます。むしろ,この点に関して外務省の方にお聞きしたい点として,先ほどおっしゃられた「ナラティブなものが必要」だというのは抽象的には理解できるのですけれども,どの程度の意味合いでおっしゃったのかというのがよく分からなくて,どこまで今のこの部会で判断するのが,配慮をするのが適切なのかという,そこをもう少し説明していただけると議論がしやすいかなとは思いました。 ○山本部会長 ありがとうございます。長沼幹事から,もし今の御説明が頂ければ,できる範囲で。 ○長沼幹事 今御指摘がございましたように,ナラティブの重要性は,国内法をシンガポール条約の担保法という位置付けとしつつ,シンガポール条約とは異なるものをとするということについての整理を,どれだけ容易に関係者の方に理解をして支持をしていただくことができるかということとも関連するのではないかと思います。非常に重要な点でございますので,この場でというよりは,少し私も考えさせていただいて,次回までのタイミングで御回答をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○三木委員 三木です。私は,先ほど,シンガポール条約そのままで採用することが望ましいと申し上げましたが,その理由は説明しておりません。ここで,私の申し上げたかった趣旨を説明したいと思います。   私は,何も,この部会資料にあるように,日本企業と相手方企業との関係で相手方企業を不当に利する必要はないのではないかという趣旨で,シンガポール条約と同じということを申し上げたわけではありません。シンガポール条約に日本が将来加盟する場合に,このシンガポール条約のような内容の条約であれば,仲裁の条約であるニューヨーク条約が自動執行性のある条約であって,その国内執行法を置いていないように,シンガポール条約の自動執行的な性格を考慮する必要があるのではないか,ということを考えたわけです。つまり,将来,シンガポール条約に入るときに,それを自動執行的なものとすることがいいのかどうかという議論を先行させなくていいのでしょうかということです。将来,そちらの方が望ましいというような国内の議論が出てきたときに,また法改正をしなければいけないということでは困るわけです。甲案とシンガポール条約の関係について,その辺の議論の整理が必ずしも付いてはいないのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。 ○出井委員 今,三木先生から条約のお話がございましたが,これは私もきちんと詰めて考えているわけではありませんが,私の理解は,将来シンガポール条約,近い将来であることを希望しますが,入るときに障害にならないような国内立法をするということではなかったかと思います。シンガポール条約が自動執行力を持つかどうかというのは,確かにもう一つ論点としてあるのかもしれませんが,シンガポール条約を想定した,国内担保法というわけではないかもしれませんが,シンガポール条約に適合する国内法を国際調停も対象に入れて行うということの検討をしているという理解でした。   それで,国際の要件を広げるかどうかという問題について,皆さんが展開された議論に付け加えるものはほとんどないのですが,少しこの問題を位置付けを私なりに整理しておきたいと思います。まず,一つは国際性の要件をシンガポール条約より広げること,それでもなお条約適合であると,狭めるのは不適合になるけれども,広げることは適合であるというところは,多分これはコンセンサスであると思います。それから,先ほど福田さんから整理があったように,甲,乙1,乙2で,乙1案を採ればそもそもこの問題はないのですね。国際性を広げるかどうかということを議論する意味がない,必要性がないということになります。それから,甲案を採れば,国際性のある調停以外は執行力を与えられないということになりますので,これは結構クリティカルな問題で,国際性は本当にこのままでよいのかということを議論しなければいけないので,拡張する必要性も恐らく高いのではないかと思います。他方,乙2案を採る場合は,ここに書いてある拡張した③,④の類型が執行力を与えられるか,与えられないかと,そういう問題設定ではなくて,乙2案の要件,すなわち認証あるいは認証プラスアルファというものでないと執行力が与えられない,つまり執行力を与えられるときに認証が必要かどうか,認証プラスアルファが必要かどうか,そういう問題設定になるので,甲案の場合よりもそれほど喫緊の必要性は相対的には高くないのではないかと思います。   私も結論的には冒頭に古田委員がおっしゃった御意見に賛成なのですが,外弁法の規律を参考にしてこの③と④を入れられているわけです。ただ,これも皆さんから御指摘のとおり,外弁法は代理権の範囲の問題であって,外国弁護士,外国法事務弁護士に代理権が認められるからということで実質法まで変わってしまうというのは,本来それはおかしな話なので,外弁法並びというのは,飽くまでもそこは法制的には参考であるということだと思います。ただ,実務上は,何人かの方がおっしゃったように,特に③について,①とか②と違う並びになるのかというのは,確かに実務上は少し違和感のあるところなので,③,さらには④はそもそもどれほど必要性があるのか,これは外弁法でも④がどれくらいの必要性があるのかというのは議論になっていましたが,特に③については,私は国際性拡張するということは十分合理性があるのではないかと思っております。   この問題は,繰り返しですけれども,乙2案を採った場合の日本法の規律,つまり認証あるいは認証プラスアルファの場合にのみ執行力を与えると,そういう法制を侵食することになるわけですね,一部エンクローチすることになるわけです。そのエンクローチの範囲が,③や④をエンクローチしてよいのかということで,私は結論としては,それはエンクローチしてよいと思っておりますし,シンガポール条約のこの規律のままでも,国内の認証を得ないと執行力が得られないというところは既に一部はエンクローチしているわけです。国際案件だって日本国内で調停をやることはあるわけですから,そこはエンクローチしているわけなので,それほど大きな拡張ではないのではないかと思いますので,私は結論としては③,④を拡張してよいと思います。   ただ,最後に,この問題は私が今申し上げたような位置付けの問題なので,もしこれを拡張することが法制上,あるいはいろいろな関係で,ものすごい議論が起こって立法の議論が進まなくなる,支障が出るようであれば,私は元に戻って①,②だけでもよいのではないかと,それくらいの位置付けでこの問題は考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○福田幹事 ありがとうございます。議論の整理については今,出井委員が的確に整理してくださったとおりだと思います。そこに私も異論を差し挟むものではありませんが,1点だけ,これまで出てこなかった観点からの問題提起をさせていただきたいと思います。   今,出井委員も触れられた④の要件,準拠法を日本法以外の法と定めたときという要件に若干の引っ掛かりを覚えております。といいますのは,乙2案を採用したときに,この④の問題が少しクローズアップしてくるのではないかと思っております。つまり,乙2案は,乙1案ではなく乙2案という形で積極的に一定の要件を設けようというのがここでの議論であったと受け止めております。そうしたときに,例えば,BtoBを前提としていただいて構わないのですけれども,当事者双方とも日本法人ではありますが,外国出身の方が代表者となっていて,その国の方々のコミュニティーにおいて取引をされておられて,取引の準拠法はその外国の法という指定をしているというときに,純粋な国内事案とほぼ等しいにもかかわらず,準拠法を外国法と定めたことによって,認証ADRの手続を使わずに,そのコミュニティーの中で調停をして出来上がった和解合意に執行力を付与するということになるのではないかと思います。これまで国際調停事件の代理の局面で外弁法の話が出てきており,適切に代理人が付いた場合は特に弊害が生じないのかもしれませんが,今私が申し上げたような例だと必ずしも適切な代理人が付くとは言い切れない場面もあると思われます。そうすると,乙1案ではなく乙2案という意思決定をしたにもかかわらず,今のような事例を取り込むということについて,弊害という点から,若干の問題があるのか,ないのかというところを,少し議論をして頂ければと思います。お願いいたします。 ○山本部会長 ありがとうございます。   いかがでしょうか,今の点について,もし何かコメントいただけることがあれば。 ○出井委員 コメントといいますか,福田さんのお話,確かにそれはその通りだなと思ってお聞きしておりましたが,古田先生はこの辺りはいかがでしょうか。 ○古田委員 御指名ですので。悩ましいところだと思います。福田さんの御指摘もごもっともだと思います。例えば,純粋国内事案なのだけれども,執行力を得るためだけに殊更に準拠法を外国法にすることを認めていいのかという問題になってくるかと思います。一つの割り切り方としては,そういうものも国際調停として執行力付与の対象にはするのだけれども,しかし執行決定の審理の段階で執行拒否事由の有無を厳しくチェックする方向性はあるのだろうと思います。ただ,実務的な必要性から言いますと,外弁法の国際調停の定義から借用した部分の中でも,③の例えば外資系企業の子会社同士の紛争を国際調停と定義する必要性に比べると,準拠法が外国法である調停和解を国際調停と定義する必要性は必ずしも高くはないとも思います。要は,外弁法上は外国弁護士が代理できる国際調停だけれども,調停和解の執行力との関係では国際調停ではないという違い,国際調停の定義が外弁法と民事執行法で相違することをどこまで許容するかというかという問題です。私としても現段階で定見があるわけではないです。どちらの考え方もあり得るだろうと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○竹下幹事 一橋の竹下でございます。私は,国際性を広げた方がいいということを先ほど来申し上げさせていただいたところでございますが,個人的には本来は,純国内的な事案だけを除く,全体を対象とした上で純国内的な事案だけを除けばシンガポール条約の事案は当然に入ってくるし,先ほど来御説明させていただいたようなところでも,外国での取引関係などについてもきちんと射程に入ってきて,いいのではないかというのが基本の発想なので,本来的には外弁法のこの基準を本当に使っていいのか,という問題意識はありました。しかし,これでコンセンサスが取れるのなら,それでもいいのかなというのは思っていたのですが,ただ,今の準拠法の点について言えば,外弁法で,少なくとも私の個人的な理解としては,外国法が準拠法であるとすると,当然その準拠法のエキスパートが紛争処理に当たる可能性というのがあるというのが大前提だったのではないかと思われ,今,福田幹事がおっしゃられたような事案において,外弁法上の国際事件に当てるということはあり得ても,こちらの執行力の付与との関係では,それだけでは国際とはみなさないというふうに区別して規律するというのは,個人的には十分にあり得るのではないかと思います。その結果として,④のところが削除,ない形での国際性の作り方ということも十分に個人的にはあり得るのではないかと思います。第1回の会議でも外弁法の基準をそのままこちらで用いることが出来るかは別問題と申し上げたかと思いますが,今のシンガポール条約プラス外弁法というのが,もうリジッドに固まった国際性の定義であるということは,決してそんなことはないのではないかと考えております。特に④については削ってしまっても,多分問題はないのではないかと個人的には考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○出井委員 私ももう少しよく考えてみたいと思いますが,2点ありまして,1点は,先ほど申し上げたように外弁法の規律というのは飽くまでも代理権の問題なので,その問題を執行力にそのまま持ってくるというのは,法制的にはかなり飛んだ議論であるのかなと思いますので,必ずしも外弁法並びでなくてもよいのではないかと思います。   もう1点は,これも先ほど少し申し上げましたが,実は外弁法のときも,日本法人同士で外国法を準拠法としてやるようなものが果たしてどれくらいあるのかという問題があって,先ほど福田さんの方からは説例を挙げられましたが,果たしてそれがどれくらいあるのかという問題もあって,私はえいやで④を入れてしまっても,ここまで拡張してしまってもそれほどの弊害はないのではないかとも思いますし,他方,③だけにするというのも十分ありかと,それくらいに考えております。   それから,すみません,この議論も更に続くのでしょうが,先ほど竹下先生からCtoCの話がありましたよね。これは国際の問題とは別なのですが,シンガポール条約上はCtoCは入っていたように思ったのですが,そこはどうなのでしょうか。すみません,これは後で確認していただいても構いませんが。 ○山本部会長 事務当局の方で,もし今のが分かれば。 ○福田幹事 福田でございます。シンガポール条約の解釈については,まだしっかりと詰めているわけではございませんけれども,シンガポール条約でいうところの商事というものをどのように解釈するのかというところの問題かと思われます。商事については,これまで御議論いただいたように,積極的な定義を置いていなくて,むしろなるべく広く解釈されるべきというような形で注が付いているというのが現状でございます。そうすると,明確にCtoCが除かれているというようなことまでは言い切ることはなかなか難しいのではないかと思っております。他方,個人の方が業として何かやっておられるような場面というのは,この条約の対象に入ってくるのだろうと現時点では考えております。 ○出井委員 個人の人が業としてやっているのは,そもそもそれはCではなくてBなのだと思うのですが,竹下先生がおっしゃったのは純粋のCtoCですよね。そういうのも私は条約上は明確に除かれてはいなかったのではないかと思いますが,これは山田先生にお聞きした方がよいかもしれません。 ○山田委員 Cなのかどうかという形で,言わば属性でもって分別をしているというわけではなくて,家庭のために用いられる場合を除くとか,人事,家事を除くといった目的や類型での除外規定でということですので,今,福田幹事が言われましたように,個人が業として,完全に業としてであれば,恐らくビジネスに入るのだろうと思いますけれども,例えばeBayとかメルカリとか,そういったところを頻用しているような人をどちらに入れるのかというのはよく分からない,そういう不分明なところは残り得るのかなという印象を持っております。記憶の限りで恐縮ですけれども。 ○山本部会長 竹下幹事,その点に関連してですか。 ○竹下幹事 その点,どこかでやはり議論した方がいいかなと思って,先ほどあえて発言をさせていただいたのですが,もちろんコマーシャルというところも一つなのですが,個人的にはシンガポール条約の1条2のAの読み方が少しポイントになってくるのかなと思っていて,当事者の一方,括弧して消費者が個人うんぬんと,個人でも業としてやっていればBなのではないかとは思うのですが,当事者の一方が締結したものと書いてあるだけなので,当事者の他方が事業者であるときだけが抜かれるのか,そうではなくて,もう一方が消費者である限りで常に全部抜けるとしたら,CtoCは当然に抜けることになるのではないかと思いますので,この条約の1条2項Aの解釈の問題なのではないかと個人的には考えております。私自身,必ずしもこれが一般的な解釈なのか,定見はないところではございますが,少なくともシンガポール条約が主として念頭に置いているのはBtoBなのではないかというのが現在の私の理解で,間違っているかもしれませんが,問題提起だけさせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございます。その点はまた引き続き議論する必要がありそうだとは思いましたが。 ○三木委員 この話題を離れてもよろしいでしょうか。 ○山本部会長 どうぞ。 ○三木委員 先ほど私が申し上げたことにこだわるようで恐縮ですけれども,外務省の条約局は,今から私が申し上げることの専門家なので,私が何か間違ったことを言えば訂正していただきたいし,また,本日でなくても結構ですけれども,御意見をお伺いしたいこともありまして,少し話題を振らせていただきます。先ほど申し上げたことですが,シンガポール条約というのは条文の作りから見ると,自動執行性があるような条約の作りをしているように見えます。そういうもののよい例として,1958年にニューヨーク条約が作られて,それからかなりたって,1985年に仲裁のモデル法が作られたわけです。そのときに,モデル法における執行拒絶事由は,ニューヨーク条約と違ってはいけないということで,全く同じ執行拒絶事由を作りました。その背景には,ニューヨーク条約の自動執行的な性格が考慮されたという事情があったように思います。   一般的に,自動執行的な性格を有する条約について,さらに国内の条約執行法を作る場合には,先ほどのモデル法のように,要件などは基本的に一致させます。その理由の一つとしては,条約優位の原則がありますから,国内法は条約にオーバーライドされる余地があることもあろうかと思います。もちろん,シンガポール条約の非加盟国との間では,この甲案を基にした国内法がシンガポール条約とは違う内容をもって適用されることになるのでしょうけれども,その国も,将来,シンガポール条約に加盟してくることはあるわけです。一番クリティカルな場合には,それをめぐって裁判をやっているときに,もともとはシンガポール条約の加盟国ではなかったけれども,途中で加盟国になったという場合には,国際性要件との関係で,相手方に当事者適格か何かがないとか,そういう話になってくることがあるのではないかと思うのです。もし,そうだとすると,しかも,先ほどから出ているように,③とか④とかいうのは,少し不適切な言い方かもしれませんが,ないと絶対に困るというようなものではないわけですね。そういうことを踏まえて,シンガポール条約と合わせた方がいいのではないかという観点は,考えられないでしょうか。私は,この分野は専門家ではありませんので,お教えいただければと思います。 ○長沼幹事 長沼でございます。三木先生,どうも問題提起ありがとうございました。おっしゃっていただきましたように,今日この場でというよりは,もう少しきちんと検討させていただいて,その上でまた御報告させていただこうと思っておりますが,自動執行(力のある)条約は,権利義務などが明白,詳細に定められていて,解釈上疑義のないがなく,その内容を具体化する国内法令を待つまでもなくその条約をそのまま国内的に執行することが可能な条約をいうのだろうと思います。他方で,シンガポール条約のように,条項について様々な解釈の余地があるものが,それが自動執行力を有するのかと言われれば,私個人としては,それは少し難しいのではないかというふうな感触は持っておりましたが,これも非常に重要な点でございますので,もう一度しっかりと勉強させていただいて,それで次回に御説明をさせていただこうと思います。こんなところで御容赦いただければ幸いです。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   事務当局の方は,先ほどの御疑問というか,あれは大丈夫ですか。 ○福田幹事 ありがとうございます。福田でございます。先ほどのお話を踏まえると,④はなくても困らないというような程度のものと理解してよろしいのですかね。仮に,④は設けなくてもというような方向で考えるときに,では③だけ,外弁法の規律を借りてくるのかという問題がまたあろうかと思います。いまいまつまり,シンガポール条約とも違うし外弁法とも違うという第三の類型を作るというのであれば,その合理性,相当性というものをまた考えていかなければいけないのかなと思っております。   他方,竹下幹事の御意見を伺っていますと,むしろ①,②の要件については,(2)の要件があることが範囲を狭めてしまう要因になっていることから,(2)を取るということも一つ候補として挙がってくると受け止めていいのかどうかというところなのですけれども,その辺りについて,竹下幹事のお考えをもう少し御説明いただけますと幸いです。 ○竹下幹事 竹下でございます。元々私,シンガポール条約というのは,要するにUNCITRALのものですので,要するに国と国がまたがった形というのが明確になっているものだけが当然,UNCITRALでは対象となってくるわけですので,それで作られた適用範囲というのがこの①と②なわけですよね。そのときに,正に今,福田幹事が御指摘のとおり,(2)というのがあって,これはウイーン売買条約などにもあると思うのですけれども,最も密接な関係がある事務所,営業所に着目して,国をまたがっているかどうかを見るわけです。しかし,そうすると,どうしても複数国に営業所があるような場合に,必ずしも明確な規律とならない,さらには,本来どう見ても日本企業と外国企業の取引なのだけれども,現地に営業所があって,そちらが最も密接に関係するということになって射程から外れるということがあったら規律が不安定になるという観点から,私は発言させていただきました。(2)を取って大丈夫か,このシンガポール条約が念頭に置いている事案が多分,全部入ってくるという点では大丈夫だとは思うのですが,そこのところはしっかりと精査をする必要があるように思います。(2)を取ることによって,シンガポール条約が念頭に置いているのに日本の新法が対象としないという事例が出てこないといったことがあっては問題だと思いますし,その他の問題も含めて,少し慎重は期する必要があるものの,基本的には③と④を付けないで(2)を取るというのでも,先ほど申し上げた私の懸念自体が解消されるというのはそのとおりかと思われます。 ○福田幹事 ありがとうございます。福田でございます。そうしますと,これまでの意見を踏まえますと,商事性というところ,又は消費者契約というものの解釈,こことの関係でも問題提起を頂きましたので,今日の御議論を踏まえて,次回に,その適用の対象となる紛争をどうするのかという辺りも突っ込んだ議論をしていただくことになると思いますので,そこも含めて,少しこちらの方で整理をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。 ○高杉委員 今の点ですけれども,これはシンガポール条約の2条1項Aを文字化したものだと理解しております。ですので,もしシンガポール条約と平仄を合わせるということであれば,これは取らないというのも一つの選択肢かと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,今御議論があった点も含めて,次回以降に御議論,また外務省の方からも,一定の検討を頂いた結果の御報告といいますか,も頂けるのではないかと思いますので,次回以降,更に詰めて,乙2案を具体的にどういうような形で表していくのかということとも関係すると思いますので,御議論を続けていきたいと思います。   他に,最初の方に戻っていただいてもいいですが,何かこの際,御発言いただくことはございますでしょうか。   よろしいですか,今日のところは。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   次回の議事日程等につきまして,事務当局の方からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。本日も熱心な御議論,本当にありがとうございました。   次回の日程は,令和3年6月18日金曜日,午後1時30分からを予定しております。次回の会議では,本日の御議論を踏まえまして,対象から除外すべき紛争類型,それから,民事執行の合意に関する論点を中心に取り上げさせていただきたいと考えております。また,次回までの間にパブリックコメントの正式版を公開することを予定しておりますので,次回の会議ではその内容も踏まえて,仲裁法の見直しに関する論点についても少し取り上げていきたいと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,これにて本日の法制審議会仲裁法制部会第8回会議は閉会にさせていただきたいと思います。   本日も長時間にわたりまして熱心な御審議を頂きまして,誠にありがとうございました。お疲れさまでした。 -了-