法制審議会 家族法制部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和3年7月27日(火) 自 午後1時30分                      至 午後6時01分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題   1 養育費及び面会交流に関する論点の検討  2 父母の離婚が子の生育に及ぼす影響に係る心理学的知見に関する発表及び質疑応答  3 海外法制に関する参考人ヒアリング及び質疑応答 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第5回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますけれども,よろしくお願いを申し上げます。   それから,議事に入ります前に新しい関係官等の紹介などをさせていただきたいと存じます。前回からの変更といたしまして,法務省の金子民事局長が委員に,同じく法務省の北村参事官が幹事に,外務省の河田主査及び法務省の寺下局付が関係官に新たに任命されておりますので,簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。   金子委員から順番にお願いをいたします。 ○金子委員 7月16日付で民事局長になりまして,委員として参加させていただくことになりました,金子です。民事局は4年ぶりとなりますが,できるだけ早くキャッチアップして,皆さんの議論についていけるように頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   では,北村幹事。 ○北村幹事 このたび民事局参事官を拝命いたしました北村でございます。事務局として精一杯頑張りたいと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 河田関係官。 ○河田関係官 先月付で外務省国際法局国際法課に配属となりました河田と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   最後,寺下関係官。 ○寺下関係官 7月16日付で法務省民事局付に着任いたしました寺下と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 皆様,どうぞよろしくお願いいたします。   続きまして,本日の会議の配布資料を確認させていただきたいと思います。事務当局の方でお願いをいたします。 ○北村幹事 お手元の資料について,今回も少し大部になりますけれども,御確認いただきたいと思います。   まず,本日使用いたします部会資料3,こちらは前回と同じものになります。その他,事務局の方から御用意をさせていただきました部会資料3に関する議論の参考として,養育費算定方法等の海外法制一覧,離婚後養育に関する海外法制一覧を配布してございます。   続きまして,今回お願いしてございますヒアリングの関係の資料ということになります。金先生,山口先生,小川先生,西谷先生,それぞれから頂いた資料ということになります。なお,菅原先生から頂きました資料につきましては,大変申し訳ございませんが,今メールでお送りさせていただいたので,ウェブの方はお手元に届くかと思います。会場の方につきましては,後ほど席上に配布させていただきまして,ヒアリングの際に使用させていただきたいと思います。   また,参考人のヒアリングはないものの,海外法制に関する資料といたしまして,フランスについては石綿幹事に,タイについては関西大学の西澤教授に御用意いただいた資料を用意してございます。さらに,タイの統計等に関する資料として,在タイ日本国大使館及びアンダーソン・毛利・友常法律事務所の安西明毅弁護士に御協力いただいて,それらを事務局においてまとめさせていただいた資料も参考資料として御用意させていただきました。その他,委員から提出いただきました資料についてですが,赤石委員,大石委員,武田委員からそれぞれ関連資料の御提出がございます。なお,武田委員の方からは,本日追加でも資料を御用意いただきましたので,そちらにつきましては本日メールで追加資料として送らせていただいておりますし,席上の方にも参考資料その2と左上の方に枠囲いさせていただいております資料を御用意させていただいております。   資料の説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの資料がございますので,お手元に届いているかどうか御確認を頂ければと思います。   それでは,本日の議事に入りたいと思います。   前回会議で,この部会の今後の検討の進め方につきまして御議論を頂きましたので,それに従って進行をさせていただきたいと思います。   本日は,前回の積み残しである部会資料3につきまして,まず,養育費に関する残った論点につき議論をし,引き続き面会交流に関する論点の議論へ移りたいと思います。本日,できれば部会資料3の最後までと思っておりますけれども,後の予定もございますので,休憩を挟みながら,3時20分ぐらいまでに部会資料3に基づく意見交換を行うことを予定しております。   その後に,前回の会議の際にも御要望がございました,父母の離婚が子の生育に及ぼす影響に関する心理学的な知見につきまして,菅原委員の方から15分程度お話を頂き,質疑応答の時間を設けたいと考えております。   そして,後半には,離婚後の子の養育の在り方に関する海外法制等のヒアリングということで,あらかじめお伝えをしてあります4名の参考人の方々にウェブ会議の形で参加をしていただき,ヒアリングを実施したいと考えております。このヒアリングにつきましては,まず4人の方から順にお話を伺った後で,まとめて質疑応答の時間を設けたいと考えております。   以上のような形で進めさせていただければと存じます。   そこで,まず,部会資料3に基づきまして,養育費に関する論点につき意見交換を続けたいと思います。前回,資料の第5の養育費に関する裁判手続等の前まで一通り議論をいたしましたけれども,本日,事務当局の方から資料の第4の養育費の取決めの内容に関する規律に関連して,養育費の算定方法に関する参考資料が用意されておりますので,この第4も含めまして,養育費に関する残りの論点について,30分程度の時間を取って,御議論を頂ければと思います。   この議論に入る前に,今触れました養育費の算定方法に関する参考資料につきまして,事務当局の方から御説明を頂けますでしょうか。 ○北村幹事 事務局でございます。「養育費の算定方法・算定基準に関する諸外国の例」ということで,参考資料5−2とあります資料を用意させていただきました。こちらにつきましては,法務省が令和2年度に行った調査研究を基に,各国の御担当の先生方にもお聞きした上で,事務局において,左側にAからFまでの項目を立てましたけれども,こちらの観点で整理をさせていただいたものでございます。飽くまでも本日の議論の御参考ということで,暫定版ではございますけれども,御用意させていただいたものでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,養育費に関わる論点につきまして,第4,第5の部分を中心に御意見を頂きたいと思います。どなたでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。少し支援的な意見も入りますけれども,2点ほど申し上げたいと思います。   1点目は,第5の中に出ております民間ADRなどの裁判外手続の検討及びその受皿に関してということかなと思っています。第5の課題に書いてあります裁判手続の負担軽減であるとか迅速化,この辺りに関してはこのまま検討を進めて,更にこういった民間ADRのような裁判所外手続,これらをより広く活用できないかと,そんなふうに考えております。   今回,私の方から提出させていただいた参考資料の方にも,2014年,日弁連さんが司法シンポジウムで発表した家庭裁判所の実情という資料を添付させていただいております。採番してあるページ数でいいますと97ページ以降です。少し古い2014年の調査でございますので,現状,変わっている可能性があるとは思っておりますが,例えば東京家庭裁判所を例に挙げると,当時の調停室の数,処理対象件数,こういったところから逆算した期日間隔は2か月に1回入らないと,こんな結果が出ております。一方,利用者の方からも期日間隔が長いという声が上がっているとの結果も報告されています。当時から夜間調停であるとか休日調停,迅速化に寄与すると考えますけれども,余りそういった動きが本格的になっているということは私としては認識しておりません。あわせて,1年少し前からのコロナ禍におけるリモート調停,これも一部でやっておるとは聞いておりますが,一般的に採用されていないのではなかろうかと感じています。   こういったことを背景に,この家庭裁判所の陣容の問題,設備の問題,なかなか解決が難しいであろうという前提に立ちまして,例えば,冒頭申し上げました,高葛藤でない事案において,先だって明石市の泉市長が参考人でお越しになりましたが,例えば自治体など,こういった行政機関が法的な支援でありますとかADR的な紛争解決支援,こういった受皿とすることはできないか,こういったADR的なところで合意に至れなかった場合に,家裁申立て手続,これを迅速にできるように支援するような仕組み,こういったものを検討してはいかがであろうかと,こんなふうに考えております。   これも先日,子どもの立場で光本参考人がおっしゃっていた,どうしても裁判所に行くと勝ち負けの論理になってしまうと,こういったことを踏まえて,飽くまで話合いであるADR,ADR前置といいますか,そういった仕組みを作って,話合いを経てもなかなか合意できない事案,DV事案,虐待事案,こういったものを家庭裁判所側に回して切り分けをすることで,より納得感のある合意形成,こういったものに寄与することができるのではなかろうかと,考えております。本日,オーストラリア法ということで小川先生が参考人としてお話しいただけると聞いておりますが,オーストラリアではFDR前置という仕掛けがかなり昔から導入されていると聞いております。この辺りの話も今日お聞きできればと思います。   2点目です。回収に関してでございます。権利者の負担軽減,これは非常によいことだと思いますが,立替え払い,強制徴収,これは第3のテーマになってしまうと思いますが,もう少し丁寧に立法事実の確認をしたいというのが今現時点の思いであります。前回の第4回会議で,この辺りの2019年の民事執行法改正,それによる効果という定量的なデータは出ませんかという御依頼を申し上げましたが,まだ時間が掛かっているようでございますので,この辺りも踏まえて,どうするのがよいのか考えていくのがよいのではなかろうかと,考えております。   私から申し上げたい点,以上2点でございます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。ADRの活用と,それから,執行の方の現状について御意見を頂きました。 ○原田委員 弁護士の原田です。今,貴重な御意見を頂きまして,日弁連でも日弁連のADRを利用した調停といいますか,そういうものの提案をしておりますが,ADRにもいろいろあるということと,ADR前置という形にしますと,今,家庭裁判所では調停前置,それから審判というような,もちろん最初から審判で駄目ではありませんけれども,そのような形になっていることを考えると,二度三度の手間になるということもあり得るかと思いますので,それは選択ができるようにするということと,ADRで決めたことを債務名義にするということが重要だと思いますので,ADRで決めたことを家庭裁判所に持っていけば,簡裁の即決和解のように,1か月,2か月待たなくてもすぐ期日が入って債務名義ができるというようなやり方をやっていければと。私もこの前,当事者間で作ったものを債務名義を取るためだけに家裁に調停を申し立てて,結局1か月半待たされたというケースもありまして,合意ができている場合,特に,自分たちのことだけと言われるかもしれませんが,弁護士会のADRや両方代理人が付いてやった合意については,すぐに債務名義ができるような期日の入れ方ということも検討していただければと思います。   それから,14ページのところにある住基ネットワークを活用するという問題と,それから,公示送達のために現地調査をしないというところについての問題なのですけれども,住基ネットワークについては賛否両論いろいろありまして,行政が作った手続について裁判所が直接関与するのはどうかと,司法の独立という観点からも,どうかという問題は常に考えなければいけない問題だと思います。   ただ,利便性の問題で考えたとき,ここで利便性が問題になるのは,相手方の住所が分からなくても申立てができるかどうかという問題なので,当事者としては相手方のどの時点かでの住所が分かれば申立てができると,その後,その相手方がどこにいるかを捜すのは裁判所の問題なので,そこで必ず住基ネットワークを使わないと利便性が高まらないという問題ではないと思います。そして,裁判所であれば,戸籍の附票を取れば,本籍地を点々としている人でない限り,1回か2回ですぐ現在の住所が分かるという問題もありますので,それほど大きな負担ではないかと思います。   それから,公示送達のために現地調査を要しないという規律については,弁護士同士でもいろいろ話した結果,賛否両論というか,慎重論も結構ありました。それは,例えば養育費とか婚姻費用については執行の段階では特別扱いされていますよね。例えば,継続的に将来債権もできるとか,あるいは2分の1までの差押えが認められるとか。しかし,この公示送達のところは債務名義を作る段階ですので,ここで養育費だけ特別にやるということについての合意が得られるのかという点については,いろいろな疑問がありました。 ○大村部会長 ありがとうございます。ADRの効果に関わる点と,それから,資料14ページの課題のところに挙がっている2点につきまして,御意見を頂戴いたしました。   そのほかに御発言はございますでしょうか。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。私からは12ページの第4,1(2)の養育費の算定方式や考慮要素を法定してはどうかというところについて意見を申し上げます。   現在,算定表というのが使われていまして,それに基づく実務というのが進められております。やはりそれを法的にしっかりとした根拠を持たせるということは,一般の見通しが付きやすいという意味で重要と思っておりまして,法定することについては賛成です。ただ,その考慮要素をどうするかというのがやはり問題で,これから検討していかなければいけないと思います。その際,1点だけ申し上げたいのは,今,月々の支払のほかに,大学の入学金等の特別の教育費のプラスアルファの負担は,その時点で協議しますというふうな条項を調停条項に入れたりします。それは養育費とは別の費用なのかどうかという,そこの位置付けの問題も少し整理をして,仮に養育費に準ずるようなものとして考えるのであれば,この考慮要素の中に高等教育についての学費等も含まれ得るような規律も必要ではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。養育費の算定方式につきまして,法定するということには賛成だけれども,その中身をどうするかということについて,特に学費の問題について検討を要するという御指摘を頂きました。 ○石綿幹事 石綿でございます。池田先生の御発言に重ねまして,第4の1について2点発言させていただければと思います。   まず1点目ですが,池田先生と同じで,養育費について算定方式や考慮要素を法定化するという方向性に賛成をいたします。ただ,今日事務局から作っていただいた一枚紙の表などを見ておりますと,考慮要素のみを法定していると思われる国と,具体的な算定の計算式まで法定している国と,多分二つの方向性があると思います。この場で具体的な算定方式まで議論していくということは重要かと思いますが,最終的にどこまで法定していくのか,条文にどこまで書き込んでいくのか,また実態に合わせた変更等の必要性も生じてくる可能性があることから算定方式の見直しについてどこまで法定するのがよいのかということも併せて議論ができればよいのかなと思っております。   2点目は,具体的にこの算定方式などを考えていく際に,考慮要素として一般的には父母の資力などが挙げられるかと思いますが,それと同時に,子どもが1人育っていくのにどれくらいの費用が必要なのかといったような視点も入れられるとよいのではないか,子どもを育てていくのにどれぐらい掛かって,それを父母がどの程度負担をしていくかというようなことの視点も入れられればよいかなと思います。算定の方法を考えていく際に,一般的にこれぐらいのような費用が掛かるのだということを御教示いただけると,また様々に議論ができるのではないかと思っている次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。法定するということについて,どこまでやるのかという問題があるだろうということと,それから,子どもに掛かる費用がどのくらいなのかということを明らかにしておくことも必要なのではないか,これは父母間の養育費で賄えない部分もあるだろうから,そこを明らかにした方がよいという御趣旨かと思って伺いました。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。今日もありがとうございます。養育費についてなのですけれども,今,養育費と言ったときに,それは誰を対象にするのかという議論が,離婚後の子どもに関するものというふうなことで議論が進んでおります。民法766条もそのような規定になっていますが,やはり婚姻外で生まれた子どもをここに位置付けるのか,位置付けないのかという議論は今のうちにしておかないと,大体固まってから,婚外子をここに準じるとして入れるのがどうも何か難しそうな気がしてきました。諸外国のいろいろなレポートも拝見しておりますと,やはり婚姻外で生まれた子どもについても包摂しているところが多いように思いますので,今のうちにどのようにするのか,何か少し認知については議論がされていると聞いているのですが,父性確定した後には同じなのか,そのときに決めるとするのか,などなどあります。婚外子の出生率は2.29%という2018年のデータですけれども,母子世帯のうち8.7%が2016年調査では未婚のお母さんでございます。今後も増える傾向にあるということを考えますと,今のうちの議論が必要かと思っております。   それから,武田委員から裁判所についての御議論がありましたけれども,私どもも共感します。やはり夜間調停してほしいというのは,養育費のときの検討会でも申し上げたのですけれども,やはりお父さんもお母さんもそこのニーズは高いと思いますし,きちんとしたADRの手続も含めて,やはり利便性というのはとても大事かなと思います。   あと,算定表なのですけれども,考慮要素など,法制化するのとともに,やはりその算定表を一体いつ改定するのか,やはり十数年改定されないようなものでは困りますので,何年ごとにするとか,そのときに作成委員会を開くのか,開かないのか,そのときに民主的な手続,ある程度開かれた透明性のある手続がやはり必要なのではないか,ステークホルダーはここに関わった方がいいのではないか,などの議論も一緒にしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点御指摘いただいたかと思いますが,養育費については,離婚後だけではなくて婚姻外で生まれた子どもについても早めに議論をした方がよいのではないかという御指摘,それから,裁判所が便利に使えるようにという点は,先ほどの武田委員の御発言と同趣旨だということ,3番目に,算定表については石綿幹事からも御指摘がありましたけれども,改定ということを考えなければいけないので,そのやり方についても検討しておく必要があるということ,こういう御指摘だったかと思います。 ○大石委員 千葉大学の大石です。ありがとうございます。石綿委員と,それから赤石委員がおっしゃったような内容について賛成で,やはり子どもを育てるに当たってどのぐらいの費用が掛かるのかといったことについて,学術方面での研究もありますので,それを見つつ,父母の支払能力だけではなくて,子どもの成育に幾ら掛かるのかといったことも検討要素に入れることが必要かと思います。また,特に,やはり時代を経るに従って標準的な子育て費用というのも変わっていくものだと考えられますので,その見直しの方法ですか,赤石委員がおっしゃっていたようなことについて,見直しの手続というのを含めて検討しておくということは重要かと思います。   それから,一枚紙で海外の事情についておまとめいただいて,大変有り難いと思っておりますが,可能でしたらなのですけれども,やはり子どもの手元にどのぐらい残るのかという意味で,例えば低所得世帯の場合,養育費が収入算定されると児童扶養手当が減るとか,アメリカの場合も結局,支払われた養育費が公的扶助と相殺されて,子どものウエル・ビーイングは余り改善されないとかということもありますので,その辺りの扱いが諸外国でどのようなものであるのかといったことも,もし可能でしたら付け加えていただけますと,大変有り難いと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。3点御指摘いただいたかと思いますが,子育て費用という観点は必要だろうというのは石綿幹事と同趣旨である,それから,改定につきましては,これまでに御発言があった委員,幹事のおっしゃるような考慮が必要だろう,最後に,養育費と他の様々な給付の関係につき,養育費が払われても他の給付が減るというようなことでは効果が上がらないので,諸外国について,もしそうしたことが分かるデータがあれば欲しいという御要望を頂いたかと思います。 ○小粥委員 小粥でございます。申し上げたいことは二つございます。いずれも議論の進め方ないし事務局へのお願いというようなことになります。   一つ目は,法律の理屈に関わるところでございまして,二読に向けて,親権とか監護権という概念をきちんと整理して,これと,今議論している養育費の問題,あるいは面会交流の問題との関係をもう少し詳しく整理していただくということが必要ではないかと思います。これは理屈の問題と申しましても,たった今,赤石委員が御指摘になったことでありますとか,つまり,婚外子についてどう扱うかということにも関わることでございますし,また,終始この場に議論として出ておりますけれども,DVあるいは虐待の問題について一定の理論枠組みを持っていなければ,なかなか面会交流についても議論することが難しいかもしれないような気もいたしますので,そういった実践的な問題と関わるところを特に,その法律の理屈を整理した形で二読に向けて御準備を頂きたいし,そういうことを議論していく必要があるのではないかと,これが第1点でございます。   それから,第2点目で,前回私,法律の理屈と申しますか,民事法制の議論に少し集中すべきだということを申しましたけれども,民事法制の問題はもちろん,周囲のと申しますか,それ以外の問題との中で,最終的にどんな果実が得られるのかということの方が大事だと思いますので,これも,二読で間に合うのかどうか分からないのですけれども,関係諸機関との連携の状況とか,どういったことが民事法制以外でできそうなのかということ,この場で議論することは難しいと思うので,なおさら,これを事務局に検討状況あるいは進捗状況について,是非二読のときに教えていただきたいと,以上,2点でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。2点御指摘を頂きました。1点目は,親権,監護権,あるいは養育費,面会交流といった,ここで扱われている基本的な概念についての整理が実際上の問題を考える上でも重要だろうから,事務当局の方で一定の整理をしていただきたいという御要望,それから,民事の問題として取り扱える問題と,それ以外の問題との関係がこれまで議論になってきましたけれども,他の関係省庁での議論の状況を是非二読のときには整理して御披露いただきたいという御要望を頂きました。ありがとうございます。 ○柿本委員 主婦連合会,柿本でございます。御説明ありがとうございました。私は12ページの第4の課題の,考慮要素を法定してはどうかということと,ADRについて意見を申し述べます。   私も考慮要素を法定化することに賛成でございます。その際の数字でございますが,具体的な家計に関するデータが種々,行政から出ております。子どもの貧困を解消するという観点におきましては,日常生活を送るに当たって様々な支出が必要です。具体的な数字などを参考にして生活困窮に陥らないように進めていけたらと思っております。   第5の面会交流に関してでございますが,私もADRの活用が非常に有効ではないかと思っております。これは,納得感のある合意形成ができた場合の当事者の心理的な満足感というのが非常に高いと思われるためです。 ○大村部会長 ありがとうございます。算定表の法定化につきまして,子育てに掛かる費用は様々なデータがあるので,そういうものを十分に参酌した方がよい,ADRの活用については今までに出ている御意見に賛成であるいうことと承りました。 ○大山委員 経団連の大山でございます。養育費に関して2点申し上げます。   当然のことながら,親の経済的な状況や裁判に関する知識の格差など,そういったことに関係なく,いかに申立者の負担を減らしながら簡易な手続等により,養育費の履行まで持っていけるかという点が重要だと思っております。私はちょうど子育て世代でございますけれども,同世代の周りの方々にもいろいろヒアリングしましても,企業で働いている者の立場からしても,裁判手続に行くということは,欧米に比べれば,まだまだ日本では心理的なハードルが高いという現実があると思っております。そういった点を踏まえれば,プッシュ型で事前になるべく相談しやすい体制を作るということが重要であり,そういった意味でも,ADRも含めて,いろいろなオプションを提示して,民間の力も使いながら養育費の履行確保のプロセスを進めていくということが重要だと思っております。   あわせて,家裁についても,企業で働きながら,平日の時間を使いながら手続に行かなければならないといった事情があることを踏まえると,司法に対する心理的なハードルだけではなくて,会社の周りの方に対してもそういったプライベートなことを見せずに,うまくスムーズにいろいろ手続を進めたいというニーズも実際にはございます。そういったところを踏まえると,裁判手続も平日だけではなくて,いろいろな形で柔軟に対応ができるような体制整備を是非,より一層進めていただければ有り難いと思っております。既にいろいろなお取組をしていただいていると思いますけれども,オンラインでの手続等を含めて,より一歩踏み込んだ形で柔軟な対応をいただけると有り難いと思います。   それから,二つ目は,先ほど赤石先生からも御指摘がございましたとおり,婚外子の取扱いについてです。結果的にやむなく婚外子となっているケースだけではなく,実際,最近ではあえてパートナーと話し合った上で事実婚を選んでいくという世帯も増えつつあります。実際に周りでも,かなり増えてきておりますので,今後将来的に,婚外子の数はおそらく増えていくということを想定すると,やはりこういった婚外子に関する対応という視点はきちんと今の段階から論点に含めて御検討いただけると有り難いと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点目は,手続をできるだけ簡易にということで,裁判所へのアクセスの容易さを確保していただきたいといった御要請を頂きました。2点目は,赤石委員の御指摘と同じで,婚外子の問題を取り上げる必要があろうという御意見だったかと思います。 ○水野委員 水野でございます。今までお話を伺ってきていても,やはり日本の制度的な条件を前提に議論をしておられるように思います。裁判手続か,そうでなければADRかということなのですけれども,特異な協議離婚を代表とする日本の手続は,実は世界的に見ると非常にいびつであることを考えますと,この際,かなり抜本的な制度改革も可能なのではないかと私は夢見ております。   離婚全てを裁判離婚にすることは,もちろん日本の裁判所の現状から,無理だとは思うのですけれども,子どもの養育費の問題につきましては,これだけならば公的な簡易な手続を創設することが可能なのではないかと思うのです。かなりの財政出動は必要だと思いますけれども,公証人であれ,あるいは法律家であれ,ともかく中立的な法律家がきちんと法定された基準に基づいて算定する手続を作り,そして,お子さんを持った夫婦の離婚などについては,必ずその手続をくぐることにします。つまり,合意の形成というアプローチではなくて,中立の法律家が客観的に決めるという手続です。フランス法では,ほかの民事裁判は和解できても離婚裁判は和解してはならないとされています。和解という合意にしてしまうと当事者の力関係が非常に働くところですので,そこで客観的な水準が崩れてはならないという危惧を制度的にもっているからです。そういう観点から言っても,合意の形成の支援という発想ではなくて,客観的にカップルの子育て経費の負担はこのようなものであるということを,客観的な第三者である,法律家がルールに従って決めるという手続をくぐらせるという,そういう制度設計も可能なのではないかと思います。   私が何となく制度改革のイメージとしておりますのは,介護保険です。介護保険という制度ができる前とできた後とで,日本の高齢者福祉の状況は大きく変わりました。客観的な要介護度認定と同じように,子の必要性と親の収入や資産から計算できる公的な客観的基準ができて,養育費については必ずこのルールが関与,介入するという,そういう制度設計ができると,日本の育児の子育て負担の現状は相当,意識も現実も変わってくるのではないかと思います。今回,それぐらいの大きな改正を夢見てもいい,企画してみてもいいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。現在の制度を改良するというところから更に外に出て,子育てのための法的な仕組みを組み立てるということも選択肢に含めて考えるべきではないかという御指摘を頂きました。 ○畑委員 畑でございます。手続法の観点から若干コメントしておきたいと思います。直前に水野委員がおっしゃった新しいアイデアにつきましては,直ちにコメントする用意がございませんので,また考えてみたいと思っております。   資料の順番でいきますと,13ページにADRのことが書いてありまして,何人かの方から既に議論が出ております。私もADRの活用でうまく問題が解決されるというのは非常に望ましいと思っておりますが,ただ,これは原田委員がおっしゃったのでしょうか,それを,例えばADR前置というふうなことになると,またなかなか問題も,かえって手続が長引くというふうなこともありますので,その辺りの制度設計はいろいろ考える必要があるかなと思いました。   それから,13ページの(注)にありますように,ADRの結果を債務名義化するということについては,現在,別の部会で議論がされておりますので,そこについても我々としても注意を払っていくということになるのかなと思いました。なお,13ページの(注)の2行目の執行手続を経るというのは,執行決定を経る,であろうかと思います。   それから,14ページの,これも先ほどから言及があります住基ネット等の話でありますが,確かに住基ネットがいいのか,原田委員がおっしゃったような戸籍の附票を取り入れるのがいいのかという辺りは,どちらが便利かという辺りは私には判断できませんが,この種の仕組みというのはあり得ると思います。ただ,取り分け@で扱われている問題というのは非常に一般的な問題で,相手がどこにいるか分からなくて困るというのは非常に一般的な問題ですので,一般的な問題として解決するということもあり得ますが,今回我々が扱っているような問題に即して何か手当てを考えるとした場合,どの範囲かというのはなかなか難しいところがあるかなと思っております。   @は子の監護に関する手続となっていて,Aの方は養育費に関するとなっていて,この二つで微妙に範囲が資料上,異なっておりまして,ここも少し考え所かなと思っております。取り分けやはり特別扱いというのは養育費の関係かなというふうな感触もありますが,現時点での感触ということです。それから,Aの公示送達につきましては,これも原田委員からの御紹介にありましたけれども,実際上は相手方に分からない間に裁判なりがされてしまうという面がありますので,債務名義の形成ということに当たっては少し慎重に考える必要もあるかなとは思っております。後々かえって紛争を生じるというふうなこともあり得るかとも思われます。元々この公示送達において申立人にいろいろな負担が掛かるというのも,法律でそう書いてあるというわけではなくて,解釈,運用の問題ですので,一律にこの場合はこうと法律で書いてしまうというよりは,解釈,運用によって問題をある程度解消するということも考えられるのかなという気はしております。   それから,15ページの養育費に関する審理の話です。具体的に挙がっているのは,@が調査嘱託等です。調査嘱託等につきまして応じる義務があるというふうなことは,多くのものの本に書いてありますので,明文化するということは考えられるとは思いますが,これも非常に一般的な問題の一環でありますので,ここで子の監護に関しては義務があるという規定を置くというのは,かえって少し妙ではないかという気もするので,もし何か規定を置くとすれば,書き方は少し注意を要するかと思います。それから,何か書くとしても,一般的に言われているのは,恐らく正当な事由がない限りは応じる義務があるとか,そういうふうなことが多くの文献に書かれているのではないかと思い,書くとしてもそういうことかなと思われますが,そうすると,また正当な事由とは何かといった解釈問題は残ることにはなると思いますが,書くとしてもそのぐらいが限度かなという気がしております。   それから,その下のAの養育費の算定の話ですが,これが手続の問題なのか実体の問題なのかというのもよく分からないところがあり,これも感触だけですが,取り分け資料の開示に消極的な側がいる場合に,何かしら一定の,資料が少ない中でも認定するというふうなことは,直感的にはあり得るかなとは思っております。   それから,16ページに面会交流の暫定的な実施のようなことが書いてあります。これも手続プロパーの問題としては,こういう制度を設けるということはできるだろうと思うのですが,これに伴って実際上どういうメリット,デメリットがあるのかという辺りは,私としては何とも言えないというところであります。   それから,17ページの執行の辺りの話でありますが,@,A辺り,これも立法ですから,こういう仕組みを設けるということは考えられるようには思います。ただ,一方当事者に対する非常にきめ細かいサービスというふうなことがここでは必要になってきているように思われまして,これも確たるイメージがあるわけではないですが,事柄の性質としては,むしろ行政的なサポートのようなことも考えられるかなというふうな気はしております。行政がサポートするという考え方を延長していくと,その下の(注1)にあるような立替え払いとか強制徴収とかいった話につながるのだろうとは思いますけれども,そういうことも考えられるかなという気はしております。   それから,その次のBの履行勧告,履行命令でありますが,これもあり得るとは思うのですが,取り分け履行命令は少し中途半端な制度になっているというところがあるように思います。強制執行と履行勧告との間にあって,やや中途半端な制度になっているような気がいたしまして,これを過料の額を多少引き上げるということでそれほど効果が変わるのかなというのは,少しよく分からないような気はしております。   最後に,19ページのBに,面会交流についてのより強力な強制執行のようなことの可能性というふうなことが書かれております。私も一般的に言えばそういうことはあり得ると思いますし,例えば,適切に定められた審判の内容というものは実現されるということは基本的には望ましいとは思っております。ただ,これも従来指摘されてきているところですが,やはりうまくいかないと非常に弊害を生じやすいというところがありますので,そういうことが生じないような手当てが当然ながら同時に必要になってくるということを改めて一応申し上げておくということであります。   長くなりまして恐縮ですが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。手続全般につきまして多数の御指摘を頂きました。そのうち面会交流に係る部分につきましては,また後で御議論を頂こうと思っておりますので,そのときにも御発言を頂ければと思います。その他の点につきましては,ADRについては既に出ている前置や債務名義の問題について,なお考える必要があるであろうということ,それから,住基ネットや公示送達,調査嘱託については,ここでの問題と一般的な問題との関係をどう考えるのかといった御指摘がございました。それから,履行勧告制度,履行命令制度等について,現在のものについての評価に係る御発言を頂きました。それから,行政の方でやるべき問題もあるのではないかといった御指摘も頂いたところかと思います。   予定していた時刻を過ぎておりますけれども,手続に関わる問題で,今津幹事と杉山幹事からお手が挙がっておりますので,今の畑委員の御発言と重複しない問題につきまして,簡潔に御指摘を頂ければと思います ○今津幹事 東北大の今津です。3点ほど発言させていただければと思います。   まず,13ページに言及されている仲裁法制部会での議論との関係で,そちらでも債務名義の種類を増やすという意味で,調停にも執行力付与を認めてはどうかという議論が出ているということを伺っております。そこでの部会の議論では,少なくとも養育費に関しては執行力付与という方向で見ていいのではないかという議論が出ていたように思います。私自身もそういうふうに思っております。逆に言えば,面会交流の方はこういった,より広い形での執行力の付与ということになりますと,執行してしまった後の取り返しが付くかどうかというところで,少し金銭の支払とは異なる側面もありますので,方向としては,養育費には少なくとも債務名義化を拡大する方向でいいのではないかという印象を持っております。   それから,資料の16ページ以下で,執行の実効性の確保に向けたいろいろ御提案をしていただいているところですけれども,たとえ債務名義があっても,それが使えないと意味がないわけですので,方向性としては非常に,この部会でもきちんと議論をしていきたいと思っております。執行手続がきちんとしているということが前提になれば,任意の履行が促されるという効果もあると思いますので,非常に重要な議論だと思っております。ただ,気になる点として,執行するということの前提に,権利があるからそれを実現するという考え方があると思うのですけれども,問題は,その権利があるということがはっきりしているかどうかというと,現状ではなかなか,養育費にせよ,面会交流にせよ,誰の権利かというところでいろいろな議論があったりしますので,権利がきちんとあるのだということがはっきりした上で,ではそれを実際に確実に履行しましょうという,そういった裏付けがあれば,執行の実効性確保というところにも議論が進みやすいと思いますので,実体的な権利の部分についても部会できちんと議論ができればと思っております。   それから,もう1点ですけれども,既に議論が出ている裁判所の夜間,休日にやってもらいたいとか,オンラインでやってもらいたいとかいう点ですけれども,これは畑先生からも御指摘があったように,この場面に限らず,恐らく一般的にそういうニーズはあるのだろうと思います。それをこの場面でなぜ特別扱いするのかという,そういった議論は当然出てくるかと思うのですけれども,そこはやはり,権利者に対して権利をより強化するというか,手助けをするということではなく,子どものためのものであると考えれば,一方当事者に肩入れしているというようなことではなく,最終的に子どもの利益を実現するために後見的な関与をするのだと,そういった方向での正当化は可能であろうと考えますので,国家は,あるいは法は家庭には立ち入らないのですよという時代では,もうないのではないかと私自身は思いますので,そういった方向で議論ができればと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○杉山幹事 なるべく重ならないようにということでありますけれども,私自身,水野委員がおっしゃったように,養育費についての債務名義の作成から回収に至るまで,なるべく簡易にできる手続を設けるのは望ましいと思って,ただ,そのような制度をゼロから作るというよりは,現行の裁判手続ないしは執行手続を,なるべく申立ての回数を減らして,迅速な審理を可能にするという形で実現していくというのが一つの方向性としてあり得るのではないかと思います。少なくとも取決めに関しては,自動算定の話はございますけれども,裁判所ないしはADR機関,しかも適正なADR機関が介入するのが望ましく,さらには,ADR機関での判断に執行力を付与する方向性で議論していくということが望ましいと思います。今のように裁判外での取決めを債務名義にするために,裁判所で即決和解ないしは調停を求めるというのでは,裁判所でどのような審査をしていいのかが明らかではなく,執行力を付与したうえで執行決定という形で裁判所が関与していく制度を構築していくのが望ましいと思います。   14ページ,15ページにありますような,相手方の住所,送達先が分からない,ないしは収入が分からないゆえに調停や審判が進まないという問題は,できる限り裁判所による職権の手続で解消すべきと思いますので,方向性は賛成をいたします。ただ,ほかの手続にも影響を与える可能性はありますが,養育費の問題に限っての特則としての手続を用意する方向で検討していくことがよいのではないかと思います。   執行手続との関係でも,何回も申立てをしなければならないという問題があります。現在は情報取得のための制度もございますけれども,その都度申立てをしなければならないという負担がございますので,なるべく1回の包括的な申立てを可能として,その後,裁判所が主導して手続を進めていくということが望ましいと思います。ただ,17ページの@,Aについてですが,相手方から自動的に取得することができる情報が少し広すぎるような印象も抱いておりますので,もう少しこの辺りはバランスを図っていく必要性はあろうかと思います。   最後に,もしかしたら面会交流とも関わるかもしれませんけれども,18ページの(注3)にあるように,養育費の不払い等があった場合の制裁の制度についてです。17ページに書かれているように,履行命令の過料の引き上げなどは考えられると思いますし,民事執行ですと間接強制の制度,強制金の支払いを命ずる制度もございますけれども,それ以外にも,例えば間接強制の別の強制の仕方として金銭の支払い以外の何か別のペナルティを課す制度を考えていくこともあり得るのではないかと思っております。   簡単ではございますけれども,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。今津幹事,杉山幹事からもたくさん御指摘を頂きましたけれども,畑委員の御指摘との関係で言うと,子どものためにということで他の手続と区別して特別な扱いができることがあるのではないかという御指摘,あるいは,全体として申立ての回数を減らすという方向で考えるべきだというような御指摘を頂きました。それから,今までに出ていないところで申しますと,最後に杉山幹事が触れられた制裁の問題などもあるという御指摘もあったかと思います。   急がせてしまって申し訳ないのですけれども,御発言はまだあろうかと思いますけれども,養育費の問題につきましては今回はこの程度で打ち切らせていただきまして,次の機会にさらに御議論を頂きたいと思います。   それで,次は面会交流ですけれども,1時間ほどたちましたので,ここで10分ほど,今,14時28分ですので,14時40分まで休憩いたしまして,その後,面会交流の議論をしたいと思います。   では,休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   先ほどはたくさんの御発言を頂きましたけれども,養育費につきましては主に算定表の問題,あるいは手続の簡易化といった問題について御意見を頂戴いたしました。   この後は,面会交流について御議論を頂きたいと思いますが,資料の第3につきましては既に前回,説明を頂いているところですので,早速御議論を頂きたいと思います。第2の法的概念の整理というところについて,まず御意見を頂き,そして,その後に第3の取決めの促進確保,第4の取決めの内容に関する規律,これらをまとめて御意見を頂く,最後に手続に関する点について御意見を頂く,この三つぐらいのグループに分けて御議論を頂ければと思います。   まず最初に,法的概念の整理に係る部分につきまして,御発言があれば頂きたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。面会交流の話ですので,私の方からお話をさせていただければと思います。ありがとうございます。   第2ということなのですけれども,本日事務当局の方でこれまで準備いただきました資料,データを少し私の方で整理させていただきました。若干私が拾ってきたデータも追加で入れさせていただいてございます。まず,こちらについて触れさせていただきまして,第2に関しての意見を簡単に述べさせていただければと存じます。細かく説明している時間はございませんので,かいつまんで要約をさせていただきます。面会交流に関してでございます。   1ページ目,厚労省のひとり親調査の結果,取決め27.7%,今も履行している,29.8%。今回,法務省さんの方で調査いただいた協議離婚という部分に限っての実態調査結果,4ページに記載してございますが,71%の方が何らかの取決めをしている,しかしながら,定期的に会ったという回答は僅か26.8%ということでございました。これらの結果から,離れて暮らす親と子どもの交流がなされている,3割に満たないということが明らかになっているかと存じます。   次に,司法統計からデータを少し拾わせていただきました。協議の場が家庭裁判所に移った場合でございます。直近の令和2年,終局件数1万776件,認容合意7,031件,これを比率にすると約65%ということで,部会の参考資料でも提出されております。そのうちということで,ここは私の方で試算をさせていただきました。お子さんとの直接交流を認められているのは,うち5,530件ということでございます。比率にすると51%。グラフを作成いたしましたが,これは民法766条改正前,平成23年,若干の数字,上がったりしている部分がございますが,ほぼ変化はありません。家庭裁判所の調停手続,話合いをしても,約半数しか直接の交流の合意や決定を得られないということが見てお分かりいただけるかと存じます。   次に,これは先ほども申し上げましたが,2014年,日弁連さん主催の司法シンポジウムで公開された調査結果,ここを御紹介させていただきます。このシンポジウムでは,家裁の実情でありますとか,家庭裁判所の調停利用者アンケート結果などが報告されております。ここは時間のあるときにでもざっとお目通しいただければと存じます。   ここで私が皆さんにお伝えしたいのは,裁判所で合意をして債務名義化された面会交流がどの程度履行されているのかというところでございます。6ページに記載しております。(2)の@,44%,調停で合意した面会合流に関して,全くできていないという回答結果が示されております。もう養育費の議論は終わりましたので,今更ですが,合意された養育費が全く払われていないのは13%です。この事実,裁判所の調停の中で丁寧な合意形成が実現できていない,こういった進め方に問題があるケースもあるとは思いますが,裁判所で合意した,又は審判での決定が簡単にほごにされるということ,これは正に我が国の司法の信頼を損ねる致命的な問題ではなかろうかと思います。   実は,このデータに関して,私はある弁護士さんとしたことがありまして,簡単にその弁護士さんのコメントを紹介いたします。「同居人の代理人だったとき,依頼人に対して,面会交流も合意しましょう,数回会わせたら,子どもが会いたくないと言って断っていいのですよ,不履行にしても裁判所から履行勧告というお手紙が来るだけで,具体的なペナルティはありません,こんなことを話したことを思い出したと,当時安易な方法で合意させていた,後ろにいるお子さんたちのことは考えていなかった,今更ながら申し訳ない。」と,こんな発言がありました。こういうケースがどの程度あるかというのは定かではございませんが,やはりこういうケースが一定数あると考えております。   ここまで簡単にデータについて紹介させていただきましたけれども,第2に関して2点,意見を述べさせていただきたいと存じます。   1点目は,面会交流の権利性に関わることかと思います。民法766条改正当時,意見が分かれたということしか私は存じ上げないのですけれども,やはりこの児童の権利条約を持ち出すまでもなく,明確に子どもの権利である。あわせて,離れて暮らす親の権利でもあると,具体的には,やはり訪問権という形で位置付けるべきではなかろうかと考えております。私は,養育費不払いの要因の根本としては,離婚は親子の別れである,離婚後実子を扶養する義務はない,このように考えている層,こういった皆さんにも,義務に伴う,義務を実行するための権利ということで意識いただくことも必要なのではなかろうかと,こんなふうに考えます。   2点目です。祖父母その他を含めた面会交流権と,部会資料にもありましたが,最近,最高裁で「認めない」との判例ができました。結論から申し上げると,認めるべきと考えております。イギリスなんかが有名だと思いますが,祖父母を含めて面会交流権を認める国は多いと認識しております。我が国はやはり今,少子化,私が個人的にといいますか,当事者の相談を受けている中で,やはり祖父母の意向,協力の下,片方の親が子どもを連れ去るというケース,やはり実感として多うございます。子の取り合いに加えて孫の取り合いが明らかに増えています。何よりも,多くの子どもを愛する大人たちが子どもを支えていくということを可能にするために,離婚後,祖父母にも面会交流を申し立てる権利,これを認めるべきと,このように考えております。   まずはここまでとさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の御紹介に続いて,面会交流の権利性の問題と,それから申立権者の範囲の問題について御指摘を頂きました。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。今日は資料3の第5以下ということでありましたが,まだ多分触れられていない点だというふうに記憶がありますのが,それより少し前に遡ってもよろしいでしょうか。5ページとか9ページとか,その辺りに。 ○大村部会長 面会交流につきまして第2から始めております。今は第2について御意見を伺い,その後,第3,第4,第5と進んでいこうと思いますので,第2の部分につきまして,まず,御意見があれば頂きたいと思います。 ○戒能委員 最初のヒアリングのときに大変印象的だったのですけれども,実施条件について細かな取決めがなされていない方が面会交流が実際に行われやすいと,非常に気持ちの上でも楽に会えるような状況だったというのがあったと記憶しております。それは9ページに記述がございます。   それで,この面会交流の現行法の理解という点に関わるのですが,9ページの真ん中辺に,面会交流に関する取決めは父母間に権利義務関係を生じさせるのみであると,子に対しては直接的に何らかの法的義務を課すものではないことは当然であるというような論調になっていて,その前提として,5ページに766条第1項が述べられていて,これは取決めをする,しない場合もあるわけですから,父母間の協議や調停,審判等によって面会交流の内容が具体的に取り決められた場合には非監護親から監護親に対する請求権となるというわけです。非監護親から監護親に対する請求権ということになりますと,監護親の義務の履行ということを通して,9ページにまた移りますけれども,子に対しても直接的には法的な義務を課していないけれども,そういう監護親の義務の履行という形で子に,これは法的には直接的な義務とはなっていないかもしれませんが,論理的に言えば監護親は面会交流の実施に協力するというようなことが書いてありまして,結局は子の義務ということになってしまうのではないかと,そういう論理の組立ての問題ですよね。そうすると,子の意思の尊重にも関係してくる。本当に無理のない面会交流ということを考えるならば,少しそういう理屈立てについてもう一回検討する必要があるのではないかと感じております。   最後の方に移りますけれども,第5の18ページとか19ページの辺りに,高葛藤の場合,DV等の問題も取り上げられておりますけれども,直接的な強制執行を可能とする規律を設けるということが書かれていますが,すぐにそういうふうな結論付けというよりも,かなり慎重に考えていかなければならないと考えております。   例えばDVのときには,19ページのイ,課題のAで,加害者プログラムの受講を義務付けるというようなことが書いてありますが,その辺は日本のDV法の欠陥といいましょうか,まだそこまで至っていないわけですね,加害者対策が非常に不十分なわけです。言わば放置をされているようなことがあるし,そういうことも考え合わせながら,先ほど他の制度とか関係機関との連携ということの御発言がありましたけれども,このように結論付けていく課題として提言していくためにはハードルが結構高いのではないかと感じております。監護親の妨害というようなことが出ていたりしますけれども,その辺ももう少し,表現の問題だけではなくて認識の問題として,そういう状況をどう認識して,そして,それに対してどういう支援ができるのかとか,どういう他の制度を活用できるのか,連携できるのかを,相当慎重に議論をしていただきたいと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。最後に御指摘のあった執行に関わる点は,手続の方に関わる点で,他の制度との関連を踏まえて慎重に検討する必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。その問題と関わる形で,前半におっしゃった概念の整理の問題,これは先ほど小粥委員からも御指摘があったところですけれども,父母の間で面会交流について決めるということで,監護親と非監護親の間で基本的には権利義務が生ずるのだとして,しかし,それは実際上,子どもに一定の影響を及ぼすことになるのではないか,そこのところの整理が必要なのではないか,これは養育費の方についてもこれまでに議論が出たところかと思いますけれども,そうした整理をしていく必要があるだろうという御指摘を頂いたものと思います。手続の問題も,それと関連付けられての御発言があったものと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。今の戒能先生の御指摘と多分,重なる部分があるのではないかと思いますし,また,少し後ろの部分とも関係するとは思うのですが,取りあえず,面会交流の法的性質あるいは権利性について明らかにするということについて,少し意見を述べさせていただきたいと思います。   面会交流に関しては,現在,一般的な教科書レベルの説明で言うと,親の権利ではなくて子どもの権利だと構成した上で,その子どもの権利である面会交流を認めないのは監護親の妨害だとして妨害排除を求めるといった形で構成するといった説明の仕方が多くなってきているのだろうと思います。ただ,私自身は,子どもの権利だと単純に構成することに対しては,基本的には慎重さがもう少し求められるのではないかと思っております。   2点ございまして,一つは面会交流に関して子どもの利益がもう最優先に判断されるべきだ,この部分については恐らくほとんど誰も異論はないのだろうと思います。ただし,子どもの利益が最優先に考えられるべきだということと,子どもの権利だと構成して,子どもの権利については当然実現されなければいけないと構成しますと,このときには何か,原則面会交流が認められることになるということにもなりそうな気がします。後ろの方で,面会交流に関してのルールをある程度法定するかどうかという議論がありましたけれども,例えば,子どもの利益を最優先に判断して決めるというのだといった形でルールは明確化したとしても,余り機能はしないような気も一方でします。  しばしば,面会交流を原則として認める,ただし子どもの心身に害が及ぶようなおそれがある場合には認めないというような形で説明される場合もありますが,この場合には,子どもの利益というのは,言わばただし書の中で,心身に害が及ばない限りは面会交流が認められるという中で実現されているということになり,子の利益を最優先に判断するというのとはかなり開きがあるような気がします。そうした意味で,子どもの権利条約を手掛かりにしてするという説明はあるのですが,子どもの権利だと単純に構成するということが実は結論をかなり左右することにもなるのではないかと思いますので,その点でかなり慎重に判断すべきではないかというのが1点です。   もう1点は,これももう色々なところで出てきているのではないかという気もするのですが,親の権利だと構成しては駄目で,子どもの権利だと構成することでうまく説明できるのだとはいうのですが,実際に争いになっているのは,それを権利というかどうかはともかく,やはり親の主張なのではないかという気もします。先ほど,訪問監護,訪問権といった形で構成するというのはあるのではないかという御指摘も武田委員からありましたけれども,ある法社会学者の方の論文の中で,そういうことを言うのはタブーのようにはなっているけれども,やはりむしろ実際の紛争性という観点から見ると親の権利として争われているのではないかといった指摘もなされています。そうした実質を踏まえて議論する必要もあるのではないかという気もいたします。   その点で,非常に漠然としたことで申し訳ないのですが,第2のところで性質を議論,考えるというときに,児童の権利条約から非常に単純に子どもの権利だと構成しましょうということを所与の前提にして議論はしない方がいいのではないかと思っているということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。議論の仕方について御注意を頂いたと理解をいたしました。権利性を認めるということの効果に留意しながら議論する必要があるだろう,それから,実際の紛争が親の間で争われるということも視野に入れて議論をする必要がある,そういった御指摘を頂きました。 ○久保野幹事 ありがとうございます。久保野でございます。面会交流の法的性質を議論することが重要であること,そして,今御指摘のありました,子どもの権利ということを所与には考えないという視野で扱った方がよいということについて,賛成しているのですけれども,権利や義務と考える際に,面会交流というものを余り狭く捉えないということ,あるいは面会交流の外に隣接して存在するかもしれないものについて意識をするのが大事ではないかと思っております。   面会交流を狭く捉えないということにつきましては,既に資料の5ページ目の3(1)の3行目で,直接会うことだけを意味するのではないということは書いてありますけれども,メールですとか写真の交換等となっていまして,いずれも子どもの側で何らかの応答ですとか,子どもに作用する,影響するということが含まれているものになっているのではないかと思います。   他方で,ここで親の権利と呼ぶかということはともかくとしましても,親が求めていることの内容,あるいはそれを考えるときに視野に入れてもよい問題としましては,既にこの部会の中でも指摘はあったと思いますけれども,離婚したからといって,子どもがどこで何をしているか,元気で過ごしているかということさえ全く分からないといったようなことでよいのかどうか,親子である以上,説明の仕方はいろいろあるのかもしれませんが,どう在るべきなのかという,今言ったような問題も含めて考えてよいのだと思いますし,あるいは,そのような広い問題とつなげて狭い意味での面会交流の問題も考えていいように思います。外国でも人格的な関係の維持というようなことが条文に書かれていると紹介がありますけれども,それの意味するところといったものについても慎重に見ていくということが重要なのではないかと思う次第です。   以上です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。面会交流というものを狭い範囲で捉えずに,最後におっしゃいましたけれども,人格的な交流という観点から広く考えていく必要があるのではないかという御指摘を頂きました。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。ありがとうございます。面会交流についてお話しするのですけれども,この間,私が留保するような意見が多かったので,少し誤解を生んでいるのだなと思いましたので,私自身は安全な面会交流ができることは大変賛成でございますし,私もシングルマザーで子どもを育ててきたのですけれども,父親と自由に会っており,思春期に大変だったときに子どもが父親に相談して,大変有り難かったなというときがございましたので,基本的には賛成であるということを申し述べておかないと,皆さんに誤解があるかもしれないので,少し申し述べておきたいと思います。   その上で,しかし今,DV対策というのが,あるいは虐待の対策というのがやはり不十分である,例えば,いろいろな海外の条約ですと,DVがあった場合に加害者の方に退去命令があって,家を出なくて済む,お子さんはそのおうちで過ごし続けられるというような制度がなかなか日本では認められていないですとか,そういったことで逃げて,そのまま身を隠さざるを得ないというようなことがございますので,また,虐待とDVというのはとても関連しておりますので,この不十分な中で何を考えるのかというときに,やはり危惧があるということは申し述べて,まずはこの子どもにどんな深刻な影響があるのか,もう少しこの会議の中できちんと把握されるべきであると思っております。   その上で,今の法的な枠組みなのですけれども,私どもは会員数,今,4,600人ぐらいいらっしゃって,いろいろなお話を聞いているのですけれども,シングルマザー,シングルファーザーさんも少しいらっしゃいます。その中で,会わせたいと思っているお母さんが,全く別れた後に父親の方が会ってくれないということの悩みを語る方がいらっしゃいます。決して少なくはないのですけれども,今の立て付けですと,非監護親が監護親に請求する権利であるとなっているのが非常に違和感がございました。立て付けそのものを何か,あれなのですけれども。   それから,会いたいとおっしゃっている方が数年たって全く関心を失ってしまうようなケースというのもございまして,そうすると,お子さんはずっとお父さんと会えていると思っていたら,突然ぱたっと,大体ぱたっとというときは,お父さんが再婚されたとかそういうときでございます。そうすると,この面会交流というものが,お子さんが育ち上がるまで少なくともずっと継続できるものにするという,その責任にもなってきますので,そこにも少し,取決めというものに適合するのかなという気がしております。つまり,請求する側の任意な意思で突然ぱたっと取り止まってしまうようなものが,果たして認めていいのだろうかというようなことがあって,そういうことで子どものフォローをする監護親の方は本当に苦労したというような体験も聞いております。   ですので,気持ちがなくなった父親に会う義務を課したとしても,うまくいくのかどうかということもございますので,こういった,法的に取決めをして実行させるというところに何か力点があるようなふうに資料3は書かれているのですけれども,やや違和感がございまして,私は多様な関係性を包摂できるような法律でないと実質,動かなくなってしまうのではないかと思っておりますので,少し机上の空論に見えて仕方がないところがございます。   9ページの2段目ぐらいですかね,父母間の権利義務関係であるというようなところについては,戒能委員がおっしゃったように,私も非常に,ここは理屈上成り立たないようなことを書かれているように思いますので,しっかり整理された方がいいかなと思いました。   それから,少し後になりますけれども,19ページとか,フレンドリー・ペアレント・ルールですとか,いろいろ書かれておりますが,やはりこれは非常に欧米,オーストラリアでも失敗として,性虐待とかを主張することをためらわせるといったようなことも聞いておりますので,とても危険かなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。たくさん御指摘を頂きましたけれども,DV,虐待対策が不十分な中で,こういうものを認めていくことについての危惧感,あるいは継続性が確保されないということがもたらす問題,取決めをして実行するということでうまくいくのかといったことが一方で指摘され,他方で,非監護親の側から監護親に請求するという立て付けになっているけれども,監護親の側が望むのに会ってくれないという問題もあるといった御指摘も頂きました。手続に関わるところにつきましては,戒能委員からも先ほど御発言がありましたけれども,改めてまた後で御意見を頂戴できればと思います。 ○棚村委員 早稲田大学,棚村です。面会交流についての法的概念とか,権利性とか性質,そういう問題について,多分,各論でいろいろ出てくると思うのですけれども,窪田委員が少しお話ししていた,子どもの権利という構成が果たして本当に有用なのだろうかということについては,やはり慎重に考えた方がいいと思います。   ただ,私は調停委員を25年ほど東京家庭裁判所でさせていただいて,やはり面会交流の問題というのはかなり争いになりやすいというか,対立になりやすい難しい論点のひとつです。しかし,これをお父さんやお母さんの権利というよりは,お子さん自身のために用意されているものなのだということを説明すると,割合とすんなりと,それぞれの主張を譲り合いながら,お子さんのためにという形で転換をしていただけるというときもあります。ですから,紛争解決の調整のときの一つの道具として使わせていただくというのは,かなり私自身は効果があったと思います。   もっとも,権利構成をしたり,そういう法的枠組みについて,子どもの権利とすることによって,では具体的に子どもが何を発言して,子どもの気持ちとか思いがどれくらい反映されていくのかということを言うと,子どもの年齢が小さければ小さいほどなかなか難しいですから,やはり大人がそこにどう関わっていくかという,三面的なトライアングルの関係として議論せざるを得ないところがあると思います。ですから,親の権利とか子どもの権利かという二項対立的な白黒で議論するのではなくて,お子さんの思いや,一番子どもにとって幸せにつながるような関わり方をどうするかということで議論すべきだと思っています。   そして,久保野幹事の言ったことにも全く賛成です。要するに,面会交流もそうですし,養育費もそうなのですけれども,やはりお子さんが幸せにすくすく育つために,健やかな育ちとか成長に両親がどういうふうに,あるいは両親だけではなくて,おじいちゃん,おばあちゃんも含めて,どう関わることができるかというのがすごく重要な視点だと思うのです。そうだとすると,前から言いましたけれども,親権とかという言葉も,親の支配権という古い発想に根ざしています。それから監護という言葉も,世話だとか教育だとかいろいろなものとの関連の中で,当然のように使われてきたのだけれども,やはりもう一度,これは小粥委員がおっしゃっていたとおり,面会交流とか養育費という今の条文上の法的概念とかの表現があって,そこで個別の問題の議論をしてしまうと,かなり狭く限定されてくると思うのです。   結局,前にもペアリングタイム(親子の時間)と変わってきているとか,親権についてはペアレンタル・レスポンシビリティ(親責任)というので,むしろ親の義務とか責任ということが強調されたり,親の配慮という言葉に置き換えられつつあるという流れがあるとすると,もう一度お子さんの養育に対して,周りの大人で何かできるとしたら,誰が何をできるのかということを具体的に議論していく必要があると思うのです。話合いができるのか,できないのか,それから,話合いで決めた結果が本当に守られるのかどうかという,いろいろな段階やレベルがあると思います。そのときに,法的概念というのはすごく大事なことなのですけれども,それありきで議論をするのではなくて,その法的概念とか法的構成をすることによって誰の利益がどんなふうに守られていくのかということを,きちんと場面ごとに細かく議論する必要があると思うのです。   そうなると,場合によって,面会交流というのが766条に置かれて,赤石委員が最初におっしゃいましたけれども,実は結婚外の子どもについても,認知の一番最後の規定のところでは,788条ですか,そこでは認知した子どもについて監護についての766条を準用するとなっているのです。そうすると,全く婚外子についての監護とか面会交流とか養育費,ないわけではないのだけれども,ただ,専門家でないと正直言ってよく分からない規定ぶりになってしまっているのです。これをもっと,どこの場面でどういうふうに条文を書いていくかという条文そのものの位置付けとか,そういうこともはっきりさせないといけないのではないか。何かこの場面でこういう条文が出てきて,これでやればいいのだということだけではなくて,やはり一般の人たちが,井上委員なんかもおっしゃっていますけれども,条文というのは表現や場所についてもできるだけ分かりやすく示していく必要があると思うのです。   こういうことを考えると,面会交流の概念そのものもそうなのですけれども,親の元にお泊まりをしたりという長く時間を過ごす場合もあれば,メールとか,場合によってはビデオ通話みたいなので今,やり取りするというのもできるわけですから,ある意味で,面会交流というのを,久保野幹事もおっしゃるように,狭く考えるのではなくて,どれくらい充実して,離れて暮らす親とか,他方の親と充実した時間が過ごせるかどうかみたいな形で,もう一度検討し直すということの実質のほうが大切だと考えます。一番ふさわしい法的概念とか法的構成というのは,正に私から言うと,各論の取決めや話合いをどうやって進めるかとか,決まったことが本当に実現されるのかどうかという,そういう議論の中で,DVとか,もちろん暴力の問題もありますから,いろいろと考えて検討していく中で,最終的に法的概念として,こういうような法的構成や法的枠組みにしておくことによって,お子さんにとっては一番いい時間の過ごし方,それから,養育費でもそうですけれども,お金が子どもにきちんと届くというような形の議論をしていった方がいいのかなと思います。   私も,法的性質とか衡量事項とか位置付けというのは非常に重要だとは思うのですけれども,やはり各論のなかで個別具体的な問題につきいろいろな議論を進める過程の中で,一番ぴったりとくる法的な概念とか構成みたいなものを採用していくというか,議論していくという順番でいいかと思います。しかし,特に議論の仕方としては,個別の具体的な問題になってくると,かなりいろいろな工夫とか,いろいろな提案みたいなものについてもコンセンサスができそうなところは結構出てきていますので,是非この面会交流の法的概念とか法的性質,これも整理していただいて,そして,次のステップでの議論の中で,更にこの問題というのは検証されたり,議論が続けられなければいけないと思いますので,そういう感じで,面会交流とか親権,監護とか養育費というもの,それ自体の今の位置付けとか概念,この点についてもかなり見直す必要性が出てくるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさん御指摘いただきましたけれども,3点ぐらいにまとめられるのかと思って伺いました。まず最初に,子どもの権利という捉え方が持っている象徴的な意味について御発言があったかと思います。これが操作的な概念として使われますと,子どもの権利があるからということで議論が済んでしまうということになるのですけれども,理念として子どもの権利,窪田委員はそれを子どもの利益とおっしゃったのかと思いますが,それがある,その上でそれをどのように具体化して実現していくのかという議論が重要なのではないかということが,2番目に御指摘のあったところかと思います。それとの関係で,概念について再整理をし,条文の置き方などについても考えていく必要があるという御指摘も頂いたと思います。 ○佐野幹事 弁護士の佐野です。今,棚村先生がおっしゃいました,各論を決める過程で一番いい構成をというお話がありましたけれども,その候補として挙げていただきたいと思って,申し上げます。   私はやはり面会交流については子どもの権利として構成すべきではないかと思っているのですが,ただ,面会交流権という形ではなくて,精神的,肉体的に成長発達する子どもの権利と,それが面会交流を通じてなされるという構成で,子どもの権利というべきではないかと思っています。ちなみに,この成長発達権というのは児童の権利条約6条2項で,それを最大限に確保するべきという義務が締約国には課されていますので,それを充実させるために国もやるべきことをやる,両親も,非監護親,監護親,両方とも,それができるような,行動変容もあり得ると思うのですけれども,協力をしていくと,そういう形で構成できるのではないかと思っています。   そういう考え方をすれば,@,Aとありますけれども,2番目の祖父母等との面会交流についても,やはり精神的,肉体的に成長発達する権利に資する面会というのはどういう人との面会なのかという考え方ができるのではないかと思います。実質的には実際に監護をしていた人たちということになるかもしれませんけれども,一つ,候補としてお考えいただければということで,申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの基本理念あるいは目標のようなものについて,成長発達をする権利という考え方を挙げていただきました。 ○池田委員 ありがとうございます。法的性質の点について,子どもの権利ということに対して慎重に考えるべきだというお考えがあるということもお聞きしたところですが,私自身としては,やはり子どもの権利と考えるべきだろうと思っています。日弁連の議論状況を少し御紹介しますと,親の権利だと正面を切っておっしゃる弁護士というのは余り聞かないかなというところです。では子どもの権利といったときに,どんな結果を導くのかということですけれども,一方で,子どもの権利なのだから,子どもが会いたくないと言えば,それは権利を放棄しているわけだから,子どもの意見表明権というものを尊重して,その結果,面会させるべきではないと結び付ける考え方があるように思います。もう一方で,子どもの権利というのをもう少し広く捉えて,自由権的な放棄可能な権利というよりも,子どもが会う権利があるのだから,その実現のために周囲の大人が環境を調整しなければいけないと,子どもが会いたくないと言っていても,別居親あるいは同居親に変わってもらって,会いたいと思えるような環境を作る,あるいは,会ってあげてもいいよと思うような環境を作るというところの大人側の義務を引き出すような形での権利構成というのもあるかなと思っています。佐野先生が今おっしゃったのは後者の方に係る御意見だと思いますけれども,私もそちら側について賛成をしているところです。   実務的に,例えば,子どもの手続代理人として活動して,面会が問題になっているケースなどで,子どもが嫌だと言っている,あるいは,親御さんの方へ何らかの抵抗があるとかというときに,うまく調整をして面会につなげられるような活動を一生懸命する場合もあるわけですけれども,何に向けてそういう活動を頑張ってやっているのかというと,やはり子どもの利益というのでは少し弱いかなというのが実務的な肌感覚としてあって,面会ができる環境が出来上がることに対する子どもの権利のためにこそやっている活動なのではないかという感覚がしています。 ○大村部会長 ありがとうございました。権利ということで捉えることの意義について,御意見を御披露いただいたと理解をいたしました。 ○落合委員 どうもありがとうございます。簡単なのですけれども,少なくとも親の権利という立て方は,私はそぐわないと思うということを少し言っておきたいと思います。親の権利というと親の権力に近いわけですよね,力関係が違いますので。何か少し前近代的な感じがしてしまって。親が子どもに会いたいという気持ちがあるというのは,それはある場合はあるでしょうし,それは尊重するべきだと思うのですけれども,権利として書き込むと,いろいろなかえって不都合や不自由が出てくるだろうと思いまして,それには反対だということを申したいと思います。   それから,子どもの権利として書くということについてですけれども,権利といっても,今日の御議論ですと,もっと緩やかな捉え方になるわけでしょうけれども,未婚で生まれた場合などにも適用しないと一貫性がないですよね。例えば,フィリピン人のお母さんと日本人の父親の間に生まれた子どもをお父さんに会わせる支援をしているグループを知っていますが,なかなか会ってくれません。こういうときに権利という言葉を使えるのか,その辺りとの一貫性も十分議論しなければいけないと思います。   少し繰り返しだったのですけれども,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。子どもの権利というところから何を導くのか,これは先ほどの池田委員からも御指摘のあったところかと思います。それから,親の権利という見方に反対だという御意見を頂きましたけれども,これも,やはり親の権利ということで何を言っているのかということを更に突き詰めて検討する必要があるかと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。少し繰り返しになりますけれども,私自身は,既にそういうお考えも示されたところではあるのですけれども,面会交流の問題というのは,子どもの養育に対して誰がどういう形で関わっていくべきか,また関わっていく義務を負うのか,さらにはその権限を持っているのかという問題の一環ではないかと考えております。養育についての義務を負うというのは,それは親子である,法的な親子関係といいますか,それであることに伴って,親が子に対して養育の義務を負っていると。では,義務の権利者は誰かというと,やはり子であるということになるのだろうと思います。そういう意味では子どもの権利ということになるでしょうし,適切な養育ということを求めることができるわけで,その中には,具体的に物理的に会うということもあれば,久保野委員がおっしゃいましたような,それ以外の様々な形の人格的な交流ということを求めるということができてしかるべきなのだろうと思われます。   一方で,義務といったときに,その義務を果たすための権限という問題もあり,例えば,義務を果たすためには,同居している親,もう一人の義務者ですけれども,義務者に対して協力を求めるとか,そういうことも出てくるということがありますので,単純に誰の権利かということでは余り問題は解決をしないように思われます。誰の誰に対する権利であってということと,それがどういう内容のものであるのかということが問題であるし,その内容というのも,子どもが親に対して権利を持っているということだとしても,それが更に具体的にどのような内容のものとしてどういう請求ができるとか,どういう法的効果を持ってくるかというのは直ちに決まらないということがありますので,それを踏まえて考えるべきなのだろうと思います。   そうしたときに,法文化するに当たっては,今までの御議論を聞いても,権利一つの言葉だけでも,一体それは何を意味するのかとか,イメージが非常に違うということがありますので,誰の権利であるということが仮に了解が得られたとしても,それを法文化するときに,法文化することに伴う様々な影響や効果ということについても十分考える必要があるのだろうと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。一つは,子どもの養育に伴う義務を誰が負うのかという点につき,義務者の間でどのように義務と権限が分配されるのか,これは養育費について沖野委員が前におっしゃったことと同じ考え方なのだろうと思いますが,そういう枠組みで問題を整理する必要があるのではないか,その中で具体的な義務ないし権限の内容を詰めていく必要があるだろうということだったかと思います。それから,もう一つは,その上で条文化するということになると,それに伴う様々な問題が出てくるので,そうした問題についても配慮が必要ではないかという御指摘を頂きました。ありがとうございます。   第1の法的概念の整理というところについて御意見を頂いてきましたけれども,これだけを抽象的に議論しても,なかなか話は進まないということで,具体的な中身との関係で,ここに立ち戻って議論をする必要があるのではないかということだと理解をいたしました。   それで,最初のところだけで既に1時間近くたっておりまして,あと残っているところ,第3,第4について御意見をいただきたいと思うのですけれども,いまこの議論を続けますと,今日のこの後のヒアリングなどが終わらなくなるかと思いますので,面会交流につきましては,第3以降の問題は,次回の頭で継続して御議論いただくということにさせていただきたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,本日の議論も踏まえまして,次回,第3,第4,第5の具体的な問題について御意見を頂きたいと思います。   そこで,次が,前回の会議で御要望があった,父母の離婚が子の生育に及ぼす影響に関する心理学的知見,この点につきまして菅原委員にお話を頂くことになっておりますので,菅原委員の方から15分ほどお話を頂きまして,その後,同じぐらいの時間,質疑応答の時間を設けたいと思います。   菅原委員,どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○菅原委員 ありがとうございます。お時間頂戴いたしまして恐縮でございます。白百合女子大学の菅原と申します。それでは,資料の提出が大変遅くなりまして誠に申し訳ございませんでしたが,会場の先生方には机上で,またオンラインの先生方にはメールでお送りさせていただいているかと思いますので,そちらの方に沿ってお話をさせていただきたいと思います。   私は,心理学の中でも発達心理学という領域におりまして,今回の報告では,その領域の中でどのような検討がなされてきたのかということを簡単に御紹介させていただくということになろうかと思います。十分な報告にならないかもしれませんが,お許しいただきたいと思います。   まず1番目に,子どもにとっての親の離婚というところなのですけれども,多くの離婚におきまして,程度の差はあるものの,法的な離婚に先立つ夫婦間葛藤が存在しており,私たちの領域では夫婦間葛藤はインターパレンタル・コンフリクト(inter-parental conflict),IPCと略すことが多いのですが,このことにかなり着目して研究がなされてきております。こうした夫婦間葛藤が離婚後だけでなく,当然ながら離婚の前にもあって,ケースによっては長い歴史を持つものもあります。そうした夫婦間葛藤が子どもの発達や適応の多側面,すなわち情緒的,また行動的,認知的,知的な発達にネガティブな影響を及ぼすことは,既に多くの発達心理学的研究から明らかにされてきております。ですので,離婚前後の時期での子どもにとって,夫婦間葛藤は大きなストレッサー,ストレス源となります。   また,片方の親との離別というのは,その親が既に愛着の対象であった場合に,子どもの愛着というのは0歳代に急速に発達するもので,生涯に続く対人関係発達の基礎となるものですが,その愛着の対象であった場合には,対象喪失に伴う悲哀の体験となります。そのほかにも転居,転校や生活水準の低下など,離婚は子どものネガティブなライフイベントの連鎖を引き起こす可能性を有しています。また,両親ともに愛着の対象であるときは,子どもは両者を欲して,どちらかを選ぶことはできません。大人の都合による引き離しや子の奪い合いは子どもの心を深く傷付けることになってまいります。   離婚のネガティブな影響を予防,軽減して子どもの健全な発達に資する安定した生活の再構築を目指した関係者の,先ほどから周囲の大人ということが出ておりましたが,丁寧な関わりとサポートが必要とされます。具体的には,子どもが離婚に関する説明を年齢に応じた形で受ける,安全で受容的な環境の中で自分の気持ちや意見を傾聴してもらう,安定した新たな生活と人間関係の形成,また重要な人間関係が維持されるということが重要であることが言われてきております。   2番目としまして,離婚の影響性に関するエビデンスの問題について,少し触れたいと思います。先進諸国において離婚率の増加が始まりましたのは1960年代後半以降でございますが,この頃にそもそも発達心理学が成立したということもありますが,この頃から子どもへの影響を問う心理学的な研究が増加してまいりました。図1に,2021年7月24日現在で,研究データベースを見ますと,既に4,615の研究論文が親の離婚と子どもの発達との関連いうテーマで公刊されています。主には心理学,精神医学,小児科学の領域で研究が展開されてきております。離婚の影響に関する研究というのは非常にデリケートな面も多く含みますので,その実施は容易ではありません。成人期に至った時点での回顧や,またケース研究は多くありますが,渦中の親子を対象とした科学的な方法論を用いた実証研究は今まで少なかったのですけれども,近年かなり海外で活発になってきております。そこで,今日はそうした海外で実施された実証研究の結果の幾つかを紹介したいと思います。次のページをお願いいたします。   まず,非離婚家庭との比較というところから研究がスタートしております。これに関しては既に多くの研究がございますが,アメイト(Amato)の2014年のレビューによりますと,世界各国で実施された多くの研究から,子どもの健康と発達に関する様々な側面について検討がおこなわれてきています。多く扱われてきている子どもの発達の結果変数を表1に示してございますが,1の精神的健康,2の健康リスク行動,3の学校適応,4の自己評価,5の対人関係までございます。これらの側面において,非離婚家庭と比較しまして,統計学的に有意なレベルでのネガティブな差が観測されてきております。しかし,条件に合致する複数の公表された研究のデータを統合して再分析をおこなって大きな結論を得るということを実証研究の領域では行うのですけれども,そうしたメタ分析の結果から,その効果量というのは比較的小さいということも知られてきております。要するに,いろいろな帰結があるということが知られてきております。括弧の中に書いてございますように,1.0だったら決定的に悪い影響がもたらされるということになるのですけれども,その影響力は弱い程度から中程度の範囲で,ヨーロッパ各国の研究で0.23から0.38,アメリカの研究で0.24から0.33といった値の間に入るということが報告されてきております。   2−2を御覧いただきたいと思います。子どもの発達段階に応じて,子どもが離婚に対してどう反応するのかということも研究が多く重ねられてきました。これに関しまして,アメリカの小児科学会,APAが節目,節目でまとめを行っておりますが,最新の2016年のまとめを見ますと,乳児期におきましても既に愛着が発達すると先ほど申し上げましたが,愛着対象との疎遠や喪失,生活環境の変化に対して否定的な情緒反応や摂食,睡眠の問題が発現することがあります。そして,よちよち歩きのトドラー期には分離不安的な行動が激しくなったり,排泄や言語などせっかく発達したものが後退したり,また摂食,睡眠の問題の発現も一般的であることが知られています。   幼児期後半では,別離の永続性についてまだ子どもの認知発達上,理解することができません。ですので,繰り返し片親の不在について尋ねたり,また,自己中心的な思考がメインになりますので,自分がいい子にしていればまた両親の和解が達成されるといった和解幻想を強く抱きます。それがかなわないということで自己卑下的な感情を発達させるということも知られております。結果,退行や摂食,睡眠の問題に加えて,外在化型,上の表1にございますが,攻撃的な不注意,多動,不服従といったような行動の問題が見られるようになることもあります。   小学校低学年段階では,自己卑下や和解幻想もまだ続いておりますが,さらに,なかなかストレスが解消されないとひきこもりや怒りなどの否定的な感情の発現も見られ,よって,学校でのパフォーマンスが低下したり,また,非同居親から見捨てられてしまったのではないかという悲しみの感情を抱いたりするようになります。   小学校高学年以降の思春期,青年期では,認知発達が一段と進み,客観的に自分を見られるようになりますが,同時に客観的に親の関係も見られるようになりますので,離婚の理由を部分的に理解できるようになってまいります。しかし,状況を受容することには依然として困難を抱えており,非行やひきこもり,薬物使用,不適切な性行動,学校不適応が出現することもあると言われています。   以上のように,発達最初期からどの年齢段階でも,子どもは離婚の影響を受けることが知られてきております。こちらのアメリカ小児科学会の論文では,年齢に合った子どもへの説明とカウンセリングが必要であること,また,パンフレットや親子それぞれに向けた本や絵本を用いたガイダンスは否定的な影響性を軽減することに役立つ可能性があり,小児科医はよく子どもの心身の状態を把握できますので,子どもの状況を代弁することや,親へのアドバイザーとして機能することの重要性が強調されていて,まさに周囲の大人の専門家の立場の一つとして機能しようということをこちらの学会でも決意しているという状況でございます。   2−3,次のページを御覧いただきたいと思います。発達心理学の領域では,こうした影響がなぜもたらされるのかというメカニズムに関する研究というところに進んできております。こうした離婚の悪影響を予防したり介入するにはどういうことが必要なのかを青明らかにしようとする研究が最近進んできております。   一つ代表的な研究としまして,@としてウィーバーとショーンフィールド(Weaver & Schonfield)のアメリカの国立小児保健人間発達研究所による長期にわたる発達追跡研究のデータを用いて離婚後の子どもの適応について検討したものを紹介します。このデータベースは発達心理学領域では20世紀後半における最大のデータベースの一つで, 全米の1,364名の対象者を0歳から15歳になるまで追跡をしているものなのですが,5歳から15歳までの間に離婚を体験した260名と,この離婚群と人口統計学的変数や夫婦間葛藤の程度,離婚前の母親の抑うつや母親の子育てストレスの程度について同質な非離婚群をマッチドサンプルし,10回の時点で測定された外在化型及び内在化型の問題行動との関連について両群を比較した分析がなされています。   分析の結果,やはり一貫して離婚群の問題行動傾向の得点が高いということも明らかになりましたが,家庭観察で実際に子どもに対する敏感性や応答性について測定した離婚後の母親の養育の良質さや母親の抑うつの程度,家庭の収入や教育的環境の良好さといったものが媒介効果を有することが明らかになりました。簡単に概念図になっておりますが,離婚ということが直接子どもの問題行動を引き起こすのではなく,その間に,家庭の経済状況と教育環境の悪化と,それから同居する親の養育の質の低下というのが直接的な原因となっていて,よって,この媒介要因となっている経済状況や同居親の養育をサポートすることができれば離婚の悪影響というのを防いでいくことができるのではないかといったような議論がなされております。この研究の結果,離婚後の親の子どもへの関わりの良質さの維持とか回復への支援,また,離婚後の経済状況や生活環境についても配慮する必要があることが明らかにされました。   Aでございますが,先ほども御紹介しましたように夫婦間葛藤は離婚前後の時期の子どもにとって大きなストレッサーになりますが,離婚後の共同養育ということに関しまして,夫婦間葛藤との関連を含めた検討が近年増加しております。アメイト(Amato)らの2011年の研究はその代表的なものの一つなのですが,離婚後の子どもの適応状況には大きな個人差があり,迅速に回復することもあれば,影響が長期化することもあります。アメイトらが先行研究の総覧より,回復には二つの要因が重要であるという仮説を立てております。aとして,住んでいない方の非同居親と子どもとの関係性の良質さ及びb離婚後の元夫婦の関係の良質さが影響するということで,アメリカの代表性の高いサンプル,ザ・ナショナル・サーベイ・オブ・ファミリーズ・アンド・ハウスホールズ(the National Survey of Families and Households)の13,017名のデータを用いて検討を行っています。このNFSHのサンプルから9歳から19歳の子どもを持つ944組の離婚世帯を抽出して,過去1年間での非同居親との関係について10カテゴリー,先ほども面会交流の中身について少し議論がございましたが,親子の会話,訪問頻度,宿泊,訪問することへの親の積極性,重要事項への相手の影響性,それから,夫婦の問題ですが,夫婦間葛藤,夫婦の会話,子育て支援,干渉の程度,親としての相手への満足度といったような項目で測定を行い,これらの値を用いてクラスター分析を行って,離婚後の養育形態について三つのタイプが実際には存在するということを抽出しております。   アメリカではグッド・ディボース(Good Divorce)という概念もありますが,協力的な共同養育,すなわち親子夫婦ともに交流があって,夫婦間葛藤が少なく,相手に対する満足度も高いといった協力的な共同養育のクラスターが全体の29%,また,並行養育,すなわち親子の交流は中程度で夫婦の交流はほとんどなく,夫婦間葛藤は相対的に高いというタイプで,これが35%,また,単独養育ということで,親子夫婦とも交流がほとんどなく夫婦間葛藤は協力的共同養育と同じ程度に低いというグループで,36%でした。この三つのグループについて,従来の研究で言われていた子どもの様々な否定的な結果変数について検討を行っているのですけれども,12の適応指標のうち二つの指標において,すなわち思春期の子どもの問題行動と成人期前期での父親との親密さにおいて,協力的共同養育群は他の2群より良好な状態にあるということが示されました。夫婦間葛藤のレベルが低く,交流頻度の高い協力的共同養育のポジティブな影響性が,12のうち二つだけですけれども,部分的に示唆される結果が報告されています。   次のページをお願いいたします。離婚後の両親の養育時間,これを最近ではパレンタル・タイム(Parental Time)PTと呼んでおりますが, 夫婦間葛藤,それと両親の養育の質の統合的な検討が行われるように研究が進化してきております。共同監護の実施率がアメリカや北米諸国よりも低いドイツで行われたシュタインバッハとアーグスティン(SteinbachとAugustijn)の2021年の研究では,ドイツの1,161世帯の離婚家庭,子どもは0歳から14歳です,を対象として,1か月に非同居親と過ごす昼間と宿泊の日数を指標に取りまして,30%未満の群を単独養育群とし,30%から50%の群を共同養育群ということで両群の比較が行われております。従属変数として,子どもの問題行動,身体的健康度,友人関係の問題,学校の成績といった4側面を測定し,統制変数として人口統計学的な親の学歴,子どもの両家庭間の移動の数,これは共同養育を実行している子どもたちのつらさとしても言われることが多くなってきているものですが,その移動回数というのも入れており, さらに夫婦間の良好さ,夫婦間葛藤レベル,母子関係と父子関係の良質さを投入して重回帰分析を実施した結果,単純な相関では,実は共同養育の方が4側面に全てプラスの効果が出ていたのですけれども,この統制変数を入れるとその効果は消えまして,問題行動につきましては,両親間の関係性のよさと夫婦葛藤レベルの低さというところに有意な関連が示されました。   続いて実施された媒介分析によって,共同養育の結果変数に対する効果は親子関係の質によって媒介される間接的なものである可能性が示唆されました。共同養育が親の関わりの良質さに影響して,そのことが4側面でのポジティブな結果になるのではないかという仮説的なモデルが成り立つのではないかということが報告されております。しかし,この研究も横断研究であるため,真の因果関係は不明です。元々養育の質の高い両親が共同養育を選択するのか,あるいは共同養育をしている中で親の養育の質が上がっていくのか,今後の縦断的な検証が必要なところです。   最後に,オハラ(O’Hara)らの2019年の研究を御紹介します。こちらの研究では,夫婦間葛藤が高いということで裁判所より介入プログラムへの参加を義務付けられたアリゾナ州の536世帯のうち,9歳から18歳の長子を持って,研究に参加してくれると応諾した141世帯を対象として,介入前と9か月後の2時点で,子どもに対する構造化面接を中心に測定を行っております。   父親の養育時間ということがこの研究では大きく問われたのですが,宿泊日数で測定した父親の養育時間が夫婦間葛藤及び両親の養育の質を媒介して子どもの問題行動傾向に及ぼす間接的な影響性について行動方程式モデルによって分析しました。その結果,父親との養育時間の頻度,多さというのが父親の養育の質の向上を経由して,9か月後の子どもの不安や抑うつといった内在化型の問題行動の低減につながる効果を有する可能性が示唆されております。図3に簡単に,もう少し複雑な図なのですけれども,メインのところをまとめさせていただいております。ただし,こちらの研究もサンプル数が114と小さいこともあり,十分なモデル適合度も示すには至っておりませんので,限界は大きいのですけれども,親の養育の時間,PTと,それから夫婦間葛藤,そして両親の養育の質の三者の複雑な関係性を,子ども自身の報告データを基に,時系列に沿ってモデル化し検証した点は,研究としては注目に値すると考えられます。今後こうしたフレームに沿って,更に多くの研究が続いて行われることと思われます。   最後に,少し時間が長くなって申し訳ありません,5ページのところです。現段階の心理学的知見から示唆されることで2点,まとめさせていただいております。先ほどもたくさん議論がありましたが,私たちの領域では子どもの状況を代弁するというところが一つの仕事になっておりますので,その観点で少し述べさせていただきます。離婚は夫婦関係の破綻であって,親子関係は別個の問題として,離婚前後の時期において,親の権利と義務及び子どもの権利として,それが適切に維持される必要があると考えます。今見ていただいたように,離婚後の子どもの成育に影響する主な要因として,これまでの研究から,離婚前後の夫婦間葛藤,離婚後の両親との関係性の良好さ,また生活環境の良好さの3点が実証的な研究から明らかにされてきております。これらの要因のネガティブな影響を予防・軽減するための措置,親子関係維持や養育費請求に関する子どもの権利を担保する制度的保障や,親への心理教育,親子それぞれを対象としたカウンセリング,養育費に関する経済的支援などを講じることが必要と考えます。   なお,児童虐待,すなわち子どもへの身体的,心理的,性的虐待及び養育放棄,また心理的虐待には日本の法律でも面前DVが含まれておりますが,これらが子どもの成育に悪影響を及ぼすことは言うまでもなく,離婚前後の環境においても慎重かつ迅速なアセスメントによる予防介入が必要です。   2点目ですけれども,子どもは親の離婚における関係者であって,離婚前後のどの段階においても気持ちや意見を表明する権利を有すると考えます。本報告で見ていただいたように,子どもは乳児期より離婚の影響を受けているものの,その意思の表明には発達的に大きな限界があります。発達に関する専門的な知識,スキルを有する調査者による年齢に応じた適切な子どもの状況把握が重要になります。また,子どもは基本的に,先ほども述べましたが,両親が愛着対象となっている場合,どちらかを選ぶことはできません。したがって,紛争に発展した場合には,虐待などによって愛着形成不全となっている親がいるかどうか,いない場合には,どちらがそれまでに適切な関わりをしてきたか,今後どちらがより適切な関わりや生活環境を供給可能かといった子どもの利益の視点に立った第三者の判断が必要となります。さらに,発達とともに離婚や親に対する理解,感情は深化してまいります。また,その時々の生活状況によっても子どもの気持ちや意向は変化していく可能性があることを考慮して,親の扶養が必要な期間においてはいつでも気持ちや意向を表明できる機会があることが望ましいと考えます。   法務省が令和3年3月に発表した,未成年期に父母の離婚を経験した子の養育に関する実態についての調査報告書,こちらは未成年時に父母の別居,離婚を経験した20代及び30代の男女1,000名が対象となったウェブ調査ですが,自身の経験を踏まえて,今後,父母の離婚や別居を経験する子どもたちについて,どのような支援や配慮が望ましいと思うかという設問に対し,離婚又は別居の前後に子どもの精神面,健康面に問題が生じていないかどうかチェックする制度に賛成するものが44.3%,子どものための身近な相談窓口の設置が望ましいとする人が42.9%,子どもの権利を尊重する法律の整備に34.7%が望ましいものと選択をしております。離婚に対する子どもの状況には多様性があり,細やかな配慮が求められますが,困っている子どもたちや支援が必要な子どもたちに対して迅速な対応を講じていくことは,社会全体の責務であると考えます。   私の専門領域の研究の報告と,また最後に私自身の意見も述べさせていただきましたが,以上で報告を終わらせていただきます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   皆様,今のお話を伺って,様々な感想とか御意見とかがあろうと思いますけれども,時間が限られておりますので,意見や感想につきましては,また個別の問題を議論する際にお寄せいただくことにいたしまして,純粋な質問があれば,是非出していただいて,お答えを頂くことにしたいと思います。短く質問していただいて,短くお答えいただくということで,複数の方の質問についてお答えを頂ければと思います。どなたか質問がありましたら,どうぞ。 ○大石委員 千葉大学の大石です。菅原先生,大変詳細なサーベイをありがとうございました。一つお伺いしたいのですが,図2のところで真ん中に経済状況などが途中の媒介要因となっているというところの御説明がありましたけれども,日本の状況を考えますと,母子世帯の半数が貧困状態にあるという状況の中で,経済状況がパレンティング・クオリティですか,それに影響する度合いがどのぐらい強いのかということについて,海外の研究,あるいは御自身の研究から,どの程度のことが分かっているのか,もし可能でしたらコメントを頂ければ幸いでございます。お願いいたします。 ○菅原委員 ありがとうございます。今の大石委員の御質問は,貧困が子どもの発達にどのように影響するかという話につながってまいりますが,これにつきましては,離婚の問題よりも更に研究はたくさんございまして,二つのメカニズムということが言われてます。一つは,今回見たような親のストレスですね,経済的に困窮しているということで親にストレスが掛かって,心理的な余裕がなくなって,やはりパレンティングが劣化すると発達に悪影響する。その辺りの連鎖については既に海外や私自身の縦断研究の中でも確認されております。もう一つは,貧困に陥ることによって教育資源が枯渇するということで,そちらのルートでも影響が出るということが知られております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○落合委員 どうもありがとうございました。私,歴史的な研究とか国際比較とかをしているものですから,そういう観点から少し関心があるのですけれども,歴史的には離婚が増えてきたのは70年代から後ぐらいですが,20世紀の初めぐらいまで死亡率が高い時期が続いておりまして,その時期は死亡によって親の片方がいなくなるという子どもたちが一杯いたのですよね。死別と離別を比べた心理学的な比較というのはありますか。それが一つ目の質問です。   それから,文化的な,あるいは社会的なコンテクストとの関係もあると思うのです。社会的なコンテクストには,サポートの仕組みがあるとか,ないとかというようなことも含まれると思いますが,それから,文化的には,親が離婚したことについてのスティグマをどのぐらい強く感じる社会かということなどがあると思うのですけれども,社会による比較というようなものもありますでしょうか。 ○菅原委員 御質問ありがとうございます。死別と離別に関しましては若干研究がございます。やはり死別の場合は,先ほど御報告した夫婦間葛藤という要素が,絡む場合もありますけれども,基本的に絡まず,死後にはそういうものが残存しませんので,その辺りの違いがあるということが指摘できると思います。   また,文化的には,まだ十分に比較し得るような共通の,実証研究のレベルで言えば,方法論を共有した研究というのが日本ではまだ少ないというところがありますので,十分な実証研究のレベルでの文化的な比較はまだ難しく,先ほど御紹介したドイツのチームですら,ドイツでは画期的な研究みたいな形で言われているところがあって,まだこれからだと思われますが,中国などでも非常に関心の高いテーマですので,今後研究が増えていくと思います。ありがとうございます。 ○落合委員 では,今回の御報告はアメリカが中心ということですか。 ○菅原委員 アメリカとヨーロッパです。 ○落合委員 ありがとうございます。 ○原田委員 原田です。丁寧な御報告をありがとうございました。それで,今,葛藤の問題なのですけれども,葛藤の有無について,例えば,監護親が会わせたくない,非監護親が会いたいというような,双方から見て理由があるとか,ないとか,いろいろもめることがあると思うのですけれども,いわゆる事実として葛藤があれば,やはり子どもに負担があるのかということと,それから,葛藤による子どもの負の影響のメカニズムといいますか,そういう意味で,私どもが実務で見ていると,かなり監護親のストレスが子に与える影響というのが大きいように思うのですけれども,その辺りはいかがでしょうか。 ○菅原委員 御質問ありがとうございます。今日,詳しくは報告できなかったのですが,御指摘のように,やはり子どもに対する影響性というところでは,子どもがどう認識するかという子ども自身の認知が重要であるというところで,子どもが夫婦間葛藤をどう認知するかに関する測定尺度が開発されているのですが,子どもからすれば面前でそういうことが繰り広げられなければ,つまり葛藤に暴露させられることがなければ,それは一つ,直接的な効果は減じます。ただ,先生が御指摘のように,間接的にそれで御両親がメンタルダウンすると,先ほどの貧困と同じで,そのメンタルダウンしたことによって養育が劣化するというようなパスがつながると,子どもにとっての影響が出てくるというところがございます。 ○原田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかにはいかがでございましょうか。   よろしいでしょうか。それでは,菅原委員のお話と,それに対する質疑応答については,以上ということにさせていただきたいと思います。   菅原委員におかれましては,前回のお願いから余り時間を置かない中で大変詳しい御説明を頂きまして,誠にありがとうございました。   それでは,この後はヒアリングということになりますが,現在16時3分ですので,16時15分まで休憩をいたしまして,16時15分に再開したいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   続きまして,離婚後の子の養育の在り方に関する海外法制等のヒアリングを行います。今回のヒアリングに関しまして,事務当局の方から少し説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務局でございます。前回の御議論を踏まえまして,これから4名の研究者の方々に参考人としてお話をしていただきます。他の御予定との関係もありまして,本日のお話は金参考人,山口参考人,小川参考人,西谷参考人の順にお願いしてございます。各国の法制度の把握のため,各参考人には第一次的には民事法制度の客観的な内容を御説明いただきつつ,必要に応じて実情等にもお触れいただくようお願いしております。本日は恐縮ながら,お一人15分から20分程度で御講演いただきたいと思っております。   また,それとは別に,冒頭御説明いたしましたように,参考資料として石綿幹事からフランスについてお調べいただいた資料を,また,事務局の方から関西大学の西澤希久男教授等の協力を得て用意したタイについての資料を,それぞれ御参考までに配布してございます。こちらも適宜御参照いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   各参考人の御説明,あるいは配布資料等に対する御質問は,4人の参考人の御説明が終わった後にまとめてお願いできればと考えております。   それでは,4先生,お待たせして大変申し訳ございませんけれども,最初は山梨学院大学の金参考人からということで,韓国の制度等について御説明を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○金参考人 よろしくお願いします。では,画面共有をいたします。映っておりますでしょうか。では,始めさせていただきたいと思います。   ただいま御紹介いただきました山梨学院大学の金でございます。甚だ僭越ではございますけれども,私の方からは韓国の離婚後の親権と監護権について申し上げたいと思います。時間の制約がございますので,本日はこの問題に関する韓国法の状況についての客観的な説明を皆さんにさせていただきたいと思います。   では,レジュメに沿って説明をさせていただきたいと思いますけれども,まず,1のところを見ていただきたいと思います。今,画面に映っている1の表ですけれども,これは離婚後の親権と監護権の帰属についての韓国の家族法のこれまでの改正というものをまとめたものです。時間の制約もありますので,関係するところはこの三つ目の1990年改正と2005,2007年の改正が関わってきますので,この3か所についてお話をさせていただきたいと思います。   まず,離婚のときに父母の協議で親権者を定めるようになったのは,韓国では1990年の家族法改正のときです。それまでは離婚後は父の単独親権と定められておりました。その後の2005年改正ですけれども,御存じのように,この2005年の改正というものは戸主制の廃止と,それに伴う戸籍の廃止を内容とする家族法の大改正であったわけですけれども,この離婚後の親権については,父母の協議が調わないとき,それから,協議ができないときは家庭法院の審判の申立てをすることが当事者に義務付けられたというところに特徴があります。これは,1990年改正のところを少し見ていただきたいと思うのですけれども,この部分ですね,90年改正で,協議不調,不能の場合には当事者の請求によって家庭法院が定めると規定されておりましたので,それは飽くまでも当事者の任意ということになっておりましたから,この点についてはこのままだと申立てをしなければ親権の空白が生ずるという批判がありまして,それにこたえる形で2005年の改正で義務化したということです。   次に,2007年の改正ですけれども,この改正で,これも先生方も御存じのとおりだと思いますが,韓国では協議離婚の手続が非常に厳格化されました。この協議離婚の手続は,この改正で,離婚後の子の養育と親権者の決定に関する協議書を提出しないと協議離婚ができないというふうになったわけですけれども,この制度が導入できたのは二つの背景があると言えます。一つは1977年に,上の方のこちらの方になりますけれども,この1977年の改正で協議離婚意思確認制度というものが新設をされました。この制度自体は当時の追い出し離婚というものを防止するために,離婚の意思の有無を家庭法院で確認をするという制度だったわけですけれども,これによって,協議離婚をしようとする夫婦は必ず家庭法院を経由しなければいけないという,言わば制度的な基盤というものができたということが言えます。   もう一つの背景ですけれども,これはソウル家庭法院,実務の方で2000年代の初め頃から試験的に2007年の改正で新設した協議書提出の義務化ということなのですけれども,それを実は先立って試験的に運用していたということがあります。といいますのも,1990年代後半に起きた金融危機で韓国の経済状況が急激に変化をして悪化をしてきましたので,離婚がかなり増えてきたということと,離婚後の子の監護についても十分な用意がないまま離婚する夫婦が増えてきたという事情がありました。そこで,ソウル家庭法院では法院内に裁判官と調査官等からなる組織を作って,それに対応するための様々な対策に取り組んでいたわけですけれども,その一つが離婚熟慮期間だとか,離婚後の子の監護についてもう少し考えなさいというようなことをやっていたようなのですけれども,それが2007年の改正で立法に至ったということになります。   2007年の職権でという,この部分に下線が引かれているわけですけれども,この職権でという部分については,レジュメに記載されておりますとおりで,この離婚意思確認制度というものは裁判手続ではありませんので,その中で家庭法院が職権を行使することは法体系上無理があるという理由から,これは立法の誤りだというような指摘をする立場もあります。ただ,これに対しては,手続法の立法をするという前提の下で,父母の葛藤が激しい場合には,やはり家庭法院が職権行使をする必要もあるのではないかというふうな主張をする立場もあります。   今,離婚後の親権,監護権に関する家族法の改正で大事な三つの改正を紹介したわけですけれども,このような経緯を見てみますと,それぞれの改正に際して,国会での議論とかを確認してみても,少なくとも民法の条文上では,制定されてから今日に至るまで,例えば離婚後の共同親権を正面から認めるとか,あるいはそれを可能にする,あるいは共同親権を前提とした改正というものは実はなされていないということが申し上げられるのではないかと思います。にもかかわらず,韓国でこの共同親権への動きが出てきたということにつきましては,実務と学説によるところが非常に大きかったということが言えます。その動きを実務で具体化したのは,やはり先ほど申し上げましたように,金融危機を背景としたソウル家庭法院での対応が始まった2000年代前半であったということが言えます。   では,次の2ページのところを見ていただきたいと思いますけれども,条文上はそのような共同親権というものは少なくとも読み取れないところがあるわけですけれども,では韓国で共同親権を認める根拠はどこにあるかというところになりますが,大きく分けて事実上の根拠と条文上の根拠の二つに分かれております。条文上の根拠につきましては,表の下に韓国民法の909条の訳文を載せておきましたので,適宜併せて御覧いただきたいと思います。共同親権を認める立場が挙げている実質的な根拠というものは表に書いてあるような二つになります。子の福祉と,離婚後やはり単独で子どもを監護しているという場合が多いですので,そういった単独で子を監護している親の負担を軽減することになると,これが事実上の根拠として挙げられておりまして,では条文上の根拠はどうなのかということなのですけれども,この共同親権を韓国で議論する際にやはりネックになるのが909条2項のところで,この部分ですね,親権は父母が婚姻中のときは,父母が共同でこれを行使すると書いてありますので,反対解釈すると離婚後は単独親権ではないのかというような指摘がなされるわけです。   これに対しては,賛成派,これがほぼ多数ですけれども,レジュメに書いてありますように,この909条2項というものは離婚後の共同親権を禁止した趣旨ではなくて,親権の帰属における父母の対等性を定めた909条1項の延長線上にあるものであると,909条1項というものは,父母は未成年子の親権者となると書いてありますので,父母であれば親権者になるのだと書いてあるわけだから,これは対等なもので,これを行使の面で規定をしたのが2項であるということになります。それから,4項と5項があって,条文の内容はここに書かれているとおりなのですけれども,ここで裁判,親権者を指定するとか,いろいろなことが書いてあるのですが,この中身というものは,2人を1人にするわけではなくて,共同親権を維持するのか変更するのかを定めたという趣旨であると。ただ,子どもの福祉の観点から見たときに,単独親権が望ましいときもありますので,909条2項,4項,5項というものはそれに対応するための規定であるというような解釈をして,共同親権が可能だというようなことになっております。   これが今,実務でも採用されていますので,そうしますと,次の3のところですけれども,今申し上げましたように,子の離婚後の共同親権というものは学説と実務で形成されてきたということが言えると思いますが,そういたしますと,今,レジュメの3のところで御覧になっていますように,離婚した後の親権と監護権の帰属というものはレジュメの3の(1)の@からCまでの対応があり得るということになります。   離婚後の通常の状況を考えますと,恐らく@かBのいずれを原則とするかということになってくるかと思いますけれども,韓国では共同親権を理論上認めるとしても,やはり原則的な形としては@,父母の一方が親権者と,監護者ですけれども,養育者を兼ねるというところを原則としているのではないかと思われます。   それが?から?までですけれども,この?というものは韓国で共同親権を認めた判決としてよく引用される大法院の2012年4月13日の判決ですが,事実関係は少し分からないところがありますので,判決文だけ引用しておりますけれども,1行目のところで朱色になっているところなのですけれども,親権と養育権というものが常に同一の者に帰属するわけではなくて,子に対する養育権,これは監護権ですけれども,監護権については父母の一方に,親権については一方又は双方に帰属すると定めることは,たとえ慎重な判断が必要であるとしても,一定の基準を充足する限りでは許されるのだということを言っておりますので,裏を返せば,原則的な形としては@ではないのかというようなことを述べているものだと思います。   次に,?のところは,一つの事例と言っていいと思いますけれども,これは大法院の判決の4年前の,事案自体が非常に特殊な事案で,父母ともに離婚に際して子を育てたくないと言っていた父母だったのですけれども,これについては裁判所が,逆に共同親権だということを述べています。共同親権の共同養育ですからCの形ですけれども,採用をしたというケースです。失礼いたしました,今の判決というのは審判ですね,2008年2月1日の審判ですけれども,これについては逆に,共同親権,共同養育というものを言わば教育的な効果も狙って使っているわけですけれども,括弧書きの中にこういう表現を使っているのです,通常の離婚夫婦と同様に単独親権,養育の状態に戻すことも可能だということを言っていますので,ソウル家庭法院というものは韓国では家事事件についてはいろいろな指針を出しているところでもありますので,時期的に考えても,ソウル家庭法院のことということを考えても,恐らく実務というものはこういうふうに捉えているのかなと思われます。   それから,?のところなのですけれども,これは韓国で共同親権を主張された代表的な学者の先生ですけれども,その先生も,共同親権を採用すべきだという論文の中で,朱色のところだけですけれども,この共同親権というものが全ての離婚家族に適した親権の在り方であるということを意味するものではない,下の方ですけれども,夫婦間の葛藤と父母としての役割というものを切り離して考えるという高いレベルでの姿勢を備えることが必須であることを述べられていますので,共同親権というものはいろいろな条件が整ったときに採用されるものであると述べられていらっしゃいます。   それから,(2),(3),(4)ですけれども,(2)は離婚後の親権と監護権者を定める際の考慮要素をここに載せておきました。それから,(3)は監護者の権限になりますけれども,これは日本法とほぼ同じであると考えていただいて差し支えないかと思います。それから,(4)のところですけれども,裁判離婚の際にも協議を勧告するということになっておりますので,その辺も(4)に記載をしておきました。   それから,その他の方ですけれども,親権者の公示につきましては,子の基本証明書の詳細,それから特定に記録されることになっております。本日添付した資料の1から4までがあると思いますけれども,詳細はレジュメを参照していただきたいと思いますが,韓国では戸籍が廃止されて,5種類の証明書に切り替わっているわけですけれども,この基本証明書というものはその個人の出生から死亡までの国籍だとか親権,後見に関するものが記載されるものです。それが御覧になっている資料のような形で記載をされることになっております。   それから,DVへの対応ですけれども,協議離婚の段階で民法でできることは,離婚熟慮期間というものを短縮あるいは免除するということです。ただ,DVがある場合では恐らく協議離婚は無理だと思いますので,離婚については裁判離婚に流れていくことになると思います。そのほか,特別法として家庭暴力犯罪の処罰等に関する特例法だとか,Bの家庭暴力防止及び被害者保護等に関する法律がありますので,それによる保護と支援が行われるということになります。   それから,子の意見の聴取については,子の年齢が13歳以上の場合には原則として意見を聴取しなければならないこととされております。   最後になりますけれども,統計を見ながら,離婚制度の改正と,その後の韓国の離婚がどういうふうに変化してきているかというところを簡単に説明したいと思います。まず,2007年に協議離婚が厳格化されましたので,その協議離婚が厳格化された規定というものは2008年6月から施行されております。結果として協議離婚が年々減少していましたけれども,少しずつまた増えている傾向であって,それに連動する形で裁判離婚が同じような傾向を示していることになっております。   それから,未成年の子のいる夫婦の離婚なのですけれども,未成年の子どもがいる夫婦の離婚というものは2014年,ここに斑点が掛かっていますけれども,この年を契機として逆転をしました。ですから,未成年の子どものいる夫婦の離婚というものがどんどん減っているということになっております。それと併せて,家事事件ですね,親権者の指定変更の新受件数と子の養育に関する処分の新受件数の数字もここに載せておりますけれども,やはり2007年の改正をきっかけとして事件の数がぐっと増えてきていることになっております。日本でも司法統計年報からすると,親権者の指定変更に関しては直近のデータだと約5,000件ありますので,人口比とかを比べると同じだということになると思うのですが,子の養育に関する処分に関しては圧倒的に韓国が少ないので,これについては少し検討する必要があろうかと思います。   時間になりましたので,非常に駆け足ではありましたけれども,韓国については以上で説明を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   続きまして,関西学院大学の山口参考人から,アメリカの制度等についての御説明を頂きたいと思います。   山口参考人,お願いいたします。 ○山口参考人 画面共有をお願いいたします。ありがとうございます。   関西学院大学の山口亮子です。私からはアメリカ合衆国の共同監護について御報告いたします。   まず,アメリカ合衆国の子をめぐる概要を挙げております。日本法との違いを主に申し上げますと,アメリカで未婚で子が出生する割合は約40%,離婚率は約50%であり,これに対し日本での未婚による子の出生率は約2%,離婚率は約35%となっております。アメリカ法で親権といいますとペアレンタル・ライツとカストディという言葉がありますが,親であれば婚姻の有無にかかわらず持っているのがペアレンタル・ライツで,権利とともに扶養義務を有します。実際,子に対して権利,義務をカストディと呼びまして,日本民法の親権はアメリカの監護権に近いです。   続きまして,共同監護法成立の背景に行きます。アメリカは州ごとに家族法が異なりますが,全米として見た場合,次のような変遷が見られます。1960年代から各州で離婚法の改革が行われまして,有責主義から破綻主義へ移行しました。これにより離婚数が上昇しまして,子の監護についての関心も高まりました。この時期に家族観,ジェンダー感の変化も現れ,父親の権利思潮も高まりました。また,従来の単独監護法制では限界も見えてきましたので,勝敗を作らない監護形態である共同監護が望まれましたし,父母双方から子に対する責任の共有が望まれていました。再婚率は70%ありますので,親たちは自分の新しい人生を出発させるためにも,また,両親とも有職者である場合が多いですので,離婚後も子の面倒は双方で見るという必要がありました。さらに,この時期,心理学,行動学等による追跡調査やインタビュー調査が行われまして,離婚後の親子の交流と子の利益の調査が盛んとなりました。従来の単独親権では憲法違反の可能性もありましたが,憲法訴訟を待つまでもなく,各州法は法改正を行い,共同監護法を定めていきました。その皮切りとなりましたのがカリフォルニア州の共同法的監護と共同身上監護です。1990年代には全州で立法又は判例法で共同監護法が成立しています。現在はジョイント・カストディという言葉を用いないところが多く,ペアレンティング・プランの作成により共同監護を達成しています。アメリカの離婚は全て裁判離婚ですが,両親が別居,離婚時に協議で個別具体的に,養育費を含め,子どもに関する養育計画書を作成します。そして,それを裁判所へ提出し,それを裁判所が認めることで,裁判所命令となっていきます。   裁判規範として規定されている各州の共同監護法の種類をここに挙げました。各州の立法にはそれぞれ特徴がありますが,次のような形態が存在します。各州によって共同監護の優先性は異なりますが,当初の立法から後退するのではなく,共同監護を子の利益として推定している州が増えています。それは,子どもの心身の発達のために,子は両親双方との関係が重要であること,経済的にも親双方が責任を果たすことが求められているからでして,子の教育は親の権利であり,親の責任であることが親にも国家にも認識されております。親の教育権に関しましては,一連の憲法裁判がありますが,現在,連邦法で,親には子の学校の成績に関する情報を閲覧する権利というものが認められています。アメリカの家族観というものは,団体ではなく妻と夫,父と子,母と子という個人的な結び付きの関係性で成り立っていると捉えることができると思います。なお,アメリカ法は親の養育や面会交流につきまして,先ほどお話がありましたように,子どもの権利構成は採っておりません。子どもの利益を飽くまでも州が保障するという形を採っております。   続きまして,2ページにまいります。共同監護の現状としまして,各州で調査された数値を挙げました。おおよその傾向が分かると思います。共同法的監護が約6から8割,共同身上監護が2割から5割ほどだと思います。しかし,共同身上監護といいましても,大体1対2とか1対3の宿泊から共同身上監護とみなしているようでして,必ずしも1対1,フィフティ・フィフティが強いられているわけではありません。1週間置きの週末に親子が面会交流して別居親宅に宿泊したり,長期の休みのときに別居親宅で暮らすというパターンが多いようです。ペアレンティング・プランの中で共同身上監護とはせずに養育時間として捉えられています。   共同監護の評価としまして,1980年代から2000年代まで,社会科学者によるインタビュー調査,資料調査が行われました。注にありますが,それら40個の調査をまとめたもの,また,そこに含まれる個別の文献を参考にしたものをここでは挙げております。この調査では,未婚や離婚の違いなく無作為に抽出したサンプルだったり,離婚後のサンプルだったり,裁判所資料だったりしています。また,調査対象の数や期間も様々です。個々の研究では親の年収や学歴,住居の距離,再婚の有無,子の性別,年齢等,多くの変数による細かい数値が出されていますが,取りあえず大まかにまとめてみました。   これらの調査としましては,共同身上監護を経験している子たちの方が単独監護の子どもたちよりも精神的,行動的,心理的,身体的健康が優れているという結果が出されております。また,父母の高葛藤にかかわらず,別居親宅の宿泊日数が長いほど,子は父とよい関係を保っているということです。母への調査に関しましては,共同監護と単独監護,それを経験している双方の母親へのインタビューでは,子の心身の健康状態に変わりはないという結論です。また,母の精神的不安や父母の高葛藤と子の精神状態には関連性があると言われております。裁判官への調査としまして,インディアナ州で1998年と2011年の調査が行われました。2011年にはあらゆる年代の子に共同監護がふさわしいと考える裁判官の割合が増加しています。また,2011年には87%の裁判官が,両親が合意していなくとも共同法的監護を付与したいと答えています。   まとめますと,子どもの感覚としては別居親と頻繁に会いたいと思っており,交流の頻度と親の紛争状態が子の幸福感と関連しているようです。高葛藤両親のカウンセリング後に,共同身上監護の子どもたちはストレスや不安,問題行動が少なくなったと言われています。また,乳幼児期でも共同身上監護は悪い結果は出されていないということです。結論としまして,あらゆる年代で共同身上監護は子によってよい結果を得ている,ただし,父の暴力があると子とよい関係は築けていないということです。しかし,先ほど菅原先生の報告にもありましたように,うまくいっているので共同身上監護はいい結果が出されているということは言えるとは思います。   3番目です。共同監護の実現を支えているものとして,以下,七つ挙げました。まず,州の方針としまして,婚姻外でも子は両親と頻繁かつ継続して交流すること,両親から養育を受けることが子の最善の利益であると推定するという州の基本政策を州法に明示しているというのがアメリカ法の特徴です。これが行為規範となりまして,親は共同監護を前提として婚姻外の養育計画を立てることになります。そして,共同監護を達成するために社会資源が整えられていきます。共同監護が広がって40年以上がたっていますが,もはや共同監護は当然のこととして受け入れられており,それに向けて調整が図られているという現状です。   先ほど述べましたように,養育計画書というものを両親は数ページにわたり,個別具体的に子に関する法的決定の所在や子と過ごす時間を計画します。意見の対立,不履行が生じた場合の解決方法もあらかじめ取り決めておくということになっています。   親の合意がないのに,なぜ裁判所は共同監護を付与する場合があるのかといいますと,裁判官は子と親,それぞれの関係性を重視すると言っています。ここでは,親が精神面で共同監護ができるか否かではなく,子どものためにいかに協力して,妥協して,子どものために暮らすかということが求められています。   また,無断転居の制限ですが,別居親による子の監護及び面会交流を阻害しないために,同居親は転居前に別居親へ通知し,同意を得るか,養育計画書を作成し直さなければならないとされておりまして,これも養育計画に書かれることになります。州法はほとんどのところで定めておりますので,これも常識として認識されております。   情報発信の充実としまして,各州のホームページを見ると,共同監護がうまくいくための支援として,その充実度が分かります。例えば,養育計画書の案内や見本や作成援助などがありますし,コンピューターによる養育費の計算や,またDVなどの手続などが紹介されております。   民間支援の充実もあります。アメリカで有名なように離婚カウンセラーとか,法律以前に夫婦関係の問題にどう対処するか,そして,子どもをめぐる調整機関というものが,ここに挙げているように様々あります。養育コーディネーターやメディエーターなどは大学院を出て幾つかの資格を得る専門職として位置付けられております。   また,研究の充実は羨ましい限りで,法学研究や様々な社会科学,医学などの研究が進められておりまして,裁判所の指針なども詳細な資料が開示されておりますので,私たちはそれを見ることができます。   3番目の高葛藤事案に関してにいきます。紛争性の程度を調査したものによりますと,これはカリフォルニア州の例ですが,紛争性のない離婚が50%,争いはあったが解決したのが30%,メディエーションで解決が10%,調査後,これはエバリュエーションという監護評価を行って解決したものが5.2%,裁判中解決したのが2.2%,裁判官による判決が1.5%ということで,あまり日本の状況とは変わらないようです。   高葛藤の場合の手続としまして,DVや親密圏の暴力がある場合には,被害者はシェルターへ子を連れて避難することになります。裁判所で緊急保護命令を得て,被害者には子の監護権が通常付与されまして,加害者には養育費や生活費,治療費などの支払い命令が出されます。離婚時の養育計画作成は相手方と協議せず,それぞれが書いて裁判所に提出するというふうになっています。DVとともに今問題となっているのが,PAといわれる片親疎外というものです。DVの被害者からは加害者のでっち上げと非難されることもありますが,DVの主張がなかなか裁判所で通らないという理由の一つに,まれにDVの被害者が他方の親を遠ざけるために虚偽の証言をしているということがありまして,これがPAといわれるものとなっています。しかし,真正のDVの加害者が相手の主張をPAと言って監護権を得るということもありますので,もう裁判所では精神科医の証言が必要となってきまして,かなりここの場面では精神科の研究が進んでいると言われているところです。   高葛藤への対処としまして,まず,DV教育が必要とされています。アメリカでもまだまだ足りていないという認識です。専門家への教育,そして法学生,ロースクールの学生への教育が義務付けられています。立法におきましては,DV加害者への監護権の付与が制限されています。DV加害者への監護権付与は子の最善の利益にはならないと推定する州法が広がっています。しかしDVが認定されることがまず必要なのですが,それが第一の関門となっています。医的介入としましては,裁判所はDVや虐待加害者にDVや虐待治療終了まで面会交流を制限したり,PAによる引き離された親子の再統合のために治療的介入を命じたりすることもあります。DVやPAに関しては,もはや法律問題ではなく,心理学や精神医学,脳科学による研究が進んでいる分野です。第三者による支援,これに関しましては,虐待加害者と子の面会交流に対して第三者機関の監視や送迎があることは既に我が国でも紹介されております。履行義務違反に対する法的措置としまして,メディエーション,養育計画の再構成,裁判所侮辱,損害賠償,監護権変更などが用意されております。アメリカのほとんどの履行義務違反には民事的裁判侮辱,コンテンプト・オブ・コートが用いられまして,義務者は履行するまで過料か拘禁が科せられます。次に,子どもの代理人ですが,これは親が費用を負担しますが,これの制度も進んでおります。親が直接子どもに父母を選択させるということは子どもの利益にはならないとされておりますので,精神科医や裁判官及び弁護士による子に負担を掛けないヒアリングの方法も研究されております。   4番目,意見が対立した場合の調整方法や解決の実情。既に述べましたように,養育計画書に意見が対立した場合の解決方法を取り決めるようになっておりまして,弁護士を通じた調整やメディエーションがあります。養育計画書再作成の支援もその一つになっています。各自治体が提供するガイダンスや子どもの年齢別,両親宅の距離別の計画案,養育計画書コーディネーターやアドバイザー,マネジャーによる支援,そして,弁護士やメディエーションなどの第三者による仲介というものが一般にあります。DVがある場合には,養育計画書は協議せずに個別に記入して裁判所へ提出し,裁判所が定めるということになっております。   アメリカにつきましては以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,続きまして,大阪経済法科大学の小川参考人から,イギリス及びオーストラリアの制度等についての御説明を頂きます。小川参考人,どうぞよろしくお願いいたします。 ○小川参考人 よろしくお願いいたします。それでは,画面共有をいたします。出ていますでしょうか。これで,一つずつ動かしていくことで,やっていきます。よろしくお願いいたします。   大阪経済法科大学の小川です。よろしくお願いいたします。今御紹介いただきましたように,オーストラリア及びイギリスについてお話をしますけれども,タイトルとしては,オーストラリアの経験とイギリスの方向性ということでお話をいたします。限られた時間ですので,資料を先生方に提供しておりますので,そちらで必要に応じて補充していただければと思います。   まず,基本的には離婚後の子どもと父母との交流については,協調,協力して交流が続けられれば子どもの利益になるということについて,これを一切否定するものではないということを前提としてお話をしていきます。   日本の議論なのですけれども,これは法制審の先生方がこういうふうな議論をしているということではなくて,レジュメに付けておきましたけれども,マスコミなんかで報じられているところを見ると,いわゆる親子断絶防止法案というところから始まって,ずっと現在のように議論が続いているというふうな形での報道が続けられておりまして,共同親権制の導入へということで,単独親権制だと面会交流が制限される,共同親権にすると面会交流が促進される,そうすると子どもの健全な成育(生育)につながる,したがって,共同親権にして面会交流を促進して,子どもの健全な成育(生育)につなげていくのだと,こういうふうな形で議論されているわけです。この議論はオーストラリアの経験にとって非常に重要なポイントなので,レジュメにも書いておきましたし,少し言及をさせていただきました。   離婚後の子の健全な成育(生育)に向けて,離婚後も父母が継続して子の養育に関わることが子の健全な成育(生育)の実現につながるのだと,それによって子どもの最善の利益が実現できると,こういうお話なのですけれども,共同親権というふうな議論で議論されているのですけれども,この親権というものをどういうふうに捉えるかということも,オーストラリア,イギリス,諸外国との比較の際に重要で,法務省が公開している英語表記だとパレンタル・オーソリティ(parental authority)と書いております。ただ,これはあくまでも参考で,日本語表記が法務省の見解だとしておりますが,パレンタル・オーソリティ(parental authority)と書いてあるので,パレンタル・オーソリティ(parental authority)という表現が日本の親権に近い概念であろうというふうなことは考えられるわけなのですけれども,監護についてはカストディ(custody)という言葉が当てられております。この親権というものが,日本の親権と,諸外国の子どもの養育に関わる親と子との間の権利義務の内容と,どういうふうに関連しているのか,内容にどういうふうな同一性があるのか,どういう違いがあるのか,この辺も非常に重要になってくるだろうと思います。   オーストラリアの法改正の背景なのですけれども,欧米の離婚後の子の養育法制については,離婚後に日本の親権と同様の権利義務を父母が共有し,共同で行使している国というのがあるのかどうか,こういうふうな視点で少しお話を聞いていただければと思います。そのときの捉え方としては,親権に関しては一応はパレンタル・オーソリティ(parental authority),監護に関しては,カストディ(custody)という言葉を日本の法務省の英語としても当てている。それが,最近ではパレンタル・レスポンシビリティ(parental responsibility)となっていると。共同監護といったときには,ジョインとしてカストディ,パレンタル・レスポンシビリティといったときにはシェアード(shared),つまり分担して親の責任を果たす,こういったものから,ペアレンティング(parenting)とかケア(care)というふうなことに現在進んでいっているということも一つ念頭に置いといていただいて,離婚後も父母が親権を共有し共同で行使するという親権概念について一つだけ紹介しておきますと,親権という言葉をはっきりと使っているところがあります。   アメリカ合衆国のルイジアナ州法なのですけれども,パレンタル・オーソリティ(parental authority)と明示して書いてありまして,中身を分析すると日本の親権と非常に近いものがあります。これは,理由としては,ルイジアナ州は元々フランス法の国で,遡るとナポレオン法典にまで遡るわけで,こういう日本と近い概念になるのですけれども,注目していただきたいのは,父母の婚姻中は父母による親権行使を共同行使で原則としながら,父母の別居や離婚によって父母の親権は終了すると明示されております。終了して何になるかというと,親権ではなくて,ガーディアンシップ(gardianship),つまり後見が開始することになると規定されています。日本語でいうところの一番近い概念は後見だろうと思います。この辺のところは参考資料として提供しているものを参照していただいて,この戸籍のところに書いておりますので,もっと遡ると,ハーグ条約関連資料というところで,諸外国の親権,監護に関わる法制の調査をして,報告書があげられております。アメリカについても幾つかの州について調査をした,そして報告書をあげた中の一つが今のルイジアナなのですけれども,ほかのところでも類似したような概念を採っているところもあります。   本題のオーストラリアの経験なのですけれども,1975年に連邦家族法ができまして,これは徹底した破綻主義で,12か月間の別居でもって婚姻破綻を推定し,反証のない限り婚姻関係が解消されるという,当時の最も進んだ破綻主義の一つだと言われております。これが1995年の法改正で,連邦家族法の第7章,この部分が改正をされまして,後見,監護,面会交流,こういうふうなものの考え方が抜本的に転換をされました。具体的には,監護,カストディという言葉や,面会交流のアクセスという用語が削除されました。この前者の用語につきましては,父母の別居後に子に関する権限と責任について双方の親に帰属することを前提とする,先ほど説明しましたパレンタル・レスポンシビリティ(parental responsibility)というふうな用語に変更されてきているわけです。これらの細かなところにつきましては,先ほど紹介しましたハーグ条約資料のオーストラリア,令和元年に条文も含めて全部翻訳を提供しておりますので,細かな規定等につきましてはこちらを参照していただければと思います。   この法律が2006年に改正されまして,共同親責任法と呼ばれていますけれども,ここで養育分担の規定やフレンドリー・ペアレント条項,こういうものが設けられました。子が暴力や虐待から保護される必要がない限りは,父母がそれぞれ子の生活に関わりを持つことの重要性というのがこの法改正で非常に強く強調されることになりました。その結果,子と別居親との面会交流を含めた関与をこの改正法と裁判所が促進をするということにつながっていきました。この立法をする前段階から,このことの危険性についてはいろいろ懸念されておりまして,立法に際しては,この立法の与える影響について追跡調査をするということで,その追跡調査がずっと行われまして,調査報告書が出されました。その調査報告書を受けて2011年に,家族間暴力考慮改正家族法と書いておきましたけれども,暴力にウエイトを置いた法改正がなされました。   簡単にこの法律について説明すると,2006年改正法により導入された養育分担の規定が,離婚後も両親による均等な養育時間を確保すべきことが求められているかのような誤解を与えて,その結果として,父母が自分自身の権利,利益のみを追求することになり,子の最善の利益がないがしろにされる結果を招き,さらに,フレンドリー・ペアレント条項の存在,これは2011年法で廃止されたのですけれども,このフレンドリー・ペアレント条項によって,同居親によるファミリー・バイオレンスや児童虐待の主張が抑制されることになり,そのことから,子が暴力的な親との交流を半ば強制され,暴力リスクにさらされ続ける可能性を生じさせたというふうな調査結果等が出されて,これらに対する批判,反省を踏まえて,2006年法が僅か5年で改正をされることになったと。   さらに,2019年4月なのですけれども,オーストラリア法改正委員会と訳しておりますけれども,オーストラリアン・ロー・リフォーム・コミッションなのですけれども,将来に向けての家族法(家族法制度の調査)と題する580ページにも及ぶ報告書を公表しまして,子の最善の利益の内容として,虐待やネグレクト,家族暴力から子を保護することが最も重要な事項であるということが一層強調されることになりまして,勧告をされたと。この詳しい内容につきましては,資料として提供してあります「戸籍」の983号の25ページから26ページに記載していますので,また後ほど参照していただければと思います。   この報告書は,このホームページからアクセスをすれば,こういうものが出てまいります。この500ページに及ぶ報告書ですけれども,この報告書の内容については,私たちの研究会でこの内容について日本語に訳したものが手元にございますので,もし必要であればその日本語訳を提供させていただきます。内容としてポイントだけお話をすると,先ほどのようなことが一番重要なポイントとして挙げられるのではないかと思います。   それと併せて,日本と欧米を比べる場合に少し注目していただきたいことなのですけれども,欧米の離別後の子の養育状況がどういうふうになっているのかというふうな調査が2011年になされております。これはイギリスの全国的なサンプリング調査なのですけれども,これによると,同居親の下でほとんど時間を過ごしているのが97%,均等に養育に関わっているというのが僅か3%だというふうなことがその調査結果から明らかにされております。これにつきましても,イギリスのオックスフォード大学から出されている文献なのですけれども,これは皆さん方が御覧になろうと思えば,入力をするとウェブ上で全部提供されておりますので,是非御覧になってみてください。これを執筆された方は,オックスフォード大学のマクリーン先生,それから,ブルースミスさんはオーストラリアのナショナル・オーストラリアン・ユニバーシティの先生ですけれども,いずれもそれぞれの国で立法にかなり関与している皆さんが共同研究を行った研究成果です。これにつきましても,私たちの研究会で全て日本語に訳したものがございますので,必要に応じていろいろな文献のところでは紹介しておりますが,全訳について必要であれば,また言っていただければ提供させていただきます。   離婚後の子の健全な成育(生育)の実現へということで,欧米諸国は共同親権制ではなくて共同監護制,ジョイント・カストディ(joint custody)というふうな形で子の監護を進めていった,子どもの養育を進めていったと。これに関しても,監護については共同であったけれども,それが親責任へと変わっていって,親責任に変わっていく過程で,共同ではなくて分担だと,父親としての役割,母親としての役割,そういうふうな区別が必要でないときには親としての役割になるわけですけれども,離婚をした場合には居住環境が別々になりますから,同居親としての役割,別居親としての役割というふうな形で,それぞれ親責任を果たすという形で子どもに関わっていくわけなのですが,これが更に最近では,ケア(care)であったりとかペアレンティング(parenting)であったりとかという,より中立的な言葉に変わっているということには注意をしていただきたいと思います。   さらに,もう一つ強調しておきたいのは,これはオーストラリアに関してもイギリスに関してもそうなのですけれども,ジョイント・カストディ(joint custody)というふうな考え方の下においても,必ず同居親と別居親というものは決めます。ここのところの同居親というのが,私が調べた限りでは,恐らく日本でいうところの親権者に一番近い,重なる部分が多い概念だろうと思います。そういうふうに見ていきますと,制度的に見たときに,日本とオーストラリア,イギリス,いわゆる欧米といったときにどこまで含めるかなのですけれども,制度的な意味合いで言うと,基本的には大きな違いが実態としてはないのではないかと。では,離婚後の子どもの養育の状況についても,この実態はそれほど大きな違いはないのではないかと,要は,話合いの下で子どもの養育について取決めをして,同居親の下でほとんどの時間を過ごし,別居親とは別居親としての親責任を果たすというふうな形で面会交流を進められてきているというのが現状ではないかと。   そういう中で,先ほど冒頭で紹介したところとも関わりがあるわけなのですけれども,欧米諸国の経験としてのオーストラリアなのですけれども,ここを是非とも強調しておきたいのですが,日本においてもそうなのですけれども,共同親権の導入が必要である,単独親権制だと面会交流が制約される,共同親権にすれば面会交流が促進される,面会交流が促進されれば子どもの健全な成育(生育)につながる,こういうふうな考え方が非常に強く主張されていて,これが恐らく一般の人たちの認識なのだろうと思います。   オーストラリアも実は同じような状況の中でそういう主張がなされて,その養育分担という要求の下に2006年の家族法改正がされた。中身を詳しく見ていくと,子どもの養育時間の均等な配分というふうなことは明記されていないのですけれども,多くの一般の人たちが,子どもの養育時間の均等な配分というものがこの法改正によって目指されているのだ,この法改正というのは,そこを強調しているものだというふうな受け止められ方をしたものですから,非常に大きな問題を起こしたというのがこの2006年法なのです。   具体的に見ていくと,提供している資料で細かく見ていきたいのですが,ポイントだけ申し上げますと,養育分担の状況ですけれども,全体としては大きな変化はありませんでした。これは,理由はなぜかというと,多くの夫婦は基本的には話合いで問題を解決していたので,法改正があったからといってその人たちには大きな影響を与えなかった。ただ,葛藤のある事例で養育分担の顕著な増加が見られたと,そして,裁判で子の養育を争う父母が非常に増加をしたと,様々な場面で対立が先鋭化していったと,こういうふうなことが法改正によってもたらされたことだとその後の調査結果で分析されています。   つまり,いろいろな問題が顕在化したわけで,同居親である母親がDVや児童虐待等の問題開示に抑制的になって,フレンドリー・ペアレントというふうな条項,これは皆さん方に資料として提供しておりますけれども,同居親としては別居親に対してできるだけ積極的に面会交流を進める親がフレンドリーなペアレントであって,子どもの主たる監護親として養育を担うにふさわしい,そういうときに,DVがあるからとか虐待があるからとかといってそれを制限するような主張をしたときに,これを裁判ではっきりと証明できればいいわけなのですけれども,これは比較的密室で行われることが多くて十分な証拠が提示されない場合が多いので,そういうことを主張したときに立証できないといったときには,アンフレンドリーなペアレントだというふうなことを認定されて,主たる監護親,同居親としての子どもの養育の機会を奪われることにつながる,したがってこういう抑制効果が働いてしまったと。養育費又は財産分与についても,先ほどの2006年法の立法化によって,これが交渉材料として表に出されることになって,子どもの養育問題全般に関して合意による解決というのがますます難しくなっていったというのが結果として生じたわけです。協調,協力して解決できたものに関してまでも紛争性が増大していったというのが分析された結果です。   それで,2011年法改正へとつながっていって,DVの定義を拡大し,DVや児童虐待の告知義務を課して,子どもの安全を最優先にするというふうな形で,いかにして親の権利性を抑制,軽減していくかということに重点を置いた改正が進められていくということになったわけです。   諸外国を見ていくと,この共同監護とか親責任分担というふうな形で進んでいっているのですけれども,その前提段階として,オーストラリアもそうですけれども,離婚原因から有責性が完全に払拭されております。法定別居制度を導入しているところが多いです。つまり,離婚自体について裁判所で争うというふうな必要性がありませんし,相手方の有責性を攻撃する必要性もありませんし,アメリカでも判例で慰謝料請求権を否定している判例もありますし,オーストラリアでは明文の規定で離婚による慰謝料は生じないというふうなことが定められているので,こういう離婚プロセスの中で,この夫婦間の対立を軽減するような法改正がなされ,更に子どもの養育費の履行確保とかというふうな制度も整備され,必要に応じて面会交流などの支援体制,そういったものがいろいろ手厚く準備されている中でも,やはり親の権利性を強めるというふうな法改正をすると重大な問題が発生して,親の権利性の軽減,払拭へというふうな方向に進んでいっているということになります。   そういう調査結果が出されているのがこのオーストラリアの2019年のレポートなのですが,さらに,今回イギリスの報告をさせていただきますけれども,これが2020年6月に出されたイギリスの報告書です。これについての翻訳は私たちの研究会で行いましたので,先生方に資料として提供しておりますので,詳しい内容については御覧ください。   この英国司法省の勧告が一体何を意味しているかということなのですけれども,これは「戸籍」という雑誌に長谷川京子先生が書かれたものが資料として提供されていると承っておりますけれども,それを御覧いただければ,そこにまとめて整理されているのですが,まず第一に,裁判所の安全確保機能の調査を行いました。離婚後に父母との関わりを継続推奨する制度におけるDVや虐待事案を例外として除外するというふうな仕組み,これがどういうふうに機能しているか。   2014年の児童法改正で離婚後も父母が子の生活に関与することで子が危害を受ける,又は受ける危険性があることを示す証拠がない限り,親子の関わりを継続することが子の福祉を促進するという推定規定というものが明記されていたということになるわけですけれども,そうすると,裁判所で,ドメスティック・アビューズという言葉をイギリスでは使うのですが,DAという言葉で普通,略称していますけれども,こういう疑いがある場合に,共同養育の方針を転換して,カフカスというこのような問題に対応する専門の機関があるのですけれども,そういう疑いがある場合にはこういう専門機関に回して,そういう支援を受けつつ,安全を確保できるよう実務指針が整備をされていたわけです。そして,子の養育に関する裁判では約半数にDAの疑いのある事例が含まれているということが調査結果として明らかになり,司法省が今回の調査を開始するということになったというのが経緯です。   子と同居親の受ける危害,これは日本よりも先ほどのようにはるかに整備された暴力等に対する対応策のあるイギリスにおいて,子の養育をめぐる裁判で,子や同居親の生命身体に危害が生じるリスクが回避されていないということがこの調査報告書で明らかになってまいりました。離婚後の子の養育に関して子と父母との関わりの継続を推奨するという制度の下では,子や同居親の安全の確保が困難だというふうなことが調査報告書で出されております。子の安全が確保できない理由としては,パレンタル・アリエネーション・シンドローム(parental alienation syndrome)であったりとか,パレンタル・アリエネーション(parental alienation)であったりとかというふうな考え方の問題点,更に言うと,こういう考え方に基づいているフレンドリー・ペアレント条項ということの危険性というものが報告書の中で強調されております。   最終的なこの報告書の勧告の内容といたしましては,まず,子どもの養育に関する手続を根本的に改めるように,子と父母との面会等の関わりを優先する考え方を転換しなければならない,当事者主義的な裁判手続の見直しをする必要性がある,当事者支援体制の更なる整備をする必要がある,日本から比べると非常に手厚く整備されているわけですけれども,それでも足りないと,縦割りを改善し,関連機関との連携強化。次に,安全に懸念のある事件の処理に向けた実務マニュアルを更に整備しなければならない。そして,この3番目が重要なのですけれども,子と父母の関わりに関する推定規定の見直しです。ここは2となっていますが。離婚後の子と父母との関わりの継続が子の健全な成育(生育)につながるということが推定規定として明記されているわけですけれども,これを抜本的に見直さない限り子どもと同居親の安全の確保が難しいのだと,そういったことも含めていろいろな勧告がなされておりますので,詳しくは長谷川先生の「戸籍」の995号を御覧になっていただければと思います。   日本の問題として,このオーストラリア,イギリスを参考にしていただきたいのは,共同親権と言ったときに,この親権というものが一体どういうふうな概念かというのを,是非この中身についての議論をしていただきたい。それから,日本の離婚手続自体の問題を抜本的に見直す必要性があるのではないか,協議離婚だけではなくて,裁判手続の中で有責主義的な離婚原因がまだ残っているままだ,離婚慰謝料もある,子どもの養育費についてはまだまだ不十分な状況が続いていると,こういう状況の中で,子どもの養育ということで,親権というふうな言葉をマスコミでは使っていますけれども,子どもの共同養育ということでどういうふうなことをやっていくかというふうなことを議論するのには注意が必要だと。こういった問題については,実は欧米ではもう20年ぐらい前から共同監護という概念を導入したことによって生じた問題をいかに解決していくかということを苦慮しております。   これは2013年の「世界会議,家族法と子どもの人権」のときのものなのですけれども,こういう形で議論をしました。私はアドバイザリーボードとして関わりましたけれども,セッションとしては「シェアード・パレンティング」,子どもの養育分担の抱える問題をいかにして解決をしていくかということで,この2013年の段階,そして2020年6月の段階でも,問題の解決というのが非常に難しいというふうなことをオーストラリアでは経験し,そういったことを踏まえて,イギリスでは先ほどのような司法省の,司法省が調査するに当たっては,文献レビューを付けております,皆さん方に提供しておりますけれども,客観的な科学的根拠に基づいて調査が進められ,その結果として300ページ程度の報告書がまとめられ,今のような勧告がなされているということについては,是非注目をしていただきたいと思います。   少し駆け足になりましたけれども,私の話は以上です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,最後になりますけれども,京都大学の西谷参考人からドイツの制度等についての御説明を頂きたいと思います。   西谷参考人,どうぞよろしくお願いいたします。 ○西谷参考人 ありがとうございます。画面共有させていただきたいのですけれども,こちらで画面は出ておりますでしょうか。ありがとうございます。それでは始めさせていただきます。   私からは,ドイツにおける離婚後の共同親権及び子の養育について御報告させていただきます。   ドイツ法上のエルターリッヘ・ゾルゲ(Elterliche Sorge)という言葉は,親の配慮や配慮権とも訳されますけれども,ここでは親権と称させていただきます。本日の報告は,昨年10月に公表された7か国報告書のほか,本年7月にドイツなど各国の研究者及び裁判官の方々などに聞き取り調査を行った結果に基づいています。   まず,ドイツにおける法改正の経緯と社会的背景についてお話しいたします。ドイツでは,歴史的に早くから家族制度が世俗化しており,離婚も認められておりました。戦後,民法が1957及び1976年に改正された際には,離婚時に必ず家庭裁判所が親権者を指定する旨の文言が入りました。しかし,それ以上詳しく定められませんでしたので,離婚後の共同親権を認め得るのかどうかという点について見解の対立があり,これを認めた裁判例もございます。その後,1979年の改正では,離婚時に明確に子の帰属先を決めるべきだとされ,離婚後は必ず単独親権とすると明記されました。しかし,1982年に連邦憲法裁判所はこれを違憲とします。つまり,両親が離婚後の共同親権に合意しており,それが子の福祉にかなう場合にまで共同親権を否定するのは,基本法6条の親の権利の侵害に当たるとしたわけでございます。   最終的に,1997年の改正では,離婚後も原則として共同親権が継続すると規定するに至っています。立法時には様々な議論があり,高葛藤事案では親は合意できず,共同親権はかえって子の福祉に反するのではないか,むしろ原則は単独親権とすべきではないか,という主張もございました。しかし,現在では,原則として共同親権とする制度が定着していると言ってよいと思います。   その背景には,ドイツの社会の変化があります。ドイツでは離婚率が1990年代以降,急増しており,2000年代には40%から50%になり,現在も36%ほどございます。また,婚外子の出生率も1990年代以降急増し,2000年代に20%から30%となり,現在33%でございます。つまり,もはや婚姻家族の単位を前提とできず,離婚,再婚や事実婚のカップル,パッチワーク家族が増えているといえます。   また,人権規範も重要な役割を果たしています。離婚後の別居親又は未婚親,これは多くの場合に父親ですけれども,この者が親権を持ち,子の養育に関与するということが基本法上の親の権利であり,また,欧州人権条約が定める家庭生活の尊重を受ける権利に当たるとされています。また,児童の権利条約も子が離別した両親と密接な関係を保つ権利を定めております。これを受けて,ドイツでも1997年改正を経て,離婚後も原則として共同親権が継続しますし,未婚親にも共同親権を認める可能性が開かれております。また,別居親の面会交流や継親による共同監護も認められております。   現行法上の制度と実務における運用につきましては,ドイツでは裁判離婚主義が採られており,年間15万件の離婚事件があります。その98%で単独親権とする申立ては全くなされておらず,自動的に共同親権となっております。他方,両親の別居時や離婚後に,独立の事件として単独親権への変更を求める例はございます。こちらがほぼ1万5,000件で,1671条事件と呼ばれております。その73%の事件で母親が単独親権を得ています。ただし,共同親権を単独親権に変更する際には,他方の親も同意しているか,又は単独親権への変更が最も子の福祉にかなうことを要件としており,かなりハードルが高いものとなっています。また,近時の判例は相当性の原則の遵守も要求していますので,単独親権への切替えは非常に難しいという状況です。切り替えるとしても,両親の単なる意見の相違では足りず,意思疎通が全く不可能で現実に問題があるという例外的な場合にのみ,単独親権となりえます。その場合にも,親権全体を単独親権とするのはまれで,親権の一部である居所指定権などだけを単独親権とする例が多いとされています。虐待等によって子の福祉が危険にさらされる場合には,親権喪失の制度もあります。親権の全部喪失は年間7,800件ほど,一部喪失は8,700件ほどです。ただし,両親の別居後又は離婚後は,基本的には使われていないようです。   次に,離婚後の共同親権の下での子の監護養育についてです。立法者は引取り型を前提としております。実際には,93%の子が母と同居しているとされており,別居親である父とは面会交流をするという構造になっています。その際の共同親権の行使を円滑にするために,民法は重要事項と日常生活事項を区別しています。重要事項に当たるのは,住居の変更,学校の選択,重要な医療行為などで,両親の共同決定を必要とします。それ以外の日常生活事項については,同居親が単独で決定できます。両者の区別の基準は,判例上明確になっており,実務上も問題は生じていないとされております。特定の重要事項について両親の意見が相違する場合には,家庭裁判所に申立てをし,子の福祉に照らして決定権を自己に付与するように親が求めることができます。これを1628条事件と呼んでおります。ただし,この事件類型は基本的に少数であるようです。これは,ワンポイントの決定権付与にすぎないということと,通常は子の福祉を最もよく判断できるのは同居親の方であり,同居親の判断が優先されるために,争っても仕方がないということから,余り使われていないようです。むしろ実務でよく争われる事件の多くは,単独親権への変更の申立てか,あるいは面会交流の制限であるとされております。   次に面会交流についてです。ドイツ法上,面会交流は子の権利であり,また親の権利及び義務であると位置付けられています。共同親権の下での引取り型に従い,93%の子が母と同居し,父と面会交流しています。一般に面会交流では,隔週で金曜日から月曜日まで子が父と過ごし,長期休暇の半分を父と過ごすことが多いとされています。虐待事案であっても付添い付き面会交流を命ずることが多く,交流をそもそも禁止するという命令が出る例は稀であるようです。   面会交流の利点としては,子が両親との交流を保つことで,子の精神の安定や忠誠葛藤の除去に役立つこと,それから子の人格形成にも資するとされています。また,別居親の多くも責任感を持ち,養育費の履行率も上がるとされていますし,自主的に子どものための出捐をする例も多いようです。さらに,両親のリソースを活用してそれぞれの得意分野の強みをいかせれば,子にとっても利点が多いとされています。   以上のようなドイツの現行法の評価は,基本的に肯定的であるといえます。両親が離婚後も共同で子の監護養育に責任を持つという発想は,社会に浸透しました。裁判所でも,負担の懸念というものは示されておりません。共同親権の行使も,重要事項と日常生活事項を区別することで円滑に行われています。実務上は,少年局や民間団体等が提供するカウンセリング,親教育,それから親ガイダンスが重要であるとされています。裁判所でも期日の初回に,まずカウンセリングを受けるように当事者に勧める例もあります。カウンセリングは基本的に無料で,ソーシャルワーカーや心理学の専門家がサービスを提供します。両親に対して,パートナー関係がうまくいかなかったということと,両親が子にとっての親であるという親子関係とを切り離す重要性を伝えることで,離別後の父母の協力関係を構築することができるとされています。   DVや児童虐待の事案では,どうしても問題があれば単独親権への変更が可能です。多くの場合には,付添い付き面会交流や面会交流の制限をすることで対応できているとされています。裁判官の方に伺ったところでは,例えば,過去にDVがあったケースでも現在は父母が信頼関係を取り戻していて,協力して子どもの養育に当たっているケースもあるようです。また,現在,DVが起こるのではないかとおそれを抱くようなケースで,子どもが父親と会うのを怖がることもありますけれども,実はその原因は夫婦間葛藤にあることも多いとされています。そこで,裁判官としては,このような難しい事案が出てきたときには,心理学者の鑑定意見を求めて,まず何が原因かを探った上で適切に対処しているそうです。そのため,ドイツではDVや虐待への懸念から,原則としての共同親権を否定するという議論は全くないという状況でございます。   次に,現行法の課題と今後の動向についてです。現行法上,共同親権の下では引取り型が前提とされており,共同養育型の根拠規定はありません。しかし,否定もされていません。共同養育型とは一般に,子が両親と過ごす時間がほぼ同等であるか,あるいは少なくとも3対7以上である場合が標準です。現在,大体4%から7%の親が自発的に共同養育を実践しているとされています。両親の合意がない場合にも,2017年の判例では,面会交流の規定を根拠として共同養育を命ずる可能性が認められました。ただし,その際の要件は厳格に設定されており,共同養育が子の福祉にかなうか,子と両親の良好な関係があるかどうか,子どもの意思はどうか,両親の対話・協力関係があるか,などの要素が慎重に審査されます。これまで共同養育を認めた裁判例はごく例外的なもので,例えば,過去にその両親が共同養育を実践していた場合や,年長の子が共同養育を希望している場合,それから,母が明らかに養育能力を欠いており父の助力が不可欠であるといった場合など,例外的な事例に限られております。   このように,ドイツでは共同養育に対して慎重な態度を採っておりますけれども,これは英国及び豪州において,離婚後に共同親責任を認めるだけではなく,両親が子と過ごす時間を同等とすることで虐待等の問題が出てきたという失敗を踏まえたものであるとされています。   なお,2021年に法学者と社会学者が行った実態調査がございます。これは,シュタインバッハとアウグスティンのデータに基づいて,法学者も一緒に執筆し,「FamRZ」という雑誌に掲載されているものです。それによりますと,共同養育型を実際に実践している親には高収入・高学歴の者が多いというデータが示されております。また,共同養育を受けている子は,父との関係で満足度が高く,精神的にも健康上も安定しているという結果が出ております。ただし,共同養育が行われている場合に,7歳から14歳の子どもでは,特に両親が対立している場合に忠誠葛藤に陥りやすいというデータも出ており,子どもの逃げ場がないということで,難しい状況が出てくるケースもあるとのことです。結局,共同養育が可能かどうかというのは,その親子関係の質や忠誠葛藤の有無,両親の対立いかんによるということで,個別の事案ごとに慎重に判断しなければならないというのが現在のドイツの議論状況でございます。   今後の法改正に関する議論につきましては,あまり時間もございませんので,簡単にのみ御紹介させていただきます。まず,ドイツの学説上は,少しずつ共同養育の形態が出てきていることから,これに対応する必要があるという問題関心で改正提案をするものがございます。特に,従来は,共同親権を場合によっては単独親権に切り替えるという親権の帰属と,親権の行使,そして面会交流という3本立てになっていたのを統合して,親権行使の調整の在り方に一本化するという形での改正提案が出てきているところでございます。   また,ドイツでは,非婚父は自動的に親権を取得することができず,母の同意に基づいて親権宣言を行うか,あるいは家庭裁判所に申立てをして決定を得ることで,初めて親権を取得することができます。これはヨーロッパの中では例外となっており,他のヨーロッパの国々では自動的に非婚父も母との共同親権とする傾向にありますので,ドイツもこれを踏まえて,今後は改正していくべきだというような議論もなされています。   このように見てまいりますと,ドイツにおいては社会の変化に応じて家族制度も発展してきており,離婚後の共同親権を原則とするという制度が定着しているということができます。しかし,親権の行使については,まだ引取り型が前提となっていて,共同養育を認めるに当たっては,非常に慎重な態度を採っているということができます。ドイツはヨーロッパに位置し,欧州人権条約やEU法などの上位規範の下でヨーロッパでの家族法の平準化が進む中で,その影響も受けてきています。今後もドイツでは,ヨーロッパ諸国の動向なども見ながら,次第に家族法の改正の議論が進むのではないかと思われます。   以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   以上で4人の参考人の方々からお話を頂いたことになります。予定しておりました終了時刻は既に過ぎているのですけれども,せっかく貴重なお話を4先生に頂きましたので,大変4先生には恐縮ですけれども,当初予定しておりました質疑時間をとらせていただきたいと思いますので,あと20分だけお付合いを頂ければと幸いです。   そこで,皆様から質問等を出していただきたいと思いますが,お名前を言っていただき,どなたに対する質問であるかということを明示していただきたいと思います。時間が限られておりますので,今日,附属の資料なども出していただいておりますし,あるいはフランスやタイについての資料もございますけれども,4先生のお話に関する質問に絞って御発言を頂ければと思います。先ほどの菅原委員のときにも申し上げましたけれども,御意見等はまた別の機会に伺うことができればと思います。 ○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。多分,全員の先生方ということになってしまうのですが,私の質問というのは,子どもを特に監護している同居親の方が再婚した場合の法律関係について,それぞれの国において,特に共同監護を認めている場合にどうなるのかという点について,少しお聞きしたいと思いました。これは日本法の固有の問題になるのかもしれませんが,単独親権者である監護親が再婚して,その相手方と子どもが養子縁組をしたということになりますと,一般的には共同親権になると言われています。共同監護というのを認めた場合に,恐らく双方の関係というのが問題になるのだろうと思いますが,それぞれの国においてそうした問題がないのか,そもそも養子縁組の制度も違うので,生じないのか,あるいは,養子縁組の制度は生じないとしても,同じように再婚の問題はあると思いますので,それについてお聞きできたらと思ったのですが,全員というのは多かったら,何でしたら,先ほど再婚が70%というお話をして頂きましたので,山口さんにお聞きするということに限って頂いても結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。すみません,窪田委員,時間が限られていますので,山口参考人に限ってということでお願いしたいと思います。山口参考人,お願いします。 ○山口参考人 ありがとうございます。欧米は共通しているかもしれませんが,養子縁組は親子関係の終了となりますので,まず継親子養子縁組はほとんど行われないということです。ペアレンタル・ライツというものを実の親は持っておりますので,それは何の権利であるかといったら,養子縁組の拒否権,同意権というものがあります,そして扶養義務がありますので,終生というか,未成年に限っては,実の親がそれを持ち続ける。では,継親となる養子縁組をしていない継父,継母はどうなるかというと,事実上の監護権を有しまして,扶養に関しては家族の中で扶養する事実はありますけれども,しかし権利的には求められないというふうになっているようです。事実的にやる分には構わないということですけれども。面会交流も実親にありますし,そして,双方が再婚しますので,4人,8人の両親がいて,それで全員が関係性を持つというようなこともあると聞いております。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○柿本委員 いろいろありがとうございました。2点ございます。金先生にですが,少し読み込み不足なのかもしれませんけれども,数字の確認というか,理由を教えてください。2014年に未成年のお子様のいる離婚の減少というコメントがあったように思うのですけれども,これは何かきっかけというか,社会現象というか,法整備など,何か理由があれば教えていただきたいと思います。   2点目でございますが,山口先生が無断転居の制限というところで,常識として認識されているというふうな表現があったように思うのです。これはどのような工夫というか,どのようにして醸成されてきた常識なのかということが教えていただければと思います。それに関連して,社会資源が整えられているということが言われたかと思うのですけれども,その社会資源というのは具体的に言うとどのようなものなのかということを教えていただければと思いました。 ○大村部会長 それでは,順番に,すみませんが,短くお願いいたします。 ○金参考人 御質問ありがとうございます。2014年に未成年の子どものいる夫婦の離婚が,ない夫婦の離婚と,少なくなったということなのですけれども,韓国での説明としては,先ほどの2007年の改正以降,実はその前から少し減ってはいたのですけれども,未成年の子どもの離婚後の監護についてきちんとみんな考えるようになった一つの例として,2014年の数字が逆転したという評価がされています。本当に何があったかということについては,もう少し検討してみないと分からないところはあると思うのですけれども,傾向としてはどんどん減っていて,離婚後の子どものことをきちんと考えているということは背景にあると思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○山口参考人 無断転居の禁止は全ての州法に書かれておりまして,離婚の養育計画の中にも案内があります。そして,飛行機に乗るときには,婚姻していても,一緒に旅行しない親のサインが必要だということは,もうこれは旅行関係ではほとんどの人が知っているということなので,婚姻中から単独で旅行するときには注意されているということです。また,ハーグ条約に関しても理解が進んでいるので,転居は自由にできない,旅行でさえ自由にできない,しかも,それは非監護親であっても子どもを連れて旅行するときには他方の親のサインが必要ということです。そして,社会的資源というものは,情報発信の充実や民間支援の充実のところに書いておりますが,各種専門家がおりまして,離婚カウンセラーや養育コーディネーターというような,大学院でもそういう資格を取るようなものがありますので,そういう民間的なメンタル的なサポート,心理的なサポート,そして実体的なサポートというものがあると考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○青竹幹事  各先生方に一つずつなのですけれども,まず金先生に,共同親権を解釈により認めるべきという実務の要望があったということなのですけれども,具体的にどのような要望があったか,また何か背景がありましたら,教えていただきたいと思います。   それから,山口先生,州法の共同監護の原則で,単独とする場合には当事者の合意だけでできますか。 ○大村部会長 青竹幹事,時間が限られていますので,4問ではなくて,少し絞ってもらえますか。 ○青竹幹事 西谷先生に,親ガイダンスは義務のようなものなのでしょうか。法律上の義務でしょうか,それとも単に勧めますというようなものでしょうか。   以上です,すみません。 ○大村部会長 では,順番にお願いいたします。 ○金参考人 多分,私の説明が余りよくなかったと思うのですけれども,要望というよりかは,先ほどの1990年代後半の韓国の経済危機がありましたので,そこで離婚後の子の監護について親が非常に消極的な態度を採るというのが増えていったということになって,そういった父母に対して,きちんと親権者として自覚を持ってくださいねということで,協議離婚制度の改正も含めて,学説では共同親権にすべきだということは既に前から出てはいたのですけれども,実務の方からの要望が出たのは,やはり離婚後の子の監護について余り考えない父母が増えてきたので,それに対応する形で共同親権というものを実務でも求めるようになったというところがあると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○山口参考人 共同監護以外に単独監護ももちろんあります。1のAのところに書いております,選択的規定というものがありまして,子の最善の利益に従って監護形態を決定するというものです。DVは加害者に監護権を与えるのは子の利益にはならないと定められておりますし,高葛藤のときに裁判官が駄目だと言えば単独監護になりますので,選択肢としては残っております。 ○西谷参考人 ありがとうございます。レジュメでカウンセリングを命ずる裁判官もいると書いたので,誤解が生じたかもしれず,恐縮に存じます。カウンセリングは,あくまで当事者の合意に基づくもので,アポを取ったり,実際にアレンジしたりするのも当事者に任されています。ただし,民間団体や少年局には,カウンセリングの結果を裁判所に報告する義務がありますので,情報共有はできているということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○原田委員 金先生に,先ほど共同親権の動きがあるということでしたけれども,養育についてはやはり単独養育が原則なのでしょうか。   それから,西谷先生で,共同親権だけれども養育は単独という傾向というお話だったと思うのですけれども,その場合の共同親権の親権の内容は,日本の親権者と監護権者を分属する場合の親権者のような内容なのでしょうか,それとも,もう少し義務的なものが強調されているのでしょうか。 ○大村部会長 では順番に,お願いいたします。 ○金参考人 今,原則とおっしゃったのが,裁判実務での原則だという意味であれば,それは裁判実務は恐らく単独監護というというものを原則としていると思います。学説についても共同親権,単独養育という考え方が多いので,誰かが監護するかについては単独での監護というものがやはり韓国では支配的な考え方だと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○西谷参考人 ありがとうございます。ドイツの場合には,まず,引取り型が前提になっていて,母親が同居し,父親と面会交流するケースが多いのですが,面会交流自体,隔週で金曜日から月曜日まで父親のところに泊まり,長期休暇も半々に過ごしますので,かなり密接な交流があるといえます。それから,日本法上の親権と監護権の分属の場合との異同につきましては,ドイツの方は全く発想が違っていて,あくまで共同親権が前提となっており,そのうえで,重要事項と日常生活事項とを区別することで,共同親権の行使を調整しているということかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○石綿幹事 ありがとうございます。石綿です。西谷先生にお伺いします。スライド8ページで,虐待事案等では付添い付き面会交流が行われていると紹介されていますが,その理由を教えていただきたいです。面会交流が子どものために必要だからなのか,虐待の程度のひどいものは既に親権喪失の方でスクリーニングされているからかというところが質問の意図です。また,もし分かりましたら,交流禁止になる事案がどのようなものか,教えていただければと思います。 ○西谷参考人 どうもありがとうございます。虐待事案につきましても,一旦面会交流をやめてしまうと,子どもが父親の顔を忘れ,完全に関係が切れるおそれがありますので,それを避けるために,できるだけ面会交流は行うべきだと言われております。少年局が関与して,付添い付き面会交流を行うことも多いようです。面会場所が特定されないように,車でぐるぐるあちこち走り回って,父を面会場所に連れて行き,また連れ帰るケースもあるようですので,それだけ面会交流を重視していると言えるかと思います。そのため,交流が禁止されたケースというのが,実務家に聞き取りしても,なかなか出てこなかったのですけれども,ただ,実際にお会いした裁判官の弟さんが裁判所から面会交流を否定されて子どもに会えないというケースも伺いましたので,母親の主張などによって裁判官が会わせるべきでないと判断したケースも一定数あるのかと思われます。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○赤石委員 ありがとうございます。赤石でございます。小川先生にお伺いしたいのですけれども,オーストラリアやイギリスでは共同親責任が,時間の配分がかなり正確に配分するような法律ができて,それのネガティブな面が出てきたので,法改正をして,子どもの虐待や家族内の暴力に配慮するようになったと受け止めたのですが,これで正しいのでしょうかということと,それ以外の国ではどんな状況なのか,西谷先生のところでも,英国,豪州での失敗例というのがあったので,同じ認識なのか,それは類推なので,ごめんなさい,一応,小川先生に質問です。   あと,山口先生に,調査のレビューについて御紹介があったのですが,2ページの真ん中,共同監護の評価ですが,これは幾つかの調査を紹介した論文を御紹介されているということでよろしいですかという,二つ質問です。 ○大村部会長 では,小川参考人,それから山口参考人の順でお願いいたします。 ○小川参考人 御質問ありがとうございます。まず,共同監護はもう存在していません。だから,分担親責任なのです。監護というのはどうしても強い者が弱い者を守るという強弱関係,上下関係という概念があるので,そういうものを払拭していこうということで,親責任分担なのです。法改正のときに,日本でもそうなのですけれども,共同親権というふうな形で非常に強いロビーイングがあって,そういうマスコミなどの報道の中で,共同養育を推進するという法律を目指したのです。だから,養育時間の均等ということは明記されていないのですけれども,多くの人がそういうことが実現できるのだというふうに法律を誤って理解したのです。それによって重大な影響が生じたというのが一つのポイントです。お答えになっているかどうか。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○山口参考人 ここで挙げましたのは,40のスタディをまとめたものですけれども,個々それぞれに引用のものがありますので,私もそれを幾つか読みますと,やはり社会科学系で数学を用いた統計が行われていたり,いろいろな変数があって,1冊の本から長い文献まで,たくさんあります。ここに挙げましたのは,参考文献がたくさん挙がっているという意味で有益かなと思いまして挙げました。まとめるに当たってここに挙げただけでございます。 ○落合委員 どうもありがとうございます。小川先生のおっしゃった,今,赤石さんも指摘されたところに関してなのですけれども,共同養育のネガティブな面というのが出てきたということですが,これについて私が伺いたいのは,山口先生とか西谷先生の方から見て,それへのコメントが頂きたいというか,アメリカとかドイツでもそういうことは起きているけれども解決できると思っているのか,あるいはやはり深刻だと思っているのかという辺りについて,国際比較的なことを伺いたいと思うのです。お願いします。 ○大村部会長 では,山口参考人,西谷参考人の順で,短くお願いします。 ○山口参考人 難しいことだと思いまして,小川先生のお話を聞いていると,なるほどと私も理解するところもありまして,共感するところもあります。アメリカでは,やはり反対の人もいますし,やはり高葛藤の事例で難しいケースもたくさん出ています。立法するに当たって民意が先か,法理論が先かという話がよくアメリカでも出されますが,同性婚に関しても5割の人は反対しているということですが,それでも法改正がなされた。共同監護に関しても反対している人は確かにいるし,問題だと思っている人も確かにいるということで,裁判も常にあっているという状態です。しかし,それでも州の権限ということで,子どもの利益を確保するのだという州の権限が強いというのがアメリカ法の特徴かなと思っております。 ○西谷参考人 ありがとうございます。まず,共同親権と共同養育というのは全然別のレベルのものとして各国で分けられていますので,きちんと区別する必要があるかと思います。   小川先生も御報告くださっており,私がオーストラリアの研究者の方に伺ったところでも,やはりオーストラリア法の問題は,2006年に改正された1975年家族法にあり,同等の共同親責任を父母が負うのが最も子の福祉にかなうという推定規定が入ってしまったこと,また,子どもが両親と過ごす時間を同等にできるか否かを裁判官がまず確認するという規定も入ったことにあります。そのために,共同養育をするのがいいことだという先入観が出来上がってしまい,裁判官もそれに従っていますし,父母が交渉するときにも,共同養育をやらないといけないという固定観念ができています。そして,母親が父親によるDVや虐待等を理由に共同養育を嫌がると,片親疎外であるとか,あるいはフレンドリー・ペアレントの原則に照らすと失格だとして,母親が監護権を失ったケースもあり,そこまで強力に共同養育を推し進めてしまったのが,オーストラリアの問題だと思われます。イギリスでは,報告書などで,オーストラリア法には問題があったので,イギリスではもっとよい制度設計をしましょう,と書いてありますが,やはりイギリスでも共同養育をいいものだと見る傾向が強かったために,問題が出てきたようです。   ドイツの議論を伺った限りでは,国際比較をした上で,オーストラリアやイギリスの失敗例を踏まえて,共同養育は,父母が本当に同意していて良好な関係を保っており,うまくいくときであればよい。一方の親が嫌だと言っているときにも,子の福祉や子と両親の良好な関係,親の対話力や調整力などを見た上で,できるということであれば,ごく例外的にだけ裁判所の決定として共同養育を命じる,という傾向にあるようです。今後,ドイツでも共同養育の例が増えていくかもしれませんけれども,いずれにしてもオーストラリアとイギリスの失敗例を見た上で,慎重に動いていくものと思われます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   まだ皆さんの方から御質問,あるいは,更に意見ということになると,多数の御発言があろうかと思いますけれども,大分時間を過ぎましたので,よろしければ,本日のヒアリングはここまでということにさせていただきたいと存じます。   参考人の4人の先生におかれましては,大変お忙しい中を当部会の調査審議に御協力を頂きまして,誠にありがとうございました。本日頂きましたお話は,この後の審議の中でいかしていきたいと考えております。改めて御礼を申し上げております。   以上でヒアリングは終了ということにさせていただきたいと存じます。   そこで,次回の部会ですけれども,前回に御議論を頂きましたとおり,父母の離婚後の子の養育の在り方について意見交換をお願いしたいと考えておりますけれども,先ほどの部会資料3の面会交流の件が積み残しになっておりますので,それをやってから,今申し上げました離婚後の子の養育の在り方についての意見交換というのに入りたいと考えております。   事務局には次回までに,父母の離婚後の子の養育の在り方に関するこれまでの議論等をまとめて,意見交換のベースになるような資料を用意していただくということでお願いをしたいと思います。 ○棚村委員 それで,家族法研究会の報告書がありまして,私はメンバーではなかったのですが,私たちも読ませていただいて大変参考になりました。家族法研究会では,1年数か月にわたって論点整理をしていただいていますので,是非,海外法制についてのヒアリングもそうですが,資料としてまとめていただいて,適宜提出していただき議論の参考にさせていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。今の御指摘も踏まえて,資料の方は準備をしていただきたいと思います。   本日の審議の予定はここまででございますけれども,次回の議事日程等につきまして,事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務局でございます。次回ですけれども,令和3年8月31日火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所は改めて御連絡させていただきます。   次回は今,部会長の方から御説明いただきましたように,部会資料3の面会交流の部分の残りの御議論を頂いた上で,離婚後の子の養育の在り方に関する資料に基づく御議論をお願いする予定でございます。事務局で用意した資料をあらかじめ送付させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。今お話がありましたように,次回は8月31日ということですが,次回も,どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,30分ほど時間が延びてしまいましたけれども,法制審議会家族法制部会の第5回会議をこれで閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜り,ありがとうございました。これで閉会いたします。 −了−