法制審議会 刑事法(逃亡防止関係)部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  令和3年2月22日(月)   自 午後 1時30分                        至 午後 3時50分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 公判期日への出頭及び刑の執行を確保するための刑事法の整備について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鷦鷯幹事 それでは,予定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会第9回会議を開催いたします。 ○酒巻部会長 本日も,御多忙中のところ,お集まりいただきましてありがとうございます。本日は,天野委員,安東委員,河瀬委員,北川委員,菅野委員,藤本委員,向井委員,小笠原幹事,笹倉幹事,重松幹事,福家幹事,和田幹事及び井上関係官には,ウェブ会議システムにより御出席いただいております。   くのぎ幹事は所用のため欠席されています。また,川原委員及び保坂幹事は所用のため遅れて出席される予定です。   議事に入る前に,前回の会議以降,委員の異動がありましたので,御紹介させていただきます。森本加奈氏,田中勝也氏が委員を退任され,新たに河瀬由美子氏,藤本隆史氏が委員となりました。初めて会議に御出席いただいた河瀬委員,藤本委員から,順番に自己紹介を頂けますでしょうか。 ○河瀬委員 最高検察庁総務部長をしております河瀬でございます。森本加奈検事の異動に伴いまして,今回から当部会に参加させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。 ○藤本委員 警察庁刑事局長の藤本でございます。よろしくお願いいたします。 ○酒巻部会長 どうもありがとうございます。それでは,議事に入ります。   まず,事務当局から本日の配布資料について説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 本日,配布資料として,配布資料28「検討のためのたたき台・その2〔再改訂版〕(第1-5 保釈中又は勾留執行停止中の被告人にGPS端末を装着させることにより逃亡を防止する仕組みを設けること)」,配布資料29「諸外国におけるGPSにより被告人の位置情報を取得・把握する制度の概要(米国)」,配布資料30「諸外国におけるGPSにより被告人の位置情報を取得・把握する制度の概要(一覧)」,配布資料31「検討のためのたたき台・その2〔再改訂版〕(第2-1 禁錮以上の実刑判決の宣告後の裁量保釈(再保釈)について,同判決の宣告前の場合と比較して,要件を厳格なものとすること)」,配布資料32「実刑判決宣告後の裁量保釈の許否の判断事例」,配布資料33「検討のためのたたき台・その2〔再改訂版〕(第2-2 控訴審の判決宣告期日への出頭を被告人に義務付けること)」をお配りしております。配布資料に不足がある方はいらっしゃいますでしょうか。よろしいでしょうか。各資料の内容については,それぞれ対応する検討項目の御議論の際に御説明いたします。 ○酒巻部会長 それでは,審議に入りたいと思います。前回と同様に,更に議論を尽くすべき項目に焦点を当てて議論を行いたいと思います。   本日は,「第1-5 保釈中又は勾留執行停止中の被告人にGPS端末を装着させることにより逃亡を防止する仕組みを設けること」,「第2-1 禁錮以上の実刑判決の宣告後の裁量保釈(再保釈)について,同判決の宣告前の場合と比較して,要件を厳格なものとすること」,及び「第2-2 控訴審の判決宣告期日への出頭を被告人に義務付けること」について御議論いただくことにしたいと思います。   それでは,まず,「第1-5 保釈中又は勾留執行停止の被告人にGPS端末を装着させることにより逃亡を防止する仕組みを設けること」についての議論を行います。議論に先立ち,関連する配布資料について,事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 この検討項目に関連するのは,配布資料28から30までです。   まず,配布資料28について御説明いたします。「制度枠組み」を御覧ください。   「(3)」のGPS端末の装着を命ぜられた被告人が遵守すべき事項には,前回の御議論を踏まえ,新たに,「エ」として,GPS端末による位置測定が行われていないことを知ったときに遅滞なく必要な事項を報告することを加えています。   また,「(4)」には,位置測定が行われなくなった場合には,その機能を回復するための措置を講ずる必要が生じ得ると考えられることから,新たに,そのような場合には,裁判所は,被告人に対し,指定の日時及び場所に出頭し,必要な事項を報告することを命ずることができることを記載しています。   次に,義務違反等があった場合の措置について,まず,「(5)」には,裁判所は,被告人が正当な理由なく立入禁止命令や遵守事項に違反した場合には,保釈等を取り消すことができることを記載しています。   また,「(6)」及び「(7)」には,前回の御議論の中で,義務違反情報が検知されたときは,ひとまず一時的に身柄拘束をして逃亡を阻止しつつ,義務違反の有無を認定して保釈等の取消しの要否を適切に判断することができる仕組みが必要ではないかとの御意見があったことを踏まえ,現行法の勾引の仕組みを参考に,新たに,義務違反情報が検知された場合に被告人を勾引し,そのような情報が検知された事情について聴取する仕組みを設けることを記載しています。   さらに,「(8)」では,義務違反情報等が検知されたときは,裁判所は保釈の取消しの判断に用いるため,検察官は保釈の取消し請求の判断や被告人の身柄の確保に用いるため,GPS端末の位置情報を取得することができることとしています。   最後に,「(9)」には,命令や遵守事項に違反する行為があった場合の罰則について記載しています。   続いて,検討課題を御覧ください。   「(1)」は,前回に引き続き挙げているものです。   「(2)」には,制度枠組み「(6)」及び「(7)」に関するものとして,新たに,「義務違反情報が検知された場合における一時的な身柄拘束」を挙げています。義務違反情報が検知された場合に,保釈取消しの判断を待たずに被告人の身柄を一時的に拘束できる仕組みを設けることとした場合,どのような要件・手続で行うものとするのが適切かについて御議論いただければと思います。   「(3)」の「○」は,前回も挙げていたものですが,GPS端末の装着命令や義務違反の認定については,制度枠組みにも記載しているとおり,裁判所が行うのが適切であると考えられる一方,「GPS端末の装着」,「GPS端末の保守」,「義務違反情報の検知」については,これらをどの機関が行うものとするかにつき,「(2)」の議論も踏まえ,更に御議論いただく必要があると思われることから,引き続き検討課題として挙げています。   「(4)」の「違反があった場合の罰則」については,罰則の要否のほか,法定刑をどのようなものとするかという点についても御議論いただければと思います。   配布資料28の御説明は以上です。   続いて,配布資料29について御説明いたします。   配布資料29は,アメリカの連邦におけるGPSによる被告人の位置情報を取得・把握する制度についてまとめたものです。第4回会議において,イギリス,フランス,韓国及びカナダの4か国のGPSの制度の概要をまとめた配布資料18をお配りしましたが,この配布資料29は,それと同様に,アメリカの連邦におけるGPS制度の概要を,「1 GPS機器の装着の義務付け等」,「2 GPSによる位置情報の取得・把握の実施等」,「3 参考(GPS機器の概要等)」に整理しています。   その要点を御説明しますと,「1」「(1)」にあるように,裁判所が被告人に対してGPSの装着を命ずる仕組みとなっており,また,「1」「(4)」にあるように,一定の場所に行くこと,あるいは一定の場所から出ることを禁止するなどの条件と併せて,GPS端末の装着を命ぜられるほか,GPSの取り外し及び損壊禁止,充電義務等の事項を遵守することが命ぜられるようです。また,「2」「(3)」にあるように,そうした命令や遵守事項に違反した場合には,保釈が取り消されたり,保釈条件が変更されることがあり,法廷侮辱罪により処罰されることもあるようです。そして,「3」にあるように,GPS端末の形状や機能などは,イギリス等におけるものとおおむね同様のようです。この機器による監視は,連邦裁判所の職員である公判前事務担当官が実施しており,GPS端末には,「担当官の事務所に出頭せよ」などの事前に設定されたメッセージを受信させることも可能で,対象者がその指示に従うことも保釈の条件とされているようです。   配布資料29の御説明は以上です。   次の配布資料30は,これまでに御紹介したアメリカ,イギリス等5か国におけるGPSにより被告人の位置情報を取得・把握する制度を一覧表にまとめたものですので,御議論いただくに当たって,適宜御参照いただければと思います。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して,御質問はございますか。   説明にもありましたように,今回のたたき台には,新たに制度枠組みに加えられたものに関する検討課題や,それについての議論も踏まえて更に議論をする必要がある検討課題も挙げられており,検討課題の「(1)」から「(4)」までは,そのような相互の関係も踏まえて順に並べられているようですので,まずはこの順番に御議論を頂き,その上で,ここに記載のない事項や制度枠組み全体に関する事項などについても御意見を伺うこととしたいと思います。   それでは,まず,検討課題の「(1)GPS端末を装着させる被告人の範囲・要件」について,御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○佐藤委員 前回,私は,GPS端末を装着させる被告人の範囲・要件について,GPS技術を活用する必要性が高く,これを効果的に活用し得ることが明らかで,かつ,その運用に困難が少ない形で導入することが適当であり,まずは国外逃亡を防止するための制度として導入して,その運用の経験が蓄積した後で対象者を拡大するかどうかについて検討するのが適当ではないかという意見を述べたのですが,その際,対象となる被告人の範囲が狭すぎて,あるいは該当する事件が少なすぎて運用の経験自体が蓄積されないのではないかという御意見があったところです。   確かに,国外に逃亡する場合には,単に出国するにとどまらず,一定の期間にわたって出国先で生活することが必要になることから,実際に対象となるのは,大企業の経営者等のように相当な経済力を有する被告人などに絞られるということも考えられるわけですが,配布資料32の3枚目の最後に挙げられている,関税法違反の事例では,被告人が海外に複数の拠点を有していて海外に居住する親族,関係者がいるということが裁判所による裁量保釈の許否の判断において考慮されており,こうした事情を有する被告人をGPS端末を装着させる対象とすることもできるのではないかと思われました。また,被告人を海外に逃亡させることができる関係者がいるという点では,組織犯罪に関与したとされる被告人をGPS端末を装着させる対象に含めることもできるように思います。もっとも,そのような被告人については,そもそも保釈自体が容易に認められないとすれば,対象にはなりにくいのかもしれません。   こうしたことをあわせ考えたときに,国外逃亡のおそれという観点からGPS端末を装着させる対象となり得る被告人の類型,あるいは規模につき,事務当局として提供いただける,検討の手がかりとなるような情報をお持ちでしょうか。 ○鷦鷯幹事 国外に出ることが想定され,戻ってこなくなることが考えられる被告人ということになりますと,国外に何らかの拠点であるとか,生活を送る上での人的なつながり等を有するものが主な対象として想定されるわけですが,そのような者として,それを可能にするだけの大きな経済力を有する大企業の経営者のほかにも,例えば,外国人が日本国内でコミュニティを作っていて,そのコミュニティの中に不法滞在外国人の不法出国を手引きする者がいることが認められ,被告人がそのような手引きを利用し得る状況がある一方で,被告人の身柄拘束を継続した場合における不利益が極めて大きく,保釈せざるを得ない場合もあり得,そういった被告人の国外逃亡を防止するためにGPS端末を使うことは十分考えられるかと思われます。そうしたことを考えますと,国外逃亡の防止に目的を限ってこの制度を導入することとしても,大企業の経営者といったごく少数の者というわけではなく,一定数の被告人が対象となり得ると考えられるかと思います。 ○髙井委員 まず,意見を申し上げる前に,今日の産経新聞の記事を御紹介したいと思います。委員・幹事の中には,既に御覧になっている方もおられるかと思いますが,「地裁管内 保釈率に大差」という一面の見出しで,大津地裁と福島地裁では保釈率で30ポイントの差がある,具体的には,福島地裁の保釈率が16.7%であるのに対して,大津地裁の保釈率は46.9%であり,これは不公平ではないかという論調の記事になっています。もちろん,裁判官は独立しており,保釈は個々の裁判官が判断するものなので,保釈率が違うというのは,ある意味当然であって,これが均一であるとすればその方がむしろおかしいわけですが,30ポイントもの差が開いているというのは,保釈の許否の判断が合理的な範囲にとどまっているといえるのかどうかについて疑問を呈する余地はあろうかと思います。   それから,社会面においては,「保釈率上昇 増える逃亡」という見出しがあり,更に「同じ犯罪でも地域差『不公平だ』」との小見出しも載っております。この記事の中で,保釈中に逃亡したことにより保釈を取り消された被告人の数は,平成28年の4人から令和元年には33人に急増している,保釈中の再犯も,平成15年は61人であったものが令和元年には285人となったとの指摘がなされています。この記事の論調は,基本的に,保釈率の拡大が社会不安を招いている,あるいは招く危険があるのではないか,あるいは住民が不安を覚えているのではないかというものです。加えて,一面の記事には,現在,保釈中の被告人の逃亡防止策について議論が進められていることが書いてあるわけですが,我々の今の議論は,再犯防止のためのGPSではなくて,逃亡防止のためのGPSの導入ですけれども,社会においては,GPSによって再犯防止もできないかということも考えられている現状にあるということが言えるように思われるわけです。   では,GPSで再犯が防止できるかといえば,それはなかなか難しいけれども,GPSを付けることによって再犯に及ぼうとする意思の発生をある程度抑止することはできるのではないかと思います。また,GPSを付けた被告人が再犯に及んだ場合に,少なくとも,GPSの位置情報を追っていけば,仮にアリバイ主張をされても潰すことができますし,アリバイ主張ができないのであれば,再犯それ自体の抑止にもつながり得ると考えられるわけです。先ほど御紹介したような社会の論調を前提にすると,GPSの導入の在り方として,小さく産んで大きく育てるという姿勢では社会に受け入れられないのではないかと思います。したがって,GPSを付ける対象の被告人の範囲については,合理的な範囲において可能な限り広くすることが,今の社会の情勢を前提とした考え方であろうと私は思います。   そういう観点から考えたとき,まず,国外逃亡の可能性のある者を対象にするということは,これは合理性が明らかだと思います。その上で,どういう者について国外逃亡のおそれがあると判断されるかといえば,一つは外国人ですね。それから,先ほど御発言がありましたように,資金の豊富な者が考えられます。ゴーン被告人にしろ,許永中にしろ,海外逃亡するケースは,金融犯罪の被告人である場合が多いです。それから,これも先ほど御発言がありましたが,組織に属する者,組織を使って海外に出ることが可能な者ですね。GPSの装着は,まずはそういう範囲において広く認めるべきであると考えます。   他方で,国外逃亡のおそれはあまりない,ただ今申し上げたような三つの場合には当たらない被告人,つまり外国人でもなければ,金もあまりない,組織にも属していないという被告人について,GPSを付ければ公判期日にはきちんと出頭することが見込まれる一方で,GPSを付けないと出頭してこないかもしれないというような事例も当然あるわけです。そういう場合には保釈を認めないこととするのか,そういう場合でもGPSを付けることによって保釈を認めることとするのかという議論はあり得るところであって,GPSを付ける対象を国外逃亡に限らずに,GPSを装着させることが適切と思われる特別な理由がある場合というようなものを別途設けておいて,あとは,裁判官の裁量でGPSを付けられるようにすることが,実際の運用を考えた場合に,非常に有益ではないかと思います。   また,仮に国外逃亡のおそれがある場合に限ってGPSを付けることができる制度にし,そのためのインフラシステムができたとします。それを前提として,弁護士が,どうしても保釈を取りたいと考えて,被告人には国外逃亡のおそれはないけれども,裁判官としては国内逃亡のおそれを御心配でしょうから,被告人が自ら進んでGPSを付けることにしますと主張したときに,裁判官は,それならばGPSを付けさせて保釈を認める,ということもあってしかるべきだと私は思うのです。その場合は,弁護人からGPSの装着を申し出ているわけですから,被告人の権利侵害という問題も起きないわけです。対象を国外逃亡に限り,そのためのシステムを構築した場合に,ただ今申し上げたような,任意でGPSを装着する場面で利用できるのか。これは僕の思い違いかもかもしれませんが,国外逃亡を防止するために構築したシステムを使って国内逃亡を防止するためにGPSを被告人に装着させて保釈するということをある裁判官がやろうと考えたときに,ほかの裁判官から何だあいつはと言われるのではないかとか,裁判所の職員からあの裁判官は何を面倒なことをやっているのだと思われるのではないかということで,ちゅうちょする場合も出てくるのではないかという危惧を覚えます。   ですから,ここはやはり,例外的でも何でもいいですから,そういう国外逃亡の防止以外の場面でも,特段の理由があればGPSを付けることができるという制度にしておかないと,使い勝手が非常に悪い制度になるのではないかと思っています。 ○小木曽委員 私も,せっかく制度化するのであれば,もう少し範囲を広げた方がいいという思いはあります。これまでの委員の御発言の中でも,一定の地域への立入りを禁ずることを保釈条件にすることもよくあるとうかがいました。ただ,例えば,被害者や証人に直接的な危害を加えるおそれがかなり高いという場合には,元々保釈はされないのだろうと思われるわけで,それ以外の人たちで,例えば,都府県外への移動を禁ずるとか,一定の地域への立入りを禁ずるといった条件を付けて保釈を許可することが,実務上どのくらいあるのか,教えていただければと思います。   つまり,具体的なオペレーションのイメージを考えると,例えば,国外逃亡であれば,空港なり海港なりに近付いたらアラームが鳴るというのはイメージしやすいわけですけれども,国外逃亡以外ですと,どのような場合に義務違反があったとするか,そもそも義務違反の前提となる条件としてどのようなものを付けるのかということが問題となるわけで,その条件のイメージとして教えて欲しいのです。 ○髙井委員 少し補足したいと思います。今の御意見にしろ,事務当局から示されている案にしろ,一定の制限区域を決めて,そこを出たら発報するシステムにすることが前提になっています。そうすると,国内逃亡を防止する目的でGPSを使うという場合,では,国内のどこを切り出して制限区域にするのかという議論になるわけですが,私は,その場合には制限区域を設ける必要はなく,国外に出ることさえ阻止しておけばいいという意見です。冒頭申し上げたように,GPSを付ければ,それだけで逃亡に対する精神的な抑止効果はある上に,仮に,公判期日に出頭しなかったとしても,そのときにGPSの位置情報を見ればどこにいるか分かるわけですから,そのようなGPSの利用を考えれば,必ずしも,国内逃亡の場合に制限区域を限定しておく必要はないのではないかと思います。   その観点から言えば,制度枠組み「(2)」について,一定の区域から出てはならないことを命ずる「ものとする」というところを,命ずる「ことができるものとする」と規定しておけば,命じないこともできるわけですし,国内逃亡を防止する場合においても,制限区域を海空港周辺とする使い方もあろうかと思いますが,いずれにしても,制限区域を定めることを不可欠なものとするという考え方は採らなくてもいいのではないかと思います。 ○小木曽委員 そうしますと,国外に出るような場面では発報するけれども,それ以外の場面では,GPS端末の充電等の保守義務違反は除いて,特に条件違反というものはなく,公判期日に出頭しなかったときに対象者がどこにいるかが把握できる仕組みになっていればいいということですね。その上で,どういう被告人について,そのようなGPSの用い方が効果的であるかということは,裁判所・裁判官の裁量によるということですね。 ○髙井委員 そういうことです。 ○天野委員 小木曽委員からもお話があったように,私自身の考えとしては,被告人が被害者などに接触する具体的な危険がある場合には,当然保釈は認められないということが前提です。そのような具体的な危険性はないが,被害者に不安がないわけではない被告人について保釈が許された場合に,では,どうするのか。逃亡のおそれがあるということでGPSを装着させることとしたときに,このGPSは,被害者に対する接触禁止の条件を担保するものとしても有用ではないか,ということが,これまでの私の発言の趣旨でした。   保釈条件として被害者や証人への接触禁止が付されることが多くありますが,その際,その実効化というか,被害者側と被告人側との間で,このエリアには立ち入らないという内容の合意をすることがあります。被害者側の生活圏と被告人側の生活圏がかぶらない場合で,かつ,被告人が既に被害者側の生活圏を知っているというときに,被害者側の生活圏を立入り制限区域として設定するもので,そのような場合に,GPS端末を装着した被告人がそこに立ち入った場合に検知するという方法で活用することはとても有用なのではないかと考えています。ですので,制度枠組み「(2)」の制限区域を検討するに当たっては,被害者や証人への接触禁止という観点も含めた形で検討されてもいいのではないかと考えています。   私は,GPSが導入されたらそれ自体で保釈が拡大されるのではないかと思っていたものですから,そういうつもりで議論してきていました。GPSが被害者や証人への接触防止にも有用であれば,逃亡防止に限らず,裁判官の裁量に委ねて利用できるようにすべきではないかということは,これまでも申し上げてきたとおりなのですが,GPSの利用を国外逃亡の防止に限定するということだとすれば,その範囲内でも,GPSを被害者や証人への接触防止にも有効に活用するということがあっても良いのではないかと思います。 ○酒巻部会長 もう少し対象者について議論したいと思いますが,どなたか御意見がある方はいらっしゃいますでしょうか。 ○髙井委員 天野委員の御意見はある意味もっともだと思います。この部会でGPSが議論されている趣旨からすると,被害者保護というのは若干ずれると思いますが,先ほど申し上げた社会の要請というものを考えると,そのような観点も視野に入れながら制度設計をすることは必要なことではないかと思います。 ○笹倉幹事 髙井委員から,GPS端末を装着した被告人が再犯に及んだ場合に犯行時にどこにいたのかが後々分かるためにアリバイ主張ができなくなるという意味で再犯の抑止力があるという御指摘がございましたけれども,GPSで逃亡を防止する,あるいは被害者等への接触を防止するということを考えた場合には,やはり,逃亡や被害者等への接触に及ぼうとした時点で直ちに発覚して取り押さえられる可能性が大きいということが,抑止力の中核であるのだろうと思われます。   そうだとしますと,GPSから発報があったときにどういう機関が対応の任務を担うかはそれ自体として議論すべきことですけれども,実際に駆けつけるのが誰になるにせよ,発報はあったものの,マンパワーが足りなくて即応できないということでは困るわけです。義務違反があったときに警察等が直ちに駆けつけて対処することができる現実的可能性がセットになっていない,逆に言うと,発報があったところで警察等が駆けつけてこない可能性もかなりあるということになると,GPSが付いていても,構わずに逃げてしまおう,あるいは,被害者等に接触しようということになり,所期する目的を達成し得ないことになりかねませんので,制度を作る以上は,警察等が即時に対応することのできる人員や執務の体制がセットになっている必要があると考えます。   その観点からお伺いしたいことがあります。この制度が導入された場合に,これまで保釈されなかった人が,かなりの数で保釈されることになるのか,あるいは,これまで保釈されなかった人が保釈されることになる場合があり得るけれども,それほど数は多くならないと見込まれるのか,また,現行制度の下でも保釈され得る人についてGPS端末を装着する事例が多くなるのか,それとも,それほど数は多くならないのかといった点が,発報時のオペレーションの実効性を考える上で重要な意味を持ってくると思いますので,その辺りについて想定されているところがあれば,お聞かせいただけますか。              (川原委員入室) ○鷦鷯幹事 飽くまで事務当局の考えですが,被害者の保護が必要な刑事事件は,それなりの数に上るものと思われます。そのうち,どの範囲の事件の被告人をGPSの対象とするかにもよるのかもしれませんが,仮に,対象者の範囲を明確に切り分けることができず,どれであっても対象となり得るとすると,対象者はかなりの数になるといえるようにも思われます。また,先ほど,髙井委員から,国外逃亡以外の場面でも,特段の理由があるときには裁判所の裁量でGPS端末を装着させることができるような制度とすべきという御発言がありましたが,その場合でも,やはり,対象者の範囲をどのように画することとするか,それができるのかというのが一つ論点になるのではないかと考える次第です。 ○酒巻部会長 先ほど,髙井委員から,国外逃亡の防止に特化してGPSの制度を作ったとしても,国内逃亡の防止など別の目的で転用することも考えられるのではないかという御趣旨の発言がありました。何の規定も存在しない現行法の下で,逃亡を防止する観点から,保釈条件として被告人にGPS端末を装着させることは,そもそも許されるのかどうかという問題と関連性があるようにも思います。   対象者の範囲について,ほかに御意見はございますか。よろしいですか。   それでは,次に,検討課題「(2)」の義務違反情報が検知された場合における一時的な身柄拘束についての議論に移りたいと思います。この点について,御意見のある方はいらっしゃいますか。 ○佐藤委員 まず,制度枠組み「(5)」にあるとおり,GPS端末の装着に関する命令や遵守事項の違反があった場合,最終的には保釈の取消しによって対応するということを前提に,それに至る前の段階における一時的な身体拘束の仕組みを設けることについて,お話しさせていただきます。   被告人がGPS端末の装着に関する命令や遵守事項に違反する行為に及んだかどうかは,GPS端末に備えられた機能を使って検知するということとなりますが,制度枠組み「(6)」に書かれているような,立入禁止区域への立入り,GPS端末の取り外し,あるいは通信の途絶といった情報を伝える信号は,客観的に,GPS端末がその立入禁止区内に存在したこと,被告人の身体から離れたこと,あるいはGPS端末の通信が途絶えたことを覚知させるものではあるものの,被告人が実際に命令や遵守事項に違反する行為に及んだのか,例えば,正当な理由なく意図的に立入禁止区域に入ったり,GPS端末を破壊して取り外したりしたのか,ということまでは,その信号だけからでは分かりません。   そこで,これらの義務違反情報を検知した場合,裁判所は,保釈を取り消すかどうかを判断するに当たり,さらに,事実の取調べとして,例えば,GPS端末が立入禁止区域との境界を越えた後の軌跡,端末が取り外された場所,GPS端末との通信が途絶える直前の位置や通信が途絶えた時間の長短などといった客観的状況を確認することに加えて,そのような義務違反情報が検知されることになった原因が何であったのかについて,事情を最もよく知る被告人本人から事情を聴取することが必要となる場合も想定されます。そして,そのような聴取を行うことは,慎重な判断,適正な手続の確保という観点から見ても,望ましいように思います。   ただ,被告人が既に逃亡の態勢に入っているとしますと,この聴取に任意の協力を得られるとは思われませんので,義務違反情報が検知された場合において,裁判所による保釈取消しの要否を的確に判断する機会を確保するために必要があるときは,まずは被告人の身体を速やかに確保して,必要かつ相当な範囲の時間,これを留置することができるようにして,その間に,先ほど述べたような事実の取調べをしたり,被告人本人から事情を聴いたりすることができるようにする仕組みを設けることが考えられるだろうと思います。   この点,現行刑事訴訟法の第58条以下には,一時的な身体拘束の仕組みとして,勾引の制度が規定されています。この勾引は,勾留という継続的な身体拘束に先立って行われる一時的な身体拘束ですが,より長期の拘束に先行する一時的な拘束である点で類似するところがありますので,これを参考にして,保釈取消しの判断に向けた手続に先立って行われる一時的な身体拘束の仕組みとして,裁判所ないし裁判官の発する勾引状によって被告人を勾引することができる仕組みを設けることは,あり得る対応だと思われます。また,その内容としては,制度枠組み「(6)」にあるように,まずは,裁判所がその必要があると認めるときに被告人を勾引することができることとした上で,制度枠組み「(7)」にあるように,引致された被告人から陳述を聴取することとするほか,さらに,現行の刑事訴訟法第59条に倣い,引致後24時間以内に保釈の取消しをしない場合には釈放しなければならないものとするというように,身体拘束を最小限にとどめることにも留意する必要があると思います。 ○向井委員 制度枠組みの「(6)」については,保釈取消しの判断に先立って一定の要件の下で身柄を拘束するという制度だと理解しました。また,その要件を見ると,保釈取消しの要件と比べますと,なるほどこういった事柄については早く判断できるとは思うのですけれども,これらの事情に加えて勾引の必要性の有無を判断するとなると,事案によっては相応の時間を要することも考えられるところです。そうであるとすると,常に裁判官に令状の可否を判断するよう要求することが,被告人の身柄の迅速な拘束を実現する上では支障となるおそれがあるのではないかという若干の懸念があります。「必要があると認める」という要件の意味内容次第なのかなとも思うわけですけれども,一体どのような情報を収集してその要件を判断していくのか,イメージが持てるように,事務当局から御説明をいただけますと有り難いと思いました。   また,「義務違反情報を検知した」という認定の部分に関しても,例えば,被告人がGPS端末を意図的に損壊したのか,あるいは,何か事故によるものなのかといった認定をすることまで要求するものであるとすると,事前の一時的な身柄拘束の要否や適否の判断をする場面でそこまで認定するのは,なかなか困難なところがあるのかなと思う次第です。 ○吉田幹事 事務当局として現時点で考えるところを御説明したいと思います。   義務違反情報が検知された場合には,実際に義務違反があった蓋然性が高まっているといえるだろうと思われ,そのような蓋然性の高まりを前提として判断することになりますが,その上で,個別に見たときに逃亡のおそれの徴表とはいえないような事情があるのであれば,勾引の必要性が否定されることになろうかと思います。   ここで考慮すべき情報としては,一つには,義務違反情報が検知されたGPS端末の位置が挙げられると思います。例えば,GPS端末がすでに空港のエリアに入っているのか,あるいは,それに近付きつつある状況なのか,近付いているとするとどれぐらい接近した距離にあるのかといった客観的な位置関係を考慮して勾引の必要性を判断することが考えられるだろうと思われます。   また,義務違反情報が検知された後の位置情報の軌跡を見ることもあり得ると思われます。入ってはいけないエリアにGPS端末が入った直後に,そのエリアから出て,逆方向に戻っていくのであれば,それは直ちに勾引をする必要性を否定する事情になり得ると思われますし,逆に,禁止区域に入った後,飛行機が発着する場所に一直線で向かっていることがうかがえるのであれば,それは逃亡のおそれを徴表するものとなり,直ちに勾引状を発する必要性を基礎付ける事情の一つになり得るかと思われます。さらに,被告人と連絡が取れているのかどうか,取れる場合には,被告人が義務違反情報の検知に至った経緯についてどういった説明をしているのかなどを考慮することもあり得るだろうと思われます。   もちろん,全ての事案でこれらの事情を網羅的に考慮して判断するという趣旨ではなく,事案によって異なり得ると思われますが,例えばということで申し上げますと,このように,義務違反情報の検知そのものに加えて,そうしたGPS端末の位置やその軌跡,被告人の説明内容等を考慮して,短期間の身柄拘束をする必要があるかどうかを判断するということが考えられるのではないかと思われます。   それから,被告人が意図的にGPS端末を壊したとの判断までが求められるのかという御指摘もありましたが,これも,その判断の時点で蓋然性の程度を判断し,それに応じて,一時的な身柄拘束の要否を判断することになろうかと思われ,そこでは,必ずしも確定的な認定までが求められるわけではないのではないかと思われます。また,その際は,義務違反があった蓋然性を減殺するような事情があるかどうかも考慮していくことになるものと考えられます。              (保坂幹事入室) ○向井委員 やはり多岐にわたる判断が求められるのかなという印象は受けました。そうした事柄を簡易迅速に判断していくことが具体的に可能なのかどうか,令状審査には一定の時間を要するということと折り合いをつけながら,なお若干,考えてみたいと思いました。 ○髙井委員 制度枠組みの「(6)」の勾引の制度と,「(9)」の罰則によって現行犯逮捕を可能にすることには,緊急の身柄拘束という面で重なりがありますから,この「(6)」の勾引の制度の作り方によっては,勾引優先主義,あるいは勾引前置主義みたいになって,現行犯逮捕が制限され,有機的に機動的にできないこととならないかということを危惧します。「(6)」の勾引の制度を作るのであれば,その判断は画一的かつ迅速に行うことができるものとする必要があり,先ほどの事務当局からの説明では裁量の幅がありすぎると思います。先ほど紹介した産経新聞の記事では,保釈の判断が裁判所によって30ポイントも違うということに苦情が出ているわけです。これは間違った苦情かもしれないのだけれども,ある裁判官は勾引を認めない,ある裁判官は勾引を認めるということが随所で起きたら,これは制度に対する信頼性がなくなるということも考えなければなりません。   したがって,仮にこういう勾引という制度を作るのならば,従前からある勾引制度の上に乗っかるのではなくて,別途,この制度に特化した要件というものを定めるべきであり,場合によっては必要性の判断は必要とせず,とにかく発報したら即勾引するものとすべきです。どうせ拘束されるのは短期間なのですから。その上で,事務当局が説明されたような事情を勘案して,問題がなければ身柄を釈放すればいいわけです。とにかくまずは勾引するという制度設計をしないと機能しないと私は思います。 ○吉田幹事 補足で申し上げますと,この勾引の仕組みと現行犯逮捕の仕組みは,現時点では両方設けることが考えられるものとして記載しており,勾引ができることとなると現行犯逮捕ができなくなる,あるいはその逆の事態が生じるというものではないと考えております。その上で,勾引の必要性の判断についてどの程度の蓋然性の心証を要求するかということについては,御議論があり得ようかと思います。例えば,この義務違反情報が検知された場合には基本的には勾引の必要性があると考えた上で,他の事情から明らかに必要性がないと考えられる場合には勾引をしないというような,言わば消極的な形で勾引の必要性を判断するという仕組みもあり得るかもしれませんし,また,先ほど申し上げたように,制度枠組み「(6)」に記載したような形で,表から必要性があるかどうかを判断するものとするという考え方もあろうかと思います。いずれにしても,判断の迅速性が求められる場面である一方,身柄拘束を伴うものですので,その判断には慎重さも求められるところであり,その二つの要請の調整をどのように図るのかということについて御議論いただければと思います。 ○酒巻部会長 迅速性,緊急性という観点から,これは全く頭の体操ですが,令状が出た後の緊急執行ではなく,緊急逮捕と同様に緊急勾引のような形で先に身体拘束をして,後からこれを司法審査するという制度もあり得ると思いますが,どのような問題点が考えられるでしょうか。 ○吉田幹事 そのような緊急逮捕類似の仕組みというものも考えることはできるのかもしれません。ただ,緊急逮捕については,憲法上の要請から,犯罪の重大性や緊急性など,非常に厳格な要件が定められております。それを念頭に置いたときに,この制度枠組み「(6)」の勾引の場面について,そのような緊急の身柄拘束を認めることができるのかということについては,議論が必要なのかなと考えております。 ○角田委員 この問題は,保釈された被告人に取り付けたGPS端末から信号が来なくなったとか,被告人が許された範囲を超えて行動しているといった場面に関するものであり,この部会における当初の議論では,保釈の取消しで対応したらどうかという議論があったわけです。それについては,保釈取消しの判断にはかなり時間がかかり,緊急の場面には適しないのではないかという意見がありました。そこで,事務当局に考えていただいたこの勾引の制度を転用する方法というのは,判断の時間を確保するという観点から,私も,発想としてはなるほどと思うのです。   ただ,勾引状の発付が必要となると,要件審査がある上に,書面を作って押印することも必要になり,相応の時間を要するということがやはり問題点になります。今の段階では何がベストの方法かというところまでは決断が付かないので,問題提起として申し上げますが,そもそも保釈取消しをするかどうかの判断が本体としてあって,そういう最終的判断するために一段階前倒しの,取りあえずの身柄拘束をやろうという議論をしているわけです。そこで,身柄拘束の問題だから司法審査が必要という考えがある一方,とにかく逃げられてしまったらこの制度を作った意味が全くなくなってしまう,緊急性が極めて高いという要請もある。そういう矛盾する二つの要請の調整を何とか図ろうとすると,論理的には,取りあえず身柄拘束をして事後審査という仕組みとすることも検討の対象とする必要があるのではないか,ここまでは言えると思うのです。   その理由ですけれども,先ほど出た捜査の初期段階の緊急逮捕の場合とは違って,起訴されるだけの嫌疑があり,勾留の要件もそろっていて,本来はそのまま勾留されていてもおかしくない被告人を,GPS端末を付けることでぎりぎり外に出している場面において,被告人のGPS端末から信号が届かないとか,入ってはいけない地域に入っているという事態が客観的に生じているわけなのだから,とにかくまず被告人の身柄を確保した上で,事後審査をして,例えば不可抗力で信号が途切れていたとか,その判断はそれほど難しくないでしょうから,それが分かれば身柄拘束を解いて,また保釈の状態に戻すということも十分考えられるのではないかと,私はそう思います。   それと,一番最後の「(9)」の罰則による現行犯人逮捕は,先ほどの事務当局の御説明ですと,仮に勾引的な制度を設けても併存して機能するということでした。現行犯逮捕の場合には,その効果で身柄を拘束できる時間は48時間ということになります。そして,「(6)」の一時的な身柄拘束は,最終的な保釈取消しの適否を審査するという本来の司法審査のためのものですから,現行の勾引制度の24時間よりも,現行犯逮捕の場合と平仄を合わせて,保釈の取消しの適否の判断ができるだけの十分な時間を確保した方がいいのではないかということも付言しておきたいと思います。 ○酒巻部会長 拘束できる期間を長くすると,今度は,では事後審査でいいのかという話が出てくるかもしれません。いろいろな考え方があり得ると思います。 ○小木曽委員 今の話ですけれども,例えば,空港等に入ってはいけないという条件を付けたとして,被告人がそこに入っていることがGPSによって分かったときに,空港等にいる警察官は,とにかく事実上その被告人のところに行って国外に出ないようにしようとするわけですよね。今,勾引といっているのは,そのような事実上身柄を押さえることをいっているのか,それとも,そのような場合に,警察官は信号を検知しましたから少し待ってくださいと被告人に言って,その間に裁判所に連絡が行って,その後でようやく24時間の勾引が始まるという話になるのか,そこのところの具体的な手続のイメージはどうなのでしょうか。 ○鷦鷯幹事 制度枠組みの「(6)」の勾引の制度と「(9)」の罰則の両方を設けた場合に想定されるところを少し御説明しますと,例えば,空港周辺等の立入りを禁止された区域に被告人が立ち入ったという情報が検知され,本人の現在地が禁止区域内であることが分かっている場合において,現行犯人逮捕が可能か否かについては,立入りを禁止された区域内にいることを現認しているということと,その立入りに正当な理由がないことが明らかと言えるかどうかなどといった点から判断されることとなるのであろうと思われます。   勾引の場合には,直ちに勾引するのではなく本人から事情を聴くことが相当と考えられる場合であれば,そのようにした上で,その説明の内容によって勾引するかどうかを判断することになり,その一方で,例えば,被告人が空港の飛行機が発着する場所に向かって行っている場合など,本人の話を聴いているいとまもないという場合には,事情聴取はせず,裁判所が発付した勾引状を緊急執行する形で,現地の警察官なりが被告人の身柄を拘束し,引致するというのがイメージです。 ○小木曽委員 そうすると,身柄拘束より前の事情聴取というのは,する場合もあるし,しない場合もあるということでしょうか。 ○鷦鷯幹事 ケースバイケースでしょうが,裁判所が被告人に対して報告を命ずるとか,あるいは,被告人側から報告をするという形で,裁判所が被告人から事情を聴くというフェーズがあることはあると思います。制度枠組みの「(7)」に記載しているのは,被告人の身柄を拘束し,裁判所まで連行して引致した後に改めて被告人から事情を聴くというものですから,この制度枠組みの下では,被告人から必ず事情を聴くのはこの引致後の場面ということになりますが,それ以前でも被告人から事情を聴くことはあり得ると想定しています。 ○菅野委員 質問ですが,制度枠組み「(6)」は,迅速な手続である反面,弁護人には特段の連絡が来ないと理解をしておりますが,他方で,被告人から弁護人と相談したいなどと連絡が来たり,裁判所で陳述を聴かれる機会に立ち会ってほしいなどと言われる可能性はあると思っています。この新しい制度で,弁護人に対して何らかの情報の提供があるとか,あるいは弁護人から意見を聴くなどということを想定しているのかどうか,この点を事務当局にお伺いしたいのと,現在の制度で保釈を取り消す際に裁判所は実際に弁護人に対して何か意見を聴いたりしているのか,もし可能ならばお伺いしたいと思いました。 ○吉田幹事 この「制度枠組み」では,弁護人から勾引後に意見を聴く,あるいは事情を聴くというようなことにはしておりません。現行法上,被告人を勾引した場合,被告人に対して公訴事実の要旨を告知するなどの手続がありますが,そこに弁護人が必要的に関わるということにはなっておりませんので,そのような現在の勾引の制度との並びで考えたときに,弁護人の必要的な関与を定めることまでは必要ないのではないかと考え,このような制度枠組みとしております。ただ,実務上,その後,保釈の取消しの判断をするに当たって,裁判所において事実の取調べの一環として弁護人から事情を聴いたり,意見を聴いたりすることがあるのかどうかという点は,また別の問題かと考えております。 ○福家幹事 網羅的に調査等を行ったわけではございませんけれども,保釈の取消しは,被告人に重大な影響を与えますので,その判断に当たっては,慎重に要件を検討するという観点から,被告人や弁護人から言い分を聞き,それを踏まえて判断するという場合はあると理解をしております。先ほど角田委員からお話があったところとも重なりますけれども,それだけに,勾引後の24時間で保釈取消しの判断をするというのはなかなか難しい面があるのではないかという点については,御理解いただければと思うところです。 ○小笠原幹事 先ほど,勾引の手続でもまだゆっくりすぎるのではないかというような意見がありました。確かに勾引状を見ると,裁判官の署名押印が必要で,その紙を持っていかなければならないという話もありました。この際,GPSという先進的な話をするのであれば,令状についてもペーパーレスとかメールでの発付,あとは押印の廃止というところも考えてもいいのかなと思いました。 ○福家幹事 制度枠組みの「(6)」の「ウ」について,位置測定が行われなくなったとき,すぐに勾引状が発付されるのではなく,位置測定機能が回復されることなく一定時間を経過したときに発付し得るものとして規定している趣旨と,その一定の時間を裁判所の規則で定めることにしている趣旨を御説明いただければと思います。 ○鷦鷯幹事 まず,一定時間の経過を要件としている趣旨ですが,人工衛星からの信号が届かないエリアにGPS端末が一時的に入ってしまうことなどが原因で一時的に通信が途絶するということは,現在の技術を前提とすると日常的に起こり得ると思われるところ,そういった日常的に起こり得る現象によって一時的に通信が途絶した場合についてまで義務違反情報として検知されることとなれば,実施機関による情報の取得が過度なものになりかねませんから,それを最小化する趣旨で,一定時間の経過を要件とするものです。   その一定時間を最高裁判所規則で定めることとするのは,周辺の構造物との関係などによりGPS端末の位置の測定が行われなくなるという現象が,GPSの技術の進歩などにより生じにくくなれば,その分,より短い時間の経過をもって通信の途絶の原因が装着者の行為によるものである蓋然性を疑うことができるようになり,それを義務違反情報として検知するようにするということもあり得ると思いますので,そうした技術的な進歩を踏まえつつ,その時間を機動的に改めることができるようにするという趣旨によるものです。 ○福家幹事 被告人の身柄拘束の要件に関連する部分でもありますので,今の御説明も踏まえ,経過時間を裁判所規則で定めることが適当か否かも含めて,また検討していきたいと考えております。 ○髙井委員 制度枠組みの「(6)」「ウ」について,現時点で事務当局としてはこの経過時間の長さをどの程度のものとして想定されているのですか。技術的な要因でロストすることを前提にしたものだとすると,それほど長い時間ではないということですかね。数秒単位では少し短すぎると思うけれども,せいぜい数分程度ですか。イメージを出すために聞いているのだけれども,ここが余り長いと結局,逃げられて終わりですよね。ですから,その間に逃げることができるような長さではないという前提でお聞きしていいのですか。 ○吉田幹事 おっしゃるとおりでして,例えば,今,町中で携帯電話を使うときに,一旦電波が途切れても,その後どれぐらいで回復するだろうかという,技術の現状を踏まえて考える必要があると思うのですけれども,現状を前提としても,恐らく何時間とか何十分というほどではないはずで,数分程度,長くても10分を超えない程度の時間を基本的なイメージとして持っているところです。 ○酒巻部会長 それでは,次の検討課題「(3)実施機関」につきまして御意見のある方は,お願いいたします。 ○小木曽委員 以前の会議で,実施機関としては検察官又は裁判所が考えられるのではないかと申しました。制度の目的が保釈中の被告人の逃亡を防止して公判期日への出頭を確保することにあると考えますと,制度上,出頭確保のための被告人の勾留や保釈,その取消しの権限は裁判所にありますし,今議論のあった一時的な身体拘束の手続をどうするかということにも関わりますが,被告人の身体を一定の時間にわたって拘束する仕組みを設けるのであれば,裁判所・裁判官の判断を介在させるのがいいだろうと思われます。また,一方当事者である検察官がGPSに関する一連の作業を行うことについては公正さが疑われるかもしれないという懸念もあります。そうしますと,GPS端末の装着,保守等を含めて,裁判所が実施機関となるということが考えられます。被告人の義務違反情報が検知されたときに,直ちに身体拘束の態勢に入らないと機動性が損なわれるのではないかということは,先ほどから言われているところですけれども,実施機関と執行機関の間の連絡は技術的にはほとんどタイムラグがないような方法ですることも恐らく可能ではないかと思われますので,その点の心配はさほど大きくないのではないかと思います。 ○福家幹事 義務違反情報の検知の在り方については,義務違反があった場合の措置や,その実効性をどのように確保するかということとも密接に関係するものですので,制度の全体像が見えてきたところで,被告人の逃亡防止という制度目的を踏まえながら,どの機関が担うものとするのが適切かを検討するのが相当ではないかと考えているところでございます。   制度枠組み「(8)」に書いてあるところですが,裁判所だけではなく,保釈取消しや勾引の請求をすることができる検察官も同時に義務違反情報を検知するという仕組みも考えられるのではないかと思います。迅速な身柄確保という制度の目的からすると,裁判所が勾引状発付の事務を行うのと並行して,検察庁や警察においても被告人の身柄拘束のための態勢を直ちに整える必要があるのではないかと思われますので,そういった点も踏まえて,義務違反情報の検知の在り方を検討するのが相当ではないかと考える次第です。 ○小笠原幹事 今,情報の共有の話が「(8)」の関係で出たのですけれども,再犯であるとか別罪の捜査に位置情報が無限定に利用されるのは,やはり問題ではないかと思いますので,そこは注意する必要があるのではないかと思います。 ○酒巻部会長 他に御意見のある方はいらっしゃいますか。よろしいですか。それでは,もう一つの論点である検討課題「(4)違反があった場合の罰則」について御意見のある方は,お願いしたいと思います。 ○和田幹事 法定刑についてお話しします。   今回新しく作ろうとしている犯罪類型は,国家の身柄拘束作用あるいは拘禁作用に対する侵害,危殆化を捉えようとする罪でありますけれども,現行法でそれらを保護法益としている犯罪として,既に逃走の罪と犯人蔵匿・隠避罪があります。それらの罪との関係を整理し,もう一つ前提をお話しした上で,法定刑の話をしたいと思います。   今回作ろうとしている犯罪の罪質を理解する上では,財産犯と対応させたアナロジーで見ていくことが有用だと考えています。人を物の比喩で見るのは適切でないという指摘もあるかもしれませんけれども,有用な見方だと思いますのでお許しいただければと思います。   逃走の罪に当たる行為は,国家が対象者の身柄の所在をコントロールする権能を持っており,現に物理的にその対象者を支配している状態を前提に,それを現に侵害する行為です。これは,財産犯に対応させれば占有侵害罪に当たると考えられますので,単純逃走罪は窃盗罪,加重逃走罪は強盗罪というイメージかと思います。単純逃走罪の場合,その行為者が自らの身柄を国家から盗み出す行為だという見方です。それに対して,犯人蔵匿・隠避罪は,その対象者に対する国家の身柄拘束作用が具体化していない状態であるものの,身柄拘束することが可能であるということを前提にした犯罪だと考えれば,占有離脱物横領罪に対応するイメージになろうかと思います。犯人蔵匿・隠避罪については,占有離脱物の横領行為なので,本人が行う場合は期待可能性が小さいということで処罰対象になっていませんけれども,他人が行う場合は処罰するし,しかも,本犯助長性もありますので,つまり,かくまってくれる人がいるということになると,犯罪が一般に行いやすくなるという点も考慮して,相応に重い3年以下の懲役が用意されているという見方かと思います。その意味では,盗品等関与罪に類する犯罪だということもできるかもしれないと思っています。   それを前提として,今回作ろうとしている犯罪というのは,一旦は国家が物理的な支配下に置いた被告人について,その身柄の管理をその対象者自身に委託して,最終的には公判期日に出頭するという条件の下で保釈した,その状態を前提に,その委託の趣旨に反して出頭しない行為を処罰するものですので,問題となっている犯罪類型は全て,委託物横領罪に対応するような犯罪だと思います。そのような委託物横領罪に対応するものの中で,今回作ろうとしている種々の犯罪類型が,それぞれ違法性,責任の観点から見たときにどのような順序で並ぶのかを見ることが,法定刑を決める際に重要になってくると思います。   前回の会議で,公判期日への不出頭を代表とするような各種不出頭の罪と,公判期日外の出頭報告義務違反の罪は,犯罪性が異なり,前者の方が重く,後者の方が軽いであろうと考えられ,その法定刑は,前者については懲役2年か1年が上限,後者については懲役1年あるいは6月が上限というのが適切ではないかということをお話ししました。これを委託物横領罪に対応させて言えば,委託物横領罪は所有権侵害と委託信任関係侵害から構成されるわけですけれども,所有権侵害に対応する要素というのが,ここでは対象者の身柄の所在をコントロールする国家の権能であると考えられ,委託信任関係侵害については基本的に財産犯の場合と同じように考えられるのではないかと思います。   そうして見たときに,公判期日への不出頭につきましては,所在のコントロールを対象者自身に委ねた国家がそのときそこに来てほしいと指定した日時・場所にその対象者が来ないという罪ですので,財産犯でいえば所有権侵害が100%認められるタイプの委託物横領罪ということになろうかと思います。ですので,違法性は重いと考えられます。それに対して,公判期日外の出頭義務あるいは報告義務違反の罪については,真に目指されるべき所在のコントロールとの関係では間接的な侵害にすぎませんので,違法性が小さく刑も軽くすべきだという見方になると思います。   以上を前提にいたしまして,GPSが関係する今回の制度枠組みの犯罪について考えてみますと,まず,「(9)」「イ」の罪については,これは位置測定機能が不良のときの報告義務違反などの罪ですけれども,その義務は,それが履行されることを通じて,被告人に必要な事項を報告させ,あるいは被告人を出頭させた上でGPS端末の状態を確認することができるようにすることによって,GPSによる監視が適切に機能しているかどうか,あるいは被告人が移動範囲の制限やGPS端末の機能維持義務をきちんと履行しているかどうかを裁判所が適切に確認できるようにするためのものです。そう考えますと,この義務は,逃亡防止との関係では付随的な義務だといえますし,先ほど言いました所有権侵害に対応する対象者の身柄の所在をコントロールする国家の権能に対する侵害として見たときには,間接的なものにとどまると整理されると思います。そうしますと,この「(9)」「イ」の類型の罪については,公判期日外の出頭義務違反,あるいは報告義務違反の罪と同じく,刑の上限は懲役1年あるいは6月とするのが適切であるという見方ができようかと思います。   それに対して,「(9)」「ア」の類型については,前提となる「(2)」,あるいは「(3)」「ア」,又は「(3)」「イ」の義務等も踏まえた上で犯罪の性質を考えてみますと,GPS端末の装着を命じられた被告人は,そもそもGPSによる監視の下での移動範囲の制限に服することを前提に保釈を許されたものですので,その条件に反して故意に立入禁止区域に侵入する行為を行ったり,GPS端末を故意に取り外し,損壊し,あるいはその通信を妨害してGPSによる監視を無効にする行為というのは,保釈の大前提に違反する行為です。保釈の大前提に違反するというのは,要するに委託信任関係を害するということでありますし,逃亡のおそれを強く徴表するものだと類型的にいえるということですので,国家による身柄の所在をコントロールする権能に対する侵害性も,一定以上のものが認められるということになると考えられます。そうすると,報告義務違反の罪に比べれば重い類型として考えるのが適切だと思いますし,十分な身柄のコントロール権侵害と委託信任関係侵害があると考えれば,公判期日への不出頭の罪と同じ重さで対応するのが適切であって,懲役2年あるいは1年が上限と考えるのが合理的だろうと思います。   しかし,この類型については更にもう少し細かく考える必要があるようにも思われまして,一つは,対象者の身柄の所在をコントロールする国家の権能を害する程度を考えてみますと,具体的にこのときここに来てほしいと国家が指定している公判期日への不出頭に比べますと,GPS端末が装着されている場合の義務違反は,一段侵害性が間接的だという見方もできようかと思います。その点を重視すれば,一段軽い犯罪だという見方もできるかもしれません。また,移動範囲の制限違反については所在コントロール権侵害とストレートにいえるのに対し,GPS端末の損壊とか装着義務違反というのは侵害の態様が一段間接的だということで,それらを区別する見方もできるかもしれないと思いました。   さらに,委託信任関係侵害に対応する部分をもう少し踏み込んで考えてみますと,GPS端末を装着される人というのは,要するに,信任されていないからGPS端末を装着されているということですので,通常の意味での委託信任関係侵害の要素は小さいといえるかもしれません。しかし,それを補う物理的な管理のシステムとしてGPS端末が装着されていて,それが害されるということですので,言うなれば,通常の逃走の罪における直接的な拘禁状態が若干緩和されたものが継続していて,それを侵害する犯罪だという見方もできるかもしれず,そうすると,委託物横領罪よりも窃盗罪にむしろ近い犯罪だという見方もできるかもしれません。その点を重視すれば,結局,公判期日への不出頭の罪と同じ重さで対応するということもあり得ると思いました。 ○小笠原幹事 以前から言っていることですけれども,私は,罰則はできるだけ制限的にすべきであると考えております。今回,勾引状の話が出ておりますので,「(9)」のアのうち「(2)」の違反に当たる部分,制限区域への立入りについては速やかに身柄拘束がなされて,正当な理由がなければ当然,保釈の取消しになるということであれば,サンクションとしては保釈の取消しと保釈保証金の没取で十分ではないかと思います。   「(3)」の「ア」・「イ」の違反に当たる部分は,GPS端末を外したり壊したりするという類型であり,必ずしも器物損壊に当てはまるものではない類型も含まれるのだとすると,これに対する罰則を設けることもやむを得ないかなと思います。他方で,「(9)」の「イ」については,先ほど和田幹事からもお話があったとおり,非常に間接的なものですし,これらの場合についても保釈の取消しで対応することが可能と考えられます。あるいは,報告をしないということは装置が正常に作動しない状況が長く続くという状況であり,先ほどの勾引の要件にも当てはまることになると思います。ですから,勾引や保釈取消しが実効的になされるのであれば,わざわざ罰則をする必要性はないのかなと思っております。   そういうことで言うと,「(4)」で指定された日時・場所に出頭しなかったときというのも勾引の対象とすることで,罰則を設ける必要がないのではないかという点についても,議論の余地があるのではないかと思います。 ○藤本委員 ここまでの話とは少し視点が違うのですけれども,違反があった場合の罰則となりますと警察の捜査の対象となり,これまでにも現行犯逮捕というフレーズが何回か出てきておりますが,警察がその違反行為者をすぐに,あるいは短期間のうちに捕捉できるのではないかというお考えもあるかもしれず,その点について,一言申し上げたいと思います。   仮に条件違反があった場合に,すぐにこれを捕捉して短期間のうちに逮捕ができるかというと,もちろん個別のケースにもよると思うのですけれども,やはり外形的にこれが明らかではなく分かりようがない場合もあり,なかなか捕捉できないということはそれなりに多いのではないかと思います。確実に逃亡しようという意図の下に,逃亡しようとしていることが発覚しないように工作などがされていれば,なおさらではないかと思われるところですし,仮に外形的に明らかであっても,捜査という面では,警察官が被告人の周辺に所在していなければ,事後の捜査は別として,その場で短期間のうちに捕捉できるということにもならないのではないかと思われるところでありまして,飽くまで捜査という局面に際してですけれども,繰り返し現行犯逮捕というワードが出てきましたので,そういった点を十分にお含みいただいた上で御議論いただく必要があるのではないかと思った次第です。 ○酒巻部会長 罰則についてはこの程度でよろしいでしょうか。   最後に,第1-5に関して「検討課題」に記載のない事項や,「制度枠組み」全体に関する事柄などについて,御意見がある方があれば,挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいて御発言をお願いしたいと思いますが,いかがですか。   よろしいですか。それでは,第1-5についての審議は,この程度とさせていただき,大分時間が経過しましたので,ここで10分間の休憩とします。              (休     憩) ○酒巻部会長 再開します。   次は,「第2-1 禁錮以上の実刑判決の宣告後の裁量保釈(再保釈)について,同判決の宣告前の場合と比較して,要件を厳格なものとすること」について議論を行いたいと思います。関連する配布資料について事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 この検討項目に関連するのは配布資料31及び32です。   まず,配布資料31について御説明いたします。制度枠組みを御覧ください。   こちらの「A案」と「B案」は第7回会議においてお示ししたものであり,その際,特に「②」の「逃亡するおそれの程度が著しく低い場合」との文言について様々な御指摘を頂きました。そこで,今回の制度枠組みにおいては,それらの御指摘も踏まえ,新たな案として「別案1」,「別案2」をお示ししています。「別案1」と「別案2」は,いずれも本文において刑事訴訟法第90条を修正した形で適用することとしつつ,ただし書に該当するときは本文を適用しないこととするものであり,その場合の裁量保釈は,修正のない第90条の枠組みにより判断されることとなります。「別案1」と「別案2」の本文は,いずれも「A案」及び「B案」の「①」と同趣旨の規定であり,禁錮以上の実刑判決の宣告により逃亡のおそれが一般的,類型的に高まることを前提に,身体拘束の継続による不利益の程度が著しく高い場合でなければ裁量保釈を許すことができないことを明らかにしています。その上で,ただし書の要件は,「別案1」においては,「当該判決の宣告にかかわらず保釈された場合に被告人が逃亡するおそれが小さいと認めるとき」とし,「別案2」においては,少し視点を変え,被告人が逃亡するかどうかではなく,召喚に応じるかどうかに着目することとして,「保釈された場合に被告人が召喚に応じなくなるおそれがないと認めるとき」としています。これらを参考にしていただきながら,「検討課題」の「(1)」について引き続き御議論いただければと思います。   配布資料31の御説明は以上です。   続いて,配布資料32について御説明いたします。   この資料は,第7回会議において,いわゆる再保釈の適否が争われた事案における決定でどのような表現が用いられているのかとの御質問があったことから,御議論に資するものとして,実刑判決宣告後の保釈の許可又は不許可の決定に対し抗告又は異議申立てがなされ,原決定の判断が覆された事例を収集し,まとめたものです。いずれの事例も東京高裁又は大阪高裁のものであり,1ページ目から2ページ目までの8事例は令和元年6月から9月までの間になされた決定をまとめたもの,3ページ目の6事例は令和2年1月から3月までの間になされた決定をまとめたものです。「理由」の欄には,抗告又は異議申立てに対する決定の理由中,裁量保釈の許否についての原決定の判断の当否について述べている部分を抜粋して記載しています。   配布資料32の御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの資料説明の内容に関して,まず,御質問はございますか。よろしいですか。それでは,この第2-1について,「考えられる制度の枠組み」や「検討課題」のうち,いずれの点についてでも結構ですし,そこに記載のない点についてでも結構ですので,御意見のある方は挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいた上で御発言をお願いします。 ○佐藤委員 新たに示された「別案1」と「別案2」の各ただし書で用いられている表現について,質問したいと思います。   まず,「別案1」,「別案2」の各本文は,刑事訴訟法第90条の裁量保釈の判断の枠組みを前提にして,禁錮以上の実刑判決の宣告によって逃亡のおそれが一般的,類型的に高まった状況,すなわち,保釈を許可することについて消極方向に作用する重要な事情が新たに加わった状況において,それでもなお裁量保釈が適当と認められ得るのは,一般的,類型的に高まった逃亡のおそれを上回るほど,保釈を許さなかった場合の不利益の程度が著しく高い場合である,とする「A案」,「B案」の各「①」を維持するものと理解することができます。   その上で,「別案1」は,実刑判決の宣告の影響を打ち消す個別具体的な事情があり,逃亡のおそれが小さいと認められる事案では,本文が適用される前提,すなわち,保釈を許可することについて消極方向に作用する事情の重みが増したという前提が覆されることになるので,その場合の裁量保釈は,実刑判決の宣告前と同様に,修正を受けない刑事訴訟法第90条の判断枠組みによって,その適否を判断することにしたものと理解することができると思います。   ただ,「別案1」のただし書では,実刑判決の宣告の影響を打ち消す事情があることを本文の適用が外れる契機としていると思われますが,その表現が,「逃亡のおそれが小さいと認めるとき」とされていて,逃亡のおそれの程度が問題となっている点については,どの程度であれば小さいといえるのか,という評価にかかる議論が残ってしまうのではないかと感じたところです。   この点,「別案2」のただし書は,勾引の要件を規定する刑事訴訟法第58条第2号にある,「召喚に応じないおそれがあるとき」という文言を想起させる言葉遣いですが,その文言を,拘束を基礎付ける要件から拘束からの解放を基礎付ける要件とするため,裏返した表現とする一方,「別案1」とは異なり,保釈を認めた場合の支障,弊害の程度を問題とする要件とせず,その有無を問題とする要件とすることで,程度にかかる表現を用いた場合に生じ得る問題を解消しようとしたのではないかとも思われます。   ただ,仮にこのような理解が可能であるとしても,「別案1」の「逃亡するおそれが小さい」という表現と,「別案2」の「召喚に応じなくなるおそれがない」という表現は,一方が他方の言い換えとはいえず,その意味内容にはやはり違いがあるように思えます。この点についてどのように理解すればよいか,議論の前提として,事務当局に確認できればと思います。 ○吉田幹事 事務当局の現時点での考えを申し上げたいと思います。ただ今の御質問は,「別案1」のただし書においては逃亡のおそれの小ささを問題としているのに対して,「別案2」のただし書においては召喚に応じなくなるおそれの有無という点に着目しており,その内実が違っているのではないかという御指摘かと思います。   「別案1」の「逃亡のおそれが小さい」というのは,一般的,類型的に実刑判決によって高まっている逃亡のおそれの,その高まりを打ち消すような事情があるかどうかを問題とするものであるのに対して,「別案2」の「召喚に応じなくなるおそれがない」というのは,召喚された期日等に出頭することが確実に見込まれることを意味するものです。   いずれについても,それらを認定する根拠となる事情は,基本的には同様だろうと思われ,例えば,事案の内容・性質ですとか,宣告された刑期の長短ですとか,あるいは制限住居での居住状況といった様々な事情を考慮した上で判断していくことになるのだろうと思いますが,その判断に当たって,逃亡という点に着目するのか,あるいは,召喚に応じるという,指定されたその期日に出てくるという点に着目するのかという違いが判断に影響してくることはあるだろうと思っておりまして,どちらの文言が適切かという点も含めて,御議論いただければと考えているところです。 ○向井委員 「別案1」,「別案2」の本文が刑事訴訟法第90条の特則を定める根拠としては,実刑判決後は逃亡のおそれが一般的,類型的に高まる点に求められるということだと理解しておりますけれども,そうであれば,刑事訴訟法第90条の規律に戻る根拠としては,やはり逃亡のおそれが低いというところに求めるのが合理的ではないかと思われます。また,実務におきましては,実刑判決後の保釈の許否は,刑事訴訟法第90条の規定に従って,飽くまで逃亡のおそれと身柄拘束の継続による不利益とを比較衡量して判断してきたものであり,被告人が召喚に応じなくなるおそれの有無というものを取り出して検討してきたわけではなく,そのような実務のこれまでの運用を踏まえますと,別案1の方がより適当ではないかと考える次第です。 ○酒巻部会長 勾留や保釈の制度目的は公判期日への被告人の出頭を確保することにあり,条文の文言に現れているこれを阻害する要件要素としては,第90条では逃亡のおそれ,あるいは,第60条では,逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとなっていますが,期日出頭を求める「召喚に応じなくなるおそれ」というのは,結局,その逃亡のおそれとほぼ同じことをいうものであるということにはならないのでしょうか。 ○吉田幹事 事務当局の考え方を申し上げます。刑事訴訟法の規定を見ますと,例えば保釈の取消しに関する第96条第1項第1号には,被告人が,召喚を受け正当な理由がなく出頭しないときという事由が掲げられ,第2号には,それとは別に,被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときという事由が掲げられています。逃亡のおそれと召喚に応じないおそれは,一定程度重なり得るものと思われますが,その内実は少し違うのではないかと思います。例えば,被告人が制限住居にとどまっていて所在不明にはなっていないけれども,召喚には応じないということがあるとしますと,逃亡のおそれは認定されないけれども召喚に応じないおそれはあると判断されるというように,第1号と第2号は適用される場面に微妙に違いがあるということがいえるかと思います。そのような点も含めて,この裁量保釈の要件の明確化の規定ぶりについて御議論いただければと思います。 ○角田委員 従前の議論を踏まえて作られた別案は非常に工夫された案で,実刑判決の宣告後は類型的な逃亡のおそれが高まることを踏まえて,かつ,保釈をするについて積極・消極,両方の事情をにらんだ上で,バランシングというか,総合判断の枠組みは手放さないということを恐らく表現できているように思います。ただ,「別案1」と「別案2」とを比較すると,私としては,召喚に応じなくなるおそれという,今まで議論していたのとは異質のものを取り込むよりは,「別案1」の方が適当であろうと考えています。   その上で,「逃亡するおそれが小さい」という文言の意味を正面から聞かれたときに,どういう説明になるのかを説明していただければと思います。具体的な問題意識としては,この文言を見て,例えば実刑判決の宣告刑の期間が短いとか,被告人の身上関係が非常に安定しているとか,そういう事情をイメージするわけなのですけれども,そういうことがすっと出てくるような説明なのかどうかをお聞きしたいと思います。 ○鷦鷯幹事 先ほど吉田幹事から説明があったとおり,一般的,類型的に逃亡のおそれを高めることになる実刑判決の宣告の影響が打ち消されているということが,ここでいう逃亡のおそれの小ささの意味するところです。それが個別具体的な事案においてどのように表れるか,これは事案ごとに様々でしょうから,一概にいうことは困難かと思うところですが,例えば事案の性質・内容,宣告された刑期の長短,居住状況などから判断されることとなろうかと思われます。 ○角田委員 今のご説明によると,現在の裁判所の保釈判断の枠組みを変えるものではないと受け止めたのですが,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○鷦鷯幹事 配布資料32に記載されている裁判例を見ても,現在の保釈の判断の在り方には様々なものがあるように思われるところですが,それがどのようなものであるにせよ,制度枠組みに掲げた案のような判断枠組みの中で検討していくのがふさわしいのではないかと考えて御提案するものでございまして,それらの判断枠組みを採用した結果,これまでになされた保釈の判断と比較して制限的になるということもあるかもしれませんし,そうではない場合もあるかもしれない,そのように理解することになるのではないかと思います。 ○角田委員 分かりました。 ○酒巻部会長 「別案2」は特にこれまでとは少し違うとおっしゃったのだけれども,「別案1」と「別案2」のただし書の判定というのは,判断者としては,どちらの方がやりやすいのでしょうか。 ○角田委員 「別案1」の方が,今までの判断枠組みに沿う自然な判断ができるような気がします。召喚に応じなくなるおそれがないというようなことは,保釈の判断の中でこれまで独立して認定することがなかったものだろうと思うのです。特に,「別案2」は,召喚に応じなくなるおそれが少ないとか小さいではなくて,おそれがないという非常に明確な要件を立てています。こういう例が適当かどうかよく分かりませんけれども,かつて外国人登録法の指紋押捺拒否の罪の事案が時々あり,その中に大赦により免訴判決をしようとする際,公判期日,判決宣告期日に呼出しをしても被告人が出てきてくれない,そんなところに出ていく必要はないということで,何度も不出頭を繰り返すので,召喚に応じないことは明らかなのだけれども,逃げる理由はないので,逃亡するおそれはないということがありました。召喚に応じる,応じないというのはやや特殊な面があるのかもしれません。   保釈の判断枠組みというのは,基本的には逃亡のおそれと被告人の不利益との総合判断で考えるわけなので,若干異質だと言ったのはそういう意味なのですけれども,召喚うんぬんということを介在させて考えるという発想が,裁判官の間ではあまり一般的ではないのではないかというのが私の感想です。 ○向井委員 角田委員と同じような意見になりますが,やはり召喚に応じなくなるおそれというのは逃亡のおそれとは異なる要件ということですから,それは今まで裁判所が裁量保釈の判断の場面で考えていたものとは少し違うだろうと思います。   また,召喚に応じなくなるおそれがないとは言い切れないけれども,そのおそれが小さいという場合にどうするのかということに関して,不利益の程度の高さとのバランシングの判断の枠組みにおいて,この「あるなし」で切り分けることが,将来の予測ということになるわけですから,なかなか難しい判断になるのかなと。仮に「別案2」のようなものにするとしても,召喚に応じなくなるおそれが「あるなし」ではなくて,「小さいとき」というふうにしないと,実際の判断はなかなか難しいのかなという印象も持っております。   もう1点,不利益の程度が著しく高いという要件について,確認をしたいことがあります。先ほども,この新たな規定によって実務の運用が変わるのか,変わらないのか,変えるべきなのかという話がありましたが,実務での実際の保釈の判断自体は個々の事件ごとによって様々であるというのはそのとおりかと思いますが,一定の考え方は共有されているところかなと思いまして,つまり,実務の運用では,従来,刑事訴訟法第90条の規定に従って,逃亡のおそれという保釈を不許可とする方向に作用する事情と,それから,身柄拘束の継続による不利益という保釈を許可する方向に作用する事情とを比較衡量するという枠組みで判断してきたところです。そこについてもう一度確認をしたいのですが,「別案1」,「別案2」のいずれにおいても,不利益の程度が著しく高いということが本文に書かれていますが,これは絶対的な程度を表すものではなくて,飽くまで実刑判決の宣告によって高まった,当該事案における逃亡のおそれの程度と比較して,それより高いのだという相対的な程度を表す表現として使用されているという理解でよいのか,その点を確認をさせていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 これらの案を作成した事務当局の考えをお答えいたしますと,実刑判決宣告後の裁量保釈については,当該判決の宣告がなされていない状態との比較において一般的,類型的に高まった逃亡のおそれの程度を上回るほど不利益の程度が高い場合に許されると考えられますので,この「著しく」というのは,そのような一般的,類型的に高まった逃亡のおそれの程度を上回る程度であることを表現しようとしたものです。もっとも,それが適切であるかどうかについては,御議論いただきたいと思います。 ○菅野委員 「別案1」,「別案2」いずれについても,今の保釈の運用に対して萎縮効果が生じてしまう可能性があるのではないかという意味で反対というのが私の意見です。   実刑判決後,一般的,類型的に逃亡のおそれが高まることはあるとしても,そうだとすると,結局,逃亡するおそれが小さいと認めるときというのは,最終的には裁判官の判断とはいえ,なかなか現実的には想定できないということになってしまいかねませんし,「別案2」の召喚に応じなくなるおそれがないというのも,規定ぶりからするとかなりハードルが高いような印象を受けてしまいます。そうすると,現状,例えば懲役3年あるいは4年ぐらいの実刑のレンジでも,ケース・バイ・ケースで事案に応じて控訴審で保釈が許されているようなケースがありますが,このような規定ぶりとすることによって,その保釈が認められなくなってしまう可能性もあるのではないかと思います。結局は中身の判断の問題かもしれませんけれども,そういうメッセージにつながりかねないような「別案1」,あるいは「別案2」については賛成できず,現行の刑事訴訟法第90条の文言の中で判断することで足りるのではないかと考えます。 ○保坂幹事 この「別案2」に関し,なぜ「召喚」というこれまで余り判断してこなかったところに着目するものにしたのかということについて,私として考えたことを申し上げますと,問題となる場面は実刑判決が宣告されたというところですので,次は控訴審ということになり,現行法では,控訴審では被告人の公判期日への出頭がなくても審理自体は基本的に進められて,判決まで至ってしまうということになっております。そうしますと,裁判所の発想としては,控訴審の公判期日にきちんと出頭するかどうかということよりは,むしろ控訴審で実刑判決を言い渡すとした場合に,その刑の執行がきちんとできるかどうかという観点から逃亡のおそれというものを考えることになっているのではないかと思われます。   他方で,今回,別に検討している控訴審の判決宣告期日への出頭を被告人に義務付ける制度と併せて考えると,その判決宣告期日に被告人が召喚に応じて来さえすれば,そこで実刑判決が言い渡された場合,保釈の失効後スムースに収容することができるになるわけですので,保釈を許していいかどうかと考えるときに,きちんと召喚に応じて判決期日に出頭するだろうかというところに判断のウエートがくるのではないかと考えられます。召喚に応じなくなるおそれが「ない」というと少し強すぎるというのであれば,「召喚に応じると見込まれる」とするなど,要件はいろいろあってもいいかもしれませんが,そういう趣旨で,「別案2」は「召喚」に応じるかどうかという要素を要件に書かせていただいたものです。 ○酒巻部会長 次に議論する予定の項目と関連しているということですね。今の御説明,御意見も踏まえて,ほかにこの要件について御意見はありますか。「A案」,「B案」については,前回議論をした際に既に御意見を頂いていますが,ほかにはよろしいですか。   それでは,予定の時刻も迫っておりますので,本日の議論はここまでとさせていただき,「第2-2 控訴審の判決宣告期日への出頭を被告人に義務付けること」については,次回の第10回会議において議論したいと思います。   次回の審議につきましても,積み残した第2-2とともに,本日と同様に,検討が必要な項目を取り上げていく形で議論を深めていきたいと思います。   次回,第2-2以外にどのような形で審議を行うかにつきましては,本日の議論の状況も踏まえ,事務当局において改めて整理をしてもらうとともに,必要に応じてこれまでの検討のためのたたき台を改訂してもらうことにして,次回はそれに基づいて更に議論を行うことにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   次回の日程については,事務当局を通じてなるべく早急に皆様にお知らせすることとします。   本日の議事については,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成して公表することとしたいと思います。それから,本日の配布資料についても公表することにしたいと思いますが,そのような取扱いでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   では,そのようにさせていただきます。   本日も活発な議論をどうもありがとうございました。 -了-