法制審議会 刑事法(逃亡防止関係)部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  令和3年4月26日(月)   自 午前 9時58分                        至 午前11時38分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 公判期日への出頭及び刑の執行を確保するための刑事法の整備について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鷦鷯幹事 ただいまから法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会の第11回会議を開催します。 ○酒巻部会長 本日も,御多忙のところ,御出席いただき,ありがとうございます。   天野委員,河瀬委員,北川委員,菅野委員,向井委員,吉崎委員,小笠原幹事,くのぎ幹事,笹倉幹事,重松幹事,福家幹事,和田幹事及び井上関係官には,ウェブ会議システムにより御出席いただいております。   大澤委員,藤本委員は,所要のため欠席されています。   まず,事務当局から配布資料についての説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 本日,配布資料として,配布資料34「検討のためのたたき台・その2(第1-3 保釈中の被告人等が正当な理由なく公判期日に出頭しない不作為などを対象とする新たな罰則を設けること)〔制度枠組みの追加〕」,配布資料35「検討のためのたたき台・その2〔改訂版〕(第2-4 禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者が出国により刑の執行を免れることを防止する仕組み)」,配布資料36「検討のためのたたき台・その2〔改訂版〕(第3-4 罰金の裁判の告知を受けた者が出国することにより労役場留置の執行を免れることを防止する仕組みを設けること)」をお配りしています。   資料に不足のある方はいらっしゃいますでしょうか。   配布資料の内容については,後ほど,各検討項目の御議論の際に,それぞれ御説明いたします。 ○酒巻部会長 それでは,審議に入ります。   本日は,まず,検討項目「第1-3 保釈中の被告人等が正当な理由なく公判期日に出頭しない不作為などを対象とする新たな罰則を設けること」に関連して,前回の会議において,更に付け加えて議論すべきと考えられるものとして御発言があった点について,御提案の趣旨を踏まえ,事務当局に,考えられる罰則の在り方についての追加のたたき台を用意してもらいましたので,それについての議論を行いたいと思います。   その後,前回の会議において事務当局から検討の進捗状況を報告していただいた「第2-4 禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者が出国により刑の執行を免れることを防止する仕組み」及び「第3-4 罰金の裁判の告知を受けた者が出国することにより労役場留置の執行を免れることを防止する仕組みを設けること」についての議論を行いたいと思います。   これらの検討項目につきましては,事務当局において出入国管理及び難民認定法上の問題に関する検討を継続していると聞いており,現時点で,同法上,退去強制令書が発付されても送還をしない措置を執ることができるかどうかが確定したものではありませんが,当部会としても,可能な限り審議を進めていく必要があると思われますので,本日は,そのような措置,つまり,退去強制令書が発付されても強制送還をしない措置を執り得ることとなった場合にどのような制度枠組みとすることが考えられるかという観点からの検討も含め,第2-4及び第3-4についての議論を進めていきたいと考えております。   以上のような進行でよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   ありがとうございます。それでは,まず,「第1-3 保釈中の被告人等が正当な理由なく公判期日に出頭しない不作為などを対象とする新たな罰則を設けること」についての追加のたたき台について,議論を行いたいと思います。   議論に先立ち,関連する配布資料について事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 配布資料34について御説明いたします。   まず,制度枠組みを御覧ください。   前回の会議において,公判期日への不出頭の罪等は,その前提となる召喚状等の送達がなされる前に逃亡する行為を処罰の対象としていないことから,そこが抜け穴となって公判期日への出頭確保に困難を来すこととならないよう,召喚状等の送達前の逃亡行為を処罰の対象とする罰則を設けることが考えられるのではないか,例えば,通常,保釈等の際の条件と定められる制限住居の条件に違反して逃亡し,召喚状等を送達させなくする行為を切り取って処罰の対象とすることが考えられないかという趣旨の御意見を頂いたところであり,これを踏まえて,追加の制度枠組みを記載しています。   具体的には,「(1)」には,裁判所は,保釈又は勾留執行停止に際し,被告人の住居を制限する条件を付する場合において,必要があると認めるときは,裁判所の許可を得ないで裁判所の定める日数を超えて制限住居を離れてはならない旨の条件を付することができ,この場合においては,被告人の生活状況等を考慮して,適当と認める日数を定めることを記載しています。   また,「(2)」には,裁判所は,「(1)」の許可をするときは,制限住居を離れる理由等を考慮して,制限住居を離れることができる期間を定め,これを超えてはならない旨の条件を付することを記載しています。   その上で,「(3)」には,被告人が「(1)」又は「(2)」の条件に違反して,つまり,裁判所の許可を得ないで「(1)」の日数を超えて,又は,裁判所が許可した「(2)」の期間を超えて,正当な理由がなく制限住居に帰着しない場合の罰則を設けることを記載しています。   続いて,「検討課題」を御覧ください。   一つ目の「○」には制度枠組み「(3)」の罰則を設ける必要性,相当性について,二つ目の「○」には「正当な理由」の意義について,それぞれ検討課題として掲げています。また,三つ目の「○」については,保護法益や行為態様の点で共通点を有する同種の罪の法定刑なども踏まえつつ,御議論いただければと思います。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 まず,今の説明内容に関して御質問はございますか。よろしいですか。   それでは,議論に入りたいと思います。「考えられる制度の枠組み」や「検討課題」のうち,いずれの点についてでも結構ですし,それらに記載のない点についてでも結構ですので,御意見のある方は挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいて,御発言をお願いしたいと思います。 ○佐藤委員 「検討課題」の最初に挙げられている,住居制限の条件に違反する行為に対し罰則を設ける必要性について,意見を述べたいと思います。   ただいま御紹介がありましたように,これまでの部会で検討してきた,公判期日への不出頭の罪や公判期日外の出頭・報告命令違反の罪について,前回の会議で,これを設けることで,出頭命令や召喚状の送達前に逃亡しようというインセンティブを生じることにならないかとの指摘がありました。改めて考えますと,公判期日への不出頭等の罪が適用できなくなる状況を生じさせないようにするためには,まずは,召喚状の送達等が被告人に対して確実になされるようにすることが必要となります。   この点,現行法上,裁判所は,保釈を許す場合には,被告人の住居を制限することができることとされ,また,勾留の執行を停止する場合には,親族又は保護団体等に委託する場合を除いて,被告人の住居を制限することが必要的条件とされており,保釈中又は勾留執行停止中の住居の制限は,保釈等をされている被告人の所在を常に裁判所に対して明らかにし,裁判所による召喚等に応じることができるようにさせることを通じて,公判期日等への出頭を確保する機能を果たしているものと考えられます。   実際にも,保釈等に際しては,被告人の住居を制限する条件を付するのが通常であり,また,制限住居が定められた場合には,召喚状や裁判書の謄本の被告人への送達は,この制限住居を送達場所として行われているものと理解しております。こうしたことに鑑みますと,保釈等をされている被告人に召喚状等が確実に送達されるようにするためには,当該被告人に住居制限の条件を確実に遵守させることが重要だということになると思います。   このことを前提に,保釈等をされている被告人が住居制限の条件に違反したときは,保釈又は勾留執行停止を取り消されて刑事施設に勾留されることになるほか,保釈が取り消された場合には,更に保証金の全部又は一部を没収されることとなりますので,現行法は,こうした威嚇力を通じて,保釈等をされている被告人に住居制限の条件を遵守させることを予定しているということになりますが,保証金を納付している被告人であっても,個々人の金銭に対する価値観,保有資産の大小から,納付した保証金を放棄してでも刑事手続から離脱しようと決意し,逃亡に及ぶことはあり得ると考えられ,そのような被告人に対しては,保釈金の没収による制裁は,必ずしも十分な抑止力として機能しない可能性があります。また,勾留の執行を停止されている被告人については,制度上,金銭による担保を伴わないため,財産の没取を通じた威嚇力は,そもそも存在しません。そこで,この住居制限の条件の遵守をより確実にするために,これに違反する行為につき罰則を設けるという形で対処をすることが考えられると思われます。   もとより,刑罰がないことによって生じる逃亡の可能性をどう見積もるかなど,罰則を設けることの相当性も含めて種々の議論があり得ることは承知しておりますが,差し当たり,罰則を設ける必要性自体は認められるのではないかと考える次第です。 ○北川委員 今,佐藤委員がおっしゃったような,新しい罰則の必要性は理解しているつもりですが,制度枠組みのような構成要件を設けたときに,処罰範囲が広過ぎないかという懸念を感じましたので,発言させていただきます。   今検討されている罪は,制限住居不帰着罪というようなイメージかと思いますが,裁判所に許可された日数を超えて制限住居を離れた場合一般を処罰するという枠組みと理解しました。そうなりますと,当初の目的である公判期日への出頭確保とは関係が薄い場合,例えば,外出先から帰らなければならない日数を超えてしまったような,いわば門限破りのような場合も処罰の対象になってしまうのではないかと思われ,そういった点で,もう少し構成要件を工夫して,処罰の対象となる行為を絞る必要がないだろうかという感想を持ちました。   もう一つ,このような罪を設けた場合,公判期日外の出頭命令違反の罪,あるいは報告命令違反の罪との関係を整理しておく必要があるのではないかと思いました。公判期日外の出頭・報告命令違反の罪に加えて,この罪を設けることとしますと,罰則規定が過重にならないか,あるいは重複しないかという疑問が生じますので,そうした観点から,両罪の関係を整理する必要があるのではないかと感じた次第です。 ○酒巻部会長 ただいまの2点目の御指摘,これまで検討していた罰則との関係,処罰範囲の問題について,事務当局から何かコメントはありますか。 ○鷦鷯幹事 たたき台に追加した罪について,公判期日外の出頭命令違反の罪との関係で機能する場面に重複があるのかどうか,また,重複しない部分があるとした場合においても,罰則を設けるまでの意義があるかどうかといった点も含めて,御議論いただければと思います。 ○福家幹事 今の御議論の前提を確認させていただきたいと思います。今回の制度枠組みの中で,裁判所の定める日数を超えて当該住居を離れてはならないとありますが,これは,連続した日数を意味しているのでしょうか。 ○鷦鷯幹事 事務当局としては,連続する日数を定めることを念頭において記載しています。 ○天野委員 制限住居の条件に違反した場合の効果が明確化されれば,被害者としても安心だと思いますし,被告人の逃亡防止にも役立つと思いますので,その方向性には賛成です。   ただ,そのような条件違反を処罰することに主眼があるのではなく,被告人を逃亡させないことが重要だと思いますので,これまで検討しているGPSの制度とリンクさせることも検討されるべきではないかと思います。GPSの制度が導入されたとしても,保釈される被告人の全てにGPSが付けられるわけではないですが,GPS端末を装着されている被告人が逃亡した場合には,相当な範囲まで遡って被告人の位置情報を取得できることになると思いますので,それとうまくリンクされればいいのではないかと思っています。 ○小笠原幹事 制限住居に帰ってこないだけで,法益侵害がどの程度危殆化されているのかということを考えますと,やはり,これに罰則を設けるのは行き過ぎではないかと考えています。制限住居に帰ってこないことは,逃亡とイコールではないですし,被告人が制限住居の条件に違反する行為をした場合には,保釈取消しや保釈保証金の没取という形で対処すれば十分ではないかと思います。   ただ,御提案の中で,裁判所が当初定めた日数を超えることとなる場合に,適当と認める期間を定めて許可するといった形で,そういう定めを設けることが示されていますけれども,そのような場合は,やはり逃亡のおそれがそれなりに高くなっているということですので,保釈保証金の額を上げることができる制度を考えてもいいのではないかと思っています。   この次に議論する第2-4において,裁判所の許可を受けて外国へ一時出国する場合に保証金を納付させるとしている点とも関連しますが,現行法では,保釈保証金を後から増額することはできないとされていますけれども,当初定めた日数を超えて制限住居を離れてもよいという許可をするときには,その代わり,このぐらい追加で納めてねということで保証金を追加で納付させて逃亡させない威嚇力を高める方法をとることができるようにすれば,罰則を設ける必要はなくなるのではないかと思っています。 ○菅野委員 事務当局に対する質問ですが,例えば,裁判所が3日間と定めた場合に,被告人がちょこちょこ制限住居に帰ってはいるものの,ほとんど制限住居にはいないとか,あるいは,2日間は全く帰っていなかったんだけれども,1回ちょっと帰った場合などが考えられますが,この罪は,3日間ずっと制限住居にいない場合だけを処罰するものなのか,それとも,実質的に見て,制限住居にいないと認められる場合についても処罰するものなのか。この罪の構成要件が明確なものになるのかという疑問がありましたので,教えていただきたいと思いました。 ○吉田幹事 制度枠組みの記載の趣旨として御説明いたしますと,例えば,裁判所が3日と定めた場合には,その3日の間に制限住居に一度も帰っていないことが基本になるのだろうと考えています。御指摘のように,日常生活を送る中では,ちょこちょこ制限住居に帰るという場合もあるでしょうし,例えば,買物に行ったり,仕事に行ったりと様々な行動があり得るわけで,それらを通じて制限住居への出入りが起こり得ると思いますが,その中で,ある場合には制限住居を離れていた日数に算入するけれども,ある場合には算入しないというようなことがありますと,構成要件の明確性に影響してくるだろうと思います。ですから,3日間のうちに,一度でも制限住居に帰って,多少の時間でも滞在したという場合には,3日間を超えた不帰着にはならないと,現時点ではそのようなものとして考えています。   もっとも,そうした場合も含めて処罰の対象に含めるべきではないかという考え方もあろうかと思いますので,そのような観点から,更に別の文言を考える余地もあるのだろうと思います。 ○和田幹事 このような不帰着罪を設けることとしたときに,これは,公判期日への不出頭の罪との関係で,かなり間接的な法益侵害しかない罪になるということは確かですので,法益侵害性が軽いから処罰するべきでない,処罰規定を設けるべきでないという理屈もあり得ると思いますけれども,間接的な法益侵害しかないことは,その罪の法定刑を軽いものに抑えるという形でも対応可能ですし,また,住居の制限という条件が維持されている状態,それ自体が独立した国家的法益であるという見方をして,それを直接侵害する罪と位置付けることもできると思います。   具体的にどのような規定を設けるかということとの関係で,参考になりそうな条文を見てみますと,刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律第293条に被収容者の不帰着罪が規定されています。そこでは,刑事施設に収容されている受刑者が,「外部通勤作業の場合において,そのための通勤の日を過ぎて刑事施設に帰着しないとき。」に処罰する旨の規定が設けられていますので,それを参考にして,具体的な条文を作ることが考えられるかと思います。ただ,その際には次の点に注意が必要です。制限住居に帰着しなかったことについて正当な理由がないという点を構成要件に入れると思うのですが,正当な理由があって制限住居に帰着できなかったときでも,その後,正当な理由が消滅したときには,そこから更に合理的な期間が経過するまでに制限住居に帰着しない行為も処罰の対象として捕捉できるようにしないと,罰則としての合理性が損なわれると思いました。   具体的な法定刑については,先ほどの刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律の不帰着罪が1年以下の懲役であり,また,本丸である公判期日への不出頭の罪との関係では,間接的な法益侵害しか有しない罪であることを踏まえますと,それよりも一段軽くするのが基本的な対応だろうと思います。具体的には,1年以下,あるいは6か月以下の懲役というのが,一つのイメージだろうと思います。   この罪は,公判期日への不出頭の罪などを作ることによって,かえって逃亡を招く,そういう逆のインセンティブが働いてしまうという不合理を解消するための犯罪だという意味もありますから,制限住居に帰着しない行為を,それ自体として処罰すべきものと見るかどうかという問題とは別に,そのようなインセンティブが生じないようにするという観点でも,こうした罪を設ける必要性について検討する必要があろうかと思います。   北川委員も御指摘のとおり,また,他の委員・幹事からもお話が出ていたかと思いますが,これまで検討してきた他の犯罪類型と重複する部分がそれなりに出てきそうですので,最終的には,考え得るもろもろの犯罪類型を比較しながら,どれが本丸で,どこにより高い必要性があるのかの順位付けをきちんと行って,真に必要なところに罰則を設け,そうでないところは省くという判断を,どこかのタイミングでする必要があろうかと思います。 ○酒巻部会長 ほかに,この新しい罰則に関して御意見,御質問等がある方は,挙手をお願いします。よろしいでしょうか。 それでは,第1-3について審議はこの程度とさせていただきます。   続きまして,「第2-4 禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者が出国により刑の執行を免れることを防止する仕組み」についての議論に移りたいと思います。   議論に先立ち,関連する配布資料について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○鷦鷯幹事 配布資料35について御説明します。   制度枠組みを御覧ください。   この制度枠組みは,第6回会議で御議論いただいた際にお示しした制度枠組みをベースとしつつ,その際の御議論を踏まえ,一時出国の許可やその取消しの要件,手続,効果などについて,より具体的な内容を書き加えるなどしたものです。   まず,「(1)」「イ」には,一時出国の許可について,裁判所が定める期間内に出国しないおそれの程度や,出国できないことにより被告人が受ける不利益の程度などを考慮し,出国を許可すべき特別の事情があると認めるときに,期間を定めてすることができることを記載しています。   また,「ウ」には,一時出国の許可をする場合には,保証金額を定めなければならないことのほか,保釈の場合と同様に,適当と認める条件を付することができることを記載し,「エ」には,考慮要素を例示した上で,一時出国の許可の保証金の額は,「本邦への帰国を保証するに足りる相当な金額」でなければならないことを記載しています。   その上で,「オ」には,正当な理由なく裁判所が定めた期間内に帰国しないおそれがあるなど,一時出国の許可を維持することが困難となり得る事情が生じた場合には,その許可を取り消すことができることや,許可を取り消したときは,保証金を没取できることを記載しています。   「カ」には,裁判所の許可を得て出国した者が裁判所の定めた期間内に帰国しなかったとき,この場合には,既に期間が経過しているため,取り消すべき許可がないこととなりますが,そのような場合には,先ほどの保証金を必要的に没取することを記載しています。   「キ」の内容は,前回お示しした「たたき台」の制度枠組みにも記載していたものです。   続く「ク」には,宣告された禁錮以上の実刑判決について,刑の執行が開始され,又は上訴審で破棄されたときは,出国の制限の目的が失われることから,失効するものとすることを記載しています。   「(2)」には,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた被告人に退去強制事由がある場合に,そのことを理由として勾留することができるものとすることを記載していますが,この点については,「※」のところに記載しているとおり,退去強制令書が発付されても送還をしない措置を執ることができることとなった場合には,この「(2)」の勾留の仕組みは設けないこととなると考えられます。   続いて,「検討課題」を御覧ください。   「(1)」には,一時出国を許可する際の保証金に関して,保釈されている被告人について一時出国の許可をする際に,既に納付している保釈保証金のほかに,更に保証金額を定めて納付させることとするかという点を挙げています。保釈保証金と一時出国の許可の際の保証金の機能に違いがあるかどうかなどの観点から御議論いただければと思います。   また,「(2)」には,「一時出国の許可の取消し及び保証金の没取」を挙げ,その下に二つの論点を並べています。   一つ目の「○」には,一時出国の許可を受けた者が裁判所の定めた期間内に帰国しなかった場合に,保証金の没取を必要的なものとするか,それとも裁量的なものとして全く没取しない余地も残すこととするかという点です。   二つ目の「○」は,保釈中の被告人が一時帰国の許可を受けた場合において,その許可が取り消されたり,裁判所の定めた期間内に帰国しなかった場合に,そのことを理由に保釈を取り消すことができるものとするかという点です。   この点については,検討課題の「(1)」,すなわち,保釈保証金とは別に一時出国許可の保証金を納付させることとするかとも関連すると考えられますので,その点も含めて御議論いただければと思います。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 ただいまの説明内容に関して,御質問はございますか。   それでは,議論に入ります。「考えられる制度の枠組み」や「検討課題」のうち,いずれの点についてでも結構ですし,それらに記載のない点についてでも結構ですので,御意見のある方は挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいた上で,御発言をお願いいたします。 ○笹倉幹事 検討課題の「(1)」と「(2)」の二つ目の「○」について,意見がありますので述べます。   まず,「(1)」について,一時出国のための保証金の制度を作ることを前提にして述べますと,そもそも保釈保証金は,一定の事由が生じた場合には,保釈が取り消されて保釈保証金が没取されるという心理的威嚇によって,逃亡等を防止することを目的とする制度です。そして,そこでいう逃亡の防止には,被告人が外国に行くことがあったとしても,日本に確実に戻ってくることを担保する趣旨も,理屈の上では,当然に含まれているはずです。そうしますと,保釈保証金と一時出国のための保証金の機能は実質的に重なり合う,つまり,逃亡の防止が究極の目的であって,確実に日本国内にいること,出国したとしてもきちんと帰国すること,刑事司法制度から逃避しないことを確保するという点で,両者は共通の性質・機能を有するものといえます。   したがって,保釈された被告人について,保釈保証金に重ねて一時出国のための保証金の納付を要求するのは,同じ目的で同じ機能を有する金銭を二重に納付させることとなってしまいますので,保釈されている被告人については一時出国のための保証金は,納付を要しないとするのがよいのではないかと考えます。もっとも,海外渡航とその後の不帰国の可能性が一般的・抽象的なものにとどまる場合と,それが具体化・現実化した場合とでは,実際上同列に扱うことができず,その可能性が具体化・現実化した時点で積み増しをさせるのがむしろ自然だという考え方もあり得ると思います。この点は,他の委員・幹事の方々のお考えをお伺いしたいところです。   その上で,「(2)」の二つ目の「○」についてですけれども,保釈されている被告人については,一時出国のための保証金を重ねて納付することを要しない制度とした場合,仮に保釈中の被告人が外国に行った後に帰ってこないことになったときは,保釈を取り消して保釈保証金を没収し得る制度にしておかないと,うまく機能しないと思います。   現行法の下でも,保釈を許す際に,一時出国をする場合には裁判所の許可を要するとの条件を定めることが現に行われているものと承知していますが,そうであるとしますと,保釈保証金によって一時出国のための保証金の機能をも果たさせることとするのであれば,そのような保釈条件に違反して帰国しない場合に,保釈を取り消して保釈保証金を没取することができることを法律上明記するのが適切だと考えます。 ○福家幹事 笹倉幹事のお話と重なるところもありますが,新たな制度では,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた被告人が出国する場合には,保釈中の被告人も含めて,一律に裁判所の許可が必要となると考えられますが,保釈条件として,一時出国の許可を定めることもあり得るわけでして,その場合は,一時出国について二重に裁判所の許可が必要になるという理解になるのでしょうか。その辺りの,今,事務当局がイメージされているところを教えていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 御指摘のように,新たな制度の下では,禁錮以上の実刑判決の宣告の効力として,裁判所の許可なく出国することが禁止されることになりますので,保釈中の被告人についても,これによって出国が禁止されることとなります。その上で,先ほど笹倉幹事から御発言があったように,一時出国の許可に違反する行為があってその許可が取り消されたときは,保釈が取り消され,保釈保証金が没取され得ることとなるのであるとすると,保釈の際にこれとは別に任意的条件として同内容の条件を付する必要は,基本的にないこととなるのではないかと思われます。   その上で,敢えて保釈の任意的条件として付することとした場合には,新しい制度の許可を得ればそれが任意的条件の許可を兼ねるということもあるかもしれません。その辺りの整理についても,御議論いただければと思います。 ○酒巻部会長 今の説明について御意見はありますか。 ○福家幹事 ただいまの事務当局からの説明からすると,新しい制度の下では,そもそも,法律上,海外出国は裁判所が許可しない限りできなくなるということですので,それに重ねて,保釈の任意的条件として付する必要はそれほどないのではないかと思いました。   そういうことであれば,そういった法制度を前提に,保釈の任意的条件について,どのように考えていくかということを検討していくことになるのかと思いました。 ○小木曽委員 制度枠組み「(1)」の「カ」,検討課題の「(2)」の一つ目の「○」の保証金の必要的没取について意見を述べたいと思います。これまでの部会におきまして,禁錮以上の実刑判決の宣告があった後に,保証金を支払って保釈された者が現に逃亡した場合には,保証金を必要的に没取することとすべきではないかと発言してきたところですが,ここでも同じように,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者が対象ですので,保証金を納めて一時出国を許可する制度を設けるのであれば,裁判所の許可を得て出国した後,敢えて許可された期間内に帰国しない者については,やはり保証金の没取を必要的にして,その抑止力に期待する制度とするのがいいと考えます。 ○角田委員 検討課題の「(1)」に関して,これまでに出てきた議論に関連することですが,在宅の被告人については,この新しい制度で単一的にすっきり運用できると思います。他方,保釈との関係は,確かにいろいろな問題があり,今までの議論でかなり整理できたと思うのですが,気になったところとしては,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者を対象に,この一時出国の許可の制度を適用していく場面では,第一審での保釈は関係がなくて,裁判所がいわゆる再保釈をする際に,既に法律によって一般的に出国を禁止された被告人に対して,そのことを前提にして,保釈を許すかどうするかという問題を考えることになるわけです。   一般的に出国が禁止されているから,出国の問題はあまり考えなくていいとはいっても,保釈決定の際には,被告人の逃亡のおそれの有無・程度を踏まえて,保釈保証金額を決めていくわけなので,国内で逃げようが,海外に逃亡しようが,ある程度の金額を考えることになるのですけれども,しかし,国外逃亡の可能性もあるということになると,実務上は,相当高額の保釈保証金額を考えることになると思われます。   そうすると,新たな制度については,再保釈を前提に,このような問題を考えることになります。私自身はそういうやり方がいいという意見ではありませんが,論理的には,保釈中の被告人については,この制度を適用しないで,再保釈の運用の問題として,実務上適切に処理していくという選択肢も全く考えられないわけではないと思います。ただし,運用に任せることにすると,裁判所ごとに運用がばらばらになってしまうおそれがあるので,やはり保釈は保釈として,裁判所の従前の基準でもって運用した上で,しかも,この新しい出国許可の制度で一時的な出国を認める場合には,保釈保証金を更に積み増しできるようにすることを考える必要があるのではないかと思います。   このように考える理由ですが,結局,先ほどの議論の中でも,保釈保証金については,再保釈の際に,被告人の海外逃亡のおそれの問題も考慮した上で定めているので,一時出国のための保証金を重ねて納付させる意味がないのではないかという議論があったわけですが,しかし,法律によって抽象的・一般的に出国が禁止されているだけでなくて,実際に被告人の出国を許可するかどうかという場面では,実際に日本に戻ってこなくなる現実的・具体的な危険性が高まるのは間違いないと思いますので,そういった部分については,さらに保証金を納付させることによって担保させる方がいいような気がします。   ところが,こうしたことを含めてすべてを従前の保釈の運用だけで賄おうとすると,一般的に,保釈保証金額は事情の変更があっても増額できないと解釈されていて,運用ではできませんので,やはり先ほど申し上げたような,保釈保証金を上積みさせる制度を設けておく,ただ,必要的に上積みさせるものとするか,そこは任意的なものにとどめるという選択肢もあるかと思います。いずれにしましても,私は,在宅の被告人については,この新しい制度を適用することでいいと思いますが,保釈中の被告人については,保釈の運用で賄いつつ,それに保釈保証金を上積みさせる制度を設けておくことがよいと思っています。ただ,特に保釈保証金額の算定については,二重になる部分もあるかと思いますので,そこは柔軟に処理できるように工夫する必要があると考えます。 ○髙井委員 私も,今の角田委員の御意見に賛成です。日本の国家権力が及ぶ範囲にとどまっている人と,そこから一旦出て日本の国家権力が及ばない国外に行ってしまう人を,全く同じに考えるのは,やや合理性を欠くのではないかと思います。ですから,一時出国の許可をする場合には,保釈保証金額の上積みをすることができるようにするのが合理的な政策だと思います。 ○酒巻部会長 今の点に関連して,御意見が他にございますか。あるいは,この項目全体について,御意見がありましたら,挙手をお願いします。 ○小笠原幹事 先ほど,第1-3のところでも述べたのですが,現行制度で保釈保証金の上積みはできなくて,一度保釈を取り消さないと,金額の上積みはできないとされていますので,国外に逃亡する可能性があって,やはり危ないなというときは,裁判所が保釈を許可した時点では,想定外だと思うのです。例えば,日本に住んでいる外国人の方が,母国のお父さんが病気になったため,お見舞いに行かなければならないような場合,そういう裁判所が保釈を許す際に考えていなかったような事情で出国することが考えられることからすると,そのような事態には,保釈保証金の上積みで対応できるようにすべきではないかと思います。 ○福家幹事 同じく現行制度との関係について,少し質問させていただければと思います。一時出国の許可を受けずに出国しようとした者について,制度枠組み「(1)」の「キ」では,そのことを理由に保釈の取消しや勾留が認められることになるとされていますが,その場合の保釈の取消しに関しては,刑事訴訟法第96条第1項第2号の「被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。」という保釈取消事由との関係がどのように考えられるか,また,勾留に関しては,刑事訴訟法第60条の勾留理由との関係がどのように考えられるかについて,それぞれ教えていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 御指摘の刑事訴訟法第60条及び第96条に規定されている逃亡のおそれとの関係ですが,事務当局としましては,一時出国の許可を得ないで出国しようとしたことを理由とする保釈の取消しや勾留は,逃亡のおそれを理由とする現行法の保釈の取消し,あるいは勾留とは別のものとして制度枠組みに記載しています。   もちろん,御指摘のとおり,逃亡のおそれがある場合には,現行法の保釈の取消し事由や勾留理由の存在が認められることで,保釈の取消しがなされたり,勾留されたりすることはあろうかと思いますが,この制度枠組みにおいて,それらとは別のものとして記載した趣旨としては,例えば,現行法の下でも,保釈の条件違反を理由とする保釈の取消しであるとか,住居不定を理由とする勾留については,逃亡のおそれとは別に,これを類型化したものとして規定されていますので,それと同様の考え方によるものでして,逃亡のおそれとは別の保釈取消事由,あるいは勾留理由とすることが考えられることから記載しているものです。 ○酒巻部会長 ほかに,この項目全体につきまして,何か御意見がございましたら承りたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,第2-4についての審議はこの程度とさせていただきまして,次に,「第3-4罰金の裁判の告知を受けた者が出国することにより労役場留置の執行を免れることを防止する仕組みを設けること」という項目についての議論に入りたいと思います。   議論に先立ち,配布資料について事務当局から説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 配布資料36について御説明いたします。   制度枠組みを御覧ください。   この制度枠組みは,第6回会議で御議論いただいた際にお示しした制度枠組みとは異なり,枠の上に記載しているとおり,退去強制令書が発付されても送還しない措置を執ることができることになり,したがって,退去強制事由があることを理由とする勾留や身柄拘束の仕組みを設けないことをひとまず前提として,考えられる制度の枠組みを記載したものです。   制度枠組みの「(1)」は罰金の裁判の確定前,「(2)」は罰金の裁判の確定後をそれぞれ対象とするものです。   まず,「(1)」「ア」には,罰金の裁判の告知を受けた被告人について,罰金を完納できないこととなるおそれがあるときは,逃亡のおそれが認められるなどして勾留状が発せられる場合にはそれにより出国を防止することを前提に,それ以外の場合には当該被告人に対して出国禁止命令を発することを記載しています。   その上で,「イ」には,被告人がその命令に違反して出国しようとした場合には,出国確認を留保することができるとともに,出国禁止命令に違反して出国しようとしたことを理由として保釈を取り消し,又は勾留することができることを記載しています。   「ウ」には,そのような出国禁止命令や勾留の効力が失われる事由を記載しています。   次に,「(2)」「ア」には,罰金の裁判が確定した者について,罰金を完納することができないおそれがあるときは,次の「イ」による身柄拘束が行われる場合にはそれにより出国を防止することを前提に,それ以外の場合にはその者の出国を禁止する命令を発することを記載しています。   「イ」には,罰金の裁判が確定した者について,刑法第18条第5項に定める期間が経過するまでの間,労役場留置の執行を確保する観点から,その身柄を拘束できるものとする3つの場合を記載しています。  具体的には,「(ア)」には裁判の確定前に出国禁止命令に違反して出国しようとして勾留され,それが裁判の確定後まで継続している者を,「(イ)」には裁判の確定前に発せられた出国禁止命令に確定後に違反して,あるいは,確定後に発せられた出国禁止命令に違反して出国しようとした者を,「(ウ)」には逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある者をそれぞれ記載し,いずれも,その者について「罰金を完納することができないおそれ」がある場合に,身柄拘束をすることができることを記載しています。   「ウ」には,裁判確定後の身柄拘束が実際になされた日数は,罰金に算入することを記載しています。   「エ」には,罰金の確定後において,出国禁止命令や身柄拘束の効力が失われる事由を記載しています。   続いて,「検討課題」を御覧ください。   「(1)」には,出国禁止命令の対象とすべき者の範囲を掲げており,その対象とすることが必要かつ相当とされるのはどのような場合か,科料の裁判の告知を受けた者も対象とするかといった点について,御議論いただければと思います。   「(2)」には,出国を禁止された者の出国を防止する仕組みを挙げており,出国禁止命令に違反して出国しようとした場合にそれを理由として保釈を取り消したり,勾留したりすることができるものとするかといった点について,御議論いただければと思います。   「(3)」には,一時出国の許可等の仕組みを挙げています。罰金を完納できないおそれがあり,労役場留置の執行を確保する必要があるとして出国を禁止された者について,一時出国を許可できるものとするか,許可できるとして,どのような場合にできるものとし,どのような手段によりその帰国を担保するかといった点について,御議論いただければと思います。   「(4)」には,罰金の裁判の確定後の身柄拘束を挙げています。どのような場合に身柄拘束が必要となり,かつ相当とされるかといった点について,御議論いただければと思います。   「(5)」には,罰金の裁判の確定後の出国禁止命令及び身柄拘束の手続を挙げています。これらを裁判所又は裁判官の判断により行うものとするかといった点について,御議論いただければと思います。   「(6)」には,出国禁止命令及び勾留・身柄拘束の失効を挙げています。これらがどのように場合に失効するものとするかといった点について,御議論いただければと思います。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 まず,ただいまの説明内容に関して,御質問はございますか。   今の説明にもありましたとおり,今回のたたき台は,検討課題が「(1)」から「(6)」まで6つ挙げられています。議論の順序につきまして,そのうち,「(1)」と「(6)」は,いずれも出国禁止命令の趣旨・目的を踏まえた検討が必要となるように思われますので,相互に関連するということで,まとめて議論したいと思います。   それから,「(2)」,「(4)」,「(5)」ですが,これらは,出国禁止命令に違反した場合の措置及びその手続という観点で相互に関連すると思われますので,まとめてその次に議論することにしたいと思います。   その上で,残った「(3)」について検討することとし,最後に,ここに記載のない事項等についても御意見を伺うという順序で議論したいと思います。   まず,検討課題の「(1)出国禁止命令の対象とすべき者の範囲」及び「(6)出国禁止命令及び勾留・身柄拘束の失効」について,御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○佐藤委員 検討課題「(1)」の出国禁止命令の対象とすべき者の範囲に関連する意見を述べたいと思います。   勾留状が発せられている被告人に対して,罰金の裁判が告知されますと,刑事訴訟法第345条によって勾留状が失効することとなります。これは,財産刑の性質に照らして,一般的・類型的に被告人の逃亡のおそれが減少するとともに,刑の執行確保のために身体を拘束する必要性が小さくなるためだと理解されておりますが,当該被告人に罰金を完納するに足りる財産がなく,裁判の確定後にこれを完納することができないおそれがあるという場合には,その者について,労役場留置を視野に入れ,その執行の機会を確保しておく必要があると思います。   そうした被告人については,罰金の裁判の告知後,なお逃亡のおそれがあると認められる場合には,再度勾留状を発することによって,少なくとも裁判の確定まではその者の逃亡を防止することができますが,直ちに身体を拘束するには及ばない場合であっても,被告人がひとたび出国するとその身体の確保が極めて困難になることに鑑みますと,罰金を完納することができないこととなるおそれがある被告人については,労役場留置の執行の機会を確保するために必要な範囲で,その者の出国を制限することが許される余地はあるように思われます。   今申し上げたことは,罰金の裁判が確定した者が罰金を完納することができないこととなるおそれがある場合にも当てはまると思います。現行制度では,罰金の裁判が確定した者について,その承諾がなければ,刑法第18条第5項が定める期間が経過するまでは,労役場留置の執行をすることができないとされておりますので,逃亡のおそれがあると認められる場合には,制度枠組み「(2)」「イ」の「(ウ)」のような身体拘束を行うことによって逃亡を防止する必要があるだろうと考えます。他方,直ちに身体を拘束するには及ばない場合であっても,労役場留置の執行の機会を確保するために必要な範囲で,その者の出国を制限することもまた許される余地があるように思われます。  以上をまとめますと,最初に申し上げた,罰金の裁判の告知後に労役場留置の執行の機会を確保する方法として,罰金の裁判の告知を受けた被告人につき,当該裁判の確定後において罰金を完納することができないこととなるおそれがあるときは,現行法の勾留による一方,罰金の裁判が確定した者につき,罰金を完納することができないこととなるおそれがあるときは,制度枠組み「(2)」「イ」の「(ウ)」のような制度を設け,身体を拘束することができるものとすること,また,それらの者につき,直ちに勾留や身体の拘束をするには及ばない場合であっても,制度枠組み「(1)ア」や「(2)ア」にある出国禁止命令のような,出国を禁止する措置を講じることができるものとすることが考えられ,必要に応じて,これらの方法により,ここで想定されている問題に対処することは合理的だといえるように思われます。 ○角田委員 検討課題の「(1)」の出国禁止命令の対象とすべき者の範囲として,科料の裁判の告知をされた者を対象とするかという問題について,私は,対象から外した方がいいのではないかという意見です。   一つは,この科料は,上限が9,999円であり,非常に軽微なものです。他方で,刑罰としての拘留の裁判を受けた者については,出国して拘留の刑を免れようとする行為を阻止する制度は,これまでの議論で全く考えていないわけです。   ところが,言うまでもないことですが,主刑の軽重は,刑法第9条及び第10条第1項に規定されているとおり,科料よりも,拘留の方が重い刑罰とされています。しかも,刑罰としての実質においてもそういう順序なのだと思いますが,拘留の場合にどうして出国を阻止する制度上の手当てを設けることとしないのかというと,それはやはり,拘留が刑罰として軽微なものだから,そこまでの大掛かりな制度を設ける必要がないではないかという思想だと思うのです。そうだとすると,それよりも軽いとされる科料については,もうこれは目をつぶるという方が制度としてのバランスがいいと思います。もちろん科料には,労役場留置の執行があり得るわけですが,ここで出国禁止命令の対象に含めてしまうと,全体としての制度の整合性が大きく損なわれるという感じがします。 ○向井委員 制度枠組みには,「罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認めるとき」という要件が規定されていますが,罰金を完納することができるかどうかに関しては,その時点で本人の資力が必ずしもなくても,様々な金策,例えば,他人から借金をするといったことをして罰金を支払う可能性もあるわけです。その中で,罰金を完納することができないこととなるおそれがあるという要件について,具体的にどのようなものを想定されているのか,これを広く考えますと,相当広い範囲で出国禁止を命じ得ることになってくるわけですので,事務当局として,どのぐらいのものをこの要件で捕捉しようとしているのかについて,教えていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 「罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認めるとき」という要件については,この出国禁止の制度が,罰金を完納することができない場合における労役場留置の執行を確保するためのものであることから,このような要件を必要とすることとしたものです。もっとも,具体的に,その要件として,制度枠組みのように,「おそれ」という形で書くのがふさわしいかどうかを含めて御議論いただければと思いますが,いずれにしろ,御指摘のとおり,この要件は,それを判断する時点での本人の財力にも鑑みながら,将来における罰金の完納の可能性について,その者の資産や負債の状況とか,今後のお金の出入りの予定であるといった様々な事情を考慮した上で,個別の事案に応じて判断していくことになると考えています。 ○小笠原幹事 ただいまの向井委員の発言にも関連するのですが,そもそも,「罰金を完納することができないこととなるおそれ」という要件は,どうやって確定していくのかという疑問があります。というのも,裁判の中で,被告人の資力を明らかにすることのできる証拠は,いわゆる身上調書ぐらいで,被告人質問でもその辺りのことを聞かないと出てこないですし,本人が供述したことが本当かどうかも正直よく分からないときに,そのような「おそれ」を本当に裁判所が判断できるのかと思いました。   それで,例えば,資力申告書のようなものを罰金刑のときに出させることにするのかとか,あるいは,出国禁止命令に対する不服申立ての制度を作って,弁護側の方で,こうやってお金は出すことができると主張して,出国禁止命令を解いてもらうということをセットで設けることとするのかということは,出国禁止命令の対象とすべき者の範囲とは離れる論点かもしれませんが,こういったことも考えていかなければならないのではないかと思いました。 ○吉田幹事 小笠原幹事から御指摘のあった点について,事務当局の考えを若干申し上げますと,この制度枠組みに記載した要件を判断するに当たっての資料は,公判提出記録に限るものではなくて,令状審査と同様に,疎明資料を検察官が提出して,裁判所又は裁判官が判断することになろうかと考えています。その意味で,公判に出ていない,いわゆる不提出記録の中に入っている被告人の資力に関する各種の証拠なども,この要件を判断する際の疎明資料となるものと考えています。   その上で,現行法の下でも,「罰金を完納することができない」という要件については,罰金刑の執行段階で検察官において判断しているものですので,その判断の在り方が,制度枠組みに記載した要件においても,基本的には前提となり得るものと思います。制度枠組みに記載した要件においては,将来的な判断という要素が一つ加わってまいりますので,現行法とは若干判断の仕方が違ってくるところはあるかと思いますが,罰金の裁判がなされた場合に,それが確定した時期を想定したときに現行法の下でいう「罰金を完納することができない」という状態になっているかどうか,その見込みの判断をしていくことを考えているものです。 ○酒巻部会長 小笠原幹事,何かこの点についてございますか。 ○小笠原幹事 おそらく,そういうことになるのかと思いますので,そうすると,検察官が収集した疎明資料だけでは,結局,出国禁止命令が違法・不当であるというような不服の申立てを認める制度はあり得るのかなと思いました。 ○酒巻部会長 検討課題の「(6)」について,何か御意見がある方はいますか。 ○鷦鷯幹事 検討課題の「(6)」に関連して,事務当局として,制度枠組みにある失効事由を挙げた理由について,御説明させていただきます。   出国禁止命令や,これに違反して出国しようとした場合の勾留・身柄拘束の仕組みは,飽くまで,先ほど申し上げたとおり,労役場留置の執行を確保することを目的とするものですので,その必要性が失われるような場合には,それらの効力が失われるものとすることになると考えられます。   具体的に申し上げますと,例えば,罰金の裁判の確定前においては,罰金に相当する金額について仮納付の裁判が執行されたときは,確定後に労役場留置を執行する必要がなくなりますので,この場合には,出国禁止命令や身柄拘束などが失効するものとしてはどうかと考えたものです。   また,罰金の裁判の確定後においては,罰金が完納されたとき,それから労役場留置が執行されたときは,その後の労役場留置の執行を確保するという必要性が失われますし,また,裁判の確定後の身柄拘束の期間がこの制度枠組みの「ウ」の規定によって罰金に算入され,それが罰金額を超える場合についても,やはりそれ以上労役場留置の執行を確保するという必要性が失われることから,これらの場合には出国禁止命令などを失効させるものとして記載しています。   加えて,罰金の裁判自体がなくなる,要するに,罰金の裁判が破棄されたとき,それから略式命令の効力が失われたときなどについても,やはり労役場留置の執行を確保するという要請がなくなると考えられることから,これらの事由も,出国禁止命令や勾留・身柄拘束の失効事由として掲げています。 ○酒巻部会長 事務当局から,検討課題の「(6)」に関する説明がありましたが,これに関連して御意見,御質問等はございますか。   よろしければ,検討課題の「(1)」と「(6)」についての議論は,この程度にさせていただきまして,次に,検討課題の「(2)出国を防止する仕組み」,「(4)罰金の裁判の確定後の身柄拘束」及び「(5)罰金の裁判の確定後の出国禁止命令及び身柄拘束の手続」について,御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○笹倉幹事 検討課題の「(2)」と「(4)」について,共通するところがあると思いますので,まとめて意見を述べます。   まず,「(2)」についてですが,出国禁止命令の制度を作ることを前提にしますと,そういう制度の下で,労役場留置の執行の機会を確保することを目的として出国を禁止されているにもかかわらず,敢えて出国しようとする行為に及ぶ場合には,労役場留置の執行を確保するための法律上の制限に服さない意図が強くうかがわれることになりますので,そのような行為に及んだ者の身柄を拘束する必要性は高いといえるのだろうと思います。そうしますと,そのような場合に保釈を取り消したり,勾留状を発したりすることは,制度としての合理性があるものと考えます。   もっとも,この点で一つ問題となりますのは,刑法第18条第5項が,罰金の裁判の確定後,一定の期間が経過するまでは,本人の承諾がない限り労役場留置の執行をすることができないものとしていることとの兼ね合いです。一見したところ,整合しないように映るかもしれませんが,規定の趣旨を考えれば,矛盾しないという説明は十分に可能だと考えます。と申しますのも,この規定は,罰金の裁判が確定した者が罰金を納付しないまま逃げおおせてしまうことを許容する趣旨でないことはもちろんでありまして,罰金として納付すべき金銭を準備するのに一定の時間を要することも想定されることから,労役場留置の執行を開始するに当たって一定の猶予期間を設けたものです。そうであるとすれば,金銭調達の努力をしているのではなく,かえって,罰金を支払う見込みがない,それどころか,支払わないまま逃げてしまう徴候が表れたというのであれば,猶予を与えた趣旨に反しますので,期間の経過を待たずにその者の身柄を拘束をすることも,刑法第18条第5項の趣旨と矛盾するものではないと考えます。   次に,「(4)」についてですが,罰金の裁判の確定前に出国禁止命令に違反したことを理由として勾留され,その勾留が罰金の裁判の確定まで続いている者については,罰金の裁判が確定した後も,罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認められる限り,引き続き身柄拘束を継続する必要性は高いことになろうかと思います。この場合も,やはり刑法第18条第5項の趣旨との関係が問題となりますが,先ほど申し上げたとおり,この規定は,金銭調達のために与えられた一定の猶予期間内に罰金の支払を免れて逃亡することを許容するものではありませんので,労役場留置の執行を確保するために身体を拘束することも,その趣旨と矛盾するものではないと考えます。 ○小木曽委員 検討課題の「(5)」について,意見を申し上げたいと思います。   刑事訴訟法第505条には,労役場留置の執行については,刑の執行に関する規定を準用すると規定されています。制度枠組み「(2)」に記載されている出国禁止命令や身柄拘束は,確定した刑罰である罰金を完納できない場合を想定しており,罰金刑の執行段階の制度ということですので,現行法からしますと,検察官が,対象者の出国禁止を命じたり,あるいは,その命令に違反する行為があったと認められるときは身柄拘束ができることとすることも考えられるようには思います。しかし,確定した刑を,言わば淡々と執行するという場面と,刑の執行が危ぶまれる状況下で,更に一定の不利益を科すことの威嚇力を背景に,その執行を確保しようという場面とを,同じように取り扱うことが果たしていいのかどうかという疑問もあるように思います。   確定した刑を執行するという意味では,罰金は,本来,その納付によって執行されるべき刑罰であって,これを完納することができないときに労役場留置の執行を可能としているわけですので,その執行についての要件判断までは検察官がすることができるとしても,労役場留置の執行確保のために,身柄拘束を含めた新たな不利益を科す制度を作るのであれば,そうした不利益を科すことについては,裁判所による要件判断があってしかるべきではないかとも考えられるように思われるわけです。   刑法第18条第5項は,納付すべき金銭を調達するために一定の猶予期間を設けており,労役場留置という,いわば罰金に代わる身体的な不利益を科すことに慎重な姿勢を示しているとも読めますので,そのような考え方と,先ほど申し上げたとおり裁判所が身柄拘束等の不利益の判断に関与するべきであるということは,一致するのではないかと考えるところです。 ○酒巻部会長 確かに,刑の執行段階ではありますが,裁判所の関与という立法政策を採ることもあり得るかと思います。 ○福家幹事 小木曽委員からお話があったところと関連する部分ですが,この制度は,罰金刑の確定後に,労役場留置の執行を確保するための対応ということですので,他の裁判の執行の場面と同様に,裁判所ではなく,検察官の方で対応することが原則であろうと思っているところです。   その上で,小木曽委員から御指摘いただきましたとおり,労役場留置の執行確保のために身柄拘束などの新たな不利益を科す判断を要する部分,刑確定者の権利の問題という部分も,確かにあると思っているところですが,現行制度においても,裁判所が裁判の執行に関与している場面として,裁判の執行に関する異議という,検察官による違法な執行に対する救済制度がありますので,刑の執行段階における裁判所の関与については,こういった現行法の枠組みを大きく変えることなく,手続に問題がある場合に,裁判の執行に関する異議という不服申立ての中で対応することも可能ではないかと考えているところです。 ○酒巻部会長 検討課題の「(5)」は,刑の執行に関わることですが,裁判所ないし裁判官の関与をどうするかという点に関して,ほかに御意見がございますか。よろしいですか。   それでは,この部分もひとまず議論を終えまして,最後の検討課題の「(3)一時出国の許可等の仕組み」について,御意見を承りたいと思います。 ○小木曽委員 この制度は,罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認められる場合に出国を禁止して,労役場留置の執行を確保しようとするものですが,対象者が何らかの理由で出国する必要がある場合に,これを全く許さないこととするのも,不合理かもしれないと思うところです。   例えば,国内に生活の拠点があって,家族もいるような場合などには,先ほど第2-4のところで議論のありました一時出国のための保証金を納付させて,その没取による威嚇力を背景に,一時出国を許可する余地を残しておくことも考えられるのではないかと思います。 ○小笠原幹事 保証金を納めさせて出国を許可するかどうかというのは,罰金額が50万円くらいであれば,保証金を納めるだけのお金があるなら罰金を納めろよという話になると思いますので,おそらく罰金額がかなり高額,例えば,1000万とか,2000万といった高額な罰金の事案で出国をどうするかという議論かと思います。   保証金を納めさせて出国を許可した後,本人が日本に帰ってこなかったときは,保証金を没取されることになると思いますが,それで没取された金額は罰金に充当されるのか,それとも,罰金には充当されず,単に没取されるだけなのか,どちらになるのかと思いました。何となくですが,保証金は,飽くまで罰金を支払うための保証であるとすると,これが没取されたときは,罰金に充当するべきではないかと思った次第です。   一時出国の制度,保証金を納めさせて出国させるという制度自体は,特に反対するものではありません。 ○吉田幹事 一時出国の際の保証金として納付させる以上は,それを没取した場合には,やはり保証金として没取されているのであって,罰金に算入することにはならないのではないかと思われます。それを許容しますと,お金を放棄してしまっても構わないという人にとっては,保証金は没取されてもいずれ罰金額に算入されるのだからということで,心理的な抑止力がむしろ働かないことにもなりかねませんので,没取された保証金の罰金額への算入は,難しいのではないかと思われます。 ○酒巻部会長 ほかに御意見はございますか。よろしいでしょうか。   ここまで,検討課題の「(1)」から「(6)」までを議論してきましたが,第3-4の全体に関して,検討課題に記載のない事柄,あるいは制度枠組み全体に関する事柄について,御意見のある方は,挙手の上,どのような点に関するものであるかをお示しいただいた上で御発言をお願いできればと思います。 ○福家幹事 少しタイミングが遅くなって申し訳ありませんが,制度枠組みの「1」「(2)」「イ」の身柄拘束の対象者について,「(ア)」と「(イ)」には出国禁止命令に反して出国しようとした者が挙げられており,それに加えて,「(ウ)」には逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある者が挙げられていて,「(ア)」「(イ)」の対象者と「(ウ)」の対象者は,少し性質が異なるのではないかと考えています。事務当局において,逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある者についてまで,今回の身柄拘束の対象とした趣旨を教えていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 制度枠組みの「(2)」「イ」・「(ウ)」において,罰金の裁判確定後の身柄拘束の対象者として,逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある者を挙げている趣旨について御説明いたします。先ほど笹倉幹事から御説明がありましたとおり,刑法第18条第5項の規定は,本人に罰金の納付のための金銭調達の時間的猶予を与えることを趣旨とするものであり,この猶予期間に逃亡することまで許容するものではないと考えられ,そのような観点からしますと,罰金を完納することができないこととなるおそれがあると認められる者に逃亡のおそれがあると認められる場合についてまで,同項に定める猶予期間を待たなければならないこととして,それによって労役場留置の執行の機会を確保できなくなるという事態は,刑法第18条第5項の趣旨に照らしても,ふさわしくないのではないかと考えられます。加えて,そういった逃亡のおそれがあると認められる者については,裁判の確定前であれば,勾留の対象になることも踏まえますと,逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある者についても,罰金の裁判確定後の身柄拘束の対象者とすることが考えられますので,このような趣旨で制度枠組みに記載しています。 ○酒巻部会長 福家幹事,何か御意見がありますか。 ○福家幹事 「(ア)」・「(イ)」と比べて,「(ウ)」では広い範囲の者が対象となると思われ,その点については,少し慎重な検討が必要とも考えられますので,御質問させていただいたということです。 ○酒巻部会長 ほかに御意見や御提案はございますか。よろしいでしょうか。   それでは,本日予定した項目については幅広く議論ができましたので,少し早いですが,本日の審議は,ここまでとさせていただきたいと思います。   今後の進め方につきまして,皆様に御提案をさせていただきたいと思います。   当部会では,これまで,「検討のためのたたき台」に基づいて,全部で13の検討項目の制度枠組みについて議論を重ねてきました。検討項目によっては,具体的な制度の在り方やその採否について,恐らくほぼ異論のないものもありますし,そうでない検討項目についても,議論はおおむね熟しつつあると思われますので,部会長としましては,そろそろ取りまとめに向けた議論に入っていくべき段階に差し掛かっていると認識しています。   そこで,これまでの議論を踏まえた上で,どの制度をどのような形で採用するか等についても検討を進めていくため,次回までの間に,事務当局に「試案」を作成してもらうこととし,次回以降は,その試案に基づいて議論を進めていきたいと思います。   もとより,試案といいましても,飽くまで,全体を俯瞰して,更に議論を進める,あるいは深めるために用意するたたき台にすぎませんので,個々の制度の採否や内容についての方向性を決めるものでもありませんし,皆様の議論の対象を制約するものでもありませんが,最終の取りまとめに向けた議論の材料となるようなものをたたき台にして議論し,それを修正していく方法で審議を進めることが,合理的であり,充実した議論に資すると考えています。   ということで,ただいま申し上げましたような形で,まずは事務当局に試案を作ってもらって,それを叩きながら今後の議論を進めていく,そのようにして今後の審議を進めることにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。              (一同異議なし)   御賛同いただきありがとうございます。   それでは,そのような形で,今後の審議の準備を進めさせていただきたいと思います。   次回の日程ですが,事務当局の作業に相応の時間を要すると思われますので,準備が整い次第,事務当局を通じてなるべく早急に,委員・幹事の皆様にお知らせすることにさせていただきたいと思います。   本日の議事につきまして,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思いますので,発言者名を明らかにした議事録を作成して公表することとさせていただきたいと思います。また,本日の配布資料につきましても,公表することとしたいと思いますが,そのような取扱いをすることでよろしいでしょうか。              (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日も,どうもありがとうございました。以上で本日の審議は終了いたします。 -了-