法制審議会 民法(親子法制)部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  令和3年7月20日(火)自 午後1時29分                     至 午後5時04分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  個別論点の検討(2) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会民法(親子法制)部会の第18回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   まず,事務当局佐藤幹事から,本日を含めたこの部会の開催方法等についての御説明をしていただきます。   では,お願いします。 ○佐藤幹事 今回もウェブ参加併用の形で行わせていただいておりますので,前回までと同様,御注意いただきたい点として2点申し上げます。   まず,御発言中に音声に大きな乱れが生じた場合につきましては,こちらの方で指摘をさせていただきますので,それを踏まえて適宜御対応いただければと存じます。また,発言をされる委員,幹事の皆様におかれましては,冒頭に必ずお名前を名のってから御発言を頂きますよう,よろしくお願いいたします。   休憩時間の入れ方につきましては,1時間半程度をめどに10分間程度の休憩を2回,入れさせていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   なお,本日は委員の御欠席等はないと伺っております。   続きまして,本日の審議に入ります前に配布資料等の確認をさせていただきたいと思います。これも事務当局の方からお願いをいたします。 ○小川関係官 今回の配布資料ですけれども,事前にお送りいたしました部会資料18-1に加えまして,当日配布させていただきました部会資料18-2,それから本日の議事次第,配布資料目録となります。   なお,部会資料17の第1については,前回御議論いただくお時間がございませんでしたところ,事務当局で改めて検討し,若干,今回の資料では修正をいたしましたので,部会資料18-1の第1に基づいて御議論を頂きたいと考えているところです。資料は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,本日の審議の予定でございますが,本日は前回に引き続きまして,個別論点の検討として,更に詰めた検討が必要な論点につきまして御議論を頂きたいと考えております。具体的にはまず,懲戒権に関する規定の見直し,資料の第1,1ページ以下について,それから,嫡出の推定の見直し,資料の第2,9ページ以下について,順次御議論を頂きたいと考えております。   その後に,前回から御議論を頂いているところの,別居後に懐胎された子に関する規律につきまして,認知の訴え及び親子関係不存在確認の訴えに関する論点,これが第3で17ページ以下になりますが,それと,新たに届出に関する論点,これが第4,23ページ以下でございますが,これらについて御議論を頂きたいと考えております。   その後の進め方ですけれども,若干順序を入れ替えさせていただきまして,事実に反する認知に関する見直し,第7の45ページ以下の部分ですが,これをまず先にさせていただき,そして,嫡出否認制度に関する民法の規律の見直し,第5,26ページ以下,父子関係の当事者の一方が死亡した場合の規律の見直し,第6,38ページ以下について順次御議論を頂く,こういう予定を立てさせていただいております。   今回も論点がやや多くなっておりますので,順次御議論を頂きまして,もし時間が足りなくなった場合には次回以降に積み残しをするということも想定しているということをあらかじめお伝えさせていただきたいと存じます。   そこで,今申し上げた順序に沿って進めさせていただきたいと存じますけれども,まず最初に,懲戒権に関する規定の見直しにつきまして,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○砂山関係官 それでは,お手元の部会資料18-1の第1を御覧ください。   第1の懲戒権に関する規定の見直しについては,まず,乙案について,新たに乙1案と乙2案を提案しております。従前の乙案は,指示及び指導をすることができる旨,規定することを提案していましたが,これに対しては,懲戒の文言を指示及び指導に改めたとしても,今度はその表現が子どもに対する言葉の暴力等の口実にされるのではないかとの懸念が指摘されているところです。そこで,本部会資料では,民法第822条から懲戒の表現を削除することにより,正当なしつけも一切許容されなくなるのではないかといった誤解が生じることを防止するという従前の乙案の趣旨を維持しつつ,乙案に対する懸念を解消する方策として,新たに乙1案及び乙2案を提案するものです。   まず,乙1案については,親権の濫用を防止する観点から,児童の権利委員会の一般的意見なども参考に,指示及び指導をしなければならないと規定して,指示及び指導が親権者の責務であることを明らかにすることを提案するものです。また,指示及び指導を親権者に義務付ける場合には具体的な行為指針を示すことが望ましいと考えられることから,子の年齢及び発達の程度に応じて指示や指導をすべきことを規定することも提案しております。   次に,乙2案については,指示及び指導をすることができることを前提とした上で,指示及び指導をする際に親権者が配慮すべき具体的事項を定めることにより,民法第822条に親権の濫用を積極的に防止するための規律としての役割を与えようとするものです。   なお,乙2案は,①の規律により体罰や不当な精神的苦痛を与える行為を防止しようとするものですが,体罰はしつけの手段としてであっても正当化されるものではないことを明確にする観点から,体罰の禁止を更に②の規律で注意的に規定することを提案しております。   乙1案及び乙2案については,これまでの議論を踏まえて新たな提案を行うものですので,特に皆様からの御意見を頂戴できればと存じます。   次に,子に対して精神的な苦痛を与える行為を禁止する規定を設ける場合の表現について,本部会資料では,本文(注4)で,体罰に代えて,体罰又は心身に有害な影響を及ぼす言動とすることを新たに提案しております。部会資料16-1では,判断基準の明確性の観点から,行為に着目した概念を用いることが相当であるとも考えられることから,児童虐待の文言を用いることを提案しておりましたが,第16回会議ではこれを支持する意見は見られず,結果の面から許容される行為の範囲を画することも検討に値するといった意見が出されたところです。このような議論状況を踏まえ,本部会資料では,体罰又は心身に有害な影響を及ぼす言動とすることを提案するものです。   部会資料18-1の第1に関する説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。乙案を一定程度書き改めるとともに,(注4)を今回改めて出しているということで御説明を頂きました。   何か質問がありましたら,まず頂きたいと思います。 ○棚村委員 今御説明いただいて,乙1案,2案ということで,少し具体的な内容を指示するものと,配慮義務というような形で規定をするということに分けたということについて,理解をしました。   質問なのですけれども,(注)のところに,指示及び指導というところで,正当なしつけとそうでないものをできる限り明示し,親としてはある範囲ではできるのだということを積極的に示していきたいという意図はよく分かります。ただ,3ページの(注1)の児童の権利に関する委員会の一般的意見8号のパラグラフ39とか,(注2)のところでもパラグラフ13が引かれています。これは御承知のとおり2006年のものです。体罰そのほかの残虐又は品位を傷付ける形態の罰から保護される子どもの権利というところで規定をされているものです。その後に,一般的意見13号というのが2011年に出されていて,あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利ということになって,一般的意見というのは今,25まで出ていて,デジタル環境に関する子どもの権利というということで,ものすごく変わってきているわけです。要するに,社会の環境が時間の経過でかなり変わってくることによって,一般的意見についての重さというのが大分変わってきているのではないかと思うのです。   それで,一般的意見で引用されているパラグラフ35のところでは,確かにそういうような形で,家族法においては,やはり子どもに対する適当な指示及び指導を与えることが親の責任に含まれることも積極的に強調されなければならないと書いてあるのですが,このパラグラフ32のところには,最初のところに,むしろ体罰を禁止するとか,品位を傷付ける形態の罰を禁止するというところにこういうふうに書いてあるのです,つまり,積極的な,非暴力的な,及び参加型の形態の子育てを促進するための曖昧さの残る余地のない基盤を整えることによって,子どもに対する暴力を防止する。その後に出てくるのが,正にパラグラフ39のところになっているのです。   それで,御質問というのは,こういうような形で一般的意見も時期とか社会の状況の変化によって大分その強調するところが変わってきていると思うのです。特に15年も経っていて,非暴力的な子育てとか暴力によらない子育てというのがものすごく強調されて,2006年のときは確か刑事罰での免責の抗弁としてイギリスの例が出されて,相当な範囲での体罰というのですか,それは認められるのはイギリスだからというようなことで例が出ていました。親として相当な範囲でできることについては,やはりそれは尊重しましょうというくだりが出てくるのですが,その後の総括所見とか,いろいろ見ていると,むしろ指示とかこういうことについてもかなり曖昧な形で残しておくということに対する,批判的な姿勢というのが強くなってきているのです。   私は,乙案自体を残すということを否定するつもりはありません。しかし,途上国とか各国のいろいろな事情がかなりばらばらなときに書かれている,しつけに対する尊重という意味合いと,現在の状況で,例えば携帯の使用禁止,見させないようにするということも,ペナルティと行う場合にはかなり慎重にしろ,みたいなことが一方で言われているところで,指示とか指導ということを積極的に法文上,規定上,残さなければいけない合理性というのが大分変わってきていないかというのが御質問の趣旨です。   つまり,2006年のところでも,それから2011年も出ているのですけれども,それは1行かそこらになっちゃっているのです。要するに,どういうことかというと,今の2021年の段階で国際的に親の正当な指示及び指導を尊重するというようなことが,むしろ国際的な流れとして強調されなければいけないだろうかということを1点,御質問させていただきたいのです。そうでないと,(注)の引用の仕方が不適切であったり誤解を招くと,今,国際文書や国際社会の中ではこれが共通の認識なのかという点については,私は少しどうなのかなという疑問を持っているものですから,質問させていただきました。 ○佐藤幹事 御指摘ありがとうございます。   乙案では,指示,指導ということで従前から御提案しているところでございます。その(注)の中で児童権利委員会の一般的意見について引用させていただいておりますが,今,御指摘としましては,一般的意見についても,流れといいますか,近年重点の置かれ方が変わってきているといった御知見を頂いたものと理解いたしました。国際的なこういった文書,意見というものは,我々が今御提案しているところの一つの根拠として(注)で書かせていただいているところですが,その解釈の在り方といいますか,大きな流れで見たときに,今どこが一番国際的に重視されているところなのかといったことにつきましては,今日御示唆いただいたところも含めて,また改めて勉強させていただきたいと思っております。   なお,これまで御提案しているところの乙案の心といいますか,その意図するところといいますのは,繰り返しになりますけれども,正当なしつけということができなくなってしまうのではないかという,言わば素朴な懸念というものがあるということ,そういったことを踏まえての御提案ということでありまして,一概にこの一般的意見それ自体に依拠しての御提案というわけではございません。ただ,その見え方として,一般的意見の引用の仕方が必ずしも正確ではないのではないかというところまで,恐らく,御指摘の趣旨としては頂いたのかなと思っているところでございます。 ○棚村委員 全くおっしゃるとおりで,例えばパラグラフ38の部分,前にあるものを是非紹介をするとか,要するに,そうすると全体の文脈やバランスの中で,子どもを保護し,非暴力的,参加型の形態の子育てを促進し,あらゆる形態の暴力は禁止なのだけれども,ある意味でしつけという形で正当な指導みたいなものについてはある程度配慮しなければいけないということが理解できると思います。私の質問は,そういうバランスで(注)が組み立てられているということが書かれていれば,ああ,こういう問題なのかということで分かりやすくなります。現在の注の記載のようにパラグラフの39だけが出てきたり,13だけが出されると,正に抜き出されてしまっていて,指示とか指導というのはやはり当然に尊重されなければいけないという,そこだけの理解になってしまうわけです。ところが,その前のところに,品位を傷つける罰やあらゆる形態の暴力はもう許されないみたいな,体罰はもちろんですけれども,その中で出てくる紹介の仕方として,是非入れていただくというのは大切ではないかと考える次第です。それから,先ほど言いましたように,今後検討していただければいいのですけれども,2019年3月の直近の総括所見とかいろいろなものたくさん出ていますから,その中でどういう傾向になっているかというのは確認していただいて,2006年のものを引用することが適切かどうかということも検討していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。資料の(注)の作り方について誤解が生じないように,この後また工夫をしていただきたいと思います。   質問ということでは,ほかに何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,御意見,御発言を頂ければと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 まず,乙1案,乙2案について意見を申し上げたいと思います。   乙1案については,やはり非常に懸念が残る条文だと思っています。必要な指示,指導をしなければならないというふうな義務付けが書かれてしまいますと,かえって親の方はプレッシャーを受けかねないと思います。卑近な例ではありますけれども,例えば電車の中で子どもが泣いたりすると,それに対して親が適切な指導をしていないからだというような圧力が掛かるということは,これは子どもの福祉,さらには親の方の気持ちの問題としても,非常につらいところだろうと思うのです。恐らく,先ほど条文の具体的な解釈,あるいはその編成については棚村先生からも御説明がございましたけれども,根拠となっている条約の5条は,親がそういう指導などをしなければいけないと強調しているのではなくて,親の指導等を国がきちんと尊重しなければいけないというところが本旨なのだろうと考えると,乙1案の規定の仕方と比較すると力点の置き方が随分違ってきているのではないかと思っています。したがって,乙1案というのはやはり避けたいと思っております。   これに対して,乙2案には,大きな懸念はないのかではないかと思っています。親権者が指示,指導を行う場合の配慮義務という形で規定をしていただいていますので,そういう意味では,先ほど申し上げたようなプレッシャーは特にないように思っています。規定の仕方としてはあり得るのではないかと思ってはいますけれども,これも先ほど棚村先生からも御指摘のあった「指示及び指導」という言葉ですが,ここをむしろ「監護教育」に置き換えたとしても,趣旨としては実はほとんど変わらないのではないかと思います。もちろん,監護教育は抽象的なもので,指示及び指導は具体的な行為という御説明はありましたが,しかし,伝えたい本旨はそれほど変わらないのではないかと思っています。先ほど御説明があった,正当なしつけができるということ,そこの誤解を払拭したいという思いは理解できますけれども,それはもうこの部会の一番最初のときから申し上げておりますように,行政の方で様々な広報活動などの中で十分対応が可能だと思いますので,ここのところはあえて指示及び指導という言葉を使う必要はないのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。乙1,乙2,それぞれについて御意見を頂きました。   そのほかの方々はいかがでしょうか。 ○棚村委員 私も磯谷委員と同じ印象を持っていまして,先ほど実は質問とは言ったものの,乙案が二つに分かれるということで,一般の方たちの印象として,親の必要な指示とか指導ということが強調されることにならないかという心配があります。特に,乙案の乙1案で行くと,具体的な内容の指示,指導をしなければならないという形で,親に対する義務付けの形になっており,何というのですか,その内容をどういうふうに理解するかは別として,懲戒権という言葉の言い換えになっているだけではないかという誤解を生じないかと思うのです。つまり,監護及び教育のために必要な指示及び指導というのは何なのかということの具体性というのに欠けていてしまって,心配をするのが指示・指導を口実みたいな形で,行きすぎた行為を正当化するための言い訳になってしまわないかというのが懸念されるところです。   これに対して,乙2案の方は,指示とか指導について監護教育で置き換えてもいいという点については,私も全く同感なのですけれども,いずれにしても,これを置くとすれば,こういう監護・教育に際しての配慮というような形であれば,特に心身に及ぼす影響等に配慮するということは大切なことなので,残してもいいのかなという感じを持っています。   乙1案に関しては,一般のみなさんの誤解を招かないかということと,表現の仕方が,具体的な義務付けみたいな形になっているのが,かえって親に対してプレッシャーを与えるのではないかという懸念と,それから,行きすぎた行為に対しての歯止めにならないのではないかということが非常に心配です。 ○大村部会長 ありがとうございました。磯谷委員の御発言と基本的には同じ方向かと思いますけれども,特に乙1案について,弊害が大きいのではないかという御指摘を頂きました。 ○山本委員 私も今の棚村委員と磯谷委員の意見にほぼ同感なのですが,乙1案の親権の義務,責任を強調するという趣旨が,ここでは指示,指導をしなければいけないところに集中してしまって,結果としては解釈の相違で暴言を吐いていたり,あるいはきちんとしていない親というのを追い詰めるという,かえってずれた効果が出てしまう危険があると感じます。なので,趣旨として親権の義務と責任と権限というのを調整しようとしたという結果があったと思いますけれども,結果として,ここでそれを強調するのは今一つ結果的にはずれるかなと。そういう意味では,乙2案の方がその具体的な内容を述べるということに集中しているので,その方が妥当性があるかなと。確かに,でも,指示及び指導という言葉を使わなければならないかというところでは,磯谷委員もおっしゃったように,監護及び教育というところで別におかしくないかなと思います。   もう一つ加えて,乙1案の(注4)にあった文言ですね,体罰に加えて,心身に有害な影響を及ぼす言動という言葉を入れるかどうかという話がありましたが,これは乙2案の②ですよね,体罰を加えてはならないとだけなっているのですけれども,ここに,体罰又は心身に有害な影響を及ぼす言動というのを,①でも配慮ということは書いてありますけれども,有害な影響を及ぼす言動は禁じられているよということを強調することが,今,非暴力による育児とか,暴力によらない育児努力というのが大前提なのだという世界的な動向を見ても,一応ここに明文化しておくとしたら,そういう言い方があるのではないかと考えました。 ○大村部会長 ありがとうございました。乙1,2についての御意見と併せて,(注4)の点についても明文化をすることが望ましいのではないかという方向の御意見を頂きました。 ○山根委員 ありがとうございます。私も,重なる意見かと思いますけれども,乙2案でいっている,ねばならないことというのは,子の年齢や発達の制度,心身への影響に配慮をということをいっているので,そちらの方がより伝えたいメッセージを正しく伝えられる,届けられると考えます。   さらに,①と②と分けて記載していることですけれども,これも私は,体罰を禁止ということを目立たせるためには分けて記載した方が届くのかなと考えました。さらに,書きぶりについてはもう少し工夫をして言葉を,指示及び指導を入れるかどうか,そこを監護や教育とした方がいいのかどうか等,それぞれ,また,もう少しシンプルにできないかということも含めて少し検討が必要かなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。乙2を基本的に支持されるということで,しかし,先ほど来出ている指示及び指導というのが本当に要るのだろうかということについても御意見を頂き,全体として書きぶりを少し更に検討する必要があるのではないかといった御指摘を頂いたものと思います。   今のところ,乙案及び(注4)について,ほぼ皆様の御意見は同じ方向のように思えますけれども,何かほかに。 ○井上委員 ありがとうございます。私も今までの発言と同様の趣旨の発言であります。   今回の新たな表現の提起の乙1案ですけれども,これは一般の生活者の目線で見ると,やはりこの,しなければならないという表現とすることで,これまでの乙案の表現から受ける印象とは大きく変わると受け止めています。しなければならないことを規定する今回の乙1案では,場合によっては,やはり行きすぎた行為をとれるように解釈できてしまうおそれがあります。これはパブリック・コメントを一旦経ておりまして,また,親権の法的性格にも関わる問題であることから,乙1案と乙2案については丁寧かつ慎重な議論が必要ではないかと考えています。   また,乙1案と乙2案に共通することとして,先ほどの指示という言葉についてはそれぞれ委員からも発言が出ていますけれども,部会資料10-2のときにも指図する,命令するといった意味の記載がありました。やはりしつけと称して行きすぎた行為につながるおそれがないのかというのが,この指示という言葉を使うと,懸念があります。   ヒアリングで児童虐待が子どもの将来に影響するという話があったことや,国民へのメッセージ性を踏まえると,本文(注4)の表現ですが,体罰又は子の心身及び発達に有害な影響を及ぼす言動など,将来も含め,子に有害な影響を与えないための書きぶりを検討いただけたらどうかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。乙1,乙2につきまして,慎重な検討が必要だろうという御指摘を頂き,(注4)につきましては,具体的な文言の追加についても御提案を頂きました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○大石委員 これは確認で,それに伴って意見を申し上げることになりますが,乙2案の趣旨が丙案には全く含まれていないのかというのが私の基本的な疑問です。つまり,子育てをするときに我々は当然,子どもの成長,あるいは年齢に従って,いろいろなことを考えるわけです。乙2案の場合には,こういうふうに書かれたので,言わば個別事情配慮義務というのが後ろで出てきますけれども,それは当然に乙3案でも予定されているわけでして,それを明確化したというのがこの趣旨だという,そうすると,それを明確化するから,乙2案に案を集約することになりますが,乙3案でそういうふうに個別事情配慮義務みたいなことが当然含まれて,その趣旨だったら当然,明記した方がそれは明らかなのですけれども,しなくても,ここに当然含まれますという解釈は可能なわけですよね。だけれども,それを法文としてやはりできるだけ明確な行為指針というのを示した方がいいという,そういう政策的な判断になったら,私はそれでいいと思います。だから,元々820条の規定によりこれを行うに際して,体罰をしてはならないということだけ書いてありますが,いろいろな配慮,監護及び教育を行う場合に,やはりその子の成長なり,能力なり,環境なりを考えながら,我々は実際の子育てをしてきたわけです。乙3案には全くそれが含まれていないという趣旨だとすると,妙な対比だなという感じがするのです,乙2・3案は。   なお,体罰の関係で見ると,(注4)のように周辺部のマージナルな部分を含めるような表現がいいと思いますが,ただし,この体罰又は心身にというのは,又はではなくて,暴力を伴う場合に重なっていますから,むしろこの資料の7ページにあるように,身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす行為の方が多分,書きぶりとしては,変な重なりがないので,よろしいのではないかと思います。   少し長くなりましたが,失礼します。 ○大村部会長 ありがとうございます。大石委員がおっしゃった乙3案というのは,丙案のことを指していらっしゃいますか。 ○大石委員 丙案です,すみません。 ○大村部会長 分かりました。御趣旨は,乙1や乙2に表れている,子の年齢や発達の程度並びにその心身に及ぼす影響というのは,丙においても配慮されるべき事柄であり,丙のように書いてあれば,それは含まれていると考えるべきだろう,その上で,これを特に取り出して乙の場合には書くのだということであれば,それはそれとして理解はできる,こういう御趣旨ですね。 ○大石委員 そうです。 ○大村部会長 ありがとうございます。それから,(注4)につきましては書きぶりにつきまして御指摘を頂いたと理解をいたしました。   ほかにございましょうか。最初に乙1案,2案が新しく出ましたので,それについて御意見をと申し上げましたので,皆様からこの点につきまして御意見を頂戴しております。全体としてはほぼ同じ方向を向いた御意見が出ているかと思いますけれども,現在,甲,乙,丙と3案併記の状態が続いておりますので,3案含めての御意見でも結構ですので,頂戴いただければと思います。 ○大石委員 確認だけなのですが,甲案に対する何かサポートは全くないように思うのですけれども,それでもやはり甲案というのは残さなければいけないのでしょうか。 ○佐藤幹事 具体的に甲案が一番ベストな案だという御意見は,確かになかなか伺われないところではあるのですが,今,丙案と,今日御議論いただいている乙2案も一つの可能性として,方向性としてはあり得るところかなと思っておりまして,最終的にどういうような調整が付くのかについては,まだ見通しが付かないところがございます。そのような状況ですので,甲案についても一つのあり得る方向性としてリザーブしておきたいという,事務当局としては正直なところ,そういった考えがございます。いずれそう遠くない時期に案を絞っていく段階に入ってまいりますので,またその段階で御相談をさせていただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   懲戒権に関する規定の見直しにつきましては,ほかに御意見はございませんでしょうか。   よろしいでしょうか。今,直前に事務当局の方からお話がございましたけれども,乙1,乙2につきましては乙2の支持の方が多かったと受け止めました。乙2と丙とである部分が相互入替え可能のようなところがありますので,この二つの案を主として念頭に置きながら,しかし甲案も取りあえず捨ててはしまわないという形でこの先,検討を進める。(注4)につきましては,文言につき様々な御指摘を頂きましたので,それを勘案して再度練り直していただく,このように引き取らせていただいてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,懲戒権に関する規定の見直しにつきましては今のような御意見を承ったということで,先に進ませていただきたいと存じます。   次は,嫡出の推定の見直しということで,資料の第2,9ページ以下になります。事務当局の方からこの部分についての御説明をお願いしたいと思います。 ○濱岡関係官 部会資料18-1の第2及び部会資料18-2について御説明致します。   まず,部会資料18-2について御説明させていただきたいと思います。   これまで民法第772条で規定する嫡出推定制度の見直しに関する提案を行ってきました。もっとも,これまでの提案に対しては,婚姻を解消してから子の出生までに再婚,離婚を複数回繰り返すことも想定されるため,新たな規律においては,このような場合においても誰が父と推定されるかについて明確な規律を設けるべきではないかといった指摘も考えられるところです。そこで,従前の提案の実質を維持することとした上で,部会資料18-2で記載したような規律にすることも考えられるところですので,このような記載とすることについて問題点がないか等,御指摘いただければ幸いです。   なお,本文の(注)でも記載しておりますとおり,今回の記載は,従前の提案の本文③の甲案を一応の前提として検討しておりますが,甲案以外を排除することを意味するものではありません。   次に,部会資料18-1の9ページを御覧ください。なお,これからは従前の提案を前提に説明させていただきます。   第2の嫡出推定の見直しです。嫡出推定の見直しとして,従前の本文③は,婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子であって,妻が前夫以外の男性と再婚した後に出生した者については,再婚後の夫の子との推定によるという提案をしておりました。この規律の適用範囲については,妻の再婚後に生まれた子は一律に再婚後の夫の子と推定する甲案と,妻の再婚後に生まれた子について,前婚の解消原因が前夫の死亡の場合を除き,再婚後の夫の子と推定するという乙案の二つの提案をしておりました。そこで,今回,甲案及び乙案の考え方等について整理いたしましたので,更に検討すべき問題がないか,若しくは甲案,乙案のいずれを採用すべきかについて御意見を頂ければ幸いです。   次に,15ページの嫡出推定制度の見直しと胎児認知との関係の整理についてです。嫡出推定制度の見直しにおいては,妻が婚姻前に懐胎した子であっても,妻が婚姻の成立した後に出生した子であるときは夫の子と推定することを提案しておりますが,このような見直しを行った場合には婚姻前の胎児認知と嫡出推定の関係が問題となるため,婚姻前に胎児認知がされている場合に嫡出推定を及ぼすべきかどうかについて検討を加えましたので,これらの点について御意見を頂ければ幸いです。   部会資料18-1の第2と部会資料18-2の説明は,以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   大きく3点あったかと思いますけれども,一つは,部会資料18-2が本日出ておりますけれども,このような書きぶりの問題ですね,現在の部会資料18-1の第2の部分をこのように書き改めるという案について,御意見を頂きたいということだったかと思います。   この18-2は,甲案,乙案が分かれているところについてはどちらを採るかということを留保して,取りあえず甲案に基づいて書いているということでございましたけれども,資料の9ページの第2の③の甲案,乙案について,更に御指摘を頂きたいというのが二つ目だったと思います。   三つ目は,15ページの胎児認知との関係についての整理ということで,この点についても何か御意見があればということでございました。   その他の点も含めまして,御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。あるは,もし御質問があれば御質問を頂いて,それから御意見をということにしたいと思いますけれども,窪田委員,御意見,御質問,どちらでも結構です。 ○窪田委員 意見が一つと質問が一つということで。 ○大村部会長 併せてお願いいたします。 ○窪田委員 いずれも資料の今日配布していただいた18-2の方に関してなのですが,2点ございます。   一つは意見ということになるのですが,第1の嫡出推定の見直しのところの③なのですが,これは私の頭が単に固くなっており,嫡出推定があった後,嫡出否認がなされるというのが頭に染み付いてしまっているせいなのかもしれませんが,私自身の感覚では,③は少し気持ちの悪い文言のように思います。つまり,これこれの場合には何々の子と推定するといいながら,その何々というものの中に,嫡出否認の訴えにより子の父であることを否認されたものを除くという形で,否認されたものは除くとしております。本来,嫡出推定がされた後,嫡出否認がされるのではないかと思うのですが,なぜその後に出てくるものがこの中に入っているのかなという点について,内容がどうとかという問題ではなくて,ルールの体裁としてやや落ち着きが悪いなという感じがしておりますので,御検討いただけたらと思います。   もう一つは質問ということになるのですが,少し趣旨を確認させていただきたいのですが,④の部分で,③の場合において,これこれの場合で,二つ以上の婚姻をしたときは,子の出生の直前の婚姻における夫の子と推定するということになっています。この規定ができた趣旨というのは,例えば,懐胎してから結婚1,結婚2,結婚3というような形があった場合に,どれになるのかといったときに,最後の婚姻なのだという趣旨なのだろうと思うのですが,質問したいというのは,今のケースで婚姻1,婚姻2,婚姻3という場合で,婚姻3に関して,その夫の子であるということが否認によって否定された場合に嫡出推定がどうなるのかというのは,このルールからするとどうなるのかということについて確認させていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料18-2の③及び④につきまして,御意見並びに御質問を頂きましたけれども,ある意味ではいずれも嫡出否認の訴えが起こされたということをどのように取り扱うのかということに関わるお話かと思います。事務当局の方で何かお答えがあれば,お願いをいたします。 ○濱岡関係官 御指摘ありがとうございました。   まず,御質問の方で④の婚姻1,2,3があった場合の嫡出否認がされた場合ですが,これまでの議論の延長線として,子の父と推定された婚姻3の夫が否認された場合には婚姻2の夫が子の父と推定されて,更に婚姻2の夫も否認された場合には婚姻1の夫が子の父と推定されると考えております。本文③の括弧書きの,嫡出否認の訴えにより否認されたものを除く,本文④も同じと書いているところで,そのように理解できるのではないかと考えているところですが,嫡出否認がされた場合の効果に関する規律を772条の中に括弧書きで入れ込むこと自体,少し見づらくなっているところもあると思いますので,嫡出否認の効果の規定の在り方も含めて,今後検討してまいりたいと考えているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。窪田委員,よろしいでしょうか。 ○窪田委員 結構です。恐らく③,④をセットにしてということだったと思うのですが,私の質問は,④だけを見ると,婚姻1,婚姻2,婚姻3とあったときに,婚姻3の夫の子と推定されるだけであって,それが否認されたときに当然に婚姻2に行くわけではないと思われたために,その点に関して趣旨が明確になるような形で,できるだけ分かりやすい条文を作っていただくのがいいのではないかと思ったということです。最後の点は希望です。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回の資料18-2は主として提案の書きぶりに関わるものですけれども,事務当局としては,これまで準備してきたものと並んでこれを出してみて,こうした書き方も考えられるのではないかということで,御意見を頂いているところかと思います。最終的に条文として書くに当たって,窪田委員から御指摘のあったように,分かりやすい形で書くことが必要だろうということで,これ自体がそういう努力の一つの表れなのだろうと思いますけれども,御指摘の点も含めて,更に検討を加えていただきたいと思います。   そのほか,御指摘があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。法制度は国民にとって分かりやすいことが望ましいという観点から,私としてはこの間,甲案を推す意見を申し述べてまいりました。今回それぞれの根拠ということで,12ページの乙案の考え方のアなのですけれども,ここのところに,婚姻の解消の原因が死別である場合は,離婚の場合に比して,直前まで夫婦の同居及び性関係が継続している可能性が高く,ということが根拠の一つとして記載がされているのですけれども,不慮の事故の場合はそうかもしれないのですが,例えば病気で入院していた場合にはそうとも言い切れないのではないかと思います。いずれにしても,母が自分の意思で再婚しているのは死別であろうとそうでなかろうと同じであって,事実,再婚後の夫が存在している中で,子の父を早期に確定するという観点,子の利益の観点からは,甲案の方が望ましいのではないかと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。本日の二つ目の論点,甲案,乙案のいずれがよいかということにつきまして,甲案が望ましいのではないかという御意見を頂きました。母の意図,意思という問題と,それから蓋然性については様々な場合があるだろうと,二つの理由を挙げていただいたと受け止めました。ありがとうございます。   そのほかにはいかがでございましょうか。 ○幡野幹事 ありがとうございます。18-2の資料の②に,婚姻の解消又は取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するとあります。まだ実益があるかどうか自信はないのですが,婚姻成立の日から200日という文言を落とすことによる影響というものも検討の余地はあるように思います。③では婚姻前に懐胎した子とありますので,婚姻中に懐胎するか婚姻前に懐胎するかで一定の区別がなされていることになります。後ほど第3,第4で検討する別居に関する制度も,婚姻中に懐胎したということを前提に作られている制度であろうと私自身は理解しておりますが,仮にそうだとすると,婚姻前に懐胎したのか,婚姻中に懐胎したのか,その線引きが問題になる場合もあるように思います。その意味で,成立後200日という文言を削除して大丈夫かについて検討が必要であろうと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘は,18-2の第1の②で,後ろの300日以内というのが出ているわけですけれども,前の方について200日の部分が消えることになるけれども,それによって生ずる問題はないかと御趣旨と受け止めてよろしいでしょうか。 ○幡野幹事 はい,そのとおりです。お願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。部会資料18-1の前の規定もそういう問題を含んでいたのかもしれませんけれども,今回の書きぶりになってそこのところがより目立つようになったということかもしれませんが,何かあれば事務当局の方でお答えを頂き,そうでなければ,更に少し御検討いただくということにしようと思いますが,濱岡関係官。 ○濱岡関係官 御指摘ありがとうございました。   これまで,婚姻中に出生した子は論理的に,婚姻中に懐胎したか,婚姻前に懐胎したか,すなわち,本文①か③の規律,いずれかに当たるのではないかと考えておりまして,必ずしも婚姻中懐胎の始期の部分の規律は必要ではないのではないかと考えておりましたが,幡野先生の御指摘も踏まえ,始期の部分について残す必要があるかどうか検討してまいりたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。御指摘を踏まえて,更に御検討いただくということにさせていただきたいと思います。   そのほかにつきましては,いかがでしょうか。 ○中田委員 甲案か乙案かにつきまして,先ほど井上委員から,いろいろな場合があるけれども,不慮の事故の場合と病気とは違うとおっしゃった,正にそのとおりだと思います。どちらをより重視するのかというところのイメージの違いがあるのかと思います。私は乙案もあり得るかなと思っておりますけれども,もし甲案を採る場合の甲案の弱点として,子が前夫の相続人たる地位を失うこと,あるいは母が利益相反的な立場に立つ場合に否認権を適切に行使しない可能性があること,ということが指摘されています。11ページでそれについての詳細な検討をしていただいているのですけれども,ややこの検討の内容が抽象的かなという感じもしなくはありません。   こういうことができるかどうか分からないのですけれども,仮に甲案を採る場合に,その子が仮に前夫の子であった場合の権利保護として,子の否認権についての特別代理人を選任する可能性を残すということはどうなのかということを思い付きました。それ自体がいいかどうかも問題があると思うのですけれども,仮に甲案を採る場合に,一つの手当てかなと感じた次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。甲案か乙案かという点につきまして,先ほど井上委員の方から甲案を支持するという御発言がありましたけれども,甲案を採った場合に出てくる問題点,出てくるかもしれない問題点に対する対応策というのも考えられるのではないかという御提案を頂きました。それについては何か。 ○濱岡関係官 御指摘ありがとうございました。   十分理解できていないところではあるのですけれども,中田委員の御指摘を踏まえ,特別代理人の選任の申立てについても検討してまいりたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。甲案,乙案どちらかに一本化するときに,どちらの案を採るにせよ出てくるであろう問題点につきましては,可能な対応を図るということは必要なことだろうと思いますので,頂いた提案を踏まえまして,更に検討をしていただくということにしたいと思います。   そのほかにはいかがでございましょうか。 ○大森幹事 ありがとうございます。部会資料18-2の15ページで胎児認知との関係について検討しておられるのですが,実務の感覚としては,わざわざ出生前の胎児の時点で父親となる者が認知をする,つまり法的な父親として責任を持つという意思表示をしており,それに母も承諾をしているということは非常に重要な表明であって,それが覆ることについて違和感が強いです。法的父子関係をどうするのがいいのかという議論ではありますけれども,今申し上げた,父も母も共に養育する意思があると,責任を子どもに対して負うということを示していることは,それなりに重みがあると思いますので,そういった点で15ページの記載している内容には少し違和感を覚える次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点目の胎児認知の点につきまして,胎児認知が行われる状況を考えると,ここで整理されていることについては違和感を覚えるという御意見でございました。これは何かございますか。   御意見を踏まえて更に御検討を頂きたいと思いますが,ほかにはいかがでしょうか。 ○棚村委員 今の大森幹事の御発言とか疑問のところなのですけれども,この辺りは非常に難しいのが,やはり嫡出推定というか父性推定の問題と胎児認知というのは,かなり意思にも関わってくるわけです。それで,嫡出推定の制度とその例外をどう決めるかというときに,認知との関係をどう整合性をとっていくかというのは非常に重要な論点でして,今,大森幹事もおっしゃってくださったように,やはり婚姻を基礎として父子関係を決める,親子関係を決めるか,それとも,胎児認知という形で,どちらかというと血縁上の父と,それから,胎児ですから母の承諾という,非常に意思主義的な考え方で構成されるものとどうバランスをとるか,それから,婚姻制度というものをどういうふうに優劣を付けるかというのがかなり難しい問題になってきます。この点で,いろいろ考えてみるのですけれども,血縁主義や事実主義なのか,それとも意思主義なのか,要するに,主観主義か客観主義かと,すごく議論がある問題と思うので,この辺りも,大森幹事がおっしゃるように条文とか制度の優劣みたいなものをきちんと議論していくということは必要だと思います。ただ,すぐにこの点についての結論が出るのかどうかというのがなかなか難しそうだなと感じています。   濱岡関係官は,やはり再婚とか,それから婚姻制度というのを非常に重視したというのは,私はそれなりの根拠があると実は思ったのです。ただ,一方で大森幹事が御指摘したように,認知しようという父と,それから母の承諾もあるということもかなり重要なことなので,この優劣を付けるのはどうでしょうかというときに,いや,やはり条文とか制度の本質みたいなものと関わるので,そう簡単に規律できないのではないかというのが,現段階での私の感想でした。もっとも,事務局の御提案については,婚姻制度を基礎に親子を決めていくのだということ自体は重要なことだと思うのですが,これが重複するというか競合するような場面でどちらを優先するかという政策的判断になると,大森幹事がおっしゃったように,やはり当事者の意思に対してもかなり重みはあるだろうなとも考えます。その辺りが簡単には結論が出てこないのではないかという印象を持ちながら,最終的には政策的な判断,価値判断みたいなことが出てくるのかなというふうにお聞きしました。 ○大村部会長 ありがとうございました。なかなか難しい問題であるという御指摘を頂いたものと思います。胎児認知がなされているという状況があって,その上で婚姻というのがあるという状況を想定して,優劣をどうするかという問題を考えていただいているわけなのですけれども,どのように考えるのかということと,それをどう規律するのかということを分けて考える必要があるかと思って伺いました。ありがとうございます。 ○石綿幹事 今の胎児認知の点について重ねて発言させていただければと思います。大森幹事,棚村委員のお話を聞いて,難しい問題だということは理解いたしましたが,しかし,今回,制度が変わることによって生じ得る問題であると思いますので,手当てをする必要は高いのではないかと思います。   その上で,私は事務局の提案というのに一定の合理性があるのではないかと思っております。胎児認知がしてあるとしても,その後,別の男性と婚姻をしたということであれば,やはり婚姻をした男女はその子について育てていこうという意図があるのではないかと思います。また,特に今回の改正で従前以上に,婚姻をするということが,その女性の子を自分の嫡出子として育てていくということであるという側面が強くなっている面も,772条についての婚姻前懐胎子を嫡出子と推定するようなこととの関係であると思います。これらとの関係でも事務局の案というのは十分に説得的なものなのではないかと思います。   私が追加で意見を申し上げたいのは,16頁(3)に関するところになるのかと思いますが,認知をした男性に一定の地位を認める,例えば嫡出否認の訴えをし得る立場にする,つまり,単なる生物学上の父を超えて,やはり認知という行為をしていたので,嫡出否認の訴えを提起し得るような立場にするなど,そのような形で何らかの手当てをしていくということは考えられないのかということでございます。   長くなりましたが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。事務当局の用意された案についても合理性があるのでないかということを前提にしつつ,しかし一定の調整のための対応というのを考えることもできるのではないか。先ほど,井上委員の御発言に対して中田委員から,一定の問題回避のための制度を組み込むということを考えてはどうかという御提案がありましたが,同趣旨のというか,同じ方向性の御意見として伺いました。 ○大森幹事 先ほどの発言の補足をさせていただきますと,養育意思と申し上げましたけれども,恐らく血縁もあることが前提と思いますので,養育意思と血縁があることと婚姻制度とのバランス,調整をどう付けるのかという問題であると理解しております。冒頭で,実務の感覚としてはと申し上げましたが,実際にほかの男性との子どもを宿しながら,別の男性と再婚するというようなケースは複数,私自身も経験しております。あくまで,私が経験している範囲ではありますが,そうした当事者は,だからといって再婚した夫を法的父にしたいとはあまり考えておらず,あくまでも法的父親は血縁上の父であると考えて,その上で養子縁組などの対処しておられる場合が大半です。そうしたことからすると,提案されている制度にすることについては,当事者の方々からすると違和感を覚えるのではないかと思いました。また,それでも提案された制度にするとした場合には,胎児認知をしつつ,更に嫡出否認といった法的手続もやる必要が出てきて,申立費用やDNA鑑定費用,弁護士費用などもかかってくることになります。そうした負担も出てきて,当事者の意識との乖離もある,という点が気になるということを申し上げたかった次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほどの実務の観点からは違和感を抱くということの中身について,御説明を頂きました。それから,対応策を考えるといった場合に,その対応の負担ということもあるだろうという御指摘も頂きました。ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○窪田委員 もうただいま議論がかなり出ているところでございますけれども,胎児認知について,私も一応,意見を少しだけ述べさせていただければと思います。   私も,先ほど中田先生,あるいは石綿先生からも御発言がございましたけれども,悩ましい問題だと思いますけれども,基本的にはここで事務局案として提案されている方向というのがやはりベースになるのかと思います。大森幹事からの御指摘というのは,なるほどそうだなと思う部分もあるのですが,ただ,全体として見たときに,これも認知の制度設計,見直しとの関係も問題になるわけですけれども,認知について,やはり嫡出推定ほど強い形での法的安定性が認められていないということになると,胎児認知に関してもひっくり返すかどうかという問題が出てくると思います。それがひっくり返された場合の法律関係とかを考えていくと,やや不安定な状況になるのかなと思います。   本来であれば,嫡出推定と認知とをもう少し平仄が合う形で全体の制度設計がされるという方向は十分にあり得ると思うのですが,ただ,現在の流れで言うと,一定の配慮はなされつつも,やはり嫡出推定と認知でかなり法的安定性というところで差異のある仕組みが前提となって議論されているように思われます。そうしたものを見た場合には,やはり事務局案のような形で考えざるを得ない,それで,胎児認知もしたのに,その後,でも再婚したというケースに関しては,申し訳ないけれども,石渡先生の御提案が一番説得的だったと思うのですが,もう否認権を認めて,そちらの側で否認してもらって,あるいは妻の側から否認してでも結構ですし,夫の側から否認しても結構なのですが,それで考えてもらうということになるのではないかという感じがいたします。大森幹事の疑問には答えてはいないかもしれませんが,どうもどちらかの優先関係を定めるとすると,そういうことになるのではないかという意見です。 ○大村部会長 ありがとうございました。現在の嫡出推定と認知の規定内容のバランスというところからすると,現在提案されているようなところで,後どうするかと考えるという方向になるのではないかと,このような御意見を頂きました。   そのほかはいかがでございましょうか。   よろしいでしょうか。そうすると,18-2につきましては,もう少し文言を検討する必要があるのではないかという意見が複数出ましたので,更に詰めて御検討を頂くということになろうかと思いますけれども,濱岡関係官,それはそれでよろしいですか。 ○濱岡関係官 はい。まだ我々も検討が十分でないところもございましたので,御指摘を踏まえまして,更に検討を進めてまいりたいと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 それから,二つ目,三つ目ですね,甲案,乙案という問題と,直前の胎児認知との関係という問題につきましては,一定の方向の意見を頂いておりますけれども,それに伴う問題点というのもあるので,その対応も併せて考える必要があるのではないかということで,いずれの点についても,更に検討を要するというところで引き取らせていただきたいと思いますけれども,それでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,第2の嫡出推定の見直しに関する論点につきましては,今のような扱いにさせていただきたいと存じます。   それで,次の問題に入る前に,ここで少し休憩をさせていただこうと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,時間になりましたので,再開させていただきたいと思います。   本日の三つ目の議題になりますけれども,別居後に懐胎された子に関する認知及び親子関係不存在確認の訴え,並びに別居後に懐胎された子に関する届出ということで,資料で申しますと17ページ以下の第3,それから23ページ以下の第4ということになりますが,まとめて事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○小川関係官 御説明いたします。   部会資料18-1の17ページ以下をまず御覧ください。別居後に懐胎された子に関する規律について,前回から御議論いただいておりますが,本資料の第3では,前回会議での御指摘を踏まえた修正を加えた上で,部会資料17での提案を引き続き提案させていただいているという形です。変更点は大きく2点ございます。   まず,①の別居について部会資料17では,婚姻を解消する意思をもってとしておりましたが,主観的要件とすることに対して,判断基準として明確ではないといった御指摘がございましたので,今回の資料では「別居(その原因である事由が一時的なものであることが明らかなものを除く)」という形に改めております。一時的な原因といえるかどうかというのは,時間の長短ではなくて,婚姻による夫婦の共同生活を維持するという趣旨に照らしまして,一時的なものであることが明らかか否かというのを御判断いただくということになると考えております。このような規定ぶりで基準として成り立つか否かについて御意見を頂ければと思います。   もう一つの修正点は③でして,強制認知について規律を置くのであれば,親子関係不存在確認についても規律を置くべきであるとの御指摘を前回頂いたことを踏まえまして,これを明記するとともに,親子関係不存在確認の訴えの期間について,子が成年に達するまでの間という制限を設けてはどうかという提案をしております。もっとも,この成年に達するまでという期間については,より長い期間とすることも十分考えられるところかと思いますので,このような点も含めまして御意見を頂戴できればと思います。   さらにもう1点が19ページのウの部分でして,こちらについても御意見を頂戴したいと考えております。本文のゴシック部分での提案については,嫡出推定の例外としては引き続き別居のみを挙げているというところですけれども,前回御指摘のありました,夫婦の一方が刑事施設に収容されている場合や外国に居住している場合など,懐胎可能性がないことが夫婦のプライバシーを害さない形で明らかとなっているときには,これも嫡出推定の例外として明文で定めることについて,その当否について御意見を頂戴できればと思います。あわせて,明文で規律を設けることとした場合に,別居の場合は100%懐胎可能性がないとはいえない場合も含み得るわけですけれども,このような別居とこれらのケースというのを統一的に説明することができるのかという部分についても御意見を頂戴できればと思っております。   次に,23ページの第4についてです。こちらは第3の規律を前提に,別居後に懐胎した子について,戸籍窓口で一定の添付資料と共に届出をすることによって,夫の子でない旨の届出をすることができる方策を設けることについて,まだ事務当局の方でも方向性が定まっていないところではありますけれども,無戸籍者問題の解消という観点から,こういった方向性について検討することの是非について御議論を頂きたく,記載させていただきました。戸籍窓口での形式的審査との関係など,様々検討すべき課題もございますが,実現の見込みがあると考えられるかという点も含めまして,このような検討をすることの是非について御意見を頂ければと思います。   なお,若干補足いたしますと,①で記載しているように,一定の資料で届出を認める反面として,資料に反して実は別居をしていなかったとか,あるいは実は夫の子であるといったような場合には,夫の方からそのことを理由として訴えにより父子関係を争うことができるというふうな規律を②の方で置いております。   第3,第4の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。第3は従前お諮りしていたものでございますけれども,本日の資料では,第3の①につきまして別居の規定の仕方を改めているということ,それから,③で親子関係不存在確認の訴えについての規定を期間とともに明文化したということ,また,19ページのウのところで別居以外の場合についての説明がありますけれども,これについてどう考えるか,この3点について問題提起があったと思います。   第4につきましては,出生届の提出の段階で問題に対応することができないだろうかということが以前から言われておりましたので,そのための一つの案としてこれが出されているものと理解をいたしました。①のような考え方が可能かどうかということについて御意見を頂きたいということですけれども,併せて②のような形で嫡出推定の回復を求めるという考え方が組み合わされておりますけれども,そうしたことについても御意見を頂きたいということだったかと思います。   まず,御質問があれば頂きまして,その上で御意見をと思いますが,何か御質問はございますでしょうか。   それでは,御質問も含めて御意見の方を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。 ○山根委員 前回欠席をしてしまいましたので,議論の内容をよく理解はしていないのですけれども,まずは法律の中で別居というのを明確に定義するのはとても難しいだろうなということを感じております。そして,第4の方の届出なのですけれども,別居を証明するものをもって夫の子でないという出生届を提出できるという,これは無戸籍問題の解決のためにも進めることには賛成なのですが,ただ,一時的なけんかであっても,例えば,ある程度経済的な余裕があれば,別居や住所を異にすることは容易であるともいえますし,ですので,まずはDV関係や離婚調停の証明をもって一時的な別居でないというふうに位置付けるというところからかなと感じております。検討は進めていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。第3,第4を通じて別居というのが出てまいりますけれども,これがなかなか難しいのではないかという御指摘ですね。しかし,この方向で検討を進めてみるとよいのではないか,そういう御意見を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほかに御発言はございませんでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。今DVのことが出たので,少し関連して,私の認識でよいかどうか確認をさせてください。   第3の①で,括弧のところで今回,その原因である事由が,ということで,入りました。18ページの15行目のところからなのですけれども,精神的,身体的な必要からの一時的な別居は,と書いてあって,一時的な原因による別居があるにすぎない場合は婚姻関係の実態を欠くとは言えないとも考えられる,という記載があります。このときに,DVを受けていて精神的,身体的な必要から一時的に別居していた場合はどうなるのかというところが分からなかったので,教えていただきたいのです。   同じ18ページのウの23行目の後半からですが,他方で,たとえば夫婦げんかを契機とする別居については,と書いてあって,別居の原因が一時的なものであることが明らかであるとはいえず,ここにいう「別居」に当たることとなり,その後に懐胎した子について嫡出推定の例外が認められることとなる,とあるのですけれども,そうするとDVから避難するための別居は,一時的であったとしても嫡出推定の例外が認められて認知の訴えができるという理解でよいかどうか,教えていただければと思います。 ○小川関係官 2点頂いた点の一つ目の15行目の部分について,すみません,書き方が少しややこしかったところであるのですけれども,一時的な原因であることが明らかなものとして,ここで想定しているのは入院だったりということで,要は身体的な事情での入院だったり,精神的な事情での入院だったりという形で一時的に別居しているというふうなケースを想定しております。御指摘のDVで身体的,精神的に耐えられずというようなケースについてはこの場合には当たらないだろうと考えているところです。   2点目の方ですけれども,家庭内暴力等で一旦離れて暮らしていて避難のためなので時間的にも一時的なものの場合はどうなのかいうことだと理解いたしましたけれども,ただ,DVでやはり退避せざるを得ないというふうな状況というのは,その関係が今後,修復されるかどうかが不透明な部分がございますので,ここで我々の方で書かせていただいている,一時的なものであることが明らかな場合には当たらず,嫡出推定の例外が認められるというふうな形になると考えております。 ○井上委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。今,複数の御指摘を頂いておりますけれども,別居はなかなかやはり難しいところがあるので,御意見がいろいろあろうかと思いますので,是非御発言を頂ければと思います。 ○窪田委員 今出ていた別居について,少し意見を述べさせていただければと思います。   前回,離婚の意思をもってというような部分のものを外して,今回は別居について一時的であるかどうかということで,できるだけ客観的に判断することができるような仕組みを考えようとしたというのが事務局の案の趣旨なのだろうと理解しております。そうした方向性については一定の理解はできるのですが,ただ,一方で,既に今いろいろな例が出ていたところなのですが,別居を一時的なものとそうでないものかということで切り分けることでうまく対応できるか,あるいは,そもそも別居というのは一体何なのかということについて,やはりきちんと定義できるのかなというのが少し気になっております。こうした問題についていろいろなケースを挙げて,これはどうだ,これはどうだという議論のしかたは余り適切ではないのだろうと思うのですが,私自身はこの問題を考えながら,対極にある二つの例を考えておりましたので,それを挙げさせてください。   一つは,お互いで完全に生活を一緒にするのは嫌なので,同じマンションの中で別の部屋に住むという形で最初から婚姻を選んでいる場合,あるいは,これだったら別居とはいえないかもしれないということであれば,例えば神戸と東京でお互いに仕事をしており,結婚はするが,しかし仕事を辞めるつもりもないから,将来にわたってすぐ同居するつもりもないというようなもの,これが一体どちらなのかというのが一方で気になりました。   一方で,一時的ということであれば,刑務所に1年間入っていた,それほど長い懲役ではなくて1年間だけ,しかしその間に子どもが懐胎したというケースであれば,これは出所した後はまたやり直すつもりがあれば,まだ一時的なのかもしれませんが,恐らくそういう問題とは別で,推定の及ばない子にも関わる問題なのだろうと思うのですが,その問題を,つまり一時的かどうかということでうまく取り込めるのかということが気になりました。   その上で私自身は考えられる方向として二つ可能性があるのかなと感じております。一つは,先ほど小川さんの説明の中にもちらっと出ていたと思うのですが,婚姻の本旨に沿ったものであるかどうか,あるいは婚姻が破綻しているかどうかという別の抽象的な基準を加えた上で別居を判断するという方向性,ただ,これは当初の趣旨と違って,別居というものを事実的な関係だけで判断するのではなくて,非常に規範的に評価するということになりますので,それが本当にできるのかどうなのかということが分からないのですけれども,先ほどのようなケースを解決しようとすると,そういう方向が一つあり得るのだろうなとは思います。   もう一つの方向は,ひょっとすると大変に大きな手当てをすることになるので,もうここでは見送るというのもあり得るのかもしれませんが,こうやって議論が出てきている背景には,やはり別居というのがいつ始まったのかということについて全く制度化されていないということの問題があるのかなと思います。例えばドイツ法のような形で離婚の前提要件として別居を設けてというような,そこまで堅く考えるのではないにしても,こういうことがあったら別居だよねということ,そのハードルも比較的低いのだけれども何らかの形で客観的に示せるようなもの,そういうふうな形のものを何か定めていって,あるいはリストアップしていって,別居を言わば制度化するという方向がもう一つの方向としてあるのかなと感じました。   まだ大変に単純な思い付きということではあるのですが,この第3,第4を拝見しながら思った,感想めいたものですが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。具体例をも想定しつつ,問題への対応の方向として,要件をある程度規範化して考えるという方向と,それから,反対に要件を制度化してしまうという二つの方向があり得るのではないかという御指摘を頂いたと思います。   事務当局の方で何かお答えがあれば伺いますし,そうでなければ,更に皆さんから御意見を伺いたいと思いますけれども,小川関係官,何かありますか。 ○小川関係官 御指摘を踏まえて,検討いたします。 ○大村部会長 分かりました。それでは,ほかの御発言を。 ○石綿幹事 ありがとうございます。今の窪田委員の御発言で二つの可能性が示されたと思いますが,それぞれについて追加する形で意見を述べさせていただければと思います。   一つは婚姻の本旨に沿ったものでなくなっている婚姻が,婚姻が破綻しているかどうかということを考える際に,今の原案を見る限りだと,懐胎時に別居をしていた,別居後に懐胎をしたということなので,注目しているのが懐胎のタイミングだと思いますが,子の出生時まで婚姻の破綻の状態が続いている,先ほど小川さんが少しおっしゃいましたけれども,婚姻の修復可能性がないような場合に第3の案あるいは第4の案を使っていくということで,別居の期間というのを懐胎時だけではなく,もう少し長いスパンで見ていくというのも一つ,考えられるのかなと思いました。   それから,窪田委員の御指摘の2点目の,別居がいつ頃始まったかという別居の制度化ということですが,これに関しては,例えば第4の方に少し資料で御示唆があるように,例えばDVの保護命令なり支援措置が行われたというようなことを一つきっかけにする,あるいは,そのものが制度的に可能かは分かりませんけれども,別居届のようなものを双方の合意で出せるようにするといったようなことが考えられるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。窪田委員の御発言を受けて,更に二つの方向について具体的な方策についての御意見を頂きました。 ○棚村委員 いろいろ事務局でも御苦労されていることと思います。それで,私自身は別居のときに主観的な要件みたいなものが曖昧ではないかという発言もさせていただいたのですが,そもそも根本的に,嫡出推定みたいなものが排除される事由というのは一体何なのだろうかということを考えると,窪田委員からもあった,別居をある意味では夫婦関係の修復の可能性がなくなったとか破綻とかというところで捉えると,婚姻の本旨に反するとかという縛りが掛けられるというお話でした。それから,もう一方は,やはり別居というのはかなり事実状態なものですから,客観的にどの時点からそれを認定していくかという問題があると思うのです。   ただ,私自身は別居ということに焦点を当てる前の段階として,そもそも妻が夫の子を客観的に懐胎し得ないような事情という点がかなり大切で,それがやはり決め手になってこないのかなと思うのです。つまり,夫婦関係や夫婦としての性的交渉がないような状況とか,別居というのは正にそれを外形的に表している事情なのだと思うのです。一緒に暮らしていないとか,夫婦関係を持っていないところでは,妻は夫の子を産みえないのではないか。そうだとすると,上位概念として別居という前に,妻が夫の子を客観的にも外観的にも懐胎し得ないような事情みたいなものをベースにして,そして,それを徴表するというか裏付けるものとして,共同生活が行われていないとか,夫婦の間の交渉がないとか,それから,お医者さんの後の方につながっていく離婚後の懐胎の証明とかというのは正にそういう懐胎の可能性,蓋然性で考えているわけです。つまり,懐胎のタイミングとかそういうことを考えると,夫の子として,少なくとも前夫の子としての可能性がないという事情になってくると思うのです。   そうすると,別居を中心としてもちろん構築するという,要するに認知の訴えがどういう場合に認められるとか,あるいは親子関係不存在の確認の訴えが認められるというのは,正に別居を中心として構築するのか,それとも,妻が夫の子を懐胎することが不可能とか,難しいというか,懐胎し得ないような事情ということで整理をすると,別居も,もちろん婚姻の本旨に反しない別居とか,そういうことも重要なファクターにはなってくると思うのですが,その辺りの少し整理の仕方をした上で,戸籍の窓口でもってどういうような公的な書類をそろえてもらえれば,ある意味では届出でもって嫡出推定を一定程度排除できるかどうかということは検討できるのではないかと思います。事実的な要件化と規範的な要件化に整理できるかもしれません。   極端なことを言いますと,今まで出ていないですけれども,むしろ300日問題が一番大きくなったときに,自民党とか公明党の合同PTで議論されたのは,正にDNA鑑定も含めてどのような書類があれば,前夫の推定を外せるかどうかが議論されました。ここでは,果たして血縁というか生物学的な関係だけで親子を決めたり,排除したりしていいのだろうかという問題にもつながるものですから,DNA鑑定の結果だけでよいという案はさすがに採用されなかったのですけれども,結局,水野委員がいつも言ってくださったように,戸籍の窓口で形式的な書類でもって何らかの形で排除できるようなことはないのだろうかというと,やはり別居を証明する書類というのはかなり有力な候補としては上がってくるわけです。たとえば,住民票を異にしているとかという事実です。ただ,それも考えてみますと,家庭内別居の問題とかがあったり,それから,同じマンションで本当に階を違っていたときに,裁判所にもよく出されるのですけれども,なかなか裁判官によっては,行き来ができるような状況であればこれは難しいと言ったり,場合によっては離婚調停とかいろいろなことで弁護士さんが上申書を出して,ほとんど夫婦としての交渉がないというふうなことで,そういう上申書みたいなもので割と強制認知みたいなもの認めてくれる材料として認めてくださったり,裁判所により少しばらつきがあると思うのです。   少し繰り返しになりますけれども,別居ということに焦点を当てて,一定の強制認知とか,あるいは親子関係不存在とか,それから第4での別居後に懐胎された子に関する届出という,要するに一定の戸籍の窓口での形式的な審査でもって排除できる根拠というのは,やはり,婚姻が破綻して実質的に夫婦としての実体を喪失するという事情と,妻によって夫の子を懐胎することが客観的にあり得ないような事情というのを証明してもらうような形で少し整理をしていくと,ある意味では,共同生活の廃止という別居ももちろんですけれども,別居の中身も含めて,規範的にも要件的にも,具体的にどういう書類を用意してもらう,どういう要件を充足したときに,そういう嫡出推定制度を否認制度以外の簡易な手段でもって覆すとか否定をすることができるかということに帰着するのではないかと考えています。つまり,強力な嫡出推定制度を破るための手続とか方法としてあるのは,別居という夫婦関係の破綻,実体喪失だけでなく,妻による夫の子の懐胎が不可能な事情ということで,どこまで客観化して簡便に書類を用意したり,手続を使えるかということの整理を少ししていただくといいのかなと現段階では考えています。   少し長くなったのですけれども,別居それ自体を制度化するとか,それから,別居についての時期をどうするかとか,あるいは別居の内容を修復の可能性とかということで絞るというのもいいのですけれども,それ自体はかなり大きな法的効果を発生させることになるので,むしろ父子関係が客観的にあり得ないような事情というところに着目したり,そういう立て方をした上で,場合によってはDNA鑑定みたいなもので争えるというのも,正にそれが科学的な証明になるわけです。しかしながら,海外と異なり,日本では外観説を採っているのだとすれば,外観説を前提とした上で,できるだけ別居を含めた,客観的に証明したり認定したりして,できるだけ無戸籍の状態を生じないためにも,簡便に推定を排除するための事実を証明する手段とか方法を検討するというので,第2,第3をもう一度練り直してはどうかと考えています。もちろん,別居というところに焦点を当てていただいたのは,端的にそれは,ある意味では交渉がなかなかないとか,夫の子を客観的に懐胎し得ない事情の一つの大きなメルクマールだと思うのです。ただ,もう一回,それを考えていただくと,医師による証明とかいろいろなものも含めて,どこまでどんな書類で形式的な審査でもっても耐え得るかという議論になるのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。いろいろな御指摘を頂きましたが,第3,第4に出てくる別居というものと,それから,19ページの中に言葉としては出てまいりますけれども,懐胎可能性がないということとの関係を整理する必要があるのではないかという御指摘が中心であったかと思います。関係の整理の仕方については,それを理念のレベルで整理するのと,要件のレベルで整理するのを少し分けて考える必要があるのかと思って伺っておりました。その上で,考慮すべき事情として更に御指摘があったのは,一つは,第4については,これは戸籍窓口で処理をいたしますので,その際に出すべき書類が明解に定まるような考え方が一つ必要だろうという御指摘があったかと思います。それからもう一つ,最後の方で触れておられましたけれども,ここに書かれている考え方というのは,外観説を中心としたこれまでの実務というのをベースにして組み立てられているのではないかと思いますが,そうしたものとの関係ということも考えていく必要があるということを今の御発言から感じました。どうもありがとうございます。 ○水野委員 私は研究会の段階からずっと,母による非嫡出子の出生届によって嫡出推定が外れることを認めていただけないかと発言し続けておりました。それは,母に嫡出否認の提訴権を与えるようなことでは無戸籍の問題は解決しないだろうと考えたからでした。子どもが新しく出生したことを社会が感知することは,何よりその子の基本的人権の最初の基礎ですから,出生情報の確保は非常に大事なことです。日本人にとって裁判所がどれだけ遠い存在かを考えますと,裁判所へ行って手続をしなくては望む出生届がだせないということだと,この問題は解決しないだろうと思いました。   しかし,母の届出だけで嫡出推定を外すことについては,夫の権利が母の一存で簡便に奪われてよいのかという危惧が皆さんの中で強くて,あまり賛成して頂けませんでした。ただ,私自身はこの方法をずっと考えていたものですから,このたび別居後に懐胎された子に関する届出という形にして,その一部に道を開いてくださったことには大変に感謝をしたいと思います。   そうなりますと,別居という概念をどう構成するかが問題になります。私自身は別居を立証するとか,あるいはその概念をぎりぎりと詰めていくことの必要性を実は余り感じておりません。母がこういう出生届を出すことが一つの大きな夫婦関係の崩壊の証明だと思いますから。けれども,これまでずっと,母の届出だけで嫡出推定を覆すことはいかがなものかと言われ続けていましたところに,こういう中間的な妥協案を出していただいたわけですから,別居についてはなるべく広く認めやすい要件として,かつ現実的に妥協案の実が上がるようなところで設計をしていただければ大変有り難く存じます。どうもありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。このような届出が出されること自体が婚姻が一定の状態にあることを示しているはずなのだから,別居については広く,別居なのだというものが出てきたら,それを認めるという方向で考えるべきではないか,こういう御趣旨だと承りました。ありがとうございます。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○大森幹事 ありがとうございます。2点ございます。   1点目は,先ほど棚村委員からも御指摘がありました懐胎可能性との関係です。前回窪田委員もご発言されていたように,海外に行っている,あるいは刑務所に入っているなど,外観説において推定が及ばないとされてきたケースについて,今回の改正によって例外とされず救済範囲が狭まってしまうという結論は,この法制審の趣旨からしても妥当ではないと考えております。そういう観点では,判例法理を法文化して置き換えると考えた場合,まずは判例法理で認められていたケースは改正によっても認める必要があり,そのことを念頭に要件を考える必要があるのではないかと思います。そのため,まずは懐胎時における懐胎可能性という点を考えて,その上で,例えば嫡出推定制度の趣旨からして,夫婦関係が破綻している場合も取り込むかどうかという議論はあり得ると思いますし,そうした方向で御検討いただくのも一つではないかと思いました。   2点目は,第4の届出の制度についてです。今,水野委員からも御指摘がありましたように,こういった制度について御検討いただくことについては私自身も評価しており,何とか道筋が付けられたらと思いますので,このまま御検討を進めていただくようお願いしたいと思っております。   ところで,この届出制度については,戸籍の窓口で対応することからしても,どういった資料が必要かということが部会資料18-2の24ページに記載されていて,具体的には,別居の裏付資料として,住民票や戸籍の附票と書かれています。このこと自体はそのとおりとは思うのですが,ただ,実際には,無戸籍,あるいはDVで夫の下から離れておられる方は,夫に居場所を知られたくない,夫と絶対に接触したくないという事情を抱えていますので,住民票は移さずそのまま置いている場合が大半です。そのため,住民票を必要書類としてしまうと,この制度による救済は現実的にワークしないのではないかと危惧します。夫の下には住んでいないことが確認できればいいのではないかとも思いますので,例えば,水光熱費の請求書等と書いていただいていますけれども,こうした居住実態が分かるような資料で確認するとか,あるいは,住民票を移していないような場合には,保護命令の手続にあるような公証役場での宣誓供述書で対応するなど,工夫の余地もあり得るのではないかとは思います。   また,別居の原因が一時的なものであることが明らかでないことについての書類については,保護命令の決定書等を求めると書かれていますが,要件等の関係で適用できる事案がかなり限定されますし,また,当事者の方は夫を相手にした手続をとること自体に対しての恐怖や不安が多いため,保護命令等の制度を使える場合でも利用しない,精神的な面などにより使えないという方も多くいらっしゃいます。そのため,保護命令決定書といったものがないと一時的な証明ができないとせず,もう少しハードルを緩めることができないか御検討いただければと思う次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど,現在の実務における外観説を出発点にしてと申し上げましたけれども,現在認められているものが認められないようにならないようにという御懸念をまず一つお示しいただいたかと思います。それから,もう一つは,第4の方について,出すべき書類をどうするのかということにつきまして,いろいろな具体例を挙げていただいて,工夫の余地があるのではないかということを御示唆いただきました。後の点につきましては様々な可能性があると思いますので,皆様からこういうものでもよいのではないかという知恵を寄せていただいて,あるところで必要な書類というものにつきうまく線引きができるものならばその線でまとめられるかもしれない,そのように思って伺っておりました。ありがとうございます。   そのほかに,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 この第3,第4については,どこから別居が始まったかというところがやはり問題になると思いますけれども,先ほど石渡先生だと思いますけれども,別居届というふうなお話もございました。私も日弁連の方で少し話をしたときにも,やはり何らか客観的に別居していることが明らかになるようなものが必要なのではないかという意見があり,一つのアイデアとしては,公証人の役場で宣誓供述書を取ってはどうかというようなアイデアもありました。どこまで重くするかというところはいろいろ考え方があろうかと思いますけれども,私はやはり別居届については,行政での様々なサポートとリンクさせたり,場合によってはカウンセリングなどもリンクをさせるというような形でやりますと,現実的にも別居に当たって別居届を出そうというインセンティブも働くのではないかと思います。また,別居届を出したときには相手方配偶者にも通知をすることとすれば,より別居のタイミングが明確になるのではないかと思います。自分がどこにいるかということまで言わせるものではありませんけれども,ただ,別居が始まったのだということはお互いの共通認識にしておくというのは適当なことではないかと思います。私どもは弁護士として実務上,別居のスタート時に,相手方配偶者に受任通知をすることが多いと思います。多くの場合,「今後連絡は弁護士の方にしてください。」といった文言も含めて通知していると思います。それに似たような形で,別居届を制度化することも考えてみていいのではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから何人かの方から別居届のようなものを考えてはどうかという御意見を頂いておりますけれども,その要件ないし効果について具体的な形で今,御意見を頂き,更に検討を進めてみてはどうかという方向の御示唆を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   そのほかは,いかがでございましょうか。 ○石綿幹事 重ねての発言で申し訳ございません。2点,確認させてください。   まず,第4の②ですが,子どもが出生したということを,妻の居所を知らせることがなく何らかの形で夫に通知するという制度があるということが,②が機能する前提だと思うのですが,それが技術的に可能なのか,手続的に可能なのかということを是非事務当局の方で御検討いただきたいということです。②だけあっても子どもが生まれたことが通知されないのであれば,②は意味がないと思いますし,やはり婚姻の効果として大きなものとして嫡出推定があるわけで,それを外すというのは,やはり先ほど磯谷委員がおっしゃったように,夫側にも手当てが必要だと思いますので,②がワークするように何らかの形の通知の方法を考えていただければと思いました。   もう1点,戻りますが,第3の③に関してなのですが,原案ですと,子どもが成年に達するまでの間に親子関係不存在確認の訴えが提起可能だということになっております。これは子どもの否認権行使がいつまでできるかということと関係するかと思いますが,この場合にのみ子どもが成年に達するまでしか父子関係を否定できない,嫡出否認より子どもの否認権行使,親子関係の否定の期間が短くなってしまうというのは,それはそれでよろしくないのかなと思いますので,もし嫡出否認について成年に達した子の否認権行使が認められるのであれば,ここも期間を延ばすということも考えられるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございました。2点御指摘を頂きました。第4の②について,嫡出推定の回復を求めるために,その前提としての通知が必要なのではないか,それから,第3の③については,子が成年に達するまでの間という期間制限について,嫡出否認の方の期間制限と平仄を合わせる必要があるのではないか,このような御指摘を頂いたかと思います。これは何か事務当局でありますか。 ○小川関係官 では,1点だけ,後者の方の御指摘の部分,成年に達したという部分のところですけれども,冒頭でも口頭で御説明申し上げたとおり,この成年というのは一つこういったものが考えられるのではないかというところで書かせていただいているもので,より長い期間をすることを排斥しているものではございません。そういう意味で,石綿幹事から御指摘のありました,成年に達した子の否認権を認めた場合に成年に達したという期限を維持することにはならないのだろうとは思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○水野委員 自分ができないことをお願いして大変申し訳ないのですけれども,今の石綿幹事の御発言にありました親子関係不存在確認の訴えですが,これを法文化するとなりますとたくさんの疑問が出てきてしまいます。親子関係存否確認の訴えは,もともとは戸籍訂正の手段として形成されていたもので,戸籍には正しい血縁関係が記載されなくてはならないという前提で,訴えの利益さえあれば,誰でもいつでも提訴できる訴訟として,訴訟要件を設計する民法との構造的衝突を抱えております。ただ唯一の提訴制限は,確認の訴えは現在の関係でなくてはならないということから,死者との親子関係は対象とならないとされていました。しかしこの制限も昭和45年の大法廷判決で判例変更されました。判例変更前,たとえば最判昭和34年5月12日は,この理由で死者との親子関係確認の訴えを退けていますが,傍論で,生きている傍系血族との身分関係を確認する訴訟で,本体の親子関係も戸籍訂正できるからいいのだと言っています。つまり提訴を制限するどころか,あらゆる親族関係存否確認訴訟が可能だという前提の傍論です。この傍論の論理は,現在でも,そんなことは認められないという否定は正式にはされておりません。ただ,事実上,死者との関係の親子関係存否確認の訴えが認められることによって,そういう傍系の親族関係の確認の訴えは起こされていないというだけのことです。親子関係存否確認訴訟も親族関係存否確認訴訟も,戸籍訂正のための手段として,それくらい無限定的に行われるものとして発生してきたものです。この種の訴訟と民法の親子関係訴訟との関係には非常に大きな齟齬があります。この関係について,現在の民法学は,まだ実は整理できていないと思います。従って,もしこの言葉を明文で書くとなりますと,もう少しこの整理を進め,せめて親子関係存否確認請求訴訟についてどういう態度をとるのかということを明らかにする必要が生じてくるのではなでしょうか。それを心配しております。 ○大村部会長 ありがとうございました。親子関係不存在確認の訴えを明文化するに当たっては,検討すべき問題というのがかなりあるのではないかという御指摘を頂きました。   そのほかはいかがでしょうか。 ○久保野幹事 すみません,大分戻ってしまうのですけれども,どちらかというと理念レベルの話になりますけれども,別居を同居義務や婚姻の本旨といった婚姻制度に引き付けて考える捉え方と,懐胎可能性に引き付けて捉える方向性と示されたと理解しているのですけれども,どちらにしましても,婚姻成立後200日以内に生まれた,あるいは婚姻成立前に懐胎した子について嫡出推定があると考えることとの関係をどう説明するかということとの関係で,より検討が必要だと感じております。   それで,どちらの方向でも難しさがあるとは思っておりますけれども,要件レベルで考えましたときに,先ほど,懐胎時だけで考えるのではなく,子どもが生まれたときの事情を考慮する可能性について御指摘がありましたけれども,これについて先ほど出た別居,同居の事情を考えるということもあり得ると思いますし,また,24ページの31行目辺りで,届出時の証明との関係ではありますけれども,出生時の離婚といった事情についての言及もあったりしまして,出生時について何か要件を併せて考えるということも一つ考えてみてもよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。別居ということに光を当てて議論をすると,200日までに生まれた子どもについて,同居しているかどうかという問題はどうなるのかということを考える必要が出てくる,それについて考えるに当たっては,先ほど石綿幹事の発言にも出てまいりましたけれども,懐胎時の状況だけではなくて,出産時までを考慮に入れて考えるというアプローチというのも意味があるのではないか,このような御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   そのほかにはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。なかなか難しい問題ですけれども,別居という概念をどのように考えるのか,一定程度操作可能な概念として考えるためには考えなければいけないことがかなりあるだろう。他方,戸籍窓口で処理をするというためには,書類として何が必要なのかということを明確化するということが必要になる。それから,双方の要請と関わりますけれども,別居届のようなものというのを創設することで対応ができるのではないかといった様々な御指摘を頂いたところでございます。   全体としては,最初に事務当局の方からのお話にもありましたけれども,第4のような方向で考えるということについては,これをやめた方がいいという御意見はなかったと受け止めました。今御指摘があったような問題を踏まえて,更に第3と第4を併せて検討するということになろうかと思いますけれども,そのようなことでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。では,この第3と第4につきましては,今のような方向で更に検討をするということにさせていただきます。   次が第7の関係ということになります。資料で申しますと45ページですけれども,事実に反する認知に関する見直し,これについて御意見を頂きたいと思います。まず,事務当局の方から部会資料に基づいて説明をお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。部会資料18-1の45ページ以下を御覧ください。   事実に反する認知に関する見直しについて記載しております。この論点につきましては,前回も御議論を頂きましたが,本部会資料の本文ゴシック体部分では,部会資料17から引き続き,基本的にそこでの提案と同様の提案をさせていただいております。ただ,前回会議での御指摘も踏まえまして,相続場面で専ら特定の推定相続人を害する目的で事実に反する認知がされた場合など,引き続き検討すべき事項があると考えましたので,その旨,付記させていただいております。   その上で,今回特に御議論いただきたい点といたしましては,46ページ以下の3の更なる検討としている部分についてです。前回の御指摘も踏まえまして事務当局で検討をしたところ,47ページの9行目ですけれども,①として,子その他の利害関係人は,認知のときから一定期間内に限り,認知に対して反対の事実を主張することができるものとした上で,②として,国籍法第3条との関係では,この①の規律のうち事実に反する認知の主張期間の制限に関する規律については少なくとも適用しないということとすることで,これまで指摘されていた国籍取得の関係等に関する問題点を解消することができるのではないかと考えておりますので,この点について御意見を頂戴できればと思います。   その下のイでは,具体的な帰結を補足的に説明しておりますが,例えば(3)として,一旦認知がされて国籍取得届も受理されたけれども,事後,認知が事実に反することが明らかとなった場合には,国籍取得との関係では,この認知の無効主張の期間制限後であっても認知が無効であるということを前提としますので,国籍取得は認められないこととなる一方で,私法上の認知の効力については無効主張ができないことになるというふうな整理ができるかなと考えております。   基本的に,前回複数の方々から頂いた御指摘に沿った形で検討をさせていただいているところでございますが,このような方向性での検討について御意見を頂けますと幸いです。また,このような方向性でよいというふうな場合には,ゴシックの部分で一定の期間内に限りと書かせていただいている部分の具体的な年数などのイメージについても御意見,御示唆を頂けますと大変有り難く存じます。   第7の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。第7の45ページについては,(注3)が前回の議論を踏まえて付け加えられているということだったかと思います。今日,皆様に特に御意見を伺いたいのは,47ページに書かれているゴシックというか,太字というか強調がされている部分,①,②のような考え方でこの先整理をするということでどうかということでよろしかったですか。   今のようなことですけれども,まず,御質問があれば御質問を頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 少し確認をさせてください。47ページの34行目辺りでしょうか,3と書いてあって,事実に反する認知がされ,一定期間が経過した後,国籍取得の届出がされて,これを受理されて,日本国民として戸籍に記載されたけれども,その後,刑事事件等で認知が事実に反することが明らかになった場合,②の規律で国籍取得との関係では認知は無効なので,最後の行ですけれども,法務局長の許可を得て,市町村長はその子の戸籍を消除することとなるというふうな記載がありますけれども,これは父の方の戸籍に記載されている認知についてはそのまま残るというふうな理解でよろしいでしょうか。 ○土手幹事 ただいまの御質問ですけれども,少し丁寧に御説明させていただきます。   日本人の父の戸籍の身分事項欄に記載されている認知事項,御指摘の点ですけれども,これにつきましては,今回の部会資料の案によると,一般的な考え方によれば,民法上,認知の無効を主張することができないということになれば,消除されないということになるのではないかと考えられます。ただし,繰り返しになりますが,国籍法上,認知が無効であること及び,今回の部会資料の48ページの17行目から書いてありますけれども,当該認知の届出が公務員に対する虚偽の申立てであると認められ,それによって権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせたと認められる場合には,電磁的公正証書原本不実記録罪を構成し得るものであり,その点については現行法と同様の取扱いがされるということになると考えられます。 ○磯谷委員 最後の部分ですけれども,現行法と同様の取扱いがなされるということは,結局それは父の戸籍の中の認知に関する記載事項も消除されるという趣旨ですか。 ○土手幹事 失礼しました。前段の民法上の認知の無効を主張することができなければ消除されないのではないかと考えられるというところは,そうでございます。ただし,先ほど言いました国籍法上,あるいは刑法上の取扱い,これについては現行法と同様の取扱いがされるものになると考えられますということでございます。ですので,後段の方の国籍法あるいは刑法上の取扱いの方が現行法と同様ということでございます。 ○大村部会長 ほかに御質問等はございませんでしょうか。   それでは,御意見を頂ければと思います。 ○窪田委員 少し質問と意見が混じったようなものになってしまうと思うのですが,一つは今回,47ページで①,②,ゴシックで示していただいたような方向については,前回までと違って,国籍法の問題を切り離すという点で,私自身はこうした方向で検討していただくということ自体について,基本的には適切だと考えております。   ただ,少しその後の,例えば,一定の期間をどうするかとかという部分が次の課題だというのに対しては,私は気になっているのは45ページの第7のところで(注1),(注2)という形で示されているのが,引き続き検討課題とするということで,認知無効を主張できる人的範囲,これがどうなのだ,それから,認知が事実に反することを知りながら認知をした者が,なお認知無効の主張をすることができるのかという,この辺りが引き続き検討課題ということになっているのですが,実はこの(注1),(注2)の問題をどう考えるのかということによって,現在の認知無効について,国籍法の問題を切り離したとしても,この制度がどういうふうに変わるのかというのが,随分見え方も変わってくると思いますし,本質的な部分なのではないのかという気がします。その意味では,期間より,場合によっては先に,特に認知無効を主張できる人的範囲等については議論がなされてもいいのかなという気がしました。法務省の方で考えている作業についてのロードマップみたいなものがあれば,それについてお聞きしたいと思ったということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。その点については事務当局に今から御説明を頂こうと思います。私の理解では,この47ページは,窪田委員がおっしゃったように,①,②に分かれていて,②で国籍法の問題を民法の問題と別途考えるという,この基本的な考え方について皆様の御意見を伺いたい,その上で,①と,それから御指摘のあった第7の注に今書かれているものの関係をどう整理して,どんな順番で議論するのかということについての御質問を今頂いたと理解をいたしましたが,何かお答えいただけることがあれば,お願いいたします。 ○小川関係官 正に御指摘いただいたとおり,第7のゴシックで書かせていただいている,45ページに書かせていただいている(注1)から(注3)も含めてだと思いますけれども,この部分というのは,47ページに書いてある方向性で検討する場合にも問題になってくる部分だろうとは思っております。検討の順序につきまして,現時点でどちらを優先ということも特段はないところですが,並行して検討していくことも考えられるのかなと思っているところではございます。あとは,この無効主張の範囲というところを現行法から,現行法は基本的には訴えの利益がある人ということになっているのだろうとは思うのですけれども,そこからどの範囲で限定していくかという部分については,今少し試みに(注1)で列挙させていただいておりますけれども,ここから限定していくのかどうか,それから,もし限定しないのであれば,今,解釈上こういったものが具体的に挙がっているということであれば,訴えの利益があるという範囲で現行の規律をそのままということも一つ可能性としてはあり得るのかなと思っているところではございます。 ○大村部会長 窪田委員,更にもしあれば,どうぞ。 ○窪田委員 いえ,ございません。適当な時期にやはり検討していただいたらということだけでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,その他の御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。一般的な方向性と,それから,今,窪田委員から御指摘があった,では具体的にどのように制度を作っていくのかということと,両方あろうかと思います。後者は,立ち入った議論はこの後の回でする必要があろうかと思いますけれども,本日のところ,もし何か御感触のようなものがあれば,それも併せて伺えればと思います。いかがでございましょうか。 ○水野委員 前回は,国籍の詐取を危惧することから,認知無効を非常に幅広く認める御提案でしたので,賛成できないという発言をいたしました。それに対してこのように国籍取得の問題を別立てで提案していただきました。これは確かに詐欺的な行為であって通常の好意認知とは全然違うと思います。こういう形で提案していただいたことによって,本来の好意認知は守られる方向になるでしょうし,嫡出子との均衡性もとれると思います。御提案を有り難く思います。どうもありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回の47ページに示された基本的な整理について,御賛同いただいたと受け止めました。   そのほか,いかがでございましょうか。   特に御発言はございませんでしょうか。事務当局の方か何か聞きたいところはありますか。 ○小川関係官 1点だけ,なかなか難しいところだと思いますが,期間の具体的なイメージの部分と,先ほど若干お話も出ました認知の無効の主張のできる人の範囲というところについて,もし何か御感触があれば,頂ければと。 ○大村部会長 先ほど,前提問題として47ページの太文字のところと,それから,それを踏まえて,主張権者の範囲と期間の問題というのがあるということを申し上げましたけれども,このように問題を国籍法の問題と民法の問題に分けるということについては,皆様の方から御異論はなかったと受け止めました。従前から国籍法の問題を取り込んだ形で議論するということに伴う困難に関しましては委員,幹事が折々に触れられていたところでございますので,このように整理していただいたことによって問題がすっきり見えるようになったのではないかと思います。その上で,ではその認知について民法上はどうするのかということにつきましては,この先の議論ということにはなろうと思いますけれども,今日のところで何か御意見があれば伺っておきたいということだろうと思います。 ○窪田委員 結局,先ほど発言したこととまた重なるのですけれども,一定の期間というふうにいっても,利害関係のある者は誰でも請求できるというのであれば,それほど長い期間にはしないでくださいということになりますし,子であるとか当事者であるとか,非常に限定した人たちがその認知無効の主張をするということであれば,これはある程度長い期間でも構わないのではないかという気もします。ですから,その意味では,先ほど(注1),(注2)も議論してほしいと言ったのは,単にどの順番でというよりは,どうもこの期間の問題は,特に(注1)の認知無効の主張者の範囲の問題とは非常に密接に絡んでいるのではないかというふうな感じがいることが前提になっております。聞かれたことに答えていないとは思うのですが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。併せて議論する必要があるという御指摘を頂いたと受け止めました。   その上で,何か皆さんの方から,今日のところで,大体こんな感じではないかというような御意見,御感触があれば,更に伺いたいと思いますけれども,いかがでしょうか。   すぐには出にくいでしょうか。それでは,第7につきましては,基本的な考え方について御了解を頂いたということで,あとは主張権者あるいは期間の問題はこの後,併せて検討をする,(注3)のような場合も含めて,要件化については更に検討するということで,引き取らせていただきたいと思います。ありがとうございます。   それでは,第7まで終わったということで,次が,戻って第5ということになりますが,ここで少し休憩をさせていただきたいと思います。   久保野幹事の手が挙がっていました。ごめんなさい,久保野幹事,どうぞ。 ○久保野幹事 すみません,休憩の前に。少し戻りまして,先ほど第4について,方向性に異論はないということでよろしいかというお尋ねがありましたときに発言しそこなってしまったのですけれども,第4については,第3とともに,嫡出推定の例外の根拠をどう考えるかという点,これは翻って嫡出推定の根拠をどう考えるかということに一般的な影響を与え得る問題であるわけですけれども,その影響のいかんによっては,第4までは踏み込まないということも考えてよいのではないかと思っています。第3と第4で,論理的に考えれば同じことかもしれないのですけれども,実質的に考えましたときには,第3は別の父親を確保する裁判手続の中での例外の扱いであるということでありまして,第4はより一般的な意味を持つということで,違いがありますので,その点の違いを踏まえて,場合によっては第4についてはより慎重に考えてよいのではないかと思います。根本的に言えば第3もということにもなりますけれども,その点は,今申したような実質的な考慮からしますと,そこまで積極的に消極の意見を申し上げるものではありませんけれども,そのように考えています。 ○大村部会長 ありがとうございました。第3,第4,この方向で更に検討を続けるということで引き取らせていただきましたけれども,第3と第4で違いがあるのではないかという御指摘を頂きました。今日のところは,この先も更にこれについて検討を続けるということについて御了解いただいたと受け止めております。この先,検討して,第4は望ましくないとか,あるいは望ましいかもしれないけれども制度化ができないとか,そうしたことになる可能性はあるのだろうと思いますけれども,その点について御指摘を頂いたものと理解をいたしました。久保野幹事,そういうことでよろしいですか。 ○久保野幹事 はい,結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,第3,第4につきましては,今のような理解で進めさせていただきたいと思います。   第7が終わったということですので,ここで休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開させていただきたいと思います。   あと議題が二つ残っておりますけれども,まず,第5の関係から検討したいと思います。第5は,資料では26ページ以下,嫡出否認制度に関する民法の規律の見直しという部分になります。この部分につきまして,まず事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。部会資料18-1の26ページ以下を御覧ください。   嫡出否認制度の見直しについてですが,今回ここは民法の関連する部分のみ取り出しております。大きく三つの点について御議論を頂きたいと考えております。   まず,否認権の行使期間についてです。本資料では,これまでの部会の議論やパブリック・コメントの結果等を踏まえまして,従前3年とする案と5年とする案を併記していたところですけれども,今後3年という案を中心に検討することを御提案しているというところでございます。   次に,前夫の否認権の要件については,従前,嫡出否認をすることが子の利益に反することが明らかであるときはこの限りでないとの要件を設けることを提案しておりましたが,嫡出否認の場面で,再婚後の夫の養育意思だったり,能力だったり,経済的な事情も踏まえたものですけれども,こういったことを考慮して子どもの利益に適合するかどうかというところを判断するのは困難であるし,相当でもないのではないかというふうな御指摘があったことから,本資料では,前夫が嫡出否認によって子の利益を害する目的を要件として,専ら前夫に関する事情を考慮するというふうな提案をしております。   それから,35ページの4で,こちらは具体的なゴシック部分の提案にはつながっていない部分なのですけれども,再婚後の夫の子と推定される子について,再婚後の夫の子との推定と,前夫の子との推定に対するそれぞれの嫡出否認について,同じ手続で否認することができるようにすることが,子の手続的な負担であったり,身分関係の早期安定という観点から望ましいとの御指摘が,少し前になりますが,部会で御指摘があったかと思います。これを受けまして,現行法の規律,要は特別な規律を新たに設けなかった場合にどのような帰結になるのかというところを4で整理をいたしました。   その結果,事務当局の考えといたしましては,特段の規律を設けなくても同じ手続で審理,判決を受けることも可能であると考えております。一部,手続を分離するか否かという部分について裁判所の裁量に委ねるとしている部分もございます。このような整理を前提に,どこまで同一の手続で行うということを保障する必要があるのかと,そのために特段の規律を設けることが必要なのかという部分,若干,手続的な規律の細かい部分も書かせていただいておりますけれども,御意見を頂戴できればと思っております。   第5の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。第5について御説明を頂きました。期間について,3年ないし5年という選択肢を挙げておりましたけれども,以後,3年ということで検討してはいかがかということ,それから,前夫による否認権については,前夫の側の事情を考慮するという形で整理したいということ,そして,35ページで,同一手続内での処理の要請ということについて検討した結果,特段の規定を設けなくてもよいのではないかと思われるけれども,この点についてどうかということ,この3点だったかと思います。以上につきまして御意見を頂ければと思います。もちろんほかの点も含めて結構ですけれども,以上の3点などを中心に御意見を頂ければと思います。お願いいたします。   いかがでしょうか。 ○中田委員 第2の論点,前夫の否認権の要件について,御質問が1点と意見が1点でございます。   御質問というのは,27ページの(4)の①の下線部分ですけれども,子の利益を害する目的であることが明らかという要件になっておりますが,説明文あるいはただいまの小川関係官の御説明におきましては,前夫において子を養育する能力がないことなどを挙げておられます。例えば,32ページの(3)に,前夫に子を養育する意思又は能力がないこと,その他と続くわけですが,前夫に子を養育する意思又は能力がないことということと,子の利益を害する目的であることというのは,必ずしもイコールではないような気がするのですけれども,この両者の要件についてどのようにお考えなのか,どうして(4)の①にはその要件をお書きにならなかったのか,そこのところが御質問でございます。   もう一つの意見の方ですけれども,それは,前回も申し上げたのですが,やはり同じ(4)の①で,子との間に生物学上の父子関係があるときは,ということを要件とすることについての懸念は依然として私は持っております。恐らくここの理解は,御説明を拝見しますと,法律上の父の資格と生物学上の父の資格が重なり合っているのだというようなイメージで捉えるのか,それとも両者は別のものとして理解するかということの違いだろうと思います。それで,今回の原案というのはかなりのところ重なり合っているということを重視しておられるのかなと感じましたが,私としてはやはり懸念が拭い切れないところがございますけれども,ただ,それが部会の皆様の御意見であるということであれば,これ以上異を唱えるつもりはございません。 ○大村部会長 ありがとうございます。御質問1点と,それから御意見を1点頂戴しましたが,事務当局の方で何か。 ○小川関係官 1点目についてですけれども,若干,すみません,当初事前にお送りした資料の中から修正をさせていただいている部分等と混在があるかもしれません。といいますのは,当初,養育する能力なり意思がないということを例示的なものとして要件として挙げることがよいのではないかという形で考えていたのですけれども,若干検討したところ,養育の能力というのを,どれぐらいの資産状況だったら能力がないというのかというのは難しい問題だと思いますし,それがないからといって,きちんと面会はして父親と接していこうというふうな方も当然いらっしゃると思いますので,そういった意味で要件として挙げることは相当でないと考えましたので,資料を修正させていただいているというところになります。4のゴシックで書かせていただいている部分は,そういう意味で,能力がないという部分を明記しては挙げていないというところで書かせていただいており,子の利益を害する目的が明らかかというところに,要件としては一つに絞っているというふうなところになります。   ただ,必ずしも論理必然ではないとは思うのですけれども,自らの全くその能力がないということを知りつつ嫡出否認をするということになった場合には,では実際,否認をした後どうするのですかということにつながってくるとは思いますので,事情としては考慮されるのだろうというふうなところで,補足説明の中では若干触れさせていただいている部分があるというところでございます。   もう一つの,子の父であることというのを実体要件とすることについての御懸念というところについて,これまでも御指摘いただいているところで,事務当局としても,より何か具体的に適切な,別の要件というものを立てられればなと考えているところではあるのですけれども,前夫がする嫡出否認という場面に限っているということと,前夫が否認をした後は,前夫が更に自らの子であることを否認できないというふうな規律を説明するという観点から行きますと,こういった形で前夫の子であるということを一つ,訴訟要件とするのか,実体要件とするのかというのは御議論があると思いますけれども,要件として挙げざるを得ないのではないかというところでの,引き続きの提案になっているというところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。第1点につきましては,私も中田委員と同じく紙の資料を見ていて,御指摘のとおりだなと思ったのですけれども,新しい資料では記載が変わっているということであると理解をいたしました。   それから,第2点につきましては,実質的にはこのような規律にせざるを得ないのではないかというお答えだったかと思います。ただ,27ページ,これは紙のものですけれども,(注4)のところに,この表現の問題についてはなお検討すると書いていただいておりまして,現在の民法の表現ぶりとの関係でこのような表現が適切かどうかという点については,また別途検討をする余地が残されているのかと思って伺っておりました。   今,中田委員の御指摘の点についての御意見があればお願いいたします。中田委員,もう一度どうぞ。 ○中田委員 第1点については大変失礼いたしました。ありがとうございました。昨日送っていただいた修正版で,ここの部分が修正対象になっていなかったものですから,私,見落としてしまいまして,大変失礼いたしました。   それから,第2点につきましては,今の部会長の御指摘もそうですので,多少は和らぐことになると思うのですけれども,他方で35ページの先ほどお示しいただいた4では,後夫の子であることが否認された後,前夫の子であることも否認される可能性も残しているということで,これはやはり生物学上の父と,法律上の父とがずれる可能性があることは前提となっているのかなと思っておりましたので,必ずしも生物学上の父ということを強調するまでもないのではないかと思っております。ただ,これ以上申しません。   以上です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。今の御指摘と併せて,更に表現ぶりも併せて検討をしていただきたいと思います。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。3の前夫の否認権の要件のところで,35ページの記載のところで意見,発言させていただきます。35ページの12行目のところから,前夫の否認権を,否認権と位置付けるのではなく,前夫自らが子の父であることを主張していく権利と位置付けることも考えられるが,どうか,という記載の部分です。   ここの部分についてはこの間の私の部会での,他人に及んでいる嫡出推定を否定しにくいため,他の否認権とは性質が異なるのではないかという発言,意見を踏まえた提案だと受け止めておりますけれども,父であることを主張する以上,当然,権利の行使が子の利益を害する目的であってはならず,今回の修正提案にも沿うと考えています。名称をどうするかというのは引き続き課題だと思いますけれども,国民にとって分かりやすい形で整理をしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。35ページの4の前のところということになりますね,そこについてお考えを述べていただきました。それから,仮にこのようにするときに,どのような形で名前を付けて条文化するかという問題もあるという御指摘だったかと思います。 ○窪田委員 先ほど中田委員から二つ御指摘があった点で,最初の方,もう訂正版では修正されているからということではあったのですが,少し気になるものですから,もう少し追加で発言をさせてください。   ひょっとしたらお手元のタブレットとかに入っている最新版だと33ページの7行目からということになると思うのですが,例えばということで子の利益を害する目的での具体例が挙がっているのですが,例えば,前夫に子を養育する意思及び能力がないにもかかわらず,あえて否認権を行使するなど,否認により子の利益を害する意図があることが明らかである場合,というふうな形になっております。その意味ではやはり,例えばという例の中では,正しく子を養育する意思や能力がないにもかかわらずというのが挙がっているということで,これを見ると,正しくこんな人に否認をさせてしまって,前夫の方の父子関係になるというのはやっかいだなというのは非常によく分かるのですが,ただ,やはり少し気になりますのが,これ以外の場合に子の利益を害することが目的であるということが明らかな場合というのはあるのかという点が一つ。もう一つは,子を養育する意思や能力がないという場合には子の利益を害する意図があるとして実親子関係に関しての規律が排除されるということが,こんなところで原理的な話にこだわるべきではないのかもしれませんが,少し気になります。つまり,認知をするときには,子を養育する意思や養育するだけの能力がなかったら認知しては駄目だとか,そういうことにはなっていないわけですし,嫡出推定のところも同様です。それとの関係で,こういうふうな形で,言わば嫡出推定が重複するようなケースの特別のルールなのだとか,何か一定の説明はできそうな気もするのですが,それについて何か補足的に説明していただけるところがあれば,もう少しすっきりするのかなと思ったということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○小川関係官 2点御指摘を頂きまして,一つ目の,ここに書かせていただいた意思,能力がない場合にというふうな場合のほかに,子の利益に反することが明らかな場合というのがどのようなものがあるのかというところですけれども,引き続き少し検討させていただければと思うところではあります。 ○窪田委員 要するに,後婚の夫が非常にお金持ちで,裕福で恵まれた環境であるというときに,嫌がらせをするためだけに,言わばそれを否認して,自分のところに持ってくるというのが該当するのかどうなのかというのを少し聞きたいなというのが背後にありました。この点も含めて,また後ほど検討していただくということでも結構です。 ○小川関係官 御指摘を踏まえて検討させていただければと思います。 ○大村部会長 今の点については更に検討していただくということで,窪田委員,よろしいですか。 ○窪田委員 はい,もちろん結構です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。   最初に出た3年,5年ということですとか,あるいは三つ目の手続的に特別な規律は要らないといったこともありました。片方は非常に大まかな話であり,片方はかなり細かい話なのですけれども,何か御意見があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 3年か5年かというところについては,3年では全く駄目だということには多分ならないのだろうとは思っております。ただ,やはり長めに取った方が,無戸籍の問題を考えると,母親の方も態勢をきちんと整えるという時間として,ある程度長めに取った方が望ましいという考え方も引き続きあるのだろうと思っています。紙の方と言っていいのでしょうか,29ページの32行目辺りから,一つの行使期間3年とすることについての妥当性ということで,子どもの発達と記憶について記述がなされていまして,これ自体はそんなところなのだろうとは思いますけれども,否認の事件も恐らくいろいろだとは思いますけれども,多分想定されるものは,否認権行使によって生活実態が何か大きく変わるとか,養育者が変わるということでは多分ないのかなと思っていますので,この点はそれほど大きな要因にはならないのではないかと思います。一方で,確か5年を支持する立場からは,小学校に入学するという一つの大きな節目の前には,誰が父であるということについて決着を付けておくというような論拠も示されていたと思います。それ自体もまた絶対的ではないですけれども,考え方としてあり得ると思いますので,ただ,基本的には事務局としては,まだ引き続き5年とする案を検討することを否定しないとも記載していただいていますので,何かすごくこだわるわけではないのですけれども,この段階でもう3年に一本化というところは,少し時期尚早ではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。3年,5年は両論あり得るところで,それぞれについてそのメリット,デメリットというのがあるのだろうと思います。現在の案は3年ということですが,磯谷委員御指摘のように,(注2)で5年とする案というのも否定はまだされていないということですので,この先,3年ということで検討しながら,場合によっては5年に戻ることもある,そういうまとめでよろしければ,そのようにさせていただきたいと思います。5年の方がいいという理由につきましては,磯谷委員の方から御指摘があったところであろうかと思います。   そのほかにつきまして,いかがでしょうか。 ○井上委員 今の磯谷委員からの,29ページの行使期間を3年とすることの妥当性なのですけれども,これはどこかに書かれているものなのか,発達心理学のどこかから持ってきたのか,その辺を,細かくでなくてもいいのですが,根拠となるものがどこにあるとか,そういうものを書いていただいた方が,より3年と5年の判断をするときにしやすいのかなと思いますので,検討いただければと思います。 ○小川関係官 御指摘のとおり,この部分,なかなか我々の方で一般的にこういう知見がございますということを,通説のような形で申し上げることは難しいことから,こういった形で書かせていただいております。ただ,事務当局の方でも,そういった発達心理学の専門家の方だったりに話を聞いたり,あるいは文献として出ているものというのを調べたりした上で,こういった記載をさせていただいているところではございます。どういった資料という形でお示しできるかについては,検討させていただければと思います。 ○大村部会長 井上委員,よろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほか,いかがでしょうか。   手続の問題はなかなか意見が出にくいところではあるのですけれども,そのほか二つの問題について,3年,5年につきましては今御発言がありましたが,5年を完全に排除しない形で3年を中心に検討をするという方向性,それから,先ほどの前夫の否認権につきましては,ここにある考え方は一つの考え方ではあるけれども,なお検討する余地が残っている問題があるという御指摘を複数頂いておりますので,それらを含めて更に検討をするということかと思いますが,そんなところでよろしいでしょうか。   分かりました。それでは,手続の問題はまた少し考えていただいて,何か具体的な問題提起をする形で御意見を聴く方がよいかと思います。 ○小川関係官 口頭で補足してもよろしいでしょうか,今ですけれども。 ○大村部会長 今,こういう点はどうかという形で聞いていただいても結構です。 ○小川関係官 35ページ以下の4の部分について,この資料を作成する段階で,我々の方で疑問に思ったといいますか,こういったところが問題になるのではないかという部分で出た部分というのを御紹介させていただきます。   まず,大きく二つの問題があるかと思っておりまして,一つは(2)に書かせていただいている嫡出否認の判決との関係という部分でございます。嫡出否認の判決は,判決が確定したことによって嫡出否認の効果が生じ,子が生まれたときに遡ることとされており,再婚している場合であれば,再婚後の夫ではなかったというふうになります。そうしますと,子が,前夫と再婚後の夫に対して同時に訴えを提起したときに,前夫との関係で言いますと,まだ嫡出否認の判決が確定していませんので,否認の前提となる父子関係がそもそもないというふうな状況になります。その場合にも,裁判所は,判決で,まず再婚後の夫の子であるということを否認した上で,その判決が確定をするという条件を付きで,その条件が実現した場合は前の夫の子と推定されることを前提に,その復活した推定に対する否認を認める,あるいは,認めないという判断ができるのではないかと考えています。こういった条件付判決は民事訴訟の他の事案でも認められているものですので,それと同じように取り扱えるのではないかと考えているところです。ここは,当否という部分というよりは,理論的な整理について御意見を頂ければなというところで書かせていただいた部分です。   次に,(3)の部分ですけれども,子などが希望して前夫との関係での嫡出否認と再婚後の夫との関係での嫡出否認を同じ手続でしたいと考えたときに,手続上,それが実現できるのかという部分です。大きく場面として三つ想定をしておりまして,嫡出否認の調停の場面と,訴訟になったときの一審での場面,それから,訴訟について上訴がされた場合の取扱いと三つ書かせていただいております。   調停に関して申し上げますと,基本的には関係者全員が合意しなければ成立しないもの,合意に相当する審判をできませんので,同じ手続で行うということに対して,例えば,前夫の立場からは,先に再婚後の夫との推定について決着を付けてくれないと自分は関わりたくないということを考える方もいらっしゃると思いますけれども,そうやって同じ手続ですることを拒否された場合には,合意に相当する審判は基本的にはできないだろうと考えております。したがって,まず先に再婚後の夫の子との推定を否認するということの調停を成立させていただく必要があることになりますが,ここは調停という性質上,やむを得ないかなと思っているところです。   二つ目が訴訟になった場合ですけれども,今想定しているものとしては,子ないし母の方から再婚後の夫と前夫の双方に同時に訴えを提起するというふうな場面ですけれども,この場合も,先ほど申し上げたように,前夫からしてみたら,再婚後の夫との関係について裁判で決着が付く前に訴訟に関与させられるということは負担になるのではないかというところが問題になり得るかなと思っているところです。ただ,嫡出否認の判決の効力というのは対世的に前夫にも及びますので,前夫としてはその手続に関与し続けるということが,無駄にはならないのではないかと考えております。また,裁判所からすると,まず,再婚後の夫の方を先に判断してしまって,前夫の方の訴えというのは後で審理しましょうということで,手続を分離するという可能性もあり得るわけですけれども,通常は,分離するのではなく,一緒に判断をするということが合理的だと考えられますので,そうすると,裁判所の合理的な裁量に委ねれても不当な結論にはならないのではないかというと考えております。もし,ここについて同時にやるように裁判所に強制をすべきだと考えた場合には,民事訴訟法第41条の同時審判の申出というような強制的な規律を設けることも考えられると思いますけれども,そこまでの必要性はないでしょうと考えております。こういった取扱いについて御意見を頂ければと思っていた次第です。   三つ目の上訴の場面ですけれども,ここは更にややこしくなるのですけれども,最初に申し上げた条件付判決というのをする限りにおいて,何か矛盾した判断というのは生じないと考えておりまして,ここもそういった整理でよいでしょうかというところで書かせていただいている部分です。   すみません,結局分かりにくくなったかと思いますが,補足としては以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。中身について御説明を頂きました。35ページ(2)ですね,判決の効力との関係で,例えば判決文はどうなるかということについては,36ページの2行目,3行目に,こういう形になるのではないかといったことが書かれています。それから,(3)は,同一の手続で行うということをどのようにして保障するのかということについて,三つの場面に分けて,特段の規定を置かなくてもよいのではないか,あるいは置くことができないのではないかという御説明があったかと思います。どの点でも結構ですので,何かもし御指摘があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。   手続的にどう仕組むかという問題もあるのですけれども,この場では特に実質として,こういうことになるということでよいのか。もしそれでは困るというような御意見があれば,また別途,規定を置くということもお考えいただくことになりますので,そうした御発言があるようならば頂ければと思いますが,いかがでしょうか。 ○大森幹事 御説明ありがとうございます。質問があります。今日の部会資料の1枚目にある数次の再婚をした場合,例えば,最初にAと結婚して,離婚してBと結婚し,また離婚してCと結婚した後に出生したという場合に,Bは要件が満たされれば否認権を行使できることになるかと思いますが,Aはどのように考えるのか御教示いただけますでしょうか。 ○小川関係官 再婚が複数回あった場合については,まず,そもそもAに当たる人がB,Cを,まずCを否認できるのかという部分が出てくるのだろうと思います。ただ,今,前夫という形で整理している,前夫といいますか,Aの婚姻中に懐胎したということで,将来的に嫡出推定が復活してくるということになるのであれば,間に別の婚姻が挟まっているか否かにかかわらず,否認はできるという形になるのが自然かなと考えているところではあります。ただ,そのときにCだけ否認してBは否認しないということが妥当なのか,Bだけいうのは多分無理だと思いますけれども,Cだけ否認することができるのかという部分は,やはり検討の必要はあるかなと思ってはおります。数次重なった場合という部分については,嫡出推定の否認された場合の効力も含めて,もう少し整理する必要があるかなというところで認識しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘の問題,推定が幾つも重なるという場合は,ほかの場合も含めて問題になろうと思いますので,全体として少しまた改めて整理をしていただければと思います。ありがとうございました。   そのほか,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは,3番目の論点と呼びましたけれども,手続の問題についても御意見を伺ったところ,大きな異論はなかったけれども,細部について今,御指摘のあったような点も含めて,更に詰める必要はあるということで,引き取らせていただきたいと思います。   そういたしますと,最後が第6ということになります。第6が資料のページで申しますと38ページから後,父子関係の当事者の一方が死亡した場合の規律の見直しということになります。この部分につきまして,事務当局からの御説明をまずお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。部会資料18-1の38ページ以下を御覧ください。父子関係の当事者の一方が死亡した場合の規律の見直しについてです。   中間試案では,否認権者である夫が死亡した場合に関する人事訴訟法第41条を削除するという乙案と,これを維持するという甲案とが提案されておりましたが,今回の部会資料は,パブリック・コメントの結果を踏まえまして,今後,甲案を中心に検討していくこととしてはどうかという御提案をしております。特に夫の方の関係です。   また,パブリック・コメントの方で複数意見が出ておりました,人事訴訟法第41条第1項は削除,第2項は維持するという案についても検討を加えており,この案は第1項削除案と資料上呼んでおりますが,意見等で出ていた限りで我々の方で理解した上で,この案が支持を集めた背景について検討しております。そのところで,夫が生前に嫡出否認の意思を示した場合には,これを認めるといいますか,夫の親族がこれを行使する機会を与えるべきだという考え方が一定程度あったというのが,この第1項削除案を支持する意見が多かった理由なのかなとも考えておりまして,そのような手段をなるべく確保するという方向で検討しております。   そのような観点からは,夫が死亡した場合は,調停なり訴訟の手続中であれ,一律にその手続が終了し,その否認権の承継ができなくなってしまうという乙案というのは,一つ,ニーズにこたえ切れていない部分があるのではないかと考えております。また,人事訴訟法41条第2項を削除するまでの立法事実というのはなかなか見当たらないのではないかという観点から,甲案によることというのを提案させていただいております。   また,甲案を採用した場合の懸念として,夫が生前,子を養育する意思を示していたにもかかわらず,夫の死後,親族が否認権を行使することができるというのは相当ではないのではないかという御指摘があったと思いますけれども,この点について,嫡出の承認の規定,民法776条ですけれども,これを残すとした場合には,これによって妥当な解決が図れるのではないかということを記載させていただいております。   嫡出の承認については今後,どれだけ利用が見込めるのか,どれだけ機能するのかというところは,改正後の動向を見守る必要があるとは考えておりますが,制度上このような手段を設けた上で,まずはこの規律の運用を見守るということが相当ではないかと考えているところです。そういったところで甲案を採用することとしておりますが,この点について御意見を頂戴できればと思っているところです。   部会資料18-1の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。甲案,乙案というのが両案併記になっていた部分ですけれども,ここにつきまして今回の資料では,現行法のとおりとするという考え方に立つということで,その理由についても御説明を頂きましたけれども,出てくる問題点については,嫡出の承認というものを検討することで対応をまず図るということではどうか,このようなことであったかと思います。   御意見があれば是非伺いたいと思いますが,まず,御質問がありましたら伺いたいと思います。いかがでしょうか。   では,御質問,御意見,どちらでも結構ですので,御発言があれば頂きたいと思います。   特に御発言はございませんでしょうか。   事務当局の方は,先ほどの御説明で尽きているのだろうと思いますけれども,何か補足的に御発言がありますか。こういうことも考えたけれどもいかがかというのがあれば。 ○小川関係官 1点,今回,先ほどの説明から落としましたけれども,39ページの(注1)で書かせていただいているとおり,父子関係の当事者でない母又は前夫が死亡した場合に,この人たちの否認権の承継というのは認めないこととしていますというところについても御意見いただければと思っている次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。今,(注1)についてもという御指摘がありましたけれども,何か御意見があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○棚村委員 御提案の趣旨は大分理解しました。基本的には,前から議論しているように,否認権というのをどういうふうな権利として捉えるか,一身専属権というような理解で,本人の意思が尊重されて,本人が行使しなければいけないものと考えるということか,それから,死亡した場合に一定範囲の者に承継されるということになると,いつまでも否認をめぐる手続とか,そういうものが続いてしまうとか,それから,範囲を広げると法律関係が非常に複雑になるとか,いろいろデメリットはあると思うのです。やはり一番重要なところは,否認権の性格をどういうふうに理解するかということと,それから,否認をすることによる利益みたいなものをどの範囲の人に認めるかということが,大きく問題になってくると思います。   それで,窪田委員も先ほど少し言っていたのですけれども,ここにも多分書いてあったと思うのですが,認知の場合とか無効の主張をする場合の利害関係人とか,人的な範囲をどうするかというようなことも含めて,認知と嫡出推定とか否認の問題は大分,関係の安定性とか継続性とかで少し評価が違うので,全く同一には捉えられないと思うのですが,逆に言うと,それが余りにも乖離して開きがありすぎるとやはり問題が出てくると思うので,今回も甲案を中心にして,現行法の人事訴訟法の41条,これをかなり重視するということは,やはり扶養とか相続とかということで利害関係を持つ人たち,相続人とか相続や扶養に大きな利害関係意を持つ人たちのことも配慮をしていくという方向だと思います。それ自体は賛成なのですが,やはり本質的にこの否認権というものがどういう権利なのかという議論と,それから,それを踏まえた上で,これを認めることによってどういう利益がどういう人に実現されるかというので,認知のところと少し平仄を合わせたりしながら議論をしていくことによって,絞られていくのかなという感じがします。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員の御議論は,ここに出ている考え方は分からないではないけれども,更に検討して絞り込むことはあるべしという形にしておいた方がよい,特に認知の場合について,先ほど更に議論をすべしということになりましたけれども,そのバランスも考える必要があるのではないか,こういった御意見として承りました。 ○棚村委員 それで,基本的には賛成というか,私の考えもどちらかというと事務局に近いものを今の段階では考えており,ただ,問題点として,やはり否認権の性格みたいなものをどう捉えるかということと,それから,それによってどういう利益が誰に実現されるかという点では,認知もある意味では議論が同じようになってくるので,それも意識しながら議論した方がいいということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか,この第6につきましての御意見,御指摘はございませんでしょうか。 ○久保野幹事 よろしくお願いします。方向性として乙案を検討することは否定しないものの,甲案を中心に検討していくという方向性に賛成なのですけれども,今も話題になりました,今後ほかの訴え等と比較しながら検討していくこととの関係で,今回の資料で43ページを中心に,養子縁組の縁組無効の訴えと比較している点につきまして少し気になる点がございまして,縁組無効の訴えについてどういう考えに基づいて,どういう利益が考慮され,どのような枠組みで考えられているかということを確認し,比較してみるということは有益だとは思うのですけれども,この後半の方で,19行目以降のところで,縁組無効で親族に配慮をしていることと,嫡出否認の訴えについての在り方を割と直接に比較しての分析がされているのですけれども,ここは養子縁組と嫡出推定では,やはり親子関係の成立の否定の根拠が異なる点も大きいところがありますし,ここまで直接的に比較して結論が出せるのかということについては少し疑問を感じるところがありますので,養子縁組との比較については,全体の利益判断の在り方について比較するということで,その先についてはもう少し慎重に検討していった方がいいように思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほど棚村委員が御指摘になった,嫡出否認の訴えの性質をどう考えるのかということとも関わる議論かと思いますけれども,親子関係の効果が覆る場面というのは複数ある,それぞれの親子関係の出来上がり方というものとの関係で,どのくらいの人に,どのくらいの期間,訴えを認めるか,そういうことになるだろうけれども,それぞれの場合というのはかなり違いがあるので,それを考慮して検討する必要がある,こういう御指摘として承りました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでしょうか。   それでは,今の第6の点につきましては,夫の否認権については,現行法のとおりとするという甲案をベースに考えつつ,しかし,また乙案の考え方を完全に排除するものではなく,検討に当たっては他の場合との比較を考慮して考えていく,このようなことにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,今日予定していた資料については御意見を頂いたということになりますので,最後は今後のスケジュール等につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○佐藤幹事 次回の日程を申し上げます。次回は9月7日火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所は法務省地下1階の大会議室で予定してございます。   次回は,冒頭申し上げましたとおり,引き続き更なる検討が必要な論点について御審議を頂く予定でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。9月7日,1時30分,地下大会議室ということで,どうぞよろしくお願いを申し上げます。   では,これで法制審議会民法(親子法制)部会の第18回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 -了-