法制審議会 刑事法(逃亡防止関係)部会 第12回会議 議事録 第1 日 時  令和3年7月29日(木)   自 午後 1時27分                        至 午後 3時26分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  公判期日への出頭及び刑の執行を確保するための刑事法の整備について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○鷦鷯幹事 ただいまから法制審議会刑事法(逃亡防止関係)部会第12回会議を開催します。 ○酒巻部会長 本日も御多忙のところ御出席いただきまして,ありがとうございます。   本日は,天野委員,大澤委員,河瀬委員,北川委員,菅野委員,藤本委員,向井委員,吉崎委員,小笠原幹事,くのぎ幹事,笹倉幹事,重松幹事,福家幹事,和田幹事及び井上関係官には,ウェブ会議システムによって御出席いただいております。   まず,事務当局から本日の配布資料の確認をお願いします。 ○鷦鷯幹事 本日,配布資料として,配布資料37「取りまとめに向けたたたき台」をお配りしています。お手元にない方はいらっしゃいますでしょうか。   配布資料の内容については,後ほど御説明いたします。 ○酒巻部会長 審議に入ります。   当部会では,前回までの会議において,「検討のためのたたき台」に基づいて,全部で13の検討項目について充実した議論を重ねてきたところであり,そろそろ取りまとめに入るべき段階に至っていると認識しております。   そこで,前回の会議において御了承いただいたとおり,当部会としての取りまとめに向けて,全体を俯瞰しつつ,更に詰めた議論を行うため,そのたたき台となる資料を事務当局に作成してもらいました。本日の審議は,この資料に基づいて行うこととしたいと思います。   まずは,事務当局から,この資料について説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 配布資料37「取りまとめに向けたたたき台」について御説明します。なお,以下の説明では,この資料を単に「たたき台」と呼んで御説明します。   「たたき台」は,当部会における取りまとめに向けた御議論に資するため,部会長の御指示に基づき,事務当局において,これまでの御議論を踏まえて作成したものです。もとより,飽くまで「たたき台」であり,当部会の御議論の対象を制約したり,方向性を定めようとする趣旨のものではありません。   なお,この「たたき台」の作成に際し,考えられる制度の項目の中で,いずれの案を採用するかについて更に御議論いただくべき点については,両案を掲げています。それらの点については,後ほど,それぞれの箇所で御説明いたします。   それでは,たたき台の内容について御説明します。   たたき台の1ページを御覧ください。   「第1 保釈中又は勾留執行停止中の被告人に対する出頭及び報告命令制度の創設」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第1-1」として検討されてきた制度について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。その内容は,第7回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の内容と基本的に同様です。   その上で,これまでの御議論を踏まえ,「1(2)」として被告人による出頭・報告の有無等を裁判所が検察官に通知することを付け加えています。   「3」については,出頭・報告命令違反を抑止する観点から罰則を設けることは有用である旨の御意見があった一方で,保釈中の被告人等の逃亡を防止し,公判期日への出頭を確保することを目的とした,より直接的な罰則が他に設けられるとした場合に,そうした目的との関係ではやや付随的とも言えるこの制度の出頭・報告命令の違反についてまで罰則を設ける必要があるのか,慎重に検討すべきではないかといった御意見もありました。   そのため,ここに罰則を設けることについては,なお議論を要するものと考えられることから,罰則を設ける「A案」と罰則を設けない「B案」を併記しています。   「A案」の法定刑は,刑事訴訟法第151条の証人不出頭の罪の法定刑の上限が1年の懲役とされていることなども踏まえ,「6月以下の懲役」としています。罰則については,他の罰則の内容等も踏まえつつ,更に御議論いただければと思います。   続いて,たたき台の2ページを御覧ください。   「第2 保釈中又は勾留執行停止中の被告人の監督者制度の創設」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第1-2」として検討されてきた制度について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。その内容は,第7回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の内容と基本的に同様です。   その上で,これまでの御議論や制度の趣旨等を踏まえ,「2」には,「(1)」として,監督者に求められる役割を明らかにする趣旨で,「被告人の逃亡を防止し,又は公判期日への出頭を確保するために必要な監督をする」ことを記載し,「(4)」として,監督者がその役割を十分に果たし得るよう,裁判所が被告人を召喚するなどして出頭を命じた場合には,その旨や出頭の日時・場所を監督者に通知するものとすることを付け加えるなどしています。   また,同じページの「4」には,監督者の解任事由のほか,監督者がその義務を果たせなくなった場合における被告人の届出義務,その違反があった場合の保釈の取消し,監督者の解任又は死亡に伴う新たな監督者の選任,適当な後任の監督者がない場合の保釈の取消し・保釈保証金額の増額など,この制度を構築する上で必要となると考えられる仕組みを新たに付け加えています。   なお,第7回会議でお示しした「制度枠組み」では,裁判所が監督者に命じ得ることとして,被告人に制限住居の違反などがあることを知ったときに速やかに裁判所に報告することを記載していましたが,そのような事項の報告も,このたたき台の「2(2)イ」によって命じることができると考えられますので,これとは別に記載することはしていません。   3ページの「6」については,裁判所は監督者がその義務を果たすことを前提に保釈を許可したのであり,その義務の履行を確保し,被告人の逃亡を防止する上で罰則は必要であるといった御意見があった一方で,刑罰を科され得るとすれば監督者の引受け手がなくなり,制度が活用されなくなるのではないかという観点から,慎重な御意見もありました。そのため,ここに罰則を設けることについては,なお議論を要するものと考えられることから,罰則を設ける「A案」と罰則を設けない「B案」を併記しています。   「A案」の法定刑は,先ほどの「第1」の罰則と同様に,刑事訴訟法の証人不出頭の罪の法定刑なども踏まえ,「6月以下の懲役」としています。   この罰則についても,他の罰則の内容等も踏まえつつ,更に御議論いただければと思います。   続いて,たたき台の5ページを御覧ください。   「第3 公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第1-3」及び「第3-2」として検討されてきた罰則について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   第11回会議において新たに検討項目に加えた,裁判所の許可なく長期間制限住居から離れる罪についても,「2」として記載しています。   この「1」から「5」までの罪の法定刑については,行為態様や侵害される利益の内容等を考慮しつつ,刑法第103条の犯人蔵匿等の罪の法定刑の上限が3年の懲役とされていることなども踏まえ,いずれも「2年以下の懲役」としています。   続いて,たたき台の7ページを御覧ください。   「第4 逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第1-4」として検討されてきた逃走罪等の改正について,当部会の御議論を踏まえた案を記載しています。   これらの罪の主体については,例えば,現行犯人逮捕された者など令状に基づかない身柄拘束中の者や,少年法・更生保護法の規定による身柄拘束中の者を含めることに慎重な御意見がありましたが,各種法令が一定の要件の下で許すものとした身柄拘束は,当該法令の目的を全うするため,等しく保護されるべきであるといった御意見もあったところであり,後者の考え方に基づいて改正を行うことに合理性があるのではないかと考えられたことから,このたたき台では,「1」の単純逃走罪,「2」の加重逃走罪のいずれについても,その主体を「法令により拘禁された者」に改めるものとしています。   また,「1」の法定刑については,「3年以下の懲役」に引き上げるものとしています。   続いて,たたき台の8ページを御覧ください。   「第5 GPS端末により保釈中の被告人の位置情報を取得・把握する制度の創設」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第1-5」として検討されてきた制度について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   その内容は,第9回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の内容と基本的に同様であり,その上で,制度の内容をより具体化する観点から,手続の内容を付け加えて記載しています。   主な点を御説明しますと,「1(2)」には,被告人に装着するGPS端末の機能を,9ページの「2(3)」には,やむを得ない理由により必要があると認めるときは,GPS端末を取り外すことを裁判所が許可することができることを,「2(4)」には,GPS端末装着命令が効力を失う場合を,10ページの「4」には,裁判所や検察官,検察事務官などがGPS端末の位置情報を確認することができる場合などを,それぞれ付け加えて記載しています。   なお,第9回会議でお示しした「制度枠組み」では,裁判所が被告人に命じ得ることとして,裁判所に必要な事項の報告をすることを記載していましたが,位置測定通信の回復のために必要な事項は,このたたき台の「2(1)オ」により報告されると考えられますので,これとは別に記載することはしていません。   この制度に関しては,どのような範囲の被告人をその対象とするかについて,被害者を含む証人等への接触禁止を確保する目的でも活用できるものとしてはどうか,被告人が公判期日に出頭しなかった場合に備えて装着させることもできるものとしてはどうかといった御意見もありました。   もっとも,この点については,我が国においてGPS技術を活用して保釈中の被告人の逃亡を防止する制度は初めて導入するものであるところ,制度として信頼のおけるものとなり,定着していくものとするためには,最初の導入が円滑になされることが重要であり,そのような観点からは,保釈される者全員が対象となり得るような制度として導入し,運用に混乱が生じる事態となるようなことは避けるべきであり,導入に当たっては,その対象者は,特に活用の必要性が高く,効果的な活用方法も明らかで,運用に伴う困難も少ないと考えられる範囲に限るのが適切ではないか,そのような対象者としては,まずは国外逃亡の防止のためGPS端末の装着が必要となる者が考えられるのではないかといった御意見もあったところであり,制度の導入に当たっては,後者の考え方に基づいて,対象者を制限することが適切ではないかと考えられたことから,8ページの「1(1)」のとおり,保釈を許す際に被告人にGPS端末の装着を命ずることかできる要件を,「被告人が本邦外に逃亡することを防止するため必要があると認めるとき」と記載しています。   続いて,たたき台12ページを御覧ください。   「第6 禁錮以上の実刑判決宣告後における裁量保釈の要件の明確化」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第2-1」として検討されてきた規定案について,当部会の御議論を踏まえて整理した上で,更に二つの案をお示しするものです。   第9回会議では,「別案1」と「別案2」をお示ししましたが,御議論を踏まえて「別案1」の考え方,すなわち,禁錮以上の実刑判決の宣告後において裁量保釈を許すことができるのは,刑事訴訟法第90条に規定する不利益その他の不利益の程度が著しく高い場合でなければならないこととしつつ,当該判決の宣告にかかわらず,保釈された場合に被告人が逃亡するおそれが小さいときは,その原則は適用されず,通常の刑事訴訟法第90条による利益衡量に戻るという案をベースとし,その上で,具体的な文言について更に検討した案として,「A案」と「B案」を併記しています。   いずれの案も,禁錮以上の実刑判決の宣告により,逃亡おそれの重みが増した状況において,それを打ち消して保釈が適当と認められ得る状況を必要とするという点では共通していますが,「A案」は,逃亡のおそれが「高くない」として,言わば「結果」「状態」に着目した表現と考えられる一方で,「B案」は,逃亡のおそれを「低下させる」として,実刑判決の影響を打ち消すという,言わば「働き」に着目した表現としています。   いずれの文言が,実刑判決後の保釈に新たに設ける要件の趣旨をより適切に表現するものと言えるか,他により適切な表現が考えられるかといった点について,更に御議論いただければと思います。   続いて,たたき台の13ページを御覧ください。   「第7 控訴審における判決宣告期日への被告人の出頭の義務付け等」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第2-2」として検討されてきた項目について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   その内容は,第10回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の改訂版の内容と同様であり,実質的な変更を加えた点はありません。   続いて,たたき台の14ページを御覧ください。   「第8 保釈等の取消し及び保釈保証金の没取に関する規定の整備」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第2-3」として検討されてきた項目について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   その内容は,第6回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の内容と基本的に同様です。   なお,「1」には,保釈された者が「拘留に処する判決の宣告を受けた」場合についても記載しています。この点は,第6回会議において御議論いただいた「制度枠組み」には記載していませんでしたが,現行の刑事訴訟法第96条第3項についても,同項にいう「刑の言渡を受け」た者には,拘留に処する判決の宣告を受けた者が含まれると解釈されていますので,この「1」においても,その者を含むことを明らかにする趣旨で記載しているものです。   続いて,たたき台の15ページを御覧ください。   「第9 禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者に係る出国制限制度等の新設」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第2-4」及び「第3-4」として検討されてきた制度について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   「1」では,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けた者の出国を制限する制度について,17ページの「2」では,罰金の裁判の告知を受けた被告人に対する出国禁止命令及び勾留の制度について,18ページの「3」では,罰金の裁判が確定した者に対する出国禁止命令及び拘禁の制度について,それぞれ記載しており,その内容は,第11回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の改訂版の内容と基本的に同様です。   このたたき台の案も,禁錮以上の実刑判決の宣告を受けて,「1」の出国制限の対象となった者や,罰金の実刑裁判の告知を受け,あるいは同裁判が確定し,「2」又は「3」の出国禁止の命令を受けた者については,出入国管理及び難民認定法,以下「入管法」といいますが,入管法に規定する退去強制令書が発付された場合であっても送還しない措置を執ることが可能となることをひとまずの前提としており,そのため,これらの出国制限の対象となる者に退去強制事由があることを理由に勾留などの身柄拘束をすることができるものとすることは記載していません。   仮に,そのような送還しない措置を執ることができないとすれば,退去強制事由がある者について刑の執行が確保されないこととなりますので,そうした身柄拘束の制度を設けることについて検討が必要となりますが,ここでは,差し当たり,そのような送還をしない措置を執ることができることを前提として記載しています。   また,このたたき台には,入管法に規定する出国確認の留保の制度について記載していませんが,判決宣告による出国制限や出国禁止命令の対象となった者については,出国確認の留保の対象となることを前提としています。   その上で,これまでの御議論や制度の趣旨等を踏まえ,また,制度の内容をより具体化する観点から,内容の一部に修正を加えたり,新たに付け加えたりするなどの整理を行っています。   主な点を御説明しますと,まず,15ページの「1(2)」では,現行法の保釈の仕組みを参考に,一時出国の許可の請求や許可に当たっての検察官からの意見の聴取,第三者による保証金の納付などを加えて記載しています。   また,第11回会議における御議論を踏まえ,「1(2)エ(ア)」では,既に保釈を許可されている者については,一時出国の許可に当たり,更にその保証金額を定めることとはしないこととしています。   そして,これに伴い,保釈が取り消された場合の保証金の没取が任意的なものとされていることとの均衡を考慮し,16ページの「カ(ウ)」では,一時出国の許可を受けた者が許可された期間内に帰国しなかった場合の保証金の没取は,任意的なものとする変更を加えています。   そのほか,17ページの「2(2)」や18ページの「3(2)」では,罰金の裁判を受けた者に対する出国禁止命令の制度においても,裁判所の許可による一時出国の仕組みを設けることなどを記載しています。   続いて,たたき台の20ページを御覧ください。   「第10 刑の執行等の段階における調査手法の充実化等」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第3-1」として検討されてきた項目について,当部会の御議論を踏まえ,また,刑事訴訟法の捜査に関する規定の在り方を参考にしつつ,整理して記載しています。   「1」から「3」までは,「4」以下の刑の執行等の段階における強制調査に係る規定を整備することに併せて,裁判の執行のために必要な質問,鑑定嘱託,領置などの任意調査に係る規定を設けるものとするものであり,「1」は刑事訴訟法第197条第1項に,「2」は同法第223条に,「3」は同法第221条にそれぞれ相当するものです。   また,「4」は差押え・記録命令付差押え・捜索・検証をすることができるものとするもの,「5」はそれぞれの令状の記載事項を定めるもの,「6」は鑑定処分に関するものであり,これらは刑事訴訟法第218条,第219条,第225条に相当するものです。「7」は,これらの調査を検察事務官にさせることができるものとするものです。   「4」の強制調査について,従前の「制度枠組み」では,「刑の執行」に関して行い得るものとして記載していましたが,刑事訴訟法第7編は,「刑の執行」に限らず,過料や訴訟費用の裁判を含む「裁判の執行」について規定しており,公務所等への照会について規定する同法第507条も,「裁判の執行に関して必要があると認めるとき」に行い得るものとしていること,刑以外の裁判の執行に調査が必要となる場合もあり得ると考えられることなどからすると,「刑の執行に関して必要」な場合に限定せず,「裁判の執行」に関して必要な場合にも,強制調査を行い得るものとすることが考えられます。   そこで,この「たたき台」の「4」には,「裁判の執行」に関して必要があるときに,強制調査を行い得るものとする「A案」と,主刑及び付加刑の執行並びに追徴の裁判の執行に関して必要があるときに限り,これを行い得るものとする「B案」を併記しています。   この点についても,更に御議論いただければと思います。   続いて,たたき台の22ページを御覧ください。   「第11 刑の時効の停止に関する規定の整備」は,従前の「検討のためのたたき台」の項目「第3-3」として検討されてきた項目について,当部会の御議論を踏まえて,整理して記載しています。   その内容は,第6回会議において御議論いただいた「制度枠組み」の内容と基本的に同様です。   なお,刑の時効の対象とならない「死刑」を除いているほか,「没収」の刑についても,これまでの御議論を踏まえ,その執行に当たって刑が確定した者が国内にいることを必要とせず,時効を停止する趣旨が妥当しないと考えられることから,その対象から除外しています。   御説明は以上です。 ○酒巻部会長 たたき台に記載されている個々の制度の内容等については,後で個別に審議する際に御質問いただくとして,ここでは,ただいまの説明内容のうち,資料の位置付けなど全体に関わる事項について,御質問があればお伺いします。何か御質問はありますか。よろしいでしょうか。   それでは,「取りまとめに向けたたたき台」に基づいて議論を行いたいと思います。   数多くの論点について,取りまとめに向けた議論を効率的に進めるため,本日と次回の審議で,「第1」から「第11」までの各テーマについて議論を2巡させたいと思います。   本日は,「第1」から「第5」までについて1巡目の議論を終えることとし,次回は,「第6」から「第11」までについて1巡目の議論を終え,さらに,全体を通じて2巡目の議論を行うこととしたいと思いますが,そのような進行でよろしいでしょうか。              (異議なし)   ありがとうございます。それでは,そのように進行させていただきます。   本日の進行における時間の目安を,あらかじめお伝えしておきますと,まず,「第1」について15分程度御議論いただき,次に,その内容を踏まえつつ,「第2」について20分程度御議論いただいた上で,「第3」と「第4」については,いずれも罰則の整備を内容とし,相互に関連すると思われるので,まとめて30分程度御議論いただき,10分程度の休憩を挟みまして,最後に,「第5」について45分間程度御議論いただくこととしたいと思います。   それでは,まず,「第1 保釈中又は勾留執行停止中の被告人に対する出頭及び報告命令制度の創設」につきまして,議論を行いたいと思います。   このテーマについて御意見のある方は,挙手の上,御発言お願いします。 ○北川委員 「第1」の「3」の罰則について,私は,B案,つまり罰則を設けないのが適当であるという意見です。   その理由は,「第3」に記載されています,第11回会議で提案された制限住居離脱罪の新設との関係を整理する必要があるのではないかと考えたためです。   これまで,公判期日外の出頭・報告命令違反に罰則を設けることが検討されてきたのは,保釈中等の被告人を公判期日に確実に出頭させるためには,公判期日不出頭罪だけでは不十分であり,期日が指定されない期間が長期にわたる間に,被告人が逃亡してしまって公判期日が開けないという事態を避けるためのものであり,不出頭罪を補完するものとして,公判期日以外の出頭や報告を義務付け,その違反に罰則を設けるのが合理的であるとして提案されてきたものであると認識しているのですが,他方で,これまでも,罰則を設けなくても保釈取消しや保釈金没取で足りるという反対の御意見も強かったところです。しかも,さらに,その後の審議において,制限住居離脱罪の新設が提案され,その趣旨は,召喚状が到達する前の逃亡行為を処罰の対象とすることによって,逃亡を防止し,公判期日の出頭を確保することに十全を期そうということであったわけですけれども,そうしますと,翻って考えると,そのような一定期間制限住居を離れた行為を処罰するというのであれば,公判期日前の逃亡については,新たに構想された罪で対応可能で十分ではないか,公判期日外の出頭・報告義務違反についてまで,殊更に罰則を設ける必要性は薄れてしまったのではないかと考えた次第です。   その上で,被告人を公判期日外の出頭・報告義務違反で処罰しないとする以上,「第2」の監督者制度の監督人に対する罰則も付さないとするのが適当であると考えます。 ○菅野委員 北川委員と同じく,出頭・報告命令違反に対して罰則は設けないものとすべきだと考えています。   その理由は,これは新しい制度で,具体的にどういった報告を求めたりするのかなど,運用面でこれから具体化していかなければならない点があるからです。いきなり罰則を設けるのではなくて,まずはきちんと運用を見て,それで罰則がなければ機能しないといった立法事実が出てくるようであれば,罰則を設けることを検討すべき場合もあるかもしれませんが,例えば報告を命じられた場合に,報告が一部なかったときに報告義務に違反したことになるのかといったことについては,運用を見ていかなければ,不明確になってしまうようにも感じています。   したがって,「第1」も「第2」も同じ趣旨で,罰則を設けるべきではなく,しばらく運用し,様子を見て,立法事実を積み上げてから,更に罰則が必要かどうか検討すべきだと思っています。   もう一つ,関連して意見を述べます。報告をするよう求められていたことをついうっかり忘れてしまう方も,いらっしゃると思います。条文に書き込むべきものなのかどうかは分かりませんが,適宜のタイミングでリマインドをするような仕組みを設けるべきではないかと感じています。「第5」のGPSにつきましては,違反行為があると自動的に通知がされる仕組みがありますけれども,やはり報告の時期や内容についても,何らかのリマインドをするような制度があった方がより機能するのではないかと思いますし,罰則よりも,むしろそういった対応をすることの方が望ましいのではないかと感じたので,意見を述べさせていただきました。 ○髙井委員 これは,今回の逃亡防止の仕組みをどのように考えるかということと関連していると思うのですが,私自身は,今回の制度設計は,逃亡防止に向けて,柵を幾つも作って重畳的な制度にして,できる限り逃走を困難にする,できれば抑止する,あるいは逃走したときに,それを途中で捕まえたり,あるいはすぐ見つけて連れ戻したりすることできるようにする,そういう制度を考えようということだと,思っているわけです。   そうであるとすると,同じような趣旨・目的に向けた制度が幾つも重なってくるということは,これは当然のことであって,先ほど来の御意見,制限住居離脱罪ができるのであれば,それで足りるのではないかという考え方も,一理あるとは思うのですが,そもそも重畳的に柵を幾つも作るという観点から考えれば,それぞれの柵にそれぞれの罰則を付けるということは,基本的に必要なのではないかと思います。裁判所の持つ選択肢を増やすという意味においても,各柵にそれぞれ適切な罰則を付けるということは,あってしかるべきであると考えます。   そういう観点から,私は,この「第1」については「A案」が適切であると考えております。 ○酒巻部会長 ほかに,「第1」について御意見がありますか。よろしいですか。 それでは,「第1」についての審議はこの程度とさせていただき,次に,「第2 保釈中又は勾留執行停止中の被告人の監督者制度の創設」について,議論を行いたいと思います。   このテーマについて御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○向井委員 監督者の選任に関して,確認させていただきたいことがございます。監督者選任の手続のイメージですが,現在の身柄引受人の選定の流れと基本的に変わらないのかどうかという点です。保釈請求に当たって弁護人から身柄引受人の選定を求めるとか,裁判所が保釈を許可するために身柄引受人を選定する必要があると判断して弁護人に打診し,それに応じて弁護人が適切な身柄引受人を申し出るとか,現在,身柄引受人を選定する際の流れは,そのような扱いなのですが,監督者が選任されるまでの流れもそのような流れと同じような運用になるというイメージでよろしいのかどうかを確認させていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 監督者の選任に当たって裁判所が候補者をどのような契機で知ることとなるかという点については,たたき台の上では特に制限はありませんので,向井委員から御指摘があったような流れで知るということは,いずれも排除されないと考えております。 ○髙井委員 この制度についても,罰則について意見を述べたいと思います。先ほど「第1」に関連して,この「第2」についても罰則は不要なのではないかという御意見があったように思います。結論から申し上げると,私はやはり,この制度についても罰則を設けるべきであると,すなわち,「A案」が妥当であると考えます。   確かに,責任をそこまできついものにすると,監督者になる人が少なくなるであろうということは,容易に想定できるわけです。しかし,そもそもこの罰則がなくても,監督者はかなり重い義務を負担させられるわけですから,それほど多くの監督者のなり手が出てくるとは思えない。   それから,このような監督者を付けてまで保釈をするということは,多分,これ,保釈をしなければいけない大きな理由なり社会的要請なりがある,そういう場合だと考えられるわけです。さはさりながら,逃げてしまう可能性も十分あると,そういう場合にこの監督者が選任されるというのが,実務では多分多くなるのだろうと考えると,この監督者がきちんと監督義務を果たすということが,裁判所が保釈を認める最大の理由になると思うのです。そうなった場合に,監督者がその義務を履行しなくても,監督者自身が罰せられないということは,やはり妥当ではないのではないかと思うのです。   特に,ここで罰則の対象となる行為は,監督者が誠実に監督義務を履行しようと思えば,これは当然にできるようなことであるわけで,困難を強いるようなものではないと思うのです。そうだとすると,監督者が容易に履行できる義務を履行しなかった,しかも,それが逃亡のおそれを拡大する,増進するものであるということを考えれば,この6月以下の懲役程度の罰則をかけるというのは,それほど妥当性を欠くものではないと思います。 ○福家幹事 監督保証金の関係で質問があります。「3(2)」には,監督保証金額を決定する際の考慮要素として「監督者の資産,被告人との関係その他の事情」が記載されています。関係するものとして,刑事訴訟法第93条第2項は,保釈保証金額の考慮要素として,「犯罪の性質及び情状,証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産」を挙げています。監督保証金額を定める際の考慮要素には監督者側の事情が記載されているようですが,監督者の監督は被告人の逃亡リスクを前提とするものと考えられますので,犯罪の性質や情状,被告人の性格といった被告人側の事情も,監督保証金額の考慮要素になるのではないかと考えられます。これらについては,「その他の事情」として考慮されるのか,というのが質問です。仮に,被告人側の事情も考慮されるのであれば,そのことを明示することが相当ではないかと考えられますし,監督者の資産が,考慮要素の冒頭に掲げられていることについても,少し違和感があります。 ○吉田幹事 監督保証金の趣旨としては,大きく二つのものが考えられるかと思われます。一つは,監督義務の履行を確保するという点です。もう一つは,監督者と被告人との間に特定の人間関係,つまり,被告人において,自分の行為によって監督者に不利益を負わせることを避けようとする心理が強く働くような人間関係があることを前提として,監督者に監督保証金を納付させることで,被告人の逃亡の意欲を減少させるという点です。   そのうち前者の趣旨,つまり,監督義務の履行を確保するという点に対応して典型的に考慮事情として考えられるのは何かと考えますと,それは,監督者の資産ではないかということで,一つ例示として挙げています。また,後者の趣旨との関係でいいますと,被告人と監督者の間にどういった人間関係があるのかということが典型的な考慮事情として考えられるのではないかということで,「被告人との関係」を例示として記載しているものです。 ○福家幹事 今の点は,おっしゃるところもあるのかなと思っております。   ただ,やはり監督義務の履行確保というところにも,被告人側の事情が基礎になっているところはあるのではないかと思いますので,その点も踏まえて,また御検討いただければと思います。   もう1点,今,吉田幹事がおっしゃったところと関係するのですけれども,監督者を選任する場合における保釈保証金と監督保証金の関係など,監督保証金を定める運用イメージみたいなものがありましたら,教えていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 保釈保証金額と監督保証金額の定め方についての御質問かと思いますが,それぞれ没取される事由が異なり,役割が異なりますので,それぞれの役割を踏まえ,先ほど挙げた考慮要素なども考慮して,事案ごと判断されるものと考えておりまして,二つの金額の関係を一概に申し上げることは,なかなか難しいのではないかと思っております。 ○小笠原幹事 私は,従前から申し上げているとおり,監督保証金や罰則といった制裁がある制度とすることには反対です。先ほど髙井委員からお話があったとおり,なり手がなくなることが懸念されるからです。   髙井委員の御発言のように,特に逃亡のおそれが高い人についてのみ監督者を付けることが求められ,それ以外の人については今までの身柄引受人で足りる,という話であればいいのですが,こういう制度ができてしまって,しかも,たたき台のような要件の書きぶりだと,非常に抽象的な必要性の判断になってしまい,全ての被告人,あるいはかなり多くの,今まで問題なく身元引受人があれば保釈が認められていた人についてまで監督者が求められるようなことに歯止めがなくなるのではないかと。さらに,監督者に重い義務が課されてしまうと,監督者のなり手がなくなり,結局,今より保釈が認められなくなってしまうのではないかと,そういう懸念があるからです。   ですから,もし監督保証金であるとか,あるいは監督者に対する罰則とか,そういう制裁を付けるのであれば,そういう制裁が付かない身元引受人で足りる場合があることを前提とした制度設計にして,監督者を付するのは,特に逃亡のおそれが高いときとか,そういうかなり限定的な要件を設定しなければ,今言ったような懸念がありますので,反対です。 ○酒巻部会長 この項目について,ほかに御意見,御質問等はございますでしょうか。よろしいですか。   それでは,「第2」についての審議はこの程度とさせていただきまして,次に,「第3 公判期日への出頭等を確保するための罰則の新設」及び「第4 逃走罪及び加重逃走罪の主体の拡張等」について,併せて議論を行いたいと思います。   このテーマについて御意見のある方は,挙手の上,御発言をお願いします。 ○天野委員 「第3」の制限住居離脱罪についてですが,私はこれを新設することには賛成です。本当は,被害者への接触禁止などもGPSの制度とリンクさせられればいいなと考えているのですが,この制限住居に関する罰則が設けられることを端緒として,今後,保釈条件を遵守させる方策の在り方全般についての議論に発展していけばいいのかなと思っているところです。   それに関連して,この部会は逃亡防止関係部会なのでこの罰則の案は住居の制限の違反に限定されただけであって,そのほかの保釈条件を遵守させるための方策を議論する場というのも今後あり得ると理解してよいのか,確認したいなと思って発言しました。 ○吉田幹事 御指摘の点について,具体的にどういう場で検討するかということについて,現時点で具体的な考えを持っているわけではございませんが,今後,運用を見ていって,立法事実等も踏まえながら検討していくことになろうかと考えております。 ○小笠原幹事 「第3」に挙げられている罰則についても,やはり反対ということで従前から意見を述べてきました。今まで保釈条件とされていたものの違反について罰則を設けるという,大体そういうものと理解しているのですが,保釈条件を遵守させるのは,保釈取消しや保釈保証金の没収で足りると。あるいは,義務違反の行為が,例えば,逃走であるとか,あるいは証人等への威迫であれば,それについては既に罰則があるので,それで足りるのではないかと考えております。   公判期日に出頭しないからといって必ず逃亡というわけではないですし,それぞれ事情がある中で,「正当な理由」があるかどうかというのが,果たして罰則の適用範囲の制限として,あるいは予測可能性という点で,きちんと機能するのか,危惧を覚えるところであります。   また,保護法益の侵害の危険性の程度という点でも,呼出状に応じないとか,あるいは制限住居に帰ってこないというだけの段階では,まだ実質的なものか分からないのではないかと思います。   では,公判への出頭確保はどうするのか,保釈の取消しをしたとして収監できるのかというと,その点についても,わざわざ罰則を設けてそれで逮捕したり勾留したりするということを考えなくても,「第5」のGPSのところにも出てきますが,勾引をもっと広く活用し,24時間とかそういう短い身柄拘束をして,その中で保釈の取消しを考えていけばいいのではないかと思っておりますので,罰則はやはり行き過ぎではないかなと思います。 ○北川委員 「第4」についてですが,今まで慎重な意見を申し上げてきたところですが,これまでの審議では,逃走罪の主体は広げた方がよいという御意見が多かったと感じておりますとともに,今回の見直しというのは,保釈中等の逃亡を防止するための制度を充実させる観点から,これまでにはなかった新たな措置を設けたり,「第3」の各種の不出頭の罪等を新設する等して,刑事司法制度の保護の一層の強化を図るというものであって,そうした新たな制度全体を考慮して,改めて単純逃走罪の位置付けを再考せざるを得ないという認識に至りました。   その上で,質問なのですが,「法令により拘禁された者」という逃走罪の主体の要件,これは,現行法の被拘禁者奪取罪や逃亡援助罪の客体と同じ用語で統一するということですが,これに関連して,現行法の被拘禁者奪取罪等の客体要件である「法令により拘禁された者」については,どこまでの者が含まれるのか,特に少年法の保護処分の対象者であるとか,更生保護法による対象者を含めてよいのかということについては,学説上異論もあるところです。そのような異論のあるところの解釈は,これまでどおり解釈に委ねるということでよろしいでしょうか。 ○吉田幹事 御指摘のとおり,「法令により拘禁された者」という文言は,現行法上も使われている文言ですので,その解釈が基本になると考えております。その上で,この逃走罪の要件を拡大するに当たり,法案提出の段階に至りますと,立案当局としての解釈というものも説明していく必要が出てくるだろうと思われます。その点については,また考えていく必要がありますが,その際も,現行法の解釈がベースとなるということは,御指摘のとおりです。 ○小笠原幹事 この「第4」ですけれども,単純逃走罪の法定刑を3年以下の懲役に引き上げるというのは,やはり行き過ぎかなと思っております。先ほど述べた私の立場からすれば,そもそもこれより手前の公判期日不出頭などに罰則自体が必要ないからこれを引き上げる必要もないということになるのですが,恐らく今の単純逃走罪の法定刑上限の3倍の3年となったのは,それより手前の公判期日への不出頭の罪などの法定刑を2年以下とか,1年以下とか,そういうふうに考えると,それよりも更に進んで逃走した場合というのは3年以下と,そういうバランス感覚から来ているのではないかなと思っております。   ただ,先ほど言ったように,逃走罪で足りるのであってほかの罰則は要らないということであれば,1年というのはもしかしたら軽いのかなという感じもしなくはないのですけれども,いきなり3倍の懲役3年以下というのは,ちょっと重いのかなと。というのも,元々これが非常に軽くされているのは,責任の問題ですね,期待可能性の問題等があって,諸外国には逃走罪,単純逃走罪すら定めていないところもある。そういう中で,我が国だけ,これだけ重い,3年以下の懲役を科すというのは,バランスを欠くのではないかなと。せめて2年というのがいいところかなと,数字出しちゃっていいのかなという話はありますけれども,そんな感覚です。 ○和田幹事 単純逃走罪の法定刑が現行法に比べると3倍になるのは,計算上全くそのとおりでありますが,現実の拘禁作用が現に侵害される場合の典型は被拘禁者奪取罪であって,それは5年の懲役まで科せるわけですので,それに比べれば,3年以下の懲役というのは,自ら逃走する場合については,それなりの割引率であるという点で,期待可能性についての考慮は,それなりにされている状態が維持されるという見方も可能であろうと思います。現行の1年以下が相当軽いので,それと比べるとかなり重くなる感じはしますけれども,全体として見ると,同じような法益侵害がある行為の中では,軽い扱いが引き続き認められるという見方も可能だと思いました。 ○酒巻部会長 ほかに御意見,御質問はございますか。なければ,「第3」及び「第4」についての審議はこの程度とさせていただき,10分間の休憩に入ります。              (休     憩) ○酒巻部会長 審議を再開します。   「第5 GPS端末により保釈中の被告人の位置情報を取得・把握する制度の創設」について,議論を行いたいと思います。   御意見のある方は,先ほどと同様に,挙手の上,御発言をお願いします。 ○小木曽委員 「1」の「(1)」ですが,「被告人が本邦外に逃亡することを防止するため必要があると認めるとき」という要件が満たされたときにGPS端末装着命令の対象とするということにした場合に,どのくらいの数の者が,その対象となりそうかということについて,何らか見通しのようなものがあれば教えていただきたいのですが,いかがでしょうか。 ○鷦鷯幹事 御指摘のGPS端末装着命令の要件については,これまでの御議論の中でそのような御意見があったことを踏まえ,国外逃亡を防止する目的でのGPSの使用ということを意識して記載したものです。想定される対象者の数の規模を具体的な数として申し上げることはなかなか難しいところかなとは思っておりますが,対象となり得る者は,保釈中の被告人であって,国外逃亡を防止する必要があるものということになり,そのような場合としては,例えば,被告人が本邦外に生活の拠点を有するような者であって,本邦から離れて生活することに大きな困難が伴わないと考えられる場合などが考えられると思います。それから,前にこの点についての議論があった際に御指摘があったような,暴力団組織の幹部とか,その者を組織的に海外に逃亡させることができる関係者がいて,本邦から離れて生活することを選択することが必ずしも困難ではない場合,あるいは外国人であって,不法出国の機会や手段があると認められる場合など,そういう被告人が対象となり得るのではないかと考えられるところです。   そのように考えますと,非常に多数に上るわけではないとしても,一定数の被告人が対象になると考えております。 ○菅野委員 小木曽委員からの御指摘に,弁護人の肌感覚でお答えしますと,かなり少ないだろうというのが正直なところです。私は,弁護士を20年以上やっていまして,刑事事件をずっとやっていますから,それなりの件数を経験しているわけです。鷦鷯幹事がおっしゃったように,海外に住所等があるとか,富裕層とか,組織的な背景がある事件というのも多数やりました。特に,私は,千葉で弁護士をやっているものですから,成田空港もあり,海外がらみの事件というのは,普通の弁護士よりもかなり多く担当しているのが実情ですけれども,そもそも,保釈の際に海外逃亡のおそれが問題となり,それを防止する方策を議論することは,ほとんどありません。   ですから,このように国外への逃亡の防止ということを出発点にして始めるというのは,非常に限定的すぎるというのが,私の意見です。この部会の議論の中でも,費用対効果という話もあって,人権の制約にもつながることですから,私も,大きく広げるという意見に賛成しているわけではございません。限定的に,これに適したケースに絞ってやっていくべきという点では,私も賛成なんですけれども,それにしても,やはり国外逃亡事案に限るというのは,限定しすぎという印象を持っていて,刑事事件を多く担当する弁護士としての目で見ても,ほとんど使えない,使う場面がない制度になってしまうように思います。   私としては,国外逃亡に限らず,GPS端末を付けることによって保釈してもよいという事案は,ケース・バイ・ケースでほかにもあるように思われますので,GPSがなければ出せないという事案にも適用する余地を残していくべきだと思います。実際は,運用の中で,どういった事件に機能するのかということが議論されてくるとは思うのですけれども,否認していたり,黙秘していたりすると,現在の実務ではなかなか保釈が許されない,身体拘束がずっと続きます。なので,弁護人の立場からすると,そうした状況で,身体拘束ではなくGPS付きの保釈を許可するということも想定できるように思いますから,やはり国外逃亡事案に限るというのは,狭すぎると思います。 ○保坂幹事 事務当局から1点御質問なのですけれども,菅野委員も,御自身でおっしゃったように,保釈される被告人全員にGPS端末を付けるということは,想定しておられないだろうと思います。その必要性があって,かつ,GPS端末を付けることによって逃亡が防止できる,例えば,区域外に出た場合には,その位置をトレースして身柄を確保することが,現実的に想定される場合ということだろうと思うのです。しかも,GPS端末を取り付けるというのは,魔法のつえではありませんので,GPS端末を付けたから逃亡のおそれがなくなって保釈が許されるというほどの関係はなくて,ある程度の逃亡防止ができるだろうということなのだろうと思うのですが,類型的に,あるいは要件化するとした場合に,国外逃亡のおそれがある者以外に,国内のどこかに逃亡するおそれがあるという場合に,何かカテゴリカルに,こういう人にGPS端末を取り付けるという要件として,もし想定されているものがあるのであれば,教えていただけたらと思います。 ○酒巻部会長 少し拡張するとした場合の要件設定が想定できるとすれば,何かあるかという質問だと思いますが,いかがですか。 ○菅野委員 今,一般的な保釈で釈放されている人全員にGPS端末を付けろという話では全くないので,被害者がいる区域に立入りをさせないというようなことで,一定限度,保釈が認められるような場合とか,あるいは,しばらくは自宅にいてもらう。そういったことによって,逃亡防止あるいは罪証隠滅の防止に関しては,GPS端末を付けた場合と付けていない場合とでは,やはり判断が異なる場合というのはあり得るのではないかと,そのように私としては考えております。 ○天野委員 私も,今までのお二方の質問と同じことを聞こうと思っていたのですが,まず,対象を絞った趣旨は,冒頭の説明で分かりました。あと,対象がかなり限定されていて,事務当局としては,それほど件数は多数に上るわけではないと想定しているということも分かりました。それは,実際に運用する際に混乱を生じることは避けるべきだと,安定した運用をするために,ある程度絞るのだということなんですが,では,逆に,事務当局としては,その運用を検証するに当たって,どれぐらいの件数があればきちんと検証できると考えているのでしょうか。 ○鷦鷯幹事 法制度については御議論いただいているところですが,特定の制度を前提として,安定した運用を確保できるかどうかを検討するとなると,その制度の下での違反があった場合に,どのように対処するのかといったことも含めた検討をする必要があります。そして,そうした制度の運用を考えるに当たっては,物理的な設備だけでなくて,これに対応していくこととなる裁判所や検察庁,そういう関係機関が,制度の対象となる者の人数に応じて,さらには,複数の対象者に同時に対応しなければならない事態がどの程度生じるかといったことも想定しながら,相当の人員を配置したり,対応に当たる職員の訓練を実施したりするという,そういう人的な体制の整備も考える必要があります。その上で,運用を一件一件重ねて実際の経験を積んでいく必要があると思います。それが何件あれば十分ということは難しいと思っておりまして,1件や2件ではなかなか十分とはいえないだろうとは当然思いますが,逆に,どれくらい件数があれば十分ということも言えなくて,必要な数の運用の経験を積む必要があるのと同時に,それがあれば十分かということができると考えているところです。 ○天野委員 以前,髙井委員からも,それほどの件数はないのではないかという御意見がありましたし,本日も,菅野委員から,肌感覚としてそれほど件数はないのではないかという話ありましたが,例えば,本当に数が少なくて,何年たってもそこまで件数がないとか,そういうことになれば,そのときにはまた対象を広げていくとか,そういうことはあるということなのですか。 ○吉田幹事 新たに制度を導入するに当たって,どのような形で導入するのが最も円滑な導入になるかという観点から,今回のたたき台では,国外逃亡を防止するため必要という要件を記載しております。その上で,一定期間運用を積んだときに,何百件ということでないとしても,それなりの件数の運用を重ねることによって,この仕組みを動かすときに,何が必要で,どういった人的・物的なリソースが必要なのかということは,次第に見えてくるところもあろうかと思いますので,そういったことを踏まえながら,また次の制度の在り方を考えていくということはあるのだろうと思われます。   ただ,その場合も,国内の逃亡を防止するという観点から制度を拡張するとしますと,これまでの御議論でも出ているような,理論上,あるいは実際上の難点をどうクリアするかということを改めて検討することが必要になろうかと思います。そのときまでの運用の実績も踏まえつつ,かつ,これまで指摘されているような問題点についても検討を加えて,適切な形で改正が考えられるのであれば,それを考えていくということは,排除されるものではないと考えております。 ○天野委員 ということは,運用して,件数がそれなりにあれば,それを通じて運用で改善していきつつ,必要に応じて対象を広げることもあり得るし,逆に,件数がなかなかないようであったとしても,またそれはそれで,必要に応じて検討していくと。要は,まず今回は導入だから,ここまでちょっと絞ってみたというような理解でいいということですね。対象を広げることを排除するものではないと理解しました。 ○角田委員 今回の案は,制度の対象を国外への逃亡防止に絞っているのですが,これまでの議論の中では,もう少し広げるべきだという意見も,かなりありました。私も,この問題について複数の考え方が出てくるのは,当然あるだろうと思います。ただ,この制度を導入するに当たっては,前提として踏まえるべき事実が幾つかあると思っています。一つは,海外での運用状況などについての話を聞いていても,どうもGPSというのは,結構外されてしまったり,逃げられてしまったり,それほど万能のものではないということです。   もう一点は,元々大きなプライバシーの制約を伴うものなので,それも踏まえるべきだということがあるので,具体的に導入しようという場合には,GPSを利用して一体何ができるのか,あるいは,その実効性を本当に確保できるような方法があるのか,そういったところを具体的に詰めた上で,制度の対象になる被告人の範囲を決めていくべきだということで,これは多分,異論がないところだろうと思います。   そういう観点から考えて,今日の議論の中で,海外逃亡の防止に絞った場合に,対象者としてどのくらいの人数が想定されるのかということがありましたが,これは私も分かりませんし,多分誰にも具体的な数字は分からないのだとは思います。しかし,一方で,GPS端末を使って国外逃亡を防止しなければいけない,あるいは,それが有効だという被告人が一定程度いるのも,また間違いないわけなので,そのような被告人についての対処を考えていくというのは,重要なことです。これまでの部会の中で,他の委員から非常に整理した御意見がありました。それは,こういうことを言われていたんですね。つまり,国外逃亡については,公判期日への出頭,刑の執行確保の観点から阻止の必要性が極めて高い一方,接近先の空港や港での警戒警備を実施することで,逃亡防止の実効性も非常に高いのではないか,だから,当面,この国外逃亡に焦点を合わせて,この制度を考えたらいいのではないか,こういう御意見でした。これに私も同感です。これに対して,もう少し被告人の範囲を広げるべきだという御意見も複数ありましたが,それについて考えてみると,制度が導入されて,裁判所,あるいは捜査機関の立場で運用する場合のことを考えると,移動が許される区域の設定だとか,立入りを禁止される区域をどういう範囲,どういう仕方で設定するのかということがなかなか難しい。自分で想定してみると,これは困難な課題があるなという気がします。   それから,違反があった場合には,逃げられてしまうとどうしようもないわけなので,きちっと対応しなければいけないわけですけれども,違反があった場合に,捜査機関あるいは裁判所が対応する体制をどういうふうに作るのか,これもなかなか,課題としては大きい問題です。あるいは,GPSから発信されるどういう情報を,保釈取消しにつながるような徴表として捉えるかということについても,かなり議論が必要であろうと思います。要するに,国外逃亡の場合と比較すると,それ以外の目的でGPSを使うというのは,困難な課題が多々あると思われますが,ここのところがうまくいかないと,制度そのものが,あるいは制度全体が失敗だと,そういう評価を受けかねない懸念もあると思います。   結果的なことになりますけれども,どの程度の人数が想定され得るのかというのは,私にも分からないところですが,国外逃亡を考える被告人をGPSを利用して食い止める需要が一定程度あるのは間違いないので,今回初めて全く新しい制度を導入するので,実効性を確保しながら導入していこうという立場からは,たたき台の案のような考え方にも,充分な合理性があるだろうと,私としては考えております。 ○菅野委員 質問が2点ありまして,どのような対象にするかは,今まで議論がありましたけれども,仮にこの制度の対象者をGPSで監視した場合,これまでの保釈よりも,やはり人権が制約されてくるという面は否定できないと思います。その場合に,例えば,諸外国では,未決勾留日数の本刑算入などと関連して議論されていることもあると聞いているので,例えば,この制度,GPS付きで保釈された場合,従来の保釈であれば,本刑算入というところはされていなかったわけですけれども,未決勾留日数のように算入することがあり得るのかどうか,これが1点目の質問になります。   2点目は,導入するのにいろいろと大変な作業が必要になることは分かります。例えば,海外調査をする中で,GPSの制度を導入する際に,海外逃亡に限って,かなり小さな範囲から始めた実例があったのかどうかとか,諸外国では,導入の際にどういった問題があったのかが分かっていれば,教えていただきたいと思いました。 ○鷦鷯幹事 まず,第1点目については,御議論いただくべきところかもしれませんが,このたたき台では,GPSを装着して保釈されている期間の日数を未決勾留日数として取り扱うということは,前提としておりません。   2点目ですが,諸外国の制度の導入例で,海外逃亡の防止という小さな範囲から徐々に広げていった例があるかという御質問だったと思いますけれども,事務当局として,そのような例を把握しているものではございません。 ○菅野委員 これは意見になりますけれども,やはり従来の保釈とは異なる新たに制約される人権があるわけですから,GPS監視付きの保釈については,未決勾留日数として本刑算入することも議論されるべきではないかというのが,私の意見です。 ○保坂幹事 未決勾留日数に算入すべきだというのは,つまり,物理的に身柄拘束されているのと同視すべきだということだろうと思うのですが,その場合の権利制約というのは,何を想定されているのですか。今回の制度においては,決められた区域から出れば,そこから位置情報を把握して追いかけられますけれども,その区域内で活動している場合は自由でして,何も家の中にずっといなければいけないというように行動の自由が制約されるわけではないわけですけれども,それにもかかわらず,身柄拘束されているのと同じような状態なのだと考えるのは,どういう御趣旨でしょうか。 ○菅野委員 御指摘のとおり,物理的な制約とは大分様相が違っているというのは,私も同感です。ただ,何かあれば,この位置情報が把握され得る状況で保釈されているわけですから,それは,現代的な見方からすれば,新たな身体拘束的な要素があるのではないかと,従来の保釈よりも,様々な情報が把握され得る状況にあるという点で,未決勾留日数として本刑算入といったことも検討すべき問題ではないかと感じている次第です。 ○福家幹事 このたたき台では,裁判所の規則により規律すべきとされている点が多く見られますが,この制度は,対象者のプライバシーへの影響が大きいと考えられますので,制度の内容は,できる限り法律により定めることが相当ではないかと考えているところです。   そういった観点から,個別の内容について見ると,例えば,「2(1)ウ(ウ)」では,「GPS端末による被告人の位置の把握に支障を生じさせることとなる行為」について,裁判所の規則で定めるとなっておりますけれども,こうした行為に対しては罰則があることから,罰則規定の構成要件に当たると考えられ,規則で定めることが相当なものではないのではないかと考えられます。   また,「1(2)ア」では,出国を防止し,位置を把握するために検知すべき事由を検知する機能について,裁判所の規則で定めるとされており,「1(3)」の所在禁止区域の定め方についても,裁判所の規則で定めるとされています。こういった部分については,どのような内容の事柄を定めればよいのかということが,規定だけからははっきりしないように思われます。仮に最高裁規則を制定する場合であっても,どのような内容の事項を定めることが想定されているのかといった,委任の趣旨が明確でなければ,適切な規則制定は難しいと考えられますので,これらの点について明らかにしていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 事務当局から,御指摘の点の趣旨を御説明いたします。   まず,「2(1)ウ(ウ)」の「GPS端末による被告人の位置の把握に支障を生じさせることとなる行為」としては,現時点におけるGPS技術を前提としますと,ここで例示しているところの,GPS端末を損壊して,これを機能させなくさせる行為や,GPS端末が送受信する電波を遮断したり,障害を与えたりすることによって,位置測定できないようにする行為といったものがまず想定されるため,これらを例示として記載しているところですが,将来,それら以外にも同様にGPS端末の位置測定に支障を生じさせる技術や手法が考案されることも想定されますので,禁止すべき行為については,利用可能な技術が進歩することもあることも踏まえ,ある程度臨機に変更し得るものとすることが合理的ではないかと考えられたことから,たたき台では,裁判所の規則で定めるという形で記載しております。   この禁止行為について,罰則の対象となるというのは御指摘のとおりでございますけれども,規則によって定められる行為は,たたき台に書いてあるとおり,GPS端末による被告人の位置の把握に支障を生じさせることになる行為でありそれ自体,構成要件として明確性を欠くものではないと思われますし,その細目的な内容を法律の委任の下で規則において明らかにするということ自体は,罪刑法定主義との関係でも問題はないのではないかと思われましたので,たたき台では,裁判所の規則で定めるものとすることを記載しています。   その他,裁判所の規則で定めるという形で記載しているところが何か所かありますが,先ほど申し上げたところと同様,運用の在り方なども踏まえ,今後,技術の進歩などに応じて,臨機に対応できるようにするという趣旨でそのように記載しているものです。   「1(2)ア」の「出国を防止し,位置を把握するために検知すべき事由を検知する機能として裁判所の規則で定めるものの発生を検知する機能」としてどのようなことを定めるべきかについては,実際に使用することとなる機器の仕様やそれを使った運用などを踏まえて考えていく必要があるところですが,現時点で考えられるものとしては,例えば,所在禁止区域の周辺に緩衝区域のようなものを設定して,所在禁止区域への立入りという違反が行われる前の段階で検知して本人に通知するとか,電池の残量が一定量を下回っていることを検知して本人に通知するといったことが考えられるのではないかと思っております。   所在禁止区域の定め方についても,例えば,飛行場の周辺などを挙げて所在を許さない区域として定めるポジティブ方式や,制限住居の周辺などの所在を許す区域を挙げてそれを除いた地域を所在禁止区域とするという形で定めるネガティブ方式などが考えられることから,そういった方法を,運用等を踏まえつつ,規則で定めるということが考えられるのではないかという趣旨で記載しているものです。 ○福家幹事 最後におっしゃられた,所在禁止区域の設定の方法についてなのですけれども,後者のように所在を許す区域を挙げてそれ以外の場所に所在してはならないといった方式で定めた場合には,空港から何キロ以内のところに立ち入ってはならないという定め方と比べて,所在が禁止される区域が非常に広範になるのではないかと考えられます。そういった場合,本邦外への逃走防止を目的として,空港や港湾施設といった特定の場所への立入りを禁止することを前提としているこの制度の基本的な枠組みにも,影響を与えるのではないかと考えられます。そうすると,例えば,仮に後者の方式を採るのであれば,それは,裁判所の規則ではなく法律できちっと規定するべきではないかと考えられるところです。   いずれにしても,技術革新への対応が必要であるということは,そのとおりだと考えますけれども,対象者へのプライバシーの侵害を伴うものであるということからすると,やはり基本的な部分については法律で定めて,技術革新が生じた場合には,別途改めて法律で定めるのが相当な場合があるのではないかと考えられますし,手続的,技術的事項と言えないものについて裁判所の規則で定めることについては,慎重に考えるべきではないかと考えているところです。 ○保坂幹事 どこまで法律に書いて,どこまで規則に委ねるかというのは,このたたき台の段階では,このように仕分をしているところですが,いずれこの案のような内容の制度について法整備をするということになったならば,法案作成の過程で,当然,法制技術的な観点からも,更に詰めて検討することになろうかと思います。その際には,また最高裁とも,どこまでをどのような形で規則で定めることにするかということも協議をさせていただくことになろうと思いますが,差し当たり,このたたき台では,先ほど説明した形で考えているということでございます。 ○福家幹事 引き続きよろしくお願いいたします。別の点について御質問させていただきます。「1(4)」のGPS端末装着命令が発せられた後の手続ですが,裁判所が被告人の身体にGPS端末が装着されたことを確認した後でなければ,保釈許可決定の執行ができないとされております。GPS端末を装着するのは,被告人が身柄拘束をされている拘置所などの施設であると考えられますが,裁判所の職員がそこまで赴いてGPS端末の装着を現認すると,そういったことまで必要とされているのでしょうか。確認させていただければと思います。 ○鷦鷯幹事 「1(4)」で,保釈の裁判の執行に際して,裁判所がGPS端末の装着を確認するものとしている趣旨は,GPS端末の装着命令が発せられている被告人の保釈については,所定のGPS端末が装着されていることが前提となることから,その装着が確認されていない限りは,釈放はできないこととするものです。こうした趣旨が満たされるのであれば,必ずしも裁判官,裁判所の職員が目視で確認しなければならないわけではなく,例えば,被告人が勾留されている刑事施設や留置施設の責任ある職員からの報告などによって確認するということも考えられないところではないと考えております。 ○酒巻部会長 ほかに,様々な技術的な規定も入っておりますけれども,御質問,御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。よろしいですか。それでは,御意見,御質問はないようですので,「第5」についての審議もこの程度とさせていただきます。   本日審議を予定していた事項につきましては,一通り御意見を伺うことができましたので,本日の審議はここまでとさせていただきます。円滑な進行に御協力いただき,ありがとうございました。   次回は,最初に申し上げたとおり,まず,続きの「第6 禁錮以上の実刑判決宣告後における裁量保釈の要件の明確化」から「第11 刑の時効の停止に関する規定の整備」までについて1巡目の議論を行い,さらに,本日御議論いただいた「第1」から「第5」までも含めて,「第1」から「第11」までの全体についての2巡目の議論を行うことにしたいと思います。次回会議の日程について,事務当局から御説明をお願いします。 ○鷦鷯幹事 次回,第13回会議は,令和3年8月11日水曜日午後1時30分からを予定しております。場所は,本日と同じ法務省地下1階大会議室です。 ○酒巻部会長 本日の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと思われますので,発言者名を明らかにした議事録を作成して,公表することとさせていただきたいと思います。また,配布資料につきましても,公表することにしたいと思います。そのような取扱いでよろしいでしょうか。              (異議なし)   ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   それでは,本日の審議はこれまでとしたいと思います。皆さん,御協力どうもありがとうございました。 -了-