法制審議会 家族法制部会 第6回会議 議事録 第1 日 時  令和3年8月31日(火) 自 午後1時31分                      至 午後5時27分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 面会交流に関する論点の検討  2 離婚後の子の養育への父母の関与の在り方に関する論点の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定をしておりました時刻になりましたので,法制審議会家族法制部会の第6回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日も前回までと同様,ウェブ会議の方法を併用した開催となりますけれども,どうぞよろしくお願いを申し上げます。   それから,前回の会議以降のメンバーの変更といたしまして,厚生労働省の上井室長,外務省の石井首席事務官,竹中首席事務官,法務省の神吉課付がそれぞれ関係官に任命されております。竹中関係官は欠席と伺っておりますけれども,出席されている方々から簡単に自己紹介を御願いしたいと思います。   順番としては,上井関係官,石井関係官,神吉関係官の順番でお願いできればと思いますが,上井関係官,お願いできますか。 ○上井関係官 厚生労働省の母子家庭等自立支援室長で上井と申します。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   石井関係官,お願いいたします。 ○石井関係官 8月2日付で外務省人権人道課の主席事務官に着任いたしました,石井と申します。これからよろしくお願いします。 ○大村部会長 よろしくお願いいたします。   最後になりますが,神吉関係官,お願いいたします。 ○神吉関係官 法務省大臣官房国際課で課付をしております神吉と申します。本日から関係官として出席させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願いをいたします。   それでは,次に,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○北村幹事 事務局でございます。お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   部会資料3,部会資料6,そして参考資料6と記載されているものを御用意させていただいております。まず,部会資料3は,これまで御議論いただいていた検討資料でございます。また,部会資料6につきましては,本日の後半に御議論いただく際の検討資料として,新たに事務局が作成したものになります。その内容につきましては,御議論いただく直前に改めて御説明させていただきたいと思います。参考資料6,右上の方に赤く参考資料6と書いてあるものですけれども,こちらは公益社団法人商事法務研究会主催の家族法研究会において検討資料として使用されたものになります。本部会における直接の検討対象とするものではありませんけれども,今回の部会資料6の中で引用しておりますから,参考資料として配布させていただきました。部会資料3と参考資料6につきましては,既に法務省あるいは商事法務研究会のホームページで公開済みのものでございます。そして,今回の部会資料6につきましても公開することを予定しております。   資料の説明は以上になります。   なお,今回もウェブ会議を併用してございますので,御発言に当たっては冒頭でお名前をお名のりいただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料を御確認いただければと思います。   それでは早速,本日の審議に入りたいと思います。   前回会議で確認をいたしましたとおり,本日はまず,前回の積み残しになっておりました面会交流に関する点,具体的には部会資料3の第3から第5までのうち面会交流についての論点についての御議論をしていただき,その後に,部会資料6に基づきまして,離婚後の子の養育への父母の関与の在り方に関する論点についての御議論をしていただく,この二つを予定しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   そこで,まず,面会交流に関する論点の検討ということになります。部会資料3につきまして,意見をお寄せいただければと思います。部会資料3,先ほど第3から第5までと申し上げましたけれども,大きく分けますと,第3,第4の父母間における取決めに関する論点と,それから,第5の裁判手続に関する論点に分けられるかと思いますので,まずはこの第3,第4につきまして御意見を頂き,そして,その後で,第5に関する意見交換に進みたいと思います。   部会資料3の第3,第4につきまして御意見を頂戴したいと思います。ウェブ参加の方が今日,多くなっておりますけれども,会場の方も併せて,御発言される方は挙手を頂ければと思います。 ○大石委員 千葉大学の大石です。発言の機会を頂きましてありがとうございます。私は第5回の会議で,相関関係と因果関係についてという資料を提出いたしましたので,その趣旨につきまして少し補足させていただければと存じます。   この資料を提出した発端は,外部の会議におきまして,家族法に詳しい法律家の方が,「面会交流を促進すると養育費が確保しやすくなるというエビデンスがある」と発言されているのを聞きまして驚いたという経緯がございます。その発言の基となっている労働政策研究・研修機構の調査報告書には,私も一研究者として参加しておりましたのですけれども,その報告書で出されている養育費と面会交流のグラフからは,相関関係は読み取れますが因果関係を読み取ることはできないと考えます。にもかかわらず,これがエビデンスとして広がっているということに懸念を抱きまして,資料を提出した次第です。   私が提出した資料では,小学生の通塾率と学業成績の関係について,図を例にお示ししております。例えば,塾に通っている子どもの学業成績がいいという傾向が見いだされているとしても,そのことは塾に行ったから成績が上がったという因果関係が存在する証拠とはいえません。高学歴・高所得の親ほど子どもの教育に熱心で,塾に行かせる前から家庭教育を熱心に行っていたり,様々な習い事をさせていたりするから,子どもの成績が良くて,そうした親は中学受験志向が強いので塾に行かせる,つまり,塾通いと子どもの成績は見せかけの関係で,背後には親の学歴や所得という重要な隠れ要因が存在するわけです。   面会交流と養育費についても同じことが考えられます。面会交流が順調に行われているようなケースでは,父母の所得や学歴が高く,そうした父母だから養育費支払も順調に行っているということが考えられます。何よりも問題なのは,一時点の調査データで因果関係を証明することは非常に難しいということです。本来は,別れたカップルと子どもを追跡する調査を実施し,本当に面会交流を増やしたら養育費支払率が上がるのかどうか,それを確認しなければなりません。もしかしたら逆に,養育費支払を進めることで面会交流が増えるという関係が見いだされるかもしれません。しかし,私の知る限り,代表性のあるデータでそうした研究は行われておりません。ですので,近年はエビデンスベースドポリシーメイキング,つまり証拠に基づく政策形成が重視される傾向にありますけれども,統計の使い方に十分な注意をいたしませんと,誤った政策形成につながるおそれがあると思いましたので,今日,お時間を頂いて発言させていただいたという次第です。ありがとうございます。 ○大村部会長 大石委員,どうもありがとうございました。データの取扱いにつきまして,一般的な御注意を頂いたものと受け止めましたけれども,また具体的な場面でデータが援用された議論等になるということもあろうかと思います,そのときにもまた個別の御注意をいただければと思います。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。本日も皆様,ありがとうございます。この資料3についての発言ではなく,前回,第5回会議で比較法の先生方から各国の家族法制の御紹介をいただきました。その中で,やはり少し時間の関係もありまして,私もそうなのですけれども,質問ができなかったということが私以外の先生方にもあろうかと思います。可能であれば,書面ベースで質問を提出させていただいて,可能な範囲でお答えいただける先生方からお答えを別途頂きたいという要望でございます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。ヒアリングの際に申し上げましたけれども,質問の時間が限られているということで,皆さんの質問の数なども制限をさせていただき,十分に質問できなかった点については後で何とか対処していただくということも考えたいといったことを申し上げたかもしれません。事務当局の方で御対応いただけるかということを,まず伺いたいと思います。ただ,御対応いただけるとして,相手のあることですので,可能な限りでということになろうかと思いますけれども,いかがですか。 ○北村幹事 事務局でございます。今頂きました御要望につきましては,ヒアリングをさせていただいた先生の御意向もありますけれども,改めて委員,幹事の方に御連絡をさせていただいて,いつまでに御質問いただければ,ヒアリングをしていただいた先生方の方に事務局の方で取りまとめてお送りさせていただいて,可能な範囲でお答えくださいというお願いをさせていただきたいと思います。 ○武田委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 今の点につきましては,後で事務局の方で期日を設定していただくことにして,武田委員以外の委員,幹事におかれましても,何かありましたら,質問をお寄せいただければと思います。ただ,繰り返しになりますけれども,相手方のあることですので,いつまでにどの程度の答えを頂けるかということにつきましては事務当局の方にお任せするということで,処理をさせていただければと思います。 ○原田委員 今回の資料の第3のところから,現状とか取決めの実情について,現状のところが少し最初に分析されているので,実務に携わっている者として,ここに書かれていることについて若干,実情あるいは感じたことを述べさせていただきたいと思います。   まず,9ページの面会交流のところで,面会交流に対する取決めが父母間に権利義務関係を生じさせるのみであり,子に関して直接的に何らの法的な義務を課すものではないことは当然であると書かれていて,確かに法的な義務を課すものではないかもしれませんけれども,現実には,一緒に住んでいる親に義務が生じて,それに応じなければ間接強制などが行われるという現状では,同居親からも,あるいは子どものプレッシャーからも,子どもに事実上の義務を課しているという状況に現実にはなっているということを是非御理解いただきたいと思います。   それから,その先の,審判によって面会交流が命じられるなど,面会交流の実施が子の利益にかなうと認められる場合には,という点についても,現状,これから今の状況がそのまま続くという認識ではいけないのかもしれませんけれども,基本的に原則,面会交流を実施してきたという家庭裁判所の在り方からすると,これが子の福祉にかなうとは思えないケースが非常に多いということも御理解いただきたいと思います。   それから,10ページで統計が出ておりますけれども,これを見ますと,養育費は決めても払われないというのが多いのに対して,面会交流は決めなくても行われているという実態が浮かんでくるのではないかと思います。もちろんその割合が圧倒的に多いとは言いませんけれども,面会交流の実施と取決めの率を比べた場合に,養育費と面会交流には大きな差がありますし,特に面会交流については母子家庭と父子家庭の間に非常に大きな差があると,つまり,お母さんは会いに来ているけれども,お父さんは会いに来ていないというような実態が見えるのではないかと思います。   私どもが面会交流を決める際に感じることは,確かに監護親が嫌がるというケースもありますけれども,非監護親の方が特に求めない,あるいは再婚をしてもう会いに来ない,そのようなケースもたくさんありまして,取決めがない,あるいは面会交流が実施されていないということが監護親側の問題なのか,あるいは非監護親側の問題なのか,あるいは子どもの問題なのかということについても慎重な検討が必要で,これはこの前,赤石委員が提出されましたアメリカの論文などを見ますと,実際にそのように実施してきたケースで,子どもの立場から見ると必ずしも福祉にかなわない場合もあるということが見えてくるのではないかと思います。   それを前提に,この11の課題のところについての意見を述べさせていただくと,まず,@のガイダンスの実施の問題ですけれども,厚労省の統計を見ますと,参考資料の2−1を見ていただくと,知らなかったという方はかなり少なくて,Q37以下にそのように見ておりまして,どのような人にどのようなガイダンスをするかということの検討が必要なのではないかと。今,家庭裁判所で面会交流の調停などの場合,あるいは離婚で親権が争われるような場合に,この面会交流に関するガイダンスのようなビデオを見るように言われるのですけれども,これは非常に理解のある親御さんのケースでありまして,本当に葛藤が高いケースにこれが参考になるのかなとは思っております。   それから,Aの協議離婚の見直しの問題については,ここにもありますように,DV事案で離婚が遅れることによって貧困が増すとか,あるいは支配,被支配関係から逃れられないというようなおそれは強く懸念しております。貧困の問題では,やはり今,別居だけでは児童扶養手当が支払われないという問題があります。これは,もちろん不正受給とかそういう問題があるのかもしれませんけれども,やはりこのような状態が続くと非常に,特に母子家庭の貧困は促進されると思います。諸外国では,母子家庭とか父子家庭というのではなく,子どもを育てている親に対して支援が行われるという立て付けになっていると思うのですけれども,そういうような形にしていただければもう少し検討の余地があるのではないかと思います。   それから,Cについては,養育費についてもこの前いろいろ意見が出ましたけれども,面会交流について,裁判所の関与,あるいは専門家の関与全くなしに自動的に債務名義にして,しかも強制執行ができるというのは,かなり危険ではないかと考えております。   長くなりましたが,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。面会交流につきまして,実務上の経験,それから,資料についての理解の仕方を踏まえて,11ページの課題につきまして,具体的な御意見を頂きました。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。私からは11ページの2のA辺りについて,意見を申し上げたいと思います。Aのただし書の部分については,今,原田委員がおっしゃったように,十分な配慮が必要だと私も考えております。その上で,協議離婚制度の見直しをして,一定の取決めを義務付ける,あるいは届出要件としていくような方向性というのは望ましいのではないかと考えています。ただ,その場合に,Cの債務名義にしていくという方向性を考えればなおさらですけれども,合意の真摯性ですとか,あるいは内容の妥当性というのを担保するためには一定の審査というものが必要になるのではないかと思います。場合によっては事前相談ということもあって,取決めの過程からそういう担保をしていくということもあり得るかなと思っています。   更に踏み込んだ話をさせていただきますと,審査をするという場合の担い手としては,以前,水野先生が御指摘されていたかと思いますけれども,中立的な立場の法律家が関与をするということが方法として考えられるかなと思っています。先ほど申し上げたように,それが債務名義になるということを考えれば,やはり法律家の関与というのが望ましいのではないかと思っています。   あともう一つ,協議離婚の問題としては,当該夫婦の子どもの関与,広い意味での関与ですけれども,それが制度上,何ら保障されていないというところについては問題かなとかねて考えています。あたかも忘れられた存在であるかのようだと思っています。そうした問題意識からしますと,先ほど申し上げた,仮に取決めの審査を行うという仕組みを採るとすれば,子どもからも心情とか意向とか,そういったものを聴き届けるというプロセスも組み込めたらいいなと,是非組み込みたいなと思います。その担い手としては,一次的にはその取決め審査をする法律の専門家ということかもしれませんけれども,仮にその内容によっては心理や福祉の関与ということが必要かもしれませんので,そういう必要がある場合にはそういった職種と直ちに連携できるような,ワンストップサービス的な機能も果たす,そういう仕組み,制度の構築というのがあれば,より理想的かなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。11ページの課題Aの協議離婚制度の在り方の見直しという点につきまして,御意見を頂きました。基本的にはこの方向で考えるべきではないかということで,そのときに,当事者の合意あるいは内容についての審査が必要であろう,審査に当たっては法律家を中心にした関与が必要であるけれども,子どもの意見等を聴くような仕組みを設ける必要がある,こういう御意見として承りました。ありがとうございます。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。今日はオンラインで参加しております。   2点申し上げたいのですけれども,2011年の民法766条の改正の後,家裁での,面会交流原則実施論といわれていたかと思うのですけれども,そういうことがかなり広まって,いろいろなやれない事情というのを調停で出したとしても面会交流が決まっていくという流れがあったというふうに,私どもが当事者の方からヒアリングをすると,ございます。ここにも参加されている裁判官の細矢さんが,面会交流の原則実施論について二つ論文を書かれていて,最近の論文では,何か誤解があったので,もう一度面会交流の実施についての状況を御提案している論文があると読ませていただきました。ですので,この論文を書かれた背景ですとか,10年たったわけですけれども,そういった状況について,やはり,今この議論をする手前の,この10年に何が起こっていたのかということを知るためにも,是非御説明いただける機会があるといいなと思っておりますが,いかがでしょうか。   それから,もう一つが,最後のページまで行ってよろしいのですよね。 ○大村部会長 第3,第4につきお願いできればと思いますので,13ページまででお願いいたします。 ○赤石委員 分かりました。では,後でまた申し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。そうすると,1点のみということで,2011年改正後の家裁実務の在り方について,裁判所の方の実情ないし,それに対する御理解というのを伺いたいという趣旨の御発言だと承りました。今,赤石委員の御発言の中でお名前も挙がりましたけれども,細矢委員の方で何か,今,お答えいただけることがあれば,お答えを頂ければと思いますし,別途,改めてこの点について御説明を頂くということであれば,そのようにしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○細矢委員 東京家裁の細矢でございます。今頂きました点について御説明申し上げますと,多少お時間が必要かなと思うのですけれども,少しお時間を頂いてもよろしければ御説明させていただこうと思いますが,いかがでしょうか。 ○大村部会長 今御説明いただけると理解しましたけれども,重要な点だと思いますので,ある程度の時間を使って御説明を頂けるということであれば伺いたいと思いますが,細矢委員,よろしいですか。 ○細矢委員 では,私の方からなるべく簡潔にお話をさせていただこうと思います。   まず,今,赤石委員からお話がありましたように,私が平成23年の民法改正後に共同執筆し,平成24年に公刊されて家庭裁判月報に載りました論考がございます。それを平成24年論考といわせていただきます。まず,この趣旨ですけれども,この論考は,子どもと別居親との適切な面会交流は,基本的には子の健全な成長に有益なものということができるという基本的な理解を前提とし,子の福祉の観点から,面会交流を禁止・制限すべき事由が認められない限り,具体的な事案に即して,面会交流の円滑な実施に向けて審理・調整を進めることが相当であるという内容となっております。   この論考の趣旨は,子の福祉の観点から,面会交流を実施することによって子の福祉に反する事情があるか否かを双方から丁寧にきめ細かに聴き取りながら進め,そのような事情が認められない場合は,当事者の感情的な対立や不安,お子さんの状況や意向等,それらの阻害要因を考慮しながら働き掛け・調整を行い,円滑かつ適切な面会交流の実施に向けて環境調整を進めるというものでございました。   この場合,例えば同居親側の提出する証拠によって特定の禁止制限事由が認められない限り,必ず面会交流を実施しなければならないというような方向で調停を運営するというものではございませんでした。すなわち,そこにおいては,同居親に禁止制限事由についての主張立証責任を負わせるような,いわゆる当事者主義的アプローチというものは採用されておらず,禁止・制限すべき事由がないと認められた場合の環境整備の結論として必ず面会交流ありきということが前提になっていたわけではなく,当然のことながら,環境整備を進めた結果,当事者の感情的な対立や不安,お子さんの状況や意向等,そのような阻害事由によって調整が難しく,お子さんの福祉の観点から面会交流を実施することが相当でないと,実施しない方がよろしいという結論があることも前提となっておりました。   しかし,今御指摘いただいたように,調停の実務の現場においては,一部において,禁止制限事由が認められない限り必ず,特に直接交流を実施すべきであるという方向で調停運営が行われ,その結果,同居親に対して配慮が十分ではない調停運営が行われたことがあったようでございます。このような調停運営については,原則実施論などと呼ばれて批判されることもあったと認識しております。   現在,調停の現場におきましては,同居親への聴取の在り方など,運営について振り返りをし,ニュートラル・フラットな立場,すなわち同居親,別居親,いずれの側にも偏ることなく,先入観を持つことなく,子の利益を最優先に考慮するという立場から,よりきめ細かで丁寧な傾聴や説明をする,そのような動きが出てきております。   他方で,別居親側からは,取り決められた面会交流の内容が非常に貧弱である,あるいは,取決めをしても実際には履行されない,そのような批判がされてきたことも事実でございます。このような中,子どもの利益を最優先に考慮し,最も適切な内容を慎重に見極めながら,振り返りつつ,面会交流を実施する上での課題を解消しながら,より良い面会交流の在り方を見付けようとする動きも出てきております。   今御説明しましたような調停実務の動きを踏まえまして,この面会交流調停の運営方針について,先ほどの平成24年論考の言葉が誤解されたり,趣旨が十分伝わらなかったところもあるようでしたので,東京家庭裁判所における面会交流PTにおきまして,令和元年11月,新しい運営モデルを策定し,それを家庭の法と裁判26号に掲載したところでございます。   この新しい運営モデルについても簡単に御説明させていただいてもよろしいですか。時間的に大丈夫でしょうか。 ○大村部会長 どうぞ,よろしくお願いいたします。 ○細矢委員 この新しい運営モデルですけれども,調停委員会が先ほど述べましたニュートラル・フラットな立場で子どもの利益を最優先にしながら,面会交流を実施することによって子の利益に反する事情があるかどうかという観点を踏まえて,直接交流,間接交流それぞれについて,実施しないこととするか,あるいは実施するかどうか,実施する場合はどのような内容,方法が一番よろしいかどうか,その子どもにとって一番ふさわしいオーダーメードの面会交流の在り方を見付けようとするものでございます。この選択肢の中には,面会交流を実施しないということも入っております。実施するということも入っております。幅広く考えていきたいと思っています。   この検討に際しては,六つのカテゴリー,安全,お子さんの状況,それから親の状況,親子関係,親同士の関係,それから環境,これらに尽きるものではないのですが,これらを中心に円環的な検討,これは,まず主張背景事情をしっかり把握し,課題を把握し,それを当事者と共有し,課題の解決に向けた働き掛け・調整を経て,その働き掛け・調整の結果の分析・評価をし,必要があればこの過程を繰り返し,なるべく実態に合った面会交流の在り方を見付けようというものでございます。また,スピード感についても,適度なスピード感という言い方をしており,適正かつ迅速な解決に至るように調停運営をしていこうということにしております。なお,この六つのカテゴリーのうち安全については,最優先に,調停のどの段階でも最優先に検討すべき事項と考えており,調停委員会は,常に,安全に関する情報についてはアンテナを鋭く張って,どんな小さな情報でも見逃さないようにしようと考えております。   以上が,本当に簡単ではございますが,私からの説明となります。詳しくは先ほどの文献等をお読みいただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。家裁実務について,御説明を頂きました。   ほかに御発言はありませんか。 ○井上委員 ありがとうございます。連合の井上です。2点発言させていただきます。   まず一つは,第3の2の課題ですので11ページになります。@からCまで挙げられているのですけれども,現行の規律下でも,面会交流にとどまらず,日常の監護も含めて,父母が自律的に共同,協力しているケースがありますので,法による規制は慎重であるべきと考えます。特に,DV等を原因とする場合,多くは社会や慣行による力関係が背景にあり,被害者が立証することは困難とされます。そのような中で一律で面会交流や共同監護を推進することは,子の安全が確保されず,問題であると考えます。   もう一つは,第4の2の面会交流の取決めの内容に関する規律の(2)の課題のところです。13ページに書かれていますが,面会交流の取決めに関し,その内容に関する考慮要素や基準等について決定してはどうか,とあります。今ほどの繰り返しになりますけれども,現行規律下でも面会交流にとどまらず日常の監護も含めて父母が自律的に共同,協力しているケースがありますので,法による規制は慎重であるべきと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。面会交流等についての法による規制については,慎重に考える必要があるのではないかという方向の御意見を頂きました。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。まずは第3,取決めの促進確保というところに限って発言をさせていただきたいと思います。   取決めがあって,履行があってと,いろいろな段階があると思っておりますが,私は個人的にはまず,取決めというのを非常に重要と感じています。昨今,養育費徴収率を上げると,このこと自体は良い話だとは思うのですけれども,例えば,養育費に関して取決めもしていない,取決めの啓もうもない,そんな中で,やはり養育費不払いは許せない,よろしくないと思います。しかしながら,だから強制徴収だという懲罰的な議論,メデイア含め,このような意見が散見されるかなと思っております。まずは親の自覚を促すような規律があって,さらに,国が取決め促進に向けて一定の責務を担うという立て付けをもって,国民の皆さんに理解を頂く,そのためにまず取決めがあるのだということを,まずは申し上げたいと思います。   そんな中で,4点ほど課題が挙げられておりますが,課題に合わせて4点,意見を述べさせていただきます。1点目,親ガイダンスに関して,ここは是非進めるべきと感じます。受講は必須とすべきだと思いますけれども,今挙がっている,例えば法的知識,恐らくここに留まるべきではないのではないかと感じます。先日,子どもの当事者の参考人もおっしゃっていましたが,やはり親の離婚に直面した子どもの気持ち,配慮すべきこと,こういうことを含めて,将来的には共同養育計画の策定の基礎となるような,こんなものも含めたガイダンスをした方がよいのではないかと,そんなふうに考えております。   2点目の協議離婚の在り方についてですけれども,先ほど申し上げた離婚前の養育計画,これも,今申し上げたことの繰り返しになりますが,面会交流,養育費に留まらないテーマであるべき,かつ,それ以外の,例えばこの後のテーマにも出てまいります重要事項の決定,どのように取り決めていくのかということに関しても,計画の範囲内に含めるべきであろうと,考えております。あと,DVに関してですけれども,当然,例外として配慮すること,賛同いたします。ただ,(注2)にある,今現在もそうだと思うのですが,一方的に取決めをすることができない事情ということが一体何なのかということを規律として示すべきではなかろうかと,考えます。   3点目です。ここは既に論点整理が終わっている養育費に関しての発言になりますが,暫定養育費といわれるものに関してです。おっしゃるとおり,いろいろな御意見があることは認識しております。離婚が実現することが遅れるということによる経済的不利益,これは解消しなければいけないと,こういった事実は当然あろうかと思います。しかしながら,迅速に養育費問題だけを決定するということが子どもの利益に直結するのかということを今一度再考すべきではなかろうかと思います。前回,韓国法制のご説明で,金先生が来られました。御説明の中にもありましたが,離婚前の熟慮期間ということを設けられているという御説明がございました。養育費,面会交流などの離婚後の,親責任という言い方をあえてさせていただきますが,そういったものが本当に履行されるのかという一定の判断があった後,離婚を認める国もあると認識しております。司法統計を拝見いたしますと,現在の家裁での養育費の平均審理時間,5か月程度という数字が出ているかと思います。私自身,まだ現時点での解がまだ定まっているわけではないのですけれども,よく葛藤,葛藤と,親同士の高葛藤と言われますけれども,葛藤を下げるために一定の期間を確保する,あと,この暫定養育費とのメリデメを整理して,その上で方向性を考えていくのがよいのではなかろうかと,考えています。   4点目,ここはもうほかの委員の先生方がおっしゃったとおりでございます。一定,債務名義としていく方向,ここは考えなければいけない問題かと思いますが,中立な法律家の一定の公的な判断を基に進めるのがよかろうと,そんなふうに考えます。   第3について,以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。取決めの促進というのを国の責務だと捉えるべきだというところから出発されて,課題の1から4につきまして具体的な御意見を頂戴いたしました。ありがとうございます。 ○水野委員 ありがとうございます。先ほどの池田委員のご発言を受けての発言になるかと思います。以前にも発言しましたとおり,日本の状況は非常に例外的です。西欧諸国ですと,まず,離婚は原則として裁判離婚ですので,司法がてきぱきと処理するわけですが,日本ではブラックボックスの協議離婚の中に離婚のほとんどが流れ込んでいる問題があります。それから,もう一つ大きな前提として違っておりますのが,日本の育児支援が非常に貧弱だということです。DV現場は実際には虐待状況にあるわけで,本当は離婚以前の段階から育児支援が機能していなくてはならないはずです。例えば,フランスの親権制限判決と,それに基づいてケースワーカーと児童事件担当判事がケアをしながら親権を行使させているケース数の比率でいいますと,人口比でフランスに匹敵する規模なら,日本だと年間ほぼ20万件の親権制限判決が出て,40万人ぐらいの子どもたちがケースワーカーと判事の監督の下で育っていることにならなくてはならないわけですが,御存じのように日本の親権喪失も親権停止も二桁止まりの数で,非常に貧弱な状況です。   このような状況を前提に,離婚の場面での子どもの養育費,また子どもとの面会交流を考えなくてはならないという,非常に難しい構造的な難問に我々は直面しているわけです。もっとも,養育費だけですと,相当機械的な処理が可能です。国によってはもう養育費は行政による決定でできることにしている国も少なくありません。日本でも制度が成熟してきたら行政だけでもあり得るかと私も思いますけれども,現段階では法律家が情報を処理して,機械的に決定していくという池田先生の御提案のような形で設計するのがいいかと思います。   ただ,池田先生がもう一つおっしゃった,子どもの意見表明権という観点には,留保がございます。もちろん子どもの福祉が何より大切で,子どもの様子を見ずに子どもの問題を決めていくのは非常によろしくないと私も思いますが,日本の現状で子どもの意見をただ表明させることについては,危惧を持っております。子どもの奪い合いのような場面でケースワーカーが関与するときに,子どもの様子をしっかり見て,子どもの望みを察知しなくてはならないけれども,決してしてはならないのは,子どもに両親のどちらかを選ばせることです。それは非常に残酷な自己決定を子どもに迫ることになりかねませんから。日本の現状ですと,そもそも訓練を積んだケースワーカーが本当に足りないのですが。  それから,先ほど申し上げた養育費の制度設計についてですが,本来こういう虐待問題に関与しているケースワーカーは,当事者に寄り添って,当事者の自己省察を支援するという形のアプローチをします。このような支援ももちろん大切なのですが,そのような養育支援と,機械的に,法的に養育費を決めていく手続の間には,相当乖離があるように思います。欧米諸国のように,それぞれ異なった専門家が大量にいて,手続と場面に従ってきちんと分業して,処理をすることになっていればよろしいのですが,日本の場合はどちらも全然不十分で,そして,家裁の調停にはいきなり全部それらが流れ込んでしまい,バーゲニングパワーによる合意形成ということになります。これらを整理していくときにどのような制度設計が妥当かというのは,相当慎重に考えなくてはならないように思います。池田委員がおっしゃったように,子どもの問題では,子どもの関与は非常に大切ですけれども,養育費の問題を取りあえず軌道に乗せるところでは,少しそれと切り離して子どもの支援の問題を考えていく制度設計がよいかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。協議離婚制度の在り方を見直すという方向に立った上で,その議論の仕方として,子どもの関与,あるいは子どもの問題を養育費と切り離した方向で取り扱うというのがよいのではないかという御意見を頂きました。 ○落合委員 落合です。少し繰り返しになってきたのですけれども,池田委員,水野委員からも出されました子どもの意見表明ということについて少し申したいと思います。   11ページの項目立てをしている中に,子どもの意向ということが明記されていないのですよね。やはりこういう重要論点というところに明記されるべきだと思うのです。そんな簡単なことではないというのは分かっておりますけれども,子どもの利益ということ,何よりも子どもの意向というのを重視するというのは,まず書かれるべきだと思います。ですから,この課題は,子どもの意向というのをどういうふうに判定していく,どうやって読み取っていくのかとか,それは随分と繊細な気配りとか状況設定が必要ですよね。その方法をよく作り上げるということですとか,そういうことを特筆しておかないと,すぐ父母の問題になってしまうのではないかと危惧します。ですから,子どもの意向確認,もちろん年齢とかいろいろな条件があるわけですけれども,子どもの意向確認をまずして,それを重視するということを特筆し,その方法をきちんと書くということをするべきであろうと思います。   それから,強制執行というような言葉もありますけれども,誰が誰と会うというのは強制執行するようなものではないと思うのです。人は会いたい人と会うというのがやはりよいですよね,人間関係としては。強制的に会うと,かえって会いたくなくなったりとかいうこともあるかもしれませんので,なるべく強制というようなものは伴わないような方法で,その実施についても規定していきたいものだと思います。   それから,面会交流の相手ですけれども,子どもが会いたいのは父母だけとは限らないと思うのです。子どもが会いたい人は祖母,祖父かもしれないし,あるいはもう少し違う人かもしれない。子どもが会いたいのは誰なのかというのを聴いてみて,最初から父母に限定しないでこの問題を考えていくべきではないかと思います。その辺りをどこかに明記していただきたいということで,意見を申しました。   それから,もう一つ,原則ということですと,今の子どもの意思というのは一つの大きい原則ですね。もう一つの原則は,やはり子育てには男女とも関わる,父母とも関わるというのがやはり原則だと思うのです。それは今,日本で育児支援等に関するときにも,それは原則として立てています。ですから,それはどこかに書いておくべきことなのではないでしょうか。原則としてはそうなのだけれども,しかし,実際にはいろいろな問題はあるわけですよ。でも,何か少し議論が細かい,細かいわけではないのですけれども,ある種のケースに最初から入り込んでしまうというような,例えば,DVがあるケースとかに最初から入ってしまうような議論の立て方になっているようなことを危惧します。やはり原則論,一般論から話を始めていくようにしたいものだと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。幾つかの御指摘を頂いたかと思います。強制執行等の仕方につきましては,また第5の項目で他の方々からも御意見を頂きたいと思います。それから,何人かの委員から御指摘のあった子の意思,意向というのをどのように取り扱うのかという問題は重要な問題かと思いますが,他のところで子の意思をどうするかという形でまとめて取り上げるということも予定されているかと思いますので,そこで議論されたことをここにも反映させるという形になるのかと理解をしております。それから,最後に,議論の仕方につきまして,原則から先に議論すべきではないかといった御指摘がありました。原則が重要だというのはおっしゃるとおりだろうと思いますけれども,原則をめぐる議論はなかなか難しいところもございまして,どちらから議論を進めるのかということかと思います。ただ,現在の養育費とか面会交流についても原則に関わる議論は必要でしょうし,その他の議論につきましても原則に関わる問題は当然出てくると思いますので,どこかの段階でまた皆様の御意見を頂くということになるかと思って,伺っておりました。 ○柿本委員 柿本でございます。調停実務につきまして,赤石委員からも原則実施論というところから話が広がったかと思うのですけれど,家裁での現状の理解が進みました。ありがとうございます。   私は,11ページの課題のところで申し上げますと,協議離婚制度の在り方を見直すということに関しては私も賛同いたします。ただ,その中でやはり,面会交流についてはDV事案等への特段の配慮が必要だと考えます。   もう1点,面会交流をするに当たりまして,法廷実務では努力していただいて,フラットでニュートラルでとおっしゃっていただいたのですけれども,公的な支援制度の創設,これもやはり周辺事案になるかと思いますが,環境整備が非常に重要と考えます。 ○大村部会長 ありがとうございました。協議離婚の在り方について見直すということについては賛成だけれども,DV事案等について格別の配慮が必要であるということと,面会交流について,フラットな形での環境整備が重要だということを再度強調されたということだったかと思います。 ○石綿幹事 石綿でございます。2点発言させてください。   一つは,先ほど,面会交流については取決めがなくても行われているので,取決めの強制や促進をする必要がないのではないかという御意見があったかと思います。取決めがなくても面会交流が行われているということ自体は,親子の交流が進んでいるということで,好ましいことだとは思いますが,取決めがなくて行われている面会交流に紛争が生じた場合にどうするのか,あるいは,取決めがないことによって,面会交流をどうするかということが父母間で紛争になるということは考えられるかと思います。ですから,もう少し離婚時,あるいは離婚してから間もない時期に,面会交流の取決めを求める必要がないかということを検討してもよいのではないかと思います。   また,資料の13ページの2行目辺りを見ますと,面会交流の取決めを促進するというのは,必ずしも実施を強制する,実施するという取決めを強制するということまでは意味していないのではないかと思います。夫婦が話し合って,また子どもの意向も反映して,面会交流を実施しないという選択肢,直接交流はしないで別の形で交流をするといったような選択肢も認める形での取決めの促進という議論というのもあり得るのだと思います。取決めの促進をすることと面会交流の実施の強制になるということとも必ずしもリンクはしないと思いますので,離婚後の子どもと親の交流の在り方をどうしていくかということをもう少し議論する余地ができればと思います。   それから,2点目は,子の意思に関してですが,先生方から議論が出ていますが,取決めのことについて今後,議論を進めていくのであれば,例えば13ページの面会交流の取決めの際の考慮要素等の中で,子の意思というのをどのように反映していくか,誰がどのように判断していくかといったようなことを,検討としていくことも考えられるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。取決めの必要性ということについて,もう少し詳しく見ていく必要があるのではないかという御指摘と,それから,子の意思について勘案するとした場合に,どのような形で制度上,取り込んでいくのかということについて御意見を頂戴いたしました。 ○久保野幹事 ありがとうございます。久保野でございます。繰り返しでございますけれども,11ページの課題のところの@,Aに関しまして発言をさせていただきます。   協議離婚制度の在り方の見直しということがAに書いてありますけれども,Aと@の問題を併せて,少し広めに考えていくのがよろしいのではないかと思います。まず,考えていく必要性につきましては,父母の婚姻の解消というのは父母の問題であるものの,子どもへの影響が大きく,不利益が生じ得るということが前提とされているわけですので,父母以外の第三者が何らかの形で関わるということを確保するということがとても重要なのではないかと思います。少し話が飛びますけれども,ほかの制度との対比で考えてみましたときに,例えば子どもの出生というのは一面でプライベートな問題ではありますけれども,他面で母子保健制度がしっかりと作られていて,母子健康手帳が交付されて,第三者が関わっていくというふうになっているようなことなども参考になるように思い,考え方として,父母以外の第三者が関わっていくという方向で考えていくべきではないかと思います。   それで,考えていく際に少し,様々な選択肢を広めに考えてみることがよろしいように思います。一方で取決めに着目するとこう考えられるといったような議論がありますけれども,取決めという内容で見ていくのか,相談をしていくことで,葛藤がありそうか等の何かしらの問題がありそうかということを探知していくですとか,あるいは支援の側面ですとか,この局面で問題になり得ることというのは複数のものが議論され,念頭に置かれているように思いますので,その機能ですとか目的について,広めに見てみるということがよろしいのではないかと提案いたします。   同じような観点から,関わっていく第三者につきましても,既に法律家ですとか,それに限らず福祉や教育といったような専門家について言及がありましたけれども,例えばファイトプログラムといったようなものが行われていたりですとか,民間でプログラムといったものも多数,現在実践,研究されていると思いますし,広い形でどのような専門家がどのように関わるのがよいのかということについても考えてみることが重要なように思います。このことは,DVの問題等についてどう対応するかということとの関係でも,ある特定の考え方を前提に,問題があると考えていくのではなく,問題を解決するためにどのような専門家がどういう目的で関わるのがいいのかという形で議論していくということにつながっていくのではないか,あるいはつながるとよいのではないかと思います。   すみません,一般的な意見になりましたけれども,以上でございます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。11ページの課題の@,Aを併せて考えるというところから出発されて,第三者の関与という観点を一つ出された。それから,もう一つは,様々な選択肢,考え方を広く取って見るべきではないか,DV問題などについても,ある一つの考え方に難点があるという場合に,ほかの考え方を検討してみるといったことも有益なのではないか,このような御指摘を頂いたかと思います。 ○青竹幹事 ありがとうございます。2点ございまして,先ほどから既に多く議論されているところですけれども,11ページの取決めにつきまして,原則と例外というお話がありましたが,やはり取決めを原則として義務付けるべきなのではないかという,池田先生の御意見に同意したいと思います。ただし,委員の先生方がおっしゃっているように,取決めができなければ離婚できないとするのは問題が生じるということになりますので,例外を認めるべきというのもあります。また,離婚時までに必ず取決めが成立しなくてもよいとしながら,その場合でも,離婚後に持ち越しまして取決めをする義務自体は消えないということを,例えば民法上,明文化するということがあり得るように思います。養育費については,取決めがなくても,現行民法上も,離婚後も親としての扶養義務は消えないですけれども,扶養義務というのが,それ自体が抽象的ですので,内容を具体化する養育費の取決めは義務であるという原則を民法上,明文化するということで,取決めを促進することにつながるようになるのではないかと考えました。   それから,2点目なのですけれども,面会交流を原則とするのかどうかということについて,細矢委員からの御説明がありました。面会交流が原則なのかについて,最近の審判例で公表されたものを少し見てみたのですけれども,確かに数としては,できるだけ面会交流を認める判断を示すという傾向がみられました。ただ,子どもの心理面,家族の状況,親子の関係などをやはり家庭裁判所の方でも考慮しているということがうかがわれまして,認めるけれども第三者機関の立会いを必要とするとか,母の付添いを必要とするという判断がされたものもありますし,DVの事例とか,子どもが強く拒否しているという事例で面会交流を認めないという審判も公表されています。ですから,先ほど細矢委員もおっしゃっていたように,面会交流が原則実施というのではなく,最近ではフラットに判断されていて,面会交流が原則というような形にはなっていないとみられましたので,少し御報告させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。取決めについては,原則とすべきだという考え方に賛成だけれども,例外を設ける必要があるし,それから,離婚後の取決めも可ということを明らかにすべきではないかという御意見を頂きました。面会交流につきましては,最近の審判例について御紹介を頂きまして,その実務が今動いてきているということについて御披露いただいたものと理解をいたしました。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野でございます。11ページの課題について,五つ申し上げたいのですけれども,まず,取決めの確保促進という点に関してなのですけれども,子どもの育成にどう関わっていくのが最も望ましいかというのは非常に多様であって,非常にカスタムメイドのものが大きいのではないかと感じており,それを一番よく知る者がきちんと合意ができるということは大事なのだろうと思っております。その意味で,確保促進する方策というのは大事だと思うのですけれども,@とも関わりますけれども,もう一つ,どういう合意をしたらいいのかとか,合意自体の確保促進とともに,支援ということも非常に重要ではないかと感じているところです。ガイダンスとも関わるかもしれませんし,メニューなどの提示などとも関わるかもしれません。   二つ目は,そういう合意ということで語られる面会交流の概念についてです。これまでに石綿幹事からは直接交流という言葉も出てされたかと思いますし,それから,これまでの議論の中では,子どもへの関わり方,子育てへの関与の仕方の中で,人格的な交流の重要性ということも言われました。そのことと面会交流というのが一致しているのかどうかというのがよく分からないところがあります。訪問,宿泊,面会というのが典型的だと思われますけれども,例えばeメールのやり取りですとか,様々な形が交流にはある中で,取決めの対象とする面会交流の概念というものをある程度,外縁なり,あるいは典型的にはこういうものということを明確にする必要はないのだろうかというのが気になっております。その概念の点が2点目ということになります。   3点目は,これはもう何人もの委員の方,幹事の方から御指摘があった点ですけれども,適正の確保というのは,確保促進ということとまた別途必要なことですので,適正の確保ということも挙げる必要があるのではないかと思っております。それには専門家の関与が非常に大事だというのも,そのとおりだと思われます。  ただ,4点目ですが,先走りかもしれませんけれども,専門家の関与については,報酬を誰が払うのかというようなことも少し気になっておりまして,制度設計を最終的にするときには,そういったことも考える必要があるのだろうと思っております。   Cの強制執行について,これが最後の点でございますけれども,取決めについて,それを実現していくための方策が非常に重要だということは,そうだと思うのですけれども,そもそもの取決めがどれほど適正になされたものか,内容面でのチェックが掛かっているかということとともに,この問題というのは,やはり状況の変化も相当にあるのではないかと考えられますので,柔軟なといいますか,そういう取決めの変更などもあり得る中で,当初決めたことが金科玉条であるというような扱いになるのは非常に問題であると思われますので,かなうなら執行段階でも,現在それが維持すべき取決めなのかということが適切に図られるような仕組みというのが考えられるべきではないかと思ったところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。取決めを進めるという方向について,幾つかの点について更に立ち入った形で御意見を頂いたかと思います。具体的にどういう取決めをするのか,取決め支援を行うとか,あるいは,その内容になる面会交流の中身,概念を明らかにする必要があるとか,あるいは適正さを確保するために専門家の関与を求めるということで,それを制度として仕組んでいくためには報酬等のことも考えなければいけない,さらに,状況の変化織り込んだ制度を考えていく必要があるといった御指摘を頂いたかと思います。 ○大石委員 ありがとうございます。私は今,法務省が実施してくださいました協議離婚調査について分析を行っておりまして,10月にはその結果を専門誌に出していただけるということになっておりますけれども,分析してみて分かりましたのは,面会交流の取決め,書面以上での取決めなどに関しては,監護親の方が高学歴かどうか,それから,収入がかなり高いかどうかといったこと,そして,非監護親に関しては,正規就業しているか,高学歴かどうかといったことがかなり影響しているという結果を得ております。つまり,かなり経済状況がいい監護親の方,非監護親の方もそうですけれども,そういった方たちの中では取決めがそれなりに進むわけですけれども,そうでない方たちが取決めを行うことはなかなか難しいことであると解釈しております。ですので,今,沖野委員もおっしゃっいましたが,支援といいますか,そういったものはやはりどうしても必須であって,かなり手間暇掛けて支援していかなくてはいけないということではないかと。また,そういうふうに収入が高くない方たちが取決めを行うという意味では,先ほど沖野委員が報酬のことをおっしゃっていましたが,報酬がもし個人負担ということになれば,それはかなりなハードルになるのであろうということが予想されます。   もちろんこれはウェブ調査ですので,代表性という点ではかなり問題はありますが,しかしその中でも非監護親の3分の1が再婚しているという実情もデータで示されております。そういう意味でも,親子の関係や家族の形態が,時々刻々変化していくということも考慮して,取決めに関しての政策を決めていくことは必要ではないかと思った次第です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。協議離婚の調査について分析をされているということで,それに基づいて,当事者の属性によって差が出るという御指摘を頂いたかと思います。支援を考える,あるいは制度を作っていく上で,そうしたものを考慮する必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。 ○佐野幹事 ありがとうございます。佐野です。私は12から13ページの面会交流の取決めに関する考慮要素について,考慮要素を明確化するというのは賛成であり,これを決める際にはやはり最新の科学的な知見,発達に関する知見を盛り込むべきではないかと言おうと思っていました。しかし,この部分は,裁判手続の中だけではなくて,協議離婚などで当事者の方たちが自分で決めるときの考慮要素にもなるという趣旨であるとすると,考慮要素は,なかなか一般の方にとっては使いにくいというか,分かりにくいものになるのかもしれない。むしろ基準としては,月1回とかというふうな取決め方の方が,一般の方には分かりやすいかもしれないが,それは今いろいろご発言があったように,面会交流というのはカスタムメイドで,その家庭,その家庭にとって,あるいはその親子にとって,ふさわしい形というのがあるので,そういった一般的な決め方,月に1回とか,そういう基準になるということであれば,より慎重に検討しないといけないと思った。 ○大村部会長 ありがとうございました。取決めについて考慮要素を定めていくということについての得失,メリット,デメリットみたいなことですね,あるタイプの要素を挙げるということになると,一方で,一般の人にとっては使いにくいものになるかもしれない,他方,一般の人にとって使いやすいようなものは,作り方によっては危険性もあるということで,その両方を考えていく必要があるのではないかという御指摘として承りました。 ○戒能委員 ありがとうございます。戒能です。先ほど,余り個別のことにこだわらず,原則論,一般論からというお話がありましたが,その原則論,一般論が難しいのだという部会長の御指摘もありました。DVや虐待の問題,家庭の中における暴力の問題は,一番最初に戻ってしまうのですが,決して例外ということではないという認識を私は強く持っております。そのことに関しては先回の部会で,小粥委員ですか,御指摘いただきました。実践的な面から見て,どうしてもきちんとDVや虐待に関する理論的な枠組みを持って,面会交流の問題に対峙しなければならないというような御指摘があって,その点は非常に印象深く受け止めました。   それで,日本の場合は,先ほど細矢委員から新しい運営モデルのお話があって,安全という要素を最優先事項として検討しているという裁判所,家裁における現状の変化のお話を頂いたわけなのですけれども,しかしながら,どのくらいDVや虐待の問題が出てきているのだろうかと,そういう統計はもちろん日本ではないのではないか,最高裁でも把握をしているかどうか。そういう実態,現実から進もうというのがこの部会の最初の基本的なスタンスだったと記憶しておりますが,そういうところから言っても,まだ極めて例外的な問題,個別の問題だという認識が社会において一般的であり,この部会においてもひょっとするとそういう認識の方が支配的なのかなということを少し感じました。   しかしながら,武田委員が冒頭におっしゃってくださったように,質問の時間がほとんど残念ながら,ございませんでしたので,例えばイギリスやオーストラリアの反省,失敗という言葉が出てきましたけれども,その失敗を反省の糧として,ドイツの状況など,もう少し踏み込んで質問をしたかったということがございます。いずれにせよ,少なくともイギリス,オーストラリアでは,失敗というよりも,問題を再発見したと私は思っておりまして,そこでプロコンタクトカルチャーでいいのか,子どもや監護親の安全の問題ですよね,危険から守られるということを忘れてはならない,司法の実情はどうなのかということで,かなり緻密な調査を行って報告書を出しています。英国司法省の報告書は本部会にも資料として提供していただいたので,少しは勉強したのですけれども,そういう試みが行われているということも意識しながら,この家裁の変化,新しい運営モデルということも頭に置きながら,決して例外的なことではなくて,きちんと対峙することが必要だと思います。例えば10ページの一番下の方なのですけれども,安全・安心への懸念を解消する必要があり,DV,児童虐待といった問題への対応を含め総合的な対応を図るべきという指摘というところがございます。その辺をきちんと意識して議論を進めていければなと感じております。 ○大村部会長 ありがとうございました。DV等の取扱いにつきまして,戒能委員,従前から御発言のあったところですけれども,これは決して例外でないという認識で考えたいという御意見を頂きました。今日の課題で申しますと,2の第1パラグラフの本文部分がありますけれども,その後のただしというところにつきまして,幾人もの委員,幹事の方から御指摘がありましたので,この点については十分な配慮をしながら議論をしていくということになろうかと思います。 ○棚村委員 早稲田大学,棚村です。私は,特に11ページの課題の@のところなのですけれども,養育ガイダンスとか親ガイダンスという点について意見を述べさせていただきます。海外では,親ガイダンスの実施に力を入れてきており,私は30年ほど前にアメリカの親教育プログラムというのがなぜ出てきて,それがどういうふうに広まったかということを紹介させていただきました。その当時は余り評判が良くなかったというか,関心度は低かったのですが,家裁ではその後いろいろとやっていただいて,取り入れるという方向になりました。   ただ,現状を見ますと,気を付けていただきたいのは,先ほども原田委員からもあったと思うのですけれども,DVDを見せたり一般的に説明したりというのは,正にかなり早期の段階での集合型のガイダンスということになります。集合型・集団型のガイダンスが有効な場合,タイミングと対象者・実施方法などが問題になってきます。これに対して,かなり個別的具体的な問題を抱えている当事者には,個別的な相談とかカウンセリングとか,個別専門相談や個別ガイダンスが求められているケースというのがあります。その二つを区別しながらきちんとそろえていかないと,親ガイダンスという形でみんなを集めて一般的な情報を提供すれば,それで効果があるというのは,葛藤が少なく早い段階でそういう集合型,集団型のガイダンスみたいな機会が与えられると,問題に対する意識や心構えを持てることになります。しかし,一般的な情報提供のレベルを越えて,非常に個別的な専門相談みたいなものを心理的にも法的にも,いろいろな意味で必要としている人たちもいるので,それにもこたえられるような個別相談型のプログラムみたいなものを充実するということが,協議離婚制度をどう見直すかということにも非常に重要になってきます。そして,それから子どもの親権・監護についてのその後の養育計画というもので,どんなものを父母で話し合って決めていくかということにも関係してきますので,是非支援の部分で,具体的にどういうようなガイダンスを,どこの機関が,どのタイミングでどのような形でやるかということを,当事者の支援ニーズや支援の各段階ごとに細かく議論する必要があります。   もちろん,このことは,家庭裁判所が現在やっている親ガイダンスというものを否定するわけでもありませんし,やはり紛争を抱えた人と,紛争を全く抱える前の,離婚とか別居ということを考え始めた初期に,自治体,例えば,私自身が東京都の離婚前後の親ガイダンスをやったときも,集合型のプログラムをやりますと,必ずその終わった後に長蛇の列が出て,そして,個々のそれぞれの抱えている問題を,ディスカッションの中でももちろん出てきますし,それから,その後,更に並んで,こういう点についてはどうしたらいいのだろうかという相談や質問が出てきます。それがやはり法的な問題だけではなくて,むしろ心理的なものとか,生活全般や将来に関わる不安とかというのもありますので,その辺りはやはり実情に応じて,複数のガイダンスというか,相談体制を充実させていくということが,協議離婚制度でどんな内容を当事者がどんなふうに決めていくかという,先ほどからある合意や取決めの適正の問題とか,いろいろありましたので,それが第1点です。   もう1点は,先ほどから佐野委員もおっしゃっていた,13ページの上の方の面会交流の取決めのときの考慮事項,考慮要素,基準ですけれども,養育費の場合は割合と考慮しなければならない事情とか問題になる点というのは比較的はっきりしていますので,その点は法定化というのはかなり重要かなと思います。しかし,面会交流の場合には,お子さんの年齢とか,発達の段階とか,それぞれの御家族が再婚するとか,いろいろな形で事情が大きく変わったり,望ましい内容や在り方もかなり多様で複雑になってきます。お子さんの意思というのも非常に重要だと思うのですが,やはり考慮要素を法律でもって面会交流の場合に決めていく,実施の有無とか方法,頻度でもそうですけれども,これはかなり,柔軟で弾力的な対応が必要であるのに,これに縛りを掛けることにもなりかねないので,慎重にされた方がいいという,佐野委員の御意見に今のところ私も賛成です。   もちろん,親ガイダンスの中身については,これはかなり重要なことですし,制度化のニーズは高いものがあります。ただ,どの機関がどういう内容のものをどんな形で提供していくかとか,実施していくかということについては,やはり集合型のガイダンスと個別型のガイダンスみたいなものについて複数用意して,各々抱えているニーズに応じた支援体制というものをかなり充実させるという前提ですと,その後のいろいろな課題として出されている問題についても問題解決の在り方が大分変わってくると思っています。もちろんDVとかそういうものも,戒能先生からも皆さんからもありましたけれども,東京都の支援講座をやっていても,そういう不安とか,そういうことを現実に抱えているというお話もありましたし,それから,暴言とかいろいろなものも,モラルハラスメントみたいなものもありましたので,やはりそういうことに対してきちんと,不安,それから問題を抱えている人への御相談ができるような体制を整えるようなことも併せて検討するということで,法制をどういうふうに変えていくかというのは非常に重要な要素になってくると思います。以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。11ページの2の@の養育ガイダンスについて,一般的なものと,それから,先ほどから出ておりますけれども,個別化されたものを用意していく必要があるのではないかという御指摘と,それから,12ページから13ページにかけての考慮要素基準の問題については,養育費と面会交流では少しやはり分けて考える必要があるのではないか,面会交流については慎重に考える必要があるという御指摘を頂いたかと思います。   大分時間がたっているのですが,落合委員から手が挙がっていて,今,赤石委員からも手が挙がりましたので,落合委員,赤石委員,お二人の御発言を伺ったところで休憩したいと思います。 ○落合委員 落合です。戒能先生からの御発言に対してなのですけれども,戒能先生の取組については非常に尊敬申し上げているのですが,今日おっしゃっている,今までもおっしゃっている,DVは例外ではないというのは,やはり私は受け入れられませんね,家族社会学者として。全ての夫婦間にはDVがあるということですか,例外ではないというのは。ここにいる全ての人たちはDVの加害者か被害者ですか,あるいは全ての親密な関係にはDVはあるということですか。それはすごく強い言明で,家族社会学者としては,やはり現実味がないと思うのです。それから,そういうDVがあるから一方の親の関わりを絶つということだと,父親の育児参加とか言っている今の風潮ですね,それは賛成している人が多いと思いますけれども,それも危険だと思われますか,普通の夫婦関係とか親子関係でですね。それは,いろいろうまくいっているケースも一杯あるわけですし,やはりバランスを欠くと思うのです。実務とか実践をやっている方たちは問題のある例を多く見ているのだと思いますけれども,しかし,それが一般であると言ってしまうと,やはり全体としてバランスを欠くと思いまして,どういう立場からこの審議会が議論しているのか,世間の人から少し疑問を持たれるのではないかと思うのですけれども。DVの問題とかが軽いことだとか,少ないと言っているわけではないのですけれども,それは例外ではありませんという言い方はものすごく強い言明なので,私はやはり学者として,それは言えません。 ○大村部会長 ありがとうございました。表現の問題もあろうかと思いますけれども,戒能委員にお答えいただいてもいいのですが,私の理解したところでは,それがマージナルな現象であって,周辺的な問題として位置付ければよいというような性質のものではないという御主張なのだろうと思います。全てのカップルの間にDVがあるという御主張をされているわけではないと受け止めておりますけれども,そういう御趣旨ですね。 ○戒能委員 そのとおりです。 ○大村部会長 ただ,落合委員のおっしゃることも分かって,例外ではないということになったときに,ではどのくらいあるのかという認識については,例外ではないという言葉が出ただけですと,なかなか皆さん一致しないところがあります。その辺りは,戒能委員もおっしゃっているようにデータがなかなかそろわないところがありますけれども,おっしゃっているのは,皆さんが思っているよりもマージナルな現象でないと受け止めていただきたいという御趣旨だと思いました。   またDVについて議論するときに,戒能委員あるいは落合委員の意見を更に伺いたいと思いますが,差し当たり赤石委員の手が挙がっているほか,窪田委員,原田委員,大石委員と立て続けに手が挙がりました。赤石委員には先ほど,続けて御発言を伺うと申し上げましたので,御発言を伺いますが,あとの方については休憩を挟ませていただいて,その後に御意見を伺いたいと思います。戒能委員ももし何か御発言があれば,休憩の後でお願いをしたいと思います。 ○赤石委員 しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。発言のチャンスをありがとうございます。先ほど細矢委員,御説明ありがとうございました。今,フラットな立場から中立的に関わろうとしているという御説明があって,確かに裁判所での対応が少しずつ変わってきているということは聞くところでございます。一方,5年前あるいは7,8年前に面会交流など,養育費とかで調停をされた方の本当に苦しんだ体験を聞いていて,そういう意図ではなかったという家裁の実務がどうしても原則面会交流となってしまった,そこの何か,法律を1個変えたことによってものすごい影響があるということの教訓を得られるのかなと思っておりまして,その間,離婚調停など裁判をされた方たちのアフターフォローは,やはり裁判所はできていないわけでございます。その間に,決まったことによって後で殺人事件なども行われていたことであったわけなので,その辺りというのは一体どう考えたらいいのだろうかというのは思ったところでございます。   だから,趣旨として掲げていくことと,それが実施されていくときのギャップというのを,私はものすごく川下にいるわけでございますので,感じたわけで,ですから,一つの法律を動かすということは,先ほど戒能先生も例外のお話がありましたけれども,一つのものを動かすということは,全ての方に適用されるのであれば,一番端っこにいる方たちの人権も考えないといけないということでございます。   もう一つ,細矢委員の御発言で,これだけ手間暇を掛けた実務をやろうとされているのだということを改めて感じました。そうであるならば,今の調査官の方たちの人員ですとか,何度も実務で聴き取っていこうとされているということでは,今の裁判所の体制で果たして可能なのだろうか,やはりこの辺りが,実は法律をどう変えるかということと同じぐらい大事なのは,裁判所の体制をどう充実させていくかというところにあるのかもしれないなというふうなことを,お話を聞いていて思った次第でございます。その点も非常に重要な点,要するに法律の条文を変えただけでは実現しない子どもの利益というのをどう実現していくのかも一緒に考えざるを得ないかなと思います。   11ページのところなのですけれども,協議離婚にある程度のかせを付けていくという方向性については,私はある程度は慎重なのですけれども,先ほどいろいろな委員から御意見があったように,養育費と面会交流は少しやはり分けて考えるべきですし,特に債務名義化というようなことに関しては,しっかり分けるべきではないかと思います。最初のヒアリングでもあり,ここでも9ページで,お子さんがやはり取決めをかっちりされたときにはなかなかうまく適応できないのだというようなお話もありました。それから,監護親,非監護親の事情というのも非常に変化します,ということがございます。それから,親ガイダンスにも関わるのかもしれないのですけれども,やはり取決めをするときの,別居されていることが多いのですけれども,ひとり親の経済的な,あるいは生活の実情が非常に日本は深刻です。これは,ひとり親の相対的貧困率が半分であるとすれば,別居時のひとり親と思われる方たちは多分80%ぐらいは貧困でしょう。非常に困難を多重的に抱えております。ここに厚労省的な福祉も届いていない,このことを解決しないと多分,協議離婚でどう決めていくとか,そういうことの議論になっていかないのですよということが,どうも法的な取決めの中で忘れ去られそうなので,少し言及しておきたいと思います。   この間,児童扶養手当の現況届時のいろいろな窓口でのハラスメントについての調査を,傷付く窓口ということで発表させていただきました。厚労省にもお届けしたのですけれども,実際には家の近くに前夫がいるだけで事実婚と認定されるですとか,そういう聴き取りをされておりますのが実情です。ですから,今の厚労省の運用だと,面会交流を認めている運用にも少しなっていないのかなと私は思っております。そういった別居時の対応ですとかそういったことをやはり社会全体で変えていかないと,民法,家族法の枠では変えられないものがあるなというのが私の印象でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの御指摘を頂きましたが,最後におっしゃっていただいた,家族法を変えることによっては変えることができない問題があるという点,これは確かにそうなのだろうと思いますが,家族法上の制度にしても,それを動かすための条件を考える必要があるのではないかという御指摘も頂いたかと思います。これは,先ほど沖野委員ですとか大石委員も触れておられたところなのではないかと思います。課題に即して言うと,課題のAやCについては,養育費の問題と面会交流の問題をやはり分けて考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。   先ほど申しましたように,まだ窪田委員,原田委員,大石委員と手が挙がっておりますけれども,始まりまして1時間半以上たちましたので,ここで10分休憩させていただきまして,その後,再開したいと思います。現在15時9分ですので,15時20分まで休憩いたします。   では,休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開をしたいと思います。   休憩前に挙手されていた方に順次御発言を頂きたいと思います。 ○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。取決め等に関する話ではないのですが,先ほどの落合委員と戒能委員のやり取りを伺っておりまして,少し今後の議論のためにも確認しておいた方がいいのかなと思いましたので,発言させていただきます。   もちろんこの審議会においては,法律の専門の人もいれば,それ以外の御専門の方とか,別の立場から参加されている方という形でおられるわけですが,特に落合委員と戒能委員のやり取りの中で気になりましたのは,原則,例外という言葉の捉え方が,多分,法律の専門家とそれ以外の方でかなり違うものとして扱われているのではないかという点です。もちろん落合委員の原則というのは,基本的な考え方としてこうではないかという趣旨のものであったと思います。それに対して,法律家の世界で,これは常にそうだというわけではないのですが,原則,例外と言うとき,多くの場合には,基本的にほかに特段の例外,事由が認められない限り原則が適用される,ただし特段の事情が認められる場合にはそれが否定されるというような枠組みの中で論じられることが少なくないように思います。   細矢さんから大変詳しく説明していただきまして,大変に有り難かったですし,私自身も改めてその論文の主旨というのを理解できた感じがするのですが,細矢さんから言及がありました平成24年の論文というのは,細矢さんもおっしゃるとおり,当事者主義的なものではなかったということなのかもしれませんが,この問題に関しては必ず引用される文献となって,それも恐らく本意ではなかったのだろうと思いますが,面会交流を求めれば,原則としてそれに応じなければならない,ただし子どもの生命身体又は心身に重大な危害を与える可能性がある場合にはその限りではないといった形で,そうした例外が認められない限りは原則が実施されるという枠組みとして理解されていたのではないかと思います。その原則,例外という枠組みの形で単純に使われることを懸念して,家庭の法と裁判の新しい論文の枠組みというのを提示していただいたということなのだろうと思いますが,原則,例外という言葉が持っているものとして,そういうニュアンスが法律家にはあって,非常に慎重になっているのだという点を理解してもらってお互い議論していかないと,実りのない議論になってしまうのではないかと思いました。   なお,追加でひとつだけ発言させていただきますと,青竹先生からは,実務もだんだん落ち着いてきているのではないかということだったのですが,私もここ2年ほど審判例,それから決定を見ているのですが,家庭裁判所と高等裁判所でかなり温度差があるのではないかという感じもしております。家庭裁判所ではいろいろなことを踏まえながら,正しく細矢さんから指摘していただいたような枠組みの中で判断しても,高裁に行ったら例外事由が認められない,だから面会交流を認めるというような判断が出ているものに結構立て続けに接する機会がありまして,その点でもどうも実務の状況も単純には言えないのかなと思いました。   最後の点は余計な点まで含めてしまいましたが,基本的には言葉の点で詰まらない形での議論にならなければいいなということだけでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。実務の状況についての御発言を別にすると,議論の仕方について,あるいは法律家とそれ以外の方々の想定している場面の違いといったことについて御説明を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○大石委員 千葉大学の大石です。単なる情報提供なのですけれども,法務省の協議離婚実態調査には離婚の原因について監護親と非監護親を分けた集計が掲載されておりまして,暴力についても知ることができます。報告書の43ページです。事務局がお持ちだと思いますし,ホームページから誰でも入手可能ですので,後で御確認いただければと思うのですが,さわりだけ読み上げます。複数回答なのですけれども,監護親の場合には身体的な暴力を理由に挙げるのが11.6%,精神的な暴力を挙げるのが26.8%,経済的な暴力を挙げるのが20.4%,子への虐待が7.2%となっています。あとは浪費ですとかギャンブルですとかといったものが出てくるのですが,監護親も非監護親も性格の不一致を挙げるのが一番多い傾向にあります。ただし,性格が一致していたら離婚しないと思いますので,それ以外の要因に着目したほうがよいかもしれません。非監護親は性格の不一致以外をの要因を挙げる傾向が余りなくて,性格の不一致の次に高いのが親族との折り合いや異性関係というような順番になっています。もちろんこれはウェブのモニターを対象とした調査ですから,それなりに安定した環境にある方々ということになりますし,代表性があるわけではないですし,かつ主観的な報告なので,バイアスは含まれているとは思いますけれども,暴力の存在についての一つの参考資料として捉えることは可能かと思いましたので,少し申し添えただけです。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。データについて御紹介を頂きましたが,最後のところでおっしゃっていただいたように,幾つかの前提の下で評価をする必要があるデータという形で御紹介を頂いたと理解をいたしました。 ○小粥委員 小粥でございます。面会交流に関して,やや抽象的なことを二つ申し上げたく存じます。   一つ目は,どういう場合に面会交流を許すべきかについて,個別事情に依存する部分が多いので,なかなかルールを明示することは難しいし,重要な考慮要素を導き出すということにも慎重になるべきだというような御意見が多かったのではないかと受け止めました。しかし,それだからといって,この審議会でその点について,民法にいかなるルールも,あるいはファクターなども設けないということになりますと,問題は裁判所が解決するということになって,裁判官の判断に委ねられるということになります。それを更に具体的に言いますと,ここについては民法に規定がないことになるので,実務をどうするかについて裁判官が研究する,事実上論文を書く,その論文に基づいて実務が動くということになるのだろうと思います。ですから,問題は,決めるのが難しいから,ここで決めるのをやめるということがよいかどうかではなくて,問題を審議会で決めるということは法律案を作るということにつながる作業なので,法律で決めるのか裁判官の判断に任せるのか,それのどちらがよいかという観点から考えるべきではないかと思いまして,私自身は少し大事なことは法律で書いた方がよいのではないかと考えておりますが,その具体的な議論はまた必要だとは思っております。以上が一つ目でございます。   それから,二つ目のことは,面会交流というものの法的な性質についてでございます。これは,落合委員の今日の一つ目の御発言と,それから,久保野幹事の御発言とも関係するところですけれども,例えば祖父母なんかについてはどうかというような問題とか,あるいは,子どもにとってどういう意味があるのかというようなことを考えると,どういう場合に面会交流を認めるのかということが,今の夫婦間の問題として何となく捉えられているような面会交流の概念では収まらないような問題についても議論の俎上に上り掛けているように思います。ですので,今後の議論に際しては,従前の現行法の766条の面会交流についての議論からあるいははみ出す,踏み出す,あるいは変えていかなければならないようなところもあると,実際にそういう議論が既にこの審議会に出ているのではないかと思うと,以上が2点目でございます。   長くなりまして,失礼いたしました。 ○大村部会長 ありがとうございました。二つ御指摘いただいたかと思いますが,一つは,ルール化が難しいというときに見送るということがどのような意味を持つのかということについて,御見解をお示しいただいたと受け止めました。それから,2点目については,先ほど御発言もありましたし,これまでもありましたけれども,面会交流の主体を広げていくという御指摘がありますけれども,それを民法の現在の規定との関係で位置付けて,その外にはみ出しているという理解の下で議論をしていく必要があるという御指摘だと受け止めさせていただきました。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。先ほどは第3についてということで述べさせていただきましたので,次に第4について,特に面会交流の実施の有無であるとか方法であるとか頻度,ここについて意見を述べさせていただければと思います。   私たちが当事者から話をお聞きする限り,又は司法統計でも,今,面会交流頻度は月1回,これが非常に多いと思っています。少し前は2か月に1回が多かったかなと記憶をしております。国会での政府答弁などでも,様々な事情を総合考慮して,子の利益の観点から決定されているという答弁がいつもなされています。とはいいながら,自身の経験,こういった当事者の皆さんから話をお聞きする限り,月1回の親子の交流,2時間,これが子の利益であるという説明を受けた人を私は聞いたことがありません。裁判官から,月1回が子どもの利益なんだ,理由は説明する必要ない,このようなことを言われた当事者もいます。個別の中身について余り申し上げるつもりはないですけれども,何でこの月1回が子どもの利益に資するのか,これは是非,今日,最高裁の方からも少し論文の紹介もありましたので,この場ではなく,もう少し私もきちんと拝見してから,改めて意見を聞いてみたいと思います。是非御参加の委員,幹事の先生方にも今一度考えていただきたいと思います。同居時は一定の監護を担っていた一方の親,任意の話合いであれば合意できれば何とでもまとまります。しかしながら,家庭裁判所に調停を申し立てたら,これは前回も申し上げましたけれども,直接の面会が許容されるのは51%,半分です。本日も原則面会交流,言葉として出てきましたけれども,少なくとも司法統計上の数値,この51%という数字は,これは前回も申し上げましたが,民法766条改正前からおしなべて変わりません。なので,そのような原則面会交流であるというような実感は私たち当事者の実感としてはない。原則面会交流ということは,本日の御説明でもあったとおり,裁判所の調停運用の中での話なのだろうと思います。   また,前回も発言が出たのですけれども,直接交流だけにこだわってはいけないと,何かそのような意見がほかの先生方から出ていると感じました。確かに理論的に言えばそうなのだろうということは私も分かるのですけれども,今の実態としては,直接交流か,認めないか,間接交流か,いずれかしかないのです。一旦,間接交流,間接交流って何かというと,最近はいろいろなリモートとか電話とかと言っていますけれども,基本的にリモートなどの交流はごくわずかです。基本は手紙です。一方的に手紙を送るだけ,又は一方的に写真を送るだけ,これが今の家庭裁判所の審判で出る間接交流のほとんどのケースだと,私は感じています。このことは調停の現場をよく御存じの弁護士の先生はお分かりいただけると思います。では,一旦それで間接交流の決定が出ましたと。現在の調停運用では,裁判所はもう関係なくなりますよね。審判なのか,調停に代わる審判なのか,合意せざるを得ない状況になって合意するのか,いろいろなケースがありますが,一旦それで合意をすると,最後に調査官なんかがよく言われますよ,お母さん,諦めないで,今回は間接交流の決定が出たけれども,もう一回申し立てればいいのよ,大体みなさんそれで調停の再申立てします,1年後ぐらいに。すぐやりたいとみんな言ってきますけれども,1年後ぐらいに申立てします。結論はどうなるかというと,変わりません。1年離ればなれになっていて間接交流の決定,再調停申し立てまで更に1年離ればなれになっていて,そのような環境で子どもが素直に会いたいと言えるでしょうか。なので,直接交流という主軸があって,1年離れているから一回直接交流してみましょうと,それで,距離的な問題,まだ夫婦間の葛藤もある,では,そこを間接交流で補っていきましょうと,例えばそういう運用がなされるのであれば,まだよいと思いますが,今,実態としてはこういうオールオアナッシングになります。一回間接交流決定が出たら,大きくなって子どもがお父さん,お母さんを探しに来るまで,親子断絶です。これが実態です。まずそういった実態を委員の先生方にも御理解を頂きたいと思います。   次に頻度に関してです。先ほど,月1回という頻度が相場であると説明を申し上げましたが,別居まで,私もそうでした,同居時は私,長男と毎日寝ていました。お姉ちゃんはお母さんと,弟はパパと。それが別居したらか突然,年間12日です。1回2時間だと年24時間です。そもそも親子の交流って何のためにあるのか。私はメディアの取材によく申し上げるのですが,私たちは月1回,2時間,近所の公園で遊ぶだけの親戚のおじさんみたいになりたいわけではない。うれしいことも悲しいことも含めて子どもの育ちに関わりたい。落合委員もそのような育児参加的なことをおっしゃっていただきましたが,そうなのだと思います,今や国民の声は,それが親の役割であると思っています。つまり,親子の交流というのは,民法改正前の面接交渉とか,今の面会交流とか,囚人に許可されるようなものでよいのでしょうか。本日,後半どこまで議論が進むか分かりませんけれども,離婚後の子の養育の在り方,やはりこういった囚人に許される面会とかというものではなくて,ペアレンティングタイムであるべきではないかと,そんなふうに思います。   頻度に関しては,前回,先月の第5回会議にて,アリゾナ州のモデルペアレンティングタイムプランという参考資料を提出させていただきました。法定化するのにハードルはたくさんあろうかと思います。昨年ですかね,アリゾナ州は原則フィフティ・フィフティと,フィフティ・フィフティがよいかという議論はするつもりは今はありませんが,フィフティ・フィフティを原則の養育時間とする内容で法改正がなされたと聞いております。先月提出させていただいたモデルはその前のプランでございます。隔週2泊3日の宿泊面会に加え,長期休暇,祝日,記念日,合算して大体年間100日程度,最低でも30%の監護の分担をするということが基本的な考え方,これが子どもの情緒的安定につながるという背景を基に定められたと聞いております。是非御覧になっていただきたいのですが,年齢ごとのプランに加えて,子の年齢,当然,両親間の家の距離ですね,何らかの基準,それが子どもの福祉に資するモデル,こういったものを考えるために前回,参考資料として出させていただきました。早々に決められる話ではないということは認識しております。是非委員の先生方も一度御覧になっていただければ,英文に加えて,拙いながら邦訳も付けさせていただきましたので,是非御一読いただければと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。面会交流の取決めの内容について,御自身の認識を御披露いただき,御意見を頂きました。あわせて,面会交流という現在の捉え方でよいのかという問題提起を頂いたものと理解しました。   これで一応,挙手をされている方々からは御意見を伺ったかと思います。第3,第4につきましては様々な意見を頂戴いたしましたが,一読ということですので,何らかの方向性を確認するということをせずに,皆様の御意見を伺ったということで,次のラウンドに進ませていただきたいと思います。   第3,第4につきましては御意見を頂きましたので,続きまして,13ページの第5の裁判手続等に係る部分につきまして,面会交流に関する御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。 ○棚村委員 面会交流についてなのですけれども,16ページの課題というところで,調停審判で必要がある場合には暫定的な面会交流を実施させるということで,恐らく今も試行的面会交流というのはかなり重要ですし,有効な働きをされているところは周知のところだと思います。家庭裁判所において,調査官が中心となって実務上,実施されている試行的面会交流について規律をおくことはあまり問題はありません。ただ,この提案の中に,例えばFPICとか,民間の支援団体みたいなのがあって,そういうところに,協力してもらい報告をしてもらって,それを是非活用したいということだとすると大きな問題がでてくるように思います。私は厚労省から2019年度に面会交流相談支援事業をやっている団体の全国調査というのをさせてもらいました。その結果を見ると,ひとり親の自治体が支援をしているところ(自治体系)と,ご自身が問題を経験した当事者の方たちが中心となって支援をしているところ(当事者系)と,それから,調停委員とか元調査官や弁護士さんなんかが中心の,FPICが一番大きいのですけれども,そういうようなところ(司法系),55団体の調査をさせてもらいました。そこのところでやはり出てくるのは,民間団体がかなり人材とか財政的に厳しい中で頑張っておられるという姿だったのですが,裁判所と民間団体との連携というのですか,そういうことが非常に重要になってくると思います。   それで,私自身は試行的面会交流というのが,ある意味では,面会交流そのものだけではなくて,その後の親子の関わりにも非常に重要ですので,そういうような機会を,家裁の内部だけではなくて,他の機関と連携してやれるということも可能性としては必要だと思います。ただ,こういう暫定的な試験的な面会交流みたいなものの実施の結果の報告については,その調査結果からもあったのですけれども,やはり守秘義務とか個人情報の問題があります。結局,お子さんがどういうふうに会ったかをそのまま伝えるということがお子さんにとっても非常につらいときもありますし,それから,家裁なんかがそれをどういうふうに利用するかということについても十分な協議とか連携というものが前提になってくると思いますので,その後の方の19ページとも関わるのですけれども,やはり公的助成とか質の保証というので認証制度みたいなものも必要にはなってくるかもしれません。しかし,その辺りのところで,やはり個々の支援ニーズにこたえた民間の柔軟な活動とか弾力的な活動というのもあるので,余り画一的にどういう基準を備えて,どういうところだったら認証してお金も与えるという,そういう形にならない方がいいのではないのかなということです。財政的支援とか,公的助成と交流場所の確保・利用が,面会交流支援の民間団体では,そういう調査をしたときに,必要だという声がたくさん寄せられました。それから,関係機関,弁護士会とか裁判所とか,医療・福祉・心理などの専門職や関係機関との連携を持ちたいという要望も多く出ていました。つまり,自分たちの相談支援体制に不足する能力・人材とかいろいろなものを補いながら,お互いに補完してやりたいというニーズはものすごくあるのですけれども,そういう点で言うと,DVとかこういうプログラムなんかもそうだと思うのですけれども,正に受付をして,事前の準備,それから実施をするレベルで,相当いろいろな問題が出てくることに配慮をされて,こんなことが課題や問題として出てきて,自分たちだけではなかなかうまくいかないという声がありました。つまり,面会交流についての機関連携の問題についてはニーズがすごくありましたので,是非,試行的な面会交流の御提案もそうですし,御配慮いただければ幸いです。それから,民間団体に対する公的助成ということになれば,第三者による認証評価みたいなこともでてきますし,それから,加害者のDVプログラムというのも少し出てきているのですけれども,この辺りもやはり,先ほどのガイダンスのときと同じで,集団プログラムみたいなものが有効な場合と,それから,個別の専門カウンセリングとか,そういうアプローチが重要なところもありますので,その辺りのところは少しきめ細やかに検討していただきたいと考えております。つまり,法制でどういうものを作っていくかということと,実際に支援みたいなものをどうするかというのを,少しセットで御検討いただければと思います。   少し長くなりましたけれども,16ページのところ,それから19ページのところのいろいろな具体的な支援の提案とか,そういう辺りのところについても意見を述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。民間の面会交流支援機関の在り方については,これまでにも話題になったことがあろうかと思いますけれども,そうしたものに対する支援も必要である,それから,裁判所を含む組織間での連携といったことも考えていく必要があるという御指摘を頂いたと思います。どうもありがとうございました。   そのほか,第5の部分につきまして御指摘,御意見があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○佐野幹事 第5のところをまとめて申し上げます。   まず,14ページの申立てに関する課題ですけれども,イの@のところ,これは子の監護に関する家庭裁判所の手続ということで,養育費だけではなくて子の監護全般に関するご指摘かと思います。そうすると,面会交流とかも入ってくるため,DV被害の方たちなどは住民票を移転しないというケースがかなり出てくるのではないかという現実的な懸念が出てきます。また,現在住所は当事者には閲覧させないということを前提とはしているのですけれども,調査の結果,申し立てたところに管轄がないということが分かった場合にはどうするのか,移送するのか,そのような検討の必要性も出てきます。   それから,Aのところ,これは養育費に関することではありますが,公示送達を簡単にするというのは養育費減額の場合にも適用されるということは念頭に置いて議論しないといけないのだろうと思います。   それから,次に16ページの暫定的面会実施のところですけれども,これについては,実施の前に安全性に対する判断は絶対に必要になるだろうとは思います。ただ,実際に実務をやっていると,実際に実施している現状を見ることにより,その夫婦が持っている問題,どこが課題になっているのかというのを分かることもあり,そういう意味では,材料を得られやすいということはあるかと思っています。これと併せて,正当な理由があれば格別,正当な理由がない調査拒否に対する対応の検討も必要なのではないかと思います。   また,子の監護に関する処分の子どもの申立権というのも検討すべきではないのかなと思います。実際あった例として,子ども自身はすごく面会を嫌がっているのですけれども,結局,監護親の方は養育費をもらいたいから,子どもに面会しろといいと言い,非監護親の方は会わせろと言う場合,父母の利害は一致しているものの,子ども自身がそれに巻き込まれて利益を害している場合,それを是正する方法がないというような事案もありますので,子ども自身の申立権というのは検討されるべきではないかと思います。   それから,19ページの面会交流機関の認証制度の話については,棚村先生がおっしゃったような問題プラス,支援機関に報告義務などを負わせると,今,支援機関もかなり,当事者からの攻撃に遭ってもいるようですので,いかに支援機関を保護していくかということも検討が必要になるのではないかと思います。   それから,非監護親に対するDV加害プログラムだけではなくて,監護親に対するカウンセリングなどの手当てによって,極端にマイナス思考になりがちな当事者が,プラスに考えられるようになって前向きになるというような場合も経験しています。ただ,その際に問題になるのは,やはり経済的になかなかカウンセリングを続けられないといったところもありますので,そういったソフトなアプローチというのも充実させていく必要があるかと思います。それから,もう一つ,一番問題となっているのは,今,面会に関しては,子どもの拒否ですので,それに対する対応というのも必要になってくるのではないかと思います。   面会交流の強制執行,これはない方が望ましいとは思うのですけれども,ただ,その前の任意の話合いを促進するという意味では,最後の手段として,規定としてあるというのもありなのかもしれないと,悩ましく感じているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。多数の御指摘を頂きました。この資料の中に出てこないもので,調査の拒否の問題ですとか,子どもの申立権の問題ですとか,あるいは民間の面会交流機関についての支援だけではなくて,保護も必要ではないかといったような御指摘,監護親の側へのカウンセリングも必要だといった御指摘も頂いたところかと思います。全部尽くしていませんけれども,多数の指摘を頂きまして,ありがとうございました。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。第5のところの,養育費の審理手続,あるいは執行手続については,前回発言させていただきましたので,それと重複しないところで,18ページと19ページの面会交流の強制執行の方法について,少しだけコメントさせていただければと思います。   現在は,強制執行の方法としては間接強制の方法が認められていて,ただし間接強制するためには執行可能な程度に給付の特定をすることが必要とされていますが,実際には間接強制をしても面会交流が実現しないので,直接強制の方法についても課題のBとして検討すべきではないかとなっているかと思います。間接強制は債務者,この場合,監護親に心理的なプレッシャーを与えることによって債務の履行を強制するというものでありまして,それしか執行方法がないのでは不十分かと思いますし,また, 強制金を積み立てれば解決するかというと,今度は実効性や過酷執行とのバランスも考えなければならないと思います。   さらには,裁判例を見ると,間接執行は債務者に心理的にプレッシャーを与えるという執行方法なので,子どもが嫌だと言っていると執行できないというような例もあったりするところです。結局,強制執行できないような場合には,その背景には,そもそも取決めがない場合もあるかもしれませんが,取決めがあったとしても,子どもの成長に応じて取決め内容が実情に合ってこなくなっているということもあるかと思いますので,まず,子どもの成長に応じて子どもの意思を適宜反映させる手続を作ることを条件に,間接強制以外の直接強制,あるいは,養育費のところでも出たような,18ページの(注3)のところにあるような,その他の制裁というものも,実際に課すかどうかは別として,設けることもあり得るかとは思います。   直接強制は,子の引渡しの場面でも実際に認められていますが,これを入れるとしても,間接強制ができないような場合に限るという形で補充的な制度として作っていく形にしていくのがよいと思いますし,強制方法を多様化していくのが適当であろうと思います。ただ,繰り返しになりますが,前提として,子どもの意思をきちんと反映していくことが不可欠であろうかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。面会交流の場合の強制執行の方法について,間接強制以外の方法というのも考えていくべきではないか,その際に子どもの意思というものを状態に応じて勘案するための仕組みを組み込むことも必要であろう,こういう御指摘を頂いたかと思います。 ○原田委員 ありがとうございます。試行面会の16ページのところなのですけれども,現在でも試行面会が行われていて,ただ,ここで書いてあるように多くの場合,一回的な交流を観察するだけということで,継続的なものが必要だというところは,私もそう思いますし,これは逆に,裁判所が一旦決めた後も一定期間見守るという仕組みが必要なのではないかと思っています。先ほどから出ています,子どもの成長によって状況が変わっていくというときに,だんだんと子どもの意思,あるいは部活だの何だのということで,なかなか決まった日に決まったようにはできないという状況になったときに,それが決まるまでは面会交流をしなければいけないということになって,その部分,間接強制が行われて,お金を払わなければいけないというような事態もあり得ますので,そういう意味では,裁判所が一旦決めた後も何らかのフォローをする仕組みというのは必要なのではないかと思いますし,棚村委員がおっしゃったように,逐次報告させると,個人情報の問題や子どもにとって負担の問題もあるというお話もあるかもしれませんけれども,やはりそのときの面会の様子や,子どもがどんなふうに話をしていたかというようなことを一定,裁判所に報告させると,あるいは報告することができるというような仕組みも考えていいのではないかと思います。   一つ私が懸念しているのは,16ページの命令によって暫定的な面会交流を実施させるというところなのですけれども,やはり今,調査命令が出て,調査命令を出すに当たっては,大体今,本人たちの同意を取っているというのが原則です。それでも同意せざるを得ない状況になっているというのが実態で,例えば,試行面会した後,子どもさんの様子はどうですかと聞かれて,夜泣きしましたとか下痢しましたとかいう話があっても,それが数日で収まると,ではそれは大したことありませんねという形になって,そのまま過ぎていってしまうというところがあります。ですから,やはり面会ができないとか,子どもの意思が,嫌がっているとかいうような場合に,どうしてそうなのかということ,その理由を非監護親にきちんと理解をしていただくというような手厚い手続の履行というのか,そういうものが必要になるのではないかと,そういうものがないと,今の状態での命令というのはかなり懸念を感じると思います。   それから,19ページの一番最後の課題のBのところですけれども,いわゆるこれはフレンドリーペアレントルールというようなものを導入する的な考え方ではないかと思うのですけれども,これについては先回の小川先生の御報告や,あるいはドイツでも,あるいは韓国や,報告にはありませんでしたけれども,カナダとかそういうところでも,やはりそういう監護親の態度を可とするというような条項についてはなくしていくという方向になってきているということもありますので,やはりこれがありますと,応じなければ自分に不利になるのではないかというプレッシャーがかなり監護親に掛かるということもありますので,これについては消極的に私は考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。大きく3点,御指摘を頂いたかと思いますが,16ページの試行的な面会交流,1回限りではなくて,裁判所が継続的にフォローアップするような仕組みを考えるべきだということ,それから,命令については慎重な取扱いが必要だということ,最後,19ページのフレンドリーペアレントルールというものについては消極的な意見を持っているということだったかと思います。ありがとうございます。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。私からは19ページのイのBの面会交流の直接的な強制執行について意見を申し上げます。   私はこれに関しては反対です。先ほど佐野先生から御意見があって,こういう制度を設けておくことで任意の履行が進むのではないかというふうな御指摘があって,抜かれない伝家の宝刀というふうな位置付けで,一定の考慮の余地があると承りました。しかし私は,それであってもやはり抜かれないかどうか分からない伝家の宝刀を制度として置くのはどうかなと。そのときに思いますのは,子の引渡しのときの直接強制がいかに子どもにとってストレスフルなものなのかということです。面会交流というのは複数回継続的にやるものですから,何回もひょっとして直接的な強制執行をされるという可能性もあり得る制度であれば,それだけ子どものストレスは非常に高いということになりますので,なかなかこれは難しいのではないかと思って,反対の意見を申し上げる次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。直接的な強制執行のもたらすマイナス面について考えると,これについては反対であるという御意見を頂きました。 ○今津幹事 幹事の今津です。資料の19ページの課題に関して発言させていただきます。   まず,@のところですけれども,民間の支援機関について位置付けを明確にするという方向性については賛成の立場であります。それに加えてといいますか,更に踏み込んだ形で,既存の,例えば執行官なんかに子どもの心理や発達の専門家を入れるということも考えてよいのではないかと思っております。既に子の引渡し執行が制度化された段階で,執行官が非常に重要な役割を担うという形になっておりますので,それも含めて,執行官にそうした法律以外の専門性のある方を入れるということも検討されてよいのではないかと考えております。   それから,Aのところですけれども,審判においてプログラムの受講を条件とするという点ですが,そういったプログラムが存在するということは承知しているのですけれども,それがどこまで実効性のあるものなのかというところについて,私はよく分からないので,本当にこういったものがDVの改善に役立つということであれば,こういった条件とするという方策も有効かと思うのですけれども,その辺り,御承知の点があれば,委員の皆さんにお伺いしたいと思っております。   それから,Bの点で,直接的な強制執行を可能とするかどうかという点については,私も,先ほど杉山幹事からお話があったように,制度を設けることも完全には排除しない形で議論してはどうかと考えております。こういった方法があることによって任意の履行が促進されるということもあるでしょうし,子どもが面会交流を嫌がっていない,望んでいるけれども,監護親が拒否しているというケースもないわけではないと思いますので,そういった場合に何ら直接的な手段がないということになりますと,審判の実効性の確保という点で疑問が出てきますので,そういった可能性も排除せずに議論していただいてはどうかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。19ページのイの課題のところの,@,A,Bについてそれぞれ御意見を頂いたかと思います。執行官に法律家以外の専門家を入れるという御意見や,あるいはプログラムの実効性についてどうかという御疑問,そして最後に,強制執行について,任意の履行を促進するという観点から,やはりあった方がいいのではないか,これは先ほどから意見が分かれているところでありますけれども,そのような御意見を頂いたと理解をしております。   そのほか,御発言はいかがでしょうか。 ○武田委員 親子ネット,武田でございます。第5に関してということで,3点ほど意見を申し述べたいと思います。   1点目は,16ページ,試行面会に制度的裏付けを持たせることについてです。面会交流調停に入るケースっていろいろなケースがあると思います。余りこの言葉を言うと,またいろいろと批判されるとは思うのですが,同意なき連れ去り事案,このような同意なき連れ去り事案においても,本当は任意の話合いで面会についても合意したい。やむなくその後,期間がたって,これはもうどうしようもないということでやむなく申し立てるケース,こういったケースが多いものと思っています。親の思いを言うのは非常に恐縮なのですけれども,子どもたちが無事に暮らしているのか,大体こういうケースって転居を伴っていますので,寂しい思いをしていないか,元気な姿を見たい,裁判所に行ったら何とかしてくれるのではないかという思いで調停に臨むと,そんなケースだろうと思います。   これも司法統計ですけれども,面会交流調停の平均審理期間は今,平均的に10か月と言われております。これは私の肌感覚ですけれども,今回,1点目で申し上げる試行面会,ここに至るまでどれだけ時間が掛かるのだと。多分6か月では無理ですね。少なくとも8か月ぐらい,期日4回,5回,このぐらいは少なくとも掛かる。私は自分のケースを思い出しましたけれども,試行面会を得られたのは13か月目でした。別居後もずっと私は子どもと会えていて,いきなり,会えなくなりました。それで調停を申し立て,13か月目,会えなくなってから通算で1年半ほど経過してようやく試行面会にたどりつきました。私は試行面会の前,会員のみなさんに聞きまわりました。みんなから,1時間何すればいいの,どんなおもちゃを持っていけばいいの,もうどきどきです。あんなに仲よかったはずなのに,調査官報告を見たら,パパのこと嫌いになったとか書いてあるし,そんな思いで,要は何が言いたいかというと,それほど再会までに時間が掛かるということです。その間に子どもは離れて暮らす親のことを忘れようとします。これはもう本当にそうだと思います。   そんな状態の中で,試行面会,私,不勉強で申し訳なかったのですが,何でこの試行面会に至るのにこんなに時間が掛かるのだろうと。やはり私が聞いている話も含め考えますと,試行面会に至れないケースってすごくあるのですね。試行面会なしで合意させられてしまった,審判が出てしまった,非常に多いと思います。先ほど,平均審理期間10か月と申し上げたではないですか,私のケースもそうですが,試行面会まで1年を要するということは多分,試行面会をやっていないケースって相当数あるのではないかと,これは別途,北村さん,何かそんな数字があれば,宿題を出してすみません,教えてほしいと思います。今,肌感覚として,試行面会に至らない調停のケースというのが相当数あるのだろうと,そんなふうに思っています。このような家裁実務,私は課題と思っておりますが,試行面会に制度的な裏付けを持たせて,健全な親子の断絶期間,ここを最小化していくという制度は是非制度化すべきと思います。   家裁で試行面会をやるということですので,離れて暮らす親,お子さんから見て安全が担保されるということ,私のように1年半試行面会実施までに時間がかかるではなく,少しでも早く無事な姿を見られれば,逆に離れて暮らす親の葛藤も下がり,あわせて,今,子の意向調査までも結構時間が掛かるではないですか,そういった調査も併せて実施でき,あと,家裁で意向調査をすれば,横で同居しているお父さん,お母さん,おじいちゃん,おばあちゃん,別室になりますので,まだ発言しやすいのではないかなと,そんなふうに考えています。試行面会,調停期間中に実施して,一定の実績を調停期間中に積む。棚村先生からいろいろな課題があるという発言もありましたけれども,調停期間中も,例えばこの面会交流支援機関と連携をとって,きちんとできた報告内容を基に裁判所が判断していく。こんなふうに,課題は多々あろうかと思いますが,進める方法もあるのだということを改めて感じましたので,是非この試行面会の制度化,検討を進めていくべきと思います。   2点目は,19ページの方になりまして,面会交流支援機関に関してです。最近ある会合で聞いたのですけれども,現在,全国で65か所だそうです。FPICさんだけで多分14か所ありますので,地域は偏在していると思っています。要は,面会交流支援機関が存在しない都道府県,多数あります。この支援機関を民事法に位置付けた上で公的支援も含めて検討していくこと,これは当然必要であろうと思います。しかしながら,この面会交流支援機関の位置付けに関して,申し上げておきたいことは,飽くまでこの親子面会交流というのは当事者のみの実施,これが原則であると。支援機関の利用が原則とか,支援機関を使うことが強制とか,そういうものではないことを前提に議論を進めていただきたい,このように考えています。   最後,3点目です。調停や審判が不履行になった場合ということです。これも前回,日弁連さんのアンケート結果を紹介いたしましたが,面会交流については,裁判所で合意に至っても履行されないのが44%,これは前回申し上げたとおりでございます。その抑止力ということでいろいろ意見が分かれていると思いますが,現在認められている間接強制,これは最近,間接強制要件を満たす審判って余りもう,数少なくなっているのではないかなと,これは,すみません,根拠はないのですけれども,そんなふうに感じています。逆に,この間接強制要件を満たす結果が出たからといって,それで間接強制に至るまで,これはどれだけ時間が掛かるのでしょうかということ,あわせて,お金と親子の交流,何かこれをてんびんに掛けるようで,このような実態から余り良い制度だとは私は思っていません。やはり基本的にはきちんと,お子さんも含めて両親が合意すること,納得感の合意を得ること,これがないと,いろいろ出ておりますが,再婚したから会いたくなくなったとか,やはり納得感がある合意を形成していくことが重要と,そんなふうに考えています。   では,対策として直接強制なのかという話でありますが,私は,直接強制には,抑止力という観点では意味があると思いますが,後ろ向きに感じております。どちらかというと監護者変更の要素となる,又は過料,こういった方法で抑止力を持たせる方が,直接強制,引渡しよりはよいのではないかと,こんなふうに考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘は,一つは試行的面会交流については,手続に時間が掛かる,あるいはそれに至らないというようなことで,実情はどうなっているかといった御質問がありましたけれども,事務当局の方で何か分かればお答えいただき,直ちには分からないようであれば,裁判所と相談していただいて,出せるようなものがあれば出していただくということでよいですか。それから,2番目に,面会交流支援機関の位置付けについて,補助的なものとして位置付けたいというような御意見,そして最後は,間接強制,直接強制のいずれにも疑問があるので,それ以外の手段の方が望ましいのではないか,こういう御意見を頂きました。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。先ほど大石委員が離婚についての認識について,暴力のデータを示してくださったのですけれども,やはり被害を受けている方が暴力被害の認識をする率と,言わば加害をされている側の認識にかなり,もちろん同じカップルを調査しているわけではないから,出現率とかいろいろあるのでしょうが,若干認識の差があることが分かるなと思って聞いておりました。ですので,ここは本当にかなり永遠の課題で,御自分がやはり圧迫感を持った行動をするとか,そういったことがどういうふうに影響されるのかというのをなかなか気が付くことができないということがあるかなと思います。   それで,19ページのところを少し言及しておきたいのですけれども,課題のところで,民間の面会交流支援機関については,何らかの形で位置付けをしていくということは必要だろうと思っております。この認証に関しては,いろいろなステークホルダーが知恵を絞って,どのような認証をしていくのかという方向を議論した方がいいと思っております。それと同時に,昨日もある支援団体の方から,都内でうまく面会交流で使えるような安価で安心して遊べる場所はないでしょうか,みたいなお話があったのですけれども,やはり行政機関がそういう後押しをする,前に明石市で天文館を無料にして面会交流に使ってください,みたいな施策を最初に打ち出したことがありました。天文館に行ってみたら余り子どもが遊べるスペースはなくて,今は明石市は駅前にすばらしいパピオスという施設があって,そちらの方が全然遊びやすいので,もう天文館は多分,皆さん,それほど行かれないと思います。そこはとても楽しいボールプールなどがあります。泉市長が一生懸命造られたと思いますけれども,いい施設です。そういう後押しも一緒に必要であるということです。ただルールではなく,そういった行政の取組が必要かと思います。   それから,直接的な強制執行については,私は,ごめんなさい,肌感覚で申し上げますけれども,反対でございます。   それから,最後,Bの後半ですね,フレンドリーペアレントルールについては,今までいろいろ,オーストラリアでの経験とかを前回聞きました。やはり虐待や暴力といったものを言いにくくなる,発見しにくくなる,フレンドリーペアレントルールがあることによって,相手を許容する親の方が監護親になりやすいということになってしまいますので,非常に危険なルールであると思っておりますので,これについては皆さんも認識されたかと思うので,今後,議論すべきではないということで一致できるといいなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。19ページの課題のところについて,具体的な御意見を頂きました。面会交流支援ということについて幅広に,支援機関だけではなくて環境の整備ということについても考えるべきだという御意見と,それから,強制執行については反対であり,フレンドリーペアレントルールについても導入すべきでないという御意見を頂きました。 ○原田委員 ありがとうございます。先ほどちょっと言い忘れたことなんですけれども,いいですか。   19の@のところの認証機関の問題なのですけれども,この前,ヒアリングのときにもやはり費用のことがいろいろ心配で,御意見も頂いたと思うのですが,どうしても実施することによって収益というか費用が得られるという傾向にあるように思いまして,終着が面会交流を実施するということになっていると,やはりロードマップを作って,どうやって面会を実施するかということになりがちなので,安全・安心が保障されるのかということが心配です。そういう意味では,財政面や運営面での公的な支援というのが本当に重要だと思います。それから,この前行われていたヒアリングでは,専門性について特別な資格というものは持っていないという方がほとんどだったと思いますけれども,そのような専門性についての確保ということがやはりどうしても重要になるのではないかと思って,そうやって公的な財政面の支援をすると,税金の投入ということになるので,今度はどうやって監督するかという問題が出てくるというふうになると思います。その点は少し私は苦手な分野ですけれども,そのような財政面や運営面での支援というのを是非やっていただきたいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。面会交流支援機関についての財政面,運営面での支援ということが必要ではないか,それは監督の問題とも関わってくるという御指摘を頂いたかと思います。   よろしいですか,ほかに御発言は。   それでは,第5につきましても一通り御意見を頂いたということで,資料3のうち面会交流に関する論点の検討に係る意見交換はこのくらいにさせていただきたいと存じます。   残りの時間で資料6に入りたいと思いますが,10分休憩しましょう。今,16時25分ですので,10分休憩して,16時35分に再開をしたいと思います。   休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開したいと思います。   資料3につきまして意見交換をいたしましたので,残りの時間で資料6に関する意見交換に入らせていただきたいと思います。今日,全部はとても無理かと思いますけれども,行けるところまで行きたいと思います。   まず,それに先立ちまして,事務当局の方から部会資料6について説明をしていただきたいと思います。 ○北村幹事 事務局でございます。それでは,部会資料6について御説明いたします。なお,先ほど配布資料の段階で御説明いたしましたけれども,参考資料6は飽くまで部会資料6の中で引用していることから御参考までに配布した資料であり,今回御議論の対象としていただくのは,この部会資料6の方になります。   まず,第1,はじめにの部分につきまして,第4回会議で御議論いただいた結果を踏まえて,養育費及び面会交流の部分を部会資料3で御議論いただきましたので,それ以外の離婚後の子の養育に関する問題について,なぜ今回取り上げたのかという点について説明を記載しております。現行法の立て付けや諸外国の状況を踏まえると,親子の関わり方については,まず@として,子に関する事項について父母間でどのように決定するのかという問題と,Aとして,子と一緒に過ごす時間を父母間でどのように分担するのかという問題に分けて検討することが検討に資するのではないかということで整理をしております。   本資料の検討範囲については,第1の2で記載しております。子に関する事項について父母間でどのように決定するのかという問題に関しましては,現行法の規律が不十分なところがあるのではないか,現行法においても父母が決定に関与する場合があり,それら以外の子に関する事項についても,可能であれば父母それぞれが子に関する決定に関与し,慎重熟慮の上で決定することが子の利益にかなうことがあるのではないかなどの御意見もあるところです。そして,この点について検討を行うこと自体は,従前のこの会議においても,子の利益や意思の尊重という点からも有意義なのではないかとの指摘もされたところでございます。そこで,本資料においては,主として子に関する事項の法的な決定という観点,すなわち先ほどの@の点について現行法の規律について改めて確認をした上で,父母双方が決定責任を負うことが子の利益になる場合があるのかどうか,父母双方による決定の対象となる事項の分類,内容,決定への関与の態様の順に,考えられる論点を整理したということを記載し,これらの点について御議論いただきたいということを示しております。   続きまして,第2は,離婚後の子の養育への父母の関与の在り方に関する検討事項の整理ということで,まずは現行規定の整理をしております。そして,現行法に対する意見として挙げられるものを示した上で,離婚後の子の養育への父母の関与の在り方について,父母の離婚後の子に関する事項の決定についての規律の在り方について,子の利益が確保されることを担保するために必要な場合には,父母双方が決定責任を負うことも含めて,より柔軟な規律を求めることについて御議論いただくというものでございます。   続いて,第3でございます。こちらは,離婚後も父母双方が子に関する法的な決定責任を負うことが子の利益となる場合として考えられる論点について記載しております。こちらは離婚後も父母双方が子に関する事項について法的な決定責任を負う場合の要件について,14ページの課題にありますように,離婚後も父母双方が法的な決定責任を負うことを選択可能とする規律を設けること,仮にそのような規律を設けることとした場合には,事後的に変更可能という規律を設けることについて御議論いただければと思います。   第4につきましては,父母双方が決定責任を負うこととした場合には,どのような事項について双方が決定責任を負うことになるのかについて,具体的事例に応じて御議論いただくものでございます。子の養育に関して決定すべき事項については様々な事項がありますので,今回は一つの例として,重要決定事項,日常決定事項,随時決定事項の三つに分けて,それぞれについて決定の責任主体はどう在るべきか,御議論いただくということで資料を用意させていただきました。なお,今回は三つに分類いたしましたけれども,日常決定事項と随時決定事項を分けないで二つに分ける考えもあろうかと思いますので,それは15ページの(注1)で記載しております。   最後に,第5になりますけれども,父母の双方が重要決定事項について決定責任を負う場合の関与の態様について,決定への関与の態様や違反した場合の効果について御議論いただくものとなります。なお,こちらにつきましては事務局としては一定の方向性を示すというよりも,従来御議論いただいていた内容をできるだけフラットに書かせていただいたということになろうかと思います。   資料の説明としては以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほど冒頭で申し上げましたように,この資料の全部について本日のうちに御意見を頂くということは無理かと思いますが,今御説明いただきましたが,第1から第5まであるうちの第1が言わば今回の検討範囲等に関わる総論的な記述の部分で,第2ではその検討事項に関する前提の整理がなされておりますので,第1,第2の部分について差し当たり御意見を頂きたいと思います。第2の細かい点につきましては,第3以降について御意見を頂くときに併せて御意見を頂きたいと思いますので,第1と関わるような形で,第2にも及ぶということで,本日は御意見を頂戴できればと思います。どなたでも結構ですので,お願いをいたします。 ○棚村委員 これまでも面会交流や養育費でいろいろと具体的な問題を含めて法制上実務上の議論がなされてきました。それで,私自身が考えていますのは,親の離婚とか別居ということがあったときに,親子の関係がどう在るべきか,子どもの養育についてどういうような仕組みが必要なのかということを細かく場面ごとに考えていくということが非常に必要なことではないのかと思っています。特に子どもの視点から見て,子どもの福祉とか子どもの利益ということはよく言われるわけですけれども,そこで現行の民法を含めた民事法制,家事法制で十分な対応できているのだろうかということについて議論をするということは非常に有効だと思っています。特に,よく出てくる離婚後の共同親権とか,あるいは共同監護というものが望ましいか,望ましくないかという形で議論がされることがあります。しかしながら,こういう議論の仕方よりも,むしろお子さんの側にとって具体的にどういうことが問題になって,それを誰が決めているのか,そして,どういうような方法でそれを決めていくか,決めたことについても何か問題が出たらどう変えていくか,そのルールなり仕組みなりがやはりきちんと整っているかどうかということを冷静に場面ごとに,段階ごとに議論しながらやっていく必要があるのかなということを考えています。   前から言いましたように,親権とか監護という言葉や制度そのものが明治民法の時代に導入をされて,それなりにうまくいっている部分もあったかと思いますけれども,翻ってよく考えてみると,それが時代や社会の変化の中で適合しなくなっている部分はありますので,そういうことを一つ一つ議論しながら詰めていく作業が必要だと思います。もちろん,現行法の規律でいいというものについてはいいですし,規律を見直したり,明確化したり,基準や考慮事項みたいなものを精査していった方がいいという場合には,規律をおくことで議論すべきだと考えています。そういう全体の細かい丁寧な議論の中で,共同親権とか共同監護という,今正に喫緊の課題で関心の高いことも論じられていくことが望ましいかなと思っていますので,是非今回の部会資料6で整理していただいた,こういうような進め方でやっていただけると有り難いと思います。慎重に議論するということも必要ですけれども,取りあえずきちんと一つ一つについて議論を積み重ねていくということで,多くの委員・幹事のみなさんがかみ合った議論をするためにも,是非こういう形で進めていただけるといいなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。この資料に沿った形で個別の問題ごとに議論をしていくということが望ましいのではないかという趣旨の御発言を頂いたと理解をしております。共同親権とか共同監護という話もあろうかと思いますけれども,それもそうした中で出てくることになるだろうという位置付けをされたと理解をいたしました。   ほかに,いかがでございましょうか。 ○石綿幹事 石綿でございます。今,棚村委員がおっしゃったように,私もこの資料に沿った形で,まずは議論を進めていくことができればと考えております。離婚後の子の養育に父母が関与するというと,何か大きく制度を変えるのではないかという印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが,部会資料6の3ページの2段落目で整理されているように,現行法においても離婚後一定程度,父母と子の関わるということは想定されているのではないかと思います。婚姻の同意は今後なくなりますが,特別養子縁組についての同意など,子の将来について重要な影響を与えるような事項については,離婚後も父母双方が同意をするということが制度上は想定されており,今の民法の下でも離婚後,子どもに関してある程度重要なものに関しては,父母双方が関与するということが理念としては考えられているのではないかと思います。その範囲をもう少し拡大していくべきなのか,拡大すべきでないのかということを議論することができると,子どもの利益にとって有意義なのではないかと思います。   それから,現在でもうまくいっている家庭では,資料に書いてあるようなことは離婚後も父母の双方が決定をしている,だから法制化する必要はないというような意見もあるかもしれません。これは面会交流について小粥委員が御指摘なさったことと共通かもしれませんが,うまくいっているカップルがうまくいかないときの紛争解決のルールがないということが今の民法の問題でもあるかと思います。その紛争解決を裁判所に委ねるままにするのはなく,紛争解決手段をこの場で議論ができること,そのこと自体も有意義だと思います。そのような観点からも,棚村委員がおっしゃったように,一つ一つ議論をすることができればと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。現行法に含まれている考え方の言わば延長線上で,どのように考えることができるかというように捉えることができるのではないかということが一つ,それから,法律が果たすべき役割ということについて考える必要があるのではないかという御指摘が一つ,2点御指摘を頂いたかと思います。   ほかにはいかがでしょうか。 ○大石委員 ありがとうございます。千葉大学の大石です。すみません,私はこのレジュメの議論の立て方にかなり違和感があります。どのような意思決定をするにしても,また,子に関する決定においても,やはりその裏ではコストが掛かっているわけなので,養育費ですとか,そういった経済的裏付けを何か別物のようにして切り離した形でこういう議論が進むことについて,大丈夫なのかなというような懸念を持っています。例えば,悪い言い方をすれば,金を出さずに口を出すというような事態を招く可能性もあるのではないかと思いまして,やはり養育費確保の実効性を高めるような施策と合わせていかないと,こちらの議論だけ進むということに対しては,少し心配をしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。養育費等の経済的な問題と完全に切り離して議論することができるのか,少なくともこの問題だけを議論するというのは適切ではないのではないか,こういう御指摘として伺いました。 ○原田委員 すみません,私はまだ少し考えがまとまらなくて,考えがまとまらない原因の一つは,婚姻中の共同親権の場合も,実際どちらかが勝手に決めてやったりすることもあるわけですよね,それから意見がまとまらないこともあると。そうすると,離婚後に双方が決めるべきだという事項を決めたときに,あるいはそれがうまくいかなかったときはどうするかということを決めたときには,婚姻中の共同親権下でもそれが適用されるというか,そういう問題になっていくのかという辺りを少し,御意見を言っていただくときにその点との関連も言っていただければなと,私はその辺で判断ができていなくて,今少し悩んでいるところなので,よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。共同で決定するということになって,離婚後であると,意思が統一できないときにどうするかという問題を考えるわけですけれども,それは婚姻中にもある問題なので,そこまで含めて考えるのかという問題提起を頂いたと思います。また,それぞれの場面で皆さんからその問題についての御意見も頂戴できればと思います。 ○赤石委員 赤石でございます。ありがとうございます。私はこの書きぶりを見ていて,たまたま教育費についての御支援の情報をいろいろ提供しているときと重なったので,ああと思ったのですけれども,この子の養育の在り方についての議論って,一体どんな社会を目指しているのかなということです。   高等教育の無償化,いわゆる就学支援新制度というのが2020年4月から,消費税の導入と合わせて,かなり低所得の方にはたくさんの支援,授業料の無償化と給付型の奨学金で,私立大学の自宅外通学では年額160万円ぐらいになる支援が今ございます。かなりの支援が出てきたわけなのですけれども,もしお子さんに両方が関わっていますということになったときに,その私的な扶養をされる方が2人いるのだから,今はひとり親として所得制限を計算して,住民税非課税の方が先ほど言ったようなレベルの支援を受けられるわけなんですけれども,変わっていくのかなというのを少し思いました。   申し上げたいことは,大学教育とか高等教育がある程度もう無償化されている社会,つまり,子どもが自立するまでの育ちの中である程度,公的な支援のベッドがすごく豊かにある国で,子の養育の在り方についての議論が,双方でやっていきましょうということが議論されることと,ドイツなどはそうなのかなと思うのですけれども,日本のようにまだ私的扶養で高等教育とか,いろいろな育ちへの経費が親にかなり私的扶養に任されている国とで,同じように目指していいのだろうかというような,一体どんな社会を目指しているのかなと,もう私的扶養だけでどうするのかとやるのか,公的なところの関わりがかなりあって,私的なところを双方でやるのかというのは,かなり違ってきて,下手にここの議論だけが進むと,また,では両親の所得で見ましょう,みたいな話になったときに,先ほど言ったようなことが少し違ってくる,この支援を受けられる方が受けられなくなる。先ほど大石先生も少しおっしゃいましたけれども,口出してお金出さない方,当然ながら高等教育ってすごく高いので,口は出すけれども援助はしないとか,安い方に行けとか言うというようなこともあったりして,一体どんな社会を目指そうとされているのかなというのがよく分からなくなってしまいました。やはり公的なところがどれだけ子どもの育ちに関わっていくのかということと,このことはものすごく結局は関わってしまうのだなというのを思った次第です。どうしても現実的に,子どもたちと親を支援しておりますので,そういう発想になってしまうのですけれども,理念だけ入ってきたときに,一体どうなっていくのだろうというのを思った次第です。多分,この高等教育の費用だけではなくて,いろいろなところにいろいろなことが出てくる可能性があるのだと思っております。   あと,5ページの,調査を引用されているのですけれども,ほとんどが同居親が決める方がよかったと振り返って思っている方が多かったのですけれども,このデータをどういかされているのか,少し不明だったなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点目は,直前の大石委員の御発言とある意味で関連するかと思いますが,経済的な問題と切り離してよいのかと大石委員はおっしゃったのだけれども,赤石委員は,逆に,これが経済的な問題に跳ね返ることがあるのではないかということを考える必要があるのではないかという御指摘だったかと思います。それから,資料の中に出てくる(注7)に上がっているデータについてですけれども,これは事務当局としては,こうしたデータがありますということで参考までに提供されているのだろうと思いますが,何か特別なことがありましたら,少し補足してください。 ○北村幹事 これは,飽くまでも調査の結果をフラットに御紹介しているというものでございます。今回は法的な決定において,どういう場合に父母が関わるとよいのか,それが子の利益のためになるのかという観点から御議論いただきたい,それの観点の中の一つに使っていただくということで,客観的なものとして御用意したものでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。第1の部分は余り活発に議論が出にくい部分だろうと思いますが,基本的には第1の,この部会資料6のような形で提示していただいたような方向で検討を進めていただくというのが望ましいと私自身は理解しております。   今,大石委員から,例えば養育費の支払との関係はやはり検討しなければいけないという御指摘がありましたし,それはもうそのとおりだろうと思います。また,赤石委員からは,ここで両方ともが養育費を負担するということになったら,公的な扶助などはどうなるのだろうかという御指摘もあったのですが,当然それも扱わなければいけない問題だと思うのですが,それは恐らく第3以降のところで具体的に,例えば共同決定事項にするとか,そうしたふうな方向に行く場合に,単にこれは重要だから共同決定事項にすればいいよねというだけではなくて,それ以外のものとの関連性をどうやって反映させるのかという枠組みの中で検討していくことが必要だし,していくべきなのだろうと思っております。   第1の部分それ自体は,これは人によって読み方はいろいろあるのだろうと思いますが,私自身は,パッケージとして共同親権か単独親権かという議論の仕方をしないという出発点を確認したものなのだと思っております。従来は,諸外国では共同親権が一般なのだから日本でも導入しろとか,いや,やはりそれではできないのだとかという形で議論することが多かったと思うのですが,ただ,共同親権の議論を聞いていると,実は面会交流の話しかしていないよねというときもあれば,正しく財産管理の話とか,進学の話だとか,そういう話をしていたりと,対象がものすごくざっくりとしたまま,パッケージとして議論してきたように思われます。このパッケージとして親権を議論すると,1個でも反対の部分があったら納得できないという形になるわけですから,折り合いが付かない。それに対して,この第1の部分というのは,子の養育という概念をある程度分節化していって分けて議論できないのかということを提案していて,分けて議論していくということで,これについては共同だとか,これについては単独だということを,まだこの段階では言っていないのだろうと思います。ですから,そういう意味で,私自身は第1の部分の議論というのは非常に重要だし,重要な出発点なのかなと思います。   次に,第2の部分について一言触れさせていただきますと,第2については条文が挙がっているだけなので,今,議論のしようもないなと思うのですが,ただ,恐らく第1の出発点を採りますと,親権という概念を維持できるのか,どうなのかということは否応なしに問題になっていくのだろうと思います。特に,内容に応じていろいろなものを考えていくということになると,親権という形でひとくくりにして議論すること自体が適当ではないということになるのかもしれないと思います。ただ,親権が誰にあるかとか,親権者という概念は一方ですごく便利な概念として使われてきたので,親権という概念を使わないときにうまく規律できるのかどうなのかという問題もあるのだろうと思います。従来の議論では,親権という概念を問題とする場合に,権利ではなくて義務なのではないかとか,権利性と義務性の話が多かったのですけれども,今回出てきている話というのは,権利か義務かというよりは,分節化した内容について,それぞれ誰が責任を持つのか,誰が管理していくのかということなのだろうと思いますので,その点では,実は民法の規定の見直しというのはいろいろな形で出てくる可能性があるということは認識しておく必要があるのだろうと思います。   以上,感想ですけれども,私自身の受け止め方です。 ○大村部会長 ありがとうございました。第1は議論の仕方に関わることを述べているのだろうと整理していただき,様々な問題を一括してどうするかと考えるのではない考え方で考えようということであり,それには賛同されるという御趣旨だったかと思います。これは,最初に棚村委員が個別的に議論していくとおっしゃったのと共通の御意見かと思います。それから,第2には現行の規定が掲げられているわけですけれども,現行の規定を見直していくということになると,親権概念を,少なくとも観念上は一度,分解して考える必要があることになるけれども,しかし,親権はこれまで使ってきて便利な概念でもあるので,それを最終的にどうするのかという問題があるという御指摘を含んでいたと理解をいたしました。   ついでに申し上げますと,窪田委員もおっしゃいましたけれども,資料の中で,責任とか権限とかといった言葉が出てくるかと思いますが,それは,御指摘があったように,親権という概念をさしあたり外して考えるために何か用語を作らなければいけないので,暫定的な言葉が置かれているということなのだろうと思います。このような言葉遣いでよいのかどうかということも,この後,議論の対象になるのかと思って伺っておりました。ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。日弁連での議論を二つほど御紹介した上で,私が感じていることを第1,第2辺りについて申し述べたいと思います。   まず,日弁連では,一つは,これは双方で決定に親が責任を持つというのが子どもの利益になる場合があるという前提でこの資料が作成されているけれども,本当にそうかという意見がありました。先ほど御指摘がございましたけれども,(注7)のところで,アンケートでは同居親が決めるというのがいいのだというのがいろいろな事項で多数を占めていまして,それからすると,現行法で特に問題ないのではないかという指摘がまずございました。もう一つは,先ほど窪田先生の御指摘があったところに関係しますけれども,この資料は一旦親権,監護権というところを外して,個々の養育に関する事項についてフラットに見ていきましょうという考え方にのっとって作成されていますけれども,それに対してやはりある程度親権,監護権はまとまりを持った概念ではないかと,そこの議論を抜きにして,いきなりこの分解したことに立ち入っていいのかというふうな意見もあったところです。   次に,私の意見ですけれども,一つ視点を出すというぐらいの意味合いしかないのですが,この資料では,子どもの養育について,個々の事項の決定責任を双方が担うとすることの可能性が検討されているわけです。しかし,この決定という概念が本当に親子の間のやり取りの実態をうまく言い表せているのかなという問題意識を持っています。例えば,進学先を決定する,決めていくというときに,いろいろな要素やステップがあると思います。子どもの思いですとか,あるいは日頃の成績ですとか,学校の校風とか,塾との相談とか,親子の相談とか,いろいろな検討を経て決まっていく,収れんされていくというようなものではないかと思います。こうした非常に長いプロセスを経ていくので,そこでの親の責任といえば,プロセス全体に対して責任を負っているということではないか。あるいは,一定の発達段階以上の子どもであれば,子どもが決める,そこに親が支援をする,あるいは子どもの決定を促していくというような責任ではないかと。それが実態だとすると,親の決定責任というとやや違う,実態と異なるのかなという思いがあります。ですから,そこにいい言葉があれば,その言葉を当てたいところなのですが,余り名案がなくて,今のところ,例えばプロセスへのコミットメントとか,片仮名言葉ばかり出てしまうのですけれども,過程責任とか,そんなことを考えたりもしています。   あとは,決定という言葉に対する若干の違和感というのを一旦置くとしても,そうやって長いプロセスを経て何らかのものが決まっていくというときの,そのプロセスに双方が責任を負うと言っても,どの部分に責任を負うのかとかという問題は,やはり考えなければいけないのかなと思います。一つは,例えば対外的に表明しなければいけない段階に来たところのみ双方で責任を負うということもあり得ます。ただ,長い過程を経て収れんされていった結論に対して,最後の最後でどんとひっくり返されるというのがあっていいのかという疑問もあります。もう一つは,やはり全体としてプロセスとして見たときに,プロセス全体に対して別居親も何らかの形で責任を負うとしつつ,責任の在り方を見直すことこともあり得ます。それは多分,緩やかな関与とか,そういうことになるのかもしれませんけれども,そんなアプローチもあるのかなと思ったりしています。少し,すみません,視点ということで,雑駁な意見ですけれども,以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。弁護士会には,様々な御意見があるのだろうと思いますが,それを教えていただいたのと併せて,池田委員自身のお考えとしては,決定という言葉が使われているけれども,ある特定の時点で捉えて誰かが決めるというのではなくて,プロセスとして捉える。プロセスとして捉えることによるメリットと,それから,プロセスとして捉えるために抱え込む難しさをあわせて御指摘いただいたと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほか,御意見があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○武田委員 武田でございます。今回,部会資料6が配布されて,一定の進め方が提示されたと理解をいたしました。この論点検討の進め方について,最初に資料6を見たときに,法学者でも法律の専門家でもないからでしょうか,非常に違和感を感じました。それが率直な第一印象でございます。しかし,一旦きちんと中を見てみて,中身に関して,父母間でそれぞれの決定事項にどのように決定するかという問題,そこと切り離して,子と一緒に過ごす時間,監護の分担の話,この2点を区分して検討を進めるということ,議論をごちゃごちゃにしないために,この進め方というのは最初のアプローチとしては,よかろうと思いました。   ただ,今後,いつ議論するかという話につながってくるかと思うのですが,2点目にある監護の問題,先ほどの面会交流のテーマの議論でも,やはり面会交流と,要は監護の分担ではない,どうもその辺りの議論が活発にならなかったなと個人的には感じておりまして,これを2巡目でやるのか,どこのタイミングでやるのかということは,ほかの委員の皆さんの意見も聞きながら多分,決めていくのだと思うのですけれども,どこかのタイミングで子の監護の分担ということもきちんと議論の俎上に上げるということと,あと,既に他の委員の先生から話が出ましたけれども,いわゆるこの親権概念をどうするかということ,名称も含めてですね,この辺りを有効な議論にするために,適時適切な意思決定ができないという意見はよく聞きますが,本当にできないことはないように感じていますので,子どもの福祉に資する要素は何でというところから認識を一致させて,その上で次の議論に進めていくというアプローチは,この部会資料6にのっとってという形でよいのではないか,そんなふうに感じたところでございます。   進め方に関して発言を申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございます。監護の共同の問題とか,あるいは親権の概念の問題について,なお検討をする必要があるという留保の下で,議論の仕方としては,これでよいのではないかという御意見を頂いたと思います。武田委員から,一番最初の段階としてはこれでよいのではないかという御指摘を頂いたかと思いますけれども,これで何か具体的な方向が提案されているというわけではなくて,この枠の中で議論をしてみたらどうかということかと思いますので,これに御賛同いただいたものと理解をいたしました。 ○大山委員 大山でございます。私も今ほど,武田委員や窪田委員からのご指摘と同じようなスタンスでございまして,まずは大きな方向性として,やはり子の利益になる場面というものが,そもそもどういったことが考えられるのかというに始まり,資料に挙げられている様々な論点プラスアルファも含めて,是非一度,民法上,明文化するということも視野に入れながら議論をしてみるということについて賛成です。もちろん,すでに御承知のとおり,先ほど来,議論しております面会交流の在り方一つ取っても,本当に多種多様なケース,論点,課題があると承知しております。またZ世代をはじめ,家庭観や価値観も本当に多様化している中で,一つの制度に落とし込むというよりは,やはり社会全体として選択肢を広げていくという視点から制度設計していただくのが,やはり大きな意味での目指すべき日本の方向性と感じております。   また,後半の議論になると思うのですけれども,面会交流でもご指摘がありましたように,やはり「子の意思」の問題につきましては,また別途,そちらをまとめて御議論されるというふうにはなっているようですけれども,こちらも父母の関与の在り方の中で外せない論点だと思っておりますので,是非御検討をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。一通りこれで議論していくということについて賛成だという御意見と,それから,選択肢を増やすということを考えるべきではないかということの御指摘を頂きました。そして,後でと申し上げたところですけれども,子の意思の問題というのはやはりどこかできちんと議論する必要があるだろうという御指摘を頂いたとか思います。ありがとうございます。 ○沖野委員 沖野でございます。ありがとうございます。直前の大山委員の御指摘とほぼ重なるようなことかと思っておるのですけれども,私も検討の進め方としてこのような形で進めていくことが有用ではないかと思っております。すなわち,離婚後の子どもの養育に父母がどのように関わっていくかという問題には様々な面がございます。これまでの養育費の問題ですとか面会交流の問題もある中で,今回,子どもに関する一定の事項の決定というのにどう父母が関わっていくかと,その在り方というものを考えてみようと,それは別途,具体的に子どもとどう一緒に過ごすかとか,どう監護していくかということとは一旦切り離して,決定の問題として考えていこうというのは,問題を整理する上で非常に有用ではないかと思います。   一方で,現行法の下ではかなり親権がそれを担っているところもあるとは思いますけれども,他方で父母の決定になっているところもありますので,余り現行法の概念を下にやるとかえって混乱するということがありますから,当該局面における問題における父母の関わり方として切り出すということは有用だと思います。ただ,最終的にいろいろな問題が合わさった中で再パッケージ化というのも,余地としてはあるところですので,それはまた改めて考えるということですし,名称なども含めて再度検討するということですし,さらに,この問題を取り上げたときに,他の事項にどういう影響を及ぼすのかということも全体として総合的に見るものだと思いますけれども,そのことは分析的に考えるということを排除することにはならないだろうと考えております。   それから,今回の話としては,現行法の親権からすると,離婚後の親権者は単独であるということになっておりますけれども,子どもに関する重要な決定事項については双方が関わるということが十分あり得て,そういうものを選択肢として用意するということを考えてはどうかというのが今回の資料になっております。ですから,もちろん,選択肢ではなくて必ず双方にすべきだという考え方もあるかと思いますけれども,現在のトーンは,大山委員がおっしゃったような多様な選択肢ということの方向で考えてはどうかという姿勢になっているかと思います。私はそれ自体,それでよろしいのではないかと考えているところです。   3点目としまして,用語が非常に難しいということがありまして,双方責任という言葉が使われております。これは共同というと共同の合意のようなイメージを持つので,そうではなく様々な可能性があるということで,双方責任という言葉が使われているのですが,双方というのと責任というのと両方,日常的にイメージするところがあるので,双方責任というと,一方で単独責任とかいうと,全く責任を持たないというような話も出てくるのかとか,少しその言葉遣いが難しい面があると思いますけれども,ここでの双方責任と言われるのは,特にそれが望ましいと考えられるような事項を選択した上でというか,全てではなく,一定の範囲において双方が決定に関与する,その意味では双方関与型というか,そういう方がよろしいのかもしれません。と申しますのは,ここでの関与の在り方も,様々な関与の在り方が最後に出されておりまして,主たる決定者を決めた上で通知をするというタイプのものもあれば,合意をして,合意が調わないときには第三者機関で決めてもらうというような在り方もありますので,非常に多様なものが考えられている,ただ,関与するのだということがポイントであるということからすると,双方関与型ぐらいの方がよりイメージは湧きやすいのかもしれません。それに関しては単独関与型ということで,通知もしなくていいのかということですが,今日のお昼御飯に何を食べさせるというようなことを通知する必要はないと思いますので,用語はいろいろあるかと思いますけれども,少し用語についても考えた方がイメージが湧きやすいということがあるのかもしれません。   それから,4点目,これも大山委員がおっしゃったことですけれども,途中で出ました子どもの意思の問題,例えば,どういうところに進学したいかということについて,子どもがこう考えているけれども,親がこう決めるということでいいのかというのは,それ自体は単独決定でも全く同様に問題になることだろうと思いますので,子どもの意思の尊重や,その酌み取り方ということで別途,項目が用意されているというのは,前半にも出てきたところです。ここは父母がどう関わるかという問題の中での事象の切り取り方ですので,最終的な子どもについての決定において,子どもの意思というものをどういう形で尊重していくかというのは,また別途,父母の関わり方と並んでといいますか,問題になることではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの御指摘を頂きましたが,多少順序を変えて申し上げますと,第一に,決定という言葉がいいかどうかというのは先ほどから話題になっておりますけれども,決定ないし関与を他の問題から差し当たって切り離して議論するということには意味があるだろう。そして,そのときに選択肢を提供するという考え方もよいのではないかということですね。それから第二に,ばらばらに問題を考えていった上で,再概念化というか再パッケージ化をするということもあり得るということをおっしゃっていただいたと思います。そして第三に,他の問題にどのような影響が及ぶかとか,あるいは子どもの意思をどのように捉えるのかというのは,それぞれ独立の問題で,今ここで問題になっていることと別途議論する必要があるという御指摘を頂いたのかと思っております。 ○原田委員 また私も分からないことばかりなのですけれども,共同,双方,責任といういろいろな言葉が出てきて,しかも,今の沖野委員のお話だと,子どもの意思の尊重等の関わり方とは別の問題ではないかというお話もあったのですが,特に進学先とか,重要な子どもの進路を決めたり,子どものいろいろな意思を決める上で,最終的に子どもの意思を尊重するということは,子どもが決めるとまで言っていいのかどうか分かりませんが,親の関わり方というのは,子どもが最終的に決める,同意をするために,両方の親がどう援助していくのかという問題なのかなと感じていたのですが,責任という言葉が出てくると,その結果について誰がどう責任を負うのかという問題も出てくるのかな,先ほど大石委員が,口は出すけれどもお金は出さないというような話もありましたけれども,この責任という言葉を使ったときに,考慮要素の中で,結果に対してどう関わるのかということも入ってくるのか,まだこの段階では決めるところだけについて考えられているのかという辺りも,少し私は疑問に思っていて,その辺の整理もしないといけないのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。大きく二つ御指摘を頂いたかと思いますが,一つは,子どもの意思は別の問題だと先ほど私も整理したかもしれませんけれども,別のというのは,独立して考慮すべき問題で,独立して検討した結果,ここでの問題に戻ってきて反映することはあるのだろう。沖野委員もそう整理されたのではないかと思います。現在のように単独親権であっても,子どもの意思を考慮するということになれば,親権の行使について子どもの意思を組み込んだ形の制度化が必要になってくる。そうした問題の捉え方をされていたのではないかと思います。それから,再三問題になっている決定とか関与とか責任という言葉がどこまでのものを指しているのか,これが不分明であるという点は,今の原田委員の御指摘のとおりだろうと思いますけれども,これはこの後,御議論を頂いて,内容を詰めるとともに用語も探すということになるかと思って伺いました。 ○菅原委員 すみません,短く,失礼します。少し戻りますが,沖野委員がおっしゃったことに関係して,池田委員もおっしゃったことなのですけれども,私もやはりこの双方責任という,責任という用語が非常に厳しい用語だなと思いまして,先ほど池田委員の御意見にもありましたけれども,子どもがだんだん大きくなっていくと,自己決定というか,自分で決定していくのを親がサポートしていくということがあるので,やはりコミットメントとか,あるいは双方関与,関与すべき重要事項とか,何か決定ではなく親の関与という形の概念で進めていただけるとよいのかなと思いました。一方,この進め方に関しては,コンテンツを積み上げていくという方向には賛成です。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。議論の仕方については賛成だということと,それから,やはり皆さんが問題にされている責任,あるいは決定ということについてどうするのか,これはなかなか難しい問題で,これまで親権者が何かを決定するということとの関係で議論を立てていると思いますけれども,今日においてそれでよいのかということも含めて議論をすべきであるというのが皆さんの御感触だったと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほか,御意見いかがでしょうか。まだ第3以下がございます。それから,第2につきましては,先ほども申し上げましたが,第3以下の議論との関係で,現行の制度がどうなっているかということについての皆さんの御意見を頂くということも必要になろうかと思いますけれども,本日のところは第1,第2まで御意見を頂いたということで,この先は次回に送るということにさせていただきたいと思います。事務当局,それでいいですか。 ○北村幹事 結構です。 ○大村部会長 それでは,次回の部会ですけれども,今申し上げましたように,部会資料6の残りの部分を検討いたしまして,それが済みましたら,今日話題になっておりました子の養育における子の意思や意見の反映に関する論点に進みたいと思っております。次回そこに入れるかどうか,分からないところもございますけれども,事務当局におかれましては,次回までに今の点につきまして,これまでの議論等を踏まえて意見交換のための資料を用意しておいていただければと思います。   それでは,本日の審議は,途中ですけれども,ここまでということにさせていただきたいと思います。   次回の議事日程等につきまして,事務当局の方から御説明を頂きます。 ○北村幹事 事務局でございます。次回の日程は,令和3年9月21日火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所につきましては改めて御連絡いたします。   次回につきましては,今,部会長からも御指示がありましたように,部会資料6の残りの部分の審議をさせていただいた上で,子の養育における子の意思や意見の反映に関する論点の御審議をお願いできるようにしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,法制審議会家族法制部会第6回会議をこれで閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 −了−