新たな自由刑の名称に関する 意見交換会 第1 日 時  令和3年9月27日(月)     自 午前10時00分                          至 午前11時06分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  1 開催趣旨の説明等         2 配布資料の説明         3 意見交換 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○吉田刑事法制管理官 予定の時刻となりましたので,ただ今から新たな自由刑の名称に関する意見交換会を開催させていただきます。   本日は,御多忙中のところお集まりいただき,ありがとうございます。   本日の司会進行役を務めさせていただきます,法務省刑事局刑事法制管理官の吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   まず初めに,本日の会議についてですが,今井委員,大沢委員,酒巻委員,武委員にはウェブ会議システムにより御出席いただいております。また,奥村委員は御欠席されています。   会議運営の都合上,皆様におかれましては,御発言の際には最初にお名前を明らかにした上で御発言くださいますようお願いいたします。   それでは,当省大臣官房審議官の保坂から,当意見交換会の開催に当たりまして,一言御挨拶をさせていただきます。 ○保坂官房審議官 官房審議官の保坂でございます。   お忙しい中,少年法・刑事法部会の委員の皆様にお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。この意見交換会の開催に当たりまして一言,趣旨も含めて御挨拶をさせていただければと思います。   まず初めに,少年法の改正についての御報告でございますが,令和2年9月に皆様に取りまとめていただいた答申案が,翌月の10月の法制審議会の総会で全会一致ということで採択されて答申になりました。そのうち少年法の部分につきまして,先の通常国会に提出いたしまして,本年5月に成立の運びとなりました。来年の4月1日から,民法の施行と同じ日から施行されるという運びになっております。この場をお借りしまして,皆様の御尽力に感謝申し上げたいと思います。   法務省におきましては,現在,法制審議会の答申の残りの部分,具体的には,犯罪者の処遇を一層充実させるための法整備につきまして,立案作業を進めておるところでございます。その中で,自由刑の単一化に係る刑法の改正の部分に関しましては,その名称,これは部会でも総会でも決めてこなかったわけですが,その新たな名称を定める必要がございます。その名称の在り方につきましては,社会的な影響も大きいことになりますので,法務省刑事局として,立案の参考とさせていただくために,皆様の御意見を伺いたいと考えたところでございます。   そこで,本日は,その法制審の部会の委員の方のうち,行政機関等の職員を除きました有識者の方にお集まりいただきまして,このような意見交換会を開催するということにした次第でございます。是非新たな自由刑の名称の在り方について,忌憚のない御意見を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○吉田刑事法制管理官 本日は,法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の元委員の方々による意見交換ですので,自己紹介については省略させていただくこととし,次に,会議の公開及び公表について,皆様にお諮りさせていただきます。   当会議については,自由で活発な意見交換を行っていただくため,会議自体は公開せず,会議終了後に,発言者名を明らかにした逐語の議事録を作成した上で,会議の資料とともに法務省のウェブサイトにおいて公表することを原則的な取扱いとし,公表することが不適切な議事内容や資料については,皆様にお諮りした上で,例外的に非公表とすることとしてはいかがかと存じます。このような取扱いとすることでよろしいでしょうか。           (異議なし)   ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。   続きまして,配布資料について,当局参事官の玉本から説明させていただきます。 ○玉本参事官 本日,配布資料として資料1「事前に提案のあった名称案」,資料2「現行法における各用語の使用例」を,参考資料として,参考資料1「諮問第103号に対する答申(抜粋)」,参考資料2「参照条文(刑法)」をお配りしております。不足がある方はいらっしゃいますでしょうか。   このうち,資料1は,皆様から事前に御提案を頂いた名称案の一覧でございます。文字数の多いものから順に,同じ文字数の中では五十音順に記載しております。なお,備考欄には,当該名称と類似する名称として御提案があったものについて記載しています。   次に,各名称案について,事務局において把握している御提案の趣旨について,簡単に御紹介させていただきます。   まず,番号1の「刑務所収容刑」については,答申の「刑事施設に拘置するものとする」という内容を端的に表すものである,有罪判決の執行として収容されるという意味合いを分かりやすく表すためには,「刑事施設収容」よりも「刑務所収容」の方がよいといった御趣旨であると伺っております。   次に,番号2の「自由剝奪刑」につきましては,答申の「刑事施設に拘置するものとする」という内容について,移動の自由の制限という側面から表すものである,刑罰としての拘留も一般的な意味での自由剝奪刑の一種であるが,刑法上,拘留と別に狭義の「自由剝奪刑」が存在しても問題ない,単に自由刑とするのでは一般人には分かりにくいといった御趣旨であると伺っております。   番号3の「拘居刑」につきましては,新自由刑は,「刑事施設に拘置する」ものであり,期間の点を除き拘留と同じであるが,拘留よりも長い期間にわたって刑事施設に「居る」ことになるので,拘留の「留」を「居」としたといった御趣旨であると伺っております。   番号4の「拘禁刑」につきましては,懲役刑と禁錮刑を包括する用語として一般的である,端的であり,「禁」という字を用いることで刑罰の質が軽くなるという印象も与えない,「拘禁」の語は現行法においても多く用いられていることから,刑の名前であることを明確にするため,「拘禁刑」とすることを提案するといった御趣旨であると伺っております。   番号5の「拘置刑」につきましては,新自由刑が「刑事施設に拘置」して処遇を図るものであることを踏まえたものである,新自由刑の具体的な内容が一般市民にもイメージしやすい名称であると思われるといった御趣旨であると伺っております。   番号6の「収容刑」につきましては,「収容」はやや包括的な意味合いを有する用語であり,被告人を一定期間施設に拘置するだけではなく,その間に処遇が実施されることをも連想させ得るものではないかと思われるといった御趣旨であると伺っております。   番号7の「自由刑」につきましては,自由を剝奪する刑罰であるという趣旨を端的に表現する名称として適切であると考えられる,「自由刑」の用語はドイツ刑法と同じであり,犯罪白書などでも従来から使用されているといった御趣旨であると伺っております。   番号8の「矯役」につきましては,「矯」は,矯正施設において必要な作業や指導を通じ,受刑者の改善更生を図り,矯正するという意味である,「役」には役職や職務という意味もあり,自由刑の執行における作業や指導を意味するものとして用いることができるのではないかといった御趣旨であると伺っております。   番号9の「矯戒」につきましては,「矯」には曲がったものを真っすぐにする,悪いことを直し改めるといった意味があり,「戒」には禁じられていることを教え諭して慎ませるという意味がある,新自由刑について従来の懲役とは異なるニュアンスを出す趣旨であるといった御趣旨であると伺っております。   番号10の「矯置」につきましては,「矯」には受刑者の改善更生を図り矯正するという意味が,「置」にはその場所にとどめ置く,拘置するという意味がある,全体として,身柄を拘置するとともに,指導や作業を行わせることを通じて,改善更生させる刑罰という意味であるといった御趣旨であると伺っております。   番号11の「禁居」につきましては,「刑事施設に拘置するものとする」との新自由刑の内容については,現行の刑法では禁錮がそれに相当するところ,禁錮と異なることを示すとともに,居所が限定されるという意味を込めて「禁居」としたといった御趣旨であると伺っております。   番号12の「拘役」につきましては,「役」には役職や職務という意味もあり,新自由刑の執行における作業や指導を意味するものとして用いることができるのではないか,全体として,身柄を拘置するとともに,指導や作業を行わせることを通じて,改善更生させ社会復帰させる刑罰という意味であるといった御趣旨であると伺っております。   番号13の「囚戒」につきましては,「囚」には罪人を捕らえて牢に入れるという意味があり,「戒」には厳しさを感じさせる要素があるように感じられる,全体として,刑務所に入れて教え諭すという意味で,新自由刑の趣旨を伝えようとするものであるといった御趣旨であると伺っております。   番号14の「囚導」につきましては,新自由刑では,作業だけでなく,改善更生のための指導が行われるという点を強調するため,「導」という字を用いるとともに,飽くまで刑務所に入れる刑だということを改めて明確にする趣旨で,「囚」という字を用いたといった御趣旨であると伺っております。   番号15の「懲治」につきましては,過去の刑法改正の議論の中において,懲役に代わる名称として「懲治」が提案されたことがある,「治」という字には矯正的な意味が含まれると思われ,これにより新自由刑における作業や指導を表現できないかといった御趣旨であると伺っております。   番号16の「罰居」につきましては,金銭を支払うことを罰として行うのが罰金であるのに対して,罰として「居る」場所を刑事施設に限定するのが新自由刑であり,そのことを端的に表現したものであるといった御趣旨であると伺っております。   最後に,資料2は,資料1に記載の各名称案に含まれる語句のうち,現行法において用いられているものについて,その使用例を記載したものでございます。   配布資料の説明は以上です。 ○吉田刑事法制管理官 ただ今の説明内容に関する御質問はございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,意見交換に移りたいと思います。   進め方としましては,意見交換を効率的かつ円滑に行うという観点から,まず皆様から,お一人につき5分以内で,考えられる名称の案や名称を検討する際に考慮すべき要素などについて,順次御意見・御発言を頂き,その後,他の委員の方々の御発言を踏まえつつ,更なる御意見・御発言を頂くこととしてはいかがかと考えておりますが,そのような進め方でよろしいでしょうか。           (異議なし)   それでは,早速ですが,五十音順で青木委員から御発言をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ○青木委員 新たな自由刑の名称に求められることにはいろいろな要素があって,いろいろと考えたのですけれども,それら全てを完全に満たすという名称を考え出すのはなかなか難しいというのが率直なところです。その中でも,どうしても外せない要素は,以下のような点ではないかと考えております。   1番目には,刑事施設に拘置される刑であるということが刑の名称自体から分かることが必要なのではないかと思います。   2番目には,新たな自由刑は,拘留と期間の点を除いて同じ内容ですので,拘留との整合性が取れることが必要なのではないかと思います。   3番目には,新たな自由刑については,懲役と異なって,懲らしめのためではなくて,改善更生を図るために作業を行うということが明記されているわけですし,作業を一律に義務付けるものではなく,指導を行うこともできるので,そういう内容と矛盾するものであってはならないと思います。   4番目には,その用語によって,違う概念のものを想起させるというものであってはならないと思います。   5番目には,過去には法律用語としても使用されていたけれども,現在は使用しないこととなった用語や漢字は,使用すべきではないのではないかと思います。   このような観点から,事前に頂いておりました資料1の「事前に提案のあった名称案」に掲げられている各名称案を検討いたしましたので,その結論だけを申し上げますと,今述べた観点から,新たな自由刑の名称としてふさわしくない,不適切だと思われる案を番号で申し上げますと,備考欄に書かれているものを含めてですが,8番,9番,10番,12番,13番,14番,15番になります。また,ふさわしくないとか不適切だとかいうことまで申し上げるつもりはないのですけれども,5番は,拘留との整合性といった観点などからして,やや疑問があります。 ○今井委員 私も,検討の視点は青木委員と同じものでありますが,結論としては,資料1に挙がっている4番のうちの「拘禁刑」がよいのではないかと思っています。   その理由ですけれども,新たな自由刑として想定されてきたものは,刑事施設に拘置した上で,その社会復帰を目指した処遇などを行うという内容を持った刑でありますが,刑事施設に拘置するというところは,「拘禁」という言葉で示されていると思います。その拘禁という言葉は,国際的にはimprisonmentの訳語として定着していまして,日本でもそれを使うことに抵抗はないだろうと思います。また,拘置して,社会復帰を目指した処遇をすることを内容とする刑罰であるということを示すためには,拘置よりも拘禁の方が,全体としてよく分かるのではないかと思いまして,4番のうちの「拘禁刑」という案を支持しています。   「拘禁刑」と資料1で括弧内に書かれている「拘禁」との違いなのですけれども,これは,先ほど青木委員もおっしゃっていたと思いますけれども,現在使われている用語との区別という観点から見ると,以下述べるように,「拘禁」ではふさわしくなく,「拘禁刑」の方がよいように思います。   「拘禁」という名称ですと,2文字で表せることから,現在使われている他の刑名との並び,言いやすさ等の面では優れているかと思われますけれども,拘禁という単語が現在どのように法令で使われているかを検索してみましたところ,約300を超える用例が確認できたところです。例えば,資料2に記載されている刑法第97条は,「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは」として,拘禁という単語を動詞として用いております。また,刑事訴訟法第91条第1項は,「勾留による拘禁が不当に長くなつたときは」として,拘禁という単語を名詞として用いています。これらの条文では,いずれも拘禁という言葉を刑罰の執行に限らず,身体の自由の拘束という広い意味で用いておりまして,新たな自由刑の名称として「拘禁」という2文字を当てますと,既にある用例との間で紛れが生じまして,誤解を招くおそれがあると思われます。   他方で,「拘禁刑」という名称につきましては,資料2にある二つの用例しかありません。しかも,そのいずれも,当該条文を読みますと,我が国における刑罰としての身柄拘束という意味で拘禁刑という言葉が用いられているわけではないことは明らかでありますので,新自由刑の名称を「拘禁刑」としても,既存のそれら二つの用例との間で誤解を招く余地は少ないだろうと思います。   以上のように,国際的な観点から,また,後で御意見あるかと思いますけれども,自由刑という言葉が持っていたこれまでの大変誤解を招くような存在自体を否定するという意味におきましても,拘禁という言葉を使い,また,それを刑で受けるという番号4の「拘禁刑」がよいと思っております。 ○大沢委員 新たな自由刑の名称案については,参考資料1の答申において,「新自由刑に処せられた者には,改善更生を図るため,必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うことができるものとする。」とされたことから,各受刑者の特性に応じた指導が行われるという新たな点を踏まえる必要があるのかなと当初は思っておりました。   それから,同時に,刑の峻厳さを表すような字も必要なのかなと思いまして,そうした観点から私も幾つか提案はさせていただきました。ただ,これはもう,どれもいわゆる造語なので,参考程度という気持ちで提案させていただいた次第です。   他方で,やはり一般の国民の立場からすると,分かりやすさというか,その名称を見てすぐ頭に入ってくる,又は,すぐ新しい用語が使われることも大事な要素なのかなと思います。そういう意味ではやはり,それを見て意味が分かるというのが一番大事な要素なのかなと思いまして,そういう観点から見ますと,私が資料1に掲げられている御提案の中で分かりやすいなと思ったのは,2番の「自由剝奪刑」と「拘禁刑」です。   また,新聞人の立場から一言申し上げさせていただきますと,新聞で刑の言渡し等に関する記事を書くときは,やはりある程度簡潔な言葉である必要があると感じております。新聞の場合は,見出しに刑の名称を記載することがありまして,いわゆる主見出しというメインの見出しの字数は,8文字が大体ベストだと言われており,例えば,大沢被告懲役8年のような形で記載されます。見出しには,刑の言渡しを受けたのが誰かということと,それから刑期を表す文字が入ってくることも考えると,新たな自由刑の名称は,なるべくコンパクトな字数の方が望ましいということを,念のため申し上げておきます。   それからもう一つ,先ほど青木委員がおっしゃっていた5番の「拘置刑」ですけれども,新聞では,常用漢字の関係で,記事の中で勾留の「勾」という字が使えなかったという事情があって,しばらく勾留というのを拘置に置き換えて使っていた時期がありました。今はもう勾留の「勾」という字も使えますけれども,新たな自由刑の名称を「拘置刑」にすると,昔の記事との整合性に問題があるかもしれないという懸念もあるということを申し上げておきます。 ○太田委員 新自由刑の名称の選定基準として,私は五つのことを考えました。   まず一つは,刑事施設に拘置するという意味だけではなくて,改善更生のために必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うことの,この両方の意味を備えた用語がやはり望ましいと考えました。   自由刑とか拘禁刑,収容刑などもすぐ思い浮かびましたが,それらは,やはり身体拘束だけの刑罰との印象を受けますし,それから,答申に「必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うことができるものとする。」とありますので,その条文との整合性も取れないと考えました。それから,拘禁又は拘禁刑などとしますと,拘留と区別しにくく,身柄拘束を伴う刑を包括的に言い表したものが拘禁刑であるという上位概念とも区別しにくい印象を持ちますので,その点でも望ましくないのではないかなと考えました。   2番目として,被告人とか受刑者とか,一般国民が用語を聞いたときに,刑罰であることのイメージを持つことができることが望ましいと考えました。また,受刑者が刑罰を宣告されたときに,できれば,将来の更生を求められることを感じることができる用語であれば,なおよいのではないかと考えました。   3番目として,宣告をする裁判官とか,それから求刑をする検察官,その他の刑事司法の実務家及びマスメディアが言いやすい語感を有するのが望ましいのではないかと考えました。新たな造語とすると聞き慣れないですが,令和という元号も次第に慣れてまいりましたので,新しい造語でも慣れてくれば大丈夫ではないかなと考えております。   言いやすさという点では,例えば,3年の何々に処するとか,無期懲役みたいに無期何々とか,有期何々とか,それから何々刑というように,そういう文字を入れても,読みやすい,聞きやすい用語であるということが必要ではないかと思います。例えば,新しい自由刑の名称を刑務所収容刑にしますと,無期刑務所収容刑といったように,かなり長くなりますので,字数からも一定の制限があるのではないかということで,2文字若しくは3文字ぐらいの字数とするのが適当ではないかと考えました。   4番目として,用語の後に刑という文字を入れても入れなくても刑罰であることの雰囲気が伝わる必要があるのではないかなと考えました。そういう観点からすると,自由刑は,「刑」を取ってしまうと「自由」となってしまって,刑罰のイメージがなくなるので,ふさわしくないのではないかと思いました。   以前,韓国で刑法の全面改正案が作られたときに,自由刑を一本化することになり,刑罰の名前が検討されたのですけれども,「自由刑」というものが候補に上らなかった理由としては,一般市民から,何か自由を与える刑罰だと捉えられがちだということで採用されなかったということもありますので,やはり自由刑といった名称は,一般市民にはなじみにくい用語かなと思いました。   最後に5番目ですけれども,刑事訴訟法や刑事司法のその他の用語と紛らわしくなく,また,他の刑罰の用語で用いられている文字は極力避けるということが望ましいのではないかと思いました。例えば,拘置は拘置所と類似しますし,留置の「留」の字も,留置とか拘留などに用いられていること,また,「更禁」という名称も考えましたが,これは更生緊急保護の更緊とも紛らわしいということで,やはりほかの用語とも紛らわしくないということが必要であると考えました。   それから,「自由刑」という名称もやはり,これまで懲役,禁錮,拘留を含めて自由刑と呼んでいましたので,もし新たな刑罰の名称が「自由刑」になってしまいますと,包括的な名称が使いにくくなるなと思いました。   資料1に掲げられた個別の案の中で,私として,避けるべきかなと思っている用語は,囚人の「囚」という字を使った用語であり,それらは,やはり時代的に少し合わないのではないかなと思います。また15番の懲治の「懲」という字も,新たな自由刑の名称には望ましくないだろうと思っております。 ○小木曽委員 名称選択に当たって考慮すべき要素ですが,被告人を含めて,これを聞いた国民に内容が伝わりやすいということ,それから,法律に書いて,また法廷で言い渡す際に明瞭であるということ,さらに,できれば新たな自由刑のコンセプトが適切に表れれば,なおいいのではないかと考えます。   そうしますと,文字数が多過ぎるのはよくないということになるだろうと思います。受刑者から何を奪うのかということを表そうとしますと,自由を奪うので「自由刑」ということになると思いますが,これまで自由刑という用語は,禁錮や懲役等の上位概念としても用いられておりましたので,個別の刑の種類を表すということになると,難があるだろうと思いますし,これまでの御意見の中でも出ておりますけれども,従来,懲役何年とか禁錮何年と一般に言われてきたこととの関係では,使いにくいだろうと思います。   次に,「拘禁刑」ですが,これは,受刑者にどのような制裁が科されるのかということを表現するものではないかと思います。漢和辞典を見てみますと,「拘」の字にはとらえるという意味があり,「禁」には戒めとか守るべきこととか差し止めるとか牢屋とか,いろいろ意味があるようであり,新たな自由刑のコンセプトについては議論のあるところであると承知していますが,拘禁という言葉は刑の種類を表す名詞としては穏当なところかと思います。   ただし,今井委員の御発言にもありましたように,拘禁という文言自体はほかでも使われておりまして,他の用例との区別をどうするのかという問題があります。他の用例が300を超えるということになりますと,それを直すわけにもいきませんので,そうすると,拘禁に「刑」の字を付け加えて「拘禁刑」とすれば,区別の問題は解消されることになるだろうと考える次第です。 ○川出委員 新たな自由刑の名称を考えるに当たって,次の2点が重要ではないかと思います。   第1に,改善更生のための処遇が,刑の内容自体になるかどうかについては,部会では結論を留保したままになりましたが,いずれの考え方を採るにしても,新自由刑は,刑事施設への拘置と,受刑者の改善更生のための処遇の両方を要素とするものであるということ,言い換えますと,いずれもが受刑者に義務付けられるということは間違いありません。したがいまして,その名称は,両方の義務があることを積極的に示すようなものであることまで要求されないとしても,少なくとも両方の義務があることを否定すると受け止められるようなものでないことが必要であると思います。   第2に,1995年に刑法典を口語化,平易化して,一般国民にも理解できる用語を使うように変えたわけですので,新自由刑の名称も一般の人がそれを見たときに,その意味を理解できるようなものにするべきだと思います。具体的には,現在の日本語にない新たな用語を作るというのは望ましくなく,これまで使われてきている言葉を用いるのがよいのではないかと思います。   この二つの観点からは,名称案のうち,「拘禁刑」か「自由刑」がふさわしいように思います。ただ,このうち「自由刑」については,法律家の間では広く共有されている言葉ですけれども,太田委員から御指摘があったように,一般の方には,あたかも被告人を自由にする刑のように受け取られるかもしれませんので,それを考えますと,「拘禁刑」の方が望ましいように思います。   その場合に,「拘禁」とする案もありますけれども,既に今井委員と小木曽委員から御指摘があったように,拘禁という用語は,憲法を始めとする他の法令では,広く身体を拘束された状態を指すものとして使われており,刑の執行に限られているわけではありません。それゆえ,それをそのまま刑罰の名称とすることは,他の法令における拘禁の意味について誤解を招きかねないという問題がありますし,客観的に身体を拘束された状態を指す拘禁という言葉を,そのまま刑罰の名称にした場合には,新自由刑も身体の拘束,すなわち刑事施設への拘置のみが義務付けられるものであるという誤解を生みかねないという問題もあるように思います。   これに対して,「拘禁刑」という言葉は,一般的には身体の拘束を不可欠の要素とする刑を意味するにとどまりますので,それに対応する刑事施設への拘置に加えて,処遇の義務付けを含む刑罰を指すものとしてこの言葉を用いたとしても,何ら不自然ではありません。また,既に御指摘があったように,逃亡犯罪人引渡法や国際刑事裁判所に対する協力等に関する法律における拘禁刑という言葉は,外国や国際刑事裁判所において言い渡された刑罰のうち,身体の拘束を要素とするものを指していまして,そこには処遇を義務付けるものもそうでないものも含まれますけれども,その意味内容は,それぞれの法律の趣旨に従って解釈されるべき問題ですし,そこには我が国の新自由刑は含まれませんので,これとの対比でも,新しい刑の名称としての「拘禁刑」の意味内容について誤解が生じることはないと思います。   以上の理由から,私としては「拘禁刑」という案を支持いたします。 ○佐伯委員 私も,新しい名称というのは,刑の内容を示すとともに,専門家だけでなく,一般の方にも分かりやすく,そして呼びやすいものであることが望ましいと思っています。   ただ,青木委員もおっしゃいましたように,全ての要請を完璧に満たすというのはなかなか難しいので,相対的にどれがいいのかという観点から申し上げますと,もう既に今井委員,小木曽委員,川出委員がおっしゃっていらっしゃいますけれども,「拘禁刑」というのが一番望ましいのではないかと思います。   私としては,当初,使い慣れているものですから,「自由刑」という名称がいいかなと思いましたが,それは専門家,刑法学者として使い慣れているということであって,一般の方には,「自由刑」というと,もう既に御指摘があるように,自由を与える刑のようにも受け取られかねないということで,確かに専門家として慣れ親しんでいるというだけでは駄目だなと反省しまして,「拘禁刑」という名称が一番望ましいと思いますし,「拘禁」にするか,「拘禁刑」にするかという点につきましても,刑罰であるということを示す意味で,「拘禁刑」とするのがよろしいのではないかと思います。 ○酒巻委員 検討の視点とすべき事柄について,資料1を拝見して考えましたことを申し上げます。   新たな刑罰の内容を端的に,かつ,容易に理解可能な日本語で表現しているのは,1番「刑務所収容刑」,2番「自由剝奪刑」だと思います。内容が容易に理解可能である,分かりやすいという視点は,新たな法律用語を作るに当たって,現在では不可欠の重要な事柄であると考えます。   現在の刑法典になってからもう随分時間が経ちましたが,御承知のとおり,基本法の法文を平易化する,あるいは現代語化するという,一般国民にも分かりやすい法文への改訂は,元々現行刑法典の平易化から始められ,その後多くの基本法についても進められたものでした。この度,新しい刑罰の名称を定めるというせっかくの機会においても,ここに顕れていた一般国民が読んで,聞いて,容易に理解できるという視点は,大変重要であると考えています。   この観点から,1番と2番は望ましいのですが,欠点は,術語として長過ぎるということだろうと思います。とりわけこれまでの懲役,禁錮という端的な表現には及ばない。他方,資料1に掲げられている簡潔な短い2文字の案を拝見しますと,そのほとんどは,確かに新たな刑罰の内容を我々日本人が得意としている漢語,漢字の意味内容の組合せを駆使して,あたかも明治時代にヨーロッパの言語観念を漢字の造語によって表現していたのと同様の試みと見ることはできます。しかし,誠に残念ながら,先ほど申しました一般国民が見て,聞いて,直ちに分かりやすいかと言いますと,そういう観点からはなかなか難しい。2文字の案は,ほとんどが現在存在しない言葉ですが,現代において,新たな造語を作るという必然性はないように思います。   そこで,先ほど佐伯委員が御発言されたように,法律学の世界である程度定着して違和感がないとおぼしい「自由刑」という案は,本日の会合が新たな自由刑の名称についてと称されているとおり,これまで審議会の場でも,少なくとも会議参加者にとってはあまり違和感のなかった言葉だと思います。   それから,これも既に出たとおり,自由刑という言葉は,学問上の術語ないし翻訳語であって,刑法や刑事政策の書物を読んだことのある人にとっては,すぐに理解可能だと思います。さらに,自由刑単独ではなくて,例えば,生命刑,身体刑,自由刑,財産刑と並べて用いると,多くの一般国民も,ああ,なるほどと御理解が得られるのかもしれません。しかし,やはり自由刑という術語を単独で用いる文脈,あるいは従来の懲役,禁錮の代わりにこれが有罪判決の言渡しに際して口頭で宣告されるということを考えますと,例えば,被告人を「無期自由刑」に処するというのは,一般人が聞くと,引っ掛かりがあるだろうと思いますし,「自由刑20年」に処するという表現が,果たして一般の国民の皆さんにどう響くのかを考えると,恐らく相当の違和感があるのではないかと思います。   以上が,案を見て感じたことでございまして,要するに,まず,専門家ではなくて一般国民にとって読んで,聞いての分かりやすさ,それから,もう一つは口頭の判決言渡しにおいて,従来同様,紛れなく違和感の少ない簡潔な表現であるということが,大事なのではないかと思います。   そうしますと,やはりこれまでも出ていたように,「拘禁刑」というのが,最も望ましいというのが,私の意見でございます。 ○武委員 本日は,被害者の立場,そして,偏っているかもしれませんけれども,一般人の立場から話をしたいと思います。   私たち被害者や遺族にとって,刑の名称はとても大事です。私たちの会であれば,子供を殺されています。日本は法治国家です。敵討ちは許されません。だから,その大切な命を奪ったことに見合った刑罰を,国が与えてくれるわけです。その名称は,より厳しい名称であってほしいと,私は思います。そして,余り難しい言葉でも,私たち被害者も一般人も,そして加害者本人も分からないと思うので,難しいものであってもいけないと思います。犯罪を起こした加害少年が,二度と自分は犯罪を起こしてはならないと思うような,そんな名称でもあってほしいと思います。   資料1に掲げられている番号1から番号16の名称案を見ていて,いろいろ感じたことを話したいと思います。   まず,「自由刑」という名称は,自由という文字が入っていると,まるで自由を与える,自由にさせると思わせるようでどうしても違和感があって,受け入れられないです。また,矯正教育の「矯」という文字が入る名称も,刑罰より,まずは教育を考えましょうというか,教育を重んじるというか,そういうイメージがあるので,やはり受け入れ難いです。それから,今まで囚人という言葉があったけれども,最近は使われていないということなので,「囚」という文字が入っている名称も余りよくないと思いまして,それで,一番いいなと思ったのは「拘禁刑」でした。すんなり入ってきました。やはり禁ずるの「禁」,私は,これは入ってほしいなと思いましたし,「拘」という文字も,拘束や拘置所等に使われていて,まだ分かる言葉だったので,それが二つ組み合わさって,すんなりと入ってきましたので,資料1の中では「拘禁刑」がよいと思っています。 ○羽間委員 私は,資料1に掲げられた名称のうち,「拘禁刑」を支持いたします。理由について,既に多くの委員がおっしゃっているところと重なっておりますが,あえて申し上げます。   新たな自由刑の名称は,まず,答申にある「刑事施設に拘置する」という内容を,端的に簡潔に表現したものであることが肝要であると考えます。さらに,答申には「新自由刑に処せられた者には,改善更生を図るため,必要な作業を行わせ,又は必要な指導を行うことができるものとする。」という内容があり,これは表現が可能であれば組み入れるべきだと思うのですが,表現が冗長となったり,国民から見て懲役刑,禁錮刑を単一化したことで,刑罰の質が軽くなったような印象を与えたりするのであれば,更に言葉を組み入れることはせずあえて表現しないということも選択すべきだと思います。そうすると,「拘禁刑」という名称とすることが,内容を端的に表現し,文字数も少なく,また,「禁」の文字をあえて用いることで刑罰の質が軽くなった印象を与えない効果も生じるため,最も適切だと考えます。   また,これも複数の委員がおっしゃっていましたけれども,例えば,公判廷で,裁判官が刑を言い渡すときの発音のしやすさ,それを聞く側にとっての分かりやすさという点でも,「拘禁刑」はよろしいのではないかと思います。 ○橋爪委員 既に議論は尽くされており,私が発言すべきことは残されておりませんが,せっかくの機会ですので,ごく簡単に申し上げたいと存じます。   新たな自由刑の名称を検討するに際しましては,2つの視点が重要であると考えておりました。第1に,新たな自由刑の内容や意義,その目的を適切に示した名称となっていることが重要であると思われます。すなわち,犯罪に対する法的非難として,受刑者を刑事施設に拘置し,必要な作業や処遇を行わせることによって,本人の改善更生を促すという刑罰の内容,意義を端的に明示することが重要であると思われます。   第2に,国民一般の理解にかなうように,平易で明解な名称が好ましいと思われます。新しい刑罰を設けるわけですので,その趣旨や内容が誤解されることがないよう,十分に注意することが必要であると考えます。例えば,今回の改正が過剰な厳罰化,逆に緩刑化を意図しているといった誤解が生ずることがないよう,十分に注意することが重要です。   このような前提から私なりに検討いたしまして,「拘禁刑」,「拘置刑」,「自由刑」という案を提出いたしましたけれども,改めて考えますと,「自由刑」,「拘置刑」にはなお問題があるように思われましたので,その点について簡単に申し上げたいと存じます。   「自由刑」という名称は,自由を奪うことが刑罰の内容であることを端的に示しており,また,これまでの部会でも新自由刑として議論してまいりましたので,部会の構成員としましては,一番なじみのある名称ではございます。ただ,国民一般の目線からしますと,「自由刑」という名称からは,刑罰の内容がイメージしづらく,受刑者を自由に解放する刑罰であるかのような印象を与えるおそれがあり,その点が問題として残るように思われました。   また,「拘置刑」という案についても申し上げますと,これは,要綱骨子一の2の(三)の「新自由刑は,刑事施設に拘置するものとする。」と,同一の表現を用いておりますので,仮にこの表現どおり刑法が改正された場合には,拘置のみが新自由刑の意義,内容として理解されるおそれがあるように思われました。受刑者に作業,指導を義務付けることが,新自由刑の刑罰の内容を構成するか否かについては議論があり,部会でも見解の一致がなかった点ではございますが,仮にこれが刑罰の内容ではないとしましても,作業,指導に受刑者の改善更生を促す上で重要な意義があることには異論がないと思われます。そうしますと,「拘置刑」という名称では,専ら拘置のみに意味があるような印象を与え,作業,指導の刑事政策的な意義が軽視されるおそれがあることが懸念されます。   このように考えますと,私も「拘禁刑」という名称が,「禁」という語の使用によって,一定の否定的なニュアンスが示されており,法的非難としての意義がシンボリックに表現されているという観点からも,一番適当ではないかと思います。 ○廣瀬委員 私が考えてきたことも,これまでに皆さんがおっしゃってこられたこととほとんど同じで,すでに尽きていると思います。そこで,重複する部分については割愛しまして,補足する点だけを申し上げることにします。私は,刑事裁判官を30年やっていましたので,そういう観点から,裁判官が,法廷で判決を言い渡すときに,言いにくい,言い間違える,それから聞き取りにくいということでは,やはりまずいだろうと思います。また,内容を反映している,あるいは,文字にした場合に読んで分かりやすいということ,そういう観点から,資料1に掲げられた名称を見てみましたが,直感的に,「拘禁刑」か「自由刑」ぐらいかなという印象を持ったのです。しかし,「自由刑」については,いろいろな意味で問題があるという御指摘がありましたが,私もそのとおりだと思います。それから,実際に自分で「被告人を○○に処する」というのを言ってみたりもしたのですが,やはり「自由」というのは,なかなか言いにくいなと感じました。そういう意味でも,「自由刑」という名称はよくないのではないかと思います。以上を踏まえますと,やはり「拘禁刑」が一番妥当なのではないかという感じがいたしております。 ○山﨑委員 重複する部分が出てしまいますが,考えてきたことをお話ししようと思います。   まず,新たな自由刑の名称として求められる点として,3点考えました。   一つは,刑の内容や意味が端的に表されている名称であることということです。答申で,「新自由刑は,刑事施設に拘置するものとする。」とされていますので,その内容,意味を端的に表す名称である必要があると考えました。   二つ目は,耳で聞いて,分かりやすい名称であることが求められると思います。先ほどもお話が出ましたけれども,法廷での判決言渡しの際,あるいは,その他の場面も含めて,その刑の名称が読まれたときに,耳で聞いただけで分かりやすいということが求められると思います。死刑や罰金などと並んで,簡潔で平易な名称である必要があると考えます。これに対して,聞いてもすぐに漢字での表記や刑の内容が思い浮かばないような名称というのは,ふさわしくないのでないか,そのような観点からしますと,やはり造語を刑の名称とすることは難しいように感じております。   三つ目としては,現代的な要請に応えた名称であるということも必要ではないかと考えました。これも既にお話が出ていましたが,平成に入りまして,刑法始め様々な法律が平仮名や口語体とされるとともに,表現についても平易化して分かりやすくするということが追求されてきたと思います。また,現代における刑事施設に収容された方々の人権に関する国際的な水準,あるいは今日の量刑における社会復帰支援という観点も十分に意識する必要があると考えます。以上のような現代的な要請にも応え得る名称がふさわしいと考えました。   そのような基本的な考え方を基に,資料1に掲げられている名称案についての意見を述べますが,答申では,「新自由刑は,刑事施設に拘置するものとする。」としていますので,この内容を端的に表すものであり,かつ,耳で聞いたときの分かりやすさという点,さらに,刑罰であることを示すというようなことを考えますと,やはり私も「拘禁刑」という名称が最もふさわしいのではないかと考えております。   他方で,答申では懲役及び禁錮を単一化するということで,懲役刑は廃止されるということになりますので,懲役の「懲」ですとか「役」という文字は,従来の懲役刑を想起させることもありますから,これらの文字を用いるというのはふさわしくないのではないかと考えました。また,矯正の「矯」という字は,曲がったものを真っすぐにするという意味で使われておりまして,この点は,社会復帰処遇の中には支援的なものも含まれてきているという現代の行刑内容を示す名称としては適切ではないのではないか,さらに,この「矯」を用いた名称案となりますと,造語となり,音で聞いたときに,漢字の表記や刑の内容がすぐには思い浮かばないのではないかという難点があるように感じております。また同様に,囚人の「囚」につきましても,文字の成り立ちからして,閉じ込めておくというような意味ですので,施設内での移動や社会内処遇との連携を図るという現代の行刑内容を示す名称としては,やはりふさわしくないのではないかと考えております。 ○吉田刑事法制管理官 それでは,ただ今皆様から頂いた御意見・御発言も踏まえつつ,更なる御意見・御発言を頂ければと思います。ただ今述べていただいた御意見の補足・追加や,別の観点からの新たな御意見など,どのような事項についてでも結構ですので,御発言のある方は,挙手をお願いいたします。 ○青木委員 先ほどは,新たな自由刑の名称として,ふさわしくない,不適切だと思われるものだけを申し上げ,私としてふさわしいと思っているものを申し上げませんでしたので,今までの皆様の御意見を伺って,私もこれがよいと考えるものを申し上げたいと思います。   皆さんと同じですけれども,私も「拘禁刑」というのが一番ふさわしいのではないかと思います。拘禁刑というのは,一般名詞としても使われるものだとは思いますので,その点で100点ではないと思いますが,一般的な用語が特定の法律で一般的な用法とは別の意味で使われることはあり得ることですし,また,拘留も一般名詞としての広義の拘禁刑の一種ということにはなるわけですけれども,一般名詞としての広義の拘禁刑と刑法上の「拘禁刑」とがあることも,説明としては成り立つので,拘留とは別に「拘禁刑」という刑が存在するということによって,拘留が広義の拘禁刑であるということが否定されることにもなりませんから,拘留との関係でも問題はないのではないかと思います。   現在,拘禁刑という用語が使われていることに関しては,先ほどから皆さんがおっしゃっているように,これも問題がないと思います。   そういうことで,「拘禁刑」というのが,資料1に出ている案の中で最もふさわしいのではないかと,私も思っております。 ○井上特別顧問 私も,考え方の大筋は皆さんとほぼ同じです。   そのうえで,有力候補の一つの「自由刑」というのは,確かに刑事法の分野では一般的に使われている名称ですが,もともとはドイツ法のFreiheitsstrafeの直訳であり,比較法的に見ると,それに当たる言葉を使っているのはドイツ法系の国だけで,ほかの法系では使われていないと思います。その意味でも,今回の新しい刑名として使うのが適切かは疑問があります。   また何人かの方々が新名称に求められる要件を挙げられましたけれども,要求水準が高過ぎて,2文字か3文字にその全てを盛り込もうとしても無理だと思いますね。明治の初期には,西欧由来の法律用語を,単に直訳するのではなく,漢語を巧みに組み合わせて意訳した見事な造語が行われたわけですが,当時の知識人は漢籍の教育を受けていて,それぞれの文字にどういう含意があるかということについて共通の理解があったといえますし,ほぼお役人や法律専門家の間だけの話でしたので,それでよかったのですが,今日それと同じことをしようとしても無理ですし,国民のみなさんの理解も得られないように思います。   何人かの法律以外の分野の知人の意見も少し聞いてみたのですが,やはり難しいという反応で,消去法では「拘禁刑」がよいのではないかという感触でした。他の刑名に合わせて2文字で「拘禁」とするというアイデアもありますが,「拘禁」では,やはり,それ自体として一般名詞やほかの法令の用語と区別できず混乱を招いてしまいますから,結局のところ,皆さんの大方の御意見である「拘禁刑」とするのが穏当ではないかなと,私も思います。 ○吉田刑事法制管理官 ほかに御意見・御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,特段,御意見として追加で頂くものはないようでございますので,本日の意見交換については,この程度とさせていただきたいと思います。   本日,皆様から新たな自由刑の名称に関して様々な御意見・御発言を頂き,名称について検討する際の視点についても御指摘を頂きました。その中で,比較的多く見られたように思われるものを挙げてみますと,まず,刑罰の目的や機能,あるいはコンセプトに照らして,刑の名前として適切なものとなっているかという視点が示されたかと思われます。これに関連するものとして,刑罰の内容をどのように捉えるかということはひとまずおくとしても,新たな自由刑には,拘置するという要素と,改善更生に必要な作業や指導を行うという要素があって,その両方の要素に照らして,刑の名前として適切なものと言えるかという視点が示されたかと思います。   また,簡潔で平易な名称となっているかという視点も示されたかと思われます。これに関連するものとして,一つは,一般国民から見て,刑罰であることが分かりやすいものと言えるかという視点が示されたかと思いますし,また,法廷で言い渡されるものであるということも踏まえて,裁判官や検察官,あるいはそれを報道するマスコミ関係者にとって,言いやすい,聞き取りやすい,あるいは使いやすいものであるといえるかといった視点も示されたかと思われます。   さらに,他の法令上の用語や概念との関係で混同等の問題を生じないかといった視点も示されたかと思われます。   ほかにも様々な視点が示されまして,大変貴重な御意見を頂いたものと受け止めております。当省として,本日の意見交換の内容も参考にさせていただきながら,引き続き法律案の作成作業を進めてまいりたいと思います。   それでは,本日の意見交換会につきましては,これで閉会とさせていただきます。   なお,本日の議事及び資料につきましては,特に公表に適さないものはないように思われますので,全て公表させていただきたいと思いますが,それでよろしいでしょうか。            (異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 -了- -19-