法制審議会 仲裁法制部会 第11回会議 議事録 第1 日 時  令和3年8月6日(金) 自 午後1時34分                     至 午後5時05分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  仲裁法制の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 それでは,所定の時間,既に過ぎておりますので,法制審議会仲裁法制部会第11回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中御出席を頂きまして,また,8月に既になっているにもかかわらず御出席いただきまして,ありがとうございます。   本日は,金子委員,それから衣斐幹事が御欠席というふうに伺っております。   まず,前回に引き続き,本日もウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので,ウェブ会議に関する注意事項を事務当局から説明してください。 ○福田幹事 福田でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。   毎回同様のお願いとなりますけれども,念のため御案内をさせていただきます。   本日も新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言が出ておりますので,部会長も含め,基本的にはウェブでの参加をお願いしたところでございます。   ウェブ会議を通じて参加されている方の映像及び音声を確認させていただきます。私の声が聞こえておりましたら,手を挙げる機能を使ってお知らせください。   ありがとうございます。手を下げていただいて結構でございます。   ウェブ会議に関する注意事項を説明させていただきます。   ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐため,御発言される際を除き,マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願いいたします。審議において御発言される場合は,手を挙げる機能をお使いください。それを見て部会長から適宜指名がありますので,指名されましたらマイクをオンにして発言をしてください。発言が終わりましたら再びマイクをオフにし,同じように手のひらマークをクリックして,手を下げるようにしてください。なお,御発言の際は,必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。 ○山本部会長 続きまして,幹事の交代の予定がございますので,御報告をいたします。   前回部会後,渡邉幹事が御異動になりましたので,後任として小津幹事が御就任の予定でありますけれども,事務手続の関係で幹事の発令が未了ということでございますので,本日は便宜,関係官として御参加を頂いております。   小津関係官におかれましては,簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。  (自己紹介につき省略)   それでは,本日の審議に入ります前に,事務当局から,配付資料の説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。   本日は,部会資料11-1及び11-2として,「仲裁法等の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討(2)・(3)」を事前に送付させていただいております。また,部会資料11-3として,「仲裁法等の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討(4)」も昨日,追加で送付させていただきました。直前の送付となりましたことをおわび申し上げます。   資料の内容につきましては,後ほど事務当局から御説明をさせていただきます。 ○山本部会長 それでは,早速,本日の審議に入りたいと思います。   まずは,部会資料11-1及び11-3について取り上げます。   事務当局から,部会資料の説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 それでは,吉川から御説明をさせていただきます。   部会資料11-1の第1の1では,仲裁地が日本国内にある場合における暫定保全措置の定義(類型)及び発令要件について取り上げております。   本文1は,前回会議での御意見を踏まえまして,部会資料10の提案に係る規律のうち,その実質において改正モデル法に対応していないおそれがあるとの意見があった部分について,規律を改めることを提案しております。   まず,本文1(1)③の類型の発令内容につきましては,紛争の対象となる物又は権利関係について,その変更の停止,予防又はこれに必要な措置を命ずることに加えまして,その変更が生じた物又は権利関係の原状回復も命ずることができるという規律に改めることを提案しております。   また,本文1(1)③の類型の発令要件につきましては,改正モデル法の規律に対応するという観点から,中間試案と同様,民事保全法第23条第2項の規律を参考に,「申立てをした当事者に生ずる著しい損害又は急迫な危険を避けるために必要があるとき」との文言に改めることを提案しております。   次に,本文1(1)④の類型につきましては,④のアとイの類型を分けて規律することとした上で,④イの発令内容について規律を改めることを提案しております。   まず,④アの類型につきましては,改正モデル法の規律に対応するという観点から,本文1(2)の定める発令要件に関する規律が適用される形に規律を改めております。   ④アの類型は,改正モデル法にいう仲裁手続の円滑な進行を妨害する措置に対応するものであるところ,改正モデル法では円滑な進行を妨害する措置についても発令要件の規律が適用されていることを踏まえまして,修正をしたものとなります。   続きまして,④イの類型につきましては,部会資料10においては,「証拠の隠滅,偽造又は変造」の禁止という規律を提案しておりましたが,その点を「証拠の廃棄,消去又は改変その他の行為」の禁止という規律に改めることを提案しております。   続きまして,本文第1の2に進ませていただきます。   本文2では,暫定保全措置の変更等及び事情変更の開示につきまして,規律の整合性等の観点から,所要の修正を加えるとともに,本文2(3)において,事情変更の開示命令の発令要件及び開示を命ずる対象について規律を改めることを提案しております。   本文2(3)につきましては,前回会議において,仲裁廷による開示命令は,事情の変更があるかどうかを判断するために命ぜられるものであるのに,仲裁廷が重要な変更があると認めることを開示命令の要件とすることは適切ではないという意見がございました。   そこで,本文2(3)では,そのような御意見を踏まえまして,事情変更の開示命令の発令要件を「事情の変更があったと認めるに足りる相当の理由があるとき」とするとともに,開示を命ずる対象を「当該事情の変更の有無及び当該事情の変更があったときはその内容」とすることを提案しております。   続きまして,本文3では,暫定保全措置に係る費用及び損害について,原則として責めに帰すべき事由との要件を維持することとしつつ,ただし書として,「ただし,当事者間に別段の合意がある場合は,この限りでない。」との規律を設けることを提案しております。   改正モデル法第17G条に関するUNCITRALの作業部会における議論では,過失のある当事者が責任を負うものとすべきか,それとも仲裁廷が誤った判断をした場合にも当事者が責任を負うものとすべきかという点については,合意に至らなかったものとされております。   これに照らしますと,改正モデル法第17G条は,当該規定に基づく損害賠償の要件につきまして,無過失責任とする趣旨ではなく,また,過失を要求することを禁ずるまでの趣旨ではないものと考えられます。   そこで,本文3は,原則として,申立人の責めに帰すべき事由がある場合に損害賠償を命ずることができるものとし,その要件を明確にしつつ,当事者間に別段の合意がある場合には,仲裁廷に損害賠償を命ずる権限を与えないものとすることも,その要件を変更することも,いずれも認めるという旨を明らかにすることを提案しております。   本文4では,暫定保全措置の執行についての規律を提案しております。   部会資料10では,本文1(1)①,②及び④の類型の暫定保全措置については,仲裁廷による支払命令の制度を設けることを提案しておりましたが,前回会議では,そのような規律を設けることは相当ではないという意見を多数頂いたところであります。   そこで,本文4では,本文1(1)①,②及び④の類型の暫定保全措置について,執行決定の申立てを受けた裁判所が,執行決定において,当該暫定保全措置の違反があった場合に金銭を支払うべきことを命ずるものとした上で,暫定保全措置に基づく民事執行を許すものとするという規律を提案しております。   本文4の提案に係る規律の下では,執行決定をする裁判所が,執行拒否事由の有無と暫定保全措置の違反があった場合に支払われるべき金額とを同時に審理・判断することとなります。   改正モデル法の規律との対応という観点から検討いたしますと,本文4の規律によれば,第1に,仲裁地が日本国外にある場合に発令された暫定保全措置についても,我が国の裁判所が執行決定をすることにより,その執行が可能となること,第2に,改正モデル法と同様,暫定保全措置の執行に関する権限は,全て裁判所に委ねられることとなること,第3に,改正モデル法においても,裁判所が暫定保全措置を執行するために必要な範囲において,暫定保全措置を再構成することが認められていることなどからしますと,本文4の規律は,改正モデル法の規律に対応した内容と言えるのではないかと考えております。   また,本文4の規律では,暫定保全措置の違反又はそのおそれを執行決定の要件とはしておりません。これらを要件とした場合には,暫定保全措置の違反又はそのおそれがないときに執行決定の申立てが却下されることとなりますので,改正モデル法に定められていない執行拒否事由を日本法が定めたものであると評価されるおそれがあることを考慮したものとなります。   以上が部会資料11-1の説明となりますが,追加でお送りした部会資料11-3についても併せて御説明をさせていただきます。   部会資料11-3では,暫定保全措置の執行について,別案の提案もさせていただいております。   こちらの別案では,裁判所における手続を2段階のものとすること,つまり,執行拒否事由の有無を判断する手続と,暫定保全措置の違反又はそのおそれを要件として金銭の支払を命ずる手続との2段階の手続とすることを提案しております。   別案の規律の下では,1段階目の手続と2段階目の手続を同時に申し立てることも,別々に申し立てることもできるものとすることを想定しております。   まず,1段階目の手続では,裁判所は執行拒否事由の有無のみを判断することとなりますので,審理の実質は,③の類型の暫定保全措置に関する執行決定と異ならないこととなります。そのため,部会資料11-1の提案に係る執行決定の手続と比べますと,その審理が簡易・迅速なものとなると考えられます。   また,1段階目の手続の申立ては,執行拒否事由がある場合に限り却下されることとなりますので,改正モデル法の規定に抵触していると解されるおそれも特に生じないのではないかと考えております。   次に,2段階目の手続についてですが,2段階目の手続では,暫定保全措置の違反又はそのおそれが要件として求められているため,暫定保全措置の違反の態様及び程度等を裁判所が勘案することが容易になることなどにより,裁判所が金額を算定しやすくなることも期待できるのではないかと考えております。   私からの説明は以上でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,今,資料11-1及び11-3全体を御説明いただきましたが,審議はそれぞれの項目に区切ってお願いしたいと思います。   まず,資料11-1の第1の「1 暫定保全措置の定義(類型)及び発令要件」,この部分について,御質問でも御意見でも結構ですので,御自由にお出しを頂ければと思います。 ○古田委員 古田でございます。   前回も申し上げたことと重なるのですけれども,今回の立法の目的をどのように捉えるかということとの関係で私の意見を申し上げます。事務局からの御説明で,今回の部会資料は,実質において,モデル法と齟齬しない規律をしているということなのですけれども,やはり中間試案のときの書きぶりと比べますと,モデル法の表現からの乖離は否定できないと思います。   もちろん,理論的に説明を尽くせば,実質的には同じだということは言えるのかもしれません。けれども,やはり文言が違いますと,法律家としては,その意味や実質も違うのではないかと考えることにもなります。   また,実際この立法がされた場合,日本を仲裁地とする国際仲裁事件で,仲裁人は全て外国の法律家であるという案件では,暫定保全措置の発令要件については,仲裁地の法である日本の仲裁が適用されることになりますが,日本の仲裁法の文言を見ると,モデル法とは違って,例えば日本の民事保全法や民事訴訟法と類似をした文言が使われているということになりますと,例えば当事者の一方が,これはモデル法とは実質的に異なる規律を定めている条文なのであって,例えば民事保全法の条文と同じ文言なのであるから,日本の民事保全法に関する日本の最高裁の判例を参考にすべきであるといった議論がされることは予想されるところです。   結論的には,仲裁廷は,例えば今回の法制審議会部会の議事録とか,他の立法資料を勘案して,形式的に文言は異なっているが実質はモデル法と同じ規律であるということで判断するかもしれませんけれども,そういう手順を踏まなければいけないこと自体が,外国の仲裁実務家から見ると,不思議なことだと思われ,日本の仲裁法はモデル法準拠と言っているけれども,ちょっと違うようだというようなことになり,そういったことが,例えば仲裁実務に関する業界の出版物等に書かれると,やはり日本の仲裁法はちょっと不思議だねと,ガラパゴス的だねという風評被害的なものが生じて,結果において,我が国における国際仲裁の振興を図るという今回の立法目的が阻害されるのではないかなということを恐れています。   私は2年ほど前,「ジュリスト」の2019年8月号に「Ragan神話の誕生と終焉」という文章を書かせていただいたのですけれども,実際にも、過去にアメリカの弁護士のチャールズ・ラーガンさんが日本で国際仲裁案件を担当された際に非常に不快な思いをされて,日本の仲裁は大変特殊であって世界標準ではないというようなことを1990年代に国際仲裁の業界雑誌にお書きになって,それが割と広く読まれた結果,日本の仲裁は変だというイメージが広く定着してしまったということがあります。今回の立法で,何かそういったことがまた再燃するのではないか,再現されるのではないかということを恐れております。   今回,文言を中間試案から変えた理由として,我が国の法制との整合性を考慮せざるを得ないという理由が部会資料で上がっております。我が国の法制との整合性を考慮する必要性があるのは間違い無いのですが,そこで整合性というときに,今回,我々が立法しようとしているのは,仲裁廷の権限に関する規律であって,日本の裁判所の権限に関する規律ではないのですから,日本の民事訴訟法とか民事保全法の規律に倣う必要性はないと私は思っています。   現に,2003年に今の仲裁法を立法するときにも,それ以前には旧民事訴訟法第7編に公示催告仲裁法という法律があったわけですけれども,その一部改正ということではなくて,新たにモデル法と概ね同じ表現の仲裁法という新たな法律を立法しました。その際には,民訴法の条文の表現からは離れて,モデル法の表現を取り入れた今の仲裁法が立法できたのです。今回の法改正に当たっても,民事保全法ですとか民事訴訟法の文言にとらわれることなく,モデル法の文言を尊重した中間試案のような立法することは,決して我が国の現在の法制との整合性を無視したものでもないし,そごするものではないと思っております。   したがいまして,結論としては,実質をモデル法に合わせるということだけではなく,表現ぶりも中間試案のようにモデル法に沿ったものにすることが,我が国における国際仲裁の振興という目的の観点からは望ましいと思いますし,是非そのような方向にしていただければと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。   私も,基本的にはモデル法の国内法化という観点からしますと,モデル法とそごがないということは,表現ぶりからも分かりやすいということは重要であると思われますので,古田委員が言われましたように,可能なのであれば,中間試案のような形での立法化ということが望ましいのだろうと考えています。   ただ,国内の法制上の観点等から,それが仮に難しいという場合につきましては,今日の資料でも御報告いただいておりますように,少なくとも,実質においてモデル法とのそごがないという説明ができるような立法をすることが,最低限必要なところではないかと考えております。   その観点から見まして,本日の11-1の1ページでゴシックで御提案いただいているところは,前回,これは資料で申しますと,資料の10だったでしょうか。10で提案されていたところと比較して,格段の改善があるのではないかというように受け止めております。   特に,本日の資料ですと,(1)の④の部分について,アとイに区分をして,イの部分,証拠保全的な部分についてと,それ以外の審理を妨げる行為という部分を分ける形で,かつ(2)の関係でも,その点が反映される形で規律が想定されているというのは,これは前回の御提案に比べて,モデル法に即した形になっていると評価できるように思います。   また,④のイの文言につきましても,前回の隠滅,偽造等々という文言に比べて廃棄,消去等といったものの方が,モデル法の趣旨に近いものになっているように思われますので,このような変更については賛成したいと思います。   他方,③のところで,「原状の回復」という文言,規律を加えていただいておりまして,これもモデル法で申しますと,17条の第2項の(a)号のところの後段部分ということになりましょうか。原状を回復する措置という文言がありますので,それに対応する規律が存在することを明確化するという意味で,積極的に評価できるように思われますけれども,若干気になる点といたしまして,この③の部分は,前回ですと,「申立てをした当事者に損害が生じ」うんぬんというところで,ここは著しい損害,急迫の危険といったような文言に今回改められているということがまずありますけれども,それとともに,③の冒頭部分で,この損害等々に係る文言として,「紛争の対象となる物又は権利関係について」という文言が加えられております。   その③の中で原状の回復というものが出てきているということになるわけですけれども,まず,「原状の回復」という文言につきましては,先ほど申しましたように,モデル法ですと,(a)の規律の中でこの文言が見られるということでありまして,この(a)は紛争を解決するまで現状を維持し又は原状回復する措置ということで,従来の検討過程では,日本法でいえば,係争物に関する仮処分と同様の機能を担うものに相当するのではないかという整理がされてきたところで,それは今回,前回以来のこの①から④の分類で申しますと,②の類型がこの(a)に相当する類型ということになるのではないかとも思われます。   そうしたときに,(2)の方は「原状の回復」という文言がないということですけれども,これは③の方に「紛争の対象となる物又は権利関係」というものが加わったということもありまして,係争物についての原状の回復という,モデル法でいう(a)でいっているところのレストアというものをここで受けているという形になると見ていいのかどうかということについて,一つ,確認のために御質問させていただきたいと思います。   それから,関連いたしまして,「紛争の対象となる物又は権利関係について」という文言ですけれども,従来,この③については,モデル法ですと(b)の規定に相当する部分と考えられてきたのではないかと思われまして,そこでは「current or imminent harm」というところ,これが当事者に生ずる著しい損害又は急迫の危険というところなのではないかと思われますが,必ずしも「紛争の対象となる物又は権利関係」という文言,こちらの方では,モデル法の方では入っていないようにも思われますので,これはモデル法の(b)よりも限定がかかっているということになるのかどうなのかというところについても,この御提案の趣旨について,念のために確認をお願いできれば有り難いと思います。 ○山本部会長 それでは,最後の分,御質問につきまして,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。   まず1点目のレストアの部分ですが,これは今,垣内幹事から御指摘の17条の2項のa号で書かれている原状を回復する措置というものを,今回の提案では③のところで記載をしたという理解でございます。   このような形で③の方に整理をした理由は,②については民事保全法上の係争物仮処分に類似したものということで整理をしておりますので,そこから原状の回復というのは若干はみ出る部分がございますので,③の方に加えたと,こういう整理でございます。   2点目の御質問ですけれども,おっしゃるように,「紛争の対象となる物又は権利関係について」というような文言は,モデル法の17条の第2項のbには加えられておりません。この点,③でこのような記載ぶりをしたことによって,限定がかかっているのかどうかというところの御質問だと思いますけれども,我々としては,この③でこのようなものを入れたことによって対象を明確にしたという趣旨でして,決してモデル法の17条の2項のb号でできることよりも狭めたというような理解は,今のところはしていないところでございます。   具体的にこのような文言を加えたことで,何か発令できないような類型のものがございましたら,皆様方から御指摘を頂ければと思います。 ○山本部会長 垣内幹事,いかがでしょうか。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。御説明については承りました。   私の方で今,具体例が特にあるということでありませんので,その辺りは,実務を御存じの先生方に是非御指摘いただければと思います。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかに御指摘がございましたらお願いします。 ○出井委員 出井でございます。   特に,具体的な指摘ということではありませんけれども,お二人の委員,特に垣内幹事がおっしゃったように,今回の案,11-1の案は,前回の意見はほぼ消化して反映されているように思います。したがって,実質においてモデル法と同じであるということは言えるのではないかと思っております。   私も当初から,古田委員御指摘のように,できるだけモデル法の表現も,表現もモデル法の表現に従い,また,項目分けもできる限りモデル法の項目分けに従って立法していただく方が,実務家サイドからすると,古田委員おっしゃるように,説明の手間が省けると。古田委員,風評被害ということもおっしゃいましたが,そういうこともあり得るかもしれませんし,なので,できる限りモデル法の条文に沿った形でということを私も主張していたわけです。   ただ,これは条約ではありませんので,最低限,実質が合っていればよいということになるのだと思います。法制上,どうしてもそうしなければいけないということであれば,そこは仕方がないことかなと。したがって,ぎりぎりモデル法コンプライアントということであれば,及第点ではないかと思います。   想像するに,今回の立法では,裁判所による執行と,承認・執行ということが出てまいりますので,それとの関係で,入口の第1の1の類型及び発令要件,特に類型についてはこういうふうに書き分けざるを得なかったということかと思いますので,実質が合っていれば,私は最低限,及第点ではないかと思います。   先ほど,垣内幹事と事務局とのやり取りをお聞きしていても,やはりモデル法の17条の2項のa,b,c,dと今回の①,②,③,④がどういう対応関係にあって,どこに,どういう文言が入っているのかということを検討し出すと,非常に難しい議論になって,正に説明が手間が掛かるということだと思いますが,結論としては,実質モデル法と違っている,あるいは実務でこういうことをやっているけれども,これが抜けてしまうのではないかということは,今のところ発見できていないものですから,私はこれで了とせざるを得ないのではないかと思っております。 ○三木委員 三木です。   私も,これまで御発言された委員,幹事の方々と同じく,もし可能であれば,規定ぶりもモデル法に合わせることが当然望ましいということを,まず留保しておきます。   その上で,現在のこの御提案に関して申し上げます。④ですが,これを前回の案からア,イに分けたこと自体は,一歩前進だとは思います。ただ,どうしてこれを,4という一つの項に入れて,その中をア,イに分ける必要が,あるいは必然性があったのかというところが疑問です。   事務当局の御説明にもありましたように,このアとイというのは,内容的には全く性質の違うものです。また,(2)の適用においても,アとイは違う扱いをしています。そうであれば,④と⑤にして独立の項にする方が,現状の案でいくのであればまだしも,この法律の主たるユーザーである企業や内外の関係者に理解がしてもらいやすいということになるのではないかと思います。   あえて,今回の御提案の趣旨を想像すれば,モデル法が四つの項目に分けていますので,同じく四つにそろえたということかもしれません。しかし,これだけ規定ぶりや,この項に入っている両者の内容が齟齬していれば,今更四つにこだわる必要はないのではないかと思います。その点につき,どうしてもこの4の中で,アとイという形で一つの項にまとめなければいけないという理由があるのであれば,お教えいただきたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。   最後のところは御質問も含んでいたかに思いますので,事務当局からもしお答えいただければ。 ○福田幹事 福田でございます。三木委員おっしゃったように,なるべく4類型というところで,こちらも頑張って考えたところですけれども,アとイは性質が異なるものというのはおっしゃるとおりでございますので,そこは法制的に5類型という形で仕組むべきかどうかというところは,こちらで引き取らせていただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉野委員 吉野です。まず,三木委員がおっしゃったことに関して,この④のアとイの関係ですが,私ももう一つよく分からないところがあるのですが,④のアというのはかなり広い概念を定めているような気もいたします。ともかく,審理を妨げる行為というかなり漠然としたと言ったら何ですけれども,相当広い行為を含んでいるような概念ではないかと理解しております。   つまり,イの証拠の廃棄,隠滅等も,結局のところ,審理を妨げる行為と受け取ることができないことはない。と考えますと,アの中にイも,広い意味では含まれるのではないかという見方も可能ではないかという気もしております。ただ,この点は,私自身これを,アとイの関係をどうするかということについて,定見を持っているわけではありませんので,この点についてはこの程度にさせていただきます。   もう一つですが,問題となっております③について。前回提案されたところからすると,この(1)の①と②は,日本の民事保全法に言わば倣った規律,これに対して③は,いわゆる仮の地位を定める仮処分的なものをここに含めましょうという規律だと。大ざっぱに言って,そういう理解を私自身はしています。   既にこれまで,多くの実務家の方々から出されていた意見は,結局のところ,このような国際的な仲裁案件において,この暫定保全措置としてしばしば登場するのが,いわゆる継続的な取引契約,商品の供給契約等を含むわけですが,そういうようなものを一方的に打ち切られ,あるいは長期間にわたる工事契約があって,その工事が途中で打切りになった。それから,医薬品とかそういうものの共同開発契約が,一方から,当事者から途中で打ち切られる。このような場合に,差止めの請求が出る。あるいは逆に,従前どおりの履行の請求が出る。そのような,長期にわたる継続的な契約においての事例が出され,この場面に当てはまるのかどうか,適用があるのかと,こういう疑問が多かったと思います。   そうすると,それらの事例は,日本での保全処分でいえば,全て仮の地位を定める仮処分ということになろうかと思いますけれども,それがこの③で全て賄うことができているかどうかということなのだろうと思います。   ざっと読んだところ,それから説明等をお聞きしたところでは,全てこれまでに出されている事例は,これに含ましめることができると考えられるところだと思いますけれども,皆様方からの全部の事例が適用されると考えてよいかどうか,こういう点が問題になるのではないかと考えております。 ○今津幹事 東北大の今津です。   冒頭で古田委員がおっしゃったことに関連して,既に出た意見と重複するところもありますけれども,意見を述べさせていただきます。   確かに,モデル法の文言とは離れた形での規律になっているということは確かで,それが外国から見てどういう印象を受けるかという懸念があるという御指摘は,確かにそのとおりだなというふうに伺いました。ただ,今回,現在の仲裁法のように,必要と認めるというだけの規定よりもう少し詳しく,明確にしようというところに,そういう流れでこういう規律が設けられる。その背景としては,執行力を与えるということを見据えて,明確化しようというところが出発点であったと理解しています。   それとの関係では,モデル法の文言自体もやや抽象的なところもありますので,一定程度明確にする必要はあるのかなと。どういうふうに明確にするかという一つの形として,今回御提案いただいたようなものが出てきたと。さらに,前回の議論を踏まえて,より取りこぼしがないような形で御提案を頂いたというふうに理解していますので,モデル法の文言そのままということではないにせよ,現在の国内法制との関係,あるいは今後の執行における当初の予測可能性確保という,そういう要請にこたえるという意味では,こういった方向での取りまとめというような方向を支持したいなと,私としては思っております。   それから,先ほど三木先生から御指摘があった,4類型に必ずしもこだわる必要ないのではないかというところ,私も今回拝見した④のアとイの区別なんかで,こういう形ではなくてもいいのではないかという感想を持ちました。   ④のアのところで,「審理を妨げる行為を禁止する」というふうに書いた後に,「イに掲げるものを除く。」という形になっていて,このイの証拠の保全というようなものが審議の妨害に含まれているような規定ぶりになっていると思ったんですけれども,これはモデル法の段階では,必ずしもそういった整理になっていなかったように思いますので,ここは④として統一しなくてもいいのかなというふうに感想を持ちました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○古田委員 度々すみません,古田でございます。   今,今津先生がおっしゃった点なのですけれども,2006年のモデル法改正は,仲裁廷が出すべき暫定保全措置と予備命令について,その類型ですとか発令要件を従前のモデル法よりも詳細に規定するとともに,暫定保全措置については執行力を付与するものでした。ただし,その執行手続の具体的な内容については,各国の執行法制に委ねるという形で2006年の改正がされています。   したがって,今回,我が国の仲裁法を2006年モデル法に合わせて改正するということであれば,暫定保全措置の発令要件をモデル法と表現を変える必要はなく,仮にモデル法の要件に従って発令された暫定保全措置が,我が国の既存の執行法上,執行できない場合には,それはもう執行しなくて構わないということで割り切ればいいと私は思っており,中間試案もそういう前提での提案をされていたという理解です。   ですので,我が国での執行をより容易にするために,暫定保全措置の類型ですとか発令要件の規律をモデル法とは違う表現にして,日本の執行法制に合うように変える必要はないと考えます。逆に,今回,日本の既存の民事保全法ですとか民事訴訟法に合わせるために表現を変えたことによって,今まで,委員,幹事の先生方が御議論されていたように,今回の部会資料の提案が果たして本当にモデル法に合っているかどうかという点について,この部会でもこれだけ議論になっているわけです。ですので,このまま立法してしまった場合に,やはり本当にモデル法に適合しているのかという点は,今後も問題として残ってしまうと思います。そうしたリスクをあえて残して立法する必要性がどこまであるのかという疑問があります。   部会資料で言っておられる既存の法制との整合性というのが,果たしてそこまでのことを要求しているのかという点が,私の冒頭の発言の根幹にある問題意識ということになります。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。度々失礼いたします。   今の古田委員の御指摘にも若干関連するかもしれませんけれども,もし仮に,今回御提案いただいているような考え方をベースに立法したという場合には,これ,国内向けには一問一答等の解説ということになるかもしれませんけれども,対外的にも英語等外国語で,これがどういう形でモデル法の規定と対応しているのかということについては,分かりやすい説明をする努力というのが不可欠になるかというふうに感じておりますというのが1点です。   それから,もう一つですけれども,これはくだらない思い付きの域を出ないお話でありますが,先ほど来の④のアとイを④,⑤に分けるかどうかということと,モデル法の4類型ということとの見え方としての整合性ということとの関係で申しますと,④のアとイをまとめるというよりは,むしろ①と②をまとめた上で,これをアとイにするであるとか,そういった整理ということも,モデル法との関連はより分かりやすいという面も出てこようかという感じもいたしまして,これは全く思い付きですので,御参考までに意見として申し上げます。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,この第1の1については,以上の程度にさせていただきまして,引き続きまして,資料11-1の4ページの「2 暫定保全措置の変更等及び事情変更の開示」,それから5ページの「3 暫定保全措置に係る費用及び損害」,この辺りについて,まとめて御議論を頂ければと思います。   どちらからでも結構です。また,どなたからでも結構ですので,御質問,御意見を頂ければと思います。 ○古田委員 古田でございます。   3の暫定保全措置に係る費用及び損害の点ですけれども,これも前回申し上げたのですが,ここで「責めに帰すべき事由により」という要件を課すことが,果たしてモデル法と整合的なのかという点について,引き続き疑問を持っております。   モデル法の17条Gには,帰責事由については規定されていません。今回の部会資料6では,その点については作業部会において両論あって,合意に至らなかったからだという御説明がされているのですけれども,仮に作業部会でそういう議論があった上で,現在のモデル法17G条の条文になっているのであるとすれば,この費用及び損害の負担を仲裁廷が命じるときに,当事者の帰責事由を要求するかどうかについては,17G条の解釈問題として,仲裁廷に委ねるという判断がされたということになるのではないかと思います。   ところが,今回の我が国の立法で,帰責事由を明確に要件としてしまった場合には,日本を仲裁地とする国際仲裁においては,仲裁廷は暫定保全措置に係る費用及び損害の負担を命じる場合には,必ず当事者に帰責事由があったかどうかを判断しなければいけないということになり,仲裁廷が帰責事由を要件にするかどうか自体を判断するという余地が奪われてしまうことになりますので,結果において,モデル法17G条よりも要件を加重したことになってしまうのではないかと考えます。   その結果,日本を仲裁地とする国際仲裁で,しかし仲裁廷は外国の仲裁人で構成されている場合に,仲裁廷が日本の仲裁法はモデル法準拠だと言われているので,モデル法に従って判断すればいいと考えて,例えば日本の仲裁法の条文の英訳は確認しないまま,当事者の帰責事由は要件として不要であるという前提で費用及び損害の負担を命じる判断をした場合に,その判断は我が国では仲裁判断しての効力を有するのですけれども,日本の仲裁法との関係では帰責事由の判断はおよそ欠落しているわけですので,結果として,日本の手続法に違反をした費用・損害の負担の命令ということになり,仲裁判断の取消事由があるということになる可能性もあります。   仮にそういうことを理由に仲裁廷の費用及び損害の負担に関する判断が取り消されることになりますと,これはこれで外国の仲裁人にとってはサプライズということになり,そういうことがいろいろあちらこちらで喧伝をされますと,やはり日本の仲裁法は,モデル法準拠と言っているけれども,ちょっと違っている,変わっているよね,不思議だよねという,風評被害の原因になるのではないかということを恐れているところです。   したがって,私としては,この「責めに帰すべき事由」という要件は削除すべきであると考えております。   今回の部会資料では,ただし書を付加して,「当事者間に別段の合意がある場合は,この限りでない。」とすることによって,そこは担保されるというようなことも書いてあるのですけれども,暫定保全措置に係る費用及び損害の負担を命じる際に帰責事由を要求するかどうかという点について,当事者が別段の合意をするということは,実務上ちょっと想定できない事態です。したがって,このようなただし書を設けたからといって,私の懸念は払拭されないと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。   ただいまの古田委員の御発言に一部賛成するところもあるわけですが,これも第1の1で申し上げたように,基本的にはモデル法に従って,文言も含めてモデル法に従ってやった方が,私は元々いいと思っていました。   ただ,この「責めに帰すべき事由」のところについては,今回の部会資料ですと,そこはモデル法の解釈としてはどちらとも決めていないということですかね。だとすれば,日本法でこういう要求を,要件を加えるというのは,モデル法との関係では,そこはクリアはできるのではないかと思います。   先ほど古田委員から,外国の仲裁人が日本の仲裁法の英訳を見ずに判断することがあって,モデル法に準拠しているということだけを信じて判断してしまって,それが取消事由になるというのはサプライズだというお話ありましたが,ちょっとそれは仲裁人のコンダクトとしては,日本の仲裁法を見ずに判断するというのは,やはりいかがなものかと思います。   もう一つ,「当事者間に別段の合意がある場合」,ここについては,余りその点についてだけ当事者の別段の合意,つまり責めに帰すべき事由の点についてだけ当事者間の別段の合意を行うというのは余り想定できないので,これを加えたから,先ほどの古田委員の懸念が払拭されるということには多分ならないと思っています。   どっち付かずの意見を申し上げてしまいました。私は,元々は責めに帰すべき事由は要らないのではないかと思っておりましたが,立法政策として「責めに帰すべき事由」を入れるというのは,ぎりぎりありなのかなと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   ございませんか。沈黙が何を意味しているのかという,何かもう少し知りたいという気もいたしますが。 ○垣内幹事 垣内です。   これまでの先生方と重なるところもありますけれども,モデル法のとおりであるという方が,モデル法に準拠していることが分かりやすいという意味では明快であるということかとは思います。   この「責めに帰すべき事由」を要求すべきなのかどうかという,実質論的なところについては,私,特段,今のところ確たる考えを持っていないところでありまして,「責めに帰すべき事由」を要求した方が望ましいかどうかというところについては,よく分からないところがあります。こういう要件は必然なのかと言われますと,そこは少しよく分からないところがあるようにも思いますけれども。   逆に,この文言を設けたことによって,モデル法に違反しているということになるのかと,モデル法から乖離しているということになるのかという点に関しては,本日の資料でも御説明がありますし,若干の文献などを見ましても,この点については各国法に委ねる,その損害賠償の実体要件については各国法に委ねる趣旨であったというような解説も見受けられるところのようでありますので,必ずしもモデル法と異なるということではないのかなと考えております。   そういう意味では,こういった提案もあり得るということかと思われますし,また,ただし書として加わっている部分につきましては,確かにこの点のみについて別段の合意をするということは,事実上はそれほど想定されないところかなという感じもいたしますけれども,仲裁法にこの種の規定を設けた場合に,当事者間が合意で変更できるのかどうかということが問題になり得るところで,この規律については合意で変更ができるという前提で立法するということについては,そういう方向でよろしいのではないかと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○高杉委員 ありがとうございます。高杉です。   私も,古田委員のできる限りモデル法にあわせた文言にすべしとの御意見に賛成します。仲裁地は,世界のどこでもあり得るわけですけれども,仲裁人は、仲裁地である国の仲裁法を見るわけです。モデル法準拠国が仲裁地である場合には,仲裁人としては,モデル法との内容の相違点が特に気になるかと思います。   仮に仲裁法の実質的な内容がモデル法準拠であったとしても,法律の条文がモデル法と大きく違う場合には,いくら学者等が英文でモデル法準拠である旨の解説をしたとしても,仲裁人の立場からみると,文言が大きく異なる条文について,モデル法と同一内容だと確信を持って言えるかどうかという問題が生じるのではないかと思います。   このような観点からいうと,やはりモデル法にできるだけ近い文言でないと,かえって誤ったメッセージを発することになるおそれがあるのではないでしょうか。ただ,法制上の問題があるということですと,どこまでバランスをとることができるかということになろうかと思います。現時点まで,すごく御尽力されて何とかモデル法の実質的な内容を実現しようというのは理解しておりますけれども,やはりモデル法の文言にできる限りあわせるというのが重要だと思いますので,先ほど古田委員がおっしゃった懸念が残ると思います。 ○竹下幹事 竹下でございます。   余り御発言がないようですので,私も3番の点について,前回も同じことを言ったかもしれませんが,発言をさせていただければと思います。今回の御提案で,「申立てをした者の責めに帰すべき事由により暫定保全措置を発したと認めるときは」という要件,もちろん手続的なものであると思いますが,ある種の実体的とも取れるような責任についての要件を課すことについて,モデル法から離れていないということのようですので,私も強く反対ということではありません。   ただ,全体として若干気になるのが,やはりこの辺りのところまでは,国として執行するかの問題とは異なり,恐らく仲裁廷の振る舞いをどうするか,仲裁廷に関する規律ということで,私としては,もう少し仲裁廷にはフリーハンドを与えても差し支えないようにおもわれ,仲裁廷が判断をする前提として,こういった要件をあらかじめ設定しておくということ自体が適切なのか,若干気にかかるところでございます。   その意味では,この何ですか,責めに帰すべき事由により発したと認めるというところなんかも,モデル法の規律に近いような形で,余り条件のようなものを付けるのではなくて,素直に,仲裁廷の判断に委ねるというような形で,相当と認めるときはとかでもよいのではないかと思っているところではございます。ただ,今現在の御提案でもモデル法から離れるわけではないということのようですので,強く反対ということではございません。ただ,全体として,もう少しこの辺りの話までのところは,仲裁廷の判断に委ねるような規律とすることでも構わないのはないかということだけ申し上げさせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井でございます。   重ねて申し上げますけれども,私も,竹下幹事のおっしゃるように,できる限りモデル法の文言に即して立法した方がいいと思っています。   ただ,この点について,先ほど古田委員からは,仲裁廷が必ず責めに帰すべき事由を認定しなければいけないというのがございました。それはそのとおりだと思いますが。逆に,モデル法と同じように,何もここに書かない場合,責めに帰すべき事由というのを書かない場合,その場合どうなるかというと,先ほどと,皆さん,そこは仲裁廷の裁量に任されているんだというお話がございました。つまり,仲裁廷が,そういう文言の下で,今度は仲裁廷が損害賠償を求められた場合に,責めに帰すべき事由を要求して,それで損害賠償を棄却したりした場合,それは,やはり同じように取消事由になったりするのではないかと思いますので,そこはどっちにするかは,これは決めの問題ではないかと思います。   誤解ないように申し上げておきますけれども,決めの問題というふうに言いましたが,私は,そういう問題がいろいろあるのだったら,モデル法に従っておいた方が説明はしやすいとは今でも思っているところです。 ○古田委員 古田でございます。   出井委員が最後におっしゃった点,帰責事由を要求しない立法した場合に,仲裁廷が帰責事由を要件として要求して,帰責事由がないから費用を損害の人が命じないとしたときに,それが仲裁判断取消事由になるかという点ですけれども,私は取消事由にはならないと思っております。   モデル法17G条は,「The arbitral tribunal may award such costs and damages」というふうになっており,特に要件は定めておりませんので,普通に読めば仲裁廷の自由裁量で,費用及び損害の負担をさせてもいいし,させなくてもいいという規律になっていると思います。   中間試案の条文も,「仲裁廷はいつでも」,中略しますが,「費用及び損害の賠償を命ずることができる。」とだけ規定をしており,その要件は特に規定しておりませんでした。仲裁廷の判断で,この件については,例えば申立人には帰責事由がないので費用及び損害の負担は命じないという判断をしたとしても,それは条文に違反するものではなくて,条文上許されている仲裁廷の裁量の範囲内の判断ということになり,したがって,仲裁判断の取消事由である手続法違反ということにはならないと私は考えております。 ○竹下幹事 竹下でございます。繰り返しの発言となってしまって,大変申し訳ありません。   今,古田先生がおっしゃられたこと,正にそのとおりだとは思うんですが,私の理解からすると,恐らくこの17条Gのところで,三木先生の翻訳していただいた資料の文言で御説明いたしますと,「仲裁廷が,事情に照らして当該措置又は当該命令は認められるべきではなかったと事後に判断したときは」という文言に定められている仲裁廷の判断があったときに,「shall be liable」,責任があるという形に規定がなっていますので,モデル法では仲裁廷の裁量に委ねられていることだと理解しております。第二文の方の「The arbitral tribunal may award」のところも,確かに「may」というのは裁量の可能性はあるのかもしれませんが,それ以上に,第一文の方の「The party requesting an interim measure or applying for a preliminary order shall be liable」ということに条件が付いている,つまり「if the arbitral tribunal later determines that」ということで,仲裁廷がやはりそういった認められるべきでないという判断したときという条件の下で「shall be liable」,責任を負うという形になっていますので,ある程度仲裁廷に裁量といいますか,判断を委ねるということ自体は,モデル法に明示されていると理解することができるのではないかと思います。私としては,今回の部会資料ですと,若干,仲裁廷に委ねられていたところが立法であらかじめ決まっているというので,現在の御提案も一つのモデル法の実施の方法なのだろうとは思いますが,もう少し仲裁廷に裁量を残しておいてもいいのかなと考えております。   長くなりまして申し訳ございません。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがですか。   よろしいでしょうか。 ○山田委員 私も余り強い意見があるわけではないのですが,この3のところについて,一言だけ申し上げたいと思います。   今,様々御議論ありましたように,モデル法17Gに文言上も合わせることが最善であることはおっしゃるとおりだと思いますけれども,しかし,この文言は常に解釈が伴うものであって,ここで御紹介がありますように,その解釈としては,無過失にするかどうかということについては決まらなかった。結局,その国の政策に委ねるということが,この17Gの趣旨であるというふうに仮に読んだといたしますと,取り分けこの暫定保全措置を日本国の裁判所が最終的に執行するというときに,誤りがあったらどうするのかという側面に関しては,国の政策的な判断で,日本法に引きつける文言を,17Gが採り得る範囲で定めるということも一応可能なのではないかと思われますので,今の御提案でもよいのではないかという意見でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに,2の方は特段御意見が出ていないようですが,今回の提案でよいかどうかという点も含めて,もし御意見があれば伺いたいと思いますが。   よろしいでしょうか。 ○三木委員 三木です。   それでは,2の点について申し上げたいと思います。   2の(3)につきましては,前回の資料に比べて,改善があることは間違いありませんが,こういう形の修文でいいのかどうかという点については,疑問を持っております。   今回の案では,「事情の変更があったと認めるに足りる相当の理由があるとき」ということですけれども,認めるに足りる相当の理由があるというのは,前回の資料よりは若干疑いの余地が入っていますけれども,これ自体は,依然としてかなり強い心証の状態ではないかと思います。   したがって,ここまでの心証の状態を要求しないと,内容の開示を命ずることができないのかという点については疑問があります。もう少し,疑いという言葉が法制上使えるかどうかは別として,疑いがあれば開示を命ずるということにしないと,この制度の意味は,事実上ほとんどなくなるのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,よろしければ,この資料の最後の点になりますけれども,資料6ページ,第1の「4 暫定保全措置の執行」,この点について御議論を,御質問,御意見をお出しいただければと思います。 ○古田委員 古田です。   まず,質問からでよろしいでしょうか。資料11-3についての質問ですけれども,関連するかとは思いますので。   資料11-3で,手続を2段階に分けて,執行拒否事由があるかどうかを判断する手続と一定の額の金銭の支払を命ずる手続を分けるということが構想されています。まず質問ですが,まずこの①の段階での裁判所の判断というのは,要するに,いわゆる通常の執行決定と同様に,○○という暫定保全措置に基づく強制執行を許すというような裁判の主文が予定されているのかどうかというのが質問の1点目です。   もう一つは,この①と②の手続は,同じ受訴裁判所が審理することが想定されているのでしょうか,あるいは別の事件として裁判所で受付をして,別の裁判体が審理・判断をすることが想定されているのでしょうか。その2点,まずお教えいただければと思います。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。理論的なところの説明はひとまずおくとして,今,我々が想定しているものをお答えしたいと思います。   まず,一つ目につきましては,執行拒否事由と呼ばれるものの有無を判断するということですので,その拒否事由がないということになれば,我が国において,何らかの形での執行というものを許すというような形の主文になろうかと思います。   仲裁判断の場合は民事執行を許すというような形になっておりますが,それと同じかどうかというところについては,なお検討が必要かと思っております。   二つ目の御質問につきましては,この部分はまだ,事務当局としてはいろいろなバリエーションがあり得るのだろうと思っております。   基本的に,同時で申し立てることを可能とするようなものであるとすれば,一つの裁判所において全部審理するということが分かりやすいのかもしれませんし,1段階目の手続だけ先に審理して,さらに必要があれば2段階目にいくというようなことを想定するのであれば,そのタイミングで改めて裁判所を選べるということもなくはないかなと思っております。その辺りは,今日の御議論を踏まえて考えていきたいと思っているところです。 ○古田委員 ありがとうございます。   ちょっと今の回答を踏まえて,意見というか,疑問点なのですけれども,元々の部会資料11-1の4の構想では,本文の1(1)③の類型の暫定保全措置については,裁判所の執行決定を経て,その後,我が国でいうと,間接強制をするのか,あるいはおよそ民事執行が想定されない類型だと考えておられるのか,どちらかかと思いました。他方,①,②,④の類型については,部会資料11-1の規律ですと,およそ間接強制は想定されておらず,その代わりに金銭の支払命令があるという位置付けだと理解をしました。   その理解を前提にして,部会資料11-3を見ますと,手続を2段階に分けていますので,例えば第1段階で本文1(1)①の類型の暫定保全措置について民事執行を許すという執行決定がされた場合に,当事者がそれを債務名義として間接強制を求める道が残されているのかどうか。私は,残されていていいのではないかと思っているのですけれども,事務当局の御意向として,間接強制はやはり許さなくて,その場合でも金銭の支払命令だけにするのだということであれば,そのように間接強制の余地を否定する理由について教えていただければと思います。結局は質問でしたね。御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○山本部会長 それでは,事務当局から御説明お願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。   少し舌足らずなところがございましたけれども,11-3での事務当局としての提案というのは,11-1の4の(2)のアとイを別々の手続で行うということに主眼がございました。ですので,古田委員がおっしゃったような間接強制を許す趣旨までは含んでいないものと御理解いただければと思います。   それがなぜそうなのかという説明ですけれども,これまで御説明申し上げてきたとおり,仮差押え的な暫定保全措置であったり,係争物の仮処分的な暫定保全措置については,1回の違反行為ですぐに履行不能となってしまうことが想定されますので,間接強制というものにはなじみにくいものと考えております。そういったことから,この違反金の支払命令の方がより望ましいのではないかと考えているところでございます。 ○古田委員 すみません,古田です。よろしいですか。 ○山本部会長 はい。 ○古田委員 ありがとうございます。   確かに,1の(1)①,②は,不作為を命じたときに,例えば財産を処分されてしまえばそれっきりではないかというのは,おっしゃるとおりかと思うのですけれども,例えば④の仲裁手続における審理を妨げる行為を禁止したけれども,その行為を継続しているというような場合に,その行為を継続している間は1日幾らずつの間接金を支払えという強制執行は可能なのではないかと思われます。当事者が新しく作る裁判所による金銭の支払命令の手続ではなくて,間接強制金の手続を選択したいと考えたときに,それを殊更に否定する制度設計をする必然性は,やはりないのではないかと思います。   質問というか,意見というか,どっちだか分かりませんけれども,もしこの点について福田さんから御意見あればお伺いできればと思います。 ○山本部会長 今,御意見ではないかと思いますが,福田さんから何かコメントがあれば。 ○福田幹事 福田でございます。   今の点ですけれども,おっしゃるような場面は想定されるだろうと思います。ただ,そうしたときに,この11-1の4の(2)のイで,例えばアンタイ・スーツ・インジャンクションが出ていて,それに従わずに何か行為をしているときに,1日当たり幾らというような形は,こちらの違反金支払命令でも出し得ると考えておりましたので,あえて間接強制に行かなくても,このルートで同じことは実現ができるのかと考えておりました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○古田委員 確認ですけれども,そうすると,今回想定されている金銭の支払命令というのは,必ずしも一括の金銭支払だけではなくて,1日当たり幾らというような間接強制金のようなものも想定されているという理解でよろしいでしょうか。 ○山本部会長 事務当局からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。   おっしゃるとおりでございます。そのようなことも想定し得るものとして,提案しております。 ○古田委員 了解いたしました。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   この資料11-3,この4の別案の部分も併せて御意見,御質問等の対象としておりますので,御発言の対象にしていただければと思います。 ○小川委員 今,御説明にありましたように,今回御提案されている4の(2)のイについては,間接強制金の支払も含むというお話なんですけれども,裁判所の方で,この間接強制金類似の支払について,何の手掛かりもないと,幾ら,どうやって支払うべきか,見当が付かないということになると思われます。これにつきましては,現状の間接強制と同様に,1日幾らであるとか,申立ての趣旨か何かに具体的な金額を書いていただいた上で,それが相当な金員であるということについて具体的な御主張がされることを予定しているということでよろしいのでしょうか。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。こちらの想定としましては,間接強制類似のものという制度と考えておりますので,おっしゃるように,何も資料のないところで裁判所が一から金額を定めるというのはなかなか困難な面があるというのは理解し得るところです。   ですので,今の間接強制の実務になるべく近い形で仕組むことが望ましいと思っておりまして,私の承知しているところでは,民事執行規則で,申立書において金額を記載すべきことの手掛かりとなるような規定があったかと思いますので,場合によってはそういった形で,手続規則等で対応するということもあるのかなとは思っております。ですので,基本的には,申立人の側でこのぐらいの金額を出してほしいというところから,審理はスタートするのかなとは思っております。 ○山本部会長 小川委員,いかがでしょうか。 ○小川委員 そういう方向で御検討よろしくお願いいたします。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○今津幹事 東北大の今津です。   執行に関しては,前回からかなり議論がされていたところかと思いますが,元々この執行手続に関して,事務当局から当初,支払命令の制度というのが御提案された背景として,執行決定をやってから間接強制の決定をすると時間が掛かって不便であるというところから出発していたと理解しています。   今回,資料の11-1で御提案されたものは,執行決定の枠の中に金銭の支払を命ずる部分も入れることによって,間接強制として別枠にするよりも時間を短縮しようという,そういう御趣旨なのかなと承りました。   他方で,11-3の方は,手続としては執行決定と金銭の支払を分けるけれども,申立てを一本化する等の工夫によって,本来的な間接強制を使うよりも短縮をすると,そういう御趣旨なのかなというふうに,私としては理解しました。   その場合なんですけれども,間接強制を使う場合だと,本来の給付を最初に命じた上で,それに違反したらこういうふうに金銭を支払えという,そういった形で主文が書かれると理解しているんですけれども,今回のような11-1とか11-3のような御提案だと,違反した場合,金銭の支払を命ずるという,違反した場合ということの前提といいますか,違反するなというその命令というのはどこかに含まれるのかなと,そこがちょっと疑問に思ったんですけれども,暫定保全措置については,一応承認の対象として,違反するなという内容のものが既に存在するということを前提に,執行決定の制度を組み立てているのか,あるいは承認については特段何も設けないという前提で,今回の執行決定の中に違反するなというものも読み込むのか,その辺りどのように理解されているか,ちょっと御説明いただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。まず,暫定保全措置においては,不作為が命じられているもの,つまり,何々をしてはならないというような形で命令が出されていることが多いかと思います。それを,一段階目の手続で執行拒否事由の有無を判断し,そういった内容のものとして日本国として受け入れた上で,その暫定保全措置で命ぜられている禁止規定に違反したかどうかというのを,この支払命令の発令のところで判断することを考えております。   継続的に不作為を求めるものですとか,1回の行為によって直ちに義務違反が生じてしまう場面等,いろいろバリエーションがあると思っておりまして,仮に一回的な行為がされたことにより暫定保全措置の内容が実現されないときには,間接強制というものは履行不能になってしまうので,なるべく早い段階の手続で支払命令を設けて,その執行を担保しようというところに一つ主眼があるというふうに御理解を頂ければと思います。 ○山本部会長 今津幹事,いかがですか。   よろしいですか。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。   まず,11-1の方の4に関してですけれども,前回御提案されていた仲裁廷の方で金銭の支払を命ずるというものと比較いたしますと,やはり今回のように,金銭の支払を命ずるという形での実現,強制履行を図っていくというものであっても,裁判所の方でその旨の裁判をするという形の方が,仲裁廷が行うことを前提とするよりはよいのではないかと思います。   したがいまして,前回の提案よりも11-1の提案の方が望ましいのではないかと考えております。   その上で,11-1ですと,「執行決定」というもので民事執行を許す旨ということとその金銭の支払を同時に一つの裁判で命ずるという形になっているところを,11-3ですと,これを二つに分けるということなのですけれども,11-1と11-3を比較いたしましたときに,相違点としては,今の手続的な点で2段階になるということに加えまして,別案の方ですと②の方の要件として,当該暫定保全措置の違反又はそのおそれがあることを要件とするという,要件面での違いということが一つ加わるということかなと思います。   この組合せで考えますと,手続が1段階か2段階かということと,金銭の支払命令をするというときに,その要件として,違反又はそのおそれということを要件として盛り込むかどうかということがありますので,論理的には更にほかの組合せもあり得るということかなと思われまして,例えば1段階の手続で,11-1の6ページの(2)アとイのような仕組みになっているけれども,イの方について,違反又はそのおそれがあるときはという形での要件を設定するというようなこともあり得るのかなという感じもいたします。   先ほどの事務局からの資料説明の中では,そのような1段階で,かつ違反又はそのおそれが要件ということになると,これが立証されない限り,あるいは疎明かもしれませんけれども,認められない限りは執行決定がされないということになり,これがモデル法との関係で問題があるのではないかというお話だったかと思います。   確かに,そういう見方もあるのかもしれないのですけれども,結局,2段階の手続になったといたしましても,その2段階目で支払命令をしてもらえなければ,エンフォースはしてもらえないということには変わりがないわけでありますので,それが見えづらいということにはなるのかもしれませんけれども,実質においてそこまで大きな違いがあり,11-1はモデル法に違反するとされる可能性が高いけれども,11-3であればそうならないということになるのかどうかということについては,私には若干疑問があるようにも感じております。そのために,あえて独立の裁判を設けるという必然性がどこまであるのかということについては,少しなお検討の必要があるかなという気がしているところです。   その上で,仮に11-3のような2段階の手続を仕組むといった場合には,別案の①の裁判,執行拒否事由があるか否かを判断する裁判というものが独立の裁判ということになってきますので,これが仮に文字どおり民事執行を許すというような執行決定ではないものであるとすると,その理論的な位置付けというのは何なんだろうかということが問題になってきそうな感じもいたします。   他に確認的に執行拒否事由がないことを認定する裁判ということなのか,何かその他の効力があるということなのか。その他の効力といっても,債務名義が直ちにできるという効力でないとすると,それは一体何なのかといったようなことが問題となりそうでありまして,仮に執行拒否事由がないということを認定して,その旨を宣言する裁判であるということだとしたときには,その効力がどうなるのかと。執行拒否事由が存在しないということについて,既判力ないしそれに準ずるような拘束力を生ずるということになるのかどうか。   そういう拘束力を認めてよいかどうかという問題と,認めるとした場合に,それにどのようなメリットがあるかというようなことが問題となりそうな感じがいたしますけれども,仮にメリットがあるということだとすると,それをこの①,②,④の場合にのみ,そのようなルートを,このような類型の裁判を考えるということになるのかどうか。③の場合も含めて,そういうステップを踏むということもあるいは考えられるのかなという感じもいたしまして,その辺りについても更に検討が必要なのかなという感じがいたします。   もし2段階に分けるということについての強い必要性が仮にないということであれば,先ほど少し申しましたように,11-1の考え方にのっとって,1段階だけれども,違反又はそのおそれがあるという要件がなければ,金銭の支払命令というのは難しいのであると,法制上の観点等から難しいのであるということであれば,これを1段階目の要件とするということもあり得ないものでもないのかなと思われます。その場合には,別途の裁判,特殊な裁判について,その性質如何といったような問題については論じる必要がなくなるということでありますし,また,③の類型の場合との違いというものは,それほど大きなものにはならないということかなとも思われるところです。   付随いたしまして,仮に2段階の手続というようなことになりますと,①,②,④の場合と③の場合とでかなり手続,仕組みが異なってくるということになってまいりまして,実務上,その種のことがどの程度あるのかというのはよく分からないところがありますけれども,暫定保全措置として,この複数の類型にわたるような内容の措置が命じられるというようなことがないのかどうか。仮にそのようなことがあったときに,類型,一つのところでいろいろなことが命じられていて,それぞれについて別の手続に乗っていくというようなことになると,かなり複雑な話にもなりそうでありまして,それが望ましいのかどうかといったことについても,少し気になるように感じました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,最高裁判所,お願いできますか。 ○小津関係官 念のため確認したいのですが,部会資料の11-1,8ページには,「暫定保全措置に基づく民事執行をするためには,被申立人が当該暫定保全措置に違反したことを証明し,条件成就執行文の付与を受ける必要があるものと考えられる。」という記載があるのですが,違反があったことが明白な,シンプルな事案であれば,書記官が条件成就執行文を付与することで特段問題はないと思うんですが,違反があったか否かが微妙な事案に関しては,その後の手続として,民事執行法に規定がある執行文付与に対する異議の手続や,執行文を付与すべきことを求める執行文付与の訴えというような手続で争われる可能性があるという理解でよろしかったでしょうか。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。今の小津関係官のような理解でよろしいかと思います。争いが生じた場合は,執行文付与の訴え又は付与されたことに対する異議ということになるのかと思っております。 ○小津関係官 ありがとうございました。 ○吉野委員 吉野です。   先ほどの垣内幹事のお話とも関連してくるわけですが,このような,いわゆる2段階の手続を取るということになると,やはりかなり重い手続になるという感じがいたします。それはそれでやむを得ないということであればいいのですが,実質的に手続が複雑になるといいますか,時間がかかってくることは間違いないところだろうと思います。   それで,質問ですが,これは執行決定と,その後の金銭の支払を命ずる決定とを別々に行うという前提ですが,仮に,これを一つの決定でしてしまう。無論,その前に一つの申立ての中で,この二つが申し立てられているということが前提になりますけれども,一つの決定の中に執行決定と金銭の支払を命ずる,これに違反したときはこれこれの金銭の支払を命ずるという一つの決定をしてしまう。ただし,現実に金銭の支払についての命令を,現実にそれに基づいて強制執行することができるのは,執行決定そのものが確定した後と,このような考え方というんですか,このような扱いというものが可能なのかどうか。なかなか難しいかもしれませんが,提案された事務当局の方では,この辺りはどのようにお考えになっておられるのかどうか,お聞きしたいと思います。 ○山本部会長 御質問ということですので,事務当局からお答えを頂ければと思います。 ○福田幹事 福田でございます。11-1の4で提案をさせていただいたもの,つまり,一つの決定手続で両方の命令ないし決定を出すということであれば,この決定が確定すれば,その後,これが債務名義になってくると思いますので,執行文の付与がされて強制執行に移るということになろうかと思います。   2段階の手続で仕組むときには,これはいろいろなバリエーションがあるんだろうと思いますので,それは仕組み方の問題かなというふうに今は考えております。 ○山本部会長 吉野委員,よろしいですか。 ○吉野委員 結構です。ありがとうございました。 ○手塚委員 手塚です。今回,最初に出てきた11-1については,常に必ず金銭支払命令とセットでないと執行決定が出ない,あるいはその申立てができないというのはちょっと,使い勝手としてはよくない場合があるだろうと思っていまして,これ実務でいいますと,いろいろな類型があると思うんですけれども,例えばあれですか,①とか②で銀行預金について,引き出してはいけないというような保全措置を採った場合に,仲裁廷からそういうのが出ていますというだけでは,やはり銀行もなかなか,では,預金引き出し認めませんからとならないのではないかと思うんですね。それに対して,裁判所が執行決定まで出していれば,もちろん確定しているかどうかというのはありますけれども,裁判所の命令があれば,これは一応執行拒否事由がないということが公に判断されているので,事実上,銀行の方から引き出すような行為を阻止できる可能性があるのではないかということで,実務というのは,やはりそういうところで結構動いている部分があるのではないかと思うんですね。   それからあと,④のアの方でしょうか,これはアンタイ・スーツ・インジャンクションみたいな形で,海外の裁判所で仲裁行為を無視して訴訟を起こしているというときに,仲裁廷からそういう仲裁合意に反する訴訟の進行を禁ずるというような命令が出るわけで,これ,私も1回そういうのをとったことあるんですけれども,やはり執行力がないということだと,なかなかその相手方もそれに応じて,訴訟をステイしてくれないとか,言うことを聞かないわけですよね。   だから,そこで,裁判所がそういう暫定的保全措置について執行決定を出せば,これはもう裁判所が執行拒絶理由がないということを認めているわけですから,相手方もステイに応じる可能性はより高まるし,あと裁判所,外国裁判所も日本の裁判所が訴訟を進めてはいけないという,仲裁廷の保全措置を認めたわけですから,そういう意味では,何も執行力がないだけに比べれば,はるかに実務的な実効性があるのではないかと思うんですね。   だから,日本の民事執行のいずれかの類型に基づく執行ができなければ無意味なのかというと,私はそんなことないんだと思うんですね。なので,そういうものとして執行力を認める,あるいは執行を許可するというのが出て,かつ本当に必要だったら,支払命令みたいなものも採れるということで,私は2段階に分けるのはいいアイデアだと思っていて,間接強制の申立てのときも,結構,書面審尋したりとか,本当に履行する意思があるのかないのかということを確認した上で,裁判所は間接強制金,出していると思いますし,いろいろな事情を考慮して金額決めると思うんですけれども,そういうことを執行決定のところと常に必ず一緒にやるというのは,私はあんまりよくないと思っていました。   だから,こういうふうに2段階に分ければ,常に必ずうまくいくというところまではいかないかもしれないけれども,最初から二つともやらなければいけないという制度よりは2段階に分けていただいた方がいいし,2段階目にいかないでうまく解決できるということも,実務的にはかなりあるのではないかなと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○出井委員 出井です。   大変御苦労されているというのはよく分かります。   順番に,11-1の方からコメントいたしますが,前回の案,部会資料10の案,仲裁廷に支払命令を出すことを義務付ける,それがないと執行に乗っていかないという案に比べたらよくなっていると思います。裁判所の執行手続は,各国に委ねられているというところでも説明できるとは思います。   しかし,やはり11-1の案は,以下述べるような問題があると思っております。   ①,②,④と,それから③を分けて,前者は支払命令の金銭執行という形でしか執行できないということにしているわけですが,これは①,②,④を,この条文案だけ見ると,禁止,不作為命令であって,③と執行のルートで大きな違いが出てきてしまうということが合理的に説明できるのかという問題。   それから,既に前回及び今回も何人かの方から御指摘があったように,実際に仲裁廷が出す保全処分が,①,②,④と③のこの区分けですね。この区分けに沿って,泰然と類型分けできるのか,さらには複数の保全処分が求められた場合どうするのかという,いろいろな問題があって,やはりそこは疑問であると思います。   もう一つは,11-1,執行拒否事由の判断と同時に支払い命令の判断,金額の判断も同時に行われなければならない,それがなければ,執行決定出せないということになりますと,やはりこの手続が非常に重たくなってしまうという問題があると思います。   もちろん,執行拒否事由の判断でも非常に難しいものがあって,そこで長引くことはあるわけですが,執行拒否事由はほとんど問題なくて,割と簡単に判断できるという場合も多いと思います。その場合でも,①,②,④については,なおこの支払命令という金額決定が必要になるということになりますと,それほど簡単には出ないのではないかということになり,要するに,執行決定の手続が非常に重たくなって,手間が掛かるものになってしまうという点が,実務上は一番気になるところで,11-1というのは使い勝手がどうなのかなと思っておりました。   さて,別案ですが,何人かの方から御指摘あるように,第1段階の執行拒否事由があるか否かの判断,これを理論的にどういうふうに説明するのか,整理するのかという問題はあるかと思いますが,先ほど手塚委員がおっしゃったことと重なると思いますけれども,実務上は,2段階に分けるというやり方は結構意味のあることではないかと,今のところは思っております。   第1段階,これは執行決定とは言わないんですかね。執行拒否事由がないことの判断,これは執行決定と言わないのかもしれませんが,その段階での決定が出れば,それは法的には債務名義とは言えないんだとは思いますけれども,ある意味,裁判所のお墨付きが得られているわけですね。通常は,その段階で任意に従ってもらえるということが期待できると思います。   もちろん,仲裁廷による暫定保全措置だけでも拘束力はあるわけですから,従ってもらうことは多いのですが,それに更に裁判所のそういう決定があると,先ほど手塚先生からも御説明,例示があったように,任意に従ってもらえるインセンティブは強まるという,実務上の意味はあると思います。   先ほど,支払命令の判断は結構時間掛かるのではないかというふうに申し上げましたが,その時間が掛かるという点を考慮して,だからこそ切り離したというのがこの別案ではないかと思います。つまり,第1段階だけを行って,第2段階は行わない場合もあると,そういうことを,これ認めるわけですよね。第1段階だけで意味があるのであれば,先ほど手塚先生も私も,それは意味があるというふうに御意見申し上げましたけれども,支払命令に時間が掛かるというデメリットも幾分かは和らぐのではないかと思います。   ここから先は,質問も含めてということになりますが,別案における第2段階の支払命令について,今までもこの支払命令というのをどういうふうに性格付けるかは,いろいろな説明があって,確か何回か前の部会資料では,違約金的なものだということでしたが,これが間接強制金,それから損害賠償金とどう違うのか,あるいはそれの関係がどうなるのかについても,いろいろな説明があったかと思います。   今回のこの別案,それから先ほどの福田参事官の御説明等をお聞きしておりますと,かなり間接強制金に近い,そのものではないとしても,少なくとも間接強制金的な使い方がされることを予定されているものであるというふうに伺いました。   要件の面でも,違反又は違反のおそれですか,確か間接強制も,これは解釈,判例の解釈だったかと思いますけれども,違反のおそれが必要であるということだったと思いますので,その点でも結構要件も近いし,それから損害賠償金との関係も,これ民事執行法の172条の4項及びその解釈ということになるのかもしれませんが,それと今回設けられている規律も割と,損害賠償金との関係という点でも非常に近いように思います。   そうすると,果たしてこの第2段階の支払命令というのが,間接強制と一体どこが違ってくるのか。はっきりした違いは,一つは,間接強制の裁判は執行裁判所が行うと。これに対して,提案されている第2段階の支払命令は,先ほど執行拒否事由の裁判を行うところと同じ裁判体がやるのかどうかという問題ありましたが,いずれにせよ,これは債務名義認可段階で行うと,執行裁判所ではないと,そこが一つ違うところですかね。   それからあと,間接強制は債務名義があって,それにその後で間接強制の申立てを行うわけですが,今回の場合は,必ずしも債務名義が先行しているものではない。かつ,第1段階が確定していることが申立ての要件ではなくて,第2段階の発令の要件にはなるかもしれませんが,そこが違うということは理解しましたが,それ以外に果たして違いがあるのか。今申し上げた二つだけの違いだと理解しましたが,どうでしょうか。更に言うと,ここまでいくのであれば,やはりストレートに間接強制に統合してしまってもよいのではないかという気もします。   間接強制との違いについて,御確認のコメントを頂ければと思います。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えいただければと思います。 ○福田幹事 福田でございます。今,出井委員に整理いただいたとおり,二つほど御指摘があったかと思いますが,その違いというのはあるのだろうと思います。加えて申しますと,まず,実質として,間接強制ですと,一回的な不作為義務が命じられている場合は,それに違反してしまうと,直ちに履行不能という形になりますので,間接強制はできないということになると思います。   これに対し,この我々が提案しております制度ですと,違反した場合は損害賠償に言わば転化されるようなイメージで考えておりますので,そういった形の金銭執行ができるというところで,一つ意味のあるもの,実効的なものと考えている,この点に違いがあると思います。   それから,2点目ですけれども,これは先ほど出井委員がおっしゃったように,通常の間接強制であれば,それは執行裁判所がやるわけですので,間接強制の申立ての前に,債務名義が送達されていて,執行文が付与されていることが必要になってくるわけですけれども,今回のこの制度ですと,民事訴訟法の規定が包括準用されることを前提とすると,執行拒否事由の有無を判断した裁判所の決定は,送達とか執行文の付与の対象にはならず,この支払命令の方にスムーズに移行すると。そして,その支払命令が債務名義になりますので,そのタイミングで送達が行われて,執行文が付与されてということになるという点で,違いがあるのかなと考えております。 ○出井委員 御説明分かりました。   いろいろ理論的な問題は,これから整理しなければいけないと思いますが,今回示された別案というのは,いろいろ御苦労されて,それなりに実務上意味のある案ではないかと,私は今のところは思っております。   ただ,最後にもう一つだけ申し上げると,やはり①,②,④と③は,④はこれ特殊なものなので分かりますが,①,②と③を本当に分けられるのかどうかというところが,実務上はなお気になるところです。そこは,恐らく実務上何らかの対処は可能ではあると思っておりますが,指摘いたします。ありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   恐らく,なお御意見等あるのではないかと思いますが,既に開始から2時間以上たちましたので,ここで若干の休憩を取ってから,またこの暫定保全措置の執行の問題について議事を再開したいと思います。   15分程度ということで,15時50分に再開したいと思いますので,それまで御休憩いただければと思います。           (休     憩) ○山本部会長 それでは,50分になりましたので,審議を再開したいと思います。   引き続き,この資料11-1の第1の4,それからこの11-3について御質問,御意見,御自由にお出しを頂ければと思います。 ○三木委員 三木です。   UNCITRALにおける議論の場で,暫定保全措置の執行それ自体については,各国の国内の執行法制に委ねるという前提で議論がされましたから,当然,この執行の具体的な手続とか内容について,具体的な議論があったわけではありません。   ただ,会議全体の暗黙のコンセンサスとして,この暫定保全措置に基づく執行というものは,仲裁判断の執行とある意味でパラレルなものとしてイメージされていたことは間違いないだろうと思います。すなわち,仲裁判断の執行について言えば,仲裁判断が下りて,それが任意履行されない場合,言い換えると,仲裁判断の命令に対する違反があった場合に,それを受けて,仲裁判断の執行の申立てを裁判所にするということになります。   これとパラレルに考えますと,暫定保全措置の執行についても,仲裁廷が暫定保全措置を命じて,それに対して,これを命じられた者がその命令に違反をし,それを受けて裁判所に暫定保全措置の執行を申し立てるということが,この制度の一般的な前提として考えられていたと思います。   そういう意味でいいますと,先ほど手塚委員がおっしゃった仲裁廷が出した暫定保全措置について,いわば裁判所がお墨付きを与えるというような形のものを,ここにいう暫定保全措置の執行としてイメージしていたわけではないだろうと思います。   また,これを別な観点から申し上げますと,日本の民事保全法の言葉でいいますと,保全命令裁判所と保全執行裁判所というものがあります。もちろん,債権執行のように,事実上,保全命令裁判所と保全執行裁判所が一つというものもあります。それから,実際にも,保全命令裁判所と保全執行裁判所が分かれているという場合もあります。   これを,この仲裁の暫定保全措置の執行の場面になぞらえますと,日本の民事保全法でいう保全命令裁判所に当たるものが仲裁廷であろうと思います。仲裁廷が出した暫定保全措置に違反があって,その執行を裁判所に申し立てるというときの裁判所は,保全執行裁判所に相当するのだろうと思います。   そうした観点から,昨日送られてきました11-3の2段階の制度を見ますと,もちろんこの別案における第1段階の手続が,民事保全法にいう保全命令裁判所の役割であるとは言えません。それとは異なったものであることにはなろうかと思います。しかし,見方によっては,仲裁廷は部分的な保全命令裁判所の機能を持っており,その残された部分をこの別案の第1段階で補って,両者あいまって保全命令が完結するような制度というように見えなくもない。あるいは,そうではないとしても,そのように受け取られる可能性は十二分にあろうかと思います。   そういうことでいうと,この別案というのは,かなりの程度,日本国内においてすら,あるいは海外の目から見たらなおさら,かなり誤解を受けるおそれのある仕組みではないかと思います。   それから,現実にどの程度の遅れが生じるかは,この制度の細部が何もまだ書かれていないので分かりませんけれども,少なくとも2段階に分けると,1段階目の裁判に対して抗告がなされ,2段階目の裁判についてまた抗告がなされるというようなことが可能になりますので,二重の抗告の手続が進行するということになるのではないかと思います。   そうすると,暫定保全措置というのは,言うまでもなく緊急性を要するわけで,その執行についても,緊急に対応すればするほどいいわけですから,そういう意味でも,この制度はやや奇妙なといいますか,それなりに問題がある制度である,あるいは,そのように受け取られるおそれがあると思います。   そういう意味では,結論として,どちらかという意味で,相対的に見れば,資料の11-1の4の方がよりよいのではないかと思います。もちろん,現在の4の制度がこのままでいいのか,もう少し検討する余地があるのかという点については,そこは留保する必要があると思います。しかし,現時点では,取りあえず,資料の11-3の制度よりは11-1の方の制度がよいのではないかという意見を申し上げておきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。度々申し訳ありません。   先ほど実務家の委員の先生方から,この11-3のような2段階の制度,実務的にはメリットがあるのではないかという御指摘がありました。私は,その点について余り,さきに発言したときには認識をしておりませんでしたので,そのような実務上のニーズがあるということだとすると,先ほど申し上げた時点よりは,もう少し考える余地があるのかなという気がしてきております。   ただ,理論的性質等々のお話は先ほど申し上げたとおりですけれども,ちょっとよく分かりませんのが,別案ですと,やはり第1段階の手続が,言わば前置と申しますか,こちらが確定しない限りは第2段階の裁判ができないということは想定されているようなのですけれども,①の裁判だけをすることに意味がある場合があるというのが先ほどの御指摘だったと思いますが,そうであるからといって,②の裁判をするに当たって,必ず①の裁判をまずやって,それが確定しなければ②ができないとする必然性と申しますか,そのことの合理性というのがどこにあるのかということは,少しまだよく分からないところがあります。   そういう観点からは,11-1で示されているような制度を設けた上で,別途,①のみの申立てもできるというようなことであれば,それはいずれのニーズ,つまり強制執行そのものを迅速にするというニーズと,そこまでいくことなく,裁判所の,先ほど三木委員がお墨付きと言われたようなもの,それについてニーズがあるとすれば,それに対応するというようなことも考えられそうかなとも思いますので,その確定ということを要求することの合理性について,なお検討の余地があるように思われます。   ただ,これ別案については,昨日送られてきたばかりで,まだ,細部についてはいろいろと検討の余地があるものかとも思われまして,まず,同時に申し立てることは許容されるということが,資料の説明で記載がされておりますけれども,同時に申し立てたとして,併合されているということに形式的になるのかどうか分かりませんけれども,同時に手続が進んでいく場合に,同一の裁判体が判断をするとしますと,本来であれば確定しなければできないような裁判について,言わば確定を黙示の条件として,同時に裁判そのものは行っておくと。実際には,もう一方の方が確定しなければ強制執行はできないというような進め方もあり得るとすれば,まず確定しなければいけないので,そこは時間が掛かって遅れてしまうという問題は解消できる可能性もあるのかなと思われますので,その辺りも含めて,少し手続の仕組み方について,なお検討の必要があるのかなというふうに感じたところです。   それから,これは御質問ということになるんですけれども,今日の11-1の第1の1のところで,改めて整理された①から④の暫定保全措置の類型があるわけですけれども,これを卒然と眺めますと,③の場合についても,執行方法として間接強制という可能性があるものも含まれ得るのかなという感じもいたします。   その場合に,①,②,④であれば,これはこちらの支払命令というような仕組みにのっていて,③の方は通常の間接強制ということになるということでよろしいのかどうか。その点について,事務局として何かお考えがあれば教えていただければと思います。 ○山本部会長 それでは,事務当局から,その質問の部分についてお答えいただければと思います。 ○福田幹事 福田でございます。御質問ありがとうございます。   今回の提案では,第1の1の③については,民事執行法上の間接強制を想定をしておりまして,この支払命令の手続にはのってこないと想定しておりました。 ○垣内幹事 はい。事務局のお考えについては承りましたけれども,その類型によっていろいろと違ってくるというのが,やや複雑な面はあるのかなという印象は持ちます。 ○髙畑委員 ありがとうございます。聞こえておりますでしょうか。 ○山本部会長 聞こえています。 ○髙畑委員 ちょっと接続テストがうまくいかなったので,すみません,度々入ったり出たりで。   ちょっと途中聞き漏らしたところもあるかもしれないんですけれども,こちらの,先ほど手塚委員,出井委員がおっしゃっていたように,やはり昨日お出しされた別案というのは非常に検討に値するのかなとは思っておるんですが。というのは,やはり執行拒否事由があるか否かだけでも判断していただく,ある程度の執行の可能性というか,日本の裁判所のお墨付きを頂くということによって,当事者の任意の履行を促すということは,非常に実務上意味があるのではないかなとは思っております。   ただ,ちょっとこれは質問というか,その一方で旧来の施設というか,支払命令とパックになっているようなものですと,なかなか難しいのかなというところと,支払命令までは要らないような類型というのもあるのかなというところはあるんですけれども。   その前段のというか,別案の場合の①のところ,執行拒否事由があるか否かを判断する手続というのが,何というか,いわゆる執行決定をする裁判所にとって,執行決定という中ではどのぐらいの立ち位置というか,拒否事由だけを判断されてというか,もうちょっと言うと,当事者が求めるのは執行拒否事由があるか否かだけを判断してくださいみたいに言うのか,それとも執行決定お願いしますと言うんだけれども,取りあえず第1弾として,執行拒否事由があるかだけを判断すると,そういうプロセスなのか。それはちょっと,モデル法の17条のHとかIとかというところの,その執行というところとどういうふうに位置付けられるのかというところをちょっとお伺いしたかったところです。 ○山本部会長 ありがとうございます。   それでは,事務当局からお答えいただけますでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。今の髙畑委員からの御指摘も,これまで出ております一段階目の手続をどういうふうに理論的に説明するのかというところとリンクする話かなと思っておりますので,そこはにわかにお答えすることが難しいわけですけれども,我が国の仲裁法上の執行決定というものは,拒否事由の有無を判断し,その決定が出れば民事執行を許す旨の決定と,こういう形で定義がされております。   これまでの我々の整理によりますと,今回の暫定保全措置命令について,1の(1)の③については,民事執行になじむということでこれまでは御説明をさせていただいてきて,それ以外の1,2,4については,民事執行には直ちにはなじまないというような整理をさせていただいております。   そうしたときに,民事執行になじまない類型のものについては,民事執行を許すというような形では法制上書きづらいところでして,そういう意味で,この点をどういうふうに理論的に説明するかというところを検討しているところでございます。   ですので,ちょっと明確なお答えにはなっていませんけれども,現時点でお答えできるところは以上になります。 ○髙畑委員 ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○竹下幹事 一橋大学の竹下でございます。   この11-3の方の,別案というのが出てきて,①の手続の理論的な意義をどう捉えるかなど,まだまだ検討が必要というのはそのとおりかと思いますが,今後,こちらの案で検討が進んでいくのではないかと思うので,1点だけ気付きの点を発言させていただきます。これ①と②で,一緒に手続しているとするといいのかもしれないんですが,①と②が時間的にずれたとすると,①でした拒否事由の審査を常に②の方ではそのまま受け取らなければならないのか。時間のずれがあるとすると,何か判断のずれのようなものも起こってくるような気がしているところでございまして,この点について,今事務当局から何かお答えいただきたいということではないんですが,今後問題となっていくのではないかと思います。問題点をハイライトするという趣旨で発言させていただきました。 ○山本部会長 御指摘ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 三木です。   先ほど11-1の4の案と11-3とを比べれば,11-1の4の案の方が相対的に望ましいということを申し上げました。それは,少なくとも別案のように,必ず2段階でやらなければいけないという制度のみを置くことは望ましくないという意味です。つまり,現在の11-1の4にある案というのは,先ほど申し上げた民事保全の用語でいうと,保全命令裁判所と保全執行裁判所を一つの裁判所が兼ねるという,先ほども申し上げましたけれども,債権の差押え等の保全等に近いような形で作られているということです。   それに対して,先ほど垣内幹事がちょっとおっしゃった,その用語を使いますと,保全命令裁判所の部分を独立させて,一種の保全命令の裁判だけをもらうという,選択肢を付加的に設けるということが可能なのであれば,そのことまで私は反対する趣旨ではありません。すなわち,現在の別案のように,執行拒否事由があるか否かの裁判というものを作るのではかう,何か,きちんとした民事手続法の法理に乗っかるような形の裁判にする必要があるのではないかと思います。   私が現在考えられるのは,やはり一種の執行決定の裁判にするということではないかと思います。そういう形でもし仕組めるのであれば,執行決定だけをとって,2段階目は当面使う必要はないというような手続がオプションとしてあること自体は,あり得るのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 もう既に十分議論されていると思います。最後に一言だけ,11-1と11-3を比べての議論,いろいろな議論を今伺っておりましたし,私も意見述べましたが,私は11-3の方がいいように思いますけれども,ただ,11-3は皆さん御指摘のとおり,理論的にいろいろな問題はなおあって,検討しなければいけないと思います。そもそも①,②,③,④で執行の効果が分かれてしまう,ルートが分かれてしまうというところが,果たしていかがなものかと思っております。   それから,支払命令という,事務局の御説明ですと,間接強制よりも更にある意味では使い勝手の良い強力な制度であるということで御提案になっているのかもしれません。実際にそういう効果もあると思いますが,そういうプラスアルファがオプションとしてあるというのは,私はそれはそれでいいと思いますけれども,入口段階で絞ってしまうというところから議論が出発してしまっている点がなかなか難しいところだと思います。   元に戻ってシンプルに考えて,①,②,③,④を問わず,執行決定は出す。そこから更にその後は間接強制で,執行裁判所が行うというのが一番シンプルではないか。それにプラスアルファとして,今回御提案の支払命令のようなものを設けるというのは,私はあってもよいと思います。なかなかそこは法制上難しいというところから,こういういろいろな案が出されていると思います。 ○高田委員 高田です。   三木委員,垣内幹事から出ている御意見について,私の感触を一言申し上げます。   11-3の方の2段階手続ということですが,これは垣内幹事がおっしゃられたように思いますが,2段階手続を組むということは,第1段階について不服申立てを認め,確定させることに意義がある場合ということではないかと思いまして,果たしてそれだけの必要があるかということだろうと思います。   仮にそうだとしますと,執行決定が債務名義になるということを前提に議論してまいりましたこれまでの議論を踏まえますと,結局,第1段階に当たるものは不服申立てを認める中間裁判に当たるものと考えることになるのではないかと思います。要するに,第1段階の執行拒否事由の確定は,専ら第2段階の支払命令との関係のみ意味があるということに整備するのが一番落ち着きがいいのではないかと,理論的には思いました。   これが正しいかどうか自信はございませんけれども,一つの参考意見として申し上げます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかはいかがでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。   皆様から貴重な御意見たくさん頂きまして,ありがとうございます。   皆さんの意見を伺っていて,全部を一気に解決するのはなかなか難しいところではあるんですけれども,一つの考え方として,③とそれ以外とを分けるところについてどうかというような御意見が複数あったかと思います。それとの関係で,今,我々の提案だと,明らかにこの③とそれ以外とを明確に区別して議論をしてまいりましたけれども,今回のこの2段階の構想を仮に採るとすれば,1段階目の手続は執行拒否事由の有無を判断するという意味で,③の執行決定と全く同じ審理・判断をするということになると思います。   そうすると,結局,その執行決定というワードをどこまで維持するかというところは法制的な問題になるわけですが,もう①から④まで全て同じ,一つのカギ括弧付きの執行決定手続の中で一旦審理をすると。③については,カギ括弧付きの執行決定が出れば民事執行に移るけれども,それ以外の①,②,④については,このような裁判所の支払命令という,そういうルートの執行方法にのってくると。   こういう形でひとつ規律をすれば,少しは皆様の御意見を反映させることができるかもしれないと,つらつらと考えていたところですが,何か現時点でコメントを頂けるところがありましたら,お伝えいただけますと幸いです。 ○山本部会長 いかがでしょうか。   先ほど確か,垣内幹事からは,今のような報告が,①,②,④と③を必ずしも区別しないということもあるのではないかというような御意見もあったかと思いますが,もし何かコメントいただける点があれば。 ○三木委員 三木です。   今おっしゃったようなやり方は,私も大筋ではあり得ると思いますが,1点,確認しておきたいのは,これは先ほど高田委員がおっしゃったことでもありますけれども,その場合に,執行決定というのを完結した終局決定として仕組むというのであれば,それは反対です。   それに対して,高田委員がおっしゃった中間決定という構造がいいのかどうかは,ちょっと留保しておきますけれども,いずれにしても,1個の手続の中でこの二つの審理をやるということであれば,そして,それと資料11-1の支払命令を組み合わせるのであれば,1個の手続の中で概念的に段階が分かれているだけで,手続としては1個の手続でやるということでありますから,上手に仕組めば,全員が満足できるような制度になり得るのではないかと思います。 ○古田委員 古田でございます。   先ほども申し上げましたけれども,現行法上の間接強制の方法で執行したいという当事者がいるときに,それを殊更に否定する必要はないと思っています。現行法上の間接強制にプラスアルファで新たに支払命令の制度を設けて,より執行の実効性を高めるということは立法政策としてはあり得ることだろうと考えます。   部会資料11-3の別案ですけれども,そのように考えてまいりますと,この第1段階の暫定保全措置に執行拒否事由がある否かは,正に執行決定の段階で判断すべきことですから,本文1(1)①から④までの全ての類型について,執行拒否事由の有無は執行決定の段階で判断をし,拒否事由がなければ当該暫定保全措置に基づく強制執行を許すという裁判をして,それに対する即時抗告等の不服申立てまでを執行決定制度ということで制度設計をして,その後の第2段階の手続,すなわち現在の間接強制の方法に乗せて間接強制金の判断をするのか,あるいは新たに設ける一定の金額の支払を命じるのかという手続は,執行裁判所の職責,執行方法として整理をするという考え方もあるのではないかと思います。 ○垣内幹事 垣内です。どうもありがとうございます。   まだ,私自身は理論的な整理等を尽くせていないところがありますけれども,先ほど福田参事官が言われたような考え方というのは,これは三木委員もおっしゃいましたように,基本的にはあり得るものではないかと思います。   元々,中間試案の段階では,まず執行決定をすると。その上で,間接強制も含めて,執行段階に入っていくという想定であったわけですので,それと実質的には同様のことになるということかと思います。   ただ,今回,11-1,11-3と両案を御提案いただいて,検討させていただいたことを踏まえて考えますと,11-1で想定しているように,執行決定と同時に支払い命令まで出すことができる場合があるという方が,緊急的な局面における強制執行が迅速にできるという点では望ましい面もあるように思われますので,執行決定をまずはするというときに,①,②,④の類型については,当事者の申立てがあれば,支払命令についても同時に発令することができるというような仕組みにすることができるのであれば,それはそれが望ましいのではないかと考えるところです。   もちろん,当事者はそこまではその段階では望まないということであれば,そのような申立てをしないということになり,それは後の段階でするというオプションも認めるという,この選択が認められると実質的には望ましい規律ということになるのではないかと,現段階では感じております。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。   ただいま垣内幹事からのお話のあった点は,事務局に確認ですけれども,現在の11-3も,それは入っているという理解だったんですが。11-3は,同時にもできるし,それから第1段階やった後,第2段階というのもできるし,第1段階だけで止まることもできるという提案だと理解していたのですが,その点だけ確認を頂ければと思います。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。   11-3での提案というものは,今,出井委員おっしゃったように,1段階目だけの申立てをして,2段階目にはいかないということも可能であるということで想定をしておりました。 ○出井委員 同時も可能なんですよね。 ○山本部会長 同時に決定することも可能かということの問いですか。 ○出井委員 はい。 ○山本部会長 事務当局,お願いします。 ○福田幹事 決定まで同時という趣旨でしょうか。執行拒否事由の有無についての判断が確定していない段階で,支払命令について発令することができるかどうかという趣旨での御質問でよろしいですか。 ○出井委員 すみません。確定しなければいけないので,同時に申し立てることはできるけれども,同時に発令というのは,その段階では第1段階確定しているので,それはできないということになりますか。 ○福田幹事 福田でございます。   できないと決めているわけではないですけれども,それを要求することもあり得ますし,場合によっては,先ほどからおっしゃられているように,確定を要しないで発令をするということもあるかもしれません。   ただ,2段階の手続で,別手続で区切ってしまうと,一つ目の決定に対して即時抗告が出れば,恐らく一つ目の決定の効力というのは執行停止されることが民訴法上は原則になってくると思いますので,事実上,次の支払命令はできないという形になるかなというふうに今は整理しておりました。 ○出井委員 分かりました。もう少し考えてみたいと思います。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかはよろしいでしょうか。   この11-3については,事前に御検討いただく時間が必ずしも十分取れなかったものであったにもかかわらず,本日,かなり実質に踏み込んで御議論を頂いて,11-1との比較もしていただけたのではないかと思います。   先ほど三木委員からは,うまく工夫をすれば全員が満足できるような案が構築できるのではないかというような御示唆もございました。私自身はそこまで楽観的にはなり切れない部分がありますけれども,かなり論点といいますか,問題の所在は明らかになったと思いますし,皆さんの意見の幅もそれなりのレンジに入っているようには思いました。   今日の議論を踏まえて,事務当局,この11-1の4,あるいは11-3の提案を前提にしながら,リファインした更に案を次回は御提示いただけるのではないかと思います。   それでは,一応これで11-1及び11-3については御議論いただけたかと思いますが,よろしゅうございましょうか。   それでは,引き続きましてもう一つ,お疲れとは思いますが,部会資料の11-2というのがございますので,これについても御審議を頂きたいと思います。   まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 吉川から説明をさせていただきます。   部会資料11-2の第1では,「仲裁法第45条第2項の規律の見直し」について取り上げております。   仲裁法第45条の規律によりますと,裁判所において仲裁判断を取り消す旨の裁判や執行決定を却下する旨の裁判がされない場合であっても,仲裁判断の取消事由が存在しさえすれば,確定判決の同一の効力が否定されることになるから,仲裁判断の取消事由は全て当然無効の事由を定めたものであるとの考え方もあり得るところかと思います。   しかし,このような考え方に対して,部会におきましては,そのような考え方をすること,ないし仲裁法第45条第2項のような規律を設けることは,実質的に見て,モデル法の規律にそぐわないのではないかとの指摘がございました。   このような指摘を踏まえますと,例えば仲裁法第45条第2項の規律を,仲裁判断を取り消す旨の裁判又は執行決定の申立てを却下する旨の裁判が確定した場合には,仲裁法第45条第1項の規定は適用しないという形で,仲裁法第45条第2項の規律を改めることも考えられます。   そこで,改めて検討をしてまいりますと,仲裁判断の承認及び執行について定めたモデル法第35条及び第36条の規律を見ますと,仲裁判断が拘束力があるものとして承認されないという場面につきまして,モデル法の文言上は,必ずしも仲裁判断が取り消された場合又は執行決定の申立てが却下された場合に限定されていないところでございます。   そしてまた,我が国の仲裁法は,仲裁判断の効力を争う方法として,モデル法と同様,仲裁判断の取消しの申立てをする方法と,執行決定の申立てにおいて執行拒否事由を主張して争う方法とを定めていることから,仲裁法第45条第2項の規律は,基本的には今申し上げたような場合に適用されることが想定されていると考えますと,仲裁法第45条第2項の規律を改めなくても,先ほど述べました(説明)1(2)記載のような考え方に沿った解釈をすることも可能であると言えるものと考えられます。   そこで,以上を踏まえまして,本文の第1では,仲裁法第45条第2項の規律につきましては,これを改めるべきであるとまでは言い難いという考え方から,現行法の規律を維持することとしてはどうかとの提案をしております。   続きまして,第2では「仲裁合意の書面性に関する規律」について取り上げております。   まず,仲裁法第13条第4項の規律の関係では,現在の仲裁法第13条第4項の下でも,例えば仲裁合意が口頭でされた場合であって,当事者双方の合意の下,その合意の内容が電磁的記録で記録されたときには,要件を満たすものと解釈することが可能である上,現時点では書面又は電子的記録以外の方式による記録を特段想定することはできないということに照らしますと,現在の仲裁法第13条第4項の規律は,改正モデル法(オプションⅠ)の第7条第3項の規律と実質において異なるものではないとの評価ができるものと考えられます。   そこで,(説明)1の中では,仲裁法第13条第4項の規律については,これを改めることとせず,現行法の規律を維持することとしてはどうかとの提案をしております。   なお,我が国の仲裁法において,改正モデル法(オプションⅠ)の文言に合わせた規律を設けることができないのであれば,改正モデル法(オプションⅡ)に倣い,仲裁合意の書面性に関する規律を撤廃すべきであるとの考え方についてどのように考えるかという点につきましても,御意見がございましたらお聞かせいただけますと幸いです。   他方で,改正モデル法に対応するという観点から,例えば仲裁法第13条第3項の規律を改めるという考え方もございます。改正モデル法(オプションⅠ)の第7条第6項によれば,例えば海難救助に関する契約などに見られますように,当該契約自体が口頭でされた場合であっても,当該契約において仲裁合意を内容とする条項が記載された別の書面が引用されたときには,仲裁合意の書面性が満たされることとなります。   そこで,このような場合を念頭に置いて,改正モデル法に対応するという観点から,例えば書面を作成することができない緊急性がある場合には,口頭でされた契約において仲裁合意を内容とする条項が記載された文書が引用されたときにも書面性を満たすものとするなど,一定の要件の下で書面性の例外を拡大する旨の規律を設けるという考え方についても,御意見を伺えますと幸いです。 ○山本部会長 それでは,まず第1,仲裁法45条2項の規律の見直し,この論点につきまして,御意見あるいは御質問,どなたからでも結構ですので,御発言をお願いします。 ○古田委員 古田でございます。   結論としては,45条2項については,現行法の規律を維持することでよいのではないかと考えておりますが,部会資料についてちょっと質問させてください。   改正案として,45条2項の規律に仲裁判断を取り消す旨の裁判又は執行決定の申立てを却下する旨の裁判が確定した場合にはという文言を加える案が出ているのですけれども,ここでいう仲裁判断を取り消す旨の裁判というのは,その裁判をした裁判所が日本の裁判所ではない場合,例えば仲裁地は外国なので,外国の裁判所が仲裁判断を取り消した場合も含む御趣旨なのかどうかという点が質問の第1点です。   次に執行決定の申立てを却下する旨の裁判ですけれども,仲裁判断に基づく強制執行は複数の法域で同時並行的に進行する可能性があり,国や法域によって,ある国では執行決定が出て強制執行が認められるけれども,ほかの法域では執行決定が出ずに強制執行が認められないということが,同一の仲裁判断について生じる可能性があります。ここでいう執行決定の申立てを却下する旨の裁判というのは,日本の裁判所がそのような裁判をしたことが前提になっているのか,そうではなくて,世界中いずれかの裁判所で強制執行が認めない裁判がされれば適用があるという趣旨なのか,その点について教えていただければと思います。 ○山本部会長 この点は,事務当局の提案ではないと思いますので,事務当局からどの程度お答えができるかはちょっと分かりませんが,お答えできる範囲でお答えいただければと思います。 ○福田幹事 福田でございます。今の御質問ですけれども,まず仲裁判断を取り消す旨の裁判というのは,それはもちろん仲裁廷がある国の裁判所ということになるんだと思いますが,仲裁判断の執行決定の申立てを却下する裁判というのは,日本の我が国の裁判所が執行決定を却下したときということで想定をしておりました。 ○山本部会長 古田委員,いかがでしょうか。 ○古田委員 結構でございます。了解でございます。ありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。   私も質問ですけれども,ここで改正案として提案されている案の下でも,いわゆる理論上,当然無効と言われているものがあるかと思いますが,その余地はなお残るという理解でよろしいでしょうか,それが1点です。   それからもう一つ,最終的に今回,現行法の規律を維持することとしてはどうかという事務局の御提案ですが,ここで解釈論を何か議論する場ではないというのは理解しておりますけれども,どういう理解かというのを確認しておきたいと思います。   45条の解釈問題として,仲裁判断が取り消されなければ,執行以外の場面,執行についてはなお争えるということになっていますので,執行以外の場面で,例えば別訴の中で,同じ紛争,訴訟物が問題になった場合に,仲裁判断による既判力遮断があるか,そういう問題設定において,仲裁判断の無効を主張できるのかどうかと,そういう問題があったと思います。これは,仲裁判断,取り消されていない場合の話です。   私は,それはできないと,そういう,そこで仲裁判断の無効を主張することはできないと考えていたんですが,そこはなお解釈論問題としては残る,もちろん,先ほど申し上げたように,当然無効というのは別としての話ですけれども,そこの点の解釈問題はなお残るという意味で,この部会資料の2ページの上から2行目ですか,「45条第2項の規律は,これを改めなくとも,前記1(2)の考え方に沿った解釈をすることが可能であるといえる。」と,そういう趣旨で記載されているのかどうか。この2点,確認したいと思います。 ○山本部会長 これも,どこまでか分かりませんが,事務当局からお答えを頂ければ。 ○福田幹事 福田でございます。今,2点というふうに出井委員はおっしゃいましたけれども,ほぼ一点に解消されるのかなというふうに考えておりました。やはり,当然無効というものを観念するのかどうかと,何をもって当然無効というのかというところからひょっとしたらあるのかもしれませんけれども,そこはいろいろなお考えがあるんだろうと思います。ですので,当然無効を観念するのかどうかということも含めて,解釈の余地はあるのだろうと思います。   さらに,その部分をクリアしたとして,次に,二つ目の御質問かもしれませんが,具体的な局面において,仲裁判断の取消しがない場面であっても無効の主張ができるかどうかというものは,恐らく解釈がやはり残るのだろうと思っております。   当然無効を観念する余地を減らせば減らすほど,具体的な局面での無効を言える場面というのはどんどん減ってくるという,そこは相関関係になるのかなと思っているところでございます。 ○山本部会長 出井委員,いかがですか。 ○出井委員 了解です。結構です。 ○山本部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   ありがとうございました。この点については,この結論自体については御異論はないというふうに理解をさせていただければと思います。   それでは,続きまして,この資料11-2の2ページの第2,仲裁合意の書面性に関する規律,この点について御質問,御意見をお出しいただければと思います。   古田委員,どうぞ。 ○古田委員 古田でございます。   結論としては,現行法の規律を維持するということでもよいと思っております。   部会資料に書いてある点で,モデル法のオプションⅡに倣って書面性要件を撤廃してはどうかという考え方なのですけれども,その場合には,管轄合意については,民訴法3条の7,民訴法11条のいずれにおいても書面性が要求されていることとの整理が必要になると思います。従前,仲裁合意について書面性を要求する趣旨は,当事者に慎重に検討させるためと,仲裁合意の存否についての争いを可及的に防ぐためということが言われており,同じようなことが,裁判管轄の合意について書面性を要求する根拠としても言われておりました。もし仲裁法についてモデル法(オプションⅡ)を採用して書面性を撤廃すると,では,民訴法上の裁判管轄の合意の書面性はどうするのかというところに議論が波及する可能性があり,両者の関係をどう整理するかが問題になると思いました。   それから,部会資料3ページに書いてある仲裁法13条3項を改正して,口頭でされた契約において,仲裁合意を内容とする条項が記載された文章を引用したときにも,書面性を満たすものにするとの規律を設けてはどうかということなのですが,これは現行法上もそのような解釈がされているのではないかと,私は理解をしておりました。   例えば,オプション取引ですとかデリバティブ取引というのは,多くの場合はISDAマスター契約と言われるような基本契約があって,そこで例えば裁判管轄条項ですとか仲裁条項が規定されているのですが,個別の取引は電話等で口頭で約定が成立することが多々あります。その場合,約定成立した後にコンファメーションで書面を交わすことが一般的ですけれども,法的には口頭で合意が成立した時点でデリバティブ取引成立と考えており,その取引はISDAマスター契約によってカバーされているという理解です。もしISDAマスター契約に仲裁合意が入っていれば,個別の取引も仲裁合意の対象であるという理解で金融取引はされていると承知しています。それがもし現行法ではそういう解釈ができなくて,それを担保するために新たに立法するのだという趣旨だとすると,私の今の実務の理解と違ったことになるのかなと思いました。   そういう基本契約が何もなくて,本当に口頭だけで仲裁合意しなければいけない場合,例えば海難救助などがそうなのかもしれないんですけれども,そういう場合に,我が国では,本当に何の書面もない口頭での仲裁合意の効力に問題があるので,そのような仲裁は,例えばロンドンなどの外国を仲裁地としてしまう実務になっているという現状があって,我が国の国際仲裁振興の観点からは,何の書面もない純粋の口頭仲裁合意も有効とする要請があるのだということであれば,そこは検討すべきなんでしょう。その点については海事の専門の方の意見等を聴いて,実務上どうなっているかということを少し調べた方がよいと思いました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 今,古田委員がおっしゃった点について,私なりの理解を申し上げたいと思います。   現在の日本の仲裁法の13条3項によると,「書面によってされた契約において,仲裁合意を内容とする条項が記載された文書が当該契約の一部を構成するものとして引用されているときは,その仲裁合意は,書面によってされたものとする。」という規律になっています。この規定が,古田委員がおっしゃった事案の解決になっているかどうかということだろうと思いますが,今読んで分かるように,必ずしも現在のこの規定が,元のマスター契約が文書で存在する場合に,それを口頭で引用した場合に適用されるかというと,必ずしもそうはなっていないと思います。   また,サルベージ契約について,海難救助という言葉が使われましたけれども,海難救助ではなくて,実際は沈んでしまった船を,沈む途中で無線で口頭によってサルベージの契約をするというものです。だから,救助ではなくて,沈んだ船を後に引き揚げるという契約のことですけれども,これについては,現在の日本の仲裁法の13条3項ではカバーできないという前提の下に,改正モデル法がオプションⅠ,オプションⅡとして提案されているわけです。したがって,そうしたものは,カバーされていないということがUNCITRALの作業部会の大前提になっています。それは,デリバティブとかの口頭による契約の場合についても同じです。   したがって,最も望ましいのは改正モデル法のオプションⅠを基本的に採用することですが,それが日本の法制上難しいというのであれば,具体的な規定ぶりとかはなお検討する必要があると思いますが,3ページで提案されているように,少なくとも緊急性のある場合には,口頭でされた契約についても有効とするというような規定を置くことは,大変望ましいと思いますし,もちろん一定の業界の要請に応えていない状態にも対応します。また,日本の国際仲裁の振興を図る上でも有益ではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。   1点,確認のための質問をさせていただきたいんですけれども,3ページの13条3項の関係につきまして,先ほど三木委員も言われましたように,モデル法に合わせるという観点からしますと,これを改正するということは十分考えられるのかなという感じを持ちましたけれども,資料で13行目でしょうか,「書面を作成することができない緊急性がある場合」ということが記載されておりますけれども,これはモデル法のオプションⅠの7条の6項ですと,必ずしもそういった限定は付されていないようにも見えるのですけれども,このような限定を付したとしても,これはモデル法には反していないという理解でよろしいのでしょうか。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。今の点は,非常に悩ましいところで,このような要件立てをすることで,改正モデル法との関係でどのように評価されるのかというのは,予断は許さないところかと思います。ただ,現状よりも広がるという意味では,モデル法に近づくというところはあると思いますので,どのような要件立てが相当かというのはなお検討しなければいけないですけれども,そういった観点で検討を進めていくということがよりいいのかなというのが,現状お答えできるところでございます。 ○垣内幹事 了解いたしました。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   ほかに御意見がないということですけれども,ちょっと今回の資料では,具体的な案の形で掲げられていないので,議論しにくいかもしれませんけれども,13条4項については現行法の規律を維持すると。   13条3項については,3ページの最後に書かれてあるような改正,規律を設けることについてどう考えるかということですが,先ほど古田委員と三木委員の間のやり取りで,古田委員は現状でも対応できているのではないかという御指摘であるのに対して,三木委員は,なかなか現状の規定の解釈では,こういう3ページというようなところに対応するのは難しいのではないかという御意見だったかと。 ○古田委員 ありがとうございます。   三木委員がおっしゃったことを踏まえますと,確かに条文上そのように読めますので,そういう意味では,部会資料3ページに書いてあるような規律を加えていただいて,それが創設的なものであるのか,確認的なものであるのかは議論の余地はあるとしても,少なくとも基本契約に仲裁合意が規定されている場合には,基本契約によってカバーされる口頭での約定も仲裁合意によってカバーされることが条文上も明らかにされることが望ましいと考えます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょう。 ○三木委員 先ほどの垣内幹事及び古田委員の御意見をも組み込む形で一つの案を申し上げますと,それが日本の法制上通るのかどうかはさておき,3項に限定した形で,さらに緊急性とかの要件を付さずに,つまり,この3項のような他の文書を引用する形であれば,引用元は文書性が必要だけれども,引用する側は口頭でよいという意味で,一応の解決になるのではないかと思います。すなわち,この3項について,無条件で口頭でもよいという規定を付け加えれば,見た目はモデル法のオプションⅠに反していますけれども,実質的には,ほとんどの場合について事実上対応できることになるのではないかと思います。   なぜならば,実際に改正モデル法が押さえようとした,口頭による必要がどうしても実務のニーズとしてある場合というのは,基本的には,基本契約がどこかに存在する場合の口頭引用であって,全てをゼロベースで口頭ということは,教壇設例的には作ることができますけれども,実際には,ほとんどないのではないかと思います。したがって,繰り返しになりますけれども,3項に関して,無条件での口頭の引用を認めるような規定が作れれば,それは実質において,モデル法とのさほどのかい離はないのではないかと思います。 ○吉野委員 これも,これまでに出ていた議論だと思います。書面性が要求されるようになって,そしてそれが,最近ではいろいろな手段が,厳格な書面以外の様々なツールが出てきた,合意を証するツールが出てきた。それを正式に認めていこうということです。   それから,先ほど来,御紹介がありましたようないろいろな必要性から,これを拡大してきた。書面性からいえば,それを緩和してきた,こういうことになるのだろうと思います。モデル法もそういう考え方ではないかと思われるのですが,ただ,現実の仲裁合意に関する必要性ですが,どの程度あるのか。   先ほど古田委員からも御紹介ありましたように,民事訴訟法上の合意,それから私も前回に申し上げたと思いますが,いわゆる保証契約の書面性の問題とか,いろいろな場面で書面が要求されているわけですから,厳格な書面性がいまだに要求されている場面があります。それとの関係から,どの程度緩和することができるか。それは,やはり現実の必要性の状況から検討すべき問題だろうと思います。   したがって,本件について,どこまで緩和していいのか。私としては,現段階で確たる意見を持っているわけではありませんけれども,先ほど来出ているような口頭によるもの,これをどこまで認めるのか,こういうことだろうと思います。積極的な賛成とか積極的な反対という結論ではございません。 ○山田委員 ありがとうございます。山田でございます。   私の意見は,先ほど古田委員,三木委員,垣内幹事がおっしゃられたことと恐らく同じ平面上にあるかと思いますけれども,まず,13条4項につきましては,前回,全面的にオプションⅠを採ってはいかがかというようなことを申し上げたかと思いますけれども,実務上は現行の4項で十分に足りているのではないかということを踏まえますと,書面性自体を放棄するということは,仲裁合意か,訴訟上の合意であるということも鑑みますと,なかなか困難ではないかと考えております。   他方で,先ほど来御議論があります13条3項につきましては,先ほど三木委員が最後におまとめになったこととほぼ同じですけれども,書面を作成することができない緊急性というのはちょっと厳格にすぎるところで,要件としてもし設けるのであれば,相当なとか,あるいは合理性があるという程度の要件でもって改正をすると。口頭で引用する場合でも書面性を認めるという形での改正が望ましいのではないかというふうに,今のところ考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○髙畑委員 ありがとうございます。   今の13条3項のところなんですけれども,いや,私は実はちょっと不勉強で,勘違いしておりまして,ここの部分をモデル法に倣って記載しなくても,現行法でも,例えば先ほど古田委員が挙げられたISDAもそうですし,多くの金融取引がやはりマスターアグリーメントとスケジュールという形で,特にマーケットのあるもの,金融に限らず,電力とかでもそうですけれども,マーケットのあるものは大抵そういう,何でしょうね,基本契約と個別契約であったりとか,そういった形で運用していますので,なおかつ個別契約であるとかスケジュールであるとかには,ほとんど一般条項と言われる仲裁付託合意も含めて,記載しないことが通例ですので。   これが,私も幸か不幸か余り,仲裁地を日本とする,東京とするというものに余り出くわしていなかったので,余り深く考えていなかったところではあるんですけれども,もし現行法上で,ここで,日本の仲裁法で読むに無理があるとすると,やはり確認規定であったとしても入れておく必要があるのかなというふうには感じました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。あるいは事務当局から,確認をしておくべき点はありますでしょうか。 ○福田幹事 ありがとうございます,福田でございます。   現時点では,こちらから確認させていただくことはございません。皆様の御意見を踏まえて,検討を続けたいと思います。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,これで,資料11-2についても御検討,一応は頂けたかと思いますが,全体を通して,もし言い残した点がありましたら,この際御発言を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。大丈夫でしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   次回議事日程等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日も長時間にわたりまして御議論いただきまして,誠にありがとうございました。   次回の日程につきましては,令和3年9月10日金曜日午後1時30分からを予定しております。   今日の御指摘を踏まえまして,仲裁全体について,更に一歩進めて,取りまとめに向けた御議論をお願いしたいと思ってございます。   私からは以上です。 ○山本部会長 これで,法制審議会仲裁法制部会第11回会議を閉会にさせていただきます。   次回以降も引き続き要綱案の取りまとめに向けての大詰めといいますか,御審議をお願いすることになろうかと思いますけれども,引き続きよろしくお願いをいたします。   本日も長時間にわたりまして熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございました。 -了-