法制審議会 仲裁法制部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和3年10月8日(金) 自 午後1時30分                      至 午後2時38分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  仲裁法制の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 所定の時刻になりましたので,ただいまから法制審議会仲裁法制部会第13回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は山田委員,衣斐幹事が御欠席と伺っております。   今回も前回に引き続きましてウェブ会議の方式を併用して議事を進めたいと思いますので,ウェブ会議に関する注意事項を事務当局から御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 これまでの会議と同様のお願いとなりますけれども,念のため御案内をさせていただきます。   まず,ウェブ会議を通じて参加されている方の映像及び音声を確認させていただきます。私の声が聞こえておりましたら,手を挙げる機能を使ってお知らせいただきたいと思います。   ありがとうございます。確認できましたので,手を下げていただいて構いません。   それでは,ウェブ会議に関する注意事項を説明させていただきます。ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐため,御発言される際を除き,マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。審議において御発言される場合は,先ほどの手を挙げる機能をお使いください。それを見て部会長から適宜指名がありますので,指名されましたらマイクをオンにして発言してください。発言が終わりましたら,再びマイクをオフにして,同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしてください。なお,御発言の際は,こちらに出席の委員も含め,必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。 ○山本部会長 それでは,本日の審議に入ります前に,配付資料の説明を事務当局からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。配付資料としまして,本日は部会資料13-1「仲裁法の改正に関する要綱案(案)」と,13-2「部会資料12からの変更点等の説明」の2種類を配付させていただいております。この資料の内容につきましては,後ほど事務当局から説明をさせていただきます。 ○山本部会長 それでは早速,本日の審議に入りたいと思います。まずは「第1 暫定保全措置に関する規律」,部会資料13-1の1ページから5ページまでということになろうかと思いますが,この点についての御審議をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 それでは,吉川から御説明をさせていただきたいと思います。前回の部会資料12からの変更点等につきましては,部会資料13-2で整理をさせていただいておりますので,部会資料13-2での説明の順番に沿って御説明を差し上げます。   まず,従前は仲裁廷が発した命令を指して「暫定保全措置」との文言を用いていた部分について,法制上の観点から「暫定保全措置命令」との文言に改めております。実質においても,当事者が所定の措置を講ずることを仲裁廷が命ずるという内容であることを踏まえますと,暫定保全措置命令との文言を用いることが相当であると考えられます。   次に,部会資料13-1,2ページ5行目の事情変更の開示の要件について,「(1)の事情の変更があったと思料するとき」との文言に改めております。前回の会議では,事情の変更があったと認めるに足りる相当の理由があるときという要件を設けることにすると,それは過重な要件であって相当でないとの御意見があったことを踏まえまして,より緩やかな要件の下で事情変更の開示を命ずることができる旨を明らかにするため,事情の変更があったと思料するときとの文言に改めたものとなります。   続きまして,暫定保全措置の執行のうち暫定保全措置命令の執行等認可決定につきまして,部会資料13-1,2ページ23行目の5(1)アでは,暫定保全措置命令の類型に応じて執行等認可決定の内容を明示することにしております。予防・回復型については,暫定保全措置命令に基づく民事執行を許す旨の決定を,禁止型については,違反金支払命令を発することを許す旨の決定を求める申立てができるものとしております。その上で,略語を「執行認可決定」から「執行等認可決定」に改めております。これは,禁止型についてされる決定は,違反金支払命令の発令を許す旨の決定であるため,執行認可決定との略語を用いることは必ずしも相当でないと考えられることから,「等」を付したものということになります。   部会資料13-1の4ページ,32行目の5(2)暫定保全措置命令に基づく民事執行では,先ほど御説明したように,暫定保全措置命令の類型に応じて執行等認可決定の内容を明示したことに伴い,予防・回復型の暫定保全措置命令については,執行等認可決定がある場合に,当該暫定保全措置命令に基づく民事執行をすることができる旨を明示する規律を設けることとしております。   続きまして,違反金支払命令について,部会資料13-1,5ページの30行目,(3)キでは,違反金支払命令が発せられた後に暫定保全措置命令の取消し等がされた場合には,裁判所は違反金支払命令を取り消すことができる旨の規律を設けることとしております。違反金支払命令の発令後に暫定保全措置命令の取消し等がされた場合であっても,違反金支払命令が有効なものとして存続していると,違反金支払命令を債務名義として民事執行を開始することができ,その手続も停止しないものと考えられること,さらに,不当利得返還請求の成否についても疑義が生じ得ることなどから,暫定保全措置命令の取消し等がされた場合には,裁判所が違反金支払命令を取り消すことができるものとしております。   部会資料13-2の3ページの(注)のとおり,一定の場合には,暫定保全措置命令の取消し等がされた後であっても,違反金支払命令の効力を維持し得るものとすべきであると考えられることから,常に取り消さなければならないとするのではなく,取り消すことができるとの規律としております。   続きまして,違反金支払命令の申立てについて,部会資料12では,暫定保全措置命令の命令書等の提出に関する規律を準用するものとしておりましたが,部会資料13-1では,その規律を準用しないこととしております。これは,執行等認可決定の申立てに際し,裁判所に命令書等が既に提出されていることなどを踏まえると,違反金支払命令の申立てに際し,重ねてその提出を求める必要はないと考えられることによるものです。   以上が部会資料13-1及び13-2に記載させていただいた内容となるのですが,2点ほど,部会資料で説明を記載していない点について補足で御説明をさせていただきたいと思います。   まず,部会資料13-1の2ページ8行目,3(4),事情変更の開示命令に違反した場合の効果を規定する部分になりますが,この3(4)冒頭の「当事者が」という部分を「暫定保全措置命令の申立てをした者が」との規律に改めることを考えております。この3(4)の規定は,暫定保全措置命令の申立人が事情変更の開示命令を受けたにもかかわらず,暫定保全措置命令の取消し等の基礎となるような事情変更,つまり申立人にとって不利益な事情変更の有無等を明らかにしないことに対する,言わば制裁のような効果として,取消し等の要件があるものとみなすという趣旨の規定ということになります。しかし,3(4)の規律の主語を「当事者が」といたしますと,申立人ではなく被申立人が事情変更の開示命令に応じない場合にも事情の変更があったものとみなされ,取消し等の要件があるものとされてしまうことになりますので,申立人への不意打ちが生ずるおそれがございます。そこで,3(4)冒頭の「当事者が」の部分を「暫定保全措置命令の申立てをした者が」に改めることを考えております。   もう1点ございまして,訳文添付の省略につきまして,部会資料13-1の3ページ2行目,それから6ページ最終行,それぞれ同じ文言を用いておりまして,「裁判所は,相当と認めるときは,当事者の意見を聴いて」という規律にしているのですけれども,この「当事者の意見を聴いて」という部分を「被申立人の意見を聴いて」に改めることを考えております。申立人は自ら翻訳文を提出しない形で申立てをしていることに照らしますと,翻訳文提出の省略が認められた場合に不利益を被り得るのは被申立人だけであると考えられます。そこで,当事者双方の意見を聴くのではなく,被申立人の意見を聴けば足りるのではないかという考え方に基づき,規律を改めることを考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま御説明があった第1の点,若干文言の修正や訂正もございましたけれども,この点全体につきまして,特に順序は区切りませんので,どの点からでも結構ですので,御質問あるいは御意見があれば,お出しを頂ければと思います。 ○古田委員 古田です。今の事務局の口頭説明の関係ですが,書証の翻訳文の省略をするときに意見を聴く相手を,当事者とあるのを被申立人に変えるということだったのですが,これは部会資料13-1,6ページの3(1)のお話でしょうか,あるいは3(2)も含めてのお話だったのでしょうか。 ○吉川関係官 吉川からお答えさせていただきます。今私の方から御説明差し上げましたのは,仲裁判断書の翻訳文の提出の省略の部分でございまして,書証の訳文添付の省略につきましては,また別途の検討が必要になろうかと考えております。 ○古田委員 分かりました。つまり,3(1)の方だけをおっしゃっていたということですね。 ○吉川関係官 はい。その部分と,暫定保全措置命令の命令書の部分でございます。 ○古田委員 分かりました。ありがとうございます。 ○山本部会長 よろしいですか。 ○古田委員 はい。 ○山本部会長 それでは,ほかに。 ○道垣内委員 ありがとうございます。道垣内でございます。申立人は翻訳文を添付して申し立ててきているはずだと,そういう御説明でしたか。それだとしますと,余り意味がなくてというか,長い仲裁判断を翻訳しないで手続を進めてもらいたいということからすると,申立人が最初から翻訳文なしにしてほしいという申立てをすると思うのですが,そういう前提ではないのでしょうか。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。今,道垣内委員がおっしゃったように,申立人が訳文添付を不要だと考えて申立てをする場合は,まずは添付しないで裁判所に申立書だけを提出する,それで,裁判所がその点について判断をするために,被申立人の意見を聴いて,相当と認めた場合に省略を認めるかどうかを決める,こういうことを考えておりました。 ○道垣内委員 どうして翻訳が必要ないと思っているのかを申立人が述べるチャンスはないのですか。両方の意見を聴いてもよさそうなものだと思うのですけれども,あえて片方だけにするという趣旨も今一つよく分からないのですけれども。 ○福田幹事 福田でございます。執行決定の申立てをするときは,申立人は現行の規律だと必ず訳文を添付しなければいけないとなっています。新しい規律の下では,もし申立人が訳文添付が要らないと考えるのであれば,まず,申立ての段階では訳文は付けずに,例えば英語なら英語で作られた仲裁判断書をそのまま出すと。もちろん,そのときになぜ必要ないかということを申立書に書いていただければ,裁判所はそれに基づいて相当かどうかを判断すると。その判断の過程で被申立人の方の意見を聴いて,被申立人も特段問題がなければ,訳文添付の省略を認めて,そのまま訳文なしの状態で手続を進めると。こういうことですので,道垣内委員のおっしゃっていることが実現できるのかなと思っておりますが,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 分かりました。ありがとうございます。 ○三木委員 もう1点の口頭説明があったところについて,質問というか,意見を述べます。13-1の3(4)の冒頭の当事者というのを申立人に変えるという御趣旨であったと思います。ただ,仲裁廷が特別の事情があると認めて暫定保全措置命令を取り消したり,変更したり,効力を停止したりするときというのは,被申立人側の主張によって,例えば,被申立人側に有利な内容の暫定保全措置命令を出したけれども,もう少し違う内容の暫定保全措置命令に変更しなければいけないというようなときなどを考えてみると,被申立人に対して開示命令を出して,このみなし規定を使うという場合があるのではないかと思うのですが,いかがでしょうか。 ○山本部会長 事務当局からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。おっしゃるような局面は確かに存在するのではないかと思います。ただ,そういった場合は,変更後の申立人側に有利な暫定保全措置命令は新たな暫定保全措置命令と考えることもできるのではないかと思います。そうしますと,この(4)の規律を制裁的な形で用いて変更するということで考えなくてもいいのかなと思っておりますが,いかがでしょうか。 ○三木委員 そうすると,この規定における変更というのはどういう場合を指すのでしょうか。全てが新たな措置命令だとすると,変更という局面はどういう局面を想定しておられるのでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。(4)の規律が適用される局面というのは,被申立人側に有利な形での変更というものを想定しております。ですので,先ほど三木委員がおっしゃった暫定保全措置命令の申立人側に有利なものについては,新たな命令という形で(1)の要件を満たすものとして発令されるものと考えてございます。 ○三木委員 それでは,開示を求める資料が被申立人の側の支配下にある場合もあるのではないかと思いますけれども,その場合はどうでしょうか。変更,取消し,効力停止の如何を問わず,資料は被申立人側の支配下にあるという場合は,この(4)は被申立人に対してもできるようにしておかないといけない気がしますが,いかがでしょうか。 ○吉川関係官 吉川からお答えをさせていただきたいと思います。被申立人の側だけに資料があって,それを被申立人が出さないという場合について,そのことを理由に被申立人に有利な変更,すなわち暫定保全措置命令の取消し等をするかどうかという話になろうかと思うのですが,飽くまで被申立人が自分で資料を出さないにもかかわらず,あえて取消し等を認めるという必要,取消し等の要件を満たすものとみなすという必要はないと考えておりますので,今回,3(4)の主語を申立人だけに限ることを考えております。 ○三木委員 有利,不利というのは,仲裁廷と当事者,あるいは申立人と被申立人で判断が違うこともありますし,あるいは暫定保全措置が発せられた後に,被申立人が状況が変わって,むしろ維持した方がよくなって,逆に申立人側では取り消した方がいいけれども,その資料は被申立人にあるという場合もあり得ると思うのです。いずれにしても,UNCITRALモデル法は,これは私は作ったときの経緯,議論も覚えておりますけれども,当事者のいずれに対しても出せる,この案でいうと3項の開示命令は,当事者のいずれであるかを問わないということは前提で議論をしておりましたので,先ほど申し上げたようなケースもあり得るように思います。 ○吉川関係官 吉川からもう一度御説明をさせていただきたいと思います。モデル法の関係ということで申し上げますと,3(3)の事情変更の開示命令の対象者自体は,「当事者に対し」ということを変更することは考えておりませんので,申立人に対しても被申立人に対しても,事情の変更の有無等の開示を命ずることはできるものとすることを考えております。改正モデル法の規定がございます部分は(3)の部分でございますので,そこについては引き続き,改正モデル法の内容に沿った規律を設けることを考えております。先ほど変更を考えているという御説明を差し上げたのは(4)の部分でございまして,事情変更の開示命令に従わないときに事情の変更があったものとみなすという規律のうち,誰が従わないときかという部分だけを申立人に限定するという趣旨でございますので,改正モデル法の規律から離れるということではないと考えております。 ○三木委員 被申立人側が後に資料を出さないことが有利になるという状況の変更などもあり得ると思うので,そういう場合もカバーできるように,それほど絞り込む必要はないのではないでしょうか。 ○山本部会長 御意見として承りたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。今回文言を変えたところに議論が集中していますが,それ以外の点ももちろん含みますので,第1全体で結構です。どの点でも結構ですので。 ○古田委員 全体についてですが,従前から申し上げていますように,規律の表現としては,やはり私は中間試案のようにモデル法の表現に沿ったものの方がよかったと今でも思っております。今回の部会資料はモデル法とは違う表現ぶりにはなっておりますけれども,しかし,内容的にはモデル法に準拠したものになっていると考えております。仮にこのような形で立法がされた暁には,我が国の仲裁法は2006年改正モデル法に準拠したものになっているということについて,対外的な発信というのは非常に重要になってくるかと思います。その点については,是非,法務省の方も含めて,関係者一同で力を尽くす必要があるかなと思っております。 ○山本部会長 ほかにいかがでしょうか。第1は,ほかはよろしいですか。 ○吉野委員 吉野です。少し細かいところなのですが,13-1の5ページ,暫定保全措置命令とそれに対する違反金支払命令に関するところです。全体として,いわゆる第1の1のウとア,イ,エ,オを分けて,そして,その後の処理について違反金支払命令が必要かどうかという点を分けて考える,こういう仕組みだと思うのですが,この仕組みにおいて,執行等認可決定と違反金支払命令それぞれについて,執行文の付与が要るのかどうかという点について伺いたいと思います。   この執行文付与については,この段階において,やはり仲裁判断書と同じように,仲裁判断に対する執行文付与と同じように,この段階でも執行文付与が必要という考えと,御承知のように,民事保全では原則としては執行文は要らないという立て付けになっているわけですが,この執行等認可決定と違反金支払命令について執行文が必要なのかどうか,その点については特に記載がありませんし,それは立法の段階の問題だといえばそれまでかもしれませんが,この点については現段階ではどのように捉えておられるのでしょうか。よろしくお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。この点は,(1)ウの暫定保全措置命令とア,イ,エ,オの暫定保全措置命令とでは区別して考える必要があると思っております。予防回復型と申しておりますウの暫定保全措置命令の場合は,確定した執行等認可決定のある暫定保全措置命令が複合的債務名義となりますので,それに基づいて民事執行するときに執行文が必要ということになります。もう一つの禁止型,ア,イ,エ,オについては,執行等認可決定をした後,次に違反金支払命令が出たときに,この違反金支払命令が債務名義になると考えられますので,この違反金支払命令に基づいて民事執行する局面で執行文の付与というものが必要になると,こういうふうに整理をしております。 ○吉野委員 その点ですが,何について執行文付与するかという問題が実はあろうかと思うのです。そうすると,特にア,イ,エ,オについては,執行等認可決定と違反金支払命令と二つの段階を経ているわけで,今説明を頂いたのは,最終的な違反金支払命令について執行文を付与するということだと思うのですが,そもそも本来の仲裁判断についても執行決定が要る,これについて執行文付与する際に,何に執行文を付与するのかという点については,どうやら考え方についての争いがあるようで,そうすると,この暫定保全措置命令に関する執行文の付与についても,何に執行文を付与するのかという点については,考え方によって争いが出てくる可能性があるのではないかと思います。この点について,私自身は定見を現在,持っているわけではありませんけれども,何に執行文を付与するのかという点については,立法の問題だろうとは思いますけれども,十分整理して立法された方がいいのではないかと思っているところです。よろしくお願いします。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。一旦よろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして「第2 仲裁合意の書面性に関する規律」,部会資料13-1の6ページ,これについて御審議を頂きたいと思います。まず,事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 吉川から御説明をさせていただきます。第2におきましては,部会資料12では「文書に記載され,又は電磁的記録に記録された仲裁合意を内容とする条項」としていた部分につきまして,「仲裁合意を内容とする条項が記載され,又は記録された文書又は電磁的記録」と規律を改めております。これは,現行仲裁法第13条第3項においても,条項ではなく文書が引用の対象とされていることとの平仄を合わせるものとなっております。本文第2の「記載され,又は記録された文書又は電磁的記録」という文言は,既存の法制上の用例に合わせたものとなっておりまして,実質的には記載された文書と記録された電磁的記録を指すものと考えております。   なお,現行法第13条第3項と本文第2の規律の関係という点につきましては,部会資料13-2の4ページ末尾に記載させていただいておりますように,基本契約が書面によって締結され,その中で仲裁条項が記載された文書が引用されているときには,当該基本契約の内容を前提に締結された個別の契約についても,現行法第13条第3項の規律が適用されるものと考えております。これに対して,新たに設けられる本文第2の規律は,サルベージ契約等の,仲裁条項が記載された文書を引用する契約が書面でされていない場合に適用されるものと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,この第2の点について,御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。 ○古田委員 今の事務当局から説明があった点ですが,文言が少し分かりにくいのではないかと思います。条項が記載され,又は記録された文書又は電磁的記録という文言は,その趣旨としては,条項が記載された文書,又は記録された電磁的記録ということですので,むしろそのとおりの文言にした方が日本語として読みやすいのではないかと思います。既存の法制上の表現と合わせたということですけれども,既存の法制上の表現が分かりにくいときに,あえてそれに従う必要があるのかどうかはよく分からないところです。日本語として,もっと端的な表現があるのではないかと思った次第です。 ○山本部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○三木委員 今,古田委員がおっしゃったところも含めて,この新たな条文案の文言は分かりにくいところがあります。もちろん今,事務当局から説明があったように,法制上の理由でそうしているということですので,条文案自体をどうこうしてほしいということは申し上げません。しかし,記録に残すために,2点について,この条文案の読み方について改めて確認をしておきたいと思います。   1点目は,もう既に御回答があったことではありますけれども,仲裁合意を内容とする条項が記載され,又は記録された文書又は電磁的記録というときに,解釈としては,又は記録された文書というところは実質上読まないというか,あるいは意味がないものとして扱う,そういう言い方がいいかどうかは別として,実質はそういうことであるという理解でよいのだろうと思いますけれども,その点をもう一度,念のために確認しておきたいと思います。   それから,2点目は引用のところですが,この部分を普通の日本語として読みますと,当該契約の一部を構成するものとして引用されているときとなっていますので,引用の際に当該記録の一部を構成するということも明示的に言わなければいけないように読まれる余地があります。しかし,もちろんそういう趣旨とは思えませんので,そうではないということを,この点も念のために確認しておきたいと思います。 ○山本部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。まず1点目ですけれども,こちらは先ほど吉川からも説明がありましたように,記載された文書と記録された電磁的記録というものを並列的につなぐということで考えております。ですので,三木委員がおっしゃったような解釈ということになろうかと思います。   2点目につきましては,一部を構成するものとしてというところについては,評価を含む概念であると理解しておりますので,実際に書面によらないでされた契約において,ここまで明示的にされている必要はないものと考えております。 ○山本部会長 三木委員,よろしいでしょうか。 ○三木委員 はい,結構です。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは,引き続きまして,「第3 仲裁関係事件手続に関する規律」,部会資料13-1の6ページから7ページに掛けてですが,この部分について御審議をお願いしたいと思います。事務当局から部会資料の説明をお願いします。 ○吉川関係官 吉川から御説明をさせていただきたいと思います。   「第3 仲裁関係事件手続に関する規律」につきまして,部会資料13-1におきましては,前回の部会資料12から特に実質的な変更点等はございません。先ほど,3の外国語資料の訳文添付の省略のうち3(1)の「当事者の意見を聴いて」の部分については変更を考えている旨を御説明させていただきましたが,その他の点につきましては特に実質的な変更はないということになります。管轄,移送,外国語資料の訳文添付の省略につきまして,改めて御意見がございましたらお聞かせ願えれば幸いでございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,この第3の点,どの点からも結構です,どなたからでも結構ですので,御発言をお願いいたします。   いかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。実質的には今までと変更はないということですが,よろしゅうございましょうか。   それでは,これで今回の部会資料13-1につきましては一通り御意見を頂けたかと思います。   それでは,ここで暫時休憩を取らせていただきたいと思います。14時30分に再開したいと思いますので,それまで休憩としたいと思います。           (休     憩) ○山本部会長 時間になりましたので,再開をしたいと思います。   基本的に皆様の御意見を伺ったところでは,特に第1の3(4)の部分についてかなり御意見,御議論があったかと思いますが,もう一度,事務当局からその点を整理した形での御発言をお願いしたいと思います。 ○福田幹事 福田でございます。事務当局の整理を申し上げますと,まず,この3の事情変更の開示命令の部分につきまして,部会資料13-1の2ページの5行目,(3)の部分はモデル法に対応した規定ということで整理をしておりまして,こちらについては暫定保全措置命令の申立人に対して有利なもの,不利なものを問わず変更があるということで,それを前提とした開示命令の規定ということで考えてございます。したがいまして,ここでいう当事者に対しというのは,いずれの当事者も含まれるということで,モデル法に対応したものと考えております。   他方,(4)の規定につきましては,これは我が国の仲裁法固有の規律ということで考えておりまして,そうしたときに,先ほど吉川から説明をした「当事者が」という部分について,「暫定保全措置命令の申立てをした者」としたとしても,その部分だけを取り上げて,モデル法との関係で問題があるということにはならないものと思っております。また,中身につきましても,ここは暫定保全措置命令の申立人が,事情の変更についての開示に従わないときについての制裁規定という形で整理をさせていただいておりまして,他方で被申立人側については,もし開示命令が出たとしても,それは協力する義務はあるのかもしれませんが,制裁までは課されない,そういった類いの義務という形で整理をするということでよろしいかと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ただいまの御説明につきまして,何か御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この部会全体の審議結果といたしましては,この部会資料13-1「仲裁法の改正に関する要綱案(案)」につきましては,基本的には御異論がないと承りましたので,当部会としては,この部会資料13-1の内容で要綱案を取りまとめるということにさせていただきたいと思いますが,いかがでしょうか。   このようなオンラインですので,画面に映っておられる方々はうなずいておられるのは見えるのですが,それ以外に少し分からないですが,特段御異論はないと理解させていただいてよろしゅうございましょうか。有田委員は賛成の意思で。 ○有田委員 賛成ですという意思表示のために手を挙げる機能を使用しただけで,意見があるという挙手ではありません。 ○山本部会長 ありがとうございました。賛意を示していただいたということで。   よろしいでしょうか。それでは,御異論はないということで,全員一致をもって,この部会資料13-1の内容で要綱案を決定したということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。   なお,この要綱案につきましては,今後,法制審議会総会に報告をすることになります。それまでの間に誤字等の修正その他,実質的な内容にわたらないような表現,字句等の修正はあり得るかと思いますが,そのような形式的な修正につきましては,慣例に従い部会長と事務当局に御一任を頂きたいと思いますが,それでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございました。それでは,そのような形にさせていただきます。   それでは最後に,今後の予定につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。どうもありがとうございました。   本日御決定いただきました要綱案を報告する法制審議会の総会は,10月の下旬に開催される予定でございます。この総会におきましては,山本部会長から要綱案の内容について御報告をしていただいた後に,総会の委員の皆様に御審議を頂くことになります。総会における御審議の結果,要綱が決定されますと,その後に法務大臣に答申されるという運びになる予定でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。それでは,次回議事日程等につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 次回は,令和3年10月22日金曜日,午後1時30分からを予定しております。   次回の会議では,調停に関し,家事紛争に関する和解合意を対象とするかどうかという論点に関して,有識者からのヒアリングを実施する予定でございます。 ○山本部会長 それでは,法制審議会仲裁法制部会第13回会議はこれにて閉会をさせていただきます。   本日は部会資料13-1について要綱案としての取りまとめを頂いたということで,まだ半分ではありますが,半分ほど私は肩の荷が下りた感じがいたします。次回以降は引き続き,調停等に関して,まだまだ残っておりますけれども,どうかよろしく御審議のほどをお願いいたします。   本日も熱心な御審議を賜りまして,誠にありがとうございました。これにて会議は終了したいと思います。 -了-