法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第16回会議 議事録 第1 日 時  令和3年9月3日(金)自 午後1時00分                    至 午後5時50分 第2 場 所  法務省20階 最高検察庁大会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,所定の時間になりましたので,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第16回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   なお,本日は湯淺委員,それから衣斐幹事が御欠席と伺っております。   まず,前回の部会後,幹事等の交代がありましたので,御紹介を致します。   渡邉幹事が退任され,後任として小津幹事が就任されました。また,関係官として新たに大庭関係官が就任されました。このたび新たに就任された小津幹事,大庭関係官におかれましては,簡単な自己紹介をお願いしたいと思います。順番にお名前,御所属の御紹介をお願いいたします。   (委員等の自己紹介について省略) ○山本(和)部会長 それでは,続きまして,本日の審議に入ります前に,配布資料の確認を事務当局からお願いいたします。 ○藤田関係官 本日は部会資料21「民事裁判手続のIT化に関する検討事項4」,部会資料22「民事裁判手続のIT化に関する検討事項5」を配布させていただいております。資料の内容につきましては,後ほどの御審議の際に事務当局から御説明させていただく予定でございます。   本日の配布資料は以上でございます。 ○山本(和)部会長 それでは早速ですが,本日の審議に入りたいと思います。   なお,毎回のお願いで恐縮でありますが,本日も議論すべき論点が非常に多岐にわたっておりますので,全体を通して御発言につきましては可能な限り要点に絞って簡潔にお願いしたいと思います。恐縮ですけれども,円滑な議事進行に御協力をお願いいたします。   それでは,まず,部会資料21について御議論をお願いしたいと思います。一つ目の論点として,部会資料21の「1 手数料の電子納付への一本化」,「2 郵便費用の手数料への一本化」,「3 民事裁判手続のIT化に伴う訴訟費用の範囲の整理」,この部分につきまして,まとめて御議論を頂きたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○園関係官 説明を申し上げます。   1ページの「1 手数料の電子納付への一本化」,そして「2 郵便費用の手数料への一本化」につきましては,基本的に中間試案の内容から変更を加えておりません。これまでの部会で頂いた御意見,パブリック・コメントに寄せられた意見におきまして,基本的に異論のなかったところでございますので,本文記載の内容において今後具体化を図ることを提案しております。   2ページ目の3,訴訟費用の範囲の整理につきましては,従前,事務当局から,当事者の旅費や訴状の作成,提出費用などについて訴訟費用の範囲から外してはどうかという御提案を差し上げていたところでございますが,これまでの御議論を踏まえまして,本部会における結論といたしましては,現行法を維持することとしてはどうかと提案しているところでございます。   事務当局の説明は以上となります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,以上御説明の点につきまして,どの点からも,あるいはどなたからでも結構ですので,御発言があれば頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○阿多委員 1,2,3,いずれも賛成したいと思います。特に2については,現時点での金額提示は難しいとは思いますが,元々実費精算していた郵便費用は,IT化に伴って,ITを利用する者にすれば,ほとんど必要のない状況になりますので,一本化するに際しIT利用者の負担増にならないような金額を提示していただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。1の手数料の電子納付への一本化ですが,基本的には便利になるのだとは思うのですけれども,何事においてもほかの方法も用意しておくべき必要があるのではないかと思っております。何かあった場合にといいますか,やむを得ない事情がある場合に。今回,ここの書き方では,「やむを得ない事情があると認めるときを除き」という一文を入れていただいていますので,柔軟な対応ができるということを前提に,賛成いたします。私も1,2,3,全てにおいて賛成しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   他に御発言はございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。   基本的には,ただいま御説明いただいた部分については,ゴシックで書かれた部分についての御異論はないと承りましたが,よろしゅうございましょうか。   それでは,続きまして,部会資料21の4ページになりますが,「4 費用に関するその他の論点」の方に移りたいと思います。   これも,まず事務当局から説明をお願いいたします。 ○園関係官 では,御説明差し上げます。   4ページの「4 費用に関するその他の論点」でございますが,(1)におきましては,書面電子化手数料を徴収することの当否などにつきまして,インターネットを用いてする申立てなどによらなければならない場合に関する議論と併せて引き続き検討することを提案しております。   (2)におきましては,電子書類を通知アドレスの届出をしていない者に対して送達ないし送付する場合の取扱いにつきまして,これまでの御議論を踏まえまして,本部会における結論といたしましては,現行の法令の下における取扱いと同様に,当該電子書類を提出する当事者の方におきまして書面への出力を行う規律とすることとして,その規律の定め方につきましては最高裁判所規則に委ねることとしてはどうかと提案しているところでございます。   (3)におきましては,裁判所設置端末を用いて訴訟記録の閲覧などを請求する者から端末使用の対価を徴収することについて御議論を頂きたく存じます。   御説明は以上となります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点,(1)から(3)に一応分かれていますが,どの点からでも構いませんので,御発言を頂ければと思います。 ○笠井委員 まず,資料の(2)に関して,一番議論があったところかなと思うのですけれども,(2)の資料の趣旨についてまず御質問をしたいと思います。その御回答を伺った上で,意見を申し上げるかどうかは少し考えたいのですけれども,この資料では,送達すべき副本等の作成主体について,ゴシック体の部分で,現行法令の下における取扱いと同様にとして,電子書類を提出する当事者が書面の出力を行って裁判所に提出することにしようという提案がされているわけで,その理由としては,恐らく現行法令を変更するのは時期尚早であるというようなことかなと理解いたしました。そこで,この現行の法令というのが法律のことをいうのか,それとも民事訴訟規則のことをいうのかということをまず伺いたいと思います。   私は,法律は職権送達の原則を定めていますけれども,当事者が副本を提出すべきことまでは定めていなくて,民事訴訟規則58条の1項と2項や59条が,送達は当事者が提出する副本によってするということを定めていると理解していますので,ここでいう現行の法令というのは規則のことをいうのではないかと思いました。その理解でよいのかどうかを確認したいと存じます。   また,もしそうだとすると,その具体的な規律については最高裁判所規則に委ねると書いてあるのですが,これがどういう意味を持つのか。つまり,この法制審の部会で決めるべきことと最高裁規則に委ねることとの仕分けですね,特に,現行民訴規則が定めていること以上に何か最高裁規則に委ねて規則で明文化してもらわなければいけない事項があるのか,つまり,この提案がどういう事項をそこでいう具体的な規律として想定しているのかということについても御教示いただければと思います。   質問は以上です。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○園関係官 関係官の園の方からお答え申し上げます。   まず,1点目の御質問,本文における現行の法令の意味につきましては,基本的に笠井委員に御指摘いただいたとおりと理解しておりまして,例えば,訴状などの一定の書類につきましては,民事訴訟規則第58条1項などにおきまして,当事者から提出された副本によってすることとされていることを指しているということを念頭に置いた記載でございます。   2点目につきましては,この本文の提案の趣旨ということでございますけれども,まず,念のため申し上げますが,民事訴訟法の改正を含意しているものではございません。そして,その上で,最高裁規則に委ねるという趣旨でございますけれども,IT化後につきましても現行の建て付けを変更しない前提で,最終的な規律の書き方につきましては民事訴訟規則の規律にその定めを委ねると,そういう趣旨でございます。   お答えは以上となります。 ○笠井委員 ありがとうございます。では,意見も続きで申し上げたいと思います。   意見としては,以前に申し上げたことと変わっておりませんで,この際,最高裁規則事項であるとしても,せっかく電子提出ができるのに結局紙の書類も出さなければいけないという不便さを解消するために,最高裁判所の規則として,出力して送達するという方向で再考していただきたいと考えているところでございます。これが意見なのですけれども,なお,その議論の前提に係ることを少し補足しますと,前の商事法務の研究会では,訴状の送達について原告が自ら被告に送達するというという当事者送達を導入することも話には出ていましたが,その研究会でも,そこまではせずに職権送達のみのままであるということを前提として検討を進められまして,この部会でも職権送達のみであるということは議論の前提だろうと理解しております。   職権送達を前提としても,現行民訴規則58条のように,訴状等の送達は原告が提出した副本によってするという定めはもちろんあり得ると思いますし,最高裁民事局の方々が監修されている条解民訴規則等のコンメンタール等では,この取扱いは確立した実務慣行を明文で規定したものであると説明されています。この実務慣行を元にした規則を今回,IT化を前提としてどう考えるかということが問題となるのですけれども,そのコンメンタール等においても,現行規則の解釈について,原告が副本を提出するというのは具体的なサンクションを伴わない訓示的な規定である,法律の定めの内容としては,もし原告が副本を任意に提出しない場合には最終的には書記官が謄本を送達することになるということも書いてありますので,法律の内容としては,裁判所が出力して送達するという基盤がないわけではないと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 今御指摘いただいた点について,私が少し疑問を持っている点を述べたいと思います。勘違いであれば大変恥ずかしいのですけれども,今回の提案の内容自体に関して,現行法の132条の10の第6項の第2文が,オンライン申立てに係る書類の送達又は送付を裁判所が出力した書面ですると定めているように思われまして,これを裁判所が出力したものではないもので行うということを規律するということは,現行法の定めを変更するということになるのではないか,そうであれば,そのような変更をしなければならない立法事実が問われるということになるのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 (1),(2),(3),いずれもコメントしたいと思います。   (1)では,インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合,いわゆる義務化の議論と併せて引き続き検討するという提案になっていますが,私が理解する限りにおいては,この義務化の議論によって書面電子化手数料の徴収の要否が必然的に決まるものではないと思います。むしろ,裁判所が管理する訴訟記録の電子化の話は裁判所の管理のあり方の議論ですから,裁判所の負担,つまり手数料等を請求すべきではないという形で,まとめていただくべきと思います。   (2)について,従前から私自身は裁判所の負担を提案してきましたが,事務当局からはむしろ現状どおりという提案がありました。まず確認したいのは,副本提出主義と異なって,特に送達の場合,相手方に送る書面が何なのか,前から質問させていただいておりますが,訴訟記録自体をプリントアウトして送るのか,それとも従前のように原告側が所持しているデータをプリントアウトした書面を送るのか,いずれによるのかによって送達する書類が異なるのではないかと,まだ疑問に思っています。今回の御提案でもその点は明確ではありません。送達の対象となる事件の書類は,訴状を例に言いますと,訴状審査を経た最終的なものが訴訟記録になるわけですから,訴訟記録をプリントアウトして送達するという形とし,その後の準備書面や証拠は裁判所の審査は入りませんので,当事者間で送付するという形で,(2)は前段と後段を分け,送達関係は裁判所,送付は当事者間というルールで行うという提案をしたいと思います。今回,背景として制度導入に際しての裁判所の負担について触れられています。確かにどれだけの書類が電子化されずに提出されるのかは分からないところがありますが,訴状等,送達に関係する書類に限定すれば,提訴時のみ,極端な言い方をすれば最初だけになりますので,最初だけは裁判所でプリントアウトすべきいう修正案を述べたいと思います。   (3)では,端末を使用する対価の徴収が問題となっていますが質問があります。現時点でも閲覧等の申立てに際しては申立手数料として確か150円を負担していますが,この申立手数料とは別に端末使用料を加算して負担しなければならないという提案なのか,それとも,申立手数料については事件係属中の当事者は今まで負担をしてこなかったわけですが,当事者も申立手数料を負担すべきという提案なのか,確認をさせてください。 ○山本(和)部会長 それでは,(3)の点につきまして,事務当局の方からお答えをお願いいたします。 ○園関係官 関係官の園の方からお答えを申し上げます。この(3)の本文の提案につきましては,従前,委員,幹事の方から御提案があったものを整理しているところでございますけれども,問題提起されておりますのは,まず,事件係属中の当事者から申し上げますけれども,現行法におきましては費用法別表第2におきまして,訴訟記録の閲覧,謄写などにつきましては無料とされているところでございます。ただ,このような方につきましても今後,IT化後につきましては,裁判所設置端末を利用する形で訴訟記録の閲覧などを求める場合には,別途その対価を徴収することについて提案されていると,そういうふうに理解しております。   次に,事件係属中の当事者以外の第三者の方の御説明となりますけれども,現行法におきましては御指摘のとおり1件150円という手数料が求められているところでございますけれども,これについても同様に,裁判所の設置端末を利用する形で閲覧などを請求する場合には,別途対価を徴収することについて提案されているものと理解しております。 ○阿多委員 そうしますと,現状より高くなるという提案のようですが,係属中の当事者は,申立て段階で原告側が一旦訴訟費用を立て替え,最終的には原告,被告いずれかの負担となるような形で,当事者は裁判制度を利用するに際して費用負担をしているわけで,更に裁判所の中の設備を利用することについて費用負担を求めるのはいかがかと,むしろ最初の裁判制度の利用の際に支払う費用に含めて考えるべきではないかと思います。そういう意味では,現状と同様に係属中の当事者は費用負担はなし,閲覧謄写を求める第三者は,利害関係の有無にかかわらず,現行でも一定の費用負担を求めていますので,金額が相当であればあり得ると考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私も(1),(2),(3)のそれぞれについて御意見を申し上げたいと思います。   まず,(1)の書面電子化手数料についてですが,引き続き検討すること自体を否定するものではありませんけれども,オンライン申立てへの一本化の論点の帰すうによらず,書面を用いた申立てをする者から電子化手数料を徴収することは正当化し難いのではないかと考えています。理由は何点かございます。   一つ目は,訴訟記録の作成及び保管は書記官の事務とされておりまして,そのための費用がこれまで徴収されてきたことはないと理解しています。電子化手数料も訴訟記録の作成及び保管のためのものですので,これを個別事件の当事者から徴収することには違和感があります。この費用は訴訟を運営する裁判所の本来的な事務に伴うものですから,国費で賄うか,一般的に申立て手数料に含まれるものと理解されるべきではないかと思いました。   また,オンライン申立てへの一本化の論点との関係で言いますと,その着地点がいわゆる甲案,乙案,丙案のいずれであっても,書面を用いた申立てをする者は,それが法律上認められているはずですから,書面の提出によって訴訟法上の効果を得られるのであって,その書面が電子化されることによる受益の主体といえるか疑問を感じます。また,電子化手数料の額が提出される準備書面や書証などの書面の分量によって決まるのであるとすると,書面を用いた申立てが制度上認められているにもかかわらず,実際にそれをする者の訴訟活動を萎縮させるおそれもあるのではないかと思いました。   3番目の理由は,これもやはり電子化手数料の額が提出される準備書面や書証等の書面の分量によって決まるのであるとすると,という想定の下でありますけれども,提出される書面の分量を記録して,その都度か何らかの区切りにおいて手数料の額を計上し,提出当事者に請求し,納付の管理をするというのは非常に煩瑣であって,裁判所の人的資源の使い方としていかがなものかと思いました。また,答弁書を提出したものの訴訟遂行に不熱心なまま敗訴判決を受ける被告など,電子化手数料を納付しないままとなる多数の当事者の存在が予想されまして,それによって蓄積する未納案件の処理も裁判所の重い負担となるように思ったところです。   (1),(2),(3)について御意見を申し上げると冒頭に申し上げましたけれども,少し長くなりましたので,(1)のところだけで取りあえず終わらせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 (2)についてですが,今まで御発言になった方は皆さん(2)に対してネガティブな御意見なのですけれども,私はそれほど簡単に突っ走っていいのかなという懸念を,以前にも申し上げましたけれども,なお持ち続けております。どれぐらいの処理をしなければならないのかということが現状見えない中で,この方向に行ったときの裁判所の事務負担というものが膨大なものになりかねないと思います。   もちろん裁判所の人員が潤沢であって,この規律を取り入れたことによって事務職員の定員増になるとか,そういうようなことになるのであれば,私は別に問題はないのだと思うのですが,現状の日本の財政の状況から考えてそういうことはほぼ考えられないわけです。したがいまして,結局何が起こるかというと,大きな庁においてはこれの専用の人員を今持っている人の中で,使える人の中からそちらに回すか,あるいは物件費,物を買うような費用を使って新たに人を雇い入れるということをしないと,これは対応できない可能性があるわけです。それから,小規模庁においては,恐らくそれ専用の人を張り付けるなんていうことはできないでしょうから,結局この事務が本来事務に加わって大きな負担になってくるということが考えられるわけで,それでは本来,裁判の適正な運用に使われるべき人的な資源が,コピーをして,それを整理して封筒に入れるという作業に大きく食われてしまうと,これが本当にいいのかどうかということを考えるべきなのではないかと思います。   したがいまして,私は,将来的には変わり得るかもしれませんけれども,現時点においては(2)の規律を採用すべきであると考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 書面の電子化の手数料,(1)について,まず意見を述べたいと思います。書面を用いた申立てなどをする当事者というのは,すなわち士業者に委任しない一般の方々のことを指すと思われ,実務的には大きな論点になるのではないかと考えています。したがいまして,この論点はインターネットを用いた申立てを当然に行う司法書士や弁護士などの士業者の視点からではなくて,やむを得ず書面を用いた申立てをする当事者の視点から意見を述べさせていただきたいと思います。   本文の記載からは,書面を用いた申立てなどをする当事者は,それだけで余分に手数料を徴収されるという仕組みが提案されているかのようにも思われるのですが,実はその前段階として,インターネットを用いた申立てをする士業者へのアクセスをより一層拡充して,そもそも書面を用いた申立てなどをしようとする当事者がほとんどいないという状態が念頭に置かれているのだろうとは推察いたします。その上で,裁判所の窓口にはスキャナーなどの機器が設置されて,書面等を用いた申立てなどをしようとする当事者が自らの労力によって書面をPDF等に電子化することができる環境が整っているという前提において,なお当事者が司法書士,弁護士に委任することを望まず,また時間や手間を掛けて自らの労力を要するよりは幾ばくかの手数料を支払って裁判所に書面を電子化してもらうという選択肢があるということは,有益なのだろうと思っています。しかしながら,こういった前提がなく,現在と同じ水準の本人訴訟を希望される当事者が直ちに手数料を納める必要があるという状況下においては,手数料の徴収には反対せざるを得ないと考えています。前回の議論の際にも申し上げましたが,取り分け被告においては,手数料を納めるぐらいであればそもそも書面による応訴をしないという選択をされる当事者も多く出てくると思われますので,慎重に検討していかなければならない問題だと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 (2)についてですけれども,私も今のこの提案でよろしいのではないかと思っております。先ほど阿多委員の御発言,もしかしたら誤解をしているかもしれないのですが,送達の場合には,例えば訴状の場合,訴状を審査したものを裁判所でプリントアウトしてとおっしゃられたと思います。そこで前提としているものは,仮にIT化が実現しても,訴状について最初に提出したものを裁判所が訴状審査しても,それが修正されて,最初に出した訴状と別の修正された訴状が訴状審査の結果,出来上がるわけではなくて,恐らく今の運用と同じような訴状訂正申立書というものが別に作られるのではないかと思います。そのように考えると,裁判所に出したものと同じものを当事者が印刷して出すという今の運用とそれほど変わりはなくて,訴状の送達と準備書面の送付で区別する理由があるのかというのは,少し疑問に思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 裁判所の手間という話について,山本克己委員もおっしゃいましたし,裁判所の方もそういうことを気にしておられるのだろうと思うのですけれども,これは前から阿多委員などもおっしゃっているように,電子的に出されたものと,原告が副本ですよというふうに出したものとを逐一,合っているかどうかということを確認する手間というのはどうしても要ると思うのです。これは当然,きちんとその副本を送達しなければならないというのは裁判所の責務なわけですから,そうしますと,見比べて合っているかどうかをきちんと確認して,それから送るという手間というのは相当なものではないかと逆に思うのです。これは想像の世界ですので,分からないといえば分からないのですけれども,この辺りについて,もし裁判所の方で,そこはやはりかなり違うのだとおっしゃるのであれば伺いたいと思った次第です。私はその手間も相当掛かると思っているということでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   もし裁判所の方から何かあれば,後で御発言いただきたいと思いますが,取りあえず阿多委員,お願いいたします。 ○阿多委員 大坪幹事から質問が出ました。私も訴状の訂正があれば訂正申立書も併せてと理解をしています。提案の趣旨は,裁判所に訴訟記録として整理し備え置かれた電子データを原告がプリントアウトする形になるのであれば原告が裁判所の事件管理システムからプリントアウトして裁判所に届けるよりも,裁判所の側でプリントアウトする方が時間的にも早くなりますし,また,笠井委員の御指摘のあった同一性の確認も不要になりますので,先ほどのような提案をしたという次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 (2)についての御議論が進んでいるところですので,まず日弁連の御意見を紹介させていただきますと,これは裁判所に出力をして送達送付に使っていただきたい,費用負担を当事者に求めるものではないということを求めているところです。   その上で私の意見を申し上げますと,部会資料の8ページのウに記載されている内容が今回の提案の理由になっているのですが,そこでは冒頭で,「少なくとも民事訴訟制度が,オンライン利用に全面的に移行するまでの過渡期においては,」とされています。これは,少なくともオンライン申立てへの一本化の論点における甲案の状態に至るまではという趣旨と理解しているのですけれども,そうしますと,今回の提案は今時の法改正においてはオンライン申立てへの一本化について甲案を採用できないという前提の上でなされているものなのかなと思いました。その前提の内容については,結論として私は違和感は持っていないのですが,今現在残っている論点について一定の結論を前提として先取りしているというわけでないのなら,本文(1)の表現を借りれば,(2)についても,「インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合に関する議論と併せて,引き続き検討することとしては,どうか。」という整理になるべきところのように思いました。したがいまして,この点については現時点で方向性を示すには至らず,追ってオンライン申立てへの一本化の論点と併せて検討することが相当ではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 先ほど,システムにアップロードされている電子データと,副本として提出された書面の同一性の確認についての御指摘がありました。現在検討中のシステムの設計について詳細はまだ決定しておりませんが,当事者において事件管理システムにアップロードした電子データを印刷する際には,それがアップロードされた電子データから出力されたものであることが明らかになるような仕様とすることを予定しております。このような仕組みなどの方法により,アップロードされた訴訟記録である電子データと,副本として提出された書面との同一性を確認することは十分に可能であると考えておりますので,裁判所が自ら書面を出力した方が負担が少ないということにはならないと考えております。   また,あえて一言言わせていただきますと,現行の民訴規則が訴状の送達は原告から提出された副本によってするとしておりますのは,当事者から正確な副本が提出されることを前提としているものでしょうから,当事者から出てきた書面と原本とを一字一句対照するなどの手間の掛かるチェックは求められていないものと理解しているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。 ○日下部委員 (2)につきましては,最初の頃に申し上げましたとおり,現行法の132条の10の6項の第2文がどういう意味合いなのかというのを私も十分把握しかねていますので,それについて正確な御理解をお持ちの方がいらっしゃれば御指摘を頂ければと思います。   それはそれとして,(3),端末使用料の徴収について意見を申し上げたいと思います。私がこれを最初に見ましたときに,端末の使用料を徴収するかどうかということがそもそも法制上の問題なのか,法制審の部会で検討すべきことなのかというのがよく分からなくなりました。ただ,それはさておき,意見を述べさせていただきますと,事件係属中の当事者についてもそうではない者についても,裁判所の端末による訴訟記録の閲覧等の請求者から端末使用料を徴収すべきではないと思います。   徴収すべきとの意見の中には,裁判所外の端末から閲覧等をする者との間での不公平を指摘するものもあるようですが,そうした者の大多数は日常的に使用している自宅若しくは職場のPC,又は自らのモバイル端末を利用して閲覧等をし,訴訟記録の閲覧等のためだけに特に支出をすることはないと考えられます。そうしますと,裁判所の端末の使用が無償であってもさして不公平を生じるとは考え難いですし,少なくともさしたる不公平感を持たれるということはないと思います。また,徴収すべきという意見の中には,端末の維持管理費や事務負担の受益者から対価を徴収することの合理性を指摘するものもあると理解しています。そして,その理屈は理解できます。しかし,国民一般が利用する公共機関における端末について使用料を徴収するということは一般的ではなく,無償で利用できる公共サービスの一環であるとの理解が普通ではないかと思います。裁判所においては端末の使用料を徴収するとなりますと,恐らくは奇異の目で見られて,国民に向けた説得力のある説明ができるのだろうかと懸念しております。   最後に,部会資料の中では,裁判所の端末を無料で利用できるといたずらに独占する者が出てくるおそれがあるといった指摘も御紹介されています。しかし,快適なラウンジであれば格別,なかなかそうとは言い難い裁判所で端末をいたずらに独占する者を念頭に考えることが妥当かは疑問であります。また,裁判所においてはアクセスできるウェブサイトを制限することで,誰もいたずらに独占する気にならないようにすることでも対応できる問題ではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 (2)の書面による送達ないし送付を行う場合の取扱いについて申し上げます。   当会としましては,実務に変更を加えるものではないことから,書面による送達ないし送付を当事者がすることを維持するということでよいということが従前から述べてまいりました意見でございます。繰り返し部分もありますが,裁判IT化とは利便性を向上させ裁判の迅速化を図ることが目的であり,ここにいう利便性とは当事者,裁判所の双方にとってのものだろうと理解しています。手数料の負担とも関連する問題となりますけれども,当事者の手数料負担を半ば義務として,一次的に裁判所が書面を出力するという規律を設けるということになりますと,裁判所の負担が重くなりすぎることによって裁判の迅速化が図れなくなるおそれが高まるとともに,当事者にとって従来と比べて手数料負担が重くなるという二重の負担が増すことにもなりかねないと思っています。また,裁判所は書記官権限の見直しも提案され,人的リソースの効率活用を掲げられている中,書面の出力といった代替性の効く作業を裁判所に課すという規律は,全体としてやや整合性に欠けるのではないかとも思っています。   平成8年の民事訴訟法の改正以来,相手方用の書面は当事者が用意するという実務が定着しており,司法制度の安定性という観点からも,裁判の迅速化を図るためにこの定着した実務を変更するだけの立法事実は,少なくとも現時点では,ないといえるのではないでしょうか。   今回の部会資料によりますと,施行時点では今までどおり当事者が送達,送付用の書面を用意することとし,当面は今までどおりの実務対応が継続することが予定されているものの,相当期間が経過し書面を用いた訴えの利用が相当数少なくなった段階でこの運用を見直すという趣旨が含まれているように思われ,なお,その際は最高裁規則事項であるため法改正は不要と,そういう趣旨だと理解をしました。そうであれば,現実的な提案であり,将来的には柔軟に実情に沿った変更をすることができるものと考えられますので,改めて今回の部会資料に賛成の意見を述べさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 日下部委員からお話がありました法132条の10ですけれども,私はどうも立案に関わったようなのですが,どういう説明がされていたか全く覚えておりませんが,条文を読んだ感じとしては,132条の10の第6項で,出力された書面が記録になり,それが閲覧謄写の対象になると規定されておりますので,記録が電子化されることを念頭に置いていない規定であると。したがって,記録化するためには出力が必要であって,出力するついでに副本も作るというような考え方に基づいて規定されているのではないかという気がいたします。   今回は,記録は電磁化されるということですので,記録との関係で出力する必要はないわけです。それとともに,132の10というのは本当にどれだけ使われるか分からない状況で作ったもので,それほどは来ないだろうという見込み,この電子情報処理組織を用いた申立てというのがそうは使われないだろうという見込みで立案されているものだと推測いたします。しかし,今回は記録の電磁化,電子化というのは全件で行うという方針ですので,量的にも全く違って,これは量の差が質にまで転じている場合だろうと思いますので,現在の132条の10の第5項があるからといって,今回の4の(2)の提案がなされるということは十分理由が付くのだろうと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○高田委員 高田です。私も山本克己委員と同じことを申し上げようと思っていたわけですけれども,現行法は訴訟記録が書面であるということを前提に,送達のために書面化する必要があるという作業について述べているということではないでしょうか。その先,副本制度は規則事項ですので,法律はそこには触れていないということができそうではありますが,一定の方向は示していると読めるのかもしれません。   引き続き,(2)について私の意見を申し上げさせていただきます。御指摘のように,裁判所のシステムを利用して提出した当事者や訴訟代理人が,なお別途,送達書類が必要な場合に,副本として出力書面の提出が,規則レベルとはいえ,義務付けられるという負担を負うことには違和感が残るところでございますし,今まで皆さんの御議論があったように,何よりもコピー機さえ十分に存在しなかった時代に成立した副本制度を,訴訟記録が電子化され電子情報の書面の出力が容易になった現在,今後とも維持すべきかということについては本格的な議論が必要と考えておりました。   ただ,日下部委員の御指摘もあったところでございますけれども,今回の立法として考えた場合,仮にシステムを利用することが義務付けられる者に関して甲案が採用されないとした場合,言い換えれば乙案,丙案の採用を想定する限り,裁判所において書面と電子情報が文字どおり併用されるということになりますので,その状況についての正確な見通しなく今回の立法で進めることには慎重であるべきであるという部会資料の記述は説得的であるように思いますし,その点で山本克己委員や小澤委員の御意見に共感を持つところでございます。   ただ,直前にも申しましたように,副本制度の今日的意義ということは重要な検討課題であると私自身は考えております。小澤委員の御指摘にもありましたように,甲案が採用されるとはいわないまでも,広くシステムが利用されて手続が進行するようになった時期においては,機を失することなく見直すことを考えることがあり得てよいと思います。そのためには,阿多委員から御指摘のあった送達書面の理論的な性格ということを含めて議論の蓄積を進めるべきだろうと思います。ただ,取りあえず今回の立法に関しては,そこまで機は熟していないのではないかという印象を持っているということを申し上げさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○長谷部委員 今,論点が(2)と(3)と,行ったり来たりですが,私は主として(3)について申し上げたいのですけれども,よろしいですか。   (2)については今,高田委員がおっしゃったように,電子ファイルで訴状の提出が可能であるという制度になったにもかかわらず,なお紙媒体で副本に相当するものを提出しなければならないという不便は,確かに問題があるだろうと思います。今後検討する価値がある問題であると思っております。 (3)については,先ほど日下部委員が御指摘になったのですけれども,資料の8ページのところに書いてある,裁判所外の端末から閲覧等をする者との間の不公平は,余り理由がないのではないかと,私も思います。裁判所外の端末を使って閲覧するというのは,機会費用なども考えるとそちらの方がコストが掛からないという理由でされているわけですから,裁判所に行くしかないためにそこで閲覧するという人との間の不公平は余り考えなくていいだろうと思うわけです。   むしろ,(3)の論点については,事件係属中の当事者とそれ以外の者とを同じに扱っていいのかどうかと,そちらが問題だと思っています。先ほども日下部委員がこの問題は民事訴訟法の問題なのだろうかとおっしゃったのですけれども,直接の問題ではないかもしれませんが,民事訴訟法の訴訟記録の閲覧制度との関連で,訴訟記録というものをどのように理解するかという問題に関わると思いまず。平成8年改正よりも前から,訴訟記録は当事者にも利用される共通の資料として作成されるのだと,そういう理解の下に,事件係属中の当事者については手数料の納付は不要であるという理解がずっとされてきたわけで,それを今回IT化することで,この事実を変えるだけの理由があるのかどうかというのは,慎重に検討していく必要があるだろうと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 最後の(3)の裁判所に設置された端末を使用する対価についての意見を述べさせていただきます。   インターネットを用いた訴訟記録の閲覧は一般のパソコンからもできることを想定しており,裁判所に設置される端末についても特殊な回線やアプリケーションが組み込まれたものではなく,閲覧用に一般のパソコンを設置するイメージで理解しております。そのようなイメージを前提にしますと,一般のパソコンを使用することによる対価として費用が徴収されるというのは,行政ではほとんどが同様のサービスを無償で提供していることなどを踏まえますと,国民感情として理解されにくい状況にあるのではないかと思っています。独占使用の防止という観点においても,当該端末を使わずともインターネットに接続された他の一般的なパソコンから閲覧ができるというのであれば,昨今のパソコンの保有状況からすれば,そこまで懸念することもないのかなという印象を持っています。   そして,この端末は当事者や第三者による訴訟記録の閲覧だけでなく,公示送達がインターネットを用いてされるのであれば,その内容の閲覧もすることができるものとなるのではないかと想像しております。そうであれば,裁判所の掲示板を閲覧するのと同水準の敷居の低さを確保する必要があるのでしょうから,なおのこと裁判所に設置された端末の使用は無償とすべきではないかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。既に意見は出尽くしている感もありますけれども,私自身の4の(1)から(3)についての現時点での考えを申し上げたいと思います。   まず,(1)につきましては,既に指摘がありますように,書面で電子的な,オンラインを使わないということが法律上認められるという場合について,そのことに伴って追加的な手数料の負担が生ずるということは適当でないように思われますので,そのような場面を想定して手数料を設けるということは余り賛成できないように考えております。   また,(2)の点につきましては,これはなかなか難しいですけれども,現時点での判断としては私自身は先ほど来,山本克己委員あるいは高田委員が指摘されているところに説得力を感じているところです。したがいまして,原案の方向に賛成したいと考えております。   (3)につきましては,事件係属中の当事者について端末使用の対価を徴収するということは適当でないだろうと思われますし,それ以外の者につきましては,理屈としてはおよそあり得ないということはないかもしれませんけれども,しかし,訴訟記録の閲覧ができるという公開の趣旨が及んでいるということも考えますと,そこで現状よりも負担が増大するというような結果は避けた方がよろしいのではないかと思います。そうしますと,これは閲覧の手数料との関係などもありますけれども,なかなか対価を徴収するということは難しいかなというのが現時点での印象です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○品田委員 裁判所に設置された端末の利用についての手数料を徴収することについて,消極的な御意見が多数ございましたけれども,実務的な観点から申し上げると,現在でも当事者であるか第三者であるかを問わず,長時間にわたって訴訟記録の閲覧をする方というのはいらっしゃいます。今後,記録の閲覧用の端末がどの程度設置されるかというのは分かりませんけれども,いずれにせよ何の負担もなく長時間にわたって端末の利用が可能であるとした場合には,ほかの利用者との調整ですとか,現場でいろいろな混乱が生ずる可能性もあるのかなと考えているところです。自らの端末で記録を閲覧なさる方との公平の観点等も踏まえると,端末使用料の徴収も含めて,端末の利用に関する合理的なルールを設ける必要性は高いのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。おおむね御議論は出尽くしたと考えてよろしいでしょうか。   この部分,(1),それから(3)については,引き続き検討する,あるいはどのように考えるかということになっておりまして,これにつきましては,いわゆる申立ての義務化等の議論も踏まえて次回以降に具体的な提案がなされるということになろうかと思います。本日の委員,幹事の皆様の意見を踏まえて提案がなされていくということになる,引き続き検討していただくことになろうかと思います。   他方,(2)につきましては,これまでもかなりの議論が蓄積され,今回,具体的な提案が事務当局からなされているということかと思います。本日もかなり,やはり委員,幹事の御議論は分かれていたところでありますけれども,現在の提案は基本的には現在の規律ないし運用というものを,当面という言い方が適当かどうか分かりませんが,維持するという方向での御提案と理解しましたが,それを変えるべきであるという御意見も複数出されたように思いますけれども,なかなかその方向で現段階で部会のコンセンサスが得られるかというと,やはりそれはなかなか難しいように思いました。多数の御意見で,実際の運用というものを見てみないと,それによって実際に裁判所負担がどの程度になるかということを見てみないと,軽々にやはり現在の運用を大きく変えるということは難しいのではないかという御意見が示されたように思います。   そういう意味では,この事務当局の御提案というものを,ただ,これは日下部委員,あるいは高田委員からも御指摘があったかと思いますけれども,いわゆる義務化の論点のところで甲案が採用されるということになった場合には,少し議論の前提が違ってくるのではないかというような御指摘もあったように思いますので,完全な形で取りまとめるということではないかもしれませんけれども,現段階では基本的にはこの事務当局の出されている案ということで,御異論はあるかもしれませんけれども,そういう方向で今後の議論を進めていきたいと。ただ,先ほどの申立て義務化というところにどういう案を採用するかによってもまた変わってくる,そういう意味では若干の動きというものはあり得るということは留保しながらも,基本的には事務当局の本日の御提案の方向で今後進めていくということが私としては適切かなと考えた次第でありますけれども,いかがでしょうか。   皆さん,この副本というものを一体どういうふうに位置付けるのかというのは確かに今後,引き続き考えていかなければいけない問題ですし,実際にやってみて,こういうIT化が実現した後,必要があれば,それは再度検討していくということも,この部会で多くの委員,幹事から述べられたということかと思いますので,一応こういう議論がこの部会で尽くされたということを前提として,そのような方向で今後は考えていくということでよろしゅうございましょうか。   それでは,恐縮ですけれども,この論点についてはそのような形で取りあえずのまとめをさせていただいて,最終的な要綱案に向けて更に審議をしていただければと思います。   それでは,以上で部会資料21については御議論を頂けたということになろうかと思いますので,引き続きまして部会資料22の検討の方に移りたいと思います。   まず,部会資料22の「第1 口頭弁論」についてでありますけれども,順次御議論いただきたいと思いますが,まず,1ページの「1 ウェブ会議等を用いて行う口頭弁論の期日における手続」,この点につきまして,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。本文は中間試案の内容から変更はございませんが,(注)におきまして,期日の指定と同様に期日の変更を裁判長の権限とする考え方を御提示しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして御意見あるいは御質問をお出しいただければと思います。   いかがでしょうか。先ほどの(注)の期日の変更の点も含めて,特段の御意見あるいは御異論はないと理解してよろしいでしょうか。 ○小澤委員 ウェブ会議等を用いて行う口頭弁論の期日における手続について,意見を申し上げたいと思います。   通信状況の悪化により具体的な口頭弁論期日における手続が途中で途絶したような場合,仮にこの期日に出頭しないと評価されてしまうと,例えば擬制自白に関する規定159条3項など,期日に出頭しないことによる不利益に関する規定との適用関係で問題が生ずると考えています。そうすると,検討すべき課題はもちろんいろいろあるのでしょうけれども,例えば通信状況の悪化等の場合には,次の2点が考えられるのではないかと思っています。一つ目は,期日に出頭しないことによる不利益に関する規定との関係においては,期日に出頭したものとする扱いとする規定を置くという考え方,二つ目は,電話による方法を認めるなど,いわゆるフェイルセーフ的な措置を規則レベルで規定するという考え方があり得るのではないかと考えています。取り分け第2の方法については,後ほど検討される予定の簡易裁判所の手続における電話会議における口頭弁論にも関連することになろうかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。今の小澤委員の示された問題状況については,資料2ページの2の(1)の一番最後のなお以下の段落で,この資料の検討としては,最終的には悪化の状態やそこでのやり取りを踏まえた事案ごとの判断とならざるを得ないと思われるというまとめというか,指摘がされているところでありますけれども,小澤委員の今の御提案は,これでは必ずしも十分ではないという趣旨なのでしょうか。 ○小澤委員 そこまでの強い意見ではございません。 ○山本(和)部会長 分かりました。 ○脇村幹事 小澤委員がおっしゃいました点につきまして,部会資料との関係を少し説明させていただきますと,部会資料で書かせていただいたのは,どちらかといいますと積極的な行為を相手方がしたようなケースについて,それを口頭弁論としてやっていたと評価できるかどうか,そういったことについては,もちろん通信状況が悪いときには難しいだろうということを念頭に書かせていただいておりました。恐らく今,委員がおっしゃった点は,どちらかというと通信状況が悪化した人の有利な方向といいますか,自白成立しない方向で考えるべきではないかということでございますので,恐らく解釈論としましては,そういったケースについて欠席とみなすということは当然考えていないということになると思いますので,そこの点については私たちも,書きぶりが少し誤解を生むことがあったのではないかと思います。その辺は,結論を言うと,恐らく委員と同じ発想だと思いますので,説明ぶりを少しきっちりと考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにこの部分について,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。基本的には御異論はないということでよろしいでしょうか。   それでは,続きまして,今度は3ページ「2 無断での写真の撮影等の禁止」の部分ですが,事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。本文は中間試案の内容から変更はございませんが,説明におきまして,裁判所法及び法廷等の秩序維持に関する法律との整合性に関する検討を加えております。 ○山本(和)部会長 それでは,この点につきまして御質問,御意見,御自由にお出しいただければと思います。 ○日下部委員 今回の資料では,関連する現行法令として裁判所法と法廷等の秩序維持に関する法律に言及されておりまして,それぞれの規定に照らして,民訴法に新たな制裁の規定を設けることの是非,要否についての問題意識が示されているかと思います。私自身はこれらの法律について十分な理解が及んでいるというわけではないのですけれども,それを条文などを見まして,一応,以下のように理解をしているところです。   まず,裁判所法についてですが,71条が法廷の秩序維持を,72条が法廷外における処分を定めており,それらを受けて73条が刑事罰としての審判妨害罪を定めているということですが,その審判妨害罪の構成要件として,裁判長等による命令に違反することが必要とされているかと思います。ここでいう命令が法廷内外における掲示によって事前に一般的に伝えられるものでよいということであれば,ウェブ会議などの参加者が秘密裏に行う不適切な行為に制裁を科すことができるかもしれないとは思いました。しかしながら,審判妨害罪の適用のためには,ほかに裁判所又は裁判官の職務の執行を妨げることも必要ですので,裁判所法の規定では秘密裏に行われる不適切な行為の抑止効果を持たないように思いました。   他方,法廷等の秩序維持に関する法律の2条1項では,法廷内外での手続に関して行政罰の制裁を定めておりますけれども,それには,裁判所の命令や措置に従わず,又は暴言等により裁判所の職務の執行を妨害し,若しくは裁判の威信を著しく害することが必要とされています。こちらの方でも,不適切な行為が裁判所に認識されずに行われる場合でも,事前に裁判所がそうした行為を禁ずる命令を下したり,禁ずる旨の措置を執ったりすることができるのであれば,制裁を科すことはできるのかもしれないと思いました。しかし,行政罰を科すためには,裁判所の「面前その他直接に知ることができる場所で」という要件が満たされることも必要になっておりますので,この法律の規定では秘密裏に行われる不適切な行為の抑止効果を十分に持ち得ないように思いました。   今のような理解が正しいということだとしますと,改めて新たな規律の要否が問われることになろうかと思います。この点,法廷や準備手続室のような裁判所の施設で手続が行われる場合と異なって,当事者がウェブ会議などの方法で裁判所外の場所から手続に参加する場合には,ウェブカメラの死角で無断で録画された映像がインターネット配信されたりする可能性がありますので,そうした行為に対して制裁を科すことができないということですと,その蔓延を許すことになりかねない,それによってプライバシーや営業秘密の漏えいにつながるおそれもありますし,口頭弁論の公開を法廷での傍聴でのみ認めている趣旨や,非公開手続における意見交換のしやすさが損なわれて,訴訟手続の充実した円滑な進行の妨げになるおそれもあるように思います。したがいまして,そうした行為にも制裁を科すことのできる規律を別途設ける必要性はあるのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 今回の提案は,IT化によってウェブでの審理が行われるようになると,裁判所には分からないような形で審理の状況が録画されるなどして,それがインターネットを通じて簡単に世界中に配信される危険が高まると,そういうことから,民事訴訟規則77条や裁判所法などとは別の規律として提案されていると理解しております。   写真撮影について,刑事訴訟規則215条に民訴規則77条と同様の規定があるわけですけれども,この規定の制定には次のような時代背景があるといわれています。すなわち,憲法82条の規定する裁判の公開原則の強化というものもあって,戦後間もない一時期には法廷での写真撮影が自由に行われる状況が生まれていたと。それで,ややもすると無節操,無秩序であったということで,行きすぎた取材活動が法廷を混乱させることもあったようです。このために,昭和22年1月1日に今の刑事訴訟規則215条が施行されたということになっているようです。また,昭和27年には一連の当時の公安労働事件における法廷の混乱から,法廷の秩序維持に関する法律の制定になったといわれております。   このように,民事訴訟規則も同様の経過だと思いますけれども,民事訴訟規則77条による写真撮影等の許可については,解説によれば,当事者その他の関係人の名誉の保持も考慮要素に挙げられておりますけれども,これまで明確にプライバシー保護ということや,企業秘密を保護するというための写真撮影が禁止されていたというわけではないように思います。元々プライバシー保護と裁判の公開との関係は,これまで必ずしも十分に整理がされていたとはいえない状況だと思われます。平成8年の民事訴訟法改正の際にも,訴訟審理の公開の制限については特別の制限を置かないということで,問題の解決は先送りにされているという状況と理解しております。   今回の部会資料の5ページのウでも指摘されているのですけれども,密かに写真撮影等をした場合に,それだけで直ちに裁判所に対する影響があるとはいえないと私も思います。部会資料では,その場合に制裁を加えることが現在の法制度との関係で整合性をとることができるのかとされていて,ここには裁判の公開原則というものも考慮として含まれているようにもうかがわれるところです。   今後は,公開原則に重きを置くということになりますと,憲法制定当初と同様に,法廷の写真撮影や録画ということも自由にできてしかるべきというような考えもあるように思います。しかし,現代社会においては国民のプライバシーに対する意識というものは非常に高くなっております。今は,例えば,必ずしも個人が特定されていない鉄道会社の乗車履歴についても騒ぎになるような,そういう世の中ですので,多少整合性に疑問が生じたとしても,時代に合わせた法整備というものが必要になるのではないかと考えます。   したがいまして,提案のような規定を民事訴訟法に定めておくべきと考えます。これに伴って,民事訴訟規則というのは新しい制度に吸収されることになるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 重複しない形で意見を述べたいと思います。まず,(注)で,ウェブ会議や電話会議を用いないケースについても検討するという記載になっている点は,元々法制審の部会の早い段階で,私はウェブ会議以外の場面,法廷で黙って録音・録画していた場合も規律の対象に含めるべきと発言していましたので,私はまとめて議論すべきだと考えています。   その前提で,今回の提案は既存の法制度,裁判所法ないし秩序維持に関する法律の射程距離との関係での議論がされています。1点気になりますのは,裁判官が認識しているかどうかについて,5ページの記載によりますと,直接目撃又は聞知し得ないにもかかわらず禁止することの是非が問題とされていますが,それを言うと,秘密裏に録音・録画されて,その裁判が終結し判決が出された場合,控訴された,ないしは確定したという場合には,従前録音撮影等をされていたデータがインターネット等で発信されたとしても,制裁もできない気がするのです。そういう意味では,裁判所が認識にかかわらず,一定の禁止事項は定めるべきと思います。   5ページのウでは,現在の法制度との関係で整合性をとることができるかという問題提起をされていますが,インターネットを通じて入手するという新しい状況が想定されるからこそ議論しているわけですから,現行制度が想定していない場面と考えることも可能だと思いますので,私も規定は創設すべきだと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。規定の創設についての複数の意見が出たところですが,私もそれに共感しておりますので,その立場で意見を申し上げたいと思います。   ウェブを使ってオンラインで訴訟を利用することによってプライバシーの侵害が生じたり,あるいは営業秘密が漏えいされるということになりますと,やはり取り返しの付かない問題になり得ると考えております。そして,それが個別の裁判での法廷の秩序に直接影響を与えなかったり,それから,法廷の秩序等が損なわれないとしましても,ウェブ審理を安心して利用することについてのそもそもの信頼というものが損なわれて,IT化された裁判,あるいはその司法の利用にちゅうちょするということが生じてくるのではないかと思われます。   これを防止するには,やはり裁判所があらかじめ明確な根拠をもってそういった行為を禁止するということを利用者の方に伝えていただくことが必要だと考えられますけれども,現在の裁判所法の規定,それから,法廷等の秩序維持に関する法律の規定を見ますと,その構成要件といったものはこのIT化されたものを十分に想定した内容にはなっておりませんし,その構成要件で十分な制裁ができるということでもないと思われますので,やはりIT化された司法を利用されている方の信頼を保護するという観点で,規定を創設するべきではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 青木です。写真撮影や録画とかウェブ配信を認めるかどうかというのは,他方で国民の知る権利というか,表現の自由にも関わる内容になるかと思いますので,プライバシーや公正な裁判のためにそれを制限するという場合には,それを禁止する,制限する規範なく,裁判長の法廷警察権などに委ねるというのは難しいのではないかと思います。表現の自由に対する制約ということであれば,明確な規律を設ける必要があるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 今,具体的に不適切な行為はどういうものなのかといった御議論が進んできているところかと思います。私は,先ほど申し上げましたとおり,秘密裏に行われる行為に対して適切なコントロールを及ぼすためには,新たな制裁の規律を設けるべきだという考えでありますけれども,どのような行為を禁止や制裁の対象にすべきかは別途検討を要する問題だと理解しています。   ウェブ会議等による会議への参加者が手続におけるやり取りを忠実に速記をするということは,禁止や制裁の対象とすべき理由はないように理解しておりますので,その点は部会資料の考え方に共感をしているところです。他方で,放送やインターネット配信によって手続の映像や音声が手続参加者以外の者に流布されることは,これはプライバシーや営業秘密,それから訴訟手続の進行との関係で弊害が大きいので,これを禁止して刑事罰の対象とすべきという必要性は高いように思いました。   微妙であるのは,当然に手続参加者以外の者に流布されるとは限らない写真の撮影,録音・録画,その他映像又は音の複製行為ですが,これらは速記と異なって,手続の参加者が一般的に行うものではないと思いますので,その後の第三者への流布を予防するという観点からは,これらについては裁判長等の命令や措置に違反して行うなど一定の加重された要件の下で,過料の制裁の対象とするという程度が適切ではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。既に御指摘がありますように,技術の発展によりまして,録音・録画等の記録をとって,それを一般にウェブ上などで公開するという危険がかつてないほど現実的なものとなっているということは,そのとおりであるかと思われまして,そのことについての一定の対応ということは考えるべき問題だろうと考えております。   ただ,1点,この規律ですと,規則上,裁判長の許可に係らしめていて,許可がなければ録画等ができないという形になっているわけで,この規律は基本的には当事者の行為を規律するという点では必要で,かつ,何が禁止されるかということをその都度,当事者との関係で明らかにするという点で,明確なものでもあるということかと思われまして,その点,文言等について,現在の技術の水準を踏まえて何らか手を加える余地があるかどうかというようなことはあるかもしれませんけれども,一定の場合を除いて録音等,録画等が禁止されているということは,現行でもそうであり,今後もそうなのだろうと思われます。   問題は,禁止されているということを越えて,それについて違反に制裁を科すということがどうかということで,制裁がなければ規制に実効性がないのではないかという御議論も理解できるところではありますけれども,秘密裏に行われてしまうことについての問題ということですと,秘密裏に行われたものがそのまま秘密にとどまっているということであれば,制裁ということも実効的には機能し得ないだろうと思われますし,逆に,ウェブ上で一般に公開されてプライバシーが公にされたり,あるいは営業の秘密が損なわれたりといったような実害が生じていると,しかも,それが許可なくされたものであるという場合については,これは損害賠償請求等の可能性というものは現状でもあるように思われまして,逆に,そうした形でプライバシー侵害であるとか名誉侵害を認められないような場合についても一律に制裁の対象とするということを理論的にどこまで説明できるのかということについては,確かに真剣に考えなければならない点があるのかなという感じが私はしておりますので,制裁を設けるものとすることについてどのように考えるかというのが資料での問い掛けでありますが,一般的な制裁を設けるということについては慎重に考えた方がいいのではないかと私自身は考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 若干言い漏らしたことがありましたので,補足をさせていただきたいと思います。   まず,ウェブ会議等を用いない場合にも同様の規律を設けることの適否が検討事項として(注)で挙げられているかと思います。この点につきましては,先ほど阿多委員からも御意見があったかと思いますけれども,私もウェブ会議等を用いない場合にも,用いる場合と同様の規律を設けることが適切ではないかと考えております。   少し詳しく申し上げますと,法廷や準備手続室のような裁判所の施設においては,不適切な行為が秘密裏に行われるということはなかなか難しいので,裁判所法や法廷等の秩序維持に関する法律の定めだけでも大分カバーできるかとも思います。しかしながら,例えば法廷にPCなどの端末を当事者が持ち込んで,裁判官がその画面を見ることができない場所に着座していることを利用して,無断でその期日の様子をインターネット配信するといった事態も考えられますので,そう考えますと規律の対象にすることは十分あり得るのではないかと思いました。   それから,テーマは異なりますけれども,今回の規律は,対象とする行為を期日において行われる行為としておりますけれども,書面による準備手続における電話による協議や,期日を開かずに,かつウェブ会議の方法によって行われる審尋にも当てはまるように思いますので,そうした期日外の手続についても対応すべきではないかと考えております。   それから,これは恐らく法制上の問題なのかとも思うのですけれども,進行協議期日にこの制裁なり禁止なりの規律を及ぼすことができるのかというのを若干気にしております。と申しますのは,進行協議期日は規則でのみ定められていて,法律レベルには根拠規定が明確なものはないように思います。そうしますと,今回提案されている制裁の規律が法律において設けられたとしましても,法律が予定していない,規則において初めて現れる期日に法律の制裁の規定を及ぼすことができるのだろうか,これは,言い換えますと,法律が想定していない制裁を規則レベルで及ぼすということにもなりかねないようにも思われましたので,法制上の問題がないのだろうかという疑問を持ちました。仮にこの点に問題がある,あるいは疑義があるということであれば,進行協議期日も法律事項に格上げする必要があるのではないかと思った次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。私も,これまでの議論にありましたように,この規定は必要だと思っております。ただ,どのようにかして録音・録画をさせないようにするということは難しいのではないかと思います。やりたい方がやる方法はあるのではないかと思います。先ほどから御意見が出ているように,それがどのような形で使われるか,それによってどんな社会的影響が及ぼされるのかということに対して,制裁が必要なのではないかと思います。   また,場合によっては,録音・録画が必要な場合もあるのではないかと思います。例えば,当事者が多数いる場合,その多数が裁判所のシステムにアクセスできない場合,又は記憶,記録として当事者がそれを後で必要とする場合,そのようなときには,この「裁判長の許可を得ないで」という一文がございますので,可能と理解しています。ただ,現状でも許可があればできるということではありますが,ほとんど許可がされていないという現実があると聞いています。   例えばですが,裁判所が録音・録画をして,当事者が必要な場合にそれを貸し与えるとかの方法をとったらどうでしょうか。その録音・録画がインターネット等に出た場合に,誰がどのように管理をしていたものかが分かるので,その影響からどういう制裁を加えるかということもはっきりします。この録音・録画を全面的に禁止するというのではなく,許可を得たらいいというのでもなく,裁判所は記録のために必ず録音・録画をしていて,そのものは貸し出してもらえる等の別のルールを作ってもよろしいのではないかと考えています。   障害がある方が記録,確認等のためにとっておきたい場合もあると思いますし,私自身も自分の発言を録音して後で確認したいということは,今のこの会議の場でもございます。そういったことも含めて,現実的な案を設けること,社会的大きな影響があるようなことに対しては,それをさせないような制裁を設けること,これらはいずれも必要だと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 ありがとうございます。様々いただきまして,私たちもまた改めていろいろ考えていきたいと思っています。   少しお話しさせていただきますと,恐らく総論的な話として,今,民事訴訟規則の方で一定の行為を禁止といいますか,許可制にしていることについて,そういったものについての行為を拡充するといいますか,見直していくということが必要ではないかということ自体,それは私もそうなのですけれども,皆さんの御意見はそうなのだろうと伺っておりました。   一方で,今,裁判所法ですとか秩序法に制裁の規定があり,直接的には民事訴訟規則には制裁がないわけでございますが,そういった関係をどうやって考えていくのかは慎重に考えないといけないとは私も,部会資料で書いているとおりですが,思っているところでございます。   そこを付言させていただきますと,先ほどから御議論がありましたが,どういった場合に制裁を科すべきなのかという点について,恐らく今の法制は,正に裁判に影響がある,秩序等も含めて,影響があるケースに絞って制裁を科すということを含意しているのに対し,今頂いている意見の多くは,そこに限らずプライバシーの問題についても制裁の対象とすべきではないかという新たな視点を加えているものだろうと認識しておりました。   更に言えば,一定の禁止行為について違反すれば,一律に制裁を課すということが,中間試案も含めて,出ていたところでございますが,そういった新たな観点からの制裁をなぜ裁判所のケースだけ掲げていくのか,それは,しかも秩序と関係なく,していくのかについて,どういった点で説明していくのか,非常に難しい問題ではないかと思っています。   すなわち,プライバシーの侵害等が問題になるケースは別に裁判に限らず起こるわけでございまして,そういったケースについては民法であり,あるいは刑法,そういったものがカバーしているのに対し,この裁判所の営みに関して,裁判の秩序と関係がないプライバシー問題だけを取り出して一律に科すということについて本当に正当化できるのかは,また別途検討する必要があるのかなと思っているところでございます。   もちろん我々としても,一律に科さないと言っているわけでは当然ございませんで,既存の法律でカバーできるものについてはカバーしていくということもあるのだと思いますが,既存の法律と関係がないものについて一律に科すということについて,少なくとも民事訴訟法でそういったことができるのかという問題は,法制上の問題を含めて,あるのだろうと思っているところでございます。   そういった意味で,なかなか,御意見いただいたところを踏まえながら私たちは考えていかないといけないのですが,どういった形でその制裁を別途設けることについて正当化できるのか,本当にできるのかについては,また慎重な検討が必要なのかなと思っているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 先ほど脇村幹事から,保護法益をどのように整理するのかとの話の中で,プライバシーの運用を指摘されました。さらには,企業秘密の保護等も指摘されていたのですが,私が発言するときは意図的にそれらの言葉は使いませんでした。それらを本当に保護法益に入れる必要があるのかは検討する必要があります。むしろ,裁判制度に対する信頼という,抽象化した利益で考えるべきです。当事者の私的な利益であれば損害賠償という対応も可能です。今回の提案内容では,裁判官が認識しているかどうかだけで結論が変わること自体が私は問題だと思っており,裁判制度に対する信頼を確保する,ルールに基づいて裁判をするという場面において,裁判所の許可なく法廷の状況が外部に流出する事態になると,当事者としては,訴訟活動をするに際し萎縮的な効果が生じることになりかねません。その点等をお考えいただいて,何を守ろうとするのかは整理する必要があると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私も今の点について付言させていただきたいと思います。   先ほど,民訴法に別途,新たな規律を設ける必要性があると考えると申し上げましたけれども,そのときの理由として,私はプライバシーや営業秘密の漏えいには言及いたしましたが,それにとどまらずに,口頭弁論の公開を法廷での傍聴でのみ認めている趣旨や,非公開手続における意見交換のしやすさが損なわれることなどで訴訟手続の充実,円滑な進行の妨げになるといった,より民事訴訟手続の進行への悪影響という観点も念頭に置いて発言をしていたものです。ですので,申し上げたかった保護法益というのが,プライバシーや営業秘密だけの話をしているわけではなくて,訴訟制度が成り立っていく上で必要なことではないかという問題意識を持っているということを強調させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。また意見を頂きまして,考えさせていただきたいと思っています。おっしゃるとおり,抽象的なそういう裁判所に対する信頼をどう考えていくのかというのは従前から問題になっているところかと思います。恐らくここの問題は,そういった問題自体を否定するつもりは私もないのですが,禁止行為ということを定めることのほかに,別途制裁を科すということについて,そこまで認められるかどうかについてというところなのかなと思っておりまして,そういった問題について,このITとの関係のみで考えていいのか,正に,部会資料に書かせていただきましたけれども,恐らく今の問題というのは現在でも起こっている問題といいますか,そういった意味で,ITだけで検討していくのではなくて,リアルの法廷も含めた,そういった点についてどう考えていくのかという点で,なかなか難しい問題なのかなと思っているところでございます。そういった意味で,行為禁止の在り方として,具体的にどこまで制裁を科すことができるのかについて,また頂いた意見を踏まえながら,私たちも考えていきたいと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   おおむねこの論点はよろしいでしょうか。   それでは,なかなか難しい,事務当局としても苦慮といいますか,悩んでおられるということでしたが,引き続き検討いただくということにしたいと思います。   続きまして,今度は資料6ページの「3 口頭弁論の公開に関する規律の維持」です。この点について,事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。本文は中間試案の内容から実質的な変更はございません。 ○山本(和)部会長 いかがでしょうか。ずっとこういう形でこれまで資料が作成されてきたものかと思いますが,この段階で何か御意見があればと思いますけれども,よろしいでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。基本的には賛成なのですけれども,社会的関心が高い事件で,傍聴に行ったけれども,関心を持っている方が非常に多くて,抽せんに漏れて傍聴できず,後で,入れた方から話を聞くというような案件が多くあるということも聞いております。そういった場合に,当事者の同意を得て中継する等の方法も考えられるのではないでしょうか。今後,その点も検討していただきたいと要望いたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,御意見頂戴いたしましたので,今の御意見を踏まえて検討を更に進めていただければと思います。   よろしければ,次に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。資料7ページ「4 準備書面等の提出の促し」です。この点につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。本文(1)では,中間試案で示された内容に加え,準備書面の提出と同様に,証拠の申出につきましても,裁定期間を経過した場合の理由説明の義務を設ける考え方を示しております。本文(2)では,裁定期間の経過について相当の理由がないときは,当事者の意見を聴いて相当の期間を定め,攻撃防御方法の提出命令を発することができ,この命令に反して提出された攻撃防御方法につきましては,訴訟を遅延させることとなると認めるときは却下の決定をしなければならないものとするとの規律を設けることを御提案しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点,(1),(2)に一応分かれていますが,関連しますので,どちらでも結構ですので,御意見あるいは御質問等をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。 ○日下部委員 この点について,皆さん御意見をお持ちなのだろうと思いますが,訴訟代理人をよく務めている者の立場もあって,最初に意見を申し上げたいと思います。   まず,(1)アの書記官による提出の促しには賛成をしております。しかし,イについてですけれども,例えば期間末日の12時を若干経過した時点で準備書面の提出等がなされた場合なども考えますと,提出等の遅れが実質的に審理の進行に影響を与えないこともありますので,訓示規定とはいっても,理由説明を常にしなければならないと規律するまでの必要はないように思います。具体的には,裁判所から説明を求められた場合に限れば十分ではないかと思いました。   なお,このような規律が実際に仮に加わったということであれば,裁判所内での合議のスケジュールへの影響も含めて,実質的に審理の進行に影響が生じたということであれば,裁判所からの説明要求は威厳を持って積極的になされるべきだろうと考えています。   他方,(2)の提出命令と制裁についてですが,これらについては反対であります。理由として2点申し上げたいと思います。   一つは,審理の計画が定められている場合の攻撃防御方法の却下についての特則である現行法157条の2と不均衡と思われたことです。この157条の2ですと,審理の計画が定められた上で特定の事項についての攻撃防御方法の提出期間が定められた場合に,その後に提出された攻撃防御方法の却下については,審理計画に従った手続の進行に著しい支障を生ずるおそれがあるときに却下が可能とされているものでありまして,かつ,提出の遅れに相当の理由があると疎明されたら却下できないとなっています。ところが,今回の御提案ですと,審理の計画が定められていない場合であっても,提出期間の徒過を受けて提出命令がなされれば,それに違反して後に提出された攻撃防御方法は,訴訟の遅滞が認められる限り却下が必要であるということになっています。この二つを比較してみますと,確かに提出命令の存否という点では異なりますけれども,審理の計画すら定められずに進行してきた手続において,提出遅れの理由を問わずに却下を必要的とするという今回の提案というのは,非常に不均衡であると思いました。   二つ目は,より本質的なのですが,今回の御提案ですと,その運用によっては適正手続の保障にもとる事態をもたらしかねないと思いました。特定事項に関する攻撃防御方法を一定の期間内に提出せよという命令に違反して後に提出された攻撃防御方法の却下を必要的としますと,そのことは特定事項に関する攻撃防御方法を出し尽くすべき期限を裁判所が設定することを意味すると思います。しかし,元々の提出期間の設定を定める法162条は,そこまで強度の意味を持っていないと思いますので,今回提案されている(2)アの提出命令とイの必要的却下の定めというのは,特定の事項について,後に発見,発覚した攻撃防御方法を訴訟資料とすることを不可能にするという点で,非常にドラスティックな影響をもたらすように思います。提出命令に至る過程を考慮しても,そこまでドラスティックな影響をもたらす制度ということですと,手続保障上の問題があるように思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 弁護士委員が続けてこの論点について発言するのはいかがかと思いますが,私も,重ならないように発言したいと思います。(2)については日下部委員の指摘のとおりと思います。   (1)について,アは分かるのですが,イの書きぶりは,アの期間の経過後に当該準備書面の提出又は当該証拠の申出をする当事者はとあり,期間経過という1点をもって説明義務を負う立て付けになっているのですが,アの方は,期間経過後において裁判長は書記官等に促しをさせることができると記載されています。そうしますと,イの規定ぶりから見て,裁判長による書記官を通じての促しすらない状態において,当事者は徒過したことの説明義務を負うということになりますが,促しすらない状態で,裁判所がその必要も感じていない状況で,当事者が説明義務を負うというのはいかがなものかと思います。説明にも記載がありますが,イの場面は,裁判所等が説明を求める場合とは,典型的には促しを書記官を通じて求めたけれども当事者から何ら対応がない場面を想定した上での説明義務を負うという形にするのが規定ぶりから収まりが良いのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。(2)については御意見賜りまして,(1)の点についてなのですが,部会資料の説明をさせていただきますと,私たちは素朴に,こだわる意見ではないですけれども,期間を一応約束といいますか,していて,遅れる以上,別に促しがなくても出すのは当然ではないかという気がしていまして,遅れているのだったら遅れている理由ぐらい言うのは当然ではないかという意見があるのかなと思っていました。促しを裁判所がするのはある意味,当たり前なのですけれども,それは必要性があるかどうかというか,そもそも決めた以上は守るのが普通なのだから,促しはある意味,権限規定といいますか,できるということで,しないから出さなくていいというわけではないのではないのかというのは素朴に,聞いていて思いましたので,そういった意味で,裁判所が促すのを待てばいいのだというのは若干,個人的には違和感といいますか,何といいますか,決めたのだから出すので,別に,理由があればもちろん出さないというのはあるとは思うのですけれども,何か理由ぐらい言ってもいいのではないか,それは裁判所が求めないと理由が言えないぐらいだったら,出せばいいのではないかという気も何となくしたのですが,それ以上強い何かあるわけではないのですけれども,部会資料としてはそういう意味で,書きぶりといいますか,多分そういう素朴な感覚で書かせていただいているのかなと思っております。   あと,イについては,求めがあったときだけやるということは,逆に言うと,出すときは普通に出せばいいということになりますので,守るということをきちんとするのであれば,きちんと理由を言わないといけないのだろうということを思いながらやるのと,言われたときに出せばいいのだというのは,大分ニュアンスが違うような気もして,全く一緒なのかなというのも少しありまして,何といいますか,実務上は裁判所の促しがあれば出すというのもあれなんですが,どちらかというと促す前に出していただく方向の議論をしていたのかなと思ったので,何となく感想めいたことを話させていただきました。すみません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○服部委員 服部でございます。まず,今,脇村幹事が言われたように,促しがある前に当然出すべきでしょうというのは,実務的におっしゃるとおりですが,弁護士委員としては,事案によっては最大努力しても期間を徒過してしまうということもあり得るということを,若干弁解がましいかもしれないですけれども,申し上げたいと思います。もちろん努力するべきは当然であると思っております。   先ほど日下部委員から言われた,(1)イの点,裁判所からの説明を求められた場合でよいのではないかという点については,私も同感でございます。  部会資料9ページの4行目の括弧の中に,他方の当事者からの説明というのも一つの案としては出てまいりますけれども,これについて私は反対でございます。元々が審理の充実で,遅延しないようにというところで,期日間の準備を促進して迅速かつ充実した争点整理を行うということが元々の162条の趣旨であるということからしますと,それについての遅延の理由の説明を求めるのを相手方の当事者の意向に係らしめるというのは,いささか抵抗がございますし,そもそも原告,被告という対立構造にある民事訴訟手続で,一方当事者の主張や立証準備に関わる状況についての理由の説明を求めるかどうかということを,他方当事者の意向に係らしめるということにも重大な懸念があると思っております。   (2)につきましては,私も日下部委員と同様に反対の意見でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 (2)について,弁護士委員から消極の方向の御意見がいろいろ出ておりまして,裁判所が命じて,それを徒過すると必ず却下だと,そういう規律について厳しすぎるという御意見もあったかと思います。私は,ここまで明確に義務的な却下という規律でなくてもいいとは思いますけれども,何らかのそういう,期間制限をきちんと遵守しないとサンクションがあるという規律は,やはり置いていいのではないかと思っております。その意味では,162条とどう組み合わせるかという問題もあるとは思いますけれども,更に裁判所が命じて,提出がされない場合に,少なくとも157条の2までの規律にはするとか,あるいは162条から直接157条の2の規律に持って行くとか,そういったような,ほかの方法も含めて,更に検討する価値はあるのではないかと思います。   以前から別の委員からもお話があったと思いますけれども,手続についての提出期間についての規律というのが日本の場合,緩すぎるとも思われるところでありまして,157条も余り使われていないと,そういう裁判所の方の問題もあるとは思うのですけれども,そういった現状を少しでも変える必要があるのではないかと考えている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 先ほど来お話に出ている157条の2については,私は立案に関わっており,そのときに自分が何を言ったか,何を言われたかもきっちり覚えていますので,御紹介したいと思います。   私は157条の2については,必要的却下とすべきであるという意見を述べました。それは,そうしないと結局,できる規定では期間を遵守するインセンティブを与えることはできないということです。それから,今,笠井委員からお話のあった,157条1項の攻撃防御方法の却下の本体規定の運用状況が芳しくないと,芳しくないというのは外在的に見てなのですが,ということも加味すると,結局これは空文になってしまうのではないかというおそれがあったからです。ただ,それに対しては弁護士委員,幹事も反対されましたし,裁判所の方もできるだけ潤沢な資料に基づいて裁判したいという感覚をお持ちの方が多かったようで,やはり反対をされたということで,できる規定になってしまったわけです。   しかし,審理計画自体がほとんどワークしていないので,どうなのかという,157条の2をどうかという点については,余り議論してもせんないところですが,やはりこの場合,2段階にきちんとしているわけですよね。まず,1回目,出せと言って出なかったので,もう一度期間を決めるということですので,これでもなおできる規定でしか対応できないというのはいかにも,裁判のスケジューリングというのは一体どうなるのかという点について,私は余り正当化できないのではないか,やはり却下は必要的であるとすべきだという気持ちは,157条の2の立案当時と変わりありません。   ただ,日下部委員がおっしゃった点も私は考慮すべきだろうと思います。期間経過後に発見した攻撃防御方法について一律却下というのはおかしいのではないかと,それは正におっしゃるとおりだろうと思いますので,(2)イに157条の2のただし書のような救済の条項を入れるということでいかがなのかなという感じがしております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。(2)のことに対して,反対意見を述べさせていただきます。   そもそも当初の提出期限の設定に当事者の同意が要らないのが現状だそうでございまして,当事者の事情を無視して期限が定められるおそれがあります。そして,消費者事件の場合は,事業者と消費者が当事者として対する場合が多いのですけれども,裁判を職務として対応する事業者と,自分のなりわいのほかにこの裁判を戦う消費者では,消費者の方はその時間を生み出すことが困難な場合もあり,最大限努力をしても期限を守ることが難しい場合もございます。期限を守るために複数の代理人を立てたくとも資金力が乏しいということもございます。そのような事情を鑑みて期限を決めていただくことがそもそも必要なのです。無駄に時間を延ばすわけではなく,最大限の努力をしても難しいという場合がございますので,この提出命令及び制裁に対しては反対とさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 藤野委員から現在の準備書面の提出の在り方についてのお話が出たので,実際どうなっているかという話をしたいと思いますけれども,今現在,裁判所が一方的に準備書面の提出期限を定めるということはなくて,あらかじめ提出する側に意見を聴いて,その準備状況を踏まえた上で提出期限が定められております。定められた期日に関しても,基本的には,個人の,むしろ本人の方は,その定められた期日を守られている傾向の方が強いのではないかと思っております。そのように,少なくとも一方的に裁判所が提出期限を決めるということはありませんので,その意味では現状認識が少し違っているかもしれません。   せっかくなので,ついでですけれども,私は個人的には,皆さんがおっしゃられるように,準備書面の提出が,定められた期日に遅れたら,常識的に,なぜ遅れたかということを説明すべきだということは当然であり,社会人としても当然そういうことが必要だろうと思いますけれども,今現在,弁護士の人数も以前に比べて大幅に増えておりますので,弁護士もいろいろな考え方の人がおりまして,必ずしも常識的に行動される方ばかりでもないと思います。何らかの形で,定められた,あるいは提出を約束したといってもおかしくはないと思うのですけれども,そういう形で一定の期日までに提出するということを約束した以上は,それを守れなかった場合には一言あってしかるべきではないかと思います。それについて,法律に書かれていなければ分からないということであれば,できれば民事訴訟法の中で,明確にその点を定めておくというのは意味があるのではないかと思っております。   ちなみに,制裁の点,(2)のところですけれども,これまでも既にいろいろなところで議論されているところですが,こういう却下するというような形の提案になりますと,代理人の都合でもし準備書面の提出が遅れたという場合に,それが本人の不利益に帰結するということで,訴訟に直接影響するというようなものになりますので,そのような制裁でない方が望ましいという議論もなされております。(2)のような提案に関しては,個人的にも,反対ということになります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。私は基本的には(1)の提案については賛成したいと思います。イの規律,説明につきまして,常にこれを必要とするということが,ややしゃくし定規ではないかという発言もあったかと思いますけれども,当事者の求めに委ねるという場合には,これは求めることができるという形に当然なるのだろうと思いますけれども,裁判所に対して説明するということで考えますと,裁判所としては期限に出てこなかった場合に,なぜ出てこなかったのかということを聞くことができるというのは,これは規定がなくても当然のことではないかとも思われまして,あえて裁判所に対して説明するという規定を設けるということであれば,これは一般的にそうした説明義務があるという形の規定を設けるということでないと,余り規定を設ける意味もないのではないかという感じがいたします。ただ,どんな軽微な場合でも必ずいちいち説明させるのかということについては,場合によってはこちらは例外を設けると,ただし裁判所が必要でないと認めた場合にはこの限りでないといったような規律を加えるということは,あるいはあり得るのかもしれないと考えております。   それから,(2)につきまして,資料で記載されている提案ですと,特にイの部分が,遅滞させることとなると認めるときは必ず却下ということになっておりまして,これはかなり,従来の規律との比較で申しましても,あるいは実質的に日下部委員の御指摘のあったような点に鑑みましても,例外なく却下というのはやや過度な規律ではないかと思われます。山本克己委員が言われましたように,必要的却下という規律を設ける意味は,私自身はあるのではないかと考えておりますけれども,一定の例外をただし書で設けるということが必要ではないかと考える次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。おおむね御意見は出たと考えてよろしいでしょうか。   それでは,(1)と(2)で記載ぶりが違っているところで,(1)はどうかと書かれていて,(2)はどのように考えるかとなっているわけですが,(1)の部分について,特にイの点については,弁護士委員の一部からは,9ページに記載されているような,裁判所からの説明を求められた際に限ってこの説明義務が発生するという御意見があったのに対して,それ以外の委員,幹事等からは原案を支持すると,あるいは若干の例外を設けて例外を支持するという御意見が示されたかと思います。   他方,(2)については,これも特にイの点については,このままの規定について支持する御意見は少なかったように思われまして,何らかのただし書を設けるという,例外的な場合を設けるべきだという御意見,あるいは,そもそもこのような規律には反対するというような御意見も示されたかと思います。   ということですが,今日示された御意見を踏まえて,引き続きこれらについては事務局の方で検討していただくということになるかと思います。   それでは,よろしければ,ここで若干の休憩を取りたいと思います。15時30分,3時半に再開したいと思いますので,それまで休憩としたいと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,審議を再開したいと思います。   引き続きまして,部会資料10ページ,「第2 新たな訴訟手続」について御検討をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から資料の説明をお願いします。 ○波多野関係官 波多野でございます。資料10ページ,「第2 新たな訴訟手続」について説明いたします。   これまでの部会及び意見募集では,終局までの審理期間についての当事者の予測可能性を高めるとともに,裁判が適正迅速に進行すること自体について反対される御意見はなく,特に企業間において制度を設けることによって,一定の期間で裁判所の公的な判断が出ることを予測することができることについてニーズがあるというような御意見もございますことから,制度を設けることにつきまして引き続き検討することが考えられるところでございます。   中間試案では,制度を設ける甲案及び乙案を御提示し,設けないとする丙案を提示していたところでございますけれども,これまでの部会におきまして,制度を設けるとしましても,甲案及び乙案のいずれかの案にこだわることなく,その要素を適切に組み合わせるべきであるとの御意見も頂いたところでございまして,本部会資料では甲案,乙案及び丙案の提示をしておりません。   そこで,引き続き検討するに当たっての視点を14ページの「検討」に記載しているところでございます。ここでは当事者双方に明確な同意がある場合に手続を開始するということや,当事者双方が十分な訴訟活動をするために,証拠自体の範囲に限定を課すのではなく,当事者の合意に基づいて証拠申出や証拠調べの時期を定めることとすることが考えられ,そのような合意を前提として,審理を終えた時期から短期間に裁判所が判決を出すというようなことを制度的に確保することなどについて検討することが考えられるという視点を示しているところでございます。   また,当事者双方に明確な合意を前提とするとしましても,消費者や労働者が被告になることに対する御懸念を考慮しますと,中間試案の(注)で示しましたように,消費者や労働者に関係する訴訟を除外するということも考えられるという視点を示しているところでございます。   説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして御意見を頂戴できればと思います。どなたからでも結構ですので,お願いいたします。いかがでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。今回は甲案,乙案,丙案ではなく,記載の仕方を変えていただいておりますが,この点を含め,私どもも十分読み込みさせていただきました。6か月という期間限定の新たな訴訟手続は,当事者が主張を立証する権利を制限することになり得,十分な審理ができない訴訟制度となる可能性があります。また,判決に不服な場合,通常手続に移行できるとしても,同じ裁判官が行う裁判であれば,自らが一度出した判決を覆すことは難しいかと予想されます。まだまだ懸念材料がある,現時点での新たな訴訟制度を設けることには無理があると私どもは言わざるを得ません。労働者問題や消費者問題は除くという案も頂いてはおりますが,これは全体をもう少し時間を掛けて審議すべき内容で,本IT化部会において審議することに無理があるのではないかと考えております。よって,この案には賛成できない立場でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 従前の甲案,乙案,さらには丙案とは違う形の整理で準備提案されています。ただ,従前,必要な視点ではないかとして指摘した点への言及が漏れており,さらには判決等について従前とは違った提案がありますので,その点を指摘したいと思います。   まず,積極要件で,当事者双方に明確な同意がある場合を開始要件とされた点は理解できますが,一旦新しい訴訟手続を選択した場合に,最後まで審理が継続することが前提での提案と思います。その上で,(4)の審理の終結になるのでしょうか。その後に(2)で判決が出された後に異議で通常手続に移行し不服申立てとして,控訴ではなくて異議という提案があるかと思います。しかし,必ず審理を終結し判決まで行かないといけないのか,途中下車という言葉が適切かどうかはわかりませんが,当初双方当事者が合意してこの手続を選択したとしても,何らかの事情,例えば証人等が病気で出頭できなくなったため期間制限のある証拠調べでは証人尋問もできない状況になったときに,そのまま判決をもらわないといけないのか,後発的な事情で十分な審理をしてもらえないこともあり得るわけで,そういう意味では,途中でもこの手続から下りるという方法は不可欠ではないかと思います。   さらには,(4)では,判決内容についても,期間との関係で,簡単な理由での判決でよいという提案がされていますが,裁判において重要なのは判決に対する信頼だと思います。ラフな判決,ラフといってしまいますが,ラフな判決では裁判に対する信頼,本当にその結論で納得してもらえるのかという信頼が確保できないと思います。従前からこの手続に対する批判としてラフジャスティスという言葉が使われていました。それが適切かどうかは分かりませんが,判決に対する信頼を確保するためには,裁判所が説得力ある判決を準備し言い渡すことが必要だと思います。   そういう意味で,今回の整理では,少なくともこの2点で疑問があると言わざるを得ないと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 この新たな訴訟手続については,随分長きにわたって議論されてきたところで,今回,具体的な提案がなくなって,制度の趣旨が一般的に示される状態に戻っていますので,少し意見を述べづらいなと感じています。その上で,今現在,私自身が適切であると考えている制度について,ごく簡単に要点だけ申し上げますと,以下のようなものになります。   開始要件としては当事者双方の申出。手続保障の観点から,各当事者に訴訟代理人が付いていることを要件とする。ここは特に御異論はあるとは思います。それから,審理の初期に申出があることを想定するけれども,制度上は開始時期は問わない。当事者双方と裁判所が協議をして審理計画を立てる。審理計画は当事者双方と裁判所が協議して変更することができる。審理期間は具体的事件に応じて協議により定める。提出できる証拠の種別は制限しない。当事者の一方の申出又は裁判所の判断により通常の手続に戻る。ここは取り分け重要で,裁判所の判断により戻るというのは,当然ではありますけれども,審理が判断を下す,判決を下すのに熟していないと判断されるときには,当然その裁判所の判断で,必要があれば通常の手続に戻ることが必須と考えています。不服申立ては控訴。消費者や労働者が当事者となる事件類型を対象から除外するけれども,それ以外には適用のある事件類型を限定しない,というものです。   先ほど藤野委員の方から,ラフジャスティスであるなどという御懸念が示されたところですけれども,審理期間の定めを置いたからといって,裁判所が審理に熟していないけれども時間切れだから判決ねというようなことは,元々想定されていなかったと思います。飽くまで判決をするのは,審理が十分になされて判決をするのに熟したと判断されたときのことであって,それに至っていないときには裁判所の判断で通常の手続に戻るということが当初から一貫して想定されていたと思いますので,ラフジャスティスになるとか,期間の制限があるから十分な主張立証ができないというのが本当に当たっている懸念なのだろうかというのは疑問を持っています。取り分け,各当事者に通常の手続に戻る権限があれば,十分な審理が尽くされていないと考えた当事者の方では,通常の手続に戻って不足していた証拠調べの申出をするということも妨げられないので,そこも併せて考慮していただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○増見委員 従前より企業の立場からは,期限の定まった訴訟制度について,予測可能性が立つことに大きな価値があると申し上げています。今までの議論をお聞きして,新しい訴訟制度に適応した事件類型の具体的なイメージが共有されておらず,そのため懸念が高まっていると考えております。   私は米国における略式判決(サマリー・ジャッジメント)という制度の類型を連想し,新たな訴訟手続のメリットを考えておりました。米国のサマリー・ジャッジメントは,ディスカバリーの後に証拠調べがある程度された段階で,事実関係には争いがなく,法律の適用だけが求められているような場合に,当事者の一方が申し立てれば,裁判所判断により略式判決を出す制度となっています。当事者の一方が望めば元の手続に戻ることも可能であるため,特に法人同士,また事実関係に争いがなく争点が少ない事例に向いていると考えます。論点が少ない事案に関して迅速に結論が出るという点で非常に利便性が高く,特許訴訟等の場面で非常によく使われている制度と理解をしています。   そのため,新たな訴訟手続は,一定の範囲で活用される分には非常に効果があると考えております。どのような事案に適応しているかのイメージが明確になれば,コンセンサスを得やすくなると思っております。   具体的な案として示されている,甲案,乙案の検討に当たりましては,企業の立場として,当事者双方の明示的な合意を必須とせず,簡便に手続を開始できるようにすべきと申し上げていました。しかし,より安心できる制度とするために,当事者双方が合意した場合にのみこの手続が始められることで問題ないと考えております。また,乙案で示されていた証拠を限定しないことについては,元々そうすべきと意見しておりました。しかし,期限を設けず,合意で延長が可能になるという意見につきましては,6か月で終わる前提を引き続き存置すべきと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私も,従前から述べてきたことと同じことになりますけれども,当事者の合意を基礎にこういう6か月といった期限を区切って迅速な審理を進めるという特別な手続を訴訟の手続として設けること,法律がそういう選択肢を当事者に示すということは,手続の選択の幅を広げるという意味で,意味があると思っておりますので,こういう方向で規律を設けることについて賛成でございます。甲案,乙案とは今,なっていないのですけれども,基本的には乙案のような方向で,当事者が双方の共同の申立てでこういう手続を選ぶといったような方向がいいかなと思っておりまして,あとは,いろいろな定めの仕方というのはいろいろとあるとは思いますけれども,そういった方向で考えていただければと思っております。   なお,不服申立て方法をもし異議にするのであれば,先ほど阿多委員もおっしゃったかと思うのですけれども,終局判決までやらなければいけないという話になるのはおかしいかなというのは,これは研究会の頃からそう思っていたところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○小澤委員 本人訴訟の当事者の相談を受けておりますと,やはり判決までの期間の予測可能性が付かないことへの不安を持たれる方が多くいらっしゃいます。長期化すると,場合によっては年単位となる訴訟もあるという実情をお話ししますと,そこで訴訟をすることを避けるということをお決めになるという方も一定数いらっしゃいます。こういった相談を受ける立場の者としては,新たな訴訟手続が当事者の合意を基礎とするものであれば,新たな訴訟手続による訴えを提起し,被告が同意した段階で,当事者双方にとって判決までの期間の予測可能性が立つという制度になりますので,事業者間の紛争のみならず,本人訴訟の当事者の中にも利用を希望する当事者は相当数いるのではないかという印象を改めて持っております。   民事訴訟制度の改正を議論する機会というのはそうそう訪れるものではないと思います。ここで新たな訴訟手続を設けないという選択をしてしまうことは,将来にわたって国民の選択肢を狭めてしまうことになると思いますので,事務当局には大変御苦労を掛けることになりますが,要綱案をまとめるまでに,審理期間の見通しが立つことを希望する当事者にとって有益となる制度の具体案をお示しいただければと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐々木委員 佐々木です。私も今まで企業の立場でこの制度のニーズについて発言をしてきたのですけれども,その中で想定していたものの一つとしては,やはり訴訟に至る前に相当程度の交渉があって,ある程度もう事実関係等には争いがないのですけれども,幾つか僅かな争点が残っている場合ですとか,法律の適用について合意できないような場合というのを考えておりました。ですので,そういった想定していた実例を考えますと,この新たな訴訟手続が当事者双方の申立てによるですとか,合意に基づくということであっても何ら支障はないのかなと考えております。当事者双方の合意に基づいてこの手続に入るということであれば,当事者のどちらかが,この手続では続けられないというようなことになれば,先ほど阿多委員がおっしゃったように,手続の途中でこの手続から下りられるという制度を設けてもいいのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○井村委員 繰り返しになりますが,やはりユーザーの立場からすれば,裁判というのは長いという印象があります。そのような中で,迅速化を図るためにこのような規律を設けることに関して,甲案にしろ,乙案にしろ,反対をするものではありません。一方で,個別労働紛争については,労働審判員制度で迅速化が既に図られており,非常に満足度も高く,しっかりとした結果も出されていますので,連合としても非常に評価しているという制度ですので,本件については是非除外としていただきたい,ということを述べさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○長谷部委員 ただいま,こういった迅速な手続についてのニーズが企業あるいは一般事件でもあるというようなお話も出ましたし,判決までの時間について予測可能性を高める必要があるということも,一般論としてはもっともなことなのだろうと思います。もっとも,全ての事件について6か月でするというのは相当大変なことで,先ほど佐々木委員から御指摘がありましたけれども,既に企業間で交渉が進んでいて,あと争点が幾つかあって,それを解決できれば何とか終局まで進められるというようなものであるとか,あるいは,増見委員がおっしゃいましたサマリー・ジャッジメント,これでとても具体的なイメージが湧いたのですけれども,争点がそれほど多くなくて,文書の証拠がある程度出ているという状況であれば,6か月ぐらいで終結ということも可能なのかもしれないのですが,全ての事件に当てはまるものではないと思います。それでも,そういうニーズがある事件についてはこういった選択肢を設けておくと,そういう意味であれば,設けることに反対するものではありません。   ただ,設けるとすれば,幾ら争点が少ない訴訟であっても,6か月以内で終結するというのは,それぞれの当事者も,また裁判所も本気になってといいますか,真剣になって,6か月以内で終えるのだと,そのために頑張るのだと,そういう方向に持って行っていただかないと,そうそう簡単に6か月では終わらないだろうと思うのであります。もちろん途中で,やはり争点が更に増えてきてしまったとか,あるいはいろいろな事情の変化があって,この手続が無理だということであれば,それを下りるという選択肢を設けておくことには賛成なのですけれども,この手続を進めていく以上は,当事者双方が手続の開始についてきちんと合意する必要がある。一方が消極的な合意ではやはり難しいのではないかと思いますので,両方の合意をとって,かつ,先ほどの準備書面の話とも関連しますが,書類の提出期間も厳格に守るのだと,そういう覚悟でやっていただくのであれば,こういう手続を作ってもよろしいのかなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○門田委員 今般のIT化の法改正の機会に,ITツールの特性もいかした新たな訴訟手続を導入して,その利用を希望する当事者のニーズにこたえられるようにすべきであるということは,もう再々述べてきたところでして,全国の裁判所からも甲案に賛成する意見が多かったところです。もっとも具体的な制度設計につきましては,中間試案の甲案,乙案にこだわるものではなく,望ましい制度の在り方について柔軟に議論していきたいと思っております。   この際,これから検討するに当たって,私なりに重要と考えている点を2点ほど申し上げておきたいと思います。まず第1に,審理期間についての当事者の予測可能性を高めるという,この所期の目的を遂げるためには,具体的な審理期間の上限をリジッドな形で法律で明示する必要があると考えており,これが審理期間の目安といった程度の意味合いしか持たないというものであると,なかなか合意ができないといった形で,実際には機能しないのではないかという危惧を持っているところです。   それから,2点目として,これは先ほど長谷部委員がおっしゃったところとも重なるように思いますが,法律で定める審理期間内で審理を終えるためには,裁判所だけがその責任を背負うというのではなく,逆に裁判所が当事者のみにその負担を課すというのでもなくて,法定の期間内で適切な形で必要十分な審理を終えて,裁判所が判断を示すことができるようにするという共通の目標に向かって,争点をどのように設定するかや,証拠を適切なタイミングで提出するといった点も含めて,裁判所と当事者代理人が協議,協働しなければならない,そのようにしないとうまくいかないと思っているところです。そのような制度設計とすることが不可欠であると考えております。   こうした点を念頭に置いた制度が導入されれば,当事者の予測可能性を高めるとともに,争点中心の集中かつ充実した審理の実現につながるものと信じているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 先ほど,私自身がこういう制度がよいのだろうと考えるというアイデアについてお話ししました。それの中で,審理期間について,私自身は具体的事件に応じて協議により定めるという考え方がよいのだという意見を申し上げたところですが,その理由として,6か月というふうに一つの期間,それもかなり短い期間という設計にしますと,実際にこの手続が使われる可能性のあるケースが極めて限定的になってしまい,ほとんど使われない制度になる,そのおそれがとても大きいと思っています。   そういう観点から,また,私が具体的な例としてかつて申し上げた例について言いますと,例えば,審理で通常であれば2年ぐらい掛かってしまうかもしれないけれども,1年で終わらせるようにしたいと,こういったニーズは全くすくい取れないということになりますので,それでよいのかと思っています。協議により定めるということだとすると,協議がまとまらなければ結局駄目ではないかという御意見も確かにあるところです。それは仕方のないことであって,そこでその話がまとまらないのであれば通常どおりの手続をすればよいというだけの話だろうと思います。私は6か月に限ることで,これが使われない制度としてまた死文化してしまうことを非常に危惧しているところです。   なお,何らかの目安として期間の定めというものを置いた方がよいという考えであれば,例えばですけれども,6か月又は当事者と裁判所が協議して定める別の期間というような形にして,一応の目安というものを法定しておくというのは,これはあり得るかなと思いますが,それに固定するという考えについては私は反対であります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 長谷部委員がおっしゃったこととほぼ重なるので,上塗りにしかすぎないのですが,私はやはりこの手続を本当に動かそうと思ったら,両当事者が積極的に関与する必要があるのではないかと思いますので,甲案のような被告側の消極的同意で足りるという制度設計というのは,ほかのいろいろな面からも反論の余地がありますし,私もほかの点も言いたいことはないわけではないのですが,時間の省略のためにそれは省きまして,協力を得るためにはやはり積極的に関わってくるということが必要であるという点で,乙案で進めていくのが望ましいのではないかと考えております。   想定される事件としては,恐らく事実についての争点が少ない事件ということになろうかと思います。証拠調べ,取り分け証人尋問や当事者尋問を課さなければならないものを6か月でやるなんていうのは不可能ですので,書証だけで証明可能なような争点しかないような事件というのが恐らく適した事件であろうと思われます。それは両当事者が把握できる,それぞれの思いが一致しないと,その争点の少なさというものは実現できないわけですので,そういう意味でも乙案というのが望ましいのではないかと考えております。   審理期間の設定について,合意ベースでというお話がありましたが,審理計画がうまくいっていないということを考えると,私は,おっしゃる趣旨はよく分かるのですが,本当にワークするのかどうかという点でやや疑問を持っており,一応法定ということで,6か月が適切なのかどうかというのは別途検討すべきだと思いますけれども,法定の方が望ましいのではないかという感じがしております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○服部委員 服部でございます。いろいろな要件などについてのお考えも示されているところですけれども,最初に立ち戻りまして,従前の丙案を支持する意見の中で,パブリック・コメントなどを拝見しますと,多岐にわたる意見が示されています。,大きなところでは,不十分な審理につながる,裁判をするのに熟したときに判決するという法の243条に反するのではないかという懸念,当事者が希望していないのに,この手続の方向に進まされるのではないかという懸念,事件類型として適切と今,言われているものに限らず,適切ではなさそうなものまで引きずられてしまうのではないかという懸念など,そういったことがあるのではないかと言われています。これらの懸念が,相当程度に払拭する制度設計をしなければいけないものと思っております。   入口の点では,先ほど来,複数の委員がおっしゃっていますが,やはり当事者双方の意思によることが必要であって,そうでなければ,先ほど御意見もありましたとおり,短期間での審理というものには耐えられないだろうと思っております。まず,共同の申立てといいますか,当事者双方の積極的な同意が前提になるのであろうと思っております。また,この時点で事件類型にはまらないのではないかというようなものについては,ある程度カットできるのではないかと思っております。   そして,対象事件について,消費者の関係ですとか労働者関係の事案については排除するべきであろうと思っておりますが,部会資料の方では,消費者や労働者が被告となる場合という形で確か書かれていたかと思いますけれども,消費者が原告になる場合であっても証拠の偏在などの社会的構造の格差があることからしますと,原告の場合であっても対象事件とするのは不適切なのではないかと考えるところです。   そして,不十分な審理になるのではないかなどの懸念については,やはり証拠制限について,これは証拠内容そのものについての制限は掛けないというのが適切といいますか,そうせざるを得ないと思っておりますし,この手続では厳しいということになれば,途中での通常手続への移行についても,これは当然に認められるものでなければいけないと思っております。   そして,判決については,判決に要点を記載することで足りるというような提案もありますけれども,最初に阿多委員も言われたとおり,これでは判決に対する信頼というものがどうなのだろうかという点の懸念はあります。そして,要点記載の判決となりますと,簡易裁判所の訴訟手続での280条の簡略判決というのが想起されるわけですけれども,この簡略判決というのは,やはり簡裁での判決ということの特殊性に鑑みて設けられている制度であって,これを地裁で,しかも短期間で迅速に争点整理や主張立証を行うという制度の中で,要点記載のものが出てくるとなると,先ほど申し上げた不十分な審理だとか,判決するのに機が熟していないのに至ったのではないかというような疑念を強めるのではないかと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○青木幹事 既に出ている意見と重なりますけれども,審理期間という点では,やはり攻撃防御方法の提出に一定の制約がされることになりますし,当事者の積極的な関与が必要であるという点からも,基本的には当事者の明示の合意か同意に基づく必要があると考えますが,迅速で予測可能性の高い手続には価値があると考えますので,裁判所も不相当ではないと認める場合には,このような訴訟手続の規律を設けることには賛成です。   ただ,対立当事者双方の同意が必要であるということにしますとこのような手続が利用されなくなるということであれば,このような制度を設けることの意義が乏しいということにもなりますので,明示の合意か同意を要求するとしてもニーズがあるのかというところは問題になるのかなとは思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。これまでに複数の御意見が出ておりますので,新たに付け加えることはないかもしれませんけれども,私自身としての意見を申し上げておきたいと思います。   事務当局で整理していただいたように,予測可能性を確保するということと,当事者の合意を重視するということから,消極的な合意というのを認めない案を御用意いただいたことに大変共感を覚えるものです。また,こういった短期間での審理のニーズというのが皆無でないとしましても,企業全般において常にニーズがあるというものではなくて,特に日本企業が海外での特許侵害などの訴訟に巻き込まれた際に,短期間で行われる略式判決を得ることによってその紛争から逃れ出るという効果があるという場面では非常にメリットがあるというか,特に国際紛争については訴訟費用も掛かりますし,また,確実に一定の期日までに結論が出るということから,BtoBでの紛争においては有意義な面があるということは理解できているところですが,果たしてそれ以外の場面で活用できるところがあるのだろうかと考えますと,なかなかイメージしづらいというのが実情でございます。   今まで御説明のあった様々な不利益が生じ得ることを考えますと,私もこの制度の導入についてはなかなか積極的になれないところではあります。それは,取り入れて,ニーズもあり,迅速な紛争解決に役立つという特定の分野を決めて,例えば知的財産権の紛争,これは権利の保有者と企業対企業の紛争と限定して,しかも一定のもう事実認定が終わっている特別の場合に限定して導入するというような形であれば,検討に値すると思いますので,直ちに捨てなければいけない,廃案にすべきとまでは思いませんけれども,一定のケースに限定して,更にそれに適した制度として検討を進めていく方が現実的ではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 私も,このような新しい手続を導入する方向に賛成するという立場から,これまで出た御意見に付け加えるという意味で,述べさせていただきます。   この手続で不服申立てができるとしても,同じ裁判官が判断するということであれば結論は変わらないではないかというような御批判がされているわけですけれども,同じ証拠や主張であれば同じ結論が出るというのは,裁判官が替わったとしても同じことになる,同じ結論になるだろうと思います。そういう意味で,異議を出した後に新たな証拠や主張が出されたら,それで結論が変わるかどうかはその当事者の訴訟活動によって大きく異なってくるということなので,不服申立てということで,当事者の手続保障としてそれほど懸念される事態にはならないのではないかと思われます。   あと,小澤委員から本人訴訟のニーズがあるという意見を頂きまして,個人的にはそういったこともあるだろうとは思うのですけれども,いろいろ御批判もある中で,まずはこういう新しい制度を導入してみるという意味で,訴訟代理人が付いている場合に限定して始めてみるというのも一つの結論なのではないかと思います。   この点に関して,平成15年に導入された民事訴訟法の132条の2の提訴前の照会について,訴訟代理人たる弁護士だけができるというのが訴訟法理論上正当化が困難だという理由で否定されたという経緯があると思います。同様に,このような手続について訴訟代理人が付いている場合に限定するというのは,訴訟法理論上,正当化が困難だということになるのかもしれないですけれども,オランダなどでは弁護士強制を採っていないということなのですけれども,コルト・ヘディングという暫定的な審理手続で訴えを提起するということが認められていて,その場合には原告側は弁護士代理が強制されるということが民事訴訟法に定められているということのようです。ですので,本当に法理論上正当化できないものかどうかというのは検討の余地があるのではないかと思います。いずれにしても,可能であれば,そういう訴訟代理人に限定した形で小さく産んで,今後の運用を見るというのも一つの解決策ではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 この手続に適した事件類型について,認識の共有が必ずしも図られていないのではないかと,そういった御趣旨の御指摘も先ほどあったかと思います。それは私もそうだなと思っております。先ほど,米国訴訟におけるサマリー・ジャッジメントの例が示されまして,それに適するような事件を念頭に置く御意見もあったところです。確かにそういった事件がこの手続に適しているのはそうだろうと思いまして,それは否定はしません。しかし,私はもう少し幅を広げていただきたいと思っています。先ほども言及しましたけれども,特に審理の計画なり期間なりを定めないで進行してしまうとすぐに年単位の期間を必要とする,そのうちに担当している裁判官も替わってしまい,また仕切り直しになるというようなことが予想されるような事件において,審理期間を1年にしたい,あるいは1年半にしたい,こういうニーズも当然あるわけですし,それをやはりすくい取るという考え方を捨て去らないでいただきたいと思います。   それから,どういった事件がそういった当事者間の合意あるいは裁判所を含めた協議によって計画的に進めていくのに適しているのかということについて,認識の共有が図りにくいのは,正にそれは事件の個別的な性格によるものであって,一般的に議論することが難しいからだろうと思います。そう考えますと,やはりその当事者双方の申出がある,それはその当事者が,その事件が計画的に進めていくということに適している,あるいはそれが可能だと判断できるからであって,その判断をやはり尊重するということで十分ではないかと私は思うところです。   なお,その判断が間違ってしまうということはよろしくないので,その観点からも,訴訟代理人が付いているということを求めることには理由はあるだろうと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 私が言おうと思ったことをほぼ日下部委員に言っていただいたので,またもや上塗りになってしまうのですが,どういう事件の種類に限るのかという議論は多分うまくいかないと思うのです。立法技術的な理由もあり,例えばBtoBの事件といっても,消費者契約法に倣う限りは,契約関係がある場合にしかBtoBはあり得ないということになりますし,BtoCも同じです。ですので,そういう形で区切るのは非常に難しいし,知財に限るという案も,ではほかに全くニーズがないのかということで,私はやはり極めて限られた事件の種類に限定するのではなく,今,日下部委員がおっしゃったように,両当事者が一致して短くしたいと,計画的な審理によって短い審理期間で判決を得たいという意欲を示していれば,それで足りるのだと思います。   そして,かつその先も日下部委員と同じでして,その判断はやはり専門家である訴訟委任を受けた弁護士代理人,簡裁でこの制度をどうするかよく分からないので,司法書士の方のことは置いておきますが,弁護士代理人が両方に付いていて,その弁護士代理人が共に申し立てると,共同申立てをするという形で事件の選別がなされれば十分なのではないかと考えております。   以前,私はやはり弁護士代理人を付けると,ある場合に限定すべきだということを申し上げたときに,それは確か笠井委員からだったと思うのですが,現行の審理計画の締結能力は当事者本人にもあるのではないかということをおっしゃられましたが,それはそうなのですけれども,ただ,審理計画がうまくいかないのは幾つかの要因はあると思うのですが,履行する能力,覚悟というものについて当事者本人では判断できないし,仮に審理計画に同意したとしても,これを本当にうまく履行できるかどうか分からない,そういう履行能力の点が重要であると当時は思っておりました。そして,今日もお話を聞いていて,やはりその選別のミスというものがないようにするためには,専門家のサポートしている当事者についてのみ乙案で行くべきだと考えております。   かつては,弁護士代理がある場合に限った規定を訴訟法に置くことはできないのだというような考え方というのは結構強かったと思います。これは訴え提起前の証拠収集手続についても,私は弁護士代理がある場合に限ってはどうかというようなことを言ったときに,即座に却下されてしまったので,そういうイメージを持っておりましたが,今回はそういう枠は取れつつあるのだと思っております。というのは,電子的な手段を用いての訴え提起について,訴訟委任を受けた訴訟代理人がいる場合に限るのだということが正面から論じられているわけですので,そういう敷居はなくなっているのだろうと思っておりますので,ここでもそういうことを考えてはどうかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 今,山本克己委員から名前を出していただきましたので,一言釈明というか,今はどう考えているかを申し上げます。   私自身も最初,研究会とかでいろいろと議論しているときは,弁護士双方が合意には入るということについて,むしろ積極的な方向の発言もしていたことがありまして,ただ,147の3などと並べてみると,前回申し上げたときは,弁護士代理が入ると整合性がとれないと思ったものです。どちらでないといけないという強い意見があるわけではなくて,そういう意味では,今,山本克己委員もおっしゃったように,当事者の合意について弁護士代理を必要とするという制度も,これは十分にあり得ると考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 私も基本的に,双方の当事者の合意があるときに迅速な手続を利用可能にするという方向性には賛成したいと考えております。   それで,直前に出ておりました,弁護士代理人が双方に付いている場合に限るかどうかという点につきまして,これは私,以前にも申し上げたところですけれども,確かにそのような場合が最もふさわしいであろうということは否定できないように思っておりますけれども,しかし,迅速な手続で解決が得られるという利益を弁護士代理人が付いていない当事者に当然に一律に否定していいのかどうかということについては,私はなお若干のちゅうちょを感じるところがあります。先ほどの審理計画に関する現行法の規律もそうですけれども,ただ,弁護士代理人がある場合に限るというのは政策的に絶対あり得ないのかというと,それはあり得るということなのかもしれませんけれども,ちゅうちょを感じるということで,一つの考え方としては,例えば,弁護士代理人が付いていない場合については裁判所の許可を要件として利用を認めるであるとか,何かそういったことも考えられないだろうかという感じもいたします。   従来,甲案でも乙案でも,裁判所が相当でないと認めるときについては対象外とするという規律を想定しておりまして,恐らく今回,これから検討される手続についても,そのような余地が認められるということが考えられるのではないかと思いますので,そうした規律に委ねておくということも考えられるように思いますけれども,しかし,弁護士代理人が付いているかどうかということで類型的な判断が第一次的には可能なのであり,かつそれが望ましいということであれば,先ほど申し上げたような形での規律ということもあり得るかなと考えております。   それから,期間についてですけれども,何らかの具体的な期間がおよそ法律で示されないということは適切でないだろうと思われまして,例えば,6か月といった形で法律で一定の期間が示されるということは,手続の予測可能性という観点からしても重要なことではないかと思います。ただ,一切その他の期間を設定することができないかということについては,そこまで厳格にする必要もないのではないかと思われまして,両当事者が合意をした場合には別段の期間を定めることができるということもあってよいように思われます。   ただ,その場合,そのような期間の設定が裁判所の目から見て余り適当でないというようなこともあり得るのではないかとも思われまして,裁判所がどういった形で期間の設定について関与するかということも一つの論点かと思われます。先ほど申しましたように,相当でないと認めるときは利用を認めないというような規律が設けられるのであれば,その点についてもそうした形で対応するということも考えられるかなと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 再三申し訳ございません。今の御指摘いただいた点について,少し角度が違うのかもしれないですけれども,付言いたしますと,期間が6か月だけだということだとすると,もうそれだけで使うことはあり得ないと考えられてしまうケースがとても多いと思いますので,何らかの話合いをした上で別段の期間にすることもできるという余地は是非残していただくべきだと思います。その期間が裁判所の目から見て無理がありすぎるということであれば,それは受け入れられないのは当然でありますので,裁判所を含めた協議の結果,決めるべきことだと思います。   若干気になりますのは,当事者双方の合意とか同意が必要である,それは明確なものでなければいけないという御意見がとても多いところなのですが,私ももちろんそれには賛成しているのですけれども,そこでいう合意や同意というのが,この手続を使いたいと申し出る段階で既に存在していないといけないという意味であるとすると,それは硬直にすぎると考えています。   例えば,原告が訴状において,この手続を使いたいと申し出て,その訴状を見た被告が初めて原告の考えを知って,被告としてもその考えには応じることができると考えて,答弁書で被告としても申出をする,このようなケースであってもこの手続が利用できるように制度設計をするべきだと考えています。その意味では,従来,当事者の共同の申立てによるという言葉が使われていたわけですけれども,それが,事前に原告と被告が示し合わせて了解をした上で,同意をした上で申立てをしなければいけないということを意味するのだとすると,それは狭すぎると思いますので,この発動要件,開始要件については是非留意をしていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。皆様の意見を聞かせていただき,ありがとうございます。そもそも当事者双方の合意があって用いる手続とのことですが,今,日下部委員もそのことについて御意見くださいましたが,この新たな訴訟手続を創設する目的が「裁判が公正かつ適正で充実した手続の下でより迅速に行われるようにするため」ですので,この目的に合意しない当事者がいるとは基本的に思えません。合意の下で始まっても,それが難しい場合があり,途中から通常の手続に変えられるということも盛り込まれてはいますけれども,皆様の御意見の中にところどころに懸念があるように,この部会の場でいろいろな懸念を全部払拭して何かの規律を作るということは難しいのではないかと感じています。それを意見として申し上げます。   先ほど増見委員が米国のサマリー・ジャッジメントのお話をしてくださいました。それが非常に利用しやすく,有効に使われているということでした。証拠調べを尽くしてから,当事者が希望する場合に用いるということでした。その場合に使われるものでしたらよく分かります。といったように,この制度そのものをもっとしっかり考える必要があるのではないでしょうか。皆様のそれぞれの懸念を全部払拭して,この新たな制度が今作れるとはとても思えません。このことをもっと真剣に考えていただきたいと思います。当事者双方の合意,訴訟代理人が付いている,それらだけで進めてよろしいことでしょうか。そのことをもっと考えてください。この場で決めてよろしいことでしょうか。それが私の意見です。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。おおむね御意見は出たということでよろしいでしょうか。   一定の,コンセンサスとまでは行かないにしても,意見が近い部分もあれば,論点によってはかなり正反対の御意見が述べられたところもあったかと思いますけれども,今後引き続き検討していくに当たって,事務当局の方から何か今の段階でございますでしょうか。 ○脇村幹事 脇村です。様々御意見いただきましたので,私たちの方でもそういった懸念も考えながら,考えていきたいと思います。少なくとも,裁判所と当事者が一致した方向を見ないといけないのではないか,一定の事件類型に絞るといいますか,想定してやらないといけないのではないかという点について,どう法制化していくのか,私たちの方でじっくり考えたいと,できるかどうかも含めて,考えていきたいと思います。   恐らく,かっちり作るのかという問題について言えば,適切なものを選別する上で一番重要なのは恐らく最初の入口の合意プラス,阿多委員などからもお話があった,途中の抜けるといいますか,あるいは最後の判断が出た後,出るというところについて,真ん中をどう考えるかは,出口で異議で当然出るということであれば,恐らく最終的にどう制度を作るにしても,見込みがないケースについてはもうその手続を止めるということにならざるを得ないだろうと思いますので,そういった意味では,途中で抜けられるということを前提に考えていくべきではないかという意見があったことを踏まえながら考えていきたいと思っています。   また,弁護士強制に関して言いますと,恐らく御懸念に対して弁護士強制を付けるべきだという御意見に対して,積極的にこの制度は利益のあるものなのだと,当事者にとってそういったオプションを増やすのだという観点から考えますと,弁護士を付けないと使えないという選択肢は非常に難しいだろうなというのは率直に思っているところですが,恐らくそういった問題は,途中で抜けられるかどうかをどう仕組むかによって払拭できるかどうかも含めて考えないといけない問題だろうと思いますので,全体像について私たちの方でもしっかり考えていきたいと思います。   また,期間を一定にするかどうかにつきましては,恐らく様々な考え方があるのだろうと思いますが,一つの考え方として,柔軟にするべきだという意見もある一方で,恐らく柔軟にすればするほど,予測可能性はとれないといいますか,また,当事者の合意によって変わってくるとすると,結局,逆に当事者にとって使いにくいケースもあるかもしれませんので,具体的な制度としては,こういった制度ですということを示した上で,それにふさわしくないものについては外す,使わないということを前提に期間を区切るということも一つの選択肢なのだろうと思います。ただ,いずれにしても,頂きましたので,そういった懸念を考えながら,少し考えていきたいと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   それでは,これについては次回以降,何らかの具体的な提案,できるかできないかも含めて,具体的な提案を事務当局から頂いて,また御議論をしていただければと思います。   それでは,続きまして,今度は資料15ページの「第3 土地管轄」,それから「第4 上訴,再審,手形・小切手訴訟」,この辺りは従前とは変わらない提案,提案といっても現行法の規律を維持するとか,同様にIT化するということですけれども,特段変わらない記載ぶりになっておりますけれども,これらについて特に何か注意すべき事項等,御指摘があれば御発言いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。   よろしいですか。   それでは,続きまして,次の論点は,16ページの「第5 簡易裁判所の手続」で,これは幾つか分かれておりますけれども,全体について事務当局から,まず説明をお願いいたします。 ○西関係官 これまでの会議では,簡裁の手続について地裁における第一審の訴訟手続と同様にIT化していくということにつきましては,御異論はなかったところかと存じます。一方で,簡裁の手続についてIT化に伴う特則を設けるかどうかにつきましては,その具体的な内容も含めて様々な御意見を頂戴しておりました。この点につきましては,従前は,地裁の手続がある程度固まってからということにさせていただいておりましたが,そろそろ地裁の手続も具体化してまいりましたことも踏まえまして,今回改めて御議論をお願いするものでございます。   また,支払督促につきましては,通常の手続がIT化されることになりますので,現在の実務も踏まえながら所要の整理を行うということとしております。   一方で,少額訴訟についてはIT化に伴う見直しは特段行わず,現行法の規律を維持するということとさせていただいております。 ○山本(和)部会長 それでは,中身は分かれていますが,一括して御議論いただきたいと思います。どの点についてでも結構ですので,どなたからでも御発言を頂ければと思います。 ○小澤委員 まず,部会資料22の注記に当会を始めとする司法書士の要望を反映していただき,ありがとうございます。当会の意見としましては,令和2年11月6日に開催された第5回会議で発言したとおりではありますが,本日はその中でも取り分け,特に実現する必要性がある論点と考えている電話会議による口頭弁論と,電話会議による当事者尋問について発言をさせていただきます。   口頭弁論の公開主義という観点から慎重であるべき論点であることは承知しておりますが,ここでは簡易裁判所における実務面から,創設の必要性について述べたいと思います。現行制度では陳述擬制によって,多忙な当事者も一定の法廷活動ができるという建前になっております。そこに新しく電話会議による口頭弁論への参加ができるとすれば,当日の状況に応じて更に次のステップまで審理を進めることができ,より一層迅速な手続をとることが可能となります。   具体的には,消費者金融業者などが原告となって,例えば東京簡裁とか大阪簡裁のような都会の簡易裁判所に貸金請求訴訟を提起し,被告が地方にいる場合,こういう相談は私も多数受けていますけれども,被告が書面だけを出し続けて出廷しないということがあります。今回提案されている電話会議による口頭弁論は,このような事案において,出廷していない一方当事者に電話会議システムを利用して主張の確認や整理をするためのものと考えられますので,現状行われている簡易裁判所での審理をより充実させる手段と考えておりまして,デメリットというのはないと思っています。   被告が一定の和解案を示した準備書面を提出した上で,出頭せずに陳述擬制をするケースを念頭に置いて,もう少し考えたいと思いますが,現行制度では期日に出頭した原告がその和解案の内容を一部修正した上で,修正案であれば応じてよいと考えていたとしても,被告が出頭していない以上,次回期日を定める必要があると思います。しかしながら,電話会議による口頭弁論が許容されるのであれば,被告が一定の和解案を示した準備書面を提出した上で,電話会議により口頭弁論に参加し,期日に出頭した原告が望むのであれば,そのまま口頭弁論から和解期日へ移行することで,その期日内に和解が成立することも可能となると思っています。   このように,簡易裁判所においては,既に続行期日においても陳述擬制が認められており,電話による口頭弁論参加は口頭弁論の充実の効果が期待できること,さらに,和解手続は地方裁判所においても引き続き電話会議が認められる見込みであることを踏まえると,和解手続の多い簡易裁判所においては,電話会議による口頭弁論から電話会議による和解手続という一連の流れが円滑となって,一期日で処理することが可能となるという利用者側,裁判所側にも大きなメリットがあると考えています。   また,当事者尋問につきましても,現行制度では民事訴訟法278条により尋問に代わる書面を提出することが認められております。電話会議による当事者尋問は,この尋問代替書面にプラスアルファの効果をもたらすものと位置付けられ,より充実した審理に資するものと考えています。   元々簡易裁判所においては一体型審理が採用されており,口頭弁論と証拠調べを明確に分けずに審理しながら裁判官が争点を絞る作業をすることが少なくありませんので,電話会議による口頭弁論と併せて電話会議による当事者尋問の制度を導入することができれば,簡裁事件の争点の絞り込みや主張の整理が現在よりも格段にやりやすくなるのではないかと考えています。   すなわち,いずれの提案におきましても,簡易裁判所では書面での提出が認められているものについて,更に充実した審理を一層迅速な解決を図るため,電話会議による方法を付加することを認めるのが相当ではないかという意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 先ほど小澤委員から,電話会議のメリットについて具体的な説明を頂きましたが,やはり電話会議の持つリスク,具体的には当事者の本人確認について解決できない限り,電話会議で口頭弁論期日を実施することには疑問を感じています。   今回,口頭弁論においてウェブ会議による参加が認められたわけですが,その理由の一つは,ウェブ会議であればある程度,本人であることの確実性が担保されることにあります。しかし,電話会議になりますと,本人確認が実施できるのかという問題点は残らざるを得ない。さらには,当事者尋問等を想定した場合,裁判所の心証の取り方を考えても,電話会議による当事者尋問は,ウェブ会議に比べて情報量が少なくなりますので,心証に影響する事にならざるを得ない。これらの理由から,電話会議による口頭弁論,電話会議での当事者尋問は無理だと思います。現状でも,口頭弁論ではなくて弁論準備手続等では電話会議が利用できるわけで,そういう方法もあり,一定の時間をかける弁論準備手続であれば本人確認も十分に担保できる可能性もあります。にもかかわらず,弁論準備手続に比べて事実上短時間しか割り当てられない口頭弁論で,しかも,ウェブ会議システムが導入されるという状況において,あえて電話会議を選択する必要はないと考えます。   3点目の,ウェブ会議等における証人尋問の要件の緩和は,いろいろ悩んでいるところです。書面尋問とのバランスですが,書面尋問は先回,弁論準備手続での書面尋問の書面の提出での議論でもお話をしましたが,証拠の申出をした後に,どういう方法で実施するかを選択する際に,書面尋問が選択され証人に質問書を送付するという形式で実施しています。   そうしますと,直接主義との関係では,法廷に出頭してのリアルな尋問,出頭が困難であればウェブ会議による尋問,さらには書面尋問という順序になると思いますが,簡裁における書面尋問の要件が,異議等は不要で相当性だけを要件にしています。そうするとウェブ会議による証人尋問で地裁の要件と同じ異議がないことを簡裁でも要件にすると,異議があった途端,直接の尋問から書面尋問というように順序が逆転してしまい,おかしな話にならざるを得ない。直接主義との関係で考えるならば,直接法廷での尋問,無理であればウェブ会議での尋問,そして,書面尋問という順位付けは守るべきで,であるならば,簡裁における書面尋問に関する要件を変更できないのであれば,ウェブ会議における証人尋問の要件の緩和が必要と思います。   最後に,司法委員の関与につきましても,平成31年,令和元年の統計等の第13表では,簡裁全体事件数34万件のうち3万4,000件ほど,約1割の事件で司法委員が関与しているということが紹介されています。司法委員は,その役割が一面,調停委員のような形での和解に関する調整があり,他面,一般市民や専門委員と似たような知見の提供が期待されていて,特に簡裁における交通事故物損事件などではアジャスター等の経験者が司法委員として関与をして,その専門的知見を提供しているということがあると聞いています。   現状,都市部の本庁所在地に併設されている簡裁であれば,司法委員も充実しているようですが,支部に併置されている簡易裁判所,さらには独簡といわれている簡易裁判所では,司法委員の関与の機会が必ずしも確保できていないという話もありますので,そういう意味では,司法委員が出頭して立ち会って関与する以外に,ウェブ会議での関与という道を開くことは意味があるとは思います。   ただ,途中も申しましたように,司法委員の役割としては一面調停委員と似た役割があり,司法委員がウェブで調停に関与するような形になりますと,言わばウェブで調停が実施される,それも裁判所の関係者が裁判所に出頭することなくウェブで関与するということになりかねません。将来的にはODR等の議論があり得るかと思いますけれども,現時点では少なくとも主宰者は裁判所に所在していることが前提で手続が組み立てられていると思います。司法委員の関与とは,そういう意味で,制度としては広く認めることはあっても,実際の運用としては場面で限定していただく必要があると思います。   さらに,従前から簡裁特則の関係で提案させていただいてきたのは調書の省略に対する対応です。これも従前から統計的な形でお話をしていましたが,レ号事件というのはさほど多いわけではなく,さらには簡裁で証人尋問,当事者尋問をしている事件数というのは一定,限られたものです。そういう状況において調書の省略という形で,控訴された段階で反訳書を準備するということになっているわけですが,限られた事件であれば,裁判所の方で,一つの方法は録音テープを控訴審に上げるということもあるかと思いますけれども,録音テープによる記録化というのが必ずしも今回の改正では導入されないというのであれば,控訴された事件に関してだけ裁判所の方で所持しているデータに基づいて調書を作成するということを御検討いただきたいと思います。   あと,簡単に,挙がっています支払督促,少額訴訟についてもコメントだけしておきますけれども,支払督促について東京簡裁に今,システムがあるわけですから,現状維持ということについては賛成したいと思います。2のOCRの方法による支払督促の申立ては利用されていない実情に鑑み,もう廃止,さらには少額訴訟については,これはやはり人的関係が重視されるので,市民の親しみやすさという観点から,特則は設けないという形の処理でいかがかと思います。   全体について意見を述べさせていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 阿多委員から出ました本人確認の点なのですけれども,電話会議によると本人確認ができないのではないかという懸念については,2ページ2の(2)に,現在の電話会議システム等と同様に,個別の裁判体において事案に応じて適切にこれを行うと述べられておりますとおり,現在におきましても準備手続や和解手続などが電話会議により円滑に行われていることを踏まえますと,口頭弁論においてもさほど心配する必要はないのではないかと考えているところです。   非公開の手続と公開の手続とでは本人確認の厳格さが異なるという見解をとる場合であっても,電話会議による口頭弁論参加の条件を事件管理システムの利用登録者に限定し,かつ,本人確認については当日に事件管理システムに登録された電話番号で電話会議に参加し,更に期日ごとに事件管理システム上に表示されるワンタイムパスワードを電話会議による参加者が述べるなどの方法により,本人確認性を担保することはできると考えています。   なお,改めて電話会議による口頭弁論への参加を認める必要性について補足をさせていただきますと,当事者がウェブ会議で参加をしたとしても,本人訴訟が多い簡易裁判所では,特に一時的な回線状況の悪化等によりウェブ会議が中断してしまう状況が発生する可能性が多いと思われます。そのたびに期日を先延ばしするということでは,ウェブ会議は逆に使い勝手が悪いシステムとして利用が広がらないのではないかという懸念があります。そこで,ウェブ会議にトラブルが生じた際の救済弁としても電話会議は活用される意義はあるのではないかと考えているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私も今回挙げられている主要な四つの項目について,簡単に意見を申し上げたいと思います。   まず,一つ目の電話会議による口頭弁論に関してですが,やはり憲法上の要請である公開原則にかなうのかという点の疑問が払拭し切れておりません。手続の主要な主体である当事者を見ることができない状態で,果たして公開原則,憲法の要請に沿っているのか,民訴法の規定が憲法違反を問われるような事態を懸念しなくても本当に大丈夫といえるのだろうかということで,心配をしております。   また,本人訴訟が多い簡裁の手続において電話会議による口頭弁論を認めますと,訴訟代理人となる資格のない者が当事者の背後で実質的に代理活動をするおそれや,なりすましによる判決の詐取のおそれも強まるかと思います。いわゆるオレオレ詐欺の例を挙げるまでもないと思いますが,電話の音声のみでは人は結構だまされやすいものかなとも思いまして,手続の節目でもあって,憲法上の公開原則が直接当てはまる口頭弁論において,映像を伴わない参加形態を認めるというのはかなりハードルが高いのではないかと感じています。   電話による当事者尋問につきましては,全てが全てというわけではありませんけれども,当事者尋問が行われるのは基本的に口頭弁論期日でありますから,口頭弁論期日において電話による参加を認めるかどうかというところとほぼ重なってくる話で,私自身はこれも難しいのではないかと感じています。   それから,ウェブ会議などによる証人尋問の要件の緩和についてですけれども,書面尋問の要件として当事者に異議がないことを求めている法205条に対して,簡裁特則の法278条では,当事者に異議がないことは要件から除外されているということを念頭に置くと,ウェブ会議などによる証人尋問の要件を同様に緩和することは考えられなくはないのかなとは思いました。ただ,現実的にどうだろうかと考えますと,当事者に異議があって,しかし,それでも裁判所が相当と認めて,ウェブ会議などによる証人尋問を行ったとしますと,恐らくそのやり方に異議を持っている当事者としては,この尋問では的確な証言が得られていないといった不満を持つことは大いにあり得て,実際の尋問の場でそういった不満が表明されて,ウェブで参加している証人を交えて公開法廷で審理が紛糾する事態を露呈するといったことにならないだろうかということも危惧いたしております。   それから,もう一つ,こちらも大きいかなと思うのですが,もしも当事者に異議がないことという要件を外して,裁判所による相当性判断のみでウェブ会議等による証人尋問を認めるということになりますと,現行法の204条の1号,2号,つまり遠隔地要件とか証人の精神の平穏が著しく害されるといった要件も意味を失うということになってしまいますので,幾ら簡易裁判所における証人尋問とはいっても,そこまで規律の枠を取り払ってよいのだろうかという疑問は持っています。   最後に,ウェブ会議等による司法委員の関与についてですが,司法委員は和解を補助することと,裁判所からの意見聴取を受けることという二つの機能を担っていると理解しています。和解の補助については,先ほど阿多委員がおっしゃったかと思うのですけれども,ウェブで司法委員が参加して,和解について話をするという状況を想像しますと,やはり和解に向けた説得力の低下で悪影響がもたらされるかなということは懸念されます。他方,意見聴取を受けるという機能についてはさしたる悪影響も別段ないのではないかと思われます。   二つの機能が一つの制度の中に収められているので,結論を述べづらいのですけれども,ウェブ会議などによる司法委員の関与を認めてもよい局面はあるように思われまして,制度的にはそれを可能としておくということは十分あり得るのではないかと感じました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,第5の1については,先ほどもありましたが,これまで少し先送りにしてきた論点であったわけですが,本日本格的な御議論を頂戴し,意見が一致する点,異なる点,ございましたけれども,またそれぞれの論点について,今日の意見を踏まえて,引き続き事務当局の方に検討していただくということになろうかと思います。   2の支払督促,3の少額訴訟については,ここでの資料の記載に特段の御異論は出なかったと理解いたしました。   それでは,続きまして,資料19ページ「第6 費用額確定処分の申立ての期限」の問題について,事務当局からまず資料の説明をお願いします。 ○藤田関係官 御説明いたします。中間試案で示された案を具体化しまして,費用負担の裁判が執行力を生じた日から10年とすることを御提案しております。 ○山本(和)部会長 いかがでしょうか。御質問あるいは御意見を頂ければと思いますが。 ○阿多委員 時間の省略としてではないですが,賛成したいと思います。期間は10年が望ましいと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。特段の御異論はございませんでしょうか。   それでは,この点は期間を設けるということで,その期間については10年ということで,一応現段階では皆さんの特段の御異議はなかったというふうに理解したいと思います。   続きまして,資料21ページ「第7 IT化に伴う書記官事務の見直し」ですけれども,これは少し分けて御議論いただきたいと思いますが,まず,「1 担保取消しと書記官権限」です。この点につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。本文(1)及びその(注)におきましては,担保権利者の同意又は同意擬制があるときの担保取消しや,その同意擬制の前提となる権利行使催告を書記官権限とすることを御提案しております。本文(2)におきましては,担保の事由が消滅したことを証明したときの担保取消しを書記官権限とすることを御提示しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして,どなたからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○阿多委員 前の議論を繰り返すつもりはありませんが,1項の書記官権限化は反対,2項の書記官権限化は賛成したいと思います。   1点,質問があるのですが,いわゆる和解条項作成に際して,仮差押えをしていれば,担保取消しの同意と抗告権放棄を条項に追加するのが一般的だと理解していますが,1項を書記官権限にした場合に,担保取消し等については和解の中では定めることはできるのか,事務当局はどのように整理されているのか質問しておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,今の御質問につきまして,事務当局の方でお答えいただければと思います。 ○脇村幹事 脇村です,すみません,私もついて行っていないところがあるかもしれませんが,結論的には和解条項でもできることを当然認めている方向でいいのかなと思っていました。恐らく先生がおっしゃったのは,抗告権放棄と対比した異議権放棄の話なのですかね,もしかしたら少しずれるかもしれませんけれども,そういった異議の放棄ということも併せて和解条項にするという実務はあり得るのではないかとは思っていたところなのですけれども,すみません,お答えになっていたかどうか若干あれなのですが,ひとまずこれでお返しします。 ○阿多委員 短い質問で分かりにくかったかと思いますが和解の成立は裁判所の権限であることを前提に,事実上同時に,現状は裁判所の権限である担保取消のうち,担保取消し同意と抗告権放棄条項を記載して和解を成立させていますが,書記官権限にするという意味が,裁判所の権限が委任ではなくて書記官の専権にするという意味だと理解すれば,和解条項の中に担保取消しの同意と抗告権放棄条項を記載できないのではないか,別の書類を作らないといけないのではないかを危惧して質問した次第です。 ○脇村幹事 恐らくそういう意味では,もしかしたら従前の制度と若干変わってくるところがあるのかもしれません,裁判所書記官ではないというところで。ただ,恐らく同意あるいは放棄については別途,裁判所が関与しない形でもできるのが恐らく一般的な理解だろうと思いますので,そういったものとして少なくとも機能するということはあるのかなとは思っていたのですけれども,その辺,私の方で若干誤解があるのかもしれませんので,また,場合によっては,少し先生に真意をお伺いするかもしれませんけれども,またよろしくお願いいたします。すみません。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局でその点は御検討いただくということで,ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 ごく短く。結論として私も(1)については本文にも二つの(注)にも賛成であります。(2)については反対であります。理由は阿多委員がおっしゃったこととほとんど同じです。部会資料の22ページでは,(1)について,裁判所の裁判の効力を書記官の処理で否定することができるのかという問題意識も示されているところです。しかし,裁判所が判断した担保決定においては担保の事由の有無の判断がなされるのに対して,ここで検討されている担保取消しの事由というのは担保権利者の同意でありますので,判断事項も違いますから,特に問題視すべき理由はないように思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私も従前の繰り返しになりますけれども,今の両弁護士委員の御意見と結論は同じで,79条1項については裁判所書記官権限にすることに反対,2項,3項については書記官権限でいいのではないかと考えております。同じになりますけれども,やはり担保の事由自体が裁判所の判断事項ですから,それの消滅というのはやはり裁判所の判断事項として存置すべきだろうと思いますし,それほど判断が簡単な場合,定型的な場合ばかりではないだろうと理解しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにございますでしょうか。特段ございませんでしょうか。   御発言いただいた委員はいずれも(1)については賛成,(2)については反対という御意見であったかと思いますけれども,特段ございませんでしょうか。   それでは,そういう御意見を踏まえて,また次の,先ほどの阿多委員とのやり取りの問題を含めて,事務当局で検討していただきたいと思いますが,続きまして,資料23ページの「2 訴えの提起手数料の納付命令及び却下命令等」,この点につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。訴状審査のうち訴え提起手数料の納付を命ずる部分につきまして,第1次的な権限を裁判所書記官に与えることを御提案しております。この納付命令についての最終的な判断の権限は裁判所にあるものと整理いたしましたほか,原告が納付すべき手数料を納付しないときの訴状の却下は,現行法どおり裁判長が行うことと整理しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきましても,どなたからでも結構ですので,御指摘等を頂ければと思います。 ○阿多委員 説明いただいた点の確認です。補正命令についての異議の裁判は,121条で裁判所が判断し,それで納付がない場合,(4)の場合は,現状の訴状の却下にあたるので裁判長の判断という形で,裁判所,裁判長と主体が異なるという前提で間違いないのでしょうか。 ○阿多委員 となりますと,元々書記官権限にするために,従前,裁判長の納付命令,裁判長の訴状却下という,裁判長で完結していたものが,書記官権限に移した途端に,異議については裁判所の判断,訴状却下は裁判長という複雑な関係になるやに思うのですが。ということを踏まえて,むしろ私自身は,場面としては納付命令だけの話ですけれども,異議に対する裁判は(4)とそろえるという意味で,裁判長の異議に対する処分としては,121条でなくて137条に準ずる要件に統一すべきではないかと思います。中身自体は書記官権限にすることに賛成です。 ○脇村幹事 ありがとうございます。今,阿多委員から頂いた点につきましては,私たちも,一般則を変えてまでやるかどうか少し考えていたところでございます。頂きましたので,当初は一般則を変えてまでとは思っていたのですけれども,確かに変えた結果が不ぞろいといいますか,ということはあるかもしれませんので,その辺,ほかの法制でもどういう仕組みなのか,もう少し改めて検討した上で,その点は改めて検討したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。破産法の立案時もそういう議論があったように記憶しておりますので,その辺りも踏まえながら御検討いただければと思います。 ○日下部委員 今の点に関わっているのですけれども,私はこの辺り,余り詳しくはないところで,勘違いであれば申し訳ないのですが,2の(1)で納付命令を書記官が出して,異議の申立ては別段なかったけれども,期間内に手数料の納付がありませんでしたという場合には,(4)の規律のとおり裁判長が命令で訴状を却下しなければならないと,こういう流れが想定されていると思うのですけれども,もしも裁判長が書記官の納付命令を見たときに,これは適切ではないのではないかと考えて,判断が異なったという場合であっても,裁判長はこの規律ですと書記官の判断に従わなければならないということになると思うのです。それは果たして適切な規律,適切な帰結なのだろうかという点で疑問を感じました。   そもそも手数料の納付をしないことが適法なのかどうか,額の解釈をどうするのかといった問題については,実質を伴うこともありますので,これを書記官の権限で手数料についての補正命令の対象とすることについては,私は賛成しかねるところであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。部会資料の関係で少し御説明させていただきますと,最終的に補正命令に応じなかった場合に,その補正命令が,正しくないという言い方はあれかもしれませんけれども,裁判長と少し意見が違った場合の,裁判長がどう扱うかにつきましては,部会資料22の25ページに少し書かせていただいているとおり,恐らく裁判長の判断を優先するということで却下できないということかなと思っていました。   その関係で,先ほど実は阿多委員からあったお話も,破産法21条を見ながら,異議が出たときの裁判所の判断したときと,書記官でなくて裁判所と裁判長の判断はどうなのかとか,少し考えないといけないなと思っていたのが,破産法並びでいいかみたいなことを考えながら今,書かせていただいているところなのですが,恐らく書記官が判断をしただけで,異議もなく,特段,裁判所の判断がないままされた後に,裁判長が判断する際には,裁判長の判断権限は当然残っているということで考えるのでいいのではないかということを思っておりまして,その意味で,その前提で納付命令についても書記官ということがあり得るのかというのが少し今,考えていたところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○横田委員 先ほど日下部委員の方から,実質的な判断を伴う手数料の算出を書記官ができるのかという御疑問がありましたので,実務上の取扱いを説明させていただければと思います。   現在の実務では,訴状が受理されますと,裁判長の補助事務として,まず書記官が訴額を算定した上で,これに対応する手数料額を算出して,不足がある場合にはこれを指摘するということになっています。これは単なる金銭の支払請求等の算定が容易なものに限らず,一定の評価基準に基づいて算出することを要する不動産関係訴訟などについても,書記官が手数料額の算出を行う前提で今の実務が回っているという状況です。裁判官は訴額の算定について解釈上の問題等がある事案を中心に書記官から相談を受けるということが率直な実務の実情です。先ほど,書記官と裁判長の判断が異なったらどうするのだというような御疑問もありましたけれども,脇村幹事のお答えに補足して実務の運用の面から申し上げますと,例えば,今,送達は書記官の権限で行うことになっていますが,送達の有効性についての判断が裁判官と分かれるような事態を避けるために,送達の可否についての判断が悩ましい場合には,書記官が事前に裁判官と相談するのが一般的な運用となっています。   仮に部会資料の提案のような規律が導入された場合であっても,訴額の算定について解釈上の問題等があるような事案については,裁判所への異議申立てがあることを踏まえて,あらかじめその裁判体に対して書記官が相談をした上で補正処分を発することが当然に見込まれますので,このような実務の運用を踏まえますと,これまで実績を重ねてきた書記官に対して手数料納付命令の権限を与えることについて,特に支障はないように思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,ここも事務当局において更に確認していただくべき問題点の御指摘がございましたけれども,今日の御意見等を踏まえて引き続き要綱案の原案に向けて御検討を頂ければと思います。   続きまして,25ページ「3 過納手数料の還付等の書記官権限化」,この点につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○園関係官 御説明いたします。本文につきましては,中間試案で提案された内容から実質的変更はございません。 ○山本(和)部会長 ということですが,何か御指摘いただくべき点がございますでしょうか。 ○阿多委員 これも従前から,なぜ裁判所の権限で残っているのかがよく分からないのですが,還付については紙の上の計算の処理ですので,書記官権限にすることに賛成したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   他にいかがでしょうか。この点は特段御異論がないと理解させていただいてよろしいでしょうか。   ありがとうございました。   それでは,続きまして,資料27ページの4,書記録という名称が用いられていますが,括弧して電子調書ということですが,その更正についての規律の部分です。事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。第12回会議で御提案しました内容につきまして,告知や不服申立てについての規律を御提案しております。なお,和解調書等につきましては裁判所の更正決定によるものと整理いたしております。このほか,(前注)のところにも少し記載がございますが,電子化後の調書を指す用語につきましても,もし御意見がございましたら,賜れれば幸いと考えております。 ○山本(和)部会長 それでは,この論点につきまして,どなたからでも結構ですので,御意見を頂ければと思います。 ○阿多委員 まず,4の(1)の和解調書等についての更正決定については,裁判所の権限という形で賛成をしたいと思います。   (2)は意見を述べる前に1点,質問をさせてください。法160条2項で調書異議という手続があるのですが,書記録の更正と調書異議の関係はどのようになるのでしょうか。事務当局のお考えを説明いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。少し今考えているところを述べさせていただきますと,御案内のとおり現行法でも調書異議がございまして,調書異議があった場合の訂正,修正がございます。これは恐らく単に誤記などといった誤りに限られる問題でなくて,こういったことも書くべきではないかといったことも含む異議という制度かと思いまして,これに対して調書の更正は誤りに限られているので,少し違いがあるのかなと思っています。また,異議申立てと,恐らくここでいう更正の申立ては,訂正が可能な時期も異なってきますし,異議のケースは現行法でもその旨,記載しないといけないということで,応答の方式も異なってまいりますので,そういう意味では両者は並列することでいいのではないかと今のところは考えているところです。恐らく調書が作られて長期間経過した後は,もう異議が使えませんので,実際には調書の更正が使えることになるということにはなるのだろうと思いますけれども,二つは併存するということでいいのではないかと今のところは思っています。 ○阿多委員 併存するということですが,調書異議は次回期日までに申立期間が限定されており当事者が異議の申立てをして,訂正されるのであれば裁判所が訂正の決定をすることになります。他方,調書異議が次回期日までに申し立てられないまま,誤記が残った場合には,書記録の更正の手続で処理するのかと思っていました。文字面上は計算間違い,誤記,その他とありますので,調書の誤記も更正の対象となるのではないか。そうであるならば,両方残す意味がどれだけあるのかよく分かりません。書記録の更正を導入するのであれば,調書異議との関係についても整理していただいたらと思います。   書記録の更正について,私自身はもう少し小さな制度をイメージしていたのですが,更正という概念で整理して提案されており,賛成はしたいと思います。不服申立てとの関係で,即時抗告か通常抗告かという議論も記載されています。元々即時抗告と通常抗告の整理という議論は法制審の部会の前半では論点として挙がっていた事項ですが,それについては取り上げないという形になったかと思います。ただ,今回の29ページ等で指摘の不服申立ては,即時抗告に統一してはどうかというのが私の意見です。 ○脇村幹事 ありがとうございます。そういう意味では,まず,異議を残すべきかどうかについては,完全に吸収できないのではないかというのが一番引っ掛かっているところでございまして,明白かどうかは置くとしても,誤り以外について今まで異議の申出ができたことを,さすがに排除するのは難しいかなというのが第一感で思っているところでございます。そういった意味では恐らく実際には,誤りのケースは更正で多分対応することが多いと思うのですが,そこについて,残りを全部切り捨てるのが少し難しいかなというのが第一感でございます。また,不服申立てについても,更正とか即時抗告を統一すべきという議論がありますので,感覚的には分かっているつもりなのですが,判決の更正も含めて,そこに一括して,恐らく直すかどうかという話になろうかと思いますので,そこまでやるまでのあれがあるのかというところが今,引っ掛かっているところでございます。そういったことから,原案では現状維持といいますか,判決の更正並びみたいなことの方向で考えておりますので,今頂きましたので,改めてその必要性があるかどうか,少し考えてみたいと思います。 ○阿多委員 調書異議との関係について,書記録の更正は今までも実務上行われていた運用を明文化したものと理解していますが,漏れる部分があるのであれば,併存する必要があると思います。実務では調書異議だけでなく,訂正上申という職権発動を促すといった方式で調書の訂正を求める方法もありましたが,今回明文を置くことが実務にどう影響するのかに関連すると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○橋爪幹事 少し細かい話になるのですけれども,書記官の更正処分ということになった場合の異議申立ての期間について,少し検討する必要があるのではないかという問題提起だけさせていただきたいと思います。   この更正処分に対して,いつまでも異議申立てが可能として更正処分が確定しないということになりますと,手続の安定性に支障が生じる一方,この調書の更正といった事態は決して頻繁に生じるものではありませんので,そのような更正処分が行われた場合は当事者にその旨を告知するということになろうかと思います。そうしますと,その告知が当事者において更正処分に対する異議申立てを行うか否かの検討を行う端緒となりますし,同じく書記官の更正処分に対する異議申立てについては,訴訟費用確定処分の更正や支払督促の更正におきましても,いずれも異議申立ての期間が1週間と定められておりますので,これらの規律との平仄を意識する必要があるのではないかと考えている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   書記録という名称についても何か御意見があればという御発言もありましたが,この場で言っていただかなくても別にいいのかもしれませんけれども,何かあればと思いますが,いかがでしょうか。 ○阿多委員 即時抗告でいいと発言しながら恐縮ですが,28ページでは相当と認める方法での告知と記載されています。しかし,決定の告知について,従前ですと特別送達等で確実に日にちがカウントできることが前提ですが,IT化に伴う相当と認める方法の告知で1週間という期間がカウントできるのかという点に疑問が生じました。事務当局はどういう形で期間計算をするのかについて説明いただけますか。 ○山本(和)部会長 御質問ということですので,事務当局,もし何かあれば。 ○脇村幹事 脇村です。恐らく,入れる場合に起算点をどうするかという問題がございます。もちろん決定等は基本的に相当と認める告知でございますが,実務にはそういったケース,即時抗告が問題のケースは,実務上送達するということもあろうかと思います。制度としては,仮に期間制限を入れる場合には,実務運用は送達だけれども,制度としての組み方としては送達までは要求しないと,そういったことの制度としての作り方はあるのではないかとは思っているところです。いずれにしても,先ほどから,やはり即時抗告あるいは期間制限,何といいますか,余り放っておくのはよろしくないのではないかという御意見を頂きましたので,決定全般の告知の在り方との関係も少し考えながら,整理はしていきたいと思います。 ○山本(和)部会長 阿多委員,よろしいですか。 ○阿多委員 結構です。ありがとうございます。 ○山本(克)委員 書記録という言葉についても意見という話だったので,私の感想を申し上げます。記録という言葉は,言うまでもないことですけれども,裁判手続の世界では一件記録を指して記録といっていますので,書記録というと,今まで記録といっていたものを別のものに言い換えないと混同が生じたり,いろいろなことが起こり得るので,それから,必ずしもIT化について後れることが見込まれるものとして家裁の手続があり,家事調停については調停調書という言葉は残るのだろうと思うのです。実質的には同じようなものが紙媒体なのか電子記録なのかで調書という言葉が使われなくなるというような状態というのは余りよろしくないのではないかというので,ここに書いてある言葉では電子調書の方が私は望ましいのではないかという感じがしております。   書というので紙を指しているのではないかという疑念があるかもしれませんが,商法上,商業帳簿の保管義務というのが商人に課せられていますけれども,あれが電子化されていたら帳簿でないなんていうことは誰も言わないですね。帳簿の簿という字を私,少し先ほど,自宅からアクセスしているものですから,パソコンで調べましたところ,元々竹簡のことらしいですね,だから竹冠らしいです。物を書く竹の断片という意味のようです。その後,転じて,紙をつづったものとなって,誰も「簿」は紙なのだ,紙を本来,有体物を意図していたものなのですが,別に電子化されても商業帳簿といっているわけですから,私は別に電子化されたからといって書という言葉を使ってはいけないということにまではならないのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。有用な漢字の知識も教えていただきましたが,ほかにいかがでしょうか,この論点。よろしいでしょうか。   それでは,この点,(1)については余り御異論はなかったと思いますけれども,(2)の部分についてはなお,言葉も含めて,検討いただく点の御指摘を頂きましたので,引き続き事務当局において御検討を頂きたいと思います。   それでは,本日最後の論点になりますけれども,資料30ページの「第8 障害者に対する手続上の配慮」,この点につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 民事裁判手続のIT化に伴いまして,障害者に対する手続上の配慮に関する規律を設けることにつきましては,これまでの部会におきまして論点として提起していただきまして,これを踏まえて議論を頂戴しておりました。また,パブリック・コメントの実施中には,障害者団体の方においでいただきましてヒアリングも実施したというところでございます。今回の部会資料では,これまでの部会で頂いた意見等を踏まえまして,改めてこの論点につきまして議論をお願いするものでございます。 ○山本(和)部会長 ということで,この点につきましては具体的な提案という形にはなっておりませんので,委員,幹事から御自由に御発言を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いいたします。いかがでしょうか。 ○服部委員 第8まで議論が及んで,大変ありがたいと思っております。従前,意見書も出させていただいているところでございますけれども,私からは今回,2点に絞って意見を申し上げたいと思っております。   部会資料にも記載いただいていますとおり,パブリック・コメントでは障害者に関する手続上の配慮の規定を設けることについて積極的な意見が多く,是非何らかの規定を設けていただきたいと思っているところです。民事訴訟法の総則に規定を置くこと,裁判所に障害者に対する手続上の配慮をすべき責務があるという規定を置くことについてですが,これは,これまで運用ということで提供されてきた配慮に法的根拠を与えることとなりますし,特に障害者の側から障害特性に応じた手続上の配慮を求める場合に,その根拠規定ともなるということで,非常に重要であると思っております。   部会資料32ページでは,障害者基本法の29条で手続上の配慮の義務が国に課せられているということが摘示されておりまして,このような規定との関係についても検討する必要があるという記載をしていただいています。ここの意味合いが一義的によく分からないところはあるのですけれども,これが,例えば,障害者基本法で既に義務と定めているのに,重ねて民訴法での規定化が必要なのかという意味合いだとすれば,元々障害者基本法というのは基本原則を定める法律であって,ここで定めている基本原則に基づいて別途の法整備を行うということには特に問題がないものといえると思っております。例えば,障害者基本法の第4条に基づいて障害者差別解消法という別の法律が制定されていますように,民訴法の総則に別途の規定を設けることを制約するものではないのではないかと考えております。   また,民事訴訟手続以外の手続の関係では,もちろんそのほかの法的手続などについてもこのような総則規定が必要となってくる場面はもちろんあると思っております。それは順次,ほかの手続の関係でも御検討いただくことは可能なのではないかと。現時点で法制面の問題で,民訴法にだけ入れるということに少し抵抗があるという話かもしれませんけれども,ではほかの法律に同時に入るのかと,それか,順次適宜入れていくのかというところでの御検討を頂いた方がよろしいのかなと思っております。   また,障害者以外の者との関係についても検討する必要があるという点につきましては,これは障害者の方だけが取り上げられるということについて,それでよいのかという問題なのではないかと思っておりますが,裁判所への責務を課すということになりますと,やはり対象をある程度限定された方がよいのではないかと思っております。もちろん外国人など,ほかにも手続上の配慮を要する対象の方というのはいるのだと思いますけれども,そういう方々への手続上の配慮について法制化することについては,また改めて検討するということも考え得るのではないかと思っております。   すみません,長くなりましたが,これが1点目です。   もう1点目,意思疎通支援の補助者の立会いなどを認める規律についてでございます。部会資料には通訳人の154条について記載を頂いておりまして,この通訳の中に,通訳人に準ずるものとするのかどうか,取扱いは分かりませんけれども,ここに意思疎通支援者の立会いを認めるという規定を追加する改正などは考えられると思っております。また,以前,法155条の付添人の規定についての改正についても,提案の意見を申し上げさせていただきましたけれども,その方法も考えられると思いますし,あと,法60条の補佐人の規定の改正なども方法としては考えられるのではないかと思っております。  必要性がある者の意思疎通の補助の名目で非弁活動が行われることなどの懸念と,その排除の必要性が課題として挙げられると書いていただいていまして,私もそれはそのとおりだと思っております。   例えば,まず155条,付添人の規定ですと,意思疎通支援を要する者の付添いを認めるときには弁護士の付添いも要することとするとか,補佐人の関係では,補佐人の陳述は当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなすという規律がありますが,これを緩和するなどの方法も考えられるかと思っております。また,裁判所の御負担が増えることにはなりますが,その補佐人などで意思疎通支援として同席したいというケースの場合には,裁判所の方で事前面談をしていただいて適切な支援者であることを確認していただくということも考えられるかと思っております。この点,アルゼンチンの新民商法典で支援制度が定められているそうでして,それを参考とした対策として,今申し上げた裁判官の事前面談を必要的なものとするとか,障害特性に精通した専門家が関与して,具体的な適切な支援の内容についての意見を述べるなどの方法も考えられるということを御提案させていただきたいと思っております。また,意思疎通支援者として適切な方かどうかということについては,例えば社会福祉法人,障害者福祉団体や支援事務所などに在籍する方に限定するなどの方法も考えられるかと思っております。   すみません,長くなりましたが,以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 私も意見と,質問を一つさせていただきたいと思います。   意見については,意思疎通支援に関してです。今,服部委員の方から言及もありましたけれども,現行法の154条の1項が既に,耳が聞こえない者及び口がきけない者について通訳人を立ち会わせるとしております。その意味では,154条1項というのは既に一定の障害者の意思疎通支援のための規定になっているといってよいと思うのですが,これが知的障害や精神障害のある者については手当てを特段していないということが,現状の障害者の方に対する支援という観点から見たときに,中途半端といいますか,少し抜け落ちがあるのではないかとも感じられたところです。   問題意識として,非弁活動や障害者に不利益となる者の関与の排除が重要であるという御指摘があって,それはごもっともだと思いますが,それは,例えば規則以下の下位規範であるとか運用上のガイドラインなどで対応を考えるべき問題でもあるのかなとも思われまして,いずれにしましても,非弁活動などの排除が課題であるからといって,知的障害や精神障害によって意思疎通できない障害者について,耳が聞こえない者や口がきけない者と区別して支援者の有無に差が生じているというのは合理性を欠くのではないかと思いました。   以上が意見でございます。   もう一つ,質問ですけれども,総則的な規定を入れることに支障があるのではないかということについては,障害者基本法29条との関係が言及されておりましたけれども,そのほか,障害者に配慮することをうたう規定を入れることで,ほかの何らかの事情を持つ人,訴訟手続に当たる上で何らかの支障を持つ人に対する配慮が逆に欠けているということになるのではないかといった問題意識もあるいはあるのかなという気もいたします。ただ,これは法制上の問題なのかもしれず,私自身はぴんと来ていないところでありまして,よろしければ事務当局の方々には,障害者に配慮することをうたう総則規定を入れることがどういった,特に法制上の問題を生じさせ得るのかということについて,少し説明を補足で頂ければと思っております。 ○山本(和)部会長 それでは,最後の点,事務当局から御説明をお願いできますでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく法制上の問題,いろいろあると思うのですが,一つは,基本法で今,書かれているとおりでございますけれども,恐らく,法制としては,現行の民事訴訟法はこういった基本法も踏まえてきちんとされているものだという認識をまず,持っています。そういった意味では,第2条の裁判所の責務ですとか,あるいは当事者のそういった配慮規定といいますか,誠実義務に関するものは,そういったものに対応しているはずであるということを前提にする上で,更に上乗せして何を作るべきかということができるのかどうかという,正に技術的な問題かもしれませんけれども,そういった問題があろうかと思います。   もちろん賛成する方の立場からしますと,きちんとそういったものは明確にすべきだと意見がある一方で,いや,そういったものに対応している場合に,全てのケースについて書くのかといったこともいろいろあるのかなと思います。そういう意味では,若干の法制上,技術的な問題なのかもしれません。書くべきだという方からすれば,明確にして何が悪いのだということでしょうし,足りているのになぜ必要なのだという立場からすると,正に法制上必要なのですかということなのかと思います。   そういった面では,なかなかこの辺,どう考えていくのか難しい問題なのだろうと思いますし,私たちとしてもその辺,どこまで調整できるのかを考えていかないといけないとは思っているところでございますが,なかなかいろいろな意見があるのかなと思っています。 ○日下部委員 法制上の問題については私はうといところでして,なかなかコメントしづらいのですけれども,訴訟手続において何らかのハンディキャップを負う,そういう立場の方としては,障害者はもちろんそうですけれども,障害者ではないけれども,高齢者であるとか妊婦さんであるとか,あるいは先ほども言及がありましたが,日本語を解さない外国人の場合,あるいは短期的に傷病を持つ者なども挙げられるのかなと思います。そういった方たちについての配慮ということも必要だということなのかなと思うのですけれども,障害者の方だけを取り上げた規定を入れるということが大きな法制上の問題ということであれば,もう少し考え方の枠を広げるというアプローチもあるいはあるのかなとも思ったところです。   思い付きのような話で恐縮ですけれども,以上です。 ○脇村幹事 ありがとうございます。正に日下部委員がおっしゃっている点,私も実はいろいろ考えていたものの一つだったというのは正直申し上げるところなのですが,そういった場合に,更に言うと,どこまで書くのかという問題がまた難しくなってくるというのが,率直に申し上げて,非常に難しい,技術的な話かもしれませんが,難しいのかなと思っています。私としましては,この部会で御意見を頂いているところでございますし,また,民事訴訟に限らず,そういった方々に対する配慮の政策はやっていかないといけないというところですが,そういった中で,この訴訟法の改正の中でどういった形で実現できるのか,できないのかについて,私たちとしても考えていきたいと思っています。少なくとも,恐らくパブコメでも頂きましたし,皆さんの今頂いた御意見も踏まえて,そういったことが重要であるということ自体,私も当然,否定するものではないというか,思っておりますので,そういった受け止めをどういうふうに当局としてもできるのかについては,改めてまた考えていきたいと思っています。この訴訟法の枠内でできることがあるのかどうか,どうやってやるのかについて,なかなか私も知恵が浮かばないのが正直なところなのですけれども,少しまたお時間を頂きながら,御相談させていただきながら,在るべきものを考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。私も導入していただくべきものだとは思っております。ただ,その場合に,相手方当事者が特別な費用を負担しなければならないような事態が生じるのはまずいのではないかと考えています。障害者権利条約にあるように,手続上の配慮は国の義務でございますので,例えば,新たに入力するものはともかくとして,既に印刷されているものがPDFになっているような書面を使う場合に,それをテキスト入力するのが相手方当事者であるとか,そういうことが起きることはまずいと思っております。その点も踏まえて組み立てていただきたいと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○脇村幹事 ありがとうございます。藤野委員がおっしゃったとおり,そういった相手方の対応も含めて考えないといけないと,現行民訴法2条は信義誠実遂行と書かれていますので,そういった範囲内で無理のない範囲で何かをお願いすべきことがあるのかもしれないということは考えながら,そういったことを,法制上なのかどうかという問題はありますけれども,私たちも,すみません,うまく言えないのですけれども,考えないといけないことはよく分かっておりますので,注意していきたいと思います。 ○藤野委員 ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。私も何らかの規定が必要だと思っておりまして,今御指摘のあった様々な問題を乗り越える方法は,服部委員などから御示唆いただいたものがとても参考になるのではないかと考えているところです。   それ以外に,現状の民訴法の規定では,耳の聞こえない方であるとか,あとは口がきけない者などについて特に限定した,口頭弁論についてですけれども,規定があるところですけれども,今回,IT化というのはどうしても視覚に頼った形になりますので,目の見えない方について特に配慮した規定を置くということも一つ,方策の内容としてはなり得るのではないかと思っております。   そのように,障害の特性などに応じて何か,現状の民訴法がIT化された仕組みで可不足があるかどうかということを個々の条項について検証していただければ,総則的な規定とともに,各規定が充実したものになってくるのではないかと思いますので,是非御検討を進めていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   この論点につきましては,障害者に対して手続上の配慮が必要であるという点については,恐らく部会委員,幹事,共通の思いがあるのだろうとは認識をしております。問題は,それをどのような形で規定に表すかということなのだろうと思いまして,事務当局も今日,脇村幹事から何度もありましたが,苦慮しているところでございます。本日の部会において幾つかの有益な御提案,御示唆を頂けたかと思いますので,また部会の外でも是非御提案等ございましたら,事務当局の方にお寄せいただきたいと思いますけれども,引き続き事務当局の方で何らかの工夫,ブレークスルーができないかということは,引き続き探って検討していただきたいとは思います。   それでは,本日予定されていた議題は以上で御議論いただけたかと思います。よろしゅうございましょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。次回の日程につきましては,日時は令和3年9月24日金曜日,午後1時から午後6時まででございます。一応,法務省の場所は今,未定なのですが,もちろん皆さん恐らくオンラインだと思いますので,場所は後で一応,正式のものとしては送らせていただきますが,オンラインの御参加をお願いいたします。   次回会議におきましては,要綱案のたたき台を一部ずつ順次お示ししていくことのほか,たたき台でいきなり出すのが難しい論点につきましては別途,たたき台と別の部会資料を用意させていただくことを考えております。どういったものを用意するのかについては今,検討中でございますが,後ほど送らせていただきます。詳細については追って皆様に御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ということですので,いよいよ要綱案の取りまとめに向けた審議が始まっていくことになるかと思いますけれども,引き続き御協力のほどお願いを致します。   それでは,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第16回会議はこれにて閉会にさせていただきます。   本日も長時間にわたりまして熱心な御審議を賜り,誠にありがとうございました。 -了-