法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和3年9月24日(金)自 午後1時00分                     至 午後5時45分 第2 場 所  法務省7階 共用会議室6・7 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,所定の時間になりましたので,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第17回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は湯淺委員,衣斐幹事が御欠席ということであります。また,大谷委員,小澤委員におかれては一時中座される御予定,また,増見委員が途中から御出席の予定と伺っております。   それでは,議事に入ります前に,前回の部会後,委員の交代がございましたので,御紹介いたします。   服部委員が御退任され,新たに清水委員が御就任になられました。   清水委員におかれましては,お名前,御所属程度で結構でございますので,簡単な自己紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介について省略)   よろしくお願いいたします。   それでは,次に本日の配布資料の説明ですね,事務当局からお願いいたします。 ○西関係官 本日は部会資料23「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案のたたき台1」と部会資料24「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討1」を配布させていただいております。それぞれの資料の内容につきましては,後ほどの御審議の際に事務当局から説明させていただく予定でございます。   本日の部会から,要綱案の取りまとめに向けた御議論をお願いしたいと考えております。部会資料23は,これまでの御審議を踏まえまして,幾つかの項目につきまして要綱案のたたき台を提示させていただくものでございます。一方で,これまでの御審議の経過を踏まえまして,論点として特出しした方がよいと考えられるものにつきましては,部会資料24として別に取り上げさせていただきました。もっとも,これらにつきましては一つの項目の中で併せて御議論を頂いた方がよいものもございますので,本日の審議では,二つの資料を項目ごとに適宜行き来しながら議論をお願いしたいと考えております。   なお,今まで議論を頂いた項目のうち,今回取り上げていない項目につきましては,次回以降の会議において御議論を頂くことを予定しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは早速,審議に入りたいと思いますけれども,今,事務当局からの御説明にもありましたように,本日から要綱案の取りまとめに向けた審議に入ることになります。また,議論いただく論点も極めて多岐にわたっております。そのようなことですので,恐縮ですけれども,もし提案,ゴシックになっている部分ですね,この事務当局からの提案に対しまして反対の御意見等がおありの場合には,どのようにすればいいのか,この項目を削除するべきという意味なのか,あるいは,ここの文言をこういうふうに変えるべきだという趣旨での御反対なのか,恐縮ですけれども,可能な限りその御趣旨を明らかにしていただければと思っております。既に審議がこのような段階に入っておりますので,どうか御協力のほど,お願いいたします。   それでは,まず一つ目の論点,訴えの提起等に関連する論点についての御審議をお願いしたいと思います。部会資料では部会資料23の方の1ページ,「第1 インターネットを用いてする申立て等」,それから,部会資料24の方の1ページ,「第1 裁判所のシステム障害等に関する事項」,それから4ページの「第2 濫用的な訴えの提起を防止するための方策」がこれに該当いたします。   これらを順番に取り上げていきたいと思いますが,まず,部会資料23の第1の部分について,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 説明いたします。   部会資料23の第1の「1 インターネットを用いてする申立て等」は,中間試案の第1の1の柱書及び部会資料17の第2の1及び2の内容と同内容のものでございます。(注1)及び(注2)は,裁判所のシステムにアップロードすることができるファイル形式やファイルの容量に関する規律や提出された電子データのテキストデータの提出を求めることができるという規律につきまして,これらが技術的なものでありますことから訓示規定と考えるべきものであるというところもありますので,最高裁判所規則で定めることが適当であるということからしますと,(注)に記載するということにさせていただいております。   なお,インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合の御議論でございますが,今回の部会では取り扱わず,次回の部会で御議論をお願いすることを予定しております。   続きまして,3ページの「2 書面等による申立て等に係る電子化」でございますが,こちらは部会資料17の第1の3と同内容のものでございます。   説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,今御説明があった部分,1と2に分かれておりますけれども,どちらからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○阿多委員 先ほどゴシック部分への意見というお話がありましたが,ゴシックの本文以外で2点意見を述べたいと思います。   一つ目は,(注2)は障害者等への対応として,裁判所が違うファイル形式の提供を求めることができる旨を最高裁判所規則に設ける提案がされていますが,説明では,訓示規定であること等を理由に当事者の申立権を削除して職権発動を促す申出の扱いになっています。しかし,この提案を日弁連が積極的に行ったのは,障害を有する本人や代理人が自ら裁判所に対して手続的配慮を求めることを認めることに意味があるのであって,職権発動の促しに基づき裁判所に配慮が必要かどうかということを考えてもらいたいということではありません。当事者の申立てに従って裁判所に判断を求める場面はやはり必要だと思いますので,(注2)は規則に落とすにしても,当事者の申立権を維持していただきたいと思います。これが1点です。   二つ目は,これも法制審での議論ではなくて,内閣法制局等との間で法文化される際の問題と思いますけれども,1では法132条の10の改正として提案がされています。そうしますと,危惧するのは,民事訴訟法の中にいわゆる読み替え規定が設けられ,民事訴訟法の本則では従前の書面による提出,申述がそのまま残され,どこかで全て読み替える法律として改正され,非常に使い勝手の悪い法律になるのではないかという点です。そういう意味では,個々の場面において書面又は電磁的方法等によりというように,どういう方法によることが認められるのかが個々の条文で分かる法文にしていただきたいと思います。これは希望です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。事務当局から何かコメント等ございますか。 ○脇村幹事 脇村でございます。1点目につきましては,御意見ということで承ったというところだと思います。2点目につきましては,恐らく次回以降,いわゆる甲,乙,丙で議論していただくこととも関連するのかなと思いますので,御趣旨としては承ったという言い方はあれなのかもしれませんけれども,そういった点を踏まえながら,また次回以降の議論も踏まえながら考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。よろしくお願いいたします。2の書面等による申立て等に係る電子化の記載のことですけれども,まずは質問でございます。この(2),(3)の内容から,書面で提出した者は,裁判所によって電子化されたファイルの内容を確認しなければならないことになりますが,その方法はどのような手段が考えられるのでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,今の御質問につきまして,事務当局からお願いします。 ○波多野関係官 ここで予定しておりましたのは,裁判所に赴いていただいて,その裁判所の端末等で,どのように電子化されているかということを確認するということが考えられると考えていたところでございます。 ○藤野委員 ありがとうございました。裁判所に行って,電子化されたファイルを裁判所の端末で確認するとしたら,書面で提出した者には,端末を持っていないということもありまして,それなりの負担が生じるのではないかと思います。期日が決まっていない段階で通知があって,自分が出した書類が電子化されたものが正しいかだけを確認するために裁判所へ行くということは,少し厳しいのではないかと考えております。つまり,(3)番ですね,(1)の記録をした旨の通知を受けた日から2週間以内にしなければならない,この辺りは少し厳しいのではないかと思います。例えば,間違いがあることを知った日から2週間以内,又は,内容に間違いがないことの確認は裁判所でしていただく,それの方がよろしいのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。事務当局からもしコメントがあれば。 ○脇村幹事 ありがとうございます。先ほどの補足なのですが,確認する方法としては,まず,出した本人が確認するケースと,本人でない人が確認するケースもあるかもしれないのですけれども,もちろん本人が自分で出した書面を手元に残したまま,例えば,自分の端末を使って裁判所の方のものについて確認するということもあるのではないかとは今のところ考えていたところです。あと,おっしゃるとおり,期日を迎える前に連絡が来て,直ちに確認しないといけないというような運用を想定しているかということだと思うのですけれども,直接的には,恐らく期日前に連絡をして,何か確認してということまで想定していたかというと,余り考えていなかったのが正直なところでございまして,つまり,この規定としては置いてあるのですけれども,基本的には期日において,こうやって記録化していますということを裁判所が伝えて,そこから確認するのかな,ぐらいのイメージで考えていたのですけれども,藤野委員の御意見を踏まえながら,またほかの方の意見を踏まえながら,少し考えてみたいとは思います。 ○藤野委員 よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私からも,2の「書面等による申立て等に係る電子化」に関して申し上げたいと思います。   まず,その中の(1)のただし書では,電子的なファイルに記録することに困難な事情があるときはこの限りではないとされており,建築図面が例として挙げられていると思います。そうした書面については,提出されている紙がそのまま訴訟記録になると説明されているのですが,それについての謄写や証明書の請求があったときに想定される裁判所の対応について,意見を申し上げたいと考えてはいるところです。ただ,これは部会資料の18ページの第9の閲覧等に関する部分で改めてお尋ねした方がいいのかなと思っておりますので,また後ほど言及させていただければと思います。   もう1点ですけれども,2の(2)から(4)までの規律については,提出された書面に基づいて訴訟行為がなされたものの,その書面が適切に電子化されないまま訂正の申出期間が経過した場合に,その訴訟行為の内容がどのように定まるのかについて疑問を持っています。例えばですが,当事者が期日の1週間前に紙ベースで準備書面を提出し,それが裁判所において電子化された際に落丁を生じたものの,提出当事者がそれに気付かないままその準備書面の陳述をし,その後,訂正の申出期間が経過したという場合を考えております。部会資料5ページの上部の,「なお」で始まる段落では,その場合は電子化されたものに基づいて主張の陳述がされると考えられると説明されています。しかし,書面提出をした当事者が電子化されたものを事前に確認し,それに基づいて陳述するという保証はないように思いますし,むしろ,その当事者としては自らが提出した紙ベースの準備書面の内容を陳述することが自然かと思います。また,陳述は口頭による訴訟行為ですので,提出当事者が「提出した書面のとおり陳述します」と述べた場合には,紙ベースの準備書面の内容が陳述されたというほかないように思います。同じことは,被告が第1回期日において持参した答弁書を陳述する場合のように,電子化される前の準備書面が陳述された場合には一層明らかかと思います。   このように,訴訟行為は紙ベースの書面に基づいて行われたものの,電子化の際にそごが生じ,訂正の申出期間が経過しますと,訴訟記録が実際の訴訟行為を反映していない状態になって,後の手続の安定性を欠くことにならないか懸念しております。それを慮って,以前の会議では,訂正の申立て期間を経過したら,電子化されている訴訟記録のとおり訴訟行為がされたものとみなすといった規定を設けるべきではないかと述べたように思うのですが,今回の部会資料でもそうした規定は提案されておりません。事務当局としては,先ほど私が申し上げましたようなそごが生じた場合の問題がどのように解決されるものと考えていらっしゃるのか,お考えをお聞かせいただければと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは,事務当局からお答えを頂ければと思います。 ○脇村幹事 ありがとうございます。脇村です。なかなか難しい問題なのかなとは思っているところなのですが,卒然と私たちが考えておりますところを申し上げますと,まず,訴訟記録について基本的に電子を前提にするというのがこれまでの部会の議論であったかと私としては理解しているところでございます。恐らく,口頭でした場合にどうなのかという問題はあるのですが,そういった意味では,裁判所あるいは相手方当事者の共通の前提となっている書類といいますか記録というのは,電子化されたものなのかなと考えますと,電子化されたものに沿って陳述したということが運用としてはあり得るのではないかとは思っていたところでございます。   ただ,もちろん,今,日下部委員がおっしゃったとおり,当事者が自分の出した書類そのものに基づいて陳述したと,引用する形にした場合どうなのかという問題はあるだろうと思いますが,その辺は日下部委員がおっしゃったとおり,そういったことでいきますとそごが生じてしまうのではないか,それは立証の問題といいますか,証明の問題かもしれませんけれども,出てくるかもしれません。あるいは,これまでの議論で,システム直送なり電子による直送で相手方に準備書面を出すというようなことも提案させていただいたところでございますので,電子を前提にした運用,陳述というのがされるのが一つなのかなとは思っていたところですが,最終的にはここの場面による口頭の陳述の仕方によっても変わってくるのかもしれません。そこら辺は場合によっては私たちの方でまた考えていかないといけないのかなとは思っております。 ○日下部委員 それほど頻繁に生じる問題ではないとは思うのですけれども,十分予想される事態でもありますので,是非事務当局には引き続き御検討いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 質問になります。部会資料の4ページの2の(1)の最後の段落の「もっとも」以下の「電子化された後の記録に基づいて訴訟行為が行われた場合には,記録の訂正を許容することは適当ではないと考えられる」と記載されているところです。そういうことが妥当だと思いますけれども,そのことについて本文で要綱に記載する必要がないのかというのが1点目の質問になります。   2点目ですけれども,これは日下部委員がおっしゃられたところにも関係するのですけれども,脇村幹事がお答えになったところで,電子化に失敗して「電子化されたものに基づいて主張の陳述などの訴訟行為ができない」ということを明確に定めておく必要があるのではないかと思いました。期日で口頭での陳述も認められると思いますけれども,それを訴訟記録にするというのは,口頭弁論等の調書に記録されて,はじめてそれが訴訟記録になるのではないかと思います。ですので,期日で書面に基づいて陳述したとしても,訴訟記録にする場合には,当事者の書面がそのまま訴訟記録になるのではなく,口頭弁論調書に当該書面を陳述したということで,調書の別紙なりに添付して,その調書が訴訟記録になるという意味で,電子化された調書だけが訴訟記録だというふうに統一した方が実務の混乱はないのかなと思います。いかがでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,2点御質問ですが,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。1点目につきましては,現行法でも口頭弁論でされた,あるいは主張について,何か訂正の規定がございませんので,そういった並びで,ゴシックとしては書かなくてもいいのかなと考えていたところでございます。   2点目につきましては,恐らく,私たちが考えていましたのは,訴訟記録といいますか,準備書面自体も適切であれば訴訟記録に今でもなって,陳述前であってもある意味,訴訟記録と同じような感じだと思うのですけれども,そういった提出されたものを直ちに恐らくPDFといいますか電子化した上で,それを踏まえて陳述するということであれば,一体として訴訟記録になるのかなとは理解していたところで,そういった意味では今のゴシックで対応できるのではないかとは思っていたところです。ただ,もし何か私たちが気付いていないことがあるかもしれませんので,また教えていただければと思います。 ○大坪幹事 分かりました。 ○山本(克)委員 先ほど,藤野委員だったと思いますが,おっしゃった,2の(3)の2週間以内にしなければならないという趣旨なのですけれども,これは効力規定なのでしょうか。つまり,2週間以内にしなければ,もう訂正できないということを内容としていると理解してよろしいのでしょうか。まず,そこを確認させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○波多野関係官 関係官の波多野でございます。この2(3)で考えておりましたところは,2週間以内にしなければ,当事者の方からは申出をすることができなくなるということで考えていたところでございました。 ○山本(克)委員 ということは,効力規定ということですね。そうした場合に,別途,でも,訂正の書面をこのシステムに登録することはできるわけですね。それは2週間経過後も可能だということでよろしいでしょうか。 ○脇村幹事 脇村でございます。先生のおっしゃったとおり,別の書面をもう一回出すということも当然,可能でございますので,そういった意味で,私たちの方も,もしかしたらもう少し考えなければいけないところがあるのかもしれませんが,どちらかといいますと,期日後にやったケースのことを念頭に何となく考えていたので,先生の御趣旨だと思うのですが,期日前にやった場合について,結局出し直せばいいのではないかという気もしてきましたので,また御意見いただければ,是非お願いしたいと思います。すみません。 ○山本(克)委員 現在でも多分,準備書面を提出して期日に臨んだ後に,期日において準備書面の訂正を口頭でされるということはあり得ると思うのです。そことの違いが一体何なのかということをもう少し整理した方がいいような気もしたのですが,御検討いただければと思います。 ○脇村幹事 脇村です。私たちも場面をもう少し限定といいますか,個々の場面に応じて少し考えたいと思います。なかなか私たち,先生がおっしゃっているとおり,期日前にこれを掛けることの意味がどこにあるのかと,確かに何となく意味がないような気がだんだんしてきているところもございますので,少し改めて提案させていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 書面等による申立て等に係る電子化のところなのですけれども,要綱案によりますと,訂正を求める旨の申出は裁判所から記録をした旨の通知を受けた日から2週間以内にしなければならないと示されており,部会資料の説明によると,提出した当事者が出頭した期日の際に通知をすることが念頭に置かれていると理解をしました。そうであれば要綱案に,(1)の記録をした旨の通知は期日が設けられた場合には提出後の期日においてするものとするというように明示をしていただくことも御検討していただきたいと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 基本的なことを質問するので申し訳ないのですが,書面等による申立て等と電子化された訴訟記録とを書き分けられていますので,今回の改正が訴訟記録は電子化したものを前提にするのであれば,電子化する以前の裁判所に提出された書面等は訴訟記録を構成はしない事実上の資料であって,飽くまで訴訟記録は電子化されて以降という意味でしょうか。これが1点目。   2点目,これも基本的なことの確認ですが,弁護士サイドと裁判所ないしは法務省との理解が違う原因は,弁護士は自分の手元にある控えに基づいて陳述をしているという意識ですが,法律的にはむしろ裁判所にある訴訟記録を基づいて弁護士も陳述しているということが正確だという理解でよいでしょうか。というのは,先ほど日下部委員から書面に基づいて陳述するという言葉があったのですが,改正後はそもそも概念が残っているのかがよく分からないので質問します。陳述の対象というのは電子化された訴訟記録と理解してよいのかというのが2点目の質問です。   3点目は,いつ訴訟記録になるのかという時期について,今回(3)では,先ほど来2週間以内の訂正が話題になっていますが,この2週間というのは,そもそも訴訟記録になっているものの訂正の話なのか,2週間の訂正期間が経過して初めてそれが確定して訴訟記録になるという意味なのか,訴訟記録になる時期について説明いただけませんか。3点の質問です。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 逆から説明させていただきますと,記録になる時期については,これから議論があるのかもしれないですけれども,電子化した段階で一応はなっているという前提でいいのではないか,陳述しなかったとしても,それを前提に,いろいろ共通する資料ということになっているのではないかということで,電子化された時点で記録化されたという理解でいいのではないか,2週間経過前であってもいいのではないかと卒然と考えていたところです。   また,陳述の内容については,恐らく今の実務ではそもそも裁判所に出したものと,相手方に直送したものと,先生方が出したものがそごがあるということを前提とした議論が多分,されたことが余りないといいますか,ずれていると大変なことになりますので,余りそういった意味で区別する必要はないのだろうと思います。ただ,私たちの感覚からしますと,準備書面というのは飽くまで裁判所に提出するものだとすると,出されたものが準備書面だと思っておりましたので,裁判所に出したものが,陳述するのであれば,それが前提なのかな,相手方に送っていないといけないのも現行法どおりですので,そういったものかと思っていました。   ただ,もちろんこれまで議論がありましたけれども,出したものだとしても,出したものと記録化したこととにそごがあった場合どうするかというのが今回新たに問題となっているところだと思います。それについてどう考えるかについては,私としては,感覚的なものかもしれませんけれども,直送もシステム直送といいますかそういったもの,あるいは送達かもしれませんが,相手方に,あるいは裁判所が見るものというのは,恐らく記録化されたものが前提だとすると,運用としてはそれを前提にしているのかなということは何となく思っていたところというのは,先ほど話させていただいたとおりでございますので,そこはまた御議論があるのではないかとは思っております。   あと,電子化する前の記録については,恐らくこれまでの議論は,私は少し分かっていないところがあるかもしれませんけれども,記録の閲覧等も基本的には電子化されたものを前提にされるというのがこれまでのこの部会の流れではなかったかと思います。そういった意味では,記録自体は出された紙そのものというよりは,やはり電子化したものというのが皆さん御認識なのかなと私としては理解した上で今日,しゃべらせていただいているところが正直なところでございます。 ○阿多委員 これまでの実務では,好ましいとは思いませんが,本人も含め当日に書面を持参する場合があります。そうすると,大坪幹事も発言されている電子化する暇もない段階で期日が開かれる場合は,電子化されていないので陳述できない,次回の期日まで陳述の対象にならないということなのか,それとも,期日が開かれている以上,口頭での陳述としたとの扱いになるのか,実務の在り方に影響する話なので,どのように考えているか説明いただけませんか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。私のもしかして個人的意見なのかもしれませんが,お話しさせていただきますと,まず,準備書面につきましては,先方が受け取っていないとできないという,もちろん欠席していなければできるわけですけれども,そういった問題がありますが,恐らく運用としては,先方が何らかの形で受け取っているケースについては,その紙に基づいたことをしますということを当日されるということは,当然今後もあり得るだろうとは認識していました。そういった行為をしたケースについて,恐らくその上で,その後,書面を恐らく電子化するということになりますので,そういったことはあるのかなと思っておりまして,結果的に,そうすると結局,口頭の内容は当日出したものに基づいてしゃべったというところで,結局電子化されていないものを前提に口頭でやるということもあるのかなとは今のところ考えているところです。   先ほど申し上げていたのは,電子的にしたものを共通認識として相手方も裁判所もしているケースについては,その電子化したものに基づいてというのが運用的にはあるのかなとは思っていたところなのですが,本人といいますか,原告というか,出された方が,飽くまでこの手元にある紙に基づいて陳述したという行為ができるかどうかというのは,最終的には先方が同意したりとか,そういったことを踏まえながら考えていくのかなとは思っていたところです。 ○阿多委員 結構です。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,この部分,特に2の記録の電子化の部分について種々,実務の状況も踏まえて御意見を頂きましたので,事務当局においては更に精査をしていただいて,御検討を深めて,また次の段階の提案に活かしていただければと思います。   それでは,引き続きまして,次の論点は部会資料24の方に,恐縮ですが,移っていただいて,「第1 裁判所のシステム障害等に関する事項」,この部分を取り上げたいと思います。   事務当局から説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 部会資料24の第1について御説明いたします。   第1の裁判所のシステム障害等に関する事項の「1 裁判所のシステム障害等に係る時効の完成猶予」につきましては,時効の期間満了に当たり,裁判所のサーバ等の障害によりましてインターネットを用いた申立て等をすることができず,裁判上の請求などに係る手続をすることができない場合には,通常,民法161条の天災その他避けることのできない事変に該当するものと考えられますので,特段の規律を設けないということを提案しているところでございます。   また,(注1)につきましては,手続上の不変期間につきましても民訴法97条により対応することができるものと考えられますことから,特段の規律を設けないというものを提案しているところでございます。   本文2につきましては,インターネットを用いて申立て等をしなければならないとされた者につきまして,裁判所のサーバ等の障害が一定期間継続するようなときには,何らかの形で申立て等をすることができるようにすべきであると考えられることから,書面等による申立て等をすることができるという規律を設けることにつきまして御議論をお願いするものでございます。   説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この第1の部分につきまして,どなたからでも結構ですので,御質問,御意見を頂戴したいと思います。 ○笠井委員 1の方のシステム障害の関係なのですけれども,私はこれまで,こういう場合というのは民法161条には当たらないと理解して発言もしてきましたし,資料もそういう前提で作られていたのではないかと一応理解しているのですけれども,今回,161条の中で読めるのではないかという御提案でございます。ただ,天災その他避けることのできない事変という言葉が使われていまして,事変というのはそれなりに大きなことを何か予定したような用語ではないかなと,戦争に限りませんけれども,騒乱とかそういったものがどうしても浮かぶような用語ですので,本当にそういうふうに読めると言い切っていいのかという辺りについては,これはほかの委員の御意見も伺いたいところでございます。最後は時効消滅がされるかどうかということについての現場の裁判官の御判断だと思いますけれども,161条でそういうふうに簡単に言い切ってしまっていいのかなというのが正直,思っているところでございます。   この161条というのは,昨年の4月から施行の民法の債権法改正で2週間が3か月に長くなったのですけれども,そういう長くなったということからしても,割と大きなものを想定しているのではないかとも思えるところでございます。大は小を兼ねるというところかもしれませんけれども,これまでの議論では1週間程度,その事由がやんでから,見ればいいのではないかというのが,この裁判所のシステム障害についての関係でしたので,そういう意味で,長い期間になったというのもやや抵抗を感じるところではあります。   それから,もう1点なのですが,これは時効の関係について,こういうふうになっているのですけれども,民訴法の147条の規定で訴えの提起がされたときに,その時点で裁判上の請求があったとするというのは,時効の完成猶予のほかに法律上の期間の遵守というのもありまして,法律上の出訴期間などについて手当てをしなくてもいいのかというのが気になっております。これはやや時機に後れた発言かもしれませんが,出訴期間については,これは訴えを提起するしか方法がないわけでありまして,不変期間という言葉では読めない部分も出てこようかとも思いますので,この辺について手当てをする必要がないのかということも併せて思っておるところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 最高裁の方に質問です。弁護士としては,民事訴訟法の規定が行為規範としてどういう形になるのかということに関心があるわけなのですけれども,インターネットを用いて訴訟を提起しようとした場合に,システム障害などで訴訟の提起ができないという場合には,まずは裁判所に電話で問合せをするということになると思われます。このとき簡易裁判所であれば,口頭でそのまま訴訟の提起をしたということになるのかもしれませんけれども,それはひとまず置いておいて,何らかのシステム障害で訴訟が提起できないという問合せが当事者からあった場合に,裁判所としてはどのような回答をすることになるのでしょうか。いつからいつまで裁判所のシステムの障害があったというようなことを回答していただけるのか,あるいは,そういうことについて何らかの証明を出していただけるのか,現時点でのことになるかもしれませんけれども,裁判所としてどのようにお考えなのか,教えていただければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,最高裁判所の方でお答えいただける範囲で,もしお答えいただければと思いますが,いかがでしょうか。 ○橋爪幹事 裁判所においてシステム障害の発生が確認された場合の具体的対応についてのお尋ねかと思います。その点は,もちろん今後検討していく話ではありますが,基本的にはウェブサイト上にその旨を掲示して周知するなどといったような形で適切に対応していくことになるのではないかと思います。システム障害の証明書というようなお話もありましたけれども,仮にウェブサイト上に掲示するなどの周知措置が執られた場合については,それをもって裁判所に顕著な事実となるかと思いますので,そういう形で対応できるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 現時点ではそういうことでやむを得ないとは思うのですけれども,そもそもシステム障害でホームページを見られないというようなことも考えられるかと思いますし,代理人としては,システム障害でインターネットが使えない場合にどうしたら時効を中断できるかというところに関心が高いので,システム障害で申立て等ができない期間を明確にするなどして,障害が解消してからの申立て等でも障害のあった期間に申立て等があったものとするなど裁判所の方で対応できることがあるのであれば,わざわざ紙で提出する場合が定められなくても対応できるのではないかとも思いますので,今後御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私も1の「裁判所のシステム障害等に係る時効の完成猶予」に関して意見を申し上げたいと思います。趣旨は,先ほど笠井委員の方がおっしゃられたことと非常に近いものです。今回の部会資料では,裁判所のシステム障害を民法161条の「天災その他避けることのできない事変」として扱えば足りるという考えが示されているところで,これはそのような扱いはできないとしてこれまでなされてきた議論の前提を覆しているものかと思います。民法161条の天災というのは地震,洪水などの自然力を意味していて,その他の事変というのは暴動,戦乱など天災と同視するべき外部的障害を意味すると私の手元の解説書には記載されておりました。裁判所のシステムは,申立て等がなされる先における受入れ体制というべきもので,通常は天災でもその他の事変でもないと判断されるように思われますし,少なくとも裁判所職員に起因するシステム障害であれば,これを民法161条の「天災その他避けることのできない事変」として扱うことは無理ではないかと思われます。   部会資料の御説明を読んでおりますと,時効の完成猶予という実体法上の問題を民事訴訟法において規律することが困難であるといった御指摘もあるかと思います。その点は理解できるところです。しかし,現行法147条のとおり,いかなる時点で時効の完成猶予等に必要な裁判上の請求がなされたとするかを民事訴訟法が規律することには支障はないと思いますし,現行法の132条の10の第3項も,そのような観点からインターネットを用いた申立て等が裁判所に到達した時点を定めているものと思います。裁判所のシステム障害等の場合に,申立て等が裁判所に到達した時点のみなし規定の特則を置くことで対処することができないとは私には思われませんでした。   IT化に伴って新たに生じる問題に対処するという上では,インターネットを用いた申立て等に固有の事情を取り上げるべきかと思いますので,例えばですけれども,裁判所のシステムの障害その他電子情報処理組織において生じた申立人の責めに帰すことのできない事由により申立て等ができなかった場合に,そうした事由がなければ申立て等ができたと認められるときに,裁判上の請求がなされたとみなすという規律も考えられるのではないかと思いました。このような規律であれば,先ほど笠井委員が言及されました出訴期間の問題にも対処できるのではないかと思った次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 裁判所に質問した上で,意見を述べたいと思います。   現在の実務では,裁判所に夜間受付の窓口があって,郵便等での提出では間に合わない場合には本人や代理人は裁判所に出向いて夜間受付に提出し期間を遵守するということが行われていますが,電子化された後において,電子データでの提出が義務付けられている場合に,もろもろの事情でWEBではデータを提出できないというときは,24時間中,裁判所に出向いて裁判所に設置されている端末を使って提出することができるのか,それとも,そういうことはもうやめましょうという話で,裁判所では24時間受け付けるという扱いはなくなるとか若しくは,裁判所に設置された端末の稼働時間に制限が課され出向いてもアクセスできないことになるのか回答いただけますか。それによって2の答えが変わる可能性があります。 ○山本(和)部会長 それでは,現段階でお答えいただける範囲で,最高裁判所からお願いいたします。 ○橋爪幹事 ただいまの阿多委員の御質問は,システム自体が24時間稼働しているのかという話ではなく,裁判所の設置端末が24時間一般の方に開放しているのかという御趣旨かと思いますので,そうであれば,常識的なところからして難しいのかなという感じを持っております。 ○阿多委員 私もそう考えていたのですが,裁判所のシステム障害以外の事情で,当事者がデータ提出をできないことが起こり得るのであるならば,代替策,対応策を考える必要があると実務家としては思うわけです。その方法として,97条による解決はあり得ますが,最終的には評価が入って認められるかどうかではなく,行為規範としてこうすれば提出方法として認められるというものを明示しておく方が良いと思います。端的に言うと,書面による提出を一旦は認める方法を維持する。無効なものが有効に遡って転換することはないという理屈の問題もあるかもしれませんが,実務的な必要性からも書面による提出を一旦認める方策は維持すべきだと思います。   その他,不可抗力の概念ではこれまで議論した場面は含まれないという前提で議論をしてきたと私も考えていますし,いわんや裁判所のシステム障害以外の,インターネット環境や,当事者が支配する領域でのトラブル,例えばサーバが外部から乗っ取られた等セキュリティのレベルに関すること等余り裁判例もない状況で解釈に委ねるのは手続の安定の観点から非常に不安に思います。そういう意味で明文の規定を設けるべきだと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 先ほど来,何人かの方がおっしゃっている出訴期間の遵守の件ですが,現行法において民法161条のような事由が起こって出訴期間を遵守できなさそうな場合については,161条を類推適用するのではないかと思いますので,出訴期間うんぬんというのは理由にならないと考えます。私は,確かに161条の,今回の改正で3か月に延びてしまったというところをどう見るかというのは,やや難しいところはあるとは思うのですが,別に161条自体が,こういう電子情報システムというものが日本国民のいろいろな生活分野に大きな影響を及ぼすということを想定して作られたわけではないので,そういう新しい事態については,やはり積極的に,民法の趣旨の拡張解釈なのか類推適用なのか分かりませんけれども,それで民法で対処するということは十分可能な話だし,それが駄目だという決定的な論拠はないのではないでしょうか。従来考えていた事変というものと対比し得るようなものであれば,従来考えていた事変でなくたって拡張解釈はできるのだろうと思うので,私はもう原案どおりで結構かと思います。   ただ,2の部分についてはどのように考えるかというふうになっておりますが,それは私は積極的に考えた方がいいのではないかと,少なくともこの電子情報システムを用いた訴訟手続というのが完全に根付くまでは,やはりこういうような救済策を入れておくというのが,新しいシステムに対する国民の信頼を得る上で重要なのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○日下部委員 私からも2の部分について意見を申し上げたいと思います。   ここではインターネットを用いた申立てをしなければならない者も,その責めに帰することができない事由によりそれができない場合には,書面による申立てができるという規律が提案されています。帰責性のないものに救済を与えるという発想自体は非常に自然と思います。しかし,裁判所が自ら認めているシステム障害や,広域で発生し社会的にも認知されたインターネット障害のような場合を除き,インターネットを用いた申立てができない原因がどこにあるのかは容易に判断できることではなくて,そうした原因究明ができない申立者は,客観的には帰責性がなかったとしても,救済されないことになるのではないか,そうした場合が大いに予想されることを踏まえると,部会資料の提案にはにわかには賛成できません。   この点につきましては,先ほど阿多委員の御説明もあったかと思いますけれども,以前の部会では,特に条件を付さずに書面による申立てを認め,その後にインターネットを用いた申立てにより補正すれば,書面による申立ての時点で裁判上の請求がなされたとする規律が提案されていたかと思います。これに対しましては,部会資料の3ページの末から4ページの頭にかけて,当初の申立てが当初から適法であったと評価することはできないという考えが示されているかと思います。しかし,民事訴訟法において,インターネットを用いた申立てをしなければならない者も,後に方式面で補正されることを条件に書面による申立てをすることができると定めれば,当初の申立ても条件付で適法ということになるように思われますので,部会資料での説明はトートロジーになっているのではないかと思いました。また,実質的に見ましても,当初,書面により申立てがなされて,後にその書面と同内容の申立てがインターネットを用いてなされたのであれば,当初の申立ての時点で申立者が裁判所において請求をする意図を具体的かつ現実的に示したと十分に評価することができ,これに裁判上の請求としての効果を認めることが不合理であるとは思われません。   なお,以前の会議でも指摘したかと思いますけれども,後にインターネットを用いた申立てにより補正しなければならないのであれば,不必要に書面での申立てが横行するということも考えられませんので,実害を不安視する必要もないのだろうと思います。   こういう次第ですので,この2の部分については特段条件を設けずに,後に補正されることを条件として,書面による申立てを認め,その時点で裁判上の請求があったとみなすという扱いにすることがよいのではないかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。まず,時効の完成猶予の点に関しましてですけれども,これは最終的に民法161条の解釈をどう考えるのかという点に帰着するところで,その点についてここで何か決定するということができないという性質上,なかなか発言しにくいなという感じを持っております。ただ,このIT化の法整備というものの基本的な発想と申しましょうか意義というところが,やはりITの活用によって裁判,司法へのアクセスを向上すると,そして,ITによって利用者の利便性を向上するというところにあるというところから考えますと,システムの故障等によって手続が実際上できなくなっているという場合について,時効等で当事者に生ずるかもしれない不利益については民法161条の解釈に委ねておけば足りると,そこが確かに部会資料で御説明になっているような解釈が通用していくということであれば,それはそれで結果としてはいいのかもしれませんけれども,そこはここで決められることでないとしますと,何らかより明確な形で規定を整備できるのであれば,その方がより望ましいのではないかという感じは依然として,しているところではあります。   それから,2番目の書面による申立て等との関係ですけれども,ここは直前に日下部委員から御発言があったところにも関係いたしますけれども,3ページから4ページにかけまして,仮にその種の規律がなかった場合に,オンラインで申立てをしなければならないけれども紙を持ってきたというときの扱いをどう考えるのかということにつきまして,今回の部会資料では,少なくとも弁護士等の一律にインターネットを用いなければならないとされている者がした書面での申立てについては,事後的な補正という形は認めないという考え方が示されております。私自身は,先ほど日下部委員が言われたのと基本的に同様の考え方を従来持ってきたところでありまして,口頭での訴え提起の場合と,この書面での訴え提起というものを同列に論じる,特に口頭での訴え提起というのは従来既にほとんど使われていない制度であるのに対して,現在,書面で訴え提起するというのがほぼ全てなわけでありまして,それをインターネットでするということを義務付けるという場合に,しかしオンラインで行うことに何らか支障が生ずることの可能性と,どうしても口頭でやらなければいけない,書面を作ることができないという場合と同じような取扱いでいいのかと考えますと,ここは必ずしも同列には考えられないという意見も十分あり得るのかなと思っています。   ただ,ここも結局は,明文で決めれば別ですけれども,解釈問題ということになろうかとも思われまして,現在でも補正がなされたときに,その補正の効果が様々な法律効果の関係でどのように評価されるのかというのは,その補正の内容等にもよると考えられているのではないかと思われますので,そこは解釈に帰着するということなのではないかと思います。したがって,両論あり得るということなのだろうと考えているところです。   ただ,そこも先ほど申し上げたところにも重なりますけれども,もしそこが解釈の問題ということになるのであれば,恐らく部会資料の2で御提案いただいているように,一定の場合には書面提出による申立てができるということを明確に規定しておいた方が,規律としてはより安定的なものになるのではないかとも思われまして,したがいまして,仮に部会資料のような補正についての解釈も有力にあるのだということを前提にするのであれば,部会資料の2の提案については賛成をするべきなのかなと考えております。   ただ,考えてみますと,部会資料の2のような提案を認めた場合には,弁護士の場合でありましても,場合によっては書面による申立てが認められる場合が出てくるということになりますので,そうなりますと結局,書面で持ってきた場合には一旦それを受理した上でという取扱いが,乙案を採用した場合の当事者本人,弁護士が付いていない場合の扱いと同じようなことを想定することになるのではないかとも思われるところで,そこがどうなのかということについては,少し事務局に確認をお願いできれば有り難いと思っております。   また,併せて,弁護士がもしインターネットでできないというときに,本人の名前で書面を持ってきたら,それは受け付けてもらえるということになるのかどうかというような疑問も少し持つところですけれども,その辺りにつきましても事務局で今,御理解がありましたら,御教示いただければ有り難いと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いいたします。 ○脇村幹事 脇村です。ありがとうございます。今頂いた点,あるいはこれまで頂いた点,少し話させていただきますと,結局,次回以降ですかね,義務化をどの範囲で認めるかという議論がされることとの関連で,若干現時点では言いにくいところもあるのですけれども,一定の範囲で義務が掛かっていた場合に,なお書面による提出を認めるかどうかというのが正にここの第1の2の問題そのものなのだろうと思います。恐らく,いろいろな方がいろいろな言い方をされていますが,結局平たく言うと,無条件で書面をまず出させることを,義務化したとして,認めるかどうかという問題と,併せて,義務化した以上は一定の事由がない限りは書面,救済を置くとしても難しいのではないか,そういった議論があるのだろうと思います。   この問題に関しては、義務化を掛けるという以上は無条件による提出はあり得ないだろうと思っているところでございまして,仮に一定の条件で認めるとしても,それは義務を外すだけの例外事由が必要,例外をどこまで認めるかというのは議論があるかもしれませんけれども,あるのだということで今,書かせていただいたところです。恐らく時効との関係だけではなくて,先ほどからの議論は結局,一旦書面を提出することをまず認めるかどうかという話だと思いますので,そういった意味で部会資料は,一旦出させた上で補正するとしても,結局補正段階で,無条件で出して無条件で認めるということではなく,恐らく義務化する以上は,何か理由があるときに限って補正といいますか,遡っての効果を認めるということになるのだとすると,もう真正面からきちんと,一定のケースについて義務を外す例外を設けますかということを議論すべきではないかと思っていますし,恐らく法制上それしかないだろうと思っているところでございます。あとは,それを時効との関係だけで議論するのか,もう少し広く訴訟行為についてできるようにするという視野でいくのか,恐らく,設けるのであれば,時効も含めて広くということかもしれませんけれども,限らず,こういった例外を認めるかどうかということで,訴訟行為の例外,義務化の例外を認めるかということを議論するのだと思います。そういうところで書かせていただいているところです。   また,垣内幹事から今,では義務化したときに書面が出てきたらどうするのだという話だと思うのですが,少なくとも一定の例外ができるということになりますと,それは受けて,その例外事由があるかどうかを審査することになるのだろうと思います。もちろんこの例外を設けるという考えを前提にしますと,例外があればそのまま続行していくでしょうし,例外がなければ,それは方式外ということで却下されるのだろうと思います。2についてはそういったことで書かせていただいたところです。   あと,また付け加えますと,時効に関しては,この解釈論がどうかという非常に難しい問題なのかもしれませんが,部会資料自体は結局,公的機関である裁判所がある意味,稼働できない状況になったというときに,それは時効は止まるのではないですかと普通に思っているだけでございまして,結局,今ですと窓口が開いていれば取りあえず稼働したことになるのが,サーバが動いていないと稼働したことにならないということの差異かなというところで,結局時効の完成猶予も,裁判所が動いていないのに時効が進むということってあるのかなというのは思っていたところですが,もちろん皆さんの意見からするとそれは無理だということであれば,その前提で2を置くかどうかを検討することになるのだと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 今の御説明は御説明として承りましたけれども,代理人が本人の代わりに書面でというのは,これはどうなのかということを,少し問題としては感じたところではありますが,特に絶対コメントしてほしいということではありません。どうもありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 すみません。弁護士さんを付けたときの本人をどうするかという問題について,また次回以降,取り上げるのだろうと思います。これまでの議論からすると,一応,横並びということで,できないという方向だったと思いますが,ただ,ここで言うのが適切かどうか分かりませんけれども,訴え段階だけを考えますと,委任状を持ってこなければ弁護士さんは出てこないよなと思いましたが,運用の話ではなくて本質的にどうするかについては,次回以降また検討させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。まず,私はこの2は設けて当然と思っております。そして,1のところですけれども,これまでの御意見の中にもありましたように,さきに日下部委員がおっしゃってくださった意見に私は賛成しているのですけれども,「裁判所のシステムの故障により」という,ここのところに問題があるのではないかと思っております。私どもはインターネットがある世界に生活しておりまして,インターネットは様々な事情でアクセス障害を生じることが避けられないということはどなたも自覚していることと思います。この場合のセーフティネットを用意しておいていただかないと,安心してこのシステムを利用することができないというのが一般の考え方ではないでしょうか。よって,「裁判所のシステムの故障により」の箇所は「裁判所のシステムの故障及び何らか不可避な障害により」等,ここにしっかりそういう一言を付け加えていただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 垣内幹事からの発言に脇村幹事から事務当局の理解についての説明があった点です。私も次回の議論と思いあえて触れませんでしたが,解決の方法として,裁判所のシステム障害等の場合に限定した形ではなく,甲案または乙案に一定の例外を認めるという解決もあり得ると思います。藤野委員や日下部委員も発言していましたが,どこに原因があるのかも分からない状況を環境で切り分けるのか,個別の事情で考慮するのかルールの作り方はいろいろあると思います。そういう意味で,義務化の議論と関連して,甲案,乙案いずれであっても例外事由として整理することもあり得る,その点も付加しておきたいと思います。 ○脇村幹事 ありがとうございます。今のは,繰り返しになるかもしれませんが,恐らく御議論としては結局,第1の2は正にどういったケースについて例外を認めようかという話だと思います。この例外についても,恐らく甲案,乙案によって多少ニュアンスが変わってくると思います。資料を前提にして考えますと,恐らく,やむを得ない事由という中,例外的については,結局こういったシステム障害以外にあるのかなというふうなことは思っているところですけれども,いずれにしてもそういったことで,正に第1の2は時効に限らない問題として検討されるべき問題なのかなとは理解しておりました。   また,藤野委員からも時効についてお話がありました。なかなか民法自体がそういう様々な事情の時効の完成猶予を認めることはしていない体系になっていることもありますので,時効の枠組みとしては一律的に決まらざるを得ない面があるのかなと思います。ただ,一方で,これまで議論がありましたとおり,結局それは訴訟法上,例外を設けるかどうかという議論であれば,正に2の議論として議論していくのかなと思っているところでございますので,また次回以降,義務化と併せて議論させていただければと思っております。 ○垣内幹事 度々恐縮です,垣内です。これまで第1の2については賛成する方向の御意見を多く伺っていたかと思いまして,そのこととの関係で,1と2の組み合わせ方について若干,教えていただきたいということなのですけれども,2について仮に,ここで提示されているような,一定の場合には書面でということが認められるということになりましたときに,部会資料の2ページ辺りでしょうか,で書かれている民法161条の解釈との関係では,これはどういうふうな位置付けになりますでしょうか。非常に161条の方を厳格に考えますと,書面でできるということなのであれば,161条による対応はないということになるのかどうか,その辺りについて事務局の方で何かお考えがありましたら,お教えいただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく垣内幹事がおっしゃるとおり,御指摘の,できないと言ったとしても,例外ができるのであれば,もうできない場合に当たらないのではないかというところで,2を入れる場合には,サーバが止まっていたとしても時効の完成猶予が難しくなるというようなこともあるのではないかという御指摘かなと思って今,伺っておりました。   当局として現時点で何かあるわけではないのですが,元々部会資料を作った際には,そういったサーバが止まった以上は一時的に時効の完成認めてもいいのではないかというふうなことも考えていたのが正直なところなのですが,ただ,一方で今日いろいろな方々から,非常に難しいのではないかという御意見を頂きましたので,その意見を前提にするのであれば,それは2を認めた上で,2を採るべきだということで,時効の完成猶予を認めないという考えもあるのだろうと思います。そこは161条について厳格に解すべきという意見を踏まえれば,そういったこともあるのかもしれませんが,現時点でそれ以上のことを私たちとしては思っているところではございません。2についてどうするか,あるいは161条について厳格に解すべきという意見に従って,そういう解釈を採るということもあるのだろうとは思っているところでございます。 ○垣内幹事 御説明は了解いたしました。そうであれば,私自身は元々の事務当局のお考えのように,今時効の完成が認められるとおっしゃったのは,時効の完成猶予が認められるという御趣旨と理解いたしましたけれども,2を導入した場合でも時効の完成猶予を認めてよい場合があるのではないかという感触を持っておりますので,それが民法161条の解釈で可能だということであればそれでもよいのですが,難しいということであれば,先ほど来出ておりますように,何らか明確化するための規定を設けるということも検討に値するのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 先ほど,法律でインターネットを用いた申立てが義務付けられる者につきまして,第1の2のように一定の要件の下に書面での申立てができるということになった場合の処理についてのお話があったかと思います。その点については,個別事案に応じてのケース・バイ・ケースの話かという気もいたしますが,例えば,申立てをする人が何らの要件充足の事実を主張することもなく,書面による申立てをしてきたというような場合には,通常は裁判所から指摘をすることによって,書面での申立てというものをなかったものにして,改めてオンラインでの申立てをするということになるのかと思いますし,常に正式な申立てとして取り扱う必要があるのかは疑問を持っているということを指摘させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 先ほど垣内幹事が最後におっしゃったことと同じことなのですけれども,従前,義務付けがどこの範囲にされるかということと,時効の完成猶予の話は多分,分けて考えられてきたと思います。時効期間の末日にインターネットで出そうと思っていたら出せなかったという場面も考えるべきではないかという話で,末日に出そうと思っていたら,そのときに天災が起こった場合と同じような話になると思いますので,やはり分けて考えていただく方がいいのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかはよろしいでしょうか。   それでは,かなり賛否両論,御意見を頂いたかと思いますし,次回以降に御議論を頂く義務化の論点とも密接な関連があるということでありますので,引き続き義務化の話とも含めて,事務当局の方でお考えを頂きたいと思います。   それでは,続きまして,同じく部会資料24の4ページ以下,「第2 濫用的な訴えの提起を防止するための方策」,こちらの議論に移りたいと思います。   まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 4ページ目の「第2 濫用的な訴えの提起を防止するための方策」につきましては,認容の見込みがないことが明白な同一内容の訴えでありますとか,請求内容が不明瞭な訴えにつきまして,これまでの御議論でも,司法資源を有効に用いる観点から,何らかの手当てをする必要があるというようなところを御議論いただいたところでございます。そして,その方策としまして,本文記載の訴え提起の手数料の最低額の納付がない場合には,納付命令を経ることなく訴状却下をすることができるというような規律などについて御議論をお願いするというものでございます。   説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点につきまして,どなたからでも御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○笠井委員 もうこれは従前から申し上げていることの繰り返しになって,ある種,確認的な発言なのですけれども,今回出ている方策の中の,二つぐらい挙がっているのですけれども,前段の,例えば1,000円が納付されない場合には却下できるような規律というのは,これは従前言われてきたデポジットと同じような問題ではないかと思いまして,訴訟救助の制度との整合性が問題となろうかと思いますので,消極的に考えております。   それから,その後の,手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであると認めるときについての規律でありますけれども,原告が手続を不当に遅延させることを目的として何かすることを認定できる場合というのがそもそも想定できるのだろうかというところがありまして,6ページの(3)イの辺りに関係しますが,原告がその手続を不当に遅らせることを目的として即時抗告することを想定するのはやはり難しそうな感じがしておりまして,どうも実際にワークするのかよく分からないというところで,いずれにせよ消極的な意見を持っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 私も従前の確認的な意見しか述べられませんが,必要性について理解は示しますが,ゴシックで示されている案のままだと問題があると思います。特に,訴訟救助の申立ての有無にかかわらず,納付されない場合は一律却下というのは問題があると思います。個別の事情を考慮すべき場面があると思います。   笠井委員が御指摘の6ページの(3)では,私はウの方が気になります。訴状却下命令については,不納付の他に他の記載不備を理由にすることもあるなどの技術的な難点があるという指摘があるのですが,私のイメージは,形式的客観的に判断できる事項と記載不備等を理由とする実質的判断を必要とする事項は区別をして誰が却下をするのかという点も含め分けて記載すべきである,法技術的な観点で難点があるという部分は,だからこそ場合分けをしてシンプルに誰が訴状却下をするのかまで検討いただけたらと思います。 ○日下部委員 先ほど,デポジット案と同じではないかという御指摘もあったと思うのですけれども,私が理解しているところでは,この提案の中の「訴えの提起の手数料を納付すべきであるのに」という部分は,訴訟救助の申立てをそもそもしていない場合と,訴訟救助の申立てをして,その申立ての却下決定が確定した状態に至ったという場合と,両方を含むもので,後者の場合には訴え提起の際に当然に手数料の最低額の納付が求められるわけではないという意味で,従来提案されていたデポジット案とは異なるものだと理解しています。   その上で意見を申し上げたいと思うのですが,訴え提起が濫用的であるかどうかということを判断対象にせずに,手数料を納付すべき立場にあることが明確である,あるいは明確になったにもかかわらず,最低額の手数料も納付されない場合に限って,簡易迅速な処理をできるようにするという今回の提案の前段のコンセプトには賛成してよいのではないかと考えています。   ただし,今回の提案ですと,訴訟救助の申立てをせずに訴え提起をした者が1週間以内に手数料を納付しなければ,たとえその間に補正の促しなどが一切なくても訴状却下命令を受けることになるのですけれども,多忙ゆえにうっかり期間を渡過してしまうという原告の存在も考えますと,それは杓子定規にすぎるのではないかと思われました。最低限,補正の促しをしたにもかかわらず,一定期間が経過しても最低額の手数料も納付しないということを訴状却下の条件とすべきではないかと思った次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 脇村です。ありがとうございます。また御意見いただきまして,私たちも若干,生煮えなものを出してしまったところもあるので,少しまた整理したいと思っています。いずれにしても,今までの案で難しいという御意見が強いということは改めて今回,確認させていただきました。その上で,当局としましても,何らか一定のケースについて,簡易といいますか,認めるケースがあるのではないかということは少し考えてみたいと思っているところでございます。特に,訴訟救助をする機会を当然与えることを前提にしつつも,何も納めようとしないような人について,ほかのケースと一律に扱うかどうかという点については,これまでも少し御意見があったと思うのですが,そこは分けて考えることができるのかもしれないとは思っているところでございまして,結局そこでは補正命令の趣旨,あるいは即時抗告を認めている趣旨に遡って,少し私たちも考察しようと思っているところでございます。   具体的には,補正命令を掛けるということは,恐らく裁判所の考えは幾らですよと言った上できちんと納める機会を保障する,あるいはそのケースについて訴訟救助を申立てする機会もある程度保障することも含まれているかもしれません。また,即時抗告についても,他の理由による却下は別として,金額ベースで言えば,恐らく控訴審で、原審が納めよと言った金額なり,納めなかった金額が妥当かどうか争うことを即時抗告することで高裁で争う機会を設けるということかもしれませんが,そうだとすると,そういった趣旨が当てはまらないようなケースは,場合によっては即時抗告についても何らか例外といいますか,何らかのこともあるのかもしれません。そういったことを,補正命令なり即時抗告なりの趣旨を踏まえながら,皆様から頂いた点も踏まえて,少し考えていきたいと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   事務当局で引き続き考えてみたいという御発言であったかと思いますので,それでは,次の機会にまた,多分もう少し具体的な御提案を出していただいて,御議論いただく機会があるのだろうと思います。   それでは,引き続きまして,次は送達に関する論点について御審議をお願いしたいと思います。部会資料は23の方では5ページ,「第2 送達」のところ,それから,24の方は6ページ,「第3 送達すべき電磁的記録の閲覧等をしない場合に関する規律」,この辺りでありますが,まず,部会資料23の「第2 送達」のうち「1 電磁的記録の送達」,それから,24の方の「第3 送達すべき電磁的記録の閲覧等をしない場合に関する規律」,これは一体の規律内容に関する事柄でありますので,併せて御審議をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○西関係官 まず,部会資料23の5ページ,「1 電磁的記録の送達」についてでございます。こちらにつきましては,基本的にこれまでの部会資料における記載内容をベースにしたものでございます。すなわち,電子データの送達方法といたしましては,(1)記載のとおり出力書面による方法がございますが,受送達者がシステム送達を受ける旨を届け出ている場合には,(2)のとおりシステム送達によることが可能であるとしております。この届出をする場合には通知アドレスの届出をする必要がありまして,システム送達における通知はこの通知アドレスに宛てて行うことを想定しております。なお,今回,通知アドレスの届出をする場合に,送達受取人をも届け出ることができるものとするような規律を提案させていただいております。   このシステム送達は,送達を受けるべき者が閲覧又はダウンロードしたときに効力が生ずるということを基本としております。そこで,その送達を受けるべき者が閲覧やダウンロードしない場合にどうなるかという規律につきましては,部会資料24で取り上げております。6ページの「第3 送達すべき電磁的記録の閲覧等をしない場合に関する規律」になります。ここでは,これまで御議論いただいた内容を踏まえまして若干の修正を施しております。   まず,通知の発出から1週間の経過により閲覧したものとみなされるものではなく,端的にこの1週間の経過を閲覧やダウンロードと並ぶシステム送達の効力発生原因の一つと位置付けております。また,送達を受けるべき者がやむを得ない事由によって閲覧等をすることができない場合には,その期間はこの1週間という期間に算入しないこととして,送達を受けるべき者の保護を図っております。   以上の規律について御審議を頂ければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,以上御説明の部分について,どの点からでも結構ですので,御質問,御意見をお出しいただければと思います。 ○日下部委員 最初に2点,質問をさせていただきたいと思います。いずれも部会資料23の方に関してです。   一つ目ですけれども,部会資料23の(3)の第1文の括弧内では,「電子メールアドレス等」の説明としてインターネット等を利用する方法という限定がありますが,このインターネット等の「等」はインターネット以外の何を含意しているのか,システム送達における通知においてインターネットが用いられないことが考え難いので,お尋ねする次第です。   それから,2点目は,同じく(3)の第2文についてです。ここでは送達受取人の届出に言及されています。ここでいう送達受取人とは,従来どおりの紙ベースでの送達が例外的に行われる場合に備えたもので,従来の送達受取人と同じ者を意味しているのか,そうではなくて,本人に代わってシステム送達を受ける者を意味しているのか,その点をお知らせいただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いいたします。 ○西関係官 まず,一つ目の御質問の(3)のインターネット等の「等」でございますけれども,こちらは文言については更に検討を図りたいと思っておりますが,これからの技術の発展も見据えましてある程度幅のある記載にしようというところで「等」を設けております。現在の技術を前提としますとこれに何が含まれるのかというところを考えますと,例えばファックスですとか,そういったところが考えられるのかなというところでございますが,そういったところが通知アドレスの届出の対象となる通知アドレス,若しくはその連絡先として含まれるべきなのかというところにつきましては,御意見もございましたら頂きたいと考えております。これが1点目でございます。   2点目につきましては,システム送達を受けるに当たっての送達受取人ということになりますので,現行法の紙を受け取る送達受取人とはまた異なるものとして提案をさせていただいているものでございます。 ○日下部委員 ありがとうございました。1点目につきましては,今後の技術の発展も考えてということであれば,私からはそれ以上何か申し上げることはありません。   2点目の送達受取人については意見がございます。送達受取人の制度ですけれども,当事者が第三者の住所などを送達場所として届け出る場合に,その第三者が当事者の同居者等ではなくて,補充送達の受領資格がないときでも有効に送達できるようにするために認められているものと理解しております。これは,当事者が自らの住所等では送達を受けることに困難があって,第三者の住所等を送達場所として届け出る必要がある場合があることがそもそもの前提であるところ,システム送達のために届け出られる通知アドレスというのは,インターネットを通じて通知を受けるものですから,インターネットに接続できる限り,場所を問わずにシステム送達を受けることが可能だと思います。事件管理システムに利用登録して電子メールアドレス等を届け出る当事者については,場所を理由としてシステム送達を受けることに困難を生じることはありませんので,システム送達のための送達受取人という制度は不要だろうと考えております。仮にこれを認めますと,訴訟代理人となる資格のない者が当事者に代わって事件管理システムにログインし,システム送達を受けることを公的に認めることとなりますので,違法な非弁活動をしやすくするおそれがあるという実害も懸念されるところです。したがいまして,(3)の第2文は削除すべきであるというのが私の意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 日下部委員が質問された,送達受取人の法的性質は現行法と異なるというのが事務当局の説明ですので,現行法と何が違うのかについて説明いただいた上で議論をすべきなのかもしれません。その点は置き,現行法との関係で言うと,送達場所の届出制度の活性化を意図して創設されたものですが,電磁的記録の場合,特に(2)で複数人の届出を認めるのであれば,あえて届出先以外に送達受取人という制度を導入する必要はないと思います。現行法の解釈では,送達受取人と当事者との関係では委任契約も不要だ,一旦届出をすると委任契約も不要なわけですが,そのまま最後まで継続すると解されており送達受取人のできることが委任に比べて広い形になっています。電子化後の送達受取人に当事者と同じ地位を与えるのであれば,訴訟記録全体を閲覧できることになりかねません。   現在,日弁連は最高裁との間で本人サポートについて意見交換をしていますが,本人がウェブ手続に関与される前提でサポートについて議論している状況で,別に送達受取人が届け出ることを認めると,何をサポートするのかが非常に曖昧になると思います。電磁的記録を前提にする送達においては,あえて送達受取人という概念を設ける必要はない,逆に設けることによる弊害があり得るため,私も第2文は削除すべきと考えます。 ○山本(和)部会長 脇村幹事からコメントありますか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。一応,当局の書いた趣旨をもう少しだけ説明させていただこうかなというところで,また御意見いただければと思います。書かせていただきましたのは,結局,今の送達受取人制度,それに対する批判が多分いろいろあるとは思うのですけれども,受取人制度というのは,場所及び人を指定して,自分の代わりに受け取ってもらう人を指定できる,同居していない人も認めるということをしています。恐らくこの電子化した場合であっても,自分が紙の書類を受け取らずに,例えば電子に詳しい人に受け取ってもらって,それを届けてもらうというニーズは一定数,同じようにあるのではないかということも考えまして,そういった意味では発想としては現行と同じではないかと思いますし,結局,受取人としてできるのは受け取るだけなのですけれども,そういったことは一つ,現行で認められている範囲と同じように認めてもいいのではないかとは思っていたところで,差し当たり書かせていただいたところでございます。   恐らく今,日下部委員や阿多委員がおっしゃったのは,制度として設けるべき問題なのか,あるいは,本人サポートの話がありましたけれども,電子に詳しい人が事実上というか運用上,受け取った上で,それを伝えたり渡したりということも認めることがどうか,そちらも否定なのか,肯定なのか,少し私,そこは聞いていて分からなかったところなのですが,もしその点について何か御意見があれば,また教えていただきたいと思っています。ただ,制度を作る上では一応,今ある制度と同じように,代わりに受け取るということがあってもいいのかなというところで書かせていただいたところでございますので,また御意見を頂ければと思っているところです。 ○山本(和)部会長 それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。まず,第2の方なのですけれども,第2の1(4)に届け出られた電子メールアドレス等に宛てて発するものとするとありますが,これが当事者及び代理人双方のメールアドレスが認められる場合に,1人の当事者に対して受ける者が複数いる場合には,どちらかを優先するというような仕組みが必要ではないかと考えています。どちらかが,例えば当事者が受け取りましたけれども,それを実際に運用していく代理人の弁護士先生が知らないというようなことがないようにしていただきたいというのが一つでございます。   もう1点なのですけれども,これは資料24の第3の方なのですが,新たに作られるシステムでは,電子記録が閲覧されることは送達を送る側には分かるものと考えます。よって,その1週間が経過する間に閲覧していないことが分かるのだと思うのです。つまり,閲覧がなされていないことが分かる場合に,その1週間という期限を設けただけで,送達しているということになってしまうのはどうかと思うのです。つまり,閲覧していないと分かっているのでしたら,期限は1週間ですよとか,まだ閲覧していないようですが見てもらえませんかとか,何らかの閲覧を促すこと及び確認することは必要なのではないかと思います。別のところにもこの1週間という期限がありますが,1週間というのは長いような短いような,例えば,仮に夏休みとかを取っていて全く閲覧することがないようなことが専門の弁護士先生でも起こり得るのではないかと思うのです。やはりとても大事なことですので,この一発のルールだけで,1週間が経過したときは電子的記録の送達は,そのときに効力を生ずるという,ここのところはもう少し,ごめんなさい,どのように書けばいいかということを私,うまく言えないのですけれども,つまり,確認するということをしっかり明文化していただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。脇村幹事,今の点は。 ○脇村幹事 ありがとうございます。今,藤野委員から2点ほどあったと思うのですが,1点目の優先順位について,恐らく今でも弁護士さんが選ばれているケースについては,弁護士さんだけが届出をしていますので,その人にしか送達しない運用がされていると理解しています。ですから,そういったことも場合によってはあるのかもしれません。いずれにしても,今の現行法でも送達が本人にされてしまう,普通はされないのですけれども,されてしまうと,一応送達があったということにならざるを得ないところはあるのかもしれませんが,運用ベースなのかもしれません。少しその辺について私たちもメッセージ性を含めて,少し考えていきたいと思っています。   恐らく二つ目については,重要書類等について促すようなことをするのか,そこまで行きますと運用ベースの話なのかもしれませんが,元々の原案は,あえて見なかったようなケースも含めて,少し期限を設けるべきではないかということを書かせていただいています。ただ,先ほど藤野委員自身がおっしゃっていたように,先ほど言った運用の話が,どう書いていいのか非常に難しいところがありますので,それが運用ベースの話なのか,制度として組むべきなのか,私たちとしては,制度としてはなかなか一律,送達というのは柔軟にできるところも難しいところもあるのかなと思っておりますので,少しそこら辺は御意見を踏まえて考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 送達受取人について議論があったのですけれども,それは甲,乙,丙のどれを採るかでかなり結論が変わるような気がして,今これだけを単体で議論するのはどうなのでしょうか。つまり,全ての者について情報処理システムの使用を義務化するのであれば,私はやはり送達受取人というものを考えないとまずい場合もあるのではないか,例えば,私がすぐ思い付く例を考えますと,私の両親は両方90前後でまだ健在なのですが,それが突然,誰かから30万円支払え程度の訴状が送られてきて,どないしようと言われたら,本人のメールアドレスを教えても何の役にも立たないので,私のメールアドレスを届けるようにすると思います。そういうのまで排除されるというのは非常に困る,仮に全ての者に義務化するのであれば,そういう可能性はやはり残しておいていただかないとまずいと思います。そういうのが嫌だったらもう全部紙ベースでやるという話なら,それはそれで,そういう選択肢が残されているのだったら,送達受取人は別になくても構わないかもしれないですね。ということで,システム送達について送達受取人が完全に排除されるということについては,何かまだ納得できないものがありまして,というか,今の議論の仕方について納得できないものがありますので,どうなのかなという,私だけなのかなという気がしないではありませんが,一応そういうふうに感じたということをお知らせしておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 今の議論とは違って,部会資料24の第3の送達すべき電磁的記録の閲覧等をしない場合に関する規律なのですが,送達を受けるべき者にやむを得ない事由が生じたケースについて確認をお願いいたします。私の理解が間違っているのかもしれませんので,送達を受けるべき者からやむを得ない事由が生じていたという主張があった場合,やむを得ない事由が生じていた期間がみなし送達の効力が発生するまでの1週間の期間に含まれないと考えるだけであり,主張の期間制限というのはないという理解でよろしゅうございますでしょうか。もしそのような理解であると,例えば通信障害などによるメール不到達期間が2日あったということになると,9日の経過をもって送達の効力が発生するということになるのだと思うのですが,被告の送達を受けるべき者が,例えば4週間,何らかの事情により隔離入院をしていたようなのであれば,みなし送達の効力が発生するまで5週間を要することになると思います。それまでの間に原告は判決が確定したものとして,強制執行などの手続に着手するような事態になると権利救済に関する手当てなども考えなければいけないのかなと疑問を感じました。 ○山本(和)部会長 御質問ということですので,事務当局からお願いいたします。 ○西関係官 具体例というところで,2日ぐらいシステム障害があったときにどうなるかというところですと,小澤委員にも御整理いただきましたとおり,その2日というのが1週間という期間にカウントされない結果,9日目に送達の効力が発生するというようなことになるのだと思います。   それと,先ほどおっしゃっていただきました隔離入院というような事情があった場合には,そのこと自体が,やむを得ない事由により閲覧することができないと考えられました場合には,その期間もこの1週間という期間の経過が止まる期間になりますので,それはそれで,そういったところで救済されていくというところはあるのかとも思いますし,仮にそうではない場合としても,その問題につきましては,それで,例えば訴訟行為を行うに当たっての不変期間を徒過してしまった場合などには,別途97条の適用の関係で何かその判断をされていくということもあり得るのかなというところを考えた次第でございます。 ○小澤委員 ありがとうございました。 ○阿多委員 山本克己委員は,義務化の甲案,乙案,丙案によって答えが違うのではないかと指摘され,具体的に高齢の両親の例を挙げられました。高齢の両親についての解決方法はいろいろ考えられ,例えば,当事者アカウントにひも付けされたサブアカウントを設けて,サブアカウントを子供に付与する,ただし,サブアカウントはメインアカウントとは異なり制限された権限しか行使できない,という解決もあり得るし,そういう議論がされています。   送達受取人は,電磁的記録を受け取る場面ですが,甲案,乙案,丙案の義務化は電磁的記録を提出する場面の規律であり,送達受取人を設ければ全て解決できるわけではありません。むしろ,送達受取人を認めフルスペックの権限を付与すると,訴訟記録を自由に閲覧できることになり,弊害が生じるおそれもあります。したがって,電磁的記録の送達の場面では,現行の送達受取人をスライドして残す必要はないと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私も今の点について少し付言させていただきますと,自ら通知アドレスをチェックすることができないという高齢者などの当事者については,電子的な意味での送達受取人という制度のニーズがあるのではないかという御意見も出てくることはあるだろうとは思っていたところです。しかし,阿多委員が言及されましたとおり,そういった方に対する手当てというのは,送達受取人の制度をデジタル的に設けるということで図るべきというよりは,そうした者についてはオンライン申立てをすることそのものに支障がある者ということで,例えばオンライン申立てへの一本化の議論における甲案の状況になったとしても,例外的に紙ベースで訴訟追行を認められる者として扱うとか,あるいはオンライン申立てをするように事件管理システムに利用登録するにしても,別途検討されている本人支援,本人サポートの中で対応するということも十分解決になっているものだと思います。むしろ,システム送達のための送達受取人という制度を認めることのリスクを恐れる必要があるのではないかというのが私の考えです。   それから,別の点についてもう1点,付言させていただきますと,先ほど藤野委員の方から,当事者とその代理人が共々通知アドレスの届出をしているような場合に,システム送達のための通知を受ける優先順位を付けるという考え方への言及があったかと思います。それと関係しているのですけれども,従来,主として弁護士委員の方からでしたが,通知アドレスの届出をした者の一部のみをシステム送達を受けるべき者として届け出る制度を提案させていただいておりました。しかし,その制度については今回の部会資料の7ページでは規律として設けないこととされています。この点は,委任を受けた訴訟代理人が,依頼者である当事者に不利益が生じないようにするために提案してきたものではあるのですけれども,訴訟代理人の立場ではない方にはなかなか理解され難いのかなとも思うところです。   仮になのですが,こうした届出の制度が認められないとすると,本人から依頼を受けた弁護士の中には,通知を受けた依頼者が送達対象書類を直ちに閲覧等してしまうことで生じ得る当事者の不利益を未然に防ぐために,依頼者には事件管理システムに利用登録しないようにアドバイスするという者も少なからず出てくるのではないかと思います。そうしますと,せっかく民事裁判手続がIT化されても,依頼者である当事者がその利便性を十分に享受できないという事態も考えられるところで,そうした点を危惧しているということもございます。   したがいまして,今回の部会資料では規律を設けないという考えが示されておりますけれども,改めてこの提案については再考していただきたいと意見として申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 青木です。すみませんが,部会資料24の方に行ってしまいますけれども,閲覧等をしない場合に,通知を発してから1週間の経過によりその送達を認めることについてですが,先ほど小澤委員の方からも指摘がありましたけれども,送達を受領する機会を確保するということと,送達の効力を迅速,確実に生じさせるということの両方の要請を満たす必要があり,なかなか難しい問題ではないかと思います。部会資料の御提案については,その通知を発してから1週間が経過した場合に,例外事情が判明しなければ,その期間の経過による送達の効力を前提に手続が進められるとすれば,後から例外事由が判明して事後的に覆る可能性はありますが,一応迅速な手続の進行というのは確保されるのかなと思います。   具体的な場面,先ほど小澤委員が挙げた強制執行について考えてみると,例えば第一審判決の被告への送達で,送達の通知から1週間が経過した場合に,その後2週間が経過すれば,例外事情が判明していない限り,その判決は確定したものとして判決の確定を前提とする手続が進められ,例えば確定判決に基づいて強制執行するという場面では,執行文の付与をすることができるということになるのかと思います。他方で,被告債務者の方でやむを得ない事由により閲覧ができなかったという場合には,判決に対して控訴期間が経過していないということで,控訴を提起するとともに,執行文付与に対してはその異議を申し立てて判決の確定を争うということになるのではないかと思いました。部会資料の御提案の理解として正しいのかどうか分かりませんが,このような理解が正しいとすれば,御提案はあり得る規律ではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 恐縮ですが,送達受取人なのですが,法律外の何らかの仕組みが作られることでオーケーという議論は私はすごく抵抗を感じます。そういうことでいいのだったら,法律外で何か準備しておれば,法律で最終的なウルティマ・ラティオとしての法律上の保護がなくていいという議論は,私は少し承服し難いと思っております。そういう努力をされることについては敬意を表しますが,それがあるから大丈夫という話はいかがなものかという気がいたしております。それから,法制的に見た場合に,能力制限制度の適用を受けていない者について何らかの法制的な処理ができるのかどうかというのも私はやや懐疑的で,その辺は法制面なので事務当局の御判断の方がより重要だと思いますが,その点もやや疑問を持って,サブアドレスうんぬんという話についてはそういう疑問を持っております。   ということで,決して弁護士の先生方が危惧されている点について無視していいという趣旨ではないのですが,それだけを理由に送達受取人の制度をやめるということには抵抗を感じており,もう少し何か限定するような理屈で対応する方が,送達受取人を利用できる場合を,あるいは利用できない場合を考えるということの方が私は望ましいのではないかと思います。   それと,話は変わりますが,今,青木幹事がおっしゃった点なのですが,このやむを得ない事由というのがどこまでなのかというのは,かなり微妙な問題があるのではないのかと思います。裁判所のシステムがダウンした,あるいはインターネット自体がダウンしたというような場合は入れていいと思うのですが,個人のIT機器の故障も入るのでしょうか。その辺り,かなり微妙な問題なのではないのかという気がしています。個人のIT機器の故障は,直ちにはやむを得ない事由にならないのではないのかという気が私自身はしております。例えば,すごい僻地に住んでおられて,個人の機器が故障したら,今度新しく購入するまで,あるいは修理してもらうまで,すごく時間が掛かるというような場合はともかくとして,町中に住んでいれば,ネットカフェにでも行って確認するとか,そういうこともあり得ない話ではない。そういうやむを得ない事情の範囲について,どこまで個人的な事情が入るのかどうか,その人の特有の事情が入るのかどうかというのは,少し議論しておいた方がいいような気がします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 山本克己委員から,法律以外の制度での対応に疑問が示されました。私自身は(3)の第2文は削除すべきという提案をしていますが,別案も考えています。送達受取人を(2)で複数届け出られた当事者や代理人の中から送達受取人を選任し届け出る制度と構成すれば,その枠の中で処理ができると思います。(2)の届出とは別に送達受取人を届け出ることによって弊害が生じることを危惧していますので,解決の方法としては,「をも」の対象は(2)を前提に,その中から届け出ることにすれば法律的には残せると思います。ただ,送達受取人には送達場所の固定の議論もありますので,そういう議論も含めて中身を詰めて議論する必要があると思います。   次に部会資料24の第3の2,先ほどから議論が出ている「やむを得ない事由」という表現です。ここは送達を受け取る側の要件の問題ですが,裏返しの議論と思われる提出については,97条は「責めに帰すべきことができない事由」を要件としており,要件が異なります。この「やむを得ない事由」で2の利益を享受するのは代理人等が対象ですので,利益を享受する場面は「やむを得ない事由」と「責めに帰すべき事由」のどちらが広いのかがよくわかりませんが,山本克己委員が挙げられた,本人ないしは代理人の支配領域における事情が入らないという整理になると制限された内容になるのではないかと危惧しています。広めの適用を考えていただけたらと思います。   それと,「期間に算入しない」として期間延長の表現で提案されているのですが,実際に問題になるのは,閲覧しないうちに即時抗告期間が経過した場面であって,期間の延長がされる結果救済されるのではなく,個々の場面で救済される事情があるか否かが重要だと考えます。書きぶり,対象となる場面も含めて議論いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 送達受取人についてはいろいろ御議論があるところかと思いますけれども,少なくとも現行法の送達受取人が制度として必要とされている理由がそのままデジタルの方でも当てはまるということではないと思いますので,そこは単純にスライドさせるということではなくて,なぜそれが必要になるのか,それを置くことでどういった弊害が逆に考えられるのかということをも併せて検討いただきたいと思います。特に,デジタルの送達受取人を想定しますと,本人に代わって常に事件管理システムにログインできる状態になっていることが恐らく必要になるという意味で,従来の送達受取人とは大分意味合いが違ってくるのだろうと思っています。   それから,もう1点,部会資料24の方のシステム送達のみなしによる効力発生について,簡単に申し上げたいと思います。ここでの2の規律は,受送達者に帰責性がない間はシステム送達の効力発生に影響させないという考え方かと思いますので,それは自然ではあると思うのです。しかし,先ほど来何名かの方から御指摘がありましたけれども,何がやむを得ない事由に該当するのか,あるいは閲覧等をすることができない期間がどの程度なのかというのが個別事案における解釈,運用に委ねられるのだとすると,法的安定性の点ではどうなのだろうかという疑問を感じています。閲覧等をすることができなかった事由が受送達者の端末と裁判所のシステムを結ぶインターネット回線又はそれに付随する機器のいずこかにあるという場合に,その原因の究明は容易ではないことが大いに予想されますので,原因究明ができなかった場合の不利益を受送達者が被るという帰結を正当化できるのだろうかという点も疑問に思っています。   仮に,インターネット申立てへの一本化への点についていわゆる甲案が採用されて,かつ被告に対する訴状の送達の場面でも当然にシステム送達がなされるといった状況を想定しますと,被告に対する不意打ち防止のために,みなし効力発生の例外は極めて重要になるのだろうと思います。しかし,そのようにはならないのだとしますと,みなし効力発生の例外の必要性や重要性というのは低下しますので,その要否などは,不意打ち的にシステム送達を受ける者の不利益が発生する局面というのはどういうものなのか,その局面において既存の規定によって合理的な救済が与えられないのだろうかということを改めて具体的に考えることが必要なのではないかと思いました。確か以前の会議のときに,訴状の場合はどうか,反訴状の場合はどうか,あるいは即時抗告の対象となる決定の告知がシステム送達によってなされる場合はどうかといった踏み込んだ検討をいたしましたけれども,そうしたより具体的な検討もする必要がやはりあるのではないかと考えている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 ありがとうございます。様々頂きましたので,また今後考えていきたいと思っているところでございます。その上でですが,若干コメントさせていただきますと,先ほどから,みなし送達といいますか,につきまして,この送達期間で検討すべきなのか,次の行為で検討すべきなのかというお話も少しあったかと思います。部会資料につきましては,恐らく,その後の即時抗告とか不服申立てがないケースであっても,例えば判決の確定時期ですとか,そういう単体で問題とするケースがございますので,後の行為の追完とは別に,送達期間として作らざるを得ないのではないかと考えているところでございます。更に言えば,そこについて法的安定性をかなり求めるということであれば,恐らく例外を設けないということなのでしょうけれども,さすがにそれはやりすぎかなとは思っております。また,書き方としてやむを得ない事由という書き方が,やはり97条の追完との平仄も含めて,中身がずれてくるのではないかという御議論もあろうかと思いますので,そこについては当局としても改めて,恐らく追完とできればそろえた方がいいのではないかという議論も当然あろうかと思いますので,検討させていただきたいと思っているところでございます。   また,送達受取人につきましては,まず前提として,若干皆さんの中で受取人の行為が何か幅が広いような受け取り方をされていらっしゃる御意見もあるのか,それは恐らく,いろいろな本人サポート等で御議論されている結果なのかもしれないのですけれども,当局で出している部会資料自体だけで言えば,これは,どういうログインの仕方かどうかは別ですけれども,当該文書,つまり送達文書を見られること以外は含意は当然しておりませんので,それ以外について,この規定を置くことで,受取人としてやるということは全く想定はしていません,この規定としてはですね。もちろんこれまで恐らくいろいろな形で運用について御議論なされていることの関係で,どういった形で本人でないことのサポートをするということで,場合によっては幅広い御議論をされているのかもしれませんが,少なくともこの送達受取人の議論はそういったものとは関係がなく,直接的には送達を受け取ることを代わりにできるかということのみを制度として認めるかどうかを議論しておりますので,別に私たちとしてこれ以上のことはないのですけれども,少なくともそういう限定で受取人を置くかどうか,もちろんそうだとしても濫用されるではないかという御議論はあるのは承知していますが,当局の意見としては,飽くまで受け取ることのみを想定しておりますので,そういった前提を御理解賜れればと思っております。もちろん,その上で反対意見があるのは重々承知しておりますが,これを入れることによって,受取人が何かほかの訴訟行為をこの制度としてできるということは含意はしていません。   また,私たちが提案させていただいているのは,いずれにしても,今の法律とどうこうというあれかもしれませんが,代わりに受け取るということを認め得るのであれば,今と同じように真正面から規定を置いた方がいいのではないかという素朴な感覚から来ているものでございまして,そういったことで提案させていただいているところであります。またそういった意味で御議論いただければと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかには。 ○垣内幹事 垣内です。部会資料24の方の第3の2のやむを得ない事由の関係に関してですけれども,97条との平仄の問題等も検討の必要があるという,今,御説明も頂いたところかと思います。私自身は,これは前にも申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんけれども,97条の責めに帰することができない事由というのは,従来の裁判例等の扱いを見ますと,かなり厳格に解されてきたのではないかと思われまして,本日の部会資料24の7ページ,2(1)の第3段落でしょうか,一方でから始まる段落の初めの部分,発出された通知が到達しなかったこと等により気付かなかったというような場合につきまして,注意して3日に一遍確認していれば気付いたのだというような場合で,しかし,その通知は届いていなかったので,少しぼうっと過ごしてしまったというような場合については,従来の97条の解釈では追完を認めることは難しいのかなとも思われるところで,この場合について一定の救済を認めるべきだとしますと,やむを得ない事由,これは少し広いと私は受け止めたのですけれども,そういった要件設定の方がこの場合は適切なのではないかと考えており,本日の御提案にそういう意味では賛成したいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほか,よろしいでしょうか。 ○日下部委員 申し訳ありません。一つ,言葉の使い方に関する点で,ごく簡単にコメントさせていただきたいと思います。   部会資料23の方で,(5)イという部分ですね,システム送達の効力発生時の表現として,従来ダウンロードと呼ばれていたところが,受送達者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録した時という表現で今回は示されていると思います。この「記録した時」という表現ですと,実際に受送達者のPC内のファイルに記録されているかどうかが問題視されて,書記官が公証できないようにも読まれ得るということをやや気に掛けております。実質的には,これは裁判所側において事件管理システム上,受送達者からのダウンロードのリクエストを受けて対象データが転送されたことが確認できたときを意味すべきかと思いますので,事務当局にはよりよい表現を探ってみていただきたいと思っております。ただ,法制的に仮に現在の提案のような表現となった場合には,後に刊行されるであろう一問一答などでその意義を実質的に説明して,自分のPCには記録されていないのだという一言で送達の効力が争われて,実務が混乱することがないようにしていただきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,もう一つの送達,残っているところですが,部会資料23の7ページの「2 公示送達」,この点につきまして,まず事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 この論点につきましては,これまでの部会資料における提案から内容的な変更はございません。なお,公示すべき事項につきましては,現行法の規律等も前提といたしまして,運用上の検討課題とすることを前提としております。   簡単でございますが,私からは以上でございます。 ○山本(和)部会長 それでは,この点について御意見等があれば,お出しを頂きたいと思います。 ○阿多委員 2点あります。1点目は(2)に「(1)の公示すべき内容は,次の各号に掲げる公示送達について」としてア,イと見出しを付して書類の公示送達と電磁的記録の公示送達に分けられて記載されているのですが,訴訟記録は電子化されていることを前提にすると,書類の公示送達という見出しは適切なのかという疑問です。アは裁判所の掲示場に掲示する場合の公示送達のことかと理解していたのですが,この見出しでよいのかという質問です。   2点目は,説明の4行目なお書です。「現在の実務では,法第111条の定める事項以外についても,運用上,一定の事項について掲示がされている」としてそれらについては実務運用上の問題として整理されていますが,これまでの議論は,法111条の定める事項について限定して議論していたのだと理解しています。何を公開するのか,開示するのかということについて,法111条を受けた規則46条は,呼出状がある場合には呼出状を掲示すると定めていますが,呼出状には何が記載されているのかというと,原告,被告等当事者の名前や事件番号,事件名等が記載されており,それでは広すぎるのではないか,原告名は落とすとか,事件名は落とすとかいう議論をしていたのだと私は理解をしています。そうだとすると,定める事項以外は実務運用に委ねるのではなく,規則事項とされている掲示内容はこのままでよいのかを議論すべきであって,もっと絞る,原告名や事件名等はプライバシーの観点から外すべきではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。御質問もあったと思いますので,事務当局からお答えを頂けますでしょうか。 ○西関係官 こちらの書類の公示送達,電磁的記録の公示送達とございますけれども,こちらは送達の規律一般に言えることかもしれませんが,書類の送達というのが一定の割合で残るのではないかと考えております。といいますのは,現行法上は紙での申立てというのを前提としておりまして,それと送達すべき副本をまた紙で出して,それを送るということになっております。その枠組み自体は,今後電子化されたとしても残るのであろうと考えておりまして,その意味で書類の送達ないし書類の公示送達というのは残っていくのだろうと考えております。それと別に,今回オンライン申立て等が認められるようになり,かつ訴訟記録が電子化されるということに伴いまして,そのデータ自体を送るという場面も当然新しく想定されるということで,それを電磁的記録の送達ないし電磁的記録の公示送達と呼び習わすというような整理をひとまずここではしているところでございます。ただ,一方でこういったところにつきまして,どういった規律を設けていくかというところは法制上,なお検討しなくてはいけないところかとは思っておりますので,御意見を踏まえまして引き続き考えていきたいとは考えております。 ○阿多委員 私の理解が誤解だったのかもしれませんが,そうなると,電磁的記録で提出された場合についてはイが規定されるのであれば,裁判所の掲示場への掲示はあり得ない,常に電磁的記録の公示送達になるという理解になるのでしょうか。私は,電磁的記録を裁判所の方でプリントアウトして掲示場に掲出するのも残るのかと思ったのですが。提出自体が電磁的記録だとアという場面はなくて,アは書面で提出された場合の,なおかつ電子化されていない一定の場合という理解でよいのでしょうか。 ○西関係官 公示すべき内容というのを裁判所の掲示板に掲示するという場面もありまして,それは電磁的記録をオンライン申立てされた場合でも同じなのかなと思っております。ここでいう掲示の対象というのは,呼出しの場合はひとまず置きますけれども,公示すべき内容,要するに,いつでも渡しますので出頭してくださいというようなことを公示するということになりますので,それを裁判所の掲示板に掲示するか,それとも裁判所に設置されている端末で見られるようにするかというところは,元となった申立てがオンラインでされているか紙でされているかというところは,必ずしも関わりはないのかなと考えていたところではございます。 ○阿多委員 言葉の意味ですので,これ以上の議論は結構です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 度々。前に少しお伺いして,民法98条との関係で,裁判所に掲示する,掲示場に掲示する以外の方法でも民法98条の公示送達といえるかどうかという点の御検討をお願いしたと記憶しておりますが,その点,何も説明のところには書かれていないので,もし検討されているのであれば,その点をお教えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○西関係官 こちらにつきましては,公示送達について電子的な方法を設けた場合には,その公示による意思表示における公示にもなるのではないかとひとまず整理しておりますが,引き続き検討はしたいとは考えております。 ○山本(克)委員 御検討をお願いします。 ○山本(和)部会長 ほかに,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。これまでも出ていることなので,確認でございますが,2の(1)の「公示送達は不特定多数の者が電子情報処理組織を使用して公示すべき内容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置」ということが,インターネットを用いていつでも誰でもどこからでもこの公示内容を見ることができるということになるのですかね。そうなるということで書かれた場合に,これまで裁判所の掲示板に掲示していることとは状況が違うということは認識しておりまして,どこまで掲示するかということはプライバシー侵害にも関わることと思いますので,もう少しここを具体的に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局の方からお答えをお願いします。 ○西関係官 どのような方法でというところは,電子情報処理組織を使用してというところで,今後,最高裁規則で定まっていくところなのかなと理解しているところではございますが,一つ想定される方法としては,例えば裁判所のウェブサイトのホームページなどに何か公示すべき内容を掲示して,見られるような状態にするというようなことが,これまで想定して議論がされてきたのかなと承知しております。 ○藤野委員 その場合の内容というのが,先ほど申し上げたようなプライバシーにまで関わることであるのかという辺りはどうなのでしょうか。 ○西関係官 公示すべき内容としては,この(2)に書かれたようなものを公示するということが法律上,決まっていくということになるのかなと,その上で,それを表示するためにどういったものを記載していくのかということになるとは思います。 ○山本(和)部会長 もう少し具体的に説明していただいた方がいいのではないかと。 ○藤野委員 そうですね,お願いします。 ○西関係官 失礼いたしました。送達すべき書類をそのままの形でウェブサイト,ホームページなどに掲示をするといったことは予定されませんで,例えば判決書などが出ているので受取に来てくださいということをウェブサイト上にアップするというところなのかと思います。それは,現行法でもそういったことが裁判所の掲示板に掲示をされていまして,その掲示をする対象が裁判所の掲示板からウェブサイトになっていくということになるのかと思います。 ○藤野委員 先ほども申し上げましたけれども,裁判所の掲示板に掲示することとインターネットに上げるということは,大きく意味合いが違います。そのことは配慮して,インターネットに上げることと,裁判所の掲示板に掲示することの内容を変えるぐらいのことは必要なのではないかと思っております。以上,意見です。 ○山本(和)部会長 この点は,ずっとこの公示送達のところで問題になってきたところかと思いますので,では,脇村幹事。 ○脇村幹事 ありがとうございます。今お話しさせていただいたとおり,現行法でもそういった意味で,生の資料をそのまま出すかということで,プライバシーの問題があるかと思います。同じような配慮は当然,今回もしていくのだろうと思っています。その上で,一方で,全く何も情報がないと,これまた公示送達の意味がないわけでございますので,恐らく私たちの方としては,掲示板に掲げていることをインターネットに掲げることで,そこまで生じないのではないかという気もしているのですが,藤野委員からお話がありました,そこら辺は私たちももう少し具体的に御説明できる準備をさせていただいた上で検討していきたいと思っているところでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○山本(克)委員 今の藤野委員が危惧されていることそのものかどうか分からないのですが,以前,官報公告で破産手続開始決定を受けた者のリストをウェブにアップロードしたという事件があり,それが大きな問題になったと思いますので,あれは官報公告ですからアクセスの手段が限られていますけれども,そういうような,例えば公示送達を受けた者のリストみたいなものを誰かが編集してウェブにアップロードするというような事態というのは全く想定できないわけではない,というようなことも含めてお考えになっているのかなという気がしました。もしかしたら外れているかもしれませんが,蛇足ながら申し上げておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 同じ点で,最高裁への要望ということになるのですけれども,パブコメの意見には,「例えば自身に宛てられた訴訟の有無を検索することができるようにしておけば足り,氏名等を公示する必要はない」というような意見もあったので,そういう形で自分が訴訟の被告になっていないかを検索できるようなシステムにしていただくのがいいのではないか。さらに,システム上,他人に成り済まして検索できないようにできると,なおいいと思いますけれども,その辺を最高裁の方で規則の改正も含めて御検討いただけければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小津幹事 今,電子情報処理組織を使用した公示送達に何を掲載するかについての裁判所の見通しに関する話題があったかと思います。最高裁としては,今後,情報の悪用のリスクなどを踏まえて適切な実務運用が行われるように努めてまいりたいと考えておりますが,差し当たり現段階でどういうことを検討しているかを申し上げるとすれば,公示送達で書類を受け取るべき者が認識する必要はありますので,事件と受送達者の特定という意味で,受訴裁判所,事件番号,それから送達を受けるべき者の氏名を公示することは必須になるのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはいかがでしょうか。今の点は引き続き,規則等を含めて,検討していただくということになろうかと思いますが,公示送達の部分,よろしゅうございましょうか。   それでは,以上で送達の部分は終わりましたが,ここで休憩を取らせていただきたいと思います。20分弱ということになりますけれども,15時45分に再開したいと思いますので,それまでお休みいただければと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,所定の時間になりましたので,審議を再開させていただきたいと思います。   続きましては,部会資料23の8ページ,「第3 送付」の部分であります。この点につきまして,事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○西関係官 送付につきましては,これまでの部会におきまして,当事者間の直接の送付につきまして,裁判所のシステムを用いた送達方法を導入するということが検討されてまいりました。当事者間の直送方法につきましては現在,最高裁規則の方で定められているところでございまして,この点につきましても今後,最高裁規則において具体的な規律が定められるということが考えられるところでございます。   本文では,相手方が在廷していない口頭弁論において陳述することができる準備書面という点につきまして,システムを用いた送付方法が定められるであろうということを前提に記載をさせていただいたものでございます。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点につきまして,どなたからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。ありがとうございました。 ○阿多委員 どなたも発言されないのであれば,(注)の,みなし送付の場面を残すか残さないかと点に隅括弧が付いていますが,送付では,隅括弧なし,実際に送付を受けた場面に限定すべきだと思います。 ○山本(和)部会長 いえ,ありがとうございました。   ほかはよろしいですか。   それでは,続きまして,争点整理手続等の関連論点についての御審議をお願いしたいと思います。部会資料23の8ページ,「第4 争点整理手続等」の部分です。まず,事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○西関係官 まず前提といたしまして,争点整理手続の一本化の論点がございましたけれども,先日の会議における御議論も踏まえまして,3種類の手続を維持することを前提に,それぞれの規律について記載をさせていただいたところでございます。   まず,「1 弁論準備手続」についてでございますけれども,調査嘱託の結果等の顕出の問題につきましては,これまでの御議論を踏まえまして今回,(1)において規律化することを提案しております。(2)につきましては,一方当事者出頭要件及び遠隔地要件を見直すものでございまして,これまでの部会における提案内容と同じでございます。   次に,「2 書面による準備手続」につきましても,基本的にはこれまでの部会における提案内容と同じでございますが,書面による準備手続を行う受命裁判官の範囲につきまして,これまで判事補のみが受命裁判官となることはできないという規律を提案させていただいておりましたが,こちらは削除をすることとしております。   それと,「3 審尋」,「4 専門委員制度」につきましては,これまでと同じでございます。進行協議につきましては,これまでの部会における御議論を踏まえまして,最高裁規則において所要の見直しがされることが考えられるところでございます。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   この点,1から4まで分かれておりますけれども,どの点からでも,特に区切りませんので,御質問,御意見があればお出しを頂ければと思います。 ○清水委員 清水です。ただいまの説明の中で,受命裁判官による書面による準備手続に関する規律につきまして,今回,受命裁判官に関する他の仕組みとのバランスから,判事補のみが受命裁判官となることはできないとの規律は削除ということで御説明を頂きました。中間試案の段階では,先ほどの御説明のとおり,判事補のみが受命裁判官となることはできないとの規律になっておりまして,日弁連はこの中間試案に対して賛成させていただいております。現行法上,書面による準備手続は裁判長のみが主催できるとなっているのは,この手続が基本的に準備書面の提出のみによって争点等を整理するものであることから,円滑に行うためには一定の知識や経験が必要とされたと理解しておりまして,今回の改正によりまして,ほかの弁論準備手続が双方不出頭でウェブ会議等により行うことができることになることなどによりまして,書面による準備手続が利用される場面というのはより限定されることが想定はされます,とはいいましても,3種類の争点整理手続を置く現行法の枠組みを維持することを前提とする以上は,元々の制度趣旨を踏まえていただきまして,この部分は中間試案の段階の提案によっていただければと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 2点あります。1点目は,清水委員から発言がありました書面による準備手続です。説明では,受命裁判官に関して「他の仕組みとのバランス」が指摘されていますが,他の仕組みとのバランスを取るがゆえに,弁論準備手続との差別化,区別化がほとんどなくなるのではないかと危惧しています。以前から,弁論準備で双方ウェブでの参加を可能にするのであれば,あえて書面による準備手続を残す意味はどこにあるのかという問題提起をしてきました。部会では弁論準備手続では取調べの対象の拡大などできることを広げたわけですが,書面による準備手続は口頭弁論の準備のための必要な事項とあるので多分,できることは弁論準備手続と変わらなくて,最終的に口頭弁論に顕出させるかどうかという違いだけだと思います。   ところで,コロナ禍での書面による準備手続の運用については,双方がウェブ参加するにはこの手続しかないことから,弁論準備よりもはるかに多い,倍以上の回数で書面による準備手続が利用されています。結果,書面による準備手続には法律上の期日がないものですから,期日調書も作成されず,調書に代わるものとして協議経過表というタイトルの簡単な報告が作成され,作成者についての裁判官の名前も記載されていないものもあります。本来の公証されるべき期日ではないため,関与している裁判官や書記官の名前もなかったり,三文判だけが押されている,私の入手する限りほとんどです。記載されている内容も続行とだけというものです。そのような運用の実情を考えたときに,改正後は弁論準備手続が運用の中心になるのではなく書面による準備手続が運用の中心になりかねません。私自身は,運用で対応するというのでなくて,制度的に差別化,区別化すべきではないかと思います。   元々の書面による準備手続の議論の際には,協議を残すのか,残さないのかという議論もあって,協議がなくなれば弁論準備との差別化が可能と考えられたわけですが,協議を残すにしても,何らかの形の弁論準備手続との違いを明確にする必要があると思います。その一つにすぎませんが,手続について未特例の裁判官が関与を認めるのをバランスをとるという理由で改めるのではなく,その部分は現行を維持すべきだと思いますし,更に制度的に差別化について定めるべきだと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。脇村幹事からコメントありますか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。最終的にこの一本化は見送る方向で今,考えているところでございます。一方で,受命裁判官について判事補がなれるかどうかは,正に受命裁判官制度との関係で考えるべき問題だろうと思っています。先ほどからお話がありましたとおり,弁論準備においてもそういった規律は制限する規定はございません。もちろん運用において裁判長なりがするケースが多いということは承知していますが,そうだとすると,なぜ書面による準備手続だけそういった制限を掛けるのかというのは難しい問題があるのではないかと思っています。もちろん書面による準備手続と弁論準備手続について差別化を図るという点,そういった御議論はあると思いますが,では,なぜそこが受命裁判官のところで差別化を図るのかは私は正直,分かっていないところだと思います。そういった意味では,なかなかその点,当局としては難しい面があるのかなと思っているところでございますが,また御意見を頂ければと思います。 ○大坪幹事 書面による準備手続について判事補が受命裁判官になれるかについて私は阿多委員,清水委員の意見と反対のことを言ってしまうのですけれども,日弁連の意見は明確にその点について言及されていないところかと思いますが,争点整理については現在,司法研修所でも民事裁判の教育の中で事実認定の前提として争点整理というのを重視した指導というのがなされておりますし,実務家の研究も多数公表されていて,立法当初,平成8年の当時とは現在では大分状況が変わって,かなり争点整理についての研究が進んでいるのではないかと思います。その研究されている争点整理の実質は弁論準備手続であり,今回改正されることによって双方不出頭でも弁論準備手続で争点整理ができるということになると,先ほど清水委員もおっしゃられましたように,大部分の書面による準備手続のニーズというのが改正後の弁論準備手続に吸収されて,書面による準備手続は,刑務所などに入っている人などウェブ会議等で参加できない当事者について,辛うじて利用されるというような手続になると考えられます。   そういう意味で,実質的な争点整理をする事件は弁論準備手続に集約されていって,書面による準備手続というのは,そういう争点整理の必要のない,言わば物理的な制約のために使われるということになり,立法当初言われていたような,経験豊富な裁判官によって充実した適切な争点整理がされるということよりも,実務のニーズに応じて柔軟な対応ができるような形で,書面による準備手続が利用できる範囲を広げておいた方がいいのではないかと個人的には思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。審尋,専門委員,あるいは進行協議,この辺りも含めてということですが,特段ございませんか。 ○阿多委員 余り書面による準備手続について拘るのも恐縮ですが,脇村幹事から発言がありました,未特例か特例かでの区別は私自身も合理的だとは思ってはいません。言いたいことは弁論準備手続と書面による準備手続に制度的差別を考えるべきというものです。私自身は,先ほどの大坪幹事の発言にあった使える場面は期日を開けない,接触もできない場面を想定するのであれば,10ページのウにある協議に関する事項を削除して両者の差別化を図るべきではないかと思います。   あと,弁論準備手続について,ゴシックでない部分にあえて言及するのは時間がないところで恐縮ですが,尋問に代わる書面を排除しない理由について,説明の10ページの5行目以下で説明されています。説明中の表現ですので,あえてこだわる必要はないとも思いますが,第2文の「また」以下では,「尋問に代わる書面も客観的なものであり,法廷以外の場所で証拠調べを行ったとしても,その内容が変わるものではないという点は調査嘱託の結果と変わるものではないと思われる」と説明されていますが,客観的という用語を用いる意図が明確でありません。「法廷以外の場所で証拠調べを行ったとしても」という部分も,そもそも尋問に代わる書面は口頭弁論の期日に採用された証人の尋問を書面とするというだけであって,法廷以外の場所という説明は適切ではないと思います。尋問に代わる書面というのは言わば陳述書と同じで,事後的に作成されたものという点では,陳述書と証拠価値は変わらないものだと思っていて,陳述書が採用されている以上,こちらも仕方がないとは思いますが説明欄に記載された理由,とりわけ「仮に,何らかの弊害があることを理由に規律を置かないのであれば,本来は,事実上であってもその内容を提示等することも認められないと思われるところ,そこまでの弊害はないように思われる」との説明はあえて部会資料の訂正は求めませんが,議事録には説明としては不正確であるという点は残しておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 ありがとうございます。私ももう少し,今,先生のお話しになったことも踏まえながら,今後の説明ぶりを考えさせていただきたいと思います。いずれにせよ法律上明確にすること等をメインに私たちとしては考えていたところでございますので,それ以上のことをどこまで説明するのか,少し御意見を賜って,また考えていきたいと思います。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして,今度は電磁的記録についての証拠調べの部分でありますけれども,部会資料23の12ページ,第5の部分であります。まず,この点について事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 御説明いたします。第15回会議で御提案させていただいた内容から特段,実質的な変更はございません。   簡単ではございますが,御説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ということですので,ここも特段,区切らず,1,2,3と一応分かれておりますが,まとめて取り上げたいと思います。どの点からでも結構ですので,御質問,御意見等,御自由にお出しを頂ければと思います。   特段ございませんか。   よろしければ,次に証人尋問等に関する論点の方に移りたいと思います。部会資料23の方では,13ページの「第6 証人尋問等」というところでありまして,また,部会資料24の方では8ページの「第4 証人尋問等」,それから9ページ「第5 参考人等の審尋」の辺りがこれに該当いたします。   まずは,部会資料23の「第6 証人尋問等」のうち「1 証人尋問」,「2 通訳人」の部分と,部会資料24の「第4 証人尋問等」,これは一体になっているところですので,併せて御審議をお願いしたいと思います。   まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 まず,部会資料23,13ページの「1 証人尋問」についてでございます。こちらにつきまして,これまでの部会資料における記載内容とは変更ございません。証人の所在場所に関する規律につきましては部会資料24の方で別途,取り上げているところでございます。なお,宣誓の方法につきましては,これまで様々な御意見を頂いたところでございますので,こちらを踏まえまして最高裁規則において所要の見直しがされるということが考えられます。   それと,「2 通訳人」につきましては,これまでの部会における御議論を踏まえまして,ウェブによる通訳というものをひとまず原則的な形態とした上で,それが困難である場合には電話によってもすることができるというような規律としております。   続いて,部会資料24の方に移らせていただきまして,8ページの「第4 証人尋問等」についてでございます。こちらでは証人の所在場所に関する規律を取り上げております。ここで1及び2として掲げている要件につきましては,説明中に書かせていただいた若干の修正を施したほかは,これまでの部会資料における提案内容と基本的に変更はございません。一方で,この二つの要件につきましては,先日の会議におきまして,その関係性についての御指摘を頂戴していたところでございますので,説明中で考え方を整理させていただいたというところでございます。御意見を頂ければと考えております。 ○山本(和)部会長 それでは,この論点,これも今御説明いただいたところのどこからでも結構ですので,御指摘を頂ければと思います。 ○日下部委員 部会資料24の「第4 証人尋問等」に関して,最初に1点,お尋ねをさせていただきたいと思います。   この部会資料の9ページの(2)の直前の箇所では,「通信環境に関する要件等,本文1及び2以外の要件については,別途最高裁規則で定められることを想定している」と記載されています。これまで,法律には最高裁判所規則において定められるべき事項が幾つか具体性をもって示されている授権規定が設けられることが想定されていたかと思いますけれども,その点は従来と考えは変わっていないという理解でよろしいのでしょうか。お尋ねさせていただければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○西関係官 御指摘のところは,通信環境等に対する要件をどういうふうに設定していくかというところかと思います。いずれにつきましても,こちらは技術的な問題が含まれますので,法律というよりは規則の方で定められるべきところかとは思いますが,それの足掛かりとして何か法律の方に授権規定が必要かどうかというところは,法制上の問題として,併せて検討させていただきたいと考えております。 ○日下部委員 従来,法律レベルにおいて最高裁判所規則に授権する規定を置いて,かつ,それがどういう観点でその規定を最高裁判所規則に設けるのかというある程度の指針になることも想定されていたかと思います。場所の問題だけではなくて,通信環境そのほか適切な尋問を行うために必要な事項というのはいろいろあると思いますので,どういったことを最高裁判所規則で定めるのかという点については,法律レベルでも明らかにした方がよいと考えておりますので,御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 質問です。部会資料24の8ページの第4の2の「裁判所が証人の陳述の内容に【不当な】影響を与えるおそれがあると認める者の在席する場所でないこと。」における「認める者」について,説明の2(1)の第1段落の最後の括弧書きに,「なお,本文1の要件の位置付けをこのように整理したことに伴い,当事者の親族や従業員については本文1の規律の対象から除外している。」と記載していますが2の対象になるという意味でしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局から御説明をお願いします。 ○西関係官 こちらにつきましては,1の要件とはまた別途の考慮として,何かその証人に対して影響を与えるような可能性があると判断される場合に,その方の同席を制限するというような形になるかと思いますので,もし具体的事情の下で,例えば当事者の親族などがそういったおそれがあると判断される場合には,そういった者が同席しないということが要件の一つとして要求されるということになるのかなとは考えております。 ○阿多委員 そうしますと,1と2が完全に区別されているという前提になったときに,当事者本人が同席することによって証人に対する影響がある場合で,1の括弧の要件が外れるときには,当事者本人は2では読めないという前提でよいのですか。最初から切り分けられていることになるのでしょうか。 ○西関係官 1と2は別途の要件であるというふうにひとまず整理はさせていただいたところでございますが,説明のところにも少し書かせていただきましたとおり,例えば,相手方当事者に異議がない場合で,1の要件には掛からないという場合であっても,その当事者が裁判所の目から見て何か証人に対して影響を与えるおそれがあると判断される場合には,2の要件を満たさないというような形で,その当事者の同席というのはやはり御遠慮いただくという場面はあり得るのではないかと考えております。したがいまして,2の要件から,当事者というものが必ず除外されるということにはならないのかなとは整理していたところでございます。 ○阿多委員 分かりました。そういう読み方をするのであれば結構です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 部会資料24の第4の証人尋問のところでございますが,証人の所在場所に関する規律として2が明記されると,どのような者であっても同席していたら,相手方から同条を根拠に証人尋問を行うことを拒む主張がなされるのであろうと想像しておりまして,そうしますと,そのような主張があった場合にはほとんどにおいておそれありと判断され,証人はウェブ環境の整った個室に1人で対応しなければならないことになるのではないかと思っております。しかしながら,そのような対応がそぐわないケースというのも実際には一定数,あるのではないかと考えています。   パブコメに寄せられた意見を振り返りましても,証人との同席が相当でない者は具体的事実によって異なって,画一的に規律することは困難であるから,明文の規律は設けずに,裁判所の裁量的判断による旨の規律を設けるべきであるとの意見が出されておりまして,2のような規律を設けることへの懸念が示されていると理解しています。   部会資料中の説明においても述べられておりますとおり,民事訴訟が公平に行われるべきことは当然でありますので,そのような趣旨の規律をあえて設けることにより,逆に柔軟な対応ができなくなるおそれを生じさせることは避けた方がよいのではないかと考えています。したがって,前回と重複した意見で恐縮ではございますが,2のような個別具体的な規律は必要ないという意見であります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 質問です。今の小澤委員,その前の阿多委員の発言にも関わるところなのですけれども,部会資料24の第4の本文の2のところで,この本文の2と民事訴訟法203条の2の付添いとの関係はどのように整理すればいいのか。確認なのですけれども,203条の2で付添人が認められる場合があって,そういう場合は部会資料24の第4の2には該当しないということでよろしいのでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○西関係官 付添いは203条の2で一定の要件の下に認められるものでございますが,その中に陳述の内容に不当な影響を与えるおそれがないというところが要件として入っているように思われます。なので,203条の2の中で付添いというのが認められるのであれば,基本的にはこの部会資料に書かせていただいた2の要件というのは満たさないといいますか,抵触するということにはならないのではないかとは思います。 ○山本(和)部会長 大坪幹事,よろしいですか。 ○大坪幹事 取りあえず,分かりました。 ○山本(克)委員 私は,先ほどの小澤委員の御発言の趣旨を少し計りかねているところがあり,裁量的判断に委ねるといっても,裁量的判断の根拠は訴訟指揮権にあるのでしょうか。訴訟指揮権の発動を法廷外のところにどうやって及ぼすかという問題があるわけで,だからこそこの規定が必要だと私は認識しておりました。訴訟指揮権の中でも法廷の秩序維持権みたいなものですね,それの根拠はやはり必要なので,だからこそこの規定があるのだろうと思います。それで,【不当な】を残すべきかどうかなのですが,私はこれは,不当かどうかというのはやってみないと分からないところがあって,やってしまった後で不当であることが分かっても手後れなので,余り不当性というものを強調すべきではなく,削除が相当であると考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐々木委員 佐々木です。今回の部会資料24の第4のところでは,親族や従業員については本文1の対象から除外しているということなので,当事者の従業員の同席ということについては,影響を与えるのか,不当な影響を与えるおそれがあると認められるかどうかというところになるのだと思うのですが,親族に関してはそれでいいのかと思いますが,従業員については当事者本人と余り変わらないところがあるのではないかと思いますので,従業員の同席に関しては元に戻すような,要件1に入れていただいてもいいのかなと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 1や2のような規律を設けるのか,裁判所の裁量の幅を広くするのかという考え方の違いは残ってはいるのだろうとは思うのですけれども,差し当たり今,提案されているとおり,1,2のような規律を設けるということを前提として,【不当な】という言葉を残すべきか,削除すべきなのかという点について意見を申し上げたいと思います。   先ほど大坪幹事の方から付添人についての言及もありましたけれども,例えば,証人が子供である場合や精神障害や知的障害を持つ者であるという場合には,その傍らに親や意思疎通の支援者が付き添って,証人が証言することを補助する必要があるということが考えられるかと思います。現行法の203条の2の付添人の規定に照らして言えば,陳述の内容に不当な影響を与えるような言動をしてはならないということで,制度的に不当な影響を与えることはないのだというように一応整理され得るとは思うのですけれども,仮に今問題となっている2の規律の中から【不当な】という部分を取ってしまいますと,どのような者であれ影響を与える者は在席することができないということになってしまい,付添人が付くということ,あるいは付添人ではない者でも何らか影響があるということであれば,それが適切な証言を得る上でよい影響をもたらす者であったとしても同席できない,在席できないということになりかねないように思いましたので,私は【不当な】という言葉は残しておいた上で,【不当な】に当たるかどうかの判断は裁判所に委ねるという扱いでよいのではないかと考えました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 今の【不当な】の件で,これは私がやや卒然と発言したことを取り入れていただいて,隅付きにしていただいたと認識しているのですけれども,私自身はやはり,よい影響か悪い影響かというようなことではなくて,事実を語るのが証人だと思いますので,【不当な】というのが入っていることには抵抗を感じております。203条の2との関係は確かに問題となりまして,かつ,恐らく元々【不当な】というのが入っていたのは203条の2第1項が参考にされているのだろうと想像しているのですけれども,203条の2の場合について例外として考えればいいのではないかと思いまして,そういう意味では,それについて規定が要るかもしれませんけれども,203条の2と,これは【不当な】がなくても両立するのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに御発言はございますでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。今の【不当な】の点につきましては,確かに証人に求められることは事実,真実を述べるということですけれども,しかし,証人に与える影響について,余り上品な言葉ではないかもしれませんけれども,この人の前ではうそはつけないなというような影響であるとか,安心して本当のことを言えると感じるといったような影響ということも,影響という中には含めて考えることもできるように思われまして,しかし,そういう場合に,そういった影響があることを理由として在席を排除するということが適切なのかというと,そこは必ずしもそうではないのかなという感じもいたします。実質について余り対立があるのかというのはよく分からない感じもいたしますけれども,そういう意味では【不当な】という文言を残しておくということの方が,私としては現時点では適切かなと感じるところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 私は,繰り返しになりますが,笠井委員のおっしゃることが非常に説得力を感じました。やはり証人というのは知っていることをしゃべることを期待されているわけですので,影響のない状態で知っている範囲でしゃべるということを求められているのだろうと思いますし,203条の2の,これは付添いを認めた以上は,仮に不当な影響を与えるとしても,それはしようがないということを法律が認めているわけなので,付添人として認められた者の在席が駄目だなんていうことは,この2の方からは出てこないのだろうと思います。これも笠井委員のおっしゃるとおりだと思います。それで,この人の前なら安心してできるというのであれば,そういう人は付添人とすべきであって,それをあえて【不当な】と,そういういい影響というか,証人が真実を述べやすくするような者の在席をこれが邪魔するというよりは,むしろ付添人の方の解釈として広めに取ればいいだけの話のような気もいたします。   ですので,私はやはり不当かどうかということの判定というのが,事前に判断することはかなり難しいということ,それから,影響を与えるおそれがあると認めるというのは,かなり幅広い緩やかな概念というか,きちんと要件設定がされているわけでもなく,具体的な規定というふうに先ほど小澤委員かどなたかがおっしゃいましたが,こんなのは具体性は全然ないので,ある程度の裁量の幅というのは裁判官に保留されていますので,ある面では運用に委ねられる部分もあると思いますので,私はそれほど【不当な】を取ったから危険だとは考えておりません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   事務当局から何かございますでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。脇村です。また御意見いただきまして,規則事項にするかどうかも含めてどこまで,この【不当な】についても少し考えていきたいとは思っています。恐らく,【不当な】を入れる御意見というのは,裁量性があるにしても,影響がある一事をもってはじくべきではないという発想からすると,何かよすがが必要ではないかということでしょうし,【不当な】を入れないという方であったとしても,正に山本克己委員がおっしゃったとおり,ケースに応じて対応するということでしょうから,その辺,文言を入れるかどうか,法律事項かどうかという問題もありますけれども,併せて少し考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 それでは,この部分,よろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして,今度は部会資料24の9ページ,「第5 参考人等の審尋」,この点について御審議をお願いしたいと思います。まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 部会資料24の9ページ,参考人等の審尋についてでございます。こちらにつきましては,参考人等の審尋の簡易な証拠調べとしての位置付けに着目いたしまして,電話会議によることを認めるということを提案させていただいております。その当否につきまして御意見を頂戴できればと考えております。   簡単でございますが,私からは以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして,どなたからでも結構ですので,御質問,御意見等を頂ければと思います。 ○阿多委員 従前からの意見の繰り返しですが,簡易な証拠調べといえども,この規定に基づいて労働審判等の場面では,証人尋問に代わるものとして使われていますので,音声の送受信により同時にというのではなくて,映像も含めたものを要求すべきだと考えますので,映像を前提にする表現に改めていただきたいと思います。 ○日下部委員 今,阿多委員の方から御意見があったのですけれども,私の意見は近いといえば近いのですけれども,少し異なっています。部会資料の10ページを拝見しますと,法187条が定める参考人等の審尋は簡易の証拠調べとして位置付けられているとして,それゆえに電話会議の選択肢を法文上,排除するまでの必要はないのではないかという考えが示されているかと思います。しかし,現行法187条は2項において,相手方がある事件については当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日において審尋しなければならないと規定して,相手方がある事件については,通常の証人尋問等と同様に,期日において取調べをしなければならないとしているところです。そうであれば,遠隔地に所在する参考人等との通話も,相手方がある事件については通常の証人尋問等と同様に,映像及び音声の送受信を必要とするとすることが現行法の考え方に整合的であって,適切ではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私は,この原案どおりでいいのではないかと思っている立場から発言いたします。   運用としては映像を含めた審尋の方法になるということが多いのだろうと思いますけれども,法制度として音声のみを禁ずる必要性まであるかというと,これはやはり事案次第ではないかと思いますので,今の日下部委員の御発言を踏まえても,相手方が認識できるということは音声でも十分にあるということはできますので,音声のみでもいいことにしていいのではないかと思っております。なお,民事保全の要審尋事件での審尋でもこの辺の議論が影響してき得るところでありまして,民事保全で保全命令を発するのに,要審尋事件で,では絶対に映像がないといけないかというと,そういう事案ばかりとは限らないというところもあります。そういったところにも影響するところですので,音声のみでいいのではないかということを申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 前回,簡易裁判所において電話会議を活用してほしいという意見を述べたことにも若干通じるかもしれませんが,コロナ禍においてリモート化が進んだと申しましても,一般の方ではウェブ会議をする環境が整っていない方も多くいらっしゃるのが現実だと思います。ウェブ会議での参加を必須としますと,そのような方は現実に出頭するほか選択肢がないことになり,IT化による利便性を享受することができないということにもなりかねません。もちろん,ウェブ会議であれば裁判所は映像による情報も得ることができますので,原則論としてウェブ会議による参加が望ましいことは当然だとは思いますが,しかし,参考人の審尋などのように簡易な証拠調べであれば,電話会議で音声による情報収集のみで差し支えないと考えられるものについては電話会議による参加を認めることが相当であると考えますので,この提案の内容に改めて賛成します。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございますでしょうか。よろしいですか。   事務当局から何かあれば。 ○脇村幹事 恐らく運用ベースで話をすれば,ウェブができるケースについてはウェブをした方がいいではないかということ自体は,恐らく皆さん一致しているのかなと思っています。あとは例外的にというか,音声を必ず排除しないといけないのかというところだと思いますので,当局の立場は,部会資料といいますか,ほかの法制,ほかの手続の代表例の非訟ですとか家事とかとのバランスを考えて,そこまでしないといけないのかなというのは素朴に思っているところでございます。改めてそういったことを踏まえながら検討していきたいと思いますが,どうなのですかね,その辺が少し,決めの問題といえば決めの問題なのでしょうけれども,絶対できないとすることにはやはり若干のちゅうちょは当局的には覚えるのが正直なところなのですが,また御意見いただきながら考えて,そろそろ決めないといけないのでしょうけれども,考えていきたいと思います。すみません。 ○山本(和)部会長 ほか,よろしいでしょうか。予想どおりに御意見が分かれたというところかと思いますが,更に引き続き事務当局としても検討していくということであります。   よろしければ次の論点に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,その他の証拠調べ手続に関連する論点ということになります。部会資料でいいますと,23の方は14ページの第7ということになりますし,部会資料24の方にも10ページに「第6 ハイブリッド方式による証拠調べ」というものがあります。順次取り上げたいと思いますが,まず,部会資料23の第7のうち「1 鑑定」,「2 検証」,「3 裁判所外における証拠調べ」,これらの点について御審議をお願いしたいと思います。   事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○西関係官 部会資料23の14ページ以下でございますが,「1 鑑定」,「2 検証」,「3 裁判所外における証拠調べ」,こちらのいずれにつきましても,これまでの部会資料における提案内容と基本的に変更はございません。なお,この3について,裁判所及び当事者双方が映像と音声の送受信により相互に認識しながら通話することができる方法というふうにこれまでの部会資料でしておりましたところ,今回,裁判所及び当事者双方がという文言を取っておりますが,内容について特段変更を加える趣旨ではございません。   説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,これらの点,これもどの点からでも結構ですので,御質問,御意見等があればお出しを頂きたいと思います。 ○日下部委員 詰まらない点なのかなとも思うのですけれども,1点,質問をさせてください。   部会資料の15ページ,2の検証の部分です。その中の第2段落では,「映像と音声の送受信により検証の目的の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法」とされています。ここで「相互に」というのが何を意味しているのか,特に検証の目的が自然人でない場合には不可解だなと思いました。過去の部会資料を再度見てみますと,部会資料20の時点ではこの「相互に」は含まれていなかったところかと思います。これは,検証の目的の所在場所に誰か自然人が所在して検証の実施を補助することが当然であるので,「相互に」をあえて入れたのかとも思ったのですけれども,その理由を事務当局の方から御説明いただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えいただきたいと思います。 ○西関係官 御指摘ありがとうございました。こちらにつきましては,検証の目的が対象になりますので,御指摘のとおり,認識という行為が相互にされるということは基本的にはないのかなというところでございまして,こちらは誤記でございます。大変失礼いたしました。 ○山本(和)部会長 御指摘ありがとうございました。   それでは,ほかにありますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,今度は部会資料24の10ページ,「第6 ハイブリッド方式による証拠調べ」について取り上げたいと思います。事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 ハイブリッド方式による証拠調べにつきましては,その法的な位置付けをめぐりまして,これを口頭弁論の期日における証拠調べであると捉える考え方と,裁判所外の証拠調べの手続であると捉える考え方の双方が出されたところでございます。ここでは後者の考え方に従った提案をさせていただいているところでございますが,改めて御意見を頂戴できればと考えているところでございます。   簡単でございますが,以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   それでは,この論点につきまして御質問,御意見をお出しいただければと思います。   いかがでしょうか。この沈黙が何を意味するかということですが。 ○日下部委員 どなたも御発言されないと,少しあれだなと思いましたので,手を挙げさせていただきました。部会資料での御提案は,ハイブリッド方式を裁判所外の証拠調べと位置付けるものですが,以前にも御紹介させていただきましたとおり,日弁連の意見はこれを口頭弁論と位置付けるべきというものでございます。   部会資料での提案の問題点として,私からは,ハイブリッド方式による証人尋問をする場合の要件について,そこに絞って意見を申し上げたいと思います。   部会資料の御提案では,ハイブリッド方式による証人尋問は合議体である裁判所が主宰するもので,ただ,そのうちの一部が証人の所在場所とは異なる場所で手続に参加するという整理になっているかと思います。そのため,受命裁判官又は受託裁判官が裁判所外で証人尋問をする場合の規律である法195条とは手続を主宰する主体が異なるので,195条の厳しめの要件とは関係なく,法185条の要件と同じ要件でハイブリッド方式による証人尋問ができることとしているものかと思います。しかし,合議体の裁判官全員が法廷にいる場合に,遠隔地に所在する証人を取り調べるための法204条の要件は厳しいものでして,また,証人の所在場所において受命裁判官が取り調べるための法195条の要件も厳しいものであるのに,その中間に位置するハイブリッド方式による証人尋問となると急に,相当と認めるときというだけの要件となるということは,現行法が185条の特則として195条を定めている趣旨と整合しないのではないかと思われました。仮にハイブリッド方式の証拠調べについて,部会資料のように法185条の裁判所外の証拠調べの亜種として規律するにしても,ハイブリッド方式の証人尋問については,現行法と同様に195条の亜種として規律することも考えられるのではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに,いかがでしょうか。 ○脇村幹事 当局として一応発言した方がいいのかなと思って,挙げさせていただいたのですが,正直な点を申し上げますと,非常に難しい問題だと思っていますのが正直なところです。185条に位置付けた際にどう要件を付けるのか,非常に難しい問題だろうと思っておりまして,部会資料に書かせていただいているとおり,裁判所の全員で行ったケースとの差別化として,加重するような要件を作れるのかどうかというのは,非常に難しい問題なのかなと思っています。もちろんそれが195条,あるいは204条との関係でどうなのだという御指摘については,逆に言うと,その点も,正直言いますと,相応に考えるべきことだということも思っておりまして,そういった意味で,当局として今出せる案としては,バランスを考えると,もうこれしかないのかなとは思っているのが正直なところですが,お前は自信があって言っているのかと言われると,また難しいところでございまして,すみませんということを言いたかったというだけです。すみませんでした。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 当局のお悩みは理解した上での発言です。質問というか,趣旨を確認したいのですが,11ページ,2の第2段落の末文に括弧で,法廷外で関与した裁判官も裁判所外で心証を得ることになると解されるが,そのようなことは難しいと思われる,として心証を取るのがどの場所かが理由で204条というか口頭弁論における尋問では無理だと説明されているのですが,そういう法原理がそもそもあるのかについて,事務当局か研究者の方に教えていただきたいのですが。証拠調べをしている法廷で心証を取るわけですが,それ以外の場所でも心証形成することは当然ありうる,例えば裁判官室の中で合議をしていてということもあるでしょうし,いろいろな場面で心証は形成されると思うのですが,なぜ裁判所外で心証を得ることになると解することが理由で駄目なのかがよく分からないのです。証人尋問の場合,証人が法廷外に所在していることは204条のルールがあって,あとは裁判官が法廷にそろっているか,1人か2人が現地に赴き不在かという違いだけであって,204条のバリエーションで考え得ると思いますが。括弧の理論的な背景について紹介いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 山本克己委員は,この点についてでしょうか。 ○山本(克)委員 はい,そうです。弁論準備手続の場合に裁判官室で文書の証拠調べができるわけですよね。その辺りとの整合性が,今,阿多委員が御指摘になった記述について,整合性はどうとられているのだろうというのは,簡単に思い付く点では,そういう疑問を感じました。 ○山本(和)部会長 事務当局の方から御説明を。 ○脇村幹事 ありがとうございます。言葉足らずで,感覚的な表現になるかもしれないのですけれども,基本的に裁判所外のケースについて,裁判官がそこで取ったものを,心証を取るというか,そのまま証拠にしていいかどうかということをいうと,難しいのかなというのが今,私としては考えていたところでございまして,そうしますと,裁判所外ではなくて裁判所の内部的なものとして,一部とはいえ裁判所外にいる人について,そのまま口頭弁論として認めるということが本当にできるのだろうかというのが言いたかったことの一つなのでございます。だからこそハイブリッドの議論なのでしょうけれども,そのときに,今ですと裁判所外で得たものは一応そのまま使えないというのを,全員で行ったときは使えなくて,一部だけだと使えるといえるのか,というのが言いたかったことです。すみません。 ○阿多委員 もう理屈の世界なので,我々が入る世界ではないとは思うのですが,204条では,公開法廷で証拠調べが実施されているかどうかに意味があって,公開法廷に3人いればできるけれども,法廷外に1人出てしまうと,証拠調べはできないという理由がよくわかりません。従前,合議がその場でできる,できないといった議論もありましたが,本質的な議論ではないと思います。場面として裁判官が全員公開法廷にそろっているか,1人が現地で証人の傍にいるのかによって,心証の取り方がウェブを通じて間接的か,1人は現地に行って直接に心証を取っているのかという違いだけであって,個々の裁判官自体は同時に心証を取れている状況にあるわけです。204条は離れたところにいる証人からの心証を取ることを前提にしているわけであるにもかかわらず括弧に書かれたルールで裁判所外の心証という言葉になるのかがわからないのです。基本的には204条ルールに収める方法によるべきということが私の意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。 ○山本(克)委員 何度もすみません。私も204条の趣旨は公開法廷かどうかということを重視したものだと考えていますので,これで公開をしていれば,それで裁判官全員が法廷にいる場合と同視しても構わないのではないかと,結局,公開かどうかが決定打なので,どこにいるかということよりも,そちらの方がよほど重要なのではないのかということを考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。ここは大変難しい問題で,今御議論が出ていますように,公開の点について手当てができるのであれば,口頭弁論という構成もあり得ないものではないのかなというふうな感じもいたします。ただ,185条の延長線ということで考えることも同様にできそうな感じもいたしまして,どちらの方がいいのかということについて,私自身はどうも余り決定打が見いだせていないというのが正直なところです。   ただ,いずれにしても,こういう規定を設ける必要があるのかどうか改めて検討する必要があるように思われるといった記載もされていて,これは規定が不要ではないかという御趣旨なのかと理解しましたけれども,一部の構成員が裁判所外にいて,他の者が法廷なり他の場所にいるという形態で関与するということは,明文の規定がなければなかなか難しいのではないかという感じもいたしますので,規定の整備そのものは必要ではないかと考えておりまして,その一つの方法として,御提案になっているような185条の延長線上で考えるという規律は十分あり得るものなのだろうと考えております。   ただ,日下部委員が御指摘になった証人尋問の場合の諸規律との均衡というところは,やはり気にはなるところで,先ほど御指摘のあった195条ですとか,今回,証人尋問をウェブ会議でやる場合の要件のいずれよりも緩和されているということが,どうも説明が付きにくいのではないかというのは,御指摘のとおりのような感じがしております。   ただ,全員がウェブ会議でしか接していないというわけではなく,一部の人は現地で実際に直接,証人に接しているというところがウェブ会議の場合とは違うということと,一部の裁判官だけが接していて,他の裁判官,構成員は接していないというのではないというところが195条の場合とは違うということなので,このいずれよりも若干緩和された形での要件設定ということは理屈としてはあり得るような感じもするのですけれども,ただ,それが相当と認めるときというだけでよいのかどうかというところについては,証人尋問の重要性を考えると,なかなかそこは慎重に考えるべきではないかという御意見もあり得るのかなという感じがいたします。仮にその辺りを重視いたしますと,こういった第6のような規定を設けるにしても,証人尋問の場合については当事者に異議がないときに限るであるとか,何らか異なった規律を設けるということもあり得るのかなと感じるところです。   まとまりがない発言で恐縮ですけれども,以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほか,いかがでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。また当局としても考えていきたいと思います。部会資料の簡単な,すみません,今頃補足を言ってもあれなのですけれども,趣旨からさせていただきますと,いずれにしても当局としては,口頭弁論で認める,裁判所外で認めるについて,二者択一の問題ではないとは思っているところでございます。いずれについても検討すべき問題ですので,極端な話で言えば,両方とも意味があるということであれば置くことも可能ですし,逆に言うと,どちらも難しいということであれば置かないということも選択の視野に入ってくるのだろうと思います。当局の資料としては,それぞれ検討した上で,差し当たり185条並びであれば理論的に置けるのではないかというところで書いているところですが,それは逆に言うと,204条の並びで作れないからこれを置くというわけではなくて,あちらは難しいからあちらは置かないけれども,こちらはこちらと考えているところです。ですから,極端な話で言えば,両方ないということも,正直言うと,あると考えています。   結局,今伺っていまして,204条の口頭弁論で置くかどうかについて,少し私が古いのかもしれませんけれども,法廷にいない裁判官の状態で,それを法廷といいますか,口頭弁論と呼んでいいのかどうかについて,やはり踏ん切りが付けられるのかどうかが分からないというところが恐らくあるのかなと思います。ここについてはまた御意見を頂きつつ,私たちも考えないといけないのですが,そこがやはり引っ掛かる,公開していればいいではないかという御意見も山本克己委員からございましたので,あるかもしれませんが,また御意見を頂ければと思います。   185条については,単体で言った場合,やはり並びですると要件を加重するのは難しいかなと思う反面,ほかとの並びでどうかと言われると自信がないところでございますので,要件を加重できるのか,加重できないのかは改めて考えていきたいと思いますが,なかなか全員で行ったときと差を設けるのは難しいのだとすると,加重できない,逆に言うと,加重できないから認めるべきだというよりは,もう規定を置かないということもあるのではないかとは思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 今の脇村幹事のおっしゃることはよく分かるのですが,ただ,こういうIT技術の進化というのは,バーチャルな法廷を構成できる環境ができつつあるわけなので,物理的な法廷というよりもバーチャル空間の法廷というものを観念でき,かつ,3人ともそろっているのであれば直接主義であり,かつ公開が,公開はやはり法廷でしないとまずいと思うのですが,法廷で映像が公開されているのなら,私はもうそれはバーチャルな法廷が形成されていると考えていいのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほか,よろしいでしょうか。ずっと,理論的に難しい問題ですし,直前に議論されていたことは恐らく刑事訴訟等にも跳ね返る話で,ここだけで決められるのかというような問題ももちろん事務当局は意識されているのだろうと思いますけれども,引き続き何らかの,針の穴を通すということかもしれませんが,事務当局に引き続きお考えいただいて,もし何らか成案が出れば,また御提案を頂ければと思います。   よろしければ,続きまして,今度は部会資料23の方に戻っていただいて,15ページ,「第8 訴訟の終了」の部分の,まず最初,「1 判決」の部分について,事務当局の方から説明をお願いします。 ○大庭関係官 御説明いたします。   本文は,内容としましては,中間試案,それから従前の部会資料の記載を変更するものではございません。法律事項として規定するところを本文の方に記載するという観点から,記載を整理,修正したということでございます。判決の1(2)イに前記第2の1(2)から(5)までに定める方法によるほかとありますが,これは要するに,いわゆるシステム送達の方法によることもできるほか,という趣旨で書かせていただいたものでございます。   説明としては以上になります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点を御議論いただきたいと思いますが,いかがでしょうか。どなたからでも。   よろしいでしょうか。   それでは,続きまして,今の部会資料で16ページ,次ですね,「2 和解」というのがありまして,それから,部会資料24の方も12ページで「第7 新たな和解に代わる決定」というのがございます。この和解に関する部分をまとめて御議論いただきたいと思いますが,まず,事務当局から説明をお願いします。 ○大庭関係官 説明いたします。   和解に関して,まず部会資料23の第8の2のところから順に御説明をいたしますが,本文の(1)につきましては,中間試案及び従前の部会資料から内容に変更はございません。本文(2)の受諾和解のところにつきましても,趣旨は従前の部会資料と変更ないところでございますが,出頭困難要件の意義について,前回この点について議論いただいた第15回の部会で御意見があったところでしたので,説明の中の第2段落の,「本文(2)は」というところの中で,事務当局としてのその点に関する整理を記載しているということでございます。本文の(3)につきましても,従前の部会資料から変更はございません。部会で議論いただいて賛成の御意見が多かったところを踏まえ,記載させていただいているというところでございます。   以上のほか,和解に関しては従前,部会で議論いただいた点としまして,まず,和解に加わる第三者に関する規律を設けるかどうかという点がございます。この点に関しては,説明に記載をしましたとおり,従前の議論を踏まえて規律を置かないこととして,記録の閲覧等に関しては,その第三者は利害関係を有する第三者としての規律に従うことになるものとして整理をしております。   それから,新たな和解に代わる決定につきましてですが,こちらは部会資料24,12ページの第7で取り上げているところでございます。こちらについて御説明いたします。本文は,規律を設けるとした場合の規律の案という従前の甲案の内容を含め,部会資料18と同様の記載でございまして,従前の議論においては,このような新たな和解に代わる決定について規律を設けるかどうかというところで,それぞれのお立場から御意見を頂いていたところでございますが,規律を設けないとする立場からの御意見として,幾つか指摘があったかと思います。これらの点について,この部会でコンセンサスを得られるような解決を得ることは困難だとすると,規律を設けないという結論に至らざるを得ないのではないかということで,このような説明になっております。   説明としては以上になります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,これもどの点からでも結構ですので,御発言があればお願いしたいと思います。 ○日下部委員 部会資料23の受諾和解の出頭困難要件については,以前の部会で私が問題提起といいますか,発言をしたことでもありますので,今思うところを申し上げたいと思います。部会資料17ページでは,ここでいう出頭困難要件というのは,当事者が物理的に受訴裁判所に出頭することのみならず,電話やウェブ会議により手続に参加するみなし出頭も困難であることを意味すると説明されているところです。   私はこの点について,出頭困難要件が定められているほかの規定と異なって,ここではみなし出頭も含むということであれば,そのことを明示しないと混乱が生じるのではないかという問題提起をさせていただき,またあわせて,ほかの規定と同様に,みなし出頭を含まない意義として整理することで受諾和解の利用可能性を広くするという考え方にも言及した次第です。ただ,いずれの点についても特にほかの委員,幹事の方々から御賛同があったというわけではないものと理解しています。   これらの点について一人こだわるというつもりもないのですけれども,部会資料の提案どおりの考え方となった場合に,当事者双方が出頭しない受諾和解を試みるに当たって,実務上,困惑する事態が生じないかという点が気になっております。すなわち,そのような受諾和解は,当事者双方が電話やウェブ会議により手続に参加することも困難であるということが要件ですので,次回期日を指定せずに和解の期日を終えるということになり,その後,当事者の一方又は双方から受諾書面が提出されないと,その後に期日を開いて手続を続けることが説明できないことにならないだろうかという問題意識です。時間がたって状況が変わったので,受諾和解が不成立だったときの,その後の続行期日については,電話やウェブ会議により手続に参加することが困難ではなくなったと説明すれば足りるのかもしれませんけれども,やや御都合主義的にすぎるようにも思われまして,それでいいのだろうかと思った次第です。ややマニアックかなという気もいたしますが,気になりましたので,発言させていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 逆の方向からの意見になります。従前から264条の「出頭することが困難であると認められる場合において」という文言が残ることを前提に,どう解釈すべきなのかという議論をしてきました。元々264条は,規則事項に落ちますけれども,裁判所による真意の確認等が行われて,当事者が裁判所提示の和解案で構わないという状況に至っているにもかかわらず,当事者がウェブで参加すれば(1)の和解の成立になり,出頭が困難でなければ受諾和解を手続としてとれないのはバランスが悪いと思います。説明では,実務の実際上の運用によっては特段の支障がないと書かれていますが,むしろ受諾和解の要件は,和解期日の要件と同じように,相当と認めるときはと簡易化し,その他の問題は真意確認その他の手続の問題に落とすべきと思います。無理な説明をするよりもシンプルな方を提案したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。今の点に関連して,受諾和解の部分でも,あるいはほかの点でも結構ですけれども。 ○垣内幹事 垣内です。今問題になっておりました受諾和解の要件についてですけれども,私自身は本日の資料で御提案いただいているような,出頭がウェブ等でも困難な場合ということで,ウェブ等で期日ができるということであればそちらの方を優先するということの方が,和解の成立という局面では穏当なのではないかと感じております。資料でも説明がありますように,ウェブ等を活用しても期日調整がどうしても都合が付かなくて,全然無理であるという事態もそれなりにはあり得るような事態に思われまして,そのような場合に使えるということであれば,それなりに有用な使い方もできるのではないかと思われますし,その後,期日の調整ができるようになるということも,それはそれで,相当の期間を置けば,先に日程を押さえておくということができるでしょうから,そういうこともできるのではないかということで,一応の説明は付くのではないかというようなことを考えた次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 通常の和解期日をウェブでするのと受諾和解の違いは,その間に裁判所の方が片一方ないしは双方当事者と連絡を取って真意確認をしているわけです。全く何も調整がないまま期日が指定されてウェブでその日に成立する和解とは違って,期日間にもろもろの行為をしているわけですから,あえてウェブ会議の期日を設けなくても,真意確認できているのであれば,相当と認める限り和解成立することはプロセスを考えると無理な提案をしているとは思いません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐々木委員 佐々木です。新たな和解に代わる決定のところの発言でもよろしいのですよね。   これまで新たな和解に代わる決定について,需要があるというふうに説明させていただいて,これを導入していただきたいという立場でずっと話をさせていただいてきたのですけれども,これまでの議論を伺っていますと少し形勢的には不利なのかなと思っておりまして,最終的には乙案,新たな和解に代わる決定の規律を設けないというのでもやむを得ないのかなと思っているところです。   ただ,最後にという感じになってしまうかもしれませんけれども,今,民事調停法を利用するという実務があって,それなりのニーズがあって,これが便法的に使われているのだと思います。これは飽くまで便法的とこういった資料にも書いてあるかと思うのですけれども,そうであれば,なぜそれが正面から民事訴訟法の中に取り入れられないのかというところは率直に,素直に疑問に思うところです。この民事調停法の17条決定を利用するという方法は,訴訟のユーザーからすると,どれほどの人たちが認識しているのかなとは思うところでして,手続の見通しとか,手続的な安定性とか,そういうのを考えるのであれば,これを真正面から民事訴訟法の中で認めていいのではないかと思っている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 ただいまの佐々木委員の発言を受けて,裁判所からも一言コメントさせていただきたいと思います。   先日の部会で新たな和解に代わる決定が導入された場合の運用イメージについて懸念が示されたことは,裁判所としては非常に残念なことであったと考えておりますが,他方で,一定の事案において,調停に付した上で民事調停法17条に基づく決定を行うという現在の実務については,特段の問題はないということであったと理解しております。そうであれば,裁判所としてはそのような実務の在り方を続けていき,利用者の方々の信頼や納得を得ながら,個別の事案に応じて適切な紛争解決手段の提示に努めていくことになろうと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 よろしいでしょうか,垣内です。これも大変悩ましい問題で,私自身は現在,17条決定を使うと,付調停をするという運用がされていて,それが適切に運用されている限りは,それはそれで評価すべき部分のある運用だろうと考えているのですけれども,しかし,そちらの方については,法律の規定等の関係では,必ずしも適切な運用に必ずなるような,例えば,資料で甲案として示されているような種々の歯止めと申しますか,要件設定がされているということではないということも考えますと,この際こういった形で規定を明確にしておくということにも一定の積極的な意義があるのではないかという方向での意見を申し上げたところかと思います。   それに対しては,特に17条決定の場合には付調停という形で手続が切り替わるということもあるということで,そこは区別ができるのではないかといったような御示唆も頂いたところで,最終的にはこれは実際に,仮に甲案のような立法をしたときにどういう実務になっていくのか,あるいは現状で乙案で行ったときにどういう運用がされていくのかということのある種の予測に係るところがあろうかと思いますけれども,調停手続に切り替わるということがどの程度の意味を持つのかというところについては,私自身は若干懐疑的であったということになるかと思いますが,逆に甲案のような形で,つまり,先ほど便法という言葉がありましたけれども,飽くまで付調停で17条決定をするということは便法であるという意識が,運用に対して適切な行為を促す機能を果たすのだとすると,甲案のような形で規定を設けるということについて示された懸念という方がより問題であるという評価になるのだろうとも思われまして,私自身はどちらともなかなか断定はできないように考えておりますけれども,ですから,資料でまとめていただいていますように,コンセンサスが得られないのであれば,これはやむを得ないということは,そのとおりであろうと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 ありがとうございます。話題が変わって,受諾和解の件につきましては恐らく,どちらが本筋というか原則,例外というか,何かその辺に,完全に並列にするのかというので,恐らく日下部委員や阿多委員のおっしゃっていることも踏まえると,完全並列ということもあるのかもしれませんが,やはり期日で最終確認するということが本則ではないかという観点からすると,運用的には恐らく出頭困難,緩やかに認めるとしても,段差を付けるという案を採用した方がいいのかなとは直感的には思っているところでございますので,改めてまた,名を取るのか実を取るのか,少しあれかもしれませんけれども,少し制度の枠組みは考えていきたいと思っております。   和解に代わる決定についてはいろいろな御意見,今まで頂いたところでございますし,恐らく垣内幹事がおっしゃったとおり,話合いに向けた制度の中で17条を使うケースと,そうでないケースの,その辺の問題があるのかもしれないと思いつつ,いずれにしても,最終的になかなか難しいということであれば,難しいのだろうということだと思いますが,今日は御発言されない方も,恐らく難しいと思っていらっしゃる方が多数いることは存じておりますので,そういったことからすると,そういったことではないかと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   よろしいでしょうか。和解に代わる決定については,一定のニーズが示され,また実務で行われている運用について,ある程度それを明文化するという必要性も多く指摘されたかと思いますが,他方では多くの懸念が述べられ,最終的にはコンセンサスの得られるような成案は見いだせなかったということは,私としても残念なことだとは思いますけれども,全体の審議の経過を踏まえれば,既に最終的なコンセンサス,要綱案に向かった段階ですので,この段階ではなかなか難しいということなのかなとは,御議論を伺って,思うところであります。   それでは,よろしければ,本日最後の論点ということになりますけれども,部会資料23の18ページ,「第9 訴訟記録の閲覧等」,この部分は1から3までありますが,まず,部会資料の説明を事務当局からお願いします。 ○藤田関係官 御説明いたします。第14回会議で御提案した内容から更に明確化した点は,主に次のとおりでございます。   一つ目,本文1の(2)でございます。和解調書に加えまして,受諾和解の和解条項案,そして裁定和解の和解条項につきましても,その閲覧等の請求が可能な者を当事者及び利害関係を疎明した第三者に限っております。ただし,口頭弁論の期日において和解が成立した場合の,この和解調書につきましては,現行法どおり利害関係のない第三者にも閲覧請求を認めることといたしております。   2点目,本文1の(3)でございます。紙媒体に加えまして,データ形式の謄本や事項証明の請求権を認めております。   3点目でございます。訴訟記録の閲覧又は謄写の具体的な方法につきましては,本部会での御審議の結果を踏まえた内容を最高裁判所規則において定めることといたしております。   御説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この点,1から3までありますが,特に区切りませんので,どの点からでも結構ですので,お気付きの点,御指摘を頂ければと思います。 ○日下部委員 最初に,例によって質問をさせていただければと思います。   具体的には,(2)において当事者と利害関係のある第三者以外による閲覧等ができなくなる和解に関係する調書の範囲につきまして,伺わせていただきたいと思います。まず,その中で最後に言及されている,口頭弁論期日以外で成立した法第267条の和解を記録した電子文書については,正に確定判決と同一の効力を有する和解調書そのものを意味していて,そこに至る過程の和解の期日の調書その他,和解に関する訴訟記録は含まれないという理解でよいかというものです。   それから,同様にですけれども,それより前に言及されている法第264条の和解条項案に係る訴訟記録や,法第265条第1項の規定による和解条項の定めに係る訴訟記録は,結果として受諾和解が実際に成立した和解条項案が記載された訴訟記録や,当事者が裁定和解の申立てを行った後に裁判所等が示した和解条項の定めが記載された訴訟記録を意味していて,そこに至る過程の和解の期日の調書その他,和解に関する訴訟記録は含まれないという理解でよいのか。二つ質問として申し上げましたけれども,言っていることは共通でして,最終的にどういう和解が成立したのかということについての記録又は調書だけが非開示の対象になるのかどうかという点についてお伺いさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○藤田関係官 事務当局でございます。基本的に日下部委員の御指摘のとおりとこちらも考えております。ただ,1点のみなのですが,受諾和解に関しましては時系列上,受諾和解の和解条項案が示され,受諾されないというケースももちろんございます。このゴシックの記載ぶりに関しましては,そこを問わずに,受諾和解の和解条項案であれば,当事者及び利害関係を疎明した第三者のみが閲覧等を請求することができるというような内容になっております。 ○日下部委員 どうもありがとうございました。私自身も,最終的にどのような和解が成立したのかが非開示となれば足りると考えておりましたので,最後の受諾和解のところは少し細かい話になっておりますけれども,基本的に事務当局のお考えには賛同するものであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 2の秘密保護のための閲覧等の制限です。従前から,決定を出す前に相手方に対しての意見陳述の機会を付与すべきとか,さらには不服申立てについて提案していましたが,必ずしも他の委員の説得ができず,今回の提案もそれら手続は創設されていないのですが,この手続自体は,制限を求める者が申し立てるだけで,相手方は閲覧制限の裁判がされていること自体,何も知らされません。決定自体は第三者を意識した閲覧制限であって,当事者は元々閲覧できるわけですから,相手方には告知も予定されていません。しかし,改正案は正当な理由がなく利用若しくは開示してはならないという義務を相手方にその決定に伴って課すというものですから,相手方に知らせないまま放置するのではなく,告知するという旨の規定を設けるべきだと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 1の(2)の,成立した和解の内容が利害関係のない第三者に供されないことについて,意見を述べます。   判決につきましては,判決が場合によっては法律に代わるものとなったり,法律を補うという意味で,国民の行動規範になるということがありますけれども,そういうことも含めて,裁判所に持ち込まれた事件について裁判所が法的判断を示した判決というものは公共財と考えられています。他方で,判決を除く訴訟記録について,公共財という考えは聞かれないのではないかと思います。和解調書につきましては,元々和解というのは多くは非公開の手続で行われる当事者の自主的な紛争解決の結果であって,裁判所が示した判断でもなく,和解に至る事情も事件によって様々なので,国などが当事者になっているような社会的に影響のある事件については例外もあるかもしれませんけれども,一般的に言って,国民の予測可能性を高めるなどの効果というのは期待できないと考えられます。また,不貞の慰謝料の請求事件などのように,当事者が解決内容を公にしたくないというような事件も少なくないと思われますので,そういうような事件で,IT化によって和解調書まで広く世界中に流通するということになると,ますます訴訟を敬遠する人が増えるのではないかと思います。(2)の提案というのは,和解調書を一律に閲覧請求ができないものとするのではなくて,利害関係のある第三者には閲覧請求が認められているものなので,同種の事件で参考にしたいというニーズについては,それで十分ではないかと思います。以上から,提案には賛成したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 まず,一点確認をいたします。部会資料23の19ページの冒頭で,「部会のこれまでの議論や意見募集の結果を踏まえると,利害関係のない第三者に裁判所外端末を用いた訴訟記録の閲覧を認めることは難しい」ため,今回,注記に記載がないとあります。本件については判決文についても閲覧は認められないという理解でよろしいでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○藤田関係官 御指摘のとおりと考えております。 ○増見委員 今の御回答に基づき意見を申し上げます。従前より企業の立場から,利害関係のない第三者においても裁判所外の端末から訴訟記録の閲覧を認めてほしいという意見を申し上げています。先ほどの大坪幹事の御意見にもありましたが,そもそも裁判所という公権力が下した判断は,公に開示されて広く知られるべきものであり,さらに,民事訴訟IT化のメリットが当事者以外の多くの人々に還元されないことも非常に残念なことと思います。そのため,この点について現段階で閲覧が認められないと結論付けることについては反対意見を申し上げます。   また,匿名化等の技術面での課題があることは理解しております。しかし,以前御紹介いただいた主要諸外国でのIT化の状況,手続の状況の資料などを拝見する限りでは,利害関係のない第三者による裁判所外からの閲覧を完全に認めていない国は存在せず,少なくとも判決文に関しては,当事者名等を匿名化した上で公開している状況です。そのため,日本では利害関係のない第三者による裁判所外からの閲覧がIT化後でも実現できないということになると,国際的な観点から日本の司法制度への信頼性が低下しかねず,日本の司法制度は透明性が低いという国際的な評価にもつながりかねないと懸念いたします。そして、そのような国際的な評価が日本のビジネス環境の産業競争力の低下にもつながると懸念いたします。そのため,この点については早々に判断を下すのではなく,諸外国で既に実現できていることがなぜ日本では実現できないのかを引き続き御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○大坪幹事 今の増見委員の御意見についてなのですけれども,以前もお話しいたしましたが,現在,民間の営みとして,最高裁などの協力も得て日弁連法務研究財団などにおいて,一定の仮名処理を施した上で全ての判決について公開することを検討しております。ですので,仮に民事訴訟法改正で判決が利害関係のない第三者に裁判所外端末を用いた公開がなされなくなった場合でも,民間の営みとして全ての判決が公開できるようにしていきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。失礼しました。 ○日下部委員 先ほど大坪幹事の方から,和解調書等を非開示とする条件が無条件になっているという点について支持する御意見があったかと思います。私自身はそれは行きすぎではないかと考えておりますので,異なる意見を申し上げたいと思います。   現在の御提案ですと,和解調書等は,それゆえに当然に非開示の対象となる,たとえ当事者双方が開示して構わないと考えても,あるいは訴訟記録の一部として開示されるということを望んでいたとしても,非開示となるということになるかと思います。しかし,以前の会議でも述べましたが,公的紛争解決機関を用いて紛争解決をした以上は,たとえ当事者双方が開示を望んでも必ず非開示にするという扱いは,公益的観点からは疑問がぬぐえません。当事者の一方又は双方から申出があればといった条件を付すということも改めて御検討いただきたいと思っています。   なお,先ほど大坪幹事の御意見の中で,和解の結果というのは公共財としての性質は持たないのではないかという御指摘もあったところですが,やや極論かなという気も個人的にはいたしたところです。また,同種事件の当事者が利害関係のある第三者に該当するという御指摘もあったところなのですが,そこまで広く利害関係は認められていたかなという点で,疑問は私としては持ったということは指摘させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。ありがとうございます。私も,和解も一つの解決方法であるので,一律に閲覧制限が掛かることは問題ではないかという考えを持っております。これは以前にも述べたところです。消費者問題においては,その和解の内容が同種被害の解決につながる場合がありまして,それを全く見られなくなるということは困ったことだと思います。   ただ,今,日下部委員がおっしゃった同種の被害者が利害関係のある第三者に認められるかどうかという辺りですけれども,少なくとも同様の問題の被害者が利害関係のある第三者として認められて閲覧できるのであれば,その点は一つ解決するのでありますが,その点を運用に任せられるのか,又は明示していただくのかということは課題としては残っていると思いまして,消費者問題の被害に対して和解というのが大きな影響があるということは皆さんに分かっていただきたいことと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 先ほど私の意見に対して大坪幹事より,民間の側から判例を公開する努力を続けていただけるという御発言がありました。民間側からの努力自体はすばらしいことと思います。しかし,裁判所として,政府として情報の透明化や公共への提供に対してどのような姿勢を見せるのかということも,同時に重要と思います。引き続き御検討いただきたくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。特段ございませんでしょうか。 ○日下部委員 2点,意見を短めに申し上げたいと思います。   まず一つ目ですけれども,部会資料の18ページの説明を読みますと,当事者による裁判所外の端末による閲覧等については,裁判所のサーバにアクセスする以上は観念的には裁判所の処分があったと言わざるを得ず,請求もあったと観念せざるを得ないとして,その場合にも請求を要するという規律が提案されているところです。しかし,実際上は特に書記官が何かをするということはなく,単にインターネット上で自分の訴訟記録を閲覧するということが想定されているかと思いますので,この説明で十分納得できるのだろうか,説得力があるのだろうかという点は気に掛けております。   特に,裁判所のサーバにアクセスするのであれば書記官の処分,裁判所の処分があったのだと観念せざるを得ないということですと,これまでシステム直送と呼んでいた送付の方法についても裁判所の処分なのではないかと考えられて,システム直送の主体を書面の提出当事者であるとする整理と整合しなくなるのではないかという気もいたしますし,例えば,一般の人が行政機関のホームページなどで自らに関する情報を閲覧するという状況もよくあると思うのですけれども,行政法の世界においては,それは行政庁による処分がなされていて,それゆえに,例えば利用者による請求が行われていると観念せざるを得ないと整理されているのか,行政の話とは違うということなのかもしれませんけれども,やや,法的な整理の観点で,それでいいのかなという問題意識を持っております。   それと,異なる点について併せて申し上げたいと思いますが,本日の資料ですと,部会資料の3ページ,大分遡った方ですけれども,そこでは訴訟記録の電子化についての規律が挙げられていたところです。ここでは建築図面を例として,電子化に困難な事情があるときにはこの限りではないとされておりまして,一部は紙がそのまま訴訟記録として残ることが想定されているかと思います。そうした紙の訴訟記録につきましては,この部会資料18ページの閲覧謄写等に関する規律においては謄写請求の対象になるのだと考えられるところで,実際に謄写請求がなされるとどうなるのかということを考えた次第です。   謄写請求に対して書記官は,請求者に対して謄写に供する,謄写してもいいよというように謄写できる状態にするということが求められているもので,自らコピーをとる必要はないと説明されているところなのですけれども,紙の訴訟記録が珍しいものになって,オリジナルは裁判所にしかないということですと,コピーをとらせるということも神経を使わなければいけないということになるのだろうと思います。それで不安だということであれば,書記官がコピーをとるしかないのだろうということで,手間が掛からないだろうかという気もしますし,請求者にとっても,その紙の訴訟記録が保管されている裁判所に赴いて,そこの書記官に謄写請求をしなければならないということになりますので,当然のことながら,電子化された訴訟資料と比べますとコピーの入手の負担が著しいので,IT化による利便性は得られないということになろうかと思います。   そうした状況と比較しますと,デジタル写真に撮るということが,部会資料においては,常に適切である保証がないからという理由で,電磁的記録に残さない理由として説明されているところではありますけれども,紙の訴訟記録が残ることによって生じる書記官や請求者の負担,それから,紙の訴訟記録が含まれている事件の上訴や移送を迅速に行うことの妨げにもなり得るということを考えますと,うまく撮影できないことを不安視するというのは理解できなくもないのですが,やはりそこは電子化をするという形に徹底した方が結局よいのではないかと思っています。今回,提出された書面等の電子化に対して提出当事者による訂正申出の制度の規律も提案されているものですので,電子化のためにデジタル写真に撮影することが必要だという場合でも,その規律に委ねれば対応としては十分ではないかと思いました。   このような思考から,部会資料の3ページの方の話になって恐縮ですけれども,そこの2(1)のただし書,これは記録することにつき困難な事情があるときはこの限りではないというものですが,その部分は削除してしかるべきではないかというのが私の意見であります。長くなって失礼いたしました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 すみません,細かいところで,3の補助参加人のところで,まず質問です。ただし書で,当事者が法第44条1項の異議を述べることができるときという記載があって,この意味が普通に読んで分かりにくいので,質問させてください。具体的な例で申しますと,再審の申立てと一緒に補助参加を申し立てる場合というのは,当事者からは直ちに異議が出るとは限らないものの,補助参加を認める決定が出るまでは当面,利害関係を疎明しなければ,補助参加人はこれらの記録の閲覧等ができないということでよろしいでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○藤田関係官 事務当局でございます。御指摘のとおり,当事者が異議を述べることができる間は,利害関係を疎明していただいて謄写をしていただくというようなことになると考えております。 ○大坪幹事 ありがとうございます。理論的にどうなのかは分からないのですけれども,形式面で,このゴシックの書き方について,補助参加人は利害関係を疎明した場合に,こういう謄写等が請求できるとし,ただし当事者が法44条2項で異議を述べることができないときと,補助参加を許す裁判が確定して以降は,利害関係の疎明が不要とした方が分かりやすいように思いましたので,御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 先ほど日下部委員がおっしゃった18ページの下の方の説明で,観念的には書記官の処分があったものと考えるというところについて,私も読んだときに,なるほどとも思ったのですけれども,本当かなとも思って,今まで余り考えたことがなかったので,そう思ったのですけれども,裁判所のシステムにアクセスすると書記官の処分があると考えるとすると,日下部委員がおっしゃったように,システム直送の問題が出てくると思いますし,それから,仮に裁判所のサーバやシステムがうまく機能していなくて当事者が適時に閲覧ができなかった場合に,それって何か書記官の処分があったことになるのかという話にもなって,そうすると,書記官の処分に対する異議が言えるのかみたいな話になって,ためにする議論で申し訳ないのですけれども,いろいろと別の軋轢なども出てきそうな感じがして,ここまで厳密に,かつ形式的に考えなくてもいいのではないかとも思っているということを申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○脇村幹事 ありがとうございます。書記官に対する請求につきましては,説明ぶりはまた私たちも少し整理していかないと思っているところですけれども,言いたかったことは結局,訴訟記録を管理しているのは一応,書記官という前提で,裁判所に請求していたことからすると,観念的にはそうなるのではないかということを考えていたところでございます。もちろん実際,では何をもって請求というのかといいますと,恐らく最初の段階ではないかとか,そういった話になろうかと思いますので,笠井委員の御意見あるいは日下部委員の御意見を踏まえながら,説明文を含めて少し考えていきたいと思っています。ただ,実際上これまで議論していたことを変えたいというつもりは正直,ないといいますか,法律の書き方としてはこうかなというところで考えています。   また,日下部委員からあった書面の記録化なのですが,恐らく,変な話ですけれども,運用として,写真などでいいケースについて写真で撮ったりということはあるのだろうと思っています。ただ,恐らくここで私たちが念頭に置いていましたのは,当事者たち,特に図面などですけれども,簡略化した写真などを提出するのではなくて,本体を裁判所に提出したいということをしてきたケースなどを念頭に置くと,やはり訴訟記録としては,それが写真などで代替できない,やはり図面になると難しいところがあってきたりしますと,それはその解像度も含めて少しレベルが落ちる,写真などで代替できないケースは認めざるを得ないのではないかと考えていたところで,そうすると,訴訟記録にしないといけないという規律をそのまま置くと,不正確なものが訴訟記録になってしまうというのは,やはり難しいのではないかとは思っていたところです。   ただ,恐らく実際上は同じ図面を相手方に渡すのは難しいでしょうから,結局写真なりを撮って渡すとか,そういったことはあるのかもしれませんが,それは何となく訴訟記録の電子化とは少し次元が違うものかなと,それ自体を証拠として裁判所に提出している以上は,仮にそれが電子化が難しいということであれば,難しいと言わざるを得ないのかなと思っていたところでございまして,すみません,それ以上は考えていなかったところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにはよろしいでしょうか。   それでは,本日予定されていた議事についてはこの程度にさせていただきたいと思います。   最後に,次回議事日程等について事務当局から御説明をお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。次回の日程は,令和3年10月15日金曜日の午後1時から6時でございます。場所については未定でございますが,是非オンラインの利用をしていただければと思います。   次回会議においては,これまで御議論した項目のうち,今回取り上げたものについて御議論いただく予定です。詳細につきましては追って御連絡させていただきます。 ○山本(和)部会長 それでは,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第17回会議は,これにて閉会させていただきます。   長時間にわたりまして熱心な御審議を誠にありがとうございました。 -了-