法制審議会 家族法制部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和3年10月19日(火) 自 午後1時32分                       至 午後5時26分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題    1 子の養育をめぐる問題についての子の意見の尊重及び父母の離婚に関連する諸問題に関する論点の検討  2 未成年者を養子とする養子制度を中心とした論点の検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定をした時間になりましたので,法制審議会家族法制部会第8回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   今回も前回までと同様,ウェブ会議の方法を併用した開催になります。よろしくお願いを申し上げます。   まず,本日の会議の配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方からお願いをいたします。 ○北村幹事 お手元の資料について御確認いただきたいと思います。まず一つ目は,部会資料7,こちらは前回と同じものになります。続きましては部会資料8で,こちらは本日の後半に御議論いただく際の検討資料として新たに事務局が作成したものになります。こちらの内容については,御議論いただく直前に説明をさせていただきたいと思います。   続きまして,事務局提出の資料といたしまして,普通養子制度の実態調査に関する資料を,直前でありますけれども,お送りさせていただいております。東京法務局管内における普通養子制度の利用実態についてというものになります。こちらは,「民事月報」に掲載予定の原稿になりますので,掲載までは,委員,幹事限りとさせていただければと思います。   続きまして,参考資料5−1ということで,外国法制の一覧表になります。こちらは前回の会議におきまして外国法制に関する御質問,御意見等を頂いてございました。こちらは,事務局の方で把握しているということで第5回に配布させていただいたものですけれども,こちらの3ページ目のところに,公的機関による養育費に関する支援例であるとか,公的機関による面会交流に関する支援例等も記載させていただいておりますので,併せて御参考までにということで,改めての配布をさせていただきました。   続きまして,厚生労働省から提出いただいた資料がございます。こちらは前回,佐野幹事の方から御指摘いただいたものということで,厚生労働省の方からお出しいただいたものになります。   続きまして,武田委員から3点,資料を頂いてございますので,こちらを出させていただいております。池田委員からも子の手続代理人の関係で3点,資料を頂いております。棚村委員からも2点頂いておりまして,こちらは棚村委員の御論考と併せて,日本加除出版で行われました未成年期に父母の離婚を経験した子どもの養育に関する全国実態調査のその分析の中から必要な部分をお出しいただいたと理解をしてございます。   また,各資料をホームページで公表する際には,適宜資料番号等を付記させていただく可能性がございますので,御了承ください。   今回もウェブ会議を併用してございます。御発言に当たりましては,冒頭でお名のりいただきますようお願いいたします。   なお,第5回会議におけるヒアリングの対象者の先生方に対する御質問を皆さんから頂きました。一部の先生から御回答を頂いていない状況でございますので,御回答がそろった段階で皆様に御提供させていただきたいと思います。この点も御了解いただきますようお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。資料がたくさんございますので,お手元に渡っているかどうか御確認を頂ければと思います。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   本日は初めに,前回会議における御発言を受けまして,家庭裁判所における子の意思の把握の実情等について,裁判所の方から御説明を頂くということを予定しております。その後,前回の積み残しになっております,部会資料7に基づいて子の意見の尊重及び父母の離婚に関する諸問題に関する論点について引き続き議論をしていただきまして,後半には,部会資料8に基づいて,養子制度に関する論点についても御議論を頂きたい,このようなスケジュールを考えております。   それでは,まず最初に裁判所の方から,家庭裁判所における子の意思の把握の実情等につきまして御説明を頂ければと思います。お願いをいたします。 ○木村幹事 最高裁家庭局の木村でございます。本日は,まず,家庭裁判所における子の意思の把握の実情等ということで,また,特に調査官調査の関係というようなところについて御説明させていただきたいと思います。   家庭裁判所におきまして,子の意思を把握するに当たりましては,家事事件手続法第65条及び第258条の規定に基づき,子の陳述の聴取,家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により,子の意思を把握するように努めております。第65条の陳述の聴取につきましては,裁判官による審問や書面照会の方法による場合等が考えられますが,実務においては,家庭裁判所調査官が心理学,教育学等の行動科学の専門的知見及び技法を用いて行う調査が多く活用されているものと承知しております。   家庭裁判所調査官の調査の一般的な流れについて御説明いたします。家庭裁判所調査官は,子の意思の把握に当たりましては,子の言語的表現による意見,置かれた状況に対して示される認識や挙動等に表れる非言語的表現を捉えて総合的に分析,評価を行っております。子の意思を適切に把握するために,家庭裁判所調査官は,まずは親と面接を行い,子が置かれている状況として,父母の紛争の経緯,父母から子に対してどのような説明をしたか,生活環境とその変化,日常的な監護状況等を聴取したり,子の状況として理解力や現状認識,言語表現力,興味関心,健康状態等を聴取したりすることが多いものと承知しております。加えまして,事案に応じて,子の普段の様子を見ている保育所や学校の職員,親族等の陳述を聴取したり,当事者が作成した陳述書,母子健康手帳,保育園等の連絡帳,学校の通知表,診断書といった資料を収集したりしながら,子を取り巻く事情等を十分に把握するように努めております。   子との面接におきましては,子が初対面の家庭裁判所調査官に対して余りに緊張してしまい,思っていることや感じていることを十分に口にできないといったことなどが生じないように,家庭裁判所調査官は子の年齢や特性等を踏まえ,多くの場合,意向や心情を確認する面接を行う前に,家庭訪問するなどして子の様子の観察や子との関係作りを目的とした面接を行います。他方,子の意向や心情を確認する面接を行う際には,多くの場合,同居親の影響がないようにするため,同居親宅ではなく,子に裁判所に来庁してもらって意向調査を行うなどの配慮をしております。その際には,やはり子の年齢や特性等に応じて児童室や面接室を使い分けたりするなどして,調査実施時の環境が適切なものとなるよう配慮しております。   例えば,低年齢の子の場合には,無用な緊張を招かないよう,多くの場合,子にとって親しみやすい玩具等が備え付けられた児童室を活用しています。子が小学校高学年ぐらいになってきますと,玩具のない年齢相応に落ち着いた部屋を用意した方が円滑に聴取を進められる場合が多いことから,児童室ではなく,かといって通常の面接室とも異なる,カーペットが敷いてあるような暖かみのある面接室を用意することもあります。また,多角的な視点で情報を収集するといった目的から,複数の家庭裁判所調査官が面接を担当することも少なくありません。   子の意向や心情を聴取する際には,単に子から話を聴くだけでなく,子の表情や仕草等,言葉以外の情報も十分に観察し,子の意思を総合的に理解するように努めております。一般的に低年齢の子は言語表現能力の制約が大きいことから,観察の結果も丁寧に考慮すべき場合が多い一方,年齢が上がるに従って,言語によって複雑な意思や,その意思が形成された背景等を表現できるようになるため,言語的情報の重要性が高まるものといえます。   子の年齢に応じた対応という点では,行動科学の知見等を活用した実務的な研究が行われており,例えば,小学生の子を対象とした調査の留意点に関する研究では,主として子の認知面の発達における変化に着目して,小学1年生から小学3年生,おおむね6歳から9歳までを学童期前半,小学4年生から小学6年生,おおむね10歳から12歳までを学童期後半として分類し,その分類に応じた発達上の特徴を整理した上で対応上の留意点を検討したものなどがあり,実務において参考にされております。   子との面接の冒頭においては,家庭裁判所調査官は子に対して調査に関する説明を行っております。具体的には,子の気持ちや理解力を推し量りながら,例えば,父母がこれからの家族の暮らしをどうするかについて家庭裁判所というところで話し合っていること,調査官は家庭裁判所の職員であり,父母どちらの味方でもないこと,今後のことを決めるのは,審判や人事訴訟の場合は裁判官ですけれども,調停の場合は今後のことを決めるのは父母であり,子が決めるわけではないため,子が責任を負う必要はないことなどを伝えております。   子に対して質問を行うに当たっては,父母の一方の選択を求めるような質問は慎む,誘導的な質問は控える,シンプルで分かりやすい言葉を使う,子の答えをじっくり待つ,同じ質問の繰り返しを避けるといった配慮がされているものと承知しております。前回の部会では,家庭裁判所調査官が直接的な質問で子に選択を迫ることがあるのではないかといった御指摘がございましたけれども,一般的には成人に対する場合より一層慎重な配慮を心がけ,適切な質問を行うように努めているものと承知しております。   例えば,学童期前半の子に対しては,誘導や暗示の影響を与えてしまうことを避けるため,子の自発的な語りを促しつつ,○○のことを教えてなどのオープンな質問から始めて,子の発言に沿いながら内容を具体的に確認する質問へと展開していくなど,子が話した内容を徐々に明確化していきます。認知的な発達の途上にあり,他者がどのように見たり思ったりしたかについての理解が十分ではないことに留意しながら,子が直接体験した事実を中心に確認するように努めております。子との会話のきっかけをつかむために,例えば優しい,怖い等の様々な表情のイラストが描かれた表情カード等のツールを用いることもあります。   学童期後半の子につきましては,時系列的に物事を報告する力が高まっており,子の体験したエピソードをより詳細に確認することが可能となりますが,大人と同様の認知ができるわけではないことに留意し,具体的に語らせるとともに,その情報源を確認する必要があります。また,徐々に複雑な感情を理解できるようにはなるものの,言語的な表現能力は十分でないため,例えば,別居親に会いたくないという場合,同居親の感情に配慮していたり,葛藤を感じていてもうまく説明できなかったりする可能性があることに留意して面接を進める必要があります。また,非言語的表現については,動作,表情,視線,語調等に着目し,表現ぶりや言葉の選び方に不自然なところがなく年齢相応の言葉遣いであったか,挨拶や面接時の態度については年齢相応の振る舞いをしていたかなどを把握しております。以上のような面接のほか,家庭裁判所の児童室において親子が交流する機会を設けて,その場面を観察することもあります。その際には,交流後に子から感想を聴取したり,実施後の様子を把握するために保育所等の職員から事情を聴取したりすることもあります。   このようにして収集した情報に基づき,家庭裁判所調査官は面接時に直接確認した子の反応を,面接以外の情報から把握できた子の反応と併せて考慮し,面接時の子の反応の分析及び子の意思の形成過程の分析を行いまして,子の意思を総合的に評価しております。その際にも,当然ながら,子の年齢や発達の程度等に応じた検討を行っており,例えば学童期前半の子の場合には,子の語彙の乏しさや言語理解の未熟さなどから言語表現が大人とは異なる意味を持つ場合があるほか,理解力,感情表現力の制限や被暗示性の強さから,言語表現のみからは正確な意思が把握できない場合や,子が言語で表現した内容をそのまま子の意思として扱うことが相当でない場合もあることなどを考慮しているものと承知しております。   あわせまして,親の影響についても検討しております。例えば,面会交流事件において,別居親との面会を拒否する子の発言が子どもらしくない,同居親と同じような言い方であったり,想起できるはずのない時期の出来事を拒否の理由としていたりする場合には,子が同居親に影響されていることが考えられます。他方で,子が別居親に会いたいと述べつつも,別居親とのエピソードの内容やそれを語る様子からは別居親に対する恐怖心が見て取れるといった場合には,会いたいとの発言は別居親の影響を受けたものであるということが考えられます。こうした親の影響の有無や程度についても,その他の子の反応や,子との面接以外から得られた情報も踏まえながら,多角的に分析が行われているものと承知しております。   以上のように,家庭裁判所においては事案に応じて子の意思を適切に把握するように努めているものと承知しております。   なお,この家庭裁判所調査官による調査は,飽くまでも家庭裁判所による事実の調査の一環として行われるものですから,裁判官ないし調停委員会は,調査結果を検討する際は,家庭裁判所調査官と同一の立場ではなく,別個の立場において調査の経緯,方法,内容等についても慎重に吟味した上で,調査結果に加えて他の主張や資料等を総合考慮しているものと承知しております。   私からの説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   皆さんの方で何かもし特にございましたら,御質問等伺いますけれども,よろしいですか。 ○武田委員 親子ネットの武田でございます。御丁寧な御説明ありがとうございました。2点,質問させてください。   今の説明ではなかったと思いますが,この調査官調査というものがどういう手続を経てどういう判断で決められるのか,弁護士の先生方や法学者の先生にとっては当たり前の話かと思いますが,一般の方にもわかるよう,その辺りをもう少し具体的にお話しいただければなと思います。   2点目です。もし統計があればなのですけれども,何か前提を置いていただいても構いませんが,例えば,面会交流調停であれば大体何回目ぐらいから調査官による調査が入るとか,そういうデータをお持ちであれば,教えていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事の方でもし何かございましたら,お願いをいたします。 ○木村幹事 御質問ありがとうございました。まず,どういった手続というか,プロセスといいますか,どういった形で調査が行われていくのかという点でございますけれども,これは本当に事案ごとに様々でございまして,調停であれば調停委員会,裁判官と調停委員で構成されますが,その調停委員会と家庭裁判所調査官の方でよく話し合って,どのタイミングでどういった調査をするのかというようなことについて議論の上,決めるというようなことになろうかと思います。   二つ目でございますけれども,二つ目の御質問というのが,何回目ぐらいから調査というものに入っていくのかというところでございますが,これは,すみません,統計といったものはございませんで,これも正に事案ごとに様々ということでございます。事案によりましては,第1回,第2回,初期の段階から,こういうような必要性があるからこういう調査をした方がいいというようなことを調停委員会,調査官で話し合って進めるといったこともございます。事案に応じて様々というところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ウェブで赤石委員と原田委員から手が挙がっているようですので,赤石委員,原田委員の順番で御質問を頂いて,まとめて木村さんの方でお答えを頂ければと思います。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。やはり私どもが家庭裁判所の調査官調査を経験した同居親の話を聴きますと,やはり今日,すごく丁寧に調査官調査が行われているということと少し印象が違うこともお聞きしております。これは,何年ぐらいからこのような調査をすることになったのか,それを一つ教えていただきたいです。   もう一つは,調査官の方はいろいろな専門性を持っておられる,心理学の方もいらっしゃるし,社会学の方もいらっしゃるし,あるいは法学の方もいらっしゃるとお聞きしております。この方たちが調査官調査をするに当たってのトレーニング,研修といったものはどんなものがあるのか,期間ですとか,そういったことをお教えいただければと思います。   よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○原田委員 弁護士の原田です。御報告ありがとうございました。武田委員からの御質問もありましたけれども,実務の私どもの感覚としては,やはり調査官調査が入るのは父母の間で面会交流に合意ができない場合であって,合意ができない理由は,監護親の方からどういう問題があるからできないというふうに言う場合なのか,子どもが嫌がっていますからできませんという場合なのかによって,やはり子どもが嫌がっていますからできませんというような場合は調査官調査が入ることが多いような気がしております。   それで,私の質問ですけれども,前々回,細矢委員から裁判所の面会交流の扱い方について,平成23年から24年に掛けて細矢委員の論文があって,論文の主旨としては原則実施ということではなかったけれども,全国的に実務ではそれが行われるようになったと,そういう扱いがされるようになったと言われておりました。私どもも調査官調査で,お子さんから聴くと,面会交流したくないと言っても調査官はそれを聴いてくれなかったとか,調査報告書は自分が言ったことと違うことが書いてあるとかいうような意見をかなり聞きました。それに対して,昨年の論文などで,もっと細やかに寄り添って調査をするように変わってきたとおっしゃっていたと思いますが,実際この調査官に対する訓練とか,あるいは調査官に対してどのように調査の方法を変えるようになったのかとか,そういうようなことがありましたら教えていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。赤石委員から2点,原田委員から1点ありましたが,赤石委員の2点目と原田委員の御質問は重なるところもあったかと思いますので,まとめて木村幹事の方でお答えいただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○木村幹事 御質問ありがとうございました。赤石委員からの御質問の1点目でございますけれども,先ほど私の方で説明させていただいたような調査につきまして,そういったものが行われるようになったのがいつ頃からかというような御質問だったかと思うのですけれども,何か大きな転換点とか,そういったようなものがあったわけではございませんで,基本的な在り方というものについては,従前からそういった発想といいますか,方針で調査を行ってきているというところでございます。   赤石委員の2点目は,原田委員の1点目の御質問にありました研修,研究等というところとの関係でもございますけれども,面会交流の関係では,面会交流事案に関して精度の高い調査実務を行うために,子の利益に資する面会交流に向けた調査実務の研究と題する研究が家庭裁判所調査官によって行われ,これが令和2年2月に公刊され,実務の参考として活用されているということがあります。こういった家庭裁判所調査官による研究といったものは,日々といいますか,よく行われておりまして,そういった研究を基に研修を行い,そこで示された考え方等につきまして周知等を図っていくといったようなことがございます。   この面会交流の研究におきましては,面会交流を実施しないことが同居親や子の物理的,精神的な安定の確保に資する場合もあることのほか,面会交流及びそれをめぐる紛争の解決過程を,父母間又は親子間の支配的,暴力的な関係が生じる機会や,父母間の紛争に子をさらす機会にさせないといった基本的姿勢も示されておりますところ,引き続き,家庭裁判所調査官による適切な関与がされるよう努めてまいりたいと考えているところでございます。   基本的なところで,調査官の養成課程というものにつきましては,まず,調査官補という形で裁判所に採用されるということになりまして,2年間の研修を経まして,補が取れまして調査官となると,その後は,経験年数等に応じた研修というものが計画されておりまして,例えば裁判所職員総合研修所という研修所で行われる研修や,また,各家庭裁判所で行われる研修といったところで,ロールプレイとかそういった実践的なものも含めて,様々な研修を行っているというところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ほかはよろしいでしょうか。 ○柿本委員 柿本でございます。御説明ありがとうございました。調査官の方お一人が受け持っている人数,調査をする人数など,お分かりになりましたら教えていただきたいのですが。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○木村幹事 今の御質問は難しいところでございまして,例えば裁判所の規模ですとか,事件の多さとか,そういったところで様々変わってくるというところでございます。 ○大村部会長 木村幹事,少し音が切れてしまったのと,最後はハウリングがあって,よくは聞き取れなかったのですけれども,裁判所の規模等によって違うというような御趣旨を伺ったと理解しましたので,そのようにお答えいただいたということで進めさせていただきたいと思います。   皆様の方から,まだ質問があるかもしれませんけれども,本日の裁判所からの御説明について,一般的な質問については今,承ったということで,さらに何かありましたら,個別の問題について議論する際に,裁判所の取扱いはどうなっているのかという形で御質問を頂ければと思います。そのような扱いにするということで,進めさせていただきたいと思います。木村幹事,どうもありがとうございました。   それでは,続いて,部会資料7に基づく意見交換に移りたいと思います。前回会議では,部会資料7の第1,第2に関する御意見を頂いている途中で時間切れとなってしまいました。そこで,本日は引き続きまして,部会資料7の第1,第2の部分,つまり,子の養育をめぐる問題についての子の意見の尊重に関する論点につきまして,更に御議論を頂きたいと思っております。御発言のある方は,挙手をお願いします。 ○池田委員 資料7に関してなのですが,前回私の方から子どもの手続代理人の活動例のヒアリングをしてはどうかという御提案をしましたが,議事進行との兼ね合いがあるということでしたので,私の方から少し御紹介させていただいてよろしいでしょうか。 ○大村部会長 よろしくお願いします。 ○池田委員 お時間を頂きまして,ありがとうございます。   それでは,子どもの手続代理人の活動を具体的ケースを用いて簡潔に御紹介したいと思います。子どもの意思を聴き取り尊重するという実践の一例をお示しすることで,資料7の課題等の検討をする際の御参考になればと思っております。   なお,資料は三つ配布させていただいております。一つは,法律雑誌の論文です。これは,子どもの手続代理人の活用が非常に盛んな金沢家裁での運用状況等を裁判官がお書きになったものです。具体的事例の紹介もあります。それから,前回会議で子どもの年齢の線引きという議論もありましたけれども,この論文では,上の兄弟に代理人が付いたという関係で,下の6歳や7歳の子どもにも代理人が選任されたという事例も紹介されています。もう一つは,「子どもの手続代理人の役割と同制度の利用が有用な事案の類型」というものです。これは,日弁連が最高裁と約10か月ほどにわたって協議をした結果をまとめたものです。これは,手続代理人の役割ですとか,その制度が有用な事例を挙げており,全国の弁護士会と家庭裁判所が持って運用の方針にしているというような書類でございます。あと1点は,日弁連の市民向けのリーフレットです。   これから三つのケースを御紹介いたしますが,これらは守秘義務の関係で,私が見聞きした幾つかのケースをミックスしたり事実を加工するなどして,事案が特定できないようにしています。   まず,一つ目のケースですが,離婚調停の事例です。子どもは15歳です。父と同居していて,父母ともに親権を求めて争っているという事例です。子ども本人は父のところで暮らすことを希望していました。子どもの年齢を考えますと通常,もう15歳ですから,何の問題もなくその意向に従って父が親権者とされるところでした。ただ,このケースでは子どもと父との関係が非常に悪かったといいます。細かなことでしばしば衝突していて,父としてもやや監護意欲を維持しにくい状況になっているかなという状況だったそうです。調停手続においても,そうした状況を見て,子どもの意思とはいっても父を親権者とすることで本当にいいのかという問題意識も共有されつつあったようです。また,期日間に父子間で頻発するトラブルを子どもの立場に立って調整してくれる存在というのも求められていました。そういった背景の下で,子どもの手続代理人が選任されました。   代理人としましては,子どもの意思とその客観的利益にそごがあるかもしれないということはよく理解をしていました。ただ,子どもを説得するような関わり方をしますと絶対に子どもの信頼を得られないと考えて,説得はしまいと心に決めていたといいます。ただ,いずれ必ず物事が落ち着くべきところに落ち着くきっかけとなるような機会が訪れるのではないかとも思っていたそうです。子どもとの打合せでは,子どもがなぜ父との生活を望んでいるのか,父に対する思いや母に対する思いを聴き取りました。また,父子間の衝突は繰り返されていましたので,その調整を行う過程においても,子どもの言葉からその意思を感じ取るということもありました。そして,調停期日にはそれを報告しています。またあわせて,母の下で生活することに消極的な具体的な理由も聴いて,母側にそれが対応可能なものなのかどうかということも検討してもらうという,来たるべき機会の,言わば地ならしとして,そういったことを行っていました。そうするうち,絵に描いたようにその機会が訪れたといいます。ある夜,子どもから,父とのトラブルがあって家を追い出されたが,どうすればよいかという相談の電話が掛かってきました。代理人はここで初めて,「お母さんのところに行ったら?」と一声を掛けたそうです。すると,子どもはすんなり,分かりましたと言って,その日から母の下で暮らすようになりました。自分の意見が丁寧に聴かれて尊重されるという過程を経たからこそ,子どもにとっても納得のいく結論が得られたのではないかと思います。   二つ目の事例は,別居中の子の監護者指定,子の引渡しの審判の事例です。子どもは9歳。父が子どもを連れて別居をしたために,母が監護者指定と子の引渡しの審判を申し立てています。ところが,そのさなかに子どもが父宅を家出して,自分で母宅に行ってしまったのです。そこで,今度は父が母に対して監護者指定と子の引渡し審判を申し立てるということで,非常に葛藤性が高い事案で,子どもとしては父がいつ連れ戻しに来るのではないかと恐れて,通学もできないという状況でした。そこで,緊急に子どもの立場から双方の調整を行う存在というのが求められて,子どもの手続代理人が選任されました。   代理人が子どもから聴取したのは,父に対する苛烈な非難の言葉の山でした。代理人は,それをそのままお父さんに伝えることをちゅうちょしたそうですけれども,そして,やや控えめな表現で報告するということも検討したのですが,子ども自身は,自分はそんなに優しい言い方をしていない,そのまま伝えてほしいと強く希望しました。そこで,代理人はそれを子どもの言葉としてそのまま報告をしました。しかし,他方で子どもの言動全体を見ますと,必ずしも父子関係が回復不能ではないような印象も持ったといいます。そのため,母と暮らしたいという子どもの強い意向に寄り添いつつも,何とか父と子どもとの関係をつなぐことできないかと考えました。その一つとして,父からの面会の求めがありましたので,子どもが感じている不満を一度,直接父にぶつけてみようということで,そのような機会を持つことにしました。子どもはその席でお父さんに対して,涙ながらに不満のありったけをぶつけました。ただ,その内容は,代理人が従前聞いていた内容とは少し違っていたものでした。お父さんがお母さんの悪口を言ったことへの不満ですとか,別居後の生活上の不満など,言わば年齢相応の実態を伴うような不満の数々でした。父はそれを全て受け止めて,謝ってくれました。子どももほっとしたのでしょうか,最後には二人で談笑する状況だったといいます。手続としては,父は母の監護を認める,母は父との充実した面会を認めるという内容の調停が成立しています。子どもの意思を尊重しつつも,その利益にかなうソフトランディングが実現したといえます。   最後,三つ目のケースですが,離婚調停の事例です。子どもは18歳です。実母と養父が子どもを養育していましたが,実母が養父に対して離婚調停を申し立てました。子どもとしても,その現実は受け入れなければいけないのかなとは考えていたのですけれども,養父に愛着もありましたし,実母と養父の離婚を本心では望んでいませんでした。また,養父との離縁も望んでいませんでした。それから,それに先立つ実母の実父との離婚がまずあって,養父との再婚があって,別居という経過をたどっているのですが,それらに振り回されたということの不満もあったのですね。今の調停の手続も正確に知りたいのに,知らせてもらえないという不満もあって,そうした状況で弁護士に相談をしました。その弁護士が手続代理人に就任しています。   子どもは代理人と相談をして,自分で調停に行きたいと,そして自分の経験したことを話したい,離縁を望まないということについても意見を述べたいと希望しました。代理人は裁判所にそうした機会を求めたところ,裁判所は調停期日一期日を丸々取って,しかも,裁判官自身もその意見を聴きたいと言ってくれました。そこで,代理人は当日に向けて子どもと一緒に意見書を作成しました。そして,当日,実母と養父,各々の代理人,裁判官を含む調停委員会全員がそろう中で,子どもは代理人の助けを得て自分の気持ちを話しました。緊張して,口頭ではなかなか十分に伝え切れなかったそうですけれども,この意見書作りを通じて気持ちの整理ができたということは大きかったといいます。実母と養父は,子どもの意見を受け止めて応答して,一定程度,調停の内容に反映してくれました。それだけでなく,母子が互いの思いを知り,以前よりも母子関係が良くなったそうです。このケースは一つ目のケースと同じく,意外と見過ごされがちな年長児の意見表明の保障という点に加えまして,ステップファミリーにおける子どもの意思という点,それから,裁判官が直接子どもの意見を聴くという手続の在り方という点でも参考になるのではないかと思います。   私からは以上です。時間を頂きましてありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。手続代理人につきまして資料を御提供いただいた上で,幾つかの事例について詳しい御紹介を頂きました。どうもありがとうございます。 ○佐野幹事 第2のところの(1),(2),まとめて申し上げても大丈夫ですか。   ありがとうございます。佐野です。そうしましたら,課題の(1)のところですけれども,まず,@について,基本的には子どもの利益の観点から子どもの意見を明示するということは賛成です。やはり民法というのはある意味,今後の家族の在り方を方向付けるという部分もあると思いますので,親子の双方向的なコミュニケーションを促進するような仕組みを提示していくという意味でも,意味があるものになるのではないかと思います。ただ,やはり子どもに選択をする責任を負わせるような形での規定ぶりというのは,特に親の紛争の場合には,慎重になるべきと思います。そういった意味で,Aについては反対と言わせていただきます。   それから,Bですけれども,これも,方向としてはよろしいかと思うのですけれども,先ほど調査官の調査の話もありましたように,その家庭についての情報があればよいが,それがないなかで,子どもから聴いた内容を親にそのままフィードバックすることに慎重になるべき家庭がないわけではない。むしろ親の離婚という問題をかかえた子どもの支援につなげる形での意向確認とか,支援につながる情報提供の方法の確立というのを一緒に併せて考えて検討する必要があるのと思っています。Cの年齢基準については,私も子どもの権利条約の考え方から,反対です。   それから,Dの子どもの申立権,これはやはり年齢に応じて実情と合わなくなってくるところ,たとえば子ども自身の交友関係の広がりから,従前の取決めが実情と合わなくなることもありますので,賛成です。その取決めの見直しなのですけれども,債務名義等の絡みとありますので,調停などを行った場合を想定しているのだと思いますが,当事者から見ると,再調停というのは非常に負担が重いものですので,履行勧告による調整,289条4項などをもう少し有効に使うということも併せて検討できないかと思いました。   それから,続けて(2)の方も行きます。こちらは基本的にBの損害賠償以外は,方向性としてはよろしいかと思っていますが,@とAにつき,法務省にもし具体的なお考えがあれば,お伺いしておいた方がいいのかと思いました。といいますのも,@について議論をしていたときに,子どもの特別代理人のイメージがそれぞれ全然違っていて,片方は,親権停止の場合の職務代行者のような,親権者が決定できない場合にその特別代理人が決定するようなイメージで話をしていて,もう片方は,今,池田先生からお話があったような家事事件手続法の手続代理人のようなイメージで話をしていたのです。ですので,もしこのイメージが法務省の方でおありでしたら,御説明いただいた方がよいのかと思いました。   それから,Aについても,これは家事事件手続法の中で親子関係調整調停のような類型を設けるというようなイメージなのか,それとも,家裁の手続外で設けるというイメージなのか,その辺も,もしお考えがあればですけれども,教えていただければと思います。   最後に,Cの利害相反の場合の特別代理人の規定なのですけれども,水野先生から制定経緯を伺って,なるほどと思ったのですが,現状扶養請求などは未成年者の手続行為能力が認められていないので,この826条を使って,特別代理人を裁判所から選任をしてもらって,請求をするということをやっています。その際に問題になるのが,子ども本人が申立権者に入っていないので,なかなかスムーズに行かないという問題がございます。ですから,そのために,子どもからの扶養請求でほかの方法が認められればいいのですけれども,そうではないという前提だとすると,やはり子どもの申立権というのは明示していただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。8ページ以下の課題に挙がっております具体的な項目につきまして御意見を頂きました。9ページからの(1)の部分については,基本的な方向については賛成であるけれども,個別の点については問題があるという御指摘を頂いたかと思います。それから,11ページの(2)については,Bを除いて全体の方向は賛成であるが,@,Aの2点について御質問があるということで,質問を出していただきましたので,事務当局の方でもしあれば,お答えを頂ければと思います。 ○北村幹事 11ページの(2)のア@につきましては,具体的にこの方向というところまでイメージがあるわけではなく,むしろ,この部会の中で御意見を頂ければと思って出してございます。Aについても同様でして,(注2)のところにも記載しておりますけれども,実際に裁判手続の中で行うべきなのかどうかというところも含めて御意見いただきたいという形での提案をさせていただいているところでございます。 ○佐野幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 よろしいですか,佐野幹事。ありがとうございました。   そのほかに御発言ありませんでしょうか。 ○戒能委員 ありがとうございます。先ほどの池田委員のケースの御報告を聞いて,大変勉強になりました。というのは,具体的な制度の具体的な課題についての発言ではないのですが,やはり子どもの意見をなぜ尊重しなければならないのか,聴かなければならないのか,の方が先だと思います,そのことを考えさせる問題提起だったのではないかと思っています。   それで,これは原田委員が御提供くださった英国司法省の文献レビューを参考に少し考えたことなのですけれども,やはり物事を決めていく過程への子どもの参加の保障ということです。そこでどれだけ聴かれているか,どれだけ尊重されているかということなのですけれども,まだその辺りが,先ほどのような事例の集積,そして,そこからどういうことが導き出されるかというのが,まだ日本では整理されていないのではないかと思われます。英国の文献レビューから学べることは,手続や決定を,これは年齢にもよります,その子どもにもよるのでしょうが,先ほどの18歳のケースは正にそうだと思うのですが,自分がコントロールできると,自分に関わる,あるいはそれがその周りにいる父とか母との関係を変えていく,あるいは,より質の高いものにしていくというところを子ども自身がコントロールできるのだという,そこに意義があるのではないかということを考えさせられました。ですから,大人の目線ではなく子どもの目線からきちんと,子どもにとっての意義を考える必要がある。18歳でなくても,もう少し小さくても,そういうことを十分考えて,そして自分でコントロールしていきたいと,全部そのとおりになるのではなくても,そこに深く関与できて,そして結果を導き出すというようなことを,子ども自身に力があるといいましょうか,そういうことを少し認識する必要があると,先ほどの事例の御紹介を通じて感じました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。子どもの意見を聴く,あるいはそれを決定に反映させるということを子ども自身の観点から意味付けていくということが必要なのではないかという御指摘を頂きました。どうもありがとうございます。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。子どもの意向とか意見ということなのですけれども,家庭裁判所の調査官の調査とか,調査官の現場での対応について,それから,家裁の調査官研修所というのですか,裁判所職員総合研修所となっているのですが,そこで教えたりということをさせていただいていますので,お話をさせていただきます。家裁の実務ですと,先ほど木村幹事からの御説明もあったのですけれども,年齢でいくと10歳ぐらいを基準にして,10歳よりも小さいお子さんについては「心情」というような表現をします。これは,10歳未満のお子さんでは,言語的な表現力とか,いろいろ物事をきちんと整理して言葉で伝えるということもなかなか難しい場合がありますので,そして,心情調査などといい,10歳以上になりますと,ある程度自分の置かれた状況や境遇を理解したうえで,自分自身の考えや気持ちなどを言葉で表現したり,伝えたりできるようになります。10歳以上のお子さんの場合には「子の意向調査」という形で一応分けているということが一般的だろうと思います。それで,先ほどから御説明があったように,年齢とか発達の程度とか,置かれた状況に応じて,丁寧に総合的,多角的に調査をする,いろいろな手法を使って直接間接に子の意向なり心情なりを客観的に把握するように努めております。しかし,具体的に,子どもの意見とか意向をどう把握するか,尊重するかという問題もありますが,これを,池田委員も言ったように,把握できた結果を手続にどう乗せていくかとか,手続にどう反映させるかという問題があります。   それから,戒能委員が今おっしゃられたことも重要で,これはアメリカでもイギリス,ドイツ,フランスでも大きく議論されていますけれども,子どもを手続にどう参加させるかという問題もあります。これは金子民事局長が,家事事件手続法の立法過程で非常に丁寧に審議検討された,利害関係参加とか,そういう手続の中で子どもをどういうふうに参加させていくかという問題であり,大きく分けると二つあると思うのです。そして,実体法にどういう規律を設けて,手続法上にどういう規律を設けて,子どもの心情,意向,それから思い,気持ちみたいなものをどういうふうに把握して反映させるかというのはとても大きな課題だと思うのです。   今日御提案を頂いていることについて,総論として子どもの年齢,発達ということなのですけれども,年齢基準ということを一応,他の国の例を見てみますと,15歳ということについては私は少し疑問を持っていまして,20歳から18歳に成人年齢も引き下げられますので,その中で,15歳という年齢は民法や家事審判法とかそういうところで,遺言,認知,養子縁組の代諾など,明治時代からの規定が採用されてきたもので,これを現状や諸外国の例に照らして見直してもいいのかなというのが私の今の意見です。   例えば,韓国なんかでも13歳というところで線を引いたり,中華民国の対応も12歳というのをかなり重視したり,要するに,年齢や発達の程度に応じて,もちろん意向とか心情を配慮するのですが,年齢基準というのもかなり重要で,ドイツなんかでも14歳,それからアメリカのかなりの州で,14歳の子どもが言ったことについてはコントローリング,つまり,かなり決定的な重みを持つのだという規定を置いているところもかなりあります。その辺りで,15歳という意思能力とか判断能力とか,子どもの扱いについて,かなり重要な年齢の規律の基準になっているところを少し見直してもいいのかなというのが私の意見です。もう少し詳しく言えば,養子縁組のときも,自分で決められる年齢というものと,それから,かなり本人自身の意向を重視しなければいけないという年齢には,グレードがいろいろありますので,その辺りのところを,15歳がどういう意味を持っていて,それを14歳とか13歳とかとした場合にどういうふうな形でインパクトがあるのかというのを,もう一度検討してもらえるといいなと思っています。   それから,子どもの手続代理人の件なのですけれども,これも,大きなことで言うと,水野先生が批判的におっしゃっている特別代理人という制度についても,意見の不一致や対立があるときに特別代理人を選任しろという話なのですが,これも,どういう人が子どものためのどんな役割を担うかということで,子どもの手続代理人と同じで,どういうケースでどんな役割を担ってくれるためにどんな人が必要か,そこに当然,御質問にあったようなトレーニングとか訓練とか,専門性とか経験とかというものがどう必要になってくるかということになってくると思います。   ですから,その辺りで,子どもの個々の事項についていろいろ決定するときに,子どもの意向みたいなものを誰がどういう手続の過程で反映させるか,場合によっては本人自身にも申立てみたいなことで判断を求める権限というか,そういう参加権みたいなことをどう認めるかというので,子の養育の体制全体について子どもの意見をどうやって反映させるかという問題と,子どもに関する個々の問題ごとにどう反映させるかというときに,具体的にどういうケースでそういうことを誰が担う必要が出てくるかということを,全体としてのイメージを共有しながら,特に海外の制度を見ていますと,子ども自身の意向とか心情を確認する機能とか役割というのを誰がやるか(意向・心情確認機能)。親がもちろんできれば,親にやってもらうということも出てくるのですが,親同士で対立していて,子どもともそれが不一致であるときには,中立公正な第三者が確認をしてくれるということは非常に大きい意味があるわけです。   それから,もう一つはやはり福祉教育的な機能みたいなものを果たすということになると,子どもにきちんと働き掛けをして,子どもが意見を言いやすいように,あるいは,今起こっていることをどういうふうに理解できるかとか,これもやはり福祉教育的なアプローチとか機能の部分(福祉・教育的機能)と,それから,権利擁護とか代弁的な機能というので,やはり法的な側面での支援,あるいは説明を求めるということもあります(権利擁護・代弁的機能)。そのときには,やはりどういう人が何の問題について子どもに対してきちんと説明をしたり,子どもから聴き取ったりするのかということの事項に応じて,専門性とか資格とか,そういうのは異なってくるだろうと思うのです。   そして,私自身はいつも考えているところは,そういう意味で言うと,日本の場合に家庭裁判所調査官というのがいらっしゃるので,家庭裁判所調査官というものがお子さんのそういうような気持ちとか,意向とか,置かれた状況の確認ということを一部やる場合もあります。それから,福祉的な教育的な機能や,あるいはそれをつないだり,実際に学校だとか生活をしているところとの連絡調整みたいなことも担ったりすることもあります。それから,法的な側面での中立公正な権利擁護とか代弁的な機能になると,弁護士さんがある場合にはふさわしいのかもしれませんけれども,その辺り,家庭裁判所調査官が今やっている役割とかそういうものと,それに,例えば足りないとかそういうときに,弁護士さんなり,あるいは子の福祉とか心理とか,そういうところを専門にする人たちが,海外の法制を見ますと,アメリカでもそうですけれども,必要な支援の内容や事項に応じて,その専門性を担う担い手というのが用意をされるということがやはり必要になってくると思います。また,複数の専門職が共同とか連携して当たるということも考えられます。それから,その辺り,子どもの心情とか意向を誰がどういうような形で把握するか,そして,その出てきたものをどういうふうな形で取り次いでいくかという,これは裁判手続とか,いろいろな場面によって,取り次ぎ方というのは違うと思うのです。特に,家庭裁判所調査官との間で,手続代理人との関係,それから特別代理人というのも出てきていますけれども,そういう方が一体具体的にどの場面で何をやってくださるにふさわしいかということで,人選というか,スクリーニングのようなものが出てくると思うのです。親がやれるのであればいいのですけれども,やれない,例えば高葛藤であるとか,お子さんとの意見も大分違う,それから,お子さんの年齢もかなり高くなってくれば,自立して自分で判断したいことが増えてくると思いますので,当然相違も出てくると思います。   その辺り,長くなりましたけれども,お子さんの意向とか心情とかをどう把握するか,どう手続に乗せるかという問題と,お子さん自身が一定の年齢になったら,自ら手続に参加して,自分でイニシアチブをとって物事を決める,事態を打開できる,そういう3段階ぐらいのことについて,ここの課題として示されている点についてもう一回少し整理をしていただくと,議論もしやすくなってくるのかなという感じを持ちます。 ○大村部会長 ありがとうございます。大きく分けて2点あったかと思いますが,一つは,年齢で線引きを行うときに,現行法の下では15歳という線が非常に大きな意味を持っておりますけれども,その点について見直してみる必要があるのではないかという御指摘を頂きました。それから,もう一つは,先ほども御指摘がありましたが,手続代理人というときにどういうものをイメージするのかというのが必ずしも一致しないところがあるということで,誰がどのような働きをするのかということについて,他の職種との関係も含めて,少し詰めて考える必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。どうもありがとうございます。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石でございます。少し議論が前に戻ってしまうところがあるかもしれないのですけれども,前回,久保野幹事だったかと思うのですけれども,私に御質問を頂いたので,今回少しお答えした方がいいかなと思って,発言させていただきます。   御質問は,離婚後も両親双方が双方責任のような形で関わっている,その事例について,法的な何かがなくてもやっていけるのだというようなことを私が1回目の会議のときに言ったことについて,もう少し具体的に話してくれというようなことではなかったかと思います。それで,次回にいたしますということでお約束していたのですけれども,9月に御質問いただいた後,私どもの会員約5,000人の方に,面会交流などを問題なく行っている方にお答えいただきたいということで募集を掛けまして,40人の方がアンケートに回答してくださいました。この方たちの中から,かなり頻度が高く別居親と交流をしている方たちに,インタビューを4人にさせていただいたところです。ですので,もう少しきちんとしたものを御報告するに当たっては,もう少し精緻にやらなければいけないので,今日は発言だけにさせてください。   皆さん,離婚時には幾つかの葛藤があったけれども,調停などを経て,現在は子どものためを考えて頻繁に面会交流をしており,また,子どものいろいろなことについても御相談をしているというような状況の方たちでした。また,養育費の支払についても継続されているということです。お子さんが,例えば療育が必要とかそういうことで,発達障害なのですかね,学校にも関わっているですとか,療育の方針についても聞いたりしているというような方もいらっしゃいました。割と頻繁に情報を伝えているという方もいましたし,食事の会をするような,両親と子どもで食事会をするときに情報を伝えているというような方もいらっしゃいました。   総じて,双方責任,あるいは双方決定責任ということについて今,法制審議会で議論されているのだけれども,法的にこういうものが必要だと思うかということを質問したのですけれども,同居親でお母さんの立場の方に聴いているわけなのですけれども,この方たちは,子育てを担うところから,子育てについて話をする,よく子どもを知っている人と話をしたり,相談することというのは必要だと思う,しかし双方で決定するというよりは,やはり自分がその主導権を持っていて,こうしようと思うのだけれどもというような話をして,いいでしょうみたいな,そういうことであって,双方が決定するということには違和感があるとおっしゃっていました。なるべくここは誘導しないように聴いたつもりなのですけれども,そのような方が多かったです。   表面上はうまくいっている方であっても,例えば子どもが不登校気味で母の仕事を休まざるを得ないというようなことを面会交流の際に父親に話すと,養育費の増額と結び付けて,無理にでも子どもを学校に引きずって行けというような発言があったり,要するに,養育費の増額を請求されているかのように捉えたからなのだろうと思うのですけれども,養育費のことと無関係であれば,まあ不登校もしようがないよね,学校に無理に行かなくてもいいよねというようなことを言うですとか,なかなか,子どものためというより,やはりお父さんの養育費のことで考えてしまうというような反応が来ると。ですので,父母が子どもに関わり続けるということは皆さんとても肯定的で,かつ,葛藤が以前あったとしても,ある程度そこを切り分けてやっておられるという方があったのですけれども,双方の決定の責任を定めるというようなことについては,かなり必要性を感じている方は見当たらなかったということでございます。   付録なのですけれども,面会交流をされている中には,非同居親の方の両親が,子どもにとっての父親が早く再婚して跡継ぎが生まれてほしいので,面会交流を禁止しているので,祖父母に隠れて会っているというような方もいらっしゃったので,親族との関係というのもいろいろなのだなということを思ったのを,少し補足しています。よりきちんとしたデータが取れたら,また御報告したいと思います。   何度も言うとあれなので,別の件も少し発言しておきたいのですけれども,子どもの意見の尊重についてなのですけれども,今,小児科医の慶應大学の臨床の鴇田夏子先生にいろいろお伺いしたときに,やはり家裁でなかなか子どもの意見というのが聞き届けられていないので,意見書等でそこを出していると,やはりもう少し家裁の中で子どもの本音を聴き取れるような,そういう体制が不十分であると自分は感じているということをおっしゃっておりました。でも,先ほど木村幹事にお聞きすると,かなりじっくりやっておられるという話だったのですけれども,この先生はそういう不十分なところを感じておられるということでありました。これと関連して,議論が一巡したところでまたヒアリングをおやりになるということでしたので,こういう子どもの臨床に関わる先生にヒアリングの機会を設けたらどうかと思いました。積極的に述べたいとおっしゃっていたので,お伝えしておきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。前回質問が出た点との御関係での御発言が1点と,それから,子どもの意見の聴き取りについて現状についての御意見ないし,これに関するヒアリングの御希望を頂きました。   先ほど久保野幹事のお名前も出たように思いますけれども,久保野幹事,何か今あれば伺いますけれども。 ○久保野幹事 赤石委員,具体的なアンケート等を実施して有用な情報を集めていただいておりますこと,本当に有り難く思います。ありがとうございます。例えば,療育が必要な子どもについて,医療機関との関係でも双方が情報を得るような形で,婚姻中の共同親権と似たような形で子どもを育てていこうとしている方々といったような例というのは,今回の調査の中ではいらっしゃらなかったのかなという印象をもって,伺ったのですけれども,そのような理解でよろしいですかというのが一つと,仮にそのような前提でないとしましても,第三者との関係で何か困ったことがないかというような点について,特に,今後おまとめいただく際に,もしあれば教えていただけると有り難いということを,要望としてお伝えさせていただきたく思います。 ○赤石委員 赤石でございます。そうですね,先ほど申し上げた例の中では,インフォーマルに療育のいろいろな結果等について情報は共有しているという方がいらしたと思いますが,それを第三者機関との関係で,もう少しはっきりとどのようにしているかということを知りたいということを今,御希望を承ったと理解しております。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは,今のような御要望があったということで,お願いをいたします。   前回の持ち越しになっていた部分につきまして,更に何か御意見があれば頂きたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○久保野幹事 すみません,立て続けに,久保野でございます。11ページで,先ほど話題になっておりました,子に関する個々の事項について決定する場面についてなのですけれども,棚村委員からの御指摘と重なるのかもしれませんが,この場面での問題の捉え方として,現在の構成は,子に関わる何かの事項を決定するについて,子の意見ないし意向があり,親権者の意見ないし意向があり,それが一致しない場合にどうするかといったような構成になっていると思うのですけれども,もう少し別の見方というのもあり得るかと思います。プロセスに着目するといいますか,二つ例を挙げさせていただきますと,例えば,子どもを参加させるですとか,関与させて一緒に決めていくというような側面ですとか,また,例えば,子どもが別の大人に相談できる機会を設けて決めていくですとか,そのような,各自の意見があってそれらが一致するかどうかという問題の立て方だけではない,どのように決めていくかといったプロセスのようなことについても検討の対象にできるといいのではないかと思いました。既にほかの委員や幹事からも前回,以前にも出た御指摘かとは思いますけれども,大事ではないかと思いまして,重ねて発言をさせていただきました。   以上です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。子どもの意見の聴き方について,この資料でとられているような前提と並んで,別の捉え方も可能なのではないか,そうしたものも考慮して考えていく必要があるのではないかという御指摘を頂きました。   それでは,10分ほど休憩いたしまして,15時に再開したいと思います。休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,15時を回りましたので再開をしたいと思います。   部会資料7のうち,前回途中まで御意見を頂いていた第1,第2につきましては,先ほどまで引き続き御議論を頂いてきたところでございます。あと残っておりますのが,13ページ以下の「第3 父母の離婚に関連する諸問題」という部分になりますけれども,この部分について意見交換をお願いしたいと思います。御発言がございましたら,自由に挙手をお願いいたします。   いかがでございましょうか。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。父母の別居に伴う子どもの養育についてですけれども,そこからでもよろしいですか。嫡出でない子の養育についても,前にも少し発言させていただいたのですが,788条のところで準用するみたいな規定になっているので,少し分かりにくいので,規定の位置とか,規定の仕方についても整理をされた方がいいかなという感じを持っております。   それから,(2)のところで,別居のところですけれども,私が,2010年で少し古くなってはいますが,面会交流に関する制度などの調査研究をしたとき,家庭裁判所の調査官のヒアリングとか,親に対するアンケートの調査もさせていただいたときに,別居中の御夫婦の紛争というのが大体7割ぐらいあって,紛争が深刻化していたり,解決が困難な事例が多くみられました。どちらかというと離婚後の紛争というのは,離婚直後は結構紛争が激しかったりするのですけれども,3年とか5年ぐらいたつと少し落ち着いていくという傾向が何となく見て取れました。そうすると,別居中の父母の間の紛争というのは深刻でエスカレートし易く,かつ,ここの解決みたいなものをかなり重点を置いてやってあげないと当事者にとっては厳しいように思われます。これは緊急的な保全処分なんかもそうだと思いますけれども,別居という事実上婚姻関係が続いていながら,実は離婚までの暫定的浮動的な状態での規律がないということについては,かなり法的にも社会的にも問題が大きく出ているのではないかと思います。   離婚の規定の類推適用とか準用というのもいいのですけれども,やはりきちんと別居ということに対応して,いつから別居を開始したとするのか,その手続の在り方とか,それから,別居中の夫婦の法律関係・権利義務関係,夫婦もそうですし,子どもをめぐる問題,たとえば,親権や監護をめぐる事項についての規定の明確化というのですか,手続的にも実体的にも明確にしていく必要があると思います。事務当局で示していただいた課題の中でも出てきていますけれども,やはり規定それ自体が,養育費についても面会交流についても,きちんと見直されるべきなのですけれども,特にやはり別居中の御夫婦,つまり共同親権が続いてはいるのだけれども,それについて夫婦としてなかなか話合いがうまく行っていないときに,どういうような規律を設けていくかということについて,やはり法的にもきちんと手当てをした方がいいのだろうという感じを持っています。   例えば,親権者とか,先ほども出ました監護者とか,子どもの引渡しとかという事件もかなり増えていますので,そのときの決定の際の考慮事項とか基準についても,御提案もされていますけれども,特にフレンドリーペアレントについてはいろいろ御意見とか御批判もあるところだと思うのですけれども,一つのファクターとして考慮するということはあり得るのかなと思っています。ただし,余りこれを加重に評価しすぎた場合には,やはりいろいろ問題が出てくると思いますけれども,先ほどの子の年齢とか子どもの意向とか心情とか,それから監護養育の能力とか実績とか,いろいろなものを総合的に考慮してというときの考慮事項については,ある程度明確にしていくということは必要だと思います。特に,別居中の子どもの養育に関する規定については,きちんと規律を明確にし,どういう手続を置いて迅速に進めることができるのかということでは,法制度をきちんと整備された方がいいかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料の中には,嫡出でない子に関する問題と,父母の別居に伴う問題とがございますけれども,嫡出でない子についての規定の配置等に関する御発言もございましたが,主たる御発言としては,別居中の父母の紛争が割合としても多いし,重要度としても大きいので,規定の明確化を図る,考慮要素や基準などというのを示した方がよいのではないかという趣旨の御発言を頂いたと思います。どうもありがとうございました。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○石綿幹事 石綿でございます。棚村先生に重ねて発言させていただきます。資料の第3の2(2)に関連する,父母の別居に伴う子の養育に関して発言させてください。   第一に,離婚と異なり,別居というのはどのように定義をするのかということが難しい概念かと思います。しかしながら,単身赴任のような場合はここでいう別居には含まれないとは思われますが,父母が従前のように共同して意思決定をできないような,離婚を前提とした別居のような場合には,やはり何らかの規律を設ける必要があるのではないかと考えます。そのような状況の別居というのは,棚村先生が先ほどおっしゃったように,父母間の紛争性が高い可能性も多いと思いますし,それに伴って,特に別居親との交流などが途絶えるといったようなことで,子どもにとって大きな影響があることもあるかと思いますので,子どものために両親が最低限のことについては別居時に定めるということを求めていく必要があるのではないかと思います。   次は,2点目ですが,これも棚村先生が少し言及なさっていましたが,別居時というのは離婚の場合とは異なり,共同親権が続いている状態なので,恐らく原則としては,両親が共同して子どもに関して様々なことを決定していくことが求められる場面なのではないかと思います。ただ,別居に至っている夫婦というのは,その決定が難しい状況にあると考えられる可能性が高いことから,子どものことについて誰がどのように決定をしていくのかということについて,別居に至った場合どういうふうに決めていくかということについても,規律を置くなどの方向性を考えた方がよいのではないかと思います。   また,3点目ですが,監護者の指定の基準というのもブラックボックス化しているといったような批判もあるところかと思いますので,可能であれば,どのように子どもの利益を判断しているかということを明確化していくということがあるのではないかと思います。   4点目は,このように別居ということに少し注目をして,もし民事法の方の分野で,別居の際に何らかの対応をするようにという規律を設けていく場合に,児童扶養手当の支給など社会保障との連動も図ることができないかということを,ここの部会の検討対象ではないかもしれませんが,検討できればよいのかなと思います。児童扶養手当が早く支給されるように離婚を急ぐ家庭もあるというようなことを聞いたこともございますので,そのような社会保障との関連も,機会があれば検討ができればと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。基本的には棚村委員と同じ方向でという御発言がございましたが,4点御指摘を頂きました。別居時に父母が子どものために最低限のことを決める必要があるだろう。また,共同親権ということになるので,共同で決めるのが原則であるけれども,しかし,それができない場合の対応が必要である。3番目に,監護者を決める基準について,やはりその要素を明確化した方がよい。そして,4番目に,社会保障との連動ということも考慮に入ってくるのではないか。こうした御指摘をいただきました。別居時にというお話がありましたけれども,先ほど棚村委員の方からは,どのような形で別居するのかといった御指摘がありました。どこから別居で,どうすればいいのかといったことについても,何か考える必要があるのではないかという御趣旨がお二人の発言には含まれていたのかと思って,伺いました。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○杉山幹事 幹事の杉山です。私も前のお二人の委員の見解とほぼ同じになるのですけれども,17ページの(2)の父母の別居に伴う子の養育に関する課題のうちのDの方について意見などを述べさせていただきます。特に,別居に際して監護者指定,面会交流等の子の監護に関する問題が出てきたときに,特別な裁判手続,これは保全処分に限らず,迅速に判断する手続を設けることを検討した方がいいのではないかと思っております。それとの関係で,19ページの(注4)のところですが,暫定的な監護者を定める以外に,離婚を前提として,子の監護に関する保全処分の在り方について制度を検討することも,意見としてあると書かれていますけれども,どのような制度が望ましいかを考えるに当たっては,子の監護に関する保全処分の実態といいますか,どのように発令されているのかが分かった上でないと,在るべき姿については検討できないと思いますので,もしそのような実情が分かるのであれば,教えていただければと思います。   一緒に議論すべきかどうか分かりませんけれども,16ページの(1)のBで養育費の自動算定の話がございまして,これは,離婚した後にこのような自動算定をする制度を作るかどうかにも依ると思います。別居をしていて養育費が払われていないときの救済方法を考える必要性はあると思いますけれども,これも離婚後の養育費の場合と同じで,債務名義まで作るということになりますと,その後の争う手続をどうしたらいいのかとか,制度を作るとして最低限度の額しか保障できないのかという問題もありますし,別居の始期をどう判断したらいいのかという問題なども出てきますので,離婚後の話よりなお難しい課題があるのではないかという気がしています。    ○大村部会長 ありがとうございます。17ページのDに関して,迅速な手続を作るという方向で検討をするというのがよろしいのではないか,また,それと関連しますけれども,19ページの(注4)に出てくる保全処分については,実態を知るということがまず最初なので,何かあれば情報が欲しいということ,最後が16ページのBに関わる話ですけれども,ここでいわれていることは離婚後の規律と共通の難しさを持つけれども,別居の場合にはその難しさはより高い,より大きくなるという御指摘を頂いたかと思います。どうもありがとうございました。 ○原田委員 弁護士の原田です。今,いろいろと御意見が出ております16ページのAのところの別居の際の規律の問題は,規律という言葉がどうかというのはありますけれども,一定の協議をすることについて反対するものではありません。   ただ,この別居時というのが,いつするのかということで,今,例えば子の連れ去りとか,親子引離しとかいう言葉がいろいろ当たり前のように使われていることに非常に懸念を感じています。悪化した夫婦関係を解消したいと考える親がこれまで主たる監護者であった場合は,子どもを連れて出るのは当然のことなので,別居時にそれを決めなければ出られないというようなことになれば,現実的にはもう別居ができないというような状況になってしまうということを非常に懸念しており,このときというのを非常に緩やかに考えるべきであると思います。棚村先生方が出されておりました,未成年期に父母の離婚を経験した子どもの養育に関する全国実態調査を見ても,結局,離婚後に親子の交流が行われているのは,離婚や別居前に夫婦の関係や親子の関係が良好であった場合ということであって,ここで規律を決めたから,親子の間が良好になって交流ができるというものではないと思います。   したがって,こういうふうに突然出ていかなければならない,合意がなくても出ていかなければならないような状況の方が,では直ちにすぐ話合いができるかというのは,なかなか難しいところもあると思いますが,現実にはそういう方は多くの場合,弁護士や,あるいは警察などに相談をして,行方不明の捜索願いなどが出ても,きちんと安全にいるということを告げてもらうとか,あるいは出た後,弁護士がすぐ受任通知を送って,以後,裁判所で話合いをするとかというふうな手続をとっている場合がかなり多いと思います。出ていって,本当にどこに行ったか分からない,全く交流できないというようなケースがそれほど多いとは私は思っていません。ですから,この別居時というところが,どういう場合にこれが問題になるかというと,やはり話合いができないで出ていった方の場合だと思うので,そういう場合に,どのような形で規律したら本当に高葛藤が治まって,そして子どもさんとの交流ができるのかというようなことに沿った規律,規定というのを考えていかなければいけないのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。16ページの(1)Aに関連いたしまして,別居時に子どもの監護等について取決めをするという考え方が出ておりますけれども,別居時というのを厳格に考えてしまうと様々な不都合が生ずるので,どのような対応をするのが結果として望ましいのかということを考慮しつつ,この別居時というものについて緩やかに考えていくということが望ましい。こういった御意見を頂いたかと思います。ありがとうございました。 ○佐野幹事 ありがとうございます。佐野です。今,原田先生がおっしゃったのと同じ,16ページのAに関連して,海外では別居時にこういったことを決めるという話はよく聞くのですけれども,具体的にどういうプロセス,別居前なのか別居後なのか,それをどういったプロセスで決めるのかというのが実のところ余りよく分からないので,ヒアリングあるいは何らかの形でピックアップして調査したようなものがあれば,御提供いただけると有り難いかと思います。ただ,その際にはDV法制など,海外では家から加害者の方を出すところもありますので,そういったところも含めて,それこそ一覧表ではないですけれども,調査したものを御提供いただけると有り難いと思います。   もう一つ,認知なのですけれども,認知はいろいろなケースがあるので,なかなか一緒に扱うのは難しいと実感として思っています。というのは,強姦により妊娠してしまったケースもあるので,それは例外的に排除するということなのかもしれないですけれども,私の中で考えがまとまっていないところはあります。 ○大村部会長 ありがとうございました。16のAについて,やはり御発言を頂きましたけれども,一つは,外国で別居時に取りきめるという対応がされていると言われているけれども,その実情についてデータがあれば出していただきたいという御要望を頂きました。それから,ここでは認知のときや別居時にということで,二つの場合を並列で並べておりますけれども,少し違うのではないかという御実感を御披露いただいたと思います。ありがとうございます。 ○畑委員 畑でございます。17ページの(2)のD,先ほど杉山幹事が発言されたところです。私も大きな方向性としては,杉山幹事と違うということではないと思っております。すなわち,ここで問題となっているような局面で迅速な裁判手続が可能になるということは望ましいと思っております。ただ,裁判手続というのは,訴訟でも何でもそうですが,規定を置けば早くなるというものでは決してないというところがございますし,現在でも保全手続がございます。現在存在する裁判手続で対応できることがないのか,あるいは,もし現在の裁判手続で十分でない要因があるとすれば,それは何かという辺りを明らかにする必要があるのかなという気がしております。例えば,裁判所のキャパシティーの問題のようなことがあり,そういうことは,仮に規定を置いても,制度的な基盤が変わらない限りはなかなか難しいというところもございますので,現在の制度とその限界のようなところを明らかにするという辺りが,まず重要ではないかという気がしております。その意味では,杉山幹事が御発言になった,保全についての実情みたいなところも確かに重要かなとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。17ページのD,先ほど杉山さんからも御発言がありましたけれども,迅速な手続が望ましいというのはそうだけれども,手続を置いたとしても,様々な環境が整わないと裁判の迅速さというのは実現されないということで,現在の状況はどうなのか,ネックになっているのは何なのかということを検討するというところから始めるべきではないかという御意見を頂きました。 ○武田委員 ありがとうございます。親子ネットの武田でございます。(2)の別居関連の先生方の御発言がほとんどだったと思っています。私の方からは,まず15ページから始まる課題に記載されている(1)両場面に共通のもの,ここに関して,まず2点,意見を述べさせていただければと思います。   1点目,扶養義務の内容等を明確化という記載がございます。これは前回部会でもお話しさせていただきましたが,法律婚が有効であろうとなかろうと,つまり,離婚していようといなかろうと,また嫡出であろうとなかろうと,親は両親の法的な婚姻状態にかかわらず,親であることに変わりなく,子どもの養育に関して責任を持つという理念,これを明らかにすることがよいのではなかろうかと,考えています。つまり,父母だから扶養義務があるではないかという立て付けだけで本当に養育費なり面会交流なりの実施が改善していくのかと懸念を感じております。ただ,この責任に関して内容を明確化,規律,規定を検討していくという方向にはおおむね賛同するものでございます。   2点目,嫡出でない子の養育に関してです。部会資料7を拝見させていただきますと,飽くまで認知ということが前提になっていると理解しています。当然,法的には認知がなければ権利義務は発生しないと理解しております。したがって,このような議論の立て付けになっていることは分かりますが,認知を得られないお子さんはどうなるのか。議論が拡散するから,より広くなるから,あえて外しているのかというところが確認させていただきたいと思っています。何が言いたいかといいますと,認知がないから親の愛情や生活費を受け取れない子どもが取り残されるということとしてよいのかということが私の問題意識です。こういった非嫡出子に関係する現場で,もう少し,どのような声が上がっているのか,先ほどレイプみたいな話なんかもありましたけれども,もう少し立法事実を示していただいた上で議論を進めた方がよろしいのではなかろうかと,そんなふうに感じています。   最後,もう1点,別居に伴う子の養育に関するものに関してです。こちらは意見というより,少し教えていただきたいと思っているところでございます。具体的には,民法752条,同居,協力及び扶助の義務に関してです。この条文に現時点でどのような意味があるかというところを少し教えていただければと思います。現行法でも同居調停という手続があるのは存じ上げております。しかしながら,同居調停を行ったから同居命令が出るなんていうことは,私は聞いたことがありませんし,そもそも命令をもって同居状態に戻るようなことはあり得ることではなかろうと,そんなふうに思っています。この条文が理念的なものなのか,相互の協力はまだしも,国民意識がこれだけ多様化している中,「同居が家族や夫婦の在るべき姿」的な条文も,個人的には違和感を感じるところです。この辺り,恐らく法的には歴史的な変遷もあろうかと思いますので,同居,協力及び扶助の義務,ここについて,どなたに回答いただくのがよいのか判断できませんが,少しこの議論を注視している国民の皆様にも分かるよう,御教示を頂きたいと思います。   とりあえず,ここで切らせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点,御意見ないし御質問を頂いたのかと思います。1点目は,扶養義務の明確化という話が16ページに出ているけれども,もっと立ち入った形で考え方を示す必要があるのではないかという御意見だったかと思います。それから,残り2点は,2点目は御質問かと思いましたが,嫡出でない子というときに認知された子を想定しているけれども,認知のない子どもについてはどうなのかという御指摘がありました。それから,3番目,752条の同居義務についての御質問ですけれども,その中にも二点が含まれていたように思いますが,一つは,同居義務があるということと,別居の状態になっているということの関係をどう理解するのか,それから,そもそも現在の婚姻において同居義務をどれくらい重視するのか,この2点の御質問ないし御指摘があったのかと思いました。何か事務当局の方からありましたら,お願いします。 ○北村幹事 まず,認知を今回挙げさせていただいた点ですけれども,まず現行法を前提としての議論ということで,法律上の父子関係が発生するという時点ということで,認知で挙げさせていただいております。認知を受けられない場合には,裁判上の手続,裁判認知という手続もありますので,今回は認知のときということで挙げさせていただきました。これを挙げることについての御意見があるということは,今回の部会の中でいろいろ御意見いただいたところです。   もう1点,同居,協力,扶助の義務については,民法の先生方がいらっしゃる前であれなのですけれども,それぞれ義務がありますし,実際に裁判においても同居を求める審判を起こすことはできるということにはなってございます。実際にもそのような例があるというのは承知しておりますけれども,ただ,同居を認める審判が出たとしても,強制的な執行はできないとされています。 ○大村部会長 ありがとうございます。武田委員,よろしいですか。 ○武田委員 ありがとうございます。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。非嫡出子についての議論がここで出てきていることは,私が前に,婚外子についての議論も一緒にした方がいいのではないかということを受け止めていただいたものと理解しています。不勉強で申し訳ないのですけれども,認知手続についてほかの審議会で議論が何かされているように聞いているので,それでよろしいのでしょうかということが一つです。   認知の手続が父親から子どもに一方的というか,そういう矢印でできるということが果たしてどうなのだろうかということは,家族法の在り方としては少し疑念は生じているものの,ここで議論していることではないと思います。先ほどおっしゃってくださったように,子どもから請求することも,子どもの代理として母から請求することもできるということも認識しております。   その上で,2年前に寡婦控除という税制を改正してほしいということで要望して,税調でひとり親の控除という形に,差別がなくなる形になったというときに,100人の結婚しないでお子さんを産んだ方たちに調査もさせていただいたのですけれども,非常に多様な方たちがいたと思うのですけれども,その方たちのもっときちんとした調査というのが在るべきなのだろうなとは,今,武田委員のお話を聞いて,私もそう思いました。妊娠期間中,まだ婚姻届を出す前にDVがあって,結婚に至らなかった方もいらっしゃいましたし,また,本当に子どもの父親がほかに家族を持っているというケースも,2,30%ですかね,いらしたと思いますし,いろいろな方がいたと思っております。ですので,ここで別居の方と一緒に議論するのは,何となく私も違和感がございます。   それから,別居のことについてなのですけれども,子どもの連れ去りというのが問題であるというようなお話はあるのですが,私どもとしては,別居するときに,原田先生がおっしゃったように,子連れで別居する以外の方法がない,御自分が子どもを見ているわけですから,それ以外の方法がないという方はたくさんいらっしゃるかと思います。そういった子連れ別居した後の別居中の方の状況ですけれども,本当に厳しい状況がございます。まず,住宅を探すといっても,御実家に帰れないというときには,就労していない場合は民間アパートを借りることも困難であるというようなことがございます。それから,子どもの学校を替わる,あるいは保育園を再度探し直す,こういったところで今,保育園も待機児童もありますので,非常にそこでも困難がございます。また,子どもの環境の変化ということで,子どものケアというのも非常に大変になります。それから,お仕事を見付けるというところでも,お仕事のブランクが長ければ長いほど,中年の女性が仕事を見付けていくというのは非常に困難がございます。また,ほとんど子連れ別居で夫の方に家を出ることを言わないで出たような方の背後にはDVがございますので,メンタルケアの部分でも,非常に自己肯定感も低くなっておりますし,メンタルにも大変なことがございます。大体五重苦か六重苦の中で別居を続けている方にどのような規律を設けるのかという話を今,議論しているのですが,私としては,そういう方たちにどういう規律を設けるという話をしているということを少し意識していただきたいとは思っております。   もちろん親子関係を継続していくということは大変重要なことだろうとも思うわけですけれども,一方では夫婦の関係が非常に葛藤状態のときにさらされている子どもは,やはり非常にまた大変な思いをしているということも事実でございます。そうなると,一定期間の冷却期間があることは決して悪いことではなく,別居したらすぐに親子が会ったりとか,そういうことをするのがいいのだというのが,少し私には違和感がございます。一定の冷却期間があれば,冷静に考えられるというようなこともありますので,欧米の映画などを見ると少し恐ろしいような,ぼこぼこに殴られた後,すぐに面会交流が始まるような映画を見ていると,とても野蛮に見えるのですけれども,そういうものもございますので,一定期間の冷却期間というものも決して悪いものではないのだと申し上げておきたいと思います。少し素朴な議論になってしまって申し訳ないのですけれども,そういう生活と状況の中でこの議論を行われるということを意識化していただければ,大変有り難いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。3点ないし4点御指摘いただいたかと思いますが,1点目が,これは御質問だったかと思いますが,認知手続に関する検討の状況について,他の部会で検討されているといったことがあれば,その点についてということだったかと思います。それから,2番目は,認知の場合と別居の場合を同じように議論するのには違和感がある,先ほども御指摘がありましたけれども,同方向の御指摘かと思います。そして,3番目に,子どもを連れて別居する場合の困難についてのお話があり,そうした人々に適用されるルールを考える際にはその状況を考える必要があるということでした。それとの関係でということだったかと思いますが,一定期間の冷却期間ということを考える必要があると御指摘がありました。一定期間の冷却期間を置くという御提言は,独立の問題としてあり得る御提言なのかと思って伺いました。以上かと思います。 ○今津幹事 幹事の今津です。先ほど畑委員や杉山幹事からお話のあったところと重複するのですけれども,17ページの(2)Dというところに関して発言をさせていただきます。   ここに書かれているように,父母が別居するに際しての裁判手続,あるいは,より広く家事紛争一般における裁判手続について,適切かつ迅速ということが求められている点については全く異論がないところなのですけれども,そのための特則を設けるということについては,その内容も含めて慎重にというか,検討していく必要があると思っております。私自身は現状の家裁実務は,何か制度上とか,あるいは運用上,明らかに不備があって,手続が遅延していたり,あるいは不適切になっているというような認識は持っておりませんので,今,裁判官も,あるいは代理人として付かれている方も一所懸命やっている結果として現状があると認識しているのですけれども,これを何か規律をいじることですごく改善がされるのかというところは,杉山幹事がおっしゃった,現状がどうなっているかという認識も含めて検討していく必要があるのかと思います。   資料でも(注4)のところで,要件の立て方を工夫するとか,あるいは(注6)でも書かれていますけれども,迅速さということを余り強調してしまうと,今回,冒頭でも少し裁判所の方からお話があった調査官の調査なんかも,現状でも不満を持たれている方もいるというようなことで,より,むしろ慎重に時間を掛けてやるというようなニーズも,もしかしたらあるのかもしれないと思いますので,迅速さと内容の適切さというのは必ずしも両立し得ない面もあるかと思いますので,その辺りは慎重に検討していった方がいいということを意見として申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど来御指摘が続いております17ページ,2のDについて,特則を設けることについては慎重な検討が必要なのではないか,これも御指摘があったところですけれども,ルールを変えれば対応できる問題なのかうかというところは検討を要するだろう,さらに,迅速性以外のニーズというのもあって,それも考えなければいけないのではないかという御指摘を頂きました。   小粥委員から手が挙がっておりますが,その前に,先ほど赤石委員の御発言の中で,第1点の認知の手続については御質問だったかと思いますので,事務当局の方で,もし今の状況について何かあれば,お願いをいたします。 ○北村幹事 おっしゃるとおり,法制審議会民法(親子法制)部会において,嫡出推定制度であるとか認知の手続も含めて現在,議論がされてございます。そちらの状況につきましては,法務省のホームページに議事も含めて出ておりますので,御参照いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○小粥委員 小粥でございます。裁判所の手続の実際について教えていただける機会が出てきそうなので,それに加えて裁判所に教えていただきたいことを加えさせていただきたいという趣旨の発言になります。   具体的には,DVとか虐待があるかどうかということを裁判所がどのように判別していて,裁判所として実際にどのくらいスクリーニングができるというか,認識することができるのかということを,裁判所の口から,そういうことは適切にやっているという以外のお返事が頂けるとも想像しにくいですが,そこは池田先生や原田先生の御意見なども伺って,何とかと。つまり,裁判所でそれがどの程度認識できるかによって実体法の組み方が変わってくると思うのです。すごく失礼な言い方をすると,裁判所ではよく分からないのだということになるのか,それとも裁判所は分かるのだということになるのかによって,実体法の組み立て方は恐らくかなり違ってくると思うので,そこを是非ともお聞きしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。DVあるいは虐待といったものについての判別,判断の仕方について,裁判所の方でどのように行っているかということについて伺いたい,どの程度識別できると考えているのかということが,この先,制度を組んでいく上での前提になるのではないか。こうした御指摘と御要望を頂きました。 ○佐野幹事 先ほど赤石委員の方からお話がありましたが,別居した後の子どもの監護状況の不安定さ,立場の不安定さというのは,例えば,保育園に待ち伏せされて連れ去られるかもしれない不安など,実際はあるわけなのです。そういう意味では,監護をしている方から子どもの監護者指定を申し立てたときに,申立てが認められているのかどうかも,裁判所から実情を御報告いただけるのであれば,助かります。連れ去った方からの,戻せとの申立てに併せて監護者指定というのは判断されていると思うのですけれども,連れていった方から,自分を監護者として指定してくれという申立てが認められているのかどうか,もし数を把握されているようであれば教えていただきたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。小粥委員から御要望がありましたけれども,佐野幹事の方からも,連れ去りといわれているケースで,連れ去った側からの自分への監護者指定の状況について知りたいという御要望がございました。裁判所でどうなっているのかということについて直ちにお答えを頂くというのは難しいところもあるかと思いますので,事務当局の方で後で打ち合わせていただいて,可能な範囲でお答えを頂くということにしていただく,それでいいですか。 ○北村幹事 かしこまりました。 ○大村部会長 小粥委員,佐野幹事,それでよろしいですか。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。先ほど原田委員とか赤石委員の方からも,別居時の状況については,子連れ別居とか,緊急避難的な別居などいろいろな状況もあるので,現状でメリットがあるのだろうかというような御発言もあったと思うのです。私どもは多分,石綿幹事もそうですけれども,別居制度というものを積極的に検討してはというのは,欧米の国々では協議離婚というよりは,協議離婚も,合意的な離婚もあるのですけれども,やはり裁判所が一定程度関与するという方向になっています。それは,婚姻の状態と離婚という夫婦関係を正式に解消するまでの間に,うまくいかなくて事実上別居ということが日本でも生じているわけです。そのときに,どうしても事実状態だけにまかせてしまいますと,法律的にも当事者の力関係で決まってしまうとか,実力行使をした方で決まるとか,法律関係が不安定になってしまうので,法定別居という制度を設けて,婚姻している円満な状態と,それから離婚という形で夫婦関係を正式に解消した間の中間のところに制度を設けていって,いわば「冷却期間」をもうけたり,法的な権利義務関係を全て認めるのではなく,例えば義務を少し軽減したり,手当てを厚くしたり,監護とか,あるいは養育費のこと,生活費のことも決めたりとか,紛争を棚上げして,スムーズな移行を図るなどの機能が果たされています。要するに,事実状態に任されているところで,非常に不安定な法律状態を,別居という制度を置くことによって,そこで当事者が手続をとれば,正に夫婦としての権利とか義務,それから親子としての権利,義務の定めみたいなものをある程度安定して受けられるというメリットもあるわけです。   海外はそういう形で別居制度がよく使われるのは,先ほどのDVの法制とも関係するのですけれども,家庭裁判所に相当するところが,保護命令とか,ストーカーの接近の禁止とか,ハラスメントとか,そういうようなことでの問題行動のリスク対応みたいなことについても,迅速な対応がある程度とれるというのもあって使われています。要するに,危険とか安全性についてのある程度のスクリーニングみたいな機能も持っているので,割合とうまく使われているのだと思います。   そこの辺りは安全・安心への対策が日本で縦割りに少しなってしまっている,ストーカーだったら公安委員会とか警察とか,戒能委員なんかも御指摘されていますけれども地裁でもって保護命令みたいな形で接近禁止とか,立ち退きとか,退去命令とかという,そういう中に,むしろ何らかの形で,暫定的な監護とか,養育費,婚姻費用の分担の問題とか,そういうことについてもある程度,暫定的な決定をできるような機能みたいなものが付け加わるといいと思うのです。ただ,それはもちろん理想的なのですけれども,別居制度を設けることの意味というのは,法律的に別居をして,婚姻と離婚の過渡的な状態の中で紛争が起こったり,当事者の事実状態や力関係で決まってしまうものを,法的に少し明確な規準で問題の解決をしたりさせるための制度なのです。ですから,それが日本ではやはり一番欠けていると私たち研究者は思っているし,それについての規律とか制度化というのを考えるということも大切だと思います。   正に無戸籍の子どもたちの問題が生ずるのも,嫡出推定という効果を,どの時点から別居をしていて,婚姻とは違った形で離婚に向かっているのかということが明らかにできると,父性推定の排除とか,そういう効果も与えることができるわけです。ところが,事実状態に任せておくと,いつ別居したのかでそれぞれの言い分が違ったり,そういうふうになると,婚姻しているのだけれども,離婚までの暫定的な状態の確認とかサポートができない状態になってしまいます。先ほど言いましたように,離婚をしないと児童扶養手当がもらえないということになってしまうと,やはり離婚を急ぐか,どちらにするかという問題になってしまうので,一番グレーゾーンになってしまっている別居状態みたいなものを,一定程度法的に保護されたり救済をされたりされるための制度として設けていく可能性というのは,十分検討の余地はあるのではないかと思います。その上で,先ほど小粥委員からもあったように,DVとか暴力とか虐待に対してどういう保護が与えられるかという制度,これ自体もやはりきちんと考えていく必要があると思うのです。   ただ,別居という制度を置くか置かないかということについて,あるいは有益かどうかについては,協議離婚の実態調査とかいろいろ,未成年期の父母の離婚を経験した子どもたちというか,20代,30代の人たちの調査なんかでも明らかになっているのは,子どもたちの目からみても,十分な話合いがされずに,事実上別れていかざるを得ない現実というのは確かにあると思うのです。ただ,子どもから見ると,やはり別れてくれてほっとしたというのも4割ぐらいいて,なるほどなと思いました。この調査でも,夫婦げんかは6割ぐらいがやっていて,かつ,先ほども少し御紹介がありましたけれども,面会交流とか養育費が行われているのは,どちらかというと親子の関係も,別居前から割合とコミュニケーションもあってとか,良好だったケースが多くなっていました。そういういろいろな条件はあるのだと思うのですけれども,では,別居という事実上の関係を全く法的に何の規準も手続もないまま置いていいのかというのを是非検討していただきたいと思います。   その上で,DVとか暴力の法制については,日本は十分ではないと思っていますので,是非,ここで全部が議論できるとは思わないのですけれども,支援という中で,関係機関の連携というのは非常に重要なことだと思いますので,そういう中で,家庭裁判所にいきなりDVとかそういうものを処理する機能を取り込むということはなかなか難しいかもしれません,負担との関係もありますし。ただ,安全と安心というのは非常に重要なテーマですから,それと,別居という制度を置くか置かないかというのは,少し切り分けながら議論をしていただけると,別居という制度が必要かどうかという辺りのところで御議論を頂いて,それを利用するニーズとかそういうものが全くないのであれば,取り上げる必要はないということになると思うのです。しかし,子どもにとっても当事者にとっても,選べる制度としての別居という制度があることによって,過渡的な暫定的な,そういう期間が割合と安定して,法律関係とか権利義務関係が明確化できるということであれば,是非前向きに少し検討してもいいのかなというのが先ほど来の主張です。 ○大村部会長 ありがとうございます。2点のお話があったかと思います。先ほどから別居の話が出ておりますけれども,事実上の別居とは別に,制度化された法定別居というべき制度を持っている国があるわけですけれども,そうした婚姻と離婚の中間のような形態を導入するということを検討すべきなのではないかという御意見を頂きました。それとの関連で,裁判所による安全対応についてももちろん考えていく必要があるけれども,問題を差し当たり分けて考えることがよいのではないかという御発言だったかと思います。 ○原田委員 原田です。先ほど私の発言で,そういう制度に反対していると思われたのかもしれませんけれども,先ほど申しましたように,別居時,そのときにしないと駄目だというふうな形での制度設計はやめてほしいということを申し上げました。先ほど赤石委員からもおっしゃったように,本当に子どもを連れて出た場合に,いつ来るのかとか,連れていかれるのではないかとか,いろいろな不安を抱えながら生活していらっしゃることを考えると,どういうふうな制度設計にするかは別にしても,一定の決まりがあることは私は否定はしません。ただ,先ほど言ったように,それをしないと別居できないという状況では困るということと,それから,いろいろな状況で精神科にかかったりとか,そういう方もいらっしゃる状況なので,遅れたときにペナルティーとして,遅れたから,もう君は監護者にはなれないのだ,というようなことはしていただきたくないということを申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの発言を補足される趣旨で御発言があったと思います。別居時に何か決めるということについて反対しているというわけではなくて,それに伴う問題への対応が望ましいという御趣旨かと思います。棚村委員の法定別居の御提案も,全ての場合に法定別居しなければいけないということではなくて,法定別居という選択肢を設けて,その当事者の関係を明確化するというのはいかがかということだと思いますので,御主張が正面から対立しているというわけではなかろうと思って受け止めました。 ○武田委員 もう議論がかなり進んできていると思うのですけれども,少し戻るようなお話で恐縮です。次は,17ページ(2),父母の別居に伴う子の養育に関するもの,こちら側に関しての意見を述べさせていただきます。   1点目,別居時の規律の重要性,これはもうほとんどの,かなり多くの先生方が,重要であるという御意見を表明しておりますので,私の意見としても,離婚時よりも別居時の規律の方が重要ということを述べさせていただきます。理由は割愛をさせていただきます。   2点目です。部会資料15ページのDです。別居後の養育環境に子が定着した後で子の引渡しの審判が出されることを,子の養育環境の安定性を害する事態という記載がなされております。これはこれでこのとおりかと思います。しかしながら,いろいろと今,DVがあるときなんかは完全に別ですけれども,最初の別居,このタイミングでのお子さんへの影響,ここは是非考えていただきたいと思います。慣れ親しんだ住環境,別居後,離れて暮らす親,おじいちゃん,おばあちゃん,親族含めた関係,お友達との別れ,お子さんたちって恐らくこの最初の突然の変化,両親間の葛藤もそうですけれども,この環境変化に大きな苦痛を受けていることは御意識を頂きたいと思います。これが2点目でございます。これらの負担を軽減するためにと,なかなか話合いは難しいとかという意見もございますけれども,話合いできる方もいらっしゃると思っています。お子さんへの説明,これをすることが何よりも重要なのかなと思います。   先ほど民法752条,同居,協力及び扶助の義務ということを申し上げましたけれども,やはり別居時というのはまだ法的婚姻が有効という状態にあるわけですから,何とかそこは協力し合って,お子さんの負担を少しでも取り除く努力をしましょうということが私の意見でございます。赤石委員から,家の問題ということも難しかろうと,私も同感でございます。こういった課題を具体的にどうするかというのは,まだ議論するタイミングではないと思いますけれども,すみません,個人的なケースなのですけれども,私別居の話が出た際にときに,「私が家を出る」「あなたは子ども達とここにいなさい」「私はウイークリーマンションででも暮らす」と言いました。このような行動も子どもの負担を軽減するひとつの方法かと思いますと言いました。私の場合,結果的には,その後,連れ去られることになりましたけれども,一定の規律を設けることでいろいろな知恵が出てくるのではないかと思っています。   3点目,監護者及び親権者を定める規律についてです。17ページの(注2),18ページの(注3)にあるような規律を設けること,ここは賛同いたします。しかしながら,現状は「継続性の原則」と我々,呼んでおりますけれども,そのような報告が,やはり私どもの耳には多く入っております。この5月,弊会の別居お母さんに対するアンケート調査結果を出させていただきましたけれども,我々は実感として,これら(注2)や(注3)のような規準で監護者,親権者が定められているという実感はありません。この規律の考え方,少し,棚村先生がおっしゃっているような別居後の新しい規律というところにもつながるような話かなとも思っているのですけれども,いずれか一方を監護者という形に指定するのではなく,まず,話合いによって合意できるか,できないか,その後の共同監護というところを基本的な考え方に置き,現行法制下で多くの御家族がWin Loseの関係になっていると思いますが,そこを少しでも脱却できWin Winにできる制度設計を考えていく必要があるのではなかろうかと思います。   最後,4点目です。18ページの(注3)の規律に関して,いろいろ御批判の多いフレンドリーペアレントルールに関して,簡単に触れさせていただければと思います。部会資料7に記載されているとおり,単に面会交流の多い,少ないということで監護者を決定する,フレンドリーペアレントルールがこのような規律であるとは私は思っておりません。部会資料7に記載のとおり,協力しない態度,これを親権者,監護者決定の一要素として考慮するもの,既に一部考慮されていることもあろうと思っております。ただ,我々離れて暮らす親として,当事者からの話を聴く限り,例えば,離れて暮らす親との交流に対して直接な妨害行為をするか,また,これはよくある話なのですけれども,再婚相手,新しいパートナーに子をなつかせようとする,無理やり父,母であると教え込む,これもよくある話です,子に他方の親に対する拒否感情を持たせるように悪口を言う,このような行動は子どもを過酷な状況に追い込むと思っています。こういった,私は寛容性だと思っておりますけれども,こういった問題を規律でやっていくのか,例えば,これまで何度も話の出ております離婚前親教育でひもといていくのか,いろいろな方法はあろうかと思いますけれども,こういった他方の親と子の結び付きに関する寛容性についても,より一歩踏み込んだ検討が必要なのではなかろうかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。別居時の規律が重要だという点については,ここで出ている議論に基本的には賛成だということをおっしゃった上で,別居による子どもの負担,環境の変化の負担ということを重視すべきだである,父母の間での話合いは難しいことも多いだろうが,できることもあるので,そのことも勘案すべきだという御意見を頂きました。それから,資料の17ページの(注2),(注3)のような考え方には賛成だけれども,実際の状況がどうなっているのかという問題提起,あるいは共同監護,フレンドリーペアレントルールというものについてのお考えをお示しいただいたと思っております。ありがとうございます。 ○池田委員 弁護士の池田でございます。先ほど小粥委員の方から,DVのスクリーニングについて,裁判所の立場からと,それから代理人の立場からの御意見もあるのではないかというふうな御指摘を頂きまして,そのことに関連して一言申し上げたいと思います。ただ,DVそのもののケースというのは,恐らく他の弁護士委員,幹事の方がたくさん扱っておられるかと思いますので,補足を頂きたいのですけれども,夫婦間,父母間の監護紛争の中で,例えば面会交流について,DVが一方から主張されているというようなケースについて,DVそのものをあったか,なかったかということを正面から事実認定をするというふうな形は余り多く見掛けないような印象は持っています。むしろ,子どもが怖がっているとか,拒否をしているとか,そういった子どもに対する影響面を調査し,評価をしていただいているような,そこにスポットを当てているような印象を持っています。   ただ,では家庭裁判所の方で暴力や,そういったものを認定することは避けているのかというと,そうでもなくて,児童虐待の場面では,もちろん暴力や支配性とかいったことについて認定をきちんとしていただいているというケースはあります。もっとも,児童虐待の場面では,多くは児童相談所が児童福祉法28条の審判で施設に入所させるかどうかを承認するという場面ですから,児童相談所が綿密な関わりをして調査をしてきているというのがあって,事実認定はしやすいところはあるかと思います。そうでないところで当事者の主張だけが対立しているような場合に,どこまでそういった認定ができるのかというところは,少し感じているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの小粥委員の御発言を受けて,弁護士としてのお立場から,DVないし児童虐待のスクリーニング,あるいは認定についてお話を頂きました。   原田委員,もう一度手を挙げていらっしゃいますか。 ○原田委員 原田です。挙げたつもりではなかったのですけれども,機会ですので,引き続き今の話を少し,DVなどをよく扱っている立場から,話させていただいていいでしょうか。 ○大村部会長 お願いします。 ○原田委員 池田委員が言われたように,DVがあったか,なかったかという認定を裁判所が,特に調停などの段階で,しているということはないし,審判の場合でも,やはりその影響がどうなのかということで議論になっていると思います。逆に,DVのケースでも,お母さんが,いや,私は面会交流の引渡しとかでは絶対会いたくないけれども,子どもが会うのは構わないと言われる方も結構いらっしゃるのです。なので,子どもにどういう影響があるかということについては,直接的な暴力も問題ですけれども,どちらかというと精神的な支配性が非常に強くて,自分の言うことを聞かないと何をするか分からないと,だから,子どもがだんだん大きくなってお父さんの言うことを聞かなくなったとき,お父さんからどんな扱いを受けるかどうか心配だとか,そういう形でおっしゃる方がおられて,それについて裁判所が真摯に聴いてくださっているかというと,それは懸念でしょうという形で,現実にそういうことがあったのですかという形になってしまって,なかなかそのお母さんの懸念が結果に反映されないということが多いと思います。   それから,虐待の問題では,先ほどおっしゃられたように,児童相談所の果たす役割が大きいのですけれども,実際,例えば親権や面会交流を決める場合に最も困難なのは性的な虐待です。例えば,お子さんをお風呂に入れているときに何か触ったのではないかとかいうようなことについて,子どもの様子や,例えば陰部が腫れているとか,何か子どもが挙動不審のようなことがある,でも,直接見てはいないというようなときに,そういう懸念があるとしても,なかなか懸念だけでは認めてもらえない。心療内科,児童精神科のお医者さんに診ていただいて意見書を書いていただくこともありますけれども,やはりよほどの説得力というか,なかなか認めていただけない,そして,もう二度と暴力は振るいませんとか,そういうことはしませんとおっしゃられると,お父さんはこうおっしゃっていますよという形で決まってしまうということもあって,そのような場合,立会いの下で面会をするとか,第三者機関,あるいはFPICなどにお願いをするとかいうようなことで,やむを得ず合意するというような形もあります。   それから,私どもは面会交流に反対しているように思われるかもしれませんけれども,実際はやはり第三者機関を使うとお金が掛かりますので,できる場合はできるだけすると,お母さんが,私は嫌だけれども会うのはいいよとおっしゃる場合は,本当に代理人としては,土曜,日曜,お盆,お正月,引渡しのために出ていって実行しているというのが現状です。 ○大村部会長 ありがとうございます。池田委員の御発言を受けて,DV,それから虐待のそれぞれについて,御経験の中で経験されている困難な事例について御披露いただいたと思います。それから,面会交流のために尽力されているというお話も頂きました。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○武田委員 ありがとうございます。では,発言させていただきます。別居前後の規律という御議論を頂いたと思っています。今日,議論の中で,長期間ずっと会えない,そんなケースは余り聞いたことがないというようなお話も若干ありましたけれども,我々はよく意見が対立する連れ去り,連れ去りは連れ去りとして置くとしまして,実はその後,引き離し状態が長期化する,私どもはここを何とか改善していただきたいと思っています。突発的に連れていってしまったとか,個別の事情もあるのだと思います。しかしながら,この別居後,連れ去り後の引き離し期間の長期化ですね,いきなり環境が変わってということを先ほど申し上げましたけれども,その後,こういった引き離し状態が長期化,固定化する,その辺りの問題を是非御認識していただきたいということをお話しさせていただきたいと思います。   海外のメデイアではよく取り上げられました,今年の7月にオリンピックスタジアム前でハンストを実施したヴィンセントさんのお話であるとか,ヴィンセントさんは3年間全く会えない,警察に行っても,裁判所に行っても,役所に行っても全然駄目だったと報道がされておりました。また,これは我々の仲間の別居お母さんグループが支援に行って,そのときのインタビューで答えておられましたが。やはり,インタビューに答えておられたお母さんも,「3歳半の娘を元夫に連れ去られ,1年半もの間,顔を見ることも声を聞くこともできない。」もう一人のお母さんは,「自宅を閉め出された後,知らぬ間に引っ越されてしまい,二人の子どもの行方すら分からず,1年半,一度も会えていないし,ここから先,いつ会えるかも分からない。」このようなインタビューでした。   私たち子どもと離れて暮らす親は,引き離されたお子さんたちの声を直接聞くことはできません。でも,連れ去り後の長期にわたる引き離し,これで子どもたちが苦しんでいること,これは容易に想像できます。そんな中,今日こうやって別居時の規律の議論をしていただいて,これからどのように組み立てていくかという話が,レジュメを含めて,つながっていくかと思いますが,今日,その関連の提案といたしまして,私の方から「親子審判」という形のメモを出させていただきました。この考え方が全てであるとも思っておりませんし,既存の手続をより活かした方がよいのではないかという意見も当然あろうかと思いますけれども,今後,こちらには民事法の先生方も多数いらっしゃいますので,今後の様々な御意見,御提案を頂く材料になればと思います。   私の方からは,以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。連れ去りの後も続いている,武田委員の表現でいうと引き離しという状態の長期化について検討してほしいという御要望と,それとの関連で出していただいている資料の御提案についての御紹介があったと受け止めました。ありがとうございます。 ○水野委員 ありがとうございます。民法766条がテーマに上がってきておりますが,議論の前提として,この条文の限界を理解した上で,制度設計をしなくてはいけないだろうと思います。つまり,基本的に766条は協議,二人の合意ということを前提にできており,協議で合意ができれば内容の妥当性チェックは原則としてかかりません。そして,その際に子どもの意見を聴くという設計も,その合意にできるだけ子の意見を反映しようということなのでしょうが,これらは全て意思決定,合意の中の枠組みの議論であり,私はそのことを危惧しています。全員が合意をしていたとしても,それが子どもの福祉に反するという場合もあるはずです。DVの父親が子どもを置いていけというので,幼い男の子が,母と姉妹を父親から逃がすために,自分が残ると判断したケースを聞いたことがあります。つまり,児童虐待がある場合には両親から子どもを守らなくてはならず,精神的虐待やDV暴露は外部からは簡単にわかりにくいですが,そういう弊害の判断を必要とする場合があります。それは親権制限の方の領域なのかもしれませんが,日本の場合にはDV対応や児童虐待対応が非常に貧弱ですので,これが離婚の場面,このような離婚後の協議,別居中の協議のところに流れ込んできています。そこの切り分けはなかなか難しいのかもしれませんが,常にそういう問題を抱えているという前提で,この協議の問題を考えなくてはならないだろうと思います。   それから,言いたかったのは今の構造的な問題なのですが,付け足して,子どもの意見につきましても一言,申し上げます。児童相談所の現場の人などのお話を伺いましても,一時保護の場合も,子どもがこう言っているからという発言は非常に重いので,極力,使わないのだそうです。子ども自身にとっても,あなたがそう言ったから帰すわよとか,あなたがそう言ったから保護する等と言うのは,ものすごく子どもにとっての負担を掛けてしまうので言わないことにしていて,子どもの意見,子どもが何を考えているかは,よく慎重に聴かなければいけないけれども,対応は常に相談所が決めたのだと言うことにしているそうです。そして,親に対しても,お子さんが帰りたくないと言っていますよなどとは言わないで,それは我々が決めたという,つまり,全ての当事者から悪者になりながら児童相談所が引き受けて,子どもを守らなくてはならないと言っておられました。それと同じことは,このような裁判所における決定においてもあるはずで,裁判所が,子どもがこう言っているから決めました,あるいは子どもに,あなたの意見に従って決めますというようなことを,裁判所としては言ってはいけない場面が非常に多いだろうと思います。子どもの意見を十分に聴かなくてはならない,子どもの様子を十分に見なくてはならないというのは,本当にそのとおりだと思うのですが,それを,決定権限を子どもに与えるという形にするのは,非常に残酷なことだと思いますし,子どもの意見を理由に立てて親を説得することについても,やはり慎重さが必要でしょう。全ては裁判所が判断したとして,このような場面で子どもを守らなくてはならないのだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。766条が協議ベースになっているということで,当事者の合意で全て決められるのかというと,そうではないということを意識すべきだという御指摘と,それから,当事者の合意で決めるべきだという考え方との関連で,子どもの意思を反映させてということが言われるけれども,子どもの意見の取扱いについては慎重に考える必要があるという御指摘を頂いたものと思います。ありがとうございます。   そのほか,よろしいでしょうか。   それでは,部会資料7については御意見を頂いたということにさせていただきまして,今,16時19分ですので,10分休憩させていただいて,16時30分に再開いたしまして,部会資料8の方に入らせていただきたいと思います。休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,16時30分になりましたので,再開したいと思います。   残りの時間,1時間ほどでございますけれども,部会資料8に基づきまして,未成年者を養子とする養子制度を中心とした論点に関する意見交換に進みたいと思います。   冒頭,事務当局からお話がありましたが,普通養子制度に関する実態調査が行われたと伺っております。そこで,部会資料8と,今触れました実態調査の内容について,まず御説明を頂こうと思っております。説明の順序なのですけれども,部会資料の最初のところが言わば総論的な話になっておりますので,それをまず説明していただいて,そして,調査のお話をしていただき,そこで一旦切らせていただいて,調査についての御質問等を伺い,なお時間が残りましたら,資料8の各論部分について御説明を頂く。その辺りまで行きたいと思っております。   ということで,まず最初に,部会資料8の最初の部分と実態調査について,事務当局の方からの御説明をお願いしたいと思います。 ○北村幹事 それでは,まず部会資料8の第1について御説明いたします。   本部会では,今まで父母の離婚等に伴う子の養育の在り方に関して様々な観点から検討を行ってまいりました。もっとも,離婚後の子の養育の在り方に関しては,親権者や監護親が再婚するに当たってされる養子縁組も,子の養育について大きな影響を与えることが少なくないとの指摘もされてまいりました。このように親権者,監護親が再婚するに当たって配偶者との間での養子縁組を行うことを,本資料では便宜上,連れ子養子縁組と呼ばせていただきますけれども,この連れ子養子縁組について検討を行う必要があるのではないかということで,検討をさせていただいております。さらに,その連れ子養子縁組を検討するに当たっては,子が未成年の際にされる養子縁組全体について,あるいは養子制度全般についても検討する必要があると思われます。ただ,養子縁組制度全てとなりますと範囲も広くなりますので,本部会のテーマに沿った,子の養育,親権関係を中心に御議論いただくというものになります。   第1の2では,現行法の養子縁組制度の基本構造を記載してございます。養子縁組のうち,昭和62年の民法改正によって導入された特別養子縁組以外については,通常一般に普通養子縁組などと呼んでおります。本資料では,その普通養子縁組のうち,未成年を養子とするものと成年を養子とするものをと分けまして,前者を便宜的に未成年養子縁組,後者を成年養子縁組と呼ばせていただいております。この特別養子縁組につきましては,令和元年に養子となる年齢を原則として15歳まで引き上げるなどとするなどの大きな改正がされたところでございます。   それぞれの要件効果につきましては,簡単に3ページの表にまとめさせていただいておりますが,養子縁組のいわゆる原則の形が成年養子縁組だとして,その成年養子縁組につきましては原則,縁組の届出によって養子縁組が成立いたします。届出のみではなく,当然,縁組当事者の合意等も必要になりますけれども,基本,合意があって縁組届を出して受理をされれば,縁組が成立いたします。ただ,未成年養子縁組の場合は民法第798条本文により,家庭裁判所の許可が必要とされております。もっとも,例外がございまして,民法第798条ただし書で,自己又は配偶者の直系卑属を養子とする場合は許可が不要になります。   これら普通養子縁組の主な効果は,表1の主な効果の欄に書いてあるとおりでございますけれども,養子と実方,元々の親との親族関係は終了いたしません。他方,特別養子縁組につきましては,養子と実方との親族関係が終了するという重い効果が発生いたします。そのため,特別養子縁組が成立するための手続も慎重にされているということで,表1の主な要件の欄に書いてあるとおり,様々な手続と要件が必要となるということでございます。   先ほど部会長から御指示いただきましたように,続きまして,個別の論点に入る前に,普通養子制度の実態調査の結果について併せて御説明をさせていただければと思います。今御説明いたしました養子縁組全般を前提といたしまして,この調査の御説明もお聞きいただければと思います。今般,東京法務局の協力を得まして,東京法務局本局管内における普通養子制度の利用実態について調査を行いましたので,この結果概要について御報告をさせていただきます。冒頭申し上げましたとおり,現在,所要の手続を経て公開予定でございまして,近いところで民事月報,そして戸籍という雑誌に公開される予定でございますので,その点,御留意いただきまして,まだ公開されていないということで,委員,幹事限りとさせていただければと思います。   本調査の目的でございますが,養子縁組の実態というものにつきましては,特別養子縁組を導入いたしました昭和62年の改正に向けまして,昭和57年に一度,調査がされております。しかし,その後,調査というものをされておりませんで,養子縁組全体の件数といったものにつきましては統計によって把握が可能ですけれども,このうち未成年養子縁組の割合といった,どうなっているのか,さらに,その中身がどうなっているのかといったことについては分からないというのが実情でございました。そこで,養子縁組の実態について,今般この法制審議会の家族法制部会の調査審議に資するために調査をしようと考えたところでありますけれども,昭和57年当時とは社会情勢や法制度が異なっているということもありますし,また,調査のノウハウもなかったということから,まず,全国的な調査に着手する前に,東京法務局の協力を得まして東京法務局の本局管内におきまして試行的な調査を行ったものでございます。   調査の方法は,4ページから5ページに記載しておりますけれども,令和3年6月に提出された縁組届及び離縁届のうち,東京法務局本局に保管されるものについて全数調査を行いました。   まず,前提でございますけれども,養子縁組届や離縁届など戸籍の届出につきましては,届出人の本籍地又は届出人の所在地の市区町村においてされます。ですので,住所地,本籍が別のところであっても,住所地の市区町村で届けをすることができます。法律上の要件を満たしている場合には縁組届等を受理して,本籍地の市区町村にその届書類が送られた上で戸籍の記載がされます。その後,戸籍の記載を終えた届書類につきましては,1か月ごとに,様々な届書類,その間に出されました出生届であるとか婚姻届等をまとめまして,管轄の法務局に市区町村の方から送付がされるということになります。この届書類については基本,非公開の書類でございまして,届出人のほか,法律上の利害関係がある者が特別の事由がある場合に限り閲覧等ができるというものになっております。これは,戸籍よりも更に細かな情報が載っているということから,そのような扱いにされております。本件は,そのような届書類ではありますけれども,法令の規定に基づいて,今回特別に調査をさせていただいたということになります。   縁組届,離縁届については,まず,何が書いてあるかということですけれども,様式というのが定められてございまして,養子になる人,養親になる人,それぞれについて氏名,生年月日,住所,本籍というものを記載いたします。さらに,養子については父母の氏名であるとか父母との続柄,あとは入籍する戸籍又は新しい本籍,そういったものを記載することになっております。この調査は,これらの記載事項をそれぞれ個別の事項を確認いたしまして,分かる範囲で調査を行ったものになります。したがいまして,本調査の結果について,推測とありますけれども,届書類の記載上,住所が同じなのかどうかであるとか,養親の父母の氏名等の記載等も一応確認はできるということもありますので,そういったことも踏まえて調査を行っております。さらに,実際の身分関係がその後どうなったかにつきましては,それぞれの方の戸籍を確認する必要がありますけれども,昭和57年当時とは異なりまして,戸籍も原則非公開となっておりますし,また,戸籍そのものは各市区町村において管理されているということもありますので,今回できる範囲の調査をさせていただきました。   なお,そういった届書類の性質もありますので,今回,幾つか数字を挙げさせていただいておりますけれども,令和3年6月に提出されたものということで,東京法務局管内に出されたものを一つ一つ特定いたしますと,個別の方が特定されるおそれがありますので,その辺りも御配意いただいて,後ほど質問していただければと思います。   結果について御説明いたします。結果につきましては5ページ以降に記載しておりますけれども,養子の性別はおおむね半数ずつであり,男女の違いはなかったということになります。未成年養子であってもその傾向は同じでございました。養子の年齢を確認したところ,今回の調査では約7割を成年養子が占めておりました。養子の年齢は平均33.0歳ということでございました。15歳未満の養子縁組について,民法第797条第1項に基づいて,先ほど申し上げましたように,法定代理人が縁組の承諾を代わりにすることができますけれども,代諾されたものについて,45件のうち多くが実母が代諾者となっておりました。養子と実親との続柄については表4のとおりになります。養親については,養父,養子間の縁組が129件で,養母,養子の間の縁組は103件ということで,夫婦共同縁組よりも,養親が単独で養子縁組をしたものが176件で,多かったという結果になります。   養父,養母の年齢及び平均年齢差は表5,表6のとおりになります。縁組のうち養親又は養子の少なくとも一方が外国人の縁組は7件で,それ以外は日本人同士の縁組ということで,197件でございました。養親と養子の住所の一致についても,届書類の記載から確認をいたしましたけれども,表7のとおり,成年養子では住所が一致していない件数が多く,未成年養子については住所が一致している場合が多いものの,一定程度,15歳未満の養子縁組も含めて,住所が異なっている場合がございました。家庭裁判所の許可の審判があった事例は5件のみでありまして,いずれも未成年養子縁組についてのものでございました。他方,未成年養子について許可審判がないものの多くは,配偶者の直系卑属を養子とするものでございましたけれども,自己の直系卑属を養子とするものもありました。離縁については,第5以下に記載しているとおりでございますけれども,説明は省略させていただきます。   これらの調査結果からの考察ということで書かせていただいておりますけれども,特に未成年養子については,許可審判が不要の事例が多いということがこの調査の結果から分かりました。また,養父との養子縁組も多いということもありますし,住所が一致している場合もそれなりに多いということなので,連れ子養子縁組が多いのではないかということも推論がされてございます。   養子制度の実態調査の結果につきましては,以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   資料8の第1の部分と,養子縁組についての実態調査についての御説明を頂きました。御説明の中にもありましたけれども,久しぶりに行われる養子縁組についての調査ということで,皆さんの中にも様々な観点から御関心をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います。この部会の審議においても参考になる材料が含まれていると思いますけれども,その点も含めまして,まず,御質問等があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○落合委員 今,連れ子養子が,というか,配偶者の直系卑属を養子とするものが多いということだったのですけれども,せっかく数えられたので,数が分かっているのではないでしょうか。正確な数を頂いた方がいいかと思います。その中で同居しているものがどのくらいとかいうのが,これが今回の検討と一番関わってきますので,正確な数を伺いたいと思うのですが,いかがでしょう。 ○北村幹事 冒頭にも申し上げましたけれども,最終的に婚姻されているかどうかということで,その後どうなっているかまでの確定が,やはり戸籍を私どもが見ていないので,そこまでは出せなかったということですので,御理解いただければと思います。あと,件数としてはそう多くはありませんでしたけれども,外国人との養子等もありまして,全てその場合,戸籍等を把握できないということもありますし,そういったこともありまして,正確な件数が出せていないということは御理解いただければと思います。 ○落合委員 婚姻届の関係も見ていらっしゃらないということですよね,その年に婚姻届が出ているかどうかということも。 ○北村幹事 今回は,先ほど申しましたように,届書類というのはまとめて送られてくるものですので,その中から養子縁組届だけを抜き出して確認しております。逆に,婚姻の方はもっと数が多うございまして,その区で婚姻されたかどうか,その月に婚姻されたかどうかということも含めてばらばらですので,その方の届書類を探すというのは非常に困難ということもありまして,今回そこまではしておりませんし,そこの調査はやはり戸籍を見ていないので,困難かと思います。 ○落合委員 分かりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。多い少ないという先ほどの御発言がありましたけれども,推測を交えて考えるとこのくらいの数になるのではないかということで,結果を申し上げているということで,具体的な数は出しにくいということかと思って伺いました。 ○窪田委員 今の落合委員から出たことに関連してですが,このような理解でよろしいでしょうかという確認です。全数の中で許可審判があったのは5件ということですから,それ以外の件数というのは全て家裁の許可が必要ない連れ子養子か,若しくは自己の直系卑属に関する養子ということになって,そのうち連れ子養子が全部同居していると断定することはできないかもしれないけれども,通常の場合には同居している可能性が高いと考えられると,同居しているものが連れ子養子ということになって,それ以外の件数のものが全て自己の直系卑属に関する養子かどうかは分からないけれども,自己の直系卑属との養子縁組を主とするものというような理解でよろしいのでしょうか。自己の直系卑属と養子をする場合にも,同居するというケースはもちろんあると思いますので,明確には言えないのですが,先ほど御説明があった趣旨はそういうような理解でよいかを確認だけさせていただければと思います。あるいは,それはもう推測がすぎるということであれば,その点を指摘していただいても結構です。 ○北村幹事 今御指摘いただきましたような観点から我々も推測しておりまして,その結果,おおむね連れ子養子が多いという結論を出しておりますし,直系卑属に関しましては,後ほど部会資料に出てきますけれども,孫養子の場合も存在していると理解をしているということになります。ですので,御指摘いただいたとおりかとは理解しております。   あと1点ですけれども,法定代理人の本籍等,年齢等も確認をしながらやって,推測もしておりますので,余りにも年齢等が違うと,連れ子養子というのはさすがに違うのかなということもありますし,本籍も一致しているのであれば,その関係からも親子の可能性が高いと考えて,推測と調査結果をまとめさせていただいております。 ○窪田委員 ありがとうございました。 ○棚村委員 早稲田大学の棚村です。昭和57年当時の法務省の調査も,特別養子制度を創設するかどうかというところでされたわけです。それで,私どもが理解しているのは,当時はもう少し多かったのですけれども,今だと大体7万件から8万件ぐらい養子縁組の届出があるというのは分かるわけです。ただ,昭和57年当時の調査だと,やはり3分の2が大体成年養子,それから,3分の1ぐらいが未成年養子ということでした。しかも,3分の1を占めている未成年養子の3分の2ぐらいは連れ子養子ということで,そして,3分の1ぐらいが許可養子という形で,全く第三者を未成年で養子に取る,大体そんなような傾向が今回もおおよそ確認できたということで理解してよろしいのかというのが質問の1点です。   それから,昭和57年当時の調査のときは,未成年養子について,かなり調査をしようということで,地域を限定しながらやったものもありますし,それから,全国的にも少し統計を取ったりということで幾つかの取組をしているのですけれども,今回は,その調査にも限界があると思うのですけれども,今後の予定として,例えば許可養子とか,その実態は多分,裁判所の方で縁組の許可をしたとか,許可をしなかった例というのはあると思うのです。そういうようなものも収集して,未成年養子全体の様子,特に連れ子養子ということになると,サンプルで何らかの調査をするということもあり得るかと思うのですが,ただ,それになると大分大規模な調査になってきます。そこで,今回の連れ子養子にもしターゲットを絞るとすると,何らかのサンプルみたいなものを抽出して調査をするということまで考えているのかという質問です。   もう一回整理すると,昭和57年当時の成年養子が3分の2ぐらい全体を占めていて,その3分の1が未成年養子だったのだけれども,その3分の1の中の3分の2はやはり連れ子養子だったという結果だったと思うのです。それで,許可養子というのが未成年養子のくくりの中の更に3分の1で,特に最近は大分,申立ての件数を見ると,減ってきているので,その辺りのところは大まかな傾向は今回の調査でも把握できたのかという,推測もあるでしょうけれども,1点です。   それから,今後,未成年の普通養子の実態をある程度明らかにするにしても,許可養子については裁判所の協力が必要だし,それから,連れ子養子については,やはり実態の調査というのは何らかの形でのサンプリングでのモニター,ウェブでのモニター調査とか何かあるとすると,そこまで考えているのかという質問です。 ○北村幹事 ただいまの御質問につきまして,まず,1点目の昭和57年当時との傾向,その傾向は同じなのかどうかでございます。我々といたしましては,この調査の結果を見ますと,大きくは変わっていないのではないかとは理解をしております。ただ,どうしても東京局本局管内だけということで,地域的な違いがあるのかといったところについては今回,調査できておりませんので,その辺りも含め,今後,こちらのまとめのところに書かせていただいておりますけれども,何らかの形で少し調査の範囲を広げたいと,現在,内部で考えております。その際,やはりどうしても調査をしていただく先にも負担が掛かりますので,どういう形でどの範囲でできるのかにつきましても,少しまず我々の方で考えながら,どこまでできるのかというのを検討させていただきたいと思っております。ほかの調査につきましても,いずれもそういう観点から,可能なものについて検討したいとは考えております。まずは,こういった形での調査を少し,東京だけなのか,東京の傾向がほかのところも同じなのかということも含めて検討できないかということを内部的に今,検討を始めているというところになります。 ○棚村委員 少し追加なのですが,野沢慎司先生の研究グループがステップファミリーとの関係で,連れ子養子についてのヒアリング調査みたいなのをやって,中身も含めて,調査した結果もありますので,そういうような個別の調査,先行研究との関係とか,いろいろなことも少し整理していただくと,連れ子養子についてはいろいろ問題点とか実情が明らかになるのではないかと思います。これは意見ということです。 ○北村幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○大石委員 ありがとうございます。千葉大の大石です。すみません,規模感がよく分からないのでご質問します。今,東京法務局で未成年養子縁組が,令和3年6月で60組ぐらい成立しているということは,そのペースで毎月発生していたとしたら,年間700組少しぐらいというような規模になるのかと思うのです。それで,人口動態統計などを見ますと,夫妻が親権を行わなければならない子の数というのが全国で年間20万ぐらいなのです。この数は20歳未満の子どもについてなので,この資料で対象としている15歳との間には5歳ぐらい年齢差はありますけれども,東京法務局でこの程度の数だとすると,未成年養子縁組というのは滅多に行われないものだと理解しておいた方がいいものなのかどうか。その辺りの規模感が分からないので,御教示いただければ幸いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○北村幹事 今御質問いただきました点につきましても,正確な統計がないものですから,正直,よく分からないというところがあります。ただ,推測として全体の3分の1ぐらいなのではないかということは,いろいろ物の本などには書いてあって,縁組6,7万件ぐらいあるうちの3分の1ぐらいが未成年養子なのではないかという記述がされているものは見たことがございます。ただ,それも含めて少し,もし可能であれば全国的に見てみたいと思ってはおります。   ちなみに,東京法務局本局ですので,基本,東京23区の中で出されたものになりまして,多摩地区につきましては別の支局がございますので,そちらの方に届書類が送られています。したがって,今回の調査は,23区プラス離島になりますけれども,ここで出された養子縁組届等を今回,一月分集めてきたということになります。そういう規模感だと御理解いただければと思います。 ○大石委員 ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。今のようなことで行われた調査ですので,全国的に見たときにどうなのかということ,また東京と他の場所で違いがあるというようなこともあろうかと思いますけれども,手始めにこれをされたということかと思います。 ○落合委員 度々すみません。私,実は江戸時代について養子の研究をしていまして,歴史人口学の方法を使っています。それですと,私たちがデータベースを作ったものですから,もっと正確に出るのです。だから,かえって今は統計を出すのが難しいのだということを確認しました。   それで,一つ意見を言いたいと思いましたのは,本当に私たちが今欲しい統計は何なのかというと,再婚したときに子どもがいた人たちのうちで,それを養子にしているのはどのぐらいの割合なのかというのが一番知りたいですよね。ですから,それが少なくとも推計ででもこれが出せるような方向で,これから調査していただきたいと思います。今のですと,養子のうちの何%が連れ子養子だというような話なのですけれども,連れ子全体のうちの何%が養子になっているかが一番知りたいですよね。だから,そこが分かるように今後,お願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。養子縁組の調査自体は学術的には非常に意味のあることだと思いますが,立法の過程で行っている調査ですので,何のために行うのかということが意識される必要があるのだろうと思います。落合委員からはそこのところを御指摘いただいたと理解しました。再婚の場合に子どもが養子になるというケースがどのくらいあるのか。これは,再婚の場合に子どもがいるケースがどのくらいなのかということを把握しなければいけないので,そちらも含めて考える必要があるのではないかといった御指摘を頂きました。他方,養子制度をどのように改正するのかということを考えるときに,養子制度というものが全体としてどのように機能しているのかということについての一定の認識も必要ですので,そのためには全養子の中で未成年養子がどのような状況にあるかというデータも必要だろうということで,今回のものが出ていると理解しております。いずれにしても,目的との関係でデータを絞り込んでいく,時間もマンパワーも限られていると思いますので,そういうウエイト付けが必要だという御指摘として承りました。   そのほかに,今の調査について何か御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,資料のうちの第1の部分と実態調査については御意見,御質問を伺ったということにさせていただきまして,あと20分少々残っておりますので,議論の実質に入るのはなかなか難しいかもしれませんが,部会資料8の残りの部分についての説明を伺っておき,次回,議論に入るということにさせていただこうかと思います。 ○北村幹事 それでは,再び部会資料8の説明に戻らせていただきます。   第2について,未成年養子縁組につきましては,先ほど御説明いたしましたように,民法上,家庭裁判所の許可が必要とされており,養子は養親の親権に服するという民法第818条第2項の規定も踏まえますと,未成年養子縁組については本来的には民法は,養親が養子を養育することによって養子の利益を図るための制度と捉えているのではないかと考えられるところではございます。もっとも民法第798条のただし書で認められているとおり,家庭裁判所の許可が不要な例外もございますし,先ほどの調査で御説明させていただいたとおり,未成年養子の多くの場合が連れ子養子なのではないかという推測がされているように,多くの場合,家庭裁判所の許可が不要な場合,そういったものが未成年養子縁組の多くを占めているということが分かります。この場合,成年養子と同様,家庭裁判所の関与はございませんので,縁組の届出によって基本,養子縁組が成立するということになります。これらの現行法につきまして,未成年養子縁組について,家庭裁判所の許可の基準につきまして明らかではないのではないか,あるいは,連れ子養子縁組についても本当に家庭裁判所の許可が不要でよいのかなどといった意見が従来あったところでございます。また,自己の直系卑属を養子とする縁組も一定数ございまして,先ほどの調査の結果からも,養親と養子の住所が異なる事例というのも一定数あったところです。このような養子縁組につきましては,従来から一定の必要性があるとされてきたところではありますけれども,子を養育するという未成年養子縁組の本来の姿とはやや異なるのではないかなどの指摘もあったところでございます。   そこで,これらの点を踏まえまして,7ページの課題のところに挙げましたように,未成年養子縁組の要件について検討してはどうかという提案をしてございます。その際,未成年養子縁組につきましては,原則として養育を受けることが子の利益となる場合に限って認めることとして,民法第798条ただし書についても,許可の必要な範囲について更に検討してはどうかという提案をしております。加えて,未成年養子については養育を前提とするとしつつ,それ以外の場合として,成年養子縁組と同様に取り扱ってもいい場合はないかということの検討もお願いするものでございます。   続きまして,第3ですけれども,第3につきましては,この第2での議論を踏まえまして,未成年養子縁組の成立に関する規律として,民法第795条につきまして,未成年養子縁組については原則,夫婦共同縁組をしなければならないとされておりますけれども,配偶者の嫡出である子を養子とする場合には夫婦共同縁組の例外とされております。これを配偶者の嫡出である子に限る必要はないのではないかという意見がございますので,どのように考えるべきか,御意見を頂くものです。   また,代諾縁組につきまして,現在,民法第797条においては,15歳未満の子を養子とする場合には,その法定代理人がこれに代わって縁組の承諾をすることができるとされておりますが,15歳という年齢を引き下げることや,15歳未満でも養子となる者の意向,意見を聴取しなければならないという規定を設けることについて,どのように考えるのかという点であるとか,現行法では離婚した後,親権者でない親につきましては子の養子縁組に関与することができないという点も指摘されております。そこで,未成年養子縁組については,全ての父母が養子縁組に関与しなければならないとすることについて,どう考えるのかという点についても御意見を頂きたいというものでございます。   なお,これは部会資料6の双方責任の概念とも密接に関連いたすところでございます。どの範囲で離婚に際して子の養育に父母が関わっていくかというところに関わりますので,そういったところは関わりますが,未成年養子縁組という観点から今回は御議論いただきたいというものでございます。   続きまして,第4でございます。こちらにつきましては,未成年養子縁組後の親権に関する規律についてということでございます。現行法では,未成年養子は養親の親権に服するとされております。ただ,先ほど御説明いたしましたけれども,未成年養子縁組であっても,実際には直接養親が養子を養育していないとうかがわれる例もありますし,また,普通養子縁組の場合,特別養子縁組と異なり,実方との親族関係は残っておりますので,養子縁組後も実親が養親,養子の関係へ介入することも指摘されているところでございます。そこで,未成年養子縁組後の親権の所在等について,当事者の選択により,養親が行使することも実親が行使することも選択できるようにすること,といったことについて御議論いただきたい,また,未成年養子のうち成年養子と同様の規律とするものとに分ける考えの場合,親権の行使者についても区別する規律を設けること,養親子関係で親権を行使する者は,その親権行使を妨害する者がいるときには妨害を排除できるという規律,あるいは,養親の配偶者が養子の親である場合には,子に対して共同して親権を行使するという規律,養親の配偶者が養子の親である場合に,養親と配偶者である実親が離婚した場合の親権の所在について明文の規律がないので,規律を設けてはどうか,未成年養子縁組後に親権を行使する者が全て死亡した場合に親権者はどのように定まるのか,この点は解釈も分かれていることから,その点についての規律を設けてはどうかという御議論を頂きたいというものです。さらに,実親が再婚するとしても養子縁組をしない場合も,先ほども落合委員からの御指摘がありましたけれども,そういう場合も当然あり得ますので,その場合の配偶者による子の養育に関する規律につきましては,現在規律はございませんけれども,その点について規律を設ける必要はないかについても御議論いただきたいというものになります。   第5につきましては,養子についての相続についての御議論を頂きたいということと,少し飛びますが,第6については,法律上の親については子に対する親としての扶養義務を負うとされておりますけれども,未成年養子縁組がされた場合の扶養義務についての規律も解釈が分かれているところでございますので,その点,特に連れ子養子をした場合に,監護していない親の扶養義務というところがどうなるのかも含めて,その扶養義務についての考え方を明示してはどうかというものでございます。第7については,離縁についての規律,第8については,特別養子縁組についての離縁の規律について御議論いただくものでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。資料8の残りの部分について御説明を頂きました。先ほども申し上げましたように,今日はもう議論に入るのは難しいと思いますので,今の説明を踏まえて,次回以降に御意見を伺いたいと思っております。   少しだけまだ時間があるので,私の方で今伺ったことについて一言だけ触れさせていただきたいと思います。今回出た資料は,養子制度についての見直しということで,養子制度の側から書かれております。その成立から始まって離縁に至るまで,順番に書かれておりますけれども,この部会ではこれまで離婚後の子の養育について議論をしてまいりました。離婚後の子どもの養育ということが,その子が養子になることによって影響を受けるだろう,それぞれの場面で,例えば,養子になったら養育費の支払の問題はどうなるのか,あるいは,養子になったら実親の面会交流はどうなるのか,こうした問題がこれまでの部会での議論との関係では出てくることになるのだろうと思います。それを養子の側から整理するとこのような論点が出てくるのではないかという形で整理されている,このように私は受け止めております。民法の先生方は,ここに出ているものについて,こうしたことが議論されているということは御案内のとおりですけれども,その中には,今申し上げた離婚後の子どもの養育との関係が近いものと遠いものが含まれているかと思います。この部会でのこの先の審議のスケジュールや,この部会の課題との関係でいいますと,近いものから順次検討して,遠いものについては今回は無理であれば将来の課題とすることになるのかというのが全般的な私の理解でございます。その上で,皆様から個別の問題について次回以降に御議論を頂ければと思っております。   今日,一般的な説明で,内容には入りませんけれども,何かこの養子の問題について,具体的な問題に入る前に発言しておきたいということがございましたら,伺いますけれども,よろしいですか。 ○落合委員 ここで議論することとのつなぎになる部分についてなのですけれども,先ほどのこの資料の13ページの(注5)に当たるところです。連れ子養子縁組をしない連れ子は,諸外国では多いでしょう。その場合に諸外国では,再婚相手というのは相手の連れてきた子どもに対してどのような義務があり,権利があるのでしょうか。そのようなことを私は不勉強でよく知らないものですから,ごく簡単に教えていただけると有り難いと思っております。事務局からでも,例えば何か整理していただいたものを次回お出しいただけると,そこが理解しやすいと思います。養子にしなければ日本ではできないようなことが,養子にしないでできている国があるのではないかというような関心です。いかがでしょう,そのような資料を御用意いただけますでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。13の6について御意見を頂いたかと思います。事務当局の説明の中にも多少入っておりましたが,今回の問題とは直結はしないけれども,関連する問題として,ここに取り上げられているかと思います。こういう問題まで進むことができるかどうかというのは一つの課題なのですけれども,もしここまでやるということになったときには,落合委員がおっしゃるように,これは諸外国で様々な対応がされているところですので,そうしたデータも出していただくということになろうかと思います。   大石委員,棚村委員に御発言いただき,それから赤石委員も手が挙がっていますので,その後にお願いいたします。中身にわたる話については次回にしていただいて,今日のところは,一般論として言っておきたいということに限って御発言を頂ければと思います。 ○大石委員 千葉大学の大石です。私は高齢化について研究しておりますので,その観点から申し述べたいと思います。今ここでの主な論点は,養子縁組などをした後の子どもの養育をどうするのかという話なのですが,逆に,子どもが養父母を扶養する義務ですとか,そういったものは民法上どうなっているのでしょうか。実の親もいて,養父母もいてというような状況になった場合に,どういう順番というか,どのような義務が民法上存在するのかといったことについて,法学者の先生方から教えていただければ有り難いと思います。現在は現役世代2人で1人の高齢者を扶養する高齢社会になっています。養子縁組をした結果として,今度は親に対する扶養責任というものが将来的に来るのだとしたら,それもまた子どもの生涯に影響が及ぶのかなと。例えば,離別した親が生活保護を申請した際に,全然交流がなかったとしても扶養照会が子どもに来るというような話も聞きます。養子縁組をした親についても同じなのでしょうか。そういったことの現場での運用の問題なのか,法的な問題なのかについて教えていただきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。その問題は,先ほども出ましたけれども,扶養義務についてどう整理するかということの中で触れることになるかと思いますので,今日のところは今の御関心を伺ったということにさせていただきたいと思います。 ○棚村委員 落合先生からありましたように,連れ子養子縁組をしない連れ子ですね,その法律関係はどうなるかというと,養子縁組をした場合には法的な親子となりますので,氏を名のったり,親権とか監護とか扶養,相続という効果も生じます。ところが,そうでないと一親等の直系姻族関係というもので,結婚によって,ある意味では親族の中には取り込まれるのですけれども,親子としての法的効果みたいなものはほとんど生じない。ただ,扶養という場面で,家庭裁判所の許可があれば,三親等内の親族として,場合によっては扶養の権利義務があり得ることもあるのですけれども,そういう扱いで,正直言って,法的な親子としての効果は余り生じないということになります。余りというか,ほとんど生じないという状態です。海外は恐らく,これから調べられたら分かりますけれども,一定の場合に,監護とか,子育て,あるいは扶養とか養育費なんかの支払いについては,同居して親子としての責任を引き受けるというような意味で認められているところもありますけれども,日本は基本的には親子としての法的効果はほとんど認められていないという状況だと思います。一応,説明しておきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。これには歴史的な経緯もあるわけですけれども,現状については棚村委員が御説明になったとおりで,それから,外国の例についても調べますと,国によって違いはありますけれども,一定程度の対応がされているというところもあろうかと思いますので,また,場合によってはそうしたことについても整理して,資料等を出していただくことをお願いすることになるかもしれません。 ○赤石委員 ありがとうございます。しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石です。この資料8に関するのではない質問というか,でもよろしいでしょうか。 ○大村部会長 手短におっしゃってください。 ○赤石委員 今日配布された棚村先生の,子の養育の在り方に関する実証的調査アンケートの概要なのですけれども。 ○大村部会長 赤石委員,少し待ってください。   それでは,この資料8について,第2以降については,次回に具体的な問題について御意見を頂戴するということで,今日のところは資料8についてはここまでということにさせていただきたいと思います。   その上で,赤石委員は棚村委員が出された資料についての御発言ということですね。 ○赤石委員 ありがとうございます。すみません,先ほど言っておけばよかったのですけれども,この棚村先生がお出しになったアンケートの概要なのですけれども,貴重な資料だと思うのですけれども,幾つか分からないことがありました。例えば,この調査はどのように行われたのか,サンプルの偏りみたいなのが少し分かると,よりデータとして利用できるのかなと思います。それから,面会交流があった群とない群に分けて調査されているので,1,000人ずつというのは結構大きな数だと思うのですけれども,ここの比較というのは棚村先生のところではなかったので,ほかの論文でおありなのかどうかとか,分からないことが一杯あったので,ほかの共同研究の方が出されているのか,ここから何を読み取るのか,なかなか難しいと思ったので,どこが主体で調査されているのかというのもよく分からなかったので,是非今度,もう少し補足があると有り難いと思った次第です。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員提出の資料についての御質問を頂きましたけれども,また次回にでも補足を頂ければと思いますので,よろしくお願いいたします。 ○棚村委員 はい。了解いたしました。 ○大村部会長 それで,先ほど申し上げたように,資料8の残りは次回にさせていただき,資料8はかなりありますので,次回に終わるかどうか分かりませんが,もし終わるようであれば,その先の財産分与に関する論点の検討に進みたいと考えております。事務当局におかれましては,財産分与に入る可能性もありますので,そちらの資料も準備をお願いしたいと思います。   ということで,本日の審議はここまでということにさせていただきますけれども,次回の議事日程等につきまして,事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○北村幹事 次回の日程は,令和3年11月16日火曜日,午後1時30分から午後5時30分までを予定しております。場所は改めて御連絡いたします。   次回は今,部会長から御説明がありましたとおり,部会資料8,ほぼ全て残っておりますので,基本的には部会資料8を御審議いただくことと,可能であれば財産分与制度に関する論点の御審議をお願いいたしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。次回は11月16日ということで,よろしくお願い申し上げます。   それでは,法制審議会家族法制部会の第8回会議,これで閉会をさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。閉会いたします。 −了−