法制審議会 担保法制部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  令和3年11月9日(火) 自 午後1時30分                      至 午後5時34分 第2 場 所  法務省地下一階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに向けた検討(7),(8) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会担保法制部会の第9回会議を開会したいと思います。   本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   前回の部会の前に幹事に就任されました若林さんに簡単に自己紹介をお願いしたいと思います。  (委員の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   それでは,まず配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。新たに事務当局の方からお送りした資料として,部会資料9「担保法制の見直しに向けた検討(8)」がございます。こちらにつきましては,後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。そのほか,部会資料といたしましては部会資料8「担保法制の見直しに向けた検討(7)」も,前回からの積み残しがございますので,使用することといたします。   以上が事務当局が準備した部会資料ですけれども,このほか委員等提供資料として9-1から9-3までを尾﨑幹事から頂いております。こちらは前回,最後に御説明いたしましたけれども,本日の会議の最後に,尾﨑幹事から御説明を頂く予定です。   資料については以上です。 ○道垣内部会長 それでは,審議に入りたいと思います。   まず,前回からの積み残しとなっておりました部会資料8「担保法制の見直しに向けた検討(7)」について,議論を行いたいと思います。   それでは,事務当局から部会資料8の第3についての説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 部会資料8の第3「倒産手続開始申立特約」について御説明いたします。   現行法における所有権留保売買契約やファイナンス・リース契約において,設定者に倒産手続の開始の申立てがあった場合に特定の法的効果が発生する旨の特約が設けられることがあります。このような特約のうち,担保権実行の手段として民事再生手続又は会社更生手続の開始の申立てがあったことを解除理由とする条項は,再生型倒産手続の趣旨,目的に反するものとして無効になると考えられております。このような現行法における議論状況を踏まえると,解除条項に限らず,債務者等について倒産手続の開始の申立て等があった場合に,目的物を債務者の責任財産から逸失させる等により,倒産手続の中で管財人等が必要な対応をする機会を失わせる特約については,無効である旨を規定することが考えられます。   まず,平成20年の最高裁判例やこれに関する学説状況を踏まえ,民事再生手続や会社更生手続における解除条項が無効である旨を明文で規定するという考え方があり得ますが,解除条項は担保取引においてのみ約定されるものではなく,担保取引において実行として機能する解除条項の効力のみを規定するということが適切なのかという問題があり得ます。また,破産手続における解除条項の効力については,現行法でも議論が分かれているものの,破産手続において留保所有権が別除権として扱われることからすれば,効力を否定する必要はないと差し当たっては考えておりますが,この点についても御議論いただければと思います。   次に,解除という構成ではなくても,民事再生手続や会社更生手続の開始の申立てがされたときに,設定者が担保の目的財産について必要性に応じた対応をする機会を失わせる特約の効力を否定することが考えられます。この点については,現在御提案している私的実行の方法によると,帰属清算方式により設定者のいわゆる受戻権を失わせるためには,暫定的な清算金の支払又は提供などが必要ですので,この規律が強行規定であれば,倒産手続の開始の申立てがあった場合に,当然に又は担保権者の請求により,目的物が確定的に担保権者の所有に帰属するという合意をしても,倒産法の趣旨等の観点を考慮するまでもなく,無効となります。これに対して,実行手続に関する規定が任意規定だとすれば,上記のような合意の効力を倒産法の趣旨等の観点から問題にすることとなり,最高裁判決の趣旨からすると効力を否定すべきと考えられます。  また,処分清算方式の実行については,あらかじめ目的物の譲渡先を指定しておき,倒産手続の開始の申立てがあれば,直ちに目的財産の所有権が譲渡先に移転するというような特約について,その効力を否定するのが適当であると考えられます。以上のような特約につきましても,破産手続においては,新たな規定に係る担保権が別除権として扱われる以上,特約の効力を否定することができないように思われるところです。   また,集合動産や集合債権を目的とする担保について,倒産手続の開始の申立てがあった場合に,担保の目的の構成部分である動産の処分権限や債権の取立権限の喪失事由とする旨の特約の有効性も問題となります。これについても,会社更生手続及び民事再生手続との関係では効力を否定するのが適当であるように思われる一方で,破産手続との関係では見解が分かれ得るように思われます。   さらに,以上のような特約の効力を否定するべきと考えた場合でも,これを明文の規定とすべきかどうかについては更に問題となります。担保取引についてのみ明文の規定を設けるのは不当な反対解釈を招きかねないという考え方もあり得ます。他方で,判例等に照らしても,倒産手続開始の申立てによって担保の実行等に関する効果が生ずることを定めた特約の効力が否定される場合があることには異論はないように思われ,担保取引に関する予見可能性を高める観点から,どのような範囲の特約を無効とすべきかを検討することが考えられます。規定する場合でも,無効となる条項を網羅的に列挙する方法のほか,それが困難である場合には,バスケット条項として抽象的な規定を設けることも考えられ,例えば,本文に記載したような規定があり得るのではないかと考えております。   以上について御意見を賜れればと存じます。私からの御説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして,どなたからでも結構でございますので,御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○松下委員 松下です。一言発言させていただきます。まず,第3の(1)の御提案については,是非再生,更生手続のような再建型の手続の申立てをしたこと,あるいは,それらの開始原因となる事実が発生したこと等々の事由をトリガーとする,責任財産を逸失させる条項を無効とするというような明文を是非設けていただきたいと思います。判例で明らかになっていることについては,少なくとも明文の規定ではっきりさせることが必要だという趣旨です。   反対解釈関係で二つ問題があろうかと思います。一つは,22ページの18行目以降,もっとも以下で書かれているとおり,担保取引以外にも例えば賃貸借で,解除事由の条項というのはあり得るわけですが,ここについては依然としてオープンであり,規定がないから反対解釈をするということはないように,この部会の議論でも記録を残して,その趣旨を明確にする必要があろうかと思います。   反対解釈に関する1点目が担保取引以外の契約で,次に,破産についてどう考えるかですが,これは規定を設けない方がよいのではないかというのが私の意見です。これも,反対解釈をするということではなくて,つまり,破産の申立てをしたら責任財産から逸失させるというような条項の効力は有効だということではなくて,なおこれは解釈に委ねられるべきだろうと思います。確かに別除権なのだから行使されてもよいのではないかという意見もあります。しかし,例えば,例外的ですけれども,事業継続がある場合とか,あるいは担保目的財産とそれ以外の所属の財産とを合わせて売るとより高価に売れる場合,つまり1足す1で3になるような場合などが考えられますので,ここについてはオープンなままに残しておくという考え方をとるべきで,繰り返しますが,部会の審議の過程でそういう議論があったということを残しておくべきかと思います。   私からは以上です。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 ありがとうございます。発言させていただきます。今の松下教授の発言をなぞる形になろうかとは思いますが,倒産実務家からいたしましても,新たなる規定に係る担保権の効力について規定をしていただければとは思っております。管財人等をやっておる立場からいたしますと,今正に松下教授から御指摘がございましたとおり,倒産手続開始申立特約は担保に関わるものだけではもちろんございません,種々のものがございます。都度,管財人として対応していくということにはなりますが,倒産公序の観点から対応していくということになりますが,今回の立法は,今正におっしゃられたとおり,担保に限るものであって,それ以外のところについて反対解釈を及ぼすものではないと私は理解をした上で,立法をされると考えておりますので,そのようなところがはっきりした形での立法をお願いしたいということでございます。   また,破産に関しては議論が正にあるところだというのは十分理解しておりますが,近年やはり破産における事業譲渡,破産手続の中での事業譲渡ということも,かなりツールとして動いておるというところが実感でございます。その意味でも,破産においてはなお,立法うんぬんというところまではなかなか難しいかもしれませんけれども,破産においてはそういった需要があるということを前提に,この申立特約ということの立法をしていただきたいと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。大澤さん,松下さんに少し伺いたいのですが,松下さんは,まだ解釈に委ねるべき場合として,例えば賃貸借契約が当然に解除されるといった条項はどう考えるべきなのかという話をされたのですが,所有権留保というものに伴わない単純な動産売買の解除条項というのは,今のお二人のお考えですと,解釈論によって含まれたり含まれなかったりするものなのか,それとも,そういうのを含む形で文言を工夫するのか。松下さんのおっしゃった責任財産から逸失させるための特約というふうな言い方をすると,場合によっては入るのかもしれないですが,その辺りについてはどのようにお考えで御発言されたのか,少し確認させていただければと思うのですが。 ○松下委員 松下から先でよろしいですかね。私は,今のような担保目的でない単純な売買の場合には解釈問題だと考えておりました。先ほど私が挙げた例でいえば,賃貸借などに近いと考えることになり,ここでの御提案に沿って新しく規定を設けるのであれば,その規定の外側の問題と理解しておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。大澤さん,何かございますか。 ○大澤委員 いえ,特段付け加えるべきことはございません。感覚として同じような考え方をしておりましたので,立法がどうなるのか,どう書くのかは少しあれですけれども,少なくともそこは範囲としては違うと考えておりました。 ○山本委員 基本的には私も今の松下委員,大澤委員と同じような理解をしております。今の部会長の御質問との関係で言えば,今回の規律は正に平成20年の判例がいっているように,担保権実行に対する倒産手続の制約を潜脱するような条項について,その効力を否定するものである,そういう意味では,担保権実行に対する制約中止命令等が一定の強行規定性を持っていて,それを合意で潜脱するというところに問題を見いだしているものと理解しております。   それに対して,通常の売買,担保ではないと実体法上,性質決定されるような取引については,私の理解では,双方未履行の双務契約等の契約に関する倒産法上の規律を潜脱するものであるとすれば,その効力は否定される可能性があると,その契約に関する倒産法の強行法的規定を潜脱するという意味で,効力が否定される可能性があるのかなと思っています。それは,しかし,別問題だろうと思っておりまして,そういう意味では反対解釈も類推解釈もされないのではないかということで,その点を明確にして規律を置くべきであるということに私も賛成です。   第3で示されている規律の中で(1)のもの,正にこれが判例が問題にしたような規律だと思うのですが,確かに資料が説明しているように,これが実体法上,既に強行規定というか,実行の規律というのが実体法上の強行規定なのだとすれば,そもそも問題は倒産法下であるかどうかに関わらず,このような行為は無効だと,効力は認められないということであるとすれば,それは必ずしも倒産法の規律として設ける必要はないという理解もあり得るのだろうと思います。ただ,問題はそれが実体法上,強行規定であるかどうかということが明確にできるのかどうかというところでありまして,そこが何らかの形で明確にできるのであれば,規定は要らないという考え方もあり得るのかもしれないとは思っておりますけれども,それが難しいということであれば,最も問題になるのはというか,通常問題になるのは倒産法の下での話だとすれば,それは倒産法下のこういう実行規定については効力を否定するということを明文化した方がいいのではないかと思っております。   (2)の方の問題は,これは(1)よりはよりソフトなもののような感じがしますが,これについては必ずしも定見はありませんけれども,これは前回議論した取消命令といったような制度が入るかどうかといったようなこととも関連するようにも思えますけれども,これについては今のところ,どちらもあり得るのかなというぐらいの印象を持っております。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。反対解釈の部分については,今,先生方がおっしゃったことに賛成なのですが,今回の御提案そのものの範囲といいますか,対象の問題になるかもしれませんが,こういう倒産手続開始申立特約といわれるものが問題にされるのは,先ほど山本委員から御指摘があったように,倒産手続上の制約,特に中止命令の趣旨を潜脱するところに一番大きな問題があるのだと理解しておりまして,その観点から許されないものがあるというのはそのとおりだと思います。   何が許されないかということについてなのですけれども,倒産手続開始申立てを理由とする期限の利益の喪失を定める条項自体は,恐らく問題ないという考え方が一般的なのだと思います。それに加えて,期限の利益が喪失された場合に,ここでの倒産手続開始申立特約ではなく,既に議論した私的実行あるいは民事執行法上の実行ができるというのも,恐らく異論のないところで,その意味では,今議論している担保制度は,倒産手続開始の申立てがなされれば期限の利益が失われて,担保権者としては実行通知を出すことによって実行できるという状況になることを想定しているのだろうと理解しています。それとの関係で,対抗措置として中止命令,さらには禁止命令を設けるという議論がなされていることを前提としますと,最判平成20年のときとやや状況が変わっていて,当時は通知一本で実行できてしまうということ自体が中止命令の潜脱につながったと思うのですが,現在,実行通知に対する対抗措置として禁止命令を考えていることとのバランスといいますか,比較でいうと,倒産手続開始申立特約のうち,許されないとされるべきなのは,倒産手続開始の申立てによって自動的に実行あるいは責任財産逸失の効果を生じせしめる特約であって,申立てによって期限の利益が喪失された後,解除できるという規定まで無効にする必要があるのかというのは検討の余地があるのではないかと思います。むしろ,実行できるのとパラレルに,その解除もできるということでもそれほどおかしくはなくて,ただ,それに対して,申立てとともに,あるいは申立てと同時にですかね,禁止命令を出してもらうという行動をとることができる制度を準備するならば,倒産手続開始申立特約として効力を否定すべきものとしては自動的なものに限定するという考え方もあるのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   私は実は部会資料を見たときに,実行手続に関する規範が任意規定なのか強行規定なのかということの論点が書いてあること自体,意味が全然分からなかったのです。強行規定に決まっているではないかとも思っていたのですね。しかるに,皆さんのお話を聞いていて,分かったような気がしたのは,担保の実行であるということですと,幾らでも止める方法があって,民事再生でも会社更生でもいいのですが,申立てがあった時点で担保の実行を始めるという特約が可能だけれども,担保実行を完全に終わらせてしまうというのは,どうせルールがあるのだからできないのだから,開始申立で担保実行が始まるといった特約自体の効力までも否定する必要はないわけですね。それに対して,多分,解除というのが判例も出てくるわけですが,それは担保権の実行ではない解除なのではないかという気がしまして,つまり,実行ならばこういうふうに,何日間待たねばいけませんよとか,あるいは評価額を通知しなければいけませんよとか,いろいろなルールがあり得て,それがなされて初めて,実行が終了するということなのですが,解除ということになると,それは解除のメカニズムに従って,民法545条に従って行われるのであって,担保でいろいろルールを定めたからといって,それが適用されるわけではない。そこで解除の部分を使われてしまうと,擦り抜けられてしまうので,解除の部分を押さえておかなければならない。そういう話なのかなという気がして,そういう整理なのかなと思いました。   しかし,もう一つ気になるのは,今までリースについて,例えばUCCですと,担保の目的とするリースについてはUCCにおけるセキュリティ・インタレストして扱って処理をするということがあったりするわけですけれども,仮にそういうルールを今回置かないとすると,リースにおける担保機能の実行というのと解除というのが別立てではなくなるのですよね。そうすると,平成20年の判決は確かにあるのですが,ここにおける解除ということの効力をストップするという意味は,ひょっとして所有権留保売買とか,そういうものにおける売買契約を解除するという特約の効力を制限するというのと若干意味が違うのではないかという気がしながら聞いておりました。つまり,解除イコール担保の実行という類型と,担保の実行以外の解除という類型ですね。これは正しいかどうか分からない解説でございますけれども,整理は若干必要なのかなと思って伺っておりました。すみません,いろいろ述べてしまいまして。   ほかにございませんでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。すみません,私の先ほどの発言は,そういう意味では誤解に基づくものだったかもしれませんが,実行の意味を持つ解除とか,解除以外の方法もあるかもしれませんが,何らかの形をとった担保の実行は,中止命令あるいは禁止命令の対象になるという前提で発言しておりましたけれども,そうではない,中止命令・禁止命令の対象となる実行とは別のものであるということだとすると,確かに倒産手続開始申立特約の効力自体を自動的な解除特約に限らずに否定しなければいけないのかもしれません。ただ,その場合には,今正に御指摘があったように,どういう範囲で,実行に代わる解除が許されるのかというのが難しいなと思いました。 ○道垣内部会長 おっしゃるとおりで,所有権留保のところの実行について,譲渡担保の形をとった場合と同じように,誠実評価とか受戻しとか,いろいろ考えていきますと,解除というものとは離れた形の譲渡担保などのメカニズムに乗るのと同じのが実行という話になるわけですが,やはり少し性質が違うと考えますと,私が申し上げたように,担保権の実行というのと解除というものが違うメカニズムで動くものであるという捉え方をすべきではないということになるかもしれません。これは,所有権留保などの実行の手続について詰めながらではないと話ができないのかもしれないと思います。 ○本多委員 三井住友銀行の本多です。今ほどまでの先生方の御議論と違う点について申し上げる形になってしまって恐縮なのですが,第3の(1)に関してなのですけれども,一括清算法上の一括清算の有効性に影響がない形で規律化が図られるべき,ということについても,念のために申し上げられればと思っています。   少なくとも二つの場面が気になるところでございまして,一つが特定金融取引のうちのレポ取引といわれるもの,すなわち,買戻又は売戻条件付売買とか,消費貸借とかという法形式がとられるものなのですけれども,かかる取引の一方当事者に倒産手続開始の申立てがあった場合に,一括清算の対象になる結果として,一方当事者が保有し相手方当事者に交付された有価証券がそのまま相手方当事者に帰属しますという取扱いがなされるのですけれども,この取引が,倒産手続の中で担保取引とリキャラクタライズされるようなことがあった場合に,担保取引に関して,目的財産を設定者の責任財産から自動的に逸出させる条項だから無効ですという規律の対象になるのは適切ではないと考えております。   それから,もう一つの場面として,証拠金規制との関係で,当初証拠金の差入れに関する一括清算法4条1項の帰属清算方式による私的実行と,それから,4項の処分清算方式による私的実行に関する効力の有効性にも影響が与えられない形で整理されるべきと考えております。ちなみに,先ほど事務局案の御説明の中で,部会資料の23ページのところ,道垣内先生も御指摘になりました強行規定か任意規定かという議論とも関連するところがあるのかなと感じられまして,仮に強行規定だとすると,なお,個人的には強行規定なのだろうなと思っていたのですが,それとの関係においても一括清算法の4条1項と4項がバッティングすることがないということが確保される必要があるのかなと思っております。念のためのコメントとして申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。金融取引における担保の問題についてどのように扱うのか,普通の担保の中で扱うのか,それともフィナンシャル・コラテラルというのは全く別立てにするのかというのは,世界各国でもいろいろ立場のあるところで,難しいところだろうと思います。是非それは考えておかなければならない問題だと思います。ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。阿部さん,お願いいたします。 ○阿部幹事 平成20年判決について,確かに債権者と債務者との事前の合意によって,債務者の責任財産からリース物件を逸失させるとか,それで,リース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることになるから,それが民事再生手続の趣旨,目的に反するというようなことが書かれていて,ここを強調していくと,いろいろなものが無効になりそうな気がするのですけれども,他方で,この判決は,担保としての意義を有するにとどまるリース物件をこうしてしまうのは民事再生手続の目的に反するということを強調しています。担保としての意義とは何なのかというと,この判決では,リース料が支払われない場合に,リース業者においてリース契約を解除してリース物件の返還を求め,その交換価値によって未払リース料や規定損害金の弁済を受けるということが担保としての意義といわれていたのです。ということは,そのような解除は倒産手続開始の申立てをきっかけとしてやるとしても問題ないという読み方も,もしかしたら,あったのかもしれないと思います。つまり,リース料が支払われない場合にはというのは,要するにリース料の債務不履行ということだと思うのですけれども,リース料が債務不履行になっているので,契約を解除してリース物件の返還を求めますというのは,担保としての意義の実現にほかならなかったはずで,井上先生も先ほどそういうことをおっしゃっていました。ただ,井上先生は更に進んで,期限の利益喪失によって,元々債務不履行になっていなかったのを債務不履行にした上で担保の実行をすることまで含めて担保実行といって,それは禁止されないという御理解を示しておられたような気がしたのですけれども,そこまで行くかどうかというのはともかくとして,担保としての意義を有するにとどまるのを,それ以上の効果を生じさせるというのは,民事再生手続の趣旨,目的に反すると,そういうふうな書き方になっていたような気がしたのです。ですので,リース料が支払われない場合にリース契約を解除するというのが担保としての意義というふうな言葉で受けられていて,ここをどれぐらいのものと見るかということが今,議論されているのかなと思ったという次第です。   私の誤解かもしれないので,間違っていたら正していただきたいのですが,以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。阿部さんの御意見の中に,解除が行われるとしても,その事由やシチュエーションや,取引の性格とか,いろいろあるので,なかなか条文を置くことは難しいだろうと,民事再生なら民事再生の目的に反するかどうかということの解釈論で判例で対応するしかないのではないかというインプリケーションは含まれていますか。それとも,やはりそれは解釈の余地がある文言にしても,明文にきちんと置いた方がいいということでしょうか。松下さん,大澤さんはそういうことだったと思うのですが,その件についてはどう思われますか。 ○阿部幹事 率直に言うと,そこまでのインプリケーションはなかったのですけれども,実は当初,確か松下先生なども,判例で認められていることは明文化しましょうということだったと思うのですけれども,今回のゴシックになっているところというのは判例で認められているところよりも広くなっている部分というのがあるような気がするのです。なので,果たしてこれが判例を明文化しているのかというのがよく分からない。判例はもっと慎重な読み方もできたのではないかという,そこが少し気になったという意味です。 ○道垣内部会長 それで,慎重な読み方をするルールにした方がいいというお考えですか。 ○阿部幹事 そこは,そうですね,いろいろな方の話を伺って,価値判断としてどう判断すべきかということを考える必要があるかと思いまして,私自身はどうすべきだというところまでは,申し訳ないですが,現時点ではないというのが率直なところです。すみません。 ○道垣内部会長 分かりました。つまり,説明をするときに平成20年の判決からの一本道のような説明をするのは多少問題があって,更に検討した上で,こうするのならこうする,またもう一個要件を加えるのなら加えるというふうにすべきであると,そういうことですね。 ○阿部幹事 そうです,判例からの飛躍というか,拡張している部分は拡張するとしてもそう認識した上で拡張すべきではないかということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございますでしょうか。   大体皆さんは,何らかの形で書いた方がいいということと,これは私だけ悩んでいるのかもしれませんけれども,やはり所有権留保とかファイナンス・リースにおける解除というものと,担保機能の実現としての担保権の実行というものの関係をどういうふうに考えるのかという問題とかを並行して進めながらやっていかなければいけないという問題が多分あるというのと,もう一つ,いわゆるフィナンシャル・コラテラルと呼ばれる様々な担保取引について,本多さんは及ばないようにしてほしいという話だったのですが,及んだ方がいいという考え方も十分あり得ると思うのですけれども,とにもかくにも,それについてどういうふうに考えるのかというのをきちんと押さえなければならないということ,こういった点を御指摘いただいたと思います。   それでは,ほかにございませんでしたら,積み残しになっておりました部会資料8というのは,ひとまずこれで終了いたしまして,本日の部会資料9の「第1 倒産手続開始後に生じ,又は取得した財産に対する担保権の効力」というところから入っていきたいと思います。事務当局において,部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 まず「第1 倒産手続開始後に生じ,又は取得した財産に対する担保権の効力」のうち,「1 倒産手続の開始後に生じた債権に対する担保権の効力」について御説明いたします。   ここでは,現行法の将来債権譲渡担保について,設定者に倒産手続が開始した後に発生する債権に譲渡担保権が及ぶかどうかについて見解が分かれていることを踏まえまして,立法に当たってあり得る考え方を幾つか示しております。   【案9.1.1.1】は,将来債権譲渡担保の効力は倒産手続開始後に発生した債権にも無制限に及ぶという見解に従い,明文の規定を設けようとする考え方です。この案に従うと,担保権者が既発生の債権及び将来発生する債権について取立権限の付与を解除した場合には,それらの全てについて担保権者が取り立てることができることになります。この案に対しては,倒産手続開始後に担保の目的となる債権を発生するコストを倒産財団が負担するにもかかわらず,担保権の被担保債権の弁済に充当されてしまい,事業の再生を妨げるという批判があり得ますので,新たな債権を発生させるための費用を担保権者に負担させるなど,事業の再生を可能とするための措置を講ずることが検討課題になると考えられます。また,この案に従った規律を設けるとしても,公序良俗の適用によって担保権の範囲が制限されるという可能性はあり,いわゆる倒産法的公序も考慮されるものと考えられます。しかし,このような対応策に対しては,立法的に解決するのであれば明確な規定を設けるべきであるという再反論があり得るように思われます。   【案9.1.1.2】は,【案9.1.1.1】と同様に,担保権の効力は倒産手続開始後に発生した債権にも及ぶこととしつつ,担保権者が優先弁済権を有する範囲を限定し,倒産手続開始時点において発生していた債権の価値を上限とするものです。これは,倒産財団が費用を支出して発生した債権が全て担保権者への優先弁済に充てられると事業再生の妨げとなり,一般債権者への弁済に充てられる責任財産が減少するという問題が生ずることから,担保権者への弁済に充てられる価値を制限しようとするものです。この案については,倒産手続開始時において存在している債権の価値の評価が円滑に行われ得るか,そして,倒産手続開始時に発生した債権はいかなる債権を意味するのかという点についても検討が必要であると思われます。また,後ほど御説明する【案9.1.1.3】及び【案9.1.1.4】についても同様ですが,これらのような規律とする場合,将来にわたる担保目的債権の累積の残高を基礎とする与信は困難になると考えられますので,そのような与信手法のニーズについての検討が必要であると考えられます。   【案9.1.1.3】は,倒産手続開始後も担保権の効力が及ぶが,担保権者が実行すれば,その後に生じた債権には担保権が及ばないとするものです。この考え方については,「実行」の時点を具体的にどのように捉えるかが問題となります。取立権限を喪失させる行為の時点と第三債務者に対する請求の時点のいずれを基準とするか,また,債権ごとに別々に実行が可能だとすれば,目的債権ごとにそれらの時点が異なる可能性があるなどの問題が生じます。したがって,この案を採るのであれば,集合債権を目的とする担保権の実行について,個別の債権実行の集積と捉えるのではなく,集合的に処理する方法を検討する必要があるようにも思われます。また,この考え方については,担保権者が当初から取立権限を有しているいわゆる累積型の債権担保において,担保権の効力が及ぶ範囲が明確でないという問題も指摘されております。   【案9.1.1.4】は,担保権の効力は倒産手続開始後に発生した債権には及ばず,それとの均衡から,手続開始時において設定者の取立権限も失われるとするものです。もっとも,債権譲渡担保については債権の真正譲渡に関する処理との整合性についてどのように考えるかが問題になるように思われます。   また,本文には記載しておりませんが,8ページの4のとおり,以上御説明いたしました四つの案以外にも,倒産法的公序に反する譲渡の内容を具体的に明示するという規律の設け方なども考えられるところです。   次に,第1のうち「2 倒産手続の開始後に取得した動産に対する担保権の効力」について御説明いたします。   現行法上,設定者について倒産手続が開始された場合に管財人や再生債務者が取得する財産に担保権の効力が及ぶかどうかについては債権と同様に見解が分かれておりますが,資料では,新規加入物に担保権の効力を及ぼすべきかどうかを実質的な観点から検討しております。設定者についての倒産手続開始後に発生した動産に担保権の効力が及びますと,倒産財団の負担の下で担保権者が利得を得ることになります。これを避けるとすれば,集合物の流動性を維持しつつ,担保権者が優先弁済を受けることができる額は,倒産手続開始時の評価額を限度とするか,倒産手続開始によっていわゆる固定化が生ずるものとすることが考えられます。また,流動性を維持した上で,管財人側にも固定化の権限を付与するという考え方も主張されております。   また,資料では11ページの3として,実行に関する部会資料7でも取り上げました「実行後の再度実行の可否」について改めて取り上げております。集合物を目的とする担保権が一旦実行されても,その後に構成部分に加入した動産を含む集合物に担保権の効力が及ぶという累積的な担保権設定の合意の効力につきましては,先日も御議論いただきましたが,今回の資料では,仮に平時においてそのような合意の効力を認める場合でも,倒産手続開始後においてはそのような合意の効力を認めないとすることが考えられるのではないかという観点から問題提起をしております。   以上について御議論いただければ幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは,どなたからでも結構でございますので,御意見等を頂ければと思います。 ○鈴木委員 千葉銀行の鈴木でございます。ありがとうございます。冒頭の選択肢のところ,第1のところですが,恐らく今,銀行界で最も取扱いの多い部類の債権担保を活用としたファイナンス形態としては,太陽光発電などの再生可能エネルギー設備向けの融資があります。これは,将来発生する売電債権を含めて担保取得しておりまして,デフォルトしても将来の売電収入からの回収を見込んだ取組となっています。選択肢のうち,こういった既に確立された金融の実務に甚大な影響があることを鑑みると,金融機関としては【案9.1.1.1】の立場となるかと考えています。一方で,短期の債権を担保に短期の運転資金を調達するといった取引では,【案9.1.1.2】や【案9.1.1.3】を選択肢とする議論もあり得るかとは思います。担保を取得する取引の類型によって違った論点があるのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○本多委員 三井住友銀行の本多でございます。ありがとうございます。今ほど鈴木委員から御発言があったところと全く同じ見解でございまして,与信の在り方,それから,それに伴う担保ストラクチャーの設計の在り方によって,【案9.1.1.1】のような考え方によるべき場合と,それから,【案9.1.1.2】若しくは【案9.1.1.3】の考え方による場合が分かれ得るのではないかと私も考えております。鈴木委員の御見解をなぞるような形になって恐縮なのですが,かねてプロジェクトファイナンスのようなものを引き合いに出させていただいているのですけれども,長期与信の設計として,その与信の期間にわたって継続的に発生する動産だったり,今回は債権ですけれども,債権だったりを累積的に把握するという形で事業キャッシュフローを掴取させていただくという与信の類型がございまして,太陽光発電プロジェクト向け与信もそういうものなのだと思っておりますが,そういう場合に,担保権の効力が及ぶ範囲が一時点において存在する債権に限定されてしまうということになるのだとすると,ファイナンスの設計と大きくギャップが生じてしまうのかなと思っております。そういう意味では,こういう与信に関しては【案9.1.1.1】一択になるのかなと考えています。ただ,そうした場合に,設定者に,例えば,再生型の倒産手続が開始している場合の事業の再生との関係で著しい支障を生じさせ得ることがあるとは考えられまして,そのための調整はきちんと考えられないといけないと考えております。   その一つの方法は,部会資料にもございますが,新たに債権を発生させるための費用を担保権者が分担しますというものであり,部会資料の12ページ目の第2の(2)の提案がそれに当たるのかなと思っておりますが,そうした考え方によりますと,例えば【案9.1.1.2】から【案9.1.1.4】までというのが,担保権者と設定者との間において取り分を切り分ける際に,ある特定の時点における一断面を縦に切り取って,その範囲内で担保権者が取る一方で,それ以外は設定者が取れる形にするという切り分け方が提案されていると理解されますが,【案9.1.1.1】を採る場合において,発生させるための費用を分担しますということになりますと,債権ごとに発生費用相当額とそれ以外の部分を設定者と担保権者が切り分ける,横にスライスするような,そういう切り分け方になると考えられるのかなと思っています。   ちなみに,そういうアレンジをした場合に,発生費用相当額が,例えば労働債権者,商取引債権者等の債権者のための弁済の資金に充当されることになるのだとすると,その範囲内において担保権者より優先する形でそうしたステークホルダーに対する弁済が行われるというアレンジになるように思われます。一方,継続的に担保目的債権の回収の都度,発生費用を除く金額を被担保債権に充当する形で別除権行使が行われることになると思われますが,こうした現象を外から眺めてみますと,収益執行型というのが前々回においても議論されたのだと思うのですが,あたかもそういうような担保権実行が行われているという外観が表れるように思われます。   また,別の調整方法として,これも部会資料にございますが,最判平成11年1月29日のような公序による調整というのもあるのだと思っておりますが,部会資料で御指摘されていますとおり,一般法理による調整を試みますと,やはり予測可能性のところで問題が発生するということになりそうであり,その更なる対案として,例えば,民法548条の2第2項,それから消費者契約法10条のように,公序によって制限される,無効化される場合の判定に際する判断枠組みを示すような規律を設けるというのも一法なのかなと考えております。   他方,そうした長期的な与信以外の,例えばABLの取組みにおいてボロイングベースで担保管理をしていますというような与信に関しては,これも鈴木委員が御指摘になったとおり,基準日における担保対象債権の残高に応じた与信管理をしているという発想と理解していますので,【案9.1.1.2】,それから【案9.1.1.3】のような考え方が当てはまりそうなのかなと考えております。   長くなりましたが,以上になります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。少し抽象的な話になるのですけれども,実体法と倒産法との関係についてコメントさせていただきます。   資料では,倒産手続開始後の財産についての担保権の効力について,様々なルールがあり得ることを整理してお示しいただき,よく分かりました。一方,理論的な前提問題としては,担保権の平時実体法における効力を倒産法により制約するか否かという問題があると考えております。  第1に,実体法上の効力が制限されるべきではないという考え方があって,担保権設定者の持つ処分権の範囲とか,集合動産,集合債権の実行のルールとか,そういったものに従って倒産手続開始後の財産への担保権の効力を制限的に解する方向が,この第1の考え方によるものであろうと思います。また,民法90条の公序良俗を根拠にして倒産時の効力を制限するという方向も,飽くまで実体法の中に制約の根拠を求めようとする姿勢の表れであると理解しています。反対に,第2に,実体法上の担保権の効力が倒産法により変容するという考え方もあり得て,例えば,倒産によって集合動産,集合債権が当然に固定化するというルールとか,債務者の処分権とは無関係に倒産手続開始後の財産には担保権の効力が及ばなくなるとか,そういうルールは第2の考え方に基づくものといえそうです。どちらの考え方を基礎にするのかということは,理論的にはそれなりに大きな問題かなと考えていまして,これを検討する必要があるのではないかと思いました。   個人的には,従来の日本の倒産法,特に民事再生法が担保権の実体法上の効力をなるべく尊重するというルールを採用してきたのは,平時実体法上,担保権の効力がそれほど強くないとか,担保権の効力の範囲が狭い範囲に限られているといった,そういう前提があったからであって,今時の改正によって広くて強い担保権が認められるようになるとすれば,正面から倒産法による制約と,その制約の限界はどこまでかといったようなことを論じる必要があるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○尾﨑幹事 尾﨑です。倒産局面における取扱いというのは担保の性格を決する重要な要素になりますので,また繰り返しになりますけれども,事業の成長という観点から改めて発言したいと思います。   当然のことですけれども,倒産に至った場合でも,再生の見込みがあるのであれば,そのための再生資金の供給というのは,事業の再生,再度の成長のために非常に重要になると思います。その一方で,倒産局面で担保権に対する制約を強めすぎたり,予測困難なものにしたりすると,平時における事業の成長のための融資にも影響が生じてしまうことになりますので,事業の再生ということはもちろん重要なのですけれども,新たに生まれるより多くの企業の成長というのも重要であり,どちらも重要な両者のバランスをいかに図っていくのかということが今回の議論で目指されるべきものではないかと思っているところです。   そうした議論を進めていく際に重要な視点として,平時において融資をする際に,どういうファイナンスを実現したいのかということがあるのではないかと思います。そのため,今回の倒産局面における取扱いにおいても,そうしたファイナンスの実現のためにどういった制度のオプションを用意しておくのが望ましいかということを考えることが重要だと思います。この点は,これまでこの部会の議論でも既になされていたように思いますし,この資料もそうした観点から整理いただいているように思います。   この辺りは鈴木さんや本多さんがおっしゃったことと少し重なりますけれども,例えば,資料の6ページの13行目にある,将来にわたる担保目的債権の累積の残高を基礎とする与信といったような場合には,これは恐らく【案9.1.1.1】が整合的であるように思いますし,その場合には倒産手続開始後に発生する一定の費用について担保権者が負担するということが合理的なのだろうと思います。他方,ABLのようなボロイングベースのファイナンスの場合には,これは将来価値というよりも一時点の物の価値に着目したファイナンスですので,【案9.1.1.2】や【案9.1.1.3】の考え方が整合的になるのではないかと思います。   さらに問題になるのは,資料でも検討されておりますように,こうした典型的なファイナンスだけを念頭に置けばいいのか,それ以外の様々なファイナンスの可能性を閉ざしてよいのかということだと思います。今議論しているような個別財産に対する担保権だけでなくて,本日最後に少し御紹介させていただく,事業全体に対する担保権のようなオプションによって多様なファイナンスを可能とするという整理もあるのかもしれません。   いずれにしても,事業者の多様な成長資金ニーズにこたえる多様な融資を可能にするために,様々な類型のファイナンスに応じたオプションが適切に用意されているといった観点からこの議論をすることが極めて重要なのだと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   少し今後の議論のために,鈴木さん,本多さんがおっしゃったところ,今,尾﨑さんが引用された6ページの12行目以下のところなのですけれども,太陽光発電などのことで累積的に担保を期待しているという話なのですが,これというのは,例えば今,私がお金を借りて太陽光発電の設備を作って,といったときに,最初すぐにかどうかは知りませんが,例えば2年たった時点で,その後ずっと上がっていく利益,あるいは東京電力に対する債権なのかもしれませんが,それからその時点で順々に弁済を受けていくというスキームのことをおっしゃっているのか,それとも,私が債務不履行になった時点で,そこからずっと先たまっていくものについて担保のつもりになっているよという話なのか,それはどちらなのですか。ずっと弁済を受けていくという話を前提にしている話でしょうか。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多です。今ほどの御質問に関しては,私のイメージでは前者との理解です。元々のファイナンスの設計に際しまして,長期の分割返済の約定を設けさせていただく形になると思うのですけれども,その前提として,道垣内先生もおっしゃった,例えば売電によってあるタイミングでどれぐらいのキャッシュが生まれるかを分析し,そこから事業を運営していく際の資本的支出とか運営経費とかを差し引いて,ボトムのキャッシュフローと呼んだりしているのですが,金融債務の弁済に充当できるキャッシュの残高がどれぐらいあるのかということを前提として,その各タイミングにおいて元利払いが幾らまで可能になるのかというふうな設計を念頭に,そういうファイナンスの組立てを図っています。   そういう長期のファイナンスの継続中に,ある一時点で残念ながらデフォルトが発生してしまいましたという場合に,その後においてなお事業の再生が可能ということなのであれば,むしろ事業を継続させた上で,そこから生まれる倒産手続後におけるキャッシュフローのうち,発生費用相当額を取り分けた上で,残額相当額を分割返済の約定にのっとって充当いただけるというふうなアレンジを考えたいと思います。なお,例えば再生手続が開始した場合において,そういう分割返済の約定付きの別除権協定ができることもある,すなわち,自力再建型の場合にはそのような分割返済約定付きの別除権協定が締結される場合があるという理解なのですけれども,一方で,スポンサーが付いて一括返済の約定による別除権協定となる場合においても,受戻金額の算定に際し,将来発生する債権の額面金額で計算をするというよりも,将来にわたって累積的に発生することが想定される債権の額面金額からこれらを発生させるための費用を差し引いた残額の現在価値を念頭に置いて交渉させていただくこともあるのかなと理解しています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。しかし,それは,私が住宅ローンを借りるときに,私の給料債権ということを考えて,給料債権が幾らだから,そこからこれだけ払えるよねと計算してやるのと,根本的に何か違いがありますか。 ○本多委員 三井住友銀行の本多です。大きく違いがあるわけではないかもしれないのですが,与信の設計に際しまして,実際にどれぐらいの費用が発生するかとか,それから,どれぐらいの売上げが立つのかというところを分析させていただく精度が違うというところが,ファイナンスの採り上げに際する分析の仕方が違って見えるというところがあるかもしれません。それから,住宅ローンに関して申し上げますと,不動産という担保物件があります。 ○道垣内部会長 すみません,住宅ローンに限るわけではなくて,普通のときにインカムを考えて,これだけなら払えるよねという計算をするというのは,それは当たり前のことなのではないですかという質問で,住宅ローンの例を出したのは私のミスかもしれません。 ○本多委員 ありがとうございます。いわゆるコーポレートファイナンスといいますか,会社に対し,その事業が営まれることにより事業キャッシュフローが生み出されることを前提としてファイナンスをさせていただく際にも,御指摘のとおり,当たり前のお話として,キャッシュフローの創出力の分析を前提とした返済可能額の検証が必須となると思います。プロジェクトファイナンスとそういうコーポレートファイナンスで違いがあるのだとすると,期間の長さ,金額の大きさというのが,プロジェクトファイナンスの場合ですと,より長く,大きくなるという半面として,コーポレートファイナンスの場合対比,キャッシュフローが具体的にどのように生まれるのか,それが資本的支出や運営経費との関係において,最終的に金融負債の返済に回るキャッシュフローのレベルがどの程度になるのかということについて,プロジェクトベースでより精緻に分析させていただくというところでは,違いが出てくるかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。今の鈴木委員,本多委員,尾﨑幹事からの御発言と重なるところがございますが,ファイナンスの形態という問題と,集合債権譲渡担保に関しては前回から累積型と循環型という類型論が議論の前提とされておりますので,その両者の関係について,一言申し上げさせていただければと思っています。   累積型と循環型の区別ということですけれども,ここで基本的に伊藤先生の類型論に基づいて,取立権が誰に帰属するかという形での類型が立てられているかと思います。取立権が担保権設定当時から担保権者に帰属するか,それとも,実行時までは設定者に留保されるかという点をメルクマールとして類型化されているということであります。しかし,先ほどの3人の御発言もそうですし,前回からもそういう意見がありましたとおり,実務において,累積型といっても,取立権が担保権者に完全に与えられていて,担保目的である将来の事業債権を全部担保権者が回収して被担保債権に充当してしまうというような例はそれほど多くないということでありましょうし,それでは事業自体が回らなくなるという御指摘もあったところです。ですから,完全な取立権が担保権者に与えられている例というのはあくまでも一つの理念系にすぎず,もう少し広く実質的に累積型というものを把握していく必要があるのではないかと考えています。   そこで,先ほどから鈴木委員,本多委員,尾﨑幹事がおっしゃっておられるとおり,基本的にはそもそも背後にあるファイナンスの形態が異なることを前提として,いかなる形態のファイナンスのために用いられる担保なのかということによるのだと思います。  まずは循環型ですが,循環型というのは典型的には短期の運転資金の融資で,履行時にサイトにある売掛債権を担保目的として評価する類型であるのに対して,累積型というのは設備投資などの中長期のファイナンスで,平時から目的債権から常時回収するということを前提として担保評価がなされる類型ということで,平時からの回収という意味で累積型と分類されるのかと思っています。   法的な構成としては,恐らく実務の多くは設定者に取立権が付与されているということなのでしょうけれども,例えば30%ないし40%というのは必ず担保権者に回金がなされて,被担保債権に充当されるという形での運用がなされているのではないかと推測されます。これは法的に分析するとしたならば,取立権は設定者に付与されているということなのでありますけれども,あくまで30%,40%の範囲というのは担保権者のために取立てをすることが委任されているということなのであって,このケースはやはり,たとえ取立権が形式的に設定者にあるといっても,循環型と評価すべきではないということになろうかと思います。   他方,担保権者に取立権が付与されている例というのは,例えば,担保権者名義の口座への入金がなされて,そこで管理が行われているケースが想定されるわけですけれども,その場合も通常は30%から40%を被担保債権に充当して,残りは設定者の事業の回転資金として商取引債権者や労働債権者に弁済がなされていると推測されます。そうしますと,取立権が設定時から担保権者にあるというケースは,累積型の一類型に過ぎないと考えるべきであり,設定者に取立権が与えられているケースについても,平時から目的債権の取立金から一定額又は一定の割合で担保権者に回金がなされて被担保債権の弁済に充当がなされているということであれば,累積型と把握すべきだと考える次第です。   そうしますと,累積型の債権譲渡担保においては,平時に30%から40%の範囲で回金がなされているということであるならば,その範囲で実質的に担保権の効力が及んでいると考えられます。その30%から40%の範囲という実体法上の担保権の効力は,平時はそれが潜在的なものにとどまるわけですが,再建型の倒産手続においてはそれが顕在化することになり,倒産時についても平時の回金率といいますか,それを前提に,その範囲で優先弁済権が確保されるというような形で倒産手続の制度設計を行うのが合目的的かつ公平にかなうのではないかと思っております。   続いて,【案9.1.1.1】から【案9.1.1.4】のいずれかという話ですが,仮に類型論が可能であるということであるならば,累積型は【案9.1.1.1】を前提として,【案9.1.1.2】あるいは,先述の回金率を基準に制限をしていくということになり,循環型に関しては【案9.1.1.3】または【案9.1.1.4】ということになるのかとは思いますが,立法論として,類型論的な規定を置くというのは難しいということですと,場合によっては,集合物概念を用いて集合債権譲渡担保という別の担保形態を観念する必要があるのかもしれません。あるいは立法技術的に類型論に応じた並列的な規律が難しいということならば,原則・例外のような関係を設けて,部会資料の7ページにもありますように,債権譲渡は債権移転という形式が採られており,債権移転の効力は確定的に生じているということを前提とするならば,原則として将来債権についても担保権が及ぶのだけれども,例外的に循環型については実行後には担保権の効力が及ばない特段の合意が認定されるというような原則・例外関係を検討するということなのかもしれません。   ただ,累積型に関しても,先ほど申し上げましたとおり,全部丸取りできるということではなくて,平時の回金率ですね,30%なり40%なり,その範囲でのみ優先弁済権が認められるということになろうかと思いますので,その反対の60%から70%は担保権の効力が及ばない特段の合意があると認定することもできるかとは思います。その意味では【案9.1.1.2】に近い視点かもしれません。いわゆるカーブアウトという議論もされているようでありますけれども,事業担保権におけるカーブアウトと同じような考慮を債権譲渡担保における累積型でもやっておく必要があるのではないかと考える次第です。   長くなりましたけれども,以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○村上委員 労働組合連合の村上です。債権譲渡担保や動産担保についてこれまで以上に広く認めていくことに対しては,これまでも申し上げているとおり,労働債権を有する労働者の立場からは基本的に賛同し難いところではありますが,今回部会資料で提案されている内容について意見を述べたいと思います。   まず,1において,倒産手続開始後に発生する債権について無制限に担保権の効力が及ぶとする【案9.1.1.1】の考え方については,一般債権者である労働者保護の立場から反対の意見です。事業継続を前提とした会社更生や民事再生などの倒産手続において,将来債権を含めて包括的に担保権の効力が及ぶことになれば,事業継続のための財産が散逸したり,又は十分確保できない事態も想定されます。再生型の手続は事業の再生を指向するものですから,担保権者も含めて,すぐに回収できればよいという短期の視点ではなく,従業員の理解と協力を得ながらいかにして事業の再生を図るのかという中期的な視点も求められるのではないかと考えます。   また,今までの部会でも申し上げてきましたが,労働者には一般先取特権があるといっても担保権等に劣後しておりますので,実際の労働債権の確保というのは容易ではありません。売掛債権のような労働者の労務の提供により生ずるような債権について,将来債権も含めて広く担保権の効力が及び,債権確保が今まで以上に困難になるということは,公平性や納得性の観点から課題があるのではないかと考えます。したがいまして,一般先取特権が労働者保護の観点から十分でない点も踏まえれば,倒産手続開始後に生じた債権に対する担保権の効力が及ぶ範囲については政策的に制限するべきだと考えます。資料の第1の1でいえば,【案9.1.1.4】が適当と考えます。   また,資料の9ページの2,倒産に対する担保権の効力についても,債権同様の考えに基づきまして,資料10ページの19行目にございます②の制限する考え方が適当ではないかと考えます。   あわせて,このテーマではないのですが,もう1点だけ申し上げさせていただければと思います。部会資料8の担保実行手続中止命令に関してです。特段記載はなかったのですが,この中止命令や禁止命令の申立権者には誰が入るのかということでありまして,ここは労働者,労働組合が含まれるということを明確にしておくことも必要ではないかと思っております。先ほど申し上げたように,労働者,労働組合は重要な利害関係人でありますので,そういった視点から,その点を明らかにしておく必要があるのではないかという意見です。   ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。私も,現行法の解釈としては,当事者が明示的に累積的に担保目的で将来債権を譲渡すると合意した場合は,その効力は倒産手続においても否定し難いのではないかと考えております。その意味では,現行のルールとしては【案9.1.1.1】がベースになるのかと思います。それに対しては,資料にも挙げられている最判平成11年の公序良俗違反というのが一つの制約原理にはなると思うのですけれども,これは法律行為についての評価ですので,飽くまでも譲渡時点において,譲渡契約として公序良俗違反と評価できるものを問題視するということで,倒産になったときに担保権の及ぶ範囲を制約する原理としてはなかなか使いにくい原理かなと考えています。その意味では,倒産手続上の考慮から何らかの制約を設けるとすると,立法論として議論する必要があると思います。正に今,それをしているわけですが,その方向としては二つぐらいあり得て,飽くまでもスタートは累積的に譲渡できあるいは譲渡担保に入れられるという前提で【案9.1.1.1】をベースにしつつも,資料でいえば12ページ,後で出てくる話になるかもしれませんが,担保目的債権の発生のための費用をカーブアウトするという考え方があり得て,事業を継続しながら,そのために必要な費用を超える分について担保権者が累積的に優先的に把握していくということが考えられようかと思います。   ただ,特定の集合債権と申しますか,いろいろ包括的な特定が可能かもしれませんが,場合によっては限定的な範囲の集合債権を担保に入れるときも含めて,集合債権毎に何がカーブアウトの対象になるのかの判断は容易ではなく,直接的な費用は分かりやすいのですが,先ほど例に挙げられた労働債権などは典型的で,こういうものがどういう割合で債権発生のための費用として配分されるのかを決めるのは容易なことではないと思います。それを解決する方法として,先日の金融法学会で粟田口弁護士が報告されていたように,裁判所の関与の下でカーブアウト費用を認定することもあり得るかとは思うのですけれども,裁判所にそれを委ねるにしても,やはり難しい判断を迫られることは間違いないという点が気になっているところです。   それで,もう一つの制約方法としては,例えば【案9.1.1.3】のように,実行時に存在する債権に限定して,倒産手続においてはそういう形で制約を働かせるというのも一つの考え方だとは思います。ただ,その場合には,現在行われている累積的な担保に基づくファイナンスに致命的な影響があるのではないかというのが問題になるわけですが,それについては,こちらの制約原理を採用する場合には,本日御紹介があるかもしれませんが,事業全体を担保に取る,企業の全資産を担保に取るという別途の制度を仮に設けたときに,その制度の中で,企業全体をベースにして営業費用をカーブアウト費用として計上するというのであれば,労働債務をカウントすることも相対的には容易になるので,そちらで累積型の担保融資を行っていただくというのも一つの解決方法かと思います。   現在行われている累積的担保に基づく融資としては,太陽光発電のファイナンス以外にも,プロジェクトファイナンス,あるいは一部のLBOなどのアクイジションファイナンスなどが挙げられると思うのですけれども,こういったものは,通常といいますか,私の知る限り,新設会社を作って事業とかキャッシュフローを特定して,他業を禁止した上で,その新設会社をボロワーにして担保が設定されることが多いのではないかと思いまして,そうだとすれば,事業全体,あるいは企業全体を担保に入れる制度によって,今申し上げたような累積型のファイナンスが救われる可能性があります。そうなのであれば,生き物としての,すなわちコーポレートとしての企業の全事業資産のうち一部の集合債権を担保に入れる場合は,少なくとも倒産手続においては,一時点において存在する債権に効力を限定するというのも一つの制約方法かと思います。これは累積型の担保制度を別途用意できるかどうかに関わる問題なので,そちらとの兼ね合いで考えなければいけないわけですけれども,そのように考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 私は,今まで本多委員若しくは鈴木委員もおっしゃられたように,【案9.1.1.1】が恐らく原則だと思います。当然,ファイナンスをされるときの譲渡担保権の評価は,倒産時において,特に累積型の場合に,担保権の効力がその後も継続することを含めて評価をしているものと想定されます。よって,それを制約するような立法を行うことは,担保権評価額が低くなり,かえってファイナンスが付きにくくなることに繋がるため,ビジネス的な面では【案9.1.1.1】のように理解をすべきだと思います。   ただ,私は,民事再生と会社更生は解釈が違うのかなというのは思っています。譲渡担保権は,民事再生の場合は当然に別除権ですから,【案9.1.1.1】のような理解だと思うのですが,会社更生の場合は更生担保権になりますので,開始決定の時点で財産評定による資産評価を受けるため,そういう手続の場合に民事再生の場合と同じ考え方でいいのかというところを考えました。会社更生の場合は,【案9.1.1.2】の考え方を適用するも,ここでは倒産手続開始時に発生した債権の評価額とあるのですが,累積型の場合は発生していない債権も評価に含めなくてはいけないので,倒産手続開始時の対象物の評価額とすべきだと思います。そうすると,累積型の場合も,当然,現在価値を考慮することになるかもしれませんが,将来債権も含めて評価することになります。このような解釈を採ることで,更生担保権の評価額の範囲で譲渡担保権の効力が存続することになるのではないかとは思います。確かに,手続によって取り扱いを分けるのが本当に妥当なのかということもあるのですが,会社更生は,元々更生担保権として担保権を民事再生とは別の取扱いにしている手続なので,問題ないのではと思います。   一方,民事再生の場合ですが,先ほど各委員がおっしゃられたように,やはり倒産手続をやる上での費用を担保権者が一部負担をすべきケースもありますので,これは後の第2で出てくる費用負担に関し明文の規定を設けて,場合によっては裁判所がそれを決定する等の手続を踏まえて,利害調整を図るのがよろしいかと思います。その場合,先ほど井上委員がおっしゃられたように,公序良俗という一般条項で制限をかけるのではなく,一般債権者への弁済原資を毀損しないような利害調整をするメカニズムを盛り込むべきだと考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大澤委員 大澤でございます。私は,皆様とはやはり少し意見が異なりまして,【案9.1.1.4】を基本に物事を考えていってはどうかと考えております。といいますのも,やはり倒産局面においては倒産法からの変容というものがあってしかるべきと考えておりまして,倒産財団が一般債権者の引当てとなるべきものというふうに切り替わるということを考えますと,倒産公序という,先ほどから出てきてはいますけれども,そういった観点からも,【案9.1.1.4】を基準にまず考えるべきであろうと考えております。また,先ほど来出てきておりますのであれですが,循環型の債権譲渡担保に関しては【案9.1.1.4】でもなじむのではないかとも思っておりますし,逆に,また累積型に関して申し上げれば,今お話が出てきました太陽光発電等であるとするならば,入りと出をSPCなり何なりを作ってかなり管理をしておられて,倒産隔離のスキームがほぼ出来上がっている部分があろうかと思います。その意味でも,そういった,やや仕組みとしては,倒産隔離もきちんと出来上がったようなところを捉えて,【案9.1.1.1】というふうに行くというよりは,中小企業等も,いろいろな会社がございますので,【案9.1.1.4】の方で,倒産においての局面の変容ということをスタートに考えてはどうかと考えております。   実際に【案9.1.1.1】の場合には,費用の負担を担保権者の方がというようなお話もございましたし,実際に今日の資料でも費用負担のお話が出てまいりますけれども,きちんと費用負担がきれいに分けられるかというのは,実際問題としてあろうかと思っております。労働債権がとか,いろいろなお話がございますけれども,それ以外にもいろいろな費用というものがございまして,それをどううまく分別していくのか,これは倒産債務者の分担です,これは担保権者の分担ですと分けたということを,理論上はできたとしても,実務上果たして可能かということは大きく懸念をするところでございます。裁判所にそこを委ねるというのも,なかなか裁判所も判断がしづらいのではないかということもございまして,【案9.1.1.1】から得られる不都合を,中で費用分担だけで解消しようというのは難しいとも考えます。また,倒産公序,あるいは公序の観点から【案9.1.1.1】を制限しようというお考えもあるというふうにも十分理解はしておりますけれども,やはりここも,では公序とは何かといったときの,先生方,皆さんからも出ておりましたので,余り長くは申し述べませんが,予測可能性といったところでも,なかなかそれで穴空けをするというのは実際的には難しかろうとも思っております。   であるとするならば,やはり【案9.1.1.4】という形で,担保権の効力については倒産開始後には及びませんという形で立法をし直すと,ただ,その際に,おっしゃるような,別にファイナンスを潰すというようなことを考えているつもりは毛頭ございませんので,別途,倒産隔離ができているものについては,恐らく【案9.1.1.4】から更に別の例外等を設けていくというような形で,どちらを利用するかというような考え方からすると,【案9.1.1.4】に寄せた上で,不都合を立法上解消するということを考えてはどうかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。【案9.1.1.1】に対する反論だろうと思うのですが,【案9.1.1.4】まで飛ばなくても,もう少しソフトランディングもあるかもしれませんが。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。実は私は先ほどの片山先生の御発言に関して,実務的な補足ということを元々申し上げようと思っていたのですが,その後の先生方の御発言に関しても一言ずつ触れさせていただければと思っていまして,順番に申し上げますと,まず,片山先生から,累積型に関する平時の回収率のお話を頂いたのですけれども,念のために実務を紹介させていただきますと,プロジェクトファイナンスのような長期分割型の与信で,担保権者が累積的に将来債権を担保として頂く場合に,取立権限も担保権者に頂くというアレンジがなされることがありまして,その場合は担保対象債権の全額を一旦担保権者として取り立てさせていただいた上で,そのタイミングにおける分割返済約定に基づく元利払い相当額の金銭を返済に充当させていただき,残りを設定者にお返しをするという形になっています。あらかじめその回収率が定められているわけではなくて,ローン契約上の返済約定に基づく支払金額を回収充当させていただいく,という設計になっています。それが片山先生に対するコメントになりまして,一方で村上委員から,労働債権の。 ○道垣内部会長 少し待ってください。片山さんがおっしゃっていたのは,別に30%というところにポイントがあるわけではなくて,例えば月々250万円というふうな額であるならば,それは250万円が優先弁済の範囲として,その部分だけを確保していると考えるべきだというのが片山さんの御発言のポイントであって,パーセンテージか金額かというところにポイントがあるわけではないと思うのですが,その辺りについてはどうですか。 ○本多委員 私もその理解でございます。回収率と表現なさるのか,元利払い金額と申し上げるのかは大きなギャップを生じさせるものではなくて,どちらかというと,ローン契約に基づく返済約定により充当金額が決まりますというところがポイントなのかなと思っています。すなわち,今回の議論に関連することを申し上げますと,発生費用の計算が難しいというところはあるのですが,発生費用に関してカーブアウトをして設定者が取れるような形とすることを考えますという場合に,対象債権の回収額のうちローン契約の返済約定に基づき担保権者が弁済充当させていただいている金額として想定される金額と,発生費用相当額を対象債権の回収額から控除した残りとして想定される金額は,もしかしたら違うかもしれない,場合によってはかなり違ってくるかもしれないというところがありまして,そうした金額のギャップも場合によってはこの議論に影響するかもしれないのかないというところが気になったので,申し上げたということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。では,続けてお願いいたします。 ○本多委員 ありがとうございます。村上委員の労働債権保護については,御指摘のとおりと思っていまして,【案9.1.1.1】が採られたとしても当然,累積的に担保権者が丸取りという規律がなされることにはならないと考えています。発生費用に関して,先ほど来申し上げているとおりなのですが,算定が難しいというところはあるとは思うのですが,労働債権に関しては相応に明確に算定できるのかなと思っていまして,労働債権も含む一般債権者というステークホルダーとの間における発生費用の分担というのは,技術的に難しい面はあるにせよ,きちんと議論されないといけないのかなと考えています。   それから,その後に井上先生の方から,コーポレートファイナンスを前提として集合債権を担保として頂く場合に,スクリーンショットになるのが原則になりそうではという御指摘を頂いたのですが,そういう例が大宗でありそうである一方で,必ずしも長期的な与信がプロジェクトファイナンスとして倒産隔離が施されたビークルを前提として行われるわけではない場合もありまして,コーポレートベースで太陽光発電に関するプロジェクトが営まれる場合のファイナンスも実務上ございます。そうした場合に,【案9.1.1.1】の規律に基づいて担保の範囲が画されるというのも必要になってくることがあるのかなと考えております。   それから,大西先生がおっしゃった,【案9.1.1.2】に関して,再生手続と更生手続における考え方の差についてなのですけれども,部会資料記載の提案によりますと,【案9.1.1.2】は飽くまでも倒産手続開始時において現実に発生していた債権を前提とするという考え方のようですので,将来発生する債権を現在価値に割り引いて,というところまでには及んでいなさそうなのかなと思われます。一方で,大西先生がおっしゃるように,集合債権担保の評価の仕方として,将来発生する債権について発生コストを差し引いた残額について現在価値に割り戻して,その合計額ですというふうに考えるのはフェアな考え方なのかなと思っていまして,更生担保権の評価も恐らくそういうふうにされているというのが通例的なのかなと理解していまして,おっしゃるとおりだなとお伺いしていた次第です。   それから,大澤先生の御発言に関して,【案9.1.1.4】を採った場合における累積型の取組に対する配慮に関しまして,一般的に倒産隔離が施されたビークルを前提として,倒産手続に巻き込まれない形でファイナンスができているという実態があるにはあるのですが,必ずしもそのようにきれいに運営できているわけではないものもございまして,場合によっては,倒産手続に巻き込まれた場合に,担保取引にリキャラクタライズされるのではないかと懸念されるものも交じってございます。そうした場合に,倒産手続開始後に担保取引と認定されることになって,その結果,【案9.1.1.4】の規律になりますということになると,ファイナンス上かなり大きな影響があるということは申し上げざるを得ないところがありまして,そういう萎縮効果を生じさせることがないように,今の判例法理にのっとった【案9.1.1.1】の考え方によるというのも,考え方として大いにあるものかなと思っております。   すみません,長くなりました。以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。井上さんも【案9.1.1.1】が現在の判例法理なのではないかと言いましたが,私は,現在の判例法理の理解として全く賛成できません。実際どういうふうな裁判例になるか,倒産実務になるかというのは分からないと思います。したがって,今こうなっているからこれでファイナンスが現在構築されているというのでしたら,それは随分危ない橋を渡っていらっしゃるのだなというのが私の印象なのです。ですから,それが絶対に現在認められているのだというところからスタートするのは私はいかがかと思います。認められるべきだというのは分かるのですが,認められているのだというのは,そうかなという疑問があります。すみません,感想ですが。 ○阪口幹事 ありがとうございます。阪口です。今回の議論は立法論で,かつABLを大きなターゲットにしていると思っています。そうしますと,債権だけではうまくいかなくて,当然,動産の方も考えなければいけない。議論は,どうしても【案9.1.1.1】から【案9.1.1.4】までが中心になってしまうのですけれども,部会資料9の9ページ以降の動産の方を考えたら,これはさすがに累積的だという議論はなかなか出ない。10ページの①,②,③も完全に累積的な提案は出ていないわけです。そうすると,立法のときに債権と動産の規律がばらばらになるのが良いのかという問題が生じ,理屈の上では債権と動産の規律が分かれるということはもちろん仕方がないのだけれども,立法論としては規律を揃えるべきだと思います。そのときの揃え方としては,債権の方でいうと【案9.1.1.2】か【案9.1.1.3】になり,10ページの動産でいうと【案9.1.1.2】に対応するのは①になりますよね,とか,そういう揃え方ではないかと思っています。   他方,先ほどから出ている,現在でも,累積的な担保設定の実務がありますと言われたら,それはおっしゃるとおりだと思うのですけれども,まず,プロジェクトファイナンスのようなものはもう倒産隔離か何かで処理するというものが一つの方策で,また,後に出てくる事業成長担保権でカバーするというのも考えられます。なぜ累積的な担保設定が行われているかというと,太陽光って,最初にできたら,あとは人間の関与が,ゼロではないですけれども,余り関係なく売掛債権が発生していくという特質があるから,累積的な担保設定ができるだけであって,普通の企業の場合には人間がいないと話になりませんから,動産も債権も全部取られてしまうと,結局動産も債権が発生しないことになる。普通の企業を考えたら,やはり動産と債権を横並びにし,かつ,累積的な担保設定は認めない,というものになるのではないか。   他方,【案9.1.1.4】,また動産でいうとそれに対応する10ページの②ですかね,これはいわゆる,手続開始直後は少し大変という問題があるわけですね。つまり,倒産手続開始直後に,別除協定ができるまでは設定者は在庫や売掛金に手を出してはいけないという問題になってしまうので,実務上,不都合かなと思います。   そうすると,債権の方だったら【案9.1.1.2】か【案9.1.1.3】か。その2つでいうと,私は【案9.1.1.2】がすっきりしていいのではないかと思っていたのですけれども,別除権の時期選択権を考えたら,【案9.1.1.2】はさすがに少しおかしくて,【案9.1.1.3】になるのかなとも思っています。その横並びで動産も考えるということになります。   つまり,結論的にいうと,累積的なものの切り分けをどうしていくのかということになりますが,立法論としては,債権の方でいうと【案9.1.1.3】をベースにして,他方,累積的なものは外へ出していって事業成長担保権若しくは倒産隔離で対処するということかなと思います。   あと,今現在,僕の知っている実務で中途半端な位置づけになるのが診療報酬債権の担保設定の一部で,累積的というほどでもないけれども2か月分だけでもないというものが,中途半端という表現がいいかどうか分かりませんけれども,あるのかなと思います。それはどちらかにくっつけないといけないのかなというと,そこは少しまだ迷っているところではあります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ,井上さん,本多さんがおっしゃっていた話というのは,やはり動産に関しては集合物論というものでやっていると,それに対して,債権に関しては将来債権というのを確定的に譲渡すると考えるとすると,動産はさておき債権は【案9.1.1.1】になるのではないかという,ここで切り分けられるのではないかという前提があるのではないかと思います。更にそれにファイナンスの実態というものも加わってくるのかもしれないですけれども。   債権について様々に御議論いただきまして,誠に両者のお考えとも説得力があるお話だと思いまして,いろいろまだ検討すべき点はあろうかと思うのですけれども,先ほど阪口さんの方から動産について話を振っていただきましたのですが,動産についてはどのようにお考えになりますか。もちろん今後,債権について発言をすることを禁ずるとか,そういう趣旨は全然ございませんけれども,動産の方についてはまだほとんど御発言を頂いておりませんので,いかがでしょうか。 ○本多委員 三井住友銀行の本多です。ありがとうございます。先ほど道垣内先生が触れてくださいましたとおり,債権に関しては,将来債権に関する一連の判例があって,累積的な担保権の設定も,少なくとも平時については許容されています。一方で,動産に関しては集合物論にのっとって,実行のタイミングで固定化するというのが一般的に考えられているのかなと理解しておりまして,経路依存的といいますか,そういうふうに判例が出来上がってきたからというところによると思うのですが,債権と動産で違いがあるというのが少なくとも現状の判例法理なのかなと理解しております。   一方で,ファイナンスの観点から両者がずれることがいいのかどうかというのは,阪口先生がおっしゃったとおりのところがございまして,やはり長期的なファイナンスで与信期間にわたって入ってくる動産について,担保権が及ぶということを前提にといいますか,事業キャッシュフローをそういう与信期間にわたって押さえていくということを前提に,集合動産の担保を設定させていただくという考え方をしているところがございまして,累積的な担保権設定の合意が有効に認められるということなのであれば,ファイナンスにとっても強力ですし,それが倒産手続に入った後においてもなお効力が維持されるというのは,少なくともファイナンスの観点からは望ましいと申し上げられると思っています。そうした場合に,やはり事業の再生との間における調整が必要になると思っていまして,その方法として,先ほど来なのですが,発生費用の分担という横の切り分けという方法もあると思いますし,それから,一般法理,倒産法的公序を規律として明確化した上で分担が適正化できるというのも,また別の方法として検討できるのかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。私も基本的に動産に関しては,いわゆる循環型というのが実務の多くで行われていて,債権のような累積型に関するニーズがどこまであるのかというのは疑わしいということで,動産と債権で異なる規律になっていいとは思っております。しかしながら他方,今回の担保法改正の大きな柱の一つが,ABL型の動産と債権をまとめて,在庫と売掛債権をまとめて担保に取るという担保形態を何とか実現していきたいというもう一つの狙いもあるのかと思います。その受皿をどうするかという問題だとは思います。特別法上に事業担保権であるとか,あるいは包括担保権を設けて,そちらでうまく機能するということであれば,それで十分かとは思うのですけれども,他方,事業担保権の構想というのは,全資産担保ということで展開されておりまして,それは固定資産も,それから,流動資産としての動産とか債権も全部含めた全資産を担保化するという大掛かりなものになっているようです。そうしますと,いわゆるABLで必要とされている実務がそこまで,固定資産まで丸取りする形の担保が求められているのかというと,そうではなくして,流動資産の枠で動産と債権,あるいは預金をまとめて担保に取るという程度のものが求められているということになりますと,そこでそごが生じてしまうようにも思われます。そうしますと,ABLで求められているものは民法上の動産債権担保で実現すべきということになるのかもしれないとは思っております。どこを受皿にするかということにもよるのでしょうけれども,ほかに受皿がないということであれば,今回の担保法改正の一つの大きな柱としてのABLを実現するために,動産についても累積型ということは念頭に置いていく必要があるのではないかということを一方では思っている次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ABLを推進することが今回の改正の一つの柱かどうかというのは,私はよく知りません。そうなのかなと思いながら伺っていました。反対だというのではないですよ。ただ,いろいろな意見はあり得るというだけの話で,それも議論の対象であろうと思います。ABLを必ず進めていくのだという方向で話をしないといけないわけではないだろうと思います。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。先ほど,債権について,現行法の解釈としては累積的に倒産手続上も及ぶと解すべきではないかと申し上げましたけれども,立法論としては,それをそのまま認めるべきだとは考えておらず,先ほど申し上げたように二つの方向性,すなわち,累積的に及ぼすにしても,カーブアウトのようなルールを設けるか,あるいは倒産手続に入った段階では実行時に固定するといった制約を設けるべきではないかと考えておりまして,そのうち後者については累積的な利用ができなくなってしまいますから,別途の担保制度が用意されるべきではないかと申し上げました。   動産については,私は阪口先生と同じように,立法論としては債権とセットで考えるべきではないかと思っておりまして,その意味で,債権について二つの方向と申し上げた二つの方向が一応は動産についてもあり得るのではないかと考えています。すなわち,将来動産の譲渡のような意味で,累積的に担保に取ることができるという前提で,倒産手続に入った後も一定のカーブアウト費用を超えたものについて担保権者が累積的に価値を把握できるという設計か,あるいは,動産についても,もう一つの方向として,実行時に存在する動産に限定するという方向か,二つあり得るのだろうと。ただ,動産については,平場の将来債権譲渡のような法理が確立しておらず,民法の条文もない中で,担保についてそういった累積的な譲渡の効力を認めるのはなかなかハードルが高いだろうと思っておりまして,そのハードルを越えるだけの必要性があるのであれば,債権,動産ともにカーブアウト付きの累積的効力を志向するのも一つの行き方だと思っておりますが,実際上はなかなか難しいのではないかという感覚もあって,そうすると,集合動産あるいは集合債権の担保の設計としては,スクリーンショット型で捉えることを考えて,その上で累積的な担保ファイナンスについては,実際に行われているものをベースにすると,売掛債権も在庫も,あるいはそれ以外のものも全てひっくるめて全資産担保を取るというパターンが比較的多いと思うので,会社資産全体に対する包括担保を,きちんとカーブアウトの費用を,直接費用のみならず事業継続のために必要な費用を,仮に労働債務があればそれも含めた上で,控除していくという方向があり得るのかなと思いました。それでは過剰といいますか,ABLのような融資は全資産を担保に取る必要はないというご説明が今,片山先生からありましたけれども,恐らくABLは累積的ではなく,ボロイングベースでその時々の残高を,債権も動産もという形でつかまえればいい場合が多いのではないかというのが私の理解です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 大澤でございます。先ほどの債権のところの議論とほぼ同じ形での考え方になりますけれども,やはりこちらは特に,累積型が実務上,今まで発達してこなかったということもございますので,循環型をベースに物事を考えていったときにどの考え方を採るかということになろうかとは思いますが,先ほどの費用の点も含めて考えますと,やはり倒産時での固定化というものが,この動産においてもやはり分かりやすいということと,あと,なじみやすいのではないかとは考えております。   簡単ではございますが,以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見は。動産とは限りませんが,御意見はございますでしょうか。 ○藤澤幹事 累積型かスクリーンショット型かという類型論について,三つぐらいコメントを申し上げたいと思います。   まず,累積型のファイナンスについて,担保権者の融資した額ですとか担保権者の期待を根拠にして,その分だけ広い範囲で担保権の効力が認められるべきであるというような御議論があったと思うのですけれども,少し突き放した見方というか,債務者が倒産してしまった時点から振り返ってみれば,債権者はそれだけのリスクを最初に取ったのであって,それを特別視することはないのではないかという疑問を持ちました。   これが一つ目のコメントなのですけれども,しかし,そうはいっても担保権者がどれだけの担保目的物を最初に期待していたのかということが重要であるとして,かつ,累積型なのかスクリーンショット型なのかということを倒産の時点で類型分けすることがそれほど簡単ではないとすれば,両方とも同じ取扱いにすることにしつつ,担保目的物の範囲によって得られる優先権の範囲が少し変わってくるような共通のルールを導入することはできないかと考えました。   第一のルールは,既に何人かの委員の方からのお話もありましたけれども,会社更生手続に入った場合には,結局その担保権というのは金額に評価されることになりますので,民事再生手続においても,それと同じような評価の仕方をして,評価額の範囲で優先権が認められるというふうなルールにすることで,同じルールなのだけれども,累積型もスクリーンショット型も処理できるということはあり得ないのかと思いました。   第二のルールとして,この次に出てくる費用の問題で処理することはできないかとも考えました。よく例に出てくる太陽光発電のようなものなのですけれども,こういうものは最初にすごくお金が掛かるのだけれども,実際に売電債権が発生する時点では,それほど労働のコストであるとか原材料のコストであるとかいったものは掛かりませんので,費用を控除するといっても,その額は大したことはなくて,担保権者の側は比較的広い範囲で優先権を得ることができるというふうになるかと思いますが,売掛債権のような債権が担保目的となっている場合には,費用を控除するとなりますと,売掛債権の発生には原材料ですとか人件費ですとか,そういったものが掛かってくるので,コストを控除してしまえば債権者の側に残る優先権の範囲はすごく小さくなりそうです。このように,共通のルールで処理しつつ,少し違う結論を導くことができるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 まず,私も動産の場合も債権と同様に考えるべきだと思います。そういう意味で,私は先ほど民事再生と会社更生を少し別に扱ったのですが,民事再生は基本的には【案9.1.1.1】でよろしいのかと思います。特に循環型が想定される動産譲渡担保の場合,債務者である設定者が倒産後も事業を続けているわけですから,在庫は売却によって売掛金になり,またそれを原資に原材料を仕入れて製品を作ってということで循環します。よって,その場合コストだけが掛かるというよりも,逆に利益も得ているわけですから,そういう意味ではここでは費用負担のうんぬんという議論をすべきではないと思います。   なお,先ほどの太陽光発電のところで,場合によっては事業譲渡担保権(包括譲渡担保)で扱うというのも一つの手ですというお話がありました。事業譲渡担保権というのは今後議論されるのですけれども,議論の中では,一部事業に対する担保権設定は認めるべきでないという議論もあるように理解していますので,その場合は事業譲渡担保権の対象にならないものと思われます。また,太陽光発電の場合は,太陽光のアセットで生じる累積的なキャッシュフローを回収していく前提で評価がなされ,コストの控除はなされない形で担保評価額が定められますが,事業の場合は,売上からコストを全部ネットした利益をベースとした評価額で評価されますので,そういう意味で両者は違います。よって,太陽光発電については,事業譲渡担保権とリンクさせて考える話は,事業譲渡担保権の内容が明確に議論されてから検討すべきなのかなと思った次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○本多委員 ありがとうございます。三井住友銀行の本多でございます。10ページ目の①から③までの考え方に関してコメント申し上げられればと思っておりますが,10ページ目の①は,2ページの債権に関する【案9.1.1.2】に対応していそうで,一方で②は【案9.1.1.4】に対応していそうですと。一方で,③は【案9.1.1.3】とは異なって,固定化の権限が管財人又は再生債務者に与えられていますという形になっているのですけれども,その前提となる考慮として,管財人等が費用を投下して事業を継続したことによって発生した動産の増加分について,担保権者が把握することになる事態を回避しようとするというお考えによるものと理解しておりますが,一方で実務に照らして考えた場合に,倒産手続開始後の状況として,恐らく設定者側で大変な混乱状況になって,事業の継続の結果,業績が回復して在庫の残高が増えますというよりも,在庫の価値が急減するというふうな状況になって,そういう状況下において担保権者としても実行するのか,それとも別除権協定の締結ができるのかというのを模索するというふうな状況になるのかなと思っています。   すなわち,担保権者として在庫の残高等をもとよりコントロールできる地位にはない一方で,設定者側においては,もしかしたら倒産手続開始の直前直後の混乱状況においては難しいのかもしれないのですが,倒産手続開始の前後において,在庫の残高がどれぐらいになりそうかということは把握できると思われます。部会資料の11ページ目にも言及がありますが,そういう情報の非対称性がある中で,むしろ設定者側で在庫の残高が小さくなったタイミングで倒産手続を申し立てるということはできなくはないのだと思うのですけれども,そういう状況があり得るということに鑑みますと,10ページの③の取扱いというよりも,【案9.1.1.3】に近付けて,担保権者が実行しようとしたときに固定化がされるというふうな取扱いが望ましいのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。③も別に担保権者の側からの固定化権限がないということではないのではないかと私は理解していたのですが,いろいろな考え方があり得ると思いますけれども。   ほかに何か御意見はございませんでしょうか。 ○倉部委員 倉部でございます。ありがとうございます。今,動産の方のお話時間なのかとも思いますが,少し債権の方にも戻りつつお話をさせていただきたいのですけれども,やはり再建型の倒産手続,民事再生と会社更生の担保権の取扱いの違いというのをどこまでここで考えるのかというのも少し気になりながらお話を伺っておりました。今日お話を伺っていて,様々な金融の類型,融資の形態があって,その類型化というのがどこまでできるのか,私自身余りフォローし切れていない部分もありそうで,その辺は少し不安が残るのですけれども,仮に累積型と循環型という分類が可能なのだとすれば,取り分け循環型の場合ですと,やはり,1の債権のところに戻りますと,【案9.1.1.4】という手続開始によって固定化してしまう,担保権の効力が及ばないというのは,少し硬直的なのかなと考えています。このように担保権の効力が及ばないということになってしまいますと,やはり再建型の倒産手続に入ってこれから事業継続をするという,その事業継続を阻害するというおそれが出てきてしまいますので,これは採りにくいかなと考えています。   その一方で,【案9.1.1.1】というのは,やはり再建の目的といったことですとか一般債権者に対するしわ寄せといったことも考えますと,これもまた極端で,採りにくいなと考えておりまして,そうすると【案9.1.1.2】か【案9.1.1.3】ということになるわけですが,ここで,このどちらか一つというのではなくて,現在の再建型倒産手続の在り方,また,その中での担保権の取扱いということに照らして考えますと,会社更生の場合ですと【案9.1.1.2】の方が採りやすく,民事再生の方ですと【案9.1.1.3】と,それぞれ手続ごとに異なる立場になりますけれども,その方が現在の各手続における担保権の取扱いには沿うのかなと考えています。この四つの中でこれと一つに絞るというのではなくて,それぞれ採り得るもの,【案9.1.1.1】と【案9.1.1.2】,と【案9.1.1.3】というのがあり得るのかなと考えながら伺っておりました。   それと,動産の方ですけれども,10ページのところで①,②,③という御提案をしていただいているわけなのですけれども,債権と動産で余り大きな取扱いの違いが生じるというのは好ましくないのかなと考えていまして,今申し上げたような立場から申しますと,会社更生の場合でしたらば,手続開始時の評価ということになるのですかね,①になるのですね,では民事再生の場合はどうなるのかといいますと,③になるのかと思いますが,ここで再生債務者にも固定化の権限を付与するというところが少し違和感を感じまして,やはり民事再生法上は別除権ですので,基本的には換価時期の選択権も担保権者に残している,中止命令等の制約はありますけれども,それは一応例外的ということで,基本的には担保権者に換価時期の選択権を与えているということだと思いますので,そこは先ほどの債権の方で御提案いただいているような【案9.1.1.3】に沿った考え方で動産の方も,民事再生に限っては捉えてもいいのではないかと考えております。   以上でございます。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   大体いろいろな見解の分布というものは伺えたのではないかと思います。まだ御指摘いただかなければならない点もあるかもしれないのですが,大体もう2時間を経過しております。そこで,よろしければ,この第1の2までは一応御意見をいろいろ伺ったということにいたしまして,しかし,第2のところが今までのところと密接に関係があるというのは皆さんの御発言からも明らかでございましたので,少し休憩を取りまして,第2のところから始めるということにさせていただきたいと思うのですが,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本来15分の休みを取ることになっているのですが,少し遅れておりまして,申し訳ございませんが,3時50分から再開するということにさせていただければと思います。それでは,3時50分まで暫時休憩をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 それでは,大体お戻りでしょうか。50分になりましたので,再開をさせていただければと思います。   次に,部会資料9の「第2 担保の目的である財産に係る費用の負担」について議論を行いたいと思います。事務当局において,部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは,「第2 担保の目的である財産に係る費用の負担」について御説明いたします。   これは,倒産手続開始後に目的財産について必要となる様々な費用を誰が負担するかという問題について検討しようとするものです。費用としては様々なものが想定されますが,主に,①担保目的財産の維持・管理のために要する費用,②集合動産,集合債権について,担保目的財産を発生させるための費用などが想定されます。このうち担保目的財産の維持・管理のための費用については,倒産手続開始後においても,設定者が担保権の目的財産の使用収益権限を有している間は,その物の維持・管理は設定者の利益になるということから,その費用も設定者が負担するとすることが考えられます。   次に,担保目的財産を発生させるための費用については,目的財産の流動性が失われていない段階においては,設定者において取立てや処分により事業活動を行い,利益を得ることができますから,費用も設定者に負担させることが考えられます。   なお,集合債権が担保の目的とされた場合に,個々の債権が個別に担保の目的財産になっているという理解を前提といたしますと,一つの行為によって設定された担保権の目的債権が常に一律に流動性を維持したり失ったりするわけではございません。このため,集合債権については,常に先ほど申し上げたようなルールを適用することで解決をすることができない可能性も考えられます。そうすると,集合債権については費用負担についても個別の債権ごとに考えていくことも考えられますが,これに対しては煩瑣にすぎて実務上とり得ないという批判があるところでございます。   以上について御議論いただけますと幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは,どなたからでも結構ですので,御意見を頂きたいのですが,すみません,司会の権利を濫用いたしまして,1点だけまず伺いたいのですが,費用を負担するということの意味内容なのです。つまり,担保権者がいて,担保目的物を発生させたりしなければいけないわけですが,それに,例えば100万円掛かったとしたときに,負担するというのは,優先弁済を受ける額が100万円減るということなのでしょうか。例えば,被担保債権額が5,000万円あったとしたときに,4,900万円までしか優先権を行使できませんという意味で,100万円は一般債権者に行きますよという意味なのか。それとも,100万円は別個に払わされて,しかし5,000万円権利行使ができますよという話なのでしょうか。それが,よく分からなくて,負担ではなくて優先弁済権の範囲の問題ではないかと最初に思ったのですが,そういうふうな数字の問題としてどういうふうな処理がなされるということが前提になっている案なのでしょうか。 ○笹井幹事 ありがとうございます。もしかすると道垣内先生の問題意識にうまく答えられていないのかもしれませんが,これを書いた時点では単純に考えておりまして,最終的に今,先生がおっしゃった事例ですと,100万円の費用が発生して,その費用は最終的には担保権者が負担するということになれば,物は設定者の専有下にあって,設定者が100万円の費用を支出した場合には,その100万円を設定者が担保権者に対して求償することができる。担保権者が最初からその費用を支出したということであれば,それは自分の負担なので,誰にも請求できないということになります。前者のように求償権が発生する場合には, ○道垣内部会長 私が最後までうまく言えなかったのですが,被担保債権額は,例えば,実行したときにそれに5,000万円の価値があったら,5,000万円被担保債権額も減るのだけれども,5,000万円分回収されたということになって。しかし100万円払わされるのですか,負担だといって。 ○笹井幹事 設定者がまず払った場合でしょうか。 ○道垣内部会長 そうですね。 ○笹井幹事 その場合は,担保権者が被担保債権を持っていますので,そこで相殺をするとかいうこともあると思います。 ○道垣内部会長 相殺するということは優先弁済権の範囲が下がっているだけであって,負担していないですよね。負担するということの意味が私にはよく分からなくて,あたかも自分のものであるかのように,そこに掛かった費用は自分で払わなければいけないというのを負担というとすると,幾らそこに費用を投下しても,その費用分,被担保債権額が減るわけではないですよね。それとは無関係な法律関係になるわけなのですが,担保権者が何で払わなければいけないのですか。少しうまく説明できていませんが。 ○藤澤幹事 資料の中で,費用に関して私が以前書いたものを引用していただいておりますので,道垣内先生の今の御質問に対して簡単に説明させていただいてもよろしいでしょうか。   (注26)に引用していただいた論文では,主に債権の真正譲渡を念頭に置いておりました。つまり,将来債権の真正譲渡の場合には,将来債権が倒産財団の外に出てしまっているものですから,その発生費用を回収するという場面で,外に出てしまっている債権をどうこうすることはできないので,譲渡人すなわち倒産者が譲受人に対して債権発生費用を請求できるようにするべきだ,つまり,お金を払えと請求することができて,その費用を支払ってもらって初めて将来債権を発生させる義務を尽くす必要が出てくるという風なことを書きました。   他方で,その発想の元になったアメリカの連邦倒産法の制度では,原則として倒産手続開始後の財産には担保権の効力が及ばないとしつつ,プロシーズにだけは担保権の効力が及び,ただし,プロシーズの発生費用がかかるような場合には,担保権の効力を縮減するという制度になっていまして,担保権者の側がお金を払うというわけではなくて,担保権の優先権の範囲が狭くなるというふうな制度になっています。ですから,私が論文で書いた立法論とアメリカの制度とは異なっていまして,両方あり得るのではないかと考えました。 ○道垣内部会長 真性譲渡以外で,何で両方あり得るのですか。アメリカの制度設計しかあり得ないのではないですか。 ○藤澤幹事 そうかもしれないです。 ○道垣内部会長 ごめんなさい,問い詰めてしまって。   今のは計算上の話ですので,ほかのところもありますでしょうから,どうぞ御自由に御発言いただければと思います。 ○横山委員 すみません,よく分からないところを教えていただきたいのですけれども,費用の負担について,特に①の担保目的財産の維持管理のため利用する費用というところなのですが,個別の動産などを考えた場合には,単純に,最初に道垣内先生がおっしゃったように,自分のものについては自分が負担するというのが,民法の一般的な原則のように考えていました。そうしますと,譲渡担保の場合に,目的物が譲渡担保権者のものなのだと考えますと,なぜ,設定者は利用できるから払うべきだということになるのか,このロジックがどこから出てくるのかというのを確認したいと思います。担保権であれば,一般の場合と同様,それは担保設定者のものであり,物権的な使用収益権限が残っているのだから,あなたが費用を負担するのが原則ですというのは分かる気がするのですけれども,そうでない考え方に立ったときに,一般論として,使っているから利益を受けているから,費用を負担すべきというルールがどのように説明されるのか,またそれが適合するのかについて,御確認をお願いいたします。 ○笹井幹事 (1)についての御提案を示したときに,使用収益によって利益を得ているからということを理由付けとして書いたのが余り適切でなかったのかもしれませんが,使用収益権限がある人に費用を負担させるべきなのだという一般原則があって,その一局面としてこの(1)を設けるという理解をしていたわけではございません。   先生がおっしゃるように,一般論としては,自分のものについては自分で払うというのが民法の原則であるのかもしれないと思いつつ,譲渡担保の目的とされた物が誰のものなのかということについても,見方によってはいろいろあり得るのではないか。そうすると,どちらが負担させるのかというのをどこかで決める必要がありますので,その際に,設定者留保権と呼ぶかどうかは別として,設定者に残された物権的な利益があって,そこから使用収益権が出てきているという理解に基づいて,ここでは,どちらに負担させるかといえば,設定者に使用収益権限が残っている限りは設定者に負担させた方がよいのではないかと考えて,御提案をしたということでございます。   これでお答えになっているでしょうか。 ○横山委員 ありがとうございます。そういうふうなつながりが後ろにあるのか,譲渡担保の理論構成についてどう考えるかということとの理論的なつながりがあってのお話なのか,それとも,それはともかくとして,政策的な問題として,譲渡担保の法的構成とは別個に,政策的にこうした方がいいのだと,そういうお話なのかということを確認したかったまでです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   阪口さんから手が挙がっているのですが,第1のところを議論した際に,商売を続けるから債権が発生するのだと,したがって,発生した債権は担保権者が取るということでも構わないかもしれないけれども,発生させるために必要だった費用というのにまで担保権者が優先権を及ぼすのはおかしいよねという話で,いろいろあって,第2のところの費用負担のところで調整をするということもあり得ますよね,例えば【案9.1.1.1】か何かを採っても,という話が出ていたわけですよね。その発想って,担保目的物の原材料費用というか,それを作るのに掛かった費用は出した人が取れますよねと,そういう話であり,優先部分というのはその増えた部分にしか行きませんよねという発想でして,今,横山さんと笹井さんとの間で議論があったような,使用収益ができる人が費用を出すというのとは少し発想が違うような気がします。第2のことをするのに,どちらの方向で,どのくらいの額にするのかというのを,費用にするのかパーセンテージにするのかとか,いろいろあるかもしれませんし,発想をそもそもどういう発想でとるのかというのもあるかもしれないので,いろいろ御議論いただければと思います。すみません,先ほどから司会の権利を濫用いたしまして。阪口さん,お願いいたします。 ○阪口幹事 質問が一つ,意見が一つです。まず質問としては,ここに書いてある,これこれのときに限ってとか,しているときはという,この「とき」というのは,時間を指している「時」なのかという質問です。例えば,(1)の方であれば機械のメンテ費用が多分典型例と思いますけれども,設定者が使用収益権限を有している期間に支出したメンテ費用は,ということを指す意味で「とき」と書いてあるのかということです。何でこんなことを聞くかというと,その時点では使用収益権限があったけれども,後日結局実行されてしまいましたということも当然あるわけなので,そうすると,設定者の方に使用収益権限がある中でずっとメンテしていました,その後,後日実行されました。実行された後になって,あのとき俺が出した100万円を返してと言っても,それは返してもくれないし,担保権者が優先弁済権なしにもならないという,ここの意味がそういう意味でいいのかというのが,まず質問です。   次に,意見の方ですけれども,仮に,「とき」が時間を指しているとして,使用収益権限とか,処分権限,取立権限で決めていいのでしょうかというのが私の意見です。判例にも出てくる,魚の養殖の集合物担保を考えると,部会資料にも出てきますけれども,餌の費用が問題になります。ハマチというのは出荷に1年半とか2年ぐらい掛かるらしいのですけれども,その間,稚魚を買ってきて,ひたすら餌と薬をあげているだけ,ひたすらお金をつぎ込んでいるだけです。1年半ぐらいたって,やっと出荷できる大きさになって,あとはそれを1年半で出荷するのか,2年ぐらいまで大きく育てて出荷するのか,それはその債務者,事業者の選択です。その間って別に使用収益しているわけでも何でもないのですけれども,取立権限,処分権限は,日頃は,再生債務者がずっと持っていると思います。その状況下で,最後の最後に実行されたら,今までつぎ込んだお金は何なのだとなるわけですよね。   今の例は,実務的には,もちろん別除権協定が確実に成立します。というのは,担保権者からしたら,餌をやられなかったら担保の対象の魚が死んでしまいますから,それは絶対やめてねということになる。きちんとした債権者ときちんとした債務者であれば,債務者が育てる間に支出した餌代はどうぞ債務者が優先的に取ってください,薬代も取ってください,残った部分について何対何で分けましょうというふうに必ず別除権協定が実務的には成立する。それは当たり前の結論です。これを,今の立法しようとしているものに当てはめて考えたら,使用収益権限があるとか取立権限があるとかいう時点に支出したものでも,やはり担保権者側に請求できるものがあるはずだと思います。ここの御提案の,先ほど質問した「とき」というのが,そういう時間の間に支出したものは全部,設定者なら設定者の負担ですよという意味であるとすると,少し実態に合わないのかなと思います。したがって,先ほど藤澤先生がおっしゃったアメリカ連邦倒産法の506条のCですか,あと,まだきちんと勉強していませんけれども,ドイツ倒産法170条にも似たような条文があると,聞いたこともあるので,もう少し適切な費用の請求,ここでいう請求というのは,道垣内先生の質問に対しては,僕も優先弁済権の縮減というイメージで考えていますけれども,そういうことができるのではないか,競売における共益費用のようなイメージのものを何かできるのではないかと思っています。以上,質問と意見です。 ○道垣内部会長 質問の方をお願いします。 ○笹井幹事 ここで念頭に置いておりましたのは,使用収益権限を有している期間というのでしょうか,設定者が使用収益権限を有していた期間に発生した費用については,その設定者の負担にするという趣旨です。おっしゃったように,1年半餌をあげ続けたのに,最後の最後に売られてしまって,今までの費用は何だったのかということはあり得るかもしれませんので,そこは適切な分担のルールがあれば,是非また御教示いただきたいと思っておりますが,余り複雑なルールになっても適切に実務で運用していけないというようなこともあって,今はこういった形でお示しをしているわけです。確かに先生がおっしゃるような問題点というのはあるだろうと思います。 ○道垣内部会長 差し当たって,よろしいでしょうか。 ○山本委員 今皆さんが言われたことかと思われますけれども,この問題は,私はかなり射程が広い問題だと思っていて,また,従来からも倒産法上も議論されてきた,抵当権などで議論されてきた問題なのかなと思っています。つまり,倒産財団から一定のお金が拠出されて,それによって担保目的財産の価格が上昇した結果として,担保権者が別除権等を行使して,手続開始時よりも多く回収ができたという場合に,それを全部担保権者に取らせていいのかどうかという,抽象化していえばそういう問題なのかなと思っています。様々な議論がされてきたところだと思いますが,横山さんが言われたのはそのとおりだと思うのですが,この倒産の場面では,自分のものというのが,自分のものは自分で費用を出すのは当然だということなのですけれども,ここで費用を出しているのは実際上は,倒産債務者というよりは,一般債権者が費用を負担しているという面があるわけなので,結局,一般債権者が費用を拠出して,担保権者がその分,価額が上がった分を取っていくということをどう見るのかという問題なのかなと思う,そこで,先ほど来出ているアメリカ法とかドイツ法においては一定の規律が行われているものと認識をしています。   そういう意味では,特に(1)の使用収益権限を基礎とするという考え方を採った場合には,抵当権の場合には,これは使用収益権限は債務者側に常にあるということになりますので,そうすると,今のような局面では担保権者からは取れないというか,担保権者側に負担させることはできないということになるルールなのかなと思うのですが,今まで本当にそう考えられてきたのかというと,必ずしもそうではない見解,そうではない議論もされてきたのかなと思っています。   そういう意味では,そもそも果たしてこれを今回の立法の中で規律することが適当なのかどうかということ自体も一つ,やはり問題で,抵当権その他,他の担保権に波及する実質的な効果というか,そういうことも考える必要があると思いますし,そのためには,必ずしも,やはり先ほどの阪口さんの例からも明らかなように,使用収益権限だけで切る,完全に分担を分ける,確かに笹井さんが言うように,ではどうするのだというところはあるわけですけれども,なかなかそういう,一律にそれで切れるのかというような疑問も持っているということで,解決策はないですけれども,取りあえず感想だけです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ,第2の中にもいろいろなものが含まれていて,(1)のところは価値の維持みたいなことが書いてありますが,特定動産の価値の維持ということになると,先ほどの抵当権の話にすごく近付いてくると思うのです。それに対して,第1のところで,全部を担保権者に与えてよいのかというときの調整弁として議論がされているときには,新たに生み出す債権とか,倒産手続開始後に新たに搬入される動産とか,そういうものに対しての原価分についてどうするのかというのであって,若干,抵当権の議論の話とは違うのかなという気もしますが,微妙かもしれません。 ○山本委員 部会長の言われることはよく分かって,(1)と(2)がどういうふうに区切られているのかというのは必ずしもよく分からないところはありますけれども,集合動産,集合債権に固有の規律として何らかの規律を設けるということは,私もあり得るのかなとは,そこをうまく区分けできれば,あり得るのかなとは思っていて,それは,しかし,先ほど来議論されている第1の問題でどういうような規律とするのかということと密接に関連するところで,先ほどの【案9.1.1.1】とかという方向を考えて,それに対してこういう(2)的な規律を設けたりとかということはあり得なくはないとは思っています。 ○藤澤幹事 第2の(1)が必ずしも当然の前提とはならないのではないかということについて発言させていただきます。この点に関して民法上の手掛かりになる条文もあって,抵当権についての391条が,第三取得者が必要費とか有益費を支出した後に抵当権が実行された場合に,第三取得者が最初に配当を受けることができると定めています。抵当不動産の第三取得者というのは,正に不動産を自分のものとして使用収益している存在だと思うのですけれども,実行の段階になったときには,配当金の中から費用の償還を受けることができるという制度があるので,民法も第三者的な立場の人が担保目的物の価値の維持のために費用を支出した場合には,それを保護することによって,価値の維持を促進するというような政策的な条文を用意していると捉えることもできます。そうすると,倒産の場面でも,使用収益権があるからとか,占有があるからとか,そういうことだけではなくて,誰に費用を負担させることが望ましいのか,適切なのかという観点から費用負担の問題を考える必要があるのではないかと考えます。   ただし,山本先生がおっしゃったとおり,これを今時の改正において扱うべきなのかということは別問題です。非常に射程の広い問題でもあって難しいことから,やはり倒産手続開始後に発生する財産に限って何らかのルールを入れるというような方向もあり得ると考えております。開始前に存在したものについては,依然として解釈に委ねられているとか,依然として立法が待たれるとか,そういう状態にしておくことになるのではないでしょうか。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。391条は,第三取得者で,もちろん第三取得者がたまたま債務者であるということもあり得るのですが,債務者でないことが前提になっているのですよね。そこで,第三取得者が取れますということなのですが,設定者イコール債務者であったときに,債務者が取れますというのは,今度は残り分については一般債権者として譲渡担保権者も掛かってこられますので,他の債権者とその部分は同列になりますということであって,優先弁済権の縮減という問題だろうと思います。391条とはその意味では少し構造が違う。ただ,藤澤さんがおっしゃるように,考え方としてはそういう考え方で出来上がっているとはいえるのだろうと思います。   誰からもお手が挙がっていないのですが,少しそれは困るので,どうして困るかというと,今まで第1のところで,第2で調整すればという意見がいろいろな人から出ているのに,第2については余り議論がなかったりすると,第1のところでみんな,自分の見解は第2のところで調整するのでとおっしゃっていたのは,それはどう調整するのですか,皆さん,という感じがします。そこで,本当は黙っていられると困るのですけれども。 ○本多委員 ありがとうございます,三井住友銀行の本多でございます。この第2の(2)の発生させるための費用に関してなのですけれども,先ほど来,債権に関しては【案9.1.1.1】を採った場合,それから,動産に関しては累積的な担保権設定の合意が有効で,それが倒産手続下においても尊重されますという立場を採った場合の調整の方法として,第2の(2)の,発生させるための費用を担保権者が負担しますというやり方も一法であるということを申し上げておりました。   ちなみに,この議論の冒頭で道垣内先生がおっしゃったことに関連して,例えば,被担保債権5,000万円であるとして,担保目的物からの回収金が100万円で,その担保目的物を発生させるための費用が50万円だった場合の取扱いに関しまして,例えば債権が担保目的物だった場合には,100万円を担保権者として一旦取り立てて,そのうちの50万円相当額はこの発生させるための費用であるということなのであれば,その分担保権者の優先権が縮減される,すなわち,そのまま回収に充当することができないで設定者にお返しをするのだろうなというふうな,そんな調整になるということを考えておりました。   一方で,それは,債権に関しては【案9.1.1.1】を採り,動産に関しては累積的な担保権設定の合意の有効性が認められる場合を念頭に置いているものであって,債権に関し,ボロイングベース管理型ABLの場合のように,一時点の債権のみを担保対象として管理している一方,動産に関しては集合物論の適用を前提とする担保権設定合意であった場合に,そのまま(2)の規律が妥当するということになると実務上は困ってしまうことがあるかもしれなくて,例えば,倒産手続開始後に発生した担保対象債権について,担保権実行の通知をし,取立権限が担保権者に帰属した後に支払期日が到来する場合には,この(2)の規律によりますと,発生させるための費用を担保権者が負担することになる,すなわち,取り立てた後,充当できる金額がその分,小さくなってしまうことになりそうです。たまさか担保対象債権が倒産手続開始前に発生しているのであれば,そうならないというふうな規律になるのだとすると,担保権者にとっての予測可能性に大きな影響を与えることとなり,その結果として,担保権設定手続のタイミングにおいて,将来そういう減価があるかもしれないというふうな担保評価をせざるを得なくなるかもしれなくて,ファイナンス金額もその分小さくなってしまうというふうな実務対応になってしまうのだとすると,望ましくないかもしれなくて,そういう意味で,第2の(2)の規律の適用があるファイナンスの類型が,将来発生する目的物が累積的に担保対象となることを期待する長期的なファイナンスの場合と,一時点の残高により担保を管理しているファイナンスの場合とで異なってしかるべき,という考え方もあるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。本多さんは,減価があるかもしれないとすると融資に慎重になるかもしれないとおっしゃったのですが,与信にあたり一定のリスクがあって当たり前のような気もしますが。   ほかに御意見はございませんでしょうか。何となくこういうのはとってもいいけれども,どういうふうな計算にするのかはなかなか難しいよねという話と,ここだけ規定したときにほかのところに波及して,ここだけの問題ではないのにどうするのという問題と,そんなところなのですかね。 ○井上委員 ほかに発言がないようであれば,単に本多委員の発言に重ねるだけになるかもしれませんが,発言させていただきます。私も第2の(2)というのは,実質的には債権について【案9.1.1.1】を採る場合,あるいは動産については,先ほどなかなか難しいかもしれないと申し上げましたが,累積的に担保の効力が及ぶと考えた場合の規律とすべきであって,そうではなくて一時点において発生している債権,あるいは一時点において存在している在庫を対象とするという形で倒産手続上の担保の効力を考える立場からすると,その取得のための費用を控除するというのは,考えられない見解だろうと思っていました。ですから,第2の(2)のゴシック部分の御提案というのは,ここでいっている「とき」というのが,先ほど阪口委員がおっしゃったことにも関わりますけれども,その時点という意味と考えるのではなくて,今申し上げたように,飽くまでも担保の効力が及ぶ範囲が累積的なときには適用されるけれども,スクリーンショットの場合,特定の時点に存在するものにしか及ばない場合には空振りになるように読むしかないと思っておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。お二人の指摘は極めて重要なところだと思います。全ての場合に当てはまるわけではなくて,第1のところをどう考えるかというのと密接に結び付いているということですね。   ほかに,本日のところは御意見がないといたしますと,部会資料第3,第4というところに入りたいと思います。ただ,本日は別個,参考資料を配っていただいておりますように,5時過ぎぐらいから金融庁の方にプレゼンをやっていただきたいと考えております。第4のところで議論が実は多々あろうかとも思います。そうとは限らないかもしれませんけれども,時間の関係で,まずは第3のところをやってみて,更に時間があれば第4に入っていくというふうにしたいと思います。第3につきまして,事務局の方から御説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは「第3 否認」について御説明いたします。   集合動産や集合債権を目的とする担保権について新たに規定を設けるに当たって,集合物に動産を加入させる行為や,担保権の効力が及ぶ債権を発生させる行為のうちどのようなものが否認の対象になるかが問題となります。集合動産を担保権の目的とした担保権者は新たな動産が担保権の目的の範囲に加入することを期待して担保価値を評価していることからすれば,危機時期以降に生じた新たな動産の加入が全て否認されるというのは相当ではなく,他方で,設定者が合理的な事業遂行の範囲を越えて担保権の目的を増大させた場合などには否認の対象とする必要があると考えられます。   しかし,個別動産の加入を担保の供与と捉えられるかについては疑問もあり,また,通常の営業の範囲における加入が否認の対象となるかどうかを有害性や不当性といった一般的要件に委ねることは明確性を欠くという批判もあり得ます。そこで,否認対象とすべき悪質性の高い行為を抽出する方法として,①客観的にその取引が異常なものであることを要件とすること,②問題状況が破産法第71条第1項第2号で相殺が禁止されている場合と類似していることに鑑みて,専ら担保権者に債権を回収させる目的で動産を担保権の目的の範囲に加入させたことを要件とすること,③設定者が担保権者と通謀して他の債権者を害する意図をもってしたことを要件とすることなどが考えられます。   また,以上のように,悪質性が高い行為を抽出するための要件を課す場合であっても,これに加えて,担保権の目的が危機時期の最初の時点に比べて増大していることを要件とするかは,別途検討する必要があると考えられるところです。  債権については,判例の考え方を前提とする限り,目的債権が発生した時点で担保の供与があったというのは動産の場合以上に難しいようにも思われる一方で,担保権の目的債権をどの程度発生させるかという点については,設定者の作為が介在する余地もあり,動産と同様の基準により,担保権者の把握する担保価値を増大させる悪質な行為を否認の対象とすべきではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは,この点につきまして,どなたからでも結構でございますので,御意見,御質問を頂ければと思います。 ○松下委員 ありがとうございます。松下です。この第3ですけれども,まず(3)ですが,これはやや狭きに失し,適切ではないと考えます。これは民法424条の3の1項2号の詐害行為取消請求が,いわゆる偏頗行為を対象とする場合の規律と類似しているように見受けられますが,まだ倒産手続が始まっていないという意味で,債権者平等の貫徹の必要性が低い場面のルールを,この倒産手続の中での偏頗行為否認のルールに持ってくるというのは,やや狭きに失するのではないかと思います。そういう意味で,(3)は適切ではないと考えます。   (1)と(2)をどう考えるかなのですけれども,資料の16ページの下の方にもありますが,結局(1)でいっても(2)でいっても,審理することは余り変わらないように思います。結局,普段の取引との乖離を認定して,取引の異常性なり,専らという目的を考えるなり,することになると思うので,実質は余り変わらないのかなという気がします。既にある条文の文言と同じものを使った方が解釈が明確だということであれば,(2)ということになるかもしれませんが,それはそれほど決定打ではないという気がいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大西委員 私は,(1),(2),(3)の中では(1)が一番広い概念なのかなと思っており,結論としては(1)の方がいいのかなと思います。(2)と(1)の違いですが,例えば,倉庫Aと倉庫Bがあって,倉庫Aの在庫品を集合物譲渡担保に入れたときに,その後,間違って倉庫Bに搬入すべき在庫品を誤って倉庫Aに搬入したとします。,例えば両方の在庫品が同じものだと仮定すると,Aのところに入れて当該在庫品が増えていくとした場合,これは明らかに通常の営業の範囲を越える加入だと思うのですが,これは(2),(3)では否認の対象として引っ掛からないのかなと思います。もちろんそういうケースはそれほどあるものか分からないのですが,やはり一般債権者の弁済原資で集合物譲渡担保権の対象となる在庫品を増加させてしまうというケースもあるものですから,(1)で広く否認の対象と捉えてもいいのかなと思います。また,このように考えても,通常,こういう集合動産等の担保設定の場合,通常の営業範囲を越える新たな加入というのはそもそも担保権者から期待されていないため,担保評価額に入っていないはずですので,(1)でいいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 ありがとうございます。慶應大学の片山です。債権の方についてはなかなかイメージがしづらいところがあるのですけれども,動産の倉庫への加入行為ということを検討してみますと,確かに広い意味での偏頗行為的な行為としての分析は可能なようには思われますが,行為としては,実は倉庫に入れるという事実行為のような気がしまして,そもそも否認の対象になるのかどうかというのが分からないところではあります。もちろん当初の動産譲渡担保設定契約において想定された範囲での行為については,設定段階で意思があると考えることは可能なのでしょうけれども,そうしますと,それは平時の意思ということになりますので,平成16年判決のような行為の擬制という形でないと否認の対象にのっかってこないのではないかとは思いますし,また,そもそもの設定契約で想定された範囲を越えたような動産加入行為ということになりますと,それは当初の設定意思は関係ないということですので,加入時点の意思的行為を観念するという余地はある気はするのですけれども,果たして,単なる倉庫に入れるという行為に意思的な行為を観念できるのかという懸念が生じます。民法の詐害行為取消権ですと,少なくとも事実行為は対象にならないということですので,仮に立法するということになると,否認というよりもむしろ,抵当権の付加物に関していいますと370条のただし書がありますけれども,あそこでは取消しの対象にすると書いているわけではなくて,担保権の効力が及ばないという規定になっているかと思います。ですから,私も分析し切れておりませんけれども,単に事実行為にすぎなくて,否認の対象にのっからないということになってくると,担保権の効力が及ばないというような立法の規定の仕方をしなければいけないのかなと思った次第でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。けれども,詐害行為取消しのところは,法律行為を今回,行為に変えたのですよね。そのときに,法律行為でなくてもいいということで変えたのでは。 ○片山委員 それはもちろんそうです。ただ,対抗要件具備行為のように,法律行為でなくても準法律行為に相当するような,やはり何らかの意思的な行為でなければいけないという大前提かと思いまして,単なる事実行為というのが取消しの対象になるという理解ではないかと思いますし,否認権も多分そうなのではないかとは思います。 ○道垣内部会長 否認権もずっと以前から議論があったところですが,370条ただし書についていえば,事実として付加一体物を付加するという行為も対象になっているので,これの並びでいった方が全体の構造としてはスムーズではないかというのが片山さんのおっしゃることかと思います。誠にもっともなところもあろうと思います。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。正に今存在している否認規定,例えば破産法162条にいう「担保の供与」にそのまま該当するかという点では,集合物への個別動産の加入行為はぴったりとは当てはまらないので,だからこそ今回御提案のような立法が望ましいのではないかということだと思います。立法によって否認の対象に入れることがふさわしくないかという意味では,私は立法によってこういった集合物への加入行為を否認の対象にすること自体は,許されないことではないと思っておりますので,その意味では,価値的な意味で,否認に値するものを,純粋の担保設定行為でないにしても,否認することはあってよかろうと思います。その上で,(1)(2)(3)の御提案がなされている中で,資料の17ページのところに,悪質な行為がなされた場合は,担保の目的の価額を全体として増加しているかどうかにかかわらず否認の対象とすべきであるというのが,本当にそうなのだろうかという感じを持っています。これは,もしかすると個別動産の搬入行為を個別担保動産の増加行為として否認するという考え方なのかもしれないですけれども,そういうよりは,否認対象を集合動産自体を膨張させる行為と捉えて,価値的あるいは金額的な増加相当分が否認されると,つまり,持ち込んだ物自体を捉えて否認するというよりは,全体として増加している場合を問題にするべきではないかという気がして,意図自体が幾らかけしからんところがあるとしても,担保目的の対象が減っているときにまで,個別の持込み部分だけを否認して,更に減らすところまで持って行く必要があるのかなという印象を持ちました。そう考えると,(1)(2)(3)の中でいうと(1)を問題にすればよいようにも思われたのですけれども,逆に言うと,目的が悪いと通常の営業の範囲の増減であっても問題にすることが,果たして本当に必要なのだろうかという印象を持ちました。担保権者としては,むしろ通常の営業の範囲の増減をある意味,見込んだ与信をしているときに,それを越える増加分は許さないぞということは分かるのですが,そうでないときにまで許さないということに少し違和感を持ったというところです。 ○道垣内部会長 なるほど。松下さんだったと思いますけれども,1と2で現実に裁判手続等で,あるいは管財人が主張して立証していかなければいけない事柄というのが,事実としては変わるわけではないのではないかという発言があったと記憶しているのですが,専ら担保権者に債権を回収させる目的で行われたといったかたちで目的を表に出してしまう規律にしたときには,通常の範囲なのだから,そんな目的なんかないよと一生懸命言っても,あなたはこういう目的でやったでしょうなんていうふうに言われてしまう危険性があるというのが,井上さんの今の御発言の前提にはありますか。 ○井上委員 どちらもあり得るのではないかと思います。どちらもというのは,逆に通常の営業を大きく越えるような増加がなされたけれども,目的の立証というのはなかなか難しくて否認できないということも一方であり得るように思ったので,ほとんどの場合は私も重なるのだと思うのです。ほとんどの場合,重なると思うのですが,立証が仮にできたとして,例えばメールのやり取りなり何なりが出てきて目的の立証ができたときに,通常の営業の範囲の増減なのに否認する必要があるのかというのと,逆に,通常を大きく越える増加がなされているのに,目的の立証が,事実上立証できる場合が多いかもしれませんが,立証できなかったときに,それを放置するというのと,どちらが適切かというと,客観的に捉える方がよいのではないかと。これについては,通常の営業の範囲というのが曖昧な概念だという議論は確かにあるのですが,繰り返しになりますが,目的にすると曖昧でなくなるかというと,そんなことは恐らくないので,常に立証のときに曖昧さは,立証の困難さは残る,その場合に,ずれがまれにできたときに,どちらを否認の対象にするのがいいかという観点でいうと,(1)の方がいいのではないかというのが私の認識です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阪口幹事 阪口です。幾つか申し上げることになりますけれども,まず,(3)が狭すぎるというのは間違いないと思います。次に,(1),(2)の前提ですけれども,これは担保権者の主観は問わないという前提でいいのかということの確認をしたいと思います。17ページの(注37)のとおり,設定者が担保権者に何の連絡もせずぼんぼん在庫品を放り込んでいくということが可能なので,そこはもう(1),(2)の方は担保権者の主観を問わないということでいいのかという確認を,まず,したいと思います。   その前提で,では(1),(2)どちらがいいのか,確か日弁連では場合によれば両方という意見も出ていたと思いますけれども。まず,(2)は否認すべきだと思うのです。倒産実務をやっていると,あそこの債権者にだけは返すという意図を持つ人が一定数,確実にいます。例えば,自分の親が連帯保証人になっているから,そこだけは返すとか,そんなことは世の中に一杯あることなので,それはやはり否認すべきだと思うのです。その延長線でいうと,例えば,17ページの(4)に書かれている,100万円の在庫があり,30万円分が加入し,50万円流出で残が80万円という,この例の順序を変えて,危機時期において,最初の100万円の残高が仮に50万円分流出したので,残高50万円になりました,このまま放っておいたら50万円ですというときに,あえて30万円分の在庫を入れるのは,それはやはり否認すべきと思うのです。先ほどの井上先生のご意見では,それは担保権者から見たら通常の範囲内だからいいではないかということかもしれません。それは,担保権者から見たらそうかもしれませんけれども,一般債権者から見たらそうではないと思うので,やはりそこは否認の対象とする。したがって,30万円分を増やした行為に関して否認しなければいけないので(2)は要るのだろうと思います。   他方,(1)と(2)で,(1)が本当に主観を問わないというのであれば,(1)と(2)の違いが本当に生じるのは,教室事例で現実にはないのでしょうけれども,設定者が意図もないのに勘違いをして,たくさん担保対象の倉庫に入れてしまった場合ということなのでしょう。そんな事態は多分,世の中の事象としてはほとんどないのでしょうけれども,そのときに,それを否認すべきだと考えるか。アメリカ連邦倒産法のように,二つの時点で比較してすぱっと客観的に決めるのだというような考え方を採るのかどうか,これはもう価値判断ですが,僕はどちらかというと伝統的な,主観がベースにあるような否認体系を前提に考えるので,それだけだったら(1)をしないでもいいのかなと,結論でいうと,結局(2)でいいのではないかと思う理由です。   あと,(2)で担保権者側の主観を問わないとすると,いわゆる無償否認のような類型になるので,期間制限みたいなのが要らないのかという問題と,それから,担保権者が善意の場合に現存利益の範囲内という規定が要らないかという辺りは別途検討が必要なのかなとは思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○笹井幹事 (1)と(2)の前提として,担保権者の主観を問わないのかという御確認ですが,(1),(2)に関しては担保権者の主観は問わないというつもりでございました。 ○道垣内部会長 まあ,問えという案はあり得るので,別にこの15ページに書いてあるところが問わないという前提で書いてあるからといって,主観的要件をプラスすべきであるという主張自体,幾らでもあり得るわけなのですが。   まず,否認について,集合動産又は集合債権を目的とするところの,価値を増加させたり目的物の量を増やしたりするときに,否認について特別なルールはあった方がいいということは,皆さん一致されていることなのでしょうか。現行のルールで対応できる,そこでやるべきだとは考えないということでよろしいでしょうか。次に,それでいいとしましたら,詐害行為のところにはこれを置かなくていいということでいいのでしょうか。それとも,否認に置くのだったら詐害行為についても置けということになるのでしょうか。それがあって,3番目に(1),(2),(3)どれですかということになりますが,2番目の問いについて,皆さんの御意見はいかがでしょうか。そのとき同じになるかどうかというのは,また別問題で,破産,倒産手続という債権者平等の原則といいますか,それがより強い貫徹を要求される場面におけるものと,通常の詐害行為のときとは違うというのは十分あり得るのですが,詐害行為のところは現行の条文で何とか対応できるということなのでしょうか。そういうことでよろしいですか。 ○片山委員 慶應大学の片山です。詐害行為について,現行の規定で対応はやはりできないのだと思うのですけれども,破産法に倣って民法の詐害行為取消権についても,新たな規定を設ける必要があるかどうかという点は,考えどころかとは思います。ただ,今回の債権法改正でもそうですけれども,破産法に倣えとやってきましたので,破産法で必要なものは民法も必要であるという御意見がおそらく,多数を占めるのではないかとは思っているところでございます。仮に民法に規定を設けるとしたら,先ほども述べましたように370条のただし書のような規定となるのではないでしょうか。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何か御見解が。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。私は,道垣内先生のおっしゃる3番目で(3)を採るということだとすると,2番目の詐害行為にも同じ要件を求めるということになるのかもしれないのですけれども,3番目で,先ほど私は(1)でいいのではないかと申し上げましたが,ということであれば,平場のルールとしては同じものを設ける必要はないのではないかと考えます。   次に,先ほど阪口先生がおっしゃった,(2)で在るべきだということに対する,一部反論をさせていただきたいのですけれども,確かに阪口先生がおっしゃるような事案は一方にあるかもしれないのですが,他方で,真っ当な金融機関等の担保権者がモニタリングをしていたら,信用状況が相当悪化した状況で大幅な在庫流出があったというときに,通常の営業の範囲に戻してもらうべく交渉して,それに従って設定者がその担保権者に利益を与える目的,すなわち,その集合物を増加させる,元に戻す目的で在庫を搬入した場合,通常の営業の範囲内であっても,(2)だとやはり否認されてしまいそうです。そのように,事業上の必要というよりは,むしろ直前になされた大幅な減少行為に対する担保権者からのクレームといいますか,モニタリング上問題の指摘を受けて,通常の営業の範囲に戻す行為,是正行為がなされたときも,やはり危機時期になされた以上,それは否認すべきだということに対する抵抗はやはりあって,そのときに,(2)の立場でも目的がいい目的なのだといってもらえるものなのか,でも,そこで飽くまでも自分の担保権の範囲を増やせというリクエストがなされ,通謀とまでいうかどうかは別として,設定者がやむなしということで,担保権者の利益に資するべく在庫を持ち込んだというときに,(2)の目的がないといえるのかは不安なところがあり,そういう是正行為の範囲,つまり,通常の営業の範囲の増減にとどまる範囲の行為をなお否認するべきであるというところに抵抗があるということになります。 ○道垣内部会長 阪口さんからもお手が挙がっていらっしゃるのですけれども,井上さん,通常の営業の範囲を越える,それは,場合によっては意図的な行為かもしれませんし,自然災害かもしれませんし,火事かもしれないのですが,異様に減ったときに,通常予定されている量に戻すという行為は通常の営業の範囲を越えないのですかね,当然。つまり,100あって,90になったり110になったりしていると,それが通常の営業の範囲で,20足したり20減ったりする,それは当然なのですが,それが10になってしまったと,まずいぞといって90加えて100にするという,その90加える行為は,通常の営業の範囲を越える動産又は債権の担保権の目的の範囲への加入には当たらないでしょうか。 ○井上委員 逆に言えば,そこで勝負をつければいいのではないかというのが私の意見でして,通常の営業の範囲をどう捉えるのかというのは確かに曖昧ではありますけれども,そのときの事業状況からして,在庫レベルを大体50から100ぐらいの間に維持するのが通常だと考えられる場合に,あるいは悪質なものか,あるいはそうでもないかはともかく,10まで下がってしまったという異常状態が何らかの状況で発生したときに,それを50から100の間に戻す行為というのは,そのときの事業の継続に要求される準備行為としての在庫の確保として通常だとすれば,通常の営業の範囲の回復行為ではないかと思うのですけれども,場合によっては,あるいは事業の状況によっては,今,道垣内先生がおっしゃった,急激な回復行為自体が通常でない場合もあるかも分かりません。ただ,それは飽くまでもそういう客観的な,そのときの事業に照らして通常の事業サイクルとして容認されるといいますか,それを仮にはみ出たときの是正も含めて,通常の事業サイクルと認められるかどうかで判断すればよいことで,その範囲に収まっているときに,目的を追加して要求するのか,あるいは,先ほどの阪口先生の意見はむしろ,通常の営業の範囲を問題にせずに目的だけで否認するということかもしれませんが,それでいいのかという点について,抵抗があるということです。 ○道垣内部会長 (1)オア(2)というときはその程度なのですが,私も通常の体重に戻したいと思っているのですけれども,そのためには異常な行為をしなければいけないので。阪口さん,お願いします。 ○阪口幹事 阪口です。井上先生の御意見というか御質問に対して,私の感覚では,多分それほど変わらないのだろうと思うのです。井上先生のおっしゃっている,そこでいう通常の営業の範囲というのが,元々の50,100ではなくて,その危機時期における通常の営業の範囲かどうかを見ていくとすれば,ほとんど多分変わらないのだと思うのです。危機時期に現金が100万円しかない,そのなけなしの100万円を全額つぎ込んで在庫を増やすというのは多分,通常ではないという判断になってくるので,多分変わらないのだろうと。ただ,通常の営業の範囲といってしまうと,日頃の通常の営業の範囲のような判断になってしまうのではないのかというのが元々の僕のイメージで,そうだとすれば,100万円なら100万円まで行かない限り否認されないということになってしまう,それは僕は違うのではないかと思って,申し述べました。   多分,否認すべきだと考えている事象自身はそれほど変わらないのだと思うのだけれども,その言葉として,「通常の営業の範囲」,部会資料の提案のうち,どちらかというと「通常の営業の範囲」だと表現としてまずくて,「担保権の目的の構成について通常の過程で生じる変動の範囲」の方かも分かりませんけれども,それだと,先ほど申し上げたような通常のレンジの範囲内のものが,どれだけ悪性があっても,かつ,そのときの危機時期におけるシチュエーションから考えたら通常と思えない行為でも,否認しにくくなるのではないかというのを危惧して,(2)と申し上げているということです。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございます。なかなか具体的な適用で,それほど具体的なシチュエーションで,例えば井上さんと阪口さんの間で,こういう場合にどうすべきかということについて意見の対立があるとは限らないのですが,それをどういうルールにすると一番うまくその結果をもたらすことができるかというのは,なかなか難しいところだとは思いますが,ほかに何かございますでしょうか。   大体,(3)は駄目だという話で,(1)か(2)で,それで,かつ(1),(2)の考え方についても大体いろいろな御意見は頂いたと思います。   それで,本当は第4の担保権消滅許可制度の方に移るべきなのですけれども,今日の当初から申し上げておりますように,委員等提出資料9-1から9-3までに基づいて,尾﨑幹事から御説明を頂きたいと思います。   ただ,少しその前に,今回の資料に関するものに限らず,倒産手続における取扱い全体について,この機会に補足の御発言がございましたら,お願いしたいと思いますが。   よろしゅうございますか。それでは,尾﨑さんの方から少しプレゼンテーションをお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。 ○尾﨑幹事 尾﨑です。貴重なお時間を頂きまして,ありがとうございます。   この部会の第1回目にも申し上げましたけれども,金融庁は,金融機能の発揮を通じて日本の社会・経済の持続的な成長に貢献することなどを目指して,仕事をしております。この部会でも,特に金融機関が事業者の多様な成長ニーズに対応しやすくなるよう,そのための多様な融資実務,それを形作る重要な要素である担保法制の多様な在り方を求めて発言をしてまいりました。そして,私の発言の基礎となっているのは,昨年設置されました,事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会における有識者の方々の御議論であり,この研究会の論点整理でございます。この論点整理に関しましては,この部会の第1回目にも提出させていただきました。金融庁では,この論点整理を基に1年ほど掛けて,有識者の先生方や事業者の方々,金融機関やベンチャーキャピタルの皆様方と意見交換を重ねてまいりました。そうした場で寄せられた御意見等を踏まえまして,事業成長担保権の活用利点や具体的な想定事例,制度設計上の論点等についてまとめたのがお手元にある資料でございます。先月25日には,これらの資料で研究会の第4回会合が開催されました。本日は,その研究会での議論の模様も含めて,資料について御紹介させていただきたいと思います。   まず,「事業者を支える融資・再生実務のあり方に関する研究会事務局資料」と書かれたパワーポイントの横長の資料を御覧いただけますでしょうか。こちらでは,ページをめくっていただきまして1と2という二つのパートに分かれておりますけれども,前半ではいろいろな方々から寄せられた御意見を紹介しておりまして,後半では具体的な,この事業成長担保権を使えると思われるような想定事例を御紹介しております。   まず,前半ですけれども,3ページを御覧いただけますでしょうか。事業成長担保権を活用する利点,それから,逆に留意点をまとめております。利点ですけれども,まず,事業の将来性に基づいて必要な借入れがしやすくなるということが挙げられております。これが①です。それから,②として,これはデットでの調達ということになりますので,エクイティに比べて持分の希薄化を抑えられるということ,それから,③ですけれども,経営者保証に過度に依存しない資金調達が可能になること,そして最後,④ですが,メインバンクを明確化でき,より迅速な経営改善や再生支援を受けられるようになるといった点でございます。   利点とともに留意点についても頂いております。大きく分けて二つありまして,①の方は,事業成長担保権は誰にでも使えるような,あるいは誰でも,どんな場面でも使えるという万能なものではなくて,特性をよく理解した上で活用すべきだというものでございます。その点も踏まえまして,②の方ですけれども,金融機関に対する活用件数の画一的な開示の強制といったようなことを含めて,活用を一律的に強制するようなことは不適切であるという御意見を頂いております。   これらの点,特に②につきましては,これまでの金融庁の議論とも共通の認識でして,確認の意味で,次の4ページ,5ページで昨年の第1回会合の資料を再掲しておりますので,御覧いただければと思います。   少し飛ばしまして,8ページの方を御覧いただけますでしょうか。こちらからは想定事例の御紹介になります。事業者の方々やベンチャーキャピタル,金融機関,特に地方金融機関などとの意見交換会の中で頂いた想定事例でございます。   まず,下の表を御覧いただけますでしょうか。事業成長担保権がどのような事例で活用できるかという問いに対する一部の銀行の御回答をまとめたものであります。それぞれの銀行のビジネスモデルや事業性評価のノウハウなどの違いも反映されておりまして,回答にもばらつきが見られたところであります。   次に,具体的な想定事例ですけれども,これが10ページ以降で御紹介しております。時間も限られておりますので,11ページの(1)のSaaS企業と書いてあるところについてだけ簡単に御紹介させていただきます。これは事業者さんとベンチャーキャピタルの方々から教えていただいたものでございます。御承知のように,SaaS企業は相対的にデットでの資金調達になじむビジネスモデルでありまして,海外では事業成長担保権類似の担保を設定して借入れがされているそうでございます。SaaS企業の将来性を理解するためには,過去や足元の財務状況,赤字になっているかとか,そういったようなことよりも,顧客基盤が順調に拡大しているといったようなことの方が重要になるわけですけれども,日本ではそうした将来性に基づく借入れが難しいということでありました。事業成長担保権の導入をてことして,事業の将来性を的確に考慮する新しい融資実務が形成されれば,海外のように成長資金の調達がしやすくなるのではないかという期待とともに,事例を頂いたところでございます。   このほかの事例も,主にリスクをとって将来成長していこうとするけれども,例えばIPOなどで非常に高いリターンを目指していくというわけでもないといったような事業者さんが,事業成長担保権を活用できれば,より資金を調達しやすくなるといった期待から,事業者や金融機関などから御共有いただいたものでございます。   想定事例の詳細には立ち入りませんが,3点ほど補足させていただきます。一つ目は,事業成長担保権はあくまで選択肢を増やすという位置付けでございまして,今の不動産担保で十分に融資がされている実務を否定するというものではないということであります。活用イメージをお寄せいただいた金融機関さんも,「この担保を使ってリスクをとっていこうと希望される事業者さんは,既存のお客様ということになりますと,全体のまだ数%程度ではないだろうか」といったようなお話をされていまして,むしろ,「今まで融資できなかった新規のお客さんを中心に活用を検討していきたい」といったような御感触をおもちでございました。   二つ目は,これらの想定事例のより正確な位置付けについてです。今の制度でも,日本全国を探せば,ここに挙げたような例で融資できた例というのは見つかるかもしれません。ただ,重要なのは,事業成長担保権があれば,金融機関がこうした融資に取り組むことがより合理的になって,大きな流れとして実務の幅が広がっていくということでございます。事業者支援に積極的な地銀さんからは,こうした理解を元に,事業者支援に向け,より一層やりがいを持って体制を整えられるようになる担保だといったようなお声も頂いているところでございます。   最後の点ですけれども,9ページを御覧いただけますでしょうか。少し前に戻りますけれども,事業成長担保権は新しい融資を広げていくための重要なピースの一つであると考えておりますけれども,この制度だけでは十分ではないということです。金融庁の研究会のタイトルにも表れておりますとおり,我々のゴールは事業成長担保権を作ることだけではなくて,この新たな担保権をてことして,事業者を支えられるような融資・再生実務が,新たに,追加的に,形成されていくということだと思っております。この点について,念のため確認的に補足させていただきたいと思います。   以上が資料1の御説明ですけれども,最後に,この資料の6ページ目を御覧ください。金融機関の方から寄せられた御意見でございます。簡単にまとめますと,新たな制度が導入されるとして,それを実務上どう扱うのかイメージを共有してほしいという御要望でございます。担保には,様々な機能的な説明がされていますが,金融機関にとっては,要すれば,信用リスクを下げるものです。「この担保を活用して信用リスクを下げていくためにどういったことが必要なのか」そして「それをどうやって会計上表示するのか」などといった,実務イメージを共有してほしいといったお声が寄せられました。その中で,類似の担保が活用されている海外の事例の共有を求めるお声も頂きました。また,逆の意見になりますが,既に事業者支援に積極的に取り組んでいる金融機関の職員からは「自分たちの問題だから,自分たちで考えるから大丈夫だ」といった御意見ももちろんございました。こうした御意見を踏まえまして,我々としては何か一つの答えを示すということではなく,金融機関の創意工夫を助けられるよう取り組みたいと思っております。   まずは米国の実務について調査することから始めておりますが,それが資料2でございます。資料の2の方を御覧いただけますでしょうか。「全資産担保を活用した米国の融資・再生実務に関する調査の概要」という資料でございます。   この3ページを開いていただけますでしょうか。金融機関の人事ローテーションとか,あるいは体制整備といった,この担保を活用する際の実務的な事項について調査いただく予定でございます。   4ページには,今回の調査のターゲットが示されています。米国で全資産担保を活用している企業は,本当に小さい企業の場合もあるわけですけれども,今回の調査では,そこから個人事業主のような方々を除いたセグメントについて調査いただく予定であります。   5ページ以降につきましては,調査いただくNRIさんにおいて,既に御存じの内容をまとめていただいておりますけれども,先程3ページについて申し上げたこととの関連ですと,例えば8ページの下半分にありますように,リレーションシップ・マネジャーの重要性を御指摘いただいています。今後の調査では,この点も含めて,実務について掘り下げていただく予定です。   最後に,参考資料3を御覧いただけますでしょうか。これは,昨年公表しました事業成長担保権という議論のためのたたき台について,研究会内外の様々な実務関係者,有識者から寄せられた意見等を踏まえつつ,更に拡充,充実を図ったものでございます。この場を借りて,改めてご協力をいただいた皆様には御礼を申し上げたいと思っております。   それでは,資料の方ですけれども,まず,構成についてです。3ページの目次を御覧ください。冒頭「0.」になりますけれども,ここにおきまして事業成長担保権の意義や目的を整理した上で,その次の第一部は,実際に融資が実施されて,返済されて担保権が消滅するという,多くの企業が利用するであろう場面の規律について整理しております。それから,27ページ以降の第二部は,担保権の実行などの限られた場面における規律です。事業成長担保権の場合は,実行に至らないように支援をしていくインセンティブが,現在の担保制度よりも高いわけではありますけれども,仮に策定した事業計画が当初の想定より大きく下振れ,担保権実行に至ってしまった場面の規律について,整理しております。   7ページ以降が第一部であって,ここは実際に融資が実行され,返済されて,担保権が消滅するという,多くの企業が利用するであろう場面の規律について整理しております。それから,27ページ以降の第二部におきましては,担保権の実行などの限られた場面における規律でありますし,事業成長担保権の場合は,実行に至らないように支援をしていくというインセンティブが,現在の担保制度よりも高いわけでありますけれども,仮に策定した事業計画が当初の想定より大きく下振れ,担保権実行に至ってしまった場面の規律について取り扱っております。こうした二部構成になっております。   第一部について簡単に御説明を申し上げたいと思います。まず,8ページの「1.」のところですけれども,事業成長担保権の設定と公示に関する論点を整理,拡充いたしました。また,22ページ以降の「2.」において,事業成長担保権の実行前の効力に関する論点を整理,拡充したほか,26ページ以降の「3.」において,事業成長担保権が役割を終えて消滅する際の規律について検討しております。   この「第一部」について,先日の研究会におきましては,例えば目的物の点についてご意見が寄せられました。より具体的には,昨年の論点整理では,事業の一部に担保設定ができることを議論の俎上に上げておりましたけれども,研究会では,そうしたニーズを認めつつも,事業の切り分けが難しいため,一部の事業への設定は不可とすべきではないかといったような御意見を多数いただきました。また,「不動産」や「預金債権」について,昨年の時点では,除くことを議論の俎上に上げておりましたところ,多くの方々から,こちらは「含める」という選択肢も検討すべきではないかという御意見を頂きまして,その点を整理しております。含むとした方が整理もしやすいのではないかという意見が聞かれたところであります。   次に,第二部について御説明いたします。28ページ以降の「4.」の優先順位のところですが,事業成長担保権固有の,あるいはこの実行手続固有の優先順位について検討しております。   特に,29ページの「4.2.2事業成長担保権の実行手続開始「前」に生じた債権との優先関係」については,昨年のたたき台に対して,様々な御意見や御指導を頂きまして,改めて大きく三つのパターンに整理し直しました。(a)が個別の事案ごとに優先する債権を判断し,随時弁済するべきだという考え方であります。(b)と(c)は,事前のルールを設けて,一定の債権について随時弁済するべきという考え方であります。(b)と(c)の違いは,(b)は随時弁済する債権について,民事実体法上の規定を引用しようというものであるのに対して,(c)は政策的に一定の範囲を新たに作ろうという考え方である点です。これらの中で様々なバリエーションができている,という形で整理しております。   また,37ページの「5.」以降の実行手続ですけれども,昨年のたたき台に寄せられた御意見を元に,「裁判外の実行」と「裁判上の実行」という大きく2パターンに分けて,改めて論点を整理しております。「裁判上の実行」は,ある程度コストや時間が掛かっても手続をしっかり踏みたいというニーズに対応するものとして御検討いただければと思っております。他方で,裁判所が関与することでコストや時間が掛かり,事業としての価値がほとんどなくなってしまうような場合にまで「裁判上の実行」しか選択肢がないとすると,現実的ではありませんので,そういった場合にも事業の継続に資するような選択肢として,「裁判外の実行」について,また,債権者などの保護に留意しつつ御検討いただければと思っております。   44ページ以降の「6.」から「8.」までは,「裁判上の実行」を念頭に置いた記載となっております。   それから,59ページの「10.」と62ページの「11.」については,それぞれ,債権者・株主の対抗手段と,特に株主の保護のあり方について,寄せられた御意見を整理しております。   最後,66ページの「12.」ですけれども,倒産処理手続が申し立てられた場合に,事業成長担保権がどのように扱われるか,ということについて整理したものです。冒頭の意義と目的で整理されたことを反映して,特に,担保評価の点やプライミング・リーエンについて,これまでの担保制度とは大きく異なる論点が生じております。   研究会ではこれらの点につきまして,多くの御意見が寄せられました。例えば,29ページの優先関係の3パターンですけれども,これは択一ではなくて,組み合わせた規律を検討すべきであると,つまり,労働債権や商取引債権など優先する債権の範囲について,事前にルールで定めるべきものと,実務に委ねるべきものを組み合わせるべき,といった御意見が寄せられました。また,48ページの「7.2個別財産の換価」については,異なる意見が寄せられました。事業が傷み切ってしまって,事業としての価値がなく,事業として譲渡できない場合に,個別財産の換価を認めるか否かについて,個別財産の換価については破産手続でやればいいではないかといったような御意見もある一方で,破産手続だと廉価でしか売却できなくなるといったような御意見も寄せられました。   それから,55ページの「9.」では,「裁判外の実行」の論点を整理しております。研究会では,まだ論点が十分に明確でないという御指摘も頂いております。特に,現在の譲渡担保権の私的実行と同様に,事業者から管理処分権等が移るという形にするのか,あるいは,譲渡担保権の私的実行とは異なる実行手続として,飽くまで事業者の同意を前提とした特別の手続を新たに構想するのかといった点について,更に踏み込んだ検討が必要かといった御意見を頂いております。   資料と当日の議論の模様については,以上となります。こうした研究会の議論の内容を踏まえまして,更に加筆修正をいたしまして,改めて昨年の論点整理の改訂版として公表いただき,これを次回の部会の場に改めて御提出させていただければと考えております。   最後に,第1回の繰り返しになりますが,改めて一言申し上げます。事業成長担保権を立法するとなると,実務上の運用も含めまして,乗り越えるべき点が多いことは理解しております。また,担保法制だけで全てが解決できるわけでないことも承知しております。しかし,海外の例を見ても,こうした担保法制が重要なインセンティブの一つとして機能していることは確かです。繰り返し申し上げているように,事業者の多様な成長資金ニーズに応じた多様なファイナンスを可能とすべく,10年,20年先を見据えて,是非,前向きに御検討いただければと考えております。   長くなりましたけれども,私からは以上でございます。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。   この部会は17時30分までの予定にしております。最後のまとめもありますが,一人二人,こういうことを差し当たって聞いておきたいという方がいらっしゃいましたら,御発言いただければと思います。また次回に資料が配られるということでございますし。 ○遠藤幹事 中小企業庁取引課長の遠藤でございます。尾﨑参事官におかれては,御説明ありがとうございました。中小企業庁としても,今,尾﨑参事官から御説明のあった,事業全体を包括的な担保とする新しい担保物権を創設するという方向に関して,全面的にサポートする立場であります。前にも申し上げたように,中小企業庁としても,中小企業の社長が負うリスクが高過ぎると,社長のなり手が現れず,将来の日本経済の成長や雇用確保の基盤となる,開業率の向上にも事業承継の円滑化にも支障を来しますので,「社長業」という仕事をなるべくリスクの少ないものにしていくと,そのために,社長個人に個人保証が付いたり,社長個人の財産に担保権が付いたりという状況をなるべく脱却していくということが望ましいと思っています。そういう観点から,逆に会社の事業全体に対して担保権が設定できるという方向で資金調達が広がるということに関しては,中小企業にとっても非常に望ましい,歓迎すべき方向だと思っています。   その上で1点,今,尾﨑参事官から説明があった担保権の実行の場面については,包括担保を実行するときに,多分,普通の担保権と違うのは,時間軸を考える必要があって,担保権の実行を始めてから,最終的なエグジットまでは,事業の売却になるか収益回収か,あると思いますけれども,一定の時間が掛かります。その間に,関係者としてどういう人たちが出てきて,それぞれどういう権限関係,権利関係にあって,義務があってということは,今後議論させていただきたいと思っていますので,よろしくお願いいたします。   今日のところは私から申し上げたいのは以上です。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○村上委員 連合の村上です。今ほど御提案いただきました点について,やや感想めいたことになりますが,何点か申し上げたいと思います。   御提案にありますように,事業成長担保権というものを制度化することによって,5ページにあるベンチャー企業や再生局面にある企業など,将来的な成長が見込める事業者が経営者保証等に依存せずに事業の継続や成長に必要な資金を調達するための新たな選択肢というものが生じること自体は,あるかもしれないとは思います。しかし,労働者保護の観点では何点か懸念がございます。   1点目は,事業成長担保権者による経営関与です。御提案では,事業成長担保権の実行に関して,事業成長担保権者として債務者の事業を継続させるため,経営改善や事業再生へ向けた支援を行うことが合理的とされております。こういった関与は,現在も金融機関によって行われておりまして,このことが経営にとってプラスに働くというケースも多々あるとは思いますが,一方で,この事業成長担保権というものによって,更に強い関与が行われるということもあるのではないかという懸念もございます。その関与の下で,リストラや労働条件の切下げ,人件費抑制などの施策が強行されるということが起きないのだろうかという懸念でございます。   第2に,事業成長担保権の強い効果です。この点については,先ほどの提案にもありましたけれども,事業成長担保権に労働債権が優先される範囲が極めて限定されるとすれば,労働債権の引当て財産が極めて限定されることになるのではないかという懸念でございます。   三つ目に,実行手続がとられた場合,労働契約はどうなるのかという点です。この点は,先ほどの資料50ページにおいて,その取扱いは特に検討を要するとしていただいていますが,正に働く者にとっては大きな問題であります。これは現在でも私たちにとっては大きな課題でありまして,特定承継の場合は承継から排除された場合の不利益がございますし,包括承継の場合は,不採算部門などで切り離されたようなときや,あるいは望まない労働者にとっての不利益というものもございます。私たちはこの問題だけではなく,事業譲渡や合併など,様々事業再編において労働組合などへの事前の協議,あるいは労働契約の承継,解雇の制限などのルールの法制化が必要と思っておりまして,こういった点も感想として持ったところでございます。また,労働債権を優先するか否かについては,資料では複数の考え方を示していただいておりましたけれども,労働債権について優先的な弁済が必要と考えていることだけ併せて申し上げておきます。   以上です。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   まだまだ御質問,御意見があろうかと思いますが,恐らく尾﨑さんの方に皆さんがいろいろメールをお送りになっても,尾﨑さんはお喜びになると思いますので,どうぞ御遠慮なくと,私が尾﨑さんに代わって言うのは変ですけれども,いろいろな意見とかアイデアを金融庁の方にもお知らせいただければと思いますし,この全体,担保法制との関係におきまして,何かいろいろお気付きになる点がございましたら,法務省ないしはこちらの方の事務局の方にいろいろな御意見をお寄せいただければと思います。継続的に今後,考えていくということになりますので,また先のときによろしくお願いいたします。   それでは,十分に時間が取れなくて恐縮でしたが,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   次回の議事日程等につきまして,事務当局から説明をしていただきます。よろしくお願いします。 ○笹井幹事 本日も長い時間にわたりまして御議論くださいまして,ありがとうございました。   次回は,12月7日火曜日,午後1時30分から午後5時30分まで,場所は法務省20階第1会議室でございます。   今回,第4の担保権消滅許可制度が積み残しとなりましたので,冒頭,その部分を議論していただいた後,今回,尾﨑幹事からもプレゼンテーションいただきましたが,包括的な事業全体あるいは会社全体に対する包括担保につきまして御議論いただきたいと思っております。これまでで動産債権につきまして一通り一読の議論を終えたということになりますので,少し特殊なものということで,次回,次々回を充てたいと思っておりまして,その第1弾として,この包括的な担保を取り上げたいと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは,法制審議会担保法制部会の第9回会議を閉会にさせていただきます。   本日は熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございました。では,また次回,よろしくお願いいたします。 -了-