法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  令和3年10月15日(金)自 午後1時00分                      至 午後5時17分 第2 場 所  法務省7階 共用会議室6・7 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは,所定の時間となりましたので,これより法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第18回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   本日は衣斐幹事が御欠席ということであります。   それでは,本日の審議に入ります前に,本日の配布資料について事務当局から説明をお願いいたします。 ○西関係官 本日は部会資料25「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案のたたき台2」と,部会資料26「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案の取りまとめに向けた検討2」を配布させていただいております。それぞれの資料の内容につきましては,後ほどの御審議の際に事務当局の方から説明させていただきます。本日の部会におきましても,二つの資料を項目ごとに適宜行き来をしながら御審議をお願いしたいと考えておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは早速ですが,本日の審議に入りたいと思います。   まず,一つ目の論点として,部会資料25の1ページ,「第1 口頭弁論等」の部分でありますけれども,この論点は「1 口頭弁論等の期日」と2ページ「2 準備書面等の提出期間」に分かれておりますが,これは一括して取り上げたいと思います。まず,事務当局から資料の説明をお願いします。 ○大庭関係官 御説明いたします。   本文第1の「1 口頭弁論等の期日」につきまして,(1)の映像と音声の送受信による通話の方法,ウェブ会議等ですが,この口頭弁論の記載は中間試案及び従前の部会資料と内容としては同様でございます。(2)期日の指定及び変更については,部会資料22の(注)で,変更を裁判長の権限とすることについて御提案をしたところですが,部会で議論いただいた状況を踏まえ,今回,本文で記載をすることとしたものでございます。   なお,従前御議論いただいておりました事項で,本文に記載していないものとしてですが,まず,説明の部分の2に記載しておりますが,無断での写真撮影等の禁止についてという点がございます。これにつきましては,特にウェブ会議等により手続を行う期日等において,法廷外の場所にいる者が送受信した手続の映像や音声の録音・録画等を許可なく行うといったような状況を念頭に置いて,規律を設けるべきという御意見も頂いてはいたところでございますが,現行法,すなわち裁判所法及び法廷等の秩序維持に関する法律における制裁の規定の及ばない行為について,制裁を伴う禁止規定を新たに設けるだけの必要性及び相当性を肯定することは,これまで議論いただいておりましたところを踏まえても,なお慎重な検討を要するという観点から,今回の要綱案のたたき台では本文に記載をしないこととしたものでございます。また,説明の3の記載ですが,口頭弁論の公開に関する規律につきましては,新たな規律を置かないということで御議論を頂いていたところと思いますので,本文には記載しておりません。   続きまして,2ページの下の方ですが,「2 準備書面等の提出期間」についてでございます。この点に関しては従前,裁判所書記官による提出の促し,それから,提出が遅延した場合の理由説明義務,また,裁判所による提出命令,それから,提出が遅延した攻撃防御方法の却下に関する規律を設けることを含め御議論いただいていたところですが,部会で議論いただいていた状況を踏まえ,それらのうち提出が遅延した場合の理由説明義務について本文に記載をしたものでございます。提出の促しについては,その効果等からすると,規律を設けるとしても規則事項とすることになるのではないかというところから,本文には記載をしておりません。また,提出命令及び攻撃防御方法の却下については,部会において反対の御意見も多く頂いていたところを踏まえ,今回,本文に記載しないこととしたものでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御説明の部分につきまして,どの点からでも結構ですので,御質問,御意見を頂ければと思います。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。御説明ありがとうございました。今,御説明の中にあった,第1の説明の2の点について質問させていただきます。   無断での写真撮影の禁止について,これまで制裁等の話も含めながら議論してきたわけですけれども,本文に入れない理由をもう一度詳しく教えていただけますか。本日のところまだこれから議論を続けるということでしょうか,それとも,現在ある法律で大丈夫ということでしょうか,それとも,まとめ切れないので本文から外すということでしょうか。お願いいたします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 脇村でございます。この部会資料の立て付けとしましては,結論において,この部会において要綱の形で取りまとめるのは難しいということではないかということで,書かせていただいております。その意味では,この部会としての議論としては,これ以上難しいのではないかという意味で書かせていただいておりますが,その趣旨につきましては,先ほどお話しさせていただいたとおり,現行法における解釈,運用等において,適切に問題のあるケースについて対応できるものがあるのではないか,逆に,それを越えるものについて,現時点で直ちに規制を,特に民事訴訟に限って置くようなことは,なかなか難しい面があるのではないかというところで書かせていただいているところでございます。恐らく今後の議論として,こういったITの進展に伴って今後の運用の見直し等々を議論される際に,また改めて議論することはあろうかと思っておりますが,差し当たりは現行法の裁判所の秩序維持法あるいは実体法上のそういうプライバシー侵害等の規律によって対応することで,現時点としてはそれ以上は難しいのではないかということを書かせていただいたつもりでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。そうしますと,懸念の大きかった,ネット上に流布してプライバシーの侵害等,またそのことによって大きな問題になるということに対して,現行法で対応できるということで理解してよろしいでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。少なくともこのプライバシー等の侵害がされたケースについて,民法上は差止めあるいは損害賠償請求ができるということは現行法もそうだと思っておりますので,差し当たりといいますか,そういったことで対応が一つ考えられるということを前提に考えているところでございます。何か今回,規定を置かなかったからといって,全てが野放図といいますか,ほったらかしなわけではないということを理解した上で,現時点で更にそれを越えて何かするのは,更に検討が必要ではないかと考えているところでございます。 ○藤野委員 ありがとうございます。制裁についてはどうでしょうか。制裁を置くことでそれを抑えるという案があったかと思うのですけれども,現行法で何らかの制裁が科せられるのでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。そういう意味では,先ほど言いましたとおり,プライバシー侵害等が起きた場合には,それを制裁というのか,被害回復というのか,あれかもしれませんけれども,実体法上の請求権がプライバシー侵害されたからできるということによって,それ自身が制裁なのかもしれませんが,できるのだろうと思っています。それを越えて,裁判所独自がそれと別に何かできるのかという点については,様々な議論があるのではないかと考えているところでございまして,そういった意味では,現時点で完全に否定するかと言われますと,今後の検討ではないかと思っていますが,差し当たりはそういった方法で対応することが考えられるのではないかということで,ゴシックから落としたというところでございます。 ○藤野委員 状況と内容は理解いたしました。ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 藤野委員が発言された点に関連する点を含め,2点コメントします。   先ほど事務当局から民事的解決や,さらには制裁の話がありました。今回の部会資料でも,説明の部分の3の上部では,現在の法制度との整合性の観点等からすると,と理由も触れられています。しかしながら,挙げられている現在の法制度は,裁判所法71条,73条で規定されている刑罰は1年以下の懲役若しくは禁錮,1,000円以下の罰金となっています。また,法廷等の秩序維持に関する法律2条での制裁は20日以下の監置又は3万円以下の過料ということになっています。現状,民事訴訟法での過料は最大20万円以下になっていると思いますが,現在の法制度の想定する制裁で実効性が確保できるのか,無断での写真等の禁止に対応できるのかは疑問に思います。所管等も含めていろいろ議論があるとは思いますが,今後議論するに際しては,より実効性のある制裁まで想定して議論する必要があると思いますので,一言コメントしておきます。   次に,準備書面の提出期限について,従前からいろいろ議論いただきました趣旨は十分理解した上での発言になりますが,現在の実務では,3ページ1行目の裁定期間の定め方については,代理人の意見を聴いて,端的に言えば,提出はいつまでにできますかと意見を聴いた上で定める運用がされています。今回,それを過ぎるとオートマチックに説明義務が課されることになるわけですが,そうなりますと,代理人はむしろ,より確実な提出期間の確保を要望する形になって,更に書面の提出が先になることになりかねません。準備書面等の提出期間の設定が迅速裁判,早期提出による充実した審理を想定されていると思いますが,後者はともかく,説明義務を課されるがために,それを回避しようとして,より長期の提出期間を求められて,裁判が遅くなるということが現場で起こるのではないかと危惧されます。そういう意味で,本当にオートマチックに徒過した途端に毎回説明させる規定ぶりが良いのかについて,もう一度検討していただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私からは,2の「無断での写真撮影等の禁止について」の部分に関して意見を述べたいと思います。   従前の部会での検討においては,特に無断で録画された映像がインターネット配信されることを念頭に,プライバシーや営業秘密の漏えいや訴訟手続の充実した円滑な進行の妨げになるおそれを指摘させていただきました。このうちプライバシーや営業秘密は,事案によっては気にする必要はないこともあるかと思いますけれども,特に非公開の手続におけるやり取りがインターネットで流出すると,例えばですが,担当裁判官が多数の匿名のインターネットユーザーに揶揄されるなどして裁判の威信が損なわれることが懸念されますし,それを慮って訴訟手続の進行に悪影響が生じることも懸念いたします。実際にそのような事態になるかどうかは分からないのですけれども,現在のインターネット上の動画サイトなどで公開されている動画を見ますと,決して杞憂とはいえないのではないかと思っています。   部会資料の2ページでは,この無断での写真撮影等の禁止について制裁を科すような特段の規律を設けることにつき,現在の法制度との整合性の観点等を理由として,本文に記載していないと説明されております。もしも法益保護の必要性が認められるのに,既存の法制度との整合性が理由で保護できないというのであれば,本末転倒であるように思います。しかし,ここで指摘されてきた無断での写真撮影等の問題というのは,民事訴訟だけの問題ではなくて,ほかの訴訟類型でも問題になり得るものであって,民事訴訟法ではなく裁判所法や法廷等の秩序維持に関する法律のように,より通用性のある法規での対応を考えるべきようにも思われました。そのような観点からは,この問題については対処不要として整理されたというわけではなくて,将来の課題として残っているものであると理解しておりますし,私は法務省には引き続き問題意識を持ち続けていただきたいと思っておりますことを意見として申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。私も同じ論点につきまして意見を申し上げたいと思います。   既に藤野委員ですとか弁護士委員の方からも御指摘がありましたように,無断での写真撮影,そして,それを流布する行為というのは,この訴訟のIT化において現実に差し迫った大きなリスクではないかと思っております。民事訴訟法の中の規定として何らかの規定を置くということは,恐らく適切ではないと思われますけれども,事務当局の資料にも明記していただいているように,現行法の規律が及ばない行為であるということも確かだと思います。現行法では,そもそもIT化といったことについて十分に検討された規定にはなっていないわけですので,IT化を現実のものとして捉えたときには,やはり不当な行為について,現行法の規律が及ばない部分についても制裁などを科す新たなルールを創設することが必要ではないかと思っております。   特に,法廷等の秩序維持に関する法律につきましては,法律の目的として,民主社会における法の権威を確保するということが述べられております。裁判を受ける方にとって,法の権威に対する信頼を確保するということは非常に重要でありまして,裁判をして,便利だからといってIT,ウェブなどを使って,それを利用したときに,その情報が不当に流布されたり,プライバシー侵害なども,金銭的に救済の余地はあるとして,それによって完全に被害が回復されるものでもないことを考えますと,それによってIT化されたウェブの裁判を活用しないという方が出てきては困るものだと思っております。裁判の威信の保持ということもこの法律の目的となっておりますので,IT化を踏まえて,この法律であるとか,それから裁判所法といったものも見直すべきところは見直し,安心して訴訟を提起することができ,また,その場に立つことができるような環境を整備することが必要だと思います。   取りあえず,現在の事務当局の整理として,民事訴訟法の改正という観点からの整理としては,この書かれたとおりだとは思いますけれども,引き続き御検討をお願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○湯淺委員 私もこの点に関しましては,既にほかの委員の皆様が御指摘になっている点と全く同意見でございます。特に,事務当局からはプライバシー侵害には民事上の救済があるという御説明がございましたけれども,私はインターネット上のプライバシー侵害の事案に鑑みますと,事務当局の御説明には納得いたしかねます。   実際問題としまして,まず,プライバシー侵害を引き起こすような情報を発信した者は誰かということについて,いわゆるプロバイダ責任制限法の規定はございますけれども,実際には,まずこの点で発信者情報の開示を求める訴訟を起こさなければならないのが通例である。そこから発信者をやっと特定できて,今度はもう一回,別の民事訴訟でプライバシー侵害の訴訟を起こすという二重の訴訟が必要だということから,今般プロバイダ責任制限法の改正に至ったわけでございまして,これは大谷委員の方が御専門の領域かと思います。しかし,今後改正法ができたとしましても,やはり法的根拠がない場合には,依然としてISPは慎重な立場をとるのではないかということも考えますと,やはり民事訴訟法本体に何がしかの規定を明確に置くことの方が抑止効果としては大きいのではないかと考えている次第でございます。   また,ほかの法制度との整合性という御指摘が事務局からございましたけれども,近年,情報の秘匿性を守るための法整備はいろいろな方向で進んでいるわけでございまして,例えば不正競争防止法における限定提供データの規定でありますとか,参考とすべき規定はほかの法律領域にもあるようにも思います。そういうことも踏まえまして,事務当局にはもう一段,御検討をお願いしたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   事務当局から,今までの点で。 ○脇村幹事 脇村でございます。本日,お話しいただきまして,当局としては民事訴訟法の改正というのはやはり難しい面があるというのは,先ほど述べさせていただいたとおりでございます。ただ,その趣旨として,この部会として,これで完璧なのだというメッセージではないということも私たちは,それは逆に自覚しているものでございます。そういった意味では,先ほどお話がありましたとおり,まずはこの規則事項等で,説明資料に書かせていただいていますが,禁止事項を明確にしていくというのは,今後の営みとして考えさせていただいた上で,これに反した者についてのプライバシー侵害ということで,恐らく,単なるプライバシー侵害の実体法上の問題だけではない問題がそれで対応できるのではないかとは考えているところでございます。   ただ一方で,制裁独自につきまして民訴法のみで対応するのは,やはり他の行為との関係について整合性はどうなのだ,あるいは,先ほど阿多委員がおっしゃったとおり,そもそも制裁として今の既存のものについて見直す必要があるのではないかという御指摘も頂いたところでございますので,当局としましては,この部会としてなかなかそこについてまで踏み込むのは難しいというのは思っているところでございますが,まずは先ほど言った点で対応することをきちんと説明をし,周知をしていくことをしつつ,今後,他の法制度の手続に関する見直し等を踏まえた際には,そういったことについてこの部会として否定したものではないのだと,飽くまでそういった点も踏まえて今後の課題として残ったということを,きちんと誤解がないように説明していくことが必要かと思っております。   そういった意味では,今回の改正の中で,完全ではないにしても一定の規則,あるいは実体法上,さらには裁判所の解釈について,我々としてはきちんと説明しつつ,今後の課題について,そういったものがあるということは引き続き,法務省として考えるべき問題であるということが部会の御意見であるということを,きちんと残していくことが重要かなと思っているところでございます。 ○大坪幹事 準備書面等の提出期間のところについてです。阿多委員から先ほど,このような無条件の提出義務だと,代理人の方でかえって確実な提出期間を求めて,訴訟が遅延するというような懸念があるのではないかという御意見がありました。この点なのですけれども,このような説明義務を設けるだけでは,代理人の方で確実な提出期間を求めて今より訴訟が遅延するというようなことは余り考えられないのではないかと思います。それより,相手方の代理人としては,裁判所もそうかもしれませんけれども,ある程度この期間を前提として期日の準備の予定等も立てることになりますので,規定の仕方と実際の運用については多少今後,議論の必要もあるかと思うのですけれども,遅れるのであれば事前にいつになるかとかいうことを一言言っていただくと,準備の都合,いいのではないかと思っております。その程度のことであれば提出する側にもそれほど負担にならないと思いますし,相手方の立場からは,予定された期日に提出されていないという場合に,裁判所に問合せをしたり相手方に問合せをするというのは,知らない相手に対してはなかなか勇気が必要だったり,時間もなかったりすることもあってできないこともありますので,そういうことを考えると,本文の提案のような形で無条件の説明義務という形にしていただいた方がよろしいのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 弁護士委員・幹事の中で意見を回しているようで,申し訳ありません。大坪幹事の指摘は十分理解をしております。ただ,弁護士以外の委員・幹事に現在の実情を認識していただきたいという趣旨と,準備書面の提出期限が守られない理由は,出せるけれども出さないのか,それとも,出せないから出さないのかという本来的な問題であって,むしろ,準備書面を早期に提出できる状況,例えば,証拠の収集等も含めて,裁判所と一緒になって裁判を充実させるのか,迅速化させるのかを検討していくことが重要だと思います。制裁を入れれば改善されるのだという発想ではなくて,いろいろ協議して,早期提出,充実に弁護士は努めていくべきではないか,そういう観点から意見を述べた次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,第1の点は以上とさせていただきまして,引き続きまして,同じく部会資料25,3ページの「第2 上訴,再審,手形・小切手訴訟」の部分でありますが,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 関係官の波多野でございます。御説明いたします。   記載の主な内容につきましては,中間試案から変更していないところでございますが,電磁的記録につきまして,書証に準ずる証拠調べの規律を明文化するということを前回御提案しているところでございます。その関係で,民事訴訟法第338条1項6号の再審事由及び手形訴訟における電磁的記録の取扱いについても明文化することが考えられますので,その旨を本文の方で御提示しているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点につきまして御質問,御意見があれば,御自由にお出しいただければと思います。 ○日下部委員 一つ質問をさせていただきたいと思います。これまでの部会では,電磁的記録の証拠調べについて審議してきたわけですけれども,第15回会議で利用されました部会資料20においては,「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの」について,書証に準じて証拠調べをすることが提案されており,その提案は支持されていたように思います。今回の部会資料の4ページの3の説明部分を読みますと,手形訴訟では書証と同様に電磁的記録についての証拠調べもすることができるとされておりますが,ここでいう電磁的記録とは,書証に準じて証拠調べをすることが想定されている,「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの」という理解でよいでしょうか,というお尋ねでございます。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。御指摘いただきましたとおり,中身については同じことを考えているところでございます。次々回以降,全体についてパッケージで書かせていただいたときに,平仄についてはまたお諮りさせていただきたいと考えております。 ○日下部委員 ありがとうございます。そうしますと,その前提で一つ意見を申し上げたいと思います。   「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの」の内容につきましては,文書の電子版だけではなく,いわゆる準文書の電子版も含むということを第15回会議のときに確認させていただきました。他方,今回の部会資料の4ページの3の「なお」で始まる段落では,現行法352条1項の書証には準文書の取調べは含まないものとされていることが紹介されていると思います。その趣旨に従いますと,今回の部会資料において手形訴訟で取調べの対象となるとされる,「電磁的記録であって情報を表すために作成されるもの」は,準文書の電子版を含まないものとなるべきように思われました。その旨を文言上明らかにすることが望ましいように思いますし,法制的にそれが難しいということであれば,そのように解釈されるべきことを後に刊行されるであろう一問一答などで示すことを御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 ありがとうございます。表現ぶりにつきましては,中身については日下部委員のおっしゃっているとおりだと思っておりますので,もう少し文言にできるかどうかは,私たちも探究といいますか,頑張ってみたいと思います。他方で,頑張ってみてもなかなか難しい面があるかもしれませんが,そういった場合に,この部会での議論を適切に反映すべく,説明等については留意していきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。第2の部分,よろしいでしょうか。   次に,今度は部会資料26の方に移りまして,部会資料26の1ページ,「第1 インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合」,この部分について御審議を頂きたいと思います。まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 波多野でございます。   インターネットを用いた申立て等がされることによりまして,民事訴訟における社会全体のコストの削減を図ることができるということからいたしますと,全ての申立てがインターネットを用いてされることが望ましいといえますし,これまでのこの部会におきましても,将来的に全ての申立てがインターネットを用いてされるということを目指すべきであるとの御意見をお出しいただいているところと承知しております。   インターネットを用いた申立て等が利用されるようにする方策の一つといたしまして,これまでの部会におきましては,弁護士等の専門家や国,地方公共団体の指定代理人についてはインターネットを用いた申立てに限定するという考え方の御意見も頂いているところでございまして,これらの者につきましては効率的,円滑な訴訟活動への協力を求めることが許容されると考えられますので,この点を本文1で御提案しているというところでございます。もっとも,これらの方についても,裁判所のシステムが故障した場合など,インターネットを用いた申立て等をすることができない場合について,書面での申立て等をすることができるというような例外を設けるかにつきましては,別途検討することを予定しているところでございます。   また,弁護士等の専門家ないしは先ほどの指定代理人以外の方についてもインターネットを用いた申立て等がされるようにすることが望ましいということは,先ほど御説明したところでございますが,これらの方につきましても,インターネットを利用することができるような方についてはインターネットを用いて申立て等をしていただくようにするとの規定を設けることが考えられるところでございまして,その旨を(注)に記載しているところでございます。   本文の2につきましては,これまでインターネットを用いた申立て等に限定する場合について,システムを利用した送達方法を用いることを併せて御議論いただいていたところでございまして,この点を規律として明確にしたものでございます。本文2(2)は,本文2(1)の規律を設けることによる効果を記載したものでございまして,ただ,実際上,弁護士等の専門家の方は訴状や答弁書と一緒に委任状提出の際にシステムの送達を受けますと,そういう届出をすることになると思われますので,基本的には原則どおり,その届け出た通知アドレスに通知がされることになるものと思われます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   この論点,早い段階から甲,乙,丙という3案を並行する形で御議論を頂いてきたところでありますが,今般,事務当局の方から,いわゆる乙案をベースにした形での提案があったということになろうかと思いますので,御質問,御意見等があろうかと思いますけれども,どなたからでも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。御説明ありがとうございました。ただいまの御説明の中で,将来的に全ての当事者がインターネットを用いた申立て等によることを目指すべきということについてはおおむね異論がなく,ということがございましたが,そういう社会になるであろうことは予想されますが,少なくとも私は目指すべきであるとは思っておりません。このことは御承知置きください。   その上で,質問させていただきます。第1の1(4)の記載でございます。4ページのオの説明にもありますけれども,代理人がいる当事者本人が電子提出をすることを義務付けるということについて,代理人がいる場合はおおむね問題がないであろうということが書かれていますけれども,本人が何らかの主張をするときに電子提出が義務付けられるということは,レアなケースかもしれませんけれども,難しい場合もあると思います。自分ができないために代理人を立てている場合もあると思われますけれども,例えば代理人の解任届などを出すときにはどうなるのでしょうか。そういう例外規定も入れるべきではないかと考えております。実際のところ,例外規定は(4)だけでなく(1),(2),(3)も含めて入れていただいた方がよろしいのではないかと考えております。   取りあえず,その1点,申し上げます。 ○山本(和)部会長 それでは,質問に係る部分もあったように思いますので,事務当局からお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。先ほど,解任のケースについてどうかということだと思うのですけれども,恐らく解任したケースにつきましては,部会資料に書かせていただいておりますが,この解任されたケースについて義務化は外すということを当然考えています。藤野委員がおっしゃっているのは解任された前の解任届を出すときでございますので,解任したといえるのかということでございますが,恐らく解釈論としましては,それはもう解任を実体法上されていて,あとは通知するという手続でございますので,そういったケースについてまで必ず電子化ということまで想定しているかといいますと,この書きぶりでも想定していないということはいえるのではないかとは思っているところでございます。その上で,全体的に例外を置くことにつきましては,今回の趣旨からいって,そこまで置くのは難しいのではないかということを部会資料に書かせていただいておりますが,一方で,システム障害等が起こったケースについての例外については別途検討することとしておりますので,基本的にそういったことでケースとしては対応できるのではないかと考えているところでございます。 ○藤野委員 本文中に,例外もあり得るというようなことの記載はしないということでしょうか。 ○脇村幹事 先ほど言いましたとおり,何をもって例外とするのかについて御議論があると思いますが,少なくともシステム障害等について置くべきではないかという意見が,少なくとも前回もあったと思います。今回は,前回取り上げていたので,そこの部分は本文に書いていないわけでございますけれども,そういったことは今後は一体にするときには併せて書くことになるのかなと思います。恐らくそこについて,システム障害以外についていえないかどうかという議論はまたあるのだと思いますが,今の当局の案として,いわゆる例外規定が全くないのかと言われますと,そこは従前の議論からすると,置くことも,少なくともシステム障害については,あるのかなと考えているところでございます。 ○藤野委員 取りあえず,おっしゃっていることは理解いたしました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 藤野委員が指摘された(4)ですが,私は例外にとどまるのではなく,むしろ(4)を削除すべきという意見です。理由は,(1)から(3)は専門職,一定の有資格者にしなければならないという,義務という言葉を使っていいのか分かりませんが,義務を課すわけですが,有資格者に委任する本人は自らではできないから有資格者に委任をする場面も相当あるはずで,(4)を設ける必要があるの疑問があります。   説明の4ページのオの6行目で,特段の不都合を生じないと考えられると書かれていますが,自分たちでは電子化に対応できない,有資格者に任せたいと思って委任している本人に義務を負わせるべきではないと考えます。   少し違う論点,質問になりますが,2の隅付き括弧の(2)の記載の趣旨を確認させてください。送達について,通知を発することを要しない旨の記載があるのですが,従前から最高裁等からの説明では,送達の対象については,まず領域1に電子記録を保存し,それを領域2に移し,その後に送達の相手方に通知をして,閲覧すればそれで送達が完了する。つまり,まず電子記録化されていることを前提に通知を出すという取扱いになっていたかと理解をしているのですが,ここでの書きぶりは,電子記録化すれば足り,そのものに対し通知を発することなく送達の扱いにしているのですが,そもそも領域2の方に記録はもう済んでいるので「記録すれば足り」意味が理解できないのですが。私が誤解しているかもしれませんので,説明いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,質問の部分,事務当局から。 ○脇村幹事 ありがとうございます。私の理解しているところで,少しシステムの関係はあるかもしれませんけれども,2(2)の趣旨につきましては,全体的な話かもしれませんけれども,送達行為というのは送達するという処分を一定程度しないといけない前提で考えています。ですから,名宛人を指定するような送達記録的なものを作ることを前提に考えているところでございまして,この(2)が発動する場合でも,そういったことなく単に記録をしただけで,名宛人も決めずに,そういったことで送達効果を発生することは想定されていないということを考えていまして,記録をサーバに入れた上で,その後に,送達しますというか,送達記録というのを作った上で初めて送達ということが観念できるのではないかと考えていたところでございます。そういったことから,記録をすることと送達ということの処分というか,行為というか,あれかもしれませんが,には多少違いがあるのかと考えておりました。 ○阿多委員    訴状が送達される場合を考えると,委任状と送達を受ける旨の届出との二つが考えられますが,委任状自体は現時点では規則に基づいて書面で提出するという形になっています。今後も委任状自体は書面での提出前提になるかと思いますが,送達を受ける旨の届出自体は委任状と一緒に届出を提出することになるのか,それとも,委任状とは別個に提出することが必要なのか,どうなりますか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく,その点につきましては今後,委員がおっしゃったような問題点を踏まえながら,ずれが生じないような形で何か考えていただくのだろうと思います。規則において,そういった一体的処理を前提に,委任状で,委任状と併せて,あるいは委任状の中に,いろいろやり方はあると思いますけれども,書面として出すのか,あるいは全体として電子でやるのかについては,恐らく,この規律自体の提案が今回,具体的にされたところでございますので,最高裁規則委任事項だと思いますが,併せて適宜,ずれがないような形で規則が定められるのではないかというふうに,そういったところかなと思います。 ○阿多委員 その前提で,今後の委任状の取扱い,さらにはこの送達を受ける旨の届出の取扱いの議論になりますが,あえて(2)のような規定を設けなくても,実務の運用で対応できると思いますので,隅括弧は必要がないと考えます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私からは,今まで議論されたテーマについて,二つの意見を申し上げたいと思います。   一つは,インターネットを用いて申立て等をしなければならない者の範囲についてです。先ほど阿多委員がおっしゃられたこととほぼ同じになるかと思うのですけれども,やはり気になりましたのは1の(4)の部分です。ここでは,代理人への委任などをしている本人が,インターネットを用いて申立て等をしなければならない者に挙げられているところです。部会資料の4ページを拝見しますと,その理由として,委任等をしている本人は代理人を通じて訴訟活動するから,特段の不都合を生じないとされています。しかし,ここでは委任等をしている者が自ら申立て等をする場合の方法が規律されていますので,この理由説明は理解ができないように思いました。具体的にも,委任等をしている本人が代理人を通じずに申立て等をしようとするのは,代理人との信頼関係が揺らいでいるなど,代理人によらずに自ら申立て等をする必要があると考える局面だと思いますので,その場合の本人に不都合が生じるかどうかを考えることが必要であって,そうした者を当然にインターネットを用いて申立て等をしなければならない者とすることは不適切だと思います。したがいまして,私もここでの(4)は削除すべきだと考えます。   先ほど来,そうした状況については,例えば代理人を解任するなどして委任関係を終了させればいいのではないかという立場からの意見交換もあったかと思います。もちろんそれも本人の選択肢に入ることは当然だと思いますけれども,本人としては代理人を解任するまでの判断には至っていないものの,差し当たり特定の申立て等については自らしたいと考えることがあるのも人の世の機微ではないかと思いました。インターネットを用いた申立て等が実際上できない本人に対して,自ら申立て等をしたければ,まずは代理人を解任せよと求めるだけの立法事実はないように思います。以上が1点目です。   2点目ですけれども,こちらは先ほど阿多委員の方から言及がありました2の隅括弧付きの(2)についてです。ここではインターネットを用いて申立て等をしなければならない者がシステム送達を受ける旨の届出をしない事態に備えて,通知アドレスへの通知なしでシステムを利用した送達を可能とすることが示されているかと思います。しかし,部会資料5ページの4の「もっとも」という段落にも記載されておりますけれども,実際上そのような事態になることは考え難いと思いますし,このような規律を設けることは,通知がシステム送達の要素であることを前提としますと,システム送達とは異なる別の送達方法を定めることを意味するのではないか,それによって余り生産性のない解釈上の問題を生じさせるのではないかということも気にしています。   元々このような規律を事務当局が考えるに至ったのは,恐らくはインターネットを用いてする申立てをするという立場と,送達を受けるという立場を分離して規律しているからではないかと思います。以前検討していたときには,インターネットを用いてする申立てをするイコール,システム送達を受けるという立場として設定し,そのような立場になった者を,例えばデジタル当事者なり何なりと定義付けて規律するということですっきりするのではないかと思っておりましたが,今のところそこを区別して規律しているので,この隅括弧付き(2)のような提案が出てくるのだと思います。ただ,先ほど申し上げました理由で,こうした規律は不要と思いますし,仮に何らかの規律を設けるとしても,例えば,システム送達を受ける旨の届出をしていない者はインターネットを用いて申立て等をすることができない,といった規律で処理するというのもスマートでいいのかなと漠然と思ったという次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○清水委員 今回,委任による訴訟代理人については,インターネットを用いた申立てによらなければならない場合の例外は置かないという旨の提案を頂いております。通信障害等を理由とする例外については別途検討する予定であると御説明を頂いておりますが,前回部会資料24の第1の2において協議された際の通信障害に関する例外が認められる範囲が,後に原因についての証明が必要ではないかとか,極めて限定的なものではないかと懸念しております。委任による訴訟代理人が通常は通信機器や通信環境を用いて対応しているといいましても,それは正に通常の状態の場合でして,これらを使えるということと,何か問題が生じたときに対応ができるということは別のことだと考えています。   何らかの事情によってインターネット申立てができない場合を懸念している弁護士は非常に多くて,そのような場合にその弁護士がどうすればよいのか,その時点において判断して対応できる方法が残されていること,それはすなわち書面による申立てが認められることが必要だと考えております。どんな極限状態だと言われますと,なかなか想定は難しいのかもしれませんが,そういった極限状態になったときに,委任による訴訟代理人がいざというときの備えをもって安心して業務を行える環境が整備される必要があると考えております。現段階でその不安が何かと言われますと,通信障害以外にはなかなか思い付かないということなので,この点は通信障害等による例外の検討を行う際に改めて御検討いただくことになろうかと思いますが,その例外が狭すぎたり,立証の必要があるというような厳格な取扱いがされるのであれば,不安が払拭できないと考えております。後にインターネットを用いた申立てにより補正する前提であれば,わざわざ書面にて申立てをする弁護士がいるとは思えず,弁護士が書面にて申立てをしたい場合というのは通常時ではないということですので,そのような場合には,そこまで厳格な要件ではなくて書面による申立てができるような体制をとっていただきたいと考えております。意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 様々な方から多くの懸念が示されている中で,少し違う意見となってしまいますが,そもそもインターネットを用いた申立てを無期限に義務付けないことが正しいのだろうかというところに少し疑問を持っており,意見を申し述べさせていただきます。   民事訴訟制度のIT化が,非効率な紙ベースでの管理をやめて電子化をし,様々な形で効率化することでアクセシビリティを上げ,社会全体としてメリットを享受しようとする,政府としてよりよい方向に向かうための法改正であるということについては皆さんの理解が得られていると思います。しかし,多くの人が非効率であると理解している従来の紙ベースでの申立てを今後も無期限に認め続け,そのためのシステムを維持していくことは二重のコストになります。このような状況は民間企業の観点からすると無駄遣いであり,税金を非効率なシステムの維持のために使うことにつながりますので,やはり一定の期間を設けて,IT化をよりよい形に力強く推進していくべきなのではないかと考えております。猶予期間があるため,現在ITに対応するのが難しいと思っている方のセーフティーネットを用意することも可能と考えます。そのようなIT化に向けた準備をする猶予期間を設けたうえで,IT化の対応を任意とする法改正に今回してしまうということにいささか疑問を持っております。やはりもう少し強い形で,インターネットによる申立てのみになるような方向性を引き続き模索する必要があるのではないかという意見を申し述べさせていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 今の増見委員の意見と同じような話になるかもしれませんけれども,令和3年3月に日本司法書士会連合会で裁判IT化に関する研修会を開催した際に行ったアンケート内容の回答結果を簡単に紹介いたします。参加した司法書士のうち146名の回答を得ることができまして,詳細は月報司法書士2021年7月号に掲載されておりますけれども,民事裁判のIT化の議論が進んでいることを知っていると答えた会員は88.4%,民事裁判をIT化することのメリットとしては,書面から電磁的記録に置き換わることによるコスト,時間,労力等の合理化を掲げた者の割合が87.6%,裁判所への出頭負担の軽減を掲げた者の割合が84.9%,裁判の各種手続の迅速化を掲げた者の割合が69.8%と続きました。懸念点としては,本人サポートを掲げた者の割合が95.8%と飛び抜けておりました。民事裁判IT化に賛成かという問いについては,93.8%が賛成するという前向きな回答をしておられたということが印象的でした。15年以上登記のオンライン申請を利用した経験から,裁判のIT化に抵抗を感じる会員は非常に少ないと感じておりましたが,実際のアンケート結果でも同様の結果が示されたものと理解をしています。このように,司法書士会全体としても裁判IT化については大きな期待を寄せており,インターネットを用いてする申立てについても当然に対応することができる状況であると考えております。   したがいまして,部会資料で提案されておりますように,委任を受けた訴訟代理人は例外なくインターネットを用いてする申立てによらなければならないとする案に抵抗感はございません。もちろん将来的には利用者全てがインターネットを用いてする申立てによることとする甲案を目指すべきであり,そのための工夫を重ねていくことが大切だと考えております。   そこで,規律としては,義務化の範囲が士業者に限定されるとしても,司法制度全体の効率化を図るとともに当事者個人の利便性を向上させるためにも,一人でも多くの方にシステムを利用していただくことが重要だと考えています。しかしながら,最初のうちはどうしても食わず嫌いといいましょうか,ITの利用に躊躇し,慣れ親しんだ方法を用いてしまおうとすることが世の常であるとは思っています。ですから,部会資料5ページ目に書かれておりますように,インターネットを使用する方法によりすることができる者は,申立て等をインターネットを使用する方法によりするものとする旨の訓示規定を設けていただくことは,そうした食わず嫌いの方々にITのよさを実感していただくための方策として有益であると考えています。   なお,インターネットを使用する方法によりすることができる者とは,必ずしも本人に限らず,書類作成者として司法書士が関与する場合なども当然,インターネットを使用する方法によりすることができますので,こういった場合も訓示規定に含めることも御検討いただければと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 委任による訴訟代理人にインターネットを用いた申立て等をすることを義務付ける場合の,例外を設けるべきかどうかということが議論されているかと思います。その点について,以前にも何度か意見を申し上げたことがあるので,またかと思われてしまうかもしれませんけれども,意見を述べさせていただきたいと思います。   部会資料3ページのエの部分を読みますと,ここでは弁護士などは通常は通信機器や通信環境を準備することが可能であると思われることや,ほぼ例外なく裁判所に提出する書面等をパソコンのワープロソフトを用いて電子的に作成している実情にあると考えられることなどを理由として,例外を設けないことが提案されているかと思います。少々細かい話になりますが,弁護士の実情として,多くの者がインターネットを用いた申立てに難はないだろうと思います。しかしながら,ワープロソフトで書面を作成しているものの,通信環境の整備を含め,インターネットを用いた申立てに難がある者がいるということも実際上の真実だろうと思います。ワープロソフトはインターネットに接続されていないパソコンでも使用できるのに対して,インターネットでの通信を訴訟代理活動で用いるという場合には,セキュリティ対策,また増大するデータ量に対応するための通信機器の維持更新を含む通信環境の整備,それから,様々なサイトにおけるユーザーインターフェースや本人確認のプロトコルへの慣れなど,プラスアルファのハードルが生じると思います。   この部会はウェブ会議の方法で実施されておりまして,それに参加している者はそうしたハードルを越えて久しいと思いますから,ぴんと来ないと思いますけれども,インターネットに十分親しむことなく高齢になった人など,今から付いていくことができない人というのはいて,それは弁護士においても変わらないものであります。これに例外を設けないとしますと,改正法における本格的なe提出に係る部分が予定どおり2025年度に施行されることとなった場合,つまり,今からおおむね4年後には,一部とはいえ,高齢者などの弁護士は直ちに訴訟代理の領域から退場せざるを得なくなると思います。それもまあ仕方ないよねというのが多くの委員,幹事の御意見とは思いますけれども,人的例外を一切認めないことの現実的な帰結については,今一度思いをめぐらせていただければと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○佐々木委員 佐々木です。少し乱暴な意見になるかもしれませんけれども,意見の表明だけですので御容赦いただければと思います。   私は,結論から言いますと,小澤委員ですとか増見委員と同じで,甲案を目指すべきだと思っておりまして,例外は認めるにしても,やはり原則として全ての当事者がインターネットを用いた申立てによるべきとして,その上で施行時期なり経過措置なりというのを検討するべきではないかと考えております。私は,委任を受けた代理人等だけに義務付けをする理由として少し違和感があるのが,デジタルディバイドのお話です。この資料にも,高齢者を中心に1,000万人以上の人がそういうデジタルに関する能力を備えていないということが考慮されているかとは思うのですけれども,一般社会,今,現状を見ると,ITの利用と民事訴訟の利用を比べたときに,正直言って民事訴訟の方がよほど縁遠いのだと思います。さらに,専門家ではないとこの手続を駆使して訴訟を起こすことが難しいというところだと思っておるのですが,それでもこの民事訴訟の手続というのは,代理人の存在があったりとか,サポート体制があったりとかということで,全ての方が利用できるようになっているのだと思います。   IT化に関しても,これは決してそれほど特別視する必要はないと思っておりまして,同じように代理人を利用する,それからサポート体制を整えることによって,十分に全ての方が利用できるのではないかと考えております。もちろん刑務所で受刑している方はどうするのかとか,例外的に検討しなければいけないことはあるのだとは思うのですけれども,IT化というのと,そもそも訴訟を利用するということのハードルの高さを比較すると,何かIT化だけを特別視する必要はないのかなと考えているところです。そのために,サポート体制を充実するということを前提に,原則として甲案のような形にするというのがいいのではないかと考えている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 経済界等から甲案によるべきという意見が出ているのは十分理解はしていますが,先ほどの発言にもありましたように,訴訟自体を本人がそれほど経験するものではないという前提,かつ,IT化の内容は,WEBで参加できるというだけではなくて,提出すべき資料をメールで送受信するのではなくて,裁判所の事件管理システムへのアップが必要になりますので,一定の技術的な知見,経験を必要とすると思われます。本人サポート等の話もありましたが,現在の本人訴訟の件数,率を考えますと,経過期間を置くにしても,甲案を実現できる環境が整うまで時間が掛かると思いますので,現状,乙案がやむを得ないと考えます。目指すものは委員間で共通していると思いますが,制度として始めるのであれば,乙案になると思います。   2点目は,先ほど小澤委員から,5ページの訓示規定の規律について,書類作成者として関与する司法書士についても織り込む内容にすべきとの提案がありましたが,元々士業者,有資格者は義務と整理されており,訓示規定の対象として想定されているのはそれ以外の本人と整理されるべきで,関与する,サポートする面々までを織り込むというのは違う場面と思われますので,適切な提案なのか私自身は疑問を持っています。訓示規定にどこまでの義務を織り込むのかというのは,各委員の甲案への志向の強さが反映すると思いますが,このできる者に対する訓示規定として設けるにしても,素直に当該本人を前提に議論すべき内容と思います。   それと,全く違う点,3ページの支配人で示された,法令上の訴訟代理人は取り込まないという扱いが合理的だと思いますので,その点についても意見を述べておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。先ほど非効率という言葉で,IT義務化を目指すべきという御意見がございましたが,この言葉が目先のことしか考えていない非常に短絡的な言葉であることをお伝えしたいと思います。効率化の名の下に時間とコストを最優先してきた結果,その不都合がいろいろな面で現れていることに気が付いておられないでしょうか。これは裁判のことを申し上げているわけではございませんが。全ての国民が平等に裁判を利用する機会を得ることが大原則,大前提でございます。そのことを思い出してください。甲,乙,丙という言い方で言うならば,私はいまだに丙案でございます。ITを利用できる方が利用することは全く構いませんが,これを利用しない,できない方が書面で出すことを禁止するような方向には持っていってほしくはありません。インターネットを利用することがとても便利であれば,いずれ社会的にそうなっていくはずでございます。そうなったときにまた考える議論はあるとしても,現段階で義務化としていただきたくはございません。   今回,これまでの議論でいいますと乙案で取りまとめた案を出されていますが,これで行くのでしたら,先ほど私が質問し,その後,阿多委員等が御意見をくださった,1(4)は削除していただきたいと考えております。また,オンラインで出さなければいけない士業者の方々がいざというときに,出せないようなシステム障害等が起きたときの対策も考え合わせ,裁判所のシステムの構築には万全を図るべきですし,いざというときにPDFにできるような設備等も充実を図ることが確約された上でこうなっていくべきと考えます。   以上が意見でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 私は従来から乙案支持でございますので,今回の事務当局の御提案は相当なものであると考えております。なお,それでも甲案支持の方もおられることが今日分かりましたが,その関係で,甲案を支持している方にお伺いすることでもなく,恐らく事務当局にもお答えできないことなのでしょうが,今,行政手続についてもIT化というものを進めていこうということになり,それのための新しい省庁まで作られているわけですが,行政の場合に,行政庁に対して国民が何らかの申請行為をする場合,これを全て紙ベースをやめますというような方向性というのは行政の方でのIT化で議論されているのでしょうか。もしされているのであれば,是非お教えいただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 事務当局からお答えいただける範囲で。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく,私も全てを知っているわけでは当然ないわけでございますが,様々な意見の検討がされていると承知をしております。実際に実現しているかどうかという問題と,議論があるかという問題があろうと思うのですが,実現されているかどうかといえば,恐らくまだそれほどそういった話が進んでいるとは私も承知していませんが,逆に今後そうすべきだという意見があるのだろうと思います。そういう意味では,他との比較で何かどうこうというのはなかなか難しいのかなと思っていますので,当局としては,まずはこの裁判手続について何が相当かを議論していけばいいのではないかと思っているところでございます。   付け加えまして,今まで議論いただきましたところで,部会資料の説明を少しだけさせていただきますと,現実的な案として今回,乙案を出させていただいているところでございます。これは基本的に,やはり士業の方については対応していただくことは可能ではないか,更に言えば,電子化することの方が負担が軽くなるということはある程度間違いないと思うのですが,結局,申立てだけでなく,受け取る側も問題でございますので,準備をした弁護士さんだけがその負担を負って,何もしなかった弁護士さんが逆に全て,自分は書面で受け取りたいということを通すことが本当に許されるのかという点,そういった効率化といいますか,結局,自分だけではない誰かが書面化することになりますし,書面で出したものを電子化することの前提を考えたときに,どういった分配をしていくのかという観点からすると,少なくとも士業としてやっていただく以上は,それは対応していただくことが一つ考えられるのではないかということで書かせていただいているところでございます。そういったことから,全体としては御意見として甲案を支持される方がいるのは承知していますが,士業ではない方に,とはいえ,それ以上というのは難しいのではないかということで,あるいはコンセンサスが難しいということで,今回書かせていただいているところでございます。   また,議論として,弁護士さんを選んだからどうするかと先ほどからずっと議論いただいておりました。私は聞いていて少し,私もいろいろ考えているところはあるのですが,少なくとも弁護士さんを選んだケースについて,本人と弁護士さんを分離して,それぞれ訴訟行為をすることを通常のパターンとして考えるべきなのかどうか,少し考えた方がいいのではないかと思っています。恐らくこれまでの訴訟法等ではそういった発想はなかった,例えば送達については弁護士さんがやるとか,そういった発想は恐らく,それぞれ別個にやるということは想定していなかった議論ではないかと思いますので,そういったケースについて,両方がやるのだということを前提に,それぞれ義務を課す,課さないと分けるということが整合的かどうかというのは改めて考える必要があるのだろうと思っておりますし,やはり別個に考えるのは難しいのではないかと思っているところでございます。   ただ,一方で皆さんの御意見の中には,別々にやるというのが,代理人ができないケースに限った議論として,していらっしゃる方もいらっしゃったと思います。恐らくそれは全然次元が違う話ではないかと思いますので,弁護士さんが難しくないケースについても両方認めるのか,弁護士さんが病気とかですかね,動かないケースに限ってやるのか,そういったものは分けて議論をしないと,整合的な議論はできないのではないかと思っているところでございます。   当局としては差し当たり,分けないという方針で部会資料を書かせていただいているところでございますが,そうでない,例外的にでも別々にするケースがあることを想定して書くかどうか,例外を置くかどうかについては,恐らく士業の例外を置くかどうかとは別の議論として今回,提示があったものと理解しておりますので,また当局としても考えていきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 全体についてのコメントも頂きましたが,山本克己委員はよろしいですか。 ○山本(克)委員 少しだけ。私が行政手続の話を聞いたのは,比較うんぬんというよりも,基本的に,これは藤野委員がおっしゃったことですが,やはり国民の裁判を受ける権利を等しく保障するというのが訴訟制度の出発点だと思っておりますので,デジタル化がどれだけ国民に浸透したかというのを測るバロメーターとして,行政手続のオンライン化,特に,国民の申請行為のオンライン化というものが一つあり得るのではないかと。裁判手続は,私は最後でいいと,完全デジタル化は最後でもいいぐらいだという発想から,そういうことをお伺いした次第です。ですので,民事訴訟法が先走って期限を設けて,完全オンライン化などということをする必要は全くないというのが私の考え方です。   それから,今,脇村幹事から話のあった,訴訟代理人と本人がばらばらであるという場合を想定すべきかどうかということなのですが,最低限,民事訴訟法57条は,これは恐らく書面行為の話ではなくて,弁論における口頭の行為を前提としているのだろうと思いますが,一応ばらばらであることは57条は当然の前提としていると思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 大谷でございます。今発言された山本委員の御意見に極めて近い考え方をしておりまして,その賛成の気持ちを伝えたいと思っております。ただ,私自身はITをこういった裁判の手続にも利用して,皆さんがその便利な世界を理解していただくような,そういった世界が早く実現したらいいなと思っている方です。ただ,義務化という方法がそれを実現するための近道ではなくて,逆にそれに反対するアレルギー反応を強く喚起してしまい,逆効果になってしまうだろうということを懸念しております。ですので,現在提示いただいている乙案ですね,士業の方にということは合理的なやり方ではないかと思っております。また,ITが現実に様々な申請に浸透してきても,使えることと使いこなすことは少し別なところもありまして,システム全体,裁判所のシステムに対して危害を与えるような形で使われてしまうということを懸念したり,また,この電子化された仕組みを使う方が十分な知識がないと,自分の身を守るような仕方で使えないということもありますので,もう少し環境の整備というのを先行させる必要があるのではないかと思っております。   乙案を拝見していて思うのは,やはりプロの方が一生懸命使うことになりますので,プロの方に使い勝手がいいような形で,より高度化された仕組みになってしまうのではないかと,それはそれで結構なことだと思うのですけれども,海外でIT化が先行している先進事例を見ますと,民事的な救済を求めてそれを必要としている市民の方にとって非常に使いやすいシンプルなインターフェースが用意されたりもしております。つまり,プロがプロ仕様で突き詰めて優れたシステムにしていくと,逆に市民の方にとっては使い勝手が悪い,ハードルが高いものになりかねないことも考えていただいて,民事訴訟法の議論そのものではないですけれども,裁判所へのお願いということになろうかと思いますけれども,今回の改正法で実現し,先行して士業の方に義務付けることになるインターネットを通じた申立てということについて,士業の方にとって使いやすいインターフェースではない,別の環境整備というのも別途進めていただくことが必要ではないかと思っております。   また,その過程で例外的なものとして考えるべき様々な,通信障害以外のことも含めて,出てくるかと思いますので,それをきめ細かに裁判所の規則で明確にしていただくことも必要だと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 裁判所としては,今般の改正で士業者のみならず一般の利用者の方も含めて電子申立てを原則利用するという甲案の規律の導入を目指すべきであると考えていることは,従前から申し上げているとおりです。   その上であえて申し上げますと,従前よりデジタルディバイドの方への配慮も重要な問題と認識しておりまして,この点については,十分な本人サポートの体制を構築する必要性に加えて,過去の部会では,「やむを得ない事由」といった要件を緩やかに解釈するなどして,ITリテラシーに乏しい方も「やむを得ない事由」に当たるというような解釈の可能性について発言したところです。業として訴訟行為を行う士業者の方が,システム障害が起きたような場合以外はすべからく電子申立てをしなければいけないとして,裁判手続の円滑化,効率化に協力していただくことは当然のことと考えておりますが,それ以外の一般の方々についても,それぞれの方のITリテラシーやIT環境に応じて格別の困難がない場合には,やはり電子申立てを利用していただくというのが,その方自身が裁判手続を便利に効率的に行っていくためにも望ましいことではないかと考えております。ただ,そのような柔軟なルールを法律上の義務と関連付けて定めることが必ずしも容易でないとすれば,せめて今回の部会資料の(注)にあるような訓示規定という形で,電子申立てが原則的な形態であることを示すという考え方も理解できないわけではないと思います。   あと1点,先ほど阿多委員の方から,委任状につきまして現行民訴規則23条が書面で証明しなければならないとなっていることをもって,今後も書面で提出されるのではないかというお話がありましたけれども,この規定も当然に今回のシステム化に応じてしかるべく改正がされるものだと考えておりますし,委任状がシステムを通じて提出されるということは,当然のことながら,その時点でその代理人の方がシステム登録できる,すなわち通知アドレスの届出も併せてされているというような形かと思いますので,部会資料のブラケットに掲げられた2(2)のような規律も合理的なものと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。私からは,先ほど山本委員の御発言の中にありました御質問で,行政手続でIT化が義務付けられているものがあるかどうかというお話ですけれども,これについては私,かなり早い段階で質問をしておりまして,その後何回目かに,現段階では国民が利用する行政手続にIT化が義務付けられているものがないという御回答を頂いております。事業者が使う会社法か何かには,少し記憶が曖昧なのですけれども,一部義務付けられ始めているという話はありましたけれども,私ども国民が使う行政手続の中には義務化されているものはないという回答を頂いていることを紹介いたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。既に議論はおおむね出尽くしている感もありまして,私が付け加えられることというのはそれほどあるということではないのですけれども,基本的な方向としましては,私自身は,これは山本克己委員が言われたところとおおむね重なるかと思いますけれども,将来的には甲案のような形,つまり,全ての利用者がオンラインを活用するということが事実として望ましいだろうということは,私はそうであると思いますけれども,現時点で年限等を区切る形で甲案の実現を目指すということはなかなか難しいのではないか,これは,繰り返し出ておりますように,やはり全ての国民の裁判を受ける権利の問題ということがありますので,軽々にはそこに進むことは難しいということは理解できるところであり,他方,しかし士業者の方については,裁判手続の効率的な運用ということに協力していただくことが期待されますし,期待してよいと考えますので,乙案の方向でよろしいかと思っております。   ただ,今回,第1の末尾の(注)のところで,そうはいっても一般的にもオンラインでの申立て等の活用が期待されるということを何らかの形で示していくということは意義があることだと思いますので,細かい文言等は検討の余地があるかもしれませんけれども,そうした考え方を示す規定を設けるということには賛成したいと思います。   その上で,ゴシックの部分の1(4)あるいは2の隅付き括弧の付いている(2)の部分に関してですけれども,御提案の趣旨は何となく分かるようなところもありつつ,しかし,先ほど来の御議論を伺っておりますと,1(4)に関して申しますと,あえてこのような規定,規律を設けるということ自体が,あたかも当事者本人が独立に訴訟行為をすることを前提としているというような印象を与える部分もあるように思いますし,もし両者一体であるということであれば,それは代理人について義務であるという規定だけ置いておけば必要十分なのであって,このような規定をあえて設ける意義があるのだろうかという疑問もあるように思われます。   他方で,場合によって当事者本人が自ら訴訟行為をするということは,別に現行法下で禁じられているということでもないわけですので,それはできてしかるべきであろうと,理論的に禁じられるというものではないだろうと思われるところで,そのときに,自身は士業者としての資格を有していない当事者本人について,委任をしたということで当然に義務を課していいことになるのかどうかというと,そこは日下部委員からの指摘がありましたけれども,そういった議論を伺いますと,若干ちゅうちょを感じるところがあるかなと思います。   そう考えますと,(4)の類型の方については,末尾の(注)の考え方はもちろん妥当するので,オンラインでやることが望ましいだろうということかとは思いますけれども,しかし,あえてこういった形で特出しで義務化するということまで必要なのかというと,そこはなお検討の余地があるかなという感じを持ちます。   では,(4)の規律をあえて設けることのメリットがあるのかどうかと考えますと,これは若干うがった見方といいますか,余り正面でこういうことを議論すべきではないのかもしれませんけれども,弁護士が代理をしているという場合で,しかし,これまで出てきておりますように,何らかオンラインでできるかどうかに不安があるような場合があったとして,そのときに本人がやればできるということがあり得まして,しかし,そのときにみだりにそのような事態が生じるということが好ましくないという評価をしますと,(4)のような規律が必要ではないかということになるのかなという感じもいたしますけれども,濫用的にそのようなことがされるとすれば,それは問題だろうと思いますけれども,しかし,その理由でこういう規律を設けるということでもないのかなという感じもしておりまして,少しこの(4)については,考え直してもいいのかなという考えを現時点では持っております。   2(2)の方の規律ですけれども,これも,どの程度こういう事態が実際に生じるのかということについてはよく分からないと,これはシステムに登録する際に通常の流れとしてどういう形が想定されるのかということとも関係するようにも思われまして,オンライン申立てをするためにシステムに登録をするというときに,当然にこの通知アドレスの届出をするような形になっているとすると,ほぼ自動的に届出がされるということになりそうな感じもするわけですが,しかし,これも日下部委員から指摘がありましたように,一応ここまでの検討では,システム送達を受けるための通知アドレスの届出というものと,オンライン申立てをするための登録ということとを分けて考えているということかと思われます。   そのときに,話が少しずれたことになるかもしれませんけれども,当事者本人については,この案を前提にしますと,オンライン申立てをすることはできると,義務ではないけれども,することはできるということになっていて,かつ,従前議論されていましたように,一度始めたら以後は義務であるという形になるのではなくて,必ずしも義務ということではなく,やめたければやめることもできるということになっていて,それはそれでよろしいかと思いますけれども,オンライン申立てをするために登録をした状態になっている士業者でない方というのは,送達を受ける方については紙を送達を受けるという選択肢というものを恐らく残すということが前提で,そこを分けているということなのだろうと思います。そこは,そのようにすることが不可欠なのかどうか,義務でなくやめることができるという前提であれば,申立てをする方と通知,送達を受ける方とはセットで考えて,登録されていれば,そこは通知等もオンラインで受けてもらうということにするという方法もおよそあり得ないわけではないようにも思われまして,そのようにしますと,オンライン申立てできる地位と送達を受ける地位というのが連動してくるということになりますので,余りこの(2)のような難しい規律を考えなくても済むのかなという感じもするところです。私自身,検討が十分でないところですけれども,この(2)について,これを設けるかどうかというのは難しい問題だと感じているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 いろいろ研究者の方々からも御意見いただきまして,私も全体的なところと,若干踏み込んだ点についての意見を申し上げたいと思います。全体的な方針としましては,山本克己委員がおっしゃられたことと私もほとんど同じ考えを持っているところです。その意味で,今回提案されている乙案ベースの考え方には賛同をするものです。   その上で,若干細かいところですけれども,この訓示規定を導入するということについてですが,私はこの考えには賛成でございます。ただ,その規定は訴訟当事者本人など法律専門家ではない多くの人を名宛人にすることになると思いますので,訓示規定であるということが分かるようにしておかないと誤解や混乱を招くのではないかという点は気にしております。この規定が最高裁判所規則で定められるということであれば,その文言をこの場で議論することには限界があるように思うのですが,文末を「努める」とすることを希望しているということを意見として申し上げたいと思います。   それから,もう一つ,この第1の1(4)の規律の必要性について,先ほど垣内幹事の方から御意見が出たところです。そこでは,本来はインターネットを用いた申立て等をしなければいけない代理人が,それを回避するために本人名義で書面を提出してくるという,そういった脱法を許していいのかという問題意識かと思います。もちろんそういった脱法行為を許容すべきではないという価値観は私も持っているところでありますけれども,それを本人による申立て等の方法を制限することで達成するというのが制度設計としては妥当とは思いません。部会資料を読みますと,そうした脱法行為の防止が理由として特に挙げられていないのは,正に制度設計の正当化根拠にはなり難いからだと私としては理解していたところです。そういう意味合いで,先ほど申し上げましたとおり,この(4)の部分はやはり削除をするということが適切だというのが私の意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○井村委員 民事訴訟法IT化関係部会の始まりは,コロナで少し遅れたものと記憶しています。昨年4月に初めて緊急事態宣言が出た際には,裁判所の機能が一時的に停止をすることになりました。裁判は誰もがいつでも公平に受ける権利がある,という意味で,裁判所の機能が停止をしたということは,その権利がある種,阻害されたとも考えることができますので,そのためにもこのIT化,デジタル化は必要だということであれば,提案されている乙案は,現時点においては妥当なのではないかと私どもとしては考えているところです。一方で,効率化を求めること,働く者の立場から言えば,労働生産性を上げていくということは,決して民間職場だけではなくて,公務の職場でも必要です。それをデジタル化,IT化という道具を使って成し遂げていくということも重要な観点だと連合としては考えています。裁判というのはセーフティーネット機能の重要な一つだと我々は考えておりますので,裁判所の効率化の観点からもIT化は進めるべきだという意味からすると,将来的にはやはり甲案を目指すべきなのだろうと思います。   紙ベース,アナログベースで,それを裁判所に送るということになれば,それを受け取る側の裁判所の職員の働き方にも関わってきます。例えば,士業の方のみならず,ユーザーである我々が訴訟を起こすときにも,裁判所に直接ではなく,例えば,法テラスに行って,ITのサポートを受けながら裁判をするということも考えられますので,実は裁判所に直接行くより,はるかにハードルは低いのではないかとユーザーの立場として考えられます。将来的には甲案ということを含めて,現時点においては乙案には賛成する,ということを意見として表明させていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   基本的には,私が伺った限りにおいては,現段階においては,今回提案があった方向性,いわゆる乙案的な方向性に御賛成の御意見が多かったように伺いました。ただ,引き続きやはり甲案の方向というのを現段階でも目指すべきではないかという,(注)のような訓示規定を越えて,もう少し強いものを主張される委員,幹事の御意見もあったように思いますし,他方,この原案を前提にしたとしても,1の対象の範囲との関係においては,特に(4)をどうするかということについては多々,これを外すべきだという御意見も含めて,意見があったように思いますし,さらに,それ以外のものについても例外規定を考えるべきではないかという御意見が引き続きありました。これについては前回,前々回でしたかで,通信障害等のところの例外規定という議論があったわけですが,その内容,あるいは,更にそれを越えたような例外規定みたいなものの必要性も指摘されるところがあったように思います。それから,送達の関係の2については,やはり(2)がどうなのかということについては賛否両論の御意見があったように伺いました。   そういうことを踏まえて,次回,次々回になりますか,引き続きこの問題をもう少しブラッシュアップした案をお出しいただくということになるかと思いますが,事務当局から何か現段階でありますか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。特に第1の1の(4)辺りについて,恐らくいろいろな御意見を頂いて,いろいろな角度がございましたので,バリエーションにと,私たちも少し考えてみたいと思います。脱法の議論をしていいのかどうかという問題もありますし,そうではない議論をした方がいいのか,若干私も考えなければいけないと思うのですけれども,いずれにしても少し整理をさせていただきたいと思います。あと,2(2)につきましても,実際活用するかどうかも含めてなのですが,少しその辺,もう一回考えたいと思いますが,(注)につきましては,恐らく,日下部先生から末尾という話がありましたが,末尾を変えるのだったら前の方は今のままでいいのかとか,最終的にどこまで詰め切れるのかというところもありますけれども,頂いた意見が反映できるようなうまい表現を私が思い付くかどうかという問題もありますけれども,考えていきたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,よろしければ次の項目に移りたいと思います。   引き続きまして,資料26ですけれども,6ページの「第2 訴えの提起の手数料の納付命令及び原裁判所による即時抗告の却下」,この点について御審議をお願いしたいと思います。まず,事務当局から資料の説明をお願いします。 ○波多野関係官 波多野でございます。では,説明をいたします。   本文の1から6までは,裁判所書記官による訴え提起手数料の納付命令の規律でございまして,部会資料22の第7の2で記載しておりました内容と同内容でございます。本文7から9までが,これまで濫訴への対応などとして御議論をお願いしてきていたところに関するものでございますが,これまでの御意見を踏まえまして,訴え提起手数料を納めないことを理由とする訴状却下命令に対して,自身が考える手数料額も納めないまま即時抗告する,このようなケースについては,控訴審の判断を仰ぐ機会を保障する必要性に乏しいのではないかと,このように考えられますことから,このような場合には即時抗告をすることができないものとしまして,原裁判所において却下するという規律を御提案するものでございます。   なお,これまで補正命令を経ずに訴状を却下する制度などについても御検討をしてきていただいたところでございますけれども,従前の御議論を踏まえまして,これらは取り上げておりません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点につきまして御質問,御意見,御自由にお出しを頂ければと思います。 ○阿多委員 前回この論点が議論されたときも指摘したのですが,書記官権限化することによって手続が非常に複雑になっていると思います。6ページの第2のローマ数字での主語を見ても,1は書記官,5は裁判所,そして6では裁判長と主体が変わっています。元々は訴訟費用等の納付命令であれば裁判長の権限だったものを,私は少しでも裁判所の負担を軽減すべきと考え,書記官権限にすべきという提案をしました。それが,訴訟費用等に関することに由来すると思いますが,書記官の処分に対する異議に対して裁判所の判断があった後,また裁判長に戻るという立て付けの複雑さはどうにかならないのかと思います。   一つは,裁判所で全て貫徹するか裁判長で貫徹するか。説明欄を見ていても,2行目は,裁判長は書記官に対する監督権限があるという書きぶりがある一方で,(3)の1行目からは,実務上は,納付命令を発する前に裁判長と相談した上で発令するという書きぶりが悩みの表れかとは思いますが,せっかく規定を整備するのであれば,私は137条自体が裁判長の権限になっていること自体が問題と思いますので,主体は裁判所に統一すべきと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。ほかは特段ございませんか。   事務当局から何かあれば。 ○脇村幹事 阿多委員に頂いた宿題といいますか,御意見につきましてコメントさせていただきますと,今回の案はそういう意味で,いろいろな意見を既存の制度との整合性をとりつつ,組み込んだものでございまして,そういう意味では,慣れた人間の目で見ると,こんなものかという気が私もしてしまったところがあるのですけれども,すっきりできるかどうか,少し考えたいと思います。なかなかほかとの整合性といいますか,の意味では,最終的にはこうならざるを得ないと,説明等をさせていただく際には,もう少し分かりやすい表現で私たちも周知に努めたい,あるいは書記官さん,裁判所に対しても周知をしていくということが一つかなと思いますが,頂いた意見は,できるかどうか少し考えつつ,限界もあるのかなというのが正直なところで,すみませんというところでございます。 ○垣内幹事 垣内です。私は基本的に本日の御提案の方向でよろしいのではないかと考えております。それで,確認のための御質問なのですけれども,第2の,特に7以降の規律になりますでしょうか,一切払わないというときに原審却下等ということですが,この辺りの規律は従前,濫訴に対する対応策を考える際には,訴訟救助の申立てがされていて,それが認められる可能性があるときでもデポジットなどを義務付けられるということについての疑問などが指摘されていたところかと思いますけれども,今回の御提案の場合には,これは訴訟救助の申立てがあった場合には,それが認められないという判断がされることが,この7,8,9のような規律の適用の前提となっていると理解してよろしいのでしょうか。その点について御教示いただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えを。 ○脇村幹事 ありがとうございます。結論的には,垣内幹事がおっしゃっていただいたとおり,訴訟救助の申立てがあったケースについては,それを処理しないとできないと考えています。恐らく場面としては,補正命令の段階で訴訟救助して,却下して確定したケースが基本的になると思いますが,場合によっては一審段階といいますか,却下までは訴訟救助していなかったケースで,即時抗告と併せて訴訟救助したケースについても,訴訟救助の処理が終わらない限りはこういった処理に乗らないと考えていたところでございます。 ○垣内幹事 了解いたしました。それであれば,これでよろしいのではないかと思います。ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。7のことで質問させていただきます。ここに手数料のことが書かれていますが,「その者において相当と認める訴訟の目的の価額に応じて算出される民事訴訟費用等に関する法律の規定による訴えの提起の手数料を納付しないときはこの限りでない」の,手数料というのは,納付者側で決めてよろしいということで読んでよろしいのでしょうか。そこが分かりにくいところなのですけれども,教えていただけますか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 いろいろ書いていますけれども,基本的には,自分としては訴額が幾らなので,そうするとこれぐらいですというふうに思ったのを納めてほしいと考えていたところでございまして,そういった趣旨で書いたつもりなのですけれども,分かりにくかったですか。申し訳ございません。 ○藤野委員 理解いたしました。分かりやすく書き直していただければと思います。それで結構です。ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。それでは,事務当局,工夫が可能かどうか,御検討を頂ければと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,幾つか書きぶり,内容も含めて,事務当局の方で更に工夫を求める御意見はあったかと思いますが,基本的な方向性としては大きな御異論はなかったように伺いました。また次の段階での案をお示しいただければと思います。   それでは,少し早いのですが,次の論点が議論が熱くなるのではないかという予感もしますので,ここで休憩を取りたいと思います。20分程度の休憩ということですので,15時15分に再開したいと思いますので,それまで御休憩を頂ければと思います。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,15分になりましたので,審議を再開したいと思います。   続きまして,やはり部会資料26の7ページ,「第3 新たな訴訟手続」について取り上げたいと思います。まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○波多野関係官 波多野でございます。それでは,御説明いたします。   これまでの部会におきまして,当事者双方が希望する場合について,判決までの期間に関して当事者の予測可能性を高めると,このような制度を設けることを検討することが考えられると,そういう御議論を頂いてきたところでございまして,今回その具体的な手続を御提案しているところでございます。   まず,手続の開始でございますが,当事者の希望に基づく制度でございますので,当事者双方が手続を利用しようとする積極的な意思がある場合に開始するということとしております。なお,当事者が一定の期間内に主張や立証をすることを予定しておりますので,消費者と事業者間で締結される契約に関する訴えや,個別労働関係民事紛争に関する訴えを対象から除外するということとしております。   審理期間につきましては,当事者の予測可能性を高める観点から一定の期間を法定するということといたしまして,新しい手続の最初の期日から口頭弁論の終結までの期間を6か月とし,裁判所が最初の期日に口頭弁論を終結する期日と判決言渡しをする期日を指定するということとしております。また,当事者は最初の期日から5か月以内に攻撃防御方法を提出し,証拠調べはその最初の期日から6か月以内に行うということとしております。   他方で,このように始めました手続でございますけれども,当事者においては予期せぬことが発生するというようなこともあるという御指摘を頂いておりまして,このまま新しい手続を続けることができないというような判断に至った場合には,この手続が,先ほどから申し上げましたところ,当事者の積極的な意思による迅速な訴訟活動を前提とするものでございますので,当事者の一方が通常の手続に移行したいと希望される場合には,通常の手続に移行するということとしております。   判決の効力が異議によってなくなるということも御提案しているところでございまして,その観点から,口頭弁論終結から判決言渡しまでを1か月とするということも御提案しているところでございます。判決の記載でございますが,中心的な争点について集中して審理するということが予定されていますので,判決の記載についても,事実については要点を記載することとし,理由については主要な争点についてしっかり記載していただくと,そういうことを御提案しているところでございます。   判決に対する不服申立てにつきましては,審理期間を法定するということによりまして事実上,証拠方法が限定されておりますので,控訴とするのではなく,異議申立てをすることによって第一審の口頭弁論終結前の状態に復するということを御提案しているところでございます。   簡単ですが,説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点,これもこれまで長きにわたって様々な形で御議論を頂いてきたところですが,今般事務当局から,初めてといいますか,具体的な提案がなされたところですので,恐らく多々御質問,御意見があろうかと思いますので,御自由にお出しを頂ければと思います。 ○日下部委員 ありがとうございます。今回の部会資料の7ページ以下で,新たな訴訟手続に関する具体的な提案が示されておりますが,各当事者にいつでも通常の手続に戻るオプションを認めるなど,当事者のイニシアチブを尊重するもので,多くの特徴が中間試案における乙案と共通していることを私自身は積極的に評価しております。   その関係で,最初に1点,お尋ねをさせていただきたいと思います。今回の御提案では,乙案に見られた審理計画への言及がないのですが,裁判所と当事者双方が新たな訴訟手続の下でどのように審理を進めるのかを協議する場は想定されていないのでしょうかという質問です。今回の御提案では,新たな訴訟手続によるとの決定の後,2週間以内に口頭弁論又は弁論準備手続の期日を開き,そこで口頭弁論終結や判決言渡しの期日を指定するとされております。この2週間以内の期日が協議の場に当たるように思えるのですけれども,そこではどのようなことが話されることが想定されるのか,事務当局のお考えをお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。ここで想定しておりますのは,当事者双方の申述あるいは同意があったケースについて,恐らく双方がまずはそういった同意をするに当たっては,見込みといいますか,そういったことを考えていることを当然の前提に考えていたところでございます。その上で,具体的な期日を指定する際には,裁判所とそういった考え方についてのすり合わせといいますか,協議を当然するのだろうと思っていたところです。他方で,そういったことについて制度として書くのかというと,そこは実務上の運用というか,そういった想定をされているということでいいのではないかということで書かせていただいていますが,中には5か月以内に短くするときについてというようなことも書いていますが,そういったところは結局そういった協議あるいはそういった話合いといいますか,意識のすり合わせをする中で,おのずとそういった話が出てくるということを踏まえて書かせていただいたものでございますので,結論的には日下部委員がおっしゃったように,こういった場で話合いといいますか,そういったことをするのを当然の前提に考えていたところでございます。 ○日下部委員 ありがとうございます。今回の御提案でも,裁判所と当事者双方が審理をどのように進めるのかを協議し,決めていく,すり合わせていくものと理解いたしました。その点でも乙案で示されていた考え方と共通しているように思いますので,積極的に評価できるかと思います。   ただ,幾つかの点において,現在の提案内容には使い勝手の悪さや導入への懸念材料を残しているように思いますので,意見を述べたいと思います。ただ,これは切り口がいろいろありまして,それら全て言及しますと独演会のようになってしまうかと思いますので,差し当たりは審理期間と審理計画についてだけ意見を述べたいと思います。それでも若干長めになってしまうかもしれませんが,御容赦いただければと思います。   今回の御提案では,審理期間は新たな訴訟手続によるとの決定後2週間以内に行われる口頭弁論又は弁論準備手続の期日から6月以内とされております。部会資料の11ページの(4)では,このように審理期間を法定する理由として,「訴え提起前の段階を含めて当事者の予測可能性を高める観点から」と説明されています。新しい訴訟手続において審理期間を法定するか,手続開始後に当事者間で合意する期間とするかという問題については,私自身は,以前にも言及しましたけれども,後者,すなわち当事者間で合意する期間とすることが適切だと考えております。   理由としましては,若干抽象的ですが,まずは当事者のイニシアチブを尊重するというコンセプトに沿うのがそのような考え方であるためというものです。より実質的に言いますと,通常の手続における審理の遅延の実情に鑑みれば,新たな訴訟手続の効用というのは,特定の審理期間で審理するのに適した事件についてのみ期待できるものではなく,ある程度審理に時間を要するあらゆる事件において期待できるものであると考えているからです。すなわち,現在の通常の手続におきましては,審理をどのように進めていくのかを協議する機会は制度的に保障はされていません。そのために,一定の審理期間で早期に判断を求めることが適当であると紛争当事者が考えたとしても,その判断が裁判所に示されることは予定されておらず,また,仮にそのような判断が当事者により示されることがあっても,裁判所がそれに応じて審理を進めることも制度的に保障されていないと思います。そのため,結局のところ,効果的に審理を進めようという意欲が裁判所と当事者双方の間で共有されて,具体的な審理の計画に結び付くことはなく,従来どおりの無計画審理となって,準備不足を理由として期日が実質的に流れてしまったり,意味の薄い水掛け論の応酬が長々と続けられたり,裁判官の人事異動のタイミングで審理が停滞したりすることで,審理期間が長期化するという弊害が放置されているのが実情だと思います。   新たな訴訟手続は,こうした弊害を制度的に解消するものと期待されるところでして,その弊害はある程度審理に時間を要するあらゆる事件において生じ得るものですから,審理期間を6月以内と法定することには合理性はないと思います。仮に審理期間を6月以内と法定しますと,その審理期間では充実した審理を行うには足らないことが明らかな事件では,新たな訴訟手続の利用の余地はなく,この手続が利用できる事件が極めて限定的になりかねないと思います。新たな訴訟手続が実際に使われる制度になるよう,間口は広くすべきだというのが私の考えです。   なお,審理期間を手続開始後の当事者間の合意に委ねますと,確かに訴え提起前には新たな訴訟手続の下での審理期間を予測することはできなくなります。しかしながら,そもそも新たな訴訟手続を利用するために相手方当事者の申述又は同意が必要であるなら,新たな訴訟手続を利用できるかどうか自体が予測し切れないのですから,利用できる前提で具体的な審理期間を訴え提起前に予測できることを重視することには合理性があるか疑問です。また,具体的な審理期間を訴え提起前に予測できないとしても,新たな訴訟手続を利用できれば審理期間のめどが立つようになると予測することはできるわけですし,また,実際に手続開始後に当事者間の合意により審理期間が定まれば,審理の終了時期が合理的に予測できるようになり,そのこと自体が,いつ終わるともしれない審理に拘束される,そういった当事者の負担を大いに軽減するものだろうと思います。   審理計画について言えば,審理期間を当事者の合意に委ねる場合には,6月以内を前提とする内訳を法定する必要はなく,現行法147条の3を参考に,計画を定める上での最低限の規律を用意すれば足りるものだと思います。具体的にどのような計画を立てるかは,正に運用の問題として,今後の実務における創意工夫を期待すべきかと思います。   なお,審理期間を法定せずに当事者間の合意に委ねる場合にも,審理の計画を立てるための協議の場が必要になります。しかしそれは,新たな訴訟手続を利用したいという当事者双方の申述や同意がどのような状況でなされたのかに応じて柔軟に対処すべきものと思います。例えば,訴状と答弁書で申述がなされたのであれば,第1回口頭弁論期日の直後に準備手続室に場所を移して弁論準備手続期日や進行協議期日を開いてもよいし,争点整理手続の初期段階で当事者双方が申述したら,電話会議かウェブ会議方式による進行協議期日を臨機応変に開いてもよいと思います。こうした対処方法は法定するには適さないし,当事者双方の自主的な協力が見込まれる状況である以上,法定する必要もないように思います。   非常に長くなってしまって大変申し訳ございませんでしたが,差し当たり,この点についての意見は以上であります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○井村委員 連合の井村です。これまで労働審判制度の対象となる事件について,新たな訴訟手続の対象から除外するよう発言してきましたが,今回提起された検討案の1のただし書において,消費者契約に関する訴えと併せて,この限りではないとして列記されたことを連合として評価したいと思います。部会の中で様々な意見が出されたことも承知をしておりますが,労働審判制度を引き続き意義あるものとするためにも,是非ともこの案で取りまとめをお願いしたいと考えています。   また,新たな訴訟手続についてはパブコメ段階でも反対の声は根強くありましたが,我々連合としては,長期間にわたる裁判の迅速化はユーザーにもメリットがあるものと評価をし,IT化部会で扱っていることにはいまだに疑問はあるものの,制度の導入には反対の立場はとってきていません。一方で,労働審判法を含めて,民事訴訟以外の各手続法におけるIT化についても,今後検討が行われると思いますが,現状の労働審判制度において,例えばタイムカードなど証拠をコピーできないために,閲覧のためだけに裁判所に足を運ばなければならないといった課題が起きています。これらの手続法のIT化の議論に際しては,新たな訴訟手続の規律も参照あるいは準用されることも考えられます。新たな訴訟手続に関わる本部会の取りまとめの検討に際しては,他の制度への波及も念頭に,IT化のメリットを十分に享受できるよう丁寧な制度設計を図っていただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 3点,質問なり確認になります。まず,この手続において和解についてはどのように考えているのか,この手続で和解はできないということになるのでしょうかというのが1点目です。   2点目ですけれども,今回の提案では証拠の制限というのはなくて,6か月の期間内であれば証人尋問も,さらには鑑定や文書提出命令も許容されるということでよろしいのか,確認になります。   3点目ですけれども,中間試案では,「地方裁判所においては」と記載されていたものが,今回の提案では「裁判所に対し」と変わっているわけですけれども,簡易裁判所についてはどのようにお考えなのかということを教えていただければと思います。お願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,3点,事務当局からお願いできますか。 ○脇村幹事 脇村です。和解につきましては特段,何も規制は考えておりませんで,できると考えております。証拠整理については,期間制限以外置いておりませんので,間に合うのであればと考えています。恐らく鑑定になりますと,後の方にやると多分間に合わないですけれども,最初にやるとか,そういったことがあるのかもしれませんが,期間制限以外のことは考えておりません。また,裁判所につきましては,特段そこに区別自体は設けていませんが,恐らく運用ベースで考えた場合に,簡易裁判所をどこまで使うかという問題はあろうかと思いますが,制度としてはそこは特に規制というか,区別は設けていないと考えています。 ○大坪幹事 ありがとうございます。和解については,集中して争点整理を実施して,人証調べも終了した段階であれば,和解による解決を双方が望むということも考えられますので,今,本文の6について,口頭弁論終結の期日から1月以内の間において判決の言渡し期日を指定するということになっておりますけれども,和解ができるように,和解のためにこの期日が変更できるとした方がいいのではないかと考えております。   簡易裁判所についてなのですけれども,簡易裁判所の手続においてもこの新しい訴訟手続が適用されるということになりますと,民事訴訟法の270条は,「簡易裁判所においては,簡易な手続により迅速に紛争解決するものとする」とされておりまして,民事については調停や少額訴訟を簡易迅速に処理する民衆に親しみやすい裁判所があってもよいということで簡易裁判所というのが設けられたということなので,簡易裁判所の役割とは相容れないのではないかと思います。簡易裁判所ではこの手続が想定しているような事件は,本来だと民事訴訟法18条の簡易裁判所の裁量移送の規定で地方裁判所が扱うべきものになるのではないかと思われます。ですので,簡易裁判所ではこのような手続が設けられるにしても,適用はされないようにすべきではないかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 最初に質問をして,後で意見を述べたいと思います。質問は12で,訴訟が通常の手続に移行したときは,新たな訴訟手続のために既に指定した期日は,通常の手続のために指定したものとみなすとあります。字面だけ拝見しますと,6で表現されている終結する期日や判決言渡しをする期日が通常移行してもそのままの期日として指定されたものと読めるのですが,12の意図するところも含めて説明を頂けたらと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。12につきましては,念頭にありましたのは,終結前の状況の期日指定を念頭に考えていたところでございまして,今御指摘いただいたとおり,移行した後に終結とか判決が残ってると,多分,取り消していくのかなとは思っていたところなのですが,書き方として,一番最初に決めていながら,生き続けることの問題というのも今伺って分かりましたというところを今,差し当たり答えさせていただきます。すみません。 ○阿多委員 従前から新たな訴訟手続については2点,問題点を指摘していました。1点目は,途中で下りられない,最後まで行かないといけないのかという点,2点目は,判決が簡潔なものを前提にしているという点です。   1点目については今回,10で当事者による通常の手続に移行させる旨の申述を入れられていますが,この書きぶりではいつまで通常移行の申述をできるのかが明らかではありません。極論すれば,終結する期日が終わった後で,通常移行の申述をして判決だけが通常の手続でするということになりかねないので,10の通常移行については,いつまで申述ができるのかを定める必要があると思います。   判決は13で,事実の要点及び主要な争点という形で対象を絞った記載を提案されていますが,先回も意見を述べたように,新しい訴訟手続は,当事者が選択して手続自体を短期間に実施するものですが,判決自体はやはり説得性が重要であって,現状の詳密な判決まで必要とは思いませんが,一定の説得力ある内容であることは必須と思います。事実の要点及び主要な争点にコメントするだけでは足りないと考えます。この提案には疑問があります。   後幾つかコメントしておきます。一点目は,先ほどの判決で,現状の手形訴訟についても,少額訴訟についても,判決は,規則において,手形判決,少額訴訟判決という形で,他の手続等による判決とは区別された表現になっています。この新しい訴訟手続でも判決の名称を考慮する必要があると思います。特に,判決後に新たに委任を受ける代理人は,もちろん符号等も新しくなるとは思いますが,判決を見た途端,異議を述べるべきなのか,控訴なのかを一見して分かるようにしておく必要があると思います。   2点目は,訴訟代理人の要否については,当事者の本人訴訟も認めた上で,要件で判断するという話がありました。ただ,今日の前半の議論でもありましたように,電子化は一定の士業者を前提に,義務化する,そして,新たな訴訟手続も,当初はIT化に伴う,関連した提案と整理されていたかと思います。大坪幹事からは,代理人を有資格者に限定しない簡易裁判所には適用すべきではないという意見が延べられていましたが,元々はIT化に伴うものとして提案されていて,義務化との関係で士業者を前提にするのであれば,当事者本人ではなく,有資格者である代理人が就いている場合に限定すべきだと思います。従前の部会においても,訴訟物の判断は当然本人ですが,手続は専門家のサポートがあって初めて充実したものが実現できるわけで,有資格である代理人を義務付けない新たな訴訟手続を創設することには疑問があります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 先ほど長々しゃべってしまいましたので,次は少し短めにと思っております。今,阿多委員の方から判決について言及がありましたので,私も判決と不服申立てについて意見を申し上げたいと思います。   今回の御提案では,口頭弁論終結から判決までの期間を1月以内とし,判決には重要な要点及び主要な争点についての理由を記録するとされております。しかし,口頭弁論終結から判決までの期間が現行法の251条1項の定める2月以内から1月以内になることには,利用者の視点からはさほどの価値があるとは思えません。また,簡略化された判決を望む声が利用者から上がっているという話も私自身は聞いたことがありません。むしろ,判決内容を簡易にすることは,裁判所にこの制度を当事者に利用させようとするインセンティブを与えかねず,当事者のインセンティブを尊重するというコンセプトに沿わないように思いますし,裁判所にこの手続の利用を,言い方は少々尖っておりますが,無理強いさせられるのではないかという危惧も出てくるため,この制度の導入自体に対する不信を招くものであって,私は適切ではないと考えています。   また,今回の提案では,不服申立ては控訴ではなく異議とされております。しかしながら,各当事者にいつでも通常の手続に戻るオプションが認められ,制度上,証拠制限もないのであれば,不服申立てを異議とする必要はなく,通常どおり控訴とすべきだと思います。各当事者の判断により不足のない審理を求めることができる制度的手当てがなされている以上,同一審において二度判決を得られる機会を設定することは,過剰であるだけではなく,審理の長期化を招く要因にもなるので,有害だと思います。   なお,先ほど述べました判決までの期間の短縮と判決内容の簡略化は,新たな訴訟手続における判決に対する不服申立てを異議とするために提案されているようにも思われたのですが,仮にそうだとしますと本末転倒だろうと思います。   以上申し上げました理由から,結論として私は,判決内容の簡略化と不服申立てを異議とする点には反対です。判決までの期間の短縮については,それ単体では反対はいたしませんが,ラフな判決の原因になり得るリスクも考えると,積極的に賛成することもできません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 阿多委員が発言された点で,訴訟代理人の選任を必要とするという意見について,部会資料の10ページの下から4行目に言及があります。14回の部会でも,脇村幹事からは,このような制度がオプションを増やすという意味で積極的な利益があるもので,当事者がそのような利益を受けられないという選択肢は難しいという訴訟代理人の選任を必要的とすることに消極的な御発言があったかと記憶しております。   恐らくこのような制度を導入することについて反対される方と法務省の方とは,この制度に関する認識が180度異なっているのだろうと思っております。日弁連でも,労働審判制度が一定の成果を上げているということから,労働事件以外にも同様の制度が考えられないかということを検討しておりました。その際,そのような制度に対しては今回と同様の批判が述べられておりました。制度の検討の過程では反対される方に対して,単に紛争解決の選択肢を増やすだけで,おっしゃられるような危険な制度ということであれば使わなければよいだけでありますし,それほど危険な制度ではないという説明がなされていましたが,なかなか理解を得られませんでした。危険な制度かどうかというのは,制度が導入されていないので,予測するというのは困難なこととは思いますが,今回の提案についても,危険があるという一定の御批判なり懸念があるわけですので,その点について配慮することを検討してもよいのではないかと思います。そういう意味で,訴訟代理人の選任を必要的と考えるべきではないかと思います。   比較は単純には難しいのかもしれませんけれども,薬などは普通の薬局で購入できる方が一般の方にとっても便利なことが多いと思いますけれども,実際には安全性の確保等のために医師の処方によらなければ使用できないという医療用の医薬品があるわけです。ですので,こういう新しい訴訟手続を設けるに当たっても,当事者にとっては便利だとしても,その利用には一定の危険があるということであれば,訴訟代理人の選任を必要とするということも選択肢として十分考えられるのではないかと思います。   もう1点,判決について阿多委員,日下部委員と反対のことを言ってしまうのですけれども,このような制度の導入に御批判される方からはラフジャスティスということを言われるわけですが,そのことは具体的にどういうことを意味しているのかというのは必ずしもよく分からないところです。仮にそのようなラフな判決が出されたとしても,結論が正しくないのであれば日本の民事訴訟制度の中では控訴審で結論がひっくり返ることが多いと思います。今回の提案で具体的に考えたときに,事実の要点及び主要な争点についての理由を記載するということになっているわけですけれども,これがもしラフな判決で当事者が納得できないということであれば,今の提案では異議を申し立てることができるということになっていて,更に控訴もできるということになりますので,そういうことからすると,現行の3審制度よりも,4審ないし3.5審くらいの,より当事者にとっては手続保障に厚い制度ということになるのではないかと思います。   また,度々紹介しておりますけれども,現在は余り先例的な価値のない判例というのは一般に公開されていないわけですが,民事判決のオープンデータ化が実現しますと,全ての判決が裁判官のお名前とともに入手することが容易に可能になってくるということになります。したがいまして,オープンデータ化が実現しますと,事後的な監視ということも可能になってきますし,さらに,裁判所としても新たな訴訟手続によって終局判決を出す場合には,当事者が納得するような判決を書くことを努力するのではないかと思います。民事判決のオープンデータ化につきましては,最高裁にも御協力いただいているところでございますので,実現の可能性は高いところであろうと思っております。   ですので,私は現在の御提案の,事実の要点及び主要な争点についての理由を記録すると,先ほどの波多野関係官の御説明では,「しっかりと理由を記載する」というふうなこともおっしゃっていたので,そういうことで十分,手続的には保障されるのではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。今回はこれまでの議論から取りまとめられた内容となっているようですが,内容を吟味した上で,やはりこの新たな訴訟手続は現段階では作ってはならないと反対意見を申し上げます。前回の意見の繰り返しになりますが,迅速化には反対していません。とても大事なことなので,もっと時間を掛けて検討すべきで,このIT化部会で拙速に創設することに反対しています。   ただいま大坪幹事から認識の違いということも言っていただきましたけれども,それはそうかもしれません。しかし,私どもは日々消費者問題の相談を受けている消費生活相談員からも,この制度はない方がいいという意見を得ております。これまで何度も申し上げておりますが,以前に福岡地裁で試みられた迅速トラックに対する検証の結果はこの部会では報告されていませんし,かつ反映もされていません。また,前々回,増見委員が教えてくださった,アメリカで利便性よく用いられているサマリージャッジメントについても,その利点を確認して検討したという案ともなっていないように読み取れます。賛成意見を含め,ほかの委員の皆様もそれぞれ懸念があり,それらが払拭されているとは読み取れません。期間を決めて迅速化を図るという野蛮な方法ではなく,裁判官の増員,証拠や情報に差があることを是正する等の方法をもって,迅速化と期間を予想できる制度を目指すべきと考えています。   実際,この案で実施されると,裁判所や裁判官が6か月という審理期間の中で判決を出そうと頑張ってくださることになると思いますが,現状の体制ではほかの案件に影響が及ぶ懸念もございます。証拠や情報に差がある国民を格技場に放り出して戦わせ,時間が来たから勝敗を決めるというこの制度は,弱者には不利でございます。消費者契約に関する訴えを対象から外すということも盛り込まれてはいますが,それでは消費者問題の全てが除外されるということにはなりません。大きな懸念が残ります。これらの理由から,この段階でこの制度を作るということについて反対と申し上げます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 法人同士のみならず,一般人同士であっても,審理期間の見通しを立てた上で,できることなら迅速に解決したいというニーズはやはり相当程度あると考えておりますので,事務当局は大変御苦労なさったと思いますけれども,本人訴訟の当事者でも利用できる今回の提案については積極的に評価したいと思います。改めて,この案に賛成をしたいと思っています。前回,審理期間や証拠調べの制限があることから,本人訴訟の当事者の利用に対する懸念も示されていたところではございますが,本文10(1)に提案されているとおり,いつでも通常訴訟に戻ることができることを保障していただいたことで,本人訴訟の当事者も安心して新たな訴訟手続を利用することができるのであろうと感じました。また,簡易裁判所においても一定程度このニーズは存在していると思いますので,その点についても付言しておきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 先ほど来,訴訟代理人の選任の要否について幾つか御意見が出ていたかと思いますので,私からもその点と,併せて手続の開始要件について,また意見を申し上げたいと思います。   今回の御提案では,新たな訴訟手続を利用するための要件として,当事者双方に訴訟代理人が選任されていることは求められていないところです。部会資料の10ページの(3)イでは,その理由として,本人訴訟の当事者におけるニーズを一律に否定することは難しいとされております。その考え方は理解はできるのですが,新しい訴訟手続は充実した審理を早期に終えることを目指すものであって,本人訴訟の当事者にその利用を認めた場合には,十分に主張立証活動ができないまま,通常の手続に戻るオプションを行使することもできずに審理が終結してしまうというリスクはやはり否定できず,それは無視できないように思います。本人訴訟の当事者のニーズにかなう制度とすることと,それに伴い当事者本人に生じ得るリスクの制御を両立することは困難ではありますが,新たな制度を導入するという局面においてはリスクの制御の方を重視することが慎重かつ適切であって,訴訟代理人が選任されていることを要件とすべきだと考えています。   また,今回の御提案では,時期を問わずに,当事者双方の申述又は一方の申述と相手方の同意が開始要件とされ,かつ,その申述や同意は書面によることが必要とされております。これらは当事者のイニシアチブを尊重するというコンセプトに合致しており,適切だろうと思います。しかし,部会資料の10ページにおきましては,書面性の要件を求める理由として,「当事者による申述の意思を明らかにする観点から」と説明され,口頭弁論又は弁論準備手続の期日における申述や同意には書面性の要件を求めないこととされています。この点については私は反対であります。   当事者の意思の確認は,新たな訴訟手続を利用する旨の申述や同意をしているかどうかを確認するという表面的なものではなく,当事者がこの手続の内容,取り分け早期の審理を目指すものの制度上の証拠制限はないし,また,各当事者にいつでも通常の手続に戻るオプションがあるということを理解し,真意に基づいて申述や同意をしていることを確認するという内実を伴うものであるべきだと思います。そのためには,期日においても口頭の申述や同意を認めるべきではないという考えです。付言いたしますと,このような期日における口頭での申述や同意を認めることは,さきに述べました判決内容の簡略化の提案と併せて,裁判所にこの制度の利用を強いられるのではないかという不信を招く大きな要因にもなりまして,この制度の導入を困難にするように思います。   とは申しましたが,もっとも,ということになりますが,両当事者が訴訟代理人を選任していることを要件とする前提であれば,この手続を利用する旨の申述や同意は,その内容が十分に理解された上で真意に基づいてされたと認められるので,書面性の要件を必要とすべき理由はないように思います。書面性の要件につきましては,訴訟代理人の選任の要否とともに検討することが妥当ではないかというのが私の考えであります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 今の日下部委員の御発言中,裁判所がこの制度の利用を強いるのではないかという点については,全くそういった御懸念は当たらないということを申し上げておきたいと思います。   その上で,この手続の判決がラフなものとなるという御発言もありましたので,裁判所のイメージを申し上げますと,本制度の下では,当事者と裁判所が十分に認識共有をして設定した中心的な争点に集中した審理が行われることになりますし,判決書についても,専ら当事者が判断を求める中心的な争点について,裁判所がどのような理由でどのように判断したかということを説得的に伝えることに重点が置かれる,そういった趣旨を第13項の「事実の要点及び主要な争点についての理由」ということで表現しているものと理解しています。したがって,中心的争点についての判断はこれまで同様に充実したものになると思いますし,この手続の判決は説得性が重要であるというのは,正に阿多委員がおっしゃったとおりであると思っておりますので,ラフな判決になるという御指摘は当たらないものと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 青木です。本文の2と本文の10(2)において,裁判所が新たな訴訟手続により審理及び裁判をすることが困難であると認めるときが除外事由,通常の手続への移行の事由として挙げられています。この点,中間試案においては,相当でないと認めるときとされていたと思いますが,相当でないよりも困難であるの方が,新たな訴訟手続の利用を希望する当事者の意思がより尊重されるという趣旨なのではないかと思います。この点は,新たな訴訟手続を幅広く利用可能な制度として考えるのか,特にそれにふさわしい事件について利用を想定するのかといったことにもよるかとは思いますが,裁判所による司法資源の利用や裁判の質にも関わるところであり,消費者契約や個別労働紛争以外にも新たな訴訟手続の利用が相当でない事件類型があるかと思いますので,当事者の合意があり困難でなければ新たな訴訟手続を開始するというのではなく,裁判所による相当性の判断による選別があった方がよいのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○長谷部委員 長谷部です。先ほど来の御議論を伺っていまして,この手続に対して,例えば日下部委員は,6か月と法定する必要はなく,それを超えても,従来よりも迅速に行われるということであれば,いいのではないかという御意見でしたし,理由の記載についてもいろいろな御意見があったと思います。それから,対象事件について,一般的な事件にも適用すべきではないかというような御意見もあったように理解しております。 大坪幹事からの証拠方法について証人尋問は排除されないのですかという御質問に対して,事務当局からは排除されないということではありましたけれども,確かに,同行証人などで迅速に証言が得られるということもあるのかもしれませんので,証人尋問を一般的に排除するまでの必要はないのかもしれませんが,本当に6か月で解決するということを前提とするのであれば,証人尋問を一般的に認めなければならない,あるいは同行でない証人の尋問がどうしても必要だという事件は,やはり適さないのかなと私は思います。   対象とする事件について,先ほど藤野委員から,増見委員から御指摘があったサマリージャッジメントなどが反映されていないのではないかという御指摘もありました。この点については,10ページ2行目の,「そして,これまでの部会での議論からすると」以下のところに表れているのかと私は思っておりました。「事実関係の争いが絞られているような事案が念頭に置かれる」というところにサマリージャッジメントの趣旨が入っているのかなと私は理解していたのですけれども,争点がそれほど多くはない,そして,これも前の議論にもありましたけれども,証拠がかなり開示されていて,あとは法解釈の問題であるとか,あるいは,争いがある事実関係について裁判所がどう判断するかが明らかになれば判決まで行けるという,6か月以内でも行けそうだという,そういう場合,そういう事件なのだと限定的に考えれば,一般的な事件についてラフジャスティスでともかく迅速にすると,そういう趣旨ではないのだということは,やはり説明で明らかにしておく必要があるのかなと思いました。   事務当局の方でもいろいろ御苦労されて工夫されていると思うのですが,対象事件をもう少し具体的に,例えば,最も適するような事件として典型的に考えているのはこういう事件ですというようなことをお書きいただいた方が,全ての事件について迅速さを優先した裁判を認めているという御理解には至らないのかなと思っている次第です。飽くまでも,両当事者が迅速に進めるのだと,手続について迅速化に協力する体制があるのだと,そういう前提で,事案としてはサマリージャッジメントの対象事件のようなものを考えているということをもう少し強く書いていただいてもいいのかなと思った次第です。   長くなりまして申し訳ありません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○増見委員 以前より何度か申し上げていることの繰り返しになってしまいますが,改めて企業ユーザーとしての意見を申し述べさせていただきます。今回の御提案は,迅速な紛争解決を求めるユーザーに新たな選択肢を提示するものであり,6か月という当事者双方の期待値をきちんと残した形であるということで,非常に評価をしております。   多くの懸念が示されておりますが,本手続は,飽くまで同意した双方当事者が一緒に申し立てるものであり,かつ裁判所が6か月での審理が困難ではないと判断したものに限られています。また,審理途中で新たな証拠が提示されたことで,より念入りな検討が必要ということになれば,どちらかの当事者の申立てで通常の手続に戻れる制度になっており,非常に安全に配慮された制度設計であると評価しております。よって,今回の御提案は非常に妥当なもので,前向きに捉えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 私も対象事件について発言したいのですけれども,その前に,先ほど長谷部委員から人証についての御指摘がありました。その点,新しい訴訟手続を批判する方々も余り言及はされていないようなのですが,今現在,少額訴訟という制度があります。少額訴訟に関しては1回の手続で終えるということになっていて,その対象の事件は訴訟の目的物の価額が60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えということになっています。60万円というのは消費者が関わる事件も結構多いのではないかと思われます。少額訴訟は現在も,一定の事件数があると認識しておりまして,その少額訴訟においては,それなりに人証調べも行われています。当事者が本人が多いということがあるのかもしれませんけれども,必ずしも少額訴訟で1回の期日だからということで人証調べが行われていないわけではないので,今回の提案でもうまくやれば6か月の期間内で人証調べをするというのは十分可能ではないかと思っております。   対象事件についてですが,今,御提案いただいた除外事由の二つの,消費者契約と労働事件に関して除くということについて,特に異論はありません。ただ,これまでの自分の経験から,今回の提案で目指しているような手続があったとしたら利用したと考えられる事件はどういうものがあるかというのを改めて考えました。これまでも話が出ておりますけれども,不動産の明渡しの訴訟で,事実関係はある程度早期に明らかになった事件で,商事留置権の成立について法律的な争いが争点になった事件がありまして,それは最高裁判例もなかったところなので,当事者としては何度か主張を繰り返したということがありました。そういう事件に関しては,当事者双方がある程度期間を区切って集中して主張を出し合って,早めに裁判所の判断をもらった方が当事者にとってもメリットがあるのではないかと思います。そういう事件の場合に,現在は早めに裁判所の判断をもらうことを実現するような代替的な手続はないので,こういう新たな訴訟手続のニーズはあるのではないかと思いました。   次に,近隣の住民などがマンションの建築工事の差止めを求めるというような訴訟類型があるわけですけれども,この場合は,建物が建ってしまうと訴訟をする意味がなくなりますので,できるだけ早く結論を出してもらうという必要があります。こういう場合,現行の制度では,特に密行性を考慮する必要がないので,債務者となる相手方にも反論の機会を与える債務者審尋等を経る仮処分の申立て,民事保全法2条2項の申立てが考えられるわけです。   ほかにも,この仮処分命令の申立てに適しているような不動産の明渡しを求める訴訟とか,占有使用,建築工事,営業行為,通行等の禁止を求めたり,逆にその妨害の禁止を求める場合,自分が占有する物件に対する立入りの禁止を求めるとか,担保権の実行としての競売手続の停止,あるいは担保権の実行を禁止する場合には,現在は仮処分命令の申立てが活用されているわけですけれども,仮処分命令の申立てでは,権利のあるなしだけではなくて,保全の必要性などの要件が必要になってくるとともに,更に保証金が必要になり,建築工事の関係だと結構高い保証金が必要になるということがあります。その保証金が工面できずに仮処分の申立てができないという場合もありますので,仮処分命令の申立てというような代替的な手続があるにしても,それでは対応し切れない事案がありますので,そういう場合に今回の提案のような制度は有効な手段,選択肢として考えられるのではないかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私もこのような制度について,導入に賛成しております。これは従前から申し上げているとおりでありまして,そういう意味では増見委員がおっしゃったことと内容的にも同じような話になるわけですけれども,当事者にこういう選択肢を示すと,6か月ないし7か月といったことで終わりが見通せるということについては,やはり訴訟手続を利用しやすくするというメリットが大きいように思います。   いろいろな懸念が示されているかと思うのですけれども,まず,判決書に関しては,私自身はこの事実の要点及び主要な争点についての理由の記載でいいのではないかと考えております。元々使われる事件が,従前から一定の交渉があったり,今,大坪幹事からもかなり詳しい具体的な事例が御紹介されて,非常に勉強になったのですけれども,そういった事案とか,あるいは民事調停を含むADRの手続が事前にあって不成立になったような事案とか,そういったところで,どこを判断してもらいたいのかということについて当事者のニーズがあって,だからこういう制度を使いたいのだと両当事者が申立てをすると,そういうことになりますので,判決書自体は原案のとおりでいいのではないかと思います。これも大坪幹事や橋爪幹事もおっしゃいましたけれども,裁判所は,判決として出すわけで,かつ,一定のことについて判断してくれと当事者が求めているわけですから,そこはラフジャスティスにならないだろうと,そこは裁判官を信頼していいのではないかと私などは考えております。   御懸念については,例えば,いろいろなセーフティーネットが,この原案ですと二重,三重に張り巡らされていると思いまして,消費者契約に関する訴えと個別労働関係民事紛争は除かれている,あるいは途中でも通常の手続に戻れる,そして,不服申立ても異議であると,二重,三重にそういったことが考慮されていますので,それでも心配だとおっしゃる御意見については,正直,私は疑問を持っております。   訴訟代理人を付ける必要があるかどうかという問題については,私は従前から発言が揺れておりまして,そういう意味では定見がなくて,どちらもあり得るかなという程度にしておきたいと思いますけれども,以上のように,基本的にこの原案に私は賛成をしております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。私も基本的にこの原案に賛成しておりまして,訴訟代理人を付ける必要があるかどうかという点につきましても,恐らく多くの事件では訴訟代理人が付くということが想定されるのではないかとは思いますけれども,あえて法律で制限をするというまでの必要はないのではないかと,これも従前申し上げていることの繰り返しとなります。   そのこととの関係で,先ほど青木幹事から御発言がありました10(2)であるとか,あるいは2のところで,審理及び裁判をすることが困難であるときという要件立てになっている点について,これは御質問ということになるのですけれども,これは相当でないという要件立てと比べてかなり厳格なものを想定されているということになるのか,もしそうであるとすれば,確かに,訴訟代理人の関係もありますので,特に代理人が付いている当事者に限らないとする場合については,相当でないときには使うことにはならないという安全弁を設けておくということに合理性があるようにも思われましたので,その点について少し事務局の御趣旨を御説明いただけると有り難いと思います。よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。脇村です。ここの書きぶりについて,このようにしている趣旨でございますが,いろいろ御意見いただいているところなのですけれども,今回の提案につきましては,基本的に当事者にイニシアチブを与える前提の制度として全体を組んでいると考えています。そういった場合に,ある意味,裁判所も含めて縛るという方向の法制度にありながら,裁判所が相当というふうにしますと,ある意味,自由に外れるということは,さすがに趣旨に反するだろうということで,具体的に外れるケースについて客観的な方向で書かせていただいたというふうなことでございます。もちろん,このように書かれたとしても,客観的に困難であるかどうかを判断するに際しては,恐らくというか,部会資料に書いているとおり,弁護士の方が付いていらっしゃるかどうかなども含めて,実際に可能かどうかということを考慮して,ある意味,事案ごとに判断するということかと思っておりまして,そういったことで部会資料の説明を含めて書かせていただいたというところでございます。 ○垣内幹事 御説明ありがとうございます。起案の趣旨については承りました。   それで,資料の10ページの一番下の辺りにも記載されておりますし,今の口頭での御説明でもありましたけれども,訴訟代理人が選任されているかどうかということは,困難であるか否かの判断の際に考慮されるのではないかということで,これは私もそのとおりかと思っておりまして,この点に関する限り,審理をすることが困難であるというのは,この手続が適正に運用された場合に迅速で,かつ争点についてポイントを絞った充実した判断がされるという意味での,この審理をするということが,当事者本人の場合に当該本人については困難であると認められれば,これは困難であるという要件に該当するということになろうかと思われまして,そういう意味では,適用の結果において,相当であるという文言を使った場合と,この局面に関する限り,大きな違いは出てこないと理解をしております。その前提で,私は,そういうことであれば,この御提案のとおりでもよろしいのかなと考えているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 私もこの事務当局の原案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。当初,やはり情報量の格差がある消費者問題,それから労働紛争については,自由に自らこの制度を選択して訴訟による解決を望んだとしても,期待どおりにそれを使いこなせない場合もあり得るだろうということで,この手続の導入には反対の立場をとってまいりましたけれども,明確にそれを除外していただくことができましたので,そのような意味で,こちらの制度というのは新たな選択肢として意味のあるものになっているのではないかと感じております。   同じように情報の非対称性がある当事者としては,例えば企業間の取引では中小企業なども考えられるところなのですが,逆にこういった短期間で結論を出すことができる手続ということになりますと,例えば下請事業者,製造事業者などで,下請代金の請求事件などで活用していただくことができれば,例えば経済的な基盤が不十分で,早期に代金の回収ができなければ事業の継続が困難となるような事業者にとっても,こういった制度を活用して早期に必要な回収ができるというようなことも考えられますので,制度の濫用の可能性があらゆる点で潰されているということもありますので,存在する意味があるのではないかと思っております。逆に,裁判官の方にとっては,この第6の規定などがなかなか御負担になり得るのではないかとは思っておりますけれども,そういう意味で,この原案を支持したいと思っております。   それで,先ほど垣内幹事の方からも御質問のあった,裁判所が困難性のフィルターを掛けるということなのですが,困難性という言葉もまだ少しすっきりしないところがありまして,相当性のフィルターの方がまだ,例えば,裁判所が早く終わらせたいという意向でぐいぐい進めるとか,そういうような可能性を潰すのにも,むしろ相当性という言葉の方が適切ではないかとも思いましたので,今,事務局の説明を聞いて,それが杞憂だということであれば別ですけれども,まだ何かすっきりしないところがありますので,その点,更に検討していただければと思っているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 今までいろいろな御意見の中で,この手続の対象となる事件はどういう事件なのだと,そういう観点からの御意見がいろいろ出ていたかと思います。恐らく議論を進める上で,前提として,審理期間が6か月と法定されているのかどうかというところで大分変わるのではないかと思います。   もしも審理期間が6か月以内であると法定されているのだとすると,正にその期間内に審理が十分に終わる事件とはどういうものなのだということが問われることになるわけで,いろいろな方がそれぞれのイメージで御意見をおっしゃってくださっていますけれども,私自身はそのような事件というのはかなりまれだろうと思っています。実際のところ,例えば攻撃防御の提出期間が5月以内ということになりますと,当事者間での主張書面のやり取りというのは,その期間内には2往復が精一杯だろうと思います。当初の訴状と答弁書を含めても3往復の主張書面のやり取りで,攻撃防御方法の提出が必要と考えられるものが全て終わるという状況に持っていくというのは,相当難儀だと思いますので,6か月の期間でできる事件というのは大変少なくなると思います。その結果どうなるかといいますと,この手続が導入されたとしても,残念ながらほとんど使われず,人に知られない制度にまたなってしまうのではないかという懸念を私は強く持っています。残念ながら民事訴訟法の中には,存在はしていても使われていない制度というのは幾つか,少なからずあるわけでありまして,そういうものをまた一つ積み上げることにならないかという懸念です。   私が先ほど申し上げました,審理期間を法定せずに当事者間の合意に委ねるというのは,どのような事件であったとしても,計画を立てずにだらだら審理を進めるということが審理期間の長期化の要因になっているだろうという見立ての下に,計画を立てるというところに価値を置いた物の考え方で話をしておりますので,こういった事件類型が適しているのだということに踏み込むわけではないというものになっているものです。私の考えがどういう思考に基づいているのかということを御説明した方がよいかなと思いましたので,述べました。   それから,最後,若干細かい点なのですけれども,例外的に除外する事件類型につきまして,今回の御提案では消費者契約に関する訴えを除外事件とされています。これは,例えば中間試案などで示されていた「消費者と事業者の間の民事上の紛争に係る事件」よりも,両者間の契約関係を必要とする点で,狭くなっているように思います。例えば,いわゆるPL訴訟のように,消費者が契約関係にない事業者を訴えて被害救済を求めるという事件もありますので,そういった事件も適用対象から外すということが検討されるべきではないかと思いました。察するに,今回の御提案で消費者契約に関する訴えとされているのは,国際裁判管轄に関する民訴法3条の4第1項を範とするものではないかと思うのですけれども,むしろ紛争解決方法以外の点について当事者間の契約の存在を前提としない仲裁法附則3条1項を範とする方が適切ではないかと思った次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 先ほど長谷部委員から,どういう事件を前提にするのかという発言があって,私の前の日下部委員は,むしろ期間で拘束すること自体が問題で,それによって事件の対象が限定されると発言されていました。当初,日下部委員が期間及び審理計画について発言されたとき,私自身はコメントしなかったのですが,私は新たなという形で提言するのであれば,メニューとして明確なものを出すべきと考えています。審理期間も自由に定められるとなると,現行の147条の2以下の規定とどこが違うのかと思わざるを得ないところです。やはり期間は明確に対象事件をそれなりのものを考えて,提言すべきと思います。   長谷部委員が例示された,企業間であればADR,調停等を利用している,第三者の判断が欲しい紛争の類型や,証拠,主張も全てそろっている事件類型も一定あり得,我々も実際に経験しているわけです。そういう類型が典型であって,対象をどこまで広げられるのかによって新たな訴訟手続自体への委員それぞれが考えているものが違ってしまい,整理できないかと思います。期間限定を前提に,選択肢としての提案として私は受け止めて,意見を述べたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 今の阿多委員からの御意見について,コメントといいますか,日弁連の意見だけ紹介させていただきたいと思います。日弁連の意見は,期間については6月等と法定することなく,当事者の協議によって柔軟に定めることができるという考えに賛成するものです。一応御紹介させていただきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○橋爪幹事 審理期間を6か月と法定した場合,せっかくこの手続を設けても,ほとんど利用されなくなってしまうのではないかという御懸念がありましたので,その点についてコメントさせていただきたいと思います。   実際に裁判手続を担当してきた経験からいたしますと,審理期間の長短は,事件の客観的な性質,内容というものももちろんですけれども,むしろ当事者の主張の在り方,証拠の出し方やタイミングに大きく左右されるものと実感しております。そうしますと,紛争の全体像を理解して証拠関係も把握している当事者が,紛争解決の納期を重視して本手続の利用を双方一致して希望し,それを可能とするような主張立証をするということであれば,6か月以内で必要な審理を終えることのできる事件というものは決して少なくないと考えているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大坪幹事 もうほぼ議論は出尽くしていると思うので,気になっている点について1点,指摘させていただきます。裁判所と当事者の関係についてです。   今の民事訴訟法というのは争点中心審理に特徴があるといわれていると思いますけれども,その争点中心審理における争点整理というのは,裁判官だけがするというものではなくて,当事者も協力しなければできないということになっていて,協働進行主義というようなことがいわれています。藤野委員から,こういう手続が設けられたら裁判官が頑張るというふうな発言がありましたけれども,弁護士の中にやや裁判所に依存しすぎているような論調が見受けられるようです。裁判官が頑張っただけでは充実した迅速な争点整理というのは困難なことが多く,ある程度当事者が協力することが充実した迅速な争点整理には不可欠ではないかと思います。ですので,ほかにも本人訴訟ということを念頭に置いて議論がなされていることがありますけれども,一般に本人に求められている民事訴訟上の能力というのはかなり高いものであるので,特にこのような新しい訴訟手続を考える際にも当事者が果たすべき役割も前提として制度設計する必要があるのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   ありがとうございました。伺う限りにおいては,このような手続を設けることになお反対の御意見はありましたけれども,御発言の委員,幹事の大多数は,基本的にはこの提案を基にして考えるということについては御異論がなかったのではないかと思います。ただ,その規律の内容,これは今回が初めて実質的には出てきたものですので,中身については多々,ほとんど全ての項目についてといってもいいかもしれませんが,もちろん賛成の御意見もありましたし,御異論というか,変えるべきだという御意見もあったかと思います。事務当局においては,今日の御意見について精査していただいて,次の段階において,またこれに基づいて新たな形で御提案を出していただきたいと思いますけれども,事務当局から何かございますか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。頑張りますとしか今は言えないところなのですけれども,なかなか,制度としてがちっと書けるのか,要件の解釈で補うのか,皆様の御懸念と,制度の立て付けがどういう整合性がとれるのか,特に,頂いた御意見のうち,従前の甲案的なものに対する御批判を前提としたものを,今回の案をベースにしたものにそのままダイレクトに要件化できるのか,その辺も含めて,少し私の方としても,考えたいと思います。 ○山本(和)部会長 頑張っていただければと思います。   それでは,よろしければ次の項目に行きたいと思います。次は,簡易裁判所の訴訟手続に関連する論点ということになります。部会資料25の方でいえば4ページの第3のところでありますが,ここは【P】となっておりまして,その実質としては部会資料26の12ページ以下の「第4 簡易裁判所の訴訟手続に関する特則」というところになろうかと思いますけれども,まず,事務当局から御説明をお願いします。 ○西関係官 これまでの部会では,簡裁の手続につきまして,地方裁判所の手続と同様にIT化をするということを前提に,特則を設けるかどうかという点を中心に議論をされてきたところでございます。この論点につきまして,これまでに頂戴した御意見を踏まえまして,一定の要件の下で電話会議による口頭弁論を認めること,また,ウェブ会議による証人尋問の要件を緩和すること,この二つにつきまして具体的な提案をさせていただいたところでございます。これらの点につきまして御審議を頂ければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,この論点につきまして,どなたからでも結構ですので,御質問あるいは御意見を頂ければと思います。 ○小澤委員 司法書士が電話会議による参加をすることというのはほぼないと思っていますけれども,簡易裁判所を利用する本人訴訟の当事者にとっては非常に歓迎される規律を事務当局から御提案いただいたと受け止め,感謝申し上げます。公表されたばかりの令和2年度の司法統計第13表によりましても,簡易裁判所において原告本人訴訟率は81.1%,被告本人訴訟率は86.31%,一方又は双方が本人訴訟である率というのは93.35%と依然として高水準になっています。説明で述べられておりますとおり,陳述擬制が続行期日においても認められており,書面の提出で審理が進むことが多い簡易裁判所においても,電話会議によって参加することが可能となることで,より充実した審理をすることができるようになると考えています。   例えば,東京簡易裁判所ではいわゆる業者事件を専属に取り扱う部署が設けられており,こういった事件の大半では,被告が分割払いを希望する記載した答弁書を提出しましても,その点自体に争いはないので,原告が結審を求めれば,そのまま結審をしてしまい,次々と事件が流れていく,そういう状況だと理解しています。電話による出頭が認められることで,このようにこれまでは欠席判決となっていた事案であっても,電話でよいのであれば対応しようとする被告が増えることで,口頭弁論から和解手続に移行され,司法委員などが関与するなどによって和解が成立することが多くなったり,和解が成立しなくても,当事者の言い分をしっかり聞いた判決が増えると考えています。ひいては強制執行の減少にもつながるのだろうと期待を寄せているところであります。   技術的な点で補足を申し上げますと,一方当事者がTeamsなどによるウェブ参加をしていたとしても,Teamsには電話番号からアクセスするという機能もございますので,Teamsを活用することで,一方がウェブ会議,もう一方が電話会議という参加もできると考えられます。このように利用しますと,今まで書面提出というアナログな手続で期日を続行していたところ,IT機器の利活用によって電話会議による参加もできることになったといえるのではないかと思っています。   本人の起案した書面の提出だけでは裁判所としても当事者の真意を理解しにくいことが多いと思われるのですが,電話会議による参加を認めることで口頭による補充説明が認められれば,紛争の要点を迅速に把握することができるのだろうと期待できると考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 まず,1の音声の送受信による通話の方法による口頭弁論については,新たな要件が付されたものが提案されていますが,結論は反対です。2については賛成という立場です。   1についてコメントをします。従前,2点の問題点の指摘があり,一つが本人確認等の問題点,もう一つは憲法上の公開原則の問題点という指摘がありますが,私は本人確認についてコメントをします。当事者に異議がないときという要件が付されていますが,本人への成りすましによる判決の騙取では,本人でない他人が異議ありませんと発言するのですから,異議要件を付したとしても意味がありません。本人確認について,どこまでのことを想定するのかを考えると,他の業種と比較するのはどうかとは思いますが,例えば,コールセンターを使って本人確認等を実施して契約を成立させる実務では,相当の内容を本人に発言をさせて,なおかつ録音をして,それら手続を経てやっと本人確認を了したと認めて契約を成立させるという実務が行われています。では,簡易裁判所での本人確認でそこまでのことを想定するのか,本庁併置の簡易裁判所等での口頭弁論では相当数の事件の指定されているわけですが,その場で長時間掛けて本人確認をすること自体かなり支障がある,無理な話だとは思います。   説明書等では,弁論準備手続や他の手続における電話会議の利用について記載がありますが,運用としては,簡裁の口頭弁論は本庁併置ですと数分刻みでかなりの件数が指定されているのに対して,弁論準備等は元々,地裁の例でいいますと,30分を1単位でして時間を掛けて手続を実施している運用の状況もあります。となりますと,簡易裁判所で電話による会議が必要であれば,あえて口頭弁論で実施する必要はなくて,弁論準備手続等を利用すれば足りるのであって,口頭弁論においてあえて電話会議を導入する必要は高くないと思います。   先ほど小澤委員から,欠席判決の率が下がるのではないかという話がありました。しかし,答弁書等を提出していれば,次回以降は書面による準備手続等での対応が可能であって,電話会議を導入することによって欠席判決率が変わるということはないと考えます。むしろ,他の手続を用いて裁判所がWEBや電話会議で本人の声を聴くことも可能なわけですから,あえて口頭弁論の場において,本人確認等が難しい状況において,電話による通話方法を導入することには反対したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 私からも,音声の送受信の方法による口頭弁論について意見を申し上げたいと思います。結論としては今,阿多委員がおっしゃいましたのと同様に,この提案にはかなり強いちゅうちょを覚えており,現状では反対ということになります。   今回の御提案では,簡易裁判所において,当事者に異議がないときは音声の送受信による口頭弁論を可能とする提案がされております。これについては手続要件を緩和するものですから,手続が柔軟になることは当然でして,それが便宜をもたらす場合があることは否定はいたしません。しかし,ここで審議すべきはそうした便宜の有無ではなくて,映像を伴わない手続の公開で憲法上の公開原則の要請を満たすかどうかではないかと思っており,その点について十分に検討され,一定の整理を付けなければならないと思っています。その点からは,当事者に異議がないことという要件を付加することは,この問題に対する解決にはなり得ないと思っています。   この点,部会資料では13ページの2の末尾におきまして,「手続自体が公開されれば,その要請を充たすし,その趣旨から,必ず映像が必要となるとまではいえないように思われる」という説明がなされていますが,それだけです。仮にそのような理解でよいなら,裁判官,当事者及び代理人のいずれも受訴裁判所の法廷にはいない状態での完全なリモートの手続で,音声だけが法廷に流れているという状態でも公開原則を満たすということになるわけですが,私はそこまで割り切った考え方は現時点ではとてもできないと思っています。   また,事が憲法の問題であるためと思うのですが,私を含めて部会の委員,幹事から憲法解釈について具体的な御意見はなかなか出にくいし,それはやむを得ないことでもあろうかと思います。しかし,憲法に反する立法はできない以上,委員全員が映像を伴わなくても憲法上の公開原則を満たすという考えを明確に支持するのでない限り,要綱案に盛り込むことはかなり危険ではないかと思っています。この提案に積極的な御意見をお持ちの方がいらっしゃることはもちろん承知しておりますけれども,検討を深めるためにも,憲法の公開原則の要請についてどのようなお考えをお持ちであるのかお聞かせいただきたいと思っています。   なお,音声だけでも公開原則を満たすという考えを採るのだとしますと,別途検討されておりますハイブリッド方式の証拠調べについても,口頭弁論と位置付けることに理論的な障害はないことになるだろうと思います。憲法の公開原則の問題はそちらとも関わっているので,考え方が一貫しているかという観点からの検討も必要ではないかと思いました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。私も反対の立場でございまして,今の日下部委員のおっしゃる賛成の方の意見ではございません。私は,簡易裁判所の訴訟手続に関する特則は設けない方がいいと考えております。1の方は,本人確認に問題があると思っております。これは阿多委員等もおっしゃったことでございます。当事者に異議がない場合とありますが,この点どうなのか,懸念がございます。   2の方ですが,そもそも簡易裁判所は利用しやすいという利便性を高めるべきではありますが,その内容が不確かなものであってはならないと認識しております。ここには書かれていませんが,調書を作成しなくてよい現状は問題があると考えておりまして,簡易裁判所でも調書は作るべきという意見を持っております。その上で,2の方ですけれども,証人尋問がウェブでいいということは,メモを見ながら発言すること等をやめさせることはできないと思います。法廷外で不当な影響を受けていないか確認する方法が困難なのではないでしょうか。内容では,裁判所が相当と認めるときはとありますが,それを相当と認めることがどの程度確実に行われるかということに疑問がございます。よって,この特則は設けるべきでないという考えでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○笠井委員 私は,真っ向から反対というわけではないのですけれども,基本的には消極的な意見を持っております。要するに,そこまでの必要性がないのではないかと思っております。ウェブ会議でできる人がやるという手続にしておいて,どうしても不出頭で電話だけで和解がしたいということであれば,擬制陳述プラス和解を電話でというようなこともできると思いますし,簡易裁判所だからといってこういう,電話でも口頭弁論できるという手続をあえて作る必要はないのではないかと思います。   先ほど日下部委員がおっしゃった憲法の公開原則との関係なのですけれども,私自身はそことの関係では,電話でも,現在の372条3項の少額訴訟は,これはやはり1回の口頭弁論期日で審理を完了させていますので,この証人尋問というのは電話で,音声の送受信により同時に通話する方法でできていて,この証人尋問自体は口頭弁論期日でやっていると私は理解していたので,そういう意味では,現行法にもあるのではないかと理解しています。その旨,書いたこともあって,ここは誤解がありましたら恥ずかしいのですけれども,御教示いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。事務当局から何か確認することはありますか。 ○小澤委員 御意見,ありがとうございます。幾つかの点で少し補足できればと思います。   どなたかの発言に,現行制度のままでも工夫することによって目的は達することができるのではないかという御意見もあったと思います。ただ,現に一部の独立簡裁においては,手続の詳細は不明ですけれども,口頭弁論の際に事実上,欠席当事者に電話をし,意向の確認をしているということも聞いております。しかし,多くの裁判所ではこういう工夫がされることはなく,欠席判決による多くの債務名義が作成されているという事実があるのだろうと思っています。当事者の意識を変えて口頭弁論への出頭意識を高めるためにも,今回の改正で新たな規律を設ける必要があるのではないかと思っています。新たな規律が設けられることによって,裁判所もこれまで直ちに判決で終了させていた事案について,被告に電話での参加を促して,和解を試みることも多くなるのだろうと思っています。そういう意味では,口頭弁論の活性化にもつながることとなるので,新たな規律として,このような規律を求めるのは意義があるのではないかという点が1点であります。   そして,公開原則に反するという御意見はもちろん理解していますが,笠井委員からおっしゃられた点も正にそうだと思いますが,この電話会議による口頭弁論の参加が公開主義に反するという指摘について,これまでの部会の議論において,ウェブ会議による口頭弁論の参加については公開主義に反するという結論には至っていないと認識しておりまして,取り分け簡裁では,続行期日においても擬制陳述により,当事者が出頭せずとも主張を擬制することができて,出頭した相手方はその陳述を受けた弁論をすることが認められているように,口頭弁論の参加方法については総体的に緩やかに規律されていると思っています。また,簡易裁判所は市民に身近な裁判所ということで,規律の設けられ方についても,まずは当事者の利便性を優先すべきなのだろうとも考えています。したがいまして,IT化の規律を設ける際,IT機器の活用について同様に考えることも許容されるのではないかと思っていますが,電話会議による口頭弁論の参加について,具体的にどのような点が公開主義に抵触するのかということは御教示いただければと思っています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○日下部委員 公開主義との関係でやはり気になるのは,映像を伴わないというところが違うわけでして,世の中,百聞は一見にしかずという言葉もあるわけですから,どういう状況で参加している人がいるのかというのが見えないという状態でも公開原則を満たすといえるのかということについて問題意識を持つのは,さしておかしなことではないだろうと思っています。   あと,先ほど笠井委員の方から,私が十分理解できていなかったかもしれないですけれども,少額訴訟における電話による証人尋問の規定に言及されていらっしゃったのかなと思うのですけれども,これは証人がリモートで参加するだけのことであって,当事者が電話会議方式で参加する話ではないと思います。私がお話を誤解していたのであれば申し訳ございません。   今,ちょうど証人尋問の話をいたしましたので,ついでと言っては何ですが,ウェブ会議等による証人尋問等の要件を,「相当と認めるとき」に緩和するという今会の部会資料での考え方についてもコメントさせていただきたいと思います。この点については私自身,はっきりとした定見を持つには至っていないのですけれども,今回の部会資料の13ページの末尾から14ページにかけて,法278条により尋問に代わる書面の提出が相当性の要件のみで認められているのであるから,それよりも厳格な要件を設定することは均衡を失するということが指摘されているかと思います。しかしながら,現行法において簡易裁判所における証人尋問等も規律している法204条は,簡易裁判所における尋問に代わる書面の提出要件を定める法278条よりも厳格な要件を設定しているのですから,言わば不均衡は既に現行法に内在していますので,その不均衡を理由にウェブ会議等の方法による証人尋問等の要件を法278条と同様の要件に緩和すべきだという説明では十分ではない,難しいように思います。現行法204条が定めている厳格な要件を,今般のIT化を契機に,簡易裁判所においては相当性の要件一本に緩和すべきという,より積極的な理由が必要ではないかと思うのですが,私自身はそこまで積極的な理由があるのだろうかという疑問は拭えないでおります。間違ったことを申し上げた点もあるかもしれませんが,御教示いただければと思います。 ○垣内幹事 垣内です。私は,特に第4の1について発言をさせていただきたいと思いますけれども,結論からしますと,どちらとも決めかねているというのが正直なところです。今までメリットを強調される御意見と,それから,問題点としては,大きく言って本人確認の問題と公開原則の問題を指摘されていると理解をしております。   そのうち公開原則との関係ですけれども,笠井委員が御指摘されたような少額訴訟に関する規定というものがありまして,これは確かに日下部委員がおっしゃったように,当事者が音声でということではないということかとは思いますが,一般に公開の趣旨がどの場面で最も重要視されるだろうかと考えたときに,これは事実の狭い意味での弁論,主張という局面よりも,むしろ証人尋問等の人証調べを公開で,これは映像もある形で行うということが非常に重要なのではないかと思われるところで,現在の一般の民事訴訟の在り方を見ましても,主張の部分については実質的には弁論準備手続等においてされていたものが口頭弁論に上程をされると,そして,口頭弁論の期日は集中証拠調べの期日として行われるということが一般的なのではないかと思います。そういう意味で,証人尋問について証人が音声で尋問を受けるということが憲法上,許されているという前提に立つとするのであれば,こちらの当事者の主張について音声でということも憲法上許されないとまではいえないのではないかと現時点で私は理解をしております。ただ,公開原則に反しないとしても,その趣旨をどの程度,様々な局面でいかしていくべきかという問題がありますので,みだりに音声だけでいろいろな手続をやっていいということに直ちになるものではないと思いますので,この場面において,音声のみの手続,口頭弁論を認めるかどうかについては相応の慎重な判断が必要な問題だろうと思います。   他方,本人確認の問題につきまして,確かに映像があった方が音声のみよりは本人確認がより確実にできるということはあるのだろうと思われますけれども,懸念されている問題としては,典型的には,なりすましと申しますか,これは結局,原告,被告が通謀するなどして債務名義,確定判決を騙取するというような事態を想定されているのではないかと思いますけれども,仮にそのような場面であるとしますと,わざわざ電話で口頭弁論に参加するという手間を踏むことがそういった弊害を増やすことにつながるのかどうかといいますと,別に欠席するといったもっと簡単な方法ということも可能だということを考えますと,なかなか,直ちに本人確認の問題がどこまで致命的なのかというのは,私自身は少し,よく分からないと感じる部分もあります。   そういう意味では,音声の送受信による通話の方法による口頭弁論が直ちに違憲であるとか,本人確認の点から全く是認し得ないということはためらわれるところですけれども,これは笠井委員の御指摘がありましたように,今後,ウェブでも口頭弁論ができるというのが一般的な規律となっていくというときに,一足飛びに電話まで認めるというところが必要なのかどうか,ウェブであれば対応できるという当事者も相当数いるのではないかということを考えますと,その状況を見た上で,更に簡裁ではなお電話が必要なのであるということであれば,その先,もう一歩踏み出すという検討の在り方も考えられるのではないかと思われまして,そういう意味では,もう少し慎重に考えてはどうかという辺りが現在における私の考えということになります。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。かなり賛否が分かれたように思いますけれども,事務当局としては今後,進めていく上で,いかがでしょうか。 ○脇村幹事 ありがとうございます。部会資料自体は,先ほどから憲法の話が出ていますけれども,恐らく,私たちとしては現時点でも,これは政策判断の問題であろうと思っておりますので,直ちに憲法違反になるとは思っていない,今日お話を伺っていても,憲法自体の問題なのかというふうには思っております。ただ,一方で先ほどから必要性あるいは相当性について,様々な御意見を頂いたところでございまして,そういったところを払拭できなかった場合の,これについて提案するかどうかは,改めて少し考えたいとは思っています。ただ,利便性向上することもありますので,直ちにこの案を否定するのがいいのか,ただ,ウェブが入るのに,あえてそこで音声を入れるのかについて,改めて今日の御議論を考えながら,少し当局としても考えていきたいと思いますし,次回,少なくとも何らかの形でこの考えを提示したいと思います。ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,よろしければ,引き続きまして,今度は部会資料25の方の4ページ,「第4 費用額確定処分の申立ての期限」,この点について事務当局から資料の説明をお願いします。 ○大庭関係官 御説明いたします。   「第4 費用額確定処分の申立ての期限」の本文の記載は,従前部会で議論いただいていたところを踏まえ,申立てに10年間の期間制限の規律を設けることとするものでございます。従前の記載との変更点としまして,本文の1ですが,期間の起算点について,従前の部会資料では訴訟費用の負担の裁判が執行力を生じた日としておりましたところ,訴訟費用の負担の裁判が確定した日としております。これは,従前の記載ですと,判決に仮執行宣言が付されていた場合等に起算点が流動的になる期間が生じ得る場合があることから,表現を改めたものでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この論点につきまして御質問,御意見があれば,お出しを頂きたいと思います。 ○阿多委員 提案自体は賛成したいと思いますが,最高裁に関連して御質問したいと思って発言をしました。現状,訴訟記録の保存期間については,保存規程等において最長5年となっているかと思います。そうしますと,今回,10年以内であれば訴訟費用の確定の裁判ができるとなっても,記録がなくなるのであれば,事実上それは不可能になるかと思いますが,今回の提案を受けて,訴訟記録の保存期間等を変えることを予定されるのかについて教えていただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,最高裁からお願いします。 ○橋爪幹事 記録の保存期間につきましては,事件記録が電子化されたとしても,一定のランニングコストを要するため,無制限に保存できるようになるわけではなく,こうしたコストや終局後の記録を利用するニーズの程度などを踏まえて適切に検討されるべき事項であると考えております。したがいまして,現時点で記録の保存期間について定見があるわけではなく,確たることは申し上げられませんが,今回新たに定められる費用額確定処分の申立て期間の長さも考慮すべき要素の一つであり,これも踏まえて適切に決定していきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 今の御回答で結構です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。   特段の御異論はないと伺ってよろしいでしょうか。   それでは,引き続きまして,今度は同じく部会資料25の5ページ,「第5 IT化に伴う書記官事務の見直し」です。この点は,「1 担保取消しと書記官権限」,「2 電子調書の更正」という二つありますけれども,まとめて取り上げたいと思いますので,事務当局から資料の説明をお願いします。 ○大庭関係官 御説明いたします。   「第5 IT化に伴う書記官事務の見直し」の「1 担保取消しと書記官権限」につきましては,従前,法第79条第1項の担保取消し,また,同第2項及び第3項の場合の担保取消しについて,裁判所書記官の権限とすることの如何について,それぞれ御議論を頂いておりました。これらのうち法第79条第1項の担保取消しにつきましては,反対の御意見も多かったところを踏まえ,本文には記載しないこととしたものでございます。法第79条第2項及び第3項の場合に関する本文及び(注)の部分の記載は,従前の部会資料と同様の記載になってございます。   引き続き御説明いたしますが,6ページの「2 電子調書の更正」は,和解等に係る電子調書の更正決定及び口頭弁論の電子調書の更正処分についての規律でございますが,従前部会において御議論いただいたところを踏まえ,不服申立ての手段につきまして即時抗告に統一をするということで整理して記載し,それに伴いまして,判決の更正決定についても同様に統一をする趣旨で,(注)の部分にそのことを記載しております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま御説明のありました部分,どちらからでも結構ですので,御指摘いただける点があれば,お願いします。 ○阿多委員 前回質問したことの確認ですが,まず,1の担保取消しについて,いわゆる同意の証明方法等について,従前から訴訟上の和解の場合には和解条項の中に担保取消し同意と抗告権放棄の条項を記載しているわけですけれども,書記官権限になったとしても,裁判所の取扱いとしては,従前同様の扱いになるのかという質問です。   2点目ですけれども,今度は裁判外の和解の場合に,担保取消し同意ですけれども,従前は意思確認として,本人の場合は印鑑証明,さらには代理人の場合は特別授権に関する事項の入った委任状等を徴収することが行われています。今後の扱いの話かと思いますが書記官権限等になることで取扱いに変更があるのか,ないしは,今まで運用だったとは思いますが規則化等について裁判所の方で何かお考えがあるのかを紹介いただけたらと思います。 ○山本(和)部会長 取りあえず,それでは,まず,事務当局から。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく運用はまた最高裁からあると思うのですけれども,実体法上の話をさせていただきますと,従前も結局,同意の有無につきましては,あったかないかという証明の問題だと思っております。結局,裁判所に対して同意をしたからどうこうではなくて,相手方といいますか,担保を申し立てたものに対して同意したかどうかが問題であったと思いますので,そういう意味では,書記官権限にしたかどうかによって,大して何か変わることはないのではないかとは理解しているところでございます。その上で,その証明文書としてどこまで要求するかということだと思いますが,恐らく,書記官権限にしたこととそれが直接証明によって何か影響することがあるのかなと私の方は思っているところでございますが,実体法上は先ほど言った話になると思いますので,その上で裁判所の方で適切に運用されるのかと,あるいは裁判所は今,考え方があるかもしれませんが,運用を検討されるのではないかとは思っております。 ○山本(和)部会長 裁判所の方から何か補充していただくことはありますか。 ○橋爪幹事 現時点で考えている運用として,特に付け加えることはございません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。阿多委員,いかがでしょうか。 ○阿多委員 本来の法改正の話ではないことを質問し,申し訳ありません。   2について,(1)では和解に係る電子調書の更正決定,(2)では口頭弁論調書となっているのですが,(注)で入っています判決の更正決定は257条1項でいつでも更正決定ができるとしつつも,2項で即時抗告を適法な控訴があったときまでに制限しています。では,口頭弁論調書の訂正の申立てについて,期間制限を考える必要はないのか。  控訴された段階で,控訴審で原審の口頭弁論調書の更正が行われると,原審の判断の前提に影響する可能性があります。調書の訂正はいつでもできるという点には疑問があり,時的な限界を設けるべきというのが意見です。   和解は成立した後の争い方に関連することかもしれませんが,再開のための期日指定の申立てがあった後に,和解条項の中身に関連する更正が制度的に可能なのか,やはり時的な限界があると思いますが,如何でしょうか。事務当局にお伺いできればと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。恐らく今回の改正は,基本的に従前の解釈を踏まえてされていたものだろうと思いますが,恐らくこれまでも調書異議というものは時的制限,解釈上あったと思いますが,こういった更正自体について何か時的限界があるという議論は恐らくなかっただろうと思います。私としては,そういうこともありましたので,今回,前回ですかね,出した提案から,この調書の更正の要件として,誤記その他,これに類する明白な誤りということで,一定の内容について縛りを掛けております。これは判決の更正を参考にしたものでございますが,そういったことで縛りを掛けることはあるとはしても,時的制限を直ちに今の段階で導入するのは難しいのではないかと思います。おっしゃっていた指摘につきましては,恐らく運用上の問題として,そういったケースについて,後ですることの問題そのものの話ではないかと思うのですけれども,そのことを踏まえて,なお時的限界を設けることによって,後で明白な誤りについて一切直せなくなるということは,恐らくこれまでの部会の議論の中でもそういった話はなかったのではないかと理解しているところでございます。 ○阿多委員 判決の内容に影響する調書の更正に時的な限界がないのは問題であり,当審に係属中であればいつでもというのがあるのかもしれませんが,移審した場合,控訴された場合等は,調書の更正はできない旨を明記すべきという意見です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○脇村幹事 判決の更正決定に時的限界というのは,どの辺りの話であるか教えていただくと,すみません,何条ですかね。 ○阿多委員 更正決定の257条の2項のただし書の即時抗告できる,ただし判決に対して適法な控訴があったときはこの限りでないという,その部分について関連すると思って発言をした次第です。 ○脇村幹事 恐らく257条2項の更正決定につきましては,控訴があった場合にはその中で争うというだけの話でして,それ自体が何か更正決定自体の時的限界を定めたものとは多分違う話かと思いますので,少しそこは議論が違うのだろうと思います。もちろん調書につきまして,例えば控訴審の中でいろいろ議論している際に,移審に変わったケースがどうするかという議論はあるのかもしれませんけれども,時的限界として今まで議論はされていなかったのではないかとは思っているところでございます。 ○阿多委員 257条2項は,むしろ控訴された以上控訴審でというのが一般的に説明されている内容ですが,控訴審に移審後に調書が更正されること自体,それでよいのかと思うものですから,それを時的限界と呼ぶのが適切かも分かりませんが,制限を設けるべきとの趣旨で発言したと理解いただければと思います。 ○山本(和)部会長 御意見として,それでは。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,基本的には,阿多委員から御発言はありましたが,今回の提案については御異論は特になかったということかと思います。   それでは,よろしければ,最後になりますけれども,部会資料25,7ページ「第2部 民事訴訟費用等に関する法律の見直し」です。これは第1から第3までありますが,これもまとめて取り上げたいと思います。事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○園関係官 御説明いたします。   「第2部 民事訴訟費用等に関する法律の見直し」の第1から第3までにつきましては,従前御議論いただいた内容を整理したものでございます。 ○山本(和)部会長 ということで,簡単でありますが,従前どおりということでありますが,この際,どの点についてでも結構ですので,御質問,御意見があれば承りたいと思います。 ○藤野委員 主婦連合会,藤野でございます。8ページの第2のことで確認させていただきたいと思います。書面での申立てとITを用いた申立てでは,後者の方が低額とするとありますけれども,これはオンラインを用いた場合に実際の郵送料が掛からないということにおいての低額という意味でしょうか,それとも,IT,オンラインを用いることにインセンティブを与えるために手数料そのものを減額するという意味の書き方でしょうか。これについて確認させてください。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお答えをお願いします。 ○園関係官 では,関係官の園の方からお答え申し上げます。今,藤野委員の方から御指摘を頂いた,申立ての種類によって実際に掛かるであろう郵便費用,そして,さらにはオンライン申立てにインセンティブを付与するという政策的な目的,両方を考慮して,具体的な金額について検討を進めてまいりたいと考えております。 ○藤野委員 ありがとうございました。その場合に,書面を用いて申立てをする場合に,現状より高くなることは考えにくいと思います。その点の御配慮はよろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   ありがとうございました。それでは,これで本日御審議いただくべき事項は全て御審議いただけたということになりますので,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   最後に,次回の議事日程等につきまして事務当局から御説明をお願いいたします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。次回の日程は,日時が令和3年11月5日金曜日,午後1時から午後6時までを予定しております。場所については,すみません,現在未定でございますが,また追って御連絡させていただきたいと思います。   次回会議におきましては,被害者の氏名等秘匿制度につきまして,実施しておりました追加試案に対するパブリック・コメントの結果を踏まえつつ,御議論を頂く予定にしております。そのほか,詳細につきましては,また追って皆様に御連絡させていただきます。ありがとうございます。 ○山本(和)部会長 それでは,これで法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第18回会議は閉会にさせていただきます。   本日も長時間にわたりまして熱心な御審議を賜り,誠にありがとうございました。 -了-