法制審議会 民法(親子法制)部会 第23回会議 議事録 第1 日 時  令和3年12月21日(火)自 午後1時30分                      至 午後4時29分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  要綱案(案)に盛り込むことの是非を検討すべき論点 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(親子法制)部会の第23回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   最初に佐藤幹事の方から、本日を含めたこの部会の開催方法等についての御説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 本日もウェブ参加併用で開催しておりますので、御注意いただきたい点を2点申し上げます。まず、御発言中に音声に大きな乱れが生じた場合につきましては、こちらで指摘をさせていただきますので、適宜の御対応をお願いできればと存じます。また、御発言の際には、その冒頭にお名前を名のっていただいてから御発言をお願いいたします。   本日、休憩時間の入れ方につきましては、1時間半程度をめどに15分程度の休憩を入れさせていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日は委員の御欠席はないと伺っております。   次に、本日の審議に入ります前に、配布資料の確認をさせていただきます。これも事務当局の方からお願いをいたします。 ○小川関係官 今回の配布資料は、部会資料23、本日の議事次第と配布資料目録という形になっております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   本日の審議の予定についてでございますけれども、前回の会議の最後に要綱案の原案をお示しできるように努めたいという趣旨のアナウンスがありましたが、まだ幾つか議論をすべき論点が残っていると考えられますところから、事務当局の準備状況なども勘案いたしまして、本日は要綱案の原案に盛り込むことの是非を検討すべき論点ということで、積み残した論点につきまして御議論を頂ければと考えております。   具体的には、本日の部会資料23で申しますと、まず、嫡出否認制度に関する規律の見直し」、部会資料23の第3、1ページ以下になりますけれども、この部分について御議論を頂きたいと考えております。その次に、第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子に関する民法の特例の見直しということで、第4、資料では16ページ以下になりますが、この部分について御議論を頂き、最後に、認知制度に関する見直しということで、第5、17ページ以下について御議論を頂く。この順で、三つの項目について御議論をお願いしたいと考えております。いつもより論点の数が限られておりますので、もし議論が早く終わるようであれば、年末でもありますので、本日は早めに会議を終了するということにしたいと考えております。   さっそく、本日の審議に入らせていただきたいと思います。まず、「嫡出否認制度に関する規律の見直し」の論点につきまして、事務当局の方から御説明お願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。お手元の部会資料23を御覧ください。今回の資料は、前回の部会資料22-1の「要綱案のたたき台(2)」のうち、更に検討すべき論点に関する項目、具体的には第3から第5までの規律を抜粋したものになります。したがって、第1の懲戒権に関する規律の見直しと、第2の嫡出の推定に関する規律の見直し、それから再婚禁止期間の廃止についての部分については内容に変更はございません。   第3についてですけれども、前回資料からの実質的な変更点については下線を付しているところです。変更点は幾つかございますが、まず大きな点として2点申し上げます。成年に達した子の否認権の関係では、前回の会議で、これを認めることに肯定的な御意見が多かったことから、2ページの(4)③に規律を追記し、見直しを行うことでどうかというふうな形で提案をさせていただいております。また、ブラケット付きではございますけれども、(5)として父がした子の監護のための費用の償還に関する規律の新設という項を設けております。この2点について、まず御説明をいたします。   補足説明の6ページを御覧ください。3ですけれども、まず、「成年に達した子の否認権」という呼称については、成年に達していない者も行使できる規律としておりますので、若干正確ではない面がございました。他方で、子の否認権との関係では出訴期間の特則と位置付けられますので、今回の資料より「子が自ら否認権行使するための嫡出否認の訴えの出訴期間の特則」という表題で書かせていただいております。   中身についてですけれども、継続的に同居した期間が3年を下回るときという要件については、前回会議等で、これを扶養の実態といった形に改めるべきではないかという御指摘もあったところですけれども、やはり積極的に主張立証すべき要件としてなかなか難しい面があるということ、それから、社会的な親子関係の実態があるということのメルクマールとして同居自体にも重要な意味があると考えられることから、本資料においても要件としては同居というものを置かせていただいております。このほか、7ページ以下のイ、ウでは、同居の継続の要件該当性が問題となる場面を具体的に挙げて検討を加えているところです。   10ページの(4)に参りまして、前回、成年に達した子の否認権を設けることについて肯定的な御意見が多かったものと認識しておりますけれども、改めてこれまでに指摘されてきた懸念点も含めまして整理をしております。簡単に申し上げますと、アから順に、アは現在の嫡出推定制度に与える影響や立法事実は何かといった問題、イが父による適切な養育が行われないことになるのではないかという懸念の有無、それからウが、子にとって父子関係を選択できることになるということがありますので、それが子の成育に与える影響などを考慮する必要があるのではないかという懸念を書かせていただいているところです。こういった事情を含めまして、この規律を設けることの当否について御意見を頂ければと思います。   次に、13ページの5です。嫡出否認の判決の効力に関する規律の新設等についてと書いております。嫡出否認がされた後に、それまで子を養育していた父、資料上は元父としておりますけれども、この元父が子の監護のために支払った費用を子や本来の扶養義務者に請求することができるのかということが問題になります。嫡出否認の訴えの出訴期間を延ばすことに伴って、今後問題となる事例も生じ得るというところですので、今回ブラケット付きではありますけれども、一定の規律を提案しているところです。   具体的に申し上げますと、まず、子に対する請求についてはできないということを明記しています。これは、子の監護のための費用というのは性質的に、経済的に自立していない子の生活保障のために支払われたものであるということ、嫡出否認制度は生物学上の父子関係の存否にかかわらず、嫡出否認がされるまでの間は母の夫に法律上の父としての責任を負わせることとしているといった事情を踏まえますと、子の利益を保護するという観点から、元父の子に対する請求を制限するということが正当化されるのではないかとも考えられますので、こういった規律を提案しております。他方で、他の扶養義務者、具体的には新たに子の法律上の父となった者や子の母に対する請求ですけれども、これについては制限しないという形にしております。これら二つの規律を内容とするものですけれども、費用負担の問題として全体として考えるべきものとも考えられますので、この二つの規律を一体として置くべきか否かという形で提案させていただいております。大きな2点の変更点は以上となります。   以上のほかに幾つか修正がございますので、御説明します。資料の4ページに戻っていただきまして、補足説明の1が母の否認権についてですけれども、ただし書の規律から「目的による」という記載を落としております。これは、母の否認権の制限の趣旨について従前より権利濫用のようなケースで母の否認権を制限するというように考えられておりましたので、これによってその実質を変更する趣旨ではないということを御理解いただければと思います。   次に、その下の補足説明2の部分ですけれども、前夫の否認権についてです。5ページの(2)で、出訴期間について、前回、委員から御指摘があった点を踏まえまして、前夫の否認権について、子の出生を知った時から3年というような期間制限に加えて、子が成年に達した後はすることができないというふうな制限を設けることを提案しております。   次にですけれども、6ページの(3)で、母が複数回離婚と再婚を繰り返しているような場合について、実質的には併合して提起しなければならないという方向性は、前回より御議論いただいていて、異論のないところだとは思うのですけれども、規律の仕方として、今回の資料では、人事訴訟法に併合提起をしなければならないとの規律を置くことを提案しているところです。   次の変更点ですけれども、12ページの4に参りまして、嫡出の承認に関する規律です。先ほどの出訴期間の特則を設ける関係で、子についても嫡出の承認をすることができる旨の規律を置くことを提案しております。これは、出訴期間の特則を設けることによって子自身の身分関係が不安定になるということの指摘があったことを受けまして、子が自ら承認をすることで身分関係を安定させる余地というのを認めるべきではないかというふうな観点から、嫡出の承認ができる主体として子を追加することとしているものです。なお、嫡出の承認の意義については現行法の理解も一定ではないというところですけれども、ここでは少なくとも母が子に代わって承認をするということはできないというふうなことを前提に考えているところです。   それから、16ページの6ですけれども、子が死亡した場合の否認権の承継に関する規律について置いております。従前は承継に関する規律を置くことも考えられるというふうな旨を注書で書かせていただいたところですけれども、子の否認権自体が子自らの判断で行うことに意義のあるものであるということからいたしますと、子が死亡した場合の承継はしないという前提で、特段の規律は置かないということで提案をしております。   修正点についての説明は以上となります。第3の説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。第3についての修正点の御説明を頂きました。主な修正点として二つの点、一つは、従前は成年に達した子の否認権としておりましたけれども、今回は子が自ら否認権行使をするための嫡出否認の訴えの出訴期間の特則に関する論点となっております。補足説明の3、6ページ以下がこれに対応しますが、この部分の規定と、それから、嫡出否認の判決の効力に関する規律の新設ということで、これが補足説明で申しますと13ページの5に対応する部分になりますが、この2点が主な修正点になっていたかと思います。その他幾つかの修正についても御説明を頂きましたけれども、まず、これら主たる修正箇所について御意見を頂きまして、その後に残りの点についての御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。 ○窪田委員 前回私の方で、同居要件を養育とか監護に置き換えることができないかということで割に強く主張いたしましたので、その観点からも自分の意見を述べさせていただきます。前回、養育というのではなくて、むしろ同居の方がうまく要件立てできるのではないかという御意見もございましたし、今回非常に丁寧に説明していただいて、私自身は両方ともあり得るのだろうとは思っていますが、同居という形で要件を立てるということ自体については納得いたしました。   その上で、もう一つ、今回新たに追加ということで、子に対する要求費用の償還請求は認めないという規定を置くという御提案ですけれども、これについても私自身は賛成の立場です。恐らく、こうした養育費用については、そもそも不当利得返還請求できるのか自体、議論の余地はあるのだろうと思うのですが、そうした議論の余地がある問題を残すということ自体が望ましくないだろうと思っておりました。また、私自身は前回、要件としての養育にこだわったのは、ある程度きちんと養育がされていれば、それについて養育費の償還請求のような問題が起こらないようなケースに限るべきではないかと考えていたのですが、今回、それとは全く違うアプローチということになると思いますが、養育費の償還請求を認めないということで、この点についてクリアにしたという趣旨で理解できました。これは法務省の原案を作成した立場から、同じように考えているのか、いや、それは違うと言われるのか、よく分からないのですが、そのただし書の部分、ただし、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときはこの限りでないというのは、恐らくこの費用償還請求権を認めないという規定を置くことによって、単に人格的利益の問題だけではなくて、そうした側面も含んで、このただし書が考慮、判断されることになるのではないかと私自身は理解しております。そうだとすると、この規定を置くということはむしろ適切であるだろうと思います。その上で、更に他の養育義務者に対する償還請求についてはこれを妨げないという形で、直接的にはできるともできないともいわないわけですし、不当利得返還請求権も恐らくそれほど簡単にできるわけではないのだろうと思うのですが、いずれにしても、ただし、この部分についてまでできないとする必要はないと思いますので、こういう形で規定を置くということに賛成です。したがって、今回この提案をしていただいたような方向でよいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。提案そのものの方で申しますと、2ページの(4)③と、ブラケットに入っておりますが、(5)ということになりますが、③については、複数の考え方があるだろうけれども、ここに書かれている考え方はあり得るということで了解したということ、それから、(5)については、子本人に対する返還請求権について、それから、それ以外の者に対する返還請求権について、いずれもこれでよろしいのではないかという御意見を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。 ○棚村委員 私もほぼ窪田委員と同じような印象を持っています。   一つは、子どもの否認権行使についての制約ということで、前からも少し議論があったのは、社会的親子関係というような概念でいうと割合とひとくくりにできるのですけれども、それをどういうふうな形で具体的に要件化するかというときに、やはり扶養とか監護というのはストレートに当てはまる概念だと思うのですけれども、なかなかそれが、具体的にどれくらいの期間とか、どれくらいの程度行ったかということについて、かなりばらつきが出てくる可能性があると思うのです。そうすると、同居ということで、一定期間の同居というのは割合と、監護養育の実質よりは客観的な立証や主張も比較的しやすいでしょうし、さらに、監護養育の実質がある方はそれを重ねて主張するということで、後の養育の状況との関係でバランスをとりながら、否認権の適切な行使ということについての一定の縛りを掛けられるのかなというので賛成したいと思います。   それから、3年というような点についてですけれども、婚姻関係についても破綻の認定でいろいろ問題になりますし、親子関係についても何らかの目安があった方がいいだろうということで、3年で区切ると、それでは4年はどうなのだとか、いろいろ細かいことはあると思うのですが、どこかでやはり線引きをする必要があるかなというので、基本的には一定期間の同居ということで良いかと思います。それから、ただし書で養育の状況ということで父の利益に対する配慮ということでバランスをとりながら、否認権の行使について一定の基準を示していくという点に関しましても、確かに曖昧だというようなこともあるかもしれませんけれども、やはりある程度、社会的親子関係というのが同居を通して推測できるという仕組みにして、監護養育というものも伴っている可能性もありますので、もしその辺りのところで父の利益に対する配慮がなければ、養育の状況というところでチェックをするという、については賛成をしたいと思います。   それから、否認権の行使についても、前夫ですけれども、子が成年に達したときというので、これもやはりある程度、身分関係の法的安定ということの配慮の中で、成年に達した後もできるというのは少し問題があるだろうということで、賛成をさせてもらいたいと思います。   さらに、監護費用の償還の問題も、不当利得の特則みたいな形でこういう紛争が起こってくる可能性というのは強く懸念されますので、これについては当事者というか、特に父からの返還というのは認めないということに賛成です。ただし、一番悩んだのは、ただし書みたいなものを設けた方がいいのか、それとも、設けないで解釈や運用でやらせた方がいいのかという点なのですが、1点やはり少し疑問があるところは、否認がされた後の後始末で、特に、本来扶養義務を負うべき者が結局その義務を免れるみたいなことにならないように注意的に規定するというのが今回のブラケットみたいなところに書かれた趣旨だと思います。この辺りは少し悩ましいところなのですけれども、やはり今後、争いがいろいろ紛争が起きてきたときに、本来の扶養義務者に対する求償、これもなかなか難しい主張立証になってくるかもしれませんけれども、これも注意的に規定するという趣旨であれば、これでもまあいいかなという感じを持っております。もっとも、扶養料の求償を恐れて、否認権を行使しない萎縮効果への配慮も必要です。   以上のように、基本的に大きな変更点については賛成をし、窪田委員とほぼ同じで、よろしいかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。(5)のただし書について多少御意見を頂きましたけれども、結論としては、この点も含めて今回の修正提案でよろしいのではないかという御意見であると承りました。ありがとうございます。   そのほかの委員、幹事の御意見も頂戴したいと思います。先ほど事務当局の方から、③についてはこのような形でこの提案を維持するというのが前回の多数の意見であったように思われるので、ということでこの提案がされておりますけれども、このようなものを置くということでよろしいかという前提になる点も含めまして、御意見を頂戴できれば幸いです。 ○大森幹事 部会資料2ページ目の③に関する質問と、(5)に関する意見を申し上げます。   ③については、補足説明で特則として組み込む趣旨として、未成年のうちでも行使することができるからと書かれていますが、実際にどのくらいから行使ができるのか、例えば、意思能力があればできるとお考えになるか、その辺りをお聞きしたい。そのこととの関係で、家事事件手続法、において行為能力に関する規律を新たに設けておく必要ないか、という点も確認したいと思います。   次に、(5)の償還の点に関する意見ですが、先ほど棚村委員から、ただし書まで記載する必要があるかどうか悩ましいという御発言がございましたけれども、日弁連での検討も踏まえ、少なくともただし書についてはやや消極に考えています。と申しますのは、償還されるかもしれないと思うことによって、それを危惧した母などが事実上否認権行使を躊躇することが出てきてしまうのではないかとの懸念があるためです。部会資料13ページでは、子に償還を認めないことを明示する理由について、事実上、否認権行使を困難にするおそれがあるからと書かれていますが、そのことは母などについても妥当をするようにも思われますので、少なくとも解釈に委ねるということにして、明示はしない方がいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。1点御質問と、それから1点、御意見を頂きました。御質問の方は、2ページの(4)③について、成年に達したということが今回外れていますけれども、未成年のうちにも可能いうことだと、それはいつからになるのか、そのことに関して手続規定を整備する必要はないのかという御質問だったかと思います。御意見の方は、(5)について、先ほど棚村委員からも触れられたただし書について、ただし書は置かない方がよろしいのではないかという御意見として承りました。質問につきまして、事務局の方でお答えをお願いします。 ○小川関係官 子自らの出訴期間の特則の関係ですけれども、まず、成年に達した後、行使しなければならない、中間試案の段階等ではそういった形で書かせていただいていたのですけれども、何回か前の資料では、未成年も含むという形で提案させていただいたところです。そういう意味で未成年、16歳、17歳であっても理論的にはできるということを前提としております。手続行為能力という形でいいますと、一般的には15歳前後からというところになるのかなとは考えているところなのですけれども、もちろん身分関係に対する判断というところがありますので、実質的にそれを行使できるということになると、もう少し年齢が上がってくる可能性はあるかなとは思っております。それについて人事訴訟法上、家事事件手続法上、特別の規律をというところの御質問の趣旨を正しく理解できているかどうか分からないのですけれども、人事訴訟法でいいますと13条の方に訴訟行為能力の規定として、未成年であっても提起できるような形の規律は置いてありますので、それを前提にしますと、16歳、17歳であっても訴えを提起するということは妨げられないと考えているところです。御質問の意図としては、それ以外に何か規律を設けるべきではないかというところでしょうか。 ○大森幹事 ありがとうございます。確認ですが、1点目として、どれぐらいから子自身の否認権行使ができることになるのかについては、意思能力ではなく、もう少し高い能力を考えておられる、次に2点目として、手続法で何か手当てをする必要があるかどうかについては、人事訴訟法については今御指摘いただいた条文があるので、それで対処ができるのではないかということですね。それでは、家事事件手続法はいかがでしょうか。 ○小川関係官 家事事件手続法でいうと252条が民訴法と同様の規定を置いておるかと思いますので、そういう意味で、未成年であることによって手続行為ができないということはないということで考えております。 ○大森幹事 252条で対処する、と理解してよろしいでしょうか。 ○小川関係官 はい。 ○大森幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○大石委員 2ページの③、問題のところと7ページの説明のところの関係について少し伺いたいのですが、「具体的には」から始まる9行目からなのですけれども、この前半部分ですね、3年以上継続して同居したことがあるとの事実は、養育の状況如何にかかわらず、親子という社会的な実態を基礎付けるというのは非常によく分かる。これは③の本文を見れば分かるのですが、その後の「認められないし」の「し」は多分、認められない、逆に今度は、という趣旨なのだろうと思いますが、継続して同居した期間が3年を下回るときであっても、この有無・程度等に照らして、あるといえるときには認められないと書いてあるわけですが、この部分の説明は③の規律案から直接に出てくることなのでしょうか、それとも、ただし書を考慮したからこういう話になるのか、その点を少し伺いたいのですが。 ○大村部会長 ありがとうございます。補足説明の中の表現ぶりについて御質問いただきましたけれども、いかがですか。 ○小川関係官 御指摘のとおり、この11行目の「継続して」以下の部分については、本文の部分では当然、読めないことになりますので、ただし書の中で、こういった場合は否認が認められないことになるというふうな結論になり得るという趣旨です。すみません、少し記載の場所が適切ではないかもしれないです。 ○大石委員 そうすると、8ページにある(2)のところでも少し触れて、それについて言及するというのが分かりやすいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。御指摘を踏まえて、後ろの部分との平仄をとるような形で修文していただければと思います。   そのほかにはいかがでございましょうか。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。2ページの③の関係で御質問をさせていただきたいと思います。   ただし書につきましてですけれども、否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときには否認権を行使できないこととし、ということなのですけれども、この要件につきましては、補足説明の9ページにおいて、例えば、子の出生直後の一定の期間、父として子の養育を行ったことによって3年以上の同居と同程度の社会的な親子の実態が形成されていた場合、17行目辺りですけれども、こういうような説明がされているところでございますけれども、どこまでその意味するところが具体的なのかについては必ずしも明確になっていないように思われます。ただ、読ませていただきますと、この3年間という期間が何か重要なメルクマールなのかと思われるところ、3年間という期間が重要であるとお考えになっているのかというところが1点目でございます。   少し細かめな質問を二つほどさせていただきたいと思いますけれども、例えば、3年間以上面会交流などはしていないのですけれども、適正額の養育費を支払い続けているという場合には、ただし書に該当して否認権の行使はできないこととなるのか、逆に、3年間以上養育費の支払がない、のだけれども、ただし書の要件を満たす場合はあるのかと。例えば、父親が3年間以上養育費を支払ってはいないのですけれども、週何回か子どもにご飯を作るなど身の回りの世話をしていたような場合にはどうなるのかといったところ、少し細かめな質問になりますけれども、お聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。2ページの4③について、具体的な例を挙げられて幾つかの質問を頂いたかと思います。9ページの真ん中辺りの説明とも関連するところかと思いますので、事務当局の方でお願いをいたします。 ○小川関係官 この同居に関する3年という期間、本文の方の要件の3年の部分ですけれども、先ほど委員の御指摘の中にも一つの目安というふうな御指摘もあったところではございますが、フランス法の身分占有であっても5年以上というような形であったり、アメリカの統一親子関係法でも2年以上というような形であったりと、ある意味、期間を区切っているものはございます。社会的な親子関係として実態があるといえるためには、やはり一定期間の継続というところは要素として必要になってくるのであろうと、その意味で、提案としては3年という形での期間というのを一つ挙げさせていただいておりますので、この期間の継続というのは一つ重要な要素にはなってくるのだろうと考えております。   ただし書については、本文と異なりまして、3年という具体的な期間を定めているものではないですけれども、本文もただし書もいずれも、社会的な親子関係の実態がないというときに否認権行使を制限するための要件として考えておりますので、ただし書の、父の養育の状況に照らしてその利益を著しく害するときという判断に当たっても、この3年間という数字は一定の意味を持ってくるものだとは考えております。   その上で、養育費の支払のみを3年継続していたケースであったり、面会のみを3年継続していたようなケースですけれども、もちろん具体的には、養育費の支払という事実で社会的な親子の実態がどの程度形成されているのかということであったり、あるいは父の不利益というのがどの程度あるのかというところが、同居と比べてどうなのかということが考慮されるべきなのだろうとは思いますけれども、部会の御指摘の中で、養育費の支払だったり実際の監護というのは重要な要素になるというところは御意見でも多数あったところかと思いますので、3年間養育費の支払を継続していたというような事案は、もちろんほかの事情も考慮すべきだと思いますけれども、基本的にはただし書の要件に当たる方向で考えてよいのではないかと現時点で事務当局としては考えているところです。逆に、面会交流のみをしていたというところは、同居と比べてどうなのかという部分の対比というのは少し検討する余地があるのかなと思っているところです。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。よく分かりました。その上で少しお話しさせていただければと思いますけれども、今説明していただいたように、3年の同居と同程度の3年以上の関わりというものがただし書についても重要なメルクマールというか、要素という、ことになるということであれば、この要件の書きぶりにつきましても、父の利益を著しく害するときというようなところよりも、もう少し違う書きぶりがあるのではというところもあるのですけれども、それはそういうような意見というか、そのように考えるところでございまして、いずれにしましても、ただし書の要件を設けるに当たりまして、法改正後の裁判所における審理判断に混乱等が生じないようにするために、先ほど御説明していただいたようなこととか、そういった解釈や適用場面、どういったことを念頭に置いているのかにつきまして、できるだけ詳細に立法担当者解説等に記載するなどして、明らかにしていただければ有り難いと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。2ページの(4)③のただし書について、書きぶりについての御意見も頂きましたけれども、運用についてどのように考えるべきかということを具体的に示していただきたいという御要望を頂いたと受け止めさせていただきたいと思います。 ○幡野幹事 ありがとうございます。私も同じ場所で、(4)③のただし書の理解に関して事務局にお伺いしたいことがございます。   今日の資料の8ページの20行目から、子の意思で父との同居をやめた場合に関する記述がありまして、25行目に、特に子が一方的に同居をやめ、養育を拒否するような場合には、父の利益が害される程度も大きくなると評価することができることが多いと考えられる、このように書かれているのですけれども、社会的な親子関係があるというのは、父親の側が子を子として扱うという要素と、子の側が父として扱うと、双方の要素が必要であると思います。子の側が父として扱わないという、事由があった、つまり一方的に同居をやめたり養育を拒絶したような場合にも、そのことに基づいて不利に扱うことが望ましいのかという問題があるように思います。このただし書の解釈の仕方としては、子が一方的に同居をやめた場合には、単に同居の期間がそこで終了したというにとどまって、それ以上に子にとって不利益な扱いをしないというのも一つの理解の仕方であるように思われました。ここで父の利益が害される程度が大きくなると評価することができることが多いと考えられるとされている趣旨についてお伺いすることができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。(4)③のただし書について、8ページの20行目以下の説明について御質問を頂いておりますけれども、事務当局の方はその点はいかがですか。 ○小川関係官 資料上書かせていただいた趣旨としましては、まず、同居の本文の要件については、子の意思で同居しなくなったというふうなケースであっても、そこは考慮せずに、3年を下回るかどうかで判断をするということになるのではないかという形で書かせていただいているところです。その上で、ただし書の部分については、同居が終わった状況ですね、どういった事情で終わったのかというところもただし書の要件の中で考慮することができるという形で、まず、趣旨としては書かせていただいているところです。その上で、幡野幹事の御指摘のように、子の方から同居をやめたということを一方的に子に不利に扱う必要性がないというお考えも恐らく成り立ち得るのだろうとは思っております。ここで、特にというふうな形で書かせていただいていたところとしては、父親としてはやるべきことをやろうとしていたけれども、子どもの方がもう否認をすることを当初から意図して同居をやめたというような、ある意味、そういったケースについては父の利益が害される程度が大きくなるのではないかというところで書かせていただいたところです。ただ、幹事のおっしゃったように、違う評価ということも十分あり得るのかなというふうには、御指摘を受けて、考えているところではございます。 ○大村部会長 幡野幹事、よろしいですか。 ○幡野幹事 はい。お考えをよく理解できましたので。どうもありがとうございました。 ○大村部会長 そのほかはいかがでしょうか。   今のところ、(4)③につきましては、ただし書の少なくとも説明について、一定の配慮が必要であろうという御意見が複数あったと理解をしておりますが、全体としてはこれについて支持を頂いたものと受け止めております。これに対して(5)、ブラケットが付いているものについては、本文については今のところ反対の意見はないと思いますけれども、ただし書は置かない方がいいのではないかという御意見、あるいは、棚村委員もこれに共感されるところがあるのかもしれませんが、そのような御意見が出ているという状況かと思います。この(5)につきまして、更に御意見があれば伺いたいと思いますし、(4)③についてもあれば、更に伺いたいと思います。 ○中田委員 全体についてなのですけれども、部分についても後で触れます。私は、この制度の新設に伴って生じるかもしれない、いろいろな社会的な波及効果に関心がありました。   大きなものが三つありまして、一つは、嫡出推定制度において血縁関係が今までにも増して重視されて、結果として血縁関係のない嫡出子が不正規な立場であるかのような印象を与えるものとなってはいけないということ、これが第1点です。、第2点は、子の否認権の行使がありうることから、血縁のない嫡出子を父としてこれから育てようという気持ちに水を差すおそれはないだろうかということです。それから、第3点として、子どもが長期間にわたって片面的に親を選べる立場に置かれることが子自身の成長に対する悪い影響はないだろうか、あるいは社会的な影響はないだろうかということが気になっておりました。今回、資料の10ページの(4)で丁寧に検討して説明してくださっていますので、私の懸念は相当程度解消されました。その上で幾つかのお願いといいますか、希望がございます。   一つは、今回の制度の趣旨を周知して、子が血縁のない父との親子関係を自由に解消できるとか、あるいは子が自由に親を選べるとかというのではなくて、何人かからもお話がありましたように、社会的な親子関係の実態を重視しているのだということを、是非理解が得られるように努めていただきたいと思います。特に、同居が常に機械的に決まるものではないのだということもお示しいただければと思います。   それから、嫡出の承認についての規律、これは後でまた議論になることだと思いますけれども、それが私の懸念との関係からいうと、本当は入った方がいいと考えておりますけれども、今後の課題とするというのであれば、もうそれはやむを得ないと思いますが、それは是非今後の課題としては認識しておいていただきたいと思います。   あと、確認的なことなのですけれども、一つ。大森幹事の御質問に対して、子自身が自らの否認権を行使できるのは15、6歳ぐらいからだというようなお話があったのですけれども、従来は、まず子は3年間は否認権があって、それから、成人に達した後も否認権があると、この2本立てだったわけで、少なくとも、生まれて3年間は子自身が否認できるということが前提になっていたわけですし、それは今回でも変わっていないと思うのです。そうすると、生まれてから15歳ぐらいまでの間の子の否認権というのはどういうものなのかと、部分的には11ページに母が訴訟代理を委任したときにどうなるのかという形で出ておりますけれども、恐らくできることは前提となっているわけでして、それと、その15、6歳以降の否認権とはどういう関係なのかということをもう少し御説明いただければと思います。   それから、個別の問題になるのかもしれないのですが、相続における遡及効が15ページに説明がありますけれども、現実には様々な問題が生じ得ると思います。例えば、3歳ぐらいのときに父が亡くなって、それで20歳になって否認するということになると、最初の相続を戻すということになるのですけれども、なかなか大変だろうと思います。   それから、最後ですけれども、父の利益という概念が今一つはっきりしないなという感じがしています。特に、認知でも同じような規律があります、17ページに出てくるのですけれども、その父の利益とか、あるいは認知者の利益というものが一体何なのかということを是非明確にして、今後、御説明をしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。今回の(4)の③のような規律を置くことによって生ずる影響について危惧の念をお示しいただいた上で、資料の方には一定の説明がされているけれども、制度趣旨の説明については十分に留意をしていただきたいという御要望を頂きました。あわせて、嫡出の承認についても今後の課題として意識をしていただきたいという御要望を頂いたところです。それから、もう一つ、従来、一旦子どもの否認権がなくなって、その後、成年に達したら復活するということで考えておりましたけれども、それが今回、未成年の子どもも行使可能であるとすると、年齢の進行に伴って否認権の性質がどうなるのかということについて整理する必要があるのではないかという御指摘を頂いたかと思います。そして、最後に、相続の遡及効や父の利益という言葉遣いについて問題が残っていると思われるので、そこについても説明等を検討した方がよろしいと、いう御指摘を頂いたと受け止めました。ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○山根委員 ありがとうございます。私も全体を通してですけれども、子どもが親を自ら選択できるということに対する子への影響とか心の負担ということを心配には思っております。そういったところには丁寧な説明というか、社会に対しての情報提供も必要になっていくと思いますし、同居が重要ということでありますとか、3年という数字が単純に独り歩きしないように努めていただければと思いました。   それと、これからの議論というところなのだと思いますけれども、今も委員が触れられたと思いますが、嫡出の承認に関する規律というところ、ここは私はよく分からないことが多くございまして、もう少し説明いただければと思っています。成年に達した子の否認権を認めたときには、子について承認の規律を設けることを提案ということで、子についても嫡出の承認をしたときは否認をすることができないものとするとありまして、その一方で、その手続に関する規律については今後の課題とするということのようですけれども、その辺りの流れというか、つながりを少し教えていただきたいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。中田委員と同様に、やはり丁寧な説明を要するのではないか、制度趣旨について誤ったメッセージを伝えないように留意する必要があるのではないかという御意見を頂戴しました。それから、承認の問題については、今ここで取り上げている二つの論点について御意見を承った後に、また御意見を頂きたいと思いますので、その際に事務当局の方から補足の説明があれば、お願いをしたいと思います。   ほかにはいかがでございましょうか。   それでは、今承認の問題も出ましたので、この二つの今回の主な修正点については御意見を頂いたということにさせていただきまして、残りの点についての御意見を頂戴したいと思います。今の承認の点について、まず事務当局からお願いします。 ○小川関係官 嫡出の承認について、今回は子も承認の主体として含めるというふうな形で提案させていただいているところです。こちらは子についての出訴期間の特則を設けることとした関係で、子が長期間、否認するかどうかの選択権が与えられる状態になるということが、身分関係を不安定にする要素が子自身にとってもあるということです。そういうところがございますので、子自身が、例えば父親との間に血縁関係がないことを知った上で、ただ、もう自分はそれを争わない、社会的な親子関係もまだ形成されていないのだけれども、争わないということを決めたといいますか、そういった希望を持った場合に、嫡出の承認をすることによって、その子自身も否認ができないということの余地を認めておくことが、先ほど申し上げたような懸念に対応する意味で良いのではないかという趣旨で提案しているところです。   もちろんそういう意味では、制度を作るということで申し上げますと、手続的にある意味、明確なものを、例えば書面を作成すれば嫡出の承認ができるというふうな規律を置くという方が明確であるのは間違いないのだろうとは思うのですけれども、ただ、現行法の嫡出の承認の意義についてこれまで御議論いただいているとおり、なかなかどういったものを指すのかという部分も難しいところもあり、特に父と母との関係でいいますと、それ自体の言動によって否認権の行使を制限するという意味で、身分関係を安定させるという意味で意義があるというふうなところの御指摘もあったところですので、そういう意味で、承認自体を制度的に明確に確保するというふうなところについては、現時点で何か具体的な手続規律を設けるというのは難しいのではないかと考えております。子の承認を設ける趣旨としては、その身分関係を子どもの側から安定させる法的な手段の一つとして設けておくことが考えられるのではないかということでて提案しているものになります。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回の規定の御提案の趣旨と、それ以上の承認について立ち入った規律を見送っている趣旨について御説明を頂いたものと思います。   その点も含めまして、それ以外の論点、修正点などにつきまして御意見があれば、頂きたいと思いますが、いかがでございましょうか。 ○棚村委員 今の承認のところの今回、否認権者が増えた部分、必要最小限こういうような形で、承認によって否認権を失うというか、規定になったということで、私はこれでいいのかなと思っています。それは、先ほど来出ている親子関係、法的親子関係、実親子関係はどうやって決めるのだと、どんな要素でやるのだというのは、血縁や生物学的な関係が基礎になりながらも、一定程度子の利益とか、社会的親子関係とかという実態を考えながら調整するというのが今回の改正での議論だったですし、提案にもつながっていると思うのです。   それで、私はこの承認制度というのを、例えば家裁の許可が必要だとか、いろいろな形で縛りを掛けるにしても、意思によって親子関係を作るという大きな変更にもつながりかねないということと、それから、もう一つはやはり生殖補助医療との関係でも、意思によって一定程度、法的親子関係を作る道というのが、ある意味では検討されていいのかもしれませんけれども、そのときの意思というのが、どういう人がどんな意思を、内容を確認したときに、いつまで撤回が許されるかとか、そういう医療行為と、それから法的な親子関係についての効果との両方の関係で、なかなか行為規制も十分に進んでいませんので、今の段階でこの承認に対してこれ以上の、現行法で与えられている程度の大きな法的効果を認めることには慎重にすべきと考えています。しかし、承認制度も、今後は活用の余地はあって、否認権と承認とは、消極的に否定する権利と、積極的に確定できる権利として裏表になっているように考えます。そこで、申し訳ないのですけれども、解釈運用で、そういう意思的な要素によって否認権を失う、喪失する、親子関係を作るということは認めていいのではないかと考えています。逆に言うと、細かいことについて踏み込んで要件化するとか、手続規律を設けるということが現在の段階ではなかなか難しいのではないかということで、事務当局の御提案に賛成をするということです。課題があるということや御指摘いただいた点については、私もそういう思いはあるのですが、今回の段階では、やはり次の課題ということで整理させていただく、取り上げないということについては賛成します。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどから話題になっております承認の点、資料の1ページから2ページの冒頭にかけてのところですが、承認の主体として子を加えるということについては賛成であるけれども、承認の性質や手続について現時点で更に踏み込むということについてはいろいろな問題点があろうということで、事務局の提案に賛成するという御意見を頂きました。 ○窪田委員 子どもの承認に関しては、気になるのは、先ほど大森幹事から年齢の話が出ていたのですが、嫡出否認の方に関していうと、人事訴訟法の規定のような形で、こういう能力があったらその辺りからということで、何となくそうなのかなとも思うのですが、承認に関していうと、ある特定の時点での承認が有効なのかどうなのかというのは、やはりかなり年齢に依存するのではないかという気がします。例えば、養子縁組であったとしても15歳という年齢がある。嫡出の承認というのは、この人がお父さんという、そんな話では多分なくて、仮に血縁関係がないとしてもそこに法的な親子関係を認めて争わないという意思表示ですから、実はかなり内容的にも十分な理解ができていないと成り立たないようなものなのだろうと思います。その点では、一般的な人訴訟法の規律に委ねてということで済むのか、やはり嫡出否認一般に関しては仮にそうであるとしても、ここの部分に関しては年齢要件が本当になくて大丈夫なのかという懸念は感じました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど未成年の子による否認権の行使について年齢の問題が出ましたが、嫡出性の承認についても、あるいは、よりこの場面で年齢の問題が出てくるのではないかと、何か規定を置くことについてもう少し検討した方がよいのではないかという御感触ないし御意見を頂いたと理解をいたしました。 ○磯谷委員 私も今の窪田委員の意見と近いものでありまして、というか、この規定を子どもに適用するということについては少し消極でございます。先ほどの15歳前後の年齢というふうなことになると、現実の子ども像を想像していただければと思うのですけれども、正に思春期の真っただ中で、とても揺れ動く年齢だと思うのです。飽くまでも私のイメージではありましたけれども、子ども自身の否認権の行使というのは、ある意味、本来であれば否認権というのはもっと早い段階で親子関係を確定するために、一定の年限が定められるわけですけれども、しかし、社会的な親子の実態もないままずっと育ってきて、そして、自分のこれまでの育ちも振り返って、ある程度落ち着いたところで子ども自身が、やはりこの父子関係というのは実態もないわけだし、続けていくということがもう耐え難いというところで見直しをするというイメージを持っていました。そういう意味では、一定程度やはり客観的に自分の子ども時代、養育のされ方というのを振り返ってみるという、そのぐらいの成熟度を想定していたのです。それからすると、この承認というものが一体どういう手続でなされるのかなど、よく分からない点が多い中で、不用意に承認した結果、否認権を失うことになりかねないと思います。承認という制度がありますと、いろいろな方からの働き掛けなども想定されるところではありますし、子どもの判断が歪められるおそれもあり、懸念を感じるというのが本音のところでございます。 ○大村部会長 磯谷委員の御意見を確認させていただきたいのですが、子どもを含めるということについての御懸念なのか、年齢についてこのような形で特段の制約が加わらないということについての御懸念なのでしょうか、どちらですか。 ○磯谷委員 理屈のところをどう整理するかは私もよく分かりませんけれども、この点について、子どもの承認というものはそもそも入れる必要はないのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   仮に承認について子どもを加えたときに、年齢について何か規定を置く必要があるかどうかということは、先ほど窪田委員なども御指摘のことを踏まえて、実質について多少検討するとともに、未成年者の身分行為一般についての現在の規律の状況も併せて考えて検討するということが必要なのかと思いますので、皆様の御意見を踏まえて事務当局の方でもう少し詰めてもらう必要があるかなと思って伺いました。   それとは別に今、磯谷委員の方から、そもそも承認の主体に子どもを加えるかどうかということについて御異論が出ましたので、もしこれについて何か他の委員、幹事から御発言があれば伺いたいと思います。 ○棚村委員 磯谷委員がおっしゃる意味でいうと、否認権の性質とか内容、趣旨とかが多分、小さい子どものときはお母さんがもしかしたら行使するかもしれません、そういうときに子ども自身の意思というのが本当に反映されているのかという問題は前から出ていると思うのです。それで、私は承認の規定というのは、現行の夫であっても、正直言って、出生届を出しただけでは駄目だという話で、結局もう少し踏み込んだ形でないと否認権をやはり失わないというようなことになっているので、一応承認の規定というのは、否認権を自分の意思で放棄できるので、窪田委員がおっしゃったように、年齢とか置かれた状況によって子ども自身が本当に承認というのができるのか、できないときにお母さんがやっていることと一体になってしまっているときに、不利益を課していいのかという問題は多分あると思うのです。   それで、私が先ほど言った趣旨というのは、否認権が認められた以上、承認という規定についても何らかの形で活用できないかというときに、この活用の仕方については一定程度、その方式とかいろいろなものについて縛りを掛けるという議論もこれまであったのですけれども、結局現行法では解釈や運用に任されているので、私も、この承認という制度があることによって濫用されたり、非常に問題や紛争が起こっていれば、反対の立場になるかもしれないのですけれども、これについて、むしろ生殖補助医療などでも出てきましたように、同意があった場合にはこの否認権を失うみたいな形で、どんな同意をいつまで誰がどういう形でとるのか、カウンセリングとかいろいろなこともあると思うのですけれども、この承認の認められる場合も、かなり厳格なハードルというか要件が必要ではなかろうかと思うのです。規定はない方がいいとか、子だけ外すということになると、子に否認権を認めた趣旨が一体どういうことだったのか、母も固有の利益を持っているし、養育にも関わっていくので、否定をする機会というのはあっていいのだろうということで広がったわけですし、それから、やはり先ほど中田委員からもあったように、未成年のときに持っている否認権というものと、それから、先ほど言った15歳、16歳で認めるといった場合のものと、それから、成人に達してから持っている否認権がどういう関係なのかというのは、なかなか難しい問題だと私は思っています。   それで、私自身は、776条の承認の規定を今後どう使うかというのは正に重要なことですから、意思的な要素をどういうふうに法的親子関係を作るときに重視していくかという問題でもあるので、私自身は、成年の子、年長の子には否認権が認められる以上、積極的に否認権を失うという承認の権利も、今回の規定の中に入れて、解釈でもしもやっていけるのであれば、それでもいいのではないかと考える次第です。もし、窪田委員からも問題提起があったように、子どもの否認権に対する承認を入れることによって、子どもにとってもほかの人にとっても、特に子どもなのだと思いますけれども、重大な問題が生ずるということであれば、外すということになるのかもしれません。ただ、今考えているのは、いずれにしても解釈運用で、この承認の制度を今後どう使うかということについては、実務や今後の改正の動向を見ながら検討してもいいのかなということで、嫡出否認権が子どもにも認められ、それから母にも認められている以上は、承認という形で、否認権が認められた結果として承認ということもあり得るのではないかと考えています。   ただ、母の場合にどういう事実があったときに承認と認められるかということについては、申し訳ないのですけれども、今後に委ねるというか、そういうことなのですけれども、磯谷委員の方で、もし子どもには是非、否認権は与えるけれども承認の制度はやはり不要であるということになると、私は少し疑問に思ったのは、かなり高い年齢になって、一定の要件の下で、3年を下回るような同居期間だとかいろいろな縛りがあって、その中で認められる否認権というものはあるわけですよね、それに対して承認をするというのは、その要件をクリアした子どもが自分の意思で、なぜできないのか説明に困らないか。私はその辺りのところで、むしろ小さな子どもの承認というのがどういう場合に当たるのかというのは難しいかもしれませんが、ただ、一定の年齢になって判断できると先ほどおっしゃっていたような、その子が否認権を行使せずに承認するということはあっていいのかなという感じを持ったのです。もしよろしければ、その辺り、少し御意見を伺いたいと思います。 ○磯谷委員 私の理解が正しいかどうか分かりませんけれども、この承認の制度も、特に出生後初期の時期においては、早期に父子関係を安定させるという意味があるのだろうと思います。一方で、一定程度成熟した子が否認権を行使するというふうな場面を考えると、その時点で早期に何か確定をしなければいけないというニーズは低いだろうと思われますし、むしろ承認という制度を導入すると、あえて否認権というカードを先に捨てさせることになりますが、そのようなニーズも疑問であると考えると、余り意味がないのではないか。かえって、余り十分に検討しないで一時の、いろいろな人から言われて承認をしてしまいますと、その子にとっての正しい決断にならないおそれもあるのではないか、特に、この年齢が成年よりも前倒しをされるとなると、なおさらその弊害が予想されるのではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 磯谷委員から出たこととかなり重なるのですけれども、私は先ほど年齢要件が必要ではないかというのは、年齢要件があったらこれを積極的にということではなくて、やはりこの子どもの承認というのはよく分からないという感じがしております。棚村委員のおっしゃることもよく分かるのですが、子による承認というのは多分、どういう要件のときにどういうふうな内容のものとしてやった場合に認められるのかというのは、ものすごく争いになる可能性がある。それが一体どの場面で争いになるのかというと、嫡出否認の場面で実際には争いになる可能性が出てくるわけです。この要件は、3年間のとかいろいろな要件を満たしているけれども、でも承認があったではないかと、過去にこういうことがあった、ああいうことがあったということになっていくと、ただでさえ成年、比較的、子自身による嫡出否認に関しては要件の点で明確ではないところが残るとされているところに、更に厄介なものを持ち込むのではないかという気がいたしました。   それから、もう一つは、嫡出否認を認めるのであれば承認も認めるというのは、何か理屈としてはありそうな気もするのですが、それが多分、唯一の解ではないのだろうという気もいたします。どういうことかというと、嫡出の承認とはいうのですが、結局内容が意味していることは嫡出否認権の放棄の意思表示なわけですよね。そうすると、嫡出否認権があるということを前提として初めてその放棄の意思表示というのも意味を持つのだとすれば、実際には磯谷委員がおっしゃるように、そういうふうな要件を満たすときに嫡出否認の権利を行使するかしないかというだけで足りるのではないかという、そのときに、あえてそれと切り離して承認という枠組みを作ることは、最初の話に戻ってしまうのですけれども、かえって紛争に不確定な要素を持ち込むことになるのかなという気がいたします。   もちろん最終的には、子による承認の手続について更に規定を整備して、非常にがっちりとしたものを作った上で、それとセットにした上で子による承認という仕組みを作るというのはあり得るのだろうとは思うのですが、そこの部分については見送るけれども子による承認だけを認めるというのは、どうしてもそうしなければいけないものなのかという点では、私自身はまだよく分からないなという気がいたしております。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○山本委員 今の議論で少し思うのですけれども、身分関係を子どもが判断するということに関わっていますよね。ですから、嫡出の承認と否認はワンセットで、どちらにするのかということを子どもが判断できるかという案件に行ってしまうのではないかと。それが、大人の世界だったら承認と否認は対になっていて、承認したら否認権はなくなるよとか、そういう条件整備で成り立つけれども、子どもの場合には自分の身分が大人に属していて依存的な生育の環境の中でいるわけですよね、かつ子ども自身の意思表示、判断能力というのも変化していくわけで、それを大人のような対の判断の要件と並べてしまうと合わない。子ども自身が承認するときには、あなたはこの承認をすると否認権を失いますということが理解できているかということになると、それは子どもの年齢ではとても無理なことだと。法律的に対にするということに意味があるかもしれないけれども、子どもという存在に関していうと、承認と否認という対のものを自分が意思をもって判断できる適正な要件というのは別に考える、大人とは違うと考えるべきだろうというふうになって、皆さんがおっしゃるように括弧に入れておくべき問題で、否認権の方は年齢が上がって自分のことを判断するときに、いつからそれができるという、どういう要件でというのは提示できると思うのですけれども、それと対になった承認を、その以前にもっと幼い段階でできるかというのは、少し無理があるかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   この問題については今、幾つかの意見が併存していると思いますが、手が挙がっていますので、久保野幹事、中田委員の順番で御意見を頂きたいと思います。 ○久保野幹事 ありがとうございます。この嫡出の承認制度につきましては、もう少し以前の議論の段階のときに、そもそも残すかどうか、この制度は削除するということも考えられるのではないかという議論がされたという経緯がありました。その際に、いろいろな理解があったのだとは思いますけれども、私自身の今後に向けての期待といいますか、可能性についての考え方としましては、嫡出否認について否認権者や期間を拡大する改正をした後に、嫡出推定制度が守ろうとしていた安定性なり何かに影響が出ないかということを見守っていかなくてはならないところ、日本で社会的な親子関係の実態に基づく規律についての議論が必ずしも成熟していない中で、今後何かしらの対応が必要になるかもしれないことを考えましたときに、この嫡出の承認という制度そのものか、あるいはそれを何かしら修正することによって手当てをしていくということがあり得るのではないかということが一つ、議論としては含まれていたと思っています。その観点から言いますと、その将来に向けての嫡出の承認制度の利用可能性というものは、必ずしも否認権の放棄という性質づけには限らないものにも開かれていると思われるのです。   他方で、成熟した子どもの否認権については、現在の案で否認権の行使要件の中に社会的な親子関係の実態というものが既に取り込まれておりまして、その点で、承認の制度に期待して何かコントロールするということは余り考えなくてもいいのかなと思いますし、また、それにもかかわらず嫡出の承認を入れていこうという場合には、正に今議論になっていますように、否認権の放棄ということにより焦点を当てた議論になると思うので、うまく説明できているか分からないのですけれども、嫡出の承認について幾つかの理解が今後に向けてあり得るところ、やや別種のものとも思われ、また、成熟した子どもについての否認権については、もう要件に社会的な実態が取り込まれているので、ここで承認を入れなくてもよいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。順序を変えてまとめさせていただきますけれども、今回の改正において子どもの承認について規定を入れる必要はないのではないか、しかし将来的に承認については、その制度趣旨の理解も含めて検討していくことが必要である、これは両立するのではないかという御意見だと承りました。 ○中田委員 成年に達した子については、嫡出の承認ということは比較的容易に認め得るのではないかという気がしました。今、消極論の委員、幹事の皆様も、成年に達した子が否認権を持っていて、その承認というのは他の否認権者と同じように扱っていいということはお認めいただきやすいのではないかと思うのですが、問題は15、16、17歳ぐらいについてどうするかということですけれども、先ほど窪田委員がおっしゃったのですけれども、この辺りについてはもしかしたら、ここに限って、例えば裁判所の許可の制度を導入するとか、何らかの仕組みを作るということもあり得るかなと思いました。   なお、成熟しているけれども、まだ重要な決断をなかなかしにくいという人について、周りからのいろいろな声があるのではないかということを磯谷委員がおっしゃって、それはそうだと思うのですが、それは否認権についても同じことでして、カードを捨てさせるということを先ほどおっしゃったのですが、カードを行使するかどうかについても、やはり周りからの圧力なり示唆ということはあり得ると思いますので、これは併せてやはり考えるべきことなのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   様々な御意見を頂いておりますけれども、一方で制度の趣旨として、子どもに否認権を与えるということで、それとの関係で承認を認めておく必要があるのではないか、また、そのことが今回の改正の趣旨を説明する上でも必要なのではないかといった御意見を頂いています。他方で、実際の運用を考えた場合に、子どもの承認を認めるということに伴う弊害が大きいのではないかという御懸念も示されているように思います。御懸念については解釈で対応できるのではないか、差し当たりそうするほかないのではないかというところから始まって、成年あるいはそれに準ずるような年齢に達していればよいかもしれないけれども、そうでない場合にはやはり問題が残るのではないか、問題が残るところについて何か制度を設けるということは考えられないか、様々な御指摘を頂いているところかと思います。 ○磯谷委員 今、中田委員から御指摘いただいた部分なのですけれども、成年に達していれば、その承認制度を設けることについても受け入れやすいのではないかというようなお話がございました。確かに相対的には弊害は少なくなるのではないかとは思いますけれども、ただ、やはり一方で、果たしてそれが本当に必要なのかというところは、先ほど申し上げたように、引き続き疑問を感じております。加えて、周りからの働き掛けのお話もございましたけれども、実際に子どもが否認権を行使するというふうなことになりますと、恐らく、まずは家事調停から始まって、家庭裁判所の中で、もし必要があれば調査官なども関わることによって、きめ細かくその意思を確認していくというふうなこと、また、問題の本質を捉えて柔軟な解決を導いていくということも可能なのだろうと思いますけれども、この承認という制度については必ずしもそういうものが予定されていない、先ほど窪田委員からもお話がありましたが、実際にはその後のそういった否認権の中で抗弁的なものとして主張されるような形になる、要するに、その表れ方がかなり違うのではないかと実務の立場からは思いますので、そういう意味で、やはり否認権行使と承認をパラレルに論じるのは少し難しいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。実務的な懸念に立脚しつつ、嫡出否認の問題と承認の問題をパラレルに議論するべきではないのではないかという方向の御意見を頂戴したと思います。 ○大森幹事 成熟した子は、否認権をそもそも行使するのかどうか、カードを切るのかどうか、それを自身で判断できることが前提です。その上で承認することが求められる場面というのがどういう場面なのか、子どもが置かれている状況を考えますと、あえて自分はそのカードを捨てることによって父とされる人に対しての忠誠心を示す、そういう使われ方になってしまわないかという懸念もあります。成年に達している場合には適切な行使、判断が期待されるのではないかという御意見もありますが、21歳までとされており、結局未成熟子である場合が多いと思うのです。要は、親の扶養にあって自立できていないという子も少なくないと思われる中で、子どもがその承認をすることが求められる場面、承認が必要となる場面ということを考えると、果たして認めることがいいのだろうかという疑問があります。   また、父あるいは母が承認するということと、子が承認するということは、やはり少し意味合いも違うのではないかと思います。父あるいは母は否認権を放棄する、承認するということによって、きちんとその子どもを扶養する、育てるということが意味合いとして出てくるわけですけれども、子どもは扶養をするのではなく扶養を受ける立場でもありますので、そういう意味からも、父や母に承認を認めているから子どもも認めるという話ではないだろうとも思います。したがいまして、私も子を承認の主体として認めるということについては消極に考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。子どもを承認の主体に加えることについて、消極的に考えているという御意見を頂きました。仮に成年に達しているような子どもを考えたとして、承認が必要である、その制度があることが求められるという場面は余り考えにくいのではないか、それから、父母による承認と子による承認とは分けて考えることができるのではないか、このような御指摘を頂いたと思います。   先ほど少し整理しましたけれども、どのように承認というものを捉えるのかという見方と、それから、これを制度化することに伴う実際上の得失、メリット、デメリットということにつきまして、皆様から様々な御意見を頂戴しました。なかなか難しそうだと思いつつ伺っておりますけれども、事務当局の方でこの点について何か聞いておきたいということがあれば言っていただきたいと思います。もしなければ、大体皆さんの御意見は伺ったかと思いますが、いかがですか。 ○佐藤幹事 いろいろ御意見いただきまして、子どもによる承認を認める必要性がそもそもあるのかというところは、また改めて検討させていただきたいと思います。その上で、年齢に関して、窪田委員からも御示唆がありましたが、縁組においては15歳で自ら決めることができる、養子縁組をするかどうか、あるいは離縁に関しても同様ですけれども、15歳で自ら判断できるというような発想が民法の中にあります。嫡出否認についても、自らの親を子自身のイニシアチブでどうするか判断するというような場面だと考えると、そもそもの必要性は改めて検討するということは前提としてあるのですが、仮に子供による承認を認めるということになった場合に、15歳という年齢設定をするというようなことは考えられるかどうかについて、もし御意見を頂ければと思った次第です。 ○窪田委員 私自身は15歳は無理だろうと思います。というのは、嫡出の承認というのが一体何なのかというのを多分、大人に尋ねてもきちんと説明できる人が何人くらいいるのだろうと。つまり、嫡出推定という制度が働いていて、法的な親子関係はあるのだけれども、その血縁関係の不存在からそれを否定することができる仕組みなのだという形のもですよね。その前提としては、嫡出否認という仕組みがあって、要はそれを使わないというものだということになりますので、この人が新しいお父さんになります、お母さんになりますとか、この養子縁組を切りますとかというのに比べると、はるかに複雑なものではないかという気がいたします。仮に年齢を設けるのだとすると、先ほど中田委員からもありましたけれども、成年ということになるのかもしれませんし、成年に達していたらみんなきちんと説明できるのかというのは多分、嫡出の承認ってそのぐらい、よく訳の分からない仕組みなのではないでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございました。御質問に対して、認めるとしても、かなり高いところに年齢の線が引かれるということになるのではないかという御感触を頂きました。 ○佐藤幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 難問ですが、皆様の御意見を頂いたということで、今日のところは引き取らせていただきたいと思います。 ○久保野幹事 年齢についてなのですが、私も、入れるとしましたら成年の方が適切だと思います。といいますのは、普通養子縁組というのは日本の場合、やはり親を選ぶとか設定するというのとは少し違ったような性質を持っているものだと思うので、一口に親子といっても同列に扱えないだろうと思います。他方で子の氏の変更について、未成年のうちに変更したとしても成年になってからもう一度申立てができ、戻すことを選べるというような構造になっていることなども考えますと、成年の方が、事柄の重さとの対比でいったときにふさわしいのかなと思います。   ただ、成年に達した子しか行使し得ないような性格のものなのだというふうなメッセージが強く、仮にその方向で立法した場合には、そのような承認という性格付けがより強く表れることになりますので、先ほど私が申し上げた意見と重なって、そこでいう承認というものがほかのものとは違うという、先ほどから何人かの委員の方から出ているような指摘を踏まえますと、年齢を成年とした上でこれを入れるということは、控えた方がよいのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。年齢としてはかなり高いところ、成年に限るべきだと思うけれども、しかし成年に限って立法すると、それは特別な意味を持つことになる、そのことの当否については問題があるのではないかという、御意見として承りました。   今の点につきましては、久保野幹事の御意見も含めて、申し訳ないのですけれども、この年末に事務当局の方で更に検討をいただければと思います。 ○中田委員 先ほどの私の意見なのですけれども、成年に達した場合には比較的認めやすいのではないかということと、成年に達していない、具体的に言うと15、16、17歳ぐらいの子については、そこに絞った形での何らかの制度、家裁の許可のような制度というのを設けることも考えられるのではないかということを併せて申し上げたつもりでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。成年以外の高い年齢の子の部分について一定の制度化をして認めるということも考えられるのではないか、そうした選択肢も含めて、更に検討をしていただきたいと思います。   それで、第3について、少し長くなっておりますけれども、その他の論点のうちで、子が死亡した場合の否認権の承継について今回、規律を削除するという提案がされておりますが、この部分について何かもし御意見があれば頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○大森幹事 規律の削除については、少し疑問があります。理由の中で一身専属的なものであるからということが述べられているのですが、他方で認知の方では承継を残していることや、父の場合は一審専属的ではないのかということも考えると、なかなか整合性が付かないのではないかとも思われます。また、実際に承継の場面がどの程度あるのかという問題はもちろんあり得るとは思うのですが、それは制度があった上で、実際に使うか使わないかという話であって、元から制度を作らないというような話ではないだろうとも思います。ほかの当事者とのバランス、また認知無効とのバランスも考えますと、子が死亡した場合だけ承継を認めないというのは少し、違和感がある次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。制度のバランスということを考えたときに、どうだろうかという御意見を頂戴いたしました。 ○棚村委員 これも本当に難しいところで、海外なんかを見ると、やはり一身専属権とか本人の意思の尊重ということで、死亡した場合には認めないというところもあれば、日本の場合はどちらかというと、身分的な関係に基づいて相続でいろいろな影響が出たり、あるいは訴えを提起したり申立てをして亡くなった場合も出てきます。そうすると、手続の受継の問題もあり、それによって、やはり少し状況が違うのではないかと思います。つまり、本人が意思を示して、否認をしようと考えたにもかかわらず亡くなったときに、全部なしになってしまうということについては、やはり何らかの形で手続を承継したり、本人の意思を実現することが必要になってくるのではないかという意味では、大森委員と共通の問題意識を持っています。つまり、一身専属権ということで全部切っていくのだったら、前夫とかも全てそういうふうになると思うのです。母はもちろん当事者ではないということで、そうなっていますけれども、やはりそれに伴う経済的な利益というか、そういうことの後始末みたいなことについても少し検討した方がいいのかなという感じを持っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からも、この削除について少し考えた方がいいのではないかという御指摘を頂きましたが、ほかにはいかがでしょうか。   分かりました。では、これは頂いた御意見を参酌して見直していただくということにしたいと思います。   その他、第3につきまして御発言はありますでしょうか。 ○大森幹事 部会資料1ページの1④の前夫の否認権の要件の点についてです。前回議論をした際、真偽不明の場合は否認権を認めないという点については、異論はなかったように思います。それに基づいて事務当局の方で表現ぶりを検討いただくことになっていたかと思うのですが、本日の資料では表現が前回と変わらないままとなっております。このままですと、真偽不明の場合も要件を満たすとなってしまわないかと思いまして、再度、御検討をお願いしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○小川関係官 御指摘の真偽不明の場合について、生物学上の父子関係があるかどうかについてという部分だと思うのですけれども、前回の議論でも少し出たところですが、子の利益を害さないことが明らかであるというところの要件自体が規範的な要件であるということからしますと、それ自体が真偽不明になることはないということかと思います。前夫と子との間に生物学上の父子関係があるということについて真偽不明であるということを前提に、その規範的な要件が判断されるという形になるというふうなところだったのかなと考えております。もちろんここの要件の書きぶりについて、法律の条文にしたときにどのような規定ぶりとするのかというところについては、細かい部分も含むところでありますけれども、検討はしたいと考えているところです。ただ、いずれにせよ資料の4ページの2(1)ですかね、補足説明の方にまとめた、規律の実質というのを実現できるような規律とするということは従前と変わっていないというところではございます。規律の細かい部分については、少し検討は引き続きしたいと思っております。 ○大村部会長 よろしいですか。ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。1ページの1(1)③でございます。母の否認権のところでございますけれども、今回ただし書のところから「目的による」というところを削除されたということでございます。従前、母の否認権の行使が子の利益を害する目的によることが明らかなときというふうな要件であったところでございますけれども、補足説明にもございますとおり、子の利益を害するか否かは否認時点の養育状況等からは容易には判断できないものであることから母の主観的事情に着目し、ということで、そういった事情から従前このような要件、「目的による」というのが入っていたかと思うのですけれども、今回、ここを削除されたというときに、残ったものが子の利益を害するか否かということになるわけですけれども、こういったことについては判断が困難なものになりはしないかという懸念があるところでございます。   補足説明の4ページ、24行目以下には、今回の文言の修正後も①から③のような場合に母の否認権行使が許されないことは変わらないというようなことが記載されておるのですけれども、母の否認権行使が許されないという場合は基本的にはこの三つの場合に限られてくるのか、それとも、もっと他の事情の有無等を検討した上で子の利益を害するか否かを判断しなければならない場合もあるのかということが気になるところでございます。それに加えて、この①から③のところでございますけれども、②について親権の濫用として制限されるような事情があるときとなっておりまして、①や③と違って必ずしも具体的な場面設定がされていないような形にはなっているのですけれども、ここについてももう少し具体的な要素といいますか、あるのかどうか、そこら辺につきましても少し御質問したいと思いまして、発言をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○小川関係官 資料にも記載したとおりではあるのですけれども、元々母の否認権の制限については、権利濫用に当たるようなもの、母の主観的な事情に着目をして、母に適切な否認権の行使を期待できないというふうな場合に制限するとしていたものですけれども、その中での考慮事情としては、子に新たに父が推定され、又は認知をされる見込みがあるのかどうか、それから、母自身による監護の可能性、それから、嫡出否認によって生じることが予想される子の養育環境への影響の程度などの客観的な事情も、もちろん母の認識もですけれども、考慮するとされていたものです。目的によるという文言を削除したとしても、そのような考慮要素を踏まえて否認権の行使というのが濫用に該当するのかどうかが判断されるということに変わりはないと考えておりますので、具体的にいかなる場合がこれに該当するのかという点に関しては、資料4ページに記載した三つの場合がこれに該当する例として挙げることはできると考えております。ただ、最終的には個別的な事情による部分は出てくるのだろうと思いますので、これに限られますというところはなかなか断言できないところですけれども、基本的にやはり母自身の固有の利益に基づいてやってくるということですので、ここの資料上挙げさせていただいた①、③のようなケースがやはり典型的なものとして挙がってくるのではないかと思っております。   ②の部分が若干抽象的な形になっているというところではあるのですけれども、親権の濫用という形で書かせていただいている部分ですので、なかなか丁度良い具体例を示すというのが難しいところではあるのですけれども、当然、主観的な母の意図というふうなところも考慮された上で判断されるということになってくると考えております。もう少し何か具体的な例をお示しできるかどうか、改めて少し検討はしてみたいと思います。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。先ほど子の否認権のところでも申し上げましたけれども、どのような解釈とか適用場面を念頭に置いているのか等につきまして、できる限り立法担当者解説等に記載するなどして明らかにしていただければと思います。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。今後の説明等についての御要望として伺いました。   ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、この第3の部分については、2ページで申し上げますと、(4)③についてはおおむね賛同いただいたと受け止めました。説明等については更に工夫をしていただくということかと思います。それから、(5)のブラケットが付いた部分につきましては、これもおおむね賛同いただいたと思いますが、ただし書について御懸念を示す御意見もあったということで、今日のところはまとめさせていただきたいと思います。そして、1ページから2ページにかけて、嫡出の承認について子を加えるかどうか、加えるとした場合にどうするかということにつきましては、先ほど多少整理をしましたけれども、様々な御意見があったということで、更に検討をするということにさせていただきます。最後に、4点目ですが、承継の問題については現在の提案について消極的な御意見を幾つか頂いたということで、それを踏まえて更に考えるということかと思って伺いました。   ということで、第3の部分については本日のところは御意見を伺ったということにさせていただきたいと存じます。   それで、休憩を挟んで、残りの部分について御意見を頂きたいと思います。10分休憩しまして、15時30分から再開をしたいと思います。   休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、時間になりましたので、再開したいと思います。   休憩の前に第3の関係について御意見を頂戴いたしましたので、引き続きまして、第4ということになります。第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子に関する民法の特例の見直し、この部分について御意見を頂戴したいと思います。   まず、事務当局の方から部会資料23の内容につきまして御説明をお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。16ページを御覧ください。   「第4 第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係に関する民法の特例に関する規律の見直し」についてです。変更点ですけれども、前回の部会資料で規律の②として、前夫の否認権の制限に関する規律を設けることを提案しておりましたが、前回の部会での御議論の状況等を踏まえまして、あえてここの提起できないという規律を設ける必要ないだろうというところで、今回これを設けない形に修正をしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今説明がございましたけれども、前回の資料で②という番号が付いておりました規律について、部会の御議論で、あえて規定を置く必要はないのではないかという御意見が多かったということで、今回はそれを削除したものが提案されているかと思います。この点につきまして、いかがでございましょうか。御意見を頂戴できればと思います。 ○髙橋委員 少し確認なのですけれども、前夫の否認権ということで、後からの婚姻の方が生殖補助医療だった場合を想定して前回、御提案があったかと思うのですが、この場合、まず、後からの方の婚姻で生まれた子が第三者の提供精子で生まれた子だとすると、まず、そもそも前夫に血縁がないのかなと思うのです、まず第一段階で。妻の方が、これは後から婚姻した夫との間の生殖補助医療で生まれた子だと、前夫の子ではないというようなことを主張すれば、もうそれで。もし前夫からの嫡出否認が認められるとすると、結局、母親の方が後から前夫の子ではないと言って嫡出否認を起こすおそれがあって、そうすると父親のない子ができてしまうと、そういう事態を防止しなければいけないと思うのですが、それに関しては、第一段階でまず血縁がないし、生殖補助医療で生まれたとしても前夫が同意している生殖補助医療でもないと、2段階で子どもの立場は守られると、こんな理解でよろしいでしょうか。 ○小川関係官 はい、御指摘のとおりに考えております。元々②で規律することを想定していた場面というのは、再婚後の夫の子と推定される場面で、その子について第三者提供精子による生殖医療が行われ、それについては再婚後の夫が同意をしていたというふうなケースです。②の規律がなくとも、そのようなケースでは、前夫が否認できるか否かは、第3の1(1)④の要件に照らして判断をされます。すなわち、前夫の否認権の行使が子の利益を害することが明らかでない、の要件の中でです。もちろん血縁関係が問題とされれば、そこで血縁関係がないということに当然なると思いますし、生殖補助医療であるということになれば、そこは基礎付けるものとして、やはり同意があったということは重要な事実になってくると思いますので、それも、先ほど申し上げたケースでいうと、前夫は同意もしていないという形になりますので、いずれにせよ④の要件を満たさないことになり、否認権の行使は認められないというふうな形になるということで、前夫が否認権をすることによって子から不当に法律上推定される父が失われるというような事態は生じないのだろうと考えております。 ○髙橋委員 ありがとうございます。前回、私は生殖補助医療のルールで認められないような、ルールといいますか、イレギュラーなケースで生まれた子についても、親子法で子どもの地位は別に考えるべきだという発言をしまして、その考えは変わっていないのですけれども、ただ、行為規制ができていないところであれこれ今の段階で議論するのは難しいかなと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。今御質問を頂きましたけれども、御意見としては、現在の状況ではこれでよろしいという御意見だと受け止めてよろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほかにはいかがでございましょうか。   それでは、この点につきましては、前回の皆様の御意見に沿って修正したものですので、今回特に御異議がなかったということで、先に進ませていただきたいと思います。   最後というか、三つ目になりますけれども、認知制度の見直し等という部分に移りたいと思います。   まず、これについても事務当局から部会資料の第5の部分を御説明いただきたいと思います。 ○古谷関係官 御説明いたします。お手元の部会資料23の17ページを御覧ください。第5は認知制度の見直しの規律等に関するものとなります。   認知については、前回の御提案より大きく変更した点がございまして、この点は下線を付しております。特に、今回御審議いただきたい点としましては、認知無効の出訴期間の起算点について、子と母について、認知を知ったときと変更した点についての当否、二つ目として、嫡出否認の訴えと同様に子の訴えについて、3年間の同居期間もないような場合に21歳までの出訴期間の特則を認めることについての適否、また、三つ目としましては、もう既に先ほど来出ておりますが、子が死亡した場合の承継の規律について、嫡出否認の訴えについて設けないとする場合に、認知無効の訴えについて設けることについての適否ということになります。認知をした父がした監護費用の償還の問題については、嫡出否認の場合と同様の考慮となるとは思いますが、認知の場合に更に特別の考慮が必要な点があれば御意見等を頂ければ幸いでございます。   具体的に部会資料の補足説明を用いて御説明させていただきます。部会資料の20ページを御覧ください。子による認知の無効の訴えについてですが、認知の要件について、例えば成年では子の承諾が認知に必要であること、また、未成年の子については親権を行使する母、未成年後見人が子に代わって行使する可能性があるというような点が想定されているという違いはありますが、具体的な認知の無効の訴えの場面では基本的に未成年か成年かで訴えについての違いを設けておりません。その上で、認知の無効の起算点については、認知による父子関係の安定という要請を重視して、これまで認知時を起算点として御提案しておりましたが、今般、母の認知無効の訴えの起算点について認知を知ったときと変更して提案することを踏まえ、現在の戸籍制度を前提として、認知がされたことについて認識ができない可能性があるという点に関しては、子についても母と同様であることから、子の認知の無効の訴えの起算点を子が認知を知ったときと変更することを提案しております。具体的に、子が未成年であり幼年者である場合、また、意思能力もないような場合に関しては、どのような形でその認知を知ったときということを判断するかということが問題になりますが、この点は20ページの36行目以下にあるとおり、実質は子の法定代理人が認知を知ったときから起算されるものとして想定しております。   続いて、21ページ、(2)母の固有の認知の訴えについて説明させていただきます。母は認知の事実を知らないままに出訴期間が経過するおそれがあるという御指摘は前回来、頂いているところでございます。改めてこの点を事務当局で検討しまして、子とともに、起算点を知ったときと提案することといたしました。嫡出否認の訴えの前夫の否認の訴えのところでも問題となりましたとおり、母の認知の無効の訴えだけが残ってしまい、実質的には認知によって生じた父子関係の主体である父子が争っていないにもかかわらず、母の認知無効だけが残ってしまい、その父子関係が不安定になってしまうという懸念は当然残ります。例えば、成年の子の認知について、母だけがいつまでも認知無効というような場面も想定されるところです。そのような場面に関して、今回、認知の無効の起算点を母が認知を知ったときと変更することに加えまして、墨括弧にはしておりますが、嫡出否認の場合と同様に、子の利益を害することが明らかなときは訴えを認めないという制限を設けることも併せて提案しております。起算点の規律のほか、このような形でバランスをとることの適否についても御意見いただければと存じます。   続いて、22ページ、また子に戻りまして、嫡出否認の訴えの場合と同様に、子の固有の出訴期間の特則を設けるということを提案させていただいております。前回の審議でも御議論いただいているところですが、特に未成年の子については子の承諾なく認知が行われ得る中で、子自身が子の判断において認知の無効の訴えをする機会を付与するということを意図しております。具体的な要件としましては、嫡出否認の場合と同様に、3年以上の同居がないこと、また、養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害していないということ、また、具体的に今回は21歳までの期間ということで提案させていただいております。   21歳までという点について、前回の資料では、18歳成年に7年というものを足して25歳という期間を提案しておりましたが、嫡出推定にせよ認知にせよ、父子関係が形成された後、子の判断でその関係を覆すかどうかといった判断が求められる状況は、子の立場からしますと両者で大きく異なることがないと考え、嫡出否認と同様に21歳という形で提案しております。嫡出否認の場合と異なって、今回御議論いただきたい点としましては、前回問題になりましたが、この同居の起算点について、例えば認知の後とするか、出生後とするか、また、ただし書の養育や父の利益の基礎事情を認知以前のものも考慮し得るかという点については、御意見を頂けたらと存じます。   そのような議論の前提として、嫡出否認では子の出訴期間が出生から3年となっており、特則の同居要件も3年間となっておりますので、実質的に当初は3年間の期間内に特則期間が始まることはないという状況になっておりますが、今回、認知無効については、当初7年間のうちに特則の同居期間を充足してしまう可能性があるところですが、具体的に提案している規律は、基本的には当初7年間を経過した後、特則として認められるということを想定しております。本部会資料では、特則の要件としての同居の要件の起算点に関しては、認知によって形成された法的な父子関係を無効の訴えの特則要件とすることで、認知後の同居期間ということで提案しております。   また、基礎事情に関しては、例えば、認知をしないまま一定期間、実質的に父として養育していた中で、認知をしてからは同居していなかったというような場合に、過去の事情をどこまで考慮できるか、時的制限を設けるかということは問題になりますが、社会的な実態に照らせば、この点について広く事情を限定しないという考えもある一方で、認知前の費用負担は単なる贈与にすぎない、また、認知後に遡って養育と評価されるのはおかしいという考えもあるところと理解しております。この辺りも率直な御意見を賜ればと存じます。   続きまして、24ページ、4の監護費用の償還の部分になりますが、基本的に嫡出否認の場合と同様の考慮となると考えております。ただ、認知無効の場合に設ける場合に関しては、嫡出否認の場合と異なりまして、認知無効については血縁関係がないこと以外の無効事由もあるということになりますので、その辺り、別の規定を置く必要があるかということについても検討の必要があると考えております。   更に、25ページの5、子が死亡した場合の承継の規律になりますが、先ほど既に御議論いただいているところですが、嫡出否認について、子が死亡した場合、人事訴訟法に承継の規律を設けないとする場合に、同じように父子関係の実質を一身専属的なものとして捉えた場合に、認知無効の場合に関しても、その承継の規律を落とした方がよいのかどうか、その点についても御議論いただけたらと存じます。本部会資料におきましては、認知の場合に関しては、対象となる子の年齢が広く、民法上も卑属がいる場合が想定されている規定があること、また、強制認知の訴え自体に関しては卑属に固有の主張適格を認められていることなども考慮して、認知無効の方では承継の規律は維持するということで御提案させていただいております。   最後に、26ページ、6のところになりますが、以上の全体的な御議論を踏まえて、これまで一定の方向は示されていると理解されている論点、例えば、真実の父と称する者の主張適格、また、認知をした者についての規律についても、また、国籍を始めとした民法以外の規律の在り方についても、更に御意見を頂ければ幸いでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   大きく分けて4点と、それから、最後にその他があったかと思います。まず最初に、今回の、修正提案に係る点が二つあったかと思います。認知無効の訴えの起算点ということで、補足説明ではなくて本文の方で申しますと、17ページの1(1)①の部分ですけれども、ここで認知を知った時としている、それに伴ってただし書を付け加えるということが、括弧に入っていますけれども、提案されています。これについてどうかということが、まず一つ目の論点があろうかと思います。それから、二つ目はその下の②についてですけれども、先ほどの嫡出子の場合と同じで、子が自ら事実に反する認知の訴えを提起するための出訴期間の特則ということで規定が提案されています。21歳という線が今回は示されておりますけれども、この点や、あるいは同居、養育等について、どの時点での事情を考慮するのかといったことについて御発言があったと思いますが、この辺りについて、まず御意見を頂戴したいと思います。それから、18ページの④とか、あるいは承継の問題がありますけれども、これは今の2点について御意見を頂戴した後に、その他の問題と併せて御意見を頂きたいと思います。   ということで、17ページの①、②につきまして、まず御意見を頂戴したいと思います。いかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。17ページの①の認知を知った時のところで発言をさせていただきます。この件に関しましては、前回会議でも、母が知らない間に認知が行われ、提訴期間が経過してしまうことを懸念するという意見が出されたかと思います。今回の提案は、そうした事態に備えて起算の方法を変更するということだと思いますので、提案の方向性で検討することは望ましいと思っております。私は賛同の立場で発言させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。1(1)①について賛成の御意見を頂きました。ただし書については何かございますか。 ○井上委員 権利の濫用ができないようにということでこれが入るということだと思いますので、それも併せて問題ないと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○山根委員 ②の方ですけれども、資料の後ろの方見ると、議論としては同居の起算点をどこに置くか等になっていると思うのですけれども、そもそもこの認知という行為の実に多様な背景があるところにおきまして、この同居ということを要件に置くということが、そうする必要が必ずあるのかということを少し心配しています。嫡出否認の場合と必ずここをそろえないと、やはり法律としておかしいのかどうか、もう一度確認させていただければと思います。お願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。現在の提案は、基本的には嫡出否認の場合と平仄を合わせる形で作られているかと思いますが、同居に関する要件が必須なのかということについて、これは御質問だと理解してよろしいでしょうか。それでは、事務当局の方から。 ○古谷関係官 御質問ありがとうございました。確かに嫡出推定の場合に関しては、同居義務のある夫婦の子として生まれた者を子として認識して、そのような関係を踏まえた同居ということで同居要件ということが立てられ、非常に分かりやすいところでございます。もちろん認知の方に関しては、その父母に関して夫婦としての同居義務がないというところの中で、同居要件を課すことについて、子との同居要件についての在り方が問題になるということは御指摘のとおりだと思います。ただ、実際ここでは、訴えの要件の問題として、父子に一定の同居がなければ認知無効の訴えが認められるということになります。認知の無効の訴えを特別に認めるために、少なくとも3年間の同居期間もあるかないかというところでの要件という形で考えており、もちろん訴えを認めるための要件として同居要件を全て撤廃ということが論理的におかしいということはないということは理解しておりますが、この場面では嫡出否認の訴えに合わせる形で提案しております。少なくとも父子の同居が3年を下回ったときには、認知無効の訴えができる、逆からみると、認知無効が問題となっている場面で、例えば内縁の夫婦のような形で同居している中での子どもとの関係が問題になって、3年以上の父子関係の実態のようなものがある場合に関しては、子において、特則的な認知の無効の訴えをすることを認める必要がないのではないとして提案しているものとなります。 ○山根委員 ありがとうございました。この辺りも一読しただけですと、やはり誤解というか、今の説明のような真意が伝わらないことが多いと思いますので、いろいろと工夫を頂ければと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。提案の内容の説明については、ここだけに限りませんけれども、親子法についてはかなり難しいところもございますので、十分にその配慮をするということが必要だという御指摘と受け止めました。ありがとうございます。 ○棚村委員 山根委員の発言にも少し関連するのですけれども、確かに嫡出推定と嫡出否認、それから認知と認知無効というのは紙一重のところもあって、表裏一体になっているところもあるので、ある程度連動させて平仄を合わせるということの方向性は賛成なのですけれども、ただ、婚姻と婚姻外の関係についての実態とか、嫡出推定とか否認のところでは実情の調査みたいなものを統計的にも少し出していただいて検討したのですけれども、認知とか認知無効については、正直言って、裁判所の司法統計を見ますと、確かに合意に相当する審判も認知の事件はここ15年ぐらいを見ても、ものすごく増えたりしています。ですから、その辺りのところを見ると、人訴の認知も少し増えていますし、大分連動している部分があるのだなというのは推測できるのですけれども、今言いましたように、欧米の国々ですと、やはり婚姻外の出生率というのが40%とか、北欧だと、ものすごくもっと高くなっています。その辺りのところで、嫡出推定とか否認とかという制度ではなくて、私が言っていたように、むしろ父子関係の推定とか、父子関係の否認とか否定とか、母子関係の問題とかというので、嫡出、嫡出でないという法的概念を取っ払ってもいいのではないかと考えた次第です。私自身は認知無効についても一定程度平仄を合わせるということは、事実婚もありますし、それなりの合理性があるとは思っていますけれども、完全に同じにするのか、どこが違うのかということを明確にしながら規律の内容を検討していかないと、ただバランスをとって、嫡出否認でもこういうふうな要件でやっているので、認知無効でも同じようにということでは行かないような感じは少し持っています。   それで、具体的には、7年という切り方も、知ってから、例えば3年という嫡出否認のところとか、その辺りのところでも、整合性がうまくとれて説明ができるような形でしてほしいというので、提案自体に反対するとかそういうことではなくて、両者を右へ倣えというようなことでやっていくにしても、実態とかそれに合わせて、多様なものが含まれていますから、なぜこの期間で区切るのかとか、それから、知ってのときと、認知のときからというときも議論させてもらったのですけれども、知らないで時間が徒過するというケースもありますし、もう一方で、やはり子どもの身分関係の安定性の確保というので今回、子どもの利益を害することが明らかなときはというのでチェックする、歯止めを掛けるということで、それ自体は仕組みとしては非常に合理的なものだと思います。ただ、山根委員が少しおっしゃったように、認知無効と嫡出否認の違うところと共通のところ辺りをうまく説明をしながら御提案をしていただくということは重要だと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。これも説明ないし周知の仕方について御注意を頂いたものと受け止めました。今回認知制度の見直しということで、認知無効に関する新たなルールが提案されているわけですけれども、嫡出否認の方について一定の期間制限があるのであれば、認知無効の方についてもそれに相当する期間制限を考えるべきではないかということで出発したと了解をしております。ただ、嫡出否認と認知無効とでは違う場面もあるので、それらについて、何が違うのでこういう規律になっているのか、何は同視することができるのでこういう規律になっているのかというところをしっかりと説明する必要があるという、御指摘として承りました。ありがとうございます。 ○水野委員 ありがとうございます。認知制度を今度このように、変えていただいたことにつきまして、有り難く存じます。認知に限らず、婚姻にしろ何にしろなのですけれども、日本法の届出制度は非常に特殊ですので、そう簡単に西欧法とパラレルに議論できないところがございますから、このように対応していただいたことについては賛成したいと思います。   そして、この期に及んで、今まで論じられたことのない話題を出すことについて、非常にたじろぎながらなのですが、同居から連想いたしまして、近親相姦子の問題を議論してこなかったなと思いました。フランス法では、アンファン・アンセステュー、乱倫子と申しますけれども、法で婚姻を禁じられた近親者間に生まれた子どもの問題です。フランスは、例えば父親が娘に産ませてしまった、兄が妹に産ませてしまったという子の場合には認知が制限されております。つまり、片方の親としか親子関係を成立できないことになっています。近親相姦に対する人々のタブー感は非常に強いものですから、そういう関係から生まれてきた子であることを明らかにしてしまうことがその子のスティグマになるという発想です。家族が同居して、いたことによって認知がされ得るというところから、その乱倫子について議論していなかったなと思い付いてしまいまして、今ここで一応、一言だけ発言させていただきます。   論理的には今回の改正において、そういう近親婚禁止に当たるような当事者間によって生まれてしまった子の認知を制限するという政策も、もちろんあり得るものだと思います。現在の日本ではそれはとられておりませんので、父が娘の産んだ子を認知することも、兄が妹の産んだ子を認知することも可能になってしまっておりますけれども、もし議論の時間的余裕があるようでしたら、一度お考えいただいてもよいかと思います。すみません、今まで論じられておらず、時機に遅れた提案になってしまうようでしたら諦めますので、御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今御指摘のように、外国法には近親間で生まれた子どもについては最初の一つ目の親子関係しか認めないというルールを設けている国もあります。御指摘の趣旨については承りましたが、今の時点で検討が可能かどうかということにつきましては、事務当局の方で引き取らせていただいて少し考えていただくということにしたいと思います。それでよろしいでしょうか。 ○佐藤幹事 1点確認をさせていただきたいのが、今お話のありました近親相姦における親子関係というのは、日本に引き直した場合に、戸籍上表れている親子関係という前提で考えてよろしいですか。戸籍の中に当事者が載っているときに、その親子関係、あるいは兄と妹との関係というようなことが戸籍上明らかな関係を前提として、子どもができてしまったような場合の認知を制限すると、そういう前提ということですか。 ○水野委員 はい、そういう前提で考えております。 ○佐藤幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 そのほかに、いかがでございましょうか。 ○窪田委員 それでは、17ページの提案のところの1(1)②について発言させていただきます。先ほど山根委員からも御指摘がありましたし、棚村委員からも御指摘がありましたが、嫡出推定否認と認知、認知無効が全部セットになる必要はないのだろうとは思います。ただ、私自身はこの②の規律は一定の意味があるかなと思います。というのは、つまり、これがなくなってしまうと、本当に血縁関係だけで全部決まってしまうということになるわけですが、それに対して嫡出推定の方でも、嫡出否認ができない場面として、やはり3年間、そういうふうな表現は最終的には採られませんでしたけれども、社会的な親子関係の実態があるという場合には、それをひっくり返すことを認めなかった、それと同じように、認知という形の法的な親子関係において、3年間の実質的な同居ということ、実質的な親子関係があるような場合には、それをひっくり返すことを認めないという趣旨では、両方ともでやはり共通するルールを置くということには意味があるのだろうと思います。   ただ、そうは言いつつ、嫡出推定の場合には基本的は生まれた時からということになりますから、3年間の期間をどこかに取るというのは比較的容易であるのに対して、認知の場合には、もう生まれてすぐ認知だとか胎児認知だという場合は別にして、ある程度子どもが大きくなってから認知したということになりますと、その後の3年間の期間というのを確保するというのは少し難しくなるかもしれないけれども、それはそれで、正しくその点が認知と嫡出推定の違いだという説明の仕方もできるのだろうとは思っております。   ただ、今の説明にもありましたし、また補足説明の中にも出てくるのですが、これはやはり単なる同居ではなくて、要するに、他人だけれども同居しているという関係ではなくて、親子であって同居している、だから社会的な親子関係があるのだというものだとすると、やはり認知後の3年間でないとおかしいということになると思いますし、この規定を見る限りでは、やはり両方とも解釈の可能性はあるのだろうと思います。飽くまで認知後に絞るという解釈もあり得るのだろうと思いますが、この規定から明らかにそうだとまではいえないのだろうと思います。その点では、やはり認知後の3年間だということを明らかにした方がいいのではないかと個人的には感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。(1)②について、基本的にこの考え方でよいのではないかという御意見を頂いた上で、同居した期間というのをどこから計算するかということについては、それは認知後だという前提に立たれ、それを明文化した方がよろしいのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。   ほかにはいかがでございましょうか。 ○幡野幹事 ありがとうございます。私も窪田先生と同じ箇所に関して、資料でいいますと23ページ、24ページの辺りの継続して同居した期間が3年を下回るとき、というときの同居をいつから考えるか、そして(3)の養育の状況についてどの時点から考えるのかということについて発言をさせていただきます。   今の御提案ですと、同居については認知後からの方がいいのではないかという趣旨のことが書かれていて、(3)の部分で養育の状況というのはその前の時点も含めて考慮するのが望ましいのではないかという書き方がされておりますけれども、先ほどの窪田先生の御意見のように、認知後に初めて父と子としての同居、そして父と子としての養育というのが始まるというように、起算点は一致させる方が望ましいのではないかと考えております。また、先ほど嫡出推定のケースと認知のケースで違う部分もあるという御発言もありましたが、そのような理解をすることにより、両者について共通の正当化ができた方がいいようにも思っております。どういうことかと申しますと、嫡出推定が及んでいる成年の子の否認に関して、3年の同居に基づく親子としての関係があるともはや否認ができないというルールは、嫡出推定という法的な親子関係の設定があった上で親子としての社会的な関係がある、その二つが合わさって、3年経つともはやこの関係は覆すことができないという構造になっております。認知に関しても、認知をすると法的な親子関係の設定があった上で、親子としての社会的な関係というものが3年間形成されて、その3年経った後に、もはやその関係を覆すことができないという構造であると考えることができますます。そのような理解をすると、なぜ3年経つともはや否認ができないのか、認知無効の主張ができないのかについて、認知の時から起算をすると、共通の正当化をすることができる、のではないかと考えております。今、論理的にこうした方が整合的ではないかという話をいたしましたが、実質的に見ても、認知前の同居していた、あるいは認知前に、子に対して養育費を支払っていたとしても、親子として同居していたかというのは明らかではありませんし、自らの子に対して養育費を支払っているのか、それともパートナーの連れ子という認識で養育費を支払っているだけなのかということも、やはり認知の前には必ずしも明らかではないという部分もあると思います。そういう意味でも、認知無効についても、認知をした後の社会的な親子関係の有無というものを考慮するのが望ましいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。理屈の上と実際上と、認知の後の状況を考慮するということが望ましいのではないかという御意見を頂いたと理解をいたしました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○石綿幹事 今の幡野幹事の発言に重ねて発言させていただければと思います。基本的に幡野幹事と同じ意見でして、特に、ただし書に当たる部分は認知後の事情を見て、法的な親子関係があった後にどのような養育をしていたのかということを判断する方が、全体として整合性がとれるのではないかと思います。心情としては、認知前に様々な養育等をしていた、費用を支出していたというようなときに、若干気の毒に思うようなこともありますが、法律論として考えた場合に、認知後ということがよいのではないかと思います。   それとの関係で、1点、④の子の監護のための費用の償還に対する規律についての質問なのですが、事務当局の方で、この際の子の監護のための費用というのはいつの時点から支出したものとお考えなのかお伺いできればと思います。認知した後に実際に支払った監護費用なのか、あるいは認知前の実質的に何かしていたものまで含むと考えていたのかということとの整合性も全体としてとれた方がよいのではないかと思った次第です。すみません、この論点は後でと言われましたが、ここで質問させていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今、心情的には前の方を考慮するということも考えられるけれども、理屈の上でどうだろうかということをおっしゃった上で、費用の償還に言及されて、事務当局に対する質問がありましたが、費用の償還のことについてお答えを頂きたいと思います。皆さん、理屈の上でとおっしゃるけれども、認知の遡及効との関係はどうするのかも多少問題になるかと思います。 ○古谷関係官 今の石綿先生からの御質問について、基本的な考えとして、償還の関係は恐らく認知後での監護の費用ということで想定されるということになると思います。結局、償還について、不当利得の関係などが問題となり、認知前にされたもの、監護みたいなものとして父が子に与えたものについて、例えば、それが贈与と評価されるかなど、その法的な性質決定などが検討されることになると考えられます。恐らく今の規律の考え方では、監護費用とされるのは認知後のものという形での整理になるかと思います。 ○窪田委員 私も今の御説明と全く同じような理解でおります。ただ、部会長から御指摘があったのは、認知の効果が出生のときに遡るのだとすると、過去の贈与も実はその法的親子関係がある者の間のものになるから、扶養として性質決定される可能性があるのではないかということの御質問だったのだろうと思うのですが、結局、認知の遡及効ということをどういうふうに理解するかということにも関わってくるのだろうと思います。その遡及効として、親子関係というもの自体は法的に遡って出生のときから考えるのだとしても、過去に行われた個々の法律行為等の性質がそれによって変わるという捉え方ではないのではないかと私自身は考えております。ですから、今御説明があったような形で、認知前の関係に関していうと、これは単なる多分、無償行為としての贈与等になりますので、その性質が変わらない以上は、そもそも不当利得返還請求権の問題は生じないという立て付けなのではないかと思うのですが、十分な説明かどうか分かりませんが。 ○大村部会長 認知前の養育については原因がなくて養育していたと考えるわけですね。 ○窪田委員 親子関係に基づく養育ではなかったという、つまり、歴史的な事実として見たときにはやはりそう捉えざるを得ないということなのだろうと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。いずれにしても、そこは少し整理を要する点なのかと思います。 ○窪田委員 多分、一言やはり遡及効についてどういうふうに理解するのかとの関係での説明は必要なのだろうと思います。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。   起算点についてと、それから今の②のルールについて、おおむね皆さんの賛成を頂いているかと思います。②の年齢の方、21歳でそろえるという提案が今回されておりますけれども、この点についての何か御意見等がありましたら是非お聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。   特にこれに違和感はないと受け止めてよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   そういたしますと、この①、②についてはおおむねこの方向でということでよろしいでしょうか。 ○久保野幹事 ①、②に関連して、今まで出ていない点としまして、21ページの(2)イで御提起いただいている問題についての意見です。21ページの最後から次のページにかけて、成年の子が承諾した認知については、母固有の認知の無効の主張自体を認めないといった規律を設けることも考えられると記されている点について、私はこれは認めないという規律にするのが望ましいのではないかと考えます。実は修正前も同じ問題があったのだとは思いますけれども、余りその点に問題意識を持って考えてきていませんでしたが、このように改めて考えてみますと、子どもの身分関係の安定ということは、もはや重視しないでよい場面かと思いますし、成年に達した子ども自身が承諾してなされている認知について母が無効を主張するということは、そこまでは認めなくてよいのではないかと、認めるべきという積極的な理由は見いだせないように思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。22ページの3行目から後ですけれども、ここで書かれている方向に賛成するという御趣旨ですね。ありがとうございます。   今の点も含めまして、ほかに御意見はいかがでしょうか。 ○棚村委員 先ほどの意見でも申したのですけれども、特にこの提案に反対というよりは、説明のときに誤解を生じないように、実態だとか共通のルールを設けることの必要性についての説明を、先ほどのような感じで、社会的親子関係みたいなものを基礎にして決定するルールというのが合理性があるのだというようなことを伝えていただければということで申し上げたということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。説明についての御注意を頂きました。   先ほどの久保野幹事の御指摘がありますけれども、その御指摘も含めて、この二つの論点については一応御意見を伺ったということにして、あとは、残る論点も併せて御意見を頂ければと思います。   残る論点と申し上げたのは、先ほど石綿幹事が触れられた監護費用の償還の問題と、それから承継の問題と、26ページに出てくる最後のその他の規律という問題ですけれども、これらについても併せて御意見があれば頂戴したいと思います。   特にございませんでしょうか。   事務当局の方で、何かここはという点がありますか。 ○古谷関係官 承継の関係は、先ほど嫡出推定の方も残した方がいいのではないかという御提案もある中で、もしその辺り、そもそも分けること自体が正当化できないというのか、今回一応、部会資料では切り分けた形で提案させていただいておりますので、その辺りの感触も含めて御意見いただけたらと思います。 ○大村部会長 承継の点について、先ほどの嫡出推定の点とも関わるわけですけれども、大森幹事からは、少しバランスを考えた方がいいのではないかと御指摘を頂きましたが、その辺りについて皆さんの御意見が何かあればということだったかと思いますが、いかがでしょうか。 ○久保野幹事 ありがとうございます。私自身はまず、嫡出の子についての承継については一身専属性を強調して、承継を認めないということでよいのではと個人的には考えているところでありますけれども、そのように考えたとしましても、認知につきまして、この資料で、しかしながらの下に書いてありますような状況についての違いといったことを背景とした利害の違いということを踏まえますと、別途に考えるということは十分にあり得るのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。今回の原案のように、嫡出否認の場合と認知無効の場合とで分けて考えることがあり得るのではないかという御意見を頂きました。   ほかにはいかがでしょうか。 ○磯谷委員 私も今の久保野先生の御意見とほとんど同じなのですけれども、嫡出否認の場合においては、子の年齢の点からしても、直系卑属がいるという可能性はかなり少ないし、また、いたとしても実際にそれで承継して何か活動をするという利益が実際にあるかといわれると、なかなか見いだしにくいということからすると、少なくとも実害は余りないのではないかなと思うところと、あと、先ほど私も強調しましたけれども、嫡出否認における成熟した子の否認というのは、やはりそれまでの養育の在り方等も踏まえた上での子ども自身のある意味、生き方といいますか、そういったところと非常に直結するものなのだろうと思いますので、一身専属的というところについては一層強調されてもしかるべきなのかなとは思いますので、そういう意味では、先ほど大森幹事からの御意見もありまして、それ自体、理由のあるところだろうとは思いますけれども、事務当局のお考えも十分合理性はあるのかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほど嫡出否認の方については、承継についての規定を削除するという案に反対の意見が見られたとまとめましたけれども、認知と併せて考えたときに、あちらは規定を置かないけれどもこちらは置くという考え方は、やはりあり得るのではないかという御指摘を今、続けて頂いたところです。 ○棚村委員 今の御意見を聞いていて、先ほどから少し、最初に問題提起したのは、嫡出推定とか否認という制度と認知、認知無効というのは、実は表裏一体というか連続する関係でもあると、事実婚もあればですね、そういう意味では、実態はかなり多様で、ただ、多様さの程度とか内容がまた少し違うコンテキストというのは考えられると思うのです。当事者の死亡のときに一身専属権で切ってしまうということであれば、先ほど言ったように、本人の意思の尊重とか、ほかの人が代理行使するとか、いろいろなことについても一定の制限を設けるという方針で決めるのであれば、それはそれでいいと思うのですけれども、今の説明を聞いていても、実態が違うからという御説明があるのですけれども、認知と認知無効というのは、かなりそういう意味では連動しているところがあるので、共通のルールみたいな形で設けて、それがどういうふうに使われるかということについては確かに様子を見てみないと分からない、特に新しい制度についてはそうだと思うのです。   ただ、先ほど来の委員の御説明とかいろいろなご意見を聞いていると、やはり嫡出推定否認ということと、実親子関係をとにかく認める場合と否定する場合とで、共通性みたいなものをベースにしながら、異なっているということで、今の承継のルールについても、異なったものを置かなければいけない説明のところが、特に一般の人が納得しにくいのではないかという感想を持ちました。もちろんそれで確定というわけではないのですけれども、先ほど言った、どこが共通のルールを使って、どこが異なったルールになるのかというところの理由の説明のところが、直系卑属がいることが少ないとか、成熟した子の否認権みたいなことを認めたときに一身専属的なものが非常に強いというのも分かります。ただ、認知の場合もやはり一定の年齢に達した子どもがそれを行使するとかそういうことについては、もちろん本人の意思も大事ですけれども、ただ、それが一定の場合に承継されるかどうかということについても、はっきりとそう明確にできるのかなとも考えます。つまり、平仄を合わせる部分については合わせて、その利用については、実際には余り利用されないということも起こるかもしれませんし、その辺りのところが少しまだ納得できないので、検討が必要かなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど棚村委員から御指摘がありましたけれども、共通の要素に着目して共通の規律を置く部分と、違いに着目して異なる規律を置く部分があるわけですが、この問題はむしろ共通点の方が多いのではないかという基本的な認識に立たれた上で、違うのならばどこが違うのかということを明確に説明するべきだと、いう御意見として承りました。   ここは、前の問題も併せて、両論御意見があるということでしょうか。 ○中田委員 ありがとうございます。認知の承継についてなのですが、現行法の786条の利害関係人というのを削除して、その代わりに限られた範囲の者を置く、しかし、承継という形で現在の判例などの考え方をある程度は受け止めるという中間的な解決かなと理解していたのですけれども、そうだとしますと、現在の法制度をどのように改正するかという観点も、あるいは維持するかという観点も含めて検討すべきことかなと思いました。 ○大村部会長 現状がどうなっているのかということを勘案して、それをどのように参酌したのかということも考慮すべきだという御指摘を頂いたと思います。   ありがとうございました。ここはいろいろな御意見が分かれたところということで引き取らせていただきたいと思います。   そのほかに何かありますか。よろしいですか。   それでは、第5についても意見を頂いたということにさせていただきたいと思います。   これで今日予定していた分は終わりなのですが、今後のスケジュール等につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○佐藤幹事 次回の日程ですが、令和4年1月11日火曜日の午後1時半から午後5時半まで、場所は法務省7階の共用会議室6・7で予定しております。   本日頂いた御指摘を踏まえまして、全体的な要綱案の原案をお示しできればと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   次回は年明けの1月11日ということで、場所はいつもと違うところですけれども、要綱案の原案を出していただいて、それについて御意見を頂くことを予定しているということでございます。   本日、要綱案に盛り込むことの是非を検討すべき論点について御意見を頂いたことによって、次回には要綱案の原案を議論するというところまでやってまいりました。あともう一息というところになりましたけれども、要綱案の取りまとめを来年に残すという形で、今年は閉じさせていただきたいと思います。   今回を含めて、今年も審議につきまして御協力を賜りましたことにつきまして、お礼を申し上げたいと思います。あわせて、よいお年をお迎えいただいて、また残りを御検討いただければと思います。   それでは、法制審議会民法(親子法制)部会の第23回会議を閉会させていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会いたします。 -了-