法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第23回会議 議事録 第1 日 時  令和4年1月28日(金)自 午後1時00分                     至 午後1時52分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 それでは、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会第23回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日は湯淺委員及び衣斐幹事が御欠席ということであります。   本日の審議に入ります前に、本日の配布資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○西関係官 本日は、部会資料32-1「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案(案)」及び部会資料32-2「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案(案)についての補足説明」の二つの部会資料を配布させていただいております。 ○山本(和)部会長 それでは早速ですが、本日の審議に入りたいと思います。   本日も資料、大きくは第1部から第3部に分かれておりますが、そのうち「第1部 民事訴訟法の見直し」について、これを大まかに三つの部分に区切って御審議を頂きたいと思います。部会資料32-2、補足説明が入っている方で言わせていただきますが、これでいうと1ページの「第1 インターネットを用いてする申立て等」の部分から9ページの「第5 争点整理手続等」、終わるのは11ページですが、この部分まで、第1から第5の部分までについて御意見を伺いたいと思います。御質問あるいは御意見のある方はいつもどおり挙手をお願いできればと思います。 ○日下部委員 第4、以前は「新たな訴訟手続」と呼ばれていた事項について、1点質問をさせていただければと思います。   今回の部会資料では、前回の部会資料に存在していた申出又は同意の時期の規律を置かないこととされています。私は前回の部会の会議でこの点の見直しも求めていたところでしたので、削除されたことには感謝しております。それを踏まえての質問なのですけれども、申出や同意の時期が遅くなった場合、訴訟の進行状況によってはこの手続を利用することが適切ではなくなっていることもあり得るように思われるのですが、そうした進行状況も裁判所の考慮事項に含まれ得るという理解でよろしいでしょうか。これは、事務当局のお考えをお聞きできればと思います。 ○山本(和)部会長 それでは、事務当局からお答えをお願いします。 ○脇村幹事 脇村でございます。ありがとうございます。今の御質問の関係で行きますと、恐らく最終的な要件の関係で行きますと、第4の2の、この事情に当たるかどうかということでございまして、今回、2の方では、事案の性質とか訴訟追行、負担の程度その他の事情に鑑みと書かせていただいておりまして、その上で適正な審理の実現を妨げるというときは外れると書いているところでございますが、御指摘いただいたとおり、このその他の事情の中には進行の状況の程度というのは入ってくるのだろうと思っておりますので、先生御指摘のとおり、訴訟追行の状況によっては、この時期になってやるということがふさわしくないケースというのは当然あり得るのだろうと理解していたところでございます。 ○日下部委員 ありがとうございます。特にそれ以上、コメントはございません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは、ほかに御質問、御意見がおありの方はお願いいたします。 ○大坪幹事 同じ第4のところで質問なのですけれども、今回、名称が変わっているわけですが、この第4の手続というのは民事訴訟法のどの部分に規定されるのか教えていただければと思います。お願いします。 ○山本(和)部会長 それでは、事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 ありがとうございます。現時点で法のどこに書くかについては、要綱を頂いた上で当局として整理していくことだろうと思っているところでございます。そういった意味では、現時点でそれ以上なかなかコメントしづらいところでございますが、今回の手続については審理あるいは裁判の中身についても触れているところでございますので、そういったことを踏まえながら、しかるべき位置に記載していくことになろうかと思っております。 ○大坪幹事 ありがとうございました。要綱案についての意見というよりも、今後条文化する際に御検討いただきたいと思いますけれども、この手続につきましては当初、特別な訴訟手続とされて、中間試案では新たな訴訟手続ということで検討されてきたところだと思います。現在固まった内容を改めて見ますと、民事訴訟法の第5編の手形訴訟とか第6編の少額訴訟のような特別な訴訟手続とはやや異なる、通常の訴訟手続の中の審理の一つのルートにすぎないように思われます。したがいまして、特別な訴訟手続として少額訴訟や手形訴訟と並べて規定するのではなく、別なところ、具体的には第2編の第一審の訴訟手続の中に規定されるべきものではないかと思いますので、御検討いただければと思います。   それを前提として、名称について今回、書き下しという形で長い説明になっているわけですけれども、従前からこの手続に関しましては、実務上試みられている迅速トラック、ファストトラックのようなものを法定化するということで考えられていたかと思います。そういう前提で名称につきましても御検討いただければと思います。今回の書き下されたところを短くして、単純には申出による法定期間審理手続ないし単に法定期間審理手続ということが、安易には考えられるところかと思いますけれども、いずれにしても特別なとか、新たな訴訟手続とは違うということが名称から分かるようにしていただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。御意見としてお伺いしておきたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会、藤野でございます。同じく第4のところでございます。私は前回ここのところに関して、数年で、2年及び3年程度での見直し規定を入れたらいかがかという提案をさせていただきましたが、そのことについては何も書かれていませんが、どのようにお考えかをお教えください。 ○山本(和)部会長 それでは、事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 脇村でございます。藤野委員、あるいはほかの方からも、見直しの検討条項といいますか、そういったことについて御意見いただいたところでございます。今回、要綱案に書かせていただいておりませんが、恐らく皆様に頂いた意見は、法律上そういった附則等で何か規定を置くべきではないかという御意見だと思っておりまして、私たち事務当局としましても、最終的に法案を出す際にはそういったことも御意見いただいたことを踏まえながら検討していきたいと思っているところでございます。この検討条項を置くかどうかは、最終的には政府内で調整した上ででございますが、いずれにしても全般のIT化、あるいはこの手続全般について見直していく必要があるのではないか、特にITについては、やってみた後どうするかについて検討すべきではないかということは多く頂いているところでございますので、検討条項につきましても、ここで確たることは申し上げにくいところはございますが、検討していきたいということで私たちの方は受け止めたいと考えているところでございます。 ○藤野委員 私は今、脇村さんがおっしゃってくださったように、前回この第4の新しい手続きに対して意見を申し上げましたが、IT化全般に関して数年での見直しは必要と考えておりまして、それは是非、分かる形で入れていただきたいと希望いたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。恐らくその点は当部会の委員、幹事の皆様の共通したところがある御意見を代表されているものと思いますので、その点は私からも事務当局の方にお願いをしておきたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 前回の会議におきまして、そのときには最後の機会と思って、この新たな訴訟手続について思うところを余さず申し上げたところです。にもかかわらず、またかという感じで、我ながら気恥ずかしいのですけれども、諸事情ありまして、肝腎な点のみ再度、簡潔に申し上げたいと思います。   この新たな訴訟手続については、当事者に不測の不利益を与えるのではないかという懸念を持つ人が少なからずおります。しかし、そうした懸念のほとんどは当事者双方に訴訟代理人が付いていれば解消されるものであると認識しておりまして、それゆえに当事者双方に訴訟代理人が付いていることを要件とすることを求めてまいりました。現在の要綱案の案では、そのことは法律上の要件として明文化はされておりませんけれども、これまでの部会資料の中で、当事者双方に訴訟代理人が付いているか、それと同視し得るような特段の事情があることが必要であるという御説明を事務当局から頂いたところです。また、そのような内容については一問一答など今後の刊行物等で周知に努めていただく御意向もお話しいただけました。私としましては、そうした今後の取組によって、部会における議論の中で想定していないような運用がされないものと信じております。今回いよいよ部会において要綱案の案を承認するかどうかが各委員に問われていると思いますが、私は、そのような取組がなされ、想定外の運用がされないということを前提として、この新たな訴訟手続に関する部分についても要綱案を取りまとめることには賛成したいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。この新しい制度ができた後の運用につきましては当然、事務当局、法務省においても十分な理解を求めるということが必要でしょうし、また裁判所、弁護士会等、司法書士会を含めて、現実に運用に携わる方々の間でも今、日下部委員から御指摘があった共通理解を形成していただいて、想定外の運用にならないよう、そして、この制度が必要な場合にしっかり使われるよう、恐らく様々な場で協議ないし実践をしていただく必要があるのだろうと私としても思っております。   ほかにいかがでしょうか。 ○藤野委員 主婦連合会、藤野でございます。ただいま部会長の山本先生も運用に際しての留意点を取りまとめてくださいましたが、第4のところですが、いろいろと議論を重ね、やってみればよろしい案になったと感じてはおりますが、私、主婦連合会としては、やはり、この部分についてIT化関係のこの部会で作り上げるということには、飽くまでも賛成はできないという姿勢でございます。それだけは申し上げておきます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。藤野委員のお立場は十分理解しているつもりでございます。また、この点は最後の取りまとめのときもお諮りをしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、引き続きまして、今度は部会資料32-2でいいますと11ページの「第6 電磁的記録についての書証に準ずる証拠調べ」のところから、16ページ、終わりは19ページになりますが、「第10 訴訟記録の閲覧等」、この部分について御質問ないし御意見があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。   特段ございませんか。よろしいでしょうか。   それでは、続きまして、第1部の残った部分ですね、19ページの「第11 再審、手形訴訟」の部分から「第15 被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度」、24ページが終わりになりますけれども、この第1部の残りの部分について、やはり御質問、御意見があれば御自由にお出しを頂きたいと思います。 ○日下部委員 ありがとうございます。1点質問をさせていただければと思います。関連している部分は第15、被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度に関してです。   前回の部会の会議の最後に、秘匿決定がされた事件において、加害者とされた者が債権者として債務名義を得た場合に、被害者とされた債務者の住所等が秘匿されているために民事執行による債務名義の実現が困難な状況をどのように考えるかについて、若干の意見交換がされたと思います。加害者側の債務名義の実現の利益も、被害者側の生命身体等の保護も重要であって、両者が両立しない場合の判断は難題でして、それについての法制的な解決案の提示には至っていないものと思います。実際の事件においては、そうした判断を迫られる現場の裁判官の苦慮が予想されるところかと思います。   この議論は民事執行の場面についてされたのですけれども、翻ってみますと民事訴訟の場面でも類似の状況は生じるように思います。具体的には、秘匿決定がされた事件において加害者とされた者が、自己の攻撃又は防御に実質的な不利益を生ずるおそれがあるとして訴訟記録の秘匿事項部分の閲覧等の許可を申し立ててきた場面です。ここでは、被害者の社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれという秘匿決定の要件の存在は否定されておりませんので、加害者側の攻撃防御上の不利益の除去と被害者側の生命身体等の保護の両者が求められるものの、それらが両立しないことで、やはり現場の裁判官が苦慮するところではないかと予想しております。   この点、部会資料32-2の23ページの上の方の(3)においては、加害者とされた者が自己の攻撃又は防御に実質的な不利益を生ずるおそれの原因となる事実を疎明したときは、裁判所は閲覧等を許可しなければならないとし、許可を義務付けているところです。しかし、場合によっては、そのような疎明があっても、被害者の生命身体等に対する危険の程度や可能性が大きく、裁判所が許可しない扱いを認めるべきこともあるのではないかという考え方もあり得るように思います。このような問題点について、事務当局としては何かお考えがあるのでしょうか。もしもあれば、御紹介いただければと思います。 ○山本(和)部会長 それでは、事務当局からお願いします。 ○脇村幹事 脇村でございます。ありがとうございます。今頂いた問題点につきましては、恐らく部会の私の理解では、最終的にこの不利益を生ずるおそれがあるという要件の疎明があったケースについては、これは要件を満たしているということで、しないといけないということについては、恐らく皆さんの御意見は一致しているところだったのだろうと思います。ただ、最終的にこの要件判断をする際に当該情報の内容について全く考えなくていいのかどうか、こういったことについては、また、そこについては最終的に事案ごとの判断ということになろうかと思っているところでございまして、結局、要件が満たされるかどうかの判断の際に、そういった情報とか、そういったことも含めて考えることについては、恐らく先ほど言ったとおりかと思っています。   ただ、いずれにしても、要件があるということになれば、それはもうしないといけないということに尽きますので、かつ、この部会では少なくとも実質的な不利益を生ずるケースについてはやはり考えるべきだということも御意見いただいたところでございます。あとは最終的にはその事案ごとの判断としか言いようがないといいますか、実務の積み重ねを踏まえながら、また引き続き検討していく課題かと認識しております。 ○日下部委員 ありがとうございます。私自身は、自己の攻撃又は防御に実質的な不利益を生ずるおそれの疎明があった場合に、正面からなお裁判所が許可しない余地を残す規定にすることについては、民事訴訟法の様々な規定において通底している当事者間の衡平の観点に照らすと抵抗感がございます。その意味では、現在提案されている文言で私自身はよいものと考えているところです。ただ、裁判所が適切な判断をするために、自己の攻撃又は防御に実質的な不利益を生ずるおそれの有無の判断において、被害者側の生命身体等に対する危険の程度や可能性も考慮することを一概に否定するべきではないように思いますし、それがどうしても困難だという場合には、あるいは一般条項による処理も個別の事案においては考えられるのではないかと考えた次第です。この規定の解釈運用は今後の問題ですけれども、その在り方の一つについての意見として、その旨を申し上げたいと思います。 ○山本(和)部会長 日下部委員、ありがとうございました。恐らくそのような解釈というか、に共感を持たれる委員、幹事も他にもおられるのではないかと思いますが、いずれにしろ個々の解釈運用に委ねられていく問題ということかと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。   それでは、以上で第1部については御検討を頂けたということで、引き続きまして、部会資料32-2でいうと25ページにあります「第2部 民事訴訟費用等に関する法律の見直し」、この部分について御審議を頂きたいと思います。第1から第3までありますけれども、どの点からでも結構ですので、御質問、御意見等をお出しいただければと思います。   いかがでしょうか。特段よろしいでしょうか。   それでは、続きまして、最後でありますけれども、部会資料32-2の26ページ以下、「第3部 その他」について御審議を頂ければと思います。こちらも第1、第2とありますけれども、どの点でも結構ですので、御質問、御意見、御自由に御発言を頂ければと思います。   よろしいですか。   それでは、以上で部会資料32について一通り御審議を頂けたかと思います。   なお、私から一言御発言をさせていただきますと、当部会においてはこの要綱案に掲げられているもののほかに、障害者に対する手続上の配慮に関する規律を設けることについても御審議を頂いたかと思います。最終的には、これまでの経緯で要綱案への記載は見送られたところでありますけれども、民事訴訟の手続に関与する障害者に対して手続上の配慮をすべきことについては重要な検討課題であり、引き続き検討していくべきものであることについてはおおむね御異論はなかったものと理解しております。もちろん、それをどういった内容とすべきであるのかについては様々な御意見があるところと思いますけれども、この要綱案に盛り込まないとしても、それはその点について検討すべきでないということを意味するものではなくて、先ほども述べましたとおり、この問題は重要な検討課題であることには基本的に異論がないものと思いますので、その点について改めて確認をさせていただきたく、部会長として発言をさせていただいた次第であります。 ○清水委員 ただいまの部会長よりの御発言につきまして、これまでの部会におきまして障害者に対する手続上の配慮に関する規律を設けることを要望しておりました立場として、深く感謝申し上げたいと思います。また、そのことが早期に実現されることを希望するという意見を改めて述べさせていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○藤野委員 主婦連合会、藤野でございます。私もただいまの山本先生の御意見はその通りだと思いました。私自身が障害者に対する手続上の配慮の規律をこの部会で外してしまったことに大きな後悔がございました。できるところからでも障害者への配慮は盛り込むべきと考えておりますので、是非、よろしくお願いいたします。ただいまの御意見、ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは、ほかに、今の点でも結構ですし、あるいは全体を通じてということでも結構ですので、何か御発言がある方がいらっしゃれば御発言をこの際、頂ければと思います。 ○阿多委員 法制審の部会は委員、幹事が個人又は推薦母体を踏まえた意見を述べ、議論を重ねる場であり、必ずしも委員、幹事の意見が100%実現できる場ではないということは十分理解しています。今般の部会においても弁護士委員、幹事は日頃の実務経験を踏まえ、各種意見を述べさせていただきました。その中には、裁判に直接携わらない委員、幹事等を意識した発言も多く、その幾つかについては、部会資料原案のままでは実務では必ずしも機能しないことについて理解をいただいた事項もありますが、他面、我々が危惧する点に問題点について必ずしも正確に、若しくはその重大性についてお伝えできなかったのではないかとじくじたる思いでいます。今日の意見交換の場でも議論されていた、第4の当事者の申出による期間の法定されている審理の手続については、実現した際の病理面について、弁護士委員・幹事としてかなり問題点を指摘し、表現、規定ぶり等も検討いただいたわけですが、それでも今後も見直しが必要ではないかと思っています。   とはいえ、23回にもわたる意見交換の機会を与えていただき、本日その成果について要綱案としてとりまとめができることそれ自体は喜びたいと思います。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○井村委員 今回が本部会最後の議論の場となると思いますので、連合としてまとめの発言をさせていただければと思います。   まず、この間の委員、幹事の皆様の御尽力に敬意を表します。とりわけ第4の規律による審理及び裁判に関して、個別労働関係民事紛争に関する訴えを除外いただいたことに感謝します。私ども連合では経済・社会全体のデジタルインフラの積極的な整備を政策に掲げており、これまでマイナンバーをはじめとする行政サービスのデジタル化の推進に積極的に関わってきております。そのような視点でこの部会にも参画をし、第4の規律の部分を当部会で議論することがふさわしいかどうかは若干の疑問は持ちつつも、民事訴訟のIT化が司法アクセス改善につながるものと評価する立場で臨んできました。今回を含めて23回の部会の中で、委員の皆さんから出された多くの意見を整理して、要綱案として取りまとめられた事務当局の御努力に敬意を表し、本案に賛成したいと思います。ついては、関係規則等も含めて、丁寧な法令の整備を図っていただければと思います。   一方で、今回の法改正は司法制度のIT化に向けた第一歩ではないかと考えます。技術の進展は本当に速いものです。そもそも本部会についても、2年前、当初の時点ではこのようなウェブ開催というのは考えることもできなかったのではないかと思います。現在の技術も数年たてば恐らく陳腐化し、またシステムを多くの人が利用する中で改善を要する部分も新たに見えてくるでしょうから、見直しは必須であると考えます。法案化の際には、是非ともIT技術の進展を踏まえた見直し検討規定を盛り込むことをお願いします。   以上です。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 日本総研の大谷でございます。これまで御発言されてきた皆様と同様に、これまでこの部会での検討をリードしてくださった皆様に感謝と御礼を申し上げたいと思います。ITの特性に非常に配慮した要綱案となっていると思いますので、今後の司法へのアクセスということでは大いに改善するものと考えております。   少し話題が外れるかもしれませんけれども、最近私が勉強していることの中にビジネスと人権という問題がございまして、先頃我が国でも決定されたビジネスと人権に関する行動計画というものがございます。この中に、司法へのアクセス、人権侵害に対する救済のアクセスの一環として、この民事訴訟のIT化ということが取り上げられております。ですので、やはりここでの検討というのがビジネスと人権という文脈の中でも、司法へのアクセス、救済へのアクセスの向上につながらなければならないと考えている次第でございます。   その関係では、今回の要綱案、非常によくまとまったものではございますけれども、この我々の考え方が生きるも、あるいはまた生かされないということがあるにしても、最高裁で設計中のシステムに依存する部分がとても大きいのではないかと考えております。最高裁ではシステムを構築するとともに、その運用ルールというのを細かく決めていただき、また、それを利用される裁判官、そして書記官その他の方々に広く伝えていただく役割があるかと思いますので、そのための準備というのが円滑に、かつ今回の要綱案の検討プロセスを踏まえたものとなるようにお願いしたいと思っております。   また、最高裁はもちろんのことですけれども、法務省その他、ITの利活用について責任を持っている行政分野におきましても、ITの利活用の環境のためのアクセスのよさというものが司法のアクセスのよさにもつながっているということを考えて、各種の支援策などを御検討いただければと思っております。私の所属しているビジネスの世界でも、司法へのアクセスにもつながるような新たな技術のイノベーション、あるいはユーザビリティということも考えながら、これからの技術開発などにも取り組んでいく必要があると自覚しているところでございます。   最後に一つ注文があるとしましたら、今回の要綱案は非常に技術的中立性を意識した文言になっていますので、直ちに訴訟の流れでITがどのように利用されるのか、また皆様の手元で使われているシステムとどのように連携していくのか、実感が湧かないところが多いのではないかと思います。そのような一般の利用者の意識とのギャップを埋める努力というのも今後必要になってくるかと思いますので、要綱案のその先といったものをここに関係する皆様と一緒に引き続き考えていくことができればと思っております。   どうもありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○小澤委員 民事訴訟法の改正に関する要綱案の策定という大作業をコロナ禍で、従前の会議方法で進めることができないという困難な状況下であったにもかかわらず、正にIT関係を議論するにふさわしくウェブ会議などを活用し、1年6か月以上の長きにわたりスムーズかつ十分な対話を確保した運営をしてくださった事務当局の皆様方に深く感謝申し上げます。お陰さまで当部会の審議において、IT化特有の問題だけでなく、ITなどを活用して裁判を迅速に進めるという抜本的な問題にまで実に意欲的かつ慎重に取り組むことができたと思っています。それぞれの異なる立場からの意見が激しく交わされたことが今となってはなつかしくも感じられますけれども、山本部会長のお人柄や誠実な議事進行によって、そういった鋭く意見が対立した論点についてもハーモナイズされて、粘り強く丁寧に議論を重ねることができ、本日の最終の要綱案承認の段階にまで至ることができたものと考えております。   ITの活用につきましては、士業者のみインターネットを用いた申立て等を義務付けるということになりますが、IT機器は義務ではないから利用しないという性質のものではないと考えております。逆に、任意であるからこそITの利便性を国民一般の方が享受することができるように、士業者が自発的に取り組むべき覚悟が求められていると意を新たに受け止めているところでございます。審議の過程や、これから承認されるであろう要綱案の全体を見渡してみても、民事訴訟法の根幹となる、裁判は当事者が主体的にするものであるという理念が随所に示されているものと考えています。これからも実務家団体として、引き続き要綱案に魂を込める努力を続けてまいりたいと思っております。   どうもありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   よろしければ、それでは、これから要綱案についてお諮りをしたいと思います。   ただ、今までの通例の場合とは違いまして、現在ウェブを利用した議事進行を行っております関係上、念のため、ウェブを利用して出席されております委員の皆様方と適時の意見表明、意思疎通が相互に可能な状態であるかどうかということをもう一度念のため確認させていただきたいと思います。お手数をお掛けしますが、私の声が聞こえていらっしゃる方は挙手ボタンあるいはジェスチャーでも結構ですので、聞こえているということをお知らせいただければと思います。あるいはマイクボタンを通じて直接お知らせいただいても結構です。よろしくお願いいたします。事務当局においては、出席委員全員との意思疎通が可能な状態に現状なっているかどうかについて確認をお願いしたいと思います。   ありがとうございます。手を下ろしていただいて結構です。出席されている委員全員と意見表明が相互に可能な状態にあるということが確認されたということであります。   それでは、これから「民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案(案)」についてお諮りしたいと思います。当部会といたしましては、基本的に部会資料32-1のとおりとして民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する要綱案を取りまとめることとしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。   特段の御異論はないと理解してよろしいでしょうか。先ほど藤野委員からは既に御意見の表明があったものと理解しておりますが、それはそういうことで、うなずいていらっしゃるので、よろしいかと思いますが、他の委員で異議のある委員はいらっしゃらないという理解でよろしいでしょうか。   ありがとうございました。それでは、一部異議の御意見を頂いたところではございますけれども、他にはこの要綱案に基づく取りまとめについて御異論はないと理解いたしましたので、賛成多数により当部会として要綱案を取りまとめるということにしたいと思います。よろしゅうございましょうか。   ありがとうございました。   なお、要綱案につきましてはこれまでも字句や表現の修正がされてまいりましたが、今後、総会での答申に至りますまでの間にも法制的な観点から形式的な表現等の修正があり得るものと存じます。そのような中身にわたらない形式的な修正につきましては、部会長である私と事務当局に御一任いただきたいと存じますが、よろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。特段の御異論はないということと思いますので、そのような形で取り扱わせていただきます。ありがとうございました。   それでは、ただいま御了承いただきました要綱案の今後の取扱いにつきまして、事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○脇村幹事 脇村でございます。要綱案の取りまとめ、ありがとうございました。今後につきましては、2月に法制審の総会が開催されまして、本日お取りまとめいただいた要綱案を御審議いただく予定でございます。総会において要綱案が取りまとまりますと、その後、法務大臣に答申されるという流れになります。その後、答申がされました場合には、その答申に基づき法律案の策定作業を行い、速やかに法案を提出させていただくべく準備したいと考えているところでございます。   また、それとはやや別の観点でございますが、御報告させていただきたいことがございます。今回の部会ではいわゆる民事訴訟に関する手続につき御検討いただきましたが、民事裁判にはそれ以外にも民事執行ですとか民事保全、倒産、さらには家庭裁判所の人事訴訟、家事事件といったものがございます。今後は民事訴訟に関する動向等を踏まえながら、これらの手続のIT化についても別途検討する予定でございますことを御報告させていただきます。   また、これらの手続の中には実務上のニーズやその内容を踏まえて、先行的に改正を実施すべきであるというものもございまして、必要に応じ、今回の要綱案に基づく法律案の提出に際し先行的に改正するものがないのかにつきましては、今、事務当局でも検討しているところでございます。具体的には現在、家庭裁判所の現場では、ウェブ会議による調停の試行的実施などの準備がされているところ、現行法ではウェブ会議において離婚の調停、和解を成立させるところができないとされているところでございます。ウェブ会議を実施し、手続を進めていながら、本人確認等も適切に行われているにもかかわらず、最終的な調停等を成立することができないとすることには当事者に不便を強いるといったことにもなりかねませんので、先行的にウェブ会議を利用して離婚の調停や和解をすることができるようにする見直しを今回の改正で行うことについて今、検討しているところでございます。報告は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの脇村幹事からの御報告についての御質問、あるいは全体を通しての御発言、御感想、既に先ほど何人かの委員、幹事からはその趣旨での御発言があったかと思いますけれども、そういったことでも結構ですので、これが本当に最後の機会となると思いますので、もし何かこの際、御発言があれば、御自由にお出しを頂ければと思います。   いかがでしょうか。大丈夫ですか。   ありがとうございました。   それでは、当部会の最後に当たりまして、私から皆様方へ一言御礼の御挨拶を申し上げたいと思います。本来なら、普通のときなら起立して御挨拶を申し上げるべきところでありますけれども、起立すると私の顔が映らなくなってしまうという構造上、恐縮ですが着席のまま御挨拶を申し上げたいと思います。   当部会は一昨年6月に発足をし、第1回の会合を持ったわけでありますけれども、本来であれば4月頃から会議を行う予定であったわけですが、正にコロナの直撃を受ける形でしばらく会議が持てなかった、そして、その会議もオンラインという、これまで法制審議会では例がなかったような形態で持たざるを得なかったということ、さらに、その後、1年半、それ以上にわたる会議も、しばしば緊急事態宣言その他の状況の中、やはりオンラインで会議を続けざるを得なかったという極めて困難な中での作業であったかと思います。委員、幹事の皆様にも様々な形で御迷惑をお掛けして、不自由な形で会議を持たざるを得なかったということでありました。ただ、その中でも、私の見たところ、審議の中身というのは決してそれによって影響を受けたものではなかったと思います。このような困難な状況の中で常に真摯かつ建設的な形で御意見を頂き、御審議を頂いたことを委員、幹事、関係官、全ての方々に部会長として心より御礼を申し上げたいと思います。   他方このコロナ禍は、当部会の対象であったIT化という観点からすれば、このIT化を促進する方向で社会的に非常に大きな影響を与えてきたことは皆さん御存じのとおりであります。それは社会全体に対してであったわけですが、当然この紛争解決、民事訴訟の手続においてもIT化が喫緊の課題であるということが明らかな中で審議が進められたと、そういう意味では非常にタイムリーな形で審議が行われるという結果になったのではないかと思います。その意味で、今回の要綱案につきましては、できるだけ早く実際にこれが使われるようになるということを私としては期待したいと思います。事務当局にも是非そういう形で御努力を引き続きお願いしたいと思います。   また、今回は民事訴訟法を中心とした改正であったわけですが、先ほど脇村幹事から御発言がありましたように、当然のことながらIT化が求められる手続というのは民事訴訟に限られず、その他様々な裁判所の手続においても同様に、やはりIT化は喫緊の課題だと思われますので、この点についても引き続き事務当局の方において御努力をしていただけますようお願いを申し上げたいと思います。   更に加えて、これは既に先ほどの感想で何人かの委員、幹事から御指摘がありましたように、IT化というのは技術が常に日進月歩していくものであります。また、実際にこの訴訟手続でIT化を実施してみると、恐らく様々な新しい問題点、新しい視点というものが出てくるのではないかと思います。そういう意味では、今回このIT化についてこの要綱案を取りまとめ、現段階においては当部会においては基本的にはこれがベストだということでコンセンサスを得て答申をするかということかと思いますけれども、将来にわたってはやはり引き続き検討をしていく必要があるということだろうと思います。   先ほど発言をさせていただきましたが、今回言わば積み残しの形になっている、例えば障害者の方々への対応の問題であるとか、またあるいは、本日も多くの御意見を頂いた法定の審理期間を定める訴訟手続の点であるとか、それ以外の問題も含めまして、引き続き検討が必要な課題というのは山積しているものと思います。そういう意味では、やはりこの点につきましても事務当局、法務省におかれては引き続き検討の作業を行っていただき、問題があれば適時に見直しの機会を持っていただきたいということを希望したいと思います。   以上、若干の希望、感想を私としても述べさせていただきましたが、最後に改めて委員、幹事、関係官、全ての方々に御礼を申し上げて、私の御挨拶とさせていただきます。本当に長い間ありがとうございました。   それでは、最後に民事局長から一言御挨拶を頂きたいと思います。   金子委員、よろしくお願いいたします。 ○金子委員 民事局長の金子です。当部会の御審議の終了に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。私も着座のまま失礼いたします。   当部会における審議は令和2年6月の第1回会議から本日まで、計23回に及ぶことになりました。この間、委員、幹事の皆様におかれましては、多岐にわたる論点について大変密度の濃い御審議を尽くしていただいたものと認識しております。ありがとうございました。本日、要綱案の取りまとめに至りましたことは、山本和彦部会長を始めとする委員、幹事の皆様の多大な御尽力のたまものであると深く感謝しております。   今回の民事訴訟法等の見直しは、民事訴訟の手続の一層の迅速化、効率化を図り、民事裁判を国民がより利用しやすいものとするために、民事訴訟手続のIT化等を実現するものであって、その意義は非常に大きなものがあると考えております。本日取りまとめをしていただきました要綱案は来月、2月14日に開催されます法制審議会において調査審議される予定でございますけれども、同法制審議会の総会におきまして要綱が決定され、法務大臣に答申されました後は、私どもといたしまして、所要の法案を速やかに国会に提出するとともに、早期に法律として成立することができるよう全力を尽くしてまいりたいと考えております。   委員、幹事の皆様方には今後とも様々な形での御支援、御協力を賜りますよう引き続きよろしくお願い申し上げます。これまでの御熱心な御審議に重ねて御礼を申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは、これにて法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会における全ての審議は終了とさせていただきます。   改めまして、本日まで御熱心な御審議を頂きまして、誠にありがとうございました。 -了-