刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会 (第10回) 第1 日 時  令和4年2月10日(木)      自 午後3時16分                           至 午後5時17分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  ○ 議論(取りまとめ報告書(案)について) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○仲戸川室長 ただいまから刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会第10回会議を開催いたします。 ○小木曽座長 皆さん、こんにちは。本日も御多用中のところお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日もよろしくお願いいたします。   では、配付資料について、事務当局から確認をお願いいたします。 ○仲戸川室長 本日は、資料として、「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会 取りまとめ報告書(案)」をお配りしております。ウェブ参加の皆様におかれましては、お手元に資料を御用意ください。法務省の会場で御参加の方については、机の上の資料を御確認ください。   この取りまとめ報告書案は、前回会議において座長からお話があったとおり、本検討会におけるこれまでの御議論を踏まえ、座長の御指示を頂きつつ、事務当局において作成したものになります。構成や作成に当たっての考え方につきましては、後ほど御説明いたします。   配付資料の確認は以上です。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   それでは議論に入ります。   皆様には、事前に報告書案を御一読いただいていると思います。   報告書案の取りまとめ方針につきましては、前回会議の最後のところで皆様に申し上げ、特段の御異論がなかったところです。   繰り返しますと、これまで9回の会議を重ね、熱心に御議論いただきました。報告書をどのように取りまとめるかについては、今後、法務省において法改正の要否・当否、内容の検討を行うに当たって、その指針となるものがいいだろうということで、そのような観点から、本検討会として方向性についての認識共有を図ることができた点については、検討会の総意として方向性を示す形で記載しつつ、意見が分かれている点については、それぞれの意見の趣旨、更なる検討課題及び検討に当たって考慮すべき観点等が分かるように記載するのがよかろうということです。そのような方針に従い、事務当局に報告書案を作成してもらいました。   具体的な構成や作成に当たっての考え方については、更に事務当局から説明をお願いします。 ○仲戸川室長 報告書案の構成等について説明いたします。   まず、全体の構成としては、「第1 はじめに」で、刑事手続における情報通信技術の活用について検討する意義などについて記載した上で、「第2 検討の経過等」で、本検討会の開催経緯や開催状況、各回における議論の経過等について記載しています。   そして、「第3 議論の概要等」で、各論点に関する議論の内容を整理して記載し、「第4 終わりに」で、本検討会として、法務省に対し、必要な法整備に向けた検討を迅速に行うことを期待することなどについて記載しております。   本検討会は、刑事手続における情報通信技術の活用方策の在り方について、委員の皆様に御議論いただき、その結果を法務省における検討の重要な参考とさせていただくために開催しているものであることから、「第3 議論の概要等」では、法改正の要否・当否、及び法改正する場合の内容などについての今後の検討に資するよう、意見が収れんしている点についてはそのことが分かるように、また、意見が分かれている点についても、更なる検討課題が明らかになるように記載をしております。   具体的には、各論点項目ごとに、考えられる情報通信技術の活用方策について、本検討会の中で方向性について認識の共有を図ることができたと思われる点を、「考えられる方策」として枠囲いの中に記載し、考えられる方策についての補足的な説明として、考えられる方策を導入する場合の更に具体的な方策の内容や、同時に、法整備が必要となると思われる事項、考えられる方策の前提となっている共通の理解などについて枠の外に記載しております。また、本検討会の中で認識共有を図るには至らなかった点などにつきましては、それぞれの意見の趣旨や方策の導入の必要性、今後の検討に当たって留意すべき点などを記載することとしております。   本検討会案に関する事務当局からの説明は以上です。 ○小木曽座長 ありがとうございました。   それでは、この報告書案に沿って、取りまとめに向けて御議論いただきたいと思います。   検討会の総意として、これまでの議論を取りまとめていきたいと思っておりますので、本日の会議では、新たな観点からの御意見というよりは、これまでの御議論を前提としつつ、報告書案の記載に関して趣旨を明確にするための補足、より適切な記載方法などについての御意見を頂きたいと思っております。つまり、取りまとめ報告書の完成に向けた具体的な修文意見を頂くのが、取りまとめに資する議論であると思います。   また、限られた時間で全体について御議論いただくことになっておりますので、御発言に当たりましては、まとめられるところはまとめて御発言いただくなど、進行への御協力をお願いできれば幸いです。   議論の進め方ですが、まず、総論として、報告書案の全体の構成、それから「第1 はじめに」、「第2 検討の経過等」について御意見いただき、次に各論として、「第3 検討の概要等」の各項目について、項目ごとに順次御意見を頂きまして、そして最後に、「第4 終わりに」について御意見を伺うというように進めたいと思います。   それでは、まず、報告書案全体の構成、「第1 はじめに」、「第2 検討の経過等」について、追加修正等の御意見がありましたら、いずれの項目であるかを明らかにしていただいて御発言をお願いします。 ○河津委員 第1及び第2について意見を申し上げたいと思います。   多岐にわたる論点について取りまとめ報告書案を作成するのは、大変な作業であったかと存じます。まずは、座長及び事務当局の皆様に感謝申し上げます。   刑事手続は、国民が、被疑者・被告人、被害者、証人、裁判員など、事件ごとに様々な立場で関与し得るものであり、情報通信技術は、そうした国民の権利利益の保護実現のために活用されるべきものです。   このような観点から見ると、現在の報告書案は、専ら捜査機関の視点で書かれているように感じられます。ここに反対当事者の視点を提供するのは私の役割であると思いますので、前回会議までの議論を踏まえ、加筆修正をお願いしたいと思います。   まず、1ページ、「第1 はじめに」の第4段落に、「刑事手続においては、今なお、紙媒体の書面が用いられ、また、対面が求められる場面」について、「例えば」以下に、「令状の発付・執行」の例を挙げて、「迅速で効果的な捜査活動、公判審理の遂行の支障となることがある」と記述されています。この点については、被疑者・被告人が迅速に弁護人の援助を受ける必要がある場合にも、「書類や人の長距離の移動が必要」となることがありますし、膨大な量の書面を謄写するために、大きな負担が生じ、防御活動の支障となり、迅速な裁判実現が阻害されることもありますので、これらの点を記載していただきたいと存じます。   関連して、第5段落に、「円滑・迅速な手続の遂行」という表現が用いられていますが、情報通信技術の活用は適正な手続の遂行にも資するものであるべきですので、「円滑・迅速かつ適正な手続の遂行」と修文いただければと存じます。   第2につきまして、3ページ、「第2 検討の経過等」の「1」の①に、刑事手続の目的についての記載がありますが、この点については、個人の基本的人権の保障を全うすることも忘れられるべきではありませんので、この点を明記していただきたいと思います。   また、「被害者をはじめとする捜査・公判に関与する国民」という表現がありますが、先ほど申し上げたとおり、国民は事件ごとに様々な立場で捜査・公判に関与し得るのであり、その中でも特に大きな負担と危険にさらされるのが、被疑者・被告人の立場ですので、ここは「被疑者・被告人、被害者をはじめとする捜査・公判に関与する国民」とすべきであると考えます。   次に、②において、プライバシー・名誉等の権利利益が侵害されることがないよう、特別の配慮が不可欠であることが掲げられており、そのことには異存ございませんが、被疑者・被告人の「裁判所において裁判を受ける権利」や「全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利」などの憲法上の権利は、それ以上に侵害されてはならないものですので、刑事手続において情報通信技術の活用を進めるとしても、それによって、裁判所において裁判を受ける権利や、全ての証人に対して審問する機会を十分に与えられる権利が制約されるべきではないことに留意すべきことを明記していただきたいと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。   事務当局とも相談しまして、更に調整・修正してまいりたいと思います。ありがとうございます。   ほかの御意見はいかがでしょうか。   それでは、その点についてはよろしいようですので、全体の構成、それから第1、2についてはそこまでといたしまして、ここから先は第3の各論の検討に入りたいと思います。   まず、「1 書類の電子データ化、発受のオンライン化」のうち、(1)書類の作成・発受について、追加修正等に関する御意見がありましたら承ります。お願いいたします。 ○親家委員 私の方からは、報告書案7ページの「ウ オンラインでの発受を原則とすることについて」に関して修正意見を申し上げます。   まず、警察としても、この1段落目に記載されているように、運搬、保管等に伴う事務負担の軽減といった観点からは、できる限り書類の発受はオンラインによるべきであると考えておりますが、1文目と2文目の接続の趣旨を明確にするために、5行目の「少なくとも」の前に、「そうした観点からは、」といった文言を加えるなどしていただくことが適当ではないかというふうに考えております。   それから、次に、同じ項目の2段落目に、書類等をオンラインで発受することが相当でない、あるいは困難である場合に関する記載がありますが、そのような例外とすべき場合は、ここに記載されているものに限られるわけではなく、検討会でも各委員から様々な意見があったところであります。   そこで、この部分の記載は、飽くまで例示であるという趣旨を明確にするため、2段落目冒頭の「他方で、」の後に、「例えば、」を挿入し、それから、3行目の「状況にある。」を「状況にあり、」とするなどの修文をしていただくことが適当ではないかと考えております。   よろしくお願いいたします。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。 ○河津委員 細かい点ですが、5ページ、「補足説明」、「ア」の第1段落で、「訴訟行為や処分のための書類」として、「起訴状、令状等」が例示されていますが、例えば準抗告申立書等も、地裁の本庁に申し立てる運搬に時間を要するという問題がございますので、「起訴状、令状」のほか、不服申立書等も例示に加えていただきたいと存じます。   また、物理的作業を伴うものとしては、「署名・契印や運搬」のほかに、「謄写」も加えていただきたいと思います。 ○永渕委員 私の方からは、報告書7ページ、「ウ オンラインでの発受を原則とすることについて」という部分についてお話をさせていただきたいと思います。   2点ございます。   まず、1点目ですけれども、本検討会の第2回(議事録14ページ)、あるいは第6回(議事録14ページ)でも申し上げましたとおり、IT化によって刑事手続全体としてできる限り合理的な事務を目指すという観点からは、電子データと紙媒体が混在するという事態ができる限り生じないようにすることが望ましいと考えております。   そこで、法律の規定ぶりはともかくといたしまして、こうした考え方自体は、この検討会において共有されたものと認識をしておりますので、この点がより明らかになるような取りまとめが相当なのではないかと考えている次第です。   それから、もう一点ですけれども、オンラインでの発受を原則化することが考えられる対象としまして、裁判所、訴訟関係人及び捜査機関と、これらが列挙されているわけですけれども、第6回(議事録12ページ)においても申し上げましたとおり、刑事手続において頻繁に書類のやり取りが生じる主体としては、これらのほかにも身柄拘束中の被疑者・被告人への送達を行う際の刑事施設の長などが存在しておりまして、オンラインでの発受を原則化することに関する今後の検討に当たっては、こうした点についても留意する必要があると考えている次第です。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   ただいまの永渕委員の御指摘ですけれども、1点目は修正の御意見、2点目は、そのような点について留意する必要があるという意見として受け止めましたが、それでよろしいでしょうか。 ○永渕委員 結構でございます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   保坂審議官から手が挙がっています。どうぞ。 ○保坂審議官 今、座長が御質問なさったこととかぶるんですけれども、前段の修文意見について、7ページの一番下のところに「なるべくオンラインで行われるよう」ということが書いてあるわけですが、これでは足りないということでしょうか。ちょっとどういう趣旨の修文意見なのかがよく分からなかったものですから。 ○永渕委員 例えばですけれども、報告書案7ページの「ウ オンラインでの発受を原則とすることについて」の1段落目の1文目の最後の「始めから電子データとして作成・管理され、発受される」というところに続けて、「紙媒体と電子データとの混在ができるだけ回避され」といった表現を挿入することが考えられるのではないかと考えております。 ○小木曽座長 保坂審議官、よろしいでしょうか。 ○保坂審議官 分かりました。ありがとうございます。 ○小木曽座長 それでは、第3の(1)について、ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。ほかに御意見がなければ、(1)については御意見を頂戴したということで、次に進みたいと思います。   次は、(2)令状の請求・発付・執行です。これについても御意見をお願いいたしたいと思います。どうぞ。 ○河津委員 10ページの(イ)の最初の○に、私が述べた意見を記載していただいておりますが、その理由について、私は、電子令状については、裁判官の押印のある令状の原本と比較すると、真正かつ有効なものかどうかが一見して判別しにくくなると考えられること、捜査機関が電子令状の写しを作成するのは極めて容易であることを述べております。   また、その下に記載されている御意見に対する反論という位置付けになりますが、逮捕状については、勾留裁判において逮捕手続の適否に関しても司法審査を受け得ることが、その実質上の代替手段であるとされており、罪を犯していない国民が勾留という不利益を回避するためには、勾留裁判に先立って、被疑事実を正確に把握する必要があるということを述べておりますので、それも記載していただきたいと思います。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。   そのほか、(2)についてはいかがでしょうか。 ○市原委員 「ウ 考えられる方策②」についての最後の段落、報告書案のページ数だと10ページになりますけれども、この「なお、」というところからの段落について申し上げます。   ここで、現行法の下でも、令状請求の際の資料を電子データとしてオンラインで送信する方法により提供することが許容されると解されるという趣旨の記載がございますけれども、この点に関しましては、第2回の検討会での笹倉委員の御発言を踏まえたものかと思われますが、その際には、併せて、オンラインでの疎明資料の提供を許容するための改正も考えられるという御指摘もあったかと思います。   この点、そういった規則の改正をすることもあり得ると考えておりますので、そのことが明らかとなるような記載としていただければと思います。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。   (2)について、ほかに御意見いかがでしょうか。よろしいですか。   よろしければ、(2)については御意見を頂いたということで、(3)にまいります。(3)電子データの証拠収集について御意見がありましたらお願いいたします。どなたからもお手が挙がりませんが、よろしいでしょうか。   よろしければ、では、(4)にまいりたいと思います。(4)閲覧・謄写・交付です。これについて御意見がおありでしたらお願いいたします。 ○河津委員 14ページ、「補足説明」、「ア」の最後の段落に、「証拠開示に伴う事務を大幅に省力化することに資する」という記載がありますが、労力を省くこと以上に、被告人の費用負担を軽減し、手続の迅速化にも資することが重要かと存じますので、この点も加筆していただきたいと存じます。   それから、15ページ、「エ」、第2段落に、「漏えいのリスクを管理するために必要な技術的措置が講じられることが確保される必要があり、そのための規律を設けることが検討されなければならない」と記述されていますが、規律を設けるに当たっては、防御権や弁護権が不当に制約されないよう留意すべき旨を明記していただきたいと存じます。   その次の段落に、「法律には、政省令や規則に定める規律によるべき旨を定め、細目は下位法令で定めることとすることが考えられる」と記載されていますが、技術的・細目的事項であっても、結果的に防御権や弁護権を制約するような内容のものを、例えば法務省令で定めることは適切でないと思われます。   この点については、委員の先生から、被告人の重大な利益に関する事項ないし基本的部分については、法律によって定められるのが原則である旨の御発言があり、それが共通認識であると理解しておりますので、その旨を明記していただければと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございました。   今、3点御意見があったと思います。   一つ目は、被告人、弁護人にとっての費用負担の軽減などにつながるという点も記載するということで、あと、二つ御意見がありましたが、今、佐久間委員から手が挙がっていますので、お願いします。 ○佐久間委員 ただいま河津委員から御指摘がありましたが、書類の発受や証拠開示の在り方によって、防御権や弁護権が不当に制約されることがあってはならないというのは、これはもう当然のことですが、書類の電子データ化、発受のオンライン化の際の情報セキュリティの確保は、取り扱う情報が意図せず外部に流出しないようにするために、技術的な措置を施すものであり、もとより弁護人の活動をオンラインで監視するなどして、現在よりも制約するものではありませんから、情報セキュリティの確保が被告人の防御権や弁護人の弁護権の制約につながるという懸念がどうして生じるのかということ、その具体的な場面をにわかに想定し難いと言わざるを得ません。   その上で、これまでも繰り返し意見が示されているとおり、刑事手続で取り扱う情報は極めて秘匿性の高いものであり、プライバシー保護の必要性が高いものでありますことから、書類の発受の際の利便や証拠書類等を閲覧する際の利便、また、謄写した証拠書類等を弁護人が利用する際の利便のために、プライバシーの保護を弱めることはできないということは、改めて確認しておきたいと思います。   また、この際付け加えさせていただきますが、セキュリティの重要性については、取りまとめ案の冒頭での会の共通の認識として示していただいているところもあります。そして、取りまとめ案では、証拠の開示に従って、例えば証拠の内容が一般に流出して、関係者の名誉・プライバシーに不当な影響が及ぶことがないようにするための方策として、解除方法の選択や漏えいリスクを低減するための技術的措置の確保についての言及があり、私としてもそのような技術的措置を講ずるための検討が十分になされるべきであるという認識を強く持っているので、取りまとめ案の方向性に賛成したいと思います。   ただ、一抹の不安が残るとすれば、現段階ではそうした技術的措置の具体的な内容が十分明確にはなっていないため、実際に採られる措置が、漏えいを防止するためのものとして十分なものとなるかどうかは、この分野における技術の進歩が早いことともあいまって、今の段階では判断できないというところです。   そうした漏えいの防止のための方策として、技術的措置を第一に検討することについては、もとより異論はありませんし、十分な措置が講じられることを期待するものではありますが、仮に今後の検討において、技術的な措置だけでは十分ではない点があり、実際に証拠の漏えいが生じてしまうような事態が生じ得るということになるのであれば、他の法的措置や運用上の方策を併せて考えていかなければならないように思っております。   これは修文意見ではございませんで、このように私が考えているということを指摘させていただくということで、御理解いただきたいと思います。 ○小木曽座長 ありがとうございました。意見として承ります。   先ほど河津委員から、3点御意見があったわけですけれども、これについて、事務当局から何か追加がありますか。 ○仲戸川室長 河津委員の御指摘のありました政省令につきまして、念のため事務当局から説明をいたします。   報告書案にも記載しましたとおり、政省令又は最高裁判所の規則により定め得るのは、飽くまで技術的・細目的事項でありまして、国民の権利や自由を制約したり、国民に義務を課すことを直接的な内容とするものは、法律で定めなければならないとされております。これは、法制上当然のことでありまして、本報告書でもこれを前提とした記載としているものでございます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   (4)につきましては、ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは、(4)については御意見を頂戴したということで、次は、(5)です。(5)は、公判廷における証拠調べですが、これについて御意見はいかがでしょうか。特段御意見ございませんか。よろしいですか。それでは、(5)は終わりまして、そうしますと、今度は大きな2です。捜査・公判における手続の非対面・遠隔化の議論に入りたいと思います。   まずは、(1)取調べ等について御意見を頂戴したいと思います。お願いいたします。 ○河津委員 19ページの「考えられる方策」の②及び③につきましては、このままの表現で検討会として方向性が一致したものとして整理することについて、私は賛成できません。   まず、②について申し上げますと、これについては「補足説明」に移し、反対意見も記載していただきたいと存じます。   この点について、私がこれまで申し上げてきた意見の趣旨を補足して申し上げますと、現行法上、「面前」という文言が用いられていること、第1号にはビデオリンク方式による場合を含む旨が記載されているのに対し、第2号には記載されていないこと、憲法による反対尋問権の保障、公判中心主義の例外となる規定の要件を安易に緩和すべきでないことから、私はビデオリンク方式による取調べで作成された検察官調書は、「面前」の要件を欠くと解する方が自然であると思います。   したがって、「検察官の面前」にビデオリンク方式による場合を含む旨を規定することについても、原則的には反対の立場です。   ただし、重大な感染症の拡大が続いているような状況により、長期にわたり対面による取調べを行うことができないような事態を想定して、例外的な手当てを設けることは考えられるのだろうと思いますが、その際には、対面による取調べと実質的な差異が極めて小さいと言えることが必要であると考えます。   これに対し、ビデオリンク方式による場合を全て一律に「検察官の面前」に含むものとすることは、国外に供述人がいるような場合も含めて、反対尋問権の保障、公判中心主義の例外を事実上拡大することになることから、賛成することができません。   この②に関して、19ページ、「イ」に、取調べがビデオリンク方式により行われた場合であっても、同項第2号により、証拠能力を認めることができると考えられると記載されていますが、この点は判例が示されているものではなく、文字どおり「解釈上の疑義」のあるところですので、一つの意見として記載していただきたいと思います。   20ページに、私が述べた意見と、それに対する反論を記載していただいておりますが、この点については、国外にいる供述人をビデオリンク方式で取調べをして作成した検察官調書であっても証拠能力が認められ得るという結論には疑問があること、反対尋問権の保障、公判中心主義の例外の要件を緩和するのは適切でないことを述べておりますので、それらも記載していただきたいと思います。   ③について申し上げますと、「考えられる方策」の中で、「一定の要件の下で」という表現が用いられているのは、他の項目と平仄を合わせたものであることは理解しておりますが、この「一定の要件の下で」という表現は、極めて例外的な場合には限られないものであるかのような誤解を読み手に与えるおそれがあると懸念いたします。   私は、一般的には許容されるべきではないという意見を述べておりますし、例外的な場合に限られることについては、おおむね異論がなかったものと存じますので、もし「考えられる方策」に記載するのであれば、表現の修正をしていただきたいと思います。   ③に関して、21ページ、第2段落に「警察署等に所在させた状態でビデオリンク方式により検察官による弁解録取や勾留質問を行うことは、現行法上も、許容されるものと考えられる」と記載されています。この表現では、現行法上、無条件に許容されるように読めますが、それには異議がございます。   この点に関して、私は、自由権規約9条3項が、裁判官の面前に速やかに連れていかれるものとする旨を否定していることを指摘しておりますので、そのような意見があった旨を記載していただきたいと思います。   それから、21ページになりますが、第3段落で、被疑者が感染症に罹患しており、押送が困難な場合などが例として示されていますが、私は、この表現では緩やかに過ぎると思います。私は、重大な感染症に罹患しており、関係者への感染を防止しつつ押送することが不可能と言えるような場合についてまで、一切の例外が許容されないとは考えない、という意見を述べておりますので、表現を修正するか、又は今述べたような意見があったことを明記していただきたいと思います。 ○小木曽座長 ありがとうございました。   ②と③についての御意見でしたが、これについて、事務当局からはいかがでしょうか。 ○仲戸川室長 ただいま御指摘がありました「考えられる方策」②・③の記載について説明をさせていただきます。   まず、②の方策につきましては、河津委員の方からもこれまでも御発言がありましたが、その趣旨は、検察官が被疑者をビデオリンク方式により取り調べた際の供述を録取した書面や電子データについて、刑事訴訟法321条1項2号の検察官面前調書として証拠能力を認めるのは、取調べを受けた際の被疑者の所在場所が、その供述に不当な影響を与えることがないと考えられる場所であった場合に限定するべきではないかという、被疑者の所在場所に関する規律を設けて限定すべきというもので、ビデオリンク方式による取調べも検察官の面前に含まれることを前提に、その際の被疑者の所在場所を限定すべき、すなわち広がり過ぎてはいけないという趣旨であったものと理解していたものであります。   そういった理解の下で、刑事訴訟法321条1項2号の検察官の面前に、ビデオリンク方式による取調べを含むことを規定上明示することについては、特段の異論はないと考えて、「考えられる方策」②として記載をしたものです。また、場所の規律についての河津委員の御指摘につきましては、他の委員から反論もございましたので、これらをまとめて「補足説明」に記載をしたということでございます。   続いて、③の「考えられる方策」の記載でございますが、ビデオリンク方式による、特に勾留質問につきましては、河津委員からも、一般的には許容されるべきではなく、仮に感染症や災害のようなやむを得ない事由がある場合に限定するにしても、相当慎重な検討が必要であるですとか、被疑者が重大な感染症に罹患しており、関係者への感染を防止しつつ押送することが不可能と言えるような場合についてまで、一切の例外が許容されないとは考えないが、もし例外を設けるのであれば、相当厳格な要件を定めることが必須であるなどの御意見を頂いておりました。   これにより、その具体的な要件の在り方については、各委員それぞれのお立場から様々な御意見が示されたものと認識をしております。   一方で、今、述べました河津委員の御発言を含めて、勾留質問をビデオリンク方式により行うことは、どのような場合であっても一切許されないという御意見はなかったものと認識しており、少なくとも一定の要件の下でそれができるようにするという点では、方向性について意見の一致を見たものと認識し、このような記載を提示させていただいたところでございます。 ○小木曽座長 この点について、他の委員からも御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○笹倉委員 ただいま御議論になっております19ページ、2(1)の③ですけれども、これまでの議論を全体として捉えて記述するとすれば、今、事務当局から御説明があったとおりになると考えます。   もちろん「一定の要件」が具体的に何を意味するのかは、今後更に詰めていく必要があり、その際には、この場での議論も当然参酌されることになると思います。そこは今後詰めるのだという前提で、これまでのこの会合での議論状況をまとめるとすれば、報告書における記載は、19ページの案に示されているとおりでよいと考えます。 ○佐久間委員 私は、②について、検察の立場から申し上げます。   第9回検討会において指摘があったように、刑事訴訟法第321条第1項第2号が、同項第3号に規定する書面と比べて、緩やかな要件の下で検察官面前調書に証拠能力を認めているのは、検察官が法律家として様々な観点から供述者に質問を投げ掛け、その供述の正確性、信用性を多面的に分析する役割と能力を有することを前提に、当該調書に録取された供述が、そのような検察官による取調べを経て得られたものであることに基づくものであり、取調べの際に被疑者がどこにいたのかを問題にするものではありません。   河津委員が国外にいる供述人をビデオリンク方式で取り調べる場合について言及されたので、この点について付言いたしますと、外国に所在する証人については、証人尋問を行う場合についてのものであり、この場合、仮にその証人が偽証したとしても、我が国の偽証罪で処罰することが現実的に困難であるとすれば、そのような者が外国に所在したままでした証言の信用性を、我が国の法廷でなされた証言と同列には評価し難いなど、類型的な相違点があると思われます。   これに対して、相手国の同意があることを前提に、ビデオリンク方式により外国に所在する者の取調べを行う場合には、偽証罪による処罰の可否は問題とならず、国内で取調べを行う場合との間に、証人尋問の場合のような類型的な相違は存在しないのですから、御指摘は全く当たらず、ビデオリンク方式による取調べにおいてなされた供述について、刑事訴訟法第321条第1項第2号を適用することを否定する理由にはならないと考えております。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   保坂審議官、どうぞ。 ○保坂審議官 河津委員の②に関する意見、修文意見について、修文をするのかどうかも含めて、事務当局として検討するためにお伺いしたいのですが、現行法の下で、検察官の取調べがビデオリンク方式で行われた場合には、面前に含まれないんだという解釈に立つんだとおっしゃったように聞きました。その理由は、今までおっしゃってきたことが理由なのかなと思うのですが、20ページの「もっとも」のところにもあるように、裁判官の面前は、ビデオリンク方式が裁判官の面前には含まれる。これは、創設的にそうしたのではなくて、入るものを確認的に書いたということなので、明示的に規定されているということなのですが、これはどういう理解になるんでしょうか。   つまり、同じように、伝聞証拠なのは伝聞証拠なわけですが、裁判官の場合はビデオリンクは面前に入り、それが確認的に規定されている、ところが、検察官の場合には解釈論として入るべきではないというのは、ちょっとどうつながるのかが分からなかったので、質問させていただきます。 ○河津委員 修文のイメージとしては、先ほども申し上げましたけれども、「考えられる方策」から「補足説明」に移し、賛成意見と反対意見を併記していただきたいということになります。   裁判官と検察官との違いについては、公平な判断者である裁判官と、当事者である検察官の、立場の違いということになるのだろうと思います。   刑訴法321条1項2号は、憲法が反対尋問権を保障しているにもかかわらず、反対尋問の機会のない供述を証拠として許容する規定ですから、検察官には、検察官自身が不当な取調べをしないことは当然のこととして、外部からの不当な影響も排除した上で、公判期日における反対尋問にも代わるような質問をして、信用性のある供述を録取することが期待されているはずです。これは、当事者である検察官に対し、果たすことが難しい役割を期待しているようにも思われますが、ビデオリンクで取調べを行うことは、その役割を果たすことを一層困難にするものなのではないでしょうか。   対面とビデオリンクとの間に、事実上の差異があることについては、一定の共通認識を頂いているものと存じますが、取調べについても、佐久間委員より、多くの検察官は、取調べは対象者と直接対面して行うのが通常であるとの御発言があったかと存じます。このことは、対面での取調べとビデオリンク方式による取調べとでは、供述の信用性の吟味に差異が生じることを前提としているように思われます。そうであるとするならば、供述の信用性の吟味をより困難にするビデオリンク方式によって取調べをしたときに、それを全て「検察官の面前」に含むものとすることは、適切ではないのではないかというのが私の意見です。 ○保坂審議官 取りまとめの段階なので、また別の機会に議論をすればいいのかもしれませんが、裁判官は中立公平で、検察官は当事者だというのは、ビデオリンク方式が面前に含まれるかどうかを左右する理由にはならないように、今、思いましたけれども、いずれにしてもビデオリンクだと観察が十分ではなく、不当な影響を受けてはいないかどうかが、画面越しでは十分に分からないということは、同じく裁判官にとっても妥当するので、今の御説明では違いを説明したことにはならないのだろうと思います。 ○河津委員 憲法が反対尋問権を保障しているにもかかわらず、反対尋問を経ない供述を証拠として許容するのですから、それに代替するような信用性を担保するものがあるかどうかという問題だと思います。   この点について、裁判官についても、面前であるかビデオリンクによるかの差異は当然あるものとは存じますが、偽証罪の適用があり得ることや、裁判官が検察官とは異なって中立の立場にあるという前提があります。これに対して、検察官は、当事者であるにもかかわらず、反対尋問的な質問をすることなどをして、信用性を担保することが期待されているのであり、それを遂行することにそもそも困難があると言わざるを得ません。   もう一つ、裁判官の面前の供述との違いを申し上げると、裁判官の面前での供述は、通常証人尋問の形式が取られますから、ある程度定型的なものが想定されます。これに対して、検察官による取調べは、比較的不定型なものですから、様々な形で供述を録取される可能性があり、供述者がどのような環境に所在して供述をしているのかも、様々なバリエーションが考えられるわけで、それを全て一律に「検察官の面前」に含むものとして取り扱うことは適切ではない。それは、公判における供述に代替し得るような条件を備えていないのではないか、ということを申し上げております。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   321条の解釈にも関わる議論になってきているようですが、取りまとめ報告書としてどのようにしていくのがいいかということについては、もう少し調整が必要であろうかと思います。   それでは、今、開始後55分ほどになっておりますので、取調べ等についての議論は、ここでひとまず終わりということにいたしまして、10分程度ここで休憩を取らせていただきたいと思います。 (休     憩) ○小木曽座長 それでは、議論を再開いたします。   2の(1)について、先ほど御議論頂きましたので、ここからは2の(2)です。被疑者・被告人との接見交通について御意見をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。 ○河津委員 22ページですが、接見交通のオンライン化の必要性が大きいことについて、示された「意見」として記述されています。   この点については、「考えられる方策」として示すべき法整備の方向性の一致には至らなかったことは理解しておりますが、必要性については一定の御理解を頂いているところですので、8ページの「令状の請求・発付・執行において情報通信技術の活用を可能とする意義」と同様、必要性については、検討会としての一致点を記述していただきたいと存じます。   23ページに、私の意見を、「被収容者・留置者の防御権等を保障することは国の責務である」とまとめていただいておりますが、私は、被拘禁者に対し、遅滞なく傍受又は検閲されることなく通信し、協議するための十分な機会、時間及び設備を提供することは、国連被拘禁者処遇最低基準規則にも定められた国の責務であること、IT化を進めることによって従来の業務が減る一方で、新たに対応しなければならない業務が生じることは、刑事手続全体について言えることであり、その業務にも情報通信技術を活用することによって、合理化・効率化を図るべきことを述べておりますので、その旨を記載していただきたいと存じます。   同じく23ページで、アクセスポイント方式に言及されていますが、これについては、十分な数のアクセスポイントが整備されるべきこと、諸外国で一般的に行われている電話による連絡についても検討すべきとの意見があったことを記載していただきたいと存じます。   そのほか、外国語通訳や手話通訳についても、ビデオリンク方式により行うことができるようにすべきであるとの意見があった旨も記載していただきたいと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。   (2)について、そのほか御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   では、次に(3)です。打合せ・公判前整理手続について御意見を頂きたいと思います。お願いいたします。 ○河津委員 25ページ、「補足説明」「ア」の第3段落に、「例えば、性犯罪事件について争点整理を行う場合など」という記載がございます。   公判前整理手続の実務上は、公判前整理手続の期日において、裁判官の面前で証拠の内容に踏み込んだ発言をすることは一般的でありませんし、他方、検察官と弁護人との間では、電話で証拠の内容に踏み込んだ会話をすることもありますが、その際、情報流出を懸念するようなことは余り想定されませんので、率直に申し上げると、この箇所の記述には違和感があります。   ただ、被害者の立場からは、万一にも情報流出があることへの懸念があるものと理解いたします。そのような懸念を理解するとしても、性犯罪事件について争点整理を行う場合は、常に率直に意見を述べることがしにくくなるおそれがあるという趣旨ではないと思われますので、「例えば、性犯罪事件について争点整理を行う場合において、当該事案の性質等によっては」と修文していただくのが適切ではないかと考えます。   それから、26ページ、「イ」の第4段落、被告人が出頭を希望する場合において、ビデオリンク方式によることを望んでいないときに、裁判所がビデオリンク方式によることを求めることができるかどうかについては、私が反対意見を述べておりますので、反対意見があった旨を記載していただきたいと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。 ○佐久間委員 これは修文意見ではなくて、私の意見でございますけれども、公判の段階におけるビデオリンク方式による打合せや公判前整理手続の在り方についてコメントしたいと思います。   打合せや公判前整理手続期日に、現実の出頭を必要とせず、ビデオリンク方式により行うことができる選択肢ができれば、柔軟な期日指定が可能になり、迅速な公判準備に資すると思われることから望ましいと考えられるので、取りまとめ案の方向性には賛成です。   もっとも、ビデオリンク方式に適する場合であるかどうかは、事案や期日の内容によることであると思われ、その点に配慮して、取りまとめ案では、裁判所が当事者の意見を聞いて判断するという仕組みが想定されているものと認識しております。   そして、ビデオリンク方式によることで、弊害や危惧が生じるかどうかを判断できるのは、第一次的には当事者であることを踏まえると、その意見は十分に尊重されなければならないと考えており、そうした認識はこの場でも共有していただけるものと思っております。 ○小木曽座長 ありがとうございます。御意見として受け止めさせていただきました。   (3)については、ほかに御意見よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは、次は(4)です。証人尋問等について御意見をお願いいたしたいと思います。 ○河津委員 27ページの「考えられる方策」の①のうち、現行法と同様のビデオリンク方式によることの必要性を示す要件を満たす場合を追加して規定することについては、検討会として方向性が一致したものとして整理することに私は賛成できませんので、「補足説明」に移し、反対意見も記載していただきたいと存じます。   この点について、私は、対面して反対尋問をする権利が十分に保障されなければ、刑事裁判の質の低下を招き、真実でない証言によって、罪を犯していない国民・市民が有罪とされる事態が生じる懸念があること、証人の側に出廷が容易でない事情があったとしても、反対尋問を完全な形で行う必要があると弁護人が判断し、したがって、ビデオリンク方式によることに異議がある場合については、対面で反対尋問をする権利を奪うことは、被告人が証人を審問する機会を不十分なものとし、刑事裁判の質を低下させるものであり、相当でないとの意見を述べてまいりましたので、その旨の意見があったことを記載していただきたいと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   この点については、事務当局からは何か御説明ありますか。 ○仲戸川室長 事務当局から、今、御指摘がありました「考えられる方策」①の記載について説明をいたします。   これまでの本検討会における議論におきましては、ビデオリンク方式による証人尋問に際して、現行の刑事訴訟法157条の6に規定されている類型以外に、どのような類型の証人をその対象に加えることが考えられるか、そのそれぞれの類型について、どのような要件を満たす場合にビデオリンク方式による証人尋問を利用できるようにすることが考えられるか、あるいはビデオリンク方式による証人尋問を認めることにどのような懸念があるかといった点につきまして、今、意見を述べられました河津委員を含め、委員のそれぞれのお立場から様々な意見があったと認識しています。   もっとも、そのような言わば各論部分につきましては、各委員からの様々なお考えが示された一方で、現在の要件では、実務上のニーズに応えることができていない場合があり、必要かつ相当な範囲での拡大を検討する必要があること、拡大するとした場合には、ビデオリンク方式によることの必要性を示す類型的な要件を追加するという現行法の枠組みを維持することには一定の合理性があると考えられることといった総論的な方向性については、特段の異論はなく、認識は共有されたものと受け止めていたところでございます。   その上で、各論につきましては、「補足説明」において様々な御意見に触れることで、今後の検討材料としつつ、「考えられる方策」については、方向性として共有された限りにおいて記載をしたというものでございます。 ○小木曽座長 保坂審議官、どうぞ。 ○保坂審議官 河津委員の修正意見に対して、ちょっと御質問なんですが、従前の議論で、今、仲戸川からも御説明があったように、河津委員も現行のビデオリンクよりも要件を拡大するものとして、外国所在証人については、賛成をされていたという理解ですので、仮のこの①の一つ目のポツの「考えられる方策」に御異論があるとすると、必要性を示す要件だけではなくて、当事者の同意をも要件にするべきだという御主張なのかなという理解をしたんですが、いや、そのことの当否は置くとして、その場合には、現行法も同じように改正しないと、私はつじつまが合わないのではないかと思うんですが、現行法の改正はしないで、新たに追加するものだけ同意を要件にするという、そういう御意見なのでしょうか。 ○河津委員 私が述べている意見は、現行法を改正すべきというものではなく、新たに追加するものについては、当事者に異議がなく、裁判所が相当と認める場合に限定するべきであるというものです。   この点については、平成28年刑訴法改正の際に、証人等の保護の要請と反対尋問権の保障をいかに調整するか、相当な議論を経て、一定の要件を満たす場合に限定して拡充されたものです。したがって、証人尋問権を有する被告人に異議がない場合について、これを拡充する余地はあるというべきですが、被告人に異議がある場合について、これを追加することについては、賛成することができません。 ○保坂審議官 すみません、ちょっとよく分かりにくかったんですが、たしか外国所在証人について、ビデオリンク方式でやる類型として追加すること自体は、必要性はお認めになっていて、それは賛成だという御意見だと私は理解していたので、ただ、それだけではなくて、かつ同意がある場合にという、そういう御意見だと理解をしたのですけれども、そうだとすると、今おっしゃった二つ目のポツの異議がなく相当と認める場合ということではなくて、必要性を示す要件として、外国に所在する証人であるということに加えて、河津委員の御意見としては、更にそれに当事者に異議がないということを付け加えろという、そういう御趣旨かと理解したんですが、そうではないんですか。 ○河津委員 私も御指摘の趣旨を正確に理解できているかどうか分かりませんが、私は、既に述べておりますとおり、当事者に異議がある場合について、ビデオリンク方式によることができる類型を追加することには反対しております。   ただ、外国所在証人については、当事者に異議がない場合であっても、なお検討すべき問題点があるという点で、他のⒷないしⒹの類型とは異なるものであると理解しております。   また、外国所在証人の類型については、日本の裁判所に喚問して証人尋問を実施することが不能な場合が想定されるという点でも、ⒷないしⒹとは性質が異なるものと理解しております。憲法が証人喚問権と証人審問権を被告人の権利として保障していることからすれば、被告人側からビデオリンク方式での証人尋問の実施を求め、検察官がこれに同意しないときに、証人尋問が実現されないということでよいのか、そのとき、当該証人の検察官調書を証拠として請求することは許されると解すべきなのかなど、検討すべき問題点は別途あるように思われます。   いずれにしても、先ほど申し上げましたが、平成28年刑訴法改正の際に、相当な議論を経て、一定の要件を満たす場合に限定して拡充されたものですから、証人尋問権を有する被告人に異議がない場合のほかには、類型を追加することについて、賛成することができないというものです。 ○吉澤委員 私は、別の点について一つ加筆の修正意見を申し上げたいと思うんですけれども、「補足説明」の「ア 考えられる方策①」のうち、28ページの(ウ)のところです。   ビデオリンク方式による証人尋問を実施することができる場合を拡大する方法について、この(ウ)にありますとおり、現行法同様、必要性を示す類型的要件を新たに追加する方法と、類型を列挙する方法を改め、諸事情を相当性の要件の下で判断する包括的な規定を置く方法とがあり得るとされております。   現行法との整合性という観点からは、前者のような類型的要件を追加する方法によることも考えられますが、従前、検討会で述べてきましたとおり、被害者支援の立場からは、あらかじめ想定されるものとして類型化されたニーズ以外にも、ビデオリンク方式による必要性が高い類型は存在し得ると考えておりますし、現行の規定の類型を含めた上で、その他の必要性の高い類型についても、適切に広く捉えることができるという観点から、包括的な要件とすることも十分検討されるべきだと考えています。   そこで、例えば報告書案の28ページの下から7行目、「組み入れるかについては、」の後に、「あらかじめ想定される類型以外のニーズを捉えることができるという観点からも」といった記載を追加していただき、こうした観点からの問題意識もあることを明記した形で加筆修正をしていただくのが適当ではないかと考えております。 ○池田委員 枠内の記載を維持するかどうかということについて申し上げますと、先ほどの河津委員の御意見に対して、事務当局からこれまでの議論の経過を踏まえて、このような記載に至ったという御説明を頂きまして、その後の保坂審議官の御指摘などにも表れておりましたが、私としても、これまでの議論状況については、事務当局の御説明であったと認識しております。   各論のレベルで、ビデオリンク方式による証人尋問を実施できる場合を追加ないし拡大するとした場合に、具体的な要件をどうするかということについて議論があって、今後更に検討されるべきであり、その際に、吉澤委員の御指摘になったような視点も踏まえて検討すべきだということではあると思うのですが、現行法が、特に必要性の高い類型についてビデオリンクで行うことを許していて、それと同様に必要性の高い類型を新たに追加する方向で検討すること自体について、なぜ同意がないことになるのかということについては、今日の御説明の限りでは余りよく理解できませんでした。私自身の理解としては、この記載を改める必要はないのではないかというふうに考えております。 ○永渕委員 私は、報告書案28ページの「(イ)証人を裁判所以外の場所に所在させることの可否について」という部分に関して意見を申し上げたいと思います。   まず、第7回会議(議事録44ページ)でも申し上げましたとおり、証人の中にも第三者などからの影響を受けるおそれが類型的に高い証人もいれば、さほど高くない証人もいて、想定される訴訟指揮の内容や程度などもこれに応じて異なると考えられるわけでありまして、そもそも証人を裁判所外に所在させて証人尋問を行うか否かを考えるに当たっては、この点が重要な考慮要素となり、第三者からの影響を受けるおそれが類型的に高い証人や、訴訟指揮が必要となる程度が高いような証人につきましては、基本的に裁判所にお越しいただくのが相当であると考えておりますので、この点を報告書にも反映していただきたいと思います。   それから、訴訟指揮権等の行使を確保するための手段として、証人の所在場所に裁判所書記官等を所在させるという方法が記載されているわけですけれども、この点につきましては、第3回会議(議事録41ページ)、あるいは第7回会議(議事録44ページ)でも申し上げましたとおり、これまで裁判所職員を裁判所外に派遣して訴訟指揮等の補助に当たらせるということはしてきておらず、その実効性は明らかではありません。また、訴訟指揮の補助に必要な職員を派遣するとなると、その態勢を整える必要があって、むしろ機動的に証人尋問の期日を実施できなくなる場合もあります。これらのあい隘路を指摘させていただいたところですので、この点も適切に反映した取りまとめにしていただきたいと考えております。 ○小木曽座長 ありがとうございました。承りました。   保坂審議官、どうぞ。 ○保坂審議官 二つおっしゃった修文意見のうちの一つ目についての、ちょっと確認というか質問なのですけれども、影響を受けやすい証人とか訴訟指揮が必要になる証人は、基本的に裁判所にお越しいただくことが相当であるという意見を反映すべきという、そういう修文意見だと思われますが、確認ですけれども、そういう場合には、ビデオリンクが相当でないということを要件化しろということなのか、それとも、いずれにしても裁判所が相当と認めるときという要件があるわけですけれども、その要件の中で、裁判所が実際にどういうときに相当か不相当かの運用上の心構えみたいなものを、この報告書に書いてくれという趣旨なのか、ちょっと趣旨がよく分からなかったので、どういう趣旨でしょうか。 ○永渕委員 具体的な修文のイメージをお話しした方がいいのかなという気がいたしますので、これも例えばということですけれども、報告書案の28ページ、「(イ)」の本文の上から4行目、「必要性などが考慮されたものである」ということに続けて、例えば「しかし、証人の中には、第三者から影響を受けるおそれが類型的に高い者と、そうでない者とが存在し、想定される訴訟指揮の内容や程度等も証人により異なると考えられる」といった表現を挿入していただいて、その次の文を、「訴訟指揮権等の十全な行使との関係では、想定される内容や程度、証人の所在場所等に応じて必要な場合には」という文言で始めていただき、「裁判所書記官等を所在させるなどをすることで、確保できる場合もあると考えられる」という形で終わるといった表現が考えられようかというふうに思います。   更に申し上げますと、その次の段落、「したがって、ビデオリンク方式による証人尋問をより機動的に実施できるようにするためには」との記載があるわけですが、この「機動的に実施できるようにするためには」という部分は、これはむしろ削除していただいた方が適切ではなかろうかと、こんなイメージで考えております。 ○河津委員 追加して修文意見を申し上げます。   29ページ、「b」に、専門家証人等についての記載がありますが、専門家証人であっても、証人の適格性から十分反対尋問を行う必要のある場合があり、その場合に、対面して反対尋問を行う権利を奪うことは適切でないという意見を述べておりますので、そのような意見があった旨を記載していただきたいと存じます。   刑事施設等に収容中の証人について、一言付け加えさせていただきますと、この類型の証人に多いのは、いわゆる共犯者証人であり、対面して証人尋問をする必要性が高いことが多いのではないかと思います。   これら専門家証人や刑事施設等に収容中の証人についても、対面して反対尋問する必要はないと判断できる事案は、少なくないのかもしれません。しかしながら、反対尋問を完全な形で行う必要があると判断されるときに、その権利を奪うことは適切でないということは、これまでも繰り返し申し上げてきたところですので、その点を反映した取りまとめをお願いしたいと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   証人尋問について、大分御意見を頂きましたが、ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、(4)の証人尋問については御意見を頂戴したということで、次の(5)です。公判期日への出頭等について御意見ありましたらお願いいたしたいと思います。よろしくお願いします。 ○成瀬委員 (5)の冒頭に記載されている「考えられる方策」について、修正の提案をさせていただきたいと思います。   現在の報告書案では、①においては、被告人と弁護人を分けて記載し、弁護人がビデオリンク方式により出頭することができるのは、被告人がビデオリンク方式により出頭することができる場合に限られることを明示しているのに対して、②においては、「被害者参加人又はその委託を受けた弁護士」として、両者を単純に並べて記載しているため、被害者参加弁護士の固有の事情により、被害者参加弁護士のみがビデオリンク方式により出席することを可能とする趣旨であるようにも読めるものとなっています。   しかし、これまでの会議において、被害者参加弁護士のみがビデオリンク方式により出席することを可能とすべきという御意見は示されておらず、飽くまで被害者参加人がビデオリンク方式により出席する場合に、被害者参加弁護士も併せてビデオリンク方式により出席できるものとするかという形で議論が行われてきたと認識しております。   言い換えれば、この点に関する議論の構造は、①で記載されている被告人と弁護人のビデオリンク方式による出頭と同じであったと理解しています。   そうだとすれば、①と②であえて書きぶりを異にする理由はないと考えますので、②についても、①と同様の記載ぶりに修正することを提案したいと思います。 ○小木曽座長 ありがとうございます。承りました。 ○河津委員 32ページ、「考えられる方策」の①の表現ですが、これが、裁判所が被告人の意思にかかわらず、被告人をビデオリンク方式により出頭させることができるものとする趣旨であるとすれば、私は反対意見を述べておりますので、その旨を記載していただきたいと存じます。この「考えられる方策」の表現ぶりについても、なお御検討いただければと存じます。 ○小木曽座長 ありがとうございます。   事務当局としては、この表現についてはいかがでしょうか。 ○仲戸川室長 ただいま御指摘を受けました「考えられる方策」の記載内容、併せてこちらの「補足説明」について説明をさせていただきます。   これまでの検討会における議論におきましても、委員の方から、物理的に対面する場合とビデオリンク方式による場合との間には、相手の表情や挙動の観察等の面で事実上の差異があることは否定し難いから、対面としないことにより損なわれる利益がないか、あるとすればそれはどのような利益か、その利益とビデオリンク方式を活用することにより得られる利益のどちらを優先すべきかなどの点について、きめ細かい検討が必要であるという御意見が示され、この点につきましては、委員の間で認識が共有されているものと認識しているところであります。   この報告書案を作成するに当たりましても、各所においてそのことを踏まえた記載をしているところでありまして、御指摘の公判期日への被告人の出頭に関しましても、補足説明の方で、軽微事件の場合を除いて被告人の出頭を開廷要件としている刑事訴訟法286条の趣旨を害することにならないよう、被告人にビデオリンク方式による出頭を命じるのは、必要性が高く、かつ被告人の防御の面でも相当と認められる場合に限定するなどの要件設定が必要である旨を記載しているところであります。   その一方で、具体的な要件をどのようなものにするかという点につきましては、「補足説明」に記載されているもののほか、ただいま河津委員から、被告人の同意を必須とすべきとの御意見がありましたように、それぞれのお立場から様々な意見があったものと認識をしております。   そのような状況を踏まえまして、「考えられる方策」の欄には、河津委員の御意見をも含めまして、何らかの要件を設定した上で、被告人にビデオリンク方式による出頭を命じる場合を設けるという方向性が本検討の総意として確認されたことを示す趣旨で、一定の要件を満たすときは、被告人が公判期日に出頭するについて、ビデオリンク方式によることができるものとすることを記載したものでございます。   御指摘の点につきましては、今後の検討材料としたいという趣旨で記載をさせていただきました。 ○笹倉委員 今、事務当局から、報告書に記載された「考えられる方策」の基になっている考え方について、これまでの議論の状況を踏まえた御説明がありました。私は、本検討会での議論の状況は、事務当局の御説明のとおりであると認識していますし、書きぶりも御用意いただいている案のとおりでよいと考えます。   法廷において、対面で公判期日に被告人が関与する場合と、ビデオリンク方式にある場合とでは、事実上の差異があるということは、本検討会全体の共通認識になっています。加えて、被告人の出頭を公判期日の開廷要件とする趣旨は、被告人の権利利益の保護にもあるわけです。そうしますと、被告人がビデオリンク方式によらずに、実際に法廷に出頭することを望む場合に、被告人のそのような意向は、ビデオリンク方式の出頭を命じることが相当であるかどうかの判断において、裁判所によって当然考慮されるべきであるし、また、実際にも十分考慮されることになると思います。そして、その点について、恐らく異論はないでしょう。   問題は、被告人の意向に反してビデオリンク方式により出頭させることが一切許されないかということですが、それがおよそ許されないというふうにしてしまいますと、公判審理を進める必要があるのに、被告人の意向によって手続が止まってしまうという状況が生じ得ることになります。それはやはり適切ではないと思いますし、河津委員もそのような強い効果を要求する趣旨で御発言になっているわけではないと理解します。   もちろん、被告人の意向にかかわらずオンラインでの出頭を命じることが許される場合があり、かつ、それが許される場面は限られるという認識を共有するとしても、それが具体的にどのような場面であるのかについては、なお考え方が別れ得ます。しかし、その点については今後の検討に委ねるということで、報告書の「考えられる方策」の記載自体は、御提案いただいているとおりでよく、それがむしろこの会合の議論を適切に反映したものではないかというふうに考えます。 ○永渕委員 報告書案の34ページ、被害者参加人のビデオリンク出席を可能とすることの許容性に関する部分について意見を申し上げたいと思います。   第8回会議(議事録11ページ)でも申し上げましたとおり、被害者参加人がビデオリンク方式により出席する場合も、被害者参加人は訴訟行為を行うことが想定されているわけでありまして、証人尋問の場合と同様、被害者参加人に対する様々な配慮といったことも含めて、訴訟指揮権や法廷警察権の行使が十分に確保されている必要があり、こうした観点は、報告書案35ページに記載のあるビデオリンク方式による出頭の相当性の考慮に当たっても重要な要素になると考えられます。   このようなことからいたしますと、報告書案34ページの「(イ)」において、被害者参加人の観察について、被害者参加人の様子をつぶさに観察する必要性も特になく、被害者参加人のビデオリンク方式による出席に特段の支障はないと記載されている部分は、やはり違和感を禁じ得ないわけでありまして、申し上げた意見を反映した記載にしていただきたいと考えております。 ○池田委員 私も、ここの「考えられる方策」の②につきまして意見を申し上げたいと思います。   前回の検討会におきまして、吉澤委員から、被害者参加人や被害者参加弁護士については、意に反してビデオリンク方式による出席を命じられる対象ではないと考える旨の御発言があった点に関連しまして、報告書案に言及はないのですけれども、今後の検討のための意見として申し上げたいことがございます。   前提といたしまして、被害者参加人が、ビデオリンク方式ではなくて実際に法廷に出席することを望んでいる場合には、それが相当でないと認められるような特別の事情がない限り、その意向を尊重して、法廷に出席していただくということになる点については、その意味では前回の吉澤委員の御意見に異を唱えるものではないということは、まず申し上げておきたいと思います。   その上で公判期日への出頭について、被告人との関係では、これまでの議論でも、例えば感染症に罹患していて、実際に法廷に出頭させると他の者に感染させるおそれがあるという一方で、公判審理を進行させる必要があるときなどには、被告人の申出がない場合でも、一定の要件の下で、例外的にビデオリンク方式で出頭させるべき場合があり得るという指摘があったところです。   これを受けて、これと同様のことが被害者参加人に生じた場合について考えてみますと、やはりその場合も、法廷への現実の出席を認めることは相当でないと評価されることになると思います。   もっとも、この場合に、被害者参加人からの申出がないために、ビデオリンク方式により出席させるという選択肢がないとすると、裁判所としては、被告人と異なって、その在廷が開廷の要件とされていないことも踏まえまして、審理の状況やその他の事情を考慮した結果として、被害者参加人の出席を相当でないとして許さないという対応を取ることにならざるを得ず、その結果、被害者参加人が公判手続に関与できないこととなることもあり得るように思われます。   しかし、被害者参加制度の趣旨に鑑みますと、参加を許可された被害者参加人が公判期日に出席する利益は、可能な限り尊重されるべきですので、被害者参加人に法廷への現実の出席を認めることが困難な場合の対応として、被害者参加人の申出に基づいてビデオリンクでの出席を認めるか、あるいはその申出がない以上、出席を相当でないとして認めないかということとは別に、申出がなくてもビデオリンク方式によることを命じることもできるものとすることは、審理の円滑な進行の確保と、被害者参加人の出席の利益との調和を図る制度の在り方として合理性があるのではないかと考えております。   以上については、報告書に記載すべきであるとの趣旨ではございませんが、そうした方策の要否や当否については、今後の検討に委ねられるべき課題だと思われましたので、意見を申し上げました。 ○小木曽座長 ありがとうございます。御意見受け止めました。 ○吉澤委員 今の池田委員の御発言も、特にこの報告書案に対する修正意見ではないということですが、私も今の御意見に対して、被害者支援の立場から意見を改めて申し上げます。   前提として確認しておきたいのですが、先ほども言及なされていましたように、被害者参加人の参加の利益が重要であるという点については、本検討会においても認識共有が図られているものと思います。そして、そのような参加の利益を踏まえますと、従前から申し上げているとおり、被害者参加人がビデオリンク方式により出席することとなるのは、被害者参加人本人による申出があることが大前提であるべきで、こうした基本的な考え方については、本検討会においても異論は示されていなかったと思います。   実際、これまで私自身は、被害者参加の申出をして、それが許可されなかったという事案に接したことはありませんし、不許可となるのは非常にまれなケースであると認識しております。   僅かながら、不許可になった事例について、私もいろいろと情報を収集してみましたけれども、これまで情報として得られた事例は、そもそも参加自体が不適切であると考えられる事案でして、現実での出頭は無理だけれども、ビデオリンクでの参加であれば許されたであろう事例というのが、今のところ見当たりませんでした。ですので、先ほどの感染症のケースは、理屈としては分かるんですけれども、実際にそういうときは、被害者においても当初からビデオリンクの申立てをするのではないかとも考えられますし、現時点では、被害者の意に反してビデオリンクを選択すべき被害者参加、しかも、それが参加の利益を損なわない事例というのが現実的にあるのかという点については、非常に想定しづらいと考えておりますので、この点は是非も含めて極めて慎重に検討しなくてはいけないと考えております。 ○小木曽座長 ありがとうございます。意見として伺いました。   それでは、(5)についてほかに御意見がなければ、次にいきたいと思いますが、よろしいでしょうか。   それでは、(6)は裁判員等選任手続です。これについて御意見ありましたらお願いいたします。 ○永渕委員 ここは恐らく実際に選任手続を主宰している裁判所から口火を切るのがいいかなということでお話をします。   報告書案の37ページ、裁判員候補者がビデオリンク方式により出頭する要件の在り方に関してであります。   裁判員等の選任手続は、裁判員法16条の辞退事由、あるいは裁判員法17条の事件に関する不適格事由の有無の判断のために、裁判員候補者に対する質問を行う手続でありますところ、第8回会議(議事録22ページ)でも申し上げましたとおり、これらの事由との関係では、裁判員候補者との間で機微にわたるやり取りを行うことがあるほか、裁判長による事件の内容の説明を受けた裁判員候補者が、その場で見せた反応や様子を踏まえて個別質問を行い、例えば不安に感じていることについての話を伺うといったこともあるわけであります。   これに加えて、裁判員等に選任された裁判員候補者に対して、裁判員等選任手続の当日に、法廷などの様子を確認していただいて、そこから一定の間隔を空けて審理に臨んでいただくということにより、裁判員候補者の不安を取り除くといった実務上の工夫も行われているところであります。   このような観点から、今後も裁判員候補者には、現実に裁判所にお越しいただくのが原則であろうとの指摘をさせていただいたところでありまして、裁判員候補者に、ビデオリンク方式による出頭を認めるとしても、裁判所までの移動の負担が大きい遠隔地に居住する裁判員候補者など、合理的な範囲で行うことが相当であると考えられますので、報告書においても、その点が明らかとなるような記載としていただきたいと考えております。 ○小木曽座長 ありがとうございました。口火をということでしたけれども、そのほかの委員の方は、この点について御意見いかがでしょうか。特段御意見がなければ、次にまいりたいと思いますが、よろしいですか。   次は、公判審理の傍聴、(7)であります。この点はいかがでしょうか。これについても、特にお手が挙がらないようですが、よろしいですか。   そういたしますと、これで大きな2の「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」について、一通り御意見を頂いたということになりますが、よろしいでしょうか。   次は、大きな3です。その他です。これについて、追加修正がありましたらばお願いいたします。ここもよろしいですか。   それでは、本体についての議論はここまでということになりますが、最後に、「第4 終わりに」です。これについて御意見がありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○佐久間委員 本検討会は、現行の刑事手続を前提として、その枠内で情報通信技術の活用策を検討してきたものであり、その直接の検討対象ではないと理解しておりますが、社会における情報通信技術の発展が、同時に社会に新たな犯罪事象を生じさせており、刑事実体法の整備を始めとして、刑事法として対処すべき検討課題があると思われるので、今後、検討が行われることを期待するという趣旨で、この場をお借りして一言申し上げたいと思います。   情報通信技術が高度化し、社会で広く活用されることになったことに伴い、情報それ自体が高い財産的価値を表象し、犯罪の対象となったり、あるいは情報通信技術が犯罪の手段として悪用されたりすることは、もはや日常的なこととなっております。   社会において、電子マネーによるキャッシュレスの決済が広く用いられたり、暗号資産のような新たな資産の形態が容易に利用できるようになっていますが、例えば現行の組織的犯罪処罰法第13条第1項では、犯罪収益やそれに由来する財産等が、不動産若しくは動産又は金銭債権であるときにこれを没収することができるものとされているため、暗号資産などについては、それが金銭債権かどうかが問題となり、金銭債権でなければ没収することができず、また、金銭債権であると認定できたとしても、没収判決の確定後にこれをどのように処分するかが問題となり得るなど、課題も認識されているところです。   今後、本検討会の検討結果を踏まえて、法整備に向けた検討が行われるに際しては、ただいま申し上げたような、社会におけるデジタル化の進展を背景として、新たに見られるようになり、現行法では対処できなくなっている犯罪事象に的確に対処するための法整備についても、幅広く検討が行われることを望みたいと思います。   そして、そのような犯罪事象に的確に対処することの必要性は明らかであると思われますので、本報告書のどこかに、刑事実体法を始めとする法整備についても検討されることが望まれるという旨を付記してもらいたいと思います。   いろいろ申し上げましたが、取りまとめ報告書案は、これまでの検討会の議論を踏まえ、会における議論の成果を分かりやすくまとめたものとなっておりまして、この会が与えられた任務に十分に応える内容になっていると思います。取りまとめに当たられた座長及び事務当局に敬意を改めて表したいと思います。 ○成瀬委員 ただいまの佐久間委員の御意見を受けまして、私も一言申し上げたいと思います。   私も、情報通信技術の目覚ましい発展と普及が社会にもたらす変化を的確に捉えた上で、法に不十分な点がある場合には、それに対応するための措置を講じることが重要であると考えており、このことは、本検討会において議論してきた刑事手続法の側面にのみ妥当するものではないと考えております。   佐久間委員がおっしゃるように、情報通信技術を悪用した新たな犯罪事象が現実に生起しており、それに伴って対応すべき刑事法上の課題があるとすれば、その対応策について早急に検討すべきことは当然であると思います。   そこで、本検討会を経た後の別のステージで検討が行われることを期待する観点から、例えば、「第4 終わりに」のところで、「情報通信技術の進展に伴い、新たに対応すべき課題に対処するための刑事法の法整備についても検討することが望まれる」というような付記をしてはいかがでしょうか。御検討いただければ幸いです。 ○小木曽座長 ありがとうございました。   御意見を踏まえて検討してみたいと思います。   「終わりに」に関しまして、ほかに御意見いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、報告書についての御意見、修正意見を頂戴いたしました。ありがとうございました。   本日も熱心に御議論いただきましてありがとうございます。   では、本日頂きました御意見を踏まえて、報告書案を修正いたしまして、次回会議で改訂版をお示しし、そこで報告書案を取りまとめるという段取りになるとよいのではないかと考えております。   具体的な修正の仕方ですが、次回の会議までに、事前に改訂版の案を皆様にお送りした上で、事務当局を通じて御意見を頂いて調整することにいたしたいと思います。   また、修正作業に当たりましては、事務当局において、取りまとめ報告書案を精査してもらいまして、全体の平仄ですとか記載ぶりの調整も併せて、必要に応じて修正が必要であればしてもらうということにいたしたいと思います。   今後の進め方、そのような方法でよろしいでしょうか。 (一同了承)   ありがとうございます。では、事前に修正案を御覧いただけるようにいたしたいと思います。   次回は、修正した報告書案を基に、再度取りまとめに向けた議論をしまして、できれば次回で報告書案の最終的な取りまとめということにいたしたいと思います。   本日の会議につきましては、特に公表に適さないという内容はなかったように思いますので、発言者名を明らかにした議事録を、いつものように公表することにいたしまして、配付資料についても公表するということにいたしたいと思います。よろしいでしょうか。 (一同了承)   ありがとうございます。   では、次回の予定を、事務当局からお願いいたします。 ○仲戸川室長 次回第11回会議でございますが、3月15日火曜日、午後の開催を予定しております。開始時刻につきましては追ってお知らせいたします。本日同様、ウェブ会議方式での開催となる予定です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○小木曽座長 よろしくお願いいたします。   本日もありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。   これにて閉会です。 -了-