法制審議会 刑事法(性犯罪関係)部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和4年2月28日(月)   自 午前9時58分                        至 午後1時00分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  1 第二の二(被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則の新設)について         2 第三の一(性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪の新設)について         3 第三の二(性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みの導入)について         4 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○浅沼幹事 ただ今から、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会の第5回会議を開催いたします。 ○井田部会長 本日も、御多用中のところ、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日、今井委員、大賀委員、北川委員、木村委員、小島委員、小西委員、齋藤委員、佐伯委員、田中委員、中川委員、吉崎委員、池田幹事、市原幹事、金杉幹事、佐藤陽子幹事、中山幹事、井上関係官は、オンライン形式により出席されています。   また、くのぎ幹事、嶋矢幹事におかれては、所用のため欠席されており、川原委員におかれては、所用のため遅れて出席される予定です。   まず、事務当局から、配布資料について説明してもらいます。 ○浅沼幹事 配布資料について御説明いたします。   資料10は、性犯罪に関する刑事法検討会の第7回会議において配布された資料53「代表者聴取の取組の実情」に、児童を対象とする代表者聴取の令和2年度の実施状況や、令和3年4月から試行を開始した障害がある性犯罪被害者を対象とする代表者聴取の実施状況を追加するなどしたものです。   まず、児童を対象とする代表者聴取について御説明します。   資料の2ページから8ページまでには、「児童を対象とする代表者聴取の取組の概要」が記載されています。3ページに記載されているとおり、代表者聴取とは、警察や児童相談所の担当者と検察官とが聴取方法などについて協議を行った上で、その代表者が聴取する取組をいい、検察においては、平成27年10月28日付け最高検察庁刑事部長通知を発出し、児童が被害者又は参考人である事件について、児童に対する代表者聴取の取組を行っています。検察における聴取技術の習得に向けた取組については、8ページの「研修への参加状況」に記載されているとおり、令和3年度には、206名の検察官が大学教授等による児童の事情聴取方法に関する講義・演習を受講しております。   次に、9ページから20ページまでには、平成27年度から令和2年度までの「児童を対象とする代表者聴取の実施状況」が記載されています。10ページの表1のとおり、代表者聴取の実施件数は、毎年増加し続けており、令和2年度には、2,124件に上っています。さらに、21ページから29ページまでには「代表者聴取の具体的流れ」が、30ページから34ページまでには「代表者聴取の証拠化・証拠利用状況」がそれぞれ記載されています。34ページの表11のとおり、平成30年度から令和2年度までの3年間で、録音・録画記録媒体が実質証拠として採用された件数は、27件でした。   次に、障害がある性犯罪被害者を対象とする代表者聴取について御説明します。   資料の36ページに記載されているとおり、検察においては、知的障害、精神障害、発達障害等、精神に障害を有する被害者に係る性犯罪事件で、事件の内容、証拠関係、被害者の障害の程度等を考慮し、その負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、代表者聴取を行うことが相当であると認められる事件のうち、試行に適した事件を対象として、令和3年4月1日から、部が置かれている地方検察庁において、代表者聴取の実施を試行しております。その試行状況等については、38ページから45ページまでに記載されています。38ページの表1のとおり、令和3年4月1日から同年9月30日までの半年間の代表者聴取の実施件数は、89件でした。   配布資料の御説明は、以上です。 ○井田部会長 ただ今の説明内容につきまして、何か御質問はございますか。 ○山本委員 障害者の方たちに対して司法面接が実施されたものが証拠として裁判に提出され、採用されたのかというのはお分かりになりますでしょうか。 ○浅沼幹事 44ページの表7の「(注)」に記載のとおり、資料作成時点においては、代表者聴取の録音・録画記録媒体が証拠採用された旨の報告はありませんでした。 ○山本委員 ありがとうございます。 ○井田部会長 ほかに何かございますか。よろしいですか。   それでは、議事に入りたいと思います。   本日は、諮問に掲げられた事項のうち、「第二の二」から最後の「第三の二」までについて御議論いただきたいと思います。   本日の進行における時間の目安については、諮問事項の「第二の二」について50分程度御議論いただいた後、午前11時少し前ぐらいになるかと思いますが、10分ほど休憩をとりまして、その後、諮問事項の「第三の一」について50分程度、「第三の二」についても50分程度、それぞれ御議論いただきたいと考えております。そのような進め方とさせていただくことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。   予定している時間については、その都度申し上げますので、御協力をお願いします。   それでは、まず、「第二の二 被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設すること」について御議論いただきたいと思います。   御意見のある方は、挙手の上、あるいは、オンライン形式により参加されている方におかれましては、挙手ボタンを押すなどした上で、御発言をお願いいたします。   この諮問事項については、最大で50分程度の時間を予定しております。 ○山本委員 2020年6月22日に開催された性犯罪に関する刑事法検討会の第2回会議で仲教授から報告されたように、繰り返しの聴取が心的外傷の症状の加算的な悪化につながることは既に共有されていることと思います。頻回にわたる事情聴取がトラウマの再暴露となり、被害者を立ち会わせて実施された実況見分により被害者のPTSDが劇的に悪化したとの報告もあり、司法手続は子供だけではなく成人にも悪影響を与える過酷なプロセスだということは申し上げておきたいと思います。発せられる言葉の一つ一つが心身に衝撃を与え、体に突き刺さり、まるで拷問のようだったと言う人もいます。処罰感情があっても、そのような手続によって自分が壊されてしまう、もたない、自殺してしまうかもしれないからできないと言う人も多いです。被害者が守られていると感じながら平静な気持ちで証言できるような司法手続のシステムをより整えてほしいというのは被害者側の大きな要請の一つです。司法面接もその流れにあり、供述の繰り返しによる被害児童の精神的負担を軽減しつつ、特に暗示や誘導を受けやすいという子供の特性を踏まえて、信用性の高い供述を確保するものであるのですから、司法面接で得られた録音・録画記録媒体に証拠能力を認めて、主尋問に代替できるようにすることは当然のことと思います。   法廷という権威的で非日常的な空間で供述を求められることが児童の緊張やストレスを高めて悪影響を与えることは、様々に報告されています。また、そのような法廷に連れて来ても、子供が話せないと言われていて、司法面接による児童供述の方が信用性が高い場合が少なからずあり得るということも報告されています。司法面接を行うことにより、できるだけ早い段階で、被害者である子供は、成長・発達の状態に応じた支援を受けながら、何が起こったかを適切に話すことができると思います。法廷でも、撮影された録音・録画記録媒体を見ることで、被害者が話しているときの声の様子とか表情とか態度とかを見ることもできるので、多面的な情報が得られて、より事実に迫ることができるのではないでしょうか。生の証言を録音・録画記録媒体により見られることは貴重なことですし、被告人の同意にかかわらず見られるようにして、子供を法廷に連れ出すことなく主尋問に代替できるようにしてほしいと思います。これは、子供だけではなく障害がある被害者にとっても必要ですし、成人でも性被害を受けて鬱やPTSDになったら精神障害があるので、適用される必要があると思います。   また、司法面接の方法については、今後、研究調査がされて、より良い方法が作り出されていくことを期待します。本来であれば中立的な立場の児童・心理・発達を理解する司法面接者、仲介人の育成を行うことが望ましいと思います。それは、一つには開示率の問題があると考えます。仲教授の論文ですけれども、イスラエルで1998年から2002年までの間に行われた2万6,000件のNICHDプロトコルの分析で、性虐待が疑われたケースで、被疑者が親以外の場合の開示率は、89%、被疑者が親であった場合は、22%との報告がありました。訴えること自体が被害者にとっては大変なことです。被害について話すことは痛みを伴いますし、その話す相手の人が自分のことを分かってくれるだろう、責められたり怒られたりしないだろう、適正に取り扱ってくれるだろうという期待がなければ話すことも難しく、開示率が低くなってしまいます。そして、面接者は、非言語的に発せられる様々なサインを見逃さず読み解いていく必要があり、知識だけではなく実践も求められます。医療職者も、試験に合格したからといってすぐに働けるわけではありません。司法面接者も継続的にトレーニングを受けた専門家として養成される必要があり、国として議論していただければと思います。   反対尋問についてですけれども、子供や法廷で正確に証言が難しくなる人を引っ張り出してくることは、被害者にとっては二次被害である上、正確な事実認定ができなくなることも問題だと思います。イギリスのように、仲介人や司法面接者が反対尋問を受けることが望ましいのではないかと希望します。しかし、どうしても子供などに聴かないといけないという場合には、イギリスにおけるグラウンドルールのヒアリングを参考に、証人のニーズに適応した形式で質問を行ってほしいと思います。子供を不要に脅かすことなしに、安全を感じられるような空間で話を聴いたり、威圧的な質問で混乱させることがないようにしてほしいと望みます。裁判官の黒い服が子供にとって威圧的だと感じられるならば脱ぐなどして、安心して話せるような環境を作らないといけないですし、今でもそのように実施されていることもあると聞いていますけれども、ケース・バイ・ケースではなく標準化した対応として行い、より事実が正確に確認できるように整備されてほしいと希望しています。 ○井田部会長 証拠能力の特則を認めるべき実態的根拠について、お話しいただきました。また、対象となる供述者について、年少者のみならず、障害を持った方も含めるべきだということや、反対尋問の方法についても御意見を頂きました。 ○小島委員 私の方からは、反対尋問が必要ないという立場から申し上げたいと思います。刑事訴訟法321条1項3号と類似している状況だということです。伝聞証拠との関係で、必要性と特信性が必要です。供述不能に代わる程度の重大な事情と、証拠の不可欠性と、特信情況の三点が必要だということです。   まず、必要性につきましては、今、山本委員がおっしゃいましたように、特に供述者の年齢、心身の状況に照らして精神的負担を生じさせる、児童の心身の平穏やその後の健全な成長に重大な障害が生じる現実的なおそれがある、被害者の聴取を繰り返すことによって心的外傷の症状が加速的に悪化したり、それまでは出なかったPTSDや身体的症状が現れて、極めて重篤な鬱病を発症したり、自死に至る場合もあるとされています。特に8歳とか10歳ぐらいの子供までについては、反対尋問を行わず、供述不能に代わる程度の重大性ということを考えるということです。   証拠の不可欠性ということでは、性犯罪の存否の証明について密室で行われることが多く、児童の供述以外犯行を裏付ける証拠が見当たらないことから、児童の供述は欠くことができないということです。   特信情況については、現在は検察官が聴いておりますけれども、検察官が聴取を行ったことで信用性が高まるのかということについて、もう一度考えなくてはいけないと思います。聴取の主体の問題です。子供の言語能力や発達の専門家である児童相談所の職員等が聴取を行った方が、より信用性が高い供述が得られる可能性がございます。一方、捜査の実情に通じていない者の聴取だと、立証に役立つ供述が得られない可能性がございます。本来であれば子の福祉と捜査の両面を熟知した面接の専門家が行うべきと考えますが、現在はこれに対応する正式な資格がございません。これを早急に作るべきだということですが、当面の間は、必ずしも資格にこだわらず、捜査機関、児童福祉機関、その他の関係機関の連携の下で指名された者が聴取をするということで、聴取の主体から特信情況をカバーしていく。聴取の方法については、司法面接のプロトコルがいろいろ異なっておりますので、これを要件化するのは難しいと思います。規定の在り方としては、司法面接の特徴を構成している聴取の主体、方法、時期、回数、供述の経緯などの要素を考慮要素として列挙し、その供述を信用すべき特別な事情があるという一般的な要件を立てる以外ないと思います。   この三つの点、供述不能に代わる程度の重大な事情、証拠の不可欠性、特信情況を十分に表現するような規定とすることを提案いたします。なお、証人尋問権の保障については、その趣旨について、供述証拠の信用性を確保し、事実認定の正確性の確保に尽きるということを申し上げたいと思います。そのような観点からすると、今申し上げた三点を基本に詰めていけば、刑事訴訟法321条1項3号と類似しているという形で、反対尋問なしに司法面接によって得られた供述について証拠能力を認めることができるのではないかと考えております。 ○井田部会長 反対尋問の機会を与えることなしに証拠能力を認める案に賛成されるということで、伝聞例外の要件については刑事訴訟法321条1項3号に準ずる形で要件を考えるべきだというお考えだと拝聴いたしました。聴取主体についても御意見を賜ったと思います。 ○齋藤委員 性犯罪に関する刑事法検討会でも繰り返し述べてきたことですが、私は、いわゆる司法面接で得られた供述を記録した録音・録画記録媒体を主尋問に代えていただきたいと思っておりますし、反対尋問も子供の心に深刻な影響を及ぼすので、できれば避けていただきたい、特に、小島委員のおっしゃっているように小さな子供の場合には避けていただきたいと思っているのですが、それが難しいのならば、子供の心の傷つきを最小限に抑えることができて、かつ適切な事実の聴き取りができる形での反対尋問としていただきたいと思っています。   また、司法面接の方法は原則に忠実にすることと、子供の発達や認知特性、心理、そして、捜査機関のニーズの両方を熟知した方による実施を望みます。なぜならば、それが、子供の心理と特性を考えると、子供の心を守ることと起きた出来事の真実をできる限り明らかにすることの両立が図れると思うからです。   私は、自分の担当しているお子さんが裁判の証言に立ったことや、裁判の証言をした後のお子さんの心のケアを担当したこともございます。もちろん、自分が担当している子供が裁判で証言する可能性がある場合には、それまでに記憶の汚染がないように細心の注意を払いながら面接を行っております。こうした経験から、法廷での証言を含めて、繰り返し子供に経験を語らせるというのは、すごくトラウマ反応の悪化をさせることは感じていますし、それは諸外国の調査の結果からも明らかです。法廷で証言をする可能性がある場合、それまでは子供に積極的なトラウマの心理治療を行うことができません。時には裁判の証言まで、事件が届け出られてから1年、2年と掛かります。その間、子供はトラウマを抱えているにもかかわらず、積極的なケアを受けることさえできない状況に置かれます。法廷での証言が近づくにつれて、家で暴れるようになる子供たちとか、それまでなかったのに自傷行為が始まってしまう子供たちとか、学校に行けなくなる子供たちがいます。彼らは証言が終わったからといって、それらの行動が収まるわけではありません。   それでも裁判で事実が明らかになるならば、それは必要なことなのかもしれないですけれども、性犯罪に関する刑事法検討会でも既に述べたとおり、法廷での証言というのは、子供の心理とか認知とか記憶の特性からして、子供の記憶の正確な想起や供述からは遠のきます。子供の心に負担を負わせる上に、かつ正確さにも欠ける方法がどうして継続されているのだろうということを大変疑問に思っております。実際、子供のビデオリンクなどの証人尋問の付添い支援をしていた者からは、裁判官の問い掛けと子供の回答を見ていて、「ああ、子供の受け取り方が違っているな。」と感じる場面が度々あると聞いております。   子供及び障害のある方は、被害からなるべく早い時期に、誘導なしで、その心理とか特性を熟知している人が聴いた方が、よほど正確な聴き取りができますし、録音・録画は話しているときの表情であるとか、話を聴いた人の言葉が誘導的であったかどうかというのも分かりやすいものです。少なくとも、供述をまとめたものや時間がたって法廷で話したものよりは正確であるし、情報があると思っています。子供の反対尋問が必要ならば、フラットな、子供が緊張しない部屋で、子供を不要におびえさせることなしに行っていただきたいと思っています。   司法面接の実施方法についても、最後に意見を伝えさせてください。子供は大人のミニチュアではないということは、第2回会議のヒアリングで桝屋先生がおっしゃっていたと思うのですが、子供の心理や認知特性の知識がない、たくさんの子供たちに接した経験のない方が司法面接を実施しても、最善の聴き取りはできません。捜査に必要な情報を得ることが大切であるという御意見もあるかと存じますが、捜査に必要な情報でも適切な聴き取りができていなければ意味がないだろうと思います。両方を両立させるために、子供の発達とか認知特性、心理及び捜査機関のニーズの両方を熟知した方が聴き取りをできるように、制度とかトレーニングシステムを整えていただきたいと思っています。   なお、子供の聴き取りと障害を有する方の聴き取りというのは必要な知識、スキルが異なっておりますので、それぞれにおいて研修が必要だということも申し添えさせていただきます。 ○井田部会長 主尋問に代えて録音・録画記録媒体に証拠能力を認める案だけではなく、反対尋問の機会を与えることなく証拠能力を認めることとする案にも賛成したいという御意見であり、仮に反対尋問がどうしても必要だというのであれば、その実施方法についてはくれぐれも工夫していただきたいという御意見だとお聞きいたしました。 ○川出委員 これまでの御意見、それから性犯罪に関する刑事法検討会の議論を踏まえますと、性犯罪の被害者等の供述及びその状況を記録した録音・録画記録媒体について特別に証拠能力を認める案としては、一定の要件の下で当該記録媒体に証拠能力を認め、その取調べをもって主尋問に代えた上で反対尋問の機会を与えるという案と、一定の要件の下で反対の尋問の機会を与えることなく当該記録媒体に証拠能力を認める案の二つが考えられると思います。   いずれの案につきましても、当該記録媒体は、そこに記録されている被害者等の供述の内容であるところの、性犯罪が行われたという事実を証明するために用いる場合には、伝聞証拠になりますので、現行法上の伝聞法則やその例外との関係で、そういった特則を設ける実態的及び理論的根拠を整理して検討する必要があると思います。   具体的な検討事項としましては、まず、反対尋問の機会を与えない案については、第一に、それが憲法37条2項による被告人の証人審問権の保障に反しないのかどうかということ、第二に、証人審問権の保障に反するか否かとは別に、反対尋問を含めて公判での尋問の機会がないままに、録音・録画記録媒体に記録された被害者等の供述の信用性を的確に判断することができるのかという点が問題となります。   また、反対尋問の機会を保障する案については、主尋問に代えられることになる録音・録画記録媒体に記録された被害者等の供述がなされたときから一定の時間が経過した時点で反対尋問が行われることになるということを、反対尋問権の保障との関係でどのように考えるのかについて検討する必要があります。   その上で、こういった実態的・理論的根拠を踏まえつつ、具体的な規定の在り方については、今まで御指摘がありましたように、一つ目として、伝聞例外を基礎付ける要素である必要性と信用性の情況的保障に対応する要件をどのように設定するのかということ、二つ目として、どのような供述者を対象とするのかということ、三つ目として、聴取主体を限定するのかといった点について検討する必要があると思います。   そして、言うまでもないことですが、ここでは性犯罪の被害者等の事情聴取が司法面接の手法で行われたものであるということが前提となっていますので、今申し上げた要件の検討においても、それを踏まえた制度設計が必要になります。   司法面接については幾つかのプロトコルがあるようですけれども、性犯罪に関する刑事法検討会におけるヒアリングなどによりますと、信用性のある供述を獲得する上で共通して求められる要素としては、事件が発覚した後、できる限り初期の段階で聴取を行うということ、真実を述べることなどの聴取の際の約束事に関する事項、グラウンドルールと呼ばれるようですが、これを供述者に理解できるように分かりやすく説明すること、供述者の不安や緊張を緩和し、供述者との間の信頼関係を構築するための手順を踏むということ、供述者の特性に応じて、誘導・暗示を極力排したオープンな質問を用いて自由報告を求めるなど、供述の内容に不当な影響が及ばないように配慮すること、こういった点が挙げられております。   このような措置が採られた状況の下でなされた供述については、少なくとも、そこから相当な時間が経過した後に不安や緊張を強いられる法廷においてなされた供述との比較において、相対的に見れば信用性の情況的保障の程度が類型的に高いと考えられますので、これらの点を要件化することができれば、証拠能力を基礎付けるだけの信用性の情況的保障に対応する内容になるのではないかと思います。   検討の方向性は、以上のようなことになると思いますけれども、その上で、冒頭に申し上げた二つの案については、要件や効果が異なるものとなるでしょうから、いずれか一方しか設けられないというものではなくて、組み合わせるということもあり得ると思います。その場合には、両案を対比しつつ、それぞれの根拠や具体的な規定の在り方を踏まえて検討する必要があると考えます。 ○井田部会長 これまでの議論をまとめる形で問題点を整理してくださいました。考えられる方向性としては、一定の要件の下で録音・録画記録媒体に証拠能力を認め、これを主尋問に代えて用いるという案と、反対尋問の機会を与えることなく録音・録画記録媒体に証拠能力を認める案の二つがあり、それぞれについての検討課題としてどのようなものがあるのかといった点を明らかにしてくださったと思います。特に、伝聞例外を認めるための要件として、必要性と信用性の情況的保障についてどう考えるべきかということについても御指摘いただきました。 ○小西委員 議論が既に法的な方に進んでいるので、少しだけ付け加えさせていただきます。   私も、実はこのことを検討する前には大変不勉強で、司法面接の結果を記録した動画を裁判の法廷で見ることがないということを知りませんで、大変ショックを受けました。では、何のためにやっているのかと。聴取することは、子供には、とても負担があります。子供は、本当に皆さんがおっしゃったように、怖い人に怖い場面で何か聴かれたりしても何も言えません。そういう意味では、法廷に出てきて主尋問と反対尋問を行うと事実が分かるのだという裁判の前提自体が、このときには成り立たないということを考えていただきたいと思っていました。そういうふうに考えれば、事実を明らかにして被告人の権利を守る、これは大事なことだと思いますけれども、既に国際的に分かっている供述に関するエビデンスに関して、法律が、今までこういう理論を立てていたからということで無視するというのは、あり得ないのではないかと思っています。正確な言い方ができなくて申し訳ないです。基本的には、最低でも、録音・録画記録媒体を主尋問に代えていただきたいというのが私の意見です。   ただ、もう一つ少し付け加えますと、私は、多分、齋藤委員と比べると、もう少し慢性になってから被害者を診ることが多いので、もう記憶が汚染され切ったというか、そういう状態で子供に会ったり、あるいは知的障害のある方が本当に同じような状況になっているところに出会うことが多いです。それは何も裁判だけではなく、その前の捜査とか、その前の学校の先生に話して聞かれるという段階から、既に子供は傷つけられていることが多くて、裁判の場に出ていく前にたくさんのこういうことが起こって、司法の中でも、更に、しかも、それが正しいという主張の下に、子供を傷つけることが行われていることは知っていただきたいと思います。正しく事実を知るという点でも、被害者を傷つけるという点でもです。   重度の精神障害のある方や知的障害のある方も、同じ状況にあるということを述べておきたいと思いますし、それから、今度は代表者聴取の方ですけれども、1回とか2回とか、そのくらいの講義を受けたぐらいでできる技術ではないのですね。心理技術の方でも、対象が子供と大人では分かれていますし、私も、14歳未満の子供については児童精神科医のトラウマの専門医に送るようにしています。やはり技術が全然違うのですね。そういう意味では、学んで、経験して更に技術を高めないといけないような仕事です。事実をきちんと確認するというためにはそれが必要なので、何人か言われましたけれども、是非ここを資格化してほしいということには賛成です。 ○井田部会長 特則を認めるべき実態的な根拠をお話しいただいたと思います。他方で、憲法37条2項が被告人に証人審問権を与えていて、その重要な内容が反対尋問権の保障とされていますので、法律家は、このハードルをどうクリアするかという点について非常に悩んでいるということを是非理解していただければと思います。 ○小西委員 分かっております。「少なくとも」と申し上げたのはそこのところで、では、どうやって被告人の権利を保障するかということは議論していただく必要があるかなと思っております。 ○池田幹事 意見を申し上げます。司法面接結果に証拠能力を認める案として、今、二つの案がそ上に上っておりますが、これらの具体的な規定の在り方を検討する上での課題について意見を申し上げたいと思います。   まず、司法面接結果に証拠能力を認めた上で反対尋問の機会を与える、つまり主尋問に代替するという案ですけれども、その必要性を示す要件につきましては、この案が反対尋問の機会を与えるものであることからしますと、現行の刑事訴訟法321条1項3号のような高度の必要性を示すものである必要は必ずしもないのではないかと考えられます。その上で、性犯罪の被害者等にとって被害状況等を繰り返し供述することにより大きな心理的・精神的な負担がもたらされると指摘されていることを踏まえますと、性犯罪の被害者等の供述であれば必要性を示す要件として足りると考えられますので、これを要件とすることが考えられるように思います。   次に、信用性の情況的保障を示す要件について申し上げます。一般に、公判廷における供述は、供述者が真実を述べる旨宣誓し、偽証罪による処罰の警告を受けていること、事実認定者である裁判体が供述態度等を観察することができること、そして、反対尋問に服するために供述の真実性を吟味する機会があることという三つの要素があることによって、その信用性が言わば下支えされていると言えます。これを前提に考えた場合、公判廷外でなされる司法面接については、対象者の供述及びその状況の全過程を記録した録音・録画記録媒体を裁判所が取り調べた後、訴訟関係人に対して、その供述者を証人として尋問する機会を与えなければならないこととするならば、ただ今申し上げた三つの要素のうち、反対尋問の機会の要素は満たされることになります。その上、録音・録画された記録媒体の再生によって裁判官が供述者の供述態度等を観察することができ、事実認定者による観察の要素も満たすと言えることから、司法面接が実施される時点での信用性の情況的保障の程度については、刑事訴訟法321条1項3号の特信性の要件よりも相当程度低いものでも足りると考えることは可能ではないかと思われます。   その上で、司法面接の手法において求められる一定の措置が採られた場合には、供述者の不安や緊張が緩和されて、誘導や暗示が極力排除されつつ聴取が行われることになりますので、一定の信用性の情況的保障を認め得るように思われます。先ほど申し上げた必要性や、反対尋問の機会が与えられることなども考え合わせますと、証拠能力を認めるに足りる信用性の情況的保障があると評価することも考えられるのではないかと思われます。もちろん、その場合に司法面接の手法において求められる一定の措置の内容としてどのようなものが考えられ、どのように要件化できるのかについても検討する必要があると思います。   これに対して、司法面接結果に証拠能力を認め、かつ反対尋問の機会を与えないという案につきましては、以上のように考える限りは、必要性や信用性の情況的保障を示す要件は厳格なものとすることが求められることになります。まず、必要性を示す要件についてですけれども、現行の刑事訴訟法321条1項3号が供述不能と不可欠性の要件を定めていることを踏まえますと、供述者が性犯罪の被害者等であることに加えて、例えば、供述者が公判期日等において更に供述することで心身に重大な故障が生じることが明らかであって、その供述が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないものであるなど、高度の必要性を示す要件を定めることが必要となるように思います。   また、信用性の情況的保障を示す要件については、先ほどと同様に、裁判官が司法面接の記録によって供述者の供述態度等を観察することができることにはなるものの、反対尋問の機会という要素は欠けることになりますので、刑事訴訟法321条1項3号のいわゆる特信性の要件と同等の高度の信用性の情況的保障が求められることになるものと思われます。   その上で、司法面接の手法において求められる一定の措置が採られた場合に、常に高度の信用性の情況的保障があるとは言い難いとは思われますけれども、少なくとも暗示や誘導の影響を受けやすい者については、司法面接の手法において求められる措置が採られた聴取の下での供述の方が、そうでない場合、取り分け公判廷で不安・緊張を覚えながらする供述との比較において考えますと、類型的に見れば、高度の信用性が情況的に保障されているとも考えられ、また、必要性を示す要件として、公判で供述することで心身に重大な故障が生じることが明らかな者という要件を設けるとすると、このような者については、反対尋問を行ったとしてもなかなか功を奏しないことが想定されますので、その特性に照らすと、公判供述と比較して、高度の信用性の情況的保障が認められる下での供述の方が信用性が担保されていると評価することは考えられないものではないようにも思われるところです。   そして、このような考え方に立つとしますと、信用性の情況的保障を示す要件としては、司法面接の手法において求められる措置として採られた措置の内容などを考慮して、刑事訴訟法321条1項3号の特信性の要件と同等の高度の信用性の情況的保障が認められることが必要になるものと考えられます。これも先ほど申し上げたことと共通しますが、その場合には、司法面接の手法において求められる措置として採られた措置の内容をどのように要件化することができるか、ほかにどのような事情を考慮すべきかを検討する必要があるものと思います。   なお、付言いたしますと、さきに述べたように、公判供述を求めることが適切とは言えない、そういう特性を持つ供述者との関係で、公判手続よりも司法面接における方が供述の信用性が保障され得るという評価が成り立つとして、それが現行の刑事訴訟法321条1項3号の求める絶対的な特信性、つまり供述時の状況それ自体によって真実を反映しない供述がなされる可能性が低下しているという評価と同等のものと位置付けられ得るのかといったことについては、なお検討すべき点があるものと現時点では考えております。 ○井田部会長 今問題となっている二つの案について、言わば各論的な問題点といいますか、新たな伝聞例外を認めるための要件について、緻密に、立ち入った検討をしていただいたと思われます。もしこの規定を設けるとすると何が問題となるかについて、相当に明確になったと感じました。 ○金杉幹事 私の方からは、反対尋問なく証拠能力を認めるという案に対して、反対の立場から述べさせていただきます。   既に御指摘もありましたように、憲法37条2項の、全ての証人に対して充分に審問する機会を与えられるという反対尋問権、証人尋問権の保障は、適正手続の本当に根幹となるものだと考えています。ですから、もちろん、皆さんがそれをどう乗り越えるかという方向で議論しておられるのは当然なのかもしれませんけれども、刑事弁護を行う立場からしますと、仮にこの憲法の保障を乗り越える必要性があるとしても、やはり許容性は認められないという立場です。まず、必要性の点については、例えば、性犯罪の被害に遭った方が繰り返し聴取をされることで深刻なトラウマが生じ得るという御指摘は、本当にそうなのだろうと思います。   ただ、我々の立場、本当に被害があったのかどうかが刑事裁判で認定されるまでは確定していないという立場からしますと、被害があったことを前提として、その被害が拡大するおそれがあるから、あるいは、被害が深刻なもので取り返しが付かないものになるおそれがあるから、被告人を擁護する立場の弁護人が関与しないところでなされた供述に証拠能力を認めて、かつ、それに対して反対尋問の機会を与えないということについては、やはり被告人の納得はとても得られないと思います。   頂いた資料の中で、実際にこの3年間で録音・録画記録媒体が実質証拠として認められた件数について、採用されている27件のうち、刑事訴訟法326条、つまり、同意されているものが、23件と大半です。今、実際に代表者聴取が行われていること自体については、私も、何度も繰り返して聴取されることよりもよいと思っていますし、そのこと自体を否定するものではありません。ただ、27件中23件については、少なくとも弁護人、そして弁護人が被告人と相談した上で同意し、それが法廷で再生されて証拠となることについては認められている事案です。   今、正に問題となっているのは、そうではなく、同意書証として出てこない、そういう場合に証拠能力を認めてよいのかという場面だと思います。そうすると、基本的には事実関係に争いがある、それは犯罪自体があったかどうかという争いの場合もありますし、犯人性の争いの場合もあると思います。そして、犯人性の争いの場合には、被害があったということ自体は確かですから、そのような場合に、法廷でまた証言をしないといけないということになれば、もちろんそれは被害者の方にとって深刻なトラウマになりかねないということは理解できるのですけれども、例えば、犯罪事実そのものがあったかどうか争いがあるという場合に、被害があったことを前提として、刑事裁判の場面で証人として出頭させない、反対尋問が行えないということは、やはり許容できないと考えます。   被害者のトラウマを緩和する方法としては、既に指摘しておりますように、三つの方法があります。遮蔽、ビデオリンク、そして、やはり裁判所外における証人尋問がもっと活用されてしかるべきだと思います。小さい子供さんにとっては、法廷での証言というのがプレッシャーになるということは本当にそのとおりだと思いますし、そういった方法は活用されてしかるべきだと思いますが、反対尋問を行わずに証拠能力を認めるということについては、やはり反対の意見です。   他方で、主尋問に代替するという案については、一定の要件の下で認められるということはあり得ると思います。その方法については、既に皆さんから御指摘がありますが、私としては三つの観点から考えています。一つ目は、聴取の対象である被聴取者の年齢についてです。先ほど、性犯罪の場合に認めるという御意見もありましたが、私は、性犯罪に限ったことではなくて、やはり小さな子供さんはどんどん記憶が変わってしまうですとか、聴き方や、そのタイミングの問題、被暗示性・被誘導性ということを考えますと、かなり対象年齢を下げて、例えば8歳以下ですとか10歳未満ですとか、被聴取者の年齢が低い場合、法廷での証言、主尋問ということでいきなり聴かれるということに適さない場合に限るべきだと考えます。   二つ目の点は、聴取をする主体です。これも皆さんから御指摘がありましたように、やはり現状の一方当事者である検察官が聴取し、その結果を記録した録音・録画記録媒体に主尋問に代替して証拠能力を直ちに認めるということには抵抗があります。中立な立場の、資格を持った、子供さんの聴取ということに適した方が行うべきだと考えます。   三点目は、その聴取を行った主体、聴取を行った方に対する反対尋問の機会が保障されるべきだという点です。これは、プロトコルが遵守されたかということも当然ですし、どのタイミングでどういう聴き方で、ほかに汚染されていなかったのかということに対して十分に尋問する機会を与えられるべきだと思います。   この三点を備えた上で主尋問に代替するということであれば、検討の余地があると考えています。 ○井田部会長 二つの案のうち、反対尋問の機会を与えることなく証拠能力を認める案については、刑事弁護のお立場から反対である旨の論拠を述べられました。また、証拠能力を認めた上で反対尋問の機会を与える案につきましては、対象となる供述者を限定し、聴取主体についても一定の要件を設け、さらに、聴取主体への反対尋問の機会を保障するといった要件の下では、特則を認めることも考えられなくはないという御意見だったとお伺いしました。 ○中川委員 新たな類型を設けるということで、今、反対尋問なし類型と、主尋問に代える類型という二つの案が示されたところですけれども、反対尋問なし類型の方について、この段階で指摘をさせていただきたいと思います。   性犯罪に関する刑事法検討会の方でも何点か申し上げたところですが、まず前提として、先ほど井田部会長や金杉幹事からも御指摘がありましたとおり、証人の供述の信用性判断に当たって、当事者の反対尋問権の保障が重要であるということについては異論がないところだと思います。この点について、より具体的に申し上げたいと思います。   性犯罪に関する刑事法検討会の第2回会議におけるヒアリングで仲真紀子教授もおっしゃったとおり、司法面接というのは、原則として、できる限り早期に1回行う、児童になるべく負担を掛けない方法で実施する、年齢が低ければ、年齢掛ける何分とのことであり、年齢に応じて聴取の時間も限られるといったものであることからすると、児童から聴取できる事項というのは、おのずから限られたものになるように思われます。ほかの多くの証拠を検討した上で、それらとの整合の確認も含めて、捜査官が更に詳細な取調べを行うということは、司法面接の本来の趣旨に沿わないものとなってしまうおそれがあると思います。   実際の事件では、例えば被害者とされる小学生などが親とか先生とかに被害を打ち明けた、その供述の経過ですとか、虚偽供述の動機などについて、弁護人がほかの証拠を検討した上での疑問点、矛盾点、防御活動の一環として得られた新たな情報などに基づいて、被害者の供述の信用性に疑問を呈したり、何か具体的な指摘をして、児童の供述の信用性が争われるということがあります。しかし、司法面接という短い時間の中で1回聴取されただけでは、いろいろな情報が聴かれていなかったり、断片的な供述で、ほかの証拠からすると一見何か矛盾しているような、そぐわないような部分がある場合に、弁護人が投げ掛けた疑問点ですとか、弁護人が指摘する点を直接確認できないということになりますと、児童の供述の信用性の判断が非常に困難ということになります。性犯罪の事案においては、被害者の供述というのは犯罪を証明する数少ない重要な証拠であることが多くありますので、そうした事案では、結果として、弁護人の主張を排斥できないということで犯罪を証明する証拠がないという結論になる場合も、心ならずも生じてしまう場合があります。   また、児童に対する将来的な心身への悪影響を防ぐという趣旨で新たな類型を設ける場合には、要件に該当する全ての事件において証人尋問は想定されないという前提になってしまいます。ですので、弁護人だけではなくて検察官も、司法面接で聴いていなかった事項で、立証の必要上、確認をする必要があると判断した事項についても、証人尋問で追加的に確認をするということが想定できないということになってしまいます。   このように、反対尋問なし類型、刑事訴訟法321条1項3号に準ずる類型だと、証人尋問を実施すれば事実認定が適切に行われる可能性がある場合でも、証人尋問を行わないという制度になってしまいますので、これについては慎重に検討をする必要があるのではないかと思います。 ○井田部会長 反対尋問の機会を与えることなく証拠能力を認める案について、証拠から心証を取る裁判官のお立場から、問題があるのではないかという御意見だったとお伺いいたしました。 ○川出委員 少し戻ってしまうのですが、先ほどの池田幹事の御発言のうち、二つの案において、録音・録画記録媒体の証拠能力を認めるために要求される必要性と信用性の情況的保障の程度には差異があるのではないかという点について、補足的に意見を申し上げたいと思います。   二つの案のうち、記録媒体に証拠能力を認め、その取調べをもって主尋問に代えた上で反対尋問の機会を与える案につきまして、私は、性犯罪に関する刑事法検討会では、既存の刑事訴訟法321条の2の対象を拡大する形で新たな制度を創設するという観点から、刑事訴訟法321条1項3号の規定を手掛かりとして、不可欠性と特信性を要求することで、司法面接の手法による聴取結果を記録した記録媒体に証拠能力を認めることができるのではないかという意見を申し上げました。   刑事訴訟法321条の2というのは、裁判官の面前でなされた供述を記録した記録媒体に、事後的に反対尋問の機会を与えることを条件として証拠能力を認める規定です。これに対して、今回問題となっている司法面接の手法による聴取結果を記録した記録媒体は、裁判官の面前でなされたわけではない供述を記録したものですから、信用性の情況的保障の程度が類型的に劣っています。その点を、不可欠性と特信性を要求することによって補えば、両者を同様に扱うことができるであろうと考えたものです。刑事訴訟法321条の2の規定の対象を拡大するという枠組みで考えると、そういう要件立てになるのではないかと思うのですが、他方で、池田幹事が先ほど御指摘になったとおり、記録媒体に証拠能力を認め、それを主尋問に代えた上で反対尋問の機会を与える案については、それとは異なり、端的に、供述の真実性を吟味するための最も重要な手段である反対尋問の機会が保障されるという前提で、どの程度の必要性や信用性の情況的保障が求められるのかを検討するという方向性もあり得ると思います。この枠組みによった場合は、刑事訴訟法321条の2というのは、その一つの例にすぎないということになりますので、それと同視できるための要件は何かという形で新たな制度の要件を考える必要はないということになります。   そういう前提で考えれば、二つの案において、記録媒体に証拠能力を認めるために要求される必要性と信用性の情況的保障の程度には差異があるというのはそのとおりだろうと思いますので、御指摘のような方向性で検討するということは十分考えられると思います。 ○宮田委員 基本的に金杉幹事の意見と同様なので、若干違うところだけ述べます。信用性の情況的保障に関する部分です。   性犯罪に関する刑事法検討会第2回会議のヒアリングにおいて、仲先生が、司法面接によって記憶の汚染が除去できるわけではない、というお話をなさいました。証拠能力を原則として与えるということになると、このような記憶の汚染の有無について、いつ判断するのでしょうか。私は、記憶が汚染されてしまっているものについて、信用性の情況的保障があると本当に言えるのか、疑問です。そもそも汚染されてしまった記憶に基づく供述については、関連性すらないと思ってしまうのです。記憶の汚染が起きていたのか、起きていなかったのかについて調べるのが先なのではないでしょうか。それを調べた上で、司法面接の録音・録画記録媒体が取り調べられるべきではないのでしょうか。私は、記憶の汚染の有無についての立証の機会をいつどのような形で与えるかというところが非常に重要なのではないかと考えております。簡単に証拠能力を認めてしまうということは、結局は、その点の吟味すらなく、反対尋問権の保障がなくなってしまうことになりかねないと思うのです。   現在、被疑者の取調べ結果を記録した記録媒体が証拠として取り調べられることがありますが、信用性判断に用いることができる情報量が違います。証拠として出る部分が、記録媒体のある一部分であるとしてもその取調べの全体であるとしても、少なくとも裁判員裁判対象事件については、警察段階から取調べ過程を全て録音・録画しています。1回だけの供述を記録する代表者聴取とは全く違う状況にあるではないですか。被疑者の取調べ結果を記録した証拠となる録音・録画記録媒体について、他の録音・録画記録媒体で供述過程全てを見ることで、自己矛盾であるとか、あるいは、ほかの証拠との整合性、これはこんな証拠があるからこんな誘導がされたのかもしれないな、ということなどを見ることができるわけですが、代表者聴取は1回だけなのです。当たり前のことですが、代表者聴取が1回だけだということは、比べられる他の供述がないということです。ですから、そう簡単に、表情等が写った客観的なものだから、これを裁判官の前で見せれば大丈夫だろう、弁護人も反対尋問ができるだろうというものではありません。   そして、先ほど小西委員や齋藤委員などもおっしゃっていましたけれども、子供の供述について見ていくのはものすごく難しいことです。私は、実は少し心理学をかじっており、いろいろな研修に出て話を聞くのですけれども、子供の真意を知るには、周囲の人と同じような動きをするミラーリングなどの様々な子供の動作、あるいは表情などから考えられる隠された子供の感情の意味するところなどを見るといったことが必要で、それは、講義を聞いただけでは、とてもではありませんが、実際に臨床の現場での理解に落とし込むことなどできません。そういう精神医学、心理学の知識のない裁判官が録音・録画記録媒体を見て、信用性判断ができるのでしょうか。何の意味があるのでしょうかというと言いすぎかもしれませんが、法律家が、子供の動作や表情などを見て、その子供の供述が本当に真摯なものであるのか、正しいものであるのか、聴取者や周囲を気にしていないか、聴取者のちょっとした動きが誘導になっていないか等という信用性に関わることを判断できるだけの力を持っているわけがありません。そうなってくると、子供への聴取者に対する尋問は必要不可欠なものになるであろうと思います。聴取者がきちんとプロトコルを理解しているのか、あるいは誘導的な手段を採らないというのがどういう意味なのかを本当に分かっているのか、どのぐらいの子供に接した経験があるのかとか、そのようなことをきちんと検討できるようにする必要があるだろうと思います。   次に、聴取主体です。聴取者は誰であるべきかということです。私は、検察官がやるというのは、金杉幹事が言ったように、やはり非常に危険だと思います。客観的な資格のある第三者、そして、子供の供述を取るということに対する訓練を受けている人でなければ無理なのだろうと思っています。私は、性犯罪に関する刑事法検討会のときに、家裁の調査官はどうかといった発言をしておりますが、今、虐待について、家裁が児相に許可を出す形で絡んでくるわけですが、家裁は、実際には、聴取などには全く関与しないような形で手続が進みます。先般も、虐待死した子供について裁判所が許可を与えていなかったというところが不当視されるような報道もありました。聴取を行う代表者の中に家庭裁判所の調査官を入れるスキームは、私は、それほどおかしいものだとは思っておりません。虐待の事案については、児相への許可だけでなく、親の親権停止や親権の剝奪まで含めた処分を家裁が考えなければいけないことは結構あるわけです。家裁の調査官は、心理の専門家が非常に多いので、法律家が心理をこれからゼロから勉強するよりも勉強するハードル自体は低いのではないか、また、調査官は子供をプレイルームで遊ばせながら、どちらの親に養育させるのがいいのかといったことを実際に判断し、調査報告書を作ったりしていますので、今の法律家とか制度の中で一番ましなのは家裁の調査官なのではないかと思っております。 ○中川委員 家裁の調査官が聴取をするという話があった点に絡んでなのですけれども、家裁の調査官というのは、確かに心理の専門家がある程度そろっているとは思うのですけれども、司法面接ということを考えたときには、事件後早い段階で聴取を行うということになろうかと思います。そうすると、それだけの機動性を確保できるのかという辺りについて検討する必要があると思います。また、例えば司法面接を誰かがやって、更に家裁の調査官が聴取するということになると、聴取の機会は2回となって逆に児童の負担が増えるといった辺りも少し検討していただければと思います。 ○井田部会長 私の司会の不手際なのですけれども、もう時間が相当に過ぎておりますが、山本委員、長谷川幹事、金杉幹事、齋藤委員の4人の方が更に御発言を希望されています。恐縮ですが、手短にお願いできればと思います。 ○山本委員 司法面接自体は、それぞれのプロトコルの原理原則に沿って、繰り返しの事情聴取によって悪影響を与えないように、1回で、誰がどこで何をしたのかを聴いて事実確認をするという手法です。それが不適当だと言われることは不当だと思います。私は法律は素人なので、失礼なことを言うかもしれませんけれども、法廷に言えない人を引っ張り出してきて、そして、また非常に攻撃的だったり意地悪な質問をされて、子供は時間の特定が難しいという特性があるところ、なかなか明確に言えないところで矛盾を突かれて、子供が答えられなくなったら、事実確認ができませんでしたということで無罪になったり、また、そのような質問に耐えられないだろうから、証拠上明らかにできないだろうということで、加害者が不起訴になっているというのは、非常に司法の不正義ではないかとも思います。子供の特性や時系列に沿って話せない人の特性を踏まえないと、加害行為を罰せられないと思います。金杉幹事から、本当にその被害事実があったかないか確認できない、あった人にだけするべきというようなお話がありましたが、これもスクリーニングの問題で、あったかないか分からないので、本来であれば全件するようなことが必要ではないかと思います。被害者の保護と被告人の権利、両方を守っていくということで議論していくと思いますので、是非前向きな議論をしていただきたいと思います。 ○長谷川幹事 宮田委員と金杉幹事の意見に対してということが主になると思いますが、まず、無罪推定の関係で、まだ裁判で被害者と確定していない者の証言について反対尋問をしないことについての辺りのところですが、無罪推定があるので、刑事手続上、被害者として扱うのはどうなのだということは被害者参加の導入の議論のときも言われました。まだ被害者と確定していない者を被害者として法廷に参加させるのはどうかという議論です。いわゆる犯罪被害者保護二法のときにも、無罪推定の話を理由に、被害者保護の施策を排除しようとする議論がありましたが、それらの議論と同じで、推定無罪ということは、有罪判決確定前に司法手続上に被害者として登場している者を手続上被害者として扱い、その特性に配慮する制度を作る許容性がないという理屈にはならないと思います。   それから、先ほど被害者保護の制度として、遮蔽、付添い、裁判所外における証人尋問があるということをおっしゃいましたが、それ自体、証人尋問ですので、それがあるからこういった反対尋問のない制度を導入する許容性がないという話にはならないと思います。   それから、反対尋問ですが、子供が供述する場合のベストエビデンスは何なのかというのが司法面接の問題を検討するに当たっては欠かせないことだと思っていまして、法廷での証言が、記憶が保持できていないだとか、そこでの誘導とか、圧迫だとか、法廷の場での子供の証言が真実の発見に資するものであるかどうかなどの皆様がおっしゃっている問題点がある中、法廷での供述はベストエビデンスとは言えないと考えます。この司法面接の議論は、子供に対する聴き方は難しいというところから出てきているわけですが、法廷で、主尋問にしろ反対尋問にしろ、裁判官、検察官、弁護人が質問するときも、その聴き方が難しいというのは同じなわけです。先ほど、司法面接での聴取の主体をどうするかというような話が出てきましたが、それは、法廷の場で反対尋問含め法曹三者が聴くことが適切かという問題にもなります。児童虐待の被害に遭った子供を診ている精神科医の先生にお聞きしたことですが、法廷で自分の関わっている子供が証言するのを傍聴していたときに、明らかに児童精神科医の立場からは、子供の顔つきや言葉遣いなどが変わって、解離を起こし始めているという状態であったのですが、裁判官はそれに気が付かないで尋問を続けたというようなこともあったということです。法廷で証言するということがベストエビデンスになるのかということは大事なことで、これは刑事弁護の立場からも重要なことなのではないかと思います。 ○金杉幹事 先ほどの宮田委員の御発言に関連して、補足を申し上げます。誤解がないようにという意味です。私が先ほど申し上げた、主尋問に代替して証拠能力を認めるという場合の三つの要件の三つ目、聴取者に対する尋問の機会が保障されるべきということは、刑事訴訟法321条3項、4項の成立の真正立証と同様に考えておりまして、その成立の真正立証で、記憶が汚染されているとかプロトコルが守られていないということが分かれば、当然、証拠能力を認めるべきではないという意見を言うことになろうかと思います。 ○齋藤委員 記憶の汚染を踏まえたとしても何がベストかという問題かと思うのですが、記憶が汚染されているかどうかは子供に聴いても分からず、子供を証人尋問に呼んで、心理や認知の特性を踏まえていない方々が質問したら、更に汚染されて混乱するだけだろうと思います。子供の心理支援について一定のトレーニングを受けている心理の専門家であっても、すごく慎重に気を付けて子供たちに会います。ですから、記憶の汚染に関しては、周りの方の証言や聴取者の尋問などで明らかにするしかないのではないかと考えております。 ○井田部会長 よろしいですか。時間もかなり経過しましたし、恐らく二巡目で議論すべきところにまで踏み込んだ議論になってきていると思いますので、本日のところは、「第二の二」についての議論はここまでとさせていただきたいと思います。   簡単にまとめてみたいと思うのですけれども、本日の議論を伺っておりますと、もし被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体に係る証拠能力の特則を新設しようとするのであれば、その方向性は二つあると考えられます。すなわち、一定の要件の下で証拠能力を認めた上で反対尋問の機会を与えることを要することとする、つまり、主尋問に代えてこれを用いることにするという案と、一定の要件の下で証拠能力を認め、反対尋問の機会を与えることを要しないこととするという案です。また、これらの二つの案は排他的な関係ではなくて、両方を採用することも考えられるという御意見も出されたところです。   他方で、取り分け、反対尋問の機会を与えることを要しないこととする案に対しては、複数の委員・幹事から否定的ないしは消極的な御意見が表明されました。   それぞれの案については、共通する検討課題として、憲法37条2項の保障する証人審問権、被告人及び弁護人の反対尋問権との関係をどう考えるか、そして、現行法上の伝聞法則やその例外との関係で、そのような特則を設ける実態的な根拠や理論的な根拠をどう考えるかということが問題となり、より具体的には、伝聞例外を認めるための要件である必要性や信用性の情況的保障についてどう考えるか、どのような供述者を対象とするか、聴取の主体を誰にするかという問題について検討する必要があるという御指摘があったものと思います。   さらに、伝聞例外を認めるための要件に踏み込んで考えたときには、被害者等の聴取結果を記録した録音・録画記録媒体については、正に司法面接の手法で行われたものであるということがとても重要なことであって、そういう情況の下でなされた供述であるのであれば、相対的に見ると信用性の情況的保障の程度は類型的に高いと言うことができるのではないかという御指摘がありました。他方で、この点については、聴取前に記憶の汚染があった場合をどのように考えるのかという問題点の御指摘もありました。   二つの案のそれぞれの具体的要件を検討する際の方向性については、主尋問に代える案は反対尋問の機会を与えるものであり、また、録音・録画記録媒体の再生によって裁判官が供述者の供述態度等を観察することができるということから、信用性の情況的保障の程度については、刑事訴訟法321条1項3号の特信性の要件よりも相当低いもので足りるのではないかという御意見がありました。これに対して、反対尋問の機会を与えない案については、この要件を相当に厳格なものにする必要が求められるという御意見がありました。   議論の収束に向けては、更に立ち入った議論をする必要があると思いますけれども、今日の御意見・御議論を踏まえつつ、事務当局には更なる議論のたたき台になるような資料を作成していただき、二巡目の議論で、それを用いて更に議論を深めることとしたいと思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。   それでは、開会からかなり時間も経過しましたので、ここで10分休憩をとりたいと思います。再開は午前11時25分としたいと思います。よろしくお願いいたします。              (休     憩) ○井田部会長 会議を再開いたします。   次に、諮問事項の「第三の一 性的姿態の撮影行為及びその画像等の提供行為に係る罪を新設すること」について御議論いただきたいと思います。   御意見のある方は、挙手されるか又は挙手ボタンを押すなどした上で、御発言をお願いしたいと思います。   この諮問事項については、最大で50分程度の時間を予定しております。 ○山本委員 ここの議論を少し越えてしまうかもしれないのですけれども、同意のない性的姿態の撮影、そして拡散は、多様な形で被害が広がる複雑な問題だと思いますので、少し述べさせていただきます。   私が子供の頃は、盗撮については余り気にしなくてよかったと思います。今は大学生を対象に講義をするときは、トイレやショッピングセンターの更衣室にカメラが仕掛けられていることを伝え、いちいち確認するように注意喚起しないといけないですし、交際相手や知り合った人に性的な画像を送ることを求めないように、求められても応じないようにとか、削除を求められたら削除するようにと教育していく必要があります。18歳以上の交際相手との性的画像の交換は、当事者間で決めることでもありますけれども、やはり断りにくい立場の人もいます。そして、別れた後でネットにばらまかれる被害を受ける可能性や、性的画像や動画をネタに脅されて様々な犯罪に巻き込まれる危険については、余り知られていないと感じますし、そもそも自分が当事者になることを若い世代の人たちも余り考えていないということがあります。   しかし、一旦巻き込まれれば、学校や職場を辞めざるを得ない、引っ越しもしないといけないなど、生活や人生も大きく狂ってしまうし、自殺する人もいるぐらい甚大な被害につながることです。子供や成人でも、いじめの中で性的画像を撮られたり、自慰行為をさせて撮影し共有するなどの痛ましい事件もあります。適切な対応がされていないのは、社会体制に不備がありますし、今正に私たちの子供や孫の世代が被害に巻き込まれていることです。簡単に性的画像が作成され、ネット上に上げて、特定の人や誰もが見られるような状態にできるのにもかかわらず、それを同じように簡単に削除したり回収することもできない、そういう社会を作り出しておいて、対応できないということは余りに無責任なことです。この法制審議会の部会だけで議論できないことはありますけれども、国としてきちんと整えてほしいと思います。   まず、性的な姿態の動画等の撮影されたものは、撮影された本人に所属することを大前提にしてほしいと希望しています。性的な姿態が記録されたものが自分のコントロールを離れて他者の手にあることは、強い精神的負担になりますし、将来的にもリスクとなります。性的な姿態の画像・動画をいつどのように扱うかは、撮影された本人が決定すべき性的自己決定権の中に含まれると思いますし、性の尊厳として守られるべきだとも思います。バウンダリー、すなわち、境界線の侵害という考えがありますけれども、同意のない性的画像・動画が勝手に見られていることは、自分の性的境界線の侵害と感じられます。そして、見られたくない自分のプライベートな部分である性的な姿態の動画を性的な対象物として勝手に他者に扱われて搾取されることは、この社会で尊厳ある人間として扱われないのと同じことだと思います。そして、被害者本人の性的尊厳がもちろん大事ですけれども、私も仕事でそのような画像・動画を見ることがありますけれども、そのように人が扱われていることを見ることも、被害者支援側にとっても打撃となります。職務として、性的画像を削除している人たちも代理受傷を受けています。捜査をする人たち、削除するために性的画像を見ないといけない人たちも同じようにダメージがあるのではないかと思います。社会に存在してはいけないものとして適切に取り締まられるようになることを希望します。   そして、今後の話ですけれども、どういう名称にするかについては、リベンジポルノという名称になったことで、自分は対象に当てはまらないと思ってしまった人も多いと聞いています。盗撮罪だと、同じように、自分の加害・被害には当てはまらないと思う人もいるのではないかと予想します。性的画像の承諾をした人や、第三者が閲覧することについてだまされて承諾したような人たちというのが、自分は当てはまらないのではないかと思ってしまう可能性もありますので、性的姿態の撮影罪など、より実態を表現できる名称にしてほしいと思います。   また、法定刑についてですけれども、後ほどの流出とも関わりますけれども、人生を変えるほどの大きな影響を与えます。軽い被害だと受け取られない法定刑にしてほしいということは希望します。   また、グルーミング罪のところでも申し上げましたけれども、性的画像・動画の送り付け行為というのは閉じられた特定の空間の中では処罰されにくいという問題があります。子供だけでなく成人もそうですけれども、親密な関係ではない人から突然、性的な画像や自慰行為の動画が送られてくるということは非常に問題です。これはサイバー露出ですので、これを取り締まられるようになってほしいと思います。このような行為が違法であることを明確にし、同意のない性的姿態の撮影の根絶を図ってほしいと思います。 ○井田部会長 実態に関する御指摘を頂いた後で、規定を新設するときの留意点として、保護法益の問題、罪名の問題、あるいは法定刑の問題等々について御指摘いただいたと思います。 ○木村委員 結論として、被害が余りに多いということと、被害の重大性から見て、何らかの法規制が必要だと思います。現状ですと、盗撮は、いわゆる迷防条例で対応されることが多いのだと思うのですけれども、条例では、撮影場所が公共の場所に限定されているのではないかという問題がありましたけれども、最近では、例えば学校の中での撮影などにも広がっていると伺っています。そういう条例が多いと伺っています。ただ、先ほども法定刑のことの指摘がありましたけれども、飽くまで条例ですので、その制約もありますし、あと、性犯罪というよりは、むしろ社会法益的な側面もあると思いますので、法定刑は必ずしも重くないというのはそのとおりだと思います。例えば、都条例の場合ですけれども、いわゆる盗撮は懲役1年又は罰金100万円、重い常習の類型でも懲役2年又は罰金100万円となっているようです。特に、明らかに個人法益としての性的被害が重大だと考えられる、特に問題になっている赤外線カメラを用いるような行為というものについては、行為態様も撮影された画像も、かなり明確に処罰範囲が区別できるものでないかとは思います。ですので、構成要件としての作り方もいろいろ工夫が必要だとは思いますけれども、立法化できるのではないかと思います。例えば都条例では、通常衣服で隠されている下着又は身体を写真機その他の機器を用いて撮影する行為が処罰対象となるようですけれども、そのような行為は場所を問わずに法律で規制するということも考えてよいと思います。   拡散行為についても述べさせていただきますと、盗撮画像の拡散と類似したものとして、要望書でも御指摘がありましたけれども、例えば、刑法でいえばわいせつ画像の頒布罪、特別法ですと児童ポルノの提供罪、あるいはリベンジポルノの公表罪などが挙げられると思います。特に、リベンジポルノの公表については、盗撮画像の拡散についても実際に適用されておりますし、この罪との関係については少し注意して扱う必要があるかなとは思っています。ただ、もし盗撮罪を新設するのであれば、仮にその拡散がいわゆるリベンジポルノ防止法の対象となり得るものであっても、その画像について、改めて、私事性的画像記録に当たるかどうかを検討するというのは余りにも合理性がないと思われます。盗撮画像の拡散は金銭目的で行われるようなことも多いようなので、そうだとすると、盗撮行為と拡散というのはセットとして考えるべきではないかと思います。ですから、仮にリベンジポルノの公表罪と重複するというようなことがあっても、それほど大きな問題ではないとは思います。ただし、法定刑との関係では、どの程度にすべきかというのは、先ほど言ったような刑法やいわゆる児童ポルノ法などの類似の犯罪類型の法定刑との関係も考慮する必要があると思っています。 ○井田部会長 撮影罪について、現在の条例による対応の限界を御指摘くださった上で、提供罪、拡散罪の犯罪化を検討すべきであるという御意見を頂いたかと思います。 ○小島委員 不同意撮影罪というのは性犯罪ではないかと思っております。保護法益については、プライバシーの侵害とか社会的法益などの指摘がなされており、その一つかどうかは議論の余地がありますが、山本委員がおっしゃったような被害の実情を見ますと、重要なのは、やはり自己の身体について意図しない形で流通されることはないという自己決定の侵害ではないかと思います。自分自身の身体が物扱いされないという尊厳の問題ではないかと思います。この問題というのは、少し大げさに言いますと、刑法典が撮影によるデータの固定から生まれる精神的被害、心の傷というものを保護すると、これを要件化していくことではないかと思います。   没収対象の関係ということでいいますと、インターネットなどで、一旦撮影されますと世界中に拡散されて不特定多数の者の目に触れる、これを没収・消去の対象にしてほしいというのが強い要望としてあります。当たり前のことですけれども、撮影行為を処罰していくと犯罪生成物件となって没収・消去の対象になります。性犯罪から創出されたものは、被害者に心の傷を永続的に与えるものであって、この世の中に存在してはならないものであり、これを没収、剝奪することが必要だと思います。不同意撮影罪の範囲の拡大が没収・消去の拡大につながるという問題意識を持っております。   さらに申し上げますと、今回の改正の論点としては撮影行為と提供行為ということが基本になっておりますけれども、複製と単純所持ということも考えていかなければいけないのではないかと思っています。これによってデータの没収・消去の範囲が更に拡大できます。同意なき撮影によって生まれた画像を複製することや、同意なき撮影から生まれた映像だと分かっていて不特定多数に提供する目的で所持するということについても、目的と分かっているということを要件にして、所持自体を処罰することを考えるべきではないかと思います。今回、刑法改正市民プロジェクトから要望書が出ていて、国外犯の処罰について記載されております。国外に事業者が流通させるという行為が問題になっておりますので、この点も検討すべきだと考えます。   私は、性犯罪に関する刑事法検討会において、アダルトビデオの出演強要によりこれを撮影する行為というのを論点として挙げました。これについてはヒューマンライツ・ナウから、商業的な撮影行為として犯罪化を求める要望書が出ております。内閣府の女性に対する暴力に関する専門調査会、若年者を対象とした性的な暴力の現状と課題においても、JKビジネスの問題とともにアダルトビデオの出演強要というのが出ておりまして、これは、人権侵害だから対策を講じる必要があるとしております。   アダルトビデオの出演強要については、刑法177条、178条においても具体的な論点として挙がっておりません。今回撮影罪として、これがなかなか難しいという意見がございましたが、もし、これが難しいのであれば、新たに制定される刑法177条、178条の論点において、AV撮影について、これを事案として検討していただきたいと思います。この事案の特色としては、強度の経済的利益が背景にあって、1回の性的行為にとどまらず、社会一般にその人の裸体や性交、特に女性ですね、これが繰り返し流布するという点で、同意については相当に慎重であるべきだと思います。事前のインフォームドコンセントがない限り、性犯罪として、十分な情報が与えられてない場合、流通が前提となるという意味で、特殊な性犯罪だと思います。このような行為について、同意があるということで考えていくことは非常に問題だと思います。 ○井田部会長 撮影罪を性犯罪として刑法に規定すべきだというお考えを明らかにし、保護法益についても詳しく述べられました。複製行為についても処罰の対象にすべきだということもおっしゃいました。没収については次の論点ですので、また次の論点のときに検討することになると思いますけれども、没収についても指摘されました。最後に、アダルトビデオ、AV出演強要の問題についても触れられたと思います。 ○佐藤(拓)幹事 この問題は、撮影行為の話と、撮影によって得られた画像を提供する行為の話と、没収の話とが密接に絡み合っていて、複雑かと思いますので、そこを整理しまして、まず撮影に焦点を当てて発言させていただき、もし許されるのであれば、更にその先まで発言したいと思います。   性的姿態の撮影行為について新たに罰則を設ける場合、他の論点においても同様ですが、その保護法益や処罰根拠についてどのように考えるかを整理して、それらを踏まえながら具体的な要件を検討する必要があるように思われます。保護法益については、既に御発言が幾つかあったかと思いますが、撮影罪を設ける趣旨が、他人に見られたくない性的な姿態を撮影されることによって、その視覚的情報が固定化され、加害者にその画像を保持されると、他の機会にそのような性的な姿態が見られてしまうという撮影対象者の被害に対応するものだとしますと、これを性犯罪の一つとして個人的法益に位置付け、性的姿態の撮影を意に反してなされないという意味での性的自由、あるいは性的姿態を撮影されるかどうかという意味での自己決定権を保護法益とすることが考えられるかと思います。   撮影行為の対象や態様・方法といった要件については、こうした保護法益についての整理を踏まえて検討する必要がありますが、単に被撮影者の同意・不同意という内心だけに着目して要件設定しますと、処罰範囲が不明確になるおそれがあるように思います。そこで、先ほど述べましたような保護法益を侵害すると評価し得るものを条文上、具体的に列挙することが考えられます。このことは、処罰の外延を明確なものとし、かつ処罰範囲を合理的なものにすることに資すると考えられます。   その上で、撮影対象ですけれども、性犯罪に関する刑事法検討会の議論などを踏まえますと、撮影された場合に性的自由ないし性的自己決定権が害され得るものとして、第一に、性器、肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部、第二に、これらの性的な部分を覆う下着、第三に、性交等又はわいせつな行為をしている姿態といったものが挙げられるかと思います。   次に、態様・方法についてですけれども、ひそかに撮影する行為、諮問事項の「第一の一」に関して議論されたような要件を満たすような撮影行為、強制性交等や強制わいせつ罪といった性犯罪の犯罪行為が行われる機会に撮影する行為といったものが考えられます。諮問事項の「第一の一」に関しては様々な御意見があって、その一つとして、例えば、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であることに乗じてという案も出されたかと理解しておりますけれども、いずれにしましても、これとの平仄というものを意識すべきかと思います。   一方で、新たな罰則の保護法益を、性的姿態を意に反して撮影されないという意味での性的自由と捉えますと、撮影対象者が自らの意思で露出していた場合や、撮影対象者による撮影の承諾があった場合については、保護法益の侵害がないことになります。そのため、それらを除外しなくてよいかについても検討する必要があるかと思います。   最後に、罰則を設ける場合の法定刑についてです。これについては、侵害される保護法益を踏まえることは当然でありますが、いわゆる児童ポルノ法の7条5項のいわゆるひそかに製造罪の法定刑などとのバランスにも留意する必要があると思いまして、それを踏まえた検討も必要であると考えます。 ○井田部会長 撮影行為に関する罪を新設するとすればという前提の下で、性犯罪に関する刑事法検討会の議論、そして、本日のこれまでの議論を踏まえて、その方向性を明らかにしてくださり、また、立法論として検討すべき点についても極めて明確に御提示いただいたと感じました。対象として三つの類型に分けて、また、撮影の方法・態様も三つに分けて整理されたというふうにお聞きしました。性的部位の中で、性器、肛門若しくは周辺部、臀部、胸部、これはいわゆる児童ポルノ法の文言を参考にしたということでよろしいでしょうか。 ○佐藤(拓)幹事 そういったものを参考にするべきなのではないかと思われます。 ○今井委員 先ほど小島委員から、アダルトビデオ、いわゆるAVの撮影強要について大変重要な御指摘があったと感じております。小島委員からは、流通が前提となるということで、他の撮影のように個人が私的に持っているようなものとは違うのではないかという御指摘があったかと思いますので、なかなか難しいのですが、現時点での問題点を整理しておきたいと思います。   アダルトビデオの撮影といいますのは、言うまでもないことですけれども、性的行為とその撮影行為、商品としての撮影行為とが同時に一体として行われるものであると理解するのが素直ではないかと思います。ですから、その際、何について強要されたのかという観点から考えますと、性的行為については同意があるのだけれども、撮影されて、その媒体が商品化されることについては同意がないのだと、商品化については強要されたのだということはなかなか考えにくいのではないかと思います。そういたしますと、この部会で今日も活発な議論がなされており、今後もなされるわけですけれども、強制性交等罪の要件の在り方の問題に帰着するように思います。アダルトビデオ、商品としての撮影については、今ほど佐藤拓磨幹事が整理してくださったような撮影罪としての流れで整理可能、説明可能な問題ではないかと思います。   先ほどの佐藤拓磨幹事の御説明を聞いておりますと、今後処罰すべき対象としての撮影行為の態様・方法としては、恐らく次の二つの整理が可能かと思います。すなわち、強制性交等罪や強制わいせつ罪等の犯罪行為が行われる機会に撮影するというものと、拒絶する意思を形成・表明・実現することが困難であるという状況に乗じて撮影する行為というものが恐らく典型的には考えられるわけでありますけれども、仮にそのような行為を処罰化するといたしますと、大本の性的行為の強要とは別途に撮影罪としての処罰の範囲が広がるわけでございますので、これによって、アダルトビデオの撮影の強要の問題もほぼカバーされ、処罰範囲が適切に確保できるのではないかと思います。   したがいまして、アダルトビデオへの出演強要に特有の問題として処罰規定を設けるべきかという見方ではなく、強制性交等罪や撮影罪の在り方として議論を継続していくのがよいのではないかと思った次第です。 ○井田部会長 アダルトビデオへの出演強要の問題については、今後検討される強制性交等罪の処罰の要件の問題、さらに、これも今後検討される撮影罪の処罰範囲、その内容の問題として議論すればよい問題で、別個独立の問題として扱う必要はないという御意見かと思います。恐らく小島委員も、決して別個独立に扱うということではなくて、強制性交等罪の要件の問題、あるいは撮影罪の処罰範囲の問題として議論していくべきだということで御納得いただいているのだろうと思います。先ほどもそういう趣旨で御発言されたのだと思いますが、いかがですか。 ○小島委員 刑法177条、178条ですと、行為者が主体になる一方、商業利用ということになりますと、撮影者だとか、それを商業利用する人とか、売買する人とか、プロダクションとか、いろいろな方が介入してくるので、それについては、刑法177条、178条だけでカバーできないものもあるかと思います。撮影罪については、これを刑法177条、178条により処罰し、カバーできないものもあるとは思うのですが、当面は刑法177条、178条の関係で論じ、その犯罪行為の機会に性的姿態を撮影したものとして、撮影罪の犯罪生成物件として没収の対象とすることになろうかと思います。 ○井田部会長 二巡目の議論については、かなり重い議論が行われることが予想されますが、アダルトビデオへの出演強要の問題については、二巡目の議論には持ち越さずに、刑法177条、178条の要件の改正の中で議論していくと、そういう趣旨の御意見だと伺いました。 ○山本委員 よく分からないので、教えてもらえればと思うのですけれども、刑法改正市民プロジェクトの要望書の様々な事例にあるように、性的な行為には同意したと、しかし、そこで撮影を持ち掛けられたと、そしてそのときに、身ばれはしないとか、顔はモザイクで隠すとか、あるいは特定の人たちだけに見られるようにするとかというように虚偽の約束をされて、それで撮影をされたということはすごく多いのですよね。だから、そのようなことに関しても、この取締りの対象になることが私は必要だと思います。というのは、後にも話しますけれども、すごくお金になるので、商業的・組織的に行われていますし、加害者の人たちは商売として、プロの詐欺師と同じように、手練手管を使っていろいろと追い詰めるような心理操作や、疑問が提示された時の様々な言い訳とかを用意してやっています。これらの性交には同意していて、撮影についてはまた別の虚偽の情報を与えられて同意した場合に、刑法177条、178条で規定されるのか、他の規定が必要なのかということをお伺いしたいです。 ○佐藤(拓)幹事 私が先ほど申し上げたことに若干補足なのですが、諮問事項の「第一の一」に関する議論の話との関係で、そこで述べた趣旨というのは、諮問事項の「第一の一」というのは、刑法177条、178条の改正の話ですけれども、そこでどういう規定方式にするのかという議論だったかと思うのです。その議論が進んでいくと、規定の形が収れんしていくと思うのですけれども、それと同じような方法で、撮影を行った場合についても、撮影罪の対象に含めるべきなのではないかという話ですので、例えば、困惑した状態を利用して撮影に同意させてしまう例などは、撮影罪の対象に入ってき得るかもしれません。また、諮問事項の「第一の一」との関係では誤信があった場合どうなのかという話も出てくるかと思うのですけれども、それと同じような話が撮影罪との関係でも出てき得るのではないかとは考えております。 ○井田部会長 撮影は同意したのだけれども、そういう形で提供されてしまったときに、提供罪になるのかどうかという問題がありそうですね。 ○今井委員 今の井田部会長の御発言とほぼ重なりますけれども、山本委員の御指摘、あるいは小島委員の御指摘、ごもっともなところでありまして、今後の課題ですけれども、撮影をどのように概念化するかということですよね。従前の、例えばカメラで撮って、それが被害者と加害者の間でとどまっているという時代ではありませんので、その撮影についての同意という際に、まず、撮影概念をどう決めるかということによって、その撮影と提供の概念の区分けができてきて、刑法177条、178条でカバーできる範囲もありますし、それを越えて、共犯では取り締まれない、もっと背後にいる者についてどうなるかという別の問題も出てくると思っています。 ○山本委員 そのような行為が必ず、対象となるようにしていただければと思います。 ○長谷川幹事 二点お話ししたいと思います。まず、先ほど小島委員の方から単純所持と複製についても対象とすべきという話があったと思いますが、加工についてもこれを犯罪の対象にする必要があると考えています。というのは、実際にデータとしてパソコンの中から発見されたときに、それがオリジナルなのか複製なのかというのは、プロパティとかをいろいろ見たら分かるのかもしれないですけれども、没収とかいろいろな現場でそこのところに時間を取られるというのはどうなのかと、そもそもが、加工された物も含め性的な姿態等の画像データが行為者の下に所持されているということがこの被害の本質であるとすれば、オリジナルか複製であるかということは被害者の目線で言えば大きな問題ではない。また、加工もいろいろな程度があります。ここはまた二巡目以降の議論になるとは思いますが、これがオリジナルなのか、複製なのか、加工されたのかというのを検討して没収する、犯罪化するかというのは、この被害の本質に照らすと不毛なことだと思うので、やはり加工もその対象にすることを検討していくべきだと思っています。これは、加工についての議論は、詰めて行くと、体の全てのパーツが本人のものなのか、他の人物のパーツを持ってきたもの、いわゆる捏造とかフェイクとか、そういったものにも話が発展していきますけれども、今日のところは加工も対象とする必要性があるという指摘にしたいと思います。   もう一点は、撮影の対象です。スポーツ選手のユニフォームなどが問題となってくるのですが、衣服に覆われているということでこの犯罪の対象から一律除外されるということはないようにというか、それも検討に残しておきたいと思っています。下着が明確に入ったら、それはそれでいいのですが、ユニフォームなどについても、これは、例えばスポーツジャーナリストの写真はどうだとか、そういう区別の難しさはあるのですが、実際に撮影されたものが、見る者をしてやはり性的な羞恥心を覚えさせるような形で、着衣の上からでも撮影されているようなものについては、犯罪化の検討は論点として残しておいていただきたいと思います。 ○井田部会長 それは、スポーツ選手が競技しているところを撮影する行為をすべて処罰すべきだということではないですよね。どういう場合に処罰すべきだということなのでしょうか。 ○長谷川幹事 撮影行為と撮影の成果物、なかなか切り離すのが難しいかもしれないですけれども、撮影された者がスポーツをしているところを普通に撮影しているものと評価されないもの、例えば、殊更に、胸の谷間のところを強調して撮影しているだとか、見ている人が性的な羞恥心を覚えたりするようなものについては対象とすると、そういうものを撮影したことが構成要件としてなっていく形を考えています。 ○橋爪委員 一点質問させていただきたいのですが、具体的にどのような処罰規定を設けるべきという御提案でしょうか。 ○長谷川幹事 処罰規定というのは、法定刑などでしょうか。 ○橋爪委員 むしろ具体的な構成要件の内容です。スポーツ選手の臀部や胸部などをアップにする写真を撮影する行為を対象にされていると思いますが、具体的にどのような行為態様を規定した上で、どのような構成要件を設けるべきとお考えかについて、お伺いさせてください。 ○長谷川幹事 ほかの要件についてまだ分からないのですけれども、着衣の有無にかかわらず、人の性的な部位、臀部とか、そこの定め方は少し置いておきますが、そういったものを強調又は露出するような方法で、かつ、人に羞恥心をもたらすような画像とか、何かそのような、すみません、まだ練れていないですが。わいせつ物頒布罪の判例の定義とか、いろいろな定義を参考にして持ってきたらと思うのですが、そういう二つの要素を構成要件にした形を考えています。 ○橋爪委員 今の点に関連しまして、私も意見を申し上げたいと思います。長谷川幹事がおっしゃったとおり、スポーツ選手の臀部とか胸部をアップにしたような画像がネットには拡散しており、そして、このような画像の公開・拡散によって、被害者の方が強い羞恥心や不快感を抱くことは当然でありまして、このような被害を極めて深刻に受け止める必要があると考えております。ただ、既に今日も議論がございましたけれども、性的な姿態の撮影を処罰する根拠は、やはり性器や臀部、胸部などの性的な部位あるいは下着など、本来は衣服の下に隠されており外部から視認不可能な部位を撮影し、かつ、その画像を固定化する点にあるように思われます。   したがいまして、この問題につきましても、性的な部位や下着など、本来は外部から視認不可能な部位が写り込んでいる場合と、水着やユニフォームなど外部から視認可能な部位のみの撮影であり、性的部位や下着が写り込んでいない場合とに分けて検討する必要があるように思われます。このうち前者の類型、すなわち、性的な部位や下着が撮影されている場合については、被害者の性的自由の侵害が明らかでありますので、これは処罰対象に含めるべきです。例えば、赤外線を用いた撮影装置を利用して水着やユニフォームを透視して性的部位や下着を撮影する行為は、当然に可罰性があると思われます。また、特殊な装置を用いていなくても、例えば、ユニフォームがずれる、透ける等したことにより、性的部位や下着が写り込んでいる場合についても、撮影者に故意がある場合には同様に処罰可能であると思われます。   これに対して後者の類型、すなわち、性的部位や下着が写り込んでいない場合には、性的部位を撮影したことを処罰の根拠にはできませんので、先ほど御提案がありましたように、別の観点から処罰の根拠を見いだす必要がございます。先ほど長谷川幹事からは、撮影行為に際して臀部や胸部を過度に強調する撮影行為を処罰対象とする旨の御提案がございました。もっとも、仮にこのような規定を設ける場合には、具体的にどの程度まで強調すれば構成要件に該当するかに関して明確な判断基準を設ける必要があると思いますが、この点を法文上明確に規定することは極めて困難であるように思われます。また、仮にこのような規定を設けた場合でも、その場合には、性能の高いカメラを用いて通常の撮影行為を行った後、特定の部位だけを拡大する行為が横行するだけですので、このような罰則は実効性という観点からも疑問が生じます。   さらに、別の規定ぶりとしましては、行為者の目的に着目した上で、性的な目的に基づく撮影行為を処罰対象にすることも考えられます。しかし、撮影行為が通常の態様で行われた場合に、性的な意図、目的を撮影段階で認定することは極めて困難であるように思われ、このような規定形式も実効性に疑問が生じます。また、客観的には通常の撮影行為として認められているものが、本人の目的だけを根拠として可罰的な行為に転ずるというのは、理論的にも正当化し難いように思われます。   さらに考えますと、撮影者の行為態様が、例えば、被害者を羞恥させ困惑させるものであるとして、撮影行為の態様に着目した処罰規定を設ける可能性もあるのかもしれません。実際、このような観点から盗撮行為を条例違反で処罰している事例も散見されます。しかし、こういった事案は、行為者が被害者に執拗に付きまとったり、至近距離から撮影しようとするなど、行為態様の異常性を重視した判断である点が重要です。したがいまして、たとえ胸部や臀部をアップにしていても、撮影の外見や行為態様自体が一般の撮影者と変わりない場合については、撮影態様に着目した処罰も困難であろうと思われます。   このように、いろいろ考えてまいりましたけれども、性的部位や下着が写り込んでいない撮影行為については、処罰対象を明確に限定した上で、かつ実効性がある罰則を設けることは困難であるように思われます。このことは、性的部位や下着が写り込んでいない撮影については、実はその後の画像の加工行為や公開などを含めて法益侵害性が顕在化するにもかかわらず、これを撮影行為だけを切り取って処罰することの困難性に起因するものと思われます。既に性犯罪に関する刑事法検討会でも申し上げたところですが、これらの行為につきましては、まずは撮影場所や撮影方法に関する規制の強化、さらに、性的に加工された画像のアップロードに関する規制等を検討した上で、被害の可及的防止を図ることが先決ではないかと考える次第です。 ○長谷川幹事 いろいろな問題点を御指摘いただき、私もまた考えたいと思います。最後の方におっしゃっていただいた、撮影行為と切り離して、加工やアップロードの時点で規制することの検討ということは、大いに進めていただきたいと思います。 ○井田部会長 残された時間もまた短くなってきているのですけれども、なお金杉幹事、小島委員、齋藤委員が発言を御希望で、また、佐藤拓磨幹事も提供行為について御発言したいということですので、できればそれぞれ手短にお願いしたいと思います。 ○金杉幹事 撮影行為につきましては立法事実が認められるところかと思いますので、処罰範囲が広がりすぎないように、行為規範として明確になるように規定をしていただきたいという点にとどめます。   ただ、所持については、やはりこれは罪とすることは難しいであろうと思います。児童ポルノの所持のときにも議論されたことかと思いますけれども、児童ポルノであっても、17歳か18歳かというぎりぎりの場合もありますけれども、そこは運用で何とかされているのだとは思います。児童ポルノのように、明らかに低年齢で、もうそれを見ればいわゆる児童ポルノ法に違反するものであることが分かる画像について、それを所持しているということは、ぎりぎり行為規範として、これを持ってはいけないのだということが明確になるかと思いますけれども、やはり撮影や提供行為に同意がなされたかどうか不明な画像、画像を見ただけでは分からない画像というのはたくさんあると思います。一見盗撮風に見えて、実は盗撮行為についてやらせであるという事案である場合には、それを撮影した者が撮影罪に問われるということについては、例えば、いや、これはこの方が同意していて、実際ここに出てきているのはこの方なのです、この方の同意書もありますというようなことを罪に問われた側が反証することは可能かと思うのですけれども、それをネット上にあるものを取ってきて所持をしていただけという方については、やらせの画像なのか、同意が本当にないものなのかということは見ただけでは分からないということがあろうかと思います。ですから、所持罪については、慎重になるべきという意見です。 ○小島委員 アダルトビデオの出演強要の問題について、一言申し上げておきます。女性の身体の商業的利用という意味では、大変問題があると考えております。被害者の女性が甚大な被害を被って、もう立ち直れないということがございます。極めて悪質な行為だと思っております。個別類型として刑法177条、178条の議論ではいまだ取り上げておりません、欺罔の中に入るということで、AVの撮影事案について補捉される文言を入れて、そのことに基づいて、犯罪行為から生まれたものということでの、撮影行為として取り上げるということで検討させていただきたいと思います。 ○齋藤委員 先ほどの長谷川幹事と橋爪委員の議論について、法律のことが余り理解できていないのですが、一点だけ、自分の性的姿態をいつ誰に見られるかということはその人が決めることというのは、既に周知のことかと思いますが、同時に、自分の体、衣服に覆われていた部分であっても、それを見ず知らずの他人とかに性的に消費されるということの苦痛は知っていただきたいと思っております。Twitterなどで、衣服で覆われている部分について性的なコメントを付けてさらされるなどの事案は、スポーツ選手などに関して、後を絶たないわけで、加工やアップロードの時点でということは是非考えていただきたいということと、この法制審議会の部会の話かどうかは分からないのですが、同意がある撮影で、拡散には同意していない事案について、それは権利の侵害だと思うのですけれども、リベンジポルノの範囲が狭すぎて、やはり適用されないものというのがたくさんあるのではないかと感じておりますので、そうしたものがきちんと捉えられるよう、継続して議論いただけると有り難いと思っております。 ○佐藤(拓)幹事 まず、提供罪について考える上でも、当然その保護法益や処罰根拠についてどのように考えるのかということを整理して、要件について考えていく必要があるだろうと思います。   撮影罪の保護法益については、先ほど述べましたように、他人に見られたくない性的な姿態を他の機会に他人に見られるかどうかという撮影対象者の性的自由あるいは性的自己決定権が保護法益だとしますと、撮影行為によって生じた画像を提供すれば、それを受けた者が性的な姿態を見ることができるようになり、性的な姿態を他の機会に他人に見られないという性的自由あるいは性的自己決定権の新たな侵害、あるいはその危険が生じたと言えることから、これを処罰対象とすることを検討すべきだと考えます。また、撮影行為により生じた画像やこれが記録された物を撮影行為者から受け取った者による二次的な提供行為が行われれば、これも同様に、先ほど述べたような意味での法益侵害性が認められることから、処罰対象に含めることを検討すべきだと思われます。   さらに、提供行為に類似するものとして、例えば撮影罪のところで述べた態様・方法を用いて、記録の生成や記録媒体への保存といった過程を全く含まないライブストリーミング、生中継のような形ですが、そういった方法により性器などの映像を送信する行為についても、法益侵害性において提供行為と差がないと思われますので、処罰対象に含めることを検討すべきだと思います。   一方、撮影対象者の同意の下に撮影した画像を撮影対象者の意思に反して提供する行為ですとか、撮影罪により生じた画像を収受、所持、保管又は複製、加工する行為などについては、他の法令とのバランスを考えながら、また、処罰範囲の合理性や罰則の明確性に留意しつつ、処罰対象とすべきかを検討する必要があるかと思います。   最後に、新たな罰則を設ける場合の法定刑ですけれども、こちらについては保護法益などを踏まえた上で、さらに、いわゆる児童ポルノ法の7条2項の提供罪の法定刑とのバランスにも留意しつつ検討する必要があるかと思います。 ○小島委員 提供行為と撮影行為は違うというお話を伺いました。提供行為について問題になるのは、撮影には同意しているが頒布には同意していないというような場合どうするかということと、先ほど金杉幹事がおっしゃった、所持はどうなのかという点が大きな論点になると思っております。しかしながら、不同意撮影罪が性犯罪であって、画像を持っていられるだけで心の傷というか、心配で、大変な被害が生じているということを理解していただきたいと思います。分かっていて所持されて、不特定多数に頒布する目的で持っているということであるとすると、分かっていて所持ということと目的ということで処罰対象になるのではないかと思います。データを持っているということは、セカンドレイプという用語がありますけれども、そういう状態ではないかということです。所持自体が、頒布されないということ自体が固有の利益だと思っております。そういう意味では、複製というのも固有の利益だということになっております。提供は、被害拡大という部分と拡散されないという固有の利益があるので、ここの部分は犯罪行為ということで検討していただきたいと思います。そして、複製と単純所持というのが犯罪化されるということになりますと、データの消去の範囲などが拡大されるということです。性的自己決定権の保護という観点からは重要な論点だと思っております。 ○山本委員 場所についてなのですけれども、自室のプライベートな場所とか、あるいは大学の教員の室内とか、特定の人が出入りするような場所だと罪に問えないということがあります。例えば社長が社長室で秘書を盗撮したのだけれど、それは公的な場所ではなく、不特定の人が出入りする場所でもなかったので、条例の処罰対象として認められなかったというような事件もありましたので、そのようなことがないように、本人が同意のない性的姿態が撮影されたら、どこであっても規制されるようにはしてほしいと思いました。 ○佐藤(拓)幹事 先ほどの発言の中で、当然そういうものは捕捉すべきだろうということを申し上げておりました。 ○井田部会長 社会的法益に対する罪でなくて個人的法益に対する罪であれば、場所は関係ないというか、問題にならないということだと思います。よろしいでしょうか。 ○山本委員 大丈夫です。 ○井田部会長 それでは、時間が参りましたので、本日の「第三の一」についての議論はこの程度とさせていただきたいと思います。   少しまとめてみたいと思うのですけれども、もし性的姿態の撮影行為に係る罰則、新しい規定を設けようとするのであれば、まず保護法益、処罰根拠をどのように考えるかについて整理して、その整理を踏まえて、どういう対象を撮影する行為を処罰すべきものとするか、どういう態様・方法で撮影する行為を処罰するものとするかが中心的な問題になるだろうと思います。また、その際には罰則としての明確性、処罰範囲の合理性に問題がないかどうかを検討する必要があると、こういう御指摘がありました。   その上で、佐藤拓磨幹事がまとめてくださったところですけれども、処罰すべき行為の撮影対象については三つ考えられるのではないか、性器、肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部というものが一つ、それから二つ目として下着、それから三つ目として性交等又はわいせつな行為をしている姿態というものが考えられるだろうと、この点については反対する御意見はなかったように思われました。また、撮影の態様・方法については、まず第一に、ひそかに撮影する行為が考えられますし、第二に、これは諮問事項の「第一の一」に関して議論されたような、こういう要件を満たすような撮影行為は当然処罰の対象になるだろうということ、そして第三に、強制性交等罪の犯罪行為が行われる機会に撮影する行為も処罰の対象と考えられるのではないかという具体的な御意見がありました。相当に問題点が整理されたという感じがいたします。そのときに、撮影対象者が自らの意思で露出していた場合、あるいは撮影の承諾があった場合をどう考えるか、こういう問題も検討する必要がある、また、法定刑をどのようなものにするかといったことについても検討する必要がある、こういう御指摘があったところであります。   それから、性的姿態の撮影罪を設けた上で、さらにその画像を他に提供するなどする行為についても新たな罰則を設けるべきであるという御意見が多数の委員・幹事から表明されまして、この点についても、やはり同じように保護法益、処罰根拠をどう考えるか、整理が必要ですし、それを踏まえて、どういう行為を処罰の対象とするか、例えば所持とか、加工とか、複製とか、そういう行為まで処罰の対象とするべきかどうか、また、その罰則としての明確性、処罰範囲の合理性に問題はないかどうかの検討が必要であり、法定刑の検討の必要もあるということで、現行法の様々な処罰規定との関連性についても検討する必要があるという御意見・御指摘があったと思われます。   さらに、スポーツ選手、アスリートに対する撮影について、それを処罰対象にすべきだという御意見もありましたけれども、これは犯罪を構成する行為を明確に切り分けることは難しいのではないか、また、実効的な罰則にならないのではないかということが指摘され、他方で、着衣の上からであっても、例えば透視機能のある撮影機器を用いて撮影する場合には、当然これは撮影の処罰範囲に含まれる行為になるのではないかといった御指摘がありました。また、アダルトビデオへの出演強要を処罰対象とすべきではないかという意見がありました。これについては、別途検討している強制性交等罪、それから、撮影罪の要件を検討するときに併せて議論することがよいのではないかという御指摘がありました。言い換えると、アスリートの撮影の問題とアダルトビデオの出演強要の問題は、別途の特有の問題、あるいはそれについての特有の規定を設けるような問題としてではなくて、この撮影罪の規定ぶりの問題、処罰範囲の問題、あるいは、そもそも強制性交等罪、強制わいせつ罪の要件を考える際に併せて検討すべきだということで恐らく合意が得られたのではないかと思われました。   以上、まとめさせていただいたような御意見・御指摘を含む本日の議論を踏まえて、事務当局において更なる議論のたたき台を作っていただき、二巡目の議論では、それを基に更に議論を深めるということにしたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。   それでは、次に、「第三の二 性的姿態の画像等を没収・消去することができる仕組みを導入すること」について、御議論いただきたいと思います。   この諮問事項につきましては、冒頭で50分程度と申しましたけれども、時間との関係もありますので、残った時間で議論したいと思います。   御意見のある方は、挙手の上、あるいは、挙手ボタンを押すなどした上で、御発言をお願いします。 ○山本委員 没収・削除の対象については、二つの対象があるように思います。一つは、加害者本人が撮影した同意のない他者の性的画像を保持している人、もう一つは、このような性的画像を流通、販売して利益を上げる人たちです。転売されたり流出した性的画像を、加工したり、複製したりして商品として取引している人がいるわけです。4,250本の動画をアップロードし、3人で6億6,000万円の売上げを上げたとの報道もありました。このように多額の利益を得られるとなると、どんどん参入してきますし、このような組織的に行っている人を取り締まらないと被害は終わらないということがあります。そして、正に多額の利益を得られる商品として、主に若年者の性的な姿態が狙われています。   刑法改正市民プロジェクトの要望書には、女性と男性の若年被害者の相談事例がありますけれども、様々な勧誘を受けて、虚偽の約束をさせられて撮られた性的動画を販売されるという被害に遭っています。このような行為をきちんと取り締まってほしいということは強く希望しています。実態を適切に捉えて、海外のサーバだから対応できないというのではなく、包括的な仕組みを作ってほしいと思いますし、監督庁と予算を決めて、削除などにも対応してほしいと思います。プロバイダーやレンタルサーバ、クレジット業者も同意のないこのような性的画像、動画の拡散に責任を負っているものだと思います。   これは少し法制審議会の部会の話を越えますけれども、ITを使って性的画像や動画を送られるときに、ぼかしを事前に入れておくということも可能であると聞いていますし、また、そのような性的な虐待画像や同意のないものとして登録された画像を検出し、報告することも技術的には可能だということも聞いています。そのようなことも踏まえながら、画像があるということは被害が続いていくということなので、より広くこの没収・消去を行って、対応してほしいと思っています。 ○齋藤委員 没収・消去をしていただきたいということに関して、オンライン上の拡散や複製というのが非常に容易に素早くできるので、適切な運用の上でスピード感を持って対応できるような仕組みを作っていただきたいということと、やはり余罪、その事件として裁判には上がらなかったけれども、余罪として所持されているものも対象にしてほしいということと、山本委員がおっしゃったように、海外サーバの問題は非常に相談が多いので、海外サーバなどの問題も適切に対処できるようにしていただきたいということを思っております。 ○佐藤(陽)幹事 この問題については、刑事手続上の没収と行政手続上の没収の二つを検討しなければいけないと思うのですけれども、私は、行政手続は全く分からないので、刑事手続の方でだけ意見を述べさせていただきます。   先ほど委員・幹事の皆様方が議論されていましたように、性的姿態の撮影罪が新設されることになりますと、その撮影罪によって生じた画像が記録された物は、刑法19条1項3号の犯罪生成物件になりますので、没収が容易にできることになろうかと思います。ただ、この条文による没収の対象は、飽くまで犯罪行為によって生じたものということになりますので、正に撮影罪の撮影行為で撮影した画像が記録された原本に限られることになるかと思います。   ですけれども、先ほどから問題が指摘されていますとおり、例えば撮影行為者が犯行の際に、被害者の性的姿態をスマートフォンで撮影して、内蔵のSDカードに一時的に保存をした後に、この撮影データをハードディスクにコピーし、そこで画像を選別して、更に別のハードディスクに保存したりとか、あるいは、このハードディスクに移された撮影データをプリントアウトしたりとか、そういうような形で複数回、それも様々な形式で複写が行われることがあり得るかと思います。撮影行為による被害の深刻さに鑑みますと、新設された撮影罪により生じた画像が記録された物の原本を没収するだけでは恐らく足りず、その画像が複写された物についても没収できるようにすることが必要かと思います。   その際には、先ほど小島委員、長谷川幹事がおっしゃっていた複製行為の処罰というようなことも考えられると思うのですけれども、複製行為の処罰に少しハードルがあると思うのは、先ほど申し上げましたとおり、複製行為は最近、非常に容易にできるので、USBにコピーをしたらもう複製ですし、ハードディスクに移したら複製ですし、そうなると、そのたびに複製罪で処罰の対象となるというのは、適正処罰の問題が起こり得るかなと思っています。また、わざわざ複製罪の有罪判決を出して、その上で没収というような形になると、これは二度手間かと思いますので、むしろ撮影罪の原本を複写した物の没収をダイレクトに規定すれば、刑事手続上の没収に関しては、スムーズになるのではないかと思っています。   ただ、その場合には、刑法19条1項3号において犯罪生成物件が没収の対象とされている趣旨を踏まえながら、どうして複写物の没収も許されるのかということの理論的根拠を整理しておく必要があって、それを踏まえて適用範囲について細かい検討を進めていく必要があろうかと思います。   具体的に申し上げますと、複写物といっても様々なものが考えられますので、例えば、撮影行為によって生じた画像の原本にモザイクなどの加工が施された結果、同一性を失ってしまったものの複写はどうするかとか、あるいは撮影行為によって生じた画像のうち性的姿態を含まない部分、例えば背景だけが切り取られて複写された場合はどうか、もっと重要な問題としては、顔だけ切り取られて複写された場合はどうするかとか、あるいは複写物の画像が更に複写された場合はどうするかとか、そういう没収の対象とする複写物の細かい範囲について、その理論的な根拠に基づいて検討を進める必要があろうかと思います。   それからさらに、この理論的根拠が妥当するのであれば、客体を撮影罪によって生じた画像に限る必要はないと思いますので、撮影罪により生じた画像以外にも、複写物の没収との関係で没収の対象とすべきものがあるかについても検討する必要があるものと思います。 ○小島委員 刑法上の没収について今、佐藤陽子幹事からいろいろ御発言がありました。それで、物の没収、複写物の没収の中で、既に言われていることですけれども、スマートフォンとかパソコンをそのまま没収されてしまうと困ってしまうということもあるのではないかと思うので、この点についてはデータの消去だけということもあり得るのではないかということを一点、申し上げておきたいと思います。   それから、有罪判決を前提としない場合というのが問題になっておりまして、不起訴事案とか、公訴時効とかいうこと、本人が望まないということで、有罪判決を前提としない事例があります。刑事事件になっていない場合について、デジタル性暴力として問題が起きています。こうなりますと、行政処分で没収できるのかという論点があります。デジタル性暴力については、被害が甚大で、被害者支援団体が被害者本人から要請されて、一つ一つ性的画像を削除しています。有罪判決を前提としない場合についても、新しい制度を作ることを考えるべきではないかと思います。そのような画像は、先ほども申し上げているように、この世にあってはならないものだと思います。有罪判決が前提とならない場合でも、削除・剝奪していくことが必要ではないかと思います。   誰がどのように没収するかということですけれども、捜査機関ということになろうかと思います。有罪判決に基づく没収はできないけれども、いろいろ捜査していったらデータが出てきたということがございます。没収できないということで、被疑者・被告人に返すしかないのだけれども、返すわけにもいかないので、本人を説得しているという状況があると伺い、問題があると思いました。関税法の輸入品の没収というのがありますが、これとは制度が違いますから、全く新しい制度を作らなければいけないと思いました。行政処分として、主体が捜査機関、行政手続上の不利益処分ということで聴聞の機会を与えて、行政手続法によることになろうかと思います。先ほども申しましたが、財産権との関係でいいますと、データのみの削除であればよいのではないかと思っております。とにかく、パソコン上やスマートフォン上に氾濫している、主として女性が被害に遭っている、この性的画像について、幅広くこれを削除していく、消去していくという方策を今回、検討していただきたいと思います。 ○井田部会長 有罪判決を前提とする没収と並んで、有罪判決を前提としない行政手続による没収・消去というのを導入すべきである、こういう御意見だったと思われます。 ○佐藤(拓)幹事 まず、小島委員のおっしゃった消去について、私もそういう処分は認めるべきだろうと思っておりまして、これからの発言で没収としか言わない場合も、消去も当然含まれるという趣旨で発言したいと思います。   佐藤陽子幹事の発言とも重複するかもしれませんが、複写物の没収については、仮に複製罪とか加工罪というものを設ければ、複写物はその生成物件として没収対象になるということになるかと思います。ただ、性犯罪に関する刑事法検討会において指摘がありましたように、仮に複製罪や加工罪を設けても、何らかの事情でその犯人を訴追、処罰できない場合には、現行の没収制度では複写物の没収ができないという問題があります。これは、現行法には違法行為によって生じた物等が新たに法益侵害を生み出す危険性を根拠にした保安処分としての没収とか、いわゆる有罪判決を前提としない没収のための対物手続がないことに起因するものでありまして、これは、私は、刑法上の没収制度の不備だと考えています。   そのため、私は、本来であれば、まずは刑法上の没収制度から見直すべきだと考えておりますが、これは今回の諮問の射程を大きく越えるものであり、また、性的姿態を撮影された方々の被害の拡大の防止という喫緊の課題への対応としては時間が掛かりすぎるとも考えております。そのため、性犯罪に関する刑事法検討会での議論にもありましたとおり、撮影罪に当たる行為により生じた画像や、その複写物等の没収に関して、刑事手続ではなくて行政没収の規定を設けるというのは、事前・事後の手続保障を確保することを条件とすれば、あり得る選択肢かと思います。   そこで、行政手続において没収・消去の措置を採ることができる根拠が問題となります。この問題に関して、私は、過去に、撮影罪に当たる行為により生じた画像や複写物等の所持罪を設けた場合と設けない場合とを比較すると、設けた場合の方がその正当化の説明がしやすいだろうという趣旨のことを書いたことがありますが、しかし、いわゆる児童ポルノ法のように所持罪がある場合であっても、現行法上、所持の客体を行政手続によって没収する制度があるわけではありませんので、新たに撮影罪に当たる行為により生じた画像や複写物等についてこうした制度を設けるのであれば、所持を犯罪化するか否かにかかわらず、その根拠について考える必要があるかと思います。   この点につきましては、撮影された画像や複写物等が誰かの手元に残っているという状態は、これが更に流通、拡散されることによって、先ほどから申し上げているような意味での法益に対する侵害が増大する危険をはらんでいると言えることから、このような危険を除去し、もって被害者を保護する必要があるとして、その根拠を説明することが可能かと思われます。このような危険を除去するためには、撮影罪に当たる行為により生じた画像や複写物等を没収・消去の対象とすることが必要だというわけです。   なお、今述べたことは児童ポルノを構成する姿態に係る画像についても同様に当てはまるように思われます。というのも、撮影された画像が残っている限り児童の心身への有害な影響をもたらす危険が継続し、その危険を除去する必要が高いためです。また、撮影罪により生じた画像や児童ポルノには当たらないわいせつな文書、図画など、それ以外に対象とすべきものがあるかについても、行政手続において没収・消去することができるものとする理論的根拠を踏まえて検討する余地があると思われます。ただ、対象として検討すべきものの範囲は、今挙げたように、それが誰かの手元に残っている状態を早急に除去しなければ新たな法益侵害の発生、拡大が生じる危険が認められるものに当面は限られるべきであって、刑法上の没収制度の見直しの検討がされる前に行政没収の範囲をどんどんと拡大していくことには慎重でなければならないと考えております。   続いて、補償の問題について述べたいと思います。どのような画像を対象とし、さらに、記録媒体に記録された画像について、記録媒体の没収と画像消去のいずれの措置をどのような場合に行うのかといったこととも関係するかと思われますが、没収・消去を受ける者の財産権を制約することに対する補償について検討する必要があります。もっとも、この補償については、一般的に財産権の内在的制約として受忍すべき限度を超えた特別の犠牲を課す場合に必要となると考えられているところ、なお慎重な検討を要するかとは思いますが、没収・消去の対象が新設する撮影罪に当たる行為により生じた画像や、児童ポルノを構成する姿態に係る画像であることを前提とすれば、財産権の側に規制を受ける原因がある場合であると言えますし、そもそも存在してはならないものであって、財産権としての価値が乏しいとも言えますので、没収・消去を命じられる者に補償が必要な特別な犠牲を課しているとは評価されないと考える余地もあり得るように思われます。 ○金杉幹事 先ほど、所持を罪とすべきではないという意見を申し上げましたが、それとの関連で、私は行政没収、有罪判決を前提としない没収については可能とし、それによって被害者の保護を図るべきだという考えなので、併せて申し上げます。   ただ、どの範囲で没収するかということにつきましては、財産権の広範な侵害にならないようにすべきです。行政没収を行う主体は警察あるいは検察等の捜査機関でいいと思っていますが、ただ、捜査機関が定期的に巡回をして、インターネット上で問題がありそうな画像を探して、それを没収する、若しくは削除命令を出すというようなことであってはいけないと思いますので、被害者からの申告があった場合に、当該インターネット上のサーバ、それから、そこからダウンロードされたものに対しての没収・消去命令を出すという形に限定すべきかと思います。 ○井田部会長 単なる所持罪についてはネガティブなお考えだけれども、この有罪判決を前提としない没収・消去の対象にすることには一定の留保の下で賛成である、こういう御意見だったかと思います。 ○川出委員 行政手続としての没収・消去の措置に関して、その主体について意見を申し上げたいと思います。   先ほど小島委員からも御指摘があったように、性的姿態の画像の没収・消去が問題になるのは、性犯罪の捜査の過程でそういった画像の存在が明らかになる場合であり、その多くは、そうした画像が記録されている物が証拠物として差し押さえられている場合だと考えられますので、没収・消去の主体は捜査機関とするのが適当ではないかと思います。その上で、捜査機関の中で、警察官と検察官のどちらを主体にするのかを更に検討する必要があります。   これに対しては、押収物以外にも性的姿態の画像は記録されているので、それらも行政手続による没収・消去の対象とすることを前提として、没収・消去の主体を考えるべきだという意見もあるかと思います。しかし、画像を没収・消去するためには、それが没収・消去の対象となるものかどうかを調査する必要がありますので、例えばインターネット上に存在する性的姿態の画像の全てについて没収・消去の対象とするのは、それを専属的に担当するような機関を設けない限り、現実的ではないように思います。したがって、現段階においては、捜査の過程で発覚した性的姿態の画像を対象とした上で、捜査権限の行使に付随する限度で行政措置を行うというのが無理のない制度設計ではないかと思います。具体的な制度としては、第一次的には刑事事件の押収物を対象とし、当該押収物に対象となる画像が記録されている場合には、その押収物を没収するか、又はそこに記録された画像を消去できるという制度にすることが考えられます。   それに加えて、例えば、押収したスマートフォンに性的姿態の画像が記録されており、さらに、いわゆるリモートアクセスによって当該スマートフォンと電気通信回線で接続されている他の記録媒体にも同様の画像が記録されていることが判明したというような場合を想定しますと、現行法上のリモートアクセスにおいてはその画像を捜査機関が複写することができるだけで、移転させることはできませんので、その記録媒体に画像が残ってしまいます。そのような場合には、画像の保管者等に対して消去を命ずるという形にして、消去の対象を拡大することを考える必要があると思います。 ○池田幹事 行政手続としての没収・消去の制度の在り方について、ただ今川出委員から主体や処分の対象について御意見がありましたけれども、先ほど佐藤拓磨幹事からも御指摘がありましたように、処分を実施する上での事前又は事後の手続保障の在り方をどのように考えるかということについても検討する必要がありますので、この点について意見を申し上げます。   まず、事後の手続保障について申し上げますと、一般に行政庁の処分に不服がある者への救済の仕組みとしては、処分庁の上位の機関に審査請求をするといった行政上の不服申立ての機会が設けられております。その趣旨は、裁判手続との比較において簡易迅速な救済を図ることができるためなどとされています。そして、このたび検討している行政手続としての没収・消去についても、これによって財産権の制約を受ける者としては、簡易かつ迅速に救済を求めるのが通常であると考えられますので、不服申立てを認めるとともに、その当否が簡易迅速に判断される仕組みとする必要があると思われます。他方で、没収・消去の対象が新設する撮影罪に当たる行為により生じた画像や児童ポルノを構成する性的姿態に係る画像、あるいは処罰されない、検察官が不起訴にした事件の画像となり得ることからいたしますと、撮影された方のプライバシーを保護する必要があるということや、あるいは捜査の秘密の保護が必要であるということも、そのような手続を構想するに当たっては考慮する必要があると思われます。   以上申し上げました簡易迅速性ということ、あるいは撮影対象者のプライバシー等の保護、捜査の秘密の保護という観点を踏まえますと、不服申立ての当否の判断はこういった観点を適切に考慮して判断し得る立場にある、当該措置を採った捜査機関の上位の機関がこれに当たることとすることが考えられるのではないかと思います。   こうした例は現行法上も存在しておりまして、例えば、平成18年のいわゆる組織的犯罪処罰法の改正等によって導入された被害回復給付金支給制度においては、検察官が行った支給対象となる犯罪行為を定める処分や、支給の開始の判断に対する不服について、捜査や刑事裁判の内容を十分に踏まえた上で迅速かつ的確に処理させるという観点から、当該処分等を行った検察官が所属する検察庁の長、例えば、原処分者が地方検察庁の検察官であれば、その検察庁の検事正に対し、審査の申立てをすることができるとされておりまして、また、審査の申立てに対する検察庁の長による裁定を経た場合に限り行政訴訟を提起する、裁決前置主義が採られております。こうした仕組みが設けられておりますのは、不服申立ての当否について、関係する刑事手続の内容を十分に踏まえた上で迅速かつ統一的に判断するためであると思われます。そして、これと同様の趣旨がこのたび検討されている行政手続としての没収・消去についても妥当するといたしますと、今後の検討においても、この被害回復給付金支給制度の仕組みを参考にするとともに、裁判所の手続において重ねて聴取される場合の被害者の負担も考慮しつつ、行政上の不服申立てを判断する主体や行政上の不服申立てと行政訴訟の関係とを整理しておく必要があると考えられます。   以上が事後の手続保障につきましてでありますが、処分に先立つ事前の手続保障については、これも小島委員からも既に御指摘があったことですけれども、没収・消去の判断に当たっては、例えば聴聞や弁明の機会の付与などといった事前の手続を設けるか否かといったことが検討される必要があります。また、そうした手続を設ける場合も、撮影対象者のプライバシーを保護する必要性が極めて大きいことなどといった、この手続の特性を考慮しつつ検討する必要があると思います。 ○井田部会長 事前・事後の手続保障、特に、例えば不服申立ての仕組みを作るべきではないかということで、これについては現行法の被害回復給付金支給制度の仕組みを参考にして作るということも考えられるのではないか、こういう御意見だったと思います。   そろそろ時間も迫ってきておりますけれども、ほかに御意見はございますか。 ○山本委員 繰り返しになるかもしれないのですけれども、先ほどから話されているように、違法に撮影されたもので、社会に存在してはいけないものなので、加害者である、撮った人の財産ではないと考えます。そして、先ほどお話があった行政手続の不服申立て処分などをしている間に、複製されたり、自動的に複製されるような設定がされて勝手に広まっていくようなこともあってはいけないので、それがきちんと保障されるような手続にしてほしいと思います。ヒューマンライツ・ナウが出された要望書の4ページのところに、被害を受けた人、撮影された者から削除・廃棄を求められたにもかかわらず、所持を継続する行為を処罰する規定を設けることとあります。やはり、この継続して保持し続けていることをきちんと一回、止めてほしいと思っています。それから不服申立てなどの手続をしてほしいと思います。   それから、先ほど被害者本人の申告があった場合にという話もありましたけれども、こういう同意がない性的画像が撮られているのを知らない人も多いわけです。どういう形で明らかになるかというと、男友達が見付けるとか、彼氏が見付けるとか、父親が見付けるとか、そういう形で明らかになって、本人に連絡が行ってというような形もあります。なので、本人だけではなくて、そのほかの第三者からも、報告した場合にきちんと対応がされるようにということが大事なことだと思います。どうしてかというと、このような被害がなかなか公にならないというのは、やはりこの被害であるということが知られた場合に、その画像・動画が検索されたりして多くの人に見られてしまうことが起こるわけですね。そうなると、より申告がしにくいということになることも踏まえた対応をしてもらえればと思います。 ○宮田委員 行政処分による没収の迅速性は非常に魅力的であるとは思うのですが、今、山本委員がおっしゃった、削除や廃棄を求められたのにそれに応じなければ処罰するような規定も考えられていいのではないかと思います。つまり、裁判所の命令などをかませるというタイプのものです。   ある事件をきっかけにして、その事件の被疑者・被告人のもとから画像が大量に出てくることはありますが、被害者が特定できない、あるいは本当に被害なのかどうか分からないような場合もございます。そういうような場合に、わいせつな画像を持っているからといって処罰していいか、被撮影者本人が知れば非常に羞恥を覚えるような姿態が写っているとしても、これが本当に被害画像なのかどうかが分からないというケースもあるのではないか、つまり、あたかも余罪のように見えるけれども、本当はそうではないもの、買ってきたもので、いわゆる真正のポルノグラフィとして売られているものと見分けが付かない、あるいは同意のもとで撮影されたものであるという場合もあり得ると思います。そういう場合に、行政処分では、事前の聴聞の機会がどの程度保障できるのかという点に若干危惧があり、私は撮影したものを削除・廃棄することを求め、それに違反したら処罰するというふうな規定を置くというのは、なかなか魅力的なのではないかと思っております。 ○井田部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、時間も参りましたので、この諮問事項についての一巡目の議論は、これで終了させていただきたいと思います。   少しまとめてみますと、性犯罪に関する刑事法検討会においても、そのような御意見が大勢を占めたと思いますが、有罪判決を前提とする没収と、有罪判決を前提としない没収・消去、この二つの場合があるという点については、多くの委員・幹事の認識が一致していたのではないかと思います。   有罪判決を前提とする没収については、刑法19条による没収ということなのですが、ただ、この没収の対象が、撮影した画像が記録されたその原本に限られているというところに狭さがあるということで、複写されたものも没収できるようにするかどうかという問題、複写物を没収できるようにする場合には、その理論的根拠を明らかにしなければならず、そうした根拠に基づいて対象とする複写物の範囲をどのように考えるかが検討課題となる、こういう御指摘があったところであります。   また、有罪判決を前提としない没収・消去については、行政手続上の制度として没収・消去をする仕組みというのが考えられ、その場合の検討課題としては、もちろん理論的な根拠をどう考えるか、対象としてどういう画像を予定すべきか、また、その措置を行う主体、どういう人、どういう機関が行うかについてどう考えるべきか、事前・事後の手続保障の在り方、それから、財産権の制約に対する補償の要否といった点が検討課題になるのではないかという御指摘があったところであります。   それらの論点についての具体的な御意見としても、例えば、行う主体というのは捜査機関がまず考えられるのではないかという御意見、それから、事後の手続保障については、被害回復給付金支給制度の仕組み、これを参考にできるのではないかといった非常に貴重な御意見があったと思われます。   以上のようなアイデアを頂戴いたしましたので、この事項についても、これを基に、事務当局に更なる議論のたたき台となる資料を作っていただいて、二巡目の議論は更にそれを用いて深めるということにしたいと思います。そういう進め方でよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。   以上で、諮問事項の一巡目の議論は終了となります。   次回からは、二巡目の議論に入りたいと思いますが、これまで申し上げてまいりましたように、二巡目の議論については、これまでの一巡目の議論を踏まえて、部会長である私の責任の下で事務当局に今後の議論のたたき台になるような資料を作ってもらい、それを使って更に深い議論をしたいと考えています。   御相談なのですけれども、次回の会議において諮問事項のうちのどの事項についての議論を行うということについては、必ずしも頭から順番にというやり方がベストであるとは限らないという感じがいたしますので、私の方で早急に検討し、事務当局を通じて委員・幹事の皆様にお知らせさせていただきたいと思います。そのようなやり方としたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。そのようにさせていただきたいと思います。   本日予定していた議事につきましては、これで終了いたしました。   本日の会議の内容につきましては、特に公開に適さない内容に当たるものはなかったかと思いますので、発言者名を明らかにした議事録を作成して公開することとさせていただきたいと思います。また、配布資料についても公開することとしたいと思います。そのような扱いでよろしいでしょうか。              (一同異議なし) ○井田部会長 ありがとうございます。それでは、そのように扱わせていただきたいと思います。   次回の予定について、事務当局から御説明をお願いします。 ○浅沼幹事 次回の第6回会議は、令和4年3月29日火曜日の午後1時からを予定しております。詳細につきましては別途御案内申し上げます。 ○井田部会長 それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。   次回までお気を付けてお過ごしください。 -了-