法制審議会 民法(親子法制)部会 第24回会議 議事録 第1 日 時  令和4年1月11日(火)自 午後1時30分                     至 午後3時31分 第2 場 所  法務省7階 共用会議室6・7 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会民法(親子法制)部会の第24回会議を開会いたします。   本日は新年早々、御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。残りはもう少しになってまいりましたけれども、今年もどうぞよろしくお願いを申し上げます。   最初に佐藤幹事から、本日を含めたこの部会の開催方法等についての御説明を頂きます。 ○佐藤幹事 本日もウェブ参加併用で開催しておりますので、御注意いただきたい点をいつものとおり2点、申し上げます。一つは、御発言中に音声に大きな乱れが生じた場合につきましては、こちらで指摘をさせていただきますので、適宜御対応をお願いいたします。それから、発言をされる皆様におかれましては、発言の冒頭に必ず名乗っていただいてから御発言をお願いいたします。   本日、休憩時間の入れ方につきましては、1時間半程度をめどに15分程度、休憩を入れさせていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日は委員の御欠席はないと伺っております。   次に、本日の審議に入ります前に、配布資料の確認をさせていただきます。事務当局の方からお願いいたします。 ○小川関係官 今回の配布資料は、部会資料24-1と24-2、それから本日の議事次第及び配布資料目録という形になっております。資料は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日は、要綱案の原案を部会資料24-1という形で準備していただいておりますので、これに基づいて御議論を頂きたいと考えております。具体的には、24-2の方のページ数で申し上げますと、まず、懲戒権に関する規定の見直し、24-2の第1の1ページ以下でございますが、これについて御議論を頂きたいと思います。次に、嫡出の推定の見直し及び女性に係る再婚禁止期間の廃止、これが第2ということになりまして、3ページ以下でございますが、これについて御議論を頂いた後、第3、7ページ以下の嫡出否認制度に関する規律の見直し、そして第4、21ページ以下になりますけれども、第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子に関する民法の特例の見直しを一括して御議論いただきたいと考えております。そして、最後に、認知制度に関する見直し、第5、21ページ以下について御議論を頂くということを予定しております。平常の場合に比べますと論点の数は限られておりますので、もし議論が早く終わるようであれば、早めに会議を終了することにしたいと考えております。   そこで、早速ですけれども、まず、懲戒権に関する規定の見直しについてですが、これについては第23回の会議で御議論を頂いた要綱案のたたき台から変更点はございませんけれども、これまでの部会での議論の簡単な整理がされておりますので、その内容につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○砂山関係官 それでは、御説明いたします。   お手元の部会資料24-2の第1を御覧ください。第1の懲戒権に関する規定の見直しにつきましては、まず補足説明の1で、児童虐待の防止を図るという今回の見直しの趣旨を記載しております。   補足説明の2は、要綱案の原案の規律について、これまでの議論を簡潔にまとめたものになります。この記載は部会の議論の見通しをよくするためのものであり、飽くまでもポイントのみを記載した簡潔なものとなっておりますので、これと矛盾しないこれまでの部会資料の記載や会議での御意見、御指摘を否定する趣旨ではございません。なお、この点については第2以降の記載についても同様ですので、その旨、御理解いただければと存じます。   補足説明の2では、まず、民法第822条を削除するとともに、新たに民法第821条において親権者の監護教育権の行使における行為規範として、子の人格を尊重する義務等を規定するなどの今回の見直しの概要を記載しております。その上で、(1)において、民法第822条の削除に係る検討のポイントとして、同条の削除後においても社会通念に照らして許容されると考えられる正当なしつけについては、民法第820条に基づく監護教育権の行使として行い得ることなどを記載し、(2)及び(3)においては、体罰その他の心身に有害な影響を及ぼす言動の禁止及び子の人格を尊重する義務等に係る検討のポイントとして、これらの規律を設ける趣旨やその意義等について記載しております。   部会資料24-2の第1に関する説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。要綱案の案の部分自体については変更はございませんが、補足説明について今のような御説明を頂いたところです。   御意見がございましたら御発言を頂きたいと思います。 ○磯谷委員 要綱案について、もちろん異論はございません。そして、その後の解説につきましても、今、事務当局から御説明がありましたように、当部会で何か取りまとめるというものではないというふうな理解ではおります。ただ、やはりここの中の記述というのは今後の解釈にも影響があると思いますので、あえて発言をさせていただきたいと思っています。   以前も少し発言をしたのですけれども、少し懸念しているのは、2ページの17行目辺りからの、心身に有害な影響を及ぼす言動の解釈について、あるいは28行目辺りから体罰の意義に関して記載をしている中で、社会通念であるとか、あるいは総合的に考慮というふうな言葉が出てまいります。法解釈ですので、社会通念に拠ること自体に何か異議があるわけではないのですけれども、やはり今回、体罰等を禁止するという規定を置く大きな意味というのは、国民の皆様の子育てに対する姿勢を変えていただくという、そういう意図が大きいと思っています。したがいまして、その辺りの解釈が従前の、少し時代に後れた古い社会通念等によって解釈されるということは、あってはならないのだろうと思っております。   そういう意味で、ここのところは本来であれば、例えば、児童虐待の深刻化の中で今回、体罰禁止の必要性というものが立法者の間でも認識された、そして、それが厚生労働省の方のガイドラインにもつながり、そこでは禁止される体罰とは何かという問題に関する議論もかなり深められました。そういう経過であるとか、あるいは、これも以前、確か棚村委員などからも御発言があったと思いますけれども、国際的な点からも今、子どもに対する体罰、あるいは体のみならず心にも有害な影響を与えることを禁止するという動きが広がっている、そういうふうな流れも意識した上での改正案であることを、是非理解していただく必要があるのだろうと思っておりますので、その点は少し付け加えさせていただきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど関係官の方から御説明がありましたけれども、この補足説明がこの要綱案についての全ての説明ではないということで、ここにはこの要綱案そのものを理解するのに必要なものを絞った形で書いてあると受け止めております。そうではありますが、今回のような提案がされるに至った背景が法解釈の上でも影響を与えることがあるので、その点についても明らかにしていく必要があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。法務省も様々な場面で広報の機会があると思いますので、そうした際に御留意を頂くということになるのかと思います。磯谷委員、それでよろしいでしょうか。ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○大石委員 私も磯谷委員と同じような趣旨から申し上げますが、2ページから3ページのところで、(3)の検討のポイントの説明で、確認と疑問が1点ずつあります。児童虐待の要因として、ここで二つ挙げられております。ほかとは違って、などといったような言葉はないので、この2点に絞られるという書きぶりなのですが、本当にそういう要因としてはこれに尽きるという御趣旨なのでしょうか。これが1点です。   もう一つは、第1点に掲げられている、自らの価値観を子に当てはめて考えるというのが、やや包括的で一般的にすぎないかという気がしています。私は信教の自由などをかなり研究してきたことが関係しますが、例えばカトリックの幼児洗礼、一般的に言うと宗教教育などは、ある意味ではここにぴったり当てはまるわけですよね。ですから、親が自らの価値観を子に当てはめる、そのこと自体が要因なのか、そうではなくて、別の言葉でいうと、不当に押し付けることになるということが問題なのか、ということが疑問です。不当に押し付ける形だったら、それはあり得るなという感じがするのですが、単にこの言葉だけを見ると、第2点のような、程度に見合わない過剰な要求をするというようなこと、そういう修飾語も一切ありませんので、ごく一般的に包括的に書いてあるので、かなり気になるところです。できましたら、もし検討の余地があるとすれば、不当に押し付けることが問題なのだという趣旨をもう少しはっきり出していただくと幸いであります。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○佐藤幹事 御指摘ありがとうございます。   まず1点目、などという言葉が入っていないが、要因はこの二つに限られるのかというご質問につきまして、3ページの上の方のところになりますけれども、必ずしもこれに限られるということではございません。ここには、これまで指摘されてきたポイントを挙げたというところでございますが、御指摘の点を踏まえて、などという言葉を加えるような形で修正をすることを検討したいと思います。   2点目でございます。御指摘のとおり意図していたところは、親が自らの価値観を不当に押し付けることが問題であるという趣旨でございますので、ここも表現ぶりを改めて検討させていただきたいと存じます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは、第1につきましては、太字の部分については前回と同じですので、皆様から特に御意見はない、これでよろしいということだと理解をいたしました。補足説明につきましては、表現につき御意見がありましたので、それを参酌して修正をしていただきたいと思います。   先に進ませていただきたいと思いますが、次が嫡出の推定の見直し及び女性に係る再婚禁止期間の廃止についてでございます。24-2で申しますと3ページ以下になりますが、こちらも要綱案のたたき台からの変更はございませんが、ただいまの第1と同様に、これまでの議論の整理等について事務当局から補足的な説明をお願いしたいと思います。 ○濱岡関係官 部会資料24-2の3ページを御覧ください。1は、民法第722条の規律の見直しについてです。ここでは嫡出推定制度の見直しの趣旨やポイントを整理しております。まず、無戸籍者問題の解消という観点から嫡出推定制度の見直しが進められました。嫡出推定制度は、婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、生まれた子について逐一、父との遺伝的つながりの有無を確認することなく早期に父子関係を確定し、子の地位の安定を図るものであり、DNA型鑑定の技術が発展した現代においても、これを維持することが相当であるとされたものと考えております。また、嫡出推定制度に関する見直しにおいては、子が生物学上の子である蓋然性が高いことを基礎とした上で、子の養育環境といった事情なども考慮されたものと考えております。   次に、5ページのウのところですけれども、推定の及ばない子に関する判例法理についての議論を整理しております。これまで御議論いただいたとおり、今回の見直し後も推定の及ばない子に関する判例法理は基本的に維持されることとなるものと考えられます。他方で、今回の見直しでは、婚姻前に懐胎され婚姻の成立後に出生した子についても夫の子と推定するとの規律を設けることとしているところ、この規律と推定の及ばない子に関する判例法理との関係が問題となります。最終的には個別の事案における具体的事情を踏まえて判断されるべきものであり、部会ではいずれかの方向性が明確に示されたわけではございませんが、婚姻前に懐胎され婚姻の成立後に出生した子について一律に夫の子と推定することとした上で、当該推定を争うには嫡出否認の訴えによるべきものとした本見直しの趣旨等を踏まえると、基本的には判例法理は適用されないものと解することが相当であるとも考えられます。   6ページの2の女性に係る再婚禁止期間の廃止に関しては、嫡出推定制度の見直しにより父性推定の重複がなくなるため、女性の再婚禁止期間に関する民法第733条を削除することとしております。   部会資料24-2の第2の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。ここも、繰り返しになりますけれども、提案自体については修正はございませんので、補足説明についての御説明を頂きました。7ページの一番最後のところにその余の検討という項目がございますけれども、嫡出の用語をどうするかということにつきましてはこの部会で検討してきたところでございます。この点が、今回は取り上げないということで途中で資料から落ちる形になっておりますけれども、最終段階の補足説明の中で、その余の検討という形で検討の経緯を書き込んでいただいたと理解をしております。   御意見等がありましたら伺いたいと思います。 ○棚村委員 基本的には問題ないと考えているのですが、ただ、補足説明の5ページの19行目ぐらいからのところで、結局、婚姻後、出生というようなことで、婚姻前懐胎200日問題については嫡出推定を及ぼすという改正を提案しているということだと思います。ただ、この点については、一つは、日弁連の皆さんからは、婚姻前の200日以内の出生子について事情は多様なものが考えられるということで、もちろん否認権者とか、それから再婚後の推定とか、いろいろなことで嫡出推定否認が見直されて、そちらの方でかなり解決ができる可能性というのは広まったということについてはいいと思うのですけれども、300日以内の懐胎についても外観説を、今後どういうふうになるかということで余地は残しておこうとなり、明文化もしないというようなことになっています。しかし、婚姻前懐胎・婚姻後出生した子だけが、改正後の、解釈の指針ということが示されていて、結局、外観説そのほかの判例法理や改正後の運用について、かなり具体的な制約を課すようなメッセージになっています。   海外を見ますと、アメリカの統一親子関係法では、一定の推定が働いている場合でも、子どもの法的な身分の安定ということを考えて、子の出生から2年以内に否認をできるという形にして制限を加えていますけれども、性的交渉の事実がないとか、社会的親子関係の実態がないとか、生殖補助医療によって生まれて同意がなかったとかいう話になると、父性推定の基礎が失われるということが起こってきますので、場合によっては、法文上、明確に何か規定しているわけではないので、一定の事情を主張立証することによって、争う余地というのは、最終的には個別の事情に基づいて裁判所が判断をするということになろうかと思います。もちろん、ここに書かれているような改正の趣旨を踏まえて厳格に運用するということも出てくる可能性があると思うのです。   しかしながら、改正後の運用がどういうふうになっていくかも分からない段階で、こういうような形公権的な解釈をこの部分だけを示してしまうというのが大丈夫なのかなという懸念が少しあって、もう少しトーンを落としながら、やはり推定とか否認の制度を見直したことによって、推定が及んでいる子については否認の訴えとか裁判で決着を付けるということが中心になるだろうというようなことはいいと思うのです。ところが、むしろ外観説を含めた判例法理については適用されないというようなことを言い切ってしまうと、先ほど出ましたように、推定ですから、今まで問題になってきたのは、推定というのはある蓋然性があって事情がかなり高いだろうというところで制約を課しているわけです。しかし、それに反するような事情とか、その基礎を揺るがすようなことが起こっている場合には、その例外ということもあり得るということになるのではないでしょうか。婚姻前懐胎婚姻後出生子の部分だけは一切親子関係不存在確認などの例外を認めないということになるのか、それとも、民法の条文ですから、それに反するような特段の事情が出てきている場合には何らかの親子関係を否定する余地を残す必要があるかどうか。これも、せっかく改正をしたので、これまでも議論があったと思いますけれども、それでカバー十分できるということであればいいかと思うのです。   ただ、条文の運用そのものをここだけかなり厳格にしてしまって、外観説の明文化とか、外観説自体については、いろいろな御意見ももちろんありましたけれども、今後の運用を見て検討しましょうということだったのでバランスを失していないかが心配です。ここも特に新しい規定を設けて、懐胎主義から出生主義ということで修正を加え、子どもの地位の安定を図ったということは非常に重要なことだと思うのです。ただ、一切争う余地も全くなくなったかというと疑問があります。この部分だけをそういうふうに言い切ってしまうということについての少し不安というか、抵抗もあるので、書きぶりを少し検討していただいたほうがよいのではないか。確定的に解釈運用の方向性を示すのではなくて、もう少し、トーンダウンするような説明の方がよろしいのかなというのが意見です。 ○大村部会長 ありがとうございました。窪田委員、今のことに関連するのであれば、続けて伺います。 ○窪田委員 全く同じ部分についてです。今御指摘があったとおりなのですが、私自身は、婚姻後懐胎のケースも婚姻前懐胎のケースについても、いずれにしても推定の及ばない子については今回、何も触れなかったと理解しています。そうすると、それを前提とした上でやはり考えていく必要があるのだろうと思うのですが、私自身も今、棚村先生から御指摘があった部分で、19行目からのもっともの部分は、やはり書きすぎではないかという感じがします。具体的な提案としては、もっとも以下は全部削ってもいいのではないかというのが正直な感想です。   というのは、今、棚村先生から御指摘があった点もありますが、バランスという点から考えても、婚姻後懐胎して、そのまま婚姻中に出生したというケースはある意味で多分、嫡出推定は強く働いているケースだろうと思うのですが、その場面でも推定の及ばない子の法理が適用される。一方、懐胎は婚姻前で出生が婚姻後だというケース、相対的に見れば嫡出推定の程度は、ひょっとしたら弱いという言い方ができるのかもしれませんが、そのときには推定の及ばない子の法理は適用されない、ある意味で非常に強く嫡出推定制度が用いられるというのは、何かバランスとしてはやはり余りよくないのではないかと思います。いろいろな議論があるのだろうと思いますが、基本的にはもう、もっとも以下を削って、具体的にやはり解釈論に委ねられているということを明確に示した方がいいのではないかと思います。   その上で、もう一つなのですが、そのすぐ上にある、個別の事案における具体的事情を踏まえて判断されるべきという点については、推定の及ばない子の法理が適用されるかどうかというのはある程度一般的な問題であって、この個別事情があると適用され、この個別事情がないと適用されないというタイプの問題ではないのではないかと思いますので、この部分は表現ぶりを考えていただく方がいいかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。お二人の委員から同じ箇所と、それに隣接する箇所について、補足説明の書きぶりについて御意見を頂戴いたしました。特に、5ページの19行目の「もっとも」以下の部分について、棚村委員からは、少しトーンを弱めてはどうかと、窪田委員からは、むしろ削除したらどうかという御意見を頂いております。これを書いた趣旨は恐らく、これまでになかった事態になるので、ある程度の説明をしておく必要があるのではないかということだろうと理解をしております。そういうことを勘案した上で、削除してしまってよろしいものか、あるいは表現を改めて残すのがよいのか、この点は窪田委員さん御指摘の第2点とあわせて事務当局の方で御検討いただくということにしたいと思います。 ○大森幹事 ありがとうございます。今の点につきましては、日弁連内からも強く削除すべきとの意見が挙がっています。理由としましては、先ほど棚村委員が御指摘された様々な事情があることや、窪田委員が御指摘されたバランスの問題もあります。先ほど部会長がおっしゃられましたように、推定を及ぼした趣旨が没却されるとの懸念への配慮もあって今回の記載に至ったのだろうと思いますけれども、元々嫡出推定を及ぼそうとした理由の一つとして、事実婚が先行しており妊娠を契機として婚姻する場合が多いのではないかということがございました。その場合には、懐胎時に事実婚状態にあることからすると、判例法理を適用しても支障はないのではないかとも思われ、むしろ、そうではない場合にはきちんと妥当な結論が、婚姻中懐胎の場合と同様に得られるようにするべきだとも思いますので、そういう観点から、もっとも以下は削除した方がいいだろうと考える次第です。   また、そのすぐ上の個別事案で判断されるべきとの記載についても、窪田委員の御指摘のように、元々判例法理自体を明文化するかどうかとの議論を続け、一般論として解釈として、判例法理を残す方向にするとの結論になったと思いますので、個別事情の問題というよりは、一般的に婚姻後懐胎の場合と同様に考えていくべき問題であろうと思う次第でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   木村幹事からも手が挙がっていますけれども、木村幹事も同じところに関わる御発言ですね。お願いします。 ○木村(敦)幹事 私もほかの先生方と同じ意見でして、部会資料24-2の5頁19行目「もっとも」以下の記述の御説明も十分成り立ち得るのですが、婚姻前懐胎の場合と婚姻中懐胎の場合のバランスを考えるとそれとは異なる考え方もあり得るため、もう少しトーンを抑えて書くか、削除していただいた方がよいのかなと思います。   もう一つ、窪田先生が御指摘された、18行目の「個別の事案における具体的事情を踏まえて判断されるべきもの」という記述についても、もう少し書き方を工夫していただければいいのかなと思います。確かにこれまでの議論において、外観説を解釈論として維持する方向性自体は認められていたと思いますが、今後、婚姻前懐胎、婚姻中出生子を踏まえて、外観説の適用に関する裁判実務が蓄積された結果、外観説そのものについても見方やその意義、必要性が変わってくる可能性も十分あり得ると思います。この点も踏まえて、外観説を維持しつつも今後の解釈に委ねるというような、もう少し幅広い見方ができるような書き方にしていただけると一番よいかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員、窪田委員のほかに大森幹事、木村幹事からも御意見を頂きました。総じてここに書かれていることに書きすぎの部分があるのではないかということで、削除の御意見も強いと理解いたしました。仮に残す必要がある部分もあるという場合には、御懸念を払拭するような形で修文を考えていただく、削除も含めてその点を考えていただくということで引き取らせていただきたいと思います。   ほかに、今の点につきましてはよろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは、そのほかの点につきまして、この第2についてはいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、この第2につきましても、太字の提案部分については前回と変わらないということで、皆様から御了承を頂いたものと理解をいたしました。説明につきましては、5ページの19行目以下、それから、その前の部分につきまして御意見がありましたので、御意見を踏まえて見直していただくということにさせていただきたいと思います。   それでは、3番目の話題になりますけれども、嫡出否認制度に関する規定の見直し、それから、第三者提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子に関する民法の特例の見直しということで、第3と第4になりますけれども、この部分について事務当局から御説明を頂き、皆様から御意見を頂戴したいと思います。   では、事務当局の方からお願いいたします。 ○小川関係官 御説明いたします。   資料24-2の7ページ以下を御覧ください。第3は、嫡出否認制度に関する規律の見直しについてです。ゴシック体の部分の規律について、前回資料から実質的な変更点が3点ございます。具体的には、10ページ以下を御覧いただければと思います。   まず、(1)ですけれども、嫡出の承認について、前回の部会資料23では、子が自ら否認権行使するための嫡出否認の訴えの出訴期間の特則との関係で、子にも嫡出の承認の規律を設けることを提案しておりましたが、前回会議での御指摘を踏まえまして、子による嫡出の承認の規律は設けないという形で修正をしております。   次に、(2)の父がした子の監護のための費用の償還に関する規律の新設の部分です。部会資料23では、子に対する償還の制限と本来の扶養義務者に対する求償に関する規律の二つを置くことを提案しておりましたが、前者については賛成の意見が多かったのに対して、後者については裁判例や学説の蓄積に乏しいということから、規律の明文化には慎重な検討が必要ではないかという御意見や、母が求償を受けることを恐れて否認権行使をちゅうちょする可能性があって、結果的に子の利益に反するのではないかという御指摘がございました。これを踏まえて、子に対する償還の制限の規律については引き続き設けることとした上で、本来の扶養義務者に対する求償に関する規律は設けないという形で修正をしております。したがって、本来の扶養義務者に対する求償については、その可否及び求償の範囲等について、引き続き解釈に委ねるというふうな形になります。   それから、(3)ですけれども、子が死亡した場合の否認権の承継に関する規律についてです。子の死亡の場合の否認権の承継については、部会資料23で、人事訴訟法第41条のような承継に関する規律を設けないということを提案しておりましたが、前回の会議ではこの部分について、承継を認める必要はないのではないかというふうな意見が複数ございましたので、今回の資料でも部会資料23の提案を維持しているところです。   他方で、認知無効の訴えについて承継の規律を設けるということとの整合性を検討すべきではないかという御指摘がございました。この点については、子が自ら行使するための嫡出否認の出訴期間の特則、また、子が自ら提起するための認知無効の訴えの出訴期間の特則、この二つとの関係では、いずれも短期間の出訴期間を経過した後であることから身分関係の安定を図る必要性が高いこと、また、子自身によって行使されるべきという点で一身専属性の高い権利であるということから、これらの場合については死亡の場合は一律に承継を認めないということが相当であると考えられます。   他方で、短期間の出訴期間の制限については、嫡出否認についてはその性質上、子が3歳に達する時にその期間が経過してしまうことから、子に直系卑属がいることは想定されないと、そのため承継を認める必要はないと考えられるのに対して、認知無効の訴えについては子が成年やそれに近い年齢になってから認知を受けるということがあり得るため、子が出訴期間経過前に死亡した時点で子に直系卑属がいることが十分に考えられます。そのため、こちらについては承継を設ける必要があると考えられます。少し先に飛びますけれども、22ページの13行目、それから17行目の下線部のところで、1(1)①の出訴期間内にとして、①の関係でのみ死亡した場合の規律を置いているというのはその趣旨になります。   実質的な変更点は以上の3点になります。この部分について、特に御意見を頂ければと思っているところです。   それから、ページを戻りまして12ページの2以下は、要綱案の原案の規律について、これまでの議論を簡潔にまとめたものになります。第1、第2の整理と同様、部会の議論の見通しをよくするためということですので、簡潔な記載となっておりますけれども、飽くまでポイントのみを記載したものですので、これと矛盾しないこれまでの部会資料の記載や会議での御意見、御指摘を否定する趣旨ではございません。   第3については以上という形になります。   それから、21ページを御覧ください。第4は、第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子の親子関係に関する民法の規律の見直しについてですけれども、部会資料22-1の要綱案のたたき台について、実質的な修正、検討等の御指摘がございませんでしたので、今回、資料でも修正点はありません。また、要綱案のよって立つ考え方についても基本的に大きな変更はございませんでしたので、部会資料17ですけれども、の部分を引用させていただいておりますので、該当箇所を御参照いただければ、その内容はそのとおりという形になろうかと思います。   第3及び第4の説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。第3と第4について、まとめて御説明を頂きました。第3については、前回の会議で議論があった点について3点の変更を検討されたということで、そのうちの2点、資料でいいますと10ページの1(1)、嫡出の承認に関する規律の見直し、これについては子の嫡出の承認に関する規律は設けないという対応をしているということだったかと思います。それから、父がした子の監護のための費用の償還に関する規律の新設、これについては、子自身に対する請求につき前回と同様に、規定を維持するけれども、本来の扶養義務者に対する請求については規定を置かず、解釈に委ねるということだったかと思います。最後に、子が死亡した場合の否認権の承継に関する規律については、前回の規律を維持するということが具体的な提案でしたけれども、認知の場合との平仄について検討した結果について御説明があったと理解をいたしました。第4の方につきましては、特に変更はないということで、説明についても従前の資料を御覧いただきたいという趣旨であったかと思います。   御発言がありましたら頂きたいと思います。 ○中田委員 それでは、子による嫡出の承認について、今回は規律を設けないという案になっていることについて、一言申し上げたいと思います。   10ページの21行目辺りから、選択権を長期間にわたって持ち続けることが子自身の生育に悪影響を及ぼすおそれも否定できないという記載がございますけれども、私はむしろそのことが子にとって負担になるのではないかという点が気になっています。21歳になるまで父子関係を選択できるという状態が継続する、子自身によっても確定することができない、そういう不安定な状態が長く続くということは、子にとって負担になることがあるのではないかという気がします。もし私自身がその立場であったとすると、早く決着を付けたいと自分では思うだろうなと感じます。   それから、28行目以下で軽率な承認に対する危惧が指摘されています。このこと自体は理解できるのですが、ただ、このことと自己決定をさせるために21歳まで期間を延ばしたということとの関係を整理しておく必要があると思います。例えば、20歳の男性は、自分が父の立場だと嫡出の承認ができるけれども、子の立場だと嫡出の承認ができないということになりますが、それはやや奇妙な感じがいたします。それは軽率な承認ということでは説明が付きにくいのではないかと思います。そうすると、ここでは軽率な承認の危惧というよりも、否認の相手方の利益の保護が問題なのではないか、つまり、幼児の地位の安定と年配者である父の地位の安定とは違うということでして、それが今回の資料に書かれていることだろうと理解しております。そうしますと、そもそも大きくなった子の否認権とその他の否認権とでは性質が違っているのではないか、だとすると、3歳に達しない子の否認権と21歳である子の否認権とを同じものとして考えてよいのかということも検討の余地があるように思います。   さらに、この制度がどのような影響を及ぼすかについても見通せないところがあります。いろいろな場面があるわけですけれども、二度の婚姻があるときに後の夫との血縁関係のある子が前の夫の嫡出子とされている場合、前の夫との血縁関係のある子が後の夫の嫡出子とされている場合、それから、一度の婚姻なのだけれども不貞行為で懐胎された場合などで異なる問題もあるような気がしまして、具体的に検討する必要があると感じます。   こういうことで、子の否認権の期間の伸長については未解明の点も少なくなく、なお不安はあるわけですけれども、これも今回の資料にお書きいただいていますとおり、子の嫡出承認制度を設けないとしても、子が承認していたという事実、そして父がそれを信頼していたという事実は、実体要件の方で考慮される余地があるということであります。そうしますと、この点も含めて、子による嫡出の承認の検討が今後の実務運用の状況を踏まえて行われるという、そちらに期待することにいたしまして、私自身としては不安は残っておりますけれども、これ以上は申し上げないことにしたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。子の承認の規定を設けないということについて御懸念を示されましたけれども、結論としては、実務の中で適宜の解決が期待されるのではないかということで、この提案に御賛成を頂けたものと受け止めました。ただ、説明については、これでは十分な説明になっていないのではないかという部分もあるので、そこを見直していただきたいという御趣旨であると受け止めました。ありがとうございます。 ○棚村委員 私も、特に結論自体は前回の議論でも、お子さんももちろん小さなお子さんもいれば年齢の高い子もいて、ただ、磯谷委員からも出ましたけれども、子ども自身にかなりイニシアチブをとらせようというのが今回の改正の中でも相当議論されました。否認権の行使というのは正に私は、消極的に父子関係を否定する権利を与えようとするわけですけれども、承認という制度そのものは、むしろ積極的に自らの意思で父子関係を確定させるという権利や意思表示と考えています。もちろん、承認するか否かの意思の形成過程でいろいろ問題があったり、十分な選択がでないとか、むしろ、精神的に負荷を与えたり、自由な選択ができないなど、いろいろなことが起こるという御意見が非常に大勢を占めていました。この点に、一応賛成するのですけれども、論理的に言えば、前にも言いましたように、否認権者の範囲を拡大するということは、逆に言うと、積極的にそれを確定させる権利も与えて、その行使の仕方とか、それについて足りないところがあればサポートしたり支援する制度を作っていくという方向性ではないと首尾一貫していないのではないか。カウンセリングとか、子どもの代理人とか、いろいろな制度を充実させることによって、子自身の意思決定そのものに何か問題あるというよりは、意思決定の機会を与えながら、それをサポートする体制というのが本来大事だと思うのです。   ですから、今回は承認という中から外すということについて特に異論は言いませんけれども、補足説明の中では、否認権というものの性質とか内容というものが当事者にとって持つ意味というのは、大分年齢においても置かれた状況でも変わると思いますので、その辺りのところを少し説明していただいて、承認ということの制度自体が十分に、運用がされていなかったり、要件が非常に不明確であったりということで使いづらい制度であることを補っていただければと思います。そこで、他の点でも今回は取り上げず、先送りになっているものがありますので、今後、承認という制度も積極的に、権利を持っている者が親子関係について自らの意思でもって何らかの形で決定ができる制度として位置付けたうえで、適切に活用がなされるような工夫が必要であるという趣旨で補足説明をしていただけますと幸いです。特に私は、前も言いましたように、一定の年齢以上、特に成人年齢が18歳になって、そういうような子どもたちが、今回、否認権という形で行使ができることになりますので、その反対側として、自らの意思である程度決められるという制度として承認が機能するのではないか、要するに、社会的親子関係というキーワードもすごく大事なのですけれども、自己決定とか自らの意思による選択みたいなことも今後検討する必要があると思います。   そこで、中田委員と全く同じなのですけれども、補足説明で次回出されるものの中で、こういう議論があったということを御紹介いただく程度でいいかもしれませんけれども、そんな形で否認権と承認という制度について、今後もきちんと検討する必要があるということで、説明を加えていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からも補足説明についての御要望があったと受け止めました。御指摘もありましたけれども、承認につきましてはこの部会の中でも何度か話題になりましたが、様々な点で不明確なところが多いということで、今回は最小限の手直しをするということになっていると理解をしております。そうした趣旨が伝わるようにという御要望と受け止めましたが、よろしいですね。ありがとうございます。   そのほかに御意見ございますでしょうか。 ○大石委員 説明書きの16ページから17ページのウの特則に係る検討のポイントですが、その37行から後の、継続して同居した期間が3年を下回るときを要件とした趣旨うんぬんの、またのところですが、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らしてうんぬんと書いてありますが、この要件は社会的な親子関係があるにもかかわらず否認を認めることが相当でないことによるものであるが、その判断に当たってはこれこれで、それが一つの基準になるものと考えられる。問題は、具体的にはということの意味なのですが、何を受けて具体的にはと書いているのか、何をどうパラフレーズしようというのかが少し分かりにくい、丁寧に書きすぎて、かえって分かりにくくなっているのではないかと思います。   そこで、私の提案ですけれども、社会的な親子関係があるにもかかわらず否認を認めるということは妥当でないことによるものであり、そして、間を抜いて、子の観点からすると、継続して同居した期間が3年を下回る場合であっても、と続けた方が多分、趣旨がよく分かるのではないかと思うんです。一定のこれこれは認めないこととしていることが基準になると遠回しに言っているものですから、もう一回、具体的にはといっても一体何を表そうとしているのかがよく分からない。何度か私も読んできたのですが、どうもはっきりしないので、そこで、繰り返しますけれども、こういうこと、要するに、3年以上の継続的な同居期間があるということは社会的な親子関係があることなのだと、その社会的親子関係ということがあるならこれは維持しようということだから、その趣旨からすると、あるいはこういう観点からすると、継続して同居した期間が3年を下回る場合であっても、実態があればいいのだから否認権は認めないと、こういうふうにつながるのではないかと思います。   少し細かいことを申しましたが、私の意見を申し上げました。 ○大村部会長 ありがとうございました。今のつながり方の部分につきましては、少し検討が必要ですね。 ○小川関係官 補足をさせていただきます。記載の趣旨は御指摘のとおりでして、修文を検討させていただきたいと思います。なお、17ページの8行目から10行目までの、その判断に当たってはから始まる部分を書かせていただいた趣旨としては、3年以上の期間を同居していたという、この3年という数字にも一つ重要な意味があるのではないかというところを強調したかったというものになります。ただ、そこの部分を書かなくても文意が伝わるということであれば、御指摘のような修正でもよいかと思いますので、少し修文の仕方は検討させていただきます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。 ○手嶋委員 どうもありがとうございます。今のウのところの関連で、ここの点についてはいろいろ御議論があってなかなか難しい中をこういう形で取りまとめていただいたというところと理解しておりまして、他方、少し新しい概念が入ってきているところでもありますので、現時点で私が個人的に理解しているところがこれで正しいのかということで、少し確認をさせていただけると有り難いと思っているところでございます。   基本的に、こうした制度を設けることの目的としてどういうものを設定するかというのについて、まず、いろいろ議論があったところかと思いますけれども、最終的にはやはり親子としての実態というか、形骸化をしている場合については一定の否認の機会を設けるということで決着をしたのかなと思っておりまして、今、事務当局の方から、3年という期間についても意味があるという補足をしていただきましたけれども、そこでいう実態、形骸化している、していないのメルクマールとして、ある程度客観的なものをここで設定した上で制度を運用しようということで、この3年にも意味があるということかと理解をしております。そういう意味で行きますと、ある意味、新しい取組でもあるので、3年の同居というのを客観的なメルクマールとして、ただし、このただし書のところも、ある意味、このただし書を素で読みますと、子の否認権の行使が父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときはこの限りでないという、父の利益というのがやや一般的に読めなくもないところでありますが、ここの要件は正に3年の同居というのに相当するような事情を主張するための一つの要件として設定をされていると理解しておりますが、そのような理解でよいのかというのを改めて確認をさせていただければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○小川関係官 御指摘のとおりです。親子関係自体が、生物学上の父子関係がないだけではなくて、実態としても存在しないというふうなケースに否認を認めるというところがそもそもの制度の趣旨だろうと考えております。そこの、どういった場合に実態がないといえるかという部分の基準として、まず客観的なものは出す必要があるだろうということで、3年の同居というところを挙げさせていただいているというところです。そして、ただし書の父の利益という部分につきましても、養育の状況に照らしてとしておりますように、養育の積み重ねによって形成されている父の利益というのが害される場合を意味しており、その判断に当たっては、実質として3年以上の同居に相当するような事情があるかどうかということが重要な意味を持つという趣旨でございます。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。 ○手嶋委員 どうもありがとうございました。この資料自体はコンパクトにまとめるということは重々承知をしているのですけれども、今後進めていく上では、立法趣旨の説明等については、その辺り、制度趣旨も含めて丁寧に御説明を頂けると有り難いと思っております。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。今御指摘のように、また、先ほど中田委員からも御質問がありましたけれども、次回、この部会資料における補足説明については見直したものを出していただくことになりますが、そこに書けることはある意味では限定されておりますので、その他の場におきまして今回の提案の趣旨が伝わるように工夫をしていただきたいという御趣旨であると、受け止めさせていただきます。ありがとうございました。   そのほか、よろしゅうございますでしょうか。 ○大森幹事 前回からの変更点の3点目、子が死亡した場合の承継に関してです。先ほどの御説明のとおり、出訴期間の特則の部分について、子が死亡をした場合には承継は認めないという取りまとめをすることが提示されております。その趣旨について、子どもが否認権を実際に行使するのかどうかという自己決定が重視され、そのため当該子どもが亡くなった以上は承継をしなくてもいいではないかということだと理解しています。ただ、否認権行使して結論が出る前に亡くなっている場合については、やはり自己決定権に基づいて権利行使をしていると考え、承継を認めるという考えもあり得るのではないかと思います。   直系卑属の利益として、ここでは相続などと書かれていますけれども、例えば、自分のお父さんがおじいちゃんに対して、本当は血のつながりがないため父子関係を否定したいと考えて否認権行使をしていたときに、その途中でお亡くなりになった場合、孫としてはその人を自分の祖父として捉えたくないという気持ちもあるのではないかとも思われます。そういう意味で、必ずしも相続など経済的な利益にとどまらないものがあるのではないかと思います。そういう観点で、どちらの結論ももちろんあり得るのだろうとは思いますけれども、権利行使していた場合には承継する機会を認めるという考えもあり得るのではないかと思い指摘させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございました。ここは前回の議論を踏まえて、前回の案を維持ということになっているのですけれども、更に見直した方がよいのではないかという御意見ですね。 ○大森幹事 はい、皆様の御意見をお聞かせいただきたいと思います。 ○大村部会長 これについて、何かほかに御発言があれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。前回はもう嫡出否認の場合については承継はよいのではないかという御意見が多かったため、それを踏まえた形で事務当局の案ができており、ただ、説明について工夫を要するのではないかということであったので、その点を補ったということだったかと思いますが、今、大森幹事の方から、それでも少し見直した方がいいのではないかという御発言が出ておりますので、他の委員、幹事の御意見を伺えればと思います。 ○磯谷委員 今、大森幹事もおっしゃったように、基本的にはここはどちらの考え方もあり得るといいますか、どこで線を引くのかというお話になってくるのかと思っています。今、大森幹事がおっしゃったような場面というのは理解ができ、孫としては、自分の父親の遺志を継ぎたいという思いもあるのだろうとは思います。ただ、そこのところをもう少し突き詰めていくと、孫が本来は血がつながっていない祖父を否認をしたいという思いにもつながり、さらには、今度は直系卑属に対しても否認権を持たせるという話にも拡大しかねないのではないかと思うのです。ですから、どこかでラインを引く必要があるのだろうと思いまして、どちらの考え方もあり得るのだろうとは思いますけれども、私自身は、今回の案のとおり、子ども自身が手続中に亡くなった場合には、そこで終了するというのも一つの考え方として、正当化できるのではなかろうかと思います。   私の印象としては、今回の否認の期間の伸長は、その父子関係の当事者である子ども自身の、ここから先の生き方に強く関連するものだと思っています。形骸化した父子関係を当事者として維持したまま生きていくのかどうか、恐らくそこが一番大きな問題なのだろうと思います。そうすると、その当事者である子が亡くなってしまえば、その子の生き方の問題は結果的には解消されるのではないかとも思いますので、必ずしもその直系卑属が遺志を受け継いでいかなくてもよいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。大森幹事からも先ほど両論あり得るけれどもという留保がありましたし、磯谷委員からも両論あり得るだろうという御発言があったわけですが、前回の案を維持するという考え方もある、それでもいいのではないかといった御発言を頂きました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○棚村委員 前々回でしたか、前のときには私は認知無効と否認権の死亡のときの承継の平仄を合わせる必要があるのではないか、そして、合わせられないとしたら、嫡出否認の場面と認知無効の場面でどう違うかということをお尋ねしたところ、今回の御説明、前回もそうだったと思うのですが、お子さんの年齢とか亡くなった後の状況みたいなことを考えると、嫡出否認と認知無効で差を付けていいのではないかという御説明だったと思います。   私自身は前に平仄を合わせるべきだというときお話をしたときには、否認権によって一体具体的にどういう権利というか利益が守られているのだろうか、そのときに財産的なものを非常に重視して、これまでの規定自体は相続とか扶養とか経済的なものが中心だったと思うのですが、利益の中に精神的なもの、あるいは人格的なものというのが入ってきているということもあります。それから、もう一つは、両論あるというのは正にそのとおりで、一身専属的なものとして、本人が亡くなったらもうそれで運命を共にすればいいのだ、終了という考え方と、正に、それはある程度、一定の権利行使がされたような場合には引き継がれる必要があるのではないかという、両論があると思います。   今の大森幹事の御発言の中で、私も少し気になっていたのが、どういう利益が具体的に問題になるかということと、それから、権利行使をしたにもかかわらず途中で、道半ばとか意思が達成されない状態でそのまま置いてしまって大丈夫なのかなというのは少し懸念があります。そこで、別に振出しに戻す必要はないかもしれませんけれども、この点についても補足説明の方で、具体的にどういう利益というものが中心になるということの説明と、それから、一身専属権だけではなくて、否認権の場合と、認知の無効のところでも多分書かれることになるのか分かりませんけれども、どちらかできちんと説明をしていただくということは必要なのかなと思います。   私自身は、大森幹事がおっしゃっている、海外のものを見ましても、嫡出推定否認制度のいろいろな強弱とかがあって、亡くなった場合に一定程度、引継ぎを認めるところと、もう決め打ちで、一身専属的なものだから本人が亡くなればそれで終わりという両方の規律の仕方があります。恐らくその議論をきちんと行っていったときに、ルールとしては簡明であるということとか、それから、ある意味では子どもにとっての公平とか平等という問題や利害関係人の利益も多分あると思うのです。ですから、その辺りのところを丁寧に検討した上で、私自身はこの扱い、自身については一応納得したつもりなのですけれども、問題点としてはあるのだとも思います。それから立法例としても両方があるのだというようなことの中で、今回の改正では、特にこういうところを重視してこういうふうに決めたのだということを説明できるようにしておくことがやはり重要かなと考えます。結論的に言うと、補足説明のところできちんと今言ったような点を納得できるような説明をして書いていただくということが大事であるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 だんだんよく分からなくなってきてしまったので、質問も含めて、私の理解でよろしいのかどうか確認させていただきたいと思います。大森幹事からあった、自分の父親が否認権を行使したという気持ちを大切に酌み取って子としては対応したいということなのですが、ここで問題となっている子の否認権というのは子が21歳に達するまでの間に提起した否認権ですよね。そうすると、直系卑属がいないとは言いませんけれども、いたとしてもかなり小さい年齢です。その子が多分、実際に判断して訴訟を承継するのではなくて、その法定代理人などが実際にやるということになると思いますから、大森幹事の理念はよく分かるのですが、実際に3歳の子どもがお父ちゃんのためにとかというふうになるのかというと、私には少し理解できないところがあります。そうだとすると、元々この子の否認権というのが全体の枠組みの中ではかなり特別なものとして設けられたということに照らせば、それをわざわざ承継させるかどうかということについては、やはり当然に承継するものではない、非常に例外的な、正しくこの本人の判断をさせるということに向けたものであるとすれば、それを承継させないという判断もあり得るのではないかなと、思いました。先ほどの繰り返しになりますけれども、このときの直系卑属というのを考えたら、その直系卑属の利益とは一体何なのだと、その直系卑属の利益を実際に判断しているのは誰なのだということをやはり問わざるを得ないかという気がいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員、窪田委員からは、基本的にはこの案でよろしいという前提で、棚村委員は、説明をやはり少し考えてほしいという御発言、窪田委員は、大森幹事のおっしゃることは一般論としては分かるけれども、実際にどういう適用の場面があるのか、具体的な場面で誰の利益が守られることになるのかを考えると、これでもよいのではないかという御発言だったかと思います。   ほかに御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大森幹事 ありがとうございます。私も先ほど両論あり得ると述べましたように、結論に反対することに固執するわけではございません。否認の場面については先ほど窪田委員がおっしゃったとおりだと思います。私が先ほど申し上げたのは、平仄を合わせている、主に認知無効のところでメインで出てくる問題点だろうと理解しております。いずれにしても、結論自体をひっくり返すまで強く考えているわけではございませんけれども、先ほど発言させていただいた趣旨については、日弁連内でもいろいろ懸念が出ているところでもありますので、棚村委員がおっしゃったとおり、補足説明の中でその辺りも配慮した記載にしていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。棚村委員からは、補足説明の中で多少説明をする必要があるのではないかという御意見がございましたけれども、大森幹事からも、結論には最後はこだわらないけれども、説明の方には留意をしていただきたいという御要望を頂いたと受け止めました。   ほかに、この点につきまして御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、今の御意見の状況に鑑みて、ここについては、原案は維持するけれども、説明については御意見を踏まえて見直すということで引き取らせていただきたいと思います。   大森幹事、それでよろしいですか。   ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。   そのほかの点について、いかがでございましょうか。 ○窪田委員 全然実質的な話ではないのですが、私自身がいろいろな場面で法制審議会の資料を扱うときには、やはり部会資料の最後の方は割に丁寧に読み込んで使っております。そのことからすると、本当に形式的なことなのですが、21ページの第4について、部会資料17の第5の補足説明のとおりである、ではなくて、同じだったら同じ内容を引けばいいのではないかという気が正直な気持ちとしてありましたので、お願いできたらと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。次回の資料作成の際の御要望として伺っておきます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○木村(匡)幹事 ありがとうございます。細かい話になって恐縮なのですけれども、14ページのオですね、前夫の否認権に係る検討のポイントの関係でございます。補足説明のところで、大体23行目ぐらいからでしょうか、子や母が前夫を父とすることに異議を述べているとか述べていないといったような状況ですね、それがどういった影響を与えるかというような話があるわけなのですけれども、書かれている補足説明を前提としますと、子や母が前夫を父とすることに異議を述べていない場合は、前夫と子との血縁関係を確認することなく前夫による否認権行使を認めることもあり得るというような話になっているかと思います。そうしますと、例えば前夫による否認権行使の時点では子や母は前夫と親和していたため、その否認権行使に異議を述べず、その結果として前夫と子との血縁関係が必ずしも、明らかにならない、あるいは、ないにもかかわらず否認権行使が認められたものの、その後、子や母と前夫との関係が悪化するという場合もあり得るように考えられまして、そのような場合において子や母が前夫に対し否認権を行使することができるのか否かといったところが問題となってくることもあるのではないかと考えるところでございます。   例えば、この場合の考え方としては、前夫による否認権行使の際の子や母の態度と子や母が自ら否認権行使することとは別物であるということで否認権を行使できるとの考えもあり得るでしょうし、反対に、否認権行使を認めると父がいなくなり子の身分関係が不安定になるおそれがある上、子や母が前夫による否認権行使に異議を述べていなかったこととの関係で禁反言的な問題も生じ得るというところがございますので、否認権行使を認めないという考え方もあり得るように思われます。   事務局の方で何か考えがあれば、少し教えていただければと思いまして、質問させていただきます。よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。それでは、事務当局にお願いいたします。 ○小川関係官 今御指摘いただいた点について、専ら母親の方が更に否認権行使することであったり、あるいは子どもに代わって子の否認権を行使するというふうな場面になろうかと思います。母が否認権行使する場合については、母の否認権のただし書の要件の中で、再婚後の夫の否認の場面で異議を述べなかったという事情が考慮されるということは、そうなのだろうと考えているところです。ただ、その中で、常に禁反言として禁止されるかどうかというのは、やはり事案によって変わってくるとは思っているところです。というのは、異議を述べる、述べないという部分で、生物学上の父子関係がないことを知っているのに異議を述べなかったケースであったり、あるいは、そういったところまで立ち入りたくなかったので異議を述べなかったケースというのもいろいろあり得るかと思いますので、そういった事情も踏まえた上で判断されるのだろうというところで、その辺り、やはり若干、総合考慮的な部分が出てくるのではないかと思っているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか、いかがでしょうか。 ○髙橋委員 ありがとうございます。第4のところ、今、窪田先生の御意見で、次回改めてまとめていただけるのかなと思ったのですが、部会資料17の方を読んで少し思ったことをこの機会に述べさせていただければと思います。   部会資料17の後、何回か審議があって、新しい資料などが出て、いろいろな議論があったと思うのですけれども、生殖補助医療については国会で生殖補助医療法が成立して2年で行為規制を作成することになっていて、行為規制がまだ整備されていないと、そういうところで議論せざるを得なかったということだと思います。2003年に中間試案を作ったときは親子法と行為規制を同時並行で議論できましたけれども、今回は国会の立法動向を見ながらということでしたので、なかなか議論がやりにくいところがあったと思います。同意については同意の形式とか、撤回などについてもどのようになるのか、あるいは同意の保存、利用、国としての情報管理の制度、そのアクセスのルールなどもまだはっきりしていません。今後のスケジュールとしては、国会の行為規制に関する立法を待つことになります。とはいえ、生殖補助医療についてルールを作ったとしても、今後どのような問題が起きてくるのかまだよく分からないところがあり、今回余り議論できなかったところもあったと思います。そのような問題があった場合には、どこかで十分な議論がなされなければいけないと思います。どこで議論されるのかというのも正直よく分からないのですけれども、意見として述べさせていただきたいと思います。   それから、もう1点、子どもの否認権ですけれども、部会資料17にありますように理論としてなかなか難しいと、そのような説明なのだと思います。ただ、その後の議論で、一般の子どもの場合、出訴期間の伸長によって、社会的にも親子関係の実態がない場合には子ども自身の判断で否認できるというような形でようやくまとまりました。子どもの否認権については、生殖医療の場合は母親の代理行使を制限する必要から、なかなか理論的には子どもの否認権を認めることができないので、理論的に同じやり方でこのようなことを持ち込むのはできないということは理解しています。しかし、同意はあったのだけれども、同意に見合う養育が全くなされなくて、社会的親子関係の実態がなかったという事例が生じるかもしれません。自分が生まれる前になされた同意に、子どもがずっとそれに服するということになります。実際にこのような問題が生じた場合には、いろいろな意識の変化なども踏まえて、将来何らかの形でまた検討する必要が出てくるのではないかと考えています。意見として述べさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。第4の第三者提供精子を用いた生殖補助医療によって生まれた子の親子関係に関する民法の特例、この部分につきましては、髙橋委員御指摘のように、行為規制を含めてなお流動的な点も多いということで、今回はこのような提案をするにとどめているわけでございますけれども、これに至る経緯についての整理をしていただくとともに、今後に残された課題とそれに関する御意見を頂いたと理解をいたしました。ありがとうございます。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○磯谷委員 今、髙橋委員がおっしゃったところと重なるのですけれども、第三者の提供精子を用いた生殖補助医療によって生まれた子どもの、従前「成年に達した子の否認権」といっていた部分について、この部会資料17においては制限することが相当であると考えられるというふうな結論になっています。ただ、実際に子どもの立場からすると、今、髙橋委員がおっしゃったように、全く形骸化した親子関係であったというふうなことであれば、生殖補助医療を利用したか否かで違いが生じるわけではないように思います。そういう意味では、何かここで嫡出否認を制限することが相当だと言い切ってしまうことについては、まだやはりちゅうちょがあるように思っています。生殖補助医療に関する部分というのはとてもデリケートな部分だと思いますので、要綱としては原案どおりで私として異議はないのですけれども、やはりここはまだこれからの課題という位置付けをしておくことが適当ではないかと思っておりますので、何かここでもう、認めないことが適当だというような結論になったと受け止められるのは、望ましくないのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。先ほどの髙橋委員の御発言にもありましたけれども、現状においての提案ということで、この先については様々な展開があり得るので、その方向を制約しないような形で示した方がよろしいという御意見として承りました。ありがとうございます。   そのほか、この第3と第4につきまして、御発言はございますでしょうか。 ○水野委員 第3の最後の、その他の検討のところでございます。私はずっと、無戸籍者問題を解消するためには非嫡出子出生届を自由に認めるとよいと言い続けてきたのですが、やはりなかなか難しいということでした。その結論自体は了解しておりますが、そこでこのような問題が残っていると書いていただいたことに感謝したいと思います。   ただ、もう少し、例えばDV対応につきましても、出生届の支援だけではなく、より根本的な問題を日本のDV対応が抱えているということも、一言書いていただければと思います。例えばフランスですと、配偶者ないし子どもに危険があることが疎明されますと、DV保護命令が10日以内に出ることになっておりますし、ほかにも接触禁止命令などの様々な対応がされております。比較すると、日本のDV対応は非常に後れています。出生の提出が困難だということだけではなく、このような構造的な問題の中でこれが一つの表れとなっているということも、少なくとも部会として認識はしているのだというようなことを書いていただけると、将来的にはよいかと思います。   それから、今回の改正の対象にはならなかったことに、最後に一言、触れておきたいと思います。匿名出産と、望まない妊娠をした女性に対するサポートという点です。この点でも日本法は非常に後れております。子どもの出自を知る権利との関係で難しい問題はあるのですけれども、匿名出産を認める可能性を考えるべきだと思います。匿名出産にも段階はあって、完全に捨て子扱いにして母親の情報を遮断する匿名出産という法制度もありますし、匿名出産を認めないにしても内密出産として、出産時は戸籍に記載せずにすむようにして産んで、将来、子どもが出自を知る権利を行使したら母の情報を伝えるなどの法制度もあります。ともかく望まない妊娠をした女性を妊娠中からサポートできるような体制を作る必要があり、そのためには匿名出産の可能性を認める必要があります。サポートの結果として、育てていけるようになればいいでしょうし、出産後も自分が母になりたくないといった場合に、その子どもが捨てられないできちんとした養育者に託されるような、社会福祉的な制度も必要です。この領域でもやはり日本社会は非常に後れております。そういう背景の問題もあって、この問題は母の認知などでわずかに触れられても、今回の立法対象としては扱えませんでした。そのようなことがどこかに書き加えられますと、次回の親子法改正に対する道が付くかと夢想しております。難しいようでしたら結構でございますが、希望でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど言及するのを忘れましたけれども、20ページの3のその余の検討というところで、この部会でもかなりの時間を費やして検討をしました届出による対応についての記載を加えていただいております。これも要綱案そのものには残らないので、このような形で記録に残すという趣旨でございます。   この部分についての御要望を今、二つ頂いたと理解をしておりますが、最初のDV等々の点につきましては、少し考えていただいて、もし可能であればここに織り込んでいただくということになろうかと思いますが、第2点の方は、御意見としては承りましたけれども、この部会で必ずしもそこを焦点化して議論したわけではございませんので、この問題に関わる問題として水野委員から御指摘があったと受け止めさせていただければと思いますが、それでよろしいでしょうか。 ○水野委員 もちろん結構です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。では、その点につきましては今のようにさせていただきたいと思います。   そのほか、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは、第3と第4の部分につきまして、前回議論があって改めた点につきまして御意見を頂戴いたしましたけれども、結論としては、提案部分についてはこのまま維持をし、補足説明について必要な修正を加えるという対応をさせていただきたいと思います。   あと一つ、第5が残っておりますけれども、1時間半たちましたので、ここで休憩をいたしまして、15時10分に再開をしたいと思います。10分ほど休憩いたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、15時10分になりましたので、再開をしたいと思います。   最後に残っております第5の認知制度の見直し等についての議論に入りたいと思います。まず、事務当局の方から部会資料に基づきまして御説明を頂ければと思います。 ○古谷関係官 御説明いたします。   お手元の部会資料24-2の21ページを御覧ください。第5は認知制度の見直しの規律等に関するものになります。前回の提案からの主な変更点については下線部を付してございます。補足説明としては23ページ以下になります。   まず、前回からの変更点としまして、認知無効の訴えの出訴期間の起算点のうち、子と子の母について、認知を知ったときからするということを御提案させていただきました。その中で、胎児認知については子の出生のときに認知の効力が発生すると解されていますことから、胎児認知の場合の認知無効の出訴期間の起算点を認知をした者だけではなく、子と子の母について同様であることを確認的に記載させていただいております。21ページ1(1)①になります。この21ページ1(1)①のゴシック体の提案の書きぶりについては、嫡出否認の訴えの(4)①の起算点の表現とそろえる形にしておりますが、内容的にその他の点を変更したというものではございません。   また、22ページ(2)③、④の点になります。認知無効の訴えの承継の問題について、先ほど既に御審議いただいているところですが、当初の出訴期間については③、④のとおり承継を認めるとしつつ、その出訴期間が経過後に子自身の判断において身分関係を確定させるための訴えについては特別に設けられることから、その承継を認めないという趣旨で③、④に関して限定を付す形での御提案となっております。先ほど、③と④の関係について、④の提訴後については承継をするという考えもあるのではないかという御指摘があった点について、人事訴訟法第27条1項では、訴訟の係属中に原告が死亡した場合は、特別の定めがある場合を除き当該人事訴訟は当然に終了するという規定にもなっておりまして、今回その特別の規定には当たらないという趣旨で、1(1)①の出訴期間内にという形で限定を付す形で付させていただいております。   23ページの2以下については、要綱案の原案の規律について、これまでの議論を簡潔にまとめたものとなります。これまでの補足説明と同様、部会の議論の見通しをよくするためのものでございまして、簡潔な記載となっておりますが、この内容と矛盾しないこれまでの部会資料の記載や会議での御意見、御指摘を否定する趣旨ではございません。   今回書かれた部会資料の内容に、若干口頭で補足させていただきます。再度戻っていただきまして、21ページ、ゴシック体、1(1)①の用語法についてです。認知をした者という表現について、現行民法上は認知をした父母という表現を用いられておりますが、今時の見直しでは母の認知には特段の変更を考えていないこと、また、最高裁の判決等でも認知者という文言を用いられていること等から、中立的な表現として、認知をした父と限定せず、認知をした者という表現を使わせていただいております。   また、25ページに進みまして、25ページのエについて、前回、子の母の固有の認知の無効の訴えについて、子が未成年の間の場合に限りに認めるべきだという御指摘も頂きましたが、この点につきましては、個別の事案に応じた解決に委ねる趣旨で、一律に限定するものとはせず、子の利益を害するか否かというただし書の要件の中で調整する形としての提案させていただいております。   26ページに進みまして、26ページの(4)、前回、認知無効がされた場合に監護費用等の清算の対象の時期、どの時点からの費用ということで考えているのかという質問が出されました。この点について事務当局といたしましては、前回の説明のとおり、認知後の内実を伴った父子関係に基づいて父として出費した費用が監護費用として考えられますので、基本的には認知後の清算の費用であると考えております。認知の遡及効によれば父子関係は出生時に遡ることになりますが、認知前の費用に関しては法的には贈与等と性質決定されるもので、遡及効によって遡ってそれが清算の対象となる監護費用の支出と評価替えされるとまで言い切ることは難しいと考えておりますので、現時点で事務当局としましては、監護費用の中身の具体的な解釈で何が当たるかという判断にはなりますが、認知後のものとして考えておるところです。   以上が口頭での説明になります。変更点にとどまらず、補足説明の説明として付加すべき点等を含め、広く御審議いただければと存じます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   変更点につきましては、補足説明の部分で申しますと22ページから23ページにかけまして、1(1)、認知の無効の訴えの出訴期間の起算点の問題と、それから、(2)の子に固有の出訴期間の特則に関する承継の例外の2点があるということだったかと思います。承継の問題につきましては先ほども話題になりましたけれども、もしこちらにつきまして御意見があれば頂きたいと思います。ほかに、23ページ以下の説明部分について幾つか補足がありましたが、それらも踏まえまして、御意見があれば頂戴をしたいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いをいたします。 ○久保野幹事 補足説明の方の細かい話になってしまうのですけれども、3点ございます。   まず、24ページの35行目辺りなのですが、ここは期間満了直前に親権を行う母がいないような場合についての特別の手当てを定めるかどうかというところについてですが、理由が三つ挙がっている中の一つ目に、現行法でも同様の状況が想定されるものの特段の規律は設けられていないこと、というのが挙がっていまして、これは確かに設けるまでの必要性はない補足的な理由として挙げ得るものであるとは思いますが、ただ、現行法では期間制限がなく、また、主張権者についても限定されていない前提下での状況ですので、設けていない理由が少し異なるかと思いますので、これは挙げなくてもよろしいのではないかと思います、というのがまず1点目です。   2点目が、27ページなんですが、行数が資料の関係で必ずしも的確に挙げられないのですけれども、トピックとしましては、認知をした者による養育の状況に照らしてその者の利益を著しく害するときについては、子自らの特例的な認知無効の主張が制限されるという要件のウについての説明のところです。ここで、ただし書の要件について、嫡出否認の方での説明、基本的な考え方について述べたところがそのまま妥当するものであるという形でまとめられているのですけれども、3年の同居が持つ意味につきましては、婚姻関係が基本的に想定される嫡出推定が働く場面と、そうではない認知の場面では、同居という要素と社会的な父子関係の実態との関係性というのが少し異なっているという議論がされたと思います。そのことからしますと、認知のこの要件につきましては、言い方が難しいですが、同居という要素をより相対化した評価の可能性が、あり得るということだと思いますので、嫡出否認について表現ぶりが変わるかもしれないという議論が先ほどあり、そちらで同居の意義付けが少し変わるかもしれませんけれども、今言ったような同居の位置付けについて嫡出否認と認知無効とで少し違う可能性について、あるいはこの要件についての評価の在り方が認知無効については、より開かれている可能性があるということについて、もし何かしらの書き入れができるとよいのではないかと思います。   3点目が、最後の部分なのですけれども、胎児認知の効力に関する規律の新設についてのところの、これは確認なのですが、最後の行から2行目のところで、出生前に別の男性と婚姻したときはというふうにここの説明にはなっていますが、本文の方を拝見しますと、胎児認知をした男性と婚姻したときも、子の父子関係は嫡出推定によって定まり、その否定は否認によるということが前提になっているかと思いますので、それが明らかになるような誤解が生じない書きぶりにしていただけるとよいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。補足説明について3点、御指摘を頂きました。御指摘を踏まえて見直していただきたいと思います。 ○古谷関係官 最初の2点についてお答えさせていただきます。   1点目の24ページの34行目、現行法でも同様の状況は想定されているものの、特段の規律は設けられない、正に御指摘のとおりでして、その点は現行法では期間制限もなく、利害関係人として主張し得るという前提が違っておるところでもありますので、その辺りは御指摘を踏まえて、全部削除するのか、もう少し理由付けとして補足的に使えるものがあるかも踏まえて、書きぶりについて検討させていただきたいと思います。   2点目の、反映後の当日配布資料の部会資料ですと27ページの3行目、そのまま妥当するというところで、この点、ただし書について、父による養育の状況に照らして父の利益を著しく害するときとの要件の考え方について述べたところがそのまま妥当するものであるというところに関して、久保野先生の御意見としては、恐らくその前提として、本文の同居要件について、それを踏まえた形でただし書が解釈されるということに関して、前提となる同居の要件に関して、嫡出の場合と嫡出でない子の場合に関しては社会的な父子関係に関する意味合いが異なってくる可能性があるということで、そのままというのは少し強すぎるのではないかというふうに理解いたしました。この点も書きぶりの点で、基本的な考え方がどこまでというところにはなりますが、制度の違いは踏まえた上での解釈ということにはなるかと思いますので、御指摘を踏まえて修文等を検討させていただきたいと思います。 ○濱岡関係官 引き続きまして、3点目の胎児認知についてです。御指摘いただきましたように、胎児認知をした者が、子の出生前に結婚をして、その後に子どもが生まれた場合は、胎児認知をした者は、嫡出推定により子の父になるものと考えております。そういった趣旨が明確になるように記載ぶりを改めて検討したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。以上のようなことで、少し記載ぶりを検討していただきたいと思います。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○水野委員 申し訳ございません、質問だけでございます。国籍詐取の懸念から、認知無効の様々な制限が望ましくないのではないかという議論が当初ありました。結局、国籍法の方でその問題は手当てをするということで、民法の方は嫡出否認と同じように制限を議論していただきました。それは有り難かったのですが、そこから先、国籍法の手当ての方はどうなりましたでしょうか。国籍を与えないというだけの手当てになるのでしょうか。それとも、在留目的で虚偽の婚姻をする場合にも共通の問題があるかと思いますが、国籍取得を目指して虚偽の認知をした場合、さらにそれに商業的な犯罪者が関わってきて行われたような場合にも、その親子関係は維持され、ただ国籍が与えられないというだけになるのでしょうか。それとも、例えば検察官が虚偽の届出という犯罪を立証した場合に、婚姻取消しなども検察官の提訴権はあるわけですけれども、犯罪行為であったという認定がされた場合には、その認知そのものが取り消されるという民事的な手当てがとられるのでしょうか、それとも、単に国籍は付与しないという結果だけになるのでしょうか。 ○佐藤幹事 御質問いただきました、今回の国籍法に関する見直しの問題の射程としましては、国籍を付与するという、認知された子について届出によって国籍を取得することができるという国籍法3条との関係で、その適用がないという限りでの見直しということになります。今お話がありましたような、犯罪行為に当たるような身分行為がされた場合の取扱いについて、何か直接的な見直しをするということではございません。一般的には、従前から、例えば検察官の方から通知があった場合に、虚偽の身分行為であるということで、それが戸籍上も反映されるというような取扱いがされる場合があると承知していますけれども、そのような取扱い自体に何か変更が生じるものではないと考えているところでございます。これでお答えになっていますでしょうか。 ○水野委員 結構でございます。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、いかがでございましょうか。 ○棚村委員 今の水野委員の質問は重要だと思ったので、私の理解ですと、いわゆる身分行為の届出と意思の関係について、条文の解釈で処理するということで、今回は手当てはしないという理解でよろしいのでしょうか。私自身はそういうふうに理解をしていて、国籍取得のための虚偽の認知届などのときに、国籍法の対応はされるが、民法上の認知の効力はどうなるのかで、多分、水野委員はその延長線上で、民法上も何らかの手当てをする必要はないのかということでの御質問であったかと思います。私は、民法上の手当てが必要になれば、なんらかのことはするが、現状では一応、解釈に委ねるということでよろしいのかなという理解なのですが、よろしいでしょうか。 ○佐藤幹事 御指摘のとおりと事務当局も考えております。 ○棚村委員 ありがとうございます。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   では、この第5につきましても、皆様から御意見を頂きましたけれども、提案の部分については特に御異論はありませんでしたが、補足説明につきまして検討を求める御意見がありましたので、それにつきましては検討した上で次回に修文をしたものを出していただくということにしたいと思います。   それでは、予定していた論点につきましては皆様から御意見を頂戴いたしましたので、今日はここまでということにさせていただきたいと思います。   今後のスケジュール等につきまして、事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○佐藤幹事 本日、要綱案の原案記載の規律につきまして、おおむね御了承いただいたところでございます。規律の整理、あるいは説明ぶりに関して幾つか御指摘を頂きましたので、本日の御議論を踏まえまして、事務当局といたしまして、御指摘のあった点のほか、要綱案としての全体的な整合性等についても改めて検討をさせていただきたいと考えております。   そこで、次回、これが最後の部会になりますけれども、もう一度御参集を頂きまして御議論を頂きたいと考えております。その上で、法制審議会の総会が2月14日に開催される予定と承知しておりますところ、部会としての要綱案をそこでお示しすることを目指しまして、次回、2月1日の部会において要綱案の取りまとめができればと考えております。   なお、次回会議の出席方法につきましては、引き続きウェブ会議併用で実施させていただく予定でございます。新型コロナウイルスの感染拡大傾向なども踏まえまして、会議自体も比較的短時間となる見込みでもございますので、ウェブ会議による出席も柔軟に御検討いただければと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   要綱案の原案の提案部分につきましては、本日おおむね御了承いただいたと理解しておりますけれども、今お話がありましたように、全体として見直したときに調整を要する点が出てくるかもしれないということと、それから、補足説明につきましては様々な御要望を頂きましたので、可能な範囲でこれに御対応いただくということで、あと1回、2月1日に部会を開催させていただきたいと考えているところでございます。   本日の審議はここまでということにさせていただきたいと思います。法制審議会民法(親子法制)部会の第24回会議、これで閉会をさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。閉会をいたします。 -了-