法制審議会 仲裁法制部会 第17回会議 議事録 第1 日 時  令和4年1月21日(金) 自 午後1時30分                      至 午後3時08分 第2 場 所  法務省20階 第1会議室 第3 議 題  仲裁法制の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 それでは、予定した時刻を過ぎておりますので、法制審議会仲裁法制部会第17回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中御出席を頂きまして、誠にありがとうございます。   本日は、衣斐幹事が御欠席と伺っております。   まず、前回に引き続きまして、本日もウェブ会議の方式を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局に説明していただきます。 ○福田幹事 福田でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。   本日は、また新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくまん延防止等の措置が出ておりますので、部会長も含め、基本的にはウェブでの参加という形でお願いをしているところでございます。   まず、ウェブ会議を通してこの会議に参加されている方の映像及び音声確認させていただきます。私の声が聞こえておりましたら、手を挙げる機能を使いましてお知らせいただけますでしょうか。   ありがとうございます。手を下げていただいて結構でございます。   それでは、ウェブ会議に関する注意事項を、改めて御説明させていただきます。   ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、ハウリングや雑音の混入を防ぐため、御発言をされる際を除きまして、マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。審議において御発言される場合は、手を挙げる機能をお使いください。それを見て、部会長から適宜指名がありますので、指名されましたらマイクをオンにして御発言をお願いいたします。発言が終わりましたら、再びマイクをオフにして、同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしてください。なお、御発言の際は、必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。   説明は以上になります。 ○山本部会長 それでは、本日の審議に入ります前に、配付資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。御説明いたします。   本日は、部会資料17「調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案のたたき台」を配付させていただいております。資料の内容につきましては、後ほど事務当局から順次御説明をさせていただきます。 ○山本部会長 それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料「第1 新法の制定による整備」のうち、「1 定義」から「3 適用除外」まで、資料にすると1ページから4ページまでになりますが、この部分について取り上げたいと思います。   事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは、鈴木から、部会資料17、第1の1から3について説明をさせていただきます。   第1の1及び2については、前回の部会資料の規律から変更しておりません。   「2 適用範囲」について、前回の部会において、民事執行の合意の時期などについて御質問を頂きましたので、その時期等に制限を設けるものではないことなどについての説明を記載しております。   また、第1の「3 適用除外」については、前回の部会において、(4)の「日本若しくは外国の裁判所の認可を受け」の部分に関し、様々な御意見を頂きました。実質として、他の国でシンガポール条約又はその条約実施法に基づき執行決定を受けたとしても、日本において執行決定を求めることが排除されるものではないとの結論とすることについて異論はなく、条約もそのような解釈であるということについても、異論はなかったものと認識しております。もっとも、その実質を書き表せているかという点について御指摘を頂きましたので、再度事務当局において検討をさせていただきました。   まず、シンガポール条約上又は条約実施法上に基づく執行決定のみを、認可から除外するという規律とすることができないかを検討しましたが、認可という文言を維持しつつ、条約上のものか、そうでないものかということを区別できるような規律を設けることの困難さに加え、そもそも裁判外で成立した和解合意に裁判所が執行力を与えるという実質は同じであるにも関わらず、条約上のものか、そうでないものかで取扱いを異にすることの説明も困難なのではないかと考えております。   また、シンガポール条約において使われている「as a judgement」の和訳である、「裁判として」又は「判決として」との表現を用いることについても検討いたしましたが、この文言をそのまま用いることは、その意味することが明らかではないことから困難である上、仮にこの文言を用いたとしても、条約上の執行決定を得たものが排除されるものではないとの実質を書き表せているのかとの問題が解決されるものではないと考えております。   以上の検討を踏まえ、条約又は条約実施法に基づく執行決定を得たものが排除されないとの結論を分かりやすくするためには、(4)の規律のうち、「日本若しくは外国の裁判所の認可を受け又は」という部分を削除するという方法があるのではないかと考えております。もっとも、条約の文言からこの部分のみを削除するということをした場合、条約の解釈とその結論は変わらないという立場を採るにもかかわらず、なぜあえて削除したのかという説明が困難となるとも考えられます。   このようなことを踏まえると、部会資料16で示した原案を維持した上、条約上の執行決定を含め、裁判所による認可を受けたとしても、認可を受けていない状態の和解合意を観念することにより、(4)の規律によっても認可を受けていない状態の和解合意であれば排除されないとの結論を、解釈により導くということもあり得るのではないかと考えております。   以上を踏まえ、(4)の規律の在り方について、皆様から御意見を賜れますと幸いです。   私からの説明は以上になります。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは、ただいま御説明がありました点、1、2、3と分かれておりますが、どの点からでも結構ですので、また、どなたからでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。   いかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。最初に、部会資料の2ページの説明のところについて確認です。   部会資料の説明の上から5行目ぐらいですかね、「民事執行の合意がされる時期及びその態様等については、特に限定を設けていない」と、そういうふうに読めるわけですが、民事執行合意の時期、態様について限定を設けていないということの意味ですけれども、その民事執行の合意は、もちろん調停での和解の中で合意することもありますが、それには限られないということであると理解します。   すなわち、いろいろな場合が考えられるのですが、例えば、紛争の元になった契約に調停合意があって、その中で執行合意があらかじめあると、こういう場合は余り考えられないとは思いますが、それが一つ。それから、ADR機関の規則の中にそのような執行についての規定もある場合、そのほかに、調停での和解合意とは別の別途の手続内の合意としての民事執行の合意もあり得るかと思います。それから、調停手続の外での合意、これは調停和解の後の合意も、調停和解が成立して終了した後で、当事者間で民事執行の合意をするという場合も含む、いろいろな場合があるかと思いますが、これら全てを一応含み得るという理解でよろしいでしょうか。   もちろん、それぞれの場合、個別の事案で合意の存在や、あるいは解釈、どこまで及ぶのかということについて議論になる、そういう意思表示の一般的な問題はあるとしても、一応それら全てを含み得るという理解でよろしいでしょうか。 ○山本部会長 それでは、事務当局からお答えをお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。今、出井委員からいろいろと具体例が上がりましたけれども、これら全てにおいて、この条約実施法の適用の対象になり得ると整理をしてございます。 ○山本部会長 出井委員、いかがでしょうか。 ○出井委員 ありがとうございます。   もう1点確認ですが、先ほど鈴木関係官から最後に御説明のあった適用除外のところの3の(4)の中で、認可を受けていない状態の和解合意を観念するという御説明がありました。この趣旨をもう一度確認したいのですが、民間調停での和解合意に、今回の新法あるいはADR改正法案のように、民間の調停での和解合意に裁判所が、認可であるとか執行決定であるとか、何らかのお墨付きを与えて、裁判を経ずに、通常訴訟を経ずに執行力を与えていくと、そういう法制を採っている国で、これを仮に認可と呼びますが、そういう制度がある国であるけれども、しかし、まだ調停和解合意が成立しただけで、認可を取っていない段階のことをイメージしているのでしょうか、それとも認可を取っていても、認可を取る前の和解合意が観念されるということで、認可を取っているということは、このブラケットの部分には当たらないということになるのでしょうか。その観念するというところの意味を教えていただきたいと思います。 ○山本部会長 それでは、事務当局からお答えをお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。今の御質問につきましては、認可を取った後であったとしても、認可を取る前の和解合意というものを観念するという趣旨でございます。具体的には、認可が物理的にどのような形で行われるかというところにもよるのですけれども、恐らく、民間のADRでされた和解合意の書面を、執行をしたい国の裁判所に一度持ち込んで、新たに認可というものを受けるということになると思います。   ですので、物理的に認可を受けた状態の和解合意については、我が国において執行決定の対象にはならないと整理をしておりますが、認可を受ける前の和解合意書面を我が国の裁判所に持ち込んでいただければ、執行決定の対象になり得ると、このような整理でございます。 ○山本部会長 出井委員、いかがでしょうか。 ○出井委員 確か前回も確認したことだと思いますが、今のような御説明に沿って考えると、外国で認可を取ったけれども、日本でも執行力を得たいという場合、日本の裁判所に執行決定を申し立てたときに、もちろん外国での認可と併せて申し立てたら、それは拒絶されるんでしょうが、外国の認可は出さないでおいて、その前の和解合意だけを日本の裁判所、執行決定裁判所に提出して執行決定を求めるといった場合に、被申立人が、これは外国で既に認可を得ているということを主張しても、それは失当になると、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○山本部会長 事務当局からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。今、出井委員がおっしゃったとおりでして、そのような主張は、主張自体失当という扱いになるのではないかと考えてございます。 ○山本部会長 出井委員、よろしいでしょうか。 ○河井委員 河井でございます。3の適用除外の(4)についての御質問というか御確認なんですが、この解説の3ページから4ページにかけて、approvedの関係で、「シンガポール条約では、「as a judgement」との表現を用いられているが」という解説の中で、3の(4)の中では、ほぼ意味は訳出されているのではないかという、そういうような趣旨の解説文になってございますが、例えば、この(4)を国際和解合意であって、その裁判所が属する国で、裁判としてこれに基づく強制執行をすることができるものとして訳出を完全にしてしまった場合には、裁判としての言葉の範囲が、純粋な裁判なのか、あるいは裁判類似、例えば、確定判決と同一の効力を有するものとか、外延が不明確と受け取られるおそれがあるので、あえて訳出しなかったと、日本法上はシンガポール条約に対応する文言をあえて設けなかったと、そういう趣旨で理解してよろしいのでしょうか。 ○山本部会長 事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。河井委員がおっしゃるように、外延がはっきりしないということもあろうかと思いますし、そもそも、「判決として」というものが何を意味しているのかということも、よく分からない概念なのかなと、このような懸念があるので、書かない方がいいのかもしれないと、こういう考え方でございます。 ○河井委員 分かりました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です、ありがとうございます。今、直前にやり取りのあった点に関しましては、このシンガポール条約では「as a judgement」という文言になっているところですけれども、この規律の趣旨、これは、ハーグ判決条約との抵触を避けるというところにあったと説明されているところで、こちらは竹下幹事が御専門かと思いますので、後で補足等を頂けるところかとも思いますけれども、ハーグ条約の方では、同様の趣旨を「in the same manner as a judgement」という判決と同様に執行できるというような文言を用いているところで、この「as a judgement」の文言も、実質的にはそれと同じものを指して使われているという理解も十分にあり得るところではないかというように思われます。   仮にそのように考えますと、現在ゴシックで示していただいているような、結局判決等と同様に債務名義として強制執行ができるということに尽きているという解釈になるのかなと理解をしているところです。   それから、亀甲パーレンが付いている(4)の冒頭の部分、「日本若しくは外国の裁判所の認可を受け又は」という点ですけれども、先ほど来、出井委員の御質問と事務局からの御説明にあった実質のところについては、私も異存はございません。問題は、その実質をどのような形で表現するのが適切かということかと思われます。   その点につきまして、私自身はどうも、日本法の条文という観点から見ますと、結局、この文言が残されていたとしても、それによって裁判所の執行決定が受けられなくなる事例、事案というものが想定できるかというと、実質的には想定できないような規定なのではないか。つまり、もちろん、執行決定付きのものという形で持ってくると、それは駄目だということにはなるわけですが、その場合、当事者としては常に執行決定の前の段階のものというものを観念して、それを主張することは可能だと思いますので、その意味で、実質的には適用範囲の限定の機能を果たすことが想定されていない文言になるかと思われます。そうしますと、この資料の説明でも御示唆いただいていますように、この文言は削除してしまうということも、日本法の法律の規定の文言としては合理的なのではないかと思われるところです。   ただ、これも御指摘がありますように、シンガポール条約の文言とは、そうしますとずれが生じてくるというところを、どこまで重要視する必要があるのかというところで、一応説明としては、シンガポール条約よりも執行決定ができる、執行の対象となる和解が狭まるものではないかということですし、シンガポール条約の一般的な解釈の趣旨をより明確な形で表現したものであって、シンガポール条約と異なる規律ではないという説明は可能かと思われますけれども、法文の文言自体がずれているということによって、シンガポール条約とは異なる規律であるという、対外的な誤解を招き得るという危険を、どの程度重視するのかということによって決まってくる問題なのかなと思われます。   私自身は、合理的な説明が一応できるのであれば、ここはなしにするという方法も十分あり得るかなという印象を現時点では持っているところですけれども、その点について、国際的な紛争の実態等に詳しい委員の先生方もおられるかと思いますので、もしこれは維持した方が望ましいのであるということがあるのであれば、そういった方法もあり得るのかなと考えておりますので、是非御教示頂きたいと感じているところです。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○竹下幹事 竹下でございます。では、発言させていただきます。   今、正に御議論のある適用除外のところの(4)、「日本若しくは外国の裁判所の認可を受け又は」のところの文言についてでございますが、このたたき台の中の説明で、「as a judgement」という表現、今、垣内先生からもご発言があったかと存じますが、ハーグの方では「in the same manner as a judgement」となっていて、シンガポール条約の方では「as a judgement」となっているものの、同趣旨であるというのはそのとおりかと思われ、正にこの文言でシンガポール条約とハーグの判決条約との適用範囲の切り分けを行っているのだと思います。この点、どれだけ明確に切り分けがされているのかというのが、多分一番の問題点でございますが、個人的な理解と致しましては、解説報告書などを読んでも、どこまで明確なのかというのは必ずしも明らかでないように思われます。   ただ、条約の趣旨などに鑑みますと、恐らくシンガポール条約の方では、あくまで私人の合意、これを根拠として、これに対して執行力を付与するという発想ですが、ハーグ条約の方は判決に対してということでございまして、ハーグの判決条約の11条で和解合意についての執行を認めると言ったとしても、やはりこれ、裁判所による認可であるとか、裁判所において手続の中で成立したという、正に裁判所の認可などに基づいて、執行力が与えられているのではないか。やはりその国家機関の関与というところが一番の区別のポイントになってくるのではないかというのが、私の理解でございます。   そう考えますと、現在の事務局から御説明いただいたとおり、和解合意というものを二つに分けることはできないのかもしれませんが、認可が得られて、認可に基づいて執行が求められる場合と、仮に外国等で認可の手続があったとしても、その元となる和解合意自体に基づいて執行が求められる場合というのが区別され、それについて、日本で別に扱って執行を行うというのは、非常に合理的なことではないかと思います。   その上で、文言についてでございますが、現在のように、この国際和解合意の定義という形で文言を考えようとすると、どうしてもこの二つの区別が難しいことになってしまうところでございまして、文言については、なかなか難しい問題だなと、個人的には考えているところでございます。そういった観点から言いますと、垣内先生御指摘のように、削除してしまうというような考え方も一つあるのかもしれませんが、個人的には、現在の案文を維持して、立法解説などで丁寧に御説明いただくというのも、一歩手段なのではないかと考えているところでございます。   仮に法文の中に、例えば、日本若しくは外国の裁判所の認可を受けた国際和解合意であって、その裁判所が属する国でこれに基づく強制執行をすることができるもの、こちらの認可の方の問題について、例えば、当該裁判所の認可に基づいて、日本の裁判所に強制執行が求められた場合に限るとか、何か限定の文言を付することができるようであれば、趣旨もクリアになってよいのではないかと、個人的には思います。しかし、なかなかそれも難しい、立法技術的に難しいというのはそうなのかもしれず、そういった観点から言うと、この点、規定について置くか置かないかは、最後の、垣内先生がおっしゃられた結論に近い結論でございますが、実際にユーザーとしてこういったものを使うときに何がよいのか、条文を使われる実務の先生方にとって、やはり条約とそろった文言があることがいいのか、それとも、条約とそろっていなくても特段問題がない、実質において同じであれば問題がないのか、その点の御判断に委ねるのがいいかなと個人的には考えているところでございます。   長くなって失礼いたしました。以上で発言終わらせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○吉野委員 吉野でございます。この問題は、また後で出てきますし、前回も問題になったかと思いますけれども、執行拒否事由のうちの一部の履行があっても執行拒否事由となるというような文言を、前回確か全部が履行されない限り執行拒否事由に当たらないという、こういうことに変わったということと、実務的には関係があるようにも思われます。   と言いますのは、ある国で強制執行しても、全部の満足が得られないというような場合に、そうしたら、日本に相手方の財産があるということが判明した。そこで、日本においても改めて強制執行したいと考えた場合に、これもまた拒否事由にはならないということで前回されたわけですけれども、それに基づいて、日本において強制執行をしたいとする場合に、ある国でというか、外国において既に認可があり、執行決定といいますか、認可があって強制執行もされたということが妨げにならないように、解釈といいますか、この(4)の文言が、そのような運用に妨げとならないような解釈ができる文言になればいいのではないかというように、私は考えているところであります。   この問題については、そういう観点からこの文言を考えるというのが、一つあり得るだろうということであります。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   3の(4)の点につきましては、出井委員、どうぞ。 ○出井委員 出井です。この3の(4)の括弧内のブラケットの部分についてです。   皆さんの前回、それから今回の議論を聞いていて、結論としては、どちらでもよいというか、どちらもあり得るという印象を持っています。私も強いこだわりはありません。   ただ、そういう前提で、ちょっと幾つか整理して申し上げておくと、この部分は、シンガポール条約の1条3項のaの(1)の前段ですかね、that have been approved by a court、これを訳した部分、それに対応する部分だという理解ですが、ここで認可と訳されているわけですが、この認可に、日本における新法あるいはADR改正法における執行決定を含むのかという、そういう問題、あるいはそれと同等の外国法制における認可、執行決定を含むのかという問題があるわけです。   国際的な問題と国内の問題とちょっと分けて考えますと、国際的な問題、これ、先ほど来議論していることで、外国の裁判所で認可を得た国際調停の和解合意について、日本の裁判所に執行決定が申し立てられた場合、日本の裁判所はこのブラケットの部分、これを理由として却下することはないと。この部分を卒然と読むと、ここで却下されてしまうようにも見えますが、その結論は採り得ないという点は皆さんコンセンサスで、シンガポール条約の解釈でもそこは異論がないところであると理解します。解釈上、そういうものはこの部分で拒否されることはないという、そういう理解です。複数の国に執行財産があるということは十分あり得るので、このような事態は当然想定されることなので、これが執行できなくなるということはあり得ないということは、それでいいと思います。   その結論自体は問題ないんですが、問題は、皆さん議論されたとおり、このブラケットの部分が、解釈としてそのように読めるのかということだと思います。認可を受けていない和解合意を観念するという解釈、それから、今回の資料の3ページから4ページで示された解釈も含め、無理のない解釈なのかという点が、私はなお疑問であるということを申し上げておきたいと思います。ただ、ここは、そういう解釈を採るということであれば、余り実務上も異論がないでしょうから、そういう解釈ということで説明をするということでも、支障はないのではないかと思います。   そのほかに、特に、これはシンガポール条約の文言に合致している規律の仕方なので、その点ではメリットがあると思いますし、シンガポール条約の文言から外れること以外に、このブラケットを削った場合に、何か問題が、不都合があるのかということを、ちょっと私は思い付かないのですが、もしあればお出しいただきたいと思います。   どういう不都合があるかということに関しては、今度は国内の問題で考えますと、例えば、日本の甲裁判所で執行決定を得た国際調停和解ですね、これについて、日本の乙裁判所に執行決定が申し立てられた場合、これは、恐らく皆さん余り異論ないと思いますが、それは認められない、執行決定は重ねては出さないということではないかと思います。そういう場合は、3の(4)のブラケットがあれば、正にここで、日本若しくはとなっていますから、ここで拒否できるわけですね。なので、その点が正に、このブラケットを残しておく理由になるのだと思いますが、一方、そもそも今、私が申し上げたような日本国内で二つの裁判所に、すなわち既に一つの裁判所で執行決定得ているのに、もう一つ別の裁判所でわざわざ執行決定を申し立てるというそんな無駄なことをする人がいるのかどうかという問題、これは、ほとんど想定できない問題ではないかと思いますし、仮にそういうものが申し立てられたら、それは、既に執行決定、日本全国に効力が及ぶ執行決定を得ているということで、申立ての利益がない等の理由で却下することはあり得るのではないかと思います。   こう考えてきますと、この鍵括弧の部分があることによるメリットというのは、結局シンガポール条約の文言と同じですねということ以外に、果たしてあるのだろうかという気がしまして、そうすると、先ほど垣内先生がおっしゃったように、ブラケットの部分は、私はない方が、日本法としてはベターではないかと思います。ただ、これも垣内幹事御指摘のとおり、シンガポール条約の文言と離れるところをどう評価するかということですが、私は、シンガポール条約の異論のない解釈と同様の既決を導く国内法の措置ということですから、それはそれで説明できるのではないかと思いますし、シンガポール条約と違っているということで、何か実務上支障があるかというと、私は余り想定できないのではないかと思います。   私は、ブラケットはなくした方がいいのではないかと思っていますが、ここは強いこだわりはありません。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○手塚委員 手塚です。私は、やはり日本の新法が、シンガポール条約の担保法ないし実施法で、基本的には同じ中身であることを説明する上では、ブラケットのところを取らない方がいいと思っておりまして、何で取ったのかということと、それから、取ったことによって何か違うのかということを、いちいち海外の方に説明する必要がなくなった方がいいということで、ブラケットを入れたとしても、執行決定があるものについて一切執行できなくなるわけではないということは、これは条約の解釈としてもそうだと思いますし、この新法の解釈としてもそういうことは無理なく言えると思いますので、要は、どっちではなければいかんというほどの強いこだわりではないんですけれども、ブラケットを残しても、解釈上それほど不都合がないんだったら、是非残しておいていただいて、シンガポール条約の文言と同じですと言えるようにしていただいた方がいいと、私は思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です、度々失礼いたします。結論については、私はいずれもありだと思っておりますので、今の御意見等も踏まえて、また、私自身は考えたいと思っておりますけれども、先ほど出井委員がおっしゃった分析について、大筋私も同じように考えています。   1点、この亀甲パーレンの中を残しておいた場合に、日本国内で同じ国際和解合意について、別の裁判所で二重申立てをするという事案が、この要件で切れるのかということですが、これは、この要件を残した場合でも、認可付きのものと、それから認可を受ける前の段階のものというのは、依然として併存して観念できるという前提での解釈をするということであったかと思いますので、日本国内で2回目を申し立てたとしても、これも、結論は出井先生のおっしゃるとおりで、申立ての利益がない等の理由で恐らく不適法ということになろうかと思いますが、この亀甲パーレンの要件で切るということには、必ずしもならないのではないか、そういう点で、この亀甲パーレンの文言にメリットがあるということでもないと。ですから、メリットは専ら国際的な外観、あるいはその説明のためのコストをどう考えるかという点に帰着するのかなと理解をしております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○髙畑委員 ありがとうございます。この点についてはやはり、私も手塚委員と同様、できればシンガポール条約と外観上よく似た文言にしていただいた方がよいかと思っております。   実は、私、ちょっとこの点も含めてなんですけれども、シンガポール条約と一見して平仄が合うようにというところでは、そのもうちょっと前のところ、これは、適用範囲の(1)のアのところの中の括弧書きですね、こちらの部分、「当事者が知っていたか、又は予見することができた事情に照らして、合意によって解決された紛争と最も密接な関係がある事務所又は営業所」の定義のところなんですけれども、これは、恐らくシンガポール条約の第2条の定義のところのうち、1の(a)の当事者が2以上の営業所を有する場合の営業所とはのところと合わせていただいたというところなんですけれども、次の(b)のところ、当事者が営業所を有しないときというのは、どこかに何か注釈というか、括弧書きか何かで入っているのかどうかというところを、ちょっと事務当局の方に御確認いただきたいと思ったところなんですけれども。 ○山本部会長 それでは、今の点につきまして、事務当局の方からお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。今の点につきましては、シンガポール条約は常居所という概念を使っておるかと思います。これに対し、今回のこの提案では、住所という概念を用いて書いておりますので、髙畑委員御指摘の部分については、特段の規律は不要ではないかと整理をしているところでございます。 ○髙畑委員 なるほど。 ○山本部会長 髙畑委員、よろしいですか。 ○髙畑委員 ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○出井委員 何度も申し訳ありません。先ほど、垣内幹事の御指摘の点ですが、そこは私も了解です。できるだけこの括弧に意味を持たせるために、ちょっと私、無理な解釈論を展開してしまったように思います。   ただ、そうしますと、本当にこの括弧の部分というのは、ほとんど適用の可能性がない、空振り条件というようになってしまいますので、かつ、さらに、先ほどの解釈でもって、執行決定、認可を取る前の和解合意というのを観念しなければいけないという、そういう解釈を持ってこないと支障が出てくるということになるかと思いました。   私もできるだけシンガポール条約、これは条約ですから、仲裁法のときに議論していたモデル法と違って、より厳格に条約コンプライアンスということが、恐らく国内実施法としては求められるはずです。その前提でも、説明はできるのではないかというのが、先ほどの私のコメントでした。   この点に関してさらに申し上げておくと、仲裁法の議論のときに、私も何人かの実務家の委員も、できる限りUNCITRALモデル法の表現レベルに沿ったものにするべきだということを申し上げていましたが、それはなぜかと言いますと、やはり日本の仲裁法がUNCITRALのモデル法に乖離があるということが議論になると、それだけで日本を仲裁地とする仲裁合意に障害になるからです。そこは結構リアルな問題だったのです。本件のシンガポール条約に合致しているかどうかという問題は、それほどリアルな問題ではなく、もう少し抽象的なレベル、日本の国際調停の振興のために、シンガポール条約というものの実施法を作ったんだというときに、実施法になっていないではないかということが言われるかどうかというレベルの問題なので、私は、仲裁法のときとは、モデル法コンプライアンスあるいは条約コンプライアンスの意味は違うものではないかと思いました。   ただ、これも何度も申し上げますが、私は、結論としてはいずれもあり得る、どちらを採っても、実務サイドとしては構わないと思っています。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○竹下幹事 竹下でございます、何度も申し訳ありません。この文言を入れるかどうかについてですが、文言を外した場合に想定される懸念が何かあるかということで、基本的には、解釈でうまくいくのではないかと思いますが、1点若干懸念されるのが、この文言を外したとすると、裁判所の認可を受けた国際和解合意については、新法の対象となってくると。今、出井先生が少しおっしゃられていたこととも関連しますが、これ、シンガポール条約上は適用を除外しているだけですから、国内法として、その外国裁判所の認可を受けた国際和解合意を新法の対象にしても、シンガポール条約とは何ら抵触するものではないところでございますので、削除したとしても、シンガポール条約との関係では多分問題がないように思います。   他方で、余り見通しはないのかもしれませんが、仮にハーグの判決条約にも日本が入るということになったとすると、この文言がないと、外国の裁判所の認可を受けて申し立てられた国際和解合意について、この新法のルールで常にいくことになると。そうすると何が問題となるかというと、ハーグの判決条約とこのシンガポール条約、いわゆる執行の拒否事由が若干の異なりがあり、これ、元々判決を想定するものと国際和解合意を想定するものとでございますので、ずれがあるのは当然でございますが、この文言がなかったとすると、この認可を受けたようなものについて、国際和解合意、日本で執行を求めるといったときに、仮に日本がハーグの方にも入ったとすれば、若干どちらに振り分けられるのかというところについて解釈上の疑義が残るようにも思われます。もちろん、条約に沿った形で解釈するというのが適切だと思いますので、文言がなくても条約に沿った解釈によって問題は生じないというのは、そのとおりかとは思います。しかし、文言があることによって、解釈上の取っ掛かりになる、すなわち、認可を受けた状態で、ある意味では、認可に基づいて執行が日本で求められるときにはハーグの方にいくけれども、そうではなくて、認可はあったとしても、認可自体ではなく国際和解合意自体に基づいて執行を求めたときには、シンガポール条約のこちらのルールの射程に入ってくる。文言があると、議論の取っ掛かりといいますか、解釈の端緒にはなるのかなということを、今少し思いました。   若干思い付きのような発言でございますし、先生方おっしゃられているとおり、実質においては、入れても入れなくても変わりがないというのは、そのとおりかと思われますので、私も、入れる入れないに何か強いプリファレンスがあるわけではないところでございますが、少し、仮にハーグに入ったとすると、やや解釈上の疑義が生じ得る可能性もあるかなと思い、発言させていただきました。   長くなって失礼いたしました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   当部会は、恐らく現在の審議の進め方からすれば、次回の会合で要綱試案の取りまとめを図る段階に至るのではないかと、私としては認識をしております。そういう意味では、この亀甲括弧についても、決着を付けなければならないということになろうかと思います。   恐らく、当部会のこれまでの議論と今日の議論においては、目指すべき方向性においては、実質的な事態、法律状態については、この委員、幹事の間で基本的にはコンセンサスがあるということだと思います。また、その事態を導く文言との関係においても、この亀甲括弧内があってもなくても、解釈としてその結論は導けるのではないかという点についても、私が伺った限りにおいては、ほぼ意見の一致があったものと、もちろんその導き方についての、どの程度の合理性というか、あれがあるかということについては、ニュアンスの違いはあろうかと思いますけれども、しかし、導けないことはないということなのかなと思いました。ただ、その中においても、結局このシンガポール条約との文言レベルでの整合性というものを求めるかどうかという点が、一つのポイントになり、複数の委員、幹事からは、やはり文言的にも一致させた方が望ましいのではないかという御意見があったように伺いました。   今日の段階ではその程度にさせていただいて、本日の議論内容を更に事務当局において精査を頂いて、次回、今のような議論を踏まえて最終的な御提案をしていただいて、次回で、今日の御議論の内容であれば、基本的には、こだわりがないというとちょっと語弊があるのかもしれませんが、どちらであるから反対だという御意見もなかったように伺いましたので、ちょっと事務当局の方に議論を精査いただいて、次回最終案を提案いただいて、取りまとめに向けた御議論を頂くということにしたいと思いますが、そのようなことで、今日の段階はよろしゅうございましょうか。   ありがとうございました。それでは、この点、ほかにこの1から3までで、ほかの部分で何かございますでしょうか。よろしいですか。   ありがとうございました。それでは、続きまして、この国際和解合意、新法の制定のところで残っている4ページの4の執行決定、それから6ページの5の執行拒否事由ですね、この二つの項目につきまして、事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは、鈴木から、部会資料用の第1の4及び5について説明いたします。   第1の4については、前回の部会資料の規律からは変更をしておりません。   第1の5については、(4)の規律について、履行の後に「その他の事由により消滅した」との文言を追加することを提案しております。   前回の部会において、和解合意自体の効力の問題と和解合意に基づく債務の問題とを区別して整理することが望ましく、和解合意に基づく債務の消滅に関しては、(4)の拒否事由として整理すべきではないかとの御意見を頂きました。そこで、履行以外の免除や相殺等の債務消滅原因についても、(4)の規律に含まれるものとして整理をしました。また、全ての債務消滅原因について、債務の全部が消滅したことが必要であるとの規律とすることとしています。   このような規律の変更等に関して、皆様の御意見をお聞かせください。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは、今の点、これもどの点からでも結構ですので、御質問、御意見を頂ければと思います。   いかがでしょうか。   特段の御意見がないということは、前回からの修正点としては、この5の(4)の今御説明があった、「その他の事由により消滅した」という文言を加えたと。これは、前回の御議論、相殺・免除等についての御議論で、基本的にはこういう方向で文言を明確化した方がよいのではないかという御意見が多かったことを反映して、それで条約との関係においても、それで問題はないだろうという事務当局の判断ということがあったと思いますけれども、特段の御異論はないと理解してよろしゅうございますか。よろしいですか。   それでは、この点は、特段の御異論、御意見はなかったということで扱わせていただければと思います。   それでは、引き続きまして、今度は部会資料の「第2 ADR法の改正による整備」という部分でありますが、この点については、全体をまとめて取り上げたいと思いますので、全体につきまして、部会資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは、鈴木から、部会資料の第2について説明いたします。   第2の1及び2については、前回の部会資料の規律から変更をしておりません。前回の部会で、認証を取得していない弁護士会ADRが主宰する手続において成立した和解についても、執行力を付与し得るものとすることや、消費者紛争に関し、いわゆるBtoC事案も適用対象とすることについて、今後も検討を続けるべきとの御意見を頂きましたので、資料にその点を明記いたしました。   第2の3について、(2)アの「特定和解の内容」という文言について、民事執行をすることができる旨の合意についても含まれるという趣旨かどうかが明らかではないとの御指摘がございましたので、その旨を明確にするために、括弧書きを追記いたしました。(2)アにおいて、和解の条項だけではなく、民事執行の合意についても記載された書面の提出を要求することについて、皆様の御意見を賜れれば幸いです。   第2の4については、前回の部会資料の規律から変更しておらず、第2の5については、新法の規律と同様、(3)の履行の後に、「その他の事由により消滅した」との文言を追加する変更をしております。   私からの説明は以上になります。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは、この第2の部分、特に区切りませんので、どの点からでも結構ですので、御質問でも御意見でも御自由にお出しを頂ければと思います。 ○伊藤幹事 伊藤です。これまでの部会での議論を、本日のたたき台にまとめていただきまして、私からは、特定和解について二つ意見がございます。   7ページの太文字、第2のADR法改正による整備の説明文を読みまして、利用者の立場で考えますと、たまたま紛争を、どこのADR機関の調停に持ち込むかによって、執行決定の対象となったり、ならなかったりすることになってしまうという結論は、私は反対です。弁護士会ADRのほか、私どもが主宰しております建設工事紛争審査会を含めまして、公的な主催者の下で成立した和解について、執行力を付与し得るものとするための要件等を議論し、結論を見た上で、このADR法改正による整備に進んでもらいたいと考えます。認証民間事業者の特定和解だけ先へ急ぐのではなくて、ほかのADR機関の調停を含めまして、一体での検討をお願いしたいと思います。   次に、もう一つの意見です。同じく特定和解についてでございますが、これまでにヒアリングや部会での議論で適用対象とするか否かの整理がなされてきました。その結果、適用除外と整理されたものや、本日このたたき台の中で、事務局から今後の課題としてはどうかと整理されたものがございます。その上でなお、この特定和解というものが必要なのかという点について、私はもう少し吟味が必要なのではないかと考えます。と言いますのも、いわゆる適用除外の検討というのは深まっていたと思うのですが、結局のところ、どのような紛争の和解を最重要ターゲットに置いているのか、今現在のたたき台の中で、その必要性、積極的理由、いわゆる肝の部分が、たたき台から何か見えづらくなっている気が、私はしております。その点から、もう少しこの部分について検討を深める時間があってよいのではないかと思った次第です。   以上、二つ意見を出させていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。事務当局から、何か今の御意見についてコメントはございますか。 ○福田幹事 福田でございます。二つ頂いた意見のうちの後者の方ですけれども、どのような事案をターゲットにするかというところにつきましては、中間試案、ないしはこの部会と並行して進めておりましたODR推進検討会でのアンケートやヒアリング結果から、一定程度ニーズがあるというようなところは出ていたものと承知しております。そういう意味で、今回の部会資料にはその辺りのところは明記をしておらず、ニーズがあることを前提で書かせていただいた部分はございますが、この辺りについては、また御確認を頂ければと思います。 ○山本部会長 前者の方の御意見は、行政的なADR等についても対象にするかどうかを考えるべきだという、そういう御意見だったんでしょうか。 ○伊藤幹事 いわゆる民間事業者が認証を受けた場合のこの手続については、今、執行付与、特定和解によってされるということになる一方、認証ではないほかのADR機関は取り残される形になるというのでしょうか、それが、私は反対です。この認証民間事業者の特定和解というものだけ急ぐのではなくて、ほかのADR機関についても、こういう要件を満たせばよいのであるとか、和解書でこういう掲載を作ってくれればよいというところを吟味した上で、一緒にやる方が望ましいのではないか、むしろそうすべきだと、私は考える次第です。 ○山本部会長 ありがとうございます。御意見としては承りたいと思いますが、ただ、その点は、この部会でずっと議論をしてきた点ではあって、その中で出来上がってきたコンセンサスとして、現在の定義があるということは、是非とも御理解を頂きたいとは思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。今、伊藤幹事の御意見の行政ADRについては、正に今回部会資料にまとめられているように、弁護士会についてとともに、今後の検討課題として残しておく必要はあるかと思います。伊藤幹事の御意見はそのとおりであると、私は思います。ただ、そこの検討に結構まだ時間がかかるであろうということで、今回こういう取りまとめになっているという理解です。   行政ADRについては、建設工事紛争審査会、原紛センターなどいろいろあって、個別の法律で対処するという方法もありますし、その点も含めて、更に検討を進めていくべきであると思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。私の先ほどの発言は、行政型ADRについては、それを取り残すべきであると申し上げた趣旨ではありませんで、正に出井委員が言われたように、行政型ADRはそれぞれの法律に基づいて設置されていて、それぞれの法律によって対処していくというのが、これまでのやり方であったと認識をしております。時効の完成猶予についても、民間型認証ADRについてはADR法で定めていますが、行政型ADRについては、それぞれの所管法で規定しているものと認識をしておりますので、これは、それぞれの省庁でそれぞれお考えを頂くということになるんだろうとは認識をしておるところであります。   ほかにいかがでしょうか。 ○河井委員 河井でございます。今の伊藤幹事の御意見に対する意見として、部会長、出井委員からもありましたが、私としては、伊藤幹事のおっしゃることも、実質としてはよく理解できるので、むしろ国土交通省を始めとする各省庁で所管している行政ADRについて、必要性ないしは有用性があるという、ことでやっておられるのであるから、執行力についても付与する方向で、各省庁で法改正を検討していただきたいなと思っております。   国民生活センターさんは、ODR推進検討会でも執行力付与に前向きな御発言があったやに聞いておりますので、恐らく消費者庁を中心として法改正をするのではないかと、私も期待しているんですけれども、国土交通省さんについても、前向きに改正を検討いただければ大変有り難いなと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○伊藤幹事 各委員の先生方からも御意見を頂きまして、ありがとうございました。国土交通省の建設工事紛争審査会の調停についても、こういう執行力を付与するとした場合に、では、どういう要件であれば、ADR法改正との横並びでし得るのだろうとか、そういう部分のところが、今回の部会のたたき台を見ると、認証の有無ですとか、あと弁護士会であると、それができる、今後の課題としようとしているのは、ある指摘があったというところですから、実際に法律を、我々の個別法を改正しようとした場合に、では、どういう要件を満たせば横並びでできるのかというところが、全く分からないところがあって、個別でやってくださいと言われても困るというのが、率直なところであるのです。   また、個別でとなった場合に、この特定和解というものが有益なものなのだろうかというと、実務の現場にいる私の立場からしますと、そもそものところで和解書を結ぶ段階で、特定合意に合意してくれるような一方の当事者であれば、そのような執行力の付与を設けなくても、期限までに約束は履行されるというのが通常なのではないだろうかと。むしろ和解を結ぶ段階になって、こういう執行付与の文言を入れてもいいですかというのを言えば、入れられる側の当事者にとってはメリット何もないですから、いっそのこと、では、債務を半分にしてくれるなら、文言入れてもいいですよということだって言いかねないといいましょうか、個別でとなると、さあ、どういう要件で、どういう内容でというところで、なかなか悩ましいことがあるなと思っているのが、率直なところです。   その点から、やるのであれば、いわゆる横並びで一体でまとめてもらいたいというのが、率直な気持ちでありました。 ○山本部会長 ありがとうございました。お気持ちは分かりましたが。   ほかにいかがでしょうか。   前回と比べると、この3の(2)のアの特定和解の内容等のところについての改正等もありますが。 ○山田委員 3の(2)のアの括弧内のところについてでございます。こちらは、正にADR法2条に設けようとしている特定和解の定義を、そのまま括弧内に書くということですので、構成的には重畳的であると言わざるを得ないようには思います。   ただ、今回、執行債務者となる側において、新しい手続で執行力が付されるということについて、注意喚起をするという意味で、政策的に必要が高いと言えないわけではないようにも思いますので、その点で、この文言を入れるということに強く反対するものではございません。   このように強調することとやや関連するかもしれませんけれども、この文言の書きぶりについては全く異存はないんですけれども、やや注意喚起をしておいた方がいいかなと思いましたのは、この和解条項の中には様々なものが含まれて、執行の合意のないものも含まれ得るのだろうと思います。そもそも執行の合意をしないで、柔軟な解決を図るというのが、ADRの本質に目指すメリットでありまして、今回のようなこの法改正によって、そのような本質的なメリットを阻害することがないように意識をして、執行力を付する条項を明確にするということも、重要ではないかと思われますので、ここで言う当該和解に基づいて執行することはできる旨の合意というのは、正にそのような合意をしたものについて、執行力があるのだということになるということだけ、少し確認をさせていただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○山本部会長 御質問だったんでしょうか、今の。 ○山田委員 私はそのように考えておりましたが、もし事務局で別の解釈があり得るのであれば、教えていただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本部会長 それでは、事務当局からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。山田委員のおっしゃったような解釈で、事務当局としても考えておりましたので、その点については、先生がおっしゃったとおりかと思います。 ○山本部会長 よろしいでしょうか。 ○出井委員 出井です。この特定和解の定義についてなのですが、第2の1のところですね。「紛争解決手続において紛争の当事者間に成立した和解であって、当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意がされたもの」と。これまでも何度か確認をしてきたところだと思いますが、この後段の民事執行の合意の時期について、先ほど新法についても確認しましたので、改めてこちらの方でも確認しておきたいと思いますが、後段の民事執行の合意の時期あるいは態様についてどう読むのかということですが、認証紛争解決手続の中での民事執行をすることの合意でなければならないと読むということでよろしいでしょうか。その点の確認です。   そう理解をしていたのですが、卒然とこの条文だけを読むと、果たしてそこまで読めるのだろうかという気がしたものですから、改めての確認です。 ○山本部会長 それでは、事務当局の方からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。今の御質問の点につきましては、事務当局の整理としましては、認証紛争解決手続の中での民事執行の合意、これがなければならないという形で整理をしております。ただ、それが和解の成立と同時でなければいけないというところまでは、ここでは要求しておりません。また、和解条項の中に含まれているかどうかということも要求しておりませんので、和解条項の中に含めるという形でも構いませんし、それとは別の形の民事執行の合意というものも許容し得ると整理をしております。   そのような整理を前提に、この特定和解というこの定義の規律で表せているのかという御指摘も、併せていただいたかと思いますが、この辺りは、実質について、皆さんに特に御異論がないようであれば、あとは法制的なところの問題かと思いますので、御指摘を踏まえた上で、更に検討してまいりたいと思います。 ○出井委員 ありがとうございました、大分クリアになりました。特に、認証紛争解決手続の中で行えばよいということであって、必ずしも和解合意と同じ書面で行わなければいけないとか、同じ時期に行わなければいけないとかいうものではないと。要するに、認証紛争解決手続の中で民事執行の合意をすればよいという趣旨も理解できました。   それで、ここから先は、これも解釈、運用の問題になってしまうのかもしれませんが、機関規則であらかじめ、例えば、当事者に異議がない限り、本手続で成立した和解には裁判所の執行決定を経て執行力が与えられるものとするなどの規定があった場合、それはどうなるのか。逆に、本手続で成立する和解については、執行力は付与されない旨の機関規則の規定があった場合はどう取り扱うのか、その辺りについて、これは解釈、運用の問題なので、現時点で確定してしまうことはできないと思いますが、何かお考えがあればお聞きをしたいと思います。   それからもう一つ、今回加えた3の(2)のアの括弧内の部分ですね。これ、先ほど山田委員の御指摘と同じで、第2の1でADR法2条で特定和解の定義を設けていて、さらに、今度は定義規定ではないのかもしれませんが、特定和解の定義を規定している上に、さらに今度は特定和解の内容の定義を重ねて規定するというのは、ダブり感はあるかなと思いました。これは単なる感想です。 ○山本部会長 ありがとうございました。前段御質問かと思いますが、事務当局の方からお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。御質問いただいた点につきましては、その民事執行の合意が機関規則の中に既に取り込まれているというようなものとお聞きしましたけれども、それが、やはりADR事業者において、双方当事者にしっかりと説明が尽くされて、明確な形で認識された上で、当事者がそれに基づいてやりましょうというような合意がされていれば、民事執行の合意ということで読める余地は十分あるかなと思っております。   ただ、それを前提としたときに、この3の(2)のアの規律の適用をどのように考えるかというところですけれども、特定和解の内容が記載された書面で、当事者の署名があるものと当事者の同一性及び意思を確認することができるものという形になっておりますので、機関規則でこういうのがありますよというのが、この(2)のアの書面に当たるかというと、そこは若干難しいのかなというところが、現時点で思ったところでございます。   これでお答えになっておりますでしょうか。 ○山本部会長 出井委員、いかがですか。 ○出井委員 現時点のお答えとしては、十分だと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉野委員 吉野です。この点は、私ども認証事業者にとっては、やはり慎重に運用を迫られる問題だろうと思います。この文言が重複しているかどうかは別としまして、ともかく執行力が一定の場合には付与されるよと、強制執行されますよということは、当事者にやはり十分に説明しなければいけないだろうと。言わば、だまし討ちになってしまっては、これは身も蓋もありません。そのことによって、ADRに対する信頼を損なうということもあり得ますから。したがって、この規則に定めているから、ADR機関の運営規則に定めてあるから、もうそれでいいということではないだろうと思います。やはり当事者が十分に認識するということが、基本的には必要だろうと思います。   したがって、ただ、先ほど来も御意見の中で出ておりますように、これがあることによって、そして、そのことを、執行力の付与があるということを説明することによって、相手方が応諾しなくなる、つまり、応諾率が下がるということも短期的にはあり得るかなと、私個人的には推測しております。ただ、やはり、こういうものを、事例を積み重ねていくことによって、制度全体に対する信頼というものは、世間での理解が深まることによって、信頼がだんだんと増していくというようには考えております。   ただ、やはり、最初に申しました、繰り返し申しますけれども、現場での慎重な運用というものは、必要なことだろうと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○今津幹事 幹事の今津です。2点御発言させていただきます。   1点目、資料の10ページ、既に出た6ページとも共通するところですけれども、前回からの修正点で、拒否事由のうちの、履行されたという文言を「履行その他の事由により消滅したこと」と改められた点、この点、前回私は、消滅と端的に言い換えてはどうかとも申し上げたんですけれども、それより今回出していただいたように、履行という言葉を残しつつ、消滅したという形で整理された方が、より元のニュアンスを残しつつ表現されていると思いますので、このような形の御提案に賛成の立場です。   それから、もう1点なんですけれども、先ほど出井委員とのやり取りを伺っていて、少し確認をさせていただきたいんですけれども、特定和解の中で、和解条項そのものと、それから民事執行に関する合意の部分が、どの程度離れていていいのかというところなんですが、前回の資料では、今回でいう7ページにある定義を拝見して、イメージとしては、一つの手続の中で、和解そのものもし、かつ、執行の合意もするというようなイメージではあったんですけれども、先ほどの出井委員とのやり取りの中では離れていてもというか、別のタイミングでもいいというようなお話で、どの程度といいますか、例えば、一つの手続の中で和解をし、一旦それを閉じた後、別の機会に執行に関する合意だけするという形とか、あるいは、別々の認証ADR機関で、和解そのものと執行の合意を分けてするというようなことまでできるのか、その点、どこが限界点なのか、ちょっと教えていただければと思います。 ○山本部会長 それでは、事務当局からお答えをお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。今津幹事から御質問のあったような具体例は、この特定和解には当たらないと、民事執行の合意は別でされているというような理解で、私はお聞きしました。   このADRの手続というものの開始から終了をどこで捉えるのかというのは、ひょっとしたら解釈があるのかもしれませんけれども、通常、どちらかの申立人が実施の契約をして、相手方を呼び出して手続に応諾をするというところから、具体的に手続が始まっていくんだろうと思います。和解が成立したことをもって、一応は手続が終わるという前提に立ちますと、その和解の成立と同じタイミングで民事執行の合意をするというのが、終期と言いますか、最後のタイミングなんだろうと思います。その形式としては、和解条項の中に盛り込むか、別の合意書面みたいなものを交わすか、それはどちらもあり得るんだろうと思います。   そうすると、その和解の成立よりも前の段階でされた民事執行の合意をどう捉えるかということだと思いますが、相手方が手続に応諾をして、将来ここで話がまとまったら、それに執行力を付しましょうという事前の合意というものも、十分あり得ると思いますので、それは手続の中でした合意として有効なものと捉えて、後に成立した和解合意とセットになって特定和解になると、こういうことはあり得るのだろうと整理をしております。 ○山本部会長 今津幹事、いかがですか。 ○今津幹事 はい、ありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 垣内です。今、議論のありました点について、事務局の御説明のとおりだろうと、感想を持ちました。   それで、そもそも別の機会に、民事執行合意をするだけのために認証機関に行くというようなことが仮にあったとして、これは、認証機関で特に執行合意をするということが、手続として用意されているということではないように思いますので、飽くまで認証業務である紛争解決手続の中でされるということが、想定されているんだろうと思います。   ただ、ある和解合意で、執行合意がない和解合意が認証機関でされたとして、その執行をめぐって再度トラブルが発生し、それについて、また当該、当該でも他の機関でもいいかもしれませんが、ADRをやるというときには、実際上、同じ内容の和解をした上で、執行合意も併せてするというようなことも、紛争の展開によっては絶対あり得ないことではないかなと思われますので、その辺りは正に解釈、運用の話ということで、今後いろいろ議論があり得るところかと思いますけれども、そんな感想を持ちましたので、関連して発言させていただきました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○伊藤幹事 事務局への要請ということで、一つだけお願いします。   先ほど、個別法の改正という話も出ましたが、法改正に当たって、いわゆる束ね法というところの検討をお願いしたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。事務局への要望ということで承っておきたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   そうしますと、今回示された、前回と変わった部分も含めて、原案について特段の御異論は示されなかったものと理解をして、次に進ませていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。   それでは、続きまして、部会資料、最後のところですけれども、11ページの「第3 民事調停事件の管轄に関する規律の見直し」、この部分につきまして、事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○石川関係官 石川から御説明申し上げます。   第3の本文は、前回の部会資料と同一であり、裁判所で行われる民事調停事件の管轄に関し、いわゆる知財調停のより一層の活用を図る観点から、知的財産の紛争に関する調停事件について、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に競合管轄を認めることを提案しています。   また、前回の部会では、医療事件、建築事件、商事事件等の専門的な知見を要する調停事件について、東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に事件を移送することができるとの規律を設けることの是非についても御議論いただきました。この点については、専門的な知見の活用の観点からは、このような移送が有益である場合があり得ると考えられる一方、当事者の出頭の便宜等の観点からは、専門的な知見を要する調停事件について、広く東京地方裁判所又は大阪地方裁判所への移送を認めることには慎重になるべきであり、仮にそのような規律を設けるのであれば、当事者の同意を要件とすべきであるとも考えられます。   もっとも、現行の民事調停法でも、調停の申立てがあった後、又は調停に付された後に、当事者が東京地方裁判所又は大阪地方裁判所を管轄裁判所とする旨の合意をすることは可能であり、その場合、民事調停法第4条第3項の規定により、裁判所は、事件を処理するために適当であると認めるときは、事件を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することができると考えられます。すなわち、現行法の規律によっても、当事者の同意がある場合に、裁判所が専門的な知見を要する調停事件を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することは可能であると考えられます。   そこで、今回の部会資料では、この点については、差し当たり現行法の規律を維持し、今後の民事調停の実務において、具体的な立法事実が生じたときに、改めて検討することとしてはどうかとの提案をしています。   第3に関する御説明は以上です。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、御質問、御意見等、御自由にお出しを頂ければと思います。 ○吉野委員 吉野です。この点ですが、結論としては、これでやむを得ないかと思っておりますが、前回も申しましたように、これ、知財関係事件だけではなく、建築事件や医療事件においても、この専門的な知見を要する調停委員というものが本当に必要な場合というのは、決して少なくないといいますか、数としては少ないとは言えますけれども、実際上、かなり起こり得るということであります。   例えば、建築事件が前回例に挙げられたかと思いますけれども、確かに建築士の方は多数おられます。しかしながら、例えば、構造計算とか地盤などの分野が問題になる場合に、その分野を専門とする建築士さんというのは非常に少ないわけです。例えば、地盤を専門とする調停委員の方が、本当にこれまでに経験豊富な方が、近畿地方にも本当に僅かしかいないということで、その調停委員の取り合いになっちゃう。それからまた、そのような専門的分野について申しますと、当事者が事前に既にその専門的な知見を有する方に相談に行っておられるということで、その当該地方にはいないということも、十分にあるわけです。それで、調停委員の選定に困ったということも、実はあるわけです。それは、今申しましたように、知財事件に限らないということなんですね。   したがって、この問題は、今回は取りあえず将来の課題としてということでやむを得ないかと思いますけれども、今後更にいろいろな場面で検討を要する問題だろうと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   特段ございませんか。 ○髙畑委員 前回、確か河井委員の方からもあったと思いますけれども、私も弁護士としては、基本的には、司法へのアクセスということを常日頃から、ひまわり基金の設置も始め、そういうことに注力してまいっておりますので、できれば、もちろん当事者が希望する場合を除いては、様々なところで紛争の解決手続というのが行えると、しかも、調停ということであると、やはり出頭義務との関係で、今後分かりませんけれども、オンラインでできるとか、そういうことがあればまた別だとは思いますけれども、そういうこともございますので、時代の変化もあるかとは思いますけれども、現時点では、基本的には地方へのアクセスということを重視して、それが当事者の利益にかなうと考えておりますので、そこのところを御配慮いただければと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   このゴシックの部分については、基本的にこれまで御異論がない状況であったかと思いますけれども、それ以外に、知財以外のいわゆる専門的な調停については、今回は規律を設けるということはせずに、今の解釈においても、両当事者が合意した場合には、そのような移送というのは可能な場合はあるということを前提にして、先ほど髙畑委員の方からもありましたIT化等も今後進められるということも含めて、また将来の課題として、しかるべきときにまた御検討いただくということでありますけれども、特段御異論はないと理解させていただいてよろしいでしょうか。   それでは、これで、一応今回の部会資料全体については御検討を頂けたかと思いますが、何か全体を通して、あるいは個々的なところでも言い残したというようなことがございましたら、この機会に御発言を頂ければと思いますが、いかがでしょうか。   大丈夫ですか。   先ほど申し上げましたように、次回に取りまとめに向けた議論をお願いしたいと思いますけれども、今の段階ではよろしいですか。   それでは、本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   次回議事日程等につきまして、事務当局から御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日もどうもありがとうございました。   次回の日程は、2月4日金曜日、午後1時30分からを予定しております。場所は、法務省内の会議室を押さえてございます。   次回の会議では、今、部会長からもありましたように、本日の御審議を踏まえ、調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案の取りまとめを目指して、本日頂いた御意見等を検討させていただきたいと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。それでは、これにて法制審議会仲裁法制部会第17回会議は閉会とさせていただきます。   本日も熱心な御審議を頂きまして、ありがとうございました。 -了-