法制審議会 仲裁法制部会 第18回会議 議事録 第1 日 時  令和4年2月4日(金) 自 午後1時34分                     至 午後2時05分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  仲裁法制の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 それでは、予定の時刻になりましたので、法制審議会仲裁法制部会第18回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中、御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日は阿部幹事、衣斐幹事が御欠席と伺っております。   まず、前回に引き続き、本日はウェブ会議の方式を併用して議事を進めたいと思いますので、ウェブ会議に関する注意事項を事務当局から説明していただきます。 ○福田幹事 福田でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。   毎回同様のお願いとなりますけれども、念のため御案内をさせていただきます。まず、ウェブ会議を通して参加されている方の映像及び音声を再度確認させていただきます。私の声が聞こえておりましたら、手を挙げる機能を使ってお知らせいただけますでしょうか。   ありがとうございます。確認ができましたので、手を下ろしていただいて結構でございます。   それでは、ウェブ会議に関する注意事項を御説明いたします。ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては、ハウリングや雑音の混入を防ぐため、御発言をされる際を除き、マイク機能をオフにしていただきますようお願いいたします。審議において御発言される場合は、先ほどの手を挙げる機能をお使いください。それを見て部会長から適宜指名がありますので、指名されましたらマイクをオンにして御発言をお願いいたします。発言が終わりましたら、再びマイクをオフにし、同じように手のひらマークをクリックして手を下げるようにしてください。なお、御発言の際は、会場にお集まりの方も含め、必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。 ○山本部会長 それでは、本日の審議に入ります前に、配付資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日は、部会資料18-1「調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案(案)」と題する資料と、部会資料18-2「部会資料17からの変更点等の説明」を事前に送付させていただいております。資料の内容につきましては、後ほど事務当局の方から御説明をさせていただきます。 ○山本部会長 それでは早速、本日の審議に入りたいと思います。   まず、事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは、鈴木から説明をさせていただきます。前回の部会資料17からの変更点等は部会資料18-2で整理しておりますので、基本的には部会資料18-2に沿って説明をさせていただきたいと思います。   まず、第1の「3 適用除外」の(4)の規律について、前回の部会において、「日本若しくは外国の裁判所の許可を受け又は」という文言を削除するか否かについて御意見を頂きました。この文言により適用除外とするものが具体的に想定し難いのであれば、文言を削除することもあり得るのではないかとの御意見もございましたが、一方でシンガポール条約の文言とそろえることが望ましいとの御意見もございました。また、日本が将来的にハーグ国際私法会議において作成された民事又は商事に関する外国判決の承認及び執行に関する条約を締結する可能性も否定できないところ、その際に、この新法で「認可」の文言を維持しておくことにより、どちらの枠組みにより執行力を認めるべきかの解釈の指針になるとの御指摘もございました。このような御意見、御指摘を踏まえまして、部会資料18-1では「認可」の文言を維持することを提案しております。   続いて、部会資料18-2には記載がございませんが、第1の「5 国際和解合意の執行拒否事由」の規律において1点、訂正がございます。(6)の規律でございます。部会資料18-1、6ページを御確認ください。5の(6)の拒否事由の「当該事実が重大であり、かつ」の後ですが、読点が抜けてしまっておりますので、「かつ」の後に「、」をつける訂正をお願いいたします。   続きまして、部会資料18-2の方に戻らせていただきますが、第1の「6 その他」として、所要の規定を整備する旨の記載を追加させていただきました。ここでは、仲裁法の総則に設けられている規定と同じ趣旨の規定を設けることを想定しております。例えば、仲裁法第10条、第11条で、裁判所が行う手続に関して民事訴訟法を準用する旨や、最高裁判所規則で必要な事項を定める旨が規定されているところ、新法においても同様の規律を置くことを想定しております。また、仲裁法第7条において即時抗告期間が2週間とされているところ、新法の「4 国際和解合意の執行決定」の(10)及び(13)で規律している即時抗告の期間についても同様に2週間とすることを想定しております。   続いて、第2の方についても説明をさせていただきます。まず、第2の「1 定義」において、執行決定の対象となる特定和解は、認証紛争解決手続において成立した和解であることを前提としておりますが、前回の部会において、いわゆる行政ADRにおいて成立した和解について執行力を付与し得る対象とすることに関して御意見を頂きました。この点については、各手続の実情や根拠法令ごとに判断されることであり、本部会による提案が一定の方向性を示すものではないことを記載させていただきました。   また、「3 特定和解の執行決定」の(2)アの規律の特定和解の内容の後に、(成立した和解の条項及び当該和解に基づいて民事執行をすることができる旨の合意)という記載を追加したことについて、前回の会議において、法制的に重複しているのではないかとの御指摘も頂きました。この点に関しては、規律の実質に御異論があったというわけではないと認識しておりますので、文言自体は部会資料17のままとしております。今後法制化される際には、御指摘を踏まえて更なる検討をさせていただきたいと考えております。   最後に「5 その他」として、新法と同様の所要の規定を整備することを想定しております。 ○山本部会長 ありがとうございました。それでは、順次区切って御審議を頂きたいと思いますが、まず、部会資料「第1 新法の制定による整備」、これは資料18-1でいえば1ページから4ページぐらいまでですね、この部分について御議論を頂きたいと思います。第1の点ですね、どなたからでも結構ですので、また、どの点からでも結構ですので、御質問、御意見があれば御自由にお出しを頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○高杉委員 高杉でございます。今回、3のところの適用除外で御説明いただいた点でございますが、シンガポール条約と沿うという方向ですので、これでいいのではないかと私は思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに発言はございますでしょうか。よろしいですか。 ○吉野委員 問題になっておりました2ページの3、適用除外の(4)ですが、私はこれでいいと思うのですが、日本若しくは外国の裁判所の認可を受けという部分と、それから、日本若しくは外国の裁判所の手続において成立しという、この部分の順序を逆にした方がどうも分かりやすいのではないかという気がしてまいりました。といいますのは、日本若しくは外国の裁判所の手続において成立した国際和解合意、要するに外国の裁判所、日本もあるわけですけれども、裁判所において成立した合意と、それから、私的なといいますか民間の手続において成立したけれども裁判所において認可を受けた和解合意という、この二つがあるわけですが、どちらを先にするかだけの問題なのですが、裁判所の手続において成立した国際和解合意というものを前に持ってきた方が、私自身としては分かりやすいような気がしております。結局のところ裁判所が絡んだものについては適用除外ですよということを総体的に意味しているのだろうと思いますので、まずは裁判所自体において成立した和解合意は除外されると、それから、民間合意であっても裁判所の認可を受けたものは除外されると、こういうように理解するということの方が、文章全体といいますか、この中身全体として分かりやすいのではないか、個人的な感想かもしれませんが、意見を述べさせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございます。事務当局から何かコメントはございますか。 ○福田幹事 福田でございます。今の御指摘も踏まえ、法制化するに当たりましては、なるべく分かりやすい文言で、かつ、シンガポール条約の文言とも沿うような形で検討させていただきたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、続きまして、今度は部会資料「第2 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の改正による整備」、部会資料でいえば4ページから7ページの頭までですかね、この部分につきまして、また、どなたからでも、またいずれの点からでも結構ですので、御発言を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○吉野委員 吉野です。度々すみません。やはりこちらの第2についても、2の適用除外、5ページの上の方からありますところですが、(3)の人事に関する紛争、その他家庭に関する紛争に係る特定和解、これが除外されると、これについてはいろいろ既に議論があったところですので、中身についてあれこれするということではありませんが、この家庭に関する紛争というものが、民事執行法151条の2第1項各号に係るものを除いて全て除外されると、こういうことですが、よくよく考えてみますと、シンガポール条約がこの家庭に関する紛争の中で、いわゆる親族法と相続法、日本の民法でいえばその両方の部分とも除外をしているということですので、この日本における特定和解に関しても、やはり親族法だけでなくて相続法に関する紛争についても除外されると、こういう解釈をとることになるのだろうと思います。ただ、既に中間試案に対するパブリック・コメントの中でも、この相続法に関する分野に関しましては、例えば相続の登記等に関するものについて執行力を認めるべきではないかと、このような意見が出されていたところでもあります。そうしますと、今回の改正ではともかくといたしまして、相続に関する、実際上の相続を実現するという観点からの紛争に関しては、やはりこれは民間合意であっても、この執行力を付与すべき対象とすることも十分に考えられるのではないかという考えを持っております。この点は将来の課題として、今後の課題として検討を要するべき問題であろうと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。将来的な課題についての御指摘を頂いたかと思います。   ほかにこの部分、いかがでしょうか。特段ございませんか。よろしいでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。今回の18-1におきまして、条約の担保法としての新法及びADR法の双方につきまして、「その他」という項目を設けさせていただき、所要の規定を整備するということを先ほど御説明させていただきました。基本的には、仲裁法における執行決定の手続と同じような趣旨の規定を設けるとの説明をさせていただいたところですけれども、即時抗告の期間ですとか、事件記録の閲覧の問題については、これまで部会で取り上げることができなかったところでございます。仲裁法における仲裁判断の執行決定の規律を見ますと、先ほど説明したとおり、即時抗告の期間は2週間とされており、民事訴訟法の規律よりも1週間長めに取ってございます。さらに、記録の閲覧についても民事訴訟法の規定の特則が設けられておりまして、利害関係のある者しか基本的には記録の閲覧はできないとの整理がされております。繰り返しになりますが、この点についてこれまで明示的には御議論いただいていないところでありますけれども、今御説明を申し上げたような方向性で基本的には皆さん異論がないということでよろしいかどうか、確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○山本部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか、この点、その他、所要の規定の整備というところですが、従来、明示的な形では必ずしも御議論いただいていなかったということかと思いますけれども、何か御意見があれば御自由にお出しを頂ければと思います。   私個人のあれから言えば、何となく暗黙のうちにはこの仲裁法の総則的な部分は、同じ執行決定という性質上、同じようなことになるのだろうなという印象は何となく持ってはいましたけれども、確かに明示ではこれまで扱ってこなかった問題ですので、この際、何かございましたら御質問でも御意見でもと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいですか。これで基本的に御異論はないとうふうに理解させていただくということで。ありがとうございました。   それでは、最後になりますけれども、部会資料の「第3 民事調停事件の管轄に関する規律の見直し」、7ページ、一番最後のところですね、ここについて、これもどなたからでも結構ですので、御発言があればお願いしたいと思います。   よろしいでしょうか。   それでは、ここまでで第1から第3の論点全てについて一通り御意見を伺ったということになりますが、全体を通しまして、何かこの際、御意見等があればお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは、要綱案の取りまとめに入りたいと思いますけれども、ここまで御意見を伺った限りにおいては、この部会資料18-1の内容については特段の御異論は示されなかったと承知をしましたので、当部会における審議結果といたしまして、この調停による和解合意に執行力を付与し得る制度の創設等に関する要綱案を本日の部会資料18-1の内容で取りまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。   特段の御異論がないということでよろしゅうございましょうか。   それでは、仲裁法制部会といたしまして、全員一致をもって部会資料18-1の内容で要綱案を決定したということにさせていただきます。ありがとうございました。   なお、この要綱案につきましては今後、法制審議会総会に報告をすることになります。それまでの間、誤字等の訂正その他、実質的な内容を変更しない表現あるいは字句等の修正があり得るかと思いますが、そのような形式的な修正につきましては部会長である私と事務当局に御一任を頂きたいと思いますが、そのようなことでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、この点についてはそのような取扱いとさせていただきたいと思います。   今後の予定につきまして、事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。要綱案の取りまとめにつき、どうもありがとうございました。本日御決定いただきましたこの要綱案を報告する法制審議会の総会は、2月14日に開催される予定でございます。この総会におきましては、山本部会長から要綱案の内容について御報告をしていただいた後に、総会の委員の皆様に御審議を頂くことになります。総会における御審議の結果、要綱が決定されますと、直ちに法務大臣に答申されるという運びになる予定でございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかに、全体を通じまして、何か御発言を頂けることはございますでしょうか。最後の機会ということになろうかと思いますので、もしあれば、何なりと御発言を頂ければと思いますが。   大丈夫でしょうか、言い残したことはないでしょうか。ありがとうございました。   それでは、ここで私から皆様方に一言、御礼を申し上げたいと思います。本来は起立して申し上げるべきところですが、起立すると顔が映らなくなってしまいますので、着席のまま御挨拶を申し上げたいと思います。   当部会は2020年10月に審議を開始いたしました。折からのコロナ禍の下、基本的にはリモートで会議を行うということにならざるを得ませんでした。まさか今日までそれが続くとは必ずしも思ってはいなかったですけれども、最後までこのような形になってしまいました。非常に不自由な審議環境の中、委員、幹事、関係官の皆様の、その中でも活発な意見交換、あるいは建設的な意見交換ができ、昨年は仲裁に関する分割的な要綱案を御採択いただき、今回は最終的に調停の部分について要綱案を取りまとめていただいたということに厚く感謝を申し上げたいと思います。   本日のこの調停に関する部分につきましては、司法制度改革からADR法の制定、更にその後に至るまで、ずっと長い間議論がされてきた問題であります。その意味では、20年来の言わば宿題に最終的な答えを見いだすことができたということは大変意味があることでありますし、また、個人的にもADR法の制定に関与した者としては大変感慨深いものがあります。また、シンガポール条約との関係では、今回の規律ができて、さらに、シンガポール条約が批准されるということになりますと、非常に早い段階で日本が国際的な対応ができたということになりますので、国際的にも高い評価を受けられるものになるのではないかと思います。今回の要綱案が総会で了承を得られた暁には、先ほどの仲裁の暫定的保全措置の執行の点と併せて、また、シンガポール条約の批准等とも併せて、できるだけ早くこの要綱案の結果が実現されるということを希望したいと思います。   それから、やや個人的なあれですが、やはり古田さんのことについては一言触れさせていただきたいと思います。本日このような形で要綱案の取りまとめに至ったことについては、古田委員の貢献が極めて大きなものであったということは、皆様よく御承知のところかと思います。本日この場でこの時を共にすることができなかったということは、私としても痛恨の極みであります。しかし、どこかで古田委員はこれを見守って、あの調子で少し文句を言われているかもしれませんけれども、最終的に取りまとめができたということは祝っていただけているのではないかと思います。   最後に、繰り返しになりますけれども、委員、幹事、関係官の皆様の今日までの御協力に厚く感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。   それでは、最後に堂薗官房審議官の方から一言御挨拶を頂きます。よろしくお願いします。 ○堂薗委員 民事局担当の審議官をしております堂薗でございます。本来であれば局長の金子の方から御挨拶をすべきところ、金子は公務のため離席しておりますので、担当部局を代表いたしまして私の方から一言御挨拶申し上げます。私も着座のまま失礼いたします。   当部会における審議は、先ほどもございましたように、令和2年10月の第1回会議から本日まで計18回に及び、この間、委員、幹事の皆様におかれましては多岐にわたる論点について大変密度の濃い御審議をしていただきました。昨年10月には仲裁法の改正に関する要綱案を、そして本日、調停による和解合意に執行力を付与する制度の創設等に関する要綱案をお取りまとめくださいましたことは、山本和彦部会長を始めとする委員、幹事の皆様の多大な御尽力があったからこそと深く感謝しております。   今回の仲裁法制の見直しは、我が国の仲裁・調停に関する法制を国際水準に見合ったものとするものであり、国際仲裁及び国際調停を一体的に活性化させることにつながるとともに、我が国のADR全体の推進にも資するものであって、その意義は非常に大きいものと考えております。昨年10月には仲裁法の改正に関する要綱が既に答申されておりますが、先ほども御紹介いたしましたとおり、2月14日に開催されます法制審議会の総会で調停による和解合意に執行力を付与する制度等の創設に関する要綱が決定され、答申がされた場合には、所要の法案を速やかに国会に提出するとともに、早期に法律として成立するよう全力を尽くしてまいりたいと考えているところでございます。委員、幹事の皆様方には今後とも様々な形での御支援、御協力を賜りますよう、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。   これまでの熱心な御審議に重ねてお礼を申し上げまして、私の挨拶とさせていただきます。本当にありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは、これにて法制審議会仲裁法制部会における全ての審議は終了とさせていただきます。   改めまして、本日まで長期間にわたり御熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。 -了-