法制審議会 民法(親子法制)部会 第25回会議 議事録 第1 日 時  令和4年2月1日(火)自 午後1時35分                    至 午後3時34分 第2 場 所  法務省地下1階 大会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは、法制審議会民法(親子法制)部会の第25回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   最初に、事務当局佐藤幹事から、本日を含めたこの部会の開催方法等についての御説明をお願いいたします。 ○佐藤幹事 本日もウェブ参加併用で開催しておりますので、御注意いただきたい点を2点、申し上げます。まず、御発言中に音声に大きな乱れが生じた場合につきましては、当方で指摘をさせていただきますので、適宜御対応を頂ければと存じます。また、発言をされる皆様におかれましては、発言の冒頭に必ず名のってから御発言を頂きますよう、よろしくお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   本日は、委員の御欠席はないと伺っております。   それから、本日の審議に入ります前に、配布資料の確認をさせていただきます。これも事務当局の方からお願いを致します。 ○小川関係官 今回の配布資料は部会資料25-1、25-2のほか、本日の議事次第及び配布資料目録となります。   資料は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございました。御確認を頂ければと思います。   それでは早速ですが、本日の議事に入らせていただきます。本日は、前回会議での御指摘等を踏まえまして要綱案の原案を準備していただいておりますので、これに基づいて御議論を頂きたいと考えております。   なお、最終的にこの部会で取りまとめを行うのは部会資料25-1の要綱案の部分だけでございますので、基本的にはその要綱案の規律について御審議を頂きたいと存じます。ただ、これまでの審議の経過を明らかにするという趣旨で、部会資料25-2には簡単な経緯を記載していただいておりますので、その部分について御意見を頂く場合には、規律の実質的な内容の修正を求めるものであるかどうかということを明らかにしていただいた上で御発言を頂ければ幸いに存じます。   ということで、本日の審議に入らせていただきますが、まず最初に、懲戒権に関する規定の見直しについてでございますけれども、これについては第24回で御議論を頂いた要綱案の原案から変更点がございますので、その内容につきまして事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○砂山関係官 それでは御説明いたします。お手元の部会資料25-2の第1を御覧ください。   「第1 懲戒権に関する規定の見直し」につきましては、本文の2において従前、体罰その他の心身に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないとの規律を設けることを提案していたところですが、本部会資料ではこの点の表現を修正し、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないとの規律を提案しております。従前提案しておりました、子の心身に有害な影響を与える言動との表現に対しては、不当に有害な影響を与えることを禁止するという本部会が提案する規律を適切に表現できていないのではないかとの御指摘もあったところです。そこで、事務当局において改めて検討した結果、子の心身に有害な影響を及ぼす言動について、これを更に具体化し、禁止される行為の範囲をより明確にすることが相当であると考えられたことから、そもそも体罰を含む心身に有害な影響を及ぼす言動を禁止する趣旨が、子の心身の健全な発達という子の利益の実現を図る点にあることに鑑み、新たに子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動という表現を提案することといたしました。   補足説明でも記載しておりますが、今御説明したとおり、この修正の趣旨は監護教育権の行使として禁止される行為の範囲をより明確にしようとするものであって、従前の提案の実質はそのまま維持し、親権者において禁止される行為の範囲に変更を加えるものではございません。また、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に該当するかの判断につきましては、従前子の心身に有害な影響を及ぼす言動に該当するかの判断として記載してきたところと、その実質において変わるところはありませんが、本部会資料では確認的に、その判断に当たって、有害な影響という結果の発生自体は必ずしも必要ではなく、当該行為が社会通念に照らして社会的に相当かを判断することや、親権者が有害な影響を及ぼさない行為であると考えていたとしても、そのような主観は判断の基準となるものではなく、社会通念に照らして客観的に監護教育権の行使として相当ではないと認められる行為は、子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に当たることなどを記載しております。また、今回の修正によって体罰の位置付けが変わるものでもございませんので、体罰の定義に当たる限りは当然に心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に当たるものであり、親権者の監護教育権の行使として許容されないことについても、確認的に補足説明に明記しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。前回の案から文言について修正が加えられておりますけれども、その趣旨について御説明を頂きました。   この修正を含めまして、第1の点につきまして御意見があれば、頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いを致します。 ○棚村委員 従前が、心身に有害な影響を及ぼす言動というので、かなり広い範囲の行為や言動を含んでいました。今回も、子の心身の健全な発達ということで一つ縛りを掛けるという趣旨では、明確になるのではないかと思いますので、基本的にはこの提案に賛成いたします。WHOなどでも、ヘルスケアとか、あるいは教育の分野でも、子どもの心身の健全な成長及び発達については、英語でいうとヘルシー・グロース・アンド・ディベロップメント・オブ・ザ・チャイルドという表現は、正に子どもの利益を具体化して健やかな成長を促すという国際的な理念にも合致すると思います。そこで、私もこの修正の提案について賛成をしたいと思います。成長発達というふうに付ける場合もありますし、発達だけでも十分にその意味を表しているのではないかと思いますので、特に字句の修正は必要ありません。ただし、このような趣旨で言動の中身を更に明確にしたり、規範的な意味合いで、指針的な、行為規範的な意味合いを付けるためにも、健全なという言葉を入れることによって、更に分かりやすく明確になったと考えますので、この提案に賛成したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員からは、この修正について賛成であるという御趣旨の御発言を頂きました。会場のほかオンライン参加の委員、幹事の方々からもたくさん挙手を頂いておりますが、磯谷委員、井上委員、山根委員、久保野幹事という順番で御発言を頂ければと思います。 ○磯谷委員 ありがとうございます。今回のこの修正というのは、率直なところ、これまでこの部会では特に問題とされてこなかった点について、本当に最後の最後になっての修正ということで、少し議論の進め方として、どうだったのかなと思うところがございます。それを踏まえて、少しこれから意見を申し上げますけれども、結論的には、私としてはこの修正案には賛成いたしかねるところでございます。   まず第1に、今回、子の心身の健全な発達に有害な影響という文言になっていますけれども、実際に児童福祉の現場において、いろいろな虐待とか不適切な養育などがありますけれども、発達にまで影響がある、あるいはあったといえるようなケースというのはそれほど多くないという印象を持っています。身体的な発達に影響があったというケースはかなり少ないと思いますし、心理的な面についても、はっきりと子どもの心の発達に影響があったといえるケースはやはり少ないと思っています。   事務当局の補足説明の中で、今回のこの規定の目的として、心身の健全な発達という子どもの利益の実現を図ると書いてあります。もちろん健全な発達というのが子どもの重要な利益であるということは否定しませんけれども、それだけではないと思います。子どもは、何より弱い存在です。そして、今を生きる存在なのです。健全な発達に影響があるかどうかだけではなくて、今傷付けられないことが大切だと思います。児童虐待の現場でも当然、発達という視点を持って仕事をしていますけれども、決して発達に有害な行為だけを防止しようと考えているわけではありません。発達に影響があるかどうかはともかく、今、子どもが苦しんでいるのであれば、それは助けなければいけないし、今、親が子どもの心身に有害な影響を与えているのであれば、やはり止めなければいけないと考えています。そのように考えると、子どもの利益を発達の観点からだけ捉えるというのは正しいとはいえないと思います。今回の修正案では、修正前の案では禁止できていたものが、この健全な発達というふうな言葉が入ることによって、それに影響があるものに限られてしまう、一部漏れてしまうことになりかねないと考えています。これが一つ目で、要するに、禁止の範囲が狭くなってしまうおそれがあると思います。   二つ目は、禁止の範囲が曖昧になるという懸念があると思います。今回、新しい821条というのが、今子育てに向き合っている親に対するメッセージだと思っています。この健全な発達という要件は、将来に関係してくる要件になりますので、どうしてもそこは曖昧になってしまうと思うのです。例えば、子どもの心身を傷付けている親に対して注意をする場面を想定しますと、親から、「いや、一時的には子どもは苦しむかもしれないけれども、発達にまで有害かどうか分からないだろう。」というような反論が予想されると思います。今、心身に有害かどうかということは、例えば子どもの心理判定などによって客観的に親に示すということが可能ですし、実務的にもそういうことをしてきました。しかし、健全な発達に有害ということになりますと、児童相談所としても、説得力をもって親に話ができるかというと、それはなかなか難しいと思うのです。この部会の最初の時点から、この規定のメッセージ性が非常に重要だということは繰り返し申し上げてきたと思いますけれども、今回の修正案はそこが曇ってしまうと思っています。   三つ目ですけれども、体罰という概念について影響を与えかねないと思っています。先ほども事務局から御説明がありましたように、事務局としては体罰の範囲は変わらないのだというふうな御説明はございました。しかしながら、一般的な法の解釈からしますと、「その他の」という規定ぶりとなりますと、基本的にはその前にあるのは例示であって、中核的にはその後の文言が要件だと考えられていると思います。そうだとすると今回、心身の健全な発達という言葉が入ることによって、体罰の解釈に影響し、健全な発達に影響がない程度の体罰であったら許されるのではないかといった、解釈上の懸念が生じかねないと思っています。これは、事務当局はそうではないという御説明にはなるのでしょうけれども、条文というのはこれからある意味、独り歩きをしていくものですので、そこのところはやはり懸念は払拭できないと思います。   言うまでもなく、体罰の禁止というのは昨今の児童虐待の深刻化の中で、国会の方で児童虐待防止法改正によって導入されました。そして、背景としては、世界的にもこの体罰禁止の流れがあり、国連においても、いかに軽いものであっても、あらゆる形態の暴力をなくすべきだというスタンスであって、日本は正に暴力防止のパスファインディング国として世界をリードする立場になっている。そういう中で、この体罰について解釈上の疑義が生じてくるということは、やはり避けるべきであろうと思います。   以上の理由から、やはり今回の修正案というのは私としては賛成いたしかねるということになります。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回、最後の段階になってこのような修正が出てきているという手続についての御批判を頂戴いたしましたが、それとは別に、内容については3点について御指摘を頂いたものと受け止めました。一つは、健全な発達ということを理念として掲げることについては磯谷委員も同意されていると理解を致しましたが、その上で、このような文言が入ることが解釈を制限的なものにするのではないか、あるいは曖昧なものにするのではないかという御懸念を示され、また、それとは別に体罰という文言の解釈に間接的な影響を及ぼすことがあるのではないかという御懸念を示されたと理解を致しました。どうもありがとうございました。   まず一通り皆さんの御意見を伺いたいと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。   まず、私も今回この最終場面に来て修正案が出てきたことに関しては、少し唐突感を持っております。ただ、事務当局の提案で委員の皆さんの意見がまとまるのであれば、それを否定するものではありませんけれども、前回までの記載に賛同していた立場から、意見を申し述べさせていただきたいと思います。   まず、一般の生活者の目線で規定を読むと、何をもって健全な発達といえるのか、発達の観点から判断することは非常に難しいのではないかと思います。また、健全な発達の解釈によっては、子に対して不当に精神的な苦痛を与える行為が許容される余地があると親権者に解釈されることになり、法の実効性が損なわれる懸念があるのではないかと思います。例えば、注意をしていてもいたずらを繰り返す子どもに対して、親が、この子は健全な発達をしていないと考えられるので厳しくしつけてよいと解釈をし、虐待を正当化する口実とする可能性はないでしょうか。国民全体が、年齢や発達状況を問わず全ての子どもに対して有害な影響を及ぼす言動をしてはいけないという共通認識を持ち、児童虐待をなくすという社会情勢を成熟させるためには、前回までの体罰その他の心身に有害な影響を及ぼす言動のままでもよいのではないかと思っておりますが、冒頭にも申し上げましたけれども、修正案に対する委員の皆様の賛成意見が多数ということであれば、それを否定するものではありません。 ○大村部会長 ありがとうございます。井上委員からは、前回までの案と比べたときに、前回までの案の方がよろしいのではないかという御意見と、しかし、この案で意見がまとまるのであればそれでも結構だという御感触を頂いたと理解を致しました。 ○山根委員 よろしいでしょうか。お願いします。私もやや最初は違和感を感じたのですけれども、この補足説明を読んで、それから事務局の説明を聞いて、納得をしたところでした。また皆さんの意見を聞いて、少し揺らいではいるのですけれども、私が提案しようと思っていたことは、この親権を行う者は、から始まる文章が長いということ。度々意見を申し上げていたところでもあるのですが、一文が長いとなかなかすっと入ってこないということがあると私は思っているところでございまして、今回も皆様の意見を聞きながら、また新たに一文を読みますと、この体罰のところにどう係ってくるかということもいろいろ懸念を持ったりもしますので、私としては、その辺りで一度文章を区切って二つの文にして、何とか最終的にいい案にならないかなということを少し考えております。御検討いただければと思います。   それと、もう1点よろしいでしょうか。3ページの12行目からの文章なのですけれども、心身の健全な発展に、から始まっていて、いかなる行為が心身の健全な発展に有害な影響を及ぼす言動かということで、この説明文の最後に、客観的に判断されるものであって、親権者の主観を基準として決せられるものではないという言葉が入りました。これはとてもはっきりして、落ち着きがよいというか、大事なことが確認できて、よくなったと感じました。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見としては、内容についてはこれでよいのではないか、ただ、文章が長いので、もう少し何とかならないかということかと受け止めさせていただきますけれども、そういうまとめでよろしいでしょうか。 ○山根委員 はい、皆さんの御意見も勘案して、二つの文に分けて、無理なく納得できるものになればと思っています。 ○大村部会長 分かりました。皆さんの御意見を伺った上で、という御意見であると承りました。 ○久保野幹事 ありがとうございます。私も内容としましては、元々の修正前の文言でよろしかったのではないかという意見でございますけれども、しかし、今回懸念が表明されている点があるということで、その懸念にこたえて、この体罰等禁止の条文化を実現するためには入れる必要があるということでありましたら、賛成を致したいと思っております。ただ、文言につきまして若干心配をしておりまして、それは、発達という言葉が狭いような印象を受けておりまして、冒頭の棚村先生の御発言にありました、成長及び発達というふうに使うことが多いように思われますし、成長及び発達とできれば、その方が望ましいのではないかと思います。   といいますのも、先ほどから議論が出ておりますとおり、この文言は間接的に監護教育権行使の指針を示す、その指針としての子どもの利益とはどういうものなのかということをより具体的に法文上示すという意味合いを持っておりますので、その点から慎重な言葉遣いが必要なのではないかと思っているところです。それで、繰り返しになりますが、発達ということだとやや狭いのではないかという印象を持っておりましたけれども、先ほどの磯谷委員の御意見等を伺うにつけ、やはり狭いのではないかという懸念を強めております。   児童福祉法の1条ですとか、あるいは厚生労働省の体罰に関する検討会の取りまとめでも、やはり成長、発達ということで、体罰は成長、発達に有害であるという文言の使い方もしているようですし、検討できればいいのではないかと思います。   以上です。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。今回の修正について御懸念を持つ立場というのがあるとすれば、それに対する対応も必要であろうという御意見と、それを前提にした上で、心身の健全な発達の、発達の文言については工夫の余地があるのではないかという御指摘を頂きました。 ○山本委員 ありがとうございます。そもそもこの議論は、こう言えばこう返される、ああ言えばこう返されるという、いわゆる反論に対する歯止めみたいな、その限定性をだんだん増やしていっているというプロセスにあると思うのです。これは磯谷委員が言われたように、この文言においても、またそれは反論が生じると。これはだんだん、このまま行くと、自縄自縛状態になると感じました。確かにどこで止めるかというのが大きな問題で、心身の健全な発達という言葉はつまりこういう意味ですという、附帯意見の方で、よく分からない反論なり議論を封じるような手立てを打った上で使うのであればオーケーだと思うのですけれども、そこはどう言ってもそれに対する反論は出てくると。要は、最初の1ページ目の説明の32行目ですかね、不当に子を肉体的又は精神的に傷付けることを防止するという、この趣旨からだんだん離れていっていないかと。今正に実行行為としてそれはいけないよと、それはやめましょうと、まずいですよと、結果どうかは分からないけれども、そうすることはよくないよと止めるというのが多分、体罰並びに有害な影響を与える行為ということの意味だった。だから、結果論ではなくて、そこでやっては駄目よと止めたいということだったと思うのです。だから、磯谷委員が言われたように、結果子どもがどういうふうに傷付いているかとか、あるいは子ども自身が今、健全かとかいうことへ戻ってしまうというのは、少し議論をややこしくさせているだけで、元々シンプルにそういう行為をやめましょうという、そこの趣旨がどう生かされるかということにポイントがあるのかなと。そういう意味では、附帯意見としてそこが明確にできていないと、どういう言い方をしても反論は生じると、その反論に対して説明がないということは具合が悪いと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。山本委員、御趣旨は分かりましたけれども、結論としては、今回の案は許容可能だという御趣旨であるのか、あるいはこれは望ましくないという御趣旨なのか、その点についてもう少し御発言を頂ければと思いますが。 ○山本委員 附帯意見として、そもそもの目的を明確にするということがあれば、これでも構わないと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。説明の方を十分にすれば、これでも構わないということで御意見を頂戴いたしました。 ○水野委員 ありがとうございます。   磯谷委員の御意見は、理由のない危惧ではないとは思うのですが、恐らくこの方が国会を通りやすいということなのではないでしょうか。私は平成8年の婚姻法改正要綱を作った者の一人として、国会を通らないことのトラウマを抱えております。そういう意味では、もし健全な発達を加えても致命的に意味が変わらないのであれば、そしてこの言葉を加えた方が通りやすくなるのならば、加えた方がいいだろうと判断しております。トラウマのせいではあるのですが。   それから、この言葉を考えてみまして、磯谷委員が言われるように、それほど体罰への肯定的影響や、あるいは健全な発達という言葉の追加が虐待を虐待でなくしてしまうリスクは、それほどないように思うのです。体罰のように子どもに有害なことは、もちろん発達に影響があるのは間違いありませんし、この条文になったからといって、客観的に虐待に当たることをしつけとして正当化することは、許されないだろうと思います。逆に、もしかするとむしろこの言葉が加わるせいで、今有害とはいえなくても発達に影響があるので禁止されることもあるように思います。例えば、所詮女の子なのだから勉強しなくていいよとか、思春期になったらどうせ男の子に負けるのだから、そんなにがんばらなくていいなどと、ネガティブな言葉を繰り返して成長の意欲をそぐようなことは、その時点では有害とはいえないかもしれませんけれども、健全な成長、発達を害するという意味では、むしろ広くなるという可能性もあるように思います。   ただ、久保野幹事が言われたように、成長及び発達という言葉にした方が体罰が外れるリスクが低くなると皆さんがお考えで、そして、それを加えたからといって国会が通りにくくなるということがないのでしたら、成長という言葉を付け加えていただく方がニュアンスはよくなるような気はいたします。 ○大村部会長 ありがとうございます。水野委員からは2点御指摘があったかと思います。一つは、国会審議を念頭に置いたお話がありましたけれども、国会も含めて国民一般に受け入れられる案として文言を考えるという観点からは、これでもよいのではないかということ。もう一つは、より積極的には、健全な発達という文言が入っていることによって、現在影響がないというものについても中長期的な観点からネガティブな評価を下すことができるという可能性があるという御指摘だったかと思います。 ○窪田委員 幾つか発言させていただければと思いますが、まず最初に、磯谷委員から御指摘があった点については、私自身も非常によく理解できます。というのは、最初にこれを見たときに同じような印象、同じような懸念というのを持ちましたので、磯谷委員がおっしゃること自体は非常によく理解できます。   ただ、今まで出なかった、ほかの方と異なる視点からのということになるかと思いますが、私自身は元々この、体罰その他のという後ろの部分が適切に限定されているのかどうか、やや懸念を持っておりました。つまり、子どもが痛いものであれば駄目、つらいものであれば駄目というふうになりかねないと。でも、恐らく重要なのは、社会的に許容されているかどうかという、やはり客観的な不法性、不当性とか、そういった行為態様に対する評価というのが伴っていないと、適切に限定されているとはいえないのではないかという懸念を持っておりました。これは確か前回だったか前々回の法制審で、そうした懸念は持っていたのだけれども、みんなそれほど違うことを考えているわけでもないだろうし、有害な影響ということの中にそれを取り込むこともできるかもしれないので、もうこれで結構だという趣旨で発言しましたが、潜在的にはこれで十分に限定されているのかどうかやや不安があったということです。   それを踏まえて見たときに、今回、子の心身の健全な発達というふうな形で絞りを掛けるということが違和感はないのかと言われると、結構違和感はあるのですが、しかし、そうした行為態様に対する制約というのをある程度縛りを掛けようということがこの中に示されているのかなと考えて、理解いたしました。その意味では、繰り返しになりますが、言葉としてはやや違和感を持っているものの、こうした形で縛りを掛けるということ自体はあり得るのかなという理解でおります。   その上で、やはり一番気になる点は、健全な発達という、言わば将来の話をここに持ち込むことというのがどんな影響があるのだろうかという点ですし、磯谷委員からの御指摘の中にもそういう部分が含まれていたのだろうと思いますが、この場合の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動であるかどうかを判断するのは、その言動の時点ですので、やはり客観的に判断されざるを得ないし、客観的に判断すべきものだということが前提になるのだろうと思います。その意味では、最終的にはここに書かれていることは社会通念上、健全な発達に有害な影響を及ぼし得ると考えられるような言動、それらが禁止されているのだということになるのだろうと思いますし、そういうふうに読めば、一応納得のできる提案なのかなと考えております。   ただ、もちろんこの条文だけを見れば、条文というのは独りでどんどん歩いていくもので、必ず条文の後ろに補足説明を付けてくれるというような六法があるわけではありませんから、これを非常に不当な形で使われるという懸念を完全に払拭することはできないのかもしれません。ただ、それは恐らくどうやっても、いずれの側からも広すぎる、狭すぎるということに対しては、何らかの形でずっと説明をしていかざるを得ないのだろうと思いますし、そういう前提で、今回の提案というのはあり得るのかなと考えております。   私自身の意見は以上ということになります。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からは、現在の文言がベストかどうかは分からないけれども、一定の文言上の枠をはめておくということ自体は必要なのではないか、それがどのように機能するのかということについてはいろいろ考え得るけれども、これで運用していくことはできるのではないかという御感触をいただいたと理解を致しました。 ○磯谷委員 ありがとうございます。まず一つだけ、反論というとおこがましいのですが、健全な発達によってクリアになるというお話が事務当局からもありました。ただ、元々有害という文言にも曖昧な点が残っているとはいえ、有害というのは単に一時的に苦痛、嫌だなと思ったりすることではなく、「害」なのです。つまり、そこのところは単なる苦痛ではなくて、それがやはり子どもの健康とかそういったものに悪い影響があるという、ある意味少し規範的な意味といいますか、そういったものを含んでいたのだろうと思うので、そういう意味では今回、この健全な発達ということを付け加えることによって、更にまた何か曖昧さが増す一方で、不当なものを排除する意味としてはそれほど大きくないのかなと感じてはおります。   ただ、今、皆さんの御意見をいろいろ伺いまして、私の意見そのものは変わりませんけれども、仮に、もしこういう形でまとめるということになれば、どなたかも御発言になっていたと思いますけれども、やはり今後の事務当局による説明というのは非常に重要になってくると思いますし、今回そういう意味では、確かに事務当局はいろいろ御配慮いただいて、体罰の考え方についても、それから健全な発達の解釈の仕方についても、説明はしていただいていますけれども、この辺りをより一層、徹底するような必要性というのは、これは強く強調させていただきたいと思います。   一旦はこの程度にさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。磯谷委員からは二つ御発言があったかと思います。一つは、従前の有害な影響という言葉自体が規範的なものを含んでいたのであって、何かあれば直ちにそれに当たるというわけではなかったのだという御理解を示していただきました。それ自体が規範的なものであったのに、更に文言を加えるとより曖昧になるのではないかという御指摘だと理解を致しました。もう一つは、これも既に御発言の出たところですけれども、部会で取りまとめるに当たって、今ここで皆さんが御発言になっているような趣旨の提案であるということでこれを取りまとめるのであれば、その趣旨が十分に伝わるような説明の仕方がいずれにしても必要であろうという御意見を頂戴いたしました。   そのほかに御発言、いかがでございましょうか。 ○幡野幹事 ありがとうございます。これまで様々な委員、幹事からの御意見の中で、この健全な発達という文言が加わると縛りが掛かるという御発言があったのですが、補足説明を読ませていただくと、元々有害な影響を及ぼす言動というものに一定の中身があって、健全な発達という文言を加えてもそれに縛りを掛けるものではないという趣旨の説明が書かれていました。私自身は、この文言はどういう観点から有害な影響を及ぼすものなのかという有害性を判断するための指針として付け加わったものであり、この文言がなかったときとあるときで有害な影響を及ぼす言動の中身に変更はないと理解をして、そうであれば、このような文言が付け加わることについても賛成したいと考えておりました。   そのようなわけで、まず、補足説明の中でそのような趣旨であるということを更に明確にしていただくとともに、2ページ目の3行目からでしょうか、有害な影響に当たるものではない行為を明確にする趣旨であると書かれているのですけれども、ここでいう有害な影響に当たらないものの例を挙げていただくと、どういう目的でこの文言が付け加えられたのか、あるいは有害な影響を及ぼす言動ではないものがどういうものなのかについてイメージすることができ、この文言が予想しない形で解釈されないようにするために有益なのではないかと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。幡野幹事は、子の心身の健全な発達という文言はこの規定を運用する上での指針を示すものだろうという理解を示されて、それにふさわしい形での説明というのを工夫する必要がある、特により広くそうした説明をしていくことが必要なのではないかという御意見を頂戴いたしました。 ○石綿幹事 私は事前に資料を見た際には、健全な発達ということを追記することで一定の限定を加えようという意図は理解をしていたところでしたので、基本的に原案の方針に賛成なのです。ただ、磯谷委員などの御発言を聞いて、必要以上に狭くなってしまうことに懸念を持たれる方がいらっしゃるということも理解をしました。なぜだろうと考えたときに、従前は有害な影響を及ぼす言動であれば多分、その行為がされた時点で判断されるというふうに多くの方が考えていたと思うのですが、そこに発達が付いたことによって、将来への影響も見ていくのかということになって、懸念が生じているのかと思います。   もし可能であれば、窪田委員が先ほど御発言の中でおっしゃったような、健全な発達に有害な影響を及ぼし得る言動という表現であれば、現時点のことも判断し得るのではないかとも思いました。条文自体の文言を変えるということが難しいのであれば、今のことを判断するということを補足説明にしっかり書き込んでいただくということがよろしいのではないかと思いました。また、久保野幹事の御発言があった、成長及び発達ということで、成長という文言を入れることによって、ある程度、今というニュアンスが含まれるのであれば、それも一つの案なのかもしれないと思っております。いずれにしても、文言あるいは補足説明のところでもう少し、今の時点を見ていくのだということを強調ができれば、御懸念が解決でき、よりよい案になるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。石綿幹事からは、基本的にはこのような文言を入れるということに賛成だけれども、御懸念に対して何らかの対応をする余地があるのではないかという御発言を頂いたと理解を致しました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。私自身は、従前の有害な影響を及ぼすという文言であっても、今回の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼすという文言でありましても、いずれでも説明が十分にされるということが非常に重要であり、逆に、十分な説明がなされなければ、いずれの文言の下でも、これが立法された場合に、その趣旨に反するような反論を試みてくるような者というのは出る可能性があるのだろうと考えております。従前の有害な影響という文言でも、長い目で見ればこれは有益なのであって有害ではないのだといったようなことを言う人がいるのではないかということを危惧いたしますし、他方で健全な発達というのは、確かに将来という視点がそこに入ってくるということは、磯谷委員その他の方々のおっしゃるとおりのところがあるかとは思いますけれども、私が思いますに、子の、日々の、毎日の生活というのは、その一日一日が発達の過程であって、そこに何らか有害な影響が及ぶのであれば、それは取りも直さず子の健全な発達に有害な影響を及ぼすものである、したがって、何も大人になってどうなるかということを必ず論じなければならないものではないという理解は、今回御提案の文言の下でも十分に可能なのではないかと理解をしておりまして、そういう趣旨で、事務局からの御説明でも、従前と規律の実質が変わるものではないという御説明がされているのかなと受け止めたところです。   ですので、最終的にこの部会の外の方々を含めて広い納得が得られるのがどういうものかということは、いろいろな御意見があるところかとは思いますけれども、こうした趣旨の規定が実際に盛り込まれるということは非常に重要なことだと考えておりますので、そのためにベストだと委員、幹事あるいは関係者の方々が御判断になるようなものであれば、私自身はそれに反対するつもりはないということを申し上げておきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。垣内幹事からは、従前の案、今回の案、いずれにしても十分な説明をする必要があるし、十分な説明をするということによって懸念を払拭していくべきであるという点では同様なのではないかという御指摘を頂きました。 ○棚村委員 私が最初に賛成というふうに述べさせていただいたのは、委員の皆さんからも出ておられるように、これを入れる場合と入れない場合とで具体的にどういうふうに違うのかという点でした。つまり、特に820条の規定での監護教育をするに当たって、人格の尊重というのが出てきますし、そして、子の年齢及び発達の程度に配慮をすると続きます。更に、3番目に体罰そのほかの言動の禁止というフレーズが出てきます。そこに子の心身の健全な成長及び発達というのがあると、なおいいのかもしれないというのが、私が先ほど少し言い掛けた話でした。   磯谷委員がおっしゃる懸念もよく分かるのですけれども、この点が将来にわたる影響みたいなことだけに焦点が当てられてしまい、現在行われている行為を許容したり、取り上げない可能性が出てこないかという御懸念であるように思われます。しかし、この点も既に窪田委員からお話がでていたと思うのですけれども、お子さんの成長、発達というのは本当に日々重ねられていることの延長線上のことではないかと思うのです。そうだとすると、基準時というとおかしいのかもしれませんが、それは正に親権を行う者が今現在から行う行為も含めて、当然そういうようなことで有害であるとか不当である行為の結果が将来にわたっても非常に悪影響を及ぼすという可能性はもちろん出てくると思うのです。ただし、私たちが考えている将来というのは、少なくとも親権を行っている未成年の間のところ辺りまでが実際には問題になってきて、その後のことについてはなかなか親権者として制約を掛けていくということはかなり難しいことではないかと思いました。   ですから、ある意味では現在の成長、発達にとって非常に有害な行為と、それから将来にわたってもいろいろな影響を及ぼすであろうということについて、私自身は、有害な影響を及ぼす言動という中に含まれうるものであるように思いました。健全な発達というのは確かに一般的、抽象的で広範囲なものを含むのですけれども、どういう観点からそういうことが不当であり許されないかが問題であって、どのような形で抑制されなければいけないかということを考えて行く必要があるように思います。先ほどから言いますように、国連の子どもの権利委員会でも、子どもの健やかな成長及び発達、あるいは、豊かな充実した成長発達それ自体が、もともと子どもの利益や権利を代表しているように考えます。59か国の法令などを調べたときに、個人の尊厳という言葉とか、ディグニティとか、子の人格などがキーワードになっており、尊厳を害する、人格を損なう屈辱的な行為は禁止するという文章が共通に見られました。もちろん体罰も出てくるのですけれども、このような趣旨を総合すると、この文章そのものが、人格の尊重、年齢や発達、意思とか参加みたいなものも促すというような理念で作られており、体罰についても、体罰以外に精神的な侵害とか、人格を損なうとか、尊厳を損なう行為は禁止するみたいな国もあって、健全な発達という文言の趣旨も、個々の意味というだけでなく、文章全体の中で解釈する必要があります。そういう意味でいうと、体罰だけでは狭すぎるというのは皆さんの一致した意見でしたし、もう少し広い範囲の中で、子の心身の健全な発達というキーワードを入れるということによって、一層親の行為の有害性とか不当性というのを客観的に示せるのではないかと解されます。もちろん、抽象的で一般的な表現になるのは、致し方ないことなのですけれども、少なくとも一番端的に表すようなキーワードとして入れるということでいいのではないかと考えます。もちろんどのような表現を採用しても様々な御懸念はあると思いますけれども、成長及び発達というような形で入れることでもいいですし、私は先ほど言ったように、発達という言葉だけでも、前のところに既に年齢とか発達ということも出ておりますので、むしろ健全な発達ということを一つのキーワードとして、有害な行為というものはどういう観点から判断されるのかという一つの大きな指針を示したという点では、具体的な規範としての意味内容がむしろ明らかになっているのではないかと思います。明らかにといっても当該行為の有害性や不当性については総合的に判断せざるを得ないことにはなると思うのですけれども、そういう趣旨に受け取っていただければ、一般の皆さんにも割合と理解をしていただけるかなという趣旨で、賛成したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員から再度、この提案に賛成だという御意見を頂きました。新たに提案されている案の全体の中に置いて考える必要があるのではないか、一定の指針を示すということで、この文言を追加するということでよいのではないか、あるいは一般にもこれで受け入れられるのではないかといった理由を挙げていただきました。 ○中田委員 ありがとうございます。先ほど山本委員がおっしゃったと思うのですけれども、幾つかの考え方の違いがあって、それを反映していこうとすると、どうしても詳しくなってしまい、その分、曖昧になっていくというジレンマみたいなものがあるのだろうと思うのです。ただ、ここで重要なのは大きな方向付けをするということでありまして、今回の御提案はやはり非常に大きな方向付けを示しているのではないかと思います。そうしますと、大勢の、できるだけ多くの人々の共感、納得を得るというためには、今回の御提案の程度であれば許容できるのかなと私は感じております。   ただ、一つだけ、御質問といいますか、お伺いしたいことがあるのですけれども、今回の御提案が障害を持った子どもについてどのように適用されるのかということに関心があります。児童福祉法の中では、障害児の健全な発達とか、あるいは児童の健全な発達という言葉が出てくるわけですけれども、この御提案が障害を持った、特に重い障害を持った子との関係でどう適用されるのかについて、御説明を追加してくださればと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。中田委員から2点について御発言があったかと思います。ひとつは、大きな流れ、方向性ということで考えた場合に、このような文言の追加はあり得ることなのではないかという御意見。それから、もう一つ、健全な発達という文言が障害を持つお子さんなどとの関係で問題を惹起することはないのだろうかという御懸念を示していただいたかと思います。2点目は質問という形で出していただいておりますので、事務当局の方でもしお答えがあれば、伺いたいと思います。 ○砂山関係官 今の御質問の点について、事務当局としての考えを御説明いたします。障害を持つ子との関係で、今回の規律についてどのような位置付けなのかというところでございますが、今回提案をしております体罰その他の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動を禁止する規律につきましては障害を持つ子の親権者についても妥当する規律であると考えております。子の心身の健全な発達の内容につきましては、子の特性に応じてその内容も異なるものと考えられるところでありますが、このような子それぞれの特性に応じた適切な監護教育の実現を図るということを念頭に、子の年齢及び発達の程度に配慮すべき義務というものを規律することを提案してきたところでございます。   また、本部会でも行ったヒアリングにおきましても有識者から、障害を持つ子について適切に配慮された子育てによりその発達を支援する重要性、障害を持つ子との関係でも体罰がその後の発達に影響を及ぼすことが指摘されております。こういったところを踏まえますと、障害を持つと否とにかかわらず、子の心身の健全な発達を実現する必要性は変わらないものと考えております。また、現行法には障害を持つ子との関係でも心身の健全な発達が図られるべきとするものが既に存在しておりまして、例えば児童福祉法においては、障害を持つ子を含む全ての児童について、心身の健やかな成長や発達が図られることをその理念として規定しているものと認識しております。この点につきましては児童福祉法を所管しておりますのが厚生労働省ですので、厚生労働省からも御意見を頂戴できればと思いますが、よろしいでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。今のような御説明でしたが、厚労省の岸本委員、挙手を頂いているでしょうか。もしよろしければ、お願いを致します。 ○岸本委員 委員の厚生労働省子ども家庭局、岸本でございます。今、児童福祉法について少しお話がございましたので、所管の立場から御説明を申し上げます。御指摘のとおり、児童福祉法第1条の規定におきまして、全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有するとされております。また、児童福祉法の第2条第2項におきましても、児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負うという規定がございます。児童福祉法におきましては、障害のある児童につきましても、その障害の程度などを問わず、全て児童福祉法における児童に含んでございます。したがいまして、今申し上げたような健やかな心身の成長、発達を保障される権利を有するといった考え方は、障害を持つお子さん、そうでないお子さん、ともに適用される理念だというのが児童福祉法の考え方でございます。   法務省事務当局からも御説明がございましたが、このような趣旨で、心身の健全な発達というのを区別をすることなく加えているものというふうに私としては資料を拝読しておりまして、そういうことであれば、厚労省としましては、児童福祉法との関係で申し上げれば、特段何か疑念を招くとか、不適切ということはないのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。中田委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 ○中田委員 はい、よく理解できました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○木村(敦)幹事 今までの議論をお伺いし、まず、今回新たに入った子の心身の健全な発達という文言によって、有害性の判断において具体的な観点を盛り込み、その指針を明らかにするという趣旨は十分に理解することができましたし、こういった文言を追加することの意義はそれなりにあるのではないかと感じております。ただ、磯谷委員がおっしゃったように、実際に、この規定が、具体的な指針あるいは観点を示すことにとどまらず、実際に子どもを監護養育する養育者、取り分け親に対してのメッセージ性をもつという点においても、とても大きな意味を持っていると思います。そういった観点を踏まえると、文言自体が、その条文を読む国民に対してどのようなメッセージ性を持っているのかという点を看過してはならないと思っております。   そのうえで、私の個人的な関心は、健全な発達という言葉において、取り分け発達という言葉だけが用いられている点がどのような影響を持つのかという点にあります。磯谷先生がおっしゃったように、発達という言葉に将来性という観点が盛り込まれていることによって、禁止の範囲を狭めてしまうこともあるかもしれませんが、その点とは別に、発達という言葉そのものが,単に子どもが育っていくという意味だけではなくて、日本語のニュアンスとして、辞書などの表現にある、より完全な形態や機能を持つようになるといったイメージも与えかねないのではないか、ということが気になっております。   先ほど久保野幹事がおっしゃったように、児童福祉法などにおいては成長及び発達という文言が使われておりますし、成長という文言自体は、私の手元にある辞書だと、体が大きくなるという意味だけで成長という言葉を用いるということもあると示されています。先ほど述べたように,発達という言葉が将来性あるいはその言葉自体が与えるニュアンスにおいて何かしら限定的な意味を持つのであれば、発達という言葉に成長という文言を加えることも考えられるのではないかと思っております。   しかし、現段階において、健全な発達だけでもよいと考えておられるのであれば、補足説明において成長及び発達という言葉を使って説明をしていただくなど、具体的な説明の場面において、文言自体が国民の皆さんに与えるイメージやメッセージ性についても十分な配慮をしていただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。木村幹事からは、指針を示すということについては賛成であるけれども、磯谷委員のおっしゃっている懸念についても理解できるということで、具体的には健全な発達というところを成長、発達と変えてはどうかという御提案を頂きましたが、用語を今から変更することが難しいのであれば、そこについて十分な説明をすることが望まれるという御意見を頂戴いたしました。 ○窪田委員 今の木村さんの御発言とも重なるのですが、これまで出ている意見の中でも複数触れられていたと思うのですが、これはやはり成長及び発達ということに特に差し支えがないのであれば、この場で変更するということは考えられるのではないかと思います。多分この文言が追加された背景に照らして見ても、ここで成長及び発達という形で成長を付け加えることに特に大きな障害はないのではないかと考えます。それが1点。   それともう一つ、余り変更を提案するようなことはこの場で望まれていないのだろうと思うのですが、やはり先ほどの中田委員の御指摘にも出てきた点なのですが、恐らく健全な発達というのは何かある一定のイメージを持った言葉なのかなという感じがいたします。何か非常に理想的な形態があって、そこから外れるものは駄目なのだという感じで、それを見ながら考えていたのですが、先ほど厚生労働省の方の言葉でも使っている、健やかな心身の成長及び発達の権利といったような形で使っているということで、これはあり得るのかもしれませんが、ただ、これを少し見直しておりますと、健やかな心身の成長及び発達の権利という言い方であれば、健やかなは必ず要るのだろうと思うのですが、実はこれは後ろに有害な影響を及ぼすという、有害なというのが入っております。実はその有害なというのと健全なというのはかぶっているのではないか、極端に言うと、子の心身の成長並びに発達に有害な影響を及ぼすと言っても、実は同じなのではないかという気がしたものですから、あえて健全なという言葉を使わなくてもいいのかなとは思いました。ただ、今の段階で更に引っかき回すようなことを言ってはいけないと思いますので、基本的には、多分より許容されるであろう、成長及びというのは追加していただきたいと思いますが、健全なについてはもう致し方がないということであれば、もうこのままでもいいのかもしれません。ただ、今言ったような形での、この言葉が持っているニュアンス、私自身はやはり少し違和感を持っているということだけは申し上げておきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。窪田委員からも、基本的な方向についてはこれでよいということで、ただ、先ほどから問題になっております文言の修正について、2段階の御提案を頂いたと理解を致しました。 ○山本委員 今の皆さんの議論を聞いていて、やはりここはきれいに表現するとすれば、成長及び発達をセットにしておいた方がいいかなと私自身も思いました。そもそも元々そういうふうにセットで表現されてきている概念があるとすれば、ここに入れるのは自然かなと。大本で国会に通りやすいと、そういうことも考えると、ほら、これは今までも通念としてみんなが言ってきたことでしょうと、そういう意味では、そこはあり得るかなと思いました。あともう一つ、及ぼす言動のところで、及ぼし得る言動というのは、確かに現在の行動に焦点を当てるのであれば、そういう意味だよということは、この文言を変えるかどうかは別にして、はっきりと補足説明に入れておくべきことだと思います。   ただ、こう言っても、私の児童相談所での経験で言いますと、子の心身の健全な成長及び発達に有害な影響を及ぼすということが、例えば発達障害といわれている、注意障害といわれている、あるいは学習障害といわれているような子どもに対してスパルタ教育をやろうとする父親であれば当然、この趣旨に従って俺はやっていると主張するのは間違いないです。そのときに、発達の程度に配慮していないと相談所は言うわけですけれども、その発達の程度こそが健全ではないから、自分はより健全にしようと頑張っているのだと、何でそれを邪魔するのかといって議論になるのは間違いありません。したがって、そういう意味では、どこまで行ってもそういう議論は常に起こり得ると、それを補足説明として、その趣旨として、こうだよとどこまで言えているかというのが一つ課題かなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。山本委員からも文言についての御意見を頂くとともに、先ほども御指摘がありましたけれども、やはり文言で示せることには限度があるので、その説明について工夫をする必要があるだろうという御指摘を重ねて頂きました。   様々な御意見を頂いておりますけれども、少しまとめさせていただきたいと思います。御提案は、今回のものによって従前の考え方、趣旨が変わるというわけではないということだったと思います。その上で、ここで私たちが考えていたものを変えるということではないとしてもて、非常に緩やかな形、予想外の形で拡張的に捉えられることはないだろうかという点について、その範囲を画するための工夫が必要ではないかといったことだったかと思います。   これに対して、それは逆に制限的な解釈あるいは曖昧な解釈を生むのではないかという御懸念が示され、皆さんの間でこの点をめぐって様々な御意見、御感触が示されていると理解を致しました。それらを通じて皆さんから共通に出されたことは、これは表現の問題なので、どのような文言を用いたとしてもそれがどのように運用されるかという点については、程度の差はあるかもしれませんが、予想外の理解の仕方が出てくるであろう、そのようなことにならないような配慮が必要ではないかということで御指摘だったかと思います。   これが現在のおおよその議論状況だろうと思っておりますけれども、御意見の分布を確認いたしますと、磯谷委員は反対という御意見を表明されておられましたが、そのほかの方々は、これに積極的に賛成だという方々、それから、これでもよいのではないかという方々、意見が分かれているところでございます。   始まって1時間15分ほどたちました。今日は休みなしで行こうと思っていたのですけれども、今のような状況であるということを皆さまに御理解を頂いた上で、少し休憩をして、取りまとめができるかどうかということについて再度皆様の御意見を頂戴したいと思っております。10分ほど休憩をさせていただきたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。   それでは、14時55分まで休憩を致します。           (休     憩) ○大村部会長 それでは、再開させていただきたいと思います。   部会資料25-1の「第1 懲戒権に関する規定の見直し」について御意見を頂いてまいりました。今回の修正案につきまして様々な立場から御意見を頂きましたけれども、非常に重要な問題ですので、様々な観点から議論を尽くしておくということが必要であろうと思っております。その上で、今まで頂いた御意見に基づいて、私のまとめの続きをもう少し述べさせていただきたいと思います。   まず、経緯に遡ることになりますけれども、この懲戒権の規定の見直しにつきましては、以前に2011年に改正がされたときから持ち越しになっていた課題ということで、今回議論をしてきたところでございます。この点につきましては、甲案、乙案、丙案という三つの案を掲げまして、そのどれがよいかということについて議論を行ってまいりました。部会の意見は早い段階である方向に収束していた、と理解しておりますけれども、社会には様々な御意見もあるだろうということで、慎重な検討を続けて今日に至ったと認識をしております。   そうした中で今回、最終的な案をとりまとめるということで、新たな文言を付け加えるという御提案しているということかと思います。休憩の前に申し上げたことの繰り返しですけれども、実質を変更するものではないということが前提で、これを付け加えることが、指針を示して適切な運用を促すという点で、よいのではないかという御意見が出る一方で、むしろこれを付け加えることがマイナスになるのではないかという御懸念が示されたところであったかと思います。皆さまの中からは、これは文言の問題であるので、どのようにしたとしても様々な理解がされる可能性があるので、十分な説明が必要であろうという御指摘が一致してなされていたと理解をしております。様々な御意見がありましたけれども、具体的な御意見としては、この提案の文言に修正を加えるという御意見も複数頂戴しております。   修正の内容については、健全な発達という部分につき複数の御意見がございました。今、休憩中に用例などについても調べていただきましたけれども、やはりもう少し精査を要するところがあって、成長という文言を加えるということでよいという点はそう簡単には判断できない状況でございます。そこで、大変恐縮なのですけれども、この点についての御意見が多かったことを踏まえて、健全な発達という文言に成長という文言などを加えるといった修正を行うかどうかという点を私の方にあずからせていただいて、成長を加えるということもあるべしという案でこれを取りまとめるということにつきまして、賛否の御意見を頂戴できればと思います。  もちろん皆さまから御指摘がありましたように、この規定の趣旨については法務省を始め関係諸方面から十分な周知をしていただくということが前提でございますけれども、今のような案で御了解を頂けるかどうか、御了解についても、積極的な賛成から、個人的には反対であるけれども、部会としての取りまとめについてということであれば賛成できるといった消極的な賛成まで、様々な御意見があろうかと思いますが、何か御発言があれば頂戴したいと思います。いかがでございましょうか。 ○大石委員 今の御提案に賛成です。その上で申しますと、もし成長及び発達ということになるとすれば、その上の行、子の年齢及び発達のところにも影響を及ぼさないかどうかについても御検討を頂きたい。具体的には、もしそうなるとすると、子の年齢並びに成長及び発達というふうになるのかどうか、文言を検討いただければ幸いです。   もう1点は、後ろの3ページの説明を読みますと、先ほど休みの前に申し上げればよかったのですが、直接的な有害な影響という結果の発生は必ずしも必要でないとまで書いておられるわけですから、そうすると、法律的な言葉遣いとしては、元の要綱の文言に戻りますけれども、有害な影響を及ぼすおそれのある言動という、多分そちらの方になるのだろうと思うのです。そうすると、磯谷委員が縷々おっしゃった御懸念にもある程度こたえることになるのかなと思うのですが、用語としては余りそれにこだわるのはどうかということであれば、特にその趣旨を含むということであれば、この点についてはこだわるものではございません。 ○大村部会長 ありがとうございます。「及ぼす」を「及ぼし得る」と直すということにつきましては、皆さまの御意見は十分に理解するのですけれども、その波及効果ということもありますので、多少難しいところがあるのではないかと思っております。他方で、体罰の方に影響が及ぶのではないかという、磯谷委員が最初に御発言になった点、これは非常に重要な点だろうと思います。先ほど事務当局の方から御説明がありましたけれども、体罰は子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動であるという理解に立っているということだったと、私自身は理解を致しました。そういう理解に立っているということを改めて確認をさせていただいて、その方向で各種の説明を行っていただくということかと思っていますけれども、事務当局の方、この点は今の私のような理解でよろしいですか。 ○砂山関係官 この体罰に関しましては、児童虐待防止法が改正され、これを明確に禁止する旨の規律が設けられたことを踏まえまして、現行民法上も懲戒権の行使として許容されないものと解されるところでございます。今回の見直しは、このような現行法の解釈を明確にするものであり、補足説明でも記載しておりますとおり、体罰に当たる限りはすべからく子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動に当たるものと考えており、親権者の監護教育権の行使として許容されないものと考えております。ただ、この点について御懸念いただいているところでございますので、今後、適切な理解が得られるように周知広報に努めてまいりたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○窪田委員 先ほど大村部会長からあった点ですが、心身の健全な発達という部分を健全な成長並びに発達とするかどうか、文言を精査する必要もあるので、その部分については最終的な文言は部会長にお任せするということで、そういうふうな方向での修正ということの提案に賛成です。 ○大村部会長 ありがとうございます。御賛成を頂きましたが、先ほど棚村委員からも御発言がありましたけれども、発達と書いてあるけれども、成長及び発達という趣旨だという理解だろうと思いますが、それを明文化するかどうかということについてはもう少し検討をさせていただきたいということでございました。   そのほか、御発言はいかがでございましょうか。 ○磯谷委員 ありがとうございます。私の申し上げたいところはもう最初のところでかなり申し上げました。その後、残念ながら直接的に私の発言に御賛同いただける方はほとんどいらっしゃらなかったようには思いますけれども、ただ、御発言を伺うと、懸念はかなり共有をしていただいたのだろうと理解をしております。また、先ほど垣内幹事がおっしゃった御発言で、私自身、はっと気付かされたと思うのですけれども、発達というのは将来という面もあるかもしれないけれども、むしろ子どもにとっては一日一日が発達の過程であると、ですから、今有害なものというのは、これはもう発達にも有害なのだというふうなお話を頂いたかと思いまして、これは大変すばらしい御発言だったかなと思っております。いずれにしても、私が申し上げたいところはもう申し上げましたので、最終的には部会長の方に進行についてはお任せをしたいと思います。くれぐれも事務当局の方としては、しっかり疑義が生じないような、今求められているこの体罰禁止、それから子どもへの有害な行為の禁止というところをしっかり伝わるように御配慮いただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。第1の懲戒権に関する規定の見直しにつきましては、皆さまからおおむね御意見を頂いたと思いますので、それを踏まえまして、他の項目についての御議論が終わった後で、取りまとめの御提案をさせていただきたいと思います。ということで、先に進ませていただきたいと思います。   次は、嫡出の推定の見直し及び女性に係る再婚禁止期間の廃止についてです。これにつきましては、前回の要綱案の原案からの変更はございませんので、事務当局からの説明等は特にございません。もし御発言があれば頂戴をしたいと思いますが、いかがでございましょうか。 ○大石委員 全く形式なのですが、5ページにありますような形、すなわち、この補足説明としての言わば完結性という視点からの疑問なのですが、5ページの13行目、また、推定制度に関する見直しの趣旨についてはうんぬんとあって、ここに参考資料21で整理したとおりであると書いてありますが、この補足説明だけを見る場合に、参考資料が特に、我々は委員として逐次頂いていますけれども、補足説明だけを見た場合に完結性がどうもないわけです。同じことは8ページあるいは19ページ、8ページのその余の検討のところにもありますし、それから、元々の19ページですが、その余の検討の部会資料22-3、第1に記載のとおりというのがあって、どうもこの補足説明だけを見るという場合に完結性がないので、その点を、この書き方でいいのかどうか、あるいはもう少し言葉を補うとかした方がいいのかについて、少し親切みが足りないかなと印象を持っておりますので、御検討いただければ幸いです。 ○大村部会長 ありがとうございます。少し私の理解を申し述べさせていただきます。今回、最終的な要綱案の原案についてお示しいただきまして、補足説明が付いております。補足説明が資料に付くのは今回が最後ということになりますので、頂いた御要望、御指摘については、その他の形で実質的な説明を行っていく際に、それだけを読めば分かるという形の説明を工夫するという形で受け止めさせていただきたいと思います。補足説明の位置付けは、そういう理解でよろしいですね。 ○佐藤幹事 この補足説明の性質ということで申しますと、今回御審議いただいている対象自体は要綱案であり、補足説明は、その要綱案をよりよく御理解いただくために、事務当局として、今回の部会のために作成した資料ですので、改めて作り直すというような性質のものではございません。この点については、今、部会長から御示唆いただいたとおりでございます。ただ、最終段階の補足説明については、これまでを振り返るような形で、どういう議論がされてきたかということの見通しを持ちやすいものにすべきといった御意見があり、ここ数回の補足説明の作成においては、事務当局としても意を払ってきたところです。その上で、いま少し分かりやすさの観点から、あるいは親切さの観点から、不足する部分があるのではないかという趣旨の御指摘と承りました。資料の作り方についての御指摘として受け止めさせていただきたいと思います。もっとも、補足説明の性質、位置付けにつきましては、今申し上げたとおりでございますので、そのように御理解を頂ければと思っております。 ○大石委員 結構です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか、第2の関係で御発言はございませんでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは、先に進ませていただきます。   第3の関係になります。嫡出否認制度に関する規律の見直しについてでございます。これにつきましても前回の要綱案の原案からの変更はございませんので、説明等は省略させていただきます。御意見があれば頂戴したいと思います。   よろしいでしょうか。ありがとうございます。   それでは、第4になります。第三者の提供精子を用いた生殖補助医療により生まれた子に関する民法の特例の見直しについてでございます。この点につきましても、前回の要綱案の原案からの変更はございませんので、説明等は省略させていただきます。御意見があれば頂戴をしたいと思います。 ○髙橋委員 少し発言させていただきます。21ページの3の第2段落、なおという段落についてです。ここで20行目から22行目に掛けて、将来の検討の必要性について、私の意見を書き加えていただいて、この点は感謝しております。その後ですけれども、こういう否認権を認めると生殖補助医療を行った意義が失われると、それから、自然懐胎によって生まれた子と差異が生じるから相当でないとされたとありますけれども、これは書いてあることは私もよく理解できるところです。ただ、私が将来の検討と申し上げましたのは、飽くまで将来ということでございます。今回、否認期間の伸長というようなことを提案しておりますけれども、ここでありますような生殖補助医療の意義ですね、これは、生殖補助医療を行って親子関係を作って子どもを養育していくと、そういうことだと思うのですけれども、私が指摘したのは、父親の側がこの意義を失わせてしまうような、そもそも想定していたようなケースでそういうのがあってはならないようなケース、例外的なケースがもしあった場合、今回、否認期間の伸長として提案したような、養育がほとんどなされないような場合と重なるようなことが出てくるのではないか、もしかしたらそういうことが将来問題になるのではないかと、そういう意見として申し上げたところですので、その点は改めて申し上げておきたいと思っております。   それから、ここのところで自然懐胎で生まれた子との差別が生じてはいけないと書かれていることについて、少し意見を述べさせてもらいたいのですけれども、これは私も全くそのように考えています。差別が生じないような制度設計がなされるべきだと考えております。今、国会で行為規制を作っているということですが、そこで実現してほしいと考えております。差別が生まれる要因としては、技術を使って生命が生まれるとか、あるいは不妊に対する理解が十分でないとか、様々な要因から、生まれた子どもに差別が生じる背景というのがあるのではないかと思いますけれども、こういうものに対する生殖補助医療実施前のカウンセリングとか、あるいは出産後のフォローアップなど、きめ細かい体制を作る必要がありますし、また、親子関係というからにはそれが証明できるように、生殖補助医療の情報の保存とか、そのような管理機関、アクセスの整備、そのような制度を整えることは大事なことであると考えております。そのような制度設計をしているところに、何かそこに水を掛けるような複雑なことを特段申し上げると、そういう趣旨ではございませんので、その点を申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今後の検討課題の内容について御意見を御披露いただいたと思います。特に、親子法制に限らない様々な対応が必要であろうということについて御指摘を頂いたと受け止めさせていただきました。   今の御意見のほかに、第4の関係で御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは、第4についても御意見を頂戴したということで、最後の項目になりますが、第5の関係、認知制度の見直し等についてです。こちらも前回の要綱案の原案からの変更はございません。ただ、前回の部会での事務当局の説明について若干補足があると伺っておりますので、この点について事務当局にまず、お話を頂きたいと思います。 ○佐藤幹事 前回、認知制度の見直しについて御議論いただきました際に、認知について反対の事実があるときは、国籍法第3条の認知された子の国籍の取得に関する規定は適用しない、こういった規律を設けることに関しまして、水野委員からの御質問として、例えば虚偽の認知が刑事法上の犯罪行為に該当するような場合に、単に国籍の取得が認められないにとどまるのか、あるいは民事法上も親子関係が否定されることになるのかといったお尋ねを頂きました。この点につきまして、今回の見直しは飽くまでも国籍法第3条の規定の適用の可否に関するものであって、犯罪行為に該当するような身分行為について、その民事法上の取扱いを含め、直接的に何らかの見直しをするものではないとの立場から、従前の取扱いに特段の変更は生じないものと考えられる旨の御説明をしたところでございます。   もっとも、今回の見直しにおきまして認知無効の主張に期間制限を導入するということを踏まえますと、今申しました前回の御説明の内容には言葉足らずの面があったと考えております。従前からの取扱いでございますけれども、検察官から戸籍の管掌者に対して犯罪に該当する虚偽認知についての通知があった場合には、民事法上も当該認知は虚偽のものであって効力を有しないということを明らかにすべく、戸籍の訂正が行われているところと承知しておりますけれども、こうした取扱い自体は、認知無効の主張の期間制限内であれば今後も引き続き妥当すると考えられるところでございます。ただ、その期間制限を超えた場合につきましては、認知により成立した親子関係が民事法上確定することとなりますので、父の戸籍の身分事項欄に記載された認知事項、これも訂正されることなく維持されるものと考えられます。   なお、期間制限を超えた場合の刑事処罰による犯罪の抑止効果につきましては、第18回の部会資料に記載して整理させていただいたところですが、最終的には個別の事案における証拠の内容等によることとなるため、一概に申し上げることはできないのですけれども、一般論としては、当該認知の届出が公務員に対する虚偽の申立てであると認められ、それによって権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記載をさせたという要件に該当すると認められる場合には、電磁的公正証書原本不実記録罪を構成し得るものであって、現行法と同様の取扱いがされることになると考えられるところです。   いずれにしましても民事法上、つまり父の戸籍上は、認知無効の主張の期間制限内か否かによって事実に反する認知の効力について取扱いが異なることとなると考えられますので、この点について、念のためではございますが、前回御説明したところに補足させていただく次第です。 ○大村部会長 ありがとうございます。前回の説明についての補足を頂きました。今の補足説明は説明の問題ということになりますけれども、認知制度の見直し、第5で提案されている部分につきまして、御意見がありましたら頂きたいと思いますが、いかがでございましょうか。   これもよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、この点につきましても御意見を頂戴したということにさせていただきます。   これで第1から第5まで御意見を頂いたということになります。この後、要綱案についてお諮りをしたいと思いますが、現在、情報通信機器を利用して議事進行を行っていることとの関係で、念のため情報通信機器を利用して出席されておられる委員の皆様と適時意見表明が相互に可能な状態であるということを確認させていただき、その上でお諮りをさせていただきたいと思います。具体的に申しますと、お手数をお掛けいたしますが、今、私の声が聞こえていらっしゃる方は、挙手ボタン、画面の上にある手の形をしたボタンを押していただく、あるいは身振り等で聞こえていることをお示ししていただきたいと思います。マイクボタンで聞こえていると言っていただいても結構でございます。   事務当局において、出席委員全員と適時意見表明が相互に可能な状態であるということを確認していただきまして、その上で提案をお諮りさせていただきたいと思います。今、皆さん手が挙がっているかと思いますが、確認をしてください。   ありがとうございます。出席委員全員と意見表明が相互に可能な状態であるということを確認いたしました。挙手された方は手を下ろしていただいて結構です。よろしくお願いを申し上げます。   それでは、本部会におきます審議結果の取りまとめをさせていただきたいと思います。   本日御議論があったところでございますが、民法(親子法制)等の改正に関する要綱案、部会資料25-1のうち、第1の2、子の心身の健全な発達という文言につきまして修正が可能かどうかという点は、字句の修正に準ずる問題として部会長に御一任いただくということを前提といたしまして、この資料の内容で取りまとめをさせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。   よろしいでしょうか。挙手を頂いている方は賛成だと受け止めさせていただきます。もしそうでないということでありましたら、マイクの方で、そうではないと言っていただければと思いますが、今のところ皆さんから賛成を頂いていると理解をしております。御異論はないようですので、民法(親子法制)部会といたしまして、全員一致で、先ほどの留保の下、部会資料25-1の内容で要綱案を決定したということにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。   この要綱案につきましては今後、法制審議会の総会に報告するということになります。直前に一言申しましたけれども、総会に付議するまでの間に誤字等の修正その他実質的な内容を変更しない表現、字句等の修正などがあり得るかと思いますが、そうした形式的な修正につきましては部会長である私と事務当局に御一任を頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは、今の点につきましても御了解を得たということで、そのような取扱いにさせていただきたいと存じます。   それでは、今後の予定につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○佐藤幹事 どうもありがとうございました。本日、一部御一任いただいた部分も含めまして、要綱案を御決定いただきました。この要綱案を報告する法制審議会の総会は今月14日に開催される予定です。この総会におきましては、大村部会長から要綱案の内容について御報告を頂いた後に、総会の委員の皆様に御審議を頂くということになります。その総会における御審議の結果、要綱が決定されますと、直ちに法務大臣に答申されるという運びになる予定でございます。なお、総会に報告する最終的な要綱案につきましては、必要な点検作業などを行った後に速やかに法務省ウェブサイトで公表をする予定でございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   以上でこの部会の議事を終えることができましたので、担当部局を代表いたしまして、民事局長の金子委員に御挨拶をお願いしたいと思います。 ○金子委員 民事局長の金子です。この部会の御審議の終了に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。   要綱案の取りまとめを頂きましてありがとうございます。25回の長きに及ぶ部会となりましたけれども、その間、委員、幹事の皆様の御尽力、御協力に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。   この部会は親権者の懲戒権に関する規定の見直しと、無戸籍者問題を解消するという観点からの嫡出推定制度の規定の見直しという大きなテーマを御審議いただいたわけでございます。いずれも社会的な関心も高く、また課題も喫緊の課題であり、また、理論的にも様々な難しい問題を含んでいるものでございましたけれども、委員、幹事の皆様には非常に密度の濃い議論を尽くしていただいたと感じております。また、大村部会長におかれましては、各委員、幹事の発言一つ一つにつきまして分かりやすく要約した上でお進めいただきまして、それにより問題点の共有、議論の深まり、円滑な進行が行われたものと思います。大変感謝しております。ありがとうございました。また、最終的に要綱案に盛り込まれなかった論点も多数ございましたが、そのようなものでも、ここでされた議論は今後の実務の発展あるいは今後の課題の検討のためにも大いに寄与するものと確信しております。   今後は、この要綱案を法制審議会に報告し、要綱の決定、法務大臣への答申というスケジュールを予定しております。それを踏まえまして、関係法案をできるだけ速やかに国会に提出するとともに、この議論の場が国会での審議にステージを移してされるわけですが、そこでも全力を尽くして早期の成立を目指して頑張ろうと思っております。皆様には今後もいろいろな場面で御支援、御協力を頂くことになると思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。   改めまして、皆さんどうもありがとうございました。 ○大村部会長 続きまして、部会長の私からも一言御挨拶を申し上げます。金子局長の御挨拶にあったとおり、本部会は2019年7月の第1回会議以降、本日まで25回の会議を重ねてまいりました。2018年の相続法改正の際には26回の会議を行っておりますので、ほぼ同じ時間を掛けて検討してきたということになります。部会で取り上げた議題は、一方では民法822条の定める懲戒権の見直し、他方で民法772条以下の嫡出推定、否認を中心とした実親子法の見直しでございました。これも局長がおっしゃったとおり、いずれも社会的な関心の高い問題であると同時に、原理的にも技術的にも困難な法的な課題を含むものであったため、部会としては時間の制約を意識しつつも慎重な検討を行ってきたと認識をしております。   822条の見直しは、先ほども触れましたけれども、2011年の親権法改正以来の懸案でしたが、今回は社会の変化のすう勢を幅広く考慮に入れながら、運用上の課題を残しつつも、親子法、さらには民法全体の将来像につながっていくような案を何とか取りまとめることができたのではないかと思っております。   また、772条以下の改正に関しましては、家族の実態、あるいは家族観、家族に対する見方が多様化していることを反映して、様々な御意見がある中で、問題を幾つかに分けて段階的に議論を進め、合意を積み重ねて最終案に至りました。その結果、嫡出推定、否認につき、複数の観点から見直すことによって、社会の変化に対応した案を取りまとめることができたのではないかと思っております。さらに、かねてより問題が指摘されていた再婚禁止期間や認知に関する規定の見直しもできたように思います。   他方、かなりの程度まで議論をしながら、あるいは問題点につき複数の委員、幹事の御指摘を頂きながら、成案に至らなかったものも幾つか残りましたけれども、部会での問題点の検討は今後につながっていくものと思っております。   皆さまの御協力、御理解によって、改正提案として異なる立場から受入れ可能な案が取りまとめられたということは、今後の家族法改正にとっても非常に意義のあることであると感じております。この場を借りて改めて御礼を申し上げます。   今後は、これも先ほど御説明がありましたが、総会での御決定などのプロセスを経て、国会において改正案が早期に法案として成立することを期待しておりますけれども、現行法にせよ改正案にせよ、実親子法の規定には理解が必ずしも容易ではない法技術が含まれております。また、今回の改正案には複数回の離婚を想定した規定などもあります。部会でも、本日もまた御指摘のあったところですけれども、広い範囲の人々に改正案の考え方を御理解いただくための方策を講ずることは必須であると思われます。事務当局を始め関係省庁、関係諸団体、また委員、幹事の皆様には、引き続き御尽力を賜れますようお願いを申し上げます。   なお、親子法に関しては現在、法制審の別の部会、家族法制部会におきまして、離婚後の子の養育に関する問題を中心に審議が行われているところでございますけれども、この改正も合わせますと、広い意味での親子法の改正がひとまず実現をするものと期待をしております。こちらにつきましても様々な形で御支援を頂けますと幸いに存じます。   以上でございます。   これをもちまして、民法(親子法制)部会の審議を終えることといたします。   長い期間にわたりまして、どうもありがとうございました。これで閉会を致します。 -了-